黒田総裁、物価目標「手段に限界なし」 政府・企業に景気刺激促す
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SankeiBiz 2015/10/31 08:15
「必要であれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和であれ、なんであれ調整を行う。その手段に限界があるとは全く思っていない」
日銀の黒田東彦総裁は30日の金融政策決定会合後の記者会見で、物価上昇率2%の達成に向けた決意を改めて強調した。政府がこのところ追加緩和圧力を弱めてきているのとは対照的に、日銀はいつでも追加緩和のカードを切る可能性をちらつかせた格好だ。
総務省がこの日発表した9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、2010年=100)は前年同月比で0.1%下落し、2カ月連続のマイナスとなった。エネルギーを除いた上昇率は1.2%と8月の1.1%から伸びており、日銀は「物価の基調は着実に改善してきている」(黒田総裁)と判断しているが、2%の物価安定目標にはほど遠い状況だ。
「もはやデフレではない状態まできた」(安倍晋三首相)。「金融でできる範囲は限られている」(麻生太郎財務相)
この約1カ月間に、政府から日銀に向けたメッセージは急速に変化した。総務省は携帯電話料金の引き下げに向けた有識者会合を開き、国土交通省もタクシーの初乗り運賃の引き下げを業界に働き掛けるなど、生活者の負担感を和らげるための施策を矢継ぎ早に打ち出している。
背景には、中国や東南アジアといった日本経済と関係が深い新興国経済の減速懸念が強まっていることがある。特に、輸出と生産の回復が遅れている。4〜9月の貿易統計で、数量ベースの輸出は2期ぶりにマイナス。9月の鉱工業生産(速報値)は3カ月ぶりのプラスとなったが、経済産業省は11月には再びマイナスに陥ると予測している。
中国の景気減速を理由に、キヤノンやオムロンなどが16年3月期の通期業績予想を相次いで下方修正した。
こうした中、日銀は企業の設備投資や賃上げの動向を気にかけている。9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、今年度の設備投資計画は強い内容だったが、黒田総裁は「計画の割に十分出てきていない」と不満を述べた。連合は来年の春闘で2%程度のベースアップ(ベア)を要求する方針だ。
黒田総裁は「賃金と物価は車の両輪」とした上で、「政労使会議や官民対話も重要な要素だ」とも述べ、政府による3年連続の働き掛けを暗に迫った。(米沢文)