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回答先: えせ陰謀研究家中丸薫とは何者か? 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2000 年 6 月 25 日 11:06:41:
※東大生が読む学生新聞は電波陰謀新聞。
今年はいよいよ2000年。新しいミレニアム、新しい世紀の幕開けまであと1年となった。20世紀も大変革の時代であったが、21世紀、世界はどのようになっていくのだろうか。この記念すべき年の始めに、記念すべきインタビューとして、今回はまさに20世紀を代表する人物である中曽根康弘氏に、21世紀の世界の展望、東大生へのメッセージなどを聞いた。
宇宙論と生命科学が主流に
――いよいよ21世紀まであと1年となりました。21世紀は今世紀以上に大きな変化の波が押し寄せてくるのではないかと思います。先生の眼から見た、21世紀の世界の展望などをお聞かせください。
21世紀は大転換の時代になると思う。言い換えれば、文明のコペルニクス的転回の時代に入るだろう。20世紀は18世紀、19世紀の延長線上にあった。もちろん、21世紀もその延長線上にあるけれども、むしろ断続的な転換の可能性が出てくる。
というのは、学問の研究が非常に進んできた。よく言うのだけれど、20世紀は量子論、相対性理論に代表されるように物理学の時代であった。ところが21世紀は生命科学と宇宙論の時代になる。そういう意味において、大きな転換が予想される。
さらに、それが国際関係、安全保障、国際政治、外交、経済、あるいは文化、そういうものに非常に大きな影響を及ぼしてくる。
国内政治においても、国家主権とグローバリズムとの関係、それから地域主義。19世紀から流れてきた大きな潮流は、インダストリアリゼーション、デモクラタイゼーション、ナショナリズム、それからリージョナリズム、グローバリズム。その中でも、20世紀後半になって、リージョナリズムとグローバリズムが非常に大きく飛躍してきた。つまり、EU、APEC、NAFTA、ASEANというように、世界的にリージョンが発達してきた。
同時に、経済の面では電子マネーというもので国境を越えてきた。マネーのみならず、契約、貯金、あるいは証券の移動、そういうものが非常に大きな変化を遂げている。
もう一つは環境問題。地球防護という意識が非常に高まってくる。それから国家主権というものが相当制約されてくる。そういう時代に入っていくだろうと思う。
電子世界と電子国家が出現
国内外を覆い尽くす大きな動きとしては、電子時代の到来だろう。電子世界と電子国家が出現する。それによってグローバリズムがますます促進していく。
日本は教育の大改革から始まる。その上に立って、憲法の改正が行われるだろう。そして、電子国家として発展していく。また、直接民主制がさらに前進していく。例えば、首相も知事と同じように公選になるかもしれない。しかも、投票は投票所に行くのではなく、自分の家庭でボタンを押して投票する。更には貯金だって、あるいはものを購買するにしても、情報にしても、みんな家庭でボタンを押して全部できるようになる。現に、そういうことはアメリカではかなり進んでおり、政治もその影響を受けている。
また国際的には、インダストリアリゼーション、資本主義が大きく修正資本主義になっていくだろう。つまり、ヘッジファンドのように資本主義が民主主義の遊蕩児になるわけだ。そういう意味で修正資本主義【注・フェビアン社会主義】が出てくるようになる。
WTOによる貿易自由化、規制打破、というようなやり方は、世界経済を非常に拡大し、それに貢献している。その原則は今後もやはり継続されていくだろう。これが世界的資源の配分を自動的に効率的にしてきている。しかし、各国の文化や生活体系まで破壊する危険性が出てくる。そういう意味で、民族文化、地域文化からの反撃がかなり強く出るだろう。それが修正資本主義という形になる。特に、南北問題。環境問題、エネルギー消費問題等をめぐって南北の対立が激しくなり、必然的に修正資本主義にならざるを得ない。
人権擁護のため内政干渉も成立
安全保障の問題では、核兵器をどうするか、この問題を始末しなければならない。それと生物化学兵器などの大量破壊兵器の国際管理。また、多国籍軍という形が、国際法的にさらに地位を獲得してくるだろう。その中で、コソボの事件のように人権擁護のために主権が制約されることも起こり得るだろう。今後、そういったことがさらに前進してくる可能性が高い。それが国際法として、慣習法として認められるようになるだろう。今までは内政不干渉でできなかったものが、人権問題が非常に悪質の場合には、国際法を越えて干渉が成立してくる。そういう時代に入るだろう。
安全保障の問題で非常に大事な問題は、先進国の間の軍事兵器に対するサイバー戦争。ハッカー戦争。これによって兵器が一部動かなくなる。それは宇宙にまで及んでくる。先進国の間では、そういう面に焦点が移行するだろう。
中国は妥協しながら共存へ
政治外交的に大きな問題は中国の問題である。しかし、中国はソ連とは違って、非常に柔軟性をもった共産主義である。いわば社会資本主義、社会市場主義。そういう柔軟性をもっている。だから、20世紀のソ連のような立場にはならない。妥協しながら、共存の方向に行くだろう。経済は資本主義化してゆくが、政治、社会は独裁方式が続く。しかし、経済の発展と国際化が政治に変化を促す。現に村では直接選挙が行われている。毛沢東も昔、エドガン・スノーにUnited States of China と言ったことがある。それだけ民主化が深化し、人間尊重、人権意識というのが高まってきている。
今後、国連はそれほど強化されないだろう。その代わり、今言ったような地域機構、地域主義というものが、国連の支店のような形になり、国連はその名のもとに最終的に地域問題を解決する手段になるのだろう。
総合的・立体的芸術が生まれる
文化的にはDNAの解明と宇宙構造の解明が非常に前進してくる。それと同時に、電子社会、電子世界の展開の影響を受けて、芸術と文化が非常に変貌してくる。今ある彫刻、絵画、舞台芸術に、新しい文明的要素、文明の材料を駆使した、もっと総合的な、立体的な芸術が生まれるだろう。静的なものだけではなく、動的な芸術が生まれる。
それと同時に、国家主権に対して、ある特定の目的の下に、例えばある学問、農業、物理学、あるいは芸術、政治的主張、そういうようなものを中心としたNGOとか、NPOの世界市民連合のようなものが出てくる可能性が非常に高い。ある一つのものを研究している学者集団が、国境を越えてインターネットで結合する。
それは他の分野でも十分起こり得る。例えば、宗教においてもそうである。DNAや宇宙空間の構造解明が前進するにつれて、新しい宗教が生まれる。既存のキリスト教、仏教、あるいは回教、ヒンズー教、それはもちろん生き長らえていくが、それらを超克した、しかもそれらの要素を基本的に借用して、新しいファクターを取り入れた21世紀的な新宗教が、世界的、あるいは地域的に生まれる可能性が高い。【注・世界統一宗教の樹立】
日本独自の感性を世界に展示
――そのような変化の中で、日本 がこれから果たさなければならない役割は何でしょうか?
日本は、明治以来の発展途上国であったのが先進国の仲間入りをした。この経験を途上国に対して、日本の負担において分け与えるということが非常に大事である。それと同時に、WTOにおいても、国連においても、先進国と途上国の間の調停役とか、融合をはかる仕事を果たさないといけない。
それと同時に、日本文化の独自性、わび・さび、もののあはれなどといった、感性をつかみ出して芸術化したものは、外人にはわからない世界だ。日本独特のもの。こういうものを世界に展示して、そういう感性があるということを教える必要がある。
禅というものが世界的好奇心の対象にもなるし、それを勉強しようとするものや、座禅を組もうというものや、禅仏教徒になろうとするものが、インテリの間にかなり増えてくるのではないかと思う。
無意識の世界が解明されてくる
――先生も禅をされていらっしゃるようですが、それが健康の秘訣なのでしょうか?
肉体的にはもちろんだが、精神的にもそうだと思う。
河合隼雄氏が『ユング心理学と仏教』という本を書いたが、ユングが探しているような無意識の世界の解明、これは実は禅が体験でやっていることだ。
人類はDNAの解明をどんどんやっているけれども、人間には60兆の細胞があって、その一つの細胞に30億の遺伝子情報が入っていると言われている。しかし、その中で今使われているのは五%から10%くらいだそうだ。OFFになっているのが90%から95%。それが今後だんだん解明されてくる。あるいは動き出す。そこから、無意識の世界が大きく解明される要素が出てくる。例えば、人間の意志や願望、あるいは環境の激変というものが、眠っているDNAをONにするということが言われている。そこに奇蹟が起こったりする。それはまだ想像の世界だけれども、今、科学的に解明されようとしている。そういう意味において、無意識とか禅というものが世界的に広がっていくだろうと考えられる。
星を見る東大生になってほしい
――最後に、未来を担う東大生へのメッセージをお願いします。
やはり基礎学をしっかりやりなさい。今の学生や若い人を見ると、基礎力が非常に不足している。いつまでも漫画を読んで満足していてはダメ。我々のときには、旧制高等学校で原書も多少は読んだものだ。それから、翻訳もやった。私はパスカルの『パンセ』を半分くらい翻訳した。みんなそれくらいやっていた。【注・ほんまかいな中曽根先生!】
また、現代は情報氾濫の時代。どれにとっついていいかもわからない。結局、彷徨う東大生になってしまう。人間としての芯と軸をしっかり持たないといけない。それはひと言で言えば求道心だろう。一番てっとり早いのはカント哲学だ。釈迦も明けの明星を見て悟ったという。カントの『実践理性批判』を読むと、天上の星を言っている。いつも讃嘆の感情を持って考え、仰ぎ見る。「天上の星と内なる道徳律」である。そういう断言命令を私たちは持っている。その辺りから21世紀の世界の人は再出発するのだろう。星を見る東大生にならないといけない。
――ありがとうございました。