投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 04 日 18:18:47:
回答先: 緊急超法規提言 斎藤精一郎(立教大学教授) 不良債権処理で資本主義の一時停止を その1 (週刊新潮2001年10月11日号) 投稿者 sanetomi 日時 2001 年 10 月 04 日 18:14:24:
資本主義停止の決断
長い前置きになったが本論に入ろう。 テロに直撃された世界ナンバー1とナンバー2の経済大国。世界同時大不況に突入するのが
避けがたいことはご理解いただけたと思う。そして、それがそのまま日本経済を失速、、いや、「墜落」させることにつながることもお分り
いただけたのではないか。
企業を倒産の嵐にさらし、国民生活は壊滅 − そんな恐怖のシナリオが現実化することをわれわれは何としても回避しなければなら
ない。では、どうすればいいのか。 いま二つの選択肢が俎上に上っている。
一つは景気失速を食い止めるべく、国債の大量増発によつて大々的な財政出動を繰り出せという、お馴染みの景気重視流の主張だ。
その代表は前自民党政調会長の亀井静香氏の30兆円の大型補正予算論である。
もう一つは小泉首相が掲げる構造改革によって、日本経済に展望を拓くとの改革断行派の主張だ。
前者の、「痛み」を避け、日本経済を軟著陸させようとの景気重視派のやり方はこの10年間、繰り返し実行されてきたもので、その効果
は一時的にすぎないだけでなく、過大な国債累積をもたらし、かえって日本経済を出口の見えない袋小路に追いやるだけであることは
この10年の経験が証明している。
これ以上漫然と国債増発を垂れ流せば、日本国債の格下げは必至で、国債暴落は現実化する。これは別の形での、日本経済を墜落
させるシナリオである。一見、景気重視派の主張は優しいが、その本質は単なる「先送り策」で、悪性ポリープを痛みの伴う切開手術では
なく、痛み止めでごまかす対症寮法でしかない。
とすれば、日本経済の墜落を回避する方法は後者の改断行しかない。しかし、世界不況の暗影が濃くなるもとで、「激痛」や強烈なデフ
レ圧力が不可避的な改革断行が現実的に可能だろうか。
それこそ、改革派の主張は世界不況という嵐の真っ只中に強行着陸を企てる暴挙だ。ここでわれわれは全くの政策的手詰まりに直面
する。
しかし、この閉塞を突破するにあたって見落してはならない基本問題がある。
それは日本経済を長期間デフレに閉じ込めてきた元凶に照準を当て、その除去を最優先することだ。そして、それに伴う「激痛」を緩和
するために大胆かつ柔軟に対応することである。
ここに第三の方策が登場するのである。すなわち、「資本主義の一時停止」である。
日本経済の長い閉塞の元凶とは、最低で50兆円、最大で100兆円ともいわれる″根雪化″している不良債権だ。これが金融システム
を梗塞化させているだけでなく、企業に過大債務として重圧を課している。
これを3〜15年の内に最終処理すれば、日本経済に展望が拓かれてくる。とくに企業の過大債務の処理には企業の整理・淘汰、さらには
再編が不可欠だ。
それでは、世界不況のもとで、企業の整理・再編が円滑に断行できるのか。
そんなことはできるわけがない。そもそも根雪化した不良債権が除去できるわけがないではないか。
誰もがそう考えるに違いない。私もそう思う。
しかし、常識ではできないことをやらなければ、もはやこの日本経済を破滅から救うことはできないのだ。
だからこそ「資本主義の一時停止」が必要なのである。 具体論を示そう。
根雪化した50〜lOO兆円の不良債権の核心的問題とは、銀行からの過大借金を抱えたかなりの企業が返済困難か返済不能に陥っている
ことだ。
だが、それらを法的整理(倒産)に追い込めば、失業者がさらに急増する。経済は失速し、破滅に追い込まれる。だから、銀行が返済を強
く迫れず、それら過大債務企業を存続させてきているのだ。
では、これらの存続可能な企業を手助けし、さらには不良債権を処理していく方法はないのだろうか。
私が提唱する「資本主義の一時停止」とは、こういうことである。