上海株はバブル同然 世界最大の不安要因 蘇る悪夢…
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20150522/ecn1505221140006-n1.htm
2015.05.22 「お金」は知っている 夕刊フジ
上海株価は昨年秋から急激な勢いで上昇を続けているが、バブルも同然で危なっかしい。世界の株式市場は日経平均を含め、堅調な米国景気の回復と米国株に牽引(けんいん)されているのだが、「上海株」が最大の不安要因だ。
グラフを見てほしい。中国の政策金利と上海株価の動向で、金利を下げるたびに上海株価は上昇気流に乗っている。5月初旬には息切れしかけたが、中国人民銀行が11日に昨年11月以来3度目の利下げに踏み切ると息を吹き返した。預金金利が下がると、個人投資家などの資金が預金から株式へとシフトするとの思惑が生まれるのだが、中国の場合はそれにとどまらない。利下げは党中央が株価を引き上げる強い意図のシグナルである。
公務員や国有企業幹部を退職して、株式投資に専念する党員が最近増えている。背景には、習近平国家主席による不正蓄財取り締まりや綱紀粛正を受けて、収賄や公金横領ができなくなったうえに、豪華な接待などの役得も享受できなくなった。そこで株で大もうけしたほうが得策というわけである。もちろん、党官僚たちは党中央の株価引き上げ情報をいち早くつかんでおり、にわか専業投資家に転身した。
日米欧など通常の市場経済国家で、利下げの本来の目的は景気てこ入れのためである。消費や設備投資を刺激すると同時に通貨安効果で輸出の回復も期待できる。株価上昇はあくまでも副産物に過ぎない。
中国の場合、利下げのプロセスで、人民元の対ドル・レートを小刻みに切り上げる操作を3月下旬から続けている。
人民銀行が自身の設定するレートで外貨を全面的に買い上げる「管理変動相場制」をとっているからこそ可能な操作なのだが、元高は中国企業の国際競争力を削ぎ、景気を冷やす。北京は一方で暖め、他方で冷水をかけるという矛盾に満ちた政策をとっている。
市場原理に逆らった変則的な政策をとるのは、昨年後半以来、加速している資本逃避を食い止める必要に迫られているからだ。中国の外貨準備は資金流出のあおりで、昨年6月末をピークに減り続け、ピーク時に比べ昨年12月末で1500億ドル減、今年3月末に2630億ドル減となった。昨年、国際金融市場からの銀行借り入れや債券発行で合計年間3000億ドル前後のペースで外貨を調達したが、それでも外準が大幅に減っている。
元高誘導にも限界があり、余剰資金を国内につなぎ止め、海外に流出した資金を還流させる方法は、もはや株式市場しかない。
だが、過剰生産、過剰設備の重圧で上場企業の多くの収益は悪化しており、株価とは真逆の基調にある。まさにバブルである。グローバル化の結果、主要な世界の株式市場が共振する。上海株式市場は2007年5月に急落し、たちまちのうちに東京、ロンドン、ニューヨーク市場など世界を巻き込んだ記憶がよみがえる。 (産経新聞特別記者・田村秀男)