コレステロール・ショック(10) 地震と噴火の「予知と予測」
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2015年06月04日 武田邦彦 (中部大学)
「地震が予知できない」というのは約6000人の犠牲者を出した1995年に阪神淡路大震災で学問的にはっきりして、政府は「地震予知」を「地震予測」に変えた。でも、「地震予知はできなかった」というマスコミの報道もなかったし、地震予知と地震予測という言葉があまりにも似ているので(故意に似た言葉にしたのか、それとも正しい言葉なのかは別途、検討しなければならないが)、日本社会ではまだ「地震は予知できる」と考えている人が多い。
「地震予知」とは「地域限定、3日以内」という制限がついている。それに対して「地震予測」は「地域限定、30年以内」であり、時間が大幅に違う。地震予知が発令されると具体的な行動を伴う。学校や職場は休み、交通機関も止まっていわば「非常事態」である。このタイプの「地震予知」は阪神淡路大震災で「不可能」であることが分かったので、今は「存在しない」。
ただ、政府や専門家は自らの間違いを認めないので、このタイプの地震予知があり得るのかどうかも積極的には公表していないと思う。私たちの生活、人生設計、自宅建設などに大きな影響があるが、テレビも報道しないので、私は専門家筋から聞いたということだ。
それに対して地震予測は「30年以内にどのぐらいの確率で起こるか」なので、行動は伴わない。長期的にその地方の地震対策をするという程度だ。でも、耐震家屋を建てるとか、長期的な施策に使う。これはまだ「生きている」と思う。
というのは、2014年の東北大震災で、「宮城県沖にマグニチュード7.5程度の地震が30年以内に起こる可能性は99%」と2006年に予想されていたから、ある意味では地震予測が当たっていたとも言えるからだ。
宮城県に行って調べてみると、沿岸地域を中心に2011年には地震の備えはしていて、「いつでも来る。来たときにはどうする。津波はこうして避ける」というのがすべて決まっていた。ところがそれはマグニチュード7.5の地震だったので、現実の9.1とは全く違っていた。その結果、ある家族は地震予測にそって行動し、危うく津波にのみ込まれそうになった(奥さんが訓練通りに行動したが、ご主人がそれではダメだと判断して慌てて奥さんを山に連れて行って一命が助かった)。
だから「予測できた」というところでも規模まで正しくないと大きな犠牲を出すことが分かっているが、2015年の小笠原の地震は表紙の地図にも示したように「地震予測」にも入っていない。マグニチュード8.1(当初8.5)ほどの大きな地震なので、これが予測できなければ、さらに小さな地震は予測できない。あれほどの観測網が整い、測定を続けている東海地震がマグニチュード8と小笠原の地震より小さい。
政府や専門家に文句を言っても仕方が無い。現実はこのような状態だから、私たちはどうしたらよいのだろうか?