投稿者 付箋 日時 2001 年 6 月 03 日 11:25:41:
回答先: 日本のCIAと言われる内閣官房室の内閣情報調査室 投稿者 付箋 日時 2001 年 6 月 03 日 10:15:58:
長船労組・2000・8・9 ビラ
本頁は上記ビラを基本に、最新情報を記載しています。更新日 2001.3.29
私たちは三菱重工が中心となったTMD(戦域ミサイル防衛)開発に反対します。
三菱重工は1999年度決算で大幅な赤字を出し、対策として「2000年事業計画」を発表し、その中で「TMD(戦域ミサイル防衛システム)推進体制の強化」を打ち出しました。
TMDは敵の弾道ミサイル発射を人工衛星や空中警戒管制機のセンサーで察知、陸上・海上からミサイルで多段階に迎撃するシステム。システム構築に1兆円以上かかるといわれています。
迎撃ミサイルを共同開発
1999年9月、三菱重工は防衛庁から、日米両国が取り組む弾道ミサイル防衛(BMD)の共同技術研究の主契約企業として指名を受け、99年度予算で計上していた設計・試作作業を9億円で受注。共同研究するのは海上配備型上層システム(NTWD)。早期警戒衛星などで弾道ミサイルの発射を感知し、海上のイージス艦から迎撃ミサイルを発射して弾頭を破壊するNTWDの主要技術となる、@赤外線を利用して標的を識別・追尾する赤外線シーカー、A赤外線シーカーを保護するノーズコーン、B弾道ミサイルの弾頭を破壊するキネチィック弾頭、C第2段ロケットモーター。米国側の共同開発企業はレイセオン社。防衛庁は1999年度9億6千万円、2000年度21億円を計上。2001年度は37億円の予算を要求して8月25日に了承されました。
そして、次期中期防衛力整備計画(次期防2001〜5年度)にはTMDの本格配備として予備費1500億円が計上されています。
新型イージス艦2隻建造(ヘリ空母2隻建造)
現在のイージス艦4隻(三菱長船3隻、石播1隻建造)は弾道ミサイルの迎撃能力がないので、次期中期防衛力整備計画(次期防2001〜5年度)で、TMD搭載の新型イージス艦2隻を新たに建造するというものです。
防衛庁は2000年1月5日、次期防で従来のイージス艦よりミサイル攻撃への防空能力を格段に強化した新型イージス艦2隻を配備することを決定した(「読売」2000.1.6)。
防衛庁はミサイル護衛艦の後継艦にイージス艦を導入する方向で具体的な検討に着手した。各護衛艦群に2隻ずつの態勢とし、ミサイルによる防空能力を向上させるのが狙い。次期防の期間中に建造開始を目指す方針(「読売」2000.10.1)。
注:今回の発表は「新型」を外して、単に「ミサイル護衛艦」としているが、「弾道ミサイル撃ち落とす海軍戦域防衛(NTWD)システムの搭載が計画されている」(「読売」2000.1.6)のは明らかです。
軍事偵察衛星
TMDには発射しようとするミサイル基地を監視する軍事偵察衛星が不可欠です。その軍事偵察衛星は、1998年12月22日の閣議で、偵察機能を備えた情報収集衛星を導入することを決定。99年度予算で総額113億円を計上しました。2001年度概算要求には992億円を計上しています。
衛星は高度500km上空から精密な写真を撮影する光学機器衛星と夜間や雲に影響されない3次元合成開口レーダーで探査する衛星を2基ずつ計4基(三菱電機製)を2002年度に打ち上げ、2005年度には予備機として2基を打ち上げる計画です。更に2005年度には次世代型偵察衛星を2基打ち上げ、8基の衛星がどの地点でも1日2回以上偵察できるような体制を作り、又、データ中継衛星を静止軌道上に打ち上げ、8基の軍事偵察衛星で捕らえた全世界の画像データをリアルタイムで受信するとしています。
地上局は日本列島の南北に1カ所ずつ設置。北は北海道の苫小牧市、南は鹿児島県阿久根市を8月21日に決定し、2001年度に完成予定です(総予算は2,500億円)。
軍事偵察衛星は500kmの軌道上から監視するので、視野が限られています。例えば1日1回「三宅島」の真上を飛ぶとすれば、軌道を変えなければならず、常に燃料を使用するので寿命が限られます。衛星を8基を運用するなら、常に何百億円もかけて衛星の更新をしなければならず、喜ぶのは三菱重工と自衛隊くらいなものです。
軍事偵察衛星システム全体は内閣情報調査室が所管していることから、衛星8基(予備2基・次世代衛星2基)、地上局(全国5ケ所・光ファイバーケーブルの通信設備・人員約200名)、H2Aの打ち上げ(計4回)などの総費用約1兆円は防衛費として計上しないと思われます。
情報収集衛星を運用・管理するために2001年4月内閣情報調査室内に「衛星情報センター」を発足、116名の定員を配備する予定です。
H2Aロケットも開発
衛星を打ち上げるにはH2ロケットが必要ですが、そのH2ロケットは1999年11月打ち上げに失敗しました。2000年夏、H2ロケットを使って「地域観測衛星(ALOS)(光学式軍事偵察衛星の原形)」を打ち上げる予定でしたが延期され、新たにH2Aロケットを開発して2002年度までに軍事偵察衛星を打ち上げる予定です。宇宙開発事業団はH2Aロケットの開発を急いでいます。
2000年6月2日、H2A補助ロケット(2000年2月失敗したM5ロケットと同じ燃焼方式)が燃焼試験中に破損し、事業団は2日の記者会見では「試験は失敗に終った」としていましたが、5日には一転して「想定内の現象で燃焼試験は成功、H2A打ち上げは計画通り」と主張し、前会見の内容を修正しました。その後もH2A主エンジンの故障は続発しています。
H2Aロケットエンジン1段目の150秒間(実際は400秒)の燃焼試験を8月23日終了し、今度は2段エンジン(三菱重工製LE5B)の真空中での燃焼試験を9月4日、8日に行ったはずですが、結果は発表されませんでした。
そして宇宙開発事業団は9月18日、今度はH2A固体補助ロケットの燃焼試験を延期すると発表しました。原因はリチウム電池の焼損。しかし、H2A打ち上げは計画通りとしていました。
これは「H2A、情報収集衛星、国際宇宙ステーション」を最優先にしている国の計画が遅れるのを恐れたゴマカシとしか考えられません。尚、その後2002年度に打ち上げを予定していた「宇宙ステーション」(実験棟「きぼう」を3回に分けて打ち上げ)については延期して、2004年2月の打ち上げと修正しました。
H2A1号機打ち上げ延期
宇宙開発事業団は2000年11月22日、H2Aロケットの第1段エンジン(LE7A)の下部噴出口を覆う部品「ノズルスカート」表面に多数の腐食痕が見つかったと発表した。ノズルスカートは燃焼したガスを効率的に膨張させて推進力を生み出すための部品。この部品は高温にさらされるため、中を液体水素燃料が通りノズルを冷却する。打ち上げ時に、管に穴が開くと燃料が漏れて引火する危険がある。エンジン開発は三菱重工が担当、仮にノズルを作り直すと1年以上かかる(「日経」2000.11.23)。
宇宙開発事業団は11月29日、H2Aロケット1号機の打ち上げ予定を、2001年2月から半年間延期することを決
め、宇宙開発委員会に報告した。尚、実用衛星打ち上げには影響が出ないとしている(「日経」2000.11.30)。
これは国際協力よりも、軍事を優先するという政府の姿勢を如実に表しているといえます。
宇宙開発委員会の技術調査部会は9月27日、H2Aロケット第1段エンジンの設計変更が必要、とする中間報告を提出しました。これを受け宇宙開発事業団は、2001年2月に打ち上げを予定していた欧州の衛星「アルテミス」(衛星本体1000億円)の搭載を断念し、ダミー衛星(重量2トン、H2Aは4トンの能力有り)を打ち上げることを決定しました。全負荷ではH2Aのエンジンが破壊されるので、負荷を減らして打ち上げ試験を行う、というものです。
設計変更により、軍事偵察衛星の打ち上げは当初予定の2001年夏から2003年冬まで2年余り延期されることになります。
早期警戒衛星(TMDの配備は既に始まっている)
TMDには発射されたミサイルを発見して軌道を観測し、迎撃ミサイルに指令を出す、静止軌道上の早期警戒衛星が不可欠です。その迎撃ミサイルの発射には、米国の早期警戒衛星からデータをもらうしかありません。このことは現在日米共同で開発しているTMDは、米国のコントロール下に置かれることを意味します。
米海軍の戦域ミサイル追跡艦「インビンシブル」が米第7艦隊に編入・実戦配備されていることが分かった。佐世保軍事問題研究会の篠崎正人事務局長は「インビンシブルは戦域ミサイル防衛(TMD)構想が対象とする中距離ミサイルの追尾を主目的に開発したレーダーシステムを搭載しており、東アジア地域のミサイル監視と併せ、TMDとの関連性も極めて高い」と指摘している。
インビンシブルは3月14日から佐世保に寄港、佐世保港立神岸壁に接岸している(「長崎」2001.3.27)。
佐世保海上自衛隊には「こんごう」「ちょうかい」の2隻のイージス艦が配備されており、迎撃ミサイル(SM−3ブロック3型)を既に搭載している。
TMDは世界各国が反対
米国のNMD(米本土ミサイル防衛)の配備はABM条約の変更が必要となります。TMDの配備はABM条約の変更は伴いません。そして米国のMNDはミサイルを撃ち落す実験に失敗しています。
TMDはミサイルの発射直後のブースト段階で撃ち落すことになっています。それはもし非同盟国のミサイルが発射されれば、目標がどこであっても、例え人工衛星の打ち上げであっても、非同盟国の領海ぎりぎりにイージス艦を配備して、「同盟国の脅威」として「集団的自衛権」を発動して、TMDで撃ち落すというものです。このことは「偶発的核戦争」の恐れがより強まることを意味します。
TMDは、現在国際問題になっているNMD(米本土ミサイル防衛)と本質的に変わりはありません。中国は、TMDの迎撃ミサイルはNMDの迎撃ミサイルとして使える『潜在力』を持っており、TMDとNMDが早期警戒衛星を共用できることを挙げ、一体運用の可能性を指摘し反対しています。米国は、日本も研究に参加する海上発射型の戦域ミサイル防衛(TMD)については、経済上も戦略上も得であり『コストもリスクも少ない』として開発を支持しています。NMDは延期したとしてもTMDの開発は続けるというものです。
2000年9月11日に開かれた日米安全保障協議委員会で、戦域ミサイル防衛(TMD)の共同開発を引き続き進めていく方針を再確認。前虎島防衛庁長官は、「しゅくしゅくと(静かに=秘密裏に)技術協力を進めていくことが重要である」と述べています。
9月27日に開かれた参議院代表質問で田英夫氏(社民)は「戦域ミサイル防衛(TMD)は即刻中止すべきだ。」との質問に、森首相は「弾道ミサイル防衛(BMD)は我が国防衛政策上重要な課題と認識している。純粋に防御的なシステムであり、地域の平和と安定に悪影響を与えるものではない。」と回答しています。
新たな核軍拡競争の火種
TMD(NMD)及び軍事偵察衛星はILOの「宇宙条約」にも違反します(日本は1967年10月10日批准)。
私たちはTMDの米・日(=三菱重工)共同開発には断固として反対します。又、日本が計画している軍事偵察衛星の打ち上げにも反対します。災害などの情報収集衛星としてどうしても必要ならば近隣諸国との共同運用を提案します。