(回答先: Re: 大仏は見ている 投稿者 ! 日時 2002 年 2 月 15 日 22:30:12)
「!」さん、初めまして。
タイから密輸してスイスやスウェーデンを経由しヨーロッパの人たちに売られている仏像に関して、タイの人たちは、「ヨーロッパの業者や個人は、仏像を美術品のように考えているが、仏像はあくまでも宗教のなかにあるものであり、博物館や室内を飾ったり眺めたりされるためのものではない」と非難しています。
文化とは、共同体を構成する人々の生活様式だと考えています。
生活様式を大きく区分すると、個々人の生存と再生産を維持する方法・共同体の統一を維持する方法・他の共同体との接触の方法があります。
もう少し具体的に言えば、食糧など生活に必要なものの獲得方法・住居など建物の様式・婚姻の仕方・死者の葬り方・統治の仕方・自然(人を含む)に対する基本的な考え方・人生の楽しみ方・外の共同体との問題を解決する方法などが上げられます。
宗教(価値観体系)は、ある共同体のほとんどの生活様式を規定する重要なものだと思っています。
文化物(財)とは、そのような文化活動が対象化(人の活動によりある物になったこと)されて存在している物だと考えています。食べ物などは消化されて別の物になってしまいますが...
このようなことから言えば、便所から墓までが文化財です。もちろん、裏ビデオやビニ本なども文化物(財)です。
そして、破壊された大仏も文化物(財)です。
「!」さんが言われている文化財は、おそらく、「残すに値する貴重な文化物」のことではないかと推察します。
その前提で言えば、何が残すに値する貴重な物なのかを判断するのは、それが存在している共同体(国家)の役割です。
「!」さんを含めてバーミヤンの大仏を残して欲しかったと思っている人は多いでしょうが、だからと言って、「文明諸国」がタリバン政権を非難するのは筋違いだと思っています。
タリバン政権はイスラムを基盤とした政権であり、ムハンマドがメッカのカーバ神殿にあった女神像などを破壊させたように、大仏を偶像と考え文化活動として破壊したのです。
欧米諸国や日本は、大仏破壊をタリバン政権の酷さやとんでもなさを証明するものであるかのように宣伝していますが、南北アメリカ・アフリカ・オーストラリアなどの太平洋地域で人と文化をズタズタにしたこと自分たちの歴史こそじっくり反省すべきだと思います。(他の国も様々な破壊活動をしてきましたが)
欧米諸国に限らず、先人の文化物を破壊しながら、そのときどきで良かれと考える生活様式を築いてきたのです。そして、今も、それを続けています。今後もたぶん、程度の差は別として、そうしていくのではないでしょうか。