アルツハイマー型認知症との関係も…(写真はイメージ)
睡眠不足がアルツハイマーの原因に…「7時間睡眠が理想」の真相は
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170105-00515310-shincho-life
「週刊新潮」2016年12月1日号 掲載
■万病から身を守る「理想的な睡眠」の新常識(3)
ここまで、睡眠不足や睡眠の質の低下によってもたらされる様々な病気のリスク、そして理想の睡眠方法について紹介してきた。
もうひとつ怖い話に触れておくべきだろう。睡眠時間とアルツハイマー型認知症との関係である。
「神経細胞を取り囲んで支えているグリア細胞とリンパ球を合わせてグリンパと呼び、グリンパが行う脳内の老廃物排出システムをグリンパティックシステムと呼びますが、最近、これとアルツハイマーとの関係性が見えてきたのです」
国立精神・神経医療研究センター部長の三島和夫氏はこのように語って、続ける。
「細胞から排出された老廃物を含む体液は、リンパ液となって全身に張り巡らされたリンパ管に入り、最終的には血管に流れ、腎臓で尿となって処分されます。これまで脳内には、このリンパ系システムが見つかっていませんでしたが、実はグリア細胞の働きが関係していた。脳は神経細胞とグリア細胞で埋め尽くされていますが、睡眠中はグリア細胞が小さくなって細胞間の隙間を広げ、そこに脳脊髄液が入り込み、リンパ液として老廃物を含んで脳外に運び出される。そのことがわかり、このリンパ液がアルツハイマーの原因のひとつ、タンパク質のアミロイドβも捨てているようなのです。実際、睡眠効率が低い人ほど、アミロイドβの髄液中濃度が異常に高い数値を示すという論文も発表されています」
また、うつ病との関係を述べるのは雨晴クリニック副院長の坪田聡氏で、
「不眠症の人が治療をせずに放っておくと、健康な人とくらべ、うつ病になるリスクが35倍になると言われています」
■睡眠時間と年齢の関係
とまれ、われわれが最も避けたい数々の病気のリスクを考えたとき、3時間睡眠のナポレオン式が最悪であることは火を見るより明らかだ。
先に睡眠時間は7時間程度が望ましい旨を書いたが(※(1)を参照のこと)、三島氏は必ずしもそうではないと話す。
「疫学調査をすると、7時間睡眠の人が病気のリスクも死亡率も低いという結果が出るのは、経済的に最も問題がなく、アクティブに活動できている人の睡眠時間がそれくらいだ、ということ。長時間寝ている人のなかには無職ですることがなく、惰眠をむさぼっているだけの人も入っているはず。“仕事があるから十分に眠れない”という社会的制限を外せば、健康で8時間以上眠っている人はもっと増えるはずです」
それでも、睡眠不足が万病の元であることには変わりはない。ただし、睡眠時間と年齢の関係は考慮したほうがよさそうだ。
「年齢を重ねるほど、人は眠れなくなります。脳の奥にあって寝たり起きたりという指令を出す脳幹の力が弱まって、眠る力が衰えることが理由のひとつ。もうひとつは、若いころほど体力も頭脳も使わなくなって疲労度も低くなり、そんなに寝る必要がなくなるから。若いころ長時間寝た記憶があるので“昔は長く深く寝られた”と考えてしまいますが、健康で病気がない人は20年に30分ほどの割合で睡眠時間が減少していくとされています」(坪田氏)
6時間台から8時間台の間で、年齢も考慮して、いまの自分に合った睡眠時間を規則正しくとる。それが最大の健康法であることは疑いなさそうだ。
特集「がん・糖尿病・アルツハイマー……万病から身を守る『理想的な睡眠』の新常識」より