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政権参加の可能性をめぐり欧州連合(EU)内での外交的孤立を警告されたオーストリアの右翼政党、自由党が1日夜、保守系の国民党との間で、連立政権樹立で合意した。議会で多数派を握る両党の連立協議がまとまったことで、自由党の政権参加へ残されたハードルは、組閣命令の権限を持つ国家元首のクレスティル大統領による正式承認だけだが、拒否する可能性は少ないとみられている。異例の制裁をちらつかせ、国民党の再考を促そうとねらったEU各国の対応は逆効果となり、当面の関係悪化は避けられそうもない。
合意成立は自由党のハイダー党首と国民党のシュッセル党首が同夜、記者会見で発表した。2日に大統領に報告、承認を求める。
新内閣では、これまでの社民党との連立内閣で副首相兼外相を務めたシュッセル氏が首相に就き、ハイダー氏は南部ケルンテン州の州知事のまま、閣外にとどまる。
ハイダー氏は会見で「大統領には野心的な改革計画を示すことができる。大統領が我々に任せさえすれば議会では広い多数の支持がある」と強調した。
海外からの圧力は「名誉ある民主主義者、まっとうなオーストリア市民への多大な侮辱だ」と退け、新政権のとる行動をみれば「十分な情報なしに我々を非難した人たちは、やりすぎたと恥じ入るだろう」と自信をみせた。
クレスティル大統領は選挙では国民党が推した人物だが、職業外交官出身でもあり、自由党の政権参加に難色を示し続けてきた。しかし、自由党と国民党は、大統領からの組閣命令を待たず、法的には非公式のまま、「見切り発車」の形で連立協議に踏み切っていた。
議会の多数を占める両党が政権合意を整えてしまった以上、国家元首とはいえ象徴的な性格が強い大統領が認めない法的根拠はないという見方が強い。理論的には議会の解散もありうるが、現閣僚の賛同が必要な上、最近の世論調査では自由党が3割以上の支持率で第1党という結果が相次いでいる。民主主義のルールに基づいた上で自由党の政権参加を止める道は、現実的にはないに等しい。
両党首は、大統領への報告がまだ済んでいないことを理由に、詳しい政策は明らかにしなかった。(12:05)