組換えDNA技術応用食品について(東京都立衛生研究所提供)


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投稿者 明星 日時 1999 年 8 月 02 日 09:17:56:

 近年、バイオテクノロジー技術を応用したもののうち、組換えDNA技術
が確立され、有用な特性を持つ遺伝子のみを宿主に付与し、農作物などを短
期間で品種改良することが可能となってきました。すでに医薬品を始めとす
る様々な産業分野で、組換えDNA技術の利用が始まっています。 食品産
業においては、来るべき世界の人口増加に伴う食糧危機や将来の高齢化社会
を見据え、食糧の増産・食品加工の効率化をはかり、また食品の栄養価や機
能性を向上させることが重要な課題となっています。食糧危機を回避し、健
康で豊かな社会を実現するためには、作物や食品微生物のさらなる改良が必
要とされており、そのための一手段として、組換えDNA技術があります。
 組換えDNA技術応用食品の実用化は、昨今急速に進んでいます。特に農
業分野では、害虫に抵抗性を持つトウモロコシやジャガイモ、また特定の除
草剤の影響を受けずに生育する大豆やナタネ、日持ちの良いトマトなどが、
欧米で次々に商品化されています。最近では、脂肪酸の含有量が高い油糧作
物の開発も進んでいます。 害虫抵抗性の作物は、農薬への依存度を減少さ
せるとともに、農薬だけでは防ぎきれない虫害による作物の減収を防ぐこと
を可能にしたといわれています。 さらに、畑を耕すことによって表面の肥
沃土壌が風雨の作用で流亡することが世界的に大きな問題となっています
が、特定の除草剤の影響を受けずに生育する作物は、土壌流亡を防ぐ唯一の
手段である「不耕起栽培」での雑草防除手段を提供し、環境保全型農業の実
現に貢献するという利点を持つといわれています。 日持ちの良いトマトの
開発は、畑で完熟させたトマトが流通過程で傷むのを防ぐ目的で行われまし
たが、このトマトの開発で、消費者は畑で熟したそのままの、味の良いトマ
トを購入することができるようになりました。 一方、農作物の分野に続い
て、食品微生物の改良においても、組換えDNA技術の応用が研究されてお
り、一部では実用化が始まっています。 人類は、古くから微生物を利用し
て作られた発酵食品を食べていました。日本人の食卓にも、味噌、納豆、醤
油、漬物、酒などの伝統的な発酵食品とともに、今や、食生活の洋風化にと
もなってパンやクラッカー、サワークラウトのほか牛乳や肉を利用した発酵
食品が並んでいます。これまでにも、食品加工技術・保存性や安全性の向
上、健康の維持・増進に役立つような食品の栄養価や機能性の向上、さらに
は、資源の有効利用を目指して、従来技術による食品微生物の改良が進めら
れてきました。今後、食品微生物への組換えDNA技術の応用は、高齢化社
会や食糧増産問題の解決に向け、これまでの改良技術では成し得なかったよ
うな食品の機能性や品質の改善を可能とするものとなっています。 欧米に
おいては、遺伝子を組換えた微生物を利用して作られた「キモシン」が、
チーズの製造に用いられるようになっており、これまで子牛の胃からしか取
れなかった本酵素の大量生産が可能となりました。キモシンに続いて、α-
アミラーゼやリボフラビンも実用化され、組換えDNA技術の食品微生物へ
の応用は、高品質・高機能性の食品を大量生産するために、今後も開発が進
められるものと考えられます。 今までに実用例はありませんが、将来的に
は組換え食品微生物を含む食品も開発される可能性もあります。


 食品衛生法では、食品の安全性の確保は、第一義的には、製造者または輸
入者の責任において行うものであるとしています。したがって、遺伝子組換
え食品の安全性についても、厚生省が作成した「組換えDNA技術応用食品・
食品添加物の安全性評価指針」(以下、安全性評価指針という)に基づいて、
開発企業が自らの責任で、安全性の評価を実施することになっているので
す。 しかし、遺伝子組換え技術は、高度な先端技術であり、食品分野への
応用経験が少ないことから、厚生省では安全性の確保を図るために、安全性
評価指針に適合しているかどうか、個別の品目ごとに確認しています。 具
体的には、開発企業から提出された資料に基づき、既存の食品と比較して、
実質的に同等と見なし得るか否かの判断をします。 このようにして、食品
としての安全性が確認された遺伝子組換え農作物が、日本国内において販売
できるようになるのです。 「実質的同等性」という概念が、1993年に出
された、OECD(経済協力開発機構)の報告書の中で、安全性評価の原理とし
て確立しました。 この概念は、「導入された遺伝子の起源や特性がよく知
られており、既存の食品と同程度に無害であるとの科学的根拠がある場合に
は、その遺伝子組換え食品の安全性は、既存の食品と同等と考えられる」と
いうものです。具体的には、既存の食品と比較して、品質特性、栄養素の種
類と量、植物が持っているアルカロイドなどの自然毒の種類と量、使用方法
などに変化がなく、新たなタンパク質にアレルギーなどの有害性がない場合
に、実質的同等性が認められます。 人間は、長い歴史の中で、たとえ天然
の有害成分や栄養阻害成分が含まれている食品であっても、経験的に安全に
利用してきました。例えば、ダイズには、生で食べると消化不良を起こすト
リブシンインヒビターが含まれ、ジャガイモの芽には有害なソラニンが含ま
れています。しかし私たちは、ダイズは加熱し、ジャガイモは芽を取り除く
など、経験を通して安全に食べるすべを会得してきたのです。このように、
食品は、原則として、防ぐことのできない有害性が確認されない限り安全と
みなされてきました。遺伝子組換え食品に含まれている有害成分の種類や量
についても、既存の食品と比較して変化がなければ、安全とみなすという認
識が、実質的同等性の概念のベースとなっています。 新しい技術を応用し
て作られた食品の安全性評価については、既存の食品と「実質的に同等」か
どうかを考察し、同等とみなされた食品は、既存の食品と同様の方法で安全
性を評価するというのが、実質的同等性の原理です。これに基づき、各国と
も安全性評価指針を策定して、安全性の評価を行っています。 アレルギー
を引き起こすかどうかについては、厚生省が安全性評価指針に基づいて、開
発企業に、「アレルギー誘発性に関する安全性評価に必要な資料」の提出を
求めています。一般に、食品アレルゲンとなるのは、タンパク質が多いの
で、遺伝子組換えで導入した、タンパク質についても、十分に安全性を評価
する必要があるからです。 そこで、提出された資料により、遺伝子産物
が、すでにアレルゲンとして知られているものか、既に知られているアレル
ゲンと構造的な類似性があるかどうかについて、データベース検索により確
認しています。また、胃液や腸液などによる消化試験でタンパク質が分解す
るかどうか、加熱によってタンパク質が変性し、アレルゲン性を失うかなど
についても、十分に検討します。 現在、安全性が確認されている20品目
の農産物については、いずれも適切であると判断されています。


【東京都の対応】

 組換えDNA技術応用食品の安全性については、国が「製造指針及び安全
性評価指針」を示し、これに合致したものは問題ないとしています。 しか
し、組換えDNA技術応用食品は、新たな技術導入により作られた食品であ
ることから、都としては今後とも国内外の動向を注意深く見まもっていきま
す。 なお、表示については、平成9年3月26日、都知事から農林水産大
臣あてに「遺伝子組換え食品に関する表示等について(要望)」を提出して
います。また、平成8年12月18日、都議会において、東京都議会議員提
出議案により、「遺伝子組換え食品に関する意見書」を内閣総理大臣並びに
厚生省あてに提出しています。




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