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アフガン戦略を描いた“謎”の男(フォーサイト2002年第2号) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 2 月 18 日 21:21:57:

アフガン戦略を描いた“謎”の男
国際ミステリー小説にも伝説的戦略家として登場するアンドリュー・マーシャル。
八十歳になった今も国防総省の現役幹部で、アフガン攻撃に深く関与していた。
ウーバ・パーパート
(ジャーナリスト・元米国家安全保障会議顧問)

アメリカのアフガン攻撃は、爆撃に伴う非戦闘員の被害も多く、厳しい非難も浴びた。だが、これも戦略上、必然的に生じる負の部分で、攻撃自体の妥当性はいずれ証明されるだろう。
この緻密に組み立てられた戦略の陰には、一人の戦略家の存在がある。彼はアフガン攻撃を通じて、アメリカの軍事的優位性を明示して見せたのだ。
すでに一九九一年、アメリカは湾岸戦争を通じて、敵方のイラクのみならず、味方の同盟諸国に対しても、軍事的優位性を見せつけた。さらに、今回は、泥沼の長期戦になるという大方の予想を覆してみせた。
慌てたのは他の大国の軍事指導者たちだ。彼らは自国の軍事力の見直しに走った。
今回展開された爆撃は、全体の六〇%以上が敵方の射程圏外から放たれた高精度誘導爆弾で、湾岸戦争当時、この「スマート兵器」が占める割合は、わずか八%にすぎなかった。しかも、スマート兵器一基にかかるコストは、九一年の百万ドルから、一万八千ドルという桁違いの安値になっている。
なかでも最も注目すべきは、配備から発射まで、すべての行程が独自のIT(情報技術)システムに従って進められたことで、指揮、管理、通信からリアルタイムのデータ収集まで、全体を統合する情報が大気圏の内外を通じて伝達された。これはアメリカのみが完成に近い段階にまで開発したシステムで、ほかのどの軍事大国も所有しておらず、今後も予見し得るかぎり、所有できるとは思えない。
こうした軍事的優位を確保できたのは、莫大な軍事予算を投じた結果とも言えるだろう。事実、エール大学の歴史学者、ポール・ケネディによれば、アメリカの防衛支出は、世界全体の支出の三六%を占め、アメリカに次ぐ九カ国の支出総計を上回っている。
だが、問題の核心は金額ではない。その予算で何を手に入れたかである。アメリカが軍事関連ITの研究、開発、取得に投じている金額は、アメリカ以外の諸国全体が費やす額をはるかに上回り、恐らく世界総額の八〇%を超えるとみられるのだ。

さらに高まった影響力

この「質」の差がアフガニスタンでもろに出た。今回のアフガン戦争は、この数年間に進みつつある「軍事革命(RMA)」の真髄を垣間見せた初の軍事行動だったのである。
そして、この「軍事革命」に向けて、過去二十年間にわたって主役を演じてきたのは、米国防総省の“謎”の組織、「ネット・アセスメント部(ONA)」を率いる伝説的戦略家、アンドリュー・W・マーシャルである。マーシャルは七三年十月、当時の国防長官で、彼と同じく政府系シンクタンクのランド研究所出身のジェームズ・シュレシンジャーにONA創設と同時に部長に任命され、以来三十年間、八十歳になる現在まで、この部門の長を務めている。
もっとも、「軍事革命」という概念自体は、八二年、旧ソ連軍のニコライ・オガルコフ参謀総長が提示したもので、ミサイル、マイクロエレクトロニクス、センサー、精密誘導などの技術分野におけるアメリカの優位性が戦争の性格自体を劇的に変貌させる可能性があると訴えたことが端緒となった。
その十年後の九三年七月、この概念を引き継ぐ形で、マーシャル自身がONAの省内メモに自らの考えを示した。この「軍事革命に関する考察」と題するメモのなかで、彼が強調したのは、長距離精密攻撃の重要性と、「敵を上回る情報の優位性」の確立だった。
昨年二月、ブッシュ米大統領とラムズフェルド国防長官は、それまで冷や飯を食わされてきたマーシャルにチャンスを与えた(クリントン政権下のコーエン国防長官は、彼を国防大学校に追いやった。ONA自体の消滅も図ったが、この企ては失敗に終わった)。軍事戦略の包括的な見直しを指示されたマーシャルは、作業の陣頭指揮に立ち、「軍事革命」の概念を軍組織全体に組み入れるべく、アメリカの軍事力と戦略を徹底的に洗い直した。彼の描く「軍事革命」の未来構想が軍全体に浸透する可能性はきわめて高い。
というのも、彼の長いキャリアのなかでも、これほど影響力が高まったことはかつてなかったからだ。すでに陸軍参謀総長シンセキ大将の強力な支持も取り付けた。しかも、ブッシュ政権の中枢を担うラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官、アーミテージ国務副長官、ロッシュ空軍長官は、すべて七〇年代にマーシャルの下で働いていた「弟子」なのだから。
なお、四年に一度更新され、昨年九月三十日に発表された米国防白書にも、「マーシャル・レポート」の一部が採用されている。この新たな「マーシャル・プラン」が米軍部に浸透して規範となり、加えて弾道ミサイル防衛構想が進めば、アメリカの戦闘能力は、さらに各国に水をあけることになるだろう。
九七年、米陸軍戦争大学校では、ある戦争シミュレーションが行なわれた。世界に分散するテロ細胞を「オレンジ」と名づけ、このネットワークと米軍とを戦わせるゲームだったが、結果は米軍チームの敗北に終わった。攻撃方法が分からなかったこともあるが、もともとこの種の「戦争」には、関心が薄かったためだ。しかし、こうした時代はもはや過去となった。

軍事力が築いた「帝国」

かつてアフガン戦争で味わった体験から、今回の戦闘の泥沼化を警告していたロシア軍部は、その予想が完全に外れただけでなく、いまや自らの貧弱な軍備、訓練、戦略オプションを苦い思いで点検しているにちがいない。
パキスタン軍部とその諜報機関の報告を真に受け、アメリカの作戦の失敗を想定していた中国も、自国の軍備に関して疑問を持たざるを得ない状況にある。とりわけ台湾に対する威嚇態勢の見直しは必須となっている。
こうした地政学的状況のなかで、アメリカの「一国主義」が進むという恐怖感が世界を覆っている。だが、これはブッシュ政権の国家安全保障チーム内に亀裂があるという誤った観測に基づく過剰な反応だ。
「多国主義」のパウエル国務長官と「一国主義」のラムズフェルド国防長官およびウルフォウィッツ副長官が対立していると喧伝されているが、実際はパウエルも、不確かな同盟国に不要な譲歩をするよりは、迅速かつ断固としたアフガン攻撃がテロ撲滅同盟の強化に役立ったと評価しているし、一方のラムズフェルドも、反テロ同盟の情報網はきわめて貴重で、アメリカの「独断専行」は愚策であることは十分承知しているのだ。
両者の主たる差異は、単に外交と軍事という職務上の違いから生じたものにすぎない。軟弱なクリントン的多国主義はすでに死に絶えた。アメリカは今後も各国と連合を結ぶだろうが、それはアメリカの目的を分かち合う同盟であり、妥協のためではないのである。
アメリカでは、ルパート・マードック傘下の雑誌編集長を務めるウィリアム・クリストルを軸とする「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」の新保守主義グループばかりでなく、比較的リベラルなポール・ケネディの口からも、「新アメリカ帝国」という言葉が発せられている。しかも、ケネディによれば、ローマ帝国や大英帝国といった古典的な概念を凌駕する帝国だという。
すでにアメリカが帝国であるか否かの論議は終わった。新保守主義の学者たちに言わせれば、「アメリカ帝国」は現に存在し、目下の課題は、帝国の力をもって何をなすかの展望に移っているのである。
「アメリカ帝国」が描く目標に関しても、新保守主義派とリベラル派との間には、ほとんど齟齬《そご》はない。具体的な目標は、(1)アメリカの高い抑止力と戦闘能力に基づく平和と安全(2)重要市場に対するアクセスを含めたグローバルなアメリカの利益の保護(3)不当な規制を排除したグローバル経済の活性化と生産性の向上。この三点だ。
となると、アメリカ以外の国にとっては、あまり気分の良くない展望が浮き彫りになってくる。とりわけ保守的なアラブ諸国やパキスタンなどの暫定的な同盟国は、やがて自国の社会や経済の改革を迫られ、実現できなければ、結局は敵陣営とみなされることになるだろう。アメリカの長き友人となり得るのは、アメリカと同じ夢を描く国のみということになるのである。
by Uwe H. von Parpart
訳/金子宣子

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