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[経世済民131] 価格変動で消費者より「企業が得しそう」が76.4% 外国人が支える地価上昇 低金利続き、還元利回りが超魅力的 本能を抑制
価格変動で消費者より「企業が得しそう」が76.4%
藤村 広平日経ビジネス記者
2019年3月18日5 80%全1203文字
 販売価格をもっと頻繁に、より細かく、自動的に変動させることで収益力の向上を図る「ダイナミック・プライシング」。日経ビジネス2019年3月18日号特集では、すでに導入済みの航空料金やホテルだけでなく、インターネット通販やスーパーなど実店舗でも、活用を模索する動きが相次いでいることを紹介した。
 しかし、このダイナミック・プライシング、新たに導入するにあたっては細心の注意が欠かせない。日経ビジネスが実施した消費者アンケートでは、この施策を警戒する声が目立ったからだ。
 消費者550人に対して、インターネット経由で実施した今回のアンケート。「ダイナミック・プライシングについて、どのような印象を持ちますか」という設問で、値上げ・値下げのどちらが増えそうかと聞いたところ、値上げを予測する声が86.2%を占めた。「企業にとってお得なシステム」との印象を持つ人も76.4%と、「消費者にとってお得なシステム」の23.6%を圧倒した。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00024/031300001/survey.jpg
【調査の概要】調査会社マクロミルに委託し、2019年2月20〜22日にインターネットを通じて実施した。性別・年齢別にサンプルを集め、合計550人から回答を得た。

 実際には、稼働率を上げたり在庫を効率よく消化したりするために、企業が値下げすることも十分あり得る。また価格が上がったとしても、その商品やサービスを受けたいと強く希望している人が入手しやすくなるメリットもある。導入企業は、こうした利点を分かりやすく説明する必要がありそうだ。
 調査では「どんな種類の商品・サービスなら、価格が『もっと頻繁に』『もっと細かく』『自動的に』変動することを受け入れられますか」とも聞いた(詳細はこちら)。不思議だったのは航空料金の変動が増えることを「受け入れられる」としたのが70.9%に上ったのに対して、鉄道料金の「受け入れられる」は48.2%にとどまったことだ。
 「目的地まで移動する」という便益は両者とも同じはずだが、これまでも変動していた航空料金は受容度が高く、これまで変動の少なかった鉄道料金は抵抗感が強く残っている。より細かくデータを検証すると、航空料金が「受け入れられる」と回答した390人のうち、3分の1にあたる136人が鉄道料金の変動を「受け入れられない」としていた。
 個別の意見としては「通勤で利用する路線の値段が細かく変動すると困る」(愛知県の30歳男性)といった声のほか、「今まで通りの価格のほうが計算しやすい」(千葉県の55歳女性)という回答もあった。首都圏で長らく問題になっている「痛勤電車」。解消に向けてはピーク時の値段を上げて需要を分散するような手法も選択肢の一つとなるが、実現へのハードルは高そうだ。
商いの根幹である値決めに、革命が起きようとしている。ネット通販サイトはより頻繁に、細かく、自動で価格を動かし、「一物一価の原則」が通用しない時代が目前に迫っている。日経ビジネス3月18日号特集「ダイナミック・プライシング」では、アマゾン・ドット・コムなどを舞台に急変動する価格の裏側に迫り、消費者の生の声も掲載している。

百代過客通行人
声高に透徹するバナナの叩き売り、御託演説の長丁場の蝦蟇の油、大道商人は古来目の前のたかり客の顔色を伺いつつダイナミックプライシングを実施して来たではありませんか。客の側でも今さら驚くべき事、動揺すべき事ではありませんね。その辺のスーパーマー
2019/03/18 06:07:423返信いいね!

すてぃぐりっつ
消費者側のメリットとされていることを検討してみれば、在庫消化は例外であり全体に影響を与えるほどの比率はないことや、強く希望する人ではなく富裕層に利益をもたらすだけということから、小手先の詭弁であることが分かる。正しくないことを分かりやすく説
2019/03/18 10:42:312返信いいね!

naoto
ある会社の経営企画
食品ロスの問題で、スーパーなどは惣菜の在庫リスクを抱えていますから、夕方からの特売セールは致し方ないと思います。問題は公共交通機関ですが、五輪を控えている以上、通勤時間の柔軟な対応を企業に求めることで、もう少し「働き方改革」の促進に繋がって
2019/03/18 13:07:041返信いいね!

47
新幹線でも繁忙期と閑散期価格があるように、稼働率に応じて料金を変える合理性はあると思う。時代が進んで、より細かく、より頻繁に価格を変える技術が出来上がりつつあるとしても、ダイナミック・プライシングにより自動で価格を変動させるのには問題がある
2019/03/18 20:59:302返信いいね!

mino
情報や取引の支配力など寡占企業が価格決定力的に有利なのは自明だ。消費者の感覚はそれを感じているからだろう。企業側に情報優位を渡さないだけの不特定多数の一般人に情報を提供し処理し判断を支援するインフラが整わなければ,あるいは仮想市場機能が充実
2019/03/19 10:58:15
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00024/031300001/

 

外国人が支える地価上昇、「第2のニセコ候補」は?

奥平 力 日経ビジネス記者
2019年3月20日
3 86%

全722文字
 国土交通省が19日に発表した公示地価(2019年1月1日時点)で、前年からの上昇率が全国トップだったのはまたあの場所だった。北海道倶知安町。スキーリゾートが集積するニセコ観光圏の一角で、住宅地で50.0%アップ、商業地で58.8%アップと驚異的な伸び率だ。

 パウダースノーを求めるオーストラリア人のスキー客によって確立されたニセコブランド。現在は東南アジアからの観光客や投資家が地価上昇のけん引役になったが、外国人向けの別荘用地、外国人向けの商業施設の土地の価格が上がり、日本人従業員向けの住宅地なども上がるという好循環は続いている。ただ、現地で別荘仲介業を手掛ける東急リゾートのグローバル営業部長の渡辺将一氏は冷静に「一服感が見えつつある」と話す。開発が進んだ結果、条件の良い別荘用地の確保が難しくなってきたほか、地価上昇に伴い割高感も漂い始めていると語る。


白馬村は1998年の長野五輪でスキージャンプ競技の舞台にもなった(写真:アフロ)
 そうなると、「第2のニセコ」の登場に関心が移り始めても不思議ではない。

 渡辺氏が注目するのは「長野県白馬村」だ。今回の公示地価でも、これまでは横ばいだった同村の別荘地にある地点が10.5%の伸びを見せた。冬季五輪の開催場所であるネームバリューも外国人を引き寄せる魅力になりやすい。渡辺氏はまた第3候補ととして、長野県飯山市と新潟県妙高市にまたがる斑尾高原に注目する。ニセコに飽和感や天井感も漂い始めるなか、各地でのリゾート開発競争にまた拍車がかかりそうだ。

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ふじおか

今冬から富良野に滞在していますが、スキー場に、街に、ニセコから流れてきたオーストラリア人が増えていました。彼等曰く、同郷人が多すぎて日本に居る気がしない、混雑しすぎてあっという間にパウダースノーが荒らされてしまって楽しめない、滞在費が高くなりすぎた、とのこと。
すでに飽和しているのに更に新たな開発が進んでいるようですが、オーバーキャパシティを解消せずに今後もこの人気が続くのか、一時のブームで終わってしまうのか。
2019/03/20 18:44:19返信いいね!


Dxffm

白馬の方が東京からの利便性が高いのは事実ですが、北海道のパウダースノーとは全然違います。スキーをしに態々日本へ来る程のスキーヤーがその違いに気づかない訳ありません。東南アジアからの初心者は長野、豪州からの上級者は北海道に分かれるのでしょうか。
2019/03/20 20:12:53返信いいね!


Darth Vador

Jedai Master

 温暖化が進むことはあっても解消することはない、これからの地球環境。いつまで来てくれるんですかねぇ、Aussieの連中。富良野だが先日行った際の気温は温暖化をもろに感じさせる暖かさでした。今から新規にスキー場目当ての投資をしようというやつの気が知れない。
2019/03/21 00:01:51返信いいね!
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/032000180/


 

 


日銀政策会合:やはり「2%達成」は無理筋。低金利は続き、還元利回りが超魅力的
金融テーマ解説
大槻 奈那 2019/03/15
日銀、政策決定会合で現政策を維持
• 弊社の直近アンケート:消費・投資に慎重スタンス継続
• 投資戦略:長期金利はマイナス圏から浮上できず、配当利回りの優位性が過去最高に
・3月14〜15日、日銀が政策決定会合を開催、マイナス金利、長期金利の変動幅等全ての金融政策を維持した。発表は11:30過ぎと通常に比べて極めて早く、無風の会議だったことが伺われる。
・弊社の直近の調査では、個人の投資・消費意欲が引き続き低い。個人のマインドを反転させる金融施策は考えにくく、長期金利は、しばらくプラス圏に安定的に浮上するのは困難。
・東証上場銘柄の配当利回りと、国債利回りとの格差は過去最高。低成長かつ、市場の企業統治の要求の高まりで、企業は配当や自社株買いを強化せざるをないだろう。特に銀行は配当利回りの高止まりが続きそうだ。株価の変動もやや落ち着いており、ゼロ金利預金から銀行株への一部シフトを推奨。
日銀、政策決定会合で現政策を維持
3月14〜15日にかけ、日銀が金融政策決定会合を実施し、マイナス金利、長期金利の変動幅、ETF購入、低い長短金利へのコミットメント(フォワードガイダンス)等、全ての金融政策の維持を発表した(現在の政策を図表1に記載)。発表は11:30過ぎと通常に比べて極めて早く、無風の会議だったことが伺われる。


弊社の直近アンケート:消費・投資に慎重スタンス継続
マネックス証券が行っている投資家アンケートでは、引き続き消費に対して抑制的な姿勢が表れている(直近は3月1〜4日に実施。回答総数は609人)。
「1年前と比較して家計を引き締めているか?」という問いに対しては、「引き締めている」とする割合が「緩めている」という割合を大幅に上回った。前回1月調査よりは落ち着いたが、トレンドは変わっていない(図表2-1)。
また、「今は貯金を維持または増やすべきか、投資・消費をすべきか?」という問いに対しては、株価の持ち直しとともに「投資・消費すべき」という回答が増えたものの、まだ預金に傾いている(図表2-2)。


貯金するべきと考える背景について聞いたところ、前回調査同様、年金不安、消費増税、国の財政内容への不安などが上位にとなった(図表3)。それ以外にも「良い投資先がない」という理由が新たに上位に浮上しており、市場の持ち直しにもかかわらず、株価への期待が低下している印象だ。


これらの調査結果をみると、個人の慎重なマインドは金融政策では変えにくいと思われる。日銀もこうした状況を十分認識しているとみられるため、消費者へのアピールを狙った金融緩和を行う可能性は低いだろう。
投資戦略:長期金利はマイナス圏から浮上できず、配当利回りの優位性が過去最高に
現在10年国債利回りは、-0.045%と、過去2年の最低レベルで推移している。上記の通り、日銀は正常化も緩和も進めづらい状況が続く。となると、日本の金利はますます米国の金利次第となり、しばらくはプラス圏に安定的に浮上することは想定しにくい (図表4)。


世界的に景気が鈍化しつつある中、企業は株価を押し上げるため、配当や自社株買いなどの株主還元強化策を打ち出す可能性が高いとみられる。コーポレート・ガバナンス強化の流れもこれを後押ししそうだ。
特に、銀行株の配当利回りと、国債利回りとの格差は、過去最高水準となっている (図表5-1)。株価の変動幅も2013年以降は小さくなっている(図表5-2)。利益が不安定になっている銀行については、配当の先行きをやや慎重にみる必要があるものの、高配当の銀行株には総じて妙味がある。リスクは全く異なるものの、ゼロ%金利から抜けられない預金に資金を寝かせておくよりは、その一部を銀行株にシフトすることを推奨したい。

https://media.monex.co.jp/articles/-/11174


ネガティブ本能を抑制せよ
ストラテジーレポート
広木 隆 2019/03/15
猫の日(2月22日)に書いたレポート、「『悪い』は現在の状況 『良くなっている』は変化の方向」で、<総合的に考えれば中国景気は「底打ちつつある」と見るべきだろう>と述べた。ところが昨日発表された中国の景気指標を取り上げた日経の記事の見出しは、「中国減速 見えぬ底打ち」とあった。工業生産の伸びがリーマン・ショック直後以来、10年ぶりの低水準となったことに焦点を当てている。<春節による統計の振れは毎年の恒例行事だが、伸び率がここまで低いのはリーマン・ショック直後の09年1〜2月(3.8%)以来、10年ぶりのこと。製造業の購買担当者景気指数(PMI)をみても、2月は生産が好不調の節目である50を下回った。これも10年ぶりで、生産活動が極めて低調なのはまちがいない。>
僕の論点は以下の通り。
@ 春節の影響は、どうやっても季節調整できない。1-2月の統計を合算しても影響が出る。従って、この時期の指標だけ取り上げて語るとミスリードしやすい。実際に前述のレポートで掲示したように、12月の工業生産前年同月比は11月から上向いていた。日経の記事にもあったが統計局の毛盛勇報道官毛氏は「春節要因を除くと6.1%増」と述べている。だとすれば改善基調にある。
A 12日の日経新聞は「減速する中国経済」と題してOpinion面で3人の識者の見方を紹介していた。神戸大学の梶谷教授は<米中対立がソフトランディングし、財政と金融が一体化した景気刺激策をとれば物価上昇が起こり、年内に景気を回復軌道に乗せるのは難しくないだろう>と述べている。モルガンスタンレーのチーフ中国エコノミストのRobin Xing氏も<緩和的な財政・金融政策は効果をあげ始めている>と梶谷氏に同調する。そのうえでこう述べている。<企業や個人の金融環境を映す融資総量の伸びが戻ってきたほか、製造業購買担当者景気指数(PMI)の新規受注の項目も反転してきた。1〜3月期の成長率は6.1〜6.2%となり、4〜6月期から伸びが加速すると予想している。当社は発電量や自動車販売、政府支出など6項目からなる独自の指数を算出している。国内総生産(GDP)統計より振れが大きく企業収益と連動性が高いのが特徴だ。この指数も4〜6月期からの拡大を示唆している。>
B 11日、OECDは最新の景気先行指数を公表した。OECDは大半の先進国で成長モメンタムの弱さが継続しているが、フランスでは、消費者信頼感の改善、自動車の登録台数、インフレの鈍化によって成長モメンタムが安定化しており、中国でも同様のサインが見られるとして、中国の評価を、これまでの「Signs of easing growth momentum(成長モメンタムが弱まる兆し)」から「Signs of stabilising growth momentum(成長モメンタムが安定化する兆し)」に上方改定した。Aで引用した中国経済の専門家やOECDの見方は、中国経済の底打ちを示唆している。「中国減速 見えぬ底打ち」には違和感がある。
C Aで挙げたOpinion面のアンカー、木原雄志氏は、<中国の2018年の実質国内総生産(GDP)成長率は6.6%と28年ぶりの低水準だった。経済が成熟してサービス産業の割合が高まれば成長率が低下するのは自然な現象だ>と総評で述べている。これは僕も従前からずっと言ってきていることだ。工業生産が10年ぶりの低水準になったとしても、驚くようなニュースではない。木原氏の総評の結語が秀逸である。<中国のGDPは10年に日本を上回り、いまや2.5倍の規模を持つ。世界経済への影響力も格段に大きくなった。極端な楽観でも悲観でもなく、その実力を冷静に見つめるべきだろう。>
おっしゃる通りだ。「極端な楽観でも悲観でもなく、その実力を冷静に見つめるべき」なのに、どうして多くのメディアはネガティブなところばかり、取り立てるのだろうか。それはメディアだけでなく市場も同じだ。
昨日の日本株相場は、米国株高を受けて高く始まったが結局、下げてしまった。市場で言われたのは、中国の工業生産高の伸びの鈍さが意識されたなどとの解説だ。しかし、昨日発表された中国の指標では小売売上高は市場予想に一致、固定資産投資や不動産開発投資は伸びが加速した。それなのに「工業生産10年ぶり低い伸び」という、悪いところしか見ていない。
「『悪い』は現在の状況 『良くなっている』は変化の方向」は、「FACTFULNESS (ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」という本から引用した言葉である。同書には、なぜ世間には悲観的な見方ばかりがあふれているのか、ということの答えがある。なぜかというと、それは人間の本能のせいだというのである。人間には「ネガティブ本能」というものが備わっている。だから物事のポジティブなほうよりネガティブなほうに目が行きがちで、悪いように悪いようにと捉えてしまうのだ。
では、どうすればその「ネガティブ本能」にとらわれずに正しく公平な見方ができるようになるか。すぐに思いつくのは「悪いニュースを相殺するべく、良いニュースを積極的に見る」というものだが、それでは逆のバイアスがかかり、やはり物事を見間違う。著者が推奨するのは、頭の中に「悪い」と「良くなっている」というふたつの考え方を同時に持つということだ。「悪い」と「良くなっている」は両立する。「悪い」は現在の状況であり、「良くなっている」は変化の方向である。これが前述のレポートで述べたことであった。
特に今のような相場環境ではこのような考え方を持つことが重要である。聞こえてくるニュースはどれも世界景気減速を懸念させるようなものばかり。ただ、それは「悪い」という今の状況を報じているだけで、「良くなっている」ほうはニュースになりにくい。
例えば米国株。S&P500構成企業の業績に急ブレーキがかかっている。リフィニティブの調べによれば、1-3月は11四半期ぶりに減益になる見通しだ。そこだけを見れば「悪い」が、その先は「良くなっていく」。減税効果剥落や人件費、原材料費の高騰もあって利益の伸びは低いが、最悪期は脱するとも考えられる。これが「悪い」と「良くなる」は両立するということだろう。S&P500は年初来高値にV字回復だが、まさに足元の業績の悪さに目を向けるのではなくその先の回復を織り込んでいるのだろう。
S&P500と構成企業の当期純利益合計の前年同期比変化率

出所:Refinitiveデータをもとにマネックス証券作成
僕が相場と向き合ってきたのはたかだか30年余りだが、その経験を通じて言えるのは、相場の構成要素が100あったとしたら、その100すべてが悪い、というような本当の「陰の極」は稀である。悪い中にも100のうち1つか2つは良いもの、あるいは良くなっている兆しがあるのが普通である。逆に言えば、真っ暗に思える状況の中にも必ず好転の兆しが隠れており、それを探すのが投資で成功する秘訣だと言える。稀代のファンドマネージャー、ジョン・テンプルトンの名言、「本当の強気相場は悲観の中に生まれる」などはまさにそのことを言い表している。
2月22日付レポートで触れた日本企業の四半期業績のアップデートもしておく。その時点では、<第4四半期(1-3期)の業績は盛り返す予想になっている。株のリターンが業績の変化に連動しているなら、現在はすでに業績回復を織り込みにいっているステージにあると考えられる>と述べたが、その後発表された川崎汽船の赤字幅拡大とみずほFGの大幅な下方修正で、第4四半期も減益の見通しとなっている。2019年度の第1四半期(4-6月)も、前年同期が過去最高益の高い水準だったこともあり、そことの比較ではまだ減益となるだろう。世界景気の悪化も4-6月でボトムを打ちそうなサイクルで動いている。相場の完全な底入れは4-6月のどこかに来るだろう。昨年クリスマスにつけた安値を下回ることは想定しないが、二番底という感じの押しがあるのではないか。現在の戻りはまだ本格反騰とは言えない。但し、ピンポイントで大底を拾うこともできないし、狙うべきでもない。いずれにせよ、大局観では底値の局面であり、押したところをこまめに拾うスタンスでいいと思う。
日経平均と構成企業の当期純利益合計の前年同期比変化率

出所:Quickデータをもとにマネックス証券作成 3月12月決算銘柄
https://media.monex.co.jp/articles/-/11168


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/609.html

[経世済民131] パウエル議長、「当面」金利維持を示唆−FOMC、今年利上げゼロ予想 株下落、FOMC後の上昇維持できず FRB年内利上0
パウエル議長、「当面」金利維持を示唆−FOMC、今年利上げゼロ予想
Jeanna Smialek
2019年3月21日 3:12 JST 更新日時 2019年3月21日 6:51 JST
今年と来年の成長率の予測下方修正、保有資産縮小9月に停止へ
トレーダーが織り込む利下げ確率は48%前後に上昇
Jerome Powell
Jerome Powell Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米連邦公開市場委員会(FOMC)は19、20両日に開いた定例会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25−2.50%のレンジで据え置いた。今年の利上げ回数予想をゼロに引き下げ、保有資産の縮小を9月に停止する方針も明らかにした。米国債市場では10年債利回りが約1年ぶりの水準に低下し、市場が織り込む年内の利下げ確率は高まった。

声明全文はこちらの記事をご覧ください

  昨年12月時点の予測では、今年の利上げ回数は2回だった。今回のFOMC声明は1月声明の文言を踏襲し、「世界経済・金融状況と落ち着いたインフレ圧力」を指摘した上で、将来の金利変更の判断において「辛抱強くなる」と表明した。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は記者会見で、「辛抱強いとは、判断を急ぐ必要がないという意味だ」と説明。「政策変更を明確に必要とするほど雇用とインフレの見通しが変わるには、しばらく時間がかかるかもしれない」と述べた。

  議長はグローバルリスクが経済見通しを圧迫し、インフレを抑制しているため、金利を「当面」維持することが可能だとの見方を示した。「いずれの方向にも動く妥当性を示唆するようなデータは入ってきていない。われわれは辛抱強い姿勢を続け、時間とともに状況がおのずとはっきりするのを待つべきだと、データは示唆している」と述べた。

  パウエル議長は世界的に弱い物価圧力が「昨今の重大な課題の一つだ」と指摘し、低インフレに警鐘を鳴らした。さらに、「2%という対称的な物価目標を断定的に達成したとの感触は得ていない」と述べ、「そのため、われわれは辛抱強い姿勢でいられ、目標達成を確認するまで動く必要はない」と語った。

  議長は「政策を維持する理由は、政策金利が適切な水準にあると考えているためだ。経済は良好だと判断しており、国内外の情勢がどのように展開するか注視深く見守っている」と話した。

  年を通じて金利を据え置くと示唆したことは、景気減速懸念に加え、エネルギー価格の下落がインフレを抑制し、国外リスクが見通しを暗くしているとの懸念を反映している。ブルームバーグの調査では今年は1回の利上げが予想されていたが、金融当局はこれよりもハト派的な予測を示したことになる。

The Fed's New Dot Plot
  メドレー・グローバル・アドバイザーズのマネジングディレクター、ベン・イーモンズ氏は「ハト派な結果であることは間違いなく、少し意外でさえある」と述べた。

  市場の反応はハト派的な解釈を裏付けた。米株式相場は一時的に上昇に転じ、ドルは下落。米国債は上昇し、10年債利回りは約1年ぶりの水準に低下した。トレーダーが織り込む利下げ確率は48%前後に上昇した。

  FOMCは同時に発表した付属文書で、バランスシートの縮小ペースを5月に鈍化させ始めると表明。米国債の縮小額(償還元本の再投資をやめる規模)を月最大300億ドルから同150億ドルに減らし、9月末には縮小を停止することを明らかにした。その後はポートフォリオを「当面、ほぼ同じ」規模で維持する可能性が高いという。10月からは償還を迎える住宅ローン担保証券(MBS)を月最大200億ドル相当、米国債に乗り換えていく。

  今回の政策金利据え置きは賛成10、反対ゼロの全会一致での決定だった。

  声明は「経済活動の伸びは昨年10−12月(第4四半期)の着実なペースから鈍化した」とした上で、「2月の雇用者数はほぼ変わらずだったが、雇用の伸びはこの数カ月ならしてみると堅調だ」と指摘。「食品とエネルギー以外の項目のインフレ率は2%付近にとどまっている」としながらも、「全般的なインフレ率が低下した」と記述している。

  金融政策当局者は今年と来年の経済成長率の予測をそれぞれ下方修正。2019年の予想中央値は2.1%と、2018年通年の成長率を1ポイント下回っている。

金利予測
  予測を示した当局者17人のうち、11人が今年は利上げがないと予想。4人が利上げ1回、2人が利上げ2回との見通しを示した。2020年の利上げ予想は1回とし、同年末のFF金利誘導目標を2.6%とした。21年については同水準を維持すると予想した。

  昨年12月時点での予測では、20年と21年のFF金利予測がともに3.1%だった。長期的なFF金利の予想中央値については12月も今回も2.75%となった。

  当局は2012年に2%というインフレ目標を正式に導入したが、それ以降の大半の期間で物価上昇率は目標を下回っている。

  インフレ見通しは前回の予測から下方修正された。2020年と21年の個人消費支出(PCE)価格指数は全体、コア指数ともに2.0%と予想。12月時点では目標を上回るケースもあると予想されていた。

  今年第4四半期の失業率は平均で3.7%と予想。前回の3.5%から引き上げた。長期の予測は4.3%に下方修正された。

原題:Fed Sees No 2019 Hike, Plans September End to Asset Drawdown (3)(抜粋)
Powell Signals Prolonged Fed Pause as Inflation Lags, Risks Loom


 

【米国株・国債・商品】
株が下落、FOMC後の上昇維持できず
Vildana Hajric、Sarah Ponczek
2019年3月21日 6:37 JST
米国債は大幅高、10年債利回りが2.52%に低下
FOMC、今年の利上げ回数予想をゼロに下げ−成長は減速したと認
20日の米株式相場は、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均が下落。米連邦公開市場委員会(FOMC)は経済成長が減速したとの認識を表明、今年の利上げ回数予想をゼロに引き下げた。これに反応し前日比プラスとなる場面があったが、上昇の勢いは続かなかった。米国債は大幅反発。10年債利回りはここ1年余りで最低となった。

米国株はS&P500とダウ平均が下落、金融とヘルスケアが軟調
米国債は大幅反発、10年債利回り2.52%に低下
NY原油は年初来高値、米原油在庫が7月以来の大幅減
NY金スポットが上げに転じる、FOMC後−先物は下落
  FOMCのハト派的な声明を手掛かりに、ハイテクやエネルギー銘柄を中心に米国株が大きく持ち直す場面があった。だが、金融とヘルスケアが軟調となる中、S&P500は結局マイナス圏で取引を終えた。

  S&P500種は前日比0.3%安の2824.23。ダウ平均は141.71ドル(0.6%)下げて25745.67ドル。ナスダック総合指数は0.1%上昇。ニューヨーク時間午後4時40分現在、米10年債利回りは9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.52%。

Fed-fueled S&P 500 rally fizzles out
  貿易に関するトランプ米大統領の発言が材料視された可能性もある。トランプ氏はこの日、中国が通商合意を順守していると確信するまで対中関税を維持すると語った。この発言は特に工業株に悪影響となったもよう。

  米国債は軒並み大幅高。年内に利上げを予想しないとのFOMC見解に反応した。昨年12月時点の予測では、今年の利上げ回数は2回だった。5年債と30年債の利回り差は拡大、イールドカーブがスティープ化した。

  ニューヨーク原油先物相場は反発し、年初来高値を更新。米エネルギー情報局(EIA)の統計で原油在庫が昨年7月以来の大幅減となり、供給が一層引き締まっていることを示した。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は80セント(1.4%)高の1バレル=59.83ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は89セント高の68.50ドル。

  ニューヨーク金市場では、スポット相場が上昇。FOMCが今年の利上げ回数予想をゼロに引き下げたことに反応し、それまでの下げを埋めた。ニューヨーク時間午後4時8分現在、スポット相場は0.5%高の1オンス=1313.33ドル。FOMC声明発表前に取引が終了したニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は0.4%安の1301.70ドルで終了。

原題:U.S. Stocks End Day Lower Despite Dovish Fed Turn: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Soar as FOMC Spurs Dovish Repricing of Policy Outlook
Oil Hits 2019 High on Biggest U.S. Crude Storage Drop Since July
Spot Gold Erases Losses After Fed Said It Sees No 2019 Hikes


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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-20/POONY16VDKHS01


 


ビジネス2019年3月21日 / 03:26 / 2時間前更新
FRB年内利上げ想定せず、資産縮小9月終了へ ハト派姿勢に転換
Reuters Staff
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[ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、成長ペースが鈍化する中、2019年の想定利上げ回数をゼロとし、よりハト派的な政策スタンスへの転換を鮮明にした。

バランスシート縮小については9月に終了すると表明。5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ぺースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減する。

FOMCでは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを全会一致で決定。FRBが金融政策に「忍耐強く」対応するとの方針も再表明した。

パウエルFRB議長は記者会見で「雇用とインフレ見通しを踏まえ、政策変更が必要になるのは当面先になる可能性がある」とし、「忍耐強く」とは「FRBが判断を急ぐ必要のないことを意味する」と語った。

FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では年内の利上げ回数はゼロ、20年は1回の利上げが実施されるとの見通しが示された。

この見通しを受け、米短期金利先物市場では、FRBが来年50%強の確率で利下げを実施する見方が織り込まれた。

こうした中、パウエル議長は、米経済が「良好な状況」にあり、見通しは「明るい」と強調。同時に、英国の欧州連合(EU)離脱や米中貿易問題などに絡むリスクが存在するとし、FRBは米経済見通しを注視していると述べた。

議長は「経済指標は現時点で、FRBが金利をどちらの方向に動かすべきか示唆していない」との認識を示し、「忍耐強くなるには適切な時期にある」と強調した。

FOMC声明を受け、米株価は上昇、米債利回りは低下。ドルは全面安の展開となった。

FRBは17─18年に7回の利上げを実施したが、今回のFOMCの決定は、世界的な経済成長の鈍化と米経済見通しの軟化に対応し、FRBが金利とバランスシートの双方で引き締めを休止したことを示すものになった。市場ではこれまでもFRBの引き締めサイクルは終了したとの見方が出ており、今回のFOMCを受け、FRBの見解と市場の見方が一致したことになる。

トランプ大統領はこれまで、利上げが経済を脅かしていると批判しているが、FRBの見通しはこうした見方にも沿う形となった。

米主要株価指数は一時プラス圏に浮上したものの、引けにかけて値を消し、米債利回りは1月初旬以来の水準に低下。ドルは幅広い通貨に対して売られた。

ウエスタン・ユニオン・ビジネスソリューションズ(ワシントン)のシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏は 「FRBのハト派化の度合いは市場の予想を上回った」と指摘。「FRBは政策を大きく転換させた。年内の利上げはないとの見解を示したことが特にハト派的だった」と述べた。

FRBが今回示した経済見通しは、昨年12月の前回見通しと比べ失業率、経済成長率を含むすべての面で下方修正となった。具体的には、今年の経済成長率は2.1%とし、前回見通しの2.3%から引き下げた。失業率見通しは3.7%と、前回から若干引き上げられた。今年のインフレ率見通しは1.8%。前回見通しは1.9%だった。

FRBはFOMC声明で、経済活動の拡大は堅調だった昨年第4・四半期から減速したとの認識を示し、最近の経済指標では家計支出と企業の設備投資の伸びが第1・四半期に鈍化することが示されていると指摘。ただ、米経済にとって持続的な成長と健全な雇用市場は「最も可能性の高い」シナリオとの見方も示した。

今回のドット・チャートでは FOMC参加者17人のうち少なくとも9人が金利見通しを下方修正。全体としては、年末時点のFF金利誘導目標の見通しが0.5%ポイント引き下げられた。

経済と金融市場の情勢が予想通りに推移すれば、資産縮小を9月に終了するという方針は、多くのアナリストの予想よりも早い時期となった。9月終了時点で償還されたモーゲージ担保証券(MBS)は、月額200億ドルを上限に国債に再投資される。これにより、FRBは保有する資産を国債に絞るアプローチにおおむねシフトすることになる。

*内容を追加しました。


 

ビジネス2019年3月21日 / 09:26 / 8分前更新
FOMC声明全文
Reuters Staff
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[ワシントン 20日 ロイター] - 1月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場は力強いまま(remains strong)だが、経済活動の拡大は昨年の第4四半期の堅調な速度から鈍化した(has slowed from its solid rate in the fourth quarter)ことを示している。

2月の就業者数はあまり変わらなかったが(Payroll employment was little changed in February)、雇用の伸びは概してここ数カ月底堅く(solid)、失業率は低いままだった。最近の指標は、第1・四半期に家計支出と企業の設備投資の伸びが減速することを指し示している(Recent indicators point to slower growth of household spending and business fixed investment in the first quarter)。前年同月比で見ると、主にエネルギー価格の下落が原因で全体のインフレ率は低下した(overall inflation has declined, largely as a result of lower energy prices)。食品やエネルギー以外のインフレ率は2%近くにとどまっている。総じて(On balance)、将来のインフレを示す市場ベースの指標はここ数カ月で低くとどまっており(remained low)、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はあまり変わっていない。

委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。これらの目標を支援するに当たり、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを2.25─2.50%に維持することを決定した。委員会は、経済活動の持続的な拡大、力強い労働市場の状況、委員会の対称的な目標である2%に近いインフレ率という結果がもたらされる可能性が高いと引き続きみている。世界経済と金融の動向、落ち着いたインフレ圧力を考慮し、どのようなFF金利の目標誘導レンジの将来的な調整がこれらの結果になるために適切かを決める際に、委員会は忍耐強くなるだろう。

FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は最大雇用の目標と対称的な2%のインフレ目標との比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。

政策決定の投票で賛成したのは、ジェローム・パウエル委員長、ジョン・ウィリアムズ副委員長、ミシェル・ボウマン、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、リチャード・クラリダ、チャールズ・エバンス、エスター・ジョージ、ランダル・クオールズ、エリック・ローゼングレンの各委員。
https://jp.reuters.com/article/fomc-statement-idJPKCN1R201B?il=0


 
トップニュース2019年3月21日 / 06:26 / 3時間前更新
FRB年内利上げゼロ、資産縮小9月終了へ:識者はこうみる
Reuters Staff
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[20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、成長ペースが鈍化する中、2019年の想定利上げ回数をゼロとし、よりハト派的な政策スタンスへの転換を鮮明にした。

バランスシート縮小については9月に終了すると表明。5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ぺースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減する。

FOMCでは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを全会一致で決定。FRBが金融政策に「忍耐強く」対応するとの方針も再表明した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●バランスシート縮小終了時期、予想より早い

<グリーンウッド・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、ウォルター・トッド氏>

年内に利上げはないとの見方はすでに市場に織り込まれていたが、FRBのドット・チャートはこうした予想を裏付ける格好となり、注目に値すると言えるだろう。FRBはまた、バランスシート縮小の終了時期を9月末と明確にした。これは市場の予想よりも早い時期だった可能性がある。

(パウエルFRB議長の会見前時点で)市場はこれら2つに反応している。

●ハト派的な内容、事実上の利上げ終了か

<UBSアセットマネジメント(ニューヨーク)のマクロ資産配分戦略部部長、エバン・ブラウン氏>

内容は明らかにハト派に傾いている。特に予想外だったのは2019年の利上げ回数予想がゼロになったことだ。市場のコンセンサス予想は最低1回だった。20年の利上げ回数予想は1回だが、来年までかなりの時間があり、FRBは事実上利上げを終了したと考えられる。

バランスシート対応についてはおおむね予想通りだった。

●ハト派的シグナル、当局者11人のドットが年内利上げゼロ

<TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏>

極めてハト派的だ。金利見通しを示すドット・チャートでは、年内の利上げを示す当局者11人のドットがゼロとなり、大幅な下方修正となった。

市場では、引き下げはドット1つ程度と予想されていたと考える。11人のドットがゼロとなったことは事実上年内の利上げがないとのコンセンサスを示したことになり、市場に極めてハト派的なシグナルを発したことになる。

バランスシート縮小の終了時期を明示したこともハト派と受け取られたようで、それは米株・米債価格の上昇に反映されている。

●予想上回るハト派姿勢示す

<ウェスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(ワシントン)のシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏>

FRBが市場予想を上回るハト派姿勢を示したことでドルが急落した。FRBは大きな政策転換を図った形だ。FRBが2019年の利上げをゼロにした事実は非常にハト派的だ。一方で、FRBは成長支援策は取っておらず、今後数カ月の利下げ可能性は低下しているようだ。バランスシート正常化は、早ければ9月に終了するということだ。

●FRBの変心ぶりに注目

<ルートホールド・グループ(ミネソタ州)の最高投資責任者(CIO)、ダグ・ラムゼイ氏>

声明を読み返さねばならないほど欧州中央銀行(ECB)の対応と酷似しており、予想外だった。個人的には声明内容より米連邦準備理事会(FRB)のここに来ての変心ぶりに目が留まった。当社は株式市場には慎重で、債券市場にはやや強気の立場だ。景気は引き続き減速すると予想され、年内10月以降に利下げがあってもおかしくない。

●資産縮小の9月終了は想定外

<ウエルズ・ファーゴ・アセットマネジメント(ウイスコンシン州)のシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏>

予想以上にハト派的だった。資産縮小を12月末ではなく、9月末に停止するとしたことが最大の驚きだった。また、年内の利上げはないとの見通しについても、想定よりも多くの支持があった。

欧州中央銀行(ECB)がハト派化したことは、ユーロ圏経済にとりハト派的と受け止められたが、FRBのハト派化はECBのハト派化よりも強気なものとみられている。
https://jp.reuters.com/article/fomc-instantviews-idJPKCN1R12QO

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/610.html

[経世済民131] EUが揺さぶるMiFID2のデリバティブ規則変更−英離脱を機に 英首相3カ月延期要請、欧州委は反対 FOMC後パウエル
EUが揺さぶるMiFID2のデリバティブ規則変更−英離脱を機に
Viren Vaghela、Silla Brush
2019年3月21日 6:31 JST
欧州連合(EU)離脱後、英国は証券取引所で取引されるデリバティブ(金融派生商品)でEUとの間にどれほどの問題を抱えることになり得るのか。シティー・オブ・ロンドン(ロンドンの金融街)があらためて、そのことに気付かされている。同デリバティブ市場の取引規模は一日当たり1兆5000億ドル(約166兆円)。  

  ドイツ取引所やユーロネクストなどの取引所のロビイストはEU当局者に対し、EUの取引ルールの主要部分である「オープンアクセス」を無効にするよう要求している。オープンアクセスはデリバティブ取引を一つの取引所で行い、別の取引所でその清算をすることを認めるもので、英国から広範な支持がある。 

  欧州議会で第2次金融商品市場指令(MiFID2)に関する議論をリードするマルクス・ファーバー議員は、「英離脱後の新たな環境で『オープンアクセス』条項が当初の意図通り実際に機能するか」、欧州委員会は「非常に慎重にチェックすべきだ」と指摘。「英国の離脱を踏まえて取引と清算を巡る状況が大きく変わることから、こうした条項を見直すのはごく理にかなったことだ」と述べた。

  オープンアクセス条項が無効となった場合、トレーダーは取引と清算を1カ所で行わなければならなくなる。この条項を支持していたロンドン証券取引所グループのような機関は、複数の取引所を活用できない事態となれば、リスクが1カ所に集中する上に競争力が阻害されると懸念を示している。

  EUの一部の国は、自国の取引所を守る口実として英国の離脱を利用している面もある。

Derivatives Battle
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iOWwfde37Zyg/v2/513x-1.png
英国とドイツは、取引所で取引されるデリバティブで世界有数の市場
原題:Europeans Try to Kill MiFID Rule in Brexit Derivatives Fight (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-20/POOJY36JTSE801?srnd=cojp-v2


 

ワールド2019年3月21日 / 00:46 / 6時間前更新
英首相、EU離脱期日の3カ月延期要請 仏・欧州委は反対
Reuters Staff
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[ロンドン/ブリュッセル 20日 ロイター] - 英国のメイ首相は20日、欧州連合(EU)離脱期日を6月30日まで3カ月延期するようEU側に要請した。英議会で2回否決された離脱協定案の承認に向け時間を稼ぎたい考えだが、フランスやEUの執行機関である欧州委員会は要請に反対する考えを示した。

メイ首相は議会で「首相として、EU離脱を6月30日以降に先送りする用意はできていない」とし、「このため、EU基本条約(リスボン条約)50条に基づく交渉期限を6月30日まで延長するよう、トゥスクEU大統領宛に今朝、書簡を送付した」と述べた。

その上で「政府は(離脱協定案の)意義ある3回目の議会採決を行いたいと考えている。可決されれば、交渉期限の延長で下院は離脱協定案を討議する時間が得られる。否決されれば、下院は今後どのように進めるのか決める必要がある」と述べた。

EU当局者は、トゥスク大統領が離脱期日の延長を正式に要請するメイ首相の書簡を受け取ったことを明らかにした。

一部のEU加盟国はメイ首相による離脱期限の延期要請を歓迎。ドイツ高官は、5月下旬の欧州議会選まで離脱を延期させることは法的に問題にならないとの見解を示した。

これに対し、欧州委員会のユンケル委員長は、離脱が5月24─26日に実施される欧州議会選挙以降に延期されることについて警告し、離脱が5月23日以降になる場合、英国も欧州議会選に参加する必要があるとの考えを示した。

またフランスのルドリアン外相は、離脱協定案が英議会で承認されるという確約をメイ首相が提示できなければ、延期要請は認められないと指摘した。

ロイターが入手したEU文書は、離脱期日の延期は欧州議会選挙より前の短期間か、少なくとも今年末までの長期間のどちらかと指摘。「英国に提示する延長は、2019年5月23日までか、英国が欧州議会選挙に参加する必要がある、より長期間となる。これがEUの機能と意思決定能力を保持する唯一の方法だ」としている。

一方、トゥスク大統領は、来週の英議会で協定案が承認されるという条件で、短期間の離脱延期については認める考えを示した。
https://jp.reuters.com/article/brexit-may-extention-idJPKCN1R11Z9

 


ビジネス2019年3月21日 / 06:36 / 3時間前更新
情報BOX:米FOMC後のパウエル議長発言要旨
Reuters Staff
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[20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを全会一致で決定した。

また、FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では2021年までを通して1回の利上げが実施されるとの見通しが示され、FRBが米景気減速を警告する中、年内の利上げはない公算が大きいことが示された。

このほか、バランスシート縮小については5月からペースを減速することも表明。具体的には、保有国債の毎月の縮小ぺースを最大300億ドルから最大150億ドルに半減させる。

パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で発言した主な内容は通り。

*FRBの重要目標は景気拡大維持

*労働市場は堅調

*FRBは米経済が年内底堅く成長すると依然予想

*FRBは米国内外の一部動向に注目する必要

*FRBは忍耐強く対応する見通し

*昨年9月以降の指標から成長は予想よりも鈍化のもよう

*成長は特に中国や欧州で鈍化

*年初以降の限られた指標内容は強弱まちまち

*雇用の伸びは月平均で減速しているもよう

*他の多くの労働関連指標は底堅さ示す

*脆弱な小売売上高は消費支出の減速を示唆

*英EU離脱や通商交渉がリスク要因

*きょうのFOMCでは各種指標の解釈に関する議論にほぼ終始

*「忍耐強く」とはFRBが判断を急ぐ必要がないことを意味

*政策見通しの変更は当面先となる可能性

*9月時点の準備預金残高が効果的な政策運営に必要な水準を引き続き上回る可能性

*必要に応じ、バランスシート戦略をさらに調整する

*基調的な経済ファンダメンタルズは堅調

*金融状況は数カ月前よりも緩和的

*中国の成長安定化が基本シナリオで、欧州で景気後退は見られず

*中国の経済情勢は関税が一因の可能性あるが、主因ではない

*米経済を巡り関税を懸念する声あるが、どの程度の影響が及んでいるかは判断しがたい

*最近の経済指標は、FRBが金利をどちらの方向に動かすべきか示唆していない

*ホワイトハウスの経済予測にはコメントしない

*昨年打ち出された税制改革や支出政策はサプライサイドの効果をもたらした可能性あるが、判断しがたい

*忍耐強くなるには良い時期

*低調な米小売売上高統計を軽視していない

*米家計のファンダメンタルズは明るいもよう

*総じて金融安定に対する脆弱性は高くない

*連邦政府債務の持続可能性を巡り、公的な議論の再開が必要

*2019年末時点で、バランスシートが国内総生産(GDP)の17%程度と、ピーク時の25%から低下する見通し

*2%のインフレ目標は均衡の取れた手法では十分に達成されていない

*インフレ目標の未達成が、忍耐強く対応する理由の一つ

*インフレ目標を達成するとの信認維持に向けて、より独創的な思考が必要

*FRBは利回り曲線のフラット化を目指していない

*バランスシートの構成に関しては早期に決定

*FRBはバランスシート内の証券の平均年限(残存期間)長期化をまったく検討していない

*バランスシートが9月以降どの程度の期間、安定状態を保つかは不明

*ウェルズ・ファーゴについては、消費者に対するかなりの不正行為があり、改善の余地が大いにある

*Wファーゴの是正措置に満足できるまで、業務制限令を解除しない。解除の時期には至っていない
https://jp.reuters.com/article/fed-powell-comment-idJPKCN1R12RK?il=0
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/611.html

[国際25] 同盟を壊す「トランプ要塞」、駐留費負担増の現実味 S&P500とダウ下落、ハト派的FOMC受け金融株に売り ドル下落
コラム2019年3月21日 / 08:06 / 2時間前更新

同盟を壊す「トランプ要塞」、駐留費負担増の現実味
Peter Apps
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[15日 ロイター] - トランプ米大統領はシリアやアフガニスタン、韓国や欧州大陸の大半で米国の軍事的な関与を後退させているかもしれないが、その流れとは逆を行く場所がある。

米国防総省は、「フォートトランプ(トランプ要塞)」と呼ばれる大規模な基地をポーランドに新たに建設し、機甲師団を駐留させることを検討している。

その理由は簡単だ。ロシアを抑止し、米国の支持を得たいポーランド右派政権は、米軍駐留経費として20億ドル(約2230億円)、あるいはそれ以上の負担を申し出ている。これは多くの米同盟国、とりわけ欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟国に警鐘を鳴らし、トランプ氏がさらに広範な適用を狙う先例のように見える。

トランプ氏は、日本やドイツなど米軍を大規模に駐留させている国々に対し、駐留経費の全額負担だけでなく、さらに5割増しで支払うことを望んでいるとブルームバーグは伝えた。この提案は政府内の多くの外交政策関係者ばかりか、外部からも激しい怒りを買っている。

同時に、2020年米大統領選が迫る中、米国の同盟国は自国防衛のためにもっとカネを出さなければ、米国は撤退するというレトリックをトランプ氏が強めていることを如実に示すサインでもある。

もう1つの明確なサインとして、提出された国防総省予算において、主張を強めるロシアと中国に対する軍事費は増加した一方、欧州における米軍活動費は1割減らされている。米軍の訓練活動などを支える欧州抑止イニシアチブ(EDI)の予算は現在65億ドルで、2014年のロシアによるクリミア併合以降、増加し続けていた。

国防総省によると、今後も米軍は東欧にローテーションで駐留し続けるが、ポーランドのように受け入れ国が費用を負担すると約束しない限り、新たな拠点の建設や訓練は削減するという。

これは1945年以降、米国の歴代政権が取ってきた方針からの大きな転換であり、孤立主義を一段と強めるものだ。歴代政権の大半は、海外駐留米軍について、願わくば長期的な平和をもたらし、米国が望み通りに影響力を及ぼすことを可能にするための投資だと捉えてきた。極端な話、現在の米国との同盟関係はカネ次第と受け止められかねない。

トランプ氏が大統領の今について言えば、これは米国の政策立案ですでに広範に見られる流れなのかもしれない。2020年大統領選の民主党候補、とりわけ左派のエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースの両上院議員は、トランプ氏と同じぐらい孤立主義的だ。米国の外交政策の主流は今もNATOや他の同盟関係に深く関与し続けているが、未来の大統領を含む型破りな政策立案者に対するその影響力は、かつてほど大きくないかもしれない。

NATOなど同盟諸国の国防予算に対しても、不満は高まっている。14日公表されたデータによると、2018年のNATO国防費は29カ国の大半で増加しており、中でもバルト三国をはじめとしたロシアに近い東欧、北欧諸国においては急増している。一方、ドイツは減少を続けている。

国内総生産(GDP)比2%の国防費を拠出するというNATOの目標を達成したのは米国を除くと6カ国だけだった。トランプ氏は昨年、2倍の4%にすべきと主張している。

ポーランドのドゥダ大統領が冗談で名づけたとされる「フォートトランプ」が現実のものとなるかはまだ分からない。欧州の一部の専門家は懐疑的な見方をしており、ポーランドは欧州の友好国と取引にとらわれない関係を結んで運命を共にすべきと指摘する。「フォートトランプ」の提案について、ポーランド当局は米当局と協議する予定だが、他の米同盟諸国はその結果を注視するだろう。

トランプ氏は、強硬な態度に出て、米同盟諸国に支払いを要求すれば、自身の保守的な有権者に効果的に訴えることができると期待しているに違いない。だが、それがより大局的な戦略として理にかなっているかどうかはまた別の問題だ。

世界各地に点在する駐留米軍、特にドイツのラムシュタイン空軍基地のような主要施設は、米軍が世界で活動する上で中核をなす。費用を負担するよう同盟国に迫ることは、慎重な交渉の上に成り立ってきた数々の取り決めを台無しにする恐れがある。その中には中東やアフリカにおける米国の対テロ対策で中心的な役割を担っているものもある。

米国の同盟国の多くはすでにかなりの負担を強いられている。アジア太平洋ほほ全域における米軍の活動拠点である日本は、米軍の年間駐留費55億ドルの75%を負担しているとの試算もある。トランプ氏の希望通り、さらに50%増となれば、負担額はこの2倍以上になる。米軍駐留という議論を呼ぶ性質の問題であることを考えれば、増額が実現するかどうかは全く分からない。

それでも、トランプ氏はより広範なメッセージを送っているようにみえる。過去の米政権は友好国やパートナーとの防衛協定に積極的に深く関与することを選んできたが、そうした国々は今後、自身でその仕事を行うというものだ。それはある意味、自己達成的な予言の様相を強めている。2016年の大統領選でトランプ氏が勝利して以降、マクロン仏大統領やメルケル独首相といった欧州のリーダーは、防衛協力をより深めるようになった。

それは恐らく正しい選択だろう。米国防長官だったマティス氏は昨年12月に辞任するまで、同盟諸国に対する米国の関与を再確認するため、世界中を精力的に飛び回ってきた。

しかし、そうした日々は過ぎ去ってしまったようだ。ロシアも中国も、依然としてそれぞれの周辺地域で動きを活発化させ続けている。米国が反応してくる懸念が薄れるにつれ、一段と強硬姿勢を強め、潜在的な危険が高まりやすくなる。

実際に基地が建設されるかどうかは別として、トランプ政権が孤立主義的ムードの音楽を流す中、 「フォートトランプ」は同盟国による米国との関係見直しという遺産を残すかもしれない。それこそまさにトランプ大統領とその支持者が望むことだろう。

だからといって、世界がより安全な場所になるとは限らない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/column-fort-trump-idJPKCN1R10YM


ビジネス2019年3月21日 / 06:31 / 3時間前更新
S&P500とダウ下落、ハト派的FOMC受け金融株に売り
Reuters Staff
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[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米国株式市場はS&P500とダウが下落した。米連邦準備理事会(FRB)がハト派スタンスを示したことを受け、金利に敏感な金融株が下落し、指数の重しとなった。

取引序盤から下落していた主要3株価指数は米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明を受け、一時上げに転じたが、プラス圏を維持したのはナスダックだけだった。

ナショナル・セキュリティーズ(ニューヨーク)のチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、「FOMCの声明に対する初動はいつも間違っている」と述べた。

今回のFOMCでは、年内の追加利上げを行わないことを示したほか、バランスシート縮小の終了に関する見通しも示した。

FOMC後にプラス圏に浮上した指数を抑えたのが銀行株。S&P金融.SPSYは引け前の1時間で大幅に売られ、2.1%安となった。

キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズ(ニューヨーク)のトレーディング部門責任者、R.J.グラント氏は、イールドカーブのフラット化を受け、「特に銀行株への売りが急増した」と述べた。

S&P500の主要11セクターのうち、6セクターが値下がりした。

個別銘柄では、米宅配大手フェデックス(FDX.N)が3.5%安。世界の貿易の伸び鈍化を理由に2019年度の1株利益見通しを下方修正した。フェデックスはダウジョーズ運輸株平均.DJTを押し下げ、同指数は1.3%安となった。同業のUPS(UPS.N)も2.2%安。

一方、米食品大手ゼネラル・ミルズ(GIS.N)は2.2%高。第3・四半期利益が予想を上回ったほか、通期利益見通しを上方修正した。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を1.16対1の比率で上回った。ナスダックでも1.64対1で値下がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は約77億6000万株。直近20営業日の平均は75億3000万株。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 25745.67 -141.71 -0.55 25867.7 25929.5 25670. .DJI

9 2 63

前営業日終値 25887.38

ナスダック総合 7728.97 +5.02 +0.07 7721.95 7779.24 7674.0 .IXIC

4

前営業日終値 7723.95

S&P総合500種 2824.23 -8.34 -0.29 2831.34 2843.54 2812.4 .SPX

3

前営業日終値 2832.57

ダウ輸送株20種 10143.26 -134.06 -1.30 .DJT

ダウ公共株15種 770.92 +2.72 +0.35 .DJU

フィラデルフィア半導体 1393.01 -14.34 -1.02 .SOX

VIX指数 13.91 +0.35 +2.58 .VIX

S&P一般消費財 891.57 +3.31 +0.37 .SPLRCD

S&P素材 347.21 -0.17 -0.05 .SPLRCM

S&P工業 623.19 -3.95 -0.63 .SPLRCI

S&P主要消費財 565.82 -2.17 -0.38 .SPLRCS

S&P金融 434.40 -9.26 -2.09 .SPSY

S&P不動産 219.30 +0.93 +0.42 .SPLRCR

S&Pエネルギー 494.51 +4.36 +0.89 .SPNY

S&Pヘルスケア 1064.97 -7.20 -0.67 .SPXHC

S&P通信サービス 159.08 +1.83 +1.16 .SPLRCL

S&P情報技術 1285.90 -3.55 -0.27 .SPLRCT

S&P公益事業 291.56 +0.83 +0.28 .SPLRCU

NYSE出来高 9.96億株 .AD.N

シカゴ日経先物6月限 ドル建て 21290 - 140 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物6月限 円建て 21270 - 160 大阪比 <0#NIY:>


ビジネス2019年3月21日 / 06:26 / 3時間前更新
ドル下落、米FOMCのハト派姿勢受け=NY市場
Reuters Staff
2 分で読む

[ニューヨーク 20日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、この日まで開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利が据え置かれたほか、年内の利上げを見送る見通しが示されたことを受け、ドルが主要通貨に対し大幅に下落した。

またFOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では2021年にかけて1回の利上げが実施されるとの見通しなどが示された。

主要6通貨に対するドル指数.DXYは0.6%安の95.806と、2月4日以来の安値。一時は200日移動平均線を下回った。

対円JPY=でも0.6%下落し、1日としては2カ月ぶりの下落率となる勢い。

マニュライフ・アセット・マネジメントのシニア投資アナリスト、チャック・トームズ氏は、利上げが年内ゼロ、来年1回という見通しを受け「FRBは総じてハト派的な見解で一致できたようだ」とし、「市場はハト派的内容を予想していたが、想定を超えるハト派だった」と述べた。

FOMCではこのほか、バランスシート縮小について5月からペースを減速することも表明。具体的には、保有国債の毎月の縮小ぺースを最大300億ドルから最大150億ドルに半減させる。

TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「バランスシート縮小の終了時期を明示したことも、かなりハト派的だった」と語った。

FOMCを受けて、金利先物市場で2020年初めの利下げ予想が強まった。CMEグループのフェドウォッチによると、市場が織り込む来年最初の会合での利下げ予想確率は48%と、前日の32%から上昇した。

ドルは対ポンドGBP=では上昇。メイ英首相がこの日、欧州連合(EU)離脱期日を6月30日まで3カ月延期するようEU側に要請したが、投資家は引き続き見通しを懸念している。

ドル/円 NY終値 110.68/110.71

始値 111.50

高値 111.54

安値 110.54

ユーロ/ドル NY終値 1.1411/1.1416

始値 1.1350

高値 1.1448

安値 1.1347
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN1R12R9
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/761.html

[経世済民131] 英国人が見た平成日本、偉業を誇らない不思議 
コラム2019年3月20日 / 18:55 / 13時間前更新

英国人が見た平成日本、偉業を誇らない不思議

コリン・ジョイス  ジャーナリスト
4 分で読む

[東京 21日] - 日本を定期的に訪れている筆者は数年前、都内に「上野東京ライン」という新しいJRの路線ができたことに気がついた。上野駅と東京駅はすでに結ばれていなかったか。そう思い、やや困惑した。

なるほど、それは都心を走り抜け、5つの都県を一度も乗り換えることなく縦断できる路線であることが分かった。複数の路線を結ぶ難しい事業を見事に成し遂げたことで、乗客の利便性は高まり、世界最先端の日本の公共交通はさらに良くなった。

南北270キロメートルにも及ぶ鉄道路線の名称に、徒歩で行き来できる都心の2つの駅名を使うのは、かなり控え目なことに思えた。しかし、それこそ日本人が自分たちの大きな業績を正しく評価しない、「平成」という時代の典型だった。

<平成で成長した日本サッカー>

同世代の日本人と違い、筆者は平成以外の日本を知らない。1992年に英国から来た私には、バブルの記憶も、昭和への郷愁もない。平成時代に対して日本人の多くが抱く「停滞」さらに言えば「後退の時代」という見方を理解しつつも、自分でそう感じることはなかった。私は、自分が出会ったこの国に深く感銘を受け、特筆すべき改善する力や、遅れを巻き返す能力に目を見張っていた。

後者の例として挙げられるのはサッカーだ。私が学生として神戸に初来日した当時、日本はサッカーの「へき地」だった。しかし、1993年のJリーグ発足は日本を強豪国へと押し上げた。日本代表は実力をつけ、国内リーグの人気は高い。スタジアムは素晴らしく、サポーター層も磐石。欧州に渡ってトップリーグでプレーできるようになった選手もいる。

関西を代表するクラブチームといえば「ガンバ大阪」。1993年当時、そう思っていたことを覚えている。大阪にもう1つ、さらに神戸、京都にもクラブができる余地があるなど想像もしなかった。これはすべて一世代の間に起きたことだ。おっと、2002年に日韓が共催したワールドカップ(W杯)の成功に言及し忘れるところだった。

<複雑な直通運転の謎>

日本について語り出すと、申し訳ないが鉄道の話が止まらなくなる。運賃が高く、時刻表は当てにならず、腹立たしいほど遅れがちで、運休することもある(そして休暇シーズンには代行バスに切り替わる)英国に比べ、日本の鉄道の旅がどんなに素晴らしいか、皆に伝えたくて仕方がない。

ジャーナリストのコリン・ジョイス氏(写真は筆者提供)
来日当時、この国の鉄道システムはすでに十分素晴らしかった。北は盛岡、南は博多までしか新幹線が延びていないのは当然のことと受け入れていた。日本の大部分がカバーされていると感じたし、そこから先に行きたければ、特急列車に乗り換えるか、最初から飛行機を利用すればいいと考えていた。

都内を電車で移動するにも、JR山手線を乗り降りして私鉄のターミナル駅間を行き来するのをわずらわしいと思ったことはなかった(何しろ山手線は3分おきにやってくる恐るべき電車だ)。

しかし、そこに「上野東京ライン」が登場した。他にも直通運転の路線が増えた。電車に乗ったら途中で別の会社が運行する路線に変わり、その先はおそらくまた別の会社が運行している。技術的な問題をどう解決したのかは言うまでもなく、運賃をどう分け合っているのか、どの会社が運転手に給料を払っているのか、私にはまったく見当もつかない。

<1つではなかった本州と四国を結ぶ橋>

1988年に開通した瀬戸大橋も偉業だと感じた。行きは電車、帰りは大型トラックをヒッチハイクして橋を往復した。そして英国に住む家族に、5つの島にまたがるこの驚くべき「2階建て橋」について手紙を書いた。

日本は本州と四国を結ぶ橋を完成させた──。当時はそれで終わりだと思い込んでいた。もう1つの連絡橋プロジェクトが進行していた事実に気づかなかったのは、そのせいだろう(後に3つ目の橋建設も始まる)。恥ずかしいことに、神戸から四国まで、岡山を通らずバスで行けたことに驚いたのはそれから10年後のことだ。

同じく東京湾アクアライン連絡道の建設も、2003年ごろ飛行機から見るまで気づかなかった。橋梁部がトンネルに変わって海中にもぐる部分が、なぜ水であふれないのかはいまだに謎だ。

<「平成日本」は総じて安定>

平成の30年間に日本が直面した深刻な問題を、軽んじるつもりはない。自然災害、政財界のスキャンダル、増大する政府債務、終身雇用の崩壊と非正規労働者の増加、高まる自殺率、少子高齢化など枚挙にいとまがない。いずれもこの国が解決しなくてならない重大な問題であり、日本で記者をしていた頃は、深く憂慮しながら取材をした。

しかし、平成日本に暮らした1人として、この国の社会は総じて安定しており、回復力と対応力を備えているとも感じていた。経済危機が、ロンドンで起きた暴動のような社会の不安定化につながらなかったことをうれしく思っていた(私が物心ついてから、大きな暴動だけでも4回起きている)。

最後にもう1つ、日本で不思議だったのは外国人観光客が少ないことだった。英国は、1990年代初めまでに年間2000万人の観光客を受け入れていた。卓越した観光資源と交通インフラを備えた魅力的な国であるにもかかわらず、日本の実績は明らかに実力を下回っていた。

今はそれがどうなったか。私がここで話すまでもないだろう。

*本コラムは、ロイター特集「平成を振り返る」に掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

コリン・ジョイス(Colin Joyce)氏は、英エセックスを拠点に活動するジャーナリスト。オックスフォード大学卒業後、日本語を学ぶため1992年に来日。埼玉県の高校で英語を教えた後、週刊誌ニューズウィーク日本版に4年間、英紙デイリー・テレグラフ東京支局に7年間勤務した。15年に及ぶ日本での生活をもとにした「『ニッポン社会』入門──英国人記者の抱腹レポート」(NHK生活人新書)、「マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの<すきま>」(同)などの著書がある。

(編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/opinion-colin-joyce-idJPKCN1R10VI
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/612.html

[経世済民131] 欧州委、英離脱の6月30日までの延期に反対 米グーグルに1900億円の制裁金−広告仲介事業で競争法に違反 ネッゲーム参入

ワールド2019年3月21日 / 00:51 / 9時間前更新
欧州委、英離脱の6月30日までの延期に反対

Reuters Staff
1 分で読む

[ブリュッセル 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、メイ英首相が要請した、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を6月30日に延期することに反対している。ロイターが入手したEUの文書で明らかになった。

メイ英首相は20日、離脱交渉を6月30日まで延長することを要請する書簡をトゥスクEU大統領に送ったと明らかにした。

欧州委員会が20日の定例会議で検討するブレグジットに関する文書は、21日のEU首脳会議は、3月29日の離脱期日を欧州議会選挙の5月23日より前の短期間の延期か、それとも少なくとも今年末までの長期間の延期かの二者択一になると指摘。

「英国に提示する延長は、2019年5月23日までか、英国が欧州議会選挙に参加する必要がある、より長期間となる。これがEUの機能と意思決定能力を保持する唯一の方法だ」としている。

英離脱に伴い議席が増える予定の国は、離脱延期でそれが実現しない場合は、4月半ばから下旬までに通知を受ける必要があるとした。

また、離脱を延期した場合、英国はEUの長期予算や5月の議会選挙後の主要ポストの人事などの主要問題について「忠実な協力精神をもって」、「建設的な棄権」にコミットすべきとした。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-commission-idJPKCN1R120H

EU、米グーグルに1900億円の制裁金−広告仲介事業で競争法に違反
Aoife White
2019年3月20日 23:34 JST
欧州委がグーグルに科した制裁金、これで総額82億ユーロに
ベステアー委員、グーグルの是正努力認める−追加制裁ないと示唆
米アルファベット傘下のグーグルが競合他社の広告を不当に排除したとして、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は予想を上回る14億9000万ユーロ(約1900億円)の制裁金を科した。競争政策を担当するベステアー欧州委員がグーグルに制裁金を科すのはこれで3度目。ただ、過去2回の違反に対する是正で「不履行の問題」は見られないとして、制裁はこれが最後となる可能性を示唆した。

  欧州委員会が競争法違反でグーグルに科した制裁金は、これで総額82億ユーロに達した。同社は過去の競争違反2件に関して、追加の制裁金を避けようと取り組みながら、地域・求人検索サービスに新たな調査が入らないよう努めている。

グーグルに対し制裁金を科す理由を説明するベステアー欧州委員(20日、ブリュッセル)

Source: Bloomberg)
  今回の調査の焦点は、ウェブサイト向け広告仲介業者としてのグーグルの役割。検索結果に連動して第3者の広告をウェブページに表示させる「アドセンス」事業に関連して、競合のウェブ広告を排除する独占契約を広告主と結んでいた。問題となった契約はすべて、EUがこの調査を強化した2016年までに解約された。

  アドセンスがグーグルの広告収入全体に占める割合は2010年以降、低下を続け、15年には20%足らずとなっていた。

  グーグルのグローバル事業担当シニアバイスプレジデント、ケント・ウォーカー氏は「グーグルは欧州委員会の懸念に対処するため、すでに幅広い変更を自社サービスに加えてきた」とのコメントを電子メールで配布。「欧州競合に対する可視性を高めるため、今後数カ月にさらなる改善策を打ち出す」と述べた。

Google's Nemesis
Tech giant has been the target of the biggest antitrust fines imposed by the EU


原題:Google Fined $1.7 Billion in Vestager’s Last Antitrust Case (1)(抜粋)
Google Fined $1.7 Billion in Vestager’s Last Antitrust Case (2)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-20/POO3CKSYF01S01?srnd=cojp-v2
 

 
 
テクノロジー2019年3月21日 / 00:36 / 8時間前更新
欧州委、グーグルに制裁金17億ドル ネット広告で反競争的行為
Reuters Staff
1 分で読む

[ブリュッセル 20日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は20日、米アルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグルがインターネット広告事業で反競争的行為があったとして、14億9000万ユーロ(17億ドル)の制裁金を科したと発表した。

欧州委がグーグルに制裁金支払いを命じるのは、過去2年の間で3回目。今回の制裁金は2018年の売上高の1.29%に相当する。

ベステア委員(競争政策担当) は「グーグルはネット検索広告において支配的地位を確立し、契約によりサードパーティのウェブサイトに反競争的規制を課し、競争を阻害した」と指摘した。

問題となったのは、新聞や旅行サイトなどの検索機能を持ち、検索広告が表示されるウェブサイト。グーグルは、コンテンツ連動型広告「アドセンス」で広告を提供している。

欧州委によると、グーグルは、競合他社の検索広告を検索結果のページに掲載するのを阻止し、競合他社の検索広告が表示されるようにする場合、グーグルの承認が必要とした。

欧州委は、2017年に買い物比較サイトを巡り他社を妨害したとして24億2000万ユーロの制裁金を科し、昨年はスマートフォンのOS「アンドロイド」を巡り過去最大の43億4000万ユーロの制裁金を科した。

グーグルはこれらの2件の問題に対応していると説明。グローバル・アフェアーズ担当シニアバイスプレジデント、ケント・ウォーカー氏は発表文で「欧州委の懸念に対応するため、すでに当社製品に広範囲の変更を実施した」とし、「今後数カ月以内に、欧州の競合他社により認知されるよう一段と改善を行う」と述べた。

ベステア委員は、こうした対応について「前向きな動きがみられる」と歓迎した。

一方、グーグルの競争相手が加盟する業界ロビー団体ICOMPのマイケル・ウェバー会長は発表文で「競合企業はこれまで弱体化し、消滅してきた。EUおよび世界各国の政府が介入し、根底にある不正行為に取り組む時が来た」と述べた。

*内容を追加しました。

 
グーグルのゲーム参入 動画を見終えた人が自分もプレー
 
尾形聡彦=サンフランシスコ 中村光、内藤尚志 2019年3月21日00時26分

 
新たなゲームサービスについて発表するグーグルのフィル・ハリソン副社長=2019年3月19日、サンフランシスコ、ロイター

 米グーグルが19日、ゲーム事業への参入を発表した。市場を引っ張ってきたソニーや任天堂など日本勢の戦略にも影響を与えそうだ。

 グーグルがゲームの見本市「ゲーム開発者会議」で発表した。新サービスの名はStadia(スタディア)。サーバーから必要に応じてデータを受信する(ストリーミング)方式を取るため、ソフト自体を自分の端末にダウンロードしないで済む。高い演算処理能力を持つゲーム機やパソコンがなくてもスマホなどで簡単に楽しめるのが特徴だ。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「誰もがアクセスでき、すぐに楽しめるものにしたい」と語った。

 発表会では、閲覧ソフト「クローム」を使ってパソコンやタブレットなどで高精細のゲームをすぐに遊べるデモを実演した。サービスは今年中に米国、カナダ、欧州で開始する予定で、専用のコントローラーも発売する。日本などへの展開は「対応でき次第」(広報)という。

 グーグルはゲーム事業では後発だが、クロームや基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載する端末が世界に普及していることが強み。傘下の動画サービス、ユーチューブとゲームの融合も狙う。他人がゲームをしている様子は人気コンテンツで、関連動画の視聴者は世界で毎日2億人という。動画を見終えた人が、ボタン一つで自分も実際にそのゲームをプレーできるようにして、サービスを広げる考えだ。

 ただ、ネット上では、ゲーム愛好家らから「ネットの接続速度が遅い地域で、どう高精細のサービスを実現するのか」といった疑問の声も出ており、どれだけ浸透するかは見通せない。(尾形聡彦=サンフランシスコ)

 ログイン前の続き一方、日本勢はゲーム専用機に強みを持っていた。

 任天堂は専用機を普及させ、「マリオ」などの人気タイトルを独占的に出して稼ぐスタイルを貫いてきた。家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」で一部のゲームがストリーミングに対応しているが、大半が通常のパッケージやダウンロードでの販売だ。

 グーグルの進出に対し、任天堂はさらに特徴ある機器とソフトを打ち出していくとみられる。

 ソニーは逆に、グーグルの参入に期待を寄せる。ゲーム機「プレイステーション(PS)4」をネットでつないだスマホやパソコンでも楽しめるようにしたり、ストリーミングサービス「PSナウ」も展開したりしていて、「業界の活性化につながる」(ゲーム子会社の広報)と話す。(中村光、内藤尚志)

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経団連を標的、中国人ハッカー集団 ウイルスは2年潜伏
ライザップ赤字、AIは予言した 財務諸表のウソ発見器
SDカード、容量偽装横行か 「128GB」実は3GB
https://jp.reuters.com/article/eu-google-antitrust-idJPKCN1R11YY


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/613.html

[政治・選挙・NHK258] 「消えた留学生」問題は必然、安倍政権が生む「外国人労働者大量逃亡時代」
2019年3月21日 窪田順生 :ノンフィクションライター
「消えた留学生」問題は必然、安倍政権が生む「外国人労働者大量逃亡時代」
低賃金で働き手の足りない介護職に外国人労働者を入れようという動きが出ています。
低賃金で日本人に敬遠される職種でも、外国人労働者なら喜んで働いてくれるはず――そんなムシのいい話がまかり通るはずはない Photo:PIXTA
消えた留学生問題が大騒ぎになっている。しかし、日本政府が外国人労働者を受け入れ始めれば、さらに多くの外国人が「消える」ことになるのは間違いない。そもそも、日本人もいやがる低賃金労働を「外国人ならやってくれるはず」という思い込みは間違っている。なぜなら、彼らが日本に来る動機は間違いなく「お金」だからだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

消えた留学生問題から
予想できる将来の日本の惨状
 後からボロボロとこういう話が出てくるということは、これもまだ「氷山の一角」に過ぎないのではないか。

 ベトナム、ネパール、中国国籍などの留学生約700人が「所在不明」になっている東京福祉大学で、文科省などが調査を進めたところ、所在不明者は700人どころの騒ぎではなく、過去3年間で1400人にも上ることがわかったというのだ。

 報道によると、この「消えた留学生」たちの多くは、授業に出たのはわずか数回で、ある日忽然と姿を消し、学費未納で「除籍」扱いになった者である。

 じゃあ、そこでこういう人たちは故郷に帰るのかというと、そうではなく、多くはビザが切れても不法残留し、外食や建設現場など、日本人労働者に敬遠される「人手不足業界」で、労働力として重宝されているのだという。

 という話を聞くと、「ほらみろ、こういうことになるから、留学生とかじゃなくて外国人労働者としてしっかりとした受け入れ体制をつくらないといけないのだ!」なんて感じで胸を張る人たちがいるが、筆者の考えはまったく逆である。

 こういう問題が起きるから、外国人労働者の受け入れ拡大はやめた方がいいのだ。

 今の流れのままでいけば、数百人、数千人規模の外国人労働者が「所在不明」となる。今回の「消えた留学生」問題というのは、近い将来に日本を震撼させる「消えた外国人労働者」のプロローグに過ぎないのである。

 今回の一件から我々が学ばなくてはいけないことは、「外国人留学生にはもっと厳しい監視が必要だ」とか、「留学生を受け入れると補助金が出ることも問題だ」というような規制や制度うんぬんの話ではなく、ごくシンプルな「人間心理」である。それを一言で言ってしまうとこうなる。

「人間は時にルールを破ってでも、待遇の良い方向へ流れていく」

 留学生が学校を除籍になれば当然、不法残留になる。にもかかわらず、留学生たちは学校から消えた。学費を支払いながら留学生を続けるよりも、バイトでガッツリ稼いだ方がよほど稼げるからだ。待遇の良さが、リスクを上回ったのだ。

外国人労働者は制度を
守って働いてくれるのか?
 このような「人の心」という視点が昨年、選挙のために政府がゴリ押しした「外国人労働者の受け入れ拡大」ではゴッソリ抜けている。

 安倍政権によると、「外国人労働者」は「移民」ではなく、「特定技能」という在留資格で、14業種の特定産業分野で働くことを条件として在留が許可される人だ。つまり、介護職で日本に来た人は介護職を辞めたら日本から出てってね、というわけだ。

 だが、この制度を適応する相手は「奴隷」ではなく、職業選択の自由を持つ人間である。当然、「消えた留学生」らと同じような心理が働く。

 例えば、介護職の「特定技能」で日本にやってきた中国人の女性がいたとしよう。しかし、ご存じのように、日本の介護現場はハードな割に賃金も低い。今や中国の介護現場の方が待遇がいいという話もあるくらいだ。

 ということで、程なくしてこの女性、勤務先どころか、日本で介護の仕事をすること自体を辞めたいと思い立った。

 介護を辞めれば、「在留資格」を奪われて日本から出ていかなければならないのだが、彼女はサクッと職場から消えた。同郷の友人から紹介された夜の仕事でガッツリ稼げるからだ。待遇の良さが、不法残留というリスクを上回ってしまったのだ。

 こうして一人、また一人と外国人労働者が何の断りもなく職場から姿を消して行き、気がつけば、「人手不足の救世主」と崇めていた外国人労働者が、何千人も「所在不明」となり結果、日本は、何をしているのかよくわからない「不法移民」が溢れかえる国になりましたとさ――。

「はいはい、妄想おつかれさん」という声が聞こえてきそうだが、筆者がこういう最悪な未来を予想してしまうのは、他にも理由がある。実は今回の「消えた留学生」問題というのは図らずも、政府が推進する「特定技能外国人労働者」という制度の致命的な欠陥を露呈させてしまっているからだ。

外国人留学生の第一目標は
当然「お金」である
 この制度は、「特定技能」を持つ外国人労働者の皆さんは、人手不足に悩む業界で文句ひとつ言わずにキビキビ働いてくれる、ということが大前提となっている。

 これらの業界は、仕事がきつくて、賃金も安いということで、日本人労働者から敬遠されているが、外国人労働者の方たちは「日本で働けるだけで幸せです!」と考えるであろうという前提がある。だが、「消えた留学生」問題を見る限り、それは何の根拠もない「妄想」だと言わざるを得ない。

 そもそも、消えた1400人の外国人留学生に限らず、東京福祉大学に来ているほとんどの外国人留学生は、この学校を経て日本で仕事に就きたい、キャリアアップをしたいということを目的としている。要は「お金」が目的である。

 もちろん、「少子高齢化で悩む日本の方たちを助けるため、介護施設で働きたいんだ!カネなんて二の次だ!」という、ありがたい外国人の方たちもいらっしゃるかもしれないが、入学希望者の多くは「お金」を第一目標としている。その動かぬ証拠が、東京福祉大学留学生向けパンフレットにデカデカと記されたこの文言だ。

《「お金持ち」になる夢につながる》

 わざわざカギカッコと赤字で「お金持ち」を強調しているのだ。こういう呼びかけをして、それに応じてやってきた留学生の多くが「お金」を目的として、日本にやってくるのは当然である。

 そう聞くと、金目的で日本に来る留学生を批判しているように聞こえるかもしれないが、そんなつもりは毛頭ない。むしろ、安くない学費を捻出して海外で勉強をしようという者ならば、当然のモチベーションだ。

 そして、このモチベーションは「外国人労働者」になれば、さらに高くなることは言うまでもない。

 しかし、先ほども申し上げたように、「外国人労働者」が働けるのは、「人手不足業界」に限定されている。なぜこれらの業界が人手不足になっているのかというと、仕事がハードということもあるが、何よりも賃金が低いからだ。

 もう何を言わんとしているかお分かりだろう。政府の進める「外国人労働者の受け入れ拡大」というのは、「お金」が目的で日本にやってくる外国人たちに、彼らの来日目的にマッチしないどころか、自国民が嫌がるような「低賃金労働」をあてがう、というかなり無理のある話だ。

年間85万円の学費を4年払って
月給23万円の将来はアリか?
 どれくらい無理かというと、経営者やエリートビジネスマンと結婚したいと願う女性に、アルバイトで夢を追いかける若者とお見合いさせるくらい無理だ。どんなにゴリゴリ押しても「破談」間違いなし、というのが日本の「外国人労働者の受け入れ拡大」なのだ。

 そして、このような日本側が外国人に求めることと、外国人が日本に求めることの悲劇的なすれ違いの結果が、「消えた留学生」問題である可能性が極めて高い。

 多くの所在不明者を出した、東京福祉大学の「研究生」の1年間の学費は62万8000円。この準備過程を終えて学部に編入すると年間85万かかる。かなりの額だ。では、このような学費を毎年払い続けて、晴れて日本で働くことができた時、果たして「パンフレット」に書かれていたような「お金持ち」になれるのかというと、かなり難しい。

 例えば、東京福祉大学卒業生の多くが進むであろう「介護職員」(施設)の1ヵ月の賃金は約23万3600円(平成29年賃金構造基本統計調査)である。国内での業種の中でも決して高いとは言えない賃金だ。

 いや、これなどまだマシな方だ。昨年7月に放映された「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)が取り上げた、介護施設で働くフィリピン人看護師の月給は14万だった。果たして、このような賃金を手にして、彼らは「お金持ち」だと感じるだろうか。感じるわけがない。

 国によっては祖国へ仕送りすれば、一家全員が暮らせるくらいの額にはなるが、働いている外国人自身も日本で生活しなくてはいけないのだ。中には、「聞いていた話と違う」「騙された」と思う人もいるだろう。

 いずれにせよ、「お金」が目的で日本にやってきた留学生たちとって、日本で福祉や介護の職に就くということは、あまりにも費用対効果の悪い話だったことは間違いない。

外国人を「部品」のように扱う
心なき日本政府の行く末は
「仕事ってのはそんな甘いもんじゃない!そういう苦労をすれば、いつかちゃんと報われるんだ」と怒り出すおじさんも多いかもしれない。

 ただ、日本人相手ならそういう説教も通用したかもしれないが、彼らは「外国人」である。日本人のように責任を求めるなら、日本人と同じような権利を与えるのが筋だ。それができないのに義務やリスク、そして重労働を押し付けるのなら、「お金」などの見返りを保障するしかないのだ。

 しかし、現行の「外国人労働者の受け入れ拡大」にはそういう視点はゼロだ。

 外国人は、日本人が嫌がる低賃金・重労働の仕事を黙々とこなせばよし。外国人には職業選択の自由はないので、決められた仕事以外はしてはならぬ――。そんな都合のいい「奴隷」制度のような話がうまくいくわけはないのである。

「消えた留学生」問題は、この国が「外国人」という人たちの「心」をまったく考慮せず、「部品」のひとつのようにしか捉えていないという事実を、これ以上ないほどわかりやすく露呈させた。

 これまで本連載で繰り返し指摘してきたように、人手不足業界の待遇改善、つまりは賃金を上げていくことをせずに、外国人労働者を受け入れても、日本人の低賃金労働の現場で既に起きているブラック企業、パワハラ、バイトテロなど「恥」を世界へ向けて発信することにしかならない。

 今回の問題を受けて、TBSの取材に対して東京福祉大学は「留学生を増やすという国策に沿ってやっている」と答えていた。

 これから外国人労働者をめぐるトラブルが日本中で増える。劣悪な労働環境やパワハラ、長時間労働を強いたとして告発されるブラック企業、悪徳ブローカーなども、自分たちの正当性を主張するため、「だって、これは国策ですから」というような釈明をするのは、容易に想像できる。

 実はこの構図は、70年を経てもいまだに日本を悩ます「従軍慰安婦」や、「徴用工」の問題とまったく同じである。

 慰安所に女性を売り飛ばした韓国の女衒や、外国人の炭鉱夫をこき使った企業は口が避けても、「外国人は低賃金でこき使えるから」とは言わなかった。では、どういう大義名分を掲げたかというと、「日本のため」である。

 このように、日本人労働者から敬遠されるブラック業界の救済のため、「国策」を持ち出してしまったことが、すべての悲劇の始まりなのだ。

 日本に来たい、働きたい、と言っていた外国人が、ある日を境に「被害者」へと変わるのがこの手の問題の恐ろしいところだ。やはり「外国人労働者」問題の行き着くところは、「従軍慰安婦」や「徴用工」のような国際的人権問題なのかもしれない。
https://diamond.jp/articles/-/197546
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/702.html

[経世済民131] 利上げ停止、トランプ氏に軍配 FRBを徹底批判  ハト派FRBに踊らぬ市場 金利急低下、怪しいサイン 政策変更時間かかる
利上げ停止、トランプ氏に軍配 FRBを徹底批判
トランプ政権 経済 北米
2019/3/21 18:56
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)が20日に打ち出した金融引き締め路線の修正は、トランプ米大統領の主張に沿う決定となった。株価下落を懸念したトランプ氏は「インフレでもないのに、追加利上げなど常軌を逸している」と、FRBを繰り返し批判してきた。市場と政権の二重の圧力を受けたパウエル議長は、対話力に課題を残した。

20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、投票メンバー10人の全員一致で年2.25〜2.50%のまま据え置いた。

同時に公表した今後の政策シナリオでは、FOMC参加者17人のうち11人が「19年中の想定利上げ回数はゼロ」と表明。18年12月時点に見込んだ2回から大幅に引き下げた。トランプ政権は「2回の追加利上げなど余計だ」(ナバロ大統領補佐官)と厳しく批判してきたが、FRBも最終的には利上げ休止に傾いた。

ただ、20年の政策シナリオは参加者17人の中央値が「1回の利上げ」となった。7人が「ゼロ回」と主張する一方で、1回以上の利上げを見込む参加者が10人いた。FOMC参加者の見方は割れており、20年の利上げシナリオは、景気下振れ懸念が完全に払拭できるかどうかにかかっている。

FRBは資産縮小の停止と同時に、保有資産の構成を入れ替える。2兆2千億ドルある米国債は、9月末で資産圧縮を完全に停止する。パウエル氏は18年12月のFOMC後の記者会見で「資産縮小は順調で、見直すつもりはない」と主張していた。20年に大統領選を控えるトランプ氏は、株価下落の一因となったパウエル氏の発言を厳しく批判し、同氏の更迭も一時検討したとされ、FRBとの摩擦が目立っていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42750410R20C19A3NN1000/

 


ハト派FRBに踊らぬ市場 金利急低下、怪しいサイン(NY特急便)
米州総局 大塚節雄
北米
2019/3/21 7:39日本経済新聞 電子版
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20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落して終えた。トランプ米大統領が対中関税を保つ姿勢を示し、売りがかさんだ。焦点の米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場の予想を超える「(金融引き締めに慎重な)ハト派」ぶりをみせ、一時は買いが集まったが、その勢いは続かなかった。「市場に優しいFRB」の神通力は消えたのか。

FOMCの利上げシナリオを巡り、市場では政策メンバー予測の中央値でみた2019年…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42742090R20C19A3000000


 

政策変更「時間かかる」、FRB議長会見
米景気「見通しは明るい」 悲観論を否定
北米
2019/3/21 5:26
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【ニューヨーク=大塚節雄】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「明らかな政策変更の必要性が生じるような雇用やインフレの見通しを得るまでには、まだしばらく時間がかかる」と述べ、「政策調整を急ぐ必要はない」と利上げ休止の姿勢を改めて強調した。一方で、米景気に関しては「良い状況にある」や「見通しは明るい」と繰り返し、悲観論を否定した。

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今回のFOMCでは、政策メンバーによる2019年と20年の経済見通しが予測の中央値でみて前回の昨年12月から下方修正され、政策金利の見通しでは19年の利上げ回数が前回の2回からゼロに減った。

パウエル氏は「成長は予想よりもいくぶん鈍くなっている」と認めた。中国や欧州景気の減速のほか、企業の資金調達状況などを示す金融環境も「昨年10〜12月期に顕著に引き締まった」との見方を示した。リスク要因には、英国の欧州連合(EU)離脱や米中などの貿易交渉の不透明感などを挙げた。一方で「底流にある経済のファンダメンタルズ(基礎的条件は非常に強い」と強調し、失速懸念を否定した。

市場の一部には年内の利下げ説もあるが、パウエル氏は「我々が確認しているデータは現在、どちらの方向に動くかのシグナルを送っていない」と述べた。政策金利の「次の一手」について言質を与えず、慎重に情勢を見極める姿勢をみせた。

今回のFOMCでは、資産縮小のペースを緩めたうえで9月末で縮小を終える方針を決めた。パウエル氏は「これらの計画が予測可能性や透明性、円滑な計画の進展を実現する」と説明。「金融政策の主要な手段は政策金利だ。バランスシートは次の6カ月で通常の水準に戻す」と述べて政策的な意図は否定した。
  
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FRB、19年は利上げゼロ 量的引き締めも9月終了
経済
2019/3/21 3:04
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で先行きの政策シナリオを協議し、2019年の想定利上げ回数をゼロに引き下げた。海外景気の減速を警戒し、米国債など保有資産の縮小も9月末で終了する。20年に1回の利上げを見込むものの、金融危機時の大規模緩和を縮小する「金融政策の正常化」は、前倒しして終結に向かう。

FRB本部ビル(ワシントン)=ロイター
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FRB本部ビル(ワシントン)=ロイター

20日の会合では、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、投票メンバー10人の全員一致で年2.25〜2.50%のまま据え置いた。パウエル議長は20日の記者会見で「海外経済の成長鈍化が逆風となり、米経済も予想より減速している」と述べ、18年12月に続く追加利上げを見送った。

今後3年間の金融政策シナリオも公表した。19年中の想定利上げ回数はゼロとなり、18年12月時点で見込んだ2回から、わずか3カ月で大幅に引き下げた。FOMC参加者17人のうち11人が「ゼロ回」と主張。15年末から3年続いた利上げサイクルは、事実上休止することになりそうだ。

ただ、20年の政策シナリオは参加者17人の中央値が「1回の利上げ」となった。7人が「ゼロ回」を主張する一方で、1回以上の利上げを見込む参加者が10人いた。FOMC参加者の見方は割れており、20年の利上げシナリオは、成長率やインフレ率がどこまで高まるかにかかっている。

米国債などの保有資産を縮小する「量的引き締め」も19年9月末で停止すると決めた。FRBは08年の金融危機後の量的緩和で米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量に買い入れた。資産量は危機前の9千億ドルから4兆5千億ドルに膨張し、市場に流れ込んだ緩和マネーが金融システムを下支えしてきた。

景気回復に伴って、17年秋から保有資産の縮小に転じていたが、海外経済の減速や世界的な株価下落で早期に終了することにした。当初は終了時期を21年から22年にかけてと想定していたが、大幅に前倒しする。資産量は現時点の約4兆ドルから3兆5千億ドル強に減る見込みだが、市場には緩和マネーが大量に残されることになる。

同時にFRBは保有資産の構成も入れ替える。現時点で2兆2千億ドルある米国債は、9月末で資産圧縮を完全に停止する。1兆6千億ドルあるMBSは10月以降も償還などで保有量が減るものの、減少分は米国債に再投資して、保有債券全体の量が減らないようにする。

パウエル議長は記者会見で利下げの可能性も問われたが「現時点で、どちらかの方向に動く必要性を示すデータはない」と述べた。市場に浮かぶ早期の利下げ観測をけん制する一方で、利上げも当面棚上げする考えを強調した。

 
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http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/619.html

[政治・選挙・NHK258] 「日本語学校」の悲惨な実態、授業崩壊・入学翌日に失踪…元凶は、日本政府「日本再興戦略」
2019年3月22日 姫田小夏 :ジャーナリスト
「日本語学校」の悲惨な実態、授業崩壊・入学翌日に失踪…
台湾でも留学フェアが開催されている。出展校はダイレクトに保護者や学生たちにPRし、来場者も熱心に学校を見比べていた
台湾でも留学フェアが開催されている。出展校はダイレクトに保護者や学生たちにPRし、来場者も熱心に学校を見比べていた Photo by Konatsu Himeda
 ベトナム人留学生の万引き、モンゴル人留学生の無免許運転、ネパール人留学生の刃物を持ち出した喧嘩――、アジア人留学生が起こす問題が多発し、その対応に追われる日本語学校。その現場は、もはやまともな日本語教育どころではない、というところにまで来ている。

 元凶は、日本政府の政策にあるといえるだろう。政府は2013年に、アベノミクスの第三の矢として「日本再興戦略」を打ち出し、「人材こそが最大の資源」という認識から“優秀な外国人留学生”の積極的な受け入れを始めた。少子高齢化と人口減が急速に進行する中、留学生を就業人口として定着させることも視野に入れ、2020年までに30万人を受け入れる目標を立てた。2019年には29万8980人を受け入れ、目標達成はすでに射程距離に入っている。

 注目すべきは、2013年以降2018年までの5年間における“急激な人口増”だ。この短期間で留学生は13万0835人も増えた。この数は、神奈川県海老名市や千葉県成田市の人口に匹敵する。日本語学校への留学生も急増している。2018年は9万79人となり、この5年間で5万7453人も増加した。

 現在、留学生の受け入れが可能な日本語学校は全国で749校ある。いずれも規定をクリアした日本語学校として、法務省が告示する日本語教育機関に名を連ねている。中には、留学生をきちんと選考し、寄り添うようにして面倒を見るまともな日本語学校もある。だが、ここで取り上げるのは、リスト中にある大手有名校の惨状だ。

 筆者は複数の日本語教師から話を聞いた。この日本語学校をA校とし、登場する日本語教師をBさん、Cさん、Dさん、Eさんとした。それぞれの話から浮き彫りになるのは、学生を金づるとしか思わない日本語学校と、金稼ぎが目的でやってくる留学生、そしてその間に挟まれて報われない労働を強いられる日本語教師たちだ。

授業崩壊が始まる日本語学校
 卒業式を終え、教師たちがほっとしたのもつかの間、4月から始まる怒涛の新学期に向けて、A校は静かに臨戦態勢に入りつつあった。というのも、A校ではこの春、前代未聞の数の新入生を迎えるからだ。通常なら1学年5〜6クラスが編成されるが、今年はなんと16クラスになるという。

 近年、教室の主流を成すのはベトナムとネパールからの留学生で、ミャンマーとスリランカが次に続くという。一昔前の主役だった中国人は、すでに数を減らしつつある。その留学生たちと向き合うのは、担任となった常勤の日本語教師だ。Bさんは「こんなに増えた留学生に教えるのは正直気が重い。なぜなら、まともな授業にならないから」と打ち明ける。

 筆者は近年、A校以外の日本語学校でも「手の施しようがない学生が送られてくる」という声をよく耳にしていたが、大手のA校でも状況は同じようだ。授業に出席しない学生、単元テストで集団カンニングする学生、それでも合格点をはるかに下回り、追試をしても、“追追試”、“追追追試”となってしまう学生、自分の名前をローマ字入力のカタカナで打てない学生――Bさんは「何年も前から授業は崩壊しています」と嘆く。

 さらに目も当てられないのは、「入学した翌日から来なくなる新入生」だという。Bさんによれば、「学校は長期欠席で、(学校が把握している)バイト先にも姿を見せない。そんなふうにして失踪していく学生はとても多い」という。

 Cさんも、「日本に来るのは稼ぐため。留学生の目的は日本語の習得ではない」と言い切り、こう続ける。

「学校側は海外の提携先に依頼して、とにかく誰でもいいから日本に留学したい学生をかき集めています。その勧誘トークは『日本に行けば金が稼げる』、『家電も買えるし、化粧品も買える』というもの。学生たちの日本留学の動機なんてその程度のものです。留学期間中はできるだけアルバイトをして祖国に送金し、貯金を蓄えて帰国するパターンです」

 結果として“大手有名A校”には、“優秀な外国人留学生”とは程遠い、日本政府の期待から大きく外れた“出稼ぎアルバイター”が集まってしまった。

 留学生の中には、ベトナムの窃盗団に関わっている生徒もいるという。酒に酔った勢いでの派手な喧嘩も少なくない。女性教師に深夜に誘いの電話をかける男子留学生や、売春で金を稼ぐ女子留学生もいるという。「本当に勉強がしたくて日本に来る子はほとんどいない」と、Cさんは繰り返す。

日本語教師は報われない
日本語教育には一日の長がある台湾、いまなお若い人たちの日本語学習意欲は高い
日本語教育には一日の長がある台湾、いまなお若い人たちの日本語学習意欲は高い Photo by Konatsu Himeda
 そんなA校では、辞めていく日本語教師が後を絶たない。そこにあるのは、どんどん辞めていく日本語教師の穴を、どんどん採用して補うという不毛な循環だ。A校はこの春、数百人規模の新入生を迎えるわけだから、日本語教師は輪をかけて不足する。

 しかも、業務内容は多岐に及ぶ。日本の文化や生活習慣を正しく教えるという役目も担う、日本語学校の教師の仕事は実にエンドレスなのだ。

「日本語教師は日本語だけ教えていればいいと思われていますが、決してそうではありません。クラスの出欠管理や校内行事の準備はもちろんのこと、アルバイト希望者への対応や進路指導、果てはゴミの分別などの日本の生活指導まで、細かく行わなければなりません」(Dさん)

 DさんはA校に入社した際の契約で、「週に10コマを教える」というのが労働条件だったが、いつの間にか「週20コマ」も持たされるようになった。その結果、契約で定められた「8時30分〜17時30分」の勤務時間帯を大きく超過する状況に陥り、朝8時から終電間際までといった残業が続くようになった。しかも、給料は依然としてスズメの涙ほどの残業代しかつかない“薄給”である。

 教育職は人間が相手だ。ましてや言葉も習慣も異なる留学生が相手となれば、なかなかその指導も一筋縄ではいかない。気力体力も限界に達し、入社当時の熱意も枯渇寸前となり、誰もがギリギリの状況に追い詰められ、そして辞めていってしまう。

 Eさんは日本語教師という仕事を「報われない仕事」だという。

「日本語を一所懸命に教えようとしても、留学生も学校側も、それを望んでいないからです」

 日本における日本語教師の地位は決して高いとはいえない。ベテラン教師が少ないといわれているのも、専門職として相応(家族を養える程度)の報酬を得られないためでもある。こうした空気は留学生にも伝わり、日本語教師は留学生との距離の取り方に腐心する。

「留学生は日本語教師という存在に敬意を払っていません。日本語教師は女性が多く年齢も留学生たちとさほど変わらないので、『友達になろう』くらいの感覚で接してくるのです。ひどい場合は“恋愛対象”にさえなることがあります。高齢の先生にも敬意を持たない子が多いですね。卒業間近ともなると、学生は教師を無視して授業中の教室で堂々とトランプ遊びをしています」(Eさん)

 現場では日本語教師の地位向上どころか、質の低下が進んでいる。政府が打ち出した「30万人計画」のおかげで留学生は激増したが、とにかく手が足りず、日本語教師すら“かき集め”てくるのが実態なのだ。

「最近は学校側も『教壇に立てるなら誰でもいい』といった状況で、応募してくるのも『働けるならどこでもいい』といった人材が多くなりました。留学生にきちんとした教育を与えようなどという志なんか、あったものではありません」(Cさん)

 日本語教師になるには、大学で日本語教育を専攻するか、あるいは日本語教育能力検定試験に合格することが求められる。それらと並ぶ資格として、「日本語教師養成講座420時間コース」の修了がある。採用面接に際しては、教案を提出し、模擬授業を行うというプロセスを踏むが、A校ではだいぶ以前からこのプロセスを省いているという。辞める教師があまりに多すぎるからだ。

 日本語教師が次々と辞めていく中、いくら募集をかけても人材は追いつかない。「検定合格者や養成講座修了者を待っていたら、担任不在のクラスができてしまう」(Cさん)ため、まったくの無資格者でも起用することさえあるという。

“二重名簿”で学生管理
 さて、急増する留学生に対応するために、A校ではこんな「苦肉の策」を講じている。それは“二重帳簿”ならぬ“二重名簿”だ。

 法務省入国管理局の「日本語教育機関の告示基準」は、「日本語の授業は、同時に授業を受ける生徒数を20人以下とする」と指導しているが、A校では出席簿を20人の名簿と5人の名簿に分け、教室には25人を詰め込んで授業を行っているのだ。当局の検査が入るときには“余分な机”をみんなで一斉に隠すこともあるという。

 かつては、一般財団法人日本語教育振興協会(以下、日振協)がこうした「現場チェック」を行っていたが、今では「第三者機関が評価を行うという定期検査はなくなった」(法務省入国管理局)。日振協は現在、会員である日本語学校258校に対して検査体制を維持している。日振協は昨今の実情を踏まえ、「評価事業は質の維持・向上には欠かせない」(同)と主張する。年間70校という異例の数で増え続ける日本語学校は玉石混交、そんな中でさらに厳しい管理体制が求められるのは必然だ。

 過去3年間で1400人の外国人留学生の「所在不明者」を出した東京福祉大学も根っこは同じところにある。留学生だけではない。労働者も観光客も“数の確保”ばかりが先走る。

 ひたすら数字だけを追う「留学生のかき集め」は、若い留学生の将来を歪め、日本の教育水準を低下させ、果ては日本語教師の熱意をもくじく。負の循環を断ち切れる有効策を期待したい。

(ジャーナリスト、アジア・ビズ・フォーラム主宰 姫田小夏)
https://diamond.jp/articles/-/197557
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/724.html

[経世済民131] マイナス金利の「金融抑圧」で銀行が安楽死する 日銀の財政ファイナンスに見えてきた限界 
マイナス金利の「金融抑圧」で銀行が安楽死する
日銀の財政ファイナンスに見えてきた限界
2019.3.22(金) 池田 信夫

 世界的に続いている低成長・低インフレ・低金利からの出口が見えない。政策金利を引き上げる方針を明示していたFRB(米連邦準備制度理事会)は、経済の変調を受けて利上げを封印し、ECB(欧州中央銀行)も年内の利上げを断念した。日銀は昨年(2018年)後半に資産買い入れのペースを落としたが、それでも長期金利はずっとマイナスだ。

 日本では、企業の貯蓄過剰が20年以上も続いている。資本主義は企業が金を借りて投資するシステムだから、企業が貯蓄しているようでは成長できない。この奇妙な状況は、世界金融危機後の一時的なものと思われていたが、最近の動きをみると今後も続くかもしれない。日本経済に何が起こっているのだろうか。

企業が政府にカネを貸す異常事態
 企業が貯蓄する現象は、下の図のように1998年から始まった。1997年11月に山一証券が自主廃業した後、金融危機で銀行が融資を回収し、企業倒産が激増したため、企業が過剰債務を解消するデレバレッジ(債務解消)が始まったのだ。

日本経済の資金余剰と資金不足(日銀調べ)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/8/c/600/img_8cbae51662ca697590d8a5f583fa2dce17494.png

 これと裏表の関係で政府債務が激増し、企業の貯蓄を政府が吸収するパターンがその後も続いている。企業の貯蓄過剰は最大でGDP(国内総生産)の8%にも達し、これが銀行に預金されて国債の購入に回った。

 この因果関係をどうみるかは諸説あるが、2000年代初期までは明らかに銀行の不良債権処理が最大の原因だった。不良債権を清算するとき銀行が企業を破綻処理したため、それを恐れる企業が手元現金を増やしたのだ。

 その後、企業のデレバレッジによって2005年ごろには貯蓄過剰が終わったようにみえたが、2008年以降の世界金融危機で再び政府債務が増え、貯蓄過剰になった。このときは政府債務が増加して銀行が国債を買い、企業貯蓄が増えた。

 日本経済のマクロ的なバランスでみると、企業が資金を供給する「黒字主体」になっている状況では、政府がその資金を使うのは悪いことではない。問題はそれが一時的な不均衡なのか、長期的に続くのかということだ。

 需要と供給の一時的な不均衡は価格で調整されるので、資金需要が増えて物価が上がるはずだが、日本では物価が上がらない。それはかつて日本の特殊な現象だと思われていたが、今は世界的にゼロ金利になって「日本化」している。それはなぜだろうか。

長期停滞で「日本化」する世界経済
 今の世界的な需要不足は一時的なものではなく、構造的な長期停滞だ、というのがローレンス・サマーズ(元アメリカ財務長官)の意見である。高齢化や生産年齢人口の減少は先進国に共通であり、生産性上昇率も落ちて潜在成長率が低下している。

 こういう供給力の衰えで潜在成長率が落ちていることは間違いないが、それだけでは低金利は説明できない。需要に対して供給不足になると、物価や金利は上がるはずだ。世界的に物価が上がらない原因は、消去法で考えると需要不足である。

 日本は1980年代に世界史上まれな過剰債務を経験し、その反動で90年代から大幅なデレバレッジによる需要不足になった。2010年代には、世界金融危機後の米欧でデレバレッジが始まった。過剰債務の解消による長期停滞は、日本から始まったのだ。

 長期停滞の原因が一時的な需要不足ではなく長期的な投資水準の低下だとすると、金利では調整できない。企業がカネを貸して政府が借りる状況では、金融緩和には民間投資を高める効果はなく、日銀の量的緩和は財政ファイナンスになるしかない。

 財政赤字を中央銀行が穴埋めする財政ファイナンスは、金融政策のタブーである。政府は紙幣を無限に印刷できるので、それを許すと財政赤字が無限に増えてハイパーインフレが起こる、というのが従来の常識だった。

 しかし戦後の先進国では(終戦直後の混乱期を除いて)ハイパーインフレが起こったことはない。それは政府が信頼されているからだ。むしろ金利がマイナスになっているということは、政府と日銀が過剰に信頼されていることを示している。

 人々が日本の政府債務を心配しているのは、ハイパーインフレや財政破綻が起こることを恐れているからではなく、まじめな財務省がいずれ増税で財政を均衡させると信じているからだ。日本の金融機関もそれを信じて、マイナス金利の国債を買っている。

金融抑圧かヘリコプターマネーか
 このように国債の金利を抑え、インフレで政府債務を軽減する政策を金融抑圧と呼ぶ。日銀の保有する国債は430兆円で、残りは民間の金融機関が保有しているが、その実質金利はマイナスなので、プライマリーバランス(基礎的財政収支)は改善している。

 これは納税者の負担を国債保有者に付け替えるものだから、マイナス金利を負担する銀行が大きな負担を負うが、これには限界が見えてきた。これ以上無理をすると、銀行が国債を投げ売りして国債が暴落(金利が上昇)する可能性もある。

 それより日銀が民間銀行の保有する国債を買い取ればいい、というのがアデア・ターナー(元イギリス金融庁長官)の提案である。これはヘリコプターマネーというセンセーショナルな名前で呼ばれたが、それほど荒唐無稽な話ではない。

 日銀はすでに政府債務の4割を保有しているので、残りの国債を銀行から買い取って無利子の永久債にすればいい。今でも国債の金利は国庫納付金として全額、政府に払っているので、日銀の保有する国債は無利子である。それを日銀が売却することも事実上できないので、永久債である。それを日銀が認めればヘリマネになる。

 ただ一挙にやると大インフレになるので、新発債から順に無利子の永久債として日銀が買い取る方法もある。これによって買った国債を紙幣に替えてマネタイズし、物価上昇率がインフレ目標2%を超えたら、買い取りをやめるのだ。

 これはいま日銀のやっている「期待に働きかける」オペレーションより確実にインフレを起こせるが、危険な政策だ。ターナーは日銀政策委員会が財政赤字を監視することを提案しているが、日銀が財政赤字を止めることはできない。日銀が買い取りをやめても、投資家が国債の暴落を予想したら投げ売りが起こり、円が暴落してインフレスパイラルが起こる可能性もある。

 しかし今のままマイナス金利で金融抑圧を続けると、その負担は金融機関に集中し、特に地方銀行は「安楽死」するしかない。もう銀行というビジネスには存在価値がないと考えれば、それも一つの解決策ではあるが。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55852
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/625.html

[経世済民131] 海外投資家が疑問視する日銀「次の一手」 黒田総裁の信頼度「低下」厳しい見方 米中摩擦の影響「ある」5割超に増加、昨秋3割
為替フォーラム2019年3月22日 / 10:38 / 3時間前更新

海外投資家が疑問視する日銀「次の一手」
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
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[東京 22日] - 筆者は先週、出張先のニューヨークで現地の投資家と相次いで面談した。最も印象深かったのは、多くの投資家が日銀の金融緩和策の次の一手に注目していたことだった。

1月最終週に欧州を訪問した際の関心は、主に日本の企業と投資家による対外投資フローにあり、日銀への興味はそれほど大きくなかったことと比べると、大きな差を感じた。

世界の主要な中央銀行が次々とハト派的な姿勢に変化していく中で、日本は景気指標も弱く、インフレ率が上がる見通しも立たないことから、日銀の次の緩和策は何かに投資家が注目し始めているのだろう。会期中の国会に黒田東彦総裁がたびたび呼ばれ、金融政策について発言する機会が多かったことも注目を集めた理由の一つかもしれない。

中には、4月の金融政策決定会合で追加緩和もあるのでは、と期待する向きもあった。

<イールドカーブ引き下げか>

JPモルガンは日銀の次の一手について、景気後退リスクが高まった際にイールドカーブを引き下げると予想している。年内は可能性が低いものの、短期金利をより大きく下げ、カーブがスティープ化するよう調整するとみている。同時に、こうした追加緩和策は円相場に逆効果、つまり円安ではなく円高に作用してしまうと考えている。

面談したほとんどの投資家が、この見方に賛同していた。そして多く聞かれたのは、「なぜ日銀は長期国債の買い入れオペレーションを止めないのか」という声だった。金利水準はともかく、フラットなイールドカーブが金融機関の収益にマイナスであることが分かっていながら、なぜ長期・超長期国債の購入を続けているのかという疑問だ。

「日銀はマネタリーベース拡大のために、長期国債の保有残高の年間増加額が約80兆円となることをめどに購入を続けている」とこちらが説明すると、「すでに買い入れ額はその半分にも達していない。(密かに量的緩和を縮小する)ステルステーパリングが始まっていることは誰でも知っている。逆に無理して少額を購入し続け、イールドカーブにフラット化圧力をかけ続ける意味は無いのではないか」と指摘されるケースが目立った。

こうした声が出るのは、ドル円相場がかなり安定的に推移していることも影響しているであろう。

「日銀はいつまで2%のインフレターゲットを維持するつもりなのか」という質問も多かった。「日本で2%のインフレ率達成が難しいことは誰が見ても明らかだ。それにもかかわらず、同じターゲットを維持したまま、何も新しい手を打たないのであれば、日銀の政策意図がますます分からなくなる」との声も上がっていた。

以前であれば、日銀の金融政策に対する欧米投資家の批判は、「なぜもっと大胆に国債購入額を拡大しないのか」、「なぜ2%のターゲットをもっと引き上げないのか」といった、政策の度合いに関するものが中心だった。しかし、今回の訪問時に聞いた批判は、「なぜ同じような金融政策を続けているのか」という、政策の内容そのものに対する批判だった。

もしかすると、もはや日銀には打つ手がない、と見られているのかもしれない。「次に日本に景気後退が訪れたら、対応できるのは金融政策ではなく、財政政策になるのは明らかだ」という別の投資家の質問からも、そうした見方がうかがえた。同氏は「それにもかかわらず、これから消費税増税を行おうとするのはなぜなのか」と疑問を呈していた。

つまり、主要各国が金融と財政セットで緩和方向を向いているのに、日本は日銀が動かないままであれば、金融・財政ともに引き締め方向を向くことになってしまう、という指摘だ。

<投資家は日米通商交渉に厳しい見方>

米国の投資家が日本の金融政策への関心を高める中、4─5月はドル円相場に影響を与えそうなイベントが続く。4月10日には黒田総裁が講演、中旬には米財務省が半期為替報告を発表する。24─25日には日銀が決定会合を開くとともに、経済・物価情勢の展望(展望レポート)を公表する。

また、4月中に米中首脳会談が開催される可能性があり、5月中旬にはトランプ大統領が自動車関税に関して最終決定を下す期限が来る。そして、5月26─28日にはトランプ氏が来日するとみられている。

円相場の短期的な見通しは、筆者が面談したニューヨークの投資家の間で割れていた。1月最終週に出張した欧州では円高方向を予想する声が圧倒的に多かったが、今回は上下両方向を見ていた。1月最終週の前後と比べて世界経済に対する悲観的な見方が落ち着きを取り戻したこと、米中通商交渉が泥沼を回避できたことが変化をもたらしたのかもしれない。

日米通商協議に対しては、筆者の楽観論を懐疑的に見る投資家が多かった。安倍晋三首相との関係が良好だからと言って、トランプ大統領が国内で多くの困難に直面する中、日本との交渉、とりわけ自動車問題で攻撃対象にならないと考えるのは楽天的過ぎるのではないか、などという反応が目立った。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

佐々木融氏(写真は筆者提供)
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

(編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-balance-tohru-sasaki-idJPKCN1R305H


 

ビジネス
2019年3月22日 / 10:23 / 2時間前更新
ロイター企業調査:黒田総裁の信頼度、「変わらず」と「低下」が拮抗 厳しい見方
Reuters Staff
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[東京 22日 ロイター] - 3月ロイター企業調査によると、日銀の黒田東彦総裁への信頼感が就任時と比べて低下したとの回答が半数近くに上り、信頼感は変わらないとの回答とほぼ拮抗した。物価や実体経済に成果が出てないとの厳しい見方も多い。日銀の政策は現状維持が望ましいとの回答が7割近くとなり、緩和政策の出口に向かうべきとの回答は昨年1月と比べ大幅に減少した。10月に消費増税を控える中、景気への懸念が示された形だ。

https://graphics.reuters.com/JAPAN-COMPANIES-SURVEY-LJA/0100914F1JR/survey-boj.png

今回の調査期間は、3月4日─15日。調査票発送企業は479社、回答社数は240社程度。

<黒田日銀総裁、積極的評価少なく>

黒田総裁への信頼度が就任当初と比べて「やや低下した」、あるいは「かなり低下した」との回答が合計で48%とほぼ半数を占めた。結果を出せていないとの指摘が多く、「失敗した政策にこだわり、中央銀行に求められる冷静な姿勢に欠ける」(機械)、「振り上げたこぶしの下ろしどころがなくなり、かたくなになっている間に市場はどんどん歪められている」(電機)、「政府の方針に迎合するような部分も見受けられる」(機械)など、厳しい見方も多い。
他方で「変わらない」も51%と半数を占めた。ただ、この中には「もともと信頼していない。物価目標が達成されないばかりか、時期も曖昧にしている」(輸送用機器)といった意見も相当数含まれ、積極的な評価は「株式相場や為替などで継続した一定の成果を上げている」(小売)など、一部にとどまった。

<景気懸念でも緩和強化は望まず>

政策の方向性については、現状維持を妥当とする回答が67%を占め、昨年1月調査の49%から大きく増えた。
「消費増税や米中摩擦といった懸念がある」(輸送用機器)ほか、「金融緩和はやめるべきだが、引き締めると景気が後退する」(機械)といった見方がある。現状の緩和政策は物価上昇に効果がないものの、引き締めは景気へのリスクがあり、緩和強化は副作用が大きいとして、現状維持しかないとする消極的な支持が増えている。
出口に向かうべきと回答は27%と昨年1月の45%から大きく後退。「現状(の政策)が長く続くほど経済の自律性が失われる」(ゴム)といった懸念は根強いものの、減速気味の景気を気にする企業が多かったとみられる。
一方、景気への懸念がある中でも、緩和強化が望ましいとの回答は6%にとどまり、昨年1月と変わらなかった。「これ以上緩和を行えば、特に地銀の体力が持たないと感じる」(運輸)などの見方が多かった。

<2%目標は不可能でも支持、見直し必要も46%>

2%の物価目標についても「維持すべき」との回答が52%になり、昨年7月調査の46%から増えた。ほとんどの企業は2%達成は不可能とコメントしているが、それでも「最低でも2%程度の物価上昇が必要だと理解しなければいけない」(小売)など、多くの中央銀行が掲げている2%が適正との見方が目立つ。
一方で、「目標設定自体をやめるべき」との回答も27%、「引き下げるべき」が19%を占め、合わせて46%が見直しが必要との見方を示している。
「実態とのかい離は明らかであり、形骸化している」(小売)、「目標達成にこだわるあまり、時機に合った必要施策を実効する柔軟性が損なわれることが懸念される」(ゴム)など、現実的ではない目標が不信感につながるといった指摘もある。 

中川泉 編集:石田仁志
https://jp.reuters.com/article/boj-confidencevote-idJPKCN1R304M

ビジネス
2019年3月22日 / 10:33 / 2時間前更新
ロイター企業調査:米中摩擦の影響「ある」5割超に増加、昨秋3割
Reuters Staff
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[東京 22日 ロイター] - 3月ロイター企業調査によると、米中貿易摩擦の影響を受けている企業は5割超と、昨秋の3割から増加した。影響は受注・生産・設備投資など企業活動全般に広がりを見せている。足元の貿易摩擦は19年中にも解決するとの見方が増えたが、覇権争いの長期化を予想する企業も多い。中国経済の減速は20年以降も続くとの見方が6割近くを占める一方、中国の拠点を移管する動きはほとんど見られていない。
今回の調査期間は、3月4日─15日。調査票発送企業は479社、回答社数は240社程度。
米中摩擦の影響を受けている企業は、昨年10月調査では33%だったが、今回は52%に増加。うち9%は大いに影響を受けていると回答した。
「関税引き上げで米国子会社のコストが増加」(輸送用機器)との指摘があるほか、「液晶半導体向け厚板・IT関連財の販売が低迷している」(非鉄金属)、「中国向け輸出の貨物数量に影響がある」(運輸)など、米中に加え国内事業にも影響が出ている。
また、「製造業の投資意欲減退により、半導体製造装置や生産用機器向けの需要が減退」(ゴム)、「中国に製造拠点のある日系企業の業績不安による設備投資抑制」(建設)など、受注・生産の減少が設備投資にも波及している。
米中摩擦はいつまで続くのか──。企業の間では早期に解決するとの見方が増えている。昨年11月の調査では20年以降も継続するとの回答が51%を占めたが、今回は45%に減少。摩擦継続は19年後半までには終息、との回答が全体の56%を占めた。
「米中ともに自国経済への悪化が顕著となってきている」(化学)ため、双方とも長引かせることはしないとの見方に傾いていることがうかがえる。「関税に関する貿易戦争は長引くと中国側が回避策を講じてくるだろう。妥協点を見つけて終息する」(紙パルプ)といった観測が出てきている。
ただ「貿易収支のインバランス解消という狭義の意味では決着に向かうと思われるが、覇権を争うという本質的な意味での米中摩擦であれば、短くても15年程度は続く」(電機)、「本丸は次世代通信を含めた技術的な覇権争いであり、当分継続」(建設)など、両者の軋轢は貿易問題にとどまらず、長期化するとの見方は多い。

中国政府は足元の景気減速についてすでに経済対策を講じているものの、日本企業の間では中国経済の停滞が長期化するとの見方は多い。
減速は20年以降も継続するとの見方が58%と最も多かった。今年後半以降は減速局面から脱するとの見方は4割にとどまった。
それでも中国に事業拠点を展開している日本企業にとって、巨大マーケットとしての位置づけは変わらない。拠点を「中国以外に移管する検討はしていない」との回答が93%を占め、昨年10月調査の87%から増えた。

中川泉 編集:石田仁志

https://jp.reuters.com/article/reuters-poll-trade-japan-idJPKCN1R304C


 

ビジネス2019年3月22日 / 12:18 / 1時間前更新
前場の日経平均は反落、FOMC後の円高で買い続かず
Reuters Staff
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[東京 22日 ロイター] - 前場の東京株式市場で、日経平均株価は前営業日比45円83銭安の2万1563円09銭で取引を終え、反落した。予想以上にハト派ととらえられた米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を受け、国内休場中の2営業日中に米国株が上昇した流れを引き継ぎ、朝方は買いが先行。しかし1ドル110円台と円高に振れた為替が上値を圧迫し、戻り売りに押され下げに転じた。

TOPIXは同0.11%安で午前の取引を終了した。東証33業種中、医薬品が下落率トップ。米バイオジェン(BIIB.O)とのアルツハイマー病薬の治験打ち切りを発表したエーザイ(4523.T)がストップ安売り気配となっている。金融セクターも軟調だった。

半面、上昇率トップは鉱業。低金利のメリットへの期待を背景に不動産セクターが買われた。REIT(不動産投資信託)も選好され、20日に1900ポイント台に乗せた東証REIT総合.TREITは9日続伸し、昨年来高値を更新した。

このほか、東京エレクトロン(8035.T)やアドバンテスト(6857.T)など半導体関連が商いを伴って上昇。米マイクロン・テクノロジーMU.Nの株価が決算発表を受けて急伸した流れが東京市場にも波及した。

日経平均は寄り付きの水準が日中高値となった。下げに転じてからはじり安となったが、売り急ぐ姿勢も限定的だった。「FOMC後の2日間の米国株の反応自体は想定の範囲内だった。景気減速の懸念でFRB(米連邦準備理事会)がハト派スタンスにならざるを得なかったのは事実としてはあるが、流動性相場が続くという点は株式市場にとって大きい」(岡三証券・日本株式戦略グループ長の小川佳紀氏)との声が聞かれた。

東証1部の前場の売買代金は1兆2697億円。騰落数は、値上がり924銘柄に対し、値下がりが1101銘柄、変わらずが114銘柄だった。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-mid-22-idJPKCN1R30BB


ワールド2019年3月22日 / 12:08 / 1時間前更新
原油先物、2019年の高値近辺 OPEC減産や米制裁が支援
Reuters Staff
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[シンガポール 22日 ロイター] - アジア時間の原油先物は、前日に付けた2019年の高値に近い水準で推移。石油輸出国機構(OPEC)主導の減産やイランとベネズエラに対する米国の制裁が、相場を支援している。

0122GMT(日本時間午前10時22分)時点で、北海ブレント先物LCOc1は0.04ドル安の1バレル=67.82ドル。前日に付けた19年高値の68.69ドルとの差は1ドルを下回る。

米WTI原油先物CLc1は1バレル=60ドルと、横ばい推移。こちらも前日に付けた19年高値(60.39ドル)に近い水準。

OPECとロシアなどのOPEC非加盟の主要産油国による協調減産が、原油相場を下支えしている。

また米国による対イラン・ベネズエラ制裁も支援材料となっている。イランの3月の原油輸出は平均で日量100万バレル強にとどまっており、2月の同130万バレルから減少。18年の最高水準は、米制裁が発表される前の昨年4月の少なくとも同250万バレルだった。

ベネズエラでも、米制裁が科され、国内は政治・経済的に危機的状況に直面する中、原油生産が減少しており、現在は日量100万バレルを大きく上回らない水準。

一方で、米原油生産が増加していることが原油相場の一段の上昇を抑えている。
https://jp.reuters.com/article/global-oil-22-idJPKCN1R30AI

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/626.html

[経世済民131] われわれの国は「安く」なった 
われわれの国は「安く」なった

小田嶋 隆
コラムニスト
2019年3月22日
42 93%

全7179文字

 4年ほど前、さる月刊誌の編集部から取材依頼の電話を受けた。

 なんでも、次の発売号の特集で、「『ニッポン凄い』ブームの実態をさぐる」的な特集企画を予定しているということで、私に求められていた役割は、制作中の記事のうちの一本を読んで、感想のコメントを提供することだった。

 記事は、電話を受けた時点では、まだ執筆途中だったのだが、ざっと以下のような内容だった。

 「日本にやってくる外国人観光客は、数の上では、中国、韓国をはじめとするアジアからの人々が圧倒的に多い。ところが、アジアからの観光客が増えている事実とは裏腹に、どうしてなのか、テレビで放映されている日本礼賛番組でコメントしている外国人は、ほぼ非アジア圏からの観光客に限られている。編集部ではこの不可解な食い違いの謎を解くべく……」

 なるほど。好企画じゃないか。

 私は、その旨(「素晴らしいところに目をつけましたね」)を伝えた上で、ラフ段階の原稿についての暫定的なコメントを送った。

 ところが、1週間ほどすると、電話がかかってきて、
 「申し訳ありません。あの企画はボツになりました」
 という残念な報告を聞かされなければならなかった。

 企画が流れた理由は、尋ねなかった。

 たぶん、中国や韓国からの観光客の声を積極的に紹介しようとしないテレビ番組制作現場を支配しているのとよく似た空気が、雑誌の編集部にも流れてきているのだろうと思ったからだ。

 われわれは、飲み込みにくい事実よりは、納得しやすいファンタジーを好む。それは、テレビ視聴者や雑誌読者にしても同じことで、だからこそ、制作側の人間には、事実を飲み込みやすい形に加工する技巧が求められる、と、どうせ、そんな調子の話なのだ。

 ちなみに、その雑誌は今年の1月をもって不定期刊に移行している。まあ、事実上の休刊(あるいはもっとあからさまな言葉を使えば「廃刊」)ということだ。あんなにまでして生き延びようとしていたのに。

 参考までに、2015年5月23日のツイートを採録しておく。

 《ある雑誌の若い編集者が「日本にやって来る観光客の数は中国、韓国がトップなのに、テレビの日本礼賛番組に登場するのが非アジアからの外国人観光客ばかりなのはなぜか」というテーマで、実数を調査して書き進めていた記事にコメントしたのだが、企画自体がボツになったとのこと。残念。》

 この時以来、私は、テレビの番組テーブルの中で相変わらず異彩を放っている「ニッポン礼賛企画」の行く末を、なんとなく気にかけている。本当のところ、われわれの国は世界の人々の憧れと愛着の対象なのだろうか。それとも、テレビ局のスタッフが「ニッポン」への称賛を集約して番組に結実させたがるのは、わたくしども日本人が、称賛の声を聞かされ続けていないと自分を保てないほどに自信を喪失していることのあらわれなのだろうか。

 つい先日、その私の年来の疑問に貴重なヒントをもたしてくれる本を読んだ。タイトルは「観光亡国論」。東洋文化研究者のアレックス・カー氏と、ジャーナリストの清野由美さんの共著で、中央公論新社(中公新書ラクレ)からこの3月に出版されたばかりの新書だ。

 本書の「まえがき」の中でも明らかにされている通り、「日本ブーム」は、少なくとも来日観光客の増加カーブを見る限り、現在進行系の、明らかな事実だ。

 データを見ると、2011年には622万人に過ぎなかった観光客数が、7年後の2018年には、3000万人を超えている。実に5倍増に近い急激な増加ぶりだ。

 この調子だと、東京オリンピックが開催される2020年には、政府が目標としてあげている来日外国人4000万人を達成することになるはずだ。

ただ、来日外国人の数が増えて、インバウンド需要が拡大すれば、すべてがめでたしめでたしの好循環でうまく回転するのかというと、話はそう簡単には進まないと思う。

 現在でも既に、急激な観光客の増加は、さまざまな場面に軋轢や摩擦をもたらしている。

 早い話、ビジネスマンの地方出張でホテルが取りにくくなっている。ビジネスホテルの宿泊料金の相場は、この先、オリンピックに向けてますます上昇するだろうと言われている。

 これ以上観光客が増えたら、いったいどんなことが起こるものなのだろう。

 今回は、うちの国が歩みつつある「観光立国」の行く末についてあれこれ考えてみたい。

 今年の2月、京都にある製薬会社のお招きで、ほんの束の間だが、3年ぶりに京都を訪れた。

 食事の間、その会社の人たちとしばし歓談する時間を持つことができたのだが、話題になったのは、やはりご当地の観光客の急増についてだった。

 3年前の秋に、ほぼ30年ぶり(その前年に一瞬だけ通りかかったことがあったのだが)に京都を訪れた折、私は、観光客の圧力に圧倒されて、街路を歩く意欲を失ってしまった次第なのだが、当地の人たちの言うには、観光客は、その3年前の京都旅行の時点から比べても、さらに確実に増加しているらしい。

 「ホントですか?」
 「ほんまです」
 「だって、3年前ですら、四条河原町のメインストリートは、渋谷のセンター街みたいな人だかりでしたよ」
 「それがいまはスクランブル交差点みたいなことになってはるわけです」
 「ホントですか?」
 「まあ、ちょっと大げさですけど。ははは」

 京都の人は、洛外の人間の前で、観光客の殺到ぶりに苛立っているようなそぶりは見せない。あっさりはんなりというのか、いとも鷹揚に受け止めている。そういうところはさすがだと思う。でも、それにしても、こんな調子で人が増えたら、いずれインフラが崩壊して、その時は応仁の乱以来の生き地獄が現出するはずなのだが、京都の人たちはそういう修羅場に立ち至ってもなお、あの余裕の構えを崩さないものなのだろうか。

 「観光亡国論」の中では、都市のキャパシティーを超えた観光客によるオーバーツーリズム(観光過剰)の問題を世界各地の観光地に材をとってていねいに紹介している。

 たとえば、つい10年ほど前までは、地域再生の成功例として世界中から注目を集めていたバルセロナは、現在、「ツーリズモフォビア」(観光恐怖症)という造語で説明される、次の段階の困難に直面している。

 歴史を振り返ると、バルセロナは1992年のバルセロナ五輪を機に、旧市街や観光名所の再整備を敢行し、独自のプランで「まちおこし」を本格化させた。この時、市が経済発展の基盤として重点を置いたのが観光で、そのために、市は、サグラダ・ファミリア教会に代表される文化資産を再評価し、住宅街、商店街の再整備事業を推進し、さらに国際会議なども積極的に誘致した。この試みは、世界中から観光客を呼び寄せることに成功し、都市再生と観光誘致の理想形として、世界で絶賛された。

 ところが、人口約160万人に過ぎないバルセロナ市に、年間4000万人とも5000万人とも言われる観光客が常時押しかけるようになると、やがて肝心の市民生活が機能不全に陥る局面に到達する。人々は自分たちが住んでいる町のバスに乗れなくなり、自宅の前の道路を自分のクルマで走るのに、恒常的な渋滞に悩まされるようになる。

 それだけではない。土地価格の高騰に伴って、オフィスや賃貸住宅の相場も急上昇する。と、平均的な市民は、やがて、自分たちが生まれ育った町で暮らすための最低限の家賃を支払えなくなる。

 そうこうするうちに、
 「観光客は帰れ」
 というスローガンを掲げたデモが頻発し、街路には、
 「観光が町を殺す」
 という不穏なビラが張られる事態に立ち至っている。

 よくできた寓話みたいな話だが、これは、現実に起こっているリアルな都市での出来事だ。
 日本では、京都の例が有名だが、実のところ、ちょっとした観光地はどこであれ似たような問題に直面しつつある。

 私がこの何年か、年に3回のスケジュールで通っている箱根も同様だ。

 あそこも、最近は中国人観光客のための温泉地に変貌しつつある。

 私の箱根通いは、まだ3年目にはいったばかりで、通算でも7回目なのだが、一緒に卓を囲む(まあ、麻雀合宿をやるわけです)メンバーは、なんだかんだでこの20年以上、毎年3回2泊3日の箱根泊を敢行している箱根通ばかりだ。

 その彼らに言わせると、この5年ほどの変化は、まことにすさまじい。

 良い変化なのか悪い変化なのかの評価は措くとして、とにかく、食事のメニューや冷蔵庫の中身や、浴衣や手配といった、あらゆるサービスの手順が、徐々に中国人観光客向けにシフトしてきているというのだ。

 その変化を一概に「サービスの質の低下」と断じることはできないが、それでも、その変化の中には、20年来の常連客からしてみれば、配膳されるメニューのコメのメシへの適合度の低下といった、年配の人間にはなかなか受け入れがたい退廃が含まれていたりする。

 外国人観光客が増え続けてきたこの10年ほどの変化をどう評価するのかについては、二つの相反する見方がある。

 ひとつは、来日観光客増加の原因を、ほかならぬわれら日本人の「おもてなし」の精神に根ざした質の高いホスピタリティや、日本文化の繊細さや、日本の四季の自然の美しさに求める考え方だ。

 要するに、わが日本に外国人が蝟集(いしゅう)するのは、この国が安全で快適な土地柄で、われら日本人自身が世界の誰よりも正直で心の温かい民族だからだという評価だ。

 この評価が間違っていると断ずるつもりはない。

 ただ、一方には、観光客増加の理由を、単に日本の「安さ」に求める意見があることも、意識しておいた方が良い。

 バブル崩壊からこっちの約30年間にわたって、物価も実質賃金も低迷したままで、おまけに通貨としての円の価値自体も、最も強かった時代から比べれば3割以上安くなっている。

 ということは、日本を訪れる外国人の立場から見て、日本での滞在費は、食事、交通費、宿泊費なども含めて、すべてが破格に「安い」ということになる。

もちろん、日本の治安の良さやホスピタリティの優秀さが評価されているという側面はあるにしても、日本の経済が低迷していて、外国人から見てあらゆる商品が割安であることが観光地としての日本の魅力の大きな部分を占めているということだ。そうでなければ、たった7年で来日観光客が5倍に増えるようなことが起こるはずがないではないか。

 ちなみに、円は震災直後の11年3月17日に史上最高値の76円25銭を記録している。

 そこから換算すると、昨今の111円台の円相場は46%ほど安い。ということはつまり、同じ1ドル紙幣が1ドル46セントの価値を持つことになる。

 それ以上に、500円以下でランチが食べられる日本の物価は、どう安く食べようと思っても絶対に10ドル以下では満足な食事ができない欧米の観光都市と比べて、破格に廉価だ。

 これは、見方によっては、日本の経済の敗北というふうに見ることもできる。

 要するに、われわれの国は、「安い」国になったのである。

 1980年代の半ば過ぎ、たぶん1985年か86年だったと思うのだが、フィリピンのネグロス島にあるドゥマゲティという町に遊びに行ったことがある。

 きっかけは、青年海外協力隊の一員としてフィリピンで暮らしていた高校時代の同級生Kが、当地にある大学の学長の娘さんと結婚したからだった。

 当時、フィリピンの物価は、日本人の若者であった私から見て、アタマがくらくらするほど安かった。

 円が高かった(1985年の円/ドル相場は250円前後)こともあるが、とにかくフィリピンの田舎の物価は、おとぎ話の中の猿とカニの取り引きみたいだった。ゴルフを一日やってプレイフィーが400円。LPレコードが300円。昼飯は100円あれば充分に食えた。

 何をお伝えしたいのかを言おう。

 フィリピンに向けて出発する前に、友人のKが口を酸っぱくして言っていたことを、私はいまでも覚えている。

 「いいか。考えなしにチップをばらまくなよ」
 「特に子供たちには安易にドルを与えてはいけない」
 「20ドル紙幣とかばらまいたらぶっ殺すぞ」
 と、彼はくどくどと繰り返していた。

 「なんでさ」
 「喜捨って言うじゃないか」
 「現地の人間が喜ぶことをして何が悪いんだ?」
 という私の質問を、Kは丁寧に論破した。

 「いいか、フィリピンみたいな国で外国人がドルをばらまくと、現地の子供は自分の国の大人をバカにするようになる」
 「大人だけじゃない。マジメに働くことや、きちんと勉強することもバカにするようになる」
 「どうして」
 「考えてもみろよ。路上で観光客に煙草を1本売って、気前の良い日本人が気まぐれに20ドルくれたら、それだけでオヤジの一週間分の稼ぎになるんだぞ」
 「了解。チップは1ドルにする」
 「子供には1ドルでも多い。クルゼーロというコインを両替しておいて、それを与えるようにしてくれ」
 「お前には関係ないだろ」
 「お前はフィリピンのことなんかどうでも良いと思ってるからそういうことを言ってるけど、ドルっていうのは、あれは国を滅ぼすんだぞ」

あの時のKの説教を、どう説明したら現代の日本の読者に伝わるだろうか。

 ともあれ、Kは、フィリピンで言うパトリオット(愛国者)で、彼なりに国を憂えていた。

 で、そのKに言わせれば、今の言葉で言う「インバウンド需要」で国が潤うことは、外国人の落とすカネで暮らす人間がそれだけ増えるということで、国の経済のおおもとのところが、タカリ体質に変貌することにほかならなかった。そのことを彼は警戒していたのである。日本のためにではない。フィリピンのために、だ。

 インバウンド需要のすべてが悪いとは言わない。

 インバウンドで潤う業界があるのはそれ自体としては悪いことではないし、そこから派生したカネがめぐりめぐって国の経済を活性化するのであれば、それは歓迎すべき流れなのだろう。

 ただ、カジノや万博やオリンピックや行きずりの観光客が落とす日銭を当てにしたところから経済計画を立案する態度は、一国の経済政策としては好ましくない。一人の愛国者として、私はそのように考える。

 もうひとつ、旅嫌いの出不精の人間の偽言と思って、3割引きくらいの力加減で聴いてもらって差し支えないのだが、私は、観光地の商売というものをいまひとつ信用していない。

 行きずりの観光客相手の商売は、リピーターを増やすために努力している街場の人間の商売とは性質が違う。

 であるから、世界中どこに行っても、観光客相手に土産物を商う人々の価格設定は、地場の人間に必需品を売る商人の値付けとはその根本の精神が違っている。

 悪い言葉を使えば、観光客相手の商売人は、ぼったくることをなんとも思っていない。どうせ同じ客とは二度と会うこともないからだ。

 もっとも、観光業に従事する誠実な人たちがたくさんいることもわかっている。

 だが、インバウンドの客を相手にするということは、行きずりの客相手に商品を売るということで、これは、商売の質そのものが荒れるということでもある。

 日本人の商店主が諸外国の商売人と比べて正直だと思われている原因のひとつは、コミュニティー外の人間と取引をすることの少ない島国の人間であるわれわれが、瞬間的な稼ぎよりも長期的な信用を重んじる態度で商売をしてきたからだと思う。

 その伝統が海外からの客を相手にしているうちに、じきに失われるのではないかと危惧している。

 というのも、
 「どうせあの人たちは値打ちがわからないから」
 「どうせ、二度と来ない客だから」
 という感じの、モロな観光地商売を展開する人間は、いずれ、商品と価格への真摯な感覚を失うはずだからだ。

 典型的な観光地の典型的な土産物屋の商売が、行き当たりばったりの出たとこ勝負であること自体は、たいした問題ではないし、それはそれで天晴な態度ですらある。

 事実、世界の観光ビジネスはそういう原則で動いている。

 ただ、日本中にインバウンドの経済が影響を与えるようになり、この国の主要な産業が観光だということにでもなったら、われわれは、いずれその種の商道徳で世間を渡る人間になって行くはずだ。

 具体的にどういう人間になるのかというと、空港前の路上で、信号待ちの度にタクシーの窓ガラスを叩いてバラ売りの煙草を売りにやってくる5歳児みたいな人間ということなのだが、その5歳児は、煙草が売れないとなると、母親を売ろうとするのだ。

 いや、これは、「キャッチ22」からパクったネタなのだが、たいして面白くもないうえに、品も良くなかった。
 いつでも品の大切なのは、良い人間として振る舞おうとする心がけだ。それを忘れてはならない。

 インバウンド需要に特化した日本人が、自分たちの品格を保てるのかどうか、私はその部分をとても心配している。

(文・イラスト/小田嶋 隆)


 なぜ、オレだけが抜け出せたのか?
 30 代でアル中となり、医者に「50で人格崩壊、60で死にますよ」
 と宣告された著者が、酒をやめて20年以上が経った今、語る真実。
 なぜ人は、何かに依存するのか? 

『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』

<< 目次>>
告白
一日目 アル中に理由なし
二日目 オレはアル中じゃない
三日目 そして金と人が去った
四日目 酒と創作
五日目 「五〇で人格崩壊、六〇で死ぬ」
六日目 飲まない生活
七日目 アル中予備軍たちへ
八日目 アルコール依存症に代わる新たな脅威
告白を終えて

 日本随一のコラムニストが自らの体験を初告白し、
 現代の新たな依存「コミュニケーション依存症」に警鐘を鳴らす!

(本の紹介はこちらから)


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none

ホテルの質が落ちたのは、被渡航多数派の質が低い(某国人にはドライヤーはおろか、部屋のTVさえ持ち出そうとする猛者がいる)ことによる自衛策の側面を無視できない(仕事柄もあるが、この数年は旅行や出張時に宿泊先のドライヤー設置方式を見比べる癖が付いてしまった。)。その一方で、都心部のドラッグストア劣化は記事の懸念どおりであろう。
ただ、懸念の顕著な例が日経ビジネスにおける別の記事でも紹介される「中国人が、韓国訪問を避ける(一度行くと、二度と行きたくないリストに入る)」旨のものである。ここから、個々人ではなく地域全体が反省すれば、またリストから除外されることもあるであろう。幸か不幸か、当面日本はリストに入らない。
2019/03/22 15:36:46返信いいね!


cyc-lo

万年平社員

外国の場合、先進国であっても物乞いをしている子供が
珍しくないといろいろ読みますが。

日本の観光地って、旅行者が何の見返りもないのに、
金をばらまくような光景があるんでしょうか?

私も、さすがに牛丼が500円でおつりがくるのは行きすぎだと思う。
固定費や材料費は削れなくて、人件費だけガリガリ削って
ブラック化するなんて、本末転倒にもほどがある。
こんなザマで、誰が幸せになれるというのか。

日本人は、自分が払うカネは、どこかで誰かが払ってくれて
自分の給料になっているのだということを思い起こすべきだ。
2019/03/22 16:24:181返信いいね!


BADBOY

なんかとても矛盾を感じる。
日本が安くなったと嘆く筆者。つまり国力が弱いから円安というのだろう。でも、この御仁は、国力を下げるような国内の揚げ足取り的な政治批判ばかりをしていて、殆ど外国と日本の関係や外国について目を向けていなかったと思う。外国との関係において、日本を強くしよう(武力のみならず、経済においても)などと言ったことはないはず。
で、日本が弱いとおっしゃる。。何をおっしゃっているんだろうと思う。
2019/03/22 16:48:102返信いいね!
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一言主

『われわれの国は「安く」なった』第一の理由はGDPが増えない……大企業が内部留保をため込んだままベースアップをしなかったからだ。
いずれインバウンド収入がGDPの上位を占める様になり、前記大企業は没落か?

2019/03/22 17:31:15返信いいね!
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らま

不労所得とまでは言わないけれど、アベノミクスて濡れ手に粟みたいな金儲けを、地道に価値を創出する人たちよりも優遇しますよね。私のような愛国心が少なめの人間でも、子どもたちの未来を思うと心が痛みます。

2019/03/22 17:55:031
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00012
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/628.html

[政治・選挙・NHK258] ノルウェーの大臣が説く「補助金ゼロ漁業」 漁獲量の減少や担い手の高齢化にあえぐ日本は、改革の足取りもおぼつかない
ノルウェーの大臣が説く「補助金ゼロ漁業」

武田 健太郎
日経ビジネス記者
2019年3月22日
4 100% 
全2136文字


ネースビーク漁業大臣に聞く

 ノルウェー産のサーモンやサバは日本の回転ずしに今や欠かせない食材。北欧の漁業大国ノルウェーは、大規模化とテクノロジー導入で「稼げる漁業」を追求する。かたや漁獲量の減少や担い手の高齢化にあえぐ日本は、改革の足取りもおぼつかない。ノルウェーのハーラル・ネースビーク大臣の来日にあわせ、「目指すべき強い漁業」へのヒントなどを聞いた。


3月中旬に来日したハーラル・トム・ネースビーク漁業大臣。日本の政府関係者と捕鯨問題やEPAなどについて協議した
日本市場はどのような位置づけですか?

ノルウェーのハーラル・トム・ネースビーク漁業大臣(以下、ネースビーク氏):日本は極めて重要な国で、アジアで水産物の最大の輸出先です。経済連携協定(EPA)締結に向けた交渉を進めることで、より多くの恩恵を受ける事ができると考えています。サバやサーモンなどは身体や脳の働きに良い影響を与えることをアピールしたいし、品質も、我が家のリビングから工場の様子を毎日見ており自信をもって保証できます。 

日本は国際捕鯨委員会(IWC)から昨年脱退しました。ノルウェーと協力は深められますか?

ネースビーク氏:今回、日本の政府関係者と捕鯨に関しても情報交換しますが、「持続可能な捕鯨」を目指している点は両国とも同じで、同じゴールを持つという点で我々の見解は一致しています。

 日本とノルウェーは漁業国として多くの共通点があります。例えば、漁業の担い手の高齢化はともに大きな問題です。ノルウェーでも、若者はかつてのように漁業に従事したいと考えなくなっています。日本の課題へのアプローチを学び、ノルウェーに持ち帰りたいと思います。

日本の寿司は「芸術品」
日本の食文化に触れた感想は。

ネースビーク氏:東京の寿司店に行きました。感激したことは、日本の寿司は、料理であると共に芸術作品でもあるということです。職人たちが我々の頭では想像できないような創作をする。どのように準備して調理すれば、作品を生み出せるのか。学ぶところは多かったです。

 ショッピングモールにも行きました。水産品の品ぞろえが極めて豊富だったほか、寿司や刺身などの陳列のしかたについても消費者の目を惹く工夫がなされていました。正直、ノルウェーではただ商品を並べているだけ。日本は魚の需要を喚起するためのノウハウを多く持っていて、学ぶ点は多いと感じました。

次ページ補助金ゼロは品質向上にもつながる


ノルウェーは、養殖サーモンの生産量(現在年間約130万トン)を2050年までに500万トンに引き上げる計画ですね。

ネースビーク氏:世界の人口が増え、食糧需要は急激に拡大しています。穀物生産や畜産の場となる陸地は限られていますが、漁業、特に養殖の重要性は増え続けています。世界には、ノルウェー産のサーモンの美しい色と香り、味に多くのファンがいます。需要が増え、価格は上昇している現状ですので、可能な限り、サーモンの養殖生産をしようと努力しているところです。

 ただ、我々が最も重視するのは「持続可能性」です。生産量を重視するあまり、生態系を崩したり、海洋環境が悪化したりする事態は最も避けるべきだと考えています。生活の糧を得ている海を守ることが最優先です。


今回の来日中、千葉県銚子市の水産工場を訪れノルウェー産サバなどが貯蔵された冷凍庫などを視察した
補助金ゼロは品質向上にもつながる
次世代の養殖技術をはじめ、漁業には国としてどのような支援をしているのでしょうか。

ネースビーク氏:伝統的な養殖手法が当面、重要であり続けます。ノルウェーでは沿岸やフィヨルドの周辺でサーモンを主に養殖していますが、水質や温度管理、病気対策などで非常に厳しい規制を儲けています。成育環境をこれまでと大きく変える事は容易ではありません。

 一方、政府としても生産効率を上げるため技術革新は欠かせません。どの水域で、どのような養殖法が可能かという研究も必要です。しかしながら政府としては、事業者に補助金は出していません。企業が自ら、研究開発などを持続可能な形で進めることが大切です。販売戦略やマーケティングに関しても補助金は出しません。

 企業が成長するには、市場が求めているのは何かを常に考えることが不可欠です。消費者が何を食べたいか。これは政府が決めることではありません。実は、補助金がないことは品質向上にも寄与します。30年前にはノルウェー政府は補助金を出していましたが、今ではサーモンと同じように、サバやニシン、タラなどの魚種でも補助金を出さない方針に変えています。


サーモンの生食を日本に提案したのはノルウェーです。今後、新たな提案の準備はありますか。

ネースビーク氏:日本の市場は極めて成熟しています。消費者が何を食べたいかは日本の市場自体が十分知っているのではないでしょうか。我々は最高の食材を提供するので、日本の皆さんには最高の料理を作ってもらいたいです。

海洋管理協議会(MSC)がノルウェー近海などで漁獲されるサバの認証を一時停止しました。

ネースビーク氏:MSCが認証停止したのは、ノルウェーだけでなく、北東大西洋で漁獲されたサバです。確かに、このエリアのサバの資源量に関しては、我々が当初想定するより多くはありませんでした。ただ、ノルウェーのサバがそれほど悪い状況でないことは理解してもらえるはずです。国際海洋探査委員会(ICES)が行う資源評価の再検討結果を待ちたいと思います。さほど遠くない時期に認証を再取得できると考えています。

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けーしー

日本の漁業者は持続可能な漁業が自分のために必要とあまり考えていないように見える。うなぎは何年も前から資源枯渇の危機が言われているが、未だに不漁、不漁と騒ぐだけだ。明らかに不漁ではなく、絶滅だろうに認めようともしないのは何故なのか疑問に思う。サンマもイカも獲れないとか、いや豊漁だとか、漁獲量ばかりに目が行っている。ニシンのように資源でなくなってしまう日も近いのではないかと不安を覚える。一部ホタテの様に計画的に育成を図ってうまくいっているところもあると聞く。海外の養殖産地に習い日本でも漁業が産業として高度化する事を願ってやまない。
2019/03/22 09:46:241返信いいね!


Rhizomorph

研究者

持続可能な漁業に取り組まれている三重大の勝川准教授のご意見では、日本での乱獲の解消には個別漁獲規制を導入すべきだという。将来のため今日の収入を捨てることは、一人だけでは出来ない。ノルウェーから学ぶべきは漁獲規制であり、補助金ゼロのような表面的なことや、ましてや養殖などではない。
養殖で問題は解決しない。日本には養殖に適した水面がノルウェーほど多くない。例えば近畿大学の開発したマグロの養殖技術に適した利用可能な海面はもうほとんど残ってないと聞いた(近大の先生に)。それに養殖に用いる餌はイワシなどの天然魚だ。有限の資源であり、野生生物としての動態は必ずしも明らかになっていない。持続可能性の問題を食用魚種から餌魚種にスライドさせただけだ。
昆虫を餌にする研究も行われているが、陸上の作物を育てるには化石燃料で固定した窒素と鉱山で採掘したリンや農業資材・農薬などが必要だ。食品残渣での昆虫飼育は一定の解決策となるだろう。
それにしても、日本の水産庁の異常な弱腰は不可解でならない。漁業者に対しても、市場に対しても。例えばIUCN/環境省がニホンウナギをレッドリスト入り(絶滅危惧IB類 (EN))させても動こうとしない。サンマの漁獲が減ったのに対し通年での操業を許す。わからない。
2019/03/22 11:40:465返信いいね!


natureizm

農林水産省が所管官庁ですが、稲作に導入した飼料米のような所得補償的な補助を10年くらい実施して漁業の構造改革をしたらどうでしょうか?急に収入が減ったら生活が成り立たないので、自分たちでの改革などできないと思います。事業者たちが改革ができないときこそ国ができることがあるのではないでしょうか。
2019/03/22 13:18:53返信いいね!


ゆいたんパパ

兼業主夫

養殖を「工場」として捉えれば、海外で持続可能な養殖場を設営して、漁業資源を確保していくのがよいのかなーと思います。ノルウェーのサーモンは成功事例ですが、国内で養殖されるサバとかは、まぁ、コスト高で国際競争力はないですが、日本人は高くてもそれなりに買ってますよね。でも養殖業者は経営が厳しいと聞きます。ということは、流通とか、価格決定メカニズムとか、どこかに非効率や歪みがあるんでしょうね(主に天然資源のボラティリティが原因と聞きますけれど)。
大胆なことをいうと、天然資源は政府が許可したお店(大手チェーン店ではない寿司屋や料亭みたいなところ)でしか取り扱えないようにして、食卓や大手チェーン店で食べられる魚は養殖に限定する、とかすると、天然資源の持続可能性を得ながら、養殖とマーケットも分けられていいんじゃないかなーとか妄想しました。
2019/03/22 15:53:09
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/031900010/?P=2&mds
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/732.html

[国際25] シリア「あらゆる手段通じて」ゴラン高原を奪還、トランプ氏を批判 ゴラン高原「シリアに帰属」=イスラエル主権承認、米に批判
ワールド2019年3月22日 / 17:38 / 3時間前更新
シリア「あらゆる手段通じて」ゴラン高原を奪還、トランプ氏を批判
Reuters Staff
1 分で読む

[ベイルート/モスクワ/ドバイ 22日 ロイター] - トランプ米大統領が21日、ゴラン高原についてイスラエルの主権を認める時が来たと表明したことについて、シリア政府は22日、「あらゆる可能な手段を通じて」ゴラン高原を奪還すると主張した。

シリアの国営通信社が外務省筋の発言として報じた。

同筋は「ゴランが今も昔も将来もシリア領、アラブ領であるという現実」に変わりはないと強調。「シリアはあらゆる可能な手段を通じてシリア国土のこの貴重な地を解放する決意をさらに固めた」とし、トランプ氏の主張を「無責任」と批判、国際法を「侮蔑している」と述べた。

また、国営ロシア通信によると、ロシア外務省報道官は22日、ゴラン高原の帰属変更は国連の決定に真っ向から違反すると表明。

イランの国営テレビによると、イラン外務省報道官も、トランプ氏の主張は受け入れられないとし、「(ゴラン高原が)シリアに帰属するという事実を変えることはできない」と指摘した。

トルコのエルドアン大統領は、トランプ氏の発言で中東地域が新たな危機の瀬戸際まで追い込まれていると主張。ゴラン高原の占領を合法化することはできないと述べた。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
https://jp.reuters.com/article/usa-israel-syria-idJPKCN1R30V5


 
シリア、米大統領を非難
ゴラン高原奪還の決意表明

2019/3/22 18:22
©一般社団法人共同通信社

 【イスタンブール、テヘラン共同】シリア政府は22日、トランプ米大統領がイスラエル占領地のゴラン高原を巡り、イスラエルの主権を認める考えを表明したことを強く非難する声明を発表した。ゴラン高原を「あらゆる手段」で奪還するとの決意も示した。国営シリア・アラブ通信が伝えた。

 シリア政府は、トランプ氏の表明は国際的な正当性を軽視する「無責任」なものだと批判。ゴラン高原が過去も将来もシリアに属することは変わらないとして、奪還への決意を強くしたと強調した。

 シリアのアサド政権を支援するイランの外務省報道官も米政権を非難する声明を出し「違法で受け入れられない」と述べた。
https://news.biglobe.ne.jp/international/0322/kyo_190322_7618175013.html

 
ゴラン高原「シリアに帰属」=イスラエル主権承認、米に批判
2019年03月22日19時58分


シリアのアサド大統領=2月25日、テヘラン(AFP時事)

 【エルサレム時事】シリアのアサド政権は22日、国営シリア・アラブ通信を通じて声明を出し、トランプ米大統領がゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めたことについて、イスラエル寄りの「無分別な偏見だ」と強く非難した。その上で、「ゴラン高原は現在も将来もシリアやアラブに帰属したままであるという現実」を変えることはできないと強調した。
 声明は、イスラエルが1981年に占領地ゴラン高原の併合を一方的に宣言した直後、併合を無効とする国連安保理決議が米国を含む全会一致で採択されたことに言及。トランプ氏の判断は「国際的な法秩序を軽んじるものだ」と訴えた。

 ロイター通信によると、ロシアは米国の政策転換について「単なる呼び掛けにとどまることを期待する」(ペスコフ大統領報道官)と表明。ゴラン高原の地位変更は国連決議違反になると訴えた。ロシアと共にシリア内戦でアサド政権を支えるイランは「違法で受け入れられない」と述べた。

【国際記事一覧へ】 【アクセスランキング】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032201050&g=int
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/773.html

[経世済民131] 広がるFRBと米株市場の認識ギャップ、背景に対中摩擦リスク アジア企業の設備投資、中国減速で3年ぶりに減少へ
コラム2019年3月22日 / 19:48 / 21分前更新

広がるFRBと米株市場の認識ギャップ、背景に対中摩擦リスク
田巻一彦
2 分で読む

[東京 22日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表以降、FRBと米株式市場との認識ギャップが大きくなっている。パウエルFRB議長は、米中経済摩擦など踏まえた米経済見通しを注視していると指摘。

高水準で推移する株価を支える市場の楽観的な心理とは対照的だ。

東京から見た場合、米中経済摩擦の継続による米経済の減速シナリオは、対中貿易の比重の大きい日本にとって「対岸の火事」と放っておけない。また、市場がリスクオフに傾けば、円高のリスクも高まる。東京市場の参加者は、NYのFEDウオッチャー並みに米経済の動向を注視すべき理由がある。

FOMC直後の市場反応は、「年内利上げ想定せず」「9月に資産縮小終了」という想定を超える「ハト派」的メッセージの発信で、いったんは株価上昇/金利低下/ドル下落で反応した。

しかし、21日のNY株式市場では、3月のフィラデルフィア連銀業況指数が急反発した[nL3N2182WK]ことや米新規失業保険週刊申請件数が予想を超えて減少[nL3N2182NC]し、景気鈍化への警戒感の低下を背景にダウ.DJIは200ドルを超える上昇となった。

FRBが発した警戒感は、かなり強いと思われる。実際、FOMCメンバーの政策金利見通し(ドット・チャート)で示された年内の利上げ回数はゼロとなり、20年は1回との見通しが示された。

その一方、パウエル議長は「依然として米経済は年内、底堅く成長すると予想」、「労働市場は堅調」とも述べている。

<ハト派的認識の裏に何があるのか>

それでは、どうして市場の予想を超えて「ハト派」的なメッセージを出したのか。「成長は特に中国や欧州で鈍化」「昨年9月以降の指標から、成長は予想よりも鈍化しているもよう」とパウエル議長は指摘した。

米中通商摩擦の影響も含めた中国経済の先行きに対する懸念が、背景にあるのではないかと推測させるような「言い回し」だったように感じられる。

今のところ、FRBの懸念の核心が何か、市場の楽観シナリオが後退し、FRBの懸念が実現してしまう可能性がどの程度あるのか、確たる手がかりはない。

ただ、20日のFOMCを受け、21日のNY金融・債券市場では、3カ月物財務省短期証券(TB)US3MT=RRと10年米国債US10YT=RRの利回り格差は、2007年8月以来の水準に縮小した。

この水準縮小は、市場におけるリセッションへの警戒感の高まりを示すとされる。

<対中関税継続なら、中国に打撃か>

1つ気がかりなのは、米中通商交渉が当初期待された2月末の合意ができず、最終合意のメドが不透明になっていることだ。

そのうえトランプ米大統領が20日、対中関税について「かなりの期間」維持する可能性に言及した。その背景としてトランプ大統領は「(協議に関し)合意するのであれば、中国に確実に履行させる必要がある」と述べた。

複数のチャイナウオッチャーによれば、足元での中国経済の減速の大きな要因の1つに、米国による10%の関税賦課がある。

だからこそ、中国側は対米交渉で早期の関税撤廃を双方で実行することを提案していたが、それへの回答が、トランプ大統領の発言だった。

中国経済はしばらくの間、10%関税という「重石」を背負って進むことになりそうで、中国経済の回復─欧州経済の回復─リスクオン心理の拡大というシナリオの実現性は、少なくとも2019年半ばまでは難しそうだ。

<中国経済減速、長期化なら日本にも余波>

中国の減速継続は、日本にとってはある意味で米国の受けるマイナス効果よりも、打撃が深くなる可能性がある。18日発表された2月貿易統計で、アジア向け輸出は前年同月比マイナス1.8%。輸出全体も3カ月連続で前年割れだった。

日本企業の中には、対中ビジネスの比重が高いところが少なくなく、輸出減─生産減が継続するようなら、企業経営者の心理を冷やし、19年度の設備投資計画を抑制させかねない。そこまでリスクが拡大するようなら、アベノミクスの下で拡大を続けてきた日本経済に「黄信号」が点灯しかねない。

もし、FRBが中国経済の動向を念頭に慎重な米経済の先行きを展望しているなら、日本の政策当局は、米国並みかそれ以上に下向きのリスクに敏感になるべきだろう。

FRBと米株式市場の間の認識ギャップが存在している間が、日本にとっての猶予期間と言えそうだ。
https://jp.reuters.com/article/column-frb-idJPKCN1R30WD


 

トップニュース2019年3月22日 / 18:13 / 2時間前更新
焦点:
アジア企業の設備投資、中国減速で3年ぶりに減少へ
Reuters Staff
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[ベンガルール 20日 ロイター] - 今年はアジア企業の設備投資が3年ぶりに減少しそうだ。中国経済の減速や貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感を背景に、企業はキャッシュを確保しようとしている。

リフィニティブのデータをロイターが分析したところによると、アジア企業2137社の今年の設備投資は平均4%増となり、前年実績の約8%を下回る見通し。増収率は3.3%で横ばいとなりそうだ。

マッコーリー・インベストメント・マネジメントのジョゼフ・デバイン最高投資責任者は、設備投資を抑える要因が複数あると指摘。「与信環境は引き締まり、ドルは上昇している。インドその他の市場では銀行の貸し出しサイクルがピークを迎えた可能性があり、中国の自動車需要は減速している」と話した。

中国の成長率は昨年、約30年ぶりの低水準に落ち込み、今年はさらに減速すると予想されている。政府が企業に過剰な債務を抱えないよう働きかけを続けている上、米国との貿易摩擦も未解決だからだ。

データによると、最も設備投資を渋るのは、不動産会社や政府のインフラ支出に依存する企業となりそうだ。ハイテク企業も、スマートフォンの世界需要が落ち込んでいるため、設備更新のための支出を抑えている。

工業用資材のサプライヤー企業の設備投資は前年比で7%、ハイテク企業は9%、それぞれ減少する見通し。

キャピタル・エコノミクスのシニアエコノミスト、ギャレス・レザー氏は「電子機器の輸出は過去1年で急速に鈍化しており、設備投資の伸び率に反映されそうだ」と述べた。

一方、設備投資減少の裏返しとして、アジア企業のキャッシュフロー(中央値)は前年の1株当たり1.30ドルから今年は1.80ドルに増え、少なくとも5年ぶりの高水準となりそうだ。

(Patturaja Murugaboopathy記者 Gaurav Dogra記者)
https://jp.reuters.com/article/asia-companies-outlook-analysis-idJPKCN1R30Y2

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/630.html

[経世済民131] 現実か幻想か、欧州に飛び火する財政拡大理論「MMT」 FRBハト派転換、米家計に好影響 個人投資家も「アクティビスト」に
トップニュース2019年3月22日 / 14:33 / 6時間前更新
焦点:
現実か幻想か、欧州に飛び火する財政拡大理論「MMT」
Reuters Staff
4 分で読む

[ロンドン 18日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)はこの3年間、2兆6000億ユーロ(約328兆円)以上を投じてユーロ圏の経済成長を加速させようと試みてきた。

だが、文句なしとは言いがたい結果を前に、さらに巨額の支出につながる思い切った代替案を試みる可能性が出てきた。

経済成長が減速するタイミングで、財政緊縮政策に反対するポピュリスト政党が、5月に迫った欧州議会選挙に向けて支持を稼ごうと図る中で、財政拡大理論のいわゆる「MMT(現代金融理論)」が、債務や財政赤字、経済運営のあり方に関する従来の考え方に挑戦状を突きつけている。

米国左派の期待の星であるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏を通じて有名になったMMTは、実質的に、インフレを制御できている限りにおいて、国家は自由に自国通貨を発行・支出することができると考える。

この理論では、国家はいつでも通貨を発行して債務の返済に充てることができるのだから、債務不履行(デフォルト)に陥ることはありえないということになる。

失業対策と社会政策のために公的支出の拡大を求める欧州のポピュリスト勢力にとって、これは魅力的に響く。彼らは、中央銀行が何年も量的緩和(QE)を続けても、金融資産の価格上昇以外には見るべき成果がなかったと主張する。

MMTの主唱者によれば、QEが2次市場における社債・公債の大量購入によって金融市場を刺激することだけを意図しているのに対して、MMTのポイントは政府支出と実体経済への資金供給であるという。

ユーロ圏において、近い将来MMTが導入される可能性は低い。統一通貨ユーロの導入地域のルールでは、加盟国が勝手に通貨を発行することは不可能で、欧州政界の主流派はMMTを支える経済理論を相手にしていない。

ラリー・サマーズ元米財務長官は、MMTを「迷信的な」考え方だと評した。

だがMMTがよって立つ発想は、大型の公債発行による投資スキームを検討することに消極的な欧州の財政主流派・政界に対するイデオロギー的な抵抗をまとめ上げる支えとなっている。

英国最大の資産運用会社リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメントでファンドマネジャーを務めるジョン・ロー氏はロイターに対し、「欧州議会選挙が終われば、欧州レベルでの財政出動・景気刺激策がはるかに盛んに論じられるようになるだろう」と語った。

<ニューディール>

ロー氏は、米民主党左派の一部の売り文句である、巨額の公的投資による「グリーン・ニューディール」を求める声がまだ欧州には現れていないことを指摘する。だが、こうした政策を求める声は、投資家が真剣に検討すべきものとしては、まだ可能性にとどまっている。

ECBは今月、QEによってインフレ率と経済成長率が上昇していないこと、少なくとも2020年までは金利をきわめて低い水準に据え置くことを認めた。こうなるとECBとしても、思い切った方針転換を求める声に弱くなる。

「ユーロ圏で最も望ましい政策は、(ユーロ圏で実施するのはほぼ不可能に近いとはいえ)中央銀行による巨額赤字の財政ファイナンスと定義される現実的なMMTだろう」と金融顧問会社INTL・FCストーンでアナリストを務めるビンセント・ドゥリュアード氏は語る。

<ポピュリストの手段に>

欧州が「ジャパニフィケーション(日本型の景気低迷)」、つまり低成長・低インフレの組み合わせに陥りつつあるという議論が生じる中で、斬新な政策アプローチを求めるプレッシャーは高まっている。とはいえ、米国に比べて、欧州における議論ではMMTを求める主張はさほど頻繁には聞かれない。

しかし、それも変わりつつあるのかもしれない。

サクソバンクの最高投資責任者(CIO)を務めるスティーン・ジェイコブセン氏は、「欧州議会選挙の後も欧州経済の減速が続くようなら、欧州の政治家ももっとインフラ整備が必要だと言うようになり、コストを増やすことなく通貨を追加発行できると考えるのではないか、と人々は想定している」と言う。

MMT型のアプローチに向けた動きはすでにいくつか生じている。

英野党・労働党のコービン党首は2015年に「民衆のQE」を提唱した。政府主導で中央銀行の出資により、インフラ整備に投資するスキームだ。

最近ではイタリアの連立与党が、低迷する経済を再生するため、EUの課す財政規律を終わらせて公的支出を増やすことを希望し、EU本部と対立した。

フランスのマクロン大統領は、暴力を伴う街頭行動となった「黄色いベスト」運動をなだめるべく、公的支出を拡大している。

ラボバンクの市場ストラテジストであるマイケル・エブリー氏は、「怒りの時代:市場におけるポピュリズムの意味」と題するリサーチノートの中で、ポピュリスト政党が公的支出拡大への要求を補強するためにMMTを利用することを投資家は想定すべきだと述べている。

エブリー氏は、「(市場は)真のパラダイム転換が生じるリスクが今後大幅に高まる事態に備えるべきだ」と警告している。

<経済は崩壊するか>

とはいえ、マクロ経済学の原則を無視することに前向きな政治家が当選しない限り、こうした動きはたいして意味を持たない。そして当然ながら、財政の専門家たちの意見は、MMTを否定するという点でほぼ完全に一致している。

各国政府が通貨を気ままに発行することを許されれば、ハイパーインフレと経済崩壊への悪循環が始まってしまう、というのが彼らの見解だ。

ECBのチーフエコノミストであるプラート専務理事は最近、インターネット上での質疑応答で、「中央銀行による財政ファイナンスという発想全般が危険な主張だ」と回答。

プラット氏は「過去には、そうした発想がハイパーインフレと経済の大混乱をもたらした」と述べ、「中央銀行が独立性を備えるべき理由はそこにある」と付け加えている。

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスが実施した調査によれば、経済専門家の88%は、「債務返済に充てる通貨はいつでも発行できるのだから、自国通貨で借入可能な国家は政府債務を懸念する必要はない」という主張に「同意しない」と回答した。

財政タカ派で知られる日本銀行の黒田東彦総裁もやはりMMTに否定的で、「広汎な支持を得られない極端な主張」と呼んでいる。

<MMTの現実味>

欧州の一般市民の間でMMTを巡る議論が起きるとは考えにくいが、関心は高まっている。グーグル検索では、「ECB」よりも「MMT」の検索回数の方が多くなっている。

イーストウエスト・インベストメント・マネジメントのアナリストであるケビン・ミューア氏は、ニュースレターの中で、主要経済国の有権者の間で怒りが広がっていることに触れ、「財政規律を維持したままの金融刺激策では、金持ちがさらに豊かになる以外の効果はない」と主張している。

また、MMTが経済的・政治的な幻想のように見えるとはいえ、一部のエコノミストは、ポピュリズムの波の勢いを軽視すべきではないと警告する。英国が国民投票でEU離脱を選ぶことも、ドナルド・トランプ氏が大統領に選出されることも、どちらもありそうにないことと思われていたのだから。

次のリセッション(景気後退)が訪れれば、英国のコービン氏が提案する「民衆のQE」のようなアイデアが一般化する可能性があると、ソシエテジェネラルのアナリスト、アルバート・エドワーズ氏は考えている。そのときになれば、「(マネーが)金融市場に紙吹雪のように撒き散らされるだけでなく、実際に減税や公共投資プロジェクトに流れ込むようになる」と同氏は言う。

(Julien Ponthus記者、Tommy Wilkes記者、Ritvik Carvalho記者 翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/europe-mmt-idJPKCN1R10XI


 

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2019年3月22日 / 17:48 / 2時間前更新
アングル:FRBのハト派転換、米家計にもたらす好影響
Reuters Staff
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[ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は20日までの米連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内に利上げする公算は乏しいとの考えをはっきり打ち出した。これは米国の家計に対する、どうか買い物を続けてくださいというメッセージだ。
 3月21日、米連邦準備理事会(FRB)は20日までのFOMCで、年内に利上げする公算は乏しいとの考えをはっきり打ち出した。ワシントンのFRB本部で19日撮影(2019年 ロイター/Leah Millis)
FRBが操作する政策金利が上がれば、他のさまざまな金利も上昇し、クレジットカードの利用や住宅、自動車購入などのコストが増大する。
ただ20日時点でFOMCの大半のメンバーが想定する年内の利上げ回数はゼロとなり、投資家の間ではFRBの利下げを促すほど景気が減速するかもしれないとの見方も広がっている。
こうしたFRBのハト派姿勢への転換が家計にもたらす好影響を以下に記した。
<借り入れ条件改善>
FRBの金利見通し修正によって10年物国債利回り(長期金利)を含む主要な市場金利が低下し、つれて住宅や自動車を買う際に利用するローンの金利が下がってきている。既に住宅ローン金利は低下基調で、クレジットカードの金利も今後低下するかもしれない。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8413/8337/mortgages_treasuries.png

<薄れる貯蓄の妙味>
金利低下は、一般的な貯蓄商品の妙味を薄れさせることで消費を後押しする。利回りが下がれば貯金の利子は減り、安全な国債に投資しているファンドのリターンは低下する。これは貯蓄資金の運用収入への依存度が比較的大きく、米国債利回り低下で痛手を受ける退職者世代には問題をもたらす。これに対してFRBは、退職者は景気全般を支える政策手段の恩恵を受けていると主張している。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8414/8338/savings_MM.png

<株価上昇>
債券利回り低下とコインの裏表の関係にあるのが株価上昇だ。株高は401kなどの確定拠出型年金プラン、とりわけ運用資産に占める株式の割合が多い若い世代に追い風となる。
今回のFOMCの結果公表後にS&P総合500種は大きく上昇。これには借り入れコスト低下が企業利益を押し上げるとの見方が反映されている。
株高は、いわゆる資産効果を享受する人々が財布のひもを緩めてくれるため、個人消費増加につながる可能性もある。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8415/8339/rate_pressure.png

<労働市場支援>
米国の失業率は50年ぶりの低水準付近にあるが、足元で労働市場の軟化が見て取れる材料がいくつか出てきている。2月の非農業部門雇用の増加ペースは急速に鈍化し、週間新規失業保険申請件数はじりじり増加してきた。
こうした中でFRBがハト派姿勢となったのは、労働市場をしっかりした状態に保つ狙いがある。そうすれば2007─09年の金融危機を抜け出した後もなお経済が振るわなかった局面で職探しをあきらめた人たちの求職活動再開を促進できるだろう。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8416/8340/full_strength.png

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」

https://jp.reuters.com/article/graphics-frb-idJPKCN1R30VK

 
ビジネス2019年3月22日 / 17:23 / 3時間前更新
インタビュー:
個人投資家も「アクティビスト」になるべき=マネックス社長
Reuters Staff
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[東京 22日 ロイター] - 平成の30年間で個人投資家を取り巻く環境は激変した。インターネットなど情報通信技術の普及により大量の情報を瞬時に入手できるようになり、セミプロのような個人投資家も数多く出現した。しかし、全体でみれば貯蓄から投資へのシフトは進まず、かつてのような日本株市場の活気は取り戻せていない。

マネックスグループ(8698.T)の松本大社長は、日本企業が企業価値を一段と高めて株式市場を活性化させるには、個人投資家の意識改革が必要と指摘。個別企業に対する理解を深め、株主としての権利を行使する「アクティビスト」になるべきと話す。 

19日に実施したロイターとのインタビューで語った。主なやり取りは以下の通り。

──平成における個人投資家にとって、大きな出来事を3つ上げるとすれば何か。

「手前みそになってしまうが、1つはオンライン証券の登場だ。証券会社の店頭まで行かなければならなかった株式投資が、家の書斎からでも(株式の売買を)できるようになった。株式投資への敷居を大きく引き下げ、破壊的な変化を生み出した」

「もう1つは、細かいが、単元株制度が導入されたことだ。それ以前は、1株あたり純資産が5万円を切ってはいけないと商法で決められており、ヤフーのような、純資産は小さいが知財価値が大きくて企業価値が高い会社だと1売買単位が数千万円などとなり、個人ではとても手が出なかった。単元株制度の導入で投資単位の壁が壊れたことは、個人にとっては極めて大きなインパクトがあった」

「もう1つと言われるととても難しいが、あえて3つ目を挙げるとするなら、村上世彰さんだ。村上さんの行動が、クローズアップされたことだろう。アクティビストなどといったものは海の向こうのものだと思っていたら、日本語で、日本で行われたというのは大きな出来事だったと思う。村上さんに関してはコントラバーシャル(賛否両論)だが、やったことのいい悪いは置いておくとして、日本の個人に、株式投資とはこんなこともできるんだ、あるんだ、と気づかせた一つのきっかけになった」

──マネックス証券は今年で創業20年周年となる。個人投資家にどのような変化を感じるか。

「オンライン証券の登場によって、プロと似たような環境で売買できるようになり、個人投資家の裾野が広がった。投資リテラシーも上がり、個人と機関投資家の差が小さくなってきた。一方、インデックス(指数)取引が広がり、日本の個人にも、個別株ではなく日経平均レバレッジ・インデックス連動型ETF(上場投資信託)などをトレーディングする人が増えてきた」

「資本市場にとってインデックス取引は1つのすばらしい発明だったが、それが行き過ぎると、個別企業の価値をみる、考えるということに対するエネルギーが減る。資本市場と投資家の関係という意味では、退化、後退したと思っている。これは日本だけでなく世界的な問題であり、機関投資家を含めた投資家全員の問題として考えていかなければならないテーマだ」

「インデックス化の進展と、ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)が重要になってきたことには関係がある。インデックス投資家は個別株を選べないので、議決権行使やエンゲージメントによって保有株の価値を上げたり、価値が下がるのを防いだりする。その時にESGなどの尺度で測って意見を述べる。投資コストが下がるとか、ESGやSDGsといった概念が世界に広がっていくとかプラスの面も多かったが、行き過ぎると価格発見機能がなくなるなど弊害も出てくる」

──これからの株式投資のあるべき姿は。

「日本の証券会社として社会に貢献できるのは、1つの切り口で言うと、日本企業のPER(株価収益率)を引き上げ、国際競争力を高めることだと考えている。近年のインデックス取引の広がりで、個人が個別の企業価値を見極めることにエネルギーを使う時間が減った。個人投資家が主体的に企業価値を高める働きかけができるようにすることも、証券会社の重要なミッションだ」

「具体的には、個人投資家が企業にモノを言えるようにしたい。『個人投資家もアクティビストになろう』と言っている。実際、アクティビストで著名なブーン・ピケンズの生涯リターンは、ウォーレン・バフェットよりいいと言われている。個人投資家もリターンが上がる可能性が高まるとなれば、企業のことをよく研究するようになる。企業のことが分かると、さらに(株を)買えるようになり、マーケット全体のPERを上げることにつながり得る」

──日本経済全体を振り返った時、平成とはどういう時代だったか。この先の展望は。

「日本経済は右肩下がりの部分もあったが、その同じ過程で、『普通の国』になってきた。日本は戦争に負けてボロボロになったところから、世界2位の経済大国になるまで奇跡的な復活を果たした。それがあまりにも大きい成功体験だったので、自分の国のやり方をなかなか変えられなかった。年功序列、男性社会、料亭政治など、あらゆることが陳腐化してきていたのに、我々はそれで成功したからいいのだと(変えられなかった)」

「ただ、そんな成功体験がある人も減ってきた。若い人は、日本が強かったことをあまり知らない。平成は、戦後・昭和という奇跡の時代から転がり落ちるように普通になっていった、いろいろな意味で『ノーマライズした時代』。それでも日本は世界第3位の経済大国であり、人々は教育水準も高く、勤勉。次の時代は日本がどのように頑張っていくか、再挑戦の時代になる」

松本大(まつもと・おおき)1963年生まれ。87年東京大学法学部卒。ソロモン・ブラザーズを経て、ゴールドマン・サックスに入社。94年、同社ゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス証券を設立。

杉山健太郎 編集:伊賀大記
https://jp.reuters.com/article/monex-interview-idJPKCN1R30T5
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/631.html

[経世済民131] FRBの明るい景気認識の裏にある「不都合な真実」米国債、高利回り求める個人投資家買い ビットコイン「冬の時代」85%減

トップニュース2019年3月22日 / 17:23 / 3時間前更新
焦点:
FRBの明るい景気認識の裏にある「不都合な真実」
Reuters Staff
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[サンフランシスコ/ワシントン 21日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、20日までの連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、ファンダメンタルズは「非常に強く」、経済は「良好な状態」にあり、先行きは「明るい」と強調した。

その半面でFRBは、米経済が急減速していると認め、物価上昇率は引き続き2%の目標に届かず、賃金は増加しても失業率は上がると予想している。

一体どういうことかと言えば、FRBが「ニューノーマル(新標準)」を完全に受け入れている証拠なのだ。新しい世界では、物価上昇力がずっと弱いままで恒久的に経済成長が鈍化し、金利も低水準にとどまり続けるので、FRBは次の景気悪化局面が到来した際に、伝統的な手段で金融緩和を実施する余地はほとんどない。

これは、2012年の導入以降物価目標を達成できずに時間が経過してきた点を踏まえれば、FRBの信認を脅かす事態だ。また解消されない需給ギャップを埋めるには、財政や社会福祉といった金融政策以外の措置が必要なのではないかとの議論も高めている。

「この問題でFRBには反省が求められる気がする」と話すのはオレゴン大学のティム・デューイ教授(経済学)だ。デューイ氏は、FRBが見通しを突然下方修正したのは、既に利上げが行き過ぎだった可能性があることを物語るとみており、「経済の定常的な停滞という説がある部分で現実化しているのは間違いない」と主張する。

<新たな不安要素>

今回のFOMCでは17人のメンバーのうち少なくとも9人、最大で15人が、政策金利見通しを引き下げ、大半が年内の利上げはないと見込んだ。大勢としては米経済が昨年に比べて勢いを弱め、今年の成長率は2.1%前後になると予想している。

成長にブレーキをかけて物価を抑える上で、どこまで利上げする必要があるかといったことは、もはや過去の話題と化した。どちらかと言えばFRBの懸念は今、物価水準が依然として企業や家計の先行き期待を損なうほど低いという逆の方向にある。企業や家計が支出に対してより慎重な姿勢になれば、新たな成長の足かせになりかねない。

一部のアナリストにとって、こうしたFRBの方針転換はある種の警戒信号と受け止められている。

ステート・ストリートのグローバル・マクロ・ストラテジスト、マービン・ロー氏は「FRBが口に出さずに把握していることは何だろうか」と疑心暗鬼の状態。バンク・オブ・ウエストのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「われわれは何か新たな不安要素が出てくるのを覚悟していると思う」と述べた。

金融市場も同じ見方で、短期金利先物は急速に来年の利下げを織り込みつつある。

<異なる世界>

ただ逆に一連のFRBの態度で、「不都合な真実」が確認できたように思えるとの声も出ている。それは世界の経済成長が既に峠を越え、各国は低成長モードから抜け出せずに失速を防ぐためには、財政政策への依存を続けるという状態だ。さらに今後景気後退(リセッション)が起きれば、経済立て直しという負担まで背負わなければならない。

PGIMフィクスト・インカムのチーフエコノミスト、ネーサン・シーツ氏は、一時的な浮き沈みが過ぎた後でも視界は開けてこないと指摘する。FRBの考えでは、長期間2%足らずの成長が続く見通しになっており「米国のこれまでの基準に照らせば、素晴らしいとは言えない」という。

日本や欧州も似たような苦境に見舞われている。そこで、低金利の長期化を考えると、より規模が大きく経済的に活力のある国がインフラや教育など明確な公益をもたらす投資のために、借り入れを増やすのが妥当ではないかとの世界的な議論が日増しに強まっている。

国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランチャード氏は最近のピーターソン国際経済研究所における記者懇談会で「現在は異なる世界になっている。われわれは金融政策が非常に制約され、財政(政策)が中心になる状態へと向かう」と語った。

そして目下の問題は、現在の低成長がずっと継続し、FRBが最新の見通しで示した「ソフトランディング」へとつながるかどうかだ。

トランプ政権からは今年の成長率が3%付近を維持し、17年の時限的な所得減税を恒久化すれば、数年間はさらに成長が加速してもおかしくないと、すごぶる強気の予想も出ている。

それはともかくとしても、昨年米国や各国の当局者が言い始めた世界同時成長の時代が幕を開けたというストーリーは、現実離れしてきたことが証明されるのではないか。

バンク・オブ・ウエストのアンダーソン氏は「米国が利上げを停止しても、世界的な経済の下振れに歯止めをかけるには不十分だ」と述べた。

(Ann Saphir記者、Howard Schneider記者)
https://jp.reuters.com/article/frb-positive-spin-idJPKCN1R30GA?il=0

 


トップニュース
2019年3月22日 / 16:23 / 3時間前更新
焦点:
米国債、高利回り求める個人投資家の買い継続へ
Reuters Staff
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[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米国債は個人投資家からの引き合いが強く、昨年は投資家の種類別で個人の割合が過去最高を記録した。Tビル(財務省短期証券)など期間の短い銘柄を筆頭に利回りが他の金融商品に比べて高い水準を保っているためで、今年も個人投資家が積極的に購入する展開が続きそうだ。
今年のTビル週例入札は個人投資家が記録的なペースで落札を続けている。期間1年以内の米国債の金利が10年ぶりの高水準となり、銀行預金や譲渡性預金証書(CD)をはるかに上回るリターンが見込めるからだ。
米連邦準備理事会(FRB)とモルガン・スタンレーのデータによると、米国債の昨年末の供給量は1兆3600億ドルと、2015年の約6880億ドルから2倍近くに増えた。一方、米証券業金融市場協会(SIFMA)のデータによると、昨年の個人投資家の購入額は約7000億ドルで、保有残高は2兆近くと過去最高に達した。
FRBは20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で年内の利上げを見送る考えを示したが、米国債は利回りが他の金融商品を上回る状態が続くとみられる。30年近くにわたり米国債を大量購入してきた主要中銀など外国人投資家は2014年以降、米国債を売り越しているが、高利回りはこうした外国人投資家からの需要減退の影響を和らげるのに役立ちそうだ。
米政府は今後10年間にわたり大量の借り入れを行い、投資家は新発債の消化を迫られる。議会予算局(CBO)によると、米財政赤字は向こう10年間で12兆ドル増加し、過去50年間で平均2.9%の対国内総生産(GDP)比は年4.4%に達する見通しだ。これは年1兆ドルの赤字に相当する。
しかしBMOキャピタル・マーケッツの債券ストラテジー担当副社長のジョン・ヒル氏は「大規模な財政赤字が生じることについては事前に周知が行き渡っており、新発債は国内で消化可能だと考えている」と話す。米国債はマクロリスクをヘッジする極めて当然な手段であり、こうした機能は今後も変わらないという。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8208/8132/Individual%20U.S.%20T-bill%20allotment.png

例えば債務管理局のデータで今年1─2月のTビルの入札結果をみると、個人投資家の落札額は約400億ドルで、前年同期の2.5倍近い。特に1カ月物Tビルは需要が旺盛で、1月末の入札では450億ドルの起債額のうち個人投資家が33億4000万ドルを落札、落札比率が過去最高を更新した。
当局による過去10年間の大規模金融緩和で金利が非常に低くなり、投資家は証券口座などに余剰なキャッシュを抱えていた。しかし昨年5月に米10年国債の利回りが節目の3%を超えると、国内の個人投資家はこぞって米国債に資金を注ぎ込んだ。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/mkt/11/8402/8326/Pasted%20Image.jpg
INTL・FCストーン・ファイナンシャルのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ビンセント・デュラード氏は「米国の金利は10年間にわたりゼロ近辺が続き、実際のところキャッシュバランスに注意を払っていなかった」と振り返り、低いデュレーションリスクで3%近い利回りが手に入るなら2年物米国債に投資するのは当然だと述べた。
デュラード氏によると、個人投資家の金融資産に占めるキャッシュの比率は昨年9月に30.5%と2007年9月以来の低水準となり、長期的には米国債相場へのキャッシュ流入が細る可能性がある。これに対して株式への資産配分比率は52%と過去20年で最も高く、株式市場が反転し下落すれば、4兆ドルが米国債市場に流入する見通しだという。
モルガン・スタンレーの金利ストラテジー部門の責任者、マシュー・ホーンバック氏は、米国債は3カ月物Tビルから10年物までいずれも利回りが金融危機後の平均を上回っていると指摘。2年物米国債の利回りは足元で2.4%とS&P総合500種の配当利回り(1.9%)を上回っていて米国債に投資妙味があり、個人投資家は今年も米国債でナンバーワンの買い手になると予想した。

https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/editorcharts/USA-TREASURIES-DEFICITS/0H001PBHM588/eikon.png
(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)

ビジネス2019年3月22日 / 20:08 / 24分前更新
ユーロの役割、拡大する必要=ユーログループ議長
Reuters Staff
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[リスボン 22日 ロイター] - ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のセンテノ議長は22日、欧州はドルの支配や全般的な不透明感に見舞われており、経済・通貨統合の完成を通じて、ユーロの国際的な役割を拡大する必要があるとの認識を示した。

議長はリスボンの会合で「貿易戦争のリスク、条約や国際アライアンスの破棄の脅威、代理紛争が、新たな必要条件、新たな課題を生み出している」と指摘。「米国の政策が不足しており、信用が低下している」との見解を示した。

「世界における欧州経済の重要性を踏まえれば、ユーロはしかるべき役割を果たしていない」とし「私たちは不透明感に直面しており、ユーロの役割を強化することで、貿易や経済統合のための好ましい環境を整えられる」と述べた。

議長は、ドルに取って代わることが狙いではなく、ドルと共存してユーロの卓越性を高めることが狙いだとし、そのためには欧州の統合強化と共通予算制度が必要だとの認識を示した。


https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-wklyoutlook-idJPKCN1R30K5?il=0


2019年3月22日 The Wall Street Journal
ビットコイン「冬の時代」、もがく仮想通貨業者 仮想通貨の時価総額は2018年1月から85%減少
ビットコイン
Photo:Reuters
 ビットコインは今、誕生から10年の歴史で最長のスランプに陥っている。そのため最も熱心な支持者でさえ、仮想通貨で世界中に破壊的影響力をもたらす夢を棚上げし、低迷期を耐えるべく倹約生活を余儀なくされている。

 仮想通貨が「冬の時代」に入った兆候はあちこちに見られる。熱狂的な高値に沸いた2017年から状況は一変した。19日のビットコイン価格は4000ドル(約44万6000円)をわずかに割り込む水準。2017年12月につけた最高値1万9800ドル付近から約80%も下落している。調査会社トレードブロックによると、仮想通貨の時価総額はピークの2018年1月から85%減少。米国最大手の仮想通貨取引所の売買高は15カ月連続で減少している。

 同じように打撃を受けたのが、ウォール街からシリコンバレーまでビジネスのあり方を変えるとしていた多くの企業や技術プラットフォームだ。この若い業界はビットコインのような仮想通貨を発行することで資本を調達する「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」を通じ、数十億ドルの資金を集めて成長してきた。だがICOは今や盛り上がりに欠き、仮想通貨を経済の主流に押し上げるはずだった壮大なハイテク計画の重要な資金源が枯渇しつつある。

 ビットコイン相場を主にけん引してきたのはモメンタムだが、現時点ではそれが失われている。主要な機関投資家が仮想通貨になかなか手を出さないうえ、規制が不透明なせいで潜在的なユーザーからも敬遠されている。仮想通貨ブームを受けて乱立した業者は次の相場回復まで逆風にさらされる。仮想通貨の愛好者は相場回復がどこからいつやってくるのか見当もつかない。

 ビットコインの価格は2016年12月の水準はまだ大幅に上回っているものの、最近の急落で2度と持ち直さないのではないかとの懸念が高まっている。市場の長期的存続は、ビットコインの具体的用途の開発とそれを支えるブロックチェーン技術にかかっている。

 仮想通貨市場はそもそも非常に不安定な性質がある。2011年にはビットコイン価格が約95%急落したことがある。2013年12月から2015年1月にかけては85%下落した。ビットコインを決済手段にしていた違法薬物売買サイト「シルクロード」が閉鎖に追い込まれたほか、仮想通貨取引所マウントゴックスで巨額のビットコインが消失するなどの不祥事も起きた。

 だが数々の波乱に見舞われた初期に比べ、仮想通貨市場ははるかに規模が大きくなっており、今やその影響力は広範囲に及ぶ。欧米諸国は仮想通貨に暗黙の、あるいは明確な承認を与え、ベンチャーキャピタル(VC)もこれを支援している。基幹技術のブロックチェーンは、サプライチェーン管理や資本市場の取引など多様な分野に応用する道が見つかりつつある。

 だが過去1年の価格急落で一部の仮想通貨企業はコスト削減にかじを切った。「まだ(オフィスに)コーヒーはある」。USBメモリに似た仮想通貨用ウォレットを製造する仏企業レッジャーのエリック・ラルシュべキ最高経営責任者(CEO)はこう語る。「だがそれ以外は廃止した」。交通費や広告費も切り詰めているが、何とかレイオフは回避したという。

 「一日一日何とか対処している」とラルシュべキ氏は話す。同社は2018年1月に7500万ドルを調達した。その資金と製品の売上高でこれまでは会社を維持できたが、今は節約を重視する経営を強めている。「18カ月後も会社が残っていてほしいと願う」

 一方で、この機に乗じて規模の小さい同業者を次々に買収するケースも見受けられる。仮想通貨ブームのさなかに多額の資金を集めていた企業だ。仮想通貨ウォレットサービスやトレーディングデスクなどを運営する米サークル・インターネット・フィナンシャルは、総額2億4600万ドルをゴールドマン・サックスなどの投資家から調達した。昨年は仮想通貨取引所のポロニエックスを買収。今月にはクラウドファンディングを手がけるシードインベストの買収を終えた。

 ICOによる資金調達を成功させた企業も持ちこたえている。ブロックチェーンのソフトウエアを開発するブロックワンはICOで推定40億ドルを調達。同社のプラットフォーム「EOS(イオス)」の開発にこの資金を充てている。メッセージングアプリ運営のテレグラムは昨年17億ドルを調達。これを元手にサービスを拡充させ、独自のブロックチェーン・プラットフォーム構築を進めている。

 これに対し、ICOに資金をつぎ込んだ投資家はあまり運がよいとは言えない。仮想通貨イオスは2018年4月に最高値21ドルを付けたが、現在は3.77ドル付近に急落している。また、2017年にICOで2億ドル余りを調達したテゾスの仮想通貨は、2017年12月には11.21ドルまで上昇したが、現在は0.55ドル付近に低迷している。

 調査会社トークンデータによると、2018年はICOに120億ドルが流入したが、今年はまだ1億ドルにとどまっている。同社が今年調査した50件のICOのうち会社が存続しているのは13社のみ。破綻率は74%に上る。2018年の破綻率は55%だった。

 「人々は冬を乗り切るための自衛策を探している」。こう話すのは、カナリーデータと称するオープンソースのデータ分析事業を最近始めたばかりのガレン・ムーア氏。同事業を育てるのが目標だが、当面は生活費を稼ぐためコンサルティングの仕事も続けている。

 調査会社ディアによると、ビットコイン採掘業者の売上高もこの15カ月間減少し続けている。

 2014年にデータ調査サイトを立ち上げたボアズ・ベッチャー氏は、2016年に同サイトを仮想通貨採掘大手ビットメインに売却。だが最近、ビットメインの業務縮小に伴って解雇されたという。

 同氏は浮き沈みの激しいこの業界で生き残るのは最大手だけだと考える。「ビッグプレーヤーはどんどんビッグになる。この業界はトップになれるかどうかの競争だ」

(The Wall Street Journal/Paul Vigna)
https://diamond.jp/articles/-/197615
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/632.html

[不安と不健康18] 足に異常が現れる6つの怖い病気、50代からが特に危険!
2018年6月6日 阿保義久 :北青山Dクリニック院長
足に異常が現れる6つの怖い病気、50代からが特に危険!
足に異常が現れる病気に要注意
「体の衰えは足から始まる」と様々な観点から言われます。例えば、ウイリアム・オスラー博士の「ヒトは血管と共に老いる」という有名な言葉がありますが、歩行など主として足を使う運動は、動脈と静脈、両方の老化を予防することが分かっています。

 また、足に現れる病状の原因が他の臓器の異常であることがありますし、足の症状が体の他の部分に潜んでいる病状を示唆することもあります。そして、足に起きたトラブルが原因で命に関わる疾患が発生することもあります。

 直立二足歩行が可能な唯一の生物であるヒトにとって、生物として存在する上で足がいかに重要であるかは言うまでもありませんが、健康を維持するという観点においても足の果たす役割は非常に大きいのです。血管、神経、内臓の病気と足に表れる症状が密接に関係することはしばしばありますし、足の症状を放置していたために命を落とすということも起こり得ます。

 そこで今回は、特に50代以上の方に注意していただきたい、足に異常が現れる怖い病気を6つ挙げて紹介したいと思います。

(※注)「あし」を漢字で書く場合、「足」がしばしば使われますが、「脚」や「肢」と表すこともあります。一般的には、足首からつま先の部分を「足」、足首から股関節までを「脚」と表記します。今回は、あし全体を指す意味で「足」に統一して表記します。

急に片足が動かなくなったら119番!
足の病気ではなく、「脳卒中」の初期症状
 ちょっと想像してみてください。風呂上りにリビングのソファでゆっくりくつろいだ後、床に就くために立ち上がろうとすると、突然片足に力が入りにくくなりました。そのうちに、全く力が入らなくなり、歩くことはおろか、しっかり立つこともできなくなってしまいました。

 一体何が起きたのでしょう。これは、足の病気ではありません。脳卒中の典型的な初期症状です。

 脳卒中は、脳血管の病気で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、TIA(一過性脳虚血性発作)に分類されます。中でも脳梗塞が最も多いのですが、発症してしまったら、脳卒中のいずれの場合でも、後遺症を残さずに回復するためには、いかに早く治療を開始するかが大切になります。足に力が突然入らなくなったけれど一晩休んで様子を見よう、という考えは大変危険です。そのような症状に気付いたら、即座に救急要請して脳神経外科専門医のいる病院に搬送してもらうべきです。

 そもそも、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣などの動脈硬化発症リスクのある方は脳梗塞が発症しやすいので、特に注意が必要です。動脈硬化は血栓症(血液が突然固まって血管の中を閉塞させること)の発生につながります。脳梗塞は脳血管の血栓症ですが、生活習慣病のコントロールができていない人は40〜50代でも脳梗塞を発症することがあります。

長時間フライト後の「片足の腫れ」に要注意!
「肺塞栓症」で突然死に至る可能性も
 足に異常が現れる病気には、こんなものもあります。長時間のフライトを終えて空港からの帰宅途上、片足が急に腫れているのに気付きました。歩きにくい状態でしたが、自宅までもう少しなので、最寄駅から頑張って歩いて帰っていたところ、突然胸痛に襲われ意識が遠のいて倒れてしまいました。これは、深部静脈血栓症から「肺塞栓症」を発生した典型的な例です。

「エコノミークラス症候群」(ロングフライト症候群の方が適切な表現ですが)としてもよく知られる病気で、長い時間狭い場所で動かずにじっとしていると、脱水などが引き金になって足に溜まった血液が固まってしまう(血栓症)ことが原因で起こります。特に足の中心を走る深部静脈に大きな血栓ができた場合には、それが飛んで肺の血管を完全に閉塞させてしまうことがあります。これにより、突然死に至ることは珍しくありません。

 この疾患は、特に持病などがない健康な方でも起きることがあります。予防としては、長時間同じ姿勢で座りっぱなしなどは避ける、水分を十分取って脱水を避ける、足を適度に動かして筋肉をよく使う、などがポイントです。長時間座りっぱなしの後、急に片足が腫れてきたら速やかに医療機関を受診しましょう。

足に痛みがあって休み休み歩く状態なら、
心筋梗塞や脳卒中の予兆である可能性も!
 足が痛くて休み休み歩くような症状が出たら、これは動脈の病気のサインかもしれません。「間欠性跛行」と呼ばれるこの症状は、高齢者に多い脊柱管狭窄症など腰椎の疾患でも現れますが、50代頃から片足の痛みが頻繁に感じられるようになったら、まずは動脈の血行障害を考えます。

 生活習慣病を30代頃から抱えていた方は特に、40〜50代でも動脈硬化による症状が現れてきます。動脈硬化による足の典型的な病気は「閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)」で、血流が悪くなることにより、足の冷え・しびれ・痛みなどの症状が現れます。重症化すると、安静時でも強い痛みが出て、さらに悪化すると潰瘍や壊疽(えそ:血行障害により足の組織が死滅してしまうこと)に進展し、足を切断しなければいけないことがあります。

 命に関わる心筋梗塞や脳梗塞の前駆症状として、この足の動脈硬化症を捉えることが重要だとしばしば言われています。心筋梗塞や脳梗塞は、症状なく徐々に悪化していきます。そして、不意に血栓症による血行遮断により忽然と発症すると、その後短時間で、死や重度の後遺症に至るという悲劇がしばしば生まれます。足の痛みを感じたら、心筋梗塞や脳梗塞の発症を意識して、自身の動脈硬化のリスクを評価しつつ早期に治療を開始することが肝要です。足の痛みは心筋梗塞や脳梗塞の予兆かもしれないのです。

「しびれ」は腰のトラブルを疑え
 立っている時はまだいいものの、座ると決まって片足のしびれが強くなり居てもたってもいられなくなる――。こうした症状がある人は、「腰の病気」が原因かもしれません。これも前述の疾患群と同じで片足に限って症状が出るのが特徴です。発症時には、腰は全く痛くないので、原因は足にあって腰ではない、と考える方が多いようです。

 腰の骨は腰椎と呼ばれ、5個の骨(椎体)で構成されます。椎体の内部には脊髄が走っており、脊髄から伸びる神経は椎体と椎体の間からさらに末梢に伸びていきます。特に腰椎から出てくる神経は足に分布します。すなわち、「椎間板ヘルニア」や「変形性腰椎症」など腰椎のトラブルによって症状が足に出ることは珍しいことではありません。足の痺れを自覚したら、まず腰椎の異常を考えるべきでしょう。足の痺れから足の痛みに症状が発展することも多く、重症化すると歩行障害も発生します。

 日頃から、姿勢に注意して腰椎の並びを整えること、ストレッチングなどで腰椎周囲の筋肉を柔軟に保つこと、筋力を衰えさせないようにすること、などが腰椎疾患による足の病状の予防として大切です。また、足の痺れの代表的な疾患である椎間板ヘルニアは、軽症であればレーザーや内視鏡など体に優しい治療で管理することができるようになっています。

足のボコボコ「下肢静脈瘤」を治せば、
こむら返りも痒みも消える
 足の血管がボコボコと気持ち悪く浮き上がる病気。これは「下肢静脈瘤」と呼ばれる、実は非常に多くの方が患っている疾患です(比較的最近の調査で罹患人口1000万人に及ぶという報告もあります)。この病気は、基本的に命に関わる疾患ではないですが、自然に治ることはなく、放置していると徐々に悪化して重症化し、生活の質を著しく落とすことになるので軽視すべきではありません。また、下肢静脈瘤のある方は前述の深部静脈血栓症の発症リスクが相対的に大きいこともわかっています。

 下肢静脈瘤は、見た目以外にも、毎晩のこむら返り、慢性的な足の痒みなど、日常的にストレスの多い症状の原因でもあります。ですので、下肢静脈瘤を治療すると、毎晩悩まされていたこむら返り(足がつること)が突如として消え、いつも悩んでいた足の痒みもいつの間にか感じなくなって生活の質が大幅に改善されます。

 下肢静脈瘤の予防法としては、立ちっぱなしを避ける、適度に運動する、圧迫力のあるストッキングや靴下を利用する、などが有効です。一旦発症したら基本的には治りません。最近では入院せずに外来での血管内治療で管理できるようになりましたので早期治療がおすすめです。

足の「むくみ」は全身の病気にかかわる!
腎臓病、心不全、肝機能障害が原因のことも
 むくみは多くの方が経験するもので、生理的な一過性の症状である場合もあります。ただし、足のむくみが慢性化したら、下肢静脈瘤に関連する「慢性静脈機能不全症」の他に内臓に問題があることも考えなければいけません。

 慢性静脈機能不全症は静脈の逆流を防ぐ弁の機能が低下するだけでなく、足の筋肉が衰えて血液を心臓に戻すポンプ力が低下すると発症します。老化現象の一つとも言えますが下肢静脈瘤と同様に、適度に運動して足の筋力を維持する、足を適度に圧迫サポートするなどが予防法として重要です。

 一方で、内臓の病気である、「腎臓病」「心不全」「肝機能障害」など主要臓器の異常や機能障害がむくみの原因となることがあります。それらは、慢性化することで臓器不全を来し寿命を著しく短くする可能性もあります。足のむくみが持続する場合は、まず内科を受診して、主要臓器に異常が見られないかスクリーニングすることをお勧めします。

 また、甲状腺機能の低下でも足のむくみが発生することがあります。上述の内科受診時に併せて内分泌疾患の鑑別も大切でしょう。

足に関わる疾患の予防は、認知症予防にもなる!
毎日20〜30分程度のやや速めの歩行を
 今回は足の症状に注目して、看過してはいけない疾患を取り上げました。これら足に関わる様々な疾患全てを予防するためには、まさに「足をよく使うこと」が重要なポイントになります。散歩が健康に良いということは日常的に耳にするでしょう。毎日連続して20〜30分程度のやや速めの歩行を励行することで、健康維持に十分な予防効果が得られることがわかっています。

 運動器として最も重要な足の機能が弱まると、「ロコモティブシンドローム」と呼ばれる移動機能低下が生じ、それにより筋力及び筋量が低下する「サルコペニア」も併発します。そうなるとさらに移動能力が低下して、サルコぺニアも悪化するという悪循環が生まれます。ロコモティブシンドロームやサルコペニアにより社会活動の範囲が大きく狭まる状態を包含して「フレイル」と表現することもあります。

 フレイルは、気力の低下が進んで最終的に心身両面での虚脱症状に陥ることに、特に着目した概念です。このフレイルこそ、現代社会で大問題である認知症に大きく影響していることが指摘されます。すなわち、足をしっかり使って、歩行などの運動習慣を継続することが認知症予防のキーとなるのです。そして、歩行により動静脈の機能も改善することから、循環器・呼吸器などの主要臓器のみならず全身のあらゆる臓器のはたらきが整います。

 足の症状が全身の病状を表すことがあり、そして足を使うことで全身の健康が作られるというのは非常に示唆的なことですね。

(北青山Dクリニック院長 阿保義久)
https://diamond.jp/articles/-/171607
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/731.html

[政治・選挙・NHK258] ニュージーランド銃乱射で考える「在日外国人に生活保護は必要か」結核の集団感染、2割が外国人
2019年3月22日 みわよしこ :フリーランス・ライター
ニュージーランド銃乱射で考える「在日外国人に生活保護は必要か」

ニュージーランドのモスクで発生した銃乱射事件は、日本にとって対岸の火事ではない。外国人が日本の生活保護を食い荒らす、といった脅威論は実際にあるからだ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ニュージーランド銃乱射で考えた
誤解が多い「外国人と生活保護」

 3月15日、ニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで銃乱射事件が発生し、50人が死亡した。容疑者は28歳になる白人至上主義のオーストラリア人男性で、犯行の様子をインターネット中継していた。また容疑者は、70ページを超える犯行声明の中で、移民の脅威を強調していた。ニュージーランド首相は、移民を排斥する考えを断じて認めない姿勢を示し、同国では銃を返納する国民が増えているという。

 移民脅威論と、結局は自分の見たいものだけを見る道具になりがちなインターネットやSNS、そして銃のうち、どれが原因であるとも言い切れない事件だ。しかし銃がなければ、少なくとも銃乱射は起こらなかった。

 4月から技能実習制度の拡大を控えた日本にとっても、対岸の火事ではない。2018年6月、日本には約264万人の外国人が在留していた。この総人数は、京都府の全人口(約260万人)を超える。

「外国人が増えると、外国人の生活保護が増えるのではないか」という懸念は、しばしば語られるが、おそらく現実のものとはならない。生活保護の対象となる外国人は、「永住者」「永住者の日本人配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」と、戦前の日本に統治されていた国々の国民で、戦前から日本に在留していた人々である「特別永住者」および子孫に限定されている。2018年6月、生活保護の申請資格がある外国人の合計は、約145万人だった。日本人約1億2000万人の1%強に過ぎない。

 このうち、国際情勢と関係して話題になる「特別永住者」は、制度が創設された1991年には約70万人だったが、その後は減少する一方で、2017年には約33万人となっている。高齢化・単身化も進んでおり、今後、増加する可能性は極めて薄い。

 生活保護を必要とする事情の多くは、「単身・高齢・無年金または低年金」だ。日本では1961年に国民皆年金制度が成立したが、外国人も対象になったのは1982年だった。このときに60歳を超えていた外国人は、加入できなかったことになる。「単身・高齢・無年金または低年金」は、生活保護全体で目立つ背景だ。外国人の場合は、日本人よりさらに無年金・低年金リスクが高かったということだ。

 「外国人が増えると、子どもが生まれたり本国の家族を呼び寄せたりして際限なく増加し、日本の生活保護を食い荒らす」といった懸念も、あまり実現しそうにない。一般的に、外国の福祉制度によって生きることは、魅力的な選択肢ではないからだ。また外国人には、生活保護の申請権はあるが審査請求権はない。最初から、日本人と同等の適用ではなく、いわば「日本人のついで」なのだ。

無保険の外国人は
生活保護の医療単給で救済できない

 生活保護には、生活費・住居費・医療費から葬祭費まで8つのメニューが含まれている。通常の生活保護のイメージは、この8つを全部使用し、月々家賃補助と生活費を受け取るというものだ。しかし、それぞれのメニューに対して「それ1つだけ(単給)」という使い方も可能だ。

「生活保護のメニューのうち1つだけ」という使い方の典型は、「医療だけ生活保護」というもので、「医療単給」または略して「医単」と呼ばれる。

 医療単給は、「医療費を支払うと、生活保護基準以下になってしまう」あるいは「生活保護を適用するわけには行かないが、医療がないと死んでしまう」という場面で使用される。たとえば、反社会団体のメンバーは、その状態のままでは生活保護の対象にならない。しかし、重大な病気で医療が必要になり医療費が支払えない場合、「反社会団体だからダメ」という運用をすると死んでしまう。本人は脱退したいのに、脱退させてもらえない場合もある。

 この場合には、福祉事務所が必要と認めたら本人の意思によらず生活保護の対象とする「急迫保護」によって、「医療が必要な間は、急迫保護によって、1回限りの医療単給の対象とし続ける」という道が残されている。

 問題は外国人の場合だ。現在、日本に3ヵ月以上滞在している外国人は、少なくとも国民健康保険に加入する必要がある。しかし、何らかの理由で無保険になっている場合、あるいは保険料が支払われておらず「資格証」になっている場合、現在は生活保護の医療単給で救済することができない。「国民健保が切れていたら自己責任」という主張は、一応筋が通っている。

 しかし医療に限らず、外国人が劣悪な生活状況にあることを放置すると、日本にいるすべての人々の健康状態が低下する。3月16日、毎日新聞で「結核の集団感染、2割が外国人」というショッキングな報道があった。2016年〜2018年の3年間で発生した日本の結核集団感染100件のうち、外国人の通う日本語学校や技能実習を行っている企業などで発生したものが19件で、感染は日本人にも拡大した。病原菌は人間の国籍を気にかけない。

外国人にはない
「最後のセーフティネット」
 このような問題を、生活保護だけで解決するのは無理だ。むしろ生活保護は、他の制度でどうにもならない人々を受け止める「最後のセーフティネット」なので、他の制度を充実させることが望ましい。外国人が日本在留3ヵ月で国民健康保険に加入できるようになったことの背景は、「そうしなければ、生活保護しかなくなる」という点にもある。

 しかし、低賃金労働や劣悪な住居などの問題を放置しておくと、疾患にかかりやすくなる。感染症にも感染しやすくなる。だから医療だけではなく、労働条件や賃金、住まいの快適さと安定など、あらゆる面を「健康で文化的」にする必要がある。そうしなければ、日本のどこかが「健康で文化的」でなくなり、日本全体の「健康」「文化」のレベルが低下する。

 とりあえず現在の問題は、日本の多くの制度に最初から見放されている外国人には、「最後のセーフティネット」としての生活保護も存在しないことだ。

数字で見る「外国人と生活保護」
世帯主以外は全員日本人のケースも
 外国人の増加に伴って、実際に生活保護で暮らす外国人は増えているのだろうか。

 世帯数を見ると、2002年の2万3176世帯から少しずつ増加し、リーマン・ショック後の2009年から激増した。2011年には4万3479世帯であったが、その後、年々の増加は緩やかになり、2017年度には4万7011世帯となっている。

 なお、この「世帯数」は、世帯主が外国籍の生活保護世帯数なので、「世帯主以外は全員日本人」という場合もある。

 冒頭で述べた通り、そもそも生活保護の対象となる在留資格は狭い。そして、生活保護でも救済できないとなると、たとえば重い疾患を治療できずに放置することになる。

 では、外国人は生活保護を必要としやすいのだろうか。前述の2002年度・2011年度・2017年度、外国人登録者数は122万人・136万人・223万人だった。2002年に対する増加率を見ると、たとえば2017年度では、外国人登録者数が1.9倍なのに対し、世帯主が外国人である生活保護世帯数は2.0倍になっている。若干、日本人よりも生活保護へのニーズが高いのは確かだ。言語・生活・文化など、あらゆる場面でハンデを負いやすい人々であることを考えると、そこに不自然さはないように思える。

 とはいえ、「日本の社会保障制度で、外国人を救済すべきかどうか」という点については、様々な点から再検討が必要なのではないかと、筆者は考えている。「救済すべきではない」と言いたいのではなく、外国人の「最後のセーフティネット」を含めて、社会保障制度の再考が必要だということだ。

 多くの国で、外国人は生活保護のような公的扶助の対象とならない。「だから日本も」という声は多いのだが、筆者には早計すぎるように思える。というのは、「最後から1歩、2歩手前」に数多くの分厚いセーフティネットがあって、もちろん外国人も利用することができ、「公的扶助しかない」という状況に達しにくい国もあるからだ。

 たとえば失職しても、少なくとも3年間は再就労支援やそのための教育を受けることができる国では、働ける年齢層が「公的扶助しかない」という状況に陥ることは考えにくい。

 日本人に対しても、雇用と公的保険を改善して手厚く支えることは必要だ。そうすることで、地域や家庭での生活を含めて、生活全般がより健康で文化的なものになり、就労の安定性が高まり、資産形成も容易になる。結果として、「生活保護しかない」という状況には達しにくくなる。

改めて考えたい、
日本の制度で外国人を救うべきか

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 外国人に対しても、同じ対策が必要なはずだ。せめて日本にいる間は、安心と健康のもとに働いて暮らすことができ、病気になれば安心して医療を受けられる状況が必要だろう。そうすれば、在留資格にかかわらず、生活保護へのニーズは生まれにくくなる。

「失職したら在留資格を失う」といったプレッシャーを強いる扱いも、改善する必要があるだろう。日本人に対しても、雇用と公的保険というセーフティネットは不十分だ。より強く柔軟なセーフティネットにして、外国人も日本人も安心して働けて暮らせる方向性が、最も望ましいように思われる。外国人への生活保護適用のあるべき姿は、その後で考えるべきことではないだろうか。

 自分が脅かされていると、わかりやすい「敵」を探しがちだ。ニュージーランドの銃乱射事件では、容疑者はモスクに集っていた人々を脅威とみなした。日本人の生活が外国人によって脅かされているように感じられるとき、日本人の生活が脅かされていることは事実だろう。しかし、おそらく、真の「敵」は外国人ではない。

(フリーランス・ライター みわよしこ)
https://diamond.jp/articles/-/197551


結核の集団感染、2割が外国人
 毎日新聞2019年3月17日 07時00分(最終更新 3月17日 07時00分)
• 社会一般
• 東京都
• 外国人労働者受け入れ拡大
• 速報
• 社会
• 政治プレミアタイムライン

https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/03/17/20190317ddm001010038000p/0c8.jpg
結核集団感染の主な発生場所
 2016〜18年の3年間に国内で起きた結核の集団感染100件のうち少なくとも19件は、技能実習生や日本語学校の留学生など外国人を中心に広がっていた。このうち、学校や職場などで日本人に感染が広がったケースも8件確認された。毎日新聞が厚生労働省や自治体に情報公開請求した結核の集団感染に関する記録で判明した。
 在日外国人の増加に伴い、結核の全患者数に占める外国人の割合はここ数年、高くなっている。それでも17…
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https://mainichi.jp/articles/20190316/k00/00m/040/201000c 
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/739.html

[国際25] 人種差別の少ないロシアで、黒人が別格な理由 映画「グリーン・ブック」が教えるロシア社会の問題点 
人種差別の少ないロシアで、黒人が別格な理由
映画「グリーン・ブック」が教えるロシア社会の問題点
2019.3.22(金) 菅原 信夫
作品賞は『グリーンブック』、『ROMA/ローマ』は3部門受賞 第91回アカデミー賞
第91回アカデミー賞で作品賞を受賞した『グリーンブック』のピーター・ファレリー監督(2019年2月24日撮影)。(c)AFP/A.M.P.A.S/Matt Petit〔AFPBB News〕

 本年2月24日に発表された第91回米アカデミー賞の作品賞はピーター・ファレリー監督作品「グリーン・ブック」に決まった。

 この作品は、がさつで無教養なイタリア移民の用心棒トニーが、孤高の天才黒人ピアニスト、「ドク」ことドナルド・シャーリーの運転手兼雑用係となって、1962年10月から12月にかけて、米南部諸州を巡回したコンサートツアーでの出来事を映画化したものだ。

 筆者は米国南部における黒人差別が本作品のテーマと聞いていた。

 そのため、映画の中で、ドクが演奏仲間とかなり正しいロシア語で会話したり、演奏仲間の名前がロシア名だったりするのに仰天し、そこになぜロシアが出るのか大いに興味をもった。

 そしてその割には、演奏仲間と親密にならないことに戸惑いを感じたりした。

 改めてこの映画の筋書きを見ると、ドナルド・シャーリーは9歳でレニングラード音楽院に留学、クラシック音楽を勉強、そのために生涯、チャイコフスキー、ラフマニノフ、スクリャービンといったロシアの作曲家を尊敬したという。

 米国の文献を確認すると、現実のドナルド・シャーリーは、家族の反対でレニングラード音楽院留学は実現しなかったそうだ。

 しかし、ロシアの作曲家には大変愛着を示し、多くのコンサートでチャイコフスキーをはじめ、ラフマニノフのピアノ協奏曲を米国や欧州の交響楽団と共に演奏し、その録音も残っている。

 実際のドナルド・シャーリーは1929年生まれだから、9歳でレニングラード音楽院に入学すること自体あり得ない。

 また、渡航したことになっている1938年という年がソ連にとりどんな時期だったかを思い返すと、この話は荒唐無稽でしかない。にもかかわらず、当作品においてはロシア、ソ連といった文化が非常に効果的に使われている。

 その理由は、ドク一行が南部巡業に出た1962年当時には、もうかなりのロシア移民が米国に移住しており、その中には音楽関係の職業に就いて生活を安定的に営んでいる階層が出ていたことによると思われる。

 米マサチューセッツ州にある避暑地ケープコッドは, 大西洋に突き出した角状の半島で、ケネディー家のサマーハウスがあることで有名だ。

 その半島の真ん中にハヤニスという町がある。ここには、1950年代からロシア移民が集う一角があって、筆者もロシア語とロシア文化に慣れるため、留学先のボストンからよく通ったものであった。

 馴染みになった避暑客の中に、ニューヨークに住む音楽家の一家がいて、浜から涼風が吹く気持ちの良い夕方には、ホテルの庭に作ったステージで即興のコンサートがよく開かれた。

 彼らの生活は、まさに「Green Book」に描かれたような全米を対象にしたコンサートツアーや映画音楽録音での短期契約の積み重ねで、長期のポジションを得るのは難しいという話をしていた。

 ドク・シャーリーは巡業公演にあたり、低廉なコストで雇用できるロシア移民の演奏者をオーディションで採用しては、一緒に演奏旅行に出ていたと思われる。

 現在はどうか知らないが、筆者が滞在した1970年代後半のケープコッドに、黒人の姿はほとんどなかった。

 それがマンハッタンやブロンクスに住むロシア人たちがケープコッドでの避暑生活をおくる理由の一つになっていたかもしれない。 

 ロシアはソ連時代から人種差別がない国、と言われている。これはその通りであって、ロシアの良い特徴の一つである。

 特にアジア人に対しては、それが中国人であろうが、中央アジア人であろうが、ロシアほど差別のない国は西欧諸国では見ることができないだろうと感じる。

 筆者も40年以上をソ連・ロシアとのおつきあいの中で過ごしてきたが、自分が日本人であることに起因する嫌な思いには一度も遭遇したことがない。

 2000年代の日本食ブームの頃は、日本というブランドは極めて日常的に使いこなされ、またそれなりのステータスを感じる言葉であった。

 モスクワの街でタクシーに乗ると、ドライバーから国籍を聞かれることはよくある。

 その時、「日本」と答えたが最後、日本車の優秀さから始まり、最近購入したテレビから、奥さんの愛用する炊飯器まで、日本製品を褒めちぎられて、多めにチップをはずんでしまったという駐在員も多いのではないだろうか。

 もっとも、最近日本大使館前で繰り広げられるロシア領土割譲阻止のデモを見ると、残念なことに、そんな時代はひと昔前になってしまったのかと感じるが・・・。

 しかし、こんなソ連・ロシアにもどうしても克服できない意識が残っている。

 それが黒人への違和感だ。差別とか偏見とかいう言葉は実態を表していないと思うので、改めて社会に残る違和感と表現しよう。

 ソ連時代、モスクワの繁華街アルバート通りには、我々日本人が「地球座」と呼ぶ、モスクワ最大のレストランシアターがあった。

 ここでは毎晩、食事とショーが楽しめて、娯楽の少ないソ連における貴重な憩いの場となっていた。

 そこでは、ロシアの民族衣装を着飾った美人ダンサーによるロシア舞踊ショーから、今では見ることもないジプシーによる歌と踊りのショーなど、次々に珍しい出し物が繰り出された。

 その中で、ちょっと一息、という感じでテーブルの食事に意識を戻せる時間が、ジャズシンガーによるスタンダードジャズの演奏だった。

 特に筆者のお気に入りは黒人シンガーによるナットキングコールのモノマネだった。ロシアで黒人を見る機会はほとんどないので、まずは彼の存在そのものに興味を持った。

 その後何回か通ううちに、彼とも舞台裏で言葉を交わせるようになり、彼がキューバから来たことを知った。

 ソ連とキューバ両政府間で交わされた文化交流協定により、短期の公演のためソ連に来たということだった。

 「モスクワを楽しんでいるか」という問いに「早くキューバに帰りたい。モスクワもいいけどね」と、ちょっと悲しそうな顔をして言ったことがなぜかずっと記憶の隅に残っている。

 ロシアの偉大な作家であり詩人でもあるアレクサンダー・プーシキン。彼の肖像画を見ると、縮れた髪、もみあげという、一般のロシア人の肖像画とは若干異なった風貌が見て取れる。

 その理由について、彼の母方の祖父母であるガンニバル将軍がエチオピア出身で、プーシキンにもアフリカの血が若干なりとも流れていた、という説が一般的だ。

 ただ、こんな例は極めて限定的で、ロシアで活躍した黒人や黒人の血が流れる人物というのは寡聞にして知らない。

 その意味でロシアは極めて非黒人国である。それゆえ、社会にも黒人への違和感が残っている。

 「Green Book」に戻ろう。

 「ドク」がもしもレニングラード音楽院に学んでいたとしたら、そこでは強烈な違和感を持って過ごしたと思われる。

 バレエ、オペラ、クラシック音楽など舞台芸術のどの世界を見ても、日本を含め世界中の留学生が多いのが現代ロシアの特徴である。ただ、そこに黒人の姿を見かけることはほぼ皆無である。

 そこで9歳という難しい年齢で自身の存在を示さねばならない苦労は並大抵ではなかっただろう。そんなこともあって、実際には留学は断念したのだろうが、映画ではそのような過去がドクの孤高の性格の背景として使われている。 

 ところでなぜレニングラードでクラシック音楽なのだろう。

 米国のクラシック音楽教育から黒人は外されていたという映画の想定は、さもあらんという気になるが、これとて、実はレコード会社によるドナルド・シャーリーの売り込みのためだったという。

 黒人のクラシックは売れない、と見たレコード会社は、ドナルド・シャーリーの音楽をジャズとクラシックの融合した新しいジャンルと宣伝した。

 彼の過去にレニングラード音楽院を入れることが、クラシックを本格的に学んだ印象を与えると考えたのだろう。

 人種をも商売の手段とする商業主義としての米国は、黒人の才能を利用しつつその人物を差別し、白人社会から隔離する――。これがこの映画が本当に訴えたかったテーマのように筆者には感じられた。

 振り返ってロシアを見ると、「黒人への違和感」は単に慣れの問題のように感じられる。

 圧倒的に少ないロシアにおける黒人人口は、ロシア人に黒人への接し方を考える必要性さえもたらさない。

 ソ連政府は、アフリカとの交流を進めるために、俗称ルムンバ大学と呼ばれるロシア諸民族友好大学を1960年に設立し、アフリカからも大勢の留学生を招いたことがあった。

 ただ、この大学もその後は一般大学と同じような仕組みとなり、ロシア政府がアフリカ諸国への支援をほぼ中断したことから、黒人学生は減少し、今や大学のあるユーゴザパッドナヤ周辺を歩いても、黒人学生に会う事は珍しくなってしまった。

 「黒人への違和感」がロシア社会に残る限り、ロシアに暮らす黒人も増えることはないだろう。

 ロシア版の「大坂なおみ」のようなスポーツ選手がロシア社会に登場するにはまだ時間がかかりそうである。この点において、日本はかなりロシアの先を行っていると言ってよい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55835

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/774.html

[政治・選挙・NHK258] 殺人ロボ規制「議論に積極関与」政府、殺人ロボ規制の支持 中南米などで禁止条約制定を求める国あるが、米国ロシアなどは否定的
国内政治ニュース(共同通信)2019年3月22日 / 20:22 / 1時間前更新
殺人ロボ規制「議論に積極関与」
共同通信
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 外務省は22日、人工知能(AI)を搭載し人間の意思を介さずに敵を殺傷できる「殺人ロボット兵器」の開発規制に関する政府見解文書を国連会議に提出したと発表した。開発規制は国際社会が対処すべき喫緊の課題だと指摘し「日本は国際議論に積極的に関与していく」とルール策定を主導する考えを表明した。

 政府見解は、AI搭載兵器について完全に兵器任せにするのではなく「人間による制御を確保すべきだ」との主張が柱。攻撃対象を戦闘員や軍事目標に限定した国際人道法の順守を強調し、違反に対しては「国家や個人の責任が問われるべきだ」と明記した。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019032201002375?il=0

主要ニュース(共同通信)2019年3月16日 / 18:30 / 6日前
政府、殺人ロボ規制の支持表明へ
共同通信
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 日本政府は、人工知能(AI)を搭載し人間の意思を介さずに敵を殺傷できる兵器について、国際的な開発規制への支持を今月下旬の国連会議で表明する方針を固めた。規制に向けた専門家による委員会新設も提唱する。政府筋が16日、明らかにした。民生部門でのAI開発の妨げになりかねないとして、慎重な議論が必要だとしていた従来の立場を転換した形。「殺人ロボット兵器」に関する国際ルール策定を主導したい考えだ。

 殺人ロボット兵器の開発を巡っては、国際人道法や倫理の観点から、中南米などで禁止条約制定を求める国があるが、開発を進めているとされる米国、ロシアなどは否定的。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019031601001991
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/741.html

[政治・選挙・NHK258] ヤフコメの調査から見えてきた「嫌韓嫌中」など過度な投稿者たちの正体
2019年3月22日 橘玲 :作家
ヤフコメの調査から見えてきた「嫌韓嫌中」など過度な投稿者たちの正体
[橘玲の日々刻々]
 エスノグラフィーは「参与観察」とも訳される文化人類学の手法で、「フィールドワーク」の方が馴染みのあるひとも多いだろう。典型的な研究は、アフリカや中南米、南太平洋などの伝統的社会に長期間滞在して、学問的に定型化された手法によって文化や慣習、ひとびとの日常などを記述するというものだ。
 その後、エスノグラフィーの手法は先進国の社会に拡張され、黒人や移民などのマイノリティ、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)のような性的少数者のコミュニティが参与観察されるようになった。日本では、1980年代の暴走族を参与観察した佐藤郁哉氏の『暴走族のエスノグラフィー』(新曜社)がよく知られている。
 文化人類学者の木村忠正氏は、「偶然の巡りあわせに導かれ」1995年頃からインターネット研究に取り組むようになった。その過程で、ネット上のコミュニティを分析する際にも、エスノグラフィーの手法が使えるのではないかと気づいたという。
 アンケートなどを使って量的な社会調査をしたり、インタビューや参与観察でコミュニティを質的に調査する従来の研究に比べて、ネットコミュニティはその性質が大きく異なる。そこでは「定性的データ(インタビューや参与観察)」と「定量的データ(アンケート調査)」の垣根が取り払われ、ひとつの事象をどちらの観点からも分析する必要があるのだ。木村氏はこれを「ハイブリッド・エスノグラフィー」と名づけた。
『ハイブリッド・エスノグラフィー N.C(ネットワークコミュニケーション)の質的方法と実践』(新曜社)では、第1部で「デジタル人類学」のコンセプト・方法論と課題を、第2部でハイブリッド・エスノグラフィーの実践を扱っている。詳しくは本を読んでいただくとして、そのなかでとくに興味深いのは第10章の「ネット世論の構造」だろう。
 そこではYahoo!ニュースの協力により、「国内」「国際」などのハードニュースに投稿される膨大なコメント(ヤフコメ)が分析されている。

ヤフコメは日本の言論空間の公共インフラになっている
 2015年からネット世論研究に取り組んでいる木村氏は、Yahoo!ニュースから大量のコメントとそれに関するデータの提供を受けた。Yahoo!ニュースには、毎日、300社程度の媒体から配信される4000本以上の記事に対して10万件単位のコメントが投稿され、1000万単位の閲覧者によるページ閲覧数は億単位に達する。音声・動画をいっさい含まないに単純なテキストデータにもかかわらず、1日分のコメントと関連データだけで100メガ、閲覧データは1ギガを超えるという(投稿者のプライバシーに配慮してデータはすべて匿名化され、Yahoo! JAPAN IDに関する情報はいっさいわからない)。
 まず、2016年7、8月に関東・東海・関西圏の16〜70歳の男女1100人を対象として木村氏が実施したウェブアンケートを見てみよう。ここでは16〜24歳/25〜35歳の年齢層を「デジタルネイティブ」、36〜50歳/51〜70歳を「デジタル移民」としてオンラインニュースの利用率を調べている。下記はその一部を抜粋したものだ。

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 これを見ると、25〜70歳の日本人の7割以上が、16〜24歳の若者層でも6割がYahoo!ニュースを閲覧しており、日本の言論空間の公共インフラになっていることがわかる。そのなかで記事だけでなくコメントも閲覧するのは6割前後で、コメント閲覧者の3人に1人から4人に1人が自らコメントを書き込んでおり、年齢によるちがいはあまり見られない。
 デジタルネイティブとデジタル移民で大きく異なるのは、SNSなどでの「拡散」「炎上」「アラシ」への参加だ。こうした行為は世代によって大きく異なり、若いほど活発で年齢が高くなるほど参加率は低くなる。これはシニア層(デジタル移民)に比べ、デジタルネイティブでは投稿や拡散などのネット上の行為が日常生活の一部になっているからだろう。
 先行研究によれば、ネットでの過激な行為はごく一部の参加者によって行なわれている。
 Twitterでの炎上参加者2万人あまりの大規模なウェブモニター調査から推計した研究では、炎上に参加するのはネット利用者の200人に1人で、炎上1件あたりの参加者は2000人程度(ネット利用者の10万人に数人)、炎上参加者の9割はひと言感想を述べる程度で、繰り返し書き込んで当事者を攻撃するストーカー的な参加者は数人から数十人のごく一部だとされた。
 在日韓国・朝鮮人への差別的Tweet(2012年11月〜2013年2月)10万件以上を計量テキスト分析した研究では、4万3000程度の投稿者IDの8割近くは1度のTweetのみで、わずか1%にあたる471のIDによる投稿は100以上、上位50のIDによるTweetが全体の8分の1(その大半は明確な差別的表現)を占めた。
 これは複雑系でいう典型的なベキ分布で、「ロングテールに位置するごく一部の投稿者が極端な主張・過度な言動を繰り返しているだけだ」との主張につながる。だが木村氏は、差別的な書き込みだけでなく、それをRT(リツイート)や「いいね」する層を含めて、言説・感情・行動の複合体を「ネット」世論として捉えることが必要だとする。
 これを実際に行なったのがハイブリッド・エスノグラフィーの「ヤフコメ」分析で、記事に対するコメント(親コメント)の内容だけでなく、それへの返信コメント(子コメント)や、コメントへの評価(「そう思う」「そう思わない」)も含め、ネット世論の全体像をとらえようとしている。

「ヤフコメ民」の正体は40代男性
 Yahoo!ニュースの2015年9月2日のブログによると、1日あたり約4万人のユーザーが約14万件のコメントを投稿しており、性別では男性が8割以上で、30代・40代の男性が全体の5割を占めている。ニュース閲覧の主要ユーザーは30代男性だが、コメント機能にかぎっては40代男性に突出して高い傾向がみられるという。こうしたコメント投稿者は「ヤフコメ民」と呼ばれている。
 Yahoo!ニュースのうち木村氏が分析対象にしたのは「政治」「社会」「産業・経済」「海外・国際」「沖縄」の5大分類に属する記事(ハードニュース)で、1週間で1万強の記事が配信され、約半数の記事に合計50万弱のコメントが投稿された。
 これらのコメントは5万6000あまりの投稿者識別IDから投稿されていて、先行研究が示すように、一部の投稿者が大量の投稿をしていた。
 具体的には、1週間で101件以上コメント投稿している投稿者IDは1%に過ぎないが、延べ投稿コメント数は2割に達する。1週間で21コメント(1日平均3コメント)以上する投稿IDは1割で、延べ投稿コメント数は6割を占める。1週間70コメント(1日平均10コメント)以下のIDを集計すると、98%の累積投稿者IDがコメント数で3分の2を投稿していた。逆にいうと、1週間に71コメント以上する2%の投稿者がコメント数で3分の1を投稿していることになる。
 ここから、「ヤフコメ民」は大きく2つのグループに分けられる。平均より著しく多いコメントを投稿する1000ID(2%)に満たない少数派(過度な投稿者)と、一人ひとりのコメント数は多くないが、全体としては全コメントの9割ちかくになる多数派(穏やかな投稿者)だ。
「過度な投稿者」と「穏やかな投稿者」で顕著に異なるのは、返信コメントと評価(「そう思う」「そう思わない」)、および侮蔑表現(機械学習を用いてコメントに侮蔑表現が用いられているかどうかを判定した)の割合だ。
 2%の「過度な投稿者」は、(自分のコメントに対して返信される)返信コメント数で全体の45%、評価で33%、侮蔑表現該当数で33%を占めていた。1000に満たない投稿者IDが「ヤフコメ」ネット世論空間をつくるうえで大きな役割を果たしている。
 それに対して98%の「穏やかな投稿者」は返信コメントがほとんどなく、評価も限られ、侮蔑表現該当率も低い。ただし圧倒的な多数派なので、グループで累積すれば返信コメントの55%、評価と侮蔑表現の3分の2を占めている。こちらは、「ヤフコメ」ネット世論空間を構成する基盤にあたる。
「過度な投稿者」をさらにグループ分けすると、約6割は記事に関連してなんらかの「敵」を罵倒することが目的となっている。木村氏は彼らを「罵倒攻撃者」と名づけた。
 その一方で、約3割の「過度な投稿者」には極端な罵倒表現が見られない。だとしたら彼らは何のために頻繁に投稿するかというと、その目的はたくさんの評価(「そう思う」の数)を獲得することだ。そのため、閲覧者が共感し「そのとおりだ」と思えるようコメントの表現に工夫を凝らす。木村氏はこうした行為が承認欲求や賞賛獲得欲求と結びついている可能性があるとして、「肯定的反応追求者」と名づけている。
「過度な投稿者」の小グループのなかで興味深いのは、約5%が返信コメントを主にしていることだ。「罵倒攻撃者」が記事に関してコメントするのに対して、彼らのコメントのうち約4割が返信コメントで、コメントに対して罵倒コメントしている。
 返信コメントで罵倒する少数派は、複数のIDを使い分けて(なりすまし)返信コメント内で炎上を画策することもあるらしい。木村氏はこうした行為について、記事に対して自らの主張をコメントするのではなく、誰かのコメントに対して突っ込みを入れて炎上を楽しむユーザーが一定数いるのではないかと推測している。

2%に満たない「過度な投稿者」が「ネット世論」を牽引している
「ヤフコメ」では2%に満たない「過度な投稿者」が返信コメントの半分ちかく、評価の3分の1を獲得して「ネット世論」を牽引している。そのうち6割は罵倒することを目的とする「罵倒攻撃者」だが、それ以外に、コメントを罵倒して炎上させようとするユーザーが5%程度いる。残りの約3割は、できるだけ多く「そう思う」の評価を獲得しようとする「肯定的反応追求者」だ。
 それでは、彼らはどのようにしてひとびと(閲覧者)の関心を引こうとしているのだろうか。
 具体的な分析は『ハイブリッド・エスノグラフィー』にあたってほしいが、どのようなグループを見ても、ハードニュースのコメントの最大の関心事が「韓国(「慰安」「在日」「竹島」などの語彙を含む)」カテゴリーであることは明らかだ。
「罵倒攻撃者」では「韓国」カテゴリーが親コメント全体の40%、返信コメントの50%を占めており、侮蔑表現も多用されているが、彼らは複数の投稿IDやIPアドレスを使い分けているわけではない。投稿者IDの約8割は1次のIPアドレスとのみ結びついており、IPアドレス側から見ると、95%ちかくが1つの投稿者IDとしかつながっていない。「罵倒攻撃者」は自らの主張が「正義」だと思っているので、実名を晒さないまでも、匿名性に過度に配慮する必要を感じないようだ。
「肯定的反応追求者」も、侮蔑的な語彙こそ使用しないが、「韓国」カテゴリーを主要なコメント対象にしている。「何度謝罪しても、相手が納得しないのであれば、もっともっと、距離をとるべきだ」のように、閲覧者たちの共感を集め、訴えかける要素を持つコメントを投稿している。
 木村氏の調査が行なわれた2015年は戦後70年の節目を迎えたことから、戦争責任、慰安婦問題、賠償問題 歴史問題に関連して韓国・中国への違和感(敵意)を表明するコメントが中心となっていた。だがそれ以外でも、多くのコメントが投稿された事件がある。
 そのひとつが、千葉・船橋の「18歳少女監禁・生き埋め殺人事件」だ。命乞いする被害者を生きたまま土中に埋めて殺害するという凄惨さが日本社会に大きな衝撃を与えたが、「ヤフコメ民」の多くが加害者と被害者の個人情報に対する非対称性に強い違和感(異議)を表明した。「被害者は未成年でも実名を晒されるのに、加害者は、少年法に守られ、実名を晒されないことには、どうしても納得できない」などがその典型だ。こうしたコメントには多くの評価(「そう思う」)や返信コメントがつくことから「ヤフコメ」投稿者の多数派(マジョリティ)を構成していることがわかる。
 1週間のコメント平均数が3に満たず、侮蔑表現該当コメントも平均0.1とほとんどない投稿者IDは全体の8割以上を占める。週に2、3回、思ったこと感じたことをコメントし、評価や返信コメントがつくことで他のユーザーのレスポンスを感じ取る程度のつき合い方をしている。
 そんな「平穏」なユーザーのあいだでも韓国・中国関係は強い関心を集めている。彼らも日本と韓国・中国を対立関係として捉え、慰安婦問題、戦争責任、戦後補償、植民地支配について日本の立場を強調し、「韓中(とくに韓国)がいくら謝罪しても結局(賠償金をとろうとして)問題を蒸し返す」という認識にもとづくコメントをしている。「過度な投稿者」とのちがいは、「韓国はアメリカから離れ、中国のゴマすり」のように、韓国・中国が「アメリカ」「世界」という文脈に結びつけられてコメントされることだ。
「ヤフコメ民」の大多数は、アメリカに関しては、親米でも反米でもなく、覇権国としての振る舞いを冷静に観察する面を持っており、「「日本」に社会的アイデンティティを求め、さらに近隣諸国を外集団とし、内集団意識を明確化、強化したいという強いベクトルを見て取ることができる」。これは、私が「日本人アイデンティティ主義」と呼ぶ特徴を顕著に示している(拙著『朝日ぎらい』朝日新書)。

ネット世論の極端な言動は「マジョリティ」の分断に原因
 ヤフコメのビッグデータを分析した木村氏は、「ヤフコメ民」をコメント投稿へと動機づけるのは、(彼らのモラルに照らして)「理不尽」な感覚、ある種の「正義感」と、マスコミへの批判的態度」だという。さらに、「気持ち」という名詞が「悪い」という形容詞と強く結びついていることから、「「ヤフコメ」は、何かに対して「気持ち悪さ」を感じていることを表出する傾向がある」とされる。
 こうした投稿行動を、木村氏は以下の5つにまとめている。AとBは「過度な投稿者」に、C、D、Eは「平穏な投稿者」のコメントにも頻出している。
A 韓国、中国に対する憤り
B 被害者が不利益を被ること(加害者が権利保護を受けること)への憤り
C 近隣諸国を外集団とし、「日本」に社会的アイデンティティを求め、内集団意識を明確化、強化したいという強いベクトル
D 社会的規範を尊重しないことへの憤り
E マスコミに対する批判
 木村氏は、アメリカの社会心理学者ジョナサン・ハイトの「道徳基盤理論」(『社会はなぜ左と右にわかれるのか―対立を超えるための道徳心理学』紀伊國屋書店)を援用して、ヤフコメでの「嫌韓・反中」や「反日・売国奴」への批判・攻撃などは「理性より直観的情動と考えた方が適切である」と述べる。より詳しい説明は準備中の書籍で行なわれるとのことなので期待したいが、結論だけを簡潔に述べるなら、「ヤフコメ」の底流には「内集団」「権威」「公正(因果応報)」の道徳的基盤が強く働いている。こうした気分(道徳感情)によって形成されるネット世論を、木村氏は「非マイノリティポリティクス」と名づけた。
「非マイノリティ」とは要するに「マジョリティ」のことだが、「マジョリティ」として十分な利益を享受していないと感じているひとびとのことだ。その特徴は「生活保護」「ベビーカー」「少年法(未成年の保護)」「LGBT」「沖縄」「中韓」「障がい者」など少数派への批判的視線・非寛容で、マイノリティの人権についての主張を「弱者利権」「被害者ビジネス」と見なし、権利や賠償を勝ち取る行為としてとらえている。
 私はこうした現象を、世界的に「主流派(マジョリティ)」のなかでの分断が進んでいるからだと考えている。アメリカ社会では「白人男性」がマジョリティだが、ラストベルト(錆びついた地域)に吹きだまり、トランプを熱狂的に支持し、アルコール、ドラッグ、自殺で「絶望死」しているのはブルーワーカーの白人男性だ。彼らはアメリカ社会で自分たちこそがもっともないがしろにされていると感じており、アファーマティブアクション(積極的差別是正措置)で「抜け駆け」する黒人や移民などマイノリティにはげしい敵意を抱く。
 日本社会の主流派は「男性」だが、そこでも「モテ(持てる者)」と「非モテ(持たざる者)」の分断が進み、女性(マイノリティ)の権利を主張するフェミニズムを嫌悪しバッシングしている。
 知識社会化とSNSなどのコミュニケーション・テクノロジーの普及によって、今後、こうした「マジョリティ」の分断はますます進んでいくだろう。

リベラル派の81.4%が「第二次世界大戦の日本の行為に関して、いつまでも謝罪を求める国は行き過ぎだ」と考えている
 木村氏はネット世論を「極端な主張」と切り捨てるのではなく、「社会全般の傾向を相当程度反映している現実があると考えた方が適切である」と述べている。
 その根拠になるのが2016年のウェブ調査で、回答者の政治イデオロギーを(アメリカ共和党的な)保守と(民主党的な)リベラルに分け、第二次世界大戦についどのように考えるかを尋ねている。その結果が下記だ(「保守」「リベラル」は私の解釈で簡略化している)。

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 これを見てわかるのは、保守派(非リベラル系)であっても、半数以上(58.7%)が「第二次世界大戦における日本の行為は常に反省する必要がある」と考えていることだ。しかしそれ以上に目を引くのは、リベラル派の78.3%が「第二次世界大戦における日本の行為に関して、孫の世代、ひ孫の世代が、謝罪を続ける必要はない」に、81.4%が「第二次世界大戦における日本の行為に関して、いつまでも謝罪を求める国は行き過ぎだ」に「そう思う」と答えていることだ。驚くべきことに、この比率は保守派より多い。
 このところ、徴用工問題や自衛隊機へのレーダー照射問題で「リベラル」を自任するメディアが韓国に対して厳しい論調をとることが目立つが、それは「リベラルな読者」のこうした傾向に遅ればせながら気づいたからなのかもしれない。
橘 玲(たちばな あきら)

作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)。
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https://diamond.jp/articles/-/197741

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/742.html

[社会問題10] 「山月記」に学べ、ドラッグで終わる芸術家生命 芸能人薬物汚染に引くべきけじめの一線 
「山月記」に学べ、ドラッグで終わる芸術家生命
芸能人薬物汚染に引くべきけじめの一線
2019.3.22(金) 伊東 乾
大麻先進国から忠告? オランダ首相、カナダ高校生に「絶対手を出すな」
大麻先進国から忠告? オランダ首相、カナダ高校生に「絶対手を出すな」。写真はカナダ・トロントのトリニティ・ベルウッズ公園で行われた大麻合法化イベントの参加者たち(2018年10月17日撮影、資料写真)。(c)Geoff Robins / AFP〔AFPBB News〕

 人気テクノユニットに属する芸能人のドラッグ事件が社会を騒がせています。

 あえて実名などは挙げませんが、大河ドラマなどにも器用され「国民的タレント」の扱いであった芸能人がコカイン常用で逮捕され、20代から大麻、コカインを常用していたと供述している、などと伝えられています。

 国際的に見て「テクノ系」のイベントでは、コカインに限らずドラッグが頻用される明らかな傾向があり、若い頃から内外でその種のイベントに参加していた芸能人が覚えたのであろう、といった論評も目にしました。

 さらに、元都知事の舛添要一さんがSNSならびにJBpress上で、「道徳国家に芸術は開花せず(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55812)」との意向を投稿しておられるのも目にしました。

 これらについて、一芸術家の観点、また大学で将来芸術家として社会に出るべき若い人たちを長年指導してきた一個人として、是は是、非は非、すべて透明にしたうえで。検討してみたいと思います。

慶応義塾で「学生レイヴ」顧問をしたときの話
 すでに20年前になりますが、私が初めて大学の教壇に呼ばれたのは慶応義塾の一般教養(日吉キャンパス)で音楽を担当させられた折のことでした。

 これは後年の東京芸術大学など、芸術家を育てる場での指導ではありませんが、テクノに直接かかわるケースですので、そこから話を始めましょう。

 クラシック音楽で生計を立て、直前まで地上波テレビ番組「題名のない音楽会」の監督をしていた私でしたが、日吉のクラスは「音楽への今日的アプローチ」と銘打って、「およそ耳に聞こえるものなら何を持ってきてもよい」と、学生発表とそれを巡るディスカッション、補講でカリキュラムを考えました。

 Jポップ、ザ・ビートルズなど、時代時期も国もおよそばらばらな、学生の好きなあらゆる対象を俎上にあげ、聴覚の脳認知とソルフェージュの2つの刃物で生け作りにしていく内容で、200人程度の履修があり、それなりに人気のある授業だったように思います。

 私もまだ30代前半でしたので、学生諸君も親近感を覚えてくれたのでしょう、「三田祭」の歌コン審査員などというものも頼まれました。

 そんな学生発表の初回が「テクノ」だったのです。

 「ベルリン・ラブ・パレード」というテクノイベントを、T君という学生が取り上げて発表しました。

 そこでも狭義の音楽だけでなく、セクシュアリティの問題やドラッグカルチャーなどに言及しつつ、「生け作り」にしました。

 初回がそれだったので、学生に火がついた面もあるかと思います。ドラムンベースとか「音響系」とかデスメタルとか、およそあらゆる音楽のビビッドな切り口を3年ほど担当した期間、ずっと斬り続けることになりました。

 さて、この初年の初回に「ベルリン・ラブ・パレード」で発表したT君、しばらくすると教卓だったか日吉音楽研究室だったかに、別の相談にやって来たのです。

 「六本木でレイヴをやりたいんですが、未成年ばっかなんで、会場借用の成人保証人になってもらえませんか?」という依頼。

 レイヴというのはテクノ・ミュージック特有のライブで、単に音を流すだけでなく飲食、場合によってはセックス&ドラッグも関わるイベントを指します。

 ここで私は、いくつかのことで厳密にクギを刺したうえで、学生の頼みを聞き入れました。

 クギというのはドラッグ対策です。乱れたセックスもするな、と伝えました。

 そういうことをポンポン、ダイレクトに言う教員は、当時の慶応大学には少なかったようで、いろいろな学生が訪れて来て、楽しい数年の「塾員生活」になったように思っています。

売人はどこにでもやって来る
 「いいかい? チャージさえ払えば誰でも入れるテクノイベントを六本木で開けば、ヤクザも来れば売人も来る。君ら、それを水際でどうやって食い止めるつもりなのか、考えて計画立ててもってきてみ?」というのが私から出した対案です。

 「君らのレイヴで何かが起きたら、未成年の学生じゃなくて俺がすべて責任問われることになるんだけど、分かってる?」

 学生たちは彼らなりに慎重に検討して対策案を立て、決して迷惑をかけるようなこと、犯罪に関連するようなことがない誓約、危ないことがあったら、直ちに私の携帯に連絡するとともに行事を中止、必要に応じて警察への通報なども必ずすること、など、有事のアクションプランを立てさせました。

 それらをつぶさに確認したうえで、私は会場借用の保証人を引き受けました。

 当日は近くまで車でつけ、万事問題なく動いていることだけ確認しましたが、イベントそのものにはコミットせず、会場も一瞥しただけで後にしました。

 こういうものは若者だけでやるのがいい。大人はそこで事故がないよう、脇を保護する役割に徹するのが重要です。

 と、まぁ、そんな20ウン年前の話から始めるのは、学生向けにはドラッグのようなものを使用すると、現実に響いている音を聴くことが困難になると思われるという話をしたことから以下の展開につなげたいからにほかなりません。

 善くも悪しくも、私は、覚せい剤もコカインも使用したことがなく、今後もそのような予定はありませんので(笑)本当のところは分かりませんが、何らかの薬物が体に入ると「聴こえ」に変化が出る可能性が高いと思います。

 例えばアルコールを摂取すると、聴音ソルフェージュの成績は下がる可能性が高いでしょう。

 私たちのように厳密に音を扱うプロフェッショナルは、自分の耳が頼りで職人仕事していますので、それを狂わせるようなものを体に入れるという行為そのものに、強く疑問を感じます。

 その点を1990年代のティーンたち、慶応日吉キャンパスの学生諸君に、私は強調して話しました。

 慶応での講義では、テクノ・イベントは社会的に多様な困難な境遇にある人が、南米のカーニバルにも似た、ある種の「祝祭的転倒」として行っている面があることなどをはなしました。

 また、近しかった山口昌男さんの議論などを引きながら、実際に日本で楽隊業をロングランで継続していくうえで、どういう自律のラインを引くべきかといったことを、かなりリアルに話ました。

 リアルというのは、六本木ないし赤坂の現実の街区で、どのあたりに暴力団事務所があるといったことを含め、決して間違いを起こさぬように情報を与え、学生と約束したうえで、彼らを信用してやる、というスタンスです。

 闇雲に禁止しても、子供はむしろ反抗したり逸脱したがったりするものです。

 むしろリスクの現実を示し、現実に何が起きうるか、ゾッとする内容を伝えたうえで、自律的なガイドラインを各自で作らせ、それを守る約束を信用してやることで、若い者は伸びる・・・。

 これが、当時30代半ばなりではありますが、マスター・ミュージシャンとしての私の考えでありました。

 テクノはだめ、レイヴは危険だからやらせない、ことなかれ、ではなく、危険を承知したうえでそれを避け、雪山登山をトライする。

 危険があったらいつでも下山の準備と、何より覚悟を決めておくこと。こういうポイントは、単に学生時代のテクノ・イベントと言う以上に、その先にも有用であるように思います。

舛添さんの見解への是々非々
 JBpress連載でこの問題に関する舛添要一さんのご見解(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55812)を読みました。

 名刺交換などしたことがないわけではありませんが、彼が私を記憶しているとは思いません。しかし、三十数年前、私が学生だった頃に彼は助教授であり、またその職を退く騒ぎがあった頃、私は学園祭の委員として一連の出来事にコミットメントがありました。

 先ほどお名前を挙げた文化人類学の山口昌男さん邸に出入自由であったため、関連する様々な情報が入って来る、不思議な立ち位置にあったのが理由ですが、以下とはあまり関係がありません。

 舛添さんは主張されます。

 「私が一番強調したかったことは、文化や芸術は自由な環境の中で花開く、ということである。ヒトラーは、退廃芸術を弾劾し、多くの芸術作品を廃棄させたが、ナチス政権のようなことが繰り返されてはならない」

 「イランのように、イスラム宗教指導者が支配する国でも、芸術は宗教の規範に反することはできない。日本には、『日本教』という、その場の空気、雰囲気が支配する掟がある。悪しき集団主義である」

 全くその通りと思います。ナチスに限らず、同時期のソ連ではスターリニズムの嵐が吹き荒れ「社会主義リアリズム」に合致しない作品が糾弾されるなど(いわゆる「ジダーノフ批判」)ろくでもない政治圧力が表現芸術に加えられました。とんでもないことです。

 舛添さんはまた、「宗教国家ではあるまいに、どの分野でも過剰な道徳は豊かな創造力を殺ぐ。道徳は優秀な才能を窒息させる」と主張され、フランスを引き合いに芸術を開花させる自由な空気について言及しておられる。

 これも分からなくはありません。が、一点、疑問に思うところがあります。

 「私が『品行方正な芸人』に魅力を感じないのは、そのような芸人は権力にとっては利用しやすい存在だからだ。煮ても焼いても食えないような芸人は、権力者は怖くて使えない。だから、狂気の気配を感じる芸術が、私は好きなのである」

 こう言われるのですが、少なくともかつての日本に関して、私はそのようには思えないのです。

 私がテレビ業界でコンスタントに仕事をしていた1990年代には、小指のない芸能プロダクションの部長さんといった存在を目にしたものです。

 いわゆる興業ヤクザと呼ばれる存在で、暴対法が施行される1992年以降、少しずつ減っていったのだと思いますが、20世紀の終わりまで決して目にしないわけではなかった。

 21世紀について記すことができないのは、私が大学に籍を置いて、やや胡散臭い魅力も放つ芸能界と完全に縁が切れてしまったので、現実が分からないことによります。

 舛添さんが言われるのは、例えば、お祭りの屋台、夜店で繰り広げられるテキヤのバイ(商売)、アセチレンランプに照らされたセルロイドのお面や色とりどりのヒヨコ、冷めるとおよそマズいのにその場ではやたらと美味しい粉モノなどと近い、ある種の「胡散臭さ」に近い芸人の「狂気」のように思えます。

 というのも、舛添さんが例に挙げる「勝新太郎」のケースなどは、まさに興業ヤクザ的な商慣習そのものと言うべきで、胡散臭さの魅力ではあっても、芸そのものとごっちゃにすべきものではないと、表現側の立場からはハッキリ線引きしておかねばならないからです。

 舛添さんは言われます。

 「ただ、芸人が不祥事を起こすと、皆が道学者ぶって高い倫理を求めるが、これは私に言わせれば、全ての芸術家にそれを求めるのは『木によりて魚を求む』がごとしである」

 これはしかし、私たち芸術側の観点、特に若い芸術家の卵をコンスタントに育てる責任を負う立場からは、到底「そうですね」とは言えないご意見です。

 むしろ、「ただ、政治家が不祥事を起こすと、皆が道学者ぶって高い倫理を求めるが、これは私に言わせれば、全ての政治家にそれを求めるのは『木によりて魚を求む』がごとしである。」というパラフレーズが可能であるように思われてしまう。

 というのも、芸能界と政治、双方に共通するのは「大衆的な人気」であるから。

 映画「男はつらいよ」の寅さんを考えれば分かりやすいでしょう。

 彼はテキヤで、今日の目で見れば明らかに「ヤクザ」に分類されるでしょう。暴力団員であるかどうかは議論が分かれると思いますが、キャラクター「フーテンの寅さん」は実際に愛され、国民的存在となりました。

 この寅さんのような「胡散臭さ」が、愛される点ではないかと思うのです。

「山月記」に学ぶ「クリエータよ、ドラッグ虎となるなかれ」
 「男はつらいよ」が、学園紛争華やかなりし1960年代、一世を風靡した「ヤクザ路線」映画のパロディ、間抜けなテキヤの人情劇として企画されたのは紛れもない事実です。

 暴対法が施行された1992年「男はつらいよ」はシリーズ第45作を数えており、残り3作が完成しています。

 ところが、1996年、主演の渥美清氏が亡くなり、冷戦後期の日本を代表するこのシリーズ映画は幕を閉じました。

 今回の摘発を、「テクノミュージシャンが若い時期、海外を含む活動を通じてドラッグを覚えた」云々だけで語るべきではないと思うのです。

 ドラッグを供給し続けるルートがなければ、汚染は続きません。

 コンテンツが入手できなくなったり、グループの仲間まで活動を自粛したりするのを行き過ぎだ、と指摘する向きもあるようです。

 しかし、仮に20代からコカイン常用という供述が事実であれば、30年来一緒に活動してきた人たち(マネジメントを含めて)には、説明責任が間違いなく問われ、表現人サイドの観点から、私は自粛を行き過ぎだと思いません。

 今回逮捕された芸能人は私より数歳若いはずなのですが、非常に「老成」した表情が報道で印象的に思われました。

 薬物を常用すれば。老成というか老化、ないし廃人にも直結し得るわけです。

 何にしろ、こうした事件はろくなものではないし、「芸術家」が薬物に頼るというのは、才能その他の不足に恐怖した弱い人が、不安を忘れるために一過性の忘却に走ったことから習慣性の罠に嵌る場合が大半でしょう。

 「芸術家」という看板の「木」によりて「魚を求める」話では全くないと断言しておくべきと思います。

 芸術云々は一切関係なく、心の弱い個人が薬物に頼ったり、それがドラッグ・シンジケートのカモになったりするのは言語道断です。

 そしてまた、夜店のアセチレンランプの魅力と、セルロイド面を作る現実とは別のものとわきまえる必要が、少なくともクリエータサイドには絶対的にあります。

 中島敦の「山月記」は、詩人としての自らの才能に不安を持った主人公、李徴が、ついには社会から脱落し「人喰い虎」に変身してしまった悔悟が語られます。

 「・・・曾ての郷党の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは云わない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった」

 「己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった」

 「かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔としなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である」

 「己の珠に非あらざることを惧れるがゆえに、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった」

 「・・・(中略)・・・己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった・・・果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ・・・」(中島敦「山月記」より)

 芸術の立ち位置からの、ドラッグ汚染に関する観測は、上記「山月記」の中島敦の叙述がすべてを尽くしているように、私は考えています。

(つづく)


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55824
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/162.html

[国際25] 英EU離脱、ゴールドマンが合意なき離脱の確率を引き上げ EU、英に2週間の猶予、決断求める ユーロの役割、拡大する必要

ワールド2019年3月22日 / 17:43 / 2時間前更新
英EU離脱、ゴールドマンが合意なき離脱の確率を引き上げ
Reuters Staff
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[ロンドン 22日 ロイター] - ゴールドマン・サックスは22日、英国の欧州連合(EU)離脱について、メイ英首相の離脱案可決の確率が低下し、合意なき離脱の確率が上昇したとの見方を示した。

EU首脳は21日、英国のEU離脱を巡り、メイ首相がEUと合意した離脱協定案が英議会で来週承認されない場合、4月12日まで離脱日を2週間延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めた。

ゴールドマンのアナリストは「離脱を少なくとも2週間延期することにより、英国とEUはあらゆる選択肢を当面確保した」と指摘。

同社は、メイ首相の離脱案が可決される確率を60%から50%に引き下げ、合意なき離脱の確率を5%から15%に引き上げた。

離脱中止の確率は35%で変わらず。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-goldmansachs-idJPKCN1R30VD

 

ビジネス2019年3月22日 / 20:08 / 2時間前更新
ユーロの役割、拡大する必要=ユーログループ議長
Reuters Staff
1 分で読む

[リスボン 22日 ロイター] - ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のセンテノ議長は22日、欧州はドルの支配や全般的な不透明感に見舞われており、経済・通貨統合の完成を通じて、ユーロの国際的な役割を拡大する必要があるとの認識を示した。

議長はリスボンの会合で「貿易戦争のリスク、条約や国際アライアンスの破棄の脅威、代理紛争が、新たな必要条件、新たな課題を生み出している」と指摘。「米国の政策が不足しており、信用が低下している」との見解を示した。

「世界における欧州経済の重要性を踏まえれば、ユーロはしかるべき役割を果たしていない」とし「私たちは不透明感に直面しており、ユーロの役割を強化することで、貿易や経済統合のための好ましい環境を整えられる」と述べた。

議長は、ドルに取って代わることが狙いではなく、ドルと共存してユーロの卓越性を高めることが狙いだとし、そのためには欧州の統合強化と共通予算制度が必要だとの認識を示した。
https://jp.reuters.com/article/eurozone-reform-centeno-idJPKCN1R319J


 


 

2019年3月22日 ロイター
EU、英の離脱に2週間の猶予 4月12日までの決断求める

3月21日、欧州連合(EU)首脳は、英国のEU離脱を巡り、メイ英首相がEUと合意した離脱協定案が英議会で来週承認されない場合、4月12日まで離脱日を2週間延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めた。ロンドンの英議会で2019年1月撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)
[ブリュッセル 22日 ロイター] - 欧州連合(EU)首脳は21日、英国のEU離脱を巡り、メイ英首相がEUと合意した離脱協定案が英議会で来週承認されない場合、4月12日まで離脱日を2週間延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めた。

 7時間にわたる議論の結果、EU首脳はさまざまな選択肢を残し、英議会にメイ首相を支持するよう圧力を掛けるとともに、長期の離脱延期の可能性を与える一方で、合意なき離脱となった場合に批判を回避することにも備えた。

 メイ首相は6月30日までの離脱延期を求め、来週の議会採決で離脱案への支持を得られるとして説得を試みた。

 EU首脳は当初、5月22日までの延期を承認した上で、メイ首相が議会の支持を得られなかった場合の対応は来週に先送りする方針だったが、EU外交筋によると、メイ首相は各国首脳の説得に失敗。議会の支持獲得が可能だとメイ氏自身が信じていないとの印象を受けた首脳もいたという。

 メイ氏の退席後、残りの27ヵ国首脳の間で激論が交わされた結果、英議会が離脱協定案を来週承認した場合、5月22日までの延期に応じることで合意した。一方、承認されなければ、英国は4月12日までに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶ必要があるとした。

 EUは英国が加盟国にとどまるためには5月23日に欧州議会選を実施する必要があるとしており、4月12日は、法律で定められている通知期間である6週間前に当たる。

選択肢はオープン
 EUのトゥスク大統領は記者会見で、4月12日まで「全ての選択肢が残されており、崖っぷちの日は先送りされる」と述べ、「英政府にはまだ、合意、合意なき離脱、長期延期、離脱撤回の選択肢が残されている」と指摘した。

 メイ首相は離脱撤回や、欧州議会選の実施が必要になる長期延期に否定的な見方を示し、来週の議会採決で支持を得られるとの考えを強調した。

 EUの瀬戸際外交の背景には、英議会に圧力を掛ける狙いがあるかもしれないが、無秩序な離脱を回避する取り組みによって、景気減速やナショナリズムの拡大など他の課題に直面するEUの足を引っ張っているとのいら立ちも強まっている。

 マクロン仏大統領は「われわれはEUの利益を守る措置を提案した」とし、「内部の対立を解消する責任は英国にある。EU内に対立はない」と述べた。

 メルケル独首相は産業界への配慮から、無秩序な離脱を回避するため「ぎりぎりまで取り組む」と述べ、慎重な対応を促した。

 英国が3月29日に合意のないまま離脱した場合、EUは批判にさらされる可能性があったが、EU外交筋は、英国が欧州議会選の実施について判断する期日である4月12日まで危機を先送りすることで、EU首脳らは批判のリスクを回避したと指摘した。
https://diamond.jp/articles/-/197753
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/775.html

[経世済民131] 「問題社員」を辞めさせない限り生産性は上がらない 言葉ありきの仕事グセをやめれば企業は変わる 高ければいいわけではない
「問題社員」を辞めさせない限り生産性は上がらない

 問題社員は組織のがん細胞

【短期集中連載】中小企業はここから変えよ(最終回)
2019.3.22(金) 野崎 大輔

(野崎大輔:組織人材開発コンサルタント)

 前回、前々回と、働き方改革の本質は生産性の向上だと述べてきました。そのためには、社員が辞めないような会社作りをしないといけないとも言ってきました。しかし、時には辞めてもらわなければならない社員も存在します。それは、往々にして生産性向上を阻害する要因になっている「問題社員」です。

(前々回)そんなに甘くない! 中小企業「働き方改革」の現実 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55792

(前回)コレをやったら失敗する、中小企業の「働き方改革」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55793

問題社員は組織のがん細胞
「問題社員」と一口に言っても、様々なタイプがあります。

 例えば、「根はいい人なんだけど、仕事が出来ない」というタイプ。こういう人はまだ見込みがあります。根気強く育てていけば活躍できる人材になる可能性があります。基礎力を徹底させて、仕事を通じて育成していくことになります。

 しかし、仕事が出来ても、会社に対して文句や不平不満ばかりを口にして組織に悪影響を及ぼす社員は気をつけなければなりません。こうした社員は「反“会社”勢力」と言っています。

 会社に勤めているのであれば、会社の経営理念や方針に沿って業務に当たるというのが大前提です。会社の方針に対して反抗的で、文句ばかり言っているような社員は、仕事が出来る人だとしても、組織に悪影響を及ぼすのであれば辞めさせた方がいいと私は思っています。

 大企業では半会社勢力が一人くらいいても大勢に埋もれて目立ちませんが、従業員20人未満の中小企業の場合、1人でもそんな人がいると、対応に苦慮することになります。その人に同調するような人が出てくることもあり、組織が蝕まれてきます。仕事が出来て、発言力が多い人であれば、なおさら負の影響力を発揮します。

 もうこうなると組織にとってはがん細胞。ほかの人たちに転移する前にさっさと辞めてもらった方がいいのです。そうしないと、社内のチームワークが壊滅的なダメージを受けることになってしまいます。

 その観点から、中小企業の経営者から反“会社”勢力で困っているという相談を受けた際は、あえて強く「その社員は辞めさせた方がいいですよ」と進言することもあります。

問題社員のおかげでまじめな社員が次々と離職
 先日、私が支援しているある企業の社長から、「うちの会社、社員がけっこう辞めるんです」と相談を受けました。「辞める理由は何ですか?」と社長に聞くと、「夏場の作業が体力的にきついから、ということです」とのことでした。

 でも、腑に落ちなかった私は社長に根掘り葉掘り質問していきました。すると、どうやらあるベテラン社員と一緒に作業している社員がほぼ辞めているということが分かりました。仮にその人物をAとすると、社内では「Aと一緒に仕事をするのが嫌だ」と言う社員が多く、Aが原因で辞めていった人が何人もいたことが分かりました。

 以前も書きましたが、社員の離職は大きなロスです。採用コスト、教育コスト、人件費・・・Aのせいで、これまで同社は大きな損害を被ってきたわけです。

 そこで社長に言いました。「社員が辞めるのは、仕事がきついんじゃなくて、こいつのせいですよ」と。「これから決めなきゃいけないのは、Aをどうするかですよ。注意しても直らないのであれば私は辞めさせたほうがいいと思う」。そこまではっきり伝えました。

 社長も納得してくれたようで、「じゃあ、その線でAと話してみます」ということでした。

 結局、Aは自分の非を認め、改心を誓ったので、そのまま雇い続けることになりました。これはこれでよい結果だったと思います。

 中小企業で離職率が高くなる要因の一つが、このAのような人間の存在にある可能性もあります。だいたい社員が次々に辞めていくというのは、社内の人間関係に原因があることが多いです。その原因を放置したままで、いくら「働き方改革」を叫んでも、働く環境は変わりません。

 しかし、だからと言って「問題社員」に対して「君、クビだ」と言うことは、法律的にも不可能です。

 では、「問題社員」どうすればいいのか。これはもう端的に本人に言えばよいのです。もちろんパワハラになるような伝え方はNGですが、例えば「君のマネジメントのせいでこういう悪影響が出ているんだ。直してくれないと困るんだ。改善してもらえないのなら、君は別の道を考えたほうがいいよ」という具合に正直に言うのです。

 社長は組織の全体最適の視点を持つ必要があります。何か障害があるのであれば、速やかに対処しなければ問題は大きくなり、組織が蝕まれていくのです。

 肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方が疲労度は高く、いわゆる気疲れによって生産性は低下します。ある会社の管理職の方は、「問題社員が1人いるだけで部署全体のパフォーマンスが30%は下がっている」と仰っていました。これは会社としても大問題なはずです。

 一般的に解雇は悪というイメージがありますが、組織に悪影響を及ぼし、改善の見込みがない問題社員とは一緒の道を進むことはできません。真面目に働いている社員が嫌な思いをしたり、我慢したりしているのを放置している方が悪です。経営者としてどちらを優先するかは明白です。

 中小企業にありがちな「問題社員」には、もう一つ典型例があります。仕事をしない、会社の批判をしたり、周囲と上手くやれないお局さんケースです。

 周りからは、「あの人がいるとやりにくいんだよな」と言われていたり、部下をつけるといじめて辞めてしまうということも起きます。特に事務部門で長く勤め続けているお局さんは、社内で絶大な発言力を持つようになります。時には社長に直接不平不満をぶつけてくる強者もいます。

経営者は腹を括って対応を
 同時に問題なのは、こういう人たちは自分で仕事を抱えこんでしまい、ブラックボックス状態にしてしまいがちということです。

 社長はお局さんについて、「アイツがいないと会社が回らないんだ、だから辞めてもらっちゃ困るんだ」ということで、問題があってもあえて見て見ぬふりで、辞めさせることには及び腰になりがちです。ところが、実は簡単にできる仕事を、無自覚のうちに複雑化していることも少なくありません。最新のソフトやサービスを利用すれば、低コストでスムーズにすむ仕事が、非常に高コストで複雑な仕組みで進められていることもあるのです。

 こういう人は自分の仕事を「これは私しかできない」と言って他人に教えず、わざとブラックボックスにしていきます。そうやって自分の立場を強固なものにしようとしているのです。

 しかし、こうしたお局さんはやっぱり組織のがん細胞です。社内への影響力も無視できません。引継ぎが上手くいかなくて一時的に業務が混乱することがあったとしても、こういう人間には一刻も早く辞めてもらわなければなりません。

 問題のある社員には、ストレートにいかにその人が周囲に悪影響を与えているか、いかに会社の期待に応えられていないかを説明します。こういう人たちは自分が正しいと思っているので遠回しに言っても、気づかず、自分が悪いとも思いません。だからストレートに伝えた方が良いのです。

 だいたい、お局さんが社内で幅を利かせるようになるのは、社長や上司が「あいつを怒らせたりすると面倒臭いから放っていた」というのが原因であるケースが多いのです。ここでまた「面倒だからいいや」で済ませてしまっては、事態は何も解決しません。

 中小企業が生産性の向上を図るためには、例え仕事ができたとしても、周囲に悪影響を及ぼし、全体の生産性を低下させている問題社員を何とかしなければなりません。

 実はコレが働き方改革の前に大切なのです。職場における人間関係の良し悪しも少なからず生産性に影響を及ぼします。

 もしも自分の会社に「問題社員」がいるようなら、社長は腹を括って臨まなければなりません。がん細胞はひとりでになくなることはありません。放置すればますます増長し、他の社員にも転移してしまうかもしれません。早い段階で取り除けるかどうかは、社長の覚悟次第と言えるでしょう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/55794
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55794

 

【第10回】 2019年3月22日 佐宗邦威 :BIOTOPE代表・戦略デザイナー
「言葉ありき」の仕事グセをやめれば、日本企業は変われる!【入山章栄×佐宗邦威】
VISION DRIVEN時代の「人と組織」対談 #3

「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」――これがかつてのビジネスの常識だった。しかし「他者モードの戦略」は、いたるところで機能不全を起こしつつある。その背後で、いま、マーケットに強烈なインパクトを与えているのは、「根拠のない妄想・直感」を見事に手なずけた人たちだ。
そんななか、最新刊『直感と論理をつなぐ思考法――VISION DRIVEN』を著した佐宗邦威氏は、いま何を考えているのか? P&G、ソニーで活躍し、米国デザインスクールで学んだ最注目の「戦略デザイナー」が語る「感性ベースの思考法」の決定版!!
妄想(ビジョン)を具体化するデザインの力
佐宗:今回書いた『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』でも軽く触れているんですが、最初に個人が抱いた「妄想」(ビジョン)を話す相手は10人、20人ではなく、比較的信頼できる1〜3人くらいがいいと思うんです。最初は、「それはいいね!」とある程度ポジティブに言ってくれる友人からスタートする。
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学ビジネススクール准教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年から現職。「Strategic Management Journal」など国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。
たとえば、ベンチャーキャピタルにいきなりプレゼンにいかないじゃないですか。プレゼン自体は「見える」ことですが、プレゼンするまでのプロセスとして、こちら側で信頼できる人とのあいだでイメージを具体化するために何往復もしているわけです。
「ビジョナリー」と言われている人も、裏では、実はそういうシステムを回しているんじゃないでしょうか。
入山:佐宗さんのやっている戦略デザインファーム「BIOTOPE」はそういう役割じゃないですか?
佐宗:まさにそうですね。ビジョナリーの人が持っている「絵」の実現を支援することで、具体化のスピードを一気に上げていくことが大事だと思っています。たとえば「人工流れ星」をつくるという魅力的な「妄想」を打ち上げているALEの岡島礼奈さんという方がいます。「100年後のことをやりたいんだけど、それをどう具体化していこうか」という話、妄想からリアルの世界に落とし込んでいくというときには、僕たちの出番だなと思いますね。
そのためには、「デザイン」のとくに可視化・具現化の力が非常に生きてくると思うんです。具体性がない妄想だけでは、なかなか実現しにくい。
今回の『VISION DRIVEN』でも、原稿の前にまず1枚の大きな「絵」をつくりました。僕がラフで描いたものを、社内のイラストレーターが見事に具体化してくれて、それを自分がさらに修正していくことでより解像度を高めていったんです。最初にモヤモヤしていたものがデザインの力で具体的になっていくわけです。
ちなみに、僕からすると、入山先生も「絵」で考えるのがうまい人だなあという印象です。先生の講義では、ホワイトボードはほとんど図や絵ですから、ほとんどビジュアルで考えていらっしゃるのかなと思いました。あのわかりやすい図などはどうやってつくっているんですか?
入山:たとえば『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)で「世界標準の経営理論」という連載を4年間していたときは、僕がささっと描いた乱雑なラフをカメラで撮って、それを担当の編集者に送っていました。
この編集者さんがとても優秀で、僕が言いたいあやふやなことを奇跡的に理解して、見事に整理してくれる。さらにそれを優秀なDHBRのデザイナーさんが仕上げてくれるという流れですね。このプロセスで面白いのは、僕がイメージしたとおりのものができるときもあれば、僕のイメージをデザイナーさんが超えてくれる場合もあることです。
佐宗:僕も個人としてある程度デザインできると思っているんですが、やはりプロの具体化レベル、解像度を上げる力はレベルが違います。

イメージの解像度を上げるには五感を使う
入山:言葉だけで伝えるより、殴り描きでもいいのでラフがあったほうが伝わるということはあると思いますね。むしろ、言語による制約って、僕らが考えている以上にものすごく大きい。物事は言葉にした瞬間にすごく矮小化されるんです。僕たちは頭の中で言葉にできないいろいろなことをもっと考えているはずなんですが、言語化したときにしょぼくなってしまう。
佐宗邦威(さそう・くにたけ)
株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー。大学院大学至善館准教授/京都造形芸術大学創造学習センター客員教授。東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科修了。P&G、ソニーを経て、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。著書に『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
佐宗:テキストの場合とビジュアルの場合では、バイト数みたいなものが違うんでしょうね。あるいは、その背景にある「直感」は、バイトという概念では表現できないのかもしれませんが。
過去も含め、ものすごい情報量が人間の頭のなかにはあるはずです。それを言葉という限られたバイト数で具体化するのと、視覚的なかたちで拡げて具体化するのとでは、出てくるものは全然違って当たり前だと思います。
言葉の裏にはビジュアルがあって、ビジュアルのさらに先にあるのは直感です。ですから、ある言葉を定義しようとしたら、まず全身で経験してみる。そうして経験したなかで出てきた感情のキーワードや真意があります。それをまた新しい文脈の中で言語化してみる。言語化したものを、いまの時代やこれからの時代における価値観で見てみるわけです。
入山:そうやってプロセス自体をガラッと変えてしまうことが必要なんでしょうね。「言葉ありき」というのは、なかなか難しい。僕も、みんなが名前を知っているような大企業からご相談を受けることがあるのですが、創業者やトップがぽろっと言った言葉を社員が神学論争みたいに解釈して、物事が前に進まないという構造を目にすることがあります。
佐宗:だからこそ、まずは身体で体験するとか、目で見えるように表現するというふうに、インプットやアウトプットのかたちを変えていく。それだけで、けっこう簡単に現場が変わったりするというのが、戦略デザインの仕事をするようになってから気づいたことですね。
入山:ソフトバンクは学生募集の際、ひたすら動画を見せるそうです。脳に思い浮かんだ複雑なことを俗世間化するためにビジュアル化し、最後に文字化するわけです。ビジュアルから文字化するプロセスに音や動画を利用すれば、より鮮明になると思います。
「想い」は時代に合わせて再解釈することで生き返る
佐宗:『直感と論理をつなぐ思考法』にも書いたんですが、子どもっていろいろなものを目で見て、「これはシマウマ」「これはゾウ」と学びながら、最後に言葉で名前を覚えます。そのプロセスはまさに「体感からはじまり、視覚を経由して、言語化する」プロセスで、最初から「いきなり概念」というわけではないわけです。
入山:いろいろ体感して、最後に名前をつける。いわゆるJK語って、女子高生たちの感覚で時代を表現しているんですよね。そのあたりの感覚で断絶があるから、僕はいまだに「エモい」という概念が理解できません(笑)。
佐宗:一方、ビジネスの世界は、言語での議論、論理の世界に終始しがちです。しかし新しいものは感覚からスタートしないと生まれようがありませんし、人も動かない。縛られている論理からいったん抜け出し、子どもみたいに考えるプロセスを挟んでから、もう一回言語化してみることで、概念はよりいっそうはっきりしてくるわけです。
入山:僕が佐宗さんに聞きたいのは、創業者の想いの具体化です。たとえば大企業には企業理念や経営指針など、根底にはそもそも創業者の想いがあるじゃないですか。でも古い企業になると、たいてい創業者ご本人はもう亡くなっていますから、創業者と同じことは体感できません。そういうときには、創業者の想いってどう具体化するんですか?
佐宗:まさに、そこが大企業がうまくいかなくなる原因の1つだと思っています。たとえば宗教の教祖が死んでしまったあとに、いろいろな宗派が生まれるのと同じです。「聖典」みたいなベースがあれば、ある程度は現場に合わせて解釈できるでしょうが、それでも限界はあるでしょう。
魂は、生まれたときに最初に宿る、つまり妄想(ビジョン)の段階で魂が宿っていると思っています。創業者が自分の想い、妄想を実現するために行動し、周囲を巻き込んで、時代の波に乗って上り続けた結果、会社という大きな山ができる。大事なのは、その最初の山を踏まえて、次の一歩をどう踏み出すかを考えることですね。
そのためには、創業者の「魂」を時代に合わせて大胆に「再解釈」することが必要だと思います。そしてそのためには、単なる言葉の解釈ではなく、時代における空気、時代感、人の感情などモヤモヤしたものを踏まえつつ、「ジャンプ」しないといけない。いわゆるリブランディングは、まさに「再解釈」のプロセスですね。

直感力を磨けばビジョンは具体化できる
佐宗:ブランドの再定義をお手伝いするとき、僕は歴史分析とか歴史のフィールドワークをけっこうやるんです。その時代に生きていた人の感覚や感情を浴びるためです。
たとえばソニーの前身である東京通信工業株式会社に、「自由闊達にして愉快なる理想の工場」という井深大さんの言葉があります。この「自由闊達」という意味は、おそらく今とは違うと思うんです。言葉だけから想像してもわからない。僕らの「自由闊達」と創業者の感じている「自由闊達」とは絶対違うでしょう。
軍事産業でずっとやっていたエンジニアが、ようやく軍事ではない、本当に自分がつくりたいものをつくれる自由闊達な時代になった、という文脈で生まれてきた言葉なんです。
入山:まさにエスノグラフィック的なアプローチですよね。僕は企業向けの講演でイノベーションは重要だという話を散々していて、最後に話すのが「センスメイキング」なんです。
佐宗:不透明性の高い現代のような環境だと、外界の状況を感じ取って、そこから固有の意味をつくっていくセンスメイキング(意味づけ)が欠かせなくなりますよね。入山先生は以前から、この概念に注目されていました。
入山:でも、問題はそのあとで、「じゃあどうすればいいんですか?」と必ず聞かれる。
学術的にはセンスメイキングって奥行きの深い概念ですから、いろいろな答え方があると思うんですんが、僕の回答は意外と大したことはなくて、「経営者がビジョンを語ることも重要ですし、受け手の腹落ちも重要です」と。みんな、「なんだそんなことか」という顔をするんですが、「トップのビジョンを自分たちの現場に置き換えるとどう解釈できるか、それを考える機会をつくったり研修をしたりしていますか?」と質問すると、それをやっている企業って少ないんですよね。
「妄想」が企業に必要なことに気づいている経営者は多いと思いますが、結局、それを現実のビジネスに落とし込んでいくときには、一定のプロセスが必要です。みんな、それをやるとなると、手が止まってしまう。その本質的なアプローチのところがわかっていない。
佐宗さんの今回の本には、それが具体的かつ体系的なかたちで書かれていて、実際のアクションにつなげられるようになっている。まさに「直感」と「論理」をどうつなげばいいのかを、現場で考え続けてきた佐宗さんだからこそ書けた一冊だと思いますね。
『直感と論理をつなぐ思考法』のゲラで「モーニング・ジャーナリング」を知ったあと、迷わずすぐにモレスキンノートを購入したという入山先生。
佐宗:うれしいお言葉をありがとうございます! 今はある程度の情報はそこそこ簡単に集められます。でもそれを羅列しただけでは、ただの寄せ集めなんですよね。そこでいちばん大切なのは何なのか、その全体像をつかむためには、やはり体系性みたいなものも大事にしたいと思って、今回の本をまとめました。結局、直感と論理の「往復」を繰り返すことが、大事なのだということを僕自身も体感しましたね。
(対談おわり)

https://diamond.jp/articles/-/195877

 

【第5回】 2019年3月22日 ヤニス・バルファキス ,関美和

あなたの身近の「値段がつくと価値が下がるもの」とは?
何でも高ければいいわけではない理由

元財務大臣が十代の娘に語りかけるかたちで、現代の世界と経済のあり方をみごとにひもとき、世界中に衝撃を与えているベストセラー『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳)がついに日本に上陸した。

ブレイディみかこ氏が「近年、最も圧倒された本」と評し、佐藤優氏が「金融工学の真髄、格差問題の本質がこの本を読めばよくわかる」と絶賛、ガーディアン紙(「新たな発想の芽を与えてくれるばかりか、次々と思い込みを覆してくれる」)、フィナンシャル・タイムズ紙(「独自の語り口で、大胆かつ滑らかに資本主義の歴史を描き出した」)、タイムズ誌(「著者は勇気と誠実さを併せ持っている。これぞ政治的に最高の美徳だ」)等、驚きや感動の声が広がっているその内容とは? 一部を特別公開したい。.

心が満たされることの価値

 エギナ島に陽が落ちようとしている。夏の夕方だった。私は君とベランダに座って、海の向こうのペロポネソス山脈に赤い夕陽が沈んでゆくのを眺めていた。私が子どものころ、父がよく話していたように、私も君に、沈む夕日はなぜ赤いのかを科学的に説明しはじめた。せっかくの素敵なひと時が台無しだ。

 その晩、友人夫婦とその幼い息子のパリスを誘って、マラソナス・ビーチにあるお気に入りのレストランまでボートで向かった。食べ物を注文していると、パリスがみんなを笑わせはじめた。パリスはノリノリではしゃぎ、私たちを大いに笑わせてくれた。いつもはむっつりしている友人もつい笑ってしまうほど、楽しい晩だった。

 食べ物がくる前に、コスタス船長が、頼みがあると言いにきた。

 コスタス船長は、レストランの裏にある船着き場の私たちのボートの横に、自分の漁船を停めていた。船の錨が海底の岩に挟まってしまい、引き上げようとしたら鎖が切れてしまったという。

「お願いできませんかね? 先生、ダイビングがお好きでしょう? ひとつ潜って、この縄を錨の鎖に結んでもらえませんか? できれば自分でやりたいところなんですが、今日は持病のリューマチが痛んじゃって」そう頼まれた。

「いいよ」人助けのチャンスだと思って、喜んで海に飛び込んだ。

 夏の夕暮れ。私をうっとうしく思っている君。はしゃぎ回るパリス。コスタス船長の頼みで、海に飛び込むのは楽しかった。素敵な夏のひと時だ。心が満たされる。嫌なことも忘れてしまった。たとえば、友だちが傷ついたり、退屈な宿題をしなくちゃならなかったり、孤独を感じたり、将来に不安を持ったり、そんなときとは正反対の気分になった。

 こんなふうに心が満たされるのは、「いいこと(グッド)」だ。しかし、経済学でも「グッズ」という言葉を使う。店の棚に並んでいる品物や、アマゾンで売っているものや、テレビでしょっちゅう宣伝しているものも「グッズ」と呼ばれる。同じ言葉だが、意味はまったく違う。後者はむしろ「商品(コモディティ)」と呼ぶべきものだ。では、「グッズ」と「商品」はどう違うんだろう?

「高ければ高いほど売りたくなる」わけではない

 エギナ島の夕暮れ。パリスがはしゃぎ、私は海に飛び込む。そんな経験はおカネでは買えない。一方、「商品」は売るためにつくられたものだ。

 君が気づいているかどうかわからないが、グッズについてほとんどの人は勘違いしている。値段が高いほうがいいものだと思っている人は多い。しかも、支払ってもらえる金額が多ければ多いほど、人はそれを売りたくなるはずだと思い込んでいる人も多い。

 だが、そうではない。

 たしかに商品の場合はそうだ。消費者が高額でもiPadを手に入れたいと思えば、アップルはもっとiPadを生産する。レストランも同じで、値段が高くてもみんなが地元の名物料理を注文したがったら、レストランはその料理を目いっぱいつくろうとするだろう。

 でもパリスのお笑いは違う。おカネを払うからもっと面白いことを言ってくれとパリスに頼んだら、パリスは変に緊張してしまうに違いない。おカネをもらえると考えたとたん、面白いことが言えなくなってしまうかもしれない。

 コスタス船長の一件を考えてみよう。もし、おカネを払うから海に潜ってくれと頼まれていたら、喜んで潜っただろうか? 海に飛び込むことを楽しめただろうか?

 おカネを払うと言われたら、人助けの喜びや冒険のワクワク感がなくなってしまう。ちょっとばかりおカネをもらっても、失われたワクワク感の埋め合わせにはならない。

すべてを「値段」で測る人たち

 パリスが将来プロのコメディアンになったり、私がプロのダイバーだったら話は別だ。パリスのお笑いも私のダイビングも「商品」になる。

 商品とは、いくらかの金額で「売る」ものだ。それが商品であるなら、お笑いにもダイビングにも市場価格がつく。市場価格とは「交換価値」を反映したものだ。つまり、市場で何かを交換するときの価値を示しているのが市場価格だ。

 だが、売り物でない場合、お笑いにもダイビングにも、まったく別の種類の価値がある。「経験価値」と呼んでもいい。海に飛び込み、夕日を眺め、笑い合う。どれも経験として大きな価値がある。そんな経験はほかの何ものにも代えられない。

 経験価値と交換価値は、対極にある。それなのに、いまどきはどんなものも「商品」だと思われているし、すべてのものに値段がつくと思われている。世の中のすべてのものが交換価値で測れると思われているのだ。

 値段のつかないものや、売り物でないものは価値がないと思われ、逆に値段のつくものは人の欲しがるものだとされる。

 だがそれは勘違いだ。いい例が血液市場だろう。多くの国では、人々は無償で献血している。誰かの命を救いたいという善意から、献血するのだ。では、献血におカネを支払ったらどうなる?

 答えはもうわかるだろう。献血が有償の国では、無償の国よりもはるかに血液が集まりにくい。おカネにつられる献血者は少なく、逆におカネを支払うと善意の献血者はあまり来なくなる。

 グッズと商品の違いがわからない人は、どうしておカネを支払うと献血者が減るのかを理解できない。おカネを受け取りたくないから献血しない人がいることが、わからないのだ。

 でもここで、コスタス船長の一件を思い出すと、わかりやすくなる。夜の海に飛び込んでくれと船長に頼まれて、私は彼を助けたいという気持ちから、面倒だったが服を脱ぎ、暗くて冷たい海に飛び込んだ。もし「5ユーロ出すから海に飛び込んでくれ」と頼まれていたら、やらなかっただろう。

 献血も同じだ。献血者は人助けと思って献血する。だがそれに値段がつくと、人助けでなく商売になってしまう。ちょっとばかりおカネをもらっても、気持ちの埋め合わせにはならない。もちろん、時間もかかるし注射針は痛い。

「皮肉屋とは、すべてのものの値段を知っているが、どんなものの価値も知らない人間」だとオスカー・ワイルドは書いた。

 現代社会はわれわれを皮肉屋にしてしまう。世の中のすべてを交換価値でしか測れない経済学者こそ、まさに皮肉屋だ。彼らは経験の価値を軽んじ、あらゆるものは市場の基準で判断されると思っている。

(本原稿は『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』からの抜粋です)

ヤニス・バルファキス(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EU から財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『そして弱者は困窮する』(未邦訳)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。

関 美和(せき・みわ)
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学卒業後、電通、スミス・バーニー勤務を経て、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な訳書に『誰が音楽をタダにした?』(ハヤカワ文庫NF)、『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)、『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP社)、『明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業』(ダイヤモンド社)など。
https://diamond.jp/articles/-/195064
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/634.html

[経世済民131] 来週の外為はFOMCショックから立ち直れるか、株価が鍵 FRB議長「点描画」 欧州「日本化」懸念再び、成長とインフレ鈍化

 

 

トップニュース2019年3月22日 / 15:38 / 6時間前更新
来週の外為はFOMCショックから立ち直れるか、株価が鍵
Reuters Staff
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[東京 22日 ロイター] - 来週の外為市場では、米連邦公開市場委員会(FOMC)のハト派急転換を経て1.4円下落したドルが、さらに下げ続けるかを見極めることになりそうだ。米10年国債利回りが1年2カ月ぶりに2.500%台に落込む一方で、強さを維持する米国株の動向が鍵となり、株価が崩れる場合、リスク回避の円買いでドルが110円を割り込む可能性もある。

予想レンジはドル/円が109.50━111.50円、ユーロ/ドルが1.1250―1.1450ドル。

3月19―20日に開催されたFOMCでは、年内追加利上げを見込まないメンバーが11人もおり、米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート(B/S)縮小も早々と9月末に終える予定が示された。

市場では「B/S縮小が12月末ではなく、9月末に停止するとしたことが最大の驚き。年内利上げはないとの見通しも、想定より多くの支持があった」(ウェルズ・ファーゴ・アセットマネジメント)との意見が出ていた。

「これでもかというほどのハト派転換だった。(来週は)FOMCを受けたドル安の余韻が続くかを見極める週となりそうだ」とトウキョウフォレックス上田ハーローの営業推進室長、阪井勇蔵氏は言う。

今後は、米中通商協議や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る手続きに何らかの進展があるかに加え、米国株の動向が鍵を握ると同氏はみており、株価が値崩れすれば「下方向のリスクが意識されやすい」(同)という。

3月25日の週は四半期末、月末となるため、期末特有のフローも出やすいとみられ、かく乱要因になり得る。

米中通商交渉を巡り、米国や中国サイドからの「大いなる進展」との発言や、トランプ氏からの「米国に不利なら合意しない」との発言等に市場は一喜一憂してきたが、今回の鍵を握るのは「履行検証メカニズム」だ。

「履行検証メカニズムが担保されなければ、2017年4月に両国が合意した貿易不均衡是正への『100日計画』の二の舞になるだろう。合意が単なる覚書に成り下がり、中国側は実質的に何も取り組まないこともあり得る」(国内エコノミスト)という。

ロス米商務長官は2017年5月に、100日計画の一環として、参入が規制されていた金融や農業分野で速やかに市場開放を進めるとの約束を中国から取り付けたとしたが、金融市場ではその後、計画がほぼ実態のない合意との認識が広がった。

為替マーケットチーム
https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-wklyoutlook-idJPKCN1R30KC

 


2019年3月21日 加藤 出 :東短リサーチ代表取締役社長
FRB議長が「点描画」の名作を持ち出して市場に訴えたこと
点描画
パウエルFRB議長は講演で、点描画の代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の画像を示し、FRBの情報発信について「点」ではなく「全体」に目を向けるよう訴えた Photo by Takahisa Suzuki
 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は3月8日の講演で、緑、黄、オレンジ、青の点(ドット)が描かれた写真を聴衆に示した。これだけでは何が表されているのか分からない。

 続いて彼はフランスの画家、ジョルジュ・スーラの有名な絵画「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を提示した。最初の写真はこの絵画のクローズアップだった。同絵画は点描技法の代表的な作品だが、ドットが見えるほど近づくと意味不明になる。FRBのドットチャートも同様であり、過度にそれに目を向けないでほしいとパウエル氏は訴えた。

 ドットチャートはFRB幹部各自による先行きの政策金利予想をドットで表したもので、ベン・バーナンキ元FRB議長時代に始まった。その中央値は常に大きく報じられてきたが、それは「計画」でも「約束」でもなく、情勢次第で変更される予想の集計にすぎない。中央銀行が未来を見通す水晶玉を持っているなら別だが、現実はそうではない。

 今年のように米中貿易戦争等で経済情勢が大きく変わってしまう場合、ドットチャートで先行きの政策を示すことは特に誤解を招きやすい。パウエル氏はFRBの情報発信全体を見てほしいと言っているが、本音ではドットチャートをやめたがっているだろう。だが一度始めてしまったものはなかなかやめられない。せめてFRBは日本銀行のインフレ予想のように、各自のドットが先行き修正され得る方向性を、上向きや下向きの三角形で示す方がよいだろう。

 ドットチャートとは趣旨が大きく異なるが、日銀が2016年9月に採用した宣言(インフレ率が安定的に2%を上回るまでマネタリーベースを増加させる)も、市場の期待を制御しようと中央銀行が導入してはみたものの、トラブル含みとなり始めた事例といえる。

 16年9月の金融政策決定会合で日銀は、超金融緩和の中間目標を、マネタリーベース(現金+日銀当座預金)という「量」から「金利」に変更した。巨額の国債買い入れは技術的に遠からず継続できなくなることが予見されたためだ。

 しかし、「量」を放棄したことが明らかになると、為替市場で一部のプレーヤーが「緩和姿勢の後退」と受け止めて円高方向に走り始めることを日銀は心配した。

 そこで日銀は「量」を捨てていないフリをするために前述の宣言を採用した(リフレ派の日銀政策委員に賛成票を投じさせる意図もあった)。だが、「その場しのぎ」の対応は後で説明に無理が生じる。

 実は、マネタリーベースの増加が経済に何の意味もないことは、16年2月のマイナス金利政策導入で決定的となった。

 それ以降のマネタリーベース増加の大半は日銀当座預金における「ゼロ金利適用部分」だ。金融機関は市場からマイナス金利で資金を借りて、そこに預けることで薄い利鞘を得る。「ゼロ金利適用部分」が増えても実体経済には全く染み出さないことは日銀自身が最もよく知っている。

 最近の長期金利の低下に合わせて日銀は国債買い入れ額を年30兆円台に落としている。それに伴ってマネタリーベースの伸びも鈍化した。そのこと自体に経済への悪影響はないが、前述の「その場しのぎ」の宣言のせいで、「マネタリーベースを増やさない日銀の意図は何か?」といった誤解が市場関係者から聞こえる。先行き円高が進んだら、そういった声はより大きくなり、日銀は説明に苦慮することになると懸念される。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
https://diamond.jp/articles/print/197315

 
2019年3月22日 The Wall Street Journal
欧州の「日本化」懸念再び、投資家に教訓は 成長とインフレ鈍化する欧州、日本の道たどるか

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

 ***

 「日本化」が復活している。欧州の経済成長とインフレの鈍化を受け、ウォール街では欧州が日本化しているとの懸念があらためて浮上している。バンクオブアメリカ・メリルリンチ(BAML)によれば、この認識に基づく取引は現在「世界で最も意見が一致する取引」だ。

 言うまでもなく、日本は何年も低インフレに手を焼いているうえ、日本株は30年近く前の暴落から回復していない。欧州にはよく似た現象が幾つかある。欧州中央銀行(ECB)と日本銀行はいずれも、長らくゼロ金利やマイナス金利を試してきたが、物価上昇には至っていない。日欧のいずれも、問題の度合いを認識する前に性急に利上げを行った。加えて、日本でも欧州でも高齢化が成長見通しを圧迫している。

 こうした類似点は投資家にとって重要だ。だが政府と市民にとっては相違点の方が重要かもしれない。実際には、日本の経済成長は一般に考えられているほど悪くないし、欧州の政策対応は日本と全く違う。

 確かに、日本は1990年のバブル崩壊後10年にわたり伸び悩み、銀行は問題に見舞われた。だがその後の日本経済は(人口減少の影響を除外するため1人当たりを基準とすれば)順調だった。世界銀行によると、日本の1人当たりの国内総生産(GDP)は2000年以来、購買力平価ベースでユーロ圏より速い成長を遂げている。しかも06年以降の成長は米国や英国より速い。日本の失業率は一貫してどの先進国よりも低い。

 欧州は08年と10〜12年に起きた2つの危機に金融緩和政策と緊縮財政政策で対処した。日本の対応は全く逆だった。危機後20年以上にわたり、ほぼ常に、プラスの実質金利(つまり、インフレ率をやや上回る金利)を維持した。ECBは、11年の間違った利上げから撤退して以来、コアインフレ率(エネルギー、食品、アルコール、たばこを除く)を超える金利を設定してこなかった。

 ECBだけでは欧州の災難全てに対処できなかったとしても、金融緩和がデフレ回避に役立ったとするマリオ・ドラギECB総裁の見解に賛成するのは理にかなっている。

 一方で、日本の路線を欧州がたどっているのではないかと投資家が懸念するのは当然だ。欧州諸国の政府は日本が抱えたような多額の赤字を抱えたくないし、抱えることもできない。その上、金融政策の威力がはるかに限られているため、何かショックを受ければ欧州はデフレに傾きかねない。

 危険は明らかだ。日本株は配当の再投資を加味しても1989年末のピークをなお18%下回っている。同年以来、日銀が利下げを挟まずに3回続けて利上げしたことはない。日本の消費者物価は98年にデフレ入りする前の水準から1%も上昇しておらず、生鮮食品とエネルギーを除くと20年前より低い。

 投資家が日本化について懸念する際には、欧州で新たなショックが起きることを懸念する必要は全くない。マイナス金利を維持する準備のある中銀と低インフレのおかげで、ゼロ近辺の10年物ドイツ国債利回りが容認されている。日本からの教訓は、債券利回りの一段の低下があり得ないと思われている時は常に低下するということ、そして債券は素晴らしい投資先だ、ということだった。欧州は日本と全く同じ経験をするわけではないかもしれないが、ユーロ圏解体という追加的な懸念が鈍感なドイツ国債の魅力を高めている。

 日本から株式市場への最大のメッセージは既に浸透しているのかもしれない。それは、「間違っても銀行株は買うな」ということだ。

 日本では大手輸出企業が主な勝ち組となったが、欧州でそれが再現されるかどうかは全く分からない。90年以降の日本株市場では、自動車株が工業銘柄と共にベストパフォーマーの一角を占めている。海外需要のおかげだ。欧州には大きな貿易黒字があるものの、世界・中国経済の成長鈍化と貿易摩擦の激化からすると、日本ほど長きにわたって維持するのは難しいだろう。

 欧州市場の投資家にとっての好機は、日本化への懸念がまたも行き過ぎであることだ。欧州のインフレと経済が期待を裏切らなくなるだけで株価が上昇する一方、米国の新たな自動車関税を避けるために環大西洋協定が成立すれば、疲弊した欧州の自動車メーカーは息を吹き返すだろう。悲観がわずかな期待に変化する時、株価は上昇することがある。日本がこれに当たり、90年以降の弱気相場では20%以上も上昇した年が5回あった。日本化のこの側面ならば、欧州は歓迎するだろう。

(The Wall Street Journal/James Mackintosh)
https://diamond.jp/articles/-/197616


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/635.html

[経世済民131] ソニー、増える利益と下がる株価  アップル1兆$企業になれた理由 サイゼリヤ客離れ、全席禁煙化のせい? 景気後退での営業

ソニー、増える利益と下がる株価
証券部 菊池貴之 2019/3/22 5:30日本経済新聞 電子版
2019年3月期に、前期比70%増の8350億円と過去最高の連結純利益(米国会計基準)を見込むソニー。最高益は18年3月期に続き2年連続だ。吉田憲一郎社長のもと、ゲームや音楽など景気の影響を受けにくい事業が着実に利益を稼ぐしくみを構築し、テレビなどエレクトロニクス事業の苦戦で収益が低迷していたかつての姿とは完全に決別した。だが、同じ最高益でも、株価を見る限り前期と今期とでは市場の受け止め方が異なるらしい。18年3月期の期中は株価がずっと上がり続けていたのに、昨年9月下旬を境に右肩下がりに転じてしまっている。

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「3年間合計の営業キャッシュフロー(CF)が3兆円に達しても不思議はない」。ある国内証券のアナリストは21年3月期までのソニーについて、こんな見方を示す。ソニー自身が示している営業CFの見込みより1兆円多い額だ。確実にキャッシュを生んでいるゲームや音楽といったエンタテインメント事業に加え、世界シェアで5割超を誇る画像センサーがある。スマートフォン(スマホ)の販売が頭打ちでも、画像センサーには複眼化、多眼化という追い風がある。ソニーの現金創出力に対する期待は高い。
ところが、株価はさえない。20日の終値は4951円と、約1カ月ぶりに5000円を割り込んだ。昨年9月28日に付けた昨年来高値(6973円)より3割安の水準だ。昨年来高値を付けたころには17倍台だったPER(株価収益率)は今や7倍台。東証1部平均(14倍台)の半分程度でしかない。

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2期連続の最高益を見込み、業績は好調だが……(ソニー本社)
利益や営業CFが増える一方で、下がり続ける株価。この差をどう理解したらいいのか。
まず指摘できるのは「次の利益成長のネタがみえてこない」(米系証券のアナリスト)ことだろう。19年3月期の予想営業利益が3100億円と連結業績全体をけん引するゲーム事業は「プレイステーション(PS)4」がゲーム機としてのモデル末期にさしかかっている。定額でオンライン対戦や一定のソフトを遊べる「プレイステーションプラス」の会員、3630万人(18年12月末時点)が一気にいなくなることはないにしても、成長のドライバーとしては力不足と言わざるを得ない。
とはいえ、次世代機はいずれ出てこよう。実際、吉田社長は18年10月、英フィナンシャル・タイムズに対し「次世代機は必要だ」と話しており、20年3月期に新型ゲーム機が投入されると予想する証券アナリストもいる。
画像センサーでも手を緩めない。ソニーは画像センサーを含む半導体事業に、21年3月期までの3年間で6000億円を投じる計画を掲げる。18年3月期までの3年間と比べ約3割増しの水準で、生産能力は2〜3割高まる見込みだ。スマホだけでなく車載用でも需要が増えていることに対応する。

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とすれば、株価が低迷する理由はほかにもある。それは皮肉にもCFが想定以上に増えていることかもしれない。前出のアナリストが指摘するように今後3年間で稼ぎ出す営業CFが1兆円も上振れするなら、相応の利益増を伴わなければ資金効率は悪化する。18年3月期に18%まで高まった自己資本利益率(ROE)も低下が避けられない。2月8日には1000億円の自社株買いを発表したが、1兆円に比べれば文字通り、ケタが違う。
ソニーは03年、業績悪化をきっかけに日本株全体を急落させた「ソニー・ショック」の引き金を引いた。逆に、17年秋に発表した業績上方修正は、日経平均株価が約26年ぶりの高値を回復する原動力になった。ソニーは良くも悪くも日本企業の象徴だ。好業績が素直に評価される段階が過ぎ、好業績で積み上がったキャッシュをどう活用するのかが問われている今の姿も、多くの日本企業が抱える課題と重なる。市場が求めるレベルが1段階上がったとの認識をソニーの経営陣が強めれば、どうにも上値が重い日本株も活気づくかもしれない。
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東証後場寄り 引き続き小安い 日銀買いの思惑乏しく、ソニー安値
2019/3/22 13:01
22日後場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は引き続き小安い。前営業日比40円程度安い、2万1570円近辺で推移している。円相場が1ドル=110円台後半と引き続き高止まりしており、散発的な売りに押されている。ソニーが昨年来安値を更新したほか、キヤノンなども売られており、主力電機株の下落が相場全体の重荷になっている。
東証株価指数(TOPIX)は前営業日の終値を0.11%下回って午前を終えた。日銀は前場終了時の下落率がより大きい19日(0.3%)に上場投資信託(ETF)買い入れを実施しておらず、「きょうも実施しないとの観測が買い控えにつながった」(国内証券の株式トレーダー)との声があった。
JPX日経インデックス400とTOPIXは引き続き小安い。
前引け後の東証の立会外で、国内外の大口投資家が複数の銘柄をまとめて売買する「バスケット取引」は約284億円成立した。12時45分現在の東証1部の売買代金は概算で1兆4330億円、売買高は7億3637万株だった。
エーザイは引き続き売り気配。小野薬や塩野義、武田が下落している。セブン&アイや花王、JTも下げている。一方でSMCや住友鉱、味の素が上昇。ソフトバンクGやスズキも高い。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42733940Q9A320C1000000/?n_cid=TPRN0026

 

2019年3月22日 竹内一正 :経営コンサルタント
アップルがジョブズを失っても史上初の1兆ドル企業になれた理由
アップル
「アップルはこれから駄目になる」と言われながら、なぜ1兆ドル企業に成長できたのでしょうか?Photo:iStock/gettyimages
2011年にジョブズが死去した時、多くの専門家は「アップルはこれから駄目になる」と予測した。ところが、ジョブズの後を継いだCEOティム・クックはアップルの売り上げを伸ばし続け、2018年夏にはビジネス史上初の時価総額1兆ドルを突破。iPhoneの累計販売台数は15億台を超えた。
 
ジョブズ亡き後のアップルでは一体何が起こっていたのか。そして、2019年1月に起きた「アップルショック」はアップルの終焉のはじまりなのか。『アップル さらなる成長と死角』の著者であり、アップルでの勤務経験を持つ竹内一正氏がその舞台裏を3回にわたって解き明かしていく。

30兆円のキャッシュを
どうやって積み上げたのか?
 2689億ドル――約30兆円。

 これは2017年度までにアップルが積み上げたキャッシュであり、スウェーデンの国家予算を上回る金額だ。アップルの財務体質は盤石だと世間は思っている。

 そして、このキャッシュはiPodやiPhoneといった画期的な新製品がもたらしたものだと誰もが考えているが、それはA面の話に過ぎない。

 B面では、ティム・クック率いるオペレーション部門が八面六臂の活躍をして、財務体質の改善を劇的に成し遂げていた。オペレーションとは、物流や在庫管理、サプライヤー管理を行う“裏方”の部署で、華やかさとはまったく縁がなく、地道で泥くさい仕事である。

 そもそも、世界を驚かせる新製品を生み出すアップルでは、開発部門やデザイン、マーケティング部門が花形だ。一方、オペレーション部門は縁の下の力持ちで、アップルのヒエラルキーでは“最下層”と言っていい。ティム・クックは大学を出てからIBMやコンパックなどでこのオペレーションの仕事に携わってきた。

 アップルに入ったティム・クックはジョブズの下、オペレーションの責任者としてアップルの工場を次々と閉鎖して、鴻海などサプライヤーに生産委託し、在庫回転率を上げ、赤字から黒字へ財務体質を劇的に改善したのだ。

技術開発はうまいが、
在庫管理は下手だった
 ティム・クックが来るまで、アップル社では新製品を市場投入するたびに旧製品の膨大な在庫に悩まされていた。このことに世間もマスコミも気を留めていなかった。

 しかし、実際には数百万ドルもの損失となって、アップルを苦しめていて、いかにして不要な在庫を最小化するかは、アップルの経営にとって大きな問題のはずだった。それにもかかわらず、世界を驚かせる製品を生み出すことに全力を挙げるアップルにとって、創業以来、在庫管理という仕事のプライオリティーは極めて低かった。

 1995年頃、つまり、クック以前では、「アップル製品には3つの価格サイクルがある」と言われていた。

 詳しく説明しよう。まず、製品発売時の価格がエントリープライス(初期価格)だ。たとえば、35万円の初期価格で販売開始したマッキントッシュは、時間経過とともにどうしても販売は減速していってしまう。

 そこである日、ミッドターム・プライス(中間期価格)の25万円に一気に価格ダウンする。すると、販売は一旦、息を吹き返すものの、そう長くは続かない。しかたなく次の新製品が登場するタイミングに合わせて、EOLプライスを付ける。EOLとはエンド・オブ・ライフの意味で、いわば「たたき売り価格」だ。新製品が登場すれば旧製品に価値はなくなる。もし、EOLプライスが15万円だとすると、結局35万円で売り出したマッキントッシュは、最後には15万円でたたき売りしていたことになる。

 当時のアップルは、エントリープライスで利益を稼ぎ、ミッドターム・プライスは利益スレスレで、EOLプライスだと赤字になっていた。3つの価格全体を総じて利益が出ればいいという極めて大雑把な考え方をしていた。それはアップルの社内常識であり、創業者のジョブズの思考回路を反映したものとも言えた。新製品を生み出すことに情熱を傾けるアップルだが、在庫管理や生産管理は下手くそで、手を抜いていた。

マイクロソフトに援助を求めるほど、
カネのなかったアップル 
 ジョブズが暫定CEOとなった1997年度のアップルの業績は約10億5000万ドル(当時のレートで約1260億円)の赤字で、売上利益率はマイナス15%と散々で危機的状況に陥っていた。2018年夏には時価総額1兆ドルを突破したアップル株だが、その頃は一株3ドル程度の“ジャンクボンド”に過ぎず、売却したくても手数料の方が高くつくありさまだった。

 世間ではアップル社の身売り話が大きく取りざたされ、隆盛を誇っていたエクセレントカンパニーIBMが買収に乗り出すとか、アラブの王様がアップルを欲しがっているといった記事がシリコンバレーのサンノゼマーキュリー紙を度々飾った。

 そこで、アップルへ奇跡の復帰を遂げ、暫定CEOとなったジョブズが最初に断行した事のひとつが、宿敵のマイクロソフトから資金援助を得ることだった。

 1997年8月のイベント、マックワールドのステージ上でジョブズが「マイクロソフトと提携をする」と発表した時、観客たちは凍り付き、絶句した。ウィンドウズがMacをまねてつくられたことは業界関係者の間では常識中の常識だった。そして、PC業界を牛耳るマイクロソフト社とビル・ゲイツは独裁者ビッグブラザーであり、アップルファンにとっても親の敵同然だったからだ。

 そんな感情論を振り払うように、ジョブズがビル・ゲイツと結んだ条件は、「マイクロソフトがウィンドウズを開発した際に、Macの重要な部分を盗用した」とアップルが起こしていた訴訟は取り下げること。そして、訴訟を取り下げる代わりに、マイクロソフトは1億5000万ドルで議決権なしのアップル株を購入し、少なくとも3年間は売却しない。そして、Mac用のアプリ、ワードとエクセルを開発することだった。

 親の敵のようなマイクロソフトから1億5000万ドルのカネを恵んでもらわなければいけないほどアップル社は資金難に直面していた。それはティム・クックがアップルに入社する1年前のことだった。

「在庫は、乳製品と同じだ」
『アップル さらなる成長と死角』
竹内一正さんの新刊『アップル さらなる成長と死角』
 1998年にコンパックから来たティム・クックは、在庫管理というジョブズにとって一番苦手であり、価値さえ感じていなかった本質的かつ重要な問題を、長年培ってきた高度なオペレーションのマジックで革命的に改善していった。

 ジョブズと同様にティム・クックは、細部にまで口を出す経営者だ。ただし、クックの場合は製品に対してではなく、在庫管理の表計算スプレッドシートを相手にして、だった。

 倹約家で、シゴト人間のティム・クックの会議は4〜5時間と長時間に及ぶことがざらである。在庫を1点ずつ細かく追いかけるには時間がかかる。長時間のマラソン会議になる覚悟で部下たちは準備をし、万全の態勢で会議に臨まなくてはならなかった。

 そして、ティム・クックは在庫に関し、部下たちに常々こう諭していた。

「乳製品と同じように考えて管理すべきなんだ。もし、賞味期限を過ぎたら問題だ」

 この言葉はアップル社員たちにとって目からうろこだった。在庫は時間の経過とともに腐っていく。古株のアップル社員たちはあっけに取られたが、クックの指摘は見事に本質を突いていた。

 クックが財務体質を強化したからこそ、ジョブズは資金繰りの心配をせずイノベーションに精力を注ぐことができたのだ。

 ジョブズが亡くなった時にアップルは、約816億ドル(約9兆円)のキャッシュをたくわえていた。そして、ティム・クックは、CEOを引き継いでからの6年間でアップルのキャッシュを約3倍強の約2689億ドルにしてみせた。もし、ティム・クックのオペレーション力がなかったら、アップルはiPhoneを生み出す前に資金切れを起こしていたかもしれない。

(経営コンサルタント 竹内一正)
https://diamond.jp/articles/-/197559


 

2019年3月22日 鈴木貴博 :百年コンサルティング代表
サイゼリヤの客離れが「全席禁煙化のせい」という説はどこまで本当か

サイゼリヤの客離れが「全席禁煙化のせい」はどこまで本当か

既存店売上高が11ヵ月連続で対前年比マイナスとなった原因が、「全席禁煙」ではないかと言われている。それは本当だろうか?Photo:DOL
サイゼリヤで報じられる苦境
「11ヵ月連続マイナス」の原因とは
 外食産業の成長株だと思われていたサイゼリヤが、苦境にあります。既存店売上高が11ヵ月連続で対前年比マイナスになったというのです。そしてその一因が、ひょっとすると昨年7月に打ち出した「全席禁煙」ではないかという報道がされています。

 一方で、ほぼ同時期、昨年6月に全席禁煙に踏み切った串カツ田中では、逆に禁煙化によって「成果が出た」と報道され、全席禁煙は外食産業にとってプラスになるというイメージが広められました。

 一体全体、全席禁煙は外食産業にとってプラスに働くのか、それともマイナスに働くのか、どちらなのでしょう。2020年の東京オリンピックに向けて、これから外食産業における禁煙の動きはより活発になると思われます。それも踏まえて、禁煙化と売り上げの関係について考えてみたいと思います。

 まずは、足もとで不調が取り沙汰されているサイゼリヤの状況を見てみましょう。サイゼリヤの既存店の売上減に関しては、実は面白いほど一貫した特徴があります。売上高は客数と客単価に分解できますが、売り上げが減少した11ヵ月の間、客数は一貫してマイナスとなり、その一方で客単価は一貫して微増を維持しているのです。

 そしてその数字は、それほど大きな振れ幅ではないというのがもう1つの特徴です。客数は11ヵ月平均で2.4%のマイナス、客単価は同じく11ヵ月平均で0.4%のプラス。平たく言えば「お客さんの数は100人から97〜8人に減ったけど、お客さんが使うお金はほとんど変わっていない」という表現に近い状況が、11ヵ月続いているのです。

 とはいえ、客数が一貫して減っているのは事実なので、「やはり一定数のお客さんが禁煙化で客離れになったのではないか」という疑問は出てくるでしょう。

 この全席禁煙の影響ですが、要素を分解すると、禁煙になったのでお店を使わなくなった(離れた)顧客の数と、逆にタバコを吸う顧客がいなくなったのでお店を使うようになった(増えた)顧客の数の差し引き、ということになります。

 日本人の成人(男女合計)の喫煙率は18%ですから、単純に考えると、サイゼリヤでは離れた客の数も増えた客の数も、実際の増減のマイナス2.4%よりも多いであろうことが推測されます。

全席禁煙を打ち出す前も
客数は一貫して減少していた
 さらに、もう1つ気をつけなければいけないことが、この2.4%減は禁煙の影響だけではないということです。11ヵ月連続ということで言えば、全席禁煙を打ち出す前の時期でも、サイゼリヤの客数は一貫して減少していたことになります。

 サイゼリヤの場合、2018年7月下旬に全国約1000店舗のうちの約300店舗で全席禁煙が始まり、今年9月までに全店での全席禁煙化を完了する予定になっています。禁煙化が始まった2018年8月から直近(2019年2月)までの7ヵ月に限っていうと、客数の減少率は2.0%。そしてその1年前となる、禁煙化と関係がない2017年8月から2018年2月までの客数の減少率は1.1%です。

 そう考えると、禁煙化の悪影響はせいぜいその差の1%未満(単純計算で0.9%)。となり、禁煙の影響が既存店売上高の大きなマイナス要因とまではいいにくい気がします。

 では、禁煙がプラス効果になったという串カツ田中のデータを見てみましょう。こちらは2018年6月に全面禁煙を行ったところ、むしろ客数が大幅に増えたという報道がありました。2018年5月における客数は対前年比で4.5%マイナスだったのが、6月には2.2%のプラスと大きく(6.7ポイント)改善したので、そう報道されたようです。

 そこで、先ほどと同じような考え方で、全席禁煙になった2018年6月から直近の2019年2月までの既存店における客数増のデータを見てみると、4.5%どころではなく、平均で7.2%ものプラスになります。この数字を見ると、結構スゴイように思えますが、実はそうとも言えません。

 まだ喫煙可だった1年前の同時期、2017年6月から2018年2月の客数は6.1%の高水準にあるからです。つまり、串カツ田中はそもそも成長を続けている会社なのです。

 そして、前述の2つの時期の差を単純に計算すると、増えたのは1.1%なので、禁煙がプラスに働いた分はサイゼリヤ同様、やはり微妙な数字だったと言えそうです。

外食の浮沈の激しさは
こんなものではない
 そもそも外食産業の興亡は、もっと数字的に激しいものです。直近2月の全店での対前年売上比を各社について拾ってみると、好調のコメダ珈琲が8.5%、スシロー8.8%、マクドナルドが3.6%。それに対して苦戦しているチェーンでは、天丼てんやがマイナス4.6%、吉野家がマイナス4.7%、モスバーガーはマイナス5.0%という振れ幅です。サイゼリヤが直近でマイナス0.7%の売上減だということは、業界全体で見れば異変というほどの出来事ではないわけです。

 ただし、です。前述のように、日本の成人男性の18%が喫煙者だという事実を考えると、これから先、オリンピックに向けたグローバル規制により、外食各社で一斉に禁煙化が進むマイナス影響は、少なくないと考えるべきでしょう。

 タイミング的には、他社を横目で見ながらいつ踏み切るかが、マーケティング政策的にいえば、「喫煙者がいないプラスをアピールすることによる顧客増」と「これまで来店してきた喫煙客の離脱によるマイナス」について、前者をなるべく増やし、後者のダメージをどう減らすかが、考えどころになってきます。

 特に喫煙者をブレークダウンすると、男性が28%、女性が9%なので、その偏りを考慮することも重要です。女性顧客がメインのお店ではプラス効果が大きいし、男性顧客がメインの居酒屋のようなお店ではマイナス効果の方が大きいわけです。

各社が進める地道な取り組み
喫煙者を繋ぎ止める秘策とは
 サイゼリヤの場合、ワイン1本が1000円、デカンタが200円、グラスワインが100円とアルコールの価格がとても安いため、これまでも「ちょい飲み」で来店する顧客が多いことが知られていました。よってサイゼリヤにとっては、全席禁煙は居酒屋と同じ打撃があったかもしれません。

 その点で、サイゼリヤは面白い対策を考えています。全席禁煙になったお店に、今後は新幹線と同じように喫煙ルームを設けるというのです。これは東京都の禁煙条例で許されている施策ですが、全席禁煙のマイナスが大きい業態にとっては重要な対応策です。

 そして、今は全面禁煙への移行期なので、お店ごとに顧客が増えた、減ったと一喜一憂がありますが、最終的にすべてのチェーンが同じ法律に従うことになる2020年には、少なくとも東京都に関してはプラス効果もマイナス効果も消えてしまうはずです。

 そう考えると、この問題は最終的には「喫煙者に支持されているお店は喫煙ルームを設置するべきだ」という、当たり前の考え方へと収斂していくように思われます。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
https://diamond.jp/articles/-/197558

 


来たる景気後退に備え、営業はどうあるべきか
マーク・コバック,ジェイミー・クレグホーン:ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで多数の顧客戦略やマーケティングを中心としたプロジェクトに携わっている、ベインのB2Bコマーシャル・エクセレンス・グループのリーダー。
2019年3月22日
景気後退期に勢力を拡大するためには、大がかりな変革を景気後退前に行っておくのがベストである。新たなデジタルツールを活用しつつ、営業キャパシティとビジネス機会を整合させ、営業のオペレーションを締め直し、本社サポート組織がきちんと回るようにするなど、基本の徹底がカギとなる。

 現在われわれが謳歌している景気拡大期は、歴史的観点では相当長い部類に入ろうとしており、日を追うごとに景気後退のリスクは上がっている。景気後退は多くの企業にとっては不意打ちのように起こる一方で、結果はだいたい想像がつく。
 2001年の景気後退では、S&P500企業の総売上高は、景気後退前のピークから、景気が底を打った18カ月後――正式な景気後退の終了宣言から1年近くも後――までの間に9%減少した。しかし、適切に準備をした企業にとっては、この期間は混乱に乗じてシェアを伸ばす機会にもなる。
 景気後退期に勢力を拡大する企業になるための大がかりな変革は、景気後退が来る前に行うのがベストである。過去の景気後退期における世界各国の約3500社の動向を調査したところ、最終的に勝者になった企業も敗者になった企業も、景気後退の前は2桁の成長率を記録していた。しかし、いざ景気後退に見舞われると、業績の差が顕著に広がり始めた。勝者が成長を続ける一方で、敗者は失速したのである。
 業績の差はその後の景気回復期にさらに広がった(図1参照)。勝者が実行し、敗者が実行しなかったことは何だろうか。勝者は、景気後退が来る前に、景気の悪化から自社を防御するための様々な手立てを打っていた。例えば小口顧客にサービスを提供するために低コストのチャネルを追加したり、商品構成をシンプルにしたりといった、営業部門の内外での施策である。

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 本稿では、新たなデジタルツールの登場を視野に入れながら、営業組織が次の景気後退に向けて今やるべきことに焦点を当てて解説する。まず着手すべきは、営業キャパシティとビジネス機会を整合させ(営業キャパシティは展開したその時から過不足が生じ始めるのが常である)、営業のオペレーションを締め直し(値引きのコントロールなど)、本社サポート組織がきちんと回るようにする(機敏な営業支援組織が不可欠)といった基本を徹底することである。
 ここ数年で大いに発展したデジタルツールや分析テクニックは、こうした基本を確実にクリアすることに役立つ。我々が最近、B2B企業約900社を対象に実施した調査では、これらのツールの重要性が際立った。勝者(ここでは過去2年間で純収入を大幅に伸ばし、業界内で市場シェアを拡大した企業と定義する)の間で営業ケイパビリティにデジタルツールを導入している企業の割合は、敗者の約4倍だった。デジタルツールはまた、新たな市場へのアプローチの可能性も広げることができる。
 ゼロベースの営業キャパシティ
 時代遅れの手法で顧客や担当地区の割り当てをしている営業組織があまりにも多い。彼らは過去の営業データや大雑把なレポートに頼って、全体の市場規模を算出したり、必要な営業担当者の人数と配置を見積もったりしている。デジタルツールを活用することで、より正確なマッチングが可能だ。
 たとえばデータセンターや通信ネットワーク企業向けにデジタルインフラを提供するバーティブは、いくつかの特徴的なデータ(例えば、ある施設に設置可能なサーバーラックの数)を活用したビジネス機会算出プログラムを確立した。このプログラムは、顧客上位100社のそれぞれについてバーティブの主要3製品に支出可能な金額の合計を算出したり、各地区の小口顧客の市場規模を推定したりすることができる。
 同社がこの新たなプロセスを用いて主要5顧客の潜在的市場を再評価したところ、従来の推計値を50%上回る(18億ドル対12億ドル)ことが分かった。そして同社は、この最新の推計値に基づいて新たに見積もったビジネス機会を捉えるために、営業の顧客カバー体制を修正したのである。
 手を引くタイミングを知る
 多くの営業組織は、どの顧客に一番時間をかけていて、実際に顧客との対面時間をどのように使っているかについて追跡していない。さらに悪いことに、ほとんどのチームは顧客、製品ライン、取引ごとの収益性を定量的に把握していない。
 この問題に対処するために、あるクラウドサービス・プロバイダーは、個々の取引レベルの収益性を定量化するためのデータ分析を実行した。そして、データをどこから見ても2000ドル未満の契約では利益が出ないという結論を得た。この分析結果は経営幹部が小規模契約を禁止する根拠となり、営業組織がより大規模な契約の締結に集中するようになって、同社は数四半期も達成できなかった営業目標を翌四半期に達成した。
 低コストの営業チャネルを拡大する
 状況によっては、小口の収入源を諦める代わりに、利益が上がる形で小規模な契約を締結できるチャネルを編み出す企業もある。何かを売り込む際に、外回りの営業担当者が必ず顧客と接する必要があるというのは神話である。場合によっては内勤営業グループの方が、コスト効率の良い営業活動を実行できる。
 自動車ディーラーを顧客とする、あるオンライン広告・ソフトウェア会社の例を考えてみよう。幾度かの企業買収を経て、同社の営業部隊の成績は低迷していた。特に小規模ディーラーに対する営業とサービス提供のコストがかさみ、これらの顧客の利益率が縮小あるいは赤字化していた。また、営業担当者の時間も過度に奪われていた。同社は小規模ディーラーの担当を内勤の営業センターに切り替えた。このことによりコストが減少しただけでなく、従来サービスが手薄になりがちだった顧客層への気配りが強化されて、ディーラー側の顧客体験も改善した。一方、営業担当者は束縛がなくなり、より大規模なプロジェクトの営業活動に時間をつぎ込めるようになった。その結果、この会社では新規顧客獲得数が前年比3倍に増え、顧客減少数は大幅に減った。
 内勤営業への切り替えには、通常は高度なデジタルマーケティングのケイパビリティが必要である。新たなデータソースや予測分析ソフトウェアは、内勤営業組織がターゲット顧客を特定したり、マーケティングや営業のリソースをリアルタイムで配置したりすることを支援する。例えばあるITサービス会社は、ディスカバーオーグと呼ばれるツールを使って、顧客が購入する可能性を示唆する人事・組織関連のデータ(ネットワーク担当管理職の求人など)マイニングを行っている。そうしたデジタルツールの導入後、同社の営業チームが見込み客と初回打ち合わせを設定できる確率は倍増した。
 効果的な行動を見極め強化する
 成績トップの営業担当者とそれ以外を分ける要因を理解したい企業は、オンラインカレンダーや電子メールのやり取りをマイニングする分析エンジンの活用を進めて、優秀な成績と相関関係のある行動の特定につなげようとしている。このような効果的な行動を研修に組み込んだり、現場のマネジャーが推進したりすることも可能である。
 あるB2Bのテクノロジー企業は、マイクロソフトのワークプレイス・アナリティクスなどのデジタルツールを、営業担当者の行動の追跡に活用した。そのデータによると、成績トップの担当者はその他と比べて、社内の複数グループとやり取りをする割合が3倍、同僚の営業担当者と協力する割合が2倍、直属のマネジャーと毎週見込み顧客のレビューを行う割合が1.5倍も高いことが分かった。こうした行動を教育し、マネジャーによって継続的に推進することによって、成績下位の担当者の生産性を押し上げることができる。
 顧客管理を自動化する
 優秀な営業担当者は、各顧客について、ビジネス機会、顧客内シェア、意思決定者とインフルエンサー、重要なアクションの最新状況を常に把握している。レベジーやオルティファイといったソフトウェアアプリケーションは、こうしたプロセスを自動化し、企業の顧客管理プラットフォームに組み込むことによって、戦術的なビジネス機会追跡ツールを強力な戦略計画ツールに変える。
 こうした分析は顧客の維持やクロスセルもサポートする。ある産業機器販売会社は、顧客にクロスセルをするべき製品を特定するために、ラティスエンジンズの人工知能を使っている。同社がこれを試験的に活用したところ、人工知能の提案を利用した営業担当者は、利用しなかった者と比べて売上が3〜4%高かった。そして本稼働後は営業担当者全体で売上高の増加が見られた。
 バックオフィスを合理化し、デジタル化する
 営業支援組織は、景気後退時に真っ先にコスト削減のターゲットになる傾向がある。業務の大部分のデジタル化と自動化を進め、スタッフが報告書を取り出して手作業で数字を照合する必要性を省くことにより、コスト圧力の先手を打つことは無駄ではない。最も優れた営業支援組織では、スタッフは価値のある知見を生み出す分析作業(クロスセルの機会を見つけるための既存顧客のマイニングなど)に従事している。
 その他にデジタル化の機会がある業務として、CPQ(製品構成・価格設定・見積)プロセスが挙げられる。例えばある電気通信会社は、iPadのアプリケーションを使って幹部の契約レビューを支援している。小規模な契約についてはこのアプリがリスク水準、商業的実現性、戦略的機会、さらに利益率や落札できる確率等、必要な情報をまとめて容易に確認できるようにしてくれる。
 価格設定の精度を磨く
 B2B企業はほぼ例外なく、価格設定の改善余地がある。ベイン・アンド・カンパニーが1700社以上の営業・マーケティング担当の役職者を対象に実施した調査によると、85%の企業が、自社の価格設定の判断に改善の余地があると考えていた。しかし、そのための適切なツールやダッシュボードが自社にあると答えた企業はわずか15%に留まった。価格設定能力がすでに優れている企業も、以下のようなデジタルアプローチによって、さらに価値を引き出す機会を見出している。
・動的契約スコアリング:過去の取引、現在の顧客セグメントや嗜好データ、勝率、競合価格データについてマイニングを行うことにより、各契約に適した形で統計に基づいた価格設定指針を出す。
・アルゴリズムを用いた価格設定:外部市場、顧客、現在の需給に関するマクロデータ、競合他社の価格設定や変遷の情報を用いて、最適な価格を瞬時に決定する。
・反復機械学習:人工知能がサポートするA/Bテストを短いサイクルで繰り返すことにより、利益および数量目標を達成するための最適な価格をSKUレベルで決定する。
小さく始めて早めに失敗する
 デジタル営業ツールの数はあまりにも多く、途方に暮れてしまうかもしれない。営業部門を統括するリーダーとしてはどこから始めるべきだろうか。
 我々は、営業組織が小さなチームを作り、試しながら学習することによってこの問題にうまく対処する様子を見てきた。多くの組織がアジャイル開発の原則を取り入れており、プロセスを改善するだけでなく、短期集中型のトライアルを実施して成果を上げていた。成功を測る唯一の基準は、売上高と利益幅の増加である。こうしたチームで小さく始めることにより、プロセスの中で素早く欠点を解消できるし、たとえ失敗しても小さな傷で済むため、成功しないかもしれない方法も試すことができる。そして成功すれば、それを素早く拡大できる。
 景気後退の到来を正確に予測しようとしても、たいていは当たらないため、あまり意味はない。しかし勝者になる企業は、景気後退が始まるずっと前からその最中にかけて、営業組織や市場開拓戦術など、自力でコントロールできる部分に取り組むことに力を入れる。そして営業に関するデジタルテクノロジーにいっそう精通することにより、デジタルの導入が遅い競合他社よりも優位に立つことができる。適切なデジタルツールを装備した営業チームにとっては、来たる景気後退は恐怖ではなく、むしろ待望されるものとも言えるのである。

HBR.ORG原文:What Sales Teams Should Do to Prepare for the Next Recession, November 23, 2018.


マーク・コバック(Mark Kovac)
ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで多数の顧客戦略やマーケティングを中心としたプロジェクトに携わっている、ベインのB2Bコマーシャル・エクセレンス・グループのリーダー。

ジェイミー・クレグホーン(Jamie Cleghorn)
ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで顧客戦略やマーケティングを中心に、多岐にわたる分野のプロジェクトを手掛けている。
http://www.dhbr.net/articles/-/5774


 



http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/636.html

[政治・選挙・NHK258] 大企業の著しい利益増加は零細企業の惨状と人件費抑制が原因だ アベノミクスの6年間、企業利益は著しく増加した
2019年3月21日 野口悠紀雄 :早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
大企業の著しい利益増加は零細企業の惨状と人件費抑制が原因だ
Photo:PIXTA
 アベノミクスの6年間、企業利益は著しく増加した。なぜこのように増加したのか?
 それは、人件費の伸びが抑えられたからだ。仮に人件費が売り上げと同率で増加したなら、利益はほとんど増加しなかったろう。
 人件費が圧迫されたのは、零細企業の売り上げが伸びなかったため人員が削減され、その労働力が大企業に移る際に非正規化したからだ。
 結局のところ、零細企業の惨状が、利益を増加させたのである。
人件費が0.7%しか増加しなかったために、
利益が55%も増加した
 図表1は、2012年から18年にかけての企業の利益などを示したものだ(注1)。
 この間に、営業利益は55%も増加した。しかし、人件費は0.7%しか増加しなかった(年平均上昇率では1.13%)。売上高の増加率が16%だったことと比べても、人件費の伸びは低い。

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(注1)営業利益=売上高−(売上原価+販売費)
 人件費は、売上原価にも販売費にも含まれる。人件費は、前回用いた従業員給与より広範囲の概念。2018年10〜12月期において、全産業(除く金融保険業)、全規模で、従業員数は3440万2797人、人員計は3667万5932人、従業員給与は、30兆2526億500万円、人件費計は47兆4678億1400万円である。
 なお、ここでは、「売上原価+販売費」を「原価総額」ということにする。1人当たり人件費を「賃金」ということがある。
 仮に人件費の増加率がもっと高かったら、営業利益の増加率はどうなっただろうか?
 図表2は、これに関するシミュレーションを行なったものだ。
 人件費以外の売上原価、販売費などは実際の値を用い、人件費についてさまざまな値を仮定した場合の営業利益を計算した。
 図表2に示すように、仮に人件費増加率が売上高と同率(2.5%)だったとしたら、営業利益は6年間で17%しか増えなかったはずだ。
 あるいは、人件費が年率3%で増えたとしたら、営業利益は6年間で3%しか増えなかったはずだ。
 この意味で、人件費の圧迫が利益を増やしたのだ。

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零細企業の売り上げが伸びないために、
人件費が削減された
 では、なぜ人件費の増加率がこのように低く抑えられたのか?
 そのメカニズムを図表3で見よう。以下では、資本金10億円以上の企業を「大企業」、資本金1000万円以上2000万円未満の企業を「零細企業」と呼ぶことにする(注2)。
 まず注目すべきは、零細企業の売り上げがほとんど伸びなかったことである。この間に、大企業の売上高は12.2%増加したのに対して、零細企業では1.7%しか増加しなかった。消費税増税の影響を除けば、売り上げは減少したことになる。しかも、零細企業では、人件費以外の原価総額増が3.7%と、売上高より高い伸び率となった。
 零細企業は、利益確保のため、減量経営を強いられた。そのため、賃金を引き下げ(0.7%の引き下げ)、かつ人員を削減した(約7%の減)。

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 削減された人員は、零細企業より規模の大きな企業に移ったはずだ。大企業等の平均賃金は零細企業より高いので、仮に転職した労働者が大企業等の高い賃金を得られれば、経済全体の平均賃金は上昇しただろう。しかし、そうしたことにはならなかった。
 大企業等に移ったからといって賃金が上がったわけではない。非正規雇用になるなどの理由で、賃金は零細企業のときとあまり違わない水準か、それより低い水準になった。このため、大企業の賃金も、平均で見ると低下することになったのだ(1.2%の低下)。
 こうして、大企業では、人員数を売り上げの増加率(12.2%)とほぼ同率(12.4%)増やしたにもかかわらず、人件費計は11.0%増にとどめられた。
 結局のところ、経済全体では、人件費増加率が売上高増加率より低く抑えられ、その結果、前項で見たように、利益が大幅に増加したのである。
 以上が基本的なメカニズムである。繰り返すと、以下のようになる。
(1)零細企業の売り上げが伸びない。
(2)このため、零細企業で賃金の引き下げ、あるいは人員削減が行なわれた。
(2)その労働力が大企業等に移ると、非正規化などの理由で賃金が低下した。
(注2)ここで注意すべきは、人員では零細企業のほうが多いにもかかわらず、営業利益は大企業のほうが多いことだ。2018年10〜12月における数字で、具体的に言えば、つぎのとおりだ。人員では、大企業が全体の19.1%、零細企業が26.9%と、零細企業のほうがウエイトが大きい。ところが、営業利益については、大企業が56.1%を占め、零細企業は8.4%でしかない。
 従って、人件費などの動向には、零細企業の動向が大きな影響を与えるのに対して、利益の動向は大企業の動向が大きく影響する。
零細小売業では、
売り上げが半減した
 以上で述べたことを、産業別・企業規模別に見よう。
 上記の第1のポイントである、「零細企業の売り上げが伸びない」ということは、製造業でも見られるが(図表4)、非製造業ではきわめてはっきりと見られる(図表5)。
 すなわち、大企業では16.2%の増加なのに、零細企業ではわずか1.3%しか伸びていない。
 このため、零細非製造業では、人員を削減し(6.2%減)、賃金も引き下げた(0.1%引き下げ)。
 それに対して大企業では、人員を22.8%と、売り上げ増加率(16.2%)より高い率で増加させた。
 ただし、賃金は3.1%低下させているので、人件費計の増加率は19.1%に抑えることができた。

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 つぎに、非製造業のいくつかの部門を見よう。
 小売業では、売り上げが、大企業であっても減少している。零細企業では、ほぼ半減というきわめて大きな落ち込みだ。この結果、人員や賃金の削減も著しい。図表6に見るように、人員は、零細企業では23%もの減。賃金は、大企業でも零細企業でも5%程度下落している。
 飲食サービス業では、売り上げが大企業で約18%落ち込み、零細で約6%落ち込んでいる。大企業のほうが激しく落ち込んでいるが、増えていない点は零細も同じだ。そして、人件費計は大企業でも約2割減少しており、零細企業では半分以下に落ち込んでいる。
 医療、福祉業では、大企業は売り上げが若干だが伸びている。しかし、零細は売り上げが半分近くに落ち込んでいる。
 このように、売り上げが伸びなかったリ減少したりした部門があったことが重要である。それらの部門が労働力を維持できずに放出し、放出された労働力が他部門で低賃金で雇用されたのである。
 労働力を吸収した部門は、売上高の伸び率が高い部門である(それは、主として大企業だった)。そうした部門が低賃金の労働力を利用できたために、利益が増加したのだ。

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複雑な二重構造
経済全体の賃金を引き上げられない理由

 以上で見たように、「賃金が上昇せず、利益が増大した」という現象は、経済の構造が一様でないことによって引き起こされたものだ。
 最も基本的な点は、売上高の増加率に大きな差があることだ。それが、雇用面での調整を引き起こしていったのである。
 差は、まず企業規模で生じる。
 いくつかの例外はあるものの、大企業での売上高が順調に増加したのに対して、零細企業の売り上げが停滞、または減少した場合が多い。経済全体でも、図表3で見たように、そうなっている。
 この結果、1人当たり人件費は、多くの零細企業で引き下げられている。ここで取り上げた産業では、医療、介護以外のすべての分野で、零細企業の1人当たり人件費は低下している。零細企業の人員は、ここで取り上げたすべての産業で減少している。
 つぎに、産業による差がある。小売業、飲食サービス業では、大企業でも零細企業でも、売り上げが減少している。この結果、これらの産業での1人当たり人件費は、飲食サービス業の大企業を除き、低下している(図表6)。
 上で見た1人当たり人件費低下部門は、もともと賃金水準が低い分野だ。そこでさらに賃金が低下するのは、深刻な問題だ。
 こうした問題を金融政策で変えられるものではないことは明らかだ。また、政府がいかに春闘に介入しようと、経済全体の賃金を引き上げられないのも、明らかだ。
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
https://diamond.jp/articles/-/197561

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/746.html

[国際25] トランプ大統領を悩ます3つの思惑 トランプ大統領、中国との通商合意「おそらく実現する」
トランプ大統領を悩ます3つの思惑

2019/03/22

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは、「トランプの3つの思惑」です。ドナルド・トランプ米大統領は、アフリカ北東部エチオピアで起きた旅客機(ボーイング737MAX)の墜落事故、ニュージーランド・クライストチャーチのモスクにおける銃乱射事件及びロシア疑惑に関して、意味ありげな発言を繰り返しています。本稿では、トランプ大統領のこれらに関する発言の思惑を探ります。


オハイオ州の戦車工場で演説するトランプ大統領(REUTERS/AFLO)
飛行機事故と支持基盤
 ボーイング737MAXが3月10日に墜落事故を起こすと、早速各国は「安全に運航可能が確認できるまで、同型機の運航を一時停止する」と発表しました。しかし、ボーイング社の本社がある米国は即座に対応しませんでした。

 その背景にはトランプ大統領とボーイング社の蜜月があるとみてよいでしょう。以下で、例を挙げてみます。

 まず、トランプ政権で国防長官代行を務めるパトリック・シャナハン氏はボーイング社の元上級副社長でした。ハノイで開催された2回目の米朝首脳会談の際、トランプ大統領は「トップセールス」を行い、ベトナムとの間で100機のボーイング737MAXの売却契約を結んでいます。

 さらに、トランプ大統領は昨年の米中間選挙終盤の10月19日、米西部アリゾナ州メサのトランプ集会で演説を行う前に、ボーイング社を含めた航空・軍需産業のCEOと面会をしていました。

 トランプ大統領はボーイング社をかなり持ち上げた発言もしています。2017年に米南部サウスカロライナ州にあるボーイング社の工場を訪問したとき、演説の最後に「米国に神の恩恵がありますように」と述べたあと、「ボーイング社に神の恩恵がありますように」と加えました。同社と蜜月関係にあることは間違いありません。

 その理由は明白です。航空・軍需産業で働く労働者はトランプ大統領の極めて重要な支持基盤だからです。中でもボーイング社は15万3000人の従業員を抱えており、ボーイング737MAXは同社の営業利益の3分の1を占めているといわれています。ボーイング737MAXに関して、彼らにマイナスの影響を与える判断は先送りしたいという思惑があったのでしょう。

 しかも、トランプ大統領の置かれた状況が対応を遅らせた一因であるともいえます。

 以前述べましたが、仮に来年の米大統領選挙で再選を果たせず元大統領となった場合、トランプ大統領は選挙資金法違反及び共謀罪で訴追される可能性があります。元顧問弁護士のマイケル・コーエン被告の議会証言で、再選の意味合いがまったく異なってきました。

 トランプ大統領にとって、航空・軍需産業に携わる労働者の票の確保は、一気に重要度を増してきたわけです。

トランプの白人至上主義者擁護のワケ
 ニュージーランドで起きた2カ所のモスクを狙った銃乱射襲事件で、オーストラリア国籍の白人男性が逮捕・起訴されました。「白人至上主義者」を名乗るこの男は、移民を「侵略者」と呼び、彼らに対して敵対心を強く抱いていたと、メディアは報道しています。

 トランプ大統領もメキシコとの「国境の壁」建設を正当化するとき、移民を侵略者と呼び、敵視して有権者を煽ります。

 トランプ大統領はホワイトハウスの記者団からの「白人至上主義の脅威が世界中で高まっていると思いますか」という質問に対して、「そうは思わない。深刻な問題があるのは一部の人々だ」と回答し、白人至上主義を厳しく非難しませんでした。

 トランプ大統領のこの発言に疑問符がつくと、ミック・マルバニー大統領首席補佐官は政治番組に出演し、「トランプ大統領は白人至上主義者ではない」と主張しました。大統領首席補佐官自らが、大統領を白人至上主義者ではないと断言するのは、異例中の異例でしょう。

 しかし、トランプ大統領は過去にも白人至上主義者を擁護する発言をしています。南部バージニア州シャーロッツビルで17年8月12日、白人至上主義者と反対派が衝突し死者が出ました。その際も、「喧嘩両成敗」の立場をとり、双方に責任があるとし、白人至上主義を明確に否定しませんでした。

 率直に言ってしまえば、航空・軍需産業の労働者と同様、白人至上主義者はトランプ大統領の支持基盤の一角を成しているからです。同大統領のうえの発言の背後には、たとえ白人至上主義者であっても、支持基盤を構成する彼らの票の確保を最優先するという思惑があります。

トランプのマケイン攻撃の意図
 トランプ大統領は、昨年8月に亡くなった共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員を最近、激しく攻撃しています。なぜ今になってマケイン議員に非難を浴びせているのでしょうか。

 米公共ラジオは先週、ロシア疑惑の捜査が終了したと報じました。ロシア疑惑を捜査するロバート・モラー特別検察官のチームの中で、主要な役割を果たしてきたアンドリュー・ワイズマン検事がチームを去り、ニューヨーク大学で教鞭をとることを理由に挙げています。同ラジオによれば、2週間以内にモラー氏が最終報告書を米司法省に提出するというのです。

 米下院にも動きがありました。モラー報告書の公表を求める決議案を「420対0」で可決しました。米司法省が報告書を改ざんしないように圧力をかけたのでしょう。

 トランプ大統領は3月17日、「米海軍で成績がビリのマケインが(大統領選挙の)投票日の前に公表されることを願って、偽りの文書を米連邦捜査局(FBI)とメディアに渡した」と、自身のツイッターに投稿しました。トランプ大統領はクリントン陣営の資金によって作成された「裏づけのない文書」に基づいて、ロシア疑惑の捜査が開始したと主張しています。

 さらにトランプ大統領は同月19日、米中西部オハイオ州ライマにある戦車の製造工場を訪問した際、演説の中でマケイン上院議員を改めて批判しました。同大統領は「率直に言おう。私は彼(マケイン議員)のことを好きになったことはない」と述べたうえで、「彼は私を危険にさらすために、偽りの文書をFBIに渡した」と強い口調で非難しました。

 「死人に口無し」といいますが、マケイン上院議員から真実を聞き出すことはできません。だからこそ、マケイン議員を標的にして攻撃しているのでしょう。

 トランプ大統領はモラー報告書の内容が自分に不利になった場合を想定し、対策を講じています。一連のマケイン批判の背景には、同上院議員と議会民主党が「共謀」して、自分を貶める行為をしたと米国民に印象づける意図があります。

 加えて、ロシア疑惑の捜査結果はまったく信頼性がないというメッセージを発信することで、最終的に自分に有利な方向へ世論形成を図りたいという思惑もあります。

 しかし、ロシア疑惑の捜査開始のきっかけは、トランプ陣営の元外交顧問で偽証罪に問われたジョージ・パパドポロス被告がオーストリアの外交官に、ロシアがヒラリー・クリントン元国務長官に打撃を与える情報を保有していると語り、同外交官がその内容を米国政府に伝えたことでした。米メディアは、トランプ大統領の主張は誤りだと指摘しています。

 いずれにしても、20年米大統領選挙に向けて、トランプ大統領はますます支持者を意識した言動や判断をする傾向が強くなるでしょう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15708



カンパニーニュース2019年3月22日 / 21:18 / 4分前更新
トランプ大統領、中国との通商合意「おそらく実現する」
Reuters Staff
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[ワシントン 22日 ロイター] - トランプ米大統領は、22日放送のテレビインタビューで、中国との通商協議は前進しており、最終合意が「おそらく実現する」との見通しを示した。中国製品に対する関税を「かなりの期間」維持する可能性を示したことについては、協議が不調という意味ではないと説明した。

トランプ大統領は、フォックス・ビジネス・ネットワークとのインタビューで、欧州連合(EU)からの自動車輸入関税について、EUとの協議中は25%を維持する見通しを示した。

トランプ氏は「われわれのディールは非常にうまくいっている。どうなるか、そのうち分かる」とし「ディールはおそらく実現する。かれらはそれをとても必要としていると思う」と述べた。

トランプ氏は今週、米中通商協議での合意事項を中国が確実に履行するよう、中国製品に対する関税を「かなりの期間」維持する可能性があると明らかにした。

これに関し、中国との協議が不調なのかとの質問に「まったくそんなことはない」と述べた。

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/777.html

[不安と不健康18] うつ病の根底にある怒りと悲しみ 新型うつは甘えの構造 豊かになっても人は幸せになれない 
うつ病の根底にある怒りと悲しみ
新型うつは甘えの構造

SOTカウンセリング研究所所長 緒方俊雄氏に聞く
2013/12/27

海部隆太郎 (ジャーナリスト)

 うつ病の初期段階ならば、薬で改善する。だから早期に発見し医師の診断を受けることが大事だ、とうつ病に関する雑誌記事や本には書かれてある。ところが、薬が効かない人たちはどうすればいいのか。投薬が中心となる医師の治療と、カウンセリングで改善させていく臨床心理士との違いはどこにあるのか。産業カウンセラーとして定評のあるSOTカウンセリング研究所所長の緒方俊雄氏に、投薬とカウンセリング手法、うつ病に陥る要因などについて聞いた。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/7/1/-/img_71e23ac2308ad466ff5916bd7d5578b0222976.jpg

緒方俊雄(おがた・としお)
早稲田大学理工学研究科修士課程終了。1988年ソニー入社。半導体レーザーの研究開発、半導体の企画、マーケッティングを経て社内カウンセリングに従事。2009年から大手EAPにて休職者のカウンセリングやメンタルヘルス研修を担当。2009年うつ病者の復職支援の研究で日本産業カウンセリング学会より学術賞を受賞。2011年7月SOTカウンセリング研究所を設立。臨床心理士、産業カウンセラー。主な著書に『慢性うつ病は必ず治る』(幻冬舎新書)、『すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本 それが新型うつ病です』(同)など多数。

うつ病は体験が形作る病だ
―― うつ病を治すのは、薬を活用すべきなのか、カウンセリングなど心理療法を第一にすべきなのか、または併用すべきなのか。これまで専門家から話を聞いてきました。それぞれ正しいと思うが、すべてのうつ病罹患者に通じるとは言い難い。この点について、どのような考え方をお持ちですか。

緒方俊雄さん
緒方:薬を飲み休息をとることで立ち直れる人は、それでいいと思います。ただ、根本的な解決とはなっていないので、何がしかの出来事、きっかけで再びうつ病に陥る可能性が高いといえます。再発を繰り返している人、10年も薬を飲み続けていても良くならない人がいます。それは、うつ病になりやすい性格、行動パターンをもっているからです。薬で気分を盛り上げても原因を変えてやらないと治らないでしょう。

 近年、脳科学の分野が進展し、脳の神経伝達物質をコントロールする薬を飲めば、人間の感情を変えられることが分かってきました。これで将来は心の問題を解決できる、と考えるのが現在のトレンドです。私は感情のコントロールでうつ病が解決できるとは考えていません。躁鬱病のように遺伝的要因が強い場合もありますが、ほとんどのうつ病は生まれてから現在に至るまでの多くの体験が形として表れた病気だからです。

 神経伝達物質であるセロトニンが少ないためにうつ病になるのではない。うつ病になったことで、あたかも動物が冬眠するかのように、活動が抑えられるために体がセロトニンを減らしていると考えるべきではないでしょうか。うつ病を病理的に脳の病気というハードと捉えるか、自身の体験からくるソフトとみるか大きな違いがあります。

 医師の考え方や抗うつ薬そのものを全面否定する気はありません。初期の段階ならば、その方が時間も手間も少なく済むからです。それに対しカウンセリングは、時間もお金もかかります。まずは薬で治るならそれでいい。しかし、治らない場合はカウンセリングで治すしかありません。

豊かになっても人は幸せになれない
―― 書店に行くとうつ病に関する書籍が並んでいます。著者の大半は医師ですが、医師は慢性うつをテーマにした本を書いていないようです。治せないからでしょうか。偏った見方かもしれませんが、現状の薬は限定的といえるような気がします。うつ病に陥る根本原因は、自身の体験にあるということですが、もう少し詳しく教えてください。

緒方:うつ病の根本にあるのは、無意識に抑圧された怒りと悲しみです。この話をすると「どんでもない。自分は怒りがあるからうつになったのではない」という反発を受けます。言い方を変えると、うつ病を治そうと考えている人は治るが、うつ病に逃げ込んでいる人は薬もカウンセリングをしても治りません。このような発言をしてネットで炎上したことがあります。誹謗中傷の嵐でした。本質だから、核心を衝いているからこそ自己防衛のために反論する。それで炎上したのだと思います。

 自身の体験ということでは、養育期に親から厳しく育てられた経験が潜在的に怒りとして蓄積されている。これは私の研究成果でなく、数十年前から論文等にある学説に基づいています。身近な人を失った悲しみもあります。この話は『慢性うつ病は必ず治る』に書きました。

 逆に過剰な甘やかしで育てられた場合は、「新型うつ」になります。日本独自ともいえる現象です。米国では高校を卒業すると独立していくのが一般的で、早くから独立心を養うので、日本的な「新型うつ」は、ほとんど見られません。これは『すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本』に詳細を書いています。「従来型」と「新型」は症状も行動パターンも対称的ですがともに親の干渉の仕方に問題があります。

―― 話が横道に逸れますが、半導体レーザーの技術研究者からカウンセラーまでの経緯を簡単に教えてください。

緒方:理系大学を出て大手電気メーカーに入り、研究を続けていましたが、身近な人がうつ病になる、会社では出社できない同僚が出ましたし、知人の自殺はショックでした。最先端の研究で豊かな生活に貢献できることに不満は無かったのですが、人を幸せにすることには直結しない。心を大切にすることに傾いていったのです。それから夜間の大学院に通い臨床心理士の資格を取り、社内でメンタル対策やカウンセリング業務に携わるようになったのです。その後、退職してメンタルヘルス専門企業を経て独立しました。

信頼関係を築くことがカウンセリングの第一歩
―― これまでカウンセリングで対応した人数はかなりの数になると思いますが、簡単にどのような手法をとるのか教えてください。

カウンセリングの流れ
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緒方:悩みの相談などもあり、これを入れると数えきれません。心の病としてカウンセリングした人は、約600人はいます。多くの人と接してきましたが、みなさん最初は敷居が高かったと思います。しかも、鍼灸やマッサージなどは、終わった後にスッキリ感があり効果を自覚できます。そこに発生する料金は満足して支払うでしょう。しかし、カウンセリングは、大半の時間を悩まれている人が話すだけ。1時間のカウンセリングでは、最初の状態とほとんど変わりません。これで料金を支払うのは無駄なような気がして、次からは来なくなる人もいます。

 それでも通われる人は、3回目ぐらいから「本当に良くなるのか」と聞いてきます。3カ月ぐらいで改善の兆しが出てくると、何も言わなくなる。やはり信頼関係をいかに築けるかがカウンセリングのポイントです。


 長期間にわたりうつ病に苦しんできた人にカウンセリングをする場合は、すべてを受け入れることを心がけます。なぜならば、幼少期に親に甘えていないからです。何回か話を聞いているうちに、思いっきり泣いたり、怒ったりして私を困らせるような行動に出ます。心地よいと言いながらうたた寝する場合もあります。それが何回か続きますが、甘え足りない部分が満たされてくると、これまで我慢してきた怒りや悲しみが出てきますので、それを取り出してやるのです。

 サラリーマンなら上司から文句を言われても耐えます。逆らってもいい方向に行かないと分かっているから。しかし、同僚と飲んで文句を言って気持ちを抑えることをします。うつ病になる人は、上司は自分の為を思っていったのであり悪いのは自分だと思いこんでしまう。だが、心の底では上司に対する怒りが蓄積しているのです。

 溜め込んでいる怒りを吐き出してもらうことで、必ずうつ病は改善していきます。男性は怒り、女性は怒りと悲しみが根底にあります。怒りや悲しみの感情が表出されると、辛かった体験を受入れることができるようになります。次に、うつ病になりやすい完全を求める、がんばり過ぎるなどの性格傾向を変えていきます。するとうつ病は改善し、それまでとは違った人生を歩み始めます。

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3475
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/732.html

[不安と不健康18] 発達障害と診断されない「グレーゾーン」の人たちの生きづらさ 『発達障害グレーゾーン』姫野桂さんインタビュー
オトナの教養 週末の一冊

発達障害と診断されない「グレーゾーン」の人たちの生きづらさ

『発達障害グレーゾーン』姫野桂さんインタビュー
2019/03/22

本多カツヒロ (ライター)

 著名人が公表したり、メディアで度々取り上げられたりと広く知られるようになった発達障害。しかし、発達障害の傾向はあっても診断が下りず、いわばグレーゾーンで苦しんでいる人たちがいる。『発達障害グレーゾーン』(扶桑社)を上梓し、ご自身も発達障害当事者であるフリーライターの姫野桂さんに、発達障害とは何か、かれらとの接し方などについて話を聞いた。


(Motortion/iStock/Getty Images Plus)
――ここ数年、発達障害という言葉が話題になることが多くなりました。ひとつの「ブーム」とも言えるとも思うのですが、発達障害当事者として現状をどう見ていますか?

姫野:良い面と悪い面があるように思います。良い面としては、発達障害そのものが世間に広く認知されるようになったことで、これまで努力不足で仕事や勉強で力を発揮できなかったと思われていた当事者の方々が、発達障害かもしれないと気がつくことができるようになったこと。

 その一方で、発達障害の当事者が集まる会にマルチ商法や新興宗教の信者が紛れ込み、後日勧誘されるケースがあるとも聞きますADHD(注意欠如多動性障害)の方々は、人当たりがよく、いつもニコニコしている人が多かったり、ASD(自閉症スペクトラム症)で物事を客観的に捉えられない傾向がある人は標的にされやすい。また、なにかあれば「お前アスペ(アスペルガー症候群)なんじゃない?」などと茶化す人が出てきたのは悪い面ですね。

――姫野さんご自身も発達障害と診断されているわけですが、そもそもどのような経緯で発達障害であることが判明したのでしょうか?

姫野:就職活動の際に、SPI(多くの企業が採用する適性検査)というテストを受けることが多いのですが、どう頑張っても数学の点数が低かったため、やむなく数学が得意な友人に指導してもらいました。しかし点数が上がることはありませんでした。当時は仕方がないと思いSPIテストがない企業の一般職に就き3年ほど働きました。その後、フリーライターとして働き詰めになった末過労で倒れ、心療内科を受診した際に受けた心理検査で発達障害と診断されたんです。

――基本的なこととして発達障害とは、どんな病気なのでしょうか?

姫野:生まれつき、つまり先天的な「脳の偏り」「能力の偏り」で日常生活や仕事に支障をきたす障害です。もちろん先天的な病気ですから、治ることはありません。

 一口に発達障害と言っても、注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)の3種類にわけられます。ADHDは、注意が散漫になり集中力を欠き、仕事上では記入漏れが多いなどの特徴があります。ASDは、本音と建前、比喩が理解できなかったりとコミュニケーションに問題を抱える特徴があります。LDは、知的な問題がないにもかかわらず、読み書きや計算が苦手です。私の場合は、このLDのために数学ができなかったのです。

 ただ取材をしていて感じるのは、人それぞれ程度の差はあれ、ADHDとASDが混ざっている場合が多いですね。

――発達障害の診断基準とは、心理検査で診断されるとのことですが、どんな検査なのでしょうか?


『発達障害グレーゾーン』(姫野桂, OMgray事務局、扶桑社)
姫野:臨床心理士の質問に口答で答える「WAIS-V」という心理検査が使われることが多く、その他にも別の心理検査を組み合わせ、幼少時代や家庭環境の聞き取りを行い、綿密な検査の末、診断する場合もあります。医療機関によっては小学校時代の通知表や中高時代の成績表を取り寄せるところもあるようです。

――姫野さんの場合は過労で倒れ、心療内科を受診し発達障害であるとわかったわけですが、どういったことをきっかけに発達障害であることがわかる人が多いのでしょうか?

姫野:発達障害と診断された方々の9割以上が、うつ病や睡眠障害、双極性障害、自立神経失調症などの二次障害を患っています。それらの症状に悩まされ、心療内科を受診し、はじめて発達障害と判明する場合が多いようです。

 二次障害がなくても、仕事でミスが多いなどの理由で調べていくうちに発達障害と診断されるケースもあります。

――ミスが多いということのほかに、発達障害の方が仕事で困ることはありますか?

姫野:マルチタスクが苦手な人が多いですね。たとえば、電話の対応をしながら、メモを取ると言った行為です。また、短期記憶が苦手な傾向があるため、話している間に最初に何を話していたかを忘れてしまうことも多々あります。そうなると会議や打ち合わせなどで話についていけなくなります。

――日常生活においてはどんなことがありますか?

姫野:ゴミの出し忘れや公共料金の払い忘れ、家事の段取りがうまくできずに悩む当事者もいます。ゴミの出し忘れが重なりゴミ屋敷になってしまう人もいます。

――それは今回の本の主題である発達障害とは診断されていないが、その傾向があるグレーゾーンの方々にも当てはまるのでしょうか?

姫野:程度の差はありますが、グレーゾーンの人たちは、時間やお金を費やし、努力をすればこなせてしまうことも多いのです。グレーゾーンの人たちの特有の悩みは、発達障害の傾向はあるけれども診断が下りていないがために、会社の同僚や上司に言うことができない。そうなるとまわりからは「仕事ができない」「怠慢だ」などと思われてしまうのです。

――職場に発達障害やその傾向があるグレーゾーンの同僚・上司・部下などがいる場合、どのように接すれば良いのでしょうか?

姫野:腫れ物に触れるように接するのではなく、苦手なことは手伝ってあげてほしいと思います。ケアレスミスが多いので、書類をダブルチェックしてフォローしたり、ですね。他には得意なことに集中させるのも良いと思います。一番良くないのは、仕事を取り上げることです。それにより、自己肯定感が下がりますから。

――たとえば、どんな作業が得意なのでしょうか?

姫野:人それぞれですが、ASDの方のなかには細かな作業が得意で、経理で能力を発揮している方もいます。また、プログラムのバグをチェックするような一般的には単調な作業が得意な方もいます。重度の発達障害の知人がいるのですが、マニュアル化された仕事が得意で、マクドナルドでのアルバイトが一番向いていたと言う人もいます。得意なことは本当に人によって様々です。

――最後に、特に本書を薦めたいのはどんな人たちでしょうか?

姫野:生きづらさを感じていない、非当事者の方々にも読んでもらいたいと思っています。グレーゾーンの人たちは、職場ですごく怒られることが多いんです。怒られることで自己肯定感が下がってしまう。本書を読んで、発達障害やそのグレーゾーンの人たちがいることを理解し、もし職場にそういう人がいる場合、かれらへの叱り方やフォローの仕方を工夫していただけると良いですね。

■イベント告知■
生きづらいけど生きのびたい!「発達ハック」コンテスト
日程:2019年3月31日(日) OPEN 12:00 START 13:00
会場:ShibuyaLoft9
チケット:前売り1700円 当日2200円(税込・要1オーダー500円以上)
【ゲスト】
姫野桂(ライター/『発達障害グレーゾーン』『私たちは生きづらさを抱えている』著者)、
鈴木悠平(「LITALICO発達ナビ」編集長)、
オム(OMgray事務局代表)、
光武克(発達障害バー「The BRATs」代表)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15706
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/733.html

[国際25] 世界潮流を読む 岡崎研究所論評集 南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」 
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

南シナ海問題、米国とフィリピンの「温度差」

2019/03/22

岡崎研究所

 ポンペオ米国務長官は3月1日、訪問先のフィリピンでドゥテルテ大統領、ロクシン外相と会談、同外相との共同記者会見で、南シナ海における米比相互防衛条約の適用を明言した。この問題での、ポンペオ長官の発言は次の通り。


(Witthaya Prasongsin/oxinoxi/francescoch/iStock)
 冒頭発言:島国としてフィリピンは、自由な海洋へのアクセスに依存している。南シナ海における中国の人工島建設と軍事活動は、米国だけでなく貴国の主権、安全、したがって経済的活動に脅威を与えている。南シナ海は太平洋の一部をなしているので、同海域におけるフィリピンの軍、航空機、公船に対する如何なる攻撃も、米比相互防衛条約第4条の相互防衛義務発動の引き金となる。

 質疑応答:米比相互防衛条約下での我々のコミットメントは明確だ。我々の義務は本物であり、今日、南シナ海は航行の自由にとり重要な海域の一部をなしている。私は、トランプ政権が、地域と世界中の安全、商業的航行への自由のため、これらの海域の開放性が確保されるようコミットしていることを、全世界が理解していると思う。我々は、その取り組みにおいてフィリピンだけでなく――フィリピンはその一環である必要があるが――この極めて重要な経済的シーレーンの開放性を維持し中国がこれを閉ざすと脅さなくするべく、地域の全ての国々を支持することにコミットし続ける。

出典:‘Remarks With Philippine Foreign Secretary Teodoro Locsin, Jr.’(U.S. Department of State, March 1, 2019)
https://www.state.gov/secretary/remarks/2019/03/289799.htm

 ポンペオ長官の今回の発言は、南シナ海におけるフィリピン軍等への攻撃が米比相互防衛条約の対象になると明言したことで注目された。この発言が大きな意味をもつ理由は同条約第4条の規定にある。第4条は「各締約国は、太平洋地域におけるいずれか一方の締約国に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」としている。つまり、南シナ海は条約に言う太平洋に含まれないとも解釈する余地があったのを、太平洋を含むと明確にしたのである。

 ドゥテルテ政権下のフィリピンは、米国、中国との関係で立場がふらついているきらいがある。その原因の一つには、米国の対比防衛へのコミットメントの確実性へのフィリピン側の不安もあると思われるので、ポンペオ長官の今回の発言は歓迎できる。南シナ海における中国の軍事活動を名指しで批判したのも適切である。

 ただ、フィリピン側には、米比同盟をめぐり歴史的に複雑な感情があり、今回の共同記者会見でのロクシン外相の発言からも、それが続いていることが窺われる。ロクシン外相は、米比間の協力を強調しつつ、フィリピンにおける米比相互防衛条約の「見直し」要求があることについて、更なる考慮が必要であるとして「曖昧さの中に、不確実性つまり抑止力がある。明確化は遺漏と条約外の行動を招く。しかし、過度の曖昧さはコミットメントの強固さを疑わせることになる」と述べている。

 このように、米比間には少し温度差が見られるので、米比協力には今後とも何らかの紆余曲折があるかもしれない。米国の南シナ海における航行の自由作戦をはじめとする軍事行動を含む努力の継続が重要で、その中で、その助けとなる米比関係が緊密化していくかどうかにも注目していくということであろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15651
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/778.html

[国際25] From LA 大学でも「大麻学」、米国は大麻解禁国家となるのか? 時間の問題
From LA

大学でも「大麻学」、米国は大麻解禁国家となるのか?

2019/03/21

土方細秩子 (ジャーナリスト)


(OlegMalyshev/Gettyimages)
 昨年カリフォルニア州が娯楽用大麻を合法化したことで、 米国は一気に大麻解禁に向けて進んでいる。来年の大統領選挙への立候補を表明したバーニー・サンダース上院議員は「若い頃何度か大麻を吸引したことがある」と認めた上で、

 「大麻は合法化すべき。あまりにも多くの人々が大麻で逮捕されたことにより前科がつき、人生を台無しにされた」と訴えている。米国では大麻を一度も経験したことがない、という人の方が少数派で、それを違法とすることの方がデメリットが大きい、という考え方だ。

 またこちらも2020年の大統領候補の1人であるニュージャージー州選出のコリー・ブッカー上院議員は、実際に大麻を米国で合法化する法案を提出し、上院での承認を目指している。ブッカー議員の法案は大麻合法化だけではなく、サンダース議員の主張するように「過去にさかのぼって大麻関連の米国人の犯罪歴を消去する」というなかなかに大胆なものだ。

 この動きは「マリファナ・ジャスティス・アクト」と呼ばれ、上院の中にもサンダース議員をはじめエリザベス・ウォーレン、カマラ・ハリス議員ら大統領候補に挙がっている民主党の賛同者がいるという。

 ブッカー議員が法案によって狙っているのは「ドラッグとの戦い」に勝利することだ。大麻を解禁することで、少なくとも大麻の違法取引は消滅し、そこから利益を得ていた犯罪グループも崩壊する。また同時に米国に根強く存在する人種問題も、ドラッグに大きく関係する。

 例えば、大麻所持などで逮捕されるアフリカ系住民の数は白人のおよそ4倍。しかし大麻使用率は人種間でほとんど差がない。つまり大麻所持が違法であることが黒人差別を助長している面もある。こうした不均衡を是正するためにも、大麻解禁は必要だとブッカー議員は主張している。

 現在の共和党政権下でこうした法案が可決される可能性は低いが、民主党の大統領候補の多くが法案を支持していることから、もし来年の選挙で民主党が勝利すれば法案は可決されるかもしれない。米国が大麻を合法化すれば、世界中に大きな影響を与えることにもなるだろう。

 すでにそれを見越し、今後の産業としての大麻業界の成長に期待する向きもある。実際カリフォルニア州ではシリコンバレーの資本が乗り出す大型大麻農場の経営も始まっている。合法化されれば需要も伸び、観光産業の一部にも組み入れられるし輸出による利益も考えられる。

コロラド州立大学の「大麻学」
 米国には大麻合法化を行う州の増加に伴う大麻関連ビジネスに対し人材を派遣する企業も存在する。その企業の一つ、バングスト社のカーソン・ハミストン氏は「今後北米で大麻関連の職業は他の職業と比較しても求人の伸びが目立ち、給与も高い水準が期待できる」と語る。

 教育の場も例外ではない。全米で最も早く大麻を合法化したコロラド州では、コロラド州立大学で「大麻学」を学ぶことができる。大麻の育て方、管理などの実際的な学問だが、カリフォルニア州のUCLAではさらに大麻の合法化、経済・社会的インパクトについて、など大麻をめぐる経済学の講義も行われるようになった。

 北ミシガン大学では「医療用植物化学」として大麻を含む医療効果のある植物について学ぶ学科が存在するし、ハーバードでさえ大麻のポリシーと法律に関する講義が開かれている。

 最も積極的なのは北ミシガン大学で、4年間をかけて日本でいう農学部のような形で大麻の栽培からその効能についてを学ぶ。卒業生は大麻農場や大麻加工などで職を得ることができるが、初年度から平均で7万ドルの収入が期待されるなど、一般的な大学新卒者よりも高給で迎えられるという。

 一口に大麻と言っても、例えばロサンゼルスには大麻をテーマとしたお洒落なブティックもある。大麻成分の入った飲み物、お菓子、大麻をモチーフにしたファッションなど、大麻関連の様々なグッズが販売されている。有名ブランドによる大麻吸引具の販売もあり、一気に高級化している感もある。今後ビジネスとして注目される、というのは合理的な考えだ。

 すでに合法化に踏み切った州が大麻合法を撤回する可能性は低く、今後も新たに合法化を目指す州は多い。米国が大麻解禁国家になるのは時間の問題かもしれない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15682
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/779.html

[国際25] 米政府当局者、中国との貿易協議で早期合意の可能性高くない トランプ米大統領:連邦準備制度が利上げ終了したことを望む 
米政府当局者、中国との貿易協議で早期合意の可能性高くない
Saleha Mohsin、Jennifer Jacobs
2019年3月22日 11:19 JST 更新日時 2019年3月22日 22:34 JST
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トランプ米大統領は22日、中国との貿易合意は近いと主張した。来週には政権の交渉責任者が北京を訪問する予定だが、政府当局者らは速やかな合意成立に否定的な見解を示している。

  トランプ氏はFOXビジネス・ネットワークで放映されたインタビューで、「合意にかなり近づいていると思う」と発言。「だからといって合意に至るというわけではないが、とても近いと思う」と続けた。

  トランプ氏は貿易合意が成立するとしても中国に確実に合意を順守させるため、一部の対中関税を維持すると今週述べたが、この発言以降に交渉ペースが鈍ってはいないとこの日は強調。中国側は関税の即時撤回を求めている。同氏はこれまで、望んでいるのは実効性のある合意であり、急場しのぎの合意ではないと言明してきた。

米国商業会議所の国際問題責任者、マイロン・ブリリアント氏が米中貿易合意に向けた問題を指摘

(出典:ブルームバーグ)
原題:Trump Says China Deal Is ‘Close’ Ahead of Fresh Round of Talks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POQX4U6TTDS001

 
トランプ米大統領:連邦準備制度が利上げ終了したことを望む
Simon Kennedy
2019年3月22日 21:02 JST
「これで引き締めはなくなったと期待」−FOXビジネスの番組で
金融引き締めへの警告は「正しかった」、当局に影響したとは思わず
トランプ米大統領は、連邦準備制度が利上げを終了したことを望むと発言した。連邦公開市場委員会(FOMC)は20日に利上げ見通しを後退させ、年内の据え置きを示唆した。

  トランプ氏はフォックス・ビジネス・ネットワークの番組「モーニング・ウィズ・マリア」で、「これで引き締めはなくなったと期待している」と表明。同番組がインタビューの内容を電子メールで公表した。

  トランプ大統領は講演やツイートでしばしば米当局の金融引き締めが景気拡大を脅かすと訴えてきた。フォックスには、自身の警告は「正しかった」ことが分かったが、自分が金融当局に「影響を及ぼした」とは思わないと語った。

  米景気拡大はなお従来より速いペースだとし、「米国は非常に大きな可能性を秘めている」と述べた。米企業をたたえ、「われわれは他の国によって適正に扱われていない」とも主張した。

原題:Trump Says He Hopes Fed Has Finished Raising Interest Rates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORMRN6TTDS301
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/780.html

[国際25] ドイツの10年国債がマイナス利回りに−2016年以来初めて ロシア中銀、金利据置ルーブル高 トランプ大手ハイテク分割反対

ドイツの10年国債がマイナス利回りに−2016年以来初めて
John Ainger
2019年3月22日 19:03 JST
独製造業購買担当者指数は44.7と12年以降で最低
予想下回るインフレと成長の指標でドイツ国債は今年値上がり
ドイツの10年物国債利回りが22日、2016年以来初めてマイナスとなった。独製造業の経済活動がますます大きく縮小し、ユーロ圏全体の景気減速懸念を深めた。

  市場予想を下回るインフレと成長の指標が続く中、安全資産と見なされるドイツ国債は今年値上がりしている。IHSマークイットの3月の独製造業購買担当者指数は44.7と12年以降で最低となり、エコノミスト予想の48を大きく下回った。

  ダンスケ銀行の債券調査責任者、 アルン・ローマン・ラスムセン氏は、「マイナス利回りは、米連邦準備制度とイングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)がいかにキャリー環境と利回り追求を作り出したかを浮き彫りにしている」とし、「現在の市場センチメントの核心だ」と述べた。

  独10年債利回りは4ベーシスポイント(bp)低下しゼロ前後。これは16年10月以来の低水準。

German yields go negative for the first time since 2016
原題:German 10-Year Yields Drop Below Zero for First Time Since 2016(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORHEV6K50Y001?srnd=cojp-v2



ドイツ製造業PMI速報値、3月は3カ月連続で縮小示す−総合も低下
Brian Swint
2019年3月22日 20:14 JST
製造業PMIは44.7と2012年以降で最低、市場予想も大幅に下回る
サービス業PMIも低下、総合指数は約6年ぶりの低水準
ドイツ製造業の業況は3月に一段と悪化した。世界の貿易を巡り緊張が続いていることが背景にある。

  IHSマークイットが発表した3月の製造業購買担当者指数(PMI)速報値は44.7と、2012年以来の低水準をつけ、エコノミスト予想の48も大幅に下回った。拡大・縮小の境目である50を下回ったのは3カ月連続。3月は新規受注と雇用が落ち込んだ。

  統計内容を受けて、ユーロは対ドルで急落した。

  IHSマークイットの主席エコノミスト、フィル・スミス氏は、「ドイツ製造業は低迷が深刻化してきた」と述べ、「英国の欧州連合(EU)離脱を巡る不確実さや米中貿易関係、自動車業界の減速、世界の需要の全般的な軟化など、全てが製造業に引き続き重くのしかかっている」と指摘した。

  サービス業を含むドイツの総合PMIは51.5に低下し、過去6年近くで最低となった。サービス業PMIは54.9と、前月の55.3から低下した。

原題:German Manufacturing Sinks Deeper Into Contraction in March(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORHK66K50XS01?srnd=cojp-v2

 


ロシア中銀、金利据え置きールーブル高でインフレ見通し引き下げ
Anna Andrianova
2019年3月22日 20:19 JST
ブルームバーグのエコノミスト調査で40人全員が据え置き予想
基本シナリオ通りに展開なら年内に緩和に転じる可能性
ロシア中央銀行は22日、政策金利据え置きを発表した。据え置きは2会合連続。ルーブル高と消費者需要の弱さでインフレ圧力が弱まったため、年内に緩和サイクルに戻る可能性があるとコメントした。

  中銀は1週間物入札レポ金利を7.75%で据え置いた。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査で40人全員が予想した通りだった。

  中銀は声明で「基本シナリオ通りに状況が展開すれば、2019年中に政策金利引き下げに転じる可能性があるとみている」と説明した。年末のインフレ率予想は4.7−5.2%と従来の5−5.5%から引き下げた。

原題:Russia Holds Key Rate as Ruble Rally Helps Inflation Outlook (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORLGC6TTDS601?srnd=cojp-v2



トランプ氏:大手ハイテク分割に反対、ソーシャルメディアは嫌いだが
Terrence Dopp
2019年3月22日 22:09 JST
トランプ米大統領は民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)が提案する大手テクノロジー企業の分割を支持しないと述べた。トランプ氏は一方で、ソーシャルメディア企業が反共和党の役割を果たしていると批判した。

  トランプ氏は22日放映されたFOXビジネス・ネットワークとのインタビューで、「分割という概念が気に入らない」と述べた。

  同氏は「メディアに対する規制という概念が嫌いだ」と述べ、「誰もが自由であってほしい。だが、彼らはリベラルな民主党やその他の人たちに対する対応と、われわれへの接し方は同じではない」と言明した。

  トランプ氏は19日、民主党のコンテンツを優先し、一部共和党の素材をブロックしているとして、フェイスブックやグーグル親会社アルファベット、ツイッターを批判していた。

原題:Trump Blasts Social Media Companies Yet Opposes Breaking Them Up(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORPRF6JTSEH01
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/781.html

[経世済民131] ドルに破局がやってくる−FOMCがサプライズで弱気派支援 日本は世界最大の債権国から陥落間近、ドイツが猛追−そのとき円は

 
ドルに破局がやってくる−FOMCがサプライズで弱気派支援
Susanne Barton、Katherine Greifeld
2019年3月22日 10:20 JST
• FOMCが予想外の今年の利上げゼロ示唆、ドル指数は大幅安
• ドルに強気のポジション、1月以来の高水準に積み上がっていた
米連邦公開市場委員会(FOMC)からのビッグサプライズは、ドル強気派に破局をもたらしそうだ。
  ブルームバーグのドル指数は20日に0.5%下落、1月以来の大幅安となった。FOMCメンバーらが市場予想に反し、今年の利上げゼロを示唆した。これによりドル建て資産の利回り優位が後退し、ドルの魅力は薄れる公算だ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iRp5BM4C.d48/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png

  一部の投資家やエコノミストはFOMC声明のハト派色の強さに不意を突かれた。ヘッジファンドや短期筋は1週間前に、ドルに強気のポジションを1月以来の水準に引き上げていた。
  BMOの外国為替戦略グローバル責任者、グレッグ・アンダーソン氏は、「20日まではドルについてやや強気だった。当局が量的緩和(QE)と金利の両面での引き締めが終了したと示唆したら速やかに姿勢を変えるつもりだった。しかし、当局はそのヒントをわれわれが思っていたよりはるかに早く出した」と語った。
  2019年の初めには、米当局が利上げを停止またはペースを緩めるとの観測などからドル弱気派が正当性を強調していた。だが実際にはドルは好調を維持し、ブルームバーグのドル指数は、昨年2月の安値から今年3月19日終値までで約7%上昇。そこに20日、FOMCドットプロットの爆弾が落とされた。
  TDセキュリティーズの外為ストラテジスト、マーク・マコーミック氏は、「ドットがドルを落ち込ませ」、ドル「弱気」の根拠を強めると述べた。
パウエルFRB議長
(出典:ブルームバーグ)
原題:This Might Be the Dollar Disaster Bears Have Waited For (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POPSOG6TTDS101 


 


日本は世界最大の債権国から陥落間近、ドイツが猛追−そのとき円は?
小宮弘子、Chikako Mogi
2019年3月22日 9:42 JST 更新日時 2019年3月22日 12:36 JST
日本が四半世紀以上謳歌(おうか)してきた世界最大の債権国としての地位を失う日が近づいている。背後に迫るのはドイツだ。

  世界最大の債権国から日本が転落したとき、為替市場では何が起きるのか。5年以内に日独逆転が起こる可能性があるとみるみずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「リスク回避通貨として円を投機勢が選ぶだろうか」と指摘したうえで、政治の安定などの条件がそろえば、ユーロが円をしのぐリスク回避通貨になり得るとみている。

General Images of Banknotes
ユーロと円紙幣Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  財務省データによると、日本の対外純資産残高は2017年末で328兆円となり、3年連続で減少した。一方、ドイツは261兆円で2年ぶりに中国を上回った。18年末の残高は5月に発表される見込み。
 
  対外純資産の蓄積をもたらす経常黒字は11年以降、ドイツが日本を上回っている。国際通貨基金(IMF)のデータによると、16年以降はドイツが最大でその状態は予測期間の23年まで続く。

ドイツは2016年以降世界最大
  本来、経常黒字の拡大は通貨高を招き、通貨高が競争力を低下させることで黒字は縮小に向かう。唐鎌氏は、単一通貨ユーロの場合、黒字の稼ぎ頭であるドイツの強さに見合うほどの通貨高が起こらず、黒字が増え続けるため、「いずれ対外債権国通貨としてユーロは円に取って変わるはず」と指摘。イタリアなど対外債務国もあるため、ユーロ圏全体で世界最大の債権国となるのはだいぶ先だが、「ドイツ一国がなればかなり大きな話だ」と述べた。

  14年にユーロ圏の日本化についての著書を刊行した唐鎌氏は、ユーロがドイツにとって割安であり続け、輸出主導の成長になればなるほど、金融政策も為替動向に敏感になる傾向が強まるとも指摘。それは金融政策に従属する「日銀にそっくり」で、欧州中央銀行(ECB)の「日銀化がより進む」とみる。ユーロ高が進んでいた約1年前、ドラギECB総裁は講演でユーロ高は「景気拡大だけでは説明しきれない」と、厳重に監視する必要があると述べている。日銀の黒田総裁は先月の衆院財務金融委員会での答弁で、円高が進んで経済や物価情勢に影響を与えた場合に追加緩和を検討する考えを示している。

(最終段落にECB、日銀について追加します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PONESA6TTDS20


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/639.html

[経世済民131] 米イールドカーブ逆転迫る、「その先」を読む債券トレーダーも 円が上昇、逃避の買い−米国債の逆イールド発生で 
米イールドカーブ逆転迫る、「その先」を読む債券トレーダーも
Emily Barrett
2019年3月22日 14:31 JST
長短金利逆転の次の大きな流れへの注目も高まっている
「テーマ別のブルスティープニングが始まる時期」に近づく−BMO

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/inXBpLjamdSc/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
The Marriner S. Eccles Federal Reserve building stands in Washington, D.C. Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

米連邦公開市場委員会(FOMC)が市場の意表を突いて年内の利上げ見送りを示唆したことで、債券市場でリセッション(景気後退)のシグナルが点灯に近づいた。こうした中で既にそうした動きの反転を見据えているトレーダーもいる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POR1946KLVR401?srnd=cojp-v2
  10年物米国債利回りが21日に一時2.50%を下回ったため、3カ月物との利回り格差(スプレッド)は2007年以来の小ささになった。FOMCによる20日の声明発表前、スプレッドは15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)強だったが、金利見通しの変化を受けて「ゼロ」まであと4bpに迫った。

  逆イールドは不況を正確に予測する指標だと広く考えられている。BMOキャピタル・マーケッツは長短金利が逆転する可能性が高いとみている。逆イールドが多くのアナリストの視野に入っている今、その次の大きな流れへの注目も高まり、一部のトレーダーは「その先」を読もうとしている。短期の利回りが急低下し、イールドカーブが再びスティープ化するというシナリオだ。

One of the market's most-trusted recession indicators is getting closer to zero
  金融当局が景気見通しに自信を失いつつあり、利下げを再開する必要があるという兆候が出れば、そうした動きが促されることになる。市場は「テーマ別のブルスティープニングが始まる時期に近づいており、その時期を予測するのが19年に投資家が直面する最も重要な判断の1つになるだろう」とBMOの金利ストラテジスト、ジョン・ヒル氏は言う。

  実際、スティープ化は既にカーブのある部分で見られる。緩和サイクルが近づいているとの観測から20日には5年債利回りが30年債利回りよりも大幅に低下し、スプレッドは17年11月以来最大になった。

原題:Bond Traders Turn Eyes to What May Happen After Curve Inversion(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POSCRP6TTDS001

 
円が上昇、逃避の買い−米国債の逆イールド発生で
Susanne Barton
2019年3月23日 6:14 JST
22日のニューヨーク外国為替市場では、円が週間ベースで1月以来の大幅上昇。米国債3カ月物と10年物の利回り逆転が2007年以降で初めて起きたことが背景。
• ドルは円に対し、週間では1.4%安。ニューヨーク時間午後4時27分現在、前日比では0.8%下げて1ドル=109円96銭。一時は1%安の1ドル=109円74銭を付けた。
o ユーロは対円で1.4%値下がり。ユーロに対する円のコールオプション需要が1月以来の高水準に膨らんだ。トルコ・リラなど新興国通貨の弱さも円買いにつながった
o ドル・円の1カ月物インプライド・ボラティリティー(IV、予想変動率)は一時6.32%に上昇。今週は4.91%と、約4年ぶりの低水準を付けていた。四半期末にかけての買い戻しの動きもボラティリティー上昇の背景
• 3カ月物と10年債の間での逆イールドは2007年以降初めて。逆イールドはリセッション(景気後退)の前触れだと広く考えられている。フランスやドイツの経済指標で弱さが示され、欧州の景気見通しがあらためて疑問視されたほか、2月の米財政赤字は月間ベースで過去最大となった
o 米連邦公開市場委員会(FOMC)は今週、経済成長率予想と金利見通しを引き下げた。当局者の大半が今年の利上げ回数をゼロと想定している
• 逆イールドや世界経済に関する懸念、欧米の株式相場の弱さが円の上昇につながったと、ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの通貨ストラテジスト、ブレンダン・マケナ氏は指摘 
o 「この日発表されたドイツの経済指標が弱かったことから、世界の経済成長を巡る懸念が再燃した。株式相場もかなり大きく下げている。こうした状況では円が上昇する」
• 主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前日比0.3%上昇、週間では0.1%低下した。
o 米10年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.4355%。一時は2.4160%と、昨年1月以来の低水準を付けた
• ドルは対ユーロで0.7%高の1ユーロ=1.1298ドル

欧州時間の取引
  ユーロが2週間ぶりの大幅下落。フランスとドイツの経済指標が低調となり、域内景気モメンタムの弱さが浮き彫りになった。
原題:Yen Lures Haven Seekers as U.S. Yield Curve Inverts: Inside G-10(抜粋)
Euro Slumps as Weak Data Come Amid New Trade Fears: Inside G-10

 

【米国株・国債・商品】株が反落、ダウ460ドル安−景気減速懸念
Vildana Hajric、Sarah Ponczek
2019年3月23日 6:25 JST
22日の米株式相場は大幅反落。世界経済の伸びが鈍化している兆候が増えた。米国債は買いを集め、10年債利回りが急低下。3カ月物と10年物の利回り水準は、2007年以降で初めて逆転した。
• 米国株は反落−S&P500種は1月以来の大幅安
• 米国債は上昇−3カ月物と10年物に逆イールド
• NY原油は大幅安−世界経済への懸念再燃
• NY金先物は上昇−弱い統計受けて需要増
  S&P500種株価指数は前日比1.9%安の2800.71で終了。ダウ工業株30種平均は460.19ドル(1.8%)安の25502.32ドル。ナスダック総合指数は2.5%下げた。米10年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.44%。
  今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、金融当局のハト派姿勢が一段と強まったにもかかわらず、22日のS&P500種株価指数は1月以来の大幅安となった。素材や金融関連が指数全体を押し下げた。
  この日の10年債利回りは一時2.416%と1年2カ月ぶりの低水準となり、3カ月物の利回りを下回った。米QMAのチーフ投資ストラテジスト兼ポートフォリオマネジャー、エド・ケオン氏は「逆イールドは、景気の先行きにとっては良い兆候だと見なされていない」と指摘。その上で、「イールドカーブのフラット化は、今後の経済成長鈍化を示唆する傾向があるといった単なる循環的なサインではない。世界中の先進国の金利が際立って低いという長期的な変化だ」と分析した。
  ニューヨーク原油先物相場は3週間ぶりの大幅安。ドイツとフランスの製造業購買担当者指数(PMI)が市場予想を下回るなど、発表された統計が失望を誘う内容だったことを受け、世界的な景気減速懸念が再燃した。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は94セント(1.6%)安の1バレル=59.04ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は83セント安の67.03ドル。
  ニューヨーク金先物は上昇。独製造業PMIが低調だったことなどを受け、避難先として金への需要が高まった。週間ベースでは3週連続の値上がり。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は0.4%高の1オンス=1318.70ドルで終了した。
原題:Stocks End Week Lower Amid Hints of Slowing Growth: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Buying Wave Triggers First Curve Inversion Since 2007
Oil Falls Most in Three Weeks on Global Slowdown Fears (Correct)
PRECIOUS: Gold Set for 3rd Weekly Gain as Growth Concerns Mount
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POSCRP6TTDS001


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/643.html

[経世済民131] 米国:2月の財政赤字、過去最大の2340億ドル−19年度の赤字膨らむ ハト派の「リベンジ」米連銀総裁2人の見解、主流派も
米国:2月の財政赤字、過去最大の2340億ドル−19年度の赤字膨らむ
Katia Dmitrieva、Laura Davison、Saleha Mohsin
2019年3月23日 10:15 JST
• これまでの単月ベースで最大の赤字額は7年前の2317億ドル
• 2月までの5カ月間では財政赤字が5442億ドルに増えた
米財務省が22日発表した2月の財政収支で赤字額が過去最大となった。法人税収の落ち込みや支出増加が響いた。
  単月ベースでの財政赤字は2340億ドル(約25兆7200億円)。前年同月は2152億ドルだった。ブルームバーグがまとめたデータによれば、これまでの記録は7年前の2317億ドル。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ib9dGZkX7J60/v4/576x-1.png

  財務省の月次予算報告によれば、2019会計年度(18年10月−19年9月)の2月までの5カ月間では財政赤字が5442億ドルと、前年度同期からほぼ40%増えた。同報告の発表は政府機関が閉鎖されていた影響で1週間遅れた。
  5カ月間の歳入は1兆3000億ドルに減った。減少率は1%未満。歳出は9%増の1兆8000億ドル。
原題:U.S. Posts Largest-Ever Monthly Budget Deficit in February (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-23/POSIVF6JIJUO01


 
ト派の「リベンジ」−米連銀総裁2人の見解、主流派も受容
Steve Matthews
2019年3月22日 16:57 JST
ブラード、カシュカリ両総裁はかねて追加利上げに反対表明
最新の金利予測では当局者17人中11人が今年の据え置きを予想
かねて米政策金利が間違った方向に向かっていると主張して、そのことによって冷たい視線を浴びることもあったハト派の連銀総裁2人の意見が、今や米金融当局の主流派となりつつある。

  この数年、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者(現行は2人欠員の計17人)それぞれの金利予測を点の分布図で表示するドット・プロットで、追加利上げゼロを見込んできたのはセントルイス連銀のブラード総裁とミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の2人だけだった。だが20日公表の最新のドット・プロットでは、今年について両総裁を含む11人が金利据え置きを予想していることが示された。

The Fed's March Dot Plot
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ioz0pe5iPsWA/v1/-1x-1.png

  ドット・プロットの各点がどの当局者のものかは明示されていないが、ブラード、カシュカリ両総裁はかつて、金利据え置きを望む立場を公言してきた。

  2008年から総裁を務めるブラード氏(58)はこの2年間、持続的な低成長を背景とした低インフレの下で、追加利上げは不要だと訴えてきた。また、ブッシュ(子)政権の財務省で金融危機を受けた金融機関救済のための重要ポストに就いた経歴を持ち、16年に就任したカシュカリ総裁(45)は、賃金の伸び悩みについて、一般に理解されているよりも労働市場に一段と多くのスラック(たるみ)が存在することの反映だと唱えてきた。

Federal Reserve Bank of Minneapolis President Neel Kashkari Speaks At NABE Conference
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁写真家:Andrew Harrer / Bloomberg
  グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「こうした見解を多くの人々がからかってきた」と述べた上で、「金融当局内部には競争があり、あなたが連銀総裁だったら、連邦準備制度理事会(FRB)やそのリサーチに勝りたいと望むだろう。そして両総裁は勝利した」と指摘。「多様な見解に加え、誰もが自由に意見を表明できるようにすることで、金融当局は恩恵を得ている」と語った。

  この2人を他のFOMC参加者から隔てたのは、低失業率だけではインフレ高進にはつながらないというコントラリアン(逆張り)の見解であり、今ではその正しさが証明された。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda and Former Reserve Bank of India Governor Raghuram Rajan Speak At BOJ Event

セントルイス連銀のブラード総裁写真家:大隅智宏/ブルームバーグ
  カシュカリ総裁の前任者であるナラヤナ・コチャラコタ氏は、自身の見解も非主流派として「よくからかわれた」と述懐。「私やブラード、カシュカリ両総裁のようなアウトサイダーが、ニューヨークとワシントンの中核的な集団思考に対抗する意見を表明するのを、連邦準備制度の組織構造が可能にしている」と説明した。

原題:Revenge of the Doves: How the Fed Mainstream Joined Two Outliers(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORBS26JIJUO01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/644.html

[経世済民131] ムーアFRB理事候補:昨年12月の利上げは「大きな間違い」トランプ:FRB利上げ終了を望むFRB理事候補にムーア指名
ムーアFRB理事候補:昨年12月の利上げは「大きな間違い」
Craig Torres、Rich Miller
2019年3月23日 11:12 JST
パウエル議長ら理事会メンバーを手助けできるようになりたい
ブルームバーグテレビジョンのインタビューに答えた
トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)の理事候補として名指ししたスティーブン・ムーア氏は22日、連邦公開市場委員会(FOMC)による昨年12月の利上げは「非常に大きな間違い」だと主張するとともに、米経済の拡大を確実にするためパウエルFRB議長に協力することを楽しみにしていると述べた。

  ムーア氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「12月に利上げをしたことは今なら誰でも非常に大きな間違いだと認めるだろう」と指摘。利下げが必要かとの質問に対しては、「それについては分からない。もっとよく見極める必要があるだろう」と答えた。

スティーブン・ムーア氏

ブルームバーグ
  保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の客員研究員を務めるムーア氏は、長年トランプ氏を支持。ムーア氏とトランプ大統領は経済について「とても似たような考え方をする」と説明し、「今後5−6年は3−4%の成長率を達成できると本当に思う」と話した。20日までのFOMCでは米経済の長期成長率は1.9%前後になるとの予測が示されている。

  ムーア氏は「私は混乱させたくはない」と述べた上で、「パウエル議長をはじめとする理事会メンバーがこの国のためになし得る最善の成長促進と物価安定のシステム構築を本当に手助けできるようになりたい」と語った。

 

原題:Fed Nominee Moore Says December Rate Hike Was a Big Mistake (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-23/POSLJD6K50XS01?srnd=cojp-v2


 
トランプ大統領:FRB理事候補にスティーブン・ムーア氏指名へ
Jennifer Jacobs、Saleha Mohsin、Margaret Talev
2019年3月22日 13:37 JST 更新日時 2019年3月23日 3:36 JST
トランプ米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)理事の候補にスティーブン・ムーア氏を指名すると明らかにした。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の客員研究員を務める同氏は、長年トランプ氏を支持している。

  大統領は22日にフロリダ州パームビーチに向かう途中、同行の記者団にムーア氏の指名を発表し、先のブルームバーグ・ニュース報道を確認した。大統領はその後ツイッターで、ムーア氏について「極めて評価の高いエコノミスト」だとし、「傑出した候補者であることに疑いの余地はない」と加えた。

  ムーア氏はトランプ大統領と同様、パウエル議長の下でのFRBを批判している。大統領としては、ムーア氏をFRB理事に置くことでパウエル議長を監視し、追加利上げを阻止しようと考えている可能性がある。

原題:Trump Says He’ll Nominate Stephen Moore to Federal Reserve Board(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/POR0DO6JIJUO01

トランプ米大統領:連邦準備制度が利上げ終了したことを望む
Simon Kennedy
2019年3月22日 21:02 JST
「これで引き締めはなくなったと期待」−FOXビジネスの番組で
金融引き締めへの警告は「正しかった」、当局に影響したとは思わず
トランプ米大統領は、連邦準備制度が利上げを終了したことを望むと発言した。連邦公開市場委員会(FOMC)は20日に利上げ見通しを後退させ、年内の据え置きを示唆した。

  トランプ氏はフォックス・ビジネス・ネットワークの番組「モーニング・ウィズ・マリア」で、「これで引き締めはなくなったと期待している」と表明。同番組がインタビューの内容を電子メールで公表した。

  トランプ大統領は講演やツイートでしばしば米当局の金融引き締めが景気拡大を脅かすと訴えてきた。フォックスには、自身の警告は「正しかった」ことが分かったが、自分が金融当局に「影響を及ぼした」とは思わないと語った。

  米景気拡大はなお従来より速いペースだとし、「米国は非常に大きな可能性を秘めている」と述べた。米企業をたたえ、「われわれは他の国によって適正に扱われていない」とも主張した。

原題:Trump Says He Hopes Fed Has Finished Raising Interest Rates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORMRN6TTDS301
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/648.html

[経世済民131] 市場期待に満額回答のFOMC、円相場にしわ寄せか 米国株式市場が急反落、世界景気低迷不安強まる 中国株上昇が香港ドル圧迫
為替フォーラム2019年3月23日 / 12:10 / 8時間前更新

市場期待に満額回答のFOMC、円相場にしわ寄せか

尾河眞樹 ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員兼金融市場調査部長
4 分で読む

[東京 23日] - 3月19、20日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)は、ハト派色を一段と強めた。成長率見通しは2019年が2.3%から2.1%へ、20年が2.0%から1.9%へと引き下げられた。バランスシートの縮小は5月からペースを鈍化させ、9月末には停止する方針が示された。

最も注目されていたFOMCメンバーの政策金利見通し、いわゆるドットチャートは昨年末に発表された分布が引き下げられ、この3カ月間で全体的にメンバーがハト派に傾いたことが明確になった。今年の利上げはゼロ回、20年は1回で、それで打ち止めとの予想だ。

ただ、長期的な見通しを示す中立金利は、12月時点の2.75%に据え置かれた。

これに対し、政策金利に対する期待を示す米フェデラルファンド(FF)金利先物は19年が2.285%、20年が2.030%で、市場は来年にかけて「利下げ」を織り込んでいる。つまり今回のFOMCは、市場からの催促に米連邦準備理事会(FRB)の方が寄り添った格好だ。

<市場に「寄り添いすぎた」可能性>

FRBはその期待に十分すぎるほど応えたはずだが、直後の市場の反応は必ずしもポジティブなものとはならなかった。1月はFRBの「ハト派」転換を受けて米株が上昇、リスクオンの流れから、ドル安とともに円安圧力も一段と強まり、ドル円は底堅い展開となった。

だが、今回はFOMC直後にいったん株が上昇したものの、ほどなくして上げ幅を縮小し、終わってみれば20日のS&P500種株価指数は8.34ポイント下落、ダウ工業株30種も141ドル安で取引を終了した。リスクオフの中、ドル安と共に円高が進行し、ドル/円は一時110円台半ばまで下げた。

筆者は、FRBが市場に「寄り添いすぎた」ために、かえって政策に対する不透明感が増し、市場参加者の戸惑いがこうした反応になって現れたと見ている。FRBのパウエル議長はFOMC後の会見で、経済見通しは「明るい」と繰り返し述べた。その根拠として、今年の成長率見通しは2.0%付近、失業率は4.0%を下回っており、インフレ率もターゲット付近であることなどを挙げた。

しかし、見通しがポジティブなのであれば、17人のFOMCメンバーのうち12月時点で2人だった金利据え置き派が、この3カ月で11人へ急増するほどハト派に転じたのか、その根拠はあまり明確とは言えない。パウエル議長はリスクとして、世界経済、特に中国と欧州の減速傾向を挙げ、世界的に弱い物価上昇力について「重大な課題である」としたが、これらは今に始まったことではない。

市場の戸惑いは、そのまま記者会見の質疑応答にも表れていた。記者の質問は「次のアクションは利上げなのか、利下げなのか」に集中したが、パウエル議長は明言を避けた。代わりに、「経済指標は現時点で、FRBが金利をどちらの方向に動かすべきか示唆していない」とし、「忍耐強くなるには良い時期」と述べた。あくまで様子見を決め込むスタンスだ。

<一段の円高も視野>

筆者はこれまで、FRBのハト派姿勢は米株の上昇につながり、為替市場では円安圧力がむしろ強まると見ていた。米株価と円の名目実効為替レートは明確に逆相関を描いており、昨年末の米株安と共に円が急伸した後、年明けからは米株価の反発と共に円売り圧力が強まったことを示している。

これにドルの名目実効為替レートを重ねると、FRBがハト派に転じた1月以降、ドルの上値は重くなっていたものの、リスクオンのムードが広がったことで円安圧力のほうがドル安圧力を上回っていたことが見て取れる。これまでドル/円が底堅く推移してきたのはこのためだ。

中期的にみれば、FRBの利上げ休止は米国の景気後退を後ずれさせる公算が大きい。大きな流れはこれまでと変わらず、市場が「景気の延命」を織り込んでリスクオンとなり、夏場にかけて米株高・円安の流れが再開する可能性が高い。

しかし短期的には、今回のFOMCで金融政策に対する不透明感が強まったようにみえる。今後は米国の経済指標に一段と注目が集まろう。3月米雇用統計で非農業部門雇用者数の前月比の伸びが回復するか、米小売売上高が今後持ち直すか、米供給管理協会(ISM)などの景況感はどうか。仮に弱い指標が目立つようであれば、米国の景気後退とFRBの「利下げ」が一段と意識されるようになり、米株安とドル/円の下落につながる可能性がある。

問題は、その際に日銀が取り得る追加緩和の手段が限られることだ。FRBと欧州中央銀(ECB)がいずれもハト派に転じ、「リスクオン」がこれまでのドル/円相場を支えてきたが、欧米が利下げに踏み込む可能性が高まれば、円相場にしわ寄せがくることも想定されるため警戒が必要だ。

2月下旬から3月中旬にかけて、ドル/円相場は111円台を中心に堅調に推移していたが、レンジ相場が長く続くなかで徐々に上値が重くなっている。テクニカル上も90日移動平均線が200日移動平均線を下抜ける「デッドクロス」が現れており、短期的にはドル/円は下落方向にバイアスがかかりやすくなっている。

経済指標の内容が市場の懸念を高める中で、ニューヨーク市場では22日、ドル/円が110円を割り込んだ。一時的にせよ、ドル/円がさらなる下値を試す可能性に注意したい。

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

 3月23日、短期的には、今回のFOMCで金融政策に対する不透明感が強まったようにみえる。今後は米国の経済指標に一段と注目が集まり、弱い指標の場合には米株安と円高を招く可能性があると尾河氏は説く。2017年撮影(2019年 ロイター/Thomas White)
尾河眞樹氏 ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員兼金融市場調査部長
*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。
 
編集:久保信博
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-maki-ogawa-idJPKCN1R4042


 

ビジネス2019年3月23日 / 06:54 / 14時間前更新
米国株式市場が急反落、世界景気低迷不安強まる
Reuters Staff
5 分で読む

[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米国株式市場は急反落、主要3指数の下落率が1月3日以来の大きさとなった。米欧の製造業指標が弱く、米国の長短金利が逆転し、世界景気低迷への不安が強まった。

3月の米製造業活動指標が予想を下回ったほか、欧州や日本の指標もさえなかった。これを受けて、米国の3カ月物財務省短期証券(Tビル)US3MT=RRと10年債S10YT=RRの利回りが、2007年以来約12年ぶりに逆転した。長短金利の逆転は景気後退(リセッション)入りの兆候ともみられる。

エコノミック・アウトルック・グループの首席グローバルエコノミスト、バーナード・バウモル氏は「景気後退が迫っていると直ちに結論付けようとは思わない」とした上で、「地平線上に本物の雲が発生しつつある。問題はこれらの雲がどの程度暗くなり、景気後退の嵐を引き起こすかどうかだ」と語った。

S&P総合500種.SPXの主要11セクター中、公益事業.SPLRCUのほかはすべて下落した。

「恐怖指数」の異名を持つシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数).VIXの上げは2カ月ぶりの大きさとなった。

S&P総合500種、ダウ工業株30種.DJI、ナスダック総合.IXICは週間でも下落した。

連邦準備理事会(FRB)は19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、成長ペースが鈍化する中、19年の想定利上げ回数をゼロとし、よりハト派的な政策スタンスへの転換を鮮明にした。

金利に敏感とされるS&P金融.SPSYは2.8%値下がりし、週間では昨年12月遅く以来の大幅安を記録した。

個別株では、スポーツ用品大手ナイキ(NKE.N)が6.6%安。第3・四半期(12─2月)決算は、北米売上高が予想を下回った。

米宝飾品大手ティファニー(TIF.N)は3.1%高。好調なインターネット通販を背景に、19年度の売上高・利益見通しを堅持した。

米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O)は約3%安。コーウェンが、セダン型量産車「モデル3」の米需要について、価格の安い新車種が第2・四半期に投入されるまで軟調と予想した。

米ボーイング(BA.N)は2.8%安。ガルーダ・インドネシア航空(GIAA.JK)が、旅客機「737MAX8」型機49機の発注をキャンセルする方針と伝わった。金額の規模はカタログ価格ベースで60億ドル相当とみられる。

米動画配信サービス大手ネットフリックス(NFLX.O)は4.5%値下がりした。米アップル(AAPL.O)が25日、動画配信サービスの開始などについて発表すると予想されている。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を3.69対1の比率で上回った。ナスダックでも4.90対1で値下がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は86億6000万株。直近20営業日の平均は77億1000万株。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 25502.32 -460.19 -1.77 25844.65 25877.01 25501.45 .DJI

前営業日終値 25962.51

ナスダック総合 7642.67 -196.29 -2.50 7800.25 7817.83 7642.57 .IXIC

前営業日終値 7838.96

S&P総合500種 2800.71 -54.17 -1.90 2844.52 2846.16 2800.47 .SPX

前営業日終値 2854.88

ダウ輸送株20種 10052.30 -233.37 -2.27 .DJT

ダウ公共株15種 784.26 +4.91 +0.63 .DJU

フィラデルフィア半導体 1400.37 -41.46 -2.88 .SOX

VIX指数 16.48 +2.85 +20.91 .VIX

S&P一般消費財 884.84 -18.54 -2.05 .SPLRCD

S&P素材 340.33 -10.50 -2.99 .SPLRCM

S&P工業 614.81 -14.28 -2.27 .SPLRCI

S&P主要消費財 571.22 -1.34 -0.23 .SPLRCS

S&P金融 421.09 -12.00 -2.77 .SPSY

S&P不動産 222.16 -1.06 -0.47 .SPLRCR

S&Pエネルギー 484.86 -13.06 -2.62 .SPNY

S&Pヘルスケア 1049.44 -19.22 -1.80 .SPXHC

S&P通信サービス 158.47 -2.03 -1.27 .SPLRCL

S&P情報技術 1286.77 -30.91 -2.35 .SPLRCT

S&P公益事業 296.66 +2.03 +0.69 .SPLRCU

NYSE出来高 11.47億株 .AD.N

シカゴ日経先物6月限 ドル建て 21000 - 340 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物6月限 円建て 20985 - 355 大阪比 <0#NIY:>
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPKCN1R32SJ

 
トップニュース2019年3月23日 / 10:59 / 10時間前更新
アングル:中国株上昇が香港ドルを圧迫、本土に資金が流出
Reuters Staff
2 分で読む

[香港 21日 ロイター] - 中国本土株の急伸を受け、香港ドルを売って人民元を買い、本土株に投資する動きが強まり、香港ドルに下落圧力がかかっている。

香港ドルHKD=D3は3月初めから、当局が定めた取引バンドである1米ドル=7.75─7.85香港ドルの下限に下落し、中央銀行に相当する香港金融管理局(HKMA)が市場介入して買い支えている。

年初からの介入回数は5回、規模は累計116億香港ドル(14億8000万米ドル)で、いずれも今月に入って実施された。

それでも相場は同7.8475香港ドルと、下限ぎりぎりで推移している。

これは香港のファンドや個人を含め、海外投資家が主に香港と本土の株式相互取引(ストック・コネクト)を通じて中国A株を買っていることが主因。この制度を使う場合、投資家は他の通貨を人民元に交換する必要がある。

中国A株.SSECは年初から24%近くも上昇した。米中貿易協議が近く妥結するとの期待や、株価指数を運営する米MSCIが、新興国株指数への中国本土株の組み入れ比率を4倍に引き上げると決めたことが背景にある。

コネクト制度を通じた香港から本土への資金流入は1、2月に1210億元と、前年同期の3.73倍に達した。

HKMAによると、人民元は年初から2.8%上昇し、最大のオフショア人民元市場である香港の元預金は1月に2.6%減って5991億元となった。

BNYメロン(ロンドン)の首席通貨ストラテジスト、サイモン・デリック氏によると、伝統的に人民元が下がると香港ドルも下がる傾向にあったが、昨年12月初めからは逆相関が示されている。

投資家は低金利の香港ドルで資金を調達し、本土のA株を買っている。香港市場はキャッシュが豊富なため、資金が流出しても今のところ金利は上がっていない。

HKMAの介入により74億香港ドルが吸収されたが、銀行システムの流動性水準を示すキャッシュバランスは689億香港ドル。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(香港)のFXストラテジスト、ロナルド・マン氏は「少なくとも世界金融危機当時の100億香港ドルまで減少しない限り、香港の金利は大幅に上昇しそうにない」と話した。

(Noah Sin記者)
https://jp.reuters.com/article/china-stock-idJPKCN1R30VY
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/649.html

[政治・選挙・NHK258] 共産、TikTok開設 初投稿は志位委員長のピアノ 中国共産党の影が動画アプリ「TikTok」を覆う 
国内政治ニュース(共同通信)2019年3月23日 / 17:24 / 4時間前更新
共産、TikTok開設
共同通信
1 分で読む

 共産党が、若者に人気のショート動画配信アプリ「TikTok」に公式アカウントを開設した。同党によると、日本の国政政党では初めて。無料通信アプリLINEによる党サポーターの登録も新たに開始。統一地方選、参院選や長期的な支持拡大をにらみ、同党に先入観を持たない「白紙の若い世代」(小池晃書記局長)への発信を強化している。

 TikTokは15秒前後の動画を投稿し、他のユーザーと共有できるアプリ。動画に自分の好きな音楽を合わせることが多い。中高生を中心に人気が広がり、2018年の新語・流行語大賞の候補にもなった。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019032301001883?il=0
 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42837570T20C19A3000000/

 
日本共産党が「TikTok」進出 初投稿は志位委員長のピアノ
3/19(火) 12:36配信 東スポWeb
日本共産党が「TikTok」進出 初投稿は志位委員長のピアノ
志位委員長
 日本共産党が動画投稿アプリ「TikTok」に公式アカウントを開設した。

「TikTok」はアイドルや女子中高生に大人気のアプリ。音楽に合わせてさまざまな動画を投稿し、人気を競う。

 共産党は今後の選挙対策の一環で、若者へのアピールを図る。

 初投稿は志位和夫委員長(64)が自ら登場。野外イベントで趣味のピアノでショパンを奏でる動画で「すごいです。プロのピアニスト」と反響が寄せられた。

 続いて機関紙「赤旗」の記者や職員とみられる女性も登場。「ヘイトスピーチ許さない」のポスターをバックに踊るなど独特の手法で支持を訴えている。

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志位和夫 、 ショパン 、 ヘイトスピーチ を調べる

最終更新:3/19(火) 12:40
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6318057


 

中国共産党の影が動画アプリ「TikTok」を覆う
ByteDance Can't Outrun Beijing's Shadow

2019年1月29日(火)20時00分
フィリップ・スペンス

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若者が夢中になるTikTokも「中国企業」ゆえの足かせがある(写真は昨年6月に北京で開催された展示会でのバイトダンスのブース) REUTERS

<サイバー空間でも強権を振るう一党独裁国家の巨大な影響力が世界進出を目指す中国IT企業の足かせに>

昨年12月にカナダ司法省が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)副会長兼CFO(最高財務責任者)を逮捕して以来、中国企業と米企業の緊張関係が世界の注目を集めている。

世界制覇の野心に燃える中国企業は、ハードウエア部門だけではない。消費者向けスタートアップのユニコーン(企業価値が10億ドルを超える非上場ベンチャー企業)も、世界のインターネットを中国化しようと挑んでいる。

なかでも12年創業のバイトダンス(北京字節跳動科技) は、国外で急激に市場を拡大している。昨年10月の資金調達では企業価値750億ドルと評価され、非上場のスタートアップとして世界最大となった。

主力のサービスは2つ。ニュースアグリゲーションアプリ「今日頭条(Toutiao /国外版はトップバズ)」は、基本的にフェイスブックのニュースフィードと同じだが、人工知能(AI)による(興味のあるニュースを推薦する)リコメンド機能が売りだ。

もう1つの「抖音(ドウイン)」は、6秒動画アプリのVINEに似たショートムービーアプリで、国外では「TikTok(ティックトック)」として絶大な人気を集めている。アメリカでは昨秋、最も多くダウンロードされたアプリになった。

バイトダンスの張一鳴(チャン・イーミン)創業者兼CEOは、20年までにユーザーの半分を外国人にするという目標を掲げる。中国の規制強化リスクを回避する狙いもあるだろう。

破格の評価額がついた大きな要因は、例えば騰訊(テンセント)が運営する携帯電話のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」と違って、国外でも成功できると証明したことだ。

ただし、その世界的な成功は、中国以外の消費者向けIT企業が経験しているのと同じ緊張をバイトダンスにもたらす。「人々がフェイスブックに向ける注目や不満と、まさに同じものを向けられる」と、IT情報サイト、テックノードのジョン・アートマン編集長は指摘する。

インドでは昨年、バイトダンスのニュースアプリが、選挙前に差別を扇動するフェイクニュースを流したと批判された。インドネシアでは「ポルノや不適切なコンテンツ、神への冒瀆」を理由に、TikTokのアクセスが約1週間、遮断された。

CEOが出した反省文
民主主義社会で受ける批判に対する準備不足も露呈している。YouTubeで昨夏、TikTokが子供の性的なコンテンツを容認していると非難する動画が話題になった。バイトダンスは著作権侵害を理由に動画の削除申請をしたが、拙速な申請だったことが判明し、さらに批判を浴びた。

このような反応は、中国企業と世界の間に大きなずれがあることを物語る。政府との協力関係やコンテンツポリシーに関する原則は、中国共産党の影響下で成長した企業とシリコンバレーの企業では、根本的に異なるはずだ。

国内では、バイトダンスは繰り返し共産党に屈服している。昨年4月には、ジョーク共有アプリ「内涵段子」が「低俗な」コンテンツを理由に閉鎖を命じられた。

張は反省文を公開。「社会主義の中心的価値観に不相応のコンテンツだった」と説明し、今後は「権威ある(党公認)メディアとの連携を深め、権威あるメディアのコンテンツの配信を増やし、権威ある(党公認)メディアの声を伝えることに力を入れる」と約束した。

バイトダンスの製品が政府の取り締まりを受けた後、抖音では、警察や軍を宣伝する動画が以前より頻繁に表示されるようになった。恐らくアルゴリズムのリコメンド機能をいじったのだろう。

ただし、中国企業が国外でシェアを伸ばすほど、共産党との関係や依存が注視されるようになる。国際社会では、中国の影響力と、公的領域でIT企業が果たす役割への懸念が高まっており、世界進出を目指す企業の足かせになりかねない。

グーグルやツイッター、フェイスブックは数々の批判を受けて、フェイクニュース対策に本気で取り組み始めた。バイトダンスも、現地の言語に精通したコンテンツ管理者の採用や、フェイクニュースの通報に賞金を出す試み、不審なアカウントの削除、地元のファクトチェッカーとの提携などを進めている。

企業に選択の自由はない
バイトダンスにはもう1つ、欧米のIT企業とは共有できない問題がある。常に中国政府の介入がちらついても、一企業には何もできないのだ。

中国政府はいずれ、バイトダンスのようなコンテンツプラットフォームが、国外の世論に対して持つ潜在的な影響力に気付くだろう。人々をニュースやエンターテインメントのアプリに依存させることは、世論を誘導する強力なルートになり得る。

例えば、バイトダンスのアルゴリズムを操作して、特定の候補者の当選を後押しすることも考えられる。それに比べたら、ロシアが16年の米大統領選でソーシャルメディアの宣伝に数百万ドルを投じたことなど、子供の遊びに思えてくる。

しかも、コンテンツ表示のアルゴリズムを微妙に操作するといった手法は、ロシアのような選挙介入より発覚しにくい。「有権者登録を忘れずに!」というメッセージを、特定の候補者の支持者に向けて多めに発信しても、気が付きそうにない。

とはいえ中国企業も、このような外交政策に関して、政府に進んで協力しているわけではない。エドワード・スノーデンが米国家安全保障局(NSA)による監視の実態を暴露した後、欧米の企業は、政府から情報提供を求められても抵抗している。消費者の信頼こそ、自分たちのビジネスの核心だと理解しているからだ。

次のページ中国企業に選択肢はほとんどない

中国企業も、政府への協力を疑われることのダメージを理解している。配車サービス大手の滴滴出行は警察からデータの提供を要請されたが、プライバシーを盾に2回にわたり拒否。最終的に段ボール数箱分の書類を提出したが、ほとんど役に立たない情報ばかりだった。

もっとも、一党独裁国家において、最終的に企業の側に選択肢はほとんどない。中国で17年6月に施行された国家情報法は、全ての組織と個人に、国の情報活動への協力を義務付けている。

バイトダンスは、国外での評価がリスクにさらされるとしても、中国政府を喜ばせることを最優先させるしかないだろう。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2019年01月29日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。
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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/01/tiktok-2_3.php
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/769.html

[経世済民131] 日本企業に芽生えた「敵対的」行動、経済にはプラス 株式ボラ上昇に賭ける投資家、欧州議会選 トルコ中銀が引締、リラ急落
コラム2019年3月23日 / 11:04 / 10時間前更新
コラム:日本企業に芽生えた「敵対的」行動、経済にはプラス
Jeffrey Goldfarb
2 分で読む

[香港 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本企業が、「敵対的」になっている。伊藤忠商事(8001.T)は、日本では異例の敵対的TOB(株式公開買い付け)をデサント(8114.T)に仕掛け、持ち株比率を40%に増やして重要な決議事項に対する「拒否権」を手にした。

一方、東芝(6502.T)は株主からの突き上げに直面し、電子部品のアルプスアルパイン(6770.T) は今年の経営統合を巡って提訴された。

こうした「敵対的」な行動は、安倍晋三首相が掲げる経済改革のいわゆる「第3の矢」にとって追い風となるものだ。

安倍首相は2012年の就任後、金融財政政策を矢継ぎ早に放った。だが、日本企業によるバランスシートの改善や再編の動きは遅れている。昨年のコーポレートガバナンス・コード改訂は変化を促すものだ。安倍首相は2月、子会社の取締役会に独立した社外取締役を増やす指針の策定を約束した。

すでに圧力を感じている経営陣もいる。

スポーツブランドのルコックスポルティフやアンブロのライセンスを持つデサントの経営方針に不満を持った伊藤忠は、持ち株比率を30%から40%に引き上げられるよう、プレミアムを上乗せして株主から株式を買い取る異例の手段に出た。

15日にはTOBが成立したと発表され、伊藤忠が今後、デサントの買収戦略や幹部人事により大きな影響力を持つことが明らかになった。伊藤忠は中国のスポーツ大手、安踏体育用品(2020.HK)と中国に子会社を設立しており、デサントには中国での成長戦略を加速させることが求められそうだ。

一方、東芝の株主である米投資ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネジメントも、東芝にしびれを切らしている。日本においては珍しく強引なやり方で、キング・ストリートは、時価総額約2兆円の東芝の取締役会において、過半数の入れ替えを要求した。

また、香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントは、1月にアルプスとアルパイン電気が経営統合して誕生したアルプスアルパインが少数株主の権利を阻害したとして、株式交換無効などを訴えて提訴した。

こうした動きは、環境の変化を無視してきた日本の企業経営者はもちろん、株主の要請に耳を傾けるようになっていた経営陣をも揺さぶるだろう。自社株買いの増加や、敵対的買収の防衛手段である「ポイズンピル(毒薬条項)」の導入を見送る会社が増えていることは、良い兆候だ。

こうした前向きな行動が加速すれば、リターンや成長率も上昇し、アベノミクスの成果となるだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/japan-toshiba-breakingviews-idJPKCN1R3107


 
トップニュース2019年3月23日 / 10:34 / 10時間前更新
アングル:株式ボラ上昇に賭ける投資家、欧州議会選を見据え
Reuters Staff
1 分で読む

[ロンドン 22日 ロイター] - 欧州では5月の欧州議会選を控えてポピュリズム(大衆迎合主義)が勢いを増す懸念が出てきた。このため投資家の間では、政治的不透明感が高まり、株式市場のボラティリティが増大する方向に賭ける取引が広がりつつある。

既にユーロ圏のボラティリティを測る指標で「欧州版恐怖指数(VIX)」と呼ばれるVSTOXX先物はこの数週間に急上昇。4月きりの15.35に対して5月きりは16.8と上昇ぶりが目立つ。

BNPパリバの株式・デリバティブ・ストラテジーヘッド、エドムンド・シン氏は「欧州にはポピュリズムの波が押し寄せてており、欧州議会選が行われる5月ごろにちょっとした波乱がありそうだ」と話す。

欧州議会選は5月23─26日に投票が行われるが、ユーロ圏ではこれまでの移民政策や財政引き締め策に対する反発が強い。

目下の選挙戦では欧州連合(EU)懐疑派や極右候補の支持率が高まっており、中道左派や中道右派などの主流派が初めて過半数議席を失う恐れがある。

ソシエテ・ジェネラルの欧州株デリバティブ部門責任者エルベ・ギヨン氏は、ポピュリズムの台頭が最近の投機的取引活発化につながったと分析。「政治面の不透明さを生んでいるのは米国よりも欧州だ。投資家はこうしたイベントに絡むボラティリティ上昇で利益を得ようと非常に大きな取引を行っている」と述べた。

VSTOXXは、金利上昇や世界的な景気減速、米中貿易摩擦への不安から世界的に株式相場が下落した昨年末に付けた26超の水準を依然として大きく下回っている。

しかしVSTOXXの取引が突然勢いを取り戻したことから、投資家が新たな投資機会を探している様子がうかがえる。

ブルックス・マクドナルドのエドワード・パーク最高投資責任者は、こうした取引の一部は英国のEU離脱を巡る不透明感がなかなか消えないことも原因だと指摘した。

米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)がハト派的な政策運営姿勢に転じたため、通貨や債券、株式では今年に入って全体にボラティリティが低下していた。

(Josephine Mason記者)
https://jp.reuters.com/article/eu-election-investors-idJPKCN1R30U5

トルコ中銀が金融引き締め策、リラ急落で
中東・アフリカ
2019/3/23 19:41 
【イスタンブール=佐野彰洋】トルコ中央銀行は22日、同日の通貨リラ急落を受けた金融引き締め策を発表した。主要な政策金利である1週間物レポ金利(年24%)を使った市中銀行への資金供給を停止。今後は別の政策金利である翌日物貸出金利(25.5%)や後期流動性貸出金利(27%)に切り替える。停止期間は明らかにしていない。

中銀は高金利を嫌うエルドアン大統領の圧力下にある。使用する政策金利を切り替えることで利上げに近い効果を狙ったとみられるが、政策の透明性に欠け、発表後もリラは下げ止まらなかった。

中銀は金融政策の枠組みを簡素化するため、2018年6月に1週間物レポ金利の使用を再開したばかりだった。

22日の外国為替市場で、リラは対ドルで一時1ドル=5.8リラ程度と前日比5%あまり急落した。中銀の統計で個人や企業がリラを売ってドルを買う動きを加速させたことが明らかになり、リラの先安観が強まった。

主要輸出先であるドイツの景気先行きへの懸念も再燃したほか、トランプ米大統領がイスラエルが占領中のゴラン高原について同国の主権を認めると表明し、エルドアン氏が反発したこともリラ売り材料となった。

トルコでは18年夏に米国との政治対立からリラが急落する「トルコショック」が起きた。18年の対ドル下落率は約3割に達し、物価高と消費や投資の低迷で経済はマイナス成長に陥っている。


3回連続で政策金利の据え置きを決めたトルコ中央銀行=ロイター
トルコ中銀、政策金利を3会合連続で据え置き
2019/1/17 1:30

トルコ、政策金利据え置き エルドアン大統領に配慮か
2018/7/24 22:34
トルコ中銀、1.25%利上げ 大統領が引き締め容認か
2018/6/7 21:50
トルコ中銀、事実上の引き締め策導入 リラは上昇
2018/5/28 21:45
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42838010T20C19A3000000/

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/650.html

[政治・選挙・NHK258] 東京・沖ノ鳥島沖で中国無断調査 EEZ内、外務省申し入れ 国連海洋法条約違反 中国の狙いは「資源の宝庫・沖ノ鳥島」強奪
東京・沖ノ鳥島沖で中国無断調査 EEZ内、外務省申し入れ
2019年3月23日 18:48
 東京・沖ノ鳥島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)で23日午後0時半ごろ、中国の海洋調査船「嘉庚」がロープのようなものを海中に垂らして航行しているのを、第3管区海上保安本部の航空機が見つけた。外務省は「無断での海洋調査は受け入れられない」と外交ルートを通じて中国政府に申し入れた。

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 東京・沖ノ鳥島沖を航行する中国の海洋調査船「嘉庚」=23日午後(第3管区海上保安本部提供)

 海保の航空機は調査船に対し「同意を得ない調査は認められない」と無線で中止を要求したが、応じていない。

 日本政府は沖ノ鳥島を基点にEEZを設定しているが、中国側は「岩にすぎない」と反論し、EEZを認めていない。

 沖ノ鳥島沖では2016年と18年にも、中国の船が許可なく調査している。(共同通信)https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/400088

中国船、沖ノ鳥島沖EEZで海洋調査 海保が中止要求
2019.3.23 18:36政治政策
 
東京・沖ノ鳥島沖を航行する中国の海洋調査船「嘉庚」=23日午後(第3管区海上保安本部提供)
東京・沖ノ鳥島沖を航行する中国の海洋調査船「嘉庚」=23日午後(第3管区海上保安本部提供)
 23日午後0時30分ごろ、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)から東北東約165キロの排他的経済水域(EEZ)で、中国の海洋調査船「嘉庚」(カコウ)がロープのようなものを海中に垂らして航行しているのを海上保安庁の航空機が発見。目的を確認したところ、「海水温度の調査にあたっている」と応答した。海保は、海洋調査を実施していると判断し、無線で中止を求めたが、同船から応答はなかった。

 約1時間後、同船はロープを垂らした状態で沖ノ鳥島の東北東約160キロのEEZを西向けに航行を続け、海保は巡視船を向かわせている。

 国連海洋法条約では、他国のEEZでの無断の海洋調査は認められていない。
https://www.sankei.com/politics/news/190323/plt1903230018-n1.html


 


中国の狙いは「資源の宝庫・沖ノ鳥島」強奪だ
フライデー
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次期国家主席に就任すると見られる習近平副主席。超保守派とされ、領土問題では強硬姿勢が予想される〔PHOTO〕アフロ(以下同)
「今なお、監視船の領海侵入という中国からのプレッシャーは続いていますが、尖閣諸島だけを見ていてはダメです。長期的に見れば、中国の最終的な狙いは西太平洋にあります。つまり、南シナ海、東シナ海の次に中国は、日本最南端の島、沖ノ鳥島を獲りに来るでしょう」

 元防衛庁防衛研究所研究室長の平松茂雄氏は、こう警告する。

 中国で荒れ狂った「反日デモ」は、当局の規制強化で鎮静化した。が、尖閣諸島付近には連日、中国の海洋監視船が姿を現し、示威行動を繰り返している。9月24日には中国の監視船4隻が領海侵入し、翌25日には台湾の漁船約40隻が、自国の監視船を伴って押し寄せた。台湾船とは海上保安庁の巡視船が放水するなど小競り合いを起こした。24日、日本から河相周夫外務事務次官が訪中し、翌日次官級協議がもたれた。が、中国側は矛を収める気はなく、緊張が高まる一方だ。

 領土問題に詳しい東海大学海洋学部教授・山田吉彦氏が言う。

「中国の方針は、九州から沖縄、台湾、フィリピン、マレーシアへと続くライン第一列島線≠確保すること。要するに南シナ海と東シナ海を自国の海にすることです。ケ小平時代の'82年に、2010年までに第一列島線を掌握する計画を立てました。ところが、南シナ海はほぼメドがついたが、東シナ海はまったく手つかず。そこで戦略を組み直し、'10年から急遽、尖閣諸島に漁船が大挙して押し寄せるようになったのです」

日本最南端に位置する沖ノ鳥島。中国は、岩礁に過ぎず排他的経済水域の基点条件を満たさないと主張する
 今回の中国の暴挙のきっかけは、日本による尖閣の国有化だったが、それは口実に過ぎず、ケ小平時代からの長期的な戦略に基づいた計画的行動だというのだ。そして、その先にあるのが西太平洋。中国は何の目的で沖ノ鳥島を狙うのか。前出・平松氏が説明する。

「世界は海の時代に入りました。レアアース、天然ガスの一種であるメタンハイドレートなど新資源が海底に眠っていることはここ数年各国で確認されている。'70年代には南沙諸島近海の豊富な石油埋蔵量が指摘されていましたが、当時はまだ中国も経済力がなかった。しかし、世界第2位の経済大国となった今、周辺海域の覇権獲りに一気に乗り出した。まったく油断できない」

 沖ノ鳥島は、東京から約1700km南の西太平洋上に浮かぶ環礁。'31年に東京府小笠原支庁へ編入され、 '68 年の小笠原返還協定によって米国から返還された。満潮時はほとんど水没してしまうため、日本がコンクリートの護岸を造った。日本の排他的経済水域を確保するために死守しなければならない生命線だが、北東約2000kmに位置する南鳥島を含めた近海に眠る資源が図抜けている。

「東大の加藤泰浩教授らの研究チームの調査では、南鳥島海域だけでもレアアースの埋蔵量は約680万t。日本国内の需要で言えば、200年分以上と推定されています。また沖ノ鳥島近海にはそれ以上の埋蔵量が期待されているのです」(経済ジャーナリスト)

100年分の天然ガスが眠る海

 メタンハイドレートについては、日本近海だけでも国内の天然ガスの消費量にして約100年分が眠っていることが確認されている。圧倒的な経済力を誇る中国が触手を伸ばしてくるのも否定はできまい。前出・平松氏はこうも指摘する。

「中国共産党は2021年に創立100周年を迎えますが、それまでに台湾を自治州として中国に取り込む予定です。そうなれば、尖閣が獲れなくても太平洋に出られる。つまり、数年後には尖閣を越えて沖ノ鳥島に一気に向かう可能性は高い。日本政府はその点にも留意すべきです」

フィリピンが領有権を主張していた南沙諸島沖に中国が建設した監視基地。実効支配を進める際の常套手段
西沙諸島でも最大の永興島'88年に中国が空港を作り、実効支配。今年7月、三沙市を設置し領有を宣言
 中国にはベトナムやフィリピンなど周辺諸国の抗議を無視して、他国の領有地域を無理矢理自国の領土にした「前科」がある。'70年代から南シナ海にジワジワと実効支配を進め始めた中国は今年7月、ベトナムが領有を主張する西沙、フィリピン海域にある南沙、中沙の3諸島をひとまとめにして「三沙市」という新自治体を作り上げてしまったのだ。

 中国が他国の領土を「実効支配」する手口について、産経新聞中国総局特派員の矢板明夫氏が解説する。

「政府は漁民に対して補助金を出し、先兵隊≠ニして実効支配を狙うエリアに漁に行くように手配します。日本円にして30万〜40万円で、漁民はそれだけで採算がとれる。中国はそうして漁業権を主張し、漁場周辺のパトロールを始める。そうして実効支配しているという既成事実を作っていくわけです」

 '95年、中国は南沙諸島のミスチーフ環礁に監視櫓(小屋)を建設。実効支配の前線基地とし、周辺諸島を一つずつ潰していった。思えば、尖閣もまったく同じパターンだ。日本が実効支配しているにもかかわらず、漁船が姿を見せ始め監視船が勝手にパトロールを始める。そして自分の領土だと主張する。しかも、領海侵犯に民間人を使うことで、アメリカに軍事介入する口実を与えない。したたかな計算に裏打ちされた周到な作戦なのだ。

中国がゴリ押しで作った「三沙市」は、西沙、南沙、中沙の3諸島からなる自治体だ。行政施設は西沙にある
 中国では10月に第18回中国共産党大会が予定されており、胡錦濤主席から習近平副主席に権力委譲が行われると見られる。習氏は反日強硬派と目される。『習近平の正体』(筆名・茅沢勤)の著書があるジャーナリストの相馬勝氏が言う。

「胡錦濤国家主席は反日の言動をしなかった。日中関係に非常に気をつかっていた。温家宝首相も度々来日しています。しかし、習氏の支持基盤は軍です。軍で多数を占めるのが太子党と呼ばれる高級幹部の子弟たちのグループ。彼を支える軍は絶対に領土問題で妥協することはない。習氏が最高指導者になった場合、政治基盤の軍に配慮せざるを得ない。強硬路線一本槍になるものと見ています」

 日本の政治家が政局に明け暮れているスキに、膝元まで中国の実効支配≠ェ及びかねないのである。

「フライデー」2012年10月12日号より
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/33714


http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/771.html

[経世済民131] 独コメルツ銀、買い手は他にいないのか 合併に値するドイツ企業BMWとダイムラー 中国による豪石炭の通関遅延、影響顕在化
コラム2019年3月24日 / 09:23 / 12時間前更新
コラム:独コメルツ銀、買い手は他にいないのか
Rob Cox
4 分で読む

[ロンドン 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツ政府は、ドイツ銀行(DBKGn.DE)とコメルツ銀行(CBKG.DE)の合併協議について、国家を代表するような巨大銀行が誕生することを歓迎する意向を表明した。

従来のケースを踏まえれば、政府の承認を得ているこの案件は、既に話がまとまったも同然と言える。しかしこうした一種の国家資本主義的論理こそがまさに、欧州企業がより世界的な競争力をつけることを阻んでいる。

ショルツ財務相が国内の民間大手2行を一体化させたいと願うのは、バーテンダーが2人の酔っ払いにさらに酒を注ぎながら互いの身体を支えるようお願いする行為に等しい。この議論を細かく検討している規制当局者が心底から分かっている通り、問題を抱えた2つの銀行が合併したからといって、必ずしも健全な巨大銀行が出来るとは限らない。より良い選択肢は、コメルツ銀株を15%持つドイツ政府が、同行への買収提案を競わせる方向に持っていくことだろう。

コメルツ銀は十分な株主資本利益率(ROE)の達成に苦労しているとはいえ、欧州の同業者にとってさまざまな買収のメリットを提供している。これらの同業者の一部は資本基盤がより強固で、経営の効率性も高い。

具体的にはING(INGA.AS)やウニクレディト(CRDI.MI)、バンコ・サンタンデール(SAN.MC)、BNPパリバ(BNPP.PA)らが候補に上がる。もう一方のドイツ銀も、例えばUBS(UBSG.S)のようなもっと体力があるライバルの傘下に入った方が、うまくやっていけるかもしれない。UBSは既にバランスシートの大きい投資銀行事業の縮小を通じて、自らのビジネスモデルが直面する課題に取り組んでいる。

ドイツ政府は国内での統合を支持しているため、ドイツ銀とコメルツ銀が合併した方が、難しい意思決定に対して政治的庇護を受けられる可能性は確かにある。例えば統合に伴い3万人前後をレイオフするような事態に際してだ。そうだとしても、ドイツの銀行業界はもうこれ以上の国家資本主義を必要としていない。今回のような「上からの命令」によるディールは悪しき例になるし、コメルツ銀行の株主からもっと条件の良いディールを求める機会を奪いかねない。

コメルツ銀が新たな買い手候補にアピールできる点を考えてみたい。同行は1000の店舗を展開し、資産額は約5000億ユーロに上る。ドイツ産業界の屋台骨となっている中小企業とのしっかりした取引基盤も持ち、7万の法人顧客を抱えるほか、ドイツの貿易金融の3分の1を担っている。

さらには、個々の買い手候補ごとに特別なメリットもある。例えばオランダ最大手INGは主にオンライン事業を通じて既にドイツの銀行トップ10の一角を占め、預金量は1500億ユーロ近いため、コメルツ銀と統合すれば相当なコスト削減ができる。

その上、INGが本社をアムステルダムからフランクフルトに移せば、欧州連合(EU)で最も厳しい幹部報酬規制の適用を逃れられるだろう。オランダの法律では、金融機関幹部の賞与は固定給の20%までと定められている。ところがドイツを本社とすれば、理論的には経営陣に対して最大でEUの法令が認める固定給の200%の賞与を支給することが可能になる。同じ理屈は、INGのライバルであるABMアムロ(ABNd.AS)にも当てはまる。

ドイツ銀を別にすれば、コメルツ銀を手に入れることで最も得をするのはウニクレディトかもしれない。ウニクレディトは、ドイツ第5位の銀行で資産およそ3000億ユーロのヒポ・フェラインスを子会社としている。もしウニクレディトとコメルツ銀が統合によって、コメルツ銀の昨年の営業経費の15%前後に相当する10億ユーロを年間で節約できるなら、最大で70億ユーロの純現在価値を生み出せる。そうなるとウニクレディトは、コメルツ銀の株主に大幅なプレミアムを乗せた買収価格を提示する余地が生じる。

またウニクレディトが本社をドイツに移転した場合、今のところまだ定量的な把握はできないものの、別のメリットを享受してもおかしくない。資金調達コストの低下だ。イタリアの銀行は、国内企業全ての借り入れコストの基準となる同国国債が投資家から敬遠されていることで痛手を受けている。イタリアとドイツの10年国債利回りスプレッドは260ベーシスポイント(bp)前後もある。

ウニクレディトが本社を移してもすぐにドイツで借り入れ、イタリアで融資ができるわけではない。現段階で規制当局は同行が資本や流動性を国境をまたいで移動させるのを阻止しているからだ。それでもこうした規制はそのうち緩和される可能性がある。

サンタンデールもドイツで借り入れができれば得をするだろうが、スペインとドイツの10年国債利回りスプレッドは100bp前後とイタリアよりも小さい。

BNPパリバもディールを検討することがあり得る。同行の時価総額は560億ユーロとドイツ銀の3倍。また株価純資産倍率(PBR)は0.5倍にとどまるものの、コメルツ銀の2倍だ。このためPBRが0.25倍しかないドイツ銀よりも、コメルツ銀の買収妙味は大きくなる。BNPパリバが「ユーロ圏のリーディングバンクの1つ」と常々宣伝している点からすると、域内最大の経済規模を誇るドイツで強固な事業基盤を持たないというのは「看板倒れ」の感もぬぐえない。

もちろんリスクを伴わない合併など存在しない。ある場合には、企業文化の衝突が起きるかもしれないし、約束した経費節減の成果を国境をまたぐ形で生かすのは難しいだろう。何といってもドイツ銀の今の苦境自体、米投資銀行勢と張り合う努力を20年間続け、失敗したことに原因があるのだ。

それなのに政策担当者はしばしば、米国勢やアジア勢と競争できる全欧州規模の巨大企業の創設を口にしている。域内の弱い企業に有利な再編に固執する限り、そんな企業は決して出現しない。

https://jp.reuters.com/article/commerzbank-breakingviews-cox-idJPKCN1R30XG


 
コラム2019年3月24日 / 12:04 / 9時間前更新
コラム:合併に値するドイツ企業、実はBMWとダイムラーか
Liam Proud
3 分で読む

[ロンドン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ドイツ政府が再編を通じて国家を代表する巨大企業を生み出そうと取り組んでいるが、残念ながら対象を間違えている。

ショルツ財務相を含む当局者は、窮地に陥ったドイツ銀行(DBKGn.DE)を救うためにコメルツ銀行(CBKG.DE)と合併させたい考えだ。しかしそれが実現しても恐らくうまく機能せず、資本コストを稼ぎ出すのに引き続き苦労するだろう。むしろ、BMW(BMWG.DE)とダイムラー(DAIGn.DE)の統合を促す方が合理的だ。

BMWが20日に発表した2018年決算は、高級自動車メーカーが直面する各種の問題を浮き彫りにした。年間売上高は、世界的な自動車販売の鈍化や貿易摩擦が響いて前年比0.8%減の975億ユーロにとどまり、クルーガー最高経営責任者(CEO)は、今年の営業利益率見通しを従来の8─10%から6─8%に引き下げた。利益率見通しの下方修正は、電気自動車(EV)や自動運転車向けの多額の新技術投資費用が一因になっている。

ダイムラーも同じ問題に見舞われており、アナリストは今年の営業利益率が7%程度になるとみている。リフィニティブのデータによると、BMWとダイムラーの予想利益に基づく株価収益率(PER)はともに7倍弱と、2015年の12倍強から低下した。

そこで統合がプラスに働く可能性がある。プラットフォームの共有化でEVないし化石燃料車の製造コストは下がる。ルノー(RENA.PA)と日産自動車(7201.T)の連合は17年、合計コストベースの4%相当の相乗効果を報告している。その半分の効果だとしても、ダイムラーとBMWは年50億ドルの経費を節減し、350億ユーロの現在価値を生み出せる。これは法人税率30%、PERを10倍と想定した場合の合計時価総額の3分の1に上る。

両社は既にカーシェアリングや配車サービスなどで合弁を立ち上げており、地元メディアによるとEV事業での協力強化も話し合っているところだ。

統合への道のりで障害の1つになるのは、新会社が出来れば何人かの上級幹部がポストを失う可能性で、これがディールの現実味を乏しくしている。さらにBMWの方が時価総額が小さいので、同社のオーナー一族であるクバント家は恐らく、新会社の経営権を手放すことになるだろう。

それでも両社が合体すれば、フォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)や急成長するEVメーカーの米テスラ(TSLA.O)と競争する上でより適切な態勢が整う。規模の大きさから、買収の標的にもなりにくい。この点で昨年、中国の浙江吉利控股集団がダイムラーの株式約10%を取得した際に警戒感を高めたドイツの政策担当者を安心させるに違いない。

危険なのは、ドイツ銀行のケースと同様、BMWとダイムラーが救いようのない状態に陥るまで手をこまねいていることだ。

●背景となるニュース

・BMWは20日、今年の税引き利益が10%余り減少するとの見通しを示した。新技術投資費用ねん出の一環として、120億ユーロの経費節減と経営効率化の計画も発表した。

・BMWの18年売上高は9750億ユーロで、前年比0.8%減少した。営業利益は7.9%減の91億ユーロ。


 
コラム2019年3月24日 / 09:28 / 12時間前更新
コラム:中国による豪石炭の通関遅延、次第に影響顕在化か
Clyde Russell
2 分で読む

[ローンセストン(オーストラリア) 18日 ロイター] - 中国が、非公式な形ながらオーストラリア産石炭の通関手続きを遅らせている。1─2月の石炭輸入統計には変化は現れていないが、足元では影響が出始めているかもしれない。

オーストラリア産石炭が中国の税関を通過する時間が最低40日と以前に比べ2倍になったと伝えられた後、中国の石炭トレーダーはオーストラリアからの石炭購入量を減らしているもようだ。

中国の税関当局は今月、石炭輸入政策や外国貨物の検査態勢のいずれも変更していないと説明した。ただ外務省の報道官は、環境面と安全面のチェックを強化していると発言している。

中国がオーストラリア産石炭輸入を制限しているのではないかとの懸念は、豪ドルの値下がりと主要輸出港のニューカッスルにおける石炭価格の軟化をもたらした。

もっとも中国の1─2月のオーストラリア産石炭輸入統計を分析すると、前年同期と比べて数量の劇的な変化は見当たらない。

リフィニティブが集計した運搬船や港湾関連のデータに基づいた1−2月の中国のオーストラリア産石炭輸入量は1390万トンで、前年同期の1330万トンから4.5%増加した。

2月の輸入量は583万トンで、1月分の807万トンを大幅に下回ったとはいえ、これは春節(旧正月)の要因と考えられる。

より心配なのは、3月初めから17日までに中国に陸揚げされたオーストラリア産石炭が250万トンにとどまっている点だ。

このデータでは、3月全体で789万トンが陸揚げされる見通しも示されている。だが、後半2週間の積み下ろし作業や通関手続きが前半2週間よりも加速しなければ実現しない。

<価格動向>

現在、中国の港への陸揚げを待っているオーストラリア産石炭を積んだ船の数は17隻で、通常よりやや多い。

リフィニティブのデータでは、積み下ろし作業中のインドネシア産石炭運搬船は13隻となっている。

インドネシアは世界最大の一般炭輸出国で、中国向けの供給も最大。1─2月の中国向け出荷は前年比でほぼ横ばいだった。具体的には2120万トンで、前年同期の2190万トンをわずかに下回っている。

中国による1─2月のオーストラリア産とインドネシア産の石炭輸入がかなり底堅かったことが、価格動向にも反映されている。

ニューカッスル港の一般炭価格は、中国の通関手続き遅れを巡る懸念で一時打撃を受けたものの、その後ある程度持ち直した。

17日までの週の価格はトン当たり92.53ドルで、前週の95.18ドルから下がったものの、2月17日までの週に付けた19カ月ぶり安値の89.46ドルよりも高い。

インドネシア産石炭価格は15日までの週が39.76ドル。8カ月ぶり高値だった前週の40.32ドルを下回ったが、昨年11月30日までの週の28.85ドルから大幅に回復している。

結局、運搬船や港湾関連データと価格動向を総合すると、中国の石炭輸入は大きく鈍化していないことがうかがえる。

それでも3月に入ってこれまで実際に陸揚げされた量の少なさは、この流れが3月全体のデータで確認された場合、不安の種になってくる。
https://jp.reuters.com/article/bmw-results-breakingviews-idJPKCN1R30VF
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/654.html

[政治・選挙・NHK258] 安倍政権のロシア急接近は中国への牽制になるのか? 国際的な見方は「日本の対中ロシアカードは役に立たない」 
安倍政権のロシア急接近は中国への牽制になるのか?
国際的な見方は「日本の対中ロシアカードは役に立たない」
2019.3.25(月) 古森 義久
日ロ首脳が会談、北方領土交渉の打開に至らず
モスクワで行われた日ロ首脳会談の後、共同記者会見を行い握手するロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と安倍晋三首相(左、2019年1月22日撮影)。(c)Alexey DRUZHININ / SPUTNIK / AFP〔AFPBB News〕

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 安倍晋三首相がロシアへの急接近を図ろうとしている。だが、その接近の先になにがあるのか。北方領土は帰ってくるのか。

 不透明な展望の中で、安倍首相周辺からは「ロシアへの接近は中国の動きを抑えるためだ」という対中牽制論も聞こえてくる。日本は中国に対抗するための「ロシアカード」を手に入れようとしている、というわけだ。

 だが、日本のロシアへの接近が本当に中国の動向や政策に影響を及ぼせるのか、そこには大きな疑問がつきまとう。

 米国でも、その効果を疑う声があがっている。ワシントンの大手シンクタンクがネット上で「日本はロシアへの接近によって中国の動きを抑制できるのか」という設問を公開し、各方面から意見が寄せられた。

「対中政策の武器としてロシアカードが使える」という日本側の主張を、ロシアと米国の専門家たちはどう受け止めたのか。結果は、「ノー」が「イエス」の3倍だった。「ロシアへ接近することで中国を操れるようになる」という考えは、残念ながら空疎な願望にすぎないという判定が下されたようである。

正反対に分かれた日ロの専門家の意見
 安倍晋三首相のロシアへの急接近には、米国でも強い関心が向けられている。

 ロシアのクリミア占拠などに対してトランプ政権は厳しい非難を浴びせてきた。そんな中での日本の「親ロ的」な動向は、米国の懸念をも生んでいる。米側からすれば「同盟国の立場を考慮しないのか」という当然の反応といってよい。

 そんな状況の中でワシントンの大手研究機関、戦略国際問題研究所(CSIS)が3月中旬、「日本は中国に対してロシアカードを使えるか」というタイトルのネット上の論壇を開設し意見を求めた。

 この論壇では、まず日本の防衛研究所のロシア専門家、兵頭慎治氏が、安倍政権の主張として以下の骨子の意見を載せていた。

「日本のロシアへの接近や日ロ平和条約の締結は、ロシアの最近の中国との連携を抑え、中ロが協力して反日に走るのを防ぐことができる」

「日本のロシアへの接近は、ロシアの中国への依存を抑え、中国のアジアでの膨張も抑制し、中国の日本に対する圧力や威嚇にロシアが同調しないようにすることができる」

 一方、同論壇には、反対意見としてロシアの外交戦略専門家ドミートリー・トレーニン氏による以下の趣旨の意見も紹介されていた。

「日本がロシアの対中政策を変えさせることなど絶対にできない。ロシアにとって対日、対中の関係は、まったく次元と比重が異なるからだ」

「現在、中国は軍事面や経済面でロシアが依存すべき戦略パートナーだ。だが、日本は米国のジュニア的存在であり、中国とロシアの連携を離反させる戦略パワーはない」

 このように日本の対中「ロシアカード」について、日本とロシアの専門家では見解が正反対に分かれることとなった。

第三者である米国の専門家たちは?
 そこで第三者的な立場にある米国の専門家たちに意見を尋ねてみた。

 まず、中国の軍事戦略に詳しい米中経済安保調査委員会の委員、ラリー・ウォーツエル氏は次の骨子を語った。

「私の考えはトレーニン氏の意見に近い。日本はロシアとの関係が薄く、中国を動かせる材料が少ない。ロシアとの石油ライン構想でも中国の同意が必要だろう」

「日本はロシアへの接近ではどうしても米国の立場を考慮することが必要となるだろう。米国がロシアをクリミア問題で糾弾し続ける限り、日本のロシアへの接近には限度があると思う」

 また、中国の政治動向や海洋戦略を専門に研究する戦略予算評価センター(CSBA)の上級研究員、トシ・ヨシハラ氏は次の趣旨を語った。

「ロシアは対中関係を、対日関係とは切り離して計算している。たとえば中国の弾道ミサイルの増強は日本にとってもロシアにとっても脅威だが、ロシアは独自に対応する」

「日本は中国の対日姿勢に正面から対処すべきだ。ロシアへの対応に中国ファクターを含めると、対中、対ロの両政策ともに的を外す危険が生まれる」

 こう語るヨシハラ氏も、どちらかといえばロシア側のトレーニン氏の主張に賛同すると付け加えた。

 安倍政権の周辺から流される「中国を牽制するためにロシアに接近する」という主張は、国際的には説得力に欠けるとみられている。日本側がいくら「ロシアを利用して中国の反日志向を抑える」「日本がロシアに接近すれば、ロシアの中国接近を防げる」などと主張してみても、ロシア側の専門家にとっても米国の専門家にとっても、空疎な願望として響くと言わざるを得ないということのようだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55874
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/802.html

[政治・選挙・NHK258] 英国のEU離脱がもたらす軍事的危機、尖閣略奪も ブレグジット:メイ首相の忌まわしき賭け
英国のEU離脱がもたらす軍事的危機、尖閣略奪も

経済的問題にばかり焦点を当てて喜ぶのはロシアと中国
2019.3.25(月) 中谷 寛士
「合意なき離脱」か「離脱延期」か、終わりが見えないブレグジットの混乱
英ロンドンで、議会の前に掲げられたEUの旗と英国旗の前を通り過ぎる男性(2019年3月4日撮影)。(c)Tolga Akmen / AFP〔AFPBB News〕

 いよいよ英国の欧州連合(EU)からの離脱が目前となってきた。EUからの離脱は、英国の国際的な地位を低下させると懸念されている。

 そうしたなか、一部の意見ではあるが、英国の国際的地位低下を防ぐ手段の一つとして、米国出身のメーガン妃の夫であるヘンリー王子を次の米国大使として任命すべきだとの意見さえ出てきた。

 英国のEU離脱に関する話題の中心は、離脱後の経済問題、貿易、景気の動向、国境管理などである。

 例えば、今年に入ってから英国国内で話題となっているのは、コードレス掃除機で有名な英国のダイソンが本社をシンガポールに移転するといった発表や、ホンダが英国南部スウィンドンにある工場を2021年に閉鎖すると発表したことなどだ。

 両社とも、それぞれの決定に関しては、英国のEU離脱とは関係がないとしているが、専門家は英国のEU離脱の影響が出始めていると見る。

 英国のEU離脱は、ヨーロッパ大陸への玄関口であった英国が扉を閉めることになり、投資先としての魅力が落ちるという見方は間違いではない。

 このように英国のEU離脱に関しては経済問題に関する報道が多く、一般国民も実際に今後の生活に直接影響を与える経済に関連した問題を注視している。

 景気動向、経済活動や国境管理などの直近の問題がより重要なため、注目されることはないが長期的に見れば、英国のEU離脱とは欧州の安全保障を巡る問題でもある。

 英国のEU離脱と欧州の安全保障は全く関連がないように見えるかもしれないが、欧州の政治情勢の不安定化はこれを敵視するロシアにとっては好都合である。

 また、歴史的にも英国が欧州の安全保障に貢献してきたことを忘れてはならない。

 例えば、欧州の安全保障の専門家であるベアトリス・ホイザーに言わせれば、英国のEU離脱とは、本質的には経済上の問題ではなく安全保障の問題なのである。本稿では、この忘れさられた安全保障という観点から英国のEU離脱問題を考えてみたい。

政治と安全保障
 そもそも政治情勢と安全保障が、どう関連しているかをまず考える必要があるであろう。ここで言う政治情勢とは、国と国との関係性だと考えてほしい。

 身近な例を挙げれば、昨年6月にシンガポールで行われた初の米朝首脳会談を思い出してほしい。会談の数カ月前までは、ドナルド・トランプ大統領と金正恩総書記は、お互いを激しく挑発し、緊張関係が高まっていた。

 さらに遡れば2017年には、北朝鮮はミサイル発射実験や核実験を行っていたが、会談以降、実験は一切行われていない。

 つまり、この会談以降、米朝の政治関係はある程度落ち着いたということだ(もちろん何も具体的な進展はないが)。

 もし、米朝のような対立関係にある国の政治関係が悪くなれば、最悪の場合、衝突が起きる危険性がある。

 また、日本ではあまり知られていないが、1983年11月に行われた北大西洋条約機構(NATO)の定例演習(Able Archer)を旧ソ連側が、NATOが自らに対する先制攻撃を準備していると勘違いし、警戒態勢を敷き、自らも先制攻撃の準備を高めたという事件もあった。

 この演習は、新冷戦と呼ばれ、米ソ間に緊張関係が高まっている時期に行われた。

 演習前には、当時のロナルド・レーガン大統領がソ連を「悪の帝国」と呼んだこと、昨今、話題となっているINF条約締結のきっかけともなった、米国のNATO諸国へのパーシングII(中距離)ミサイル配備が目前と迫っている状況、そして「スターウォーズ計画」と呼ばれた米国の戦略防衛構想の発表といった背景があった。

 このような政治情勢の悪化があったため、演習自体は定例演習であったにもかかわらず、ソ連は演習をNATO側の先制攻撃だと勘違いし、NATO側が知らないところで危機が高まっていたことは、注目に値するであろう。

 敵対している者同士の関係が悪くなれば、武力衝突の可能性が高まるというのは自明の理かもしれないが、同盟国同士の政治関係が悪くなることが、果たして安全保障にどう影響を与えるのであろうか。

 ここで、先述のNATOが実質的には欧州の安全保障に貢献しており、EUは地域統合体であり、特に経済統合がEUの主要な役割というように理解するのは自然であろう。

 つまり、英国がNATOに加盟している限り、英国がEUから抜けようが、あまり影響がないのではないかという疑問がわくかもしれない。

 確かに、この2つの組織は、本質的にも性格的にも2つの異なる組織である。実際に、英国のEU離脱が欧州の安全保障に与える影響はないと考える専門家も少なくない。

 NATOは北大西洋条約機構という名前の通り、大西洋を越え、米国とカナダの北米国も含む軍事同盟である。

 これに対し、EUは欧州連合、つまり欧州独自の地域統合体である。重要なことは、EUが地域統合という特徴を持っているからこそ、英国のEU離脱は長期的な安全保障上の問題なのだ。

 現在、トランプ大統領のNATO軽視、最近では、昨年数回にわたって米国のNATOからの撤退を示唆していたことが報道されている。

 こうした中で、ロシアの軍事的脅威は日々高まり、欧州は一つに結束する必要がある。このような悪化する政治情勢の中で、欧州統合の象徴を否定した英国を欧州諸国は頼ることができるだろうか。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は英国のEU離脱を受け、欧州は今こそ団結が必要な時だと述べた。

 また、NATOの事務総長であるイェンス・ストルテンベルグ氏は、2016年6月のEU離脱の是非を問う国民投票を前に、英国のEU離脱は、EUだけでなくNATOにとっても欧州の分裂を招く恐れがあるので、望ましくないといった旨の発言をした。

 英国のEU離脱は欧州に大きな亀裂を作るきっかけとなると言われている。それはNATOに加盟する欧州諸国内での亀裂にも自ずと繋がるという見方があるのも事実だ。

 実際、NATO加盟29カ国中、22カ国はEU加盟国でもある。英国のEU離脱は「英国と欧州諸国との離婚」と称されることがあるが、たとえ円満離婚であろうと離婚は離婚なのである。

 冷戦中、英国は欧州諸国の「団結」がソ連との戦争を抑止するためには必要だという考えを持っていた。

 皮肉なことに、抑止に必要だと考えていた欧州の結束をEU離脱で自ら壊すこととなる。英国のEU離脱によって、NATOの予算の約80%がEU加盟国外から来ることになる。

 これは、どういう意味があるのか。

 具体的に英国のEU離脱が欧州の安全保障に与える影響を理解するために、英国が欧州の安全保障にどのように歴史的に貢献してきたかを簡単に見ていきたい。

英国と欧州の安全保障
 英国は、地理的に見れば、日本と同じく島国であり、ヨーロッパ大陸とは海で隔てられている。

 しかし、2度の未曾有の世界大戦が英国に教えた教訓は、ヨーロッパ大陸で起きた戦争は、英国の安全保障にも直接影響を与えるということだ。

 特に第2次世界大戦中、航空機が発達しロンドンはドイツ軍の激しい空襲を受けた。このことは、英国とヨーロッパ大陸を隔てる海は、安全保障上の障壁とはならないことを証明した。

 つまり、欧州大陸の安定が英国の安定と繁栄にも直接影響するということを英国は学んだのだ。

 第2次大戦後、欧州諸国は戦争によって疲弊し、英国もかつて誇った大英帝国の栄光にも陰りが見え、ドイツが破れたことで生じたヨーロッパ大陸内の「力の空白」を単体で埋める力をすでに失っていた。

 この戦争で生じた「力の空白」を最大限に利用したのが、ソ連であった。

 ソ連は、ドイツが第2次大戦中攻め入った東ヨーロッパの国々(ポーランド、ルーマニア、チェコなど)を自分の支配下に吸収した。

 加えて英国だけでなく、西ヨーロッパ諸国が2度の世界大戦から学んだことは、欧州の安全保障には、米国の力は欠かすことができないということだ。

 特に、米国は両大戦において、戦争が始まった後に参戦したことから、戦時同盟ではなく、米国を平時から欧州の安全保障に関与させる必要性があった。

 NATOとは、本質的には欧州の安全保障のために、米国を戦時ではなく平時から軍事同盟に含めるという安全保障上、非常に重要な考えを体現した組織である。

 この軍事同盟創設に深く貢献したのが、英国であった。

 英国が中心となり、1948年に相互防衛を定めたブリュッセル条約が英国、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの間で締結された。

 この条約は2つの点において重要であった。第1に、この条約は、翌年1949年に締結された北大西洋条約の先駆けとなった。

 米国を含む軍事同盟を作るにあたり、まずは当然ながら西ヨーロッパ諸国が西ヨーロッパの安全保障に自ら責任を持つことが重要であった。

 米国自身もこれらの国々の力だけでは、西ヨーロッパの安全を維持するのには不十分であることをよく理解していた。

 また、ドイツに対する「宥和政策」が第2次世界大戦のきっかけとなったことから、米国は経済、外交、軍事力などを使ってソ連共産主義を「封じ込める」戦略を採用するに至った。

 これらのことから、ヨーロッパ大陸における共産主義拡張に危機感を抱いていた米国は、英国とフランスの誘いを受け、1949年北大西洋条約を締結することに合意した。

 第2に、この条約は西ドイツを含んだ西欧同盟創設へと繋がり、EU発足後は西欧同盟が定めた相互防衛条項はリスボン条約42条7項へと受け継がれた。詳しくは、のちほど見ていくが、この条項は英国のEU諸国への「核の傘」の提供でもある。

 冷戦中、ソ連の通常戦力に圧倒されたNATO加盟国は、戦争の疲弊からまだ抜け出しておらず、軍事予算の大幅な増強を望まず、米国の核戦力がヨーロッパの安全保障上の頼みの綱であった。

 また、1962年英国は米国との「特別な関係(両国の密接な政治的関係性を表す)」を使い、米国が持つ潜水艦発射弾道ミサイル(ポラリス)を英国に供給(売却)することを米国に合意させる。

 当初、当時のジョン・F・ケネディ政権は、英国に自らの弾道ミサイルを売却することに難色を示した。

 それでも米国政府は英国との「特別な関係」を維持する重要性、そして、売却するにあたり、英国のポラリスミサイルは、特に平時においては、NATOの安全保障に関与することを条件に、ミサイルの供給に合意した。

 つまり、1962年より英国の核戦力は、西ヨーロッパ諸国に「核の傘」を提供しており、英国は一種の「大西洋の架け橋」となったのだ。

 ただ、上記で「特に平時」と記したように、英国の「至高の国益」が侵害されうる状況下においては、ミサイル発射の権利は、英国政府のみに与えられている。

 つまり、究極的には英国は、他の核保有国と同じく、核使用に関しては独立した意思決定権を持っているのだが、英国は自らの核戦力をNATOの抑止のために提供しているのも事実だ。

 もっと端的に言えば、NATOの「核の傘」は二重になっているのだ。

 冷戦中、特にこの点は重要であった。米国はヨーロッパのために本当に核を使う覚悟があるのかという不安が常に欧州内には存在した。

 そこで、もし米国が仮に核使用を躊躇した場合には、英国が持つ核戦力を使用するという決意を英国が示すことで、NATO内の不安の解消を図った。

 また、戦略的に見た場合、NATO用の英国の核戦力の存在は「第2の神経中枢」であり、ソ連の核使用を複雑にする役割があった。

 つまり、ソ連が、米国がヨーロッパのために核使用することはないと確信したとしても、まだ英国の核戦力という存在を見過ごすことができない状況を作ったのだ。

 また、「核の傘」に加えて、英国はNATO諸国の核政策に関する不安を聞き入れ、米国と調整するという役割も担っていた。

 そして、英国が米国と協力して創設したのがNATO内の核計画グループであった。

 これにより、NATO内にNATOの核政策を核保有国と非核保有国が直接協議する場所を設けたのであった。このように英国は「大西洋の架け橋」となったことで、欧州内の調整を図る重要な役割を担ってきた。

 英国は、この米国との「特別な関係」に加え、G7、国連安保理の理事国、EUの主要加盟国でもある。このような要の立場を持つ国がEUから抜けると、EU全体に影響を及ぼすというのは当然と言えよう。

英国のEU離脱のヨーロッパの安全保障への影響
 このように、英国は歴史的に欧州の安全保障において重要な役割を担ってきた。それでは、英国のEUからの離脱には、具体的にどのような影響があるのだろうか。

 最も身近な例を挙げれば、EUが2008年からソマリア沖で行ってきた海賊対処活動から英国は撤退することになる。実際に、この海賊対処の司令本部は英国からスペインへと移転する。

 また、昨年3月に英国南部ソルズベリーでロシアの元スパイがノビチョクというロシアが開発した神経剤によって、ロシアのスパイによって毒殺されそうになった事件があったのは、記憶に新しい。

 この事件に対し、今年1月、EUは特定のロシア高官を対象にした制裁(EU内の渡航禁止及び資産の凍結)を科した。当然、今後このようなロシアの英国に対する主権侵害行為にEUは共同で対処することができなくなる。

 今後、ロシアによるEU諸国と英国の結束を試すような事件が再び起きるかもしれない。

 この事件に対する英国とEUの対応次第では、欧州におけるロシアの軍事的な挑発行動がより活発になる恐れがある。

 2014年のロシアによるクリミア併合以降、欧州においてロシアの脅威が再び高まっている。

 このような悪化する欧州の安全保障環境を反映し、2016年2月、BBC(英国放送協会)はドキュメンタリー風ドラマ「World War Three: Inside the War Room(第3次世界大戦を想像する)」を放映した。

 このドラマにおいては、2014年のウクライナ危機と同じようなことが、ロシアと直接国境を接するバルト三国でも起きることが想定された。

 そして、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の安全保障を巡って、NATOとロシアが核戦争へと近づいていくといった非常にショッキングな内容であった。

 実際に、欧州の安全保障の専門家は、ロシア軍に対し小規模な軍事力しか持たないバルト三国の安全を危惧している。

 重要なことは、ウクライナと違いバルト三国はNATO加盟国ということだ。つまり、バルト三国への武力攻撃は、集団防衛を基礎とするNATOに対する武力攻撃でもあるのだ。

 また同じく、2016年5月には、NATOの副最高司令官を務めた英国陸軍元大将のリチャード・シレフ氏が書いた「War with Russia(ロシアとの戦争)」という小説が出版され、話題となった。

 本書は題名の通り、ロシアとNATOが欧州で戦争するという内容だ。本書はあくまで小説ではあるが、作者の経歴からNATO内の現在の雰囲気、ロシアの脅威といった点が現実的に描写されている。

 作者の一番重要なメッセージは欧州の安全保障は危機に陥っているということだ。

 シレフ氏はロシアとの戦争は避けられると考えているが、そのためには、NATO加盟国は軍事予算を増加するなど、ヨーロッパの安全保障により積極的になる必要があり、何よりNATO内の団結が必要だと強調する。

 シレフ氏は英国のEUからの離脱に反対している。同氏が自身の小説を通して強調したことは、冷戦下と違い集団防衛という意識がNATO内で欠如しているということだ。

 具体的には、同じNATO加盟国でもロシアに対する脅威認識が異なる。

 バルト三国やポーランドなど冷戦時代、ソ連の支配下にあり、ロシアと国境を接する国は、ロシアを非常に脅威として見ているが、南ヨーロッパの国々、イタリア、ギリシャ、スペインなどは、ロシアよりも自国の課題(経済問題など)がより重要である。

 つまり、ロシアをそこまで脅威として見ていないのだ。

 また、これらの南ヨーロッパの国々だけでなくバルト三国のような冷戦後NATOに加盟した小国をなぜ、NATO全体で守らなければいけないのか、という意見があるのも事実だ。

 そして、NATOの安全保障上の支柱である米国の大統領がNATOを「時代遅れ」と呼んだり、NATOから撤退したいと個人的に発言したりなど、米国の同盟国としての信頼性が疑問視されている。

 このような背景の中での、英国のEUからの離脱である。

 タイミングが悪すぎたと言うべきか。本来であれば、英国はEUに残ることで、欧州の結束を訴えなければならなかった。

 そして、米国との「特別な関係」を生かし「大西洋の架け橋」としての役割が期待されたのだが、EU離脱により英国の欧州における地位の低下は避けられない。

 すでに2017年の時点でドイツのメルケル首相は、米国と英国にもはや頼ることはできないと示唆している。

 注目すべきは、ドイツではトランプ政権の米国第1主義やNATO軽視から、ごく一部ではあるが、ドイツの核武装も必要だという意見が出てきたことだ。

 もちろん、ドイツの核武装などドイツ国民の大半が望んでいないことであるが、このような意見が出てきたこと自体が、ヨーロッパの不安を反映していると見るべきであろう。

 英国のEU離脱はEU内の政治的な亀裂を作り、他のEU加盟国のEU懐疑派を勢いづける可能性がある。

 現に、2017年のフランス大統領選では、反EUを掲げたルペン候補が決選投票まで残り、EU離脱のドミノ現象が起きるのではないかとEU内では不安視された。EU内で生じた政治的な亀裂はNATO内の亀裂へと繋がる可能性もある。

 というのも、先述した通りNATO加盟国の大半はEU加盟国でもあるからだ。このような不安定な政治情勢では、EUもNATOも得をしない。

 あるEU加盟国の高官に言わせれば、欧州内の政治的な亀裂こそ弱点となるのだ。この状況で得をするのは、NATOを敵視するロシアである。

 ロシアとしては、欧州内の政治的分裂を加速させたい。実際に、ロシアが反EUの活動家たちに金銭的な援助を行っていることが疑われ、EU加盟国の総選挙では、EU懐疑派を裏で支持しているとも言われている。

 もちろん、このような裏工作はソ連時代にも存在した。冷戦下においては、欧州内(ドイツなど)の反核運動をソ連が裏で奨励していたことは、よく知られている。

 ロシアとしては、ライバルが勝手に自己分裂してくれた方が望ましいというのは当然であろう。

 もっとも、ロシアはNATOが本当に消滅するとまで考えているかは疑問であるが、ロシアが現実的に望むことは、NATOを軍事同盟ではなく、単なるディベートクラブにすることである。

 つまり、議論は行っても実質的な軍事行動を取らせないようにさせることだ。より端的に言えば、NATOを中立化、または少なくとも弱体化させたいのだ。

 逆にロシアが最も望まないのは、ロシアという巨大な熊にキツネやタヌキなどの小動物でも一枚岩となって向かってくることだ。

 また、この小動物の集団の後ろには米国という大怪獣がいる。この構図が欧州における抑止の論理である。

 この抑止の論理からすれば、皆が右を向く必要があるのに、英国だけ真っ先に左を向いたことになる。誰かが左を向けば、他にも左を向く者たちが出てきてもおかしくはない。

 英国が、今後も欧州の安全保障に貢献していくと宣言しても、欧州諸国はこの宣言を懐疑的に見るのは当然である。

 また、英国は、EUから離脱することによって、EUの改革条約であるリスボン条約42条7項が定める相互防衛義務からも抜けることになる。

 この条約の原型は、相互防衛を定めたブリュッセル条約である。この42条7項の特徴は、EU加盟国に対する武力攻撃が生じた場合、加盟国は「すべての手段」を使用し、加盟国を支援、そして援助する「義務」があることだ。

 ただ、EUには、軍事的に中立国であるアイルランドなどの国も存在するため、必ずしも全加盟国による軍事支援などが行われるわけではない。

 また、どのような行動を取るかは加盟国次第であり、軍事行動を絶対に必要としているわけではない。

 この点においては、NATOの集団防衛を定めた第5条(加盟国に対する武力攻撃は、全加盟国への攻撃と見なす)と大差はない。第5条も必ずしも加盟国に軍事行動を取るように定めているわけではない。

 ただ、リスボン条約においては、「すべての手段」と明確に定められているため、この条約は、EU諸国に対する英国の「核の傘」の提供とも理解されている。

 むろん先述の通り、英国はNATOを通して「核の傘」を提供してきたので、NATO加盟国に対する「核の傘」がなくなることはないが、このような条約から抜けることで傘への信頼性だけでなく、英国の同盟国としての信頼性を低下させることとなる。

 実に、この条項は相互防衛を宣言することによってEU内の結束を強める目的を持っているのだ。

 フランスのマクロン大統領が昨年11月発言したように、英国のEUからの離脱は欧州の政治的な分裂を明確にしたのである。

 2度の世界大戦を経て、ヨーロッパ大陸の問題は、英国の問題でもあると理解した英国は戦後欧州の安全保障に深く貢献した。

 冷戦中、米国との「特別な関係」を持つ英国は欧州の安定に寄与したが、皮肉なことに21世紀の現在においては、逆に英国自体が不安定要因となっている。

 英国が欧州から距離を置いても、欧州で起きた問題から離れられるわけではない。英国がEUから離脱しても、英国は西ヨーロッパの端に位置する島国であることに変わりはない。

 本稿では、あくまで欧州の安全保障を中心に論じたが、最後に日本への影響を簡単に見てみたい。

 ロシアが欧州諸国と戦争したいなどと考えているわけではないが、仮に欧州でロシアと戦争が始まった場合、遠い日本に影響を与えることなどないと思うかもしれない。

 だが、可能性は少ないながらも、2つのことが言える。

 まず、欧州で起きた戦争が、アジアに飛び火する可能性は非常に低いがゼロではない。つまり、対岸の火事と傍観を決め込んではいられない。

 ただ、この点に関しては、飛び火しない可能性も大いにあるので、不用意に危機を煽るつもりはない。

 次に、火事場泥棒的な活動があり得る。戦争が飛び火すると述べたが、飛び火する理由としては、欧州で生じた混乱に乗じて、領土紛争を抱える国々が、領土をわが物にしようと軍事行動を開始するといったものだ。

 1962年10月に起きたインドと中国の国境紛争は、キューバ危機で世界の注目がキューバに集まっている間に中国が計算的に始めた戦争との分析もある。

 また、1950年10月の中国のチベット侵攻は、朝鮮戦争に世界の注目が集まっている時に起きた。

 このような火事場泥棒的なことが尖閣諸島、南シナ海、台湾で起きるかもしれない。

 火事場泥棒的に開始された軍事侵略がエスカレートして戦争にまで発展しない可能性はゼロではないのだ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55820


 

ブレグジット:メイ首相の忌まわしき賭け
合意なき離脱となれば許されない罪――マーティン・ウルフ
2019.3.25(月) Financial Times
退任決まってルンルン気分? キャメロン英首相が鼻歌を歌う
英ロンドン・ダウニング街10番地の首相官邸前で、テリーザ・メイ内相の首相就任決定を発表するデビッド・キャメロン首相(当時、2016年7月11日撮影)。(c)AFP/CHRIS J RATCLIFFE 〔AFPBB News〕

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年3月22日付)

 デビッド・キャメロン氏は英国史上最悪の首相だった。

 しかし、テリーザ・メイ首相はこの地位を争うライバルになる恐れがある。

 キャメロン氏は、その必要もないのに欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を実施するという大失態を犯した。メイ氏は、そのEUから合意なしで離脱するリスクを冒している。

 これは筆者がかなり前から恐れていた展開にほかならない。もし英国が合意なき離脱をすることになったら、その責任はメイ氏にある。

 メイ氏の戦術は、古代ローマのとあるエピソードを思い出させる。

 老婦人に変装したクマエのシビュラ(巫女)が、古代ローマ最後の王タルクイニウス・スペルブス(傲慢王)のところにやって来て、9巻ある預言書を買わないかと持ちかけた。法外な値段だったため、王は断った。

 すると巫女はそのうちの3巻をたちまち焼き払い、残った6巻を同じ値段で買わないかと言った。王は再び断った。

 巫女はすぐさまそのうちの3巻を焼き払い、同じ提案をした。懲りた王は残った3巻を、最初に示された高値で買った。

 メイ氏もまた、英国議会に対し、3度目となる同じ問いかけをするつもりでいる。法外な価格も要求している。誰もが抵抗している離脱協定案を受け入れるよう求めているのだ。

 あるときには離脱期限の長期延期をちらつかせ、自分の離脱協定案を支持しなければ敵を利することになる、下手をすればブレグジット(英国のEU離脱)そのものが頓挫しかねないと離脱派に脅しをかける。

 そうかと思えば、今のようにもっと短い延期案に転じ、自分の提案を支持しなければ自動的に合意なき離脱になる恐れがある、とソフト・ブレグジット派(あるいはEU残留派)を揺さぶる。

 いずれにしても、メイ氏は同じゴールに固執している。何が何でも、とにかく自分の案を通そうとしているのだ。

 首相はなぜ、自分の離脱協定案を何としてでも議会で通したいと思っているのだろうか。

 それは、これが相容れない3つの目的――保守党の団結維持、EUとの合意、そして約束したブレグジットの履行――を達成する唯一の方法だと信じているからだろう。

 これらの目的自体は不合理なものではない。

 確かに、国民投票の実施は大失敗だったかもしれない。だが、その結果の実行を拒めば、その政治的なコストはかなり大きなものになる。

 また、保守党が割れてしまったら、英国が冷戦時代にこちら側にいたのは間違いだったと思っている人物の率いる労働党に、政権が渡ってしまうかもしれない。

 さらに、離脱派はEUと「きれいさっぱり別れる」ことを夢見ているかもしれない。

 だが、合意なき離脱は「きれい」どころか、その逆だ。政治と経済に長期に影響する大変な災禍をもたらすことになる。

 首相がEUとまとめた離脱協定案には、それが妥協案である強みもある。

 深い断絶が生じた英国内では、この協定ではほとんど誰の望みもかなえられない。この惨めな状況においては、これが望みうる最良のものなのかもしれない。

 しかし、この戦略にあそこまで強くこだわることは、リスクも極めて大きい。

 メイ氏は離脱の長期延期というアイデアに一時的に関心を示した。離脱派から自分の協定案への支持を得るための脅しが主目的であったにせよ、それによってはるかに魅力的な選択肢への道が開かれた。

 メイ氏よりも大胆で柔軟性もある指導者だったら、長期延期というアイデアを、ちょっと反対されただけで引っ込めるようなことはせず、もっと固執しただろう。

 自分の党を割るコストを払って1846年に保護主義的な穀物法を廃止した当時の首相、ロバート・ピールを見習ったことだろう。

 自分の離脱協定案か合意なき離脱かというおぞましい選択に代わるものを検討するために、他党の議員にも接触しただろう。

 メイ氏は、離脱の長期延期を、2度目の国民投票という選択肢を追求することに利用するべきだ。

 英国民が、2016年の国民投票時に流布していた幻想の多くをすでに振り払ったことは間違いない。

 EUから離脱しつつEU加盟の利益のほとんどを維持することは容易であるとか、世界のEU以外の国々と素晴らしい条約を結ぶことも簡単にできるとか、すぐ近くにある巨大な市場への優先的なアクセスは失われるが他国との素晴らしい条約締結で簡単に埋め合わせができる、といった幻想だ。

 これに対してEUは、英国が方針転換するチャンスを歓迎するべきだ。自分たちの大義の明らかな勝利を意味することになるからだ。

 再度の国民投票には政治的リスクもある。しかし、それはメイ首相の離脱協定案も同じだ。

 合意なきEU離脱については言うまでもない。後者に踏み切れば英国と経済的なパートナーとの関係は悪化するだろうし、世界における英国の影響力が損なわれ、英国経済にダメージが及ぶ。

 そのような方針転換の可能性を、首相はすべて排除してしまったように思われる。片や議会も、政府の行動なしにはそのような抜本的な変更に同意することができない。そして政府は行動しないように思われる。

 メイ氏にとって国民投票の結果は不可侵の指示であり、断絶を深めた保守党の存続は神聖な義務だからだ。

 こうして英国は、メイ氏の離脱協定案か合意なき離脱かという、2つに1つのギャンブルに臨もうとしているように見える。

 真の指導者ならこんなことはしない。

 メイ氏は、あらゆるコストを払ってでもブレグジットを実行するという観点から始める必要はなかったし、党の団結を維持するという観点から始める必要もなかった。

 この国の利益は何であるかというところから始めなければいけなかった。

 首相はそれができなかっただけでなく、ついには、この忌まわしいギャンブルに臨もうとまでしている。

 賭けの結果が離脱なき合意となれば、メイ氏は決して許されない。

By Martin Wolf

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http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/803.html

[国際25] イタリアと中国が「一帯一路」で覚書−G7で初、米や欧州から懸念も 中国副首相ら、関税引下げや債券発行加速を表明−経済支援
イタリアと中国が「一帯一路」で覚書−G7で初、米や欧州から懸念も
John Follain、Sonia Sirletti
2019年3月24日 15:35 JST
イタリアのENIやインテーザ・サンパオロなどの企業が参加
新興企業の振興策やイタリアの果物輸出拡大などでも合意
中国の習近平国家主席は23日、訪問先のイタリアでコンテ首相と会談し、広域経済圏構想「一帯一路」関連のプロジェクトに関する覚書に署名した。主要7カ国(G7)メンバーが同構想に加わるのはイタリアが初めてで、米国や欧州連合(EU)から中国の経済的優位に対する懸念が出ている。

  イタリアのディマイオ副首相によると、同国と中国の企業は10の項目に合意し、その規模は最大200憶ユーロ(約2兆4850億円)に上る。ローマのビラ・マダマで行われた署名式では、コンテ首相と習主席が両国国旗と欧州旗の前に座った。

  テレビで生中継された両首脳の会談でコンテ首相は、イタリアと中国は「より有効な関係を構築し、既に良好な関係をさらに向上させる」必要があると述べた。

Italy Sign A Memorandum On China's Belt and Road Initiative
3月23日、ローマでの習主席とコンテ伊首相。撮影:Alessia Pierdomenico /ブルームバーグ
  企業間の合意にはイタリアのエネルギー企業のENIや天然ガス輸送のスナム、銀行のインテーザ・サンパオロなどが名を連ねた。トリエステとジェノバの港湾と中国交通建設の合意も含まれている。この他にも両国の当局者らは脱税対策や新興企業の振興策、イタリアから中国への果物輸出拡大など19の協定に合意した。 

  中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を第5世代(5G)移動通信網の構築から外すよう同盟国に働き掛けている米国は、イタリアのポピュリスト政権が中国とインフラプロジェクトで協力する姿勢に懸念を示している。また、フランスのマクロン大統領は21日のEU首脳会議の場で、「私は大統領に就任した時から欧州の主権の擁護を訴えている」と語っていた。

原題:China’s Xi Recruits Italy Populists for Global Spending Plan (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/POUX2T6S972801?srnd=cojp-v2

 
中国副首相ら、関税引き下げや債券発行加速を表明−経済成長支援で
Bloomberg News
2019年3月25日 7:58 JST
北京で今週開かれる米中貿易協議を前に副首相と財政相が発言
米中貿易戦争の「休戦」を楽観させる新たなヒントか
中国の副首相らは関税を引き下げ、2019年に債券発行を加速する方針を表明した。米国との貿易摩擦問題に取り組みながら、景気減速に対応する狙いだ。

  韓正副首相は24日に北京で開かれた中国発展高層フォーラムで、中国が経済の自由化を進める中で、今後も輸入関税の引き下げを継続し外国企業にとって最上の環境を構築していくと表明した。関税引き下げの詳細には言及しなかった。

CHINA-DEVELOPMENT-FORUM
韓正副首相(3月24日、北京)写真家:Thomas Peter / AFP経由でGetty Images
  韓副首相は、知的財産権保護の改善や技術移転強要の禁止などの政策を再確認した。劉昆財政相も同フォーラムで、政府が債券発行を加速させ、その調達資金を内需促進に利用する方針を示した。

  中国副首相らのこうした表明は、今週の米中貿易協議の前触れとなるもので、両国の「休戦」を楽観させる新たなヒントとなりそうだ。中国が財政政策による景気支援の強化をあらためて表明したのは、世界的な景気の弱さの中で自国経済の減速に対処するため同国政府が国内市場を一段と重視していることをうかがわせる。劉財政相は、歳入は鈍化するものの「財政政策が実体経済の支援により重要な役割を果たしていく」と述べ、税金や手数料を今年、2兆人民元(約32兆7000億円)以上減らす計画をあらためて示した。

原題:China Officials Tap Lower Tariffs, Debt Sales to Aid Growth (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/POW4XW6S972801?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/800.html

[国際25] ドイツ銀の投資銀行再編が焦点、コメルツ銀との合併交渉  中国人民銀総裁:金融市場の開放余地大きい−リスク管理も必要 
ドイツ銀の投資銀行再編が焦点、コメルツ銀との合併交渉−WSJ紙
Lee Spears
2019年3月25日 9:23 JST
雰囲気は建設的だがより厄介な問題を取り上げ始めたばかりとWSJ
コメルツ銀は投資銀再編に向けたドイツ銀の意欲を探っていると同紙
ドイツ銀行とコメルツ銀行との合併交渉で、ドイツ銀の投資銀行の将来の在り方が焦点になっていると24日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、オンライン版)が報じた。事情に詳しい複数の関係者からの情報を引用した。

WSJ紙が引用した関係者によれば、合併協議の雰囲気は建設的だが、より厄介な問題を取り上げ始めたばかりという
コメルツ銀は、投資銀再編に向けたドイツ銀側の意欲を探っていると同紙
両行は初期段階の話し合いを1カ月程度で終えたいと望んでいるが、合併交渉完了には数カ月を要する可能性が高い
原題:Deutsche Bank, Commerzbank Debate Investment Banking Arm: WSJ(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWAN06K50XS01


 
中国人民銀総裁:金融市場の開放余地大きい−リスク管理も必要
Bloomberg News
2019年3月25日 10:00 JST
国内外の金融機関を同じく扱うべきだ−株式保有や事業範囲巡り
投資家のリスク管理手段の充実が今年の重要課題−易総裁
中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は24日、本土金融市場の対外開放度は高くないと指摘し、アクセス拡大に向けた余地が大きいと述べた。

  易総裁は北京で開かれた「中国発展ハイレベルフォーラム」で、外国金融機関を株式保有比率や事業範囲、ライセンス面で国内同業と同じく扱うべきだと表明した。

  中国の当局者は同フォーラムで、経済を一段と開放し、国内企業と公平な競争環境を確保する方針をあらためて言明。景気減速や高水準の債務、長期的な金融安定を巡る懸念が生じる中、中国政府は外国の専門知識や資本の活用も目指している。

  易総裁は「金融開放に合わせたリスク防止メカニズムの改善が必要だ。金融セクターの開放は金融リスクの原因ではないが、開放に伴いリスク管理は複雑になる」と説明。中国市場に資金を投じる上で外国企業や投資家が求めてきたヘッジを後押しする考えも示した。

リスク管理
  易氏は「今年の重要課題は資本市場がいかにより的確に価格を決定できるかを研究するとともに、十分な種類のヘッジ手段を提供して、あらゆる分野の投資家がより効果的にリスクを管理できるようにすることだ」と指摘。利用可能な金融手段の種類を増やすことで資産配分を最適化できるとも話した。

  また、易総裁は対米貿易協議の議題の一つになっている人民元相場について、「人民銀は既に日常的な介入を控えており、市場参加者はますます柔軟な為替レートに適応している」と語り、為替改革を進める方針を繰り返した。

原題:China Has a Lot of Financial Opening Up to Do, Says Central Bank(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POW9DP6JTSE801
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/801.html

[国際25] フィリピンの首都で深刻な水不足、インフラ整備の遅れや需要増加で 
フィリピンの首都で深刻な水不足、インフラ整備の遅れや需要増加で
Cecilia Yap、Andreo Calonzo
2019年3月25日 8:35 JST
マニラ首都圏でも断水、市民生活や企業活動に影響
5月末までにサービスは完全に復旧すると水道会社は説明
フィリピンの首都マニラがここ約10年で最も深刻な水不足に見舞われている。

  インフラ整備の遅れや需要増加に加え、ダムの貯水量が減少したことなどが原因。複合企業アヤラ傘下の公益会社でマニラの東半分の地域を管轄するマニラ・ウォーターは今回の水不足の責任を認めている。ここ数日で状況は緩和されたが、官民挙げて即時かつ長期的な解決策をなお模索している。

水不足の原因
  マニラ・ウォーターの管轄地域で断水は3月上旬に数十の村から始まり、先週には都市部全域に拡大。水が供給されない状態が何日も続いた地区もあり、不足分は1日当たり1億4000万リットルに上った。

  今月のように、ラメサダムの水位が69メートル以下になると、マニラ・ウォーターの処理施設には水が流れなくなる。ラグナ湖から毎日1億リットルの水を供給するために建設された同社のカルドナ処理施設は昨年12月に操業開始の予定だったが、3月15日時点で稼働しているのは一部にすぎない。

  マニラ首都圏上下水道供給公社と認可を受けた企業はインフラを拡張するとともに、新たな水源の確保もしておくべきだった。

市民や企業への影響
  先週の断水時には、バケツなどを持った数千人の市民が給水ポンプや消火栓の前に列を成し、消防車を追いかける人もいた。小売店ではプラスチック容器が売り切れ、一部のレストランは飲み物の提供を中止。公立病院は重病患者以外受け入れを取りやめたほか、ショッピングモールのトイレは一部閉鎖となり、マカティにあるザ・ペニンシュラマニラ・ホテルは噴水を停止した。

当局による対策
  ドュテルテ大統領は15日、アンガットダムから150日分に相当する約6000億リットルの水を直ちに放出し供給を増やすよう指示したが、インフラの不備で1日に40億リットル以上を引き込むことはできなかった。水道当局は古井戸の再開も推進している。

過去の水不足
  エルニーニョがフィリピンを襲った2010年にも、マニラ市民は1日当たり数時間の断水に見舞われた。当時、政府は定期的に人工降雨作業を実施したほか、給水車を出動させて各家庭に水を配布した。

水不足解消はいつ?
  マニラ・ウォーターによれば、影響を受けた顧客のうち90%への供給が18日までに復旧。フェルディナンド・デラクルス社長は同日の議会調査で、5月末までに水道サービスは完全に復旧すると説明した。同社長は今回の事態の責任を取って辞任する用意があると表明している。

原題:Worst Water Crisis in Decade Hits Philippine Capital. Here’s Why(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/PONJHT6JIJUO01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/802.html

[国際25] 英国で離脱反対デモ、「100万人超」が国民投票の再実施を要求 英首相、離脱案巡り閣僚・強硬派と協議 辞任圧力の報道も

ワールド2019年3月25日 / 09:05 / 1時間前更新
英国で離脱反対デモ、「100万人超」が国民投票の再実施を要求
Reuters Staff
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[ロンドン 23日 ロイター] - ロンドン中心部で23日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に抗議する大規模なデモが行われ、参加者は国民投票の再実施を英国政府に訴えた。

ブレグジット(EU離脱)を決めた2016年の国民投票から3年が経過したが、離脱がいつ、どのように実現するのか、あるいは本当に実現するのかは不透明なままで、政治の混迷が深まるなか、メイ首相が辞任に追い込まれる可能性もある。

デモの参加者は「ブレグジット撤回が最善の決定」、「国民投票を要求する」などと書かれたプラカードを掲げ、繁華街ピカデリー・サーカスなどロンドンの名所を行進し、首相府の前を通過して最終目的地である議会前に到着した。

主催者によると、参加者は100万人を超え、昨年10月に同様のデモが行われた際の参加者数である約70万人を上回った。ロイターは参加人数を独自に確認できなかった。警察もデモ参加人数の推定は発表していない。

実際に100万人が参加したとすれば、ロンドンで行われたデモとしては、2003年2月に200万人近くが集まって行われたイラク戦争に抗議するデモに次いで過去2番目の規模となる。

英国南西部ブリストルからデモに参加したガレス・レイさんはロイターに対し、「しっかりとした手続きが進められ、政府が妥当な判断をしていたら、私の感じ方も違っただろう。今は完全なカオスだ」と述べた。「どうなろうともこの国は分断されることになるが、うそで分断されるのは避けたい」と強調した。

メイ首相が21日、ブレグジットを巡り国民に「私はあなた達の味方です」と訴え、議員らに自身の離脱案への支持を求めてから3日間で、ブレグジット撤回を求める署名運動で439万人の署名が集まった。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKCN1R6009


 
ワールド2019年3月25日 / 09:10 / 1時間前更新
英首相、離脱案巡り閣僚・強硬派と協議 辞任圧力の報道も
Reuters Staff
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[ロンドン 24日 ロイター] - 英国のメイ首相は24日、欧州連合(EU)離脱案を巡り閣僚や強硬派議員と緊急会合を行った。これより先、英メディアは閣僚らがメイ氏の退陣を模索していると報じた。

首相府によると、メイ氏はジョンソン前外相やリースモグ議員、ベイカー議員など強硬派のほか、リディントン内閣府担当相とゴーブ環境相を首相の公式別荘「チェッカーズ」に呼んだ。

リディントン、ゴーブ両氏はメイ氏が退いた場合の暫定首相候補に名前が挙がっているとの報道を否定した。

首相府の報道官は「会合では(離脱協定案を巡る)意味のある採決を今週行うための十分な支持が下院内にあるかどうかなど、さまざまな問題を議論した」と明らかにした。

バズフィードの記者、アレックス・ウィッカム氏はツイッター上で、強硬派議員がメイ氏に対し、離脱協定案の承認と引き換えに自身の退任時期を示すよう求めたと伝えた。

サンデー・タイムズ紙は、閣僚らがメイ首相に辞任を迫ることを計画していると報じた。報道によると、11人の閣僚がメイ氏について、判断が「狂った」有害な存在になったとして、辞任すべきとの考えで一致したという。[nL3N21B0MO]

ただ、暫定首相候補に名前が挙がっているリディントン、ゴーブ両氏は報道を否定。リディントン氏は「メイ氏は素晴らしい仕事をしている」と述べ、ゴーブ氏も「船長を交代すべき時ではない」とコメントした。

ハモンド財務相もスカイニュースで、首相が交代しても事態の打開につながるわけではないと指摘した。ただ、メイ氏の離脱案に議会の支持を得るのは不可能かもしれないとの見方を示した。その上で、首相の離脱案を支持しないのであれば、議会は何を支持するのか決める必要があると述べた。

財務相は2回目の国民投票も排除しなかった。「議会の過半数が2回目の国民投票を支持するかは分からない」としながらも、「筋の通った提案であり、他の案と同様に検討に値する」と述べた。

英議会ではEU離脱を巡る次の一歩について25日に審議する。議会はこれまでに離脱案の修正を提案しており、その中には主導権を政府から議会に移す案も含まれている。修正に法的拘束力はないが、メイ氏に方針転換の圧力をかけることになる。

バークレイEU離脱担当相はBBCで、議会が離脱協定案を承認した場合、選挙公約に反する可能性があり、そうなれば総選挙につながる可能性が高まると述べた。

https://jp.reuters.com/article/anti-brexit-march-idJPKCN1R50ZD
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/803.html

[政治・選挙・NHK258] 景気回復実感できない方たくさんいること承知している=安倍首相 日経600円超の下落、長期金利も低下 世界経済減速懸念 
ビジネス2019年3月25日 / 09:25 / 1時間前更新
景気回復実感できない方たくさんいること承知している=安倍首相
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - 安倍晋三首相は25日午前の参院予算委員会で、「景気回復を実感できない方がたくさんいることも承知している」と述べ、景気回復が幅広く実感されるよう努力する姿勢を強調した。上月良祐委員(自民)への答弁。

上月氏は地方経済の現状認識を質問。首相は日銀短観を取り上げ2000年代の景気回復期と比較して全国で景況感の回復が確認されていると指摘しつつ、景気ウオッチャー調査などでタクシー利用客が減少しているとの声が出ているとも述べた。
https://jp.reuters.com/article/abe-economy-idJPKCN1R600V

 
ビジネス2019年3月25日 / 09:55 / 25分前更新
日経600円超の下落、長期金利も低下 世界経済減速懸念=東京市場
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 25日 ロイター] - 週明けの東京市場は、前週末NY市場で株安・ドル安・米長期金利低下が急速に進んだことを受け、日経平均.N225は一時、600円を超す下落となった。ドル/円JPY=EBSは110円付近で推移。長期金利JP10YTN=JBTCは2016年9月以来となるマイナス0.090%に低下した。世界経済の減速懸念が東京市場でも広がっている。

日経平均は前営業日比359円93銭安の2万1267円41銭で寄り付き、その後、下げ幅は600円を超えた。

世界景気の減速懸念が再燃し、ドル/円が円高に振れるなど外部環境が悪化したことで、幅広く売りが先行した。

景気敏感セクターの機械、鉄鋼、電気機器などに売りが目立つ。米金利低下による運用環境の悪化を懸念し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)、三井住友フィナンシャルグループ(8316.T)などの銀行株も安い。

ドル/円は、前週末に1カ月半ぶり安値を更新する109.74円まで一時、下落した。その後の散発的な買いで110円ちょうど付近までいったん戻した。

その後、110円を割り込んだ水準での攻防となっている。

市場では「年度末の売買需要が下支えになっているが、それがなくなる来週以降は、下げ圧力が強まるかもしれない」(邦銀)との声が出ている。

22日のNY市場で、長短金利が12年ぶりに逆転。欧州でも10年独国債利回りJP10YTN=JBTCがマイナスになるなど、世界的な長期金利低下の流れを受け、10年最長期国債利回りは午前9時過ぎにマイナス0.090%に低下した。これは16年9月30日以来の水準。

田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/tse-fall-idJPKCN1R6024

 
最新経済ニュース2019年3月25日 / 10:15 / 5分前更新
再送-為替こうみる:VIX先物は株急落を示唆、ドル108円へ=新生銀 池田氏
Reuters Staff
1 分で読む

(検索コードを修正しました)

[東京 25日 ロイター] -

<新生銀行 市場営業部統轄次長 池田隆雄氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)が予想以上のハト派姿勢を打ち出し、市場はまだ方向感を決めかねていたところだった。欧州で製造業購買担当者景気指数(PMI)が悪化してリセッションへの懸念が台頭、米国では利下げ観測まで浮上してきた。

米国で長短金利が逆転する「逆イールド」が発生して話題を集めているが、一方で投資家の不安心理を示すボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数)の先物が、それに先立って大きく売られていたことは注目に値する。

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、19日時点の売り持ちは12.8万枚。昨年2月などに発生した株価急落、いわゆるVIXショックの際も10万枚を超える売りが積み上がっていた。

低ボラティリティーに賭ける参加者が多数いたということは同時に、虚をつかれる形で株価急落への警戒感も台頭しやすい状況だったといえる。そこに逆イールドとリセッション懸念が急速に強まったことで、まとまった株売りが生じたのだろう。

米金利の低下基調と株安懸念を背景に、当面のドル/円の下値めどは108円付近とみている。新年度入り後は国内機関投資家が円高局面でドル買いに動くかもしれないが、それでも108円台を割り込むことになれば、円高警戒感の強い日本の連休明け頃には、105円台まで下げ幅が拡大する可能性も念頭に置くべきだ。

 

東京外為市場ニュース2019年3月25日 / 09:55 / 26分前更新
〔マーケットアイ〕金利:長期金利は2年半ぶり-0.090%に低下、国債先物は伸び悩み
Reuters Staff
2 分で読む

[東京 25日 ロイター] -
<09:51> 長期金利は2年半ぶり-0.090%に低下、国債先物は伸び悩み

10年最長期国債利回り(長期金利)は前営業日比1.5bp低いマイナス0.09
0%で出合いを付けた。2016年9月30日以来、約2年半ぶりの低水準となる。一方
、国債先物中心限月6月限は足元では153円18銭(前営業日比14銭高)近辺で推移
。買い一巡後は伸び悩んだ。市場では「期末で市場参加者は限られている。上を買う投資
家が存在しない状況」(国内証券)との声が出ていた。
TRADEWEB
OFFER BID 前日比 時間
2年 -0.192 -0.182 -0.01 9:39
5年 -0.202 -0.193 -0.009 9:49
10年 -0.095 -0.086 -0.02 9:49
20年 0.321 0.331 -0.025 9:47
30年 0.487 0.497 -0.031 9:37
40年 0.55 0.563 -0.028 9:42


<09:02> 国債先物は続伸で寄り付く、世界景気の減速懸念で買い先行

国債先物中心限月6月限は前営業日比15銭高の153円19銭と続伸で寄り付いた
。中心限月ベースでは2016年7月29日以来、約2年8カ月ぶりの高水準で推移して
いる。前週末の欧米市場では米独の3月製造業PMIが弱い内容となったほか、景気後退
入りの兆候とみなされている米長短金利の逆転で投資家のリスク回避ムードも強まった。
外部要因を受けた買いが先行した。

市場では「外部環境に反応して金利に低下圧力が掛かる形となっており、日銀も静観
を余儀なくされそうだ。ただ米10年債利回りの低下による逆イールドは、水準としては
行き過ぎの感も否めない」(証券)との声が聞かれた。

TRADEWEB
OFFER BID 前 時
日 間

2 -0.19 -0.1 -0. 8:5
年 4 83 011 7
5 -0.20 -0.1 -0. 9:0
年 4 94 01 0
10 -0.09 -0.0 -0. 9:0
年 3 83 017 0
20 0.321 0.33 -0. 9:0
年 2 024 0
30 0.488 0.49 -0. 9:0
年 8 03 0
40 0.554 0.56 -0. 9:0
年 6 025 0



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TIBORレート
日本証券業協会 短期国債レート・入札前取引含む
短期国債引け値・入札前取引含む 
短期金利のインデックス 
https://jp.reuters.com/article/idJPL3N21B1CA?il=0


 

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/805.html

[国際25] モラー特別検察官、トランプ陣営とロシアとの共謀の証拠なし 華為vs米政府、中国の思惑は負けるが勝ち
モラー特別検察官、トランプ陣営とロシアとの共謀の証拠なし
Chris Strohm、Shannon Pettypiece
2019年3月25日 4:57 JST 更新日時 2019年3月25日 9:43 JST
司法長官:司法妨害の立証には証拠不十分−特別検察官は結論出さず
共謀も司法妨害もなかったと大統領、民主党は報告書全文の開示要求
トランプ大統領
トランプ大統領 Photographer: Al Drago/Bloomberg
2016年の米大統領選に対するロシア介入疑惑を捜査したモラー特別検察官は、トランプ陣営とロシアとの共謀の証拠はないとする一方、トランプ大統領による司法妨害の可能性に関しては潔白であるかどうか結論を出さなかった。特別検察官が先に司法省に提出した報告書の内容として、バー司法長官が24日に明らかにした。バー長官自身は、捜査で得られた証拠では司法妨害を立証できないとの判断を示した。

  バー長官は議会への4ページの書簡でモラー氏の報告書について、司法妨害の「問題の双方の側面について証拠を見つけ」ており、「特別検察官が法律上の難題とした部分は未解決となっている」と説明。同報告書でモラー氏が「この報告書はトランプ大統領が罪を犯したと結論付けていないが、大統領の潔白を証明するものでもない」と判断したことを明らかにした。

relates to モラー特別検察官、トランプ陣営とロシアとの共謀の証拠なし
左からモラー特別検察官、バー司法長官、トランプ大統領
  しかしバー長官は、自分とローゼンスタイン司法副長官は「特別検察官の捜査で得られた証拠は、大統領が司法妨害を行ったと立証するには不十分との結論に達した」と同書簡に記した。

  トランプ大統領は同報告書によって共謀と司法妨害という自らの地位を脅かしかねない2つの疑いが晴れたと受け止めた。ただ議会民主党はこれらの問題に関して有罪か無罪かを決定する権限を主張している。

「潔白が証明された」
  トランプ大統領はバー長官の書簡公表の約1時間後、「共謀はなく、司法妨害もなかった、完全かつ全面的な潔白が証明された」とツイートした。またフロリダ州パームビーチで記者団に、「違法テイクダウン(タックル)は失敗した」と語った。

  バー長官は16年のロシアとの共謀の疑いについて、「ロシアに関係した個人がトランプ陣営に複数回、支援を申し出たことはあったものの、特別検察官はトランプ陣営ないし陣営に関係する者がこれらの企てでロシア政府と共謀ないし連携したとの判断に至ることはなかった」と説明した。

  司法省当局者によると、ホワイトハウスはモラー氏の報告書の検討ないし議論に関与せず、事前にバー長官の書簡を閲覧することもなかった。

  ホワイトハウスのサンダース報道官は発表資料で、「特別検察官は共謀も司法妨害も見つけなかった」とし、司法妨害を巡る特別検察官の判断部分は事実と異なる形で論評。その上で「バー長官とローゼンスタイン副長官はさらに、司法妨害がなかったとの判断を下した。司法省の結論は大統領の完全かつ全面的な潔白さの証明だ」と論じた。

  司法省当局者によれば、モラー氏は司法妨害の判断を含むバー長官の書簡について見解を聞かれることはなかった。

開示範囲
  1年10カ月にわたったロシア疑惑の捜査は終結したが、議会では今後数カ月にわたり、モラー氏の報告書をどこまで開示すべきかを巡り論戦が繰り広げられる見込みであり、さらに法廷で争われる可能性もある。バー長官は議会に宛てた22日の書簡で、今後、モラー、ローゼンスタイン両氏と相談の上、モラー氏の報告書のどの部分を追加で公表するかを決めるつもりだとしている。

  民主党議員らは同党が進めている調査に必要だとして、報告書全文および根拠となる証拠を開示するよう求めている。ペロシ下院議長とシューマー民主党上院院内総務は24日の共同声明で、「米国民には知る権利がある」と主張した。

  ナドラー下院司法委員長(民主)はツイッター投稿で、「モラー氏が大統領の潔白を結論付けることのなかった報告書を受けて司法省が下した最終判断と、非常に懸念される食い違いを踏まえて、われわれはバー長官を証人として喚問するだろう」と述べた。

  一方、ニューヨークの連邦地検は大統領一族の中核企業や大統領選挙戦、就任式実行委員会に対する捜査を進めており、トランプ大統領は引き続きリスクに直面している。モラー氏は一部の問題をニューヨーク・マンハッタンやバージニア州アレクサンドリア、ワシントンの各連邦地検や、司法省の国家安全保障部門に委ねていた。これにより大統領個人や事業に関する捜査は継続する可能性がある。

原題:Trump Claims Victory as Mueller Finds No Collusion With Russia(抜粋)

(今後の見通しなどを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/POVZGF6JIJUO01



華為vs米政府、中国の思惑は負けるが勝ち
コラムニスト:Noah Feldman
2019年3月22日 13:22 JST
敗訴でも米裁判所は政府の言いなりだと中国側は強調できる
華為の訴訟が狙いを定めているのは19年度国防権限法889条
relates to 【コラム】華為vs米政府、中国の思惑は負けるが勝ち
Photographer: Wang Zhao/AFP/Getty Images
米政府を提訴した中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が目指しているのは、法廷での勝利ではない。訴訟の趣意書で同社が示した主張はこれまでの判例に基づくものではないし、米国の憲法に違反しているとの言い分にも法的根拠はほとんどみられない。

  テキサス州の連邦地裁で今月起こされた訴訟は極めて異例だ。華為側は、中国政府の関係会社だとして同社を名指しし同社の通信機器とそれを使う企業を米政府の契約から締め出した米議会を標的に、道徳上の問題があると痛烈な批判を展開しているようにみえる。

  華為はこの提訴で何を得ようとしているのだろうか。根底にある目的は恐らく、米国が法治国家だという認識への攻撃だろう。

  華為の敗訴はほぼ確実だ。だが裁判に負ければ、米国の裁判所は政府の言いなりだと同社や中国政府は主張できる。そして華為は、第5世代(5G)移動通信インフラの構築で世界のリーダーとしての中国の立場を固める能力を持つ企業と、米国の国益は相容れないと論じることもできるだろう。

  華為が訴訟で照準を定めているのは2019年度国防権限法(NDAA)の889条だ。この法律は華為または別の中国通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)と米政府は通信機器・サービスで契約できないなどとかなり単刀直入に規定している。両社を対象とする理由はどこにも書かれていないが、米議会は通常、法案可決の際に理由を説明する必要はない。

  米議会が華為とZTEを禁止対象として特別に選び出し、憲法違反の「私権略奪法」を可決したというのが華為側の論点だ。だが、故アール・ウォーレン元米連邦最高裁長官が記したように私権略奪法を巡り憲法が禁じているのは「立法府による裁判」と「特定の人物もしくは団体に対する立法府による処罰」であり、889条は華為を罰してはいない。米政府が同社と契約したり、同社製品を使うことはないという規定だ。従って、華為側の論拠は極めて弱い。

  中国共産党系の新聞、環球時報の英語版グローバル・タイムズは「高い地位にある人々からの提案」抜きに華為が米政府を相手取る訴訟を起こすことはなかっただろうと報じ、中国政府が提訴を承認したか、あるいは訴訟を始めるよう助言すらしたことをほのめかしている。

  さらに同紙は論説で、華為は「政治的動機に基づく米政府による弾圧に直面」しているとし、「欧米の観点から見ても訴訟を起こす十分な理由」があると主張。この訴訟は「米国の司法制度の独立性を試すことになる」と結論付けている。

  こうしたことが示唆する華為側の意向は、米国が憲法を軽視しているように見せることでプロパガンダ(宣伝工作)上の勝利を収めたいとするものだ。同社創業者の娘である孟晩舟最高財務責任者(CFO)が米国の要請に基づきカナダで逮捕されたことにも触れ、米国は中国への対応となると法の支配を無視すると主張するのに訴訟が利用できる。

  もちろん、少なくとも889条を巡って、そのような主張は事実ではないが、華為や中国は気にしないだろう。
 
  (ノア・フェルドマン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米ハーバード大学の法学教授です。デービッド・スーター元米連邦最高裁判事の下で働いた経歴もあります。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Huawei’s Lawsuit Against U.S. Won’t Win in Court: Noah Feldman(抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/POW6CQ6KLVR401
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/804.html

[戦争b22] 米駆逐艦と沿岸警備艇、台湾海峡を通過 中国との緊張高まる 中国、ハイテク規制緩和求める米側への譲歩拒絶=FT
ワールド2019年3月25日 / 10:15 / 23分前更新
米駆逐艦と沿岸警備艇、台湾海峡を通過 中国との緊張高まる恐れ
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 24日 ロイター] - 米軍は24日、海軍の駆逐艦と沿岸警備艇が台湾海峡を通過したと明らかにした。中国との緊張が一段と高まる恐れがある。

一方、中国本土との摩擦が激化している台湾は、米国による支援と受け止める可能性が高い。

米軍が発表した声明によると、通過したのは海軍の駆逐艦カーティス・ウィルバーと沿岸警備隊バーソルフ級カッター。

声明は、船舶の台湾海峡の通過は、自由で開かれたインド・太平洋地域のための米国の取り組みを表しているとし、国際法が認める場所はどこであれ米国は引き続き飛行や航行、活動を行うと説明した。
https://jp.reuters.com/article/usa-taiwan-military-idJPKCN1R602O


 
ワールド2019年3月25日 / 08:55 / 2時間前更新
中国、ハイテク規制緩和求める米側への譲歩拒絶=FT
Reuters Staff
1 分で読む

[24日 ロイター] - 今週予定される米中閣僚級貿易協議を前に、中国はハイテク企業への規制を緩めてほしいという米国側の要望に関して譲歩を拒んでいる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が23日、協議に詳しい3人の関係者の話として伝えた。

ホワイトハウスは同日、ライトハイザー通商代表とムニューシン財務長官が28日から始まる閣僚級貿易協議に出席するために北京に向かうと発表した。

米国は中国に(1)外国のクラウドコンピューティング企業に対する差別的な処遇の停止(2)データの海外移転制限の縮小(3)国内データ保存規制の緩和──を求めている。しかしFTによると、中国はこれらの点で今のところ「意味のある譲歩」に応じていない。

FTが引用した関係者の話では、中国が当初示した提案を米政府が不十分な内容と判断してより強い形の約束をするよう促すと、この提案を取り下げたという。
https://jp.reuters.com/article/china-tech-idJPKCN1R50Z6
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/575.html

[経世済民131] 人生100年時代に追いつかない生活者の心構え 
人生100年時代に追いつかない生活者の心構え
博報堂生活総研の「トレンド定点」(第22回)
2019.3.25(月) 三矢 正浩
先の長い100年人生、見通しは立っているのか。
(三矢 正浩:博報堂生活総合研究所・上席研究員)
 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化をみつめ、さまざまな研究活動を行っています。
 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。
もはや「老後」はなくなった?
 最近さまざまなニュースや国の政策、企業の情報発信などを通じて「人生100年時代」という言葉を耳にする機会が多くなりました。この言葉が世に出たきっかけは、2016年に発売された書籍『LIFE SHIFT』(日本語版2016年10月発行、東洋経済新報社)。上述の「人生100年時代」をキーワードとして、これからの人生設計や生活のあり方について問うたもので、今でも根強く売れ続けている大ヒット書籍です。
 博報堂生活総研の「生活定点」では生活者のさまざまな意識や行動、価値観の変化について継続的に調査しています(首都圏・阪神圏の20〜69歳男女 約3000名に聴取、調査概要は記事末尾に記載)。そのなかで、「人生100年時代」というキーワードが広まったことが影響したのでは? と考えられるスコアの変化があります。
●「老後のことを考えた生活をしている」
 1992年33.3% → 2018年21.6%(過去最低)

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 聴取をはじめた1992年から緩やかな低下傾向にはあるのですが、2016年から2018年にかけて、やや急なかたちでスコアを落としています。
 スコアは全年代で低下しているのですが、変化を牽引しているのはやはり50〜60代。50代では2016年から2018年にかけて35.9→27.8%、60代では53.9→44.2%と、それぞれ10ポイント弱減少しました。上述『LIFE SHIFT』はちょうど2016年調査と2018年調査の間に日本で発刊されており、上記変化に関係している可能性があります。
 1990年代であれば、まだ「現役」と「リタイア後」の境界がはっきりとしたライフプランを描きやすかったのかもしれません。しかし、日本社会が「高齢化社会(高齢化率7%超)」→「高齢社会(同14%超)」→「超高齢社会(同21%超)」へと急速に変容するのにあわせて、世の中のムードは変わってきました。
 政府のスローガンをみても、2010年代に入ってから「一億総活躍」や「70歳定年制」の議論など、流れはどんどん「生涯現役」の方向に進んできたことが分かります。そこにきて『LIFE SHIFT』が打ち出した「人生100年時代」のインパクト。「もはや、人生に“老後”はないのだな・・・」という認識がいやが応でも強まったのではないでしょうか。生活者に希望するリタイア年齢について聞いてみても、
●「希望リタイア年齢」
 60〜64歳でリタイア:2010年30.1% → 2018年24.5%(過去最低)
 65〜69歳でリタイア:2010年28.7% → 2018年29.5%(ほぼ横ばい)
 70歳以上でリタイア:2010年24.9% → 2018年35.3%(過去最高)

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 2010年から聴取したこちらの項目は、しばらくあまり大きく変化していませんでしたが、やはり2016年から2018年にかけて、やや急なかたちで「60〜64歳」が減少し「70歳以上」が増加しています。生涯現役に向けて“腹をくくった”生活者が少しずつ増えているように思われます。
「人生100年時代」を迎えるための意識は・・・?
『LIFE SHIFT』のなかで説かれていたのは、「人生100年時代」に向け、人生の早いうちから“準備”をはじめることの大切さ。心身の健康はもちろんのこと、自分の能力や知識、人間関係、お金など、有形・無形の“資産”を蓄え、マネジメントすることが重要だと語られていました。
 では、きたる「人生100年時代」に向けた“準備”について、生活者の意識や状況は、以前と比べてどんなふうに変化しているのでしょうか? こちらも「生活定点」の長期時系列データをいくつかご紹介しましょう。
(1)「人生100年時代」と健康意識
 まずは、長い人生を送るうえで何より大事だと思われる健康についての意識をみていきます。
●「自分の健康状態は、いつも自分で把握していたいと思う」
 1998年58.1% → 2018年39.0%(過去最低)
●「健康に気をつけた食事をしている」
 1992年56.7% → 2018年34.2%(過去最低)
●「ちょっとした体調の変化も気になる方だ」
 1992年33.2% → 2018年20.5%(過去最低)
●「健康のための努力は惜しまない方だ」
 1998年14.9% → 2018年 8.1%

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 スコアは1990年代と比較して軒並み低下し、直近が最低のものが目立ちます。生活者は全体としてあまり健康を意識しなくなっているようです。解釈の仕方によっては「昔と比べてみんな健康になっており、ことさら健康を意識する必要がなくなった」という読み解きも可能ではありますが・・・ちょっと無理がありそうです。
(2)「人生100年時代」と自己研鑽意識
 続いて、学びやスキルアップなどの自己研鑽に関する意識。「生涯現役」を貫いたり、本業以外でも「二足のわらじ」で稼いでいこうと思ったりすれば、生涯を通じた学びは欠かせません。それらの意識はどうなっているでしょうか。
●「いくつになっても学びたいことがある」
 1998年53.2% → 2018年36.1%(過去最低)
●「学校では学べない、暮らしの知恵や技術を学ぶ場がほしい」
 1998年43.2% → 2018年28.9%(過去最低)
●「社会人が気軽に学べる場がもっと増えるべきだと思う」
 1998年41.2% → 2018年25.6%
●「知識・教養を高めるための読書をよくしている」
 1998年29.3% → 2018年16.7%(過去最低)

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 いずれの項目も1998年からの調査ですが、4項目中3つが過去最低に。今ほど生涯現役への切迫感が強くなかった20年前のほうがむしろ、学びに対して前向き・貪欲だったという結果となりました。
(3)「人生100年時代」と趣味意識
(2)については「今や趣味や遊びも仕事に生かせる時代。真面目な学びだけがすべてじゃない!」という見方もあるかもしれません。ということで長期的な趣味意識の変化もみてみます。
●「一年を通して楽しんでいる趣味がある」
 1998年60.2% → 2018年49.1%(過去最低)
●「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」
 1998年47.9% → 2018年33.2%(過去最低)
●「人に教えられる趣味やスポーツがある」
 1992年23.5% → 2018年19.4%(過去最低)

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 こちらも長期的には減少傾向。もちろん「まったく趣味がない」ということではないとは思いますが、「一生を通じて楽しめる」「人に教えられる」レベルの趣味の持ち主は、経年でみると少なくなっているようです。
(4)「人生100年時代」と人間関係意識
『LIFE SHIFT』では人間関係も重要な“人的資本”として位置づけています。そんな人的資本形成=人付き合いに関わる状況・意識はどうなっているでしょうか。
●「参加しているグループ・団体がある」
 1992年59.6% → 2018年37.6%(過去最低)
●「人づきあいは面倒くさいと思う」
 1998年23.2% → 2018年33.2%(過去最高)
●「自分はいろいろなネットワークを持っている方だ」
 1994年21.2% → 2018年14.1%

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 こちらは1990年代と比較してグループへの参加やネットワーク力への自信は低下し、反対に人づきあいが面倒という意識が過去最高となりました。生活者は人的資本形成に対して、あまり前向きに捉えてはいないようです。これもあるいは「人に頼らなくても大丈夫」という自信が裏にあるという読み取り方もできなくはないですが、果たしてどうでしょうか。
(5)「人生100年時代」とお金意識
 最後にお金について。結局「人生100年時代」を生きるためには、自分が頑張ることはもちろん、「お金にも頑張ってもらう」=資産運用がこれまで以上に重要になってきます。ではお金に対する意識や状況はどうなっているかというと・・・。
●「毎月、決まった額の貯金をしている」
 1992年59.9% → 2018年31.1%
●「金融機関や金融商品は目的に応じて使い分けている」
 1998年22.6% → 2018年12.3%(過去最低)
●「いろいろな投資情報に関心がある」
 1992年19.2% → 2018年11.0%
●「金融商品の良し悪しについて、自分なりに判断できる」
 1998年21.9% → 2018年10.6%

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 リーマンショック以降、比較的市場環境が落ち着いてきたこともあり、直近では横ばい傾向が続いているものの、1990年代の生活者と比べると、今の生活者は貯金や投資に関してあまり積極的ではないようです。
 これは、「財テク」がもてはやされ、生活者の所得状況も今より良好だった90年代から経済環境が変わってしまったことの影響もあり、仕方がない部分もあるのかもしれません。また、バブル崩壊等の際に大きく資産を毀損した経験がある人は「もうこりごりだ」と資産運用に後ろ向きになってしまった可能性も考えられます。
 いかがでしょうか。
『LIFE SHIFT』で説かれていた「人生100年時代」へのさまざまな準備。これまで確認してきた「生活定点」データをみるかぎり、どうも生活者はあまり積極的ではなさそうだぞ・・・と、そんな結果になりました。
理想論、モデルケースのなさを指摘する声も
 以上の結果をどんなふうに捉えればよいのでしょうか。
 60代の同僚研究員に聞いてみると、
「『人生100年時代』というキーワードによって、頭では、生涯現役の時代になっていく覚悟はできた。でもだからと言って、みんなが急に自分の行動を変えたり、生活を変えたりできるわけではない」
「シニア世代でも暮らしの状況はまちまち。一日の多くの時間を“老老介護”状態で親の面倒をみていて、『目の前の現実でいっぱいいっぱいだよ・・・』という人も少なからずいる。少し『理想論』すぎる部分があるのかもしれない」

と、そんな反応が返ってきました。
 また別の50代男性に聞いてみると、
「日本の高齢化は現在進行形で進んでいて、『人生100年時代』のモデルケースがまだまだ少ないことも関係しているのでは。“スーパーマン”とか“絵に描いたような成功”とかではない、100年時代の“普通の生活像”の生き方イメージが描けない。強いイメージがないと、そこに向かう意欲も高まりにくいし、つい日常のいろんなことに流されてしまうのかも」

との意見。
「趣味などなくても一日中スマホを見ているだけで楽しく過ごせる」という声を聞いたこともありますが、ネットでさまざまなコンテンツに触れることができるなど、特に先のことを考えずとも、毎日を楽しく過ごせてしまう環境が(良くも悪くも)整っている事も、少なからず関係しているのかもしれません。
 4月からは新年度が、さらにその1カ月先にはいよいよ新元号がスタートします。これを自分にとっての転換点と考えて、これまでと生活を変えてみたり、新しく何かをはじめたりと、まさに「ライフをシフトする」良い機会として生かしてみるのも一手かもしれません。
「人生100年時代」とその準備。
 皆さんはどんなふうにお感じになったでしょうか。
【参考情報】
○「生活定点」調査概要
 調査地域:首都40Km圏、阪神30Km圏
 調査対象:20〜69歳の男女3080人(2018年・有効回収数)
 調査手法:訪問留置法
 調査時期:1992年から偶数年5月に実施(最新調査は2018年5月16日〜6月15日)
○「生活定点」ウェブサイト
 https://seikatsusoken.jp/teiten/
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55833


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/664.html

[国際25] インドでも政府統計データ修正?世界最大の民主主義国家の苦悩 経済成長を妨げる「最大の障害」とは
WEDGE REPORT

インドでも政府統計データ修正?世界最大の民主主義国家の苦悩

経済成長を妨げる「最大の障害」とは
2019/03/25

野瀬大樹 (公認会計士・税理士)

 日本では政府発表の雇用統計数値に意図的と思える改ざんがあったことが一時期話題となり、国会でも大きな論争になっていたが、その話題をネットで見ながら昨年インドでも似たようなケースがあったと思い出した。

http://wedge.ismedia.jp/mwimgs/c/e/1200/img_ce49d271dd96c82acc8ad5adca3579ed194907.jpg
2018年10月に来日した際のモディ印首相と安倍首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 昨年の11月末、インドの統計局は前政権時代のGDP成長率を見直し、下方修正すると発表した。これにより、平均して7%台後半の成長率を記録していた前政権時代の経済成長率は軒並み1%近く下がり、その平均は6.8%程度にまで下がることとなった。

 統計局の説明では、現政権のGDP成長率の計算方法が前政権時代と異なるため、比較可能性を勘案して過去情報を修正することになったとのことだ。これは私が所属する財務会計の世界でもよくある話で、利益の計算方法が法改正で変わった場合、その比較可能性を維持するために過去の数字を新しい計算方法で計算し直すのだ。

 ただ、今回のこの見直しについて、一部では政治的意図を勘繰る意見も根強い。なぜならこの下方修正により、現政権での平均経済成長率はわずかながら前政権時の平均を上回ることになったからだ。

 インド国民だけでなく、インドを巨大な成長市場と見込む世界中の企業や投資家の期待を集め、2014年に発足したモディ政権だが、当初の期待が強すぎたせいか、昨年半ば頃からその人気に陰りが見え始めている。年明けには、支持率がついに5割を切った。4月の総選挙を控え、その前哨戦と言われる地方選挙でも軒並み負けが続いており、モディ政権は今、非常に苦しい政権運営を強いられている。

 参議院選挙を控えた安倍政権が焦りを感じ、その結果、毎月勤労統計の改ざんが起きたのでは……と勘繰られているように、総選挙で苦戦が予想されるモディ政権がその焦りから過去の経済成長率を下方修正し、「我々の経済運営も悪くなかったんですよ」とアピールしようとしていると勘繰られているのだ。

選挙が近づくたびに繰り返される「バラマキ」や「ポピュリズム」
 この動きは何も経済成長率の統計だけではない。

 例えば2月1日に発表されたインド予算案。

 インドでは、毎年このタイミングで翌年度の政府方針や新しい税制が発表される。当然、海外投資家や外資は規制緩和や政府手続の簡素化を期待するのだが、この数年の傾向は「バラマキ」に近い。今回の「バラマキ」の主な内容は、以下の通りである。

1)農家に対する所得補助を決定

 インドで圧倒的な数(つまり票)を抱えている小規模農家に対し、年6000ルピー(9000円程度)の所得補助を与える。しかもその所得補助を「3月31日までに与える」という。日本では考えられないスピード感だ。政府は「景気対策」を強調するが、4月の総選挙をにらんでのあからさまな「バラマキ」と見る向きは少なくない。

2)個人所得税の従来の非課税枠を「年収25万ルピー」から「年収50万ルピー」に引き上げる

 こちらも低所得層をにらんだ減税策だ。それに加え、日本でいうところの基礎控除も従来の4万ルピーから5万ルピーへ20%超も拡充された。この年収50万ルピーという金額はもはや低所得層だけでなく、いわゆる中間層にまで恩恵を与える大盤振る舞いだ。国の財政赤字の規模がGDP比で従来の3.3%から3.4%に拡大することも同時に発表され、慢性的な財政赤字に対する懸念の声は強くなっている。

 このように、毎年繰り返される低所得層への「課税緩和」や「所得補助」で、インドの慢性的な税収不足に改善の目途は立っていない。また逆に、高所得層へのさらなる課税「サーチャージ」は数年ごとに継続して増えており、外資系企業やその駐在員にとっては悩ましい問題となっている。外資系企業がインドに拠点を置くコストは当然上がり、インドへの「FDI(海外直接投資)」に冷や水を浴びせている。

 しかし、こうすることで、9億人を超えると言われるインド有権者の大部分を占める低所得層の支持を得ることができるのもまた現実である。

「我々はあなた達からは税金は取りません。お金持ちと外国人からガッポリとります!」という意思表示は、結果として選挙で有利に働くのだ。

 もちろん政府も、「やるべきこと」はきちんと理解している。

 税負担を「より広く薄く」することで税収を確保し、その税収をテコにインドの弱点と言われるインフラを整備。規制を徐々に緩和して外資を呼び込み、経済成長を加速させるという王道の政策が正解だとは政府も分かってるのだ。しかし、先述のような「バラマキ」をしないと選挙に勝てないため、間違っているとわかっていても、所謂「ポピュリズム」が生じてしまうのだ。

 政権発足当初に高い支持率を誇っていたモディ政権には、こうした「世界最大の民主主義国家ゆえの苦悩」を乗り越える英断が求められていたが、現状ではそんなモディ政権ですらこの「ポピュリズム」に苦しめられているようだ。

パキスタンとの「国境紛争」にも影響
 さらに、その苦悩が別方面で顕在化したと言われているのが2月に大騒ぎになったパキスタンとの国境紛争である。

 インド・パキスタン両国が主権を主張するカシミール地方で2月14日、インド治安要員の約40名が死亡するテロがあったことへの報復として、インド空軍は同26日、国境を超えて空爆を実施した。インドとパキスタンの間では小さな銃撃戦はあるものの国境を超えての空爆は非常に稀で、現地では連日その「成果」や、愛国心を煽る内容の報道ばかり流れていた。

 インド政府はパキスタンの過激派300人以上を空爆で殺害と発表したが、「死者なし」と発表したパキスタン側の情報とは相当な乖離がある。内政や経済面での行き詰まりを安全保障面で解決しようとするのは、日本も含め古今東西で繰り返され続けてきた手法であるが、今回の空爆に関しても支持率低迷に苦しむモディ政権の意図が少なからずあったのでは、という見方が強い。事実、空爆後モディ政権の支持率は急騰している。

インドの経済成長を妨げる「最大の障害」とは?
 インドは世界最大の民主主義国家である。ただ、「民主主義は素晴らしい」と小さいころから教育を受けた我々日本人もその弊害にはもう気が付いているハズだ。多くの「物言う有権者」の顔色を窺い続ける結果、本当は正しいと思っていてもその政策を実行できないジレンマが生じる。インドは今、そのジレンマに直面しているように見える。

 ご存じの通り、日本で普通選挙が導入されたのは1925年で、それ以降全ての成人男子に選挙権が与えられた(女性も含めると1946年から)。それまではいわゆる制限選挙で、ある程度の納税をしている成人男子だけに投票権が認められていた。

 ただ、インドは1947年の独立以来、全ての成人男女に選挙権がある。これは民主主義の理想としては素晴らしいのだが、実際は前述のような「ポピュリズム」を多発する原因にもなってしまう。ウソかホントか分からないが、インドの地方選挙では「私が当選したら皆さんの家にテレビを配ります」と公約を掲げた候補者が当選したという逸話まであるくらいだ。日本の制限選挙にもそれなりの意味はあったのである。

 選挙権を一度認めてしまった以上、世界最大の民主主義国家として、インド政府は世界でもっとも困難な国家運営を続けていくしかないのだ。

 現地で暮らしていて思うのは、この国の「国家運営の芸術性」である。13億を超える人口、多くの宗教と民族、国境紛争やテロの危険性……これらの問題を抱えた巨大な国家を、中国のような「独裁体制」でもなく、アメリカのように継続的な「対外戦争」も行わず、70年以上にわたり運営しまとめ上げる営みはもはや「芸術」と言っていいと思う。しかし、この「芸術性」こそが、インドを中国と並ぶ世界の経済成長を支えるリーダーたらしめない理由になってしまっているのだ。

 このインドの経済成長を阻む問題を解消するには、2014年のモディ政権のような高い支持率を誇る政権の誕生を待つしかないのだが、次の選挙では与党・BJP(インド人民党)が議決権を減らすことで、連立政権の誕生が予想されている。そうなれば政権運営は各方面への「忖度」を必要とすることになる。モディ首相も今ごろ頭を抱えているに違いない。

 4月11日より投票が始まる「インド総選挙」から目が離せない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15728
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/806.html

[国際25] 独裁者のどこが悪い?トランプ流の問題解決法に学ぶ 全文和訳ムラー報告 米司法長官 ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か
トランプを読み解く

独裁者のどこが悪い?トランプ流の問題解決法に学ぶ

2019/03/23

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)


写真:ロイター/アフロ
 ここのところ、私の企業マネージャー研修カリキュラムには、「トランプ流の問題解決法」が事例学習としてよく取り入れられている。トランプ氏はビジネスマン出身だけに、大統領になっても経営者感覚で国の運営や外交に当たっている感が否めない。

 企業経営も国家運営も原理的に相通ずるものがあるが、本質的な違いは独裁と民主の体制基盤にある。資本主義制度下の企業は株主の所有物であり、その経営の権限を経営者に付与した以上、不正を牽制する監査機能があっても、経営上の意思決定は経営者の独裁ベースで行われるようになっている。

 トランプ氏はこの経営者スタイルを政治の場に持ち込んでいるので、メディアや学者など多方面から反感を買うのも無理はない。さらに経営者には、その独裁的立場からして、古来の「帝王学」あるいは独裁を前提とする統治技術にあたる「君主の政治学」を学ぶ必要が生じる。これは戦後の日本人経営者に欠落している部分でもある。

分断統治の手法
「Divide and Conquer」、日本語にすると「分割統治」という。これは「ヒト」と「コト」という2つの意味に分けて考察したほうが分かりやすいかもしれない。

 まず、「ヒト」。少数の支配者が大多数の被支配者に統治を行うにあたり、被支配者を異なる利益集団に分断することで、統治を容易にする手法である。被支配者同士を争わせれば、支配者に矛先が向かわなくなる。

 帝王学の「必修科目」である。ここでは「分割」よりも「分断」がより適切なので、私は「分断統治」という言葉を使っている。「分断統治」の起源は、デカルトの法則まで遡ることができる。一体化された集合体を、容易に問題解決ができるように、あえてできる限り細かなグループに分断(分割)する法則である。

 被支配者の連帯は力量の集結によって、支配者の地位を脅かす存在になり得る。古代ローマ帝国は、支配下に置かれた都市相互の連帯を禁じ、都市毎に応じて処遇に格差をつけ、このような「分断統治」によって、征服した都市からの反乱を抑えることに成功したのであった。19世紀以降の欧米の植民地経営もまた然り、この原理を応用した。

 逆方向の反統治側においても、「分断」の概念が用いられる。マルクス主義の唯物史観は、労働者階級と資本家階級の分断による階級闘争を中核として打ち立てられた理論だ。これはまさに、支配階級の打倒を目指す反対方向の「分断」であって、「分断」による「反分断」である。

 マルクス主義の良き実践者である毛沢東も、農民に対し「地主・富農・中農・貧農」と細かく階層を設け、対立・分断を図った。しかし、毛沢東はいざ政権を掌握し、被支配者から支配者に転じた途端、被支配者となる広義的人民(労働者階級)に対して分断統治をはじめた。彼はでっち上げられた「人民内部矛盾」という概念を拡大解釈し、異見を唱える層を敵対勢力と見なし、その対立を「敵我矛盾」と位置付け、人民の力を動員して打倒に乗り出す手法を使った。文化大革命はその好例だった。

「分断」という概念は今日において、善悪のどちらかというと、悪に分類されるほうだが、その原初的意味、つまり「帝王学」における統治技術論の1つとして捉えられた場合は、むしろ中性的なもの、あるいは「必要悪」ないし「相対善」と位置付けられていた。

「トランプは米国民を分断させようとした!」。このような批判が世間を賑わせたところで、あえて「分断統治」を説く帝王学次元の冷徹な視線で見れば、善悪を分別する余地がないことが分かる。

ボールを国民に投げる
 トランプ氏の大統領就任演説。そのエッセンスは次の1節に凝縮されている。各メディアでは「国民に権力を取り戻す」などと訳されていたが、原文を吟味して私は独自に訳してみた――。

「今日の式典は、単なる政権交替でもなければ、政党交替でもない。権力の移行であり、権力を首都ワシントンからアメリカ国民に返すときであります。……長い間、国民がコストを負担しながら、政府関連の一握りの連中が甘い汁を吸ってきました。……」

 ボールを国民に投げる。国民はこれまでコストを負担しながら、一握りのいわゆるエリート集団が代わりに政策を決定し、その利益を独占してきた。ならば、コストを負担する国民が自ら政策を決定すればよい。このために決定権を国民に移行する。これによって、ボールをキャッチした側には、権力とリスクが双子として生まれる。代議制民主主義の下で政治家が取るべきリスクを、トランプ大統領は密かに国民に転嫁したのだった。

 TPPの離脱、メキシコ国境における「万里の長城」の構築、反グローバル的な保護主義。いずれもトランプ大統領の乱暴な愚策だと、エリート集団もメディアも一斉に批判しているが、この愚策の源は有権者の自己利益(個々の私利)の総和に過ぎないと、トランプ氏はそう解釈しているようにも見える。

 米国民の分断を危惧する声も多かった。いや、もともと分断されていた。そもそも異なる利益集団の存在が「分断」の証左だったのではないか。分断など消えたことは一度もない。さらに言ってしまえば、一定の分断を生かして被支配者を支配することは、帝王学の基本でもあると、トランプ氏はひそかにそう考えていたかもしれない。

分割による問題解決
「分割統治」の「コト」版とは、そのままで解決できない大きな問題をいくつかの小さな問題に分割し、一つひとつ解決していき、最終的に問題全体を解決する、という手法である。

 政治家が打ち出す公約。いってみれば、問題の集合体でもある。これらの公約を、実施の難易度や問題の性質に基づいていくつかの問題グループに分割し、解決していく。

 前提は民意から大きく乖離しないこと。たとえその民意がどんなに馬鹿げたものであっても基本的にそれをフォローすることだ。保護主義や孤立主義に傾く民意は問題のある民意かもしれないが、それでもトランプ氏はストレートに受け入れ、その民意を公約に反映させようとした。いくら民主主義制度の下で選ばれたトップといえども、理性的な政治家ではなかなかできないことだ。

 結果からいうと、トランプ氏は大統領に就任してからの2年間で、選挙時に掲げた公約の大半を達成した。非常に優秀な成績と言わざるを得ない。経営者としての問題解決力は評価されても良さそうだ。

 問題の分割解決にあたっては、その問題の分割方法と解決の優先順位が非常に重要である。問題と問題の間に関連性があったりなかったりするからだ。問題Aを解決したことによって、問題Bの解決に有利な条件を提供し、問題Bを連鎖的に解決できることがある。逆に最初から問題Bに着手した場合、大変苦労したり、あるいは問題Bを解決したにもかかわらず、問題Aに関連性が薄い故に、問題Aの解決になお多大な労力がかかったりすることもある。

 問題の本質とかかる諸要素の関連性を見抜く力が必要だ。たとえば、米朝交渉の席から立ち去る姿勢を見せ、それによって米中交渉における主導権と優位性を確立し、さらに米中交渉の妥結を安易に目的とせず、米中貿易戦争の最終的戦勝にパースペクティブ的な視点を据えるというアプローチ・チェーンを見る限り、トランプ氏はその能力に長けているようにも思える。(参照:米朝決裂をどう見るべきか?不敗の交渉と深遠な謀略)

TPPよりも2国間交渉を好む理由
 トランプ氏は躊躇なく、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の離脱を決断し、その代りに2国間交渉を好んだ。その理由も「分断」「分割」の原理に通じている。12カ国も一括して交渉するよりも、各国と個別交渉し、いわゆる「各個撃破」の手法を取ったほうが有利だとトランプ氏が考えたのだろう。

 経営者は一般的に労働組合との団体交渉よりも、労働者との個別交渉を好む。なぜならば、個別交渉の場合会社がより強い立場に立てるからだ。逆に労働者は経営者に対して、対等の立場で労働条件の維持・改善を主張するために、労働組合による団体交渉を好むのも同じ原理に基づく。

 TPPからの離脱も一種の「分断」である。自ら分断を受け入れ、他の11カ国にある種の「痛み」を作る。そこで、いざ復帰交渉になれば、米国がより有利な立場に立てる。したたかなトランプ氏はそう考えていたかもしれない。2018年4月16日、トランプ氏は離脱を決めたTPPについて、オバマ前政権下で合意した条件より「大幅に良くなる場合」には復帰を検討しても良いと表明した。もちろん、彼は老獪な交渉家であるから、すぐには実務交渉に持ち込もうとしなかった。「分断」状態を意図的になるべく長く引き延ばそうとした。

連載:トランプを読み解く
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15527
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15725


 


全文和訳 ムラー報告について米司法長官が議会に送った書簡

2019/03/25

BBC News


2016年米大統領選におけるロシア介入とトランプ陣営による結託の疑惑、ドナルド・トランプ大統領による司法妨害の疑惑などを調べていたロバート・ムラー特別検察官の捜査報告書について、ウィリアム・バー司法長官は24日、トランプ氏やトランプ陣営がロシアと共謀した証拠はないと連邦議会に報告した。司法妨害については判断を示していない。民主党は、ムラー報告書の全文提出を求めている。

バー司法長官が上下両院司法委員会の委員長および筆頭委員に宛てた手紙の全文(英文)はこちら。ここでは全文を和訳した――。

拝啓 

グレアム委員長、ナドラー委員長、ファインスタイン筆頭委員、コリンズ筆頭委員、

2019年3月22日(金曜日)に提出した通知への補足として、ロバート・S・ムラー3世特別検察官が到達した主要な結論について、そして検察官が用意した報告書を受け取り私がまず点検した結果、今どのような状況になっているかお知らせするため、この手紙を書いています。

特別検察官の報告書

特別検察官は金曜日、「起訴もしくは不起訴の判断について説明する、非公開の報告書」を、連邦規則集28編第600.8条c項にもとづき提出しました。この報告書は「2016年大統領選挙へのロシア介入に対する捜査に関する報告」と題されています。私は今も内容を点検中ですが、報告書を説明し、特別検察官が達した主な結論と捜査の結果を要約することは、国民の利益にかなうことだと考えます。

報告書では、2016年米大統領選挙に介入しようとするロシア政府と、ドナルド・J・トランプの大統領選対策本部とその関係者が共謀した、もしくは関連する連邦捜査を妨害しようとしたという疑いについて、特別検察官とスタッフが徹底的に捜査したことが書かれています。報告書で特別検察官は、捜査を完遂するにあたり、弁護士19人を雇い、約40人の連邦捜査局(FBI)捜査官、インテリジェンス分析官、法廷会計業務の専門家、その他の分野の専門スタッフからなるチームの補佐を受けたと説明しています。特別検察官は2800本の召喚令状を発し、約500本の捜索令状を執行し、通信記録押収の裁判所命令を230件以上獲得し、通話相手の記録機の使用を50回以上許可し、外国政府に13回証拠提出を要請し、約500人の証人を事情聴取しました。

特別検察官は捜査に関連し、個人・法人に対する複数の正式起訴と有罪判決を獲得し、いずれも内容を公表しています。捜査の過程で特別検察官はいくつかの案件について、他の事務所に対応の継続を委託しています。報告書は、追加の起訴を勧告せず、特別検察官が未公表で非公開の起訴状を取得した事実もありません。特別検察官報告書の主要な結論を、下記で要約します。

2016年米大統領選へのロシア介入

特別検察官の報告書は2部に分かれています。第1部は、2016年米大統領選挙へのロシア介入について捜査結果を説明したものです。ロシアがどのように選挙結果に影響を与えようとしたか概要を示し、それに関連してロシア政府につながりのある人物たちがどのような犯罪を犯したかを記録しています。報告書はさらに、トランプ陣営に関わる人物を含むアメリカ人が連邦法に違反し、大統領選を左右しようとするロシアの謀略に参加したのかどうかについて、特別検察官が何より注目していたと説明しています。特別検察官の捜査は、トランプ選対およびそれに関係する何者かが、2016年米大統領選を左右しようとするロシアと共謀もしくは連携したという事実を見つけませんでした。報告書には「捜査は、トランプ陣営の関係者が、ロシアの選挙介入活動と共謀もしくは連携したという事実を、確定しなかった」と書かれています。

特別検察官の捜査の結果、ロシアは主に2つの形で2016年選挙を左右しようとしたと確認されました。まずひとつは、ロシアの組織「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」を通じて、究極的には選挙介入を目的に、アメリカ社会に不和をもたらすため、情報かく乱とソーシャルメディア活動を展開したこと。上記のように特別検察官は、いかなるアメリカ人についても、そしてトランプ陣営幹部や関係者についても、IRAの取り組みに共謀したり意図的に連携した事実を見つけませんでした。ただし特別検察官は、こうした活動に関連して複数のロシア国民や組織を起訴しています。

もうひとつ、ロシア政府は選挙を左右する目的で情報を収集し拡散するため、コンピューター・ハッキング作戦を展開しようとしました。特別検察官は、ロシア政府の工作員がクリントン陣営や民主党組織の関係者のコンピューター侵入に成功し、メールを取得し、そうして得た内容をウィキリークスを含む様々な仲介者を通じて世間に拡散したことを、捜査によって発見しました。こうした活動をもとに、特別検察官は複数のロシア軍将校を、選挙を左右する目的でアメリカのコンピューターに侵入しようと共謀した罪で起訴しました。しかし、上述したように特別検察官は、複数のロシア関係者がトランプ陣営に支援を繰り返し申し出たにも関わらず、トランプ陣営やその関係者が、こうした活動でロシア政府と共謀もしくは連携したという事実を見つけませんでした。

1) 共謀罪での起訴に相当するか判断するにあたり、特別検察官はトランプ陣営関係者がロシアの選挙介入活動と「連携」したかについても検討した。特別検察官は「連携」を、「選挙介入についてロシア政府とトランプ陣営の間の、暗黙のもしくは明示的な、合意」を意味するものと定義している。

司法妨害
報告書の第2部は、大統領による複数の行動についてです。行動のほとんどは一般に報道されたもので、特別検察官は司法妨害が懸念され得るとして、捜査の対象にしました。「事実関係を徹底的に捜査」した結果、特別検察官は起訴・不起訴に関する司法省基準に則り、その行動を判断するか検討したものの、最終的には従来の起訴・不起訴の判断をしないことにしました。つまり特別検察官は、精査した行動が司法妨害にあたるかどうか、どちらとも結論を下しませんでした。代わりに、捜査した個別の行動について、報告書は問題の両側から証拠を提示し、大統領の行動と意図を司法妨害とみなすことができるかという、特別検察官が法と事実の「困難な問題」だと捉える内容について、結論を出していません。特別検察官は、「この報告書は大統領が犯罪を犯したという結論は出していないものの、無罪を認定するわけではない」と述べています。

特別検察官が司法妨害捜査の事実関係を説明しながら法的判断に至らなかったため、報告書内の行動が犯罪を構成するかどうかを判断するのは司法長官になります。捜査を通じて特別検察官事務所は、一部の司法省関係者と協議し、特別検察官の司法妨害捜査にまつわる多くの法的内容および事実関係について話し合いました。こうした事案に対する特別検察官の最終報告を検討し、法律顧問局を含む省内関係者と協議し、我々の訴追判断の指針となる連邦政府による起訴の原則を適用し、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官と私は、特別検察官の捜査で得られた証拠は、大統領が司法妨害の罪を犯したと断定するには不十分だと結論しました。我々の判断は、現職大統領を正式起訴し刑事罰を追及することに関する憲法上の議論とは無関係で、それをもとにしたものではありません。

この決定をするにあたり我々は、特別検察官が、「ロシアの選挙介入に関する大本の犯罪に大統領が関わっていたと裏づける証拠はない」と判断していることに留意しました。さらに、決定的ではないものの、こうした証拠の不在は、司法妨害に関する大統領の意図にも影響すると判断しました。一般論として、司法妨害罪で確定的な有罪判決を得るためには、政府はある人物が悪意をもって、予定もしくは検討している展開に十分関連し得る妨害的行動をとったと、合理的疑いの余地がないほど、立証しなくてはなりません。報告書は、そのほとんどが国民の目の前で行われた大統領の行動を列挙していますが、そのいずれについても、司法妨害的で、予定もしくは検討している展開に十分関連し得るもので、悪意による行動だったと、我々が判断できるものではありませんでした。そしていずれも、連邦法にもとづく司法省の起訴指針にもとづき、司法妨害罪を構成すると、合理的疑いの余地がないほど立証しなくてはありません。

司法省の検討状況

特別検察官の報告書は司法長官への「非公開報告書」になると、関連規則は定めています(連邦官報37,038, 37,040-41(1999年7月9日)、特別検察官事務所細則参照)。しかし私は従前の発言のとおり、本件に対する国民の関心は認識しています。そのため、私は関連法や規則や司法省方針に沿った形で出来る限り、特別検察官の報告書を公表したいと考えています。

特別検察官との協議、および私の当初の検討の結果、報告書には「大陪審が審理する事案」に関連する情報の使用および公開を規制する、連邦刑事訴訟規則第6条e項の対照になり得るのは明らかです(連邦刑事訴訟規則6(e)(2)(B))。この規則は一般的に、刑事捜査と起訴に関する大陪審情報の公開を制限するものです(同)。規則が定める厳格な制限を超えて第6条e項の対象内容を公表するのは、場合によっては犯罪になりえます(参照例・合衆国法典18編)。

合衆国法典18編第401条3項は、大陪審審理の公正性を守り、大陪審の特有で貴重な捜査権限が本来意図される刑事司法機能のためにのみ行使されることを保証しています。

こうした制限をかんがみると、報告書の点検スケジュールは、法的に公表できない6条e項対象の内容を、司法省がいかに速やかに特定できるかに寄ります。私は、報告書内の6条e項情報をできるだけ速やかに特定するため、特別検察官の支援を要請しました。さらにこれとは別に私は、特別検察官が他の捜査当局に委託した継続案件に影響し得る情報を、特定しなくてはなりません。この作業が終わり次第、私は該当する法律や規則や司法省方針に照らして、何を公表できるか速やかに判断できるようになります。

冒頭で書いたように、特別検察官規則によると、「司法長官は議会各委員会への通知の公表」が国民の利益にかなうと判断することができるとあります(連邦規則集28編第600.8条c項)。私はそのように判断しましたので、各位に送付した後、この手紙を公表いたします。

敬具

ウィリアム・P・バー

司法長官

(英語記事 Mueller report: Read William Barr's summary sent to Congress)

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47689406
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15743


WEDGE REPORT

ロシア疑惑捜査、“灰色”決着か、モラー報告書、新たな訴追なし

2019/03/24

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 2年近くに及んだモラー特別検察官のロシアゲート捜査が22日終了、報告書が司法省に提出された。内容はまだ不明だが、新たな訴追の勧告はないとされており、「大統領選挙でロシアと共謀した」という疑惑は“灰色”のまま終わりそう。ただ、事件のもみ消しを図ったという司法妨害については「大統領の犯罪」に言及している可能性もあり、報告書の公表に全米の関心が集まっている。


(AP/AFLO)
容疑に蓋し逃げ切りか
 モラー特別検察官の捜査は主に、大統領選挙でロシアとトランプ陣営との共謀があったのか、捜査をやめさせようという司法妨害があったのか、の2点が中心。報告書が提出された段階で判明しているのは「新たな訴追の勧告は盛り込まれていなかった」(司法省当局者)ということと、「ロシア共謀疑惑」で起訴された者は誰もいなかったということだ。

 捜査では起訴された者が34人。うち6人はトランプ陣営の幹部らだった。ポール・マナフォート元選対本部長、リック・ゲーツ元選対副本部長、マイケル・フリン大統領補佐官、マイケル・コーエン元個人弁護士、大統領の友人のロジャー・ストーン氏、ジョージ・パパドポロス元外交顧問だ。

 しかし、6人はロシアとの共謀という本筋を問われたのではなく、議会や捜査当局への虚偽証言や脱税、資金洗浄などのいわば別件容疑だ。マナフォート氏は詐欺罪などの容疑で7年半の禁錮刑を受け、コーエン氏も3年の刑で5月から収監される予定だ。6人以外の残りはロシアの情報関係者や軍人らである。

 問題はトランプ大統領の疑惑だ。選挙期間中、トランプ氏がロシア側と直接的に秘密接触していた可能性は薄いと見られており、大統領が長男のジュニア氏も含め、部下に接触を指示していたことが報告書に記されているかが1つの焦点だ。明記されていれば、罪には問われなくても、大統領の道義的、政治的な責任があらためて追及されることになるだろう。

 より可能性があるのは「司法妨害疑惑」だ。大統領は17年2月、コミー連邦捜査局(FBI)長官に対し、フリン大統領補佐官への捜査をやめるよう求めた疑いがかかっており、事実であれば、司法妨害に相当する。報告書がこの点についてどのように判断しているのかが最大の注目点だ。

 だが、報告書に限って言えば、大統領が逃げ切った可能性もある。第一に司法省の指針によると、現職の大統領は訴追されないことになっている。またモラー特別検察官が捜査で大きく依存した大陪審の規則は、実際に当事者が起訴されない限り、大陪審を通して入手した情報の公表を禁じており、大統領が起訴されないのであれば、大統領に関する情報の公開は蓋をされる恐れがある。

ボールはバー司法長官に
 捜査報告書は今後、バー司法長官からその要約が議会へ送られ、事実上公表されることになる。同長官は22日、議会指導者への書簡で、数日内に報告書の要約を送るとし「できる限り透明性を確保する」と述べた。議会下院は先に、報告書の全文を公表するよう求める決議を満場一致で可決している。

 しかし、特別検察官規則によると、報告書の内容をどの程度、要約に盛り込むかは司法長官の裁量に委ねられており、捜査の情報源や方法などの極秘情報が漏洩しないよう、また大陪審での証言が漏れないように配慮することになっている。

 民主党はかつて、長官がトランプ大統領の主張に沿うようなメモを書いていたことなどを念頭に、要約にホワイトハウスの意向が反映されるのではないかと懸念している。民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は共同声明を発表、「公表前に報告書をホワイトハウスに密かに見せないよう」司法長官に警告した。米紙によると、ホワイトハウスは報告書の不都合な部分については、大統領特権を行使して、公表させないことも検討しているようだ。

 大統領弾劾の手続き上の出発点になる下院司法委員会のナドラー委員長(民主党)は、現職の大統領が訴追されないという指針を犯罪のもみ消しに使われかねないと指摘、司法長官とホワイトハウスをけん制した。しかし、ペロシ下院議長は勢いづく大統領弾劾論に距離を置き、「トランプ氏は弾劾に値しない」と慎重姿勢を示しており、弾劾をめぐる動きは流動的といえるだろう。

際立つ強気
 週末をフロリダの別荘で過ごしているトランプ大統領は、ロシア疑惑で起訴される者が誰もいないことを予想していたのか、強気ぶりを際立たせている。報告書が提出される前、モラー氏の捜査を「魔女狩り」「政治的なでっち上げ」と非難する一方で、「国民は報告書の内容を知りたがっている。公表されるべきだ。共謀など何もなかったことが分かる」と胸を張った。

 報告書がロシア疑惑で明確な犯罪性を指摘できなければ、トランプ大統領は自らの無実を正当化する動きに拍車を掛けるだろう。しかし、一連の捜査でトランプ氏や側近らのロシアとのうさんくさい関係が浮き彫りになったのは紛れもない事実。その目的は大統領選挙で勝利するため、対立候補のクリントン氏に不利な情報を入手しようとしたことだった。ロシアと接触した側近らは18人、頻度は100回以上に及んだことは決して見過ごされないだろう。

 モラー氏の捜査がロシアゲートを立件はできないにせよ、大統領の不倫口止め料支払いなど、捜査の過程で浮かび上がったさまざまな疑惑は今後、議会や州の司法当局の調査でさらに追及されることとなる。「捜査の終わりではなく、始まりだ」(アナリスト)という声が強まる中、報告書の公表が待たれる。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15731
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/807.html

[原発・フッ素51] 対サウジ原発供与秘密計画の発覚と中東核拡散の危険  フランス、ドイツに核の傘を提供する用意
対サウジ原発供与秘密計画の発覚と中東核拡散の危険

2019/03/25

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)


(iStock.com/flySnow/Purestock)
 トランプ・ホワイトハウスが秘密裡に進めてきた対サウジアラビア原発供与計画内容の一部がこのほど、内部告発で発覚、米下院監査・改革委員会(エリジャ・カミング委員長)が「原子力エネルギー法」抵触の疑いがあるとして真相解明に乗り出した。

 計画では数十基の売却が見込まれており、もしこれが実行に移された場合、サウジは敵対関係にあるイランに続き核開発への転用に乗り出すことも懸念され、最悪の場合、中東での核拡散に発展しかねない危険をはらんでいる。

 カミングズ委員長は去る2月19日、ホワイトハウスが政権発足後の2017年初めからひそかに着手してきたサウジアラビアへの原子力技術供与計画について、「複数の内部告発者」の情報提供を下に作成したという報告書要約版を公表した。


(Martin Janecek/Gettyimages)
 その中で以下のような点が明らかにされた:

「内部告発者たち」はこのほど当委員会に対し、ホワイトハウス関係者たちが法律に抵触する恐れがあるにもかかわらず、サウジへの原子力技術移転計画を大急ぎで推進しようとしていることに対し重大な懸念を表明するとともに、計画をめぐりホワイトハウス内部での主導権争いなど、当事者間で混乱状態に陥っていることを警告してきた。
良識派の倫理問題担当顧問たちはトランプ政権の「高官たち」に対し、サウジとのこうした取引は、外国への原子力技術移転に際し議会の事前承認が必要であるとして繰り返し注意喚起してきたが、彼らはこれを無視してきた。
同計画の推進母体となっているのが、サウジ国内における原発建設を請け負う複数の大手企業からなる「IP3インタナショナル」コンソーシアムであり、2016年米大統領選挙期間中に国家安全保障問題顧問を務めトランプ当選後も大統領顧問だったマイケル・フリン氏が中心的役割を担ってきた。
2017年1月から同年7月までホワイトハウス国家安全保障会議中東北アフリカ担当上級部長だったデレク・ハーベイ氏はトランプ政権発足直後に関係スタッフたちに対し、「IP3原子力計画」はマーシャル・プランの中東版であり、フリン大統領補佐官がすでにサウジへの売却を決定済みであることを告げた。
フリン氏はその後、大統領の署名を得るための「閣議メモ」を作成、その中で、大統領の永年の親友で2017年1月「大統領就任式実行委員長」の要職を務めたトーマス・バラク氏を計画推進責任者に指名した。
大統領は今年2月12日、サウジアラビアなど中東数カ国の原発建設会社代表をホワイトハウスに招き会談したほか、娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問をサウジに派遣するなど、その後も同計画は進行中とみられる。
 これらの指摘のうち特に注目されるのは、クシュナー氏の最近の動きだ。

 同報告書が言及した通り、クシュナー氏は今月初め、サウジの首都リアドを訪問、かねてから親交のあるサルマン国王、皇太子ら同国王室トップと会談した。しかし、電子メディア「Daily Beast」などによると、この会談について現地米国大使館は一切知らされておらず、大使も会談には同席を許されなかった。

核開発に踏み切る可能性
 これに対し、ホワイトハウスは会談が行われたこと自体を認めた上で、その目的については「両国協力関係、イスラエル・パレスチナ問題、中東における経済投資などについて協議が行われた」と型どおりの説明だけにとどまった。

 米国大使館高官やスタッフが有力雑誌「Vanity Fair」記者に語ったところによると、これまでの外交慣例によれば通常、米国政府の閣僚や高官らの外国訪問の際には、スケジュールの調整、身辺警護の徹底、滞在中の行事や会談へのスタッフの同席など現地大使館が一切の準備を担当してきたが、今回だけはつんボ桟敷に置かれ、すべてサウジ王室任せで行われたという。

 このため、米議会では今回のクシュナー氏のサウジ訪問で、原発供与問題含め具体的にどのような話し合いが行われ、どの程度の進展があったのかについて、下院監査・改革委員会、外交問題委員会など各関連委員会が近くホワイトハウスから詳しい説明を受ける予定だ。

 対サウジ原発供与問題がここにきて急にクローズアップされてきたのは、もしいったん核技術が同国に渡った場合、核開発に踏み切る可能性が極めて大きいとみられているからにほかならない。

 この点について、前述の下院報告書も以下のように指摘している:

 「多くの専門家は、もし、機密性の高いアメリカの核技術を供与した場合、サウジは核兵器生産に乗り出し、ひいてはすでにきわめて不安定な中東全域での核拡散につながることを憂慮している。げんにモハメド・ビン・サルマン皇太子は昨年の時点で、こう公言している『もしイランが核爆弾を開発した場合、わが国は間違いなく、ただちにそのあとに従うことになる』」

 事実、サルマン皇太子は昨年3月、米CBSテレビ番組で具体的に「わが国は、いかなる核爆弾も確保しようとは思っていない。しかし、もし、イランが核爆弾を開発した場合、われわれは間違いなく、できるだけ早く同じ道を追求していくことになる」と述べた。

 またその数日後には、ファリ同国エネルギー大臣がさらに具体的に「同盟国であるアメリカがわが国に原発技術を提供することは自然の成り行きであり、それに続いて核燃料サイクル、そのモニタリングについても援助してくれることを期待している」と一歩踏み込んで発言、核開発への強い意欲を示し注目された。

 サウジ側のこうした姿勢は、同国の核開発がイランの出方次第にかかっていることを内外に明確に示したものだ。

パキスタンが核開発援助
 問題はそのイランだ。

 イランは去る2015年7月、米英仏独の欧米4カ国と中露を加えた6カ国との最終協議で、イランの核開発抑止をめざす最終取り決めいわゆる「イラン核合意」を受け入れたばかりだった。ところが、皮肉にもトランプ大統領は2018年5月、オバマ前大統領がとりまとめた同合意からの離脱を発表、このままではかえってイランにフリーハンドを与え、核開発に踏み切らせる口実を与えかねない状況になりつつある。

 今のところイランは、トランプ政権が「イラン核合意」無効宣言をした後も、他の加盟5カ国が合意を順守し続けているため、今後の対応については様子見の状態だが、米政府の対イラン経済制裁が長期化し、国内経済への打撃が深刻化した場合、合意自体の見直しを迫られる事態もありうる。

 この点に関連し、イランのモハメド・ザリフ外相は、米下院報告書要約版が公表された翌日の先月20日、ツイッターを通じ「イラン核合意を破棄する一方でサウジに対し核技術を提供しようとしていることは偽善以外の何物でもない。反体制ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害に関与したサウジ政府に今また原発技術を供与しようとするアメリカは今や、人権問題にも核拡散問題にも無関心であることを世界に知らしめるようなものだ」と激しくトランプ政権を非難した。

 米下院調査委員会がサウジへの核技術供与にとくに神経をとがらせる背景には、サウジはかつて、同じイスラム教スンニ派が支配するパキスタンに資金援助を行い、結果的に“最初のスンニ核爆弾”と揶揄されたパキスタンの核開発をおぜん立てしたことがある。

 両国はパキスタン建国の1947年以来、政治、安全保障、通商、文化交流、宗教に至るまで幅広い緊密な協力関係を維持してきており、パキスタン政府は対サウジ関係を「アラブ世界における最強、最重要の関係」として重視してきた。

 こうしたことから、ニューヨーク・タイムズ紙も「パキスタンは隣国インドに対抗できる核保有国になれたことについて、サウジに特別の恩義を感じていることは明らかであり、サウジがその気にさえなれば、パキスタンが核開発援助をすることは否定できない」と報じている。

 また、パキスタンは2002年時点で、北朝鮮に対し、核爆弾技術を供与したことが、米情報機関によって確認されている。そしてその北朝鮮は近年、とくにサウジとの関係強化に乗り出してきており、最悪の場合、外貨稼ぎのために、すでに開発に成功した核兵器技術を今度はサウジに売却するというシナリオも考えられる。

 しかし、最大の問題は、こうした中東を舞台にした多くの安全保障上の将来的不安要因があるにもかかわらず、トランプ米政権が、イラン核合意の廃棄を決定する一方、他方でライバル関係にあるサウジに対し、核開発転用の危険がある原発技術供与に乗り出そうとしている点だ。戦略的視点を全く欠いた近視眼的な外交というほかない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15732


 
フランス、ドイツに核の傘を提供する用意

2019/03/25

岡崎研究所

 1月22日、ドイツの町アーヘンの市役所で、メルケル首相とマクロン大統領が、独仏両国の協力と欧州統合を一層推進する条約に署名した。このアーヘン条約は、平和と安全保障、文化、教育、研究、気候、環境開発、経済など、多岐にわたる包括的な独仏協力をうたったものだが、最も重要なのが防衛、安全保障で、就中両国の領土に対する侵略が行われた場合、「兵力を含むあらゆる手段」で支援することを約束している。


(Trifonenko/tkacchuk/iStock)
 この約束は、集団的自衛権を定めたNATO条約第5条を越えるものとされている。NATO 条約第5条は、締約国が攻撃を受けた場合、「必要とみなす行動を取る(…such action as it deems necessary…)」と規定しているが、アーヘン条約での支援は無条件とされている。

 これは、欧州が自らの運命を決める時期が来たとの認識に立ったものと言われる。そして、それはトランプ大統領のNATO観に由来するものである。トランプはNATOでは米国が不当に多くの財政を負担させられているとして、他の加盟国に防衛費を少なくともGDPの 2%支出するよう求めたが、基本的にNATOを税金の無駄使いとみなしている節があり、米国のNATOからの離脱さえ示唆している。このような状況の下で、欧州諸国が米国には頼れないと考えるのは当然である。

 米欧関係は、第二次世界大戦後の国際社会で大きな比重を占めてきた。米欧は基本的価値観を共有するのみならず、先進国経済圏として世界経済をけん引し、民主主義地域として戦後世界の秩序の維持発展に貢献してきた。しかし、米欧の一番強い絆はNATOに集約される安全保障面であったと思われる。冷戦後もロシアの脅威に対し、共同で対処してきた。 その絆が切れるということは、米欧関係にとって革命的変化である。欧州が米国に頼らずに自らの安全保障を確保しようとするのは画期的なことである。

 しかし、米国以外の締約国が、米国がNATOで果たしてきた役割を肩代わりするのは容易ではない。欧州ではこれまでも自身の手で欧州の防衛を強化しようとする動きが見られ、特に、マクロン大統領は、欧州統合軍の創設の必要性を強調してきた。 しかし、これまで米国が果たしてきた役割に代わるような欧州統合軍の設置には欧州諸国の防衛費の飛躍的な増加が必要で、実現には時間がかかる。

 アーヘン条約では、フランスがドイツに核の傘を提供したことが重視された。条約の条文中には核の傘に対する直接の言及はないが、マクロン大統領がインタビューに答えて、その点を明らかにしたという。 核の抑止は欧州統合軍の創設と異なり、時間がかかる問題ではない。ロシアの核攻撃に対する抑止には、必ずしもロシアと同じ核戦力は必要ない。抑止はロシアが堪えがたいと思う被害を与える能力があれば成り立つ。何が堪えがたい被害であるかの判断には主観的要素も入る。フランスの持っている約300の核弾頭とミサイルで、ロシアが堪えがたいと考えるような核攻撃をすることは可能であり、そうとすればフランスの核能力は対ロ抑止力を持っていると言える。ただ、ドイツを核の傘のもとに置くことは可能としても、欧州全体を置くことまでは考えてないだろう。その意味でフランスは米国の肩代わりはできず、米国が手を引いた後の欧州の核抑止は大きな問題である。

 トランプのNATO観で、NATOが崩壊したわけではない。しかし、その土台が大きく揺らいでいることは間違いない。これからの米欧関係は未知の領域に入っていく。その中で独仏の安全保障協力は重要な役割を果たすことになるだろう。

 1963年のエリゼ条約は独仏の戦後の和解を確認した歴史的文書であったが、アーヘン条約が米欧関係の基本的変化の中での独仏の協力を謳ったものとして、同様に将来歴史的意義のある文書であると認められることになる可能性がある。実際、同条約には、エリゼ条約の独仏和解と協力の精神のもと、21世紀の状況に合わせて、さらなる独仏協力と統合を促進するとの規定がある。ただ、内容が抽象的であるので、状況の変化等に応じ、どれだけ具体的に独仏関係の深化が進むかは未知数である。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15680
http://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/263.html

[政治・選挙・NHK258] 政府の障害者雇用促進法「改正案」が民間企業で悪評ふんぷんの理由 予算の減額といっても 本質は税金の付け替え
2019年3月25日 週刊ダイヤモンド編集部 ,池冨 仁 :記者
政府の障害者雇用促進法「改正案」が民間企業で悪評ふんぷんの理由
 
近年、障害者雇用の世界は“売り手市場”で、相対的に軽度の障害者は引く手あまたとなっている。昨年夏に発覚した「障害者雇用の水増し問題」で、中央省庁などの公的機関が大規模採用に乗り出したことにより、障害者雇用の“大移動”が起こる可能性を孕んでいる(写真と本文は関係ありません) Photo by Hitoshi Iketomi
 昨年から今年にかけて、世間を騒がせてきた「障害者雇用の水増し問題」は、収束に向かうどころか、さらに混迷の度を深めている。

 政府は3月19日、「障害者雇用促進法」の改正案を閣議決定し、国会に提出した。公的機関には、お粗末だったチェック機能を強化させる。また、中央省庁が法定雇用率を下回った場合は、民間企業に義務付けている納付金(事実上の罰金)と同様に、不足が1人に付き年60万円のペナルティを科す。企業には、これまで認めなかった週10〜20時間しか働けない精神障害者(発達障害を含む)向けの給付金の新設にも踏み切る。

 だが、こうした政府の動きに対して、民間企業の人事関係者からは、恨み節ばかりが聞こえてくる。「場当たり的で、ナンセンスだ。霞が関のお役人は、現場の実情を理解していない」(大手メーカー)、「確かに、罰金の額は民間企業と同じだが、本質的な問題が解決するとは思えない」(大手金融機関)などと、はなはだ評判が悪い。

 現在、障害者雇用納付金制度は、組織の形態を問わず、100人以上の常用雇用者(1年以上の勤続者)を抱える企業は、全て対象となる。2018年4月より、民間企業に科せられた法定雇用率は、2.0%から2.2%に引き上げられた(数年後には、3.0%の水準に近付けられる)。

 この2.2%を達成できなかった企業は、制度の運営主体である独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から、1人に付き月額5万円(年額60万円)の納付金を徴収される。一方で、達成できた企業は、同じく月額2万7000円の調整金(事実上の報奨金。年額32万4000円)が支給される。

 高齢・障害・求職者雇用支援機構は、厚生労働省の有力外郭団体の1つだ。地味な存在を装ってはいるが、常用雇用者100人以上の企業に対し、労働基準監督署並みに厳しい“抜き打ち検査”も行う。

 その対象は、建前上は常用雇用者100人以上の全企業が対象だが、厚労省は全ての組織に対して強権を発動するのではなく、重点ターゲットを定めていると言われる。

 あるIT関連企業の人事担当者は、こう打ち明ける。「障害者雇用の不足人数が2桁(10人。年間600万円)を越えると、厚労省の直接的な介入が始まる」。その後、改善がなければ、厚労省のホームページで企業名を公表される。実質的な脅しであり、見せしめである。

 厚労省は、自らは非難の矢面に立つことなく、外郭団体を通じて制度を運用している。この制度は、企業における障害者雇用を進めるために、未達成企業から吸い上げた納付金を達成企業への調整金に回すという前提で設計されており、実質的に税金には依存しない「金のなる木」として機能してきた。

予算の減額といっても
本質は税金の付け替え

 これまで、障害者雇用促進法(旧身体障害者雇用促進法)の規定に則り、企業に対して障害者雇用を押し付けてきた格好の国(厚労省を含む)だったが、今では産業界における求心力を失いつつある。

 18年8月に発覚した障害者雇用の水増し問題では、国の28の行政機関で約3900人、地方自治体などでは約3800人、合計で約7700人の水増しがあった事実が判明した(17年6月時点)。これまで、数字ありきで企業に厳しく科してきた法定雇用率は、国・地方自治体などは民間企業より高い2.5%だったが、再調査で実際は半分以下の1.17%だったことが露呈する。

 企業は、障害者雇用率の達成を実現するために、人員やコストをかけて本業には直結しない仕事を捻出するなどして、“数字合わせ”にあくせくしてきた。その裏では、世間に模範を示すべき立場の中央省庁が、前提となるデータの数値を操作するなどしていたのだ。

 実は、法定雇用率の算出の根拠については、ざっくりした算定式が公開されている。だが、詳細な内訳は明かされず、今もブラックボックスのままだ。加えて、法令の無視は、旧法が定められた60年(59年前!)に遡る疑いが濃厚となってきた。もはや、何を言っても、国民の信頼は取り戻せまい。

 現在、国は前例なき約4000人というスケールで国家公務員の採用を進めている。その大半は、すでに民間企業で働いている障害者の中途採用で補填する。国は、自らの不始末に対し、過去には本腰を入れてこなかった障害者雇用を急拡大させたことにより、民間企業の採用計画に影響を及ぼすという矛盾を引き起こしているのだ。

 企業で働いた経験のある障害者にとっては、今回の大規模採用は唐突な話だが、より安定した国家公務員という立場に魅力を感じて転職を考えても、不思議ではない。向こう2年間で、約8000人を新規採用する以上、しばらく雇用市場の混乱は避けられそうにない。

 冒頭で触れたように、国は中央省庁などにも、民間企業と同様の罰則を科すことにした。法定雇用率を達成できない場合には、1人に付き60万円というペナルティを設ける。だが、予算の執行には影響しない「庁費」の枠から、翌年度の雑費を削ることで代替する。

 このペナルティの原資は、あろうことか税金なのである。仮に、ある省庁で、「障害者の採用人数が10人足りない」という場合には、600万円の罰則(予算の減額)となる。だが、その省庁へ渡る税金の額が減っても、削減分は国庫に収まるというスキームなのだ。

 本質的には、行政機関内部での“付け替え”に過ぎず、当該省庁の懐が痛むこともない。こうした急ごしらえの弥縫策で、納税者の理解が得られるものだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
https://diamond.jp/articles/-/197730
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/816.html

[政治・選挙・NHK258] 首相、一帯一路への協力に4条件 

国内政治ニュース(共同通信)2019年3月25日 / 16:49 / 1時間前更新
首相、一帯一路への協力に4条件
共同通信
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 安倍晋三首相は25日の参院予算委員会で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」への協力の在り方に関し、一帯一路のルート上に位置する対象国への適正融資など四つの条件を満たす必要があるとの認識を表明した。「(4条件を)取り入れているのであれば、協力していこうということだ。全面的に賛成ではない」と述べた。

 4条件として、適正融資による対象国の財政健全性のほか、プロジェクトの開放性、透明性、経済性を列挙した。

 一帯一路では、中国の過剰融資が国際的に問題視されている。首相はこの点を踏まえ「経済力以上に貸し込むと、その国の経済の健全性が失われてしまう」と指摘した。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2019032501001679?il=0
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/818.html

[経世済民131] 日経平均は650円安、今年最大の下げ幅 世界景気の減速懸念 ETFだけで日銀の債務超過水準を答えるのは不適切=日銀総裁

 
ビジネス2019年3月25日 / 15:50 / 2時間前更新
日経平均は650円安、今年最大の下げ幅 世界景気の減速懸念
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は大幅反落した。世界の景気減速懸念が再燃し前週末の米国株が急反落。外為市場で円高が進行したことも重荷となり、朝方から幅広い銘柄が売られた。海外勢から仕掛け的な先物売りが出て下げ幅を拡大したが、午後は為替がやや円安方向に振れたことを横目に眺めて下げ渋った。ただ、反発の勢いは弱く、終値の下げ幅は650円を超え、今年最大となった。

前週末の米国株式市場では、主要3指数の下落率が1月3日以来の大きさとなった。米欧の製造業指標が弱く、米国の長短金利が逆転し、世界景気低迷への不安が強まった。この流れを引き継ぐ形で、週明けの東京株式市場でも売りが先行。日経平均の下げ幅は一時700円を超え、取引時間中としては2月15日以来、約1カ月半ぶりの安値水準を付けた。

ただ、2万0900円台に近づいたところでは下げ渋った。ドル/円が110円台まで回復してきたことが下支えとなったもよう。「上海株も下げてはいるが日経平均に比べて下げ率は小さい。指数先物にも目立って買い戻しや売りが出たような感じはなく、ある意味、自然体で下げ止まっている」(国内証券)との声も出ていた。

市場からは、景気悪化が懸念されるのも長くは続かず、「2万1000円を割り込んだ水準で新年度が始まれば絶好の買い場となる」(いちよしアセットマネジメントの上席執行役員、秋野充成氏)との見方も出ていた。

TOPIXは2.45%安。東証33業種全てが下落する全面安商状で、石油・石炭、医薬品、鉱業、ガラス・土石製品などが値下がり率上位となった。

個別銘柄では、あおぞら銀行(8304.T)が大幅安となり一時5年4カ月ぶり安値。22日、2019年3月期連結業績予想と期末配当予想を下方修正したことが嫌気された。リテールおよび金融法人向け対顧客ビジネスが伸び悩んでいる。トレーディング業務も振るわず、粗利益が当初見込みを下回る見通しとなった。

一方、ピーエス三菱(1871.T)は急伸。22日に発表した19年3月期業績予想と配当予想の上方修正を好感した。手持工事の進捗が前回予想を上回ったことや工事採算の改善などが寄与する。繰延税金資産の計上に伴う押し上げ効果も大きい。年間配当予想は18円から32円(うち12円は特別配当)に引き上げた。

東証1部の騰落数は、値上がり104銘柄に対し、値下がりが2014銘柄、変わらずが22銘柄だった。

日経平均.N225

終値      20977.11 -650.23

寄り付き    21267.41

安値/高値   20911.57─21275.43

TOPIX.TOPX

終値       1577.41 -39.70

寄り付き     1593.3

安値/高値    1571.74─1593.4

東証出来高(万株) 132784

東証売買代金(億円) 23917.11
https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-close-idJPKCN1R60HV


 
ビジネス2019年3月25日 / 14:10 / 3時間前更新
ETFだけで日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない=日銀総裁
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は25日、午後の参院予算委員会で、ETF(上場投資信託)だけを取り出して日銀が債務超過になる水準を答えるのは適当ではない、と述べた。藤巻健史委員(維希)の質問に答えた。

黒田総裁は保有しているETFについて「期末時点で時価が簿価を下回る場合は、引当金を計上する。決算上の期間損益は下押しされる」と述べた。ただ、日銀の損益は、国債の利息収入やETFの分配金の収益などいろいろな要因を組み合わせて全体として決まってくるとし「ETFの要因だけを取り出して、債務超過になる水準を答えるのは適当ではない」とした。

黒田総裁は、量的・質的金融緩和は、バランスシート拡大で収益が押し上げられる一方、出口時には、当座預金に対する付利金利引き上げによって収益が減少しやすいと指摘。ただ、経済・物価情勢が好転して付利金利を引き上げる場合には長期金利も相応に上昇するとし「当座預金に対する支払い利息が増える一方、保有国債はより高い利回りの国債に順次入れ替わるため、受け取り利息は増加する」と述べ「出口時の収益面への影響は、受け取り利息も含めたバランスシート全体で考える必要がある」とした。

また、15年度から、利息の受け払いで利益が上振れる局面では一部を積み立て、下振れる局面では取り崩すことのできる債券取引損失引当金の拡充を行ったことを説明し、「こうした措置は、出口に向けた収益の振れを平準化して、財務の健全性を確保する観点から一定の効果を持つ。事前の対応としては十分なものと認識している」と述べた。

黒田総裁は、日銀が保有する国債の残存期間は7年強だと述べ、景気が回復し、物価が上がる中での長期金利は「なだらかな形で金利が上がる時には、金利の高い国債に乗り換えていく。付利が引き上げられても、両面をみていかなければならない」と繰り返した。

また、保有国債は償却原価法を採用しており「長期金利が上昇して、国債価格が下落しても、決算上の期間損益で評価損失が計上されることはない。大きな問題が生じることはない」とした。

*内容を追加しました。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-etf-idJPKCN1R60CY

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/668.html

[経世済民131] QQEの最大の貢献は生産性上昇、続けたことで2%台前半の失業率実現 日銀、長期金利のマイナス幅拡大を静観 円高抑止効果も
ビジネス2019年3月25日 / 17:46 / 14分前更新
QQEの最大の貢献は生産性上昇、続けたことで2%台前半の失業率実現
原田日銀審議委員
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - 日銀の原田泰審議委員は25日、都内で講演し、量的・質的金融緩和政策(QQE)の日本経済への最大の貢献は、生産性を引き上げたことだと指摘した。また、QQEを続けていなければ、2%台前半の失業率は実現していなかった、と述べた。

金融緩和で労働需給の逼迫状態を続け、生産性の上昇を追求するべきだという「高圧経済論」を信じ過ぎれば、インフレの兆候があるのに引き締めが遅れ、許容できない高いインフレを招いてしまうかもしれないとの懸念を示し「実際の金融政策運営においては、2%のインフレ目標を優先して、さらなる雇用の改善や生産性の上昇は、できたら望ましいもの程度に考えて行うべきもの」との考えを示した。

原田審議委員は、2013年4月にQQEを導入、その強化を図ってきたなかで、2%の物価安定目標は達成できていないものの、生産、雇用、投資、輸出、消費、財政状況などほとんどの経済指標が改善していると指摘した。

そのうえで「大胆な金融緩和政策、QQEの日本経済に対する最大の貢献は生産性を引き上げたことだ」と述べた。

また、「金融緩和政策によって働きたい人がみな働けるようになるという意味での生産性は大いに高まった。QQEを続けていなかったら、2%台前半の失業率は実現していなかった」とした。

原田委員は、金融政策によって生じた人手不足によって賃金が上昇すると指摘。高い賃金を支払うことができる生産性の高い企業が残り、経済全体の労働生産性も上がるとし「人手不足は、社会不安を起こさずに新陳代謝を起こす手段だ」と強調した。

雇用が伸び、生産性が上昇していることを踏まえ、「いまや皆、物価を引き上げ、景気をよくすることを望むリフレ派だ。だからこそ、日銀は金融緩和政策を続けている」とした。そのうえで、QQEに反対している人々の態度には「認知的不協和」があるとした。認知的不協和とは、自分の認識と新しい事実が矛盾すると不快に思うことだという。金融政策でいえば、足元で生産性上昇などの成果があるため、将来、出口で大変なことが起こると主張することなどを挙げた。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-qqe-harada-idJPKCN1R60QX


 


トップニュース2019年3月25日 / 17:46 / 14分前更新
焦点:
日銀、長期金利のマイナス幅拡大を静観 円高抑止効果も
Reuters Staff
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[東京 25日 ロイター] - 25日の東京市場で長期金利JP10YTN=JBTCのマイナス幅が一段と拡大した。日銀は昨年7月に決めたゼロ%を中心とした上下0.2%程度の範囲内で推移しており、当面は市場動向を静観するとみられる。金利低下が円高回避につながっているとの分析も日銀内にはあり、問題視する声がない。

ただ、長期金利のマイナス圏推移の長期化は、市場機能や金融仲介機能など副作用が、累積的に積み上がるリスクもあり、世界経済の反転がいつになるのか情勢分析を急いでいる。

<長期金利低下、調節上問題なし>

米長期金利の低下を受け、25日の東京市場で日本の長期金利は一時マイナス0.095%に低下した。これは現行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を導入する前の2016年8月以来、2年7カ月ぶりの低水準となる。

日銀は長期金利の操作目標である「ゼロ%程度」の解釈について、昨年7月にゼロ%を中心に上下0.2%程度に事実上拡大した。

足元の水準はその範囲内であり、日銀内では「金融市場調節上の問題はない」との認識で一致しているとみられる。

むしろ、変動幅を拡大したことによって「昨秋以降の金融市場の不安定な動きを緩和する役割も果たしている」(1月金融政策決定会合の議事要旨より、ある政策委員)との指摘もある。

つまり、長期金利の低下幅が大きくなったことで、足元で起きている海外金利の低下に伴って生じると予想される円高方向への圧力を一定程度、緩和させているとの分析だ。

だが、昨年7月の段階で金融正常化路線を進めていた米国は、世界経済の不透明感が強まる中で利上げ休止を余儀なくされ、足元では先行きの利下げも市場で意識されるなど世界経済・金融市場の環境は大きく変化している。

バンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ金利ストラテジスト、大崎秀一氏は長期金利の低下について、米連邦準備理事会(FRB)のハト派姿勢やドイツの3月製造業PMIが予想を下回ったことで「リスクオフの流れが意識されている」とし、政策金利であるマイナス0.1%を下回る可能性も「高まった」(同)とみている。

<マイナス長期化、副作用拡大の懸念>

米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は25日、米利上げは「来年後半まで想定していない」と発言。FRB主導で日米金利差が拡大方向に再び動き出すのは、かなり先であることが多くの市場に関係者に認識されている。

日本の長期金利のマイナス幅拡大がどこまで進むかは予断を許さないものの、マイナス圏での滞留が「長期化する様相を強めているのは確か」(国内金融機関の関係者)という見方が、市場に広がりだした。

長期金利のマイナス幅拡大や長期化は、金融機関の収益や保険・年金の運用への影響など金融緩和の副作用のさらなる拡大に直結する。マイナス金利の国債に対する投資家需要は乏しく、市場機能の一段の低下につながるリスクもある。

市場では、長期金利のマイナスが拡大・長期化した場合、「金融機関収益の一段の圧迫が意識され、株式市場のさらなる悪材料になる」(別の国内金融機関関係者)との指摘も出ている。

<待たれるリスクオフ心理の沈静化>

ただ、日銀にとってかじ取りが難しいのは、副作用への配慮に比重を置き過ぎ、国債買い入れの減額などを大胆に展開すれば、市場が長期金利の低下をけん制したと受け止め、内外金利差の縮小観測などを背景に円高が進行しかねないリスクが存在することだ。

現在の内需の状況について、日銀は輸出と生産が落ち込んでいるものの、設備投資や個人消費といった内需はしっかりしていると判断している。

このため、現行の金融政策を粘り強く継続し、設備投資の拡大などをサポートしつつ、国内景気の拡大メカニズムが動き出すのを待つ戦略を採っているとみられる。

円高進行のリスクがあるような選択は回避し、許容レンジ内での長期金利の低下を静観していく可能性が高い。

だが、「持久戦」の構えを維持したまま、別の外的理由で円高が進み出した場合、日銀は難しい状況に直面しかねない。中国政府による景気対策の効果が発現し、海外経済が再び持ち直すまでにリスクオフ心理が一段と広がるかどうか、日銀は注意深く動向を見守ることになりそうだ。

伊藤純夫 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/boj-long-term-interest-idJPKCN1R60QH
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/669.html

[経世済民131] 景気後退を暗示「逆イールド」とは何か、12年ぶり発生 米経済良好シカゴ連銀総裁 身構えた米市場FRBと認識に差、鍵は中国
トップニュース2019年3月25日 / 15:00 / 3時間前更新
アングル:
景気後退を暗示「逆イールド」とは何か、12年ぶり発生
Richard Leong and Dan Burns
2 分で読む

[22日 ロイター] - 米債券市場で22日、3カ月物財務省短期証券(Tビル)と10年債US10YT=RRの利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。それは何を意味するのか。以下にまとめた。

●財務省証券とは何か

財務省証券とは、連邦政府が売りに出す国債、つまり債務のこと。大半は、満期までの一定期間、固定利率で利金が支払われる。償還期間は1カ月から30年間まで多岐にわたる。

米国債は政府が元利金の保証をしており高い信用力があるため、世界で最も安全な債券だと考えられている。

●利回りとは何か

投資家が保有する国債が満期を迎えるまでの、投資額に対する利息も含めた年間収益の割合を示す。金利と同義で使われることもある。

利回りは、表面利率と債券価格との関係によって決まる。価格が上昇すれば、利回りは低下する。

●利回り曲線とは何か

利回り曲線(イールドカーブ)とは、1カ月物から30年物に至るまで償還期間が異なる債券利回りの変化を表したもの。

通常であれば、曲線は右上がりのアーチを描く。債券投資家は長期国債を保有するリスクを負うことの補償を期待するからだ。したがって、30年物の利回りは通常、1カ月物や3年物のそれよりも高くなる。

長期金利と短期金利との差が拡大し、イールドカーブの傾斜がきつくなることを「スティープ化」すると言う。30年物利回りは2年物のそれよりもかなり高くなる。

また、債券市場用語の「スプレッド」とは金利差のこと。その差が縮小して、イールドカーブの傾斜は平たんになることを「フラット化」すると言う。その場合、例えば10年物の利回りは3年物のそれと比べて大差なくなることがある。

●逆イールドとは何か

めったにないことだが、イールドカーブの一部あるいは全てにおいて右肩上がりではなくなることで、短期金利が長期金利より高くなった場合に起きる。これを「逆イールド」と呼ぶ。

22日、3カ月物と10年物の利回りが2007年以来約12年ぶりに逆転した。

イールドカーブはしばらくの間、全体的にフラット化していた。昨年12月にはイールドカーブの短期ゾーンから中期ゾーンにかけて約10年ぶりに逆転現象が起きていた。

●なぜ逆転は問題なのか

逆イールドは昔からリセッション(景気後退)到来のシグナルとされる。

過去50年において、米国ではリセッションが起きる前には逆イールドが見られた。逆イールドが起きてリセッション入りしなかったのはたった1度だけだ。

短期金利が長期金利を上回ると、短期の借り入れコストが長期のそれよりも高くなることを意味する。

そのような状況においては、企業は日々の運転資金の調達コストがより高くなり、経営者は投資を抑制あるいは凍結しがちだ。一般消費者の借り入れコストも上昇し、米経済の3分の2以上を占める個人消費も減速する。

経済は次第に縮小して、失業率も上昇する。

●逆イールドが起きてすぐにリセッション入りするか

イールドカーブが逆転後、12─24カ月でリセッション入りするとされる。

また、逆イールドはリセッション入りする前に解消することが多い。

逆イールドは、リセッションの長さやその程度を予測することはできない。

●逆イールドはそもそもなぜ起きるのか

短期債は、米連邦準備理事会(FRB)のような中央銀行の金利政策に非常に敏感だ。

一方、長期債は、投資家のインフレ期待により影響される。債券投資家にとってインフレはタブーである。

これまで3年間続いてきたFRBの利上げにより、短期金利は上昇している。また、借り入れコストの上昇が経済を後退させることから、現在のように今後インフレが抑制されるとみられている場合、投資家は比較的緩やかな長期金利を受け入れやすい。

22日の3カ月物と10年物の利回り逆転は、やや異なる状況下で発生した。

長期金利が短期金利よりも大きく下げたのは、予想を下回る欧州経済指標を受け、投資家がより安全な米長期債を買いに走ったためだ。

3カ月物利回りも、2日前にFRBが年内の利上げはないと示唆したことでやや低下していた。

FRBはまた、9月には保有国債の縮小を終了すると発表している。

(翻訳:伊藤典子 編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/yeild-curve-idJPKCN1R60EO


 

ビジネス2019年3月25日 / 11:55 / 21分前更新
利回り曲線平坦化、市場の警戒理解できるが米経済は良好=シカゴ連銀総裁
Reuters Staff
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[香港 25日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は25日、イールドカーブのフラット化に市場が神経質になるのは理解できるとした一方、米経済は依然良好なペースで成長しているとの認識を示した。

25日のアジア市場では、米10年債利回りが3カ月物の利回りをさらに下回った。

22日の米国市場での長短金利逆転は2007年半ば以来となった。

エバンズ総裁はこの逆転について「かなり小幅」とし、「長期金利が長きにわたり低下してきたことを考慮に入れる必要がある」と指摘。「トレンド成長率や実質金利の低下に関連した構造的な要因が一部あるだろう」とした上で、「そうした環境ではイールドカーブが過去と比べて幾分フラットになるのがおそらく自然だと思う」と述べた。

香港で開かれたクレディ・スイス・アジア投資会議で見解を示した。

総裁は同会議の合間にCNBCのインタビューに応じ、投資家が「警戒感や様子見姿勢」を強めるのは理解できるとし、連邦準備理事会(FRB)も同様だと述べた。

一方で、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は「良好」とし、今年の米経済成長率は2%前後になると予想。「『これまでより低い』と反応するだろうが、それは的外れだ」と述べた。

<立ち止まって慎重になるには良い時期>

エバンズ総裁は25日、米経済は引き続き堅調だが、FRBがいったん立ち止まって慎重な姿勢を取るには良い時期だとの認識も示した。また、来年後半までは利上げを想定していないと述べた。

米金融政策については、現時点で緩和的でも引き締め的でもないと指摘した。今年1月の時点では、米経済の力強さが継続するなら今年3回の利上げもあり得るとの考えを示していた。

総裁は「私は物事がインフレを少し妨げているとみている。私はインフレ率が上昇してほしい。したがって、私自身の道筋では、来年おそらく下半期までは、利上げは想定していない」と述べた。

エバンズ総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ。

FRBは20日まで開いたFOMCでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置いた。また、新たに示された金利見通しでは、年内の利上げ回数をゼロと予想する当局者が17人中11人と、12月時点の2人から大幅に増えた。

予想以上にハト派的なシグナルを受け、市場では来年の利下げを織り込む動きが急速に広がった。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/fed-evans-idJPKCN1R605I?il=0


 

コラム2019年3月22日 / 19:48 / 10時間前更新

身構えた米市場、それでもFRBと認識に差 鍵は中国
田巻一彦
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[東京 25日 ロイター] - 22日のNY市場では、米国の長短金利が12年ぶりに逆転し、景気減速懸念からダウ.DJIは前日比460ドル超の下落となった。これまで米景気の先行きに強気だった米株式市場が見せた「動揺」だった。

ただ、19─20日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に米連邦準備理事会(FRB)が示した米経済の先行きへに対する「警鐘」に、市場が追いついたのかと言えば、それは「ノー」ではないか。FRBの慎重姿勢の背後には、米中経済摩擦が及ぼす打撃リスクがあるとみられるが、市場の心配はそこまで及んでいない。

米中摩擦の長期化がはっきりしてくれば、対中貿易の比重の大きい日本経済にとって、想像を超える打撃が生じかねない。

22日のNY市場では、10年米国債利回りUS10YT=RRが2.43%台に低下する一方、3カ月物財務省短期証券(Tビル)US3MT=RRは2.45%台で取引を終え、2007年以来、約12年ぶりに米長短金利が逆転した。

これを受け、米株式市場では主要3指数が大幅反落し、ドル/円JPY=EBSは一時、109円台に下落した。

直接の原因は、マークイットが22日に発表した3月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値だったと言われている。2017年6月以来、約2年ぶりの水準に落ち込み、製造業の減速リスクに市場の注目が集まったとの報道が多かった。

だが、その1日前の21日のNY株式市場では、3月のフィラデルフィア連銀業況指数が急反発した[nL3N2182WK]ことや米新規失業保険週刊申請件数が予想を超えて減少[nL3N2182NC]し、景気鈍化への警戒感の低下を背景にダウ.DJIは200ドルを超える上昇となっていた。

私は、米株式市場が本格的に景気失速を意識し出したとみるのは、早計ではないかと思う。

ただ、株式市場が心配した背景はわかる。FRBが米景気への認識をかなり厳しく示したからだ。その警戒のトーンは、かなり強いと思われる。FOMCメンバーの政策金利見通し(ドット・チャート)で示された年内の利上げ回数はゼロとなり、20年は1回との見通しが示された。

パウエル議長は、FOMC後の会見で「依然として米経済は年内、底堅く成長すると予想」、「労働市場は堅調」とも述べつつ、「成長は特に中国や欧州で鈍化」「昨年9月以降の指標から、成長は予想よりも鈍化しているもよう」と指摘した。

米中通商摩擦の影響も含めた中国経済の先行きに対する懸念が、背景にあるのではないかと推測させるような「言い回し」だったように、私には感じられた。

22日の米市場に影響を与えた3月ドイツ製造業PMI速報値の落ち込みも、ブレグジットへの懸念だけでなく、対中輸出減速リスクも影響している可能性が高い。

<対中関税継続なら、中国に打撃か>

世界経済の動向に少なからず影響を与えそうな米中通商交渉は、当初期待された2月末の合意ができず、最終合意のメドが不透明になっている。

トランプ米大統領が20日、対中関税について「かなりの期間」維持する可能性に言及した。その背景としてトランプ大統領は「(協議に関し)合意するのであれば、中国に確実に履行させる必要がある」と述べた。

複数のチャイナウオッチャーによれば、足元での中国経済の減速の大きな要因の1つに、米国による10%の関税賦課がある。

だからこそ、中国側は対米交渉で早期の関税撤廃を双方で実行することを提案していたが、それへの回答が、トランプ大統領の発言だった。

中国経済はしばらくの間、10%関税という「重石」を背負って進むことになりそうだ。

<中国経済減速、長期化なら日本にも余波>

中国の減速継続は、日本にとってはある意味で米国の受けるマイナス効果よりも、打撃が深くなる可能性がある。18日発表された2月貿易統計で、アジア向け輸出は前年同月比マイナス1.8%。輸出全体も3カ月連続で前年割れだった。

日本企業の中には、対中ビジネスの比重が高いところが少なくなく、輸出減─生産減が継続するようなら、企業経営者の心理を冷やし、19年度の設備投資計画を抑制させかねない。そこまでリスクが拡大するようなら、アベノミクスの下で拡大を続けてきた日本経済に「黄信号」が点灯しかねない。

もし、FRBが中国経済の動向を念頭に慎重な米経済の先行きを展望しているなら、日本の政策当局は、米国並みかそれ以上に下向きのリスクに敏感になるべきだろう。

当面、日本の政策当局は、株価とドル/円の行方に神経を使うことになるのではないか。
https://jp.reuters.com/article/boj-long-term-interest-idJPKCN1R60QH


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/670.html

[経世済民131] 米に政策停滞リスク 債務上限引き上げなど巡り  「幸福な国」豪経済は、重力に逆らえるか
米に政策停滞リスク 債務上限引き上げなど巡り
トランプ政権 経済 北米
2019/3/25 18:02
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領の「ロシア疑惑」を巡る捜査はヤマ場を越えたが、米議会の停滞は避けられそうにない。トランプ氏は与党・共和党内で求心力を回復する可能性がある一方、野党・民主党は税逃れなど新たな疑惑の追及に余念がない。北米自由貿易協定(NAFTA)や債務上限の引き上げなど重要な政策審議が遅れる可能性がある。

「トランプ大統領にとって素晴らしい日となった。2020年の(大統領選の)闘いへ前進するときだ」。24日、トランプ氏と米フロリダ州でゴルフを共にしたリンゼー・グラム上院議員(共和)は、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査の最終報告書を「共謀なし、司法妨害なし」と評価し、トランプ氏への支持を改めて表明した。

身内の共和党内は「トランプ離れ」がじわりと進んでいた。上院では14日に「国境の壁」を巡るトランプ氏の非常事態宣言を無効にする決議案を可決したが、共和党から12人もの造反が出た。くすぶり続けたロシア疑惑がひとまずヤマ場を越えたことで、崩れかけていた共和党の結束が再び強まる可能性がある。

ただ、野党・民主党はペロシ下院議長らがバー司法長官を徹底批判。同党は20年の大統領選に向けすでに動き出しており、予備選に立候補したバーニー・サンダース上院議員やベト・オルーク前下院議員らも24日に「捜査報告書の全文公表が必要だ」と追及を続ける声明を公表した。民主党はトランプ氏の税逃れ疑惑や不倫もみ消し疑惑など、次の一手も用意する。

18年11月の中間選挙の結果、下院では民主党が多数派となり、連邦議会は「ねじれ状態」となった。与野党の対立は日に日に激化。予算の成立が大幅に遅れて連邦政府は過去最長の一部閉鎖に追い込まれたばかりだ。ロシア疑惑の捜査報告書は、対立を鎮める方向に働かず、政策審議のさらなる停滞が避けられない。

目先の懸案は、連邦政府債務の上限引き上げ問題だ。3月2日に政府の借入限度額を定めた「債務上限」が復活し、米政府は自由に国債発行ができなくなった。復活した上限は22兆ドル(約2420兆円)。米財務省の特例措置で9月までは資金を確保できそうだが、議会が早期に上限を引き上げなければ米国債の債務不履行(デフォルト)を引き起こしかねない。

ただ、上院財政委員会のグラスリー委員長(共和)は「債務上限の引き上げは秋になるかもしれない」と審議の先延ばしを示唆する。大統領選に向け有権者にアピールしたい与野党は、20会計年度(19年10月〜20年9月)の審議で激しい駆け引きを繰り広げることになる。グラスリー氏は債務上限問題を「民主党との取引の材料にする」と主張。政府の資金繰り問題はぎりぎりまで議論すらされないリスクがある。

民主党の議会指導部は、18年11月にNAFTA3カ国で署名した「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定=新NAFTA)」の批准にも反対意見を強める可能性がある。NAFTA再交渉はトランプ氏の主要公約の一つ。民主党が批准に賛成すれば、トランプ氏には大統領選を前に手柄が1つ増えることになる。

そのため民主党は、参加3カ国の労働基準の引き上げなどUSMCAの条文見直しを早くも要求し、審議入りに立ちはだかる。同党のペロシ下院議長も「(NAFTA再交渉で)トランプ氏は国境の壁の建設費用をメキシコに払わせると言っていたではないか」と皮肉を繰り返す。NAFTAの改定となるUSMCAは、批准作業が20年の選挙後にずれ込むとの見方すら浮上している。

米経済は政府閉鎖の影響で個人消費などが下振れし、1〜3月期の実質成長率が1%前後に急減速するとの観測が強まっている。米連邦準備理事会(FRB)が19年の利上げを見送る方針を示唆するなど「一人勝ち」の米景気にも陰りがみえてきた。予算や通商を巡る「政治リスク」がだめ押しとなれば、20年の選挙を前に与野党ともに有権者の支持を失いかねない。

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米議会、20年大統領選にらみ火花 「ねじれ」で政策停滞リスク
2019/1/4 23:00

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42874280V20C19A3FF2000/


 

コラム2019年3月25日 / 11:40 / 6時間前更新
「幸福な国」豪経済は、重力に逆らえるか
Clara Ferreira-Marques
3 分で読む

[シンガポール 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 過去30年近く重力に逆らって浮揚してきた豪州経済が、ついに物理法則に屈しつつあるように見える。

昨年第4・四半期の国内総生産(GDP)は停滞。住宅価格は下落し、賃金も伸び悩んでいる。だが、豪経済の勢いを保つ手段はまだ残されている。

豪経済は「幸福な国」の愛称が示す通りに、アジア通貨危機、世界的な金融危機、史上まれに見る鉱山ブームの終焉、また約10年で首相が6人も変わるという国内政局の混乱を見事に乗り切ってきた。

移民の流入が助けとなったが、好調な中国経済からの波及効果や、その後の不動産市場・インフラ投資拡大のほうが、経済を大きく支える要因となった。

現在、こうした要因の多くは、消滅しつつある。1人当たりのGDP──つまり、典型的な先進国のほぼ2倍の人口増加ペースの影響を除いたGDP──は、約10年ぶりに2四半期連続でマイナス成長に陥った。政府はこの算出方法を良しとしていないが、役員室や酒場でこぼされる不満の背景には、こうした現実がある。

まず、宴会の格好の話題となっていた不動産市場の熱狂が収まりつつある。豪中銀によると、全国の住宅価格は、2017年終盤までの5年間で50%近く上昇したが、コアロジックによると、2018年の下落率は、2008年以降で最悪の5%近くに達した。

シドニー、メルボルンなどに住宅を保有する世帯の純資産は、依然として高水準だが、こうした住宅価格の反転は、個人消費に心理的な悪影響を及ぼす可能性がある。クリスマス商戦後の値下げは、2月に入っても続いていた。

不動産ブームの背景の1つにはアジア勢の購入があったが、それに加え、低金利と優遇税制でオーストラリア人も賃貸物件への投資を進めていた。

今現在、需要は減退しており、銀行にも不良債権処理の圧力がかかり、融資の審査基準も厳格化されている。一方、長期にわたる建設ブームで、供給も需要に追いついた。そうなると、住宅価格の下落は、迫りくる不況の足音ではなく、健全な後退と言えるのかもしれない。2016年半ばの水準に下落しただけなのだ。

賃金も、見た目ほど悪くない可能性がある。給与が伸び悩んでいるとはいえ、2月の失業率は約8年ぶりの低水準に改善。シドニーがあるニューサウスウェールズ州などではすでに過去最低を記録している。

また、余剰生産力の隠れた源である不完全失業率も、安定しつつあり、雇用の拡大が続いている。複数の大型プロジェクトの影響もあり、鉱山会社などはすでに西部地域で人手不足を指摘。豪中銀は、全国の賃金が「緩やかに上昇する」と予想している。

豪ドル高の一服が本物であれば、慎重な楽天主義も正当化される可能性がある。

豪州の家計債務は、世界でも有数の高水準にあり、確かに懸念要因ではある。これは、住宅市場がGDP(1兆3000億ドル)の5倍以上に膨らんだことが背景だ。こうした借り入れは、銀行のバランスシートの過半を占めている。

ただ、家計債務は、不況を増幅することはあっても、必ずしも不況のきっかけとなるわけではない。金利が低いことに加え、多くの場合、債務を抱えているのは相対的に若く裕福な世帯で、返済能力は相対的に高い。

さらに重要なことに、金利オンリー型の高リスク融資の比率は、以前に比べれば大幅に低下している。豪中銀が昨年終盤に明らかにしたところでは、金利オンリー型融資の比率は全体の25%強と、ピーク時の約40%を下回っている。

中国経済はどうか。豪州の輸出の約3分の1は中国向けだ。鉄鉱石価格は、ブラジルのダム決壊の影響で急伸しており、資源大手のリオ・ティントやBHPなどからの供給が予想外に拡大している。中国政府も景気刺激を続けていく意向を示唆しており、地政学的な緊張が再燃しなければ、鉱物・金属に対するおう盛な需要は続くはずだ。

もっとも、こうした要素は、豪州が自らコントロールできるものではない。ただ、豪州はある程度まで自らの運命を決めることができる。

まず、低金利とはいえ、金利は1.5%ある。必ずしも利下げで住宅購入を促せるわけではないが、日欧に比べれば金融政策の余地は大きい。

これに加え、財政政策の発動も可能だ。政府は今年度の財政赤字予想を下方修正しており、金融危機後初となる黒字計上に向かっている。

5月の選挙を控え、減税だけでなく、人口増大で急務となっている道路・公共交通機関への投資も可能だ。同国の人口は2031年までに3000万人を超えると見込まれている。

独立政府機関である豪州インフラ委員会が作成した2019年のリストには、総額400億ドル以上の開発計画が記載されている。

国内労働人口の半数以上は、就職後に大きな不況を一度も経験したことがない。このため、企業経営者やエコノミストから見ると、今回のような景気減速が集団心理にどのような影響を及ぼすのか、予測は難しい。

ただ、少なくとも、選挙で選ばれた政府には、豪州経済の浮揚という離れ業を続けるだけの力がある程度まで残されているはずだ。

●背景となるニュース

・第4四半期の豪GDPは前期比0.2%増、予想下回る伸び [nL3N20T0DI]

・豪中銀、成長と雇用のバランスに配慮 住宅市場巡り議論=議事要旨[nL3N21608M]

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/australia-column-breakingviews-idJPKCN1R30WH
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/671.html

[経世済民131] 原田日銀委員:いまや皆、物価を引き上げることを望む「リフレ派」米シカゴ連銀総裁:下振リスク現実化なら金融緩和 ムーア阻止
原田日銀委員:いまや皆、物価を引き上げることを望む「リフレ派」
日高正裕
2019年3月25日 16:24 JST
構造改革が容易になったことで生産性は「伸び率を高めている」
物価下落望むデフレ派かと言われ「そうだ」と答える人は現在いない
日本銀行の原田泰審議委員は25日、都内で講演し、いまや皆、物価を引き上げ景気をよくすることを望む「リフレ派」であるとの認識を示した。

  原田委員は、2013年4月の量的・質的金融緩和後、稼働率の上昇や人手不足によって構造改革が容易になったことで、日本の生産性は「伸び率を高めている」と指摘。雇用が伸び、生産性が上昇しているため、「あなたは物価が下落した方がよいと考えるデフレ派か」と言われて「そうだ」と答える人は現在いない、と述べた。

  その上で、その意味で「いまや皆リフレ派」と言明、「だからこそ、日銀は金融緩和政策を続けている」と語った。

  日銀は13年4月、黒田東彦総裁の下で、約2年を念頭に2%の物価目標の達成を目指すとして異次元緩和を開始。累次の追加緩和を行ったが、足元の物価上昇率は1%に満たず目標は遠い。超低金利政策が長期化する中、金融機関経営への影響など副作用が累積しており、異次元緩和への批判的な声も強まっている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWUMD6K50Y801?srnd=cojp-v2


 
米シカゴ連銀総裁:下振れリスクが現実化すれば金融緩和の必要性も
Matthew Boesler
2019年3月25日 15:00 JST
• 米成長率は18年の3.1%から19年は1.75−2%に減速へ−エバンス氏
• 経済成長が予想通りなら、追加の引き締めはインフレ加速次第に
米シカゴ連銀のエバンス総裁は、2019年の経済見通しが失望すべきものである場合、連邦準備制度は政策金利を据え置くか、金融緩和に踏み切る必要もあるだろうと述べた。
  エバンス総裁は25日に香港で行う講演の事前原稿で、「現時点で、下振れシナリオのリスクは上振れシナリオのリスクよりも大きいようだ。経済活動が予想より軟化したり、インフレやインフレ期待が低くなり過ぎたりした場合、当局の目標達成に適切な調整を行うため、据え置きないし緩和する必要さえあるかもしれない」と述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ioz0pe5iPsWA/v1/576x-1.png
  連邦公開市場委員会(FOMC)は3月20日、追加的な金融引き締め回数の見通しを減らし、投資家の意表を突いた。FOMC参加者17人のうち11人が年内の金利据え置きが適切との見方を示した。過去3年間にFOMCは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標をほぼゼロから2.25ー2.5%に引き上げている。
  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC後の記者会見で、経済成長見通しの下方修正の一因として海外の景気減速を挙げたが、エバンス総裁も減速見通しに同調。米成長率は2018年の3.1%から19年に1.75ー2%に減速すると予想した。
  エバンス総裁は「このレンジの下限が実際のところ、長期的な潜在成長率についての私の見方に一致する」とコメント。経済成長が予想通りなら、追加の引き締めはインフレが加速するかどうか次第になると指摘した。
  同総裁は「経済成長が潜在成長率に近い水準で推移し、インフレの勢いが増す場合は、米経済が長期的に持続可能な成長軌道に落ち着き、インフレ率が当局の2%目標付近で上下対称的に推移する状況を確実にするため、多少の追加利上げが長期的には適切になるかもしれない」と述べ、「このシナリオでの金利の道筋については、コアインフレに加速の兆候があるかどうかに強く左右されるだろう」と説明した。
原題:Evans Says Fed May Have to Ease If Downside Risks Become Reality(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWFHO6S972801?srnd=cojp-v2


 
FRB理事に指名のムーア氏、上院は指名阻止を−マンキュー氏が訴え
Brendan Murray
2019年3月25日 18:00 JST
元CEA委員長のハーバード大マンキュー教授、ムーア氏を早速批判
「この重職に必要とされる知的な威厳が彼にはない」とマンキュー氏
トランプ米大統領が連邦準備制度理事会(FRB)理事への指名を発表したばかりのスティーブン・ムーア氏に対し、早くも痛烈な批判の矢が向けられた。共和党系の著名経済学者の少なくとも1人は、上院での同氏の指名承認を阻止するよう訴えている。

  ブッシュ(子)政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、現在はハーバード大学教授のグレゴリー・マンキュー氏は22日のブログでムーア氏について、「この重職に必要とされる知的な威厳が彼にはない」と指摘。「ムーア氏は承認されるべきでなく、上院議員は今こそ職責を果たすときだ」と記した。

  ムーア氏(59)のFRB理事就任には上院本会議での承認が必要。FRB理事のポストは正副議長を含めて計7つで、現在は2つが空席となっている。研鑽(けんさん)を積んだ経済学者や元金融業界幹部、銀行規制監督当局者が起用されるケースが多い。

  減税や規制緩和、米国が一段と公正と見なす貿易協定の締結などを通じ、成長加速を狙うトランプ大統領の施策を総じて支持してきた民間部門のエコノミストの一部も、保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の客員研究員を務め、2016年の米大統領選でトランプ氏の経済政策顧問だったムーア氏の指名には首をひねっている。

  「ピーター・ダイヤモンド氏が承認されなかったのに、スティーブン・ムーア氏が指名されて承認までされるかもしれないというのは本当に嫌悪すべきだ」。ルネサンス・マクロ・リサーチの経済担当責任者ニール・ダッタ氏は、オバマ政権時にFRB理事に指名されながら共和党の反対で辞退に追い込まれたノーベル経済学賞受賞者ダイヤモンド氏に言及してこのように語った。

  ムーア氏はジョージ・メイソン大学で経済学修士号を取得しているが、金融政策についての専門知識の持ち主としてではなく、アーサー・ラッファー氏と共に、減税による経済成長促進を提唱するサプライサイド経済学の支持者として知られる。

原題:Swift Pushback on Stephen Moore, Trump’s Latest Pick for the Fed(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWUCL6K50XT01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/672.html

[経世済民131] 米国債券市場、リセッションのシグナル発信 長期金利2年7カ月ぶり低水準 日本株ことし最大の下げ、米欧経済悪化で金は債券へ
米国債券市場、リセッションのシグナル発信−今週の入札に注目
Liz Capo McCormick、Alexandra Harris
2019年3月25日 13:08 JST
3カ月物の利回りは現在、10年物を上回っている
1310億ドルの入札を予定−利回りは数カ月ぶり低水準か
今週は1310億ドル(約14兆3900億円)の米国債の入札が予定されているが、利回りは数カ月ぶりの低水準となる見込みだ。米金融当局のハト派的決定と世界の成長鈍化の新たな兆候を受けて、投資家は債券市場に流れ込んでいる。

  今週の入札はイールドカーブの中で今、リセッション(景気後退)のシグナルとして注目されている3カ月物から始まる。3カ月物の利回りは現在、10年物を上回っている。2007年終盤に始まった不況に先立ち、イールドカーブのこの部分は06年序盤から逆転していた。フランスとドイツの景気の弱さを示す指標や米製造業の減速の中で今回の逆イールドは出現した。

  今後数日に発表される米国の住宅市場や消費者信頼感を測る指標で、投資家は連邦準備制度の次の動きを予測しようとするだろう。当局は3月に、市場の意表を突いて今年の利上げ回数見通しをゼロとした。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ihqCL4OE_EUs/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
Yield curve turns negative for the first time since 2007
  レイモンド・ジェームズの債券責任者、ケビン・ギディス氏は、「金融当局の行動やコメントは投資家に、経済の今後について他の人が知らないことを当局者らは知っているという印象を与えた」と指摘。「典型的なモメンタム取引は現在リスクオフを支持しており、これがリセッションについての会話を促している」と述べた。

  政策当局は依然として次の動きは20年の利上げと示唆しているが、短期金融市場のトレーダーらは利下げ観測を強めている。フェデラルファンド(FF)金利先物は今年の0.25ポイント利下げ確率約80%を織り込んでいる。先週前半には30%程度だった。

  サンフランシスコ連銀は、3カ月物と10年物の利回り格差を最も有用なリセッション指標だとしている。今週は2年、5年および7年物債の入札も実施され、これは当局が一部の予想より早くバランスシート縮小を停止するかどうかを占うヒントになる。

   FTNファイナンシャルのストラテジスト、ジム・ボーゲル氏は「入札を通じ、投資家がカーブのどの部分に資金を投じたがっているかが分かる 」と話している。

原題:Bond Market Flashes Recession Warning Before Round of Auctions(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWIRZ6TTDS001?srnd=cojp-v2


 

債券上昇、長期金利は一時2年7カ月ぶり低水準ー米欧金利低下や株安
野沢茂樹
2019年3月25日 8:02 JST 更新日時 2019年3月25日 15:53 JST
債券相場は上昇。長期金利は一時2年7カ月ぶりの低水準を付けた。世界経済の減速懸念を背景に米欧金利が大幅に低下した流れを引き継いだことや、株価急落、円高進行も加わり、超長期債を中心に買いが先行した。午後に入ると、日本銀行の国債買い入れオペの結果や高値警戒感から金利低下が一服した。

新発10年物353回債利回りは、日本相互証券の前週末午後3時の参照値を2ベーシスポイント(bp)下回るマイナス0.095%と、2016年8月以来の低水準。その後はマイナス0.09%
新発20年債利回りは一時0.325%と16年9月以来、新発30年債は0.49%、新発40年債は0.565%とともに16年11月以来の水準まで低下
長期国債先物6月物の終値は前週末比7銭高の153円11銭。一時153円21銭と夜間取引で付けた16年7月以来の高値に並んだ。午後は伸び悩み
市場関係者の見方
SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジスト
手前の金利がこれだけマイナスになると、利回りを追める資金は長いゾーンに向かわざるを得ず、イールドカーブにはフラット(平たん)化圧力がかかりやすい
米連邦準備制度理事会(FRB)のハト派化にもかかわらず、景気減速懸念がなかなか収まらないのは、中国や欧州経済の底打ちの確認までしばらく時間がかかりそうだからだ
日銀は米欧中銀に比べてタカ派的だとみられたり、円高の引き金を引きたくないだろうから、当面は金利がさらに下がっても動かないのではないか
日銀買いオペ
残存期間1年超3年以下と3年超5年以下、10年超25年以下と25年超が対象。金額はいずれも前回と同じ
応札倍率は10年超25年以下で3.52倍、25年超で4.45倍と前回からやや上昇
備考:過去の国債買い入れオペの結果一覧
SMBC日興の竹山氏
日銀オペ結果はそれほど弱くはなかったが、金利低下が進んだ後とあってオペで売って利益確定する動きが出たようだ
超長期ゾーンの応札倍率の上昇で、海外市場の流れを受けた相場上昇が一服した面も
背景
株式相場は大幅安。日経平均株価は前週末比3%安と昨年12月25日以来の下落率で、2万0977円11銭で終了
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=109円71銭と先月11日以来の円高・ドル安水準を付けた
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.185% -0.200% -0.090% 0.335% 0.500% 0.565%
前週末比 -0.5bp -1.0bp -1.5bp -1.5bp -2.0bp -2.0bp

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/PORKDT6JIJUQ01?srnd=cojp-v2

 
日本株ことし最大の下げ、米欧経済指標悪化で資金は株から債券へ
河元伸吾
2019年3月25日 7:43 JST 更新日時 2019年3月25日 15:24 JST
• 3月の米製造業PMIは52.5、ユーロ圏47.6−いずれも予想外に低下
• 米10年債利回り1年2カ月ぶり低水準、円は1ドル=109円台に上昇
25日の東京株式相場は急反落し、TOPIXと日経平均株価はことし最大の下落率。米欧の製造業指標が悪化して世界景気の減速が懸念された。円高を受けた機械や精密機器など輸出関連、商品市況安から石油・石炭製品や非鉄金属など素材関連中心に全業種が安い。
• TOPIXの終値は前週末比39.70ポイント(2.5%)安の1577.41
• 日経平均株価は同650円23銭(3.0%)安の2万0977円11銭
o 両指数とも2018年12月25日以来の下落率
背景
• 米国の3月製造業PMI速報値は52.5−予想53.5
• ユーロ圏の3月の製造業PMI速報値は47.6−予想49.5
• 米国債市場で逆イールド発生、3カ月と10年が逆転−2007年以降初 (1)
• ドル・円相場は一時1ドル=109円71銭、前週末の日本株終値時点の110円81銭から円高
  東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「米欧の製造業指標が下げ止まらず、世界景気の減速が続いている」と指摘。米国は「利上げ停止もあって長期金利が大幅に低下したが、その効果が出るには時間がかかるため景気のボトムアウトは来月以降」とみていた。
  
  前週末の米S&P500種株価指数が1.9%下げた流れを引き継ぎ、アジアの株式市場は売り一色となり、中国の上海総合指数は一時1.7%安。日本株は米金利低下による為替相場のドル安・円高が業績や経済に与える影響が不安視されるため、下げが大きくなった。投資家の資金は債券に向かい、日本の10年国債利回りはマイナス0.095%と、2016年8月以来の水準に低下した。

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  東洋証券マーケット支援部の山本裕史ストラテジストは「米債の逆イールド発生に反応した海外勢など短期筋による先物主導の下げ」と指摘。欧州製造業指標の悪化や英国の欧州連合(EU)離脱問題に対する懸念も売り仕掛けを増幅しているとした上で、週後半に米中の閣僚級の通商協議や国内の鉱工業生産の発表を控えているため「安値でも積極的に買いにくい」と話した。
• 東証1部33業種の下落率上位は原油安を受けた石油・石炭製品、鉱業のほか、医薬品、非鉄金属、機械、精密機器、証券・商品先物取引、化学
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-24/POW6CQ6KLVR401



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[経世済民131] イールドカーブ逆転、読み違えにご用心−エラリアン 花形トレーダーの中国株ファンド、10時間で1兆円強を獲得 
イールドカーブ逆転、読み違えにご用心−エラリアン
コラムニスト:Mohamed A. El-Erian
2019年3月25日 15:12 JST
景気見通しは比較的良好−堅調な労働市場が消費を支え続けている
現在のイールドカーブを決定している要素にも注目
22日の米国債市場で3カ月物利回りが10年物を上回った。これは2007年以来初めてで、米国が年内または20年序盤にリセッション(景気後退)入りするとの観測が強まった。こうした「逆イールド」は歴史的に、約1年以内の大幅な景気減速の先触れであることが多いからだ。しかし、現在のイールドカーブを決定している要素と経済の状況に照らして、今回は例外かもしれない。ただ、リセッションシグナルだという誤った解釈が、予言を自己実現させてしまうリスクはある。

  逆イールドは投資家が利下げを見込み、短期の利回りが大幅に下がると予想している時に起こりがちだ。景気が急激に減速しリセッションの本格的リスクがある時に最も起こりやすい。

  確かに、米成長は既に18年の平均水準から減速している。米連邦準備制度のコミュニケーションの失敗と、35日間の政府閉鎖が原因だ。これらの傷は癒えつつあるものの、減税効果の薄れに加えて米中貿易摩擦、政治的不透明、世界の細分化と分極化の逆風がある。

  しかし、成長に関するこのような悲観論は堅調な労働市場が消費を支え続けているという事実を無視している。景気拡大サイクルの遅い時期にしては雇用創出は堅調で、賃金も実質ベースで伸びている。消費だけでなく企業投資も今年と来年の成長に寄与する見込みだし、減税効果は薄れても代わりに政府支出が増えている。

  比較的良好な景気見通しに加え、今回の逆イールドでは次のような点が留意される。

  欧州経済が本格的な減速に見舞われドイツ10年債の利回りがマイナスとなる中で、米国債に資金が流れるのは自然なことだった。また、米金融当局が今年の利上げ回数ゼロを想定したことで市場は早ければ12月の利下げを予想し始めた。

  社債市場では投資適格債、高利回り債がともに比較的小さなスプレッドで取引されており、景気減速を示唆していない。さらに、インフレ期待の低下は大幅な需要減見込みによるのではなく、インフレ低下要因の多くが構造的で恒久的なものだという認識が理由かもしれない。

  こうした全てが、今回の逆イールドは伝統的なリセッションシグナルでないことを示唆している。

  しかし、3カ月物と10年物の利回りが逆転した22日には米国株が下落。グーグルの検索では「リセッション」と「イールドカーブ」という言葉が急増した。逆イールドを迫り来るリセッションの前兆だと読み違える人が多ければ多いほど、株価は下落してボラティリティーが上がり、市場に流動性不足のスポットが出現するリスクが高まる。これが続けば、家計と企業の信頼感が損なわれ、企業投資の決定は先送りされ、実際に成長の足をすくいかねない。

(このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Beware Misreading Inverting Yield Curve: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWP0X6JIJUS01?srnd=cojp-v2


 
花形トレーダーの中国株ファンド、10時間で1兆円強を獲得
Bloomberg News
2019年3月25日 12:11 JST
目標60億元に対し、集まった額は700億元超と関係者
上海総合指数は年初来24%上昇−個人の投資熱が寄与
中国株の花形トレーダー、陳光明氏は、自身の新会社が初めて設定する投資信託に700億元(約1兆1400億円)を集めるのに10時間しかかからなかった。投資家がいかに中国株に夢中になっているかが浮き彫りになるエピソードだ。

  同氏が上海で運用するフォーサイト・ファンドは22日、目標としていた60億元を突破したので資金のこれ以上の受け入れを停止すると発表した。集めた額の公表はしなかったが、事情に詳しい関係者は700億元超だと述べた。うち、約200億元は中国招商銀行のプラットフォームを経由した資金という。

  中国の7兆2000億ドル(約790兆円)規模の株式市場への個人の投資熱は高まっており、上海総合指数の年初来24%上昇に寄与している。

  フォーサイト・ファンドの担当者は、資金調達の詳細についてコメントを控えた。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iLandDG2ujBI/v2/576x-1.png
Fund inflows have fueled a world-beating rally in China stocks
原題:Star Trader’s China Stock Fund Lures $10 Billion in 10 Hours (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/PORAWD6KLVR401?srnd=cojp-v2


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[経世済民131] 働き方改革「実質残業」の落とし穴、知的生産的な仕事が危ない 卒業生と若手「べからず集」 日本人が不安を解消する究極の一手

【第112回】 2019年3月25日 秋山進 :プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役
働き方改革「実質残業」の落とし穴、知的生産的な仕事が危ない!
時間感覚

月45時間の残業は
短いのか長いのか
 もうすぐ4月。働き方改革関連法が施行される。

 残業は、原則月45時間まで。これを機によい働き方に変えて、成果をあげ、健康的に生きたい。

 さて、残業上限時間についてである。45時間は多いと思う人もいるだろうが、少なすぎるのではと思う人もいるだろう。というのは、時間の感覚は必ずしも客観的なものではないからだ。

 例えば、白熱したスポーツの試合を見ているとき、あっという間に時が経つ。まだ学生の頃、私は1979年に行われた、高校野球最高の試合といわれる伝説の「箕島高校対星稜高校」の試合をレフトスタンドで観戦していた。延長18回、3時間50分の試合であるが、手に汗握るその展開に熱中していた。12回裏の島田の同点ホームランも、16回裏のファールフライを一塁手が転倒したために命拾いした森川が打ったホームランも、いまだに目の前で起こったとおりに頭の中で再現できるくらいだ。時間の経つことなど完全に忘れていた。

 仕事も同じだ。興味がわき、面白いもの。良いメンバーで、いいチームワークのもとに進められる仕事は完全に時間を忘れさせる。夕食をとりながら議論をしているはずが、気がつくと終電の時間になっていることなどざらである。体感としての時間は1時間くらいなのに、実際には時計を見ると5時間くらい経っている。

 そういう寝食を忘れるような仕事が続けば、残業などあっという間に45時間を超え、100時間に近づく。それを超えることも普通にあった。

 まことにやっかい(?)なことに、それなりに年齢の高い、しかもそれなりの成功者といわれる人はみんなこのような体験を持っている。そしてそれを誇りに思っている。熱中できる仕事、場合によってはフロー体験ともいえるような幸せな仕事は、大成功することが多い。したがって出世をした人(成果を出した人)は、このような幸せな時間=「主観的な時間は短く客観的な時間は長い」という体験を、貴重な原体験として記憶の中に持っているのである。

 では、この主観的時間と客観的時間の違いはどのように生まれてくるのだろうか。

なぜ楽しい時間はすぐ終わり
退屈な時間は長いのか
 いろいろな説があるようだがその1つによると、「主観的時間の長さ」は、「意識的情報量」 を「無意識的情報処理速度」で割ったものに相当するらしい。

 つまり、楽しい時や忙しい時には、いろいろなことを忙しく処理したり、楽しい時間を夢中で過ごしたりして、「無意識的情報処理速度」が高いと考える。すると、主観的時間は小さくなる(自分が感じる時間は短くなる)。時計で見れば実際には長時間であっても、主観的には短時間と感じるのだ。

 一方、退屈でつまらない時には、集中することができず、外部の刺激や情報に注意が向いている。些細な「意識的情報量」が増えるいっぽうなのだ。その場合は、結果的に主観的時間も大きくなる(自分が感じる時間が長くなる)。つまり、主観的に時間が過ぎるのを遅く感じるというわけである。

 このように、個人の時間感覚は、意識的に感知する情報量と無意識的情報処理能力の比によって決まるという説である。かなり自分の実感に近い。

 しかしながら、この主観的時間が短いからといって、長期間にわたり長時間労働を続けていくと徐々に調子は落ちてくる。大量の情報処理からくる疲労は脳と身体に蓄積してくる。そして体調に悪影響が出る。精神は病まずとも体が病む。体に不調をきたせば精神にも悪影響が及ぶ。好調は長くは続かない。

 最悪なのは、主観的な時間は長く(つまらない)、さらに客観的時間も長い(終わらない)仕事である。つまらないのに終わらない……これはつらい。精神と体のどちらも病むのは必定だろう。会社はこれらの仕事を根絶しなければならない。

 関係のない会議にむやみに人を集めることをやめ、適材適所を進め、さらにはAIでもRPAでもなんでもよいから、意味を感じられない仕事を撲滅しなければならない。本来働き方改革の本丸はここにある。

仕事をしていなくても
知的生産する潜在意識の働き
 仕事と時間に関しては、もうひとつ別の観点がある。直接的、顕示的に仕事をするのではなく、潜在的に行っている仕事があるのだ。

 知的生産のためのバイブルともいえる『アイデアの作り方』(ジェームズ W.ヤング著、CCCメディアハウス刊)には、いかにして優れたアイデアを生むかについての秘訣が書かれており、世界中の知識人がこの本の手法を実践してきた。ヤングはこう述べる。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

 本の内容を要約すると、以下のようになる。

1)まずは考えたい問題について、あらゆる資料、情報を徹底的に集め、読む。

2)新しいアイデアはアイデア同士の掛け合わせなので、集めた材料同士の組み合わせを幾通りも考えてみる。集めた材料を、パズルを一つひとつ触るように確かめ、見る方向を変えてみたり、置き方や並べ方を変えてみたり、加工したりして、いろいろな関係の可能性や関連性を探る。

3)あれこれ試行錯誤したら、すべて忘れる。放棄する。忘れているあいだに潜在意識のなかでアイデアが孵化する。

 このようにして十分発酵させると、無意識のうちに、自然に機が熟して新しいアイデアがふとした瞬間に生まれるというのが本に書かれた手法である。

 さて、問題は3)の寝かせておく時間である。当人の意識からは消えるが、実際には頭のどこかで潜在意識が一生懸命仕事をしているのだ。コンピューターでいえば、バックグラウンドで勝手に動いているプログラムである。見えないけれど、実際には動いているから、なにかのきっかけで突然アイデアがひらめく。では、この人が潜在意識で動かしている時間は労働時間ではないのだろうか。

 優秀な人になると、こういった潜在意識下で何本ものプログラムを走らせている。しかし、これを労働時間と認定するのは難しい。外から見る限りでは働いていないから(自覚もないし)労働時間と認定はできないものの、実際には(間違いなく)働いているのである。

 こういう働き方をする人のほうが、そのときだけ考える人よりも明らかに知的生産のレベルは高い。ただ、これを労働時間にするかといわれると、その実在性が証明できないからカウントできない。
 
 表向きは会議に出ながら、今晩どの飲み屋に行こうかと考えている人には、会議に出ている時間を労働時間と計測することでお金を払える。しかし、無意識ではありながらも、仕事の成果に向けて生産的に動いている脳の働きに対してお金を払うことは難しい。

 知的生産の仕事は、やはり時間で測るのには向いていないのだ。

 時間と仕事の関係についてはまだまだ試行錯誤と改変が続くだろう。今回の改革をポジティブな結果をもたらすための第一歩としてとらえたい。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)
https://diamond.jp/articles/-/197734

 


 

 
前向きに読み解く経済の裏側

大学卒業生と若手サラリーマンに贈る「べからず集」

2019/03/25

塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

 今回は、久留米大学商学部教授の塚崎公義が、大学を卒業する学生に贈った「べからず集メッセージ」を御紹介します。若手のサラリーマンにも読んでいただければ幸いです。


(gyro/Gettyimages)
雛が飛び立てば辛いことも多い
 卒業おめでとう。と言った後の言葉が難しい。高校の卒業式や大学の入学式では、「これから自由な時間がたくさんあって、大学は楽しい所だ」という明るい話ができるのだが、大学の卒業式はそうではない。「これまで自由な時間がたくさんあって楽しかっただろうが、これからは違う」という話をしなければならないので、話す方も辛いのだ(笑)。

 しかし、物は考えようだ。君たちは、これまで「親や社会に育ててもらっている子供」だったのが、晴れて大人の一員となったわけだ。巣の中で親鳥からエサをもらっていたヒナが、自分でエサが獲れるようになったのだ。これからは、巣から飛び立って自分でエサを獲るのだ。これは素晴らしいことだ。

 もちろん、巣の中で待っているヒナと比べれば、苦労も危険も多いが、それが一人前になるということだ。しっかり大人としての仕事を頑張って欲しい。

辞める前に次の仕事を確保せよ
 仕事は辛い。当然のことだ。職場が遊園地のように楽しかったら、給料をもらう代わりに入場料を払わなくてはいけないはずだから。仕事自体が大変だということもあろうが、社会人が辛いのは、上司や顧客が選べないということだ。

 学生時代のアルバイトも、金をもらって働く以上は辛かったはずだが、アルバイトは、嫌なら辞めれば良いだけだ。特に今は景気が良いので、次のアルバイトが簡単に見つかるので、辞めないで我慢をする理由がない。

 しかし、正社員は違う。辞めてしまえば、せっかく辛い就職活動の結果として得られた仕事を失ってしまうのだ。それだけではない。日本の会社は履歴書に空白期間がある人物を採用したがらないのだ。他の会社で働いている正社員が転職しようと思えば採用してくれるかもしれないが、失業者あるいは非正規労働者(アルバイトなど、正社員でない人)が就職しようとしても、採用される可能性は低いのである。

 そこで、是非覚えておいて欲しいのは、「辞表を出す前に次の仕事を確保しろ」、ということだ。入社した先がブラック企業であったり、上司にパワハラされたり、様々な理由で辞めたいと思うことがあるだろう。多少の事は我慢すべきだが、そうは言っても我慢できないこともあろう。そういう時には、辞めて転職するのも選択肢の一つだが、その際に絶対に覚えておいて欲しいのが、次の仕事の確保である。

 上司と大喧嘩をしても、決して口にしてはいけないのが「こんな会社、辞めてやる」である。その言葉は飲み込んで、転職活動をしよう。「次の職場が見つかりさえすれば、嫌な上司に辞表を叩きつけてやれるのだ」と思えば、転職活動にも熱が入るだろう(笑)。

詐欺にはくれぐれも注意
 若者は、詐欺師のターゲットになりやすい。警戒心が薄いからだ。中年になると、若者より金は持っているが、自分が騙された経験があったり知人が騙された話を聞いたことがあったりするので、警戒心が強く、騙しにくいのだ。

 詐欺に遭わないためには、常に警戒心を持っていることが重要であるが、私が強調したいのは、「相手の立場に立って考える」ということだ。仮に君が「絶対儲かる投資の話」を知っていたとしたら、見知らぬ若者に教えてあげるだろうか? 教えてあげないはずだ。そうだとすれば、君に絶対儲かる話を教えてくれる人は、よほどのお人好しか詐欺師だろう。

 余談であるが、「相手の立場で考える」というのは、ビジネスの社会でも役に立つので、覚えておいて欲しい。「ライバルが何をされたら一番困るか」「どういう品揃えをすると客が衝動買いをしたくなるか」といったことを、ライバルや客の立場に立って考えてみるのである。

高金利の借金は怖い。リボ払いやキャッシングに注意
 奨学金と住宅ローン以外の借金は、本当に必要な時だけにしよう。友達からの借金は、人間関係を壊す場合が少なくないので、財布を忘れた時に電車賃を借りる程度は構わないが、それ以外は絶対に避けよう。

 反対に、友達に金を貸すのもやめよう。それで友達を失ったという話は数多く耳にしているので。もしも友達に金を貸したいなら、形式は貸出でも、心の中では困っている友達にカンパしよう。つまり、返ってくる事を期待しないということだ。それなら、返って来なくても友人関係は損なわれないし、返ってくればそれに越したことはないのだから。

 借金で怖いのは金利だ。「消費者金融は高金利で怖い」と思っている人は多いだろうが、カードローンやクレジットカードのリボ払いも、同じくらい高金利で怖いものだ。

 「1万円借りても毎日の利払いは5円だけです」と言われると気楽に借りたくなるが、毎日5円の金利を支払い続けると、1年間で1825円、10年間で18250円プラス閏年分の金利を支払うことになるのだ。

 もちろん、「明日までに手術代金を払わないと親が病気で死んでしまう」という状況であれば高金利でも借金をすべきだが、それ以外の場合には高金利の借金は極力避けるべきだろう。

保険は本当に必要かを考えて
 「社会人になったのだから、一人前の大人として生命保険くらい加入しておかないと」などと言われて、生命保険に加入する新入社員が多いと聞くが、本当に保険に加入する必要があるのだろうか。

 万が一、独身の新入社員が死亡したとして、悲しむ人はいるだろうが、路頭に迷う人がいるだろうか。親を養っている新入社員は別として、そうでない限りは生命保険は不要だろう。

 生命保険というのは、客が払った保険料の中から保険会社のコストや利益が出ているわけだから、客全体としては損をしているわけだ。それでも生命保険に加入する必要があるのは、「自分が死んだら路頭に迷う人がいる」という場合だろう。「何となく加入しておくと安心だから」という事で加入するのはやめておこう。

困った時は188番に相談しよう
 学生時代は、困ったことがあったら学生課に相談すれば良かったが、これからは犯罪は110番に、火事や急病は119番に、金のトラブル等は188番に電話しよう。

 188番は、消費者ホットラインと呼ばれるもので、電話をすると、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を紹介してくれる、頼もしい存在だ。「イヤや!」と覚えておこう。

 以上、卒業式にふさわしく無いことを色々と述べたが、最後にもう一度「卒業おめでとう」と言っておこう。君たちの人生が素晴らしいものであることを祈っている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15733


 

【第23回】 2019年3月25日 野田 稔 :明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授
心配性の日本人が不安を解消するための「究極の一手」

毎年、厄除けに行かないと、何か悪いことが起こるのではないかと思うようになっていませんか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA
「厄年という呪縛」は
日本人に共通のものだろうか?
 世界の中でも日本人は心配性な国民だといわれます。

 しかし、若い頃の私は、そんなこととは無縁の男でした。目先では慎重なこともありましたが、先々には楽観的でした。自分には基本的に不運は訪れず、努力次第でいかようにも明るい未来は開ける、と感じていました。

 ところが42歳、つまり男の厄年になると、何があったわけでもないのに厄除けのお参りに行く自分がいました。

 特に本厄のお参りは、一種、行事的なところがあります。多くの人が行うことであり、取り立てて変わったことではありません。しかし私の場合はそれ以来、毎年その時期になると、厄除けで有名な寺にお参りをしなければ気が済まなくなってきたのです。

 いつの間にか、自分は不安を意識する人間になっていました。厄除けに行かないと、何か悪いことが起こるのではないかと思うようになっていたのです。

 なぜだろうかと考えました。「そういう年齢になったのだ」と、言ってしまえばそれまでかもしれません。齢も重ねてきて、守るべきものも増えてくる。個人差はありますが、徐々に体力の衰えも感じ始め、健康や経済面、あるいは自分の居場所など、将来の様々な不安にかられます。永遠だと思えた自分の人生に有限を実感します。

 多くの人がそうなのだろうと思います。

 そもそも冒頭に記したように、日本人は遺伝学的にとても不安要素の強い国民だといわれます。生物学的な話をすれば、いくつかある脳内物質(ホルモン)の中で、3大脳内ホルモンといわれるものがあります。

 それは、セロトニン、ノルアドレナリン、そしてドーパミンです。

 セロトニンは不安感を抑え、楽観性を増す脳内物質です。精神を安定させる物質です。ノルアドレナリンは興奮や覚醒をつかさどる物質で、これが多いと活動的になります。最後はドーパミン。新規探索志向、つまり好奇心の源といわれる物質です。

 このうち「不安」に直結する物質がセロトニンですが、セロトニントランスポーターという運搬役があって、セロトニンを回収し、再利用するのだそうです。

 このトランスポーターの型を決める遺伝子があり、その型の分布が人種によっても大きな違いがあるといわれます。

 遺伝子の型によって再利用の効率が違ってくるので、その結果、セロトニンの働きに違いが出てくるわけです。働きが悪いと、不安感が強まるということになります。

 セロトニントランスポーターの遺伝子にはS型とL型の2種類があり、その組み合わせによってSS型、SL型、LL型の3タイプに分かれます。これを日米で比較してみると面白いことがわかりました。

 日本人はSS型が全体の7割近くを占め、LL型は数%しかいないそうです。対して米国人はLL型が多数で、SS型は極端に少ない。結果、日本人は慎重派、悲観的で緊張しやすい人が多く、米国人にはストレス耐性が高く、楽観的な人が多いということがいえるそうです。

 そうしたことを考え合わせると、厄年を過ぎて慎重になる、不安を覚えるというのも、日本人として致し方ないことなのかもしれません。

 雄大な大陸を背景にした米国民と、地震や噴火、台風といった自然災害の多い島国に住んでいる日本国民の違いという見方もできるかもしれません。いずれにしても、不安な心とどう付き合っていくかは、特に日本人、中でも私たちのような年齢になった人間にとっては大切な課題なのだと思います。

験担ぎも前向きな願掛けから
いつの間にか変質してしまう
 日本人には験を担ぐ人が多いようにも思います。例えば、毎朝、最初の一歩は必ず左足から出す、ズボンやスリッパも左足から履くとか。昔、流行ったことですが、タバコの封を開けた時に、トントンと指で叩いて出てきた1本を抜き出して反対にしてもう一度入れ直し、その1本は必ず最後に吸うとか。

 私にもいくつか担ぐ験があります。ただ、それがどんなことかをあまり他人に言うべきではないと聞いたことがあるので、ここではその内容は述べないことにします。あ、これこそ験担ぎですね(苦笑)。

 とにもかくにも、なぜ験を担ぐのかについても考えてみました。

 それでわかったことがあります。験担ぎは若い時からそれなりにやっていたと思い出したのです。ただし若い時の験担ぎは、いいことが起こるようにといった、いわば「願掛け」でした。たぶん、何かを偶然した時に、いいことがあった。だからその何かを習慣化しようとしたのだと思います。それこそが「験担ぎ」の本来の意味だと思います。

 ところが、厄払いを意識し始めた頃から、私の験担ぎの意味も変わってきました。それまでは「具体的ないいことがあるように…」という願掛けだったものが、いつの間にか、「漠然と悪いことが起こらないように…」と願う習慣に変わっていたのです。

 お参りもそうですが、験担ぎも、決して悪いことではありません。それが負担にならず、気が休まるならば、それは続けるべきだと私は思います。

 ただ問題は、何事もそうですが、度を越してしまった時です。

 人間、不安感が強くなると、悪あがきを始めます。どんどん深みにはまって、いわゆる「ドツボにはまる」ことになっていきます。

 それはよくありません。精神状態をよくするための行動によって自分が拘束され、むしろ精神が苛まれていく結果になってしまいます。

イメージできれば、
その状態をマネージできる
 不安症候群のようなものに襲われてしまった時は、一般には認知行動療法がいいといわれます。別名、論理療法です。自分が不安に思うもの、その源泉は何なのかということを論理的に解明していく方法です。原因を具体的に突き止められれば、その原因を取り除けばいい。たとえ簡単に取り除けないとしても、どうすればリスクを減らしていけるのか、どう行動すればいいかがわかります。また、その結果、あり得る最悪の状況を考えて、その状況は回避できるようにすることもできるでしょう。

 場合によっては、最悪の結果になったとしても、「この程度の被害で済むのか」と分かり、安心できます。

「不安は明確化すると課題に変わる」ということです。

 イメージできないものはマネージできません。逆に言えば、漠とした不安だから対処できずに、ただただ怯えてしまう。その姿形をしっかりと思い描くことができれば、多くの場合、対処できるようになります。たとえ、そのリスクを完全に取り除くことはできなくても、可能性を減らしたり、衝撃に備えたりすることができるはずです。

 イメージできれば、その状態をマネージすることができるわけです。

 この考え方は当然、正しいと思います。ただし、万能とまではいえません。私もこうした認知行動療法を行いますが、残念ながらそれだけで不安がすべて解消できるわけではありません。解明しようにも、しかとイメージできない漠とした不安というものもあります。

 そこで今回の“究極の一手”です。

 不安な心と向き合う方法として、「和魂洋才」を活用するのです。西洋の論理的・科学的方法論と、東洋の知恵をバランスよく組み合わせて使いこなすのです。

 最近の医療現場で、西洋医学と東洋医学を上手くミックスした混合医療の重要性が説かれるのと同じです。東洋医学の知恵の多くは、反科学ではありません。科学ではまだ解明できていないことも経験値で鷹揚に取り入れているのです。

 つまり、イメージできる不安の源泉は論理療法で解明し、しっかりと対応すればいいのですが、それでも解明できない漠とした不安には、神頼みも験担ぎも有効であると言いたいのです。

 未知のものには未知のもので対処する。その鎧が自信につながり、安心につながるのであれば、それを否定する必要はありません。

 そう思えるようになって、「こんなことをやっていて意味があるのか?」と考え始めた私の考察も、巡り巡って「意味がある」という結論に達しました。

 西洋流の論理的アプローチにも限界はあるのです。論理で解明できる不安は、人間が背負い込む不安の一部にすぎないのです。

すべてにおいて必要なのは
バランス感覚である
 ただ、注意すべきは常にバランスを崩さないことです。論理も神秘も、行きすぎは禁物です。どちらも行きすぎれば取りつかれ、病的変質に至ります。

 論理的すぎれば、論理を逸脱します。神頼みも験担ぎも、意識せずにそれが心地よいうちはプラスですが、不安感が増すことで、何とかそれに対処しようと何でもかでも意識して行うようになると、危険です。

 私も一時期、担ぐ験がどんどん増えていた時期がありました。次から次へと様々な験を担ぐようになって、そんな自分に疲れ始めたのです。神経質すぎたり、潔癖すぎたりして疲弊してしまうのと似ています。

 そうなるとどうでしょうか?疲弊する上に、むしろ不安はどんどんと増していきます。たった1つでも験を担ぎ忘れた不安に、がんじがらめになっていきます。そもそも験を担ぐとは、先述したように、そうすればいい結果になったという経験からその行為を習慣化することであるはずなのに、むしろ脅迫概念になって、それをしないと悪いことが起こると強く思い始めるようになります。

 心の病一歩手前の状態です。

 そうなり始めたらどうすればいいのでしょうか。窮地に追い込まれた私が試みたのは、ショック療法です。意識して、1つひとつ験担ぎの呪縛の鎖をほどきにかかるしかありません。清水の舞台から飛び降りる覚悟で「やらないようにする」のです。例えば朝起きた時に、これまでとは違う足から一歩を踏み出すようにします。

 大げさだと思われるかもしれませんが、それほどに呪縛は強いものです。

 そうやって1つの習慣をやめて、数日様子を見る。何も悪いことは起こらない。日常は何も変わらないということを確認して、次の験をやめます。そうやって1つひとつ験担ぎをほどいていきます。

 今度はやめることの習慣化ですが、すべてやめる必要はありません。負担にならない行動、昔から真に習慣化している行動までやめる必要はありません。要は、自分の気持ちが楽になればいいのです。

「和魂洋才」の考え方、生き方は常に重要です。何事も行きすぎはいけません。バランスのよい人生こそが最強です。そのためにも、どちらにも偏りすぎずに和と洋のいいとこ取りをしてみてください。

 科学的アプローチも論理的思考も、神頼みも等しく使いこなしてこその「気持ちの良い人生」ではないでしょうか。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/677.html

[経世済民131] 異動シーズン、転勤はサラリーマンの宿命なのか「転勤制度」の正体 出張オジサンの密かな楽しみ ハト派ドミノ利上げ停止も米3
迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

異動シーズン、転勤はサラリーマンの宿命なのか
「転勤制度」の正体 
2019/03/25

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)


iStock / Getty Images Plus / Qvasimodo
 3月は転勤シーズン。顧客企業から異動の挨拶が殺到し、経営コンサルタントとして事務対応に忙殺されるシーズンでもある。昇格の栄転で意気軒昂たる人もいれば、行きたくもない転勤先を知らせる辞令に愕然とする人もいる。感情を露にすることを得意としない日本人でも、その書いたメールの行間を読めば、やはり言葉の端々に感情が滲み出るものだ。転勤はサラリーマンの宿命なのだろうか?

私は「転勤」でサラリーマンを辞めた
 私も転勤に苦い思い出をもつサラリーマンの1人だった。20年前、香港駐在中に日本への帰任辞令を受け取ったとき、ひどく落ち込んだ。海外の仕事が大好きだった。努力よりも結果、業績しか評価しない外国人上司は鬼のように厳しかったが、業績に追われる地獄のような日々に自分の価値を見出すことで無上の幸福を感じ、そして上司に感謝していた。

 帰任してみると、東京の職場は体育会系で厳然たるタテ社会の人間関係が存在し、数日も経たないうちに、「先輩を崇拝せよ」と冒頭に書かれた「職場の鬼の十カ条」たるメモを握らされた。仕事もやりたい仕事ではなかった。日々の出勤は苦痛でしかなかった。それがいずれ心の病につながるだろうと感じずにいられなかった。そのような状態で、自分も会社も満足できるパフォーマンスなど出せるはずもない。

 結局のところ、私の東京勤務は半年しかもたなかった。辞表を出して海外に舞い戻った私はついに天職と巡り合い、19年間経営コンサルタントの仕事を続けてきた。そういう意味では当時、「強制的」な転勤がなければ、私の人生はまったく違うものになっていただろう。

 最近、個人的な相談をよく受ける。脱サラして海外に飛び出して起業したいという若者の相談がほとんどだ。「日本国内の閉塞感が嫌で、海外で一旗挙げたい」というセリフに私は大体こう答える。「その閉塞感の中身とは何か、いま一度点検しよう」。というのは、閉塞感たるものにはある種の「守り」から来ている部分も含まれている可能性があるからだ。

「過保護」に起源する制度は時間の経過や外部要因の変化によって硬直化が生じ、それが進行して閉塞感につながる。そこで閉塞感を打開すべく、その制度から飛び出したところで、いままで受けてきた「保護」も同時に失われる。この副作用に耐え得るのか、自己耐性のチェックが必要になる。

「タテ社会」の人間関係による損得勘定
「先輩を崇拝せよ」と冒頭に書かれた「職場の鬼の十カ条」たるメモをもう一度考えてみよう。それを一方的に批判するだけでいいのか。

 上位者を崇拝することは、上位者を無条件に信用することだ。思考停止をも意味する。しかし、思考停止すなわち悪かというと、そう簡単に答えは出ない。論理的な議論をやめ、上位者に無条件に従う代わりに、上位者が守ってくれる。タテ社会の人間関係からは一定の秩序が生まれる。それが構成員に利益をもたらす場面も多々ある。いや、その利益目的でタテ社会の人間関係がつくられたのかもしれない。

 日本人が善とする「安心」や「保障」もある意味で、このタテ社会の人間関係から生まれている。たとえば、日大アメフト部の悪質タックル事件を例にしよう。2018年5月29日、日大アメフト部の部員たちは声明文を発表した。そのなかに、こんな一節がある――。

「これまで、私たちは、監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまいました。それがチームの勝利のために必要なことと深く考えることもなく信じきっていました」(参照:観客席の悲劇、日大アメフト事件の本質をえぐる)

 これはまさにタテ社会の人間関係の写実である。先輩や上司の指示について、それが正しいことかを考える余地がない。論理性どころか、善悪を基本的な倫理観で判断することすら本能的に放棄している。先輩や上司を崇拝する典型的な表現である。

 崇拝とは神を信仰する宗教次元の話である。宗教は信ずること、哲学は疑うこと。信じてからは疑えない。疑ってはじめて信じ得る。疑うことは、信じ得る根拠を得るための前提だ。しかし、タテ社会の人間関係はある意味で、哲学を排斥し、宗教を第一義的に捉え、「信じる」ことを善とする。

 上位者に対する信用や従属と引き換えに保護を受ける。見返りに利益や福利が期待される。日大アメフト部の部員たちいわく「深く考えることもなく信じきっていた」、そこに表出される思考停止の現象もこの法則とぴったり一致する。

 さらに、上位者への無条件の従属という延長線上で、上位者が指示や意思表示を明言しなかった場合には、「忖度」の必要性が生じる。忖度は一種の「思考」であるが、ただしその正体は物事に対する論理的思考や倫理的判断ではなく、上位者の本音となる意思を推し量る作業にすぎない。

 明示された上位者の指示に従う「低次・顕在的従属性」と、黙示された上位者の意思を忖度する「高次・潜在的従属性」という複合的従属性によって、組織内における保護や利益・福利を受ける度合が決まるというのが、日本式タテ型社会のメカニズムなのである。俗にいうと、「上のいうことを聞けば出世する」という仕組みだ。

転勤制度の正体とは?
 転勤制度は、「低次・顕在的従属性」グループに属し、日本企業の正社員制度の基盤である。

 正社員の雇用といえば、解雇しない(できない)ことが大前提になる。ただ、いくら正社員だからといって全員が優秀で定年まで勤め上げるとは限らない。どうしても適格ではない社員が出てくる。そうした社員を解雇できない場合、何らかの方法で調整する必要が生じる。そこで「人事権」の出番になる。

「人事権」とは何か。人事権という概念は、法律概念ではなく、法律によって直接定義されている権利ではない。雇用者である会社は、労働契約等に基づき、労働者の配置や異動・配転、賃金調整、人事考課、昇進・昇格・降格の権利を有すると解される。その権利を「人事権」という。

 実は「解雇権」も広義的属性において、人事権の一部として解釈され得るが、解雇行為との相互関係を比較するうえで、意図的に切り離して解説したい。したがって、拙稿における「人事権」とは、労働者の雇用期間中における地位や処遇の変動に関する雇用者である企業の一方的決定権限という限定的解釈を用いている。

 日本企業は実務面において、正社員に対して「解雇権」をもたない代わりに、広範な「人事権」を有している。転勤を含む異動の辞令を会社が基本的に不自由なく発令できるのは、その表れである。一種の「give and take」たる「対等の取引関係」とさえいえる。転勤制度は「低次・顕在的従属性」グループに属している以上、社員は原則として辞令を拒否することができない。ただ、法律面で社員が転勤命令に対して拒否権を有しているか否かは、ケースバイケースで複雑な問題であり、詳述を割愛する。

 雇用慣習や企業運営の基本的メカニズムとして、社員がもしこの種の「低次・顕在的従属性」を拒否した場合、つまり終身雇用制度上の基本的権利義務を拒否すると見なされるだろう。そこでたとえ転勤命令を拒否して即時解雇されなくとも、後日に受け得る人事上の不利益、特に潜在的不利益を覚悟しなければならない。これを、この種の「give and take」を素直に受け入れた社員との不公平を回避するために付される「バランシング制裁」として捉えれば、不当とは思えない。

 戦後の高度成長期を背景とする正社員終身雇用制度の一部として生まれた転勤制度は、その合理性と正当性を有していた。しかし、日本の「終身雇用」は崩壊しつつある(参照:崩壊に向かう日本の「終身雇用」)。それは「約束手形」の不渡りを示唆するものである。終身雇用を保障できないとなると、「give and take」という関係における双務性が崩れる。であれば、会社が社員に人事辞令を発し、一方的に転勤・異動させることもできなくなるはずだ。

 したがって、終身雇用メカニズムの希薄化には、転勤制度も同期して弱化されなければならない。数年後の日本は、3月の「転勤ラッシュ」が完全に消えるまでいかなくとも、風物詩たる地位を失うかもしれない。

連載:迷走する日本の「働き方改革」への処方箋
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15730
崩壊に向かう日本の「終身雇用」

2019/03/06

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 日本は資源国ではない。胡坐をかいているだけでは食べていけない。日本人には勤勉要件を課されている。勤勉でさえあれば、将来という「約束手形」が保障されている。(参照:日本人に襲いかかる「経済的不安」の正体とは?)。しかしながら、バラ色の時代は終わった。


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ジャパン・アズ・オンリーワン
「約束手形」制度とは、将来の分配に供される資源が保障されていることを前提としている。この前提が崩れると、手形の現金化が難しくなり、「約束手形」の不渡りリスクが高まり、日本社会で善とされる「安全」や「安心」も毀損される。ところが、世界を見渡しても、「約束手形」制度がある特定の時期に成功を収めたのは日本くらいしかないことが分かる。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ではなく、「ジャパン・アズ・オンリーワン」なのであった。

 私はアジアで長く経営コンサルタントの仕事をやってきたが、こんな制度を見たこともない。現地の人に聞いても、「約束手形」によって将来が保障されるなど想像すらできないし、たとえそれがあっても絶対に信用しないというのである。

 しかし一方では、非常に面白いことに、現地に進出した多くの日系企業は、日本本社の人事制度をそのまま持ち込んで使っているのである。つまり日本型の正社員終身雇用制度もどきの「約束手形」制度を現地で実施しているということだ。

 私はそうした日系企業の日本人経営トップにいつも少々意地悪な質問をする。「貴社は日本以外の海外拠点でも、終身雇用制度なのですか」。すると、十中八九は答えないか、言葉を濁すかで逃げるのである。そこでさらに掘り下げる。「海外で終身雇用をやってもいいのですか」……。さすがにこれ以上続けたら、敵視されかねないので、この辺で打ち止めにする。

 現地の雇用慣習はさておき、日本企業をはじめとする外国企業に限っていえば、途上国や新興国に工場をつくって操業したり、製品を販売したりするのは、安い人件費や市場のポテンシャル目当てであろう。状況が変われば、次の地域へ移動する。というのも、フロンティアを求めるのが資本主義の本質であるからだ。このような流動性を前提に終身雇用云々を語れるはずがない。そこで日本型の正社員終身雇用制度を導入したところで、高い確率で問題になる。ときには深刻な問題が起こる。

「終身雇用制度もどき」の災い
 日本型の終身雇用制度には3つの大きな特徴がある――。解雇しない(できない)こと、定期昇給(昇格)をすること、定年退職金が出ること。

 アジアなどの海外、特に新興国や途上国に進出した日系企業のほとんどは、現地で解雇しないことと定昇することの2項目だけは忠実にやっている(欧米企業よりはるかに温情的な雇用政策を取っている)ものの、退職金を出す企業は皆無に近い。なぜなら、現地拠点は一種の時限措置としての出先に過ぎず、いつその国から出るか、次はどこに移るかも分からないからだ。むしろこれは至極真っ当な経営判断ではあるが、問題は3分の2しかやっていない不完全終身雇用制度が引き起こす副作用にある。

 たとえばアジアの場合、ほとんどの国では慣習的な終身雇用制度がなく、その代りに法制度による厳格な解雇制限(シンガポールや香港などを除外)が課されている。これは日本の終身雇用と本質的な違いがある。生涯視野の「約束手形」ではなく、強制された「現金取引」に近い雇用関係なのである。

 さらにいえば、現地人従業員はこの点についてもよく理解している。彼たちはあえて日系企業に終身雇用の問題を提起しない。とりあえず目先の3分の2でも制度もどきでもいいから日本型終身雇用の「現物(現金)特典」を享受しながらも、「約束手形」にはかけらほどにも期待していないのである。

 一方で、日本人経営者だけは蚊帳の外に置かれ、「現物特典」を年々積み上げ、従業員の既得権益を肥大化させながらも、賃金支払額と生産性が乖離する年長従業員、特にそのうち一部モンスター化した従業員や管理職を目の当たりにしても、なす術がない。

 海外との対比事例から、日本型の終身雇用を中核とする「約束手形」制度の特異性が明らかになり、日本の常識が世界の非常識であることが示された。

日本の終身雇用の本質とは?
 法律上における「終身雇用」とは何を指しているのか。これを理解するために、海外の労働法令と比較してみよう。

 まず、日本の「労働基準法」第14条第1項「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない」

 次に、中国「労働契約法」第14条「無固定期間労働契約とは、雇用単位(訳注:使用者)と労働者が終了の時の確定がない旨を約定する労働契約をいう」

 最後にベトナム「労働法」第22条第1項a号「無期限労働契約とは、当事者双方が契約の期間および効力を終了する期限を確定しない契約である」

 この通り、日中越の労働法においていずれも、「終身雇用」という概念が使われていない。「終身雇用」は法的概念ではない。どうしてもというのなら、「終了の時(期限)の確定がない雇用」、あるいは「期間の定めのない雇用」である。つまり、「無期雇用」のことである。

 中国やベトナムの無固定期間や無期限労働契約は、雇用期間の長短という「量」の次元にのみ明示規定されている。これに対して、日本の場合は、雇用期間の長短という「量」に関係なく、企業と従業員の終身における「心理的契約」という「質」の要件が黙示されているのである。つまり雇用終了の出口(通常、定年退職を指す)について心理的な契約によって「約束手形」たるコミットメントがなされているのである。

終身雇用制度が崩壊したとき
 高度経済成長とバブル期を経て、今日の日本では、「約束手形」の現金化はすでに資源や財源が不足する状態になっている。その解決策というと、終身雇用制度に終止符を打つという選択肢がまず浮上する。

 実際に昨今の日本では、終身雇用制度ははたして機能しているかというと、結論的には「崩壊しつつある」よりも、一部の企業ですでに「崩壊している」様相を見せている。就業規則上では定年60歳となっているが、業績悪化を受けて早期退職や希望退職を募るケースは年々増加の一途をたどっている。いずれも「約束手形」の財源不足に起因する不本意な措置とみていいだろう。

 リストラ、あるいはリストラに近い非自発的な退職は日本社会でまだまだ、ネガティブに捉えられている向きが強い。社会全体に転職に有利なシステムも整備されていない。転職率は欧米に比べると低く、1つの企業に長期にわたって勤務し続けるという働き方を好む人が大多数である。このように、現時点では終身雇用制度の完全崩壊について、日本人は心の準備ができていないといってもいいだろう。

 そもそも、終身雇用制度の完全崩壊とはどんな状態なのか。単純化してしまえば、正社員制度の崩壊、つまり1億総非正規雇用化である。日本人は親しみのない完全競争社会に放り込まれ、日本社会の普遍的価値観に照らして善とされない「弱肉強食」現象と共存していかなければならなくなる。

 私自身も日系企業から欧米系企業への転職経験をもっている。欧米系企業に入った当初の1年は地獄のような世界だった。上司には即時成果の提示を迫られる一方、先輩はまったく仕事を教えてくれない。温情あふれる日系企業とサバイバル重視の外資、対照的な職場にストレスを感じずにはいられなかった。

 終身雇用制度の完全崩壊とともに、日本社会にこのような競争メカニズムが果たして定着するのだろうか。

連載:迷走する日本の「働き方改革」への処方箋
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15541


 

「出張」するオジサンの密かな楽しみ、新幹線の席取りから夜の街まで

出張は大変だが、密かな楽しみでもある(写真はイメージです) Photo:PIXTA
多い人の場合は月に何度もある出張。年をとるに従って、長距離移動がしんどくなるものではあるが、とはいえ出張ならではの楽しみもある。いや、ささやかな楽しみぐらい、見つけたい気持ちになる。出張中のビジネスパーソンだって小さな自分だけのご褒美があって、いいじゃないか。(取材・文/フリーライター 藤井弘美)

ちょっとした非日常へ
出張は“命の洗濯”
 出張は日々の業務の一環である。出張先で行われる予定の会議、視察、研修、コンペといったタスクは場合によってはプレッシャーであり、出かける前から胃がキリキリと痛んで憂鬱に感じることもあろう。

 しかし、なんといっても出張である。口うるさい上司やみっともないところを見せられない部下、そして家庭すらももはや出張に赴いたおじさんを縛りはしない。普段の環境から解き放たれたおじさんの可能性は無限大である。

 とはいえ、あまり大きく羽目を外すつもりもない。

 出張はあくまで「仕事」であるからしてサラリーマンとして、また家庭人として培ってきた良識にのっとった範囲で、束(つか)の間の小さな自由をささやかに楽しみたいだけなのだ。小学生の頃あれほど楽しみだった遠足よりも、ひょっとしたら出張の方が待ち遠しいかもしれない。毎日精神をすり減らして仕事をがんばっているのだ、少しくらい出張を楽しみにしたって罪はないはずである。

 さて、出張の「ささやかな楽しみ方」にはどのようなものがあるのだろうか。中年男性を中心とした聞き取り取材を行ったので、その結果をご報告したい。

移動は旅の醍醐味
新幹線・飛行機はお楽しみの宝庫
「いざ出張に赴かん」として、自宅や会社の扉を開いた瞬間から出張は始まる。心なしか、歩を進めるおじさんの背中に翼が生えているように見える。

 目的地へ向かう手段には主に新幹線か飛行機を用いることが多い。無事乗車・搭乗を済ませて座席に体を沈め、人によっては革靴を脱ぐなどすればそこから数時間、誰にも邪魔されることのない極上のプライベートタイムの始まりである。

「新幹線に乗るときは必ず駅弁を買う。どの駅弁にしようか悩んでいる時点ですでに幸せ。

 ビールも欠かせないが、『そのあと仕事が入っていなければ』という条件付き。だから日帰りの出張の際は、ビールは帰りの車中だけ」(42歳男性)

「新幹線は景色を眺めるのが楽しみで、東海道新幹線なら好きなポイントを完全に把握している。なので、(富士山などが見える)E席を確保するために出張が決まった時点で予約を入れる。見どころは富士山、大井川、伊吹山など。

 桜の季節はかなりの時間窓外を見ていて、『日本って本当にきれいな国なんだな』と改めて思わされる」(35歳男性)

「新幹線移動中は『仕事中』という自覚があるけれども、自分の時間として使えるところがいい。普段はデスクで電話や来客応対、上司の呼び出しなどでよく作業が中断させられるから、新幹線ではここぞとばかりに仕事のメールを返すことができて、それがありがたい」(37歳女性)

「慢性的な睡眠不足なので、移動といったら必ず昼寝。f分の1ゆらぎも手伝って最高の睡眠を取ることができる。目的地が着く直前に起きて準備。下車して少し歩けば頭がスッキリして、それから始まる仕事への意欲すら湧いてくる」(38歳男性)

「海外に出張に行くことが多く、飛行機は長時間同じ場所でじっとしていなければならないのであまり好きではありませんが、唯一の楽しみは映画です。まだ国内では公開されていない話題作を先取りして見ることができるので、お得な感じがあります」(46歳男性)

 車内・機内のアナウンスが目的に近づいたことを告げる。身の周りを手早く片づけたおじさんは、「その日それから何をするのか・すべきか」についてのプランニングを始めているはずである。自宅と職場から距離的にかなり遠いところまで来た。一抹のアウェー感を覚えるが、それが嫌いではなかった。おじさんは荷物を手にして立ちあがった。

誘惑盛りだくさんな夜の街
お昼に時間があれば観光も
 目的の駅・空港に着いたら今度はスーツケースを引いて次の目的地へと移動しなければならない。それから仕事に取り掛かる人もいれば、前乗りでホテルにチェックインをする人もいるだろう。

 夜の街は地方ごとに特色があって面白い。その特色を満喫しようという心意気は、その街に対するリスペクトの表れでもある。

「地場の酒と食い物、温泉が楽しみ。前もって調べて行く場合は全体的になかなかオツなもので、情報収集の段階でヨダレが出てきているのを自覚する。で、調べた店を探して実際にたどり着く面白さは子どもの頃にやったオリエンテーリングに共通するものがある。

 地元の飲み屋の大将にオススメの店を教えてもらう場合もある。こっちはこっちで、人と触れ合ってその輪が広がっていくような、えも言われぬ良さがある」(38歳男性)

「食事は昼、夜ともに必ず地元でオススメのところで取るようにしています。こちらも旅先でテンションが上がっていて、『地の料理に感嘆するため』に食べているようなところがあって、よっぽどじゃない限り何を食べてもものすごくおいしく感じるし、やっぱり実際ものすごくおいしいんですよねえ」(42歳男性)

「その土地のキャバクラ。フリーで入って指名は決して入れず、いろんな女の子と話す。大きな都市は周辺都市から来ている女の子がわりと多く在籍していて、それぞれの街の話が聞けて面白い。あと、特にキャバクラなどに行かなくてもその辺を歩いているだけで結構楽しい。知らないところにいる自分の違和感を楽しむというか」(35歳男性)

“違和感を楽しむ”に関連して、かなり過激な楽しみ方をしていた人もいるようである。

「以前ドイツに出張に行った際、ご飯を食べようと思って財布だけ持ってホテルを出て、しばらくしたら迷ってしまったんですね。当時はスマホなんて便利なもの持っていませんでしたから、道を調べようにもわからない。ドイツ語が話せるわけではないから誰かに道を尋ねるのも躊躇がある。そもそもホテルの名前がうろ覚えなんです。

 それで2時間くらいあたりをさまよい歩いて、やっぱり道がわからず、不安で仕方がなくなって、いい大人なのに半ベソかきそうになっていたらようやく見たことある街並みに出て、無事部屋に戻ることができたんです。

 その時の刺激がちょっとしたクセになって、それ以来外国で食事に外出する時はあえて地図やスマホなどを持たず、あたりを散歩して軽い迷子になるようにしていました。あの心細さがたまらないのですが、伝わるかな……。今はもうやらなくなりましたが」(51歳男性)

 一歩間違えれば異国で迷子になったまま一生さまよい続ける……なんてことにはならないだろうが、なかなかリスキーである。同様の楽しみ方をされている方は自己責任のもと十分ご注意願いたい。

真のプライベートタイム到来
朝までは完全におじさんの時間
 宿泊先の部屋はおじさんにとって暫定の巣であり、何人(なんぴと)たりともその聖域を侵すことはできない(上司からの電話・メール連絡を除く)。

 朝まで、おじさんはその空間の支配者となって、思い思いの時間を過ごすのであった。

「普段自由な時間を取れることがなかなかないので、この機会に映画を見たり本を読んだりする。コンビニで食料とお酒を買い込むところからが始まり」(40歳男性)

「その日の仕事と翌日の準備を完全に終えたら、持参したトレーニングウェアに着替えてジョギングに出る。街によるが、午前0時以降になると人通りが少なくなるのでそれくらいが望ましい。その日早く寝て、翌日早朝に行くこともある。

 自宅にいる時もジョギングは週に3回やっていて、ジョギング自体が趣味というのもあるが、出張先で行くジョギングは見知らぬ風景が新鮮ですごく楽しい。空気も都内に比べてキレイだし」(46歳男性)

 おのおのアプローチの違いこそあれ、どうやら「知らない街の雰囲気を楽しむ」はおじさんたちにとって出張先で人気のアクティビティのようである。罪がなく、楽しもうとする心持ちさえあれば身一つで非日常感を楽しむことができる手軽さに、その理由があるのかもしれない。

出張先との人間関係
適度な距離感がカギか
 出張を重ねていくうち、自然と出張先でも人間関係が形成される。出張はたまにしか会えない人に会える機会にもなってくる。

「出張である工場に行くと、隣接した研究所に常駐している開発担当の課長がいつも応対してくれるのですが、妙に僕とウマが合いまして、役職の上下はあるものの友人のような感覚で付き合っています。だからあそこに出張があると彼に早速連絡して、『次はどこどこに飲みに行こう』なんて盛り上がります。

 僕がLINEをするのは家族のグループと、あと彼くらいです(笑)」(43歳男性)

 さて、ここまで男性の声を中心にご紹介してきたが、ここである女性による「出張の楽しみ」についてもご紹介したい。

「大阪支社に出張に行くことがあるんだけど、そこの人たちが大体すごくいい人で、地元のおススメのお店に連れていってくれるのが楽しみ。

 逆に支社の人が出張でこっちに出てくる時は、ランチも夕飯も仕事の関係者を集めておいしいところに食べにいく。

 普段面と向かったやり取りがないこともあって、相手がすごく親切にしてくれるのがうれしい」(37歳女性)

 話を聞いているだけで胸が温かくなるような世界である。お互いを思いやる心が両者の間を反復しているうちにどんどん増幅して新たな幸せを生んでいる図式である。

 しかし彼女が軽く指摘している通り、そうした関係も適度な距離感によって保障されているのかもしれない。距離が近くなってくるとどうしても欠点やあらが目についてくるものだ。たまにしか会えないからこそ心地いい相手というのはいるはずで、そういった相手が出張先にいる人は、出張の楽しみが増える分、幸福といえるのではないだろうか。

 企業戦士たちの体力は加齢とともに削られ、若い頃はあまり感じなかった疲れが体にたまるようになっていく。昔はなんてことなかった日帰りの出張ですら、今は翌日、翌々日に疲れを重く残すことがある。

 しかし出張は体力的に大変な半面、楽しむ姿勢で臨めば悪くないものに変わるかもしれない。出張を心待ちにして、日常から離れた環境で命を洗濯しようとするビジネスパーソンたちのささやかな楽しみ、ささやかな努力が、現在の日本経済を支えているのであろうと感じさせられた今日この頃である。
https://diamond.jp/articles/-/177591


2019年3月25日 The Wall Street Journal
欧米中銀の政策転換、「ハト派ドミノ」に危惧

 【チューリヒ】欧米の主要中銀が急きょ、金融政策をハト派路線へと転換した影響が世界に広がっている。その結果、より規模の小さい国では、経済がおおむね健全であるにもかかわらず、政策金利は今後何年にもわたり低水準、もしくはマイナスに張り付いたままとなる恐れがある。

 こうした金融緩和政策は、不安定な資産バブルの温床となる可能性があるほか、次回のリセッション(景気後退)時に、中銀の対応余地を狭めることにもなりかねない。

 スイス国立銀行(中央銀行)は今後数年にわたりマイナス金利政策を維持する方針を示している。スイスは米国やユーロ圏主要国に比べれば規模は小さいが、世界の大手銀行や企業が本社を置いており、これらの企業は為替相場や金融環境に敏感だ。金融市場は相互依存を強めており、規模の小さい国の問題が規模がより大きい国へと一瞬にして飛び火する危険がある。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は20日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25?2.5%に据え置くとともに、年内の利上げ見送りを示唆した。昨年12月時点では、今年1?3回の利上げを見込んでいた。

 その2週間前には、欧州中央銀行(ECB)がさらに踏み込んだ措置を講じた。銀行への低利融資を通じた新たな刺激策を発表。少なくとも年内いっぱいは主要金利である預金金利をマイナス0.4%に据え置くとし、当初の想定より長くマイナス金利を維持する考えを示した。

 スイス中銀は21日、主要政策金利である預金金利をマイナス0.75%に据え置いた。金利水準は2015年1月から変わらず。またインフレ見通しを今年は0.3%に、来年は0.6%にいずれも引き下げた。スイス中銀は海外の成長と物価が弱含んでいるとしたほか、「主要通貨国の政策金利見通しが引き下げられた結果」と説明した。

 一方、ノルウェー中央銀行は全体の流れに逆行。政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げて1%とし、年内の追加利上げを示唆した。産油国であるノルウェーは原油高が景気の追い風になることから、他の欧州諸国とはやや事情が異なる。だがそれでも、「貿易相手国の利上げ見通しがより緩やかになった」として、長期の金利見通しについては引き下げている。

 年内利上げに踏み切るのはノルウェー中銀だけではないかもしれない。英イングランド銀行(中央銀行)はこの日、政策金利を0.75%に据え置く一方、英国が新たな通商協定への移行期間を伴い、合意した条件で欧州連合(EU)を離脱すれば、「継続的な金融政策の引き締め」が必要になるとの認識を改めて表明した。だが、無秩序な離脱となれば、利下げの可能性も排除しないとしている。

 FRBやECBの金融政策決定が、ドルやユーロを使用しない国々にとってもなぜ重要なのか? スイスのほか、ユーロ圏に加盟はしていないが、距離的に近いスウェーデンやデンマークなどの国は、貿易の大部分をユーロ圏に頼っている。そのため、成長やインフレは為替の影響を極めて受けやすくなる。中銀が金融刺激策を実施すると、通常はその国の通貨が下落するため、ECBが2週間前のように新たな刺激策を打ち出すと、スイスフランなどの欧州諸国の通貨に対して、ユーロは下落する傾向にある。ECBは巨大なため、スイスなどの国々は、その影響を相殺する手だてが限られる。

 スイスと同様、スウェーデンやデンマークも長年にわたりマイナス金利政策を講じており、早期に状況が変わる公算は小さいとみられている。

 ノルディア・アセット・マネジメントのマクロストラテジスト、セバスチャン・ガリー氏は、FRBやECBから「受ける重力は極めて強力だ」と指摘。「その結果、(ユーロ非加盟の欧州中銀の)大半はECBの金融政策を踏襲することを余儀なくされ、不適切な資本配分や住宅バブルなどの問題を招く」と語る。

 主要中銀から影響を受けているのは、欧州諸国に限らない。韓国銀行(中央銀行)の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は21日、「市場予想以上に緩和的な」FOMC声明を受けて、韓国中銀の金融政策運営に「一段の余地」が生まれたと指摘。現在の引き締め停止を維持する考えを示唆した。

 またこの日は、インドネシア銀行(中央銀行)が4カ月連続で金利据え置きを決定。フィリピン中央銀行も政策金利を据え置いた。ING バンクによると、FRBが年内利上げを見送ると見られる中、インドネシア中銀は早期に利下げに転じる可能性もあり、フィリピン中銀も一段と緩和的なスタンスを講じる余地が生まれるとしている。

(The Wall Street Journal/Brian Blackstone)
https://diamond.jp/articles/-/197703

2019年3月25日 野地 慎 :SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト
利上げ停止も米30年債利回り上昇で高まる景気減速リスク
「クリスマスの悪夢」とされた大幅な株安を目の当たりにしたFRB(米連邦準備制度理事会)は、年明け以降、急速にハト派にシフトし、当面の利上げが見送られるとの思惑が市場では支配的だ。
 米国債市場でも2年債や10年債の利回りが政策金利に近い水準で安定してきており、利上げ見送りが織り込まれつつある。
 ただ、30年債利回りは緩やかに上昇し始めており、3%の大台を上回る局面も目立ってきた。5年債と30年債のスプレッドは明らかに拡大傾向である。

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 中期債と超長期債の利回りスプレッドの拡大は金融緩和局面かつリスクオンとなる局面で生じやすい。期間が短めの国債利回りは金融緩和(今回は利上げ見送り)の影響で低位で安定する一方、その緩和が促す株高などによって景気拡大への期待が徐々に強まり、それが長めの期間プレミアムを押し上げることで超長期債の利回りを上昇させる構図だ。
 利回りスプレッド拡大は、株価が上昇し、米国経済の先行きへの期待が高いことを反映しているものといえ、好感できるものだろう。
 ただ、景気を支えるために利上げ見送りを決めたFRBにとっては、30年債利回り上昇が景気に及ぼす悪影響も気になるところである。
 足元では、株高の一方で同時に米国経済の減速を示唆する統計が発表される状況だが、中でも、住宅市場の減速は顕著である。
 30年の住宅ローン金利は5%に近づいた後、足元で低下してきてはいるものの、2018年5月に10年債利回りが3%を上回っていた当時とほぼ変わらない4.5%近傍で下げ渋っていることが分かる。

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 中長期債と超長期債の利回りスプレッドが拡大している分、30年の住宅ローン金利が下げ切れないでいる状況と説明できるが、これでは利上げ見送りの効果も半減してしまう。
 減速が続く米国の住宅市場においてはローン金利高止まりとともに住宅価格の割高化も指摘され始めている。価格の下落が先に生じた場合、家計が保有する住宅の価格下落が逆資産効果で個人消費を抑制する可能性も低くはない。
 FRBは保有資産の見直しも視野に入れており、MBS(住宅ローン担保証券)の償還分を国債で再投資することを計画している。
 このことも国債利回り対比での住宅ローン金利の上昇を促すと予想される。FRBが利上げ停止宣言によって生じた株高に甘んじ、一方で住宅ローン金利の上昇を見過ごした結果、景気減速の種が膨らんでいくリスクにも留意が必要である。もちろん景気減速懸念から株安が進行すれば、おのずと30年債利回りは低下していこう。
(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

https://diamond.jp/articles/-/197698

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/678.html

[国際25] メイ首相命運決める最後の1週間か−辞任圧力強く暫定首相の名も 英首相、議会・閣内から不満の圧力 議会、超党派で代替案提案
メイ首相命運決める最後の1週間か−辞任圧力強く暫定首相の名も
David Goodman、Tim Ross、Robert Hutton
2019年3月25日 15:00 JST 更新日時 2019年3月25日 16:09 JST
首相は退陣の日時を具体的に示すよう閣内の圧力にさらされている
管理内閣の暫定首相候補として首相側近やゴーブ氏の名前が挙がる
英国は3月最終週に欧州連合(EU)から離脱する予定だったが、先週のEU首脳会議を経て、「合意なき離脱」を含む決断の期限が4月12日に先送りされた。これに伴い、メイ英首相は政治生命を懸けた闘いに1週間を費やすことになりそうだ。

  事情に詳しい複数の関係者によれば、メイ首相は、退陣する日時を具体的に示すよう閣内から圧力にさらされており、首相がEUと取り決めた離脱合意案への支持獲得にそれが役立つと主張する向きもある。

  メイ首相は、2度にわたり大差で否決された離脱案を今週再び下院の採決に付すチャンスに望みを託しているが、与党保守党内の離脱強硬派から十分な支持取り付けを目指す動きは引き続き難航している。

  週明けの閣議は緊迫する可能性が高く、27日の立法議案の主導権を一般議員に認める案の下院採決が25日中に行われる予定。可決されれば、2回目の国民投票からEUとの関税同盟への残留、離脱撤回に至るさまざまな選択肢への支持表明の機会が議員らに与えられることになる。

  メイ首相と複数の閣僚らは24日、ロンドン郊外の首相別邸「チェッカーズ」で、ジョンソン前外相やジェイコブ・リースモッグ議員など欧州懐疑派の主要議員らと会談した。

  英紙テレグラフによれば、自らの離脱案を支持する議員の数が得られると「確信」する場合のみ、首相は退陣に向けた日程表を提示する用意があると政府関係者の1人が示唆した。

  閣僚らの間では、EU離脱プロセスを完了に導く管理内閣の暫定首相候補として、首相側近のデービッド・リディントン下院議員と離脱推進派の中心人物、ゴーブ環境・食料・農村相の名前が取り沙汰されているという。

  一方、ジョンソン氏はテレグラフ紙への寄稿で、離脱交渉の次の段階がどのように違ったものになるかメイ首相は示す必要があると主張。現在の離脱案を断念し、「EUから直ちに離脱する」ように首相に要求した。

U.K. PM Theresa May Seeks EU Leaders Delay Approval in Brexit Standoff
メイ英首相写真家:Jasper Juinen / Bloomberg
原題:May Faces Endgame as U.K. Leader Is Losing Control of Brexit
May Signals No-Deal Brexit to Be Taken Off the Table: Telegraph(抜粋)

(ジョンソン氏のテレグラフ紙への寄稿の内容を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWP6V6TTDS001


英首相、議会・閣内から不満の圧力 議会、超党派で代替案提案へ
くすぶる閣僚の離反
英EU離脱 ヨーロッパ
2019/3/25 18:11 (2019/3/25 21:13更新)日本経済新聞 電子版
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【ロンドン=中島裕介】英国の欧州連合(EU)離脱を巡るメイ英首相の苦境がいっそう深まっている。離脱延期を議論した先週のEU首脳会議では事前の予想に反してEUから最後通告を突きつけられ、英の閣内や議員が焦燥感から混乱。英・EUの離脱案への反対行動やメイ首相への辞任圧力が徐々に強まっている。メイ首相は混迷を制御する力を失いつつあり、週内に予定される3度目の離脱案の採決ができるかすら不透明になってきた…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42874600V20C19A3FF1000/
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/814.html

[政治・選挙・NHK258] 平成は「社会主義体制が完全に敗北した」時代 窮地に追い込まれた日本共産党 大虐殺を主張し続けなければならない共産党の宿命
平成は「社会主義体制が完全に敗北した」時代

窮地に追い込まれた日本共産党の「社会主義革命」
2019.3.26(火) 筆坂 秀世
ロシア史上最も偉大な人物、スターリンがプーチン氏抑え1位に 調査
ロシアの首都モスクワで行われたメーデーの集会で、旧ソ連の独裁者ヨシフ・スターリンの肖像画を掲げる女性(2017年5月1日撮影、資料写真)。(c)AFP/Kirill KUDRYAVTSEV〔AFPBB News〕

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 平成も残すところ約1カ月となった。新しい元号が、数日後には発表される。

 思えば平成は、世界の大激動の中で始まった。平成元年の1989年の11月には、東ドイツが自国の体制を守るために作った「ベルリンの壁」が崩壊した。この年は、ソ連によって政治、経済、社会体制が押しつけられた東欧の社会主義国の全体が崩壊し始めた年でもあった。

 激動は、まずポーランドで始まった。ソ連の言いなりだった統一労働者党に代って独立自主管理労働組合「連帯」が政権を握った。ハンガリーでは、政権党の社会主義労働者党が党名を社会党に改称して社民政党化し、政権党の「指導的役割」を規定した憲法から同規定を削除した。東ドイツでは、社会主義統一党書記長だったホーネッカーが辞職に追い込まれ、「党の指導性」規定が憲法から削除された。チェコスロバキアでも、国民の反政府運動の高まりの中で共産党書記長が辞任に追い込まれた。

 ソ連の言いなりだった独裁政権に対する民衆の批判は、東欧全体に広がり、日本共産党と親密な関係にあったルーマニア労働者党書記長、初代大統領でもあったチャウシェスク独裁政権も崩壊し、最後は銃殺による公開処刑にされた。

 91年8月には、ついに親玉のソ連共産党が解体し、ソ連邦も崩壊していった。

眼前で繰り広げられている歴史的必然とは
 マルクス主義の最も重要な命題は、「資本主義から社会主義への移行は歴史的必然」だとするところにある。

 私が18歳で日本共産党に入党した際、先輩党員から手渡された勧誘本には、次のようなことが書かれていた。

“今、世界の半分近くの人びとが社会主義の下で暮らしている。世界は音を立てて資本主義から社会主義へと変わりつつある。これこそが人類進歩の方向である。この速度を速めるのが君たち若者なのだ。君たちこそが社会を発展させる主役なのだ”

 その証明がソ連であり、東欧の社会主義国の存在であった。だが、この歴史的必然論が成立しなくなった。それどころか、私が18歳の頃に読んだ勧誘本をもじれば、眼前で繰り広げられているのは、皮肉にも社会主義から資本主義への移行であり、こちらの方がよほど必然的に見えるのである。

地球上に社会主義体制などなかった?
 ソ連共産党が解体した際、日本共産党は『大国主義・覇権主義の歴史的巨悪の終焉を歓迎する──ソ連共産党の解体にさいして』(91年9月1日)と題する常任幹部会声明を発表し、この中で「もろ手をあげて歓迎すべき歴史的出来事である」と表明した。

 全世界を覆った「共産主義・社会主義崩壊」論に対抗するためであった。そのため、“そもそもソ連の体制は社会主義ではなかった”と言い始めた。レーニンの時代は良かったが、スターリン以降変質したとも言う。現在の綱領では、ソ連、東欧について次のような評価を下している。

「レーニン死後、スターリンをはじめとする歴代指導部は、社会主義の原則を投げ捨てて、対外的には、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道、国内的には、国民から自由と民主主義を奪い、勤労人民を抑圧する官僚主義・専制主義の道を進んだ」

「東ヨーロッパ諸国で一九八九〜九一年に起こった支配体制の崩壊は、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義の破産であった」

 この綱領の草案を作成したのは日本共産党の指導者である不破哲三氏である。その不破氏が2003年6月の党大会で、綱領改定の報告で次のように述べている。

「1917年に始まった、資本主義を離脱して社会主義へという世界的な流れは、ソ連・東欧の崩壊によって終わったわけではない」

「中国、ベトナム、キューバなどでの社会主義への前進をめざす努力に、私たちは注目しています」

 ソ連、東欧諸国は社会主義国ではなかった。中国、ベトナム、キューバも社会主義国ではなく、今は社会主義を目指す途上にある国々だというのだ。つまり、とうとうこの地球上から社会主義国は消え去ってしまったということなのである。

若者を誤導した日本共産党
 スターリンが権力を握ったときにこういう指摘をしていたのなら、その先見の明を褒めることもできる。

 だが、実際には、日本共産党はまさにスターリンの指導を受け、スターリンと共に歩んできた。

 スターリンが書記長になったのは、ロシア革命から5年後の1922年である。この年にコミンテルン(共産主義インターナショナル)日本支部として創立されたのが日本共産党であった。一方、日本共産党が“ソ連は社会主義ではなかった”と言い出したのは、1991年にソ連共産党とソ連邦が解体してからである。スターリンが権力を握ってから実に69年も経っているのだ。

 私が日本共産党に入党した当時の綱領には、どう書かれていたか。

「第二次世界大戦後、国際情勢は根本的にかわった。社会主義が一国のわくをこえて、一つの世界体制とな(った)」

「資本主義の全般的危機はふかまり、資本主義世界体制は衰退と腐朽の深刻な過程にある」

「社会主義世界体制は人類社会発展の決定的要因になりつつある。世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である」

 日本共産党は、スターリン以降の社会主義体制をここまで持ち上げていたのである。この綱領を振りかざして、多くの若者に入党を呼びかけていったのだ。ところが今になって、実は社会主義世界体制など誕生してもいなかった、と説いている。無責任の極みと言うしかあるまい。

 私自身は別段、個人的恨みはないが、この綱領を信じて、どれほど多くの若者が日本共産党に入党したことか。若者を誤導した責任は、決して軽くはない。日本共産党の幹部だった私にも責任はある。

 そもそも社会主義国には、自由も民主主義もなかった。社会主義国の憲法には、それぞれの国の共産党、社会主義政党の指導性が書かれていた。一党独裁が憲法で保障されていたのだ。現在の中国やベトナムもそうである。

 かつてドイツが東西に分裂していた時代に、東ドイツから西ドイツに逃げて来る人は大勢いたが、その逆はなかった。理想社会どころか、地獄のような体制であったということだ。これらの事実をほんの少しでも正面から見ていたなら、ソ連や東欧の社会主義体制に未来などなかったことを見通せたはずである。

 私の眼も曇っていたと言うしかない。

平成は「社会主義の展望」が消滅した時代
 日本共産党のこうした弁明は、日本共産党自身を窮地に追い込むことにもなった。

 社会主義革命の歴史的必然論を説いたマルクスとエンゲルスの共著『共産党宣言』が書かれたのは、1848年のことである。それからすでに171年が経過した。それでもこの地球上に社会主義国が1つも存在していないというのが、日本共産党の立場なのである。

 これでは社会主義の展望など語ることができないのも当然である。

 私自身を振り返ってみても、入党した当時は「マルクス・レーニン主義」と呼ばれており、マルクスやエンゲルス、レーニンの著作をよく読んだものである。難解で容易に理解できない内容だったが、兎にも角にも読んだものである。党の会議に出ると、党員たちと社会主義の未来を語り合った時期もあった(どの党員も浅薄な知識しか持っていないのだが)。

 だが現在はどうだろうか。社会主義革命を目指している党員は皆無だろう。そもそも目標にもなっていないのだ。

 共産党の指導者である不破哲三氏は、一昨年11月17日付の朝日新聞のインタビューで、「党名の変更はしないのか」と問われ、「日本共産党は、戦前から95年、この名前で活動してきたが、将来的には21世紀から22世紀も展望しながら、日本に理想社会をつくるために活動する政党です。党名には、その目標が体現されています」と語っている。

 21世紀中どころか、22世紀までかかると言い始めたのだ。100年以上先の展望なのである。不破をはじめ、誰一人として存命していない先の話を平気で展望として語るというのだから、呆れるほかない。こんなものは展望とは言わない。この方針に確信を持てと言われても、まともな党員なら困惑するばかりだろう。だが誰一人として困惑しないのだ。なぜなら誰も社会主義など、真面目に考えたこともないからである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55885


 

「大虐殺」を主張し続けなければならない共産党の宿命

南京大虐殺の嘘:事件後、日本人は歓迎されていた!


2019.3.26(火) 森 清勇
孫文が眠る「南京中山陵」 6月から見学無料、事前予約制で
南京中山陵(2018年5月31日撮影)。(c)CNS/泱波〔AFPBB News〕

 易姓革命を繰り返す中国は、前王朝の歴史を否定することによって自己を正当化できた。白を黒に塗り替えることで権力を維持することができたのだ。

 国民の支持を問うこともなく権力者になった者は、誰かを悪者とする敵に見立てる必要がある。

 悪者にされているのは華夷秩序に従順でない日本である。その仕かけが歴史戦であり、「南京大虐殺」である。

 独裁政権(あるいは絶対君主)下の国民は自由を制約され、真実を知る権利も語る権利も剥奪され、権力者が「強いること」を語らなければ生きられないように運命づけられている。

 強いられることが嘘と分かっていても否定できないし、むしろ拡大することが歓迎されるという悪循環を生み出すこととなる。

 南京大虐殺が正しく格好の題材である。地道な歴史研究で白の証明をすることが論理的であるが、統治の手段として敢えて白を黒とする相手に論理は通用しない。

 以下に、「南京大虐殺」はなかったことを証明し、統治の手段として利用している現実を確認する。

朝日新聞社が戦場に送った慰問団
 支那事変が始まって約半年後の昭和13年1月、朝日新聞社は吉本興業の協力を得て、華北と華中に慰問団を派遣した。

 華北の慰問先は大連・天津・石家庄・太原・通州などであり、華中は上海・南京・蕪湖・蘇州・杭州などであった。

 昭和13年1月5日付「東京朝日新聞」は「戦線へ初春の慰問団」の見出しで、誇らしげに次のように社告を掲載した(早坂隆著『戦時演芸慰問団 「わらわし隊」の記録』、以下同)。

 「本社が全国国民より出征皇軍慰問のため寄託された資金は目下約32万円の巨額に達してゐるが、(略)今回右皇軍慰問資金の一部をもって更に軍当局の援助を得て北支戦線および中支戦線に左の通り慰問映写班ならびに慰問演芸班を派遣することに決定」

 「慰問演芸班 陣中への新春笑ひの慰問として吉本興業部の協力により、漫才に落語に講談に浪花節に全員第一流のメンバーをすぐり」という通り、「わらわし隊」と呼ばれた慰問団には柳家金語楼、花菱アチャコ、横山エンタツ、ミスワカナなどが入っており、東京を昭和13年1月15日に出発する。

 当時の朝日新聞は「軍用機献納運動」を展開して多額の寄付金を募り、昭和12年の下半期だけで611.5万円を集めた。

 この資金で戦闘機20機、爆撃機10機、偵察機10機など90機を献納している。これから類推すると、32万円は軍用機5〜7機に相当する数百億円であろう。

 上海の激戦は終わっていたが南京戦は続いており、公演先では無数の支那兵の死体がごろごろ転がり、時には弾が飛び、また空襲を受けるなどの小競り合いもあったという。そうしたところへ列車や自動車、馬車、或いは輸送機・戦闘機で乗り込んで慰問している。

 20キロも離れた場所から歩いて劇場に来た兵隊もいたが、劇場が小さく入り切れず、外までずっと行列が伸びていたという。

 劇場のない所では野外の芝生の上で、あるいは軍艦上で公演し、時には遅れてきた兵士のためにと頼まれて再度の公演も行っている。

 金語楼やアチャコら7人は北支慰問団で、中支慰問団はミスワカナ(紅一点)、横山エンタツ、杉浦エノスケ、石田一松、玉松一郎、神田ろ山および林正之助(吉本創業者の実弟で社長)の7人であった。

 上海戦が終わって2か月後の1月17日、上海に到着した。小休止の後、さっそく午後は病院慰問をやり、夜は松井石根最高指揮官をはじめとする軍上層部列席の下で公演するなど精力的である。

 上海に1週間滞在して21カ所で慰問を行い、23日に南京へ向かう。南京を陥落させて1か月後余であるが、東京裁判の判決ではいまだ戦闘が続行している時期である。

戦闘機で南京入りした慰問団
 ミスワカナ・玉松一郎夫妻と神田ろ山の3人は列車で南京入りする。他の4人は戦闘服に身を包み、パラシュートを背負って、上半身を外部に晒したままの戦闘機で移動し、飛行中はかなりの寒さに襲われたという。

 「もしもの時は、こめかみに一発」と説明され、ピストルを渡されたそうである。

 南京では27日まで公演をやっている。人気の高かったミスワカナは軍の病院を積極的に慰問し芸を披露した。

 南京到着時の模様を石田一松は、子供たちが「先生(シーシャン)、先生」と声を出しながら道を開けて歓迎してくれた。「自分の国にいて他国の人におべっかを使わねばならぬ彼らは手に手に日の丸の旗を打ち振っているのだ」と、同情の気持ちをもって書いている。

 しかし、これは演芸団だから特別の歓迎を受けたのではない。

 「東京朝日新聞」は激しかった南京戦が終わった数日後の1937年12月21日付で、「初めのうちは彼らも日本人を見るとこそこそと壁の陰に隠れたものだがこの頃はすっかり日本の兵隊さんと仲良くなり兵隊さんが通りかかると『先生々々』とニコニコ顔で何か用事を言付けて呉と寄って来る程である」と書いている。

 ところが、昭和23年11月13日付「朝日新聞」は、「(松井石根は)1937年12月13日に南京市を攻略した。修羅の騒ぎは、1937年12月13日に、この都市が占領されたときに始まり、1938年2月の初めまでやまなかった。この6、7週間の期間において、何千という婦人が強姦され、十万以上の人々が殺害され、無数の財産が盗まれたり、焼かれたりした」と書くのだ。

 米国人宣教師でYMCA書記長のジョージ・フィッチは「昼も夜も日本軍の暴行は続いた。特に最初の2週間がひどかった。恐怖の9週間が過ぎた2月17日、それまで街頭に出るのをためらっていた14台の人力車が初めて現れた」「強姦は12月15日頃から1日1000件の割で続発」「被害者の年齢は10歳から70歳」などと証言している。

 フィッチは病院の患者らを撮影したマギー・フィルムを持って1938年2月25日に上海を発ち香港、広州経由でハワイを手始めに全米で日本軍の悪行を宣伝して回り、11月に中国への帰国の途に就いた人物である。

 慰問団が来たときは16師団の佐々木到一少将率いる第30旅団(33連隊と38連隊の各2000人)が警備している時期である。公演は2500人収容の国民大会堂で行われ、約4000人中の実に62.5%が演芸を観て腹をよじって笑っていたのだ。

 兵民分離の市民登録を12月24日から開始して、市民には「安居ノ證」を付与し、新年からは中国人による自治委員会もできて治安を維持していた。こうした中で1日1000件の割で強姦が続発していたというのである。

 早坂氏は2007年に人民大会堂(共産党政権で名称変更)を訪ね、その後、南京市民に聞き取りを行う。

 多くの市民が「日本人は歴史の真実を知らない。もっと歴史を学ぶべきだ」と判で押したように言ったという。

 そして「共産党一党独裁下において高度な情報統制下にある国の人々が、『真実』という言葉を口にする時、私は寂しい気持ちになる。・・・彼らのもっている歴史観こそ、共産党に都合の良い『自尊史観』でしかない」と述べる。

 そして、田中上奏文(満州を皮切りに日本が世界を征服するという偽書)を偽書としないで教え、通州事件を「正義の叛乱」とし、原爆投下やヒロシマ・ナガサキは殆んど教えず、天安門事件やチベットでの虐殺には一切触れないため知らないにもかかわらず、「日本人はなぜ歴史から学ぼうとしないのか」と口を揃える中国の現実に思いをはせる。

 約10か月後には第2次「わらわし隊」が送り出され、(昭和13年)12月3日に再度南京を慰問する。

 その様子をミスワカナは、「南京の町はとても活気があって、兵隊さんと支那人で雑閙(ママ)してゐます。日本軍の使役につかはれて働いてゐる俘虜がトラックで通ります。支那人のカフェなんかも出来てゐて、姑娘が『いらつしやい』なんて日本語で呼んでゐます」と情景描写している。

元軍人も喜んで受け入れた南京市民
 南京戦に関わらなかった人物はもちろん、直接・間接に関係した軍人も戦争終了直後から南京市民は快く受け入れている。一人は「大虐殺」の最高責任者とされた松井大将の秘書であった田中正明氏である。

 パール判事の全員無罪論を翻訳した田中正明氏は興亜学塾に学び、講師であった下中弥三郎氏の紹介で松井大将の知遇を得、大将が会長であった「大アジア協会」に勤務して機関紙「大アジア主義」の編集に携わる。

 大将は戦傷した部下を見舞うため、田中氏を同道して大阪、名古屋、金沢、仙台などの陸軍病院を訪ねている。

 そうした折に、「その後の南京の治安状況が心配だ、視察に行ってくれないか」と頼まれ、陸軍省から「従軍記者」の認可を得て、昭和13年6月末、即ち南京事件が終わったとされる4カ月後に南京を訪ねる。

 のちに大虐殺の張本人とされる松井中支那方面派遣軍司令官が南京を去って半年も経っていないときである。

 しかも、田中氏は松井氏が会長を務める組織の秘書役である。その人物が松井氏の紹介とあって、「安全区はもとより、雨花台、下関、新河鎮、草鞋峡、紫金山などあらゆる古戦場や捕虜収容所等案内して頂いた」(『諸君!』(2001.2)所収の「三派合同 大アンケート」)というのである。

 田中氏が尋ねたところは、「大虐殺」があったとされる場所ばかりだ。それにもかかわらず、恨みごとの一つも言わずに、案内している。

 2例目は、河村たかし名古屋市長の父君たちが、事件から約8年後に南京に駐屯したことである。

 父君は歩兵伍長で250人の部隊の一員として、敗戦翌日の1945年8月16日に南京に入る。翌年1月まで約5か月間、郊外の寺に滞在するが、市民にとても親切にされ温かいもてなしを受けたという。

 感謝の念に堪えがたく戦後50年目に「お礼というか感謝の気持ち」として、父君が中心になって戦友たちと桜1000本を寄贈する。植樹祭には体調を壊した夫に代わり、ご母堂が参加されている。

 寄贈した戦友たちの誘いで市長は植樹から10年目に南京に行き、南京大虐殺記念館にも足を運ぶ。

 そこでの展示内容や説明と父君たちへの親切のギャップが大きいことに驚き、姉妹都市であればこそ「父たちが親切なもてなしを受けた南京で、いったい何が起こっていたのか真実を明らかにし、友好増進につなげたい。そのために真剣な議論で真実を明らかにしたい」と提案する。

 一地方自治体の首長といえども国会議員も務めた政治家の発言だけに、中国は猛反発し、準備していた友好行事の大部を一方的にキャンセルする暴挙に出たのであった。

 第3の例は「日中友好軍人の会」が9年後に南京を訪れた時のことである。

 遠藤三郎元中将ほか18人は何と「国賓」として招待され、北京では周恩来首相、彭徳懐国防相、粟裕参謀長と会談している。

 その後、南京に入るが、ここでは人民解放軍の歩兵高級学校の張日校長(中将)や姚普iようてつ)副校長(中将)と会談する。

 このとき、南京攻略時の第10軍参謀であった谷田勇元中将が、雑談のように、南京占領後数件起きたレイプに触れ、「南京ではいろいろありまして、ご迷惑をおかけしました」と述べて、「事件を起こした者は軍法会議にかけました」と伝えたところ、張校長は事件に対する日本軍の扱いは「公正」だったと応じ、和やかに会談は推移したと述懐している(「産経新聞」平15年7月24日付)。

福田元首相に郷愁を抱かせた南京
 2018年6月、福田康夫元首相が南京大虐殺記念館を訪問して「献花」までしたことが騒がれた。中国が政治的な「歴史戦」を仕かけている真最中であり、思慮のなさが批判を受けたのは当然であろう。

 しかし、元首相に南京訪問を思い立たせたのは、父親の赳夫氏(のちに首相)が当時大蔵官僚で、汪兆銘政権の財政顧問(1941〜43年)になっていた関係で南京に在住して、小学校進学前の「3か月間だけの生活だった」が、「現地の中国人は非常に親切にしてくれたんだな。あの時の南京に対するあこがれというか望郷というか、そうした思いが以前からあったんです」(「産経新聞」平成30年7月4日付、「単刀直言 福田康夫元首相」)と語るように、いい思い出が残っていたからにほかならない。

 インタビューの間などで康夫氏が(大虐殺)事件について一切語っていないことは、父君から大虐殺どころか、事件があったこと自体を聞いていないからであろう。

 さらに敷衍すると、父は事件を「知っていて語らなかった」のではなく、そもそも「語ることができなかった」ということではないだろうか。

中国側の被害者数は謎だらけ
 以上は日本側への対応の指摘であるが、中国側の常識を疑わせる発言なども多々存在する。ここでは4例を示しておきたい。

(1)東京裁判で、魯甦は「日本兵が5万7418人を殺すのを見た」と述べ、検察側書証では「5万7400余」と記載されて東京裁判の法廷に提出された。しかし、法廷では朗読されることはなかった。

(2)遺体処理の慈善団体としては「紅卍会」が知られており、4万3071体を処理した記録も残されている。

 昭和13年4月16日付「大阪朝日新聞」は、「戦ひのあとの南京でまず整理しなければならないものは・・・濠を埋め、小川に山と重なってゐる幾万とも知れない死体、これを捨ておくことは、衛生的にいっても人心安定の上からいっても害悪が多い。・・・そこで、紅卍会と自治委員会と日本山妙法寺に属するわが僧侶らが手を握って片づけはじめた」とし、続けて運搬手段や費用、人力などについて書いている。

 死体処理に当っては慈善団体と雖も中国人の自治委員会と調整が必要であろうから、「紅卍会と自治委員会・・・が手を握っ」たというのは当然であろう。

 ところが、東京裁判で突然、「南京市崇善堂」という慈善団体が出現し、11万2266体を埋葬したというのである。

 南京戦に上海派遣軍参謀として参加し、南京戦終了後の1938年2月からは南京特務機関長として1年間、南京(城内と城外の行政県)住民と関係してきた大西一大尉は、崇善堂の名は聞いたことも見たこともないという。

 その後の調査でも崇善堂はトラックは1台しか持っていなかったと言われる。費用の請求や人員の支援依頼なども出ていないようで、正しく幽霊団体ではないだろうか。

(3)中国は高校で使用している教科書『世界近代現代史』の中では、「1937年12月〜1938年2月の間だけでも南京一都市において、30万人もの武器をもたない中国人が、日本のファシズムの残酷な大虐殺の被害に苛まれた」と記述している。

 ところが、南京大虐殺記念館の張建軍館長は、同館を訪問した福田元首相に対し、「南京の城内の人だけでなく、そこに至るまで日本軍が戦争しながら殺害した人も30万人に入っている」と説明している。教科書記述の「南京一都市」ではなく、「そこに至るまで」と地域を拡大している。

(4)歩平・中国社会科学院近代史研究所所長は櫻井よしこ氏らとの座談会(2005年6月、『日中韓 歴史大論争』所収)で、「南京大虐殺の30万人という数字について、当然、根拠はありますが、これはたんに一人ひとりの犠牲者を足していった結果の数字ではありません。被害者の気持ちを考慮する必要もあります。日本でも広島の原爆記念館に行くと、犠牲者の数は14万プラスマイナス1万人と表記しています。・・・一定の変動幅を持たせることはお互いに必要なことだと考えている」と語っている。

 死者数は死体の積み上げでなく、「感情」を加えたものだというのだ。そして、広島の焼死体や行方不明などでどうしてもはじき出せないプラスマイナスを引き合いに出す。これは議論以前の暴論ではないだろうか。

おわりに
 「あったこと」の確認は「たった一事」で可能となるが、「なかったこと」には「無限の証明」が求められる。「悪魔の証明」と言われるゆえんである。

 「なかったこと」は噂の段階で否定することが大切であるが、「南京大虐殺」のように、国家が確信的に公言するに至っては容易ではない。

 しかし、中国側の発言に矛盾が目立つようになってきた。

 河村名古屋市長の発言に対する中国側の反応(暴挙)は、「真実」が究明されれば「歴史戦」の敗北につながり、さらには共産党一党独裁の「ウソ」体質の暴露となり、政権の正当性に赤ランプが点きかねない。

 そうした危惧からであろうか、「大虐殺」から「性暴力」への方向転換を始めたのではないだろうか。

 リ・リニューアルした南京の記念館では、南京大虐殺の広告塔にも見立てられてきた本多勝一記者やアイリス・チャンの関係物品が撤去され、「性暴力」コーナーが新設されて「南京占領で1か月に2万件近い強姦事件が発生した」と表記し、写真、映像、さらには避妊具・避妊薬などが展示されているからである。

 これ以上の宣伝は馬脚を現わし、共産党指導部にとっては益なしとみはじめたと思われる。また習近平主席の「一帯一路」は苦境に立たされ、「信用」面で日本の協力を必要としている。

 今こそ、南京問題を政治決着するチャンスではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55837
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/831.html

[国際25] NZ・白人至上主義者の元凶はトランプ大統領か アカデミー賞『グリーンブック』の人種差別は今も生きている 
NZ・白人至上主義者の元凶はトランプ大統領か
アカデミー賞『グリーンブック』の人種差別は今も生きている
2019.3.26(火) 高濱 賛
日本でも現在上映中の映画『グリーンブック』
黒人天才ピアニストと黒人嫌いな白人運転手
 ピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』が、本年度アカデミー賞の最優秀作品賞、脚本賞、助演俳優賞を受賞した。

 この映画は、全米を風靡した黒人天才ピアニスト、ドン・シャリー氏が黒人嫌いの白人運転手、トニー・リップ氏(本名トニー・バレロンガ)とともにディープ・サウス(南部深部)をコンサートツアーした2か月間の体験を描いたコメディ伝記(実は見方によっては社会風刺ものともいえる)だ。

 脚本を共同で手がけたのはリップ氏の息子。父親やシャリー氏から聞き取ったエピソードや手紙を基に執筆、映画化した。「死んだら映画化してくれ」というシェリー氏の遺言だった。

 場所は人種差別の色濃く残っていたルイジアナ、アラバマ、ミシシッピ各州とそこにたどり着くまで通過するペンシルベニア、イリノイ、インディアナなど東部、中西部の州だ。

 南部の州には 日没後、黒人の外出を禁止する「サンダウン・タウン」が点在していた。

 時は、黒人が法的にも市民としての権利を認められた公民権法成立の「前夜」である。

 確かに超高級車キャデラックの後部座席には、いかにも値の張りそうな背広姿の黒人。運転席には粗野なイタリア系ニューヨークっ子が座っている。

The Negro Motorist Green-Book by Victor H. Green Victor H. Green - Publisher, 1940 Snowball Publishing. 2017
 異様な雰囲気だ。それだけで白人と黒人との接触を極度に嫌う南部人の好奇心を誘う。しかもご主人様は黒人でお仕えするものが白人なのだから、なおさらだ。

 コンサートツアーというが、何も大劇場で演奏するわけではない。

 行く先々で待っているのは、天才ピアニストのポップジャズを聴きたい地方の白人名士たちだけ。演奏するのは超一流ホテルやクラブ。

 それでいて演奏するホテルのレストランでシャリー氏は食事もとれない。

 「黒人客お断り」は創業以来の社是だ。シャリー氏がちゃやほやされるのは演奏している時だけなのだ。

 むろん高級ホテルには泊まれない。モーテルでも黒人専用モーテルだ。

 そこで白人の運転手には黒人ドライバーのためのガイドブック『グリーンブック』が必需品となってくる。

 映画のタイトルは、そこからきたわけだ。

「カーター大統領の郷里」で体験した人種偏見
 ところでこの映画をどう観るか。

 非白人である筆者には、1960年代の白人の黒人に対する根深い人種的偏見がこれでもかこれでもかと迫ってくる。

 偏見は何も黒人にだけ向けられているのではない。彼らとは異質のユダヤ系、イスラム教徒、アジア系の中国人や日本人にも向けられている。

 非白人として米国に長年住んでいる筆者には、他人事ではなくなってくる。

 これは東京の映画館で同胞と一緒に、よその国のよその人種同士の話としてエンジョイするのとは勝手が違う。

 筆者は、この映画の舞台を1970年代、取材旅行したことがある。あの時、実感した、あの非白人に注がれていた「ある種の冷ややかな目」を今でも覚えている。

 アラバマ州のジョージ・ウォレス知事(当時)とインタビューするために州都モンゴメリーでは知事室のある州議会に行く途中、12、13人の子供たちが筆者の後をつけてきて「チャイナマン、チャイナマン」(中国人に対する蔑称)とはしゃぎ立てた。

 「オレはチャイナマンじゃないぞ」と怒鳴りつけると、「お前はチャイナマンだ」と怒鳴り返した。そしてげらげら笑った。とんだ歓迎ぶりだった。

 1977年に第39代大統領になったジミー・カーター氏の生まれ故郷、ジョージア州プレインズ(人口770人)を取材したときは、プレインズに宿泊施設がないため隣町アメリカス(人口1万7000人)のモーテルに宿泊した。

 このとき宿泊したモーテルには、地元の警官2人が現れ、私の滞在中ロビーに常時待機していた。

 モーテルの主人は「よそ者のあんたを見張っているんだよ。何せ、ジャップは珍しいからね」と耳元で囁いた。まさに“VIP待遇”だった。

 「40年前の話だろ」と笑われるかもしれない。しかし、今も大きく変わっていない。

 昨年からジョージア州アトランタ支局勤務になったインド系記者は筆者にこう漏らした。「アトランタ都市圏は問題ないがやはり田舎での取材はしづらいね。やはり電話取材が多くなる」。

黒人運転者にとって『グリーンブック』は命綱だった
 話を映画に戻す。

 物語はあくまでも白人運転手の見た当時の南部での出来事だった。シャリー氏の見た南部ですらトニー・リップ氏の目を通してのものだった。

 ちなみに『グリーンブック』とは、1936年にニューヨーク・ハーレムに住むビクター・グリーンという黒人の郵便配達人が書いた黒人旅行者用のガイドブックだ。本の表紙は緑。そこからグリーン・ブックと名づけられた。

https://www.amazon.com/s?k=the+green+book+negro+motorist&i=stripbooks&crid=1QM2QQY3CDNF9&sprefix=green+book%2Cstripbooks%2C246&ref=nb_sb_ss_i_6_10

 映画にとって最も重要な小道具は『グリーンブック』だ。

 公民権法成立前は白人が黒人を差別し、分離することは法的に何の問題もなかった。1962年と言えば、黒人奴隷が解放されてからまだ97年しか経っていない。

 それ以後も南部州では無実の黒人が罪を着せられてリンチに遭ったり、黒人教会が焼き討ちに遭ったりしていた。

 黒人が国内を移動したり旅行したりするにも様々な制限があった。

 車で旅行する黒人には、宿泊するホテルやモーテル、飲食するレストラン、バー、居酒屋、ガソリンスタンド、車の修理、床屋に至るまで制約があった。それは東部や中西部でも同じだった。

 そこで、グリーン氏が考えついたのがこの黒人用の旅行ガイドブック。

 当初はニューヨーク市内のみを対象にした10ページ足らずの小冊子だった。1部25セントだった。

 その後、毎年改訂版が出るようになった。ガイド対象地域は全米はおろか、カナダ、メキシコにまで広がった。広告も入り、価格は1部1ドル25セントになった。

 グリーン氏はその後バケーション予約サービスなどにも手を広げ、第2次大戦後の旅行ブームの波に乗って大成功したという。

 『グリーンブック』は公民権運動が最高潮に達する1966年まで続いた。

(その後、歴史的観点から注目され、1941年版オリジナルはオークションで2万2500万ドルで落札している)

黒人の大半は黒人経営の「民宿」に泊まっていた
 『グリーンブック』にはいったい何が書いてあるのか。取り寄せた1940年度版(ファクシミリ版=48ページ)を読んでみる。

 序文にはこう書かれている。

 「本書の狙いは、黒人自動車運転者(Negro motorist)が全米各地を快適に旅行できるよう、便宜を図ることにある。この本はただ宿泊できるホテルや民宿を紹介するだけでなく、旅先で必要になったあらゆることを解決するために役立つ」

 「本書は毎年書き換えられている。黒人自動車運転者が利用できる宿泊施設やサービスが毎年増えているからだ」

 「さらに一つ読者の方にお願いしたい。皆さんが旅をしていてここは利用できる、ここには宿泊できるといった体験談を編集部にぜひお寄せいただきたい。それによって私たちが便利な情報を共用できるからだ」

 本書は全米各州ごとに泊まれるホテルやモーテルの名前と住所が書かれているが、ホテルは少ない。

 代わりに目立つのは「Tourist Homes」と呼ばれる民宿だ。黒人が自分の家の一室を旅行者に賃貸しているのだ。特に南部州にはこの民宿が圧倒的に多い。

 そのほか、ナイトクラブやガソリンスタンド、車の修理、ドラッグストア、美容院や床屋がリストアップされている。

 裏を返すと、通常のホテルやガソリンスタンドがいかの黒人を差別していたかが浮き彫りになってくる。

リップ氏は「黒人を救済した立派な人間」か?
 シャリー氏とリップ氏は、こうした状況下の南部深部を旅行していたのだ。

 映画は結論として、人種差別主義者で無教養なリップ氏が旅行を通じて、南部の人種差別の実態に気づき、その現実からシャリー氏を守り(カネをもらってボディガードを買って出たのだから当然だが)無事コンサートツアーを成功させたことを讃えている。

 この点に噛みついたのが著名な黒人映画監督のスパイク・リー氏ら黒人映画関係者だ。

 つまり白人の目線で人種差別を描き、リップ氏を「黒人(シャリー氏)を人種差別から救済した立派な人間」として祭り上げているというのだ。そこが鼻持ちならないのだろう。

 知人の黒人ジャーナリストの一人は、筆者にこう語った。

 「もしシャリー氏が著名なピアニストではなく、ただの無教養な黒人だったらどうだったか。誰も相手にしなかっただろう」

 「そのことは現在でも言える。黒人が大リーガーだったり、有名な映画俳優ならちやほやするだろう。でも彼ら普通の黒人だったら、どうか」

 「だからこんな映画をいくつ作っても白人目線では人種差別問題の本質をえぐることはできないんだ。それは中南米系やアジア系にしてもイスラム教徒に対しても同じだ」

 ニュージーランドで起こったオーストラリア国籍の白人至上主義者によるイスラム教徒虐殺事件が世界を震撼させている。

 こうした事件が世界中に伝播していることと、ドナルド・トランプ米大統領の白人至上主義的発言との関連性が取り沙汰されている。

 トランプ大統領は、ニュージーランド銃乱射事件について、記者団に「白人至上主義が広まっていると思うか」と聞かれて、「(白人至上主義者は)ごく少数だ。脅威ではない」と答えた。

 米メディアはこの発言をとらえて批判している。

 2017年8月、南部バージニア州シャーロックビルで南部軍のリー将軍像を巡って白人至上主義団体と反対派とが衝突した事件で反対派の女性が死亡したことがある。

 この時にも「(女性の死の責任は)双方にある。白人至上主義者にも素晴らしい人たちが含まれている」と白人至上主義者批判を避けている。

 元共和党下院議員で現在コラムニストのジョー・スカ―ボロ―氏は、トランプ大統領の「人種差別主義」を激しく批判してこう論じている。

 「トランプ氏は、大統領になる前からイスラム教徒の入国禁止を主張し、KKK(Ku Klux Klan=クー・クラックス・クラン)指導者のディビッド・デューク氏をかばい、ヒスパニック系判事を誹謗、戦死したイスラム教米兵の家族を馬鹿にし、反ユダヤのツイートを繰り返してきた」

 「これらはトランプ氏が行ってきた数多くの反人種主義的発言のほんの一部にすぎない」

 「トランプ政権になってから米国内での極右によるテロ行為は4倍に増え、ヘイトクライムは17%増加した。欧州での極右による攻撃は2016年以降、43%も増えている」

https://www.washingtonpost.com/opinions/obamas-presidency-will-be-hailed-as-transformative-trumps-will-be-viewed-with-scorn/2019/03/19/c4ba3742-4a7c-11e9-9663-00ac73f49662_story.html?noredirect=on&utm_term=.e0b1f5d88625

NZ銃乱射犯は「トランプはシンボル」と尊敬していた
 ニュージーランド乱射事件の犯人、ブレントン・タラント容疑者は犯行予告で「トランプ氏は新たな白人アイデンティティ(白人が白人であることの主体)のシンボルだ」と讃えていた。

 映画『グリーンブック』は1960年代の南部の人種差別社会を「過去」のものとしてビビッドに描いた。

 根底には「白人は優秀な人種だ」という何ら根拠のない優越感に浸る哀れな白人たちの姿があった。「白人至上主義」を当たり前のものとして受け入れる無知さがあった。

 前述の黒人ジャーナリストは筆者にこうも言い切った。

 「トランプ大統領が白人至上主義者を声を張り上げてはっきりと非難できない理由は何か。それは彼自身が同じ穴のムジナだからだ」

 「映画はあくまでの『過去の出来事』としてとらえ、アカデミー賞選考委員会は評価し、最優秀作品賞を与えた」

 「だがあの映画は今も姿形を変えて生き続けている『現在の出来事』だ。それがまさに南部ではなく、海の向こうのニュージーランドで起こったのだ」

 米共和党のストラテジストで政治評論家のアリス・スチュワート氏は、テレビで次のようにまくし立てていた。

 「事件はトランプ大統領が白人至上主義者を勢いづけたという人がいるが、筋違いだ。何か起こると何でもかんでもトランプ大統領のせいにする。まさに魔女狩りだ」

 映画『グリーンブック』は目下日本でも一般公開中。皆さんはこの映画を観てどんな感想を持たれるだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55854
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/817.html

[不安と不健康18] 人生最後の10年、寝たきりでなく快適に過ごすには 健康寿命と平均寿命:「ピンピンコロリ」を模索する新学術と芸術 
人生最後の10年、寝たきりでなく快適に過ごすには
健康寿命と平均寿命:「ピンピンコロリ」を模索する新学術と芸術
2019.3.26(火) 伊東 乾
平均年齢は70歳、日本のシニアチアチーム「心も体も生き生き」
平均年齢は70歳、日本のシニアチアチーム「心も体も生き生き」。写真は千葉で行われた「ユナイテッド・スピリット・アソシエーション」日本支部の全国選手権大会にゲスト出演した滝野文恵さん(左から2人目)ら(2016年3月26日撮影)。(c)AFP/TORU YAMANAKA〔AFPBB News〕

 かれこれ1年ほど前になりますが、厚生労働省から「健康寿命」の統計調査結果が発表されました。

 取りまとめに時間がかかり最新データとして示された2016年の数値ですが

男性が 72.14歳
女性が 74.79歳

 という結果。あれから1年の間、この連載ではあまり触れませんが、日本学術会議の当該小委員会で「健康寿命延伸」に関する仕事を担当させられています。

 昨年末からは政府答申の責任執筆者として取りまとめを行い、年明けにはシンポジウム(http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/271-s-3-5.pdf)なども開催しました。

 大学授業としての公務なので連載のテーマにはほとんどしてきませんでした。ただ、年度末に当たって、全国民が知悉しておくべき、この問題について簡単に解説してみたいと思います。

健康寿命って何?
 さて、改めて上の数字を見て見ましょう。男性が約72歳、女性が約75歳。「そんなに日本の寿命って短かったっけ? 寿命は80歳を超えてるんじゃないの?」という声が聞こえそうです。

 その通りなんです。日本人の「平均寿命」は、2018年夏発表のデータを引用すれば

男性が 81.09歳
女性が 87.26歳

 となります。

 昨今「厚労省」の「統計データ」は、いろいろな批判にさらされていますが、こちらのデータは「旧労働省」ではなく「旧厚生省」側の数字。

 かつ正味の余命というのは死亡診断書などで判断されるものですから、データ改竄などの心配はない数字と考えていいと思います。

 広く言われる「超高齢化社会」の到来、そのものを示す数字です。

 さて、この「余命」ですが、先ほどの「健康寿命」と数年の差があります。いったい何なのでしょう?

 私たち学術会議の小委員会では、便利のためにザックリした値を用いて

男性:平均寿命 約81歳 − 健康寿命約72歳= 約9年
女性:平均寿命 約87歳 − 健康寿命約75歳= 約12年

 のタイムラグを念頭に、議論を進めました。この値は何か?

 ラフに言えば「不健康余命」。あるいは「低QOL余命」と考えることができる困った数字です。ちなみにQOLはクオリティ・オブ・ライフ、つまり生命、生活の質を示す略語です。

 例えば、重い病気に罹患する、あるいは、寝たきりの状態になってしまう、さらには、認知の症状が出て社会生活に困難がある・・・。

 端的に言えば、国民が「加齢によって不健康な状態になる」平均的な年月が、上に記した9年とか12年という歳月になるわけです。

 とりわけ若い皆さん、人生の最後の10年内外を、不健康に過ごしたいと思われますか?

 学術会議の小委員会では、どうしたらこれを短くできるか、可能であれば0に近づけられるか、様々な観点から議論しています。

 明らかなことは、こうした問題は100年の計をもって、出生前や幼児期から、ライフロングのライフ・サステナビリティの課題として国が責任をもって取り組むべきものであるという事実です。

 60歳、70歳になってから、初めて「対策を」といっても、できることは限られているわけですから。

 問題になっている労働統計との関わりで考えるなら、2050年頃の日本では75歳、あるいは85歳といった年齢の人が「現役」として働くことが期待されてもいます。

 これは、定年を75歳、85歳などまで引き上げるということも意味しますが、同時にこうした年齢まで「現役」の納税者として社会で活躍してもらいたいということでもあります。

 つまり、「年金の受給」などはそれ以降に先送りしてもらわないと、国家のそろばん勘定が合わなくなるという切実な状況をも示しています。

 「健康寿命」という概念は、いまだ国際的に確立されたものではなく、その数値の算出にあたっても複数の考え方があり得ますから、「改竄だ!」などと批判を受ける可能性がないとは言えません。

 ただ、身体ならびに脳の状態の「平均的」な健康状態を考えるなら

男性の健康寿命 72.14歳
女性の健康寿命 74.79歳

 を超えた年齢層の国民を「納税者」としてカウントして得られる見込みがあるのか?

 まずもって不可能であろう、という切実な問題をも示していることになります。

 2020年現在の日本で考えるなら、上記の数値も参考に 男女とも70歳前後が、仕事の安全な引継ぎも含めて、現実的な<引退>年齢になっていると言えそうです。

 現状では「個体差」が著しく、80歳、90歳を過ぎても元気でかくしゃくとした人がたくさんおられます。

 私が親しくご一緒してきた中にも、松平頼則、團藤重光、金子兜太といった方々は90代に入ってからも主要な業績を遺しておられます。

 老化の大半は「生活習慣」に起因する・・・少なくとも統計的に考えるなら、そのような前提を置いて議論をすることが可能です。

 つまり、人生最後の10年ほどをどう過ごすか、という分かれ道には、自分自身の選択も浅くない関わりがある。

 こうした自然科学から導かれる結論を、浅くティーチインされた政治家がリピートして失言になったりする例もあるかと思います。しかし、各々の個人が自分の問題として真剣に向き合う必要があるのは間違いありません。

老化は不可避のプロセスか?
 日本では、比較的多くの方が「人間は年を取れば老化するもの」と思い込んでいないでしょうか?

 テレビなど見ると、そのような先入観を感じさせるものを散見します。

 結局、年をとったら人間はみな寝たきりになる、あるいは認知症状が出てわけが分からなくなってしまうのでしょうか?

 もしそんな「諦念」があるとしたら、大変危険なことで、誤りを直ちに正しておく必要があります。

 もちろん、遺伝的な要因などで、避けがたい状況は存在します。

 私の知る中にも、早くから優秀で官界から企業に転じた人が、50代で早発性の疾患を発症して亡くなられたケースがあります。

 ちなみに私自身の父も46歳で亡くなっており、3代遡っても男は50を超えた人がなく、私が記録を更新している状態です。

 ただし戦死とかシベリア抑留とか、およそ「寿命」と別の理由で早死にしているものですが・・・。

 生活習慣や栄養状態、保健衛生のコントロール次第で、人間の余命ならびにそのQOLは、大いに変化するものです。

 子供の頃、日曜の夜に楽しみにしていたテレビ番組に「すばらしい世界旅行」というドキュメンタリーがありました。

 後年、この番組を作っておられた岡村淳さんと近しくご一緒するようになりました。小学生時代に見る「アマゾン」や「パプアニューギニア」などの現実は、ただただ目を見張るばかり、驚異の別世界でした。

 そんな中で、少年時代の私が最もショックを受けた中に、パプアニューギニアの「裸族」のお婆さんがありました。

 陽に焼けて、どこから見ても「お婆さん」ですが、年齢が38歳とテロップが出たんですね。

 間違いかと思いましたが、連れ合いの男性も39歳などとテロップが出る。孫を抱っこしたりして、正味の「おじいさんおばあさん」をやっている。

 私は両親が晩婚で、父兄参観などで当時すでに50を過ぎていた母が来ると、周りの友達のお母さんたちより明らかに年かさで、恥ずかしく思ったりもしたのです。

 その大正生まれの私の母より10歳以上若いはずの南の島の女性が、完全に「老人」であることにショックを受けました。

 30代前半で大学に着任した私が、研究室の「裏番組」として「健康寿命延伸」のサイエンスを20年来続けて来た一つの原点は、このドキュメンタリーにあります。

 もう一つは、30代後半で直面した親の介護で、最期まで責任を取りつつ、一個人として多くのことを考えました。

 老化は、そこそこの進行度合いであれば、かなりの範囲で、より高速な進行を食い止めることができる生理現象、と考える必要があります。

 既に進んでしまった老化を「取り戻す」ことは容易ではありません。しかし、地道な生活習慣からでも、自分の「老い」をゆっくり進行させることは可能です。

 命の終わる日まで、できるだけ自分らしい自分の生を全うする可能性は万人に開かれているのです。

 その現実をもっと多くの普通の人が認識できること、手ごたえを持って「若返り続けていくこと」こそが、世界で最初に超高齢化社会を迎える日本の2020年代最大のミッションの一つである、と考えられるわけです。

人生50年から人生120年へ
 「人生50年」かつてはよく耳にした言葉です。ちなみに私は54歳になりましたので、この基準では人生が一度終わっている勘定になります(苦笑)。まだおよそ、やり残した仕事だらけなのですが・・・

 さて、織田信長が本能寺の変で不慮の死を遂げるにあたって、「人生50年」と幸若舞を舞って自刃したらしい・・・エピソードはよく知られますが、織田信長(1534-82)当人は、満年齢で48歳、今日の観点からは十分に早死にです。

 その後を襲った木下藤吉郎こと豊臣秀吉(1537-98)のケースはもっと意外で、満年齢で61歳の人生、「還暦」をようやく超す程度の期間に、善くも悪しくもあれだけ多くの出来事があった。

 さらに、その後260年の日本を決定づけた徳川家康(1543-1616)にしても満73年の生涯、中国の故事にいう「古稀」古くから稀なり、という70歳をようやく過ぎて、一生涯を終えています。

 <鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス>の家康も「後期高齢者」になるまでは待てなかったんですね。最高権力者も時代の医療水準には勝つことができなかった。

 ここで、自然科学の観点から戦国時代の日本人と、21世紀の日本人を比較してみたいのですが、DNAのレベルで違う生物だったと考えるのは、妥当なことでしょうか?

 突然変異などの生起確率は正確な評価が難しいですが、寿命を考えるうえで、そんなに大きな変化があるわけがない。

 これは歴史を逆に遡ってみると、例えば平清盛(1118-1181)のように「天寿」を全うしたと思われる人が満享年63歳、天智天皇(626-672)は満享年46歳、聖徳太子こと厩戸皇子(574-622)も満享年48歳。

 でも同じ時代の推古女帝(554-628)の満享年74歳など、決して現代人と変わらない「寿命」を全うした人がいないわけではないと思われるわけです。

 神話の登場人物には100歳を超える寿命が伝えられますが、史料として確認できる範囲で、日本に文書主義が定着した飛鳥―奈良期以降の資料に拠るとしても、生物学的に考えてここ1500年程、人類の余命がDNAレベルで延伸あるいは短縮したとは、まず考えられません。

 もっぱら保健衛生の向上と、医療の進歩によって、私たちの「寿命」は大幅に長く実現するようになった。

 そんな中で、最も変化させにくいと思われる一つが、個人ないし共同体レベルでの「生活習慣」ではないか、と思われるわけです。

 古来、塩分の強い食生活を送ってきた地域、古来、ヨーグルトなどの摂取で長寿が一般的な地域・・・。

 こういった人間に由来する要素を「アーティファクト」と呼びます。これを習慣的なものとして外側から眺めるのではなく、物質の相互作用に立脚する厳密な科学として検討する重要性を、学術会議では議論しています。

 特に人類全体の「超高齢化社会初期」に登場していると考えるべき、日本の「介護まわり用品」には、是々非々があり、かえって寝たきりを助長するような、誤った介護なども存在するのではないか、といったシリアスな議論を積み重ねています。

 こうした詳細については、続稿で具体的に触れたいと思います。もう1点、本稿では「ターミナルケアの倫理」に言及しておきたいと思います。

超高齢化社会のQOLから考えるターミナルケア
 この連載では公立福生病院で発生した「人工透析停止」による患者死亡の問題を考えており、別原稿を準備したいと考えていますが、そこでの議論の背景の一つとして、高齢以下社会のターミナルケアとQOLの議論に触れて、このイントロの結びに代えたいと思います。

 福生病院で、医師から患者への「透析停止」という選択肢の提示は、明らかな医療ガイドラインからの逸脱にほかなりません。

 「厳しく検討する必要がある」というのが、この問題への私の基本的な考え方ですが、以下の議論はそれとは独立して考える必要があるものです。

 秀吉や家康、あるいは清盛でも天智天皇でも、かつてはどんな最高権力者でも、延命治療の方法がなければ、そこで寿命は尽きざるを得ませんでした。

 また、そうしたライフサイクルに対応した生活習慣が成立していた。「くち減らし」や「姥捨て」のような現実も確かに存在し、目を背けていては合理的な判断はできません。

 さて、21世紀の今日、飛躍的に進歩した延命治療によって、以前であれば生存が困難、ないし不可能だった人たちに、新しい生の可能性が開かれました。素晴らしいことだと思います。

 しかし同時に、それらの医療に支えられる人が「納税者」ではなく「年金受給者」などとして、国庫を圧迫する存在になるとしたら・・・?

 こういった問題が、日本の厚生行政全体を財務の観点も含めて検討するとき、問われることになってきます。

 しかし、これがさらに、国全体ばかりでなく、個別の病院経営などにも影響を及ぼすとすると、様々なことが懸念されます。

 極論すれば「コストパフォーマンスの高い患者/低い患者」といったことも考えることができてしまい、医は仁術からかなりの算術に変質してしまうことになりかねない。

 家族の負担などによっては「無駄な延命医療などは避けて・・・」という<本人の意志>が、下手をすると姥捨同様の、経済的な判断にもなりかねないリスクも、検討する必要があります。

 大局から問題を検討して、明らかな「正解」が少なくとも一つあります。

 まだ若いうちから生活習慣を長寿型にシフトする、国民健康寿命延伸のための基礎科学の推進がその「半分」に当たります。

 では、残りの半分は何か?

 そう問われると「人はパンのみに生きるものにあらず」つまり、精神的、メンタルな問題ないし、生きる希望や生き甲斐の問題が決定的に重要になります。

 学術会議の提言案文には、それら全体への対案がまとめられていますが、複雑かつデリケートな問題が大半です。

 段階を追って一つひとつ、議論を共有したいと思います。イントロダクションだけで大幅に紙幅を越えました。続稿で詳述したいと思います。

(つづく
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55871
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/736.html

[政治・選挙・NHK258] 韓国・文大統領が目指す「日韓首脳会談」に日本は応じるべきではない 韓国の三菱重工資産差し押さえ「深刻」 仲裁時期見極め
2019年3月26日 真壁昭夫 :法政大学大学院教授
韓国・文大統領が目指す「日韓首脳会談」に日本は応じるべきではない
文在寅大統領
Photo:YONHAP NEWS/AFLO
韓国政府が
日韓首脳会談を目指す意味は
 現在、韓国政府は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍晋三首相との首脳会談の実現を目指しているという。19日には、李洛淵(イ・ナギョン)首相が「年内に2回、日韓首脳会談を行うチャンスがある」との認識を示した。

 ただ、日本では“反韓国”の世論が盛り上がっており、今すぐ、日韓首脳会談を実現することは簡単なことではないだろう。

 今後のポイントは、韓国政府が国内の厳しい反日感情と、日本との関係改善をいかにバランスさせるかだ。現在、文政権は、支持率が低下する中で経済(GDP)成長率も低下する難しい状況に追い込まれている。

 国民に対するアピールとしては、北朝鮮との融和政策を促進することなのだが、金正恩・朝鮮労働党委員長が核武装を諦めないスタンスを明確にしていることで、米朝間の関係がぎくしゃくし始めている。

 一方、韓国が依存してきた中国経済は、成長の限界に直面している。また、元徴用工への賠償問題から日韓関係は戦後最悪になっており、日本は関税率の引き上げなどの対応方法を検討している。それに伴い、韓国の経済界は先行きへの危機感を強めている。韓国政府はその心理に配慮し、日韓関係の修復および改善を意識し始めたようだ。

 ただ、最終的に文政権が生き残るためには、世論優先の姿勢を示さざるを得ない。文大統領が反日感情を強める世論に背を向け、世論が求めることとは異なる政策を進めるとは考えにくい。わが国としては、“本当の意味”での関係改善を韓国に期待するのは難しいと見るべきだ。

経済安定のために
対日関係の修復を目指す文政権
 現在、韓国の経済は、まるで下り坂を転がり落ちるような勢いで減速している。文政権は、一段の景況感の悪化と景気の減速、あるいは失速を防ぐために、日本との関係修復を目指し始めた。

 それは、韓国が経済の安全策(バックストップ)を手に入れるために重要だ。

 韓国経済の特徴の1つは、貿易への依存度が高いことだ。2017年、韓国のGDPに占める輸出入の合計割合は80%だった。これは世界的に見てかなり高い。韓国の経済は資材などを輸入し、それを国内で加工して製品を作り、輸出することで成長してきた。近年の成長を支えたのは、サムスン電子の半導体事業だった。

 2018年に入ると、中国経済が減速した。公共事業の中断に加え、世界的なスマートフォン販売の不振や米中貿易戦争への不安から、中国の企業業績が悪化した。加えて、世界的にデータセンター向けの設備投資が一巡し、半導体需要が急速に落ち込んだ。

 これがサムスン電子の業績を悪化させ、韓国経済を直撃した。年初来、韓国の輸出・輸入ともに前年同月比で減少している。中国には、韓国にかまうだけのゆとりもない。中国政府は、米国との通商協議や景気減速の食い止めに必死だ。

 韓国の経済界では、今後の企業業績に加え、ドルの調達能力への懸念も高まっている。大手信用格付け機関は、韓国企業の信用力が悪化し始めたと指摘している。元徴用工の賠償問題などを理由にわが国が制裁を発動すれば、韓国経済はボディーブローのようなかなりのダメージを受けるだろう。

 文大統領としては、首脳会談を通して日韓の関係を修復・改善し、経済への影響を抑えたい。韓国には“日韓通貨スワップ取極”の再開を目指したいとの目論見も見え隠れする。

 日韓通貨スワップ取極は、相手国が持つドルと自国通貨を融通しあう協定だ。韓国が豪中などと結ぶスワップ協定には、ドルと自国通貨の交換が含まれていない。

 日韓通貨スワップ協定が再開できれば、韓国は経済の安全策を手に入れることができるだろう。文政権はそれを目指して、日本との関係改善を目指し始めたように見える。

期待できない
本当の意味での関係改善
 このように考えると、韓国は国内の厳しい反日世論と、日本との関係にいかに折り合いをつけるかという問題に直面している。

 徐々に韓国政府は、自国の要求が日本の“我慢の限界”を超えてしまったことを察知し、危機感を持ち始めてはいる。

 ただ、韓国政府がその危機感を根本から解決するためには、反日感情を高める世論をなだめる必要がある。その上で、韓国政府は対日関係の修復が自国に重要であることを、世論に納得させなければならない。

 だが、いまの文政権がその取り組みを進めることは難しい。

 現実的に考えると、文大統領は日本との関係よりも、世論への配慮を優先せざるを得ないだろう。過去、韓国の政治家は世論に迎合せざるを得なかった。それができないと、政治家生命が絶たれてしまう恐れがあるからだ。

 結果的に、韓国の政治家は、世論の求める方向に動かざるを得なかったのである。

 韓国の市民団体などは、元徴用工問題に関する追加訴訟を準備し始めた。世論の反日感情は増している。文大統領が世論をどのようになだめることができるか、有効かつ現実的な方策は見当たらない。また、韓国世論も許容できないはずだ。文大統領の支持率は、就任後最低の水準に落ち込んでいる。結局、怒る世論に一段と迎合せざるを得ないだろう。

 ということは、「本当の意味」で韓国が、日本との関係改善を重視し、目指していると考えることは難しい。ここでいう「本当の意味」とは、韓国が国家間の最終的かつ不可逆的合意を順守するということだ。それは、韓国が政治と経済を安定させ、長期の視点で政策を進めるために必要だ。

 しかし、政府が求めに応じないということそのものが、韓国の世論には受け入れられない。世論にとってその状況は、大統領が人々の要求に耳をふさいでいることと映るだろう。

 そう考えると、今後、日韓関係が一段と冷え込む可能性が高いといえる。

日本は韓国の真意を見極め
必要な措置をとればよい
 まず、日本は文政権の真意を見極めなければならない。それと同時に、国際世論から自国の主張への理解と支持を獲得するために努力すべきだ。

 文政権が日韓首脳会談の実現を重視し始めたのは、表向き、日本との関係をつなぎとめるためだ。それは、韓国の対日姿勢が根本から改められることとは異なる。韓国国内で文大統領が直面する状況を考えると、首脳会談の実現を境に韓国が1965年の日韓請求権協定の順守などにコミットするとは考えられない。

 これまで韓国政府は、日韓の2国間協議への対応を求めるわが国からの督促に返答していない。韓国が“最終的かつ不可逆的”な政府間合意を守る確たる意思を表明していない以上、日本は、首脳会談開催の求めに応じる必要は特に認められない。

 同時に、日本は自国の利益を守らなければならない。政府は、国家間の協定に明記された権利の行使を真剣に検討すべきだ。元徴用工の賠償請求問題に関して、韓国の原告団が、日本企業の資産を差し押さえるという“実害発生”の恐れが高まっている。

 日韓請求権協定の規定に従い、日本は第三国委員を交えた仲裁委員会の設置申請の実行などを検討し、事態悪化を防ぐべきだ。原告団が日本企業の資産差し押さえに踏み切るなら、日本は、韓国への対抗措置を発動し、国内企業の経営を守らなければならない。

 そのために、日本は何よりも、国際世論の支持や納得感を取り付けなければならない。その努力は必須だ。国際的にみて、日本の政治は安定感を維持している。政府はそれをフルに生かし、世界経済のダイナミズムとしての期待を集めるアジア新興国との関係を強化し、TPPなど多国間の経済連携の深化を目指せばよい。

 同時に、関係強化に必要な経済支援や国内での構造改革は、積極的に進めるべきだ。日本はそうした取り組みを通して国際世論からの支持を取り付け、自国の利益を守ることを目指すべきだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
https://diamond.jp/articles/-/197837


 


韓国の三菱重工資産差し押さえ「深刻」 仲裁時期見極め
竹下由佳、鬼原民幸 2019年3月25日19時26分

 
記者会見で質問に答える菅義偉官房長官=2019年3月25日午後4時21分、岩下毅撮影

写真・図版
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 韓国大法院(最高裁)が三菱重工業に対し、元女子勤労挺身(ていしん)隊員らへの賠償を命じた判決をめぐり、同社の商標権と特許権が差し押さえられたことについて、菅義偉官房長官は25日の記者会見で、「極めて深刻だ」と批判した。その上で「日本企業の正当な経済活動の保護の観点からも引き続き、適切に対応していきたい」と述べた。

 元徴用工や元女子勤労挺身隊員らに対する賠償問題をめぐっては、日本政府は日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。今年1月には協定に基づく協議を要請。再三の督促にもかかわらず、韓国政府が応じていないことから、日本政府は協定に基づいて、日韓と第三国による仲裁手続きに入る方針を固めており、その時期を慎重に検討している。

 菅氏は25日の会見で仲裁手続きについて問われ、「どのタイミングで何を行うかという具体的な内容については我が方の手の内を明かすことになるので差し控えたい」と明言を避けた。外務省幹部は元徴用工訴訟で新日鉄住金の資産もすでに差し押さえられていることから、「新たな段階に入ったわけではない」として、当面は協定に基づく協議に応じるよう求める考えだ。

 一方で、自民党などからは韓国に対し、経済的な「対抗措置」を求める声が高まっている。麻生太郎財務相は12日、衆院財務金融委員会で措置の具体例として「関税(引き上げ)に限らず、送金停止、ビザの発給停止とかいろんな報復措置がある」と例示した。

 ただ、日本政府内ではこうした措置について「デメリットの方が大きい」(外務省幹部)との見方が大勢だ。日韓が対抗措置の応酬になりかねず、経済への影響が大きいためだ。

 財務省によると、昨年の韓国への輸出額は約5・8兆円で、中国、米国に次ぐ規模。輸入額も約3・6兆円で第5位だ。また、昨年の韓国からの訪日客数は約754万人で過去最多となった。政府関係者は「対抗措置と言っても嫌がらせレベルのことしかできない」と言う。(竹下由佳、鬼原民幸)

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日韓の「解決済み」ひっくり返す 同様の訴訟へ影響必至
元徴用工訴訟、日本企業に賠償命じる初判断 韓国最高裁
https://www.asahi.com/articles/ASM3T5FDBM3TUTFK014.html
http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/832.html

[国際25] EU、英国の合意なき離脱に姿勢変化−どうせ起きるなら早い方がいい 英下院、離脱案修正、拘束力ない採決実施−首相主導権失う
EU、英国の合意なき離脱に姿勢変化−どうせ起きるなら早い方がいい
Ian Wishart
2019年3月26日 0:13 JST
合意なき離脱に向け、加盟国政府の準備は整った−欧州委員会
事態に進展なければ英国は4月12日午後11時に合意なき離脱へ
メイ首相
メイ首相 Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg
英国の合意なき欧州連合(EU)離脱について、EUの言い回しに変化が見られている。「ますます可能性が高まっている」合意なき離脱に対して域内の企業や市民の用意はできているとし、安心感の醸成を図っている。

  21日のEU首脳会議で加盟国首脳らはメイ英首相に対し離脱案を再び議会採決にかける時間的な猶予を与えるため、英国の離脱期限延期を認めた。だがEUの欧州委員会は25日、最悪の展開をたどった場合の計画について、声明を発表した。

  欧州委は英国の合意なき離脱が依然として最も好ましくない選択肢だとしつつ、加盟国政府の準備は今や整い、税関職員の採用も進んだと表明。EU関係者が記者団に語ったところによると、どのみちそれが起きるのであれば早いほうがいいとの認識がEU内で広がっている。この関係者は衝撃を緩和するような「小手先の合意」はないと強調し、全ての措置は一方的でEUの自己防衛が目的だと説明した。

  事態に何も進展がなくこのまま時間が過ぎれば、英国は4月12日現地時間午後11時に合意なき離脱に陥る。ただ、双方ともにこの準備を整える目的でEU首脳が離脱期限を5月22日まで延ばす可能性もあると、別のEU関係者は述べた。同月23日に実施される欧州議会選挙に英国が参加しない場合、これ以降への離脱延期は難しい。

  21日の首脳会議では、マクロン仏大統領ら一部首脳は合意なき離脱への抵抗感を著しく後退させた様子を示したと、複数の外交官は語った。フランスやベルギー、オランダなど英国の離脱で最も影響を受けるEU加盟国は合意なき離脱に備えてこれまでに計2000人以上の税関職員を採用したと、EU関係者は述べた。

原題:EU Shifts Tone on No-Deal Brexit, Saying It’s Getting Likelier(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POXCYYSYF01S01?srnd=cojp-v2


 
英下院、離脱案修正に関する拘束力のない採決実施へ−首相主導権失う
Tim Ross、Ian Wishart、Robert Hutton
2019年3月26日 7:52 JST
メイ首相
メイ首相 Photographer: Jasper Juinen/Bloomberg
英下院は25日、メイ首相が欧州連合(EU)と取り決めた離脱合意案の修正に関する一連の拘束力のない採決を実施する案を賛成329、反対302で可決した。これに伴い、離脱案への議会承認を得るための採決を行うことが困難となり、EU離脱プロセスの主導権を議会が握ることになる。

  メイ政権の政務担当者のうちリチャード・ハリントン氏など3人が首相の方針に反する投票を行うために辞任した。BBCのジャーナリストのツイートによれば、ハリントン氏はオリバー・レトウィン議員が提出した修正案に賛成票を投じるために辞任したと語ったという。

原題:Defeat for May Hands Control of Brexit Process to Parliament (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POY2856KLVR401
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/818.html

[国際25] 米国務長官、ロシアにベネズエラでの「非建設的行為」停止求める  米上院共和党、ロシア疑惑捜査が適切に行われたか調査計画 
ワールド2019年3月26日 / 09:22 / 19分前更新
米国務長官、ロシアにベネズエラでの「非建設的行為」停止求める
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 25日 ロイター] - ポンペオ米国務長官は25日、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、ベネズエラ情勢について協議した。この中でポンペオ氏は、ロシアがベネズエラのマドゥロ大統領を支援するのを「手をこまねいて見ているわけにはいかない」とけん制した。

現地メディアの報道によると、ベネズエラの首都カラカス郊外の空港には23日、100人近くの兵士を乗せたロシアの空軍機2機が着陸した。これが事実ならば、ロシア政府はマドゥロ政権との関係強化に動いている可能性がある。

米国務省のパラディーノ報道官はポンペオ、ラブロフ両氏の電話会談について出した声明で、ロシア空軍機に関する報道には触れずに、「違法なマドゥロ政権」に対するロシア軍のいかなる支援も非難する立場を示した。「ポンペオ長官はロシアに非建設的行為を停止するよう求めた」という。

また、米国や中南米諸国に歩調を合わせ、ベネズエラの野党指導者、グアイド国会議長を支持するよう訴えた。

ブルームバーグはベネズエラ通信情報省の当局者の話として、ロシア空軍機の着陸は両国の長期的な軍事協定に沿っていると報じた。ベネズエラが購入したロシア製の軍装備の保守管理が目的だという。

ベネズエラ通信情報省はロシア軍機の到着やブルームバーグの報道について、コメントの求めに応じていない。

米政府当局者によると、米国は最大で100人のロシア軍兵士が上陸した可能性があると考えているが、そのうち何人が現地に残ったのかは不明だという。ベネズエラでの目的についてはコメントを差し控えた。
https://jp.reuters.com/article/pompeo-russia-venezuela-idJPKCN1R7017?il=0

 

ワールド2019年3月26日 / 03:12 / 42分前更新
米上院共和党、ロシア疑惑捜査が適切に行われたか調査計画
Reuters Staff
1 分で読む

[ワシントン 25日 ロイター] - 米議会上院司法委員会のグラム委員長(共和党)は25日、2016年の米大統領選にロシアが介入した疑惑捜査について、連邦捜査局(FBI)などが不適切な方法で行わなかったかを調査するため、バー司法長官に特別検察官の任命を要請すると明らかにした。

グラム氏は、今回の件を逆の立場から明らかにすると説明。トランプ陣営の外交政策顧問を務めたカーター・ペイジ氏への通信傍受を行うための外国諜報活動偵察法(FISA)に基づく令状に目を向ける時だと指摘し、司法委員会委員長の立場としてこの件を調査すると説明した。

ペイジ氏がトランプ氏の選挙活動から退いた直後の2016年10月、FBIはページ氏を監視するための令状請求で深刻な間違いを犯した、と共和党議員は指摘している。

グラム氏は記者団に対して、FISAの件を調査するための特別検察官任命について、1日にバー司法長官に話す計画だと述べた。

メディアによると、グラム氏はその後、ロシア介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査報告書について、バー司法長官が司法委員会で証言することに合意したと述べた。

*写真を付け、内容を更新します。
https://jp.reuters.com/article/pompeo-russia-venezuela-idJPKCN1R7017?il=0
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/819.html

[国際25] オカシオコルテス米議員にメディアは夢中、波及効果トランプ氏並み FOXでは誰か悪役を必要としていたが、議員はこれを好演
オカシオコルテス米議員にメディアは夢中、波及効果トランプ氏並み
Gerry Smith
2019年3月26日 6:33 JST
アレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員
アレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米民主党の新星として知られるアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員(ニューヨーク州)に、メディアも夢中になっている。

  ソーシャルメディア向けの短い動画コンテンツを作成するオンラインメディア、ナウ・ジスは、選挙資金法に関する議会公聴会での同議員発言を動画にまとめ、ツイッターに掲載した。AOCの略称で知られるオカシオコルテス議員は、300万人のフォロワーを持つ自らのアカウントでこれをリツイート。その再生回数は4000万を超え、ナウ・ジスの動画で過去最高を記録した。

  29歳という若さとカリスマ性、挑発的な発想で知られる同議員は、ポッドキャストや深夜のトーク番組などメディアに幅広く登場し、米誌タイム最新号の表紙も飾った。これは、2016年米大統領選挙でトランプ大統領の存在がニュース各社の事業を大きく押し上げたのとよく似ている。  

Former Trump Lawyer Michael Cohen Testifies Before House Oversight Committee
マイケル・コーエン被告に質問するオカシオコルテス議員(2月27日)Al Drago / Bloomberg
  FOXニュースの報道でオカシオコルテス議員の名が挙がるのはほぼ毎晩で、CNNやMSNBCなど競合するニュース専門ケーブル局よりもはるかに目立つ。このことは、民主党に批判的な報道姿勢を取るFOXでも、同議員についての報道が高視聴率に寄与していることの表れだ。

  コロンビア大学のトウ・センター・フォー・デジタル・ジャーナリズムのエミリー・ベル所長は、リツイートしてほしいメディア各社は同議員に「ぞっこんだ」と指摘。「ヒラリー・クリントン氏が話題性を失ったいま、FOXでは誰か悪役を必要としていたが、オカシオコルテス議員はこれを好演している」と話した。

  出版関連の分析会社チャートビートによると、オカシオコルテス議員に関する記事の数はここ数カ月で急増し、同議員に言及がある平均的な記事は1300ものページビュー(PV)を稼ぐ。これは、一般の政治関連記事の約2倍だとしている。

relates to オカシオコルテス米議員にメディアは夢中、波及効果トランプ氏並み
タイム4月1日号の表紙を飾ったオカシオコルテス議員タイム
The AOC Bump
Online articles about Ocasio-Cortez draw twice as many readers


Source: Chartbeat

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原題:Ocasio-Cortez Creates a Trump Bump of Her Own for News Media(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POXOZ46VDKHS01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/820.html

[不安と不健康18] 食の安全 常識・非常識 「インフルエンザ予防に乳酸菌」のページが消えた! 健康効果の読み解き方(前編) 
食の安全 常識・非常識

「インフルエンザ予防に乳酸菌」のページが消えた!

健康効果の読み解き方(前編)
2019/03/26

松永和紀 (科学ジャーナリスト)


(kuppa_rock/iStock/Getty Images Plus)
 毎年冬になると、「インフルエンザ予防によい食品」というニュースがテレビや雑誌、ネットなどで流れます。今冬の新顔は紅茶でした。インターネットでは強く批判されましたが(米国国立衛生研究所で研究中の病理医研究者のブログ、五本木クリニック院長ブログ)、信じ込んで紅茶をがぶ飲み、という人もいたようです。

 おなじみなのはヨーグルトの乳酸菌。でも、私から見れば、乳酸菌も根拠は希薄なのです……。なんて思いながら企業サイトを調べていて、すごいのを見つけてしまいました。


水戸ヤクルト販売会社のWebページのキャプチャー。指摘したら、あっという間に消えた 写真を拡大
 ヤクルトの販売会社の「インフルエンザ予防」というページでした。免疫力アップの方策として「乳酸菌 シロタ株を摂取する!」と明記してありました。

 ヤクルト=乳酸菌シロタ株というのが消費者の認識でしょう。つまり、ヤクルトを飲めばインフルエンザを予防できるということ?

 2月20日(水)、(株)ヤクルト本社広報室に文書で問い合わせをしたところ、22日に「一部不適切な表現があることについて確認しました」という回答が来て、あっという間にページは読めなくなりました。

 えっ、どの会社も乳酸菌のインフルエンザ予防をどんどん宣伝しているのに、なぜこれはダメ? そう思ったあなた、鋭いです。企業の「これが効く」研究と広告・宣伝、法律は、かなり複雑な関係があります。2回にわたって考えてみます。

薬機法、公正競争規約に違反の恐れ
 まず、インフルエンザという疾病の予防効果、つまり医薬品的な効果効能を食品でうたうのは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)違反の恐れがあります。成分を添加した食品はとくに厳しくみられます。

 また、食品の健康効果は、実際のものよりも著しく優良であると示す表示や誤認させる表示が禁止されています(健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について)。この場合の表示は、容器包装に印刷されているものだけでなく、テレビや新聞、インターネット等における広告も含まれます。

 さらに、事業者団体が景品表示法に基づき、公正取引委員会と消費者庁の認定を受けて決めた自主ルール「発酵乳・乳酸菌飲料の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」では、「発酵乳・乳酸菌飲料が、病気の予防等について、効能又は効果があるかのように誤認されるおそれがある表示」は「してはならない」と定めています。

 こうしたことから、私の指摘を受けて、すぐさまWebページを削除したのでしょうか。

 ちなみに、「免疫力がもっとも高まる状態は、36.6度です!」とも記述されていました。これは、明らかな“ニセ科学”です。

インフルエンザ予防、根拠は薄い
 食品が医薬品的な効果効能をうたうのは法律上ダメ。でも、それは、乳酸菌シロタ株にインフルエンザ予防効果があるのかどうか、という科学的根拠とは別問題です。本当に効果があるのなら、杓子定規な法律をかいくぐり、なんとかうまく宣伝してゆきたい、という企業の気持ちもわかるし、自分も知りたい……。そう考える人も少なくないでしょう。

 では、乳酸菌シロタ株の予防効果、その根拠はどの程度のものなのでしょうか?

 「インフルエンザ予防に乳酸菌シロタ株が効く根拠論文、免疫力がもっとも高まる状態が36.6度である根拠論文をお示しください」とヤクルト本社広報室に文書で尋ねたところ、前述のようにページ削除という結果でした。

 2月22日の回答は「一部不適切な表現があることについて確認しました。今後、ヤクルトグループの情報発信について、お客さまに誤解されることのないように連携していきます」というもので、根拠についての説明はありませんでした。

 ならば、ということで、学術論文のデータベース「Pubmed」で探してみました。乳酸菌シロタ株のインフルエンザとの関係について人で調べた論文は2つしか探せませんでした。

 1つはヤクルトUKがスポンサーとなり英国の大学で行われたもので、ヤクルトを飲む前後で一部の免疫機構の指標は上昇したものの、インフルエンザAに特異的な指標は、有意差なし。もう1編は、ヤクルト本社が資金提供しベルギーの大学で行われた研究ですが、こちらも高齢者施設の健康な高齢者には効果なし、という結果です。

 これで、学術的な根拠があると言えるでしょうか?

巧妙なトリックがある
 でも、ヤクルトのインフルエンザ予防効果という記事を何度も読んだことがあるけれど……。そんな人は多いでしょう。実はそこに、“トリック”が隠れていると私は思うのです。

 ヤクルト中央研究所は、「菌未来レポート」(https://www.yakult.co.jp/kinmirai/)というサイトで研究成果を公表しており、 “上気道感染症(カゼ・インフルエンザ)”(https://www.yakult.co.jp/kinmirai/report/report2/)というページでは、 「乳酸菌シロタ株を含む飲料を飲むと上気道感染症(カゼ)にかかる回数が、約半分になるという研究成果が得られました」と書き、「乳酸菌シロタ株でカラダにいい未来を」と大きな字で伝えています。

 そして、そのすぐ下で「インフルエンザは予防が大事」として予防接種などについて紹介した後、「免疫力アップ」も予防ポイントとして挙げ、「米、魚介類、野菜、果物、乳製品をバランス良く食べることに加え、乳酸菌などのプロバイオティクスを摂取することで免疫力が高まることが、近年の研究で明らかになっています」と書いているのです。


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「乳酸菌シロタ株を含む飲料を飲むと上気道感染症(カゼ)にかかる回数が、約半分になるという研究成果が得られました」と説明したすぐ下に、「インフルエンザは予防が大事」「乳酸菌などのプロバイオティクスを摂取することで免疫力が高まることが、近年の研究で明らかになっています」と書いている
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 これを素直に読んだらだれでも、ヤクルトを飲んでインフルエンザ予防をしよう、と思うのでは。でも、水戸ヤクルト販売会社があっという間に削除したページとは異なります。「上気道感染症にかかる回数が半分になる」という論文は実際に出ているし、後段でも、直接的には「ヤクルト製品や乳酸菌シロタ株が予防する」とは書いていない。したがって、このページはセーフ、なのです。

 製品を紹介するページとは別に、研究成果を紹介するサイトを作り、その中で疾患への効果を説明する。あとは、消費者が頭の中で製品と疾患への予防効果を勝手につなげてくれるのを待つだけ……。

 この手法だと、法律や公正競争規約違反に問うのは難しくなります。私は消費者の心を惑わすトリックだと思いますが、この手を使う食品企業はかなり多くあります。

 ちなみに、「乳酸菌シロタ株をとっていると上気道感染症にかかる回数が半分になる」という論文、たしかにあるのですが、批判されています。

 研究は、ヤクルト本社がスポンサーになり英国の大学研究者が調べたもの。同社は、この研究やほかの論文等を根拠にし、「生きた乳酸菌シロタ株の日常的な摂取により、免疫機能のサポートを助け上気道を守る効果を維持する」(maintain the upper respiratory tract defences by helping to support immune functions)という表示をしたい、と欧州食品安全機関(EFSA)の審査を受けたことがあります。

 しかし、この研究は、試験のやり方に問題があり根拠とならない、とコテンパンに批判され、ほかの論文と共に審査された結果、却下されているのです。

 こんなことまで知ると、「えっ、根拠はほとんどないのに、私たちは信じ込んでいたの?」と思いませんか?

 ヤクルト本社に、EFSAという権威ある機関の審査で却下された後もなお、上気道感染症への効果や“免疫力”アップなどをアピールすることについての見解を尋ねたのですが、次のような回答でした。

 「菌未来レポート」は、日本で実施した当社の研究成果を紹介する企業広告です。EFSAの指摘は、欧州で食品のヘルスクレームを申請した際に示されたものです。

 研究成果を用いた目的が異なるため、EFSAの指摘に対するコメントはありません。

 これで納得できますか? 

 いずれにせよ、論文やEFSAの審査結果など読まないメディアは、科学的根拠などどうでもよいようです。企業やその資金提供を受けて実験した研究者の話をそのまんま流しています。

明治の乳酸菌R-1も調べてみた
 同様のことを、ほかの企業も行っています。

 たとえば、(株)明治のR-1ヨーグルトは、インターネットで検索するとインフルエンザ予防効果に関する情報が山のように出てきますが、私には、根拠は確かとは思えません。

 同社も商品などの紹介ページとは別に、「乳酸菌研究最前線」というページを作り、そこで「免疫機能を活性化し、インフルエンザを抑制できる!?」と題して、関連の研究成果を紹介しています。

 乳酸菌1073R-1株について、(1)〜(5)までの5つの試験結果を並べています。が、(2)(3)はマウスでの結果。ヒトで効くという根拠にはなり得ません。

 (1)は山形と佐賀で行われたヒトを対象とした試験結果。同社の研究者によるもので、論文が2010年に発表されており、高齢者施設でヨーグルトを摂取した群と牛乳を飲んだ群を比較し、ヨーグルト群の方が2.6倍、風邪を引くリスクが下がり、目や鼻、のどの調子もよく、NK細胞活性という免疫機能の指標の一つが上昇、という結果です。

 ただし、この研究は「ヨーグルトは体に良いはず」というような被験者の思い込みや生活の無意識の変化などを排除できておらず、参加者人数も多くなく、信頼度の低い予備的研究です。

 (4)は「乳酸菌1073R-1株の継続的な摂取がインフルエンザワクチンの効果を高める可能性がある」として、試験結果が説明されているのですが、論文をどうしても探せません。

 そこで、明治広報部に尋ねたところ、なんと学会発表でした。2月20日付の回答によれば論文には今、取り組んでいるところ、とのことです。学会発表は審査がなく、事実上、だれでも、どんな内容であっても発表はできます。

 一方、論文は多くの場合、第三者の審査の結果、掲載されます。したがって、学会発表レベルでは、科学的な根拠とは扱われません。なのに、根拠として説明しているのか? 唖然としました。

 (5)は、「高齢者のインフルエンザ予防につながる可能性が示唆されました」として紹介されています。文科省の科研費による研究で、2017年に発表されています。高齢者施設で毎日R-1ヨーグルトを食べてもらい、試験開始前と、毎日食べるようになってからの唾液中のIgA濃度を比較し、有意差あり、つまり効く、というわけです。

 でも、この試験では、(1)の試験と同様に、ヨーグルトは良いという思い込みや生活習慣の無意識の変化等を防げませんし、IgAは免疫機構の指標の一つに過ぎません。

 (1)〜(5)では、インフルエンザ予防などとはとても言えないのです。念のため同社広報部にほかの根拠も尋ね、4つの論文が示されたのですが、3論文は上記とだぶり、もう一つは、この論文(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26686726)でヒト試験ではなく、参考になりませんでした。

 試しに学術論文のデータベースPubmedで、菌名の「OLL1073R-1」で検索すると、出てくるのは13の論文。この中には細胞実験なども混じっており、人への効果を調べたのは3論文で、前述の(1)と(5)が含まれています。

企業が触れなかった論文は?
 気になったのは残る一つ、同社が触れなかった2018年の論文です。これは同社の研究者によるもの。(1)(5)とは異なり、効果を検証する時には必須の「二重盲検ランダム化比較試験」を行なっており、信頼度は高いです。

 その論文を読むと、試験は夏に30〜49歳の健康な人を対象に行っており、たしかにR-1ヨーグルトを食べた群の方が、R-1ではないヨーグルトを食べた群よりも夏場の疲労感スコアは有意に低い。

 しかし、免疫系の指標の1つであるNK細胞活性に差はほとんどなく、夏風邪を引く割合も、両群で有意な差がありません。つまり、この論文を読む限り、風邪を防ぐとは言えません。

 これらを合わせて考えると、「風邪罹患リスクを低減し、インフルエンザの抑制効果の可能性がある」と記述するには、エビデンスが不足しているのではないか。私でさえも、論文を読んで感じるぐらいですから、多くの科学者が疑問を持っています。「ヨーグルト自体は悪くない食品で、積極的に食べてもらってよいけれど、あんなことは言えないよね」という感じです。

 こうした疑問、批判に対する見解も同社に尋ねましたが、「当社は、さまざまな研究成果について、研究結果に基づく事実を提供しています。 今後も乳酸菌の可能性を追求し、研究を進めてまいります」という返事でした。

 明治は、商品説明では「強さひきだす乳酸菌」と宣伝し、冬場に思わせぶりなCMを流しますが、風邪やインフルエンザなどの言葉はいっさい出しません。

 一方で、「乳酸菌研究最前線」では風邪やインフルエンザなどの言葉を振りまいています。「学会発表しました」などとプレスリリースもします。

 それを受けて、メディアが勝手に製品と風邪やインフルエンザをリンクさせて報道し、個人もblogなどで書きまくる。これが、「インフルエンザ予防にR-1ヨーグルト」と流される情報の正体です。

伝えるメディアの責任は
 とてもややこしい話を書き連ねました。科学的根拠を検証しようとすると、これくらい面倒なもの。お付き合いくださって、ありがとうございます。

 整理すると、インフルエンザ予防という疾病予防効果はそもそも、食品では標ぼうできません。加えて、乳酸菌が免疫機能を上げるという根拠は希薄です。免疫系の指標の一つや二つ、上昇したとしても、人の体はとても複雑ですから、それが臨床的な意味があるかどうか、つまり体によい効果につながっているのかどうかは不明です。

 本記事では乳酸菌業界のリーダー格で目立つ2社を取り上げただけで、ほかの食品企業だって似たり寄ったり、です。巧妙に情報を出しておけば、メディアや個人が勝手に製品と効果をつなげて大々的に取り上げ宣伝してくれるのです。

“免疫力”は識別ワード
 実は、私には苦い経験があります。

 数年前、連載していた雑誌編集部に、“免疫力”という言葉を解説してほしい、と頼まれました。雑誌やインターネットで「免疫力を上げるには……」というフレーズをよく見かけますが、学術用語ではありません。定義がはっきりしないので、私のみるところ、まともな科学者は使うのを避ける言葉です。

 免疫は、外から入ってくる病原体を取り除こうとする重要な体の働きですが、過剰になるとアレルギー症状を引き起こしたり、自分自身すら攻撃する「自己免疫疾患」になったりします。そう考えれば、「免疫力を上げる」などという言葉遣いはできないし、特定の食品で感染症を防げる、という単純な話にはなり得ません。

 お茶やヨーグルトの論文を読み、「この言葉を使った健康解説などがあったらまずは疑う、くらいの識別ワードと思ったほうがいい」という原稿を書きました。

 ところが編集部から連絡が来たのです。「ヨーグルトは事例から外して欲しい」という依頼でした。

 その雑誌に広告を出している乳業メーカーから圧力が来たわけではないようでした。その前に、どうも編集部がスポンサーに忖度したのです。

 そのため、私は記事自体の掲載を取りやめてもらい、そのまま連載も終了しました。

 こういう話、少なくありません。スポンサーが圧力をかけるまでもなく、メディア側が自己規制をしています。

企業、メディア、研究者、みんながお得だが、消費者は……
 加えて、私が取材経験から感じるのは、研究者による悪しき連帯です。「インフルエンザに紅茶」をすぐに批判したのは、医師でした。食品の効果を検討している栄養学や農学の研究者は、声をあげません。

 国や大学等の研究費が少ない日本の研究者にとって、食品企業のようなスポンサーはありがたい。うっかり批判して、後に研究助成してもらえない、なんて事態は避けたいのです。

 それに、狭い世界なので、「○○に効果」と言っている研究者は友達、仲間、というケースも少なくありません。恩師がその企業から研究費を提供されていたり、自分の学生が将来、その企業に就職したいかも……。批判にブレーキがかかります。

 その結果、どうなるか?

 企業の根拠薄弱な「○○は効く」は、その企業にとって得、メディアにとっても、関心は高いのでテレビの視聴率は上がり、記事はよく読まれるし、スポンサーの覚えめでたくお得、多くの研究者も黙っていた方がお得、です。

 批判するには、論文に目を通し、ほかにもいろいろ調べて否定してゆく地味で時間のかかる作業が必要です。「インフルエンザと紅茶」を批判するのに、冒頭で紹介した2つの記事が、執筆にどれくらいの時間をかけたことか。よほどの正義感、公衆衛生に対する倫理観がないと、できないでしょう。

 圧倒的な量の宣伝、もてはやす記事と、わずかな批判と。その結果、不利益を被るのは、明確な根拠が実はないのに、「効く」と思って買う消費者。そして、消費者はそのことに気づいていません。

*後編(3月27日公開予定)へ続く

【参考文献】

・(株)水戸ヤクルト販売会社

・ヤクルト中央研究所菌未来レポート

・American Journal of Clinical Nutrition・Efficacy of daily intake of Lactobacillus casei Shirota on respiratory symptoms and influenza vaccination immune response: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial in healthy elderly nursing home residents.

・Scandinavian Journal of Immunolocy・Immune Response of Healthy Adults to the Ingested Probiotic Lactobacillus casei Shirota.

・International journal of sport nutrition and exercise metabolism・Daily Probiotic’s (Lactobacillus casei Shirota) Reduction of Infection Incidence in Athletes

・Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry・Effects of a Fermented Milk Drink Containing Lactobacillus casei Strain Shirota on the Immune System in Healthy Human Subjects

・EFSA Journal・Scientific Opinion on the substantiation of a health claim related to Lactobacillus casei strain Shirota and maintenance of the upper respiratory tract defence against pathogens by maintaining immune defences pursuant to Article 13(5) of Regulation (EC) No 1924/2006

・明治・乳酸菌研究最前線

・British Journal of Nutrition・Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1. Randomized controlled trial

・Gerodontology・Effects of yogurt fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1 on the IgA flow rate of saliva in elderly persons residing in a nursing home: A before-after non-randomised intervention study.

・Nutrients・Anti-Fatigue Effects of Yogurt Fermented with Lactobacillus delbureckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1 in Healthy People Suffering from Summer Heat Fatigue: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15710
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/737.html

[経世済民131] 一流大学行く価値あるか?ないかも 通った大学によって将来の収入にほぼ差が出ない
2019年3月26日 The Wall Street Journal
一流大学行く価値あるか?ないかも
テキサス大学
Photo:iStock/gettyimages
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

***

 われわれはどの大学を出たかが成功のカギになるとうんざりするほど聞かされている。では、一部の親が法律に違反してでも子供を名門大学に入れようとするのは当然のことなのか?

  無論、こうした親が大学のコーチや入試管理者に賄賂を送ったとして米連邦捜査局(FBI)に起訴されたのは行き過ぎたケースだ。だが法律を順守している親も無縁ではない。中には誰もがうらやむトップ校に入れるため、自分の母校に数百万ドル寄付したり、1時間1000ドル(約11万円)の受験コンサルタントを雇ったりする親がいるからだ。

 一方で、これは経済的な観点からは意味をなさない。大学の学位が高校の卒業証明書に対して収入面で大幅かつ持続的な格差をもたらす証拠はある。だが一流大学であるがゆえにその差が広がるわけではない。もちろん例外はあるが、一流大学の卒業後に成功した人々の大半は、仮にそうでない教育機関に通っていたとしても成功した可能性が高い。つまるところ、裏口入学を巡って先週起訴された親たちの下に生まれた子供は裕福で、有利な人脈があり、子供のためならほぼ何事もいとわない献身的な親がいるということだ。これは出身大学がどこであっても成功へのレシピとなるだろう。

 それゆえ、合法的もしくは不正な手段で子供をトップ校に入れようとする親に向けられた憤激は、理解できなくはないがピントがずれている。カントリークラブ(スポーツと社交のための会員制クラブ)と同様、一流大学への進学はステータスの証明であってその源泉ではない。他人の富によってはじき出された子供は栄誉を失うだけで、未来を失うわけではない。

 エリート大学に通う優秀で野心的な子供たちがその後順調な人生を送るという事実は、前者と後者の因果関係を示すわけではない。それが最も明確に立証されたのは数学政策研究所のステイシー・デール氏およびプリンストン大学のアラン・クルーガー教授による、今や有名になった2つの論文だ。

 先週末に58歳で死去したクルーガー氏は米国で最も尊敬され、多くの実績を残した労働経済学者の一人だ。同氏は曖昧なデータを用いて革新的な実験を行い、社会の通説をたびたび覆してきた。

 大学に関する研究もその一つだ。同氏とデール氏は大学の出願先リストとその後20〜30年間の社会保障庁への提出資料に基づく収入額の関連性を調べた。その結果、生い立ちや学業成績、テストの点数が近く、出願した一流校・非一流校のリストが一致した2人の学生を比べると、1人が一流校に進学し、もう1人が進学できなかった場合でも、その後の収入額は同等であることがわかった。出願先リストは野心の表れであり、実際に通った大学よりもそれが成功の強い原動力となると両氏は主張する。「出身大学のランクで得られるリターンはほぼゼロに近い」と両氏は2011年に述べている。


名門大学受験コンサルタントのアレン・コー氏は同業者のリック・シンガー被告が共謀や恐喝などの罪を認めたことに衝撃を受けている。同氏とのインタビューで業界の内情などを聞いた(英語音声・英語字幕あり)
 通った大学によって将来の収入にほぼ差が出ないという事実は、大学の質が重要でないことを意味するのではない。大学の質はむしろ、特定の学生の達成感を高めるのにどのくらい効果的かで決まるのであり、大学のランクと同義ではない。デール氏はこう指摘した。「大学の教員は指導力ではなく、研究成果に基づいて採用される。一番良いとされる大学に最良の教師がいるとは限らない」

 テンプル大学のダグ・ウェバー准教授(経済学)は、デール氏とクルーガー氏が調査対象としたエリート大学は学術研究の面で非エリート大学をわずかに上回るだけだと述べた。一方、大学の質の差が顕著であれば、収入にも著しく影響するという。さらに、ある調査によるとテキサス大学に通うことで他のテキサス州立大学の出身者を上回る収入格差は生じなかったが、別の調査ではフロリダ大学に通うことで他のフロリダの州立大学出身者と比較して大きな収入格差が生じていたと指摘。ウェバー氏は、フロリダ大学がフロリダの他の州立大学よりはるかに高いランクにあるのに対し、テキサス大学と他のテキサス州立大学のランクの差はわずかだからだと述べた。

 同じ現象は外国にも見受けられる。米国以上に親がエリート大学への進学に熱心な国々はある。こうした親が米国人ほど子供の入学に費用をつぎ込むかどうかは分からないが。

 ノルウェー生まれで現在はシカゴ大学で経済学教授を務めるマニュ・モグスタット氏ら3人の共著者は、ノルウェーでクルーガー・デール両氏と同様の調査を実施した。その結果(年齢・性別・高校の成績による調整後)によると、エリート大学出身者の収入はそうでない人々をわずかに上回ってはいたが、それよりはるかに重要なのは専攻分野の違いだった。理系の卒業生は人文系の卒業生の3倍近い収入を得ていたからだ。


米国で発覚した裏口入学事件では一部の出願写真が偽造された疑いがある。いかに簡単にフェイク写真を作れるかをWSJが検証(英語音声・英語字幕あり)
 エリート大学出身であることが将来の収入にほぼ響かないのであれば、そのどれかに子供を押し込もうと多額の金を費やし、不安にさいなまれるのは理不尽なのではないか。あるいは単に親が経済以外の要因に重きを置くことも一因かもしれない。例えばパーティーで自慢話ができるとか、子供が特定の社会集団の中で結婚相手を見つけるチャンスがあるとかいうことだ。

 そうした大学に入学するのは、宝くじを買うのにも似ている。ビジネスや政治の世界でトップに上り詰める可能性は常にかなり低いが、もし未来のフォーチュン500企業経営者や米大統領と同じ大学の寮にいたとなれば、その可能性が少しは高まるかもしれない。

 ただ、富裕層の利点ばかりに目を奪われると全体像を見失うだろう。デール・クルーガー両氏は次のような事実にも気づいた。アフリカ系米国人やヒスパニックの学生と、両親が大学卒ではない学生は、一流大学に通ったことで実際に収入が大きく伸びていた。それは恐らく、他の方法では得がたい貴重な人脈を広げるチャンスに恵まれたためだと両氏は分析している。

(The Wall Street Journal/Greg Ip)
https://diamond.jp/articles/-/197870
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/683.html

[国際25] 世界で一番幸福な国はフィンランド−2年連続 最も不幸せなのは南スーダン 日本は
世界で一番幸福な国はフィンランド−2年連続
Kati Pohjanpalo
2019年3月25日 13:26 JST

フィンランドが2年連続で、世界幸福度ランキングのトップとなった。
  他の北欧諸国のデンマーク、ノルウェー、アイスランドも4位までに入った。国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が156カ国・地域をランク付けした。
Happiness Scoreboard
The gap between the top and bottom countries is wide

Source: World Happiness Report
  米国は1つ順位を落とし19位。最も不幸せなのは南スーダンだった。
  20日発表された19年のランキングは16−18年にかけてのギャラップの調査に基づく。調査項目は国内総生産(GDP)や友人・家族からの社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由、社会の寛大さ、認識されている腐敗度、最近の感情など。
  リポートによると、フィンランドは各項目で14年以降安定した上昇を記録し、現在では他のトップ10諸国を「大きくリードしている」。
原題:Finland Ranked World’s Happiest Country for Second Year Running(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POWKX76JIJUO01?srnd=cojp-v2


World Happiness Report2019
https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2019/WHR19.pdf

Finland Again is the Happiest Country in the World
MARCH 20, 2019
NEW YORK, March 20 – As in 2018, Finland again takes the top spot as the happiest country in the world according to three years of surveys taken by Gallup from 2016-2018. Rounding out the rest of the top ten are countries that have consistently ranked among the happiest. They are in order: Denmark, Norway, Iceland, Netherlands, Switzerland, Sweden, New Zealand, Canada and Austria. The US ranked 19th dropping one spot from last year.

This year, the Report analyzes how life evaluations and emotions, both positive and negative, have evolved over the whole run of the Gallup World Poll, starting in 2005-2006. For life evaluations at the national level, there have been more gainers than losers.

When you factor in population growth, world happiness has fallen in recent years, driven by the sustained downward trend in India. As for emotions, there has been a widespread recent upward trend in negative affect, comprising worry, sadness and anger, especially marked in Asia and Africa, and more recently elsewhere.

Among the 20 top gainers in life evaluations from 2005-2008 to 2016-2018, 10 are in Central and Eastern Europe, five are in sub-Saharan Africa, and three in Latin America. The 10 countries with the largest declines in average life evaluations typically suffered some combination of economic, political, and social stresses. The five largest drops since 2005-2008 were in Yemen, India, Syria, Botswana and Venezuela.

This year’s happiness report focuses on happiness and the community: how happiness has evolved over the past dozen years, with a focus on the technologies, social norms, conflicts and government policies that have driven those changes. Special chapters focus on generosity and prosocial behaviour, the effects of happiness on voting behavior, big data, and the happiness effects of internet use and addictions.

“The world is a rapidly changing place,” said Professor John Helliwell, co-editor of the report. “How communities interact with each other whether in schools, workplaces, neighborhoods or on social media has profound effects on world happiness.”

The World Happiness Report 2019, which ranks 156 countries by how happy their citizens perceive themselves to be, according to their evaluations of their own lives, was launched today at the United Nations. The report was produced in partnership with The Ernesto Illy Foundation.

“We are living a moment of transition to a new age and this generates a sense of uncertainty,” said Andrea Illy, Chairman of illycaffè and Member of the Board of Fondazione Ernesto Illy. “Social happiness is therefore even more relevant, in order to give a positive perspective and outlook for the present and for the future.”

The chapter by Professor Jeffrey Sachs, director of the Sustainable Development Solutions Network focuses on the epidemic of addictions and unhappiness in America, a rich country yet one where happiness has been declining rather than rising.

“This year’s report provides sobering evidence of how addictions are causing considerable unhappiness and depression in the US,” Sachs said. “Addictions come in many forms, from substance abuse to gambling to digital media. The compulsive pursuit of substance abuse and addictive behaviors is causing severe unhappiness. Government, business, and communities should use these indicators to set new policies aimed at overcoming these sources of unhappiness.”

The report, produced by the Sustainable Development Solutions Network (SDSN) with the support of the Ernesto Illy Foundation, is edited by Professor John F. Helliwell of the University of British Columbia and the Canadian Institute for Advanced Research; Professor Richard Layard, co-director of the Well-Being Programme at LSE’s Centre for Economic Performance; and Professor Sachs, director of SDSN and the Earth Institute’s Center on Sustainable Development. Policy applications of happiness research are collected in a companion SDSN publication Global Happiness Policy Report 2019.

According to Professor Sachs, “The World Happiness Report, together with the Global Happiness and Policy Report offer the world’s governments and individuals the opportunity to rethink public policies as well as individual life choices, to raise happiness and wellbeing. We are in an era of rising tensions and negative emotions (as shown in Chapter 2) and these findings point to underlying challenges that need to be addressed.”

The World Happiness Report 2019 includes the following chapters:

Chapter 2 Changing World Happiness: by John Helliwell, Haifang Huang and Shun Wang, presents the usual national rankings of life evaluations, supplemented by global data on how life evaluations, positive affect and negative affect have evolved on an annual basis since 2006, and how the quality of government and various forms of conflict have influenced those evaluations.
Chapter 3 Happiness and Voting Behaviour: by George Ward, considers whether a happier population is any more likely to vote, to support governing parties, or support populist authoritarian candidates.
Chapter 4 Happiness and Prosocial Behavior: An Evaluation of the Evidence by Lara Aknin, Ashley Whillans, Michael Norton and Elizabeth Dunn, shows that engaging in prosocial behavior generally promotes happiness, and identifies the conditions under which these benefits are most likely to emerge.
Chapter 5 The Sad State of US Happiness and the Role of Digital Media: by Jean Twenge, documents the increasing amount of time US adolescents spend interacting with electronic devices, and presents evidence that it may have displaced time once spent on more beneficial activities, contributing to increased anxiety and declines in happiness.
Chapter 6 Big Data and Well-Being: by Paul Frijters and Clément Bellet, asks big questions about big data. Is it good or bad, old or new, is it useful for predicting happiness, and what regulation is needed to achieve benefits and reduce risks?
Chapter 7 Addiction and Unhappiness in America: by Jeffrey Sachs, surveys a number of theories of addiction, presents evidence of rising US prevalence of several addictive behaviours, and considers a variety of possible causes and cures.
In presenting these results at the launch, coeditor John Helliwell noted that “over the seven years of World Happiness Reports, there has been a steady increase in the level and sophistication of reader interest. At first, readers mainly wanted to see how countries ranked. Now we see ever-increasing interest in using the happiness lens to help understand what makes for happier homes, schools, workplaces, and communities, and to use these findings to help make lives better everywhere.”

Contact: Kyu Lee, klee@ei.columbia.edu
http://unsdsn.org/news/2019/03/20/finland-again-is-the-happiest-country-in-the-world/


Figure 2.7: Ranking of Happiness 2016-2018 (Part 2)
1. Finland (7.769)
2. Denmark (7.600)
3. Norway (7.554)
4. Iceland (7.494)
5. Netherlands (7.488)
6. Switzerland (7.480)
7. Sweden (7.343)
8. New Zealand (7.307)
9. Canada (7.278)
10. Austria (7.246)
11. Australia (7.228)
12. Costa Rica (7.167)
13. Israel (7.139)
14. Luxembourg (7.090)
15. United Kingdom (7.054)
16. Ireland (7.021)
17. Germany (6.985)
18. Belgium (6.923)
19. United States (6.892)
20. Czech Republic (6.852)
21. United Arab Emirates (6.825)
22. Malta (6.726)
23. Mexico (6.595)
24. France (6.592)
25. Taiwan Province of China (6.446)
26. Chile (6.444)
27. Guatemala (6.436)
28. Saudi Arabia (6.375)
29. Qatar (6.374)
30. Spain (6.354)
31. Panama (6.321)
32. Brazil (6.300)
33. Uruguay (6.293)
34. Singapore (6.262)
35. El Salvador (6.253)
36. Italy (6.223)
37. Bahrain (6.199)
38. Slovakia (6.198)
39. Trinidad and Tobago (6.192)
40. Poland (6.182)
41. Uzbekistan (6.174)
42. Lithuania (6.149)
43. Colombia (6.125)
44. Slovenia (6.118)
45. Nicaragua (6.105)
46. Kosovo (6.100)
47. Argentina (6.086)
48. Romania (6.070)
49. Cyprus (6.046)
50. Ecuador (6.028)
51. Kuwait (6.021)
52. Thailand (6.008)

53. Latvia (5.940)
54. South Korea (5.895)
55. Estonia (5.893)
56. Jamaica (5.890)
57. Mauritius (5.888)

58. Japan (5.886)

59. Honduras (5.860)
60. Kazakhstan (5.809)
61. Bolivia (5.779)
62. Hungary (5.758)
63. Paraguay (5.743)
64. North Cyprus (5.718)
65. Peru (5.697)
66. Portugal (5.693)
67. Pakistan (5.653)
68. Russia (5.648)
69. Philippines (5.631)
70. Serbia (5.603)
71. Moldova (5.529)
72. Libya (5.525)
73. Montenegro (5.523)
74. Tajikistan (5.467)
75. Croatia (5.432)
76. Hong Kong SAR, China (5.430)
77. Dominican Republic (5.425)
78. Bosnia and Herzegovina (5.386)
79. Turkey (5.373)
80. Malaysia (5.339)
81. Belarus (5.323)
82. Greece (5.287)
83. Mongolia (5.285)
84. Macedonia (5.274)
85. Nigeria (5.265)
86. Kyrgyzstan (5.261)
87. Turkmenistan (5.247)
88. Algeria (5.211)
89. Morocco (5.208)
90. Azerbaijan (5.208)
91. Lebanon (5.197)
92. Indonesia (5.192)
93. China (5.191)
94. Vietnam (5.175)
95. Bhutan (5.082)
96. Cameroon (5.044)
97. Bulgaria (5.011)
98. Ghana (4.996)
99. Ivory Coast (4.944)
100. Nepal (4.913)
101. Jordan (4.906)
102. Benin (4.883)
103. Congo (Brazzaville) (4.812)
104. Gabon (4.799)
 
105. Laos (4.796)
106. South Africa (4.722)
107. Albania (4.719)
108. Venezuela (4.707)
109. Cambodia (4.700)
110. Palestinian Territories (4.696)
111. Senegal (4.681)
112. Somalia (4.668)
113. Namibia (4.639)
114. Niger (4.628)
115. Burkina Faso (4.587)
116. Armenia (4.559)
117. Iran (4.548)
118. Guinea (4.534)
119. Georgia (4.519)
120. Gambia (4.516)
121. Kenya (4.509)
122. Mauritania (4.490)
123. Mozambique (4.466)
124. Tunisia (4.461)
125. Bangladesh (4.456)
126. Iraq (4.437)
127. Congo (Kinshasa) (4.418)
128. Mali (4.390)
129. Sierra Leone (4.374)
130. Sri Lanka (4.366)
131. Myanmar (4.360)
132. Chad (4.350)
133. Ukraine (4.332)
134. Ethiopia (4.286)
135. Swaziland (4.212)
136. Uganda (4.189)
137. Egypt (4.166)
138. Zambia (4.107)
139. Togo (4.085)
140. India (4.015)
141. Liberia (3.975)
142. Comoros (3.973)
143. Madagascar (3.933)
144. Lesotho (3.802)
145. Burundi (3.775)
146. Zimbabwe (3.663)
147. Haiti (3.597)
148. Botswana (3.488)
149. Syria (3.462)
150. Malawi (3.410)
151. Yemen (3.380)
152. Rwanda (3.334)
153. Tanzania (3.231)
154. Afghanistan (3.203)
155. Central African Republic (3.083)
156. South Sudan (2.853)

http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/825.html

[不安と不健康18] 腰痛治療の80%が誤診、慢性痛の名医が嘆く医療界の現実 
2019年3月26日 木原洋美 :医療ジャーナリスト
腰痛治療の80%が誤診、慢性痛の名医が嘆く医療界の現実

Photo:PIXTA
「慢性痛」の名医として知られる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹教授は、日本の腰痛治療は誤診があまりにも多く、「安易に手術を勧めるケースが多い」と嘆く。実際の医療現場で北原医師が体験し、理解に苦しむ誤診の実態を解説してもらった。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

骨粗しょう症に気づかず
怪しい診断、手術を勧める
「日本の腰痛治療は間違いだらけ」と嘆くのは、慢性痛の名医として知られる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹教授だ。もっか北原教授のもとには、主治医の紹介状を手に日本全国から患者が殺到し、不本意ながら「(紹介状のない)初診患者さんお断り」にせざるをえない状況になっている。


『日本の腰痛 誤診確率80%』(集英社インターナショナル)、北原雅樹著、192ページ
 つまり、患者のみならず医師からも大いに「頼りにされている」わけだが、「この状態で、なぜあの病気を疑わないのか」あるいは「この患者さんにどうして手術を勧めるのか」など、理解に苦しむ診療をしている症例がものすごく多いらしい。

 そんな日々の体験から、昨年11月には『日本の腰痛 誤診確率80%』(集英社インターナショナル)なる著書まで上梓してしまった北原教授に聞いた、患者と家族が知っておくべき腰痛の真実をシリーズでご紹介する。

 第1回は、本当に患者数が多い、高齢者の“何をやっても治らない”慢性腰痛についてだ。

 まずは3つの症例を読んでほしい。

【症例1】

 80代女性。紹介状には「認知症」とだけ記されていたが、MMSE※(ミニメンタルステート検査)を受けてもらうと14点で、重症であることが分かった。付き添いの50代後半の息子さんによると1年半ぐらい前から腰痛を訴えるようになり、整形外科を受診したが異常は発見できなかった。半年後、腰椎骨折が発見され、治療したが腰痛は消えない。その後転倒し、大腿(だいたい)骨と手首を骨折。手術を受けたがリハビリテーションをさせようにも、本人は痛がってやってくれない。車いすにも乗れず、寝たきり生活が続いている。どうしていいか分からず、息子さんは「わらにもすがる思いで来た」と言う。

 先生はまず、本人に話しかけた。

北原「何が一番困っているんですか」
患者「うーん、分かりません」
北原「どこが痛いですか」
患者「私、痛いのかしら」
北原「じゃあ今日はどうして来たんですか」
患者「さあ、この子が連れてきてくれたの」

 というわけで、本人には、腰痛で困っているという意識がないことが分かった。先生は次いで息子さんに質問し、症状を一通り聞いた後、告げた。

北原「申し訳ないけど“わら”にはなれませんよ。お母さんにとって一番重要なのは、とにかく運動してもらうことです。

 お母さんは短期記憶力しか残っておられないので、5分前のことは忘れてしまいます。だから、『運動しないと寝たきりになりますよ』と言うと『寝たきりは嫌、運動する』と約束するけど、すぐにまた『痛いから嫌』の繰り返しになる。それでも運動してもらいたいので『運動しないと寝たきりになりますよ。痛くてもつらくても運動しましょう』とワードで入力してプリントアウトしましたので、これを壁に貼ってください。ご家族が言うよりは、医者からの指示の方が多少なりとも効力が高いかもしれません。

 この1年半で認知症がかなり進んでしまったのは、恐らく動いていないせいでしょう。主治医の先生はよく分かっていて、認知症の薬以外余分な薬は出さず、なんとかリハビリテーションをしてもらいたいとおっしゃっています。信頼できる先生ですからどうか、この先生のもとでリハビリに励んでください。それが唯一最善の治療法です」

※MMSE:世界で広く行われている認知症のスクリーニング検査。30点満点で、21点以下は「認知症の疑いあり」、22点〜26点で「軽度認知障害(MCI)」と判断される。

【症例2】

 90代男性。耳は少し遠いが、MMSEは29点で非常にしっかりしている。紹介状には「座骨神経痛」「手術を勧めたが、ご家族が納得しない」「鎮痛剤、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠導入剤、筋弛緩薬を処方」などと記載。

 4〜5年前、何かの作業中に転倒し、尻もちをついた時から、痛むようになった。痛みが消えないため1年後に手術。1〜2年はよかったが痛みが再発したため、再手術を勧めた、とあった。

 北原教授は本人に聞いた。

北原「痛みはどのような感じですか」
患者「ビリビリする感じです」
北原「困っていることは何ですか」
患者「特にありません」
北原「これまでどのような治療を受けてきましたか」
患者「薬以外では、神経ブロック注射と手術です」
北原「リハビリは行っていないんですか」
患者「リハビリって何ですか。受けたことはないですね」

 次に本人と付き添いの息子さんに告げた。

北原「足の関節が硬くなっていますのでリハビリをしましょう。手術は不要です。鎮痛剤、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠導入剤、筋弛緩薬は止めた方がいいですね。主治医の先生への手紙に書いておきます。介護保険は使っておられますか」
息子「いいえ、うちは介護するほどじゃありませんから」
北原「介護だけでなく、リハビリにも使えるんですよ。」
息子「え、そうなんですか。分かりました」

【症例3】

 80代、女性。原因不明の腰痛。セカンドオピニオンを求めて地方から来院。話を聞くと「過去に骨折したことがある」とのことで骨粗しょう症を疑い、現在治療してもらっている病院に照会したところ、骨密度が健康成人の60%しかなく、明らかに治療が必要な骨粗しょう症と判明。

 さっそく、本人と付き添いのご主人に聞いた。

北原「骨粗しょう症ですね。主治医の先生からは何と言われましたか」
患者「いいえ、何も言われていません」
夫「骨粗しょう症だなんて、初めて聞きました」
北原「うわぁ、それはいけませんね。他の先生がやっていることを悪く言いたくないですが、それはいけない。ご主人、インターネットはやっていますか」
夫「いいえ、私はしていませんが、息子はやっています」
北原「では息子さんに、“骨粗しょう症専門医”でキーワード検索をしてもらい、家の近くにある専門医を受診してください。私の意見を書いた書類をお渡ししますので、その先生に渡してください。奥様の腰痛には骨粗しょう症が関係しているものと思われます。残念ですが、今の先生は骨粗しょう症の知識がないようです」

日本の腰痛治療には
引く発想が必要
 以下に、3つの症例から北原教授が感じた問題点をまとめてみた。

(1)痛みから始まる「悪循環」

 慢性痛治療の現場では、しばしば2パターンの悪循環が起きている。

 ・Aパターンは「痛み⇒薬の多用⇒脳への影響⇒生活水準の低下」
 ・Bパターンは「痛み⇒生活水準の低下⇒薬の多用⇒脳への影響」

 症例1はBパターン。痛み⇒生活水準の低下が認知機能に対して悪影響を及ぼし、そのせいでさらに生活水準が低下して痛みが続いていた。

 痛いからといって一日中動かずぼーっとしているのが一番いけない。

 家族は「もっと薬を処方してほしい」と望んでいたが、不必要な薬の多用はさらなる悪循環をもたらすので、やめておくのが正解。

 一方、症例2は、Aパターンに近い。薬が多用されているにもかかわらず、脳への影響が見られないのは幸いだった。手術は絶対やるべきではない症例だ。

(2)「座骨神経痛」の7割は誤診

 腰痛の診断名で疑った方がいいものの1つに「座骨神経痛」がある。ある統計では、座骨神経痛と診断された患者150人中、本当にそうだったのは40〜45人。全体の7割にあたる100人以上が座骨神経痛ではなかった。

(3)手術さえすれば「リハビリは不要」という誤った認識

 リハビリは手術と同じくらい重要。症例1の方も2の方も、リハビリを受けていなかったのには驚いた。手術した意味は、リハビリをしてこそ現れる。

(4)超高齢者に手術で全身麻酔はやるべきでない

 症例2の患者は90代。腰痛も「ピリピリする程度」で決して重症ではない。その痛み自体も薬の多用による可能性があった。全身麻酔の手術は進めるべきではない。

(5)薬を多用する医者が多過ぎる

 症例2の患者は、薬の多用が大きな問題だった。鎮痛剤(リリカなど)は軽度の認知障害につながる可能性がある。また精神安定剤(デパス/ベンゾジアゼビン)なども軽度の認知障害の原因となる可能性がある。

 さらに言うなら、精神安定剤では痛みは取れない。「痛くて眠れない」のなら、適切な痛み治療が必要である。一方、「眠れないと痛みを感じてしまう」のなら、痛み治療ではなく睡眠障害の治療が必要だ。

 軽度の認知障害が起こると、痛みに強くこだわったり、意識が低下したり、生活が昼夜逆転したりして、従来の社会生活が送れなくなり、外出もせず、ひどい場合には寝たきりになる。そういう患者は、薬を止めるだけで痛みが消えることがある。

(6)骨粗しょう症は痛みの原因になる

 骨粗しょう症では、その8割以上で、腰や背中になんらかの痛みが生じる。高齢者、特に女性が腰痛を訴えたら、骨粗しょう症を疑うべき。

 ◇

「僕はメディカルバイオレンスと呼んでいるんですけどね(笑)。医者の方は、何かしないといけないという義務感があるから、治療法を足す。引かないんですよ、日本は足す医療がメインで引く医療がない。だけど今までやってきた治療がだめなんだから、そうじゃないこと、ということは治療法を減らすということが必要なんです」と、北原教授は指摘する。

>続編は3月27日に公開予定です。

◎北原雅樹(きたはら・まさき)
横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授。1987年、東京大学医学部卒業。医学博士。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部付属市原病院麻酔科、帝京大学医学部付属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激法(IMS)を日本に紹介する。2006年より東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2017年より横浜市立大学付属市民総合医療センターに移籍。IMS治療の第一人者としてテレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍中。
https://diamond.jp/articles/-/197833
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/738.html

[国際25] 世界一の高身長国、米国が抜かれた理由 
2019年3月26日 The Wall Street Journal
世界一の高身長国、米国が抜かれた理由
背の高い兄と弟
https://diamond.jp/mwimgs/e/b/-/img_eba97ed05eebf6a108540ede9b89b5c0180402.jpg
 歴史的に、ある社会の所得が増えると、そこに住む人の身長も高くなる。ではなぜ国民1人当たりの可処分所得が世界で最も多い米国の平均身長が世界一ではないのだろう。

 かつて米国は世界一の高身長国だった。身長に対する所得や経済の影響を研究する経済歴史学者のジョン・コムロス氏によると、それが200年以上続いた。

 独立戦争当時、米国の兵士の身長は英国の兵士より約5センチ高く、第二次世界大戦時もドイツ兵より約5センチ高かった。しかし今、世界で最も背が高いのはオランダ人だ。

 米国生まれの白人と黒人の成人で見ると、女性の平均身長は約165センチ、男性が約178センチ。アジア系とヒスパニック系を加えると平均身長はこれより低くなるが、西欧諸国と同じような条件にするため除外した。オランダ人の平均身長は女性が約170センチ、男性が約184センチだ。

 所得はこれとは逆の傾向を示している。

 経済協力開発機構(OECD)によると、国民1人当たりの家計調整純可処分所得の平均額は米国が年間4万4049ドル(約484万円)でオランダが2万8783ドルだ。

 コムロス氏ら研究者は生活の質を反映するものとして身長に関心を持っているが、小児科医や親にとって身長は子どもの全体的な健康状態を示すものだ。

 ハッセンフェルド小児病院(ニューヨーク大学ランゴン・メディカルセンター)の小児内分泌学者ジェイソン・クライン氏によると、健康な子どもは3回の急成長期を経験する。1回目が誕生から1歳まで、2回目が就学年齢前後、3回目が思春期の始まりにやってくる。

 同氏によれば、思春期の急成長期が始まると米国人の身長はオランダ人に追いつき始める。しかしオランダ人の急成長期は米国人より始まるのが遅く、期間も長いという。

 身長だけではあまり多くのことは分からないが、長期にわたって成長を追うことで子どもが正常に育っているかどうかが分かる。米国の小児科医は疾病対策センター(CDC)作成の標準チャートを参照して成長を観察している。

 CDCのチャートで分かるのは、子どもが成人したときにだいたいどれくらいの身長になるかだが、より正確に知りたい場合に小児科医が使うのが、レントゲン撮影による骨年齢と両親の身長という2つの指標だ。

 前者は左手と手首をレントゲンで撮影し、成長板の開き具合を正常に発達した骨の画像と比較するもので、これによって骨の成熟度が分かる。

 クライン氏によると、「成長が遅い人は骨年齢が実年齢より若い可能性がある」が、最終的な身長がどうであれ、大多数の子どもは正常に成長するという。

 一方、後者は両親の身長から子どもの将来の身長を計算するもの。計算方法はいくつかあるが、クライン氏が採用している方法は以下のとおりだ。

 女子の場合、父親の身長から13センチを引き、その数値と母親の身長の平均値が将来の身長になる。男子の場合は、母親の身長に13センチを足して、その数値と父親の身長の平均をとる。

 例えば父親の身長が約178センチ、母親が約163センチの男子の身長は約177センチまで伸びると推測できる。ただこの推計値は5センチ程度ぶれる可能性があり、非常に小柄な両親を持つ子どもの身長は計算を上回ることが多い。

 米国人の平均身長が頭打ちになり、オランダ人の身長が伸び続けている理由について、コムロス氏は栄養摂取や医療、金の使い方の違いによると考えている。

 「平均所得は非常に誤解を招きやすい指標だ」とコムロス氏は言う。「身長は誰がその所得を得ているのか、それをどのように使うのかに左右される。健康で医者に定期的に行く人のほうがより長く生きる可能性が高く、より背が高くなる可能性も高い」

(The Wall Street Journal/Jo Craven McGinty)
https://diamond.jp/articles/-/197869
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/826.html

[経世済民131] 金の上昇基調は継続、金利の低下とドル安が下値を支えるか 日経平均は昨日の大幅安の反動で451円高と大幅に反発 銀行株回避
金の上昇基調は継続、金利の低下とドル安が下値を支えるか
江守哲のゴールドウィークリーレポート
2019/03/25
先週のゴールド:続伸の展開
金相場は上昇しました。3月19・20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える中、週初は小幅に上昇しました。3月21日にはFOMCの結果を受けて、一時1,320.22ドルと、2月28日以来、3週間ぶりの高値を付ける場面もありました。その後は株高などで反落しました。
新規失業保険申請件数が予想以上の減少となったほか、フィラデルフィア連銀が公表した3月の第3連邦準備地区の製造業景況指数も前月のマイナスから大きく反発したことで株価が上昇し、安全資産としての魅力が低下しました。
週末は上昇しました。ユーロ圏の弱い経済指標を受けて、世界の景気減速懸念が強まり、米国を中心に株価が大幅安となったことで、リスク選好が大きく低下し、安全資産としての金の魅力が高まりました。週間ベースの上昇率は2ヶ月ぶりの大きさとなりました。
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月19・20日に開いたFOMCで、2019年の想定利上げ回数をゼロとし、よりハト派的な政策スタンスへの転換を鮮明にしました。
バランスシート縮小については9月に終了すると表明。5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ペースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減することとしました。さらに、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25〜2.50%に据え置くことを全会一致で決定し、金融政策に「忍耐強く」対応するとの方針も再表明しました。
一方、3月のユーロ圏総合購買担当者景況指数(PMI)速報値は、市場予想を大幅に下回りました。製造業が約6年ぶりのペースで縮小し、需要の大幅な減少が鮮明となりました。
世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は3月15日の771.04トンから3月22日には781.03トンに増加しました。投資家は徐々に金保有の積み増しを行っています。
CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の3月19日時点のポジションは8万8396枚の買い越しとなり、前週から9,577枚増加しました。買いポジションが925枚減少しましたが、売りポジションが1万502枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。
円建て金相場は反落しました。ドル建て金相場は上昇しましたが、為替相場が円高基調になったことが上値を押さえました。
【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)

出所:マネックス証券作成
今週のゴールド:上昇基調は継続
金相場は引き続き上値を試す展開が想定されます。金利の低下とドル安が金相場の下値を支えると考えられます。また、株式市場に変調の兆しがあることも、安全資産としての金の魅力を高めると考えます。
FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は「雇用とインフレ見通しを踏まえ、政策変更が必要になるのは当面先になる可能性がある」とし、「忍耐強く」とは「FRBが判断を急ぐ必要のないことを意味する」としました。
FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では、年内の利上げ回数はゼロ、2020年は1回の利上げが実施されるとの見通しが示されました。この見通しを受けて、米短期金利先物市場では、FRBが来年50%強の確率で利下げを実施する見方が織り込まれました。
パウエルFRB議長は、「米経済が良好な状況にあり、見通しは明るい」と強調し、同時に、「英国のEU離脱や米中貿易問題などに絡むリスクが存在する」とし、FRBは米経済見通しを注視しているとしました。さらに「経済指標は現時点で、FRBが金利をどちらの方向に動かすべきか示唆していない」との認識を示し、「忍耐強くなるには適切な時期にある」と強調しました。
FRBは2017〜2018年に7回の利上げを実施しましたが、今回のFOMCの決定は、世界的な経済成長の鈍化と米経済見通しの軟化に対応し、FRBが金利とバランスシートの双方で引き締めを休止したことを示すものとなりました。
市場ではこれまでもFRBの引き締めサイクルは終了したとの見方が出ており、今回のFOMCを受けて、FRBの見解と市場の見方が一致したことになります。トランプ大統領はこれまで、利上げが経済を脅かしていると批判していましたが、FRBの見通しはこうした見方にも沿う形となりました。
また、欧州経済の減速懸念がさらに強まったことで、安全資産への需要が高まりやすくなっています。先週末の株価の急落が一時的なものにとどまらないようだと、投資家のリスク回避姿勢がさらに強まり、金への投資が膨らむ可能性があります。一部のヘッジファンドは「株安と金相場の上昇」を見込んで、株売り・金買いのポジションを構築しているとの見方もあります。
FRBが米経済は減速しつつあると示唆し、世界の他の国々の成長が減速している可能性があるとの見方が広がっていることは、投資家心理を冷やす要因となりそうです。さらに、英国の欧州連合(EU)離脱について英議会の混乱が鮮明になっており、このような政治的なリスクも金市場への関心を高める可能性があります。
これらの状況から、金相場は今後も下値を切り上げる展開が想定されます。株安傾向が続けば、2月に付けた1,346ドルの高値更新の可能性も出てくるでしょう。
円建て金相場も堅調さを維持すると考えます。ドル建て金相場が堅調に推移しているものの、円高基調が上値を抑える可能性があります。その場合でも、節目の4,700円を維持できれば、4,800円を目指す展開になるものと思われます。
まずは4,700円のサポートを確認したうえで、押し目を買うことを検討したいところです。逆に、4,700円を割り込むようだと、保有しているポジションはいったん手仕舞いしたほうがよさそうです。
プラチナ:続伸の展開
プラチナは続伸しました。先週からの上昇の流れを受けて、高値を試す展開となりました。同じ白金族系のパラジウムが過去最高値を更新する動きを続ける中、プラチナにも買いが入り、一時875ドルまで上昇し、2月28日につけた直近高値の876ドルを試す展開となりました。
ただし、その後は買いが続かず、週末には株安を嫌気する形で反落し、大きく値を下げ、844ドルで週末の取引を終えました。それでも週間ベースでは上昇を維持しました。
CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における3月19日時点の大口投機筋のポジションは1万7581枚の買い越しとなり、前週から1,233枚増加しました。買いポジションが649枚増加し、売りポジションが584枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。
プラチナ相場は金相場の上昇につれる形で上げてきましたが、週末に下げています。これは、週末の市場で株価が大きく下落したことが影響したものと思われます。
金相場は金利の低下や株安に伴いリスク回避姿勢の高まりで買われていますが、工業品向けの需要が中心のプラチナは売られやすい地合いになったといえます。また、直近高値を上抜けなかったことも、売りを誘いやすくなっているといえます。
さらに、パラジウム相場も週末に下げており、今後も手仕舞い売りが続くようだと、これも売り材料視される可能性があります。このように、外部要因をよく見ながら、価格動向を見極めることが肝要です。
目先は840ドルを割り込むようだと、調整基調が強まる可能性があります。その場合には、820ドル前後でサポートされるかを確認することになります。短期的には過熱感もあることから、調整が優先されやすい地合いにあることは念頭に入れておきたいところです。逆に、840ドルを維持して推移することができれば、再び上値を試す可能性も残るでしょう。
円建てプラチナ相場も続伸しました。ただし、今後はドル建てプラチナ相場の上値の重さに加え、円高基調が下押し圧力となる可能性があります。そのため、まずは3,100円のサポートを維持できるかを確認したいところです。
そのうえで、再び3,200円を超えた場合には、その流れに乗って買いを検討したいところです。また、3,100円を割り込むようだと、保有しているポジションは、いったん手仕舞い売りをしたほうがよさそうです。
【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)

出所:マネックス証券作成
シルバー:反発の展開
シルバーは反発しました。金相場の底堅さを背景に徐々に下値を切り上げ、3月21日には15.63ドルまで上昇する場面がありました。ただし、週末には株安などで反落しましたが、15.41ドルで取引を終え、週間ベースでは上昇を維持しました。
CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における3月19日時点の大口投機筋のポジションは2万3310枚の買い越しとなり、前週から3,772枚減少しました。買いポジションが987枚減少し、売りポジションが2,785枚増加したことで、買い越し幅が縮小しました。
銀相場は3月21日に高値を付けたものの、テクニカル的に重要と思われる15.58ドルを超えられなかったことで、やや上値が重くなっています。また、需要は工業用がメインであることから、景気指標の悪化や株安基調に反応しやすい傾向があります。今後もこれらの指標が軟調に推移するようであれば、上値の重い展開になる可能性がありそうです。
今のところ、15.25ドルと15.60ドルのレンジ相場となっていますが、レンジ下限を下抜けするようだと、15ドル割れの水準まで調整する可能性がありそうです。ここで下げ止まらないようだと、基調がさらに悪化することになるため、注意が必要と考えます。
週明けの株式市場の動向を注視したいところです。逆に15.60ドルを超えるようだと、2月20日に付けた直近高値の16.21ドルを試す動きになる可能性も高まるでしょう。
円建て銀相場は小幅に反落しました。ドル建て銀相場は堅調でしたが、円高基調が水準を押し下げました。57円を明確に超えられなかったことから、目先は56円でサポートされるかを確認することになるでしょう。サポートが確認されれば、その時点で買いを検討したいところです。
逆に56円を割り込んだ場合には、保有しているポジションをいったん手仕舞いしたほうがよさそうです。一方で、57円を回復し、再び上向き基調になった場合には、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。
【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)

出所:マネックス証券作成

江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。 著書に『LME(ロンドン金属取引所)入門』(総合法令出版)など 共著に『コモディティ市場と投資戦略』(勁草書房)
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• 2019/03/18ゴールドは底堅い展開続く、プラチナは上値を追いやすい地合いに
• 2019/03/11ゴールドは底打ちから反発基調へ、プラチナは大幅続落
• 2019/03/04金は株価次第、プラチナは買われすぎ感が強まる
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https://media.monex.co.jp/articles/-/11224

日経平均は昨日の大幅安の反動で451円高と大幅に反発 明日は3月末決算銘柄の権利落ち日
市況概況
マネックス証券 マネックス証券 2019/03/26 印刷 (まとめ)日経平均は昨日の大幅安の反動で451円高と大幅に反発 明日は3月末決算銘柄の権利落ち日印刷
国内株式

マネックス

日経平均
東京市場まとめ
1.概況
本日の日経平均は451円高の2万1428円と大幅に反発しました。TOPIXやJPX日経400、東証2部指数や新興市場のマザーズ指数など主要指数は総じて上昇しました。

昨日の米国市場で主要指数は高安まちまちでしたが、ドル円が110円近辺でしっかりだったことや昨日の大幅安の反動から日経平均は197円高の2万1174円で寄り付きました。日経平均は寄り付き後も大きく上げ幅を広げると前場を385円高で終えました。日経平均は後場に入るとさらに上げ幅を広げて一時は483円高まで上昇しました。日経平均は結局451円高と1日の高値圏で取引を終えています。東証1部の売買代金は3兆2338億円となりました。

東証33業種は全業種が上昇しました。中でも陸運業、その他製品、金属製品、倉庫運輸関連、建設業、医薬品、機械の7業種は3%を超える上昇となりました。

2.個別銘柄等
東証1部の売買代金上位銘柄はほとんどが上昇しました。売買代金トップの任天堂(7974)が5%近い大幅高となったほか、アルツハイマー治療薬の治験中止を発表して以降連日大幅安となっていたエーザイ(4523)も本日は3.8%高と反発しました。その他にもソニー(6758)やトヨタ自動車(7203)、キーエンス(6861)、武田薬品(4502)、ファーストリテイリング(9983)、三菱UFJ(8306)、三井住友(8316)がいずれも上昇しました。一方でソフトバンクグループ(9984)は0.8%安と続落しました。

材料が出たところでは、大和証券グループ本社(8601)と業務提携すると発表したFX会社のマネーパートナーズグループ(8732)が15%超の大幅高となりました。一方で航空機用内装品メーカーのジャムコ(7408)は5%安となりました。傘下の工場で製造工程に不正があった疑いがあり、国土交通省が立ち入り検査を行ったと報じられたことが嫌気されました。

VIEW POINT: 明日への視点
日経平均は昨日の大幅安の反動で大幅高となりました。足元で市場のボラティリティが高まっており、明日以降も大きな値動きに警戒しておきたいところです。なお、明日は3月末決算銘柄の権利落ち日で株価に権利落ちの影響がある場合がありますのでご注意ください。

(マネックス証券 マーケット・アナリスト 益嶋 裕)


日米株価の200日線
相場一点喜怒哀楽
東野 幸利 東野 幸利 2019/03/26 印刷 日米株価の200日線印刷
国内株式

米国株

日経平均

米国市場
ダウ平均、ナスダックともに高値圏で強い動き
欧州の景気後退懸念や米国の長期金利の低下、VIX指数の上昇などでリスク回避ムードが強まっていますが、日本株を見る上ではやはり米国株の今後が重要とみられます。

ダウ平均、ナスダックともに、昨年の史上最高値からの大幅な下落幅に対して85%戻しという、強い動きがありました。足元は、ダウ平均が先行して調整局面にありますが、依然として長期トレンドを示す200日線を上回り、直近高値からの下落率も2%程度と軽微に済んでいます。

こんな高値圏で強い米国の株式市場。ほんとに景気減速を織り込んでいるなら、とっくに株価はもっと下げているはず。景気が悪くなるからといって、高値圏で持ち株を簡単に利益確定売りができる、そんな簡単な相場はありません。

株価には先行性があるため、実際の景気減速を認識するのは、大抵は株価が大幅に調整したあと。だったら、あの時に売っておけば良かったと後悔する、その繰り返しなのです。

景気悪化を十分に認識しながら、高値圏で売り切れる相場なんてない。むしろ、そういうときは、強い株価を認識し、景気悪化は一時的なものと判断する方がよいのでは。

話を戻すと、ハイテク株主体のナスダックに関しては、200日線はもちろん、昨年12月安値からの上昇トレンドライン上なども維持しており、米国株市場は依然として強気局面継続と見ることができます。

日経平均は弱気局面から抜け出せない状態
一方、日経平均の方は少し事情が違います。下落基調にある200日線を逆に下回る弱気局面から抜け出せない状態にあります。だから、3月25日のように前日のダウ平均以上に下げるような現象が出てくるのです。

今後、ダウやナスダックの強気局面が維持されれば、日経平均の予想PERをボリンジャーバンドのマイナス2シグマで見た過去の下限値(図表1)でもある21,000円付近をサポートに、10連休を意識しながらもみ合いを維持できる想定ができます。

【図表1】日経平均の予想PER(ボリンジャーバンド、20日)

出所:QUICK Astra ManagerよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
しかし、ダウ平均が200日線を明確に下回った場合、弱気局面にある日経平均は相対的に大きく下げる可能性がある点には注意が必要です。
 
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東野 幸利
東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ 日本株アナリスト
1968年大阪生まれ。証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行勤務を経て、現在はDZHフィナンシャルリサーチで勤務。需給やテクニカル分析を主体として、世界主要指数や国内の個別株分析を担当。日本テクニカルアナリスト協会理事、IFTA(国際テクニカルアナリスト連盟)国際検定テクニカルアナリスト、元IFTA教育委員会メンバー、FP技能士1級、年金・退職金総合アドバイザー(DC協会)。ドイツやスイスなど国際カンファレンスでテクニカル分析論文を発表、明治大学の非常勤講師、2018年は同志社大学経済学部で講師予定。メディアは、日経CNBC、モーニングサテライト、ラジオ日経などに出演。ダイヤモンド・ザイ、日経マネーなど寄稿・執筆多数。
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2019/03/19
需給改善期待の4月相場
2019/03/12
上海株の高値警戒と3月後半相場
2019/02/26
日経平均、値幅も日柄も正念場
 
https://media.monex.co.jp/articles/-/11233


 
米逆イールド発生後のシナリオ:銀行にはどう転んでも逆風。暫く銀行株は回避。
金融テーマ解説
大槻 奈那 2019/03/26
• イールドカーブの逆転発生で市場が再び不安定化
• 厳しい銀行セクター
• 今まで以上に銀行に厳しい環境
• 当面の投資戦略:銀行リスクを取るなら成長期待よりインカムゲイン狙いで
・米国で長期金利が短期を下回る「逆イールド」が発生し株価が下落。東京市場は持ち直すも、持続力は不透明。FRBが利下げに踏み切るまで、不安定な株価が続く可能性も。
・なかでも銀行セクターには厳しい。FRBが動かず景気が後退したとしても、利下げに踏み切ったとしても収益にマイナス。加えて、マネロン対策やIT投資に過去より多額の資金が必要になっている。
・従来、邦銀には配当利回り、米地銀には再編期待という救いがあったが、利下げ・景気後退のシナリオ下で他のセクターに勝つことは難しく、暫く銀行株を積極的に持つ理由は見当たらない。銀行リスクを取るなら、成長よりはインカムゲインに軸を置いた劣後債券投資の方が妙味がありそう。
イールドカーブの逆転発生で市場が再び不安定化
22日、米10年物国債利回りが3か月の短期金利を上回り、11年半ぶりに「逆イールド」が発生した。これが景気後退のシグナルだとして、日米ともに株価は大幅に下落した (図表1)。翌営業日の東京市場は持ち直したものの、持続力は不透明である。


長期金利は将来の景気やインフレ率を反映する。それが足元の金利を下回るほどに下落してしまった時に「逆イールド」が発生する。市場では、経験則的に、そこから1〜1.5年のラグを置いて景気が後退し株価が暴落するとされる。
逆イールドは、どの程度アテになる先行指標なのか。
1990年以降で、10年物国債の利回りと3か月の利回りが逆転したのは、今回を入れて4つの期間、計400日である(図表2)。
これだけの事例では十分とはいえないものの、それぞれの傾向をみてみると、逆イールド発生後、FRBが早期に利下げした90年代後半は、その後もしばらく株価が堅調に推移した(図表2の@)。一方、利下げのタイミングが遅れた99年や2006年は、たとえその後利下げをしても、株価の下落は止められなかった(同A、B)。


つまり、逆イールドが発生したのち、FRBが早期に利下げに踏み切らなかった時には、やはり株価が暴落した。こうした過去の事例を認識しているFRBとしては、今後株価が安定しなければ、利下げに追いやられる可能性が高いだろう。
つまり、ここから先は、FRBが利下げに躊躇して景気後退を招くか、政策金利引き下げかの二つに一つとなる。
厳しい銀行セクター
そのいずれのシナリオでも厳しいのが銀行セクターだ。利下げは資金利益を減少させる。逆に、利下げがなく景気が後退すれば、貸出が減少し与信費用が増加するという憂き目にあう。
これまでも、景気後退期に入りつつある局面では、銀行には逆風が吹いた。このため、逆イールドが発生すると、これが完全に解消しない限り、銀行株は他のセクターに比べて弱い(図表3)。


今まで以上に銀行に厳しい環境
さらに、足元では、景気や金利とは関係のない要因が銀行セクターに重石になっている。マネーロンダリングやIT投資である。
欧米の銀行では、最近、マネーロンダリングに関する調査や罰金が相次いでいる(図表4)。日本にも、今秋には国際機関のFATF(Financial Action Task Force、金融活動作業部会)の検査が入り、いくつかの金融機関が直接FATFの検査を受ける。マネロン対策費は、大きな金額にはならないものの、それでなくても収益環境が悪い中での追加負担となる上、何かあればレピュテーションにも響く。


また、IT投資も、年を追うごとに負担が大きくなっている。今や、ゴールドマンサックスやJPモルガンなどの米大手行グループでは、従業員の20〜25%がエンジニアである。2018年に世界の金融機関がITに投資した金額は4,400億ドル(48兆円)に上り、更に今後3年間、年4%程度ずつ増加するとされている(IDC Financial Insights)。
これらは、収益を劇的に拡大するものではなく、むしろ、メンテナンスや、フィンテック企業からの防衛策であったり、経費の削減のためのもので、短期的な株価上昇には直結しづらい。
当面の投資戦略:銀行リスクを取るなら成長期待よりインカムゲイン狙いで
金利は、昨年3Qまでは上昇すると思われていたが、足元でシナリオが大きく変わってきた。米国の中小銀行セクターについては、統合などによる経営効率化も期待できるが、その効果は、組み合わせや統合条件次第だ。環境悪化をハネ返すほどの力はないことも多いだろう。
一方、日本の場合、金利には殆ど主体性がなく、米国次第となっている(図表5)。このため、邦銀も米国同様に苦しく、年度末の配当取りが終了してしまえば投資妙味は少ない。


これに対して、銀行債の利回りも低下はしているが、それでも、2%台後半と安定している(図表6)。景気後退リスクは否定できないが、それでも銀行が債券を返せないようになるリスクはまだ極めて低い。当面、銀行リスクを取るなら、成長期待で株式に投資するよりは、金利が高めの銀行劣後債で様子見とするのが得策だろう。



大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
大槻 奈那 の別の記事を読む
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• 2019/03/15日銀政策会合:やはり「2%達成」は無理筋。低金利は続き、還元利回りが超魅力的
• 2019/03/07みずほ大幅下方修正。見た目ほど悪くはないが…:5つの疑問と将来性
• 2019/02/27「東証プレミアム市場」の影響:地銀には一見マイナスだが、増配、再編の可能性も
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https://media.monex.co.jp/articles/-/11231

 


 

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/687.html

[国際25] 中国に改革迫るトランプ氏に「一定の理」、内外で支持拡大 
トップニュース2019年3月26日 / 16:58 / 1時間前更新
焦点:
中国に改革迫るトランプ氏に「一定の理」、内外で支持拡大
Reuters Staff
2 分で読む

[ワシントン/ブリュッセル/北京 25日 ロイター] - トランプ米大統領が「米国第一主義」推進のために真綿で首を絞めるように関税を駆使する行為は、企業経営者から同盟諸国、米議会の与野党双方の議員まで多方面の怒りを買ってきた。

しかしトランプ氏の政策にほとんど反対している人たちから幅広く支持されている取り組みが1つ存在する。中国に対して、市場原理をゆがめる貿易や補助金に関する各種慣行の修正を強く迫っていることだ。

米中貿易協議が続く中で、さまざまな政治家や企業経営者、外交官らは、米国やその他の外国企業とその社員に痛手を与えてきた諸問題を解決するために、トランプ氏と通商担当チームにあくまで中国に意味のある構造改革を要求するよう促している。

米国と中国を含む39カ国で自動車の座席や電子部品を生産するリア(LEA.N)幹部のスティーブン・ガードン氏は、トランプ氏の「貿易戦争」は、企業や外国政府が不公正とみなす政策の改革を中国に強制してくれるとの期待を解き放ったと話す。「これらの問題がすべて提起された今、解決に乗り出すことについて米国内で政治的支持がより広がっており、後戻りはできなくなっている」という。

ガードン氏の発言は、中国の経済政策や通商政策に向けられる米国内外の企業の心持ちが、トランプ氏の戦術とまでは言わないまでも目指す結果に沿う方向に変化していることの表れだ。

米中協議において習近平国家主席は、米国の圧力に屈して構造改革を実施するのを嫌っているもようで、関税を課される方が中国の経済発展モデルを変えるよりもましだと考えるかもしれない。

また中国は譲歩の一環として、対米貿易赤字解消のために多額の米国製品購入を申し出ている。ただ米製品の買い入れはトランプ政権にとって抗しがたい魅力かもしれないものの、米企業が中国で地元勢との不公平な競争を余儀なくされているという問題の解決には全く役に立たない。

米企業から不満が出ているのは、中国が知的財産権を組織的に盗み出し、外国企業に技術移転を強要している点だ。これを改めるには、習氏と共産党指導部に方針を転換してもらう必要がある。

<よろめきと説得>

トランプ氏が当初今月1日に設定していた新たな対中関税導入期限を延期した際に、同氏が中国からの巨額な米製品購入提案によろめき、構造問題を放置したまま協議に合意してしまうのではないかとの懸念が生じた。

ところがそれ以降、多数のロビイストや企業幹部、外交官、米与野党議員らが入れ代わり立ち代わり、トランプ氏に構造改革要求を堅持するよう働き掛けている。

自由貿易推進派の急先鋒でトランプ氏の関税政策を批判してきた共和党のケビン・ブレイディ下院議員も最近こうした説得に加わり、「われわれは中国がより多くの米製品を買うのを望んでいるとはいえ、もっと大事なのは中国に知的財産権や補助金、過剰設備など世界経済を歪めてきた分野で高い国際基準を守る責任を果たさせることだ」と強調した。

先週には長年の対中貿易強硬派として知られる民主党のチャック・シューマー上院議員が、構造問題で引きさがり、米国産大豆などを中国に買ってもらうことで安易に妥協しないようくぎを刺した。

<EUも内心は共感>

欧州連合(EU)は、トランプ政権が今後、輸入自動車に関税を導入する事態を警戒しつつも、中国の技術移転強要や市場アクセス制限などに不満を抱いているという面では米国と変わらない。

あるEU高官は北京でロイターに「われわれには域内企業から連日苦情が寄せられている」と語り、中国政府は再三にわたって外国企業の事業環境を改善すると約束しながら、ほとんど進展がないと指摘した。

欧州委員会のマルムストローム委員(通商)は、中国が国際的な貿易ルールを自分たちに都合良く気ままに利用していると非難しており、まるで米通商代表部(USTR)の声明を聞くかのようだ。

一方でマルムストローム氏は、EUは米国と違って貿易問題には多国間主義で対処する意向であり、具体的に世界貿易機関(WTO)の改革を進めると説明した。

それでも複数のEUの外交官や当局者は、トランプ氏が関税という好ましくない手段を用いていても、中国に構造改革を実行させるという目標自体は渋々ながら賛成であると認めている。非公式な形ではトランプ氏の成功を応援する声が多いのだ。

ある外交官は「われわれは一方的な措置には反対だが、誰も中国に同情しない。要求内容に関して、われわれはトランプ氏に一定の理があると考える。中国政府は、改革なしでは今のシステムがただ機能しなくなる可能性があると理解しなければならない」と述べた。

(David Lawder、Philip Blenkinsop、Michael Martina記者)
https://jp.reuters.com/article/trump-china-idJPKCN1R70FE


 


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/828.html

[国際25] トランプの“報復”が始まった「ロシアとの共謀なし」とモラー報告 トランプ勝利宣言が意味するもの ロシア疑惑5つのポイント
トランプの“報復”が始まった「ロシアとの共謀なし」とモラー報告書

2019/03/25

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 バー米司法長官は24日、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査報告書の概要を議会に送り、ロシアとトランプ陣営との共謀を認定できなかったこと、トランプ大統領の司法妨害の十分な証拠がなかったことを明らかにした。大統領は「完全かつ全面的な潔白」と勝利宣言。今後報告書の全面開示を要求する民主党との攻防が激化する一方、大統領の反撃が始まった。


トランプ大統領から出された声明(AP/AFLO)
大統領専用機のコックピットに陣取る
 バー長官が議会に送った4ページの報告書概要によると、大統領選に勝利するためロシアと共謀したという「ロシアゲート」について、トランプ氏や側近らがロシア側と「合意」した証拠はなかったと結論付けた。この点に関し報告書は「ロシア関係者からトランプ氏の選挙を支援しようという複数の申し出があった」ことを指摘している。

 バー長官は概要の中で、「共謀」という言葉を使用せず、「合意」という表現を使った。トランプ大統領に配慮を見せたのではと受け取られている。また、ロシア疑惑よりも、立件の可能性が高いとされた大統領の司法妨害疑惑について、報告書は「大統領が罪を犯したと結論付けないが、潔白が証明されたわけではない」と“黒白の判断”を避けた。

 長官はこの点に関し、ローゼンスタイン副長官と協議した結果、「モラー特別検察官は大統領の犯罪を証明するのに十分な証拠を見つけることができなかった」と判断したことを明らかにした。司法妨害疑惑は大統領が当時のコミー連邦捜査局(FBI)長官に、フリン大統領補佐官(当時)に対するロシア疑惑の捜査をやめるよう要求したというものだった。

 米メディアによると、トランプ大統領は概要の内容を休養先のフロリダ州マール・ア・ラーゴの別荘で同行していた2人の弁護士から聞いた。この日も朝からゴルフを楽しんだ大統領は説明に「完全かつ全面的な潔白」と手放しで喜んだ。ワシントンへの帰任の直前、大統領は「こうした捜査が行われねばならなかったのは米国と、大統領にとって恥辱だ」と語った。

 大統領の支持者らはホワイトハウスを2年間覆ってきた暗雲が取り除かれたとお祝いムード。サンダース報道官は「捜査はいかなる共謀も、いかなる司法妨害も見つけることができなかった」と語った。だが、司法妨害の「潔白が証明されたわけではない」という指摘は無視した。

 トランプ大統領は「最高の気分」(副報道官)のようで、ニューヨーク・タイムズによると、エアフォース・ワン(大統領専用機)がフロリダからワシントンに着陸した時、コックピットに陣取っていたという。ホワイトハウスに戻った際も「米国は地球上で最高の場所だ」と短くコメント、気持ちを吐露した。

捜査は税金の無駄遣い
 大統領は28日にミシガン州グランド・ラピッズで「米国を再び偉大に」集会に登場し、ロシアゲートの“無罪放免”を受けて勝利宣言し、20年の再選に向けて大きく踏み出す考えだ。その一方で、自分を苦しめてきた敵対勢力への報復にも乗り出す構え。

 大統領はワシントン帰任前の発言で「捜査で多くの人間がひどく傷ついた」「誰かが相手側も調べてほしい」「相手側では多くのひどいことが起きた」などと攻撃のトーンを高めた。大統領はこの“相手側”が誰かについては言及していないが、司法省やFBI、“影の政府”と批判するヒラリー・クリントン氏らを差しているものと見られる。

 ワシントン・ポストによると、大統領の当面の攻撃の標的は具体的には、モラー特別検察官チーム、事情聴取などで大統領に不都合な情報を漏らした元当局者や元側近、大統領の疑惑を暴き立ててきたメディアの3つだ。特に、かねてより税金の無駄遣いと批判してきた特別検察官の捜査費用を取り上げていくのは間違いないだろう。

 共和党全国委員会は捜査費用について、1日5万230ドルを675日間も浪費したと具体的に発表した。またトランプ再選本部は「共謀でっち上げ」と名付けたビデオを公表するなど、報告書の結果が新鮮なうちに政治的に利用しようと迅速に動いている。ちなみに、モラー・チームは弁護士19人、FBIの捜査官40人などから構成されていた。

 こうしたトランプ大統領らの攻勢に対し、野党民主党は戦略の練り直しに迫られている。ペロシ下院議長と上院のシューマー院内総務は報告書の全面開示を要求するとともに、「バー長官が捜査に公然と反対した過去を考えると、中立的な立場から報告書の内容を判断できない」と批判した。

 バー長官は報告書の内容の一部に大陪審の証言や証拠などが含まれていることを指摘。こうした証言などは法律で公表することが禁じられていると警告しており、全面開示については否定的だ。このため、下院司法委員会のナドラー委員長はバー長官を早速証人喚問する考えだ。

 だが、最近の世論調査では特別検察官の捜査が政治的な意図に基づいて行われていると考える国民が50%に達しており、「共謀なし」という今回の結果は民主党にとっては強い逆風だ。ホワイトハウスと民主党との対立は法廷闘争を含め、一気に先鋭化する雲行きだ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15744


 

トランプの勝利宣言が意味するものとは?

2019/03/26

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

 今回のテーマは、「トランプの勝利宣言と民主党の対策」です。ウィリアム・バー米司法長官は3月24日、ロシア疑惑に関してトランプ陣営とロシア政府の共謀は認定できなかったと米議会に報告しました。ロバート・モラー特別検察官の捜査報告書は、司法妨害を巡っては判断を示しませんでした。

 本稿では、ドナルド・トランプ米大統領に対するロシア疑惑の捜査結果の意味及び議会民主党の対策について述べます。


24日、ニューヨークのタイムズスクエアに集まったトランプ支持者たち( REUTERS/AFLO)
論争を呼ぶバー長官の結論
 バー司法長官は上下両院の司法委員会委員長並びにランキング・メンバー(最古参議員)に提出した4ページの書簡で、2016年米大統領選挙においてトランプ陣営のスタッフが選挙に影響を与えるために、ロシアの陰謀に加わった証拠は確認できなかったと結論づけました。

 書簡によれば、ロシアの「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」という企業は、偽情報をネット上に拡散して米国社会に不和の種をまき、大統領選挙に影響を及ぼそうとしました。しかし、トランプ陣営とIRAの共謀を裏づける証拠は確認できなかったと明記しています。

 加えて、ロシアのハッカー集団がクリントン陣営と民主党本部の電子メールを窃盗し、内部告発サイト「ウィキリークス」に公開した件に関しても、トランプ陣営とロシア政府が共謀した事実は見つからなかったと記しています。

 一方、トランプ大統領の司法妨害に関しては結論に至りませんでした。モラー特別検察官のチーム内で、司法妨害の対処を巡ってもめたことを窺わせます。

 モラー特別検察官は、報告書の中で司法妨害に関して「トランプ大統領は犯罪を犯したと結論づけていないが、このことが大統領の容疑を晴らすものでもない」と指摘しています。つまり、無罪とは断定していないわけです。

 にもかかわらず、バー司法長官は「私とロッド・ローゼンスタイン司法副長官は、(トランプ大統領が)司法妨害の犯罪を犯したと立証するには不十分だと結論づけた」と米議会に対して説明しました。

 モラー特別検察官が司法妨害について判断を示さなかった理由に関して、米国の専門家の間で見解が分かれています。

 1つはモラー特別検察官は司法妨害に関して、司法妨害に相当する場合としない場合の双方の見方を示し、司法長官と司法副長官に判断を委ねたという考え方です。もう1つは、米議会に判断を任せたという見解です。後者を支持する専門家は、バー長官とローゼンスタイン副長官の判断は、「単なる意見に過ぎない」と批判しています。

 議会民主党は、司法妨害についてモラー特別検察官が示した双方の見方を記述した箇所を精査することを強く望んでいます。今後、バー長官とローゼンスタイン副長官の司法妨害に関する解釈の仕方が、争点となることは間違いありません。

 さて、モラー特別検察官はトランプ大統領の弁護士チームの抵抗に遭い、同大統領を対象にヒアリング調査を実施できませんでした。

 弁護士チームはヒアリングに応じた場合、トランプ大統領が「偽証罪」の罠に嵌ることを恐れたからです。その結果、トランプ大統領はモラー特別検察官の質問に対して、書面回答で応じ、逃げ切ることができました。ここが分岐点でした。

 司法妨害罪に相当すると判断するには、同大統領に対するヒアリングは不可欠だからです。モラー特別検察官が司法妨害に関して結論に至らなかった要因として、この点は看過できません。

トランプの「政争の具」
 トランプ大統領は、「共謀はなく司法妨害もなかった。完全かつ潔白が証明された」と自身のツイッターに投稿し、「勝利宣言」を行いました。トランプ大統領を応援する保守系のFOXニュースの司会者ショーン・ハニティー氏は、番組の中で「共謀も司法妨害もなかった。何もなかった。魔女狩りは終わった」と語り、トランプ大統領よりも早く勝利宣言をしています。

 さらに、トランプ大統領は記者団に対して「大統領がこのような捜査を受けなければならないのは国家の恥だ」と語気を強めました。自分はロシア疑惑の捜査で22カ月間も、不当に扱われてきたといいたのでしょう。

 20年米大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、モラー報告書を最大限活かして、議会民主党を攻撃し、支持者に対して「モラーの捜査は魔女狩りで、ロシア疑惑はでっち上げだったことが証明された」と、強くアピールするでしょう。今後、民主党からの批判を封じ込めるための「攻撃材料」として報告書を活用する可能性は極めて高いといえます。

 つまり、モラー報告書は「政争の具」と化する運命にあるのです。

議会民主党の対策
 では議会民主党は、バー司法長官のモラー報告書の概要を記した書簡に対して、どのような対策を講じるのでしょうか。

 民主党のキーパーソンは、下院司法委員会のジェロッド・ナドラー委員長です。ナドラー委員長には「召喚状」という切り札があります。

 司法妨害に関して「証拠不十分」と判断したバー司法長官に「召喚状」を送り、宣誓の上で議会証言をさせるでしょう。そのうえで、モラー特別検察官にも召喚状を出し、双方の矛盾を突きます。

 仮にバー司法長官とモラー特別検察官の議会公聴会が実現すれば、公聴会は「政治ショー」となり、来年の大統領選挙に向けて、民主党が政治的得点を稼ぐ舞台に変わることが予想されます。特に、民主党左派の議員は公聴会において、トランプ大統領に対する弾劾を進めるための「判断材料」を探すでしょう。

 民主党はモラー報告書の全面公開を求めています。今回のロシア疑惑に関する捜査には、2500万ドル(約25億5000万円)の費用がかかりました。米国民の税金です。従って同党は、「米国民には全面的な捜査報告書の内容を知る権利がある」と主張しています。

 そこで、ナンシー・ペロシ下院議長は「バー長官による米議会に対する非公開の捜査結果の報告を拒否する」と声明を出しました。20年米大統領選挙を視野に入れて、ペロシ議長には全面的公開を望む世論を民主党の見方につける意図があるとみて間違いありません。

 結局、トランプ大統領と同様、議会民主党もモラー報告書を政争の具にします。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15744

 
2019年3月26日 The Wall Street Journal
ロシア疑惑報告書の概要、5つのポイント
モラー特別検察官
Photo:Reuters
 米トランプ政権のロシア疑惑に関するロバート・モラー特別検察官の捜査報告書の4ページにわたる概要が24日

議会に提出された。概要は、2016年の大統領選挙へのロシアの介入、選挙期間中のトランプ陣営の関与、大統領

による司法妨害の有無について結論を示している。ただし報告書そのものは依然秘密扱いだ。

 捜査報告書の概要を示したウィリアム・バー司法長官の書簡のポイントは以下の通り。

特別検察官の捜査は徹底的に行われた
 ロシア疑惑については、二つの議会特別委員会と複数の米情報機関も調査を実施してきた。ただモラー氏の報告

書は2800件の召喚状、500件近い捜索令状、証人約500人への聴取で集められた資料に基づいており、この問題に

関してこれまでで最も徹底的に調べた内容となった。

ロシアは2016年大統領選に介入した
 米情報機関は2017年1月、ロシアが米国内で対立の種をまき2016年の大統領選に影響を及ぼす目的で、ハッキ

ングしたり偽情報を流したりするキャンペーンを展開したとの結論を出した。モラー特別検察官はこの結論を追認

し、ロシア政府による二つの活動を特定した。一つは「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」と

して知られる組織によって行われたソーシャルメディアを利用した偽情報活動、もう一つはロシアの情報機関によ

る民主党を標的にしたハッキング活動だ。

トランプ氏の共謀は判明せず
 モラー氏の捜査では、トランプ大統領や関係者が、2016年大統領選に影響を及ぼそうとするロシアの陰謀に加

担したことを示す証拠は見つからなかった。司法長官が公表した概要によれば、モラー氏は、ロシアと連携してい

れば犯罪となるが、「トランプ陣営あるいはそれに関係する人物が2016年の米大統領選に影響を及ぼそうとする

ロシアと共謀あるいは協力した事実は判明しなかった」と述べた。

司法妨害については判断せず
 トランプ氏とジェームズ・コミー前連邦捜査局(FBI)長官、ジェフ・セッションズ前司法長官やその他の人々

とのやりとりが司法妨害とみなされるかについて、モラー氏は結論を出さなかった。捜査報告書は「この報告書は

大統領が罪を犯したと結論づけるものではないが、潔白を証明するものでもない」とした。これを受けてバー氏は

ロッド・ローゼンスタイン司法副長官と相談し、自ら判断を下した。トランプ氏の行動は同省の訴追の基準に達し

なかったという判断だった。

報告書全体をそのまま公表することはできない
 モラー氏は捜査の一環として大陪審を用いたが、これが報告書の完全な公開を難しくするだろう。バー氏は議会

に対し、裁判手続きにより「特定の大陪審情報の公開は一般に制限される」と述べた。1990年代に当時のクリン

トン大統領を捜査したケン・スター氏のような特別検察官は、大陪審を用いたものの、最終的に報告書を公表した

。バー氏は今後の進め方を決めるため、報告書内の大陪審情報を特定するうえで特別検察官の支援を求めている。

一方で、報告書の情報で継続中の捜査に関わるものは全て保護しなくてはならないと述べた。「特別検察官の報告

書のうち、私に可能な限り多くの情報を公表する」ことを目指すと述べたが、自身の精査が終わる時期については

明言しなかった。

(The Wall Street Journal/Byron Tau)
https://diamond.jp/articles/-/197872
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/829.html

[国際25] 仏、習氏訪問で450億ドルの商談成立 「一帯一路」はけん制 「合意なきブレグジット」に備えるEU、具体策は
ワールド2019年3月26日 / 09:07 / 38分前更新
仏、習氏訪問で450億ドルの商談成立 「一帯一路」はけん制
Reuters Staff
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[パリ 25日 ロイター] - フランスと中国は25日、習近平国家主席のフランス訪問に合わせ、総額約400億ユーロ(450億ドル)の商談をまとめた。マクロン仏大統領は一方で、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」をけん制する立場を示した。

今回まとまった15件の商談には、欧州航空機大手エアバス(AIR.PA)の航空機300機を購入する推定300億ユーロの契約が含まれた。他には、再生可能エネルギーや海運、銀行部門で契約が締結された。マクロン氏によると、中国側はフランス産鶏肉の輸入解禁に合意した。

マクロン大統領は貿易やハイテク産業で存在感を強める中国に対抗するため、欧州の結束を促す考えも示した。習主席との共同会見でマクロン氏は「欧州は結束し、首尾一貫したメッセージを発するべきだ。われわれは戦略的投資でそれを実行している」と述べた。

マクロン氏はこの日の習主席との会談に続き、26日にはドイツのメルケル首相、ユンケル欧州委員長を交えた習氏との4者会談を主催する。

習主席がフランスに先立ち訪問したイタリアは、主要7カ国(G7)のメンバーとしては初めて「一帯一路」への支持を表明している。

一帯一路構想は、かつてのシルクロードに沿ってインフラを通して中国と東南・中央アジア、中東、欧州、アフリカを海と陸で結ぶ経済圏を作る計画だ。

マクロン大統領は、欧州の企業は中国市場へのアクセス改善や一段と信頼の置ける中国の取引所、事業環境の具体的な改善、公正な競争を求めていると指摘。また、一帯一路は国際規範に合致する必要があると述べた。

習主席は24日付の仏フィガロ紙への寄稿で、フランスに一帯一路への協力を求める姿勢を鮮明にし、原子力や航空産業、農業といった分野での貿易と投資の拡大を呼び掛けた。

習氏は共同会見で「フランスと一段と強固で安定的、ダイナミックな国際的・戦略的パートナー関係を構築できるかどうかはわれわれの肩にかかっている」との認識を示した。「中国は自国の発展が諸外国に恩恵を与えることを望んでおり、一帯一路についても同様の考えだ」とした。

パリ中心部ではこの日、中国の少数民族の人権を巡る問題に抗議する数百人規模のデモが行われた。
https://jp.reuters.com/article/france-china-idJPKCN1R700A?il=0


 
トップニュース2019年3月26日 / 16:33 / 1時間前更新
アングル:「合意なきブレグジット」に備えるEU、具体策は
Reuters Staff
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[ブリュッセル 25日 ロイター] - 欧州連合(EU)の複数の高官は25日、新たな期限の4月12日以降、英国が合意のないままEUから離脱(ブレグジット)する確率が高まっているとの見方を示した。EU側はそうしたシナリオに向けた準備を完了したという。

高官らによると、英国が合意なしに離脱した場合、英国はEUとは無関係の第三国となり、離脱の日をもってEUの法律が適用されなくなる。英国と欧州の関係は、一般的な国際法にのっとったものになる。

英国との通商には直ちに世界貿易機関(WTO)のルールと関税を適用する。国境での通関手続きのほか、衛生検査や検疫なども実施し、EUの基準に従っているか確認作業を行う。

英国の企業や団体は、EUから補助金を受けたり、現在の条件のままEUの入札手続きに参加できなくなる。

英国民はEU市民ではなくなり、域内へ入るには追加の手続きが必要になる。

「合意なき離脱」後のEU側の対応を整理した。

●金融サービス

EUは、英金融機関を利用したデリバティブ(金融派生商品)や振替、決済に支障が起きないよう、一時的かつ限定的な措置を講じる予定。英国からEU加盟国に移管される一部の店頭デリバティブについては、12カ月間限定で契約更改を容易にする措置を導入する。

●空の移動と安全

EUは、英国とEU間で航空サービスの接続が断絶されることがないよう、基本的な運航を保証する。

●陸上輸送

英国がEUの陸運業者に同等の措置を認めるという条件で、EUは英国の業者にも「一定期間」、基本的なアクセスを認める。

●鉄道輸送

EUは、英鉄道インフラの一部については、3カ月間は安全承認の有効性を継続させ、その間にEU法に基づいた長期的な措置を講じる考え。特に英仏海峡トンネルについては、英国がEUの基準と同じ安全基準を維持することが条件になる。

●船舶検査

EUは、法的安定性の維持のため、船舶検査を実施し、船舶輸送の事業継続性を確保する。

●航路

EUは、アイルランドとフランス、ベルギー、オランダの間に新たに主要航路を設置し、そのための予算を優先的に取り扱う。

●北アイルランド

平和プロセス支援の一環でEUが行っている英領北アイルランド向けの財政支援プログラムは、現行のEU長期予算の期限である2020年まで継続される。2020年以降、同プログラムの予算は、残るEU加盟27カ国全ての承認が必要になる。

●EU予算

EU側は、英国側がその義務や監査などを受け入れる限りにおいて、3月30日までに署名された契約や決定については、2019年中は英国側企業や団体などへの支払いを継続することができる。

●漁業権と補償

EUは、欧州海洋漁業基金を使い、一時的に操業できなくなるEU加盟国の漁業者や業者に補償を提供する。英国が同等の措置を取るなら、EUは2019年末まで英国船にEU海域での操業を認める可能性がある。

●気候変動対策

EUは、域内排出量取引制度の円滑な機能と環境効果の継続性を守る。

●留学生向け奨学金

エラスムス・プラスと呼ばれる留学奨学金制度を利用し、ブレグジット前に英国またはEUで留学を始めた英国とEUの学生や研修生は、学業を最後まで継続することができる。また、奨学金も継続して受け取れる。

●社会保障

EUは、ブレグジット前から英国で働いていたEU市民と、EUで働く英国民については、社会保障の受給資格を認める。

●ビザの相互免除

EU側は、英国が同じ対応を取るなら、EUに渡航する英国人にビザは求めない方針。

●EU予算からの支援

EUは、衛生検査や植物検疫に必要な専門家や税関職員の育成に予算を出すことができる。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-no-deal-idJPKCN1R70KD01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/830.html

[国際25] ウーバーの手荒な作戦、ライドシェア非合法国チリで物議 ボーイング最新鋭機に試練の歴史、50年前の「教訓」 
トップニュース2019年3月26日 / 11:27 / 2時間前更新

焦点:

ウーバーの手荒な作戦、ライドシェア非合法国チリで物議
Aislinn Laing
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[サンティアゴ 19日 ロイター] - ウーバーの運転手は、チリの首都サンティアゴ郊外にある国際空港に彼の真新しいスズキ車を寄せた。予約した乗客がにさっと乗り込むと、運転手は何かトラブルの兆候はないか、そっと周辺を見回した。

「空港での商売は簡単ではない」。バックミラーに付けたロザリオを揺らしながら自動車道へと車を急がせる運転手は、ロイターの記者に対してこう話した。「チリでウーバーの運転手をやるのは大変だから」

それというのも、乗客を乗せているところを当局に捕まれば、ウーバーの運転手は罰金を科されるか、自動車を押収されてしまうからだ。チリはまだ、ライドシェア(相乗り)に関する規制の枠組みを整備していない。

チリのフット運輸相は昨年、「こういう(ウーバーのような)方式は合法ではない」と述べた。「現時点では、有償乗客輸送に関するチリの法令に沿ったものではない」

チリのような急成長市場において米ライドシェア大手のウーバーが法的な根拠を得られていないことは、待望の新規株式公開(IPO)に向けた準備を進める同社にとって、潜在的なリスクとなっている。

こうした背景から、チリではときには滑稽に思えるほどのいたちごっこが当局と運転手たちとの間で繰り広げられている。運転手らは、警察官や運輸省の取締官が待ち伏せしている乗車・降車ポイントについて情報を交換している。

また彼らは、乗客を「共犯者」に仕立て上げている。乗客は助手席に座るよう指示され、取り締まりにあったときに備え、口裏を合わせるための作り話を覚え込まされることも日常茶飯事だ。

先日、別の機会に乗ったウーバーの運転手は、ロイターの記者に対して「誰かに聞かれたら、知人のディエゴおじさんだということにしてくれ」と頼んだ。

ギレルモと名乗る41歳の別の運転手は、ロイターに対し、男性の乗客の場合には、自分たちはサッカー仲間だという作り話が定番になっている、と話した。彼も他の運転手も、当局に身元が割れることを恐れて、姓は教えてくれなかった。

ウーバーの配車アプリにもウェブサイトにも、チリにおける法的な地位が確定していないことについては何も書かれていない。だが、2014年にサービスが開始された同国では現在、月間利用者数が220万人、運転手は8万5000人が登録しているとされる。

ウーバーは、法律上の問題など何もないかのように、サンティアゴ各所のビルボードや広告メールを通じて派手な宣伝を展開している。

チリ国内でウーバーの広報を担当しているベロニカ・ジャドゥ氏は、ウーバーは合法だと主張している。彼女が引き合いに出すのは、チリのタクシー会社や労働組合が北部ラセレーナ市においてウーバーのサービスを中止させようとした訴訟を却下した2017年の最高裁判決だ。

この判決は、2016年にバチェレ前政権が提出したた配車サービス規制に関する法律を根拠としている。3人の判事で構成された法廷は、「その趣旨は配車サービスを規制することであり、その発展を防ぐことではない」と判示した。

「ウーバー法」とも呼ばれるこの法律はまだ施行されておらず、政府と強力なタクシー労働組合、配車アプリを使う新興企業が合意を探っているところだ。

広報のジャドゥ氏は、チリ国内のウーバーの運転手らが、運輸省当局者の目をごまかすために協力するよう乗客を指導していることを同社が把握しているかどうか、確認を拒んだ。「当局への協力が重要だと強調している」と、同氏は話した。

ウーバーの評判は、一連のスキャンダルによってすでに傷ついている。同社はこれまで、男性優位な企業文化、強引なビジネス戦術、世界各国の規制当局との長引く論争ゆえに批判を浴びてきた。サンフランシスコに本社を置くこの新興企業の株式時価総額は実に1200億ドル(約13兆2000億円)に達するが、その成長は鈍化した。

チリをはじめとする諸国で法的な地位がクリアになれば、ウーバーにとっては追い風になるだろう。とはいえ、サンティアゴを本拠としてシード段階での投資を行うベンチャーキャピタル、マグマ・パートナーズのマネジングパートナーであるネイサン・ラスティグ氏によれば、ウーバー株に興味を持つ投資家がより気にしているのは、中国の配車サービス最大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)などの競合他社が進出しつつあるラテンアメリカやその他の地域で、ウーバーが優位を維持できるかどうかである。

「投資家が気をもむのは、競争がある地域で、市場シェアや収益性を維持できるかどうかだ」とラスティグ氏は言う。

<待ち合わせは駐車場で>

ウーバーはロイターに対する声明の中で、チリのライドシェア規制が前進するよう、「全力で取り組んでいる」と述べている。

一方で、罰金が積みあがっている。2016年以来、チリ運輸省の取締官はウーバー運転手に対して、700─1100ドルの罰金を7756回科している。各地の警察官も数千件の出頭命令を発した。

運転手らはロイターに対し、業務を続けられるよう、罰金として負担したコストはウーバーが補填(ほてん)してくれると話している。ウーバーによれば、「ケースバイケースで対応している」という。

同社のテクノロジーも役に立っている。たとえば、サンティアゴ地域の利用者は、運転手が空港を乗車・降車地点とする配車を拒否することが多いとソーシャルメディアに不満を投稿している。というのも、空港では取り締まりが盛んに行われているからだ。

その解決策として、ウーバーのチリ国内向けアプリには「ウーバーX SCL」と呼ばれる特別カテゴリーが用意された。SCLとは「アルトゥロ・メリノ・ベニテス国際空港」(サンティアゴ)を示す空港コードである。運転手らがロイターに語ったところでは、このカテゴリーの配車予約は、罰金を受けるリスクを承知で車を走らせる大胆な運転手が対応するという。

だが、運転手を確保するだけでは道半ばである。ウーバーのチリ向けウェブサイトでは、空港を出る乗客に対して、短時間用駐車場で運転手と待ち合わせるように指示している。運転手らはロイターに対し、取締官らしき人物がウロウロしている場合には、ウーバー配車アプリのメッセージング機能を使って待ち合わせ場所を変更しているという。

チリ向けにコミュニケーションの手法を修正している理由について、ウーバーは説明を拒んでいる。広報担当のジャドゥ氏によれば、ウーバーのチリ向け製品は「乗客と運転手にポジティブな経験をもたらすことを意図している」という。

チリの活気あふれるスタートアップ経営者の1人であるマティアス・ムチニック氏は、こうした「カオス」には困惑している、という。チリは外国人投資家に対して自国の秩序と洗練を売り文句にしているのに、国際便から降り立つ彼らが、運輸省当局者の取り締まりを逃れる冒険を目の当たりにすることになりかねない。

人工知能関連のスタートアップを経営するムチニック氏は、12月にサンティアゴで開催された投資カンファレンスで、「来訪者に与える第一印象が悪くなってしまう」と話した。

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だがミシガン大学のデービッド・ブロフィ教授(金融論)は、こうしたエピソードは一部のIPO投資家に対してはセールスポイントになる可能性がある、と話す。

「大切なのは、警察に制止されれば不愉快なことになるにもかかわらず、それでも人々がウーバーを利用したがっているという点だ」と同教授は言う。

<警察官もウーバーを利用>

ウーバーは、他のラテンアメリカ諸国も含め、世界各地で規制当局ともめごとを起こしている。

たとえばアルゼンチンでは、市場に参入してから数年になるのに、まだ法的根拠を得られていない。タクシー運転手らは「ウーバーはタクシー会社が負担している諸経費をすべて回避する一方で、不自然に低い運賃を設定している」と抗議しており、アルゼンチン政界はもっぱら彼らの味方だ。

だが、ラテンアメリカの通勤客らはウーバーの価格と利便性にひかれており、車両のオーナーらもチャンスを見いだしている。ウーバーによれば、ラテンアメリカにおける実利用者数は月間2500万人、運転手は100万人を数えるという。

新たな国に進出するたびに、ウーバーはお決まりのシナリオに基づいて成功してきた。法律上の空白を突いてサービスをすばやく拡大し、人気と市場支配力を生かして法整備を促す、という作戦だ。

だが、地方政府の中には自らの権限を改めて主張するところもある。たとえば米国では、ニューヨーク市が昨年、市中の道路におけるライドシェアの台数に上限を設けた。ロサンゼルスは交通混雑を低減するために「配車税」を検討している。

チリにおける「ウーバー法」を巡る議論は進んでいない。

タクシー労組は議会に対し、ライドシェアに携わる運転手に上限を設け、料金がタクシー料金を下回らないようにすることを望んでいる。ウーバーを代表とする輸送関連のスタートアップ企業の側でも、独特のロビー活動を精力的に展開している。

ウーバー利用者もスマートフォンを通じて賛同する。長年にわたって高い料金を維持し、質の低いサービスを提供してきた「タクシーマフィア」にほとんど共感を寄せない人は多い。

両者の板挟みになっているのは、チリの当局者だ。ハット運輸相は、自分の子どもたちがウーバーの配車アプリを利用しており、昨年の現職就任までは自身もユーザーだったことを公の場で認めている。ウーバーの運転手らがロイターに語ったところでは、警察官を含む公務員も頻繁にウーバーを利用しているという。

ホセ・ルイス・ドミニゲス運輸次官は、サンティアゴにある自らのオフィスでインタビューに応じ、運輸省がジレンマを抱えていることを認めた。

「(ウーバーは)事業を行うべきではないし、乗客も利用すべきではない」とドミニゲス次官は言う。「だが、現に存在するものを無視するのは、目を覆って太陽を見ないようにすることと変わらないだろう」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/uber-chile-idJPKCN1R30OF


 
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2019年3月26日 / 15:23 / 41分前更新

アングル:

ボーイング最新鋭機に試練の歴史、50年前の「教訓」
David Ljunggren
2 分で読む


[オタワ 25日 ロイター] - 大手航空機メーカー米ボーイング(BA.N)と各国の航空会社は、ボーイング737MAXによる2度の墜落事故を受け、同機に対する信頼回復に努めているが、約50年前を振り返ると、似たような「教訓」が存在した。
革新的な技術を駆使した新型機の就航後にボーイングが危機に直面するのはこれが初めてではない。
1965年、着陸しようとしていたボーイング727─100型旅客機が3カ月もたたない間に、3度墜落事故を起こし、計131人が死亡した。
エンジンを3基搭載した727─100型機は当時、737MAX同様、最先端の航空機といわれた。ボーイングは1964年に727型を導入し、当時の標準だった4発機に代わる効率の良い機体だとしていた。短い滑走路でも運航しやすいよう新たな機能が搭載されていた。
低速で大きな浮力を得られるよう設計された翼のフラップ(高揚力装置)は、非常に大きく高性能で、競合機よりも短時間で降下するとともに、滑走路付近の建物や障害物を回避することを可能にした。
727─100型機の墜落事故を捜査した当局は、一部の操縦士が同装置を十分に理解せず、かなり高速で降下していたことを発見した。
「機体には何も問題なかったが、注意を怠れば、降下率が非常に大きくなりかねなかった」と、米エンブリー・リドル航空大学のビル・ウォルドック教授は指摘する。同教授は727型機の事故を事例研究の一部に使っている。
航空当局は操縦士の訓練を強化するよう命じたが、政治家から運航停止を求める声が出ていたにもかかわらず、運航継続を許可した。
ボーイングは、飛行規定と最終進入時の手順に修正を加えた。
737MAXの場合、ボーイングはソフトウエアと操縦士の訓練を見直している。

https://graphics.reuters.com/ETHIOPIA-AIRPLANE-LJA/010091231EG/ETHIOPIA-AIRPLANE.png
<1年後には遠い過去>
727型機墜落事故を調査している米国の航空史家で、輸送関連の訴訟を専門に手がけた元弁護士のアラン・ホフマン氏は、今回の墜落事故に対する注目の高さを考えると、米連邦航空局(FAA)は、修正がうまく機能していると確信しない限り、737MAX8型機の運航再開を許可しないとみている。
「737MAX8型機は運航を再開し、ほかに何か起きない限り問題は悪化せず、1年後には遠い過去の記憶となっているだろう」と、同氏はロイターの取材に語った。
ロイターはボーイングにコメントを求めたが得られなかった。
737MAX8型機が2度目の事故後直ちに運航停止となったのとは対照的に、727型機は1965年11月に起きた3度目の事故からわずか2日後、米民間航空委員会(CAB)が運航を停止させる理由がないと発表した。
「727型機は就航前、非常に厳しい認証テストに合格していた。われわれの調査の中で、同機の安定性を疑うような結果は何も見つからなかった」と、CABは当時指摘した。
こうした説明をすぐに受け入れる乗客は少なかった。相次ぐ墜落事故を受け、同型機への搭乗を拒否する事態も起きつつあった。
「約半年間、727型機の多くは搭乗率が半分程度で運航していた」と、前出のウォルドック教授は言う。
それでも、727型機の危機は過ぎ去った。
727型機は次第にボーイングのベストセラー機の1つとなり、その後30年間、世界の空を飛び回った。しかし音が大きく、燃費の悪いエンジンを航空各社が敬遠するようになり、2003年には事実上、退役した。
(翻訳:伊藤典子 編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/boeing-five-decades-ago-idJPKCN1R70G0?il=0


http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/831.html

[戦争b22] トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」
世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

トランプが米韓合同軍事演習の中止を正当化する「2つの理由」

2019/03/26

岡崎研究所

 米国防総省は3月2日、二つの大規模な米韓合同軍事演習の中止を発表した。一つは「Foal Eagle(フォール・イーグル)」で、40年間毎年空軍と海軍の参加も得て通常兵器による陸上での紛争を模擬実験してきた。2017年には韓国駐留の2万8000人に加え、3600人が参加した。二つ目は「Key Resolve(キー・リソルブ)」で、これは北朝鮮の攻撃後に不可欠な司令部を作るためのコンピュータ・シュミレーションを行うものである。これらは、規模を大幅に縮小した演習により代替されることになる。


(Nastco/rclassenlayouts/iStock)
 トランプは米韓合同軍事演習の中止を二つの理由で正当化している。一つは費用が掛かりすぎる、お金の無駄遣いであるということであり、今ひとつは金正恩と交渉中であるので、彼に善意のジェスチャーを見せる必要があることである。演習の中止に伴う米韓軍の即応能力の低下、米韓同盟に与える影響は大したことではないとの判断であると思われる。

 まず第1に費用が掛かりすぎるとの点については、トランプは「1億ドルかかっている」と主張するが、どこからそういう数字をトランプが持ってきたのか、よくわからない。国防総省は、昨年の演習中止の節約額は1400万ドルだったと言っており、トランプの見積もりは高すぎる。その上、防衛はお金の問題も重要であるが、それだけで考えるべき問題ではない。同盟の維持、即応力の問題はお金の計算で割り切れるようなものではなく、そういう意味でトランプの主張は適切とは言えない。ウォールストリート・ジャーナル紙の3月6日付け社説‘Trump Gets Exercised Over Exercises’は「演習を調整することは軍事的即応力を直ちに損ずるわけではない。しかし、小規模演習による代替は能力を損ずるというのではないが、戦争のストレスの模擬実験する上では陸、海、空における大規模演習のように適切なものはない」と指摘している。その通りであろう。

 第2に、「金正恩と交渉中であるから善意のジェスチャーを」ということで、大規模軍事演習の中止を決めたとすれば、これも適切ではない。共産主義者やその亜流は、力関係を重視し、戦略を考えるのが普通であり、敵または交渉相手の善意を信じるということはほぼない。彼らは大変に現実的である。こういう相手との交渉では、善意で先に譲歩することは相手から弱さと評価されるか、あるいは下手な交渉と評価されるかである。交渉の材料、いわば譲歩は見返りを得てこそするのが良く、一方的な譲歩は極力避けるのが良いと思われる。北朝鮮はこのトランプの譲歩を善意のジェスチャーとは看做さず、その見返りに態度を変えることは見込まれない。対北圧力手段の一つを放棄させた戦利品として、見返り無しに固定化していくことを狙うであろう。非核化交渉に今一つの問題を上乗せした結果になりかねない。このことはプーチンとの交渉にも当てはまるように思われる。

 米朝交渉はハノイ会談の後、どう進展するのかよくわからない。米朝の対立点が明確になったことから、次の会談前に双方が交渉姿勢を見直すことはありうる。米側からは圧力強化が、北からはそれに対する反発が出てくるとみておくのが当面の常識的判断であろう。第3回目の首脳会談については、失敗は許されないと思われ、事前の調整が事務レベルや閣僚レベルで行われることになるだろう。「出たとこ勝負」の首脳会談ではなく、よく準備された、成功がほぼ約束された首脳会談が米朝双方の狙いになろう。非核化がすんなりいくとは思えないが、中身がどうなるかを予測するのは時期尚早である。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15681
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/576.html

[経世済民131] 時給300円の闇 日本を覆う保育士残酷物語 東証1部3分の1資本効率低く期待外れ 経財相「国内ファンダメンタルズしっかり

 
時給300円の闇 日本を覆う保育士残酷物語

広田 望 他 1名
日経ビジネス記者
2019年3月26日
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親の介護や子供の世話で、働きたくても働けない――。企業の人手不足が加速する中でも、働くことに苦労する人は少なくない。日経ビジネス3月25日号「凄い人材確保」では、そんな働き手を活用して人手不足に打ち勝つ妙手を研究した。

働き手の近くにオフィスをつくる
 「もともと、(京都市の)付近で2人の技術者が働いていました」。名刺管理サービス大手のSansanの広報はそう話す。同社が2018年10月にAI(人工知能)の技術者の拠点「Sansan Innovation Lab」を京都市に設立したのは、現地で働く技術者がいたのがきっかけだ。

 人材がいる場所に拠点を構え、人を確保する――。Sansanはこうした姿勢を続けてきた。京都市の他にも、徳島県神山町、新潟県長岡市、札幌市にも遠隔の開発拠点を設置している。

 もちろん、こうした遠隔の拠点を構えることにデメリットがないわけではない。ITツールを使ってコミュニケーションを取っているが、Sansan内でも「実際に顔を合わせて、同じオフィスに集まったほうが効率的に働ける」と考えている人は少なくない。それでも遠隔地に拠点を用意するのは、そうしなければ人材を集められない時代が来ているからだ。

 実際に京都市で働くSansanの技術者には、家庭の事情で勤務地を移せない事情があったという。そうした背景に加えて、近くに有名大学や製造業の研究・開発拠点が多く、共同研究や技術イベント、インターンシップなどを実施するのに有利だったのも、拠点設立を後押しした。AIの開発者やその卵が多く、東京に比べると企業数が少ないため、優秀な人材との接点を持ちやすいと考えたのだ。

 「そうは言っても、遠隔のオフィスが持てるのはITサービスの企業だからできること」。そんなふうに考える人もいるかもしれない。だが、今の時代にITを使わない企業があるだろうか。あらゆる企業がデータを集めて分析し、事業に生かしている。インターネットを使って事業を効率化したり、ネットを使った新事業を生み出したりしている事例はいくつもある。

 IoT(モノのインターネット)が本格的に普及すれば、あらゆる業務がインターネット経由でできるようになる。全員が同じ場所に集まらなければならない仕事は、業務のIT化に合わせて次第に消えていくはずだ。そうなれば、あらゆる企業がSansanのように、各地で人材が活躍できるように変わっていくことだろう。

 企業が変われば、小さい子供がいて出勤が難しい人や、親の介護などで遠方の職場に勤められない人といった、働きたくても働けない人が活躍しやすくなる。年間10万人いるという介護離職者は減り、共働き世帯でも子供が育てやすくなって出生率も回復するかもしれない。

 だが、こうした企業の努力が実を結び、人々が介護や子育てをしながらでも働けるようになるには、それを助ける介護業界や保育業界が十分に機能していなければ難しい。そしてこれらの業界は、特に人手不足が深刻だ。立て直すには、国を挙げた見直しが求められている。

次ページ先行きが見えない介護市場

先行きが見えない介護市場
 「全然眠れていなくて……」。首都圏で介護施設を運営する男性は昨年、目を真っ赤にしてコンサルティング事業者に駆け込んだ。介護スタッフの離職が相次ぎ、人員を別途確保しようにもなかなか来てくれない。日中・夜間ともに人員減の分の仕事を自分でこなしていたが、いよいよ限界を感じ始めた。

 まもなく制度創設から20年がたつ公的介護保険。介護が必要な人は、いわゆる団塊の世代がみな75歳以上になる2025年度には250万人に上るが、担い手は40万人近く足りない。介護事業者の利益率は3%ほどで、5%を超える全産業平均と比べて低い。「本来、民間企業の知恵と工夫を借りながら成長産業になるはずだった介護が、このような末路をたどっている状況は残念でしかたない」。昭和女子大学の八代尚宏特命教授はこう語る。


介護業界の課題を語る昭和女子大学の八代尚宏特命教授
 介護事業者が単独で、一般的な民間企業でいうところの「稼げない」「稼ぎにくい」状況を打破するのは難しい。国はこれまで税金を投入して介護スタッフなどの給与水準を上げてきたが、財政上の制約から限界も透ける。

 「人が集まらないなら料金を上げて、その分賃金を上げればいい」。たしかにそんな意見はある。だが、現実的には厳しい。「あと10年と思って資産から介護費を計算して、実際には20年生きることになったらどうするのか」。神戸市でデイサービスを受ける81歳の男性はそう話す。介護費に個人が支払える金額は、実際の余力よりも少なくならざるを得ない。

 八方ふさがりのように見えるが、八代氏は制度設計や制度運用面でも「手直しの余地は多く残っている」と話す。例えば混合介護の扱い。介護保険と保険外のサービスを上手に組み合わせる仕組みだ。今は自治体によって基準があいまいだが、もっと使いやすくして、料金とサービスの自由度を高め、利用者の選択肢を増やす必要があると強調する。

 東京都豊島区は、国の特区を使って混合介護に取り組み始めた。保険適用の訪問介護に、電球の交換、ウェブカメラを使った見守りなど保険外のサービスを加えたメニューを用意している。「それでも追随しようとする自治体より、二の足を踏む自治体のほうが多い」(八代氏)。国も自治体も小手先の人手不足対策ではなく、産業としてどう稼ぐか、どう生産性を上げるのか、という根本の課題に向き合う時期に来ている。

有志から消えていく保育業界
 同じく保育業界も人手不足が深刻化している。「立地がいいばかりに、東京に人材が流れていた」と話すのは、千葉県松戸市幼児保育課の山内将課長補佐だ。松戸市では共働き世帯の増加に伴い、0〜2歳の乳幼児保育や、預かり時間を延長する延長保育の需要が急増。市の試算では、2023年には現状より600人の保育士が追加で必要になるという。「すぐ目の前の課題だ」(山内課長補佐)


保育士は資格保有者が多いが、なり手が少ない(写真=PIXTA)

 全国で待機児童が問題になるなど、保育士が不足している。厚生労働省によれば、17年10月時点での待機児童は全国で約5万5000人だ。国の定める児童福祉施設の基準をもとに計算すると、この児童を預かるのに最低限不足している保育士は約1万4000人。実際にはより多くの保育士で子供を預かる施設が多く、数万人の保育士が求められている。

 だが、理論的にはこの保育士不足は問題にならないはずだった。全国には保育士になれる資格保有者が十分に多く存在するからだ。15年に厚労省が発表した保育士等に関する関係資料によれば、同年の保育士登録者数約119万人に対して、実際に勤務しているのは約43万人だった。70万人以上の資格を持つ潜在保育士がいるのだ。

 有資格者は多くいるのに、なぜ保育士は不足するのか。答えは単純だ。当初は志を持って資格を取った人たちが、保育士としては就職をしなかったり復職しなかったりしているからだ。

 幼児向けイベント運営などを手がける笑いの保育わくわく(神戸市)の設立者で元保育士の田中好美氏は「閉鎖的な縦社会で、なにもさせてもらえなかった」と当時を振り返る。

 田中氏が最初に衝撃を受けたのは、役職の呼び方だ。副担任の辞令を受けたが、職場では「助手」と呼ばれた。仕事の割り振りや職員間の態度には明確な上下関係があり、助手と呼ばれている若手は会議に参加できず、意見するのも許されなかった。

 笑いの保育わくわくの共同設立者で同じく元保育士の内ケ崎千鶴氏も、似たような経験を持つ。内ケ崎氏が就職した保育園では「原稿用紙1枚を使うのにも利用記録への書き込みが必要で、子供が遊べるイベントを企画しても1つも実施させてもらえなかった」。決して予算が捻出できなかったわけではなく、「去年と同じ」以外のことを上長が許可しなかったという。

 他にも「今でも児童の家庭へのお便りなどが手書きの園は少なくない」(田中氏)。パソコンが買えないといった理由ではなく、「手書きのほうが情緒があるという理由」(内ケ崎氏)だ。付き合いのある現役保育士に聞く限りでは、保育士の環境は2人が辞めた当時とあまり変わらないようだ。

 もちろん、こうした環境は保育園によって違う。だが、転職しようにも子供を放置するようで、後味が悪い。最初の職場に恵まれなければ、次第に「忙しさと何もできない環境に疲弊し、保育に熱心な人ほど職を離れていく」(内ケ崎氏)。

 こうした保育士の離職に拍車をかけているのが、深刻な待遇の低さだ。田中氏は「生きていける収入レベルではなかった」と振り返る。田中氏が初めて保育士の職を探したのは約10年前。最初に目に飛び込んできたのは、学校の掲示板に貼ってあった「初任給9万円」の文字だった。「何かの冗談かと思った」(田中氏)

 試用期間である最初の数カ月は非正規としての雇用条件だったが、正規雇用後でも「暮らしていけるような収入ではなく、実家で親と一緒に暮らしている人でないと働けないような求人がいくつもあった」と振り返る。

 内ケ崎氏も「低収入は覚悟していたが、時給を計算したときはがく然とした」と話す。ベンチャー企業の営業から転職して就いた保育士としての初任給は、手取りで12万円。残業が多く、行事やその準備などで土日に働くことも少なくない。時給を計算すると「300円だった」

次ページ「続けられると困る」

 課題の多い保育業界だが、賃金に関しては自治体が動くことで改善する事例もある。前述の松戸市は、公立保育園に比べて給料水準が低いとされている私立保育園の保育士に対して、毎月4万5000円以上を直接支給する「松戸手当」を実施。他にも、市内在住で保育士として就職する人に就職準備金として10万円の貸し付けをし、2年以上の継続勤務で返還免除をするなど、待遇改善に努めている。

 その効果もあって、18年度上半期には58人もの保育士が市外から転入してきた。前年同期の2倍以上の増加数だ。他にも学生向けの返還免除条件付きの貸付金など、新規保育士育成にもテコ入れをする。「潜在保育士の再就職を促すような支援もしたい」(山内課長補佐)

 だが、すべて国や自治体の支援に頼っていては税金がいくらあっても足りない。根本的な原因を解消するには、保育園が十分な報酬を保育士に払うように変わるべきだ。だが、保育士の待遇を改善する根本的な解決への道のりは遠いかもしれない。

 「長期雇用が保障できないので、高い賃金を払って保育士を続けられても困ると言われた」。ある元保育士の男性は、悔しそうにこう語る。保育園の経営判断として、あえて保育士の給与水準が低く抑えられている場合があるというのだ。

 その原因は、地域の子供の人数が短期間に大きく変動するからだ。日本では都市開発などで狭い地域に多くの世帯が移り住むことがある。こうした地域では突如として保育需要が立ち上がるが、しばらくすると子供は成長する。多くの世帯はその後も移動せずに生活を続けるので、新しい世帯の流入数は減少。数年後には地域の子供の人数は減り、極端に保育需要が落ち込むのだ。その需要がしぼむスピードは、日本全体の少子化などよりずっと速い。

 公立の保育園であれば、自治体の管轄内の保育園間で人材を移動させ、ある程度の需給の変動を吸収できる。だが、私立保育園の場合にはそうもいかない。保育需要が急速にしぼんだら、園が雇用する保育士が過剰になるのだ。人材がいるからといって新しい園を設立するのも、不動産と設備投資が必要なので簡単ではない。ならば最低限の保育士の人数で現状を乗り越え、保育需要が少なくなる頃には自然に退職してもらったほうが、経営しやすいという。

 一度就職すると、他の職種への転職が難しい――。そんな労働市場の課題が、保育士業界を苦しめている本当の原因かもしれない。

日経ビジネスの3月25日号特集「凄い人材確保」では、この他にも日本企業の人手不足の現実を研究した。

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谷守

自営

問題が分かった。原因が、少し分かった。ここで、衆議院、及び参議院の厚生労働委員会は、介護士、保育士の確保の為、制度設計をしなければならない者である。衆参の厚労委員会は、政府にばかり押し付けていないで、ネ。

2019/03/26 18:25:211返信いいね!


Take.Haya

記事に描かれた保育園のあまりにも硬直的な内情には驚きです。なぜ、そのような状況になっているのか。マスコミでの事実の発掘と開示、問題提起に期待します。

2019/03/26 18:31:503返信いいね!


自営

必要がなくなったら解雇出来るようになれば問題は解決されるのでは。今どき一生涯同じ会社にという時勢でもないでしょう。雇用の流動性が高まれば派遣に頼る必要もなくなり給与も上がるのでは。

2019/03/26 18:49:18返信いいね!
1件の返信を表示


Taro

潜在保育士の1人です。保育園と言うのは保育が足りない子供のための場所だったのではと思うのですが、保護者の中にはサービス業と勘違いされている方もいらっしゃるようで…またお金さえばらまけば保育士が集まると思われている先生方の考え方も変えていただかなくてはならないのではないかと思います。頭ではなく心で考えて欲しいです。
2019/03/26 18:57:122返信いいね!


へたれFP

保育士登録者数約119万人に対して、実際に勤務しているのは約43万人の部分ですが、実はこの保育士登録者数は70歳を超えたご高齢の方も含めた純粋な登録数なので、年齢階層別では60歳を超えると10人に1人位しか勤務しておらず、この年代を除くと実質110万人程。
仕事内容も園にもよりますが、かなり大雑把に分類して直接園児と接する時間が2:それ以外が1と私達が想像している以上に目に見えない雑用が多く存在します。
せっかく中途採用しても立場が弱い方に望まない仕事ばかり押し付けているようだとその方はやる気を失うでしょうし、命を預かる仕事の割にはあまりにもお給料が安く報われないから人が集まらない。
その現実を見ないで潜在保育士確保と言っても肝心の処遇が改善しない限り空回りする可能性が高いと危惧します。
2019/03/26 20:59:42
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00026/031900006/


東証寄り付き 反発、上げ幅270円超 配当取り狙いの買いなど膨らむ
2019/3/26 9:24
26日前場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は反発して始まった。一時は2万1200円台半ばと、前日比の上げ幅は270円超に達した。前日の米株式相場がひとまず下げ止まった中、25日に今年最大の下げ幅を記録した後とあって、株価指数先物に海外投機筋などによる短期的な戻りを見込んだ買いが入った。JPX日経インデックス400と東証株価指数(TOPIX)も反発している。

25日は米ダウ工業株30種平均が前週末比14ドル高と小幅ながら反発した。前日の相場急落につながった米株安が一服したのを受け、東京市場でも相場の底入れを見込んだ買いが優勢になっている。26日は3月期末配当の権利付き最終日にあたり、配当の権利取りを狙った買いが入っているとの見方が多い。また、受け取る配当金を先回りして再投資する機関投資家による株価指数先物の買いが大引けに入るとの観測も相場を押し上げている。

テルモやダイキン、ファストリが上昇している。ヤマトHDやJR東日本など陸運株も高い。一方、日立建機が下落している。アドテストやSUMCOなど半導体関連株の一部が安い。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕
https://www.nikkei.com/article/DGXLASS0ISS11_W9A320C1000000/


日本株は反発、独景気指標改善と配当取り期待−内需中心に広く買い
河元伸吾
2019年3月26日 8:07 JST 更新日時 2019年3月26日 9:24 JST
3月の独企業景況感指数は99.6、7カ月ぶりに上昇
3月末配当企業数はTOPIXが1558社−ブルームバーグ
26日の東京株式相場は反発。ドイツの景気指標が改善し、前日に高まった景気懸念がやや後退した。きょうは3月期決算銘柄の権利付き最終売買日で配当などの権利取りの買いも期待され、陸運や食料品、小売、電気・ガスなど内需株を中心に幅広く買われている。

TOPIXは前日比17.02ポイント(1.1%)高の1594.43−午前9時4分時点
日経平均株価は同216円64銭(1%)高の2万1193円75銭
背景
ドイツ:3月Ifo景況感指数は7カ月ぶりプラス
きょうが3月期末配当の権利付き最終売買日となる企業数はTOPIX構成銘柄で1558、日経平均で191−ブルームバーグ
前日の日経平均は650円(3%)安、ことし最大の下落率
  SMBC日興証券投資情報部の松野利彦氏は「独景況感指数が持ち直し欧州景気が相場の足を引っ張ることはなくなった。前日は米債の逆イールドが意識されて急落したが、景気後退にはタイムラグがあるため過剰反応」と指摘。きょうは3月期決算銘柄の配当権利付き最終日で「権利取りや配当再投資などの買いが期待される」と言う。

26日は反発で取引開始
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i4TT1C3gCwWc/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POY1GP6KLVR701?srnd=cojp-v2


 


 
東証1部企業、3社に1社「期待外れ」 資本効率低く
市場再編 ランキングで探る課題(1)
2019/3/26 11:30日本経済新聞 電子版
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上場企業の頂点に位置する「東京証券取引所第1部」の金看板の輝きが薄れてきている。企業数は約2100社と過去30年で2倍近くに膨らむ一方、投資家が求める収益性の最低ハードルを満たしていない「期待外れ」の企業が全体の3分の1を占める。東証が市場第1部の企業数の絞り込みなど市場の再編に動き出す中、ランキングからその課題を探っていく。

投資ファンドの傘下に入り、27日に東証1部から退場するパイオニア。レ…

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東証1部企業数絞り込み、3割減も 英文開示も義務化 (2019/3/15 14:00) [有料会員限定]
東証1部上場基準、世界比較でも「甘め」 (2019/3/10 2:00)
東証が上場企業絞り込み、株価に跳ね返る? (2019/3/21 6:00) [映像あり][有料会員限定]
市場区分見直しは激震 地銀・第二地銀の格下げも (2019/3/20 5:30) [有料会員限定]
東証1部の再編に支持多く 区分見直し、関係者に聞く (2019/3/5 2:00) [有料会員限定]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42889560V20C19A3DTA000/?n_cid=NMAIL007


 

経財相、「国内のファンダメンタルズしっかり」 前日に株価急落も
経済・政治
2019/3/26 9:17
茂木敏充経済財政・再生相は26日の閣議後会見で、前日の東京株式市場で日経平均株価が今年最大の下げ幅となったことについて「国際経済の不透明感などがあって各国の株価に振れの大きな動きがある」との認識を示した。その上で国内の実体経済について、良好な企業業績や雇用・所得環境の改善、堅調な内需を挙げ「ファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」と指摘した。

米国経済についても「堅調な経済成長や低水準の失業率など、堅調に推移している」との見方を示した。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL26HFZ_W9A320C1000000/


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/688.html

[経世済民131] マイナス金利債、世界で10兆ドルに到達−サイクル終盤特有の難問 イエレン前FRB議長MMT支持せず批判の輪広がる 
マイナス金利債、世界で10兆ドルに到達−サイクル終盤特有の難問
Cecile Gutscher
2019年3月26日 1:36 JST
• ブルームバーグの指数が上昇、2017年9月以来の高水準
• 利回り追求のメンタリティー復帰へ、運用者への圧力高まる
マイナス金利の債券は世界で10兆ドル(約1100兆円)に達した。景気減速の兆候に身構えながら、利回りを追い求める投資家は苦悩を深めている。
  ブルームバーグがまとめるマイナス金利債の指数は、2017年9月以来の水準に上昇。ドイツ国債は10年債利回りがマイナス圏入りし、米国債市場では利回り曲線がリセッション(景気後退)の兆候を警告している。
  各中央銀行がハト派モードに入った現在、量的緩和と同義語である利回り追求のメンタリティーに戻るよう運用担当者には圧力が高まっていると、トゥエンティーフォー・アセット・マネジメント(ロンドン)の創業パートナー、ゲーリー・カーク氏は指摘する。
  「どこにキャッシュを投じようか思案中の投資家が、利回りを追い求めたくなるのは自明だ。利回りは再び希少なコモディティーとなった」とカーク氏。「サイクル終盤に特有の難問だ」と述べた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ihKgYWh4glNY/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/600x-1.png
ハト派の世界:マイナス金利の債券、世界で10兆ドルに到達
出所:ブルームバーグ
原題:The $10 Trillion Pool of Negative Debt Is a Late-Cycle Reckoning(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POXD6Z6KLVR401?srnd=cojp-v2

 
イエレン前FRB議長、MMTを支持せず−批判の輪広がる
Enda Curran
2019年3月26日 11:31 JST
「超インフレを招くものであり、非常に誤った理論」と指摘
何がインフレを引き起こすのか提唱者は「混乱」している
イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、「現代金融理論(MMT)」の提唱者は何がインフレを引き起こすのか「混乱」していると述べ、MMTを支持しない立場を明らかにした。

  イエレン氏は、クレディ・スイスが香港で主催したアジア投資家会議で、「中央銀行が国債を買うことができるのだから、利払いを心配する必要はない」とするMMTの提唱者に異議を表明。「それは超インフレを招くものであり、非常に誤った理論だ」と語った。

Powell, Bernanke & Yellen Speak At ASSA 2019 Annual Meeting
イエレン前FRB議長Photographer: Elijah Nouvelage/Bloomberg
  MMTを巡っては、米資産家ウォーレン・バフェット氏やサマーズ元財務長官といった著名な論客が反対を表明しており、イエレン氏は新たに批判の輪に加わった形だ。

イエレン氏の香港でのその他の発言は次の通り

利回り曲線の長短逆転は極めて容易に生じるものであり、それだけでは米国にリセッション(景気後退)が差し迫っていることを示唆するものではない。ただ、米金融当局がある時点で利下げしなければならないかもしれないシグナルであるとも考えられる
今後しばらくは、中銀が金融危機に適切に対応するための手段を簡単に入手できないことを心配する必要があるだろう
欧米の労働者は賃金や生活水準の伸び悩みをグローバル化のせいにしており、ポピュリズムは大きな不確実性の源泉だ
社債やレバレッジド・ローンの集積も心配している。一部のレバレッジド・ローンの引き受けは低調だ
米金融当局によるバランスシート縮小は円滑に進んでいる。当局は今後しばらくの間、非常に大きなバランスシートの下で政策運営を行うことになるだろう
原題:Yellen Says She’s ‘Not a Fan of MMT’ as List of Detractors Grows(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-26/POYAW76K50XS01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/689.html

[経世済民131] 米中摩擦の影響、地方企業の現場に波及 回復の兆し見えず ECB日本化、欧銀に多大な犠牲 景気減速と格闘するFRB利下げか
2019年3月26日 ロイター
米中摩擦の影響、地方企業の現場に波及 回復の兆し見えず

3月26日、貿易協議を巡る米中対立が日本企業の経営マインドを冷やしている。2月撮影(2019年 ロイター/Tetsushi Kajimoto)
[東京 26日 ロイター] - 貿易協議を巡る米中対立が日本企業の経営マインドを冷やしている。外需の低迷は地方企業に減産対応を迫り、依然として回復の兆しは見通せない。

 中国が「くしゃみ」をすれば風邪を引く――。長引く米中交渉は結論を得るまでの曲折も予想され、戦後最長の景気回復とする政府の主張とは裏腹に、現場からは悲鳴の声が上がっている。

 高精度を誇るプレス金型メーカー、南雲製作所は日本海沿いの新潟県上越市に広大な製造拠点を持つ。4000平方メートル(4万3000平方フィート)、「こだわりの金型で、明日を変える」をスローガンに、約100人の従業員が組み立て作業を続けている。

 顧客は、デンソーやアイシン精機など系列を超えた大手。ただ、昨年末に受注額が急減し、なお厳しい現実に直面していると同社の米桝(こめます)弘社長は言う。

「昨年11月から受注が減少している。取引先の多くは自動車部品メーカーだが、受注に急ブレーキが掛かった」――。

 米桝氏は「中国がくしゃみをすると日本は風邪をひくと言われるが、『米中貿易戦争』が私たちのような小さな会社にも影響を及ぼしていると、強く感じている」と述べ、減産後の回復も見通せず、今春闘での賃上げが難しいと胸の内を明かす。

 世界第2位の経済大国としての地位を築いた中国。日本企業にとっては有力な輸出先の1つだけに、その影響は小さくない。

 自動車用半導体メーカーのルネサス・エレクトロニクスは一部工場での生産を最長2ヵ月間停止すると発表した。安川電機やファナック、三菱電機、三井物産、トイレ大手のTOTOなどは業績予想の下方修正に追い込まれている。

 米中の貿易協議を巡っては「完全には解決しないだろう。世界経済が一段と減速する中で、日本の輸出産業や製造業に下押しの圧力がかかり続ける」(第一生命経済研究所・主席エコノミスト、西濱徹氏)との見方が多い。

 伊藤忠経済研究所・チーフエコノミストの武田淳氏の見方は、さらに厳しい。中国の減速が日本企業に与える影響は今後数ヵ月続くとし「日本の輸出・製造業にとって、4─6月期が最悪の時期になる可能性がある」と指摘する。

3月期決算なら赤字
 政府は、20日の月例経済報告に関する関係閣僚会議で、景気の総括判断を2016年3月以来、3年ぶりに引き下げた。中国経済の減速で輸出の伸びが鈍化し、企業の生産活動に弱さがみられる現状を反映させた。

 一方、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費や設備投資は堅調とし「緩やかに回復している」としてきた基調判断は、今回も維持した。

 戦後最長の景気回復が続いている可能性について、内閣府幹部は「(今回の月例判断で)途切れたとは考えていない」としている。

 ただ、日本を代表するトヨタ自動車<7203.T>やパナソニック<6752.T>などが今春闘で賃上げ幅を縮小し、内需の柱となる消費が今後も好調を維持できるかは見通せない。

 南雲製作所の米桝社長は、具体的な取引先は明らかにしなかったものの、ある取引先からは注文が半減したという。

「営業努力で新規顧客を獲得し、何とか収支尻りを合わせることができた」と、同社の渡部賢一総務部長は言う。

 財務省の貿易統計によると、昨年の日本の輸出の約38%は電子部品や半導体製造装置、その他製品の製造に使用される重機などが占め、次いで、自動車等輸送用機械が約23%。

 米桝社長は言う。「(12月期決算の)18年は黒字を維持したが、3月期決算だったら赤字に転落していたかもしれない」──。

(梶本哲史、スタンレー・ホワイト 翻訳編集:山口貴也)
https://diamond.jp/articles/-/197972


 

 

ECBの「日本化」、欧州の銀行に多大な犠牲
為替フォーラム2019年3月26日 / 10:57 / 7時間前更新

Swaha Pattanaik
2 分で読む

[ロンドン 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)は苦況に向かいつつある。ドラギ総裁の後継者が経済活動の弱含みを受け、超低水準の政策金利を20年間維持して一段と急進的な措置を採用した日銀と同じ道をたどる可能性が高まりつつある。

金融政策の「日本化」は、欧州金融機関に多大な犠牲を強いて、中銀を一段と厳しい立場に追い込むだけだろう。

22日公表の購買担当者景気指数(PMI)では、製造業が約6年ぶりのペースで縮小し、ユーロ圏の景気鈍化が新たに裏付けられ、2%をやや下回るECBのインフレ目標実現もさらに遠のいた。債券を追加的に買い入れたり政策金利を低水準に維持したりしても、日銀の経験が示すように問題を解決できない可能性がある。一部のECB当局者が、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策や株式買い入れさえも真似る必要があるかを非公式に検討するのも不思議でない。

日本の事例は今後何が起きるのかを示している。市場のゆがみは問題としては小さく、低金利や利回り曲線の平坦化が金融機関にどう打撃を与えるかがより大きな問題だ。ドイツ銀行がファクトセットのデータを使って算出したところ、日本の金融機関の平均利ざやは2000年の1.5%から0.9%に低下、株主資本利益率(ROE)は5%と05年から約半分の水準となった。ECBが日銀の黒田東彦総裁を真似るなら、この先ある種の痛みを感じる局面も出てくる。

ドイツ銀によると、STOXX欧州600種銀行株指数を構成する各金融機関の平均利ざやは1.65%程度。バリュエーションの面でも日本化が進む十分な余地が存在する。同指数構成金融機関の株価純資産倍率(PBR)は0.71倍、データストリームの日本金融機関指数は0.46倍だ。

ECBは、金融機関の健全性は主な懸念事項でないと説明することもできるだろう。それはその通りだ。しかし、ドイツ銀によれば、ユーロ圏では日本同様、企業の銀行依存度は資金調達ニーズの75%、家計の依存度は9割に達する。銀行にとって悪いことは、景気の悪材料にもなる可能性があるわけだ。黒田氏は、政策が金融機関に及ぼす影響について一段と敏感になっている。ECBは後発者として、黒田氏の経験から学ぶことができるはずだ。

●背景となるニュース

・IHSマークイットが22日発表した3月のユーロ圏総合PMI速報値は51.3と前月の51.9から低下、ロイターがまとめた予想中央値52.0も下回った。需要の大幅減を背景に製造業は約6年ぶりのペースで縮小した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/bv-column-ecb-idJPKCN1R705T

 


景気減速の兆しと格闘するFRB、第3四半期に利下げか
コラム2019年3月25日 / 18:31 / 8時間前更新

John Kemp
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[ロンドン 22日 ロイター] - 経験則上、米連邦準備理事会(FRB)は景気減速が確認されれば今年第・3四半期に利下げする公算が大きい。金融市場の環境が悪化した場合には、利下げが早まる可能性もある。

景気減速の兆しが生じた場合、連邦公開市場委員会(FOMC)は通常数回の会合で経済データを見極めた上で金融緩和に踏み切る。

四半期と月次のデータはぶれが大きい上、相矛盾することも多いので、政策当局者は「シグナル」と「ノイズ」を判別し、基調の変化を見定めるのに数カ月を要する。

従来の想定を変更し、新たな政策工程へと踏み出すための合意を形成するには、FOMCを数回経る必要があるかもしれない。この時間差は「決定ラグ」と呼ばれる。

このためFRBはほぼ常に、リセッション(景気後退)の兆しに遅れて行動を起こす。

1990年、98年、2001年、07年の利下げでは、景気減速の兆しを最初に指摘してから3回から6回のFOMCを経て利下げを開始している。

例えば90年には、7月初めに「経済活動は拡大を続けているが、比較的ゆっくりとしたペースである」と指摘していたが、預金準備の環境を緩める決定を下したのは11月半ばになってからだった。

2000年11月半ばのFOMCでは「企業と家計の需要が弱含んでいる」と指摘したが、利下げの決定は翌年1月初めになった。

FOMC開催の頻度を踏まえると、会合3─6回分の時間差は2─6カ月間の遅れを意味する。

しかし金融環境が突然悪化した結果景気が弱まった場合には、FOMCは臨時の電話会議を開いてきた。

1998年には、6月に初めて景気の弱さを指摘し、8月の定例会合を経て9月に臨時会合を開き、1週間後に利下げに踏み切った。

2007年は8月初めに「下振れリスクが幾分高まった」とし、月内に2度臨時の電話会合を開いて9月の定例会合で利下げを実施した。

<逆イールド>

今年は1月末のFOMCで景気の問題点を遠まわしに指摘し、3月20日に終わった会合ではもっと明確な認識を示した。

今後のFOMCは4月末、6月半ば、7月末、9月半ばに予定されている。

FRBが年内に利下げする保証はないし、現在見えている景気の弱さが一時的なソフトパッチ(足踏み状態)に終わる可能性もある。

しかし米国債のイールドカーブ(利回り曲線)は逆イールド(長短金利の逆転状態)となっており、国債市場は既に第4・四半期の利下げと来年の追加利下げを織り込み始めている。

ニューヨーク連銀が開発したモデルによると、過去60年にわたり、逆イールドはリセッションの最も正確な前兆となってきた。

しかも期間10年の米物価連動国債(TIPS)の利回りは、ここ4カ月で半分に低下した。

仮に景気減速が確認され、FRBが利下げで対応するとすれば、その時期は経験則上、6月半ばか9月半ばになる可能性が最も高い。

しかし景気の悪化が予想以上に加速したり、金融市場が荒れる兆しが生じたりすれば、FOMCは臨時の電話会合を開き、それより早く利下げする可能性もある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/frb-rate-idJPKCN1R60UW
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/690.html

[経世済民131] 米レバレッジドローンのファンダメンタルズ悪化を懸念−UBS 日本株は大幅反発、独景気改善と配当取り−TOPIXは下げ埋め

 


 
米レバレッジドローンのファンダメンタルズ悪化を懸念−UBS
Finbarr Flynn
2019年3月26日 16:49 JST
• M&A絡みの借り入れブーム後遺症などが主因で幅広く悪化
• 「大幅な下落からの影響を緩和するクッションは薄くなっている」
米国のレバレッジドローンは「血がゆっくり流れ続ける」状況に見舞われ、米クレジット市場の中で最も脆弱な部分だと、UBSグループが指摘した。
  マシュー・ミッシュ氏らストラテジストは25日付のリポートで、「ローンのファンダメンタルズ悪化について懸念を深めている。悪化は幅広く、貿易に関係するというより、循環的なモメンタムの後退やM&A(企業の合併・買収)に絡む借り入れブームの後遺症が主因とみられる」と記述した。
Losing Streak
Investors cool on riskier U.S. loans funds with outflows extending for 18th week

Source: Lipper
  前回の世界的リセッション(景気後退)から10年余りが経過し、運用者らは何が次の危機の震源になるかと不安を募らせている。アバディーン・スタンダード・インベストメンツは流動性が低いクレジット市場に負荷がかかる可能性について懸念を表明。ドイツ証券のストラテジストは、借金による株式買い戻しや買収という形で止まることのないリスクテークは、前回の金融危機の不安な記憶をかき立てると指摘した。
  UBSは、悪化の兆候は比較的軽微ではあるが、「大幅な下落からの影響を緩和するクッションは薄くなっている」とし、最もリスクが高いのは、平均を上回るレバレッジと平均を下回るカバレッジのセクターで、ソフトウエアやヘルスケア、ビジネスサービスが含まれると分析した。
  事態は悪化する可能性が高く、レバレッジドローンのスプレッドは450ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近くまで拡大するとUBSは予想。現在は403bp前後。
原題:Leveraged Loans Are the Weakest Link in U.S. Credit, UBS Says(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-26/POYP426JTSE801?srnd=cojp-v2

 

ビジネス2019年3月26日 / 15:48 / 3時間前更新
日経平均株価は450円高、前日大幅安の反動 配当再投資の観測も支え
Reuters Staff
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[東京 26日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均株価は大幅反発した。前日の米国株に下げ止まり感が出たことで投資家の不安心理が後退。日本株は前日大幅安の反動もあり、朝方から買い戻しが先行した。その後、3月期末の配当・優待権利取りの買いや、機関投資家の配当再投資の買いなどに対する思惑も支えとなった。終値は450円高となり、今年3番目の上げ幅となった。

前日は世界景気の鈍化懸念を受け、日経平均は650円安と今年最大の下げ幅となったが、前日の米国株がほぼ横ばいだったことで安心感が出た。「前日2万1000円割れをみて先物をショートした短期筋もいったん買い戻している。配当・優待権利取りの動きもあった」(国内証券)との声が出ていた。

この日は3月期決算企業の配当権利付き最終売買日で、公的年金などの機関投資家から配当再投資の買いが入るとの思惑もあった。これは、3月期末配当の権利落ちにより株価指数などのベンチマークと実際のパッシブ運用資金のリターンが乖離することを防ぐため、機関投資家が指数先物を代用して配当落ち分を買い入れる動き。こうした需給の思惑も相場の下支えとなった。

TOPIXも大幅反発。東証33業種全てが上昇する全面高商状で、陸運、その他製品、金属製品、倉庫・運輸関連、建設などが値上がり率上位に入った。

個別銘柄は、任天堂(7974.T)が大幅反発。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版が25日、任天堂が早ければ今夏にも家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の新モデル2種類を発表すると報じ、材料視された。グーグルがテレビゲームストリーミングサービス「STADIA」を発表したことでゲーム機器の販売競争激化懸念も出ているが、スイッチの販売増に期待する買いが先行した。

一方、ジャムコ(7408.T)は急落。26日、国土交通省航空局の立入検査を受けているのは事実と発表したことが嫌気された。同社発表に先立ち、読売新聞が26日付朝刊で、ジャムコ傘下の九州の工場で、旅客機用シートの製造工程に不正があった疑いがあるとして、国土交通省が航空法に基づく立ち入り検査を行っていたことが分かったと報じていた。報道によると、無資格の従業員が製品の検査に関わった可能性があるという。

東証1部の騰落数は、値上がり2001銘柄に対し、値下がりが116銘柄、変わらずが23銘柄だった。

日経平均.N225

終値      21428.39 +451.28

寄り付き    21174.34

安値/高値   21174.34─21460.99

TOPIX.TOPX

終値       1617.94 +40.53

寄り付き     1592.59

安値/高値    1591.79─1618.40

東証出来高(万株) 174104

東証売買代金(億円) 32338.88
https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-lateaft-idJPKCN1R70I5

 

日本株は大幅反発、独景気改善と配当取り−TOPIXは前日下げ埋め
河元伸吾
2019年3月26日 8:07 JST 更新日時 2019年3月26日 15:23 JST
• 3月の独企業景況感指数は99.6、7カ月ぶりに上昇
• TOPIX構成銘柄の1558社が権利付き最終売買日−ブルームバーグ
26日の東京株式相場は大幅に反発し、TOPIXは前日の急落分を埋めた。ドイツの景気指標が改善して景気懸念が後退した。きょうは3月期決算銘柄の権利付き最終売買日で配当などの権利取りの買いも入り、陸運や医薬品、建設など内需関連を中心に全33業種が高い。
• TOPIXの終値は前日比40.53ポイント(2.6%)高の1617.94−1月7日以来の上昇率
• 日経平均株価は同451円28銭(2.2%)高の2万1428円39銭−2月12日以来の上昇率
背景
• ドイツ:3月Ifo景況感指数は7カ月ぶりプラス
• きょうは3月決算銘柄の期末配当の権利付き最終売買日:企業数はTOPIX構成銘柄で1558、日経平均で191−ブルームバーグ
  SMBC日興証券投資情報部の松野利彦氏は「独景況感指数が持ち直し欧州景気が相場の足を引っ張ることはなくなった。前日は米債の逆イールドが意識されて急落したが、景気後退にはタイムラグがあるため過剰反応」と話していた。
  前日にTOPIXと日経平均がことし最大の下落率となった反動に加え、きょうは3月期決算銘柄の権利付き最終売買日のため、主要指数は上げ幅を拡大する展開となった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の三浦誠一投資ストラテジストは「国内外の機関投資家を中心に、あすの配当落ち分を先物市場で手当てする買いが上げを主導している」と指摘した。
  TOPIXは前日の下げ幅(39.70)を取り戻して終えた。みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「小幅高だった前日の米ダウ工業30種平均や、きょう下げている上海総合指数との比較では上昇し過ぎ」とみている。

• 東証1部33業種は株主優待の権利取りなどから電鉄が買われ陸運が上昇率1位、ゲーム機スイッチの新型モデル発表期待で任天堂が急騰してその他製品が2位、医薬品、建設、機械も上位
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POY1GP6KLVR701


http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/691.html

[経世済民131] 日銀「次の一手」を検証、柱は地銀の支援策か ゴールドマンも逆イールド深刻視せず  米国債、上がり過ぎ 債券下落 リラ急落
為替フォーラム2019年3月26日 / 08:02 / 2時間前更新

日銀「次の一手」を検証、柱は地銀の支援策か

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
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[東京 26日] - 4月下旬に公表する「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で、日銀が景気見通しの明確な引き下げを迫られる蓋然(がいぜん)性が高まっている。

3月14─15日の金融政策決定会合では生産や輸出などを下方修正し、景気判断に慎重なトーンを加えた。4月初めの全国企業短期経済観測調査(日銀短観)で大きく好転する見込みは低く、海外景気も米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)がともに景気見通しを引き下げるなど、下振れリスクが高まっている。

だからといって、追加緩和が直ちに必要になる訳ではない。家計部門は雇用と所得が引続き堅調であり、企業の設備投資に足踏みがみられるのは、循環的な減速を除けば不透明な海外の状況を見極めている面もあるためだ。

海外経済は、中国が本格的に発動する財政刺激策が(長期的にみて望ましいかどうかは別として)、徐々に効果を表すだろう。欧米の金融政策の「正常化」が頓挫する中で円高進行のリスクは残るが、日本の製造業が予算策定段階で想定した為替レートはともかく、実際の「採算レート」までには相応の距離がある。

<追加緩和は限界なのか>

それでも、日銀による「次の一手」を早くから検証しておくことは重要だ。従来の延長線上では、政策手段の発動余地が限られているからだ。

実際、金融市場が想定している追加緩和策には、国債や上場投資信託(ETF)の買入れの増額、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)における目標金利の引下げなどがあるが、いずれも課題が指摘されている。

国債買い入れの増額は、既に日銀が発行残高の約半分を保有する中で、日銀自身が問題視してきた市場機能への悪影響を拡大させる。また、長期金利を低位固定させることで、財政規律を損なうリスクを高めることが懸念される。

ETF買入れの増加も、市場機能への副作用に加え、投資先企業のガバナンスを低下させているとの批判を一層高める可能性がある。イールドカーブのさらなる引き下げも、金融機関の利ざやを一段と縮小させるとの見方が強い。

このような懸念が渦巻く状況は、決して好ましいものではない。追加緩和はないかもしれないと金融市場が懐疑的になり、景気や物価の見通しに対し、必要以上に慎重な見方をとる可能性が生じるためだ。たとえ追加緩和が実施されても、金利や資産価格の変化を通じた政策効果の波及が抑制されかねない。

日銀が追加緩和の手段やその発動余地が十分に残されていると再三強調するのは、その意味で合理的だ。だが、そうした主張に説得力を持たせるためには、追加緩和にイノベーションの余地があることを示す必要があるし、それには相応の時間を要する。

<貸出促進策の問題点>

金融市場では、銀行貸出の促進策が日銀の次の一手になると予測する向きもある。これは、マイナス金利政策に伴う金融仲介機能への副作用が意識される中で、ECBによる貸し出し条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の再開に触発された面があろう。

特に今回は、民間企業に貸し付けた金融機関に対し、日銀がマイナス金利で資金を供給する仕組みの可能性が注目を集めている。そこで、この貸出促進策を検証してみたい。

一般論として、これは容易に問題点を指摘できる。日銀による銀行貸出動向のサーベイや短観の状況判断などをみる限り、企業の借入需要が貸し手の問題のために充足されない状況にあるとは、少なくともマクロ的には思えない。

特に大企業は手元資金もキャッシュフローも厚いので、設備投資を行うとしても資金調達の需要は乏しい。2月に本稿で指摘したECBによるTLTROと同様、日銀が貸出促進策を強化しても「紐を押す」だけ、という状況になることが考えられる。

現行の貸出促進策(「成長基盤強化を支援するための資金供給」)の活用状況も、この問題の別な側面を示唆している。

つまり、現行政策は銀行による日本企業の海外子会社向けの貸し出しも対象としているが、全体の利用残高の半分以上を大手銀行が占めていることも考慮すれば、大企業による海外ビジネスのための貸し出しを支援する面も有している。もちろん、これによって日本企業の収益が下支えされれば、マクロ的に経済成長率が上昇することは事実であり、その意味で政策効果を発揮する。

<焦点は地銀の体力か>

他方、国内金融の大きな部分を担う地域金融機関は厳しい収益状況にある。日銀が上記のようにマイナス金利で資金を供給する可能性が注目される理由の1つでもある。しかし、国内の中小企業では総じて資金需要が弱い。さらに金融機関同士が厳しい競争の下にある。金融機関がマイナス金利で資金を調達できても、貸し出す際には一段の金利引下げを余儀なくされる可能性が小さくない。

もちろん、国内にもおう盛な資金需要は散在するが、それらは主として新興企業である。日銀が「金融システムレポート」で懸念を示しているのは、ミドルリスクの企業に対して銀行が過大に与信を行っている可能性である。こうした企業への貸し出しは、景気が後退すると一定の部分が不良債権化するが、地域金融機関が引き当てや償却の負担に耐えられるだけの体力を有しているかが焦点だ。

その意味からも地域金融機関の低収益性が問題視され、改善を求める声が強まっているが、真の焦点が金融機関の体力だとすれば、もはやフローの収益の問題ではなく、実質的に自己資本の問題になってくる。

誤解のないよう強調しておくが、地域金融機関が金融規制上の自己資本不足に陥っている訳ではない。また、景気後退に伴う信用コストの増加に直面しても、多くの銀行が直ちに自己資本不足になると予想されている訳でもない。そうであっても、信用コストの増加を収益だけで吸収できない金融機関が、低下した自己資本比率を回復しようとすれば、新規の与信に慎重になって「貸し渋り」が生ずる恐れがある。

こうした点を踏まえれば、国内経済の活性化を担う新興企業の資金需要を満たすため、日銀が地域金融機関に自己資本の面で支援を行うことも想定できる。

具体的には、貸出実績に応じて日銀が金融機関の自己資本増強に資する資金調達手段を買入れる、といった手段があろう。実質的には公的資本の注入を意味するだけに、対象となる貸出範囲は限定すべきだ。また、次の景気後退が訪れた際の信用コストの上昇分だけをカバーするよう、資金供給の期間は短期にすることも必要だろう。

こうした政策は金融システムの安定に深く関わるだけに、日銀と金融庁が密接に連携する必要がある。調整に時間を要することも考えられるが、金融庁がこの政策を地域金融機関の体力強化に向けた集中的な対応期間と位置づければ、様々な政策を同時並行で実施することができるだろう。

金融市場が追加緩和の限界を意識する中で、日銀にとっては新たなポリシーミックスをアピールすることにもなる。

*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/column-tetsuya-inoue-idJPKCN1R61KR

 

 


 
ゴールドマンも仲間入り−逆イールドの脅威、深刻視せず
Joanna Ossinger
2019年3月26日 16:15 JST
• カーブの中で逆転している部分の割合は高くはない
• 10年物米国債利回り低下の理由は米国外の力学によるものだ
ゴールドマン・サックス・グループは、米国のイールドカーブ逆転についてパニックに陥る必要はないと忠告する仲間に加わった。
  逆イールドはこれまでリセッション(景気後退)の前兆とされてきたが、現在はカーブの中で逆転している部分の割合は過去の景気後退期ほど高くはないと、アレッシオ・リッツィ、クリスチャン・ミュラーグリスマン両ストラテジストが25日のリポートで指摘。また、10年物米国債利回り低下の理由は米国外の力学によるものだと分析した。米国の信用スプレッドがストレス信号を発してはいないことも挙げた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iy.daiegzVa8/v2/576x-1.png
  10年物利回りは22日に3カ月物を下回ったが、2年債の利回りは上回っている。
  ストラテジストらは、「リターン低下の環境下でも、景気後退リスクは低いままだ」と記述。経済状況は確かにこれまでほど有利ではなく、利益拡大を妨げているかもしれないが、「株式やリスク資産全般はフラットなイールドカーブであっても、良好なパフォーマンスとなることが可能だ」と説明した。
  こうした見方は、リスク資産からは「低いがプラスのリターン」が得られるというゴールドマンのストラテジストらのかねてからの結論と一致している。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iFTfezPFWvoM/v2/576x-1.png
原題:Goldman Joins Chorus Downplaying Menace of Inverted Yield Curve(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-26/POYMIM6JIJUO01?srnd=cojp-v2

 

 
米国債の値上がり行き過ぎ、アンダーウエート検討を−フィデリティ
Andreea Papuc
2019年3月26日 13:13 JST
• 活動は第2四半期に加速する可能性、成長とインフレも改善と予想
• 金融当局は再び姿勢転換、利上げサイクル再開を迫られるとの見方
米国債の利回りは十分に低下しており、投資家はこの資産クラスをアンダーウエートにすることを検討すべきだ。フィデリティ・インターナショナルがこのような見方を示した。
  先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内利上げの観測を打ち消し、その後の急激な利回り低下は3カ月物と10年物米国債の利回り逆転をもたらした。
  これはリセッション(景気後退)の先行指標とも見なされるが、フィデリティの投資ディレクター、アンドレア・イアネリ氏は26日のリポートで、「第2四半期には活動が加速する可能性が高い。労働市場は引き締まり続け、成長とインフレも幾分改善するだろう」と予想。「そのような環境の中では、金融当局は再び姿勢を転換し、今年か2020年に利上げサイクルを再開しなければならないだろう」と指摘した。
  「悲観が既に十分に織り込まれていることを考えると、米利回りがここからさらに下がる余地は限られており、米国債にはアンダーウエート姿勢が好ましい」と同氏は結論付けた。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iupHVtZAEZno/v2/576x-1.png
原題:Fidelity Says Treasuries Have Gone Too Far, Favors Underweight(抜粋)

シティに国債先物の相場操縦で課徴金勧告、1億3337万円−監視委
谷口崇子
2019年3月26日 15:37 JST 更新日時 2019年3月26日 16:04 JST

Signage is displayed outside of a Citigroup inc. Citibank branch in the Little Tokyo.
Photographer: Patrick T. Fallon
証券取引等監視委員会は26日、米シティグループ傘下のシティグループ・グローバル・マーケッツ・リミテッドの元社員が日本国債の先物取引で金融商品取引法(相場操縦)に違反したとして課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。金額は1億3337万円。

シティグループのロゴ
Photographer: Justin Chin/Bloomberg
  監視委の発表によると、この元社員が昨年10月、大阪取引所の長期国債の先物取引で、取引を成立させる意思がないのに多数の売買注文を出した疑い。
  国債の相場操縦を巡っては、昨年7月、監視委の摘発を受けた三菱UFJモルガン・スタンレー証券が2億円超の課徴金を納付している。摘発を受け、財務省が同社の国債特別資格を1カ月停止するなどの影響が出た。
  シティグループは、勧告を真摯(しんし)に受け止めこのような事態に至ったことを深くおわびするとのコメントを発表した。
(情報を追加して記事を更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-26/-3337


 

債券下落、高値警戒感や株価大幅高で売り圧力−40年入札は低調な結果
三浦和美
2019年3月26日 7:58 JST 更新日時 2019年3月26日 16:11 JST
債券相場は下落。前日までの急速な利回り低下で高値警戒感が強まったことや株式相場の大幅な反発、この日に実施された40年利付債入札が低調となったことを背景に売り圧力が強まった。

新発10年物353回債利回りは、日本相互証券の前日午後3時の参照値より2ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.07%
新発40年物11回債利回りは一時3.5bp高い0.60%、20年や30年債利回りも上昇
長期国債先物6月物の終値は前日比16銭安の152円95銭
市場関係者の見方
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也シニアエコノミスト
記録的なフラット(平たん)化を受けて注目されていた40年債入札は低調な結果になった
高値警戒感の中で、年度末を控えた投資家の買わなくてはいけない需要はある程度こなされて積極的な応札が見送られたことが確認された
日経平均株価も昨日の記録的な下げから大きく戻す展開になるなどの外部環境を含めて、債券市場も行き過ぎた動きが調整されている
40年債入札
最高落札利回りは0.610%、ブルームバーグがまとめた市場の予想中央値は0.605%
投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.50倍、前回の3.79倍から低下
備考:過去の40年債入札の結果
背景
東京株式相場は大幅反発。日経平均株価は前日比2.2%高の2万1428円39銭で引けた
25日の債券市場では長期金利がマイナス0.095%と2016年8月以来の水準まで低下。超長期債利回りも軒並み16年以来の低水準を記録し、利回り曲線のフラット化が進行
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.170% -0.180% -0.070% 0.355% 0.530% 0.580%
前日比 +1.5bp +1.5bp +2.0bp +2.0bp +3.0bp +1.5bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-25/POY1A86JIJUQ01?srnd=cojp-v2

 


ビジネス2019年3月26日 / 09:17 / 24分前更新
リラ急落、トルコ国民の活発な外貨購入の流れが主因か
Reuters Staff
1 分で読む

[アンカラ 25日 ロイター] - 先週末のトルコリラ急落は、個人投資家が低利回りのリラ建て預金を嫌って外貨購入を活発化させていることが大きな要因になった──。複数の銀行関係者がこうした見方を示した。

リラは22日、ドルに対して一時6%強も下落。当初これはゴラン高原を巡りイスラエルの立場を支持する米国と、それに反発するトルコの関係が悪化することへの懸念が作用したとみられていた。

しかしトルコ中央銀行のデータを見ると、過去半年で国内個人投資家の外貨預金残高が急増したことが分かる。15日までの週の残高は16億4000万ドル増えて過去最高の1057億ドルに達し、週間ベースの増加は23週連続だった。

トルコの銀行関係者の話では、リラ建て預金金利は物価上昇率よりも低いので、ドルに預金が流れている。

ブルーベイ・アセット・マネジメントの新興国市場シニア・ソブリン・ストラテジスト、ティム・アッシュ氏は「これが根本的な問題だ。トルコ当局は一方的なドル化の流れに歯止めをかけるため迅速に行動する必要がある。国民が自国通貨を信用しないとすれば、外国人がなぜ信用しなければならないのか」と指摘した。
https://jp.reuters.com/article/turkish-lira-idJPKCN1R700R?il=0


 
ビジネス2019年3月26日 / 15:48 / 3時間前更新
ドル110円付近、安値圏でもみあい
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 26日 ロイター] - 午後3時のドル/円は、前日ニューヨーク市場の午後5時時点から小幅高の110円前半。アジア株式市場が軒並み高となったことで、前日に対ドルで1カ月半ぶり高値をつけた円は反落した。しかし年度末を控えた売買は交錯ぎみで、下げ幅は小さかった。

午前の東京市場でドルは一時110.24円まで上昇。前日同様、下値では実需や機関投資家ら国内勢が買いに動いたとの観測が出回っていた。

米金利市場が「利下げを織り込む水準まで一気に振れたのは、やや行き過ぎではないか」(証券)との見方も、ドルの買い戻しにつながった。市場筋の試算によると、米短期金利市場は、連邦準備理事会(FRB)が年内に1度の利下げを実施する可能性を織り込んでいる。

しかし午後に入ると値動きは次第に薄れ、ドル/円はこう着。積極的にドルを買い上がる手がかりに乏しい中で、「年度末を控えた調整売買が相場変動を抑制した」(トレーダー)という。午後3時までのドル/円の値幅は上下29銭だった。

ドル/円JPY=  ユーロ/ドルEUR=  ユーロ/円EURJPY=

午後3時現在 110.13/15 1.1305/09 124.52/56

午前9時現在 110.05/07 1.1313/17 124.52/56

NY午後5時 109.95/98 1.1311/15 124.39/43

為替マーケットチーム
https://jp.reuters.com/article/tokyo-frx-lateaft-idJPKCN1R70I5
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/692.html

[経世済民131] 豊かになることを放棄した日本 低い失業率を低賃金で「演出」する愚 竹中は希代のワル? アベノミクスで庶民の生活は苦しく?
豊かになることを放棄した日本 低い失業率を低賃金で「演出」する愚

(城繁幸)
2019/3/26 07:00
日本経済新聞が「過去20年、主要各国の中で唯一日本だけが賃金が下がっている」と報じて、大きな波紋を呼んでいる。
【参考リンク】「賃金水準、世界に劣後 脱せるか『貧者のサイクル』」日本経済新聞(2019年3月19日付)
人事担当者の間では常識になっているので、今さら感のあるニュースではあるが、「財界の陰謀」だの「アベノミクスの副作用だ」だのと言いだしている、おかしな連中もいるので、将来のある若者向けに基本をおさらいしておこう。

賃金が上がらない、そのワケは……
賃金が下がったのは終身雇用だから
20年前と比べて賃金が下がった理由は、高給の中高年正社員が定年退職して非正規雇用として就労したことなどいくつかあるが、やはり労使が終身雇用の維持を最優先したことが大きい。
長期間の雇用を維持するには、将来的な景気動向などのリスクを織り込んで賃金水準を抑制する必要があるためだ。
「はっきりいって賃上げの余裕はあるが、今後数十年にわたって雇用を維持できる水準に抑えておこう」
と、労使で話し合っている企業を筆者自身いくつも知っている。
だから、賃金では日本は負け組だが、失業率では世界一の優等生の座を維持し続けている。

「給料が下がっても失業率が低ければいい」(世界各国の失業率の推移)
https://www.j-cast.com/kaisha/images/2019/03/kaisha_20190325144935.jpg

そういうわけで、前回の可処分所得の件と合わせて、リベラルの皆さんは「20年間で賃金が下がったのは、我々が何が何でも雇用を守らせた副作用だ。そのくらい我慢しろ」と胸を張るといいだろう。
【参考リンク】「『アベノミクス』効果あった? それでも庶民生活が苦しいワケはこれだ!」J-CAST会社ウォッチ(2018年12月31日付)
ちなみに、この話が人事担当者の間では常識だと言ったのは、中途採用で外国人や外資系企業の出身者を採用する際に、
「え? なんで御社はグローバル企業なのにこんなに安月給なんですか!?」
「いえ、その代わりに不祥事でも起こさない限り寝てても65歳まで雇ってあげられますよ」
という会話を、誰でも一度はしているからだ。
その結果、マトモな人材には逃げられるが。
グローバル経済の中で、現状維持は後退
ひょっとすると読者の中には、ここまで読んで「ちょっとくらい賃金が下がったって失業率が低いのならそれでもいいだろう」と思った人もいるかもしれない。
もし、世界に日本しかない状態だったら、それでもよかったかもしれない。でも、世界には日本以外にも多くの国があり、より豊かになろうと日々しのぎを削っている。
そんな中で、成長より「今雇っている人を雇い続けること」を最優先にする国は、現状維持にすら失敗するに違いない。
皆が歩き続けているなか、一人だけ歩みを止めるようなものだからだ。
失われた30年と言われつつ、奇妙なほどに安定した社会を日本は維持してきたものの、やはり失われたものは大きかったというのが筆者の見方だ。(城繁幸)


えーとね
11時間前
1) 窓際のオジサンは居なくなったけど、低賃金のオジサンになっただけで、やる気も無ければ再教育もない。2) 組合はなくなったけど、出来ないオジサン(多数派)の横の連携は凄くて、自分は動かず、周りの足をこっそりと引っ張ってワークシェアリング(サボり)。3) オジサンを企業という単語に置き換えても同じ構図が成立し、マトリョーシカになっていて、変えようがない。そこから抜け出そうとしてもチャンスが全くない。4) 定年を延長すればするほど、企業が福祉になっていって、老人ホームや老人病院と似たような人間関係になってしまう。老人がメンドクサそうに働く会社が勝てるわけがない。


城繁幸(じょう・しげゆき)
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか−アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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https://www.j-cast.com/kaisha/2019/03/26353431.html?p=all


「正社員」という働き方を考える 東洋大・竹中教授は若者の将来を奪った「希代のワル」?(城繁幸)
2019/1/31 07:00
東洋大学の学生が、構内に「竹中平蔵教授の授業に反対する立て看板」(参考:「竹中平蔵教授を批判 東洋大4年生『退学』騒動の本人を直撃」日刊ゲンダイDIGITAL 2019年1月25日付)を設置し、大学側が撤去したことが波紋を呼んでいる。

大学側の処置は正しかったのか、そもそも学生の言うように「竹中氏は若者の将来を奪った希代のワル」なのか、いい機会なのでまとめておこう。

東洋大学の竹中平蔵教授は「若者の将来を奪ったのか」!?(2018年6月28日撮影)
東洋大学の竹中平蔵教授は「若者の将来を奪ったのか」!?(2018年6月28日撮影)
「規制強化で正社員増」は机上の空論だった
結論からいえば、グローバル化が進んだ以上、先進国の賃金水準が下がるのはやむを得ないことであり、雇用を国内に引きとめるために規制緩和を行うこと自体は正しい処方箋だ。

といっても、感覚的に理解できないという人のために、日本人を使った「人体実験」も紹介しておこう。

やはり「小泉改革が格差を拡大した」と批判して政権を取った民主党政権が(30日以内の短期派遣の禁止、専門26業務適正化といった)一連の派遣業に対する規制を強化した結果、何が起こったか――。

5年前の数字と比較すると、派遣労働者を42万人減らすことに成功したものの、正規雇用も120万人減少。増えたのはパートなどの非正規雇用と失業者だった(総務省 2012年就業構造基本調査結果より)。

要するに、「派遣は悪だから規制して正社員にさせよう」とやってみたら、より不安定なパートと無職が増えただけだったというオチだ。

この結果は、実際に厚生労働省の労働政策審議会の一員として派遣法改正に携わった人のひとりが「(規制強化で正規雇用増は)机上の空論だった」と、認めるほどの惨澹たるものだった。

その後、厚労省は自ら「近年、パートや契約社員を中心に非正規雇用労働者は増加を続けており、それにも関わらず派遣労働者のみを常用代替防止の対象とし続けることには十分な整合性はないと考えられる」という報告書まで出して、完全に白旗をあげている(今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 報告書より)。

というわけで、「規制緩和で格差拡大」も「規制強化でみんな正社員に」も、完全に間違いであり、その事実には厚労省もお墨付きを出しているということになる。
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/01/31349021.html


 

「同一労働同一賃金」の本質はコレだ! ツギハギだらけの賃金制度はもう止めよう(城繁幸)
2019/1/23 07:00
政府が公務員の定年を65歳に延長する法案を年内にも成立させる予定との報道があった。

同時に60歳以降は、給料は7割に削減するとのこと。これについて、「その給与水準は高いのか低いのか」といった質問をよくいただくので、筆者のスタンスをまとめておきたい。

給料はどうなる!?
給料はどうなる!?
65歳の公務員給料は破格!
一般の日本企業は65歳までの定年延長ではなく、定年退職後に嘱託として再雇用し、賃金制度をまったく別のものに切り替えたうえで賃金は5割前後にカットするのが主流だ。そういう意味では定年延長で賃金は7割、おそらく手当なども持ち越す公務員は破格の好待遇と言っていい。

このような話をすると、「公務員がお手本を示せば民間企業もならうはずだ」という、楽観的なことを言う人もいるが、確かにそういう企業もあるだろう。

公務員が(税金を投入してお手盛りで)手本を示してやれば、交渉力のある大手企業の一部は、下請けや若手、非正規雇用を絞ることで中高年の人件費を増やすかもしれない。でも、それに何か意味があるのだろうか。単なる弊害だろう。

とはいえ、筆者は「国も民間にならって定年延長ではなく嘱託にして賃金は5割くらいに抑えろ」と言うつもりもない。そもそも一律で〇割下げるという行為自体がおかしいと考えるからだ。

戦後、日本企業は年功序列制度のもと、初任給から毎年少しずつ昇給させ、50代の定年の直前でピークに到達させることで帳尻を合わせてきた。

それが国の年金財政の事情によって、実質的な定年が60歳、65歳と引き上げ、それにあわせて賃金水準を一律で引き下げることで、なんとかやりくりしてきたという経緯がある。

役職定年制度や再雇用時の嘱託制度というのは、企業がやむを得ずひねり出した「つぎはぎ」みたいなものだ。一言でいうなら、経営者も人事部も「その人の仕事にいくらの市場価値があるか」という点を、誰も考えてこなかったということになる。

そんなツギハギだらけのポンコツ賃金制度を、「公務員も真似しろ!」とは、筆者はとても言う気にはなれない。
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/01/23347984.html

「アベノミクス」効果あった? それでも庶民生活が苦しいワケはこれだ!(城繁幸)
2018/12/31 12:00
テレビ朝日系の報道番組「報道ステーション」で、日本人の可処分所得が大きく減少している問題が取り上げられ、SNS上でちょっとした話題となっている。

それでもって「アベノミクスは失敗だ!」と大喜びしている野党関係者も散見される。庶民が実際に使えるお金は大幅減。アベノミクスを6年もやった「成果」がこれか。

本当にアベノミクスのせいで庶民の生活は苦しくなったのだろうか。いい機会なのでまとめておこう。

社会保険料は増え続けている……
社会保険料は増え続けている……
勤労世帯の生活が苦しくなったのは社会保険料のせい
結論から言うと、庶民の生活に余裕がなくなったのは、賃金が微増にとどまるなか、過去20年以上ほぼ一貫して社会保険料の天引きが増え続けてきたためだ。

事業主負担分も含めたサラリーマンの社会保険料負担は、すでに45%に達する。

サラリーマンが目先のベアより社会保障の抜本改革を要求すべき理由 (Joe's Labo 2014年4月17日付)

「労使折半だから半分は会社が払ってくれてるんじゃないの?」と、思う人もいるかもしれないが、会社から見ればすべて含めて人件費である。

たとえば、あなたがお掃除代行サービスを1万円で頼んでいて、突然1万円の「お掃除代行税」が発生したとして「しようがないなあ、ポケットマネーからもう1万円出すか」とはならないだろう。お掃除代行サービスに2万円分の働きを求めるはずだ。

そうそう、参院選前に政府は財界に「教育無償化のためのコスト」として3000億円の負担も要求した。あれも恐らく今年(2018年)の昇給を削って捻出されているはずだ。

まとめると、高齢者やニートも含めた社会全体で負担できる消費税を上げる代わりに、保険料という形でサラリーマンだけが負担を押し付けられていることになる。

ちなみに、筆者自身はアベノミクスをまったく評価していないし、むしろ大失敗だったとみている。本当の評価は、近い将来下されることになるはずだ。

とはいえ、世の中の悪いことすべてを政府の政策に押し付けようとする向きには同調する気はない。
https://www.j-cast.com/kaisha/2018/12/31347110.html
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/702.html

[経世済民131] 追い詰められる日銀、「マイナス金利貸出」の現実味 世界経済減速の影響、顕在化なら機動的政策を=諮問会議・民間議員
為替フォーラム2019年3月27日 / 15:04 / 7時間前更新

追い詰められる日銀、「マイナス金利貸出」の現実味

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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[東京 27日] - 米国で起きた長短金利の逆転は、景気後退の接近を予感させる。長期金利の低下は連邦準備理事会(FRB)がいずれ利下げに転じるというシグナルかもしれず、当然ながら日銀の追加緩和観測も高まることになるだろう。

日本でも1月の景気動向指数が悪化するなど、景気後退リスクがくすぶっている。10月に控えた消費税率引き上げの判断も、不透明感が増しつつある。7月の参議院選挙前に、緊急避難的に増税を翻す可能性も否定できない。

今の日銀は、政府が経済対策を打とうとすれば、それに呼応して緩和に動かざるを得なくなっている。筆者は予定通り消費増税が実施されることをメインシナリオとしつつ、政府が追加の経済対策を講じる可能性があるとみている。それを側面支援するため、日銀は景気対策に協力するだろう。いつか通った道をもう一度繰り返す、既視感のある筋書きである。

<追加緩和をしてもほとんど効果なし>

追加緩和の手段としてまず思い浮かぶのは、長短金利の引き下げである。短期金利は現在のマイナス0.1%を深堀りする。長期金利のターゲットもゼロ%程度からの許容幅を上下0.2%から再び0.1%に戻す。

これは企業や政府の資金調達コストを下げる点でプラスだが、銀行に対してはマイナス金利の負担を増やす。短期国債がマイナス金利運用になるという点は、銀行など投資家から政府への所得移転となり、それが果たして緩和になるかという問題が残る。副作用という面で、問題含みの対応となる。

そもそも効果はあるのだろうか。貸出金利はもはや下げ余地がほとんどない。日銀が発表する貸出約定平均金利は、新規・短期のところで2018年中は0.4─0.6%台で推移している。銀行の調達金利に信用スプレッドを乗せたぎりぎりの水準だろう。

国債の金利低下で社債スプレッドがじりじり低下していることから、貸出金利ももう少し下がる可能性はある。ただ、0.1─0.2ポイント下がったところで、企業の資金調達のコスト負担はそれほど軽減されない。日銀の主要銀行貸出動向アンケートでは資金需要判断DIも貸出運営スタンスDIも、黒田東彦総裁のもとで2013年に日銀が打ち出した大規模緩和以降、ほぼ横ばいである。

一方、日銀短観を見ると、金融機関の貸出態度判断DIは「緩やか」が「厳しい」を、資金繰り判断DIは「楽である」が「苦しい」を上回る状況が続き、しかも緩やかに改善している。大規模緩和の効果と見ることもできるが、むしろ銀行の運用難による競争激化で、時間とともに企業が借りやすくなっているにすぎないのではないだろうか。追加緩和が限界的に効いているというよりも、銀行の運用を厳しくしているだけと理解できる。

<不動産貸出への傾斜リスク>

イールドカーブ・コントロールの目的は、長短金利を低位に抑えることで、できるだけ貸し出しを増やすことにある。確かに貸出残高は増えており、効果は出ている。黒田緩和の開始以降、銀行貸出は2─3%台で伸びた。

伸びが大きいのは不動産と個人向けの貸し出しだ。特に不動産向けは黒田緩和の開始から4%台の伸びとなり、16年にイールドカーブ・コントロールを開始してからは5─7%台へとより伸張している。個人向けの中身は、住宅ローンと消費者ローンが主である。つまり、巨大な緩和マネーが不動産市場に流れ込んだことを意味する。

銀行がさらに貸し出しを増やそうとすると、どうしても定期収入が見込め、担保設定もしやすい不動産向けに偏ってしまう。銀行の設備資金・新規貸出(フロー)に占める不動産と個人(ほぼ住宅ローン)は併せて約6割に上る。ここにきて設備資金・新規貸出の伸びはマイナスに転じている(17年9月─18年12月)が、それでも残高ベースで前年比5.3%増(18年12月末)と高いレベルを保っている。

ここ数年の地価動向は、都市部の商業地を中心に上昇傾向にある。日本不動産研究所の6大都市・商業地の市街地価格指数は、18年9月末時点で前年比8.1%も上昇している。こうした地価上昇が、不動産向け貸し出しを伸ばす要因とも言える(逆の因果も働いているだろうが)。しかし、仮に20年夏の東京五輪後に地価が反落すれば、銀行経営に思わぬ打撃が加わる恐れがある。

<金融庁と二人三脚で>

次なる緩和策として、マイナス金利貸出がうわさされている。現在、日銀は貸出支援基金を設けてゼロ金利で銀行などに資金供給をしているが、当座預金のマイナス金利を深堀りすると同時に、この適用金利をマイナスにする。すると、貸出支援のパワーアップが見込める。

金利を下げて貸出増加という理屈は、量的拡大に発想を縛られたリフレ派の人たちとは異なる点で、黒田総裁には受け入れやすいだろう。また、当座預金のマイナス金利適用が23兆円(18年末)に対して、貸出支援基金は45兆円前後である。全体として、銀行収益の足を引っ張っていないという口実にもできる。

ただし、2つの問題が残る。1つは日銀が公的資金、つまり税金を使うことが許されるのかという問題である。このアイデアは以前から語られてきたが、今もって実施されていない。その理由は、日銀が民間銀行にマイナス利息という利益を与えることが、税還付に似ていることに政府内で理解が得にくいことがあるだろう。政府は「アリの一穴」を恐れる。

もう1つは、貸出支援によって、もっぱら不動産向けが伸びることを肯定的に評価できるかという問題である。貸し出しは増加してほしいが、不動産向けに回る分は「ほどほどで良い」とは言いにくいだろう。

不動産向けへの過大な傾斜については、金融機関の健全性を確保する金融庁の「プルーデンス・ポリシー」でしっかりと管理し、日銀は貸出全体を伸ばすという考え方もできる。荒技として、不動産向けを除いて、貸出増加支援を行うというルールにする案もあるだろう。

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-boj-hideo-kumano-idJPKCN1R80BF

 
ビジネス2019年3月27日 / 19:40 / 2時間前更新
世界経済減速の影響、顕在化なら機動的政策を=諮問会議・民間議員
Reuters Staff
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[東京 27日 ロイター] - 政府が27日に開いた経済財政諮問会議で民間議員は、中国や欧州経済の減速が日本の内需にも影響を及ぼす可能性などに言及し、リスクが顕在化した場合には機動的なマクロ経済政策を「躊躇(ちゅうちょ)なく実行すべき」と提言した。

民間議員は「国際経済の変動に強い経済構造の構築に向けて」と題した提言において、現下の世界情勢について、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる混迷や米中貿易摩擦などが景況感に影響を与える可能性があるとともに、中国や欧州の経済減速が日本の景気回復の持続性に対して「内需・外需の両面から影響を及ぼす可能性がある」と警戒感を表明した。

そのうえで、国内面への対応について「リスクが強まっている今こそ、デフレ脱却・経済再生最優先という安倍政権の経済政策の基本方針を堅持」しつつ、リスクが顕在化する場合には補正予算編成など「機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行すべき」と強調。ショックが生じた場合の「経済・金融への影響を迅速に把握する体制」を整備しておくことも求めた。

日本が議長国を務める6月の20カ国・地域(G20)首脳会議を見据え、経常収支の不均衡問題に対応するための「根拠ある経済分析に基づいて監視し、協議する場をG20に設ける」ことを提言。

過度な住宅投資が金融システムの不安定化につながることがないように「監視や国際的な情報共有を強化するとともに、リスクの顕在化に備えて国際協調の枠組みを再確認すべき」とも指摘した。

また、米中貿易摩擦など経済的な国際紛争の解決に向け、日本・欧州・インドなどの「ミドルパワー」が連携して「経済紛争を起点にしたショックが生まれにくい環境作りに貢献すべき」とした。

諮問会議であいさつした安倍晋三首相は「国際経済の変動に強い経済構造の構築について議論した」と述べた。「ここ最近、海外の経済情勢の変化や政策動向の変化がより著しくなっており、こうした国際経済リスクを十分注視しつつ、マクロ経済運営に一層万全を期していくことが重要」と強調し、マクロ政策を担当する茂木敏充経済再生相に対して「しっかりした対応をお願いする」と指示した。

伊藤純夫
https://jp.reuters.com/article/japan-economy-global-slowdown-idJPKCN1R80Z5

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/703.html

[経世済民131] 小口決済サービスの安定供給、預金口座の利用者負担も課題に=日銀リポート ECB必要なら利上げをさらに遅らせる=ドラギ総裁

ビジネス2019年3月27日 / 17:44 / 4時間前更新
小口決済サービスの安定供給、預金口座の利用者負担も課題に=日銀リポート
Reuters Staff
1 分で読む

[東京 27日 ロイター] - 日銀は27日、決済システムリポートを公表した。その中で、金融と情報技術を融合させたフィンテック企業を中心に新規参入が相次いでいる小口決済サービスについて、先行き安定的にサービスを提供していくには、金融機関の預金口座の利用料を利用者間でどのように負担していくかが重要な問題になると指摘した。

リポートでは、スマートフォンを利用したモバイルペイメントなど各種のキャッシュレス決済手段が急速に普及している現状を踏まえ、決済サービスの安定供給に向けた課題を金融機関とフィンテック企業の関係に焦点をあてて整理した。

決済手段を供給し続けていくためには、サービスを提供する主体が安定的な収益を確保していくことが必要となるが、多くのフィンテック企業は決済サービスを参加者の拡大と囲い込みの手段と位置づけており、決済単独で「十分な利益を確保していくことを必ずしも想定していない」と指摘。

フィンテック企業の収益は「(消費者や加盟企業など)プラットフォームの参加者をどの程度増やし、決済以外の事業でどれだけ収益を生み出し得るかに依存する」ものの、現状はキャッシュレス決済手段が林立する中で「効率的な決済サービスを安定的に提供する上で、十分なプラットフォームの規模に達した先は、いまだないように見受けられる」としている。

一方、金融機関も激しい競争が展開される中で、預金流出を回避する観点から、ほとんどが口座維持手数料など決済サービスの提供に伴う「適正な対価を得てこなかった」と分析。

人口・企業数の減少によって金融サービスに対する需要が伸び悩むことが想定される中、「決済サービスの提供から適正な対価を得ることなく、膨大な預金口座数や支店・ATM網を維持し続けることは徐々に困難になってきている」という。

フィンテック企業の決済サービス提供にとってもアクセスが不可欠な金融機関の預金口座は「小口決済サービスの基盤となる重要な社会インフラ」といえる。

リポートでは口座維持手数料など預金口座の利用料について、フィンテック企業を含めた多くの利用者間でどのように負担していくかが「小口決済サービスの安定的供給を維持する上で重要な問題となろう」と提起。日銀として「複雑な市場構造を持つ小口決済サービスの発展動向について注視していく」としている。

伊藤純夫
https://jp.reuters.com/article/japan-retail-payments-idJPKCN1R80OB


 


ビジネス2019年3月27日 / 18:14 / 2時間前更新
ECB、必要なら利上げをさらに遅らせること可能=ドラギ総裁
Reuters Staff
1 分で読む

[フランクフルト 27日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は27日、必要ならば利上げをさらに遅らせる用意があると述べるとともに、マイナス金利の副作用を和らげる措置を検討する方針を示した。

予想外のユーロ圏経済減速を受け、ECBは3月の理事会で、想定する利上げ時期を来年に先延ばしし、銀行向けの新たな低利流動性供給措置「TLTRO(貸出条件付き長期資金供給オペ)3」を実施することを決定した。

ドラギ総裁はフランクフルトで開かれた会議で「3月の理事会と同様、われわれは新たなインフレ見通しを反映して金利のフォワードガイダンスを調節することによって金融政策が引き続き経済に即した対応をすることを保証する」と述べた。

TLTRO3の要件についても、経済の状況に応じて調整することになると説明した。

現状の景気減速は必ずしも深刻な不況の前触れではないとしながらも、外需の落ち込みで企業の投資が停滞し、内需や雇用にも影響するリスクが高まっていると指摘した。

銀行からマイナス金利が融資に打撃になっているとの不満が出ていることを受け、マイナス金利の副作用を和らげる措置が必要か検討する方針を示したが、銀行の業績不振は、マイナス金利だけが原因ではないとも指摘した。

「必要ならばマイナス金利の副作用を緩和しつつ、それが経済にもたらす好ましい影響を維持できる措置を検討する必要がある。とはいっても、銀行の低い収益力は、マイナス金利の避けられない代償ではない」と語った。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/ecb-draghi-idJPKCN1R80R8



http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/704.html

[経世済民131] 低すぎる最低賃金が人手不足の真の原因 人手不足数は384万 雇用保蔵者が約400万人
低すぎる最低賃金が人手不足の真の原因

広田 望
日経ビジネス記者
2019年3月28日
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パーソルグループのパーソル総合研究所と中央大学は2018年10月、「20年の日本の人手不足数は384万人」と推計した。一方、リクルート研究所によれば、会社に籍を置きながら事業活動に活用されていない人材である「雇用保蔵者」が約400万人いるという。日本の人手不足が深刻化しているのは、企業が本当の意味で生産性を高めていないからではないか――。日経ビジネス3月25日号「凄い人材確保」では、そんな人手不足の真実を研究した。

生活費を考慮しない最低賃金
 「低い最低賃金が人手不足を助長している」。静岡県立大学の中澤秀一准教授はそう主張する。生産性を高めるための企業努力よりも、安い人件費の労働者を活用する方が利益を得やすいため、多くの人材を浪費する非効率な仕事が減らないのだという。


静岡県立大学の中澤秀一准教授は、最低賃金が低すぎると訴える(写真=陶山 勉)
 法律によれば、最低賃金は「労働者の生活費」「類似の労働者の賃金」「通常の事業者の賃金支払能力」3つの要素を考慮して決めなければならないとある。だが、「実際には1つ目の労働者の生活費はほとんど考慮されていないようだ」と中澤准教授は話す。その証拠に、労働組合から依頼を受けて中澤准教授が調査したところ、各地の労働者が生活に必要な費用は最低賃金と大きく乖離していたのだ。

 中澤准教授の調査では、健康で文化的な最低限度の生活水準として想定した生活を送るには、時給にして1500円以上が必要だと分かった。現在の最低賃金は最も高い東京都で時給985円。5割以上もの開きがある。

 労働者の生活に必要な賃金は地域によってほとんど変わらないことも分かった。日本では地域ごとに最低賃金が異なり、最も低い鹿児島県では時給761円だ。最低賃金の差は物価の違いなどと説明されることもあるが、生活に必要な食品や日用品の価格は全国どこでもほとんど変わらない。都市部は家賃相場など住居にかかる費用が高いが、一方で公共交通機関が発達していて車の所有が必要なかったり、交通費が安価に済ませられたりする。こうした違いを考慮すると、生活に必要な費用は地域によってほとんど変わらないという。

 中澤准教授が想定する生活水準が高すぎるわけでもない。時給1500円で想定しているのは、病気をせず、独身で子供のいない20代男性だ。地方在住で車を持つ場合は、軽自動車を7年落ちの中古で購入し、6年以上使う設定とした。家庭をもったり親の介護を補助したりする金銭的な余裕はない。

 実際に生活に必要な水準よりも最低賃金が低いということは、国の経済水準に比べて過剰に安い労働力が存在するということだ。こうした状況では「本質的に生産性を高める投資が抑えられてしまう」(中澤准教授)という。

次ページ逆転した非正規と正規の賃金

 例えば、作業の一部を切り出して外部企業に委託し、業務コストを削減するというのは、「本来であればおかしいこと」(中澤准教授)だ。委託先の企業は依頼を受けて利益を得るのだから、その会社がよほど自動化や効率化で高い技術力を持っているか、自社の賃金が相場より飛び抜けて高くなければ、作業を委託しても業務コストはほとんど下がらないのが自然だ。

 ところが、最低賃金が低いと、安い労働力を集められた企業が業務委託で利益を稼げてしまう。利益が出ても生産性が上がるわけではないので、労働市場全体で見れば業務量に対して投入している人材の数は変わらない。業務が実際には効率化していないので、市場への労働者の供給は増えないというわけだ。


中澤准教授は、低い最低賃金が人手不足の原因になっていると指摘する(写真=陶山 勉)
 かつて米フォードの創業者、ヘンリー・フォードは需要を高めるために、社員の賃金をT型フォードが買える水準まで上げたという。日本ではかつてのフォードと逆の現象が起きている。安い賃金で働いているため、自分が働いて提供する商品を買う消費者より、労働者自身の生活水準は低くなる。こうした労働者が増えると、消費者全体の購買力が低くなるため需要が落ち込む。経営が厳しくなって、企業はより安い賃金で社員を雇用しようとしかねない。格差の拡大につながるのだ。

逆転した非正規と正規の賃金
 契約社員やパート・アルバイト労働者に依存した事業というのも不健全かもしれない。厚生労働省が14年に発表した就業形態の多様化に関する調査によると、企業が正社員以外の労働者を活用する理由で最も多かったのは「賃金節約のため」(38.8%)だった。が、「欧州のコンジェントワーカーのように非正規労働者の方が正社員よりも賃金が高くあるべきという意見もある」(中澤准教授)。非正規労働者はあくまで一時的に不足した労働力を補うために雇用するものという考え方だ。

 従来、こうしたパートやアルバイトといった非正規従業員は「家計の補助的な収入のための仕事とみなされ、生活できない水準の時給でも無視されてきた」(中澤准教授)。だが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、労働者の4割が非正規で働いている。所得金額の階級別統計を見ても、時給1500円相当より低いとされる所得金額200万円以下が全世帯の36%(17年、国民生活基礎調査)を占める。

 仕事のやり方や事業そのものを改革して生産性を高めるには大きな苦労が伴う。最低賃金が経済水準より低ければ、業務の一部をそうした低賃金の労働者に任せることで見かけ上の生産性を高められてしまう。いわば、まやかしの生産性向上だ。

 低賃金の労働者に依存したまやかしの生産性向上は、本質的に業務に従事する人材の数を減らさない。労働人口が減少し、人手不足が各地で叫ばれている現状を打開するには、「最低賃金を見直して、安い労働力に甘えていた状況から脱却するべき」と、中澤准教授は訴えている。

日経ビジネスの3月25日号特集「凄い人材確保」では、この他にも日本企業が人手不足の現実を研究した。

monomiyusann

仮に福祉関係の仕事で年収1000万円超えなら人手不足も起きないだろう。
同一労働同一賃金なら理屈上最低賃金の地域格差も起きない。
それができないから外国人労働者を輸入する。
おかしな社会だ。ー

2019/03/28 06:09:381返信いいね!


hidetakke

ダメなおっさん

日経でも時給2000円でアルバイト雇おう!(・∀・)

2019/03/28 07:02:101
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00026/031900007/?P=2&mds

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/708.html

[政治・選挙・NHK258] 安倍首相がタオル投げるしかない、日銀の異次元緩和出口−池尾教授 長期金利2年7カ月ぶり低水準 FRB副議長:世界的リスク
安倍首相がタオル投げるしかない、日銀の異次元緩和出口−池尾教授
日高正裕、竹生悠子
2019年3月28日 6:00 JST
このまま出口が来なければシートベルトを締め危機に備えるしかない
東証の市場改革は日銀のETF大量購入に影響与えないだろう
安倍首相
安倍首相 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
池尾和人立正大学教授は、長期化する異次元緩和の出口に向かうには、2%物価目標実現のためにリングで戦う日本銀行に対し、安倍晋三政権がもはやその必要はないとタオルを投げてあげることが唯一の道だとの見方を示した。このまま出口が来なければ、団塊の世代が後期高齢者となる2020年代後半以降、国民はシートベルトを締めて危機に備えるしかないと語った。

  26日のインタビューで「日銀の独立性はいまや建前でしかなく、今の金融政策は安倍政権の総意の下に行われているのは誰が見ても明らかなので、政府が方向転換を促すことが正常化の唯一の道だ」と指摘。「安倍首相自身、いつまでも続けられるものではないと発言している。自分が始めた政策なので、任期中に出口へのめどをつけたいという思いがないことはないだろう」と述べた。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda Speaks At News Conference Following Rate Decision
日本銀行Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  安倍首相は昨年9月の自民党総裁選に向けた公開討論会で、異次元緩和を「ずっとやっていいとは全く思っていない」と発言。出口への道筋をつけることを「私の任期のうちにやり遂げたい」と話した。麻生太郎財務相は15日の会見で「2%にこだわり過ぎると、そちらの方がおかしくなる」と語った。

  足元では景気減速を受けて追加緩和観測も浮上している。3月の金融政策決定会合の主な意見では、財政とのさらなる連携を求める声が上がった。池尾教授は「空からお札をばらまくヘリコプターマネー政策のようなことをやれば物価は上がるかもしれないが、それが経済厚生を高めることにつながるのか問う必要がある」と述べた。

  日銀法は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念としている。池尾教授は「物価は手段という位置付けで、最終的な目的は国民経済の福利厚生を高めることだ」と指摘。経済厚生の改善につながる範囲で効果的に物価を上げる手だてがあるかと言われると、「その場しのぎ」や「やったふり」を除けば、有効な手段は「ない」と断言する。

任期中の2%は期待薄
  日銀は4月末に2021年度までの消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しを示すが、複数の関係者によると、21年度も2%達成は厳しいとの見方が日銀内で出ている。安倍首相の総裁任期である同年9月までに達成するのは容易ではない。その先には、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、介護・医療費など社会保障費の急増が懸念される「2025年問題」が待っている。

  池尾教授は「20年代後半以降は財政需要が一層膨張する中、貯蓄率は下がり貯蓄を取り崩して生活費に充てることになる。そうなると経済的な景色が今とガラッと変わる可能性がある」と指摘。日銀が金利を抑え込もうとしても「キャピタルフライト(資本逃避)を招いて通貨価値が急激に下落し、通貨防衛のために利上げせざるを得ない。そういう局面が20年代後半以降、あり得ないことではない」としている。

  池尾教授は東京証券取引所が進める市場改革の有識者会議の委員も務める。日銀は異次元緩和の一環としてTOPIX連動型の投資信託(ETF)を大量に買い入れているが、市場改革がこれに影響を与えることはないだろうとの見方を示した。市場再編により最上位の指数から外れる銘柄が出ることについても、「短期的に売られても中期的には経営実態を反映した値動きになるだろう」と述べた。

  池尾教授は1975年京大経卒、87年京大経済学博士、95年慶大教授、2018年から現職。金融論が専門で金融審議会の委員や部会長などを歴任。政府が08年5月、日銀審議委員候補として国会に提示したが、衆参ねじれ現象のあおりで否決された。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-27/PP04096JIJUS01?srnd=cojp-v2


 


長期金利が2年7カ月ぶり低水準、米欧金利低下や株安・円高で買い
野沢茂樹
2019年3月28日 8:01 JST 更新日時 2019年3月28日 16:05 JST
債券相場は大幅高。長期金利は2年7カ月ぶりの低水準を付けた。世界経済の減速懸念を背景に米欧債券相場が上昇したことや英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混迷を受けて買いが先行し、日本株の続落と円高・ドル安、2年債入札の順調な結果も加わり、利回り低下に拍車が掛かった。

新発10年物353回債利回りはマイナス0.08%に下げて始まり、午後3時過ぎにマイナス0.10%と2016年8月以来の水準まで低下
新発40年債利回りは0.55%と16年10月以来の低水準
長期国債先物6月物の終値は前日比28銭高の153円30銭。中心限月で16年7月以来の高値
市場関係者の見方
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジスト
世界経済の減速がどこまでいくか、不透明感が払しょくされない限り、金融市場全体が不安定で債券には追い風となろう
金利は低下しているが、こうした状況ではあすの国債買い入れオペでの減額や来月のオペ運営方針での減額示唆はメインシナリオにはならない
企業短期経済観測調査(短観)の悪化も見込まれており、追加緩和も話題に上りやすいが、日本は追加緩和の余地が乏しいので、日銀は辛抱強く今の緩和を続けるのではないか
2年債入札
最低落札価格は100円55銭と市場予想を上回る
投資家需要動向を反映する応札倍率は5.28倍と前回とほぼ同水準、小さければ好調な入札を示すテールは3厘と前回の半分に縮小
岡三証の鈴木氏
2年債入札は年度末とあってやや警戒感もあったが、円高・株安など外部環境の追い風もあり、無難に消化された
備考:過去の2年債入札の結果一覧

背景
日経平均株価は前日比1.6%安の2万1033円76銭で終了。円相場は午後に1ドル=110円ちょうど近くまで上昇
メイ英首相、離脱案支持得れば退陣−代案模索も続き打開見通せず
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.180% -0.195% -0.095% 0.325% 0.495% 0.550%
前日比 -1.0bp -1.5bp -2.5bp -3.5bp -3.5bp -4.5bp
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-27/PP0D6U6S972801


 


クラリダFRB副議長:政策当局者、世界的なリスクを注視する必要
Christopher Condon、Piotr Skolimowski
2019年3月29日 0:49 JST
米金融市場と経済は世界動向と密接につながっている
英EU離脱、成長減速、貿易懸念−辛抱強さを促す
米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長は、国際的な経済のリスクが浮上しつつあり、米金融当局は米経済見通しへの意味合いを見極めようと努めるため、政策の現状維持を続けるだろうと述べた。

  クラリダ副議長は28日、パリで講演。原稿によると、「米政策当局者がこうしたリスクを無視することはほぼあり得ない」と発言。「こうしたリスクが存在し、インフレ圧力は抑制されているため、われわれは辛抱強く、かつデータ次第の姿勢を取ることが可能だ。米政策金利にどういった調整が必要となり得るのか、将来の会合で検証する」と話した。

  フランス銀行(中央銀行)などが主催したシンポジウムで、クラリダ氏の発言は世界的な懸念に焦点を絞った内容となった。同氏は金融市場が注視している脅威として「英国の欧州連合(EU)離脱、世界経済成長見通しの急減速、貿易摩擦」などを挙げた。

  クラリダ氏は2011−13年のユーロ圏の景気減速や15、16年の中国経済低迷の際に、米国への影響を和らげるため、米金融当局は緩和策を講じたと説明。「こうした最近の出来事が伝えるメッセージは、中銀による時宜を得た政策調整が重要ということだけではない」とし、「世界金融危機以降に得られた金融機関の強い回復力も重要ということだ」と語った。

原題:Fed’s Clarida Says Officials Must Closely Watch Global Risks(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-28/PP2Y9ESYF01S01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/905.html

[経世済民131] リラ求めトルコ資産投げ売り−当局がスワップレート急騰招く トルコ・リラ、下げ続く−現地企業や個人がドル買い 
リラ求めトルコ資産投げ売り−当局がスワップレート急騰招く
Constantine Courcoulas、Cagan Koc
2019年3月27日 22:31 JST 更新日時 2019年3月28日 12:15 JST
• 外国勢によるリラ空売りを防ぐため流動性提供しないよう政府が圧力
• 「この市場を21年間見ているが、こんなことは初めて」−リマー氏

An illuminated advertising board displaying the Turkish national flag stands in the terminal during the official opening ceremony for the new Istanbul Airport in Istanbul, Turkey
Photographer: Kostas Tsironis/Bloomberg
投資家がトルコの債券と株式の投げ売りに動いた。地方選挙を控え通貨リラの下落を阻止するために当局が演出したリラ不足が原因だ。
  27日の取引で外国人投資家がオフショアスワップ市場でリラを借り入れる翌日物レートは一時1000%を超えた。外国勢によるリラ空売りを防ぐため国内銀行が流動性を提供しないよう政府が圧力をかけているためだ。
  このためリラを買い戻してポジションを解消したい投資家は債券や株式などのトルコ資産を売って現金を確保するしかなくなった。2年物トルコ国債の利回りは20%を上回り、株式相場は昨年7月以来で最大の下落となった。
  インベステック銀行のトレーダー、ジュリアン・リマー氏(ロンドン在勤)は「この市場を21年間見ているが、こんなことは初めてだ。長期的な実用主義を短期の政治的目的のために犠牲にしている。このような戦術はリラが投資可能な資産だということに疑問を生じさせる」と話した。

原題:Investors Scramble for Liras as Turkish Swap Rates Touch 1,000%(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-27/PP0WR16KLVR401?srnd=cojp-v2


 

トルコ・リラ、下げ続く−現地企業や個人がドル買い
Constantine Courcoulas、Cagan Koc
2019年3月28日 17:57 JST
国内銀行への制限措置は一時的と政府当局者
イスタンブール時間午前9時47分現在は2.4%安
トルコの通貨リラは28日の取引で下落している。地方選挙を控えリラの空売りを阻止するために当局が流動性を制限したが、リラの値下がりが続いている。

  27日には外国人投資家がオフショアスワップ市場でリラを借り入れる翌日物レートが一時1000%を超えた。外国勢によるリラ空売りを防ぐため国内銀行が流動性を提供しないよう政府が圧力をかけているためだ。

  政府当局者はこの措置について一時的だと述べているが、27日はリラを買い戻してポジションを解消したい投資家が現金を確保するため債券や株式などのトルコ資産を売り、2年物トルコ国債の利回りは20%を突破、株式相場は昨年7月以来で最大の下落となった。

  リラは25、26両日は上昇したが、27日は下落。国内企業や個人がドルを買ったとトレーダー2人が匿名を条件に述べた。28日午前のイスタンブール市場でも続落し、午前9時47分現在は2.4%安の1ドル=5.4584リラとなっている。 

Overnight lira rate surges as traders rush to close out carry trades
原題:Lira Resumes Retreat Even as Turkish Swap Rates Surpass 1,000%(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-28/PP2TLV6K50XY01
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/717.html

[経世済民131] モナコを見よ、レーニンも驚く矛盾浮き彫り 米、対中関税一部撤回の可能性 景気悪化なら追加対策も、諮問会議、米中リスク警戒

モナコを見よ、レーニンも驚く矛盾浮き彫り

コラムニスト:Lionel Laurent

2019年3月28日 13:21 JST
華為は禁止ではなく監視すべきだとする欧州の立ち位置は曖昧
中国はここ10年間、欧州に巨額の資金を投入した
中国を巡る欧州の混乱を理解するには、モナコを見ればよい。カジノで有名なタックスヘイブン(租税回避地)である公国が共産主義国家である中国に協力する。レーニンが生きていたらあり得ないとあわてふためくような連携だ。面積わずか2平方キロメートルの小国が、中国の通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の第5世代(5G)移動通信ネットワークの実験場になる。

  「スマートネーション」化を目指すこうしたモナコの試みを、中国が喜ばないはずはない。欧州の中心にショールームを確保できるのだ。中国の習近平国家主席は3月の欧州歴訪で、イタリアとフランスに加え、モナコも訪れた。

Intellectual Property
Huawei and Siemens have been the Top 2 sources of Europe patent applications


Source: European Patent Office

  モナコで習主席は温かく迎えられた。その歓迎ぶりは、欧州中核国の一角が示している対応とは対照的だ。華為と同社のセキュリティーの中国政府とのつながりを欧州連合(EU)は「心配」すべきだと欧州委員会は指摘。5Gのサイバーセキュリティーリスクに関する情報の交換をEU加盟国がするよう欧州委が望んでいるとブルームバーグ・ニュースは伝えた。

  欧州議会も、通信機器に仕込まれ得るデータの抜け穴「バックドア」が慎重な扱いを要するネットワークに組み入れられる可能性について「深い懸念」を表明。フランスの国民議会(下院)は4月、「反ファーウェイ」法案とも称される通信機器検査に関する提案を検討する。ドイツはもっと控えめな対応だが、安全保障について懸念していることに変わりはない。

  欧州の政治家が警戒感を強める中で、通信各社も華為との関係の検証を進めるが、一貫性はない。英BTグループが一部の華為製品を排除する方針を示したことに続き、仏オランジュは5Gに華為の技術を使わないことを明らかにした。ただ、欧州における華為を巡る矛盾を端的に示しているのが通信業界の大物で資産家のグザビエ・ニール氏だ。同氏がフランスで展開するモバイルサービス、フリーは他の仏通信事業者に倣い華為と距離を置き続けているが、同氏が過半数を所有するモナコテレコムはモナコでの5G通信網で華為に協力する。

  華為は禁止ではなく監視すべきだとする欧州の立ち位置も曖昧だ。こうした妥協はEUのモバイルネットワークが中国のテクノロジーに依存していることを認めている。中国への対応は欧州内でばらばらで、中国政府がそうした欧州各国に触手を伸ばし続けるだろうと中国懐疑派が嘆くのもうなずける。極めて重要なインフラへのアクセスというだけにとどまらず、地政学的な影響力を経済力で買う中国への疑義を呈しているのが華為を巡る物語だ。

  中国はここ10年間、欧州に巨額の資金を投入。カーネギー国際平和財団のフィリップ・ルコール氏によれば、例えば中国の対ポルトガル直接投資は2010−16年にゼロから57億ユーロ(約7070億円)にまで達した。イタリアは中国の広域経済圏構想「一帯一路」への協力で主要7カ国(G7)メンバーとして初めて覚書に調印し、中国は大きな勝利を得た。中国はまたハンガリーなどEUに加盟する東欧諸国との関係構築も進めている。

Chinese Networks
Cumulated foreign investment from China by country, 2000-2017


Source: Rhodium Group/UC Louvain

  ただ欧州が中国に絡みこれまでよりうまい対応をしつつある兆しもある。EUは外国からの投資の審査で新たな枠組みをまとめた。米国ほど厳しくはないが、歓迎すべき一歩だ。

  イタリアのような国を中国側につかせないようにするための最善策は、中国と同じような寛大な資金支援だろう。欧州投資銀行はすでに欧州発の5G展開に向けフィンランドのノキアに融資を提供。欧州イノベーション会議(EIC)として知られる域内のスタートアップ企業を手助けする試験的プログラムも導入した。

  理想を言えば、EUも一帯一路に匹敵するような野心的な取り組みを加盟国に示すことだ。もしそのようなことがあったとしても、中国政府は常にモナコを取り込むことはできるだろう。

  (ライオネル・ローラン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、ブリュッセルを中心に取材しています。以前はロイター通信やフォーブス誌で働いていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Xi Jinping and Huawei Can Always Have Monaco: Lionel Laurent(抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-28/PP0SF66S972A01?srnd=cojp-v2


 
ワールド2019年3月29日 / 01:11 / 2時間前更新
米、対中関税一部撤回の可能性=カドローNEC委員長
Reuters Staff
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[ワシントン 28日 ロイター] - カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は28日、中国製品に対する一部の関税を撤回する可能性があると述べた。ただ、その他の関税措置は米中通商合意の施行メカニズムの一部として温存されるとした。

米輸出入銀行の年次総会で記者団に対し述べた。

米中は現在、通商協議を進めており、中国商務省は28日、劉鶴副首相が同日、米国のムニューシン財務長官およびライトハイザー通商代表部(USTR)代表と通商協議を行うと発表した。
https://jp.reuters.com/article/us-china-tariff-kudlow-idJPKCN1R921Y


 


景気悪化なら追加対策も、諮問会議の民間議員 米中リスク警戒
安倍晋三首相

2019年3月28日 ロイター

3月27日、経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相・写真)の民間議員は、米中貿易摩擦の影響などが好調な内需を下押ししかねないとし、機動的なマクロ経済政策を実行するよう訴えた。1月に東京で撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)
[東京 28日 ロイター] - 経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)の民間議員は27日、米中貿易摩擦の影響などが好調な内需を下押ししかねないとし、機動的なマクロ経済政策を実行するよう訴えた。追加の経済対策を念頭に置いた主張とみられる。政府内には「前のめり」の財政拡大に警戒する声がある一方、補正予算などの編成ではなく、消費増税の延期を期待する声も与党内にはあり、逆風が吹き始めた世界経済の動向次第で、大きく状況が変化しそうだ。

 民間議員が提出した「国際経済の変動に強い経済構造の構築に向けて」と題した資料では、英国の欧州連合(EU)からの離脱を巡る不透明感に加え、米中の貿易協議がなお解決しない現状に危機感を示した。

 具体的には、海外発の景況感の急変には注意が必要と警鐘を鳴らし、さらにリスクが顕在化する場合には「賃金上昇・可処分所得の拡大、設備投資の増加につながる機動的なマクロ経済政策を躊躇(ちゅうちょ)なく実施すべき」と訴えた。

 内閣府幹部は「追加対策などの具体的な言及はなかった」とするが、追加の財政出動の必要性に言及したとみられる。

 民間議員が財政出動を念頭に置いた提言を示したのは、今回が初めてではない。1月30日の諮問会議でも「中長期の経済財政運営に向けて」と題した資料の中で、「柔軟で機動的な対処が求められる」と明記した。

 ただ、前回より警戒の度合いが強まっているのは明らかで、市場では「景気の落ち込み次第で、10月の消費増税前に追加の経済対策を打つのではないか」(国内大手銀関係者)との見方が出ている。

 安倍晋三首相自らが「最大の経済対策」と位置付けた2019年度予算が27日に成立した同じ日に、官邸の意向を「先取り」するとの傾向が政府・与党関係者から指摘されている民間議員が提言した内容について、無視できないとの見方が永田町で広がっている。

 ただ、政府内には「せっかく増税前後の平準化対策を打ったのに、追加対策で景気の『山』を作っても仕方ない」(政府関係者)と、一段の財政拡大の動きをけん制する声もある。

 28日の日経平均は前日比300円を超える下落となり、2万1000円をめぐる攻防となっている。与党内には、安倍首相の決断次第では、10月の消費増税引き上げの延期もあるのではないかという思惑がくすぶっている。

 予算案の効果を見守るか、補正などの追加財政措置を早期に取るのか、消費増税自体をやめるのか、その帰すうは世界経済の動向と安倍首相の判断にかかっている。

(マクロ経済取材チーム 編集:田巻一彦)
https://diamond.jp/articles/-/198267
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/718.html

[経世済民131] 日本は世界と比べて「スーパーリッチ」が少ない理由 日本の労働生産性が50年近く最下位の理由 日本株大幅続落、欧不安と金利
2019年3月28日 加藤 出 :東短リサーチ代表取締役社長
日本は世界と比べて「スーパーリッチ」が少ない理由
富裕層
シンガポールの超富裕層の日常を描いた映画「クレイジー・リッチ!」の世界は、ビリオネアが35人しかいない日本にとってはまさに「クレイジー」だろう Photo:Everett Collection/アフロ
「そこそこの富裕層」は、海外諸国と比べると日本にはかなり多く存在するが、「スーパーリッチ」は非常に少ない。不動産コンサルティング会社の英ナイトフランクが世界の富裕層の状況を分析した「ウェルス・レポート2019年」を読むと、そんな構図が見えてくる。

 保有資産100万ドル以上の人は日本に230万人いるという。これを国際連合集計の人口で割ると、100万人当たり1.9万人になる。他国は、米国1.8万人、カナダ1.2万人、英国1.3万人、ドイツ1.9万人、フランス0.9万人、台湾0.6万人、韓国0.4万人、中国0.1万人だ。

 豊かな小国(スイス3.9万人、スウェーデン2.1万人、シンガポール3.0万人)にはかなわないが、人口2000万人以上の国で見れば日本はトップに近い。

 しかし、資産10億ドル以上のビリオネアとなると、日本はわずか35人だ。100万人当たり0.3人である。主な先進国の中では異様に少ない。米1.8人、カナダ1.2人、独1.5人、英0.8人、仏0.6人、台湾1.5人、韓国0.9人である(米誌「フォーブス」の最新ビリオネア調査もおおよそ同様の数値だった)。

 昨年世界的に大ヒットした映画「クレイジー・リッチ!」は、シンガポールの超富裕層の日常を描いていた。同国のビリオネアは100万人当たり5.7人と日本の21倍だ。中国は0.3人で日本と同水準である。しかし、同国の1人当たり名目国内総生産(GDP)は日本の4分の1以下だから、すさまじい格差社会といえる。

 もっとも、日本の相対的貧困率は先進国の中で高めである。それを忘れてはいけないが、日本に留学経験がある中国人の友人は以前「私は日本に住んだときに初めて社会主義の心を学びました」と真顔で語っていた。前述のように日本に「スーパーリッチ」が少ないことは紛れもない事実だ。これをどう考えたらいいのだろうか?

 資産分布ピラミッドの頂点が低い、または頂点付近の面積が小さいことは、海外諸国に比べれば不平等の度合いが小さい、穏やかな社会といえるだろう。しかし、IT時代の新たな“大富豪”がなかなか増えてこない社会という見方も可能だ。高齢化に伴って活力が弱まっているのか、あるいは“出る杭”は打たれる風潮が相変わらず強いためだろうか?

 税制による再分配が強過ぎると思う人もいるだろう。しかし、高福祉国家故に重税で資産形成が難しそうに思えるスウェーデンですら、ビリオネアは100万人当たり3.2人と日本の12倍もいる。

 他の日本の特徴として、「そこそこの富裕層」は大勢いるものの、彼らの消費は海外に比べて質素な点がある。例えば、イオンの都内店舗へセールの日(お客さま感謝デー)に行くと、駐車場にはベンツ、BMW、アウディ、ポルシェ、ジャガーがずらりと並んでいる。持ち主たちは購入品目によっては高級店に行くのだろうが、日常は合理的な判断で節約している。

 これは、日本では富裕層間の「格差」が小さいことが影響しているように思われる。米国では「かなりの富裕層」や「スーパーリッチ」の支出を「そこそこの富裕層」が目の当たりにすると、彼らは背伸びをして見えを張りたがる傾向が顕著に存在する。

 そんな必要がない「足るを知る」日本は素晴らしいともいえるが、「そこそこの富裕層」が世界有数の多さの割に消費が伸びないという悩ましさにもつながっている。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
https://diamond.jp/articles/-/198112

 

2019年3月28日 橘玲 :作家
日本の労働生産性が50年近くも主要先進7カ国のなかで最下位である理由とは?
[橘玲の日々刻々]
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 日本経済の大きな謎は、ひとびとが過労死するほど必死に働いているにもかかわらず、労働生産性が際立って低いことだ。公益財団法人日本生産性本部の報告書『労働生産性の国際比較 2017 年版』では、 「2016 年の日本の時間当たり労働生産性(就業 1 時間当たり付加価値)は、46.0 ドル(4,694 円/購買力平価(PPP)換算)。米国の 3 分の 2 の水準にあたり、順位はOECD 加盟 35 カ国中 20 位だった。名目ベースでみると、前年度から 1.2%上昇したものの、順位に変動はなかった。主要先進 7 カ国でみると、データが取得可能な 1970 年以降、最下位の状況が続いている」
とされている。

 森川正之氏(経済産業研究所副所長)は『生産性 誤解と真実』(日本経済新聞出版社)で、「日本経済はなぜこんなに生産性が低いのか」についてのさまざまな通説・俗説を実証的に検証している。

 ちなみに私は、「日本は先進国のふりをした前近代的な身分制社会」で、それが働き方の歪み=生産性の低さにつながっていると考えており、これについては新刊の『働き方2.0vs4.0』(PHP)に書いた。

労働生産性を上げるには「すくない人数(労働時間)でたくさん稼げばいい」
 そもそも「生産性」とは何だろうか? これは一般に「全要素生産性(TFP//total factor productivity)のことで、「労働生産性と資本生産性の加重平均」と定義される。

「労働生産性」は、労働者1人1時間当たりどれだけの付加価値が生み出されたかの指標で、「付加価値」は、経済全体の場合はGDP、個々の企業では(ざっくりいえば)粗利にあたる。「労働生産性=付加価値/労働投入量」というわけだ。

 この単純な割り算から、労働生産性を高めるには2つの方法があることがわかる。分母の労働投入量を減らすか、分子の付加価値を増やすかだ。要するに、「すくない人数(労働時間)でたくさん稼げばいい」という話だ。

 当然のことながら、「(サービス)残業してもぜんぜん利益が出ない」なら労働生産性は低くなる。日本企業の多くは、この情けない状態になっている。

 それに対して「資本生産性」は、「機械設備、店舗など資本ストック1単位当たりの付加価値額」のことで、資本(機械や土地など)を使ってどれだけ効率よくお金を稼いだかの指標だ。

 農業でよく使われる「単収」(農地1ヘクタール当たりの収穫量)も一種の資本生産性で、日本の農業は資本生産性(単収)が高くても労働生産性は低く、アメリカの農業は資本生産性(単収)が低く労働生産性が高い。その結果、農業の全要素生産性(TFP)は日本よりアメリカの方がずっと高くなる。これは日本の農地が細切れで非効率なのに対し、アメリカの大規模農業が効率的だからだ。

 一般に、国全体のTFPのうち約3分の2が労働生産性、約3分の1が資本生産性の寄与度とされている。これが、「生産性」を語るときに労働と資本の両方を勘案しなければならない理由だ。

 国のTFP上昇率は、次の式で導き出される。

TFP上昇率=実質GDP成長率‐(労働投入時間(労働者数×平均労働時間)の増加率×労働の寄与度)‐(資本ストックの増加率×資本の寄与度)

 ここからわかるように、TFPの上昇は、労働と資本の増加率で説明できる要素を除いたあとの「残差」だ。この「説明できないもの」が生産性で、技術進歩(イノベーション)の指標ともみなされる。

 経済成長に関する実証的事実を包括的に整理した研究によれば、第二次世界大戦後の米国の1人当たり経済成長率の8割は生産性上昇によって説明できる。また、各国間の所得水準のちがいの半分以上は生産性格差によって生じている。

 生産性と賃金のあいだには頑健かつ強い正の相関関係がある。生産性の高い国ほど国民の平均賃金が高いし、生産性の高い企業に勤める従業員ほど賃金が高い。中長期的にはTFP上昇率と労働生産性上昇率との間には比較的高い相関関係があり、ひとびとの関心も「どうしたら賃金が上がるのか」だろうから、労働生産性上昇率を生産性の代理指標とすることには一定の妥当性がある。

 生産性上昇率を大幅に加速できれば、間違いなく中長期的な経済成長率は高くなる。1人当たりGDPも増えて国民はゆたかになり、財政・社会保障制度の持続可能性が高まり、少子高齢化=人口減へのバッファーにもなるだろう。こうして安倍政権は、「生産性革命」を掲げることになった。

「賃上げすれば生産性が高まる」とはいえない
 労働生産性についての典型的な誤解に、「賃金を抑制(賃下げ)すれば利益が増えて生産性が高まる」がある。

 だが、生産性の分子にあたる付加価値には、企業の取り分である利益や利払い費だけでなく、労働者の取り分である労働費用(給与・賞与・社会保険など)が含まれている。単に賃下げしたからといって、分母にあたる労働投入量が変わらなければ、利益が労働者から会社(株主)に移転するだけで生産性は上がらない。

 同様に、国全体の生産性を計算するときの分子となるGDPには雇用者報酬・営業余剰が含まれている。「日本の労働生産性はアメリカの3分の2」との指摘に対して、「アメリカでは労働者が搾取されているからだ」という反論は成立しない。

 生産性が上がれば従業員の時間当たり平均賃金は高くなるが、この因果関係を逆にして「賃上げすれば生産性が高まる」とはいえない。賃金の引き上げにともなって企業収益が減少すれば付加価値は増えず、利益が会社から労働者に移転するだけでやはり生産性は変わらないからだ。

「日本は商品やサービスの価格が安すぎる」との意見もあるが、これは名目と実質を混同した議論だとされる。

 生産性上昇率は価格変動を補正した実質で評価されるので、財・サービスの生産量や質が変わらなければ、価格を引き上げても生産性は上昇しない。インフレで物価が2倍になっても国全体の生産性が2倍になるわけではない。

「価格が高ければ生産性が上がる」なら、かつてのソ連や中国のように国営企業が市場を独占して高い価格を設定すればいい。その効果は破滅的で、市場競争のない経済がどうなるかは現代史が証明している。

「日本の生産性が低いことへの反論」に反論する
 生産性の国際比較では、日本の製造業は主要国並みでもサービス業の生産性が低い。ここから、「日本人はサービスはタダだと思っている」と、「日本と(たとえば)アメリカではサービスの質がちがう」という主張が出てくる。

 そこで森川氏は、「全国物価統計調査」(総務省)を使って、小売店の業態がちがっても商品価格が同じかどうかを調べた。サービスがほんとうにタダなら、丁寧なサービスをする百貨店とサービスのない量販店で価格差はないはずだ。

 だが実際には、調査対象279品目の平均値は百貨店(+28%)、コンビニエンスストア(+6%)、一般小売店(+5%)、スーパー(−6%)、ドラッグストア(−10%)、量販店(−12%)の順で価格が異なっていた。メーカー、ブランド、商品スペックがまったく同一の「特定商標品目」141品目でも、コンビニエンスストア(+8%)とドラッグストア(−7%)の販売価格には平均で15%強の差があった。

 ここから、日本の消費者も、利便性、品揃え、接客といった小売サービスの質に対して一定の価格を支払っていることがわかる。「サービスに対してお金を払ってもらえない」という怨嗟の声は、「消費者が希望していない過剰なサービスを高いコストをかけて提供しても、然るべき価格設定ができないのは当然である」と森川氏に一蹴されている。

「宅配便が何度でも再配達する日本と、留守なら雨が降っていても玄関先に置いておくだけのアメリカ」というよく使われる例えは、「サービス業の生産性の国際比較は質を考慮していない」との批判を説得力のあるものにしている。

 そこで日本生産性本部は、20種類のサービスを対象に「同一サービス分野における品質水準の違いに関する日米比較調査」(2009年)を実施し、サービスの質にどれほどのちがいがあるかを検証した。

 日本と米国の両方で生活経験を持つ日本人と米国人に対して、「日本のサービスの質が米国に比べて何%程度高い/低いと思うか」を訊ねたところ、地下鉄、タクシー、コンビニエンスストアなど一部でサービスの質に大きなちがい(日本の方が質が高い)があったものの、全サービスの平均で日米の質の差は5〜10%ほどという結果になった。

「サービス品質の日米比較」(2017)はこの調査を拡張・発展させたもので、質の高いサービスに対する支払い意思額を日本人・米国人に質問したが、ここでもやはり平均的には日本のサービスの質が5〜10%高いという結果が出た。

 この調査から、単純な生産性比較は日本の生産性水準を過小評価しており、「日米でサービスの質がちがう」というのは俗説とはいえないことがわかった。ただしその効果は、「日本の労働生産性はアメリカの3分の2」という大きな差を説明するにはまったく不十分だ。

 労働生産性の分子にあたるGDPが(物価の差を調整する)購買力平価(PPP)でドル換算されることから、「日本の労働生産性が低いのは円が過小評価されているからだ」との主張もよく聞かれる。だが森川氏は、「日本の物価上昇率が低かったため、90年代以降PPPは一貫して円高方向に動いてきており、ドル換算した日本のGDP水準を高める方向に動いている」としてこの批判を退けている(2019年3月5日日経新聞「経済教室」)。

「すぐれた経営をしている会社は生産性が高く、ワークライフバランスにも配慮している」
 次に、安倍政権が進めている「働き方改革」が「生産性革命」につながるかの検証を見てみよう。

 同一労働同一賃金によって非正規の待遇を改善すれば生産性は上がるのだろうか。

 経済合理性の観点からは、公正な賃金とは労働者の生産性に見合っていることで、同じ生産性(equally productive)にもかかわらず異なる扱いを受けている状況が「差別」と定義される。

 そこで森川氏は、パートタイム労働者の生産性と賃金が均衡しているかどうかを日本企業のデータを用いて分析し、「パートタイム労働者の賃金水準は、平均的に見ると生産性への貢献とおおむね釣り合っている」との結果が出た。「企業がパートタイム労働者全体に対して差別的な扱いを行なっているわけではなく、市場競争の下で合理的な賃金設定を行なっている」ということだ。

 これを私なりに解釈すると、日本企業はパートタイム労働者を生産性の低い仕事にしか活用できておらず、(森川氏は言及していないが)非正規と同じような仕事をしている正社員の賃金が高すぎることを示しているのだろう。

「ワークライフバランスが高い企業は生産性が高い」というのは間違いではないが、ここから「働き方改革で生産性が高まる」とはいえない。ワークライフバランスと生産性は疑似相関で、「経営の質」という要因を考慮に入れると相関関係は消失する。かんたにいえば、「すぐれた経営をしている会社は生産性が高く、ワークライフバランスにも配慮している」ということだ。

「ダイバーシティ(多様性)が生産性を向上させる」も実証的には疑わしい。

 ベルギー企業を対象とした定量的な研究では、企業の生産性・賃金に対して教育の多様性はプラス、年齢の多様性はマイナスとなった。性別の多様性の効果は企業の技術/知識環境で変わり、ハイテク産業/知識集約型産業ではプラス、伝統的な産業ではマイナスになる。国籍の多様性も、ハイテク産業では生産性に強いプラスの効果を持つのに対して、ローテク産業ではそうした効果は見られない。これは、労働者間のコミュニケーションにコストがかかるからのようだ。多様性は、企業および労働者にとって常に良いこととは限らない。

 女性取締役や社外取締役を増やすダイバーシティの効果も実証的に評価されている。

 ノルウェーをはじめとして、スペイン、イタリア、フィンランド、フランス、オランダなどの欧州諸国で取締役会に一定の女性比率を義務づけるクォータ制が導入された。

 ノルウェーでは上場企業に対して女性取締役の割合を40%にするよう法的に義務付けられたが、その効果を分析した研究は、「この規制は企業価値の低下や営業成績の悪化とともに、法的規制から外れる非上場企業への移行を大量にもたらした」と報告している。ただし、FTSE100の大企業に対して女性取締役比率25%という目標を課したイギリスを対象とした研究では、「取締役会の多様性は企業業績と関係ない」とされている。

 社外取締役については、S&P1500の米国企業を対象にした分析で、「取締役を務める企業数が少ないほどROA(総資産利益率)が高くなる」という結果になった。「複数の会社を兼務する社外取締役は業績にはまったく貢献しない」という当たり前の話だ。

 こうした実証研究をまとめると、「上場企業における社外取締役の増員や取締役会の多様化が普遍的に企業業績に対するプラスの効果を持つという証拠は乏しく、業種や企業の置かれた環境(市場特性など)によって利害得失は異なる」ということのようだ。

生産性を上げることと、格差を縮小し平等な社会を実現することのあいだには深刻なトレードオフがある
 拡大する経済格差の処方箋として最低賃金引き上げを唱えるひとたちがいる。だがリベラルに好まれるこの政策は、高所得の配偶者を持つパートタイムの女性など貧困層以外にも幅広く恩恵が及ぶため、貧困対策としては効果が低い(真の貧困者がターゲットにされない)というのが経済学者のコンセンサスだ。

 ただし、最低賃金引き上げへの批判派がいうように、国家権力による強制的な賃上げが雇用の減少をもたらすかどうかはいまだ合意が成立していない。賃上げのコストが企業収益を低下させたり、価格引き上げを通じて消費者に転嫁されるなど、労働者以外が支払うことも考えられるからだ。企業負担による労働者の医療保険が削減された事例があるように、雇用以外の労働者のコストが上昇することも考えられる。

「最低賃金を引き上げれば非効率な企業が市場から退出する」との主張もあるが、賃上げが「ブラック企業」の退出を促し、産業全体の生産性を高める効果を持つかどうかは、実証的なエイビデンスは十分ではなく、現時点では確定的なことはいえない。最低賃金を引き上げたイギリスの実証研究では、高い賃金によって新規参入が減少したとされる。

 先進国では、企業が持つ技術知識ストックが2倍になると生産性が8%程度上昇する。ここから、生産性を引き上げるにはITに積極的に投資すればいいと思うかもしれないが、日本の研究開発支出対GDP比率(2016年)は3.42%で、G7諸国のなかでももっとも高い。日本経済の問題は投資額が少ないことではなく、投資の成果が出ないことだ。

 アベノミクスの「第一の矢」は日銀による積極的な金融緩和政策だが、低金利は市場の競争を緩和し、非効率な企業を存続させ、生産性の上昇を抑制する効果がある。日銀は日本経済の競争力強化を目指しているが、自らの政策が足を引っ張っている可能性がある。

 国家の生産性を高めるには、生産性の低い企業が市場から退出し、生産性の高い企業がシェアを拡大する必要がある。生産性の低い地域から生産性の高い地域に人口(労働力)が移動するのも同じことだ。中小企業支援や地域振興など政治的に好まれる政策は、日本全体の生産性を引き上げるうえではマイナスに働くことになる。

 森川氏が強調するように、生産性を上げることと、格差を縮小し平等な社会を実現することのあいだには深刻なトレードオフがある。

強い雇用保護が生産性に対してマイナスの影響を持つ
 日本の1人当たりGDPは1990年代から大きく低下したが、為替レートの変化による影響が大きいとしても、「(その理由は)基本的には「失われた20年」を通じた日本の生産性上昇率が他国に比べて低かったことによる」と森川氏は述べる。

 とはいえ、アメリカをはじめとする欧米諸国の生産性も世界金融危機以降低下しており、2009〜16年にかぎっていえば、日本の生産性上昇率はG7諸国のなかでもっとも高い。

 その一方で、アベノミクスで潜在成長率は上昇しているが、意外にもTFP上昇率は低下傾向にある。金融(リフレ政策)・財政政策によって設備投資(資本ストック)や就業者数(労働投入量)は伸びているものの、それだけでは生産性は思ったほど上がっていないのだ。

「長期停滞論」につていのアメリカ経済の実証分析では、失業率が世界経済危機前の正常な水準に戻ったにもかかわらず経済成長率が低い理由は、@TFP(全要素生産性)上昇率の低さ、A労働参加率の低下という2つの要因でほぼ完全に説明できる。TFP上昇率が鈍化したのは、1990年代に生産性を加速したIT革命の効果が2000年代半ばには出尽くしたこと、教育水準の上昇による人的資本の質の改善がピークアウトしたことが主な理由だと考えられている。

 森川氏は「なぜ日本の生産性は低いのか、多くの研究はなされてきたが、日米の生産性格差を規定する唯一決定的な要因は見いだされていない」と述べている(前出「経済教室」)。だが、経済全体の生産性上昇が@個々の企業・事務所の生産性上昇、A参入・退出や企業の市場シェア変動といった新陳代謝の2つから生じることを考えれば、誰もが、日本経済にこうした市場競争を阻害する要因が深く組み込まれているのではないかと疑うだろう。

 多くの研究は、強い雇用保護が生産性に対してマイナスの影響を持つことを示している。裁判所の判例に基づく整理解雇規制の強化が、企業の生産性にマイナスの影響を持つことを示唆する分析もある。

 個人や集団(チーム)への成果に応じたボーナスなどのインセンティブ報酬は、一般に企業の生産性に対してプラスの効果を持っている。ただし、終身雇用を重視する伝統的な日本型雇用慣行を変えずに成果報酬を導入するだけでは生産性への効果は観察されない。

 アメリカでは、下位10%の質の低い上司を上位10%の上司に置き換えると、チーム全体の生産性が1割以上高くなるとの研究がある。従業員の仕事満足度が高い企業ほど生産性が高いこともわかっているが、会社への忠誠心や仕事へのやる気を示す「エンゲージメント指数」では、あらゆる調査で日本のサラリーマンは世界最低と評価されている(ロッシェル・カップ『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか』クロスメディア・パブリッシング)。

 政策の不確実性が生産性を引き下げるとの研究もある。日本企業が挙げる不確実性は、@社会保障制度、A政府の財政支出、B通商政策、C税制だが、最初の2つは先進国で突出した政府債務残高が原因で、これを解決するのは一朝一夕にはいかないだろう(そもそも解決できるかもわからない)。

 このように考えると、いまや「失われた30年」になりつつある日本経済低迷の元凶がどこにあるのか、おおよそ見えてくるのではないだろうか。

橘 玲(たちばな あきら)

橘玲のメルマガ 世の中の仕組みと人生のデザイン 配信中
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない?残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)。

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日本株は大幅続落、欧州経済不安と米金利低下ー内外需とも広く売り
河元伸吾
2019年3月28日 7:57 JST 更新日時 2019年3月28日 15:18 JST
• ユーロ圏の経済見通しリスクは景気下振れ方向ーECB総裁
• 米10年債利回りは6bp低下し2.37%、17年12月以来の低水準
28日の東京株式相場は大幅続落。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が景気下振れリスクを指摘したほか、米長期金利が低下し世界景気の減速が意識された。海外原油安から商社や石油関連が下げたほか、医薬品や陸運、輸送用機器など幅広く売られた。
• TOPIXの終値は前日比26.64ポイント(1.7%)安の1582.85
• 日経平均株価は同344円97銭(1.6%)安の2万1033円76銭
背景
• ドラギ総裁、下振れリスクを認識−ECBはマイナス金利について分析
• 米10年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し2.37%、2017年12月以来の低水準
  みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は「米国では連銀幹部らが利下げに言及、欧州も景気減速が加速しており、世界経済の不透明感からマーケットは政策を催促している」と話した。
  前日の米国株安に加えて、ドル・円相場が一時1ドル=110円06銭まで円高に振れたことから下げが大きくなった。大和証券の細井秀司シニアストラテジストは、「ドイツの金利低下に端を発して米国や日本だけでななく新興国も金利が低下している」ことに着目、景気減速への不安から「株を売っていったんキャッシュポジションに戻す動きが強まっている」と指摘した。

• 東証1部33業種は石油・石炭製品や卸売、医薬品、海運、証券・商品先物取引、陸運が下落率上位
• 空運は上昇
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/irC1GgCBdHyM/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/576x-1.png
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-27/PP1QDE6JTSEM01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/719.html

[経世済民131] 中古マンションを選ぶ際に 「築年数」の数字よりもっと重要なチェックポイントとは マンション価格はオリンピック後に下がる?
【第9回】 2019年3月28日 日下部 理絵 :マンション管理士
中古マンションを選ぶ際に
「築年数」の数字よりも
もっと重要なチェックポイントとは

今、中古マンションに熱い視線が注がれています。新築マンションの価格が高騰し過ぎて、手に届きにくくなっていることから、消費者の目がにわかに中古物件に向いているからです。1月16日に『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)を上梓した著者の日下部理絵さんは、これまでに1000棟以上の物件を見てきたマンション管理のプロフェッショナル。日下部さんいわく、中古マンションは「値下がりしにくい価値ある物件」を選ぶのが賢い選択とのこと。では、どんな物件を選ぶのがいいのか? そのポイントをわかりやすく解説します。


写真は本文とは関係ありません
築年数は気にする? 「築浅」は築何年までか?
 中古マンションの購入を検討する際、できれば築年数が浅い「築浅」がいいと思われるのではないでしょうか。

 ちなみに、築浅というと築何年ぐらいのマンションだと思いますか?

 実は、築浅や築古には、明確な定義はありません。

 広告会社や販売会社などのアンケート調査によると、おおよそ8割近くが「築5年前後までが築浅」という認識を持っているそうです。

 ただし、中古マンションの広告においては、築10年に近い物件でも築浅として表記されていることがあるので、注意が必要です。

 いっぽう新築の表記については、「築1年未満かつ未入居」という明確な基準があります。

 そのため、築1年未満でも人が一度入居した物件は、「築浅」という表記にかわります。

 本連載では、一般的に認識されている方が多い築5年までを築浅、それ以降を「まだまだ築浅」としています。

築年数は重要な判断材料になる?
 中古マンションを選ぶ際に「築年数」は重要な項目ですが、この数字よりも「築年数に対する状態」で判断すると良いでしょう。

 実際に築浅でも管理状況が悪く、築年数以上の劣化状態であれば、管理組合が機能していないということですから、今後の大きな不安材料になります。

 いっぽうで築年数が古くても、大規模修繕工事などでメンテナンスが行き届いており、室内もリフォームやリノベーションをしたばかりで、最新のシステムキッチンや浴室乾燥機があるなど新築同様の物件もあります。

 もし、不動産ポータルサイトや不動産会社の店舗で、希望する築年数で探しても条件にあう物件がない場合、耐震基準に不安がない範囲で築年数の範囲を広げてみましょう。

 なお、築年数に対する状態は、現地見学にいってはじめてわかること。

 見学時には、築年数に対して年数相応の状態なのか、それ以上に良い状態なのかという視点で判断しましょう。

日下部 理絵(くさかべ・りえ)
大学在学中の2001年に実施された第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。大学卒業後、マンション管理会社勤務を経て、マンションの総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」を設立。女性ならではの視点で、マンション管理組合の相談や顧問業務にあたる。また、数多くの調査を通じて、中古マンションの実態に精通する。
これまでに「東京都マンション管理アドバイザー」「東京都立城南職業能力開発センターマンション維持管理科 専任講師」「一般社団法人マンション管理員検定協会 理事長」「一般社団法人マンション建替支援機構 副理事長」などを歴任。
マンションやマンション管理に関して、セミナー講師やコーディネーター、テレビ・ラジオ番組などにも出演多数。また、マンション好きが高じて、個人投資家としても区分所有物件を都心部中心に複数保有している。
主な著書に、『マンション理事になったらまず読む本』(実業之日本社)、『マンション管理組合・管理会社 これからのマンション管理ガイド』(ぱる出版)、『マンションの設備・管理が一番わかる』(技術評論社)、『目指せ! マンション管理員』(住宅新報社)などがある。
https://diamond.jp/articles/-/198048


 


【第21回】 2019年3月28日 後藤一仁
マンション価格はオリンピック後に下がる?  ポイントは「建設会社」だ!
「もうマンションを買ってもいいかな。でも損はしたくないし、ローンも怖い」。
そんなあなたが買うべきは、「60m2前後」×「駅徒歩7分以内」×「2001年以降完成」のマンションしかありません。

本連載の書き手は、「不動産ひと筋30年! 12000人と面談し、成約件数は6000件以上」という圧倒的なキャリアを持つ後藤一仁氏。不動産仲介会社の“現役”社長です。「不動産を通じて、1人でも多くの人に幸せになってほしい」という願いが込められた『マンションを買うなら60m2にしなさい』の著者でもあります。「損をしない、戦略的なマンション選び」を語ってもらいます。


急落する可能性は低い! なぜか?
 「2020年のオリンピックが終了したら、マンション価格は下落するでしょうか?」とよく聞かれます。

 私は「急落する可能性は低い」と考えています。

 ポイントはマンションの建設会社です。オリンピックが終了したら、もうそれですべての工事が終了というわけではなく、既に仕事を数年先まで抱えているところも多くあります。

 建設作業員の人員不足による人件費の高止まりもおさまらないでしょう。また、建築費だけではなく土地価格も上昇しています(国土交通省発表の2018年公示地価では住宅・商業・工業の全用途(全国)で0.7%プラスと3年連続で上昇)。

 新築マンションの価格は土地価格、建築費、プロモーション費用、デベロッパーの利益などを積み上げた価格(積算価格)です。

 2020年の新築マンションは、「土地価格が高いときに仕入れ、建築費が高いときに建てられている」ので、オリンピックが終了したからといって、ただちに下がることは考えにくいのです。

中古マンションは?
 東京では、2020年にはJR高輪ゲートウェイ駅が開業し、東京メトロ日比谷線虎ノ門ヒルズ駅も暫定開業されます。

 それに続く駅周辺の大規模な再開発、リニア中央新幹線の開業、東京駅周辺や渋谷駅周辺などの再開発の完成はオリンピック後です。

 そう考えると、現在の政権や日銀の金融政策が続き、よほどの外的要因や大規模災害などがない限り、やはり価格は急には下がらないでしょう。

 一方、中古マンションはどうでしょうか。実需(投資用ではなく、自分が住む)の中古マンションの価格算出方法は、主に物件周辺の取引事例を参考にして導き出す取引事例価格(比準価格)です。

 オリンピックの終了により、開催が決定したことで生まれていた特需(五輪景気)がなくなるので、消費税引き上げの影響とあわせ、景気後退の可能性は否定できません。

 そうして経済が減退すると、中古マンションの価格は影響を受ける可能性があります。

後藤一仁(ごとう・かずひと)

株式会社フェスタコーポレーション代表取締役。不動産コンサルタント。
国土交通大臣登録証明事業・公認不動産コンサルティングマスター。宅地建物取引士。
1965年、神奈川県川崎市生まれ。1989年から30年以上、常に顧客と接する第一線での不動産実務全般に携わる。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、「誰もがわかりやすく安心して不動産取引ができる世の中」をつくるために株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。
首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸、賃貸経営サポートなど、今まで12000組以上の対面個別相談を行い、成約件数は6000件以上。徹底して顧客の立場に立った不動産購入・売却のガイド、コンサルティング・アドバイスを一般の個人・法人向けに、わかりやすく提供している。
親子3代にわたるクライアントや20年以上にも及ぶファンも多く、顧客層は一般人から著名人まで幅広い。2012年から7年連続で、『専門家プロファイル』の「建築・不動産」の年間アクセスランキングで全国1位をとり続ける(2012〜2018年)。
日々、実務を行いながら、執筆、セミナー講師、テレビ・ラジオへの出演・監修、雑誌・新聞等各メディアへの取材協力など、「不動産を通じて一人でも多くの人を幸せにする」ことをミッションに活動中。著書に『東京で家を買うなら』(自由国民社)がある。
https://diamond.jp/articles/-/197332
http://www.asyura2.com/19/hasan131/msg/721.html

[社会問題10] 私たちが公害の“加害者”にならないために必要なこと 道路公害に見る、市民に必要な環境への意識とは 
私たちが公害の“加害者”にならないために必要なこと
道路公害に見る、市民に必要な環境への意識とは
2019.3.28(木) 有井 太郎
道路を走る私たちも、公害の「加害者」になり得る。
 公害というと、「原因を発生させた企業」と「被害を受けた住民」など、加害者と被害者が対立する構造を思い浮かべやすい。しかし、公害の中にはこの対立の構図が必ずしも単純ないし明確ではないものもあるという。

前回の記事:「水俣病を止められなかった『企業城下町』の構造」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55263

「代表的な例が道路公害です。道路公害においては、ときに一般市民が被害側と加害側の両方になるケースも少なくありません。だからこそ、誰もが『自分も加害者になり得る』と心に留めることは、環境への配慮が求められる現代において重要です」

 こう指摘するのは、國學院大學法学部の廣瀬美佳(ひろせ・みか)教授。日本の公害史を取り上げてきた本連載の最終回では、道路公害を入口に、持続可能性が求められる未来へ向けて、私たちが取るべき姿勢を考える。

國學院大學法学部教授の廣瀬美佳(ひろせ・みか)氏。早稲田大学法学部卒業。國學院大學法科大学院教授を経て、同大學法学部教授。近年は過払金問題や医療における代諾の問題を中心に研究を進めている。主な業績には、「医療における代諾の観点からみた成年後見制度」(田山輝明編著『成年後見人の医療代諾権と法定代理権』三省堂)の執筆のほか、渡良瀬川沿岸鉱毒農作物被害事件の公害等調整委員会昭和49年5月11日調停や熊本水俣病に係る障害補償費不支給決定取消等請求事件の最高裁平成29年9月8日判決の評釈などを担当。
知らぬ間に、公害の「加害者」に加担している可能性も
――前回、水俣病を振り返った記事で、加害者と被害者が必ずしも明確な対立構造になるわけではなく、複合的に絡んだケースも多いと伺いました。住民が被害側と加害側の両方になる可能性もあるということですよね。

廣瀬美佳氏(以下、敬称略) はい。顕著な例が道路公害です。道路公害は、走行する車の排気ガスが原因となることが多数です。となると、住民は、排気ガスで汚染された空気を吸う「被害者」であると同時に、その道路を利用し車を運転することで、汚染に加担する「加害者」、あるいは「加害者に準じた立場」だとも言えます。“被害者と加害者の同一性”があるのです。

 廃棄物の問題に関しても同様です。処理の際に問題となる廃棄物は、元をたどると私たち一般市民の家庭から出たゴミかもしれません。また、生産の過程で大量の産業廃棄物が生み出される製品があったとしたら、その製品を使うことで、一般市民が問題を助長することにもなります。

 公害では、得てして被害者としての市民がクローズアップされがちですが、加害者にもなり得ますし、被害者と加害者の両方に関与している可能性さえあるのです。

――たとえば道路公害の裁判などで、実際に一般市民が加害者として責任を負ったケースはあるのでしょうか。

廣瀬 裁判で一般市民の責任まで問われたケースは見当たりません。ただ、裁判によって一般市民の“振る舞い”にも影響が及んだ事例はあります。つまり、この連載で述べてきた公害の「発生源対策」について、市民も関わった形です。

 代表例が、1996年から始まった「東京大気汚染訴訟」です。1996年〜2006年まで、東京在住でぜん息や気管支炎、肺気腫などにかかった患者やその遺族が訴えたもので、訴訟は6次にわたり、原告は633人にまで上りました。

 幹線道路などから出る排気ガスが発症の主要因という主旨であり、道路管理や排気ガスの規制を行うべき国、東京都、当時の首都高速道路公団、そして環境負荷が高いとされるディーゼル車を製造・販売している自動車メーカー7社が訴えられたのです。

 特徴的だったのは、自動車メーカーも訴えられたことでしょう。道路の管理責任を負う行政だけでなく、製造元のメーカーが訴えられたケースは、道路公害の中でも異例でした。

道路公害の発生源対策を実行するのは、他でもなく「市民」
――かなり大規模な訴訟だと思いますが、どのような結果となったのでしょうか。

廣瀬 6次の訴訟はそれぞれ原告が異なり、これらのうち判決が出たのは第1次訴訟のみです(東京地裁平成14年10月29日判決)。

 東京都における排気ガスの大気汚染は1960年代から問題になっていましたが、1970年代に入ると、全国規模での幹線道路の建設・開通に伴い、西淀川公害訴訟や川崎公害訴訟、尼崎公害訴訟、名古屋南部公害訴訟と、次々に道路公害に係る訴訟が提起され、各地裁で判決が出されるようになります。これら1つひとつの判決の詳細は細かく変わりますが、やがて自動車排気ガスによる健康被害に対する国や道路公団の責任が認められるようになっていきます。

 そして、この東京大気汚染訴訟でも国と東京都、公団に賠償を命じる判決が出ました。一方、自動車メーカーについては、最後までその責任が認められませんでした。

 ただし、裁判の規模が非常に大きく、長期化する可能性もあったため、最終的には2007年に被告と原告が「和解」に至ります。

 和解の内容として、国、東京都、公団、そしてメーカーが患者の医療費負担を拠出する「医療費助成制度」が創設されました。さらにメーカーは、解決一時金として12億円を負担しました。

 これらは「被害者の救済」ですが、ポイントにしたいのは和解条項として付加された環境対策、つまり「発生源対策」です。たとえば東京都は、植樹帯の整備や大気観測体制の強化などを行うこととしました。さらに、低公害車の普及促進にも力を入れることが決まりました。

 訴訟の中で一般市民が訴えられることはありませんでしたが、この発生源対策の話は、一般市民に関連してきます。

――どういったことでしょうか。

廣瀬 繰り返しますが、この訴訟の始まる前から、自動車による大気汚染の問題意識が非常に高まっていました。東京大気汚染訴訟は、その決定打になったといえます。

 大気汚染や渋滞による経済損失の解決策として、東京都は2000年頃から「ロードプライシング」を検討します。ロードプライシングとは、特定の道路や時間帯における自動車利用に対して、課金などを行うこと。それにより、交通量の抑制や分散を図るものです。渋滞(混雑)対策を目的として、海外で行われてきました。

 また、同じ意味で、車ではなく公共交通機関の利用促進も検討されました。

 こういった施策を考えるのは行政ですが、その実行者となるのは、一般市民です。普段使う道路を変えたり、車ではなく電車で移動したり。人々の生活につながってくるのです。

――つまり、発生源対策を担うのが一般市民になると。

廣瀬 はい。そしてもうひとつ、訴訟が盛り上がって以降、環境負荷の低い車が急速に発達します。「エコカー」という言葉が当たり前になり、電気自動車やハイブリッドが出てきました。これは先ほど述べた「低公害車の普及促進」にもつながりますが、当然ながらその車を使うのは一般市民です。被害者も一般市民なら、発生源対策を行うのも一般市民という構図になっています。

生活において、どこまで環境とのつながりを意識できるか
――お話を聞くと、発生源対策として一般市民がどんな手段で移動するかも重要ですし、さらには、低公害で環境に優しい車を購入するなど、消費者としての意識改革も必要になったわけですね。

廣瀬 そうですね。その点では、今や環境負荷の低い車を市場に出すのが当然の流れになっているわけで、良い方向に進んだと言えます。

――最近はサステナビリティ(持続可能性)が重視されるなど、環境配慮の意識が高まっています。実はその視点でも、このような公害の事例が重要になるのではないでしょうか。

廣瀬 そう言えるかもしれません。私たちは皆さまざまな顔を持っており、一見、環境破壊や公害の“加害者”とは無関係な立場にいると思っていても、実は消費者としてその製品を買ったり、使ったりする中で、公害や環境破壊に加担している可能性があるのです。

 だからこそ、環境や公害に強い意識を持つことが消費者に求められるでしょう。その重要性は、道路公害をはじめとした過去の事例からも学ぶことができます。

――日常的にそういった意識を持って生活し、製品を購入できるかということですね。

廣瀬 とはいえ、消費者の立場からすれば、どうしても環境負荷より利便性や価格を追求してしまうのではないでしょうか。あるいは、「環境に優しい」という要素と「便利」という要素を、まるで二項対立的に捉えてしまうケースも多いと思います。つまり、片方が高まればもう片方は下がる、両立はし得ないと。

――それはあると思います。何より、いくら環境意識が高まっているとはいえ、多くの消費者が「環境に優しい」という要素を重視して購買しているかは疑問です。

廣瀬 だとすると、環境への配慮が利益に結びつかないリスクが出てきますよね。企業としても営利を追求しなければいけませんから、いくら環境に優しくても利益が上がらなければ続けられません。

 しかし、必ずしも環境負荷と利便性、あるいは利益というものは対立するものではないはずです。それは先ほど話した低公害車の普及を見ても明らかでしょう。消費者もメーカーも、まずはその先入観から抜け出すべきではないでしょうか。

 企業としては、利便性がありつつ、公害や環境汚染に結びつかないものを開発する。私たち消費者は、そのような要素のある商品を“あえて”使うことが求められます。

 そして、そういった生活、消費をするためには、「誰もが発生源になり得る」ということを意識して過ごす必要があるでしょう。それを認識できるひとつの事例が、道路公害なのではないでしょうか。

――かしこまりました。5回の連載で日本の公害史を振り返りましたが、こういった過去の事例も、実は未来に生かせるものが非常に多いと感じました。

廣瀬 大切なのは“過去に学ぶ”ということです。もちろん、時代によって公害の内容や背景は変わりますが、よく見るとその構図や根本の原因は、どんな時代にも共通しているものがありますから。

 たとえば、実際に公害が発生してしまった時、危機が起きてしまった時にどのような姿勢で対応すべきかは、時代が違っても大きく変わらないのではないでしょうか。発生時点で目をつむり隠蔽すれば、それは瞬く間に広がって大損害となり、やがて自分に返ってきます。

 この連載の2回目で話した鉱害が良い例です。発生源対策を怠った足尾銅山と、当時の技術を結集して向き合った日立鉱山の対比。それは時代にかかわらず、すべての人々の学びとなるはずです。

 そういった過去を胸に刻み、過去から真摯に学ぶことが未来につながるはずです。それこそが、公害史を振り返る意味と言えるのではないでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55635
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/164.html

[国際25] 米軍に非協力、中国軍に協力するグーグルの大問題 米軍との共同開発を中止、中国には軍事転換可能なAI技術を供与 
米軍に非協力、中国軍に協力するグーグルの大問題
米軍との共同開発を中止、中国には軍事転換可能なAI技術を供与
2019.3.28(木) 渡部 悦和
グーグル従業員ら公開書簡、中国向け検閲版検索サービスの開発中止を要求
グーグル従業員ら公開書簡、中国向け検閲版検索サービスの開発中止を要求。写真は米グーグルが中国に進出していた当時の北京本社(2010年3月22日撮影、資料写真)。(c)AFP/LI XIN 〔AFPBB News〕

 グーグルが各方面から批判されている。

 欧州連合(EU)から独占禁止法違反を理由に約1900億円の制裁金を科せられたし、日本でもグーグルをはじめとするGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に対する規制が議論されている。

 また、グーグルは、ドナルド・トランプ大統領、米軍トップのジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長、パトリック・シャナハン米国防長官代行から次のように弁解の余地のない批判を受けている。

 「グーグルは中国軍に恩恵を与えている」

 「グーグルは米国の国防省には協力しないが、中国軍に直接的および間接的に協力している」

 中国の脅威にあまりにも鈍感なグーグルに対する彼らの批判は、現在進行中の米中ハイテク覇権争いが背景にある。

 グーグルに対する批判は、他人事ではなく、中国で活動する米国や日本のその他のハイテク企業に対する注意喚起でもある。 

ダンフォード統合参謀本部議長のグーグル批判
 米軍のトップであるダンフォード統合参謀本部議長は、3月17日の上院軍事委員会の公聴会で、「グ―グルの中国での企業活動は、間接的に中国人民解放軍に恩恵を与えている」と批判した。

 彼はさらに以下のように批判している。

 「産業界のパートナー企業が中国で間接的な利益、いや間接的ではなく、率直に言うと直接的な利益を人民解放軍に与えていることを知りながらも活動していることに、我々は大きな懸念を持って見てきた」

 「米国のハイテク企業が国防省に協力することに抵抗する一方で、中国のような地政学的な競争相手になぜ協力するのか」

 「中国では自由が制限され、企業の知的財産が盗まれることが分かっているのに、善良な米国側が中国でビジネス上の利益を得るために譲歩するというのは理解し難い」

 「中国はしばしば、民間技術を自らの軍事力を高めるために利用している。民間技術の軍事面への転用は直接的なパイプになっている」

 以上のようなダンフォード議長の発言の背景には、グーグルは中国にAIの研究拠点を設けたり、中国のネット通販企業の京東(JD.com)(京東は人民解放軍空軍に協力している)と提携しており、グーグルの革新的な技術が軍事分野に転用されるリスクに対する懸念がある。

グーグルのダブルスタンダード
 グーグルが批判される背景には同社の安全保障に対する甘い認識があり、米国と中国に対するダブルスタンダードがある。

 このグーグル批判は、「米中ハイテク覇権争い」に密接に関係していて、グーグルだけではなく、中国でビジネスを行う全ての西側企業にも当てはまるという視点が必要だろう。

 グーグルは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を経営理念とし、「邪悪になるな(Don’t be evil. )」を非公式な従業員行動基準にしていた。

 ところが最近では「正しいことをやろう(Do the right thing.)」を行動基準にしているとも言われている。

 この邪悪の中に軍事も入っていて、正しいことの中に「軍事に係らない」ことも入っているようだ。

 一方で、グーグルには中国の最先端技術を軍事に応用する戦略に対する認識の甘さがある。

 その結果、中国人民解放軍に対するグーグルの認識は甘い。AIなどの最先端技術は軍民両用技術であるが、人民解放軍はグーグルがオープンソースとして公開している「TensorFlow(テンソルフロー)」を使用している。

 このテンソルフローを使うと、誰でもAIを使ったアプリケーションが作れる。また、グーグルは、中国にAIの開発センターを開設し、軍と関係のある中国企業とも協業している。

●米国防省とのAI関連の研究「プロジェクト・メイブン」の契約を更新せず

 グーグルは2018年6月、2019年に期限を迎える米国防省との人工知能関連の研究「プロジェクト・メイブン」に関する契約を更新しないことを明らかにした。

 グーグルが参加していた「プロジェクト・メイブン」には、小型無人飛行機(ドローン)が集める大量の映像データの解析にAIを導入し、テロリストなどの目標選別能力を高める狙いがあったとみられている。

 このプロジェクトに対して、「邪悪になるな」という同社のモットーに反していると、多くの従業員が批判し、契約から手を引くことを決定した。

●米国防省のクラウド・コンピューティング契約の入札にも参加せず

 グーグルは2018年10月8日、米国防省の100億ドル(約1兆1100億円)相当のクラウド・コンピューティング事業の入札に参加しないことを決めた。

 このプロジェクトは、「JEDI」として知られ、国防省の大量のデータを民間のクラウドシステムに移管するもので、契約期間は最長10年に及ぶ大きなプロジェクトだ。

 グーグルが技術革新の最先端企業であることを踏まえると、国防省と契約しないことは極めて異例のことだ。

 ちなみに、マイクロソフトは、最近10年間で国防省と数百件の契約を結び、その中には約86億円の複数年にわたる米空軍との契約が含まれている。

 一方、グーグルは、中国向けに中国政府が許可した情報のみを表示する検索エンジン「ドラゴンフライ」の開発を進めているが、200人以上の社員が開発中止を求める公開書簡を2018年11月27日に公開している。

 ダンフォード議長は、「グーグルの社員がロシアあるいは中国の規範や基準が中心となる世界秩序を快いと感じるとは思わない」と批判している。

特殊な中国にグーグルの甘えは通用しない
 中国で活動をする国内外の企業にとって、中国は極めて特殊な国であることを認識しなければいけない。

 例えば、中国には国家情報法があり、軍民融合が重視されている。

 まず、2017年6月に施行された国家情報法は問題の多い法律で、その第7条には「いかなる組織および個人も、国家の情報活動に協力する義務を有する」と規定している。

 この規定は、すべての個人や企業が国家の命令に基づきスパイになることを求めるものであり、米国などでのファーウェイ排除の根拠となっている。

 なお、この国家情報法第7条は、中国人や中国企業のみならず、中国で事業を展開する外国人と外国企業にも適用されると解釈した方が無難である。

 次いで、習近平主席が主導する軍民融合は、「米国の軍産複合体をお手本として、人民解放軍と企業の人材や技術の交流により、軍民のデュアルユース技術の発展を促進し、経済建設と国防建設を両立させること」だ。

 習近平主席は、「軍民融合は、強い軍隊を建設するために不可欠である」と発言している。特に中国のハイテク民間企業は、この軍民融合に積極的に参画することが求められている。

●中国のAI企業は中国共産党にノーとは言えない

 中国においては共産党一党独裁であり、中国で活動する企業は共産党の指導にノーとは言えない。

 アイフライテック(iFlytek、科大訊飛)は、人工知能を活用した音声認識や自然言語処理で世界的に有名であるが、新疆ウイグル自治区における監視能力向上の事業に従事している。

 顔認識の分野で有名な企業イトゥ・テック(Yitu Tech)やセンスタイム(SenseTime)は、中国の警察や公安の活動を支援している。

 人民解放軍は、AIの軍事利用を追求しているが、中国の有名大学(精華大学など)や企業がこれを支援している。

 例えば、精華大学は中国のMITと呼ばれ、軍民融合を積極的に支援している。

 バイドゥ(Baidu)は、軍の情報指揮統制技術向上を目的とした統合研究所の設立において、国営の軍事企業の中国電子技術グループと協力している。

 つまり、中国のAI企業は、人民解放軍や治安組織と密接な関係がある。彼らには、グーグルの「邪悪になるな」などという倫理など存在しない。

 中国共産党が国家情報法を制定し、軍民融合を重視する限りにおいて、最先端技術を有する企業は軍に協力せざるを得ない宿命なのだ。

 また、中国に進出する外国企業も含めたすべての企業は、共産党の監視組織が会社内に配置され、その指導を受けることが義務づけられている事実も指摘したい。

 つまり、中国は、世界の中でも極めて特殊な専制監視国家であることを認識すべきだ。

●グーグルの技術は人民解放軍に利用されている

 グーグルは、中国で第2位のネット通販企業の京東(JD.com)と提携している。

 京東は中国でアリババに対抗する勢力であるが、グーグルが京東と提携する目的は、アジア市場においてアマゾンに対抗することである。

 しかし、京東は、兵站(補給、整備、輸送など)特に兵站ネットワークの構築において人民解放軍の空軍に協力していて、グーグルの技術が人民解放軍に活用されるのは時間の問題だ。

「外国で花を摘み、中国で蜜を作る」
人民解放軍科学者に注意
 オーストラリアの著名な研究所「オーストラリア戦略政策研究所」(ASPI)が「外国で花を摘み、中国で蜜を作る」 という衝撃的なリポートを発表した。

 このリポートによると、中国人民解放軍に所属する科学者が、所属・身分を偽ってファイブ・アイズ(Five Eyes)を構成する諸国(米国、英国、豪州、カナダ、ニュージーランド)、ドイツ、シンガポール、日本などの有名大学で研究活動を行い、技術や知識を中国に持ち帰り、人民解放軍のために優れた兵器を開発しているという内容だ。

 2007年から海外に派遣された人民解放軍の科学者数は、米国と英国に各500人、豪州とカナダに各300人、ドイツとシンガポールに各100人以上、そして数百人がオランダ、スウェーデン、日本、フランスに派遣されているという。

 特に人民解放軍の国防科技大学(NUDT )に所属する1600人以上の科学者が2013年までに、学生や客員教授として海外の大学に派遣されたと記述されている。

日本学術会議や大学もグーグルに似ていないか?
 今回のグーグルが批判されている状況は、日本学術会議や日本の大学の状況に似ているような気がする。

 日本学術会議は、平成29年3月24日、「軍事的安全保障研究に関する声明」を公表し、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」を批判し、防衛省への協力に関して否定的な立場をとっている。

 グーグルの「邪悪になるな」に似ている。

 そもそもAIや5Gなどの軍民両用のデュアルユース技術を軍と民に区別することが実際的に難しい時代において、防衛省の安全保障研究を「軍事的安全保障研究」と決めつけ、これに否定的に対応することの妥当性が問われる。

 また、日本学術会議や大学が中国企業や中国の大学との共同研究を「軍事的安全保障研究」との観点でいかに厳密に行っているかを聞きたいと思う。

 最近の報道では、日本の大学が今話題のファーウェイから研究費を受け取っているという。

 防衛省との研究には消極的で、人民解放軍と関係の深い中国企業との研究を積極的に行っているのではないかという思いがしてくる。

 特に懸念されるのは、ASPIが指摘しているように、人民解放軍に所属する科学者が身分を偽って、日本の大学で研究活動を行っていないかどうかである。

 ダブルスタンダードはやはり問題である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55890
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/853.html

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