http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130705-00156743-woman-hlth&p=1
日経ウーマンオンライン(日経ウーマン) 7月10日(水)17時38分配信
カロリーを抑えて体脂肪を減らすことは 究極のアンチエイジング法
この連載を読んでくださっている皆さんなら、きっと一度はダイエットにチャレンジしたことがあるでしょう。カロリーを抑えて肥満を防ぐことは、見た目にスリムできれいになるだけでなく、アンチエイジング医学の立場からも大いに勧められます。生活習慣病を防ぎ、健康で長生きすることが確かめられているからです。
2009年に、米国ウィスコンシン大学のウェインドルック博士らが20年にわたってアカゲザルを比較した研究を発表。食事制限なしのサルよりも摂取カロリーを3割程度制限したサルは病気の発症率も死亡率も低く、見た目も若々しい状態を維持していたという研究成果は世界中で反響を呼びました。
ほかにもさまざまな動物実験により、栄養バランスは保ちながら摂取カロリーだけを70%程度に抑える「カロリーリストリクション」(=カロリス)が健康長寿に有効であることが報告されています。
カロリスで長寿遺伝子の発現をコントロール 細胞の大掃除システムも活性化
僕たちの体は、親から受け継いだ約60兆個もの細胞からできていて、その一つひとつに膨大な遺伝情報が書き込まれています。親の体質に似るのは、その遺伝情報の影響ですが、だからといって親が太っていたら自分も太る運命なのかというと、そんなことはありません。遺伝子の状態やはたらきは、環境によって変わり、遺伝子のスイッチがONになったりOFFになったりすることがわかってきました。これは、ほとんど同じ遺伝情報を持つ一卵性双生児でも環境の違いで健康状態が大きくことなってくることから確認されたことです。つまり、「食事」「運動」「ごきげん(心)」によって遺伝子のスイッチをコントロールすることも可能と考えられます。
カロリスはその方法の一つといえます。カロリー制限により、老化や寿命にかかわる長寿遺伝子(サーチュイン)のスイッチがONになることも報告されているのです。ただし、日本人の一般的な食事は、欧米よりもカロリーが低いことや、若い女性の多くは普段からダイエット意識が高く、低カロリーの傾向ですので、さらに70%では危険な場合もあります。日本のことわざにあるように、日頃から腹八分を心がける、満腹になるまで食べ過ぎない、高カロリーの食品に少し注意する、という意識で十分でしょう。
また、細胞の大掃除システム「オートファジー」のスイッチもONになり、細胞内をスッキリきれいにします。「オート(=自分自身を)ファジー(=食べる)」とは、代謝の過程で細胞内に生じる不要なものを分解処理するしくみ。このしくみを活性化することも細胞の若さと健康を維持するポイントの一つといえますが、一定の時間、空腹をしっかり感じることで、体が飢餓状態と判断して、サーチュインが目覚め、オートファジーのような防御システムが働きだすと考えられています。
だから、食べ過ぎが続いたり、だらだらと食べ続けたりするのはよくありません。僕は1週間で21回の食事のうち3食を抜いています。食べ過ぎたなと思ったら1食抜きにして、次の食事までの時間を開けて、オートファジーを活性化して細胞をきれいにしてあげようというわけです。
重要な栄養素まで減らしては意味がない カロリー控えめのバランスの良い食事を
ただし、単にカロリーを減らすだけでは栄養のバランスが崩れてしまうことに注意が必要です。筋肉や骨量、免疫力の低下などのリスクもあり、ヒトの研究で、カロリー制限で減量したら骨密度が低下したという報告もあります。
2012年、NIA(米国立加齢研究所)により、抗酸化物質などを加えたバランスのとれたエサで育てたらカロリー制限したサルとしなかったサルでは寿命に差がなかったという研究結果が発表され、栄養バランスのとれた食事を最適量とることの重要性が改めて見直されています。
すべての栄養を食事だけで補うことは難しいので、栄養素を凝縮した健康補助食品=サプリメントも積極的に利用した方がいいと僕は考えています。これには異論もあり、食事で摂取すべきと指摘される方もいますが、自分自身はサプリメントで補給しています。
僕が考えているアンチエイジングのために摂取したいサプリメントは大別すると3種類あります。
(1)その人の弱いところを助けるサプリメント
一度、アンチエイジングドックなどで体の状態をしっかり診断して、血液データなどから、不足する栄養素や、弱い部分を正確に把握するとよいでしょう。
(2)抗酸化サプリメント
ビタミンA、C、E、亜鉛など、老化の原因の一つといわれる活性酸素(体のサビ)を抑える、基本的な抗酸化ビタミンやミネラルは、最初に選びたいサプリメント。ただしビタミンAやEは脂溶性のため、過剰摂取には注意が必要です。特に妊婦さんは気をつけましょう。
(3)代謝を助けるサプリメント
ビタミンB群が不足している人が意外に多いようです。カルニチンなども代謝を正常に近づけるのに役立ちます。外食やインスタント食品の多い人はビタミンB不足になりがち。また、お肉を食べない人も不足しやすいので注意が必要です。
正しい知識をもって 無理なくごきげんにやせよう
カロリスに関連する研究から、食品に含まれる成分の中に、サーチュインを活性化する作用を持つものがあることもわかってきました。赤ワインやピーナツの皮などに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールに、サーチュインを活性化させる可能性があり、最近注目を集めています。また、ガンの研究などから、りんごやタマネギなどに含まれるフラボノイドの一種のケルセチン、緑茶に含まれるポリフェノールの一種のエピガロカテキンガレートなどに抗ガン作用や健康長寿の力があるのではないかと研究が進められています。
近年、こうした「食」に関わる科学=フードサイエンスが世界中でめざましく進展しており、「分子整合栄養療法」といって、サプリメントを含めた食品によって遺伝子発現を変え、健康増進や疾病予防、老化予防などに役立てようとする試みもなされてきています。食べる順番や食べ方についてもさまざまなことが明らかになっています。
この連載では、そうしたフードサイエンスの成果をたくさんご紹介していきますので、賢く食べるためにぜひ役立ててください。知的な女性は「○○抜きダイエット」「○○だけダイエット」などの非科学的なダイエットはしないはず。苦しいがまんを強いるダイエットではストレスがたまるばかりでちっともごきげんではありません。正しい知識をもって、無理なく、美しく、そしてごきげんになれるダイエットを始めましょう。