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回答先: 組換えＤＮＡ技術応用食品について（東京都立衛生研究所提供） 投稿者 明星 日時 1999 年 8 月 02 日 09:17:56:
Ｌ−トリプトファン事件の警告 （文責 山口英昌）
●遺伝子組み換え食品の危うさ
遺伝子組み換え食品の安全性が、いかに危ういものか
を示す例があります。昭和電工が販売したＬトリプトフ
ァン（必須アミノ酸の一つ）が原因となった健康障害事
件です。Ｌトリプトファンは、眠れないときやウツ状態
などに効果があると、主にアメリカで健康食品として販
売されていました。
８９年頃アメリカで、Ｌトリプトファンを摂取した人
びとに好酸球が増加し、筋肉痛や関節痛、筋力低下、呼
吸困難を訴える患者が多発しました。好酸球増加筋肉痛
症候群（ＥＭＳ）と呼ばれているもので、３８人の死
者、１５００人以上の被害者がでました（９２年当
時）。日本でも、昭和電工の株主優待でＬトリプトファ
ンを購入した人たちのなかに、２名の被害者が出まし
た。
問題となったＬトリプトファンは、遺伝子組み換え技
術で自然の菌に手を加えて製造されていました。製造の
過程で副成した不純物が原因だと考えられています。事
故の直前に使用菌種が変更されたこと、不純物を除くた
めの活性炭の量が減らされたことがわかっています。
メーカーはことが起こるまで、不純物の安全性について
チェックしていなかったのです。
いま問題となっている遺伝子組み換え食品の製造方法
は、Ｌトリプトファンの場合と本質的に同じです。Ｌト
リプトファンの場合は、もっぱらＬトリプトファンを産
生する酵素を、遺伝子組み換えによってつくり出しまし
た。
一方、遺伝子組み換え食品であるトマトでは、Ｌトリ
プトファンの場合と逆に、トマトの成分の分解酵素がで
きないようにして、熟しても形がくずれないようにした
ものです。
このように、遺伝子を組み換え操作すると、酵素など
タンパク質の生成や、植物や動物の細胞のなかで起こる
生体反応を変えることができます。いま、植物の遺伝子
に動物や、はては人間の遺伝子までも組み込むことが試
みられているのです。
たしかに、遺伝子の情報がすべて解明できればあらゆ
ることが可能となるでしょう。しかし、研究者は、遺伝
子の情報をすべて解明したわけではありません。ごく一
部が明らかにされただけで、まだまだわからないことが
多くあるのが現状です。
企業の開発が先行すると思わぬところで、とんでもな
いことが起こる、それを如実に示したのがＬトリプトフ
ァンによる日米で起こった健康障害事件でしょう。遺伝
子組み換え食品の開発と利用は、慎重にも慎重な対処が
要求されます。
喧伝されるように、遺伝子組み換え食品の開発は、飢
餓にあえぐ８億人の人びとに十分な食糧を提供すること
も可能にする素晴らしい技術です。しかし一方で、人間
の遺伝子も操作することもできるのです。いま人類は、
原子力エネルギーを手にした以上にとんでもない手段を
手中にしつつあります。高度な技術、ハードは手にした
が、それををいかに使うかというソフトな面では、未解
決の問題をかかえている現状を十分に認識すべきです。
●有効だったＰＬ法
Ｌトリプトファンの健康障害事件で、いまひとつ大切
なことはＰＬ法（製造物責任法）とのかかわりです。ア
メリカでは次つぎと訴訟が起こされましたが、メーカー
であった昭和電工はすぐさま和解に応じました。
ご存じのように昭和電工は、新潟水俣病を引き起こし
た企業です。農薬説を唱え、裁判でも抵抗した昭和電工
が、アメリカでの裁判では早々に和解に応じたのはどう
してでしょう。
因果関係がハッキリしていて逃れようがなかったせい
もありますが、アメリカには製造物責任法（ＰＬ法）や
情報公開された裁判制度があったからです。アメリカで
事故が起こったからこそ、いち早く和解がすすみ被害が
最小限でくい止められたといえます。昭和電工はアメリ
カでのわずか二五億の売り上げのために、この６年で実
に２０００億円を和解金や訴訟費用に費やしたのです。
９５年７月になって、ようやく日本でもＰＬ法が施行
されましたが、その有効性を実証したのがＬトリプトフ
ァンによる事件でした。
（合同出版 「これでわかる食の安全読本」から）
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