朴政権“赤っ恥” 首相採決で造反続出…「醜聞候補」に与野党が猛反発
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150217/frn1502171825006-n1.htm
2015.02.17 夕刊フジ
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が次期首相に指名した、与党セヌリ党の李完九(イ・ワング)前院内代表の任命同意案が国会で可決され、首相就任が決まった。朴大統領は17日に内閣の一部改造を行い、政権浮揚を図る構えだが、先行きは暗い。李氏は醜聞続出で野党や世論の批判にさらされており、採決では与党からも造反者が出たのだ。朴大統領は恥をかいた格好だが、首相候補に疑惑や問題発言が発覚するのは、さんざん繰り返されてきた朴政権の「お家芸」でもあり、人事手腕の限界を指摘する声は根強い。
「(メディア幹部と)兄弟のように親しく、大学総長にも教授にもしてやった」
「(不利益な報道をすれば)自分でも分からないままに(記者として)死ぬことになる」
韓国国会はここ数週間、李氏が複数の記者との会食で口にしたとされる「恫喝(どうかつ)発言」をめぐり、野党が攻勢を強めて大荒れの様相を呈していた。
首相任命同意案は、当初は12日に採決される予定だったが、野党の反発で先送りされていた。16日の採決も、薄氷の勝利といえる賛成率約53%(賛成148票、反対128票、無効5票)で、少なくとも7人の与党議員が反対か無効票を投じたことになる。
李氏は、韓国北西部の忠清南道(チュンチョンナムド)生まれの64歳。大学在学中に公務員試験に合格し、経済企画院(現・企画財政省)や地方の警察トップを経て、1996年に国会議員に初当選した。忠清南道知事やセヌリ党院内代表などを歴任し、朴大統領の側近中の側近とされる。
野党のみならず、与党からも批判が噴出していたのは、李氏が抱える疑惑が「恫喝発言」だけにとどまらないからだ。
韓国メディアによると、本人と次男の兵役忌避疑惑や、不当入手情報による土地投機疑惑、博士学位論文盗作疑惑、大学助教授特典採用疑惑などが次々に浮上し、「傷だらけの首相候補」(中央日報)などと、連日猛批判にさらされた。
朴大統領は起死回生の新首相に、どうしてスネに傷を持つ人物を担ぎ出したのか。
『ディス・イズ・コリア』(産経新聞出版)がベストセラーのジャーナリスト、室谷克実氏は「李氏は若いころから用心深い性格として知られ、傷は少ないとみられていた。『院内代表』は日本の政党の国対委員長にあたる重要ポストであり、首相の任も十分こなせると判断したのだろう。しかし、指名後に一挙に問題が噴出してしまった。要するに、朴大統領の周辺にまともな人材がいないということだ」と断じる。
朴政権の首相人事では、これまでに指名を受けた候補3人が金銭問題などで辞退しており、人事手腕の低さはかねてから指摘されていた。
政権発足直前の2013年1月に指名した金容俊(キム・ヨンジュン)元憲法裁判所所長は、息子の兵役逃れ疑惑や不動産投機問題が相次いで表面化して、首相就任を辞退した。
14年5月には、旅客船「セウォル号」沈没事故の責任を取って辞意を表明した鄭●(=火へんに共)原(チョン・ホンウォン)首相の後任に、安大煕(アン・デヒ)元最高裁判事を指命したが、判事退任後に弁護士として企業顧問を務め高額の報酬を得ていたことを批判され、辞退に追い込まれた。
続いて指名した文昌克(ムン・チャングク)中央日報元主筆も、歴史認識が親日的で自虐的だとの批判を受けて辞退した。
こうした結果、辞意を表明したはずの鄭首相が留任し続けることになり、国内外に「人材不足の朴政権」を印象づけている。
前出の室谷氏は「朴大統領の人事スタイルは『自らがよく知っている人物しか登用しない』というものだが、そのやり方が限界に突き当たっているということだ。今回指命した李氏も、朴大統領の“忠犬ハチ公”のような人物として知られている。身内以外からも有用な人材を起用していれば状況は少しは変わっていたのかもしれないが、朴大統領にはそういう発想はない」と指摘する。
朴大統領は、人事刷新を断行することで、支持率が20%台まで下落した政権の立て直しを図る構えだが、そのもくろみには暗雲が垂れこめている。「李氏の適性を疑問視する声が国内で高まっており、世論を無視して首相に据えても、政権の求心力はさらに低下する」(室谷氏)との見方がもっぱらだからだ。
迷走に迷走を重ねる朴政権。このまま崩壊に向けて突き進むのか。