自民党の鈴木宗男代議士による国後島の宿泊施設建設の入札関与疑惑で、工事を請け負った北海道の業者が、工事の大半を受注直後に横浜に本社のある大手の会社に「経験が豊富」などとして実質的に「丸投げ」していたことが、関係者の話でわかった。鈴木氏は地元業者に有利なように入札資格を変更させた疑惑がもたれており、結局、工事は「地元」を経由した後で大手へ振られた。内部文書では、これにより「事業費積算が水増しされた可能性がある」と指摘している。
関係者の話や、工事を発注した外務省の関連団体「支援委員会」の内部文書などによると、この工事は国後島の緊急避難所兼宿泊施設で、コンサルタント会社「日本工営」(本社・東京都千代田区)が発注業務など入札の補助を担当した。
同社は入札約1カ月前の99年5月24日、大手エンジニアリング会社「日揮」(本社・横浜市)に、アドバイザーとして工事に協力するよう要請した。日揮はロシアなど海外での事業に実績があったためという。
その直後の27日、鈴木氏は外務省からこの工事の入札資格について相談を受け、「根室管内の企業に限定すべきだ」などと発言したとされる。
1週間後の6月3日、釧路市の鈴木氏の地元事務所に、日本工営、日揮両社の担当者、さらにこの工事を後に受注する渡辺建設工業(根室市)と犬飼工務店(中標津町)の両社長が集まった。ここに鈴木氏の秘書が同席していたという。
同12日、工事は「北海道内に本社があり、根室管内で施工実績をもつ社」などと入札資格を限定して公示された。
7月初めに、渡辺建設工業と犬飼工務店による共同企業体(JV)は約4億1700万円で受注。両社はその直後、日揮と下請け契約を結んだ。日揮によると、同社が請け負ったのは宿泊施設本体の建設と、作業員宿舎用の船の手配。JV側が一部を担当したとしながらも、日揮の担当部分が「工事全体のほとんどになる」(同社)と説明。事実上、「丸投げ」に近かったとみられる。
発注元の支援委員会が調査した内部資料によると「日揮が加わることで適正な事業費積算よりも水増しされている可能性もあり得る」とし、「丸投げ状態」になることにより、コストが上がった疑いを指摘、日本工営に検証を求めている。
渡辺建設工業の渡辺寿一社長は、「本当は根室の業者に頼みたかったが、工期が短かったので日揮に下請けを頼んだ」と説明している。同社は、JV側の仕事として「現場監督1人を出したほか、国後島に資材を運ぶ船への積み込み作業をした」としている。
鈴木事務所での会議で何が話し合われたのかは明らかになっていない。しかし入札公示の直前に、後に工事を請け負う業者だけでなく、入札補助を担当するコンサルタント会社、さらに下請けに入る大手の会社までが一堂に会していたことになり、請負業者の枠組みが固まっていたことをうかがわせる。
(朝日新聞 2001.02.22.03:15 asahi.com)
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入札補助を行った日本工営は昨年秋には、 川越市が計画している新清掃センターの建設整備計画を作る設計業務委託の入札において、1万9000円という価格にて落札している。
(落札予定価格1400万円程度だったらしい)
予測に過ぎないですが、設計技術者の一日の日当にも満たない金額での落札は、設計完了後、工事時における特殊設備の設置などでのバックマージンなどを見込んでいることを臭わせる出来事でした。
設計施工分離や競争入札システムの無意味さを感じます。競争原理を持ち込むより、適正な談合システムの検討をした方が良いのではないでしょうか?談合でも表へ出て何処が適しているかディベートして決めれば悪くないと思うんですけれど。
適正価格で良いものが出来ればいいわけですし、裏へまわるから悪くなる。