36. 秘密のアッコちゃん[277] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2024年4月22日 19:51:26 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[390]
拓殖大学顧問・渡辺利夫
2024/4/22 8:00
https://www.sankei.com/article/20240422-2DQZIN2THJP3TE3NEGYG5FNXEQ/
中国共産党には3つの「歴史決議」がある。
1つは1945年の毛沢東によるもの、2つ目は1981年のケ小平によるもの、3つ目が2021年11月に出された習近平による
「100年奮闘の重大な成果と歴史経験に関する決議」
である。
習の
「歴史決議」
には次の1文がある。
■失われしものへの固執
「党の百年奮闘が根本から中国人民の前途・運命を変えた。近代以降、帝国主義、封建主義、官僚資本主義という3つの大きな山が中国人民に重くのしかかり、西洋列強から東洋の病夫≠ニいう屈辱的な名を付けられた」
「100年に渡り、党は人民を指導して勇壮雄大で偉大な闘争を経て、中国人民が侮られ、抑圧され、奴隷の報いを受けた運命を断ち切り、国家、社会および自分の運命の主人公となった」
(在日中国大使館)
米国と渡り合えるほどの力量を蓄え、2049年の建国100年には米国に追いつき追い越すと意気込むあの中国が、列強による中国分割の時代に味わわされた屈辱の記憶を呼び覚まそうというのである。
喪失の歴史を再び繰り返してはならない。
そのためには強国になるより他ない。
既に超大国となった中国が尚非妥協的な愛国ナショナリズムを発揚しているのである。
習の歴史決議においては、香港・台湾問題に関連する記述が非常に多い。
香港・台湾問題の記述の背後に潜んでいる歴史意識とは、失われしものへの強い固執、喪失の被害者意識に他ならない。
「戦狼」
外交という、一見するところあの大国には似つかわしくない、
如何にも猛々しい姿勢には、過去の歴史に対する怨念にも似た激しい反感情が滲み出ている。
この反感情が、世界における中国の政治経済のプレゼンス拡大、並びにこれに伴って増長する尊大な自信と結び付いた時に発せられる強大な国際権力に、日米はともども向き合っていかなければならない。
■権力の正統性への懐疑
香港は、中国の全国人民代表大会において既に採択され施行されている香港国家安全維持法により、中英合意によって定められた
「1国両制の返還後50年維持」
は実質的に空文化されてしまった。
今後の焦点は台湾である。
2005年に制定された中国の
「反国家分裂法」
の第2条では
「台湾は中国の一部である」
「国は『台独』分裂勢力が如何なる名目、如何なる方式で台湾を中国から切り離すことも絶対に許さない」
と明言された。
中国共産党は被害者意識に満ちた歴史認識を演出し、
香港の「回収」
と
台湾の「解放」
への意欲を前面に押し出し、それを押しとどめようとする米国への敵意を剝き出しにしている。
これほどまでに歴史意識に固執するのには、もっと深刻で差し迫った理由が他にあるのではないかと考えねばならない。
中国共産党権力の正統性に対する国民の疑念、いやひょっとして党幹部自身に潜在する懐疑の念がその理由なのではないか。
建国以来80年にもなろうとしているものの、この間、共産党による統治の是非が国民に問われたことは1度もない。
今後も問われる見通しはまずない。
共産党統治の正統性根拠を説明できないために、過去への怨念と愛国ナショナリズムを呼び覚まし、猛々しい戦狼外交を展開しているのであろう。
■正統性が存在しないがゆえ
加えて、中国においては統治イデオロギーの正統性はもはや消滅している。
共産主義は存在しないし、社会主義ももう完全に溶解している。
中国の経済を動かしているものは市場という制御不能なメカニズムであり、行政的統制は不動産市場の崩落に見られる如く機能不全である。
少子高齢化という人口動態はもとよりイデオロギーとは関係がない。
中国における民主主義の不在、社会主義イデオロギーの溶解、これを補って余りある正統性原理がどこかにあるのかと言えば、そんなものは存在しない。
存在しないが故に今尚100年以上も過去の喪失の歴史を言い募り、その屈辱をバネに失われた領土の回復、並びにそれを押し止める米国に対抗しようという願望を露わにしているのであろう。
習近平の歴史決議の最後半にはこうある。
「党は終始世界的視野に立って人類の前途と運命を気に掛け、人類の発展の大きな趨勢、世界の構図の大きな変化、中国の発展の大きな歴史から外の世界との関係を正しく認識、処理し、その中で開放を堅持して閉鎖せず、互恵ウィンウィンを堅持してゼロサムゲームをせず、公平を主張して正義を広め、歴史の正しい流れにそって人類の進歩を図るという姿勢を貫いている」
香港の
「1国両制」
の息の根を止め、
「1つの中国」
を頑強に主張して台湾侵攻の挙に出る選択肢をちらつかせ、尚中国はゼロサムゲームをやらないと公言しているのである。
如何にも空疎な歴史決議ではないか。
日米首脳会談 米メディア「日本は米国より信頼できる」、中国「日本が軍事大国化目指す」
世界の論点
2024/4/22 10:00
https://www.sankei.com/article/20240422-EAAR5M6W65MQRMTH56IJJ7OQ7U/
岸田文雄首相は2024年4月14日までの訪米でバイデン米大統領と会談し、自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた防衛協力を確認した。
国賓待遇の岸田首相は、米連邦議会上下両院合同会議で演説。
中国の威圧的行動を踏まえ、日米、フィリピンによる初の3カ国首脳会談も実施した。
米メディアは、日米首脳会談によって、両国の同盟が一層重要になることを期待した。
中国紙は、日本が軍事大国化を目指しているのではないかと疑いの目を向けている。
◇
(米国) 同盟さらに強力にする機会
米メディアなどはバイデン大統領と岸田文雄首相の会談を機に日米同盟がより重要な役割を果たすことに期待を示している。
米ブルームバーグ通信は2024年4月10日の社説記事で、日米首脳会談における防衛協力の強化に関し
「政治と官僚の惰性で機運を失う前に行動を起こすべきだ」
と述べ、机上の議論で終わらせないよう施策の早期実現を両政府に求めた。
また、岸田政権がこれまで取り組んで来た防衛費増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を指摘し
「ほんの数年前には考えられなかったことだ」
と高く評価した。
日本について、技術力や産業力などを踏まえ
「英国に代わる米国の最も重要な戦略的パートナーになる可能性がある」
と指摘。
民主主義や法の支配を巡り
「米国よりも多くの点で信頼できる擁護者だ」
と賛辞を贈った。
「日米は同盟を更に強力にするチャンスを掴むべきだ」
と論じ、日本の役割拡大として米軍が展開するフィリピンでインフラ開発を支援することや、紅海で航行の安全確保に取り組む多国籍部隊への参加などを挙げた。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は日米首脳会談に合わせた2024年4月8日の社説で、
「日本は自由主義国の平和と安全に対する脅威が地球規模であることを把握している」
と述べ、ウクライナ支援の重要性を理解しているとした。
日本が米国ライセンスで生産する地対空ミサイル「パトリオット」の対米輸出を決めたことで、米軍が保有するパトリオットの在庫をウクライナに供与できる可能性を解説。
「日本の外交政策における歓迎すべき転換だ」
と評価した。
ウクライナ支援の重要性を巡り日本の認識は
「一部の米共和党議員よりも強い」
とし、岸田首相の訪米が米国の世論に影響を与えることに期待を示した。
米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は2024年4月15日の論考で、首脳会談で発表した何ページにも渡る共同声明は
「日米が共に(世界の)課題に取り組む決意を表明したものだ」
と述べた。
岸田首相は議会演説で
「温かい歓迎を受けた」
とし、数多くのスタンディングオベーションがあったことを紹介した。
演説に関しては
「世界が米国のリーダーシップを必要としている」
ことやウクライナ支援の継続の重要性を示し、中国問題も喚起するなど
「メッセージは明確だった」
と評した。
「米国人を励まし、日本が米国の最も近い同盟国としての役割を真剣に受け止めている」
ことを示す狙いがあったと強調した。
◇
(中国) 日本に「軍事大国」への野心
中国はこれまでも日米同盟の強化を警戒しており、日米、日米比首脳会談は中国包囲網の強化であり地域を分断させる動きだと批判した。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は2024年4月10日、日米首脳会談を前に社説を掲載し、岸田文雄首相の
「訪米の矛先は中国を指している」
と、自国が会談での最大の議題になると予想した。
その上で、
「中国を包囲し圧力を掛ける米国の戦略配置」
の中で、
「日本の働きは、既に『相手(米国)に歩調を合わせる』とは形容できず、敵陣に切り込む役割を進んで演じ始めた」
と日本への警戒感を示した。
社説は、日米韓と日米比の安全保障協力や日台米韓による半導体供給網の協力枠組み、ひいては
「アジア版北大西洋条約機構(NATO)」
の推進で、
「日本が米国を押して前に動かしている」
と指摘。
特に、日米の安全保障関係の強化は
「日米同盟の対等化を意味し、日本が大国であることの証左だと日本の一部の人間は大喜びしている」
と冷笑した。
また、日本が
「米国に頼って中国を制する」
ことを企てる一方で、米国の将来的な孤立主義化に不安を覚え、国際情勢の変化を口実に
「政治・軍事大国となる野心を示し始めた」
とも分析。
だが、日米同盟の強化は、米国の対中圧力の
「道具」
としての日本の役割を強めるだけで、地域や世界に
「更なる不安定化と対抗をもたらしかねない」
として、
「日本の見識のある人々」
に首相訪米の背後にある
「隠れたリスクを認識すべきだ」
と呼び掛けた。
同紙は2024年4月13日、日米比首脳会談について、政府系シンクタンク、中国南海研究院の寄稿を掲載した。
寄稿は、会談の目的は
「米国と日本が南シナ海問題を利用し、フィリピンを代理人として中国に対抗する第1線に押し出すことだ」
と指摘した。
2024年4月14日には同研究院の王勝院長らの寄稿も掲載。
王氏らは、日米比が共同声明で、中国の南シナ海と東シナ海における
「権益活動」
を
「威圧」
と表現し、人工島の
「軍事化」
を批判したことを、
「中国を誹謗し汚名を着せる」
もので、その目的は
「自らの武装に合法性を持たせるためだ」
と訴えた。
王氏らは日米比3カ国の海上保安機関の連携強化は、実質的には日米が西太平洋での活動を拡大するために
「理由を探した」
に過ぎず、日本はそれを口実に、巡視船の海外駐留に繋げることができると指摘。
オーストラリアや韓国などとも連携を強化することで、
「アジア版NATOの形成は間近だ」
と過剰なまでに反応した。
<主張>首相の訪米報告 危機認識をもっと伝えよ
社説
2024/4/19 5:00
https://www.sankei.com/article/20240419-LSYERIYQHJO5DCU4SX7EO2XDVQ/
岸田文雄首相が衆院本会議で米国訪問に関する報告を行った。
日米首脳会談では両国を
「グローバル・パートナー」
と位置付け防衛・安全保障、経済安保、先端技術など幅広い分野で連携強化することで合意した。
抑止の努力を怠れば日本有事に繋がる台湾有事が起きかねないという厳しい安保情勢への危機感を反映している。
日米同盟の抑止力・対処力向上の具体的方策で合意した首相訪米の成果は大きい。
残念だったのは、日米合意の背景をなす現下の安保環境への危機認識を、本会議ではきちんと伝えなかった点だ。
首相は報告で
「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても維持・強化する」
と述べた。
だが、それを訴えなければならない最大の理由となっている中国についてほとんど触れなかった。
力による一方的な現状変更の試みを否定する文脈で、
「中国を巡る諸課題への対応」
と言及したにとどまった。
共同声明に記した
「台湾海峡の平和と安定を維持する重要性」
という言葉も報告で述べなかった。
米議会演説で語った、中国は日本だけでなく国際社会の平和と安定にとっても
「これまでにない最大の戦略的な挑戦だ」
との認識も語らなかった。
更に、南シナ海の沿岸国で台湾の南に位置するフィリピンと日米の首脳会談にも触れなかった。
これでは国会で拍手をしてもらえるはずがない。
首相はもっと中国の脅威について正直に訴えるべきだ。
質疑で立憲民主党の源馬謙太郎氏は、日米関係が強固であることを確認した点を評価し、日本も国際社会の平和と安定に寄与することが重要との認識を示した。
その通りだが、立民は集団的自衛権の限定行使すら認めていない。
こうした姿勢を改めない限り政権は担えまい。
共産党の志位和夫議長は、自衛隊と米軍の指揮・統制見直しについて
「自衛隊が参戦する道を開くことになる」
と批判した。
抑止力の強化を否定するもので、共産の主張では平和を守れない。
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党は訪米を評価した。
国民民主の玉木雄一郎代表が、能動的サイバー防御関連の法案が未提出であることを問題視したのはもっともである。
<正論>日米同盟で肩を並べる覚悟を
元陸上幕僚長・岩田清文
2024/4/17 8:00
https://www.sankei.com/article/20240417-OSBRENCF2VPU5DMPN43QFBX2YY/
■高みに到達した日米同盟
米国を公式訪問した岸田文雄首相は2024年4月10日の首脳会談に続き、翌日の米国連邦議会上下両院合同会議において、安倍晋三首相以来9年ぶりとなる演説を行った。
首脳会談後の日米共同声明においては、冒頭
「過去3年間を経て、日米同盟は前例のない高みに到達した」
と、その進化を確認した。
米議会における演説では、日米同盟を
「未来のためのグローバルパートナー」
と謳い、日本が米国の地球規模のパートナーであり、この先もそうあり続けると表明した。
その背景として米国が何世代にも渡り築いてきた国際秩序が、日米の価値観や原則とは異なる国々からの新たな挑戦に直面し、その結果、自由と民主主義が世界中で脅威に晒されていることを指摘している。
加えて世界において、これらの価値を基調とする国際秩序を米国が単独で守ることを強いられる理由はないとし、日本が米国と肩を組んで共に立ち上がるとの決意を述べた。
9年前の2015年、安倍首相が演説した当時の米国はまだ1国で国際秩序を維持する力があったため、安保法制を根拠とした日本の積極的な行動により地域的な同盟を強化することに重点が置かれていたものと理解される。
しかしその後、情勢が激変し、中国の軍事力の急速な増強と海洋への覇権の拡大、そしてロシアによるウクライナ侵攻以降顕著となった、ロシア・中国・イラン・北朝鮮の連携強化により、米国が単独で国際秩序を維持することが期待できない状況となりつつある。
このような危機認識が米国内でも多く指摘されているが、これらも、今回の岸田首相演説の背景にあるものと読み取れる。
日米共通の脅威対象が強大化するなか、頼りとなる米国の力の相対的な低下が、日本が果たす責任・役割を大きくしているということであろう。
そして、これまで以上に幅広い分野において、米国のパートナーとなることが米国の日本への期待であると理解される。
■「頼る」から頼られる存在
日米首脳会談に先立つ2024年4月4日、米戦略国際問題研究所(CSIS)が、超党派の有識者による日米同盟への提言
「アーミテージ・ナイ報告書」
を発表した。
この中で、米国のリーダーシップの将来に対する疑問がかつてないほど深刻であることを認めた上で、
「世界と地域のリーダーシップの負担は、短期的には日本政府に、より重くのしかかるだろう」
「しかし幸いなことに、日本はこの役割を担うに十分な位置にある」
との認識を示している。
まさに米国にとっての日本は、世界秩序維持において、米国に頼る存在から、米国に頼られる存在に変化している。
我々日本がこれまで享受してきた発展と繁栄は、自由と民主主義による国際秩序を牽引してきた米国の努力が基盤となっている。
その米国自身が秩序維持に支障をきたしている現状において、日本が秩序維持に加担することは必然であり、そうでなければ日本の平和と繁栄の土台が崩れる。
議会演説における岸田首相の
「平和には『理解』以上のものが必要だということを知っています」
「『覚悟』が必要なのです」
との言葉は、まさに、グローバルパートナーとして、米国と共に肩を並べ世界の秩序維持に取り組んでいく覚悟を示したものと理解できる。
■より世界に目広げる必要
一方で、この覚悟を具体化するためには、今後より発展させていくべき事項もでてくるだろう。
例えば、2022年12月に閣議決定した国家安全保障戦略(安保戦略)の内容である。
安保戦略には、我が国が守り発展させるべき国益として特に
「インド太平洋地域において、自由で開かれた国際秩序を維持・発展させる」
ことが明示されている。
またこの国益具体化のため、我が国の安全保障上の目標としては
「国際社会の主要なアクターとして、同盟国・同志国等と連携し、国際関係における新たな均衡を、特にインド太平洋地域において実現する」
とある。
私はこれは我が国の国力に見合った戦略と理解しており、妥当なものと認識している。
しかし、グローバルパートナーとなるのであれば、インド太平洋地域への重点指向に変化はないものの、より幅広い分野において、世界に目を広げたものを拡大・進化させると共に、それらを日米でどのように連携して進めていくのかの検討が必要となろう。
岸田首相の演説では、具体的に米国とどこまで肩を並べるのかが明示されていない。
米国からすれば、言葉通りに受け取って、共に世界において日本が行動してくれるものと解釈している方もいるかもしれない。
また演説を聞いた日本国民も、どのような分野において、どこまで日本が米国と肩を並べ国際秩序を維持しようとしているのか疑問に思ったであろう。
この点は、日本として向かうべき重要な方向性である。
米議会での演説で終わらせるものではなく、しっかりと議論すべき内容ではないのか。
日米首脳会談 産読日「新たな防衛協力」を評価 朝毎東「巻き込まれる」恐れ懸念
社説検証
2024/4/17 9:00
https://www.sankei.com/article/20240417-YQD6ABPXKBIMBPCS46RJNHPBFQ/
ロシアによるウクライナ侵略や中国の覇権主義的行動など、自由で開かれた国際秩序が脅かされる中、岸田文雄首相が訪米し、バイデン大統領と会談した。
日本の首相が国賓待遇で訪米するのは、平成27年の安倍晋三首相(当時)以来9年ぶりである。
首脳会談は主に安全保障政策について話し合った。
自衛隊と米軍の指揮統制の在り方の見直しや、米英豪3カ国の安保枠組み
「AUKUS(オーカス)」
と日本の協力検討などで合意した。
会談後には
「日米同盟は前例のない高みに到達した」
とし、インド太平洋地域はもちろん、世界の諸課題に対処する
「グローバルなパートナーシップ」
の構築を謳う共同声明が発表された。
首脳会談に対して産経、読売、日経が
「日米の新たな防衛協力の出発点」(読売)
などと評価したのに対し、朝日、毎日、東京は
「国民への説明は後回しになっていないか」(朝日)
と批判的な見方を示した。
産経は、
日米が抑止の努力を怠れば台湾有事が生起しかねないという厳しい安保情勢への危機感を両首脳の共同声明から読み取り、
「戦争を起こさないための方策を打ち出した両首脳の合意を支持し、確実な実践を求めたい」
と強調した。
読売も、
強固な日米同盟を
「新たな国際秩序の構築に生かしていく時代に入った」
として、合意の意義は大きいと論じた。
特に指揮統制の在り方の見直しに注目し、台湾有事などの緊急事態に
「日米が即応できる体制を整えなければならない」
と訴えた。
日経は、
世界の安定に向けて
「同盟国との連携強化は重要だ」
と指摘しつつ、経済や科学技術における協力にも期待を寄せた。
ただし、日本製鉄によるUSスチール買収について
「首相が後押しする姿勢が見えなかったのは残念だ」
と苦言も呈した。
一方、
朝日は
国民への説明が不十分であるとし、
「加速する日米の『一体化』に幅広い支持が得られるのか」
と疑問を投げ掛けた。
兵器開発を含むAUKUSとの協力検討などに対しても、
「なし崩しに武器輸出を拡大するようなことが繰り返されてはならない」
と釘を刺した。
毎日は、
日米同盟を基軸とする抑止力強化には理解を示すものの、
「日本が主体性を欠いたまま米国の世界戦略に巻き込まれること」
への懸念を表明した。
むしろ今求められるのは、対中関係の安定化など
「日本独自の外交戦略だ」
と主張した。
東京は、
首相が国賓待遇で招かれたことについて、国会の関与もなく岸田政権の下で強化された日本の安保政策を
「米側が評価した結果でもある」
と見做した。
その上で
「平和憲法の理念を形骸化させる政策転換は許されるものではない」
と非難し、両首脳の合意の有効性にも疑問符をつけた。
今回の首脳会談に批判的な朝日、毎日、東京に共通するのは、米国の世界戦略に日本が
「追随」
することへの警戒感だろう。
それは、日米が
「軍事一体化を際限なく進めれば、米国の戦争に日本が巻き込まれる懸念も高まる」
とした東京の主張に端的に表れている。
ただ、首脳会談を評価する産経、読売、日経が米国への安易な追随を許容しているわけではない。
指揮統制の在り方の見直しについて日本政府は
「自衛隊が米軍の指揮統制下に入ることはない」
と説明している。
産経も
「日本は独立国だ」
とし、
「自衛隊と米軍は独立した指揮系統で運用されるべきである」
と強調した。
産経が指摘するように、世界の平和と安定は米国だけでは守れない時代になっている。
「日本の国際政治上の役割と存在感は世界第2位の経済大国だった頃よりも、むしろ今の方が大きい」(産経)
のだ。
自由で開かれた国際秩序を守るため、日本の覚悟が問われている。
◇
日米首脳会談を巡る主な社説
【産経】
・抑止力向上の合意実践を/首相の積極姿勢を評価する
【朝日】
・説明なき一体化の加速
【毎日】
・問われる日本の外交戦略
【読売】
・世界に広がった多面的な「協働」/結束して新たな秩序を作りたい
【日経】
・世界の安定へ重責増す日米同盟
【東京】
・衆議なき一体化を糾す
※いずれも2024年4月12日付
<主張>日米首脳会談 抑止力向上の合意実践を 首相の積極姿勢を評価する
社説
2024/4/12 5:00
https://www.sankei.com/article/20240412-YPNKYVLTCRIEJJ7K53GBD2KGM4/
岸田文雄首相が、米ワシントンのホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。
会談の特徴は、同盟の抑止力・対処力を迅速かつ確実に向上させる防衛・安全保障協力に重点を置いたことだ。
共同声明は
「地域の安全保障上の課題が展開する速度を認識」
し、同盟が
「重要な変化に対応できるようにする」
と明記した。
日米が抑止の努力を怠れば、日本有事に繋がる台湾有事が生起しかねない厳しい安保情勢への危機感があるからだろう。
戦争を起こさないための方策を打ち出した両首脳の合意を支持し、確実な実践を求めたい。
■指揮統制の連携必要だ
両首脳の国際情勢認識も妥当だった。
共同声明は
「世界の安全と繁栄に不可欠の要素」
だとして
「台湾海峡の平和と安定を維持する重要性」
を訴え、両岸問題の平和的解決を促した。
東・南シナ海での中国による力または威圧による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮の核・ミサイル開発に強く反対した。
拉致問題の即時解決へ米国は協力を約束した。
「ロシアのウクライナに対する残酷な侵略戦争」
を非難し、対露制裁とウクライナ支援を確認した。
中東ではハマスなどのテロを非難し、イスラエルの自衛の権利を確認しつつ、ガザ地区の人道状況に深い懸念を表明した。
共同声明は日米が
「グローバル・パートナー」
として防衛や経済安保、先端技術、宇宙などでの連携を強化するとした。
自衛隊と米軍がそれぞれ指揮・統制枠組みを向上させ、防衛装備品の共同開発、生産・整備の役割分担に関する協議体(DICAS)を設立する。
他の同志国との安保協力推進を掲げた点も対中抑止のネットワークを作る上で評価できる。
米英豪3カ国の安全保障枠組み(AUKUS)と日本の先端技術開発での協力検討や、日米韓、北大西洋条約機構(NATO)などの連携推進である。
指揮・統制枠組みの向上は日本が2024年度末に、陸海空自衛隊を一元的に指揮する
「統合作戦司令部」
「統合作戦司令官」
を置くことを踏まえたものだ。
米インド太平洋軍の司令部はハワイという遠隔地にあるため作戦行動の齟齬が生じる恐れがある。
そこで、今は作戦指揮権を有しない在日米軍司令部の機能を強化する方向だ。
自衛隊と米軍が作戦立案や部隊運用で日常的に連携し、より効果的に戦える態勢を取れれば画期的だ。
抑止力はそれだけ高まる。
ただし、日本は独立国だ。
林芳正官房長官が2024年4月11日の会見で説明したように、自衛隊と米軍は独立した指揮系統で運用されるべきである。
バイデン大統領は
「日米同盟は歴史上かつてないほど強固だ」
と語った。
更に、日本の反撃能力の保有、防衛費とそれを補完する関連予算を合わせ国内総生産(GDP)2%へ増額する計画、防衛装備移転3原則の指針改正を歓迎した。
■日本の存在感は増した
東アジアやインド太平洋地域、世界の平和と安定は米国だけでは守り切れない時代である。
中露、北朝鮮という専制国家の至近に位置する先進7カ国(G7)の国は日本だけだ。
日本の国際政治上の役割と存在感は世界第2位の経済大国だった頃よりも、むしろ今の方が大きい。
だからこそ岸田首相は国賓待遇になった。
日米の安保協力には
「米国の戦争に巻き込まれる」
という懸念の声もあるが、それは大きな間違いだ。
中露や北朝鮮の脅威は、米国よりも日本にとっての方が大きい。
日本は尖閣諸島(沖縄県)を含め自国の領域と平和、繁栄を守るため、
「安保問題で米国をむしろ巻き込み」、
同盟の抑止力向上で平和を保たなければならない立場にある。
その点からも岸田首相の訪米には意義があった。
防衛力の抜本的強化を進める岸田首相がバイデン大統領に
「日米がグローバルなパートナーとして真価を発揮すべきときだ」
「日本は常に米国と共にある」
と述べたのは説得力があった。
バイデン大統領は、日米安保条約第5条の下で、核戦力を含むあらゆる能力で日本防衛に関わると表明した。
両首脳は外務・防衛担当閣僚に対し、次回の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日本の防衛力増強に伴う米国の拡大抑止の在り方を協議するよう求めた。
核抑止を含めあらゆる局面の防衛態勢の検討は急務である。
<主張>日米比首脳会談 協力して自由の海を守れ
社説
2024/4/13 5:00
https://www.sankei.com/article/20240413-L4EUJGD3TFJ5NHYWVG5HBOJJSI/
日本と米国、フィリピンという3つの海洋民主主義国が安全保障や経済など幅広い分野で連携、協力を進めることを歓迎したい。
岸田文雄首相とバイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領が米ワシントンのホワイトハウスで初の3カ国首脳会談を開いた。
日米比はインド太平洋の海洋民主主義国で総人口は5億人を上回る。
日米、米比は同盟を結び、日比は安保協力を強化してきた。
バイデン大統領の呼びかけで3首脳が集ったのは国際法を踏みにじる中国から、自由で開かれた海であるべき南・東シナ海を守る狙いがある。
中国は南シナ海で、海軍と海警、海上民兵を動員してフィリピンを圧迫している。
中国海警船の放水砲の使用や体当たりなどで、比側には負傷者や船体の破損など被害が出ている。
「弱い者いじめ」
そのものだ。
東シナ海の尖閣諸島周辺では中国海警船が領海に侵入し、日本の漁船を追い回すようになった。
3首脳の共同声明は、南シナ海での
「中国の危険かつ攻撃的な行動」
に
「深刻な懸念」
を表明し、東シナ海での中国の一方的な現状変更の試みに
「強く反対」
した。
これらを踏まえ、自衛隊と米比両軍の合同訓練拡充や、海上保安機関の合同訓練の実施、海洋協議の創設などを打ち出した。
日本は政府安全保障能力強化支援(OSA)の枠組みを用いて防衛装備品を供与し、比軍の強化にも協力する。
自衛隊と比軍の相互往来をスムーズにする
「円滑化協定)RAA)」
の締結を急ぐべきである。
フィリピンのインフラへの投資の加速や民生用原子力計画に携わる人材育成への協力も掲げた。
着実に進めたい。
注目すべきは、共同声明で
「台湾海峡の平和と安定の重要性」
を表明したことだ。
台湾は日比両国の間に位置する。
南シナ海は安保、通商の両面で日米にとって極めて重要な海上交通路(シーレーン)だ。
中国の台湾侵攻や南シナ海支配は容認できない。
日米比が協力して対中抑止に努めるのは理に適う。
岸田首相は米議会演説で日本が
「控えめな同盟国」
から
「外の世界に目を向け、強くコミット(関与)した同盟国」
へ自らを変革してきたと説いた。
米比との協力はその実例である。
日米首脳会談 世界に広がった多面的な「協働」
2024/4/12 5:00
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240412-OYT1T50009/
冷戦後の世界が今ほど厳しい試練に直面したことはない。
日米の首脳が結束し、安全保障やエネルギー、宇宙など幅広い分野で
「協働」
していくことで合意した意義は大きい。
日米同盟をより強固にし、新たな国際秩序の構築に生かしていく時代に入った。
岸田首相が米国を国賓待遇で公式訪問し、ワシントンでバイデン米大統領と会談した。
◆部隊運用を一体的に
両首脳は会談で
「日米同盟は前例のない高みに到達した」
という認識で一致した。
会談後には、日米両国がインド太平洋地域にとどまらず、世界の課題に対処する
「グローバルなパートナー」
と位置付ける共同声明を発表した。
今回の会談の最大の特徴は、自衛隊と米軍をより一体的に運用できるように
「指揮統制」
の在り方を見直す方針を決めたことだ。
在日米軍は現在、米ハワイに司令部を置くインド太平洋軍の指揮に基づいて活動している。
一方、日本は2024年度末に陸海空3自衛隊を一元的に指揮する
「統合作戦司令部」
を創設する予定だ。
これに合わせて、米軍は自衛隊との共同作戦を円滑に進めるため、インド太平洋軍司令部の権限の一部を在日米軍司令部に移行するという。
台湾有事は現実味を帯びている。
北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、挑発を続けている。
緊急事態に日米が即応できる体制を整えなければならない。
会談ではまた、日米でミサイルなど装備品の共同開発・生産を拡充していくことでも合意した。
ウクライナへの軍事支援を続けてきた米国では、装備品の生産能力が 逼迫しているため、日本が生産体制を補完する意味がある。
岸田政権はこれまで、敵のミサイル発射拠点を攻撃する反撃能力の保有を決め、
米国が
「矛」、
日本が
「盾」
という従来の役割の見直しを進めてきた。
こうした取り組みが、米軍と自衛隊の一体的な運用を可能とし、抑止力を高めることに繋がるのは間違いない。
今回の首脳会談での合意は、日米の新たな防衛協力の出発点となるのではないか。
ただ、自衛隊と米軍の一体運用に向けては課題もある。
日本の存立が脅かされる
「存立危機事態」
では、自衛隊は集団的自衛権を行使し、米軍の戦闘に協力できる。
だが、その認定なしに米軍の戦闘を支援すれば、
「武力行使の一体化」
として憲法との整合性を巡る論議が必要となる。
現実に即して問題点を整理していくことが重要だ。
◆安定的な供給網を確認
首脳会談の成果は防衛分野に限らない。
両首脳は、次世代エネルギーとして期待される核融合発電の技術協力を進めることで合意した。
実用化すれば、安定したエネルギー源を確保し、国際社会に貢献することができるだろう。
宇宙に関しては、米国が主導する有人月探査
「アルテミス計画」
で、日本人の宇宙飛行士2人を月面着陸させることを決めた。
経済安保では、半導体やレアメタルなど重要鉱物の安定的な供給を図るため、先進7か国(G7)で協力することを確認した。
中国は、政治的に対立する国に対し、重要鉱物などの貿易を制限して圧力を掛ける
「経済的威圧」
を繰り返している。
多国間で協力し、中国への依存度を下げていく必要がある。
国際情勢は 混沌としており、日本の外交力も試されている。
米国は、ロシアによるウクライナ侵略や、中東の紛争への対応を強いられ、アジアの安全保障に向き合う余力は限られている。
中国が東・南シナ海で覇権主義的な動きを強め、北朝鮮も核・ミサイル開発を続けている。
日本はアジアの平和を守るため、主導的な役割を果たすべきだ。
◆早期停戦へ外交努力を
日本は長年、グローバル・サウスと呼ばれる新興国・途上国の発展を支援し、各国と良好な関係を築いてきた。
中東では、紛争に関与したことがなく、宗教的な対立も抱えていない。
日本の強みを生かし、欧米と、新興国との橋渡し役を担っていきたい。
イスラエルとイスラム主義組織ハマスに対して停戦を呼び掛けていくことが大切だ。
首相は会談で、日本人拉致問題の解決に向けて北朝鮮との対話や交渉に理解を求め、バイデン氏の支持を取り付けた。
日朝首脳会談を行うとしても、それはあくまで日米韓の連携を保つことが前提だ。
その原則を首相は忘れてはならない。
[社説]世界の安定へ重責増す日米同盟
社説
2024年4月11日 19:00
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK115050R10C24A4000000/
ウクライナ戦争や中東危機できしむ国際秩序をどう立て直していくのか。
岸田文雄首相が2024年4月10日、ワシントンでバイデン米大統領と会談し、日米同盟をあらゆる面で深め、世界の安定に貢献していく方針を打ち出した。
日本周辺の安全保障環境は厳しさを増しており、日米同盟の強化は不可欠だ。
一方で日本はかつてない重責を負うことになる。
米国への協力内容は曖昧な面もあり、首相はこれを明確にして国民の理解を得るべきである。
■指揮統制に実効性を
共同記者会見で、首相は
「力や威圧による一方的な現状変更の試みは、世界の如何なる場所であれ断じて許容できない」
「同盟国、同志国と連携し、毅然として対処していく」
と強調。
バイデン氏は
「同盟発足以来、最も重要な刷新だ」
と語った。
混迷を深める世界に米国だけでは対処できない。
安定した世界秩序に向け、同盟国との連携強化は重要だ。
ただそれに実質が伴うよう、どう具体化するかはこれからだ。
中核になるのが、自衛隊と在日米軍の連携強化に向けた指揮統制の在り方の見直しである。
自衛隊は陸海空やサイバー、宇宙といった多様な部隊を一元的に指揮する
「統合作戦司令部」
を2024年度中に立ち上げる。
米軍側のカウンターパートは、沖縄の海兵隊や横須賀の第7艦隊などへの指揮権を持ち、ハワイに本拠を置くインド太平洋軍となる。
日本とハワイは時差や距離があり、有事の際に緊密に協力できるか不安がある。
このため在日米軍の司令部機能を強化するといった改善案が検討に挙がっている。
米軍が偵察、監視能力を用いて敵国のミサイルを探知し、自衛隊がその情報を受けて迎撃ミサイルで撃ち落とす。
こうした協力を可能にするには双方による指揮統制の緊密な連携が不可欠だ。
ただ、自衛隊が米軍の指揮下に入ると、他国の武力行使との一体化は認めないという憲法上の問題が生じかねない。
米軍が主導する紛争に自衛隊がいつの間にか組み込まれるといった不安も残る。
日本政府は
「自衛隊が米軍の指揮下に入ることはない」
などと説明しているが、具体的な姿はまだ見えない。
実効性のある改善策を速やかに示してほしい。
中国の急速な軍拡を受け、日米同盟だけではインド太平洋の安定はおぼつかなくなってきた。
米国は同盟国、同志国と共に抑止力を高める
「統合抑止」
を掲げ、多国間の重層的な協力を進める。
米国と英国、オーストラリアによる安保枠組み
「AUKUS(オーカス)」
に日本が技術協力すると決めたのはその一環だ。
日米がフィリピンと初めて3カ国による首脳会談を開く意義も大きい。
フィリピンは南シナ海で中国から威圧され、小競り合いが続く。
日米がフィリピンを支える構図は、力による一方的な現状変更は許さないとの中国への強いメッセージになる。
海洋安保を中心に幅広い協力を期待したい。
もっとも、抑止力の向上だけでは地域の安定は望めない。
日米同盟の強化に中国は早速反発した。
両首脳が中国との対話の継続を確認したのは当然だ。
意思疎通のパイプを太くし、誤解や意図せざる衝突を防ぐ危機管理がこれまでにも増して重要になる。
この点で、米中間では閣僚の往来など一定の対話が機能しているのに対し、日中間は対話のチャンネルが乏しいのが気がかりだ。
■深まる経済・科学協力
日米は経済や科学技術の分野の協力も重層的にする。
グリーントランスフォーメーション(GX)分野では、両国の政策の相乗効果や影響を最大化するための対話枠組みを創設する。
脱炭素関連産業の競争力強化に生かしたい。
半導体などのサプライチェーン(供給網)強化に向け、両国の経済、技術戦略を整合させることも謳った。
ただ、その一環となる日本製鉄によるUSスチールの買収を、首相が後押しする姿勢が見えなかったのは残念だ。
先端技術は経済安保で重要性が増している。
核融合発電や次世代半導体、生成AI(人工知能)、月面探査などで協力を深め、中国を念頭に技術流出を防ぐと共に競争優位に立つ狙いがある。
その半面、中国やロシアの反発を招き、国際協力を前提としていた科学技術分野でも分断を促す懸念もある。
この点にも留意して協力を深めてほしい。
2024年11月の米大統領選の行方は見通せない。
今回の首脳会談が、選挙結果に左右されない強固な同盟に繋がるよう期待する。
(社説)日米首脳会談 説明なき一体化の加速
2024年4月12日 5時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S15910263.html
自衛隊と米軍の
「指揮統制」
の連携強化、対中国を念頭に置いた米英豪の安全保障枠組み
「AUKUS(オーカス)」
との協力、日米の防衛産業を繋ぐ当局間の定期協議の新設――。
岸田首相とバイデン大統領のワシントンでの日米首脳会談は、安保分野での協力の深化が前面に押し出された。
日米を地球規模で協働する
「グローバル・パートナー」
と位置付けた共同声明は冒頭、
「日米同盟は前例のない高みに到達した」
と謳う。
1960年の日米安保条約改定以来の
「最大の変化の1つ」
と評する米高官もいる。
だが、それに見合う国民への説明は後回しになっていないか。
加速する日米の
「一体化」
に幅広い支持が得られるのか。
岸田政権の今後の姿勢が問われる。
指揮統制の連携が求められる一因は、自衛隊の敵基地攻撃能力の保有にある。
米軍任せだった
「矛」
の役割の一部を日本が担うため、運用面での調整が不可欠となった。
自衛隊が2024年度中に陸海空の部隊を一元的に指揮する
「統合作戦司令部」
を設けるのに併せ、米側も在日米軍司令部の体制を強化。
平時・有事を問わず、連携を強める。
政府は、有事でも自衛隊と米軍の指揮系統は別だと強調する。
具体的な枠組み作り次第だが、圧倒的な装備や情報力を持つ米国に対し、日本が本当に主体的な判断ができるのか、心許ない。
防衛産業の連携では、日米でのミサイルの共同開発・共同生産や、米軍の艦艇や航空機の日本の民間施設での整備が念頭にある。
AUKUSとは兵器開発に必要な先端技術分野での協力を検討する。
日本は先の防衛装備移転3原則と運用指針の改定で、殺傷兵器の輸出に道を開いた。
英国、イタリアとの共同開発の合意が先に立つ形で、日本から第3国への戦闘機の直接輸出も認めた。
国際的な枠組みを先行させ、なし崩しに武器輸出を拡大するようなことが繰り返されてはならない。
日米が同盟強化を急ぐ背景には、急速な軍拡を続け、既存の秩序に挑戦する中国の存在がある。
ただ、経済分野も含め、中国への対抗のみが突出すれば、却って地域の不安定化に繋がりかねない。
共同声明は中国の強引な海洋進出を批判し、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘する一方、中国との率直な意思疎通の重要性や共通の関心分野での協力にも言及している。
言葉だけに終わらせず、首脳や閣僚級の直接対話といった実際の行動が、日本にも強く求められる。
岸田・バイデン会談 問われる日本の外交戦略
毎日新聞
2024/4/12 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20240412/ddm/005/070/067000c
自由で開かれた国際秩序が揺らいでいる。
その立て直しに日米がどのような役割を果たせるか。
同盟の在り方が問われている。
岸田文雄首相とバイデン米大統領がワシントンで会談した。
首相の国賓待遇での訪米は2015年の安倍晋三首相(当時)以来、9年ぶりとなった。
眼前に広がるのは殺伐とした世界だ。
国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアがウクライナに侵攻し、中国は威圧的行動で東・南シナ海の緊張を高める。
パレスチナ自治区ガザ地区では人道危機が深刻さを増している。
こうした国際情勢を踏まえ、打ち出されたのは、日米が世界の課題に取り組む
「グローバル・パートナーシップ」
という考え方だ。
インド太平洋地域を超え、地球規模で協力する。
■際立った対中強硬姿勢
防衛協力の拡大はその一環だ。
自衛隊と米軍の指揮・統制を向上させるという。
一元的に部隊運用を担う自衛隊の
「統合作戦司令部」
新設に合わせ、在日米軍も司令部機能を強化する。
有事における連携を強める狙いだ。
際立ったのは中国への対抗姿勢だ。
米英豪の安全保障枠組み
「AUKUS(オーカス)」
が先端技術分野での日本との協力を検討する。
日本を引き込もうとする米側の思惑も窺える。
経済分野でも半導体のサプライチェーン(供給網)強化や、人工知能(AI)などの技術開発で連携を表明した。
中国に重要物資を依存するリスクを軽減するためだ。
東アジアの安全保障環境は厳しさを増しており、日米同盟を基軸とした抑止力の強化は必要だろう。
ただ、懸念されるのは、日本が主体性を欠いたまま米国の世界戦略に巻き込まれることだ。
日本はこれまでも、防衛力強化を加速してきた。
集団的自衛権の行使が可能となる安全保障関連法を制定し、相手国の基地を叩く反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有も決めた。
周辺国との対話が不十分なまま、抑止力だけを強めれば緊張を高めかねない。
求められるのは、日本独自の外交戦略だ。
中国との関係で日米では事情が異なる。
米国は中国を安全保障と経済の両面で最大の競争相手と位置付ける。
日本は経済的な繋がりが強く、対中関係を安定化させることが求められる。
首相は記者会見で
「建設的かつ安定的な日中関係の構築を双方の努力で進めていく」
と語ったが、中国と合意した
「戦略的互恵関係」
の具体化はこれからだ。
東京電力福島第1原発の処理水放出を巡る対立、沖縄県・尖閣諸島周辺での中国公船による領海侵入など横たわる課題は多い。
米側は会談に先立ち、バイデン氏が習近平国家主席と電話協議した。
訪中したイエレン財務長官も新たな経済対話の枠組みで合意するなど、意思疎通を継続している。
日本側には、そうした強かな戦略が見えない。
■互恵関係の強化が必要
国際社会における米国の影響力は陰りを見せており、日本が多角的な外交を展開する重要性は増している。
インドを含めたグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国や、東南アジア諸国連合(ASEAN)などと関係を深めることは欠かせない。
東アジア情勢の安定に向けて日中韓の枠組みなどを生かすことも求められる。
2024年11月の米大統領選でトランプ前大統領が再選された場合、米国が再び
「自国第一主義」
に陥るリスクは燻る。
会談では、それぞれの脱炭素戦略を連携させ、投資を共同で進めることを確認した。
国内企業への補助金に関する共通のルール作りも進める。
内向きになりがちな米国を引き寄せる狙いがある。
首相は米議会での演説で、
「ほぼ独力で」
国際秩序の維持に貢献してきた米国を讃え、
「最も親しい『トモダチ』」
として、日本も役割を分担する決意を示す。
2024年3月に亡くなった五百旗頭真・元防衛大学校長は
「20世紀の日本は中国、米国の双方と戦争をして滅んだ」
と指摘し、
「日米同盟」
と
「日中協商」
を両輪とする外交を提唱した。
日米同盟を堅持しつつ、中国とも相互に利益を得られる関係を築くことを説いたものだ。
大国が身勝手な振る舞いを繰り返す中で、法の支配に基づく国際秩序をどう取り戻すのか。
今求められているのは、日本外交の骨太のビジョンだ。
<社説>日米の軍事協力 衆議なき一体化を糾す
2024年4月12日 08時23分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/320785
岸田文雄首相とバイデン米大統領が日米軍事協力の強化に合意した。
岸田政権が2022年12月に改定した国家安全保障戦略に沿った内容だが、同戦略は国会の議決も国民の審判も受けていない。
米国との軍事一体化を国民的な議論を経ず、既成事実化するような振る舞いを糾さねばならない。
両首脳は会談で、自衛隊と在日米軍の相互運用性を高めるため、双方の指揮・統制枠組みを見直すことで一致。
防衛装備品の共同開発・生産に関する定期協議の開催にも合意した。
日本は殺傷能力のある武器の輸出を一部解禁し、迎撃用地対空誘導弾パトリオットの対米輸出も決めており、武器を巡る日米協力は更に拡大されることになる。
首相の国賓待遇での訪米は、日本の安保政策の転換を米側が評価した結果でもあるが、そもそも国会の関与も国政選挙もなく、平和憲法の理念を形骸化させる政策転換は許されるものではない。
いくら米国と合意しても、国民が幅広く賛同しなければ、合意の有効性すら疑われかねない。
覇権主義的な動きを強める中国に対抗するためとはいえ、日米が
「グローバルなパートナー」(共同声明)
として軍事一体化を際限なく進めれば、米国の戦争に日本が巻き込まれる懸念も高まる。
日本側には、2024年11月の米大統領選でトランプ氏が返り咲くことも想定し、米国の東アジア関与を確実にしておきたい思惑もあろう。
首相が米上下両院合同会議での演説で、米国第1主義を掲げるトランプ氏の支持層を意識し、米国が引き続き世界秩序を主導するよう求める狙いは理解する。
ただ
「日本は米国と共にある」
との呼び掛けは、米国に常に追従し、軍事・財政負担の一層の用意があると受け取られかねない。
イラク戦争の例を挙げるまでもなく、米国が判断を誤れば、国際情勢に深刻な影響を及ぼす。
首相が
「日本は米国の最も近い同盟国」
と胸を張るなら、米国が独善的な行動に走る場合には誤りを正し、修正を促す役割があることも忘れてはならない。
http://www.asyura2.com/24/senkyo294/msg/143.html#c36