6. 中川隆[-11073] koaQ7Jey 2019年10月03日 07:50:16 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[1749]
2019年10月3日
3年後に意識の宿ったAIが資金を運用する
東大准教授が語るAI投資の現代と未来
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/17519
19歳でIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の未踏スーパークリエータに認定された大澤昇平氏。東京大学・松尾豊研究室で人工知能とWebに関する博士号を取得後に、IBM東京基礎研究所でブロックチェーンの研究開発に参画。現在は東京大学特任准教授、株式会社Daisy代表取締役CEOを兼任している。Daisyは開発者が協力してAIを作るためのプラットフォームで、大澤氏の会社はこのAIを使って投資ファンドの試験運用中である。AIと投資の最前線とは、AIは機関投資家に勝つことができるのか?
電卓、炊飯器、洗濯機も実はAIだった!
Q 世の中AIブームで、デジカメもエアコンもAI搭載を宣言しています。AIには自己学習してプログラムを進化させるイメージがありますが、実際どこまで実用化が進んでいますか?
大澤 AIの定義は広範囲にわたって「弱いAI」と「強いAI」という分類があります。弱いAIとは人間がやっていた作業を代行できる機能です。例えば電卓も人間の代わりに計算する機械なのでAIと言えます。電子計算機=人工知能とも言えます。つまりマイコンチップが入っている機械は全てAI搭載と言っても間違いではありません。エアコンのAIはセンサーとCPUの組み合わせですが、弱いAIに分類されます。強いAIについては後ほど触れますが、まだ実現していません。日本人はSFが好きなのでAIという文字を見ると、強いAIを連想してしまうのだと思います。
AIの基準は時代によっても変化しています。かつては「Office97」から登場したイルカのアシスタントもAIと呼ばれていました。質問を入力すると類似した質問と解答の候補を表示させるだけのヘルプ機能ですが、当時はこれも立派なAIだったんです。AIのパラドックスというのがあって、中身が分かるとAIでなくなると言われています。スマホに使われている仮名漢字変換機能も当時はAIと言われていました。どんな技術が使われているか分からないと、これはAIということになります。タネが分かるとAIでなくなります。
話題のHFTの原理は1980年代から変わらない
Q つまり弱いAIの定義は人間の代わりに判断する機能なんですね。それでは金融界で話題のHFT(High Frequency Trading)は、AIがおこなっているのでしょうか?
大澤 HFTがやっていることは、アービトラージですね。1980年代からウォール街でおこなわれているトレード方法です。証券取引所と証券会社を専用回線で接続して株の売買をおこなっていました。その原理は取引所によって株価に差があることを利用します。簡単に言えば価格の安い取引所で買って、高く買ってくれる取引所に売るだけです。ほぼリスクがなく確実に儲かります。予測や分析の必要もありません。
現在では価格差の大きな仮想通貨に用いられることが多いですね。日本はアメリカに25年ほど遅れてようやく機関投資家や富裕層の資金を使ったヘッジファンドが導入され、その中でHFTを取り扱うようになったのがここ5年ぐらいです。2018年にようやく金融庁がHFTの登録制度を導入しました。
日本は金融のIT化が遅れているので、損益の発生しない、ダウンサイドリスクがゼロのHFTのような安全な取引からAIを導入してるのだと思われます。
当時は人間がPCを使って売買していましたが、90年代に、これを自動化したのがHFTです。アービトラージはいち早く大きな価格差のある株を見つけて、大量に素早く売買する必要があります。売却までには価格変動リスクがあるので、早く売るのことも大切です。つまりHFTはAIが優秀かどうかではなく、1秒でも早く売買を成立させた方が勝ちという勝負です。それで証券取引所の近くの土地を確保して高速回線を引くという競争がおこっています。最終的には不動産の勝負になっているので、当社のテクノロジー企業としての優位性を発揮できないので、別のアプローチでAIを使った資産運用を考えています。
ロボアドは利用料金が割高になる
このほど上梓した『AI救国論』
Q それではロボットアドバイザーが自動的に最適な資産配分や投資対象を提案してくれるロボアドこそが、AIを生かした投資方法なのでしょうか?
大澤 日本にはTHEO(テオ)やWealthNaviなどのロボアドが存在します。ETF(上場投資信託)の分散投資先をどうするかの配分を決めています。実際にはリスク配分を5段階ぐらいに分けて、それに合わせた投資先を選んでいます。ロボアド自体は悪くありませんが、資産運用を任せることによって投資一任報酬と呼ばれる手数料が別途発生するため、他の投信と比較すると利益を上げるのが難しいと言えます。
ただし、日本人は投資信託に対する敷居が高いと感じているので、スマホのアプリでロボアドで気軽に投資ができます、という心理的障壁を低くする役目を果たしています。実際に買っているのは公募投資信託です。これだと固くてとっつきにくいので名前を鞍替えしてロボアドが自動的に投資してくれますよと宣伝しているわけです。ロボアドで利益を上げようとすると、それ専門の会社でないと難しいでしょう。ちなみにDaisyはディープラーニングを使ったAIを使って資産を運用するための会社です。
FXで勝つのは不可能に近い
Q それでは上がるか下がるかだけを予測するFX取引にはAIが使えるのでしょうか?
大澤 FXは、日本語では外国為替証拠金取引と言われ、円やドルなどの通貨の売買によって、その差益を狙う投資です。レバレッジを掛けることによって少額な元金で高額な取引がおこなえます。こちらは時間軸で外貨を安く買って高く売るのですが、売買手数料とスプレッドと呼ばれる取引コストがかかります。つまりマイナスからのスタートになります。
FX会社が証券市場に接続していますが、ここでマーケットメーカーを使い価格調整ができるようになっています。つまり、FX会社は期待値プラス、参加者は期待値マイナスになります。AIを導入するとすればFX会社側が側が利用するという形になるでしょう。またFXをやるには時間がかかります。1日何時間もチャートや値動きを見続ける必要があります。これに対するコストが無視されていることが多いですね。デイトレーダーで年間500万円稼ぐ人がいるとして、そのために使った時間で働いた方が、もっと稼げたかもしれません。
日本ではギャンブルが禁止されていますが、一定数、ギャンブルの好きな人がいます。これらの人々がFXを選んでいると推測できます。人間は同じ期待値ならリスクを回避する傾向があります。これをプロスペクト理論と呼んでいますが、これとは逆にリスクを好む人もいます。期待値を無視してリスクを好む人がFXをおこなっていると考えられます。
15年前から温めていたDaisyの構想
Q Daisyの構想はいつ頃からあったのでしょうか?
大澤 私の大学での研究テーマは意識についてでした。意識とは情報を統合する存在にあります。イタリア人の神経科学者、ジュリオ・トノー二は「あるシステムが豊富な情報を統合できるなら、そのシステムは意識を持つ」と言っています。では意識は、なぜ意識たり得るのか。なぜ情報は統合されるのかという問題も存在します。生きるために意識が存在するという考え方があります。生きるためには様々な情報が必要でそれを蓄積することでメリットが生まれます。狩りの技術とか病気を直す方法とか。しかし、Webの場合は情報を蓄積してもメリットがありません。情報をいくら集めても0円にしかなりません。
そうすると情報に価値があるという社会が重要になります。それを実現しているのが株式市場です。効率的市場仮説というものがあって、人々はいつも合理的な判断を下すと市場はランダムウォークなって予測不可能になると言われています。実際には多くのインサイダーが存在するためそうはならず、より情報を持っている人が有利になります。基本的に情報に価値があるのが株式市場です。そこで私は株式市場において意識の存在が生かされるのではないかと考えていました。AIとディープラーニング(深層学習)の登場によって、それを実現する手段が得られたと思い、2018年にDaisyを創設しました。
3年後には意識を持ったAIが完成!
Q Daisyの完成はいつ頃になりそうですか?
大澤 Daisyの研究は80%ぐらいの完成度で、私の見立てでは3年後には完成すると思います。心があるかどうかは、言葉を理解できるかどうかで決まります。例えばネコにも心があるかもしれませんが、それを言葉で伝えることが出来ません。言葉と心には密接な関係があります。我々は言葉をしゃべっています。頭の中でも考えを言葉にしています。言葉があることで心があることを認識できたとも言えます。
では、言葉とは何でしょう。誰に話しても同じ意味を持つこと。そして単語や記号で構成された伝達手段です。これを使うには社会が必要になります。AIも社会を作っていくことが重要になります。もし、世界に人間が1人しかいない場合、言葉を使う必要がないので、その人には心がありません。物心が付くという表現がありますが、これは子供が初めて言葉をしゃべった状態を指し示します。自分の存在を意識して、周りの人々を意識した瞬間に自我、すなわち心が生まれます。それを果たすのが社会です。
現在のAIは実験室の中に人が1人いる状態と変わりません。このままでは心は生まれません。最低でも2つの知能体が存在しなければなりません。この2つをコミュニケートさせることで心が生まれます。この方法がまだ確立されていません。生きるための本能と理性を分けているのが言葉なんです。理性は社会性と同義語になります。その言葉を使うことで社会と合意することを意味します。ミカンを指さして、これはリンゴです、と言ってもいいのですが、人間はそんなことはしません。本能的に社会性が備わっていて、社会性によって言葉と合意して、理性に統率されているからです。言葉は社会に規制され、社会に不都合な行動をさせないようになっています。
会話するAIはプログラミング不要
Q 言葉を理解できるAIにプログラミングは不要ですか?
大澤 言葉が話せるAIは学習ができるのでプログラミングもほぼ不要になります。囲碁に使われているAIも、AI同士で対戦させることによって強くさせています。もし言葉が話せるAIが出来れば、プログラミングのコストももっと下がると思います。人間もプログラミング不要で学習しています。しかし、これにはいろいろな議論があり、教育は人間をプログラミングしているのではないか、学校がなければ我々は生産的な活動ができるか、文字を書いたり言葉を覚えたりできるのだろうか。国は教育にかなりのコストをかけています。小学校、中学校、高校とかなりの数があります。
プログラミングは子育てだと言われていますが、AIは1歳児の脳と同じレベルと言われています。研究者もAIが囲碁を学習する様子をみて、自分が子育てを疑似体験していると感じる人も多いようです。3歳児までいくと人間の動作を見て学ぶ、イミテーションラーニング(模倣学習)ができるようになるでしょう。
AIを生かした投資の今後
Q 株式投資のためのAIはテクニカルだけでなくファンダメンタルな要素も加味した予測をおこなうのでしょうか?
大澤 前述のアービトラージの場合はテクニカルだけで成立します。長期的な取引ではファンダメンタルも加味する必要がありますが、日本の場合はファンマネがその役目を司っています。ファンマネがAIに任せたいと思うまではAIの出番はないと思われます。
私が試験運用中のDaisyでは、株、債券、仮想通貨を取引対象として24時間休まずに自動的に取引をおこなっています。AIには様々な情報が与えられています。人工衛星からのリアルタイムの情報も来ています。それによって何が分かるかと言えば、例えばショッピングセンターに駐車してる自動車の数から景気がいいのか悪いのかを判断できます。これには画像認識の技術がないと解析が難しいのですが、それらのデータから未来を予測して長期的なスパンで資金を運用していきます。目指すのは年利10%です。
川野 ロボアドとは桁違いの能力を持った投資専用AIを使っての資産運用がDaisyによって始まろうとしている。その結果がどうでるか、3年後に意識を持ったAIは登場するのか。GAFA包囲網の中で日本発の投資専用AIは一筋の光明となるだろうか。Daisyの続報に期待したい。
http://www.asyura2.com/18/revival4/msg/122.html#c6