188. 中川隆[-11066] koaQ7Jey 2019年3月30日 11:55:33 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[957]
2019.3.28 週刊ダイヤモンド編集部+
株・債権・為替「機械取引」の正体、個人は短期の振れを追うな
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/725.html
株・債権・為替「機械取引」の正体、個人は短期の振れを追うな
『週刊ダイヤモンド』3月30日号の第1特集は「株・為替の新格言」です。
昨年10、12月の株価急落に、年明け早々の外国為替市場の短時間の急変動。主犯として機械取引が挙げられますが、中央銀行による相場への影響も大きいものとなっています。高頻度な取引を繰り返すHFTに加えて、高度な数式モデルを駆使して運用するヘッジファンド。その実態に迫りました。
「30年以上にわたり運用業界にいるが、クリスマスにこれほど相場が動いたのは初めて。衝撃だった」
そう話すのは、富国生命投資顧問の林宏明常務取締役だ。昨年の株式相場は長らく続いたゴルディロックス(適温)相場から一転、2月のVIXショックや10、12月に相次いで起こった株価の暴落など、冷や水を浴びせられた。
とりわけ12月は、クリスマスの12月25日にダウ工業株30種平均が約653ドル下落。それにつられて日経平均株価は約1000円もの大暴落となり、市場関係者を凍り付かせた。
従来、米国での12月の相場といえば節税対策のために株式を売却することから株安傾向となるものの、株価は大きく動かない(年末から上昇する)というのが、市場の「アノマリー」(明確な根拠はないが、よく当たる相場における経験則)だ。とりわけ、クリスマスは市場関係者が休暇を取るため、「動かない相場だった」(林氏)。
こうした相場変動に加え、年始の1月3日には早朝という時間帯にもかかわらず、わずか数分の間に1ドル当たり4円も上昇するという異変も起きた。
これら“薄商い”のタイミングでの相場の大変動に対し、犯人説として挙がってくるのが、コンピューターが自動で注文を出す機械取引の存在だ。とりわけ、超高速で取引を繰り返す、「HFT(高頻度取引)悪玉論」が根強い。
確かに、機関投資家からの注文を証券会社の人間が処理することは減り、あらかじめ定めておいた手順に従って、コンピューターが自動的に注文の数量やタイミングを判断する取引が増えている。いわゆる「アルゴリズム取引」だ。
こうした取引は古くからあるが、AI技術の進化により、近年高度化が著しい。それは金融市場において、「超高速化」と「高難度化」の二つに大別される(下図参照)。
まず、超高速化については、先のHFTの台頭が注目されている。マイクロ秒(100万分の1秒)単位で発注を繰り返す高速取引のことで、2010年5月に米株式市場で起こった「フラッシュクラッシュ」の主因とされている。
日本においても、10年に東京証券取引所がアローヘッドを稼働させてHFTの環境が整った。東証の近くに「コロケーションエリア」を開設し、そこに置かれたサーバーにHFT業者がさまざまな売買プログラムを入力、アルゴリズム取引を行っている。
金融庁によれば、東証の全取引に占めるコロケーションエリアからの注文は件数ベースで75%。「その半数以上がHFTだろう」と、複数の専門家たちはみる。
いきおい膨大な受発注を繰り返すことで相場を支配、価格を操っているかに見えるが、さにあらず。「HFTが相場変動の振れ幅を増長している面もあるが、相場のゆがみをいち早く見つけてサヤ取りを行うことで、むしろ早期のゆがみ是正につながっている」というのが市場関係者の大方の見方だ。
仮に、市場を支配するような存在であるならば巨額の利益を稼いでいるはずだが、そうした様は見当たらない。むしろ、「HFT最大手のバーチュでさえも厳しく、事業の多角化でしのいでいる状態」と、ある市場関係者は指摘する。
実際、HFTのビジネスモデルは、相場でいう「1カイ2ヤリ」に近い。つまり、101円で買って102円で売る取引を超高速で行っているようなもの。ただし相場が逆に振れれば損をするので、その兆候をいち早く見つけて売買するために、スピードを速める技術を競い合っているというわけだ。
例えば、CPUとメモリー間の電子的な距離すら縮めるため、「直接プログラムを書き込める特殊なチップを採用するケースもある」と、スパークス・アセット・マネジメントの水田孝信上席研究員は言う。
一方で、HFTが市場に大量の流動性を供給しているという側面も見逃せない。占有率の高さは、裏を返せば、「HFT業者がいなくなれば、東京の株式市場はスカスカになるということ」だと別の市場関係者は指摘する。
とはいえ、HFTの実態が不透明なのも確かだ。そこで金融庁は登録制度を進めているが、規制を厳しくすれば東京からHFTが去ることにもなりかねず、痛しかゆしといったところが実情だ。
次に高難度化について見ていこう。こちらのアルゴリズムは、複雑な数理モデルを組んで高度な運用を行うクオンツ系のヘッジファンドで利用されることが多い。
スピード重視のHFTとは異なり、クオンツで使う際のアルゴリズムは複雑なため、「HFTと比べるとスピードは格段に遅い」と、あるヘッジファンド関係者は話す。
では、そのクオンツ系アルゴリズムについて、昨年11月に野村アセットマネジメントがリリースして話題を呼んだ投資信託「ダブル・ブレイン」を例に見てみよう。
株と債券は、「逆相関」の関係にあるというのが定説だ。金利が低下すれば株価が上がり、片や債券価格は下がるといった具合だ。こうした局面にあるとみれば、株をロング(売り持ち)し、債券をショート(買い持ち)して運用する。
逆もしかりだが、問題なのは、株と債券が同時に下落すること。実は前述の図のように株と債券の逆相関は2000年以降のことで、株と債券の同時安は現在でも起こり得る。実際、下図のように、10分置きという短い間隔で相関をチェックすれば、共に下落する局面が浮かび上がる。こうした“予兆”を高い確率で見抜けるのが、最新のアルゴリズムというわけだ。
これら超高速化を極めたHFTと超難解な数式モデルを搭載した“電脳”が跋扈する相場は、かつてより振れ幅が大きくなるが、一方でゆがみの収縮も速い。個人投資家は、短期の“振れ”は無視するに越したことはないだろう。
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/725.html