アナリスト27人にアンケート 「アベノミクスは終わった?」
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2013.07.10 ZAK×SPA!
★[緊急調査]アベノミクスはもう終わったのか?
異常なほどの乱高下相場が続き、アベノミクスは終わったのか いつ底を打つのか?高値は?アナリストら27人に緊急実施したアンケートの結果を報告する!
「アベノミクス相場はもう終わりました」と言ってのけるのは、黒岩アセットマネジメントの黒岩泰氏。
「そもそもアベノミクスとは、7月の参院選を勝つための“エセ経済学”。事実、三本の矢では足りず、追加対策が必要となっています。今後の日本経済はバブル崩壊の後遺症に苦しむでしょう。日経平均は8500円までの下落がありえます」と厳しい見方をする。
株価も為替も、黒田バズーカ砲が放たれた4月4日の水準を下回ってきたせいで最近では“アベノリスク”だとか“ダメノミクス”などと揶揄されているが、アベノミクスは本当に終わったのか? 今回、気鋭のアナリストやエコノミスト27人にアンケートを取ったところ、27人中22人が「まだ終わっていない」と回答した。
5月23日に高値1万5942円をつけて下落して以降、乱高下相場が続いているが、「そもそも今回の急騰・急落の主犯は過熱感と不安感」(カブドットコム証券・河合達憲氏)であり、「半年も上昇を続けたので、現在の調整は当然の流れです。反転・上昇には相応の時間が必要」(FP・横山利香氏)との見方をする。
また、日経平均の今後の推移を予想してもらったところ、27人の平均は「底値1万1675円」「高値1万6250円」という結果に。
底値については、15人が1万2000円台を予想。証券ジャパン・大谷正之氏は、「6月7日と13日に1万2500円近辺をつけました。ここから切り返すことができれば、ダブルボトム形成で底確認になるのでは」と指摘する。
もしさらに下落して、「日経平均が200日移動平均線(1万1000円)まで近接する局面があれば、大きな買いチャンスだと思います」(グローバルリンクアドバイザーズ・戸松信博氏)という意見も。株価も為替も、もうしばらくは乱高下する相場が続くかもしれないが、そろそろ“コツン”と底を打つ音が聞こえてきそうだ。
「アベノミクスによる上昇一本やりの相場はとりあえず終わったと見るべき」(エコノミスト・中原圭介氏)、「安倍総理が本丸とする三本目の矢に対する外国人投資家の関心は低い。日経平均の月足チャートを見て、最盛期のアベノミクス相場の再来を期待するのは正直無理でしょう」(株式ジャーナリスト・岡村友哉氏)との指摘もあるとおり、半年続いた上昇トレンドは終わった可能性が高い。株式アナリストの今北彰氏は「米国のQE3縮小、出口戦略が現実味を帯びることで、過剰流動性相場が終焉する可能性もあり警戒が必要」と警鐘を鳴らす。さらには「秋以降はFRB議長交代、消費税増税、証券税制の増税などの不透明要因があることから、年末にかけて軟調な展開を予想」(第一生命経済研究所・永濱利廣氏)という不安材料も。
一方で、「7月末の参院選への期待感から底入れ反転に向かう可能性も」(今北氏)との期待もあり、スリーアイ・竹田嘉文氏は「日経平均の今期予想EPSは約904円なので、PER17倍程度まで買われれば1万5300円は奪回可能でしょう」と計算。また、揉み合うことなく急落したため、「1万5000円近辺までは戻り売りが少なく、本格的な反発となればすんなりと上昇するでしょう」と、アナリストの宇野沢茂樹氏も1万5000円を上昇メドに挙げる。
年内の高値予想で最も多かったのは、「1万6000円」近辺で、14人。カブ知恵・藤井英敏氏は「今年の高値は5月23日につけた可能性が高い。今後は6月13日の1万2415円から5月23日の1万5942円のレンジ内で推移する」とボックス相場を予想する。
対して、フィスコ・アナリストの佐藤勝己氏は「選挙前には示しにくい政策が徐々に表面化するとの期待感から、参院選後に株価上昇は本格化、海外長期資金の流入が牽引役となるでしょう」と1万7800円と強気予想。法人税減税や解雇規制の緩和など、市場が催促する政策を出せるかに注目だろう。ちなみに、27人のなかで最も高い予想をしたのは、ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長の櫻井英明氏で、1万8500円だった。「アベノミクスはまだ序幕。表面上にいるのは安倍さんですが、背景には世界資本の方法論や思考がちりばめられていると見る。参院選があるので遠慮がちではありますが、通過後は腰の入った戦略が出てくるでしょう」と期待を寄せる。
株式ジャーナリストの大神田貴文氏は「政策は強力な株高を生むが、長続きはしません。結局は自助努力を続けた企業の株が上がるでしょう」との見立てだ。参院選後の物色は、王道を押さえておきたい。
「一の矢は金融関連(メガバンク、証券、保険、ノンバンク)と金融緩和による円安(自動車、ハイテク)、二の矢は財政投資(インフラ関連、設備投資関連)、三の矢は成長戦略でバイオ・医療、ゲーム関連、農業関連など」(河合氏)
「個人消費の回復で、不動産や百貨店も期待」(ラジオNIKKEI記者・和島英樹氏)
「政策に売りなし」で社会インフラ輸出関連の「日立やIHIなど」(株式ジャーナリスト・竹中博文氏)、「発電所、上下水道、鉄道関連」(大谷氏)に注目したい。
また、「先日法案が通過したマイナンバーや、来年1月から始まるNISA口座導入で繁忙のITゼネコンが面白そう」(ファイナンシャルリサーチ・深野康彦氏)というから、NISAに関するシステム開発を受注する野村総合研究所などもよさそうだ。さらには、「9月7日に2020年オリンピック開催地が東京に決まれば、さらに日経平均で1000円程度高値を期待できます」(証券アナリスト・藤本誠之氏)という楽しみも。
フィスコ・リサーチレポーターの三井智映子氏は、「現在はまだアベノミクスが功を奏してきたという状態で、これからが本番。安倍首相が政権を維持し、デフレを脱却し成長戦略が順調に進めば、来年度に日経平均2万円台も夢ではないと思います」と分析する。アベノミクスはもう終わったのだろうか? いや、まだでしょう!
取材・文/SA編集室 横山薫(SPA!) 図版/エフスタイル