1. 戦争とはこういう物[3296] kO2RiILGgs2CsYKkgqKCpJWo 2020年4月19日 13:20:09 : vElqk2s3q2 : ZWljbFJaUGQ1dUU=[104]
山中伸也先生のHP(https://www.covid19-yamanaka.com/cont4/14.html)より転載。
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数年の長期戦になるかも(ハーバード大学の予測)
Kisller et al., Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science 4月14日オンライン版
(内容)
昨日、各社が報道していた論文。ハーバード大学によるアメリカの予測。内容が濃くて読み込むのに時間がかかりました。少し詳しめに解説します。
・ベータコロナウイルス
新型コロナウイルスの正式名はSARS-CoV-2でベータコロナウイルスの一つです。人間に感染するベータコロナウイルスは他に、SARSの原因ウイルス(SARS-Cov-1)、MERSの原因ウイルス、そして普通感冒の原因ウイルス(HKU1とOC43)の4種類があります。SARSとMARSは、致死率も高く、感染者の同定と隔離により封じ込めることが出来ています。一方、HKU1とOC43は感染しても無症状であったり、軽い風邪の症状のみの場合がほとんどのため、感染者の封じ込めは不可能です。さらにHKU1とOC43に対する抗体は、1年くらいで消失します。また冬になるとウイルスの力が増す特徴があり、HKU1ととOC43による普通感冒は毎冬、流行を繰り返しています。季節性インフルエンザと同じ特徴です。
・新型コロナウイルスの感染パターンの予想
新型コロナウイルスも、感染者の多くは無症候か軽症のため、感染者の同定と隔離による封じ込めは困難と考えられます。今後、どのような感染様式を示すかは、抗体の寿命、季節性の有無、抗体の交差性(HKU1やOC43への抗体がどの程度、新型コロナウイルにも効果があるかで決まります。一番、需要な要素は、抗体の寿命です。もし抗体の寿命が1年程度で、対策を何も取らないと仮定すれば、毎年の大流行を繰り返すと予測されます。抗体の寿命が2年であれば、隔年で大流行します。一方、抗体の寿命が半永久であれば、今年のパンデミックので感染は終息することになりますが、人口の半分以上が感染し、医療は間違いなく崩壊します。
・活動制限はどれくらい続けるべきか(1回のみの対策の場合)
この予測の大前提として、感染拡大は、人口の半分以上が感染し、いわゆる集団免疫の状態になるまで続くと仮定しています。また新型コロナウイルスに対する抗体は半永久的に持続し、一方でHKU1やOC43への抗体では影響を受けないとしています。対策の最大の目的は医療崩壊を起さないことです。アメリカでは人口1万人当たり、重篤患者用のベッドが0.89あると考えられています。したがって、各時点における重篤患者数がこの数字以下にする必要があります。何も対策をしないと、5月くらいにはこの数字が20以上になってしまいます。強力な活動制限を行うと、医療崩壊を防ぐことが出来ます。しかし、活動制限を解除すると、数か月後にはまた大流行が起こり、医療が崩壊すると予測しています。活動制限を継続すると、流行も医療崩壊も抑えることが出来ます。しかし、長期の活動制限は社会や経済の崩壊をもたらします。また人口に占める感染者の割合が増えず集団免疫が成立しません。活動制限を中断すると、すぐに大流行が起こる状態が続くことになります。
・対策を繰り返す場合
医療崩壊を防ぎ、しかも徐々に感染者を増やして集団免疫を成立させるためには、活動制限を断続的に行う必要があります。
図Aは季節性がないと仮定した予測です。数か月の活動制限を、短い間隔で何度も繰り返す必要があると予想されます。人口における感染者数の増加が緩やかで、2022年でも50%、すなわち集団免疫が成立しませんので、それ以降も断続的な対策が必要です。
図Bは季節性がると仮定した場合です。対策の継続期間や、間隔を、少し緩めることが出来ますが、やはり2022年以降も継続が必要である。
図CとDは、医療が整備され、重篤患者用のベッドが2倍になったと仮定した予測である。Cは季節性なし、Dは季節性ありの予想です。対策をかなり緩めることができ、2022年には集団免疫が成立します。重篤化を減らす治療薬や有効なワクチンが完成すると、同様の効果が期待できる。
(コメント)
1年どころか、数年の戦いになるという、厳しい予測です。新型コロナウイルスへの抗体の寿命を半永久と仮定していますが、HKU1やOC43と同様に1年程度で抗体が消失するとすれば、状況はより厳しくなります。医療体制の整備、治療薬やワクチンの開発に全力を尽くすととともに、長期の活動制限を強いられる方に対する経済的支援が必須です。
日本では、これまでのところ、武漢、イタリア、ニューヨークのような爆発的な感染者増大が起こっていません。一方で行動制限は、最も緩い国の一つでもあります。なぜ緩い対策でここまで持ちこたえているのか、現在のところ不明です。日本特有の何かがあるはずです。その何かを明らかにし、予測に組み込むことが、日本での対策を長期視野から決定するために必須と考えられます。
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/14/science.abb5793
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http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/896.html#c1