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[経世済民121] 「日銀vs三菱」戦争収束?「赤組」2人の審議委員で臆測 日銀物価見通し小幅下方修正 日本株続伸、米財務長官と円安、米株高
「日銀vs三菱」戦争収束?「赤組」2人の審議委員で臆測
2017/4/18 17:18日本経済新聞 電子版
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 「三菱系2人は衝撃だ」。政府が日銀の審議委員人事を提示した18日午前、あるメガバンク系証券の役員は驚きの声を上げた。提示されたのは三菱東京UFJ銀行の鈴木人司氏と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏。片岡氏はいわゆる銀行枠ではないが、三菱が2つ重なるのは異例だ。金融業界では臆測が飛び交っている。

 鈴木氏は以前から「銀行OB枠」の本命候補だった。銀行出身の審議委員は中原真氏(2001〜…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC18H0A_Y7A410C1000000/


日銀委員の新候補 片岡氏「ぶれないリフレ派」
鈴木氏「市場に精通」
2017/4/18 13:00日本経済新聞 電子版
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 政府は18日、日銀の次期審議委員に三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏(44)と三菱東京UFJ銀行常勤監査等委員の鈴木人司氏(63)を充てる国会同事人事案を衆参両院に提示した。7月23日に任期満了を迎える木内登英氏と佐藤健裕氏の後任となる。

 片岡氏は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの前身である三和総合研究所に入社後、エコノミスト畑を歩んだ。積極的な金融緩和で物価押し上げを目指す政…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HBP_Y7A410C1000000/


<東証>三井住友FGが反発 日銀審議委員の人事案には反応薄
2017/4/18 13:05日本経済新聞 電子版
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(13時、コード8316)反発している。一時、前日比88円(2.3%)高の3904円まで上昇した。三菱UFJは2.3%、みずほFGは2.2%上げる場面があった。17日の米株式市場でJPモルガン・チェースなど金融株が上昇し、国内の大手銀行株に買いが波及した。株高などリスクを取る動きを背景に日米の長期金利が上昇しており、利ざやの改善期待も銀行株買いに弾みを付けた。現時点で業種別TOPIXで「銀行」の上…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HCC_Y7A410C1000000/


経済政策部 上席主任研究員 片岡 剛士
年も改まり2017年となった。昨年1月の拙稿(2015年の回顧と2016年の経済展望 )において、筆者は2016年が「原油価格とドルのゆくえがホットなトピックとなるだろう。」と述べた。そして日本経済にとっては「こうした動きに加えて、増税・緊縮の流れが撤回・抑制され、名目GDP拡大路線と整合的な経済政策が採用される動きが強まるか否かが注目点といえるだろう。」と書いた。2016年はどのような年だったのだろうか。そして2017年はどのような点に着目したら良いのだろうか。以下で検討してみることにしたい。

■「長期停滞」の可能性を示唆した2016年の先進国経済
■トランプ新大統領の経済政策が世界経済に与える影響
■トランプ新大統領の経済政策の現実味
■中国経済の何をどう懸念すべきか?
■5年目に突入するアベノミクス
■金融政策の効果
■アベノミクスを貫徹するために財政支出拡大を
■FTPL(物価水準の財政理論)とアベノミクス再構築
http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/kataoka/column/kataoka170119

2013年07月31日
『アベノミクスのゆくえ』 片岡剛士氏インタビュー
【片岡剛士氏インタビュー】異次元緩和から消費税増税まで――アベノミクスのこれまでとこれからをどう捉えるか
大胆な金融緩和などを主張する安倍総理の経済政策は、アベノミクスと呼ばれて、その是非をめぐってさまざまな書籍が発売された。その中でも『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書)は、安倍政権の経済政策を過去・現在・そしてこれからの観点から、明晰かつ詳細に論じたものとして定評がある。参院選が自民党の圧勝で終わり、ねじれが解消された今、著者の片岡剛士氏にアベノミクスの実態と今後の展望についてお話をうかがった。
異次元緩和のインパクト

──アベノミクスについては、有識者やマスコミの中でも賛否両論ありますが、『アベノミクスのゆくえ』では、第一の矢である「大胆な金融緩和」こそが、第二の矢である「機動的な財政政策」、第三の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」を適切に作動させるための必要条件としています。本書の発売(2013年4月)と同時期に、日銀のいわゆる異次元緩和が行われましたが、その動きについてどう評価していますか?

photo
『アベノミクスのゆくえ』
 片岡剛士氏(以下:片岡氏)■「異次元緩和」については、高く評価していますし、すでにさまざまな指標で景気回復の兆候が見られています。日銀が4月4日に発表した異次元緩和について、執筆当初は盛り込めませんでしたが、2刷以降、また電子書籍では内容についての言及も入れています。新しく日銀総裁となった黒田東彦さんは「これまでと次元の異なる金融政策だ」と言い、「消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に達成・維持する」と発表しました。

 これはいままでの日銀には考えらないことでした。政策担当者の政策に対する考え方をレジームと呼びますが、そのレジームを変えることは政策の転換を一般の人に認知させる鍵になります。これまで日銀はデフレの原因が政府にあるかのように責任逃れをしてきましたが、黒田さんは明確にインフレ目標を打ち出して、従来とは異なる立場を示しました。レジームチェンジを明確に宣言したわけですね。

 安倍政権ができるまでの金融政策のレジームは、「現在でも十分に金融緩和をやっていて、それでもデフレから脱却できないのは政府の規制緩和が進んでないからだ」とか、「少子高齢化が原因」とか、「中国をはじめとした新興国の安い商品が輸入されてくるからだ」といったものでした。「日銀の金融緩和が足りない」「日銀の金融政策が間違っている」と批判しても、聞いてくれる人はほとんどいない状況だったのです。

──実際のところ、日銀のそれまでの金融政策をどうご覧になりますか?

 片岡氏■1985年のプラザ合意以降、日銀の金融政策はずっと間違い続けていました。プラザ合意後の円高不況に対処するために急激な利下げによりバブルを作り、そしてバブルを終わらせるために急激な金融引き締めを行なった。バブル崩壊以降は中途半端な金融緩和しかしないで、景気を十分に回復させることができず、1997年についにデフレに突入してしまいました。

 そして1999年に日銀はゼロ金利に踏み込み、ITブームもあって景気回復がはじまったと思ったら、2000年8月に政府の反対を押し切ってゼロ金利を解除し景気後退を促してしまった。そして翌年3月にまたゼロ金利を復活させ量的緩和に踏み切って景気が回復局面に戻ったのに、2006年3月にはデフレ脱却を待たずに量的緩和を解除し、同年7月には政策金利を引き上げました。そのため2008年2月から日本は再び景気悪化局面に突入し、8月のリーマン・ショックを迎えるわけです。

 リーマン・ショック以降、欧米諸国は大規模な財政・金融政策に踏み切りました。その時期の日本は、財政政策は行ったものの、一方で日銀の金融緩和は他国と比較して見劣りするもので、デフレと円高は深刻化してしまいました。その結果、リーマン・ショックの震源地でないはずの日本への影響が深刻となり、いつまでたってもデフレから脱却できないという状況になってしまったのです。そして東日本大震災が起こり、野田政権のもとで消費税増税が決まるという流れでした。

 野田政権当時は本当に手詰まり状態で、日本経済がよくなる可能性がまったく見出せませんでした。それなのに世界と同じ水準の金融政策をやったほうがいいと言うと、周りから石を投げつけられるような状況でした。

──そのような状況で新政権が誕生したのですね。

 片岡氏■はい、安倍政権が登場し、大胆な金融政策を掲げ、選挙に勝ったわけです。ちょうど任期が切れる日銀総裁に黒田東彦さんを、副総裁の一人に長年リフレ政策を主張してきた岩田規久男さんをあてたのです。

 安倍‐黒田体制となって金融政策のレジームが180度変わり、4月4日の異次元緩和につながります。安倍政権が誕生せずこれまでと同じレジームに沿った政権が誕生すれば、失われた20年が延長されて、失われた30年になることすら、ありえたかもしれません。『アベノミクスのゆくえ』はこういう状況の中で、過去の経済政策を検証し、アベノミクスの三本の矢の考え方を分析し、将来の日本経済の行く末とアベノミクスの落とし穴をできる限り詳しく論じたものにしたつもりです。

http://www.sbbit.jp/article/cont1/26658


 


日銀:17年度物価見通しの小幅下方修正を検討、27日会合で

日高正裕、藤岡徹
2017年4月18日 17:20 JST
携帯電話機と通信料が下落、生鮮食品除く食品も低迷
「現実的ではない見通しでは対話成立しない」とJPモルガン鵜飼氏

日本銀行は2017年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通しを小幅下方修正する方向で検討している。26、27両日の金融政策決定会合で策定する四半期の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で公表する。複数の関係者への取材で分かった。

  日銀が1月の展望リポートで示した17年度のコアCPI見通し(政策委員の中央値)は前年比1.5%上昇と、民間エコノミストの予想(0.83%上昇)を上回っている。複数の関係者は、携帯電話機と通信料の値下がりに加え、生鮮食品以外の食料価格の上昇の鈍さから、足元の物価が想定を下回っていることを理由として挙げている。

  複数の関係者によると、緩やかな景気の回復基調が続いているため、日銀内では当面、追加緩和、金融引き締めともに必要ないとの見方で一致している。黒田東彦総裁は17日、「世界経済が好転する下で景気回復の足取りもよりしっかりとしたものになってきている」と述べる一方、2%の物価目標に向けて「なお力強さに欠けているので、引き続き注意深く点検していく必要がある」との見方を示した。

  JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは17日付のリポートで、「日銀がこれまでのように現実的ではない高めの物価見通しを公表していると、市場が中長期のインフレ期待をどう見定めたらよいのかがわからなくなり、対話が成立しなくなる」と指摘。4月の展望リポートで「物価見通しを下方修正し、より現実的な物価見通しを出すべきであろう」と述べた。

さすがにあきらめるのでは

  2月のコアCPIは前年比0.2%上昇と2カ月連続で上昇したが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.1%上昇と引き続き低迷している。企業短期経済観測調査(短観、3月調査)の大企業・製造業の業況判断指数(DI)は昨年12月の前回調査に続き2期連続で改善。輸出、生産が持ち直していることが景況感を押し上げた。2月の完全失業率は2.8%と1994年6月以来の水準まで改善した。

  元日銀理事の早川英男富士通総研エグゼクティブフェローは7日のインタビューで、1月の展望リポートでは春闘を前にしたタイミングに加え、円安、原油高だったため、見通しを下げられなかったとした上で、「今回はさすがにあきらめるのではないか」と指摘。1%台前半への下方修正を予想していた。

  早川氏は実力の物価に近いコアコアCPIが1%程度に上昇すれば日銀は長期金利誘導目標の調整が必要になるとみるが、原油高と円安の影響で、上向きになるかどうかは「まだよく分からない」としている。

政策枠組みの再考が必要かも

  同じく元理事の門間一夫みずほ総合研究所のエグゼグティブエコノミストは3月24日のインタビューで、展望リポートの物価見通しは物価目標に沿った高めの数値になる傾向が強く、「市場と認識を共有しにくいという致命的な欠陥がある」と指摘。市場の関心が今後の金利動向に移る中、「前提となる経済・物価の見方をなるべくバイアス(偏見)なく発信していくことは市場との対話の第一歩だ」と述べた。

  前年比1.5%上昇という17年度の見通しについて、門間氏も「非現実的」であり、民間の見通しである1%程度が「妥当な線ではないか」と指摘していた。

  黒田総裁の任期終了まであと1年。市場では、次の日銀の一手は追加緩和ではなく国債買い入れ減額や金利引き上げなど出口方向になるとの見方が強いが、門間氏は今年の利上げは難しく、来年の可能性も高くないと見る。長期的にも「出口に行ける可能性は自明ではなく、むしろ2%になかなか行かず、政策の枠組みを考え直さなければならないということもあり得る」としている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOKYM06TTDS601


 

日本株は続伸、米財務長官発言と円安、米国株高も−金融セクター高い
佐野七緒
2017年4月18日 08:05 JST 更新日時 2017年4月18日 16:01 JST

ムニューシン氏が英紙インタビューで強いドル志向
仏大統領選の不透明感、北朝鮮情勢への警戒が上値抑制

  18日の東京株式相場は続伸。米国の財務長官発言を材料に為替がドル高・円安方向に振れ、企業業績への過度な懸念が後退した。金融セクター中心に前日の米国株が反発した中、世界的にみた日本の出遅れ感も投資家の間で意識され、銀行やその他金融株、電機など輸出株の一角が高い。

  TOPIXの終値は前日比5.84ポイント(0.4%)高の1471.53、日経平均株価は63円33銭(0.4%)高の1万8418円59銭。

  ファイブスター投信投資顧問の大木昌光運用部長は、ムニューシン米財務長官の強いドル容認発言は「今後過度に円高方向に推移するリスクは少ないと暗に示している」と指摘。日本株は年初来、地政学リスクへの警戒からグローバルでみても大きく下げ、「割安感が出ている銘柄もあり、修正が入っている」との見方を示した。

  ムニューシン米財務長官は英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、米国は為替市場に介入しないと説明し、「長期的に見て強いドルは良いことだ」と発言。年内の税制改革実施をなお予想している、などとも述べた。先週にトランプ米大統領がウォールストリート・ジャーナルとのインタビューでドルに関し発言した内容については、「トランプ大統領は短期的なドルの強さについて事実に基づく発言を行った」と指摘した。

  財務長官発言を受け、17日の米10年債利回りは前営業日比1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.25%。同日の海外為替市場でドルが買われた流れが継続し、きょうのドル・円はおおむね1ドル=108円90銭ー109円20銭台で推移、前日の日本株終了時点の108円35銭からドル高・円安水準に振れた。

  イースターの連休明けとなった17日の米国株は、S&P500種株価指数が0.9%高と4営業日ぶりに反発。主要11セクターが全て上げ、金融や不動産の上げが目立った。SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦チーフストラテジストは、「地政学リスクで抑えられていた米国株が上昇し、日本株にも安心感があった」と言う。

  ただ、日経平均は朝方に192円高まで買われたが、その後は伸び悩み。ソシエテジェネラル証券の杉原龍馬株式営業部長は、フランス大統領選を23日に控え、「あえてこの局面で買う理由に欠ける。売る材料には事欠かず、腰が入った買いは入らない」と指摘。日本株投資家は「外部要因に振らされてばかりで、弱気になり過ぎている」とファイブスターの大木氏は話している。

  仏大統領選第1回投票の支持率は、独立系のマクロン前経済・産業・デジタル相が22%と変わらず、極右政党・国民戦線のルペン党首が22%と1ポイント低下。また、きょうは日米経済対話の初会合が開かれ、麻生太郎副総理兼財務相とペンス米副大統領が終了後に会見する。大和住銀投信投資顧問・経済調査部の門司総一郎部長は、日米経済対話について「貿易摩擦や為替よりも米国の雇用を増やし、ウインウインの関係構築が目的と理解している。それほど厳しい話も出てこないのではないか」とみていた。

  東証1部33業種はその他金融、銀行、パルプ・紙、倉庫・運輸、金属製品、ガラス・土石製品、証券・商品先物取引など28業種が上昇。水産・農林、食料品、石油・石炭製品、非鉄金属、鉄鋼の5業種は下落。水産では、18日付の日本経済新聞報道をきっかけに今期の営業減益観測が広がったマルハニチロが売り込まれた。

  売買代金上位では、野村証券が株価は依然割安と投資判断「買い」を継続したソフトバンクグループが上げ、オリックスやSUBARU、マツダ、昭和電工も高い。コンビニエンスストア大手がセルフレジを導入と18日付日経新聞が報じ、アルテックやサトーホールディングスなどICタグ関連銘柄も買われた。半面、ペプチドリームやアサヒグループホールディングス、ローツェ、イオンフィナンシャルサービスは安い。

東証1部の売買高は15億7522万株、売買代金は1兆7745億円
上昇銘柄数は1494、下落は415 
日本株の出遅れ感強い
日本株の出遅れ感強い
(9段落の業種別動向を訂正します.)


債券下落、米金利上昇が重し−10年ゼロ%意識で買いにくいとの見方も
三浦和美
2017年4月18日 08:13 JST 更新日時 2017年4月18日 15:52 JST

  
リスクオフ一辺倒ではないという状況になった−岡三証
長期金利は0.015%まで上昇、先物は一時151円を割り込む

債券相場は下落。米財務長官の発言を受けて、前日の米国市場でドル高・債券安の展開となった流れを引き継ぎ、売り圧力がかかった。市場では長期金利がゼロ%に再び接近したことで買い進みにくいとの見方が出ていた。

  18日の長期国債先物市場で中心限月6月物は前日比11銭安の151円04銭で取引を開始。一時は150円98銭まで水準を切り下げた。午後は下げ渋り、151円07銭まで戻す場面があったものの、結局は12銭安の151円03銭で引けた。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、債券相場の下落について、「米長期金利上昇の影響が一番大きい。米財務長官がトランプ大統領の発言をやや修正したことでドル高、株上昇とリスクオフ一辺倒ではないという状況になった」と指摘。「10年金利のゼロ%という大きな節目を意識して買いが止まっているというところだ」と話した。

  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値から1ベーシスポイント(bp)高い0.01%で寄り付き、一時は0.015%まで売られた。午後は0.01%に戻した。前日には一時0.005%と、13日に付けた昨年11月以来の低水準に並ぶ場面があった。

米債安

  米国のムニューシン財務長官は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「長期的に見て強いドルは良いことだ」と述べた。また、米国は為替市場に介入しないと説明した。先週のトランプ大統領のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでのドルに関する発言については、「トランプ大統領は短期的なドルの強さについて事実に基づく発言を行った」と語った。
  17日の米国債相場は小幅安。ムニューシン長官の発言を受けたドル上昇を背景に、終盤にかけて売りが優勢になった。10年債の利回りは前営業日比1bp上昇の2.25%程度となった。
5年債入札
  財務省がこの日に実施した5年利付国債入札の結果によると、最低落札価格は101円25銭と、市場予想の101円28銭を下回った。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.28倍と、前回の2.86倍から上昇。小さければ好調を示すテール(最低と平均落札価格の差)は4銭と前回と同水準だった。
  岡三証の鈴木氏は、「5年はマイナス利回りで国内の投資家が積極的に買わないということはある程度分かっていた」とし、「入札結果は予想の範囲内だった」と述べた。

ドル・円上昇、買い先行後は日米経済対話見極めムード−一時109円台
小宮弘子
2017年4月18日 12:50 JST 更新日時 2017年4月18日 16:30 JST


米財務長官発言で反発した米国市場の流れを引き継ぐ
日米対話で何もなければ一段のショートカバーも−三井住友信託

東京外国為替市場ではドル・円相場が上昇。米財務長官による「強いドル」発言を手掛かりにドルが反発した米国市場の流れを引き継ぎ、ドル買い・円売りが先行。その後は、日米経済対話の初会合を見極めようとの姿勢が広がった。

  午後4時27分現在のドル・円は前日比0.04%高の1ドル=108円95銭。一時は109円22銭と2営業日ぶりの水準までドル買い・円売りが進む場面があったものの、相場は総じて109円ちょうどを挟んで小幅上下する展開に終始した。

  三井住友信託銀行マーケット金融ビジネスユニット為替セールスチームの西田朋広主任調査役は、ドル・円の上昇は「ショートカバー(買い戻し)の域を出ていない感じ」で、北朝鮮情勢や仏大統領選の不透明感が重しとなる中で「積極的に買っては行きづらい」と指摘。半面、日米経済対話については、ある程度警戒されてきた経緯もあり、特段何も出てこなければ、イースター休暇明けの欧州勢による一段のショートカバーを誘発する可能性はあると話した。

  ペンス米副大統領と麻生太郎副総理兼財務相による日米経済対話の初会合が午後、始まった。今回の対話では、政権交代後の米側の体制が整っていないことから、踏み込んだ議論はせず、今後の交渉の進め方や議題について話し合う見通し。麻生副総理は対話の冒頭で、日米摩擦は過去のもので、今は協力になりつつあると発言した。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)外国為替本部の岩崎拓也営業本部長は、「中国に対しても100日計画といっても単に先送りしている状況。日本に対して、先んじて詰め寄られる姿勢を示すとは考えにくい」とし、今回の会合が「為替に大きな影響は与えるとは思わない」と語った。

  一方、上田ハーロー外貨保証金事業部の小野直人ストラテジストは、初会合で米国側から強烈な円高圧力がかかるとは想定していないが、為替報告書にあった「円の実質実効レートは平均値に比べ20%割安」という部分が強調されるような展開となれば、「市場は円高で反応しそう」と予想する。  
  17日の東京市場では米長期金利の低下や北朝鮮情勢への警戒を背景に108円13銭と昨年11月15日以来の水準までドル安・円高が進行。その後の米国市場では、ムニューシン米財務長官の「長期的に見て強いドルは良いこと」との発言を手掛かりに、米長期金利や米国株が上昇する中でドル買い・円売りが進んだ。

  BofAの岩崎氏は、米財務長官発言は「現実路線で市場の安心感につながる内容」だが、ドル・円の反発については、イースター休暇中の不測の事態に備えたポジションの調整という側面が強いと説明。最近の米景気指標はまちまちの内容で、仏大統領選や北朝鮮などのリスクがある中で「ドル・円には慎重な姿勢を崩さない方がいい」と話した。

  ユーロ・円相場は前日の東京市場で1ユーロ=114円85銭と5カ月ぶり安値を付けた後、米国時間に反発。この日の東京市場では一時116円22銭までユーロ高・円安が進んだ。ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.06ドル台半ばでもみ合っている。

  一方、豪ドルは下落。今月4日の豪中銀会合の議事録で、雇用情勢が「従来の予想より幾分鈍化」しているとの記述が売りを後押し、対ドルで一時1豪ドル=0.7547ドルと3営業日ぶり安値を付けた。

地政学リスク

  米国務省高官は17日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に核兵器開発計画を断念させるよう中国が圧力を加える明るい兆しが見られるが、トランプ政権は単独ないし同盟国と連携した軍事行動をなお選択肢としていると述べた。

  三井住友信託銀行NYマーケットビジネスユニットの海崎康宏マーケットメイクチーム長(ニューヨーク在勤)は、週末に仏大統領選、来週に北朝鮮の軍創設85周年と「材料は目白押し」で、「引き続きリスクセンチメントの本格回復はまだできない状況にあるのではないか」と指摘。「地政学リスクがくすぶる中、ドル・円の上値は重い状況が続くというイメージ」と話した。 

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLH286TTDS001
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/209.html

[経世済民121] 「3本の矢は経済にどう影響するか」(EJ第3943号)  増税で振り出し、日本経済再起動が必要=片岡剛士
2014年12月25日
「3本の矢は経済にどう影響するか」(EJ第3943号)
 片岡剛士氏という人がいます。三菱UFJリサーチ&コンサル
ティング経済社会政策部主任研究員です。片岡氏は、今年4月の
消費税率8%の増税も、10%への再引き上げにも強く反対した
数少ないエコノミストとして知られています。
 しかし、片岡氏はアベノミクス自体は評価しています。片岡氏
の著書に出ている「3本の矢の関係」を添付ファイルにしている
のでみてください。
 片岡氏は、2012年末の日本経済について、潜在GDPが実
質GDPを17兆円上回る状態にあったことを指摘しています。
潜在GDPというのは、その国にある「人とモノ」が十分に活用
されれば、達成されるとみられるGDPの推定値のことです。
 潜在GDPが実質GDPを17兆円上回るということは、本来
市場に出回っているべきお金が17兆円も不足していることを意
味しています。このように、実質GDPが潜在成長率を下回って
いる状態を「デフレギャップ」といいます。つまり、2012年
末の日本経済はデフレであったことを表しています。
 経済に関する考え方というのは、学者によってまるで違うこと
がいくらでもあります。きわめて常識的に正しいと考えられるこ
とに対しても正反対の論説を掲げてそれが正しいと主張する学者
もいます。だから、非常にわかりにくいのです。
 ここで思い出すべきことがあります。EJでは、何度も述べて
いる原則ですが、再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 経済がデフレ下にあるとき ・・・ 財政赤字を増やすこと
 経済がインフレであるとき ・・・ 財政黒字を増やすこと
―――――――――――――――――――――――――――――
 2012年の日本経済は、大きなデフレギャップがあるのです
から、明らかにデフレです。こういうときに野田政権は消費税の
大増税を企み、同じように増税を主張する当時の谷垣自民党総裁
と本来増税には一貫して反対してきたはずの公明党の山口代表も
一緒になって増税を決定したのです。上記の原則にしたがうと、
明らかに間違っていることを財務省の口車に乗った御用学者たち
は「正しい」と主張するのです。経済の考え方にはどのようにで
も変えられるいい加減なところがあります。
 ところが安倍政権は、「デフレからの脱却」を目標に掲げ、一
応正しい方向を目指したのです。まず、現在の経済状況がデフレ
であるとして、その脱却を目指すことを目標にします。続いて、
その実現策として、第1の矢の金融緩和と第2の矢の財政政策を
同時に実施しています。
 上記の原則における「財政赤字を増やすこと」とは、国債を発
行して公共事業を行うことですが、それを第1の矢と第2の矢を
同時に行うことによって実施したのです。これは経済政策として
は正しいことです。
 これについて、片岡剛士氏は次のようにわかりやすく解説して
いるのでご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 経済を人間の身体にたとえれば、病気を治す薬が第1の矢、薬
で回復した身体に体力を与える食事が第2の矢であり、元気にな
った身体の能力をさらに高める筋力トレーニングが第3の矢であ
るといえばわかりやすいでしょうか。3本の矢のこのような関係
性が理解できれば、長年続いたデフレという病にさいなまれてい
た日本経済が強い身体を取り戻すために、金融政策が必要条件で
あったという意味がおわかりいただけると思います。
──片岡剛士著、『日本経済はなぜ浮上しないのか/アベノミク
            ス第2ステージへの論点』/幻冬舎刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 片岡氏は、デフレから脱却するには、第1の矢と第2の矢を組
み合わせることが大事であることを説いています。第2の矢であ
る「大胆な」金融政策は、人々の予想に働きかけて予想インフレ
率を高め、それによって総需要を高める政策ですが、間接的で即
効性に乏しい欠点があります。
 それに対して第2の矢は、公共投資など政府部門が支出するこ
とで、デフレ・ギャップを埋める政策ですが、即効性はあるもの
の、持続性に乏しいのです。
 したがって、第1の矢と第2の矢を組み合わせることによって
まず、第2の矢の影響が働き、その後に第1の矢と第2の矢の合
わさった影響によってデフレギャップの解消に成長を押し上げ、
そこから第1の矢の影響によって成長経路が加速されるのです。
第3の矢の影響が現れるのはその後です。添付ファイルのグラフ
はそのように描かれています。
 片岡氏は第1の矢である金融政策は、人々の予想に働きかけて
予想インフレ率を高めるといっています。しかし、「予想」とい
うものは、漠然としたものです。そんなものが果して消費行動に
影響を与えるものなのでしょうか。事実関係だけをみると、日経
平均については、次の数字があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    2012年11月14日 ・・・ 8664円
    2013年 5月22日 ・・・15627円
―――――――――――――――――――――――――――――
 2012年といえば、民主党政権の稚拙な政権運営に国民の多
くが閉塞状況にあったのです。それに対して安倍政権は、インフ
レ目標を打ち出し、「アベノミクス」という経済政策や「異次元
金融緩和」の金融政策のネーミングの目新しさもあって、人々が
そこに漠然としたものではあるが、「もしかすると、景気がよく
なるのではないか」期待を抱いたことは確かです。
 その人々の期待が株価上昇になってあらわれのです。何しろ上
昇幅は6963円、上昇率は80%です。わずか半年で80%も
上昇したのです。確かに2013年の半ばまでは、国民は安倍政
権よる景気回復に期待を抱いたのです。
            ─── [検証!アベノミクス/25]

≪画像および関連情報≫
 ●「アベノミクスの総合評価」について/片岡剛士氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  金融政策は80点、財政政策は50点、成長戦略は10点。
  平均すると40〜50点になる。金融政策を評価していると
  しながら80点となったのは、追加緩和が遅過ぎたからだ。
  今はデフレからマイルドな2%の物価安定目標を目指してい
  る状況なので、金融緩和はよりアグレッシブに行う必要があ
  る。予想インフレ率や市場のマインドが落ち込みつつあった
  ところで手が打たれたが、ぎりぎりのタイミングだった。2
  013年の日本経済はアベノミクスの当初のシナリオ通り、
  おおむね、景気回復基調となった。物価上昇率は持ち上がり
  失業率は改善。株価も大幅に上昇した。ただ、14年に入る
  と予算規模が縮小され、財政政策が拡張から緊縮の方向に向
  かった。消費増税も相まって、持ち上がった日本経済が方向
  感を失った状況になった。財政政策は半分くらいしか評価で
  きない。アベノミクスは3本の矢で経済をとにかく拡張させ
  てデフレから脱却し、最終的に成長軌道に戻すというのが本
  義。ところが、消費増税という方向性の違う政策を景気浮揚
  の途上で混在させ、それまでの効果をほぼ全て打ち消してし
  まった。             http://bit.ly/1JLZdcZ
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●片岡剛士著の前掲書より

アベノミクス3本の矢の関係
http://electronic-journal.seesaa.net/article/411172575.html


 
Business | 2014年 11月 28日 16:26 JST
関連トピックス: ビジネス, トップニュース
インタビュー:増税で振り出し、日本経済再起動が必要=片岡剛士氏

 11月28日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員の片岡剛士氏は、アベノミクスが本格スタートした2013年の日本経済はほぼシナリオ通りに推移したが、今年4月の消費増税で効果が打ち消され、振り出しに戻してしまったと指摘。この2年間の総合評価は「40─50点」と採点した。写真は、東京・銀座、16日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 28日 ロイター] - 三菱UFJリサーチ&コンサルティング・主任研究員の片岡剛士氏は、アベノミクスが本格スタートした2013年の日本経済はほぼシナリオ通りに推移したが、今年4月の消費増税で効果が打ち消され、振り出しに戻してしまったと指摘。この2年間の総合評価は「40─50点」と採点した。
しかし、デフレ脱却に向けては、この道を進むしかなく、財政政策を強化して再スタートを切るべきだと述べた。
また、アベノミクスの3本の矢のうち、第1の矢「大胆な金融政策」と第2の矢「機動的な財政政策」の組み合わせは実質的な財政ファイナンスではあるものの、デフレから完全に脱却できていない段階では政府が積極的に経済対策を実行するためのマネーが必要であり、この時期の大胆な財政支出と金融緩和は肯定されるとの見解を示した。
片岡氏はこの11月に「日本経済はなぜ浮上しないのか──アベノミクス第2ステージへの論点」を出版した。「アベノミクスを評価しているようかのようにとられているが、評価しているのは金融政策だけ。財政政策は消費増税で方向感を失っており、成長戦略も期待していない」(片岡氏)という。
インタビューの主な内容は以下の通り。
──アベノミクスの総合評価は。
「金融政策は80点、財政政策は50点、成長戦略は10点。平均すると40─50点になる。金融政策を評価しているとしながら80点となったのは、追加緩和が遅過ぎたからだ。今はデフレからマイルドな2%の物価安定目標を目指している状況なので、金融緩和は、よりアグレッシブに行う必要がある。予想インフレ率や市場のマインドが落ち込みつつあったところで手が打たれたが、ぎりぎりのタイミングだった」
「2013年の日本経済はアベノミクスの当初のシナリオ通り、おおむね景気回復基調となった。物価上昇率は持ち上がり、失業率は改善。株価も大幅に上昇した。ただ、14年に入ると、予算規模が縮小され、財政政策が拡張から緊縮の方向に向かった。消費増税も相まって、持ち上がった日本経済が方向感を失った状況になった。財政政策は半分くらいしか評価できない」
「アベノミクスは3本の矢で経済をとにかく拡張させてデフレから脱却し、最終的に成長軌道に戻すというのが本義。ところが、消費増税という方向性の違う政策を景気浮揚の途上で混在させ、それまでの効果をほぼ全て打ち消してしまった」
──デフレ脱却に他の道はないのか。
「この道しかない。野党がアベノミクスを否定するのは難しいと思う。経済学的に、景気を持ち上げるためにすべきことは、金融政策と財政政策とされている。金融緩和をし過ぎることは問題だが、不況下では問題ないということは教科書にも書いている。それを愚直にやろうとしている現政権を批判するのは困難だ」
「財政政策については、手段として公共投資に偏重している今の在り方は変えないといけない。特に新規投資については、建設業の供給制約が深刻化する中で、予定通りの効果をもたらさない可能性が高い。景気刺激策という意味では定額給付金、所得税減税などで家計の実質所得の低下を抑制する必要がある」
「安倍晋三政権は、合わせて社会保障制度の改革に本腰を入れる必要がある。10%への消費税率引き上げはとりあえず延期されたが、今後、拡大する社会保障費の財源として消費増税が使われていくとすれば、増税のたびに景気対策と財政支出の拡大に直面し、財政赤字が膨らんでいく可能性がある」
──成長戦略については。
「具体的な成果を出すこと。法人税減税や環太平洋連携協定(TPP)といったところで、改革は進んでいるんだということをどこまでアピールできるかだ。TPPはぜひ前に進めてもらいたい。現局面で、農業を含むセンシティブ品目にこだわっている理屈はないと思う。むしろ、そこは捨ててでも関税撤廃や自由化といった話を受け入れることによって、日本経済が変わっていくことに働きかけなければならない」
「他方、民間向けの成長戦略については、どれほど潜在成長率が持ち上がるのか未知数の部分が大きく、私自身、あまり期待していない。そもそも、政府が何か旗を振り、民間について来いといっても無理な話。アイデアはあるが金はないという人たちの金回りをよくしてあげることが、政府の最大の役割なのではないか」
──第1の矢と第2の矢の組み合わせは、マネタイゼ―ションだとの指摘がある。
「これはマネタイゼ―ション、実質的には財政ファイナンスだ。ただ、今はデフレギャップが拡大し、2%の物価安定目標を達成できていない状況なので、やることができる。日本は将来、人手不足による供給能力の低下などから、インフレになりやすい構造になるとみている。今は政府がお金をたくさん使って、やるべきことを整備しないといけない時期と捉えている。そういう意味で、財政ファイナンスはしなければいけない」
「財政ファイナンスを批判しても仕方がなく、むしろ、それで何をするかが大事だ。日本の成長力がつけば、将来の徴税余力は増すので、財政ファイナンスしたものは確実に税収というかたちで返ってくる」
「日本の対外純資産残高は世界一で、今も拡大が続いている、消費増税をしないと財政は破綻するという人もいるが、国債の金利は0.5%をはるかに割り込み、0.4%台の攻防に移っている。これは市場がもっと国債を欲している状況。逆にいうと、日銀が買い取る以上に国債を出せるということだ」
──円安は日本にとってプラスかマイナスか。
「日本経済全体でみると明らかにプラスだ。(ドル)120円程度の円安はまったく問題ではない。輸入価格が上がって困るという話になるが、問題は輸入価格の上昇分をきちんと売価に転嫁できない日本経済の仕組みだ」
「円安について輸出企業のメリットが目立つが、他方、同じ製品で国内製と海外製が競争している場合、国内では国内製の方に競争力が出てくるので、そういった製品を作っている産業はメリットを受ける可能性がある。日本経済全体としてみた時、円安デメリットを過度に強調するのはミスリードという感じがする」
*このインタビューは11月27日に行いました。
(杉山健太郎:編集 田巻一彦)
http://jp.reuters.com/article/abe-idJPKCN0JC0CK20141128?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14287&sp=true


http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/210.html

[国際19] ホテル最大手、入国制限は米観光業に打撃「牛肉FTAで関税下げを」 ヤマト下方修正「未払残業代」「宅急便維持できるか分から

ホテル最大手、入国制限は米観光業に打撃
2017/4/18 17:14

Financial Times

 ホテル世界最大手、米マリオット・インターナショナルのアーン・ソレンソン最高経営責任者(CEO)は、トランプ米大統領の移民政策が米国の観光産業に悪影響を与えていると注意を促し、海外旅行者が米国を避けているとの懸念を強く表明した。

トランプ政権の入国制限策は観光業へのダメージになりつつある(ニューヨークの自由の女神像を背に写真を撮る日本人観光客)=ロイター
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トランプ政権の入国制限策は観光業へのダメージになりつつある(ニューヨークの自由の女神像を背に写真を撮る日本人観光客)=ロイター
 ソレンソン氏によると、米国への入国制限の今後が不透明なため、企業や会議主催者が米国以外の場所をイベントの開催地に選ぶ兆しもあるが、今年の夏に米国への渡航を避ける可能性が最も高いのは観光客だという。

■傷ついた米国の評判

 ドル高で渡米を断念する旅行者もいるが、ソレンソン氏は、トランプ政権が一部の国の人々の入国制限に注力していることが、フレンドリーな観光地という米国の評判を傷付けたと指摘する。

 同氏はテキサス州ヒューストンのマリオット・マーキース・ホテルの公式オープンイベントでフィナンシャル・タイムズ紙の取材に対し、「(米新政権が)人々の移動に関してとった行動は無益だ」と答え、「それは間違いない。良いニュースなど期待のしようがない」と述べた。

 同氏は昨年、146億ドルを投じた米スターウッド・ホテルズ・アンド・リゾーツ買収のかじを取り、同社を客室数で世界最大のホテルグループにした。

 こうした忠告の前にも、総予約数で世界最大手のオンライン旅行サイト、米エクスペディアのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)が、米国旅行への関心が薄らぐ中、ホテルや航空会社は価格を大幅に引き下げていると述べている。

 米商務省の旅行観光業担当部局によると、2017年1月の訪米客による旅行・観光関連のモノやサービスの購入は16年1月より1%減少している。業界団体「世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)」は先月、観光客に「反米感情」の「初期兆候」が見られると指摘した。

 WTTCは、旅行業界の17年の成長率を昨年より0.5ポイント低い2.3%になると見込んでいる。同業界は全体で16年に国内総生産(GDP)の8.1%にあたる1兆5000億ドルの経済効果を米国にもたらした。

 ソレンソン氏は「政権に『我々は(安全保障リスクなどの)他の問題に取り組んではいるが、実のところは、世界中の人々の訪問を歓迎しており、旅行しに来てもらいたいと伝えたい』とのメッセージを発するよう働きかけている」とした上で、「明らかに、こうした声は政権にはまだあまり届いていないようだが、引き続き働きかけるつもりだ」と語った。

■会議の開催地をカナダへ変更

 また、企業グループが米国ではなくカナダを会議の開催地に選んだケースを「少なくとも数例」把握しているとも述べた。

 同氏は「一部の海外顧客からは、外国からの団体客を米国の入国審査に通すのは心配だと聞いている」という。

 米国の税関や入国の審査は、トランプ氏が外国人に対する「細心の入国審査」を含む政策を掲げて大統領に就任する前から、より立ち入ったものになっていた。16年度に職員が調べた電子機器は2万4000台で、15年の4764台の5倍以上となっている。

By Murad Ahmed

(2017年4月18日 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H4L_Y7A410C1000000/


 

「牛肉、FTAで関税下げを」米業界団体幹部が要望
2017/4/18 17:58

 米国食肉輸出連合会(USMEF)のフィリップ・セング会長は18日、東京都内で記者会見を開き、米国産牛肉が「オーストラリア産の牛肉と比べて関税率で不利になっている」と述べた。日米で早期に自由貿易協定(FTA)を結び、関税率を引き下げる必要性を訴えた。

 日本と経済連携協定(EPA)を結んでいる豪州の牛肉の関税率は冷蔵品で29.9%、冷凍品は27.2%。ともに協定を結ぶ前の38.5%から大きく低下している。さらに2031年までにはそれぞれ23.5%、19.5%まで下がる予定だ。

 一方、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を表明した米国の関税率はともに38.5%のままだ。セング会長は「牛肉(の輸入制度)は1988年の(日米政府)合意に、豚肉は71年の合意に基づいている。見直すときが来ている」と訴えた。

 日本の16年の輸入牛肉シェアで豪州産が54%、米国産は38%。豪州が干ばつの影響で輸出余力が下がり、米国のシェアは高まった。ただ日米間で関税の引き下げ交渉が進まないと、輸出が困難になると米国勢は危惧している。

 17年の対日輸出目標も併せて発表した。牛肉は前年実績に比べて12%、豚肉は3%増やす。飼料価格の下落で産地の出荷価格が下がっているうえ、日本の輸入牛肉、豚肉の在庫が低水準で販売増の余地があるという。

 セング会長は日本市場について訪日外国人の増加や海産物から牛肉と豚肉への需要シフトに期待を示していた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ18H10_Y7A410C1000000/

 


ヤマトHD大谷上席執行役員「一時金、個人の労働実態に応じて」
2017/4/18 17:29
 
 ヤマトホールディングス(9064)の大谷友樹上席執行役員は18日午後の記者会見で、未払い残業代を一時金として支払うことについて「一時金は全員一律ではなく個人の労働実態に応じて支払う」と話した。その上で、「支払いの時期は調査が終わり次第速やかに払う」とした。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HHG_Y7A410C1000000/


ヤマトHDの柴崎専務執行役員、下方修正「未払い分の残業代で」
2017/4/18 17:24
 
 ヤマトホールディングス(9064)は18日午後、2017年3月期の連結純利益を下方修正したことを受け都内で記者会見を開いた。芝崎健一専務執行役員は「宅急便の労働環境が著しく伸び、昨年の秋口や冬に労働環境が逼迫した。経営環境維持のため社員が十分に休憩が取れなくなった」と話した。その上で「未払い分の残業代を支給するため(17年3月期に)費用を支払うことに至った」と下方修正の経緯について語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HHE_Y7A410C1000000/

ヤマトHD大谷上席執行役員「宅急便維持できるか分からず調査」
2017/4/18 16:58
 
 ヤマトホールディングス(9064)は18日午後、2017年3月期の連結純利益を下方修正したことを受け都内で記者会見を開いた。会見で大谷友樹上席執行役員はサービス残業の実態調査について「フルタイム社員8万2000人を対象にした」と話した。調査については「12月の繁忙期の宅急便の取り扱いが膨大になり、宅急便についてのサービス環境が維持できなくなると思い、自主的に社内調査した」とした。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL18HGX_Y7A410C1000000/


http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/170.html

[経世済民121] 死んでからではない、変わる生命保険 生保各社、長寿リスクに対応 日欧比較にみる年金資産運用の今後の方向性 どう景気を予想
死んでからではない、変わる生命保険
生保各社、長寿リスクに対応
2017/04/18
中西 享 (経済ジャーナリスト)
 生命保険各社は、高齢化・長寿化に見合った新しい保険を一昨年から相次いで売り出している。生命保険と言えばこれまでは、死亡時に保険金をもらうのが主目的だったが、最近は生前に給付金をもらいたいという希望が増えており、その中でヒットしたのが認知症、就労不能保険など、長寿に伴うリスクを保険でカバーしようという商品だ。

(iStock)
予想以上の売れ行き

 昨年の3月に認知症に特化した保険を発売した太陽生命の「ひまわり認知症治療保険」は、3月9日までに17万件を販売するヒット商品となっている。シニア層を対象にしたもので、告知項目を限定して、保険に加入しやすいようにハードルを下げたことが、契約者に受けた大きな要因になったという。認知症と医師により診断され、所定の状態が180日継続した場合に一時金が支給されるもので、同社は「これまで介護保険で培ってきたノウハウを生かすことで認知症に特化した保険を発売することができた」と、手応えを感じている。高齢者に多い骨折や生活習慣病なども保障の対象になる。

 また朝日生命は昨年4月に「あんしん介護 認知症保険」を発売、昨年の12月末までに3万件を獲得、予想以上の契約件数となっている。この保険は公的な介護認定と連動する形で、認知症の場合は医師が認定すれば一時金などが支給される。同社は12年に介護保険商品を発売したが、これをバージョンアップしたもので、介護の中でも負担の大きい認知症に特化した。認知症をカバーする保険を求める声が強かったことを受けたもので、40歳から75歳までが対象になる。認知症をカバーする保険の場合、契約者のうちどれくらいの人数が認知症になるかの予想が難しいが、これまでの経験を生かして認知症の保険商品を設計している。

 厚生労働省の推計によると、認知症の患者数は2015年に517万人で、25年には675万人に増えるとみられている。65歳以上の5人に1人になると見込まれ、高齢者が増える中で、その対応策が大きな課題になっている。認知症に特化した保険がこれだけ売れるのは、高齢者が増える中で認知症になった場合への不安感が根強いことの表れで、公的な対策も含めて対応を急ぐ必要がある。

仕事を失うリスクに対応

 勤務していて病気や事故などで仕事ができなくなるリスクに備えるために住友生命が15年の9月に発売したのが、就労不能保険だ。「未来デザイン1UP(ワンアップ)」と名付けた商品は、公的保険制度に連動し、障害年金1、2級に認定された場合と、公的介護保険制度の要介護2以上の認定を受けた場合に加え、同社独自の基準に該当した場合も保険金が支給される。この保険は、特約を組み合わせることでがんや脳卒中など9つの生活習慣病もカバーし、働けない状態になった時を幅広く保障する。加入対象年齢は15歳から75歳までで、家族や子供への負担が軽減できることから、特に若い世代に受けているという。

 大手生保で就労不能保険を発売したのは同社が初めてで、2月末現在ですでに50万件の契約を獲得したという。担当の小田直人商品部次長は「働けなくなったときのリスクをカバーする保険として、わが社の重要な柱になっている」と話す。

長生きするほど受取金額が増える

 昨年4月に人生100年時代に合わせて、長生きするほど大きな年金額を受け取ることができる新しいコンセプトで長寿生存保険「GranAge(グランエイジ)」を発売したのが日本生命だ。男性は3人に1人が87歳まで、女性は92歳まで生きる。さらに男性は5人に1人が90歳まで、女性は95歳まで生きる時代になっている。このため、長いセカンドライフのために十分な終身年金を準備できる保険が必要だとの考え方から発売したという。

 この商品は、年金開始前に死亡した場合の支払金額を、累計の保険料よりも抑えることで、その分長生きした場合に受け取れる年金額を大きくするのが特徴だ。イタリア人のロレンツォ・トンティが考案した保険制度に由来するもので、国内の生保では初めての導入となる。従来の死亡時に高額の保険金を受け取るという死亡保険の考え方を転換して、長い老後が続いても、長生きすればするほど受け取れる年金額が大きくなるように設計した。

 年金を早く受け取りたい人には契約年齢によっては3年や5年でも受け取れる。反対に、年金開始時期を遅らせることで返戻率をアップさせることができるなど、契約者の希望に合わせた加入方法を選択できる。昨年4月の発売以来、契約件数は3万5千件件を超え、日本生命の田中聡取締役は「『GranAge』は時代を先取りした商品だ。高齢化や長寿化、少子化などの課題が大きくなっているので、こうした社会的要請や顧客ニーズに応えられる商品を提供していきたい」と話す。

シニア向けに高利回り商品

 一方で、運用面では超低金利傾向が続いているため保険各社は運用益を確保することが難しく、一時払い養老保険といった1990年前後のバブル期に流行った高利回りを期待する商品の発売は苦しくなっている。今後伸びるとみられているシニアマーケット向けには各社とも少しでも高いリターンが見込める商品を出そうとしている。

 日本生命はマイナス金利政策による低金利の影響を受けて、銀行の窓口で販売する円建て終身保険を販売停止している。その中で、銀行窓販領域で外貨建て商品のラインアップの拡充に取り組み、外国の国債での運用に加え、利回りの高い社債などにも投資し、高い利回りの確保を目指している。外貨建て商品の販売件数はシニアマーケットを中心に堅調に推移しているという。

 世界的に低金利が続く情勢の下で、為替、金利リスクなどをにらみながら、長寿化時代のシニアにとって資産価値の増加につながる魅力的な商品を出せるかどうかが課題になる。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9407


 


 


コンサルタントコラム 754
日欧比較にみる年金資産運用の今後の方向性
執筆者: 青木 大介 (あおき だいすけ)
資産運用コンサルティング シニア コンサルタント

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昨今の世界的な低金利等を背景に、日本のみならず世界的に年金資産運用に変化の潮流が生じているように見受けられます。こうした中、今回のコラムでは、日本と同様に、いくつかの国で10年国債金利がマイナスとなった欧州の年金運用がどうなっているのか、またどう推移してきたのかをみていくことで、今後の年金資産運用を考える上でのヒントを探っていきたいと思います。

まず、直近の年金の資産配分を、日本と欧州についてみていきたいと思います(【図1】)。日本の年金の資産配分を欧州年金の資産配分と比較してみると、株式の比率は大きくは変わらない(日本25.1%、欧州28.6%)一方で、日本は外国債券の比率が高く、不動産の比率が低いという特徴がみてとれます。
【図1】日本と欧州の年金資産配分(2016年)
http://www.mercer.co.jp/content/dam/mercer/assets/content-images/jp-2017-consultant-column-754-1-600x392-chart.jpg/_jcr_content/renditions/cq5dam.web.1280.1280.jpeg
(出所:企業年金連合会『企業年金資産運用実態調査結果』
       Mercer, “EUROPEAN ASSET ALLOCATION SURVEY”)
(注)日本の資産配分は厚生年金基金、確定給付企業年金を含めた企業年金全体。欧州は、15ヶ国(Belgium, Sweden, Switzerland, Ireland, Germany, Spain, France, UK, Netherlands, Norway, Portugal, Italy, Finland, Germany, Denmark)の各国資産配分の平均を取っている。 なお、日本は実際の配分比率、欧州は戦略的資産配分を示しているという違いがある。
PEはPrivate Equity(未上場株式)の略。
上記のような差異は実は元々生じているのではなく、日本と欧州の年金の環境変化に対する投資スタンスの差異が反映された結果、近年より顕著に表れるという結果になっています。【図2】は、【図1】と同じデータソースを用いて、3年前(2013年)からどの資産クラスがどの程度増減したかをみたものです。世界的に長期金利が一層低下する中で、日本は株式比率を削減し、外国債券、ヘッジファンドを増やすといった形でリスクを減らしていく傾向がみられます(厚生年金基金が減少したことで株式比率が減少した要因もありますが、確定給付企業年金だけでみても同様の傾向がみられています)。一方で、欧州は内外債券比率を削減する一方で、ヘッジファンドや不動産といったオルタナティブ資産への配分比率を増やしており、金利低下によって想定される収益率低下に対し、リスクテイクを増やすことで収益確保を図ろうとする動きがみられています。

【図2】日本と欧州年金の2013年から2016年のアロケーション変化
http://www.mercer.co.jp/content/dam/mercer/assets/content-images/jp-2017-consultant-column-754-2-600x408-chart.jpg/_jcr_content/renditions/cq5dam.web.1280.1280.jpeg
(出所:企業年金連合会『企業年金資産運用実態調査結果』
       Mercer, “EUROPEAN ASSET ALLOCATION SURVEY”)
欧州でのオルタナティブ資産への配分の動きをもう少し詳細にみていきましょう。【図3】は、マーサーのサーベイでオルタナティブ資産に分類される代表的な5つの資産クラスについて、2016年と2013年における資産配分比率(当該資産への配分を設定している年金の平均)を示しています。欧州のオルタナティブ資産の中で、最も大きな配分がされているのがマルチ・アセットであり、欧州年金の資産配分の特徴の一つとなっています。一方で、増減に関しては、特にグロース債券の増加幅が大きくなっていますが、各資産への配分割合も増加しており、投資対象や投資戦略の一層の分散投資が進んでいる様子をみてとることができます。
【図3】欧州年金のオルタナティブ資産への配分比率
http://www.mercer.co.jp/content/dam/mercer/assets/content-images/jp-2017-consultant-column-754-3-600x405-chart.jpg/_jcr_content/renditions/cq5dam.web.1280.1280.jpeg
(出所:Mercer, “EUROPEAN ASSET ALLOCATION SURVEY”)
(注)マルチ・アセット・・・複数資産を組み合わせたファンド等への投資
リアル・アセット・・・不動産、インフラといったインフレ耐性を有する資産への投資
グロース債券・・・国債や投資適格債を超えるリターン獲得を目指す債券戦略の総称
以上みてきた日欧年金の資産運用の比較を踏まえ、日本の年金は今後どのような方向で資産運用を考えていけばよいのでしょうか。

第一に、現状の低金利環境を踏まえ、一度はポートフォリオの検証をすべき、ということです。日本の年金でもマイナス金利の導入後、様々な見直しの動きが見られていますが、その動きは欧州の年金と比較するとそれほど大きなものとなっていないように思われます。トランプ相場の恩恵によって、足元までの収益率は堅調に推移していますが、今後については債券の期待リターンが低下している結果、従来と同様の資産配分のままでは、目標収益率の達成は困難となる可能性が高くなっているはずです。ここで、収益率確保のために無理にリスクを取ることは必ずしも得策でなく、各年金のリスク許容度を踏まえ、目標収益率の未達成も致し方ない、という選択をすることも可能だと思われますが、現環境下でどのような運用を行っていくのか、自らのスタンスを明確化しておくことは必要だと思われます。

第二に、投資対象及び投資戦略の一層の分散化の検討です。日本の年金においても昨今では多様な資産への分散がかなり進んできましたが、日本はヘッジファンドに傾斜している一方で、欧州ではプライベート・エクイティや不動産などへの資産配分が相応にあり、投資対象の幅広さや取り組み度合いにおいて、欧州は日本より先行していると言えます。日本の年金の場合、新たな投資対象を検討するにあたって、政策資産配分の投資対象になっていないことがネックとなるケースがありますが、投資機会に応じて多様な資産への配分を可能にする枠組みを構築することも検討に値するでしょう。

現在の低金利環境下では、世界中の投資家が少しでも高い利回りを追い求めている結果、様々な資産がバリュエーション上割高となっている可能性があり、今から各資産に投資するにあたっては慎重なスタンスを持ち合わせる必要があります。しかし、だからといって検討を放棄するのではなく、将来の投資機会の発生に備えて投資対象についてのスタディを行い、いつでも投資可能となるよう準備をしておく、ということも決して無駄ではないと考えられます。

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2017年


タイトル
執筆者
発行日
755 - 生産性向上について考える (前編)
池淵 慶
4月14日
754 - 日欧比較にみる年金資産運用の今後の方向性
青木 大介
4月7日
753 - 確定拠出年金とパターナリズム
甲斐 佑太
3月31日
752 - 「外国人新卒採用」問題を考える
槇 千晴
3月24日
751 - 組織人事のアナリティクスの明日
伊藤 実和子
3月17日
750 - PMIの“その先”へ:クロスボーダーM&Aの事例から
後藤 孝江
3月10日
749 - 2016年の振り返り - ハードシップ手当設定におけるデータの活用
山縣 勘介
3月3日
748 - 働き方を変えるために
伴登 利奈
2月24日
747 - 退職金の不払いについて−判例に学ぶ−
甲斐 佑太
2月17日
746 - 健保コンサルのニーズ
佐々木 壱佳
2月10日
745 - マイナス金利下の年金運用について再考
青木 大介
2月3日
744 - 転勤の値段
阿久津 純一
1月27日
743 - アジア新興国進出とハードシップ手当てについて
尾西 博樹
1月20日
マーサーの知見
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前向きに読み解く経済の裏側
景気の予想屋は、どうやって景気を予想するのか?
2017/04/17
塚崎公義 (久留米大学商学部教授)
 景気が良いか悪いかで、多くの人が影響を受けます。そこで、景気に関するニュースは溢れていますし、日常会話でも景気に言及することもあるでしょう。しかし、景気について真剣に考えた事のある人は意外と少ないようです。そこで今回は、景気というものが、どのように変動するのか、それをどうやって予想するのか、考えてみましょう。


(iStock)
教科書には「キチンの波(キチン循環)」等々

 経済学の教科書には、「キチンの波(キチン循環)」「ジュグラーの波(ジュグラー循環)」などが載っています。在庫循環、設備投資循環などで景気が変動する、循環する、というわけです。たとえば「在庫が増えすぎると企業は生産を減らし、次第に在庫が減ってくると企業は再び生産を増やし、再び在庫が過剰になるまで40ヶ月程度を要する場合が多い」「10年前に設備投資ブームがあったので、10年経過して設備機械が古くなり、一斉に新しい機械に取り替えられるので、設備投資が増加して景気が回復する」ということでしょうか。

 そうしたことが絶対に起きないと言うつもりはありませんが、それが景気を動かす主な要因だとは決して思いません。在庫投資は最近のサービス化した先進国経済に於いて、ウエイトが低いですし、設備投資もコンピューター関連のものはサイクルが遥かに短いなど、業種等によりサイクルに差があるので、景気全体を動かすサイクルがはっきりしているか否かも疑問です。

 まして、リーマン・ショックのような出来事があると、在庫循環も設備投資循環も過去と断絶しますので、過去のサイクルでそれ以降を説明する事は不可能でしょう。

景気は自分では方向を変えない

 景気変動の基本は、景気は自分では方向を変えない、ということです。景気が上を向いている時は、外から力が加わらない限り、そのまま回復・拡大を続けるのです。「売上が増えると企業は生産を増やすために雇用を増やす。すると給料をもらった元失業者が物を買うので、物が一層よく売れるようになる」、といった好循環が働くからです。企業は、物が売れるので、新工場を建設するかもしれません。銀行も、景気が良い時には借り手企業が黒字なので、喜んで融資するでしょう。もしかすると、不況期には貸し倒れが増えて自己資本が減っていた銀行が、景気回復で自己資本が増え、自己資本比率規制を気にせず融資が出来るようになるかもしれません。

 地方公共団体も、景気回復で税収が増えると歳出を増やせるようになるかも知れません。サラリーマンも、景気が回復するとリストラされる心配が減るので財布の紐が緩んだり、住宅ローンを借りて家を建てようと思うかも知れません。

 景気が悪化している時は、全く反対のことが起きるはずです。物が売れないから企業が物を作らない、従って人を雇わないから失業が増え、失業者は物を買わないから、一層物が売れなくなる、といった具合です。

 そうした景気に対して、方向を変えるのは政府・日銀の財政金融政策と外的ショックです。バブルが関係する場合もあります。

財政金融政策で不況からの回復を目指す

 不況期には、政府が公共投資を増やすことで、失業者が雇われます。雇われた元失業者が受け取った給料でテレビを買うと、テレビメーカーの売上が増えるので、テレビを増産するために別の失業者を雇います。テレビメーカーに雇われた元失業者が……と続くことで、景気が回復していきます。

 減税も、景気対策として採られる事があります。代表的なのは、サラリーマンへの所得税減税です。企業が支払う給料が同じでも、所得税が減税されればサラリーマンの手取りが増えるので、消費が増えて景気が回復するだろう、というわけです。

 これについては、「サラリーマンが減税分を貯金してしまえば、景気対策の効果が薄れる」という問題がありますから、公共投資の方が景気を回復させる効果は大きいのですが、一方で、公共投資は無駄な道路が作られたりしかねないという問題があります。所得税減税であれば、減税されたサラリーマンが無駄な物を買うことは考えにくいので、その点では公共投資より優れているとも言えるでしょう。

 景気対策と言えば、日銀の金融緩和も重要です。ただ、不況期に金融を緩和しても、効果がそれほど期待出来ないのが普通です。不況期には、工場の稼働率が下がっているので、「金利が下がったから、借金をして今ひとつ工場を建てよう」と考える企業は少ないからです。まして、ゼロ金利になってしまってから金融を更に緩和しても、効果はほとんど無いはずです。その意味では、今回の黒田緩和は、実に珍しいことが起きたわけです。筆者は、本来効くはずのない政策に効果があったという意味で、「偽薬効果」と呼んでいますが。

 バブルが崩壊して以降、一度もありませんが、財政金融政策は景気が過熱してインフレが懸念される時に、景気をわざと悪化させる場合にも使います。この時は、金融政策の効果が抜群です。金利を上げれば、借金して工場を建てる企業が減るからです。一方で、財政の方は公共投資を減らすべきなのですが、景気拡大で税収が増えている時に計画済みの公共投資を中止するのは、政治的に難しい場合が多いでしょう。まして「インフレ対策で景気を悪化させるため、増税する」というのは、ほぼ不可能でしょう。

海外の景気変動が国内景気に影響する

 リーマン・ショックで国内景気が深刻な不況に陥った事は、記憶にあたらしいでしょう。反対に、外国の景気が拡大すれば、輸出が増えて日本の景気も回復する、という力も働きます。

 特に重要なのは、米国の景気です。日本から中国等に輸出された部品が組み立てられて中国から米国に輸出されている、といった場合が多い、というのが一つですが、それ以上に重要なのは、米国が好況だとドル高円安になりやすく、日本の世界向け輸出が増えやすいからです。

バブルが関係する場合もある

 バブルになると、資産価格が上昇して利益を得る人が出ますので、彼等の消費が活発になります。加えて、バブルの時には「我が国の将来はバラ色だ」といった楽観ムードが広がりますから、人々のサイフの紐も緩みますし、企業の設備投資も活発化します。

 バブルが崩壊すると、一転して景気が悪化します。人々は既に高級な自動車等を持っていますから、新しく自動車等を買う人はいません。悪くすると、銀行が不良債権を抱えて自己資本が減少し、自己資本比率規制によって「貸し渋り」をするかもしれません。

 バブルが景気を動かす事は稀だと考えている人もいるでしょうが、過去30年の間に日本の平成バブル、米国のITバブル、米国の住宅バブル(リーマン・ショックの源)があり、それが崩壊していますから、決して例外的な事では無いのです。

景気の予想は、今の方向を見て、財政金融政策と海外景気を予想する

 以上の事から、景気の予想の基本は、今の景気の方向を正しく認識し、財政金融政策や海外景気がその方向を変える可能性があるか否かを考える、ということになります。

 通常は、景気の方向を見定めるのは難しく有りませんが、アベノミクス以降は景気が横這いか少し上向き、といった所なので、景気の方向の見極めにも工夫が必要です。

 財政金融政策については、当分は景気刺激策が採られるでしょうから、上を向いている景気の方向を下向かせる事は無いでしょう。もっとも、金融政策で景気回復を加速させることは難しいでしょうし、公共投資も建設労働者不足だと効果が出にくいので、過大な期待は禁物でしょう。

 そうなると、海外経済を予測している人々に、聞いて回るのが景気の予想屋の重要な仕事だという事になります。特に重要なのは、上述のように、米国の景気です。

 あとは、今回のように、トランプ氏が米国の大統領になったり、ルペン氏がフランスの大統領選挙で勝つ可能性が出てきたりした時に、国際政治が混乱して日本経済に影響が出ないか否かを考える、ということでしょう。

 最も困難なのは、バブル時です。バブルであるか否かは、その時はわからないものです(拙稿「東京のマンション価格高騰はバブルなのか?」御参照)。しかも、仮にバブルだと思っても、それがいつ崩壊するのかを予想することは、不可能だからです。

 景気の予想屋は、おのおの自分なりの手法で予想しますので、皆が上記の方法を採っているわけではありませんが、上記を基本として、各人が様々なバリエーションを試みている、と考えて良いでしょう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9391
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/214.html

[国際19] ニューヨーカーに浸透するCruelty Freeという選択 化粧品の動物実験について Be Cruelty-Free
ニューヨーカーに浸透するCruelty Freeという選択
2017/04/17
田村明子 (ジャーナリスト)
 4月5日から16日まで、ニューヨークのマディソンスクエアガーデンシアターで、「Circus 1903 The Golden Age of Circus」というサーカス団が、公演を行った。一見なんの変哲もない、昔ながらのこのサーカス団に、実はある秘密が隠されていたのである。

サーカスの勝ち組と負け組み
http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/1/0/450/img_10c35304bd726e38342ec2fb9a46317374452.jpg

(iStock)
 サーカスといえば、このところ世界中でシルク・ドゥ・ソレイユが独り勝ち状態である。カナダのモントリオールに拠点をおくこのサーカス団は、そのプロダクションの独創性、テーマに合わせたコスチュームデザインとオリジナル音楽を作い、総合舞台芸術として、サーカス界のみならず世界中のエンタテイメント業界に影響を与えた。

 その一方で、歴史のあったリングリング・ブラザーズ、バーナム&ベイリーサーカスは、今年を最後に幕を閉じると宣言。ビッグアップルサーカスも、昨シーズンを最後に倒産してしまった。

 その理由の1つは、ここ10年ほどで動物愛護に対する社会の概念が大きく変わってきたことである。

インターネットが変えた動物愛護の概念

 私自身、子供のころは、サーカスでトラやゾウが出てくると、喜んで見たものである。タイでゾウの背中に乗せてもらったこともある。

 本来は人間に懐かない野生の動物が芸をするということがただただ珍しく、舞台裏で何が行われているのか深く考えてみたこともなかった。

 日本で先人、宮沢賢治が「オッペルと象」を書いたのは今から90年ほども前のこと。だが世界中で動物に対する概念が変わってきたのは、インターネットの普及のためである。YouTubeなどで誰でも簡単に、世界各国の様々な映像をシェアできる時代になった。動物たちは人間が本来考えていたよりもずっと賢く、社会性も感情もあることもわかってきた。

 同時にこうしたサーカスや大道芸の野生動物たちの多くは、棘のついた足環などで肉体的拘束をされ、言うことを聞かないと鞭で打たれたり餌をもらえないなどの虐待を受けながらトレーニングされていく。普段は狭い鉄の檻に閉じ込められっぱなし、という現状が、映像を通して社会で広く知られるようになってしまった。都合の悪い舞台裏を隠しておくことが難しい時代になったのである。

 サーカスの動物の全てがそういう扱いを受けているわけではないかもしれないが、人々は以前のように無邪気に動物を使ったエンタテイメントを楽しめなくなってしまった。

 リングリング・ブラザーズも多くの動物愛護団体とその支持者たちの署名運動などに押され、1年前にゾウを全て引退させてサンクチュアリ施設に移した。その後、チケットの販売が落ちたことを理由に、今年で幕を閉じることとなった。

 そんな世相の中で、動物を使わないで人々を楽しませるシルク・ドゥ・ソレイユの誕生は、とてもタイムリーで時勢にフィットしていたのだと思う。

等身大のゾウの操り人形

 さて話は冒頭に戻り、娯楽には事欠かないニューヨークで、なぜこのサーカス「Circus 1903 The Golden Age of Circus」が注目を集めたのか。

 オールドファッションな雰囲気を売り物にしたこのサーカス団で、注目されているのは実物大のゾウの操り人形が登場することである。

 ブロードウェイで大ヒットし、後に映画化もされた「War Horse」で登場した、精巧で洒落た馬の操り人形を制作したシグニフィカンド・オブジェクトの作品で、成獣と小ゾウの二匹が登場。動物愛護団体たちから、「生き物を使わなくても面白いサーカスは成り立つことの見本」と絶賛されている。

 アクロバット類などはごく普通のサーカスだったが、このゾウの精巧なパペット人形は、一見の価値アリだった。

変化してきた動物愛護の精神

 日本で「動物愛護」は、未だに微妙なテーマである。先をたどっていけば、必ず日本の捕鯨とイルカ漁にたどり着くからだ。

 だが自分は毛皮のコートを着て、血のしたたるステーキを食べながら「イルカを殺す野蛮な日本に行きたくない」とミュージシャンが発言し、大反感をかった70年代、80年代初頭から、欧米社会は大分進化した。

 ニューヨーカーの間では、一人ひとりが自分自身の中で何を選択していくのか、という動物愛護精神が高まってきたのである。

 たとえば同じ犬を飼うのなら、Puppy Millと呼ばれる劣悪な環境で繁殖させる商業ブリーダーから提供されるペットショップのものではなく、動物保護団体のところから引き取る、というようなことから、日々の食卓で肉の消費量を少しでも減らそうと意識するなど、些細なことだ。

Cruelty Free という表現

 こうした現代社会のキーワードはCruelty Free(クルエルティフリー)である。

 「残酷ではない」という意味で、たとえば化粧品や洗剤など、動物実験を実行していないメーカーの商品につけられるマークがあり、一般のスーパーなどの店頭から消費者自身が気軽に選択できる。

 同じ卵を買うのでも、ブロイラーのものではなく、ニワトリが歩ける環境で育てたものにはCage Freeのマークがついている。

 肉類などでも、工場ではなく昔の農場のような環境で育て、必要以上に苦しめないように処理を行う業者にはCertified Humane(人道的認定印)を商品につけることが認められ、消費者が選べるようになっている。

 バッグや靴などもCruelty FreeあるいはVeganなどを掲げて、人工革のみを使用しているメーカーもあり、こうしたVegan商品がじわじわと人気をあげてきている。

 過激な動物愛護団体のように、何でもかんでもダメ! というのではなく、「惨くない選択があるのなら、できる範囲でそちらを選ぼう」というレベルのマイルドな動物愛護精神が、ニューヨーカーの間では日常生活に浸透しつつあるのだ。

個人ができる範囲での選択

 菜食主義にはなれないけれど、カバンや靴は本皮でなくてもいい。

 同じ洗剤を買うのなら、動物実験を実行していないメーカーのものにする。毛皮やダウンは本物ではなくても、化繊で十分。このように、個人の意識レベルに合わせて選択できるのが、ニューヨークでは当たり前になりつつある。

 その意味では、本物のゾウではなく、等身大の操り人形のゾウが出演するサーカスを見に行く、というのも立派なCruelty Freeの選択である。

 大声でヒステリックに主張をする動物保護団体は、日本人気質にはちょっと合わない。だがこうしたさりげないCruelty Free主義ならば、おそらく日本社会にも徐々に浸透していくのではないだろうか。

 動物実験をしていないメーカーの商品は日本にも少なからずあるのだが、一目でわかるようにはなっていない。そのあたりを供給する側が、もう少し消費者側に選択肢を与えてくれても良いのではないだろうか。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9347

 

Be Cruelty-Free は、日本で化粧品の動物実験を終わらせるためのキャンペーンです。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International)とそのパートナーと共に、残虐な化粧品の販売を終わらせるよう日本政府に働きかけるために、お手伝いください。


化粧品の動物実験
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企業は消費者の声を聞いています。Cruelty-freeな製品を選ぶようにしましょう。
CRUELTY-FREE なショッピングをしましょう »

NEWS


April 12, 2017

ラッシュのシャンプーバー、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナルのグローバルな#BeCrueltyFreeキャンペーンを支援するため、日本で販売開始

March 1, 2017

グアテマラの議会が動物福祉法を承認
http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/be-cruelty-free-japan.html?referrer=https://www.google.co.jp/?referrer=http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/be-cruelty-free-japan.html


 

化粧品の動物実験について
Humane Society International


iStock
今でも世界中で、口紅やシャンプーなどの化粧品の試験のために、実験施設で動物が苦しめられ、犠牲になっていることを知っていますか? 動物の口から無理やり化学物質を流し込んだり、点眼したり、また剃った皮膚に物質を塗布したりして、試験が行われています。これが、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International、HSI)の#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャンペーンが終わらせようとしている、化粧品産業の醜い現実です。

Q: 化粧品の「cruelty-free」 (動物に苦痛を与えない)とはどういうこと?

A: 「Cruelty-free」な化粧品企業とは、安全かつ人道的な技術革新に取り組んでおり、1) 化粧品の完成品及び原料の安全性を確立させるための新たな動物実験の実施・委託、2) 動物実験なしには人間での安全性を確保できないような新たな原料*の使用、3) 新たな動物実験が必要である国における化粧品の販売、の3つを廃止する「期限」を設定している企業のことです。(「新たな原料」とは、企業が定めた期限の後に初めて化粧品のために開発された、または用いられた、新たな化学的物質を指します。)

Q: 化粧品の動物実験にはどのような動物が使われているの?

A: 世界中で、毎年10万〜20万匹の動物が、化粧品のために苦しみ犠牲になっていると推定されます。これらの動物には、ウサギ、モルモット、ハムスター、ラットやマウスなどが含まれます。イヌやサルは、どこの国でも化粧品の試験のためには使われていませんが、その他の化学物質の試験において用いられています。

Q: 化粧品にはどのような動物実験が行われているの?

A: 一般的に、化粧品の動物実験には、毛を剃ったウサギの皮膚に物質を塗りこむ皮膚刺激試験や、物質をウサギの目に点眼する眼刺激試験や、ガンや出生異常等の病気や健康被害の兆候を確認するための、数週間から数か月に及ぶ強制経口投与を行う研究や、大量の試験物質を強制経口投与し致死量を確認するための、非難が絶えない「急性毒性試験」などが含まれます。これらの試験は、動物を失明させたり、目の腫れ、皮膚の腫れや出血、内出血、臓器の損傷、出生異常やけいれんなどを引き起こし、そして最終的には死に至るなど、動物にとって著しい苦痛を伴う場合があります。試験が終了すると、動物は通常は窒息、首の骨を折る、断頭などの方法により処分されます。鎮痛のための処置は通常行われません。動物実験の種類については、詳しくはこちらをご覧ください。

Q: 法的に義務付けられていないのに、何故企業は動物実験を実施しているの?

A: ほぼ例外なく、動物実験を実施するか否かの選択は企業にゆだねられています。ほとんどの場合、企業が「新規」原料を開発し、使用したいという理由で動物実験が選択されます。新規原料とは、新しいために既存の安全性に関するデータがない原料のことを指します。なので、規制上、製品を販売する前に新たな安全性データを収集する必要があり、そのために動物実験が実施されるのです。

企業は何故動物を用いない代替法を使用しないのでしょうか。動物を用いない優れた試験方法が多く存在するので、多くの試験要件については、動物実験ではなく代替法が使用可能です。しかし、現時点で、新規原料のために必要なすべての試験の種類について代替法が開発されているわけではないのです。代替法の開発が遅れている背景として、今まで何年もの間、動物を用いない代替法の開発が優先されてきておらず、また代替法の新規開発には時間がかかるということが挙げられます。進展は着実にありますが、このような経緯からまだ全て代替法で対応できる段階には至っていません。このため、代替法がない試験に関しては、動物実験が実施されています。

現存する何千もの既存の原料のみを使えば、企業は新たな動物実験を回避できます。Cruelty-Freeな企業はこのように動物実験をせずに製品を製造しているのです。

また、動物実験は化粧品業界において長年の習慣であるという理由もあり、続いています。化粧品にはずっと動物実験が使われてきていて、限界があってもやり慣れた方法であるということから続けられているのです。化粧品の販売を許可する規制当局関係者はとても保守的なアプローチをとっていることが多く、扱い慣れていない動物を用いない試験方法で得た安全性データを企業が提出すると、承認作業に遅れが生じることもあります。HSIは、最新の動物を用いない試験方法への理解とその受け入れを促進するために企業や規制当局に働きかけています。

また、中国など自国に輸入している企業に対して法的に動物実験を義務付けている国で販売しているために動物実験を続けなければならないと主張する企業もいますが、これらの企業は、中国で販売するということは新たな動物実験を実施する必要が生じるということを知った上で、中国で販売することを自ら選択しているという状況にあります。ラッシュやポールミッチェルなど、真にcruelty-freeな企業は、動物実験の法令が改正されるまで中国では販売しないと宣言しています。

苦しむ動物たちを救うため、アクションとご支援をお願いいたします。

Q: これらの動物実験には、科学的な限界はあるの?

A: あります。同じ物質にさらされても、異なる動物種の場合、異なる反応を示すこともあるため、動物実験には、科学的限界もあります(ということは、ヒトとその他の動物の反応は異なる場合があるということです)。したがって、動物実験の結果は、人間に対して適用できない場合もあり、実生活において人間に及ぼす被害を過小評価もしくは過大評価してしまうこともあります。加えて、動物実験の結果は変化しやすく、解釈が難しいということもあります。信頼性が低く、予測が困難な動物実験は、消費者の安全性を保証するためには十分ではないということになります。

動物実験のほとんどは、毒性のメカニズムについて基本的かつ荒削りな知識しか持っておらず、種の違いが試験結果に及ぼす影響やその重要性について理解していなかった1930年代に開発されたものなので、動物実験の科学的な信頼性が不十分であることにはうなずけます。動物実験の科学的限界について、詳しくはこちらをご覧ください。

Q: 動物実験の代替にはどのようなものがあるの?

A: 化粧品企業は、今すぐに動物実験を廃止しても、cruelty-freeな方法を活用し、新しく、かつ安全で楽しい美容化粧品を製造することができます。Cruelty-freeな方法には次のようなものがあります。

• 企業は、数千種類も存在する、長い間安全に使用してきた実績のある原料を使うことができます。これらの原料に対しては、すでに安全性のデータが存在するため、新たに試験を実施する必要がありません(動物実験もその他の試験も必要ありません)。

• 企業は、ヒトが化学物質に対してどのように反応するか、動物実験よりもより正確に予測できる最先端の動物を用いない安全性試験を活用することができます。40以上の動物を使わない試験方法が利用できると評価されており、これらの最新の代替法のほうが、動物実験よりも、より安価で効率が良く、人間により適用できる結果を生み出します。最先端の動物を使用しない試験方法は、最新の科学的技術が提供するものであり、時の流れにより古くなりつつある時代遅れの動物実験に取って代わるものであるからです。例えば、EPISKIN、EpiDermやSkinEthicのような人間の肌を再構築したものを用いた皮膚試験もいくつかあります。また、太陽の光により誘発される光毒性のための「3T3 NRU」試験や目の腐食試験のBCOP試験等があります。代替法について、詳しくはこちらから。

上記のアプローチは、cruelty-freeな企業を認証する国際的に認められたプログラムであるリーピング・バニー(Leaping Bunny、英文のみ)に認証された企業がとっているアプローチです。

Q: 日本では化粧品の動物実験は法的に義務付けられているの?

A: いいえ。日本の法令では、一般化粧品については特段動物実験が義務付けられておらず、また禁止もされていません。したがって、現行の法令のもとでは、企業は動物実験を実施することを選択できるようになっています。新規の防腐剤やUV吸収材など、特定の新規の化学物質を用いる場合や、薬用化粧品(医薬部外品)において新たな原料を使う際などには、動物実験が求められています。

Q: 化粧品の動物実験を禁止した国はあるの?

A: あります。化粧品の動物実験の実施は、2009年より、欧州連合(EU)の加盟国28カ国で禁止されています。また、HSIの#BeCrueltyFreeキャンペーンも手伝って、2013年3月11日より、この日付以降新たに動物実験が実施された化粧品とその原料のEU域内の販売も禁止されました。イスラエルにおいても、2007年と2013年にそれぞれ動物実験の実施と販売の禁止が課されました。インドにおいても、#BecCrueltyFreeインドのチームにより展開された積極的なキャンペーンの後、2013年に動物実験実施の禁止が導入されました。最近では、#BeCrueltyFreeブラジルのチームにより、2014年1月、サンパウロ州における化粧品の動物実験の完全禁止の導入が歓迎されました。また、2015年には、#BeCrueltyFreeニュージーランドが、化粧品の動物実験禁止の実現に貢献しました。

しかし、その他の国のほとんどにおいては、化粧品の動物実験は未だに許可されています。多くの国においては、動物実験は法的な要件ではありませんが、禁止されているわけでもないので、化粧品の動物実験は、化粧品企業や原料供給会社により実施され続けています。世界中で展開されている#BeCrueltyFreeキャンペーンも手伝って、現在オーストラリア、ブラジル、台湾及びアメリカにおいて化粧品の動物実験を禁止する法案が検討されています。

#BeCrueltyFreeの活動状況についてはインフォグラフィックをご覧ください。

Q: HSIの#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャンペーンは、化粧品の動物実験を終わらせるためにどのような取り組みを実施しているの?

A: HSIの#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャンペーンは、化粧品の動物実験を終わらせる取り組みとしては、最も成果を挙げている世界最大規模のものです。我々は、動物の代弁者として以下の事項に取り組んでいます。

• 化粧品とその原料の動物実験と、その他の地域から輸入された動物実験が実施された美容化粧品の販売を終わらせるために法令を改正すること

• 動物を使用しない新たな試験方法の開発を支持し、その活用について規制当局や企業にトレーニングを提供することを通して、現代科学の活用を促進すること

• 動物実験やcruelty-freeな製品を購入することに関して、消費者を教育し、意識を向上させること

• 企業の動物実験廃止を支援し、変革をもたらすためにcruelty-free な企業とパートナーシップを結びロビー活動を実施すること

• 一般消費者、一流企業、政治家、著名人、そしてその他の支援者と共に、勢いのあるグローバルなキャンペーンを作り上げること

Q: 私にできることは?

A: 以下のことを実施して、HSIの、化粧品の動物実験を終わらせる取り組みを支援してください。

• Be Cruelty-Freeの誓約に署名し、化粧品とその原料の動物実験禁止に対する支援を表明してください。

• 寄付をして、世界中の動物実験を終わらせるHSIの取り組みを支援してください。

• 動物実験が実施されている製品や、動物実験が実施されている原料を使用した製品を買わないようにして、Cruelty-freeな製品を購入するようにしてください。Cruelty-free な製品をお探しの際は、HSIが公表している日本語の#BeCrueltyFree ショッピング・ガイドをご活用ください。

• 自分の愛用しているブランドに問い合わせて、cruelty-freeになってもらうように働きかけてください。問い合わせの際は、次のことを聞いてみてください: 1) 原料もしくは完成品に動物実験をしていますか? 2) 原料供給会社が動物実験を実施した、新規の原料を購入していますか? 3) 中国のような、新たな動物実験が義務付けられている国で製品を販売していますか? これらのいずれかの質問の回答が「はい」の場合、製品を買わないでください。

• #BeCrueltyFreeのメッセージ発信をお手伝いください。ツイッタ―で、@HSIGlobalをフォローして、#BeCrueltyFreeのハッシュタグを用いてキャンペーンについてツイートしてください。また、フェイスブックでHSIのページを「いいね!」して、我々が発信するニュースや活動に関する情報を友達とシェアしてください。
http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/facts/about_cosmetics_animal_testing_japanese.html?referrer=http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/be-cruelty-free-japan.html?referrer=https://www.google.co.jp/?referrer=http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/be-cruelty-free-japan.html?referrer=http://www.hsi.org/japanese/helping-animals/be-cruelty-free/facts/about_cosmetics_animal_testing_japanese.html
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/171.html

[国際19] 暴かれる王国・サウジアラビア 千万人以上が貧困以下 超先進国スウェーデン なぜフェミニストたちは無意味なパフォーマンスに

04/18(火) (BS1[BS世界のドキュメンタリー])

暴かれる王国・サウジアラビア

英国ジャーナリストと現地の活動家が隠し撮りでサウジアラビアの人権侵害の実態に迫る。

ブロガーで活動家のライフバダウィが公開の鞭打ち刑を受けてから1年。
47人の処刑以降、妻はバダウィと連絡が取れなくなった。
取材について英国外務省の見解「英国は定期的に国際法を遵守する重要性についてサウジアラビア側と話し合っている。
サウジアラビア政府幹部は宗派間抗争やISのイデオロギーを認めていない。
また我々が行っているサウジアラビア警察の訓練は厳格な審査の下で行われている。
英国の武器輸出は世界でもとりわけ厳しい輸出規制にのっとっている。
我々はライフバダウィについて強い懸念を抱いており、双方の高官レベルの会議でこの問題を取り上げている。
サウジアラビア政府はアリニムルが処刑されることはないと確約した」。
サウジアラビア政府の見解「番組は我が国を偏見に満ちた視点から描いている。
この論調は受け入れられない」。
活動家たちは表立って動けなくなった。
しかし、小型カメラの普及と共に王国の実態が世界に広く知られるのは時間の問題。
2016年2月、サウジアラビア東部で武力衝突が再発。
死者2人、負傷者26人。
ヨーロッパ会議はサウジアラビアへの武器売却禁止を求める決議を採択。
3月、サウジアラビアメディアが近々受刑者の処刑が行われると報道。
ライフバダウィの釈放予定は2022年。
フランス・ストラスブールの映像。
04/18(火) (BS1[BS世界のドキュメンタリー])
暴かれる王国・サウジアラビア
英国ジャーナリストと現地の活動家が隠し撮りでサウジアラビアの人権侵害の実態に迫る。
サルマン国王率いる現政権は国の内外でテロ取り締まりを強化しているという。
隣国イエメンでは大規模空爆作戦でシーア派民兵組織を掃討する連合国軍を率いた。
2016年1月2日、サウジアラビアは国内のテロ事件に関わったとして47人の死刑を執行。
1980年以降で最も多い大量処刑。
その多くは有罪判決を受けたテロリストだったが、政治活動家も数人含まれていた。
17歳で死刑判決を受けた少年・アリニムルは無事だったが、おじでシーア派指導者・ニムル師は処刑された。
元CIA政治的イスラム戦略分析責任者・エミールナクレは「ニムル師の処刑は反体制派に対する警告。
サウジアラビア政府はイスラム勢力だろうが世俗派だろうが一切の抵抗は認めないということ」と話す。
大量処刑は取材に協力してくれた活動家たちにも影響を与えた。
6ヶ月にわたって取材活動を続けた活動家・ヤセルは逮捕される危険性が高まり、撮影は難しくなった。
女性の権利拡大の大きな一歩とされた選挙は予定通り実施された。
しかし、女性活動家・ルージャイハスルールの名前は候補者名簿から消えていた。
女性の人権擁護活動家・ハラアルドサリは「イスラムの権力者たちはサウジアラビアに暮らす3000万人の国民の生活を向上させようとは考えていない」と話す。

04/18(火) (BS1[BS世界のドキュメンタリー])

暴かれる王国・サウジアラビア

英国ジャーナリストと現地の活動家が隠し撮りでサウジアラビアの人権侵害の実態に迫る。

サウジアラビアは少なくとも700億ドル(約7兆円)を投じてワッハーブ派の布教に務めてきたが、テロとの関連は否定し続けている。
過激派組織IS・イスラミックステートとも敵対する姿勢を示している。
しかし、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件に関して新事実は判明する。
同時多発テロの実行犯19人のうち15人がサウジアラビア出身者で、首謀者のオサマビンラディン自身もサウジアラビアの名門の出だった。
これを受け米国はサウジアラビアがテロ組織と繋がりがないか調べ始めた。
入手したCIA文書から、イスラムの慈善団体がテロを支援するときのあるパターンが浮かび上がった。
ボスニアヘルツェゴビナ救援サウジアラビア高等弁務団、米国同時多発テロ関与、サウジアラビアとの関係について解説。
同時多発テロ以降、サウジアラビアはテロと戦う姿勢を世界にアピール。
ISに対する空爆に参加し、シリアでは地上戦の準備を進めている。
しかし、根底にあるワッハーブ主義の考え方こそが問題だと指摘する人もいる。
NATO・ダレルモレル軍曹の映像。
米国国務省テロ対策顧問(2008〜09)・マシューレビット、米国同時多発テロの訴訟原告団弁護士・ショーンカーター、元米国下院外交委員会顧問・デビッドワインバーグ、元CIA政治的イスラム戦略分析責任者・エミールナクレ、元英国陸軍少将・ジョナサンショーのコメント。
ニューヨーク地方裁判所、アルカイダ、ワシントン、世界貿易センター、サルマン国王、ハードディスクに言及。


2017/03/12 フジテレビ 【新報道2001】

サウジ王家と鷹・飛行機に80羽が?
サウジアラビア・サルマン国王が1000人の王族と一緒に来日。
安倍総理とエネルギー問題について話し合う。
中東では鷹や隼は富と権力の象徴、そんな隼の大群がいるのは機内、サウジアラビアの王子が鷹80羽分のチケットを押さえたという今ネットで注目の写真。
関連動画
ドゥテルテ比大統領、南沙諸島「占領」「国旗立てる」発言を撤回 Philippine s Duterte pulls back from Spratlys flag vow (再生)フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は12日、南シナ海(South China Sea)の南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島、Spratly Islands)を全面的に占領し「フィリピン国旗を立てよ」と軍に命じた発言を撤回した。 ドゥテルテ大統領は公式訪問中のサウジアラビアで、現地のフィリピン人約2000人を前に「中国との友好関係のため」「私は(南沙諸島に)フィリピン国旗を立てには行かない」と発言。「どの島にも行くつもりはない。息子を派遣するかもしれないが、それは、われわれの主張が全世代のフィリピン人に明らかにふさわしいことを示すためだ」と語った。 この発言を受け、聴衆からは拍手が起きた。 南沙諸島はフィリピンや中国など数か国が領有権を争う。ドゥテルテ氏は6日、南沙諸島について「全て占領するよう軍に命じた」「構造物を建て、フィリピン国旗を立てる」と報道陣に表明。フィリピンが実効支配するパグアサ島(Pag-asa Island、中国名:中業島、Thitu Island)を「フィリピン独立記念日(12日)に訪れ、国旗を掲げるかもしれない」と語っていた。 しかし、この発言は波紋を呼び、大統領報道官や軍関係者は発言の意図について、フィリピンが実効支配する9つ余りの島しょ・岩礁の施設の改修のことだと釈明していた。(c)AFP年4月14日 President Rodrigo Duterte on Wednesday pulled back from a vow to place his country s flag on an island in the Spratlys chain claimed by China and other regional states.チャンネル登録はこちらから://www.youtube.com/user/afpbbnews動画のお問い合わせはこちらから://www.afpbb.com/list/helpaboutsite/regist
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https://jcc.jp/news/12003388/


 

 

サウジアラビア:1000万人以上が貧困以下の生活

サウジアラビアでの5月の反政府デモ

◆8月5日

 石油王国と言われるサウジアラビアでは、人々は裕福な生活をエンジョイしている、と思われてきたが、いまや人口2800万のサウジの3分の1以上になる1000万人が貧困レベル以下の生活をしている、とサウジの知識人であるタウフィク・エル・セイフが指摘している。

 7月29日号「サウジの王子、王家の腐敗を批判し絶縁を宣言」でも、指摘したように、シリアに対する陰謀を働くサウジアラビアの足元で、政権に対する反乱が起き始め、それが強化されていく趨勢にあることが分かる。「これは時代のなせる業であり、誰にも止められない。人間の良心が強まることで、沈黙を破って大胆な行為に出る人間は、これからもどんどん出てくるはずだ」と指摘したように、サウジでも間違いなく「アラブの春」現象は強大化していくことになろう。


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●サウジアラビア:1000万人以上が貧困以下の生活
http://en.alalam.ir/news/1501873

 サウジアラビアの知識人であるタウフィク・エル・セイフは、サウジアラビア国民の内、1000万人以上が基礎的必需品と毎日の必要経費以下の収入しか得ていない、と指摘した。

 労働社会省によって発表された統計によれば、300万人以上が貧困の故に政府の援助を緊急に必要としているとエル・セイフは語った。

 彼は政府に対して貧しい人々のための支援を要請し、サウジの社会はこの貧困に対処するに十分な富を持っていることを指摘した。

 サウジの活動家らはアブドラ国王に対し、公務員の給料、年金、学生奨学金、の値上げをするよう要請し、また基本的商品の価格安定化を要請した。
 
 社会騒乱を惹起する活動だとこの要請を指弾する政府に対し、エル・セイフは民衆の問題をよく分かった上でそれに抵抗しているのであり、政府が問題を無視している点で謝罪すべきと語った。

 サウジアラビアの改革を求める人々は社会騒乱を煽っているのではなく、民衆の権利を尊重するよう政府に要請している一般市民である、と彼は語った。 

 一方、、「百万人行進運動」はサウジアラビア全土で10月に人々に大会を行うよう語りかけている。

 2011年2月以来、抗議する者たちはサウジアラビアで恒例のようにデモ行進を行ってきた。これは主に、カチフやアワミヤで、政治犯の解放、言論・出版の自由、それに広範な差別を撤廃することを呼びかけるものであった。

 サウジの活動家によれば、勾留されている政治犯の殆どは、裁判や司法手続きなしに勾留され、ただ疑わしいという理由だけで逮捕された、という。

http://rockway.blog.shinobi.jp/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%94%BF%E6%B2%BB/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%EF%BC%9A1000%E4%B8%87%E4%BA%BA%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%81%8C%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E4%BB%A5%E4%B8%8B%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%B4%BB

 

 
2017-04-04 14:11
超先進国スウェーデンについて

 スェーデンと言うのは超先進国なのでしょうね。
 我々アジアの未開国家の人間には理解不能な原理で国家が動いているようです。

 先日川口マーンさんのフェミニズムの関する記事は、ワタシもその通りだと思いましたが、特にスェーデンに関する部分への川口さんの違和感には完全に共感しました。

113

なぜフェミニストたちは無意味なパフォーマンスに走りたがるのか

先月、スウェーデンの貿易担当大臣リンデ氏(女性)が、国内のフェミニストの人たちからさんざん非難された。イラン訪問の際に、頭にスカーフを付けたからだ。
断っておくが、イランではそれが法律である。したがって女性はこの国では、大臣であろうが、また、どんな信条を持っていようが、ふわりとでもスカーフを被らないことには、ホテルの部屋から外に出ることさえできない。

しかし、世界で一番進んだ男女平等の国の一つであるスウェーデンには、その大臣のスカーフにいちゃもんをつけた人たちがいた。「政府の信条と矛盾する」のだそうだ。

リベラル政党である自由党(FL)の党首いわく、「リンデ大臣は、フェミニンな外交を目指すスウェーデンの名声を汚した」(2月14日付シュピーゲル・オンライン)。どうも、自分たちのやりかたが世界中で通用すると思っているらしい。

125

 凄いですねえ・・・・、スェーデンのフェミニズムは。

 大臣の公式訪問でさへ、訪問先の国の法律よりも自国のフェミニズムを優先しろと言うのですから。

 イランのイスラム原理主義は、ワタシも支持しないし、またイスラム教の女性抑圧問題だと思います。

 しかしイランはイラン人の国なのです。 だからイスラム教を選ぶかフェミニズムを選ぶかを決める権利はイラン人にあるはずです。

 ところがスェーデンのフェミニスト達は、イラン人の選択を尊重する意思が全くないようです。

 しかしそうなるとフェミニズムと共にスェーデンが金科玉条としてる「多様な価値観を認める」「多文化主義」或いは「寛容」とはどう両立するのでしょうか?

 イランにどんな法律があろうとも、現実のスェーデン人の生活には何の影響もありません。

 それでもなをイラン人がイラン人の手で作った法律に文句を言い、閣僚の公式訪問時にさへそれを踏みにじれと言うは、寛容どころかIS並みの狂信であり、イラン人の価値観を全否定する話ではありませんか?

126

実は、その少し前、スウェーデンの外相(女性)が、やはりこのフェミニズムのジレンマに陥った。サウジアラビアのブロガー、ライフ・バダウィ氏がイスラムを侮辱した罪に問われ、10年の懲役と1000回の鞭打ち刑を言い渡されたことを批判したところ、それがサウジとスウェーデンの外交問題にまで発展してしまったのだ。

結局、スウェーデン外相はアラブ連盟の会合で予定していたスピーチもできなくなり、両国が結んでいた安全保障における協力関係も更新されないことになった。外交上、かなりの損失である。

129

 おお、国益を棄損しても言論の自由の弾圧に抗議すると言うのは立派です。

 しかしだったら自国の言論の自由はどうなのでしょうか?

 スエーデン、移民による犯罪実情を告発した警察官、ヘイトクライムで捜査対象に

 ベテラン警官が自身の経験をFBに書いたら捜査を受ける。

 ティム・プールのようなパラシュートジャーナリストは民主主義の敵だ? スエーデンメディアの狂った反応

 アメリカのジャーナリストがスェーデンについて批判的な記事を書くと、それを民主主義の敵と言う。

 なんか懐かしい臭いがします。 欧米でソ連崩壊以前の共産圏について批判的な記事が出る度に、共産諸国の政治家やメディアが同じ事を言っていました。

 ああ、今の中華人民共和国も同じ事言ってますね。

 自国でこんな事をやっていながら、サウジアラビアに対しては外交慣例も国益も無視して勇猛果敢に批判するのです。

130

 スェーデンにとっての言論の自由って何ですか?

 スウェーデンの価値観に合致する自由があると言う事ですか? 

 スウェーデンの価値観に合致する言論の自由は守るが、それに反する言論、それを批判する言論は、弾圧して構わないと言う事ですか?

 だったらサウジアラビアだって同じです。

131

 サウジアラビアはイスラム教を国是とする国です。 イスラム教の価値観がサウジアラビアの価値観なのです。

 だからサウジアラビアはイスラム教に合致する言論の自由は守りますが、それに反する言論、つまりイスラム教に批判的な言論は弾圧します。

 つまりスウェーデンもサウジアラビアもやっている事は同じで、自国の価値観に反する言論は容赦なく弾圧するのです。

 そしてスェーデンとサウジアラビアやイランなどイスラム原理主義国家とどちらが寛容かと言えば、サウジアラビアやイランの方が遥かに寛容です。

 なぜならこの二国は厳しいイスラム戒律を強制するのは、国内だけの話であって、それを外国に要求したり、外交に持ち込むような事をしたことはありません。

133

 一方スェーデンは外交でフェミニズムを振り回しても、自国の女性の人権を守る事には至って無関心のようです。

 前出のスェーデンのメディアが批判したアメリカのジャーナリストの記事とは、イスラム移民の大量流入で、スェーデン国内の治安が悪化して、女性の外出が極めて危険になったと言う内容なのです。

 ストックホルム症候群、フェミニストの国スエーデンの街角から女性が消えた

 こんなにも恐ろしい状況になっているのは、唯移民が大量流入している事だけが理由ではありません。

 スウェーデン政府が難民や移民による自国女性への人権蹂躙に極めて寛大だからです。

135

 4人に1人の女性が強姦される国とは?アメリカ大学構内ではない!

スエーデン裁判所は強姦に加わった5人の「未成年」の国外追放を拒否。なぜなら国外追放をすればこれらの人間がシャリア法のもとで危険にさらされるからだという。ちょっと待ってよ、これらの自称未成年によてひどい危険にさらされたスエーデン女性の被害者はどうでもいいっつうの?モスレム移民たちはスエーデンの未成年に寛容な法律を利用して30過ぎのおっさんでも未成年と偽って入国するため、スエーデン法廷は常に極悪犯人たちに軽い刑罰を加える結果となる。この被害者を襲った犯人たちはほとんどが未成年として扱われた。そして彼らに与えられた刑罰はというと、強姦者たち4人には強姦罪、そしてその模様を撮影した者一人は児童ポルノ罪に問われ、四人の強姦者に15ヶ月、もうひとりに13ヶ月という信じられないほどの軽い禁固刑が課せられた。

134

 ??

>その模様を撮影した者一人は児童ポルノ罪に問われ

 児童ポルノ罪に問われると言う事は、被害者は未成年だったと言う事ですか?

 未成年を集団強姦して、その様子を撮影して、禁固13~15か月!!

 しかも犯人はその後もスウェーデンに在留し続けるのです。

 これが被害者にとってどれほどの恐怖か?

 そして移民や難民達は当然のことながらこう思うでしょう。

139

 エッ?

 あんな酷い事やっても、一年チョッと刑務所に入れば良いの? 

 オレの国なら女の身内から切り刻まれけどね。

 この国じゃ、強姦なんて全然罪じゃないんだな。

 だったら異教徒の女は、いつもオレタチにやって欲しがってるって話は、ホントだったんだな。

 今度機会があったらオレもやってみよう!!

140

 スェーデン政府と司法には被害者女性の人権を守る意思は一切なく、難民や移民によるスェーデン女性への人権蹂躙には極めて寛大だとしか言えないのです。

 ワタシはイスラム教には非常に批判的ですが、しかし現在のイスラム諸国が国内でイスラム教を守り続ける事に反対する気はありません。

 確かに日本人の感覚から言えば、イスラム教徒はどうしようもなく不寛容な一神教で、近代化を阻む宗教です。

 しかしイスラム諸国の殆ど全てが非常に複雑な多民族国家であり、西欧式の民主主義や法治主義を確立するのは殆ど不可能なのです。

 そうした世界では宗教だけが唯一人倫を維持する手段なのです。(法と宗教)

 公正な司法制度が機能しない国では、人は「神様がダメと言ったから絶対にダメ」と信じる事で人倫を守るしかないのです。

 だからこうした世界で生きている人達はワタシ達には理解できない程の厳しさで信仰を守っています。

141

 でもそのように信仰だけを人倫として生きてきた人々が、別の世界に行ったからと言って、簡単に頭を切り替える事ができるでしょうか?

 アフリカや中東からスウェーデンに来たら、どんな人でその日のうちに寒さに驚いてスェーデン式の防寒衣料を身に着けるでしょう。

 でもスウェーデン式の理念や行動規範は、そんなわけにいくのですか?

 理念の全く違う世界から人を受け入れれば、彼等がきちんと社会に適応するためにはきっちりと、理念の違いを教えていくしかないのではありませんか?

142

 スエーデン元警官の証言、スエーデンには移民融合計画がない

 この記事でアフガニスタン出身の元警察官は言うのです。

 移民は犯罪を犯そうと思ってスェーデンに来るわけではないが、スェーデンの価値観や行動規範を理解しいない。 彼等にきちんとこうした事を理解させなければならない。 

 ワタシもこの記事の元警官の言う事はその通りだと思います。

 しかし超先進国スェーデンでは、こうした現実的な対応は、してはイケナイようです。

 スェーデン政府の見解では、「どんな世界から来た人間であろうとも、スウェーデンに入国したら直ぐにスェーデンの価値観を理解して行動する」のです。 だから移民や難民の犯罪は「起きていない」事になります。

145

 つまりスェーデン政府と言うのは、こうした神学的原理により政策を行うのです。

 まるで法皇庁のように。

 そしてISのように。

 彼等にとって大切なのは、現実の問題ではありません。 彼等が掲げる理念と信仰なのです。

 そしてその理念と信仰の解釈権は、完全に自分が握るのです。 

153

 スェーデンの大臣がイランに行くときにベールを強制されても、サウジアラビアでブロガーが鞭打ちに遭っても、スェーデンの女性には何の問題もないよ!!

 だってイランやサウジアラビアに行く用事のあるスェーデン人なんてほとんどいないんだから。

 でも自分の住んでいる街の中を自由に歩けないんじゃ仕事にも行けないよ!!

 だからホントにフェミニズムを掲げるなら、外国に余計な事を言っている暇に、自国の女性を守る努力をしたら?

146

 しかしこんな事を国民が勝手に言う事は許されません。

 フェミニズムや多文化共存や寛容と言う理念の解釈はあくまでスウェーデン政府が行うのであって、国民が勝手にやると異端として処罰されます。

 これが超先進国スウェーデンの本質なのです。

 なるほどスウェーデン政府がテロリストの流入に寛大なわけです。

 だって彼等はお互いに、全く同質同類なのですから。
http://yomouni.blog.fc2.com/blog-entry-5847.html

 


 

なぜフェミニストたちは無意味なパフォーマンスに走りたがるのか
「国際女性デー」に感じるモヤモヤ
川口 マーン 惠美 プロフィール
 
「キッチン奴隷制」も今は昔

少し前の話になるが、3月8日、ドイツ人の知り合いの女性から唐突に、「国際女性デー、おめでとう!」というメールが届き、びっくりした。「国際女性デー」など意識したことはなかったし、実際、日本でもドイツでもほとんど話題にはならない。

私の知り合いは、ソ連崩壊の後、旧ソ連邦のある国からドイツに“帰国”した人々の一人だ。

ドイツは血統主義を取っているので、先祖にドイツの血が流れていると証明された人に対しては、ほぼ無条件に帰化を認めている。連邦政治教育センターの発表では、1950年から2011年までに、ソ連邦、及び、東欧の国々から帰国した元ドイツ人の数は、450万人にも上るという。

「国際女性デー」は、旧ソ連圏では大きな意味があった。今もロシアでは、1966年以来の国民の祝日だ(スターリンが決めた)。女性はお花やチョコレートをもらい、皆から感謝される。母の日や敬老の日と少し似ている。

共産圏では女性の労働力は、とても貴重だった。就労における男女平等は、共産圏の国々の方が、西側諸国よりも一歩先に進んだ。ソ連共産党は、1920年代、キッチンのないアパートの建設まで計画していたという。

3度の食事を職場や学校などの食堂でとれば、女性は料理に縛られずに済む。当時のソ連のポスターには、赤と黒の力強い構図に、「キッチン奴隷制を打倒せよ」というスローガンが踊っている。

ソ連時代のポスター
しかし、それから100年、今はどうなのだろう?

私は、西側諸国では、男女同権はすでにほぼ達成されていると思っている。抑圧されている女性はまだいるだろうが、抑圧されている男性の数よりずっと多いとも思えない。だからこそ、国際女性デーは意味をなさず、ほとんど無視されているのである……。

フェミニズムのジレンマ

ところが、どうもその考えは間違っていたらしい。フェミニズム運動は、実は今も烈火のごとく燃え盛っている。しかも、ほぼ平等なものを、さらに均そうというのだから、運動は先鋭化を免れない。

先月、スウェーデンの貿易担当大臣リンデ氏(女性)が、国内のフェミニストの人たちからさんざん非難された。イラン訪問の際に、頭にスカーフを付けたからだ。

断っておくが、イランではそれが法律である。したがって女性はこの国では、大臣であろうが、また、どんな信条を持っていようが、ふわりとでもスカーフを被らないことには、ホテルの部屋から外に出ることさえできない。

しかし、世界で一番進んだ男女平等の国の一つであるスウェーデンには、その大臣のスカーフにいちゃもんをつけた人たちがいた。「政府の信条と矛盾する」のだそうだ。

リベラル政党である自由党(FL)の党首いわく、「リンデ大臣は、フェミニンな外交を目指すスウェーデンの名声を汚した」(2月14日付シュピーゲル・オンライン)。どうも、自分たちのやりかたが世界中で通用すると思っているらしい。

NEXT ▶︎ エマ・ワトソンの写真に何が…


実は、その少し前、スウェーデンの外相(女性)が、やはりこのフェミニズムのジレンマに陥った。サウジアラビアのブロガー、ライフ・バダウィ氏がイスラムを侮辱した罪に問われ、10年の懲役と1000回の鞭打ち刑を言い渡されたことを批判したところ、それがサウジとスウェーデンの外交問題にまで発展してしまったのだ。

結局、スウェーデン外相はアラブ連盟の会合で予定していたスピーチもできなくなり、両国が結んでいた安全保障における協力関係も更新されないことになった。外交上、かなりの損失である。

それに比べて今回、リンデ氏はスカーフを被り、30億クローナ(約380億円)もの各種商談をまとめた。

両国の会合の写真を見ると、スウェーデン側の15人の外交団のうち12人が女性。一方、相手のイラン側は全員が男性。スカーフはしていても、スウェーデン女性たちは正真正銘のウーマンパワーを見せつけている。これこそスウェーデンにとっては、二重の意味で実りある外交ではないか。

女性抑圧のシンボル

映画「ハリー・ポッター」シリーズで人気のイギリス人女優、エマ・ワトソンは、フェミニストとしても有名で、国連の親善大使として、バングラデシュやザンビアなどで女性の権利拡張プロジェクトに携わっていた。

ところが、彼女がバストを強調した美しい写真を発表した途端、攻撃が始まった。「セクシーな写真とフェミニズム運動は矛盾する、けしからん」というわけだ。

ワトソン氏自身はそれに対し、「フェミニズムとは女性に選択肢を認めることであって、私の胸とどう関係があるのかわからない」と反論した。

フェミニズムというのは、言うまでもなく、性差別を廃止し、女性の解放を主張する運動だ。これが今、復活している背景には、トランプ大統領の存在も大きい。1月、ニューヨークをはじめ、世界各地で反トランプの「Women's March」が開催されたことは私たちの記憶に新しい。

スイスでも3月、同じ趣旨の女性デモが呼びかけられた。呼びかけ人は、スイスJS(若い社会主義者)の代表、タマラ・フニチェロ氏(27歳)。デモへの参加を促す広報写真を見ると、なんと5人の女性(一人はトランスジェンダー)が上半身裸で、自分たちのブラジャーを燃やしている。5人のうちの1人はフニチェロ氏本人。ブラジャーが女性抑圧のシンボルというのは、70年代から変わらない。

フニチェロ氏のFacebookより
フニチェロ氏の解説によれば、「いろいろな体型の女性、いろいろな性的指向、いろいろな出身地の女性」の団結を示しているのが、この写真の凄いところらしい。ただ、「女は必ずしもワギナを持たなくても良い」といわれると、私にはよくわからなくなる。

いずれにしても、「これが、フィルターをかけていない私たちの肉体。この美しい肉体をそのまま見せたい」ということなので、結局、美しく見て欲しいという願望は存在するわけだ。そういえば、ブラジャーを燃やしている彼女たちは、皆、綺麗にお化粧をしている。

女性の権利拡張を主張するなら…

そういえば、70年代、女性解放運動が盛んだった頃にも、デモで服を脱ぎ捨て、警官においかけ回される女性がいたものだが、そもそも私には、男性優位主義に抗議するとき、裸になる理由がよくわからない。

誤解を招かないように言い添えるなら、私は、女性の地位を、真の平等に向かってさらに改善していくことに、もちろん賛成だ。さらに言うなら、人間は皆、同性でも異性でも、好きな人と愛し合い、暮らせば良いと思っている。

ただ、今、社会主義者が女性の権利拡張を主張するなら、同性愛者やトランスジェンダー支援より、もっと大切なことがあると思う。たとえば託児所の充実や、小さな子供を持つ人がフレキシブルな時間帯で働けるようなシステム作りに尽力するほうがよっぽど多くの女性の役にたつ。フェミニズムもリベラリズムも、もう少し地に足をつけた方向に仕切り直すべきだ。

だいたい、ヌードなど珍しくもない昨今、服を脱いだってそれほど注目されない。あれは、ビキニやミニスカートで皆が喜んだ70年代だったからこそ、衝撃的だったのだ。

蛇足ながら、“虐げられた男性たち”も、将来、このように無意味なパフォーマンスに走ることのないよう、どうか気をつけてください。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51345
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/174.html

[経世済民121] トランプ氏と市場、ハネムーン後の現実 IMF世界成長上方修正、保護主義警告 総選挙実施、ポンド下げ消す 米住宅着工低水準
FX Forum | 2017年 04月 18日 21:11 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:
トランプ氏と市場、ハネムーン後の現実

岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 18日] - トランプ米大統領就任から、もうすぐ3カ月となる。政権発足から100日間はハネムーン期間と呼ばれるが、トランプ大統領の場合、一部世論調査でオバマ前大統領の任期中の最低支持率を更新するなど、国民・メディアとの関係はとても「蜜月」とは言えない状況だろう(ただ米株市場では依然、大統領選以降のハネムーンは辛うじて続いていると言えるかもしれない)。

選挙期間中に示していた就任100日計画では、「トランプノミクス」と称される大幅減税とインフラ投資による財政拡大の立法措置を掲げていたが、スケジュールは大幅に後ずれしている。

最初のつまずきは、閣僚人事と、各省スタッフの任命・承認の遅れだ。事務作業が後ずれするのは、ある意味、必然的なことだ。慣例に従えば1月下旬の一般教書演説が2月28日に遅れ、通常なら2月上旬発表の予算教書(簡易版)が3月16日に予算案概要という形となり、具体的な税制改革は盛り込まれなかった。

選挙公約に掲げていた医療保険制度改革法(オバマケア)代替案では議会との調整が難航し、3月24日には撤回せざるを得ず、市場を失望させた。4月17日の英紙とのインタビューで、ムニューシン財務長官は、税制に関する法案を8月までに成立させる目標は「極めて大胆であり、現時点で現実的ではない」と述べた。財政出動は秋以降の法案成立待ちであり、景気浮揚効果は2018年以降と考えた方が良いだろう。

人事面では2月13日のフリン元大統領補佐官(国家安全保障担当)辞任に始まり、政権内での意見対立を背景に、政策実現の成果があがらない状況が続いている。4月5日には、バノン首席戦略官・上級顧問を国家安全保障会議のメンバーから除外。「米国第一」の強硬派を外し、クシュナー上級顧問(トランプ大統領の娘婿)ら穏健派を重用することによって、今後は驚くような強硬路線から、現実路線にシフトしていくことが見込まれる。

筆者は当初より、共和党は財政規律を重視する向きが多く、議会の協力を得るため、新政権は極端なプランを徐々に見直していくとみていたが、それが証明された3カ月だったと言えよう。閣僚の更迭検討や税制改革の調整難航といった内政面でのつまずきが続き、それをカバーするために、足元では外交面(シリア攻撃、北朝鮮問題)に傾斜した感が拭えない。

<見えてきた「トランプ流」交渉術>

一方、この3カ月で「トランプ流」交渉術の要諦が、より鮮明に見えてきた。過去の著書や発言なども踏まえると、高圧的な注文で相手を不安にさせ、自分が勝つために有利な状況を作ることのようだ。選挙活動中によく使っていた決め台詞「You’re fired!(君はクビだ)」も、そのような意図で連発していたと推察される。

1月31日の製薬会社幹部との会合で、トランプ大統領が「資金供給と通貨安誘導で有利な立場にある」と日本の為替・金融政策を厳しく批判したことも、2月10日の日米首脳会談を控えてのパフォーマンスだったのだろう。

中国に対する駆け引きも同様だ。4月11日にトランプ大統領はツイッターで「中国が北朝鮮問題を解決するならば、米国との通商合意ははるかに良いものになると習主席に説明した」と書き込み、中国の外交面での協力を得るために、通商問題を駆け引きに使っていることがうかがえる。北朝鮮の脅威に対して、中国の協力を引き出したい考えだ。

もはや米国にとって、通商問題よりも安全保障の方が優先順位は高い。理想的な処方箋は、中国の説得のもと軍事介入を回避し、北朝鮮への経済制裁の強化という形でアジア域内が合意することだろう。

4月12日付の米紙のインタビュー記事で、トランプ大統領は、1)中国の為替操作国認定見送り、2)低金利政策が好ましい、3)イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長再任の可能性、を示唆した。これら3つはいずれも従来の意見を大転換させるものだった。

1点目について、大統領は自身の立場を変えた理由として、中国は何カ月も人民元を操作しておらず、現在の局面で為替操作国に認定すれば、北朝鮮問題で中国との協議を損なうためだと説明した。14日発表の米財務省為替報告書で、中国は引き続き為替監視国として列挙されるにとどまった。今回は通商問題より安全保障を優先させたわけだが、安全保障が落ち着いた段階で、再び重要な協議事項となるだろう。

2点目と3点目で大統領は、FRB議長人事について「まだ言及するのは早い」とした上で、「イエレン議長を尊敬している」と述べ、「低金利政策が好ましい」と語った。現時点でイエレン議長を再指名するか決めていないのは事実だろう。遠回しにFRBの利上げ加速をけん制したとの解釈もあるようだが、3カ月に1回の緩やかな利上げペースなら容認されるだろう。

<米長期金利3%超えの条件>

筆者がトランプ相場の起点と考える米10年債利回りは、足元の地政学リスクの高まりで、昨年12月中旬以降の2.3―2.6%レンジを一気に下抜けた。筆者の読み間違えは、3月利上げ後の米長期金利低下だったと反省する。

3月米連邦公開市場委員会(FOMC)の付属資料、政策金利見通し(いわゆるドットチャート中央値)は、2017―18年末および長期水準のいずれも昨年12月時点と変わらなかった。3月利上げ直前に米10年債利回りは一時2.6%台をつけていたが、市場は年3回の利上げペースは加速しないと受け止めて、安心感が広がった。

つまり、あと2回の利上げを正当化する程度の緩やかな成長と物価上昇では、米10年債利回りの3%は視野に入らないと考える投資家が多いということだろう。

確かに、指標では懸念材料もある。4月14日発表の米3月小売売上高は前月比0.2%減と2カ月連続のマイナス。自動車の販売不振と税還付の遅れで個人消費が弱い。アトランタ連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によれば、1―3月期の成長率予測は前期比年率プラス0.5%まで鈍化(14日時点)。4月28日発表の1―3月期実質GDPで1%割れの可能性もありそうだ。

それでも季節的な弱さなら、米国経済の緩やかな回復は変わらない。4月分以降の持ち直しを確認したいところだ。今後は、世界的なIT関連需要の強さがいつまで続くのか、ドル高の悪影響は企業収益などにじわりと効いてくるのか、税制改革の遅れが影響するのか、といった点を見極める時間帯が続こう。

FRBは上振れリスクを意識しており、利上げは前倒しの可能性の方が高いとみる。FRBの想定通り、物価が2%近辺で推移する姿を確認できれば、6月FOMCでの追加利上げは可能だろう。利上げ継続の前提が変わらねば、米10年債の2%割れを買い進むには限度があるとみる。

4月5日発表の3月FOMC議事録では、用意周到なバランスシート(3月末で4.5兆ドル程度)縮小議論の詳細が明らかになった。大半のメンバーが、再投資政策の変更時期について、「年内に適切になる」と判断しており、米国経済の先行きに楽観的で、あと2回の利上げに自信を持っていることが読み取れた。

仮に年内に再投資政策の縮小が始められる経済状況なら、物価上昇が加速した場合、さらなる利上げの可能性は出てくるだろう。経済が上振れ(欧州に注意)、物価が2%近辺から上昇する時には、米10年債利回りの3%超えが視野に入れることを肝に銘じたい。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

コラム:FRB、トランプ政権で利上げペース加速圧力に直面

コラム:ドル高に陰り、綱引きの軍配は円高へ=亀岡裕次氏
ドル上昇、米減税やFRB早期利上げに期待=NY市場
ドル上昇、米減税やFRB早期利上げに期待=NY市場
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKBN17K0UK


 

 
IMF:今年の世界成長見通しを上方修正−保護主義台頭の脅威に警告
Bloomberg News
2017年4月18日 22:00 JST

関連ニュース

Haruhiko Kuroda, governor of the Bank of Japan (BOJ), speaks during a news conference at the central bank's headquarters in Tokyo, Japan, on Thursday, March 16, 2017. Kuroda said he doesn't think global yield rises will force the BOJ into a rate hike. Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日銀:17年度物価見通しの小幅下方修正を検討、27日会合で−関係者

日銀審議委員候補に「リフレ派」片岡氏−三菱UFJ銀の鈴木氏も

U.S. Vice President Mike Pence, left, shakes hands with Shinzo Abe, Japan's prime minister, during their meeting at Abe's official residence in Tokyo, Japan, on Tuesday, April 18, 2017. The U.S.-Japan alliance is the "cornerstone" of peace in the region, Pence told Abe in the meeting Tuesday. Photographer: Kim Kyung-Hoon/Pool via Bloombergaaaaaaaaaaa

安倍首相:北朝鮮が対話に応じるよう圧力必要−米副大統領と会談

Taro Aso, Japan's deputy prime minister and finance minister, speaks to the media ahead of the Group of Seven (G-7) finance ministers and central bank governors meeting in Sendai, Japan, on Thursday, May 19, 2016. While the host nation looks to favor an agenda that includes more fiscal stimulus to spur demand, a tonic thats strongly supported by Canada, not everyone signaled a willingness to spend more. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Taro Aso

日米経済対話「近く具体的な成果」、貿易や投資のルール協議へ

2017年の日本の成長率予想も1.2%に引き上げ、純輸出急増が追い風
「貿易戦争」のリスクが世界経済に影を落とす−オブストフェルド氏

国際通貨基金(IMF)は18日、世界経済見通し(WEO)の全文を公表し、保護主義的な勢力の台頭によって世界経済の展望の小幅な改善が損なわれ、第2次世界大戦後の経済秩序に深刻な緊張をもたらす恐れがあるとの見解を示した。

  IMFは今回、今年の世界の成長率予想を3.5%と、1月時点から0.1ポイント上方修正。2018年については3.6%成長への加速見通しを据え置いた。IMFは近年、成長見通しを下方修正するケースが多かったが、最新のWEOはかすかな楽観論をにじませた。

  上方修正は「上り調子」の金融市場や、製造業および貿易分野で待ち望まれていた循環的回復を主因としたものだとIMFは指摘。ただ、過去数十年に比べると、世界の成長は低調なままで、「貿易戦争」のリスクが引き続き世界経済に影を落としていると、IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は警告する。

  オブストフェルド氏はWEOの序文で、「世界経済は勢いを増しつつあると見受けられる。われわれは転換点にあるのかもしれない」と分析。しかし、「第2次世界大戦後の国際経済関係のシステムは、それがもたらした総合的な利益にもかかわらず、深刻な緊張にさらされている。その理由はまさに、成長とその結果生じた経済的調整が不平等な報酬を伴う場合があまりにも多かった点にある」と論じた。

  WEOで示された展望改善はIMFの春季会合のため今週ワシントンを訪れる加盟189カ国の財務相・中央銀行総裁にとって朗報となる。IMFのラガルド専務理事は先週、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「世界経済に春の気配が感じられる」と話していた。

米政権の真意は

  「米国第一」主義を掲げたトランプ氏が米大統領に就任して以降、今回がワシントンでの初の春季会合となる。同氏が先週、公約していた中国の為替操作国認定を見送った後、米政権が最もタカ派的な通商政策面の脅しから後退しつつあるのか、それとも単に闘いを選んでいるのか、各国の当局者は注意深く見極めことになるだろう。
  IMFは今年の米国の成長率予想を2.3%、来年は2.5%にそれぞれ据え置いた。1月の段階では、トランプ氏の減税案とインフラ支出増大の計画を織り込んで、見通しを上方修正していた。

  今年の英国の成長率見通しは2%と1月時点の1.5%から上方修正。18年は1.5%への鈍化を見込んでいる。昨年6月の英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択以降、同国経済は予想外の堅調なパフォーマンスとなっており、「マイナスの影響は以前の想定よりも一段と緩やかに具現化している」ことを示唆している。
  今年の日本の成長率予想は1.2%と、1月時点から0.4ポイント上方修正した。日本の成長を押し上げたのは純輸出の急増で、それは17年も続く見通しとされる。

既存体制への逆風

  ユーロ圏では、緩やかな財政刺激や緩和的な金融情勢、ユーロ安が追い風となり、17年の成長率予想は1.7%と1月時点から0.1ポイント上方修正。今年の中国の成長率見通しも6.6%に上方修正されたが、18年は6.2%への鈍化を予想する。
  IMFは新興市場国と開発途上国の全般的な見通しを据え置いた。原油をはじめとする商品相場の回復に支えられ、資源輸出国の状況は徐々に改善すると予想されている。その一方で、天然資源への依存度が極めて高い中東とサハラ砂漠以南のアフリカ地域は成長見通しを下方修正した。

  大恐慌後にまん延した近隣窮乏化政策の再燃を回避しようとの決意の下、世界の金融システムの監督と開かれた市場の促進を目的に、第2次世界大戦中にIMF創設の構想が練られた。

  それでもトランプ氏を筆頭とするナショナリストの政治家は既存のシステムやIMFのような国際機関に疑念を表明している。

  IMFのオブストフェルド氏は「先進国では、国際的な経済統合に懐疑的な各国内の政治的動向の広がりが顕著な脅威となっており、統合が通商体制のための多角的なルールに基づくシステムを通じたものであるか、ユーロ圏やEUといったもっと野心的な地域的取り決めによるか、金融規制のための世界的に合意された基準によるかは無関係だ」と、事前に準備したコメントで指摘した。

原題:IMF Raises Global Forecast While Warning of Protectionism Threat(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLBJZ6TTDS001

 


 


 

IMF:ブラジルの18年成長率予測1.7%に上方修正−不透明感後退で
Eric Martin
2017年4月18日 22:00 JST

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日銀:17年度物価見通しの小幅下方修正を検討、27日会合で−関係者

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日米経済対話「近く具体的な成果」、貿易や投資のルール協議へ
メキシコの来年の成長率見通しは2%に据え置き
アルゼンチンは昨年のマイナス成長から今年は2.2%のプラス圏へ


国際通貨基金(IMF)は18日に公表した世界経済見通し(WEO)の全文で、ブラジルの2018年成長見通しを小幅に上方修正した。政治的な不透明感の後退と金融緩和が進みつつあることや、政府による経済改革の進捗(しんちょく)が緩やかな回復軌道を後押しするとの見方を示した。
  IMFはブラジル経済の18年成長率見通しを1.7%と、1月時点の1.5%から引き上げた。ただブルームバーグ調査では予想中央値が2.2%で、IMFの予想は調査対象31人のアナリストのうち27人の予想を下回る悲観的な見通しにとどまっている。
  テメル政権は1世紀ぶりとなる深刻なリセッション(景気後退)からの脱却に努めている。ブラジル中央銀行は今年、高失業とインフレ鈍化を背景に利下げペースを加速。今年の成長率見通しは引き続き弱いものの、通貨の上昇やインフレ率の低下などから信頼感は高まっている。
 
  「ブラジルのマクロ経済見通しは野心的な構造的経済・財政改革の実現にかかっている」とIMFは指摘した。
  WEOでは、ブラジル中銀が年末までに政策金利を現行の11.25%から8.5%まで引き下げ、18年いっぱいその水準を維持すると予測。予想通りなら、ブラジル中銀としては07年9月までの2年間に19.75%から11.25%まで引き下げて以来の大規模な利下げサイクルとなる。2年にわたるリセッションの後、17年のブラジルの成長率は0.2%にとどまるとIMFは予想する。
  IMFは、メキシコの成長率については今年1月時点の見通しと変わらず、17年が1.7%、18年を2%と予想。アルゼンチンは今年2.2%成長と、昨年の2.3%のマイナス成長から回復を見込む。ベネズエラについては今年7.4%のマイナス成長を予想している。
原題:IMF Sees Brazil Growth Rebounding in 2018 on Easing Uncertainty(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLE5P6K50XT01


 


 


 
メイ英首相:6月8日の総選挙目指す−離脱交渉に向け基盤強化へ
Robert Hutton
2017年4月18日 19:23 JST更新日時 2017年4月18日 20:12 JST

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メイ英首相は18日、議会を解散し6月8日の総選挙実施を目指すと発表した。強い基盤を持って欧州連合(EU)離脱交渉に臨むため、予想外の賭けに出た。
  同首相が離脱の手続きを正式に開始してから1カ月に満たない。14日からの復活祭休暇に入る前は解散総選挙はないとしていた。

Theresa May on April 18.

Photographer: Alastair Grant/AP
  次回総選挙は2020年の予定だったが、与党・保守党の支持率が最大野党を20ポイント以上上回っている現状から、メイ首相は勢力を拡大できる余地がある。キャメロン前首相から引き継いだ下院でのぎりぎりの過半数ではEU離脱交渉を乗り切れないとメイ首相は判断したもようだ。
  同首相は18日首相官邸前で、「議会の一致団結が求められるのに、実際には分裂している。英国は結束しつつあるのに議会はそうではない」とし、そのような分裂が離脱交渉を成功させる政府の力をそぐと説明した。
  世論調査はコービン党首率いる労働党に対する保守党の優位を示す。このため与党の議席数を伸ばせるほか、首相は離脱に関して自身と同じ考えの議員を増やせることを期待しているとみられる。タイムズ紙によると、17日の調査で保守党支持は労働党を21ポイント上回り、9年ぶりの大差を付けた。
原題:Theresa May Seeks Snap U.K. Election After Triggering Brexit(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLOAW6JIJUP01


英ポンドが下げ消す、メイ首相が総選挙実施を発表
Anooja Debnath
2017年4月18日 18:45 JST更新日時 2017年4月18日 19:25 JST

18日の外国為替市場でポンドが下げを消した。メイ英首相はロンドンで、議会を解散し6月8日に総選挙を実施する計画を発表した。
  ポンドは一時の0.4%安から持ち直し、ロンドン時間午前11時13分現在は0.1%高の1ポンド=1.2576ドル。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iqYHrJ27467w/v4/-1x-1.png
原題:Pound Erases Losses as May Calls for Early U.K. General Election(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLMW26K50XU01


 
米住宅着工件数:3月は4カ月ぶり低水準に減少−許可件数は増加
Michelle Jamrisko
2017年4月18日 22:49 JST


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安倍首相:北朝鮮が対話に応じるよう圧力必要−米副大統領と会談
日米経済対話「近く具体的な成果」、貿易や投資のルール協議へ

3月の米住宅着工件数は4カ月ぶり低水準に減少した。
  米商務省が18日発表した3月の住宅着工件数(季節調整済み、年率換算、以下同じ)は前月比6.8%減の122万戸。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は125万戸だった。前月は130万戸に修正(速報値129万戸)された。
  着工件数の先行指標となる住宅着工許可件数は3.6%増の126万件となった。
  一戸建ての着工件数は前月比6.2%減って82万1000戸。前月は87万5000戸と、2007年10月以来の高い水準だった。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iAuM01GK.3S0/v2/-1x-1.png

  変動の大きい集合住宅は7.9%減の39万4000戸で、4カ月ぶり低水準。
  地域別では全米4地域のうち3地域で着工件数が減少。中西部は16.2%減って半年ぶり低水準。西部も16%減となった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Housing Starts in U.S. Fell in March to a Four-Month Low(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLWZ06VDKHT01



http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/229.html

[経世済民121] 今、風は変わった。投資のチャンスです ゴールドマン暴落ダウ113ドル安 ドル大幅安 ポンド急伸 米国原油在庫
今、風は変わった。投資のチャンスです。

市場は「晴れ、ときどき台風」

「5つの原則」から見る買い時
2017年4月19日(水)
居林 通

 お久しぶり…ではないですね。今回はあまり間を置かずにお呼びいただきました。

居林:急かしてすみません。投資のタイミングが近づいています。ここで市場に入らないなら、年初で「トランプ旋風」には乗らない、とお話した意味がありませんので。

 なるほど、そうでした。「個人投資家は今のマーケットに参加する必要なし」(2月10日)とお話していました。ただ、「いまの相場は、リスクとバリュエーションが高すぎる。負うリスクとリワードが合わない」と仰っていた居林さんの予想通り、まさに下げ相場になっています。

居林:はい。

 では、なぜここで「投資のタイミング」と言われるのでしょうか。

分析の前に、前提をお話します

居林:それをご説明することは、この1年間ほど連載で申し上げてきたことのまとめにもなりますね。つまり、私の「投資スタイル」を知っていただく必要があると思います。

 投資スタイル。

居林:過去25年ほど、自分自身を含めて数々の投資家たちを、見て、話を聞き、活躍を眺めてきましたが、投資家はいくつかのスタイルに分けることができると思います。たとえば代表的なスタイルの一つが、「ストックピッカー」です。個別銘柄で何倍にも成長する株を見いだして投資する。

 「ザ・株式投資家」という感じですね。そんな投資家は実在するのですか。

居林:ええ。こういうことができる人が、投資家の中には本当にいるのですよ。

 居林さんは?

居林:私は自分のことを「マーケットタイマー」だと思っています。市場全体を見て、いまは行くべきか、降りるべきかが分かる。そのつもりでいます。

 他のタイプもありますか。

居林:ええ。銘柄同士を比べてどちらがいいか、を判断することに長けた「レラティブバリュー」などですね。異なる資産クラス間の比較に長けた「アセットアロケーター」もその範疇に入るでしょう。1人が1つのタイプ、と決まっているわけでもないようです。

 また、イベントに際して株価のゆがみに注目する「イベントドリブン型」、マクロ経済の動向によって投資を決める「グローバルマクロ型」など、ヘッジファンドを分類する視点からも、ある程度分けられると思います。

 いわゆる「バリュー投資(割安株への投資)」と「グロース投資(成長株への投資)」とは違うのでしょうか。

居林:投資家分類としては似ています。そこは重要なポイントを含んでいるので少し踏み込んでお話ししますね。

 これは投資家としてのアイデンティティの問題で、上場銘柄をバリュー株とグロース株に分けて、どっちに属するか、と言われれば、私はバリュー株投資派だと自分で思っています。前回も「株価バリュエーションを投資判断のステップとして必ず入れるべきだ」とお話しさせて頂いた通りです。しかし、このような二者択一の分類が必ずしも自分の投資スタイルを正しく述べているのか、というのは、投資家の、あるいは投資家を目指す読者の方に、是非考えていただきたい問題です。

居林:例えば、私という人間を「男か女か」と問われればそれは男なわけですが、それが私という人間の特徴を示しているということにはならないわけです。よって、「投資家として自らを特徴づけ、これを以てマーケットからリターンを挙げる」という、自らの武器の定義はもう少し具体的であってよいと思います。

 その意味で、私は自分が「マーケットタイマー」だと信じて行動しているわけです。 当然、ストックピッカーとしての自分もいますし、今回のような地政学的リスク、政治リスクの高まりに対してどう考えるのかという「イベントドリブン型」の投資も要素として入ってはきます。しかし、自分が投資家として何者であるのかということを考えるのは、自らのアイデンティティを決めることに等しいと思います。

 例えば、ウォーレン・バフェット氏はどうなんでしょう。「バリュー投資家」の代名詞ですね。

居林:ええ。私は「彼はストックピッカーとしての側面の方が大きい」と、個人的には思いますね。しかし、彼は2008年10月に「Buy American. I am.」、すなわち「今こそアメリカ株を買うべきだ」という、私から見ればマーケットタイマー的な寄稿をニューヨークタイムズにしています。

 これは非常に印象的な文章で、今でもよく覚えています、リーマンショックの真っ最中によくも書けたと思っていました。偉大な投資家はさまざまなすぐれた点を持っているということだと思います。

(※ ニューヨークタイムズの記事はこちら)

 元に戻りますと、ストックピッカータイプの投資家の方、つまり、特定のある企業が、「今後こう成長する」という信念がある方は、私の投資スタイルを基にお話しているこの連載の内容は、納得のいかないことも多いでしょう。マーケットが行き過ぎだからと言って、これから倍になると信じている銘柄を売るかといえば、そうはならないからです。

 なるほど。

居林:市場の動きがどうであろうと、株価が上がっていく企業は存在しますから。経営に関わっている方や、その業界に精通した方ならば、そういう株式を見つけることもできるでしょう。そういう方は、ご自身のスタイルは変える必要はありません。マーケットタイマーの見方を参考にしていただければ、と思います。

下げる方向へのオーバーシュートが起きている

居林:私の場合は、マーケットの「行きすぎ」、オーバーシュートをおおよそ判断できると自負しています。もうお分かりと思いますけれど、行きすぎには「上げすぎ」も「下げすぎ」もあります。

 そうでした。その「上げすぎ」「下げすぎ」の判断の基準は企業収益、端的に言えば株価収益率、PERでしたね(PER=Price Earnings Ratio。株価と企業の収益力を比較する指標。 時価総額÷純利益)。予想される企業業績と現在の株価を比較する。居林さんの説では、「現在の日本市場の適正PERは13〜15倍」とのことでした。具体的な解説はこちら(「或るプライベートバンカーの株価の読み方」)で。

居林:そうです。そしてほぼ1年前に始めたこの連載の期間に、日本株は下げて、「トランプ旋風」で上がり、そして今、また下げに転じた。上の行きすぎも下の行きすぎも見ることができたので、ここで一度、連載全体を整理しつつ、実際に投資のチャンスが来たことをご説明しよう、と考えたのです。

 ということは、今は下げる方向でのオーバーシュートが起きている?

居林:日経平均は先週、1万8300円を一時切るところまで下がりました。前回は撤退をお勧めしましたが、この急激な下げを見て、逆に「エントリーポイントが近いな」と思い始めました。株価は、プラスの過剰反応からマイナスの過剰反応に振れつつあると思います。その幅はまだ小さく、去年の2月や、8月のブレクジットほどではない、逆に言えばリーズナブルな、この程度は珍しくない振れ幅のようです。

 それでは、解説をお願いします。

マーケットタイマーとしての5つの原則

居林:最初に、私の投資原則をまとめておきます。5つあります。

1:株価は他人が決める(参考:「大荒れ相場? いえ、これって“普通”です。」)

2:投資家間には情報の非対称性が存在する(「上限は1万9000円?日経平均縛る「4%」」)

3:マーケットは、短期の材料と長期の材料を区別できない

4:投資チャンスは偏在する(投資は“トランプ旋風”に乗るか、逃げるか?)

5:すべては確率である(「個人投資家は今のマーケットに参加する必要なし」)

 株価は少数の市場参加者が決める。しかも投資家間に情報格差がある。そして、長短のニュースに区別を付けず双方にまとめて反応する。このため「間違った」株価、オーバーシュートが生まれます。投資のチャンスはその間違った株価が「下値がなくて上値がある」時期に生まれるわけです。ということは、投資チャンスは個別銘柄では常にあるかもしれませんが、マーケット全体では「ある」ときと「ない」ときがある。

 はい。

居林:企業の価値が時価総額だとすれば、それが1年間で何割も変わるわけがないのに、たとえば東京市場の平均株価は上下2割くらいは平気で毎年動く。それは、1〜3による投資家の心理的過剰反応から起きる。ここが投資家として理解すべきポイント、ゲームのルールです。そして、これはオーバーシュートなのか、なぜオーバーシュートが生まれたのかを自分なりに考え、間違っていたときの対応を考える。そんな話をしてきたつもりです。

市場は「長短」の区別が出来ない

 この中で、「3」はまだ伺ったことがないですね。マーケットは長短の材料を区別できない、と。

居林:はい、今回はまさにこの話が主眼となります。

 今回の下げは、長期的に影響が出てくるニュースと、目先のニュースの区別が出来ずに、同時に現在の株価に織り込んだために起きています。

 “投資家の一部”がそう判断して売りに動き、全体が引っ張られているということですね。

居林:ドル円のお話から入りましょう。現在、為替は昨年12月の118円から108円台まで円高に振れている。トランプ政権誕生時、私の見方は「円高になる」でした。市場の大勢は「トランプ政権の政策は利上げ、それは円安ドル高を呼ぶ」でしたが、「トランプ政権の政策はアメリカファースト。日本企業のプラスに手を貸す理由は殆どない」と考えていたのです。

 利上げ自体、そもそもないと思っていましたがこれは外れました。しかし、この時点ですでに利上げを長期金利が織り込んでいるので、米国債の10年金利は全然上がりません。よって為替も円安にも動きませんでした。

 そうでした。

居林:そうして、この後に何が起きたか。トランプ政権はシリアに巡航ミサイルを撃ち込み、北朝鮮にも軍事的圧力をかけ始めました。

 こういう展開になるという予想は…。

居林:もちろん予想はしていませんでした。でも、問題は、株式市場の期待値が楽観だったか悲観だったか、なのです。予想と逆なら大きく振れる。トランプ旋風で、よい展開を期待している市場に、このニュースは覿面(てきめん)に効きました。さらにフランスの大統領選挙もあり、マーケットを脅かす要素が次々に現れてきた、との不安が高まって、為替はドル安になり、日経平均は19600円から18300円へ下落した。

 これは、クラシックな「期待値先行が崩れる」パターンです。冷静に考えれば、北朝鮮でこれから何が起きるのか、シリア情勢も、フランスの大統領選挙の結果もその影響も、何一つ誰にも分かりません。でも、期待値が高まりすぎたものを冷やすには十分な材料です。

 そういうものですか。

10年分の投資効果を先取り

居林:ええ。例えば、同じ状況がものすごく株価が低い時期に起こっても、これほどは下げません。株価が高いから、こういう影響が出るのです。

 ああ、前回のお話ですね? 「景気と株価は関係ない」。

居林:そうです。株価が上がるのは、現在の株価が割安だからですし、下がるのは割高だから。株価が高すぎれば、たとえ景気が良くても悪いニュースに影響されて下がりやすい。

 今回は、トランプ旋風がまずあり、それをどう見るかが重要な分かれ目でした。「これはファンダメンタルズだ」と思った方は「(長期的に)上がっていく」と判断した。一方で、「これは長期の話を短期で織り込んでしまったんだ」と、私は考えました。

 「3」の話ですね。どういうことでしょう。

居林:例えば、トランプ大統領は初の施政方針演説で、「インフラに1兆ドル(日本時間3月1日発表、その時点の為替相場で約113兆円)を投資する」と言い出しましたが、これは10年間の累計です。単年度で割れば約11兆円ですよね。

 このときニューヨーク市場のPERは17倍になりました。これは歴史的に見てもかなり高い数字です。10年間という長期に渡って行われる投資の効果を、株価は早々に織り込んでしまったように私には思えます。だいたいPER12〜13倍が米国の平均ですからね。先々の影響を今の期待値として一緒にしてしまった。ゆえに高すぎる。

 なるほど…。

オーバーシュートこそ投資のチャンス

居林:現状の「下げ」も、短期と長期の材料を区別していない。実際のところは誰にも分かりませんが、半島の情勢が朝鮮戦争みたいな大惨事になる可能性は少ない。あって一時的な緊張や一瞬の軍事衝突で、それは1年後、2年後の株価には関係ありません。フランスの大統領選挙に至っては、日本の株価に何の影響があるのか分かりません。しかし、マーケットは今の材料として反応します。「売る人がいるんじゃないか、だったら先に売っておこうか」と思うからです。

 そもそも、フランスの大統領選が長期に日本株に影響を与えると思いますか?

 いや…どうなんでしょう。

居林:そう思っている投資家は少ないと思いますが、それでも「他人がそう考えるだろう」と考えることで株式市場は「短期の材料」も織り込んでしまうのです。この前までは、トランプ政権によるアメリカ景気回復という「長期の材料」を先に織り込みすぎていたわけです。私の言葉で言うと、「マーケットは、短期の材料と長期の材料を区別できない」ので、どっちも織り込んで反応してしまう、ということになります。

 まさしく、株価は他人が決める、情報格差がある、本来関係ない政治イベント…ブリクジットだって株価になぜ影響したのかを説明するのは難しいですからね、などなどに、一瞬、反応するのです。「こうなったらどうしよう」という出来事の影響を先読みして、今の株価で織り込んで反応してしまう。それがオーバーシュートに繋がる。

居林:ですが投資家たるもの、これを理解し、付加価値の源泉にしなければなりません。ちなみに申し上げれば、現状で利益が出ている人が多ければ多いほど、相場は下げやすくなります。

 なぜでしょう?

居林:答えは単純で、売りやすいからですね。ちょっと下げたら「まあ、利食いのタイミングかな。利益が出ている(買値を大きく上回っている)から、売っておこう」と、心理的に負担なく売れる。損失が出ている人が多いなら、「こんなことで売れるか、そんなニュースは関係ない」と突っ張りますから。

 株価は、長期の企業収益には関係ないニュースで短期的にブレます。やっかいなことに、株価には常に期待値が入っているので、そのニュースが期待を裏切る方向だと大きく動きやすい。本来ならば、トランプ氏の政策、インフレの影響、中間選挙、アベノミクス、人手不足、AI…といったところが株価のドライバであるべきなのですが、それ以外の多くの要素が株価を動かしているし、言い換えれば投資機会を作り出すことが多い。

 それでは、今回の下げは?

日本株に短期的な上昇局面が

居林:今回は、本来なら株価には関係の少ない(つまり短期的な)材料である、北朝鮮情勢やフランス大統領選などに株価が反応しています。一方、長期で見ると、消費者物価指数予想の上昇米国金利の上昇を予感させる出来事があり、FRBは連邦準備制度(FED、米国の中央銀行)のバランスシート(BS)の縮小を検討しはじめました。どちらも、我々が思っていたより速い舵の切り方です。

 つまり、居林さんが考えていたより速く、ドル高になる可能性が増している?

居林:はい、長期的に見てドル高になる材料が出つつあります。これは日本株にとっては上昇する材料です。しかし、本来は株価に影響がないはずの短期的なマイナス材料が影響して株価が下がっている。

 先月お話ししたときとはまるで逆の状況です。変化が思っていたよりずっと速い。「これは、来る」と思ったので、今回は早めに修正しておきたいと考え、お話したわけです。いま(取材時点)18300円。ここからは、ゲリラ戦でもう一度入り直せます。我々の予測は、インフレがそこまで強いと思っていなかった。BS縮小もこんなに速いとは。

 しかし、逆に、投資家にとっては興味深い状況が来たように思います。

 そうなのですか。

居林:これで1万8000円を下回ると、実に魅力的な市場になるのですが。とはいえ、今回は「短期的に」面白い相場です。

 日本株の「買い」を必要条件と十分条件に分けますと、必要条件は「PERの低下」「ドル円が110円以下(円安)」だと思います。これは満たされつつあります。

 必要条件…「他にもあるけれど、証明に必要な条件の一つなのは間違いない」というやつでしたっけ。

居林:そして十分条件は「外国人投資家の買い」と「国内企業の利益率向上」です。

 十分条件は「これを満たせば証明するに十分」な条件ですよね。

居林:ええ。外国人投資家は年初に大幅に売り越しているので戻ってくる可能性はありますが、企業の利益率向上はまだ見えません。合わせて考えますと、買う状況が整ってきて、あとは利益率の向上(それには現状、円安が必要です)、ということになります。こういうことから、「誰が見ても買い」には至りませんが、マイナスのオーバーシュートが発生しつつあるので、いいエントリーポイントになってきた、と見ます。

 今年のマーケットは、おそらくこうした「短期的なオーバーシュート」が続々と起こって、市場は頻繁に振れるでしょう。過去の経験から年間の上値下値の変動幅は2割ありますが、今年はまだわずか6%ですからね。ここから、ロデオのように乗りこなさなくてはいけません。


このコラムについて

市場は「晴れ、ときどき台風」
いわゆる「アナリスト」や「経済評論家」ではなく、「実際に売買の現場にいる人」が書く、市場の動きと未来予測です。筆者はUBS証券ウェルス・マネジメント本部日本株リサーチヘッドの居林通さん。そのときそのときの相場の動きと、金融市場全体に通底する考え方の両面から、「パニックに流されず、パニックを利用する」手法を学んでいきましょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/020500004/041800012

 

 

第164回 「原油相場に影響を与えている米国原油在庫の動向」
米国の原油在庫が過去最高を更新し、原油価格の上昇を抑制する大きな要因となっています。原油価格の動向は、他の市況商品、ひいては、米国株価等にも大きな影響を与えます。米国原油在庫は今後どうなるのでしょうか?
1.原油在庫増加の主因はシェールオイル生産増加米国の原油在庫は、2015年に入り急激に増加しました。その後も春と秋の製油所のメンテナンスシーズンを挟んだ季節的な増減はあるものの、概ね増え続けています。米国の原油在庫増加の最大の理由として挙げられるのが、米国のシェールオイルの生産増加です。同国のシェールオイル生産が加速したのは2012年なのですが、増産されたシェールオイルが輸入原油を代替したため、原油の輸入が減少しました。また、石油製品の輸出増加に伴い、製油所の原油処理量も増加しました。そのため、当初は在庫増加への影響は限定的であったと考えられます。在庫が急激に増加した2015年は、それまで在庫増加を抑制していた輸入量と原油処理量の伸びが縮小しました。(図1)このことが、2015年に在庫が急増した要因の一つと考えてよさそうです。

2.期近と期先の値差も在庫増加を招いたしかし、これらの需給変化以外にも、2015年以降の在庫の増加を引き起こした要因があるようです。原油価格は、2014年の後半に急落しました。OPECによる生産調整の放棄と、米国の量的緩和からの出口政策開始に伴う米ドル高が主な理由とされます。そして、米国の原油在庫は、この原油価格の急落後に大きく増加しています。(図2)

2014年後半からの原油価格急落局面で、何が起こったのでしょうか。大きな変化は、原油先物市場で、将来の受け渡し(期先)価格が直近の受け渡し(期近)価格よりも低い状態(バックワーデーション)から、高い状態(コンタンゴ)へ転換したことです。原油価格が急落する前の2014年6月時点では、受渡月が3年先の原油先物価格は、期近の受け渡しに比べて約16ドル安い価格でした。これが、2015年1月には約18ドル高になったのです。一般的に原油の貯蔵には倉庫料や調達コストの金利等の在庫コストが発生しますが、コンタンゴで期近と期先の値差が十分ある場合は、将来の値上がりに備えて原油を在庫しておいても、先物取引によってコストをカバーしたり、条件によっては、利益を出したりすることが可能となります。そのため、原油を貯蔵するインセンティブが働き、意図的な在庫の積み増しが起こったと考えられます。
3.米国原油在庫の今後の見通しでは、今後も米国の在庫は増え続けるのでしょうか。供給面を見ると、同国の原油生産量は、2016年9月を底に増加に転じています。米国におけるシェールオイルの生産コストは大幅に下がっており、原油価格が1バレル50ドル程度あれば、開発が進むとされます。米国内で稼動している原油の掘削装置(リグ)の数も増加しており、今後も生産量の増加が見込まれているのは確かです。しかし、2016年に増加に転じていた純輸入量は、足元では既にやや減少傾向にあります。また、原油先物市場の期先と期近の値差は、原油価格の上昇とともに縮小しました。直近の値差はごくわずかであり、意図的に在庫を積み増すインセンティブは働き難くなっています。米国の原油生産量の増加ペース次第である点は否めませんが、原油価格の急落等でコンタンゴが大きく拡大しない限り、今までのような在庫の拡大は起こりにくいのではないでしょうか。このように、米国の原油在庫を取り巻く環境は若干変わったようです。もちろん、原油価格に影響を与えるのは米国在庫レベルだけではなく、OPECが主導する減産の動向をはじめ、世界経済、為替レート、そして地政学リスクもあります。昨今は、地政学リスクの影響に注目が集まりがちかもしれませんが、米国原油在庫レベルに影響を与える要因についても注目していきたいと思います。
コラム執筆:村井 美恵/丸紅株式会社 丸紅経済研究所
■ 丸紅株式会社からのご留意事項
本コラムは情報提供のみを目的としており、有価証券の売買、デリバティブ取引、為替取引の勧誘を目的としたものではありません。丸紅株式会社は、本メールの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。投資にあたってはお客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。
前の記事:第163回 「急速に拡大している中国の共有経済市場について」 −2017年04月04日
http://lounge.monex.co.jp/advance/marubeni/2017/04/18.html


 

 
ダウ平均の終値は113ドル安=米国株終値

配信日時 2017年4月19日(水)05:20:00 掲載日時 2017年4月19日(水)05:30:00
NY株式18日(NY時間16:20)
ダウ平均   20523.28(-113.64 -0.56%)
S&P500    2342.19(-6.82 -0.29%)
ナスダック   5849.47(-7.32 -0.13%)
CME日経平均先物 18370(大証終比:-70 -0.38%)
http://klug-fx.jp/fxnews/detail.php?id=366026


ゴールドマンの下げがきつくダウ平均は反落=米国株概況

配信日時 2017年4月19日(水)05:36:00 掲載日時 2017年4月19日(水)05:46:00
NY株式18日(NY時間16:20)
ダウ平均   20523.28(-113.64 -0.56%)
S&P500    2342.19(-6.82 -0.29%)
ナスダック   5849.47(-7.32 -0.13%)
CME日経平均先物 18370(大証終比:-70 -0.38%)

 きょうのNY株式市場でダウ平均は反落。地政学リスクが依然として燻る中、取引開始前に発表になったゴールドマンとジョンソン&ジョンソンの決算が冴えなかったことでダウ平均を圧迫した。ゴールドマンはトレーディング収益が予想を大きく下回った。先週発表の大手銀のトレーディング収益が好調だっただけに、市場には失望感が出ているようだ。ゴールドマンが一時5%超下落するなど下げがきつく、ダウ平均は一時20500ドルを割り込む場面も見らた。

 同じく決算を発表したバンカメも下落。決算自体は好調で1株利益は0.41ドルと予想(0.35ドル)を上回った。トレーディング収入が好調で、債券トレーディング収入は29%増の29.3億ドルと、予想(26億ドル)を上回った。株式トレーディング収入も7.4%増え11億ドルと予想(10.1億ドル)を上回っている。ただ、金融株全体の軟調な動きに連れ安した。

 ダウ採用銘柄ではゴールドマン、ジョンソン&ジョンソンのほか、メルクやファイザー、JPモルガンも軟調。一方、ユナイテッド・ヘルスやコカコーラやマクドナルド、P&Gは上昇している。

 ナスダックも反落。アップルやフェイスブックなどITハイテク株は全般に軟調。アマゾンやエヌビディアは上昇している。

 決算を発表したネットフリックスが下落。「ハウス・オブ・カード」のようなヒット作の不在もあり、契約者の伸びが予想を下回った。第2四半期は、「ハウス・オブ・カード」の新シーズンと映画3本のリリースが予定されており、契約者は予想を上回る見通しを示しているものの、コスト増から利益は予想を下回るとしている。

 ベライゾンのマカダムCEOの発言が伝わり、コムキャストやディズニー、CBSとの合併協議にもオープンだと述べた。コムキャストのCEOとは協議すると語っている。この発言でベライゾンとコムキャストの株価は上昇。

 ヘルスケア製品販売のカーディナルヘルスが大幅安。2017年度のガイダンスを発表しており、1株利益は従来の5.35ドル〜5.50ドルの下限近くになるであろうとの見通しを示したことが嫌気されている。これはジェネリック医薬品の価格低下を織り込んだという。また、メドトロニックの患者治療・深部静脈血栓症・栄養障害事業を現金61億ドルで買収するとも発表。同社の時価総額の4分の1以上の大型買収となる。

バンカメ 22.71(-0.10 -0.44%)
ネットフリックス 143.36(-3.89 -2.64%)
コムキャスト 37.59(+0.39 +1.05%)
カーディナルヘルス 72.39(-9.44 -11.54%)

アルファベット(C) 836.82(-0.35 -0.04%)
フェイスブック 140.96(-0.46 -0.33%)
ツイッター 14.44(+0.04 +0.28%)
テスラ 300.25(-1.19 -0.39%)
アマゾン 903.78(+1.79 +0.20%)
エヌビディア 99.29(+0.06 +0.06%)

ダウ採用銘柄
J&J       121.82(-3.90 -3.12%)
P&G       90.80(+0.41 +0.46%)
デュポン     77.88(-0.21 -0.27%)
ボーイング    177.85(-1.17 -0.67%) 
キャタピラー   94.39(+0.25 +0.27%) 
ユナイテッド   113.56(+0.29 +0.26%) 
ビザ     89.73(-0.08 -0.09%) 
ナイキ        56.11(-0.13 -0.23%)
GE        29.84(+0.20 +0.68%) 
3M        190.22(-0.14 -0.07%) 
エクソンモビル  81.05(-0.53 -0.65%) 
シェブロン    105.68(-0.49 -0.46%) 
コカコーラ    43.48(+0.41 +0.96%) 
ディズニー    114.19(+0.41 +0.36%) 
マクドナルド   132.30(+0.95 +0.73%) 
ウォルマート  73.89(+0.40 +0.55%)
ホームデポ   147.76(+0.45 +0.31%)
JPモルガン   85.16(-0.70 -0.83%)
トラベラーズ     120.75(-1.17 -0.97%)
ゴールドマン     215.59(-10.67 -4.78%)
アメックス    75.79(-0.88 -1.16%) 
Uヘルス     168.59(+1.41 +0.85%)
IBM      170.05(-1.05 -0.62%)
アップル      141.20(-0.63 -0.45%)
ベライゾン   49.22(+0.41 +0.84%)
マイクロソフト  65.39(-0.09 -0.14%)
インテル     35.77(+0.29 +0.81%)
ファイザー   33.84(-0.16 -0.47%)
メルク      62.27(-0.53 -0.85%)
シスコ      32.67(+0.06 +0.19%)

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
http://klug-fx.jp/fxnews/detail.php?id=366027

 


NY外為:ポンド急伸、対ドルで6カ月ぶり高値−英国で総選挙実施へ
Alexandria Arnold、Dennis Pettit
2017年4月19日 05:22 JST

18日のニューヨーク外国為替市場ではポンドが上昇。欧州の取引時間帯からの上げが続いた。ポンドは一時、対ドルで昨年10月以来の高水準となる1ポンド=1.2905ドルに上昇した。メイ英首相は6月8日に総選挙を実施する方針を表明した。
  ポンドは主要10通貨全てに対して上昇。ポンド需要の高まりに応じて、長期間にわたりポンドの売り持ちを保有していた投資家はポジションを解消した。英国が欧州連合(EU)離脱交渉に臨む上で、総選挙はメイ首相にとって基盤強化のチャンスになると受け止められている。17日の世論調査によれば、保守党の支持率は労働党を21ポイント上回った。
  ニューヨーク時間午後3時51分現在、ポンドは対ドルで2.2%上昇して1ポンド=1.2847ドル。ドルは対円で0.4%下げて1ドル=108円48銭。
原題:Pound Climbs to 6-Month High After Call for Early U.K. Election(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOMG1RSYF01S01

 

米国株:反落.ゴールドマン決算嫌気し金融安い−ヘルスケアも下落
  18日の米株式相場は反落。欧州の株安の流れを引き継いだ。ヘルスケアやエネルギー、金融が特に安い。
  ゴールドマン・サックス・グループは5%近く下落。同行の1−3月(第1四半期)決算内容はウォール街を驚かせた。伝統的に強い分野である債券トレーディングが、他社の好調に逆行して不調だった。
  またこの日は商品相場の値下がりを手掛かりに石油や鉱業銘柄が売られた。
  S&P500種株価指数は前日比0.3%安の2342.19。ダウ工業株30種平均は113.64ドル(0.6%)下げて20523.28ドル。
  S&P500種の業種別11指数では、金融株指数が0.8%安。ゴールドマンは4.7%安と、昨年6月以降で最大の下げとなった。
  ヘルスケア株の指数は1%下落。カーディナルヘルスは12%安だった。同社はメドトロニックの事業を61億ドルで買収する。
  一方で不動産や公益事業は上昇。米国債利回りはこの日、全ての年限で低下した。
  上昇銘柄で活況だったのはCBSやモルソン・クアーズ、オートネーションなど。商いを伴って下落した銘柄はカーディナルヘルスやWWグレインジャー、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)など
原題:U.S. Equities Slide as Financial, Health-Care Shares Decline(抜粋)
原題:U.S. Stocks Fall as Goldman Earnings Disappoint: Markets Wrap(抜粋)
◎米国債:反発、利回りは年初来で最低−税制改革後退や地政学リスクで

  18日の米国債相場は反発。大半の年限で利回りが年初来の低水準を付けた。税制改革に対する期待の後退や地政学リスクが背景にある。
  ニューヨーク時間午後4時2分現在、10年債利回りは前日比8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.17%。昨年11月9日から12月15日にかけた上昇局面の半値押しの水準である2.177%を下回った。
  税制改革に対する信頼低下や北朝鮮のミサイル発射実験、23日のフランス大統領選、18日発表された住宅着工件数など弱い内容の米経済指標が買い材料となった。
◎NY金:続伸、終値で5カ月ぶり高値−地政学的な「不安材料」で
  18日のニューヨーク金先物相場は続伸。英国とフランスでの選挙や米国と北朝鮮の対立を巡り懸念が広がる中、逃避先とされる金が買われた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は前日比0.2%高の1オンス=1294.10ドルで終了
終値では昨年11月4日以来の高値
「北朝鮮や英EU離脱、仏大統領選など世界各地で不安材料があるため」、需要は引き続き安定している−RBCウェルス・マネジメントのマネジングディレクター、ジョージ・ジロ氏(ニューヨーク在勤)
「金の買い増しが望まれるだけの不安がある」
銀スポット相場は0.4%安の18.3507ドル
プラチナは0.7%安の977.38ドル
パラジウムは1.9%安の774.83ドル
原題:Gold Posts Highest Close in 5 Months on Geopolitical ‘Worries’(抜粋)
◎NY原油:続落、過剰在庫懸念が引き続き相場圧迫
  18日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が続落し、約1週間ぶりの安値をつけた。19日に公表される週間統計では米国の石油在庫が先週140万バレル減少したと予想されるが、3月末には5億3550万バレルと過去最高に達していたこともあり、投資家は在庫過多を不安視している。
  エナジー・アナリティクス・グループ(フロリダ州ウェリントン)のディレクター、トーマス・フィンロン氏は電話取材に対し、「市場は大幅な調整が入っていい時期だ。供給がだぶついており、若干の在庫取り崩しがあれば助かるというところだ」と話した。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は前日比24セント(0.46%)安い1バレル=52.41ドルで終了した。終値としては4月7日以来の安値。北海ブレント6月限は47セント安の54.89ドルで取引を終えた。
原題:Crude Declines as Attention Shifts to Upcoming U.S. Supply Data(抜粋)
◎欧州株:ストックス600下落−英国株は大幅安、首相が総選挙目指す
  連休明け18日の欧州株式相場は下落。幅広い銘柄が売られる展開となった。英国のメイ首相が解散総選挙を目指す方針を表明したことを受 け、同国株は大きく売られた。
  指標のストックス欧州600指数は前営業日比1.1%安の376.35で引け た。業種別では1業種を除き全て値下がりした。鉄鉱石価格の急落を背 景に鉱業株が下げを主導した。
  輸出銘柄のウエートが大きい英FTSE100指数は2.5%安。メイ首 相が6月の総選挙実施を目指す方針を示しポンドが上昇する中、同指数 は欧州連合(EU)離脱を決定づけた昨年6月の国民投票以降で最もき つい値下がりを演じた。
  ストックス600指数を構成する鉱業株は3.1%下落。3営業日の下げ 幅は昨年9月以降最大となった。シティグループが鉄鉱石相場見通しに ついて弱気な見方を示したことが嫌気された。
  石油・ガス銘柄と建設株も大きく売られ、ストックス600指数を3 月27日以来の低水準まで押し下げた。
  個別銘柄では、デンマークの宝飾品メーカー、パンドラが12%急 落。四半期ディーラー調査で同社の失速が目に見えて明らかになったと して、カーネギーが投資判断を「ホールド」に引き下げた。
原題:European Stocks Slide With FTSE 100 as May Calls for Election(抜粋)
◎欧州債:周辺国債、独債とのスプレッド縮小−英国債は下げ埋める
  18日の欧州債市場では周辺国債のドイツ国債に対する利回り格差 (スプレッド)が縮小した。
  フランス大統領選挙についての世論調査で左翼党のメランション候 補と他候補の支持率の差が縮まらなかったことを背景に、ドイツ国債の 下落を見込んだ取引が膨らんだ。
  ユーロ参加国の国債利回りとスプレッドの一覧はこちらをクリック してください。
  英国債先物は下げを埋める展開。メイ首相が解散総選挙を実施する 方針を明らかにしたことが手掛かり。
原題:Bunds Unmoved by Rally in Treasuries; End-of-Day Curves, Spreads(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOMHDQSYF01V01

 


メイ英首相の総選挙表明で欧州通貨買い・ドル売り優勢=NY為替概況

配信日時 2017年4月19日(水)06:11:00 掲載日時 2017年4月19日(水)06:21:00
 きょうのNY為替市場は欧州通貨買い・ドル売りが優勢となった。欧州通貨についてはメイ英首相の発表を受けたポンド買いにより、ユーロも連れ高した格好。メイ英首相は6月8日に総選挙を実施したい意向を示している。市場ではメイ首相が選挙で勝利するようであれば、ポンド買い戻しの流れは加速するとの見方も少なくない。

 英政府は既にEUに対して離脱を通知しており、今後、離脱交渉に入って行くが、市場では既にEU離脱が無くなると見ている向きは少なく、それよりも、選挙でメイ首相が勝利し、首相の立場が強化されたほうがポンドにとっては追い風と見ているようだ。直近の世論調査ではメイ首相が優勢。

 きょうのポンドはショートカバーが強まり、短時間の間にストップを巻き込んで一気に上昇する場面も見られた。ポンドドルは1.29台、ポンド円は140円台まで一時急伸した。

 一方、欧州通貨の上昇で相対的にドル売りが出る中、ドル円は上値の重い展開が続き、前日の上げを失っている。北朝鮮問題への懸念が根強い中、米国債への逃避買いから、利回り低下が続いておりドル円を圧迫している。前日のムニューシン米財務長官の発言でドル円は109円台まで戻していたが、再び108円台前半に下落している。ゴールドマンの決算が冴えなかったことで、米株が下落していたことも圧迫した。

 ユーロドルは1.07台を回復。日曜日の仏大統領選の1回目の投票を前にユーロのショートカバーが活発に出ているとの指摘も聞かれる。仏IFOPの日次世論調査では、ルペン氏の支持は1回目の投票で22.5%と変わらずだが、2回目の投票では39.5%とマクロン氏との差が拡大している。ただ、他のフィリョン氏や極左のメランション氏との差も小さく、予断は許さない状況は続いている。

みんかぶ「KlugFX」 野沢卓美
http://klug-fx.jp/fxnews/detail.php?id=366030
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/235.html

[不安と不健康18] 疲れているあなた、優秀な同僚には合わせるな お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ 
疲れているあなた、優秀な同僚には合わせるな

お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ

2017年4月19日(水)
上田 準二
コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二さん。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田さんが若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田さんの波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。

連載8回目は、29歳の女性(会社員)からの相談。上司や同僚が優秀な人ばかりで周囲に追い付けず、それでも頑張って前向きに仕事に取り組もうとするあまり、心身共に疲弊してしまっています。そんな女性への上田さんからのアドバイスは?
悩み:上司や同僚は優秀な人ばかりで、心身共に疲れてしまいました
私は今年、入社4年目なのですが、この職場で働き続けるべきか悩んでいます。きっかけは昨年体調を崩し半年間入院した時に、心身共に疲弊していた自分に気づき、その原因は仕事が自分の身の丈に合っていないんじゃないかと思い始めたことです。

一緒に働く上司や先輩、同僚はとても優秀で良い人たちばかりで、自分は恵まれた環境にいると思っています。しかし、私は仕事の内容に興味が持てず、仕事のためと本を読んで勉強しても内容が頭に入って来ません。そんな状態なのでお客様の前でも自信を持って話せず、何か課題が浮上した時は、専門知識ではなく対人関係で乗り切ってきました。

先日、ヒルティの『幸福論』を読んでいると「どんな仕事も一生懸命になれば興味が沸いてくる、興味がない仕事も打いいち込めば必ず楽しくなってくる」という一文を目にしました。これは普遍的な考え方で、正論だと理解できます。ただ、どうしても私には合っていないなと思うんです。

私は、目の前の仕事から逃げているだけなのでしょうか。どうしたら目の前の仕事がこわい、と思わず、興味を持って自分から動けるようになるのでしょうか。

29歳 女性(会社員)

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
大竹剛(日経ビジネス編集): 前回は、「周囲がアホな人ばかり」という職場で働いている男性からの悩みでしたが、今回は「周囲がデキる人とばかり」という女性からの悩みです。頑張りすぎて、体調も崩してしまったようです。前回の相談(上司と同僚がアホなほど仕事は楽しくなる)と、まったく逆ですね。

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス取締役相談役): 周りが優秀だから、彼女は必死に残業をして体を壊すほど仕事しなきゃいけなくなったのか。

大竹:そのようです。

上田:もう、前回悩みをよこした彼氏に聞かせてやりたい。周りが優秀な人ばかりと思ってしまうと、精神的に追い詰められて体調も崩し、会社に行きたくなくなってしまうものなんだと。

大竹:前回の男性は、「アホばかりで会社に行きたくない」と言っていました。「行きたくない」という結果は一緒ですが。

 ちなみに、この女性はヒルティの『幸福論』を読んで、さらに悩んでしまったようです。

上田:まあ、そんな本を読まなくても、だいたいみんな同じことを言うよね。

大竹:どんな仕事も一生懸命になれば興味がわいてくる。

上田:うん。

大竹:優秀な周囲の人に必死に付いていこうと努力する姿が目に浮かびます。彼女はかなり前向きで、きっと頑張り屋さんなんでしょう。ただ、かなり深夜残業もしているようで、過労で倒れてしまわないかとちょっと心配です。

上田:心配だよね。バリバリ仕事をやって優秀な人の輪の中に自分も入っていかなきゃいけない。それが深夜残業につながってしまっている。

 確かに、どんな仕事も一生懸命になれば興味がわいてくるというのは、まあ、正論でしょう。ただね、一生懸命になるやり方を、周りの人と同じにする必要は全くないんだよ。周りと同じように専門知識を持たなきゃいけないと思う必要は全くない。

 彼女自身も、人間関係で乗り切ってきた、と言っているでしょう。それがダメなように思っているみたいだけど、それは非常に重要なことなんだよね。僕なんか49年の会社人生、まあ波乱の人生だったけど、専門知識で勝負したことなんて一度もないから。周りは専門知識を持っている人ばっかりだったですよ、大商社でエリート社員がいて。

 それでも、僕がある程度、周りの人たちから認めてもらえたのは、専門知識じゃないんですよね。やっぱり対人関係なんですよ。商売を取りに行くときは、どんな仕事でも、専門知識ではなくて対人関係なんです。だから既に、あなたは非常にいい才能、利点を持っている。専門知識ではなく対人関係で乗り切ってきた経験は、これからも必ず生きてくるよ。

 だから、専門知識をつけようと、毎日毎日、深夜残業するようなことは、今すぐやめなさい。上司もそこまでは期待していないから。それなのに、ついつい、明日までにはこれを片付けておかなければと、自分で自分を追い込んでいる。そうやって常態化した残業で仕上げた仕事というのは、結局は出来栄えが決してよくない。

 自分がどこまでやれるか、一日でやれる範囲を決めて、きっちりと帰ること。上司から、「あれはいつできるの?」と聞かれたら、「1週間ぐらいかかります」とか、はっきり言うこと。それを言わないと、どんどん追い込まれちゃうよ。

 上司も、彼女は残業してでも何とかそれなりのものを作ってくるだろうと考えるようになってしまう。ところが、出来栄えがよくないとまたやり直しになっちゃうから、残業がぐるぐるぐるぐる尾を引いちゃう。自分でその一日一日やれる仕事をきっちりと朝の間に、今日はここまでやるというのを決めたらそれ以上やらない。前の日でもいいですよ。夜寝る前、朝起きたとき、今日はここまでやると。

大竹:自分のできる範囲と、計画をきちっと上司にも伝えておくんですね。

上田:うん。その計画通りにいかなくなってしまったときは、残業やむなしだけれども、それはまたその次の計画に反映する。最初から今日は何をやるか、明日は何をやるかと決めないでやっていると、毎日残業になっちゃうから。

大竹:上田さんの若かりし頃は、どうだったんですか。かなりのモーレツ社員だったと聞いていますが。

上田:見方によればそう言えるかもしれないけれど、何であいつはサボってるんだと思っていた人もいると思うよ。あきれていた上司もいたでしょうね。

大竹:どういうことですか。

上田流「3日寝ないで働き、2日はズル休み」のススメ

上田:さっきも言ったように、まず、上司に自分の計画を宣言するんですよ。40歳ぐらいまでは、「3日以内にあそこの取引先を、競合商社から全部、私が奪ってきます」とか、だいたい宣言していた(笑)。

 そう言ったら、3日間、寝ない覚悟で取引先の社長を追い回す。朝までカラオケ、しまいには「うちで飲んで行ってくれ」と自宅に呼んじゃう。別に賄賂とか癒着じゃないよ。けど、しつこいな、だけど、お前の話は面白いな、と思ってもらうまで、徹底的にやる。要するに、さっきも言った対人関係で徹底的に勝負する。それで最後には「まあ、伊藤忠の上田でやるよ」と言ってもらう。

 3日間、寝ないで仕事をしたら、そのあと2日ぐらいは会社に行かない。1日目は布団から出ない。2日目はスーパー銭湯にでも行ってリラックスする。出社は3日目から。

 当然、「上田、お前は何だ」となるよね。ウィークデーに2日間も休みやがって、何様だと。そう言われたら、「違うんです、僕は3日で1週間分、目を開いていました」と言い返していた。だから、「今週は終わりです」と(笑)。

大竹:やっぱりモーレツだ。でも上田さん、3日間寝ないで仕事をするなんて、もう、今では会社は認めませんよ。

上田:もちろんそうでしょう。働き方改革の時代だからね。これはあくまで、昔の話ですよ。CMでもあったでしょう。「24時間戦えますか」。そんな時代でのことです。

 ただ、ここで僕が言いたいのは、人にはそれぞれ、違った働き方があって、それぞれの強みも異なるということ。だから、この彼女も周囲と同じ働き方で勝負しようとしないで、そのことを上司にもしっかり伝えたほうがいいよ、ということなんだよ。

 僕の場合も、自分が勝負できるのはまさに、彼女がそれで乗り切っているという対人関係でしかなったよ。専門知識じゃなくてね。そういう働き方を上司に宣言したら、上司は最初、お前は生意気だと言っていたよ。けど、次第に上司もむしろ、僕を使いやすくなったんだろうね。誰が行ってもダメそうな商談を、「お前行ってこい」とどんどん任されるようになった。

 特に商社みたいな会社の場合、取引先の方が専門知識じゃ上だからね。僕がいた食肉業界だって、専門知識ではメーカーの方が当然、たくさん持っていますよ。

大竹:専門知識がなくても勝負できるのは、よほどの話し上手か聞き上手か、いずれにしても高いコミュニケーション力が必要なのではないですか。言うは易く行うは難し、ですよ。

上田:確かにそうかもしれんが、専門知識がないなら、そこで勝負しても仕方がないんだから。

 こんなこともあったな。僕はあるとき、デンマークにベーコン用の豚肉を買い付けに行ったことがあるんですよ。

大竹:デンマークに、ですか。

上田:そう。年末、除夜の鐘を聞いてからモスクワ経由でコペンハーゲンまで行って元旦に着いた。ある大手Aメーカーさんがベーコン用の豚の買い付けに行くのに、同行したわけですよ。実はそのAメーカーさんは、それまでデンマーク産の豚肉は競合商社から買っていた。伊藤忠はゼロ。そこをひっくり返すというのが、僕に与えられたミッション。

 ヨーロッパの人は、年末年始はバカンスに行くのが普通だけどね、さすがにデンマークの輸出組合のトップとなると年末年始でも本拠にいるわけですよ。そこへ、Aメーカーの担当者と押しかけようという話だった。ところが、翌朝ホテルに迎えに行くと、その担当者がいない。もぬけの殻なんですよ。

 コペンハーゲンについた初日、その担当者が正月なので日本食が食べたいというから、僕は必死に探したわけですよ。電話帳をひっくり返して、ジャパニーズレストランを。そうしたら、たまたま日本食の店をやっている明治生まれのおばさんがおったのよ。

 「あなた、元旦に日本から何しに来たの?」と目を丸くして聞くから、「いや、実は豚肉の買い付けで来たんだけど、私の連れが餅を食わせろとか、年越しそばをまだ食ってねえとか、いろいろ言うから何とかしてほしい」と頼み込んだ。それで、1月10日まで休みだった店をわざわざ開けてもらって、その担当者と一緒に押しかけたんですよ。それなのに翌朝、その担当者を迎えに行ったらいないんだ。

 しょうがないから、僕は1人で輸出組合のヘッドクオーターに行ったんですよ。正月でも、絶対に総裁は出て来るはずだと思って、玄関で1人で待つことにしたんです。

大竹:記者の「夜討ち朝駆け」みたいですね。それで、来たんですか?

ライバル商社に出し抜かれ、絶体絶命の危機

上田:ええ。来たんだよ。かっこいいジェントルマンが、美しい女性秘書を連れてね。クルマを降りてきて、僕のことをぱっと見ると、向こうから歩いてきた。秘書が「何なんだこいつは」という感じで「Who are you ?」と聞いてくるから、「私は伊藤忠の上田で、日本から豚肉の買い付けに来たんだ」と。

 「Aメーカーが商談に来ると言っていたけど、それはあなたか?」(秘書)

 「私がアテンドして来た」(上田)

 「え? それはB商社じゃないのか」(秘書)

 「いえいえ、伊藤忠です」(上田)

 「だけどAメーカーはB商社が担当ではないのか。何で伊藤忠が来るんだ」(秘書)

 「Aメーカーは今年から私とやることを決めて一緒に来たんだ」(上田)

 「本当に決めたのか」(秘書)

 「私と取引を開始しようと思わない人が一緒に来るわけがないでしょう」(上田)

 「だけど、彼らはうちの主力工場のところにB商社と一緒にいるよ」(秘書)

 「ん????」(上田)

大竹:とんずらしたと思っていたAメーカーの担当者は、上田さんを騙してB商社と一緒に行動していた、ということですか?

上田:そうなんだ。B商社を出し抜こうと思って多少、ハッタリをかましていたら、実は僕が騙されていた(笑)。

大竹:ひどい…(笑)

上田:ただ、そこからまさかの大逆転が始まった(笑)。

 その総裁が、今、オフィスには誰もいないし、年頭の方針発表の原稿を書きにきただけだから、まあとにかく中に入ろうと誘ってくれたんだ。部屋で話し始めると、テーブルの上に小さな日本の国旗とデンマークの国旗を交差して置いてくれて、すぐに宴会が始まった(笑)。生ハムやチーズ、ワインとかを、ものすごく美人の秘書がワゴンでだーっと運んできて。それでこっちも気分が良くなって、適当にあれこれ話していたら、総裁は「ミスター上田は根性があるな」と思ったんだろうね。

 伊藤忠は指定商社じゃないのに、Aメーカーについてきて自分が商談するというんだから大したものだと。それで後日、商談に応じてくれることになったんだ。だけど、本当にAメーカーはそういう気持ちはあるのかどうか、それが疑問だなと言うわけ。

大竹:上田さんの約束を破ってとんずらしていたわけですしね。

上田:結局、その担当者とは3日間ぐらい連絡取れないしね。置き手紙はありまたしよ、ちょっと用事が入っているので3日間ホテルに戻りませんと。結局、その担当者はB商社に裏で拉致されて、ほとんどもう裏契約みたいなことをされているという状況だった。

 それで僕と総裁の商談の日。総裁がこれは重要な取引であると切り出してきた。事前の交渉がどうなっているかは関係がない。これはデンマーク王女の今年最初のビジネスになると。当時、王女は輸出組合の名誉理事長か何かだったんだね。

担当でもないのに年間1200トンの豚を買い付け

大竹:それで、上田さんはどのように交渉に挑んだのですか。

上田:年間契約にしましょうと。1年間ぶっ通しで買うと、勢いで提案してしまった。総裁が「王女の取引」だなんて言うもんだから、こっちも気が大きくなってしまった。

大竹:年間契約というと、量はどれくらいになるんですか。

上田:1200トンですよ。1200トン。

大竹:全然イメージが湧きません。

上田:それはもう、その辺の養豚場の豚がいなくなるくらい(笑)。

 Aメーカーの担当者は驚いて、ザワザワとしていましたよ。そこで総裁は、Aメーカーの担当者にこう聞いたんです。「あなた方は我々の主力農場を訪れたと聞いていますが、どうでしたか?」と。Aメーカーの担当者は「素晴らしかったです」と答えましたよ。そこで総裁は畳み掛けるように、「と言うことは我々のポークをお買い上げになる意思はあるんでしょうけど、私の輸出入の契約当事者は伊藤忠です」と、その場で宣言したんです。

大竹:ひっくり返しちゃったんですね。すごい。

上田:ええ。それでAメーカーに、こういうことなのでひとつ、ここでサインしましょうと。そのAメーカーは、年間契約の1200トンなんて今まで契約したことがないし、本社に電話をすると言うので、国際電話を繫いでもらって、私も伊藤忠の本社に電話をしました。

 実はね、僕を送り出した伊藤忠の畜産部も、上田が契約を取れるなんて誰も思っていなかったんですよ。そもそも、僕は担当でもなかったの。

大竹:え?担当でもないのにデンマークまで飛び、1200トンもの契約を決めてしまったのですか?

上田:僕はそれまでシカゴにいて、戻ってきたのが11月。一方で、畜産部は何とかデンマークの豚に食い込みたいので、Aメーカーに対して何とか伊藤忠にアテンドをさせてほしいと頼み込んでいた。

 ただ、伊藤忠内部でもめていたわけですよ。わざわざ行っても契約をとれるのかとか、ああだこうだとか。最初に行けと言われた担当課長は「英語ができません」と断った。本当は英語ができるのに、急に英語ができなくなった(笑)。それで豚の担当者が行くことになったんだけど、出発ギリギリになって「パスポートの期限が切れている」と言いだした(笑)。

 それで部長から「上田、お前はアメリカで豚の輸出をやっていたんだから、直接の担当じゃないけど行って来い」と指名されてしまったんです。部長にしてみれば、誰でもよかった。

 そんな経緯だったから、電話で課長と豚の担当に「1200トン買うことにするから」と言ったら、「何?120トンの間違いじゃないのか」とひっくり返るほど驚いていた。

大竹:ケタが1つ違うし。

上田:そう。これはもう相当な金額なので、部長の決済を今すぐとっていただけませんかと頼んだんだ。あと3時間以内にサインをするか、しないかだと。それをしないと、B商社の牙城を崩せず、伊藤忠はデンマークの豚にはもう参入できないかもしれないと、急かしましたよ。

 そうしたら、すぐに折り返し電話がかかってきて、やれとなった。ただ、AメーカーはB商社とずっと長年の付き合いがあったから、我々が入ることによってより有利な条件にならないと、納得しないでしょう。そこでAメーカーの担当者に、B商社の取引条件を薄々知っているはずだと。なんぼなのと、教えてよと。それで、価格が空欄になっている契約書に、それを下回る金額を書いた。もう、Aメーカーの担当者も、やったという感じだし、本社で鼻高々。伊藤忠は伊藤忠で、これでデンマークの豚肉の買い付けに道が開けた。

 さて、皆さん本国に帰るよね。でも僕は帰らん。

大竹:帰らなかった?

専門知識なんていらない。必要なのは計画と復習

上田:ようやく、ここで相談の回答に話が戻ってくるんだが、みんな優秀な人ばかりで、休みなしに働く。でも、僕はもうこれで1カ月仕事しないと決めたんだよ(笑)。まあ、そこまでやるとちょっとやり過ぎだから、赴任していたアメリカにちょっと挨拶に行くことにした。だって、アメリカにいる先輩たちは、もう怒って僕に国際電話をかけてくるんだから。

 デンマークで1200トンの豚を上田が買い付けしたということは、Aメーカーはアメリカの豚肉をその分だけ買う余力がなくなったということになるんですよ。

大竹:なるほど、そういうことですね。

上田:アメリカの駐在員からしたら、何ということをするんだと。アメリカ時代にお世話をしてやったのに、上田は恩を仇で返すのかと。

 それで、「お詫び」と称してヨーロッパからシカゴに飛んで、1週間ぐらい何もせずに遊んでいた。僕はあまり無理しないの(笑)。

大竹:いやいや、1200トンの契約をとるまでの行動自体は、かなり無茶をしてますよ。

上田:そう見えるでしょう。でもね、自分としては最初から、何日以内にこれとこれはやると決めて準備をしていたことだから、別に頑張り過ぎてはいないんだよ。総裁も実は最初から捕まえてやろうと思ってデンマークに行ったわけだし、あった時の交渉の仕方だって、頭の中で準備をしていた。

大竹:その準備の過程で、専門知識は必要なかったのですか?

上田:専門知識があったって、この商売が決まったと思う?

大竹:上田さんだから、まとめられたのかもしれない…。

上田:だって、担当じゃなかったんだから専門知識なんてない。デンマークの豚肉事情だとか、ヨーロッパの取引慣行だとか、全然知らない。デンマークの豚をやったことがないから、そういった人々とも会ったこともない。コネクションもゼロ。

大竹:でも、道は開けた。

上田:そう。もちろん、B商社にAメーカーの担当者を拉致されちゃったのは、誤算だった。でも結局、僕のやることはあまり変わらなかったんだよ。

 大事なのは、何でそうなったのか復習をして、打開策を練ったこと。それが、オフィスの玄関で朝、待ち伏せするということ。そんなに難しいことじゃない。「復習」って言っても、相手をやっつける「復讐」じゃないよ。結局、B商社に対しては、それに近い結果になったけど(笑)。

 今回、相談してくれた彼女に言いたいのは、毎日悶々と仕事の成果なり結果なりが出ないことを長々と続けていく必要はないということなんです。できないことは、もう区切りをつける。私がやるのはここまでと。そういうものは、もうずるずる残業したからできるというものじゃないんだから。

 僕はデンマークに行けと言われたときに、専門知識をそこから身に付けて勝負をしようとは、全く思わなかった。どうやったって、デンマークポークの専門知識においては、Aメーカーの担当者にも、B商社の担当者にも勝ち目はないから。だから、自分ができることを、期限を決めて、ようするに大晦日に出発して正月の最初の1週間くらいだけでケリをつけると決めてやった。

大竹:伊藤忠の周りの優秀な人たちも、そもそも、上田さんが契約を取るなんて期待していなかったし。

上田:そう。周囲だって、自分が思うほど期待していないんだよ。だから、頑張り過ぎて自分自身を追い込んじゃダメなんだ。周りだって、それほどあなたを追い込もうなんて思っていないよ。言われたことを、自分なりにケジメを付けてきちんとやり遂げれば、それでいいんです。

 自分の資質、能力、キャパがどれくらいのものかを考えず、周りの優秀な人と同じところまでやらないといけないと思ってしまうと、プレッシャーに押しつぶされてしまうよ。だから、まず1回自分のキャパをしっかり、自分で判断してみましょうよ。その自分の等身大の姿に、正直であることが大事なんです。

 それで、そのことを周りの人にも上司にもきっちりと伝えましょう。自分の能力を正直にさらけ出せばいいんですよ。

大竹:そうすれば、目の前の仕事が怖いということもなくなるんでしょうね。

 ちなみに、それでシカゴで遊んで東京に戻ったら、上司の反応はどうだったんですか?

上田:これがひどいんだよ。僕がアメリカで遊んでいる間に、デンマークの王女様が日本に来てレセプションを開いたらしいんですよ。そのレセプションで、デンマークの輸出振興に多大なる貢献をしたということで、Aメーカーと伊藤忠が、何とか賞というのをもらったんです。

 それで僕が戻ってきたら、伊藤忠の部長は何と言ったと思いますか、Aメーカーの部長に?

 「この商談をまとめるために、うちの部ではこいつしかいないという一番優秀な上田をアテンドさせました」と(笑)。

大竹:調子が良いなぁ。

読者の皆様から、上田さんに聞いてほしい悩みを募集します。悩みの投稿は日経ビジネスDIGITALの有料会員か、もしくは日経ビジネスオンラインの無料会員になる必要があります。日経ビジネスオンラインの無料会員の場合は、投稿に会員ポイントが必要です。
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このコラムについて

お悩み相談〜上田準二の“元気”のレシピ
コンビニ大手ファミリーマートで発揮した優れた経営手腕のみならず、料理、読書、麻雀、釣り、ゴルフと、多彩な趣味を持つ上田準二氏。ユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長を退任し、取締役相談役となった今だから語れる秘蔵の経験や体験を基に、上田氏が若者からシニアまで、どんな悩みにも答えます。上田氏の波乱万丈の人生を聞けば、誰もがきっと“元気”になる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/16/022100017/041200013
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/494.html

[国際19] トランプ氏、査証審査を厳格化する大統領令に署名へ 文在寅が大統領になったら移民する「米国に捨てられていいのか」と叫ぶ韓国
トランプ氏、査証審査を厳格化する大統領令に署名へ 
 4月18日、トランプ米大統領は、専門技能を持つ外国人向けの査証(ビザ)「H─1B」の審査を厳格化する大統領令に署名する。10日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)
 4月18日、トランプ米大統領は、専門技能を持つ外国人向けの査証(ビザ)「H─1B」の審査を厳格化する大統領令に署名する。10日撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)
[ケノーシャ(米ウィスコンシン州) 18日 ロイター] - トランプ米大統領は18日、専門技能を持つ外国人向けの査証(ビザ)「H─1B」の審査を厳格化する大統領令に署名する。大統領が掲げる「米国第一主義」を推進する狙いがある。

大統領はまた、その「米国製品を購入し、米国人を雇う」大統領令を活用し、連邦政府の調達も変更する見込みだ。米国産鉄鋼製品の購入拡大などを目指す。政府高官が明らかにした。

トランプ大統領の側近は、H─1Bビザの多くが給与水準の低いインド系アウトソーシング企業の社員向けに発給されているとして懸念を示しており、より技能の高い外国人労働者が対象となるよう能力ベースの審査方法に変更することを望んでいる。
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-h1b-idJPKBN17K2IY


 


文在寅が大統領になったら移民する「米国に捨てられていいのか」と叫ぶ韓国紙
早読み 深読み 朝鮮半島
2017年4月19日(水)
鈴置 高史

文在寅(左)と安哲秀、2人の大統領候補は韓国をどこへ導こうとしているのか(セウォル号事故3周年追悼式にて 写真:YONHAP NEWS/アフロ)
(前回から読む)
 大陸勢力側に行くのか、海洋勢力側に残るのか――。大統領選挙を目前に、韓国が揺れる。
中国圏に行く韓国
鈴置:「このまま行けば米国から見捨てられる」と韓国の保守系紙が相次いで国民に訴えました。
 中央日報のコラムニスト、チョン・ヨンギ記者は「米中に捨てられる韓国」(4月10日、日本語版)を書きました。韓国語版(4月10日)にも同じ見出しで載せています。
 5月9日の大統領選挙で左派か中道の大統領が選ばれそうだが、そうなれば米国は韓国から兵を引くであろう、と警告したのです。ポイントを訳します。
• 近い未来、韓国の自主的平和主義者が描く反米的理想が実現するかもしれない。
• 在韓米軍へのTHAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)配備を、次期政権が国会の議決を通じ拒否する可能性が十分にあるからだ。
• (合わせれば国会の議席の過半数を占める)「共に民主党」と「国民の党」は党論でTHAAD配備に事実上反対している。
• さらに次期大統領が(北朝鮮への外貨送金パイプとなっている)開城(ケソン)工業団地の再稼働と金剛山(クムガンサン)観光を宣言し、金正恩委員長に首脳会談を提案すれば、韓国は外交的に親中国圏に分類されることになる。
• 中国はTHAAD配備容認への報復を中断するだろう。しかし韓国は対北朝鮮制裁を細密に規定した国連決議案の違反国になる。北朝鮮の核・ミサイル開発を現金で支援する国として非難される。
 次の大統領は左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表か、中道をうたう「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)前共同代表のどちらかと見なされています。
 4月以降の世論調査で両者がいずれも30―40%の支持率を誇るのに対し、保守系候補の2人はとも数%に留まっているからです。弾劾され下野した朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領への不信感が「保守離れ」を生んだのです。
「反米ごっこ」をやめろ
「親中国圏に分類され」たらどうなるのですか?
鈴置:チョン・ヨンギ記者は次のように説きました。
• トランプ(Donald Trump)大統領が韓米同盟の終結を通知しても韓国は返す言葉がない。米軍が撤収し、米国の東アジア防御ラインは韓国の休戦ラインから日本の西海岸に後退するだろう。
 つまり「米国は韓国を見捨てる」と断じたのです。決して大げさな見方ではありません。米中二股外交を採用した朴槿恵前政権は米国を裏切り続けてきました(「米中星取表」参照)。
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権
の行使容認 ● ○ 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の
MDへの参加 ● ○ 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD(ミサイル防衛)」を採用へ
在韓米軍への
THAAD配備 △ ▼ 韓国は「要請もなく協議もしておらず決定もしていない(3NO)」と拒否していたが、朴槿恵大統領の弾劾訴追後の2017年2月28日にようやく米軍への用地提供を決定
日韓軍事情報保護協定
(GSOMIA) △ ▼ 2012年6月、中国の圧力もあり韓国が署名直前に拒否。締結を望む米国に対し、朴槿恵大統領は「慰安婦」を理由に拒否。しかし下野要求デモが激化した2016年11月突然に締結
米韓合同軍事演習
の中断 ○ ● 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの
正式参加(注1) ● ○ 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの
反米宣言支持 ○ ● 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの
加盟 (注2) ● ○ 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) ● ○ 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の
南シナ海埋め立て ● ○ 米国の「明確な対中批判要請」を韓国は無視
抗日戦勝
70周年記念式典 ● ○ 米国の反対にもかかわらず韓国は参加
米中星取表〜「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2017年4月18日現在)
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。
(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。
(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
 そんな韓国にトランプ政権は厳しい視線を向けています。3月に初訪韓した米国のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官は米メディアの前で、日本を「最も重要な同盟国」と呼んだ半面、韓国は「重要なパートナーの1つ」と形容するに留め、露骨に格下げしたのです(「米国から『同盟国』と呼ばれなくなった韓国」参照)。
 韓国の保守層は大きなショックを受けました。朴槿恵政権以上にはっきりと反米姿勢を打ち出す文在寅候補が政権をとったら「パートナー」でさえなくなると考えたのです。
 「反米左派の文在寅が大統領になったら移民する。米国が守ってくれない韓国には怖くて住めない」と語る韓国人が増えています。
 そんな心情を聞かされる日本人もかなりいまして、朝鮮半島研究者の集まりでは、しばしば「韓国人の亡命願望」が話題になります。
 チョン・ヨンギ記者は記事の最後で、名指しはしなかったものの文在寅候補らに対し「反米ごっこをやめろ」と要求しました。
• 韓国の大統領候補は夢から目覚める必要がある。世界の安保状況が韓国の「井の中の蛙」式の「独りよがりの遊び」をあざ笑っている。韓米同盟を固めて国論をまとめ、中国にしっかりと対応していこうと有権者に訴えるのが正道だ。
「アチソンライン」が復活
「独りよがりの遊び」とは激しい表現ですね。
鈴置:米国との同盟を失いかねないのです。それぐらいの言葉を使いたくなるでしょう。
 保守言論界の大御所である金大中(キム・デジュン)朝鮮日報顧問も同じ趣旨の記事を翌4月11日に載せました。「5月9日の選択と韓米関係」(韓国語版)です。
• 韓国の左派政権の下で韓米同盟関係はどのようになり、韓国の安全保障はこれまでのように維持できるのか――。これが現在の韓国の絶体絶命の問題だ。
• 楽観的に見て韓米「関係」が維持されたとしても、少なくとも軍事的「同盟」は弱体化する。悲観的に見た際、同盟関係に異常が生じ、米国は日本列島を防御線とする「アチソンライン」にまで後退、韓国は大陸側に放置されるだろう。
 「アチソンライン」とは1950年1月12 日に米国のアチソン(Dean Acheson)国務長官が演説で明かした米国の防衛領域を示す限界線です。
 「防衛線はアリューシャン列島―日本―沖縄―フィリピンにある」と定め、韓国をその外に置きました。これを聞いた北朝鮮の金日成(キム・イルソン)首相(当時)が「南に攻め込んでも米国は介入しない」と判断、朝鮮戦争を始めたのです。
 「アチソンライン」は韓国人のトラウマとなっています。中央日報のチョン・ヨンギ記者も、この言葉は使いませんでしたが「米国の東アジア防御ラインが韓国の休戦ラインから日本の西海岸に後退」との表現で「見捨てられ」の危険性を訴えたのです。
 金大中顧問は折に触れ「アチソンライン復活」の可能性を指摘してきました(「日米の『同時格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。しかし、これほどに切羽詰まった感じで書いたのは初めてです。
 「名誉革命」などと自らに酔って、保守派の大統領を追い出した韓国人(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。でもその結果、米国に見捨てられかけているとようやく気づき、大慌てなのです。
軟化して見せた文在寅
「見捨てられ論」は大統領選挙に影響を与えましたか?
鈴置:THAADの在韓米軍配備に関し、左派と中道候補がスタンスを微妙に変えました。
 4月10日の朝鮮日報とのインタビューで、文在寅候補は「北朝鮮が核挑発を続け、高度化するなら、THAAD配備が強行されることだろう」と語りました。
 一貫して「配備は延期すべきだ」「国会の同意が要る」と主張してきたのに「状況によっては容認もあり得る」と軟化したのです。
 同日の朝鮮日報のインタビューで、安哲秀候補は「国民の党」が「THAAD配備反対」を掲げていることに関し「大統領選挙の局面で、党は候補の意に沿って党論を定めるしかない」と述べました。これを受け「国民の党」も党論を「容認」に修正する方向です。
 安哲秀候補自身はすでに「配備が米国との合意に基づいて実施に移されている以上、国家間の約束は守る必要がある」と容認にカジを切っていました。
 両候補のインタビューは「文『北が核挑発継続ならTHAAD強行』 安『THAAD反対の党論撤回に向け説得』」(4月11日、韓国語版)で読めます。
「安哲秀の急追」を意識
文在寅候補はなぜ、軌道修正したのでしょうか。
鈴置:保守層を取り込んだ安哲秀候補に支持率で追い上げられ、一部の調査では抜かれたからです。
 文在寅氏が「共に民主党」の大統領候補に選ばれるまでは、同じ党の安煕正(アン・ヒジョン)忠清南道知事が「文在寅氏よりは現実的で穏健」との理由から保守層の一部の支持を集めていました。
 4月3日に「共に民主党」の候補が文在寅氏に決まり、安煕正氏の出馬がなくなった瞬間、同氏への支持の多くが同じ党の文在寅氏ではなく、「文氏よりは穏健な」安哲秀候補に流れたのです。
 韓国ギャラップの4月第1週(4−6日)の調査で文在寅候補の支持率は38%。安哲秀候補の35%に肉薄されました。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/041100102/shji.PNG

 3月第5週(28―30日)の調査ではそれぞれ31%と19%でしたから、安哲秀候補の急追ぶりが分かります。「楽勝ムード」に酔っていた文在寅陣営には危機感が走りました。それがTHAAD問題での軟化につながったのです。
 ちなみに4月第1週の調査で保守候補への支持率は、朴槿恵派の自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補が7%、反朴槿恵派の劉承旼(ユ・スンミン)候補が4%でした。
「次悪」に投票せよ
 韓国では「見捨てられ」への警戒が強まるほどに「反米」の文在寅候補を当選させまいとする空気が濃くなるのです。
 興味深いことに、左派から「極右」と決めつけられる保守の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が、保守ではなく中道の安哲秀候補への投票を呼び掛けるに至りました。
 当選可能性がほぼない保守系候補に投票しても「死に票」になる。それなら「最悪の文在寅ではなく、次悪の(より悪くない)安哲秀候補に投票しよう」との訴えです。
 趙甲済氏の主張は動画「保守の悩み 洪準杓か安哲秀か」(4月7日、韓国語)で視聴できます(「次悪」部分は開始38分30秒後から)。
 街頭でも呼び掛け始めました。「趙甲済の清渓広場での演説『候補一本化は有権者の責務』」(4月8日、韓国語による動画)です。
 世論調査では「安哲秀」と答えても、投票場には行かない保守が多いと趙甲済氏は懸念したのでしょう。
 そこで「とにかく投票しよう」と呼び掛けています。「朴大統領は悔しい。投票所へ皆で行こう。大韓民国を守ろう!」(4月9日、韓国語)でそう書きました。
 保守の中には「中道を自称するものの本質は左翼」と安哲秀候補を嫌う人もいます。安哲秀氏は2012年12月の大統領選挙では文在寅氏を支持しました。それに2014年3月から2015年12月までは、文在寅氏ら左派と統合新党を結成していたからです。
 趙甲済氏は「今は米韓同盟解体の危機を乗り越えることが急務」と考え、苦渋の「安哲秀支持」を打ち出したのです。
次の王を首実検
朝鮮日報のインタビューで、文在寅と安哲秀の両候補は安保政策で軌道修正しています。それでも保守は安心できないというのですか?
鈴置:2人の「軌道修正」は選挙用の「偽装転向」ではないかと疑う向きも多いのです。朝鮮日報の社説「安と文の2人の安保政策は本当に信頼できるのか」(4月12日、韓国語版)は見出しからしてその疑いを露わにしています。
 それに「軌道修正」に対しては、中国が黙ってはいません。4月10日に訪韓した中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表が、各党の代表に会って意見を交換したと報じられました。
 米国側に戻らないよう、ネジを巻きに来たと言った方が正確と思います。朝鮮朝の次の王様は誰がいいか、清朝の皇帝のお使いがやってきて首実検した感じでもあります。
 韓国が海洋側に残るかは、まだ流動的なのです。
(次回に続く)
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『孤立する韓国、「核武装」に走る』

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ
北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。
もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。
目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。
◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録
『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/041100102/

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/178.html

[原発・フッ素47] 福島県で急速に増え始めた小児甲状腺がん 「臭い物に蓋」をしては後で大問題に、チェルノブイリの経験生かせ 
福島県で急速に増え始めた小児甲状腺がん
「臭い物に蓋」をしては後で大問題に、チェルノブイリの経験生かせ
2017.4.19(水) 鎌田 實
コンクリートで固められたチェルノブイリ原発4号炉。石棺と呼ばれている
想定外の多さ
福島県の県民健康調査検討委員会のデータによると、「甲状腺がんまたはその疑い」の子供が183人。そのうち145人にがんの確定診断が下っている。 
確定診断はないが、がんの疑いで手術や検査を待っている子が、さらに38人いると解釈できる。さらに3巡目の検診が行われている。 
まだまだ増えるということだ。 
これは異常な数なのか。甲状腺の専門医たちもおそらく想定外だったと思う。国立がんセンターによると、2010年の福島の小児甲状腺がんは2人と試算している。 
1巡目の検査は、2011〜2013年にかけて、2巡目は2014〜2015年にかけて行われた。現在は3巡目。 
小児甲状腺がん・疑い の内訳(人) 福島
2016年12月27日までの福島県民健康調査委員会資料より作成
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/9/1/500/img_91ac384a8494a1fc3db69964586826a945928.jpg

数年で「正常」が「甲状腺がん」になるか
大事なポイントはここ。2巡目の検査で「甲状腺がんまたは疑い」とされた子供は68人の中に、1巡目の検査で「A判定」とされた子供62人が含まれているということだ。 
62人のうち31人は、「A1」で結節やのう胞を全く認めなかった。全くの正常と言っていい。「A2」は、結節5.0o以下、甲状腺のう胞 20.0o以下のごく小さな良性のものである。 
甲状腺がんの発育は一般的にはゆっくりである。これが1〜3年くらいの短期間に、甲状腺がんになったことは、どうしても府に落ちない。 
被曝ノイローゼと言われた時があった
チェルノブイリへ1991年から医師団を102回送って支援してきた。ベラルーシ共和国の小児甲状腺がんの患者数は、1987〜89年では毎年1〜2人だったのに、90年は17人、そして91年以降激増していくのである。 
ベラルーシを中心に、ウクライナ、ロシアなどで6000人の甲状腺がんが発生した。 
皆が「何かおかしい」と思い始めた当時、WHO(国際保健機関)は、「チェルノブイリ原発のメルトダウンの直接的な健康被害はない。多くは、被曝ノイローゼだ」と言っていた。 
1990年代前半、ベラルーシの甲状腺がんの第一人者、ミンスク大学の故エフゲニー・デミチク教授が、放射線ヨウ素I-131が飛散し、それが子供の甲状腺がんを増やしているという論文を、国際的総合科学ジャーナル「NATURE」に発表した。 
デミチク教授の息子ユーリーも、甲状腺外科医を目指していた。父親の教授から「息子を日本で勉強させてほしい」と頼まれた。 
ゴメリの病院の白血病の子供たち
ぼくが代表を務める日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)が1993年 松本に招待し、3か月間、信州大学や諏訪中央病院で、甲状腺の医学や肺がんの外科学を学んだ。 
その後ユーリーの病院に手術道具と材料を大量に送った。その後も頻繁にユーリーと会ってきた。しかしそのユーリーが先月急逝した。病院で仕事中に突然死した。心筋梗塞ではないかと言われている。 
甲状腺がんの第一人者はどう考えたか
ユーリーは、ミンスクの甲状腺がんセンターの所長だった。ベラルーシ共和国の甲状腺学の第一人者である。毎年1000人程の甲状腺がんの手術を行っているとぼくに言っていた。 
国の政策として、甲状腺がんの患者はユーリーの病院に集められていたため、極端に多くの患者を診ていた。多忙過ぎたと思う。福島の小児甲状腺がんのデータをよく知っていた。 
ぼくが最後に会った時は、福島では2巡目の検診が行われていた。福島の子供の甲状腺がんは、福島第一原子力発電所の事故と関係があるのかないのか、意見が分かれている。甲状腺外科学の第一人者のユーリーはどう思うかと聞いた。 
ユーリとミンスクの病院にて
「日本のスクリーニングは精度が高い。検診をしたために見つかった可能性が高い。スクリーニング効果の可能性がある」と言うのだ。 
「ただし…」とユーリー・デミチクは言い出した。 
「2巡目の検査で、がんが16人見つかっていることは気にかかる。今後さらに、がんやがんの疑いのある子供が増えてくれば、スクリーニング効果とは言い切れなくなる」 
福島は汚染が少なかったと言って安心はするな
2巡目の検査で、ついに甲状腺がんが増加して44人となった。ユーリーが心配していたことが起きている。 
ユーリーは「もう1つ忘れないでほしい」と言った。「ベラルーシ共和国では、放射線汚染の低いところでも甲状腺がんが見つかっている。福島県がI-131の汚染量が低いからと言って、安心しない方がいい」と言うのだ。 
「放射性ヨウ素が刺激となり、長期間、時間をかけてがんになる可能性はある。だから、長期間、検診を続けた方がいい」と言った。 
子供の甲状腺がんは転移が多い
もう1回確認をとった。「甲状腺がん検診で見つかったがんについて、日本では、見つけなくていいがんを見つけたという意見もあるが、どう思うか」と聞いた。 
「子供の甲状腺がんは、リンパ節転移する確率が高いのが特徴。ベラルーシ共和国で手術せず様子を見た例と、手術をした例とでは、子供の寿命は格段に違った。手術すれば、ほとんどの場合、高齢者になるまで健康に生きることができる」 
「見つけなくていいがんを見つけた、なんて言ってはいけない。見つけたがんは必ず手術した方がいい。数年経過を見たこともある。すると、次にする手術は大きな手術になった」 
「埋葬の村」と呼ばれる汚染地域
「だから、見つけたがんはすぐに手術をした方がいい。それが30年間チェルノブイリで甲状腺がんと闘ってきた自分の考えだ」 
こう語ったのだ。 
「福島県だけではなく、周辺の県も検診をした方がいいのか」と聞いたら、「コストの問題だ」という。「お金に余裕があるなら、やるべきだ」というのが彼の考えのようだった。 
事故から31年経っても住めない原発から4キロのプリピャチ
このユーリーの言葉と、重なる意見を言っている日本の専門家がいる。福島県立医大の教授、鈴木眞一氏。 
県立医大で行った手術の72人の子供に、リンパ節転移があった。加えて、甲状腺外浸潤や遠隔転移を入れると、子供の甲状腺がんの92%が、浸潤や転移していたというのだ。 
鈴木教授も、ユーリーと同じ考えだ。検診をやり、早期発見するようにし、見つけたらできるだけ手術をすること。これが大事な点だ。 
「放射線の影響は考えにくい」と言い切れるか
北海道新聞によると、日本甲状腺外科学会 前理事長の清水和夫氏は、1巡目の検査で、せいぜい数mmのしこりしかなかった子供に、2年後に3cmを超すようながんが見つかっていることを挙げ、「放射線の影響とは考えにくいとは言い切れない」と言っている。 
これもユーリー・デミチクと同じ考えである。彼は、甲状腺検査評価部会長を辞任した。こういう「空気」に負けない科学者がいることは心強い。 
子供の甲状腺がんと放射性ヨウ素I-131の関係があるのかないのか、結論づけるためには、事故直後福島県内で甲状腺の被曝量を測定し、サンプリングすることが重要だった。 
きちんとしたデータも取らずに、福島県の県民健康調査検討委員会は「放射線の影響は考えにくい」と総括している。 
チェルノブイリ原発事故と比べると、I-131の放出量が少なかった。チェルノブイリでは、小さな子供たちにがんがみつかったが、福島県では小さな子供にがんが多くはない。これが理由だ。 
高汚染のため住んではいけない『埋葬の村』に住み続ける老人
検診を縮小しないで
そんな状況の中で、検診を縮小しようとか、希望者だけにしようという動きも、昨年秋に見られた。これはとてもまずい。できるだけ検診をしっかり続け、早期発見・早期治療をし、子供たちの命を救うことが大切だ。 
原発事故と関係があったかどうかは、チェルノブイリでも事故から7〜8年かけて因果関係が証明されていったことを考えると、臭いものに蓋をするようなことはよくないと思う。 
もう1つの大きな問題は、がんの治療をした後の子供の心のサポートが十分にできているかである。 
高校時代にがんが見つかり手術を受けた子供がいた。大学進学後に再発・転移が見つかって再手術。大学も辞め、部屋に引きこもりがちになっていると聞いた。 
別の十代の男の子は、甲状腺がんの手術をした後、荒れて家族に暴力を振るうようになったという。悲しい話だ。 
「がん」になった子供の心を支えよう
因果関係が明白になるまで、できるだけ長く検診を続け、見つかった子供の治療に最善を尽くし、長く医療費の保証をしてあげることが大事だ。同時に、子供たちの心を支えていくこと。原発を国策として進めてきた責任があるように思う。 
甲状腺がん家族の会ができていると聞いた。要望があれば応援をしてあげたいと思っている。 
子供たちに、病気になっても希望を忘れないようにしてほしいと伝えたい。ぼくがベラルーシやウクライナで見てきた子供たちは皆、隠れたりせず、堂々と生きていた。たくさんの子供を日本へ招待し、保養もしてもらった。 
いつか彼らと交流させて、福島の若者も元気になってもらいたい。大きくなって、好きな人ができて、子供を生んだ女の子たちもたくさんいる。一生に一回だけの人生を捨てないでほしい。 
家族が悪いわけでもない。病気になった子も、その家族も、皆苦しんでいる。だから一人ひとりがまず勇気を持って立ち上がること。そして、前を向いて生きよう。元気になれる人から、なっていこう。 
それを見て、また勇気をもらう他の子供たちもいるはず。立ち上がれる子から、立ち上がっていこう。そう声をかけてあげたいと思う。この文を読んでくれたらうれしい。日本の空気に負けないで、新しい波を起こす若者になってほしい。 
石棺を覆うドームを建設中
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49766

http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/795.html

[戦争b20] 空母を見れば明らか、米国の北朝鮮攻撃はまだ先だ 米国は大惨事に突進する暴走列車 米国で出てきた「もう韓国を助けるな」の声

空母を見れば明らか、米国の北朝鮮攻撃はまだ先だ
「米国はすでに準備完了」が間違っている3つの理由
2017.4.19(水) 部谷 直亮
ペンス副大統領、対北朝鮮「あらゆる選択肢ある」 板門店を視察
北朝鮮との軍事境界線沿いの非武装地帯(DMZ)の警戒所を訪れ、在韓米軍のビンセント・ブルックス司令官(右)と会話を交わすマイク・ペンス米副大統領(中央、2017年4月17日撮影)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je〔AFPBB News〕
 普段、安全保障とは縁遠いテレビのワイドショーまでもが北朝鮮情勢を取り上げ、米国政府による北朝鮮攻撃まで秒読みだと論じている。米国はすでに準備が完了していると述べるコメンテーターも少なくない。しかし、本当にそうだろうか。

 筆者は“現時点”では、その見解には反対である。米国の先制攻撃の蓋然性はなく、可能性も低いとみている(ツイッター等でも一貫して主張してきた)。以下ではその根拠と、今後どのような場合に蓋然性が高まるのかを述べてみたい。

空母1隻では戦力不足

 第1の根拠は、空母打撃群の展開状況である。

 現状で西太平洋に展開する空母は、カール・ビンソンただ1隻だ。空母ロナルド・レーガンも横須賀にいるが、これは5月まで整備予定であり、その上、さらに訓練を行わなければ実戦投入は不可能だ。リビア空爆(1986)は空母3隻、湾岸戦争は空母6隻、ユーゴ空爆は空母1隻+同盟国軽空母2隻、アフガン攻撃は空母4隻程度、イラク戦争は空母6隻で攻撃を実行している。ブッシュ政権末期にイラン攻撃がささやかれた際は空母3隻がペルシャ湾に集結した。だが、現状はたかだか空母1隻でしかない。これではいかにも戦力不足である。

 というのは、北朝鮮の対空ミサイルを中心とする防衛網は相当強力だからである。航空戦力は無きに等しいが、イラン製の新型フェイズドアレイレーダーを装備しているほか、ロシア製S-300のコピーとされるKN-06対空ミサイルを複数装備している。また、低空攻撃であれば、携帯式対空ミサイルや対空砲が数千門を超える数を展開している。

 それに対して空母打撃群1個では、明らかに戦力が不足しているし、撃墜された時のパイロット救助もままならない。しかも、北朝鮮の軍事力は山岳地帯をくり抜いた防空壕やトンネルに守られており、トマホークミサイルでは打撃を与えられない。

 古い事例だが、1969年にニクソン大統領が北朝鮮への懲罰的攻撃を検討した際は、空母4隻が投入される予定だった。やはり最低でも3個の空母打撃群を展開しなければ、話にならないだろう。

ゆっくり移動している米空母部隊

 第2の根拠は、カール・ビンソン空母打撃群の動きである。その動き―特に速度―を見ると、先制攻撃の意図があるとは思えない。

 カール・ビンソン空母打撃群は4月8日にシンガポール沖で豪州行きを中止し、朝鮮半島近海(公式声明では北上)への移動を開始した。シンガポール沖から朝鮮半島近海までの距離は、ざっと計算して4800キロメートルである。この距離は巡航速度20ノットであれば5.4日、最大速度30ノットであれば3.5日、駆け足25ノットであれば4.3日で到着する。しかし16日に至るも、カール・ビンソン空母打撃群は到着した気配はない。しかも、17日の声明ではまだインドネシア沖に展開していたという。

 これこそが、米政府の意図を明瞭に語っている。つまり、意図的に空母打撃群の展開を遅らせているのである。

 歴史を振り返ってみると、1994年の中台危機の際も同様のことがあった。当時、台湾海峡を目指したニミッツ空母打撃群は、「第7艦隊司令部より、ゆっくり移動するように」という事実上の命令を受け、あえて巡航速度よりもかなりの低速で台湾海峡へと向かった。しかも、移動命令は命令の5日後に移動を開始せよというものだった(この経緯の詳細は秋元千明著『アジア震撼―中台危機・黄書記亡命の真実』を参照していただきたい)。

 なぜなら、空母打撃群の性能をフルに発揮してアッという間に到着してしまうと、中国政府を焦らせ、冷静な判断力を失わせることになってしまうからだ。米国としてはじわじわと中国を威圧して台湾への威嚇をやめさせることを狙っていたのだという。

 今回のカール・ビンソン空母打撃群も、やはり非常にゆっくりとした動きを見せている。また、ちょうど4月11日に錬成訓練が終了し、実戦投入が可能となったニミッツ空母打撃群もカリフォルニア沖から動く気配がない。

 これは現在の状況が、あくまでも軍事力による威嚇によって、相手の妥協を迫る「強制外交」(coercive diplomacy)のフェーズでしかないことを意味している。要するに、先制攻撃はまだ先であるということだ。

いまだ整わない報復攻撃への防衛態勢

 第3の根拠は、在韓米軍の防衛体制が整っていないことだ。

 北朝鮮への先制攻撃の形としては、B-2ステルス爆撃機で高高度から核施設等の一部を叩くという選択肢もあり得る。しかし、それでは北朝鮮の弾道ミサイル等による報復を招き、韓国に居住する多くの米兵とその家族が犠牲になるおそれがある。だが、在韓米軍は自国民保護の対策を取れていない。

 実は、迎撃に使用する在韓米軍のパトリオットミサイル2個大隊(96台)は、先月末から更新に入ったばかりである。在韓米軍の説明によれば、3月25日より、韓国に展開する米軍のパトリオットミサイルは、レーダーや指揮システムを含む全てのハードウエアとソフトウエアを最新式に交換する作業を実施しており、製造元のレイセオン等の技術者が長期間滞在して実施するという。報道によれば、在韓米軍の関係者は「海外の米軍の防空部隊を対象にこれだけ大々的な性能改良作業が行われるのは初」としている。今までにない規模のこの改良作業がすぐに完了することはないだろう。

 しかも、韓国への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備もいまだ途上段階であり、使用可能な状況に至っていない。加えてトランプ政権はTHAAD配備の先送りすら示唆するありさまである。

 これでは北朝鮮からの反撃に対して、万全の体制とは言い難い。また、現在、北朝鮮からの報復として懸念されているのは、砲兵部隊によるソウル攻撃だけでなく、小型ドローンにサリンなどの化学兵器を積載してソウルに飛ばしてくることである。その対策として在韓米軍の増強がなされているかも疑わしい。

 ちなみに、米軍が北朝鮮に攻め入る際はどれくらいの兵力が必要だろうか。2013年に米陸軍は北朝鮮崩壊時の核兵器等の差し押さえを想定したウォーゲームを実施した。その際の結論は、最終的に2個師団の投入に56日間かかり、9万人の米軍の兵力が必要、というものであった。現在、米韓軍事合同演習が実施されている最中だが、とても数が足りない。

 また、この演習での結論としては、(1)オスプレイによる敵中深くへの戦力投射は、すぐに膨大な北朝鮮軍に包囲されてしまい失敗の連続となる、(2)人的情報がとても足りず、偵察衛星や盗聴による技術情報ではとても埋め合わせができず攻撃等に難儀した、というものであった。これも一部のメディアが「近いうちに行われる」とする特殊部隊やトマホーク等による斬首作戦の困難性を示唆している。

北朝鮮攻撃の蓋然性が高まるのはいつか

 では、どのような状況になると北朝鮮攻撃の蓋然性が高まったと見なせるのか。

 それは、ニミッツ空母打撃群が西太平洋に展開し、ロナルド・レーガン空母打撃群も合わせて3個体制に移行し、パトリオットミサイル部隊の更新とTHAADの配備が終了し、在韓・在日米軍の増強が開始されたときだろう。

 無論、現時点でも限定的な攻撃は、米本土からB-2爆撃機を飛ばせば可能である。意外性を好むトランプ大統領の「ギャンブラー」としての性格を考えれば、あり得ない選択肢ではない。

 しかし、トランプ氏自身が繰り返し述べてきたように、現政権は首尾一貫して中東重視である。実際にシリアに地上兵力を投入しており、これを15万人に増やすべきという議論も政権内で行われている。

 そして、トランプ政権の安保政策の主導権を握っているとされるマティス国防長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官は、イラク戦争で苦労した経験を持つ軍人である。後先を考えない楽観主義に基づく戦争の尻拭いを10年以上やってきた彼らが、そのような攻撃の計画をトランプに提案する可能性は低い。

 そう考えれば、やはり、米軍による先制攻撃は、少なくとも上記のような態勢への移行がほぼ完了した時点と考えるのが妥当だろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49758


 

 
米国で出てきた「もう韓国を助けるな」の声
「北朝鮮の脅威は韓国に任せればよい」と保守派の論客
2017.4.19(水) 古森 義久
韓国、射程800キロのミサイル発射実験に成功 北全域が射程
韓国ソウルの戦争記念館に展示されているミサイル(2009年6月4日撮影、資料写真)。(c)AFP/KIM JAE-HWAN〔AFPBB News〕
「米国が朝鮮半島の危険な情勢に関与する必要はもうない。韓国との同盟を解消して、在韓米軍も撤退すべきだ」――こんな過激な主張の論文が米国の大手外交雑誌に掲載された。ソ連の巨大な脅威が存在した東西冷戦時代ならば米国の朝鮮半島関与は意味があったが、今は北朝鮮の脅威は韓国に任せればよい、とする孤立主義に近い主張である。

?論文の筆者は長年ワシントンの外交政策論壇で活動する研究者だ。その主張はきわめて少数派と言えるが、米国の一部にこうした意見が存在することは認識しておく必要があるだろう。

中国の存在のほうが大きな問題

?米国の大手外交雑誌「フォーリン・ポリシー」4月号は「アメリカはもう韓国を解き放つ時だ」と題する論文を掲載した。筆者は異色の保守派論客であるダグ・バンドウ氏である。同氏は国際問題を専門とする研究者であり、レーガン政権で大統領補佐官を務めた経歴を持つ。現在はワシントンの老舗研究機関「ケイトー研究所」の上級研究員として活動している。

?バンドウ氏は論文で、まず北朝鮮が核兵器やICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発を進めて緊迫する現在の情勢について「米国はなぜアジアの小さな貧しい北朝鮮という国だけに大きな関心を向け、米国人の血を流すことになる戦争を選択肢にしようとするのか」という疑問を提起する。「アジアには、もっと真剣に対処すべき中国のような大国が存在するではないか」とも述べる。

?バンドウ氏もケイトー研究所も基本的なスタンスは、個人の自由を最大限に求め、政府の役割を極端に小さくすることを主張する「リバタリアニズム」(自由至上主義)系の思想である。「小さな政府」を主唱するという点では、保守主流派と主張が重なっている。リバタリアニズムは、外国との同盟などを減らす孤立主義を説くことも多い。

韓国に米国の助けはいらない

?バンドウ氏は同論文で以下の諸点を主張していた。

・米国が朝鮮半島に介入し、韓国と同盟を結んで、北朝鮮と対峙した最大の理由は、東西冷戦中にソ連側陣営の共産主義の拡大を防ぐためだった。朝鮮戦争で共産側と戦って3万7000人もの米国人の命を失ったのも、北朝鮮の背後にいるソ連の勢力圏の膨張を阻止するためだった。

・だが、今や世界はまったく変わってしまった。米国にとって朝鮮半島は東西冷戦中の地政学的な意味を失い、朝鮮半島での「代理戦争」はもはや過去の遺物となった。韓国を防衛することも北朝鮮の核武装を阻止することも、米国の基本的な国益とは関わりがなくなった。

・いまの朝鮮半島で起きうる最悪の事態は、北朝鮮と韓国との戦争だろう。しかしこの戦争も国際情勢全体、あるいは米国の基本的な国益という観点からみれば、それほど重大な出来事ではない。米国が介入しなければこの戦争は朝鮮半島だけに限定されるので、かえって国際的な被害が少ない。

・在韓米軍は長らく不可欠な聖域のようにみなされてきた。だが、かつてカーター政権はその撤退を提唱している。

・現在、韓国には約2万8000人から成る米軍が配備されているが、もしも朝鮮戦争が起きた場合、米軍の被害は甚大となる。だが、いまの韓国の国力は北朝鮮を圧倒的に上回っている。韓国軍は米軍の力を借りなくても勝利を得られるはずだ。

・韓国にはときどき金大中政権のような北朝鮮との融和を求める政権が登場し、「太陽政策」の名の下に北に100億ドルもの援助を与えるような異常な出来事が起きる。援助を受けた北朝鮮は、その間に核兵器や弾道ミサイルの開発に励んでいた。韓国は「米国の保護がある」という安心感から、そんな行動をとるのだ。だから、米国は保護をやめたほうがよい。

・在韓米軍の存在は中国の膨張を防ぐためだとする議論もある。だが、中国が朝鮮半島に進出して北朝鮮を自国の支配下におく意図がないことは、すでに明白だ。台湾や南シナ海、東シナ海など、北朝鮮以外の地域での中国の攻勢を抑えるための在韓米軍の効用はほとんどない。

・韓国が核武装して北朝鮮の核兵器に対抗しても、米国にとって大きな不利益はない。また、在韓米軍を撤退させた後も、米国が核の拡大抑止、つまり北朝鮮に対する「核のカサ」を韓国に提供し続けることは可能である。

?バンドウ氏は、国が朝鮮半島への関与を減らすことで、韓国も北朝鮮も自立や自主性の意識を高め、責任のある外交や戦略を展開するようになるのではないかと総括していた。

?現実的には、米国が韓国から、さらには朝鮮半島から離脱する可能性はきわめて低いとはいえ、いまの米国内にはこんな主張があることも知っておくべきだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49768

 


 


米国はいま大惨事に向かって突進する暴走列車
"変革者トランプ"に裏切られた米国民とチョムスキー博士
2017.4.19(水) 高濱 賛
【写真特集】トランプさん、納税額教えて! 全米各地で「タックス・マーチ」
米首都ワシントンで行われたドナルド・トランプ大統領の納税記録開示を求めるデモ「タックス・マーチ」の参加者ら(2017年4月15日撮影)〔AFPBB News〕
「米黄金時代は50年代だった」

 米リベラル言論界の重鎮、ノーム・チョムスキーMIT(マサチューセッツ工科大学)名誉教授(88)の新著が出た。

 「Requiem for the American Dream」(アメリカン・ドリームへの鎮魂)。

 同教授のインタビューを柱に制作されたドキュメンタリー映画の脚本を下敷きに書かれた172ページのムック本である。映画は4年がかりで作られ、2016年1月末に完成している。つまりドナルド・トランプ第45代大統領就任1年前だ。

 チョムスキー教授は「1950年代こそ米社会の黄金時代だ」と見た。

 1950年代とは、民主党のハリー・トルーマン第33代大統領の政権の後半、共和党のドワイト・アイゼンハワー第34代大統領の政権の前半だ。

Requiem for the American Dream Noam Chyomsky Seven Stories Press, 2017
 平均的労働者には正当な賃金が支払われていた。労働者たちは、ローンで家を買い、新車を買った。皆が家族と一緒に「アメリカン・ドリーム」を満喫できる時代だった。

 米製造業が生産した製品を米国民が買う、そこには米企業・工場の海外へのアウトソーシングなどあり得なかった。労働者を守る労働組合は強固だった。労使関係はすこぶる良かった。

 ところが、その後、米国経済は退化の一途を辿り、縮小均衡の時代に入る。

 高い失業率、企業倒産や銀行破綻、大学授業料の高騰が平均的労働者の生活を圧迫した。その一方で貧富の差は年々広がって行った。人口比1%に満たない超富裕層が富の99%を独占している。

保守もリベラルも歴代政権が貧富の格差を増幅

 米国はどこでどう間違えてしまったのか。チョムスキー教授は指摘する。

 「歴代政権は民主党も共和党とも平均的労働者の生活を守る政策を推進すると口先では言いながらも実践しなかった。保守もリベラルも政権を取ると、既得権益のための政策に終始した。それはジョン・F・ケネディからバラク・オバマに至るまで歴代政権は皆同じだった」

 「米国の政治は米民主主義の理想をぶち壊し、超富裕層とその他の層との溝を急激に広げてしまった。その点では、民主党も共和党、保守派もネオ・リベラル派も同じだった」

 そして2016年大統領選。米国民は今度こそ貧富の格差が是正されるのではないのかと淡い期待を抱いた。既得権保護のしがらみとは無関係な、全くの政治の門外漢トランプ氏が既成勢力に挑戦したからだ。そして勝った。

 教授は一時期、トランプ大統領に淡い期待を寄せた。そのことが本書では示唆されている。

 「トランプ支持者の多くは、2008年にオバマに投票した有権者だった。労働者たちはオバマの主張する『希望と変革』を信じて投票した」

 「オバマが口では希望や変化を実現すると言ったが、実現できず、支持者を幻滅させた。詐欺師に騙されたようなものだった。そしてトランプが登場した。一般大衆は今度はトランプに変革を期待し、票を投じた」

 チョムスキー教授は、そのトランプ氏についてこう記している。

 「実のところ、私は米国にもいつか、率直で、カリスマ性を持ったイデオローグが台頭するのではないかと思っていた。そのイデオローグが持つ危険性も十分懸念してのことだった」

 「米社会に長きにわたり充満していた一般大衆の不満や憤りを受けて立つイデオローグが出現し、貧富の格差が縮小するような事態が到来するのではないか、と幻想を抱いた時期がある」

 「それが果たしてトランプなのかどうか。だが、考えてみると、トランプという人物は率直で、正直なイデオローグのイメージとは程遠いかった」

 「それがトランプなのか。彼が米社会に対し不満や憤りを感じている人々から支持を得ていることは間違いなかった。その多くはオバマというネオ・リベラル政権下で路傍に放り出された白人の労働者、中産階級の下層の人たちだった」

「米国第一主義」を掲げた孤立主義はどこへ

 そのトランプ氏が第45代大統領に就任してまもなく100日になる。就任当初、米主要メディアはこう予測していた。

 「『米国第一主義』を掲げるトランプ政権は対外的な関与を弱める孤立主義、経済・通商では保護主義路線を取る」

 ところがどうだろう。就任後100日にならない前からトランプ大統領のおかげで米国も世界も大混乱に陥っている。

 当初掲げていた「就任当初から取り組む100日計画」を実現しようと、トランプ大統領は大統領令を連発した。だが、与党議員の一部を含む議会からの反発を買ってすべて挫折している。

 これまで公約通り決まったのは空席の最高裁判事に保守派のネイル・ゴーサッチ連邦巡回裁判所判事を指名、議会の承認を得て就任させたことだけだ。オバマケア(健康保険改革)廃止もメキシコとの国境に壁を建設するという大風呂敷も広げたまま、今後どうなるのかも不透明だ。

 他方、外交面では、孤立主義どころか、大統領選挙中、おくびにも出さなかった「人道主義」を持ち出して中東に介入した。

 化学兵器を使用して「ビューティフルな赤ん坊を含む善良な市民を殺りくした」として、シリアのアサド政権の基地に巡航ミサイルを撃ち込んだ。核開発とミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩政権と本気で一戦構える姿勢すら見せている。

 就任当初、ロシアとの親密な関係をテコに米ロ関係の改善に意欲を見せていた。だがシリア攻撃で米ロ関係は冷戦後最悪の状況に陥っている。

 ご本人は「予想不可能な政策をやるのがオレの強み」とうそぶいているが、その朝令暮改ぶりに世界は緊張の度合いを深めている。

トップニュース作りだけしか頭にない「ツィッター政治」

 チョムスキー教授は、こうしたトランプ大統領の「無手勝流政治」をどう見ているのか。4月4日のインタビューでこう述べている。

 「トランプの政治列車はまさに軌道を外れ、今にも大惨事を起こしかねない状況にある。しかもその朝令暮改ぶりは今や日常茶飯事になっている」

 「スティーブ・バノン(首席戦略官)にそそのかされたトランプは連日、メディア向けにトップニュースを作ることしか考えていない。毎日、新しいことをツイートすれば、前日のツイートの中身は皆忘れてしまうと思っているのだろう」

 「政策面を見ても、草の根大衆の熱烈な支持を得て大統領になったにもかかわらず、トランプがやっていることは共和党や民主党の既成政治家たちがやっていたと同じように富と権力を持つ既得権層を喜ばせることばかりやっている。一般大衆が望んだ貧富の格差是正はどこへいってしまったのか。幻滅と失望だけが噴出している」(参考)

 失望だけならまだいい。チョムスキー教授が今最も恐れていることはトランプ氏によるメディア攻撃だ。

 「もしカリスマ性を持った人物が現れて、一般大衆の恐怖心を煽り、怒りと人種主義を結集し、未来への希望を失わせるような言動に出るようなことがあれば、米国は本当の危険にさらされる」

 「一般大衆が常にメディアを支持するとは限らないからだ。幸いなことに、今までのところ、率直でカリスマ性のある人間は出てきていない。だが、大統領たるトランプのメディア攻撃は注意せねばならない」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49752


http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/186.html

[政治・選挙・NHK224] 今すぐ北朝鮮攻撃はない、浮き足立たず有事に備えよ 日本に求められるリアルな議論  自衛隊:海外PKOで果たした重要な役割

今すぐ北朝鮮攻撃はない、浮き足立たず有事に備えよ
日本に求められるのは楽観論、悲観論を排したリアルな議論

2017.4.19(水) 織田 邦男
【写真特集】北朝鮮、金日成主席生誕105年の軍事パレード
北朝鮮の首都・平壌で行われた軍事パレードに登場したミサイル(2017年4月15日撮影)〔AFPBB News〕
 今年も桜が咲き、そして散って行った。例年どおり、上野公園では多くの人が車座になって花見に興じていた。日本をよく知っているある米国人が筆者に語ったことがある。「日本国内の議論って、まるで『花見』だね」と。

 彼が指摘したかったのは、「車座」を組んで外界に背を向け、内輪だけ通じる議論に終始している日本の異様な姿である。

 3月6日、北朝鮮はミサイル4発を同時発射し、一発は能登沖約200キロの海上に着弾した。金正恩総書記は在日米軍基地が標的だと言い放ち、ミサイルの固体燃料化も成功した。1年半ぶりに実施した軍事パレードでは、大陸間弾道弾(ICBM)らしき新型装備を登場させた。

 シリアでは、バッシャー・アル=アサド大統領が反政府勢力にサリンの化学兵器を使用した。ドナルド・トランプ米国大統領は懲罰として、巡航ミサイルによるシリア空軍基地攻撃を敢行した。

風雲急を告げる中で森友問題一色の日本

 こういった風雲急を告げる国際情勢にもかかわらず、日本国内では、国会は「森友学園」一色、巷では「稀勢の里」「豊洲」そして「浅田真央引退」の話題であふれ、まさに「外界に背を向け、内輪だけに通じる議論に終始」していた。

 北朝鮮では建国指導者金日成の生誕日である4月15日、つまり「太陽節」の前後に、6回目の核実験を実施するとの情報があった。核の小型化に成功し、米本土に届くICBMを完成させる、それは米国の「レッドライン」である。

 米中首脳会談の最中にシリア攻撃を実施し、トランプ大統領は習近平主席に対し「本気度」を見せつけた。これまで20年にわたる「戦略的忍耐」は失敗だったとし、「あらゆるオプション」を排除しないと明言した。もし中国が北朝鮮を説得できなければ、米国単独でも軍事力行使を含めた対応をとると伝えた。

 「太陽節」に呼応するかのように、ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、カール・ビンソンを主体とする空母機動部隊を北上させ、異例ながらこれを公開した。こうなると日本のメディアは一転して「すわ戦争か」と条件反射的に反応し、今にでも戦争が起きるような報道ぶりだ。

 普段、安全保障に関心も知識もない識者がメディアを通じて浅薄な発言をし、国民はこれに惑わされて不安に駆られる。メディアは視聴率が取れるからさらにこれを煽って大騒ぎをする。

 民主主義国家にとって、この現象は決して健全ではない。これまでのように、何があっても「話し合いを」と壊れたレコードのように繰り返して思考停止するのも不健全だが、根拠なく「米軍は攻撃する」と煽るのも、それ以上に不健全である。

 今回、米軍は北朝鮮への攻撃はしないと筆者は確信を持っている。これをSNSで公表したら、思いのほか大きな反響があった。いかに国民が正確な情報に飢えているかの証左であろう。以下、筆者の考えを簡単に紹介する。

 今回、空母機動部隊の動き、巡航ミサイル搭載原潜の派遣、アフガニスタンでのMOAB (Massive Ordnance Air Blast=大規模爆風爆弾)の使用、あるいは岩国基地におけるF35Bの爆弾搭載訓練、SEALS支援船の派遣など、米軍は普段は決して公開しないものを続々と公開した。本当に作戦実施なら、手の内をばらすような馬鹿はしない。

 これらは「太陽節」に合わせて準備した核実験を阻止するための金正恩に対する威嚇行動であり、それを何としても止めさせろという習近平主席に対する強いメッセージである。

 攻撃実施のメルクマールとして、NEO(Non-combatant Evacuation Operation)、つまり「非戦闘員退避作戦」の開始がある。韓国には現在、観光客を含め米国市民や軍人家族(軍人を除く)が10万人余り存在している。米国が北朝鮮に手を出せば、「ソウルを火の海にする」と北朝鮮は公言しており、事実上の人質状態とも言える。

 16日、ヒル元米国務次官補は「韓国には、北朝鮮の大砲の射程に約2000万人が住んでいる」とテレビ番組で指摘している。作戦を命ぜられた司令官がまず考えるのは、一般市民、特に自国民をいかに保護するかである。

まだ発令されていない非戦闘員退避

 ちなみに、「3.11」の原発事故の際、日本でNEOが発動され、関東一円から米軍人家族が一っ子一人いなくなったことはあまり知られていない。

 現段階においては、マイク・ペンス米副大統領が訪韓するなど、NEO「非戦闘員退避作戦」は開始されていない。こんな状態でマティス長官やマクマスター補佐官が攻撃実施を大統領に進言することは先ずあり得ない。

 また一個空母機動部隊と在韓米軍では北朝鮮攻撃には明らかに兵力不足である。北朝鮮攻撃はシリアとは状況は全く異なる。38度線に集中する約1万の火砲(多連装ロケット砲や長射程火砲など)はソウルを向いている。

 ソウルを「火の海」にしないためには、初動でこれらを一挙に壊滅させねばならない。同時に、核施設や核貯蔵施設を完全に破壊しなければならない。これには明らかに兵力不足である。

 金正恩を直接狙った「斬首作戦」があると主張する専門家もいる。だが実態上、非常に難しい作戦である。リアルタイムで金正恩本人の動向を把握できなければならないからだ。

 これは偵察衛星ではできない。2006年、ザルカウイ容疑者を「斬首」した時のように、側近に裏切り者がいて逐一、金正恩の行動が把握できなければ、現実的にはこの作戦は不可能だ。

 またこの作戦は失敗が許されない。失敗すれば北の独裁者は「火の海」や「核攻撃」を直ちに命ずるだろう。朝鮮半島はシリアとは違って「ちょっとだけ懲罰を」という作戦はあり得ない。「Half Pregnant」はあり得ないのだ。

 米中首脳会談でトランプ大統領は、「中国が影響を行使できないなら、米国は単独でもやる」という強いメッセージを習近平に伝えた。現在、ボールは習近平主席側にある。今回の米軍の動きは、まずは習近平主席の「お手並み拝見」というメッセージなのだ。

 16日、北朝鮮は東海岸からミサイル発射を実施した。結果的には失敗に終わったらしい。習近平主席の説得にもかかわらず、金正恩総書記は6度目の核実験を強行するかもしれない。トランプ政権はオバマ政権とは違い、本気である。その時はトランプは上げた拳は必ず振り下ろすだろう。

 訪韓中のペンス副大統領も次のように述べている。「失敗したミサイル発射に対し、我々が何か特別な対応をとる必要はない。これが核実験であれば、米国として何らかの行動を取る必要があっただろう」

 攻撃を決行するとなると、先ずNEOが発動となる。同時に、米本土から三沢、横田、嘉手納に攻撃戦闘機が続々と展開してくるはずだ。グアムのアンダーセン基地やハワイのヒッカム基地もあわただしい動きになるだろう。

 作戦準備になると、米軍は一転して情報を公開しなくなる。湾岸戦争時の「インフォメーション・ブラック・アウト」状態だ。

情報がなくなった時こそ迅速な対応を

 湾岸戦争開戦前、日本の多くの識者たちは「情報がない」ことを誤解してか「攻撃はない」と予想していた。だが見事に裏切られた。「情報がない」というのと「攻撃準備がない」というのは全く違うのだ。

 「インフォメーション・ブラック・アウト」になれば必ず分かる。その時こそ日本政府は、直ちに韓国への渡航禁止措置を取るとともに、在韓邦人帰国のための作戦を開始すべきだ。日本に事前協議をするとは言うが、保全上、攻撃開始直前になる可能性はある。

 日本も観光客を合わせて5万7000人の在韓邦人をどう退避させるか真剣に考えなければいけない。これこそが今、冷静に議論すべきことなのだ。

 現行の「在外邦人輸送」については、かなり問題が多い。拙稿「有事の際、海外の邦人救出はしなくて本当にいいのか」(2015.3.18)で指摘したので、ここでは触れない。

 メディアも浅薄だが、いわゆる有識者も軍事知識は上辺の知識しか有しない。軍事を知らない者同士が語り合っても現実とは程遠い空虚な議論から一歩も出ない。国民はメディアの作り出した浅薄な「お騒ぎ」に巻き込まれるべきではない。

 以上がSNSで述べた趣旨である。これに対し、驚くほどの反響が寄せられた。その一方で「自衛官OBとしては楽観的に過ぎる」といったお叱りもいただいたことを紹介しておく。

 「お叱りコメント」を分類すると、だいたい以下に分類される。

 (1)米国は本気だ。攻撃の可能性は高い
 (2)最悪に備えるのが危機管理なのに能天気すぎる
 (3)平和ボケした国民には刺激を与えた方がいい
 (4)手の内をさらすのは、金正恩を利する

 これらに対し反論したい。筆者は米国の本気度を疑っているわけではない。だが、段階があり今回は、攻撃はないと申し上げているのだ。

 繰り返すが北朝鮮はシリアとは違い、「ちょっとだけ攻撃」という「Half Pregnant」はあり得ない。民主主義国が軍事作戦を考えるとき、自国民を犠牲にすることを前提に作戦計画を立案することは決してない。その重要性を一番分かっているのが軍人のマクマスター補佐官であり、マティス国防長官である。

 現時点では中国だけが北を動かせる国である。米政府は中国の役割に期待している。それをさぼってきた習近平主席に対し、米国は空母機動部隊でもって本気度を示し、「お手並み拝見」との強いメッセージを与えているのである。

 米国は本気である。北朝鮮がそれでもなお、核実験を強行し、ICBMを完成させるならば、攻撃を必ず実施するだろう。その時期はNEOの状況や、部隊の集結状況を見ればある程度わかる。これが(1)に対する回答である。

 (2)については、客観冷静な情勢判断と「最悪想定」の危機管理は分けて考えなければならない。情勢分析はあくまで冷静に、しかも客観的に実施しなければならない。メディアの「お祭り騒ぎ」や国民のムードに決して惑わされることがあってはならない。

情報公開は北の為政者に最悪の事態を想起させるため

 もちろん、政府レベルでは、冷静な情勢分析の中でも「最悪を想定」した準備を怠ってはならないのは言うまでもない。内閣、NSC(国家安全保障会議)、防衛省は、多くの情報を持っているはずだし、その情報を基に緻密な分析をして、最悪想定の対策を講じているはずだ。

 (3)については、全く不同意だ。これはむしろ「禁じ手」と言える。共産主義国家や独裁国家では政権を維持するために、不都合な情報は伝えなかったり、あるいは情報をねつ造し、国民を政府の都合の良い方向に誘導することが多い。民主主義国家でこれをやると、政府の信頼性がなくなる。

 「大本営発表」症候群になって民主主義を根底から崩してしまいかねない。あくまで国民にはいろいろな情報をいろいろな角度から正確に与え、国民自身が判断できるようにしなければいけない。

 民主主義というものは国民一人ひとりが「だいたい常識的な」判断ができることで成り立っている。日本の現状は必ずしもそうではない。だが、その方向を常に目指すべきだろう。

 (4)についても不同意だ。こんなプリミティブな情報分析はとっくに北朝鮮もやっている。「手の内をさらす」といった類のものではない。これを聞いた金正恩主席が「そうか」といって戦略を変えることもあり得ない。

 むしろカール・ビンソンの北上をはじめ、米軍がこの時とばかりに公開した情報、その他、独自入手の秘密情報を分析し、為政者として「最悪を想定」して次の手を打つはずだ。だからこそ、軍事力のデモンストレーションは意味があるのである。

 1996年の台湾総統選挙の時に、中国は台湾近海に4発の弾道ミサイルを着弾させて選挙を妨害しようとした。これに対し米国は空母2隻を近海に派遣したが、これによって中国は矛を収めざるを得なかった。

 中国は空母派遣によって米中戦争になるとは思っていなかっただろう。だが、「最悪事態」を想定すれば、力の誇示を続けることによって自分に不利に作用すると考え矛を収めたに違いない。

 今回の米軍の動向も、決して無駄ではないし、いつでも「やるぞ」との意思を示すことは外交の力強い後ろ盾となっていることは間違いない。逆にいえば「力の後ろ盾」のない外交は無力なのである。

 以上が「楽天的に過ぎる」との御批判への筆者の回答である。要はパブロフの犬のように、条件反射的に反応するのではなく、情報を見極め、動くべき時に動き、そうでないときに軽挙妄動してはならないということだ。

朝鮮半島の非核化は話し合いで解決できない

 もちろん事実を直視せず、楽観を決め込むことがあってはならない。だが「すわ戦争だ」という根拠なき悲観論に右往左往するのも有害極まりない。またぞろ壊れたレコードのように「話し合いを」と繰り返し、思考停止に陥っている楽観論も百害あって一利なしだ。

 2003年から9回にわたって繰り返された六か国協議の「話し合い」で、果たして「朝鮮半島の非核化」は実現できたのか。1994年の核疑惑危機から23年にわたる「話し合い」の結果が今の状況だということをまず直視する必要がある。

 金正恩総書記の「核・ミサイルの野望」を止めさせるには、もはや「話し合い」だけでは無理である。いざとなれば「伝家の宝刀を抜くぞ」という本気度を示して初めて可能性が出てくる。今回の米軍の動きは、そのための第1弾としての力の誇示であり、まずは習近平主席の働きかけと金正恩総書記の決心を見てみようということだ。

 それがだめなら、第2弾としてNEOを開始して本気度を示すだろう。NEOの開始は金正恩総書記に対し、相当インパクトの大きいメッセージとなる。

 併せて攻撃部隊を集結させて金正恩総書記に決心を迫る。もちろん国際社会での合意形成を得る努力は必要である。同時並行的に「核とICBM」を断念させる交渉を中国に引き続きやらせる。それでもだめなら・・・今後は、そういった展開になるだろう。

 日本は当事者意識を持たねばならぬ。北朝鮮の核・ミサイルは米国だけの問題ではない。日本の安全保障そのものなのである。

 70年前、講和条約の調整で来日した大統領特使ジョン・フォスター・ダレス氏が、あまりに国際情勢に疎い日本を「周辺情勢に目をつむり、まるで不思議な国のアリス」と言って嘆息したという。

 日本人は70年前と全く進歩していないのか。我々は「お花見」よろしく車座になって外界に背を向け、内輪だけ通じる議論に終始している場合ではないのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49767


 

 


徹底解説自衛隊:最新の海外PKOで果たした重要な役割
自衛隊の歴史を読み直す(6)〜ハイチから南スーダンまで
2017.4.19(水) 田中 伸昌
南スーダン第2の都市で戦闘、民間人16人死亡 国連
南スーダンのワウに国連が設置した文民保護地区 (PoC)の避難民たち〔AFPBB News〕
 毎週水曜日にお送りしている徹底解説自衛隊。これまで、終戦後に自衛隊が誕生した背景、国内での災害派遣での活動、また海外PKO活動に参加するようになるまでを時系列に沿って詳しく見てきた(前回はこちら http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49687)。

 今回は最新の海外PKOにおける自衛隊の役割と成果について解説する。前回解説したゴラン高原、東ティモール、アフガニスタン、イラク、スーダンに続き、今回はハイチでの業務から最新の南スーダンまでを振り返る。

12.ハイチ国際平和協力業務(2010年2月〜2013年2月)

 ハイチでは2000年の議会選挙および大統領選挙の結果政治的対立が激しくなり、国内騒乱・暴動へと発展した。この状況の中、2004年2月に反政府勢力が蜂起し内戦状態、無秩序状態へと発展した。

 これに対して国連安保理は決議を採択して、同年3月、多国籍暫定軍(MIF)を現地に展開させて治安回復を図った。

 国連は、さらに治安回復、国家機能の再興・充実を図る必要があるとの判断から、新たな安保理決議(第1542号2004.4.20)を採択して国際連合ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)を設立(2004.6.1)し、MIFを引き継いでハイチの国家機能の回復・充実を継続支援することとした。

 このような状況の中、2010年1月12日に大地震が発生し、ハイチは大きな被害を被った。国連安保理は、被害の緊急的な復旧を図るとともに国家機能の復興を促進させる必要があるとの判断からMINUSTAHの派遣人員の増強を図る安保理決議(第1908号2010.1.29)を採択した。

 これに基づく国連からの要請に対し、我が国はハイチ国際平和協力業務を実施することを閣議決定(2010.2.5)し、ハイチ国際平和協力隊を設置した。

 ハイチ国際平和協力隊は、MINUSTAHの中の軍事部門を形成し、司令部要員として第1次2人を2010年2月24日から半年間、以後2013年1月30日に任務を終えて帰国するまで、半年ごとに2人を第6次まで派遣し、合計12人の自衛官が司令部要員として職務を遂行した。

 地震被害の復旧支援の実働部隊としては、2010年2月6日以降、陸自施設部隊から第1次として203人が派遣され、第1次のみ1か月という期間を除き、第2次以降第7次までで合計2140人の隊員が災害復旧支援業務に従事した。

 この間、施設部隊はがれきの除去、敷地造成、道路補修などのほか、国連資金を活用して、孤児院施設および結核診療所施設、小学校校舎の建設等を企画し実施した。また国連施設の耐震診断あるいは施設部隊に随行している医官による現地コレラ対策への協力など、専門性を生かした支援も行った。

 また、現地に派遣されていた韓国部隊との共同作業、我が国ODA事業への支援やNGO活動に対する支援など多方面にわたる活動を積極的に行った。

 航空自衛隊は、空輸隊を編成して、本邦、ハイチおよび米国(フロリダに先遣隊配置)との間で、C-130H輸送機、KC-767空中給油・輸送機および政府専用機により人員や物資・装備機材等の空輸により活動を支援した。

 ハイチ国際平和協力隊は、2013年2月にすべての任務を終えて日本に帰国した。なお、帰国に先立って、我が国はハイチ政府の要請を受けて、現地で使用してきたドーザーなどの施設機材をハイチ政府に譲与した。

 また、国連からの要請を受け、現地宿営地内に保有していたプレハブ建物および付属設備・備品などを国連に譲与した。

13.国際連合東ティモール統合ミッション(2010年9月〜2012年9月)

 1994年から東ティモールの行政支援のために設立されていた国連暫定行政機構(UNTAET)が、2002年5月20日の東ティモール民主共和国の独立をもってその任を終えたが、国連は、引き続いて主権国家としての安全と自立体制の整備を支援する必要があるとの判断から、新たに東ティモール支援団(UNMISET)を設立した。

 ところが司法分野を中心として国家機能が不十分であることが露呈したため、国家統治機能の更なる充実強化支援を目的に、国連は国連東ティモール事務所(UNOTIL)を2005年4月28日に設立した。

 しかし、その後に発生した離脱兵士への警察対応に対する抗議行動などから治安状況が極度に悪化し、国連は東ティモール政府の要請により、治安の維持・回復並びに大統領選挙および国民議会選挙の実施を支援することを目的として、2006年8月25日に、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)を設立した。

 2010年5月、国連は我が国に対しUNMITの軍事部門への要員派遣を要請した。これに対し我が国は、2010年9月10日、国連の要請を受け入れることを閣議決定し、東ティモール国際平和協力隊を設置した。

 我が国は第1次として2010年9月27日からおよそ半年間の任期で、陸上自衛隊から2人を首都ディレに設置された軍事部門の司令部に情報収集・連絡要員として派遣した。以降、2012年9月21日まで、半年ごとの任期で第4次まで各2人ずつ、合計8人が国連東ティモール統合ミッション軍事部門の要員として勤務した。

 この間東ティモールにおいては、2011年3月から7月にかけて大統領選挙および国民議会選挙が行われ、5月20日に新大統領の誕生、8月8日には新たな政権が発足し、順調に国家統治機能の充実が図られ、成長・発展へと進んでいる。

 このような成果を見て、国連は2012年12月31日をもって東ティモール統合ミッション(UNMIT)の活動を終了させた。

14.国際連合南スーダン共和国ミッション(2011年11月〜2017年5月末)

 南スーダン共和国は、20年以上にわたる内戦が終結した後、国連安保理が設立した「国際連合スーダン・ミッション」(UNMIS)の支援もあって、南北包括和平合意に基づく住民投票において、有効投票数の99%がスーダンからの分離独立を支持する結果を受けて大統領はこれを受け入れ、2011年7月9日に新たな独立主権国家として誕生した。

 これに伴いUNMISの任務を終了した。

 新たに誕生した「南スーダン共和国」は、国づくりのスタート台に立ったばかりであり、独立主権国家として成長して行けるかどうかは、アフリカの平和と安定にとって極めて重要な課題である。

 このような認識に基づき、地域の平和と安全の達成と新しい国づくりを支援するため、国連は安保理決議(第1996号)を採択し、「地域の平和と安全の定着」および「南スーダン共和国発展のための環境構築支援」を目的とする国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)を2011年7月9日に設立させた。

 我が国政府はこの決議に基づく国連からの要請を受けて、2011年11月15日、「南スーダン国際平和協力業務の実施について」および「南スーダン国際平和協力隊の設置等に関する政令」を閣議決定し、同月18日に「南スーダン国際平和協力隊」を設置した。

 派遣期間は、2011年11月18日から2012年10月31日までとし、派遣規模は、陸自施設部隊(最大330人)、国連や現地政府機関などとの調整等を行う陸自部隊(最大40人)、UNMISS司令部へ派遣する幕僚(3人)とした。

 この計画に基づき、2011年11月の司令部要員2人の出発を皮切りに、要員、装備品などの輸送を、大型輸送チャーター機、海自輸送艦、空自輸送機(C-130H×4機、空中給油・輸送機KC-767×1機、政府専用機×1機)などにより実施、2012年3月25日に南スーダンにおいて第1次隊の人員、装備などすべての態勢を完成させ、2012年4月2日から現地における活動を開始した。

 南スーダンは長年にわたる内戦の末、2011年7月9日にスーダンから分離独立した新興国家であるため、国土は内戦で荒れ果て、衛生状態も悪く、400万人を超えると言われる避難民を抱え、治安も悪く、国家統治機能も整備途上である。

 派遣された自衛隊はこのような過酷な状況の中でのPKO活動となった。

 派遣期間について、当初は2011年7月9日から1年間ということであったが、逐次延長が繰り返されて現在に至っている。

 我が国は2011年11月に司令部要員、2012年1月に施設部隊をそれぞれ派遣したが、期間延長の安保理決議に基づき、その都度派遣期間の延長を行ってきており、現在、施設部隊については2016年12月12日から第11次派遣施設隊が現地で活動している。

 自衛隊の現地への派遣任期は、施設部隊については概ね半年、司令部要員については概ね1年としている。なお、日本政府は、2017年5月末をもって自衛隊の施設部隊を撤収することを決め発表した(2017年3月10日)。

 これについて政府は、「5年以上にわたる自衛隊担当の首都ジュバ周辺における施設活動に一定の区切りをつけたと考え、今後は自衛隊による施設活動を中心とした支援から南スーダン政府による自立の動きをサポートする方向に支援の重点を移すことが適当と判断した」と発表した。

 ただし、司令部に派遣されている要員については、施設部隊の撤収後も引き続き継続派遣するとしている。

 派遣規模について、国連は2011年7月9日のUNMISS設立時の安保理決議で、軍事部門、最大7000人として各国に派遣を要請し活動を開始したが、その後の治安の悪化などに伴い人員を増強し、2016年2月時点で軍事部門要員は約1万2000人に上っている。

 我が国は、2011年11月にUNMISS司令部要員として2人を派遣したのを皮切りに次のとおり司令部要員並びに部隊を派遣している。また部隊や装備、資・機材等の輸送に当たっては、海上自衛隊並びに航空自衛隊の輸送能力を活用している。自衛隊の派遣規模の概要は次のとおりである。

○司令部要員

 派遣部隊の活動の企画・調整などのためUNMISS司令部に兵站幕僚および情報幕僚各1人を2011年11月29日に派遣し、2012年2月に施設幕僚1人を派遣した(第1次)。

 以後、2014年1月に派遣した第5次までは、それぞれ3人の要員であった。その後、政府は2014年10月に司令部に飛行運用幕僚1人の新規派遣を決定したので、第6次以降の司令部要員は合計4人の派遣となった。

○施設隊

 主として道路補修・整備などの国づくり支援活動を行う“南スーダン派遣施設隊”は、第1次隊が2012年1月から3月にかけて、現地において人員・装備・施設の態勢を整えて同年4月から活動を開始したが、部隊規模としては最大330人という陣容である。

 その後活動地域の拡大あるいは任務の変更などに伴い、2013年11月から逐次派遣された第5次施設隊から最大410人という陣容へと増強された。現在南スーダンに展開している第11次施設隊は、2016年12月に派遣され、派遣部隊指揮官(1等陸佐)以下約350人が、現地で活動している。

○支援調整所要員

 施設隊を現地に展開させるために必要な輸送業務に係る調整、さらに展開後の施設隊の業務の形成およびそのための調整等を行うため、2012年1月11日に最大40人から成なる支援調整所を首都、ジュバに設置した。

 ジュバのほかウガンダ共和国の首都カンパラおよび同国のエンテべにも要員を配置し、所要の調整業務を行わせた。

 支援調整所要員は第1次から第4次まで、それぞれ半年間の任期で勤務してきたが、2013年11月の第5次施設隊の展開に伴い、支援調整所の機能を施設隊に統合し、2013年12月24日をもって支援調整所を廃止した。

施設隊の活動内容について

 南スーダンにおける安全と平和の定着および独立主権国家としての発展のための環境の構築支援を任務として、2011年7月9日に設立された「国際連合南スーダン共和国ミッション」(UNMISS)は、世界63か国から派遣された軍事要員、警察要員、文民要員および国連ボランティアで構成されている。

 軍事要員は日本、英国、インドなど14か国から派遣された部隊からなり、我が国は陸上自衛隊の施設部隊を派遣し、英国、インド、韓国、中国およびバングラデシュは工兵部隊(注:陸自施設部隊と同等)を派遣し、その他の国は歩兵部隊、航空部隊、医療部隊および憲兵隊を派遣している。

 国連は、南スーダンにおける国家機能強化の環境整備が進展する一方で、国内の政治的対立に起因する抗争激化による治安の悪化と人道危機対処のため、UNMISSの活動の焦点を(1)文民保護(2)人権状況の監視・調査(3)人道支援実施の環境づくり(4)衝突解決合意の履行支援へと移していった。

 これに伴って自衛隊の活動も逐次変化していくとともに活動範囲も拡大していった。すなわち、まず幹線道路整備、ジュバ大学敷地造成などの国づくり支援から始まり、次いで避難民に対する医療活動・給水活動・トイレ設置などの避難民支援へ、そして避難民保護区域の整備、ジュバ河川防護柵整備などの人道支援のための環境づくりおよび文民保護支援等へと活動の重点を変化させていった。

 さらに、我が国が南スーダンへ提供している政府開発援助資金(ODA)により行われている事業や、現地で活動しているNGOとの連携、国連の他の機関および他国の派遣部隊との連携等、自衛隊の活動の範囲は拡大していった。

南スーダン共和国ミッション(UNMISS)における特筆すべき事項

〇「駆け付け警護」の取り扱い

 「平和安全法制」が平成28年(2016年)3月29日に施行されたことに伴い、国際平和協力活動などで実施できる業務の拡大が図られ、自衛隊による「安全確保業務」および「駆け付け警護」が実施できることとなった。

 2016年12月に派遣された第11次南スーダン国際平和協力隊に、最初にこの法律を適用して、「宿営地の協同防護」および「駆け付け警護」任務が付与された。派遣された部隊は、新たに付与された任務に対する訓練を十分に実施してきたと言明している。

 武器使用に関しては、国連が示している基準は、(1)PKO要員の生命等の防護のため(2)任務の遂行を実力によって妨げられる行為に対抗するためとしているのに対して、我が国は従来上記(1)のみであった。

 このことに対しては、PKOなどが国際社会の共同活動であり、同じ場面で他国のPKO要員とともに活動している以上、我が国から派遣された自衛隊員も共通の国際基準で活動しなければ、彼らを危機に瀕しさせる、あるいは爾後の自衛隊との共同活動に対する不信感を抱かせることになるであろう、ということが従来から言われていた。

 今回の法改正により(2)の任務遂行型の武器使用を極めて抑制的ながらも認めたことによって、派遣される自衛隊は、従来にも増してより安全、確実に任務を遂行できるようになったということが言えよう。

〇韓国PKO部隊への銃弾提供

 2013年12月23日、南スーダン共和国ミッションに部隊を派遣している韓国軍の現地部隊は、国連に対し銃弾1万発の提供を要請し、国連は日本に対し現地韓国軍へ銃弾1万発を提供するよう要請した。

 この要請を受けて我が国は、国家安全保障会議ののち持ち回り閣議の決定を経て、国連南スーダン派遣ミッションの韓国軍に銃弾1万発を無償で譲渡することを決め、現地派遣中の陸自部隊から銃弾1万発を韓国軍に提供した。

 これはこれまでのPKO法の審議等を通じて国会において「『物資協力』に武器・弾薬は含めない」としてきた政府見解と異なるため、官房長官が譲渡を決定した理由等について、次のような談話を発表した。

 「現地で活動中の韓国隊隊員や避難民の生命・身体を保護するために一刻を争い、韓国隊の保有する小銃に適用可能な弾薬を保有するUNMISSの部隊は日本隊のみという緊急事態である。緊急の必要性・人道性が極めて高いことに鑑み、UNMISSへの5.56ミリ普通弾1万発の提供については、当該物資が韓国隊隊員や避難民らの生命・身体の保護のためにのみ使用されることおよびUNMISSの管理の下、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提に、武器輸出三原則等に依らないこととする」

 この問題は日本国内でもまた韓国においても様々な議論を呼んだが、銃弾提供後、国連から日本政府に謝意が示され、現地の韓国隊からも現地自衛隊に謝意の表明があったことを官房長官は明らかにした。

 なお、現地の韓国隊は2014年1月10日、国連を通じて現地陸自部隊から提供を受けた銃弾1万発を陸自側に返還した。
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/372.html

[不安と不健康18] 医療の常識が変わる時代に必要なリテラシーとは? 自分ごとの健康・医学教育 
医療の常識が変わる時代に必要なリテラシーとは?
自分ごとの健康・医学教育
2017.4.19(水) 大曽根 衛
十勝ブルーの空を舞う白鳥の隊列
 十勝ブルーと呼ばれる澄み渡った青空にハクチョウたちの鳴き声が響き渡る。北海道の十勝地方東部に位置する本別町にて、3月24日から3日間、とあるキックオフイベントが行われた。

 その前に、2025年問題をご存知だろうか。

 団塊の世代が75歳以上(後期高齢者)になる2025年以降、諸外国に類を見ないスピードで高齢化が進み、人口の3人に1人以上が高齢者となっていく。当然、これまでの医療・社会保障の仕組みでは支えきれず、根本的見直しが必要というものである。

 医療と介護の連携だけではなく、生活支援・予防・まちづくりなど包括的なシステム(地域包括ケアシステム)の整備が、各自治体で急がれている。

 本別町と地域包括ケア研究所(所長:鎌田實)は、住民も一緒になり「自分ごと」として住みやすい町をつくっていくことを目指し「地域包括ケア・キックオフイベント」を協働で企画した。

 私自身も研究所メンバーとして「医療おける組織づくり・人材育成」の立場から、イベントをサポートした。

 年度末の忙しい時期にもかかわらず、事前申し込みよりも多くの方々が集まり、住民や医療・福祉関係者、行政関係者などと共創的な場ができ、本格的活動前にキックオフイベントしてよいスタートを切ることができたと感じている。

 数ある企画の中でも、次の若い世代に繋げていく企画が個人的に強く印象に残っており、いくつかご紹介したいと思う。

親子イベントで予防・健康リテラシーを高める

 NHKの人気番組「ドクターG」をご存知の方も多いだろう。総合診療医(ドクターG)が経験した症例に、全国から集まった優秀な研修医たちが病名推理に挑む番組である。

 今回、その番組にも出演され、総合診療科領域の第一人者でもある医師を講師として町外より招へいし、親子や学生たちに様々な謎解き体験などをしてもらった。

 まず、親子イベント。子供たちは小学生で、親と一緒に参加してもらい、対抗で医療クイズに挑んでいく。

スーパー総合医による親子イベント
 イベントの詳細は割愛するが、笑いと真剣さが混じり合う雰囲気の中で終了した。

 どんなことをやるか分からず不安いっぱいで来たはずの子供たちも、その雰囲気の中でやる気スイッチが入り、医療や健康について考えることを「楽しい経験」としてポジティブにとらえてくれたように思う。

 将来、医師や看護師など医療職に就いてみたいと話す子供たちもたくさんいた。そんな子供たちの中から、いつの日か町に戻ってきて活躍する人が出てくるかもしれない。

 この親子イベントに隠されたもう1つの意義は大きい。それは子供だけでなく親と一緒の参加であった点である。

 子供たちが医療や健康について少しでも興味を示すと、子供の関心事に注目し、親自身も自然に医療や健康への関心が高まる。

 今回の共通体験をきっかけに日常の中で、自分たちの体を大切にすることや周囲の人の健康やケアなどに意識が向き、親子で話す機会が増えていくことは、住民の予防・健康のリテラシーが高まる土台となるはずである。

 その好循環が拡大していくことが町全体のシステムとしても大切な要素になっていくであろう。

医学生の地域を診るリテラシーを高める

 続いて医学生向けのイベント。

 町が医学生たち(町外の医学部5年生、医学部入学を控えた高校生)を招待し、地域そのものや地域医療に多く触れてもらう機会などを多く提供した。

 住民向けのワークショップでは、住民と同じグループに入り、町の未來を真剣に考えてもらい、地域医療体験では、前述の総合診療の医師による模擬症例カンファレンスや病棟回診への同行、町の医療・介護施設の見学などの体験をしてもらった。

住民との触れ合い(まちづくりワークショップ)
 医学生たちにとってはいったいどのような体験となったのであろうか。3日間を終え、インタビューした時の声を一部紹介したい。

 「大学でも地方での実習はあり勉強になったが、お客さんのような扱いだった。本別町では住民の方ともグループワークの中で一緒に考えたり、ぼくらに悩みを話してくれるなど、直接触れ合うことができたことが本当にうれしかった」

 「医学教育の中で過ごす6年間では、医療側の目線でものを考えるクセが身についてしまい、それが専門医志向につながってしまっていると思う。それも非常に重要であるが、住民側の目線も大切。地域医療・総合診療医について、学生の立場だけではバランスよく見ていくことが難しいため、本当によい体験ができた」

 「住民から必要とされる、求められることの喜び、ということが原動力になるキャリアがあることを知った。これからのキャリアの選択肢の幅が広がった。『人生の道標』となった3日間」

病棟回診に同行し、説明を真剣に聞く医学生
 肌感として地域の厳しさやぬくもりを感じる機会、学生生活の中では非日常なのかもしれない。一度でもそのような経験ができると、学生たちの視野が広がるきっかけとなるのであろう。

 以前に比べて医師はキャリアを自己決定していけるようになったとはいえ、世の中や地域のニーズと多くの医学生のキャリアの志向には残念ながらまだズレがあるのも実情だ。地域医療には少し関心があってもキャリアとして真剣に考えている医学生はまだ多くない。

 今回のような体験からその町を知り、魅力を感じ、そしていつか働いてもいいと思ってくれる人も出てくるかもしれない。知らないことは選べない、のだから。

 これら子供たちや学生たちにも参加してもらう企画の裏には、日本の地域医療の待ったなしの現状がある。

医療のパラダイムシフト

 イベント直後の平成29(2017)年4月6日、厚生労働省より、ある報告書*が発表された。その内容は、医療を取り巻く構造の変化に警鐘を鳴らし、パラダイムシフトの必要性および新たなビジョンの具体的方策まで含めた骨太なものとなっている。

 人口構成の変化、疾病構造・生活課題の変化、地域偏在、テクノロジーの進歩等が重なる中で、これからは今までの慣習や国民一人ひとりの意識の前提など、当たり前を変えていかねば先ゆかなくなるというものである。

*厚生労働省『新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書』

 多岐に及び具体的に言及されている報告書は、今後の医療政策の基本哲学となっていくものに違いない。その中でも、今回の本別町のイベントにも重なる部分として以下の3点に注目してみた。

(1)「医師の新しいキャリアとしての総合診療医の役割」
(2)「地域主導で医師偏在を是正する」
(3)「住民への予防・健康リテラシーの涵養」

(1)医師の新しいキャリアとしての総合診療医の役割

 これまで医師は、1つの専門性を深めていく専門医としてのキャリアが主流であり、卒前・卒後の育成においても診療科ごとの縦割りの中で行われていた。

 しかし、高齢化や疾患構造の変化などにより医療・介護ニーズがより多様化していることに応じ、生活全般にも寄り添った医療の提供が必要になってきている。

 実際に医療資源の限られた地域においては、複数の専門診療科の医師をそろえることは容易ではない。かかりつけ医が、住民に近い関係で広範な医療を担い、必要に応じて大きな病院や必要なサービスなどにつなぐハブの役割とならねばならない。

 また地域ニーズの把握、住民の予防など、地域そのものを診ていくことも求められる。まさにその役割を担うべく、新しい医師のキャリアとして総合診療(専門)医の存在が注目されるようになってきた。

 報告書でも、卒前等早期からの地域での研修、リーダーシップやマネジメント能力など医学的知識以外の強化が書かれている。

(2)地域主導で医師偏在を是正する

 総合診療医が増えたとしても、医師の地域偏在が是正されない限り地域医療を守ることはできない。働き方実態調査によれば、「(条件が合えば)地方での勤務を希望する」と回答した医師が相当数存在することが明らかになっている。

 これまでのような国の画一的な施策ではなく、住民も含め各地域主導で、その地域を知ってもらう努力、働くうえで支障となることの排除等、環境づくりをしていくことが求められる。

(3)住民の予防・健康リテラシーの向上

 医療資源や財源には限りがある。持続可能なシステムを構築していくうえでは、医療従事者の在り方や制度が変わるだけでは難しい。

 住民・患者自らが健康管理を主体的に取り組むことができるようになれば、軽度な疾患での受診・検査も減り、医療資源に大きな負担がかかることも減るであろう。

 それを可能にするためには、住民一人ひとりが予防・健康リテラシーを高めていけることが必要である。

 具体的には学校教育、かかりつけ医とのコミュニケーション、医療機関や行政・各種団体による啓もう活動などが増えていくことが重要であると私は考える。

 この3点からも分かるように、医療提供側、地域・住民側のそれぞれの行動変容と協力関係、「自分ごと化」がなければ、これからの医療は成り立たないわけである。

 今回の本別町の地域包括ケア・キックオフイベントでも重要視した、「総合診療医としてのキャリア」「地域主導」「予防・健康リテラシー」という要素が、地方における地域包括ケアシステムの構築には欠かせない共通の要素とも言えるかもしれない。

 今からでも遅くない。

 各地域・一人ひとりがこれまでの慣習から一歩踏み出す勇気を持つこと、そして具体的レベルのアクションが「有機的」につながっていくことで、新しい日本の医療ビジョンに近づいていくはずだ。

 持続可能な未来へ向けて、たくさんの小さいムーブメントがつながっていくことを期待している。

鎌田實先生による子供たちへの「いのちの授業」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49737
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/495.html

[政治・選挙・NHK224] 「専守防衛」一辺倒では日本は有事に自滅を避けらない 江戸幕府はなぜ「鎖国」 やたらと戦争をしたがる人たちに教えてあげたい
2017年4月19日 光浦晋三
「専守防衛」一辺倒では日本は有事に自滅を避けらない

防衛白書によれば、日本の基本防衛政策は「専守防衛」となっている。簡単にいえば「相手から武力攻撃を受けた場合に、初めて防衛力を行使する」という政策で、日本の平和憲法を象徴する言葉の1つといってもいいだろう。しかし、軍事の専門家に言わせれば、この専守防衛は、かなり問題の多い政策なのだという。(取材・文/フリーライター 光浦晋三)

実は「法律」ではなく「政策」
専守防衛の成り立ちとは


最新兵器が使用される最近の戦争では、戦闘開始から30分で大勢が決まるとも言われる。そんな中、「先に攻撃されない限り、こちらからは何もできない」という「専守防衛」のような防衛政策のみでは、有事にたいへんな目に遭う
 中学校の教科書にも載っている日本の基本防衛政策「専守防衛」。平成28年度版の防衛白書によれば、「わが国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないとの基本方針に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備する」とされており、専守防衛に関しては「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」と書かれている。

 その基本方針は主に3つ。「相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使する」「防衛力行使は自衛のための必要最小限にとどめる」「防衛力の整備(自衛隊の総員や装備品など)も自衛のための必要最小限に限られる」というものだ。

 ただし、この専守防衛は憲法などで規定されている法律というわけではない。週刊誌などの見出しの中には、「専守防衛」を誤解しているケースも見受けられるのだが、これは「非核三原則」などと同じく日本国憲法の趣旨に則した「政策」であって、法律とは異なるものである。

 現在の専守防衛の方針は、1972年に総理大臣だった田中角栄が「専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行なうということでございまして、これはわが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということは全くありません」と答えた国会答弁がベースとなっている。以降、現在の安倍内閣に至るまで、この解釈が基本概念として用いられてきた。

戦闘開始から30分で勝敗が決まる
専守防衛では負け戦必至

 しかし近年、「専守防衛」をめぐっては、さまざまな議論が起きている。挑発的なロケット発射実験を繰り返す北朝鮮や、中国国籍の船舶による度重なる領海侵犯、竹島をめぐる韓国との領土問題などが報じられるたびに、その“限界”が指摘されてきた。

「専守防衛のような防衛政策を採っている国は世界中を見渡しても日本以外にありません。それも当然で、先に攻撃されない限り手を出せないのだから、最近の中国による尖閣諸島周辺の領海、領空侵犯行為のようにやられ放題になってしまう。もちろん国際法上、領海侵犯した漁船に武力を行使することは認められているし、現にパラオやアルゼンチンは中国の違法漁船を撃墜しています。しかし、現実にはそのような手段を取れない日本が中国に尖閣諸島を奪われるのは時間の問題かもしれません」

 こう語るのは、防衛問題の専門家で警鐘作家の濱野成秋氏だ。

「昨年は安保関連法案が施行されたことで、左翼メディアが大きな声を上げましたが、本質的な問題は専守防衛では日本を守ることは不可能だという点にあるんです。最新兵器が使用される最近の戦争では、戦闘開始から30分もあれば大勢は決着してしまいます。平和時には耳障りのいい専守防衛ですが、防衛出動一つさえ国会審議を経なければならない日本では、ひとたび攻撃を受けた時点で、ほぼ“負け戦”の結果にしかならないんです」(同前)

 専守防衛の看板は、今のところ“弱腰日本”の看板でしかなく、他国から舐められてしまう結果になっているという。では、専守防衛を維持しながら、防衛に実効力を持たせる方法はあるのだろうか。

日本を守るには
報復攻撃の条項の付記を

「私は専守防衛なる言葉を残存させたうえで、『報復攻撃』のあり方について、付記として、きっちり明文化する案を提唱したい。専守防衛は平和憲法の精神に合致するから国民合意ができているし、自衛隊のPKO派遣もやりやすい。侵攻とは考えられないから、国民も納得し、反戦デモも生じない。しかし、今の専守防衛だけでは、有事には自滅する危険性がある。だから報復攻撃の条項を付け、そのうえで報復攻撃を含めた日米安保条約の徹底的改正をすべきでしょう」(同前)

 実際、北朝鮮をはじめとする近隣諸国の動きに対し、専守防衛の解釈を拡大する議論が活発化しており、2006年には当時の麻生太郎外相をはじめとした閣僚が「(ミサイルが)日本に向けられる場合、被害を受けるまで何もしないわけにはいかない」として「先制攻撃論」を提唱。読売新聞がこれを支持する社説を掲載したこともあった。

 さらに昨年7月には「積極的平和主義」を掲げる安倍政権が、臨時閣議によって従来の憲法解釈を変更し、限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定。今後は、自衛隊法や武力攻撃事態法などの改正が進められる可能性も高まっている。  

 そんな状況の中、この4月には米政府が原子力空母を朝鮮半島近海に派遣するなど、北朝鮮に対する強硬姿勢を打ち出している。米国は同盟諸国に対して、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合には迎撃する態勢が整ったと通知し、厳戒態勢で備えるよう要請したとも報じられている。

 これに対し日本も海上自衛隊のイージス艦3隻を日本海に展開させるなど、国際情勢はキナ臭さを増している。日本の防衛政策は、大きな転換期を迎えているようだ。
http://diamond.jp/articles/-/125313


 


やたらと戦争をしたがる人たちに教えてあげたい「ナマコ」の話
人間の対極にあるスゴさ
本川 達雄
プロフィール

シリアや北朝鮮をはじめ、世界各地で一触即発の状況が続いている。なぜ人間はこうも戦争をしたがるのか。もっと賢い生き方を選べないものなのか。近著『ウニはすごい バッタもすごい』がベストセラーになっている東京工業大学の本川達雄名誉教授は、平和に暮らしたいならナマコの生き方に学ぶのが一番、と指摘する。

ナマコのスゴサは人間の対極にある

最近、『ウニはすごい バッタもすごい』という本を出しました。

生物はそれぞれ、スゴイんだ、生きていくためにこんなスゴイことをやっている。「われわれ脊椎動物だってスゴイんだぞ!」と、本の中で褒めちぎっています。

動物にはさまざまなものがいます。この本では、代表的な5つの仲間をとり上げました。それぞれが独自のやり方で繁栄しているものたちです。繁栄の原因はみな違い、それぞれがスゴイなあと褒めたのがこの本です。その中から、今回は「ナマコ」についてお話ししましょう。ナマコのスゴサは、われわれ人間のスゴサとは対極にあるスゴサだからです。

ナマコは棘皮(きょくひ)動物の仲間で、ウニやヒトデと同じグループに属しています。ナマコは他の棘皮動物同様、海にだけ住んでいます。沖縄なら波打ちぎわにナマコがごろごろ転がっています。寒い海にもいますし、深海の底にもたくさんいます。

ナマコは見るからに変な動物です。なにせ目がありません。江戸時代の俳人・炭太祇(たんたいぎ)も、

「そこここと見れど目のなき海鼠(なまこ)かな」

と詠んでいます。

ディズニーアニメや手塚漫画に出てくるキャラクターは、極端に目が大きくて、おでこが出ています。こう描くと可愛いんです。でも、ナマコには目がなく、じつは脳もないから、おでこもありません。これではまったく可愛くなく、そのうえあまり動かず、おもしろい仕草などしないので愛嬌もない。

ナマコは巨大イモムシ型ののっぺらぼーで、見るからにグロテスク。だからでしょう、夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に、初めてナマコを食べた人はすごく勇気があった、と書いてあります。

目や脳、耳も鼻も舌もない

ナマコの体はないない尽くしです。目や脳だけでなく、耳も鼻も舌もありません。心臓や血管系もありません。筋肉はないわけではないのですが、ほんの少しです。

ナマコを輪切りにすると、ちょうどちくわのように見えます。ちくわの穴の中には水が詰まっており、そこに腸や生殖巣が浮いています。ちくわの身にあたる部分はすべて皮です。ナマコは体重の6割が皮。筋肉はたったの7%しかありません。われわれ人間とは大違いです。われわれは、体の半分近くが筋肉で、皮は1割強。ナマコはまさに皮ばかりで、筋肉のほとんどない動物なのです。だからあまり動かないのですね。

ところで、ナマコは何を食べているかご存知ですか。

砂です。もちろん砂粒は栄養になりませんが、砂のあいだに生物の遺骸のかけらや、卵などが混じっています。また、砂粒の表面はバクテリアの薄いフィルムで覆われています。ですから、砂をごそっとすくって食べれば、それなりの栄養が得られます。ナマコの口のまわりには、触手という細い手が生えており、これで砂をすくって口の中に押し込みます。もちろん、砂粒そのものが大部分を占めているのですから、まことに貧しい食事です。

NEXT ?? 毒と皮で身を守る

敵に食べられないためのしかけ

ナマコは目につくところにゴロンとおり、捕まえようとしても、逃げも暴れもしません。貝やサンゴのように石の殻の中に入っていれば、そんな態度でもよいのでしょうが、ナマコは石の鎧をまとっていません。無防備のまま転がっていたら、敵に食べられてしまいそうなものです。でも、現実にナマコは海辺にたくさんゴロゴロ転がっているので、どんどん食べられているわけではないのですね。

ナマコは食べられないためのしかけをもっています。その一つは毒です。サポニンの一種で、細胞の膜を壊す働きがあります。サポニンは朝鮮人参をはじめ、多くの植物がもっています。ナマコのサポニンは、魚に対して強い毒として働きます。ただし人間には無害です。

体を守る別のしかけもあります。硬さの変わる皮です。皮を硬くすることで、ナマコは身を守るのです。この皮は硬くなるだけでなく、ものすごく軟らかくもなります。私はときどき、ナマコの皮の硬さが変わるところをテレビで実演するのですが、見る人はみな「おおーっ」と驚きますね。

シカクナマコという沖縄の浜辺にたくさんいるナマコが、私の愛用のナマコです。このナマコをつかむと皮がゴリッと硬くなります。そうなったナマコを両手で1分ほどしごき続けると、皮が非常に軟らかくなり、ドロドロに溶けて指のあいだから流れ落ちていきます。

皮を捨てて中身だけ逃れる戦略

これらの反応には、どのような意味があるのでしょうか。

まず、さわると硬くなるのは身を守る反応です。われわれも身を硬くして身構えますね。溶けるほど軟らかくなるのにも、防衛の意味があります。ナマコの一番の天敵はウズラガイという、殻の直径が10センチ以上ある大きな巻貝で、この貝にはサポニンの毒は効きません。巻貝は殻の縁から外套膜という膜を伸ばしていますが、貝はこの外套膜でナマコを包み込んで丸飲みにするのです。

ただしナマコもそうやすやすとはやられません。ナマコは貝の外套膜に包まれると、皮の一番外側を硬くします。するとナマコは硬い皮の筒の中に入った状態になります。そして、その硬くなった筒と内側との境目の皮を溶けるくらい軟らかくして、中身をグッと縮めます。すると、中身は硬い筒からパリッとはがれ、筒からするりと抜け出すことができます。

この動きは、暴漢に襲われて着物をつかまれたときに、それをさっと脱いで逃げていくやり方と同じです。貝はしょうがないから手もとに残った外側の皮を食べ、そのあいだにナマコは先へと逃げます。貝はナマコに劣らずノソノソしていますから、少しだけでも逃げられたらもう大丈夫。むけてしまった皮も、すぐに再生します。

ふつうの生物は、ひたすら身を硬くして守ろうとしますが、硬くしてもだめなら、軟らかくして体の一部を与えて生き残ろうという、柔軟な戦略をナマコはとっています。硬さ自由自在の皮をもっているからこそこんな戦略がとれ、おかげでノソノソしていても大丈夫というわけです。

NEXT ?? 自ら魅力を減らすという選択

あまり食べなくてもOK

この皮のスゴサは、硬さがすばやく変わることだけではありません。あまりエネルギーを使わずに硬さを変えて、その状態を保ち続けられることです。

私たちは筋肉を収縮させて身を硬くします。硬くするということは、外部から力が加わってもそれに抵抗して変形せずに、そのままの姿勢を保つということです。私たち人間は、こうした姿勢の維持に筋肉を使うのですが、ナマコは皮を使います。

われわれとナマコの違いはこんなふうに考えたらいいでしょう。

手をあげてみましょう。筋肉を使って手をあげます。その手をあげ続けるには、やはり筋肉を収縮させ続けなければなりません。それにはエネルギーが必要です。エネルギーを使い続ければ筋肉内に乳酸がたまって疲れてしまい、そう長くは手をあげていられません。

では仮に、手をあげた状態で、腕から肩にかけての皮膚が硬くなって突っ張ったとしたらどうでしょう。皮が突っ張りますから、腕の筋肉をゆるめても手はあがりっぱなしになります。じつは、ナマコはこうやって姿勢を保っているのです。皮はあまりエネルギーを使わないので疲れません。手を下ろしたくなったときには、皮を軟らかくすれば、すとんと下におろせます。筋肉で姿勢維持するのに比べて、なんと100分の1のエネルギーで姿勢を保てるのです。

ナマコの際だった特徴は、エネルギー消費量がきわめて低いことです。同じ体重の他の動物たち、たとえば昆虫や魚や貝などと比べると、ナマコは10分の1しかエネルギーを使いません。これは変温動物と比べた場合の話で、ハツカネズミのような恒温動物と比べたら、なんと100分の1以下です。これだけ少ないエネルギーで暮らせることに、硬さの変わる皮が大きく寄与しています。

エネルギーを使わないとは、あまり食べなくてもいいということです。食べる量が少なくてもいいし、もし同じ量を食べるなら、より栄養価の低いものでも食物になることを意味します。他の動物が食べないものまでもが、食物になりうるのです。

魅力が減れば、敵に食べられない

ナマコは砂を食べていると前に申しました。ナマコはエネルギー消費量がこれだけ低いからこそ、砂を食べても生きていけるのです。

この意味するところはきわめて大きいでしょう。ナマコは砂の上に住んでいます。つまり、食べ物の上に住んでいるのです。砂は逃げていきませんし、いくらでもあって他の動物たちは見向きもしませんから、食べ放題。餌を探してウロウロする必要はまったくありません。

毒や硬さの変わる皮をもっていて敵にも襲われにくいから、逃げずにも済みます。その結果、筋肉はほとんど必要なくなってきます。餌を探さなくていいから、感覚器官も必要なく、脳という感覚器官からの情報を処理して筋肉に指令を出す中枢もいらなくなります。

心臓や血管という循環系もいりません。われわれだったら酸素や栄養という、エネルギーをつくり出すのに必要なものを、せっせと血液にのせて個々の細胞まで送らねばなりませんが、ナマコ程度のエネルギー消費量なら、循環系の必要がないからです。心臓も筋肉も脳も眼鼻も不要になれば、ますます省エネになります。必要なのは身を守り姿勢を維持するための皮ばかり。

省エネに徹すれば徹するほど、ナマコは皮ばかりになります。すると、ますます捕食者にとって魅力のない食べものになり、安全です。

動物はみな、一種の「軍拡競争」をやっているのですね。餌になるほうの動物は、なるべく足を速くして捕まらないようにします。すると、ますます筋肉モリモリになるから、捕食者の目にはさらにおいしい食べものに見えてきます。そこで捕食者のほうも足をもっと速くして捕まえようとし、それに対抗して食べられる動物はさらに足を速くする。

こうしてとめどのない軍拡競争が続いていきます。この連鎖から逃れるには、自分の体をおいしくなく、栄養価を低くして、捕食者に食うのをあきらめさせればいいわけで、これがナマコの戦略です。まさに逆転の発想です。

NEXT ?? 何もしないという選択
地上に天国を実現したナマコ

ナマコはこうして食う心配も食われる心配もなく、ゆったりと暮らしています。これはまさに天国の生活でしょう。ナマコは地上に天国を実現してしまったのです。まことにスゴイ動物です。

私たち人間も、地上に天国をつくろうとしてきたのではないでしょうか。

日本の場合、大量に食糧を輸入することにより、食べる心配を解決しました。そして野獣に対しては立派な家を建て、火を使い、火器をもつことにより身の安全を確保しました。病原菌という見えない敵に対しては、上下水道による衛生管理、そして医療を発達させました。さらに医療は寿命を延ばして、不老不死を目指しています。これらは大量の資源、エネルギーを使って成り立っています。

われわれはこうしたやり方で天国がつくれると思っていたのですが、これは地獄への道かもしれないと思わせるできごとが起こりました。東日本大震災です。エネルギーを大量に使って天国を目指そうという生き方は大変にあやういものであり、今後とも成り立っていくかどうか、疑問になってきました。

原子力の問題だけではありません、エネルギーの大量消費は地球温暖化をもたらし、それが近年の異常気象の原因となっているようです。医療を発達させて不老不死を目指すと言っても、われわれの生存そのものが怪しくなってきてしまいました。

正岡子規もナマコを褒めた

ナマコは人間の逆張りで、省エネに徹することにより、地上に天国を実現しました。

などと言ってみても、「そんな天国、いくら食うに困らないからって、面白くもなんともないよ」という声も、もちろん出るでしょう。「砂をかむような人生、どこがいいのよ」という言い方もできるでしょう。われわれの目から見たら、ノソノソと砂を食べているナマコの生活など、まったく面白くもなく、生きている意味も価値も見いだせないかもしれません。

でも、でもですね、そもそも生きていなければ話になりません。そして、いまの便利で安全な生活を手に入れるためには、あくせくと働かねばならないのですよ。「たとえあくせくであっても、何もしていないより、よっぽどいいのだ」と、本当に言い切れるものでしょうか。

昭和の俳人、成瀬桜桃子(おうとうし)にこんな俳句があります。

「徹頭徹尾せぬを身上(しんじょう)海鼠かな」

ナマコは何もしない。それに徹したからこそ生きていけ、地上に天国を実現できたのです。このナマコのスゴサを、正岡子規はこんなふうに褒めています。

「世の中をかしこく暮らす海鼠哉(かな)」

あくせくせず、悪知恵をしぼることなく生きていければ、これが一番賢いやり方でしょう。

ナマコは賢い、頭がいい! でも、ナマコには脳はなかったなあ。

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江戸幕府はなぜ「鎖国」したのか ?現代日本人が見過ごしがちな真実それはひとつの宗教戦争だった
堀井 憲一郎コラムニスト
プロフィール

諸悪の根源は「鎖国」にアリ!?

「鎖国」という言葉が日本史の教科書から消えるかもしれない、というニュースがあった。新学習指導要領で、聖徳太子と鎖国などの歴史用語を「厩戸王」「幕府の対外政策」とする改訂案が出されて、少し話題になっていた。

ただ、3月末に出た文部科学大臣の告示によれば、聖徳太子も鎖国も、とりあえず消えないように決まったようだ。

たしかに、「幕府の対外政策」という言葉では何だか弱々しい。当時の徳川政府が維持した政策はかなりの力わざだったとおもうのだけれど、そういうニュアンスが落ちている。より正確に記そうとして、いまどきらしい決断しない姿勢が出てしまっている。

あらためて、「鎖国」という言葉は、実際に国が鎖ざされていた時代ではなく、鎖国のあと、開国してから意味を持っていた言葉なのだな、とおもいいたる。

哲学者・和辻哲郎はその著書『鎖国?日本の悲劇?』のなかで、鎖国政策を批判して、17世紀初頭の日本について、このように記している。

「侵略の意図など恐れずに、ヨーロッパ文明を全面的に受け入れればよかったのである。(…)まださほどひどく後れていなかった当時としては、近世の世界の仲間入りは困難ではなかったのである。それをなし得なかったのは、スペイン人ほどの冒険的精神がなかったゆえであろう。そうしてその欠如は視界の狭小にもとづくであろう」

和辻は、とても悔しがっている。

これが書かれたのは昭和25年(1950年)、日本は世界戦争に大敗北して5年、まだ占領下にあった。明治22年生まれの和辻は当時、61歳である。

鎖国したことによって、16世紀の日本は世界のトップレベルから落ちていった、あのときに道を間違えなければ、かくのごときみじめな敗戦国に至ることはなかったのではないか。

そう悔しがっているのだ。

第二次世界大戦における敗北は、そして日本史上初めて他国によって全土が支配されるという惨状は、秀吉・家康ラインから始まった「鎖国」に原因がある、と憤っているのだ。

鎖国さえしていなければ。当時の為政者にもっと広い視野さえあれば。日本史にもう一度やり直しがきくならば。人生が二度あれば。

高名なる知識人が、本気で悔しがっている。

敗戦後の昭和日本では、鎖国がとても憎まれていた。

「鎖国」という言葉は、そういう歴史用語である。

徳川時代の歴史を表した言葉ではあるが、その言葉が意味を持って使われていたのは、開国されたあとなのだ。明治、大正、昭和の時代の言葉である。

「西洋列強と争わなければいけないときに、出遅れてしまった原因」として「鎖国」という否定的な言葉が使われた。

明治政府によるネガティブ・キャンペーン

明治政権は、異様なほどに前政権の施政を否定的に喧伝していた。

徳川政権のやっていたことはすべて前近代的で、封建的で、まったくダメなもので、それを明治政権がきちんと近代化した、という物語を広めていた。

昭和の後半になっても、みんなそれを信じていた。徳川時代もそんなに悪くなかったのではないか、と言われ出すのは、それこそ平成に入ってからである。

鎖国は、そういう明治政府による前政権の否定の一材料として、しきりに使われていた。

NEXT ?? そもそもなぜ鎖国したのか?

徳川時代の次に位置づけられる一区切りとして、「明治・大正・昭和時代1868-1989」という歴史区分があっていいなと今おもいついたのだが(「明大昭」時代、ないしは「MTS時代」との表記はいかがでしょう)、その「明大昭時代」の用語として、「鎖国」という言葉に意味があったのだ。

明大昭時代の思想を考えるときに、「鎖国」という言葉はキーワードの一つなのである。

たしかに、徳川時代を通して、すきまなくぴったりと国を鎖ざしていたわけではない。長崎と薩摩と対馬と蝦夷の四つの口は開けていた。

しかし逆に言うとその四つしか開けていなかったわけで、その前の時代や、あとの時代と比べて、ずいぶんと狭いのも確かである。

その口の狭さが、また徳川時代を形作っていたのだから、「幕府の対外政策」という助詞の入った言葉ではなく、何かしらの一言で表してもらったほうが便利である。

「海禁」なら「海禁」でいいとおもう。そのへんは一般人の常識的な日常用語なのだから、あまり真剣に学者の意見を聞いてもしかたがない。プロの野球戦法を、アマチュア草野球で取り入れたところで、ほとんど意味をなさないのと同じだからだ。

「西洋文化に対する強いコンプレックスを持っていた時代」の空気として「鎖国」という言葉には強い存在感があった。

逆に言えば、鎖国という言葉を使わなくてもいいんじゃないかという考えは、私たちの西洋コンプレックスがかなり薄まってきたからだ、ということになる。和辻哲郎が書いたような、焼けるほどの西洋コンプレックスは、たしかにいまの日本人にはない。

私の個人的な風景からおもいだすと、1989年ころ、日本企業がニューヨークのロックフェラーセンターやコロンビア映画会社を買収したころに、やっと鎖国の出遅れから(第二次大戦の敗戦コンプレックスから)抜け出せたようにおもう。

それからもう30年である。たしかにかなり薄まってきているとおもう。それは悪いことではないだろう。あまりに国粋的な動きになるのは(反っくり返りすぎなので)、どうかとおもうが。

キリスト教布教の異常な熱情

そもそも、鎖国といえる状態になった理由を、みんなあまり真剣に捉えてない。

17世紀に、江戸の中央政府は「国を鎖ざす」という宣言はしていない。世界と没交渉になってこの国だけに閉じ籠もりたいという政策を打ち出したわけでもない。

ただひたすら、キリスト教を日本国内から排除しただけである。

日本にキリスト教徒を存在させないためだけに、国を鎖じた。そのへんの宗教的な事情があまり理解されていないともおもう。

おそらく、現在のフランス、ドイツ、イギリス人、スペイン人などをおもいうかべ、彼らの多くはキリスト教徒だとおもわれるが、何らかの脅威を感じることはなく、他宗教教徒だと強く意識させられることもあまりない。その感覚をもとに、16世紀から17世紀を眺めているからだろう。そこからは何もわからない。

16世紀の宗教にまつわる熱情≠ヘ、いまから見ればひたすらに異常である。

ルターによる宗教改革が16世紀の前半に始まり、新教と旧教の対立が先鋭化していくのが16世紀の風景である。

その対立が、遠い彼方の日本国までやってきた。フラシスコ・ザビエルは命を捨てる覚悟でやってきた。

和辻哲郎も、彼らイエズス会士のことを「中世的戒律を守り、自己及び同胞の魂を救うために身命をささげて戦う軍隊であった。従ってそれは内面化された十字軍であるということもできる」と記している。

彼らは、日本人たちを神の国へ導くのだという強い決意とともにやってきている。きちんと命を賭けている。その熱意は、当時の日本人に伝わったのだろう。日本人のキリスト信徒はどんどん増えていった。

NEXT ?? 秀吉・家康の決断

それはある種の「宗教戦争」だった

羽柴秀吉や徳川家康は、キリスト教が広まる未来を想像して、敢然、排除へと向かった。おそらく、キリスト教が広まることによって、彼らの考える日本の平和は成し遂げられないとおもったからだろう。

暴力的な時代は、その対処も暴力的にならざるをえない。

しかし時間はかかった。

1587年の秀吉の伴天連追放令から、1639年のいわゆる鎖国令の完成まで、50年かかっている。50年の年月をかけて、キリスト教徒を完全に排除していった。

これまたすごい作業である。一時、数十万人いたとされるキリスト教徒を、日本国内から一人残らず排除したのだ。

私はこれをキリスト布教しようとする勢力≠ニ日本国≠フある種の宗教戦争≠ナあった、と見ていいとおもっている。

その緒戦というか、戦いが始まる前に、秀吉・家康ラインが敵を徹底的に叩いたまでである。つまり、鎖国は宗教戦争の結末である。実際に戦端を開かないための知恵だったのだ。

秀吉の時代にはフランスでユグノー戦争が起こり、その少しあと(三代将軍徳川家光が鎖国を完成させる時代)にドイツでは三十年戦争が展開している。宗教戦争である。キリスト教徒同士でも、信じるものが違っていれば敵と見なして、殺し続けている時代であった。

たまたま、その軍隊の本拠地が日本から遠かったために、本格的な戦争に至らなかっただけ、と考えたほうがいいのではないか。

昭和25年に、和辻哲郎は「侵略の意図など恐れずに、ヨーロッパ文明を全面的に受け入れればよかったのである」と書いたが、これもまた暴論である。侵略の意図は恐れたほうがいいに決まっている。

ポルトガル軍やスペイン軍と誰も戦いたくなどない。勝ったところで、こちらは何かを得るわけではない。戦国の武将は、おそらく専守防衛をあまり好きではなかったはずだ。

しかし昭和25年の日本人が住んでいたのは、独立国の日本ではない。アメリカに占領された場所に住んでいた。戦争に負けたあと、日本の力で西洋文明に対抗しようとするのは、そもそも無理だったんだよ、という気分が国中を覆っていた。

20世紀にアメリカ占領エリアになるくらいなら、16世紀に少しくらい危険をおかしても、西洋国と一緒に近代を歩むべきだったと言いたくなる気持ちはわかる。

そういう思潮は、昭和の後半をずっと覆っていた。

鎖国という否定的なニュアンスを持つ言葉は、明治大正昭和時代にとても力を持っていたのである。そのことは、頭のどっか片隅に置いておいていたほうがいい。いま現在もまた、そういう流れと同じところにわれわれは立ち続けているのだから。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51429

 
佐藤優が薦める日本国と日本人の特徴を知るための最良のテキスト
この国の「原理」は何か
佐藤 優作家
プロフィール

インド、中国とは異なる皇位継承

南北朝時代に南朝側の思想家・北畠親房(1293〜1354年)によって書かれた『神皇正統記』(1339年頃に執筆と推定)は、日本国家と日本人の特徴について知るための優れたテキストだ。

2015年に今谷明氏による優れた現代語訳が新人物文庫から上梓されたので、古文が得意でないビジネスパーソンでも苦労することなくこの名著を読むことができる。

「大日本者神國也(おおやまとはかみのくになり)」というのが、親房による日本の定義であるが、これは日本が他国よりも優越しているという排外主義的言説ではない。日本の特徴は神道を原理とする皇統が続いているという意味だ。

〈大日本は神国である。天祖の国常立尊が初めてわが国の「基」を開かれ、日神である天照大神が長くその統を伝えなされた。これは、わが国だけのことであって、「異朝」(中国・朝鮮・インド)にその類はない。そのゆえに、わが国を神国というのである〉

神道は自らの原理を積極的に説明しないので、日本について知るためにはインド(天竺)、中国(震旦)との比較が不可欠になる。

当時は、天竺、震旦、本朝(日本)によって世界が形成されていると考えられていたので、親房は世界的規模での比較思想史に取り組んだのだ。

〈天神の種を受けて世界を創生したというわが国の世界創生説は、天竺の説に似たところがないわけではないようだ。しかし、わが国は天祖以来皇位の継承に乱れはなく、皇統も一種であって、この点については天竺においては例がない。

天竺の初めの民主王は民衆のために擁立され、以来、その後裔によって王位が継承されたが、時代が下ると、その血筋を受けた王種の多くは滅ぼされて、力さえあれば卑しい血筋の者も国主となり、さらには五天竺を統領する輩まであらわれた。

震旦はとりわけ乱逆で無秩序な国である。昔、世の中が純朴で政道も正しかった時代でも、賢者をえらんで王位を授けることもあったようなので、王統が一種に定まっているというわけではなかった。

乱世になるにつれ、力をもちいて国を争うこととなった。民衆の中から出て王位についた者もあるし、戎狄から起こって国を奪った者もある。あるいは代々の臣でありながらその君主を越えて、ついに王位を譲り受けた者もある。伏義氏ののち、中国では天子の氏姓の交替は三十六度に及んでいる。その乱れの激しさには言語もない〉

インドも中国も王朝交代が起きることが日本との決定的な違いなのである。

〈ただわが国だけは天地開闢以来、今の世にいたるまで、天照大神の神意をお受けした皇位の継承は、正しく行われている。一種の姓のなかにおいて、たまたま傍流に皇位が伝えられることがあっても、また正統に戻る道があって、皇位は継承されてきている。

これはすべて、「神明の御誓」(天照大神の天壌無窮の神勅)常に生きていたからであり、他国と異なることのいわれである〉

かりにある天皇が悪政を行った場合は、そのような天皇は廃され、皇族の中でこれまで傍流とされていた者が新たな天皇に就く。このようにして、同じ王朝の中で「革命」が起きるのだ。

このような独自の伝統を持った日本を生き残らせるために重要なのは、宗教的に寛容な精神を持って多元性を担保することだ。

NEXT ?? 棲み分けの論理

〈一つの宗派に志ある人が、他の宗派を謗り蔑視することは大きな間違いである。人の機根もいろいろであるから、教法も「無尽」で多種多様である。ましてや自分の信じている宗すら明らかにしないで、いまだ知らない他の宗を謗るの、この上ない罪業である。

自分はこの宗に帰依するが、他人は別の宗を信じており、ともに分に応じた利益があるのである。これもみな現世だけの巡り会いではなく、深い仏縁によるのである。

一国の君主や、これを補佐する人ともなれば、もろもろの教えを捨てず、機会を逃さぬように利益の広まるように心がけるべきである〉

多元性と棲み分けの世界

自分の信じている宗教が何であるかもよく知らずに他人の信じる宗教を誹謗することを親房は厳しく批判している。宗教的差異が国家と社会の分裂をもたらすことを親房が自覚しているからだ。

さらに多元性と棲み分けの論理を社会のあらゆる分野に導入せよと親房は主張する。

〈また仏教にかぎらず、儒教・道教をはじめさまざまの道、いやしい芸までも興し用いることこそ聖代といえるのである。男は「稼穡」(五穀を植え、農耕に励むこと)に努めて、自分が食べるばかりでなく、他人にも与えて飢えることのないようする。女は糸を紡ぐことを仕事として、自分が着るばかりでなく、他人も暖かにする。

賤しいことのようにも思われるが、これが人倫(人間生活の基本となる大切なこと)の根本なのである。天の時(自然の運行)に従い、地の利(自然からの恵み)に依った営みなのである。

このほか商業で利を得る者、手工業を得意とする者、また仕官を志す者もある。これらを四民という。

仕官する者にも文と武と二つの道がある。坐して道を論ずるのは文士の道であり、これにすぐれたものは宰相となることができる。戦場に赴いて功を立てるのは武人の仕事であり、この道で功績があれば将となる資格がある。

だからこそ、文武の二つは、片時も捨てるべきでないのである。「乱世には武を右にし、文を左とする。平時には文を右とし、武を左とする」という[昔は右を上と考えたので、このようにいうのである]〉

新自由主義的な競争原理が社会全体を覆っていることによって疲れ切っている現代の日本人にとって、親房が説く多元性と棲み分けの世界は魅力的だ。


『週刊現代』2017年4月22日号
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51446?page=2
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/379.html

[戦争b20] 中国主導の半島有事が「十分あり得そう」な理由 習近平が長期独裁なら着火先は台湾より半島  米国流・核攻撃から生き延びる法
中国主導の半島有事が「十分あり得そう」な理由


習近平が長期独裁を狙う時、“着火先”は台湾より半島?

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
2017年4月19日(水)
福島 香織

緊張高まる朝鮮半島、“着火”するのはトランプか習近平か、駆け引きは続く(写真:AP/アフロ)
 4月16日の北朝鮮のミサイル発射が失敗し、トランプが失敗はカウントしない、報復しないと言ったので、どうやら北朝鮮有事は少しだけ遠のいたようだ。しかも、米国はTHAAD配備について、次の大統領が判断すべきだ、として先送りを示唆した。中国に対しての譲歩と見ていいだろう。為替操作国認定も先送りにしており、これが北朝鮮制裁に対する協力への見返りであることも公式に述べている。かわりに、中国は北朝鮮をなんとかせい、と押し付けられた格好だ。

 中国はより厳しい北朝鮮制裁を強いられることになり、石油(重油)禁輸や金融制裁に踏み切らざるを得ないだろう。中国の石油禁輸などの制裁計画案は昨年のうちにすでに策定されている。中国による石油禁輸は2003年2月に一度3日間、“パイプライン補修のため”の名目で行われたが、この圧力によって北朝鮮を米中朝の三者協議に引きずり出し、それが六者協議につながったことを思えば、これを実行すれば、効果はあるかもしれない。だが、この措置は、北朝鮮を本気で追いつめることになり、下手をすれば北朝鮮が暴発しかねない。中国はそういう事態にどのような対応を想定しているのだろうか。

金正恩に「中国亡命」を説得中?

 改めて言うと、中国の同盟国としての北朝鮮の今の体制の存続が中国の根本利益に当たる。なので、米国主導の南北統一や体制変革は絶対に容認できない。ぎりぎり容認できるとしたら金正恩個人の排除までだ。一応米国側は北朝鮮のレジーム変革には興味を持っていない、と言明しているので、そのあたりは中国に配慮している。

 中国の理想としては、中国側の説得に応じて、金正恩政権が核兵器の全面放棄をすることだが、それが簡単にできたら苦労はしない。体制を存続させながら、もう少し性格の穏当な「話し合いのできる」指導者に交代させることができれば、米中ともに納得できるだろう。嘘か本当か、中国当局が金正恩に自国に亡命するように説得中という情報も韓国メディアから流れているが、もし万が一、米国の攻撃前に金正恩が中国に亡命すれば、次の後継者選びおよびその後の情勢は中国主導の展開になるやもしれない。後継者としては過去マカオで中国の庇護下にあり、今は米国の庇護下にあるハンソルが、筆頭にあがることになるだろう。もっとも、金正恩がそんな説得に応じるようであれば誰も苦労はしまい。

 ところで、米国のような超軍事大国にとって北朝鮮のミサイルが本当に脅威かというと、そうではないだろう。ロシアの軍事専門家も、今の北朝鮮に米国本土に核弾頭をぶち込めるミサイル技術はない、と見ている。せいぜい届くとしたら、佐世保や岩国あたりの在日米軍基地である。ミサイル実験の失敗も、本当に北朝鮮の技術的問題のせいだけなのか。米軍によるジャミングのせいという可能性もゼロではないだろう。

 米国にとって、北朝鮮の脅威とは北朝鮮の兵器がイランやシリアに流れることである。シリアで使われた化学兵器も金正男を殺害した毒薬もサリンだった。シリアの生物化学兵器技術は、30年来の軍事協力関係がある北朝鮮が提供したといわれている。この上、小型核弾頭までシリアに持ち込まれてはえらいことなので、米国としては強硬策に出た。

国境に派兵、航空便とワタリガニ漁船は停止

 そういう状況で、中国が北朝鮮有事をどのぐらい具体的に考えて準備しているか。これは米国系華字ネットニュース・多維がまとめていたので参考にさせてもらう。

 4月15日の太陽節に起き得る有事に備えて中国は中朝国境に兵力15万を配備した。これは公式には否定されている。だが、難民の大量流入を防ぐための国境警備強化は従来からあるマニュアルどおりである。同時に、北京・平壌間の航空便を停止した。航空会社側は「チケットが売れていないので取り消した」と説明しているが、実際のところは有事警戒といえる。今後も長期的に続くとすれば経済制裁の意味もあろう。また延坪島付近の中国漁船も姿を消した。これは違法漁業だが、ワタリガニの季節の今頃は、中国漁船でにぎわっているのが常である。漁民がいちいち北朝鮮情勢に気を配っている可能性は低いので、これも当局の指示で出漁を抑えられたと見られている。

 中国としては4月15日前後に、何かが起こる可能性は低いとみていたが、それでも相応の警戒はしていた。14日夜に王毅外相はロシアのラブロフ外相と電話会談し、シリアおよび朝鮮半島における共通の関心事の“戦略的コミュニケーション”を行った。細部の内容は公開されていないが、要するに、半島問題については戦略的に手を結ぼう、ということらしい。

 中国が想定する北朝鮮有事リスクは、@北朝鮮の核兵器がコントロール不能になって、東北部が核汚染の危機にさらされる、A大量の難民が押し寄せる、B有事の影響で地縁政治と大国関係が変化する、の主に三つだ。北京に核ミサイルがぶち込まれる、というリスクもゼロではないが、中国も数千発と推計される核弾頭を地下施設に隠し持っている核兵器大国である。中国が北朝鮮に先制攻撃する意思は今のところなく、いくら北朝鮮が中国に腹を立てたからといって、いきなり核攻撃をしかける可能性はさすがに低かろう。

 リスクの中で最も懸念されているのが、実際のところ、有事そのものよりも有事後の地縁政治および大国関係の変化、つまり北朝鮮の体制が変化し、半島における米国の軍事プレゼンスが強化されることにあるといえるだろう。逆にいえば、これが米国側の最終目的であろうと見られているので、これを防ぐためには、半島で微妙に利害対立のあるロシアとの意思疎通、連携は不可欠となる。

ロシアの発言を中国が対米牽制に利用

 トランプ政権は発足当初、親ロシア人脈の台頭が注目されていたが、最終的にはロシアコネクションスキャンダルによって弾劾の可能性をおそれたトランプが、「プーチンに弱みは握られていない」ことを証明するためにシリア・アサド政権の攻撃に踏み切った、という見方がある。シリア攻撃に反対していたバノンは国家安全保障会議(NSC)メンバーから外され、更迭が噂され、トランプ政権の方向性はロシアを宿敵とする従来の共和党路線に立ち返る可能性が濃厚となった。

 そういう状況で、中国はすかさずロシアとの関係強化にテコ入れしてきている。ロシアは北朝鮮問題に対しては「米国が金正恩政権転覆を考えているならそれは受け入れらない」という立場を明確にしている。さらにロシアメディアは「北朝鮮が米国を攻撃できる能力は実際のところないのに、米国が北朝鮮に戦争をしかけるようなことがあれば、2021年までの期限がある中朝友好協力互助条約に従って中国は再び米国と戦うことになる」というロシアの軍事専門家の意見などを報じ、中国メディアもこれを転電している。トランプスキャンダルを握っているという噂もあるロシアの発言を中国も対米牽制に利用しているともいえる。

 ちなみに、中ロが合同でTHAADに対抗するミサイルシステムを構築する噂が一時流れたが、これについては、ロシアの軍事専門家が環球時報のインタビューに「可能性は低い。中ロが同盟関係になる可能性も低い」と答えている。中ロも根本的には利害対立関係にある。ただし、中ロで“米ペンタゴンの危険な選択”に対抗していく方針は言明している。

 米国は西大西洋地域に配備されている三つの空母戦闘群を半島付近に向かわせた。北朝鮮が今後、核実験を行えば、米国としては先制攻撃もあり得る、という牽制を形で見せているわけだ。半島有事の可能性はいったん遠のいたかもしれないが、なくなったわけではない。だからこそ、中ロとも空母・カール・ビンソンに対しては偵察艦を出しており情報収集に動いている。

中国の戦争肯定派、北の「支援」と「打倒」に二分

 ところで中国の一般人の間では北朝鮮有事に対して、どのような見方が多いだろうか。

 これはネットで軍事問題について討論をするのが好きなミリタリーオタクに限っての意見かもしれないが、半島で戦争が起こるなら、積極的に戦闘に参加すべきであるという意見が多い。中国世論は基本的には戦争に肯定的である。こうした積極参戦派の意見も二通りあって、北朝鮮に味方して参戦すべきだという意見と、米国と一緒に金正恩政権をつぶすべきだという意見に分かれている。

 北朝鮮応援派の意見は、「中国にとって北朝鮮は北の大門、この土地を守るために中国は歴史上、6回戦争をしてきた。この土地を守ることが中国の中心利益であり、米国に半島で勝手に軍事行動を起こすことを許してはいけない」というものだ。中朝友好協力互助条約を結んでいる以上、中国と朝鮮は軍事同盟関係にある、というのも根拠にある。

 米中協力派の意見は「金正恩の横暴は中国も手を焼いている。だが、米国に半島で単独で軍事行動を起こさせることだけは許してはいけない。それなら中国も一緒に戦争に、そして金正恩排除に参加して、米国に勝手にさせないようにするべきだ」。半島問題の本質が米中のどちらが北朝鮮に対して主導権を握るかという点にあるとすれば、どちらもあり得る、ということでもあろう。

 さて中国が今後、具体的にどのような展開を考えているのか。

 一つ重要な要素は5月9日の韓国大統領選挙である。韓国の大統領が親北朝鮮派の文在寅となれば、中韓ロの連携によって米国の軍事的行動を抑止し、北朝鮮を再び六カ国協議の席に戻すことができる確率は高まる、と少なくとも中国は期待を寄せている。

「六カ国協議」で時間稼ぎ、その先は…

 そう、いまだに六カ国協議なのだ。だから武大偉のような過去の人が、いまさらのように韓国を訪問したり、北朝鮮を訪問しようとしたり(北朝鮮側が拒絶してできず)している。六カ国協議では、北朝鮮の核問題は根本的に解決できないことは明白だ。できるとしたら、北朝鮮を核保有国と認定し、不拡散を約束させるぐらいだろう。核の完全放棄は、金正恩政権をつぶさないかぎり考えにくい。

 ちなみに中国内部には、北朝鮮はすでに核兵器保有国であり、そろそろそれを認めるのが現実的だという意見が少なからずあり、もし米国の方を多少なりとも説得できるとしたら、北朝鮮の正式な核保有国認定も視野に入れていそうだ。そうでなければ、六カ国協議は時間かせぎでしかない。

 いや、中国にとっては時間稼ぎでもいいのだ。では、いつまでの時間稼ぎだろうか。

 それは、中国にきわめて反抗的な金正恩を、中国主導の軍事行動によって排除するまで、ではないだろうか。2021年に中朝友好協力互助条約の期限が切れるタイミングは、習近平が引退する直前、もしくは三期目継続による長期独裁体制の確立を狙っている最中かもしれない。仮に従来の共産党システムを破壊して、長期独裁政権を築こうというならば、党内と人民を納得させるような政治的必要状況を作り出す必要がある。それが台湾進攻作戦ではないか、という人が多いが、こうなってきてみると、中国主導の半島有事も十分あり得そうな気がしてくる。

【新刊】『孔子を捨てた国――現代中国残酷物語』

 ともに儒教を文化の基盤にしているから「中国人とは理解しあえる」と信じる日本人はいまだに多い。だが、習近平政権下の空前の儒教ブームは、政治に敏感な彼らの保身のための口パクにすぎず、中国人はとうに孔子を捨てていたのだ。 「つらの皮厚く、腹黒く、常に人を疑い、出し抜くことを考え、弱いものを虐げ、強いものにおもねりながら生きていかねばならない」中国人の苛烈すぎる現実を取材した。
飛鳥新社 2017年2月15日刊

このコラムについて

中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス
 新聞とは新しい話、ニュース。趣聞とは、中国語で興味深い話、噂話といった意味。
 中国において公式の新聞メディアが流す情報は「新聞」だが、中国の公式メディアとは宣伝機関であり、その第一の目的は党の宣伝だ。当局の都合の良いように編集されたり、美化されていたりしていることもある。そこで人々は口コミ情報、つまり知人から聞いた興味深い「趣聞」も重視する。
 特に北京のように古く歴史ある政治の街においては、その知人がしばしば中南海に出入りできるほどの人物であったり、軍関係者であったり、ということもあるので、根も葉もない話ばかりではない。時に公式メディアの流す新聞よりも早く正確であることも。特に昨今はインターネットのおかげでこの趣聞の伝播力はばかにできなくなった。新聞趣聞の両面から中国の事象を読み解いてゆくニュースコラム。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/218009/041700097


 


【第32回】 2017年4月19日 リスク対策.com
米国流・核攻撃から生き延びる法(1)日常の備え編
https://www.youtube.com/watch?v=hrt26UfL13I


核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対し、トランプ政権が米軍の原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島近海に派遣したり、アフガニスタンで大規模爆風爆弾を使用したりするなど、情勢は戦争の一歩手前のところまできている。今回は北朝鮮が核攻撃してきたときに備え、私たちはどうしたらいいのか。米国流の「核攻撃時に生き延びるには」を、サニー・カミヤ氏の翻訳でお届けする。
 外務省は4月11日、核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮が新たな段階の脅威に入ったとして、隣国の韓国への渡航者などを対象に、朝鮮半島情勢に注意するよう呼びかけるスポット情報を発表しました。
■韓国:韓国に滞在・渡航される方へのお知らせ〜情報への注意と「たびレジ」・在留届についてのお願い〜(外務省海外安全ホームページ)
「第3次世界大戦はすでに始まっている」と一部でいわれるように、米ロの緊張も再び高まっています。
 考えたくはありませんが、日本に再び核が落とされた場合、私たちはどのように行動しなければいけないのでしょうか。
■「2016年の北朝鮮によるミサイル発射について」(防衛省HPより)
■「アーウィン・レドルナー: 核攻撃を生き残る方法」(TED 日本語版)
■今年9月5日の北朝鮮ミサイル発射映像を公表
North Korea Releases Video of Latest Missile Launch (出典:YouTube/WSJ VIDEO)
 今回はWikihowから、米国流の「核攻撃時に生き延びるには」を翻訳してみました。WikiHowはMediaWiki.orgが編集している、アメリカでは学校教材でも使われているほどよく活用されているWebメディアです。
 アメリカでは冷戦時代から核シェルターがいたる所に存在するため、核シェルターの活用が大前提になっていますが、それでも着弾後、爆発の衝撃波・爆風による爆傷・熱風・火災旋風・放射線での被爆等による被害減少させる為に地下(地下鉄、地下街、地下道、地下階)など、日本にいても実施できるポイントがあります。
 読者のみなさんもぜひ一度、真剣に核攻撃について考えてみてはいかがでしょうか?
 また、アメリカに出張に行かれる方も多いと思います。アメリカ政府ではFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)が核攻撃を想定した教育を子供から大人まで継続して行っており、シェルターを活用した訓練も実施されています。
■核攻撃に対する具体的マニュアル(FEMA)
■一般市民用国民安全教育パンフレット (FEMA:139ページ以降を参照)
 アメリカや海外に出張に行った際に核攻撃を受ける、または、核戦争に関係する国々に支社があり社員が日本から出張する企業等、このような事態は、可能性は低いですがゼロではありません。その時にどのような行動をとらなければいけないか、一度考えてみることも必要かと思います。
J-ALERT(全国瞬時警報システム)弾道ミサイル発射情報音(5:30から)(出典:YouTube)
 肝心なのは、何が起こってもあきらめないことです。
 以下、出典はすべてWikiHowです。
 20年以上前に冷戦が終わり、核の影や放射性物質の脅威の下で暮らしたことがないという人は多くなりました。しかし、いまだ核攻撃は、非常に現実的な脅威です。世界の政治情勢は非常に不安定で、この20年間人の特性というものは何も変わっていません。
「人類の歴史で一番鳴り響きつづけている音は、戦争の太鼓を打ち鳴らす音だ」という言葉があります。核兵器が存在する限り、その核兵器が使用される危険性も常にあるのです。
 核戦争で生き延びることができるのでしょうか。その答えとして、ある人は「生き延びる事ができる」と言い、他の人は「できない」と答えています。現代の熱核反応式核爆弾は、1945年に広島、長崎に投下された原子爆弾の何百倍の威力を持っています。
 何千もあるこの核爆弾が同時に爆発したらどうなるのか、私達はしっかりと理解できてはいません。特に人口が密集する地区では、生き延びようとすることは無駄な努力にも思えます。しかし、生き延びることができる人というのは、そのような事態に精神的かつ合理的に備えができた人達で、戦略的意義のない中心部からは離れた場所に住む人達なのでしょう。
パート1: 事前に準備する
1.計画をたててください。

 核攻撃されたら、危険をおかして外に食料を探しに出るのは安全ではありません。シェルター内に最低でも48時間以上、できるだけ長くとどまるべきです。食料を備蓄しておくと、気持ちにも余裕が生まれますし、生き延びるため、他の事に集中できるようになります。
2.保存食を備蓄しておきましょう。
 保存食は、数年保存できます。倉庫に保管しておき、核攻撃後に生き延びるための食糧にします。炭水化物を多く含むものを選びましょう。炭水化物はカロリーも高く、元気を出せます。涼しく乾燥した場所に保管しておいてください。
・白米             ・麦             ・豆
・砂糖             ・はちみつ          ・オーツ
・パスタ            ・粉ミルク          ・ドライフルーツ、ドライ野菜
・少しずつ備蓄しましょう。買い物に出かけた際、1〜2個余計に買って、備蓄にまわしましょう。
・最終的には、数か月分の食糧備蓄になるようにしましょう。
・缶詰め用に缶切りを用意しておきましょう。
3.水を備蓄してください。
 食品用のプラスチック容器に、水を保存しておくことを検討してください。容器を塩素溶液で洗浄し、フィルターにかけて蒸留した水を入れます。
・1人あたり、1日、1ガロン(約3.8リットル)の備蓄を目指してください。
・攻撃された時に、水を浄化できるよう、基本的な家庭用漂白剤とヨウ化カリウム(ルゴール液)を準備しておいてください。
4.通信機器を準備しておいてください。
 情報を常に入手すること、そしてあなたのいる場所を他の人に知らせることが極めて重要です。以下を準備しておきましょう。
・ラジオ:クランクを回して発電するタイプ、もしくはソーラー電池タイプのものを探してください。バッテリータイプのものを使うときは、予備の電池を準備しておいてください。NOAA気象ラジオの導入も検討してください。このラジオは、緊急情報を24時間放送しています。
・ホイッスル: 助けを呼ぶ時に使う事ができます。
・自分の携帯電話: 携帯電話サービスが使えるかどうかは不明ですが、もし、サービスが利用できるようであれば、携帯があると便利です。あなたの携帯に合ったソーラー充電器も併せて準備しておきましょう。
5.医薬品を備蓄しておいてください。
 核攻撃に遭って、怪我をした場合、生死を大きくわけるのは、医薬品があるかどうかです。以下を準備しておきましょう。
・基本的な救急キット: セットになったものが購入できます。もしくは、自分でキットを作っても良いでしょう。消毒済みガーゼ、包帯、抗生剤入り軟膏、ゴム手袋、はさみ、ピンセット、体温計とブランケットが必要です。
・救急処置方法の手引き書: 赤十字などの機関が発行しているものを買いましょう。もしくは、インターネットで情報をあつめたものを印刷してまとめても良いでしょう。包帯の巻き方、心肺蘇生の仕方、ショック状態への対応、やけどの手当てなどを知っておいてください。
・処方された医薬品: 毎日、特定の薬を飲んでいる場合は、その薬を緊急用に備蓄しておきましょう。
6.その他の備品を揃えておきましょう。
 以下のような緊急事態用の準備キットを揃えておきましょう。
・懐中電灯と電池
・防塵マスク
・プラスチック・シートとダクト・テープ
・ごみ袋、プラスチック・ケーブル・タイ、体を清潔に保つためのウェットシート
・ガスや水などの用役を止めるためのレンチやペンチ
7.ニュースを注意して見ておく。

 敵国から、いきなり核攻撃されることは考えにくいです。国同士の政治的な関係が悪化してから、核攻撃がおこなわれると考えられます。
 核兵器を保有している国同士で、従来の武器による戦争が起こった場合、もし、その戦争が早い段階で終結しなければ、核戦争へとエスカレートしていく恐れがあります。
 更に、一部の地域に限られていた核攻撃が、エスカレートして、他の地域でも、全面的な核戦争がはじまる恐れもあります。
 多くの国で、攻撃の緊急度を示す、評価システムが導入されています。例えば、アメリカやカナダでは、DEFCON(DEFense:防衛/CONdition:体制)レベルというものがあることを知っておくとよいでしょう。
8.核攻撃の応酬が懸念される場合、リスクを評価し、避難することを検討してください。

・飛行場や海軍基地など、特に核爆弾爆撃機、弾道ミサイル積載潜水艦、大陸間弾道ミサイル用地下格納庫などがある場所。核攻撃の応酬が限定的であったとしても、これらの場所は必ず、攻撃対象となります。
・商港や1万フィート(3048メートル)以上の長さを持つ滑走路。核攻撃の応酬が限定的であっても、これらの場所は攻撃対象となる確率が高く、全面的な核攻撃になると、必ず攻撃対象となります。
・行政の中心地。限定的な核攻撃でも、攻撃対象となる確率が高く、全面的な核攻撃になると、必ず攻撃対象となります。
・産業が盛んな大都市や人口の多い中心地。全面的な核攻撃の場合、攻撃対象となる確率が高いです。
9.核爆弾のタイプについて知っておいてください。

・核分裂型爆弾(原子爆弾)が、一番基本的な核爆弾で、他の武器に組み込まれているタイプです。爆弾の威力は、中性子で重原子核(プルトニウムとウラン)を分裂されることから生まれます。ウランまたはプルトニウムが分裂すると、それぞれの原子は、膨大なエネルギーと、中性子を生み出します。娘中性子は、非常に速い核連鎖反応を引き起こします。核分裂型爆弾は、今までに唯一使用されたタイプの核爆弾です。このタイプの核爆弾は、テロリストによって使用される確率が一番高いものです。
・核融合爆弾(水素爆弾)は、核分裂型爆弾のスパークプラグのとてつもない熱を使って、重水素とトリチウム(水素の同位体)を圧縮、加熱し、膨大なエネルギーを発生させます。核融合爆弾は、熱核兵器とも呼ばれています。それは、重水素とトリチウムを起爆させるためには、高い温度にすることが必要だからです。このタイプの爆弾は、長崎や広島を破壊した爆弾より何百倍も威力があります。
(2)核攻撃対処編に続く

サニーカミヤ/元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際救急援助隊所属。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。一般社団法人日本防災教育訓練センター代表理事。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中

http://diamond.jp/articles/-/125226


 


【第32回】 2017年4月19日 リスク対策.com
米国流・核攻撃から生き延びる法(2)核攻撃対処編
本記事では核攻撃を受けた時、私たちはどのように行動したらいいのかについて、ポイント解説する。
パート2: 差し迫った攻撃から生き延びる
1.すぐにシェルターを探してください。

 地政学的な警告サインとは別に、核攻撃が差し迫った時の最初の警告は、アラームや警告シグナルで通知されることが考えられます。もし、そのような警告が無い場合、爆発で初めて攻撃を知ることになるでしょう。
 核兵器の爆発から発せられた閃光は、爆心地から何十マイルも離れた場所でも確認できます。爆発地点付近(爆心地)では、爆発から生き延びられる確率は、かなり強靭なシェルター内にいない限り、皆無に等しいでしょう。
 爆心地から数マイル離れた場所にいる場合は、熱風が到達するまでに10〜15秒、衝撃波が到達するまでに20〜30秒かかります。どのような状況であっても、直接火の玉を見てはいけません。晴れた日は、かなり広い範囲で閃光により一時的に目が見えなくなることがあります。しかし、爆弾の大きさ、爆発点の高さ、そして爆発時の天気によって、実際の被害半径は、かなり違ってきます。
 もし、シェルターが見つからない場合は、近くの窪地を探し、そこに入って、できるだけ肌が露出しない状態で伏せてください。このような場所が見当たらない場合は、できるだけ早く穴を掘ってください。爆心地から8キロ(5マイル)の位置でも、3度の火傷を負う事になります。また、32キロ(20マイル)の地点でも、熱線により、体の皮膚が焦げてしまうほどです。爆風は、最大で960キロ/時(600マイル/時)となり、建物や外にいる人をすべてなぎ倒してしまうほどの威力です。
 前述のような対応ができない場合は、屋内に逃げ込みます。この場合、必ず、かなりの爆風や熱線にも耐えうる建物でなければいけません。少なくとも、建物は、放射線から身を守ってくれます。建物の構造や爆心地からの距離により、これらの選択肢も変わってきます。また、窓からは離れてください。できれば、窓がない部屋のほうが安全です。たとえ建物自体が大きな損傷を受けなくても、爆発により、かなり離れた場所でも窓を吹き飛ばします。例えば、ロシアのノバヤゼムリャでおこなわれた核実験では(異常なほど大きなサイズのものでしたが)、フィンランドやスウェーデンでも窓が吹き飛ばされたことが知られています。
 スイスやフィンランドに住んでいる場合は、自宅に核シェルターがあるかどうか確認してください。もし、無い場合は、村/町/地区の核シェルターの場所を探し、そこに行く道順を把握しておいてください。
 ここで覚えておいてほしいのは、スイスでは、あちこちに核シェルターがあるということです。スイスで警報が鳴れば、警報が聞こえない人(耳が聞こえない等)にも知らせ、国営ラジオサービス(RSR、DRSおよび/またはRTSI)を聞いて情報を得る事になっています。
※可燃物から離れてください。ナイロンなど、オイル・ベースの素材は、熱により発火します。
2.放射能に晒されることで、多くの人が死亡します。

・初期放射線は、爆発の際に放出される放射能で、短寿命、短距離しか飛びません。現代の核兵器は、威力がかなり大きいので、爆風/熱線が届く距離が遠くなります。よって、爆風/熱線が届かず、初期放射線の影響だけで死に至る人の数は少ないと言われています。
・残留放射能は、放射性降下物とも呼ばれています。爆発が地表で生じるか、火球が地面に接すると、大量の放射性降下物が生じます。塵や埃が大気中に巻き上げられ、雨となって降下し、危険量の放射能がもたらされます。汚染された黒い煤は、雨に混じって降ってくることがあり、これを黒い雨とも呼びます。この雨は、非常に危険で、かなり熱いこともあります。降下物が触れたものは、すべて汚染されてしまいます。
 爆風と初期放射線から生き延びることができた場合(放射線症には、潜伏期がありますが、少なくともこの時点では生き延びることができた場合)、黒い煤から身を守れる場所を探してください。
3.放射粒子のタイプを知っておきましょう。

 ここで一旦、異なる3つの放射粒子のタイプについて説明します。
・アルファ粒子:放射粒子の中でも一番弱く、攻撃時に、事実上、脅威にはならないものです。アルファ粒子は、大気中に吸収される前に、空中で数インチ飛ぶと無くなってしまいます。この粒子は、体の表面であれば、さほど危険性はないのですが、体内に摂取したり、吸入したりすると致命的です。普通の服で、アルファ粒子から身を守ることができます。
・ベータ粒子:アルファ粒子よりもスピードが速く、より遠くまで透過します。この粒子は、最大で10メートル(10ヤード)飛び、その後、大気中に吸収されます。ベータ粒子は、長時間晒されていなければ、致命的ではありません。長時間晒されると、痛みのある日焼けのような、ベータ火傷を引き起こします。また、長い時間、目にあたると、とても危険です。そして、体内に摂取したり、吸入するのは危険です。服を着ていれば、ベータ火傷は防ぐことはできます。
・ガンマ線:ガンマ線は、最も危険な粒子です。空中を1マイル近く飛ぶことができ、どんなものでも透過します。このことから、ガンマ放射能は、体の外からでも、内蔵器官に深刻なダメージを与えます。かなりの防御が必要となる粒子です。
 放射能を防ぐシェルターのPF値は、シェルター内にいる人が、戸外にいる時の被曝量と比較して、何倍少なく被曝するかを示しています。例えば、RPF300は、戸外にいるより、シェルター内であれば、被曝量を300分の1に抑えることができるという意味です。
 ガンマ線に晒されないようにしましょう。5分以上、ガンマ線に当たらないようにしてください。田舎にいる場合は、洞窟や倒れた木を探し、中に潜りこんでください。その他、単に穴を掘って、そこに横たわり、あなたの周りに土を盛ってください。
4.自分のシェルターの内側から、壁の周りに土や使えそうな物を盛って、防護力をアップさせてください。

 溝の中にいる場合は、屋根を作ってください。ただし、屋根になる材料が近くに有る時だけ、屋根を作ってください。できるだけ、放射能に晒されることがないようにしてください。
 パラシュートやテントなどに使われているキャンバス生地を使えば、降下してくる塵からあなたを守ってくれますが、ガンマ線は防ぐことはできません。根本的な物理レベルで、完全にすべての放射能から身を守ることは不可能なのです。
 しかし、許容レベル内に留めることはできます。放射線透過率を1/1000に低減できる素材の必要量を決める際に、以下の数値を参考にしてください。
・鉄:21cm (0.7feet;以下ft)  ・岩:70-100cm (2-3ft)
・コンクリート:66cm (2.2ft)  ・木:2.6m(8.8ft)
・土:1m (3.3ft)        ・氷:2m (6.6ft)
・雪:6m (20-22ft)
5.200時間(8〜9日)以上、シェルター内にいてください。

 どのようなことがあっても、核攻撃後48時間はシェルターから出ないでください。
 核爆発による「核分裂生成物」を避けるためです。この核分裂生成物の中で、一番危険なのは、放射性ヨードです。幸いにも、この放射性ヨードの半減期(自然に減衰し安全な同位体になるまでの期間)は比較的短く8日です。ただし、8〜9日を過ぎても、多くの放射性ヨードは残っているので、外に出るのは制限してください。放射性ヨードの量が初期量の0.1%になるまでには90日かかるとされています。
 核分裂による、その他の主な生成物としては、セシウムとストロンチウムがあります。それぞれの半減期は、30年、28年で、生物に吸収されやすい特性を持っており、何十年も食品を危険にさらしてしまいます。また、風で何千マイルも飛ばされるので、離れた場所なら安全だと思うのは間違いです。
6.自分の生活必需品を計画的に消費してください。

 当たり前ではありますが、生き延びるためには、備蓄したものは計画的に消費してください。食料が尽きてしまうと、最終的には、放射能に晒されることにはなります(食料と水がある特殊なシェルターでない場合)。
・加工食品は、食べても大丈夫です。但し、その容器に穴があいておらず、比較的ダメージを受けていなければ、大丈夫です。
・動物は食べることはできますが、火を使って注意深く皮部分を取り除きましょう。また、肝臓や腎臓は廃棄します。骨に近い部分の肉は食べないようにしましょう。放射能は骨髄に残留するからです。
・「ホットゾーン」の加工食品は、食べても構いませんが、地下茎が食べられるもの(人参やじゃがいも)をお勧めします。植物が食用になるかどうかテストしてください(植物が食用になるかどうかのテスト方法を参照)。
・野ざらしになっている水源は、放射性降下物が含まれているかもしれないので、危険です。湧水、フタがしてある井戸などの地下水源が良いでしょう。小川や湖の水を使うのは、最後の手段にしてください。
 土手から1フットの位置に穴を掘ると、フィルターのようになって水がしみ出てきます。この水は、濁っていたり、泥が入っていると思いますが、沈殿するまで待ち、上澄み部分を沸騰させて、滅菌します。建物の中の水は、通常安全です。
 もし、水がない場合は(おそらく、水が無いケースのほうが多いとは思いますが)、水道パイプの中の水を使います。屋内で一番高い位置にある蛇口を開け、一番低い場所にある蛇口を開けて、エアを入れます。すると、建物内のパイプに残っていた水が出てきます。
7.衣類はすべて着用してください(帽子、手袋、ゴーグル、袖口が締まったシャツなど)

 ベータ火傷(次項参考)を少しでも防ぐため、特に外に出る時は、衣類はすべて着用してください。服は常に振るったり、水で洗うことで、汚染物質を除去してください。また、露出した肌部分に、汚染物質がついたままになっていると、火傷をひきおこします。
8.放射能による火傷や、熱による火傷の治療

・軽い火傷:ベータ火傷ともいいます(ベータ粒子ではなく、他の粒子によるやけどの可能性もあります)。痛みが和らぐまで、ベータ火傷の部分を冷たい水に浸します(通常5分)。
 水ぶくれができたり、焼け焦げたり、皮膚が破れはじめるようならば、冷たい水で洗い、汚染物質を除去します。化膿しないように、滅菌した圧定布で傷口を覆ってください。決して、水ぶくれを破らないでください。
 水ぶくれができたり、焼け焦げたり、皮膚が破れていなければ、傷口をカバーしないでください。体の大部分に火傷をおっていても(日焼けのように)、覆わないでください。覆う代わりに、火傷の部分を水で洗い、入手できそうならばワセリンまたはベーキングパウダー溶液でカバーしてください。(汚染されていない)濡れた土で覆ってもOKです。
・重い火傷:熱による火傷ともいいます。電離粒子というよりは熱風によるものが多いですが、電離粒子で重い火傷を負う事もあります。このタイプの火傷は、命にかかわります。脱水、ショック、肺のダメージ、感染症などが要因になって死亡することがあります。
 更に汚染されないように火傷を保護してください。
 火傷の部位に服が残っている場合は、その服をゆっくりと切り、火傷部分から取り除いてください。火傷に貼りついてしまった服を無理やり剥がさないでください。火傷にかぶっている服を引っ張らないでください。火傷に軟膏は塗らないでください。もしくは、救急隊に電話したほうが賢明です。
 火傷を水だけで優しく洗います。クリームや軟膏は塗らないでください。
 火傷専用でない通常の滅菌包帯は使わないでください。はりつかないタイプの火傷用包帯(その他の医療品も含めて)は、おそらく入手しにくい状態だと思います。そこで、代用品として、ラップ(サランラップ)を使ってください。ラップは、滅菌されていますし、火傷にはりつくこともなく、入手しやすいはずです。
 ショック症状を防いでください。ショック症状は、生命維持に必要な組織や内臓に血液がうまく流れなくなる状態です。もし、治療できなければ、死に至ります。ショック症状には、かなりの量の失血、深い火傷、傷や血を見たことによる反応があります。
 ショック症状のサインとして、落ち着きが無くなり、喉がかわき、青ざめ、心拍数が早くなることが挙げられます。また、肌が冷たくなったり、濡れている場合でも、汗をかき続けます。状態が悪化すると、息が早くなり、目がうつろになります。対処法としては、正しい呼吸ができるような体位にし、胸をマッサージして正常な心拍数と呼吸を保ちます。
 締めつけている服は緩めて、その人を安心させてください。自信を持って、しっかりと、そして優しく対応してあげてください。
9.放射能疾患(放射線症候群)を発症した人を、躊躇せず助けてあげてください。
 この疾患は、感染しません。あくまでも、その人が受けた放射能の量によって症状・状態が決まります。次の表は、放射線量と症状に関する要約です。
10.放射線単位を理解しておきましょう。

http://diamond.jp/mwimgs/8/3/650/img_83cad543f244c9ef39f42741b5b58f30281266.jpg

Gy(グレイ)は、電離放射線の吸収線量を図るSI単位。1Gy=100 rad. Sv(シーベルト)は、線量のSI単位で、1Sv=100REM。簡易化のため、1Gyは通常1Svと同等とみなされます
http://diamond.jp/mwimgs/0/5/647/img_05cbb1b37c6528ceca1fcc901ecbd08d471651.jpg

 残念ながら、このような人はすぐに死んでしまうと覚悟する必要があります。厳しいようですが、食料や物資を放射能疾患で死んでいく人に与えて無駄にすべきではありません。健康な人に、物資を提供すべきです。放射能疾患は、子供やお年寄り、病気の人によく見られます。
11.EMP(電磁パルス)から、大切な電子装置をガードしてください。

 非常に高い高度で核兵器が爆発すると、非常に強い電磁パルスが発せられ、電子/電気機器が壊れることがあります。少なくとも、電気プラグやアンテナから機器の全てのプラグを抜いておいてください。
 ラジオや懐中電灯を密閉できる金属の入れ物(ファラデー箱)に入れておくとEMPを防げることがあります。また、EMPから防護しないといけない物品は、箱と接触させないでください。金属のシールドが、防護すべき物品を完全に覆うようにし、地面に接していると効果的です。
 防護すべき物品は、導電性の外枠から絶縁しておいてください。これは、シールドに打ち寄せるEMPフィールドが、半導体の回路基板に電圧を誘導することがあるからです。もし、その場所に爆風がこないような遠い場所であれば、機器を綿や新聞で包み、その上から金属化した「スペース・ブランケット(2米ドル程の価格)」で、しっかりと覆っておくとファラデー・シールドのようになり、効果的です。
 別の方法としては、段ボールを銅またはアルミホイルで覆います。防護すべき機器をその中に入れて、機器のプラグを地面にさしておきます。
12.その後の攻撃に備えてください。

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 おそらく、核攻撃は一度では終わらないと思われます。敵国からの次の攻撃や侵略に備えておきましょう。
 生き延びるためにシェルターの一部をどうしても使う必要がある場合を除き、シェルターは完全な状態に保っておいてください。また、余分な浄水と食料も確保しておいてください。
 もし、敵国が再度攻撃してくる場合は、その国の別の地域が攻撃されることが考えられます。シェルターが使えない場合などは洞窟に住んでください。
(3)Q&A、アドバイス編に続く

サニーカミヤ/元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際救急援助隊所属。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。一般社団法人日本防災教育訓練センター代表理事。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中

http://diamond.jp/articles/-/125238

 

米国流・核攻撃から生き延びる法(3)Q&A、アドバイス編

最後に、核攻撃を受けた時に備え、私たちはどうしたらいいのか、素朴な疑問についてQ&A形式で解説する。

Q&A

Q:核攻撃の際は、一人でいたほうが良いですか?複数人でいたほうが良いですか?

A:チームで動けるので、誰かといたほうが良いでしょう。みんなが休んでいる時や必需品を探しに行っている時は、順番に誰かが番をしてください。

Q:もし、家から離れた場所にいたら、ガンマ線の爆風からどうやって生き延びればよいですか?

A:近辺のシェルターを探してください。シェルターが見当たらない場合は、頑丈な物の後ろで、地面に伏せてください。両手は頭の上におき、足をクロスさせて助かることを祈るしかありません。ただし、軽傷または重傷の火傷をおうおそれはあります。もし、柔らかい土が近くにあるならば、その土を掘って中に入れば、ダメージも最小限に抑えられます。

Q:学校にいる時に核攻撃されたら、どうやって生き延びれば良いですか?

A:そのような状況に対応できる計画が学校では設定されているはずです。戦争や脅しなどで、攻撃されやすい場所として学校が挙げられるからです。多くの場合は、戦争や脅しがあった場合は、当局が自宅待機またはシェルターへの避難を指示するので、攻撃時に学校にいないと思われます。もし特定の学校で、どうしたら良いかを知りたい場合は、先生や職員に尋ねてください。

Q:核爆発の時は、丘に隠れるほうが良いですか?地下に隠れるほうが良いですか?

A:地下が良いです。丘だと、放射能の影響を受ける事になります。

Q:核攻撃時、車またはパスに乗っていたらどうしたら良いですか?

A:可能であれば、車で溝に突っこんでください。そしてうずくまり、溶けないような何かで肌が露出しないようカバーしてください。爆発後は、最寄りのシェルターに逃げ込んでください。

Q:地下でどのように生き延びたらよいですか?

A:ドアや窓、継ぎ目の隙間をテープ、詰め物、厚みのあるブランケットなどでふさぎ、2〜3時間ごとに交換してください。

Q:放射能レベルが、致死量でなくなるまでには、どのくらいの期間、地下に隠れている必要がありますか?

A:爆弾のタイプと、爆心地からの距離にもよりますが、一般的には最低でも2週間は外に出ないでください。

Q:家の中にいて、核シェルターが無い場合はどうしたら良いですか?

A:家の中で一番低い階にいてください。被曝量を抑えられます。

Q:核戦争が起こった際、地球上で一番安全な場所はどこですか?

A:中立国では、戦争時は、どの国も手を出さないはずです。

Q:アパートにいる時、どのように核爆発の爆風から生き延びたらよいですか?

A: 一番下の階にいてください(できれば地下)。そして、当局の指示に従ってください。

Q:井戸や下水道にいれば、身を守ることはできますか?

A:どこにも行く場所がなければ、井戸や下水道のほうが、何もない戸外にいるよりも、身を守ってくれます。もちろん、そこでの食べ物や飲み物はどうするかも考えないといけません。

Q:核攻撃により、人は突然変異しますか?

A:突然変異の定義が何かにもよります。歴史上、人々は核攻撃または核事故に晒され、数日内に放射能中毒で亡くなりました。生き残った人々の子供には、軽度、重度の出生異常がみられました。しかし、この異常は突然変異ではありません。人間は、生物学的に、核攻撃を生き延びる力を備えてはいません。ですから、突然変異するだけの時間は無いのです。

Q:私の地域に核シェルターが無い場合は、どうしたら良いですか?

A:地下深い場所を探してください。そのような場所が無い場合は、最寄りの家に入ってください。そして、バスルームなど、窓が無い場所に逃げてください。

Q:戸外にいる場合、どのように核から生き延びれば良いですか?

A:できるだけ離れた場所、低い場所に逃げてください。穴が無い場合は、穴をへ掘って、できるだけ深く入りこみ、体に覆いをしてください。

Q:シェルターとして、家に地下がありますが、家自体が、その上に倒壊してしまったら、どうしたら良いですか?

A:地下室の上部を強化しておいてください。これで、その上の家が倒壊しても、生き延びることができます。そして、救助が来るまでの間、生き延びる事ができるよう、缶入りの食べ物やボトル入りの水を備蓄しておきましょう。

Q:核攻撃を受ける確率はどのくらいですか?

A:今後50年間が微妙なところです。実際、個人的には21世紀中に起こると思っています。

TIP(アドバイス) 

・シェルター内にいる場合でも、全てのもの、特に食べ物は洗ってください。

・軍を探してください。バイオハザード防護服などを着ている人がたくさん来るはずです。彼らは敵ではありません。しかし、あなたの国の戦車、飛行機、その他の車両と、敵の物の違いは、知っておいてください。

・あなたが何をどのくらい持っているか、他人には知らせないでください。

・最新の政府指示、告知が出ていないか、留意しておいてください。

・防護服があり、また核兵器が使われているか、戦車がいるかを確認しなければいけない場合以外は、外に出ないでください。

・家庭用の核シェルターを事前に作っておいてください。核シェルターは、地下や倉庫を使って作ることができます。しかし、多くの新しい建物には、倉庫が無いので、コミュニティのシェルターや、自宅の庭にプライベート用の核シェルターを作ることを検討してください。

※米国流の「核攻撃時に生き延びるには」 より転載、翻訳しました。

サニーカミヤ/元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際救急援助隊所属。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。一般社団法人日本防災教育訓練センター代表理事。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中
http://diamond.jp/articles/-/125248

http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/188.html

[国際19] 仏大統領選はポピュリズムによる「新たなフランス革命」か 欧州活発な高利回り起債、政治リスクひるまず トランプを過大評価 
2017年4月19日 田中 均 :日本総合研究所国際戦略研究所理事長
仏大統領選はポピュリズムによる「新たなフランス革命」か


 フランスの大統領選挙は4月23日に第1回投票が行われ、第1回投票で過半数を得る候補者がいれば決定、さもなければ5月7日に上位二名による決選投票となる。過去に第1回の投票で決まった例はなく、常に2回の投票が行われてきたが、ここに来て、選投票でル・ペンが最終的に勝利するシナリオも喧伝されだしている。ル・ペンはユーロからの離脱やEU離脱を問う国民投票の実施、厳しい移民政策を公約に掲げており、ル・ペンが勝利することになれば、EUを軸とする欧州秩序を大きく変えるだけでなく、戦後世界の大きな分水嶺になる。

決選投票でル・ペン氏勝利も?
急進左派の急追で情勢緊迫

 今回の選挙では極右国民戦線のル・ペン党首、中道左派のマクロン前経済相、右派共和党のフィヨン元首相、左派社会党のアモン前教育相、急進左派のメランション欧州議会議員の5名が有力な候補者である。最近の世論調査ではル・ペン、マクロンが肩を並べ、フィヨン、メラションが追い上げているとされる。

 14日フランスの有力紙ル・モンドが報じたところによると、ル・ペン、マクロンが22%で首位に並び、メランションが20%、フィヨンが19%と僅差である。これまでの予想ではル・ペン、マクロンが決選投票に残るが、決選投票では極右を嫌う穏健勢力がこぞって中道左派マクロンに投票するであろうし、マクロンが大差で勝利するのではないかと見られてきた。

 しかし、ここに来て急迫している極左メランションがル・ペンと共に決選投票に残れば、ル・ペンが最終的に勝利する可能性があるというわけだ。

 こうした可能性を秘めたフランス大統領選挙の背景と影響について世界の趨勢の中で考えてみる必要があるだろう。脈々と流れていた反グローバリゼーションの勢いがポピュリストたちによって加速され、具体的形をとった最初の出来事は英国のEU離脱(Brexit)を決めた2016年6月の国民投票であった。これは11月の米国大統領選挙に引き継がれトランプ大統領の誕生となった。

反グローバル化とポピュリズム
米英では、政策実現難しく

 Brexitとトランプ大統領誕生にはいくつかの点が共通している。それは第1にはグローバリゼーションがもたらした所得格差や移民・難民の流入に対する大きな不満を持ち、現状の変革を求める人々の意識がポピュリスト的手法で政治に吸い上げられたことである。第2次世界大戦の終了後の世界を導いてきたのは自由民主主義に基づくリベラルな国際秩序を求める考えであり、米英の政治はこのような流れを主導してきた。

 ここに来て、そのようなリベラルな秩序をつくってきた既成の政党に対する不信、既成の政治指導者に対する不信、エリートに対する反感が投票に繋がった。英国の場合にはこのような意識はEUを差配するブリュッセルの官僚たちから英国の主権を取り戻そうという叫びに繋がり、「大英帝国の栄華を再び」といった強いナショナリズムが吐露されている。一方トランプ大統領も「米国を再び偉大な国に」というフレーズを用いて米国のナショナリズムを鼓舞している。

 しかしこのような反グローバリゼ―ション・ポピュリズムの勢いも時が経てば困難に逢着する。Brexitを実現していくのは英国もEU諸国も既成の政党・政治指導者・官僚であり、EUから離脱する事を英国の現実的利益に沿った形で実現していく事は途方もなく困難なことである。英国は3月末にEU離脱決定を正式にEUに通知したが、今後2年で離脱協定や離脱後の経済関係を律する協定を合意することは著しく困難であり、相当な不透明性が漂う事となる。

 米国でもトランプ政権の閣僚の多くは、グローバリゼーションから大きな利益を得た実業家や既成秩序を守る役割を果たしてきた軍人であるのは皮肉なことである。トランプ政権の政権運営に対しては伝統的政党、議会や裁判所といった既成勢力の抵抗は大きい。イスラム諸国からの入国を禁じる大統領令は連邦裁判所で効力が差し止められ、オバマケア廃止法案も撤回を余儀なくされている。また、ロシア問題を巡るFBIや議会の調査も容易ならざる事態に繋がる可能性を秘めている。

経済低迷で不安強まるフランス
2大政党への批判、極右、極左に支持

 実はフランスにおいては英国や米国以上に反グローバリゼ―ションやポピュリズムが力を持ちうる余地は大きい。経済は長期低落しており、フランスの失業率は10%(米国や英国では5%内外で推移しているのに対し)、25歳以下の若年失業率は25%に達している。フランス人ほど将来に対して悲観的に見ている国民はいないと言われる。欧州の中でイスラム人口が最大であるのはフランスである。過去1年半の間に大規模なテロ事件が3回も発生し、大統領選挙は非常事態宣言下の選挙となる。

 極右のル・ペンや独立系中道のマクロン、極左のメランションの躍進と対照的であるのは、これまでフランスの政治を担ってきた共和党、社会党という2大既成政党の不振である。このような2大政党に対する体制批判票は、時の経過と共に態度未定の3−4割の有権者にも浸透していく可能性は大きいと見るべきであろう。

 ただ仮にル・ペンやマクロンが大統領選挙で勝利してもル・ペンの国民戦線は議会で現有議席はわずか2議席、マクロンの「前進!」という政党に至っては現有議席ゼロであり、6月の国民議会選挙で定数577議席の過半数を占めることなど到底考えられず、行政については既成2大政党の力は引き続き大きい。ル・ペンの場合には反EU、反移民の姿勢が明確であり議会との対立は避けられない一方、マクロンの場合には欧州統合推進を掲げた中道勢力であり、議会との協調は比較的容易であろう。

 ル・ペンが勝利した場合には欧州の秩序は大きく変わるのだろう。ル・ペンは、ユーロの使用を禁止する、EUからの離脱に関する国民投票を就任半年内に実施、移民流入数を80%削減する、域外との自由貿易協定を廃止し、NATOから離脱するといった相当排他的な公約を掲げている。もちろん国民議会の構成次第でル・ペンの公約は実現困難となることも予想されるので、不透明な状況が招来されよう。ただ、欧州では既に英国、オランダ、オーストリア、ハンガリー、ポーランドなどで極右ナショナリスト勢力が大きく台頭してきている。これらの勢力は勢いを得てEUは分裂と崩壊の危機に瀕することとなる。

 一方、マクロンは欧州統合の推進、保護を必要とする難民を歓迎、域外との自由貿易協定を支持するなどの公約を掲げており、勝利した場合には反EU、反移民の流れは当面止まり、(9月の総選挙の結果如何にもよるが)ドイツと共にEUの再建に向けて動き出す可能性が強い。おそらくBrexitについても欧州の混乱を回避していくという方向性が出てくるのではないのだろうか。現時点で最有力なル・ペン、マクロンの主張は対称的であり、どちらが勝利するかによって欧州の流れは違う方向に大きく変わりそうである。

曲がり角のEU統合にも影響
ロシア、トルコとの関係が情勢を複雑に

 本年3月に行われたオランダの選挙では、極右自由党が第1党になることが予想されていたが、結果的には与党自由民主党が第1党の地位を保ち、反グローバリゼ―ションとポピュリズムの勢いが少し止まったという評価もされている。しかしEUを支えるフランスの大統領選挙のインパクトは圧倒的に大きい。例えばEU予算においては総額の17%とドイツの22%に次いで2位、欧州議会の議席配分においてもドイツの96名に次いで74名であり、元々欧州統合は独仏の和解のプロセスとして始まったものであるが、今日、EUの屋台骨を支えるのはこの2ヵ国なのである。

 このようなEUが大きな曲がり角にあるときにさらに状況を複雑にしているのはEUの外縁にある大国ロシア及び新興国として力をつけてきているトルコとの関係である。

 EUはロシアのクリミア併合・ウクライナ問題との関係で経済制裁を科しており、ロシアは対抗措置としてEUからの農産物輸入に制限を科している。農業大国フランスはこのロシアの対抗措置で大きな経済的影響を受けており、ル・ペンは対ロ制裁解除をはじめロシアとの関係改善を主張している。ロシアは米国の大統領選挙で行ったようにフランスの大統領選挙においてもロシアにとって不都合なマクロン候補の不利になるような情報戦を展開していると伝えられる。このようなロシアの動きは大統領選後の仏の対露政策に大きな影響を与えざるを得ない。

 トルコでは大統領権限を大幅に強化する憲法改正が国民投票で成立したとされており、エルドアン大統領に権力集中する結果、エルドアン大統領の強権的統治が危惧される事態となっている。トルコはNATOの一員であるとともにEU加盟の候補国であり、またシリア難民問題の対策を講じていく上でもEUはトルコの協力を必要とする。トルコが民主化から遠のいていく事はEUにとって好ましいことではない。ロシアやトルコとの関係を考えていく上で独仏というEUの2大大国の強い結束を必要とするが、大統領選挙はそのような結束に大きな影響を与える。

歴史の分水嶺となる選挙
国家の復権か、グローバル化か

 思えば近代の世界は1760年代の英国の産業革命に始まった。そして米国が独立(1776年)し、フランス革命(1789年)は前近代的な旧体制を打破する市民革命であったと言われる。果たして今日Brexitに始まりトランプ大統領の誕生を経てフランス大統領選挙に至るプロセスは二百数十年前のように世界の歴史を大きく変えるうねりとなるのだろうか。再び国家意識の強い閉鎖的な国際社会へと歴史を逆行していくのだろうか。それともグローバリゼーションの大きな流れを維持しつつ、開かれた社会を目指す方向に踏みとどまることができるのだろうか。フランスの大統領選挙は大きな分水嶺となるような気がする。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)
http://diamond.jp/articles/-/125311

 


欧州で活発な高利回り債起債、政治リスクにひるまず−ドイツ銀が予想
Marianna Aragao
2017年4月19日 10:16 JST


• 欧州の高利回り債発行は年初来で410億ユーロ
• ドイツ銀はその約8%に関与

欧州では予測が難しいフランス大統領選挙や英国の欧州連合(EU)離脱といった問題が、記録的な低金利となっているこの機を捉えたい高利回り債発行体をひるませることはなく、今年の高利回り債起債は昨年より増えるだろう。ドイツ銀行はこう予想する。ブルームバーグのデータによれば、同行は最も多くの高利回り債を手掛けている。
  ドイツ銀の欧州高利回り資本市場責任者ディアムイド・トーミー氏は電話インタビューで、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げ基調にある中で、米企業が借り入れコストが低い欧州で起債していると指摘。「イースター(復活祭)と仏大統領選の間、発行ボリュームは1−3月(第1四半期)より少なくなると見込んでいる。だが年末までには2016年を上回るだろう」と述べた。
  欧州の高利回り債発行は今年410億ユーロ(約4兆7700億円)に達しており、ドイツ銀はその約8%に関与している。
  ただ、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの欧州・中東・アフリカ(EMEA)担当レバレッジドファイナンス共同責任者クリス・マンロ氏(ロンドン在勤)は、「マクロ経済もしくは地政学的な出来事が投資家にスピードを落とさせる時期があるかもしれない」としている。

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原題:Deutsche Bank Sees 2017 High-Yield Market Defying Political Risk(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMSNC6K50XU01

 
トランプ氏の能力を米市場は過大評価、中国や欧州に投資を−ハント氏
Katherine Chiglinsky、Dan Reichl
2017年4月19日 09:57 JST

世界経済には楽観的、中国やインドのほかEUさえ良好と指摘
トランプ米大統領の公約実現は「極めて困難」だろう

米生命保険会社プルデンシャル・ファイナンシャル傘下の資産運用会社であるPGIMの最高経営責任者(CEO)デービッド・ハント氏は、米国以外の国・地域に投資機会を探すよう勧めている。同氏はトランプ米大統領が自身の掲げる成長目標を達成する能力を米市場が過大評価している可能性があると指摘する。
  ハントCEOは18日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「中国やインドの現状を見ると、また実際のところ欧州連合(EU)でさえ、われわれが考えていたより若干良い。世界経済に楽観的になる理由が現在ある」と述べた。
  トランプ氏は選挙戦でインフラ投資拡大や規制緩和、減税を実施し、経済成長率を3%以上に回復させるとの公約を掲げた。これが当選後の数カ月間、株式相場を大きく押し上げたが、相場の勢いはここ数週間で失速。幾つかの政策で承認を得るのに苦戦していることが背景にある。
  ハントCEOは「トランプ政権が公言していたような成長率に米経済のパフォーマンスを引き上げるのは極めて困難だろう」と語った。PGIMの運用資産は1兆ドル(約109兆円)。
原題:Hunt Says Bet on China, Europe Rather Than Trump Meeting Targets(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMQZV6S972801
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/180.html

[政治・選挙・NHK224] 「ブラック企業度」は非公開、若者雇用促進法の看板倒れ 75歳で「年寄り扱い」は正しいか、雇用と年金から考える
2017年4月19日 週刊ダイヤモンド編集部
「ブラック企業度」は非公開、若者雇用促進法の看板倒れ

 2018年卒業予定の大学生の就職活動は今が真っ盛り。国が「働き方改革」推進で労働環境の転換を図る中、学生はミスマッチをしたくないと例年以上に「働く条件」にもシビアなチェックを入れている。

 そんな学生に判断材料を提供しようと、国が推すのが若者雇用促進法。16年3月から新卒募集する企業に下図の職場情報12項目の開示を促した。ホームページなどでの公開のほか、学生側から個別に求めがあれば、メールまたは書面で応じる必要がある。
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 人材業界関係者によると、「昨春の就活シーズンは施行直後で企業のアクションも学生の認知も追い付いておらず、今春が本格運用1年目といえる」。企業の情報公開を促す意味で「総論OK」は誰もが認めるところだが、その実効性に疑問符が付いている。
 同促進法が企業に開示を求めるのは、「募集・採用に関する状況」など3カテゴリーの計12項目。各カテゴリーで「一つ以上」開示するよう義務付けているが、企業は都合の良い情報を任意で選んで公開し、「義務を果たした」と対外的に取り繕うことができる。
 そもそも「開示義務」といえども、履行を担保する罰則がないので「ゼロ回答」もまかり通ってしまう。

主戦場の3項目を隠す

 今年2月のアイデム人と仕事研究所企業調査(901社が回答)によると、「できれば情報提供・公表したくない」項目として、「過去3年間の新卒採用者数・離職者数」「前年度の月平均所定外労働時間の実績」「平均勤続年数」が上位に挙がった。いずれも企業のブラック度の参考になる数字だ。面白いことにこの3項目は、同研究所が3月に調査した「学生が知りたい情報」(685人が回答)の上位にも並んでいる。
 12項目の多くは、企業にとって公開しても痛くもかゆくもないもの。主戦場はこの3項目である。
 人気企業ほど“強気に”消極的な姿勢を見せている。例えば就職先人気ランキングで上位にくる大手銀行、保険会社の情報を大手就職サイトで見ると、ほとんどが前出3項目のうちゼロか、1項目しか公開していない。個別に聞けば答えてくれるのかもしれないが、学生側が自粛することは想像に難くない。
「出したくないからといって伏せると、不信感を抱かせるだけ」と別の人材業界関係者。オープンにした方がミスマッチを防ぎ、結果的によりよい学生が採れるはずだ。
 売り手市場の追い風もあり、「昨春に比べれば情報公開が進んではいる」(業界関係者)。それでも、学生が本当に知りたい項目で今後も企業側に歩み寄りが見られないならば、国は働き方改革で掲げる「納得のいく働き方を実現する」ため、罰則などインセンティブを検討する必要性に迫られよう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)
http://diamond.jp/articles/-/125137

 

2017年4月19日 山崎 元 :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
75歳で「年寄り扱い」は正しいか、雇用と年金から考える


65歳から74歳は
なかなか微妙なお年頃

 日本老年学会と日本老年医学会が、現在「65歳以上」とされる高齢者の定義を「75歳以上」に引き上げるべきだとの提言をまとめた。

 2016年12月1日現在の総務省の人口推計に基づくと、わが国には、65歳以上75歳未満が1766万人、75歳以上90歳未満が1506万人、90歳以上が196万人いるとされている。つまり、定義上の高齢者の数が半減する訳だ。

 先の二つの学会は、それぞれの区分を、「准高齢者」、「高齢者」、「超高齢者」と呼んではどうかと提言している。現在、75歳を境に「前期高齢者」と「後期高齢者」を区別しているから、ある意味では呼び名を変えるだけだとも言える。

「高齢者の比率がどんどん高まっている」と言われて数字を示されると、心理的に圧迫感があってどんよりとした気分になるが、高齢者比率が半減すると、国民の気持ちが少しは軽くなるかもしれない。確かに、昔の65歳よりも、今の65歳の方がずっと元気なので、「65歳から高齢者」という定義をずっと変えないのは、社会を把握する上で不正確な面がある。

 もっとも、65歳〜74歳は、なかなか微妙な年頃であるように思える。

 15年時点で、平均寿命は女性が87.05歳、男性は80.79歳だが、厚生労働科学研究所の推計した健康寿命(13年時点)は女性が73.62歳、男性が70.42歳と、平均寿命までかなりの差がある。女性の健康寿命は男性よりも約3年長いが、それでも75歳には達していない。「助けを借りずとも、不自由なく生活できる」あるいは「働くことができる」といった状態を、多くの人が65歳から74歳の間に失うのだとすると、高齢者の定義を変更することに異議はないが、現時点で「75歳になるまでは、高齢者ではない」とまで言い張るのは少々無理があるように思う。

70歳まで働くとすれば
必要な貯蓄は所得の15〜17%

 現在の「65歳」が、多くの人にとって問題なのは、再雇用の期間などを含めて雇用が65歳までであること、通常のケースでの公的年金の支給開始が65歳からであることの2点によるところが大きい。

 しかし、まだまだ元気であるのに65歳で仕事を引退するのは、本人としても社会的にみても「もったいない」し、現実にその後の生活を考えると、なかなか厳しい条件になる。

 以下に、「22歳で大学を卒業して就職し、それぞれのリタイア年齢まで働き、リタイア後には現役時代の7割の生活費支出で暮らすために、現役時代に可処分所得の何%を貯蓄しなければならないか」を計算してみた表を掲げる。本人は若い会社員であると想定しており、将来の厚生年金を現役時代の所得の30%として計算してみた。

 現状の「標準世帯」での年金の手取り受取額は、現役世代の手取り所得の53%程度(共に手取りで計算した所得代替率。塩崎厚労大臣の国会答弁に基づく)だが、これは、標準世帯のものだし、年金支給額は今後着実に減っていく(ただし、ゼロにはならないはずだ!)ので、慎重にみて30%と想定した。賃金上昇率、資産運用の利益率は、共にインフレ率並みとした。


拡大画像表示
 65歳でリタイアしようとすると、寿命95歳に備えるなら、可処分所得の19%強、100歳に備えるなら21%強を貯めなければならない。これが、70歳まで働くことにすると、それぞれ15.5%、17.65%と軽減されるのだ。

 ちなみに、読者、特に男性読者の多くは「俺は、95歳まで生きないよ」と思っておられるかもしれないが、若い読者は「平均寿命」が徐々に90歳に近づいて行くし、「平均」が現在の80.79歳だとしても、当然、平均よりも長生きする人がいるわけだし、何よりも、「奥様の寿命までの生活費!」を考えると、現在、40代、50代の男性も、自分の95歳程度までの生活費を考えておく必要があるはずだ。

 もちろん、それよりもご自身が早く亡くなったとした場合、資産が残るとご遺族のためにもなる。

75歳まで引き上げずに
間を取って70歳がいいのでは

 思うに、高齢者の定義をいきなり「75歳」まで引き上げずに、現在との間を取り、また健康寿命に近い数字で、「70歳」とするのでいいのではないか。

 そして、定義だけを変えても社会の実態が変わらなければあまり意味がないので、「70歳になるまで働いて、70歳から年金受給を開始する」といったライフプランを標準的なものとするといいと考える。

 公的年金は、マクロ経済スライド方式に従って、どんどん給付を下げていくなら破綻はするまいが、あまりに少額では生活設計上、有効に機能しにくい。そもそも、日本は世界有数の長寿国(これは、大いに誇っていいことだが)なのだから、標準的な年金受給開始年齢をなるべく早いペースで70歳に引き上げてもいいのではないだろうか。

 そして、確定拠出年金、特に個人型は、今すぐにでも加入可能年齢を70歳まで引き上げるべきだろう。

 なお、公的年金の受給開始を70歳になるまで引き延ばすことは現在も可能で、受給開始を1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金支給額が増えるので、年金は最大42%増やすことができる。

 受給開始を遅らせる損得計算としては、81歳10ヵ月よりも長生きすると70歳まで受給開始を遅らせることが「得」になるとされているが、平均寿命は延びる傾向にあるし、また公的年金の「長生きのリスクに対する保険」の機能を有効に使うためにも、受給開始を遅らせる方策を講じる方が、おそらく有利であると同時に「より堅実」だ。

 個人としては、高齢者の定義のいかんにかかわらず、70歳を区切りとした人生設計はすでに可能だし、それは、多くの人にとって望ましいものでもあるだろう。

70歳現役時代にするためには
定年廃止と解雇規制の緩和が必要

 さて、「70歳まで現役で働くのが普通だ」という社会を考えると、世の中の仕組みのいくつかを変える方がいいことに思い当たる。

 まず、企業の「定年」という制度を廃止するべきだろう。定年は、そもそも年齢による「差別」であり、アンフェアな面があるのと同時に、定年以降も元気で有能な労働力を無駄にしているし、定年以前に意欲や能力が衰えた労働力をおそらくは過大な報酬を支払って抱え込んでいるという点で、経済的に非効率的な面のある制度だ。

 もっとも、定年がなくなると、企業は高齢社員の解雇が難しくなる。そもそも雇用契約は、働く人の能力と、雇用する側が提示する条件とを勘案して自由に決まるべきものであり、正社員に関する解雇規制を実質的に緩和することが望ましかろう。つまり、これまでの定年よりも長く雇用される人がいてもいいし、定年のずっと前であっても金銭的な補償の下に解雇される人がいてもいい。

 また、解雇規制の緩和と裏腹の関係にあるが、金銭的な補償条件についても法令に定めておくことが望ましい。

 ところで、定年を廃止し、仕組み上ひとつの企業に長く勤めることができるようになっても、本人が年齢を重ねた後もその会社や仕事に向いているかどうかは不確定だし、会社も継続しているかどうかは不確実だ。

 本人が、転職したり、独立したり、副業を持ったりといったことが、いずれも現在より自由であることが望ましい。人が、より長く元気に、同時に、より自由に働けるようになるのが、最も素晴らしい社会だからだ。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
http://diamond.jp/articles/-/125310
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/382.html

[経世済民121] 6回目のジンクスに向かう世界経済 基本は油価 日経年末2万2千 バブル教訓 時短術 成果主義企業は失敗 会社と自分の価値
2017年4月19日 高田 創 :みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト
6回目のジンクスに向かう世界経済

筆者はグローバルな金融市場に40年近く従事してきた実務家として、日米欧の政策金利の引き上げの連動について「5回のジンクス」議論を過去10年以上にわたって行ってきた。米国がまず動き、欧州が続いて、日本は最後になり、日本銀行が利上げした翌年は、世界経済が同時に減速する――など、5点の共通現象がある。(みずほ総合研究所 チーフエコノミスト/高田 創)
利上げ、日本はいつも最後
翌年、世界経済は同時減速
 いまの局面で、日本の超金融緩和からの「出口」を展望するのはまだまだ先の話だろう。ただし、既に常に先頭ランナーであった米国が利上げで動き出したなか、二番手として欧州中央銀行(ECB)が動くかどうかが鍵になる。過去40年の金融市場の経験則は、欧州の動きが日本の前触れになっていただけに、仮にECBが出口に向かうと日本の出口に向けた観測が急に浮上しやすいことに市場参加者は十分に留意する必要がある。
◆「5回のジンクス」70年代以降の日米欧の政策連動
(1)1970年代以降、日米欧の中央銀行の政策金利引き上げサイクルは一致
(2)以上の連動サイクルで日銀は日米欧の中央銀行で常に最後の利上げ
(3)日銀の利上げの翌年は全て世界同時減速
(4)同時に、世界的な金融市場の変動が生じ、新興国問題も生じる
(5)以上の5局面はすべて原油価格の高騰期と一致
70年代以降、繰り返されてきた
「5回のジンクス」の歴史
 実際、過去の政策金利引き上げの局面を見れば、70年代以降、「5回のジンクス」が成り立っていたことがわかる(図表1)。舞台を、2000年代半ばに実現した5回目を振り返れば、まず2004年に米国準備制度理事会(FRB)が利上げを行い、次いで、2005年にECBが利上げを行い、最後に2006年に日銀が利上げを行った。その順序もそれまでの4回と同じく日本は日米欧のなかで最後だった。2007年にはサブプライム問題とした世界的な経済の同時減速が生じ、翌年のリーマンショックも含め世界的な金融市場の激震となった。しかも、2007年から2008年にかけて未曾有の原油価格の高騰も生じた。
 2000年代は米国のサブプライムローンによる住宅ブームと欧州のユーロ統合ブームに伴う投資拡大が生じたことで、金融による信用の膨張が従来になく大規模であった分、その後の調整も戦後最大規模、未曾有なものになった。その結果、以上、5回目のジンクスのどの項目も当てはまる完全成立となった。当時、日本は、1990年台以降のバブル崩壊後のバランスシート調整に漸く目処をつけつつあったものの、欧米の調整の大波に洗われ、再び深刻な悲観に陥ってしまった。
◆図表1:金融市場の「5回のジンクス」と6回目の展望
(資料)みずほ総合研究所 拡大画像表示
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米国の利上げで
新たな連動局面に突入
 こうした政策金利の連動は、1970年代に為替が変動相場制に移行し、日米欧の金融市場連動が強まったことや、世界経済全体のファンダメンタル(基礎的条件)がお互いが影響しやすくなるシンクロナイゼイションが生じたことが背景にある。そうした中で、為替や金融市場、実体経済を安定させるための制度的インフラとしてG7等での先進国中心の政策協調があった。
 今回の局面では、既に2015年12月から米国の利上げが始まっており、「6回目のジンクス」のサイクルに入ったといえそうだ。世界的にもこれまでの金融緩和一辺倒の動きが転換し、一部、新興国のなかには利上げに向かう国も見られるようになり、世界的な金融政策連動は緩和一辺倒から転換し、利上げも含め出口に向けたサイクルに入りかけている。
 最近のECBの動きを見ても、微妙に出口を模索する動きも見えだした。日本は1990年代のバブル崩壊以降の「失われた20年」の間、続けられてきた低金利政策からの出口戦略を米国の景気回復に後押しされて一気に行う必要がある。米国の回復が続くうち、すなわち、米国の利上げが続くうちに、なんとか早期にマインドを改善させて出口に向かう戦略を描かざるをえない。
 日本の出口戦略は、国債市場への影響も含め、金融機関の経営の健全性、財政の持続性、インフレなどの様々なマクロ環境を同時に目配せする対応が不可欠で、かつ国際的政策連動のなかで行う必要がある。前回の「5回目のジンクス」で、金融危機や米国のITバブル崩壊後からの出口が、結局、「あだ花」に終わってしまったのも、「5回目のジンクス」として国際連動の荒波に翻弄されたことによる。
欧州も「出口」を模索し始めた
日本の金利、ECBウオッチが必要
 日本が悪循環から脱するには、アベノミクスのフレームワークとして、円安−企業収益回復−株高の好循環と内需拡大の実現が必要になる。その目的に沿えば、まだ当面は金融緩和を継続して円安を実現し、同時に信用拡大に戻すことが必要だ。こうした状況を実現するにはまだ数年はかかることから、「結果として」、6回目も利上げは日本が最後になる可能性は高い。日本はバランスシート調整においては欧州に先行しているが、欧州は日本のようにデフレに陥って企業経営者や消費者の心理がが悲観的になりきっていない分、金融政策の出口に向かうハードルは低い。もとより、欧州はドイツの中央銀行のブンデスバンクの伝統に見られるように、インフレに対する不安を根強く持つだけに、引き締めに転じやすい性格を持っている。さらに、今日、ドイツはユーロ安で経常収支をため込んでいるという批判が米国からもあること、マイナス金利の継続に対し欧州金融機関からの不満も根強いことなどの要因があるだけにマイナス金利を正常化させる動きも生じやすい。
 現在の日本の状況だけを見れば、超金融緩和からの出口を議論することはいまだ夢物語の段階だ。だが一方、海外との政策金利の連動の観点から見れば、常に二番手で動いてきた欧州の動向は、日本の金利の動きへの大きな前触れになっていた。それが過去40年の歴史だ。それだけに、6回目のジンクスにおいても、欧州の動きに注目が必要だ。市場関係者とすれば、日本の金融政策に変化はなくても、ECBが出口に向かうことが日本の債券市場における金利観に大きな影響を与えることに留意する必要がある。今後、BOJウォッチャーにはECBウォッチが必要になってきた。日本の金利の動きを占う「炭鉱のカナリア」の役をECBが担っている。
 一方、日本が出口に向かうための絶対条件に、米国が利上げを続けるか、少なくとも利下げ局面にないことも認識する必要がある。すなわち日本が出口に向かう猶予期間は先頭の米国が下げに向かうまでの限られた期間になる。米国の利上げ観測は、年内に何回かということで、予想されている。利上げ継続がコンセサスであり、こうした傾向は2018年までは続くというのが、市場の大勢だ。しかし、2019年、20年まで利上げが続くかは見方が分かれる。もし仮に2020年ごろにかけて、米国が利下げに転じ、そこまでに日本が出口に向かっていない場合、「6回目のジンクス」が成立せず、日本は再度、米国が利上げに向かう次のラウンドまでは、利上げ・出口を待つ必要がある。ただし、日銀は4回目と5回目に出口を急いだ反省があるので、今回は出口を焦らないのではないか。その結果、日本の出口は今回の米国の利上げサイクルでは実現できない可能性もあると同時に、マイナス金利も含めた超低金利政策の長期化のリスク、「永遠のゼロ」リスクもある。

http://diamond.jp/articles/-/125304

【第60回】 2017年4月19日 宿輪純一 :経済学博士・エコノミスト
国際的な物価の基本は「原油価格」にある


 先日ワシントンのFRB本部、IMFや世界銀行のエコノミストと面談してきたが、そこで気がついたのは、原油価格の動きをかなり重視しており、物価の基本として見ていることだった。原油価格を重要なインフレの先行指標としているのである。もちろん、FRBは雇用を特に重視し、失業率よりも賃金上昇率を重視していたが。

 原油価格はWTI(West Texas Intermediate)という指標で見ることが多い。西テキサスは、米国映画でたまに見かける採掘機によって、近代的な原油採掘を始めた地域である(Intermediateとは中流の意味)。今はシカゴマーカンタイル取引所(CME)に買収されたニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX)で取引されている。

 筆者はシカゴ駐在時より先物も専門の一つとしていたが、忘れもしないメガバンクの企画部経済調査室に勤務していた2008年7月11日、原油先物が1バレル(約159リットル)=147.27ドルまで上昇した。その時にはエコノミストのみならず、一般の方々まで皆、200ドルまで上昇するものと考えて、省エネが推進された。しかし、9月15日にリーマンショックが発生し下落。その後、WTIは昨年1月20日に最高値以降の最安値26.55ドルを記録した。最高値の2割以下に下落するなどと、誰が予想できたであろうか。

 資源価格において原油はその中心的な存在である。エコノミストになりたてのころ、原油価格が上昇するとブラジルの通貨や株価が上昇した。ブラジルは原油を産出しないので、なぜなのかよく分からなかったが、ブラジルでは鉄鉱石等の鉱物が採れる。鉱物などの資源価格は、原油価格にほぼ連動しているのである。確かに、原油だけでは製造業は成り立たない。

 時は経ち、最高値を更新していたころには実現するとは思わなかったことが起きた。シェールオイルの採掘開始である。頁岩(Shale)と呼ばれる泥岩の層に含まれている原油のことだが、強い水圧をかけることで採掘が可能になった。主として米国の北部と南部の山岳地帯で産出される。筆者の学生時代には考えられなかったことだが、今や米国が原油生産量1位である(2位はサウジアラビア)。さらにトランプ政権になって生産は増加する。オバマは環境を重視していたが、大統領がトランプになり、より環境負荷の高い掘削方式が許可された。環境よりも開発というわけである。

 その動きを見て、OPEC(石油輸出国機構)とロシア等の産油国が一足先に手を打ち、昨年11月30日に石油価格を上げようとして減産に合意した。OPECはまとまらない組織として有名で、15年ぶりの合意だった。彼らの共通の敵・米国の台頭によって、まとまることができたのである。その後減産目標を達成。特にサウジアラビアは目標以上に減産することで、合意を主導した。5月25日にはOPEC総会があり、サウジアラビアは減産の6ヵ月延長を要望するといわれている。しかし、最近の米軍によるシリア空爆等の中東情勢の悪化で、生産の問題を始めとして、地政学的リスクの高まりも絡まり、原油価格は予想が難しくなっている。

 原油先物にはWTIの他にブレント(Brent)というものもある。ブレントは英国や北欧諸国に囲まれた北海にある油田だ。ブレントは、現在は米国ICE(インターコンチネンタル取引所)に買収されたICE Futures Europe(以前のロンドン国際石油取引所)で取引されている。産地から見てWTIが米国産原油の代表、ブレントは欧州のそれにあたる。中東は地理的近さから言って、ブレントに入る。

 最近のそれぞれの価格の動きは、米国WTIは増産で価格下落、ブレントは中東減産によって価格上昇となっている。本稿で述べたように、原油価格の予想は非常に難しいが、このスプレッド(差)は広がる方向と考えられる。この差を利用したスプレッド取引が、最近の先物市場では盛んに行われている。

(経済学博士・エコノミスト 宿輪純一)
http://diamond.jp/articles/-/125302

 

2017年4月19日 ザイ編集部
日経平均株価は年末までに2万2000円を目指す!

投資のプロは北朝鮮リスクで一時的に株価下落しても好調な米国経済の影響で日経平均株価の高騰を予測!

トランプ氏のアメリカ大統領当選が決まった直後から顕著となった株価の上昇。日米でトランプ相場が到来したが、2017年以降の日経平均株価は一進一退の状態だ。為替が円高傾向となり、トランプ政権に失望する声も高まっている。さらに直近では朝鮮半島やシリアを中心とした政情不安もあり、NYダウにも不透明感が漂っている。
そうしたなかで今後の相場はどう動くのか? 「トランプと仕事をした投資銀行家」ぐっちーこと山口正洋さんと、「トランプ相場を的中させた」マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんという気鋭の2人がズバリ今後の株式市場の行方を先読みする!(4月21日発売のダイヤモンド・ザイ6月号より先出し公開!)
12月半ばで日本株のトランプ相場は終わった!
威勢がいいだけで何も決められないトランプ大統領
──昨秋からトランプ相場と呼ばれる株価の上昇が続いてきましたが、足元で変調の兆しがうかがえますね。
山口 正洋(ぐっちー)さん
トランプと仕事をした投資銀行家。モルガン・スタンレーなどを経てブティックの投資銀行を開設。著書多数。
ぐっちー 実は、1980年代に仕事上でトランプ氏と関わったことがあって、とても実行力のある人物だという印象を受けました。ところが、3月24日にトランプ政権はオバマケアの代替法案可決に失敗してしまった。共和党が過半数を握っている議会において、公約の目玉を通せなかったのは大きな痛手でしたね。
広木 オバマケア撤廃でいきなりつまずいたことで、大型減税やインフラ投資などが先送りされかねないとの懸念が台頭してきましたからね。
ぐっちー 8年前にオバマ氏が大統領に就任した際には、矢継ぎ早に法案を可決させました。2008年9月のリーマンショックで金融危機が深刻化していたとはいえ、オバマ氏率いる民主党は議会で過半数を割っていた。そのことと対比され、トランプ氏は威勢だけはいいが、何も決められないとの烙印を押されかねません。
広木 大きく膨らんでいたトランプ氏への期待が急速にしぼんだ格好ですね。ただ、米国株と違って日本株におけるトランプ相場は、実質的に1ヵ月ちょっとで早々と終わっているんですよ。
 トランプ大統領の誕生決定直後から日米の金利差が拡大。そのためドル高・円安が加速しました。ですが、日米の金利差は12月15日にはピークをつけて、円安トレンドが終焉。以降の日経平均株価は2万円に到達できずに頭打ちとなっています。再びトランプ大統領の政策への期待が高まる可能性もありますが、少なくともトランプ相場の第1フェーズはもう終わっていると考えるのが賢明でしょうね。
若年労働人口も増加し、米国景気は絶好調!
米企業は2ケタ増益、良好な経済指標も続々
──だとすれば、トランプ氏が有言実行を果たすまで、相場は軟調だということでしょうか?
広木 隆さん/マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
アベノミクス相場を的中させた人気ストラテジスト。外資系運用会社やヘッジファンドでファンドマネジャーを歴任。2010年より現職。
広木 実際のところ、トランプ氏が打つ政策への期待感だけで株価が上昇したわけではありません。米国の景気がいいから、相場がそのことを反映してきたのです。
ぐっちー その点に関しては、私も大いに納得。失業率などいろいろな指標を見ても、米国経済に対して、ものすごく強気のスタンスです。
広木 トムソンロイターによると、S&P500採用銘柄の利益の伸びは2016年第4四半期が7.7%となった模様です(2月23日時点)。以降、四半期ごとに2ケタ増益が続く見通しで、米国企業の業績回復が株高の背景にあるのは間違いありません。
ぐっちー 米国は若年労働人口が増加。放っておいても経済が成長します。私は友人と米国でレストランチェーンを共同経営していますが、それは売上げが自然と右肩上がりで拡大していくからです。
広木 3月の消費者信頼感指数が17年ぶりの高水準を記録するなど、「○年ぶり」と表現される良好な経済指標の発表が続いており、足元の米国経済もまさに絶好調ですね。
米国の失業率は4.7%まで低下。ほぼ完全雇用の状況で、今後は賃上げ圧力が高まる可能性が高い。
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日本は本当に世界景気敏感株!?
最近は株価の“為替離れ”が進んでいる!
──米国経済の活況は日本経済にも好影響を及ぼしそうですが、その一方で為替がやや円高気味ですね。
広木 ドル/円と日本株は相関性が高いと言われていますが、局所的な動きは別として、株価の“為替離れ”が進んでいます。その背景にあるのは、上場企業の業績改善です。2017年3月期の業績は2期ぶりに最高益を更新する見通しで、円高の影響で売上高こそ減るものの、高付加価値の製品・サービスで採算が改善します。円高という逆風を跳ね返し、企業の稼ぐ力が高まっている格好です。
ぐっちー ただし、日本には約3600社の上場企業が存在するものの、その大半がローカル(内需系)なんですね。そういった企業もぬるま湯の国内にとどまっていないで世界に攻めていかないと、知らぬ間に茹でガエルになってしまいますよ。
広木 少子高齢化が進む日本で、もはや経済の自律的回復を望むのは難しい。すでに今日の日本経済を支えているのは、世界的な景気拡大です。言い換えれば、もっぱら海外で稼ぐグローバル企業が圧倒的に強くなっていくことを意味しています。
ぐっちー 岩手で学生を教えているんですが、優秀な子は公務員になっちゃうんですよ。市役所とか。本当にもったいないと思いますよ。
広木 なるほど。とはいえ、私のメインシナリオは、2017年の日本株に強気。2018年3月期の業績を織り込み始めれば、日経平均株価は2万円を目指す展開になるはずです。アナリストによる日経平均株価の予想EPSの平均値は1460円。PER13.7倍でも2万円で、年末には2万2000円も視界に入ります。
「北朝鮮」と「米国の金融政策」、2つのリスクに注意せよ!
──注視すべきリスク要因としては、どんなものが挙げられますか?
広木 欧州の選挙がショックを与えても一過性のものでしょうし、中国経済も安全圏にあります。
ぐっちー ただ、何かの拍子に暴落するというアクシデントは相場につきものです。先々でも待ち構えているでしょうし、私なら大きく下げたらすかさず米国株を買うスタンスで臨みます。
広木 依然として米国金利は歴史的に低水準。暴落してもリーマンショックのように完全に市場がクラッシュすることはないはずです。
ぐっちー それよりも、私が気掛かりなのは戦争。北朝鮮が切羽詰まって海以外にミサイルを放つ可能性は十分に考えられ、米国内ではその前に先制攻撃すべきだという議論も出てきています。
広木 一方で、仮に短期で日本の地政学的リスクが解消されるなら、日本株はいったん暴落したとしても間違いなく株価は爆騰しますね。一方、米国の金融政策については注視する必要があります。ただし、利上げではなく、4兆5000億ドルに膨らんだFRB(連邦準備理事会)のバランスシートの縮小開始です。
ぐっちー FRBのイエレン議長の任期は2018年2月まで。すごく責任感の強い人物であるだけに、在任中にバランスシート縮小を決意する確率は50%以上でしょう。FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録で言及していますし、他のスピーチでもさりげなくほのめかして伏線を張っているようにうかがえます。
広木 もはや打つ手が残されていないものの、2018年の4月には黒田日銀総裁も任期満了となります。長短金利の操作を行なう「イールドカーブ・コントロール」についての政策変更はあるかもしれません。それらのリスクを念頭に、暴落を待って仕込んでおきたいですね。
米国は金融危機以降、日本は安倍政権誕生後にマネタリーベースを拡大したが、米国はすでに縮小局面に。
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「成長株」「株主優待株」は、
ダイヤモンド・ザイ6月号をチェック!

 今回紹介したようなリスクを踏まえたうえで、今はどのような銘柄を中心に物色すればよいのか。4月21日(金)に発売になるダイヤモンド・ザイ6月号は、今から10年以上は成長が見込める「超」成長株を選りすぐり!  これから世界が直面する3大テーマを解決しうる、IoTやエネルギー効率化、ヘルスケアといった7分野の株を紹介。トランプ相場のような短期的な相場に左右されない有望株を46銘柄も紹介しているので、ぜひチェックを。
 ダイヤモンド・ザイ6月号の別冊付録は、日経平均株価などに比べて下落相場に強い株主優待株を掲載した「株主優待株 完全カタログ2017」。上場1352銘柄を全て網羅するだけでなく、高利回り順にランキング形式で紹介! 利回りトップは33.1%と、株主優待投資家のみならず、これから株式投資を始めたい人も必見の内容だ。

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http://diamond.jp/articles/-/125033

 


今だから話せる「バブルの教訓」?熱狂の中心にいた二人の武勇と悔悟
あのカネは一体、どこに消えたのか
現代ビジネス編集部
プロフィール

2017年2月に刊行された横尾宣政氏の『野村證券第2事業法人部』は8万部突破、2016年の10月に刊行された國重惇史氏の『住友銀行秘史』も13万部と、大きな反響を呼んでいる。いずれもバブル期の金融機関の内実を当事者が実名で綴った話題作だ。

あのとき何があったのか。いま記憶にとどめるべき「バブルの教訓」とは何か。横尾氏と國重氏に本音を語ってもらった。

証券・銀行の「暴力の差」

――金融関係者の間では、「あれ、読みました?」と、両書を読んだかどうかが挨拶代わりになっていると聞きます。どちらもバブル期の金融機関の内実を当事者が実名で綴ったものですが、なぜ今、あの時代に関心が高まっていると思いますか。

横尾 國重さんの本も、私の本もそうですが、バブルがはじけたばかりの頃ではとても書けなかったと思います。バブルを煽った当事者たちに、どこかやましい気持ちもあって、なるべく真相を隠そうとしていたんです。

しかしバブル崩壊から25年以上が経ち、亡くなられた方やリタイアされた方も増えてきた。それでようやく、あの時、何が起こっていたのかを正直に話せる時期が来たということでしょう。

國重 確かに、時間が経ったことは大きいでしょうね。私はもうひとつ、2020年の東京オリンピックに向けて、今の日本経済にバブルが生まれつつあることも背景にあると思う。

金融機関の関係者をはじめ、現代の多くのビジネスマンは、東京五輪が終わればバブルは弾けてしまうと懸念している。その時が来たらどうなるのかを、過去の歴史から学ぼうとしているのではないでしょうか。

――お互いの著書を読んでの感想は?

國重 証券業界というのは大変な世界だな、とあらためて思いました。時にはお客さんが損をするとわかっていても、株を売らなきゃいけないんですから。

國重氏
横尾 私は就職する際、住友銀行の内定ももらっていたので、もし入社したらどうなっていただろうと想像しながら國重さんの本を読みました。やっぱり私には向いていない業界ですね(笑)。

國重 本を読んでよくわかったのは、ひとくちに金融業といっても、銀行と証券では違いが大きいということ。

私たち銀行マンは「減点主義」ですから、ひたすらお行儀よく、波風立てずに仕事をしなければいけない。対して証券業界、特に野村證券の場合は「とにかくカネを稼いできた奴が一番偉い」というカルチャーがあったのではないかと思います。

横尾 そうかもしれません。銀行マンのように慎重な人は野村にはひとりもいなかった。みんな気が短くて、アイディアを思いついたら即、行動に移す人間ばかりでした。

國重 銀行は、相手の将来性や担保など、会社が決めた規定に基づいてカネを貸せばいい。でも証券マンは株を売るために、自分でいろんな理屈を考えなければいけないんですね。

横尾 むしろ証券マンは、利回りが決まっている商品を売るのは苦手なんですよ。たとえば昔、「中期国債ファンド」という商品がありました。国債を中心に運用するので安全性が高く、元本割れしないというのが売りですが、そのかわり大きく儲かることもない。こういう「夢のない」商品は売りにくかったですね。

普通の株なら、「これからの日本の経済はこの分野が伸びる。だからこの銘柄がお勧めです」という具合に、ストーリーを自分で組み立てて売ることができるんですが。

横尾氏
國重 そんなこと言って、また損をさせるんじゃないですか(笑)。営業マン時代のえげつない話を読んで、「どれだけギラギラした人なんだろう」と思っていたんですが、本を読んで描いていたイメージとは違うのでホッとしました。

横尾 その言葉、そのままお返しします(笑)。

――それにしても、銀行と証券では同じ金融業と言っても、だいぶ違う。

國重 もうひとつ驚いたのは、かつての野村證券では上司が部下に暴力を振るうのが当たり前だった、ということです。横尾さんもずいぶん殴られたとか。

横尾 拳で思い切り殴られるのは日常茶飯事でした。怒った上司が電話機を部下に投げつけたり、ガラス製のテーブルマットをたたき割る、なんてこともありました。課長が部下の奥さんを呼びつけて「奥さん、こいつのせいでみんな迷惑してるんです。なんとかしてください」と怒鳴っているのを見たこともあります。

國重 当時はパワハラなんていう言葉もなく、住友銀行にも部下から「暴力部長」と呼ばれている人がいました。私はその部長が部下にマッチ箱を投げつけているのを見たことがあります。それで「暴力部長」ですから、野村に比べればかわいいものです。

横尾 部下のほうも黙って殴られているだけじゃなく、反撃するんですよ。

私も若いころ、一番怖いと言われていた常務に胸ぐらをつかまれて「お前、ぶち殺してやろうか」と凄まれたので「殺す勇気もないくせに、何言ってやがる」とやりかえし、4時間くらい口論したことがあります。

最後になぜか常務が大盛りのざるそばとかつ丼を注文して、「偉そうなことを言いやがって。これ食ってみろ」と言われて終わった。

國重 飯を食わせて和解するわけですか(笑)。

NEXT ?? 使えない社員を置くのは罪だ

「2、3億円損しても大丈夫」という客がいた

國重 横尾さんの本を読んでいてすごいと思ったのは「俺がスッた3億が、君の肥やしになったならそれでいい」と言ってくれるお客さんがいたということ。このお客さんは株じゃなく、「横尾宣政」という人間を買ってくれたのでしょう。

横尾 私が若いころに心がけていたのは「2、3億円損しても大丈夫」というお客さんを見つけることでした。いくら信用してもらっても、億単位のおカネを出してくれるお客さんはそうはいませんからね。これはという人のところには、2年でも3年でも通い詰めて、株を買ってもらうんです。

國重 3年も通い詰めるのは、なかなかできることじゃありませんよ。横尾さんは「野村證券で一番、稼いだ男」と言われたそうですが、本を読むとそれも納得できます。

「証券業界の内実をここまで書くのか…」と業界を震撼させた一冊(amazonはこちらから)
横尾 國重さんも、支店長時代にずいぶん預金を増やしたそうですね。

國重 渋谷の支店長を引き継いだ時、預金残高は50億でしたが、10倍の500億まで増やしました。その際、部下に「今度の支店長は、いずれ頭取になる逸材です」とあちこちで触れ回るようにさせた。その後で営業に行くと、みんなどんどん預金してくれるんです。コイツと付き合っておいたら後で得するかもしれない、と思いますから。

ただ、その話が行内でも有名になっちゃって、全国の支店長がみんな同じようなことをやりはじめたので、当時の住友銀行には頭取候補が100人もいた(笑)。

横尾 支店長にはどのくらいのノルマが課せられるんですか。

國重 当初は、預金と貸金の合計で500億にしてくれと言われていました。でも私は、どうせなら預金だけで10倍にしようと、厳しい数字を自ら課したんです。

横尾 國重さんは、同期で一番、最初に取締役になられたそうですが、やはり出世する人は業績を上げるんですね。

國重 ところが、そうとも限らないんですよ。証券会社と違うのかもしれませんが、銀行は支店で業績を上げなくても出世する人がいるんです。「あいつは本部向きだから」という理由で、経験を積ませるために支店長になったという人もいる。要するに管理部門の人間ですね。こういう人は、さしたる業績を上げなくても出世する。

横尾 証券会社では考えられませんね。特に野村證券は「ノルマ証券」とか「ヘトヘト証券」などと呼ばれるように、ノルマ至上主義。業績を上げなければ絶対に出世できないし、ノルマを達成できない社員は辞めざるを得ないように仕向けられる。たとえば3か月ごとに転勤させて、全国を転々とさせるとか。

國重 それ、完全にいじめですよ。成績の良くない部下の扱いは銀行とは正反対ですね。銀行の場合は、あまりに辞める部下が多ければ「上司の管理に問題がある」とみなされます。上司の責任が問われる。

横尾 それは野村證券では聞いたことがないですね。使えない社員を置いておくほうが罪だ、という企業風土ですから。

100億単位のカネを簡単に貸していた

――おふたりの現役時代はバブル真っ盛り。取り扱うおカネの量も、今とはケタ違いだったんじゃないですか。

國重 先日、『住友銀行秘史』の元にもなっている25年前につけていたメモ帳を改めて眺めてみたんですが、当時は1件あたり500億とか600億円という融資がしょっちゅうありましたね。今の時代なら、5億円程度でも、貸すとなれば銀行はかなり慎重になるでしょうが、当時は100億単位のカネを簡単に貸していたんです。

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横尾 いちいち担保を取っていたんですか?

國重 取らないことも多かったです。企業に融資する場合は、プロジェクトの中身もろくに調べずに貸していました。私が役員になって支店長をしていた時代、ある会社に「裸」で4億ほど貸したことがあります。「裸」というのは無担保、無保証のことで、「何かあったら俺が責任を持つ」と言って貸した。ところがその会社は潰れてしまって、結局カネは返ってこなかった。

横尾 責任は取らされたのですか。

國重 副支店長以下、部下は減給とか戒告処分を受けました。ところが私には何の処分もなかったんです。なぜなのか人事部に聞いてみると、役員は処分しないんだ、と。「役員を処分すると、その人を役員に引き上げた経営会議のメンバーの能力が問われてしまうから」とのことでした。

横尾 億単位の焦げ付きを出してもお咎めなしですか。“カネ余り”の時代ならではの話ですね。私たちの業界だと、企業が信託銀行に資金を委託し、証券会社が売買を行う「特定金銭信託」――通称「特金」が、80年代後半の株価急騰で大流行しました。1984年3月末での残高が2兆5789億円だったのに対し、1989年9月末には46兆7737億円にまで膨れ上がった。

國重 5年ちょっとで20倍近く伸びたんですか。企業もカネが余っていたんですね。

NEXT ?? 「天皇」と呼ばれた人たち

釈然としない気持ち

――札束が飛び交うバブルの渦中にあって、このままでいいのかという疑問を感じることはありましたか。

國重 正直言って、当時はそんなことは思わなかった。むしろ、まだ日本円が過小評価されていたから、これからどんどん円高になって、私たちの生活はずっと豊かになるだろうと楽観していました。

横尾 私は懐疑的でしたね。本来、株というのはその企業の将来性を見て買うもの。ところがあの頃は、企業が優良不動産を持っているというだけで株価が上がった。証券会社も企業の将来性を調べず、その会社が持っている不動産の価値が高ければ買おうとなってしまった。

國重 そこは銀行も同じですね。不動産に投資するという話があれば、その土地の価値をろくに調べず、いくらでも貸し込んだ。

横尾 日経平均株価が3万3000円くらいまで上がったとき、私はすでに第2事業法人部を離れていましたが、かつての同僚たちに「これはおかしい。もうすぐ暴落するかもしれないから、株は一度、全部売ったらどうか」と提案したことがあります。ただ、その後もしばらくは株価が上がり続けたため、私の提案は却下されてしまいました。

――その横尾さんの予感は現実となります。1989年末に日経平均株価は過去最高となる約3万8900円を記録するものの、90年代に入ってバブルは崩壊し、株価は暴落。そして同じころ、住友銀行や商社のイトマンを舞台とする「イトマン事件」が起こりました。

横尾 「イトマン事件」については私も以前から関心を持っていましたが、水面下で何が起こっていたのかは知りませんでした。今回、『住友銀行秘史』を読んでみて、國重さんが重大な役割を演じていたことがよくわかりましたよ。

國重 あの頃、住友銀行はイトマンに対しては何の調査もせず、言われるままに数百億円単位でどんどん貸し込んでいた。他行も「住友が貸すならウチも貸そう」と、何も考えずに融資していたんです。

そんな状況に疑問を持った私は、行内のさまざまなルートを辿って調べてみたところ、融資したカネがイトマン経由で闇社会に流れていたことがわかった。「何とかしないと住友がイトマンに食い尽くされてしまう」との危機感から、マスコミにリークしたり、監督官庁の大蔵省に告発文を送ったりしたんです。

横尾 あの事件には、住友銀行の「天皇」と呼ばれた磯田一郎会長やイトマンの河村良彦社長、さらに伊藤寿永光氏や許永中氏などのバブル紳士、多くの人物が登場しますね。

國重 本の中でも120人くらい登場しますからね。それだけ多くの人間が関わっていたこともあって、事件の全体像は見えにくかった。2005年には河村氏、伊藤氏、許氏の判決が確定しましたが、イトマンに融資したカネが最終的にどこに流れたのかは結局、解明できなかった。釈然としない気持ちは今も残っています。

「投資信託って何ですか」と刑事は聞いた

――一方の横尾さんは2011年に発覚したオリンパスの「巨額粉飾決算事件」に巻き込まれ1・2審では有罪判決を受けました。

國重 横尾さんの本の後半に事件の詳しい経緯が書いてありましたが、「イトマン事件」に比べれば登場人物はずっと少ないけれど、スキームがすごく複雑です。

横尾 ごく簡単にいえば、オリンパスが90年代以降、投資で発生した損失を隠していたというものです。オリンパスで財務部長、副社長、監査役などを歴任したある人物が、独断で資金運用を行ない、莫大な損失を出したために起こった。

スキームが複雑に見えるのは、一貫した損失処理の方針がなく、そこにオリンパスのカネを預かる海外の銀行の思惑も絡み、その都度、その都度、場当たり的に処理してきたからです。

私は野村證券時代、この人物に「無茶な運用はおやめなさい」とさんざん忠告していたのに、彼は聞き入れなかった。そればかりか、後になって粉飾の「指南役」は私だったなどと事実に反する証言をしたために、私も逮捕されてしまったんです。

國重 これだけ入り組んだスキームを、捜査当局は理解できているんですか。

横尾 わかっていないと思います。最初に任意の事情聴取をした刑事さんから言われたのは「投資信託って何か教えてください」ということでしたから。

國重 裁判官もわかってないんじゃないかな。殺人とか単純な詐欺事件と違って、こんな複雑な事件をいきなり理解しろといっても無理がありますから。

横尾 捜査当局が用意した「ストーリー」に沿って判決が下されたとしか思えません。私は2年10ヵ月勾留され、他にも同じ会社の仲間2人も同じくらい拘置所に入れられた。

拘置所の方が「特捜案件で3人一緒に捕まって、2年も3年も勾留されているのに、誰1人仲間を売らない。そんな事件はない。普通は何もしていなくても、自分が罪を逃れるために仲間を売る」と言っていました。

取り調べでは、2人とも「お前が横尾を売ったら、すぐに出してやる」と何回も言われたそうです。でも、あまりに捜査当局の作りあげたストーリーが荒唐無稽で……。

國重 仲間を売るにも、売れなかった?

横尾 そういうことです。ですから、我々はあくまで最高裁で無罪を勝ち取るつもりです。

NEXT ?? バブルの教訓

どちらも質が落ちた

――「イトマン事件」「オリンパス事件」ともに、発生した背景にはバブルという時代がありました。あれから四半世紀が過ぎて、日本の社会はどう変わったのでしょうか。

國重 誤解を恐れずに言えば、事業の将来性などを見て、そこにおカネを貸していく以上、バブルというのは当然の現象なんです。担保なんてついでにあればいいよね、という感じで、まだ実態がないわけですから。

ところが、バブルが弾けた反動のせいで、今の銀行はとても臆病になってしまった。どんなに少額の融資の場合でも、必ず「担保はありますか」と聞くでしょう。これでは世の中にカネが出回らないし、景気も上向かない。

横尾 バブル後から現在まで「失われた20年」と言われますが、私は金融当局の責任も大きいと思う。

証券業界で言えば、不動産投資の相場がバブル崩壊で終わったなら、次の相場を作ればよかったんです。たとえば、「半導体相場」とか「IT相場」といった具合に、伸びる産業に資金が集まるような相場を作ればよかった。

ところが90年代に大蔵省は、証券マンが顧客に「推奨銘柄」を勧めることを禁じてしまった。証券マンがおすすめの銘柄を伝えないから顧客は株を買うことをためらい、株価は低迷した。そんな規制がなければ、今ごろ日経平均株価は5万円台まで上がっていたと思いますよ。

國重 今は、企業が「コンプライアンス」を気にしすぎているという側面もありますね。もちろん、バブル期のように何でも融資すればいいというわけじゃないけど、将来性のある企業に対しては、少しくらい担保が不足していても融資しようという気概をもった銀行マンが減った。

コンプライアンスが国を亡ぼすことにならなければいいのですが。

横尾 バブル後、証券マンの質も下がりましたね。顧客が何を求めているのかを理解できる人が少なくなった。全体的に能力が落ちているうえに、コンプライアンスでがんじがらめにされるから、新しい相場がなかなか生まれてこない。

――著書の発売後、おふたりにはどんな声が届いていますか。

國重 それがね、住友銀行時代の仲間をはじめ、誰も私に感想を言ってこないんですよ。おそらく読んだのでしょうが、「お前ばっかりカッコつけやがって」と思われているのかもしれない(笑)。毎年、銀行時代の先輩や同僚から年賀状が届くんですが、今年は1通も来なかったくらいです。

横尾 身近な人からは、「オリンパス事件の真相がわかった」と声をかけていただきました。あと本にも登場する方から、「これはリアルでいい」とメールをいただきました。

ただ、ネットの評判などを見ると、若い方からは手厳しいご意見も多いですね。「損をする株を売りつけるなんて信じられない」とか「証券マンは人間じゃない」とか(苦笑)。

國重 今の若い人の感覚から見れば、バブルの頃はめちゃくちゃに感じるかもしれません。でも、そういう時代が確かにあって、銀行マンも証券マンも自分の判断で融資したり、株を売ったりしていた。不謹慎かもしれませんが、面白い時代でした。

横尾 そうですね。先ほど國重さんがおっしゃったように、なんでもかんでも有担保主義になってしまって、日本経済に夢を語れなくなってしまった。これでは「失われた20年」どころか、30年、40年前の日本に戻ったのと同じです。

どの会社が10年後に伸びる、だからそこに投資しようというふうに切り替えないと。それこそがバブルの教訓だと思います。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51479

 


2017年4月19日 菊原智明 :営業サポート・コンサルティング代表取締役
残業しないトップ営業マンがやっている「超簡単時短術」


仕事がなかなか終わらない。ついついネットサーフィンなどをしてしまい、無駄な時間を過ごしてしまう――。そんなあなたは、少しでも仕事を効率的に進めるために、何かしらの時短術や仕事術を参考にしたいと考えるだろう。実は、多くの時短術・仕事術のなかでも、非常に簡単で誰でも知っているが、意外なほど活用されていないものがある。驚くほど効果が高い方法なので、ぜひとも試してほしい。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

超簡単で効果が高い
「やることリスト」

 世の中にはさまざまな時短術や、仕事の効率アップのためのノウハウがある。「机の上を整理する」といった簡単なものから、体や生活のリズムを利用する(参考『残業しない「トップ営業マン」が実践する“3つのサイクル”』)といったちょっと難度の高いものまで。使うか、使わないかは別として「時短ノウハウ」は知らないよりは知っていた方がいい。実際に、残業しないで結果を出している人は、実にさまざまな工夫をしているからだ。

 このような時短ノウハウの中で「知っているけどやっていない」というものも、たくさんあるだろう。その代表といえるのが「やることリスト」ではないかと思う。

 実はこれが最も簡単で、しかも、ダイレクトに時間短縮につながる。現在、私は営業研修の他に「時間術」の研修もさせていただいている。時間術の研修の際、 参加者に向かって「やることリストを知っていますか?」と聞くとほぼ全員が手を上げる。さらに「やることリストを使うと効率的に仕事ができると思いますか?」という質問に対してもほぼ全員が手を上げる。

 やることリストの効果は、誰しも理解しているのだ。

 しかし、「では実行している人は手を挙げてください」と聞くと、途端に手は上がらない。時には一割以下になることもある。効果があるのは十分承知なのにもかかわらず、やっていないノウハウだと言えるだろう。これをやらない手はない。

4ステップで作成する
シンプルな方法

 やることリストの方法は、いろいろあると思うが、ここでは私が長年実行しているやり方についてご紹介させてほしい。この方法は簡単で、次の4ステップになっている。

 (1)前日に“やるべき仕事”と“時間が空いたらやりたいこと”をリストアップする
 (2)メモ用紙に優先順位順に書きこむ
 (3)会社に行ったら順番にこなしていく
 (4)終わったら斜線で消し、新たに思いついた項目を書き加える

 以上、非常にシンプルな方法だ。

 私のおススメは「時間が空いたらやりたいこと」を書くことである。仕事だけでなく、「将来のための本を買う」「週末の飲み会のお店をネットで調べる」といったことでもいい。ぜひ、試してみてほしい。これを書いておくと、仕事へのモチベーションが数段上がるのだ。

 私はメモ帳に書いているが、スマホやタブレットを使ってもいいと思う。実行しながら自分がやりやすい形を見つけてほしい。

やることリストで
無駄な時間が激減する

 やることリストの最大のメリットは無駄な時間が激減することだ。仕事が遅い人は決まってスタートが悪い。過去の私もそうだったのだが、出社してもなかなか仕事を始めない。

「まずはウォーミングアップだから…」と言い訳をしながら同僚との雑談や昨日のスポーツの結果確認などに時間を費やしてしまう。その後もコーヒーを飲みながらメールチェックからのネットサーフィン。気づいたらお昼近くになり《早めにランチを食べて午後から本腰を入れてやるか》となってしまう。こういった日は午後になってもエンジンがかからないのだが……。あなたも意味もなく、ネットサーフィンしたり、ユーチューブを30分も1時間も見てしまった、なんていう経験があるのではないだろうか。

 もしこの時、やることリストを活用していたらどうだろう。おそらく「無駄な時間」を過ごすこともなかったはずだ。「やること」が明確に決まっていれば無駄な時間を過ごすことなく仕事に取りかかれるものだからだ。

 “やることリスト”を活用しただけで無駄な時間が減り、自ずと残業時間も減っていく。ぜひ騙されたと思って実践してほしい。これを実践しても、残業になってしまう人は次の方法をお試しいただきたい。

 始業時間前の時間を活用する方法についてご紹介するのだが、おそらく《いったいこの時間帯の給料は誰が出すのか?》と疑問を持つ方もいるだろう。会社によっては「残業代は出すが、早出については対応していない」といったケースもある。会社が給料を払ってくれなかったとしても、この時間の仕事は価値があり、十分にリターンがある。やるやらないは別として、知っておいて損はないので、ぜひこちらも参考にしてほしい。

 以前、私が20代の営業マンに対して個人的にコンサルティングをした時のことだ。その営業マンの一番の悩みは、とにかく処理する仕事が多すぎることだった。計画通り仕事を進めていても、突然仕事が舞い込んで訳が分からなくなる。バタバタしているうちに仕事が溜まっていく。結果的に、ほぼ毎日が深夜までの残業になってしまうという。

 実は、私自身も住宅メーカーの営業マン時代に、この営業マンと同じような経験をした。《ミーティングが終わったら明日の資料を作ろう》とパソコンを開いた途端、お客様から「すぐ現場に来て!」という電話が入る。その後も本社から「今日中に書類を出し直してください」と言われたり、上司から予定外の仕事を頼まれたりする。

 予定通りに行く日の方が少なく、予期せぬ出来事が起こる日の方が圧倒的に多いのだ。バタバタと動き回り、やっとのことで手が空いた時は定時の時間をとっくに過ぎている。こうして深夜まで残業になっていった。

やることリストに加え
忙しい日だけ始業時間前出社


菊原智明さんの『残業なしで成果をあげる トップ営業の鉄則』(明日香出版社)が好評発売中。 231ページ、1620円(税込み)
 そこで、私はこの問題に対して「やることリスト」に加え、「忙しい日だけ始業時間前出社」を実行した。これで残業時間は劇的に減り、ついには定時帰宅が可能になったのだ。

 こういった経験もあったので、私はその営業マンに対し、まずは「やることリスト」の活用をおススメした。それに加え、仕事が多い日はだけは「10分でも20分でもいいので、早く出社して雑用を済ませる」ようにアドバイスをした。やり残した仕事をこの時間でしてもいいし、今日やるべき仕事を少しだけやってしまってでもいい。

 やり残した仕事を片づけると気分がいいし、やるべき仕事に少し手を付けただけでも《すでにひと仕事をした》といった優越感が味わえる。いいスタートを切れた日は間違いなくクオリティの高い日になっていくものだ。

 それから3ヵ月後――。その営業マンから「やることリストを活用し、さらに週に2日だけ早く出社するようにしましてね。そうしたら逆にやることがなくて困っていますよ」と報告を受けた。それを聞いた途端《時間の問題は解決したんだな》と確信した。その営業マンはよっぽどのことがない限り残業をしなくなったという。

 結果を出し続ける営業マンは、やることリストを上手に活用し、時間を効果的に使っている。仕事に追い回されたりせず、逆に仕事を待ち構えているものだ。

 残業を軽減するためのポイントは、出社したらすぐに始められるようにリストに書き込んでおくことだ。そして仕事に追いかけられるのではなく、意識的に仕事を追いかける形をつくること。

 このような状況になれば残業時間は劇的に軽減される。時間管理に困っている人はぜひ「やることリスト+忙しい日だけ時間前出社」を試してほしい。
http://diamond.jp/articles/-/125309

 

2017年4月19日 西尾 太
「成果主義」を絶対視する企業はなぜ失敗するのか


成果主義は重要だが、それだけを評価軸にするのはあまりに危険――。『人事の超プロが明かす評価基準』の著者で、人事コンサルタントの西尾太氏はそう警鐘を鳴らす。では、成果主義の問題点はどこにあるのか。

欧米型成果主義を導入するも
結果的にほとんどの企業が失敗

 個人的な主観に左右されない、最も公正な人事評価として考えられるのは、数字や売上などの「成果」のみで判断する評価方法でしょう。この発想に特化したのが、いわゆる「成果主義」です。これは、一般的には3ヵ月〜半年という短期間のスパンで目標を設定し、業績の結果のみで人事評価や報酬を決定します。

 バブル崩壊後の1990年代〜2000年代前半にかけて、多くの日本企業は、従来の年功序列型の報酬制度が維持できなくなり、欧米型の成果主義の導入が一大ブームになりました。

 ところが、業績を上げるために導入されたはずの成果主義は、結果的にはほとんどのケースが失敗に終わっています。

 売上以外は数値化できない「成果」というものの定義の難しさ。短期間の過酷な目標設定による過度のストレス。自己の成績のみに邁進することで生じる、人間関係の悪化。失敗を恐れて、無難な目標に走りがちになるチャレンジ精神の減退、および、社員のモチベーションの低下……、数々の問題点が浮き彫りになったのです。

 富士通や三井物産など、一度は成果主義を導入したものの、大幅な軌道修正や見直し、あるいは撤廃を余儀なくされた会社も少なくありません。

 ただ、その一方で、成果主義のブームから10年が経ち、「成果」を最も重視するという考え方は、日本でも広く定着してきています。

成果を重視するのは当然だが
数字だけを基準にすると危険


『人事の超プロが明かす評価基準』西尾太 著 三笠書房刊 1300円+税
 月刊誌『THE21』(2015‐4/PHP研究所)の特集記事「いつも評価が高い人vs.なぜか評価が低い人」のアンケート調査で、大変興味深い結果が出ています。

「あなたの会社の人事評価で最も重視されているのは何だと感じますか?」という質問に対して、評価「される」側の回答の1位は「個人の成果」(38・8%)。それに対し、評価「する」側が重視している項目の1位も、まったく同じ結果(38・8%)でした。

 さらに、「何を最も重視する人事評価制度だと、納得感が高いですか?」という質問に対しても、評価「される」側の回答のトップは「個人の成果」(39・8%)という結果になっていたのです。

 多くの企業の不明確な評価基準や、上司の好き嫌いによる不公正な評価などに対する不満が、自分の頑張った結果が公正かつダイレクトに反映される「成果を重要視する人事制度」を望む声になっているのかもしれません。

 成果を重視することについては、私も異論はありません。給与とは、会社に提供した価値の対価ですから、成果を重視するのは当然だと思います。

 ただし、数字や売上「だけ」を評価基準にしてしまうと、多くの危険を伴うことになります。

 ある企業の経営者から、こんな相談を受けたことがありました。

「うちの会社のある部署では、部下は軒並み評価が低いのに、その上司である課長だけが飛び抜けて評価が高くて、自分だけ多く報酬をもらっているんだ。部下の評価が低いのは、上司である課長の責任なのに、こんな状況はおかしい。そんなことにならない人事制度にしてほしい」

 調べてみると、この会社の人事制度は「売上」だけで評価される計算式になっていて、顧客からクレームが入ると、その人の評価は下がるという仕組みになっていたのです。

 つまり、部下はクレームの数で判断されるのに、上司は「売上」だけで評価が決まるので、いくらクレームがあっても「売上」さえ立っていれば、上司だけは高い評価を得られるというわけです。

 部下の評価は軒並み低くて、上司だけが高いなんて、あまりにもおかしな話です。

 売上「だけ」を評価基準にしてしまうと、このような事態が起こり得るのです。

成果主義は定性的評価を含めた
さまざまな評価軸の1つ

 成果主義の問題点が浮き彫りになった有名な例といえば、富士通や三井物産です。

 たとえば三井物産では、1999年に徹底した成果主義を導入しました。しかし2002年〜2004年にかけて、立て続けに大きな不祥事を引き起こします。

 短期的な成果・結果主義が引き起こした事案でした。もともと三井物産は、マニュアル化できないノウハウを先輩から後輩へ伝え育てる「人の三井」といわれ、それが強みでしたが、個人成果偏重の制度を導入してから、「業務知識や人脈を人に教えると損」などといい出す社員が出てしまい、「人の三井」の強みを急速に失わせてしまったのです。

 結局、同社では2006年に、チームワークや価値観の共有、人材育成といった定性的な行動を重視する制度に改めたのです。

 この事例にも象徴されるように、成果は重要な評価基準の1つですが、チームワークや人材育成、変革力など、“さまざまな評価軸のうちの1つ”と考えたほうがいいでしょう。

 企業は人なりです。結果や短期的な成果だけではなく、今すぐには儲けにつながらなくても、試験的、実験的、種まき的なチャレンジも評価される制度を築いてこそ、最も大事な資産である「人」が育ちます。やはり人事制度は、成果だけに特化しない、公正で「人を育てる仕組み」にすることが、社員にとっても、会社にとっても、幸せな結果を招くことになります。
http://diamond.jp/articles/-/124867

 


【第5回】 2017年4月19日 GAISHIKEI LEADERS/ISSコンサルティング監修
「会社の価値」と「自分の価値」を両方高める仕事のしかたとは?
真のグローバル経営を経験してきたビジネス・リーダーが、日本社会・日本企業の課題に対し『和魂洋才』の新たな視点から解決策を提案する「GAISHIKEI LEADERS」。そのメンバーが、経営のグローバル化と日本のユニークな強みを調和させた新しい「グローバル経営論」を解説するセミナー(共催/司会:ISSコンサルティング)の内容をダイジェストでお届けします。
今回のテーマは「会社の価値と自分の価値を両方高める仕事のしかた」。日本ケロッグ経営管理・財務本部長(CFO)の池側千絵さんに、ロクシタンジャポン代表取締役の西口一希さんとともに、ファイナンスの仕事を通じて企業価値を高めると、ひいては自分の価値を高める視点や行動にもつながるのはなぜか、語っていただきました。ダイジェストでお届けします。
なぜ日本企業の稼ぐ力が低いと言われているのか
池側(日本ケロッグ) こんにちは。まず簡単に自己紹介しますと、私は新卒でプロクター&ギャンブル(P&G)に入社して以来、日本マクドナルド、レノボ・ジャパン、現在のケロッグとファイナンス部門で働いてきました。
西口(ロクシタンジャポン) 今日はよろしくお願いします。私も簡単に自己紹介しますと、1990年にP&Gに入社して17年いた後、ロート製薬でマーケティングの責任者を8年務めました。その後に今のロクシタンで代表を務めていて、今年で3年目になります。

出所:「伊藤レポート」p37(「構成要素から見た低ROE:日米欧の資本生産性分解」)
http://diamond.jp/mwimgs/0/3/-/img_0369b927cf880419554beb3cd7228257246482.jpg

池側 自分が外資系企業に長らく勤めてきて、同業他社として日本企業をウォッチするなかで、稼ぐ力をどうすれば上げられるのか、ということに興味をもっています。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、近年そうした観点で話題になったのが“伊藤レポート”です(編集部注:経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクトの最終報告書。座長であった伊藤邦雄・一橋大学大学院商学研究科教授の名前を冠して、『伊藤レポート』と呼ばれる)。
 ここでも議論されたのですが(図表)、自己資本に対してどのぐらい稼げているかを示すROE(自己資本利益率;Return on Equity)が、日本企業の場合は非常に低水準にとどまっています。ROEは一般に10〜20%で「良い」と評価されます。ところが日本企業は2012年で少し古いデータなのですが5.3%となっており、直近でも東京証券取引所上場企業平均で7−8%程度になっています。この表だと同時点で米国は22.6%程度、欧州で15%程度あるわけです。ROEをさらに「利益率×回転率×レバレッジ」に分解して海外と比較してみると、日本は回転率やレバレッジに大きな差がない一方で、売上高利益率が低いことがわかります。
西口 企業のROEが非常に低いことは、大きな問題だと思います。資本主義的な側面はもちろんあるのですが、それ以上にそこで働く従業員自身が低いROI(Return on Investment:投資に対するリターン)に安住してしまって、仕事でブレークスルーを求めなくなり、ビジネスパーソンとして、成長できなくなる危機感を感じてます。
池側千絵(いけがわ・ちえ)さん
日本ケロッグ合同会社執行役員 経営管理・財務本部長。 新卒でP&Gジャパン(株)に入社して以来、一貫して外資系企業のファイナンス部門に勤務。日本支社全体の利益・資金管理・報告、経理、税務、アジアHQでの予算管理業務など幅広いファイナンスの専門業務も歴任。その後日本マクドナルド(株)でのフランチャイズ事業担当財務部長、レノボ・ジャパン(株)のCFOを経て現在に至る。同志社大学文学部卒。慶應大学院経営管理研究科・Executive MBA在学中。USCPA。中小企業診断士。
池側 たとえば私がいま勤めているケロッグ(世界全体)は売上高営業利益率について18%をめざしています。米国の同業他社では、なんと20%以上をたたき出しているところもあるので、18%実現に向けて全社でがんばっています。それでは日本の食品会社はというと、A社さんが昨年11%で今後15%を目指し、B社さんが昨年8%で今後10%以上を目指すとおっしゃっているなど優良ですが、一方で一桁パーセントにとどまっている会社さんも多数あります。ROEはよい会社で10〜15%と、国内では高水準ですが海外勢と比べるとまだまだ改善の余地があるように思えます。
 では、バランスシート(貸借対照表:BS)も見てみましょう。
 日本企業は無借金経営で自己資本が大きく、そのためもありROEが低く見える傾向にあります。ケロッグは純資産は結構小さくて、借り入れを利用して買収を含めた投資をしているためかROEが28%あります。これだけでどちらが良い悪いと判断できませんが、昨今は、自己資本だけでなく借入を有効に使って投資をして事業を拡大し、ROEを高めていくという戦略がひとつの大きな流れになっているようですね。ご自身で自分が属する企業や業界について財務情報を見てみていただくと、そうした流れも肌で感じていただけて面白いと思います。
西口 ROEを5%から10%に上げるというのは、ものすごく大変です。そのために、売上を上げるのか、利益率を上げるのか、キャッシュフローを改善するのか、それには新商品を投入すべきなのかコストを削減すべきなのか等、いろいろな選択肢を考えなければなりません。無理に思えるROEの達成を一生懸命考えるなかで、ありとあらゆる選択肢とアイデア、ビジネスモデルそのものまで考え付くし、その結果、個人もプロとして成長するのだと思います。
池側 本当にそうですよね。「企業全体」のROE/利益率向上というと、どうしても遠い話のように感じられるかもしれませんが、そうではないのです。そこで働いているみなさん個々人が、自分が関わっている事業においていかに利益率をあげるかということを意識することで随分変わるのではないかと考えています。
西口 日本企業の問題というよりも、資金調達プレッシャーがない環境の問題が大きいと思います。日本は、事実上、長年に渡ってゼロ金利なのでリターン自体が低くても問題になりにくい、株主にも突き上げられない。ROI、ROEが低くてもいい環境に慣れてしまっています。これまでの延長線上でそこそこ最適化して頑張っていれば、追いつめられることはない。でも何が起こるかといえば、ビジネスが陳腐化するスピード以上に、そこで働く従業員自身が自分の成長の機会を失ってしまう。
 外資系の多くでは、良くも悪くも、常にROI、ROEを厳しく問われるので、難しい状況であっても、どうすれば成長できるか、ROEを高められるか、厳しく寝る間も惜しんで考えさせられます。すると、個人も成長するし、結果として会社も成長するという好循環をうみだすんですよね。だから、欧米企業は短期的な利益を求めすぎる、日本企業は長期的視点でみているからROEの高さは問題じゃない、といった抗弁を聞きますが、人がビジネスパーソンとして生産性を向上させて、自己成長する環境かどうかの観点で考えれば、大きな問題だと思います。
自分の仕事でも「入ってくるお金」と「出ていくお金」を意識する
池側 もちろん、個々人が頑張るだけで会社全体の利益率が簡単に上がるわけではないでしょう。
 これだけ日本と海外の企業の利益率に差がある背景には、企業の組織の仕組みの違いも大きく影響していると思います。
 ひとつは、多くの日本の企業の場合では伝統的に、戦略策定を担う経営企画部門と、経理・財務部門がそれぞれ分かれた組織になっていることが挙げられます。外資系企業の多くは、この両方を「ファイナンス部門(CFO部門)」が睨みながら、経営陣を手助けしていく組織になっています。もちろん、ファイナンスの基本的な資金繰りや内部統制、予算管理、投資分析などをこなしたうえで、中長期的に会社がどういう方向に進むべきか、経営陣と一緒になって経営戦略を策定していくわけです。この点、日本企業でも、経営と数字の両方がわかるファイナンス部門(CFO部門)が、各事業部門と蜜に働いて、「稼ぐ力」を強化する方策を考えるべきではないでしょうか。
西口一希(にしぐち・かずき)さん
ロクシタンジャポン株式会社代表取締役。大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパン(株)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとしてパンパース他、数々のブランドマネジメントを担当。2006年にロート製薬(株)に執行役員マーケティング副本部長を経て本部長として入社。2015年4月より現職、ロクシタンジャポン株式会社にて代表取締役として従事。
西口 たしかにファイナンス部門であっても、たとえば経理志向が強すぎると締め付けにかかりやすくて、この経費もっと下げられませんか、ここ本当に必要ですか、と事業部門をつつきすぎて、疲れた事業部門側が前の年の焼き直しで済ませようとして本末転倒な結果をうんだりします。より戦略志向のファイナンスは、どうすれば売上や利益率が上がるかということを一緒に考えて提案できるような目線が必要ですよね。
 あとは私もさまざまな部門の方と働いてきて、それぞれで見ているところが全然違うんだなという点も実感しています。たとえば営業はトップライン(=売上高)しか見ていなくて、費用はあまり見ていない人が多い(笑)。
 対して、ファイナンス部門はトップラインとボトムライン(利益)を両睨みです。それも、単純に利益が出ればいいというわけではなくて、社員のモチベーション向上に役立つなら必要なイベントのためにバーンとお金を使ったり、減価償却が終わっていない設備でも老朽化がひどく事故につながる可能性があれば早めに入れ替えたり、事業の全体をみて必要なお金はどんどん投資します。それこそ、ビジネスパーソンに不可欠な“経営力”だと思いますね。
 私の場合は特に、PL(損益計算書)が読めることが大切で、売上高から利益に至る途中の足し算と引き算が「投資」「経費」としてそれぞれ正しいのか語れること、これこそ、リーダーになっていく人材として必要なスキルではないかと思います。
 簿記の本を読むとじんましんが出そうな方は、ご自身の会社の四半期決算書を読みこなして、他部署の方に説明できるぐらいまで自己トレーニングをされるといいです。PLが読めるよう一点突破を心がけると、BSやキャッシュフロー計算書も3点セットで読めるようになると思います。
池側 さて皆さん、会社は誰のものだと思われますか?
 議論があるところですが、ここでは基本的には株主のものという前提でお話しますね。会社としては、株主によって投資されたお金を増やしてあげられれば満足してもらえるということです。ごく簡単にいえば、企業としては入ってくるお金を増やして出て行くお金を減らし、株価が上がって配当が増えるように、会社の利益とキャッシュフローが増える策を考えなくてはなりません。
 一例として、ラーメン屋さんの店主になったつもりで考えてみてください。
 たとえば、入ってくるお金(収入)を増やすには、客数を増やし、客単価(商品単価×注文点数)が上がるように、魅力的な商品をつくる。出ていくお金(コスト)を減らすには、原料の調達を工夫して良いものを安く買ったり、お店が広すぎればもっと身の丈に合った大きさの家賃の安い場所を探す、従業員のシフトを工夫したり、電気代やガス代を節約する……など、いろいろ考えられますよね。同じように、みなさんの自分の仕事で、何をすれば入ってくるお金が増やせて、出て行くお金を減らせるか、みっちり考えていただくと、絶対に企業全体として良くなるはずです。
 会社の利益とキャッシュフローを改善することを意識して日々の仕事に取り組むことで、きっと個人の業績の成果が上がり、結果的に自分の価値が上がります。今、所属している部署が営業でもマーケティングでも、商品や業界に関する基本的な専門知識のうえに、リーダーシップやコミュニケーション力といったチームで成果を挙げるためのソフトスキルを身につけ、さらに今申し上げたような意識で、企業の価値を高めることを目標に個人としても動ける人材をめざしてください。必ず会社で必要不可欠な、もっといえばどこでも働ける人になるはずです。
「大・中・小」の視点からプロジェクトを考える
池側 もう少しファイナンスの仕事について、解説させていただきましょう。
 たとえば、新製品の開発や商品改良などのプロジェクトに参画するファイナンス担当者のミッションとしては、(1) 会社の価値を高めるプロジェクトにする。(2) プロジェクトチームメンバーの活動を効率よくする(適切なタイミングで目標設定をしてあげる)というものがあると考えています。商品案がほとんど決まってからPL計算をして目標利益構造に届かない場合、商品設計からやり直しになったり、または、目標利益構造に達していないのに商品を出すことになってしまったりします。ファイナンス担当者がプロジェクトの早いタイミングで参画して、適切に各担当者の数値目標設定をして進捗チェックをしてあげれば、やり直しなく、そのプロジェクトを成功に導くことができます。
 特にファイナンスの担当者は、「大・中・小」のそれぞれの視点からプロジェクトを見ていくのがおすすめです。
 「小さい視点」としては、商品そのもののフォーミュラと原価、容量(袋に何グラム入れるか)、パックあたり、キログラムあたりの売価、粗利益率、利益金額などの基準を細かく設定して、チームでその目標を達成していきます。次に「中くらいの視点」ですが、そのプロジェクトを今後数年のスパンで見て、投資対効果を検証したり、既存の商品とのカニバリゼーションを考慮したりします。また、「大きい視点」としては、事業部、会社全体に与える影響(売上、利益、利益率、キャッシュフローなど)を見ます。売上と利益の向上の両方の達成でチームに貢献できると、会議に「また呼んでもらえる」ファイナンスになれると思います。
 このようにファイナンスの人が事業部に入り込み、日々の業務の中で他部門の人たちと一緒に仕事をして、利益率やキャッシュフローを改善していく。また、他部門の人たちも、どうすればPL/BS/キャッシュフローを改善できるのかを知って日々の仕事に生かしていく。そうすると会社の利益率が改善し、ROEも目標に近づいていくのではないでしょうか。
 わたしが新卒で入社した外資系企業のファイナンス部門では、まずは事業部配属になり、マーケティングや営業、サプライチェーンの人たちと一緒に事業に携わりました。若いうちからビジネスを理解することができて効果的です。そのあとに経理財務や税務などのファイナンスの専門部門に行ったり、また事業部のファイナンスリーダーとして現場に戻ったり、2−3年のスパンでローテーションをして、早いスピードでCFOを目指しました。多くの企業でこの方法を取り入れていただきたいなと思います。
http://diamond.jp/articles/-/124420

http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/241.html

[国際19] 反ユダヤ主義が顕在化しているのはなぜか 対イラン制裁解除見直 北朝鮮へ圧力 米空母情報錯綜 米中異なる時間 スコット独立
Column | 2017年 04月 19日 10:18 JST 関連トピックス: トップニュース


コラム:
反ユダヤ主義が顕在化しているのはなぜか

 4月14日、最近になって顕在化する反ユダヤ主義的な言動は、一時的な苛立ち、それとも無理解、あるいは単なる無知からくるものなのだろうか。写真は2014年9月、ベルリンで行われたユダヤ人差別に反対する大規模集会の開始を待つ男性(2017年 ロイター/Thomas Peter)
John Lloyd

[14日 ロイター] - 西側諸国の政府はすべて反ユダヤ主義を否定している。だが、古くからの嫌悪はまだ生き残っている。その有害性はどの程度のものなのか。最近になって顕在化するユダヤ人差別的な言動は、一時的な苛立ち、それとも無理解、あるいは単なる無知からくるものなのだろうか。

スパイサー米大統領報道官の場合は、ひいき目で見れば、最後の「単なる無知」に該当することになろう。11日の記者会見で飛び出した「ヒトラーは化学兵器を使用しなかった」という彼の発言は、激しい怒りを招き、ただちに謝罪する結果となった。

スパイサー氏が言いたかったのは、ヒトラーが化学兵器を爆弾として航空機から投下しなかったという意味だ。これは正しい見解であり、マティス国防長官も当日述べている。しかし、ナチスは強制収容所で「ジクロンB」を使用している。ヒトラーが戦場における化学兵器の使用を自制したのは、戦術的な理由によるものかもしれない。

スパイサー報道官の視野がもう少し広ければ、彼はアサド大統領とヒトラーを比較することを慎んだろうし、ナチスがどこで誰に対して化学兵器を用いたかを明示しただろう。だが、彼のコメントは必ずしもレイシズム(人種差別・民族差別)を示すものではない。

とはいえ、同報道官が仕える政権は、1月27日の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」に向けた声明のなかで、ユダヤ人について言及しなかった。バノン首席戦略官兼上級顧問は、いわゆる「オルタナ右翼」を支持していることで、反ユダヤ主義者であるとの批判が絶えない。

一方で、トランプ大統領の娘イバンカさんとその夫のジャレド・クシュナー氏はユダヤ教徒だ。この夫妻の存在によってホワイトハウスの反ユダヤ傾向は緩和されていると見られている。

英国における最近の反ユダヤ主義の高まりを見ても、その現状が特に明確になってくるわけではない。労働党の重鎮で元ロンドン市長のケン・リビングストン氏は、「ヒトラーはシオニストだった」という主張を繰り返してきた。つまり、ヒトラーがイスラエル建国を支持していたという意味だ。この主張はかなり徹底的に反証されており、反ユダヤ主義に基づいていると考える人が多い。

これが「単なる間違い」ということがあり得るだろうか。リビングストン氏は、反ユダヤ主義的な傾向を否定している。彼は党員資格を1年間停止された。労働党議員や党員の多くは、この処分を甘すぎると感じており、トム・ワトソン副党首はこの処分に強く抗議し、除名がふさわしいと主張している。

こうした対立は、あらゆる西側諸国の左派勢力に見られる分裂を露呈している。一方の側には、イスラエルこそ中東における最大の問題であると考え、イスラエルの打倒を誓うヒズボラやハマスといった組織に対し、程度の差こそあれ共感を示す勢力がある。

もう一方には、入植などの政策について現在のイスラエル政府を非難しつつも、ユダヤ民族国家の存続を支持する人々がいる。

現在の労働党党首であるジェレミー・コービン氏は前者のグループに属しており、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラやイスラム原理主義組織ハマスの双方を「友人たち」と呼んだこともある。ただし後に、こうした表現について後悔を表明している。

フランスは、西側諸国のなかで最もユダヤ人に対する攻撃や迫害が広がっていた国だが、前党首ジャンマリー・ルペン氏の時代にはきわめて反ユダヤ色が強かった極右政党「国民戦線」が、娘のマリーヌ・ルペン氏のもとでその傾向を一掃したのは朗報に思える。

だが、本当にそうだろうか。

最近の報道では、仏極右政党「国民戦線」を率いるルペン党首の側近、フレデリック・シャティヨン氏が積極的な反ユダヤ主義者であると指摘されている。こうした報道は、国民戦線が基本的には変化しておらず、変化できない兆候だと受け止める人もいる。今なお党員の多くが、真実を主張した人物としてジャンマリー氏に敬意を払っているためだ。

ルペン氏が大統領に当選するようなことがあれば、フランス在住のユダヤ人の懸念は高まり、イスラエルに移住する人が増えるだろう。反ユダヤ主義に基づく事件や攻撃に最も積極的な反対キャンペーンを行っている雑誌バニティ・フェアが掲載した記事は、引退した警察本部長がイスラエルに移住したことを伝えている。

中欧では、古くさい嘘が今も健在である。ハンガリーでは極右政党ヨッビクの得票率が約20%に達し、国民の3分の1が反ユダヤ主義を自称する。ポーランドでの最近の調査によれば、ユダヤ人を家族として受け入れないという回答が半数以上、ユダヤ人が隣近所に住むことを好まないとの回答がほぼ3分の1に達した。

たとえホロコースト後に生まれた世代であっても、ユダヤ人ならば、ナショナリズムや社会不安が高まり、ポピュリスト政党が勢力を伸ばす時代は、彼らにとって決して幸運をもたらさないことを知っている。彼らは、リベラルな政治が生き残り、強さが維持されることを頼りにしている。このこともまた、そうあるべき十分な理由の一つだ。


ナチス時代のユダヤ人拘束、極右ルペン氏「フランスに責任なし」

米大統領報道官、アサド氏とヒトラー比べる発言で強い反発招く
米フィラデルフィアのユダヤ教徒墓地 約100墓石倒される
イスラエル軍で「ひげそり令」、ユダヤ教指導者が反発
http://jp.reuters.com/article/antisemitism-column-john-lloyd-idJPKBN17L02P

 

World | 2017年 04月 19日 13:18 JST

トランプ米大統領、対イラン制裁解除の見直しを指示=国務長官

[ワシントン 18日 ロイター] - ティラーソン米国務長官は18日、2015年のイランとの核合意に基づく制裁解除が米国の安全保障上の利益かどうかについて、国家安全保障会議(NSC)が中心となって政府機関の間で見直すようトランプ米大統領が指示したと明らかにした。

同長官は声明で、イランは合意に沿って核関連活動を抑制する約束を引き続き順守しているものの、テロ支援国としての役割を巡る懸念があると指摘した。

また、見直しについてライアン下院議長に通知したことも明らかにした。

トランプ大統領は、オバマ前政権下でのイランとの核合意を「最悪の取引」と呼んでいた。


米・イスラエルが15日に首脳会談、イランへの圧力強化目指す

ロシア、イランへのミサイル禁輸を解除 原油のバーター取引開始
モゲリーニEU代表、米国務長官と初会談 対ロシア関係など協議
トランプ政権、イランに「警告」 ミサイル実験受け対応検討
http://jp.reuters.com/article/tillerson-trump-iran-idJPKBN17L0BF

 

 
World | 2017年 04月 19日 13:12 JST

北朝鮮問題、同盟国・中国と経済・外交面で圧力へ=米副大統領

[東京 19日 ロイター] - 来日中のペンス米副大統領は19日、北朝鮮に対し同盟国および中国と経済・外交面で圧力をかける決意を示した。ただ、いかなる攻撃にも「圧倒的な力」で対抗すると付け加えた。

米空母の艦上で演説した。

ペンス副大統領は、北朝鮮による脅威に直面する中、米国の意思は揺るぎないと強調。「われわれはいかなる攻撃も打ち負かし、圧倒的、効果的な力で通常兵器あるいは核兵器の使用に対抗する」と述べた。北朝鮮への対応について、あらゆる選択肢があるとあらためて表明した。

また、トランプ大統領と協議し、米海軍の艦隊の約60%を2020年までに域内で展開させると述べた。「米国はアジア太平洋地域で存在感を強める」とし、「われわれの同盟における日本の役割と責任は今後拡大していく」と語った。

中国と周辺国との対立の場となっている南シナ海については、飛行・航行の自由を守ると強調した。

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http://jp.reuters.com/article/pence-north-korea-idJPKBN17L0B1
 

 
World | 2017年 04月 19日 12:12 JST 関連トピックス: トップニュース

米空母、朝鮮半島に向かう前に豪と演習 当局の情報錯綜

[ワシントン 18日 ロイター] - トランプ米大統領が前週、北朝鮮に派遣したと明らかにしていた空母「カール・ビンソン」などの空母打撃群が、その時点で朝鮮半島から遠く離れた地点を、半島とは逆方向に航行していたことが分かった。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、軍事パレードを実施していた週末時点では、インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を抜けインド洋を航行していたもよう。

米太平洋軍は18日、空母打撃群はまずオーストラリアと想定より短い期間で合同訓練を完了しなければならなかったと説明。現在は「司令通り、西太平洋へ向かっている」と述べた。

米軍は当初、10日付けの声明で、ハリス太平洋軍司令官が空母打撃群に「北上し、西太平洋で任務に就く」よう指示したと説明していた。ロイターなどの報道機関は11日、航行には1週間以上かかると報じた。海軍は安全上の理由から、空母打撃群が将来作戦を行う位置を明らかにしていない。

マティス国防長官は11日、「現在移動しているのは、現時点でそこに置くのが最も将来に備えたものであると考えるからだ」と説明。「特定の要求や理由があるわけではない」とした。ただ、ビンソンは豪海軍との演習を中止したと発言。後ほど国防総省が、中止されたのは演習ではなく豪フリーマントルへの寄港だと訂正する事態となった。

米海軍の関係筋が匿名を条件に話したところによると、ビンソンはスンダ海峡を通過した後で訓練を実施したという。 *本文第1段落に説明を追加しました。

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http://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-carrier-idJPKBN17L08M

 

 


米中首脳の異なる時間軸−トランプ大統領はすぐに実現する成果求める
Bloomberg News
2017年4月19日 12:57 JST

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• かなり顕著に対中貿易赤字を減らす「目に見える成果」を米側は期待
• 中国側は枠組みの設定に何年もかかるBITの推進を望むとホン氏

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の米中経済関係を巡る時間軸は、大きく異なっているようだ。
  米フロリダ州で行われた米中首脳会談では貿易不均衡是正に向けた「100日計画」で合意。トランプ政権はこれに基づき、「かなり顕著」に対中貿易赤字を減らす「目に見える成果」を期待している。米財務省は14日公表した外国為替報告書で、中国を為替操作国として認定することを見送ったが、トランプ大統領は、古い産業が中心のいわゆるラストベルトの有権者に「中国バッシング」が選挙運動でのレトリックだけではないことを示す必要に迫られている。
  中国国営の新華社通信によれば、習主席は2国間投資協定(BIT)に向けた協議再開を優先課題の1つに掲げている。有権者をなだめることを気に掛ける必要がない習主席にとって、BITは経済改革を加速させる手段となり得る。
トランプ米大統領と中国、貿易戦争で激突するのか−QuickTake
  中国社会科学院のソン・ホン上級研究員は「米中両国は異なるペースで動いているようだ。トランプ大統領はすぐに実現できるものを求めており、中国側は、この先何年も枠組みの設定に時間がかかるBITの推進を望んでいる」と指摘した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i6QSgY0y.Nqg/v2/-1x-1.png

  BITに関する交渉は10年近くに続いているが、協定の対象外とする経済分野を特定する「ネガティブリスト」が主な障害となっている。在中国米商業会議所のウィリアム・ザリット会頭は、米企業が中国で直面する不十分な市場アクセスや公平な競争条件の欠如に対処しなければ、貿易赤字の問題は解決できないと述べた。
原題:Trump’s Deficit Crusade Overshadows Xi’s Investment Treaty Pitch(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMWNQ6TTDS301

トランプ娘婿一族が所有のNYオフィスタワー、借金返済増で赤字拡大
Caleb Melby
2017年4月19日 13:08 JST

Traffic passes outside 666 Fifth Avenue in New York, on April 19, 2010. Photographer: Daniel Acker/Bloomberg

トランプ米大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏の一族が共同所有するマンハッタンのオフィスタワーは2016年に債務返済が増加し、赤字が拡大した。ローン管理者が提出した文書で明らかになった。
  LNRパートナーズの届け出によると、「666フィフス・アベニュー」の損失はローン返済の調整後で1450万ドル(約15億7000万円)と、15年の約1000万ドルから増加した。純営業利益は前年比で2.7%増加し4130万ドルとなった一方、債務返済は11%増の5580万ドル。16年末時点のタワーの入居率は80%と、9月時点の70%から上昇した。
  ブルームバーグの先月の報道によれば、ミッドタウンにある同タワーに関する債務12億ドル余りの返済条件は19年の支払期日が近づく中で一段と厳しくなりつつある。クシュナー氏のファミリー企業であるクシュナー社は07年に同タワーを記録的価格で購入していた。
  現在、トランプ大統領の上級顧問を現在務めているクシュナー氏は、公職との利益相反を避けるため同タワーの持ち分を親族に売却。父のチャールズ・クシュナー氏は同タワーを高級な居住用不動産に転換するためパートナーを探している。同タワーの再開発に関して中国の安邦保険集団は提携交渉を進めていたが、3月に協議は終了した。
  クシュナー社の広報担当は同タワーに関して活発な議論が進んでいると述べたが、財務状況に関してはコメントを控えた。
原題:At Kushners’ Manhattan Tower, Debt Payments and Losses Increase(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMYFT6JTSFC01


 

 


[FT]メイ英首相が総選挙で手に入れるもの
2017/4/19 12:36
日本経済新聞 電子版

 指導者について知るためには、彼らが掲げたマニフェスト(政権公約)を無視し、彼らを縛る制約をただ取り除けばいい。権力は人の意外な姿を明らかにする。絶対的な権力は絶対的に明らかにする。確かにこれは、誰かについて知る方法としては極端だが、英国人が試すには極端すぎることはない。
18日に発表された総選挙翌朝の6月9日には、メイ首相は第2次世界大戦以降、最も力のある首相になっているかもしれない。ブレア元首相は、不機嫌な財務相に手足を縛られた。サッチャー元首相は、まだ重要な存在だった労働組合に配慮しなければならなかった。メイ氏には、それに比肩するような邪魔者がいない。そして、同氏の率いる保守党に労働党の支持票全体にほぼ匹敵する差をつけている世論調査を信じるなら、議会が形式的な認可機関に成り下がるような圧倒的過半数を獲得する。

http://www.nikkei.com/content/pic/20170419/96958A9E93819499E3EB9AE2988DE3EBE2E6E0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXZZO1548130019042017000000-PB1-5.jpg

 メイ氏は今後7週間、自身の国内改革にメディアの興味を引こうとし、失敗するだろう。今回の総選挙は名前を変えた欧州キャンペーンであり、ヒース元首相が1974年に自身の首相の座と労組の力のどちらかを選ぶよう有権者に求めた総選挙以来初のシングルイシュー(単一争点)選挙となる。実際、そうあるべきだ。英国民の将来にとって、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の条件は、どんな教育政策や財政緩和よりも重要だからだ。
 メイ氏が勝利を収めても、それで買えるEUに対する影響力は無きに等しい。EUとしては、国内政治の思わぬ変化が、英国に厳しい離脱条件を課すEUの利益に影を落とすのを許すわけにはいかない。だが、総選挙での勝利により、メイ氏の政治的視野は2020年から2022年へと広がる。同氏は今、たとえ欧州から英国へ来る人の移動の自由の継続やEU予算への分担金拠出という代償を払っても、より長い時間をかけて加盟から非加盟へ移行する措置を検討できるようになった。怒れる有権者はメイ氏を選挙で罰するのを何年も待たねばならず、その頃には、同氏は田舎でのハイキングや(お気に入りの有名シェフのヨタム・)オットレンギのレシピを楽しむ快適な引退生活に入っているかもしれない。
 また、圧倒的多数を押さえれば、メイ氏は自分がEUから獲得した離脱条件を議会で通過させることもできる。面倒な同僚から解放されるわけだ。
 問題は、それがどの同僚か、ということだ。親EU派の一部は、絶対的な権力は穏健な管理主義者としてのメイ氏の本性を明らかにするとみている。同氏はかつてのEU残留派として、自分より右寄りの熱狂的な議員が今や議会で阻止できなくなった穏やかな離脱を形作ると考えている。18日の英ポンドの値動きは、この期待を反映していた。ドイツ銀行は英国に関する悲観的な成長予想を修正した。1つには、総選挙で「ハードブレグジット(強硬離脱)を要求する議員の影響力が弱まる」というのが、その理由だった。
 問題は、これでソフトブレグジット(穏健離脱)や漸進的な離脱を要求する議員の影響力も弱まってしまうことだ。総選挙で強硬派のジョン・レッドウッド議員は力を奪われるが、疲れを知らずに保守党左派を擁護するアナ・スーブリー議員も力を奪われる。メイ氏はスーブリー氏の方に近いという考えは、メイ氏は優柔不断だとする見方と同じくらい根強い通説だ。権力は、市場が思っている以上に徹底した保守主義者の姿を明らかにするかもしれない。確かに、メイ氏は貿易協定や移行措置なしでの唐突な離脱に反対していると思われているが、同じ立場にいれば、ほぼ誰もが反対するだろう。これは、期待するような材料ではない。移行措置の条件や最終的な市場アクセスの度合いについてはかたっていないに等しい。
 とんでもなくひどい内容の合意は、一切合意がない場合より悪い長期的影響を及ぼす恐れがある。そして6月になると、そうした合意を議会で通すのが容易になる。18日に本当に薄れたのは、強硬離脱ではなく、昨年の国民投票の破棄や骨抜きの可能性だ。親EU派はこれまで、メイ氏は議会が耐えられないほどひどい内容の合意をまとめ、新首相の下で2度目の交渉を試みるか、そもそも離脱すべきかどうかを争点とする選挙の実施を余儀なくされると考えることができた。その願望は、かすかな希望からほぼゼロへと薄れた。
 6月以降、メイ氏の権力に制約があるとすれば、それはスコットランドだ。2014年のスコットランド住民投票で英国の連合保全のために成功だった残留キャンペーンを率いた人々は、翌年に予定されていた英総選挙を前に労働党が世論調査でリードしていたことが勝利の一因だったと考えている。保守党を嫌うスコットランド人は、同党に支配されるのもあと数カ月だと期待して、英国残留に投票できたからだ。そうした有権者は今、6月から先を見通せる限り、英議会で保守党が大多数を占める状況を想定できる。メイ氏は彼らをナショナリズムに走らせるのを避けるために、寛大に統治しなければならない。大した制約ではないが、それで我慢するしかない。ほかの制約は7週間後に消えてなくなる。
By Janan Ganesh
(2017年4月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK19H0J_Z10C17A4000000/

 


 
Column | 2017年 04月 19日 10:48 JST 関連トピックス: トップニュース

コラム:英総選挙前倒し、メイ氏が「お墨付き」得る好機

Peter Thal Larsen

[ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国のメイ首相は、自身の政治家としての評価が最も高まっている局面をうまく利用しようとしている。6月8日に総選挙を前倒しで実施することは、英国の指導者として国民からしっかりとお墨付きを得る最適な時期と言える。

早期選挙に踏み切るべき強い理由は3つある。まずメイ氏が率いる保守党は今、下院で野党側をわずかに17議席上回るだけの勢力にとどまっているが、世論調査における支持率は野党より圧倒的に高い。ユーガブの最新調査を見ると、保守党と最大野党・労働党の支持率の差は21%ポイントに開いている。2月の補欠選挙では、政権与党の候補が35年ぶりに勝利した。

総選挙はメイ氏個人の信任投票ともいえる。同氏は昨年6月の国民投票後の政治的な混乱の中で首相の座に就いたが、まだ選挙の洗礼は受けていない。ここで勝利すれば、欧州連合(EU)離脱が現実味を増すとともに、英経済が苦境に陥ったとしても、ある程度政治的立場が守られる。2007年にゴードン・ブラウン氏が首相になった時点ですぐに解散総選挙を決断せず、3年後に辞任に追い込まれたという記憶は、選挙の先延ばしをやめさせる効果的な働きをしている。

また欧州の選挙日程はメイ氏に有利に作用する。今年はフランス、ドイツと国政選挙が続くため、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉はどんなに早くてもこの両国で新政権が発足した後になる公算が大きい。そしてもし英国が交渉期限の2019年3月までにEUと何らかの合意ができず、単一市場から退出する事態になっても、メイ氏は2022年までは再び選挙の試練に立ち向わずに済む。

選挙前倒し戦略にはもちろんリスクもある。選挙戦を通じてメイ氏は、これまであいまいにしてきたブレグジットで何を優先するかをはっきりさせなければならない。これは保守党内にくすぶる対立の火種をあおり、親欧州の有権者をライバルの自由民主党支持に向かわせかねない。だが選挙で再び十分な多数議席を獲得すれば、メイ氏は向こう10年首相を続けられる。

メイ氏は18日、選挙前倒しへの反対意見を取り下げたのは「最近」で、なおかつ「気が進まなかった」と打ち明けたものの、「確実性と安定性」を得る唯一の道だとも強調した。より説得力を持つ説明は、メイ氏が遅ればせながらも、自分の政治的資産が今後これほど高くなることは二度とないと気づいたからではないか。

●背景となるニュース

*メイ英首相は18日、総選挙を6月8日に前倒しで実施する意向を示し、それがEU離脱交渉に向けて政治的な安定を確保する唯一の道だと話した。

*メイ氏は「不本意ながら総選挙が必要と決断した。EU離脱とその後も見据えた強固かつ安定した英国の統率力を確立するに必要だと確信している」と述べた。

*メイ氏は19日に早期選挙を可能にする法的な手続きに入る方針。現在の枠組みでは次回総選挙は2020年以降に予定されており、日程変更には下院の3分の2の賛成が必要となる。

*野党・労働党のコービン党首は早期選挙を歓迎し、「多数派の利益を最優先する政府を信任するかどうか、国民が投票できる良い機会になる」と語った。

英、6月8日総選挙へ

メイ英首相、地方選に向け支持訴え 「野党は混沌もたらす」
英首相、総選挙を6月に前倒しの意向 EU離脱へ政治的安定求める
英下院補選、保守党が得票率減らす サンダース氏兄は落選
http://jp.reuters.com/article/britain-eu-breakingviews-idJPKBN17L049

 

World | 2017年 04月 19日 10:43 JST 関連トピックス: トップニュース
情報BOX:英首相が総選挙前倒し表明、今後予想される展開

[ロンドン 18日 ロイター] - 英国のメイ首相は18日、6月8日に総選挙を前倒し実施する意向を表明した。選挙実施に必要とされる手続きと政治的な影響についてまとめた。

<どのような手続きが必要か>

解散総選挙の手続きは従来よりも複雑になっている。2011年議会期固定法が施行される以前は、政府は必要に応じて議会を解散して選挙を行うことができたが、同法によって総選挙は5年ごとに行われることになった。

前倒しで総選挙を行うには、下院は総定数(650議席)の3分の2以上の賛成により選挙実施の動議を可決する必要がある。つまり、434の賛成票が必要となる。

メイ首相は動議を19日に提出すると述べている。可決した場合、下院は総選挙の25営業日前に解散となる。6月8日に選挙実施ならば、5月3日に解散となる計算だ。

メイ首相の与党・保守党は現在、下院で330議席を握り、最大野党の労働党は229議席。労働党は解散総選挙に賛成すると表明しており、両党の議員全員が党の方針に従った場合、559の賛成票が集まり、動議が成立するとみられる。

<メイ首相が前倒しを決めた理由>

メイ首相はこれまで繰り返し、解散総選挙の可能性を否定してきたため、方針を急転換したことになる。昨年6月の国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まって以降、メイ首相は総選挙を実施するよりも政治の安定が必要と強調してきた。首相は総選挙前倒しを表明するにあたり、議会の分裂がすでに政治の安定を脅かしていることを示唆した。

首相は「国家の極めて重要なこの時期に議会は結束すべきだが、実際は分裂している」と批判した。

メイ氏はまた、「国民投票後に金融・経済危機に早期に陥るとの予想があったにもかかわらず、消費者信頼感は高水準を維持、雇用数は過去最高に達し、経済成長率はあらゆる予想を上回ってきた」と指摘し、政府の成果を強調した。

エコノミストらは、足元の英経済が相対的に堅調であることから、総選挙実施の時期としては適していると分析。

英政府は下院で17議席分と小幅な過半数しかないため、メイ首相は選挙前倒しを決める際に与党の高い支持率を示す世論調査に影響を受けた可能性がある。

ICMが18日行った調査によると、保守党の支持率は労働党を18%ポイント上回っており、ここ1週間の各種調査では20%ポイント以上の差が示されている。

ブックメーカー(賭け業者)などによると、保守党が選挙で過半数を獲得する確率は80%と高く、労働党は2%となっている。

<ブレグジットへの影響>

メイ首相は、総選挙の結果によってEU離脱の日程が変わることはないと表明している。選挙で勝利した場合、首相は国内の求心力だけでなくEUとの交渉に向けた基盤を強化することができる。

同氏は昨年、辞任したキャメロン前首相に代わり首相に就任しており、総選挙に勝利した経験がない。

6月の選挙に勝利すれば、次の総選挙は2022年となり、ブレグジットによる経済への悪影響が出た場合に対処する時間的余裕が生まれることになる。

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World | 2017年 04月 19日 11:16 JST 関連トピックス: トップニュース

英総選挙で、スコットランド独立へ機運高まる可能性=スタージョン氏

http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170419&t=2&i=1181129102&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED3I03P

写真はスコットランド・グラスゴーでメイ首相との会合を終えたスタージョン首相。3月撮影(2017年 ロイター/Russell Cheyne)

[エディンバラ 18日 ロイター] - スコットランド自治政府のスタージョン首相は18日、英国のメイ首相が総選挙を6月8日に前倒しする意向を示したことについて、スコットランド独立に向けた自身の計画に弾みが付く機会になるとの認識を示した。

メイ氏はこの日、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)協議を優位に進める上で、議会での支持基盤を固める必要があるとして、総選挙を前倒しする意向を表明した。

スタージョン氏は「スコットランドに関しては(メイ)首相のこの動きは大きな政治的判断ミスだ」と指摘。「国民に(保守政府の)偏狭的で対立的な計画を拒否する機会を改めて与えるとともに、スコットランドの人々に将来の選択肢を与えるための民主的な責務を強固にするものだ」と語った。

スタージョン氏は離脱前の2018年終盤か19年初めにスコットランド独立の是非を問う住民投票の再実施を求めているが、メイ首相は適切な時期ではないとして反対している。

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フランス大統領選後の株価、気になるなら英国の先例にヒントあり
Blaise Robinson、Cormac Mullen
2017年4月19日 11:42 JST

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フランス大統領選のリスクを同国の株価指数CAC40を活用してヘッジしたいなら、英国での先例を思い出すのが最善だ。
  CAC40の主要構成銘柄にはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンやロレアル、サノフィ、エアバスが含まれるが、これら企業は仏国内経済へのエクスポージャーが少なく、ユーロが下落すれば吉と出る可能性がある。英国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されると、ポンドはその後数カ月下落したが、これに伴って同国のFTSE100指数は最高値を更新した。
  仏大統領選でポピュリスト(大衆迎合主義者)が勝利する可能性がある中で、投資家らの緊張は23日の第1回投票を前に続いており、欧州株下落に備えるコストは昨年6月の英国民投票以来の高水準となっている。それでも、グローバル経済へのエクスポージャーが大きい欧州銘柄がファンド資金を域内に呼び込み、CAC40指数は今月に入って2015年8月以来の高値を記録。その後は上げ幅を幾分削った。
  CAC40構成銘柄企業の国内売上高は平均して、売り上げ全体の約4分の1にすぎないことをブルームバーグ集計データは示している。LVMHやダノン、ミシュラン、サノフィ、ロレアル、エアバスなどは、この比率が10分の1に満たない。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iz7wO8lHzYM0/v1/-1x-1.png
  パリに本社を置くアンプルジェストで9億5000万ユーロ(約1110億円)の運用に携わるアルノー・デランゴティエ氏は電話インタビューで、英国民投票「直後の激しい売りの後、英国で何が起きたか思い出してみればいい。ポンド下落に伴い、世界的企業の株価は値上がりした」と説明。「反ユーロの候補者が選ばれた場合、もちろんまずは外国人投資家を中心とする売り圧力を目にするだろうが、LVMHのようにフランス国内でのエクスポージャーが非常に小さい企業のファンダメンタルズに目を向ければ、どうして売りに回ることができようか」と問い掛けた。
  英国民投票以降、ポンドは対ドルで約14%下落。これに対し、FTSE100は投票直前の水準を約13%上回っている。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/inzi7LvK6b5Q/v2/-1x-1.png

原題:Déjà Vu as France’s CAC Harks Back to FTSE 100 Before Big Vote(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMVD86K50XS01

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/182.html

[原発・フッ素47] 米国政府はWHを中国には買わせない 
米国政府はWHを中国には買わせない
2017/04/19
山本隆三 (常葉大学経営学部教授)
 日本のメディアでは、東芝の決算と半導体部門売却に関する報道が主だが、欧米メディアでは、中国企業によるウエスティングハウス(WH)買収を米国政府が懸念しているとの報道が目立つ。WHが中国企業に売却されないように米国政府は働きかけるが、もし、中国企業による買収が提案されれば、米国財務省管轄の外国投資審査委員会で審査し買収を阻止するとされている。中国企業が陰で参加するコンソーシアムによる買収も防ぐため友好国企業による買収も画策しているとも報道されている。

(AP/AFLO)
 中国企業による海外投資・企業買収の動きが活発になるにつれ、国の重要インフラ、あるいは技術を社会体制が異なる国に握られることを懸念する声は、多くの国において高くなっている。その筆頭は豪州だ。2016年に公共インフラの買収については全て外資審査局が審査することを決め、同年8月中国のコンソーシアムによる電力網運営者の買収を、安全保障上問題ありとして阻止した。電力網に中国企業の参加を許したポルトガル、イタリアとは大きな違いだ(『欧州のエネルギーインフラを買い漁る中国』)。
 米国政府が中国企業によるWH買収を懸念する理由は、軍事転用が可能な高度な技術を社会体制が異なる国が保有する安全保障問題にあるが、それだけではなさそうだ。最先端技術を巡る争いにおいて中国企業が米国企業と対立する懸念も当然ある。例えば、米国が開発したIT技術は世界標準になるが、中国だけは例外だ。中国では標準にならない。独自路線を訴求する中国が世界の主流になっているWHの原子力技術を握ると他国が困惑することも起こるだろう。
警戒される中国資本
 中国企業は、欧州では港湾設備、送配電網などのインフラ、不動産、ハイテク企業の買収に関心を示しているが、中国企業の多くが政府系あるいは政府の資金援助を受け相対的に有利な買収条件を提示可能なこともあり、欧州でも中国企業による買収を懸念する声が高まっている(『欧州では爆買いを阻止される中国』)。
 米国では、2012年から2014年に外資審査委員会の対象になった案件368件のうち、中国企業の関与する案件は68件(シェア18%)と国別では一位を占めている。中国企業が関心を示している対象企業は、鉱業・建設・公共事業が19件(シェア28%)、製造業33件(シェア22%)が多い。関心がないのは卸・小売り・輸送の3件(シェア9%)だ。
 いま、中国企業が買収を試みている米国企業で、外資審査委員会による審査が注目を浴びているのはモンタナ州でプラチナ、パナジウムなどの採掘を行っているスティルウォータ・マイニング社だ。南アフリカで金などの採掘を行っている鉱山会社シバニェ・ゴールド社が、昨年12月に当時のスティルウォータの株価に23%のプレミアを付け、総額22億ドル(2400億円)で以て買収することを提案した。
 外資審査委員会は米国の安全保障に影響を及ぼす案件を審査する。対象となる企業を買収する場合には、買収企業は委員会に届け出、審査を受けることが必要になる。2013年2月にオバマ大統領により署名された「重要産業基盤の安全保障と強靭さ」大統領令に16の分野が記載されているが、これらの分野の企業は明らかに対象になると考えられる。その分野には、化学、通信、IT、エネルギー、防衛産業、公共設備、原子炉、輸送システムなどが含まれている。
 スティルウォータの採掘する金属は防衛産業でも使用されるものであり、一方シバニェ・ゴールドの最大株主は中国政府と関係があるコンソーシアムとされている。この買収提案は当然審査対象となった。当初の審査は4月14日までに終了するとされていたが、14日時点での発表は行われておらず、期間が延長されているものと思われる。
米国に対抗し独自の標準を築く中国企業
 欧州、米国が中国企業による買収を警戒するのは、買収により中国に欧米企業が保有する高度技術が流出することだ。既に中国は特許申請数では、図‐1の通り米国を抜き去り世界一になっている。米国第一のトランプ政権は、中国が技術力で米国と肩を並べ、やがて抜去ることを懸念していると想像され、技術流出につながる企業買収には反対する立場だ。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/0/5/-/img_05eebcc3c36aaf15cbd289b7e085b40a54796.jpg

 外資審査委員会の審査結果を受け、大統領が阻止した中国企業による買収は、オバマ大統領が昨年不許可にしたハイテク企業買収を含め過去3件しかないが、今後は増える可能性が高い。中国企業によるWH買収が申請されれば当然阻止対象となる。
 米国政府が中国への技術流出を懸念するのは、中国企業が米国とは異なる標準を作り出すことも影響しているのだろう。ニーアル・ファーガソン・ハーバード大学教授は米国が作り出したIT革命に中国が対抗した例を挙げている。
 ネット販売のアマゾンがシアトルで設立されたのは1994年、グーグルがカリフォルニア州のガレージで始まったのが1996年、フェイスブックは2004年にハーバード大学で始まった。ユーチューブは2005年、ツイッターは2006年、iphoneが2007年、配車サービスのウーバーが2009年。マイクロソフトもアップルもアメリカ企業だ。
 米国企業が作り出したネット革命に対し、他国は従ったため、他の国でも米国企業が標準になった。日本も例外ではない。しかし、中国は米国企業に対抗する道を選んだ。アリババ、テンセント、百度が作られ、中国の情報は米国企業には渡らなかった。仮に原子力技術が中国に渡り、ITと同様に独自の道を進み情報が開示されなければ、他国にとっては大きな損失になる。
中国も韓国も依存するWHの技術
 米国政府が、中国企業によるWH買収を阻止する大きな理由の一つは、WHが世界の原発の約4分の1を建設していることに加え、WHの技術が中国、韓国の原発の基盤を作っていることもある。世界の既存原発の約半分はWHの技術を基にしていると言われほど世界の原発技術の主流だ。さらに、WHの加圧水型原子炉は、今後建設が予定されている世界の原発の多くを支えると見られている。技術に加え、もう一つの大きな理由は、WHが米国の原子力発電所の維持補修を行っており、自国の発電量の約20%を担う原子力発電所の大半の維持を中国企業に任せることに米国政府が大きな懸念を抱いているからだ。
 中国の発電量は世界一であり日本の約6倍の電力供給を行っている。電力の約4分の3は石炭火力発電所から供給され原子力が占める比率は3%に過ぎないが、大気汚染に加え地球温暖化の問題もあることから、中国政府は石炭火力を抑制し、低炭素電源の原発と再生可能エネルギーの開発に力を入れている。
 表-1の通り中国は現在36基の原発を保有し、その設備量は3300万kWに達するが、現在建設中の設備が21基、2300万kWあり、2020年時点では日本の設備量を抜く。さらに、計画中が41基、4700万kW、構想中が174基、約2億kWある。2026年には現在99基、設備量9900万kWを持つ世界一の米国を抜き、中国が世界一の原発保有国になると予想されている。

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 中国は原発技術を、ロシア、カナダ、フランス、米国から導入し建設を行っていたが、2006年にWHの第3世代炉AP1000を4基導入することを決め、その上でWHから技術移転を受け、AP1000の改良型CAP1400を国産炉として開発した。さらに、フランス・アレバの技術を基に華龍一号を国産炉として開発した。現在建設中の21基の内AP1000は4基、華龍一号4基だが、今年から来年にかけ建設が開始される予定の41基の内24基をAP1000が、8基を華龍一号が占めると見られている。WHの技術が今後中国の原発の中心を担うことになる。
 韓国最初の商業運転を行った原発はWHのターンキー設備だった。その後WH、アレバの加圧水型を中心に導入を行い、1987年からWHと技術導入契約を締結し、APR1400を開発している。2016年には韓国電力公社の原子力部門を引き継いだ韓国水力原子力発電がWHと部品供給契約と技術協力契約を締結している。韓国の原発技術を支えているのもWHだ。
中国には買わせないが有力な買い手は韓国
 中国はWHの原子力技術を導入したものの、全ての技術を入手した訳ではない。昨年米国の原子力技術に関し、エネルギー省の許可なく中国広核集団を援助していたとして逮捕された中国系米国人は、今年1月法廷で有罪を認めている。中国軍関係者による原子力関係技術のハッキング事件なども報告されている。中国は依然として米国の技術を必要としており、WHは中国が買いたい企業だ。
 WHが不調になったのは、米国の原発の建設を請け負っていた企業を、その工事のリスクと共に引き受けてしまったことだが、米国内の市場の先行きもあまり明るくはない。シェール革命により米国内で天然ガス価格が大きく下落し、原子力発電所と天然ガス火力発電所間の競争力が不透明になってきた。原発の投資額は天然ガス火力の5、6倍以上するが、長期間に亘る天然ガス火力との競争が不透明になっており、巨額な投資を行っても回収できないリスクが出てきた。電力会社は原発の着工に躊躇している。図-2は米国の工事中と建設許可を持っている原発を示しているが、許可取得済みの原発が建設を開始するか不透明になってきた。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/3/2/-/img_32ca295e49bf3d15fca8c12bcef3e94777095.jpg
 東芝がWHを買収した2006年にはシェール革命はまだ起こっていなかった。また、原発ルネッサンスの減速も予想されていなかった。一旦は減速した原発の計画は、北欧、東欧、英国、中国、インドなどで、地球温暖化問題への対処もあり、再度動き出している。そんななかで、中国がWHを買うのはなんとしても阻止する米国政府の意向であり、報道では日米間で協議も行われているとされる。
 いま、最も有力な買い手は、WHより技術導入を行った韓国電力とされている。米国から英国に渡り、日本が保有することになった原発技術が韓国に渡るとすれば、日本企業の凋落を見るようであり残念だが。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9406

http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/796.html

[政治・選挙・NHK224] 「パラサイト」世帯の高年齢化、日本社会のリスク要因に  パラサイトシングル生活人気ランキング
Domestic | 2017年 04月 19日 11:39 JST
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焦点:
「パラサイト」世帯の高年齢化、日本社会のリスク要因に

 写真は都内の実家で母親と同居する田中博美氏。3月撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)
http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20170419&t=2&i=1181129813&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPED3I03W

[東京 19日 ロイター] - 未婚のまま親と同居を続ける40─50歳代が10年ほど前から急増、その数は現在も高水準にとどまっている。親の年金収入に生活を頼る人の割合が大きくなっており、1990年代に「パラサイト(寄生)シングル」と呼ばれた独身者が職を失ったり、非正規社員になったりして、親の年金に依存している実態が浮かび上がる。親が亡くなった後、彼らの生活をどうするのか。日本社会の新なリスクファクターとの指摘もある。

<まさかこうなるとは このままでは共倒れ>
「なんとかやっていけると思っていたが、このままだと(母と)共倒れになる」──田中博美氏(54)は、大学で声楽を勉強した後、コンサートやレコーディングのバックコーラスの仕事をした。ボイストレーナーとして、音楽教室の仕事もしていたが、10年ほど前から急に仕事が減った。都内の一戸建てで両親と暮らし、結婚はしなかった。半年前に父が亡くなり、年金は半分くらいになってしまった。
仕事が激減したためハローワークにも行ったが、音楽関係の求人はほとんどなく、あっても決まらない。国民年金も途中で払うのをやめてしまい、受給資格がない。自分の老後は「全くの未知。音楽を教える仕事は一生できると考え、まさかなくなるとは思わなかった」。

<50代になった「パラサイトシングル」>
パラサイトシングルとは、学卒後も親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者のこと。1997年に山田昌弘中央大学教授が著書「パラサイト・シングルの時代」で造語した。当時は親に家事を任せ、家賃も払わず、給料を自分のためだけに使う気ままな独身貴族という意味合いで使われていた。山田教授によると、当時、親と同居していた独身25歳の3分の1ほどが、未婚のまま50歳になっている。1990年あたりから非正規社員が増え始めたことがその背景にある。山田教授は「非正規で収入の低い男性は結婚できない。女性は結婚して生活水準が落ちるのがいやだから、親と同居のままでいいと思っている」と指摘する。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2015年に、50歳まで一度も結婚したことのない人は男性で23.37%、女性は14.06%だった。男性の4人に1人、女性の7人に1人にあたり、どちらも前回(2010年)調査より3ポイント以上上昇、過去最高を更新した。
山田教授は、このままでは日本社会の大きなリスクになると警告する。「生活の保障をしてくれた親が亡くなった時、彼らの生活が破たんする。親の資産や貯金を食いつぶしたあとは、生活保護というパターン」。問題は社会保障という財政問題だけではない。公営住宅などがスラム化し、社会不安を起こす可能性もあるという。
総務省統計研修所の西文彦研究官がまとめた統計によると、45歳―54歳で親と同居している未婚者の数は、1980年の18万人から2016年には158万人に増加した。このうち、基礎的生活条件を親に依存している可能性があるとされるのは31万人。
ここ数年ではわずかな増加にとどまっているが、今後、団塊ジュニアと呼ばれる世代がこの年代に入ってくるため、増加傾向は変わらないとみられている。みずほ情報総研の主席研究員、藤森克彦氏は「未婚者の増加、その中でも親と同居する人が増えるというトレンドは変わらない。何も手を打たなければ、今後さらにその比率は増えていく」と見通す。
藤森氏の調査によると「1995年から2010年の間に、40代・50代人口は0.91倍と減っているのに、未婚者は1.89倍、そのうち単身世帯が1.71倍、親と同居が2.34倍に増えている」という。

<病気が同居のきっかけに>
自分の病気などが原因で親と同居せざるを得なくなるケースも多い。佐藤純一氏(56)は大学卒業後、有名ブランドで営業の仕事に就いた。デビッド・ボウイのアジア・ツアーの衣装制作に関わったこともある。上司の独立に伴い、正社員をやめてついていった。日本経済は悪くなり出していた。結婚を考えていた女性とうまくいかず、「酒に溺れて、そこからなにもやる気がなくなった」。精神を病み、親元に戻ったが、3年前に母親が他界。いまは父親と2人、年金で生活している。「早めに結婚して子どもでもいれば、ちゃんと貯金に回していたんだろうけど」。今は次の年金が支給される日まで、どうやって暮らそうかと心配する毎日だ。
軽部顕広氏(53)は大学を卒業して正社員として広告会社の営業の職に就いた。深夜まで営業先を回り、会社に戻って勉強会。終電がなくなり、社長が都内に借りていたマンションに泊まり、朝からまた仕事。家に帰れない日が続いたこともある。今で言えば「ブラック」だが、「仕事がおもしろくて、やめたいと思ったことはない」。その後、離婚を経験し、親と同居。最初は自分が家賃を払っていたが、43歳の時パーキンソン病と診断される。広告会社を退職し、いろいろなバイトをやったが、うまくいかなかった。現在、84歳の父親の年金と自分の障害年金で生活している。最近介護の資格を取得し、現在就職活動中だ。

<ひきこもりも高齢化>
ひきこもりもまた、深刻な問題だ。内閣府は昨年9月、15―39歳のひきこもりが2015年調査で54万1000人いるとの統計を発表した。前回調査の2010年時点より、約15万人減っているというが、NPO関係者は「調査対象の年齢を39歳で切っているからであって、単に対象者が40代に入っていっただけ」と説明する。現実には引きこもりは長期化し、高齢化している。
引きこもり支援NPO楽の会リーラの大橋史信氏によると、昨年「親亡き後」というテーマで相談会を開催したところ、100人以上が参加した。同氏は、ひきこもりの増加は地方で着実に深刻化していると指摘する。「地方には時限爆弾が眠っている。誰かが助けない限り、そこでは静かにタイマーが進んでいく」。
みずほ情報総研の藤森氏は、無職の中高年の就労支援策の強化や高齢者の就労環境を整備する必要があると指摘する。一方、中央大学の山田教授は、政府は「この問題を見ないようにしている。20年先、30年先を全く考えていない」と批判する。「今から25年後、今40代の人たちに親が亡くなった後の問題が大きな規模で起こってくる」と指摘。現在の生活保護のシステムでは対応しきれないだろうと警告している。
*見出しを修正して再送しました。
(宮崎亜巳、リンダ・シーグ 編集:石田仁志)

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孤独女の日常
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パラサイトシングル生活(15)バツイチの暮らし(208)定年後の暮らし(217)投資でセミリタイア生活(25)セミリタイア生活(844)第二の人生・第三の人生(155)残りの人生(51)移住生活(450)望郷生活(14)新規就農(246)半農生活(244)下町生活(35)自給自足生活(124)トカイナカ生活(42)マルチハビテーション(7)都市生活(440)昼夜逆転生活(40)リゾートバイト生活(9)
http://lifestyle.blogmura.com/parasitelife/
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/391.html

[経世済民121] 日本の結婚市場の崩壊と梅毒感染者の急増 ―売春婦に転じる日本人女性 なぜ人は同じことをまったく反対に解釈するのか

僕はさまざまな要因から、結婚によってメリットを受けられる女性は一握りで、それゆえに未婚化、少子化が進んでいる、と指摘してきた。そして、そのひとつの解決策として、結婚して子供を産み家族を作る or 生涯未婚で子無し、という極端なふたつの選択肢しかない現状に対して、欧州の先進国のように、事実婚などが増え、家族の多様性が当たり前になればいいのではないか、と提案した。

http://livedoor.blogimg.jp/kazu_fujisawa/imgs/0/5/05fbf704.png


『損する結婚 儲かる離婚』藤沢数希

女性が自分より所得が低い男と結婚するメリットはなく、男女の所得格差がなくなれば、婚姻率が下がっていくのは当たり前のことなのだ。女性がもっと社会進出し、男女平等をますます推進していく、というのは先進国では当たり前のことであり、また、僕の願いでもある。大臣の数、企業の役員の数などでも、日本は男性の方が多く、いまだに女性差別が残っている。本来、これらは北欧などの進んだ国がそうであるように、男女で半々になるべきものだ。婚姻率がどれだけ下がっても、日本でジェンダーフリーを推進していくことを止める、という考えは絶対にありえないのだ。

このような背景から、僕の本は、女性たちの背中をポンと押し、欧米では当たり前のリベラルな社会へと堰を切るきっかけになると考えていた。もう、伝統的な(単にキリスト教の影響を受けた西洋の家族法を輸入しただけのものだが)結婚にこだわる必要もないし、所得格差がなくなった以上、メリットのある結婚をすることはますます困難になっているのだから、日本人女性たちはもっと自由になればいい、と応援したかったのだ。

しかし、日本の女性たちは、僕の想像を超えて、はるかに先を行っていたことがわかった。先日、性風俗や個人売春など、日本の性産業に造詣が深い経営者や編集者の人たちと、最近の社会情勢について議論する機会を得た。その際に、いま日本で起きている驚くべき現象を、僕は知ることとなった。

20代、30代の日本人男性の年収は300万円程度であり、サービス業がさかんになり女性の労働者のほうが人気がある昨今では、多くの若い女性と所得が同程度か逆転してしまっている。こうした状況で、年収300万円程度のふつうの男性と結婚する女性はほとんどいない。その結果、何が起こったかというと、驚くべきことに、個人売春業が活況を呈することになったのだ。

つまり、男性との所得格差がなくなった以上、女性たちは、セックスを長期独占契約で売る結婚にまったくメリットを感じなくなり、その代わりに、セックスのバラ売りをはじめたのである。そのやり方はさまざまである。本番行為のないソフトな性風俗店でアンダーザテーブルで顧客から金をもらい本番を行うというものから、女子大生たちの間で流行っているいわゆる「パパ活」と呼ばれる中高年男性との月締めの売春契約、富裕層へのAV女優の斡旋など、形態は非常に多岐にわたる。しかし、ボリュームという点で最も多いのは、出会い系アプリなどを使った、個人取引であると思われる。

要するに、男女格差の縮小により、日本の結婚市場が崩壊し、セックスを長期独占契約で売る結婚から、一回ずつのバラ売りである売春に、日本人女性のビジネスが急激にシフトしていったのが、この2、3年に日本で起きていることなのだ。当然、これらは地下経済であり、公式の統計には現れないが、こうした仮説を裏付けるいくつかの強力な証拠がある。

里見ゆりあまずは、税務当局による直接の摘発である。人気AV女優であった里見ゆりあ氏に2億4500万円の所得隠しが発覚した。本人は単に貢がれた、と主張したが、東京国税局の調査官たちは売春業による所得と認定したのだ。これは氷山の一角であり、業界ではこのようなビジネスが広く行われていることをうかがわせる。

●人気AV嬢「里美ゆりあ」が2億4500万円の所得隠し “貢がれた”と異議(デイリー新潮)
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/09171600/?all=1

しかし、もっと強力な証拠がある。いま若い女性たちの間で、性病感染者が急増しているのだ。すこしググれば、各県の自治体などが梅毒やクラミジアの蔓延などを警戒しているニュースが出てくる。たとえば千代田区のウェブサイトにいけば、梅毒届け出数が女性は5年で約15倍に上昇していることが報告されている。

梅毒患者数推移千代田区
出所:千代田保健所健康推進課感染症対策主査

●若い女性の「梅毒」感染が急増。医師も危惧する異常事態(日刊SPA!)
https://nikkan-spa.jp/1181393

こうしたエビデンスや、また、実際に性産業を定点観測している記者たちの話を総合し、日本人女性たちが結婚というビジネスから、セックスのバラ売りである売春業に、急激に業態を変化させたことは間違いない、と僕は見ている。

さて、今週のメルマガでは、性病感染者数データのさらなる分析とともに、このように荒廃する日本の恋愛市場、結婚市場でいかに立ち回るべきなのか詳細に議論することにしよう。

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カテゴリ :恋愛工学

2017年04月16日
トランプvs金正恩 核のポーカーゲーム(金融日記 Weekly 2017/4/7-4/14)
TOPIX: 1459.07, -2.1% (1w), -3.9% (YTD)
Nikkei225: 18335.63, -1.8% (1w), -4.1% (YTD)
S&P500: 2328.95, -1.1% (1w), +4.0% (YTD)
USD/JPY: 108.63, -2.2% (1w), -7.1% (YTD)
EUR/JPY: 115.28, -2.1% (1w), -6.3% (YTD)
Oil(WTI Futures): 53.18, +1.8% (1w), -1.0% (YTD)

 4月第2週(4/10-4/14)の日経平均株価は週間で1.8%安の1万8335円63銭で引け5週連続の下落となった。トランプ大統領による「ドルは強すぎる」との口先介入とシリアや北朝鮮情勢で地政学的リスクが高まる中、円の上昇が続いた。金や原油価格も同様に上昇した。また、トランプ大統領が約束した大規模インフラ投資や税制改革も実行できるのか不透明感が増し、これまでの上昇トレンドが反転したことが明らかになってきた。

●米外交 通貨を武器に トランプ氏「ドル強すぎる」
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO1530186014042017EA2000/

●北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tohru-sasaki-idJPKBN17B13U?sp=true

●消えた「トランプ効果」―下げ止まらぬ米国債利回り
http://jp.wsj.com/articles/SB10433057978138953778204583084310769112992

 北朝鮮情勢であるが、15日には故金日成主席の生誕記念日「太陽節」を記念する軍事パレードが平壌の金日成広場で開催された。トランプ大統領は、原子力空母カール・ビンソンをはじめとする空母打撃群を朝鮮半島に向かわせ、これ以上のミサイル実験を行った場合、先制攻撃も選択肢のひとつだと示していた。それに対して、金正恩はパレードで新型の大陸間弾道ミサイルを披露し、「米国が挑発を仕掛けてくれば即時に壊滅的攻撃を加え、全面戦争には全面戦争で、核攻撃には核攻撃で対応する」と対抗姿勢を鮮明にした。
 ポーカーでいえば、トランプ大統領のレイズ(=掛け金の引き上げ)に対して、リレイズ(=さらなる引き上げ)したことになる。これは単なるブラフなのか、トランプ大統領は試されている。アメリカ本土を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルの開発を容認すれば、北朝鮮を中国やロシアと同じく不可侵の国家として対峙していかざるをえなくなる。

●「強力な艦隊」派遣とトランプ氏、北朝鮮は核攻撃を警告
http://jp.reuters.com/article/trump-north-korea-armada-idJPKBN17E0GF?sp=true

北朝鮮新型ICBM
●北朝鮮、新型ICBMか 軍事パレードで米けん制
http://www.sankei.com/photo/story/news/170415/sty1704150017-n1.html

●北朝鮮ミサイル、発射直後に爆発か パレードでは新型公開も
http://www.cnn.co.jp/world/35099837.html

 東芝は11日、2016年4〜12月期の四半期決算を2ヶ月遅れで発表した。監査法人の「適正意見なし」の異例の決算となった。今後は、基幹ビジネスである半導体事業の売却により約6200億円の債務超過を解消し、上場廃止の回避を目指すことになる。

●東芝の四半期決算、適正意見なしで強行突破 東証、上場廃止を含め判断へ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL11HE3_R10C17A4000000/

●東芝「上場廃止リスク」残る2つの壁とは?
https://zuuonline.com/archives/147185

●東芝の半導体事業売却手続きは「合弁契約に違反」、WDが抗議書簡
http://jp.reuters.com/article/toshiba-wd-idJPKBN17E0NK?sp=true

●東芝社債奇妙な安定 売れぬ国内勢、海外勢は強気
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD14HAR_U7A410C1EN2000/

 18日から、ペンス副大統領が訪日し日米経済対話会合が行われる。安倍政権の円安政策への非難が明確になれば、円高要因になり得る。米国では主要企業の決算発表が本格化する。トランプ相場が失速する中、企業業績が市場に安心感を与えることができるか注目される。日本の株式市場も、日経平均株価のPERが15倍にまで低下し割安感は出てきており、下降トレンドが反転することが期待される。23日日曜日には、フランス大統領選挙の第1回投票が行われる。

●ペンス米副大統領 18日訪日 日米経済対話初会合に出席
https://mainichi.jp/articles/20170407/k00/00m/010/146000c

●フランス大統領選まで1週間 混戦の様相
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170416/k10010950101000.html

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日本株
直近1年の日経平均株価とインプライド・ボラティリティの推移
直近1年の日経平均株価とインプライド・ボラティリティの推移
出所: 日経新聞社

サイズ/スタイル/セクター別の週間パフォーマンス(2017/4/7-4/14)
Chart20151114_Core30
出所: 東証、日経新聞社、セクター指数はTOPIX17業種

個別銘柄の週間パフォーマンス(2017/4/7-4/14)
サイズ/スタイル/セクター別の週間パフォーマンス
出所: 会社四季報、Yahoo!ファイナンス

FX
直近1年のドル円とユーロ円の推移
直近1年のドル円とユーロ円の推移
出所: セントラル短資

イールドカーブ(2017/4/14)
イールドカーブ
出所: Bloomberg.com

主要通貨の週間パフォーマンス(2017/4/7-4/14)
主要通貨の週間パフォーマンス
出所: セントラル短資

外国株とコモディティ
直近1年のS&P500と原油価格(WTI原油先物)の推移[USD]
直近1年のS&P500と原油価格(WTI原油先物)の推移[USD]
出所: Yahoo!ファイナンス、Bloomberg.com

地域別株価指数とコモディティの週間パフォーマンス[USD](2017/4/7-4/14)
地域別株価指数とコモディティの週間パフォーマンス[USD]
出所: iShares: MSCI Japan (EWJ), MSCI Kokusai (TOK)、MSCI Core Europe (IEUR), MSCI All Country Asia Pacific ex Japan (AAXJ), MSCI Emerging Markets (EEM), GLOBAL REIT ETF (REET). Bloomberg.com: Oil WTI Futures (CL1), Gold Futures (GC1)

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今週のマーケット・イベント
4月17日(月)
中国1-3月期GDP
中国3月小売売上高
中国3月都市部固定資産投資
中国3月鉱工業生産
米4月ニューヨーク連銀製造業景気指数
米2月対米証券投資収支
株式市場休場:英、香港、欧州など(イースターマンデー)
決算:米Netflix、他

4月18日(火)
ペンス副大統領と日米経済対話会合(日本)
米3月住宅着工件・建設許可件数
米3月鉱工業生産・設備稼働率
決算:米Johnson & Johnson、米Bank of America、米Goldman Sachs、米IBM、他

4月19日(水)
日3月訪日外客数
ユーロ圏3月HICP
米ベージュブック
決算:米Morgan Stanley、米American Express、他

4月20日(木)
日3月貿易統計
ユーロ圏4月消費者信頼感
米4月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数
米3月CB景気先行総合指数
G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン、〜21日)
決算:安川電、他

4月21日(金)
日2月第三次産業活動指数
ユーロ圏4月製造業・サービス業PMI
米3月中古住宅販売件数
決算:米GE、他

4月22日(土)

4月23日(日)
仏大統領選挙第1回投票

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カテゴリ :金融日記 Weekly

2017年04月13日
週刊金融日記 第261号 なぜ人は同じことをまったく反対に解釈するのか 〜人はみんな合理的、他
第261号の目次です。

『損する結婚 儲かる離婚』が発売しました! Kindle版も、好評発売中です。

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Kazuki Fujisawa ✔ @kazu_fujisawa
おかげさまで拙著『損する結婚 儲かる離婚』が恋愛カテゴリでAmazon売れ筋1位になりました。買っていただいたみなさま、ありがとうございます。 http://amzn.to/2mu7Lia
2017年Feb27日 14:04
3 3件のリツイート 19 いいね19件

メルマガ主要バックナンバー
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52021876.html

==============================
// 週刊金融日記
// 2017年4月13日 第261号
// なぜ人は同じことをまったく反対に解釈するのか 〜人はみんな合理的
// 金正恩は大陸間弾道核ミサイル開発を加速させる
// 広尾のオサレなビストロ
// セブ留学で韓国語を覚えました
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 東京は桜が咲き乱れておりますね。東北・北海道はまだこれからで、時間ができたらまた、弘前公園や函館の五稜郭なんかに行きたいですね。

★桜が見頃です。
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Kazuki Fujisawa ✔ @kazu_fujisawa
桜。
2017年Apr12日 11:50
8 8件のリツイート 51 いいね51件

●さくら開花予想 2017
http://sakura.weathermap.jp/

 先日、井戸さんと対談というかトークをしてきました。男女の出会いについて、出会い系アプリから街コン、バー、クラブ、そして、バス停(笑)について話してきました。そして、井戸さんの会社がはじめた出会い系スタンディングバーのステマです(笑)。

●井戸実×藤沢数希、恋愛トーク「男女の出会いはそこら中にあふれている」
http://www.mag2.com/p/news/245829

 ちなみに、トークの中で出てくる、東京に比較的近い他県では若い女子がじつは東京に吸い寄せられているというリサーチの詳細は以下のバックナンバーにくわしく書いてあります。

『週刊金融日記 第252号 地方ナンパと恋愛市場の地理的効率性について』

 ネットでは米航空会社ユナイテッドが、オーバーブッキングの不手際ですでに搭乗していた乗客を無理やり引きずり出した様子がスマホで撮影されTwitterで世界中に拡散され、大炎上しておりますね。

●米ユナイテッド航空はなぜ乗客を引きずりおろしたのか
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-39562378

 しかし、これは世間が騒いで裁判が有利に運べば、アメリカだと懲罰的損害賠償という考えがありますので、とんでもない金額を取れるチャンスのわけで、そうなったらけっこうオイシイですね(笑)。

★じつは被害者はかなりの腕のポーカープレイヤーだったそうです。
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Kazuki Fujisawa ✔ @kazu_fujisawa
あのシチュエーションだったら、最後まで絶対に降りずに、殴られて引きずり降ろされれば、億単位の賠償金をゲットできることまで完全に読み切ってた可能性がありますね。これからの訴訟戦略が見ものです。アメリカ特有の懲罰的な賠償金で唸るような金をゲットしてほしい。 .@key_poker https://twitter.com/pokerstrategyjp/status/851998025673297920
2017年Apr12日 13:43
465 465件のリツイート 371 いいね371件

★こちらも真偽の程は確かではありませんが、医師免許停止をされていた過去も……。
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Kazuki Fujisawa ✔ @kazu_fujisawa
やっぱり、あの爺さん、只者じゃねーよ。法廷でユナイテッドをぶっ殺して、カリブ海の別荘で祝杯だよ。> 航空機から引きずり降ろされた男性乗客の意外すぎるプロフィール:過去に違法薬物の転売で医師免許停止、凄腕ポーカープレイヤー…。 http://www.tvgroove.com/news/article/ctg/1/nid/34176.html
2017年Apr12日 19:30
Photo published for ユナイテッド航空機から引きずり降ろされた男性乗客の意外すぎるプロフィールが明らかに
ユナイテッド航空機から引きずり降ろされた男性乗客の意外すぎるプロフィールが明らかに
米ユナイテッド航空の旅客機から、乗客が強制的に引きずり降ろされた事件は、世界中に大きく報道され、同社への批判が続いているが、その一方で、この渦中にある男性がかなり意外な経歴の持ち主であることが明らかに・・・
tvgroove.com
245 245件のリツイート 292 いいね292件

 今週も面白い投稿がいくつもありました。見どころは以下のとおりです。

―37歳の既婚プレイヤーですが新規の20代女子との戦い方がわからなくなってしまいました
―アラフォー金融マンですがSクラス・20代前半女子がキャバクラの体入に行くとほざいています
―いったんは別れた女子大生の愛人にまた非モテコミット
―男が苦労して稼いだ金をぶちこんでも女性の心には全く響かないことを再認識
―セブでのフィリピン語学留学で韓国人女子大生にゴールしました
―不動産投資と法人を使った財産分与・コンピ負担低減スキーム
―サラリーマンがリスクを取って敗れた後はどのような行動をするべきか
―『サピエンス全史』を何時間で読めますか
(速読というのはインチキだという話)
―31歳女性ですがセックスレスの彼がキャバクラや風俗に通っているようです
―オ・モ・テ・ナ・シにより国際Aマッチに勝利しました
―そこそこいい暮らしで女の子たちと楽しく過ごすのもいいけどそんなことでは燃えないんだ

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.なぜ人は同じことをまったく反対に解釈するのか 〜人はみんな合理的

 離婚裁判の資料を見ていてとても面白かったことのひとつは、同じ出来事を夫と妻がまったく正反対に解釈しており、それぞれがそのまったく同じ出来事を相手の否を証明することに使っていることだ。たとえば、ある日、専業主婦が掃除や洗濯をしなかった。そのことが夫の準備書面にも妻の準備書面にも書いてある。夫はとうぜん家事放棄について指摘するし、妻はそんな些細な出来事で怒る夫の人格の異常性や言葉の暴力についてとうとうと書いてある。他には、ある買い物のことで口論になったとしよう。夫の書面には妻がいかに金銭感覚がない人物か書いてあり、妻の書面には夫は自分に金を渡さない異常に金に執着心を持った人物かが書かれている。立場が違えば、こうも見方が違うのだ。
 これは小さな夫婦の問題だが、国家間の問題でも同様である。先日、シリアが化学兵器を使った疑いで、アメリカは突如、50発以上のトマホークミサイルをシリア政府の空軍基地に撃ち込んだ。一線を超えた場合(=化学兵器の使用や核開発)、アメリカのトランプ大統領は容赦しない、というメッセージを送ることになった。これは核ミサイルの開発を急いでいる北朝鮮に釘を刺す狙いがある。アメリカ政府や多くの識者の見方では確かにそうなのだが、北朝鮮の金正恩はまったく逆に受け止めているはずだ。「一刻も早くアメリカ本土を攻撃できる大陸間弾道核ミサイルの開発に成功し、そのことを示さなければ、俺はアメリカに消されてしまう」
 また、ちょっと別の話ではあるのだけれど、福島県で起きた原発事故をめぐっては反原発派とそうでない者たちの間に非常に大きな隔たりが生まれた。一部、というかかなりの人たちが放射能の危険性を煽った。実際に日本の放射能から逃れるために海外に移住する人もいたのだ。そして、驚くことに、事故とはぜんぜん関係ない日本中の原発が止まってしまったのだ。それがあまりにも不経済だし、科学的な態度とは思えなかったから、僕は本まで書いたのだけれど。

『反原発の不都合な真実』 http://amzn.to/2oyibRi

 こうやって同じことをまったく違うように見ている人々は、お互いに相手のことを合理性がない頭のおかしい人だと思っている。たとえば、原発問題などで顕著なのだけど、いわゆる放射脳の人たち(=放射能を極端に怖がり日本にいると奇形児がたくさん生まれるとか言っている人たち)は、そうでない人から「科学の素養がない」「論理的思考力がない」などと罵倒される。
 僕は原発問題に関して、本まで書いたぐらいだから、こういう人たちがなぜそう考えるのか、かなり研究した。その結果、わかったことは、科学的素養も論理的思考力もこの問題を考える上で、じつはあまり関係ないということだった。これは意外な発見であった。
 まずは、よく言われる科学的素養というものを流行りの水素水を題材に考えてみよう。

●伊藤園 進化する水 水素水 (ボトル缶) 410ml×24本 http://amzn.to/2oyDaDN

 結論からいうと、どれだけ科学を勉強しても・・・

・・・

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2.今週のマーケット

●米国のシリアへのミサイル攻撃で金正恩は大陸間弾道核ミサイル開発をさらに急ぐことに(金融日記 Weekly 2017/3/31-4/7)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52107567.html

 12日水曜日の日経平均株価は続落し・・・

・・・

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3.ブログではいえないお店

―広尾のオサレなビストロ

 フレンチはじつはそれほど高くなく、野菜の多い前菜とメインひとつとグラスワインぐらいなら、それほどヘビーでもなく、もちろん美味しいので僕は好きなのですが、どうも東京はレベルの高いフレンチの供給が多すぎるせいか、けっこういいお店でもあんまりお客さんが入っていなかったりします。
 その点、先日行ってきた広尾のオカダは、ちょっと遅い時間でしたが満席で、ハイスペ女子たちの女子会やデートなどでガヤガヤしておりました。いかにも広尾のオサレなビストロという感じです。
 前菜2皿とメイン1皿にデザートをメニューから選ぶコースがひとり7000円ほどで人気です。ふたりで全皿別メニュー、つまり6種類頼んでもまったくOKと言ってました。この日はサラダ的なものを二皿とノドグロとウニのリゾット、鮑とキノコのソテー(このお値段なので小ぶりです)の計4皿の前菜と、メインはフランス産の鳩のローストを注文しました。

★ノドグロが添えられたウニのリゾット、そして、メインの鳩のローストです。美味しゅうございました。
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Kazuki Fujisawa ✔ @kazu_fujisawa
ここのビストロは美味しゅうございましたなぁ。ノドグロとウニのリゾット、鳩のソテー。メルマガで紹介しよう。
2017年Apr5日 21:59
2 2件のリツイート 16 いいね16件

 いっしょに・・・

 ・・・

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4.藤沢数希の身もフタもない人生相談

―セブでのフィリピン語学留学で韓国人女子大生にゴールしました

藤沢さん、いつもメルマガ楽しみにしております。
現在セブで語学留学中のXXXXと申します。
現在2X歳でもともと日本で研究職としてXXXXX企業で働いておりましたが、大企業特有の古い就業文化に嫌気がさし退職し、現在キャリアアップのため語学留学に来ております。
現在2ヶ月が経過し、あと1ヶ月滞在後、別の国での就職を予定しております。
藤沢さんも過去に短期でセブ留学をされていたように、セブでの語学留学はとても人気があります。

『週刊金融日記 第220号 セブのホテルとレストランを一気に紹介』
『週刊金融日記 第221号 フィリピン英語短期留学事情と英語の勉強法』

大きな理由は価格の安さにあると思いますが、リゾート地でもありますので勉強というよりは観光気分で来ている人も多くいます。
週刊金融日記の読者の方々は英語学習にも積極的だと思われますので、今回は私の経験と注意点をシェア出来ればと思います。

(1) 日本人と韓国人がかなり多い

学校にもよると思いますが
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/


 

 
リタイアしてからも生活レベルは下げたくないし見栄も張りたい!

2016/8/27 リタイアテーマ, 過去記事
ほとんどの方はリタイアした後は働かずに資産運用などをしながらも徐々に取り崩す生活をすると思います。

ちなみに私も54歳でリタイア後は毎月30万、年間360万円を取り崩しながら85歳で逝く予定です(笑)
月30万の家計費では普通の生活は出来ても高級品を買ったり高級車に乗ったりすることは自分の首を絞める行為でしょう。
しかし、ちょっと頭を使えば高級品を身に着けながら高級車に乗り続けることは可能です。
さらに、高級マンションにも住むことが出来ます。

どうすれば出来るのでしょうか?

少し考え方を変えればよいのです。
普通の考え方だと、高級マンションや高級車=ぜいたく品=無駄使い です。
これを発想の転換で 高級マンション・高級車=実用性のある資産と考えます。
かと言って、すべての高級マンション・高級車が資産になる訳ではありません。
年月が経っても資産価値が落ちないマンションやクルマ、時計などを買うのです。
普通の考え方だと家や車は新品で買ったその日から資産価値が下がり続けます。
これは減価償却という考え方で家なら木造住宅で22年、鉄筋コンクリートのマンションで47年で資産価値がゼロになります。
クルマならばたったの6年でゼロです。
実際はここまで極端には下がらないのですが、年数を掛けて徐々に価値が下がっていきます。
田舎の不便な土地に建てた家なんて悲惨です、20年後には土地代以外値段はほぼ付きません。
しかし世の中には減価償却を無視した値段が付くものがあります。
それは需要があるものです。

マンションならば東京都心で最寄り駅から5分以内の物件、車ならば海外需要があるトヨタ車、時計ならばロレックス。

●マンション選び

10年経っても資産価値が下がらないマンションの選び方15のポイント(お金つくーる様のサイト)

こちらのサイトに詳細が書いてありますが、要約すると
1、人気エリア
2、駅から徒歩5分以内
3、ブラント力のあるデペロッパー
これらを満たせば、新築で買って10年後に売りに出しても損をすることはほぼ無いようです。(運が良ければ儲かることも)
例えば5000万のマンションを金利1.0%で借りて10年後に同額の5000万で売れれば毎月の金利+管理費+修繕積立金のみの負担で高級マンションに住むことができます。
※上記10年間の金利420万+管理費360万なので、月々6万程度の負担。都内で5000万クラスのマンションを借りると通常は家賃20万位なので、20万の家賃の物件が実質6万円で住める計算。

●クルマ選び

リセールバリュー/新車残価率 アルファード・ハリアー・ランドクルーザーなど

(株)サンコーオート様のサイトより引用すると

1、トヨタの5車種=ランドクルーザー・ランドクルーザープラド・ハリアー・アルファード(ヴェルファイア)・ハイエースを選ぶ
2、上記車種の色・装備など慎重に選ぶ
3、3年後の車検前に売却する

但しマンションと違い、新車と同じ値段で売れることはありませんよ?
500万で買った車が3年後に400万〜450万で売れるといったイメージです。
例えば、450万でヴェルファイア2.5ZG(2WD)を新車で購入、3年後に400万で売却。
これを上手に転がしていけば大衆車並みの負担率でありながら3年ごとに高級車の新車が買える計算になります。

詳細はこちらをご覧ください。(サンコーオート様のサイト)

●時計選び

買って損をしない高級時計5選 (時計査定の窓口様のサイト)

私自身、古物商なのでこれに関しては非常に詳しいです。3つにまとめると…

1、ロレックス以外は買わない
2、ロレックスのスポーツモデルを選ぶ
3、新品は買わない

上記3点を守れば、10年後に売却する時もほぼ元が取れます。例えば私は2006年にロレックス・エクスプローラT(114270)を当時新品価格35万で買いました。
2016年にこれを売却すると30万で売れます。(5万円の損ですが、当時中古なら28万位だったので元以上で売れています)

時計は別に無理に売らなくても、いざという時にいつでも換金出来ますので中古ロレックスほど資産価値のある工業製品は無いと思います。

※もっとお得な時計もあるのですが、のちほどサイトに公開致します。

(例)ルジェンテ白金台 4650万円(1LDK)専有面積46.07m2(2005年築)を変動金利0.5%で買い、車はヴェルファイア2.5ZGに乗り、時計はロレックス・サブマリーナを中古で買う。

結構お金持ちに見えますねぇ(笑)
見栄っ張りでケチな人にはぴったり(ちなみに私は東京には死んでも住みたくないので遠慮します)


リタイアしたおっさんでもモテる方法?

2016/7/24 モテ・エロネタ, 過去記事
プロフィールでも触れていますが、私は10年前まで風俗業界で生計を建てておりました。

ですから、女性の扱い方には多少自信があります。
なんども痛い目にもあっている(´・ω・`)
・・・・・

仙人みたいなリタイア人生を送りたいのならば、女性にモテたい願望なんて無くなるでしょうが、私は普通の人間ですのでリタイアしてもモテたいと思っています(笑)
但し、リタイアした無職のおっさんが何もしなくてもモテるほど世の中甘くありません。

女性は建前はともかく、本音はお金が大好きな生き物です。
しかも自分で稼ぐのではなく、お金を貢いでくれそうな男性を好みます。
そうです、非常に他力本願な生物です。

たとえば、リタイア後に私は週に1度、小料理屋に通うことが目標です。
(イメージは水谷豊・相棒の花の里)

images

そこにいる女将や女性客とウィットの利いた楽しい会話・付き合いをしたいのです。
でも、いくら客でも無職の50過ぎたおっさんと正直に言えば、女性は必ず引きます・・・
「この人なにをして生きているんだろう?気持ち悪い人」
と思われますので最初から警戒されてしまいます・・・
ですので、自称で良いから職業を作ります。
私は投資家と名乗ろうと思っています。

例え近所の飲み屋であっても、服装はパリッとした清潔感ある服を着ていき、腕にはロレックスを身に着けます。
お会計の時に見せる財布はルイヴィトン、カードは最低でもゴールドカード。
(何が言いたいかと言うと、たいていの女性が知っている高級ブランドを身につけましょう)

上記は全て中古で良いです。
ちなみに私は中古ビジネスを営んでいますので安く手に入ります。
ロレックスだけは最低30万ほど掛かりますが、中古のロレックスならば売る時も高いので資産価値はあります。
ヴィトンの財布も中古なら2万円で買えますし、ゴールドカードは年会費無料のものでいいでしょう。

そうです、杉下右京になりきるのです。

あとは、女性との会話ですが、早期リタイア成功者ならばそれなりの成功者でしょうから話題は豊富でしょう、なんとかなります。
私なら株式投資の話、経営の話、いままで読んだ面白い本の話などします。
自分の話ばかりでなく、相手の悩み相談なども聞いてあげます。(話を聞くだけでよい)
女性から尊敬されるようになればしめたものです。しかも勝手にお金持ちと思ってもらえます(笑)
実際小金持ちなんでしょうが、女に貢ぐ無駄金は一銭もありませんよ?

いいんです、貢がなくて。
雰囲気さえあれば良いんです。

勝手に(お金持ちの成功者)と勘違いしてくれれば、あっち側からアプローチしてきます。
あとお付き合いする前に、別に付き合っている女性(奥様・彼女)がいることも思わせます。
こっちからしたら遊びですから、その辺の誠意は見せておきます。
恐らくそれでも食いついてきます、女性はモテる男が好きなんです(笑)
むしろもっとアプローチが激しくなってくるかもしれません。
このあたりの女性心理は藤沢和希氏の「恋愛工学」を勉強してください。

最後に
実際おまえはモテるのか?と突っ込まれると困るので一応暴露しますが、私は現在20代女性とお付き合いしております。
実物の私は見た目は全くモテそうもない薄毛のおっさんです(笑)

コストコ会員を継続すべきか悩んでいる

2017/4/15 困ったネタ, 節約
私はコストコの法人会員になっています。
コストコのシステムは1年に一度年会費を納めることにより、全国のコストコを利用する権利を獲得出来ます。年会費は法人で4158円(税込み)
1か月あたり≒346円の入場料と考えることもできます。

コストコのメリットは多くあるのですが、1つは圧倒的な安さ。
同じ商品が他店より確実に安いです。
もう1つのメリットは、コストコでしか買えない商品があること。
海外(アメリカ)でしか手に入らない珍しい商品が多くあります。
さらにその商品の品質もかなり(・∀・)イイ!!
逆にデメリットもあります。1つは業務用ならではの量の多さ。
肉とかキロ単位ですし、パンとかも大家族じゃないと消費出来ない位のパッケージです。
もう1つは上記に上げましたが、会費が掛かること。
最低でも1ヵ月に1回、5000円以上買い物しないとお買い得感がありません。

現在は法人会員なので会費は会社持ちですが、来年からは個人会員に切り替えないといけない。コストコは個人会員のほうが会費も高く、年会費4752円(税込)です。
1ヵ月あたりなんと?約400円です。
400円も入場料を払って利用するのはせいぜい1ヵ月あたり1、2回。
ひとり暮らしのおっさんには重荷です(-_-;)

ただ、私はコストコでしか買えないこちらのコーヒーの味が大好きでこれが買えなくなるのが痛い(>_<)


Ethical Bean Coffee

いっけん高級そうですが、908gで1800円程度です。(100g換算で200円)
他のコストコオリジナルコーヒー(スタバ製)より若干高めなのですが、味が全然違う!
オーガニックコーヒーなので雑味が無く毎日飲んでも飽きないのです。
楽天で買うと、227gで1800円(高い!)なので、これだけでも会費の元が取れるのですが、そこまでしてこだわる必要があるのか??
安いコーヒー豆ならカルディコーヒーファームでも売っているし業務用の豆なら100g150円程度から買えます。
究極の節約生活をするのならば、選択肢はコストコ解約です。
ただ私にそこまでギリギリの節約生活が出来るのか??
更新月は8月なのでそれまで悩みに悩んで決めたいと思います…
http://freedom3.asia/2017/04/post-452/
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/244.html

[経世済民121] 市場が熟考し始めた13兆ドルの大問題、量的引き締めに海図なし 6月米利上確率50%割込 長期金利5カ月ぶりゼロ%まで低下
市場が熟考し始めた13兆ドルの大問題、量的引き締めに海図なし
Enda Curran、Liz Capo McCormick、Eric Lam
2017年4月19日 15:40 JST

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
• 米金融当局者は保有資産の縮小開始時期を議論
• 世界経済の回復続けば、ECBと日銀も追随か

量的緩和(QE)という未知の領域に足を踏み入れた世界各国・地域の中央銀行が今、量的引き締めという海図にない水域をどう進むかプランを練り始めている。
  米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、そしていずれは日本銀行が移行期のかじをどう取るかによって、2013年に起きた「テーパータントラム(市場のかんしゃく)」のような反応が世界で再発するか、あるいは中国による近年の米国債保有縮小への反応のようにほとんど気づかれない程度で済むかの違いが出てくるだろう。FRBとECB、日銀のバランスシートの合計は現在、約13兆ドル(約1400兆円)と、中国やユーロ圏の経済規模を上回る。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i1Ibnz3rnKm4/v2/-1x-1.png

  13年に資産購入の段階的縮小を示唆してリスク資産急落のきっかけを作ったバーナンキ前FRB議長は、バランスシート縮小のために事前に戦略を定めることを提唱している。フィッシャーFRB副議長は13年のようなかんしゃくの再発を予想しないと述べているが、大規模な巻き戻しを市場が消化できない場合、中銀の練り上げたプランはすぐにつまずくだろう。
  ヘッジファンド、ユーリゾン・SLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)は、「登山で言われるのは、下りは常に上りよりも危険だということだ。バランスシートの縮小は下りだ」と指摘する。
  ただ、日銀がバランスシートの縮小に動くのはかなり先とみられ、ECBのバランスシートは少なくとも今年の終わりまでは増加し続け、縮小は資産購入を段階的に縮小してからしばらく後になる公算だ。
  そうした中、重要な未知数は、巨額の債務を抱える世界経済が景気刺激の解除で見込まれる金利上昇にどう耐えるかだ。中銀のバランスシート圧縮で長期債に売り圧力が高まり、借り入れコストを事実上押し上げる。正しいバランスを取ることは容易ではないだろう。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、デービッド・メリクル氏は「実際には、連邦公開市場委員会(FOMC)は徐々に縮小しながら市場の機能を見極めつつ、バランスシートの適切な最終的水準を決める必要が出てくるだろう」と最近のリポートで指摘した。
  市場の反応がフェデラルファンド(FF)金利誘導目標の見通しにも影響するというドイチェ・バンク・セキュリティーズの米国チーフエコノミスト、ジョゼフ・ラボーニャ氏は、「当局はバランスシートを縮小し始める前に市場に周到に準備させ、テーパータントラム再発を回避しようとするだろう」と予想した。
  
原題:Markets Start to Ponder the $13 Trillion Gorilla in the Room(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OON70S6S972801


 


6月米利上げの確率、50%割り込む−インフレ期待低下で
Wes Goodman
2017年4月19日 14:49 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i5okSgoLfKcc/v2/-1x-1.png

• ブルームバーグの金利予想で、6月利上げの確率は約44%に低下
• 雇用やインフレ指標を受け、米経済への信頼感が低下

トレーダーの間では6月の米利上げ観測が後退している。インフレ期待の低下が背景にある。
  ブルームバーグがまとめた世界の金利予想確率で、6月の米利上げ確率は44%程度に低下。今月の早い段階では60%を上回っていた。投資家の利上げ観測が後退する中で、フェデラルファンド(FF)金利先物の6、7両月限の利回りは低下。政策金利の動向に最も敏感な2年物米国債相場は、このままいけば1年ぶりの2カ月連続上昇となりそうだ。
  3月の米雇用統計で雇用者数の伸びが予想を下回ったほか、同月の米消費者物価指数(CPI)が前月比で予想外のマイナスとなったことを受け、投資家は米経済の力強さと当局による今年3回の利上げ方針を疑問視している。また、トランプ大統領が提案している減税やインフラ投資計画がまだ実現されていないことにも失望感が広がっている。
  CIBCワールド・マーケッツ・ジャパンの債券責任者、大江一明氏は市場はある種のショック状態だと指摘し、投資家はこの夏にも米利上げが可能かどうか疑い始めていると述べた。

  予想インフレ率の指標である米2年債と同年限のインフレ連動債(TIPS)の利回り格差は今週に入り1.37ポイントと、年初来高水準の2.19ポイントから縮小。米当局が2%のインフレ目標を達成する能力をトレーダーが疑問視していることが示唆された。
原題:Fed June Hike Odds Below 50% After Inflation Expectations Tumble(抜粋)

 

長期金利が5カ月ぶりゼロ%まで低下、米長期金利の年初来最低更新で
船曳三郎
2017年4月19日 08:08 JST更新日時 2017年4月19日 16:21 JST


メイ英首相

リフレトレードの巻き戻しが続いており、驚きない−バークレイズ証
• 先物15銭高の151円18銭で終了、長期金利はゼロ%付けた後に0.005%

債券相場は反発。長期金利は昨年11月以来となるゼロ%まで低下した。前日の米国市場で10年国債利回りが年初来最低を更新した流れを受けて買いが先行した。その後は高値警戒感から長期金利は下げ渋り、20年債入札を翌日に控えた超長期債相場も伸び悩んだ。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1ベーシスポイント(bp)低いゼロ%と、昨年11月16日以来の水準で開始した。その後は0.005%へ戻した。午前の日銀オペ通知後も同水準で推移した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/isdDCvKj7tJY/v2/-1x-1.png

  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「米長期金利が昨年11月以来の低水準となり、リスクセンチメントで欧米株も売られ、リフレトレードの巻き戻しが続いており、10年金利のゼロ%に驚きはない」と指摘する一方、「ゼロ%は一つの大きな壁だと思うので、マイナス圏に下がっていくか分からない」と話した。
  長期国債先物市場で中心限月6月物は前日比15銭高の151円18銭で取引を始め、午前に151円20銭と17日に付けた5カ月ぶりの高値に接近した。午後は上値がやや重くなり、結局は15銭高の151円18銭で取引を終えた。
  野村証券の中島武信クオンツ・アナリストは10年債利回りについて、「国内勢が積極的にマイナスを買うとも思えず、ゼロ%を割れるとしても先物に引っ張られるか、超長期からつぶされるかだ。超長期にリアルマネーが入っていない以上は長続きもしない」との見方し、「20年債入札を控えているので、今日は先物や10年債も強くなりにくい」と指摘した。
  超長期ゾーンでは、新発20年物160回債利回りが2bp低下の0.55%で取引を始め、その後は0.555%に戻した。新発30年物54回債利回りも2bp低い0.745%を付けた後、0.76%まで低下幅を縮小。新発40年物の9回債利回りは2.5bp低い0.945%から0.965%まで戻した。
  財務省は20日、20年債入札を実施する。160回債のリオープン発行となり、表面利率は0.7%に据え置かれる見込み。発行額は1兆円程度となる。
米長期金利が2.2%割れ 

  18日の米国債市場では10年債利回りが前日比8bp低い2.17%程度と、昨年11月以来の低水準になった。米国の予想を下回る経済指標や税制改革に対する期待の後退、地政学的リスク、欧州政治の不透明感が背景。メイ英首相が同日、欧州連合(EU)離脱交渉を巡る自身の姿勢について国民の信を問う解散総選挙を表明し、欧米株式相場は下落した。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、「円債は買い材料がたくさんあり金利低下の方向。長期債の買い入れオペ減額がなく、10年金利のコントロールの幅がマイナス0.1%からプラス0.1%であることを再確認し、サポート材料が増えた」と言う。
  日銀はこの日、長期国債買い入れオペを実施した。残存期間「1年超3年以下」が2800億円、「3年超5年以下」は3500億円と前回から据え置かれたほか、長期金利の低下で減額観測が出ていた「5年超10年以下」も4500億円と変わらずとなった。
日銀国債買い入れオペ結果はこちらをご覧下さい。
  野村証の中島氏は、「日銀は10年金利のゼロ%は気にしないということ。マイナス0.1%まで下がらないと動かないのではないか」と指摘する一方、「金利低下が進んだとしても、月末に発表される5月の買い入れ計画でひっくり返されるリスクもある」と話した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOMNPT6KLVRA01

 

新興市場通貨の先行き、予測首位のウェルズFが警鐘−1〜3月堅調も
Lilian Karunungan
2017年4月19日 14:47 JST
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i1QezJxxBT6Q/v1/-1x-1.png

• 年末まで上昇続くとは予想せず−ベネンブローク氏
• 韓国ウォンやタイ・バーツなど、今後9カ月で2%超の下落見込む

1−3月(第1四半期)の新興市場通貨は四半期ベースで約7年ぶりの大幅上昇を記録したが、それが反転しそうだ。1−3月のアジア新興国通貨で予測精度が最も高かったウェルズ・ファーゴのニコラス・ベネンブローク氏がこうした見通しを示している。
  ウェルズ・ファーゴの通貨戦略責任者を務めるベネンブローク氏(ニューヨーク在勤)は、「年末まで上昇が続くとは予想していない」と説明。「米利上げは今後も着実なペースで続き、アジア通貨を含む大半の外国通貨の重しになるだろう」と分析した。
  同行の予測によると、韓国ウォンとインドネシア・ルピア、タイ・バーツはいずれも今後9カ月で2%を超える値下がりとなる見込み。インド・ルピーとフィリピン・ペソも下落する見通しだが、中央銀行のタカ派姿勢により下げ幅は小さくなるだろうとベネンブローク氏は話した。
  円を除く域内10通貨で構成するブルームバーグ・JPモルガン・アジア・ドル指数は1−3月に2.5%上昇。2010年7−9月以来の大幅高となっていた。

原題:Alarm Sounds in Emerging Currencies for Top Asia Forecaster (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OON4CV6KLVR801

 
リサーチ無料時代終わり、基本料金542万円も-銀行の顧客向けリポート
Stephen Morris、Stefania Spezzati
2017年4月19日 13:12 JST

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米アップル、発売10周年のiPhoneでデザイン刷新準備−関係者

The Japan Exchange Group Inc. (JPX) logo is displayed outside the Tokyo Stock Exchange (TSE) in Tokyo, Japan, on Wednesday, Sept. 14, 2016. The Topix index fell for a sixth day at the close of trading in Tokyo as volatility returned to markets ahead of meetings by policy makers in Japan and the U.S. next week amid investor concern central banks around the globe may be reassessing the benefits of existing stimulus measures. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
TOPIXが小幅続伸、協和キリンなど医薬品堅調−早朝の円高一服も

Goldman Sachs Group Inc. headquarters stands in New York, U.S., on Friday April 14, 2017. The Goldman Sachs Group Inc. is scheduled to release earnings figures on April 18. Photographer: Victor J. Blue/Bloomberg
ゴールドマン、1−3月債券トレーディングでつまずく−株価下落

ドイツ銀やJPモルガンも料金体系を検討
比較的小規模な投資家には「従量課金制」も検討されている


マーケットリサーチをトレーディング顧客に銀行が無料で提供することを禁じる欧州の規制適用が数カ月後に迫っているが、請求する料金の体系はまだ固まっていない。

  欧州連合(EU)の金融・資本市場の包括的な規制、第2次金融商品市場指令(MiFID2)には、利益相反を避けるため、資産運用会社が支払う取引手数料と投資調査のための費用を分けるよう義務付ける規定が盛り込まれている。来年1月3日の適用開始が近づく中で、銀行は資産運用会社やヘッジファンドがいくら支払う用意があるか打診している。

  資産運用会社は、JPモルガン・チェースの債券アナリストから基本パッケージで5万ドル(約542万円)という金額が示されたとしているが、きちんとした料金体系を明確にしている金融機関はまだない。
  価格設定の協議が商業上の機密に触れることを理由に関係者3人が匿名を条件に語ったところでは、ドイツ銀行とコメルツ銀行は、多額の前払い契約に対応できない比較的小規模な投資家に「従量課金制」を売り込み、大手ヘッジファンドに対しては、VIPアナリストへのアクセスや会議のディスカウント、リポート読み放題などの特典が付くオールインクルーシブ(全て込み)のパッケージを提案しているという。
  ミレニアム・グローバル・インベストメンツのマネジングディレクターで、ポートフォリオ投資の共同責任者を務めるリチャード・ベンソン氏(ロンドン在勤)は「はっきりといくらで、一定の価格で何が得られるか銀行が示すのを引き続き待っているところだ」と述べ、「非常に安い価格から数十万まで開きがあり、夏休み前に明確になることはなさそうだ」との見方を示した。
原題:Banks and Clients Tussle Over What It Will Cost to Read Analysts(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMXI06TTDS001


 

ゴールドマン、1−3月債券トレーディングでつまづく−株価下落
Dakin Campbell
2017年4月18日 22:04 JST更新日時 2017年4月19日 05:31 JST

• 1−3月決算はアナリスト予想下回る、商品と為替関連で需要が後退
• ブランクファインCEO、顧客活動の低調さを指摘

米ゴールドマン・サックス・グループの株価が18日、英国の欧州連合離脱選択以降で最大の下落を演じた。1−3月(第1四半期)の債券トレーディング収入が市場予想を下回り、同業他社との比較でも不調だった。
  18日の発表によると、債券トレーディング収入は16億9000万ドル(約1840億円)とブルームバーグがまとめたアナリスト予想の20億3000万ドルを下回った。商品と為替関連で需要が後退したと同社は説明した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iGFN_DzFTMRo/v1/-1x-1.png

  この日決算を発表したバンク・オブ・アメリカ(BofA)ではトレーディング収入が増加。先週発表したJPモルガン・チェースとシティグループも同収入がアナリスト予想を上回った。
  ゴールドマンのロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)は発表資料で「一部の値付け業務について顧客活動が芳しくなく、営業環境はまだら模様だった」と説明した。
  発表によると、純利益は22億6000万ドル(1株当たり5.15ドル)と、前年同期の11億4000万ドル(同2.68ドル)からほぼ倍増した。アナリスト17人の予想平均は調整後1株利益5.34ドルだった。
  全社の収入は27%増の80億3000万ドル。アナリスト予想平均は83億3000万ドルだった。費用は15%増の54億9000万ドル。
  株式も含めたトレーディング収入全体は2%減の33億6000万ドル。株式トレーディング収入は6%減だった。
  一方、投資銀行業務の収入は16%増加。債券引き受けが25%増収、株式引き受けは70%増と好調だった。
  ゴールドマン株はニューヨーク時間午後4時現在で4.7%安の215.59ドルと昨年6月24日以来の大幅安。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ipItSJPmYYHw/v1/-1x-1.png
原題:Goldman Whiffs in Wall Street Bond Rebound That Boosts Peers (1)(抜粋)
Goldman Tumbles as Bank Strikes Out on Bond-Trading Revival (1)
Goldman Tumbles as Bank Strikes Out on Bond-Trading Revival (2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOLUJQ6K50Y001

 

米株価指数先物 時間外取引 堅調、ダウ先物は35ドル高

配信日時 2017年4月19日(水)19:20:00 掲載日時 2017年4月19日(水)19:30:00
東京時間19:20現在
ダウ平均先物6月限 20468.00(+35.00 +0.17%)
S&P500先物6月限 2344.25(+7.00 +0.30%)
NASDAQ100先物6月限 5408.50(+19.25 +0.36%)


豪ドル/ドルが下げ一服、0.7500割れ回避で下げ渋る=ロンドン為替

配信日時 2017年4月19日(水)19:17:00 掲載日時 2017年4月19日(水)19:27:00
 豪ドル/ドルが下げ一服となっている。豪ドル/ドルは、ロンドン序盤に鉄鉱石価格の下落や米債利回りの上昇を背景に一時0.7506近辺まで今日の安値を広げたが、0.7500割れには至らず、その後は下げ渋っている。

AUD/USD 0.7518


少女像の撤去要求=区長「次期政権が解決」―森本釜山総領事【4/19 18:03】
【ソウル時事】韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置された問題で、森本康敬釜山総領事は19日、管轄自治体の釜山市東区を訪れて朴三碩・東区長と面談し、像の撤去を求めた。日本側関係者が明らかにした。

像設置への対抗措置として一時帰国した森本総領事が4日、約3カ月ぶりに帰任して以来、朴区長と会ったのは初めて。聯合ニュースによると、朴区長は「次期政権が発足したら、日本政府と対話で解決する問題だ」と述べ、次期政権の方針に委ねる考えを表明。事態の早期打開は難しそうだ。

森本総領事とともに帰任した長嶺安政駐韓大使は10日、林聖男外務第1次官と会談し、少女像の撤去を含め、慰安婦問題をめぐる日韓合意の履行を求めた。長嶺大使は黄教安大統領代行(首相)との面会を要請しているが、実現していない。

時事通信社

3月のユーロ圏消費者物価確定値、1.5%上昇=速報値と変わらず―EU統計局【4/19 18:00】
【ロンドン時事】欧州連合(EU)統計局が19日発表した3月のユーロ圏諸国の消費者物価指数上昇率(確定値)は、前年同月比1.5%となった。3月31日発表の速報値も1.5%。2月実績の2.0%から減速した。

3月のEU全体の物価上昇率は1.6%で、2月の2.0%から減速した。

ユーロ圏の物価上昇率を国別で見ると、主要国のドイツが1.5%(2月は2.2%)、スペインが2.1%(同3.0%)と、それぞれ大幅に減速。一方、フランスは1.4%で横ばい、イタリアも1.4%(同1.6%)だった。

中堅国のオランダは0.6%(2月は1.7%)に急減速し、ベルギーも2.5%(同3.3%)に減速した。

このほか、財政再建中のギリシャは1.7%(2月は1.4%)に加速。キプロスは1.5%(同1.4%)、ポルトガルは1.4%(同1.6%)、アイルランドは0.6%(同0.3%)だった。

バルト3国では2月から3%台が続いている。

ユーロ圏以外では、英国が2.3%(2月は2.3%)、ポーランドが1.8%(同1.9%)だった。

時事通信社

2月のユーロ圏対外貿易収支、178億ユーロの黒字=EU統計局【4/19 18:00】
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)統計局が19日発表した2月のユーロ圏対外貿易収支速報値は、178億ユーロの黒字となった。前年同月は182億ユーロの黒字だった。EU全体は17億ユーロの黒字(前年同月は26億ユーロの黒字)。

ユーロ圏の輸出は前年同月比4%増の1703億ユーロ、輸入は5%増の1526億ユーロ。EU全体は輸出が7%増の1465億ユーロ、輸入が8%増の1448億ユーロだった。

ユーロ圏の域内貿易は5%増の1491億ユーロ、EU全体は3%増の2659億ユーロ。

時事通信社

東京市場サマリー(19日)【4/19 17:55】
【東京株式】小幅に3日続伸=売り買い交錯

日経平均株価は前日比13円61銭高の1万8432円20銭と小幅に3日続伸する一方、東証株価指数(TOPIX)は0.11ポイント安の1471.42と、3日ぶりに小反落した。押し目買いと円相場の上昇を嫌気した売りが交錯した。東証1部銘柄の52%が値上がりし、41%が値下がりした。出来高は19億5291万株、売買代金は2兆3172億円。

【東京外為】ドル、108円台後半=終盤に一段高

東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、終盤、米長期金利の上昇を眺めて一段高となった。午後5時現在は、1ドル=108円82〜82銭と前日(午後5時、108円86〜86銭)比04銭のドル安・円高。ユーロは終盤、対円、対ドルで上昇。同時刻現在は、1ユーロ=116円77〜79銭(前日午後5時、115円94〜94銭)、対ドルでは1.0731〜0731ドル(同、1.0649〜0651ドル)。

【東京債券】先物、堅調=長期金利は0.005%

債券相場は堅調。長期国債先物の中心限月2017年6月物は、前日比15銭高の151円18銭で取引を終えた。長期金利の指標となる新発10年物国債346回債利回りは、0.005%低下の0.005%となっている。朝方は、前日の米国市場で債券買い進んだ流れを引き継ぎ、買いが先行して取引開始。現物では10年債利回りが一時、2016年11月以来の0%まで低下した。ただ、日経平均株価の下げ幅が縮小し、上昇に転じると「高値への警戒感が強くなった」(銀行系証券)ため、上値が重く高値圏でもみ合った。

【短期金融市場】無担保コール翌日物速報値、マイナス0.056%

日銀が公表した短期金融市場での無担保コール翌日物の速報値は、加重平均がマイナス0.056%(前営業日確報値マイナス0.053%)、最高レートは0.001%(同0.010%)、最低レートはマイナス0.075%(同マイナス0.070%)だった。

【東京原油】中東産原油、欧米安と円高受け反落

中東産原油は反落。終値は、中心限月9月先ぎりが前日比530円安の3万6840円、ほかが270〜620円安。日中立ち会いは、前日の欧米原油相場が需給緩和観測を背景に軟化したほか、円相場の引き締まりを受け、安寄りした。その後、ニューヨーク原油(WTI)相場や為替が動意を欠く中、始値付近でのもみ合いが続いた。

【東京金】円引き締まりとNY軟化受け反落

反落。中心限月2018年2月先ぎりが前日比12円安の4477円、ほかは4〜17円安で取引を終えた。日中立ち会いは、ドルに対する円の引き締まりを受け、安寄りし、その後、ニューヨーク金相場が軟調に推移したことから、期先を中心に水準を切り下げた。

【経済統計】

◆ガソリン、3週ぶり値上がり=原油高を反映、全国平均134.0円―エネ庁

◆3月の日本製半導体装置BBレシオ、1.12に低下=前月1.36―SEAJ

【要人発言】

◆榊原経団連会長:豊田氏らはペンス氏に米経済発展や雇用拡大に貢献したいと伝えた

◆稲野日証協会長:東芝は正確な決算発表、ガバナンスの回復を

【ニュースから】

◆長期金利、一時0%に低下=5カ月ぶり―東京債券市場

◆16年度訪日客、16.2%増の2482万人=最高更新、アジア中心に増加―観光局

◆労基法改正案、今国会断念=残業規制と秋に一体審議―政府・与党

時事通信社

「北朝鮮に圧力」=米副大統領【4/19 17:55】
ペンス米副大統領は19日、東京都内での講演で北朝鮮の脅威に言及し、「(同国が)核兵器開発計画を放棄するまで経済、外交的圧力を加える」と改めて強調した。事態の打開に向け、日本や中国と連携する方針も示した。

副大統領は「北朝鮮は最も切迫した脅威だ」と指摘。「米国は100%日本と共にある」と述べ、同盟国の平和維持に努める意向を表明した。また、北朝鮮の非核化実現のため、「すべての選択肢を保持している」と語り、北朝鮮を強くけん制した。

時事通信社

円、108円台後半=ロンドン外為【4/19 17:38】
【ロンドン時事】19日朝のロンドン外国為替市場の円相場は1ドル=108円台後半で小動きとなった。午前9時現在は108円80〜90銭と、前日午後4時比15銭の円安・ドル高。

時事通信社

円相場、108円82〜82銭=19日午後5時現在【4/19 17:29】
〔ロンドン外為〕円、108円台後半(19日午前9時)【4/19 17:11】
「父母の墓参りしたい」=「残留日本人」女性が記者団に―対話の糸口狙う・北朝鮮【4/19 17:11】
ガソリン、3週ぶり値上がり=原油高を反映【4/19 17:10】
資源エネルギー庁が19日発表したレギュラーガソリン1リットル当たりの店頭価格(17日時点)は、全国平均で134.0円となり、前週から0.1円上昇した。原油高を反映し、3週ぶりに値上がりした。

地域別では、22都道府県で価格が上昇。上げ幅は愛媛(0.8円)、福島(0.7円)、熊本と奈良、埼玉(各0.5円)が目立つ。下落は神奈川と和歌山(各0.7円)、兵庫(0.5円)、徳島(0.3円)など17府県だった。

調査を担当する石油情報センターは「来週の店頭価格も小幅値上がりする」と予想している。
http://fx.dmm.com/market/news/

http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/246.html

[戦争b20] 北朝鮮、核実験場でバレーボール 米大が分析 北朝鮮対応でトランプ米大統領が派遣した「大艦隊」、なぜか南下 
北朝鮮、核実験場でバレーボール 米大が分析
2017/4/19 19:24
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 【ワシントン=共同】米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」は18日、電話記者会見し、北朝鮮北東部・豊渓里にある核実験場内でバレーボールが行われている様子が、16日に撮影した衛星写真に写っていたと明らかにした。

 会見に出席した軍事動向に詳しいジョセフ・バミューデス氏は「異例だ。核実験を待機しているか、われわれをだまそうとしているかだ」と説明した。北朝鮮は核実験場が米側の監視対象になっていることを知っているという。

 会見に同席した航空宇宙学者ジョン・シリング氏は、北朝鮮がスカッドやノドンのような日韓両国を射程に入れた中距離弾道ミサイルを毎週でも発射することが可能と指摘した。

 また、北朝鮮は米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射能力を、2020年までは獲得できないと推定。今年は射程の短い弾道ミサイル開発に傾注するとみられ「日本や韓国に対する脅威は差し迫っている」と警告した。

 韓国統一省報道官は19日の定例記者会見で「北朝鮮がいつでも核実験を行える状況にあるとの判断に変わりはない」と強調。核実験場でバレーボールをしているかどうかは「大して重要ではない。重要なのは、国際社会が何を考えているか北朝鮮がよく考え、正しい判断をすることだ」と述べた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H3T_Z10C17A4FF2000/


 


北朝鮮対応でトランプ米大統領が派遣した「大艦隊」、なぜか南下
Justin Sink、David Tweed
2017年4月19日 17:13 JST

Day 2 of U.S. Vice President Mike Pence's Visit To Japan
Mike Pence aboard the USS Ronald Reagan aircraft carrier at the U.S. naval base in Yokosuka on April 19. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
ペンス米副大統領は米海軍横須賀基地で北朝鮮に対し新たに警告
空母打撃群、今は西太平洋に向かっている−米太平洋軍報道官

米国のペンス副大統領は19日、米海軍横須賀基地で北朝鮮に新たな警告を発した。トランプ米大統領は北朝鮮問題に対応するため「大艦隊」を派遣したと先週述べたが、ペンス副大統領が横須賀を訪れる数時間前、空母カール・ビンソンを中心とする米艦隊がまだ朝鮮半島からはるかかなたを航行していると報じられた。
  ペンス副大統領は空母ロナルド・レーガン艦上で、トランプ政権は北朝鮮の核プログラムを終わらせるためあらゆる選択肢を俎上(そじょう)に載せているとあらためて表明。金正恩朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮に向けたメッセージとして、シリアとアフガニスタンに対する「断固たる行動」を取ったトランプ大統領の決意を世界は疑うべきではないと言明した。
  北朝鮮が核実験やミサイル発射実験を準備しているとの観測が高まる中で、米海軍は8日、カール・ビンソンを中心とする空母打撃群がシンガポールから西太平洋へと北上していると発表。その数日後、トランプ大統領はFOXビジネス・ネットワークに対し、米国は「非常に強力な大艦隊」を北朝鮮に向け派遣したと述べた。
  だが実際には、平壌中心部で金委員長が故金日成主席の生誕105年を祝う軍事パレードに臨んでいた時、カール・ビンソンはオーストラリア海軍との演習のためインド洋に向かって南下していた。米太平洋軍司令部のデーブ・ベンハム報道官は19日、空母打撃群は豪州との演習期間を短縮し、今は「慎重な対応」として西太平洋に向かっているところだと話した。
原題:Pence Visits Carrier as Questions Emerge Over Trump’s ‘Armada’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONBCM6K50XS01
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/193.html

[政治・選挙・NHK224] 「日豪防衛協力の重要性高まる」防衛相会談 日米韓の防衛訓練強化を確認、北朝鮮の挑発非難 衆院区割見直し97自治体分割増加


「日豪防衛協力の重要性高まる」 防衛相会談
2017/4/19 19:41
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 稲田朋美防衛相は19日、防衛省内でオーストラリアのペイン国防相と会談した。稲田氏は「地域の安全保障環境が厳しさを増すなか、日豪の防衛協力の重要性が高まっている」と指摘。ペイン氏は「防衛協力の発展に向け、訓練や相互運用性を重視した協力を模索したい」と述べた。

 会談は日豪の物品役務相互提供協定(ACSA)の署名を受けて自衛隊と豪軍の連携強化を確認する。米国を含めた日米豪3カ国の協力も申し合わせる。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H3X_Z10C17A4PP8000/


日米韓の防衛訓練強化を確認 当局者、北朝鮮の挑発非難
2017/4/19 19:43
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 日本、米国、韓国は19日、都内で防衛当局の局長級協議を開いた。防衛省は終了後に共同文書を発表し「北朝鮮の最近の挑発行為を強く非難する」と明記。北朝鮮にこれらの計画廃棄を求めた。自衛隊と米軍、韓国軍は共同訓練を重ねるが「3カ国の相互運用性を強化する努力を継続する」とした。

 地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍配備を巡っては「配備は自衛手段にすぎず、韓国への圧力や報復は不当だ」と盛り込み、配備に反発する中国をけん制した。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H42_Z10C17A4PP8000/

 


衆院区割り見直し対象97選挙区 自治体分割が増加
2017/4/19 19:53
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 衆院選挙区画定審議会(区割り審)が19日に勧告した区割りの見直しは19都道府県の97選挙区に及ぶ。影響を受ける選挙区数は現行295選挙区の約3分の1にあたり、1994年の小選挙区制導入以降で最大規模。「1票の格差」の是正に必要な措置だが、複数の選挙区に分割される自治体は大幅に増加。候補者や有権者、自治体は様々な対応が求められそうだ。

 今回の区割り改定は昨年5月に成立した衆院選挙制度改革関連法に基づくもので、小選挙区制導入からは3回目となる。

 最高裁は2009年以降の衆院選について3回連続で「違憲状態」と判断。13年に小選挙区を「0増5減」する改革を実施したが、翌年の衆院選では格差が目安の2倍を超えた。さらなる是正を進めるため、主に都市部で自治体を分割し、選挙区ごとの人口の均衡を図る対応が目立つ。

 複数の選挙区に分割される市区町村の数は17増えて105となる。選挙区と生活圏がずれると、地盤を築いてきた現職議員には痛手となる。ある与党議員は「全く知らない地域が選挙区に加わるので一から支持を広げないといけない」と話す。分割される自治体からも「市内に2つの選挙区を抱えることはあり得ない」(神奈川県座間市の遠藤三紀夫市長)などの反発の声が上がる。

 区割り審は「市区町村は原則として複数の選挙区に分割しない」との基本方針を定めて作業を進めていた。区割り審の小早川光郎会長は19日の記者会見で「東京都など格差2倍を超す選挙区が多い地域では市区の分割が避けがたい状況だ。悩ましい問題だった」と述べ、やむを得ない対応だったとの認識を示した。

 一方、定数1減となった県のうち青森、岩手、三重の3県では県庁所在地の分割が解消された。青森、盛岡、津の3市は現在2つの選挙区にまたがっているが、勧告ではいずれも全域が1区に入る。定数を変えずに線引きだけで是正を図ろうとすると自治体の分割せざるをえなくなる。昨年成立した改革法は20年国勢調査人口を基にアダムズ方式で全国の定数を再配分するとしており、今回の区割りは暫定的な改定の色彩が濃い。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H3L_Z10C17A4EA2000/


地銀の生産性、欧州の半分 日銀が高コスト体質を指摘
2017/4/19 19:39日本経済新聞 電子版
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 日銀は19日公表した「金融システムレポート」で、日本の銀行や信用金庫の高コスト体質を指摘した。なかでも中小の地銀は行員1人あたりの業務粗利益が欧州に比べて半分だと試算した。日銀が金融機関の体質改善に深く言及するのは異例だ。金融緩和が長引くなかで、金融仲介機能を担う金融機関の経営難を警戒し、構造改革を求めた。

 リポートでは「金融機関の収益性の評価」として、経費率の高さに焦点を当てた。米欧と比べて割…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC19H0B_Z10C17A4EE8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/400.html

[国際19] 中国の銀行、偽の高利回り商品販売かリスク増幅懸念浮き彫 米ユナイテッド解雇せず 高利回りは麻薬 ゆうちょ国債オペ日銀売可
中国の銀行、偽の高利回り商品販売か

リスク増幅懸念浮き彫り
Bloomberg News
2017年4月19日 16:03 JST

手形詐欺を隠すため規則に準拠しない理財商品を販売−財新報道
民生銀行は幹部の1人が不正の疑いで警察の捜査を受けていると発表

中国の高利回りの運用商品、理財商品の偽物が中国の銀行の1支店で販売された疑いがあると、中国メディアが報じた。詐欺行為を隠蔽(いんぺい)するため販売したという。
  中国民生銀行で発覚したこの疑惑は、理財商品のリスクが増幅している可能性があることを浮き彫りにした。中国の預金者は理財商品や類似商品に9兆ドル(約980兆円)の資金をつぎ込んでいる。
  民生銀は18日、不正行為の疑いで幹部の1人が警察の捜査を受けていることを明らかにした。同国メディアの財新は、同行が約30億元(約470億円)に上る手形詐欺に関与したと伝えていた。
  財新によると、民生銀の幹部らは偽の銀行印を使って手形を偽造。それを隠すため、規則に準拠していない理財商品を販売して資金を集めようとした。他にも複数の銀行と100を超えるプライベートバンキングの顧客が影響を受けたとしている。
原題:Fake Wealth-Management Products Allegedly Sold at Chinese Bank(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OON8IW6S972O01


 

米ユナイテッド、乗客引きずり降ろし問題でも誰も解雇せず−CEO
Michael Sasso
2017年4月19日 07:28 JST

ムニョスCEO:責任は私が取る−アナリストとの電話会議で発言
悪い評判が予約に影響するかどうかの判断は時期尚早−カービー社長

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iJYA2T6DBk3E/v1/-1x-1.png

米ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングスは、乗客が先週旅客機から引きずり降ろされた問題を巡り、誰も解雇しない方針を示した。この件をきっかけに同社に対し世界的な非難が高まっている。
  オスカー・ムニョス最高経営責任者(CEO)は18日にアナリストとの電話会議で、「さまざまな分野にわたるシステム障害だったため、従業員や関係者の解雇は検討されなかった」と説明。自身の今後の立場を巡っては「多くの臆測」があることを認めた上で、「責任は私が取る」と述べた。
  4月9日に乗客のデービッド・ダオ氏が引きずり降ろされた問題が起きた後、初めてウォール街のアナリストと話したムニョスCEOは、同社の対応を再び陳謝した。スコット・カービー社長は1−3月(第1四半期)決算に関する電話会議で、今回の騒動でも法人客はユナイテッド航空を支持していると話した。悪い評判が立ったことで予約に影響するかどうかを判断するのは時期尚早だとした。

  
原題:United Air Won’t Fire Anyone Over Dragging Debacle, CEO Says (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-18/OOMKEO6JTSE801

 

ウォール街に慈雨、レバレッジドローン活況-ゴールドマンもBofAも
Sally Bakewell、Nabila Ahmed
2017年4月19日 15:51 JST

高リスクローン案件が過去最高−大手米銀に恩恵

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ie8pYkoWfgos/v1/-1x-1.png

「高利回りは麻薬のよう」、低金利環境で−ヘンドラー氏

利回りが麻薬であるなら、ウォール街はそれを供給するために昼夜を問わず働いている。

  世界の投資家の利回り追求が、大手米銀による高リスク融資の販売を記録的水準に押し上げた。18日に決算を発表したゴールドマン・サックス・グループとバンク・オブ・アメリカ(BofA)も、先週発表したJPモルガン・チェースとシティグループも、1−3月(第1四半期)の引き受け手数料が約40%増えた。

  ビオラ・リスク・アドバイザーズの創業者、デービッド・ヘンドラー氏は「債券投資家は高利回りを麻薬のように求めている。この欲求を満足させるためにウォール街は案件をまとめ続ける」と話した。「ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、シティグループといったコーポレートファイナンスで良い人脈を持つ銀行は、高リスク融資を求める中級の企業とのつながりがあるため有利だ。これが業績の追い風になっている」と解説した。

  企業は今後の利上げをにらみ、世界的な低金利環境の中でリターンを求める投資家からの需要を生かすため、ローンのリプライシングや新規借り入れを急いでいる。大手銀行は1−3月に4340億ドル(約47兆2000億円)のレバレッジドローン(高リスクローン)を取りまとめた。ブルームバーグのデータによれば、これは四半期として少なくとも1999年以来の高水準。このほぼ半分はリプライシングだった。
  こうしたレバレッジドローン案件の増加でゴールドマンの第1四半期の引き受け手数料収入は37%増加。BofAも「レバレッジドフィアナンスの好調」で債券引き受け手数料が38%増となったと、ポール・ドノフリオ最高財務責任者(CFO)が電話会議で明らかにした。
  先週の発表によると、JPモルガンは引き受け業務を追い風に投資銀行部門の収入が34%増。シティは債券引き受け手数料収入が39%増えた。

原題:Goldman, BofA Cash In on a Leveraged-Loan Frenzy Like No Other(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OON7H16TTDS201


 


ゆうちょ銀、国債売買オペに参加へ−日銀に直接売却が可能に
船曳三郎、池田 祐美
2017年4月19日 19:34 JST

ゆうちょ銀が保有する国債額は73.5兆円と日銀に次ぐ大きさ
大量の国債を持つゆうちょ銀参加の思惑はあった−セントラル短資

国債を大量に抱える 日本郵政グループのゆうちょ銀行が、日本銀行が運営している国債売買オペに参加する。運用の高度化と多様化の一環で、メガバンクなどとともに日銀の金融調節で国債を直接売買することが可能になる。
  日銀は黒田東彦総裁が異次元金融緩和策を導入した2013年4月以降、大量の国債をオペを通じて購入。資金循環統計によると、市場に出回る国庫短期証券などを含めた国債等の保有残高は12月末で421兆円と、発行残高の4割近くを占めている。ゆうちょ銀が保有する国債額は73.5兆円と日銀に次ぐ大きさだ。
  ゆうちょ銀行は19日付の電子メールで、今回の日銀オペ参加について、「当行は、民営化以降、運用の高度化・多様化を進めており、その一環として、本件日銀オペの参加を申請し、この度日銀より承認されたもの」とコメントした。
  日銀の資料によると、国債売買オペに参加している金融機関の数は50程度に上るもよう。セントラル短資総合企画部の佐藤健司係長は、ゆうちょ銀行が国債売買オペに参加することについて「日銀が大規模な国債買い入れを続けると、いずれ枯渇するので、大量の国債を持つゆうちょ銀参加の思惑はあった」とする一方、「これからの事業展開で資産のバランスを変更する時の売却手段の確保が目的ではないか」と言う。
  国債の流通市場では、日銀の大量国債買いの影響で、新発20年債利回りが昨年初めてマイナスとなるなど、売り手不足が深刻化していた。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りもマイナス0.30%を付けた経緯がある。現在の水準はかなり戻しているとはいえ、20年物が0.5%台、10年物が0.0%と低金利のままだ。
  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、ゆうちょ銀行について、「 国債をいっぱい持っているところなので売りが出やすくなる面はあるが、売っても何に運用するか難しい問題」と指摘。「どこも運用に苦しんでいるので、国債を売れる状況なのかという点がある」と語った。
  BNPパリバの井川雄亮金利ストラテジストは、「オペ対象先ではなかったが、当座預金は持っていて業者を通して売っていたのを自分たちでやるということ」だと説明した上で、「国債を多く持っているので、国債オペに全額入れることはできるが、日々の動きに重大な意味を持っているとは思わない」と述べた。  
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6178 JP (Japan Post Holdings Co Ltd)
7182 JP (Japan Post Bank Co Ltd)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONII56JIJVN01
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/185.html

[経世済民121] 米財務長官、大統領発言にドル押し下げ意図「絶対ない」 トランプ減税企業に過度のリスクテークIMF 英選挙EU離脱に異変か
米財務長官、大統領発言にドル押し下げ意図「絶対ない」
FT紙

[ロンドン 19日 ロイター] - 19日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ムニューシン米財務長官は同紙とのインタビューで、トランプ大統領には自身の発言によってドルを押し下げようとする意図は絶対にないと述べた。

トランプ大統領は先週の米紙ウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、ドルが「強くなりすぎている」と述べていた。

トランプ氏のこの発言がドル押し下げを狙ったものかとの質問に、ムニューシン長官は「絶対にない」と強く否定した。

長官はまた、諸外国による為替介入について「為替操作とは米国の不利益になるように行われるものだ」と述べ、米国の利益になるのであれば為替操作とはみなさないとの立場を示した。

私たちの行動規範: トムソン・ロイター「信頼の原則」
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コラム:米政府要人の口先介入で円高は進むか=植野大作氏
中国、自国の利益のために通貨切り下げを利用せず=外務省
ドルは112円後半、短期筋のポジション調整
http://jp.reuters.com/article/mnuchin-ft-idJPKBN17L14I


 


トランプ政権の減税案、企業に過度のリスクテーク促す可能性−IMF
Bloomberg News
2017年4月19日 21:30 JST 
減税案が意図せぬ結果招く恐れもあると、国際金融安定性報告書
米国が金融規制を弱めることがないようIMFは警告
 
国際通貨基金(IMF)は19日、半期に一度の国際金融安定性報告書(GFSR)を公表し、トランプ米政権が掲げる減税案や金融規制緩和によって、米企業が望ましくない水準までリスクを冒すのを促す可能性があるとの見方を示した。
  トランプ大統領は法人所得税率を15%に引き下げる案などに言及している。IMFはこうしたプランについて、米企業が設備投資を急増させることになるだろうと指摘。ただ、企業が過度のリスクを負うという意図せぬ結果を招く恐れもあると論じた。
  報告書では「税制改革に伴うキャッシュフローは主に大掛かりな金融リスクテークに従事しているセクターに回る可能性がある」と分析。「そのようなリスクテークは過去数十年間、金融システムにおける大きな不安定化のぶれに時折つながってきた」と振り返った。
  米企業のバランスシートは総じて堅固だが、キャッシュフローは徐々に減って、レバレッジは過去最高水準近くに高まり、エネルギーや不動産、公益事業といったセクターに経営難の企業が集中しているとIMFはコメント。逆境シナリオでは、企業利益が伸び悩む中で非生産的な財政刺激のプランが金利の急上昇を引き起こし、企業の債務返済が困難になりかねないと指摘した。
  IMFは「景気刺激策や税制改革の経済的利益と広範な政策判断とのバランスを図り、金融の安定性へのリスクに備えることが、政策立案者には求められる」としている。このほか、米国が金融規制を弱めることがないようIMFは警告した。
  
原題:U.S. Tax Cuts May Lead Companies to Take Too Much Risk, IMF Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOMYY06JTSE901


 


FX Forum | 2017年 04月 19日 21:38 JST 関連トピックス: トップニュース
オピニオン:
英選挙でEU離脱に「異変」あるか

吉田健一郎みずほ総合研究所 上席主任エコノミスト
[東京 19日] - 6月8日の前倒し実施が濃厚となった英国総選挙は、欧州連合(EU)からの離脱を巡って、より現実的な交渉スタンスを示唆し始めたメイ首相の事実上の信任投票であり、首相にとって真の敵は最大野党・労働党というよりも、身内の保守党内にいる対EU強硬派だと、みずほ総合研究所・上席主任エコノミストの吉田健一郎氏は指摘する。

一般的に「ハードブレグジット(強硬なEU離脱)」の定義は、単一市場・関税同盟へのアクセスよりもEUからの移民制限を優先することであり、メイ首相の表向きのスタンスもその部類に入るが、大陸欧州との経済的な関係を現状により近づかせようとしている点で、党内強硬派とは一線を画しているとみる。

同氏の見解は以下の通り。

<メイ首相が解散総選挙に踏み切った訳>

一部世論調査によれば、与党・保守党の支持率は40%超と、最大野党・労働党に20%ポイント程度の差をつけている。この勢いが続くならば、6月8日の前倒し実施が濃厚となった総選挙は保守党の大勝に終わる可能性が高い。

世論調査に基づく議席獲得予想(下院定数650議席)では、労働党(現在229議席)は50議席程度減らす見込みであり、仮にこの多くが保守党(330議席)に流れるとすれば、総選挙に勝利した経験のない点が弱みだったメイ首相の党内リーダーシップも大幅に強化されることになろう。

それにしても、メイ首相の決断には驚かされた。ただでさえ、4月末のEU臨時首脳会談(英国は不参加)を経て、5月中には正式の離脱交渉が始まるとみられていたタイミングだ。また、英国では、2011年に下院議員の5年の任期が原則守られる(首相の解散権を大幅に制限する)「議会任期固定法」が成立しており、期日前の解散総選挙実施には議員の3分の2となる434人以上の賛成が必要となる。

メイ首相自身、これまでは、1分1秒たりとも無駄にできず、政治的空白は許されないとして、現在の議会任期が切れる2020年5月までは総選挙を実施しない方針を明らかにしていた。3月初旬に、保守党の元党首で外相も務めたヘイグ氏が英紙への寄稿で、総選挙を早期に実施すべきとの見解を示すと、政府報道官が即座に否定したことは記憶に新しい。

報道によれば、メイ首相は、イースター休暇中の山歩きの最中に、解散総選挙の前倒し実施を決断したとのことだが、3月末にEUに対して正式の離脱通告をしてからすでに数週間経っていることを考えると、「離脱通告後に解散総選挙表明」という筋書きがそもそもあったのではなく、本当に悩み抜いた末の決断だったのかもしれない。

<国民投票再実施の是非を問う選挙ではない>

ただし、後講釈ではあるが、このタイミングでの決断は極めて妥当だと思う。EUへの離脱通告前では、世論が再び揺れる可能性があった。また、保守党が40%台の支持率を得るのは、リーマン・ショック後に当時の労働党政権が支持率を急落させた2008年の「敵失」以来のことだ。

しかも、20%ポイントもの大差をつけられたら、労働党側は本来、総選挙を避けようとしそうなものだが、同党のコービン党首は、前述したように3月初旬に総選挙観測が高まった際、受けて立つ姿勢を明確に示した。現在229議席を持つ労働党が反対に回れば(造反議員が多数出ないとすれば)、議会任期固定法に従って解散総選挙は見送られることになるが、いまさら前言撤回は難しい。

そこへきて、労働党自体、党の方針としては、EU離脱賛成のスタンスを示している。EU残留を訴えて戦うならば、保守党との違いも一目瞭然だが、そうした選挙戦略も非現実的だ。

実際、コービン党首は、メイ首相による総選挙前倒し表明後に発表した声明の中で、「全ての人々に公平なブレグジットを求める」と明言している。要するに、EU離脱・残留を巡る国民投票再実施の是非を問う選挙にはなりそうにない。

一方、残留派の政党としては、スコットランド民族党(SNP)が54議席、自由民主党が9議席を有するが、SNPはすでに前回2015年の総選挙において、スコットランドの選挙区で大多数の議席を獲得している。そもそもスコットランドは労働党の地盤であり、保守党が議席を奪われる心配はない。

自由民主党については、確かに最近、党勢を伸ばしているが、SNPのように支持者が特定地域に集中しておらず、単純小選挙区制を採用する英国では獲得議席はさほど大きく伸びない可能性がある。結局、保守党が労働党から大幅に議席を奪い、メイ首相の党内政治基盤が強固なものとなる可能性が高いのではないだろうか。

<親EU派のハードブレグジット路線>

では、メイ首相は総選挙後、どのようなブレグジット交渉スタンスを取っていくのだろうか。まず大前提として、単一市場・関税同盟へのアクセスを優先し、EUからの移民制限問題で譲歩するような「ソフトブレグジット(穏健なEU離脱)」路線は、これまでの発言を見る限り、追求されることはなさそうだ。したがって、単一市場・関税同盟へのアクセスよりもEUからの移民制限を優先する「ハードブレグジット(強硬なEU離脱)」路線の中で、どの程度ハードになるのかが、重要なポイントだろう。

この点、保守党内の強硬派は、移民問題での妥協やEU予算の拠出などは論外で、EU側が譲歩しないならば大陸欧州との関係が他国と同じ「普通の関係」になったとしても構わないという姿勢を取っている。通商ルールで言えば、自国に有利な自由貿易協定(FTA)を結べないのならば、世界貿易機関(WTO)のルールで十分という発想だ(いわば「スーパーハードなブレグジット路線」)。

これに対して、メイ首相の発言やブレーンとされる人物らの言動を追うと、首相の交渉スタンスは、大陸欧州との経済的なつながりを現状により近づかせようとしている点で、ソフトなハードブレグジット路線であるように推測される。英国では最近、「親EU派のハードブレグジット(pro-European hard Brexit)」いう言葉も聞かれるようになった。

具体的には、ヒトの移動について、移民流入コントロールを厳しくしつつも、米国の「グリーンカード(永住権)」をモデルにして、英国・EU間で「ブルーカード」を作るといったアイデアも出ている。また、財市場についても、通関処理の簡素化や関税撤廃を基本とするFTAなどを通じて、両者間の経済関係深化を目指すといった政策が提唱されている。英国は離脱後もEU予算への拠出をある程度行うべきだとの声もある。実務家肌であり、もともとは残留派だったメイ首相が目指すのは、こうしたブレグジットの形ではないか。

もちろん、親EU派のハードブレグジット路線は保守党内の離脱強硬派がとても容認できるものではない。しかし、だからこそ、メイ首相は、離脱交渉が本格化する前の段階で、総選挙に打って出て勝つことによって、身内の強硬論を封じ込めたいのではないか。しかも、労働党の「敵失」で、現時点では過半数を大きく超える議席獲得が見込める。

今回の選挙に勝てば、メイ首相は2022年までの任期が見えてくる。EUとの離脱交渉は2019年3月末に2年間の期限を迎えるが、離脱協定に加えて、離脱後の関係を規定する新協定までにらめば、交渉の延長は不可避だろう。そこまで見据えたメイ首相の決断だったのではないか。

*本稿は、吉田健一郎氏へのインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

(聞き手:麻生祐司)

*吉田健一郎氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部の上席主任エコノミスト。1996年一橋大学商学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行。対顧客為替ディーラーを経て、04年より、みずほ総合研究所に出向。エコノミストとして08年―14年にロンドン駐在。ロンドン大学修士(経済学)。

 
コラム:トランプ大統領、北朝鮮に「禁断のカード」切るか

コラム:北朝鮮有事の円相場シミュレーション=佐々木融氏
北朝鮮、外国人記者らに「重大なイベント」に備えるよう通知
トランプ政権、巡航ミサイルでシリア攻撃 化学兵器使用を非難
http://jp.reuters.com/article/opinion-uk-kenichiro-yoshida-idJPKBN17L1C8?sp=true


 


 


http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/251.html

[戦争b20] 北朝鮮ミサイル爆発はトランプの妨害工作!?パレードで見せたハリボテICBMの意味 開戦前、国家は密かに予行演習「1939
北朝鮮ミサイル爆発はトランプの妨害工作!?

「レッドゾーン」は金正恩の核実験か、ICBM発射か

アメリカ現代政治研究所


2017年4月20日(木)
高濱 賛

金日成の生誕150周年を祝う軍事パレードにはSLBM(潜水艦発射型の弾道ミサイル)が初登場した(写真:ロイター/アフロ)
4月30日で、トランプ政権が誕生して100日になります。

 ドナルド・トランプ大統領は、「100日計画」を掲げて就任しました。そのうち、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱やオバマケア(健康保険改正)見直しなどは就任初日に発表しました。経済・外交面では「米国第一主義」を掲げ、保護主義的・孤立主義的傾向を打ち出すそぶりを見せています。100日を振り返ってみて、トランプ政権の現状をどう評価しますか。

高濱:米議会の承認を必要としない大統領令を発令してTPPからの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉・脱退を宣言しました。TPPは議会の承認なしに離脱できますが、NAFTAのほうはカナダ、メキシコとの再交渉が待っています。脱退するにはまだいくつものハードがありそうです。

 オバマケア見直しは共和党の一部から反発を受けて挫折しました。メキシコとの国境に壁を建設する案も、関連予算がつかず宙ぶらりんの状態です。

 中間層を対象とする減税や課税簡素化、エネルギー・インフラ法改正など、立法を必要とする公約は全く手が付けられない状況です。

就任100日、内政の失敗を外交で挽回狙う

 内政がうまくいっていない中で飛び出したのが、シリア政府軍の空軍基地に対する電撃的なミサイル攻撃作戦でした。

 シリア政府軍が一般市民に対して化学兵器を使用したことに対して、なぜ、ミサイル攻撃で応じたのか。トランプ大統領自身はこう説明しています。「化学兵器の使用と拡散を防止、抑制することは死活的かつ重要な米国の国家安全保障上の利害に関わるからだ」

 しかもこの攻撃は、米中首脳会談の最中に行われました。折から朝鮮半島は緊張の度合いを高めています。4月15日に金日成生誕105周年記念日を控えて、北朝鮮は弾道ミサイルか、核の実験をやるのではないかと予測されていました。

 米国は韓国と合同軍事演習を実施する一方で、原子力空母カール・ビンソンやその警護にあたる巡洋艦などからなる空母打撃群(Carrier Strike Group)を朝鮮半島近海に転進させました。米国はそうした中でシリアの政府軍基地に巡航ミサイル59発を撃ち込んだのです。その映像は全世界に流れました。

 さらにトランプ大統領は4月14日、アフガニスタン東部でIS(イスラム国)の地下基地を狙って「大規模爆風爆弾」(MOAB)の投下を命じました。MOABは「通常兵器の中で最も破壊力のある爆弾」とされるものです。

 マイク・ペンス副大統領は17日に韓国で、シリア攻撃やアフガニスタンでのMOAB投下に言及して、こう述べています。「北朝鮮はトランプ大統領の決意や米軍の力を試すべきではない」。

 「向こう見ずなことをすると同じ目に遭うぞ」と金正恩委員長への最大限の脅しであることは言うまでもありません。

「孤立主義」から早くも軍事介入に踏み切った理由

トランプ政権は就任からこれまで、「米国第一主義」をスローガンにしてきました。対外介入は極力避ける方針だったのではないですか。

 シリアを攻撃したあと、「ビューティフルな赤ちゃんを含む一般市民を殺りくして…」と言っています。「人道主義」的なニュアンスがありますね。トランプ氏はこれまで「人道主義」に言及したことなどなかったように思います。

高濱:ポイントはまさにそこです。ジェームズ・マティス米国防長官は4月11日の記者会見で記者からこう質問されました。「化学兵器よりも、『たる爆弾』*(barrel bombs)による空爆の方が多くの一般市民を殺戮している。たる爆弾には報復攻撃していないのになぜ『化学兵器』に対しては報復したのか」

*「たる爆弾」は、円筒状の容器に石油類を詰めた焼夷弾。広範囲に被害を及ぼすので、標的が絞りにくい場合に使用する。ベトナム戦争で使用されたナパーム弾に似ている。シリア政府軍も頻繁に使用し、一般住民に被害をもたらしている。
 マティス長官はこう答えています。「化学兵器への攻撃はトランプ政権の『政策決定』(Policy decision)だ。米国が国外で実行できる攻撃には制限がある。米国は(シリア政府軍による)化学兵器使用について手をこまぬいて見ているわけにはいかない。シリア政府軍は、化学兵器を一般市民に対して使用してはならないという第一次大戦時代後の合意*に違反した。またロシアはシリア国内の化学兵器をすべて撤去すると約束した経緯がある。これらを考えると、今回の攻撃は『暴力行為のサイクル』を断ち切ることにある」

*1925年の「ジュネーブ議定書」は化学兵器の使用禁止を謳った。ただし、その開発・生産・保有は禁止していないことから、米国、ソ連、日本は大量に生産した。その後、1997年発効した化学兵器禁止条約は化学兵器の開発・生産・保有を包括的に禁じている。
("Reporter to Mattis: Why Would U.S. Strike Syria for Chemical Attack, but Not Barrel Bombs?" Shepard Smith, Insider, Fox News, 4/11/2017)
 マティス長官の発言を聞く限り、シリア攻撃はしっかりした予測を立てた「戦略目標」(Strategic target)ではなかった。つまり巡航ミサイルによる攻撃がシリア内戦解決のプロセスにどう影響するかについてを考えていない。中長期的な戦略に基づいた決定ではなかったんですね。

 米主要紙のホワイトハウス担当記者が筆者にこう解説しました。「トランプ大統領は、就任から100日も経たぬうちに内政面で躓きを見せている。その結果、早くも政権運営に陰りが出てきた。そこに、シリア政府軍による化学兵器使用というもってこいの状況が訪れた。強硬派のスティーブ・バノン首席戦略官だけでなく、常識派のジェームズ・マティス国防長官やH・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)らも賛同せざるを得なかったのだろう」

習近平は沈黙の後、「攻撃は問題ない」とコメントした

トランプ大統領は、習近平国家主席との昼食の前にシリア攻撃を決定しました。そのこと自体、ミサイルや核の実験を続ける北朝鮮への強烈なメッセージと受け止めるべきでしょうね。

高濱:トランプ大統領はシリア攻撃を公式に発表する前に、隣に座っている習主席にそのことを明らかにしました。トランプ大統領によると、習主席は10秒間沈黙し、「子どもたちに毒ガスを使うような相手には(攻撃は)問題ない」と答えました。

 米中首脳会談はかなり早い段階で決定していました。ですからこれに合わせてシリア攻撃を意図的に行ったわけではありません。たまたま時期が重なっただけでしょうが、トランプ大統領としてはシリア攻撃の時期をずらすことはできたかもしれません。

 ずらさなかったのは、シリア攻撃で米中首脳会談がすっ飛んでしまうとは見ていなかったからです。さらに一歩進めて、習主席との昼食の際にシリア攻撃を敢行することで、「北朝鮮がミサイル・核実験を続けるのであれば、同じようにミサイルをぶち込んでやってもいいんだぞ」という脅しをより効果的にしようとしたことも十分考えられます。

トランプの脅しは本当に金正恩に効いているのか

その脅しは、金正恩委員長にはどうも効かないように見えます。どうでしょう。

高濱:確かに、北朝鮮は軍事パレードにさまざまなミサイルを登場させました。新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と推定されるもの。昨年8月、試射に成功したとされる潜水艦発射型の弾道ミサイル(SLBMの「北極星」。「北極星」を地対地型に改造して射程を延長した「北極星2型」。そして中距離弾道ミサイル「ムスダン」を改良した「KN08」や「KN14」と推定されるもの。

 トランプ政権を牽制し、力で対抗する姿勢を強調しました。さらに、失敗はしましたが中距離弾ミサイルの発射を試みました。

 一見したところ、金正恩委員長に対するトランプ大統領の脅しは「糠に釘」のように思えます。事実、米国の外交専門家の中には、ここ1週間を「朝鮮危機」と見た人もいます。ウドロー・ウィルソン学術国際センターのロバート・リトワック博士は、北朝鮮の一連の言動を見て、「1962年のキューバ危機*がスローモーションで再現された感じだ」と指摘しています。

("A 'Cuban Missile Crisis in Slow Motion' in North Korea," David Sanger and William J. Broad, New York Times, 4/16/2017
*1962年10〜11月にかけて、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設した。米国はカリブ海を海上封鎖。米ソ間で緊張が高まり、一時は米ソの全面核戦争寸前にまで達した。)
首脳会談以後、変化がみられる米中関係

トランプ大統領は首脳会談の後、習主席を褒める発言をしました。その5日後、トランプ大統領は習主席と電話で話をしています。首脳会談で、米中関係になにか変化が生じたのでしょうか。

高濱:トランプ氏はさすがビジネスマンです。会った人の悪口は言いません。苦労して国家のトップにまで上り詰めたリーダー同士という感覚があるのかもしれません。

 それはそうとして、習主席との関係は尋常ではないようですね。ウマが合ったのかもしれません。

 トランプ大統領によると、自分が「なぜもっと北朝鮮に圧力をかけられないのか」と問い詰めたのに対し習主席は、中国と朝鮮との数千年に及ぶ対立の歴史について切々と説いて、北朝鮮との付き合いの難しさを説明したようです。

 首脳会談を受けて注意すべき動きがいくつかあります。一つは、ペンス副大統領のアジア歴訪です。韓国、日本などを訪れました。北朝鮮は、ペンス副大統領がソウルに到着する直前に中距離弾ミサイルの発射実験を敢行しました。米韓軍事当局によると、発射のあと4〜5秒で爆発してしまったようですが。

 金正恩委員長が「まともな政治家」なら、米国の副大統領が朝鮮半島入りする直前にミサイルを発射することが軍事的・政治的にどのような意味を持つかわかるはずです。米国は北朝鮮がミサイル発射実験することを予見していたのでしょう。

 それでもペンス副大統領は予定通りソウル入りしました。幸か不幸か、北朝鮮の中距離弾道ミサイル実験は失敗に終わりました。金正恩委員長にとっては屈辱だったでしょうね。

 この失敗についてこんな未確認情報があります。米ABCテレビが「北朝鮮のミサイル発射は米国からサイバー攻撃を受けて失敗した」という説を流しているのです。著名な軍事専門家でもある元英外相のサー・マルコム・リフキンド氏*の発言を引用したものです。
*:サー・マルコム・リフキンド氏は、国防、国務各大臣を経て英下院情報安全保障委員会委員長を務めた英元保守党議員。

 また英タイムズは、「米国防総省は北朝鮮のような敵国の武器システムや秘密の核計画を攪乱する十分な能力を備えている。失敗した北朝鮮のミサイル発射のうち、一部は性能の欠陥が原因だが、米国防総省が最先端のコンピューターウイルスを利用して発射を撹乱したものもあるとみられる」と報じています。

 さらに英ガーディアン紙によると、米政府当局者は米中首脳会談に先立ち、北朝鮮がICBMや地対艦ミサイルの発射実験を実施した場合、何らかの方法で撃墜することを検討していたそうです。

("V.P. Pence in South Korea," ABC News, 4/17/2017)
「北の弾道ミサイル発射失敗、原因は米国のサイバー作戦か」 朝鮮日報、4/18/2017
("US Military considers shooting down North Korea missile tests, sources say," Spencer Ackerman, The Guardian, 4/18/2017 )
北朝鮮との接触を計る武大偉特別代表に要注意

 米中首脳会談後の動きでもう一つ注目すべきは、北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の議長を務める中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表の言動です。

 10日に訪韓して韓国首席代表の金※均(※火ヘンに共)平和交渉本部長と会談しています。両者は、もし北朝鮮が挑発行為に出た場合、国連安保理決議に基づき「強力な追加措置」を取ることで合意しました。

 武大偉・特別代表は金杉憲治・外務省アジア太平洋局長とも電話協議しています。韓国メディア*によると、同特別代表はピョンヤンを訪問し、北朝鮮外務省の当局者と協議しようと打診しましたが北朝鮮に拒否されたと言われています。極秘に訪問しているかもしれません。訪朝しなくても電話会談はできるはずです。

*「中国からの高官訪朝提案、北朝鮮が拒否」朝鮮日報、4/15/2017
 かって米朝協議を経験した米国の元高官は筆者に以下の説を示しています。「ここに来て武大偉・特別代表が動き出したのは、トランプ・習会談を受けた習主席の意向によるものだ」。

 「今、金正恩委員長が何を考えているかを代弁できる者は一人としていない。金正日総書記には趙明禄国防委員会副委員長という側近がいた。趙氏はワシントンも訪問している。ワシントンは、金正恩委員長の代弁者は、叔父の張成沢国防委員会副委員長と見ていた。ところが同副委員長は13年12月に処刑されてしまった。それ以降、金正恩委員長を代弁する者はいない」

 「金正恩委員長との直接のパイプが全くない中、6カ国協議はいわば唯一の場。6カ国協議は07年の第6回会合を最後に休眠状態にはあるが、それでも米朝間をつなぐ唯一の公式ルートだ」

 「習主席としては、このルートを使って、トランプ大統領が『レッドゾーン』(超えてはならない一線)をどこに置いているのかを金正恩委員長に伝えているのではないか。新たな核実験か、米本土にまで届くICBMミサイル発射実験か」

 確かに18日現在、金正恩委員長は核実験を行っていません。しかし、きたる25日には朝鮮人民軍創設85年記念日を迎えます。その時に核実験を敢行する可能性は残っています。「朝鮮危機」はまだ完全に去ったわけではありません。


このコラムについて

アメリカ現代政治研究所
米国の力が相対的に低下している。
2013年9月には、化学兵器を使用したシリアに対する軍事介入の方針を転換。
オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と自ら語るようになった 。
2013年10月には、APECへの出席を見送らざるを得なくなった 。
こうした事態を招いた背景には、財政赤字の拡大、財政赤字を巡る与野党間の攻防がある。

米国のこうした変化は、日本にとって重要な影響を及ぼす。
尖閣諸島や歴史認識を巡って対中関係が悪化している。
日本にとって、米国の後ろ盾は欠かせない。

現在は、これまでに増して米国政治の動向を注視する必要がある。
米国に拠点を置いて20年のベテラン・ジャーナリスト、高濱賛氏が米国政治の最新の動きを追う。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/261004/041900040


 


 

北朝鮮、パレードで見せたハリボテICBMの意味

宇宙開発の新潮流

「米本土を狙う固体推進剤ミサイルの開発を止めない」と宣言
2017年4月20日(木)
松浦 晋也

太陽節軍事パレードに登場した新型ICBMと運搬車両(朝鮮中央テレビよりキャプチャー)
 米国との関係が緊迫する中、北朝鮮は4月15日に平壌で軍事パレードを実施した。

 発射実験が最近相次いだことから、メディアの報道はSLBM(潜水艦から発射する弾道ミサイル)に集まっているが、最も注目すべきは、射程1万km級と目される新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が登場していることだ。

 これだけの射程があれば、北朝鮮から北米大陸の大半を射程に収めることが可能になる。

 先に言っておくと、このICBMはまず間違いなくモックアップ、実物大の模型だ。では、単なるこけおどしだから心配は要らないのか? そうではない。パレードでのお披露目は北朝鮮が世界に向かって「このサイズのICBMに核弾頭を搭載するまで技術開発を止めない」という言う宣言であり、その意味するところは重大だ。米トランプ政権は、北朝鮮に対して「核兵器開発を止めよ」という圧力を掛けているが、北朝鮮はそれに応じず、「どんどん賭け金をつり上げるぞ」と意思表示をしているのだ。

突如登場、ロシアの「トーポリ」に似た新型ICBM

 4月15日は、北朝鮮建国の父とされる故・金日成主席の誕生日で、同国では「太陽節」という最大級の祝日である。パレード会場となった平壌の金日成広場には、金正恩朝鮮労働党委員長以下の国家首脳部が列席した。

 今回のパレードで公開された主なミサイルは以下の通り。

2016年8月に発射に成功した潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)「北極星1号」
今年2月に発射試験に成功した「北極星1号」の陸上発射型「北極星2号」
2016年6月に発射試験に成功した「ムスダン」中距離弾道ミサイル(IRBM)
初公開となる「ノドン」準中距離弾道ミサイル(MRBM)の弾頭に弾頭に空力操舵面が付いたノドン改良型ミサイル
開発中の液体推進剤を使用する3段式弾道ミサイル「KN-08」
初公開の中国の「東風21」MRBMと類似の固体推進剤を使用すると思われるMRBM
同じく今回が初公開となる射程1万km級と目されるICBM
(※詳しくは「北朝鮮のミサイル、固体推進剤で脅威度急上昇」:2017年2月21日、及び「北朝鮮、ムスダンの開発の異常なペース」:2016年6月30日、を参照。特に、固体推進剤を使うICBMがどれだけ脅威なのかをご存知ない方には、前者をぜひお読みいただきたい)

 この中で注目すべきは、7つめの新型ICBMだ。

 新型ICBMは、打ち出し用の筒状構造物(キャニスター)に搭載されていたため、ミサイルの外観は不明だが、キャニスター及びキャニスターを搭載する運搬車両が外見、サイズ共に、ロシアのICBM「トーポリ」と酷似していた。

 トーポリ(ロシア語でポプラを意味する)ICBMは、旧ソ連が1977年から開発を開始して、1985年から配備したものだ。全長21.5mで固体推進剤を使用した3段式、打ち上げ時重量45トンで、1トンの弾頭を搭載できる。運搬車両から直接発車するので、打ち上げ時は車両の焼損を避けるため、キャニスターから高圧ガスでICBMを空中に射出した上で推進剤に点火するコールド・ローンチ方式を採用している。


ロシアが配備しているICBM「トーポリ」(ロシア語版Wikipediaより)

こちらはトーポリ発展型の「トーポリM」。北朝鮮の新型ICBMの運搬車両は、こちらに類似している。
未完成のICBMを公開したのは米国へのサイン

 北朝鮮がこうしたことをやるのは初めてではない。過去に何回も、開発中のミサイルのモックアップをパレードに登場させたことがある。

 2012年の太陽節軍事パレードではコード名「KN-08」というICBMを、2015年パレードではその改良型と目される「KN-14」ICBMを、それぞれモックアップで見せつけた。共にムスダンの技術を発展させた液体推進剤を使うICBMと推定されており、全長約16m。射程距離はグアムを狙うことが可能な6000km程度らしい。これらは現在開発中と目されており、使用すると思しき液体ロケットエンジンの燃焼試験映像も公開している。

 これらと比較すると、今回の新型ICBMは、全長20m程度と大きい。トーポリと同程度の性能があるなら射程は1万kmで、北米大陸の大半を狙うことが可能となる。


新型ICBMを収めたキャニスター頭部には、開口部の継ぎ目が見あたらない。モックアップと考えられる根拠のひとつである(朝鮮中央テレビよりキャプチャー)
 これだけ大型のICBMの発射試験は確実に検知されるので、まだ新型ICBMが完成していない(打ち上げの実験段階に進めていない)ことはほぼ間違いない。また、KN-08/KN-14も開発中の現状で、さらに大型、それも有事即応性に優れる固体推進剤を使用して、コールド・ローンチ可能なICBMを同時並行開発するだけの国力が、北朝鮮にあるかどうかも分からない。

 しかし、たとえブラフであったとしても、北朝鮮が射程1万kmと目される新型ICBMのモックアップを軍事パレードに登場させた意味は大きい。米トランプ政権に対して「お前らがどうプレッシャーを掛けようが、米本土に到達するこのICBMに核弾頭を搭載するまで、我々は技術開発を続けるぞ」という明確なサインを送ったのである。

 強硬姿勢の表れとして、北朝鮮は翌4月16日朝に半島東海岸の新浦からミサイル1発を発射した(発射直後に爆発)。発射されたのは比較的小型の新型ミサイルと推定されており、「スカッド(ノドン)」改良型ではないかとの報道もある。

 また、17日にBBC記者と面会した北朝鮮の韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官は、今後ともミサイル発射実験を繰り返すと発言、「米国が軍事行動に出ればすぐに全面戦争になる」と警告した。

ミサイルはパワーゲームの賭け金をつり上げる道具

 こうした強気の姿勢は、先代の金正日朝鮮労働党中央委員会総書記以来の瀬戸際外交と考えて良いだろう。北朝鮮は1990年代と同様に、ぎりぎりまで危機感を醸成して、米国や周囲の譲歩を引き出そうとしている。

 核兵器は「使わないことに意味がある」という特徴を持つ兵器だ。北朝鮮も米国も核兵器を使えば世界中からの非難を浴び、特に国力で大きく劣る北朝鮮が核兵器を使用すれば、即体制崩壊につながるとと見て間違いない。だから北朝鮮としては、核兵器開発をいかに高いカードとして売りつけるかに腐心している。「全面戦争だ」と口には出すが、もし全面戦争になれば最初に滅ぶのは、現在の金正恩体制であることを、北朝鮮は熟知しているはずだ。

 北朝鮮の望みは、核兵器と、核兵器を米本土に送り込むことができるICBMを完成させ、なおかつそれを実戦に使用することなく恫喝に使って米国を交渉のテーブルに引きずり出し、金正恩体制の継続を米国に保証させること、と考えられる。

 北朝鮮の核兵器開発は、米国だけではなく、中国もロシアも、もちろん韓国も日本も朝鮮半島のパワーバランスを崩すものとして危険視している。核兵器開発の鍵を握るのは核実験だ。実験を繰り返すほど、核兵器は完成に近づいていく。

 だから米国は、今年3月末に北朝鮮が核実験を実施する徴候が現れてから、様々なラインを使って「北朝鮮が核実験を行うとの確証を得た時点で通常兵器による先制攻撃を行う」という情報をリークし、北朝鮮への圧力を強めていた。

 北朝鮮としては、米国という虎の尾を踏むことはできない。かつては後ろ盾となってくれていた中国との関係が悪化している今、核実験を実施して米国が通常兵器による攻撃をかけてきたなら、その後の体制存続のシナリオが描けないからだ。

 ここで、瀬戸際外交をさらに推し進める手段として、急浮上したのがICBMだ。

 ミサイルだけならば、米国の尻尾を踏まずに掛け金を釣り上げられる、と、おそらく北朝鮮は判断したのだ。太陽節軍事パレードでの新型ICBMモックアップ多数登場や、16日のミサイル発射は、そう考えれば符合は付く。

理性的なら核攻撃はない、が、理性を担うのは個人

 今回、日本では北朝鮮がいまにも核ミサイルを日本に打ってくるかのような言説が目立ったが、危機感醸成のために北朝鮮が切ることができる持ち札はまだまだある。よって、いきなり北朝鮮が最後のカード、核ミサイルを発射することはないだろう。

 次に注目すべきは、通算6回目となる核実験を北朝鮮が実施するかどうかだ。米国が「実施の確証があれば攻撃」というサインを送っている以上、北朝鮮としては米国が手を出さないという確実な証拠を手に入れない限り、核実験を実施せず、一層のミサイル実験を重ねるはずだ。

 ただし、これらの予想は北朝鮮が理性的であるという前提に立っている。

 複数の人間がコントロールに絡む普通の国家ならばともかく、現在、北朝鮮という独裁国家の理性は、金正恩という一個人の理性に依存している。個人が強いストレスのために理性を失うことはあり得る。

 言わずもがなだが、彼に理性が残り続けることを祈りたい。


このコラムについて

宇宙開発の新潮流
 宇宙に興味がある人は多いですが、人類が実際に宇宙で行っていることや、その意味や意義を把握している人は少ないです。宇宙開発は「人類の夢」や「未来への希望」だけではなく、国家の政策や経済活動として考えるべき事柄でもあります。大手メディアが触れることの少ない、実態としての宇宙開発を解説していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/217467/041900046


 

 
開戦前、国家は密かに“予行演習”を実施する

神野正史の「人生を豊かにする世界史講座」

米朝戦争勃発? 「1939年の欧州情勢」から考える
2017年4月20日(木)
神野 正史
戦争の予兆、歴史が動き始めた

 ここのところ、急速に米朝関係が悪化しています。

 3月1日、アメリカ側が米韓合同軍事演習で北朝鮮に対して示威を行うと、これに対して北朝鮮は4月5日、同国東岸から弾道ミサイルを発射してアメリカを挑発。最近では北朝鮮がミサイルを発射することなど、珍しくもなくなっていましたが、今回はこれまでとは異なりました。

 この日を境にして、歴史が動き始めます。

 その翌日の4月6日、トランプ米大統領は日本の安倍首相と電話会談をして「すべての選択肢がある(戦争も辞さない)」と伝え、その日のうちにフロリダ州の自分の別荘で中国の習近平国家主席とも会談、「中国が協力しないなら単独でも行動する」と表明しました。

 さらにその翌日(7日)、アメリカが「シリアに向けて59発もの巡航ミサイルによる爆撃を行った」という報道が世界を駆け巡ったかと思ったら、そのわずか1週間後(13日)には、「アフガニスタン東部のIS(イスラム国)拠点に向けて、通常兵器としては最大の破壊力を持つ大規模爆風爆弾『GBU43』を投下した」との報道が飛び込んできました。

 「あれ? 矛先が北朝鮮から中東にそれた?」

 「シリアもアフガニスタンも地球の裏側だから関係ないや」

…などと暢気なことを言っていてはいけません。

 これらは、米朝開戦に向けていよいよ最終段階に入っていることを示しており、我が国にも深刻な意味を持つ出来事です。

「1939年ごろのヨーロッパ情勢」に酷似

 中には「米朝ともお互いにポーズにすぎない(本気で戦争する気はない)」という意見もあるようです。筆者も以前、「ウクライナ危機(クリミア半島の帰属を巡って2014年ごろよりロシアとウクライナの間に生じた危機)」が深刻化し「すわ、第三次世界大戦か!?」と騒がれる中、「第三次世界大戦にはならない」と各方面で広言していました。しかしその筆者ですら、今回は開戦の可能性は非常に高いと感じています。

 なんとなれば、現在の米朝関係は、第二次世界大戦へと向かう「1939年ごろのヨーロッパ情勢」に酷似しているためです。

 歴史というものは、いったん動き始めると人の想定を超え急速に進展するものです。したがって、今回このコラムが掲載される前にすでに開戦しているかもしれない…と思えるほど、事態は緊迫しています。

米朝開戦を示す2つの理由

 なぜ、そう言えるのかを歴史的観点から探っていくことにしましょう。

 まず第一に、外交的慣習のひとつとして、ある国が開戦を決意したとき、いきなり軍事行動を起こすのではなく、あらかじめ友好国や同盟国などに“諒解(りょうかい)”を取っておくという手続を踏むことが多いのです。今回アメリカが日本・中国に対して立て続けに「戦争も辞さない」との意志を伝えたことが、これに当たります。

 第二に、軍事行動的観点から見ても、やはりアメリカは「開戦」を決意していることが見て取れます。何事も準備不足のまま「ぶっつけ本番」でことに臨むのでは失敗する確率が高くなりますが、特に軍隊というものは「本戦」の前に念入りにシミュレーションをしておかないと、命取りになります。したがって「国家が本気で戦争を決意」したとき、まず実際に“予行演習”を始めることが多いのです。

 軍隊というものは、兵の練度や数、兵器の優劣や多寡といった単なる「数字」からだけではその強さや能力を計ることができません。戦前の下馬評を覆して「大軍が寡兵に大敗する」例など、歴史には枚挙に遑(いとま)がないほどです。

ムッソリーニの失態

 そこでひとつ例を挙げますと、かのイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニ(1883年〜1945年)。彼は第二次大戦前、イタリア軍の練兵と軍備増強に明け暮れ、屈強な軍隊を創りあげました。これに自信を得たムッソリーニは、ついに1935年10月、19世紀の第一次エチオピア戦争(1889年〜1896年)で獲得し損ねていたエチオピアに対し、植民地化を狙って再度侵掠(しんりゃく)戦争を始めます。

 侵掠に当たって、ムッソリーニにはひとつ心配ごとがありました。それは国際連盟の動きです。当時イタリアは石油を全面的に輸入に頼りきっていたため、もし国際連盟が「石油禁輸」の経済制裁を発動したら、イタリアは破滅してしまうためです。しかし、ムッソリーニは自信がありました。

 「なぁに、国連がごちゃごちゃ言う前に、我が屈強なイタリア軍が短期間のうちに一気にカタをつけてしまうさ!」

 こうタカを括っていたムッソリーニは“見切り発進”で開戦してしまいます。


ローマ市内で演説をするムッソリーニ。(写真:The Granger Collection/amanaimages)
開戦してみると、急造イタリア軍は弱かった

 ところが!

 いざ開戦してみると、急造イタリア軍の弱いこと! イタリア軍はたかがエチオピア軍ごときに苦戦の連続を強いられます。戦線は膠着し、短期決戦どころか1936年へと越年しても埒があかず、モタモタしているうちにムッソリーニが何より恐れていた「経済制裁」に向けて国連が動き始めてしまいました。

 ただ、このときの国際連盟が腰抜けで、きわめて中途半端な制裁(石油禁輸は除外された)に終わったため、ムッソリーニは間一髪これを乗り切ることができたものの、のちに彼はこう述懐しています。

もしあのとき、1週間でも2週間でも経済制裁が石油禁輸に及んでいたら、我がイタリアは崩壊していただろう。

 戦争に敗れるどころか、政権そのものが倒れていた可能性は高いことをムッソリーニ自身が認めているほど危機的な状況に追い込まれたのです。

 よほどこの失態に懲りたと見えて、ムッソリーニは以降しばらく大人しくなってしまったほどでしたが、それというのもすべては“予行演習”もせずに自軍の力量を過信して、いきなり「本戦」へと突っ走ったムッソリーニの軽率さゆえです。

前車の覆るは後車の戒め

 ちょうど同じころ、イタリア同様、アドルフ・ヒトラー(1889年〜1945年)のドイツもまた、死に物狂いでドイツ陸軍・空軍の増強と練兵に力を注いでいましたが、このときのムッソリーニの失態を目の当たりにして一抹の不安を感じます。

自分が再建したドイツ軍は、ほんとうに実戦で役に立つのか。

 そこでヒトラーは、ドイツ軍がどこまで実戦で通用するのか“予行演習”したいと望むようになります。その絶妙のタイミングで、スペインに動乱(スペイン内乱 1936年7月〜1939年3月)が起こりました。

 ヒトラーはただちにこれに介入し、1937年4月にはスペイン北部の町に大空襲をかけさせています。これこそがパブロ・ピカソ(1881年〜1973年)の作品の題材ともなった「ゲルニカ爆撃」です。

 ボクサーでも「100回のスパーリングより、1回の試合」を経験した方が強くなるといいますが、軍隊も実戦経験を経ることでグッと強くなります。こうした経験からドイツ軍は、実戦でなければ気がつけない軍事行動上の問題を洗い出し、強さを増していきました。もしこのときの“予行演習”がなければ、ひょっとしたら第二次世界大戦でドイツもあれほど暴れまくることはできなかったかもしれません。


スペイン内戦中の1937年4月、ヒトラーはスペイン北部の街・ゲルニカに対して無差別爆撃を行った。(写真:Everett Collection/amanaimages)
現在のアメリカと、ヒトラー時代ドイツの“予行演習”

 このように、突発的に起こった戦争でもない限り、戦争を決意した国はまず“予行演習”を行って自軍の問題点を炙(あぶ)りだしてから、「本戦」に臨むというのが常套です。

 今回、アメリカはシリアに爆撃を行い、アフガニスタンでは今までアメリカ軍が実戦で使ったことのない新型爆弾を使用しました。これはもう、アメリカがすでに開戦を決意し「本戦」を前にした“予行演習”を始めていると考えるのが自然です。

 もはや現状は、第二次世界大戦の開戦前日である「1939年9月2日」のような状況になってきているのです。

 ヒトラーは1936年3月のラインライト(ライン川に沿うドイツ西部の地名、第一次大戦後の平和条約であるヴェルサイユ条約により非武装地帯に定められていた)進駐以来、挑発行為を繰り返していました。

 しかし、当時の英仏はとにかく「事なかれ主義(宥和政策)」。それがかえってヒトラーに見くびられることになり、ヒトラーはオーストリア併合・ズデーテン併合・チェコ併合・スロヴァキア保護と、つぎつぎと自分の要求を実現させていきます。しかしこの成功はヒトラーを慢心させました。

よし、次はポーランドだ!

 「総統閣下、それだけはおやめになった方が! もはや英仏の怒りは頂点に達しており、今度こそ戦争となってしまいます!」

うろたえるな! あやつらは腑抜け、今度も黙認するに決まっておる!

 しかし。ヒトラーの思惑は外れ、ドイツ軍がポーランド侵攻を始めた1939年9月1日のわずか2日後の3日、ついに英仏がドイツに宣戦布告、第二次世界大戦が幕を開けることになります。慌てたヒトラーはなんとか外交的解決を図ろうと、何度も何度も英仏に和平交渉を持ちかけましたが、もはや時すでに遅し。取り付く島もなくヒトラーは破滅に向かっていくことになりました。

 このときの英仏=アメリカ、一方のドイツ=北朝鮮、ラインラント進駐以降のヒトラーの拡大政策=北朝鮮の挑発行為(ロケット発射など)──と読み直すと、現在の状況は驚くほど1939年に似ています。

 そして、4月5日の北朝鮮によるロケット発射が「ポーランド進撃」となって、米朝開戦へと突き進む様相を呈してきたと言えます。

ハリボテ国家・北朝鮮

 開戦に向けてのハードルとして「戦争口実」がありますが、これはたいした障害とはならないでしょう。

 アメリカがひとたび戦争を欲したが最後、「挑発」「誘導」「因縁」などあらゆる裏工作を駆使して戦争口実を作ることなどお手の物、それでもダメなら事実の「捏造」(ベトナム戦争へと発展するきっかけとなった、1964年のいわゆるトンキン湾事件など)程度のことは平気で行う国ですから。(このあたりの詳細に興味がある方は拙著『戦争と革命の世界史』をご覧ください)。

 もはや開戦「待ったなし!」の情勢を受けて、マスコミも「北朝鮮は1000発ものミサイルを持っている!」「そのうち1発でも東京に着弾したらこれだけの被害が出る!」と国民の不安を煽っていますが、その点については筆者は比較的楽観しています。

 軍事力というものは経済力によって支えられます。洋の東西や古今を超えて、経済の破綻した国が保有する軍隊など、外観がどれほど恐ろしげに見えようとも“張り子の虎”にすぎません。そしてこの「1000発」というのはあくまで北朝鮮の“自称”。

弱い犬ほどよく吠える。

 たとえば、平壌の街並みは高層ビル群が建ち並んでいますが、あれはドリフの舞台セット同様、見えるところだけしかない壁だけのハリボテです。そんな“ハリボテ国家”北朝鮮が「我が国は1000発のミサイルを保有している!」と叫んでみたところで、それをいちいち真(ま)に受けることはできません。

 また、仮にミサイルが1000発あったところで、発射台が1000基あるわけでもなく、それだけの燃料もないでしょう。さらには、ミサイル発射には準備に相応の手間と時間がかかるのに、アメリカ軍が雨あられと空襲を行う中、それだけのミサイルを発射できるはずもなく。

米朝開戦となれば!

 また、米朝開戦となれば「すわ、第三次世界大戦の前哨戦か!?」とマスコミが騒ぎ立てていますが、それもないでしょう。

 ヒトラー・ドイツの場合には米・英・仏・ソという当時の覇権国家を敵に回して6年間も持ち堪えましたので、その間にどんどん戦線が拡大していって「世界大戦」へと発展してしまいましたが、今回、北朝鮮などほんの数日と保(も)たないどころか、アメリカ軍の侵寇(しんこう)が始まった途端、戦わずして崩壊する可能性すら考えられます。

 おそらくは中国がこれに介入するヒマもチャンスもないでしょうし、また中国も北朝鮮と心中する覚悟はないでしょう。

大山鳴動鼠一匹。

 それより、戦いの終った後の混乱が日本に及ぼす経済的・外交的・政治的・社会的影響の方が筆者はずっと心配です。

 しかしその点に関しては、またの機会に。


このコラムについて

神野正史の「人生を豊かにする世界史講座」
人生に役立つ知識を世界の歴史から学び、読者の方々が日々の生活に役立てていただくことを目指します。筆者は日頃、歴史を学ぶ歓びを人々に伝える、「歴史エヴァンジェリスト」として活動しており、このコラムをきっかけに、1人でも多くの方に「歴史を学ぶ楽しみ」を知っていただければ幸いです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122700036/041800010
http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/200.html

[政治・選挙・NHK224] 日米経済対話、3本柱の順序に透けるすれ違い 国家公務員退職給付、民間78万円上回る15年 日豪、初の戦闘機共同訓練を実施
日米経済対話、3本柱の順序に透けるすれ違い

ニュースを斬る

交渉の駆け引きを読み解く
2017年4月20日(木)
細川 昌彦
4月18日、日米経済対話が開催され、麻生太郎副総理・財務相とマイク・ペンス米副大統領が、貿易などについて議論した。その中身は日米経済対話の大枠を合意しただけで、具体的内容はこれからである。しかも、合意した経済対話の「3本柱」の順序に、日米の思惑の違いが如実に表れている。元経産省米州課長の細川昌彦氏(中部大学特任教授)が、交渉の駆け引きを読み解く。(「トランプウオッチ」でトランプ政権関連の情報を随時更新中)

ペンス米副大統領(右)が初来日 麻生副総理(左)と日米経済対話の初会合(写真=ZUMA Press/アフロ)
 4月18日、日米経済対話が無事キックオフされた。正確に言えば、キックオフされただけだ。

 日米経済対話の大枠を合意しただけで、具体的内容はこれからである。

 日本としては早く日米経済対話を立ち上げて、トランプ政権のイレギュラーな対日批判をこの場に吸収したい。米国側は政府高官人事も停滞して体制が整わないので、具体的な内容に突っ込めない。そこで急ぐ必要はない。

 そういう中で、今回何とか立ち上げに持ち込んだプロセスで米側の要求を受け入れざるを得なかった状況が見て取れる。

 これほど双方の思惑、意図の違いが鮮明に表れた共同記者会見、共同プレスリリースも珍しいだろう。それは、もともと2月の日米首脳会談で経済対話の妙案を日本側から持ち出した時からあった。

「経済対話の3本柱」の順序に透ける日米のすれ違い

 第1のポイントは、経済対話の3本柱の順序が象徴している。交渉当事者は認めたくないので、強弁するだろうが、たかが順序、されど順序である。

 首脳会談時には3番目に位置付けられていた貿易問題が、今回は1番目に浮上した。日本としては、貿易問題にだけ焦点が当たらないよう、広範な経済問題を扱うようにしたいという思惑がある。それが、第1にマクロ経済、第2に分野別協力、そして貿易は3番目にあえて置いていた理由だ。ある意味、広範な対話に仕立て上げるために、知恵を出して3本柱にしたのが実情である。

 恐らくこれは正しい判断だっただろう。しかし交渉は相手がある。米国は第3の貿易問題だけが関心事項である。事前折衝の結果、貿易問題が最優先事項となった。米国の本音を言えば、マクロ経済、分野別協力は「日本側がやりたければどうぞ」程度の位置づけだ。今後の具体的話し合いもそれぞれ財務相同士、経産省・商務省同士に委ねられるだろう。

 主戦場は今回第1になった貿易問題だ。米国側のプレーヤーは米通商代表部(USTR)になる。そのUSTR代表予定のライトハイザー氏も議会承認待ちで未だ稼働していない。そこで米国側としては、今回の会談では、彼が就任後に腕を振るえるような舞台さえ整えておけばよい。

 そこで第2のポイントは、貿易のルールだけではなく、「課題」を付け加えたことだ。

 日本としては中国を念頭において、日米で質の高いルール作りで主導権を取ることが双方の利益になることを前面に出して、日米協力を進めていこうという戦略だ。プレスリリースにある「第3国に関する懸念への対処」とはそれを意味している。具体的には、中国の過剰生産への対処、知的財産権問題、国有企業への補助金問題などだ。

 米国側としては、「それもいいが、農産物など個別問題の交渉も大事」というポジションで、それらを飲み込んだ言葉として「課題」が挿入された。しかも当初「二国間枠組」という形でスタートしても、将来は「二国間協定」になっていく可能性をオープンにしている。

米国抜きのTPPを進める意義

 第3のポイントは、「地域」と「二国間」の綱引きである。

 日本は米国にもっとアジア太平洋という「地域」に目を向けさせようとしている。今回麻生副総理も随所に「地域」という言葉を強調しているのは、そのためだ。日米が協力してアジア太平洋という一大成長市場でのルール作りを主導しよう、との呼びかけを米国側にしているのだ。

 これは環太平洋経済協力協定(TPP)の目的そのものである。米国にTPPの持つ意義を自ずから理解していくプロセスを埋め込んだと言えるだろう。

 しかしペンス副大統領は「TPPは過去のもの」と切って捨てて、「二国間で交渉する」と明言している。このギャップをどう埋めるか今後の大きな課題だ。

 そのためにも、米国抜きのTPPをできるだけ早く軌道に乗せることが不可欠だ。具体的に米国が参画しなければ、不利になる状況を作り出して、米国内からもそういう声が上がってくることが必要だ。観念論だけではアジア太平洋という地域に目を向けさせることはできない。

来秋までが貿易問題の正念場

 第4のポイントは、「結果の平等」と「機会の平等」の綱引きだ。

 ルール重視の姿勢は、不公正を是正して競争条件を平等にすることが目的である。いわば「機会の平等」を目指すものだ。他方、今回もペンス副大統領は「バランスのとれた貿易関係」を目指すと言う。これは首脳会談の記者会見でトランプ大統領が発言した「互恵的」という言葉とも軌を一にする。以前指摘したように、貿易の「結果の平等」を重視する結果主義だ。それが貿易不均衡の是正要求の根底にあるのだ。今後の危険因子が見て取れる。

 貿易不均衡問題はあくまでもマクロ経済政策の結果であって、貿易政策で是正を目指すものではないことを今後どこまで説得できるかだ。

 なおその関連で、円安批判という為替問題がある。これは日米経済対話からは切り離して、あくまでも通貨マフィアの財務省同士の場でマネージしていくことが日米両当局者間の共通理解であろう。ただし、トランプ大統領の発言だけが予測不能の波乱要因だ。

 いずれにしても、主戦場の貿易問題はライトハイザーUSTR代表の議会承認後動き出すだろう。勝負はそれからだ。

 ペンス副大統領と麻生副総理は年に2度ほど進捗の報告を受けるシンボリックな存在で、実際の交渉をするわけではない。ロス商務長官もトランプ政権では重要な位置づけだが、商務省という役所の所掌の限界があって、貿易交渉全般を仕切るのは無理がある。ナバロ委員長は発言の声が大きくても実務には関与できない。勢いライトハイザー氏にかかってくる。

 トランプ政権内の政治力学が流動的な中で、彼は存在感を示すことに関心が向くだろう。また、USTRという組織はそもそも議会のために働く機関であることから、議会の意向が大きく影響する。来年秋の中間選挙を控えて、農業・畜産業界の議会への働きかけは勢いを増す。

 恐らくこの夏から来秋までの間が貿易問題の正念場になるだろう。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。

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ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/041900668/?ST=print


 

国家公務員の退職給付、民間を78万円上回る 15年度
2017/4/19 21:05
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 人事院は19日、2015年度に退職した国家公務員に関する調査結果を発表した。受け取った1人当たりの退職給付が約2537万円で、民間企業の退職金と企業年金の合計よりも約78万円多かった。退職給付は退職手当と共済年金の上乗せ給付の合計。人事院は安倍晋三首相と麻生太郎財務相に対して官民の格差の是正を求める見解を示した。

 政府は約5年ごとに民間企業の退職給付の水準について調査を実施。それを基に官民比較し、国家公務員の退職給付の水準を見直している。今回の人事院見解を受けて退職給付を見直す場合、国家公務員退職手当法改正案を国会に提出する。

 今回の民間企業への調査は従業員50人以上の7355社に実施し、4493社から回答を得た。15年度に退職した勤続20年以上の従業員が受け取った退職金と企業年金の平均額を調べた。

 民間企業では退職金が約1006万円、企業年金が約1453万円で、合計は約2459万円。一方、国家公務員は退職手当が約2314万円、共済年金の上乗せ給付が約223万円で合計は約2537万円だった。

 前回の10年度退職者を対象にした調査では、景気低迷で民間の退職給付が減ったため、国家公務員の退職給付は民間水準を約403万円上回った。官民の格差はまだ残るものの、5年前と比べるとその差は縮まった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H06_Z10C17A4PP8000/

 

 
日豪、初の戦闘機共同訓練を実施へ 防衛相会談で合意
2017/4/19 22:56
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 稲田朋美防衛相は19日、防衛省内でオーストラリアのペイン国防相と会談した。自衛隊と豪軍による戦闘機を用いた共同訓練を来年、初めて日本で開く方針で合意。訓練をしやすくするための協定締結を急ぐことでも一致した。米国を含めた日米豪3カ国の協力も申し合わせた。

 稲田氏は会談で「地域の安全保障環境が厳しさを増すなか、日豪の防衛協力の重要性が高まっている」と指摘。ペイン氏は「防衛協力の発展に向け、訓練や相互運用性を重視した協力を模索したい」と述べた。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H4A_Z10C17A4PP8000/
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/428.html

[国際19] フランス「斜陽の町」が映す大統領選の行方 かすむEUの未来 爆発する既存政党への不満「ルペン大統領」の可能性はある
フランス「斜陽の町」が映す大統領選の行方

かすむEUの未来

爆発する既存政党への不満、「ルペン大統領」の可能性はある

https://www.youtube.com/watch?v=h8hUpCpcK74


2017年4月20日(木)
蛯谷 敏
 4月23日のフランス大統領選第1回投票が、あと3日に迫った。国民戦線のマリーヌ・ルペン候補と、無所属のエマニュエル・マクロン候補が有力候補となっているが、両氏の支持は伸び悩んでいる。一方、極左政党・左翼党のジャンリュック・メランション候補の支持が急拡大。共和党のフランソワ・フィヨン候補を含めた4人の混戦状態に陥っている。

 社会党と共和党という2大政党に基盤を持つ候補者が大統領の座を争ってきたフランスにとって、今回の大統領選は異例の事態。その背景にあるのは、長らく停滞する経済に、有効な施策を打てなかった既存の2大政党に対する国民の不満だ。候補4人のうち、3人は既存の2大政党以外の人間。国民が既存の政党以外から新たなリーダーを求める機運がかつてないほど高まっている。

 その中でもやはり、注目せざるを得ないのが、国民戦線のルペン候補だろう。「反EU」を掲げる同候補の公約は過激だ。EU離脱を問う国民投票の実施、シェンゲン協定や北大西洋条約機構(NATO)からの脱退、通貨ユーロを離脱し、旧フランを再導入するなど、欧州統合を後退させる政策を声高に主張する。いずれも、すぐに実現する可能性は低いが、仮に「ルペン大統領」が誕生すれば、欧州が大混乱に陥るのは間違いない(詳細は2017年4月17日号のスペシャルリポート)。

 伸び悩んではいるものの、ルペン候補の支持率は依然として24%前後でトップを走る。第1回の投票を勝ち残る可能性は高い。世論調査では、決選投票では過半数を獲得できず、対立候補に敗れると見られているが、大学教授など専門家の多くは今もルペン候補が勝利するとの見通しを捨てていない。昨年、英国で実施された国民投票の前例もある。

 都市部よりも郊外で分厚く広がるルペン支持層。その現場を取材すると、変化に対する国民の渇望が想像以上に強いことが分かった。

かつて鉄鋼の町と呼ばれたフロランジュ。欧州アルセロール・ミタル傘下の製鉄所内には操業を停止した無数の生産設備が点在していた。
 製鉄所の敷地を高台から見下ろすと、不気味な静寂、あたり一帯を覆っていた。

 仏北東部、ルクセンブルクとドイツの国境近くにある小さな町、フロランジュ。一帯はロレーヌ地域と呼ばれ、欧州を代表する鉄鋼生産地域として1950年代から知られてきた。フロランジュ周辺の町に広がる150ヘクタールの広大な産業区域にはかつて、無数の鉄鋼生産設備や関連工場が集積していた。

 しかし、3月下旬に訪れたフロランジュに、鉄鋼の町の面影はほとんどなかった。中心部に位置する製鉄所には、稼働を停止した無数の鉄鋼生産設備が点在するのみだった。


稼働を停止した製鉄所の生産設備
 製鉄所周辺で目に入るのは、廃墟となった町工場やホテル、朽ち果てた住居など。町にも人の気配はほとんどない。フランスの2017年1月の失業率は約10%だが、フロランジュ一帯の失業率は20%近くに達すると言われる。


製鉄所の近くには、廃墟となったホテルがそのまま残っていた

朽ち果てた町工場も多く目についた
 一時は世界的な鉄鋼生産拠点として名を馳せたロレーヌ地域だが、1970年代以降は、徐々に衰退の道を辿った。2000年代以降、中国やインドなどの新興国で鉄鋼生産が急増した後は、衰退のペースに拍車がかかった。

 欧州の鉄鋼メーカーも、世界再編の波に飲み込まれていく。2006年には、インドの富豪、ラクシュミ・ミタル氏率いるミタル・スチールが、ルクセンブルクのアルセロールを買収。同年、ミタルはフロランジュの製鉄所を保有していたフランスの製鉄企業ソラックも傘下に収めた。

 アルセロール・ミタルはその後、激化する世界競争に対応するため、採算の合わない欧州の製鉄所を次々と閉鎖していった。2011年、フロランジュにもリストラの波が押し寄せた。ミタルは製鉄所内の高炉2基を停止し、実質的に閉鎖することを決めた。

 当時、フロランジュ、そして周辺の町は、高炉停止に抗議する従業員や関連会社の人間であふれ返った。高炉関連の仕事に従事していた人間は、取引先や飲食店といった周辺産業も含めると、数千人に達する。雇用を失うことは、フロランジュにとって存亡にかかわる危機だった。


町を歩いても、人の気配がほとんどない
 多くのメディアが取り上げた高炉の停止は、フランス全土に知れわたり、社会問題化した。そして、瞬く間に政治問題へと発展し、翌2012年の大統領選の争点となった。当時、社会党の候補だったフランシス・オランド(現大統領)氏は「大企業によるリストラから労働者を守る」と声高に主張した。

 世論の追い風を受けたオランド候補は、当時のニコラ・サルコジ大統領を破り、大統領選に勝利する。オランド大統領はフロランジュや周辺地域の雇用維持を約束し、一時は工場を国有化する可能性にまで言及した。雇用の受け皿となる売却先を見つけない限り、大企業は工場を閉鎖できないなどの法律を定め、「フロランジュ法」と名付けた。

 政治介入を受けてミタルは、その後、フロランジュの製鉄所内に鉄以外の製品を作る別の生産ラインに投資を継続することを決めた。

 しかし、停止した高炉2基は結局、再稼働することはなかった。フロランジュや周辺地域の雇用は減り続け、飲食店やホテルなども次々と廃業した。今ではこの一帯は、米国中西部の荒廃した工業地帯になぞらえ、フランスのラストベルト(rust belt)と呼ばれる。

 雇用拡大と景気回復を掲げたオランド大統領は公約を果たすことなく、今週末に迫った大統領選には出馬しない意向を明らかにしている。


町のあちこちに、ルペン候補のポスターが貼られていた
 「社会党のことはもう信じていない」。フロランジュ市内にある数少ないピザレストランで働く30代の店員に大統領選について聞くと、こんな答えが帰ってきた。男性は、以前は鉄鋼関係の仕事をしていたが、今は定職に就いていない。

 「彼らは労働者の味方だと言って散々理想を語ったが、状況は何も良くなっていない」。男性はこう続けた。「ルペンの方が、よっぽどましだ。彼女にフランスを変えてもらいたい」。

「既存政党の候補は誰がなっても同じ」

 仏ニース大学で比較政治学を研究するギレス・イバルディ氏は、「高い失業率に苦しむ地域や、欧州統合が進む中で恩恵を受けていないと感じる地域では、社会党への失望を埋めるように、国民戦線が支持を広げている」と指摘する。

 国民戦線は、極右政党と紹介されているが、実際は左派の政策も取り込んでいる。低所得者や中小・零細企業への支援を充実させる政策を掲げており、社会党に不満を持つ国民の支持を吸収している。特に国民戦線の支持が広がっているのがフロランジュのような地域で、隣町のアヤンジュでは2014年、国民戦線に所属する町長が誕生した。

 現場を取材して特に感じたのが、国民が変化を渇望していることだ。

 「既存政党の候補は、誰が大統領になっても変わらない」とフロランジュに住む40代の女性は言う。「社会党と共和党以外なら誰でもいい。新しいリーダーでなければ、フランスは変わらない」。

ルペン候補とともに、無所属のマクロン候補や左翼党のメランション候補らが支持を高めているのは、多くの国民が既存の政党にノーを突きつけているからだろう。

 最新の世論調査によると、ルペン候補の支持率は24%でトップ。同じく、無所属のマクロン候補も24%で並ぶ。反ルペンの支持を固めた。ここに来て、左翼党のメランション氏も支持を急拡大させ、3位の座を共和党のフィヨン候補と争う展開になっている。

 今のところ、4月23日の第1回投票ではルペン候補とマクロン候補が勝ち残り、5月7日の決選投票でマクロン候補がルペン候補を破るとのシナリオが有力視されている。しかし、英国のEU離脱を巡る国民投票の前例もあり、「ルペン候補が勝つ可能性は捨てきれない」(英リーズ大学のジョシュリン・エバンス教授)と言う識者は少なくない。

 長らく2大政党が大統領の座を争ってきたフランスにとって、今回の大統領選は大きな転換点となり得るだろう。2017年前半、欧州政治で最も注目を集めるイベントがいよいよ始まる。

フランス大統領選
5年に一度実施される選挙で、今回は11人が立候補した。4月23日の第1回投票で有効投票の50%+1票以上を獲得した候補が当選する。「単記2回投票制」を採用しており、第1回投票で当選者が決まらない場合は、上位2人の間で決選投票を実施する。決選投票は、最も多い票を得た候補者が当選する。今回の投票日は5月7日。1965年以降、第1回投票で大統領が決定した例はない。

このコラムについて

かすむEUの未来
 EU(欧州連合)離脱をめぐる英国との交渉、主要国で台頭する反EUの政治勢力、終わらない難民問題…。課題山積のEUは今、発足以来の正念場を迎えている。欧州各国で起きる政治・経済の動向を中心に、ロンドン駐在記者が現場で見て聞いたリアルな欧州の姿をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030900123/041800007/
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/188.html

[経世済民121] 「イエレン・コナンドラム」の正体 暗い影増す米経済 米国境税、致命的欠陥 引き締め観測後退 債券下落 貿易黒字2カ月連続
FX Forum | 2017年 04月 20日 17:52 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
「イエレン・コナンドラム」の正体

永井靖敏大和証券 チーフエコノミスト
[東京 20日] - 3月中旬以降、米長期金利は低下傾向をたどっている。低下の主因は、医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案の失敗、つまりトランプ政権の政策運営に対する期待の剥落と筆者はみているが、米国の利上げが早すぎたと市場が解釈したためかもしれない。

米長期金利の先行きは、低下の主因や市場の注目点により異なるため、現状分析を行うことは、極めて重要だ。

振り返れば、2004年の利上げ局面でも、米長期金利は低下傾向をたどった。当時のグリーンスパン連邦準備理事会(FRB)議長が、そうした状況を「コナンドラム(謎)」と呼んだことが市場の注目を集めた。イエレン議長下の利上げ局面で進む今回の新たなコナンドラムの正体は何だろうか。

<政策期待剥落説だけなら低下一巡か>

まず、前者の政策期待剥落説についてみると、オバマケア代替法案の雲行きが怪しくなったのは、3月半ば頃という点で、米長期金利のピークの時期と重なる。ライアン下院議長が代替法案成立に向けて奔走したが、共和党の保守派メンバーで構成される「フリーダム・コーカス(下院自由議員連盟)」の反対により、目標としていた3月下旬の下院通過を断念。共和党が内部分裂している様子が鮮明になった。

この結果、市場が期待していた大規模減税やインフラ投資も実現困難との見方が強まり、米株式相場が下落。連れて米長期金利も低下傾向をたどった。この見方に異論を唱える人はいないと思われる。

政策期待剥落だけが理由なら、米長期金利の低下は一時的という結論になる。「トランプ期待」による米長期金利の上昇も一時的だった。もともと、トランプ大統領の掲げていた政策が実現すると本気で期待していた人は少ないだろう。政局関連のニュースはヘッドラインを飾りやすいため、日々の長期金利の動きに影響を与えるが、中長期的な方向性や水準を変える要因にはならないと筆者は考えている。

<早すぎた利上げが理由なら一段の低下も>

問題は、早すぎた利上げという見方との合わせ技の可能性がある点だ。米長期金利のピーク時期は、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げのタイミングとも一致する。3月の利上げについては、強引に、短い期間で利上げ地ならしを行ったと指摘する向きが多い。

2月上旬時点では、「3月の利上げはない」との見方が市場のコンセンサスだったが、複数のFRB高官の発言を受け、3月上旬には、利上げが確実視される状況に変化した。FOMC後の記者会見で、記者から、利上げの地ならしが遅すぎたのではないかとの質問も出た。

イエレンFRB議長は、質問に対し、情報発信にぶれがなかった点を強調。暗に、市場の受け止め方が遅かったと説明したが、結果として、長期金利の上昇・低下につながった可能性もある。すなわち、2月中旬頃から、市場が3月の利上げの可能性を意識し始めたことで、市場の関心は目先の経済・物価動向に集まった。この結果、長期金利は、FRB高官の景気に対する強気な発言に素直に反応し、上昇傾向をたどった。

ただ、利上げ実施後は、市場の関心は長期的な経済・物価動向に向かったとみられる。FRBが、利上げのペースが、極めて緩やかになる点を強調しているため、市場は「次回5月のFOMCでの利上げはない」ことを確信。この結果、当面の経済・物価動向よりも、構造問題に対する関心が高まりやすくなった。

特に3月の利上げは強引だったという印象を与えたため、「早めの利上げは、将来の景気・物価上昇抑制要因になる」との見方を強め、これが米長期金利の低下要因になった可能性がある。構造問題の注目度が高まることで、長期金利が一段と低下する可能性が生じる。

<米経済ファンダメンタルズは良好>

米長期金利の低下という市場からのメッセージに、謙虚に耳を傾ける必要はあるが、市場に「流される」のは危険だと筆者は考えている。金利が低下すると、長期停滞論の説得力は高まるが、いまさら感がある。

最近では、失業率が低下しても、賃金が伸び悩んでいることを理由に、失業率と賃金の関係が消滅したと指摘する向きもあるが、長期的には賃金上昇加速に結びついている。特に3月の失業率は4.5%と、米議会予算局が試算している自然失業率の4.7%を割り込んだ。

自然失業率は、幅を持ってみる必要があるが、過去、自然失業率を割り込んだ後、賃金の伸びが加速している。最近の米長期金利の低下を、構造変化で説明するのは場当たり的だと筆者は考えている。

当然のことながら、米長期金利の先行きをみる上で、客観的な景気分析が必要だ。足元の米経済指標を振り返ると、3月の非農業雇用者数、小売売上高など、弱い経済指標も出ているが、天候やガソリン価格の下落が影響している。ISM景気指数や消費者信頼感指数など、高水準を維持している指標も多く、総じてみれば、米景気は着実に回復していると評価できる。コア消費者物価指数が2010年1月以来の前月割れとなった点は気掛かりだが、携帯電話サービスの下ぶれという特殊要因がある。

先行きについても、米景気が目先腰折れする理由は見当たらない。自動車販売は、ピークアウトしつつあるが、可処分所得が着実に増加していることから、個人消費が腰折れする可能性は小さい。住宅投資についても、空室率が低下傾向をたどっているため、今後の一段の投資増が期待できる。設備投資については、循環的な下向き局面に入っているようだが、足元で企業のキャッシュフローが上向くなど、明るい兆しも出ている。

すでに計3回利上げが実施されたが、消費者物価も上昇しているため、実質金利でみた金融緩和度合いは高まっている。米長期金利は、目先一段と低下する可能性はあるが、早晩反発すると筆者は予想している。

*永井靖敏氏は、大和証券金融市場調査部のチーフエコノミスト。山一証券経済研究所、日本経済研究センター、大和総研、財務省で経済、市場動向を分析。1986年東京大学教養学部卒。2012年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

コラム:試練を迎えるドル円上昇シナリオ=亀岡裕次氏
コラム:FRB、冗舌でぶれの大きい市場との対話
コラム:ドル高に陰り、綱引きの軍配は円高へ=亀岡裕次氏
http://jp.reuters.com/article/column-yasutoshi-nagai-idJPKBN17M0BT?sp=true


 

ブラックロックCEO:米経済は「暗い影」を増しつつある
Charles Stein
2017年4月20日 00:54 JST

世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのローレンス・フィンク最高経営責任者(CEO)は米経済の減速を示す複数の兆候が暗い影を落としていると語った。
  同CEOは19日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米経済を取り巻く不透明感について、具体例として自動車販売の減速や企業の合併・買収(M&A)活動の停滞を挙げ、こうした「警告を発する複数のサインは暗さを増しつつある」と発言した。
  株式市場が上昇するためには、米企業業績が強さを維持し、トランプ大統領の政策が議会で前進するとの確証が必要だと、フィンク氏は指摘した。
  ブラックロックがこの日発表した1−3月(第1四半期)決算は利益がアナリスト予想を上回った一方、収入は予想に届かなかった。
  海外情勢について、フィンクCEOは英国の欧州連合(EU)離脱に対して「様子見」のアプローチを取っていると語った。英国にとってEU離脱が何を意味するのか不透明なためだという。今月から始まるフランス大統領選について、市場はより中道派の勝利を織り込みつつあるとも話した。
原題:BlackRock’s Fink Sees ‘Warning Signs’ for U.S. Economy Brewing(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONU976S972O01

 

引き締め観測後退、総裁任期中の長期金利引き上げ予想半減−日銀調査
日高正裕、ジェームズ・メーガ
2017年4月20日 11:00 JST

金融政策は現状維持予想が大勢、エコノミスト39人を対象に調査
「80兆円」の買い入れ額「めど」の減額や削除予想も半減

日本銀行が目標とする2%に向けた物価上昇の足取りが鈍いことを受け、金融引き締め観測が後退している。ブルームバーグの調査では、黒田東彦総裁の任期中に長期金利の誘導目標を引き上げるとの見方が半減した。来週の金融政策決定会合は、ほぼ全員が現状維持を予想した。
  26、27両日の決定会合についてエコノミスト39人を対象に11−18日に調査した。黒田総裁の任期である2018年4月8日までに長期金利の目標(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるとの予想は7人(18%)と、3月の前回調査(34%)から大幅に減少。長期国債買い入れ額の年間約80兆円の「めど」減額ないし公表文からの削除を予想したのは13人(33%)と前回調査(63%)から半分に減った。

  日銀は同会合後、四半期の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で19年度までの物価見通しを公表する。1月の展望リポートでは17年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)見通し(政策委員の中央値)は前年比1.5%上昇だった。複数の関係者によると、日銀は今回の会合で見通しを小幅に下方修正する方向で検討している。
  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは調査の回答で、日銀の物価見通しは「16、17年度を中心に小幅下方修正となる公算が大きい」と指摘した。ただ「18年度ごろに2%に達するとのシナリオは維持し、新たに加える19年度の物価見通しは2%に程近い数値を示す」と見込む。

下方修正

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、日銀は物価見通しを17年度、18年度とも下方修正し、「18年度ごろ」としている2%の達成時期も「19年度以降に後ろ倒し」すると予想している。
  年間約80兆円をめどとしている長期国債買い入れ額については、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストが調査の回答で、今会合での公表文からの削除を予想した。7日付のリポートで、「4月会合で『80兆円増』が削除されても寝耳に水ではない」と指摘した。
  日銀の長期国債買い入れの減額が既に始まっているとの指摘もある。SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは7日付のリポートで、日銀の「4月第1週における買い入れ額をそのまま延長して計算すると、年末時点での長期国債残高増加額は年間で60兆円台半ばにとどまる見通しとなる」と指摘した。
  政府は18日、7月23日に任期が終わる木内登英、佐藤健裕両審議委員の後任として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員の片岡剛士氏と三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏を充てる人事案を国会に提示した。片岡氏はリフレ派のエコノミストで、鈴木氏は石田浩二前審議委員の退任後、途絶えていたメガバンクの出身。
  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは19日付のリポートで、「片岡氏はいわゆるリフレ派であり金融緩和の維持、場合によっては追加緩和を求め、鈴木氏は逆に金融緩和縮小を求める可能性がある」と指摘。「金融緩和賛成派と反対派でバランスを確保し、かつ意見の多様化を期待させる人事」と評価した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OON7566S972801

 


 

為替トレーダーはお見通し、米国境税プランが抱える致命的な欠陥
Andrea Wong
2017年4月20日 07:03 JST

• 国境税導入でドルが上昇するとの前提は「笑える」−ウー氏
• 米国のモノ・サービス1日当たり取引額、外為市場では誤差の範囲

米国の首都ワシントンで、野心的な国境調整税の提案を売り込むポイントの一つは経済上の重要な前提にかかっている。つまり、国境税導入でドルは十分値上がりするので、米国人の多くが依存する安い輸入品のコスト増加が打ち消されるという前提だ。マクロ経済理論に裏打ちされた経済学入門といったところだ。
  しかし1日当たり5兆1000億ドル(約554兆円)相当の通貨が取引される為替市場で生計を立てるウォール街のトレーダーやストラテジストらによれば、このような考え方は不合理だ。議会共和党が意見の相違を乗り越えて国境税の法案を通過させることができたとしても、構想が示唆するとおりにドルが25%上昇すると信じる人物を市場で見つけるのは困難だろう。
  その理由の一部は、構想の根底にある理論を現実世界に応用した場合の解釈にも関係するが、それと同じぐらい重要なのは、巨大な外国為替市場がいかに予想しづらいものであるのか、政治家らが根本的に理解できていない点がある。何しろ、連日数兆ドルが取引され、世界のさまざまな経済要因がぶつかり合っているのだから。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の世界金利・為替調査責任者デービッド・ウー氏は「外為市場は最も予想しづらく、その為替市場がどうなるかを前提に税制を改革するとは笑える」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで語った。

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  ウー氏には、簡単な計算で済む話だ。米国のモノ・サービスの世界取引は1日当たり平均140億ドル前後。これは世界の外為市場で1日に取引されるドルの規模4兆4000億ドルの0.3%、つまり誤差の範囲でしかない。そして相場の流れは、金融政策や経済成長、政治リスクの変化に気まぐれなトレーダーらが反応することで左右される。ドルが素直に貿易政策に反応するというのは考えが甘過ぎるというわけだ。
  イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は実際、そうした懸念を口にした。議長は2月の議会証言で「一国の為替レートには貿易以外も影響を与える」とし、国境税が引き起こす「変化が完全に相殺されると市場が確信するには、一連の強い前提が必要だ」と述べた。

Major importers of goods to the U.S.
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原題:Currency Traders Spot Fatal Flaw in Republicans’ Border Tax Plan(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OON24E6JIJUO01

 


 
米国債空売りトレーダーが直面するショートスクイーズ−利回りが節目
Brian Chappatta、Edward Bolingbroke
2017年4月20日 02:38 JST

債券の弱気派は要注意だ。米国債利回りがさらに低下するリスクが高まっている。
  利回りはさまざまな年限で昨年11月以降の最低に近い。テクニカル指標が重要な節目を超えたケースもあり、トレーダーらは利回り上昇を見込む取引を手じまいしつつある。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによれば、ヘッジファンドなど大口投機家は11日までの1週間に米5年債先物の売り越しを約8万6000枚減らした。

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  筋金入りの債券弱気派ですら、成長とインフレ加速見通しを米国債市場が急いで織り込み過ぎたのではないかと疑い始めていることがうかがわれる。同週の手じまいで、ショートポジションは昨年11月の米大統領選挙後で最少になった。18日の債券相場上昇はショートカバーの加速が後押しした可能性がある。利回りが今年のレンジを抜け出した現在、ポジションの影響が鮮明だ。

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  TDセキュリティーズのストラテジストらは17日のリポートで、米5年債のショートポジションを1.75%の水準で解消したと明らかにした。これはフィボナッチ数列で大統領選挙後の動きの反転を示唆する重要な節目水準に近い。
  リポートは「総じて失望感が広がる中で投資家は米国債のショートポジションを減らした。ショートカバーが利回りを急激に押し下げた」とし、「今後数週間で地政学的懸念が後退した後、より妙味のある水準でショートポジションの再構築を図る」と説明した。
  米10年債利回りは18日に一時2.163%まで低下。大統領選後についてのフィボナッチ数列の50%ライン(2.1769%)を割り込んだ。
  CFTCのデータによれば、11日までの週に解消された規模の倍以上の米国債ショートポジションがネットでまだ残っている。BMOキャピタル・マーケッツのストラテジストらは18日のリポートで「米国債をショートするトランプトレードはまだ完全には降参していない」と記述した。一部トレーダーは先週にショートポジションを積み増し、またしても踏み上げされたという。
  ショートポジションが残っていることは「トランポノミクスが本当に絵に描いた餅で、米国株がさらに大幅に調整した場合、さらに劇的な米国債相場上昇の可能性を生じさせる」と指摘した。
原題:Bond Traders Stare Down Short Squeeze as Yields Test Key Levels(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONDHS6K50YD01

 

債券下落、米債安や20年入札控え売り先行−入札後に持ち直しとの声も
三浦和美、山中英典
2017年4月20日 08:09 JST更新日時 2017年4月20日 09:15 JST

• 相場は弱めのスタートも、下値を試す余地限定的−みずほ証
• 先物3銭安の151円15銭で開始、長期金利は0.01%に上昇

債券相場は下落。前日の米国債相場が軟調に推移した流れを引き継いだことに加え、この日実施の20年債入札に向けた売りが先行している。
  20日の長期国債先物市場で中心限月6月物は前日比3銭安の151円15銭で取引を開始。いったんは151円12銭まで下げる場面もあった。

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  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の346回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1ベーシスポイント(bp)高い0.01%で始まった。新発20年物の160回債利回りは0.5bp高い0.56%で取引されている。
  みずほ証券の山内聡史マーケットアナリストは、「10年金利がゼロ%まで低下したことに対する高値警戒感や、今日の20年債入札に向けた調整なども相まって、円債相場は弱めのスタートとなるだろう。ただ、下値を試す余地も限定的」とみている。
  19日の米債相場は下落。ドイツ国債に連れ安の展開となり、米10年債の利回りは前日比5bp近く上昇して2.21%程度となった。前日には節目の2.2%を割り込んで年初来最低水準を更新していた。
20年債入札
  財務省はこの日、 20年利付国債の価格競争入札を実施する。160回債のリオープン発行で、表面利率は0.7%に据え置かれる見込み。発行予定額は1兆円程度と、前回から1000億円の減額となる。前日の入札前取引で20年物は0.56%程度で推移した。
  20年入札について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の稲留克俊シニア債券ストラテジストは、日銀の10年金利ゼロ%割れ許容や海外情勢の先行き不透明感を背景にブル相場の環境とし、「20年債入札の消化に不安はない」と指摘。「0.56%という水準では絶対水準バイヤーの買いこそ期待しにくいものの、期初の残高確保ニーズなど幅広い投資家による買いが期待できそうだ」と言う。
  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、「20年債入札は良好と見込まれ、結果発表後の相場は持ち直そう」とみている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OOOIJG6KLVRG01


 


 

3月貿易収支は2カ月連続の黒字−市場予想上回る
高橋舞子
2017年4月20日 09:05 JST


• 好調な世界経済を背景に輸出は増加基調も地政学リスクで円高警戒
• 対米自動車輸出が軟調、経済対話で日本に圧力も−野村証券の棚橋氏

輸出から輸入を差し引いた日本の貿易収支は3月速報で2カ月連続の黒字となった。市場予想は上回った。
キーポイント
• 貿易収支は前年同月比17.5%減の6147億円の黒字(ブルームバーグ調査の予想中央値は6080億円の黒字)−前月は8135億円
• 輸出は同12.0%増の7兆2291億円と4カ月連続で増加−前月は6兆3475億円
• 輸出数量指数は6.6%増と2カ月連続の増加
• 輸入は同15.8%増の6兆6144億円と3カ月連続で増加−前月は5兆5339億円


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背景
  海外での需要の高まりを背景に輸出が堅調な一方で、シリアや北朝鮮での緊張感の高まりや欧州で相次ぐ選挙などの地政学リスクから円高が進んでいる。年初には1ドル=118円台後半をつけていたドル円相場は、20日午前8時50分現在、108円台の円高水準で推移。加えて利上げによる米国経済の先行きや経済対策に支えられている中国経済の動向も日本の輸出にはマイナスに働く。
  日米両国は18日に経済対話の初会合を都内で開催した。麻生太郎副総理兼財務相は終了後の共同記者会見で、「地域の不公平な貿易慣行の是正に向けて日米で協力を進めることで合意した」と発言。ペンス米副大統領は「バランスの取れた2国間貿易協定」に意欲を示し、高い水準の「市場アクセス」を求めていくと述べており、両国間の協議の行方も輸出に影を落とす。
エコノミストの見方
• 第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは19日の取材に対し、2月の貿易収支が春節の反動で上振れた影響で3月は「落ち着いた数字になる」と予想するが、輸出は堅調な世界経済を背景に増加傾向が続いていると話す。今後のリスクとして、北朝鮮問題や欧州の選挙による円高の進行、米国の利上げに伴う景気鈍化や中国の経済対策効果のはく落を挙げた。
• 野村証券の棚橋研悟エコノミストは同日の取材で、足元ではアジア向けの輸出が強く、欧米向け輸出が弱含んでいると説明。特に米国では金利上昇を受けて自動車ローンが上がっており、軟調な自動車輸出は「短期的なものにとどまらない可能性がある」と指摘する。日米経済対話についても、米国が自動車や農業の分野で日本に圧力をかけてくるかどうかが注目されると話した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OON22Q6K50YK01



http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/267.html

[不安と不健康18] 夜の運動が健康に悪い 本当の理由とは 「わかるよ」「無理しないで」は安らぎを与える言葉「心の受容力」を高める
【第12回】 2017年4月20日 ショーン・スティーブンソン(著) ,花塚 恵(訳)
夜の運動が健康に悪い 本当の理由とは

全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!


運動による負荷は必要なストレス

正しいやり方で行う運動は、目に見えない若さの源泉だとよく言われる。実際、筋肉は抗老化作用のあるホルモンの貯蔵庫だ。この種のホルモンは、DNAの酸化を防ぐ役割を果たす。それに、引き締まった筋肉の持ち主のほうが若さを長く保てるという。

では、運動は睡眠にどのように関係するのか? この二つは切り離せない存在だ。実は、ジムで運動しているあいだに身体が引き締まることはない。運動は、文字どおり身体を引き裂く行為で、筋肉繊維に膨大な数の小さな亀裂が入る。実際、ジムを出たときの身体の状態は、運動前に比べて低下している。

みっちり運動した後に血液の働きやホルモンの様子を見れば、ストレスホルモンの数は増え、炎症を表す数値は上昇し、血糖値の数値も正常から少しはずれているだろう。だからといって、どこかが「悪い」わけではない。たっぷり運動した直後はそうなるもので、回復するときになれば身体にたくさんのメリットが生まれる。

実は、運動による身体の変化は眠っているあいだに起こる。眠っているときに、身体のためになるホルモンが大量に分泌され、以前よりも強い身体にするための修復プログラムが発動するのだ。運動では、健康にとって重要なストレス要因が生じるだけにすぎない。その見返りを完全に得るためには、しっかりと休息をとって身体を回復させる必要がある。

夜の運動は身体回復のサイクルを阻害する

ノースカロライナ州ブーンにあるアパラチア州立大学の調査から、最高の睡眠を得るには午前に運動するのが理想的だということが明らかになった。彼らは、被験者を午前7時、午後1時、午後7時に運動する三つのグループに分けて睡眠パターンを調べた。

すると、午前7時に運動したグループの睡眠時間がいちばん長く、眠りも深かった。実際、身体の回復にあてられる「深いノンレム睡眠」の段階は、最大で75パーセント多かったという。何と素晴らしいことだろう。健康で長生きしたい人にとっては、最高に嬉しい知らせだ。

とはいえ、つらいトレーニングの後のほうが寝つきが早いと信じている人は、少し納得がいかないかもしれない。夜に運動すると、体深部の体温が大幅に上昇するという問題がある。一度上がった体温は、再び下がるまでに4〜6時間かかる。

私たちの身体は体温調節という過程を通じて睡眠に最適な体温まで下げる。それなのに、寝る間際に運動して体深部の体温を上げれば、最高の睡眠は得られない。ただし、多少の遅れなら心配ない。運動後に体深部の体温が下がれば、実際には通常の体温よりさらに少し低くなる。午後になってからでも、体温が下がるまでの時間を考慮して運動すれば、最高の睡眠は手にできる。

体温調節の面からすれば、夕方あたりに運動すればいい。たとえば、午後4時30分に運動すれば、午後10時に心地よく眠りにつける。その頃にはもう、運動によって分泌されたストレスホルモンはおとなしくなり、休息や消化をつかさどる副交感神経系が体内の舵を握っているので、体深部の温度は眠いと感じるくらいまで下がっている。

運動する時間帯をこれから決める人は、睡眠のことを考えれば午前中がベストだ。遅くなりすぎなければ夕方でもそれなりの効果は期待できるが、とっぷり日が暮れてからではまったく睡眠に効果はないと思ったほうがいい。運動で身体を動かすことは時間帯に関係なく大事だが、運動するメリットを最大にするには、ホルモンのサイクルを正常に保たないといけない。

世界に通用するアスリートは、睡眠をトレーニングの一環だととらえている。これはちっとも不思議なことではない。バスケットボールのレブロン・ジェームズ、テニスのロジャー・フェデラー、ゴルフのミシェル・ウィーは、毎晩必ず10時間は寝る。
テニスのヴィーナス・ウィリアムズ、アルペンスキーのリンゼイ・ボン、陸上のウサイン・ボルトは、睡眠が8時間を切る日はほとんどない。睡眠と疲労を管理するツールを提供するファティーグ・サイエンス社は、世界トップクラスのアスリートたちの声をブログで紹介している。

人類史上最速の男として知られるウサイン・ボルトの声は次のようなものだ。「睡眠はこの上なく重要だ。トレーニングを身体に吸収させるためには、身体を休めて回復させる必要がある」
この言葉には、トレーニングをするだけでは身体は変わらないということがはっきりと表れている。身体の変化は睡眠の質に左右されるのだ。

運動能力に睡眠がもたらすメリットについては、スタンフォード大学の研究チームが実際に調査している。バスケットボールの大学代表チームの選手を被験者として調査したところ、思いがけない結果が明らかになった。被験者の睡眠時間を平均8時間半まで増やしたところで、睡眠障害の認定専門医であるマイケル・J・ブレウスは次のようなデータを示した。

・被験者の走りが格段に速くなった。ダッシュの時間が1秒近く縮まった
・シュートの精度が大幅に改善した。フリースローと3ポイントシュートの入る確率が9パーセント上がった
・疲労感が減り、日中に眠気を感じることも減った(そして反応が速くなった)
・気分と身体的な機能全般が改善されたという意見があがった(試合、練習を問わず)

最高のパフォーマンスを見せたいなら、ぐっすり眠ることが絶対に必要なのだ。自分でそうすると決めて時間を賢くやりくりすれば、誰もが必ずその恩恵にあずかれる。睡眠は、時間が多ければいいというものではない。
http://diamond.jp/articles/-/125199


 

【第18回】 2017年4月20日 山名裕子
「わかるよ」「無理しないで」は安らぎを与える言葉

無意識のうちについつい言ってしまう口ぐせ。でも、その口ぐせひとつで幸せになれる人となれない人が決まってしまうとしたら……?
テレビ出演多数の人気臨床心理士が、幸せを引き寄せる口ぐせの数々を、脳への効果や医学的理論を基に解説。今回は、「寄り添う言葉」についてです。


寄り添う言葉の効用


山名裕子(やまな・ゆうこ)
やまなmental care office代表。臨床心理士。 1986年、静岡県浜松市生まれ。幼い頃から両親が一番の理解者であったが、身内ではないからこそ話せることもあるのだということに気がつく。心理学系大学を卒業後、夢に向かって努力を重ねるが、努力だけではどうにもならない挫折を味わい、自信をなくす。その後もう一度心理学を学び、臨床心理士として活動するため、大学院にて心理療法の心得や技術を習得する。2013年、臨床心理士の資格を取得。心の専門家、臨床心理士として「モーニングバード」(テレビ朝日)、「あさチャン!」(TBS系)、「Rの法則」(Eテレ)などメディア出演多数。また、有名企業から教育機関などで講演活動も精力的に行っている。主な著書に『バカ力―完璧をめざさない強さ―』(ポプラ新書)『一瞬で「できる男」と思わせる心理術』(宝島社)がある。
 辛い感情を抱え、ふさぎこんでいる人に寄り添うことは、自身の「心の受容力」を高めることにつながります。

 人は、落ち込んでいる人を見ると、「この人を助けたい」という気持ちになり、「この人のためになるアドバイスをして、この人を楽にさせてあげなければ!」と思い込みます。

 でも、ほとんどのアドバイスは、落ち込んでいる人にとっては負担です。前向きにならなければいけない、頑張らなければならない……と思わせてしまうからです。

「○○してあげよう」ではなく、「受け入れよう」という姿勢で、辛い感情をそのまま受け止めてあげることが、その人にとって一番の安らぎになります。

 例えば、「わかるよ」「そのままでいいんだよ」「無理しないでね」などは、その人の気持ちに寄り添い、精神的なサポートにつながる言葉です。そして、寄り添うことで自分の心の器も広がっていきます。

 心が狭い人の中には、落ち込んでいる人に対して「え、それってやばくない!?」などという言葉を短絡的に投げかけてしまう人もいます。心の受容力が低く、柔軟性がないだけに、他人が落ち込んでいる状況を自分ごとと捉えてしまい、自分まで慌ててしまっているのです。

 つまり、受容力が低いと、相手に負担を与えるだけでなく、自分自身の心にも負担を与えてしまうことになりかねません。

 落ち込んでいる人に対しては、まずは「聞いてあげる」、そして「寄り添う」ことです。 何かアドバイスを求められたら、その時初めて何らかの提案をしましょう。その際、「こういうケースもあるみたいだよ」「こんな情報を聞いたことがあるよ」など、やわらかい言葉で、かつ間接的なアドバイスとして伝えると、相手の心に負担を与えないのでお勧め。自身の心も、やわらかく柔軟になりますよ。

(『幸せを引き寄せる「口ぐせ」の魔法』の本文の一部を掲載しました)
http://diamond.jp/articles/-/123559
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/497.html

[国際19] 中国資産家、政権内対立を米放送で暴露 サンドイッチ3600円インフレ激化 米国優先疑問 英選挙前倒しポンド復活、株と明暗
中国資産家、政権内対立を米放送で暴露
[FISCO]

配信日時 2017年4月20日(木)12:03:53 掲載日時 2017年4月20日(木)12:13:53
米国亡命中の中国人実業家、郭文貴氏が19日、米公共放送ボイス・オブ・アメリカの取材を受けた際、中国政権内の内紛を暴露した。習近平・国家主席からの間接的な指示で、王岐山・中央規律検査委員会主任らの汚職に関し、公安部次官が情報提供を命じられたなどとする内容だった。郭氏によると、司法部門を統括する党政法委員会トップの孟建柱・書記についても同様の指示を受けた。習主席は両人を信用していないという。放送は生放送だったが、局側の判断で一時放送が中断した。ボイス・オブ・アメリカは中断の理由を明らかにしていない。実業家の郭氏は、コングロマリット「北京政泉控股公司」の実質的なトップ。香港蘋果日報によると、中央規律検査委員会は2013年、国家安全部・前次官への贈賄の疑いで郭氏の取り調べようとしたが、郭氏は香港経由で海外に逃亡した。中国は国際刑事警察機構(インターポール)を通じ、郭氏を指名手配している。郭氏は現在、米国と英国を拠点としている。両国は中国と犯罪人引渡条約を結んでいないため、送還の義務はない。【亜州IR】
http://klug-fx.jp/fxnews/detail.php?id=366326

 

 

2017年4月20日 加藤 出
人気サンドイッチは3600円 米国の外食価格インフレを象徴

 サンドイッチの価格が米国でニュースになった。米ワシントンのホワイトハウスの近くに、「Mirabelle」という最近人気の高級フレンチ・アメリカン・レストランがある。米紙「ワシントン・ポスト」(4月4日)は、その店のハムサンドイッチの価格がなんと26ドルになっていると報じた。


米ワシントンのレストランで26ドルもするハムサンドイッチが人気を博していることが話題になった(写真はイメージ)?Photo:123RF
 チップや税金を含めれば、支払額は日本円で3600円を超すことになる。驚きの価格だ。見た目は至って普通なのだが、その店が提供しているランチメニューの中では一番人気だという。

 ワシントンは高額所得者が多い街だ。また、近年の米国の消費者は、外食の際に特別な「体験」を求めて対価を支払う傾向が強くなっている。業界では有名なこの店のシェフは、料理にこだわりの食材を使っているとうんちくを語っている。

 とはいえ、常識的に考えれば、サンドイッチの価格が26ドルというのは高い。「ワシントン・ポスト」も次のように評していた。「このサンドイッチは、ロケットのように上昇していくワシントンのレストランの価格を表す新たな事例といえる」。

 このサンドイッチはやや極端なケースではあるが、米国における外食価格の上昇は全般的に激しい。消費者物価指数(CPI)でファストフードではない料理店の外食価格を2000年と現在で比べると、57%も上昇している。

 日本の感覚からすると、「本当にそれほど値上がりしているのか」と思うかもしれない。そこで、実際に確かめてみよう。

 筆者の手元に、2000年時点の米ニューヨークの外食価格を取材したと思われるJTBのガイドブックがある。何年か前にもこのコラムで紹介したが、当時よりさらに値上がりしているため、このガイドブックを参照して2000年と現在の外食価格を比較してみよう。

 グランドセントラル駅にある「オイスター・バー」のカキは、「1.35ドルから」だったが、今は「2.15ドルから」だ(+59%)。チャイナタウンにある「ホッキー」の広東風カニ炒めは、10.25ドルだったものが今は15.25ドル(+49%)である。

 さらに、アッパーイーストにある「カフェ・ブリュ」のプリフィックスランチは20ドルが39ドル(+95%)。チェルシーにある「オールド・ホームステッド」のプライム・ポーターハウス・ステーキは、60ドルだったが、今は105ドル(+75%)だ。

 また、エネルギーを除いた米国のCPIは、2000年から今年にかけて41%上昇した。毎年2%ずつ上がると同じ期間で40%の上昇になるので、日本銀行が目指しているインフレの世界が米国ではほぼ実現されている。

 一方、日本のCPIの場合は、2000年から現在にかけての一般外食の価格上昇は9%である。豚カツ定食は6%上昇だ。消費税の引き上げ分を引いたら、ごくわずかな値上がりである。米国の状況とは対照的だ。

 日銀は4月27日に発表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、インフレ目標達成時期予想を18年度のままで維持するだろう。しかし、外食を含むさまざまな価格が米国並みに日本でも上昇していくには、賃金などが毎年しっかり上がっていくことが必須である。それが近々に日本で実現するイメージは持ちにくい。

 日銀の金融緩和策の出口はまだ見えてこない。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出 )
http://diamond.jp/articles/-/125019

 


2017年4月20日 ロイター
「米国優先」の大統領令、鉄鋼業界は実効性を疑問視


4月18日、トランプ米大統領(写真)は、米国製品の購入や米国民の雇用を促す大統領令に署名したが、米鉄鋼業界では早くもその実効性に懐疑的な見方が広がっている。ウィスコンシン州で撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
[デトロイト/ニューヨーク 18日 ロイター] - トランプ米大統領は18日、米国製品の購入や米国民の雇用を促す大統領令に署名した。しかし、米鉄鋼業界では早くもその実効性に懐疑的な見方が広がっている。

 連邦政府に米国産品の調達を求める「バイ・アメリカン法」は既にに存在するが、海外企業に免責が認められているため執行が困難だった。大統領令はこの法律を厳格に適用し、特に鉄鋼業界などに実際に恩恵をもたらしているかどうかを見極めるよう指示しているが、具体的な方法には触れていない。

「米国製品を買おう」という議論は何十年も前から聞かされて耳にたこができたと話すのは、製鉄所を運営するレイパム・ヒッキー・スチール(シカゴ)のビル・ヒッキー社長。「政治家は誰も同じことを言うが、結局うまくいかない」と語り、米国企業も外国の請負業者も抜け穴を利用して頻繁に輸入鉄鋼を購入していると説明した。

 ブラッドフォード・リサーチのチャールズ・ブラッドフォード氏によると、ブリキや半製品など一部の鉄鋼製品が米国で作られていないことを「バイ・アメリカン」法は考慮に入れておらず、厳格に適用すれば国内の供給に支障が生じる。「この法律を推し進めた人々は現実がさっぱり分かっていない」という。

 米国は今年第1四半期に鉄鋼製品の25%を輸入している。

 全米建設業協会(AGC)の首席エコノミスト、ケネス・サイモンソン氏によると、米国製の鉄鋼を厳しく定義し過ぎることには、建設業界でも懸念が広がっている。同氏は、例えば輸入された可能性のあるスクラップ金属を溶かして製造された鉄鋼製品などは出所を追跡しにくいと説明した。

 トランプ大統領が就任以来、公約の実行に手こずっていることもあって、鉄鋼業界の見方は冷ややかだ。キーバンク・キャピタル・マーケッツの鉄鋼アナリスト、フィリップ・ギブス氏は「3ヵ月半前に比べて私の期待はずっと低くなった。これまでのところ、トランプ政権のやっていることは前政権と変わらないからだ」と語る。

 米株式市場も大統領令を一蹴したようだ。18日の市場では鉄鋼のニューコアやAKスチールの株価がわずかな上昇にとどまり、ユナイテッド・ステーツ・スチール(USスチール)は下落した。

 一方、労働組合は大統領令を歓迎している。全米鉄鋼労働組合(USW)は、現在のやり方では「建設業者が頻繁に抜け穴を利用し、多くの中国製品のように安価で、しばしば基準以下の海外製品を購入しようとする」と指摘した。

 ベテランの鉄鋼業界アナリスト、ミシェル・アップルバウム氏は「トランプ大統領は輸入鋼を求める者のリスクを高めた」と述べ、大統領令のメッセージ性は明らかだと評価した。

(Nick Carey記者 Luciana Lopez記者)
http://diamond.jp/articles/-/125648

 
2017年4月20日 ロイター
英選挙前倒しでポンドは長期復活へ、株と明暗


4月18日、ショッキングな総選挙表明が行われた際の一般的な常識に反し、英ポンドは大きく上昇。投資家は、6月の総選挙で英国の国内政治が安定することを期待する。2016年10月、バンコクで撮影(2017年 ロイター/Sukree Sukplang)
[ロンドン 18日 ロイター] - ショッキングな総選挙表明が行われた際の一般的な常識に反し、英ポンドは18日に大きく上昇。このことは、6月の総選挙によって、この半世紀で最大の挑戦に直面している英国の国内政治が安定するかもしれないという投資家の期待を示している。

 ポンドは、当初こそ英首相による突然の声明に対する思惑から下落。しかし、英国議会での与党多数を確実にし、欧州連合(EU)からの離脱交渉を有利に行うために総選挙を6月8日に前倒しするとメイ首相が表明すると、1セントも反発した。

 ロンドン株式市場の主要株価指数は下落したものの、首相の決断は、EU離脱に向けた政府の戦略や経済への悪影響を懸念していたロンドン金融街の著名投資家らを勇気づけた。

 総選挙の前倒しにより、保守党内の強硬な離脱派を抑え、より秩序あるEU離脱を実現するための余裕をメイ首相に与えると同時に、弱体化した野党労働党の再編につながる、と彼らは期待している。

「総選挙を6月8日に前倒しする決断は、リスクがない訳ではない」と資産運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の英ポンド運用担当責任者マイク・アメイ氏は語る。「だが、世論調査で20ポイントもリードしている保守党は、議席数を伸ばして十分なリードを広げることができるだろう」

「そうなれば、政府はブレグジット(EU離脱)の交渉により余裕を持って臨めるし、党内の右派勢力に今ほどさらされずにすむ」と同氏は付け加えた。

 世界の5大準備通貨であるポンドはこれまで下落が続き、統一通貨ユーロとの通貨統合に失敗した1985年以来の安値を付けていた。

 対ドルでは、2016年はポンドにとって2008年の金融危機以来の最悪の年であり、今後数ヵ月のEU離脱交渉の過程でネガティブなニュースが相次げば、さらに価値が下落しかねないと一部のストラテジストは懸念していた。

 だが、最も悲観的な立場をとってきたエコノミストの1人、ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は総選挙の発表を受け、メイ首相がより余力を持って交渉に臨み、時間をかけて秩序あるEU離脱を実現するゆとりを得ることで、ポンドをめぐる状況が一変する、と顧客向けメモで主張する。

「2019年までに長期的な移行措置を伴わない『クリーン』なブレグジットを実現するという締切りに対する緊迫度が薄れる。そして次にハードブレグジットを求める議員の影響力を低下させる」と同氏は指摘する。「過去2年間、ポンドについては組織的に弱気だったが、われわれはその見方を変えつつある。悲観的な為替取引はすべて終了させている」

株価は逆行

 昨年6月に英国民投票でEU離脱を決めて以来、株式市場の情勢はより複雑で、過去9ヵ月間はポンドとは逆の傾向をたどっていた。

 ロンドン株式市場のFT100種総合株価指数は、ポンド安で収益が押し上げられる多国籍企業が構成銘柄に多く含まれており、昨年6月の国民投票以降、他の欧州市場を上回るパフォーマンスを見せていた。だが18日にポンドが上昇すると、約2%下落した。

 これまでの英国株価の上昇は、昨年以降の大規模買収案件や、ポンドが異常な安値に抑えられており、いずれ回復するだろうという産業界の信認を反映したものだと指摘する向きもある。

 メイ首相の決断に対する株式市場のセンチメントを測る適切な指標は、国内市場に特化した銘柄を集めた中型株指数かもしれない。こちらは1%の下落にとどまった。

「もしメイ首相が率いる保守党が6月8日の前倒し総選挙で議席を伸ばせば、英国株式市場や消費信頼感は上向くだろう」と、英ヘンダーソン・グローバル・インベスターズで英国市場を担当するポートフォリオマネジャーは分析する。

「英国政府は、より強い立場でブレグジットの条件交渉に臨めるし、メイ政権はブレグジットのお墨付きを得たことになる。英国株式、特に中型株にとっては歓迎すべき動きだ」

(Patrick Graham記者 翻訳:山口香子 編集:下郡美紀)
http://diamond.jp/articles/-/125620
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/191.html

[戦争b20] トランプ米大統領、対北朝鮮軍事行動を模索−どの選択肢も恐ろしい 米国務長官:イランとの核合意は失敗−破棄の可能性強く示唆
トランプ米大統領、対北朝鮮軍事行動を模索−どの選択肢も恐ろしい
Nick Wadhams
2017年4月20日 02:41 JST
トランプ米大統領は就任の3週間前に、北朝鮮が米国に届く核弾頭を開発する恐れについて検討した。「そんなことは起こらせない」とツイッターで誓った。
  米国は今、それを防ぐための米軍の攻撃について計画を練っているが、選択肢は恐ろしいものばかりだ。
  アナリストらは北朝鮮が現時点で10−25発の核兵器を保有しているとみている。発射装置や軍用機、部隊、火器を全国各地に分散させたり洞窟に隠したりしつつ、韓国との境界付近には密集させている。さらに、米国は北朝鮮が世界最大級の化学兵器を保有、生物兵器の研究も進めているほかサイバー攻撃能力も持ち併せていると想定する。
  1000万人の住民を抱える韓国の首都ソウルは北朝鮮との境界からわずか56キロしか離れておらず、十分に射程内だ。このため北朝鮮は長く、攻撃を受ければ全面戦争になるとのどう喝に頼って存続することができた。
  ホワイトハウスで大量破壊兵器やテロリズムに関する調整役を務めた経験を持つゲーリー・セーモア氏は「北朝鮮が攻撃準備をしていると判断される危機的状況以外では、北朝鮮の核およびミサイル開発計画に対する先制攻撃は実用的な選択肢ではない」とし、「これが常に、米国と同盟国にとっての問題であり続けている」と話した。
  トランプ大統領が北朝鮮に対する強硬姿勢を打ち出してから、国防総省は空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島周辺に向かわせた。同艦は来週到着する見込み。トランプ大統領は、中国が北朝鮮を抑えられないならば米国と同盟国が抑えると言明した。

The aircraft carrier USS Carl Vinson.

Photographer: Sean M. Castellano/U.S. Navy via Getty Images
  米国防総省が活用できる手段の一つは、北朝鮮の核施設がある寧辺を標的に潜水艦またはステルス機から精密誘導爆弾を発射することだ。もう一つの選択肢は豊渓里の核実験場の攻撃。ノースロップ・グラマン製のB−2爆撃機がバンカーバスター爆弾を落とすことができる。あるいは、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの試射を準備していることが分かれば発射場所を攻撃するかミサイルを打ち落とすこともできる。

A satellite image of the Punggye-ri nuclear test site on April 2.

Photographer: DigitalGlobe/38 North via Getty Images
  そのような攻撃に対して北朝鮮は砲弾と短距離ミサイルの集中砲火で反撃し、ソウルはその犠牲になる。北朝鮮の報復による被害の大部分を受けるのは韓国なので、攻撃の決定は米大統領だけで下せるものではない。「戦争をするかしないか」という重大な決定に、韓国の軍と政府の最上層部は発言権を持つと、米退役陸軍大佐のビル・マキニー氏は述べた。

Kim Jong-un

Photographer: Ed Jones/AFP via Getty Images

  米国の独断での軍事行動は日本との同盟関係を深く傷つける恐れがあるほか、中国との衝突に発展するリスクもある。しかし北朝鮮攻撃の最大の障害は金正恩政権の反応が読みにくいことだ。米国側の意図が警告を発するだけで戦争を引き起こすつもりがなかったとしても、なんらかの行動を取った場合の北朝鮮側の対応は予測がつかない。
原題:Trump Mulls Military Options for North Korea. They’re All Grim.(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONGEI6TTDS101

 

 


米国務長官:イランとの核合意は失敗−破棄の可能性強く示唆
Nick Wadhams、Nafeesa Syeed
2017年4月20日 09:49 JST

Rex Tillerson. Photographer: Joe Raedle/Getty Images
大量破壊兵器保有というイランの野望の実現を遅らせただけだと批判
トランプ大統領は核合意の検証を安全保障会議に命じている

ティラーソン米国務長官は19日、イランとの2015年の核合意を厳しく批判した。合意は大量破壊兵器の保有というイランの野望の実現を遅らせただけであり、テロ支援や諸外国の不安定化でイランが果たしている役割を考慮しなかったと指摘した。
  ティラーソン長官は急きょ行われたワシントンでの記者会見で、「この合意は過去の同様な失敗をしたアプローチそのものだ」と指摘。「トランプ政権は将来の政権に責任転嫁するつもりはない」と表明した。ただ同長官は18日、核合意について90日ごとに実施する順守状況の議会報告で、現時点では合意は履行されていると述べていた。
  19日の発言は、トランプ米大統領がイランとの核合意を破棄する可能性をこれまでで最も強く示唆するコメントとなった。トランプ大統領は今週、国家安全保障会議(NSC)に対し、イランがテロ支援を続けていることを踏まえて、核合意の下で緩和した対イラン制裁を再び科すべきかどうか検討するよう命じた。ティラーソン長官は声明で、この検討作業は、制裁停止が「米国の安全保障上の国益に不可欠」かどうか判断するものだと説明した。
原題:Tillerson Faults Iran Nuclear Accord as U.S. Plans New Review(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OOOLWZ6TTDSC01


 


http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/202.html

[国際19] フランスの富裕層、「赤い」メランション氏当選に備え国外移住も検討〜テロより大きな打撃 嗜むより投資対象のウイスキー日本に
フランスの富裕層、「赤い」メランション氏当選に備え国外移住も検討
Helene Fouquet、John Follain、Gregory Viscusi
2017年4月20日 02:38 JST

パリのバンドーム広場の高級宝飾店から、ダイアモンドを投げれば届く近さの優雅なビストロ。裕福な顧客たちが交わすおしゃべりは、フランス大統領選挙の共産党系候補、ジャンリュック・メランション氏に関する話題に集中している。
  ベネズエラの故チャベス前大統領のファンだと自ら認めるメランション氏だが、彼が仏大統領になるなら国外に移住しようかと考える金持ちもいる。高級ブランド、シャネルの本店やリッツ・ホテルの近くでレストランを経営するフィリップ・マルケ氏は、「メランション氏が勝利するならフランスから出て行くと言う客はいるし、私もいずれ考えなければならないだろう」と話す。税制や賃金に関するメランション氏の政策は「テロより大きな打撃を経済に与えるだろう」と同氏は語った。
  世論調査でのメランション氏の支持率はじわじわと上昇し、同氏が大統領選の決選投票に進出する可能性も排除できない。裕福な有権者らは1980年代初め、社会党のミッテラン大統領が共産党の支持を得て選出された時のことを思い出す。銀行の国有化などを掲げた同氏の当選でソ連の戦車がパリにやってくると恐れられ、国外に移住した金持ちもいた。
  富の再配分を公約に掲げるメランション氏は、企業経営陣の報酬を一般従業員が受け取る最低給与の20倍に制限する政策などを打ち出している。
Jean-Luc Melenchon
Jean-Luc Melenchon Photographer: Christophe Morin/Bloomberg
原題:‘Red’ Melenchon Scares France’s Rich Into Considering Exile(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/OONYE2SYF01S01

 

嗜むより投資対象のウイスキー、ブームに沸く日本からの資金にも期待
鈴木偉知郎、高田亜矢
2017年4月20日 07:21 JST
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ペルノ・リカール社の蒸留所に置かれたシーバスリーガルのたる

Photographer: Simon Dawson/Bloomberg
• スコッチウイスキーの投資リターンは年率7%期待できると英社
• 英ポンドに加え米ドル建て取引開始へ、円建ても検討し顧客呼び込む

オーストラリアでバドミントンのコーチを務めるナイジェル・イシャウッドさん(50)は将来のインフレを見越して金や銀に投資しているほか、鉱山会社など欧米や豪州の上場株式も保有する。5年前からは資産の約1割をフランス・ワインに投じてきた。そして、昨年7月に目を付けたのがスコッチウイスキー。資産分散を図る狙いで4万1000ポンド(約570万円)を投資した。「ウイスキーを飲むのは好きではないが、投資商品としては比較的安全な資産だ」と語る。
  イシャウッドさんは、インターネットを通じてスコットランドの蒸留所でたるに入った熟成中のウイスキー原酒に投資した。売買を仲介したのが2015年に設立された英ウイスキー・インベスト・ダイレクト(ロンドン)。
  同社が手掛ける投資単位はスコッチウイスキーの原酒1リットルから。1日24時間、365日いつでも売買注文をすることができる。現在までに開設された口座数は約4000。投資家1人当たりの平均投資額は約8000ポンドで、投資額の累計は1000万ポンド弱という。ウイスキー・インベスト・ダイレクトは1.75%の取引手数料を得る。

  3月下旬に来日した同社創業者で最高経営責任者(CEO)のルパート・パトリック氏はブルームバーグとのインタビューで「債券や株式などと比べて投資リターンはかなりいい」と指摘。過去35年に取引された価格を基に算出すると、8年間熟成させたスコッチウイスキーの平均的な投資リターンは保管料などを差し引いた実質で年率約7%になるという。欧州中央銀行(ECB)などがマイナス金利を導入するなど世界的な低金利の中、高い利回りが期待できる投資商品として魅力は高まると話す。

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  上場株式や国債などいわゆる伝統的な投資商品以外の代替資産としては、ワインや絵画、宝石なども投資対象となっている。ウイスキーに関しては14年6月に香港で世界初のファンドが組成されたほか、昨年10月にはニューヨーク証券取引所で業界の株価に連動する初の上場投資信託(ETF)も登場した。
  大和総研ロンドンリサーチセンター長の菅野泰夫シニアエコノミストは「欧米ではリーマンショック以降、世界的な低金利の下でワイン投資の人気が高まった。スコッチウイスキーは最低3年は熟成させなければならず、ワインよりも長期の投資で、より高いスプレッドを求める投資家のニーズに応える」と指摘。その上で「仮に実現リターンが低かった場合にはウイスキーを引き取って飲むこともできるので、ウイスキー愛飲者に人気が出るのでは」と語った。
  パトリックCEOによると現在、顧客の7割は英国が占める。残りは米国やフランス、ドイツ、豪州、日本など。現在はポンド建てのみだが、数カ月内に米ドル建ての取引を開始する予定。将来的には日本円での取引も検討するといい、取り扱い通貨を増やすなどして顧客層を開拓する。
14年ぶり高水準
  炭酸水で割るハイボールの人気やポンド安を背景に16年の日本のウイスキー輸入量は前年比22%増の3万7835キロリットルと14年ぶりの高水準に達した。同CEOは、ウイスキーブームに沸く日本からの取引拡大にも期待を示した。

ジョニーウォーカー・ブレンダーズバッチ・レッドライフィニッシュ (右)

Photographer: Matthew Lloyd/Bloomberg
  ウイスキー・インベスト・ダイレクトの親会社は、金地金のオンライン取引を手掛けるブリオンボールトも傘下に持つ英ガルマーレイ。175カ国で約6万人の顧客を抱えるブリオンボールトと同様のオンライン取引システムを採用した。
  パトリック氏は、サントリーホールディングスが買収した米ビーム(現ビームサントリー)や「ジョニーウォーカー」などのブランドを持つ英ディアジオで勤務するなどウイスキー業界で24年の経験を積んで会社を立ち上げた。金とウイスキーは共に実物資産だが、ウイスキーは熟成期間を重ねるほど味わいや香りが深まり、価値も上がることが最大の違いだと述べた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-19/ONM0I96KLVR501


http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/192.html

[経世済民121] 労働者にも地方にも日本には「自立」が必要だ 解決不能な問題はない 新人3割3年30年間 帰国後2年で退職 成長の決意表明
【第16回】 2017年4月20日 ちきりん
労働者にも地方にも日本には「自立」が必要だ

ロバート・アラン・フェルドマン×ちきりん(4)
ロバート・アラン・フェルドマンさんとブロガー・ちきりんさんの対談も、いよいよ最終回。今回は、昨年から議論が続く「過労死」の問題からスタートします。フェルドマンさんは、過労死が注目されればされるほど、本来の働き方改革が進まなくなると言います。それはいったい、どういうことなのでしょうか。(構成/崎谷実穂?写真/疋田千里)


ロバート・アラン・フェルドマン
1970年、AFS交換留学生として初来日。76年、イエール大学で経済学、日本研究の学士号を取得。84年、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。国際通貨基金(IMF)、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経て、98年モルガン・スタンレー証券会社に入社(現・モルガン・スタンレーMUFG証券)。現在、同社のシニアアドバイザー。著作に『フェルドマン博士の 日本経済最新講義』(文藝春秋)などがある。


ゆがめられつつある「働き方改革」とその理由

ちきりん 最近、働き方に関する議論が盛り上がっているのは、昨年大きなニュースになった電通社員の過労死自殺がきっかけだと思うのですが、アメリカでは過労死がニュースになることはあるんでしょうか。

ロバート・アラン・フェルドマン(以下、フェルドマン) あまり聞かないですね。というか、日本で今なぜこんなに過労死が注目を集めているのかが、私にとってはよくわかりません。過労死という言葉は1980年代にも社会問題として取り上げられていました。つまり、その頃から何も具体的な解決策がとられてこなかっただけ。あの事件でいきなり過労死は大変だと騒ぎ出すことには、違和感がありますね。これは私説にすぎませんが、騒いでいる人は労働改革をつぶしたいんじゃないでしょうか。

ちきりん えー、それはまたユニークな見解ですね。労働改革を潰したいから過労死問題を取り上げてる? それってどういうことですか?

フェルドマン あの事件を引き合いに出すと、労働時間の制限が争点になってしまいますよね。もちろん、背景にはいろいろな要因があったのでしょうが、激務が直接的な原因だったとして、現在は「残業を規制しよう」という流れになっています。

ちきりん そう言われればそうですね。もともと労働改革に含まれていた正社員の解雇規制の緩和、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入など、他の施策にはまったく目が向かなくなってしまいました。みんなして残業を減らそうとか、月末の金曜日は早く帰ろうとか、そればっかり。これも誰かがこの事件を利用してのことなんですか?

フェルドマン そうです。現行の制度を維持したい既得権益層が、この事件を利用して労働改革をうやむやにしようとしている、というのが私の説です。

ちきりん それはすごい深読みですね! そんな解釈、フェルドマンさんじゃないとでてきませんよ。ご著書とか、ワールドビジネスサテライトのコメントを聞いていても、フェルドマンさんは日本人でもたどり着かないような深いところまで考えられているので、本当に驚かされます。

フェルドマン 中小企業は一番、労働改革に反対していますよね。ちゃんと規制を守っていないのは、圧倒的に中小企業だからです。でも、槍玉に挙げられているのは大企業ばかり。これはおかしいでしょう。

ちきりん それは昨年からの大きな変化で、最近は大企業ばかりがやり玉に挙げられてます。でもおっしゃるとおり、男女の機会平等や法定休暇の取得、解雇規制でさえ守られていない小さな企業は山ほどあるはず。それを放置して大企業をたたき、社会全体に「とりあえず残業を減らしましょう」運動を起こしている。大企業を叩くとこんなに人気がでるんだと、監督官庁も味をしめてしまったし。
 でも、それにより問題の本質から目をそらすことにもなってしまった。労働改革を労働時間の短縮問題に矮小化することで、「労働時間さえ短くなれば(日本の労働制度には)なんの問題もない」という間違った考え方さえ広まってしまいそうで不安です。

フェルドマン そう考えていると、いつまでたっても成果で評価することができなくなりますよね。そしてそもそも、規制を作ろうとしている官庁は規制の対象外。それはあまりにも官尊民卑、独善だと思います。そうした「官」を利用して儲けている企業もたくさんありますから、どっちも悪いのですが。

ちきりん 官僚の力が強いことで、国全体の改革が遅れてしまっている部分もありますよね。

フェルドマン 公務員の給料が高すぎることも、問題の1つだと思っています。2014年の法人企業統計によれば、企業規模別の1人あたりの人件費は、大企業では平均で709万円。中堅企業では419万円です。これでも差が大きすぎると思うのですが、さらに公務員は1人あたりの人件費が884万円になります。これは2015年度の予算から算出しました。

ちきりん そんなに高いんだ!

フェルドマン 公務員の中でも職種別に差があって、警察官や消防士はそこまで高くないのですが、教員が高い。文科省の白書によると、2014年の公立小中高校の教員は82万人。人件費は8兆8000億円。細かく計算すると、教員1人あたりの人件費が1000万円を超えるんです。

ちきりん そうそう。教員って共働きの方も多くて、年金額もすごい高かったりするんですよね。

フェルドマン もちろん、よい教員に高い給料を払うのは大賛成です。でも、教員全員が中堅企業の従業員2倍の価値を出しているのかというと、ちょっと疑問だと思います。格差にもよいものと悪いものがあって、公務員でも官庁のトップを務める人たちの給料は、現状安すぎる。大きな仕事をしてもらうために、シンガポールや香港のように高くすればいい。一方で、国の機関が地方に構えている事務所などはそれ自体がもういらないでしょう。

ちきりん 中央官庁の地方事務所って、電話もネットも整備されていなかった頃は必要だったけど、今はもう不要というケースもたくさんあります。でも地方には、公務員以外にまともな職がないという地域もたくさんあるんだと思うんです。
 地方公務員の給料が高く据え置かれているのは、地方の消費底上げのためでもあり、優秀な若い人が都会に流出せず、地方にとどまって就職できるようにするためでもある。いわば地方振興費用として地方公務員の給与は払われている。そこには「仕事の価値に応じた価格」という資本主義のルールは適用されていません。


解決策はやはり道州制

フェルドマン その問題を解決するのに必要なのは、地方分権でしょう。

ちきりん やっぱりそうですよね! 私もさっさと道州制にすればいいのにと思います。チマチマしてみんなで衰退するのを待っていても仕方ない。

フェルドマン 道州制になると、今よりも規模の大きい地方政府ができて、効率がよくなるでしょうね。

ちきりん たとえば北海道。札幌以外は過疎化が進みすぎて、いよいよ鉄道も維持できなくなっています。でもそれって発想を変えたら、新しい交通システムを導入する大チャンスですよね。北海道の地方なんて、車が少なくて道もまっすぐなので、自動運転にはもってこいです。自動運転のミニバスをたくさん導入して各町の間をつなぐとか、国に先駆けてドンドンやればいいんです。
 ほかにも遠隔医療やネット義務教育など、「広すぎて人口密度が低すぎる地域」にこそメリットの大きな最新技術がたくさんでてきています。北海道の小さな町に生まれ、各学年の生徒が数人しかいない学校でも、ネットを通じて最先端の教育が受けられ、待ち時間や移動時間無しで高度な医療が受けられる。そうなれば、そういう地域からも世界レベルの才能が育ってくるし、若者も高齢者も住み続けられる。北海道って今、一番、新技術の恩恵が大きな地域だと思います。

フェルドマン そうですね。

ちきりん 本来、そうしたグランドデザインを描くのは、北海道知事ですよね? 東北だと県が複数あるから、道州制にしないと各県の意見の摺り合わせに時間がかります。でも北海道は1つですから、今だって知事さえリーダーシップを発揮すれば実現可能なはずなんです。なのに何も起こらない。不思議すぎです。もはや国からの補助金に頼っていられる時代じゃないのに。

フェルドマン それは、テキサス州の例が参考になるかもしれません。テキサス州は全米第2位の広さを持つ、メキシコに接した南部の州です。現在エネルギー省長官であるリック・ペリー氏が前の州知事で、彼が州知事を務めていた時期にアメリカの州の中で一番再生エネルギー分野の産業が伸びたんですよ。
エネルギー関係の規制は各州で決まっているので、いくつかの州が集まっている地域で大規模な送電網を管理していますが、テキサス州だけは自分たちだけで管理しています。しかも、テキサス州は風力発電に適した広大な土地をもっているので、州知事の独断で巨大な集合型風力発電所をつくることができます。これは原子力発電所20基分くらいの発電能力です。
(注:MIT Technology Review 2016年11月号によれば、テキサス州における風力発電の年間発電容量は2016年時点で18GWであり、近いうちにさらに数千メガワットを追加するという。原子力発電所1基の年間発電電力量は発電所によりバラつきがあるが、しばしば1 GWと言われる。)

ちきりん 原発20基分とはすごい。そういう改革が北海道でもできるはずですよね。

フェルドマン でも一方で日本は、知事がなにか新しい動きをしようとすると、中央官庁が許可をしないというケースもあります。中央官庁としては地方を弱くさせたほうが得なので。

ちきりん 鶏が先か、卵が先かという話になりますが、中央官庁は地方自治体なんてあまりに頼りないから予算も権限も任せられないと言うんです。たしかにその通りで、特に地方議会のレベルはヒドい。でも、まずは任せないと人は育たないです。失敗も愚策も含めて、任せて初めて成長が始まる。

フェルドマン 育てる意志があれば、任せると思いますけどね。そうでないのが問題です。

ちきりん 前回の、「国が国民を守るのは、いいことのように見えて実は自立させないようにしてしまっている」という話と同じですね。

フェルドマン そう。親だったら自分の子どもが「宿題が解けない」と言ってきたときに、自分で解いてしまうようなことはしないでしょう。中央官庁にとって、地方は子どもではなくペット。リーダーシップを発揮させないで、自分の力を強めようとしているのです。

ちきりん そうかー、前回も思いましたが、この「自立妨げ問題」は本当に根深い問題ですね。このままでは日本人は、益々「お上頼み」になってしまう。

「留学」による人材交流が、国も企業も発展させる

ちきりん 最後に、日本企業の姿勢についておうかがいしたいと思います。日本企業は、いいものを作ったうえで、安売り競争をしようとする。これが不思議だなと。アメリカは「エブリデー ロー プライス」とは言いますが、「いいものを安く」とはあまり言わないですよね?

フェルドマン 日本人は、いいものやいいサービスを提供することに対してプライドをもっていますよね。美徳、と言い換えてもいいかもしれません。それは、今かけているこのメガネを買ったときに実感しました。これは老眼鏡なんですけど、レンズをくるっと上にあげることができるんですよ。

ちきりん 便利ですよね。遠くを見たいときにもメガネを外さず、レンズを回転させるだけでいい。

フェルドマン そのメーカーに海外にも売ってくれるかどうか聞いたんです。そうしたら、海外では売ってないと言う。なぜか。壊れたら直せないから、だそうです。

ちきりん えー、この眼鏡、日本にしかないんですか? しかも、壊れたら直せないという理由で、海外では売らないというのもすごいですね。

フェルドマン これって、すごく日本的な感覚ですよね。

ちきりん ええ。海外だと、なんでいちいちメーカーが直さなきゃいけないの、って思いそう。メーカーは売るだけ、直すのは修理屋の役目と割り切ってる人も多いし。

フェルドマン あるいは、「壊れたなら、もう1つ売ればいいじゃないか」と言うでしょうね。だから、美徳とするところがぜんぜん違うのだと感じました。

ちきりん そうかー。でもその考え方でいくと、ビジネスが拡がらないですよね。

フェルドマン そうですね。また、この会社は海外の市場環境を知らないのだろうな、と思いました。自分の会社のメガネが海外で売れるというチャンスに気づいていない。こんなメガネ、アメリカでは見たことがありません。だから、出したら売れる可能性があるんですよ。

ちきりん そうなんです。先日もほんとに驚いたんですけど、私がツイッターで「京都は日本が世界に誇る古都だけど、実際に京都に行ってみたら「どのあたりが古い日本の町並みなの?」って探し回らないと見つからない。パリやフィレンツェなど、世界の古都とは全く違う」って呟いたんです。そうしたらフォロワーの方から「えっ、パリやフィレンツェって違うんですか? 探し回らなくても古い建物が見つかるんですか?」って質問が来て……。
世界を知らない人が多いのは島国ってこともあるし、移民など海外の人をあまり受け入れないのもその理由なのかな。どこもかしこも日本と同じだと思ってるというか。

フェルドマン そうですね。でも、受け入れるのではなく、送り出すという方向でも、グローバルな感覚を持つ人を増やすことはできると思います。サウジアラビアは、2005年に即位したアブドラ国王が賢明な王様で、その年から国の奨学金で年間約20万人の留学生を送り出してきたんです。これを10年続ければ、サウジアラビアの社会は変わりますよね。実際、かなり変わってきています。

ちきりん サウジアラビアって絶対君主制の保守的な国、という印象でしたけど、そんな取り組みをしてるんですね。

フェルドマン 日本は民主党政権時代に、2兆円を使って「子ども手当」を支給するなどの子育て支援策を実施しました。そのお金を奨学金に使えば、40万人は毎年留学生を送り出せますし、また外国からも受け入れることができるはずです。将来の日本のことを考えたら非常に安いものだと思います。先ほどのメガネメーカーにも留学経験のある人が入社し、「このメガネ、ニューヨークでも売れるかも」「私がインドに行って売ってきます」という展開になることがあり得るはず。

ちきりん たしかにたくさんの移民を受け入れるよりも、日本人をさまざまな国に送り出そうという話のほうが、社会の抵抗感は少ないですよね。それはいい案かも!

フェルドマン 留学生を増やすことは、アメリカにおいてもトランプ政権への対抗策にもなり得ると思っているんですよ。というのも、やはりトランプを支持した選挙区というのは、世界との接点が少ない地域なんですよね。だから、そういう選挙区に支社がある日本企業が、現地の若手従業員や近隣に住む高校生を、日本にホームステイさせる施策をこっそり進めたらどうかなと(笑)。

ちきりん そうかー。トランプ氏支持の人も、世界を知らないから「俺たちはソンばかりしてる。日本や中国がズルイからソンしているんだ」という理屈を信じてしまうのか……。それは興味深い説明です。

フェルドマン 企業が飛行機代を負担して、日本の社員がホームステイの受け入れ先となる。そうすると、受け入れ先の家庭にとっても、すごくいい経験になると思います。留学生を受け入れたり、送り出したりするというのは、即効薬となる施策ではありません。でも、漢方薬のようにじわじわ効果がでてくるはずです。

ちきりん 知らないということは人を保守的にさせますよね。知らないものは怖いですから。知ってしまえばなんてことないことでも、知らない間は近づきたくないと思う。だとすれば、1人ひとりが世界を知ろうとすることが、よりよい未来につながるってことですよね?
 今回は生産性の話から始まって、日本にはびこる「自立を妨げる甘やかし問題」まで、とても大事な気付きをいただけました。これからもぜひまた、いろいろお話させてください。今日はどうもありがとうございました!
http://diamond.jp/articles/-/123925


 


 
【第4回】 2017年4月20日 小西史彦

ビジネスにおいて、解決不能な問題はない。マレーシア大富豪の教え

NHKやテレビ東京、日経産業新聞などで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。

人生とは「想定外」のものである

 私は、平凡だからこそリスクを取るべきだと考えています。
 ただし、無謀なリスクを衝動的に取るようなことをしてはいけない。しっかりと自分の頭でリスクを量って、命までは取られない範囲でリスクを取らなければなりません。これが大鉄則です。

 とはいえ、人生には想定外のことが起きるものです。

 どんなに事前にリスクを量っても、そのとおりにいくなどということはありえない。いや、むしろ、「想定外」のことが起きるのが人生である、というのが正しいでしょう。特に、若いころは経験値がないからなおさら危うい。私も、ずいぶんと「想定外」の出来事で痛い目にあいました。

 私は、日本を飛び出してわずか2ヶ月で解雇の憂き目(うきめ)にあったのですが、その背景には国家レベルの異変があった。まさしく想定外。私の努力でどうにかできる問題ではなかった。いよいよ海外雄飛(かいがいゆうひ)と勢い込んでいるときに、とてつもないアクシデントに見舞われたのですから、大きなショックを受けたものです。

 ことのきっかけは、国立マラヤ大学留学中にさかのぼります。

 当時、ご縁があって、シンガポール在住の若い華僑の経営者と知り合いました。シンガポールまで会いにいくと、彼のマンションに泊まらせてくれたうえに、あちこち案内してくれるなど、ずいぶんと親切にしてもらいました。

 その後も、何度かシンガポールまで彼に会いに行って親交を深めるうちに、彼が「小西、お前うちにこないか?」と誘ってくれました。日本の有名なメーカーとシンガポールに合弁会社をつくって、新しいビジネスを立ち上げたので、そこの社員として働いてみないか、という誘いでした。

 これは、私にとっては願ったり叶ったりの誘いでした。なぜなら、マレーシアに住みたいと思っていましたが、日本の大企業の駐在員でもない私にワークパーミット(就業許可)が下りるはずがなかったからです。しかし、彼が日本メーカーとつくる合弁会社の社員になれば、シンガポールでのワークパーミットは取れると考えたわけです。

何事も「中途半端」に終わらせてはならない

 彼の誘いに乗った私は、国立マラヤ大学の留学を終えると日本に帰国。日本メーカーで技術研修を受けたうえで、シンガポールへ移住する準備を進めていました。ところが、当時は気づきませんでしたが、このころからすでに異変の予兆がありました。

 日本メーカー本社から、シンガポールの工場に送り込んだ機械がどうしてもうまく動かないという連絡が入ったのです。そして、私は、まだ正式に社員として採用されていたわけではありませんが、入社するという前提で、その機械を製造した和歌山の企業と調整をしてほしいと依頼されたのです。

 そこで、私はさっそく和歌山まで飛んで、機械をつくった会社の社長とともに、シンガポールから続々と届く「あれが不具合」「これが不具合」というクレームを受けながら、あれこれと調整を続けました。しかし、それでも機械はまったく動いてくれませんでした。

 弱り果てていると、日本メーカーの社長に呼び出されました。
 そして、こんな言葉を投げかけられたのです。
「小西君、機械が動かないのでは、君も進退きわまったな」
 つまり、機械が動かなければ、合弁会社は倒産させるしかない。私の就職先そのものがなくなる、というわけです。機械が動かないのは、私の責任ではありません。にもかかわらず、いきなり前途に暗雲が立ち込めたのですから、唖然(あぜん)としました。歯を食いしばって、黙っているほかありませんでした。

 すると、社長はこう問いかけました。
「どうする?」
 若かった私も、ピンと来ました。社長は、「シンガポールには行かない」という返事を求めている、と。しかし、私は仕事を中途半端に終わらせることに抵抗があった。それに、なんとしてもシンガポールに渡りたかった。だから、こう応えました。
「それでも行きたいと思います」

「自発性」を励ますものは「自発性」しかない

 社長のもとを辞したその足で、私はそのメーカーでトラブルになっている機械の輸出を担当した輸出部の部長に会いに行きました。すると、彼はこう言いました。
「小西君、これはマーケットクレームだよ」

 マーケットクレームとは貿易用語で、契約をしてからマーケット環境が不利になった場合などに、買い主が損害を少なくするために、通常なら問題とならないような些細なことにクレームをつけることを指します。実際に機械が動かないのだから、マーケットクレームには当たらないだろうと、私は怪訝(けげん)に思いました。しかし、これは慧眼(けいがん)だったと、のちに思い知らされることになります。

 ともあれ、私は和歌山の製造会社の社長にことの次第を報告。

 彼はたいへん意気地のある人物でした。話を聞いた彼は、こう熱く語ったのです。
「俺がつくった機械が動かないとは、こんな不名誉な話はない。必ず動かしてみせる。ただ、俺は英語ができない。だから、小西さん。頼むから、俺と一緒にシンガポールに行ってくれ」

 そのつもりだった私は、もちろん賛成。彼の意欲におおいに励まされました。自発性を励ますのは自発性しかないのです。すぐに準備を整えて、ふたりでシンガポールに飛びました。そして、機械を動かすために悪戦苦闘。私には機械のことがよくわかりませんから、通訳も一苦労でした。しかし、社長は一流の技術者だったし、なにより自分がつくった機械ですから、試行錯誤の末に機械は無事に稼働。これで局面が変わると疑いませんでした。

 しかし、その後すぐに工場の閉鎖が決定。私は、正式に採用されてはいましたが、給料はいっさい支払われないまま解雇されることになりました。

 何が起こっていたのか――。

 それを知ったのは解雇された後のこと。シンガポールがマレーシア連邦から離脱。マレーシアがシンガポールからの輸入品に高率の関税をかけることになったのです。これで、合弁会社が目論んでいたビジネスの最も重要なファンダメンタル(基礎的な条件)が消し飛んでしまったのです。

 シンガポールでつくった製品を、マレーシア全土で販売するはずでしたが、それに高額の関税を課せられるとなるとビジネスとしてまったく成立しません。機械が動いたところで意味がないわけです。そして、合弁会社をご破算(はさん)にせざるを得なかったのです。

 しかし、私にとっては青天の霹靂(せいてんのへきれき)。まったくの想定外でしたが、おそらくシンガポール現地では、その政治動向を察知していたのでしょう。だから、工場の稼働をできる限り先延ばしにするために機械のトラブルを利用した。マーケットクレームと指摘した輸出部長は、非常に洞察力があったということです。たいしたものだと、いまも思います。

ビジネスで「解決不可能」な問題はない

 当時は、暗澹(あんたん)たる思いでした。
 工場が閉鎖された1ヶ月後に、結婚したばかりの妻がシンガポールに来ることになっていましたが、解雇されたことは言うに言えませんでした。そして、当日、飛行場に迎えにいくと、妻は綺麗な和服を着てタラップを降りて来ました。その姿に、彼女の異国で生きていく決意を見る思いがして、「申し訳ない」という気持ちでいっぱいになったものです。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。合弁会社のシンガポール側の社長が「申し訳なかった」と謝罪したうえで、知人の華僑の経営者を紹介してくれました。その会社に日本の染料メーカーの代理権を取らせて、私にマレーシアでの日本製染料の営業をさせるように交渉してくれたのです。日本の染料メーカーも「小西がやるなら」と了解してくれました。こうして、私は「想定外」のアクシデントをなんとか乗り越えることができたのです。

 これが、私の人生の船出でした。

 このように、人生には想定外のことが起きるのです。未来のことは誰にもわからない。どんなに慎重にリスクを量っても、想定外の事態に巻き込まれるのが人生。だからこそ、先ほども言ったように、最悪の事態が生じても生き残る術を確保したうえで、リスクをとらなければなりません。私の場合であれば、当時はまだ若かったし、薬剤師の免許をもっていた。だから、いつでも海外から撤退できるという余裕がありました。

 ただ、想定外のことが起きたからといって、すぐに撤退しているようでは何事も成し遂げることはできません。 
 私にも、「進退きわまったな」と言われたときや、工場閉鎖が決まったときに、撤退する選択肢はあった。しかし、私はそんなことは考えもしませんでした。それよりも、「目の前」の問題を解決するために全力を尽くしました。これは、意地のようなものかもしれません。そういう性格なのでしょう。

 しかし、私は、だからこそ自分なりの人生を切り拓くことができたと思っています。
 想定外のトラブルに巻き込まれても、その不運を嘆いたり、将来を案ずるよりも、とにかく「目の前」の問題解決に全力を尽くすことが、未来を切り拓くことにつながると思うのです。将来を心配し始めればきりがない。そして、いくら心配したところで、事態は一向に変化しないのです。であれば、「目前の問題」に集中すべきです。

 私は、ずいぶん長くビジネスの第一線で生きてきましたから、数えきれないほどの想定外のトラブルに見舞われてきました。そうした経験を踏まえて断言できるのは、ビジネスにおいて解決不可能な問題はない、ということです。ビジネスは生易しいものではありませんが、しょせん人間同士の営みです。そこに、解決不可能な問題はないと思うのです。その証拠に、いまここに私はピンピンして生きている。「目前の問題」に全力を尽くせば、必ず解決策は見つかるのです。

「今」に集中すれば「未来」は拓かれる


小西史彦(こにし・ふみひこ) 1944年生まれ。1966年東京薬科大学卒業。日米会話学院で英会話を学ぶ。1968年、明治百年を記念する国家事業である「青年の船」に乗りアジア各国を回り、マレーシアへの移住を決意。1年間、マラヤ大学交換留学を経て、華僑が経営するシンガポールの商社に就職。73年、マレーシアのペナン島で、たったひとりで商社を起業(現テクスケム・リソーセズ)。その後、さまざまな事業を成功に導き、93年にはマレーシア証券取引所に上場。製造業やサービス業約45社を傘下に置く一大企業グループに育て上げ、アジア有数の大富豪となる。2007年、マレーシアの経済発展に貢献したとして同国国王から、民間人では最高位の貴族の称号「タンスリ」を授与。現在は、テクスケム・リソーセズ会長。既存事業の経営はすべて社著兼CEOに任せ、自身は新規事業の立ち上げに采配を振るっている。著書に『マレーシア大富豪の教え』(ダイヤモンド社)。
 もちろん、解決策を見出しても敗北に終わることもあります。
 あのときの私がそうでした。動かない機械をなんとか動かすことに成功したにもかかわらず、シンガポールがマレーシア連邦から離脱したがために、その努力は「無」に帰してしまった。

 しかし、だからこそ、私には次の「道」が与えられたのです。私に染料営業の仕事を用意してくれた華僑経営者は、私に対する「申し訳ない」という気持ちだけで手を尽くしてくれたわけではない。私が、窮地(きゅうち)に陥っても、逃げずに問題解決に全力を尽くした。その姿勢に信頼を寄せてくれたからこそ、手を差し伸べてくれたのです。それは、私が、知人に紹介された若者をサポートするようになって、よくわかるようになったことです。

 たしかに、知人の紹介であればむげにはしません。しかし、それだけで全面的なサポートをすることはできない。なぜなら、サポートした人物に“いい加減”な仕事をされれば、私の信頼までも傷つけられるからです。そのリスクは背負えない。だから、私は必ず、その人物をじっくりと見極めます。

 そして、人物を見極めるひとつの指標が、窮地に陥ったときに、「目の前」の問題解決にどれだけ誠実に向き合うか、ということです。多少、不器用でも構わない。トラブルから逃げずに、全力を尽くす人間は信頼できる。そして、そのような人物には、自然と支援の手が差し伸べられる。人生が切り拓かれていくのです。だから、想定外のトラブルに巻き込まれたことを嘆くのではなく、「目の前」の問題解決に集中すること。これが、「不確実な人生」を生きる基本なのです。

 ちなみに、このことがあって10年ほどたってから、「進退きわまったな」と口にした社長にお目にかかる機会がありました。そのとき、彼はポロッとこう言いました。
「小西君、あのときは君に非常にすまないことをした。君を引き受けるくらいの体力は、当社にもあったんだよ」
 私は、この発言を謝罪だと受け取りました。そして、「いえ、そんなことありませんよ」と軽く受け流しました。これは、本心でした。たしかに、あのとき社員として会社に残してもらえれば、生活は安定したかもしれません。しかし、サラリーマンになるつもりはなかったのだから、それは私の望むところではなかったからです。でも、そう言っていただけたのは、ありがたいことだと思いました。
 いま考えると、あのとき、あのシチュエーションがあったからこそ、私は強靭(きょうじん)になれたのだと思います。「若いときの苦労は買ってでもせよ」と言います。あのときは、苦汁(くじゅう)をなめさせられたと思いましたが、実は、人間として成長するために必要な「苦労」をさせてもらえたということなのかもしれません。

 苦しい状況が人間をつくる――。
 それを、私は身をもって学ばせてもらったのです。
http://diamond.jp/articles/-/124428


 
【第1回】 2017年4月20日 『日本の人事部』編集部

「新卒社員の3割が3年で辞める」はなぜ30年間変わらないのか

大学4年生の春になると企業の合同説明会に足を運ぶ学生が多く見られる
 アベノミクスやトランプ景気の影響で日本経済は好調な様子だ。同時に新卒採用は学生による売り手市場が続いている。少子化による人口減少という環境変化も採用の活況を下支えする。企業の採用意欲の高まりは、採用計画に関する各種調査結果を見ても顕著で、かつてのバブル景気並みの採用難を思い起こさせる。しかしその一方で、せっかく採用した新入社員(大卒者)の3割が3年で辞めているという事実がある。人材不足の状況にあって、どうしてこのような「ミスマッチ」が起きているのだろうか。(『日本の人事部』編集部)

“自社色に染められる”
企業が新卒採用を行う理由

 そもそも、日本ではなぜ多くの企業が新卒者の定期一括採用を行っているのか。その理由は、大きく分けて三つある。一つ目は、企業が成長・発展し続けていくためには、組織の新陳代謝を図らなくてはならないこと。二つ目は、年次管理がベースとなっている日本では人員構成上、ピラミッド組織の維持が必要であること。三つ目は、新卒採用なら安いコストで人材を調達できるうえ、まだ何物にも染まっていないので、自社の価値観(経営理念・組織風土)をしっかりと共有できること。そのため、毎年4月に大量の学生が労働市場に供給されることを前提として、多くの日本企業が計画的な採用活動を行っているのだ。

 しかし世界的に見ると、日本のように新卒一括採用システムを確立している国はまれだ。欧米の大企業では「職種別採用」が基本。また、欠員があった時に募集するケースが大半であり、応募する人材には、募集した職務をこなす能力・スキルをすでに備えていることが求められる。職務未経験の新卒者を一括採用する日本とは、その方針が大きく異なるのだ。

 いずれにしても新卒採用を行う際は、将来の事業展開を踏まえた「計画性」が重要である。経営戦略から導かれた要員計画の下、計画が策定されなければならない。特にベンチャーや中小企業などでは、新卒採用がきっかけで、経営戦略がより具体性のあるものとして言語化され、実践へと結び付いていくことがある。そういう意味でも新卒採用は、経営トップ自らが取り組むべき重要課題の一つと言えるだろう。

入社3年で「3割」が辞める
バブル期から変化がないミスマッチ

 一方で、厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」によると、新入社員(大卒者)の3割が、入社後3年以内に最初の会社を辞めている。この状態はバブル時代から変わることなく、1987年以降、「新卒3年目までの離職率」は概ね25〜35%の範囲で推移している。キャリア採用の浸透とともに転職に対する抵抗感が少なくなったことや、転職手段が増え、転職自体が容易になったことなどがその理由として考えられる。その他にも、近年の「ゆとり世代」「さとり世代」と呼ばれる若者の志向の変化や時代背景など、さまざまな見方がある。

 「新卒3年目までの離職率」がバブル時代から現在まで変わらないという事実は、入社した企業が構造的な問題を抱えていること、また、採用選考のあり方に問題があることも同時に示している。なぜこのような採用の「ミスマッチ」が起きてしまうのだろうか。

 実は3年で3割が辞めると言っても、従業員規模によってその状況は大きく異なる。厚生労働省が発表した「新規大学卒業就職者の事業所規模別離職状況」(平成25年3月卒)によると、「新卒3年目までの離職率」は、以下の通りだ。

新卒3年目までの離職率(平成25年3月卒)
採用人数(人)
3年以内離職率
5未満
約6割(59.0%)
5〜29
約5割(49.9%)
30〜99
約4割(38.6%)
100〜499
約3割(31.9%)
500〜999
約3割(29.2%)
1000以上
約2割(23.6%)
 従業員規模が小さいほど「新卒3年目までの離職率」が高い。大企業志向(安定志向)は依然として強く、「待遇の良さ」を求める傾向は今も昔も変わらない。

本音の退職理由は「キャリアの成長が望めない」
就職情報サイトを鵜呑みにする学生

 しかし1000人以上の大企業でも、新規学卒者の2割が3年以内に辞めているのは事実。この問題を解決するには、「ミスマッチ」が起こる原因を追求しなくてはならない。まずは、新入社員の退職理由の“本音”を聞く必要があるだろう。

 企業の口コミサイト「Vorkers」が発表した、新卒入社で3年以内に退職した平成生まれの若手社会人の「退職理由ランキング」(2007年〜2015年に新卒3年目までに退職した元社員から投稿された回答・全627件)を見ると、退職理由で最も多かったのは「キャリアの成長が望めない」25.5%。その後を僅差で「残業・拘束時間の長さ」24.4%が続き、以下、「仕事内容とのミスマッチ」19.8%、「待遇・福利厚生の悪さ」18.5%、「企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ」14.0%などが上位に挙がっている。

 この結果から分かるのは、「キャリア成長が望めない」「残業・拘束時間が長い」「企業の方針や組織体制・社風などが合わない」など、採用選考の段階で学生に企業の内実をきちんと伝えきれなかったことが退職の大きな理由になっていること。これは明らかに、企業側の「情報開示」の姿勢に問題がある。

 特にインターネットによる就職情報サイトが普及したことで、より顕著になった。就職情報サイトに掲載されている情報は基本的にPRであり、いくら眺めてもその企業の良いところしか見えてこない。企業側が良いところしか出していないのだから当然だが、そのような状況では「自分に合った優良企業」を探し出すことは難しい。

 仮に就職情報サイトで同じように見えても、A社は経営がしっかりしていて社員がイキイキと働いているホワイト企業で、B社は職場にハラスメントが蔓延していて、仕事にやりがいを感じられずに社員がどんどん辞めているブラック企業かもしれない。さらには相性の違いなど、実際に会って本音で話し合わなければ分からないことが、他にもたくさんある。そのような事実を学生に知らせなくて、本当の意味でのマッチングなど望むことはできない。

 人材不足が深刻化する中、企業は学生のエントリー数を増やす必要がある。そのために知られたくない事実を隠したうえで学生のエントリーを煽り、採用選考を進めていくことになる。企業側が情報開示に関してこのような姿勢を取る限り、いつまで経ってもミスマッチが解消されることはないだろう。

 ところで、下記の「新聞広告」を読んだとき、あなたは何を感じるだろうか。

求む男子。至難の旅。
わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証無し。
成功の暁には名誉と称賛を得る。
アーネスト・シャクルトン

 これは、三度にわたりイギリスの南極探検隊を率いた極地探検家のアーネスト・シャクルトンが、南極探検のメンバーを募集するために出した伝説の新聞広告のコピーだと言われている。今ならとても考えられない内容であり、ほとんどの人はエントリーすることもないだろう。しかし、当時はこの小さな求人広告に対して、実に5000人もの応募があったという。あえて、ネガティブな情報を出しているのに、である。このような情報開示の持つ意義と効果・効用を、経営者や人事担当者は、いま一度、考えてみる必要があるのではないだろうか。

(4月25日更新予定の次回に続く)

※次回は採用の「ミスマッチ」を起こさないために、どのように人材を採用し、定着させていけばいいのかを考える。

『日本の人事部』とは
人事に関するあらゆる情報が集まるナレッジコミュニティサイト。全国の経営者や管理職、人事担当者など、人材の採用・育成・マネジメントに携わる方々に向けて最新の企業事例やノウハウを発信することで、HR領域の変革をサポートしている。上場企業・大手企業を中心とする全国の企業が利用しており、月間訪問者数75万人、人事正会員数10万人に及ぶ日本最大のHRネットワークを形成している。
https://jinjibu.jp/
http://diamond.jp/articles/-/125389

 

【最終回】 2017年4月20日 中原 淳 :東京大学大学総合教育研究センター准教授
海外赴任者が帰国後に退職してしまう理由 2年以内に辞める割合は25%


帰国後に退職してしまう海外赴任者は何割?

 企業がグローバル人材育成を行っていく上でのゴールとは、若手や中堅を海外に送り出すところにあるのではありません。海外赴任から戻った帰任者たちが、帰国後もその経験を活かし、グローバルリーダーとして活躍できるようにするところにあります。

 グローバル人材育成とは、採用を含めた初期の育成、そして途中の実務担当者時代のフィードバックや海外赴任の準備、そして海外赴任中と帰任後のフォローまで、人事のプロセスを総動員して人を育てること。

 その意味では、海外赴任者の帰任後というのも、グローバル人材育成を考えるうえでは、重要なポイントとなります。

 みなさんは、海外勤務で大活躍をした方が、帰任後すぐに会社を辞めてしまった、転職してしまった、といった話を耳にしたことはありませんか?

 実は帰任後すぐに会社を辞めてしまう例は、海外でもよくあることのようで、アメリカの研究者 (Lazarova and Caligiuri 2002)が調査を行っています。

 では、ここで問題です。

Q.海外赴任帰任者が、帰任後2年以内に辞める割合は何%でしょうか?
(1)5%
(2)10%
(3)25%

海外帰任者が辞めてしまう理由とは?

 正解は(3)の25%です。

 海外の調査ではありますが、実に4人に1人の割合で海外赴任者が帰任後2年以内に辞めてしまっているというわけです。日本人はそこまで高い割合ではないかと思われますが、同じような傾向は確かにあるのではないでしょうか。

 実は、海外赴任の帰任後というのは、キャリア論では中立圏(ニュートラルゾーン)という時期に当たります。中立圏とは、簡単に言うと「何かが終わる時」と「何かが始まる時」の間の「宙ぶらりんの時期」ということです。

 この時期を過ぎるとまた、新しい環境への再適応ができるようになってくるわけですが、この「宙ぶらりんの時期」というのは、空虚感に包まれ、アイデンティティを喪失し、場合によっては退職の可能性が高まってしまう、人事的には極めて危険な時期なのです。

 海外帰任者は、なぜ辞めてしまうのでしょうか。

 先ほどの調査研究(Lazarova and Caligiuri 2002)によると、「海外に比べて挑戦性のない仕事が割り当てられた」、「海外で培った獲得したスキルが生かせなかった」、「海外に出ている間に昇進機会がなくなった」、「海外のように自立的な仕事を行うことができなくなった」「キャリアが不透明になった」「同僚、本社の人的ネットワークからの離脱」「本国文化への逆適応への失敗」といった理由が挙げられています。また、「同僚からのやっかみ」といった理由もありました。

 どれも、本国で働き続けている人からすれば、「やむをえないこと」ではあるのですが、帰任者にとっては、それがどうしても我慢ならないこととなってくるようです。

帰任者は「自分が小さくなった感じ」になる?

 実際、ダイヤモンド社と中原研究室との共同調査によると、帰任者の60%は裁量の低下を感じ、53%は役職が低下したように感じるという調査結果が出ています。多くの方から出る言葉は「自分が小さくなったような感じ」というもの。

「結果的に離職はしなかったものの、帰任後に『このままでいいのか』という思いが沸き上がった人も入れると、相当数が離職を考えたと思います」と言う方や、「本社に戻ったらいきなり一マネジャーに戻ってしまって、何かガクッていう感じなんだよね」と話す方もいました。

 海外赴任者は、海外でのタフな仕事経験を通して、知識やスキルだけではなく、「新しい視点」を持つようになります。そこで獲得した「新しい視点」は、これまでの慣れ親しんだ「元の職場の風景」を、まったく別の「色あせた風景」に変えてしまう可能性をはらんでいます。

 海外赴任によって、「新しい視点」を身につけることは、有意義なことではありますが、それが帰任後の違和感、失望感につながってしまうこともあるのです。

 また、当然のことながら、「損得勘定してみると、海外赴任をせず、国内で仕事をしていた方が早くいいポジションへ昇進ができてお得だった」という人事システムが出来上がってしまっていたとしたら、人は「合理的選択」の結果として、わざわざグローバルな舞台で活躍しようとはしません。

 人事の仕事として「グローバル人材育成」を行う場合は、帰任後にどれだけ魅力的なキャリアを積めるのか、といったところまできちんと整備しておく必要があります。

 そして、実際に帰任した後には、個別のキャリア面談を施すなど、丁寧なコミュニケーションを図ることが重要です。

 海外赴任は、リーダーシップ開発においても、重要な職務経験の一つとなります。海外帰任者を、将来のグローバルリーダー候補として大切にするという視点も、大事なところではないかと思います。

個人に甘え過ぎていた日本企業

 ここまで5回にわたって、グローバル人材育成のあり方について、様々な視点でお話ししてきました。

 結論として申し上げたいのは、「グローバル人材育成というのは、単に教育研修を行うことではなく、人事の全てのプロセスをかけた試みである」ということです。

「人事の全てのプロセスをかけた試みである」ということは、採用時の見極め、新人育成など初期の育成、そして中堅、実務担当者時代の育成やモチベーション維持のためのフィードバック、海外赴任前の準備、そして渡航中、帰任した後のフォロー…といった一連のプロセスを全てグローバル人材育成の観点で再構築していく、ということです。

 アメリカにおいて、グローバル人材育成の観点で、人事プロセスを再構築していくことが注目されたのは、1980年代のことでした。帰任者の退職という問題が深刻化したためです。

 日本では、なぜこうした問題が大きくならなかったのでしょうか。少し挑戦的な言い方をすると、日本企業は長らく、個人の持つ(1)高度で勤勉な適応学習能力、(2)会社が発動する強力な人事権への諦め、(3)配偶者と家族の献身的な努力、といったものに甘えてきただけなのではないでしょうか。私にはそう思えて仕方ありません。

 グローバル人材育成は人事のプロセスを総動員して人を育てることに他なりません。新たな教育研修を企画する前に、まずは一つ一つの人事プロセスを、グローバル人材育成の観点で見直すところからはじめていただきたいと思います。

(東京大学大学総合教育研究センター准教授 中原 淳、構成/井上佐保子)
http://diamond.jp/articles/-/125453

 

 

【第17回】 2017年4月20日 澤 円 :日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
グローバル仕事人は「本・Web・会話」をどう活用しているか


知的好奇心を鍛錬するにはうってつけの「読書」。グローバル仕事人は雑誌を読む時に、同じテーマを扱った複数の雑誌を読み比べすると言います
 皆さん、こんにちは。澤です。

 4月も後半を迎えましたが、皆さんは何か新しいことを始めましたか?新生活に戸惑っている方もおられるのではないでしょうか。

 春は変化の時期、ぜひそんな状況も含めて楽しんでください。さて、今回のテーマは、前回に引き続き「自己鍛錬」です。

 今回の鍛錬ポイントは「知的好奇心」です。

 いかにして知性を磨いていけばよいのか、澤なりの考えをお伝えしたいと思います。

「読書」でファン心理や
多様な価値観を理解する

 知的好奇心を満たす代表的な行動は、なんといっても読書ですね。本を読む習慣のある人は、すでに本の取捨選択術はご自身でお持ちでしょうから、こちらは参考までにということで…。

 まずは、紙媒体の「本」を読む場合についてです。私は、紙の本を読む場合、リズムや書籍の選択に非常にムラのある人間です。「月に平均的に何冊読む!」というタイプではなく、気が向いたときはまとめ読みをすることもあれば、気乗りしないと数週間の間一冊も読まないという感じです。

 ただ、本から得る知識というのは他の媒体とは違うように感じています。ですので、まったく読書をしないという状態には陥らないように心掛けており、時間があるときはなるべく書店をぶらぶらと歩いたりします。そして、気に入った本があれば、まとめ買いをしたいすることもあります。その時、本を選ぶ観点にはこだわりがあるのでご紹介します。

・好きな作家の小説・エッセイは迷わず買う

 好きな作家の書籍を買うのは、心の滋養強壮・栄養補給であると思っています。恋愛小説でも推理小説でも歴史小説でもエッセイでも、なんでもOKです。自分が大ファンの作家が文字で紡ぐ世界は、脳内の隅々までを満たしてくれます。他人の書評などは関係ありません。自分が好きなら迷わず買ってしまいましょう(私に言われずとも、そうする人が多いとは思いますが)。

「好きな作家がいない…」という人もいらっしゃいますよね。そんな人は、ぜひ「自分が好きな人がファンである作家」の本を買ってみてはいかがでしょうか?そうすることで、「自分が好きな人が好きな世界観」を体験することができます。

 私は、「ファン心理」というものはビジネスの中でとても大事な要素であると思っています。ファンになれば、自分のモチベーションを上げる原動力にもなりますし、逆に相手のために無条件でサポートしたくなったりもします。こういった心理状態を認識・コントロールすることは、ビジネスにおける成功に大きく寄与すると思います。そのためにも、「好きな作家」に対して投資をする行為は、ビジネススキルアップのための投資と思うことにしましょう。

・いわゆる「自己啓発本」を買いすぎない

 私自身、自己啓発系にカテゴライズされる本を出版させていただいたことがあるので、こんなことを言うのははばかられるのですが…。自己啓発本というのは「即効性のある強壮剤」のようなものだと考えています。必要なタイミングで、必要とされるスキルを磨くために読むのであれば、ご自身の成長に大きく寄与することは間違いありません。ただ、あくまでも「補助的存在」として考えないと、自分の行動を自分の考えで決められなくなってしまう可能性があります。

「この場面で、あの本ではどうするって書いてあったっけ?」とか「こういう状況での行動パターンって、あの本で説明されていたな」とか、自分の考えよりも先に本に書いていることに意識が行ってしまう癖がつくと、自分の頭で思考する能力が衰退してしまうのではないかと思っています。ですので、自分の考え方や行動パターンを決めるための参考として、しっかり咀嚼・吸収することが大事になります。自己啓発本は、片っ端から読み漁って全部を身につけようなどと思わず、取捨選択しながら自分に合ったメソッドを取り入れる、くらいにしておくのがよいと思います。

・「名著」はとりあえず読んでおく

 ビジネスパーソンの共通語となっているような本は、とりあえず目を通しておくことをお勧めします。例えば、『マネジメント』(ピーター・ドラッカー)、『企業参謀』(大前研一)、『7つの習慣』(スティーヴン・コービー)、『ザ・ゴール』(エリヤフ・ゴールドラット)などです。内容の素晴らしさもさることながら、中で使われている用語がしばしば「ビジネス上の共通語」として使われたりすることもあるからです。

「マネジメント」という言葉が一般的にいう「管理業務」とは違うことはドラッカーが繰り返し本の中で語っていますし、双方にとってプラスとなる状況を「Win-Win」と表現するのは、『7つの習慣』を読んだ人であれば常識となっています。いずれの作品も最新事情を追加したり理解しやすく噛み砕いて再編集された「エッセンシャル版」が出ているので、こうした本を活用してとりあえず用語を押さえておくだけでもずいぶん違うと思います。なんとなく読む機会を逸してしまった…と思っている人は、何かを始めるのに最適な今の時期に、ぜひ書店で手を伸ばしてみてください。

・雑誌は選択肢の振り幅を大きくする

 世の中には、数多くの雑誌・週刊誌が出回っています。私も多くの雑誌を読みますが、なるべく幅広く読むようにしています。例えば、同じ政治や経済の同じトピックであったとしても、雑誌によってはまったく違う取り上げられ方をします。いわゆる「堅め」の媒体で政治の記事を読んだら、場合によっては下世話とも言えるような大衆紙で同じ話題の扱いを比べる、といった具合です。

 具体名で言えば、『選択』という通販のみで手に入るかなり硬派な政治経済系の雑誌があります。この雑誌でトランプ大統領に関する記事を読んだ後に、『週刊プレイボーイ』や『SPA!』などを読むわけです。記事中で扱う人物は同じでも、書かれる記事の詳細さや観点は全く違います。

 こうした思考の振れ幅を楽しむのも雑誌の読み方としてアリかな、と考えています。グローバル仕事人に必要なのは「多様な価値観の理解」ですから、様々な視点を雑誌という媒体を通じても感じ取るのが大事だと思っています。

 この記事を読んでくださっている主に男性読者の皆さんがひとつだけ気を付けるとしたら、大衆男性誌のグラビアページなどは電車内で決して開かないようにしましょう。そうするとグローバル仕事人以前の問題になってしまいますので(笑)。

「Web閲覧」は
責任の所在・記事の目的を見極める

 インターネットは、多くの人を情報発信者と変えました。世の中に出回っている電子データの90%以上は、この3年の間に生まれたとも言われるくらいです。多くの人々が情報発信者となり、結果としてWebの情報は玉石混交となっている状態です。ビジネスだけではなく、政治や教育、芸能などの情報が、数多く発信され消費・浪費されている毎日です。その中でいかにして情報を得て、自分の仕事に生かしていくのか。グローバル仕事人として非常に大事な振る舞いです。

 Webのライターという職業は、参入障壁が低い分、記事のクオリティには大きな差があります。私の知人には、とても緻密・丁寧な取材をしてかつ極めて正確・公平な記事を書いている人もたくさんいます。その一方で、最近問題なっているような盗作や思い込みによる記事を書き流している人々がいるのも事実です。ですので、Web上での情報収集は細心の注意を払う必要があります。どのように情報を選択していけばいいのか、澤なりの考えをお伝えします。

・「情報ソースは実名入りか」を確認するのは最低条件

「関係者によると」「詳しい情報筋によれば」という情報は、基本的に「参考情報」以上の扱いを決してしないようにしましょう。発信されている情報に実名が入っていない場合、誰もその記事に対して責任を持つことはありません。責任を持たれることのない情報はすべて「怪情報」と思った方がいいでしょう。そのような情報を目にしたときは、

「この記事に対して誰が責任を持つのか」
「どのような経緯でこのライターが記事を書いているのか」
「このような書き方をすることで、得をする人・損をする人は誰か」

 といった点に着目します。世の中の記事は何のために存在するかといえば、たいていの場合「PV(ページビュー)を稼ぐ」のが主目的であり「正しい情報を正しく伝える」ことをトッププライオリティに置いているかどうかは別問題だったりします。

 もちろん私が書いているこの記事についても「多くの人に読んでもらう」のが主目的です。そして、すべての記事は澤自身で考えたものや直接見聞きした事象を文字にして表すというスタイルです。つまり、私はすべての記事に対して責任を持つことができる状態です。となると「嘘でもいいのでキャッチーな言葉を使って人の耳目を集める」という行動を取ると、実名を出している私は信頼を落とすだけで、何一つ得るものはありません。

 そう考えると政治や芸能人のスキャンダルネタは、ほとんどが実名のない伝聞での記事であり、信ぴょう性が高いものはそれほど多くありません。そのような信用度が高くない記事に思考の時間を費やすのは、極めて非効率であると言わざるを得ません。

・SNSはさらに注意を

 特に信ぴょう性の問題が顕著に出るのは、FacebookやTwitterなどのSNSの投稿です。SNSは、デマやガセネタの宝庫です。そして、発信者の意図とは別に記事が解釈されて拡散していくという特徴もあります。SNSからの情報収集も同様に3つのポイントを押さえて読むようにしたいものです。

「この投稿に対して投稿者は責任を持つのか」
「どのような経緯でこの投稿しているのか」
「このような投稿をすることで、得をする人・損をする人は誰か」

 SNSは、グローバル仕事人が活用すると大きな得をするツールである一方で、リスクの高いプラットフォームにもなりえるものです。SNSをテーマに、別途記事を書いてみたいと思います。

「人との会話」でものの見方や理解のプロセスを磨く
年次で態度を変えるのは思考の浪費

 人は、人との会話によって最も知的好奇心が満たされる、というのが澤の持論です。本やWebの記事はもちろん価値があるものですし、効率的という点ではぜひとも活用したい媒体でもあります。その一方で人と会話をするというのは「時間と言葉を共有する」というとても手間とコストの掛かる行為であり、そこで得られるものは「大いなる体験」として心にしっかりと残るものです。ぜひ多くの人と会話を楽しんでいただきたいと思います。その際に、押さえておきたいいくつかの観点をお伝えしたいと思います。

・全く違うコミュニティーの人たちと会話する

 普段仕事をしていると、同じ人とばかり話をすることが多くなります。ホワイトカラーの職業の人であれば、上司や部下、席の近い同僚などと、朝から晩まで長時間一緒に過ごし、ほかに会話をした相手といえばコンビニの店員さんくらい…という経験がある人も多いことでしょう。接客業なら数多くの人と会話することになりますが、間に商品やサービスがあるため「価値の提供のための会話」が主となり、あまり自分の知的好奇心を満たすレベルまで深く話すことは少ない印象です。そうなると、「異なる価値観を持つ人たちから受ける刺激」が少なくなる傾向になりそうですね。

 そこで提案です。ぜひとも「異なる価値観が交じり合うコミュニティー」に積極的に参加しましょう。

 手段はたくさんあります。地域のボランティアに参加してもいいですし、オープンに人を募集しているサークルに入るのもよいでしょう。あるいは、テクノロジーの力を使って「オンライン英会話」などで異国の人たちと会話するのもいいですね。

 いずれにせよ、自分の行動パターンや思考パターンと全く違う人たちと多く触れ合うのが非常に効果的だと思います。私の場合も、いくつかのコミュニティーに属しており、様々な刺激を受けています。

・スキースクールのインストラクターの仲間
・空手道場の師匠や弟弟子(おとうとでし)たち
・茶道のコミュニティー
・スタートアップ企業のサポーター仲間
・琉球大学の学生たち
・マンションの理事会
・妻のアート関連の仲間たち(妻は現代アートの造形作家)

 こういった幅広い人たちと言葉を交わすことで、まったく違うものの見方や理解のプロセスが得られます。「おぉ、その発想はなかった!」という発見を楽しむかどうか、これがグローバル仕事人の会話術の秘訣ですね。

・なるべく幅広い年代とフラットに触れ合う

 日本における会話で日常的に聞くのが、

「今何歳?」
「何月生まれ?」
「何年卒?」
「入社は何年度?」

 といった「年次にかかわる質問」です。これはすなわち「一年ごとにヒエラルキーが存在している」ということを前提にした質問と言ってもいいでしょう。

 共通の知人や話題を探すための質問であればまだいいのですが、「あ、一年自分の方が早く入社しているからタメ口でいいな」とか「こいつは3年下か、ちょっと先輩として教えてやるか」となど、過ごした時間を何よりも重視して考える人もいますよね。

 グローバル仕事人として大事なのは「人材の価値は年次ではなく経験とアウトプットで決まる」という考え方であると私は思っています。年次が自分よりも下でも、優秀な人材であれば私を使う側に立ってほしいと思いますし、ずっと先輩でもパフォーマンスを高める努力をしない人に対しては、無条件で尊敬などしません(ちなみに、今のマイクロソフトの日本法人の平野社長は高校の後輩です。究極の年次逆転現象だと思ってよくネタにしています(笑))。

 私なりに気を付けているのは「相手の年次にかかわらず、フラットにお付き合いする」ということです。これは、誰に対してでも馴れ馴れしくするとかタメ口で話すということではありません。相手が若くても高圧的に出ることなく、相手が年上だからといって、やたらとへりくだった言葉遣いをすることもない、ということです。

 誰に対しても「フラットに尊敬の念をもって対峙する」という意識を強く持つように心掛ければ、つまらないコミュニケーションエラーを起こすこともありません。また、「誰に対してもフェアな人」というブランドを持つことができるようになります。これこそが、グローバル仕事人として必要不可欠な要素の一つです。

 そのために手っ取り早い方法を一つ。

 とりあえず誰に対しても必ず「さん付け」で呼ぶようにすることです。

 社内の規定で「役職名」で呼ぶことをルール化しているのであれば、それに従う方がスムーズでしょう。また「先生」と呼んだ方がいい相手であれば、そうするのも大人のたしなみですね。

 しかし、そのようなルールが存在しないのであれば、誰に対しても「さん付け」で呼ぶ習慣をつけるだけで意識はずいぶん変わります。「この人は年下だから『くん付け』でいいや」とか「ここは先輩の威厳を見せるために呼び捨てにしよう」とかいうことに意識を使うのは、思考の浪費だと思います。むしろ全員を「さん付け」にして、より近しい存在になったり親しみを込めて呼びたくなったら「〜〜くん」や「〜〜ちゃん」と変えてもいいでしょう。

 ただ、相手がどう思っているのかを確認せずに自分の「こうあるべき」だけで何かの行動を起こすのは、2月9日の私の記事『なぜ日本人は「べき論」を振りかざして衝突するのか』でもご紹介した通り、怒りによるコミュニケーションエラーの原因にもなります。違う価値観をフラットに受け入れる練習として、呼び方を変えてみてはいかがでしょうか。そうするだけで、年下の相手は胸襟を開いて会話をしてくるようになり、今までにはなかった若い人たちの視点を得ることができ、知的好奇心を満たす一助となることでしょう。

 私は最近「リバースメンタリング」という、若手の人たちにメンターをやってもらう取り組みを始めました。とても多くの学びがあり、刺激を大いに受けることができています。そこでの学びも、ぜひこの連載の中でご紹介したいと思います。

 (日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤 円)
http://diamond.jp/articles/-/125463


 


【第17回】 2017年4月20日 近藤宣之
社内を劇的に変えた「今週の気づき」とは

◎倒産寸前「7度の崖っぷち」から年商4倍、23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロ!
◎「赤字は犯罪」&「黒字化は社員のモチベーションが10割」と断言!
◎学歴、国籍、性別、年齢不問! ダイバーシティで女性管理職3割!
◎「2-6-2」の「下位20%」は宝! 70歳まで生涯雇用!
……こんな会社が東京・西早稲田にあるのをご存じだろうか?
現役社長の傍ら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾から慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールまで年50回講演する日本レーザー社長、近藤宣之氏の書籍『ありえないレベルで人を大切にしたら23年連続黒字になった仕組み』が話題。発売早々第4刷となった。
なんと、政府がこれから目指す施策を20年以上前から実践している小さな会社があった! 「7度の崖っぷち」からの大復活! 一体、どんな会社なのか?

「今週の気づき」は
自分が成長するための決意表明


近藤 宣之(Nobuyuki Kondo)
株式会社日本レーザー代表取締役社長。1994年、主力銀行から見放された子会社の株式会社日本レーザー社長に就任。人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。2007年、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」を実施。親会社から完全独立。現役社長でありながら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールなど年50回講演。東京商工会議所1号議員。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など受賞多数。
【日本レーザーHP】 www.japanlaser.co.jp/
【夢と志の経営】 info.japanlaser.co.jp/
 社員のモチベーションを高めるためには、社長(あるいは上司)が、個々の社員と向き合う必要があります。

 そこで、2007年から、「今週の気づき」という仕組みを取り入れています。

 人が「気づき」を得るのは、多くは「トラブルに見舞われたとき」です。
 したがって、「今週の気づき」では、「どのようなトラブルがあったのか」「そのトラブルに対し、どう対処していくのか」を全社員が報告します。

 「今週の気づき」は全社員が毎週末(原則金曜夜)までに、「その週に自分が気づいたこと」について、自分の上司・担当役員にメールで報告をします(ほかの役員や同僚にもCCで同報)。

 業務上のトラブルだけではなく、日常生活での失敗、ミス、病気、ケガ、不快な出来事など、内容は何でもかまいません。

「今週の気づき」を受け取った上司・担当役員は、必ず返信し、フィードバックします。

「今週の気づき」の成果は、おもに「4つ」あります。

【成果1】社員の成長を促す

「今週の気づき」は、「どのようにトラブルを受け止めたか」「今後の成長にどのように活かすか」を考える思考ツールです。

「気づいたことを文章化する」「上司からのフィードバック(他人の意見)に耳を傾ける」といった作業が成長の糧になります。

「お腹を壊した」「二日酔いになった」など、内容は何でもいいのですが、「単なる業務報
告はダメ」というルールを設けています。

「今週の気づき」は、自分が経験したり、見聞きしたりした出来事に対して、評論的にコメントするのではなく、自分の「決意」を表明するものです。

「そうしたいと思います」と感想を記したものについては、「したい」ではなく、「そうします」と書き改めるように指示します。

×「年度末までに、1億円の受注を獲得したいと思います」
◯「年度末までに、1億円の受注を獲得します」

「そうします」よりもさらに成長につながるのは、「なりました」と過去形で書くことです。

◎「年度末までに、1億円の受注を獲得しました」

 事実、過去形で書くことで、「達成するまでのプロセス」をイメージしやすくなるため、実現の可能性が非常に高くなります。

【成果2】社内のコミュニケーションが円滑になる

 当社のような社員55人程度の企業でも、全社員の業務上のトラブルや家族の現状を知ることは結構難しい。

 でも、「今週の気づき」を読めば、「社員がどのような日常を送っていて、どんなことを考えているのか」を把握できます。

 こうした情報は、社員とのさりげない会話に役立てられます。

 社員に笑顔を見せて、会社の空気を明るく楽しくやさしくするのも、社長の大切な仕事。
上司がメールに書かれてあった話題を持ち出すことで、部下とのコミュニケーションを円滑にできます。

【成果3】次期経営者を見極める手段になる

 社員のメールとそれに対する上司・役員の返信は、社長の私にもCCで同報するルールなので、毎週100〜125通ものメールが私にも送られてきます。

 私はすべてのメールに目を通していますが、「部下にどのような返信をしたか」によって、役員の視点がわかります。

 経営者(次期経営者)には、次の3つの能力が必要です。

・「経営力/英語力」
・「担当事業での実績」
・「誰もがついていきたいと思うような人徳」

 部下への返信の内容を見ていると、「社員とどれだけ真剣に向き合っているか」がわかるので、役員の「人徳」がわかります。

 したがって、どの役員が部下から信頼されているのかを見極めることができるのです。

【成果4】企業理念や経営方針が浸透する

「今週の気づき」を開始して3年間は、私が土日のほとんどを費やして、すべてのメールに返信をしていました。

 現在は、業務が多忙になったこともあって役員が返信していますが、経営理念や経営方針に関わる内容については、社長からも対応するようにしています(全社員に同報)。

 そうすることで、「社長が大切に思っていること」が伝わり、会社の理念が浸透するのです。

近藤 宣之(Nobuyuki Kondo)
株式会社日本レーザー代表取締役社長。1944年生まれ。慶應義塾大学工学部卒業後、日本電子株式会社入社。28歳のとき異例の若さで労働組合執行委員長に推され11年務める。そこで1000名のリストラに直面した後、取締役米国法人支配人、取締役国内営業担当などを歴任。1994年、その手腕が評価され、債務超過に陥り、主力銀行からも見放された子会社の株式会社日本レーザー代表取締役社長に就任。人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで23年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。社員数55名、年商約40億円の会社ながら、女性管理職が3割。2007年、社員のモチベーションをさらに高める狙いから、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託社員が株主となる日本初の「MEBO」(Management and Employee Buyout)を実施。親会社から完全独立する。現役社長でありながら、日本経営合理化協会、松下幸之助経営塾、ダイヤモンド経営塾、慶應義塾大学大学院ビジネス・スクールなどでも講師を務め、年間50回ほど講演。その笑顔を絶やさない人柄と、質問に対する真摯な姿勢が口コミを呼び、全国から講演依頼が絶えない。東京商工会議所1号議員。第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」を皮切りに、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」「『おもてなし経営企業選』50社」「がんばる中小企業・小規模事業者300社」、厚生労働省の「キャリア支援企業表彰2015」厚生労働大臣表彰、東京商工会議所の第10回「勇気ある経営大賞」、第3回「ホワイト企業大賞」など受賞多数。
【日本レーザーHP】 http://www.japanlaser.co.jp/ 【夢と志の経営】 http://info.japanlaser.co.jp/
http://diamond.jp/articles/-/122253
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/268.html

[社会問題9] SOSが届かず両足切断、引きこもり高齢化の調査報告が暗示する社会 貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない 


2017年4月20日 池上正樹 :ジャーナリスト
SOSが届かず両足切断、引きこもり高齢化の調査報告が暗示する社会


引きもこり支援の途絶事例が増え続けている。周囲から隠蔽され、傷つく引きこもり当事者たちの現状とは(写真はイメージです)
 長期高齢化の進む引きこもり当事者の家族が窓口に相談しても、何らかの福祉サービス受給に結びついた事例は22%あまりにとどまる一方、支援の途絶事例が約45%に上るなど、家族の間に相談窓口への失望感が広がっている実態が、「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の調査で明らかになった。

 この調査は、全国の生活困窮者自立支援法に基づく自治体の151窓口と、同家族会支部からの回答をまとめ、この4月に公表されたもの。タイトルは『長期高齢化したひきこもり者とその家族への効果的な支援及び長期高年齢化に至るプロセス調査・研究事業報告書』。今年1月に当連載で紹介した、中間報告の最終版だ。

周囲から隠蔽され、助けを
呼べずに傷ついて行く人々

 特に今回は、40代以上の高年齢に至った人の事例の背景を初めて掲載。家族から周囲に隠蔽されている中で、助けを呼ぶことができないまま周囲の対応が遅れたために、その中には両足切断に至った40代男性の痛ましい事例もあった。

 この男性は、30代のときに会社をリストラされたが、それまでは普通に仕事をしており、しばらくは友人との交流もあった。その後、10年以上にわたり、実家の離れで1人引きこもった。

 男性の部屋は、生活のゴミで溢れ、身動きが取れない状況だったにもかかわらず、両親が子どもの存在を隠し続けた。

 ところが、ある日突然、本人が「痛くて我慢できない。救急車を呼んでほしい」と大声で叫んだ。何事かと思い、救急車を呼んで診療を受けたところ、すでに病原菌が足の膝に感染し、壊死状態になっていた。両足を切断せざるを得ない状況だったという。

「困った」「助けて」と言えない人たち。そんな引きこもらざるを得なかった人たちの一面が、今回の報告書から浮かび上がる。

「一緒に暮らしているようで、暮らしていない。こうなるまで家族の誰も気づかない、希薄な関係性が見えてくる。今日は元気かなとか、純粋な関心だけは向けていてほしかった」

 同家族会のスタッフは、そう明かす。

 第三者による介入の在り方については、本人がサポートを望んでいるのかどうか、緊急性があると客観的に判断できるのかどうかを見極める必要がある。いきなり知らない人から訪問されることに、どれだけ本人たちが恐怖感を抱いているか想像もできないような“支援者”に訪問されたことによって、よけいにこじれてしまった事例も数多く報告されているからだ。

 なぜ、支援が途絶してしまったのか。同報告書には、58事例に関する検討が加えられ、実際、家族側から見た「支援の途絶」26事例の背景が、「生の声」として紹介されている。

いきなりドアを開けるのは
絶対にやってはならないこと

 中でも興味深いのは、次の3つの「失敗」事例だ。

<保健所から保健師の訪問を受けていた。その時の担当保健師は、月1回、ドア越しの簡単な声掛けに留めていた。しかし、担当保健師が異動になったので、後任の保健師が担当した。後任保健師が2回目の訪問時に本人の部屋のドアを開けたところ、本人が奇声を発する。後任保健師は驚き、以後、保健所からの訪問は途絶える>

 まさに、いきなりドアを開けるという、絶対にやってはならないことをやってしまったのである。

<持病を診てもらい病院へ行ったが、看護師に無職だとばれ、『いい年なのに』的なことを言われ、帰宅後暴言を吐くなどして荒れた。母親としてはそれを契機に精神科も受診させ、手帳や年金を取得させようと算段を立てていたがとん挫した。本人の医者嫌いを何とかしようと考えていたが、余計に不信感を募らせる結果となった>

「いい年なのに」という言動自体、問題外のケース。そもそも、医療機関や支援機関の中には、「本人をここに連れてきてください」などと言って、家族だけでは対応してもらえないところも多い。こうして支援が途絶し、長期化高齢化が進む一因にもつながるため、まずは相談に訪れる家族をサポートする機関や体制づくりが必要だ。

<ピアサポーターの訪問で本人ハンガーストライキ。訪問に対し本人への同意なしでの対応が気に入らなかったのか。以降、訪問も拒絶。支援側の本人へのアセスメント不足>

 ピアサポーターがどういう立場の人だったのかはわからないが、本人の同意がないのなら同意がないなりの声のかけ方、配慮の仕方が大事なはずなのに、本人をどうにかして出そうという焦りが先走ってしまったのかもしれない。

「たとえば、身体のチェックで『体調とか気になるところはありますか?』など、声かけ1つでもいいと思う。ゴミが捨てられていないのであれば、『ゴミ捨て手伝いますよ』とか『体がしんどいんじゃないですか?』とか、サインが出ている。生活面と身体面での困り事は、チャンスでもあるんです」(同家族会)

 とはいえ身体面の困り事は、本人が声を出せなければ周囲にはわからない。しかし、本人にとって安心できる関係性や環境が構築されていなければ、声を上げることなどできないだろう。

 引きこもる人たちの特性の1つは、あらゆる感情のエネルギーが自身の中に吸収され、内省化されていくことだ。冒頭の40代男性も、痛みは相当なものだったであろう。それでも、我慢に我慢を重ねることでエネルギーを使い果たしていたのか、ついには「もう我慢できない!」と叫び声を上げたのではないかと想像する。

 家庭訪問などの支援に「成果」を求めてしまうと、声を上げられないような本人や家族が置き去りにされていく。

本人の意思に合わせて
寄り添うことの大切さ

 こうした調査から伝わってくるのは、本人の意思や気持ち、タイミングに合わせて、周囲で支援する側が一緒に寄り添っていくことの大切さだ。

 自治体の151相談窓口の調査では、「ひきこもり支援において、現在は実施していないが、必要性を感じている支援内容」の最終集計を見てみると、「本人の居場所」が56%と最も多かった。次に「家族会・家族教室」(33%)が続き、「ピアサポート」(30%)、「インターネット相談」(17%)、「同行支援」(17%)という傾向は、1月の中間報告時と変わらない。

 一方、「家庭訪問」は16%、「宿泊型施設」はわずか6%にとどまった。

「支援者が訪問に行って、会えなくてもいい。がんばって何とか会おうとするのではなく、会えないことを感じながら、支援者のペースではなく、本人のペースを感じてほしい」

 そう家族会スタッフは言う。

 本人が行きたいと思ったときに、行ってもいい場所がある。そんな地域づくりが、これから求められている。

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。

otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)
http://diamond.jp/articles/-/125454


 


2017年4月20日 早川幸子 :フリーライター
貧困転落への第一歩「医療費の申請忘れ」はあなどれない


 貧困に陥った原因を探っていくと、最初は些細なことがきっかけだったりする。そのひとつが、「病気やケガで医療費がかさんだ」というものだ。

 Aさん(55歳・会社員)は、急性心筋梗塞で倒れて入院。手術で一命を取り止めたものの、その後も入退院を繰り返すことになった。

「狭くなった心臓の血管を広げる手術を3回受け、その都度、病院の窓口で50万〜60万円の医療費を請求されました。仕事も辞めざるをえなくなって、気がついたら300万円あった貯蓄が底をついていたのです」

 なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。

 実は、Aさんは、健康保険に「高額療養費」という制度があることを知らなかったのだ。

高額療養費を申請すると
自己負担は9万円に

 医療を市場原理に任せる部分が大きいアメリカとは異なり、日本の医療制度は公的な保険で運営されている。有効性と安全性が科学的に証明された治療には健康保険が適用されており、誰でも少ない自己負担で治療を受けられるようになっている。

 健康保険が適用された治療費(保険診療)は、診療報酬と呼ばれており、全国どこで治療を受けても一律の価格に設定されている。診察や検査、手術、入院費にいたるまで、すべての診療行為の価格は一つひとつ決められており、その患者に行った治療内容を積み上げて医療費を計算する。ただし、患者の体調や病気の状態によって、実際に行われる治療内容には若干の違いが出るので、同じ治療を受けてもまったく同じ価格にはならない。

 Aさんが受けた心筋梗塞の手術も保険診療で、1回の入院にかかる医療費の目安は約187万円(全日本病院協会「疾患別の主な指標」(2013年1〜3月)」。

 これは医療費の総額で、窓口で患者が負担するのは年齢や所得に応じて、このうちの1〜3割。55歳のAさんの自己負担割合は3割なので、50万〜60万円程度だ。

 さらに、健康保険には医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した「高額療養費」という制度ある。これは、1ヵ月に患者が自己負担する医療費に上限を設けたもので、現在、70歳未満の人の限度額は所得に応じて5段階に分類されている。

 一般的な所得(年収約370万〜770万円)のAさんの限度額は、【8万100円+(医療費−26万7000円)×1%】。心筋梗塞の手術を受けて1ヵ月の医療費が187万円だったAさんの場合は、【8万100円+(187万円−26万7000円)×1%=9万6130円】が自己負担限度額だ。

 つまり、本来187万円かかっている医療を、健康保険があるおかげで、9万6130円で受けられるということだ。

 治療がもっと長引いて、直近1年間に高額療養費が適用された月が3回以上あると、4回目からさらに限度額が引き下げられる「多数回該当」という制度もある。一般的な所得の人は、4回目以降の限度額は4万4400円になる。

 ところが、Aさんは高額療養費を利用できることを知らなかったため、窓口で50〜60万円の医療費を支払ったままになり、貯蓄を食いつぶしてしまったのだ。

せっかくのおトクな制度も
申請しないと利用できない!

 健康保険をはじめとした社会保険は、国民を貧困に陥らせない「防貧機能」を備えているので、制度を正しく利用すれば、社会で起こるさまざまなリスクから自分の身を守ることが可能になる。

 ただし、こうした制度は原則的に申請主義だ。

 高額療養費の対象者には、加入している健康保険組合が「お知らせ」を送ってくれるところが増えているが、せっかくの制度も書類に記入して申請しなければ、利用することはできない。

 その結果、Aさんのように申請できるのに、申請し忘れて損している人がいまだに存在するのだ。

「申請しなくても医療機関の窓口で高額療養費の手続きをしてくれればいいのに」と思うかもしれないが、医療機関は健康保険証を見ただけでは、5つに分類された患者の自己負担限度額は分からない。

 そのため、いったん窓口で1〜3割を負担したあとで、患者自らが高額療養費を申請して、限度額を超えた分のお金を払い戻してもらう手続きが必要になるのだ。

 ただし、現在は、高額療養費の所得区分を証明する「限度額適用認定証」を医療機関の窓口で提示すると、払い戻し手続をしなくても、最初から限度額のみを支払えばよくなっている。

 限度額適用認定証は、加入している健康保険組合で発行してもらえるので、入院することがわかっている場合は事前に入手しておくといい。

 高額療養費の申請期限は、診療を受けた月の翌月1日から2年間だ。たとえば、2017年4月20日に診療を受けた場合は、2019年5月1日までが申請期限になる。

 過去2年の間に医療費が高額になったのに、高額療養費の手続きをしていないという人は、申請できるかどうか健康保険組合に確認してみよう。

保険料を払った分だけ
メリットある社会保険

 高額療養費のほかに、もしもAさんが知っていれば貧困に陥ることを防げたかもしれない制度が、健康保険の「傷病手当金」だ。

 通常、会社員が体調を崩したりして会社を休む場合は、年次有給休暇を利用することが多いはずだ。付与されている有給休暇の日数は勤続年数によって異なるが、最大で年間20日間だ。

 病気やケガをして、有給休暇を使い果たしてしまうと欠勤になるため、「もう会社にいられない」と早まって会社を辞めてしまう人もいる。

 だが、会社員が病気やケガをして仕事を休んで、会社から給与をもらえなかったり、減額されたりした場合は、健康保険から傷病手当金をもらうことができる。1日あたりの給付額は、標準報酬日額(1ヵ月の給与を30日で割った額)の3分の2で、会社から給与が支払われていても、この金額に満たない場合は差額を支給してもらえる。

 給付期間は、病気やケガで3日連続して休んだあとの4日目から、最長1年6ヵ月の間に実際に仕事を休んだ日数だ。この制度があることを知っていれば、Aさんは慌てて会社を辞めることもなかったはずだ。

 貯蓄を使い果たすこともなく、傷病手当金の給付を受けながら病気療養をして、体調が戻ったら仕事に復帰することもできたかもしれない。

 ほかにも、Aさんが貧困に陥った原因としては、「助けてくれる家族や友人の存在がなかった」「病気が長引いてしまった」など複合的な要素も考えられるが、健康保険の制度を知らなかったことも大きな原因であることは間違いない。

 本来なら使える制度の存在を、ただ「知らなかった」というだけで人生が大きく変わるということもある。

 毎月、給与から天引きされている健康保険料の数字を見ると、「高いなぁ」と思うかもしれない。だが、その金額には、病気やケガをしたときに3割負担で受診できるというメリットだけではなく、大きな病気やケガをしたときの治療費や所得保障も含まれている。

 保険料はただ取られるだけのものではなく、払った分だけメリットも受けられる。いざというとき、自分が加入している健康保険からはどのような保障を受けられるのかをきちんと把握しておきたい。

 高額療養費や傷病手当金に限らず、「知らなかった」というだけで損してしまうことは、世の中にたくさんある。国の制度は、誰もが平等に利用できるのが理想ではあるが、個人の知識の有無によって実際の保障が左右されている部分もある。

 制度を提供する側の意識改革も必要だが、今を乗り切るためには「知らなかった」で損しないように、国民も制度の内容を知っておくことが大切だ。それが、いざというとき、自分や家族が貧困から守るに陥ることを防ぐ知恵になる。

(フリーライター 早川幸子)
http://diamond.jp/articles/-/125451


http://www.asyura2.com/12/social9/msg/783.html

[社会問題9] 男性には分からない専業主婦の底なしの「不安」とは  女性が社会で活躍するための「家庭と社会のつながり」 
男性には分からない専業主婦の底なしの「不安」とは
女性が社会で活躍するための「家庭と社会のつながり」
2017.4.20(木) 篠原 信
「家庭」を無視しては、女性の社会進出は果たせない。
 女性の社会進出を促進する政策が叫ばれているが、私たちは「家庭」をどのようにとらえるべきだろうか。

 日本では男性が「専業主夫」になるケースは少ない。そのためか、男性は“家庭が果たす社会的機能”にかなり無頓着だ。いまだに「女性は家庭に入るべき」と考える男性は少なくない。

 果たして、女性はどのような生き方を強いられているのだろうか? まずはその心理を分析することで、女性が社会で活躍する中での「家庭」のあり方が見えてくるかもしれない。

「できて当たり前」と見られる家事

 女性が専業主婦になる場合、「宇宙空間に放り出されたような感覚」に襲われるという。

 それまでの人生では学生、あるいは社会人として、社会と直接つながりを持って生きてきた。ところが専業主婦になると「○○さんの奥さん」「○○君のママ」と、自分の名前を呼んでもらえない。間接的にしか社会とつながれないのだ。社会とのつながりを断たれ、不安になる。

 学生や社会人の間は、勉強なり仕事なりを頑張ることで誰かが評価してくれる。しかし、専業主婦には夫か子供しか評価者がいない。しかも仕事内容は料理や洗濯、掃除といったルーチンワーク。できて当たり前、という評価しかもらえない。女性は自分の存在意義を確かめることが甚だ難しくなる。

 専業主婦の仕事、すなわち家事は、食品メーカーで言うなら品質管理の仕事に似ている。食品に毛やハエなど異物混入のない実績を10年積み上げても誰も褒めてくれないが、ハエが入ったとなれば猛烈に批判される。メーカーの信頼を支える基盤的な仕事なのに、評価してもらえないという点で似ている。

 あるいは、鉄道の保線の仕事にも似ているかもしれない。線路に歪みがないか深夜にチェックする仕事は、車掌や運転手と違って地味で目立たない仕事だ。10年無事故でも誰も誉めてくれないが、もし線路の歪みで事故が起きれば、責任を徹底的に追求される。最重要なのに評価されにくい仕事だ。

 社会人として働いてきた女性にとって、専業主婦は大いに戸惑わせる仕事だ。会社の業務は上手になってくれば誰かが評価してくれる。しかし料理や洗濯、皿洗いはできて当たり前、しかも「賽の河原」のようにキリがない。積んでも積んでも鬼に崩される石積みのように、家事は同じことの繰り返し。誰も評価してくれないことに当惑する。

 社会的つながりが切れてしまうのも問題だ。学生や社会人として築いてきたつながりは、結婚して専業主婦になるとほとんど切れてしまうことも多い。見知らぬ土地の家の中で1人だけ、ポツンと。しかも、「○○さんの奥さん」というフィルターが邪魔して、社会と直接つながれなくなる。

 人は、誰かとつながることで自分の居場所を確認し、自分の価値を確認する生き物。ところが専業主婦になると社会的つながりが断ち切られ、夫を通じてのつながりしかなくなる。もし夫が無理解な人間だと、女性は自分の位置と価値を確認できなくなる。「無重力状態」に浮遊する不安な状態となる。

 宇宙飛行士となる妻のため、「専業主夫」になる道を選んだ山崎大地氏は、女性が専業主婦になって苦しむのと同じ心理状態に陥ったようだ。妻の夢を支えるために自ら専業主夫になったはずなのに、これまでに培った社会とのつながりが断ち切られ、精神的に不安定になったという。

 ご近所やママ友との付き合いの形で社会とのつながりを形成できたとしても、社会人としてバリバリ仕事をしてきた人の場合、果たして社会に貢献できているのか不安になる。精神的安定を確保するのは容易ではない。こうしたことを男性は理解しているだろうか?

休みのない育児

 育児というのも、社会人経験のある女性を戸惑わせる。学生や社会人の間に「頑張れば誰かが評価してくれる」という成功体験を積んでいる。しかしどれだけ頑張っても子どもは泣きやまず、寝てくれず、そばを離れようとしない。これまでの成功パターンが通じない。

 学校や仕事には休憩がある。しかし家事と子育てに休憩はない。子どもは朝から夜までくっついて離れない。朝が来たと思ったら昼食の準備、子どもをあやしているうちに夕食の準備。泣いたりわめいたり知らぬ間にケガしたり。気が休まる時間がない。勉強や仕事でのやり方が通じない。しかも、誰もほめてくれない。

 社会とのつながりを断たれ、自分の位置と価値を確認しづらい専業主婦という特異な環境は、精神的代償を求める心理に陥らせがち。グチっぽくなったり、子供の成長に自分の全存在を賭けてしまって、子供からも疎まれるほどになったり。何かに依存せずにいられなくなってしまう。

 グチっぽさや子供への過度の介入・依存は、これまで女性の性質のように捉えられたが、そうとは言い切れない。専業主婦と同じ社会的孤立状態に追いこまれれば、「専業主夫」になった男性も耐えきれなくなるだろう。

 女性が結婚、出産後も社会とのつながりを維持・構築し続けることができるならば、女性の精神状態を健やかに保ち、ひいては子どもの発達にも家庭の円満にもつながるだろう。その意味で女性が社会進出することは、精神衛生上も有益だろう。

 ただし、家事や育児を男性が担当するにしろ女性が担当するにしろ、「誰も誉めない」「社会的つながりが断たれる」「育児に休憩がない」という課題はそのまま残されたままだ。この課題を置き去りにして、「働き方」を改善することはままならない。

 家事・育児は極めて重要な仕事であり、家庭が果たす重要な機能だ。しかし家庭の中の仕事は「誰も誉めない」「休みがない」「社会的つながりが断たれる」という状態を現出しやすく、学生や社会人の成功体験が通じない仕事でもある。その事を無視して社会進出ばかりを促進しようとすると、花ばかり見て根を腐らせるようなことになりかねない。

 家庭は社会の根っこだ。家事育児をどうとらえるか、社会自体がしっかりと見据えないと、「働き方」は見えてこないだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49743
http://www.asyura2.com/12/social9/msg/784.html

[医療崩壊5] 地方に行きたい医師を拒む"ブラック組織"の罪  厚労省の最新調査で明らかになった日本の問題点 
地方に行きたい医師を拒む"ブラック組織"の罪
厚労省の最新調査で明らかになった日本の問題点
2017.4.20(木) 森田 知宏
抗生物質の長期摂取、結腸ポリープと関連か 研究
患者のために用意された抗生物質。中国・北京の病院で〔AFPBB News〕
 4月6日、「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」の結果が発表された*1。これは、医師の勤務時間に加えて、勤務地の希望などを詳細に聞いたもので、全国の医師10万人を対象に配布し、1.6万件の回答があった。

 その結果、医師の約半数が地方での勤務意志があることが明らかになった。特に50代以下では、51% (5449/10650)が地方での勤務意志ありと回答した。

 この「地方」の定義は、「東京都23区及び政令指定都市、県庁所在地等の都市部以外」であり、日本の人口の約6割を占める。

 大規模な設備が必要な先端医療や希少疾患の医療は都市部でしか成立しないことを考慮すると、基本的な医療が日本中で提供できることを目標にするならば、十分な数の医師が地方での勤務を希望としていると言える。

医師の流動性を阻害する医局人事

 つまり、医師が希望どおりに勤務地を選ぶことができるならば、地方の医師不足は緩和される可能性がある。では、何がその希望を阻むのか。

 今回の調査では、地方勤務を希望しなかった医師に対して、その理由を聞いている。それによると、全世代を通じて仕事内容、労働環境という回答が多い。加えて、20代の3位、30・40代で5位となった理由が「医局の人事等のためキャリア選択や居住地選択の余地がないため」であった。

 私が注目したいのはここだ。地方の医師不足解消には、医師の流動性を高めることが解決策になる。しかし、医局がその流動性を妨げている可能性がある。

 医局とは、大学の教授を頂点とするピラミッド型の組織である。もともとは、医局は関連病院に医師を派遣するため、一定の流動性を保つ役割を果たしていた。これを根拠に、医局関係者は「医局が地域医療を支えてきた」と主張する。

 しかし実際には、溜め込んだ医師の運用は非効率で、ダブつかせることが多い。その象徴が、医局の本丸たる大学病院だ。このことは、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」座長の渋谷健司先生の投稿*2にも描かれている。

 「大学付属病院での臨床実習に参加した時、私は衝撃的な光景を見た。それは、60代の医者が慣れないオペをし、その横で30代半ばの油が乗った医者が、人工心肺を冷やすために、ただひたすら氷を割る作業をしていたことだ」

*1=http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000160954.html

*2=http://www.huffingtonpost.jp/kenji-shibuya/doctor_work_life_balance_b_15857308.html

 このような、若手医師がする臨床業務と無関係の作業は、患者の車椅子を押す、入院した患者の常用薬のリストを作る、など現在でも枚挙にいとまがない。その原因は、医師が多すぎるからだ。

 医局は、医学生を在学中から勧誘できる。だから、人件費を抑えても大学病院には医師が入ってくる。とはいえ、医師が増えても患者が増えるわけではないから、臨床業務に関係ないような仕事を割り振ることになる。

 民間病院ではこうはいかない。特に昨今は医師・看護師の調達コストが上がっているため、これらの業務を他の医療職で分担するのが普通だ。

 例えば宮城県の仙台厚生病院では医療クラーク(医療事務作業補助者)の活用を進め、千葉県の亀田総合病院では臨床検査技師や薬剤師など、ほかの医療職を柔軟に運用して病棟業務で活用する、などの工夫を行っている。

効率経営と医師の成長を促す地方病院

 極端な話、外科医ならメスを、内科医ならカテーテルや内視鏡を、いかに長い時間持たせることが、医師の生産性を挙げることにつながり、ひいては病院の経営上も必須の命題である。

 近年、このような傾向は変わりつつあった。上記のような事実が知られるにつれ、効率よく臨床経験を積みやすい医局を選ぶ医師や、医局に入らずに研鑽を積むような医師が増加したからだ。

 2008年の初期臨床研修制度必修化を契機に、民間病院が積極的に情報発信を行うようになったこともあり、民間病院の中には症例数が多く若手医師でも豊富な研修を積める施設があることが知られるようになった。

 若手医師のキャリアが多様化したため、自大学の卒業生をただ取り込んでいた医局は、いまや「選ばれる存在」だ。魅力的な研修先を集める医局には今でも医師が集まるし、そうでないところは閑古鳥が鳴く。

 この時代の変化に気づかない医局はブラック化している。

 例えば、九州の某大学では、在学中に医局へ入ることを在学生に「強制」する診療科がある。そんな取り決めに意味はないし、そんな不自然なルールの押しつけがある時点でブラック臭がするが、社会経験のない学生は従ってしまう。

 そのうえで、年に1度の納会では医局から抜け出た医師の名前を挙げて吊るし上げる。辞めた当人は当然欠席しているし、痛くも痒くもないのだが、その場にいる若手医師、学生への恫喝には十分だろう。

 「うちの医局を辞めて○○地方で勤務できると思うな」という言葉を言われた研修医もいる。こうなると、やっていることは反社会勢力と変わらない。

 それに輪をかけたのが専門医制度改訂だ。

 制度改訂によって、専門研修を行える病院の要件項目が増加し、地方の中核病院でも専門研修施設の資格を満たさなくなった。その中には、症例数も豊富で、臨床成績も高く、専門研修の場として若手医師のリクルートに成功していたような病院もある。

時代に逆行する専門医制度改定

 いわば、独自の販路を開拓して利益を上げている農家を、政府に圧力をかけて販路を潰そうとするようなものだ。

 日本専門医機構の吉村博邦理事長は、「地域医療への配慮を分かりやすく示す」と主張している。しかし今回の調査では、多くの医師、特に専門医制度で影響を受ける若手の医師が地方での勤務ができない理由に「医局」を挙げている。

 つまり、医局は地域医療を支える屋台骨ではなく、医師の地方流出を阻む組織である。必要なのは、配慮ではなく、医師の束縛をやめることだ。医局以外の多様な研修先こそが、現場医師の希望をかなえ、さらには地方での医師不足緩和につながる。

 専門医制度は現在、変更へ向けて突き進んでいる。全国市長会、全国自治体病院協議会、さらには署名活動も行われて、反対への声明が出されている。

 日本専門医機構は少し意固地になっているようだが、それは大人げない。今回の調査結果が、新しい専門医制度へどのように反映されるのか、または現場医師の意見など無視して突き進むのか、興味深く見守りたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49774
http://www.asyura2.com/16/iryo5/msg/601.html

[政治・選挙・NHK224] 日本の政治を衰退させる民進党でよいか、国政を担える政党への脱皮を期待 トランプとキムと核の誤算のリスク、米先制攻撃あるか
日本の政治を衰退させる民進党でよいか
国政を担える政党への脱皮を期待したい
2017.4.20(木) 森 清勇

http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/7/b/600w/img_7bf7d8396441eaf7367ae81a8a7d7168147278.jpg
【写真特集】北朝鮮、金日成主席生誕105年の軍事パレード
北朝鮮の首都・平壌で行われた軍事パレードに登場した戦車(2017年4月15日撮影)〔AFPBB News〕

 かつて現役自衛官として勤務していた時、必要があって米国の議会議事録を読む機会があった。与野党の議員たちが大陸間弾道弾(ICBM)や戦車など、軍の兵器・装備について共和党や民主党などの党派を超えて真剣に議論している姿勢に驚いた。

 同時にこうした議論が印刷されて公開されるのが民主主義国家であることも理解した。

 政治家たちにとっては、選挙民に対して、国家の安全保障について責任をもって議論しているから、安心して日々の業務に精励してほしいというメッセージにも思えた。

 議事録の処々に空白箇所が散見されたが、それはICBMのCEP(半数必中界:発射した弾頭の半数が落下する半径)や、新型戦車の有効射程と命中率など「秘」の部分で、いくらオープンを旨とする米国においても公刊文書では空白にせざるを得ない箇所であったのだ。

日本の安保論議は?

 翻って、日本の安全保障論議はどうであろうか。一昨年の安保法案の国会審議を振り返るのも「嫌になる」くらいお粗末であった。お粗末というよりも論戦になっていなかった。

 「先生と言わるほどのばかはなし」というのが一時期流布したことがあった。安保審議を観た限りではさもありなんと思った国民も多かったのではないだろうか。

 国会論戦では、大臣は質問された事項だけに短く答弁する仕組みとなっているそうである。質問者は議論の進行よりも、法案阻止を目標としているために、国民に分かりやすい議論に持っていくどころか、混乱をもたらすような答弁を引き出し、進行を妨げようとする。

 主務大臣が所掌柄、国民の理解を得るように詳しく答弁すると、野党の質問者は「そんな答弁は求めていない」「(質問時間が少なくなるので)短切にお願いしたい」と必ず注文をつける。注文つける時間がもったいないと思えるくらいである。

 安保法制が成立し、内閣改造で離任することになった時に記者会見でみせた中谷元防衛大臣の顔が忘れられない印象として残っている。主務大臣でありながら国民の納得を得るような十分な論戦ができなかった慙愧の念の様であった。

 大臣の答弁力量というよりも、質問者が近未来に想定されるかもしれない諸々の脅威から目をそらし、憲法論議に持ち込み、神学論争に終始したため、真に必要である法案であるにもかかわらず、国民の理解を十分に得られなかったからに違いなかった。

 当時も脅威は存在したが、今ほど顕在化はしていなかった。今ではだれの目にも明らかなように眼前に顕在化した脅威が存在する。

 立法の責任ある議員は脅威が顕在化してから、不足の立法を考えるようでは失格であろう。議員たちには国際情勢を先見洞察する眼力が求められている。

 国民から匙を投げられた民進党(支持率が1桁で、しかも下がり気味)に、万一名誉挽回のチャンスがあるとするならば、それはテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の審議ではなかろうか。

 単なる審議時間の消化や廃案のための行動となってはならない。国際社会ではテロ等に関する情報の共有が進んでおり、日本だけが例外であってはない。そのためにも、対案を提示し、テロ等の防止に効果的な法案に仕上げる必要がある。

 しかし、民進党の山井和則国対委員長は、「1億総監視社会をつくりかねない危険極まりない法案だ」と会見で語っている点からは、期待できそうもない。安保法案を「戦争法案」と公言してはばからなかった党の嘘つき体質で「国民を撹乱する作戦」の再現にしか映らない。

 なぜ反対のための反対しかしないのか。提案型の党に脱皮すると語った蓮舫代表の発言自体が嘘だったということだろうか。ただ代表に選出されたいだけの宣伝戦でしかなかったのだろうか。

民進党は議員の烏合党か

 民進党の中では保守的な見解の論客であった長島昭久氏が離党を決意したが認められず、除籍処分になったことが波紋を広げている。筆者が関係する防衛関係団体の新年会で氏と立ち話をしたのは去る2月のことであった。

 当時は南スーダン派遣部隊の日報に「戦闘」という用語が使われている問題で騒いでいた時期であった。参会者の多くが思っていたことであろうが、「選挙区事情があるのは重々承知しますが、選挙で共産党と連携する民進党では居づらいのではないでしょうか」と問いかけた。

 もとより確たる返事を期待したわけではなかったし、当人も答えづらかったであろうが、期せずして今回の行動が答えであったようだ。

 少なくとも、民主党は3年余にわたって政権党であった。日米同盟の米国とも同盟の深化を掲げて政権運営を行ってきたし、安全保障が国家運営の基幹的重要事であることは悟ったに違いない。

 そうであるにもかかわらず、先の安保法案審議では当初に対案を出すこともせず、議論らしい議論もしなかった。

 政権を担った経験を有する野党代表として、他の野党にも責任ある野党として行動しようではないかと声をかけ、牽引するどころか、某野党に引っ張られ埋没してしまった感じである。

 政治家を職業とする人士に求められる資質は「情熱・責任感・判断力」であるといったのはマックス・ヴェーバー(『職業としての政治』)である。情熱とは現実問題への情熱的献身であり、「不毛な興奮」をもたらす精神態度ではないとあえて言及している。

 ヴェーバー流に言えば、安保論戦時に野党が繰り出した憲法論議は「知的道化師のロマンティシズム」ということになり、「仕事に対する一切の責任を欠いた態度」であったということになるであろう。

 「すぐ隣りの毒殺国家」(『WiLL』2017年4月号所収)が、脅威の牙をむき出しにしている。韓国国防省は「北朝鮮がサリンや猛毒の神経剤VXなどの化学兵器を2500〜5000トン保有している」(「産経新聞」平成29年4月14日)とみている。

 日本政府は従来、北朝鮮が「生物・化学兵器について、一定の生産基盤を有している」とみていたが、脅威の度合いははるかに高いし、また差し迫ったものになっている状況を示している。

 健全野党か、それとも最大野党ではあるが日本の安全など眼中になく、ただ国会議員として議席を守りたい虚栄心と利己心だけが横溢していて、日本の破壊を目論む共産党とも野合する議員の烏合党であるか、いよいよ判然とするだろう。

 長島議員の離党に続き、細野豪志代表代行が党執行部は憲法改正に消極的であるとして代表代行を辞任した。

 国会議員として、日本の家族制度や教育、安全保障などに情熱を持ち責任感を持つならば、今の民進党では叶えられないのではないだろうか。それは、安保法制についての論戦でいやというほど感じさせられたし、テロ準備罪論戦で再現フィルムを見せられようとしている。

公正と信義を信頼して

 日本(日本人)は憲法の前文にあるように、恒久の平和を念願し、「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して」「われらの安全と生存を保持しようと決意」し、率先して第9条に書くように侵略戦争は放棄し、このための軍隊は保有しないし、このための交戦権も認めないとしている。

 日本は中国人を筆頭に、このように平和を愛する諸国民とみなして多くの外国人を受け入れている。しかし、寺院から仏像を盗み、靖国のトイレに爆発物を仕かけ、明治神宮の柱などに油をかけて汚損する外国人はこうした条件を満たさない者であり、こうした人物の属する国が公正や信義を持ち合わせているとは思えない。

 同じく前文は「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と書き、また「主権を維持」するのは各国の責務であるとも書いている。

 日本が歓迎するのは、どこまでも良質の外国人である。日本に敬意を表し、また日本の主権を尊重する国からの来日者である。仏像を盗んだり、神社仏閣を汚損するような外国人はまっぴらだ。

 ましてや、国民に死傷を負わせたり、テロ行為をする人物などを受け入れてはならない。テロ準備罪は、しっかり議論したうえで一刻も早く成立させなければ、日本人がテロに巻き込まれる頻度が高くなり、最悪の場合は日本がテロの温床に成らないとも限らない。

 日本は国際社会との共生を強調するが、いまや日本への脅威の主体にもなっている北朝鮮制裁に関して国連が定めた物資さえ押さえることができない法の不備が指摘されている。

 多数の国会議員がいながら、何たる不様かと言いたい。

安全保障を外国に依存する愚

 英国の外務大臣であったパーマストン子爵は、「英国には永久の敵も友人もいない。ただあるのは国益のみである」と語っている。歴史に照らせば、至言であることが分かる。

 日英同盟で日本は日露戦争に勝利したが、ワシントン会議で同盟を破棄させられ、米英を敵に回して大東亜戦争を戦った。敗戦後は東京をはじめとした都市の無差別爆撃と原爆2個を投下して一般市民を大量殺戮した米国と同盟を結び、現在に至っている。

 米国の初代大統領であったジョージ・ワシントンは、「外国の純粋な行為を期待するほどの愚はない」と言っている。

 日本は核兵器を保有し、また持つ意志を明確にしている国に囲まれながら、米国に安全保障の大部を依存している。特に核戦力に関しては米国の拡大抑止に完全依存である。

 しかも、日本が頼りにしている米国は、北朝鮮の核・ミサイルにようやく血眼になりだしたが、それはトランプ政権が直接的に米国への脅威と感じ始めたからである。

 それまでは米国の領土(グアムやハワイなども含む)にICBMが飛んで来ることはないと思っていたからであろうが、北朝鮮のテロ支援国家指定も外し、中国が提供しているとみられてきた抜け道にも注文の一つもつけたことがなかった。

 北朝鮮のICBM開発・装備が懸念され、米国の領土が危険に曝されるという段階になって、初めて米国が動き出したという認識が重要である。

 このことは何を意味しているか。日米同盟が存在しても、同盟国である日本の安全はさほど真剣には考えていなかったという厳然たる事実ではなかろうか。

 実際、日本は何年も前から、ノドン(射程約1300キロ)やムスダン(射程約2500〜4000キロ)などの射程範囲内である。それでも、米国はほとんど行動してこなかった。

 肝心の日本も米国頼りで、射程内にすっぽり入っている日本の安全が国会で議論された形跡もない。しかし、いまこそジョージ・ワシントンの言に照らして考えるべき時ではないだろうか。

 敵基地攻撃能力などがいまようやく議論に上がりはじめたが、スカッド(射程約300〜1000キロ)やノドンが配備された十数年も前に始めるべき議論であったのだ。

おわりに

 安保法案審議時もそうであったが、反対者たちは「平和を破壊する戦争法案」だと言い募り国民に反対を呼びかけた。この論理からは平和と戦争は対立関係にあることになる。

 しかし、平和と戦争は戦争抑止を中間に挟んで同一線上にあるという認識もあり得るのではないだろうか。

 真の平和は手放しで得られるものではなく、力で押してくるものがあれば、力で押し返す意志と能力を準備していなければ享受できない。すなわち戦争抑止力の準備であり、これに失敗した先にあるのが戦争であろう。

 こう考えると、平和を享受するためには「平和を叫ぶ」だけでは不十分で、戦争抑止力を準備することが不可欠であるという論理になるのではないだろうか。

 また何度でも言うが、蓮舫代表の国籍が国民の前に明示されない限り、民進党の支持率は下がることはあっても上がることはないであろう。

 日本の存亡を左右する政治家の、しかも野党第一党の党首である代表の国籍に疑問符がついているようでは、国民に信じてほしいといわれても信じられないのは当然であろう。

 民進党の参院幹部が「代表なのだから、もう少し天下国家を語ってほしい」(前掲誌)とコメントしたそうであるが、「日本」という天下国家を語れない裏事情があるのかもしれないと勘ぐられても致し方ないであろう。

 あり得ないような嘘をついたり、常人では考えられないような不正を働いても平然としているのをサイコパスというそうであるが、一私人では許されるかもしれない利己も、公人であり代表である蓮舫氏には許されないとみるのが当然ではなかろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49765


 


トランプとキムと核の誤算のリスク
緊迫する半島、米国の先制攻撃はあるのか?
2017.4.20(木) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年4月18日付)

金正恩氏、新型ロケットエンジンの地上実験を視察
北朝鮮軍第966大連合部隊の指揮部を視察する北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長。国営朝鮮中央通信(KCNA)配信(2017年3月1日配信、資料写真)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕
 1950年には、ワシントンでの軽率な発言と平壌(ピョンヤン)での誤算の組み合わせが朝鮮戦争の勃発につながった。今、朝鮮半島で新たな戦争が勃発する可能性について世界が熟慮する中で危険なのは、米国と北朝鮮の政府が再び計算を誤り、紛争に陥ってしまうことだ。

 多くの歴史家は、朝鮮戦争勃発の発端はディーン・アチソン米国務長官が1950年1月にワシントンのナショナル・プレス・クラブで行った講演にあったと考えている。長官はアジアにおける米国の「防衛ライン」について語り、朝鮮半島はその線の外に位置すると示唆した。

 平壌では、北朝鮮指導者の金日成(キム・イルソン)氏が、米国は韓国を防衛しないという明確な意味合いに留意した。5カ月後、北朝鮮軍は38度線を越えて南へなだれ込み、韓国を侵略した。

 しかし、金氏は計算を誤った。米国が戦ったのだ。朝鮮戦争は数十万人の死者を出し、米軍と中国軍の直接的な戦闘につながった――そして、いまだ正式に終わっていない。今日に至るまで、朝鮮半島の平和は正式な和平条約ではなく、休戦協定によって保たれている。

 アチソン長官が無関心を示唆したのに対し、ドナルド・トランプ大統領は決意を示している。米国は北朝鮮の核開発プログラムを阻止すると誓い、先制的な軍事行動に出る用意があると強くにおわせている。

 だが、今回もまた、北朝鮮が予測不能な形で攻撃に出る明確なリスクがある。

 北朝鮮の現指導者で、金日成氏の孫にあたる金正恩(キム・ジョンウン)氏は、祖先の軍国主義と孤立主義、そしてパラノイアを受け入れた。もし金正恩氏が米国は本当に自分の体制を攻撃する構えだと結論づけたら、最初に攻撃する気になるだろう。同氏が素早く動く動機は、米国の戦争計画には北朝鮮指導者を殺害する早期の試みが含まれているというメディアの報道によって一段と強まったに違いない。

 最近の軍事演習から見て取れる北朝鮮の軍事ドクトリンは、敗北や破滅を回避するために核兵器を先制使用することを想定している。学識経験者のジェフリー・ルイス氏は最近、フォーリン・ポリシー誌への寄稿で、次のように論じた。

「金の戦略は核兵器を早期に使用することに依存している・・・米国が彼を殺したり、特殊部隊が北のミサイル部隊を発見したりする前に使う、ということだ・・・やるのであれば、金は最初にやらなければならない」

 北朝鮮はまだ米国西海岸に届く核ミサイルは開発していないものの、韓国や日本を攻撃できる、核兵器が搭載可能なミサイルは恐らく持っている。北朝鮮との国境から55キロほどしか離れていない韓国の首都ソウルは間違いなく、破壊的な迫撃砲の嵐にさらされやすい。そして日本と韓国は、北朝鮮の化学兵器に大きな不安を抱いている。

 米国が北朝鮮攻撃を検討しているというトランプ氏の強い示唆は、中国に対し、朝鮮半島の従属国を「差し出す」よう圧力を加えることを意図している。この作戦は奏功するかもしれない。中国政府は北朝鮮での出来事をあからさまに警戒しており、北朝鮮政府への圧力を強めるかもしれない。

 一方、金体制が実は見かけの威張った態度からうかがえるよりもずっと怖気づいており、今後、核開発プログラムを凍結する可能性もある。

 だが、トランプ政権の好戦的な戦略が目的を果たすことは確かに考えられるものの、それよりは北朝鮮が引き下がらない――ひいてはトランプ戦略が失敗に終わる――公算の方が大きい。その場合、トランプ氏はジレンマに直面する。

 同氏の「非常に強力な大艦隊」は任務が完了しないまま朝鮮半島から引き揚げるだろうか。トランプ政権は、公に約束した非常に厳しい措置として、場合によっては中国とともに経済制裁の強化策を提示できるだろうか。

 トランプ氏は臆面もなく発言と方針を変えることができる。だから、北朝鮮問題について、トランプ氏がただ引き下がる、または本人がずっと求めてきた劇的な変化として現状を受け入れることは間違いなくあり得る。

 だが、その一方で、トランプ氏が北朝鮮への先制攻撃が実行可能な選択肢だと確信したという可能性もある。そのような結論は、標準的な軍の助言――1度の集中攻撃で北朝鮮の核プログラムを「抹殺する」のは不可能であり、それゆえ、そのような攻撃の後には、韓国と日本、アジア域内の米軍基地が報復の危険にさらされるとする助言――に真っ向から反することになる。

 米軍は、北朝鮮への先制攻撃に伴うリスクを十分に認識している。このため、H・R・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が、ベトナム戦争の最中に政治家に率直なアドバイスを与えなかったことで米軍幹部らを痛烈に批判する本を書いたことを思い出すと、心強くなる。

 これに対するリスクは、トランプ氏が――大統領として混沌としたスタートを切った後――、軍事行動こそが自分が有権者に約束した「勝つ」イメージのカギを握ると結論づける危険だ。大統領は、シリアを爆撃したことで得た超党派の喝采を享受した。シリア攻撃のすぐ後、トランプ氏はアフガニスタンに巨大な従来型爆弾を落とし、息子のドナルド・トランプ・ジュニアは――爆弾の絵文字付きで――歓喜をツイートした。

 トランプ大統領のインナーサークルには確かに、トランプ政権は本気で北朝鮮への「先制攻撃」を検討していると思っている人がいる。だが、もし金正恩氏が同じ結論に達したとしたら、先に核の引き金に手を伸ばすかもしれない。

By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49784
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/447.html

[政治・選挙・NHK224] 児童手当見直し議論18年度予算編成 科学技術投資、20年までに24兆円に 官民で35%増 6年ぶり貿易黒字リーマン前回復
児童手当見直し議論18年度予算編成
2017/4/20 20:47
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 政府内で2018年度予算編成を巡る社会保障改革の議論が始まった。20日の財政制度等審議会では、保育所増設の財源として、高所得世帯を対象に児童手当の支給を見直す案が浮上した。18年度編成では医師や介護事業者の報酬を決める診療報酬と介護報酬の改定も焦点となっており、財務省はできるだけ報酬を抑えたい考え。膨れる社会保障費の抑制には構造改革も欠かせない。

財政制度等審議会財政制度分科会で榊原会長(右)らが出席し社会保障改革などを議論した(20日、財務省内)
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財政制度等審議会財政制度分科会で榊原会長(右)らが出席し社会保障改革などを議論した(20日、財務省内)
 財制審が20日、社会保障改革の検討に着手。経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)でも医療・介護を一体的に改革して社保費抑制につなげる検討を進めており、6月にもまとめる「骨太の方針」や年末の予算編成に反映される見通しだ。

 20日の財制審でテーマとなったのが、待機児童解消に向けて保育所を増設するために必要な財源の確保策だ。中学生以下の子どものいる世帯に配る児童手当の支給基準の見直しを掲げた。夫婦子2人の場合、年収960万円未満に適用する所得制限があるが、所得制限がかかるはずの世帯にも月5千円を配る特例措置が設けられている。

 財務省はこの措置の廃止を検討するよう主張。そうすれば約500億円の財源が確保でき、この分を保育所など「保育の受け皿」の整備にあてる考えだ。いまの所得制限の基準見直しも検討する。現在は主たる生計者の所得だけで判定しているが、夫婦合算の所得に切り替える案などが出ている。

 18年度予算編成で改定が決まっている診療報酬や介護報酬も焦点だ。同時に改定するのは6年に1度。25年に団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となるなど、急速に医療・介護需要が増えるのを踏まえ、財務省などは改革に切り込む好機とみる。入院から在宅での医療に切り替えていくことは、制度の持続性を高めるのに不可欠だ。報酬の抑制だけでなく、地域医療のための医療・介護の連携を進める改定作業に導けるかも焦点だ。

 生活保護の支給基準の見直しも決まっている。財務省は医療費の扶助の適正化に取り組む考えだ。生活保護世帯の医療費は全額公費で負担する。これを踏まえ、一部で過剰診療や悪徳な事業者に薬を売り渡すといった事例がでている。

 児童手当の見直しや診療報酬などの改定だけでは社会保障費の抑制のための抜本的な解決にはなお遠い。財務省はかかりつけ医以外の病院に外来受診した場合に、少額の負担を求める新制度の導入を検討している。過剰に病院に通院することを抑制する狙いだ。

 ただ、政府・与党内には負担増の議論に後ろ向きな声は多い。年末に向けて財務省と厚生労働省や与党との駆け引きが激しくなる見通しだ。
 
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診療報酬、財政制度等審議会、厚生労働省、財務省

公社住宅で親子近居を支援、都が優遇 (2017/4/18 7:01) [有料会員限定]

「こども保険」自民若手ら公表 教育支援、社会全体で (2017/3/29 21:06)

年収300万円のシングル母 子供の大学進学は現実的? (2017/4/11 5:40)

世帯年収900万円夫婦の子育て 何人までなら大丈夫? (2017/3/2 5:40)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H58_Q7A420C1EE8000/


 

 

科学技術投資、20年までに24兆円に 官民で35%増
2017/4/20 19:40
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 政府は20日、2020年までに科学技術分野への投資額を官民合わせて24兆円に増やすことを目標とする方針を固めた。現在の約18兆円から35%増とする。安倍晋三首相が21日の総合科学技術・イノベーション会議で表明する。内訳は政府と地方自治体で計6兆円とする。民間企業には18兆円の投資を求める考えだ。

 安倍政権は20年までに名目国内総生産(GDP)を600兆円にする目標を掲げている。政府がその1%にあたる額を支出することを条件に、経団連の榊原定征会長がその3%にあたる18兆円の投資を民間企業で引き受けることを受け入れる構えだ。

 政府の17年度の科学技術予算は3兆5000億円で、20年までに4兆4000億円に増やす。地方自治体からの支出も現在の約5000億円から1兆6000億円に増やす見込みだ。現在、民間企業全体による科学技術分野への投資額は14兆円規模とされる。経団連を中心にこれをさらに4兆円増やすよう各企業に働きかける。

 文部科学省によると、日本の科学技術予算は海外に比べると低く、米国の4分の1、中国の5分の1以下という。GDPを増加させるのに合わせて、科学技術研究への投資を促進。国内の科学技術研究の環境を整備し、日本の研究者の海外流出を防ぎたい考えだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H5U_Q7A420C1EE8000/


 


6年ぶり貿易黒字、輸出増がけん引 リーマン前回復
2017/4/20 20:13日本経済新聞 電子版 
 中国や米国向けを中心に輸出の回復が鮮明だ。財務省が20日発表した3月の貿易統計速報によると、輸出額はリーマン・ショックが起きた2008年9月以来の水準を回復した。昨秋までは原油安や円高に伴う輸入の落ち込みで貿易収支の黒字を保ったが、年明けからは輸出の大幅な伸びで黒字を生み出す構図に切り替わった。

 黒字基調の定着で、16年度は東日本大震災が起きた10年度以来、6年ぶりに黒字となった。

 3月の輸出額…
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H40_Q7A420C1EA1000/

 
貿易黒字 6年ぶり 16年度4兆円、震災後で初
2017/4/20 10:43
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 財務省が20日発表した貿易統計速報(通関ベース)によると、2016年度の貿易収支は4兆69億円の黒字となり、年度末に東日本大震災があった10年度以来、6年ぶりに黒字となった。3月の輸出は前年同月比12.0%増の7兆2291億円で、リーマン・ショックのあった08年9月以来の水準だった。中国向けの液晶デバイスなどがけん引し、アジア向けの輸出額が過去最高を記録した。


http://www.nikkei.com/content/pic/20170420/96958A9E93819481E0E29AE3988DE0E2E2E6E0E2E3E59F9FE2E2E2E2-DSXZZO1552231020042017000000-PN1-8.png


 年度ベースの貿易収支は11年度から赤字が続いていた。東日本大震災で原子力発電所が停止し、火力発電所向けの燃料輸入が増えたためだ。16年度は原油相場の低迷と、対ドルで前年度比10%の円高になった影響で輸入額が減り、貿易黒字を回復した。

 16年度の輸出は前年度比3.5%減の71兆5247億円。米国やサウジアラビア向けの自動車、欧州向けの鉄鋼が減少した。輸入は10.2%減の67兆5179億円だった。マレーシアやカタールからの液化天然ガス(LNG)輸入額が減ったほか、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)からの原油輸入が減った。

 足元の3月は輸出が好調だ。中国向けは前年同月比16.4%増の1兆2995億円で、5カ月連続の増加。2月に春節(旧正月)休暇後の反動増があった分、減るだろうとの事前予想を覆し、過去2番目の水準になった。自動車部品や電気回路の機器などは4割増えた。中国向けに加えて、タイ向けの鉄鋼なども好調で、アジア全体では日本からの輸出額が過去最大となった。

 輸出は米国・欧州連合(EU)向けでも好調が続く。米国向けの輸出額は1兆3531億円と3.5%伸び、2カ月連続で増加した。日系企業の現地生産向け自動車部品や、原動機で2桁伸びた。EU向けはイタリアへの自動車輸出の伸びが寄与した。世界経済の追い風を受けて輸出に勢いがある。

 一方、3月の輸入額は前年同月比15.8%増の6兆6144億円だった。原油市況が底入れし、サウジアラビアからの原油輸入額が増えた。オーストラリアからの石炭の輸入額が増えたことも影響した。輸出額から輸入額を引いた貿易収支の黒字は17.5%減の6147億円だった。2カ月連続の貿易黒字だが、好調な輸出を上回る輸入の伸びで、黒字額は縮小した。

 16年度の対米の貿易黒字は6兆6294億円で、5年ぶりに減少した。大型車や鉄鋼などの輸出が減少した。トランプ政権は日本を多額の貿易赤字相手国の一つとみなす。日本から米国向けは、16年度通期で見ると自動車輸出が減り、足元ではトランプ大統領の意に沿う形で、現地生産向けの部品が伸びる構図だ。

 
G20、世界経済のリスク点検 財務相会議20日開幕 (2017/4/20 9:23)

米、対日FTAに意欲 経済対話、日本と溝 (2017/4/19 2:30) [有料会員限定]

米、対日貿易で農業分野を標的に 赤字縮小へ (2017/4/19 1:18)

ホンダ、中国で1割増の1000店超に SUV好調 (2017/4/15 0:56) [有料会員限定]

3月の工作機械受注額22.6%増 中国向け需要増える (2017/4/11 18:53)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS20H1J_Q7A420C1MM0000/

http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/456.html

[経世済民121] 年内ドル100円に導く3大要因 株高と低利回りはいつまでも続かない 大型物流空室率、首都圏6.5%、近畿17.4%高水準

FX Forum | 2017年 04月 20日 19:46 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:年内ドル100円に導く3大要因

亀岡裕次大和証券 チーフ為替アナリスト
[東京 20日] - 年初118円台だったドル円が108円台まで下落してきたが、要因は何だったのか。2月にかけて111円台へ下落した局面では、ドル実効為替が顕著に下落していた。トランプ減税・インフラ投資の規模に対する過剰な期待が後退したこと、トランプ米大統領が保護主義姿勢を強めてドル高に懸念を示したことが、米金利低下・ドル安に作用したからだ。

ただし、当時は米景気が回復基調を強め、米株価は上昇基調にあった。リスクオフ志向は台頭せず、クロス円の下落にみる円高進行は限定的だった。米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げした3月中旬には、利上げ加速期待から115円台を回復した。

その後、相場の様相が変わった。まず、FRBの利上げは加速せず、追加利上げが年内2回にとどまるとの当局者見通しが、米金利低下とドル安を招いた。そして、それまでは市場予想を上回るケースの多かった米経済指標が弱まり始め、米株価までもが下落するようになった。市場にリスクオフ志向が台頭し、ドル円だけでなくクロス円までもが下落し始めたのだ。

リスクオフに追い打ちをかけたのが、トランプ政権が医療保険制度改革で難航し、減税実施が大幅に遅れるとの懸念が台頭したことだ。さらには、シリアや北朝鮮情勢などを巡る地政学リスクの高まりが加わってドル円は108円台に下落した。

<米景気減速懸念でリスクオフの円高進行か>

つまりは、米景気回復の減速、米減税実施の遅れ、地政学リスクに対する懸念が、リスクオフ志向を生んでドル円を下落させた。ただし、トランプ大統領がドル高に懸念を示すなど、ドルにとってマイナス要因が相次いでいるにもかかわらず、4月のドル安(ドル実効為替下落)は緩やかだ。

一方、円高(クロス円下落)は加速している。仏大統領選の結果を警戒したユーロ安がドル安を抑制しているほか、リスクオフが対資源・新興国通貨を中心にドル高に作用しているからだ。そして、リスクオフがドル高以上に円高に作用しているため、ドル安よりも円高が主導してドル円が下落している。

ドル円相場は、リスク許容度、米保護主義、日銀量的緩和、の3点がカギを握るだろう。米10年国債金利は2016年11月以来の低水準に低下したが、米株価の反発は鈍い。米景気減速懸念があるために、金利低下が株高につながりにくいようだ。

トランプ政権は減税法案の年内成立を目指しているが不透明であり、減税の景気浮揚効果が表れる時期はかなり先になるとみられる。そうしたなかで、資産の目減り(株安)が個人消費を抑制し、米景気減速と株安が続きやすくなるだろう。

また、足元で中国の経済指標は堅調だが、秋の共産党大会を前にした公共事業拡大が一巡すると減速しやすく、世界景気の浮揚効果は限定的だろう。北朝鮮を巡る地政学リスクもすぐには後退しにくい情勢だ。仏大統領選でマクロン氏が当選すればユーロ安リスクの後退でリスクオンに振れるだろうが、長くは続かないだろう。リスクオフが一段とドル円下落に作用するのではないか。

<米国の円安けん制で円高に動く可能性>

では、米保護主義が為替に与える影響はどうか。米国は巨大な貿易赤字の縮小に向け、2国間通商交渉で米国に有利な条件を引き出そうとしている。トランプ大統領は、90日間で相手国ごとに貿易赤字の要因を特定するように商務省と米通商代表部(USTR)に指示する大統領令を出した。トランプ大統領は「ドルが強くなりすぎている」との懸念を表明しており、相手国によっては為替水準が米貿易赤字の一因とみなす可能性がある。

ムニューシン米財務長官は、「短期的にはドルの強さが輸出に打撃となる」との大統領の見方に同意しつつ、「長期的にはドルの強さは良いこと」としている。ドル高が抑制されて貿易不均衡が是正されることで米国経済とドルが強くなることが望ましいという意図ではないか。

米国は貿易赤字要因として、為替の「操作」よりも「不均衡」を重視しているとされる。2国間通商交渉で相手国に市場開放やダンピング解消を要求するほかに、相手国通貨の安さを問題視して指摘する可能性がある。4月の米財務省・為替報告書では為替操作国の認定はなかったが、前回(16年10月)と同様、中国、日本、韓国、台湾、ドイツ、スイスの6カ国が監視対象国に指定された。日本については、「円が高すぎるという証拠はほとんどない」「円の実質実効為替は過去20年間の平均に比べて20%安い」という文言が新たに加えられた。

実質実効為替を過去20年平均比でみると、ユーロは10%安く、ドルは10%高い。また、主要27通貨の実質実効為替について過去20年平均比をとると、高い方から、人民元1位、スイスフラン7位、ドル12位、ウォン13位、台湾ドル16位、ユーロ20位、円25位と、円の安さが際立つ。米国が適正水準よりも安いとみなす通貨の1つに円が入っている可能性は非常に高い。

人民元は中国当局が2005年以降、相場管理を弱めながら切り上げたために高いのであり、従前から完全な変動相場制にある他通貨と同列には比較できない。米国は今も人民元が対ドルで割安な水準にあり、米国企業が公正に競争できないと考えているようだ。

トランプ大統領はドル高に懸念を表しているが、貿易赤字要因を特定して2国間通商交渉に臨む段階では、相手国の通貨安や金融緩和をけん制する可能性がある。大統領は1月末に「他国は通貨安誘導に依存している。中国は行っているし、日本は何年も行ってきた」「他国は通貨供給量で有利な立場をとっている」と述べ、日銀などの量的緩和が通貨安要因との考えを示唆した。

米財務長官は4月の「ドルが強くなりすぎている」との大統領発言がドルの押し下げを狙ったもの(口先介入)ではないとする一方で、他国の為替介入が米国の利益になるのであれば為替操作とはみなさないと述べた。

米国は自ら通貨安誘導するつもりはないが、他国が通貨高誘導するのは好ましいとも受け取れる。米政権が為替に関連して日本にどのような要求をするかは不透明だが、円安や日銀緩和をけん制するような発言があると、米国からの円高圧力が意識されて円高に動くだろう。

<日銀量的緩和の縮小も円高要因に>

米国など海外長期金利の低下が日本に波及し、10年国債金利はゼロ%近くに低下した。日銀のイールドカーブ・コントロールは、長期金利の低下が進むと低下しすぎを防ぐために国債買い入れの減額につながるので、金利と量の両面から円高要因となりやすい。長期金利が低下しても円高を招く懸念から国債買い入れを減額しないと、イールドカーブ・コントロールではなくて為替コントロールの金融政策とみなされてしまうだろう。

日銀保有長期国債の年間増加額は緩やかに縮小しつつあるが、縮小が加速しやすい市場環境となってきた。米国からの圧力の有無にかかわらず、日銀の量的緩和ペースが縮小して円高に作用しそうだ。

米景気減速懸念などを背景に世界的にリスクオフ(株安・金利低下)に傾きやすく、景気を回復させる意味で米国の保護主義(円高圧力)が強まりやすいだろう。そして、米国の金利低下と保護主義は、日銀量的緩和の縮小を招きやすいだろう。リスクオフ、米保護主義、日銀緩和縮小という円高要因が重なり、年内にドル円は100円程度に到達する可能性がある。

*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)


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http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yuji-kameoka-idJPKBN17M0WB?sp=true


 

【コラム】株高と低利回りはいつまでも続かない−エラリアン
コラムニスト:Mohamed El-Erian
2017年4月20日 15:49 JST

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歴史的に見て引き続き低水準にある債券利回りと、相対的に高水準にある株価。米金融当局が金融緩和に動くとでも信じない限り、ますます折り合いをつけるのが難しくなっている現象だ。
  もっとつじつまが合って持続的な水準は、恐らくどこか中間にあると考えられる。それがいったいどこにあり、いつどのようにそこに到達するのかは主に地政学的影響と経済政策の効果とのバランスに依存することになる。

  政治的・地政学的な懸念材料にも動じることなく、株式市場は極めて強度の回復力を繰り返し示してきた。安定的な成長や中央銀行による景気てこ入れ、さらなる流動性投入を巡る市場に深く根付いた確信に依拠したものだ。地政学的な不安定さがあっても、企業利益や経済成長の改善見通しが埋め合わせになるとの判断がある。

  米国債市場の状況は異なる。10年債利回りはこのところ、昨年11月の米大統領選後に定着していた2.30−2.60%のレンジを下回って推移。地政学的な懸念に、低インフレや低成長を巡る心配が加わった。

  国債相場と株価が相反するシグナルを発するのはこれが初めてでなく、最後でもないだろう。さらに、こうした不整合と並んで、企業や消費者の景気信頼感の強さと、低調なままのハードのデータとの乖離(かいり)といったものも存在する。

  債券市場と株式市場からの相いれないシグナルに折り合いをつける唯一の方便は、米金融当局が新たな金融緩和に踏み切るとの予想だろうが、株価にも打撃を及ぼすような経済の深刻な落ち込みでもなければ、そのような可能性は極めて低い。

  一段と可能性が大きいのは、国債利回りが上昇して株価が下落することでつじつまが合うという帰結だろう。それが現実となった場合、債券市場と株式市場がどこに落ち着き、その過程がどの程度、秩序だったものとなるかは主に二つの要素の作用となるだろう。

  その要素とは、成長見通しにどれ程の地政学的な面からの悪影響があるかと、米国の政策の改革を通じ実際の成長と潜在的成長の見通しをどの程度向上させることができるかだ。投資家はしばらくの間、債券市場と株式市場との矛盾した状況がいつまで続くか、不安を募らせることになるだろう。
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:High Stock Prices and Low Yields Can’t Last: Mohamed A. El-Erian(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OOP2QG6S972901

 

首都圏の大型物流施設、3月末空室率6.5%
2017/4/20 20:55

 首都圏の大型物流施設の空室率が低下した。不動産サービス大手のCBRE(東京・千代田)によると、3月末時点の空室率は6.5%で、16年末と比べ0.3ポイント低い。低下は2四半期連続で、15年9月末(3.5%)以来の低水準だ。ネット通販の普及を背景に物流施設の需要が根強く、稼働率が高まる施設が増えた。

 複数テナントが使う前提でつくられた大型物流施設の稼働状況をCBREが集計した。東京湾岸エリアは空室率が5.5%と16年末から4.3ポイント低下。都心部に距離が近く、即日配送が必要な企業などの需要が強い。外環道や国道16号線周辺も空室率が下がった。いずれのエリアも賃料に大きな変化はなかった。

 圏央道エリアの空室率は19.8%と2.9ポイント上昇した。入居企業が決まらないまま完成した施設があったためで、首都圏の他のエリアとの格差が広がった。ただ「大規模テナントの引き合いもみられる」(CBRE)ため、今後は空室率が下がりそうだという。

 シンガポール系のグローバル・ロジスティック・プロパティーズ(東京・港)の帖佐義之社長は「機能性の高い大規模施設の需要は強い。当面は需給が引き締まった状況が続く」と話している。

 中部圏の空室率は8.5%と昨年末から5.9ポイント上昇し、14年9月末以来の高水準を記録した。近畿圏も新規供給が多く、昨年末比で6.0ポイント高い17.4%と09年末以来の高水準となった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ20H1Y_Q7A420C1QM8000/


 



http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/273.html

[戦争b20] 北朝鮮とシリアの「黒い連携」をアメリカが見過ごさない理由 サリン攻撃は北の代理実験 トランプの「変節」に戸惑う世界と日本
北朝鮮とシリアの「黒い連携」をアメリカが見過ごさない理由
サリン攻撃は北の代理実験だった!?
李 英和関西大学経済学部教授
プロフィール

警告は誰に向けたものだったか

今回の一連の北朝鮮を巡る緊張の発端が、4月6日夕方(アメリカ時間)、米中首脳の夕食会の最中に、アメリカ軍が行ったシリア空軍基地へのミサイル攻撃にあることは誰もが認めるところだろう。

この攻撃は、トランプ米大統領によれば、その直前、4月4日にシリア政府軍が自国内の反体制派支配地域に化学兵器「サリン」によると見られる攻撃を行い、多数の子供を含む88名の民間人が犠牲となった人道上の危機に対する警告的な行動であったという。また、米中首脳会談の主要テーマの一つ、北朝鮮の核ミサイル問題に対する牽制のメッセージであった、という解釈が報道の主流を占めている。

しかし、筆者は、これは間接的なものではなく、むしろ直接的な警告だったと強調したい。なぜなら、アサド政権のサリン攻撃については、金正恩体制の北朝鮮はいわば共犯といえる関係だからである。シリアは今回、北朝鮮の毒ガス兵器の代理実験を行ったものと考えられる。

シリアが化学兵器を使ったことだけではなく、シリアが北朝鮮由来の化学兵器を使ってみせたこと、これに関する何らかの確証を得たことが、アメリカのトランプ政権の対外政策を大きく変え、シリア空爆後、さらに北朝鮮に対し極めて強い態度を示すことにつながった。

つまり、今回の一連の緊張は、アメリカが、北朝鮮の大量殺戮兵器の開発が中東全域に拡散し、ひいては北東アジアで実戦運用の段階に突入しかねないことに敏感に反応していることによる。

そのことは日本の反応からもみて取れる。4月6日と9日に、安倍晋三首相はトランプ大統領と電話会談を行っている。この際、当然、直近のシリア問題が話題になっているはずだが、直後の13日に、安倍首相、菅義偉官房長官が、公式発言で表明したのは、北朝鮮によるサリンの大量保有と弾道ミサイルへの搭載能力への懸念が中心であった。

北朝鮮、シリア関与の来歴

シリアへの軍事協力国としては、旧ソ連・ロシア、イランなどが目立っているが、北朝鮮とシリアとの深い関係もまた、かなり以前から続いている。

両国の国交樹立は1966年であるが、73年の第4次中東戦争を機に軍事協力関係が深まり、北朝鮮は、戦闘機パイロット、戦車操縦兵、ミサイル要員をシリアに派遣した。さらに、90年代初頭には化学兵器をシリアに販売、90年代中盤にはサリン製造施設の設計と建設を支援した。

このようにして、シリアは化学兵器をかなり以前から保有してきたが、2013 年に化学兵器禁止条約に加盟したことで、約1300トンを申告して廃棄した。それでは、今回使用したサリンはどこにあったのか。

一つには、サリンを密かに隠し持っていた可能性が考えられる。だが、シリアの技術水準では化学兵器の長期保存が難しく、毒性効果を確実に維持するためには、新規に製造を続けて、毒ガス兵器の備蓄を更新する必要がある。

筆者が知り得た情報によると、北朝鮮がシリアの化学兵器製造設備、技術、原料などの供与に深く関与してきたことは疑いない。

NEXT ▶︎ 監視対象の不穏な動き

まだ報道されていない、最近2年間ほどの具体的事例を3点だけ紹介する。いずれも企業の形態をとっている北朝鮮の機関に関するものだ。

一つは、「朝鮮鉱業開発貿易会社」の動き。北朝鮮本国の兵器代表団が同シリア支社を数回にわたって訪問、化学兵器とスカッド・ミサイルの技術移転、そしてシリアの防空システム構築に従事している。

また、「富盛貿易」は、過去数年間、シリアの軍需機関「科学研究調査センター」にスカッド・ミサイルの関連物資を供給してきた。

そして、「端川商業銀行」のシリア支店は、職員をレバノン、ロシアに出国する回数が、目立って増えている。シリアに提供した軍事物資の代金を、国際監視下にある北朝鮮本国に送金するための資金洗浄を行っているものとみられる。

これらの北朝鮮機関は、以前から欧米が制裁対象として監視をしているものである。そこから得られた、これらの情報が、シリアの「サリン」使用の直後から、アメリカが北朝鮮に対する姿勢をより硬化させた根拠の一部となっている可能性が高い。

なぜ化学兵器に注力するのか

北朝鮮自体も、核ミサイル開発だけでなく、化学兵器の実戦運用に力を入れ始めている。

昨年秋、北朝鮮人民軍に生物・化学兵器の専門部隊が創設された。これは、約3000人の兵員で編成される連隊級の大部隊である。

さらに、筆者はその頃から奇怪な噂が北朝鮮国内に流れたという情報を得た。北朝鮮の秘密警察である国家保衛省が収監中の政治犯の内、精神病患者の家族に「患者との家族関係を絶つ」「もし死亡しても遺体の返還を求めない」という趣旨の同意書を書かせて集めている、というものだ。関係者は生物・科学兵器による人体実験を強く疑った。

そして、今年2月に、金正恩・労働党委員長の兄である金正男氏が、マレーシアで暗殺されたが、現地警察によると、その際、神経ガスの「VX」が使われている。国際的には、「兄弟暗殺」という異常さに注目が集まったが、化学兵器を実際に使用したテロ事件であることの方に重要な意味がある。

北朝鮮は、化学兵器禁止条約に加盟していないことから推察されるように、この兵器をかなり以前から開発、製造、保有していた。その保有量はすでに約5000トンにも達するとみられ、経年劣化した毒ガスは新規に製造して更新され続けている。

ただ、ここに来て化学兵器の使用に力を入れ始めた理由は、いくつか考えられる。一つは、各種の弾道ミサイル開発が順調に進み、現在は2000基ほどを保有する。他方、小型化された核弾頭の保有量はまだ20発程度と見られる。毒ガス弾頭を搭載する弾道ミサイルには事欠かないのである。

もっとも、弾道ミサイルに搭載するといっても、今の北朝鮮の技術水準では、アメリカ本土に届く長距離のICBMの場合、弾頭が大気圏を再突入する際に生じる高熱に化学兵器自体が耐えられない。搭載するにしても、韓国と日本(そして中国)向けの短距離・中距離の弾道ミサイルということになる。

核弾頭に比べれば、毒ガス弾頭は殺傷能力では劣るが、攻撃対象を恐慌状態に陥れ、社会機能や軍事作戦能力を麻痺させる破壊効果に優れる。

ただし、毒ガス搭載の弾道ミサイルを発射すれば誰が撃ったかは明白に分かる。手厳しい反撃と報復を覚悟した上でなければ使用できない。その点で、「犯人不明」の化学兵器テロの方が実戦的であろう。

その可能性は金正男氏暗殺で示されている。いずれにしても、韓国、日本、そして中国といった北朝鮮の近隣諸国にとって重大な脅威であることには違いない。

NEXT ▶︎ 米中首脳会談の謎

アメリカは何を脅威とみているか

実戦を見据えた専門部隊の創設→「VX」を使った金正男氏暗殺→シリアでの「サリン」による大量殺戮。この半年で、このようにエスカレートさせていったが、シリアの段階でアメリカの反発を受けることになった。ここがレッドラインだったというわけだ。

いうまでもなく、アメリカの外交安全保障政策にとって最大の課題は中東である。現在の混乱の中、テロ集団や反米的な専制国家などが大量破壊兵器を保有することは、最悪のシナリオであろう。

トランプ政権のマティス国防長官は、2013年に、当時のオバマ政権が行ったイランとの核合意に強硬に反対して、アメリカ中央軍司令官の職を解任されたという経歴の持ち主だ。彼と、マクマスター安全保障担当大統領補佐官は、イランやシリアと北朝鮮を一体の脅威として警戒していることが、安全保障関係者の間ではよく知られている。

アメリカは、北朝鮮の大量破壊兵器やミサイルの開発の進展は、イラン、シリアなどへの拡散に直結する可能性が高いとみているのだ。そして、今回それが証明されたことになる。

ただ、よほどの挑発行為がない限り、アメリカが北朝鮮に即時に武力行使するということではない。北朝鮮は近隣諸国に多大な被害を与える攻撃力を有しており、シリアと同じようには扱えない。

米中首脳会談後のトランプ大統領の発言に見られるように、まずは北朝鮮が貿易のほとんどを依存している中国が、本格的な経済制裁で締め付けることが先決となる。それで金正恩体制の北朝鮮を十分に弱体化させ、その上で軍事力行使の外科手術という順序になるということだ。

中国は従来、地政学的な理由から北朝鮮の体制崩壊を望まないと見られていた。しかし、金正恩体制になってから、北朝鮮は中国に対しても敵対的な姿勢を露骨に示し始めている。

一方、トランプ政権は、今回の米中首脳会談の後、為替操作国認定や韓国へのTHAAD配備など、中国が激しく反発する政策を見直す構えを示している。これらの動きは、中国が従来の北朝鮮政策を方針転換させる前段ともみられる。

そして米中首脳会談では、異例なことに共同声明が出なかった。これは北朝鮮問題で両国の主張が平行線をたどり、発表すべき成果がなかったせいなのか。それとも、発表がはばかられるような深い合意があったからなのか――。

筆者は後者とみるが、はたして穿ち過ぎだろうか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51518?page=3

 
トランプの「変節」に戸惑う世界と日本〜火薬庫と化した朝鮮半島
シリア攻撃で見えてきたこと
笠原 敏彦ジャーナリスト
長崎県立大学教授・元毎日新聞欧州総局長プロフィール

なぜ今、シリアを攻撃したか

トランプ米大統領の外交・安保政策が輪郭を現してきた。

「トランプ・ドクトリン」とはどのようなものか。それは、場当たり的な「ご都合主義」と、独善的な解釈を世界に押し付ける「大本営発表」の組み合わせだと言えるのではないだろうか。

トランプ政権によるシリアのアサド政権攻撃とその後の国際情勢の推移は、安全保障をめぐる状況も「ポスト真実」の時代に突入し、危うさを増していることを示している。

* * *

まずは、アサド政権への攻撃は何が引き金になったのかという点だ。

経緯を簡単に振り返りたい。

シリア北部ハンシャフィンで4月3日、神経ガス・サリンの攻撃により70人以上が犠牲になり、アメリカはアサド政権による化学兵器使用と断定。「越えてはならない一線(レッドライン)を越えた」として、発生からわずか3日目の6日、シリア西部のシャイラット空軍基地に巡行ミサイル・トマホーク59発を撃ち込んだ。

シリアの空軍基地に向けて発射されたトマホーク〔PHOTO〕gettyimages
報道では、トランプ氏は犠牲になった幼い子供たちの映像に心を揺さぶられ、懲罰攻撃を決断したとされている。トランプ氏は6日のテレビ声明でこう説明した。

「シリアの独裁者アサドは恐ろしい化学兵器で罪のない市民を攻撃した……多くの人がゆっくりと残忍な形で死んでいった。かわいらしい赤ちゃんまでもがこの非常に野蛮な攻撃で残酷に殺された。どんな神の子もこのような恐怖で苦しんではならない」

子供たちが泡を吹きながら倒れ、水で洗われている映像には、誰もが強い憤りを覚えるだろう。しかし、これまでの経緯を振り返ると、この説明は説得力を持たない。

思い出してほしい。オバマ前米政権がシリア空爆寸前までいった2013年の化学兵器使用問題のときのことを。

米政府は同年夏にアサド政権の化学兵器使用で少なくとも1429人が死亡したとの報告書を公表。子供を含む被害者らが苦しむ、胸を締め付けられるような映像がたくさん流れていた。

しかし、トランプ氏は同年9月、こうツィートしている。

“シリアを攻撃するな。米国にトラブルをもたらすだけだ。我々の国を再び強く、偉大にすることに集中すべきだ”

まさに「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の冷徹な実利主義者の姿を示す言葉である。

そのトランプ氏が今回は義憤にかられ、「人道主義的介入」に踏み切ったという説明は説得力を持つだろうか。

シリア攻撃の引き金が何であり、その意思決定プロセスがどうだったのかを知ることは重要だ。なぜなら、「予測不可能性」を売り物にしているトランプ大統領がどういう状況で軍事行動に踏み切るのか、踏み切らならないのかを判断する材料となるからだ。

NEXT ▶︎ 本当の動機は?

本当の動機は?

それでは何が本当の動機なのか。

▽与党・共和党支配の議会の抵抗で医療保険制度改革(オバマケア)の改変に失敗するなど、内政が行き詰まっている

▽大統領選中のトランプ陣営とロシアとの癒着疑惑を米連邦捜査局(FBI)が捜査対象としている

こうした不都合な現実から国民の目を逸らすことなどが動機ではないかとの指摘がある。

推測の域を出るものではないが、こうした説明の方が説得力を持って響く。

支持率が30%台と政権スタート直後としては異例の低さに落ち込んでいるトランプ氏。それでも、今回の懲罰攻撃に対する世論の支持は50%を超えている。対立場面が目立つ議会も概ね攻撃を支持しているようだ。

トランプ氏にとって、シリア攻撃は国内世論向けには数少ない「成功体験」になった。このことが、トランプ政権の今後の外交・安保政策にどのような影響を及ぼすのか、気になるところである。

もう関心を失った!?

そして、問われるべきは、トランプ政権が今後シリア内戦にどう関わっていくのかということだろう。

気になるのは、トランプ氏が早くも、シリアの人道危機への関心を失っている(もしくは初めから関心がない)ように見えることだ。

アサド政権の駆逐へ向けて本腰を入れるのか注目される中、トランプ大統領はすでに拍子抜けするような発言をしている。

11日付の米ニューヨーク・ポスト紙によると、トランプ大統領は同紙とのインタビューでこう語ったのだという。

「我々の政策は変わっていない。我々はシリア(のアサド政権)には介入しない」

「我々の大きなミッションは、ISIS(過激組織「イスラム国」)を撃退することだ。しかし、子供たちが窒息死し、肺が焼け焦げるのを見るなら、攻撃しなければならない」

これでは、化学兵器さえ使わなければ「お咎めなし」という誤ったメッセージをアサド政権に送っているようなものである。

アサド政権は自国民への焦土作戦を続けている。懲罰攻撃が人道危機を一層悪化させるという逆効果をもたらす可能性が懸念される。

振り返ってみよう、シリア攻撃を発表したテレビ声明の内容を。トランプ大統領は、アメリカの伝統的な理念外交に目覚めたかのように崇高に語っている。

「今夜、私は全ての文明国に対し、シリアにおける虐殺と流血を止め、あらゆるテロリズムを止めるため、我々と行動を共にするよう呼びかける」「米国が正義とともにある限り、平和と調和が最終的に勝利することを期待する」

この呼びかけから5日も経たないうちに、先のアサド政権容認とも受け止められる発言である。これが、世界の安全保障の行方に決定的な影響力を持つ超大国・アメリカの大統領の言動なのだろうか。

一方で、ティラーソン国務長官は10日、イタリアでのG7(主要7ヵ国)外相会議の前に「世界のどこであっても誰であっても、人道への罪を犯す者には責任を取らせる」とぶち上げていた。

ティラーソン米国務長官〔PHOTO〕gettyimages
大統領と国務長官の発言のちぐはぐさは、今後の国際情勢の一層の混乱を予想させるのである。

NEXT ▶︎ すさまじい変節っぷり

日本の安保はこの男の掌中に…

それにしても、トランプ氏の変節漢ぶりはすさまじい。

選挙キャンペーンでは、北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と切り捨てておきながら、12日のストルテンベルグNATO事務総長との会談後の記者会見では、「以前は時代遅れと言ったが、もはや時代遅れではない」と平然と語った。

12日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルに掲載されたインタビューでは、中国を為替操作国に認定するとしていた姿勢を一変させ、「中国は為替操作国ではない」と明言している。

NATOに対する姿勢転換は、アサド政権の後ろ盾であるロシアのプーチン政権と対峙するためにNATOの存在価値を見直した結果かもしれない。中国への柔軟路線は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への圧力を強めるための方策かもしれない。

トランプ大統領は「アメリカ第一主義」と、ときに「自分第一主義」を判断基準に状況に合わせて言動を変えているのだろう。そして、その姿勢は他国にとっては「ご都合主義」以外の何物でもないのである。

米軍は13日、アフガニスタン東部での対IS作戦で、通常兵器では最強の破壊力を持つとされる大規模爆風爆弾(MOAB)を実戦で初めて投入した。

同国のカルザイ元大統領が「なぜアフガニスタンを兵器の実験場にするのか」と反発する中、爆弾投下は北朝鮮の核・弾道ミサイル実験の抑止効果を狙ったものだとの指摘が出ている。

そして、爆撃の結果も詳しく分からない中で、トランプ大統領は「(米軍は)非常に、非常に成功裏に新たなミッションを果たした」と自画自賛している。

国連安保理に諮る素振りそぶりも見せずに踏み切ったシリアへのミサイル攻撃。その電撃的な単独行動に世界は戸惑いを隠せなかった。

矢継ぎ早の北朝鮮近海への空母派遣と巨大爆弾のデモンストレーション的な使用。こうした中、国際社会は浮足立ち、各国の言動はエスカレートする一方だ。

北朝鮮は「米国が無謀な軍事作戦に打って出るなら、我々は先制攻撃で対応する」(韓成烈外務次官)などと虚勢のレベルを上げ、不慮の暴発さえ懸念される。

日本の安倍晋三首相は北朝鮮のミサイルについて「サリンを弾頭に付けて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と発言した。

ロシアのプーチン政権は、力づくでクリミアを併合しておきながら、シリア攻撃を「国際法違反」だと臆面もなく批判している。

超大国アメリカの大統領が「ポスト真実」というバブルの中で生きているのだから、国際情勢が不透明感を増すのは必然なのかもしれない。

今や「世界の火薬庫」と化した朝鮮半島。日本の安全保障は事実上、このトランプ大統領の掌中にあるという現実をどう受け止めればいいのだろうか。

*笠原敏彦氏の過去記事はこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/toshihikokasahara
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51490?page=3


http://www.asyura2.com/17/warb20/msg/207.html

[政治・選挙・NHK224] 「消費は本当に弱いのか?」経済統計を考える 消費行動を精緻に測る経済指標の在り方とは マインドなき大臣が更迭されない理由
Special Report

「消費は本当に弱いのか?」経済統計を考える

消費行動を精緻に測る 経済指標の在り方とは
2017年4月21日(金)
飯村 かおり

消費の勢いがなかなか上向かない。その一方、経済統計の課題も指摘されている。高市早苗・総務大臣の下で2016年、「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」が発足。同研究会の国友直人座長ほか2人の専門家が、消費統計の現状と課題について議論した。

(写真=陶山 勉)

1 熊谷亮丸 くまがい・みつまる
1966年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。ハーバード大学経営大学院AMP(上級マネジメントプログラム)修了。2015年より大和総研執行役員 調査本部副本部長 チーフエコノミスト。

2 国友直人 くにとも・なおと
1950年生まれ。スタンフォード大学Ph.D(経済学)。東京大学教授を経て、2016年より明治大学政治経済学部特任教授。2013〜15年、日本統計学会会長を務める。

3 高市早苗 たかいち・さなえ
1961年生まれ。神戸大学経営学部卒。93年衆議院議員初当選(現在7期目)。内閣府特命担当大臣や自由民主党の政務調査会長などを歴任し、2014年9月より総務大臣。

4 渡辺 努 わたなべ・つとむ
1959年生まれ。ハーバード大学Ph.D(経済学)。日本銀行、一橋大学教授を経て、2011年より東京大学経済学研究科教授。日経CPINowなどを配信するナウキャストを創業。

高市 いつの時代でも、景気は話題の中心になりますが、景気を肌で感じられるのは、やはりGDP(国内総生産)の6割を占める個人消費を通じてではないかと思います。消費動向に関して皆さんがよく使っている指標は、GDPの家計最終消費支出なども含めて大体7つくらいでしょうか。それぞれに特徴があるのですが、不十分な面も感じています。
 例えば総務省では家計調査を実施していますが、毎月発表しているのは「2人以上の世帯」の結果です。昨今では、いわゆる“おひとりさま”の消費行動が商品開発や販売戦略でも無視できない状況ですが、こうした単身世帯の動向が家計調査では捉えきれておらず、物足りない部分もあります。
家計調査(消費水準指数) 家計消費指数 消費総合指数 GDP速報(QE)(家計最終消費支出) GDP確報(家計最終消費支出) 消費活動指数 商業動態統計調査
所管省庁 総務省 総務省 内閣府 内閣府 内閣府 日本銀行 経済産業省
公表周期 1カ月に1度 1カ月に1度 1カ月に1度 四半期に1度 1年に1度 1カ月に1度 1カ月に1度
公表日 翌月末 翌々月中旬 翌々月中旬 翌々月中旬(1次速報) 翌年末 翌々月上旬 翌月末(速報)
ミクロ/マクロ ミクロ(世帯単位) ミクロ(世帯単位) マクロ(国全体) マクロ(国全体) マクロ(国全体) マクロ(国全体) マクロ(国全体)
データ元 需要側(調査世帯の家計簿を集計し作成) 需要側(家計調査を他調査で補完し作成) 需要側+供給側(各種統計を合算し作成) 需要側+供給側( 各種統計を合算し作成) 需要側+供給側(各種統計を合算し作成) 供給側(各種統計を合算し作成) 供給側(調査企業・事業所の売り上げを集計し作成)
景気判断には多くの指標が使われるが「物足りない」面も
●消費動向を見る際に使われる主な統計指標
家計調査だけで判断できない
国友 消費動向をどう捉えるか、というのは複数の視点が交錯するので難しい問題です。今大臣がおっしゃった通り、家計調査は、もともとは「世帯」の消費構造やその動向を見るためのミクロ統計であり、社会全体のマクロの消費動向を示すものではありません。世帯当たりの人員はここしばらく減少が続いています。4人の世帯が一般的であった時代と、今のように世帯の平均人員が3人を切る時代を比べれば、世帯の消費は減って当然です。
 一方で、世帯数はまだ増え続けているわけですから、GDPなどのマクロ統計と比較して見る場合には、この点に注意しなければなりません。
渡辺 景況判断は、家計調査だけではなく、他の指標も用いながら、多角的に分析するのが理想なのでしょう。エコノミストをはじめとしたプロのユーザーの方々には、複合的な視点が求められていると思います。
熊谷 確かに、そこが腕の見せどころだと思います。ただ、我々エコノミストはタイミングよくリポートを出さないといけないので、やはり即時性を必要とします。その意味で、速報性のある家計調査の結果は注目していますし、様々な分析でも重要視されています。
 一方で、家計調査の月々の振れ幅を嫌う意見も多くあります。確かに小売店舗などを調査対象とする、いわゆる供給側の統計と比べると、消費者側から調査する家計調査の振れ幅は大きいですよね。
国友 家計調査の場合、振れの原因としてサンプル調査の誤差が指摘されることが多いようですが、誤差は供給側統計にもありますし、そもそも月次統計には誤差以外の不規則な変動が存在します。百貨店の売り上げにも、お中元やお歳暮シーズンなどの季節性が含まれますが、政府統計でもこういったものを除去した「季節調整値」などを提供していて、多くの方々はこうした数値を見ていると思います。
 しかし、基調的な動きを捉えるにはこれだけでは不十分なこともあり、工夫が求められます。
家計調査は日々の家計簿から
●家計調査の記入例と調査方法

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/042000062/p3.jpg

家計調査では、統計理論に基づいて、全国からまんべんなく約9000の世帯を抽出し、各世帯の家計収支を調査する。調査世帯に家計簿を配布し、購入したものとその価格など、毎日漏れなく記入してもらう。これを集計することで、日本の消費動向を表す数値が出来上がる(出所:総務省「家計調査」)
消費の減少は構造的な問題
高市 総務大臣として、毎月、家計調査から見える家計消費の動向を閣議の場で報告しています。しかし、他の経済指標が改善しているのに対して、家計調査が示す世帯の平均消費は、底堅さはありますが、なかなか上向かない弱い状況が続いています。
熊谷 短期的には節約志向といった面が見受けられますが、中長期的には国友先生がおっしゃった平均世帯人員の減少に加えて、高齢化の影響も強く表れていると思います。今、団塊世代が70代に差し掛かろうとしています。現役を退いて年金を受給する年代になると、消費はやはり減っていきます。
 さらに、東京オリンピック・パラリンピックの頃には世帯数の減少も予想されています。つまり日本経済は、個人消費がマクロとミクロともに縮小する潜在性を構造的に抱えている。この構造変化はデフレギャップや消費動向を考えるうえでも重要なファンダメンタルです。
渡辺 確かに、日本は人口減少社会を迎え、このままではマクロの消費も弱くなっていくでしょう。しかも、当面は不可逆的です。国内消費を維持拡大するためには、海外からの消費の呼び込みと国民の消費水準を一段高い次元に引き上げる必要があり、そのためにも消費行動を精緻に解析しなければなりません。
熊谷 政府の中でも経済統計を見直す動きが広がり、研究会が多く立ち上がりました。家計調査をはじめ、統計のつくり方に問題提起がなされています。こういう動きは我々も歓迎しています。
 ただ、この動きは色々な見方をされていますね。2016年末にGDPが新たな国際基準への適合により、30兆円以上増えました。これ自体は基準の変更による当然の結果ですが、実際のGDPはもっと高いのではないかという声も聞かれますし、景気を良く見せようと恣意的に数字を操作しようとしているのではないか、という見方をする人もいます。多様な意見は歓迎されるべきですが、うがった見方をされるのは残念です。
高市 それは私も残念に感じています。私は、統計は社会を正確に映す鏡であってほしいと思っています。経済統計の改革についても、総務大臣になる前から強い問題意識を持っていました。
 消費が弱まっているのであれば、それをきちんと知り、問題の背景を理解できるようにしたい。新たな指標開発も、我が国の置かれている状況を精緻に把握するためであって、政権にとって都合の良い指標をつくるなどということは絶対にあってはなりません。
国友 今大臣がおっしゃったことは戦後の統計の原点です。都合の良い数字をつくって統計の信頼性を破壊した時代を、戦後、深く反省してつくり上げたのが現在の統計制度です。

世帯の平均人数は減っている
●平均世帯人数と総世帯数の推移

出所:総務省「労働力調査」より作成。いずれも総世帯の値
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統計によって結果が違う場合も
●消費支出の推移

出所: 内閣府「国民経済計算」、総務省「家計調査」より作成。いずれも季節調整済みの実質値
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 ただ、ここにきて人口減少という、長らく経験のない局面を迎えました。大きな構造変化が起きているわけですから、人口統計だけでなく、経済統計でもその点をしっかりと捉える必要があります。
熊谷 確かに、一つの歴史の転換点と言えます。政策立案やマーケティングでは、こうした構造変化を踏まえることが重要で、経済指標はマクロとミクロの両面から見ることが必要です。政府にはそういった指標の開発に真摯に取り組んでいただきたいと思います。
 また、いかに景況を把握するかという点では、家計消費だけでなく、インバウンド消費や交際費などの企業消費を捉えるのも有効かもしれません。
高市 企業消費はGDPでは最終消費に含まれませんが、交際費などの最終需要的な消費もありますし、生産波及効果を生むので、産業連関表には一部が含まれています。よって、景況につながるというのは実感が湧きます。
 また、景況の把握という観点で言えば、振れ幅を持つ月次の数値変動の中から基調となる動きを把握するのも有効だと思います。
 政府統計は政策立案の羅針盤ですから、不規則な動きに惑わされずに経済動向の本質的な動きを見極めることが重要です。これは総務省でもしっかりと考えていきます。
ビッグデータの速報性は革新的
渡辺 先ほど、熊谷さんのお話にあった通り、マクロとミクロの両面から包括的に消費を捉えるような指標が求められています。
 しかし、景況判断に求められる速報性に対して、正確性や包括性というのはトレードオフの関係にあります。そこをクリアする可能性を秘めているのが、ビッグデータだと思います。ビッグデータの魅力は、即時性に加え、非常に細かい粒度で分析が可能だという点が挙げられます。
 私はこれまで、ビッグデータを使った物価指数の作成に取り組んできました。通常、私たちが買い物をすると、レジを介して「いつ」「どこで」「何が」「いくらで」買われたかという販売データ、すなわちPOSデータが蓄積されます。本来は販売店側が売り上げを集計・分析するために使っていたものですが、ここから価格決定や市場のメカニズムを読み解く統計をつくれないか、というのが最初の着想です。
 POSデータは物価指数をつくるうえで非常に強力なデータソースです。日々自動的に生み出されるものですから、あとはこれを集計する枠組みさえつくればいい。
 現在、私どもがPOSデータから作成している物価指数では、日次で細かく、さらに、例えば性別や年齢別で物価の動向を追うことまでできます。加えて、今日の物価指数は明後日には分かる、という速報性も兼ね備えています。
熊谷 物価というと、総務省の消費者物価指数が我々エコノミストにとっては重要な指標です。消費者物価指数は、調査員が小売店へ足を運んで調べた価格を基に積み上げたものです。それゆえに正確で信頼に足るものですが、私たちが知り得るのは、月次の物価水準です。それが、日次で、しかもすぐに得られるというのは革新的です。
渡辺 ビッグデータには、全体の合計や平均からは見えてこない国民生活の多様性や社会経済のメカニズムを映し出す可能性があります。
 例えば、物価を日次で集計すると、特売と物価の関係が可視化されます。特売はあくまで一時的な価格の下落ですが、特売の頻度が多くなれば、これは長期的な意味でも、物価水準の下落と捉えることができるでしょう。価格競争が激しい今、必ずしも1カ月継続して同じ価格が維持されるわけではなく、その日その日によって価格が変わり、当然、その売り上げも変わります。従って、物価や消費も月次ではなく日次で見るからこそ見えてくるものがある。そういった分析は、ビッグデータが非常に得意とするところです。こうしたメリットを政府統計にも生かせるといいと考えています。
高市 ビッグデータの活用も含めた、新たな視点から消費統計を整備することが急務だと考えています。また、調査で得られた情報を統計上の分類に仕分ける作業など、AI(人工知能)が統計実務を大幅に省力化する可能性を秘めているとも聞きます。今後の統計作成の現場は大きく変わり得ると思います。
国友 その可能性は大いにあると思います。政府統計ではいまだにビッグデータを十分に活用しておらず、伸びしろは大きいと思います。
 一方で慎重にすべき部分もあります。私は、政府統計の政府統計たるゆえんは、作成方法の正統性にあると考えています。ビッグデータだけでは正直、その担保が難しい。
 家計調査など、政府の統計調査の実施環境は年々厳しさを増していますが、統計理論に基づいて調査設計を行うという基本スタンスは変えるべきではありません。そのうえで、調査が完璧には実施できないという現実もありますから、そこを補う補完的なデータ活用はあり得るでしょう。
従来型の統計に優位性も
渡辺 おっしゃる通りで、私自身も、家計調査は家計調査のままでいいと考えています。もちろん、調査方法に改善の余地がありますが、確かな理論に支えられた統計調査の優位性は、ビッグデータと相対しても揺らぐものではありません。
 ビッグデータは非常に魅力的なデータソースながら、強い癖があります。もともと統計を作成するために集められたデータではなく、個々の取引データなどから副次的に得られるものですので、それ自体は日本の平均的な消費行動を捉えたものではありません。
 例えば、先ほどのPOSデータも、大手のスーパーやコンビニエンスストアなどの売り上げに限られたものになります。こういったデータ固有の癖をできる限り取り除く作業が不可欠です。
 しかし、それは容易なことではありません。統計にどのような癖が想定されるのか、ユーザーにきちんと開示して理解を得ることが、政府として必要な責任だと考えます。
 この取り組みは一朝一夕ではいかないもので、中期的な視点が必要になると思いますが、政府が取り組むべき課題として非常にチャレンジングで面白いものになると思います。
高市 ビッグデータはマーケティングではかなり一般的になってきていますが、政府統計では世界的に見てもまだまれで、未開拓と言えます。ぜひ、国際的にも高く評価され得るような指標を開発していきたいと思います。


このコラムについて
Special Report
日経BP社の媒体の中から、読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。

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マインドなき大臣が更迭されない理由

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

2017年4月21日(金)
小田嶋 隆

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/042000091/illust.png

 山本幸三地方創生担当大臣が、4月16日、大津市内で講演を終えた後、観光を生かした地方創生に関する質疑の中で

 「一番のがんは文化学芸員と言われる人たちだ。観光マインドが全くない。一掃しなければダメだ」

 と述べたのだそうだ(こちら)。

 最初に《「学芸員はがん」=山本担当相が発言》という記事の見出し部分を見た時、私は、単純に、意味がわからなかった。

 「どうして大臣が特定の学芸員の病状に言及しているのだろうか」

 と一瞬疑問に思ったほどだ。

 で、リンク先の本文を読んで、ようやく大臣の発言の真意を了解したわけなのだが、それでも、大臣の目指しているところと学芸員の仕事のどの部分が対立しているのかを理解できたわけではなかった。

 理由は、私自身が、学芸員の仕事と、地方創生担当大臣が担っている役割を正確に把握していなかったからだ。
 ついでに申せば、山本幸三という政治家の来歴や人柄についても、知識を持っていなかった。

 なんというのか、私は、はじめから最後まで、ろくに事態を掌握していなかったわけだ。
 こういう時、インターネットは頼りになる。

 大臣を批判する立場の人々と、大臣の発言を擁護ないしはフォローする人々との間でやりとりされている論争をひと通り眺めて、しかる後に、「学芸員」と「地方創生担当大臣」についてウィキペディアとネット上の各種辞書(私はJapanKnowledgeというところの会員制辞書サービスを利用している)を当たり、ついでのことに「山本幸三」で検索をかければ、15分前よりは、ずいぶん見識が高くなっている。

 無論、15分で身につけた情報は、その時間に見合った中味しか持っていない。至極薄っぺらな知識だ。
 とはいえ、簡単な感想を述べるだけのことなら、15分前とは別人に見える。その程度の粉飾は可能だ。
 一定の文章力を持っている書き手なら、この15分間で仕込んだネタを足場に、それらしいコラムを書くことだって不可能ではない。

 が、今回はそれはしないことにする。
 今回のこの件に関して、15分前までは学芸員の何たるかさえ知らなかった私が、あれこれときいたふうな説教を垂れることは、大臣がやらかした臆断とそんなに変わらないやりざまになると思うからだ。

 でなくても「相手をよく知らないからこそカマせる大胆発言」みたいなクリティカルヒットは、入社半年までの新入社員とグラビアアイドルだけに許された特権みたいなもので、私のような年嵩のコラムニストが人前でやってみせて良いことではない。

 ツイッターや巨大掲示板をざっと巡回して意外に思ったのは、大臣の発言を擁護する立場の人間が少なくないことだ。

 逆に言えば、この種の見解(学芸員に観光マインドを求めるみたいな考え方)が、一般に広く共有されているからこそ、大臣は、「がん」という強い言葉を使って学芸員の仕事を論難しにかかったのであろう。

 中には、こんな意見もある。
 これは、さる記事サイトにのったテキストで、タイトルもそのものズバリ
「学芸員についての山本大臣発言は間違っていない」
 となっている。

 内容は、大臣の発言の真意を忖度してさらに敷衍したお話と言って良い。
 本文の中で、筆者は

 「美術館や博物館、それに所蔵物は10年ごとに見直して、原則20年で全面リニューアルか廃止にしてはどうか。」

 と言っている。
 この記事の書き手が、あてつけやもののたとえでなく、本当にこの通りのことを文字通りに主張しているのだとすると、思うに、彼が大いに持ち上げているフランスのルーブル美術館も、たぶん無事では済まない。大英博物館も、エルミタージュ美術館も、軒並み、シンガポールの空港の中のスーベニアショップみたいなものに生まれ変わることになるだろう。

 でもまあ、山本大臣の言う「観光マインド」というのは、要するにこういうことなのである。

 一部の政治家やコンサルタントが博物館や美術館を目の敵にする傾向は、いまにはじまったことではない。

 美術館や博物館に対しては、以前から「税金の無駄遣い」「美術や学芸の利権を独占する特権階級による資産のかかえこみ」という声はあがっていたし、町おこしや観光地の集客事業にかかわる関係者からも、「1000円に満たない入場収入で観光客を何時間も足止めさせる観光事業への妨害施設」といった感じの意見が出ていた。

 つまるところ
「観光客にカネを使わせない施設は無駄だ」
 というお話だ。

 個人的には、この種のものの見方は、短絡的に過ぎると思っている。

 美術館や博物館自体が、単体で地域の収益に貢献していなくても、それらを目当てにその地域を訪れる観光客は決して少なくないはずだ。美術館に立ち寄った訪問客が、美術鑑賞だけをしてメシも食わずにまっすぐに帰宅する、と決まりきったものでもない。当然、美術館の客は、飲食もすれば宿泊もするし、別の観光施設を訪れることもあれば、土産だって買う。ということは、美術館は、十分に地域に貢献しているではないか。

 逆に考えて、たとえばの話、ルーブル美術館の無いパリや、大英博物館を最新のアミューズメントパークに改装したロンドンに観光客は集まるだろうか。あるいは、エルミタージュ美術館をまるごとカジノにリノベーションしたサンクトペテルブルクは、魅力を増すのだろうか。ちょっと考えれば誰にだってわかるはずのことだと思うのだが。

 それでもなお、学芸員のような立場の人間に「観光マインド」を求める声は消えない。

 学芸員に観光マインドを求める態度は、大学の教員や医者に「接客マインド」を求め、研究者に「起業家マインド」を要求する昨今流行の市場経済万能主義から派生した拝金思想と軌を一にするもので、ついでに申し上げるなら、そもそも「古い」からこそ価値を持ちこたえている博物館や美術館の収蔵品に「リニューアル」を求める思想の本末転倒の浅薄さは、文楽に現代的な演出を求め、仁徳天皇陵を電飾でデコレーションして世界遺産登録を促そうとする政治家の馬鹿さ加減と見事なばかりに呼応しているわけで、結局のところ、この人たちは地域をネタに一儲けをたくらむ野盗コンサルの手先みたいなものなのだ。

 さて、山本大臣の発言が、閣僚の資質を疑わせるに足る問題外の失言であるのだとして、しかしながら、だからといって彼が即座に更迭されるべきであるのかどうかは、また別の議論になる。

 10年前の常識なら、このレベルのバカな発言を漏らした大臣は、まず一もニも無く、即座にクビだったはずだ。
 それが、昨今は、そういうことでもなくなっている。

 なぜだろうか。
 私の考えを述べる。

 10年前なら即座にクビが飛んでいたはずの失言で大臣のクビが飛ばなくなった理由のひとつは、この10年ほどの間に、大臣のクビを次々と飛ばし続けていた理由がいちいちあまりにもくだらなかったからだ。

 わかりにくい言い方をしている。

 もう少し噛み砕いた言い方をすると、第1次安倍政権から民主党政権の時代を通じて、些細な言葉尻をとらえたメディアによるバッシングで閣僚が辞任に追い込まれるケースが相次いだことが、現今の状況をもたらしているということで、つまり、現在の、閣僚が相当に悪質な失言をやらかしてもクビが飛ばずに済んでいる状況は、過去においてあまりにも安易に大臣のクビが飛ばされてきたことへの反動ないしは、それらの事態がもたらした副作用なのである。

 別の側面から見れば、メディア主導の報道圧力で大臣のクビを飛ばせなくなっているこの数年間の状況は、メディア自身が招いたメディア不信の結果でもある。

 「死の街発言」や「放射能付けちゃうぞ発言」で大臣の責任を追及し、「絆創膏会見」を理由に大臣の辞任を迫ったマスコミは、文脈から切り取った発言をネタに大臣の首を取ることを自らの手柄であるかのように振る舞うその態度の不遜さを理由に、読者・視聴者の支持を失うに至った。そういうふうに考えなければならない。

 彼らは、大臣のクビを無駄に飛ばすことを通じて、自分たちのクビを締めたのだ。

 山本大臣の発言が論外の暴言であること自体は、多くの国民がそう思っているところだろう。
 この点に異論は少ないはずだ。

 彼自身の政治家としての評価も、今回の失言とセットで伝えられた過去の不祥事からして、地に堕ちたと考えて良い。
 にもかかわらず、山本大臣が即座に更迭されるべきだと考えている国民は、そんなに多くない。

 たぶん多くの国民は、
「別にいいんじゃねえの?」
 と思っている。

 というよりも、
「誰に代わったからって何が変わるわけでもないだろ?」
 ぐらいに考えている。

 一番の危機は、実にここのところにある。

 つまり、誰も閣僚に高い見識や立派な人格を期待しなくなっているというこの状況こそが、安倍一強体制がもたらしている最も顕著な頽廃なのである。

 われわれは、メディアにも、政治にも、粗忽軽量な大臣にも、代わりにやってくるかもしれない新任の大臣にも、あらかじめうんざりしている。この頽廃は、簡単には回復しない。たぶん、もう1回戦争がやってきて、もう1回反省するまで、この状況は改まらないだろう。

 4月17日、すなわち山本大臣による「学芸員はがん」発言があった翌日、安倍首相は、都内の商業施設のオープニングセレモニーに出席し、地元・山口県の物産も積極的に販売するよう「忖度(そんたく)していただきたい」と挨拶して、笑いを取ったのだそうだ(こちら)。

 ジョークの出来不出来は別として、このタイミングで、「忖度」という言葉を使って笑いを取りに行った神経に首相の「意地」のようなものを感じる。

 この局面でのこのジョークは、
 「オレは、全然参ってないよ」
 という意思表示に聞こえる。

 ふざけてみせることで自分の優位を印象づけるヤンキーに独特な行動形態のようでもあれば、なにかにつけて、語尾に「w」や「(笑)」を付加したがるツイッター論客の論争術のようでもある。

 いずれにせよ、この半月ほどメディアで話題になっている「忖度」というネガティブなワードを、あえて笑いを取るための言葉として使ってみせた態度は、ホームランを打たれた投手が帽子を取って打った打者に最敬礼した時みたいな強がりを感じさせて、なんだか鼻白む。

 安倍さんはどうやらマスコミを舐めてかかる段階に到達している。
 しかも、その態度は、思いのほか多くの国民に支持されている。

 このことは、別の言い方で言えば、われわれが他人をバカにする人間に頼もしさを感じる段階に立ち至っていることを意味している。

 19日の衆議院決算行政監視委員会での質疑では、こんな一幕があった。

《−−略−−首相「『そもそも』という言葉の意味について、山尾委員は『はじめから』という理解しかないと思っておられるかもしれませんが、『そもそも』という意味には、これは、辞書で調べてみますと…」

山尾氏:「調べたんですね」

首相:「念のために調べてみたんです。念のために調べてみたわけでありますが(笑)、これは『基本的に』という意味もあるということも、ぜひ知っておいていただきたいと。これは多くの方々はすでにご承知の通りだと思いますが、山尾委員は、もしかしたら、それ、ご存じなかったかもしれませんが、これはまさに『基本的に』ということであります。つまり、『基本的に犯罪を目的とする集団であるか、ないか』が、対象となるかならないかの違いであって。これは当たり前のことでありまして」−−略−−》

(出典はこちら)
 以上は、産経新聞による書き起こしだが、ごらんの通り、言い合いに近いやりとりだ。

 個人的には、自分の使った言葉を辞書で引くという動作の異様さにあきれている。

 あらためて言うまでもないことだが、人間同士の対話は、互いにあらかじめ辞書を引くまでもなく知っている言葉をやりとりすることで成立しているものだ。

 知らない言葉を使ったら対話にならないし、辞書を引きながらの対話は、揚げ足の取り合いに過ぎない。

 特定の言葉について、対話の相手が間違った使い方をしていたり、誤解をしているように思えた場合に、辞書上の語義を持ち出して先方の誤解を正したり、言葉の使い方の間違いを指摘することはあり得る。しかしながら、自分が口にした言葉について、事後的に辞書を引くことは、普通、考えられない。

 自分の使った言葉について辞書を参照するのは、自分がその言葉の意味をよく知らずに使っていた場合か、でなければ、辞書に書いてある語義を足がかりに何らかの詭弁を弄しにかかる場合に限られる。

 しかも、朝日新聞が伝えているところによれば、どうやら、「そもそも」について「基本的な」の語義を掲載している辞書は存在しない(こちら)。

 どうでも良い話を長々としてしまった。
 本当は、こんな話は、はじめからどっちでも良いのだ。

 大切なのは、首相が、辞書に載っている(とされる)語義をネタに、山尾議員を揶揄している点だ。嬲っているという言葉を使っても良い。とにかく、首相は、相手を嘲っている。これは辞任に値するとまでは言わないが、到底品格のある態度ではない。
 少なくとも、首相の国会答弁にはふさわしくない態度だ。

 「忖度」をジョークのネタにしたこともそうだが、この半年ほど、首相の言動には、対話の相手を嘲弄したり、質問そのものを揶揄するような、不真面目な態度が目立つ。

 このこと自体は、私がたしなめてどうなることでもないし、仕方のないことだとも思っている。
 首相にしてみれば、あれこれと責められて反撃したい気持ちがあるのだろうし、ああいう立場にある人間にフラストレーションがたまるのは、考えてみれば当然のことでもあるのだろう。

 私が懸念するのは、首相が野党をバカにし、閣僚がマスコミを軽視しているその態度が、なんとなく支持を集めているように見える昨今の状況だ。

 どうしてこういうことになっているのかまではよくわからないのだが、首相が野党やマスコミの質問をはぐらかしにかかる態度は、実のところ、そんなに評判が悪くない。

「バカな質問にいちいち真面目に答える必要はないだろ」
「相手がバカなんだからバカな答え方をするのは鏡の法則からして当然だよ」

 と、むしろ歓迎されているかもしれない。

 現政権が大臣を辞任させないのは、責任を認めて辞任させるとかえって政権の支持率が下がるであろうことを学習したからだと思う。

 第1次安倍政権も、民主党政権も、相次ぐ閣僚の辞任で、求心力を失い、支持を失い、最終的に政権を投げ出さざるを得なくなった。責任を取ったことが、かえって責任を追及される弱みになってしまったカタチだ。

 とすれば、責任など、取らない方が良い。
 と、政権側がそう考えるのは、むしろ当然の帰結なのかもしれない。

 仮に、責任と呼ばれているものが、取るからこそ生じるもので、取らなければじきになくなってしまうものであるのだとしたら、そんなものは、はじめから取らない方が良いに決っているではないか。

 多くの国民は、失言の悪質さを理由に辞任を求めるというよりは、むしろ、辞任したという結果から失言の悪質さを逆算するぐらいの関心度で政治報道を眺めている。

 とすれば、辞任せずに知らん顔をしていれば、多くの国民は「たいした失言ではないのだな」と判断してくれるはずで、そうである以上、辞任などしない方が良いにきまっているわけだ。

 私はいま皮肉を言っているつもりなのだが、これは、結果として、皮肉にならないかもしれない。

 いずれにせよわれわれは、ジョークがジョークとして通用せず、皮肉が皮肉として響かない時代に足を踏み入れつつある。
 そんなわけなので、できればこの原稿は笑わずに読んでくれるとありがたい。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

コラムの書き手が変わったからって、何が変わるわけでも…
と、思わせないように編集部も頑張ります。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/042000091/
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/467.html

[国際19] トランプ政権のクシュナーVSバノン確執の本質 朝鮮半島で軍事衝突はない 混迷 女子大生を餌食にする中国「裸ローン」の罠
トランプ政権のクシュナーVSバノン確執の本質

The Economist

それはトランプ大統領のレガシーを巡る戦いだ
2017年4月21日(金)
The Economist


今やバノン首席戦略官(左)とクシュナー大統領上級顧問(右)の対立はワシントンでも有名だ (写真:AP/アフロ)
 権力の中枢である米ワシントンは、決して平穏な場所ではない。中世の時代に農民などの庶民が騎士たちの一騎打ちを楽しんで見物したように、現代も政界という名の「村」における権力者たちの対立をロビイストやコンサルタント、嫌われ者のジャーナリストたちは注視している。過去も今も彼らが目にしたがっているのは、権力者が対立相手を泥の中に叩き落とす様子だ。

 それだけに米国の首都でトランプ大統領の側近がこれだけ対立しているというのは、興奮せざるを得ない。ここ何週間もスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問とジャレッド・クシュナー大統領上級顧問という2人の権力者が、報道陣へのリークやブリーフィングを通してつばぜり合いを繰り返している。

 観衆にとって面白いのはクシュナー氏が大統領の娘婿という点だ。少年っぽさを残すハンサムな彼は、米不動産王の最有力の跡取り候補であり、かつ民主党への大口献金者としても知られ、トランプ氏が信頼する相談相手である娘のイヴァンカ氏と結婚している。

 バノン氏は、怒りを蓄積してきた白髪交じりの年配者で、トランプ政権が掲げる「米国第一」のナショナリズムの推進者だ。

「お父さんがそれでは立派にみえなくなってしまう」

 ホワイトハウスで繰り広げられる様々な対立劇の大半は、党派的なイデオロギーの対立だったり人間関係のいざこざだったりする。クシュナー陣営が口にする不満を聞いていると、これは「家の格」にかかわる問題なのだという。米ワシントン・ポスト紙に匿名の情報筋が語ったところによると、トランプ氏の支持者の中核を焚き付けるようなバノン氏の強硬路線を追求することは、「お父さんがそれでは立派にみえなくなってしまう」ことだという。

 一方で、政権内部および保守派メディアにいるバノン派は、クシュナー氏は隠れリベラルであり、大衆を味方につけたトランプ氏の歴史的な勝利を台無しにしていると主張する。その憤りはイヴァンカ氏、さらにゴールドマン・サックス出身の国家経済会議(NEC)委員長を務めるゲイリー・コーン氏や国家安全保障問題担当の副補佐官ディナ・パウエルにも向けられている。

 バノン氏も確かに過去、ゴールドマン・サックスで働いていたが、近年は右派系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」のボサボサ頭の好戦的な会長として悪名をとどろかせている。

 バノン派は、メディアに対してクシュナー派を中傷する時、「民主党のやつら」「ニューヨーカーたち」「グローバリスト」といった言葉を使う。クシュナー氏と上品な身なりをした彼の仲間たちは、国境に壁を築くなどといった移民に厳しい政策を打ち出すことに怖じ気づく一方で、シリアで世界の警察官の役割を演じたり中東で和平の調停役を担ったりすることには積極的で、医療政策や気候変動などの問題では民主党の専門家の声に耳を傾けすぎだ、というのだ。

 また、クシュナー氏に何から何まで任せられていることが、バノン派や民主党、評論家の嘲笑の的となっている。中東和平問題から、カナダやメキシコ、中国との外交関係を見守り、ビジネス界の手法を使って連邦政府の立て直しまで担うという。そんなことが可能なのか、というわけだ。

バノン氏が掲げる“大義”

 
 だが、こうした対立を左派と右派の衝突、あるいは「ホワイトハウスに渦巻く陰謀」などと思って見ていると、本質を見誤る。バノン氏とクシュナー氏の半ば公然となっている対立は、もっと重大なものを巡る対立だ。つまり、トランプ大統領の目的、大統領として何を実現させるのかという問題を巡る対立なのだ。

 バノン氏にとって2016年の大統領選挙に勝利するということは、後に歴史が「トランプ主義(トランピズム)」と呼ぶかもしれない大義を推進することだった。

 バージニア州で労働者階級の家庭に生まれた元海軍将校のバノン氏は、社会というものがいかにして壊れていくのかについて何年も研究を重ねてきた。そして身の毛のよだつような暗い映画をいくつも製作してきた。その内容は、特定の社会に深く属することもない腐敗したエリート層が、どんどん流入してくる移民で金儲けをして、労働者階級を犠牲にしてきたと主張するものだ。米国の保守的で伝統的価値観が支配的な中部地域で、競争を重視しつつも困った人には手を差し伸べるというユダヤ教とキリスト教に共通する価値観が崩壊していく様子を嘆く映画も作ってきた。

 バノン氏は、極右勢力の多くの人より先にトランプ氏が従来型の保守派ではないが、ポピュリズムの影響力を「本能的に」察知していることに気づいていた。

 大統領の「首席理論家」として政権に加わったバノン氏は、ホワイトハウスのウエストウイングに構える執務室で、トランプ氏が選挙戦中に演説であげた公約の数々を書き出して壁に貼った。公約は国境の警備から貿易まで多岐にわたる。バノン氏は、その中には「行政国家を解体する」ことにより、各種規制やそれを策定する連邦政府機関を徹底的に見直すことも含まれると言う。

 バノン氏は、既存の保守派がトランプ大統領に過激な政策を捨て去るよう説得しようとするたびに、「トランプ氏は必ず『いや、米国民に約束したのだから計画は実行する』と言い返す」と語り、公約の実行を保証した。

対立する2人の決定的な違い

 バノン氏は選挙戦中、クシュナー氏とプロの選挙コンサルタントへの軽蔑という共通の思いを抱くことで絆を深めた。クシュナー氏に言わせれば、トランプ陣営は型破りなスタートアップ企業のようで、政治以外の分野で「変わった」経歴を持った技術に詳しい人が多かった。

 クシュナー氏は昨年12月にニューヨークで開催された経営者たちの会合で、選挙活動に参加したことで政府から無視されていると感じる米国人の怒りを目の当たりにしたと語っている。自分が移民問題や環境問題について世間離れしたエリートたちの意見に染まっていたことに気づいたのだという。

 だが少なくとも1つの点で、クシュナー氏はバノン氏と決定的に異なる。クシュナー氏にとって、昨年の大統領選挙はトランプ氏の勝利であって、決してトランプ主義の勝利ではないという点だ。

 選挙後ほどなくクシュナー氏は米誌フォーブス誌の取材に対し、義父は従来の民主党や共和党の典型的タイプとは異なり、それらを超える存在であり、「機能する政策を組み合わせ、機能しない政策を排除」していると語った。

両方が生き残るのは不可能

 バノン氏もクシュナー氏も、トランプ氏に対する評価について批評家たちが間違っていることを証明するためにホワイトハウス入りした。だが、トランプ氏が選挙中の公約を片っ端から破ることで支持率を上げ、成功を収めるとすれば、それはバノン氏が追求してきたナショナリスト的な大義は裏切られることになる。

 バノン氏は、自分ならトランプ氏の最も忠実な支持層をつなぎ止め、選挙中の約束を履行することでその支持を維持する手助けができると、トランプ氏にアピールして生き延びてきた。しかし、これまでのトランプ氏の言動を見れば、彼が約束したからと言っても、それらを彼に実際に履行させることがいかに難しいかがわかるはずだ。

 バノン氏の大義に比べ、クシュナー氏が唱える現実主義的な「ファミリーファースト(トランプ家が一番大事)」の方がロジックとしてはずっと単純だ。米国人は、自分たちの生活が改善すればトランプ氏に感謝するだろう、というわけだ。

 今のところクシュナー氏もバノン氏もトランプ氏を成功の道へと案内しようとしている。だが、どこかの時点で2人が追求する最終目標は両立しないことが判明するだろう。だからこそ、最近はバノン氏がクビになるという噂が飛び交っているのだろう。しかも、トランプ氏自身がその噂を煽っている。

 二人が争っているのは、何をトランプ大統領の遺産とするか、だ。つまり、そのことは両者があい成り立たないことを示している。

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このコラムについて

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女子大生を餌食にする中国「裸ローン」の罠

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

自撮りヌード写真を担保に借金、返済できなければバラマキ
2017年4月21日(金)
北村 豊

 “恩施市”は、湖北省の西南部に位置する“恩施土家族苗族自治州”の州政府所在地で、海抜900m以上の山岳地帯にある常住人口75万人の風光明媚な地域である。省都 の“武漢市”からは直線で500kmの距離にあり、自動車なら6.5時間かかる。4月3日、その恩施市の農民である周さんは自分の携帯電話に1通の写真付きメールを受領した。何だろうとメールを開くと、周さんは自分の目を疑った。携帯電話の画面には娘の“小周”(仮名)の“裸照(ヌード写真)”が写っていたのだった。

身分証明書を持って全裸写真を自撮り

 4月10日付の湖北紙「楚天都市報」は、『武漢女子大生の“裸貸(裸ローン)”5000元(約8万円)が雪だるま式に増えて26万元(約416万円)に』と題する記事を報じた。その概要は以下の通り。

【1】20歳の小周は、武漢市”にある某職業技術学院大学の2年生である。2016年10月の或る日、大学のトイレに入った小周は、個室のドアに貼ってあった消費者金融業者の広告に目を止めた。当時、小周には買いたい物があったが、懐が寂しく、到底手が届きそうになかった。そうだ、一時的に借金すれば欲しい物が買える。そう思ったら、何かに取りつかれたように、自身のスマートフォン(以下「スマホ」)で広告に書かれていたSNSの“微信(WeChat)”に連絡を入れ、先方の担当者に借金したい旨を伝えていた。

【2】ひとしきりチャットを続けて、カネを借り入れる意向を示すと、消費者金融業者の担当者から身分証の写真、学生証の写真、スマホの通話履歴を微信で送るよう要求された。小周が指示通りの物を送信すると、担当者はさらに次の物を微信で送信するよう要求した。

(1)“手拿借條”:担当者が送信するひな型に通りに手書きした借用書に自分の署名を行い、署名済みの借用書を手に持って上半身を撮影した画像。

(2)“裸條”:“全身赤裸手持身分証自拍(全裸で身分証を手に持って自撮りした)”写真あるいは動画。

【3】欲し物を買いたい一心の小周も“裸條”にはさすがに躊躇した。これを担当者に伝えると、この写真や動画は担保であり、万一返済期日までに返金されなくても、必ず流出する訳ではないので心配不要だと答えた。これで安心した小周は借入額もさほど大きくないので、返金は問題なくできると判断して、担当者の要求通りに(1)と(2)を送信した。

【4】小周の借入金は5000元(約8万円)であったが、審査費、写真の秘密保持費などの費用を差し引かれて、消費者金融業者から小周の銀行口座へ払いこまれたのは2750元(約4万4000円)だけだった。この2750元を何に使ったのか、小周には全く記憶がない。彼女が覚えているのは、毎月の生活費が1000元(約1万6000円)で、常に足りなかったからカネを借りて何かを買ったという事だけで、具体的に何を買ったのかは覚えていないのだ。

30社以上から借金、8万元が26万元に

【5】署名した借用書には借入金を1週間以内に全額返済することが明記され、返済できない場合は、完済まで毎週287元(約4600円)の金利を支払わねばならないと規定されていた。ただでも少ない毎月1000元の生活費に頼るしかない小周に借金を返済する術はなかったが、借金のことを両親に告げる勇気はなかった。そこで、ひたすら友人たちに頼み込んでカネを借りて回ったが、最後には誰もカネを貸してくれなくなった。カネに詰まって苦しんでいると、消費者金融業者の担当者が親切に助言してくれた。それは、インスタントメッセンジャーアプリ「QQ」の借金グループに加入し、別の消費者金融業者から新たにカネを借りて、前の借金を返済するというもので、小周を借金地獄の泥沼に陥れるものだった。

【6】借金の返済に追いまくられて冷静に物を考えられなくなっていた小周は、何も考えずにQQの借金グループに加入し、半年間に30社以上の消費者金融業者からカネを借入れては借金の返済に充てることを繰り返した。この結果、手続き費用を差し引いて、小周が手にした元本の合計は8万元(約128万円)以上に達したが、これに利子を加えた返済が必要な借入れ金の総額は26万元(約416万円)近くに膨れ上がっていた。

【7】2017年の“春節(旧正月)”休暇(1月27日〜2月2日)中に、小周はスマホの電源を切って、外部との連絡を絶った。春節休暇中は小周のスマホと連絡が取れなくても仕方ないと考えていた消費者金融業者も、休暇が明けても連絡が取れないことに業を煮やした。そこで小周から事前に受け取っていたスマホの通信履歴にある電話番号宛てに下記のような返金催促メールを発信した。

 どうぞ返済するよう忠告して下さい。
 小周  身分証番号:4228221997XXX
 貴女は2017年1月26日に4万元を借入れたが、明日2月4日の午後6時が返済期限です。ここに約束の時間と金額に基づき貸付金の返済を行うよう注意を喚起します。いかなる理由でも返済金額と期限の変更は認められません。もし詐欺的手段を隠して故意に貸付金を返済しないことが疑われるなら、我々は強大な社会世論の圧力、身近な親友や友人、通信履歴、第三者の借金返済機関を通じ、また、直接住宅を訪ねての催促、地元の住民委員会および地元の尋ね人広告に借金未済を暴露するなどの手段で24時間返済催促を行います。負債を返済するのは当然の道理であり、期限を過ぎて返済しない結果は重大なものとなります。期限超過の罰則は毎日200元(約3200円)となります。この返済催促は貸付側がQQや携帯電話などの常用通信手段を通じて告知義務を履行していることを示しています。

2017年2月3日
【8】父親の周さんは消費者金融業者から届いた催促メールを見て、初めて娘が借金取りに追われていることを知った。周さんは慌てて小周に連絡を取り、借金について問いただしたが、小周は言葉を濁し、カネを借りたと言うだけで、カネを何に使ったのかは口を閉ざしたままだった。愛する娘が困っている。仕方なく、周さんは虎の子の4万元(約64万円)を小周に手渡し、大至急借金を返済するよう言い聞かせた。

親や親戚、友人にヌード写真が届く

【9】ところが、文頭に述べたように、4月3日に全裸の小周が身分証を手にした“裸照(ヌード写真)”が周さんの携帯電話に送信されて来た。これを見て肝を潰した周さんは精神的に崩壊した。まさか娘にまだ借金があったなんて、周さんは考えたこともなかった。“裸照”は小周の“姑姑(父方のおば)”や“姨媽(母方のおば)”、大学のクラスメートたちにも届いていた。急きょ武漢市へ出向いた周さんは小周と会って彼女がはまった消費者金融の罠の全貌を聴取し、4月5日の午後に娘を伴って“武漢市公安局”の“東湖新技術開発区分局関南派出所”に事態を通報した。

【10】小周は今まで経験した事のない恥辱と後悔にさいなまれ、周さんに全てを告白した。借金の元本と利子の合計は26万元だが、父親の援助もあって、すでに16万元(約256万円)は返済済みで、残りの借金は10万元(約160万円)余りだが、その大部分は“裸照”を担保に取られている。かくも膨れ上がった借金の起因になったのは、最初に借入れた5000元であった。その後に借入れたカネを彼女はほとんど使っておらず、その大部分を借金の返済に充てていた。“裸照”付きのメールが大学のクラスメートたちにも届いたことから、小周は面子を失い、大学にいられなくなった。また、さらなる借金取りの出現を恐れて、小周は周さんと共に武漢市を離れ、現在は両親と共に上海市へ出稼ぎに行っている。なお、周さんによれば、彼には小周の他に9歳の息子がおり、上海市では夫婦2人でプラスチック工場の臨時工として働いているが、月収は2人合わせて6000元(約9万6000円)程なので、借金の残額10万元(約160万円)を返済することはどうやってみても不可能だという。

【11】楚天都市報の記者が“借貸(貸借)”、“借銭(借金)”などのキーワードでネット検索を行ってみると、非常に多くの消費者金融業者がヒットした。彼らの数社に微信やQQ、電話を通じて連絡してみると、ローンの月利は8〜15%とまちまちであった。月利15%として1万元(約16万円)を借りると、毎月の支払い利息は1500元(約2万4000円)となるが、1か月目の利息は先払いが要求されるのだった。記者が小周にカネを貸した消費者金融業者たちに連絡を取ってみたところ、ある業者は小周など知らないと言って電話を切ったし、またある業者は返済催促業務を外部に委託しているので、もしかすると“裸照(ヌード写真)”を使って催促している可能性もあるかもしれないと答えた。

【12】小周は大学には行きたくないと言っていたが、大学側は小周に対する心理カウンセリングを継続しており、当面は休学扱いとして、一定時間が経過したら復学が可能なように配慮してくれている。周さんは小周を復学させるかどうかを思案中であるという。

【13】小周事件に関する弁護士の意見はどうなのか。湖北典恆弁護士事務所の“陳亮”弁護士は次のように述べている。すなわち、“裸照”を担保として行う貸付は、契約そのものが無効である。なおかつ、我が国の法律が認めているのは年利24%以内の貸借関係だけで、これを超えた部分は法律の保護を受けない。小周の借金は高利貸しに属するものであり、借金1件毎に小周が元本と年利24%の利息を支払っていれば、それ以上の利息を支払う必要はない。余分に支払った利息が36%以上であれば、民事訴訟を通じて返還を求めることができる。

 中国では上述したような「“裸照”を担保に取る貸付」を“裸貸(裸ローン)”と呼ぶ。3月7日付で中国国営通信社の「新華社」が報じたところによれば、大学生向けのネット消費者金融の規模は2016年に800億元(約1兆2800億円)を突破し、さらに拡大する傾向にあるという。こうした大学生向けのネット消費者金融を“校園貸(キャンパスローン)”と呼ぶが、“校園貸”は借入がネット完結型で簡便であることが大きな魅力となっている。身分証番号、在学している大学名、学年、学生番号、学部などの個人情報を登録して、身分証や学生証の写真を示して検証し、署名した契約書の写真や動画を送信すれば、わずか10分足らずの時間で数千元から数万元のカネを借入れることができる。このため、“校園貸”はネット消費者金融の中で目覚ましい発展を遂げているのである。

2015年に始まり、各地に波及

 しかし、“車貸(自動車ローン)”なら“汽車(自動車)”を担保に取れるし、“房貸(住宅ローン)”なら“房産(家屋)”を担保に取れるが、大学生相手では担保に取るものがない。そこで悪質な消費者金融業者が女子大生を対象として考え出したのが“裸照(ヌード写真)”を担保に取る“裸貸(裸ローン)”であった。キャンパスローンの“裸貸”は2015年に中国南部から始まったとされるが、2016年には山東省、江蘇省、広東省、北京市、四川省などの各地に波及し、急速に全国的な存在となった。

 2016年11月30日には、消費者金融プラットフォームの“借貸宝”を経由して“裸貸”を利用した161人の女性たちの個人情報を記録した10ギガ(G)の圧縮データがネット上に流出する事件が発生し、“裸貸”は中国社会で改めて注目を集めることになった。161人中で本籍が流出した者は146人で、その内訳は14人の四川省が最多で、広東省(11人)、江蘇省(10人)がそれに続いた。また、年齢情報が流出したのは144人で、そこには1993〜1997年生まれ(23〜19歳)が91人含まれ、最年少は1999年生まれの17歳で4人含まれていた。また、学校情報が流出したのは28人であり、借入金額が流出したのは26人で、最高額は2.3万元(約37万円)、最低額は1000元(約1万6000円)だった。

 メディアの記者が“借貸宝”を運営する“九鼎集団”に連絡を取ったところ、先方の担当者は、「“借貸宝”は消費者金融の仲介を行っているだけで、金融実務は貸付人と借入人が個人的に行うP2P方式であり、我々は双方の貸し借りには介入しておらず、“裸貸”を行うような不良業者とは全く関係ない」と述べたという。

 “裸貸”で借りたカネを返済期日までに返済できなければ、通話履歴に記載された父母や親戚、友人、知人に返済催促のメールが発信され、それでも返済がなされなければ、“裸照”がメールでばらまかれる。さらに返済がなければ、元本に高率な利息を加えた莫大な金額を、彼女たちにその肉体で償わせることになる。2016年11月11日付の甘粛紙「蘭州晩報」が報じたところによれば、“裸貸”を行っている貸付人たちは、返済不能となった借入人の女性たちに肉体による返済方法を提案し、彼らの客である“富二代(富豪の子供)”や“官二代(政府高官や地方幹部の子供)”の放蕩息子などと一夜を共にしたり、愛人になることを強要するのだという。逃げ道をふさがれ、追いつめられた女性たちは自暴自棄となり、春をひさぐ転落人生を歩むようになるのである。

高利貸しの危険、知っていたのは1.75%

 キャンパスローンで“裸貸”を主体としている消費者金融業者によれば、女子大学生が借金をする理由は、恋愛や遊びの資金不足、アップルのiPhone購入、ファッションアイテムの購入など、千差万別だが、彼女たちは“裸貸”によって地位や名誉を失うことになるかもしれない危険を負うことなど一顧だにせず、安易な気持ちで“裸照(ヌード写真)”を送信してくるのだという。

 4月14日付の北京紙「新京報」は『大学生のネット金融調査報告』を掲載したが、調査結果の概要は以下の通り。

(1)大学生の66%はキャンパスローンの危険性を認識しておらず、年利36%以上が高利貸しとなることを知っていたのは、わずか1.75%に過ぎなかった。

(2)キャンパスローンの利用者は、男子学生が73%、女子学生が27%で、圧倒的に男子学生が多かった。キャンパスローンを利用する目的は、物質生活の改善(デジタル機器、ファッション、化粧品などの購入):54%、基本的な生活支出:36%、娯楽支出(旅行、ゲーム、会合など):24%、などであった。

 文頭に述べた小周の場合は、父親の周さんが速やかに公安局へ通報したことにより難を免れたが、違法な消費者金融業者の餌食になっている女性たちが多数存在することは疑いのない事実である。“裸貸”は日本に存在しないと思うが、それにしても、担保に取った女子大生の“裸照(ヌード写真)”を肉親や友人にばらまくとは、人間の皮を被った悪魔の所業で、厳しく断罪されて然るべきである。


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/041900097/

 

朝鮮半島で軍事衝突はない

混迷する朝鮮半島

2017年4月21日(金)
重村 智計

金日成生誕記念の軍事パレードを閲兵する金正恩委員長(写真:ロイター/アフロ)
 米国のドナルド・トランプ大統領は4月6日の米中首脳会談で「中国が、北朝鮮を抑えないのなら、米国単独で行う」と述べた。米国が単独でシリアにミサイル攻撃をした直後のこの発言は、米国は北朝鮮を限定攻撃する意向だと受け止められた。攻撃については、4月15日説や25日説が、まことしやかに流されていた。

 しかし、朝鮮半島で軍事衝突や戦争が年内に起きる可能性は極めて低い。トランプ大統領は「中国が北朝鮮の核開発を抑えなければ」と条件をつけており、6回目の核実験をしても米国が直ちに単独攻撃をするわけではない。一方、中国の習近平国家主席は、対北朝鮮向けの石油輸出を禁止すると米国に約束した。北朝鮮の側から仕掛けることも考えづらい。北朝鮮は全面戦争できない国である。

歴史的な石油禁輸の約束

 米ニューヨーク・タイムズ紙は4月13日に「習近平国家主席は、北朝鮮が核実験をすれば石油禁輸に踏み切る、とトランプ大統領に伝えた」と報じた。同紙は、国務省当局者にこの事実を確認した。これは中国の歴史的な決断だ。中国政府系の環球時報も同じ内容を報じている。

 中国が、対北石油禁輸を約束したのは、これが初めてのこと。安倍晋三首相による働きかけの成果といってよいだろう。同首相は2月11日のゴルフ会談で、有効な対北制裁策をトランプ大統領に説いた。

 安倍首相は、北朝鮮向け石油輸出を禁止すれば、同国の軍隊は崩壊し体制を揺さぶることができると説明した。同首相は、米中首脳会談直前にトランプ大統領と電話会談した際にも、対北石油禁輸を習氏に求めるよう改めてアドバイスした。

 トランプ大統領は、4月6日の米中首脳会談で石油禁輸を強く求め、習主席がこれに応じた。トランプ大統領は「金正恩体制の崩壊は目標でない」と明言したと報じられている。

 米中首脳による合意は、米国が「単独限定攻撃」するにはかなり時間がかかる事実を示している。北朝鮮が、核実験かICBM(大陸間弾道ミサイル)に進めば、中国は北朝鮮への石油供給をストップする。それでも、核開発が止まられなければ、米国は核施設への「限定攻撃」を検討する。トランプ大統領は、「中国に感謝している。習近平国家主席を信じている」と発言した。

わずか年50万トンの石油

 北朝鮮は、なぜ全面戦争できないのか。同国は「石油最貧国」で、軍隊の石油消費量は世界最低だ。年間の石油輸入量は、中ロの貿易統計やオイル・タンカーの航行記録を確認しても、最大で年間70万トン程度。過去数年は、50万トン前後にとどまる。戦争をしない自衛隊でも、年間150万トンの石油を使用している。全面戦争は、中国とロシアが無制限に石油を供給しない限り不可能なのだ。

 加えて、北朝鮮が使用する兵器は、1960〜70年代に装備された旧式だ。米韓の近代兵器には、太刀打ちできない。

 だから、北朝鮮は核兵器開発に踏み切ったのだ。米韓両国が「北は戦争できない」とわかれば、攻撃してくると信じている。それを抑えるために核開発を進めたのだから、北朝鮮軍部には核兵器の開発で譲歩する気はない。

国連総会で演説か?

 「単独攻撃」にかけるトランプ大統領の気をそぐために、北朝鮮に残された選択肢は多くはない。南北対話か米朝対話、日朝交渉の再開、日朝首脳会談の実現しかない。

 北朝鮮は、5月9日に実施される韓国大統領選挙に期待している。革新系の文在寅候補が勝利すれば、直ちに南北首脳会談を呼びかける。投票前に核実験をすれば同候補が落選してしまうから、それまで核実験はしない。

 米国は北朝鮮に対抗し、文在寅候補を落選させるための作戦を展開している。5月9日に向けて緊張を高める意向だ。韓国の内政には一切関与しないふりをする一方で、4月25日頃に空母カールビンソンを朝鮮半島近海に到着させる予定。中国の了解を得て、黄海深くまで航行させると見られる。米朝の軍事緊張を一挙に高め、文在寅候補を落選に導く。

 このような状況において、金正恩委員長が「今年の国連総会で演説してもいい」と述べ、側近たちを慌てさせたという。中国外交関係者が情報源だから、にわかには信じがたい。それでも、金正恩委員長が限定攻撃を回避し、各国首脳の認知を得る打開策を模索している様子はよくわかる。

 習氏は、金委員長の度重なる「訪朝招待」と北京への訪問要請を拒否しており、「それなら国連に行く」と中国に聞こえるように、情報を流したのだろうか。

日朝首脳会談の可能性

 故金日成主席の生誕記念行事が行われた4月15日、粛清されたと報じられていた金元弘国家保衛相が、金正恩委員長と同じひな壇に姿を見せた。彼が、なお国家保衛省を担当し、対日政策を担当している様子がうかがえた。

 宋日昊・朝日国交正常化担当大使は17日、平壌で取材に当たっている日本人記者団を呼び集め、日本に日朝交渉再開を呼びかけた。宋大使は、@拉致再調査を約束したストックホルム合意はすでに消えたA要望があれば残留日本人問題には応じるB戦争が起きれば日本に一番被害が及ぶ――など高飛車な態度を示した。その言葉からは、話し合いを望む北朝鮮の痛々しい思いが伝わった。

 宋大使の発言には、ウソがある。戦争になれば、被害が大きいのは韓国と北朝鮮だ。日本にはほとんどない。日本がお願いすれば「交渉を再開する用意がある」という発言は、こう表現しないと北朝鮮の高官たちが納得しないからだ。

 日朝は14年、ストックホルムで「行動対行動原則」に合意した。これは日本外交の失敗だった。この言葉は、北朝鮮外交が昔から駆使する「得意用語」。拉致問題への取り組みを遅延させる一方で、残留日本人の帰国や日本兵の遺骨捜索に協力し資金を手に入れることを意味していた。

 外務省は、それに気がつかなかったようだ。安倍首相はこのトリックを知り、「拉致問題解決を最優先にしないと、交渉に応じない」と条件を変更した。北朝鮮は、外交作戦をひっくり返された。

 北朝鮮では、秘密警察である国家保衛部が日本への工作と秘密交渉を担当してきた。ところが、2002年に日朝首脳会談が失敗に終わり、日本部局は廃止。ここ数年、担当者は一人しかいなかった。最近の情報では、金委員長の指示で今年初めに日本部局が復活し、20近い人員が働いているという。金委員長は、明らかに「日朝交渉」を目指し、「日朝首脳会談」を視野に置いている。


このコラムについて

混迷する朝鮮半島
朝鮮半島の動向から目が離せない。

金正恩政権は、事実上のミサイル実験と見られる「人工衛星打ち上げ」を計画。
この成否は、日本に対する核の脅威を変質させる可能性がある。
金正恩氏の政治基盤の安定にも影響する。

一方、韓国では4月に議会選挙が、12月に大統領選挙が予定されている。
現・李明博大統領は日米と緊密に連携している。
しかし、次期政権が同様とは限らない。

韓国の動きも、北朝鮮の変化も、日本の政治・経済・社会に直接の影響を及ぼす。
その変化をウォッチし、専門家の解説をお送りする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/230558/042000012/
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/204.html

[経世済民121] 日本型「正社員」改革こそが本丸だ AI半分仕事を奪った時 自動運転2つの箱 登録IT年収780 究極リスク管理は手元現金
日本型「正社員」改革こそが本丸だ

働き方の未来

専門化うながす「業務の標準化」
2017年4月21日(金)
磯山 友幸

新入社員が直面する社会の壁とは(写真:TADAO KIMURA/アフロ)
「新卒一括採用」のデメリット

 この4月に大学を出て企業で働き始めた若者の中で、思い描いていた会社人生と現実とのギャップに動揺している人が少なからずいるに違いない。とくに大企業の場合、入社式を終えるまで配属先が分からず、具体的にどんな仕事をするのか、まったく知らされていないケースがほとんどだ。

 「営業を希望していたのに経理に配属された」「東京で働けると思っていたら、いきなり地方支店に行けと言われた」「まったく別の職種の子会社に回された」

 そんな不満の声が聞こえる。

 仕事の中味を明示せずに採用することができるのは、「新卒一括採用」の「正社員」だからだ。企業に採用された以上、あとは企業の裁量次第。どんな仕事に就かせようと、どこで働かせようと、本人の希望は二の次にされる。要は特定の職種に就く「就職」ではなく、その企業に入る「就社」であったことを、入社から数週間の間に思い知らされる。

 欧米企業での就職はこれとまったく異なる。特定の職務やポストを明示して、「適材」を募る。日本でも外資系企業などはこうしたスタイルの採用を行っており、ホームページなどをみれば、現在いくつのポストを募集しているかが示されていたりする。

 こうした欧米企業型の採用形態は「ジョブ型」、日本企業のような一括採用は「メンバーシップ型」などと呼ばれる。世界全体をみると、日本のような採用形態はまれ。日本企業の「正社員」採用は、きわめて日本型ということができる。

 政府の「働き方改革実現会議」が3月28日にまとめた「働き方改革実行計画」は、まっ先に「同一労働同一賃金」を掲げ、有期の契約社員やパートタイマーなどの非正規社員と、正社員の待遇格差の解消を目指すとしている。さらに、長時間労働の是正も重視し、罰則付き時間外労働の上限規制の導入なども盛り込んだ。改革が掛け声倒れにならないよう、今後の法改正など「工程表」も作っている。

日本企業が求める「白地のキャンバス」

 長年の懸案だった労働問題の課題に、本腰を入れて取り組む姿勢を示したのは評価に値する。だが、今回の実行計画だけで十分なのかといえば、そうではない。日本型の「正社員」雇用に、ほとんどメスが入っていないからだ。

 「正社員」という言葉が示しているように、新卒者を一括で採用し、後は企業の裁量で仕事をあてがう方法こそが、「正しい」採用形態だという観念が根付いている。正社員としていったんその会社に入れば、めったなことではクビにならない。仮に初めに配属された部署がなくなっても、他の部署に移動するだけ。定年まで雇用が守られるという暗黙の了解が存在する。

 また、配属部署についての専門知識がまったくなくても、企業はオン・ザ・ジョブで一から仕事を教えてくれる。入社前に中途半端な専門知識を持っているより、どんなカラーにでも染められる「白地のキャンバス」の方が企業にとってはありがたい、というのが長年の日本企業のスタンスだった。つまり、日本型雇用の特色とされる「終身雇用」「年功序列」と「正社員」はセットで成り立っていたと言える。

 だが、今の若者世代は「終身雇用」を信じていない。バブル崩壊以降、会社が潰れたり、リストラされたりして苦労した親をみて育ってきた世代だ。会社に入る時こそ、「この会社で定年まで働きたいと思います」と発言するが、それは入社を許されるための方便だ。大半の若者は、いずれ転職したり、自分で起業したりすることを考えている。そんな若者が増えているだけに、突然、想定もしていなかった職場への配属に、面食らうわけだ。

 安定的な雇用をある意味保証している「正社員」制度は、労働者にとってよい制度だというのが、政府や労働組合の発想である。非正規雇用を問題視し、正社員化を促すというのも、それに裏打ちされている。だが、本当に「正社員」は働き手にとって素晴らしい制度なのだろうか。

 よく考えてみれば、辞令一枚でどこへでも社員を異動させることができる仕組みは、会社にとっては好都合だ。人材採用が難しい地域で支店の職員を雇うよりも、大都市圏で採用した正社員を転勤させる方が簡単だ。一方で、辞令一枚で日本国内はおろか、世界中に転勤させられる社員の生活には、大きなしわ寄せがくる。とくに最近は夫婦共働き世帯が増え、転勤となると単身赴任せざるを得ない例も多い。生活を犠牲にせざるを得ないわけだ。

「ジョブ型採用」への転換が不可欠

 非正規社員がこれまで大きく増えてきた背景には、そうした正社員型の雇用ではなく、より自由に働きたいという女性や高齢者のニーズがあった。正社員になりたいが、なれないので非正規雇用に甘んじているという人もいないわけではないが、少数である。つまり、日本型の「正社員」システムに違和感を持つ人たちが増えてきているわけだ。

 「実行計画」には随所に「生産性向上」という言葉が出て来る。だが、働き方改革によって、どうやって生産性を向上させるのか、具体的な記述は乏しい。実際は、生産性を向上させる働き方に変えようとした場合、これまでの日本型正社員システムの見直しが不可欠になるのは明らかだ。「白紙」の新卒者を雇って一から育てるよりも、一定の知識・技能を持った「即戦力」を雇う方が生産性が上がるはずだ。

 だが、大きな問題がある。新卒者を一から育てる仕組みを取り続けてきた大企業ほど、仕事のやり方が「その会社流」なのだ。たとえば、全世界共通のように思われる経理処理なども、会社によってやり方が違う。隣の会社の経理のプロをスカウトしても、仕事ができないのだ。つまり仕事の「標準化」ができていないのである。

 そうした仕事の標準化が進めば、日本企業の生産性は大きく向上するに違いない。事務処理のアウトソーシングなどが容易になるし、人材教育にかける時間が少なくて済む。

 そのためには、社員を丸ごと抱え込む「正社員」型の採用をやめ、欧米のように仕事のポストで採用する「ジョブ型」に変えていくことが不可欠だ。ジョブ型採用が主流になれば、若者たちも自分の専門性を磨くことに力を注ぐようになるだろう。一方で、専門能力に見合った給料を支払わない会社にはさっさと見切りを付け、隣の会社に転職していくのが当たり前になる。企業からしても、優秀な人材を集めようと思えば、きちんと給料を払い、職場環境などを改善していくことが不可欠になる。

 その副作用として考えなければならないのは、若年層の失業率が相対的に上昇する可能性があることだ。まったく「白紙」の新卒者を採用するより即戦力が求められるならば、大学を出ても就職できない人が増えるかもしれない。もっとも日本の場合、少子化の影響で、今後もしばらく新卒者は減り続けるので、その副作用は吸収できる可能性もある。

 「実行計画」の中心は、同一労働同一賃金や長時間労働の是正といった「待遇改善」だ。テレワークや副業の推進なども盛り込まれているが、あくまで従来の「正社員」型の雇用形態が前提になっている。企業収益が大きく改善する中で、給与の引き上げで労働分配率を上げるなど待遇改善を進めることは重要だ。だが、「働き方」と「生産性向上」を考える場合、日本人の働き方を規定してきた「正社員」の見直しは不可欠だろう。


このコラムについて

働き方の未来
人口減少社会の中で、新しい働き方の模索が続いている。政官民の識者やジャーナリストが、2035年を見据えた「働き方改革」を提言する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/042000040/


 


 
AIが49%の仕事を奪った時、人は何をするか

田原総一朗の政財界「ここだけの話」

2017年4月21日(金)
田原 総一朗
 空前のAI(人工知能)ブームが到来している。政府が6月にまとめる成長戦略の中にも、2020年の東京五輪・パラリンピックまでにAI同時通訳などを実用化する方針が盛り込まれる予定だ。


空前のAIブームである。トヨタ自動車も今年1月、AI搭載車のコンセプトを披露した
 今回のAIブームは、3度目だととされている。第1次ブームは1960年代。50年代にコンピュータが生まれ、「あと10年も経てば、コンピューターは人間の能力を抜くだろう」と言われていたが、結局、花開かないまま終わってしまった。

 第2次ブームは、1980年代。国や企業が巨額の予算を投じ、「第5世代コンピュータ」を開発した。今度こそ人間の能力を抜くだろうと期待されたが、実を結ばなかった。

 今回の第3次ブームの訪れは、爆発的に普及したインターネットとともに、大量のデータを使った「機械学習」が広がり始めたことがきっかけだった。

 さらには、大量のデータをもとにコンピュータが自ら特徴を把握する「ディープラーニング」が開発された。これがいよいよ新しい時代を切り開くのではないかと言われている。

AIにおいて、日本企業は米国企業より大幅に遅れている

 昨年6月、政府は「名目GDPを2020年までに600兆円まで増やす」という目標を掲げ、成長戦略の基本的な方針を発表した。現在のGDPはおよそ500兆円だから、あと3年で100兆円伸ばすということだ。

 具体的に、どうやって100兆円も増やしていくのか。成長戦略の中核となるのは、「第4次産業革命」だ。その柱の一つが、インターネット・オブ・シングス(IoT)、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの分野である。これらを集中的に伸ばすことで、約30兆〜40兆円の付加価値をつくりだすという。

 これらの技術が本格的に実用化するのは、2040年代になるだろうと言われている。現在のAIは「特化型人工知能」だ。例えば、昨年、AI囲碁ソフト「アルファ碁」が囲碁棋士である韓国のイ・セドル九段と5連戦し、4勝1敗で勝ち越したことが大いに話題になった。しかし、アルファ碁は囲碁はできるが、将棋やチェスはできない「特化型」のソフトだ。

 一方、人間は囲碁のみならず将棋もチェスもできるし、テニスも水泳もできる「汎用型」だ。2040年代に入ると、AIが人間と同じように汎用型になるだろうと言われている。

 ところが、ここで重大な問題がある。今、AIと言えば、世界的な主役になっているのはGoogleやApple、IBM、マイクロソフトなどの米国企業だ。日本の代表的な企業が一つもない。

 4月16日付の日本経済新聞朝刊の社説「科学技術立国の堅持へ大学改革を」に、非常に重要な指摘があった。

「日本の科学研究はこの10年で失速し、この分野のエリートの地位が揺らいでいる」。英科学誌「ネイチャー」は3月、日本の科学研究の弱体化を厳しい表現で指摘した。
 同誌によれば、この10年間に世界で発表された論文数は80%増えたが、日本は14%増にとどまる。日本の世界シェアは2005年の7.4%から、15年には4.7%に低下した。
 日本の科学研究が、年々落ち込んでいるというのだ。来たるAI時代に向けて、日本企業はやっていけるのだろうか。

日本企業が米国企業に勝てない理由

 日本企業は、なぜAIで遅れをとっているのか。

 それは、日本の経営者の多くが60代であり、発想が古いからだ。AIでイノベーションを実現できるのは、やはり20代中頃から後半くらいの柔軟な発想が必要なのだ。米国では、そういった若い技術者が発言権を持っているから、どんどんアイデアや意見を出し合い、AIの開発に成功している。

 日本では、若い技術者たちの発言権が全くない。発言権があるのは、50〜60代ばかりだ。その結果、起こってしまったのが東芝の問題だ。なぜ、東芝が倒産寸前にまで追い込まれたかと言えば、経営陣の発想が古すぎたからだろう。

 彼らは新しい時代の変化に全く対応できなかった。これは東芝だけの問題ではなく、日本企業全体に言える話だ。ネイチャーは、こういった危機感を示している。

 僕は1984年に「マイコン・ウォーズ」(文春文庫)という本を書いた。マイクロソフトの副社長・西和彦さんに取材するために米国を訪れた時、西さんはこんなエピソードを話してくれた。

 1978年のこと、西さんは大学の図書館で目にした記事でビル・ゲイツ氏を知り、ぜひとも会ってみたいと思ってコンタクトを取ったそうだ。ビル・ゲイツ氏は23歳という若さで、すでにその分野で頭角を現していたのだ。

 僕は先日、Googleで上級科学研究員を務めるグレッグ・コラド氏に会った。40代前半だと思うが、非常に若いという印象を持った。彼は「Googleは“AIファースト”だ。これから自動翻訳や画像認識などのAI中心に開発を進める」と言った。

 こういった中で、日本の技術は米国に追いつくことができるのだろうか。

 僕はまだ希望を持っている。

 別の日に、東京大学の松尾豊准教授と会って話を聞いた。彼は日本のAI研究のリーダーの一人だ。僕は彼に、「なぜ、日本はAI技術の開発がこんなに遅れているのか」と聞いたら、「日本企業で権限を持っているのは50〜60代で、若い世代に発言権がないからだ」と答えた。僕のそれまでの認識と同じだった。つまり、組織構造の問題だということだ。

AIの発達で仕事の49%が失われる

 AIが普及すると、たくさんの仕事が取って代わられてしまうという懸念もある。悲観論ではあるが、2040年代には、世界人類の90%が仕事を失うという話もある。

 そういった事態に備え、ヨーロッパでは、所得保障制度の一つであるベーシックインカムが必要だという意見がかなり出ているという。

 具体的に、どんなことか。AIが発達すれば、従業員の仕事は全てAIがやり、企業には経営者しか要らなくなってしまう。すると、人件費を削減できるから、企業は相当な利益を稼ぐことができる。国はそこから税金を取り、全国民に一定額のベーシックインカムを支給するというのだ。オランダなどでは、かなり真剣に検討されているという。

 さらには、こんな話もある。2年ほど前、イギリスのオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授と、カール・ベネディクト・フレイ博士が、野村総合研究所との共同研究で驚くべき試算を発表した。

 このままAIの開発が進むと、日本で働いている人の約49%の仕事は、10〜20年後にはAIに代替されるというのだ。

 確かに多くの仕事が奪われるかもしれないが、同時に新しい仕事も生まれるだろう。例えば1800年前後にイギリスで起こった第一次産業革命では、蒸気機関が発明されて、蒸気船や蒸気機関車、産業用機械などが仕事をするようになった。その一方で、「機械に自分たちの仕事が奪われる」と危惧した職人たちが、工業地帯で機械を破壊する「打ち壊し運動」が起こった。

 しかし、その運動は長くは続かなかった。産業革命によって、今までになかった他のやるべき仕事が増えてきたからだ。

 このように、AIの普及については悲観論と楽観論がある。先ほどの松尾准教授は、楽観論を唱えている。「どんどん新しい仕事が生まれるだろうから、雇用喪失の心配はそれほどないのではないか」と言う。

 AIを扱える人間と扱えない人間の格差が非常に大きくなるのではないかという指摘もある。今、実に様々な意見が飛び交っているのだ。

 新しい仕事がどんな仕事なのかは、まだ明確にはなっていない。AIに代替されない仕事にはいくつかの特徴があると言われている。一つは「創造的な仕事」だ。創造する力、想像する力を要する仕事である。

 二つ目は、コミュニケーション能力が必要な仕事だ。AIには、相手を理解したり説得したりする仕事はできないとされているからだ。

 三つ目は、頻繁に発生しない「非定型の仕事」。データが蓄積できないから、AIでは代替できないのだ。例えば、企業買収などの仕事がこれに含まれる。

若者は権力者を倒すことに興味がない

 日本政府も、AI時代の対策として、ベーシックインカムについてはすでに考えているはずだ。AIがどんどん普及していけば、ほとんどの仕事はAIがやり、人間は仕事をしなくてもベーシックインカムで生活できる世の中になる、というシナリオも、可能性の一つとしてはあるだろう。

 そうなると、人間は何をすればよいのか。芸術や創作などといった創造力を要する仕事や、地域や社会のために働くNGOやNPOのような活動が盛んになるのではないかと思う。

 後者については、もうすでに兆候がある。例えば、僕は数年前に、NPO法人フローレンスで代表を務める駒崎弘樹氏に面白い話を聞いた。

 「自分たちの遠い先輩たちは、社会を変えるためには権力者を倒さなければならないと言った。しかし、僕たちはそんなことには興味がない。総理大臣など、隣に住んでいるおじさんのようなものだ。むしろ、僕らはNPOをやることで社会を変える」

 今、ベンチャービジネスをやっている経営者、特に若い世代は、金儲けを目的としていない。社会を変えることを目指している。すでにそういう価値観が根付きつつあるのだ。日本の若者の価値観は確実に変化している。僕がまだ日本が米国に追いつけると希望を持っている理由はここにある。

 人間の仕事がAIに取って代わられてしまったら、人は何に生き甲斐を求めればいいのか。自由になった時間をどのように過ごせばよいのか。そういったところも問題になるかもしれない。

 本格的にAIが普及する時代には、僕は生きていないだろうが、一体どんな社会になるだろうか。非常に興味深く、様々な分野の専門家の話を聞きながら想像を巡らせている。


このコラムについて

田原総一朗の政財界「ここだけの話」
ジャーナリストの田原総一朗が、首相、政府高官、官僚、財界トップから取材した政財界の情報、裏話をお届けする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/042000018


 

「登録IT技術者の平均年収は約780万円」
企業研究
フリーランスのIT技術者を企業に紹介する「ギークス」
2017年4月21日(金)
河野 祥平、山崎 良兵
個人で働くIT技術者と企業の間を取り持ち、手厚いサポートサービスを提供する。国の働き方改革も追い風に、多様な働き方を社会に浸透させることを目指す。

(写真=陶山 勉)

技術者のスキルアップや人脈作りにつながるイベントも積極的に開催(写真=陶山 勉)
 最大で約79万人の人材が2030年に不足する──。このような経済産業省の試算が物語るのが、IT(情報技術)業界の現場で深刻化する人手不足の問題だ。国は長期的な視点から小学校でのプログラミング教育などの人材育成に力を入れるが、現状でもIT技術者は足りなくなっている。
 そこで注目されているのが「フリーランス」の人材だ。高いスキルを持ち、特定の企業に所属せず、個人事業主としてプロジェクトごとに取引先と契約を結ぶ。業務委託であり、企業と雇用契約を結ぶ派遣社員とは異なる。優秀な技術者にとっては働き方の自由度が高く、実力次第で正社員以上に大きな報酬を得られる。企業にとっても優れた技術者を雇用の義務を負うことなく、効率的に活用できるメリットは大きい。
 とはいえ、フリーランスで働く側は得られる収入や実際の業務内容に関して不安がある。企業側には人材のスキルや得意・不得意な業務などを正確に知りたいという悩みがある。こうした不安を解消し、最適なマッチングの実現を支援して成長しているのがギークスだ。登録技術者は2017年3月末までに1万2000人に達する見込みという。
フリーランスの活躍の幅が広がっている
●人材事業の累積登録者数の推移

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/042000120/graph.png

技術者1人を3人でサポート
 「これまでにどのような技術を習得されてきましたか?」「どのような業界や分野に関心をお持ちですか?」。東京都渋谷区にあるギークスの本社では、同社の担当者がフリーランスの技術者と日々きめ細かな面談を行っている。
 ギークスのサービスの特徴は、1人の技術者に対して3人の担当者が付く手厚い支援体制だ。
 技術者が登録すると、ギークスのコンサルティング担当者が個人の技術レベルや希望条件などをヒアリング。「技術者の能力と希望する条件にズレがある場合、厳しく指摘することもある。フリーランス技術者の市場価値を正確に把握することがマッチングに重要だからだ」(小幡千尋・執行役員)。
 その上で営業担当者と連携し、適性に応じた案件を紹介する。ここでは発注する企業が求めるスキルや役割、作業環境などを細かく説明し、互いの条件が合致すれば契約となる。取引実績がある企業の数は約3000社に上り、受注までの期間は49%が1週間以内。ギークスはこの発注者側から手数料を受け取るビジネスモデルだ。
 受注が決まり、実際に働き始めた後も、サポート担当者が電話や面談を通じて契約中の悩みや今後のキャリアパスなどの相談に乗る。小幡執行役員は「コンサルティング、営業代行、アフターケアという3つの役割を担うことで、技術者の不安を解消し、仕事に集中できるようにしている」と説明する。
 また、フリーランスの悩みで多いのが、契約書類の作成など様々な事務作業を自分でやらなければならないということ。ギークスでは専用のシステムを構築し、こうした事務作業を効率的に処理できるようサポートしたり、代行したりするサービスも提供する。さらに、スキルアップ研修会や、技術者同士の交流会などを定期的に開催。登録者の技術力の向上や人脈作りの手助けもしている。会社員向けの福利厚生に代わるものとして、カルチャースクール、レジャーなどの割引・優待サービスもそろえている。
平均年収は780万円
 一方、企業の側にとっても、技術者のスキルや希望をギークスが詳細に把握していること、モチベーションを高めるサポート体制を敷いていることが大きなメリットとなる。需給のミスマッチを防ぐことで、プロジェクトごとに最適な技術者に安心して仕事を任せられる上、開発体制やコストのコントロールも柔軟にできるためだ。
 「フリーランスに絞って事業展開してきたのが我々の強み。産業構造の変化が追い風になっている」。ギークスの曽根原稔人社長はこう語る。東証ジャスダックに上場するインターネット企業のクルーズを創業した人物だ。IT人材事業は同社の一事業として2002年に開始。2007年にギークスの前身企業を設立し、2009年に独立させた。


「雇用についての根本的な議論を深める必要がある」と指摘する曽根原社長(写真=陶山 勉)
 当初はメーカーや金融機関のシステム開発などへの技術者紹介が主力だった。しかし2008年秋のリーマンショックを境に、こうした大手企業からの受注が急減。顧客開拓をネット企業に切り替えるなど転換を図った。その後、ネット業界がフリーランスを積極活用する環境が整い、現在の規模にまで事業を拡大させてきた。
 手厚い支援がフリーランスの技術者に支持され、多数の優秀な人材が集まっている。ギークスに登録する技術者の平均年収は約780万円。業界平均(2015年の厚生労働省の調査でプログラマーが408万円、システムエンジニアは592万円)を大きく上回る。フリーランスの技術者がベンチャー企業のCTO(最高技術責任者)として招かれるケースも出てきているという。
 2016年秋には経済産業省がフリーランスをはじめとする多様な働き方についての研究会を発足させるなど、国も積極的な活用を推進する構え。ギークスの成功を受け、競合のサービスも続々登場して競争は激化している。
 曽根原社長は「フリーランスの支援が産業にとりプラスになるのは確か。ただ、雇用の流動性をどう考えるかとか、雇用に関する法律を時代に合わせてどう変えていくべきかとか、より根本的な議論も深める必要がある」と指摘する。今後も業界の変化を先取りし、先頭を走り続ける考えだ。


このコラムについて
企業研究
『日経ビジネス』に掲載された、企業にフォーカスした記事の中から読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/042000120/ 


 

 

ルネサスの自動運転を実現する2つの「箱」

記者の眼

2017年4月21日(金)
庄司 容子
 4月から日経ビジネス編集部に加わって早々、着任初日。担当することになったルネサスエレクトロニクスから早速、自動運転車のデモを行うとのお知らせをもらう。ここ1、2年、よく耳にするようになった「自動運転」だが、これまで全く別の業界を担当しており、実物を見たことも乗ったこともなかった。二つ返事で会場の都内のホテルの駐車場に向かった。

 東京タワーとほぼ満開の桜をバックにした駐車場には、「RENESAS」のロゴが入った青いリンカーンが止まっている。自動運転のアルゴリズムを開発するカナダのウオータールー大学(オンタリオ州)の協力を得て、ルネサスが試作した自動運転車だ。公道での実験はできないため、国内初公開となったこの日、駐車場内を2〜3周することになっていた。

1台50個の半導体が自動運転で2倍に

 ルネサスは「マイコン」と呼ばれる半導体の車載向けのシェア35%を握る世界最大手だ。東日本大震災で工場が被災し、「マイコンがない」と自動車業界が大混乱したのは記憶に新しい。自動車に搭載されているマイコンは、運転手がハンドルを切ったりブレーキを踏んだりしたときに、それに従って車の操作を制御する役割を担う。普通の車には1台あたり50個ほど搭載されている。

 自動運転システムが搭載されれば、電子化はさらに進む。搭載される半導体はさらに増え、現在の2倍になる。

 そんな「自動車の電子化」や、その加速についての話は、業界を担当する以前から見聞きしていた。しかし記者は、自動運転を経験したこともなければ、一体どんな半導体が増えるのか、なぜ増えるのかについて明確な答えも持ち合わせていなかった。

 この日、その答えの一端をこの眼で見ることができた。それが、これだ。


 ルネサスのデモ車のトランクにのせられた2つの箱。冷却のためのファンが取り付けられ、ケーブルで繋げられている。

 それぞれの箱に積まれているのは上記のマイコンと、自動運転には欠かせない「判断」を司る「SoC」と呼ばれる種類の半導体だ。

 今回ルネサスが試作した自動運転車は、車の前面や車体の上部のレーダー、バックミラー部分のカメラなど計6個のセンサーを搭載している。これらのセンサーから信号や標識、ほかの車との距離など周辺の情報を収集。それらの情報を受け取り、「止まるべき」「曲がるべき」などと判断するのが、ひと箱に2つ、計4つ積まれたSoCなのだという。

 人間が運転する自動車では、人間が視覚や聴覚で周囲の環境を把握し、それらの情報に基づいて判断してハンドルを切ったりブレーキを踏んだりする。そのハンドルの切り具合やブレーキの踏み具合によって自動車の動きを正しく「制御」する半導体が従来のマイコンだ。それに対して今回お披露目されたSoCは、人間が担っていた「判断」をそっくり代行し、人間の操作を経由せずに「制御」の半導体に指示を伝えてしまう。

 極論すれば、このSoCが入った箱が追加されたことで、この実験車は自動運転車に生まれ変わったのだ。


 一通り仕組みを頭に入れたところで、デモが始まる。

 「カメラで赤いレーンを検知してコースを走行します」。運転席と助手席はルネサス側の担当者が座り、記者は後部座席へ。リンカーンのどっしりとした座席に座り、ドアを閉めると車がそろりと動き出す。


 駐車場内のため、スピードは時速10キロメートル程度だが、いきなりカーブへ。自動運転のデモゆえ、もちろん運転席に座った担当者は指一本ハンドルに触れていないが、こまめに動いて曲がり少し感動する。

 車は車線を模した2本の赤いレーンの間を外さず、そろそろと走行。前に走っているバンとの距離も一定に保ち、乗って30秒ほどで「きっとぶつからないだろう」という安心感を持てた。「STOP」の標識もきちんと認識し一時停止。最後に信号と通信して赤であることを認識して止まり、1周目が終了した。

 SoCとマイコンの関係を思い起こしてほしい。実験車に搭載されたカメラは、レーンの際を描く赤いラインを認識する。その情報に基づいて、「カーブだから曲がるべき」という「判断」をSoCが下し、「制御」系のマイコンに伝達する。これにより、自動車はカーブを曲がる。

 「箱」を見てからデモ走行を経験すると、なるほど自動運転の肝を握るのが「センサー」と「半導体」だということが実感できる。


 「車がサイバー攻撃を受けたと仮定します」。

 おもむろに助手席の担当者が社内のモニターを操作した。

 マイコンやSoCはカメラやレーダーから届いた情報を処理して、何をすべきか判断し一瞬のうちに車を操作している。そのシステムが何者かにハッキングされ、半導体に送られる情報が恣意的に操作されたら――。想像するだけでも恐ろしいこの事態を、ルネサスの半導体は「ゲートを設けて想定外の情報が来たら遮断する」(大村隆司常務)仕組みだという。マイコンに搭載されたフラッシュメモリーに書き込まれたプログラムを書き換えられないようにするなど、既存の車載ビジネスで培ったセキュリティー技術を使っている。

 なるほど「判断」と「制御」が直結して自動車を動かす以上、「判断」の権限が奪われれば自動車は制御不能になる。

 サイバー攻撃を受けたと仮定した自動運転車は、路肩に見立てた空間に寄せて止まった。次の周回では搭載している半導体が故障したと想定。SoCのうち一つが故障すると、システムが異常を認識する仕組みが働き、やはり車は路肩に止まった。利便性の副作用として生まれてくるリスクに対して、自動車業界は総力を挙げてその対策に取り組むことになるだろう。


 日本では東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に高速道路での自動運転の普及が見込まれる。海外では2021〜2022年ごろにはタクシーなどで完全自動運転が実現するともいわれる。この巨大な市場で勝ち残るため、ルネサスは昨年秋、SoCを搭載した開発キットを2種類、それぞれ499ドル、799ドルで発売した。すでに大学や企業など100団体ほどに販売したという。

 ルネサスの車載半導体の現在の取引先は、デンソーや独ボッシュなど「Tier1(1次部品メーカー)」だ。勝手知ったるTier1の顧客だけで自動運転車を作れるならば、これまで通り半導体だけを提供すればよい。しかし自動運転は完成車メーカーやソフトウエア開発企業など、「様々な人の叡智を集める必要がある」(大村常務)。米エヌビディアやインテルが買収を発表したモービルアイなど強力なライバルに勝つためにも、大学生らにも手の届きやすい価格にして、広く多くの開発者にルネサスの半導体を前提としたソフトウエア開発を手がけてもらうのが狙いだ。

 夢の自動運転。その背後で、静かな主導権争いが繰り広げられている。2つの箱が搭載されたリンカーンに乗りながら、その未来像を実感できた。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/041900446/

 


究極のリスク管理は、手元のお金の管理

経営計画書は魔法の書

大災害に耐えられる現金があるか
2017年4月21日(金)
古田土 満
 口コミで年間150社以上の新規顧客が集まる、人気抜群の会計事務所が東京・江戸川区にある。その代表社員、古田土満氏が勧めるのが、経営計画書の作成だ。特に財務面では、損益計算書ではなく、貸借対照表中心の経営計画の立案を強く勧めている。連載最終回は、なぜ著者が貸借対照表中心の経営を勧めるか、それが会社と社員を守ることにどうつながるかを説く。
 中小企業においても、多くの経営者は損益計算書中心の経営をしています。経営者の能力は増収増益を何期連続しているかによって評価されることが多くなっているように思います。


こだと・みつる 法政大学卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験し1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。企業の財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで徹底した分析ツールを武器に様々な企業の体質改善を実現。中でも年商50億円、従業員100名以下の中小企業オーナーに絶大なる信頼を得ている。著書に、『社員100人までの会社の「社長の仕事」』(かんき出版)など
会社は赤字だから倒産するのではない

 確かに、増益(税引前利益の増加)はよいことですが、増収(売り上げの増加)のみで増益にならない場合はどうでしょうか。貸借対照表で見ると、自己資本額が増えないのに、売上債権(受取手形・売掛金)や棚卸資産が増えます。さらに売り上げアップのために設備投資まですれば総資産はさらに増加し、自己資本比率は下落します。

 総資産が増えて自己資本が増えないということは、借入金が間違いなく増えているということです。借入金依存度は高まります。

 次に増益の場合でも、利益以上に売上仕入資金(売掛債権と買掛債務の差)のマイナスが増えたり、棚卸資産が増えたりすると、儲かっているのに資金不足になり、黒字倒産となります。

 多くの上場会社が、倒産する直前の決算書は黒字です。会社は赤字だから倒産するのではなく、手元にお金がないから倒産するわけです。

 だからこそ、私は貸借対照表中心の経営をしようと訴え続けています。

1人当たり自己資本額の目標は1000万円

 会社が増収・増益にこだわる理由の1つに、銀行の格付けがあります。

 銀行の格付けは営業利益・経常利益を多くして流動資産を多くし、流動負債を少なくすればよくなるようになっています。銀行が一番重視している債務償還年数は、借入金を償却前利益で割って計算するからです。

 しかし、借入金の返済は償却前利益ではできません。損益計算書の科目で貸借対照表の科目である借入金は返せないからです。借入金の返済は同じ貸借対照表の科目であるお金(預金)でしかできません。簿記の仕訳をしてみれば納得できると思います。

 借入金を返済するためにも、預金を増やす経営、キャッシュフロー経営をしながら、自己資本額を高めることを念頭に、企業を発展させなければなりません。

 貸借対照表中心の経営のポイントは、絶対的な額ではなく、比率や、従業員1人当たりの額で見ていくことです。私ども中小企業の経営で目標とする1人当たり自己資本額は、1000万円くらいだと考えています。

 30人の会社なら自己資本額3億円、100人なら10億円です。古田土会計グループは自己資本16億円でスタッフ181人ですから、今のところ1人当たり884万円です。

 中小企業では、自己資本比率40%を目安にしながら、金額としてはまず1億円を目指してはいかがでしょうか。その次のステップとして、1人当たり1000万円を目指すべきと思っています。

 次に、いくら自己資本額が多くても、手元にお金が残っていなかったなら会社は簡単に倒産します。留保しておきたい資金の目安は、社員とその家族を守るために、できたら給料の1年分。少なくとも6カ月分は必要です。

 理想的な貸借対照表は結果としてできるものでなく、経営者の強い意志で作り上げるものです。

(1)仮払金、貸付金、投機などに無駄な資金が流れていないか
(2)土地・建物等の固定資産は本当に必要なのか、賃借ではダメなのか
(3)売り上げ・仕入れ資金が大きくサイト負け(資金の回収サイクルより支払いサイクルが速い)状態なのをどう改善するか
(4)棚卸資産はどのくらい減らせるか

などの項目を長期的に改善しながら、足りない分を利益で埋めていくのです。


大災害時に、あなたの会社は生き残れるか

 究極のリスク管理の意味でも、手元資金があることが大切になります。

 最近、一般的にリスク管理というと、個人情報の漏洩など情報セキュリティーの管理のことが言われています。しかし、我々中小企業にとっての一番のリスク管理は財務体質、特に手元資金の有無であると確信しています。

 もし、東日本大震災クラスの大地震があっても、我々の会社はつぶれないと自信を持って言える経営者がどのくらいいるでしょうか。

 イメージしてください。

 商品は全て売れない。震災で建物は全壊しました。取引先は営業不能に陥り、売掛金の回収ができません。手形の不渡りも起きてきます。こんな状態でも、社員を守ることができるだけの蓄積が会社にあるでしょうか?

 当然ですが、払うべき買掛金、手形は支払わなければなりません。そうしないと、仕入れ先が倒産してしまいます。そこの社員と家族をも不幸にします。ただ、銀行の借入金の返済は、猶予してくれるでしょう。

 貸借対照表の借方の科目で一番注意しなければならない科目は商品、製品等の在庫です。貸借対照表には資産として価値のあるものとして計上されていますが、売れなければ価値はゼロで、保管費用が余分にかかります。自分の会社の在庫を一度ゼロと評価してみて貸借対照表を見ると、借入金がとてつもなく大変な額に見えます。

 商品は売れれば大きな粗利益を稼ぎますが、売れなければ会社の命取りになります。大きく儲けようとするより、体力に見合った在庫にしないと会社はつぶれます。

 建物、付属設備などもひとたび大地震があれば、つぶれて何もなくなります。その他に撤去費用がかかるので、マイナスの財産になる可能性があります。

 売掛金、受取手形もお客様が特定の地域に集中していると一緒に被害に遭い、価値はゼロになります。その他の科目に潜むリスクも検討してください。

 会社は、存続することにより社員と家族を守ります。利益の蓄積はお金で残すべきものと、私は繰り返し言い続けています。

 もし大地震や火災などで営業が不可能な状態になった場合に、会社と社員を守るのはお金です。このお金が蓄積されているかどうかが、生きるか死ぬかの分かれ道です。

 お金を持つ目安は、前述したように社員の給料(賞与は含まない)を何カ月払い続ける体力が会社にあるかです。最低6カ月、できたら1年です。古田土会計は総額で月々6500万円の給料を払わせていただいているので、7億8000万円の預金が必要です。

 中小企業はまずこのレベルのお金を蓄えた後で、ゴルフ会員権や、リゾート施設の会員権を買うべきです。不動産の購入も4割くらいは自己資金を用意し、6割を最も長期の借り入れにして月々の返済額を少なくして手元資金を蓄えるべきです。

 経営者は、社員と家族を守ることを何よりも優先すべき目的と考え、常に最悪のリスクに備えていなければならないのです。

(構成:菅野 武、編集:日経トップリーダー)

著者、古田土満氏の新刊を発売しました

 著者自身が経営に取り入れている、社長と社員が目標に向かって一丸となる経営計画書の作り方と、その実践方法についてまとめた新刊書『ダントツ人気の会計士が社長に伝えたい 小さな会社の財務 コレだけ!』を発売しました。財務のどこに手を打てばいいのかが分かる未来会計図、利益の出し方とお金の残し方が分かる月次決算書など、著者が長年の経験からつくり上げた小さな会社のための財務ツールについても丁寧に解説しています。詳しくはこちらから。

このコラムについて

経営計画書は魔法の書
口コミで年間150社以上の新規顧客が集まる、人気抜群の会計事務所が東京・江戸川区にある。その代表社員、古田土満氏が勧めるのが、経営計画書の作成だ。といっても売り上げや利益の目標を羅列するだけのものではない。会社と社員の明るい未来像を経営計画書の中に具体的に描き、社長が社員にその実現を約束することによって、社員が高いモチベーションを持って仕事に取り組む、いい社風の会社をつくることができるという。経営計画書を使った会社運営の要点を古田土氏が語る。2017年2月刊行の著書『ダントツ人気の会計士が社長に伝えたい 小さな会社の財務 コレだけ!』(日経BP社)を再構成。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16nv/030900009/041800005/


 


 
角を曲がり切れなかった猪は再起できるか

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

人は年を重ねても変わるべきか、無理は避けるべきか。
2017年4月21日(金)
山本 直人

対照的な同期コンビ

 その2人は同期入社だったが、見た目も性格も対照的だった。ところが、なぜか馬があう。入社して20年が経ち、部署も違うけれど何となくお互いの動静は知っていたし、たまには食事にも行っていた。

 Bさんは、大柄で学生時代からスポーツをやっていた。体育会ではないけれど、伝統あるサークルにいて見た目もいかつい。30代になる頃からかつての筋肉が脂肪になって、さすがに体重が気になるようだが今でも早飯の大食いだ。

 Mさんは、小柄で見るからにおとなしそうだ。大学時代は「鉄道研究会」にいた。まだインターネットもない時代に、時刻表と首っ引きであちらこちらを旅していた。入社したころから老成した面持ちだったが、その雰囲気は40歳になってもあまり変わらず、むしろ若く見られてしまうほどだ。

 この2人は、性格も対照的だった。

 一見して豪放磊落なBさんだが、結構気が弱い。大事な商談や会議の前だと、前の晩から眠れなくなる。そして、何を話そうかと入念に準備する、もっとも一度相手と打ち解ければ懐に飛び込んでいくが、それでも宴席があれば早めに店に行き抜かりがないように準備する。見た目とは異なり、「ノミの心臓」なのだ。

 一方でMさんは、図太い。いい意味で「鈍い」とも言えるだろう。遠方の得意先に行くのに、1時間も勘違いして遅れたことがあった。実際は、得意の鉄道の知識を活かして30分遅れになったことを得意げに説明したら、かえって先方に気に入られたこともあるくらいだ。

 亥年生まれのBさんは、年男を迎えた年賀状には「猪突猛進」と書いてきたが、それを見るMさんは子年生まれだ。干支までも、どこか対照的な2人だった。

猪に訪れた意外な転機

 2人が勤務しているのは、飲食品メーカーで、ともに営業に配属された。Mさんは本社部門の経験もあるが、Bさんは営業一筋だった。出世のペースはほぼ同じで、そこそこに早い方だろう。

 ところが、Bさんには大きな転機が訪れた。営業を離れて工場の管理部門の課長へと異動になったのだ。

 営業一筋のBさんとしては少々不本意だったが、Mさんは「期待されてるな」と思った。仕事の幅を少々広げておくことで、将来に向けての地固めを行わせようという会社の「親心」だと感じたのだ。営業といえども、生産部門の状況を知っておくことは今後のキャリアの上では欠かせない。また労務管理などの気を遣う仕事は案外とBさんに向いていると思った。

 ほどなくして、Mさんも営業統括の部門の課長に異動した。お互いに、営業の一線から離れて「次の一手」を考える仕事である。

 淡々と仕事をこなすMさんに比べて、Bさんはちょっと燻っているようだった。そんな噂は耳に届くし、本社の会議で会った時もあまり元気がない。心なしか痩せたようにも見える。

 久しぶりに2人でランチに行くことになった。

 「規則的な生活になったんで、健康にいいよ」
そう笑うBさんだが、どこか寂し気に見える。ちょっと聞くと、デスクワーク、ことにデータ管理がどうも性に合わないらしい。

 何もパソコン作業がしんどいわけではない。そういう仕事は、若手がどんどん進めてくれて、とても助かっているという。ただ、自分が何をすればいいのかわからない。どうやら、そのデータをもとにして改善策などを考えるのがBさんに課せられた仕事のようだが、「よくわからねえんだよ」と言う。

 Mさんはちょっと心配になった。Bさんは「わからない」わけではないのだ。何となく「やる気がしない」のだろう。「みんな優秀なんだよね」とBさんはどこか寂しそうだ。工場は東京の近郊にあり、周囲には飲食店も少ない。仕事が終わるとさっさと帰っていく。職場を離れた部下とのコミュニケーションもあまりないらしい。

 「この歳になったら、自分の仕事は自分で作らなきゃ」
珍しく説教めいたことを言ったMさんの言葉に、「そうだよな」とBさんは頷いていた。「猪突猛進、だけじゃどうしようもないんだよなあ」

思わぬ暴発でひと騒動に

 それから3カ月ほど経った時に、Mさんの元に意外な人物からの内線電話があった。人事部のXさんだ。一期上で人事や総務畑一筋の彼には、Mさんたちも入社以来世話になっている。

 何事かと思い、指定された会議室へ行った。どうやらメールに書けない何かがあるのだろう。部屋に入ると、あらためて周りを確かめるようにして「実は」とXさんは切り出した。

 どうやら、Bさんがトラブルを起こしたらしい。しかも社外だという。概要はこんな感じだ。

 工場の最寄りの駅で、駅員と揉めたらしいのだ。夜の8時過ぎに帰ろうした時に、何かを注意された。何かが気に障ったのかBさんがつかみかかったようで、それが騒ぎになったという。

 「飲んでたんですか?」とMさんは思わず聞いた。寂しさを紛らわすために、工場の近くで一人酒でもしたんだろうか。先日の雰囲気からそんな想像をしたのだ。ところが実際は違ったらしい。Bさんはしらふだった。そして、その若い駅員にも問題があったらしい。どうやら他の客とも似たようなことがあったようなのだ。

 「あの鉄道会社は、取引があるだろ」とXさんは言う。たしかに系列の外食企業に、いろいろな食材を納品していて結構長い付き合いなのだ。

 そんなこともあって、お互いに「迷惑かけました」と言う話になった。もし酔った上での暴力だったら、戒告以上の処分になっただろうが、今回はもっと軽い注意処分で済むという。

 「しかし」とXさんは言う。もう今の工場では難しいから、異動させることにする。「で、」と一拍おいて、Mさんの方に向き直って、頭を下げた。
「お前のところで、お願いできないだろうか」

 同期が部下になる。しかも、傍から見ても妙な異動だ。嬉しい話ではないが、「嫌です」などと言えるわけがなく異動は決まった。それにしても人事が頭を下げるなんて、ロクな話じゃない。Mさんは、後からそう言っていたという。

遠回りして、もう一度スタートへ

 「すまない」

 Mさんに会った時、Bさんは絞り出すようにひとこと言うと黙ってしまった。肩書は「部付課長」だが、今回の一件はキャリアとしては致命的だ。落ち込むのも無理はない。

 形ばかりの言葉で励ましてもしょうがないので、食事を共にすることにした。面と向かい合うのも気まずくなりそうなので、会社から離れた店のカウンターに並ぶ。やはり気になるのは「その夜の件」だ。

 その日、Bさんは一人で残っていた。データを見ながら、「次の一手」を提案するために悶々としていたのだ。一方で、要領よく仕事をこなして帰ってしまう若手に苛立ちもあったという。
 そして、駅でホームの端を歩いていた時に駅員に声をかけられた。それが、なんとなく後輩の姿とダブったらしい。

 「なんだか、生意気に見えちゃってね」

 Mさんは、何も言えなかった。同情はするが、明日からのことを考えなくてはならない。「それでさ」と話題を変えて、Bさんの仕事について話を進めた。

 その日から、およそ1年半が経ちMさんは次長になり、Bさんは営業の現場に戻った。地方の営業所だが、本人は晴れ晴れとしている。

 送別会も慌ただしく、2人で飲む機会もないまま、異動の日にオフィスの隅で立ち話になった。

 「結局、俺は変われなかったし、変わろうとしなかったんだよな」とBさんが言う。「でも、それでいいのかもしれない。猪突猛進でうまく曲がれなかったけど、それが自分の限界なんだろう。でもまだまだ俺にできる仕事もあるはずだし」

 Mさんは、一瞬言葉に詰まった。「そうだよな」と励ませばいいのかもしれない。でも、今からでもいいから「変わってみる」ことも大切なんじゃないか。
 そう思ったけれど、口には出せなかった。

 人は歳を重ねても変わるべきなのか。出世をしたいならそれも必要だろうが、無理して変わろうとするよりは、変わらないままの方が幸せなのか。

 答えは、Mさんにもまだわからないままだ。

■今回の棚卸し
 どんな人にも仕事の得手不得手がある。不得意な分野を勉強してバランスをとる人もいれば、得意な領域に集中する人もいるだろう。しかし、時間が経つにつれて、気が付いたら「我流」に凝り固まる人もいる。

 ビジネスの環境が変われば、ミドル世代には、「仕事の幅」が求められる。自らを変える機会を逸する前に行動を起こすようにしたい。そして、時に同期の仕事ぶりを冷静に見ることもまたヒントになるはずだ。

■ちょっとしたお薦め
 男二人を描いたストーリーは多いが、その関係はそれぞれだ。お互いの生きざまを見ながら、自らを省みることもあるだろう。

 夏目漱石の「それから」はよく知られた名作であるが、男二人の物語としても読むことができるだろう。一人の女性をめぐる二人の葛藤が、行間からにじみ出てくる。

 主人公は若き「高等遊民」だが、歳を重ねてから読んでみると、漱石ならではの奥深さが感じられる。連休中に手に取ってみてはいかがだろうか。

このコラムについて

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/041900027/

http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/285.html

[不安と不健康18] 不眠症や肩こりで処方「ベンゾ系薬剤」に常用量で薬物依存の危険
【第338回】 2017年4月21日 井手ゆきえ :医学ライター
不眠症や肩こりで処方「ベンゾ系薬剤」に常用量で薬物依存の危険

 先月21日、厚生労働省は睡眠薬や抗不安薬として使われている「ベンゾジアゼピン受容体作動薬(ベンゾ系薬剤)」と「バルビツール酸系薬」など49薬品(44成分)について、薬の説明書(医薬品添付文書)に「連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること(後略)」と明記するよう指示を出した。

 対象薬剤の有名どころは「アルプラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン他)」「クロアチゼパム(商品名:リーゼ他)」「エチゾラム(商品名:デパス他)」「ゾルピデム(商品名:マイスリー他)」など。

 ベンゾ系薬剤などによる「薬物依存」は、長期間の大量処方といった「乱用」や「異常な量や使い方」で生じるとされていたが、ふつうに処方される量と飲み方でも依存を引き起こし、減・断薬で離脱症状を生じる可能性があると公に明示したわけだ。

 ベンゾ系薬剤の常用量依存に関しては、欧米では20年以上前から広く認識されていた。しかし日本ではいまだに「常用量で依存は生じない」と言ってはばからず、漫然と処方箋を出し続ける医師が少なくない。逆に、時間をかけた減・断薬に応じてくれる医師を探すほうが難しいかもしれない。

 しかも近年は、一般内科や整形外科で「不眠症」や「肩こり腰痛(!!)」にベンゾ系薬剤が簡単に処方されている。心身症や精神疾患でなくとも、気づかないうちに重複・連用してしまう可能性があるわけだ。また、闘病中に睡眠薬や抗不安薬を服用していた「がんサバイバー」の連用と常用量依存にも注意が必要だろう。

 脇道にそれるが「お薬手帳」の存在意義はここにある。違う病院で重複処方がないか、相互に副作用を強める薬がないかをチェックするため、かかりつけ薬局を1カ所に決めておくといい。

 一般に、ベンゾ系薬剤の常用量依存が生じるのは、服用後2〜3カ月とされている。対象薬を飲んでいる方は、まず自分の症状と薬の必要性を主治医と再確認することから始めよう。自己判断の減・断薬は決して行わないこと。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
http://diamond.jp/articles/-/125619
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/498.html

[政治・選挙・NHK224] 日本版「禁酒法」も?不安広がるアルコール規制の核心 残業時間減るか?連合会長直撃 膨大なIoT機器サイバー攻撃標的の悪夢
2017年4月21日 鈴木貴博 :百年コンサルティング代表
日本版「禁酒法」も?不安広がるアルコール規制の核心


厚労省にアルコール健康障害対策推進室が設置され、「政府によるアルコール規制がどこまで進むのか」とネット上で不安が広がっている。飲酒規制は本当に厳しくなるのか
いったい何が起きるのか?
厚労省のアルコール対策に募る不安

 4月1日、厚生労働省にアルコール健康障害対策推進室が設置された。そのことで「政府によるアルコール規制がどこまで進むのか?」とネット上で不安が広がっているようだ。厚生労働省は「あくまで議論はこれから」と言っているが、これからどのような議論がなされるのかが想像できるだけに、アルコール愛飲家たちは心配で仕方ないらしい。

 実はこの動き、3年前に施行されたアルコール健康障害対策基本法にのっとったもので、やることもすでに決まっている。法律に明記された業務の中で気になるのは、「都道府県ごとにアルコール健康障害対策推進計画の策定を要請すること」という業務だ。厚生労働省から直接要請されれば、各都道府県は対策を推進する計画を策定する流れになる。ネット民が不安なのはここで想定される対策の内容だ。

 要は、未成年の飲酒禁止とアルコール依存症に陥る人の数を減らすことを主眼とする法律なのだが、そのための対策は論理的に言えば4つしかない。値上げをする、飲み放題のような大量に飲ませるサービスを禁止する、買いにくくする、飲める場所を減らす――。この4つだ。

 そのうち値上げは財務省の管轄らしいので、今回の法律で自治体は、残りの3つの対策のどれかないしは全部を「推進する計画をつくれ」と言われることになるわけだ。

 具体的には、「飲み放題サービスがなくなるのではないか?」「自販機でビールが買えなくなるのではないか?」「公園のベンチや駅前広場など公共の場で缶ビールを飲めなくなるのではないか?」といったことが心配されている。

 前例として頭に浮かぶのがタバコの規制である。バブル当時は吸い放題だったタバコも30年間続く規制の結果、今では吸える場所を見つけるのが難しい。タバコを吸う若者の比率も、JTの調査ではバブル当時の30代男性で7割もいたのに、現在は4割以下にまで減少している。

 では、飲酒率はどうか。ある調査から数字を引用すると、「日ごろお酒を飲む」と答えた人は男性で7割、女性は4割程度らしい。30年前のタバコと結構状況は似ているのだ。

 30年前の日本では禁煙席は結構珍しかった。新幹線でも飛行機でも、中で自由にタバコは吸えた。さすがに混雑した山手線の満員電車でタバコを吸う人はいなかったかもしれないが、タバコがそこまで悪いと言う社会常識は当時はなかったので、喫煙者にはとても自由な状況だったのだ。それが規制や条例ができて、あっという間に現在のような状態に愛煙家は追い込まれていった。

最後に残った規制対象は飲酒
あながちあり得ないとは言えない

 こういう比較をすると怒られるかもしれないが、迷惑防止条例や淫行を禁止する条例が増えたおかげで、性犯罪もかなり減った。何を言いたいかというと、条例には社会を変える強い力があるということだ。その流れでタバコ、性犯罪ときて、最後に残っているのが飲酒という見方もできる。

 日本は飲酒による迷惑に対して、社会的にも法律的にも寛容な文化が残っている。しらふだと訴追されるような暴力犯罪でも、深酒で酩酊状態の人が起こした場合は不起訴になったりする。それと比較すれば、欧米では酩酊して他人に迷惑をかける人は、その時点でアウトだ。

 その基準で言えば、日本のように酔っぱらったサラリーマンが帰宅の電車に乗り込んでくるのも、今は当然の行為だが、いずれ規制される世の中になってもおかしくはない。公共の場所において「酒気帯びはセーフでも酔っ払いはアウト」という欧米流の考え方が社会常識になれば、あながち「そんなのはおかしな規制だ」とも言い切れないのだ。

 そう考えると「飲み放題がなくなる」といったレベルの不安はまだ入り口で、もう少し先まで踏み込んだ規制が進むことを覚悟しておいたほうがいいかもしれない。

 さて、私は酒もタバコもやらないが、リバタリアン、つまり自由主義論者なので、こういった規制には実は反対だ。重度のアルコール依存症患者やチェーンスモーカーには医療としての対応は必要だし、アルコールで犯罪を起こした人に対しては警察は厳しく対応すべきだと思うが、個人が日常的に楽しんでいることに行政がとやかく言うべきではないと思っている。

 最近だと、自宅でタバコを吸っている人に対して換気扇から臭いが出てくるという理由でクレームをつけるといった動きがあるが、ここまで来るとやり過ぎだというのが私の意見だ。とはいえ、反対論者の主張には、「タバコもアルコールも健康に悪い」という錦の御旗のような根拠がある。その点について、コンサルタントの立場からひとこと言っておこう。

おいしいものはみな健康に悪い
むやみな規制は悪法のそしりを免れない

 実は、健康食品についてのコンサルティングをしている中で気づいたことがある。「おいしいものはみんな体に悪い」のだ。

 タバコはともかく、酒と同じくらい体に悪いものを挙げると、霜降りの牛肉とかフォアグラとかの食べ過ぎは体によくない。激辛のカレーのように過剰なスパイスや塩分の取り過ぎも体に悪い。おいしいご飯もそうだ。おいしいからといって炭水化物や糖分を食べ過ぎると、肥満で糖尿病リスクが増大する。

 ハリウッドのSF映画で描かれる未来社会では、体に悪いという理由で料理に塩をかけるのが禁止されていたが、笑いごとではない。嗜好品やおいしい食材はなんでも適量ならよいが、過剰になると健康に悪いのだ。

 そんなことは当たり前であるにもかかわらず、適度な嗜みまで禁止する規制が万一行なわれるようなことがあれば、20世紀前半の米国で施行された「禁酒法」のように、歴史的には「悪法」のそしりを免れないだろう。現在そんな法律はないが、「禁脂身法」や「禁塩法」ができたとしても、同じことだ。

 私が新設されたアルコール健康障害対策推進室の関係者に願うのは、「あくまで適度な仕事をしてほしい」ということに尽きる。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
http://diamond.jp/articles/-/125633


2017年4月21日 ダイヤモンド・オンライン編集部
「残業時間は減るのでしょうか」連合の神津会長を直撃!

政府は3月28日、「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)の最終会合を開き、残業時間の罰則付き上限規制などを盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定した。この会議では、安倍首相の指示により、連合の神津里季生会長と、経済団体連合会の榊原定征会長が直接交渉するなど、まさに筋書きがないドラマが繰り広げられた。その舞台裏と、今回の計画に対する評価について、連合の神津会長を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン副編集長 田島靖久)

ひょうたんから駒の労使交渉で
労働基準法70年目の快挙決まる

──政府が3月末にまとめた「働き方改革実行計画」に、長年の懸案だった長時間労働の是正などについて盛り込まれました。


神津里季生(こうづ・りきお)/1956年東京都生まれ。東京大学教養学部卒業後、新日本製鐵に入社。2002年に新日本製鐵労働組合連合会会長に就任。日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員長などを経て、13年に日本労働組合総連合会(連合)事務局長に就任。15年から連合会長を務める。
 今回は、まるで“ひょうたんから駒”のように、経団連と労使交渉まで行うこととなりましたが、その結果、いい形で合意することができたという意味では、非常に意義深いものだったと思っています。労使が立ち位置の違いを乗り越えて、双方が合意できる内容にしていけたのですから。

 その中身についても、長時間労働の上限規制を罰則付きで設けることが決められるなど、精神論だけではなく具体的な仕組みとして成果を収めることができた意味は極めて大きいものがあります。これは労働基準法が施行されて以来70年間で初めてのことで、言ってみれば連合としての長年の悲願でもありましたから。そのこと自体は画期的なことだと言えるでしょう。

──働き方改革実現会議は、9月27日にスタートして3月いっぱいまでという限られた期間のものでした。
 
 そうですね。政府が示したものだけでも9つという非常に幅広い論点があり、「働き方改革」という大風呂敷を広げる中で、3月いっぱいという期限が切られていましたから本当に大変でしたし、労働時間の上限規制の議論が始まった2月1日からの1ヵ月半は、まさに筋書きのないドラマでしたね。

 そもそも私は、唯一労働者の代表者として参画している会議の議論が、淡々としたものであってはならないという強い思いを持って臨んでいました。連合として格段のこだわりを持っていたのは、「長時間労働」と「同一労働同一賃金」ですね。これら2つについては言うべきことをとにかく言って、会議のアウトプットを少しでも自分たちの理想に近づけたいと思っていました。

残業100時間が一人歩き
看過できないとかみついた

 中でも、そういう思いを強くした出来事がありました。それまで、時間外労働に上限規制を設けるという方向性は示されていたのですが、1月末になって新聞各紙が「繁忙期は100時間」というタイトルで、上限の「政府案」を相次いで報じたのです。一部全国紙は当初80時間と報じていたにもかかわらず、いつの間にか100時間として、数字が一人歩きし、流れができてしまっていたんです。

 なんだこれは、まるで忙しいときは月に100時間残業するのが当たり前と言っているようなものではないかと憤りました。これは看過できないと、2月1日の会議で「1ヵ月100時間なんて到底あり得ない」と発言したのです。反映されようがされまいが、連合として言うべきことはその都度の会議で全て言い切ってきました。

──途中で安倍晋三首相から「労使で直接話し合え」と指示され、連合と経団連による、突然の労使交渉が始まるなど、意外な展開を見せました。

「労使の合意がなければ法改正はおじゃんだ」と総理から言われ、まさに瓢箪から駒の労使協議となったわけです。私と経団連の榊原定征会長は1回目の時だけで、後は事務局同士で協議を重ねていきました。内容的にはかなりのバトルを繰り広げたのですが、いずれの事務局も真摯な姿勢で臨み、話し合いをまとめていきました。

──怒鳴り合いのようなバトルを繰り広げたのですか。

 まあ、それは分かんないけど(笑)。しかし、互いに真摯に向き合っていましたよ。じゃないと(最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障することにより従業員の休息時間を確保しようという)インターバル規制の努力義務を盛り込むなんてことにはならなかったわけですから。

──議論の中心は何だったんですか。

 インターバル規制の導入と過労死・過労自殺対策、長時間労働の上限規制ですね。我々としては、100時間という数字が一人歩きすること自体がおかしい、原則は月に45時間ですよという主張だったわけです。36協定を結んで、残業が必要だと労使が認識したとしても、それは本来45時間で収めなければならないわけですよ。

 でも、それが今まで名目だけになっていて機能していなかった。それをきちんと法律に書き込んで、労使でやっていきましょうという話になったのです。45時間を超える残業がなぜ必要かをきちんと書き込まなければならないし、それを労基署がチェックする。そういう合意がなされたわけです。

 マスコミでは、100時間以上か未満かという点ばかりクローズアップされましたが、経団連としても100時間が一人歩きすることは本意ではなかったし、同じ問題意識を持って前向きに取り組んでいた。だから、これだけの短い期間で交渉し合意にこぎ着けることができたわけです。

前進したことには違いないが
まだスタート地点に立っただけ

──では連合側が勝ったと。
 
 決して勝ち負けではありません。労使関係は本来、どちらが勝ったとかいう話ではないと考えています。互いが納得しなければ健全ではない。そういう意味では今回ギリギリのところで合意できたのは健全な労使関係が築いた結果だと考えています。


 それよりも、100時間などとあおっておいて、それが決まってしまえば本質的な部分をほとんど報じなくなるという報道のあり方には疑問を感じています。論点は特例の上限だけではないのです。失礼な言い方ですが、マッチで火を付けたのなら、きちんと最後まで報じてポンプで火を消してほしいものです。

 先日も労働弁護団の先生とお話をしていたら、ある方のIT企業に勤めている夫が、「なんだ、100時間働かなきゃいけないのかぁ」とつぶやいたと言うんです。みんな100時間働かなきゃと誤解しているわけです。今回の会議で何が決まって、企業、そして働いている人は今後どうすべきなのか、正確に伝えていくことこそが大事なのではないでしょうか。

 また、法の抜け穴的な部分ばかりをクローズアップするのもいかがでしょうか。ブラック企業たちに対して誤った気づきを与えてしまい、結果、働いている人たちに負担がかかることにもなりかねないからです。本来、そうした悪しき常識を持つ企業や、36協定を結んでいないような企業の問題を取り上げて断罪していくべきでしょう。

──とはいえ、成果を収めることができて前進ですね。

 前進したことは間違いありませんが、まだスタート地点に立っただけですよ。そもそも今回は実行計画がまとまっただけで、この後、審議会と国会の議論を経なければならないからです。順調にいって労働基準法の改正の施行は2019年かなという感じですから。

 また大企業の認識は深まり、働き方の改革を進めなければならないと考えているところが多いようですが、中小企業、特に組合がない企業などは「36協定って何ですか?」という認識の所も多く温度差が激しい。

 36協定を結んでいない企業は4割に達していると言われていますが、そういう企業が残業していないかというとそうではない。だからまずは36協定をきちんと結ぶよう、そして限度時間は月間45時間、年間360時間の範囲で収めるよう、世の中への理解活動もやっていかなくてはいけないと思っています。

──果たして働き方は変わり、残業時間は減るのでしょうか。

 せっかくスタート台に立ったのですから、今後、魂を入れ実効性のあるものにしなければなりません。連合がずっと主張し続けてきたことですし、今後も旗を振り続けます。
http://diamond.jp/articles/-/125647


 


2017年4月21日 週刊ダイヤモンド編集部
膨大な数のIoT機器がサイバー攻撃の標的になる悪夢

トレンドマイクロ エバ・チェン社長に聞く

http://diamond.jp/mwimgs/9/8/650/img_9805ac44115e6ab894a477aeab28bf9b260955.jpg
?Photo by Masato Kato

2015年以降、日本を標的としたサイバー攻撃が急増している。インターネットセキュリティ製品を展開するトレンドマイクロのエバ・チェン社長に、いま日本が直面しているリスクについて聞いた。

──2015年以降、サイバー攻撃が劇的に増えている理由は?

 もうかるからです。ランサムウエア(パソコンをウイルスに感染させて使えないようにした後、元に戻す見返りに身代金を要求する不正プログラム)の登場によって、ハッカーはもうかるビジネスモデルがあることに気付いた。さらに、ビットコインの登場で、ハッカーはトレースされずに身代金を手に入れることができるようになったことも大きいですね。

 最近はIoT(モノのインターネット)デバイスのハッキング被害も増えています。

 昨年10月、米国でDNSサービスを提供するDynがサイバー攻撃を受け、米国のおよそ半分がインターネットにアクセスできなくなりました。この攻撃に使われたのが「ミライウイルス」に感染して乗っ取られたホームルーターやIPカメラなどのIoTデバイスでした。

──直接個人が狙われる可能性もありますか。

 家庭にあるIPカメラをハッキングされて、家の中の様子を写真に撮られたり、生活を監視されたりしてしまう状況も起こり得ます。あるいは、猛暑のときにエアコンをハッキングされて使えなくされたら、きっとハッカーに身代金を払ってしまうでしょう。

 また、カーナビをハッキングされると、クラクションやライト、ハンドルを回す強さなどを操られてしまう危険があります。

──そのような脅威に対してどう備えればいいのでしょうか。

 当社ではクラウド、ゲートウェイ(通信の入り口部分)、IoTデバイスという三つのレイヤーでソリューションを提供しています。クラウドのレイヤーでは、データとクラウドの通信を保護し、ゲートウェイのレイヤーでは、家庭用のルーターに専用機器を接続することで、ネットワークに接続する機器を外部の侵入から守ります。例えば、IPカメラは初期設定のパスワードをそのまま使っている場合が多く狙われやすいため、警告を出したりします。IoTデバイスのレイヤーでは、デバイスメーカーにセキュリティSDK(ソフトウエア開発キット)をパッケージで提供し、出荷前にセキュリティのためのソフトウエアコードを組み込めるようにしています。

 20年の東京オリンピックはテクノロジー主導の大会になるでしょう。スタジアムの入退場や放送などで、多くのIoTデバイスが使われることになる。だからこそ、IoTデバイスのセキュリティが非常に重要となるのです。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)
http://diamond.jp/articles/-/125625
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/475.html

[経世済民121] 伝説的マクロトレーダーも警告、米国株は高過ぎて「恐ろしい」米金融当局、弱めの経済も利上 人民元安定「短命」か−中国株下落
伝説的マクロトレーダーも警告、米国株は高過ぎて「恐ろしい」
Katherine Burton、Katia Porzecanski
2017年4月21日 11:37 JST

Paul Tudor Jones, co-chairman and chief investment officer of Tudor Investment Corp., speaks during Bloomberg's fourth-annual Year Ahead Summit in New York, U.S., on Tuesday, Oct. 25, 2016. The summit addresses the most urgent topics for 2017 and beyondhow power shifts in global politics will affect free trade and financial markets; industry-moving innovations in AI, robotics, and life sciences; the biggest investment opportunities for 2017; and how organizations are working to increase diversity, solve the skills gap, and decrease the wage gap. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

• 米国株の時価総額、対GDP比率が2000年以来の高水準
• ゴールドマン関連会社の非公開会議で今月に入り発言していた

.資産家でヘッジファンドを運営するポール・チューダー・ジョーンズ氏は、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長や投資家に言いたいことがある。十分な恐れを持ってほしいということだ。
  伝説的マクロトレーダーとして知られる同氏は、低金利時代が何年も続いたことで株価評価(バリュエーション)が2000年以来の高水準に達しており、当時はその直後にナスダック指数が2年余りかけて75%下落したと指摘。経済規模に対する株式時価総額の高さを考えれば、中銀当局者にとって「恐ろしい」はずだと、今月早くにゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが開催した非公開会議で発言したという。発言を聞いた関係者が明らかにした。
  ジョーンズ氏のほかにも、多数のヘッジファンド運用者や資産運用のプロが非公開ではあるが、株価が持続できない水準で取引されていると同様の警告を行っている。年内に相当の相場急落が起こると予想するトレーダーもいる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iOCc2JZjs.bY/v1/-1x-1.png

原題:Paul Tudor Jones Says U.S. Stocks Should ’Terrify’ Janet Yellen(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-21/OOQM9A6JTSFE01


 
米金融当局、弱めの経済データにも動じず−利上げ方針に確信強める
Craig Torres、Rich Miller、Matthew Boesler
2017年4月21日 10:07 JST

• 今年3回利上げの予測中央値は基本線として依然有効−カプラン総裁
• 経済低迷の長期化がない限り、利上げペース加速の方針堅持の方向

1−3月(第1四半期)の米経済指標の発表で弱いデータが続いているものの、米金融当局は年内に利上げをあと2回実施する方向にあり、2%程度の成長率見通しを依然として確信しているようだ。
  当局は予想外の経済的逆風に直面し、想定していた利上げシナリオを取り下げた過去とは姿勢を変化させている。今の方が利上げ先送りのハードルは高い。
  今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つダラス連銀のカプラン総裁は20日にブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「今年3回の利上げという予測中央値は、基本線として依然有効だとなお考えている。うち1回は既に実施済みだ」と述べ、「経済成長がもう少し緩慢になれば回数を減らし、もう少し強くなれば回数を増やすことは可能だ」と語った。
  フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、2017年の利上げはあと1回だけとの見方が織り込まれている。トランプ米大統領が12日のインタビューで低金利が好ましいと述べた後、年内あと2回以上の利上げの確率は急低下。労働省が14日発表した3月の消費者物価指数(CPI)統計では、食品とエネルギーを除くコアCPIが約7年ぶりの低下となった。地政学的緊張の高まりも追加利上げ観測の支えになっていない。
  追加利上げを巡る投資家の懐疑論には根拠がある。当局は14年12月のFOMCで15年の利上げ回数を4回と予想したが、実際には1回の実施にとどまった。その後も同じ行動パターンを繰り返し、16年の利上げ回数を4回と見込みながら実行したのは1回だけだった。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i2097m9oqxx4/v2/-1x-1.png

  ただ今回は、当局は後ずさりしていない。
  ボストン連銀のローゼングレン総裁は19日、「FF金利の引き上げを続けることが適切だ」と述べ、「最近のデータは私の予想よりも少し弱めだと言えるが、経済には現時点で利上げ継続に持ちこたえるだけの十分の力強さがある」との認識を示した。
  こうしたコメントは、当局は経済低迷が長期化しない限り、今年の利上げペース加速の方針からぶれない姿勢を示唆している。この背景には、失業率が既に4.5%に低下しインフレ率も当局の目標の2%付近にあるため、過度の低金利をあまりに長期にわたり続けるのは危険という見方がある。しかも現在の経済見通しの上振れリスクは、下振れリスクに勝っている。
  バークレイズの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏(ニューヨーク在勤)は「当局に利上げを先送りさせるには、景気がかなり弱くなる必要がある。以前のバイアスは行動見送りだったが、今は行動する方に傾斜している」と指摘した。
原題:Fed Unmoved by Soft Patch Hardens Conviction on Rate-Hike Plan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-21/OOQFUY6TTDS101


 


人民元の安定「短命」か−中国株の下落続けば悪影響波及も
Bloomberg News
2017年4月21日 11:28 JST

• 中国中銀は機を捉え元安を狙う、次は5月か−BBVAの夏楽氏
• 今年末時点で1ドル=7.1元と予想−ANZのゴー氏

中国が1年8カ月前に事実上の人民元切り下げに踏み切ってから最も落ち着いていた元相場だが、このところの本土株値下がりを受けボラティリティーが高まるかもしれない。
  中国株の下落が一段と進めば、人民元にもその悪影響が波及し、ほぼ3カ月にわたり狭いレンジにとどまっていた元相場がそこから抜け出す公算が大きい。ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)とオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)はこう指摘する。
  それ以外のリスクも多い。中国の資本規制緩和に加え、米利上げや再びドルの強さを招く可能性のある地政学的緊張だ。ブルームバーグのランキングで元相場予測の精度が最も高かったBBVAの夏楽エコノミスト(香港在勤)は、「人民元建てのA株に資金を投じたくない場合、投資家はその資金でドルを買うか、海外資産を購入する手段を見つけようとする」と述べた。
  夏氏はその上で、「人民元の安定は短命に終わるだろう。中国人民銀行(中央銀行)は適切な機会があれば、人民元を安くようとする。米国の追加利上げ見通しでドルが値上がりしそうな5月が次の機会になるかもしれない」と指摘した。
  人民元は2月以降、対ドルで1.1%の取引レンジにとどまっており、ここ1週間でも0.2%を超える動きを見せていない。上海総合指数などが大きく下げている中国本土株とは対照的だ。ANZのアジア調査責任者クーン・ゴー氏(シンガポール在勤)は、中国株の下落が続けば、元も値下がりし、最近の取引レンジから外れると予想。今年末時点で1ドル=7.1元と見込んでいる。20日は6.8840元だった。

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原題:Yuan Calm at Risk of Ending as China Share Drop Darkens Mood (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-21/OOQKON6JIJVN01

 
【第3回】 2017年4月21日 田坂苑子
グーグル式仕事術「スプリント」を今すぐあなたがやるべき理由

だらだらと続く長い会議、問題解決に至らない議論、出口のないブレーンストーミング、無数のメールに返信するだけで終わってしまう空き時間……。組織で働いていれば、よくある1日かもしれない。だがこんな日がつづくと、どんなプロジェクトも前に進まない。特に組織の総意を重んじる日本の企業では、いいアイデアを前にしても決断のタイミングを逸してしまうことが多々ある。
そんな状況を「たった5日間」で打開できてしまう黄金メソッドがあるという。米グーグルの投資部門、GV(グーグル・ベンチャーズ)が数々のスタートアップで実証してきたメソッド、その名も「スプリント(短距離走/全力疾走)」だ。(文=田坂苑子)

シリコンバレーの新興企業が次々と取り入れている
「速く回す仕事術」スプリントって?


 スプリントはグーグルで生まれ、GmailやChrome、グーグルサーチ等の開発にも使われた革新的な開発プロセスだ。GVではそのメソッドをさらにブラッシュアップし、のべ100回以上のスタートアップでスプリントを行ない、大きな成果をあげている。

 それだけでもすごい数だが、スプリントを独自に導入し、さまざまな問題解決を図っている組織の数はそれ以上だ。今では、Facebookやマッキンゼー・アンド・カンパニー、Airbnbなどの有名企業だけでなく、コロンビア大学などの教育現場の他、政府機関や非営利団体でも取り入れられているという。

 このメソッドを、今すぐに、世界の誰もが実践できるよう、グーグル、GVでスプリントを磨き上げてきたジェイク・ナップらがまとめたのが、『SPRINT 最速仕事術』だ。

スプリントの仕組み

 スプリントは、月曜から金曜までのたった5日間で、問題の洗い出しからアイデア出し、プロトタイプの制作、そしてユーザーテストまで行ない、最大の成果を生み出す開発プロセスだ。事業戦略やイノベーション、行動科学、デザイン思考などで使われる手法を組み合わせ、どんなプロジェクトにも活用できる段階的プロセスにパッケージされている。

 まず、スプリントは7人以下のチームで行なう。決定権を持つ人間を1人、それ以外はそれぞれ必要な専門分野からエキスパートを選ぶ。そして、5日間連続で行なえるスケジュールと場所を確保する。その5日間、スプリントを行なっている時間帯はメール等は一切禁止。デバイスの持ち込みも禁止だ。

 上記の条件が整ったら、本書の流れに沿って、「何が問題か、問題をどうすればいいか」を洗い出す月曜日から、アイデア出しをする火曜日、ベストのソリューションを決定し、内容を詰める水曜日、試作品(プロトタイプ)を作る木曜日、そしてユーザーテストをする金曜日……と進めていく。

なぜこれだけのことが5日間でできるのか?

 たった5日間で本当にできるのかというような内容だが、5日間でやるからこそ意味があり、また、できるように作られたメソッドなのである。

 なぜ短期間でできるかというポイントはいくつかある。

 まずは、最初の段階の「問題を洗い出す」ことに時間をかける。たった5日間しかないことを思うと早くソリューションを考える段階に進みたくなるが、ここで目標をきちんと定めておくことで、その後のスピードがまったく変わってくるという。急がば回れ、である。

 また、ソリューションを考える段階では、それぞれ個別に考え、アイデアを持ち寄る手法が取られる。チームでプロジェクトを動かしていると、皆でブレーンストーミングをするほうがいいと思われがちだが、実際、個人でアイデア出しをするほうが質・量ともに優れた結果を生み出せることが、1958年にイェール大学で行なわれた研究結果でわかっている。

 ひとりで作業することで、じっくりとものごとを調べ、ひらめきを得る時間が持て、問題を考え抜くことができるからだという。

 また、個別に取り組むことで、プレッシャーと責任感から、おのずとベストな仕事をするよう駆り立てられるということもある。そうすることで、通常のブレーンストーミングにありがちな集団思考に陥らず、最強のソリューションを選択することができる。

プロトタイプ思考をもつことが重要

 また、たった1日でプロトタイプを作るには、完璧さを追求しない「プロトタイプ思考」を持つことが重要だという。

 ユーザーテストに必要なのは一時的なシミュレーションだ。莫大なコストや時間をかけてアイデアを形にする前に、ユーザーテストに必要な部分のみを制作し、ユーザーの反応を見て、自分たちが進むべき方向を最短の時間で知ることが大切なのだ。

 プロトタイプをテストしてもらうユーザーはたった5人でいい。

 かつてユーザーリサーチの第一人者が数千人のユーザーをインタビューし、最も重要なパターンを見抜くには何回インタビューすればいいかを調べたところ、問題の85%がたった5人のインタビューで発見されていた、という結果が出たというのだ。

 つまり、同じ調査でテストする人数を5人より増やしても、追加のメリットはほとんどなく、残り15%の問題を発見するために多大な時間を費やすより、発見された85%の問題の改善をしてからふたたびテストを行なうほうが理にかなっている、ということである。

誰もが「すごいアイデア」を、「すぐに実行」できる

 このスプリントのすばらしい点は、「やってみて損をしようがない」というところだ。失敗だったとしても「効率的な失敗」だったら収穫はあるし、不完全な成功ならすぐに手直しができる。つまり、アイデアが正しい軌道に乗っているかどうかをたった5日間で学ぶチャンスが得られるのだ。

 しかも、スプリントは、商品開発だけでなく、あらゆる仕事に適用できる。本書ではブルーボトルコーヒーやロボットメーカーのサヴィオークなど、商品開発における豊富な事例を取り上げているが、一読すれば、このメソッドがあらゆる仕事のやり方を根本的に見直すための強力なツールであることが理解できるだろう。

 しかも巻末には、レシピ本のように、スプリントの各ステップの細かいチェックリストがある。スプリントは成功を最大に、失敗を最小にするために、あらゆる角度から検証され、実証されたメソッドなのだ。

 何をすればいいかわからないとき、最初の一歩を踏み出せないとき、大きな決定を下さなければならないとき、スプリントはきっと役に立つ。

 長い会議で時間をムダにするより、現実のユーザーに、そして社会にとって意味のあるものをつくるために力を合わせる。これこそ最高に有意義な時間の使い方ではないだろうか。

 本書の「レシピ通り」にスプリントを行なうだけで、きっとあなたも自分の仕事が「最速」で「最高」の方向に動いていると実感できるだろう。そして今よりもっと仕事を楽しいと思えるようになるはずだ。
http://diamond.jp/articles/-/124840


 

【第2回】 2017年4月21日 マーク・ジェフリー ,佐藤純 ,矢倉純之介 ,内田彩香
データ・ドリブン・マーケティングは、驚くような企業間格差を生んでいる

昨年末にヤフーの宮坂社長が「これからはデータ・ドリブン企業と呼ばれたい」と発言して、一気に日本でも認知が広がった感のある「データ・ドリブン・マーケティング」。数回にわたってそのエッセンスを紹介する『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』は、世界最強のマーケティング企業アマゾンのジェフ・ベゾス氏の愛読書であり、アメリカ・マーケティング協会が選出する最優秀マーケティング・ベストブック(2011)の待望の邦訳である。

マーケティング格差は
どこから生まれるか

 私は、サウラブ・ミシュラ、アレックス・クラスニコフと共同で、マーケティングのPDCAプロセスおよびマーケティング投資収益率(ROMI: Return on Marketing Investment)に関する調査を行った。

 調査参加企業は252社、その年間マーケティング予算は総額530億ドルという大規模なものだ。この調査により、上位企業とそうでない企業の間に横たわる格差が浮き彫りになった。具体的に見られた顕著な差として、以下のようなものが挙げられる。

●53%の企業は、キャンペーンのマーケティング投資収益率(ROMI)、正味現在価値(NPV: Net Present Value)、顧客生涯価値(CLTV: Customer Lifetime Value)をはじめとする効果測定指標の目標値を設定していない。
●57%の企業は、マーケティング・キャンペーンの予算策定にあたり、ビジネスケース(稟議のための財務計画)を作成していない。
●61%の企業には、マーケティング・キャンペーン案の選別、評価、優先順位付けプロセスに関する明文化されたルールがない。
●69%の企業は、テスト・マーケティング群とコントロール群を分けた対照実験による効果検証を行っていない。
●73%の企業は、キャンペーン単位で予算化前に設定した獲得目標と、実際の結果とを照らし合わせるためのスコアカードを利用していない。

 これらの調査結果に、私はショックを受けた。過半数の企業にマーケティング活動を管理するプロセスがなく、また、大半の企業で効果を判断する指標の設定や測定なしに日々のマーケティング活動が行われているのだ。

 予算化される前に財務計画やマーケティング投資収益率(ROMI)が設定されていなかったら、いったいどうやってキャンペーンの成否を判断するというのだろうか。マーケティング組織におけるデータの活用状況を見ると、格差はさらに明白だ。

●57%の企業には、各キャンペーンをトラッキングし、分析するための一元化されたデータベースがない。
●70%の企業は、自社やキャンペーンと顧客との接点をトラッキングし、分析するためにエンタープライズ・データウェアハウス(EDW)を利用していない。
●71%の企業では、マーケティング・キャンペーンの実施可否判断にあたりEDWやデータ分析を使用していない。
●80%の企業は、イベント・ドリブン・マーケティングを自動化するための統一されたデータソースを持っていない。
●82%の企業は、マーケティング・リソース・マネジメント(MRM)のような自動化ソフトウェアによるキャンペーンやマーケティング資産のモニタリングを行っていない。

 つまり、データを集約してマーケティング活動の管理や最適化ができている企業は少ない。一方で、できている約2割の上位企業は、データ・ドリブン・マーケティングを使いこなし、日々のマーケティング活動においても適切な指標で効果測定を行っている。後述する通り、これらの企業は業績や市場シェアでも同業他社に大きく差をつけている。

 なぜこのようなマーケティング格差が存在するのだろうか。また、なぜデータ・ドリブン・マーケティングの実践は難しいのだろうか。

 前述の調査結果は、データ・ドリブン・マーケティングやマーケティング効果測定が企業に根づきにくい理由の表れでもある。社内プロセスは効果測定を前提としていないし、データ・ドリブン・マーケティングに必要なITインフラも整っていない。しかしながらそれ以前に、私の経験上、多くのマーケティング担当者は大量のデータに圧倒され、成果を向上させるための効果測定についてはどこから手をつければよいのかがわからない、という状態にある。

 加えて、55%の管理職が自分の部下はNPVやCLTVといった指標を理解していないと回答している。あなたの属する組織が世の中の8割の企業と同様にデータ・ドリブン・マーケティングを実践できていない、あるいはあなた自身がこれらの指標に馴染みが薄いからといって悲観する必要はない。本書を使って、上位企業との間の溝をぜひ埋めてほしい。あなたの職場でマーケティング指標を使ったデータ・ドリブン・マーケティングを実践してもらうために適切な指標、ツール、事例および手順を示すことが本書の目指すところだ。

『データ・ドリブン・マーケティング――最低限知っておくべき15の指標』より
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4478039631/asyuracom-22/
http://diamond.jp/articles/-/125539
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/290.html

[政治・選挙・NHK224] 「アベノミクス第2幕」は財政拡大をめざす リフレ派とバラマキ派の残党 地方路線「血税」まみれ あの“すごい男は地方自治を
「アベノミクス第2幕」は財政拡大をめざす

生き残りを図るリフレ派とバラマキ派の残党
2017.4.21(金) 池田 信夫

 政府は日本銀行の審議委員として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員の片岡剛士氏など2名をあてる人事案を衆参両院に提示した。片岡氏は安倍政権の前から「デフレは金融緩和が足りないせいだ」と主張してきた、ハードコアの「リフレ派」である。
 これで日銀政策委員会のメンバー9人はすべて安倍首相の選んだメンバーになり、緩和慎重派は一掃された。日銀の事務局に「リフレ派」はいないので、この人選は首相官邸の意向と思われる。日銀は今や安倍政権の「大政翼賛会」である。

日銀は「大政翼賛会」になる

 片岡氏は「デフレが失業と賃下げの原因だ」と主張してきた。これは経済学の常識の逆だが、消費者物価上昇率がゼロ前後まで下がったのに失業率は3%を下回り、ほぼ完全雇用といってよい水準になった。
 これを彼は「アベノミクスの成果」だというが、デフレという原因が直っていないのに、なぜ失業という結果だけが変わるのだろうか。完全失業率は図1のように民主党政権の2010年から下がり始め、それからずっと単調に下がっている。インフレ率とはまったく相関がない。

図1 完全失業率と自殺者数(2009年=100) 出所:厚生労働省『自殺対策白書』
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/e/4/550/img_e4888d2af95ef37c53d193826c78119a58821.jpg

 片岡氏は民主党政権の失業率低下は「悪い雇用改善」で、安倍政権の低下は「よい雇用改善」だという。だが、経済・生活問題を理由とする自殺者数は、図1のように完全失業率と強い相関がある。自殺率は2009年から下がり始め、自殺者数も約2万2000人に減った。リフレ派は「よい自殺」と「悪い自殺」があるとでもいうのだろうか。

財政再建が「財政デフレ」をもたらす

 こうしてリフレ派はあえなく退場したが、問題は代わりに何が出てくるかだ。ここでリフレ派が逃げ込むのが、財政拡大だ。「アベノミクスの金融政策がうまく行かないのは増税が悪い」という論法である。
 彼らは、ある意味では正しい。財政赤字をGDPの1%増やせば(乗数効果が1でも)GDPが1%増えることは自明だが、それは財政拡大が終わったら元の木阿弥で、政府債務だけが増える。だがリフレ派は「政府債務が発散しなければいい」という。
 これはもはやリフレ派ではなく、昔のケインズ政策への先祖返りだが、そこには金利が永遠に上がらないという前提が必要だ。今の0.01%以下という世界史にも例のない異常な金利が続く限り、今の政府債務は維持できるが、それは可能だろうか。
 長期金利が上がると普通は物価を抑制する効果があるが、他方では国債の利払いが増えて財政赤字が増え、財政の維持可能性が危うくなってインフレになる。このどっちの効果が大きいかは一概にはいえないが、基本的には投資家が日本政府を信用しているかどうかで決まる。
 普通に考えると、毎年50兆円近い財政赤字が出ているのに1100兆円以上の政府債務を返済するのは不可能だが、日本人は政府がいずれ何とかするだろうと思っているのだ。この予想が当たるかどうかは、財政赤字の動向をみれば分かる。
 日本の政府債務(GDP比)は主要国で最大だが、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は減っている。これも基本的には2009年以降の景気回復のおかげだが、消費増税で財政収支が改善した。
 ところが皮肉なことに、財政赤字が減ると国債の安全性が高まり、投資家は国債を買うようになって長期金利が下がる。民間投資も減ってデフレになる。いわば財政デフレが世界的に起こっているのだ。
 これを脱却するには、政府が「借金を踏み倒す」といって通貨の信認を下げればいい、というのがクリストファー・シムズの物価水準の財政理論だが、これは大胆すぎて政治的には無理だろう。

財政支出は長期的な成長にマイナス

 そこで出てきたのが、財政余地という考え方である。これは政府債務(GDP比)が発散しないという条件で、財政赤字を拡大できるかどうかの目安で、最近IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)が提唱している。内閣官房参与の藤井聡氏などの「バラマキ派」が最近もてはやしているが、彼は安倍政権のインサイダーなので、これから出てくる可能性がある。
 2016年11月のOECDエコノミック・アウトルックによれば、緊縮財政を続けてきた日本が財政を拡大する余地は大きく、次の図のように、GDPの2.2%ぐらい財政支出を拡大する余地がある。
図2 中期の財政余地(GDP比 %) 出所:OECD
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/c/d/400/img_cd7a2d3749427f61b88247b69908d64736387.jpg

 しかしこれはケインズ的な財政政策が可能だという「中期のギャップ」であり、財政支出を増やせばGDPが増えるのは自明だ。問題は、それが長期的な成長に貢献するかどうかである。
 OECDは日本について「公的投資が成長に及ぼす影響はきわめて悪い。公的資本ストックがすでに大きく、公的投資の限界効率が低いかマイナスだからである」と書いている。財政の維持可能性も、長期的にはあやしい。
 リフレ派の時代は終わり、バラマキ派の待望している「ケインズの時代」も再来しないだろうが、3期目の目玉に困った安倍首相が財政出動に打って出る可能性がある。
 日本が財政デフレに陥っているというシムズの診断が正しいとすると、政府が信頼されている限り金利上昇は起こらないが、「成長で財政再建」もできない。財政政策にも、今までとは違うイノベーションが必要である。
[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49811

 


2017年4月21日 姫田小夏 :ジャーナリスト
中国−地方空港路線、「血税」まみれで維持する実態


運航経費の助成や、着陸料の支援などに税金を投入し、LCCの就航路線を維持している茨城空港
Photo:実田謙一/アフロ
 訪日客を運んでくる外国からの航空機は、地方経済を支える重要なパイプとなっている。訪日客誘致の大号令がかかる中で、まずはチャーター便を誘致し、空港間に直行便を飛ばすことは、多くの都道府県や政令指定都市の大きな目標となってきた。

 国際チャーター便が定着すると、定期便の就航に切り替わるケースもある。2016年10月、大連−北九州間に「天津航空」の定期便が就航した。定期便に踏み切ったのは、前年の平均搭乗率が90%を超えるという好実績だったためだ。

不安定な中国路線
拡大から一転して運休も

 しかし、日中間の路線は不安定だ。「中国東方航空」の松山−上海便は、14年、15年と数ヵ月間にわたる欠航があった。15年2月の愛媛新聞の報道によると、「14年、県は欠航をしない条件で4〜6月に計3200万円を助成」したという。航空会社に対し損失補てんをする代わりに、路線を維持させたというわけだ。その効果で、同年6月の搭乗率は57%にまで回復したが、それ以降は再び低迷している。

 また、09年に開港した静岡空港は、東京と関西を結ぶゴールデンルートの入り口でもあり、富士山に最も近い空港として多くの中国人客が利用、中国路線は14年7月末で3路線13便だった乗り入れが、15年7月末には13路線週47便にまで拡大した。ところが、16年は一転して減少、運休が相次ぎ、17年2月時点で上海経由武漢、寧波、杭州、南京の4路線だけになってしまった。

 一方、前述した北九州市は定期便の就航にこぎつけたが、その裏には国際線の路線誘致のための営業努力があった。同市の資料によれば、16年度、同市港湾空港局が確保した予算は6億5000万円超であり、これを航空会社への運航経費の一部助成に当てたり、国際チャーター便への助成に当てたりした。国際路線の維持・拡充のための、航空会社へのインセンティブもこの予算に含まれている。

 茨城空港は、中国からのLCC「春秋航空」が、初の国際線進出先として選んだ空港だ。10年7月から茨城−上海線の運航を開始し、当時はメディアでも連日、大々的に報道された。

 春秋航空は、中国国内で「上海−成都99元(日本円で1600円ほど)」などと打ち出し、度肝を抜くような料金設定で利用客を急増させた航空会社だ。

 こうした伸び盛りのLCCを中国から誘致することは、地方の活性化にもつながる。日本への乗り入れは大阪、札幌、佐賀、広島に広がっており、LCCの就航はインバウンドの地方間競争においても、ひとつの差別化を意味していた。

 しかし、「誘致にも助成金を充てているのが実情」と某自治体職員が語るように、中国からの路線の就航は、基本的に自治体の営業活動に支えられている。

東京〜茨城間が500円!
格安バスまで出して搭乗率維持

 ひとたび路線が開通しても、それを維持するのは容易でないことは前述のとおり。「首都圏の第3の空港」として開業を始めた茨城空港も、現在同じ課題に直面している。

 そんな茨城空港が展開する“搭乗率維持作戦”は、東京駅から茨城空港まで片道500円で行ける直行連絡バス。航空機利用者に限定されているが、「東京からワンコインで空港までアクセスできる」というのが売りなのだ。

 東京駅から茨城空港まで、鉄道で行けば2110円(東京駅から上野駅に移動し常磐線利用)、特急ひたちなら3110円だ。また、東京駅から成田空港までリムジンバスなら3100円、成田エクスプレスなら3020円かかるし、東京駅から羽田空港までもJR山手線とモノレールを乗り継いで650円はかかることを考えれば、いかに破格の料金設定であるかが分かるだろう。

 なぜ、そんな破格の「ワンコインバス」が実現したのだろうか。それはほかでもない、茨城県が差額分を助成しているためである。それだけではない。LCCの就航路線を維持するために、例えば運航経費の助成や、着陸料の支援などにも助成金が使われていることは、世間にはあまり知られていない。

「LCCの運航会社は、徹底したコスト管理でひとたび不採算だと判断すれば撤退も早いのです。各自治体が、そこを助成金でなんとかつないでいるという一面は少なからず存在します」(前出の自治体職員)。

 茨城県が、茨城空港利用に投じた予算は少なくない。それでは実際に経済効果は表れているのかと同県に問いあわせたところ、その回答は「難しい質問です」というものだった。

血税をつぎ込んで
自治体職員が利用

 13年、中国東方航空が就航する鹿児島―上海線(週2往復)が利用者の低迷に陥った。そこで路線維持のため、鹿児島県は県職員1000人を研修目的で上海に派遣すると発表した。一人当たりの費用を約12万円と見積もり、予算総額を1億1800万円にまで膨らませた。路線維持のために公費をつぎ込もうという県に対し、県民から批判の声が上がった。こうした顛末は、いまなお県民の語り草になっている。

 なお、鹿児島−上海便の搭乗率が落ちたのは、前の年に中国で尖閣諸島の国有化を発端にした反日デモに起因している。同じく最近では、韓国のTHAAD配備の問題で、中国政府は東方航空や春秋航空に対し、韓国への乗り入れを減少させるという政治的対抗措置を講じている。「二国間に摩擦が生じれば、すぐに観光客を引き揚げさせる」のは中国の常套手段だ。

 このように自治体が身銭を切って誘致をしても、為替が円高に振れたり、あるいは二国間の政治関係が悪化したりすれば、たちまち中国からの客足は途絶えてしまう。こうした不安定な状況に置かれる日中間の航空路線だが、今後これを健全に維持するにはどうしたらいいのだろうか。

 冒頭で取り上げた「松山−上海便」の維持に腐心していた愛媛県だが、最近、旅行会社が上海経由の東南アジア旅行を企画したこともあって、搭乗率は回復しているという。愛媛県国際交流課国際線振興の担当者は次のように語る。

「日中間を結ぶエアラインのひとつの特徴は、中国からの利用客が多いのに対し、日本からの利用客は少ないという点にあります。このアンバランスは逆風に弱いため、搭乗率を維持するためのカギは“日本からのアウトバウンドを増やすこと”にあります」

 需要と供給のバランスを無視し、助成金をつぎ込む路線維持のやり方は、いずれ破たんが来る。「2020年までに訪日客4000万人」という大目標を掲げ、その経済効果予想を強調する日本政府。この目標数値実現のために、この先もさらに日本国中で「補助金」「助成金」を使い続けるのは、国民や地域住民の血税の正しい使い道だと言えるのだろうか。

(ジャーナリスト?姫田小夏)
http://diamond.jp/articles/-/125631

 

あの“すごい男”は地方自治の現場をこう変える!
徹底的に現場の人になる「流しの公務員」という働き方
2017.4.21(金) 鶴岡 弘之
山田朝夫氏が2010年から2015年まで「流しの公務員」として勤めた愛知県・常滑市役所(資料写真、出所:Wikipedia)
?インパクトのある表紙だ。なにしろ「便器」である。男性トイレに設置されている、あの縦長の大きな便器だ。その便器を、ある男性が笑顔で掃除している。

?男性は何者か。本の帯には「霞が関を捨てたキャリア官僚」とある。トイレ掃除とキャリア官僚というギャップが気になり、思わず本書『流しの公務員の冒険 ―霞が関から現場への旅―』(時事通信社)を手に取った。

『流しの公務員の冒険 ―霞が関から現場への旅―』(山田朝夫著、時事通信社)
35歳で霞が関を捨てる

?男性はやはりただ者ではなかった。読み終えて「この人はすごい」と恐れ入った。

?その男性は山田朝夫氏。「流しの公務員」である。流しの公務員とは山田氏の造語で、<各地を渡り歩き、求めに応じて、単身、地方行政の現場に飛び込み、関係者を巻き込み、その潜在力を引き出しながら、問題を解決していく「行政の職人」>を意味する。

?元々、山田氏はキャリア官僚だった。東大法学部を卒業して1986年に自治省(現総務省)に入省。鹿児島県、衆議院法制局、自治省選挙課、大分県、自治大学校などでの勤務を経て、35歳で霞が関を捨てて流しの公務員への道を踏み出した。

?本書は流しの公務員としての活動の記録と、現場での数々の成功や失敗を通して体得した仕事論を、山田氏が綴ったものだ。

?山田氏には「冷えた体を温めるには、手先足先から」というポリシーがある。つまり、<霞が関に優秀な人材を集め、いくら素晴らしい政策をつくっても、それが現場できちんと実施され、効果が上がらなければ日本は良くならない> ということだ。山田氏はひたすら現場に飛び込み、地元の人たちと一緒に汗をかき、目の前の課題を解決していく。そうやって導き出された仕事論は説得力に満ち、巷の頭でっかちな「べき論」とは明らかに一線を画している。

「死人病院」の再生というミッション

?本書には、山田氏が日本各地の自治体で携わったさまざまなプロジェクトが登場する。圧巻はなんといっても最も多くのページを割いて語られる愛知県常滑市における市民病院の再生だろう。

?山田氏は、かつて自治体大学校の“教え子”だった常滑市長(年齢は市長の方が7つ年上だ)から「市民病院の再生」を依頼される。築50年を超えた常滑市民病院は老朽化が進み、市民からは「死人病院」と陰口を叩かれる始末。また、毎年7〜8億円近くの赤字を出し続け、累積債務が膨れ上がっていた。

?参事として常滑市役所に赴任した山田氏は、瀕死の状態の市民病院を再生するミッションに着手する。

?だが、常滑市では新病院建設の計画がすでに何度も立ち上がっていたものの、その度に延期され、関係者の間で諦めムードが漂っていた。挙句の果てに県庁の職員からは「ゲームオーバーです。みんな『潰しモード』に入っている」と告げられる。

「100人」の心が一つに

?そんなどん詰まりの状況から、山田氏はどうやって新病院を建設し経営をV字回復させたのか。

?まず、財源の捻出に大きく寄与したのが、事業仕分けと職員の給与カットの断行、交付金の獲得などである。「愛知県の医療界の最大実力者の1人」の協力を得られたことも大きな支えとなった。

?さらに、市民や病院スタッフ、市議会議員たちを団結させ、新病院建設への大きな推進力を生み出すことになったのが「100人会議」の実施だった。

?100人会議は、山田氏が <常滑市民に市民病院の『オーナー』である意識をもってもらい、その行く末を決めてもらう> ためにスタートした。参加者は、無作為抽出公募と自推公募の一般市民、そして行政職員と病院職員を加えた約100人である。会議は5回開かれ、市民と行政と病院が対等の立場で「本当に病院が必要なのか」「どんな病院を作るのか」などについて話し合った。ファシリテーターは山田氏が務めた。

?当初、参加者たちの大半が新病院の建設に反対し、「市民病院は不要」と考えていた。それが回を追うにつれて、「どうしたら存続できるのだろう。問題は何なのか。どうしたら解決できるのか」と変わっていき、最後は「経営改革を前提に新病院を建設しよう」と心が一つになる。

?山田氏はどうして「100人」の心を一つにすることができたのだろうか。ポイントを1つ挙げると、ファシリテーターの山田氏が“結論を導かなかった”ことである。

?参加者の気持ちが変化していった秘密を、市の職員から尋ねられた山田氏は、「わたしは何も変えてないよ。むしろ参加者を導かなかっただけだよ」と答えている。確かに山田氏は議論をリードしなかった。自分の意見は殺し、あくまでもテーマを設定する役、参加者たちが退屈しないように会議を盛り上げる役、必要な情報を提供する役、に務めた。

?山田氏は、<人間はやりたい気持ちが強すぎると、マイナスの材料を無視する傾向があります。仕切り役は、『どちらでもよい』くらいのスタンスがちょうどいいのだと思います。> と記す。結果的に、参加者たちには「自分たちの病院をつくるのだ」という意識が芽生え、病院づくりに積極的に協力するようになる。元々、誰もが抱いていた「自分たちの市を良くしたい」という気持ちが引き出され、「やる気」に火がついたのだ。市民の心がドラマチックに変化していく様子は、感動を覚えずにいられない。

主役になるべきなのは地元の人

?また本書では、山田氏が数々のプロジェクトや人との出会いなどを通して体得した仕事論が語られる。例えば山田氏にとっての“良いリーダー”とは、自分がいなくなった後のことを考えるリーダーである。

?本書は第1章が常滑市の病院再生の物語なのだが、第1章を読み終えたとき、その終わり方に違和感を持った。山田氏が市役所に苦言を呈して終わっているからだ。これほど感動的な話なのになぜ市役所への苦言で終わるのか、なぜ関係者を称えないのかと不思議だった。

?しかし、読み進めていくうちにその理由が分かった。山田氏には、“自分が赴任中に手がけたことよりも、自分がいなくなってからの方が大切だ”という信念があるのだ。山田氏はこう記している。

<外から何かを持ち込んだり、自分がぐいぐい引っ張ったりするのではなく、地元の資源や人の技を磨き、地元の人が主役になるような仕事の進め方をしなければ、手がけたことは残りません。>

<常滑市民病院の再生プロジェクトでは、特に、私がいなくなった後のことを考えていました。>

?常滑市民病院の建設・再生は言ってみれば「奇跡」である。だが、一度きりの奇跡で終わらせてはいけない。「大事なのは花を咲かせることではなく、根を育てること」なのだ。

こんな「役人」もいる!

?自分がいなくなってからのことを考える上記のリーダーの心得は、カー用品チェーン「イエローハット」の創業者、鍵山秀三郎氏に教わったのだという。鍵山氏は、山田氏の“トイレ掃除の大師匠”である。本書では、山田氏とトイレ掃除の出会い、トイレ掃除の効果、トイレ掃除によっていかに山田氏が生まれ変わったかなども記されている。山田氏は、トイレ掃除が「人としてのあり方を変えてくれた」とまで言う。

?本書を読み終えたときには「なぜ、よりによってこの写真が表紙なのか」という最初の疑問は消えていた。この写真こそが、山田氏の人となりや仕事哲学を端的に伝える一枚であった。

?日本ではとかく「役人」の評判が悪い。しかし、中にはこんなにフットワークが軽く、現場力があり、成果を出している役人がいる。

?表紙のインパクトにひるむことなく、また「元キャリア官僚」という取っつきにくい肩書きに惑わされずに、ぜひ読んでみてほしい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49764
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/483.html

[政治・選挙・NHK224] 日本の超国家主義:天皇への一方的な思い入れ  幼稚園児に乱交パーティーを薦める呆れた教育?大臣の資質を間違いなく疑われる
日本の超国家主義:天皇への一方的な思い入れ
2017.4.21(金) The Economist


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(英エコノミスト誌?2017年4月15日号)

皇居で新年の一般参賀、4万7000人余り
新年の一般参賀のため皇居に集まった人々と、ベランダであいさつされる天皇、皇后両陛下と皇族方(2017年1月2日撮影)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News〕
旗を振り回す極右勢力にとっては少し問題

「教育ニ関スル勅語(教育勅語)」は1890年10月に明治天皇の名で発布された。315文字の美文調で書かれており、忠義や孝行の心を、そしてとりわけ皇室永続のために生命をささげる覚悟を養うよう臣民に促す内容だった。

?その謄本はすべての学校に配布され、天皇を祀る校内の小さな神社に安置された。子供たちは教育勅語をそらんじた。教育勅語は「国体」という、神聖なる天皇とその臣民を結びつけて国家を作る神秘的な概念の基礎になった。

?つまりこれは、日本人が天皇の名の下で数々の命令を実行することになった教化への道――軍国主義、総力戦、そして最終的に破滅的な敗戦へと至った道――の始まりだったのだ。

?従って、日本で「国体」という言葉が、ドイツでの「レーベンスラウム(生存圏)」と同じくらい嫌われているのも無理はない。なお、教育勅語は日本の降伏から3年後の1948年、国会が失効と排除を決議している。

?では、安倍晋三内閣は4月の初め、どういうつもりで教育勅語の学校での利用を容認したのだろうか。官房長官の菅義偉氏は、政府としては勅語を子供の教育の「唯一の根本」にすべきだとは全く思っていない、とはにかみながら述べた。この方針を批判する者は原理主義者だと言わんばかりだ。

?菅氏はまた、教室で使用することを政府として積極的に促進するつもりもない、となだめるように語った。使うかどうかは教師次第であり、使う場合には憲法に反しないようにするべきなのだという。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49798

 

幼稚園児に乱交パーティーを薦める呆れた教育?
大臣の資質を間違いなく疑われる「一部に良いところがあるから・・・」
2017.4.21(金) 伊東 乾
尖閣は日米安保の適用範囲、マティス米国防長官
都内の防衛省で、ジェームズ・マティス米国防長官と合同記者会見を行う稲田朋美防衛相(2017年2月4日撮影)〔AFPBB News〕
?少し前「教育勅語」を幼稚園児に暗礁、もとい暗誦させるという育児を巡る議論があり、文科省から何らかの見解が出たり出なかったりしたのをご記憶の方も多いと思います。

?さて、この「暗誦教育」で、もう1つ園児たちが丸暗記させられたものがあるのですが、こちらはあまり話題になっていない様子です。

?「五箇条のご誓文」

?これを幼児に・・・と見た瞬間、申し訳ないのですが、私はプッと噴出してしまいました。

?なぜと言って、新政府が出したこの「五箇条のご誓文」を読んで、「これからいつでも乱交して構わないのだ」と若者たちが誤解した経緯があると伝えられているからです。

?つまり、それまでは盆踊りや春秋の彼岸だけに許されていた「夜這い」「雑魚寝」の類が全解禁と勘違いした若くエネルギーをもてあました善男善女が、お宮の拝殿などで性行為にふけり、慌てた官憲が懸命に弾圧しても、かなり長いことこの「タブー解禁」は信じられ続けたというのです。

?よりによって幼稚園児に「五箇条のご誓文」、なかなか傑作なことをしてくれたものです・・・

?ということで、まずは、その「ご誓文」そのものから再検討してみましょう。

ご誓文と「おまけ」

?慶應4年3月14日、現在の暦で言うなら1868年4月6日、いまだ若い(明治)天皇が天地神明に誓う、という形式を取って、まだ「明治」と改元する以前でしたが、新政府が新しい国のあり方を、主として大名や公家に対して文書で示したのが、五箇条のご誓文と呼ばれるものでした。

?前年にあたる慶應3年10月、江戸幕府第15代将軍、徳川慶喜は「大政奉還」を天皇へ上奏、政治権力の実体は朝廷側に移ったことになっていましたが、いまだその実体は固まっていませんでした。

?親藩である福井藩出身の政府参与、由利公正(ゆりきみまさ)が政府の基本方針を下書き、これを5条にまとめ、続いて土佐藩出身の福岡孝弟(ふくおかたかちか)や長州出身の桂小五郎こと木戸孝允などが手を加えて出来上がったのが、公にされたご誓文のテクストで、当然ながら明治天皇が書いたものではありません。

?この当時、由利は39歳、福岡は33歳、木戸は35歳といずれも青年の筆になるものでありましたが、慶應4年の時点で「新天皇」はいまだ16歳の少年、いわばダブルスコアの年齢で、草莽から駆け上がってきた「志士」たちに操られて、こうした「神祇」を行っていたと考えられます。

?改めて5条の内容を見てみましょう。読みにくいかもしれない漢字を仮名に開いて付記しました。

一 広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ
?(ひろく会議をおこし、ばんき公論に決すべし)

一 上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ
?(しょうかこころを一にして、さかんにけいりんを行うべし)

一 官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス
?(官武いっと庶民にいたるまで、各々その志を遂げ、人心をしてうまざらしめんことをようす)

一 旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
?(旧来のろうしゅうを破り、てんちのこうどうにもとづくべし)

一 智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
?(ちしきを世界に求め、大いにこうきをしんきすべし)

?現代人が読んでも、いまひとつ意味が分かるような、分からないような代物で、こんなものは当初は、民衆には一切示されませんでした。

?何しろ識字率が低い。文字が読める人がそもそも少ないわけで、かつ教育に共通する水準が存在せず、大半の民衆は不確かな伝聞でお触れの内容を理解したつもりになるしかなかった。

?これが広く国民相手に普及するのは、少し経ってから段々広まったもので、かつ、以下に詳述するように「乱交OK」と勘違いされるのが実情でした。そういう意味でも、これをわけも分からない幼児に、闇雲に暗誦させるというのは、ちょっと違うのではないかと思います。

?さて、この「ご誓文」が出た翌日、新政府は、こんな難しい「ご誓文」ではなく、確実に民衆に理解可能な「禁止令」を、やはり五箇条で、こちらは高札を作って、日本全国通津浦裏に掲示しました。「五榜の掲示」と呼ばれるこちらのオマケで、各々

第一札?五倫道徳の遵守
第二札?徒党・強訴・逃散の禁止
第三札?切支丹邪宗門の厳禁
第四札?万国公法の履行
第五札?郷村脱走禁止

?を簡潔に庶民に命じています。ごく簡単に概説すれば

第一札?五倫とは五つの倫理つまり

「父子の親」
「君臣の義」
「夫婦の別」
「長幼の序」
「朋友の信」

?を守れというもので。五箇条のご誓文と表裏一体となる倫理教育を徹底するのであれば

「父親を尊敬しなさい(母親はどうでもいい)」
「君主には絶対服従」
「男と女は別で、夫婦は平等ではない」
「年長者は無条件に敬わねばならない」
「ともだちはなかよく」

?というこちらを幼稚園で徹底するといいと思います。文科省は何と言うでしょう・・・。特に「父子の親」「夫婦の別」あたりは、相当激しい反発があちこちから飛んで来そうな気がして楽しみです。

?ぜひそういう幼稚園や小学校設立の運動を・・・。しかし、あんなことがありましたから、今後はもう、ああいう特徴的な学校設立など、誰もしないのではないでしょうか。

?さて、

第二札?徒党・強訴・逃散の禁止

?これは分かりやすいですね。徒党を組むな、強訴をするな、黙って年貢を払い続けよ、という命令

第三札?切支丹邪宗門の厳禁

?きりしたん、ばてれんの類、邪宗の門はこれを一切禁ずる。幼稚園でこれをやったらいいと思います。おもいっきり憲法の保障する信教の自由に抵触しまくってますが。

第四札?万国公法の履行

?そんなこと言われても分からないですよね。新政府は攘夷討ちとかに悩まされましたが、よく考えると薩摩だ長州だといった連中が直前までやってたことですから、何と言いますか・・・。で、最後が、

第五札?郷村脱走の禁止

?門地出生に縛られよ、勝手に引越してはならない。もう露骨に今の憲法下では不法もいいところで、こんな教育を施す学校は幼稚園でも小学校でも、瞬時に刑事罰の対象となってしまうでしょう。

?ともあれ、これらを「守れ!」というのが、慶應4年春、149年前のちょうど今頃に相当しますが、太政官政府が日本民衆に直接示した最初の「高札」による命令だったわけです。

?逆に言えば、これらにさえ違反しなければ、新しい「ご誓文」しかも16歳の少年お天子さまが天地に誓ったという内容は、きっと私たちの新生活を、自由なものにしてくれるに違いない・・・。

?少し前まで「ええじゃないか」など社会的な動きもあった幕末維新期の民衆は、少しずつ漏れ聞こえてくる「五箇条のご誓文」を手前勝手に解釈し直し始めるわけです。

乱交のご誓文

?当時の民衆は大半が文字を解しません。そのような大衆は、もっぱら伝聞で、つまり不正確な聞き覚えと口伝えで、16歳の若いお天子が誓ったという新しい世の中の決まりを理解、と言うか誤解したようです。

第三条 官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン事ヲ要ス

?は、

一 役人や侍は言うに及ばず、下々の庶民に至るまで、各々、自分が思いを持ったなら、その志を遂げて交わり、決して飽きたりしないことが肝要であるぞよ

?と解釈されました。

?以下、下川耿史『盆踊り・・・乱交の民俗学』の記載をもとに、噛み砕いて見ましょう。

?民俗学者の宮本常一は大阪府南河内郡磯城村(現在の太子町)上の太子に伝わる「一夜ぼぼ」の風習について報告しています。

?ここは聖徳太子の廟堂のあるところで、旧暦4月22日の夜は寺の前に高い灯篭が立てられ、着飾った人々が参詣し、酒が振舞われ、そこでは一目見て気に入った相手がいれば誰に手をかけてもよく、いやなら相手をふりほどき、ふりほどかれないかぎりは、手に手をとってあたりの森の中に消えていった、一年でこの日に限ってはこのような乱交が認めらていたそうです。

?これには「ここでもらうとよい子種を授かる」という言い伝えが付随していて、この日に仕込まれた子であれば、父親がいなくても村落全体で大切に育てる、といったことがあるようです。

?ちなみに、仮に妊娠期間を270日程度と見なして計算すれば翌年の1月17日前後、一番寒い時期と思いますが、この頃に子供が生まれる計算になります。農繁期を避けた時期で、封建共同体として都合のよい「発情期」が設定されていたことが分かります。

?太政官による新政府の「ご一新」で、16歳の少年天皇は何を天地神明に誓ったか?と民衆は期待し、磯城界隈では「一夜ぼぼ」の掟が少年天皇によって改められ

?4月22日の夜でなくても構わず
?上の太子のお宮の杜でなくてもよく
?家の中でも?昼間でも?いつでもどこでも
?好きな相手と交わって「其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメン事」の自由を得た

?「これはええ世の中になった」

?と、夜這い乱交が大流行し、官憲が取り締まっても取り締まっても、こういうことは一度広まると、なかなか歯止めが利きません。最終的には明治の末年頃に「一夜ぼぼ」自体が廃れたそうですが、なかなか下火にならなかった様子が察せられます。

??もしかすると、第三条

?「旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ」

?すなわち、「以前からの古臭い、誤った風習を破り捨て、天地の公の道に基づいて行動しなさい」というのを、

?「旧来の風習で縛りの多かった一夜ぼぼなどの掟を破って、人間が天から授かったままの本性、すなわち本能の赴くままに、いつでもどこでも思いを遂げて好きなようにしてかまわないんだよ!?これからはご一新だから」

?などと自由に解釈されて、そういうことになったのかもしれません。

?私が「五箇条のご誓文」を原文で習ったのは中学3年の時でしたが、陋習という言葉は十分難しく、担当の世界史の教師(故・岡俊夫先生)が、いろいろと解説してくれたのを覚えています。

?幼稚園児にこれをどのように教えるつもりなのか・・・ただの丸暗記以上のことにはなりそうになりませんが、旧来もへったくれも、まだ何もない無地の子供が、本能の赴くままに好き勝手しろと曲解するなと言って無理な相談であるような気もします。

?少なくとも150年前、オリジナルのときは、別の理解の方がはるかにヒットしているわけですから。

?「五箇条のご誓文」やら「教育勅語」やらを変に珍重し、その一部に良いことが書いてあるから、などと言うのなら、まず「五榜の掲示」からチェックするのが肝要と思います。

?実に良いことが書いてありますよごく一部だけですが、「ともだちとなかよく」。

?あとは、家父長権やら男女不平等やら門地出生の束縛やらすさまじい内容ですが、この国では痴呆創生閣僚が国宝建築物の中で生火やら水やらを使わせる「観光」スピリットが大事だそうで、学芸員を一掃すべき、というくらい、独自の民族伝統、日本文化に尊敬も愛情も誇りも何一つないらしいので、適当にゴボーの掲示も都合のいいところだけ使いまわしたら便利なんじゃないでしょうか。

?この点、民衆ははるかに伝統文化に忠実で、「一夜ぼぼ」に類する習俗は一年中、日本全国どこでも・・まあ夏の浜辺、例えば夏休み中の南の島などは顕著かもしれませんが・・・しっかり「自由化ルール」で伝統を発達、進化させているような気もします(苦笑)。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49796
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/485.html

[国際19] トランプ米大統領:北朝鮮問題に中国が「懸命に取り組む」と確信 ティラーソン国務長官の大失態で日本に降りかかる火の粉
トランプ米大統領:北朝鮮問題に中国が「懸命に取り組む」と確信
Margaret Talev、Toluse Olorunnipa
2017年4月21日 06:40 JST
トランプ米大統領は20日、北朝鮮の核実験の可能性やミサイル試射を巡る緊張の高まりを和らげるため、中国の習近平国家主席が懸命に取り組むと確信していると述べた。
  トランプ大統領は、ホワイトハウスでのイタリアのジェンティローニ首相との共同記者会見で、中国政府が「この2、3時間の間に極めて異例な動き」を取ったと指摘した。
  大統領が何を意味したのかは不明だが、日本経済新聞はこの数時間前、北朝鮮が核実験を強行すれば中国は石油供給を停止する可能性が高いと、中国共産党幹部の養成学校である中央党校の張l瑰教授の発言を引用して報じていた。
  トランプ大統領は今月の米中首脳会談で、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発の阻止で一層の行動を取るよう習主席に求めた。トランプ氏はその後、この問題解決への習主席のコミットメントを確信しているとし、貿易を巡る中国への強硬姿勢を緩める姿勢を示していた。
原題:Trump Confident China Working ‘Very Hard’ to Rein in North Korea(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OOQ8RL6JTSE801

 


北朝鮮問題、トランプ政権への期待と懸念
ティラーソン国務長官の大失態で日本に降りかかる火の粉
2017.4.21(金) 渡部 悦和
北朝鮮、発射失敗したのは新型ミサイルか 米専門家が指摘
北朝鮮の首都・平壌で行われた軍事パレードで披露された種類不明のミサイルとその移動式発射機(2017年4月15日撮影)〔AFPBB News〕
トランプ1.0からトランプ2.0への変化

?米国のドナルド・トランプ大統領は、4月6日を境として自己の主張を180度変えた。米国の戦略家エドワード・ルトワックの著書「中国4.0」ふうに言えば、トランプ1.0からトランプ2.0へ変化したと言える。

?周知のとおり4月6日は、米海軍がシリアの空軍基地に対してミサイル攻撃を行った日だ。このミサイル攻撃は、トランプ氏の選挙期間中の主張とは180度違う決断であった。

?彼は、選挙期間の終始を通じて「アメリカ・ファースト」を唱え、「外国への軍事介入(例えばシリアへの軍事介入)や政権転覆(regime change)は馬鹿げている」と主張し続けてきた。

?大統領の発言は、4月6日を境に選挙期間中の発言と180度違うケースが多い。

?例えば、?選挙期間中は中国を為替操作国として激しく批判していたにもかかわらず、あっさりと「為替操作国ではない」と認め中国との関係を重視し始めたし、最近までロシアのウラジーミル・プーチン大統領を異常に高く評価し、ロシアとの関係改善を選挙公約としたが、今やプーチン大統領とロシアを批判している。

?トランプ氏は、自らの主張の変化を柔軟だと主張するが、節操がない、知識や見識がなく一貫した戦略を持っていないと批判する者も多い。

?トランプ氏のトランプ2.0への変化を現実的な政策を重視する良い変化だと評価する者もいれば、その変化を警戒し批判する者もいる。筆者個人としては、トランプ1.0があまりにも独りよがりで強引であっただけに、トランプ2.0はより現実的になってきたと思っている。

?一方で、トランプ政権においては、各省庁の副長官より下の大部分のスタッフがいない状況が続いている。このため、各省庁の政策を準備し実行できない状況が続いている。

?安全保障面では、首尾一貫した「国家安全保障戦略」「国家軍事戦略」がないことは明らかである。シリア空軍基地へのミサイル攻撃に関しては国民の57%程度が賛成したが、次の一手が難しく、トランプ政権には首尾一貫した中東戦略がないという指摘が多い。

?同様にアジアにおける一貫した戦略も問われている。6日のシリア空軍基地に対するミサイル攻撃に続き、非核兵器としては最大の威力がある大規模爆風爆弾(MOAB)を使ってアフガニスタンのISIS(イスラム国)に対する攻撃を行った。

?このMOABは、洞窟や地下トンネルを破壊する能力があり、北朝鮮の地下施設に対する攻撃を連想させるものであった。

?6日以降も米国に対する挑発を続ける北朝鮮に対してトランプ政権は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と軍事行動も選択肢であると断言し、カール・ビンソン機動打撃群を朝鮮半島近くに配置した。一触即発の状況である。

?トランプ大統領は、米中首脳会議において中国の習近平主席とディールをしたと思われる。

?そのディールとは、中国に北朝鮮を説得させ核・ミサイル開発を断念させる、それに成功すれば中国とのより友好的な関係(中国を為替操作国と呼ばない、貿易などをめぐる敵対的な姿勢を緩和する、THAADの韓国配備延期や中止など)を保証する、というものである。

?事実、中国が主体となって北朝鮮を説得する努力がなされていて、その結果が出るまでは米軍の北朝鮮に対する爆撃・ミサイル攻撃・斬首作戦などの軍事行動はないであろうというのが筆者の意見である。

?以下、トランプ大統領の変化について、米国の北朝鮮に対する軍事行動について、トランプ政権に対する懸念について記述する。

トランプ大統領の対外政策
対外不介入主義から単独行動主義に変化した

●選挙期間中に主張した対外不介入主義(non-interventionism)

?選挙期間中にトランプ氏が主張した対外政策は、米国ではしばしば孤立主義(isolationism)と呼ばれてきたが、中西輝政氏が指摘する*1ように対外不介入主義という語句が適切であり、この語句を採用する。

?トランプ氏は、米国外の紛争への不介入を主張し、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が始めたイラク戦争を手厳しく批判し、米国が軍事力により外国の政権転覆を図ること、その後の国家再建に関与することに大反対してきた。

?彼が主張するアメリカ・ファーストの意味するところは、「世界の諸問題には関心がない。米国はもはや世界の警察官ではない。アメリカさえ強く豊かになればいい」ということである。

?彼のアメリカ・ファーストの主張は、まさに対外不介入主義であり、2001年から15年以上も続く対テロ戦争にうんざりしていた多くの米国人の支持を得た。

●単独行動主義(unilateralism) への転換

?トランプ氏の対外不介入主義は、シリアの化学攻撃で苦しむ子供たちの映像が全世界に流された瞬間に吹き飛んでしまい、単独行動主義に転換した。

?シリアに対するミサイル攻撃に対しては、スティーブン・バノン首席戦略官の反対を押し切り、リベラルな考えの持ち主のイヴァンカおよびクシュナー夫妻の助言に従って実行されたと報道されている。

?今回のトランプ氏の反応は、米歴史学者のエドワード・ルトワックが言うところの「冷静な考えが最も必要とされる瞬間に、突然の感情の激流に人々が襲われてしまう」症状である。

?要するに、トランプ氏の対外不介入の主張は確固たる信念に基づくものではなく、当時の激情によって簡単に単独行動主義に転換するものだった。彼は、この転換を柔軟性の発揮だと言うが、節操のなさと批判する者も多い。

●軍事力の活用の仕方に関するオバマ政権とトランプ政権の違い

?米国は世界一の経済大国、軍事大国である。世界の諸問題の解決においては、この2つのパワーをいかに活用するかがカギとなる。

?オバマ政権は、世界最強の軍事力を活用した問題解決が極めて下手であった。オバマ氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、南シナ海の人工島建設問題、シリア内戦問題などにおいて、まず軍事力による解決を否定し、それを公言してしまった。

*1=中西輝政、「日本人として知っておきたい「世界激変」の行方」、P76

?諸問題の当事国の指導者たちは、オバマ政権が軍事力を使用しないことが分かっているから、米軍の脅威を気にしないでさらに一歩踏み込んだ挑発行為を行ってきた。

?まるでオバマ政権のレッドラインがどこかを試すかのような挑発を行うことができた。米国の軍事力を最初から使用しないと宣言するオバマ氏のアプローチが、彼の対外政策の失敗の大きな要因である。

?また、オバマ政権下においては、国防省に対するマイクロマネジメント(些細なことまで管理すること)の弊害が指摘されている。

?あまりにも軍事作戦の細部にまで関与してくるオバマ氏やスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官(当時)と国防省の関係は良いものではなかった。

?一方、トランプ政権は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と宣言し、軍事力の使用に関しては状況により使用することもあるし、使用しないこともあるという「あいまい戦略」を採用している。

?この軍事力の使用を否定しないアプローチこそが相手のさらなる挑発を抑止するために不可欠だ。

?また、トランプ政権は、国防省に対し「自由に作戦をしなさい」というお墨付きを与えている。米国内の報道によると、トランプ大統領は、アフガニスタンにおけるMOABの攻撃についてメディアが報道するまで知らなかったという。

?ここまで国防省に自由度を与えるのも問題があるが、オバマ政権とは180度違う国防省に対する管理方法である。

米国は北朝鮮に対する軍事行動を実施するか?

●爆撃・ミサイル攻撃・斬首作戦などの軍事行動の可能性は(当分の間)低い

?現時点(4月17日)では、米軍による北朝鮮に対する爆撃、ミサイル攻撃、金正恩委員長を狙った斬首作戦などを行う確率は低くなってきた。理由は以下の通りである。

・米軍による軍事作戦は、北朝鮮の韓国攻撃や在日米軍を含む日本に対する攻撃を誘発する可能性が高い。この北朝鮮軍の攻撃に対抗するためには大規模な戦力が必要だし準備も必要だが、現在の米軍はそのような態勢になっていない。

・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官は、4月16日に米国ABCテレビに出演し、「平和的に問題を解決するために、軍事的選択を除くあらゆる行動に出るべき時だ。武力衝突に至らない範囲で行動を起こせば、最悪の事態は避けられる」と軍事行動を否定している。

・韓国に所在する米国人を避難させる非戦闘員避難作戦(NEO)が大々的になされたという兆候がない。NEOは戦争開始の重要な兆候だ。

・ワシントンポストは14日、トランプ米政権の公式な対北朝鮮政策として、「金正恩委員長の政権変更(regime change)は求めない方針を固めた」と伝えた。

?2か月にわたる政策の検討の結果、北朝鮮に対し、経済制裁や外交手段により「最大限の圧力(maximum pressure)」をかけながら非核化(核兵器の放棄)を迫るとしている。圧力強化に際しては、北朝鮮の後ろ盾である中国の協力に重点を置いたと説明している。

●しかし、目に見えない軍事行動は常に遂行中である

?米軍は、今回は目立った軍事行動をとらないであろうが、米軍は、常に目に見えない重要な作戦を実施している。

?つまり、米軍はこの瞬間も、将来の作戦に備えたISR(情報・監視・偵察)活動を行っている。金正恩委員長の動向(居場所、通信状況など)、重要な軍事施設(核関連施設、ミサイル開発施設、陸・海・空軍施設など)、各軍隊の動向などを継続的に情報収集・分析・評価し、将来の作戦遂行に備えている。

?また、さらに重要な作戦は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を失敗させる米軍の「発射前(left-of-launch)」作戦であるが、日本では馴染みのない表現の作戦なので説明する。

●米軍の「発射前(left-of-launch)」作戦が北朝鮮のミサイル発射失敗の原因の1つ?

?北朝鮮のミサイル発射における失敗確率が高いと思う方が多いと思う。北朝鮮のミサイル開発・製造技術が低いことも理由の1つであるが、米軍が実施する「発射前」対処の成果の可能性がある。

?例えば、北朝鮮のムスダン(中距離弾道ミサイル)の失敗率はなんと88%であるが、ムスダンを構成するソ連製のミサイルのソ連時代の失敗率は13%であった。この圧倒的な差は米軍による「発射前」作戦の成果かもしれない。

?米軍が考えている弾道ミサイル対処の1つとして、「発射前(left-of-launch)」対処と「発射後(right-of-launch)」対処という考え方がある。

?ミサイル発射を時系列でみると、発射時点を中心として左が「発射前」、右が「発射後」になるのでこのような名称になっている。我が国では、left-of-launchを「発射の残骸」と訳している人*2がいるが、明らかに誤訳である。

?まず、「発射後」対処は自衛隊も実施しているもので、イージス艦から発射される「SM-3」や地上配備の「PAC-3」などの運動エネルギー兵器で弾道ミサイルを破壊することである。

?周知のとおりSM-3やPAC-3は高額で対処も難しい。もっと安価に、より効率的に、より確実に相手のミサイルを無効化できないかという問題意識で「発射前」対処が考えられた。

?「発射前」対処は、相手の弾道ミサイルが発射台を離れる直前までにミサイルを無効化することを狙いとする。

?ミサイルが発射される前や発射台にまだ存在する時期はミサイルの弱点であり、この弱点を呈する時期にミサイルを無効化できれば最善である。

?しかし、この「発射前」対処は目に見えない作戦で派手さはないが効果的な作戦であり、米軍は極秘裏に行っている可能性がある。

*2=長谷川幸洋、「トランプ政権が画策する対北朝鮮「静かなる先制攻撃」の全容」、現代ビジネス

?「発射前」対処の手段については、サイバー攻撃、電子戦(電波妨害など)と記述される場合が多いが、閉鎖社会の北朝鮮でサイバー攻撃を成功させることは難しいと言われている。

?それでは、具体的にいかなる手段を使うのか。

?可能性があるのは、高周波マイクロ波をミサイル電子部品に照射し熱で破壊する、ミサイルに備わっている電波信号による自爆機構を逆用する、ミサイルの部品に攻撃プログラムを埋め込むこと(これは広義のサイバー攻撃の1つ)である。

?これらを実行するためには高度な能力が必要だが、実際に米軍がこれらの手段を使用していることが、北朝鮮の弾道ミサイルの発射失敗が多い原因かもしれない。最近の資料では、ニューヨークタイムズが3月4日に読み応えのある記事*3を書いているので参照してもらいたい。

?「発射前」対処の手段として、ミサイルの部品に攻撃プログラムを埋め込むことについて書いたが、4月13日付のワシントンポスト紙の記事*4によれば、2016年2月7日北朝鮮が発射したロケット光明星(カンミョンソン)4号の残骸(特に推進ロケット)を海から回収し分析した結果、その重要な部分はほとんど西側諸国製のものであり、中国企業を通じて入手したことが判明した。

?つまり北朝鮮ミサイルのサプライチェインのどこかでミサイル部品に攻撃プログラムを埋め込むことは可能であろう。

中国の北朝鮮説得に対する期待と懸念

●トランプ大統領の中国活用

?トランプ大統領は習近平主席との首脳会談を経て、徐々に中国の重要性、米中関係の重要性を認識するとともに、諸問題の解決特に北朝鮮問題の解決のために中国を活用することを決断したと思う。

?トランプ大統領にとっての米中首脳会談の成果は、まず中国に北朝鮮を説得させ、北朝鮮の核・ミサイル開発を断念させるように仕向けたことである。中国としても今までとは比較にならない真剣さで北朝鮮を説得している。

?一方で、習近平主席の説明を聞き、中国の北朝鮮に対する影響力が限定的であることも認識したはずである。

?中国が金正恩の説得に失敗した場合の対応が難しいが、成功よりも失敗する確率の方が高いと思う。トランプ大統領は、「中国が失敗した場合、米国単独でもやる」と言っているが、実際に米国が単独で何をするかだ。

●いま中国は北朝鮮に対してどのような説得をしているのか?

?最も望ましいのは、北朝鮮が中国の説得を受け入れて核・ミサイル開発を断念し、核兵器を廃棄することである。その際に周辺諸国にとって最も被害が少ない案は、金正恩委員長を説得し亡命させることだ。

?「国外に亡命したならば、その後の面倒を見る。拒否すれば米国が攻撃する」という飴と鞭で説得している可能性もある。この説得が成功すれば画期的だが、金正恩がすんなり受け入れるとも思えず、結果はどうなるかである。

?また、「中国は北朝鮮への石油の供給を断つ」という脅しをかけているかもしれない。しかし、過去何度も米国などから「北朝鮮への石油の提供を止めること」を催促されても拒否した経緯があり、説得力を持つかどうかだ。

*3=David E. Sanger and William J. Broad、“Trump Inherits a Secret Cyberwar Against North Korean Missiles”

*4=Joby Warrick、“Kim Jong Un’s rockets are getting an important boost from China”

トランプ政権への懸念

●新型大国関係を受け入れたティラーソン国務長官

?習近平主席は、「偉大なる中華民族の復活」を掲げて中国のリーダーとなった。そして、彼は、2013年6月のオバマ大統領との会談の中で、米中の「新型大国関係」を提案して以来、一貫して米国と中国との新型大国関係を主張している。

?中国にとっての「新型大国関係」とは、米中が対等の立場であることを前提として、各々の国益を認めること。特に中国にとっての核心的利益を認めること。つまり、チベットや新疆ウイグル両自治区、台湾などの中国国内問題や東シナ海と南シナ海の領土問題に対して米国は口を出さないこと、手を出さないことを要求している。

?しかし、オバマ大統領(当時)は、新型大国関係の危険性を理解し、習近平主席の要求を拒否してきた。このオバマ前大統領の拒絶は当然である。

?レックス・ティラーソン国務長官は、習近平主席との会談において、習氏が主張してきた米中の「新型大国関係」を実質的に認める発言を自発的にしてしまった。

?つまり、中国側が「新型大国関係」を説明するのに使ってきた「衝突せず、対抗せず、相互尊重、ウィン・ウィン(nonconflict, nonconfrontation, mutual respect, win-win cooperation)」という諸原則を国務長官として最初の習主席との会談において自ら自発的に発言してしまった。

?これは由々しき問題であり、この新型大国関係を認めたということは、中国が核心的利益と主張する台湾、チベット、東シナ海、南シナ海について中国の主張を認めるということであり、日本への影響も大きい。いくら新任の国務長官であっても今回の発言はひどい。

?ティラーソン国務長官のみならずトランプ大統領以下の閣僚が中国との新型大国関係を認めるとしたならば、我が国はいかに対処すべきか悩ましい事態になる。

●トランプ大統領はドラゴン・スレイヤー(反中派)なのかパンダ・ハガー(親中派)なのか?

?トランプ氏は、選挙期間中は為替操作国であり米国の貿易赤字の元凶であると中国を厳しく批判し、大統領選挙勝利後も一中政策(一つの中国政策)を認めないと発言するなど、ドラゴン・スレイヤーの評価であった。

?しかし、日米首脳会談直前に一中政策を認めると発言し、最近では中国は為替操作国ではないと発言するなどパンダ・ハガーに変身したのではないかと思うほど、その発言は急変している。

?歴代大統領の中で、当初、中国に厳しい発言をしていたビル・クリントン大統領(当時)やジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が最終的には中国と親しい関係になったように、トランプ大統領も同じように中国とことを構えない大統領になるのではという懸念がある。

?トランプ大統領の誕生に伴い中国はいかにトランプ氏に対処するかを検討した結果導き出された1つの結論が、トランプ大統領の最側近である「イヴァンカおよびクシュナー夫妻を取り込むこと」であり、猛烈な外交攻勢により2人の取り込みが実現しつつあると言われている。

?この2人がパンダ・ハガーになれば、トランプ大統領もその影響を受けるであろう。その時に日本は米中に対していかに対応するかが問われる。

おわりに

?トランプ大統領は、4月6日のシリア空軍基地へのミサイル攻撃を契機として選挙期間中に主張してきた対外不干渉主義を改めた。

?北朝鮮の核・ミサイル開発に対しても「軍事行動を含む全ての選択肢がテーブルにある」と表明し、その解決に向けた努力を行っている。

?この対外政策の変化は現段階では望ましい変化だと言えるが、最終的には中国による北朝鮮説得の結果とその後の米国の対応を見て判断したい。

?米中首脳会談を受けて中国の北朝鮮に対する姿勢が確かに変化している。中国にとっても北朝鮮の核開発は厄介であり、その核開発を阻止し、朝鮮半島の非核化を達成したいはずである。

?中国は、北朝鮮側に立つよりも米国側に立った方が中国の国益に沿うと判断したのであろう。中国と北朝鮮間の定期航空機の運行を一時停止し、中国の港に到着していた北朝鮮の石炭積載船を追い返したのはささやかな努力の証である。

?中国の環球時報は4月12日、「北朝鮮は核やミサイルに関連した活動を中止すべきだ。米国が核武装した北朝鮮と共存する気はないことは明白だ」と強調した。また、「北朝鮮は今回こそ過ちを回避すべきだ」とまともなことも書いている。

?協調し始めた米中が北朝鮮の核ミサイル問題をいかに解決するかは見ものだが、我が国も当事者として様々な状況を想定し、その状況にいかに対処するかを具体的に詰めなければいけない。

?特に米中協調が続くと仮定した場合の日本のあるべき姿を真剣に検討すべきであろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49780
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/206.html

[アジア22] 「中国の一部だった」事実ない−韓国政府がトランプ米大統領の誤解正す 韓国大統領選、進歩系2強に悩む有権者 文、安両氏、大
「中国の一部だった」事実ない−韓国政府がトランプ米大統領の誤解正す
Kanga Kong
2017年4月20日 22:20 JST
 
中国の習近平国家主席は中・韓両国の歴史についてトランプ米大統領に何と話したのか−。韓国政府はこれを知りたがっている。
  トランプ大統領は先週の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、朝鮮半島が「かつては中国の一部だった」と習主席から聞いたと語った。韓国国民は大憤慨し、外務省が習主席の発言内容を確認する事態になった。
  韓国外務省の報道官は20日ソウルで記者会見し「数千年の歴史の中で韓国が中国の一部だったことは一度もないというのは国際社会で認識されている明白な事実だ」と言明した。
  トランプ大統領は核実験やミサイル試射をやめさせるように中国が北朝鮮を抑えることを望んでいるが、歴史的関係についての習主席の説明を聞いて、北朝鮮の政策に影響を及ぼすことは中国にとっても「それほど簡単ではない」ことが分かったとWSJ紙に語っていた。
原題:South Korea Tells Trump It’s Actually Never Been a Part of China(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OOPCI56K50XU01

 
韓国大統領選、進歩系2強に悩む有権者
文、安両氏、大接戦 これまでの選挙の法則通じず
2017.4.21(金) 玉置 直司
ペンス副大統領、対北朝鮮「あらゆる選択肢ある」 板門店を視察
北朝鮮問題も大統領選の大きな争点の1つ。写真は南北軍事境界線上の板門店を訪問したマイク・ペンス米副大統領(中央、2017年4月17日撮影)〔AFPBB News〕
?韓国の大統領選挙まであと20日。進歩系の2人による大接戦という状況に変化はない。公示後最初のテレビ討論が2017年4月19日にあったが、決め手に欠け、大勢には影響を与えなかった。

?4月19日、夜10時から、国会に議席を持つ5人の候補によるテレビ討論会が開かれた。5人は立ったままで、事前に質問は教えていない。資料の持ち込み禁止だ。

公示後最初のテレビ討論

?外交安保と経済文化社会に分けた討論会だったが、それぞれ1人あたり9分間の時間が与えられる。この時間内であれば、どの候補に質問をしてもいい。準備した資料を読むだけという討論会に対する批判に答える形で、新しい方式で実施された。

?どんな質問が誰から飛んでくるか分からない。瞬発力、危機管理能力、批判に対する対応力などを試そうという趣旨だった。

?この日の討論会は、公示後始めての直接対決だった。有力候補である共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)氏と国民の党の安哲秀(アン・チョルス=1962年生)氏にとっては、選挙戦を左右する大きな意味を持つ討論会と言われた。

?討論会を見たが、それなりには面白かった。だが、結論から言えば、選挙戦に決定的な影響を与える内容ではなかった。

?一夜明けた今朝、筆者は、大手紙デスクや記者、企業人などに相次いで「昨夜の討論会は選挙戦に影響を与えるか?」と聞いてみた。

決定的な影響はなし

?全員が口を揃えて「そういう内容ではなかった」という答えだった。とはいえ、討論会が面白くなかったわけではない。

?「北朝鮮はわれわれにとって主敵なのか?」
?「そういう規定は、大統領になる人物がすべき発言ではない」
?「軍の統帥権者(大統領)が主敵を主敵と言えないということなのか」

?保守系の正しい政党の劉承?(ユ・スンミン=1958年生)氏は、文在寅氏の北朝鮮に対する基本的な考えを厳しく追及した。

?19日の討論会で、最も攻め立てられたのは、世論調査で首位を走る文在寅氏だった。

?保守系の自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ=1954年生)氏は、文在寅氏が北朝鮮にある開城(ケソン)工業団地の大幅拡張を打ち出していることを槍玉に上げ「韓国で雇用を増やそうというのではなく、北朝鮮のための雇用拡大策ではないか」と批判した。

?また左派の正義党の?相?(シム・サンジョン=1959年生)氏も、文在寅氏のサード(THHARD=地上配備型ミサイル迎撃システム)配備問題に対するあいまいな態度を批判すると、文在寅氏が「私ではなく、立場があいまいな安哲秀氏に聞いてほしい」と語る一幕もあった。

視聴率は26%

?だが、全体としては、討論会の参加者が5人もいたことで焦点がぼやけた面は否めない。もともと当選可能性が高くない、洪準杓氏、劉承?氏、?相?氏が元気に発言して攻撃に回ることは当然だ。

?文在寅氏も予想していたことで、うまく言質を取られないような発言を続けた。安哲秀氏は、文在寅氏を相手に何度も論争を挑むが、かわされる場面も多かった。

?それでもやはり一般国民の関心は高かったようだ。午後10時からという時間帯にもかかわらず、視聴率は26.4%を記録した。かなりの数字と言えるのではないか。

?今回の選挙は最終盤まで接戦だ。最新の世論調査を見ると、文在寅氏がリードを維持しており、急追する安哲秀氏がなかなか逆転できないこう着状態でもある。この状況が、投票直前まで続く可能性も高まっている。

?今回の選挙は、史上初めて進歩系候補2人が世論調査で上位を競い合うという展開になっている。初めてのことで、「過去の選挙戦」の法則からはなかなか結果を推測できない。

?韓国の大統領選挙はこれまで、「地域性」「世代」「イデオロギー」の3つか重要な要素だった。

地域性、年代、イデオロギーの3要素は?

?このうち「イデオロギー」については、多数派の保守派からの当選の可能性がほぼなくなったという見方が圧倒的で、有力候補を、「右派」か「左派」、「保守」「進歩」できれいに分けることができなくなった。

?イデオロギーで当選のための支持者を固めるやり方が通用しないのだ。

?文在寅氏と安哲秀氏ともに、「保守」あるいは「中道」の票をどれだけ奪えるかが勝敗を決すると見て、選挙期間中、「右展開」を加速させている。外交安保政策では、大きな差はなくなっている。

?一方、韓国政界では、いつもはっきりしていた「地域性」も薄れている。以下、2016年の総選挙の時の地域別の有権者数だ。

▽2016年4月の総選挙の際の都市・道別の有権者数
ソウル・京畿道?????????2077万人
釜山・慶尚南道????????? 660万人
大邱・慶尚北道????????? 426万人
忠清南・北道????????? ?433万人
全羅南・北道????????? ?424万人
江原道???????????? ?127万人
済州道??????????????49万人

?これまでの大統領選挙では、全羅南・北道で進歩系が、慶尚南・北道で保守系が圧倒的に得票した。

?首都圏は、保守と進歩が混在しており、結果的に忠清南・北道をどちらが押さえるかが大きなポイントだった。ところが、今回は、全羅南・北道でも、慶尚南・北道でも、文在寅氏と安哲秀氏が激しく競い合っている。

?「朝鮮日報」が2017年4月14日〜15日に実施した世論調査によると、文在寅氏は、ソウル、仁川・京畿道など首都圏、釜山・慶尚南道で、安哲秀氏は、大田・忠清南・北道、光州・全羅南・北道、大邱・慶尚北道でリードしている。

?ただ、全羅道や慶尚道では接戦で、地域色は結果的に薄まっている。

世代間の差ははっきり

?残りの「世代間の差」は、色濃く残っている。

▽世代別人口比率(2017年3月現在)
20代???????16.1%
30代???????17.9%
40代???????20.9%
50代???????20.2%
60代???????24.6%

?20代、30代では文在寅氏が、60代以降では安哲秀氏が大きくリードしている。

?もともと安哲秀氏がベンチャー企業創業者出身で若者に高い人気があったが、今回の選挙では、進歩層、若者の票が文在寅氏に流れ、その代わり、60代以上で保守・中道層の票をかなり取り込んでいるようだ。

?では、最新の世論調査はどうなっているのか?

?先ほど触れた「朝鮮日報」の世論調査では、5人の対決が続く場合、

文在寅氏????36.3%
安哲秀氏????31.0%

?だ。また、15日〜16日に実施した「中央日報」の世論調査は、

文在寅氏????38.5%
安哲秀氏????37.3%

?だ。これまでの例なら、投票まで1か月を切った時点で世論調査で首位に立った候補がほとんど逃げ切っている。

1か月前の世論調査が最終結果にならない?

?だが、今回は過去の例が通用すると言い切る専門家はほとんどいない。保守層は最終的にどういう判断をするのか。

?5人の候補者のうち、保守系の候補者が果たして「完走」するのか。1人抜けた場合、その支持者の票が安哲秀氏に行くのか。また、そうだとして、安哲秀氏から離脱する進歩支持層の票はどれほど出るのか。

?もっと分からないのが、保守層や若者が果たして投票に行くのかどうかだ。

?保守層は、自分が本当に支持する保守の候補者がいないか、いても当選可能性はきわめて低い。にもかかわらず、「誰かを落とすために」投票に行くのか。

?若者は、どう出るか。韓国では投票の前の週は、休日が多い。3日が釈迦誕生日、5日がこどもの日で休日だ。両日にはさまれた4日を休みにする企業も多い。さらに9日の火曜日は大統領選挙の投票日で休日だ。8日を休めば、一気に長期連休になる。

?「季節的にも日本などに旅行に行く絶好の時期で、投票と旅行のどちらを選ぶのか迷っている若者もまだ多い」(韓国紙デスク)

?若者支持率が高い文在寅氏とすれば、20代や30代の投票率が下がることは手痛い。連休の利用法にまで頭を悩ませる選挙戦だ。

?朴槿恵(パク・クネ=1952年生)氏の罷免で思わぬ形で大幅に繰り上がった大統領選挙。異例ずくめで、予想も最後まで難しい選挙戦だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49808
http://www.asyura2.com/17/asia22/msg/599.html

[国際19] ロシアを内部から痛めつける格差拡大と貧困問題 医師の時給273円 レイプ拷問、内戦泥沼化シリア ベネズ大規模デモ2人は死
ロシアを内部から痛めつける格差拡大と貧困問題
医師の時給はなんと273円、まかり通る汚職に若者が反旗翻す
2017.4.21(金) 大坪 祐介
ロシア南部 アストラハン市内 ソ連時代から変わらない街並みが残る
?去る3月26日、モスクワはじめロシア国内の主要都市で「反汚職デモ」が繰り広げられた。クリミア併合後に高い支持率を誇るウラジーミル・プーチン政権での出来事であっただけに、日本のメディアでも「反政府デモ」として大きく取り上げられた。

?このデモは反政権活動家として有名な弁護士、アレクセイ・ナバリヌイ氏がインターネット上のSNSなどを通じて呼びかけたものだ。

?これに先立って彼の組織がドミトリー・メドベージェフ首相のビデオを公開した。首相の不正蓄財を暴露したこのビデオがデモのきっかけになったと思われる。

?筆者も公開直後にユーチューブでそのビデオを見た。ドローンで撮影したと思われるモスクワ郊外の大邸宅、イタリア・トスカーナのワイン畑など、一国の首相・元大統領とはいえ疑念を抱かざるを得ない光景であった。

汚職・不正に対する若者の怒り

?ちなみに先頃発表されたロシア政府要人の所得・資産公開によると、メドベージェフ首相の2016年中の年収は858万ルーブル(約1673万円、1ルーブル=1.95円、以下同)である。

?また同首相はロシア国内に367.8平米のアパートを所有、18.8ヘクタールの土地を49年間リース保有している。

?なおプーチン大統領は年収が885万ルーブル(約1725万円)、保有資産は土地1500平方メートル、77平米と153平米の2つのアパート、18平米のガレージである。

?冒頭の暴露ビデオで公開された大邸宅はこの公開資産にはもちろん含まれておらず、疑念は深まるばかりであるが、当のメドベージェフ首相はデモ当日はソチでスキーに興じていたと報道されている。

?筆者はデモ当日は東京にいたので、現場の雰囲気(もちろんモスクワにいても近づくことはないのだが)を知る由もないが、その翌週にモスクワでロシア人の友人たちの話を聞くと、今回のデモはこれまでの反政府デモとは何かが違うと言う。

?デモ参加者の多くが10〜20代の若者で、彼らの怒りの矛先がどこに向いているのか分からないと言うのである。

?もちろん、表向きは汚職で私腹を肥やしたに違いないメドベージェフ首相に向いているのは確かだろう。しかし、メドベージェフ首相が辞任すれば怒りが収まるかというとそういうものでもない。

?むしろ彼らの怒りはもっと漠然とした、社会全体の閉塞感にあるように感じるという。その閉塞感の根本は何であろうか?

?筆者はロシア社会に広がりつつある「貧困の拡大」が原因なのではないかと感じている。

?確かにマクロの景気は2016年第4四半期から前年比プラスに転じ、2017年もロシア政府は+2%程度のプラス成長を見込んでいる。

国民の75%が貧困層以下

?ロシア国民の多くはやっと暗いトンネルを通り抜けたと喜んで良さそうなものであるが、景気低迷と高いインフレの中でロシア国民の所得格差は拡大しており、景気回復・拡大の担い手となるべき中間層が大きく傷んでいる可能性が高い。

無機質な高層建築が立ち並ぶ新たなビジネス街 モスクワ・シティ
?ロシアにおける貧困層の定義は最低月収(1万700ルーブル=2万865円)以下の層を極貧層、最低月収からその2倍以下の層が貧困層とされる。

?また中間層は最低月収の4〜6倍(8万3460円〜12万5190円)と定義されている。

?この定義に従うと、足許、中間層に属する勤労者は12.7%(3年前には15.5%であった)、12%がアッパーミドル以上、そして残り75%が貧困もしくは極貧層となる。

?勤労者の4分の3が貧困層にとどまるというのは、日本でも話題になった「ワーキング・プア」そのものだ。そしてロシアの場合、貧困者の数の問題以上にロシア固有の問題がある。

?それは教師や医師、それに科学者、エンジニアといった、西側社会ではエキスパートと呼ばれる職種の勤労者の多くが貧困層に属するという問題である。

?こうした人々は本来、社会の健全な発展や維持の基盤となることが期待されているはずである。ところが、その彼らが貧困に直面してしまっている。

?象徴的な記事が4月7日付のモスクワタイムスのウエブに掲載されている。見出しはこうだ。

?「ロシアの医師の給与はファーストフード店員以下」

?同記事が伝えるところでは、米シンクタンクCEPRの調査で、ロシア国内の医師の時給は140ルーブル(273円)、マクドナルドのスーパーバイザーの時給は146ルーブル(284円)となっている。

?日本をはじめ欧米諸国では考えられない状況だが、ロシアでは医師の90%以上が国家公務員であり公立の病院で勤務している。もちろん医師になるためには欧米諸国と同じレベルの高等教育を受ける必要がある。

若者の真の怒りは経済格差

?こうした社会のミドル層の崩壊に直面するロシアの若者が、自分の将来に対してやり場のない怒りをデモで表明するのも無理からぬものがある。

モスクワ市内には愛国心を鼓舞する巨大ペイントが増えている
?そして今回のデモはモスクワにとどまらず、ロシア各地の主要都市でも行われた。そこには大都市と地方の格差に憤る若者の怒りもあったに違いない。

?大都市と地方にある程度の経済格差が生じることは人口規模、産業構造を考えれば致し方ない。しかしそれが命の格差になるとどうだろうか?

?4月11日、ソビャーニン・モスクワ市長はモスクワ市の平均寿命が77歳となったことを発表した。ハイテク医療の導入でモスクワ市民の平均寿命は改善を続け、ついにスロバキア、エストニアといった東ヨーロッパ諸国並みになったと称賛した。

?しかし、ロシア全体の平均寿命は依然71歳にとどまる。ロシア国内で最も寿命が短いのが、トゥヴァ共和国の62歳である。

?モンゴルと国境を接するこの共和国ではいまだに病気になるとシャーマン(呪術師)に頼ると聞く。モスクワのようなリッチな大都市とは異なり近代的な医療設備へのアクセスが十分ではないことは想像に難くない。

?最後に貧困と汚職の関係を考えてみたい。

?ロシアの世論調査機関レバダセンターが行った調査「あなたやあなたの周りの人が賄賂を払ったケースは何ですか?」が参考になる。

貧困と汚職は表裏一体

?トップは「就職の便宜」(29%)、わずかの差で「病院サービス」(26%)、「役所の許認可」(19%)と続く。

?驚くことに「運転免許」(14%)、おなじみ「交通違反」(14%)、「学校入学の便宜」(12%)、「住宅割当て」(10%)、そして「葬儀手配」(10%)となっている。最後はまさに地獄の沙汰もカネ次第ということだろうか。

?この結果を見ると、貧困と汚職が表裏一体の関係にあることを改めて認識させられる。つまり、正規の給与では生活できない医師や公務員は国民から賄賂をもらうことで生活を維持している。

?他方、一般の国民にとって貧困から抜け出すためには良い学校に入学する、良い職場に就職することが近道だが、貧困層には賄賂を払う余裕はなく、結果的に経済格差がさらに拡大する。

?改めて冒頭の「反汚職デモ」に戻ろう。

?ロシアでも若年層の失業問題は深刻である。懸命に勉強して専門知識を身につけても、既述の通り豊かな生活を送れる保証はない。ロシアの若者たちの怒りは汚職に対する道徳問題ではなく、経済問題であることを理解する必要がある。

?プーチン政権は汚職対策を強化するだけでは問題解決につながらないこと、何よりもロシアの若者が豊かな未来を描ける社会構造改革の必要性を強く認識する必要があろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49785

 

 

【第45回】 2017年4月21日 冬木糸一 :HONZ
レイプに拷問…内戦泥沼化シリアの実情『シリアからの叫び』

内戦が続くシリア。いつになったら停戦するのだろうか…
 シリアの国情は長い期間にわたって荒れ狂っている。


『シリアからの叫び』
ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ(著)、古屋美登里(訳)
亜紀書房
256ページ
2300円(税別)
 ことの発端は2011年。2010年に起こったアラブの春を端緒として過激化した反政府運動と、それに対抗するアサド大統領に率いられた政府軍によって内戦が勃発。ジリジリと進まない市街戦、非人道的で歯止めのかからない拷問、市民へのレイプ被害など無数の事態により状況は泥沼化していく。国連難民高等弁務官事務所によるとシリアからの難民は500万人を超えたという。外務省のデータによると2012年のシリア人口は2240万人だから、尋常な数ではない。

 いったい、シリアで何が起こっているのか。そもそもなぜこのような戦争が起きてしまったのか。そこで暮らす人々は何を考えているのか。本書『シリアからの叫び』はそうした疑問に答えるべく、政府軍、反体制側といった立場を問わず、シリアの人々に対して寄り添うようにして行われた取材をまとめた渾身のルポタージュである。ジャーナリストだけ数えても94人もの犠牲者が出ているシリアなので、ただでさえ命がけの取材内容を、見事な筆致で描き出していく。

レイプ、拷問

 事実上の戦争が起こっているわけだから、シリアで起こっていることは何もかもが問題といえるのだが、とりわけ深刻にみえるのがレイプ/拷問による市民への被害である。シリア国連調査委員会のレポートによれば、シリア難民たちは脱出理由のひとつに誘拐やレイプ、拷問の危険性が高まったことをあげているが、著者が調査を行った2012年頃から日常的に行われていたようだ。

 本書にもレイプ被害にあった犠牲者の生々しい声が集められている。レイプは被害者からしてみればただでさえ最悪の事態だが、結婚するまでヴァージンであることが求められるイスラム教の女性にとってはより深刻な結果をもたらす。レイプ被害を受けることで結婚ができなくなり、社会から孤立せざるをえなくなるなど、精神的な被害がより重体化するケースがあるからだ。

 政府軍による(反体制側も拷問を行っているという証言もある)拷問の内容も衝撃的。一人の男性の証言によると、家に押しかけてきたアサドの軍隊員によって銃撃され、拷問を行う病院へと連行される。死体置き場へと放り投げられ、毎晩拷問が終わるとそこへ戻されることになる。

 拷問では好き放題に殴られ、逆さにつるされ、外科用のメスで腹を開き腸を切られ、乳首の下から背中の中央まで届く穴を開け吸引チューブで肺に穴を開けるなど、とても現実とは思えない過酷な拷問が行われていたケースが無数に浮かび上がってくる(ちなみにこの証言者は、医師が偽の死亡診断書を書いてくれたことにより脱出し、ぎりぎり生きながらえることができた)。

1センチ1センチ進んでいく

 取材は市街戦が起こっている街の政府軍や、市井の人々に対しても行われている。特に市街戦においては、政府軍も反政府軍も、もちろん市民も疲弊しつくしている様が描き出されていく。

 市街戦では戦況が膠着しがちであり、スナイパーが一日中銃弾を応酬しあい、建物を一軒一軒、道路を一本一本じりじりと制圧する/される苦しい戦いが続く。極度に長い時間死が隣にある日々。『「ひとつの建物を占拠するには何時間も、何日もかかるんだ」リファフは低い声で呟いた。「こんなふうに戦いは進むんだ。こっちが一センチ進むと、あっちは一センチ下がる。あっちが一センチ進むと、こっちは一センチ下がる」』とは政府軍側の兵士の弁だ。

“「でもわたしのような中立の者もいるから、なんとか仲良くやっていけるのよ。みんなうんざりしてるから近所づきあいはいいの。あなたはホムスが戦場だと聞いているでしょう。でも、爆弾と暮らすことを学んでいる人たちがいるってこと、知らないでしょ」”

 Twitterなどで発信できる時代だが、こうした“戦場”とみなされている場所で営まれているそのリアルな実情は、著者のようなジャーナリストがいなければなかなか表に出てこないものだろう。

おわりに

 本書でシリアの人々の実態を知ったからといって、我々に出来ることは多くはない。

 とはいえ、どれほど容易く破壊的な争いに陥ってしまい、元の生活に戻るのがいかに困難なのか。非人道的な拷問やレイプが当然のものになってしまう過程、そこでいったいどれだけの不幸が起こるのかという、“内戦”──その実態を、本書は心底まで実感させてくれる。声なき人に声を与える、ジャーナリズムの仕事のひとつの見事な達成の成果がここにある。

 HONZメンバーであるアーヤ藍が配給に携わったシリア映画はこちら


(HONZ 冬木糸一)
http://diamond.jp/articles/-/125518

 

ベネズエラで反体制の大規模デモ、少なくとも参加者2人死亡
Nathan Crooks、Fabiola Zerpa、Noris Soto
2017年4月21日 03:30 JST

ベネズエラでは19日、首都カラカスなどの都市で反体制デモが行われ、少なくとも2人が死亡した。マドゥロ大統領の統治に抗議するデモとしては過去数カ月で最大規模となり、デモ参加者らは銃弾や催涙ガス、大統領を支持する過激派勢力に立ち向かった。
  カラカスのデモ行進は数マイル(1マイル=約1.6キロメートル)に及び、デモ主催者らは「最大の行進」だと指摘。バルキシメトやポルラマルなどの都市でもデモ隊が街頭に繰り出し、国家警備隊や地元警官らと衝突した。カラカスとサン・クリストバルでデモ参加者少なくとも2人が死亡した。
  野党指導者で大統領選に2度出馬したエンリケ・カプリレス氏は「数百万人のベネズエラ国民がこの日、憲法を守るために恐れることなく結集した」とのコメントを電子メールで発表した。
  数千人のマドゥロ大統領支持者もカラカス中心部で集会を開き、国営テレビではペットボトルの水を配布するトラックや故チャベス大統領の形をしたバルーンが映し出された。
  ベネズエラ最高裁が先月、野党多数の議会の立法権を剥奪しようと試みたことを受け、マドゥロ大統領に国内外で厳しい目が向けられている。野党は同大統領罷免の国民投票を実施する取り組みが昨年、選挙管理委員会によって打ち切られた後、勢いの増強を目指している。
  
  同大統領は「この日、彼らは権力打倒を試みたが、またもや失敗した」と述べた。  
  
原題:Massive Anti-Maduro Protests Leave 2 Dead in Venezuela (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-20/OOPUOX6JTSE801

http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/207.html

[不安と不健康18] 炭酸飲料の飲み過ぎ、アルツハイマー病と関連か−米国で最新研究 Deena Shanker 2017年4月21日 14:4
炭酸飲料の飲み過ぎ、アルツハイマー病と関連か−米国で最新研究
Deena Shanker
2017年4月21日 14:48 JST

炭酸飲料を含む砂糖入りの飲料を日常的に飲むことの危険性については、科学的にはっきりしている。虫歯、肥満、糖尿病や心臓発作、脳卒中のリスクを高める。その他にも発症する可能性のある病気は枚挙にいとまがない。
  ダイエットの炭酸飲料についての科学的知見は、そこまで確かでない。コーラからダイエットコーラに切り替えれば、砂糖の消費量は減らせるが、他の問題を引き起こすかもしれない。人工甘味料は、必ずしも原因だとはされていないものの、体重増や糖尿病、心臓病との関連が指摘されている。
  20日に同じ研究者グループが発表した2つの研究結果は、ダイエットにせよ通常のタイプにせよ炭酸飲料を飲む人に、その習慣を完全にやめさせるよう促す全く新しい理由を提示した。
  一つは医学誌「ストローク」に掲載された論文で、人工甘味料の入った飲料摂取と脳卒中やアルツハイマー病を含む認知症のリスク増加との間に関係があることが分かったとしている。もう一つは「アルツハイマー・アンド・ディメンシャ」に載った研究報告で、砂糖入り飲料の消費増とアルツハイマー病発症前のパターンとの関連を指摘している。
  研究は米ボストン大学医学大学院の研究者らが、数十年にわたる観察データを蓄積している「フラミンガム心臓研究」のデータ分析などを通して行った。フラミンガム心臓研究は1948年に5000人超のボランティア参加者に対する観察・研究からスタートし、71年からはその子どもたちを含め、2002年からは孫たちも含めるといった世代をまたぐ研究で知られる。
  アルツハイマー協会科学イニシアチブのディレクター、ディーン・ハートリー氏は、相関関係は必ずしも因果関係を意味するものではないと指摘。その上で、今回の研究は今後のさらなる研究のための重要な出発点となったと評価した。同氏は炭酸飲料についてはダイエットも通常のタイプも共に避けるのが最も安全だとし、「両方共に悪いと思う。普通の水が常に良い」と話した。
原題:Drinking Too Much Soda May Be Linked to Alzheimer’s(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-04-21/OOQRJD6KLVR401
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/499.html

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