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Ddog氏のような説明が流布されている背景
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投稿者 たこ 日時 2003 年 6 月 18 日 10:23:54:KZLCEeqX13raw

(回答先: Re: ちょっと反論(上奏と天皇の責任) 投稿者 Ddog 日時 2003 年 6 月 18 日 01:46:45)

どうせ「指導者」内部の問題と考えてしまうと、具体的な責任者の追求や天皇個人の政治的意見など、大きな問題ではないかも知れません。しかし、私は、Ddog氏のような説明が流布されている背景にも興味があります。説明の前提として、旧憲法の運用慣行のうち、天皇に関する事項を列挙してみたい。

1. 天皇の政治利用(注1)は回避すべきとする通念は広くあった。この原則から、内奏での会話などは公開すべきでないとされていた(これは通念)。戦後において、この常識を知らない防衛庁長官が、「天皇の激励」を口にして引責辞任したことがあるが、これは現憲法下に限らず、旧憲法下の通念で判断しても問題となる。

注1:ここで用いている「政治」は、天皇を含めない当局者の進退などの国務の「非天皇部分」に限定した意味で、当時の用法に近い。当時の用法では、政治の「天皇部分」はもっぱら「大権」の語を用いている。もちろん、「(天皇の)政治責任」という場合の「政治」と同義ではない。

2. 政策は当局者が立案し天皇はこれを裁可すべき存在とされる。これは、戦争責任に関連して「憲政」に言及した裕仁の発言による。最終的な決定文書、たとえば詔書について、天皇が輔弼を待たず独断で公布することがないという意味では、憲法規定でも現実の運用もそのとおりである。しかし、天皇が政策決定に関わることがないという意味とすれば、真実でない(当時の通念にも反する)。実際には、「御下問」などの形式による天皇からの主体的な政策誘導の実例があるほか、枢密院や内大臣、元老、重臣などの公式・非公式の諮詢機関が多数あり、どれに諮詢するかも、天皇の意向が左右した。その結果、天皇との意見の対立は、政策の決定を不可能にし、当局者の辞任につながる。当然ながら、天皇と当局者が事前に意見調整することも多いと思われるが、天皇の意見は前段の理由で公表されることが少ない(注2)。なお、「上奏」は、完成した書面を奉呈し天皇の捺印を求める形式的な行為で、この段階で天皇が拒絶した例はない(らしい)。

注2:裕仁の「独白録」では、陸相と対立して張作霖暗殺の犯人(陸軍軍人)を処罰できない田中義一首相を叱責して辞職させたことを「反省」とするが、天皇が処罰の実現を求めるなら、陸軍に命じるべきで、首相を叱責したことは不可解。いずれにしても、この辞職理由は当時に公表されたものではない。

3. 閣内不統一のときは内閣は総辞職すべきとされる(明治期以来の通念)。もっとも、一部閣僚の発言が内閣全体の責任問題となるのは、内閣の連帯責任を明記する現憲法下で強化された慣行である。旧憲法下では閣内の対立が表明化することが多かったが、最終的に調整されれば問題とならなかった。内閣制度は、旧憲法下では内閣官制(勅令)によるもので、憲法に根拠条文がない(憲法上は「国務各大臣」の個別輔弼が原則)。

確固たる通念であった原則1を破って、裕仁の発言のごく一部のみ(後述するが、戦争に反対する言動が多い)、戦後になって宣伝され、そして、ポツダム宣言受諾の「御前会議」のみが原則2に反する例として宣伝されていることに注目したい(他にも例が多いと推測される)。当然ながら、すべての説明は、天皇退位の政治的条件がなくなった「戦後」の一時期に出てきたもので、旧憲法下の通念を知らない者にのみ通用し得る説明です(説明のシナリオは戦後に作られた)。なお、ポツダム宣言受諾文や「終戦詔書」は、内閣が一致して(不本意な閣僚も形式的には合意して)上奏していると思われるので、原則3には反していないが、この事実は伏せられている(大きくは扱われない)。

宣伝されている裕仁の政治的言動は、これが真実としても、戦争責任回避のフィルターを通じて選別されたものでしょう(注3)。現実の政策決定や人事の決定から判断すると、裕仁個人の意見あるいは感情レベルでも、これに反する事実が推測できます。なお、戦後において、内大臣など側近者の発言として伝えられている政治的言動も多くありますが、その選任に天皇自身が関与し、日常的に天皇に接していた側近者の発言は、天皇の意思を体していると推測されます(少なくとも、天皇の意思に反していた、あるいは天皇と対立していたという兆候はない)。

注3:Ddog氏も書いておられますが、宣伝される言動からは、「洋行帰り」の合理的思考(西欧的価値観)を持った人物像が描かれています。これは、必ずしも戦争責任に直結する話ではないので、むしろこのような政治宣伝を行った者(幣原または吉田内閣の親英米派)の正体を露呈しているのではないかと推測しております。

以上は、旧憲法下で天皇が万能の独裁者であったという意味ではありません。天皇を上回る政治的権力を行使した者がいたとしても、これは、天皇の戦争関与と背馳するものではありません。天皇は、少なく評価しても、旧憲法下の権力機構を構成する有力な政治権力者のひとりで(「政治」の語義は最初の注を参照)、戦争の政策決定への積極的関与を疑えません。「ニューマ(空気)」に影響されたことで免責されるとの論は、オウムという特殊な集団で隔離されていたから殺人も免責との論と同じで、ちょっと無理ですね。

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