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[QUICK]エコノミスト「ユーロ高の次は為替切下げ競争?」J.P.モルガン証券会社 調査部長 菅野雅明氏
http://www.asyura.com/0304/hasan26/msg/196.html
投稿者 Ddog 日時 2003 年 5 月 15 日 22:32:07:gb2b4T9TetGkU

[QUICK]エコノミスト「ユーロ高の次は為替切下げ競争?」J.P.モルガン証券会社 調査部長 菅野雅明氏
03/05/14

【景況判断】現状(3ヵ月前比):ピークアウト 先行き(3ヵ月後):悪化
GDP予測:02年度1.7%(1.6%) 03年度0.5%(0.2%)

【金 利】短期:横這いTIBOR3ヵ月 0.08%

長期:低下 10年物新発国債0.50%

【円 相 場】円高115円/1ドル
【株 価】株小幅高 日経平均8,500円
l GDP予測値は実質GDP成長率、前年比%。カッコ内は直近10回分の平均値
l 長短金利、円相場、株価は3ヵ月後(03年8月末)の予測値

1.景気見通し:「輸出減少からマイナス成長に」

本年第1四半期が今回の景気のピークであった可能性が高まってきた。第2四半期はマ イナス成長に陥るとみている。その最大の要因は、輸出数量の伸びが急速に鈍化してき たことであり、その主因が対米自動車輸出の減少であることは明らかだ。米国でも自動 車の在庫調整が進捗中であり、日本車メーカーといえど例外ではない。米国では、4月に は米国メーカーが中心となってゼロ金利ローンなどの値引き販売を行ったが、手応えは 今一つ、というのが実情のようだ。日本国内では、設備投資が底固いが、輸出のマイナ スを補うには至らない。
第2四半期は、米国景気が第1四半期に引き続き減速、欧州景気も停滞基調を脱するに 至らないほか、期待の新興アジア諸国も、SARS問題でマイナス成長を余儀なくされる。 その結果、世界全体の実質経済成長率は、1.2%(前期比年率)と、景気が弱含んだ第1四 半期(同1.7%)をさらに下回ることになる。
今後の世界経済予測については、米国の景気が大幅に減速するのはほぼ織り込み済み であったが、欧州とアジア景気が下振れる見込みだ。まず、欧州は、ユーロ高とECBの利 下げの遅れによって、景気の停滞が一段と顕著になるとみられる。政治面でも、欧州は ドイツのほか、フランスやイタリアでも政府の年金改革を巡って、労働組合が大規模な ストを計画中であり、生産面への影響が懸念される。アジアでも、中国などでSARS感染 者数の増勢は鈍化しつつあるものの、アジア地区4月中の観光旅行者数は前年比50%減と 、アジア通貨危機時を上回る打撃となっている。もっとも、4月の生産は、エレクトロニ クスを中心に概ね底固く推移しており、今のところ、日本の輸出に目立った被害は出て いない模様だ。SARS問題が、第2四半期中に最悪期を脱すれば、第3四半期にはアジア経 済は徐々に回復に向かうと見ているが、第3四半期に入っても、恐怖心理から、人々の往 来が妨げられ、生産活動にも影響が出るようであれば、当然、日本の輸出にも影響が出 始めることになろう。中国が世界の生産基地となりつつあるだけに、中国がSARS問題の 短期鎮静化に失敗するようだと、世界経済への打撃は大きくなる。
余談であるが、中国にとってのSARSの試練は、医学的な問題に止まらない。社会主義 国特有の問題である「情報公開」がどこまで可能か、世界中が注目している。SARS問題を きっかけに、中国が情報公開に前向きに取り組めば、むしろ、世界における中国の信認 が高まることも十分ありうる。ただ、逆に、情報公開が、これまでのように、後手後手 に回るようであれば、中国の信認が後退するというコストを中国政府は払う必要が出て こよう。

2.金融環境:「どこまで進むユーロ高」

ここに来て、為替の動向が俄然注目されるようになってきた。先週、FedとECBはとも に、デフレ警戒感を表明したが、ECBのドイゼンベルグ総裁は、「ユーロレートはファン ダメンタルズを反映したものである」として、ユーロ高を引き続き是認する方針を示した のに対し、米国サイドでは、Fedのデフレ警戒感表明が「Fedはデフレ対策としてドル安を 受け入れる」と受け止められたほか、スノー財務長官の「ドル安は米国の輸出にとってプ ラス」との失言(本音?)もあり、米国のドル安政策への転換が市場での共通認識になりつ つある。このため、ドル安が一気に進んだが、昨年初のドルピーク時と比べると、ドル の実質実効レートは約10%下落し、ドルの過大評価は概ね解消した。しかし、FedとECB の為替政策の差が、今度は、ユーロ/ドルのオーバーシュートを生み出しかねない状況と なってきた。目先、ユーロの上昇テンポが急であったため、若干調整が入る可能性はあ るが、FedとECBの為替政策に対する基本的な政策のスタンスに変化が無い限り、ユーロ 高、ドル安はさらに進むと見るべきであろう。
ユーロ高がどこまで進むかを現時点でピンポイントすることは困難だが、ECBが明確な ユーロ安政策に転じるまでユーロ高は続く可能性は高い。そのためには、ユーロ圏の景 気よりも、インフレ率に注目すべきだ。特に、ECBが注目するHICP前年比が2%を割り込 むまでは、ECBの為替に対するスタンスは変わらないであろう。
ただ、その先になると、為替の動向は非常に読みづらくなる。日本、米国、ユーロ圏 とも自国通貨安を望むからだ。3ヵ国とも自国通貨安を望むと、市場は、一時的には動き づらくなるものの、その後は、通貨当局間の摩擦などがきっかけになり、突如大幅な変 動が生み出されることもありうる。ブラックマンデーは、米国とドイツの間の政策を巡 る軋轢が原因であったことを思い起して頂きたい。最悪の事態は、各国間での通貨切下 げ競争だが、いずれにせよ、日本経済にとって居心地の良い状況ではない。今後も、日 本の財務省は、事実上の「無制限介入」を実施して、円高を防止する以外に手はない。MoF による通常の為替介入でも、対ドルの円高を食い止められない場合には、日銀による外 債購入という選択肢も現実味を帯びてくるが、基本的には、MoFの腹一つで、円の対ドル 安は防止可能と考えるべきであろう。

3.注目点:「政府の緊急株価対策の有効性」

政府は、14日を目処に株式の需給対策を中心とした株価対策をまとめる方針のようで ある。その対策のなかには、郵貯・簡保資金の活用も含まれる、との報道もある。郵政公 社が発足したことで、郵貯・簡保資金をPKOに使うことには、これまで以上に反対の声が 強かったが、一部報道のとおり、郵貯・簡保資金によるPKOが始まるのが事実であれば、 それは、如何に政治的圧力が強かったかを物語るものであり、かつ、政府が株価支持に 必死になっていることの現われと解釈すべきであろう。さすがに、政府がここまで「何で もあり」の姿勢で株価支持に回れば、市場も一応は敬意を表して、日本株ショートの投資 家のショートカバーを誘うことは考えられる。
しかし、問題は、株価上昇の強さと持続性である。もし、今回の対策が、目先の需給 改善だけを狙ったものなら、効果は一時的であろう。代行返上にせよ、銀行に対する規 制にせよ、何らかの事情で株式の売却が嵩み、株価が一時的に下落しても、本来なら、 割安感から株式購入を積極化する民間投資家が出てきてしかるべきである。そうした投 資家が出てこないのは、いうまでもなく、日本の先行きに対して強気になれないからで ある。
今、政府がなすべきことは、需給対策にエネルギーを費やすのではなく、投資家、と くに外人投資家に対して、日本の将来像に関する熱いメッセージを送ることだ。需給対 策は、単なる問題先送りでしかない。不良債権処理を加速して、必要なら公的資金を前 倒しで投入すると同時に、銀行経営も立て直し、併せて企業再生を実行、さらには規制 緩和を加速して、公的サービスの領域を削減することである。
さもないと、株式市場の買い手は、郵貯・簡保に日銀という公的機関のウェイトが高ま る。既に債券市場、為替市場では、日銀の比重が高まりつつあるが、株式市場において も同様の現象が起きることが懸念される。本来、経済の鏡であるべき資産市場で公的機 関のウェイトが高まることは、市場メカニズムの衰退を意味する。
「白雪姫」の物語のなかでは、意地悪なお后ですら、鏡の発するメッセージに対しては 謙虚であったように、鏡は人知を超越したものである。確かに、資産市場は一時的にプ ライシングを誤ることはありうる。しかし、それは、基本的には、市場の力によって再 び均衡に戻されるのであり、当局の介入が許されるのは、精々一時的なオーバーシュー ティングの是正だけである。株価が10年以上の長期に及んで下落するのは、より本質的 な問題が解決されていないからだ。鏡を歪めることに専念すると、日本は、結局、世界 の投資家から相手にされなくなる。市場は活力を失い、「失われた10年」が、「失われる50 年、100年」にならないとも限らない。

<菅野雅明氏略歴>
1949年生。74年東京大学経済学部卒、日本銀行入行。シカゴ大学大学院経済学修士号取 得。日本銀行調査統計局経済統計課長、同参事、日本経済研究センター主任研究員を経 て、1999年J.P.モルガン証券会社調査部長、2001年より同マネジング・ディレクター。総 務省統計審議会委員、財務省関税・外国為替審議会委員(外国為替等専門委員会)。主要論 文に「日本経済中期見通し1998−2003年度」、日本経済新聞「十字路」コメンテータ、週刊 東洋経済「経済を見る眼」、東洋経済「統計月報『エコノミスト・コンセンサス』」、などの コメンテータ。

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