IT革命の真相

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投稿者 IT趣味者同盟革命評議会想像的破戒派 日時 2000 年 10 月 06 日 01:38:48:

IT革命とは?

自公政権が出来た頃からか、「IT革命」なる言葉が目立つようになりました。
最初はどうせコンピューター業界に儲けさせる為の掛け声の類いだろうと思い、あまり気にもとめないでいましたが、IT革命の周辺に関する資料が集まるに連れて全く違った計画が見え隠れするようになりました。

IT革命と密接に関係しているスローガンに「創造的破壊」というものがあります。
この言葉は19世紀末から20世紀にかけてオーストリア、そしてアメリカで活動したもののそれほど知られる事のなかったシュンペーターという経済学者の言葉として昨今もてはやされるようになったものです。
そして、創造的破壊は主に企業家に対する経営戦略の考え方の中核として提示され、具体的には「中抜き」と呼ばれる中間管理職の大幅なリストラや日本的流通における「中卸し」の廃止といった大規模な構造改革によって「トップとそれ以外」というような富や権力の極端な2極分化を目指すものと思われます。

ところが「国際化した競争に生き残る為には不可欠である」と言う人間が多いにも関わらず、奇妙な事に「IT革命」や「創造的破壊」といったスローガンは日本以外の国ではそれほど喧伝されていないようなのです。

ここで試しに、企業のトップがこの「創造的破壊」の教えに帰依して熱心な信者になった場合を考えてみましょう。
IT革命教=創造的破壊教では、例外を設けず破壊を進める事が強調されていますし、相当な犠牲を払い血を流してでも実行すべきであると布教しています。
もし、企業のトップがこの教えに従って中間管理職の大幅なリストラをしたら、その企業はどうなるでしょうか?
日本の企業においては一般にトップは御神輿的な存在であり、中間管理職が実際の職務をこなし、部下の面倒を見ながら無能な上司をなんとか動かして会社を支えている例が多いのです。
その中間管理職の首を一挙に切るような事をすれば、部下は統率を失い、トップは頼るべき人材がなくなり、会社はひっくり返るでしょう。
つまり、IT革命教=創造的破壊教は、日本的な会社組織にとっては命取りになりかねない上に無差別大量解雇に繋がる危険な教義を秘めているのです。

では、なぜこのようなカルト信仰が政府から経済界にまで蔓延しているのでしょうか?

IT革命の理論的解説をしている人々の言う事は、どれも判で押したように、金太郎飴のように画一的でこじつけがましい上に時には翻訳文のような特徴があります。
彼等は自説を主張しているのではなく、海外の同一のソースから仕入れてきた洗脳プログラムを一斉に吐き出しているかのような印象さえ受けます。
さらに、彼らは決まって「日本が生き残る道はこれしかない」と言うような非常に視野の狭いへ理屈を唱えるのみならず、破壊が創造的でポジティブであるという点を繰り返し強調するのです。
確かに地上げ屋が住民を追い出し、住まいを「破壊」して地ならししないと大きな建物を既存の都市空間に建築する事は難しいでしょうが、「破壊」は全体のプロセスのごく一部に過ぎません。
経済構造においてもゆっくりとした改革でも良いのに、半ば暴力的な「破壊」が強調され、しかもそれが創造でポジティブであると殊更繰り返す裏には他の真意が隠されているものと思います。
端的に言えば、IT革命=創造的破壊とは、日本的社会構造を破壊する事を目的として、企業や経済構造に留まらず、教育や福祉に到るまでを射程に入れた破壊工作であると思われます。
日本にとっては大変危険な要素のあるカルト的経営の教義が日本で集中的に布教されている現実を見ると、IT革命とは日本を標的として練られた破壊工作の計画であるとしか考えられません。

「生き残り」を強調して恐怖を煽るのがIT革命での鞭とすれば、飴にあたるのが起業家精神や成功の神話、成長の誇大妄想です。
つまり、ビルゲイツのような成功例を見せて、君等も創造的破壊(という名の破壊工作)に努めれば、欲望が満たされるのだという「夢」を餌にしています。
現実に多くの飴を用意する必要のない「成功の夢」は「アメリカンドリーム」として有名ですし、アメリカ単純国で効果が認められた後に今では世界各国で使われています。
少数の「成功者」「サクセスストーリー」を宣伝すれば良いだけで、実際に「成功者」を沢山作る必要がないので経済的な飴です。バリエーションとしてはプロスポーツ選手やオリンピックもこのような飴として使われています。

こうして、「生き残れない恐怖」の鞭と「成功の夢」の飴によって、血を流すことも辞さぬ構造改革やメンタルブロックの解除と自己改革という名の「洗脳」が経済界を中心に行なわれています。


教育や福祉では現政権の教育改革とその為の下準備としての教育改革国民会議の事が思い浮かびます。
先日の中間答申までに、教育改革の目玉として子供の強制奉仕の導入と、その労働力を老人介護などの福祉や兵役などに使う点が話し合われていました。
また、昨今あちこちで強調されているのが「自力」や「与えられる事でなく与える事」でもある「奉仕の精神」です。これらの標語は国民からより一層絞り取る、搾取するのにはとても都合がよい言葉です。

そして、これらの改革を力強く後押ししているのは公明党と創価学会です。
面白い事に創造的破壊の解説には「新しい価値の創造」という言葉がしばしば見られますが、創価学会とは「価値の創造」の為の宗教組織なのでしょうから彼等の目指す事がIT革命教で布教されているのは当然の事なのかもしれません。
また、教育改革国民会議の様子を見ていると見え見えであるように、統一教会や原理も創造的破壊を進めようとしています。
つまり森首相が自分ではわけも分からず唱えている「IT革命」とは日本破壊の目的を根底にして、統一教会と創価学会という宗教団体が実行部隊となり、そのダミーである自公連立政権が国民の目を欺くように構成されているものと思われます。
朝日新聞やマスコミ各社、大学や大学院、ビジネススクールや経営塾でも創造的破壊教は今日も熱心に布教が続けられていることでしょう。

IT革命は、その計画の真意に関わらず、もしかしたら日本や世界にとって好影響を及ぼす可能性もあります。が、陰険な計画に荷担したくないのであれば、対策は簡単です。
飴と鞭を見極めて、それらに影響されなければよいのです。
つまり「成功の夢」が「宝くじ」と同じような幻想である点を見抜き、「生き残れない恐怖」はヤクザの恫喝と同様に実態以上の被害を想定させて脅すトリックに過ぎない事を看破すれば良いのです。(「成功の夢」は多数の人から富や権利を奪う事を前提としている点で「宝くじ」と同じなのです。「成功の夢」や「宝くじ」を買った人全員の収益を合計すると、必ず損失になります。そして売った側は必ず儲けている。)
法案や政策、スローガンの裏にはほぼ確実に建て前とは違う方角を向いた目的が隠されていると思った方が良いでしょう。

創造 的破壊教は自らを破壊して終わる事になると思いますが、共産革命がソ連や中国で多くの苦しみを作る種になったのと同様、IT革命も日本に苦しみをもたらす可能性が高いでしょう。元々その為に計画された破壊工作なのですから。
少々面白いのは、IT革命教が変化してきている点です。キリスト教が日本に渡来し後、変な宗教が出来てしまったように、IT革命教も馬鹿な森総理や目先の金儲けの為なら何でもやってしまう企業や広告業界によって創造的破壊とは違う携帯電話の普及やオヤジ用パソコン教室に化けてしまっているのです。
さて、秋のIT革命戦線はこれからどうなるでしょうか?


参考用転載、 週間現代   IT革命教の布教例。


ローマ字入力も満足にできず
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<画像> ITの時代がやってきた。
 森首相も、
「IT革命が日本経済の救世主になる」
 と明言している。
 IT革命が成功すれば、国民は大きな利益を受ける。まったく新しい技術、斬新なソフトを作り出す若いベンチャー企業が次々に生まれ、既存の企業もスリム化して、停滞している日本経済が息を吹き返す。パソコンを使って学校という枠に縛られない教育も可能になるし、役所の窓口で長々待たされることもなくなる。
 しかし、その反対に失うものも大きい。後述するが、IT革命によって大量の失業者が発生することは間違いない。
「つまり、ITを最重要政策にするということは、大量のクビ切りを推進するということです。その痛みをわかったうえで、森首相はIT革命を口にしなければならない。いったい、失業者の受け皿を森首相はどうするつもりなのか」(自民党閣僚経験者)
 ITは、両刃の剣である。かりにもITの旗を振るのであれば、森首相は、ITの利点も欠点もはっきりと理解したうえで、旗振り役を務めなければ、とんでもない間違いを犯すことになる。
「森首相は、支持率が低迷する政権を浮揚させるのに、当初は教育基本法改正を考えていた。しかし、公明党の反対にあい、国民のウケもよさそうではない。そこで、誰も反対できず国民の目をひけるITを言い出しただけなんです。
 連日のように料亭で宴会ばかりやっている森首相が、真剣にITを勉強できる時間なんてありませんよ」(全国紙政治部デスク)
 たしかに森首相は、ITを「イット」と呼んだ逸話が示すように、ITのことなど何一つわかっていない。こんなエピソードがある。
 森首相が、加藤紘一元幹事長と会談した際、加藤氏に執行部批判の真意を問いただすと、
「私の主張は、ホームページにすべて書いてある。読めばわかってもらえるはず」
 といわれパソコンに向かったはいいが、どう頑張ってもアクセスできない。結局、加藤発言の真意をつかめないままに終わった。
 竹中平蔵・慶大教授らが、首相にIT革命の現状を説明した際には、
「日本って(IT革命が)遅れてるの?」
 と聞いて、唖然とさせたこともある。官邸にインストラクターを呼んでパソコンの講習を受けたが、
「ローマ字入力もままならず、耳まで真っ赤にしていた」(自民党代議士)
 という。起動するところで迷い、次はそれが終了できない。いま、やっと一本指で自分の名前を打てるようになったようなレベルなのだ。あげく、首相の要請を受けてIT戦略会議の議長に就任した出井伸之・ソニー会長から、
「首相に必要なのは(パソコンの練習ではなく)ビジョン」
 と、批判される始末だ。確かに実務が完璧にできる必要はない。最大の問題は森首相がITの本質をまったく理解していないことだ。
 森首相は、IT革命推進の核として「IT戦略会議」を発足させた。メンバーは、前述の出井氏を議長に、氏家斉一郎・日本テレビ社長、牛尾治朗・ウシオ電機会長、孫正義・ソフトバンク社長ら、企業経営者、大学教授など20人。9月20日には政府のIT戦略本部との第3回合同会議が開かれたが、40人以上の出席者にそれぞれ随行員がつき、総勢100人以上の仰々しさだ。しかし、
「森首相は、出井議長とIT戦略会議に任せきりで、会議に出ても挨拶するだけ。『私が、リーダーシップを発揮することが一番大事』と話していましたが、そんなもの皆無です。自分なりのアイデアや視点もなく、各省庁から上がってくる提案を受け売りしているに過ぎない」(全国紙政治部記者)
 メンバーの構成も安直だ。あるベンチャー企業の経営者が皮肉まじりに言う。
「戦略会議のメンバーを見ると、ITが進展しないと儲からなくて困る企業、自分のところに負担を押しつけられるような議論にならないよう監視するNTT、それに、机上論をもっともらしく発言する大学教授の集まりです」
 そもそも、議長の出井氏にしてからが、森首相が、
「ITといえばソニー」
 という単純な理由で決めたのだから、推して知るべし。実際に会議の中身の方も、成果をうんぬんするには、ほど遠い。
「どの委員も自分の意見を言いっ放しで、議論は拡散するばかりです。発言の中身も抽象論に終始して、方向性が収斂するような気配がまったく感じられない」(出席者の一人)
 メンバーの一人、村井純・慶応大教授はこう話す。
「合同会議のメンバーは、ビジネス、経済の方と政治家で構成されていて、技術の専門家は私だけです。経済人が技術の戦略を立てれば、どうしても後追いになってしまう。そもそも四十何人出席して時間が1時間半では、単純に割り算しても一人あたりの発言時間は知れたものです」
 構えは大仰だが、中身は空っぽなのだ。

 
IT講習券の愚を繰り返すつもりか
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 はっきりとした理解も視点もない森首相の「IT革命」は、もはやブレーキが壊れて暴走しているといっていい。
 その象徴が、「IT講習券」構想だ。3000億円かけて、パソコンが苦手の高齢者などに一人6000円の講習券を配るというものだ。いうなれば、「国民は塾に通ってITをお勉強しなさい」と言っているのだ。だが、もともとITは国境や時間の束縛を解く可能性に最大の価値がある。義務や押しつけとは、もっとも遠いもののはずだ。森首相はそこをまったく分かっていない。
 発表したとたんに国民の間から非難ゴウゴウ。これには野中幹事長もオフレコで、
「亀井(静香政調会長)まで賛成しているのか。押しつけられる市町村が迷惑だ。やめたほうがいい」
 と反対論を展開した。
 味方のはずの出井氏も、「個人的には必要ないと考えている」と否定的なうえ、「地域振興券」を強力に推進した公明党も、神崎武法代表が慎重な姿勢では、強引に推し進めるわけにもいかない。結局 、立ち消えとなってしまった。
 当然の結果だが、森首相はまだ懲りていない。
「IT講習券の代わりに、地方自治体に無料の講習会をやらせることを考えているんだ。講習券の予算3000億円をそっくり、地方自治体に交付金という形で渡し、講習会で使うよう通達すればよい、地方が独自にやる限り、バラマキと批判されないだろうと甘く見ている」(前出・全国紙政治部記者)
 IT革命でも何でもない。これでは、ただのムダ遣いだ。民主党・鳩山由紀夫代表が批判する。
「森首相は、オレはITに詳しいんだぞ、と強調したいだけだ。日本の浮沈がかかっているというのに、国家戦略もないし、何が問題かもわかっていない。たとえば、諸外国に比べて高すぎる通信料をどうやって低くするのか。無競争で通信料が下がるわけもないのに、NTTというガリバーをどうするのかなどには一切触れない。しかも、この1年が勝負なのに、首相は、5年間かけてやると、悠長なことを言っている。こんなことでは日本のIT革命は取り返しがつかないほど遅れてしまう」
 繰り返すが、IT革命は推進しなければならない。だが、大事なのはその方向性だ。方向性の誤りについては、自民党内からも批判の声を聞くことができる。
「ITは民間にまかせるべきだ。政府がやらなければならないのは、民間がやりやすいように、税制の緩和や、徹底した規制緩和など、環境整備をすることだ」(自民党・村上誠一郎代議士)
 正論である。縄張り意識に凝り固まった硬直した役人のやり方で世界に追いつけるわけがない。民間企業の自由な競争にまかせればいいのだ。森首相の理解のレベルはあまりにも低すぎる。


米国は820万人の失業者
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 何よりも森首相は、IT革命によって、サラリーマンが大量の血を流さなければならないことを、全然理解していない。IT革命による産業構造の変革で、余剰人員の削減は避けられないのが現実だ。ITリストラである。
 一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏がいう。
「企業が資本効率を優先すれば、切り捨てられる雇用者が必ず出てくる。つまり企業のIT化は、リストラを抜きには語れないということです」
 9月22日、ニッポンIT産業の“総本山”であるNTT東西が、'02年度までに2万1000人を削減するとする中期経営計画(3ヵ年計画)を突如として変更。削減計画を前倒しして、今年10月から両社合計で6500人の人員削減を実施すると正式発表して世間を驚かせた。
「経営のスリム化、なかでも人件費の削減はNTT最大の課題でしたが、今回追加されたリストラのターゲットは、IT化にともなう新しい技術に対応できない固定電話時代のアナログ社員でした。これまではグループ企業内での転職などで対処できていたのですが、各企業ともスリム化を図って行かざるを得なくなってきたこともあり、早期退職制度の導入となったようです」(全国紙経済部記者)
 住信基礎研究所首席研究員・伊藤洋一氏は、今後日本はIT先進国の米国がたどったと同様の道を進んでいくことになるだろうと予測する。
「今後、こうした大量リストラは避けられないものです。'90年代初頭の米国では、約1000万人の失業者が街に溢れた。失業率にして7%に至ったのです。日本でもリストラの波は、今後ますます本格化してくるのではないか」
 企業側はITの経営効果ばかりを口にしているが、IT革命がこのまま広がっていけば、あらたなリストラの嵐が吹き荒れることを覚悟しなければならない。
 日本興業銀行調査部が調査した米国の事例は衝撃的だ。
「米国ではIT革命が本格化した'92〜'93年にかけて、製造業などの高賃金業種を中心に約820万人の失業者が出たと推計されます」(興銀調査部)
 米国の場合、失業者を吸収して余りあるだけの新規雇用の創出に成功したが、産業構造の変革期には一挙に820万人もの失職者が発生した。多量の血が流されたわけだ。
 はたして日本はどうなるのか。'99年9月、通産省の機械情報産業局電子政策課がアンダーセン・コンサルティング社と共同で調査を行っている。レポートでは、こんな見通しが報告されている。
《主要産業においては、企業の労働生産性向上や競争力を失った産業での雇用減などにより、今後5年間で271万人の過剰雇用が削減される可能性がある。このうち80万人は今後の情報化の進展がもたらす効率化による削減であり、情報化が必ずしも雇用の増加の方向でのみ働く訳ではないことがわかる》
 IT化の進展により、今後5年間で80万人の大量クビ切りが始まる。史上空前のITリストラは避けようがない。しかも、他の要因によるリストラを加えると、国内でなんと271万人もの失業者が出ると予告しているのだ。
 通産省と共同調査に当たったアンダーセン・コンサルティング社の塩沢肇マネージャーは、サラリーマンに求められる能力も変わってくると指摘する。
「今後は企業の求める人材の質的変化が起こるでしょう。Eメールを打てるとか、エクセルでデータ処理ができるなどのIT技術だけでなく、医療関係や法曹関係などの専門性、つまり判断能力の有無がサラリーマンにも必要になってくる」
 企業は、IT投資によって割高な人件費を縮小して資本効率をよくしていく。つまり、IT時代に合った社員のみを選別して、企業体質を根本から変えてしまおうというのがその眼目なのだ。
 となれば、ITに対応できないサラリーマンなどは、すべてがクビ切りの対象となる。さらには、IT革命による産業構造の変化で、業種そのものが消えてしまうものも出てくる。
「IT化はビジネスの仲介者を節約し、取引を低コストにしていくことを求めます。生産性の向上で経済の拡大は達成されますが、一時的には雇用を削減させてしまう。いうならば、ポジティブな“創造的破壊”の性質を持つ。従って、仲介者に当たる情報、金融、流通、一部の運送業、商社などは、どんどん分社化を進めて企業規模をダウンサイジングさせていかないと生き残りは難しくなっていくのです」(ドイチェ証券チーフストラテジスト・武者陵司氏)
 前出の塩沢氏もこういう。
「今後のIT化で多数の人員削減が出る業種は、流通、建設、自動車、繊維、機械、銀行、証券、保険、物流などが予想されます」
 仲介者の節約は、俗に“中抜き”と呼ばれる。IT化に伴う現象だが、この中抜きは企業内でも起こる。
「企業内で仲介者に相当するのは、トップと現場の仲介役である中間管理職です。IT化で情報の民主化や効率化が進めば、この層は不要になってしまう」(前出・武者氏)
 中抜き対象者はこれだけではない。
「コンピュータで簡単に処理できる事務関係や事務サポート、これまで消費者と相対していたような窓口業務、販売などの職種が不要になります。また、 LANなどの社内の情報化で過剰になる雇用も53万人出ると予測されます」(前出・塩沢氏)


 
新たな雇用は作り出せない
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 実際に、ITリストラの波にさらされた企業を見ると、すさまじいばかりだ。例えば新日鉄。同社は'90年初頭からIT化を本格化させたが、その当時の社員数は5万8500人。それが'96年には4万660人、'00年3月には2万7689人といった具合に、10年間で半減のスピードでITリストラが進んだ。
 一方、この期間の鉄鋼の生産量は、バブル期の2900万tを除くと、2500万〜2600万t台を推移している。つまりこの10年間で生産量の水準は変わらなかったが、人員は半減して生産性が2倍になっているのだ。
 東京・兜町でも、IT化による大きな変化が見られた。東京証券取引所の立会場は、10年前には各証券会社から派遣された2000人の場立ち社員が、株券の売買を行っていた。その場立ち社員も、取引所のコンピュータ化・IT化で最後は1割程度の200人にまで減り、'99年4月2日には全廃となったのである。
「従来の人員削減は証券不況による合理化が原因だったが、これからはIT化による削減の影響が本格化してくると覚悟している。立会場の廃止もそのひとつです」(全国証券労働組合協議会事務局)
 米国では820万人ものIT失業が生まれた後、IT産業が隆盛を極め、失業者数以上の雇用が創出された。
「'94年前後から労働市場の統計に奇妙な現象が起こりました。大量リストラが報じられる中で、じわじわと失業人口が減っていったのです。IT関連企業の雇用創出の効果です。IT投資の成功によって中小企業を中心に求人が増加しはじめ、'00年には失業率5%を切り、失業者数はピーク時の半分になったのです」(前出・伊藤氏)
 IT革命を目指す日本も、これと同じ道をたどることができれば問題はない。しかし、専門家の間では、否定的な声が多い。米国のようなドラスティックな変革を行うには、日本社会は障害が多すぎるというのだ。
「通信事業の規制緩和や郵政事業の民営化も遅々として進まないし、本当の意味の変化を受け入れるには、日本の社会は既得権が横行し過ぎている。ITを導入しても、経済そのものが拡大することなく終わる可能性が高い。そうなったら、ITによる雇用創出も期待薄です」(前出・武者氏)
 水野清元総務庁長官は次のように話す。
「森首相の視点からは、IT革命の前提となる就労対策が完全に抜け落ちている。不要になった中間管理職をどうするのか。労働省職安局が対象としているのは、主にブルーカラーで、IT革命ではじかれるホワイトカラーには目が行き届いていない」
 結局、森首相がやろうとしていることは自分の政権基盤を固め、IT企業を儲けさせ、その結果、史上空前の大量失業者を出すことにほかならない。


日本は三流国に転落する
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 それにしても、森首相以下、政治家のハシャギぶりは異様だ。なぜ彼らはこんなにIT革命に熱心なのか。
 かつて、梶山静六・元官房長官が、リニアモーターカーにからんで「超電導促進議員連盟」を旗揚げした。その際、梶山氏は、
「カネのなる木に育つには10年かかる」
 と、ウソブいた。政治家は新産業、新技術の利権に敏感だ。ITも将来の利権を期待して、先物買いで群がっているにすぎない。
「官は新しい縄張り確保に走り、議員は光ファイバー敷設など、利権のニオイを嗅ぎつけて官の使い走りになろうとしている」(自民党若手議員)
 前出の慶大・村井教授が批判する。
「なぜ、ITという漠然とした言葉を使うのか。インフォメーション・テクノロジーという言葉自体には何の意味もない。ITというと、電球1個でもIT関連になってしまう可能性がある。ITよりもインターネットと言ったほうがいい。インターネットを使うためと限定することで、予算の縛りにもなる。とにかく、もうちょっとフォーカスを絞った言葉を使うべきです」
 まさに村井氏が喝破する通り、最初から予算の縛りをなくしておこうというのが、政治家と官僚のホンネだ。
 森首相は、来年度予算編成で、IT関連事業などに7000億円の新生特別枠を確保したが、それに群がるように、各省庁は1兆円にものぼる概算要求を出してきた。建設省、運輸省が「光ファイバー整備」などで3642億円、農水省「IT推進プロジェクト」169億円、郵政省「情報通信基盤整備」で88億円、労働省「IT対応の職業能力開発」205億円、文部省「IT授業整備」151億円といった具合で、各省庁とも族議員を総動員して予算確保にうごめいている。
 山口俊一・元郵政政務次官が語る。
「役人にはITというものがまったくわかっていない。光ファイバーなどは、都市部でもNTTが相当整備している。にもかかわらず、建設省が下水道に光ファイバーを引っ張ろうというのは、単純に下水道の整備費を取りたいからだ。建設省が整備して光ファイバーの運用はどうするのか。運輸省も、港湾整備にかこつけて、各港湾を光ファイバーで結び、情報のやり取りをしたいなどと言っているが、既存の整備計画にITという冠をつけただけだ」
 来年1月の省庁再編の前に内閣改造が行われるが、永田町では改造を見越してのIT利権争奪戦もすでに始まっている。
「野中氏は幹事長を辞めたいと繰り返しているが、自治省、郵政省、総務庁が合併してできる総務省の初代大臣を狙っている。郵政族のドンである野中は、光ファイバーをNTTにやらせたいのだ。また、野中側近の額賀福志郎元防衛庁長官は、ITのソフトを担当する経済産業省を狙っている」(全国紙政治部記者)
 森首相が得意分野としている教育も、学校教育用パソコンの導入などIT利権と無縁ではない。
 IT革命をスピーディに成功させなければ、日本はまちがいなく三流国に転落する。国家の存亡がかかったIT革命を、みずからの政権維持のためだけに利用している森首相。この国の真の意味での再生より、己の「IT利権」で頭がいっぱいの族議員。省庁間の綱引きに奔走する官僚。そして自社の儲けだけを考えているNTTはじめ大企業。それでもIT化は進む。
 森首相にIT革命の舵取りをまかせ続ければ、IT化の渦に巻き込まれた中堅以上のサラリーマンは、雇用の受け皿もないまま、路頭に迷うしかないのだ。




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