★阿修羅♪ 国家破産6 ★阿修羅♪ |
(回答先: 新連載「デフレと生きる」(1):日本経済は持続可能か、迫られる選択 (ブルームバーグ) 投稿者 DC 日時 2002 年 1 月 24 日 00:20:42)
「デフレと生きる」(3):公的資金注入でも金融再生は不可能-深尾氏 (ブルームバー
グ)
2002年1月24日(木)7時36分
東京 1月24日(ブルームバーグ):日本経済の持続可能性と、選択肢を問う「デフレと生きる」。3回目は、昨年末に著書「日本破綻」を上
梓した慶応義塾大学の深尾光洋教授。「デフレが続く限り、不良債権は減らず、金融再生は不可能だ。経常黒字の国でも財政破綻は起こ
り得る。中央銀行が先手を打って適切な金融政策を施さないと、事態は悪化し、リスクの少ない選択肢を失っていく。デフレが悪化すれば
するほど、より強い薬が必要になる」と訴える。
大手銀行13行が見込む今期の不良債権処理損は約6兆2000億円。昨年5月の当初計画の3.4倍に膨らんだ。深尾氏は「全銀行ベー
スでは恐らく10兆円を越す処理損になるだろう。不良債権処理損は93年以降、ずっと業務純益を上回ってきた。過去3年の平均でも、処理
損は実勢ベースで8、9兆円規模。これに対し、業務純益は5兆円くらいしかない。毎年3、4兆円の資本が減り続ける状況だ」と指摘す
る。
金融庁は昨年8月、主要行の2000年3月期時点の分類債権が1年間でどう変化したかを示す「遷移行列(マトリックス)」を公表した。深
尾氏はこれをもとに05年度までの貸倒損失額を推定。「どうみても毎年6兆円程度のロスが出続ける。しかも、00年は比較的景気が良かっ
た年だ。01年度以降も10兆円前後の損失が発生するだろう。これを現状のままの利ざやで償却することは不可能だ」と言う。
公的資金の再々注入でも金融危機は去らず
「金融システムを破綻させないためには、毎年恐らく3、4兆円程度の公的資金による資本注入を続ける必要がある」−−。足元では、
大手行に対して、98、99年に続き3度目の公的資金注入が行われるかどうかが焦点になっている。しかし、たとえまた公的資金が注入さ
れても、金融システム危機は解消しない、と深尾氏はみる。こうした厳しい見方は、日銀など金融当局でも概ね共有されているといってよ
い。
一方、小泉首相は財政赤字の拡大に歯止めをかけるべく、新規国債発行額を30兆円に抑えるのに躍起になっている。しかし、「財政の
健全化ができるかというと、それも絶対に不可能だ」と深尾氏は断言する。総合的な物価指標であるGDPデフレーターは、消費税率が引
き上げられた97年を除くと、94年以降6年以上も下落を続けており、物価水準は01年半ばまでに、94年のピークから累積で7%低下した。
深尾氏は「今年度の名目成長率が恐らく3%前後のマイナス、02年度はマイナス4%になっても不思議はない。GDPデフレーターは瞬
間風速でマイナス2%くらいだが、GDPギャップ(潜在成長率と実際の成長率の差)がどんどん広がっているので、1年後には3%弱に拡大
する可能性がある」と予想。03年度にゼロ%になるとした中期経済財政展望の見通しについて、「何の根拠もなく、非常に不見識だ」と怒
る。
デフレ放置すれば、円の逃避で日本破綻のシナリオ
「デフレが続くなかで企業が破綻し、売り上げが減る。税収は名目GDPを上回るペースで減少し、前年度比5%程度減る可能性があ
る。税収が5%減れば、どう歳出カットしても財政赤字は増える」−−。中央政府、地方政府、社会保障基金からなる一般政府の対GDP
負債比率は、01年で142%。深尾氏の試算では、プライマリーバランス(国債発行額を除く歳入と、利払い費を除く歳出の収支)を6%程度
の赤字と横ばいにみても、06年には200%に達するという。
深尾氏は「ここには不良債権処理額、つまり銀行部門の再生費用は入れてない。デフレが続く限り、毎年5兆円前後が追加的に必要
になるだろう。財政赤字がこの調子で増えれば、国債の格付けは遠からず引き下げられる。5年程度で、トリプルBの下位に落ちる可能性
が強い。そこでダブルBになれば、投機格付けだ」と指摘する。
現状を放置すれば、国内の金融資産に対する不安から円の逃避が始まり、急速な円安が進行。長期金利は上昇し、財政赤字も一段
と拡大。そこで物価が上がり始めれば、日銀が止めようと思っても止められない財政インフレが始まる−−。これが、深尾氏が想定する日
本破綻のシナリオだ。「デフレを放置すれば、このシナリオになる可能性が高い。経常収支の黒字にもかかわらず、足元では円が安くなっ
ている。外貨への逃避は既に起き始めている」と言う。
危機感が共有されないのはなぜか
しかし、週末の街に出てみれば、多くの人であふれ、不況感は感じられない。日本経済が持続不可能だとしたら、なぜ危機感が共有さ
れないのだろうか。深尾氏は言う。「それはまず、日本が豊かで、たくさんの資産を持っている社会だからだ。企業も赤字を出しながらも、ま
だ雇用を支えている。日本企業の生産性が低下しているのも、技術水準が低下しているからではなく、生産低下にもかかわらず、必要の
ない人を抱え込んでいるからだ」−−。
深尾氏はまた「日本が1930年代の大恐慌のようになっても、3分の2くらいの人はそれほど困らず、弱い3分の1が非常に苦しむのだと
思う。今でも年3万人の自殺者が出ているが、これは異常な数字だ。JRも人身事故が多過ぎて、ダイヤを守れなくなっている」と話す。足
元の失業率は5.5%。失職期間の長期化で職探しをあきらめた人は、失業率には含まれない。一方、雇用数はかなりの振れがあるが、年
間100万人近く減っている。
「デフレの場合、1人当たりの名目賃金は、実はそれほど下がらない。大恐慌もそうだった。むしろ雇用が減った。トータルの雇用が減る
ことで、全体の所得が減っていく。首になるのは、弱い人からだ。仕事がある人、コネがある人、あるいは再販制度で守られた新聞、雑誌、
テレビなどには危機感がない。しかし、3分の2の人たちにしても、失業に追い込まれたり、自殺するほどではないというだけで、実質の所
得は減るだろう」−−。深尾氏はこう予想する。
日銀券はバブル、分相応な水準への引き下げは可能か
日本経済の現状認識と持続可能性について、深尾氏のここまでの分析に対しては、政策当局、なかでも同氏の古巣である日銀にも、
共感を示す向きが少なくない。しかし、ここからの選択肢については、評価が真っ二つに分かれる。深尾氏の提案はこうだ。3年後に目指
すべき消費者物価の水準を、現在の水準からプラス2−8%の範囲に設定する。それを実現するために、日銀が大量の株価連動型投資
信託や不動産投信を購入する。
それでもデフレが止まらなければ、「政府が実質的に保証している金融資産、具体的には国債、郵便貯金、簡易保険、預金、現金の額
面に2%の課税を行う。これによって、マイナス金利を導入する必要がある」と深尾氏は言う。もちろん、日銀だけでこのような課税を行うの
は無理だし、実際に導入するとなれば、かなりの混乱が予想される。「しかし、最悪の場合、財政インフレによる日本破綻を回避するために
は、恐らくこの方法しかないだろう」−−。
「今は、日銀券も国債もバブルである。本来は紙切れであるおカネの価値が上昇している。国債の価値の裏付けは税収だが、税収が
減っているのに国債の需要が高まっていく。長い目でみれば維持不可能だ」(『日本破綻』から)。日銀券という紙切れの実質的な価値の上
昇を止めることで、株や不動産、設備など実物資産への投資を促し、消費を刺激していく。これが深尾氏の狙いだ。
通貨の信認を、コントロールしながら低下させることなどできない、いったん信認が低下し始めたら、止めることはできない−−。ある日
銀幹部はこう反論する。しかし、深尾氏は「今ならコントロールすることはできる。早ければ早いほど良い」と言い切る。水と油ほど離れた両
者の主張。しかし、現実の金融政策運営は、徐々に深尾氏が主張する方向へと、流れ始めているようにもみえる。
連載「デフレと生きる」のバックナンバーは「日銀関係の日本語企画記事」{TNI KIKAKU JBOJ JBN}でご覧になれます。
▽新連載開始「問題提起:日本経済は持続可能か、迫られる選択」(1月22日)▽一勧総研・真壁昭夫氏「生産性上昇なければ長期低迷
は必至」(1月23日)
東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka