[国家のウソ・機密費疑惑1]「埋め込み」外務省は場所貸し

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投稿者 mainichi/200103/06-3 日時 2001 年 3 月 07 日 14:24:12:

[国家のウソ・機密費疑惑1]「埋め込み」外務省は場所貸し


◇「今さら認められぬ」

 横領の手口は、ごくありふれたものだった。普通じゃなかったのはカネの出
所だ。取材班が「首相官邸のカネ」の解剖を続けた結果、本体よりも巨大な
「闇の官房機密費」が初めてその姿を現した。機密費をめぐる国家的なまやか
しに迫る。

 受話器の向こうで、相手は声をひそめた。
 「電話じゃ話せない。役所に来てもらうのも困る。霞が関から離れた所で会
おう」

 午後6時半。旧大蔵省(現財務省)の元外務省予算担当者は、約束の時間通
り待ち合わせ場所に現れた。喫茶店に入り、他の客から離れた席に座ると、早
口で本題を切り出した。

 「外務報償費(外交機密費)の額を内閣分と外務省分に分けたペーパーを見
たことがある。外務省は場所貸しだ。内閣報償費を無難なところに預けている
んだろう」

 話は具体的だった。外務省の官房長が大蔵省に外交機密費の増額を求めた
際、主計局次長との協議で、増額分を官邸と外務省とで折半したといういきさ
つも明かした。

 東京近郊の住宅街。外務省会計課の元職員は、2時間近くためらった後、重
い口を開いた。「官邸分は初めから外務報償費の中に埋め込まれている。年度
初めに、会計課長から内訳を書いた手書きのメモを渡された」

 「上納」に伴う会計処理についての証言は一層生々しかった。「総理府(現
内閣府)の方から『報償費をいくらお願いします。今から依頼書を持って行か
せますから』って電話が来るんですよ。依頼から大体2、3日で政府小切手が
切られる。それでまた総理府の職員が取りに来るんです」

 この手続きは会計課の審査室を中心に進められる。機密費を専門に扱うセク
ションだ。審査室内では官邸から依頼が来るたびに、「決裁書作って。額は5
(5000万円)」などの会話がなされていた。上納に際しては、1件ごとに
会計課長から官房長、事務次官に決裁書が回る「組織ぐるみ」のシステムであ
ることも分かった。

 政府小切手は、首相官邸にほど近い東京・虎ノ門の都銀支店で換金される。
多くの場合、銀行員が数千万円ずつ官邸に届けるという。届いた現金を官房長
官室の金庫に納めるための仕分け作業について元官邸職員が証言した。

 「帯封は全部ばらし、まず10万、50万、100万円と小分けにしなけれ
ばならない。それを封筒に入れたり、ゴムバンドで留めたりする。通常、官邸
事務所長が1人でやるが、官房長官から急ぎの補充を指示されると、事務所員
が総がかりで作業することもあった」

 機密費横領問題を契機に、「報償費について」と題した手書き3枚(他に別
紙2枚)の文書が今国会で改めて取り上げられた。1989年ごろの作成とみ
られ、90年代半ばには一部マスコミに流出していた。文書には83年度から
89年度にかけての官房機密費の推移が記載され、上納分の内訳をうかがわせ
る数字も年度別に並んでいる。

 共産党は「外務省から官邸への機密費上納を示す証拠だ」と追及したが、同
党議員がこの文書を下敷きに質問したのは11年前にさかのぼる。

 90年6月の衆院決算委で寺前巌氏は文書の存在をにおわせながら「官房長
官が使うことのできるカネが、外務省の予算に乗っているのではないか」とた
だした。さらに寺前氏は98年3月の衆院内閣委で初めて「ペーパーを持って
いる」と明かして同じ趣旨の質問をした。外務省側は「外務省のコントロール
を離れて報償費が支出されることはない」と否定し、同じ言い回しが現在も続
いている。

 しかし、霞が関から漏れてくる証言の数々は、文書で描かれた機密費の実態
と同じ姿を言い表していた。外交機密費に組み込まれている「官邸の裏金」は
年額約20億円。官房機密費の組成に重大なウソが存在することは明白だ。官
房機密費の背後に広がる権力の腐食に対し、証言には共通した嫌悪感があっ
た。

 外務省の中堅幹部はこう語った。
 「上納は核の持ち込みと同じ。ウソを重ねた結果、今さら事実を認められな
くなっているんだ」





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