年金財政は破綻しないが給付水準は下がる 毎年「仙台市」が消えていく
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2018.5.4 産経新聞社論説委員 河合 雅司 PRESIDENT 2018年1月1日号
日本の人口が減りつづけている。出生数は2016年に初めて100万人を下回ったが、2065年には約55万人にまで落ち込むという。将来のためにどんな備えが必要なのか。「20年後の日本」を襲う6つの課題について識者に聞いた。第4回のテーマは「年金崩壊」だ――。(全6回)
※本稿は、「プレジデント」(2018年1月1日号)の特集「老後に困るのはどっち?」の掲載記事を再編集したものです。
20年後、年金の積立金は枯渇するのか
2016年に日本の出生数が初めて100万人を切った。少子高齢化が進む日本では、08年から人口が減り始めた。最初は毎年、数万人レベルだったが、17年は30万人ほど減少した。今後は、50万とか100万という単位で人口が少なくなっていく。毎年、仙台市が消え続けるようなものだ。
このまま少子高齢化が加速すると、15年には現役世代2.3人が1人の高齢者を支えていたのが、40年は1.5人が、また65年になると1.3人が1人の高齢者を支えることになると予測されている。現役世代の負担は増す一方なのだ。これから老後を迎える世代にとって「年金保険料を納めても給付が受けられないのではないか」と、不安を抱える人は多い。
「現在の高齢者に比べ今後の受給者の給付水準は下がる」
17年の総選挙で自民党は、消費増税分の使途変更を公約に掲げた。今後、財源はきちんと確保できるのか、国民はどこまで負担すればよいのか、そう憂慮する人もいるだろう。「40年以降に厚生年金、国民年金の積立金が枯渇する」との試算もある。
年金制度には、破綻を避けるため給付額を調整する「マクロ経済スライド」が導入されたため、年金財政そのものは破綻することなく、今後も持続が可能となった。これは、年金支給額決定にあたって、年金を支える現役世代の減少等を反映させる仕組みだ。結論的にいうならば、年金は「破綻させない」ための仕組みづくりが終わっているといえるだろう。ただ、現在受給している高齢者と比較すれば、今後の受給者となる世代の給付水準は下がる。今後の世代の年金額を生活できるだけの水準として維持していこうとするにはさらなる改革が必要となる。
今後、さらに大きな懸念は、非正規雇用が増え、年金保険料を納めてこなかった人たちが増えることだ。最も大変なのは高齢者人口がピークに達する42年。この時期に高齢者になる人たちは、意欲も能力もあったにもかかわらず、就職氷河期で働きたくとも働けなかった世代。社会に翻弄されたような人たちが高齢者になるとき、その世代をどう支えていくべきなのか。74歳以下の人たちを“若者”として労働参加を促していく取り組みも必要となるだろう。
河合雅司(かわい・まさし)
産経新聞社論説委員
1963年、名古屋市生まれ。中央大卒。専門は人口政策、社会保障政策で、内閣官房有識者会議委員などを務める。近著にベストセラーとなった『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』。
(構成=青柳雄介 撮影=横溝浩孝)