浅見定雄「統一教会と癒着するジャーナリスト」(週金344号)

 ★阿修羅♪

[ フォローアップ ] [ フォローアップを投稿 ] [ ★阿修羅♪ Ψ空耳の丘Ψ12 ]

投稿者 YM 日時 2001 年 2 月 12 日 21:51:05:

週刊金曜日2000.12.15(344号)
統一教会と癒着するジャーナリスト
浅見定雄

浅見定雄・東北学院大学元教授が、宗教ジャーナリストの室生忠氏などを相手
取って名誉段損の損害賠償を求める裁判を起こしている。カルト信者への「保
護・話し合い・説得・救出」を続けている筆者はなぜ裁判に踏みきったのか。

私は、いわゆるカルト(注1)から名誉段損で訴えられたことが四回ある。うち
二回は統一協会(注2)からで、これは刑事告訴だったため、簡単に不起訴で終
わった。あとの二回は、「幸福の科学」と「ライフスペース」からの民事訴訟
だった。しかし、幸福の科学は、途中で教団が訴えそのものに「遺憾の意を表」
したので和解し、ライフスペースは例のミイラ事件で決着がついてしまった。
ただ統一協会のときには一度だけ検察の取り調べを受け、密室での長時間の事情
聴取と、検察官が要約した調書にいちいち異議を唱えないと調書がそのまま確定
してしまう体験をした。こんな取り調べが何日も続いたら冤罪の「自白」も起こ
るだろうな、と思った。

統一協会側の資料とのみ符合
こういう経験があるので、私は他人を同じような目に遭わせることなど夢にも考
えていなかった。だが今回ばかりは事情が違う。私や後輩の牧師たちがボラン
ティア行為として取り組んできた統一協会信者の救出活動を、「拘束連行・拘
禁・強制説得」
だと雑誌に書きまくる「宗教ジャーナリスト」が現れたからであ
る。
かねて統一協会側は、私たちの行為を「拉致・監禁・強制棄教・強制改宗」だと
宣伝していたが、私たちは納得ずくの「保護・話し合い・説得・救出」だと言っ
てきた。そこへ室生忠氏なる「宗教ジャーナリスト」が割って入る形をとり、月
刊誌『創』(創出版発行)に、「知られざる『強制改宗』めぐる攻防」という連
載記事(今年三月号〜八月号)を書いた。
「攻防」ならば、両者の言い分を公平に紹介しているのかと思う。ところが室生
氏は、統一協会側とこちら側の表現の「中間のニュアンス」と断りながら、すべ
てを統一協会側の主張に近い「拘束連行・拘禁・強制説得」と表現した。この件
で私は、室生氏と、『創』の編集長を訴えた(注3)のだが、同誌は時に国家権
力やマスコミのバッシングと対時する姿勢も示すことに敬意を表し、ここでは室
生氏だけを問題にする(注4)。
事の始まりは、私と同じ日本基督教団の黒鳥栄・清水与忠雄の両牧師が、被害者
家族の依頼で救出カウンセリングをしていたところ、その信者が途中で(あるい
は一度は本当にやめる気になったのだが再び)統一協会に戻ってしまい、その後
三〜四年もたった昨年になって突然、両牧師や家族を「拉致・監禁・強制棄教・
強制改宗」などで訴えてきたことにある。
すでにこの経過からして、訴えたのは本人たち個人の意思というより、社会的に
追い詰められた統一協会側の思惑によるものだと察せられるのだが、この裁判の
過程で、これらの牧師に「拉致・監禁・強制棄教・強制改宗」の指導をしたのは
浅見であるとの主張が出てきた。またその主張のために、統一協会側のありとあ
らゆる「証拠」文書が持ち出されてきた。そして室生氏の連載の内容は、これら
の「証拠」とだけ符合しているのである。
たとえば、浅見が今から一九年も前に、あたかもある信者の両親をそそのかして
彼女を精神病院に入れさせたかのように言い、その上で「とても信仰者とは思え
ない口調で……統一教会に対する誹講中傷を始め……(彼女が)反応を示さない
と、生意気だといって怒りました」という本人の「手記」なるものを紹介してい
る。しかしこれは、統一協会出版の『日本版収容所列島』や『私は拉致監禁され
た!』という本の内容そのままであり、この種の「手記」には、統一協会が本人
の名前を使って勝手に書いた部分が多いと元信者が証言している。その一部は、
陳述書として裁判所に提出された。私に関しては、当の女性の母親自身が、娘の
入院の本当のいきさつや、私が彼女と語り合った時の様子、その結果彼女が私に
対して抱いた感情のこと(彼女はむしろ私を慕っていたようだと母親は言う)ま
で、詳しく陳述書に書いてくれた。

室生氏のモラルを問う
私が室生氏を訴えた理由は、この「精神病院」事件のほかにも三つあるが、紙幅
の都合で省略する(注5)。ここで私が取り上げたいのは、ジャーナリストとし
ての室生氏のモラルの問題である。
第一は「取材」の問題。室生氏は、ふた昔も前の信者やその家族の古傷をえぐる
ようなことをしながら、ただの一度も本人やその家族に取材もせず、また私にも
「反論や言い分がありますか」と聞いてこなかった。一般の新聞でさえ、統一協
会の霊感商法の責任が最高裁で確定した時でも、一応はそれに対する統一協会側
の言い分を併記している。
第二は、室生氏と統一協会の癒着である。私には電話一本の問い合わせもしてこ
なかった室生氏だが、彼は問題の連載の前から統一協会系のシンポジウムの講師
をつとめ、また統一協会から「教団としてはもとより、原告信者への取材便宜や
資料提供など、全面的な協力をえることができました」と告白している。彼は裁
判傍聴のときにも、統一協会から車の便宜まで受けており、この事実についての
「報告書」も、私たちはすでに裁判所に提出している。
第三は、私が室生氏の連載に言論で答えず、裁判に訴えた理由である。裁判に踏
み切る前、当然ながら私は、代理人の弁護士を通して、室生氏側へ抗議の「通知
書」を送るなどした。すると『創』誌の方からは、私に「反論の機会」を与える
と言ってきた。
だが反論(反対して論じる)とは、私がしたことや書いたことへの批判に対して
できることである。根も葉もないことを書かれて、何を「論じる」のか。たとえ
ば、私が人を殺してもいないのに、それを確かめもせず「殺した」と書いたら、
その人物は私に「反論の機会を与える」のではなく謝罪をすべきである。「反
論」など書かせてもらっても、読者がそれを読まなければおしまいである。
実は室生氏側は、十一月十三日の口頭弁論で新たに、浅見は「女性信者」の「体
を触るなどのセクハラの行為をしている」との書面を提出してきた。
この表現から読者 はどんな場面を想像するだろうか。密室で浅見が女性信者の体
に触る姿だろう。実際は、もう十数年も昔、信者の短大生が両親や兄弟姉妹と一
緒に私の研究室へやって来た。そして思いのほか簡単に統一協会の悪を納得して
くれたので、別れぎわに私は、「本当によかったね」と言って彼女(たまたま背
が低かった)の頭をなでた。
当時、統一協会は私のことを悪魔の親玉のように教えていたので、信仰を捨てて
いない若者は、私が頭をなでるどころか握手を求めても、拒否反応を示した。だ
から私は非常に慎重に信者と接していた。しかし彼女の場合、本人も家族もすっ
かり打ち解けたので、私は自然にそうしたのである。
本人も家族も夢にも問題と思わなかった情景を、室生氏側は「セクハラ」に仕立
てあげた。さすがにこの書面は、私の弁護団の強烈な抗議で取り下げられたが、
もしそうでなければ裁判の書面は公開なので一人歩きもする。「誌上で反論」で
は済まないのだ。
最後の問題として、室生氏の自家撞着を指摘しておかなければならない。私が裁
判を起こしたあと、茶本繁正氏(ジャーナリスト)が雑誌『放送レポート』(メ
ディア総合研究所)十一月号に、また有田芳生氏(同)が自らのインターネット
ホームページに、この裁判について論評を載せた。そうしたら、室生氏から両
氏に「抗議書および要求書」なるものが送られてきた。室生氏はそのなかで、
(1)自分に取材もせず論評を書いたことは許せない、(2)ついては両氏の雑誌と
ホームページに反論を掲載させろ、と主張している。
盗っ人猛々しいとはこのことである。この件で当事者の一方にまったく取材をせ
ずに書いたのは、室生さん、あなた自身ではないか。茶本氏や有田氏は、室生氏
に「取材」する必要などまったくない。なぜなら、室生氏と浅見の両者の言い分
は、今や文章で出そろっているからである。室生氏は私の文章など何も存在しな
かった時に、私に一言の取材もせず勝手な記事を書いたのだ。統一協会だけでな
く、いろいろなカルトの、被害者にも加害者にも心を痛めなければならない立場
の人間として、私は室生氏のような「ジャーナリスト」の存在を黙視するわけに
はいかない。

(注1)「カルト」の定義については筆者の『なぜカルト宗教は生まれるのか』
(日本基督教団出版局)に詳しい。
(注2)正式名称は、世界基督教統一神霊協会。教団側は「統一教会」と称して
いる。
(注3)筆者が民事訴訟を起こしたのは今年六月。六〇〇万円の支払いと、
『創』への謝罪広告掲載などを求めている。
(注4)記述の根拠は、室生氏自身の連載と陳述書のほか、黒島・清水裁判(本
文参照)での統一協会側の文書と、浅見裁判の文書類である。該当箇所の表記は
煩碩(はんさ)になるので省略する。
(注5)「黒島・清水牧師を支える会」発行の『ペンよ、騒るなかれ──室生忠
と「創』の責任を間う」に詳しい。
同書の問い合わせは新松戸幸谷教会(ファクス047・345・2735)。
あさみさだお・一九三一年生まれ、東北学院大学元教授(旧約聖書学)。著書に
「統一協会=原理運動』(日本基督教団出版局)など。





フォローアップ:



  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。