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◎NATOの甘い詰め露呈 「4つどもえ」対決の懸念
【ベオグラード14日共同】ユーゴスラビア・コソボ紛争で勝者
となりコソボ自治州を「解放」するはずだった北大西洋条約機構
(NATO)は、ロシア軍の急展開という想定外の事態に直面、国
際治安部隊に関するロシアとの完全な政治合意がないまま和平を急
いだ詰めの甘さを露呈している。
ロシア軍出動に伴い武装解除への抵抗を強めるアルバニア系住民
武装組織、コソボ解放軍(KLA)がセルビア側を攻撃する事件も
発生。ささい細な行き違いがNATO、ロシア軍、ユーゴ軍、KL
Aの4者を巻き込んだ武力衝突につながる可能性も否定できない。
ロシア軍部隊が前触れなしにユーゴ入りしたのは11日朝。兵士
が装甲車の窓から手を振りながら首都ベオグラードを通過するとい
う大胆な行動の真意をNATO側は読み切れず、対応は後手に回っ
た。
国際治安部隊の構成や指揮権をめぐる米ロ協議が長引く中、勝手
にコソボ入りしないとのロシアの約束は破られ、ロシアの軍用車両
の隊列は州都プリシュティナでセルビア人住民の熱狂的歓迎を受け
た。
ユーゴの国営テレビは「クリントン米大統領はロシア軍の州都入
りをテレビで知り衝撃を受けた。ホワイトハウスは大混乱に陥った」
と誇らしげに伝えた。
NATOから国際治安部隊の指揮を任されたジャクソン司令官
(英軍)がNATO部隊のコソボへの緊急展開を指示。しかし、準
備不足で一番乗りに間に合わない米軍が英軍の足を引っ張るという
内輪もめのおまけも付いた。その結果が、司令部に予定していたプ
リシュティナ空港をロシア軍に占拠されるという失態だった。
「(コソボに入った)ロシア軍はたったの200人」とのオルブ
ライト米国務長官の発言が、米政府の焦りを逆に浮き彫りにする。
ロシア部隊が今後2000人、1万人となれば、コソボをNATO
主要国で分割占領するというNATOの思惑が台なしになる事態も
十分考えられる。 (了)
[共同 6月14日] ( 1999-06-14-14:46 )