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(回答先: 日銀総裁「人為的円安、経済運営への信認傷つける」〔日本経済新聞〕 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 1 月 29 日 16:46:19)
「言うは易く行うは難し」−−。日本銀行の速水優総裁は29日、都内での講演で、構造改革や金融システムの再生、それに日銀の信認の重要性を切々と訴えた。しかし、総裁自ら認めるように、構造改革の痛みを甘受することは容易ではない。いつになく力強かった口調とは裏腹に、市場の信認を失いつつある速水総裁の言葉が虚(うつ)ろに響いた。
このところ、日銀の信認をめぐる議論がかまびすしい。速水総裁は昨年12 月17日の衆院で「これまでのところ潤沢な資金供給を行ってきており、長期国債の買い入れ増額も今、必要な状況になっているとは考えていない」と述べた。しかし、2日後の金融政策決定会合で、当座預金の10−15兆円への引き上げと、長期国債買い入れ増額を決定。さらに1月の決定会合では、国債買い入れ対象から「発行1年以内のものを除く」としていた“1年ルール”を撤廃した。
こうした措置に対し、市場では「日銀はこれまで、政治圧力に押し切られる形で、自ら効果を否定してきた政策を十分な説明もなしに実施してきたため、市場の信認は大きく低下している。本来、債券需給面でプラスとなる国債買い切りの増額も、国債引け受けへの第1歩と結び付けられやすく、買い材料視しづらくなっている」(UFJキャピタルマーケッツ証券23日リポート)との声が出ている。実際、12月の決定以降、長期金利はじりじり上昇基調をたどっている。
「信認は一朝一夕に築けるものではない」
そうした声を意識してか、速水総裁は「金融政策が有効性を発揮するうえで、政策当局への信認が極めて重要な役割を果たすが、これは決して一朝一夕に築かれるものではない。政策当局が、政策に期待される効果やリスクをきちんと国民に説明する。国民は、その現実の効果やリスクがどうであったか、それが当局の説明に沿ったものであったかを検証する。政策に対する信認とは、こうしたプロセスの地道な積み重ねによってようやく得られるものだ」と述べた。
さらに、「新しい金融緩和の枠組み(=昨年3月の量的緩和)を採用するに当たっても、私は、中央銀行として誠実に説明責任を果たしていこうと考えた。すなわち、われわれが採ろうとする政策が前例のないものである以上、効果が不確かな部分があることもきちんと説明し、そのうえで、未踏の分野に踏み込んでいく必要性について理解を求めていくほかはないと判断した」と説明した。
中原伸之審議委員は昨年12月の講演で、日銀執行部などの姿勢について、1)量的緩和はできないし、やっても意味がないとしながら、結局導入した、2)量的緩和が有効だとして導入したにもかかわらず、その後、効果を疑問視する−−と指摘。「世間に自己否定的な印象を与え誤解を招きかねないし、政策効果を著しく損なう可能性がある」と批判した。総裁の発言はこれに対する反論ともいえるが、どうしても「言い訳」がましく聞こえる面は否めない。
「やらないよりやった方がまし」と割り切れない
速水総裁は一方で、「日銀当座預金の『量』を大きく増やすこと自体が、実体経済活動や物価、あるいは人々の先行き見通しなどに影響を及ぼすといった現象は、これまでのところ、明確には観察されていない」と指摘した。素直に解釈すれば、さすがにもう一段の量的緩和に対し、日銀は懐疑的なスタンスと読める。
しかし、12月の決定会合では、「(当座預金の)残高の多寡が、必ずしも市場の緩和度合いに結び付くわけではない」(複数の委員)との声があったにもかかわらず、「日銀当座預金の増額に、市場参加者の期待に働き掛けるといった何らかの効果を狙うのであれば、最近の実績を大幅に上回る目標値とする必要がある」(多くの委員)として、10−15兆円の当座預金目標が決まった。
速水総裁は「中央銀行としては、『やらないよりやった方がまし』といった乱暴な割り切りはできない」と言い切ったが、12月の決定会合で、政策委員会メンバーらの心中に、そうした思いがなかったのだろうか。講演当日の朝方、証券会社のリポートには「(総裁講演で)気に留めておくべきは、最近の会合直前の速水総裁発言は、いわゆる『逆シグナル』となっている点である」(東京三菱証券)というコメントもあった。
「今年は日本経済にとって正念場」
速水総裁は「円安によって日本経済の克服すべきさまざまな課題が解決されるわけではない」と述べたが、金融緩和の結果として自然に進む円安のプラス効果についてはどう考えるのか。12月の追加緩和後の会見で、「全体として、日本経済が今まで積み上げてきたポテンシャルズが必ず相場には出てくるはずだ。そういう中長期の流れをよく頭に入れて、相場のことを言っていただきたい」と強調したが、円高の材料を数多く挙げることが信認の向上につながるか。
総裁は足元の物価下落について、「とりわけ大きな要因としては、やはり、日本経済が長期にわたり本格的な景気回復を実現できず、需給ギャップが大きく拡大していることが挙げられる」と指摘した。しかし、デフレが経済全体に与えるマイナスの影響については触れずじまい。日銀はこれまでも、持続的な物価下落が与える影響について、議論するのを意識的に避けてきた面がある。その一方で、構造改革一辺倒の主張をしても、“徒手空拳”の感は否めない。
総裁は「今後、日本経済は、家計部門への調整の広がりといった下向きの力と、輸出・生産への下押し圧力の減少という好材料とがせめぎ合い、景気回復への足がかりをつかむうえで、重要な局面を迎えていくと考えられる」と述べた。そのうえで、今年は「日本経済にとって『正念場』となる」と決意を語ったが、日銀の信認についても、まったく同じことが言えるはずだ。