投稿者 mainichi/200103/07-3 日時 2001 年 3 月 07 日 14:25:41:
回答先: [国家のウソ・機密費疑惑1]「埋め込み」外務省は場所貸し 投稿者 mainichi/200103/06-3 日時 2001 年 3 月 07 日 14:24:12:
[機密費疑惑・国家のウソ2]規律なき使途、選挙資金に官邸の影
首相官邸の資金は、従来考えられていた以上に潤沢だった。 表に出ている
官房機密費16億2400万円のうち、官房長官が直接管理する一般行政経費
は13億9200万円。これに「裏の機密費」約20億円を加えた34億円近
くが、首相―官房長官のラインで自由になる計算だ。
一体何に使われているのか。
「表に出たら大変」
2月下旬。那覇市。東京ではコートが手離せないというのに、広い邸宅は赤
いブーゲンビリアに彩られていた。主の老人は、1998年11月の沖縄県知
事選で稲嶺恵一知事陣営の選対幹部を務めた人物だ。
「ええ、資金の手当てを自民党本部に頼みました。『人はよこさないでいい
から、資金面だけお願いします』って」
米軍普天間飛行場の移設問題が知事選の焦点だった。3選を目指す現職の大
田昌秀氏は「県外への移設」を、自民党の推す新人の稲嶺氏は「振興策とセッ
トでの県内移設」を唱えた。大田氏が当選すれば、当時の小渕恵三政権に深刻
な影響をもたらすのは確実だった。
老人は選挙資金の具体額に質問が及ぶと、一瞬息をのんで語った。「全部で
4、5億かかった。自民党から来たのはそのうち2億か3億だったな。選挙の
カネはメモに残さないし、銀行を通さないのが鉄則ですから」
数字の輪郭をぼかしながらも、老人は自民党から資金提供があったと認め
た。ただし、カネの出所は自民党一本だったのか。実はこの中に、官房機密費
が1億円以上含まれていたとの重大な証言がある。語るのは、自民党沖縄県連
関係者だ。
「官邸から知事選の資金が出たのは間違いない。私自身、選対の会議で報告
を受けた。元は税金だからね。選挙に機密費を使ったなんて表に出たら大変な
ことになる」
銀行を通さないという話に従えば、カネは東京から那覇まで人の手で運ばれ
たことになる。それはどこで受け渡しが行われたのか。出金は1回か、数回に
分けてか。老人にただした。
「官邸と自民党と二つ資金ルートがあることが分かったのは今回の横領事件
が起きてからですよ。だから官邸からカネが出たのかどうか私は知らない」
官房機密費と与党の選挙資金。その間を、実線で結ぶだけの明白な証拠はな
い。ただし、点線ではつながっていることを数々の証言が物語っている。
外務省幹部はこんな言い方をした。「いくら官邸に上納しているか、僕は正
確に知らないけど、衆院選とか大きな選挙がある年は例年より上納が増えてい
るはずだ。そんな年は僕らの機密費が切り詰められるから、皮膚感覚で分か
る」
官房機密費は「国が、国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため、
当面の任務と状況に応じその都度の判断で最も適当と認められる方法により機
動的に使用する経費」(「予算事務概要」)と定義されている。支出目的を何
一つ制限しない表現だ。
与党を中心に、国会議員が海外旅行をするたびに官邸を訪ねて茶封筒入りの
餞別(せんべつ)をもらうことも、この定義から逸脱しない支出ということに
なっている。自民党議員の場合、餞別額は最低でも30万円、中堅議員以上に
なると1回に100万円渡されることも多いという。
55年体制下で官房機密費が自民党国対費の原資になっていたことは、公然
の秘密だった。
90年代初めに官邸で勤務した人物は「絶対に名前を出してもらっては困
る」と前置きしてこう証言した。「オヤジ(官房長官)に言われて金丸さん
(故・金丸信元自民党副総裁)に機密費を1億円持って行ったことがある。薄
茶色の紙袋に5000万円ずつ2袋に分けた」
他にも官房機密費の使途に関する関係者の話は、このカネの放縦ぶりを如実
に示す。
「秘書同士でホテルのバーともう1軒はしごして200万円かかった。名刺
を渡して官邸に払いを回した」
「我々秘書官が会食しても、領収書を官邸事務所に渡せば機密費で落ちた。
官房長官からは時々お小遣いももらった」
官邸が松尾克俊・元要人外国訪問支援室長に「宿泊費の補てん分」として9
億6500万円も渡していた気前の良さも、同じ流れの中にある。
「入り」で国民の目をごまかしたカネは、「出」において必ず規律が緩む。
(毎日新聞3月7日朝刊)