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回答先: イージス艦って日米以外に持ってる国あるんでしょうか? 投稿者 タケル 日時 1999 年 3 月 03 日 14:49:49:
> イージス艦って自衛隊と米海軍以外にはどこの国が持ってるんでしょうか?
現在のところ、イージスシステム搭載艦を保有しているのはアメリカ・日本だけです。あとイギリス・イスラエル・台湾が導入を検討中のようです。ただし、同様の艦隊の洋上防空を目的とした多目標同時攻撃艦対空ミサイルシステムを採用している国はあります「ロシア」、フランスも自国で同様のシステムを研究中。
最近ではTMD関連でミサイル迎撃ミサイルと混同して論じられることの多いイージスシステムですが、そもそも、イージスシステムのルーツは太平洋戦争にまで遡ります。
当時、真珠湾攻撃で日本空母艦載機の圧倒的な攻撃力に恐れをなし、戦艦同士の艦隊決戦が無意味なものとなったことを悟ったアメリカは、全速でも30ノットしかでだせず、海上という2次元空間しか移動できない艦艇を、200キロ以上のスピードで空という3次元空間を自由に移動できる航空機の攻撃から守るための方策を早急に立案する必要に迫られた訳です。
しかし当時の技術力では現在のような精密射撃誘導と目標指示・計算(そりゃコンピューターがない訳だから)が不可能なため、弾幕射撃という確率論(この射撃を通り抜け、攻撃に成功する割合は30%以下なら、100機までの空襲なら防げるだろう)というものでしかありませんでした。
しかし、それでもその確率論は、近接信管が開発されたこと、艦隊の防空戦闘機をレーダーで誘導するCICが誕生したことで、日米の空母最終決戦となったマリアナ沖海戦において圧倒的な威力を発揮し、戦後「マリアナの七面鳥打ち」と揶揄されるように、日本の海軍航空隊をほぼ完全に叩きのめすことに成功します。
これにより熟練パイロットを長い期間かけて養成し、肉薄急降下爆撃・雷撃を行う戦術は完全に無力化され、以後日本海軍は「特攻」つまり人間を誘導装置と化す精密攻撃戦術を採用しなければ、コストに見合った戦果を達成できなくなってゆきます。
しかし、このことが戦後アメリカの艦隊防空に対する姿勢を益々強いものにすることになり、ターターからイージスに至る対空ミサイル誘導システムの開発を推し進めることになったのでした。
その後冷戦が始まり、いざ有事の際、北米大陸から大西洋を超え、ヨーロッパに軍事力を早急に輸送する必要に迫られたアメリカは、新たにバックファイァを始めとする旧ソ連の長距離攻撃機の編隊から同時に発射される長距離対艦ミサイルの飽和攻撃(20機以上の編隊から同時に数百発のミサイルを発射し、精密+確率論的迎撃を行っても、必ず何発かのミサイルが命中する。そして概してソ連のミサイルは大型で、一発で輸送船クラスなら撃沈可能なうえ、エレクトロニクスの塊である現在の軍艦は至近弾でも致命的なダメージを受ける)の危機に直面したアメリカは、遂にイージスを開発することによって、数百発の攻撃を同時にうけても、艦隊を守ることができるようになった訳です。
以上述べたように、イージスは空母機動部隊や輸送船団を航空攻撃から守るために開発されたシステムであり、現段階でその保有国が日米だけだというのも、アメリカは空母保有国であり、日本は有事の際はアメリカ第七艦隊の空母機動部隊の対潜水艦・対航空機防衛の一翼を担うという任務を引き受けていること、そして、太平洋戦争中、日本の輸送船団がアメリカの航空機によって多数撃沈され、日干しにされた恐怖から、空母を持てない日本としてはシーレーンの確保のため、有事に輸送船団を守るにはイージスが最もコストパフォーマンスが高いという理由からです。それと、フネ自体のお値段が高い、発展途上国ではコンピューターのソフト更新をはじめとするメンテナンス費用が賄えないという理由もあります。
ソ連が同様のシステムを開発したのは、単にアメリカへの対抗心から要りもしない空母を造ってしまったため(予算不足から現在は廃艦・保管艦となっている)それにあわせて高価な空母を守るために必要になってとりあえず・・・といったところでしょう。
フランスとイギリスが同様のシステムの導入を検討しているのは両国とも空母保有国であり、イギリスは特にフォークランドでフランス製のエグゾセに酷い目にあっているからだと思われます。
また、TMDになぜイージスが有効かという理由は、イージスシステムが持つ高精度の位相検波レーダー(従来のアンテナが回転するレーダーでは、アンテナが向いていない方向の敵は探知できない)とスーパーコンピューターが高精度の識別探知能力を有しており、直径1メートルほどで真上から秒速何十キロで降ってくるミサイルを探知し、その未来位置を計算するのに極めて有効なことと、もともと、その目的から何百発もの対空ミサイルを搭載可能なため、TMDで採用される予定の大型ミサイルを多数搭載可能だからです。なぜなら、核兵器を使用しない以上、弾道ミサイルの迎撃は、第二次世界大戦当時の航空機に対する迎撃と同じように、弾幕射撃(1つの目標に対し複数のミサイルを発射し、確率的に迎撃をする)しか方法がなく、港にはいらなければ弾の補給ができない艦艇には、そのためには多数のミサイルを搭載する必要があるからです。