米ワシントン州最大の都市、シアトル。地震への備えは万全ではない(AP)
米巨大地震50年以内の発生確率75% 1700年に日本を襲った津波被害から判明
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150306/dms1503060830006-n1.htm
2015.03.06 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識
米国人が知らなかった米国の大地震が日本の古文書から初めて分かったことがある。
日本では江戸時代の1700年1月26日、地震も感じなかったのに、いきなり津波が襲ってきて大きな被害を生んだ。ナゾの津波だった。日本各地に残る古文書にはこの津波が書き残されている。
21世紀になってからの研究でようやくナゾがとけた。米国西岸で大地震が起きて、その地震からの津波が14時間かかって太平洋を渡って日本にまで達したものだったのである。
米大陸の西岸で海水につかって枯死した木が多いことも発見された。枯れた時期は幹に刻まれた最後の年輪から分かる。年輪からの推定は1699年8月から1700年1月の間。この地震と一致した。
アメリカ合衆国が独立宣言を出したのが1776年だったから、まだ米国という国ができる前だ。
地震は2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)なみの巨大な地震だった。マグニチュード(M)は9くらいと考えられている。
米国の50ある州のなかで地震が起きる州はカリフォルニア州とアラスカ州だけだと一般には思われている。
たとえばカリフォルニア州のサンフランシスコでは1906年にサンフランシスコ大地震が起きた。米国の大都市で最大の被害を生んだ自然災害だった。約3000人が死亡し、火は3日間も燃え続け、多くの建物が崩壊するなど大きな被害を引きおこした。
サンフランシスコ大地震はM7・8。サンアンドレアス断層という活断層が起こした直下型地震で、大都会サンフランシスコのすぐ下で起きたために甚大な被害を生んでしまった。
ところが1700年のこの地震は数十倍も大きな地震だった。ファンデフカプレートというプレートが北米大陸の下に潜り込んでいくところで起きた海溝型地震だったのだ。
震源はカリフォルニア州北部だけではなく、その北にあるオレゴン州もワシントン州も、そしてカナダのブリティッシュコロンビア州南部までの長さ1000キロメートルにも達していた。
こんな大きな海溝型地震が米国で起きることは21世紀まで知られていなかったのである。
海溝型の大地震ゆえ、同種の地震がこれからも米国からカナダにかけての西岸を繰り返し襲う可能性がある。
次にいつこの種の地震が起きるかは分かっていない。だが学説では、この種の大地震は500年ごとに繰り返すとも、今後50年以内に再び襲って来る確率は75%以上ともいわれている。
もし起きれば、米国のポートランド、シアトル、さらにカナダのバンクーバーといった西海岸の大都会にある建物はこのような大地震を想定しないで作られているだけに、甚大な被害を生じる可能性が強い。
巨大地震や津波は日本やインドネシアだけのものではないのだ。
■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。最新刊に、本紙連載をまとめた『油断大敵! 生死を分ける地震の基礎知識60』(花伝社)。