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【ワシントン26日=林路郎】
来月初めに米国防総省が発表する今後二十年の米軍運用計画「統合ビジョン二〇二〇」で統合参謀本部が、中国の「敵対的軍事大国」としての台頭を想定、「東京からテヘランへ至るアジアの弧」が世界で最も厳しい軍事的競争の舞台となるとの認識に立ち、米軍戦力の重点をアジアへ転換する方針を打ち出すことがわかった。二十六日付のワシントン・ポスト紙が、計画策定責任者や軍首脳らの話として報じた。
「ビジョン」は中国の名指しは避けているが、「対等な競争相手」と呼び、事実上の「対中包囲網」を軸とする二十一世紀序盤の米国の軍事戦略を明確にしている。具体的には、〈1〉敵の核ミサイル搭載原潜や水上艦艇を破壊する攻撃型原潜の六割が数年前まで大西洋に配備されていたが、数年後はアジアに六割を配備する〈2〉広大なアジア用に航続距離の長い潜水艦・爆撃機・給油機の増強――などがうたわれる。
同紙によると、こうした長期計画策定の背景には、中国の軍事大国化は「時間の問題」とする米軍首脳の共通認識がある。「米中の直接軍事衝突の回避」が作戦計画立案の最優先事項であり、同紙は、国防総省が過去八年に策定した作戦計画の七割近くがアジアを舞台にしたものだと伝えた。
また、今年夏にアラバマ州で行われる空軍の大規模演習は、「中国がロシアのシベリア地方へ侵攻した」事態を想定、米軍がロシア防衛に回る作戦に関するものになるという。
「朝鮮半島統一後の在日・在韓米軍の維持」が同様に重要な目標とされ、これには「日本が大国として復活した場合、一九三〇年代の過ちを繰り返させない」狙いが込められている、という。
中国との緊張に加えて国防総省が描いているシナリオには、「北朝鮮の平和的崩壊」「インドネシア分裂」「印パ核戦争」「アフガニスタンのイスラム原理主義勢力の浸透によるパキスタン崩壊とタリバンによる核兵器入手」「イランの核武装」などが含まれる。
(5月26日19:27)