ニュース解説:ワクチンは打つべきか?・・・親として考える
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2015年01月30日 武田邦彦 (中部大学)
多くのお母さんが自分の子供にワクチンを摂取させるべきか、迷っていると思います。本来、政府(厚生労働省や政府に関係する医師)に信頼感があれば、それに従うのですが、現在は二つの理由で素直に従えないところがあります。
第一に、これまで日本政府は「ワクチン情報を国民に知らせないで、接種を強制した」ということです。ワクチンには一定の危険性があり、それがゼロではないのに「安全だ」を繰り返して強引に集団接種を繰り返しました。
感染性の病気のワクチンは、それでも若干の屁理屈があります。つまり、接種を強制しないと接種率が下がり、感染性の病気が社会に蔓延することを防ぐことはできないし、「国民はバカだから、少しでも危険というと過度に考えすぎるから」ということで危険性を言わなかったということです。
感染性のない病気でも、子宮頸がんワクチンのように政府、自治体、マスコミが一体となって「打つべき」を繰り返し、危険性を認識できないままに接種に応じて重篤な副作用で苦しむという例がごく最近にもでていることです。
厚生労働省や担当医師が、「国民全体が病気にならなければ自分の成績が上がる。一人二人がどうなってもそんなことは問題ではない」と今でも思っているので、ワクチンを打つことはかなり危険なのです。
第二に、今度は「ワクチン反対派」の問題です。ワクチンが危険だという妄想を抱く人が居て、その人がある事ないことをネットなどで発信するので、一般の人が動揺するということです。
たとえばインフルエンザの予防接種で「インフルエンザなどまったく効果がなく、副作用だけ」というようなことです。かなり有名な方の論拠を調べてみると、古いデータと新しいデータ、子供、成人、老人のデータなどを巧みに組み合わせ、自分の主張に都合のよい結論を出しているということです。
なぜ、その人が奇妙なことを言っているのかということですが、第一に「思い込みが激しい」、第二に「科学の訓練を受けていない」、第三に「有名になりたい」、第四に「自分とか子供が被害を受けて、それを一般化している」などが考えられます。
しかし、私たち自身、もしくは子供のことを考えると、大切なのは「より安全で健康な生活を送るにはどうしたらよいか」ということです。
実に奇妙なのですが、これだけ多くの関係者が居ても、私はほとんど「本当のこと」を言っている人が少ないのです。厚労省関係者は「国民はバカだ。安全と言うしかない」と思っていますし、反対派は「何が何でも反対」と言っています。
正しい考えは次の通りです。
毎年、冬に流行するインフルエンザでは死亡者数が約2000名、超過死亡数が15000名程度で、その8割が65歳以上の高齢者です。2000名という死亡者数は「インフルエンザが直接の原因となって死亡する」ということですが、15000名という方は、インフルエンザが引き金になって肺炎で死亡したり、もともと老衰で死期が近かった人がインフルエンザが元になって他の病気を発症して死亡したものをいれた数字です。
どちらに統一するということはできませんので、私たちは「毎年インフルエンザで、2000人から15000人程が死亡するのだな」という感じで捉えるのが適当です。
これに対して、ワクチンを打った場合の「ワクチンが原因して死亡した」人の数は、ほぼゼロですが、重篤な副作用は4000万人の接種で14人程度とされています。
私は次のように考えています。
1) インフルエンザで死亡する人は約5000人ぐらい。
2) 副作用で重篤状態になるのは10人ぐらい。
3) だからワクチンを接種したほうが自分にとってより安全。
4) だから毎年、打つ。若干の副作用がある感じがするが、あっても軽度の風邪気味ぐらいだから打つ。
5) 妊婦、乳幼児もワクチンを打つと安全性が上がるが、心配もあるので、ほとんど外にでないで済む場合は家族がワクチンをうち、家に帰ったら手を洗い、うがいをして妊婦と赤ちゃんを守る。
6) 妊婦と乳幼児の摂取基準は科学的合理性をもって決められているので、危険はない。ただ免疫系が完成していない赤ちゃんは効果が少ないこともある。
7) インフルエンザ・ワクチンの卵白の問題はほとんどなくなったが、それでもアレルギーの強い人は一応、よく医師と相談したほうがよい。
こんな感じです。あまり感心しない「反対派」の方の論拠で、「厚労省がいい加減なことを言ったから、その反発でワクチンに反対している」というのがありますが、私たちや子供の健康は厚労省より大切なものですので反発で国民を危険に導かないようにして欲しいと思います。
問題がこじれたのは厚労省の説明不足、というか国民をバカにした行政にありますが、良心的な医師、優れた研究者はこの分野では多くおられますので、確実で科学的な根拠で自分や家族を守ってもらいたいと思います。
繰り返しますが、私は若干の副作用はあるのですが、毎年、受けています。その理由は仕事があって休めないこと、休まないと危険になること、私が感染すると他人に感染させる可能性があり、家族や社会に迷惑をかけること、などが接種を続けている理由です。