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[国際24] 米サウジ政策さらに険しく、記者殺害巡るCIA結論 皇太子の命令と断定、トランプ政権と議会の溝深まる 
2018年11月20日 Michael R. Gordon
米サウジ政策さらに険しく、記者殺害巡るCIA結論 皇太子の命令と断定、トランプ政権と議会の溝深まる
トランプ米大統領
Photo:Reuters
 米中央情報局(CIA)が、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がジャマル・カショギ記者の殺害を命じたと結論付けたことは、トランプ政権の対サウジ政策にかつてない難題を突き付けている。

 ドナルド・トランプ大統領も側近の高官も、サウジの事実上の支配者であるムハンマド皇太子への支持を撤回する兆候を全く見せていない。

 しかし主要議員らは寛容ではいられず、中東のパートナー国を巡る米政権と連邦議会との溝は一層深まっている。

 上院外交委員会のボブ・コーカー委員長は17日、サウジの皇太子であるMbSが殺害を指示したことは明らかな状況だとツイッターに投稿。「トランプ政権は、MbSが彼の命令を実行したと思われる者たちを処刑する前に、責任の所在に関して信頼に足る判断を示すべきだ」と述べた。MbSはムハンマド皇太子のイニシャルである。

 米政府はサウジ政府との全面的な同盟関係を維持するのか。それともカショギ氏殺害と、サウジによる隣国イエメンの内戦への軍事介入を巡って強まる米議会の懸念を受けて、外交政策を修正するのか。それが今後の焦点となる。

 戦略問題研究所(CSIS)のジョン・オルターマン氏は「サウジの問題は、民主党が来年、大統領の外交政策を攻撃する際の主要な材料に浮上するのではないか」と指摘。「共和党の一部から支持を得られるだろうが、法案を可決するのに十分な支持が確保できるかどうかは不透明だ。どちらにしても、公開の場で攻撃の的になることはサウジにとって痛手となる。米政府との緊密な関係に取って代わるような好ましい選択肢が依然として見当たらないからだ」と語った。

 サウジはトランプ大統領にとって最初の外遊先だった。トランプ氏は先週、アメリカ中央軍司令官の経歴を持つ著名なジョン・アビゼイド元陸軍大将を駐サウジ米国大使に任命した。これは、米政府が引き続き安全保障面でサウジとの連携を重視していることの表れと言える。

 サウジがホワイトハウスの政策判断において重要な位置を占める理由は複数ある。イランと激しく敵対するサウジは、トランプ氏がイラン封じ込めに取り組むうえで有用な同盟国の一つだ。

 トランプ政権はまた、米国がイスラエルとパレスチナの和平計画を発表することになった場合、サウジがそれを支持してくれることを期待している。ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問はこの草案作りを主導しており、ムハンマド皇太子と頻繁に連絡を取っている。

 政権関係者は大型の武器輸出契約が締結される可能性を誇張することが多い。ただその期待は、サウジと緊密な関係を維持する理由としてトランプ氏が公然と挙げているもう一つの理由でもある。サウジによる米国への投資も同様だ。

 このためトランプ政権は綱渡りを強いられ、バランスを取ることがますます難しくなっている。多数の中東専門家に加えて今やCIA分析官でさえ、ムハンマド皇太子の独裁的な指導体制を理由に、皇太子がカショギ氏殺害計画を認識していたはずだと判断しているためだ。

 CIAによる評価が報道された後も、政権の姿勢は変わらなかった。国務省のヘザー・ナウアート報道官は、CIAの評価に反論せず、存在を認めることさえなかった。同報道官は、カショギ氏死亡の責任をサウジ指導部が負うのかについて「米政府」は最終的な結論に至っていないと述べた。

 トランプ氏は17日、ジーナ・ハスペルCIA長官との会談を前に、「われわれはサウジに素晴らしい盟友を持つ。わが国に多くのビジネスをもたらしてくれる・・・私は大統領だ。多くのことを考慮に入れなくてはならない」と述べた。

 10月にリヤドで開催された投資会議は複数の外国企業幹部が参加を見送ったが、今も多くの企業がサウジとの関係を維持している。

 しかし米議員の間では、サウジとの関係にはメリットよりデメリットが大きいとみる向きが増えつつある。イエメンへの軍事介入、サウジ国内の反体制派に対する弾圧、そしてムハマンド皇太子が直情型で冷酷でさえあるとの見方により、一部の有力議員がサウジとの距離を置きつつある。その中にはイランへの強硬姿勢を支持する議員もいる。カショギ氏殺害事件と、サウジ指導部が潔白だとした同国の調査結果により、我慢の限界を超えたのだ。

 その一例が、リンゼー・グラム上院議員(共和、サウスカロライナ州)とロバート・メネンデス上院議員(民主、ニュージャージー州)らが提出した法案だ。同法案にはイエメンを巡る政治的解決を促すため、サウジに対する軍需物資、航空機、その他攻撃用武器の売却停止が盛り込まれている。ただし、イスラム教シーア派系武装組織フーシ派からのミサイル攻撃に対する迎撃システムの売却は認めている。

 CIAによる評価を受け、少なくともサウジ問題は米議会で焦点となり続けるだろう。米・サウジ関係の著書があるブルッキングス研究所のブルース・リーデル研究員は、こうした懸念の高まりが具体的な行動につながることへの期待を示した。具体例として、サウジ政府がイエメン内戦の終結に協力しなかった場合に、サウジ空軍向け交換部品の供与打ち切りを警告することなどを挙げた。

 「カショギ氏殺害事件はイエメン内戦の終結を目指す超党派の動きを活発化させた」とリーデル氏は述べた。「掲載されたカショギ氏の最後の寄稿は、イエメンのためにもサウジのためにも内戦を終結させることを求めていた。彼を追悼するのにふさわしい場所だ」
https://diamond.jp/articles/-/186054


ワールド2018年11月20日 / 13:36 / 6時間前更新
モルディブ新政権、中国とのFTA撤回へ=与党幹部
1 分で読む

[マレ 19日 ロイター] - モルディブの新連立政権を率いるモルディブ人民主党のナシード党首はロイターのインタビューで、新政権が中国と合意した自由貿易協定(FTA)を撤回する方針を明らかにした。

モルディブはヤミーン前大統領の政権下で昨年12月に中国とのFTAに調印し、議会が同月、野党の反対を押し切って批准していた。

元大統領のナシード氏は、9月の選挙で勝利し17日に就任したソリ大統領の参謀役。ナシード氏は「中国とモルディブの貿易不均衡は巨大で、両国間のFTAなどだれも想定しない。中国はわが国から何も買っておらず、一方的な協定だ」と批判した。

ナシード氏は、FTAを発効するのに必要な法改正が残っており、議会はそれを可決しない見通しだと述べた。

モルディブは、中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を通じたインフラ投資により多額の債務を背負っており、FTAは状況を悪化させるだけだとの批判が出ている。

モルディブの通関データによると、今年1─8月に同国は中国から食肉、農産物、生花、電子製品など3億4200万ドル相当を輸入したが、同期間の対中輸出はわずか26万5270ドルだった。

ソリ新大統領は17日の就任式典で、モルディブは中国指導者に対する債務を抱え込み、財政難に陥ったと訴えた。

モルディブの中国大使館からコメント要請に対する返答は得られていない。
https://jp.reuters.com/article/maldive-china-idJPKCN1NP0C5
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/581.html

[自然災害22] 暗黒物質のハリケーン、地球に接近 銀河系を逆走中 100個の恒星が、大量の暗黒物質を伴って太陽系に接近食い止める術はない
暗黒物質のハリケーン、地球に接近 銀河系を逆走中
11/20(火) 16:18配信 CNN.co.jp
暗黒物質のハリケーン、地球に接近 銀河系を逆走中
およそ100個の恒星が、大量の暗黒物質を伴って太陽系に接近しているという
(CNN) このほど発表された論文によると、地球は宇宙ハリケーンの直撃を受ける見通しだ。およそ100個の恒星が、大量の暗黒物質を伴って太陽系に接近している。それを食い止める術はない。

写真特集:打ち捨てられたソ連製宇宙船

ただし、このハリケーンに危険はない。むしろ、まだ観測されたことのない暗黒物質を検出する絶好のチャンスになるかもしれない。

欧州宇宙機関(ESA)の衛星「ガイア」は今年4月、太陽を取り囲む銀河系の近くにある20億の恒星の位置と軌道に関する情報を公表した。

このデータを調べた研究者は、一部の恒星が特異な動きをしていることを発見。1年ほど前には、太陽系を通過する「星の流れ」が観測されていた。その1つで、同じような年代や成分の恒星100個近くで形成される「S1」は、、普通の恒星とは逆方向の軌道で銀河系を周回していた。

これは高速道路を走行する車の一部が逆走するような状況だが、距離が離れているため衝突の心配はない。逆走する恒星は数千光年の距離に分散した状態で、数百万年以内に太陽系の近くを通過する。

S1は、10億年ほど前に銀河系と衝突した矮小(わいしょう)銀河の残骸の一部と思われる。

矮小銀河はとてつもない量の暗黒物質を伴うことがある。暗黒物質はまだ観測されていない仮説上の物質だが、宇宙の謎の多くを説く鍵になるとされ、宇宙全体で普通の恒星やガスや惑星の質量の5倍の量が存在していると考えられている。

矮小銀河は暗黒物質の量がさらに多く、銀河系を周回する矮小銀河の炉座矮小銀河の場合、10〜100倍と推定される。

もしそれがS1に当てはまるとすれば、S1の暗黒物質は、普通の暗黒物質の約2倍の速度で地球を突き抜ける。S1の暗黒物質は秒速およそ550キロの速度で太陽系を飛行していると推定される。ただし暗黒物質は、もし本当に存在しているとしても、極めて拡散性が高く、太陽系に対して目に見えるような影響は及ぼさない。

こうした数字は、それを裏付ける根拠は豊富にあるものの、今のところ仮説でしかない。しかし暗黒物質が高速で地球を通過すれば、観測する絶好のチャンスとなる。

論文を発表した研究チームは、現存する観測装置と提案されている観測装置を使って暗黒物質を発見できる可能性を計算した。暗黒物質のうち、質量の重い「WIMP」は質量の特定範囲を検出できる可能性があり、質量の軽い「アクシオン」を検出できる可能性はさらに大きいとしている。

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最終更新:11/20(火) 18:57
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181120-35128933-cnn-int
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/630.html

[経世済民129] 社会保障費の歯止め見送り、景気最優先 財政危機に警鐘 マイナス利やめた方が景気物価に好影響 日銀金融政策 米利上げ新興国
2018年11月21日 ロイター
社会保障費の歯止め見送り、景気最優先 財政危機に警鐘も
社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた
11月20日、経済財政諮問会議では、社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた。2017年6月撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
[東京 20日 ロイター] - 20日の経済財政諮問会議では、今後の経済財政運営方針が議論されたが、社会保障関係費をめぐり、歳出をコントロールするための目安やコスト抑制の方針を明示することは見送られた。2019年10月からの消費増税を前に、景気腰折れの回避を最優先にする政府のスタンスがにじみ出た。

 だが、22年度から30年度にかけては急速に高齢化が進むと予想される。このまま財政規模の膨張を放任した場合、国内貯蓄で財政をファイナンスできない事態に直面すると警鐘を鳴らす専門家もいる。

 社会保障費の伸びについて、これまで政府は16─18年度の3年間で1.5兆円程度というシーリングを設けていた。

 10月時点の同会議では、民間議員から、従来の年間5000億円の伸びを下回る額に抑制することが可能との意見が提示されていた。19年度の高齢者人口(65歳以上)の伸びが0.9%程度と、過去3年間の1.7%程度より減速するとの試算から、高齢者人口の伸びが緩和されるためとしていた。

 しかし、この日の会議で示されたのは、19年度の社会保障関係費は「経済・物価動向等を踏まえ、2021年度まで実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す」という、今年6月に発表された新経済・財政再生計画で示された目安を実現すべき、というものだった。

 具体的な目安額は提示されず、目安を示す文言も骨太方針から踏み込んだ内容にならなかった。

 複数の政府関係者によると、19年10月の消費増税後に景気が冷え込まないよう、十分な対策を打ちたいという意見が政府内で多数派となり、さらに診療報酬の抑制に反発する医療関係者の強い働きかけが影響したという。

 全世代型社会保障を目指す安倍首相は、教育無償化の拡大に力を入れ、家計負担を軽減して消費対策にもつなげたいとの考えを再三にわたって表明している。

 同時に政府内には、増税で実質的な所得の目減りの影響が大きい高齢者世帯に対する支援策も手厚くしたいとの声が多くなっている。

 社会保障関係費を厳しく抑制することは、こうした政府内の意向とは相いれないとみられる。

 財政制度審議会の「来年度予算編成に関する建議」(20日発表)でも、今年は社会保障費の目安額を示さなかった。これまで毎年5000億円程度という抑制目安額を明記してきたが、増税が可能となる経済環境を整えることが「先決」と、財務省が戦術を転換した可能性が、政府部内でささやかれている。

 財政再建を重視する政府関係者は「価格上昇の激しい薬や医療高度化により、放っておけば、社会保障費は高齢者人口の伸び以上に拡大する。できれば4000億円前後といった目安額を示したいとの思いはあった」と打ち明ける。

 政府内からも20日の諮問会議で、具体的な抑制額や踏み込んだ文言が示されなければ「最も財政に影響の大きい社会保障費の策定が、ブラックボックスの中に入っってしまう。財政拡大に歯止めが効かない」と嘆く声もあった。

 さらに中長期の財政状況を見通せば、2022年度から30年度にかけて、75歳以上の後期高齢者が急増する(国立社会保障・人口問題研究所)が、この年齢層では1人当たり医療費の国庫負担が前期高齢者の5倍に膨らむ。

 今のうちから社会保障費の抑制に取り組まなければ、財政再建はままならないことは誰もが認識している。

 立正大学経済学部の池尾和人教授は「2020年代には国内貯蓄で巨額の財政をファイナンスできなくなる可能性が高まり、財政の様相も変化するだろう」と指摘する。

 しかし、複数の政府関係者は「今は25年度基礎的財政収支の黒字化目標達成のことなど考えていない」と認めている。

(中川泉 編集:田巻一彦)
https://diamond.jp/articles/-/186302


 

 
今マイナス金利やめた方が景気・物価に好影響−小枝氏インタビュー
日高正裕、藤岡徹、竹生悠子
2018年11月21日 5:00 JST
実証分析で利上げ条件を2%から1%に下げた方が物価を上昇させる
理論が発展段階にある時、データに語らせるとこういうふうになる

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
小枝淳子早稲田大学准教授はブルームバーグのインタビューで、日本銀行が今、マイナス金利を撤廃した方が景気や物価に好影響を与える可能性があるとの見方を示した。日銀の金融研究所は今月5日、約2年前にマイナス金利を撤廃していた場合の景気や物価への好影響を指摘した小枝氏の英語論文を公表した。

  小枝氏は、日銀が今、マイナス金利を撤廃した場合の影響について、まだ実証分析してないので断定はできないとしつつ、総括的な検証を行った2016年9月に比べて景気が良く、物価上昇率も高く、潜在成長率も今後上昇が見込まれるのであれば、「利上げをした方がしなかった時に比べ、経済活動や物価を押し上げる方向に働く可能性がある」と述べた。インタビューは19日に行った。


黒田・日銀総裁Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  小枝氏の論文「量的・質的緩和のマクロ経済の影響」は1995年から2016年末までのデータを基に、実際に起きた現実と別の想定でシミュレーションを行い、政策効果を定量的に評価するカウンターファクチュアルと呼ばれる手法で実証分析を実施。日銀が16年1月に採用した0.1%のマイナス金利を同年9月に0%に引き上げていた方が、景気や物価に好影響を与えた可能性が高いという結果が得られた。

  小枝氏は元国際通貨基金(IMF)エコノミストで、昨年10月から1年間、日銀金融研究所の客員研究員を務めた。「この論文は研究者としてデータをしっかり分析して結果を報告しようという動機で執筆した。政策提言をしているわけではない」と強調した。

  市場では、金融研究所が現政策に反する論文を公表したことで、日銀が金融政策正常化に向けて布石を打ったとの見方も出ている。黒田東彦総裁は20日の国会答弁で、同論文は「日銀の公式見解ではない」と言明。マイナス金利は「現時点では大幅な金融緩和の一環として必要」と述べ、市場の観測を否定した。

  日銀は13年4月、2年で2%の物価目標の達成を掲げて量的・質的緩和を開始したが、5年半たっても達成は程遠い状況だ。日銀は現在も、2%を安定的に持続するため必要な時まで現行の金融緩和を継続することや、安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続すると約束するなど、2%にひも付けた政策運営を行っている。

  小枝氏の実証分析では、利上げ条件を1%に引き下げた場合、潜在成長率が強ければかえって物価を上昇させるという結果が得られた。景気が十分強ければ、物価上昇率が2%に達する前に利上げしても、「利上げ後にそれほど引き締めなくてもよくなる」と指摘。長期目標として2%を変える必要はないが、「必ずしもそれを利上げの条件にしなくてよいのではないか」と語る。

  日銀の試算によると4−6月期の潜在成長率は0.78%だが、小枝氏は「そこそこ強い」と指摘。今後も0.8%前後の潜在成長率が続くと仮定すると、物価2%を利上げの条件にするより、1%の方が経済、物価に好影響を及ぼすとの見方を示す。

  主流派経済学の標準的なモデルでは「利上げの条件を引き上げるとあまりにも景気や物価に効くのでパズル(謎)と言われている」と指摘。「理論的なものが発展段階にある時に、実証分析によりデータに語らせると、こういうふうになる」と論文の意義を語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHHFB6TTDSA01?srnd=cojp-v2


 

日銀金融政策の今後(田口美一)

日銀のインフレ目標はギブアップすべき?
 田口講師:私の整理では、アベノミクスでは中央銀行として日本銀行がやったことはある程度効果があり、実体経済では円高阻止、株安阻止も結果的にはうまくいきました。経済も非常に順調に回復し、むしろ回復期としては非常に長い、5年超の経済成長に寄与してきたと思います。ただし、この中でたくさんの国債を日銀が買ってしまったので、その出口戦略をどうするかという問題が残っています。また、日銀ではありませんが、日本政府、あるいは財務省が巨額の国債残高を抱えているわけですが、これをどのような道筋で解消していくのか、この二つが大きな宿題として残っています。
 日銀は7月の終わりに緩和策の枠組み強化として一連の内容を打ち出しました。緩和を強化するのか、出口に向けた準備をしているのかよくわからない、矛盾のある内容だったと思います。コメントでは緩和策の強化と言ってはいるものの、政策の具体的発動では、10年国債の0%を維持と言いながら、変動許容幅は±0.2くらいまでよいという言い方をしていて、一体どういう思惑なのかとなったわけです。平たく考えれば、そうは言ってもやはり出口戦略に向かって、国債の金利が0やマイナスというのはまずいので、少しずつ調整を図っていくのだろうというのが読み筋だと思っています。実際に10年国債の金利を見ても、足元では0.15%位まで上昇しています。

 さらに、黒田日銀総裁の公表している政策の推移の中で、最も注目すべきは国債購入で、80兆円としていたものを変更せず、今もそのままにしています。
 ところが、実際そのペースで日銀が買っているかと言うと、日銀の国債残高の推移をプロットした表を見ると、2013年あたりから80兆近いペースで買ってきていたものが、実はすでに2017年から30兆円に減っているのです。そして今年は9月までのところで約22兆円となっています。このようにすでに無理が出てきているのです。実際に資産サイドに負債もついてきているのは当たり前のことで、そもそも5年ほど前から最後のポイントだと指摘してきた銀行券については、3兆円から5兆円ほどは伸びていたわけですが、やはりここにきて急激にストップがかかっています。国債を買っていないわけなので当然、当座預金もそれほど伸びてはいません。掛け声では80兆円と言っても、実際のところはすでに購入ペースは半分以下のところまで落ちてきているのです。
 日銀が異次元緩和を始めたところからの株と為替の推移で考えると、最初の2年ほどは効果が絶大でした。2016年以降は効果が全くないという見方もありましたが、ここまで時が経ち5年間を振り返ると、株価は落ちておらず、為替もトランプ政策があったとはいえ円高には戻っていません。これだけ大規模なことを続けてやり、しかも国債購入ペースが80兆円から40兆円程度に下がっていても、急に逆戻りはせず、かなりの効果が続いているという評価もできるのです。
 また、CPI(除く生鮮食品)をコアインフレ率と日本では呼んでいますが、その水準は1%に向かってゆるゆると落ち込むこともなく徐々に切り上げる動きとなっていて、それほど悲観する状況ではないと思います。世界を見ても、アメリカは2%にしっかり乗ってきていますが、ユーロは1%を割ってきています。イギリスあたりも2%後半から足元はまた落ちてきています。世界で言うコアインフレ率は、生鮮食品とエネルギーを除くもので、日本ではコアコアと言われているものになり、0.4%となっています。しかしこの0.4%も、マイナスから比べると、プラスになってきているわけです。

 そもそも2%は、海外に比べて日本の目標としては高すぎるのではないかということを、元日本銀行幹部でみずほ総研エコノミスト、門間氏がデータで示しています。日本はバブル期から世界に比べてインフレ率が低いという話で、海外で2%といった目標は日本では0%でもおかしくないのではないかというコメントを週刊エコノミストに発表しています。
 また、やや専門的ですが、最近アメリカでよく言われていることがあります。失業率が下がるとインフレが上がってくることを示すのがフィリップスカーブで、図では縦軸と横軸を逆に取っています。普通は景気が絶好調になってくると失業率が下がっていき、ある時点より低下するとインフレが顕著になってくると言われているのですが、これが最近では失業率が下がってもあまりインフレ率が上がっていないということがディスカッションされています。つまり、現在日銀が消費者物価2%を達成するために死に物狂いでやるということ自体に、どこまでの意味があるのかということが取りざたされているのです。

 金融政策の今後として、日銀は2%をギブアップした方がわかりやすいのではないか、また国債、株、リートも、そろそろ購入減額を明確に示した方が良いのではないか、ゼロ金利は一旦終わったという話を始めても良いのではないか、と思うのです。少し古い話ではありますが、2015年に元日銀の田幡氏がIMFからの要請で行った調査で、金融政策の正常化には相当な時間がかかると結論づけています。特にその当時で日本は20年以上、アメリカとヨーロッパでは10年かかると言われていました。しかしアメリカについてはこのときの予測よりも速いピッチで出口を進んでいるのです。日銀の金融政策の今後が注目されているわけです。
動くきっかけはアメリカ?
 ゲスト白川浩道氏(クレディ・スイス証券 副会長、チーフ・エコノミスト):まず2%のターゲットはナンセンスだという気がしています。日本は2%という数字を達成しようとすると、これには統計的な問題もありますが、中に入っている家賃等の全体に占めるウエイトは3割くらいあるのですが、家賃の上昇率は0%あるいはそれ以下なのが実態です。どの国でも公共サービス系の物価、例えば教育費や運賃、家賃が、制度として上がっていくものなのです。そうした国で消費者物価2%を達成するという事は、それほど生活必需品の物価に負担がかからないのですが、日本の場合はそういうところが動かないので、全体で消費者物価を2%上昇させようとすると、食料品が10%も上がらないと達成できない訳で、これは無理な話なのです。
 このような統計的なことを少し勉強すると、より現実的な物価というものがあり得ると考えられます。ないしはもう少し公共的なものも上げていく、インデックス化して賃金として上げていくというような何かをやらないと、突然2%という数字だけを与えられてなんとかしろと言われても、現実的に無理なのです。
 ただ問題は、日銀だけでギブアップできないという問題があるということなのです。もうギブアップしたいし、しようと思っているので、2%達成不可能という見通しを彼らも作っているわけで、ほぼギブアップしてしまったと言えます。しかし、政府がまだギブアップしておらず、やることの意味を自らも問わないので、議論が完全に停滞し、フリーズ状態になっているのです。
 これはやはり誰かが指摘した方が良いと思うのですが、日銀が言っても誰も聞かず、政府でも誰も言わないので、これは永遠に残るのではないかとすら思います。日銀はすでに誰かに助けを求めている状態ですが、日銀側からは言い出せません。おそらく政府も政権が変わらなければ言わないでしょう。
 1つのチャンスは、他の国あたりから言ってもらうことです。日本はもともと無理なことをやっているのではないか、為替を安く誘導しているのではないか、無理なことを目標にしていること自体、実は何か下心があるのではないかと、トランプ大統領に言ってもらうのが一番良いのです。そうすれば大きく変わることになるでしょう。しかしそれを彼が言わなければ、何も動かないだろうと思うのです。私がもしアメリカの大統領だったら、それは無理なのではないか、下心があるのでしょう、為替を安くしているだけだろうと言い、簡単に終わらせることなのです。しかしそれを言ってくれなければ、何も変わらないという気がしています。
(下心があるのでしょう、 私がもしアメリカの大統領だったら、「それは無理なのではないか、為替を安くしているだけだろう」と言い、簡単に終わらせることなのです。しかしそれを言ってくれなければ、何も変わらないという気がしています。)
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「株式・資産形成実践コース」講師
田口 美一
11月6日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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【次回の記事】米利上げが与える新興国への影響(唐鎌大輔)
【前回の記事】新たな時代の日中関係(大前研一)

https://asset.ohmae.ac.jp/mailmagazine/backnumber/20181114_1/

米利上げが与える新興国への影響
唐鎌大輔

新興国の局面変化
 2010年を起点としたときの、新興国への累積資本流入額を見ると、2017年に多くの資本が入り、その後に流出が始まっているのが分かります。これは当たり前の話で、アメリカが金利をこれだけ上げれば、ドル建ての資産が相対的に魅力的になってきているということです。

 裏を返せば、今まで新興国のような政治的なリスクや経済的なリスクを負っている、相対的にリスクの高かった資産は、ドルに比べて魅力が落ちるはずで、そこからお金を抜くしかないのです。したがってその動きが、今始まっているというわけなのです。その意味で局面変化が近いという見方ができるのです。
 例えば去年の6月、アルゼンチンが100年国債を発行したという話がありました。その100年国債なども、アメリカでこれだけ金利が付いているのであれば必要ないのです。アルゼンチンは過去100年で5回もデフォルトをしている国であり、無理してそのような国債を買う必要は無いのです。しかし2017年の時には、その100年国債がすごく売れたのです。それはやはりお金が余っていたからです。
 しかしこの1年でアメリカはバランスシートを大きく縮小し、これからも縮小していくので、お金の量は世界的に減っていくわけです。その中でどこを削るかというときに、投資家としてはやはり、新興国を削ることになるわけです。こうした動きはこれからも続くと思います。
 そもそもアメリカが金融緩和をして、新興国にお金が入ってきたからこうした事態になりました。アメリカが金融緩和をしたときに、新興国にお金が入る段階で資本規制をしておかなければいけなかったのです。量的緩和で新興国にお金が入り、新興国の資産価格が上がることになったわけで、その量を減らした時には、その逆のことが起きるのは当たり前です。金融引き締めをしても大丈夫だと言う人は、徐々にやるから大丈夫だということを言いがちですが、緩和をするときに効果があると言っておいて、止める時には影響がないと言うのはやはり無理があるのです。本来こういうことが起きないためには、資本規制を敷いて量的緩和の影響を新興国が受けないようにするべきだったのです。
 しかし、株が上がることを止めるのは、上がって困る人がいないので、非常に難しいのです。このことは、次回同様の局面では、真面目に議論しなければならないことだろうと思います。入ってくるお金で資産価格が加熱しないように、新興国はケアをしなくてはいけないのです。ただそうは言っても、やはり皆バブルが破裂しないとバブルだと気づかないもので、加熱する過程で止めるのは実際難しいだろうと思います。
 新興国に入ったお金の中身を見てみると、その60%弱がアメリカの量的緩和要因で、30%弱が低金利要因で、合わせて90%程度がアメリカの金融政策要因によって新興国にお金が入っています。

 しかし今、そのバランスシートは縮小していて、金利はどんどん上げているわけなので、新興国の資本は流出して当たり前です。9割近くがそこに端を発しているものなので、どう考えても資本流出は避けられないと言えます。新興国の経済も良いのでお金が残るのではないかという見方もありますが、新興国のファンダメンタルズ要因の資本流入はわずか1%程度なので、1%は残るかもしれませんが、どう客観的に見てもアメリカが利上げを続ける限りにおいては、今後新興国からお金が抜けることは規定路線と言えるのです。
 そうしたことを前提に、いろいろな相場や経済の見通しを考えていかなくてはいけないのです。アメリカが元気でアメリカが利上げを続けるという前提に立つと、新興国にお金が入るという事はおそらくありえないのです。わざわざそんなことをする必要がないからです。予想ですが、基本的にはこの資本が出ていくという部分に関しては、ほぼ約束された未来だと言えるのではないでしょうか。
 アメリカ経済が耐えられるかどうかというよりも、新興国が耐えられるかどうかが心配だと話ましたが、新興国の経済が何に困っているかと言うと、インフレに困っています。インフレでは通貨安になったら困るわけですが、今世界では、これまで観てきたとおり、新興国からお金が抜けて、新興国の通貨が下がるということが慢性的に起きているのです。そうするとインフレが加速してしまいます。それを止めるために彼らは何をしているかと言うと、通貨防衛です。要するに、利上げをしているわけです。
 世界的に新興国の中央銀行は、同時多発的に利上げをしている現状があります。2018年の累積変更幅を見ると、ロシアや南アフリカのように金利を下げた国もありますが、利上げをした国が多くあります。つまり、景気がすごく良くて利上げをしたいというわけではないのに、通貨が下がり続けると国内経済にインフレを通じて悪い影響があるので、防衛をしているのです。結局はアメリカの利上げによってやらされているという格好になっているのです。

 これではいずれ経済に対してネガティブなことが起きるという事は容易に想像がつくでしょう。これが続いていくと、ろくなことにはならないという前提で、マクロの見通しを立てるべきでしょう。今後もアメリカがどんどん利上げをし、円安ドル高、米金利も3.5%を超えてという予測をする人はもちろんいますが、この場合新興国はどうなってしまうのかという事は置き去りにされてしまっているのです。
 パウエルFRB議長も9月の記者会見の時に、自分たちの政策が新興国に影響を与えているという認識はあると言っています。
 しかしまだ自分たちの政策を変えるほどの話ではないと話しています。ということは、変えるほどの話になるという結末も、十分に頭の片隅にあると考えられます。FRBは、新興国を筆頭とする国際金融市場の混乱を理由として、利上げの手を止める、当然米金利が下がり、ドルも下がる、結果として円高になるというのが私の見通しのメインシナリオです。
 実際このシナリオが今年に起こると思っていたのです。
 しかし、アメリカの経済が凄く強いと、中央銀行としては利上げを止める理由がなくなってしまうのです。NYダウが高く、アメリカ経済が良い状態だと、新興国の資産価格もなんとなく値持ちしたりもするわけです。それにより結局、アメリカが強い限りにおいては、こうしたダラダラした状態が続きます。アメリカ経済に対する認識がFRBの中で変わってくれるほど新興国が混乱しないと、FRBの今の強気な姿勢は変わらないでしょう。
 どうなったら目が覚めるのかというのは、端的には株の急落が続く場合でしょう。明らかに今年2月、10月、11月と株が動揺しているので、この動揺を放って置けなくなったときに、FRBの正常化プロセスは止まるのではないかと思います。
【講師紹介】
ビジネス・ブレークスルー大学
株式・資産形成実践講座/「金融リアルタイムライブ」講師
みずほ銀行 国際為替部 為替営業第一チーム
チーフマーケット・エコノミスト
唐鎌 大輔
11月15日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
▼詳しくはこちら


▼その他の記事を読む:
【前回の記事】日銀の金融政策の今後(田口美一)


https://asset.ohmae.ac.jp/mailmagazine/backnumber/20181121_1/


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/548.html

[経世済民129] 金融市場に無傷のセクター見当たらず、投資家の逃げ場ほとんどなし ドイツ銀行株が下げ止まらず 仮想通貨売りに終わり見えず
金融市場に無傷のセクター見当たらず、投資家の逃げ場ほとんどなし
Lu Wang、Elena Popina、Vildana Hajric
2018年11月21日 12:58 JST
• S&P500種は20日に一時調整局面入り、社債市場も動揺
• 質への逃避は現金への逃避と化したとインスティネットのワイス氏
金融市場にとって今年は、過去50年で突出した厳しい1年となっているが、20日に状況は目に見えて悪化した。幅広く資産全般が軟調となり、投資家の逃げ場がほとんどなくなった。
  株式相場は続落し、幅広い銘柄が売られる中で、S&P500種株価指数は一時高値調整の水準まで下げた。原油は年初来安値を更新。クレジット市場にも動揺の兆しが見え、仮想通貨ビットコインは急落した。一方で米国債や金、円といった従来から安全資産とされる資産は小動きだった。

  2%の株安と6%の原油価格下落、社債相場の下降基調を全て考え合わせると、金融市場は1日の下げとしては2015年以降で最大級となった。S&P500種は今年の上昇分が帳消しとなり、原油価格は1年ぶりの安値に低迷。ジャンク債に連動する上場投資信託(ETF)も14年以降で最悪の下げ局面となった。
  インスティネットのトレーディング責任者、ラリー・ワイス氏は「市場にはまだ『パニック』はないが、大方のトレーダーは売りの勢いがすぐに鈍ると確信できていない。質への逃避はここにきて、現金への逃避と化した。今が資金を投じるタイミングだと説得するのは厳しい」と指摘した。
  幅広い資産クラスが歩調を合わせて値下がりした背景には将来への不安がある。米国株の過去最長の強気相場の原動力となってきた企業利益は、ピークに達したように思われ、トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争も収まる兆しが見えない。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げ姿勢を和らげる気配はなく、利上げが続けば、S&P500種構成企業が過去10年に発行した総額約5兆ドル(約564兆円)相当の社債保有者には悪夢となる。

  キーバンクの最高投資ストラテジスト、ブルース・マケイン氏は「投資に回したい資金は多いが、十分に魅力的な投資先はあまりない。幅広い資産の下落を招いている要因は、リセッション(景気後退)入りするのか、低めだがより持続可能な経済成長が得られるのかという疑念だ」と述べた。

原題:Worst Day of an Awful Year Leaves No Corner of Market Unscathed(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIV6A6JIJUO01

 
株式投資家は現金の配分増やすべきだ−ゴールドマン
Divya Balji、Joanna Ossinger
2018年11月20日 23:25 JST

Photographer: Bloomberg/Bloomberg
株式投資家は近年、素晴らしい利益を上げてきたが、現金のインフレ調整後リターンがプラスになった現在、リスクを減らすのが賢明かもしれないと、ゴールドマン・サックス・グループが提言した。
  デービッド・コスティン氏らゴールドマンのストラテジストは11月19日のリポートで、「株式へのエクスポージャーを維持しながら、現金の配分を増やすべきだ」とし、「株式との比較で現金が競争力のある資産クラスとなるのは、長年なかった現象だ」と記した。

  米利上げによってマネーマーケット・ファンドの利回りが2%を超え、インフレ率を上回ったことがこうした推奨の背景にある。12月にも0.25ポイントの利上げが見込まれるほか、2019年にも追加利上げが想定されており、現金の妙味はさらに増す公算だ。
  ゴールドマンのストラテジストらは株式について、公益株などのディフェンシブセクターに重みを置くべきだとしている。S&P500種株価指数は来年、「控えめな1桁台の絶対リターン」になると予想。18年に見られた「堅調な」企業利益と経済成長が減速するためだと説明した。
ゴールドマンの分析によるシナリオは以下の通り
• 確率50%の基本シナリオ:S&P500種が今年2850で終了、19年は5%上昇して3000へ
• 確率30%の下振れシナリオ:20年に景気後退に入るリスクが投資家心理の重しとなり、S&P500種は19年を2500で終了
• 確率20%の上振れシナリオ:強い経済成長がさらに長期化し、S&P500種は来年3400で終了
原題:Goldman Says It’s Time for Equity Investors to Boost Their Cash(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHJZH6K50XV01

現金より安全なものなし」−ハイテク株安でシリコンバレーにも不安
Sarah Ponczek、Jeran Wittenstein
2018年11月21日 8:48 JST
• 起業支援のホフマン氏、引き揚げた投資資金を今は現金で保有と説明
• 同氏の不安はハイテク株安がウォール街だけの懸念でないことを示唆

A group of men walks through a public space at Twitter Inc. headquarters.
Photographer: Michael Short
スティーブ・ホフマン氏はおなじみの紫と青の格子柄のシャツで現れ、マイクを握るやシリコンバレーの楽観論を表現。インスタグラム、エッツィ、チェンジ・ドット・コム、フォースクエアと、これまで成長を支援してきた企業の名前を交え、自身の起業支援の実績を宣伝した。
  インキュベーター(起業支援組織)のファウンダーズ・スペースを2011年に創設した同氏の話に聞き入っているのは、20代の聴衆だ。自分たちの夢に賭けてくれそうなベンチャー投資家らに直接会おうと、サンフランシスコのとある会議室に詰めかけた。
  ただ、これより少し前の時点で、ホフマン氏の口調はずっと悲観的だった。実のところ、自身の資金をポンと差し出すことはほとんどしていないという。テクノロジー株はバリュエーションが数十年にわたって高騰しており、このところのナスダック100指数の下落は想定された。公開市場での株売りの動きはますます悪化するばかりで、今度は、高止まりしてきた非公開の新興企業のバリュエーションも押し下げ始めるのではないかとホフマン氏は懸念する。
  「実際、かなり心配している」と同氏。公開市場に投じていた資金の80%と、非公開市場への投資の60%を引き揚げ、今はそれを全て現金で保有していると説明し、「現金より安全なものはない」と語る。
  ホフマン氏が抱く不安は、シリコンバレーの基準で見ればやや極端かもしれないが、新たな現実を浮き彫りにしていることは間違いない。テクノロジー株の急落を心配しているのはもはやウォール街のトレーダーだけではないという現実だ。

  誰もがドットコムバブルの崩壊や2008年のような相場急落に備えているというわけではない。そこまで悲観的なのはホフマン氏などごく一部で、一般的にはそれほどあからさまではない。ベンチャーキャピタル(VC)企業が投資案件の精査にかける日数を数日増やす、あるいは若いプログラマーが100万ドル(約1億1300万円)の住宅購入を保留する、といった具合だ。
  19日までで、テクノロジー株の大半は下落基調が始まって数カ月となる。中でも下げが顕著なのは、7月の最高値から35%下落したネットフリックスや、9月以来24%下げたアマゾン・ドット・コムだ。S&P500半導体・半導体製造装置株指数は6月初めから20%余り下げている。S&P500テクノロジー・ハードウエアおよび機器株指数もこのところ下げがきつい。世界のテクノロジー企業の合計時価総額はこの2カ月半で1兆1000億ドル減った。
  ファウンダーズ・スペースのイベントに出席したエンジェル投資家兼コンサルタントのアレックス・チョンプフ氏は「投資家の楽観論は以前より抑えられている。1年前にはなかったであろう上限が設けられている」と語った。

原題:‘Nothing Safer Than Cash’: Tech Rout Puts Silicon Valley on Edge(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIGUU36VDKHS01?srnd=cojp-v2


 


 
クレジット市場の亀裂広がる、レバレッジドローンからジャンク債まで
Jeremy Hill、Natalya Doris
2018年11月21日 14:33 JST
• 投資適格債とクレジット・デフォルト・スワップにも弱さ
• GEの苦境が社債市場全体に広がることを投資家は懸念
クレジット市場に入った亀裂が、広がっている。米企業の上にのしかかる巨額債務の重さを、投資家は恐れ始めた。
  圧力は先月に高まり始め、先週爆発した。投資適格債のスプレッドとジャンク(投機的格付け)債のプレミアムが2年近くで最も大きく拡大し、レバレッジドローンの価格は2016年以来の水準に落ち込んだ。
  BMOグローバル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、スコット・キンボール氏は「年末まではかなりひどい市場になるだろう。転換点となると考えられるポイントが今から年末までの間にはない」と話した。
  ゼネラル・エレクトリック(GE)の苦境が市場の不安に拍車をかけた。金利上昇に加え成長鈍化の可能性がある中で、巨額債務に起因する問題は社債市場全体に広がる恐れがあると投資家は不安を抱いている。
  高格付け社債のデフォルト(債務不履行)に備える保証料の指標であるCDX投資適格指数は先週、3月以降で最大の上昇となり、16年11月以来の高水準に達している。


原題:Credit Showing Deeper Cracks From Leveraged Loans to Junk Bonds(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIJ0U96K50XS01

 


仮想通貨売りに終わり見えず、ビットコインは4000ドル接近
Samuel Potter、Todd White
2018年11月20日 19:48 JST 更新日時 2018年11月21日 8:23 JST
• ビットコインは一時13%下落し4051ドル、今週の下げは25%超
• イーサやライトコイン、XRPなどライバル仮想通貨も軒並み安
仮想通貨市場を飲み込んだ混乱が20日も続き、ビットコインは一時4000ドルに接近。全ての主要な仮想通貨が軒並み続落した。
  ビットコインは一時13%下落し4051ドルを付けた。今週の下げは25%を超えた。昨年12月時点では2万ドル近い水準で取引されていた。ビットコインの下落を受け、イーサやライトコイン、XRPといった競合する仮想通貨も売り込まれた。
  仮想通貨市場は過去数カ月にわたり比較的安定した動きだったが、11月に入って急落し、規制の動きも強化されたことから、同市場の強気派を動揺させている。コインマーケットキャップ・ドット・コムによると、仮想通貨の時価総額は1月に付けたピークから7000億ドル(約78兆9000億円)減少。ビットコインの下落に賭けることができる先物市場での取引は急増している。

原題:No End in Sight for Crypto Sell-Off as Bitcoin Approaches $4,000(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHLOE6JIJUO01?srnd=cojp-v2

 


ダイモン氏は正しかった、ビットコインが「詐欺」発言時と同水準に
Michael Patterson
2018年11月20日 22:43 JST

ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO
Photographer: Marlene Awaad/Bloomberg
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は恐らく正しかった。
  同氏は2017年9月、仮想通貨のビットコインについて「詐欺」だと発言し、同通貨を取引する行員を解雇すると脅かしたが、ビットコインはその後の3カ月で4倍以上に値上がりした。ダイモン氏は発言を後悔しているとし、ビットコインの基盤となるブロックチェーン技術への信頼を表明した。
  しかし最近では、ビットコインについてダイモン氏の悲観論の先見性が際立ってきた。ビットコインは最高値から78%も下落し、ダイモン氏の発言当時の価格に戻った。他の仮想通貨も下落し、コインマーケットキャップ・ドット・コムによれば、仮想通貨全体の時価総額は1月に記録した過去最高からほぼ7000億ドル(約78兆7000億円)減少している。

原題:Jamie Dimon Vindicated? Bitcoin’s Back to Where He Cried ‘Fraud’(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-20/PIHRKV6TTDS601?srnd=cojp-v2

 


外為フォーラムコラム2018年11月21日 / 13:12 / 3時間前更新
コラム:ビットコイン、5000ドル割れで砕かれる幻想
Tom Buerkle
2 分で読む

[ニューヨーク 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ビットコインに対する甘い夢は、最近のさらなる価格下落で吹き飛ばされつつある。

多くのファンは、ビットコインが従来の金融を葬り去ることを夢見たが、価格が5000ドルを割り込んだことで、株式や債券よりも投資家の弱気心理によってずっと影響を受けやすいという事実が分かってきた。

ビットコインの欠点は、基本的な価値を持ち合わせていないことだ。

約10年前に発明されたビットコインはそれ以来、技術者とリバタリアン(個人の自由を至上価値として国家による制約を最小限にとどめるべきだと主張する人々)の双方に幻想を抱かせてきた。

つまり、個人や企業が銀行もしくは政府による搾取を受けずに世界中で資金のやり取りができる「摩擦のない金融」が約束されたということだ。昨年ビットコイン価格が突然2万ドル近くまで高騰すると、それまで懐疑的だった投資家までその輪に飛び込み、二匹目のどじょうを狙った似たような仮想通貨の発行が続出した。

それが全て間違いではなかったとしても、今では非常に時期尚早だったように見受けられる。イニシャル・コイン・オファリング(ICO)は今年に入ってブームが破裂した。米証券取引委員会(SEC)などの規制当局の締め付けや、EOSネットワークがICOを通じて過去最高の42億ドルを調達した直後にガバナンス問題に巻き込まれたことが原因だ。

一方、伝統的な投資家を引き寄せたのは裏目に出たようだ。

クライプト・ファンド・リサーチは、今年全体で仮想通貨専門のヘッジファンドの設立は最大150本に達すると予想する。だがそのほとんどは高値近くで買い、既に大きな損失を抱えているはずだ。ビットコインはこの1カ月で約3割、昨年12月の最高値からは75%も値下がりしており、漂うのは投資家のあきらめムードだ。

ビットコインを手放す理由には事欠かない。

1年前にビットコインから分裂して生まれたビットコインキャッシュ自体が、今月初めに再び2つの仮想通貨に分かれてしまった。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、各中央銀行に独自のデジタル通貨発行を促しており、これはビットコインの地位に影を落としかねない。貿易摩擦懸念や金利上昇が株安・債券安を引き起こしていることから、投資環境全般も急速に悪化している。

S&P総合500種は20日にまた2%近く下がり、9月の高値からの下落率は10%に達した。投資家にとってこれは痛手だが、リフィニティブのIBESデータによると、S&P500種企業は第3・四半期に約29%利益を伸ばした。来年も増益基調は続く見通しだ。

こうした現実世界の支えは、ビットコインにとっていくら欲しても手に入らない要素と言える。

●背景となるニュース

・コインベースによると、ビットコインの価格は米東部時間午後2時24分に4500ドルをわずかに上回る水準だった。それまでの24時間で約400ドル下がり、過去1カ月の下落率はおよそ3割に達した。過去最高値は昨年12月に記録した1万9500ドル強だった。
https://jp.reuters.com/article/bitcoin-fall-breakingviews-idJPKCN1NQ0A1
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/549.html

[経世済民129] 米中関係はどこまで悪化するのか 貿易戦争収束も対立は長期化 成長鈍化も生産性上がる 輝き失うAI 米空母香港へ 尖閣危い

米中関係はどこまで悪化するのか

2018.11.21(水) 横山 恭三

米中貿易戦争の「落としどころ」を探る


米副大統領が中国批判、習主席は「対立に勝者なし」 APEC関連行事で演説
パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の関連行事「CEOサミット」で、演説を終えて手を振る中国の習近平国家主席(2018年11月17日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP〔AFPBB News〕

 現在までに米中貿易摩擦を巡る両国間の通商協議が4回開催されたが、8月下旬のワシントンでの次官級協議以降、同協議は開催されていない。

 報道によると米中ともに一歩も引かない姿勢を見せており、2018年11月末に予定されている米中首脳会議で大筋合意に達するのは難しいだろうと見られている。

 しかし、これまでの協議の経過をみると双方の思惑も見えてくる。

 来る米中首脳会議で何らかの合意が得られる可能性がある。そこで、本稿では米中貿易戦争の「落としどころ」について考察した。

 以下、初めに今回の中国製品に対する報復関税の根拠である301条の概要を述べ、次に米中貿易摩擦を巡る通商協議の経緯を述べ、次に米中貿易戦争における両国の狙い、最後に来る首脳会議における「落としどころ」について述べる。

1.301条の概要
 通常、米国1974年通商法301〜310条を総称して1974年通商法301条と呼ばれる。

(1)制定の経緯

 1962年通商拡大法による大統領への大幅な通商権限委譲により、大幅な関税引き下げによる貿易自由化が推進された。

 一方で、エスケープ・クローズ(緊急輸入制限措置規定)の適用の厳格化など、貿易自由化の原則を貫き、貿易自由化によって生じた被害に対する救済措置をあくまでも例外的なものとする試みが推進された。

 1970年代に入って、米国の貿易収支は悪化の一途を辿り、1971年には20世紀に入って初めての貿易赤字となった。

 そのうえ石油危機による追い打ちもあり、企業や労働組合は議会に対して貿易救済措置の発動要件の緩和を求めるなど、保護主義的な圧力を強めていった。

 このような経済情勢を背景に、エスケープ・クローズの発動要件を緩和すると同時に、外国の不公正貿易政策について制裁措置権限を大統領に与える301条などが盛り込まれた、1974年通商法が成立したのである。

 さらに、1980年代後半には、米国が巨額な貿易赤字を抱えたことから、ゲッパート修正条項に象徴される貿易赤字相手国に対する議会の不満が募った結果、1988年包括通商競争力法が成立した。

 この法律により1974年通商法301条の改正・強化が図られ、外国の不公正措置に対して調査から制裁発動までの手続を自動化することを規定し、米国が一方的措置をとりやすくした。

 すなわち、他国の貿易政策・措置について、WTO(世界貿易機関)協定などの国際的に認知された手続によることなく、自国の基準・判断に基づいて「(WTO協定等)国際的なルール違反である」または「不公正な措置である」などと一方的に判定し、これに対抗する手段として制裁措置を取りやすくしたのである。

(2)法律条文の構成

 第301条は、1974年通商法のタイトルV「不公正な貿易慣行の除去」の第1章「貿易協定の下の米国の権利の執行及び外国の貿易慣行への対応」の条文である。

 既述したが301〜310条を総称して301条と呼ばれている。各条文の見出しは次の通りである。

第301条 米通商代表による措置(Actions by United States Trade Representative)
第302条 調査の開始(Initiation of investigations)

第303条 調査開始の協議(Consultation upon initiation of investigation)
第304条 通商代表による決定(Determinations by the Trade Representative)

第305条 措置の執行(Implementation of actions)
第306条 外国のコンプライアンスのモニタリング(Monitoring of foreign compliance)

第307条 措置の修正と終了(Modification and termination of actions)
第308条 情報の要求(Request for information)

第309条 管理(Administration)
第310条 通商上の執行措置の優先順位(Trade enforcement priorities)

(3)301条の内容

ア.趣旨:米国1974年通商法301条は、外国政府の不公正行為に対抗して、米国政府が報復措置をとる権限と手続きを規定する。

イ.不公正行為:

不公正行為とは、1) 通商協定違反行為および不正 (unjustifiable)行為、2) 差別 (discriminatory)行為、または3) 不合理 (unreasonable)行為をいう。

 不正行為とは国際義務(条約や協定はもちろん、国際慣習法も含めて)違反行為である。

 差別行為とは、合衆国産品またはサービスまたは投資に対する内国民待遇や最恵国待遇を拒否する行為を含む。

 不合理行為とは不公正かつ不公平(unfair and inequitable) な行為をいい、1)起業機会の拒否、2)知的財産権の適正かつ有効な保護の拒否、3)市場機会の拒否(合衆国製品のアクセスを制限する外国民間企業の組織的反競争活動に対する同政府の黙認をふくむ)、4)輸出ターゲティング、5)労働者の権利の常習的な拒否などを含む。

 いずれの場合も、それが米国商業に対する負担・制約になっていることが要件である。

ウ.担当官庁:調査者・措置の決定者は、大統領が上院の助言と承認を経て任命する合衆国通商代表(USTR)である。

エ.措置の種類:不公正行為が協定違反または不正行為の場合、措置は義務的である(USTRは措置をとらなければならない)。

 ただし、1)大統領が拒否権を発動した場合、2)相手国政府が協定違反や不正行為をやめるか補償提供に同意した場合、または 3)WTOの否定的決定がある場合、措置を免除する。

 不公正行為が差別行為または不合理行為の場合、措置は裁量的(措置をとるかどうするかUSTRが判断し決定する)である。

オ.措置の内容は大統領権限のすべてに及ぶが、対象外国産品に対する一定期間の報復関税(不公正行為による米国商業の被害と等価)の賦課が最も望ましいと規定されている。

カ.たすきがけ報復とカルーセル条項:不公正行為対象品目と報復措置対象品目はかならずしも同じでなくてもいい。

キ.調査開始:利害関係者による提訴またはUSTRの職権による独自の調査。調査開始は裁量的である。

ク.措置決定期限:一般の場合12か月以内、協定違反事件の場合18か月以内。措置の実施は最長180日延期可。措置は4年間の自動終結。

2.通商協議等の経緯
 今月17日までの公開情報に基づき、協議と関連する事象を含めて、次のとおり時系列順にまとめた。

@ 2018年5月3−4日:米国のムニューシン財務長官、ウィルバー・ロス商務長官、ラリー・クドロー国家経済会議委員長、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ピーター・ナヴァロ通商製造業政策局(OTMP)局長らと中国の劉鶴国務院副総理が率いる中国代表団が2日間にわたって第1回の閣僚級通商協議を実施したが突破口は見つからなかった。

 この協議で注目されたのは米中の間の議論でなく、米政権内部の保護貿易主義者(ロス長官とナヴァロ局長)と自由貿易主義者(ムニューシン長官とクドロー委員長)との間の意見の調整であった。(CNN 5月8日)

A 2018年5月17−18日:ワシントンで開いた第2回閣僚級通商協議を受けた共同声明で「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明。

 ムニューシン米財務長官は20日に「貿易戦争を当面保留する」と述べ、中国への制裁関税をひとまず棚上げして協議を継続する考えを示した。

 また、中国による知的財産の侵害についても、両国が連携を強化し、中国が法整備を進めるとの表現にとどまった。(日経5月21日及びCNN5月20日)

B 2018年6月3日:ロス米商務長官と中国の経済担当副首相劉鶴氏との第3回閣僚級通商協議を北京で開催。米中は共に、北京で行った通商協議で3750億ドル(約41兆円)に上る中国のモノによる対米貿易黒字の削減方法に関して一定の進展があったと発表。(Bloomberg News6月4日)

C 2018年6月3日:中国の劉鶴副首相とロス米商務長官の会談後、新華社は、米中の合意は「両国が互いに歩み寄り、貿易戦争を行わないことを前提とすべきだ」とし、「米国が関税引き上げなど貿易制裁を導入すれば、両国が交渉した全ての経済・貿易合意は無効化される」と警告。(出典:ロイター6月4日)

D 2018年7月6日:制裁関税第1弾を発動。

E 2018年7月13日:米商務省は、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した米国企業との取引禁止の制裁を解除したと発表。

 商務省は4月中旬、ZTEがイランなどに米国製品を違法に輸出し、米政府に虚偽の説明をしたため米国企業との取引を7年間禁じる制裁を科した。

 ドナルド・トランプ大統領が5月中旬に習近平国家主席から頼まれたとして制裁見直しを表明。米中の貿易協議で中国側から譲歩を引き出す交渉材料とする構えをみせていた。(日経7月12日)

F 2018年8月22−23日:米国と中国の貿易摩擦を巡る王受文次官とマルパス米財務次官(国際問題担当)との間で第4回(次官級)通商協議が22〜23日にワシントンで開催。

 米中の貿易協議は、6月初旬に劉鶴・中国副首相とロス米商務長官との間で開かれて以来。

 ただ、事情に詳しい関係者によると、目に見える具体的な進展はなく、貿易摩擦が早期に収束する見込みは低下しつつある。(WSJ8月24日)

G 2018年8月23日:制裁関税第2弾発動

H 2018年9月24日:制裁関税第3弾発動

I 2018年9月24日:トランプ米大統領が近く第3弾の制裁関税の発動を表明する見通しとなったのを受け、中国の劉鶴副首相率いる代表団はムニューシン米財務長官らと27、28の両日に閣僚級の貿易協議をワシントンで開催する予定であったが中止した。(WSJ9月21日)

J 2018年9月24日:中国国務院新聞弁公室は24日、「中米経済貿易摩擦に関する事実と中国の立場」白書を発表。

 中国国営新華社通信によると、中国政府は24日に発表した「中米経済貿易摩擦に関する事実と中国の立場」と題した白書の中で、中国の知的財産権保護の姿勢について、「明確かつ揺るぎないものだ。立法や法執行、司法レベルで保護を強化し続けることで明らかな効果を収めている」と強調するとともに、「中国の日増しに強まる知的財産権の保護は外国企業の中国でのイノベーション活動に効果的な保障を与えている」などと指摘。

 一方で、米国の対中貿易制裁については「米国政府による一連の既存の多国間貿易ルールに違反し、破壊さえするような不当なやり方によって、既存の国際経済秩序は著しく損なわれている」

 「米国政府による一方的な貿易戦争の挑発は、世界経済だけでなく米国の国益も損なうことになるだろう」などと反発。(recordchina9月25日)

L 2018年10月1日:トランプ大統領はホワイトハウスで「中国は極めて強く協議を望んでいるが、率直に言って現時点では時期尚早だ。中国側の準備が整っていないため協議はできない」とし、「時期尚早な協議を無理に行えば、米国、および米国の労働者にとって正しい合意は得られない」と述べた。(ロイター10月2日)

M 2018年11月1日:トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、1日、電話会談し、11月末にブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G−20)首脳会議にあわせて会談することを確認。

 トップ同士による打開を目指して対話を進めることでは一致。(朝日11月2日)

N 2018年11月9日:米側はポンペオ国務長官とマティス国防長官、中国側は楊潔?政治局員と魏鳳和国務委員兼国防相の米中両国の閣僚による「外交・安全保障対話」が9日、ワシントンで開催。

 終了後の共同記者会見で楊潔?政治局員は、米中の貿易摩擦について、互いに受け入れ可能な解決策を模索することで一致したと説明。(読売11月10日)

O 2018年11月17日:トランプ政権は5月、中国に対して、1)貿易赤字を2年で2000億ドル(約22兆5000億円)削減、2)先端産業の育成策「中国製造2025」による補助金の撤廃、3)米国並みに関税を引き下げ――など8項目を要求。

 トランプ米大統領は16日、「中国は142項目の行動計画を提出してきた」「取引で合意するかもしれない」と述べ、ただ、同大統領は「重要な4、5項目が解決されていない」と述べて「私にとって、まだ受け入れられるものではない」と記者団に述べた。(日経11月17日)

3.米中貿易戦争における米中の狙い
 次に、米中の貿易協議等から読み取れる両国の狙いなどを考察する。

 筆者は経済の専門家でないので、見当違いの考察になるかもしれない。大方のご教示を賜りたい。

(1)米国の狙い

 中国が不公正貿易慣行の全面的な中止を約束すれば米国の勝利である。

 しかし、米国が中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)に科した制裁を解除したことから、米国は中国からそのような譲歩を得ることは無理であろうと見ており、何らかの妥協点を模索している様子がうかがえる。

 また、今回の制裁関税の発動の時期が米国の中間選挙の直前であったところから、国内に向けに強い指導者としての印象を与える狙いがあったものと考えられる。この狙いの役割は終了した。

 11月17日に中国が142項目の行動計画を提出したことにより、来る首脳会議で合意の可能性が出てきた。

 しかし、トランプ大統領が「大きな懸案がいくつか残っており、現時点ではまだ受け入れられない」と述べており、現時点では首脳会談で合意に至るかはなお不透明である。

(2)中国の狙い

 中国は、WTO紛争解決手続きを申し立てるなどして、WTOを重視するEUや日本を味方に引き入れて、米国を孤立させるようとしている。

 しかし、2016年7月の南シナ海仲裁裁判所の裁定を無視し続けているなど国際機関を軽視している中国を信頼・協力する国はないであろう。

 また、中国は、これまでの協議で輸入拡大や知的財産保護体制の改善を提示するなど対話による解決を目指している。

 しかし、輸入拡大や知的財産保護体制の改善は、米国にとっては最低限の要求事項であって、これで米国が満足するとは思えない。

 中国は今のところ米国に報復措置も辞さない強硬姿勢を取っているが、2期目の習近平政権の権力基盤が盤石となり、習総書記は、今後、国内の反対勢力の声などを気にせずに政策決定を行うことができることから、必要であれば譲歩の姿勢を見せる可能性もある。

 中国は産業発展の原動力は科学技術力であると見ている。

 そして、中国は製造業の高度化を目指す行動計画である「中国製造2025」を実現するために、海外から次世代情報通信技術やハイエンドデジタル工作機械、ロボット、航空・宇宙装備などの「中国製造2025」が定める10大重点分野に関連する技術を必要としている。

 従って、今回は、ある程度の譲歩をせざるを得ないであろう。11月17日に142項目の行動計画を提出したことは、それを物語るものである。

4.来る米中首脳会談における「落としどころ」
 本項では、貿易赤字の削減や関税の引き下げなどの貿易問題の解決策でなく、本貿易戦争の背景にある安全保障上の問題やインテリジェンス活動を巡る米中の対立に焦点を当てて述べる。

 2018年11月14日、米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は、中国の動向に関する年次報告書を公表。

 その中で「中国の国家主導の不公正貿易慣行は、ハイテク技術の流出につながり、安全保障上のリスクだ」と警告した(11月14日 時事通信社)。

 経済はパワーの源泉として安全保障に深くかかわっている。

 経済の繁栄は、経済力はもとより、技術力、軍事力といった国家のパワーを充実させ、反対に経済の衰退はかつての旧ソビエトのように国家の崩壊に至る可能性がある。

 これがゆえに、経済的手段によって安全保障の実現を目指す「経済安全保障」という概念が生まれたのである。

 すなわち、中国の経済力の発展は米国の安全保障上の脅威なのである。

 しかも、その経済力の発展が、米国の技術および知的財産を盗み、自分のものにして大きくなったとなれば、米国の憤りも理解できる。

 ちなみに、現在繰り広げられている「米中のインフラ支援競争」も「経済安全保障」の脈絡で捉えるべきである。

 中国は自国の情報機関を使って米国の技術および知的財産を盗んで国有企業または民間企業に提供している。

 インテリジェンス活動は国家の安全確保のために行われるもので、収集した情報を民間企業の経済活動のために提供することは考えられない。

 これは、民間企業の公正な競争を阻害している。

 公正は米国が最も重視する価値観である。ここに今回の米中対立の隠れたかつ根本的な原因がある。

 本年10月10日に米司法省が中国情報機関の幹部の訴追を公表したことも、これらの活動を絶対許さないという中国へのメッセージであろう。

 従って、来る米中首脳会議では、「中国が自国の情報機関による自国の国有企業または民間企業の経済的利益のためのスパイ活動(サイバー空間のスパイ活動を含む)をやめる」ことを約束すれば、さしあたって米中貿易戦争は沈静化すると思われる。

 しかし、2015年9月の米中首脳会談での首脳同士の約束をいとも簡単に反故にした中国に対して、この約束を遵守させ、その他の様々な義務の履行をきちんと担保する仕組みをどう構築するかという課題が残っている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54708


 


2018年11月21日 田中 均 :日本総合研究所国際戦略研究所理事長

米中貿易戦争は収束に向かう、それでも米中対立が長期化する理由


 中国は複雑で危険な行動をしている。

 習近平国家主席の唱える「中国の夢」は、中国の栄華を取り戻すこと、すなわちアヘン戦争、日清戦争で敗北した以前の大国中国の姿を取り戻すことだ。

 中国は国内に向けたものと説明するが、実際の行動を見ると、対外的にも着々と地歩を固めているように見える。

 こうした中国を米国は国際秩序を変更する「修正主義勢力」と位置づける。貿易戦争は発端にすぎず、米中双方の政治・経済・社会システムの戦いという様相がより強まっていくだろう。

「中国の栄華」回復目指し
複雑で危険な行動
 中国は2010年にGDP(国民総生産)で日本を追い越して世界第2の経済大国となり、2013年に習近平氏が国家主席の座について以降、「中国の夢」実現に向けての動きは急だ。

 東シナ海や南シナ海における活発な海洋活動、特に南シナ海の埋め立てによる軍事基地化、空母の建造と配備、A2AD(接近阻止・領域拒否)戦略の下で西太平洋での米軍の接近を拒む。

 特に近年、シルクロードの復活を目指したOne Belt, One Road(一帯一路)を「Belt and Roadイニシアチブ」と称し、旧シルクロードだけでなく、アジア全域、中東、欧州、アフリカ、中南米までを包含し得るような経済構想を展開する。

 台湾との関係も馬英九国民党政権との蜜月時代から、より独立志向を持つ蔡英文政権とは対立を強め、パナマやエルサルバドルなどには台湾が維持してきた外交関係を断絶させ、中国との外交関係樹立に走らせた。

 そして2015年に発表した「中国製造2025」だ。これは2025年までの製造業発展、さらにそれを踏まえて2049年までに中国を最強の製造大国とする長期計画で、とりわけ先端産業分野の競争力の強化を目標としている。

国際秩序変える
「修正主義勢力」と米国は強硬
 これに対して、米国の行動も強硬となってきた。

 2017年末に発表された米国国家安全保障戦略には、中国が国際秩序を変更する「修正主義勢力」であり米国は力で対抗するという考え方も盛り込まれている。

 極めつけはペンス副大統領が、10月初め、米シンクタンクのハドソン研究所で行った演説に盛られた強烈な対中批判だ。中国はサイバー、投資、留学生などを通じて米国の民主主義に介入をしている「シャープパワー」だとする。

 中国は当初は、「アジアへの回帰」を掲げたオバマ政権から「アメリカファースト」を掲げ、取引的手法で理念や長期戦略を感じさせないトランプ政権をくみしやすいと考えたに違いない。

 トランプ政権が公然とオバマ前大統領の政策を否定し、TPPやパリ協定、イラン核合意からの離脱を決め、米国内法の安全保障条項を使ってアルミ・鉄鋼の関税引き上げなど保護主義的行動に出たことには、国際社会からも批判が強まった。

 そうした状況で、中国は自分たちこそが保護主義に反対して国際協調を推進しているのだと強調。アフリカや中東だけでなく、東南アジアや欧州などにも中国との経済協力関係を強化する国々が増えていった。

 そのような中で、米国が中国と戦端を開いたのが、米中貿易戦争だ。

 不公正貿易慣行に関する通商法301条に基づき差別関税の強烈な圧力をかけられたのは中国が初めてではない。日米摩擦の時も同じだった。

 1980年代後半、米国の対日貿易赤字が500億ドルを超え、米国の赤字の40%を超えた時、米国は301条を援用した。日本を「異質な国」と批判し、対日差別法案も連日のごとく議会に提案された。米国の圧力の下、日本は市場開放に精力的に取り組み、実際の関税賦課を免れた。

 当時から中国の友人たちは、自分たちは米国の圧力に屈することはしないと強調していたが、果たしてどうだろうか。

 今の米中貿易戦争は、3500億ドルに達する米国の対中貿易赤字を削減すれば解決するというものではなく、対立の根はもっと深いものだ。

 根源は多くの人が論じるようにハイテクの覇権争いなのだろう。米国にとっては、中国が知的財産権を侵害し国家の不正な補助金の下で、将来的にハイテク技術と製品の分野で米国に代わって世界の覇権を取ろうとするのを防ぐという意味合いが強いのだろう。

貿易戦争は中国譲歩で収束に
成長鈍化は体制不安定化につながる
 貿易戦争に限れば、今年11月末の米中首脳会談を経て収拾されることになると思う。

 昨今の米中双方の動きからも、貿易戦争は収拾の方向に向けて米中間でかじが切られている感がある。米中首脳電話会談、ブエノスアイレスでのG20の際の米中首脳会談開催の合意、延期されてきた外交・安全保障対話の開催など数多くの兆候が感じ取られる。

 米中の経済的体力を比べれば圧倒的に米国が強いからだ。

 中国の報復関税実施が国内の物価高や農産品の輸出低下を招いたところで、今米国経済は好況下にあり、来年以降、景気は下降する可能性が高いにしても、生産や消費などの落ち込みは景気循環の幅にとどまるだろう。

 それに比べ中国の株式市場や為替相場は貿易戦争の影響を大きく受けるだろうし、確かに中国の国内消費は飛躍的に拡大したとはいえ、GDPの中で輸出が占める比重はまだ高い。

 米国による制裁関税賦課が現在の規模でとどまるのであればまだしも、来年になって、さらに制裁関税の範囲と税率が拡大されれば深刻な影響を受けるだろう。

 共産党政権は高い経済成長を維持することが政権の正統性の根源にあり、成長が鈍化していけば、習近平体制も不安定化しかねない。

 トランプ大統領にとっての「取引」の意味は、自分に好ましい結果を作ることであり、結果が出ないと取引とはならない。

 こうしたことを考えると、貿易戦争を収束に向かわせるためには、中国は単に米国からの輸入を拡大するだけではなく、知的財産権の保護の法制やルールに従った政府補助金への改善など、制度的な面でも米国の要求に応じざるを得ないだろう。

 米国の制裁関税賦課という一方的な措置は非難されるべきだが、もし中国の制度の改善に結びつけば、それはそれで日本にとっても好ましいことだ。

「米ソ冷戦」とは違うが
戦略的対峙はずっと続く
 だが、貿易戦争が当面、収束することは米中の対峙が終了することを意味しない。

 米中は経済・文化・人的交流など幅広く深い相互依存関係があり、「ソ連邦との冷戦」に対比されるような関係になるはずがない。

 冷戦時代には大量の核兵器で相互抑止力が働き戦争は防止されたが、西側がソ連を囲い込む政策をとっていたので相互依存関係はほぼ存在しなかった。

 しかし、今や中国と世界の相互依存関係は強い。ただ一方で、今後、米中間では「戦略的対峙」が続いていくことは間違いがない。

 北朝鮮核問題が米中の協力で解決に向かえば戦略的対峙は緩むかもしれないが、基本的には南シナ海を巡る米国の「航行の自由」作戦はさらに強化されていくだろう。

 トランプ大統領がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を放棄したのは、条約の対象になっていない中国のINFが米国にとっての脅威になりつつあるという問題意識からだろう。

 果たしてINFを巡り、米中間で軍拡となるのか、それとも相互の制限の方向に軍備管理が行われていくのか。

 こうした米中の戦略的対峙の中で、東シナ海、南シナ海や南・西太平洋で偶発的な軍事衝突が起こる可能性は短期的にも全くないとは言い切れない。

 かつて中国の人民解放軍が習近平主席のインド訪問と時を合わせてインド領に侵入したこともある。人民解放軍が完全に統制されていればよいが、そうではないケースが歴史上も散見される。

政治・経済システムの戦い
イノベーション進める力が鍵に
 長期的には米中双方の政治・経済・社会のシステムの戦いが浮き彫りとなっていくのだろう。

 中国は、建国100周年にあたる2049年を念頭に「夢の実現」を目指している。米中の経済力の差は、今の米中の成長率の差を考えれば、今世紀中葉までの約30年間に縮小し、GDPに限れば、多くの人は2035年ごろには逆転するという。

 しかしそれが直ちに国力の差が逆転するということではない。米中に限ったことではないが、おそらくこれから国力を拡大していくのに最も重要な要素は、「イノベーション」だろう。

 単に技術革新だけをいうのではなく、社会全体が新しい意識で前に進んでいけるかどうかということだ。

 この点では、米国と中国はイノベーションが起こりやすい国ということはできる。

 米国の教育は圧倒的に競争的で、企業にも選ばれたエリートたちが新たな発想で革新的考えを持ち込んでいく。シリコンバレーの歴史を見れば明らかだ。

 IT・金融からAI・自動運転・IoTへと目まぐるしい変化を遂げている。米国は自由な市場が生み出す技術革新だ。

 中国の場合も、技術革新が進むだろうが、これはいわば上からの技術革新なのだろう。政府が主導し「中国製造2025」のように先端産業をターゲットにし、リソースを集中して革新につなげていく。

 共産党一党体制の下では既得権益の抵抗も容易に排除できる国なのだろう。技術革新に限ったわけではないが、米中は「民主主義下の市場資本主義」と「共産主義下の国家資本主義」の争いとなる。

 私は、この戦いでは、個人の自由と創造性が核となり、インセンティブが働いて技術革新を進めていく民主主義社会の勝利に終わるはずだと思う。

 人間社会では自由な個人の創造力がもたらす力は大きいからだ。

 ただ一方で、民主主義社会でも昨今の状況には不安を持たざるを得ない。

 政治指導者が「ポピュリズム」と「強権主義」に陥り、短期的な国民の歓心を買おうとするあまり、個人の自由と創造性に富んだ社会を窒息させてしまえば、未来は暗い。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)
https://diamond.jp/articles/-/186134


 

習主席の中国経済運営、成長鈍化でも生産性上がる−世界的にも歓迎か
Kevin Hamlin、Enda Curran
2018年11月21日 10:56 JST
• 習氏は中国経済をより持続的な成長軌道へと緩やかに乗せる
• 6%成長でも中国は世界経済にとって最大の成長エンジンに

Photographer: Kevin Frayer/Getty Images AsiaPac
株価急落や景気減速の影に隠れているが、中国には朗報もある。年間経済成長率がこのままいけば約30年ぶりの低水準にとどまり、米国との貿易摩擦がさらに深刻化する恐れがあるにもかかわらず、高リスク融資や住宅価格を抑え込む取り組みを政府が続けている。
  中国政府は2009年や15年のような従来型の投資支出や金融緩和に頼るのではなく、的を絞った減税や投資インセンティブの付与、効率的な民間企業への与信拡大で景気の下支えを図る。習近平国家主席は途中で多少の困難があっても、中国経済をより持続的な成長軌道へと徐々に乗せようとしているのかもしれない。
New Normal
China's annual gross domestic product growth

Source: Bloomberg
  調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者、アンドルー・ポーク氏(北京在勤)は「中国指導部は本土金融システムの最も投機的な部分の一部抑制で、まず素晴らしい成功を収めた」と評価。「多くのアナリストはこうした初期の大きな成果を認識できていない」と話す。
Growth Continues
China's Gross Domestic Product Per Capita

Sources: World Bank, Bloomberg
Constant 2010 U.S. dollars
  世界経済にとっては、ペースが鈍ったとはいえ中国がより着実に成長していくなら歓迎だ。中国経済は以前に比べてはるかに大きくなっており、6%成長でもかつての2桁成長と同じくらいの需要を世界に提供できる。つまり、中国は今後も世界経済最大の成長エンジンであることに変わりはないということだ。

  モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏(香港在勤)によると、習主席の過剰抑制策による成果の1つに生産性の伸びがある。14−16年の年平均1.9%程度から今年は2.4%前後に伸びが加速しているという。生産性改善を促している主な要因は鉄鋼やセメントの過剰生産能力削減などだ。
  邢氏は債務の伸びが今年横ばいにとどまり、対国内総生産(GDP)比276%前後になると予想。19年は3ポイントほど上昇するとの見通しを示した。一方、07−15年は年平均15ポイント上昇していた。同氏は「苦労して手に入れたレバレッジや生産能力抑制の成果を当局が手放すことはないだろう」と話す。
  そんな習主席にも景気減速のレッドラインがある。20年のGDP・所得水準を10年比で倍増する公約実現には年6.2%程度の成長が求められ、年間1100万人分の雇用創出目標の達成には十分な需要が必要になっている。18年は既に雇用創出の目標を達成済みだ。
原題:China’s Economy Under Xi: Slower, Safer and More Productive(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIRLP6K50XS01?srnd=cojp-v2

 


 

輝きを失う中国AI業界

熱気に沸いた1年前とは様変わり、民間投資が急減
2018.11.21(水) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年11月16日付)

中国・新華社、世界初とする「AIキャスター」を起用
中国・浙江省で開催された世界インターネット大会で自己紹介する新華社のAIキャスター(2018年11月7日撮影)。(c)STR / AFP〔AFPBB News〕

 かつて活気に満ちていた中国の人工知能(AI)セクターが落ち込んでいる。

 投資家にそっぽを向かれ、最先端技術を世に送り出せず、収益を生むのに苦労しているのだ。

 この状況は、中国政府が2030年までにAIで世界をリードする計画を発表し、ベンチャーキャピタル(VC)投資家がバリュエーションをどんどん押し上げ、中国のハイテク大手が決算発表でAIの野望を盛んに謳っていた昨年とは様変わりだ。

 AIの進展への失望が広がっているのは中国だけではない。米国では、IBMが今夏、IBMワトソン研究所のAI旗艦部門でエンジニアをレイオフした。

 その前には、ニューヨーク大学教授(心理学専門)で、長年AIに懐疑的なギャリー・マーカス氏が、「AIの歴史が始まって60年経ったのに、我々のボットにできることは、音楽をかけ、床を掃除し、広告枠を買うことくらいだ」と嘆いた。

 だが、ハイプ(誇大宣伝)と資金流入が昨年一気に過熱した中国では、流れの反転が深い傷をもたらした。

 コンサルティング会社ABIリサーチによると、中国は昨年、民間部門のAI投資で米国を抜き、50億ドル弱の資金を集めたが、今年上半期に投資された16億ドルは米国のレベルの3分の1にも満たないという。

 「我々は一般的な用途の事例が打ち立てられた後の岐路に立たされている」

 同社の首席アナリスト、リャン・ジェ・スー氏はこう話す。

 「一般的な汎用チャットボットの開発は、銀行や建設、鉱業といった産業特有のアルゴリズムの開発よりずっと容易だ。なぜなら、それには産業の知識と産業からの同意が必要になるからだ」

 この大きな転換点が、アルゴリズムと機械学習の動力となるコンピューティング能力の不足と重なった。

 その結果残ったのが、ハイテク投資家にはお馴染みの領域だ。膨れ上がったバリュエーション、大きく誇張された宣伝文句、お粗末な収益化モデルである。

 「少しばかり過剰投資になっていると感じている」

 中国のハイテク業界に多額の投資を行っているチミン・ベンチャー・パートナーズのマネジングディレクター、ニーサ・リュン氏はこう語る。

 「多くの企業はマネタイゼーションを加速できないか、実力に見合わない過剰な能力を約束している」

 バリュエーションが急上昇するにつれてVCの意欲は衰えており、人民元資金が干上がったことでこのトレンドに拍車がかかっている。

 グーグルの中国事業を率い、現在はVC会社シノベーション・ベンチャーズを経営しているカイフ・リー氏は「もし百度(バイドゥ)かグーグルからエンジニアが5人飛び出してゼロからスタートしたら・・・その会社は今なら6000万〜8000万ドルの価値があると評価されるかもしれない。9か月前であれば1億1000万ドルだった」と言う。

 同氏はさらなるバリュエーション低下を見込んでおり、「おそらく本来、5000万ドルに満たないべきなのだろう」と話している。

 アーリーステージの投資を手がける真格基金(ツェンファンド)にとっては、機械学習その他のAI投資のピークは2012〜15年前後だった。

 「現時点では、画期的な新興AIスタートアップがそう多く見当たらない」と最高経営責任者(CEO)兼パートナーのアンナ・ファン氏は言う。

 多くの人が産業特有のアプリケーションを次の大きな飛躍と見ているものの、クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)で中国ハイテク企業への投資を率いた後、自ら創世夥伴資本(チャイナ・クリエーション・ベンチャーズ、CCV)を立ち上げたウェイ・ツォウ氏が「それなりに良い(good enough)」技術と呼ぶものには、まだチャンスがある。

 「米国の投資家は常に最先端技術に投資したがるから、彼らは常に高度なAIについて考えている。だが我々は、変化をもたらすために、こうした『それなりに良い』AIを模索している」と同氏は言う。

 その好例として、オンライン英語学習会社に対する最近の投資を引き合いに出す。

 この会社のサービスは生徒とのマンツーマンの会話には劣るものの、生徒の返答――正しい答えや間違った答え――次第で変わる十分なシナリオをカスタマイズしているため、ユーザーが本当の先生がいるように感じられるのだという。

 「これは魔法のようではない」が、授業料が1ドル未満になる。

 こうしたアプリケーションには、中国特有の問題に対処するうえで利点がある。例えば、最先端技術や大量のコンピューティング能力がなくても、英語教師の不足という問題に対処できるわけだ。

 コンピューティング能力はおそらく、中国の「AI武器庫」に欠けている最大の要素だ。中国の大手ハイテク企業が今年相次ぎハードウエアに進出した動きもこれで説明できる。

 自前のAI半導体の開発に取り組んでいる中国企業にはバイドゥ、華為技術(ファーウェイ)、アリババ集団などが含まれ、アリババは量子コンピューティングへの進出の先鞭をつけている。

 アリババは来年、最初のAI半導体を市場へ送り出したいと考えているが、中国企業がこの分野での開発を加速する能力には懐疑論もある。

 今のところ、中国のAIの大部分を動かす半導体はクアルコムやエヌビディアといった米国メーカーから調達されたもので、ソフトウエアも大半は海外製だ。

 「単純な事実は、中国の大手プレーヤーの大半が米国のプラットフォームやテンソルフローといったソフトウエアツールを使っているということだ」

 大手銀行UBSのアナリストらは最近のリポートでこう書き、中国の人気アプリがアップルとグーグルの基本ソフト(OS)上で動く携帯電話産業を例えに引いてみせた。

 中国はこの弱点を嫌というほど思い知らされた。

 イラン制裁措置に違反して製品を販売したことへの処罰として米国が通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)に対する部品販売を禁じたことが、多くの中国ハイテク企業にとっての警鐘となった(禁止措置は以来、撤回されている)。

 半導体の開発とコンピューティング能力の増強は、自給を高めるために「中国製造2025」で描き出された中国政府の目標とも合致している。

 だが、中国のAIセクターが乗り越えなければならない大きなハードルはまだ残っている。

 専門特化されたAIを開発するためには各産業がハイテク企業と協力する必要があり、ハイテク企業は処理能力を高める必要があり、スタートアップ企業はもっと現実的になる必要があるとスー氏は指摘する。

 そうなっても、まだ「スピードは従来より遅くなる。投資収益率は低くなり、投資を回収するまでにかかる時間も長くなるだろう」と警鐘を鳴らしている。

By Louise Lucas in Hong Kong

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54725


 


米国で報告された尖閣周辺の「危ない現状」
中国の攻勢がエスカレート、高まってきた軍事衝突の危険性
2018.11.21(水) 古森 義久
中国、海上演習で空母「遼寧」に戦闘機着艦
中国軍の海上演習で、同国の空母「遼寧」に着艦するJ15戦闘機(2018年4月24日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News〕

 中国は尖閣諸島を奪取するために軍事力を土台とする攻勢を強め、日本領海に艦艇を侵入させるほか、新たに人民解放軍直属の潜水艦や軍用機の投入による日本領土侵食を開始した──。

 11月中旬、米国議会の諮問機関がこんな報告を公表した。中国のこの動きは、尖閣諸島での日本の施政権を否定し日中両国間の軍事衝突の危険を高めるとともに、米国の尖閣防衛誓約へのチャレンジだともいう。

 こうした中国の動向は、最近の日本への融和的な接近とは対照的である。中国当局は米国からの圧力を弱めるために日本への微笑外交を始めている。だが、米国議会の諮問機関による報告は、実際の対日政策の攻勢的な特徴は変えていないことを明示するといえそうである。

中国公船4隻、尖閣沖の領海に侵入
2016年11月に尖閣諸島沖の領海に侵入した中国公船の「海警2502」。中国側の尖閣への攻勢はこのときよりさらにエスカレートしている。海上保安庁提供(2016年11月6日撮影)。(c)AFP/Japan Coast Guard〔AFPBB News〕

日本に対する軍事力攻勢を拡大
 米国議会上下両院の超党派の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は11月14日、2018年度の年次報告書を議会に提出した。米中経済安保調査委員会は、米中両国の経済関係が米国の国家安全保障に及ぼす影響の調査と研究を主目的とする委員会である。

 同委員会の2018年度の年次報告書は、日本に関連して「中国は、米国と日本など同盟諸国との絆を弱め、その離反を図る一方、尖閣諸島への軍事的攻勢を強め、米国の日本防衛、尖閣防衛の誓約にチャレンジしている」と述べていた。

 また、米中安全保障関係に関するこの1年間の新たな主要な動きの1つとして中国側の尖閣攻勢の拡大を挙げ、この動きが米中安保関係での米国への挑戦になると総括していた。

 さらに同報告書は、尖閣をめぐる新たな動向として中国人民解放軍の原子力潜水艦や軍用機が出動してきたことを指摘し、日本に対する軍事力攻勢の増加を強調していた。中国軍は東シナ海での軍事的存在を拡大し強化してきた、ともいう。

中国潜水艦が尖閣近海に初めて侵入
 尖閣諸島に関して同報告書の記述で最も注目されるのは、“中国と日本との軍事衝突の危険性”が高まってきたとする警告だった。その点について同報告書は次のように述べていた。

・東シナ海での中国と日本との間の緊張が高まり、事故や読み違い、対立拡大の恐れが強まった。

 同報告書は、中国側の軍事的エスカレーションによって尖閣諸島をめぐる情勢が緊迫してきていると述べる。その主な内容は以下のとおりである。

・中国側の潜水艦など海軍艦艇が、尖閣諸島の日本側の領海や接続水域へ顕著に侵入するようになった。中国は、日本の尖閣諸島の施政権を否定する方法として軍事的な要素を強めてきた。

・2018年1月、中国海軍の原子力潜水艦とフリゲート艦が、尖閣諸島の日本側の接続水域に侵入した。日本側からの再三の抗議を受けて接続水域を出た後、潜水艦は中国国旗を掲げた。中国潜水艦の尖閣近海への侵入は初めてである。国旗の掲揚は日本の施政権への挑戦が目的だとみられる。

・2018年全体を通じて、中国軍は尖閣付近での軍用機の訓練飛行をそれまでになく頻繁に実施するようになった。中国軍機は日本の沖縄と宮古島の間の宮古海峡を通り抜け、対馬付近も飛行した。中国空軍のこの長距離飛行訓練は日本領空にきわめて近く、軍事衝突の危険が高い。

・2018年全体を通じて中国の公艇は平均して毎月9隻の割で尖閣諸島の日本領海に侵入してきた。この隻数は2017年よりわずかに少ないが、潜水艦やフリゲート艦など海軍艦艇の侵入は今年が初めてとなる。全体として中国側の日本側に対する攻勢は激しくなった。

・中国の尖閣諸島に対するこうした攻勢は、明らかに日本が持つ尖閣の主権と施政権への挑戦であり、とくに施政権を否定する意図が明白である。同時に日米安保条約によって尖閣の防衛を誓っている米国に対しても挑戦を強めてきたといえる。

 以上のような中国の具体的な動向は、習近平政権が最近、日本に対してみせている融和的な姿勢とは明らかに異なっている。

 中国側の尖閣に対する動向をみるかぎり、日本領土を奪取し日米同盟を敵視するという年来の対日政策はなにも変わっていないことになる。とすると、いまの習近平政権が安倍晋三首相らにみせる友好的な態度はみせかけだけだという結論になりそうだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54723

 


米空母、1年ぶり香港に寄港 米中関係改善の兆し
2018/11/21 19:00日本経済新聞 電子版
 【香港=木原雄士】米原子力空母ロナルド・レーガンが21日、約1年ぶりに香港に寄港した。中国は9月に米海軍の強襲揚陸艦ワスプの香港寄港を拒否していたが、今回は認めた。米中は11月30日〜12月1日にアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて首脳会談を開く予定。中国が関係改善への意欲を示唆したとの見方が出ている。

 米空母の香港寄港は2017年10月以来。米海軍第7艦隊によると、随伴するイージス巡洋艦チャンセラーズビルや駆逐艦カーティス・ウィルバーも寄港。これに先立ち、中国人民解放軍の司令官らが艦隊に招かれ、戦闘機の訓練を見学した。

 カール・トーマス第5空母打撃群司令官は声明で「(香港の)文化や活力、多様性を楽しむ機会を得られてうれしく思う」と指摘。「第7艦隊はこの重要な地域のすべての国のために香港を取り巻く成長と繁栄を保つことをめざす」と表明した。寄港中にスポーツなどを通じて香港の市民とも交流する予定だ。

 中国がワスプの寄港を拒否した9月は米中貿易戦争が激しさを増していた時期だった。トランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はアルゼンチンでの首脳会談で貿易問題を協議する見通しだ。香港メディアは今回の寄港を米中の対立緩和に向けた兆しと受け止めている。

 もっとも、トランプ米政権は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、南シナ海などへの海洋進出を続ける中国をけん制する姿勢は変えていない。米メディアによると、米空軍は19日に核兵器を搭載可能なB52戦略爆撃機2機を南シナ海に飛行させた。通常の訓練の一環と説明している。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38036120R21C18A1FF1000/
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/550.html

[国際24] ロシア、インドの地対空ミサイルシステムの供給入札に勝利 プーチンは一度も「2島を引き渡す」とは言っていない プーチン語法
ロシア、インドの地対空ミサイルシステムの供給入札に勝利
c Sputnik / Sergey Malgavko
経済
2018年11月20日 23:09(アップデート 2018年11月20日 23:10) 短縮 URL 0 20
ロシアは、短距離地対空ミサイルシステムの供給入札に勝利した(入札価格15億ドル)。軍事・技術協力システムの関係筋が、通信社スプートニクに伝えた。

スプートニク日本

関係筋は、「ロシアの『イグラ』(携帯式地対空ミサイルシステム)が勝利した」と伝えた。

ロシア フリゲート艦2隻のインドへの供給契約をすでに締結 総額9億5千万ドル マスコミ
c SPUTNIK / MICHAEL KLIMENTYEV
ロシア フリゲート艦2隻のインドへの供給契約をすでに締結 総額9億5千万ドル マスコミ
先にニューデリー・テレビジョン(NDTV)は、インドの軍消息筋の情報をもとに、ロシアの国営武器輸出企業「ロスオボロンエクスポルト」が、短距離地対空ミサイルシステムの供給に最も有利な条件を提示したと報じた。入札には、欧州のSAAB社とMBDA社も参加した。
ロシアとインドは、軍事技術協力分野における最大のパートナー。インド軍の全種類の武器の70%以上がロシア製。

インドは、中国とトルコに次いでS−400「トリウムフ」を購入する3番目の国となる。ロシアの最新長距離地対空ミサイルシステムS−400は、航空機、巡航ミサイル、弾道ミサイルの破壊を目的としている。射程は400キロ、射高は30キロ。

関連ニュース

露印、S−400の供給でドルは使用せず

米制裁からの離脱は世界的トレンドになるか?
https://jp.sputniknews.com/business/201811205609108/

 

プーチンは一度も「2島を引き渡す」とは言っていない
絶対に言質を与えないよう計算されているプーチン語法の読み方
2018.11.21(水) 黒井 文太郎
安倍首相、プーチン大統領と会談 平和条約交渉の加速で合意
シンガポールでロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と握手をする安倍晋三首相(2018年11月14日撮影)。(c)Alexey DRUZHININ / SPUTNIK / AFP〔AFPBB News〕

(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)

 北方領土問題に関して、魔訶不思議な議論が起きている。

 安倍首相が「歯舞(はぼまい)群島、色丹(しこたん)島が日本に引き渡された後でも米軍基地を島に置かない」とロシアのプーチン大統領に伝えていた、と報道されている(「『歯舞・色丹に米基地置かない』安倍首相、プーチン氏に」朝日新聞)。

 その背景にあるのは、ロシア側が言及している「懸念」である。マスコミ各社によると、ロシアは2島返還の条件として「歯舞・色丹に米軍を展開させないことを条件として日本側に示している」とされている。

 しかし、これは明確に間違いだ。ロシアはこの「仮に引き渡した場合に、米軍が展開する可能性」への懸念をたびたび持ち出してはいるが、持ち出しているだけだ。「米軍が展開しない確約があれば、2島を引き渡す」などとは一度たりとも言っていない。

北方4島の位置(出所:外務省)
「2島を引き渡す」とは一度も言っていない
 そもそもプーチン政権はこれまで一度も「2島を引き渡す」とは言っていない。これまで多くの報道解説が「プーチンは2島返還で決着したがっているのに、日本側が4島一括返還にこだわってきたので、交渉が進まなかった」と伝えてきた。しかし、「プーチンは2島返還で決着したがっている」と誰が言ったのか? プーチン政権はこれまで一度も、そんなことは言っていないのだ。

 11月14日の日露首脳会談では、日本側からの要望により、「日ソ共同宣言を基礎として、平和条約交渉の加速に合意」した。つまり、日本側が4島一括返還から、2島先行へシフトしたわけだが、それならプーチン政権は喜び勇んで2島返還に応じそうなものだが、そんなことはない。

 15日、プーチン大統領は記者会見で「ロシアに国境問題は存在しない」「日ソ共同宣言には2島引き渡しの条件についても、主権についても書かれていない」と発言し、直前の首脳会談での「日ソ共同宣言を基礎として〜」合意を受けて、「2島はもう確実。あとはプラスアルファだ」と過熱する日本側を牽制した。さらに、18日にはペスコフ大統領報道官がロシア国営放送で、「自動的に引き渡すことは絶対にない」と断言した。

 こうしたロシア側の発言を受けて、首脳会談直後は前述したように「2島はもう確実。あとはプラスアルファだ」といった論調で過熱報道していた報道各社も急速にトーンダウン。「ロシア側はすんなり2島引き渡すことはなさそうだ」との解説に移行している。

 ただし、冒頭に記したように、ロシア側は引き渡し後の米軍の展開に懸念を示しているため、それがロシア側の後ろ向きな対応の原因だと短絡的に解説している論調が多い。しかし、繰り返すが、プーチン政権はこれまで一度たりとも「米軍が展開しないのであれば、2島を引き渡す」という言い方をしていない。「引き渡す」という言質をとられることを、明らかに意識的に回避しているのだ。

 日本政府、そして多くの日本のメディアが陥っているのは、「自分に都合よく考える」という情報分析の誤謬だ。つまり、「ロシア側が日ソ共同宣言を認めているのだから、2島は引き渡すつもりに違いない」との思い込みである。

重要なのはプーチンの「具体的な約束」
 こうした問題では当然、相手には相手の思惑があり、それを推測しなくてはならない。それにはまず、実際に相手がどういう言動をしてきたかを分析することが重要だ。

 プーチン政権の語法には、特徴がある。必ず言い逃れる道を確保した言い方をし、絶対に言質をとられることは回避するのだ。たとえば、「日ソ共同宣言を基礎として〜」という言い方は、「基礎とはするが、それをそのままやるとは言っていない」と言い逃れが可能だ。「条件が書かれていない」との言い方は、「平和条約締結後すぐに引き渡すとは書かれていない」と言い逃れられる。「主権についても書かれていない」との言い方はもちろん「領土を譲るとは書いてない」だろう。しかもプーチン大統領はあくまで過去の文書についての評価という形式で話しており、現在のロシア政府の政策表明とはならないように注意深く話している。

 もともと「プーチン政権は2島返還で決着したがっている」という幻想の始まりは、2001年のイルクーツク声明での「日ソ共同宣言が、両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認」という文言にあった。だが、これも「交渉プロセスの出発点」としているだけで、「共同宣言のとおりにやるとは言ってない」という理屈になる。

 ロシア側が「米軍の展開を懸念」してみせているのも、懸念してみせただけで、仮にその懸念が払拭させても、ロシア側からすれば「それはそれとして、懸念が払拭されれば引き渡すとは言っていない」ということになる。

 とにかく重要なのは、プーチン政権が「日本に具体的に何を約束したか」だけである。日ソ共同宣言を基礎としても、「引き渡す」とは一度も言っていない。その意味するところは明らかだ。「引き渡す」との約束は絶対にしないということだ。

 ロシア政府は今でも正式に「4島はロシアの領土であることは疑いない」との立場を崩していない。2島の引き渡しとなれば、その政策の変更を意味するが、ロシア政府からそうしたアナウンスは全くないし、その兆候すらない。ロシアでも当然、領土を1ミリでも外国に引き渡すとなれば、大きな論争になるが、その兆候もない。

 15日のプーチン大統領の発言からも、ロシアが2島の主権を放棄しないことは明らかだ。主権を放棄せずに、領土を外国に譲り渡すなどということはあり得ない。ペスコフ大統領報道官は「妥協はあり得るが、国益に反する妥協はない」と断言しているが、ロシア側が出してくる妥協案はせいぜい「日本企業への優遇」くらいのものだろう。

日本の報道が「空振り」を繰り返す理由
 こうした「プーチン政権が一度も2島を引き渡すと言っていない事実を直視しない」ことは、日本政府の情報分析の致命的な誤謬(安倍政権だけの問題ではなく、歴代政権全部の)だが、報道各社の論調も同じ誤謬が多い。それには理由がある。日本の報道各社は、日露交渉という相手のある問題でも、情報のほぼ全てを日本政府から得ているからだ。

 ロシア側がどう考えているのか、ロシア当局側を取材して「裏取り」すべきだが、それがされずに日本政府側の一方的情報だけで報道・解説されている。これは実はもう四半世紀以上、繰り返されてきたパターンである。これまで何度も「領土交渉進展か!」と報道され続けてきたが、周知のとおり1ミリも動いていない。それらの報道の「空振り」は、いずれも日本政府側情報だけに頼り、ロシア当局側への裏取りが疎かにされてきた結果だ。

 ロシアが最も経済的に破綻していたゴルバチョフ時代末期からエリツィン時代にかけ、筆者はモスクワに居住して当時のロシア政官界を取材したが、領土をカネで売るなどということは、ロシア政官界では論外の話だった。「相手は困窮しているので、北方領土をカネで買えるだろう」などと言っていたのは日本側だけだ。

 筆者はゴルバチョフ時代から何度も「ロシア側には領土を還す気はない」という記事を書いてきたが、日本では政府発情報による期待を煽る報道が繰り返された。現在もその延長にある。この北方領土問題については、「過去には解決(返還)のチャンスがあったが、今は米露の関係悪化によって難しくなった」との論調もあるが、ロシアの歴代政権の過去言動を検証すると、そうではなく、「これまで一度もロシア側は1ミリも返還など考えたことはなかった」とみるべきなのだ。

 しかし、そろそろ日本政府情報(当然、政治的な思惑がある)だけに頼らず、ロシア側の言動を検証した報道を期待したい。「ロシア政府は2島引き渡しの約束を意図的に回避している」という事実がある以上、「2島はもう確実。あとはプラスアルファ」「交渉のポイントは米軍を展開させない確約」など、2島引き渡しを前提とした議論は、少なくともロシア側から「引き渡す」という確たる言葉が出ない間は、いずれも見当外れではないだろうか。

「ロシア側は日本の経済支援を喉から手が出るほど欲しがっており、そのために日本との平和条約締結を熱望しており、小さな2島ぐらいは差し出すはずだ」との見方もあるが、そうした見方はあくまで想像であり、ロシア側は決してそうした発言をしていない。仮にロシアの真意がそうなら、今回などはロシア側が積極的に交渉への意欲を示し、具体的な条件を明示して日本側に打診してくるはずだが、実際には煙に巻くようなコメントで領土交渉の進展を先延ばしにしている。ロシア側からこれまで積極的に言ってきたのは、9月に提案された「前提条件なしで2018年末までに平和条約締結を」、つまり、領土の話を抜きにした平和条約締結という話だけだ。

 こうしたロシア側の言動から推測されるのは、ロシアは単に日本と敵対関係にならないように、日本側の原則的問題である北方領土問題については「期待だけを持たせて手懐(てなず)けておく」「領土の原則的な問題に関わらない部分で関係改善を進め、幾ばくかの経済協力を引き出す」政策を続けるということだろう。その間は、少なくともロシア側には外交上も経済上も一切の損失はない。実際、これまでの四半世紀が、それを裏付けている。

 なお、この2島返還への期待がいかに実体のない幻のような話なのかは、下記の拙稿にその根拠を提示しているので、ぜひご参考願いたい。5年前の論考だが、その後もこれを覆す情報は出ていない。

◎「『プーチンは2島返還で決着したがっている・・・』根拠なき定説はなぜ生まれたのか」(2013年5月7日)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37716

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54717
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/588.html

[国際24] 世界から「先進国であり得ない」と蔑まれた韓国 強硬な米ユダヤ系団体が防弾少年団を大目に見た裏に垣間見える軽蔑
世界から「先進国であり得ない」と蔑まれた韓国
強硬な米ユダヤ系団体が防弾少年団を大目に見た裏に垣間見える軽蔑
2018.11.21(水) 高濱 賛
テレ朝、BTSのMステ出演見送り 原爆投下デザインのTシャツ波紋
韓国のヒップホップボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」。米ラスベガスにて(2018年5月20日撮影)。(c)LISA O'CONNOR / AFP〔AFPBB News〕

「被害者を傷つける意図はなかった」
 世界的人気を誇る韓国の男性7人音楽グループ「BTS」(防弾少年団)が、これまでにナチス親衛隊(SS)の記章をあしらった帽子を被って写真を撮ったり、原爆のきのこ雲をプリントしたTシャツを着てパフォーマンスしていたことが露呈したのは11月11日。

 これは大変なことになるぞ、と思った矢先、世界最強の米ユダヤ系団体「サイモン・ウィゼンタール・センター(SWC)」は、直ちに強烈な抗議文を発表した。

 SWCは、BTSの若者への抗議というよりも彼らを陰で演出してきた所属事務所「ビックヒット・エンタープライズ」、つまり興行主に向けて脅しをかけた。

 米エンターテイメントを相手に商売をしている韓国人興行主は、ユダヤ系米国人の怖さを知っているはずだ。

 13日、謝罪の書簡をSWCに送り、平謝りに謝った。これにて一件落着したかにみえる。

(その後SWCは何らコメントを出していない。謝罪したから不問に付したということなのか)

 一方、日本では、テレビ朝日がBTSの番組出演を見合わせたり、NHKの紅白歌合戦へのBTS出演はなくなった。

 BTSを批判したブログにファンの女子大生が反発したブログを書いた。それに怒った人物が彼女の通う大学に脅迫メールを送りつける事件も起こっている。

 余波は続いている。一方、韓国メディアは続報をためらっている。

 過去にも日本の雑誌『マルコポーロ』がホロコースト存在否定説を掲載してSWCの逆鱗に触れたことがある。

 その際には、雑誌側が直ちに謝罪したものの許されず、編集部全員の『洗脳教育』(つまりホロコーストの事実を徹底的に頭に叩き込めという思想教育)まで課された。

 最終的には同誌は廃刊に追い込まれた。今回のBTSのケースとは大きな違いがある。

米国で一応不問に付された理由は何か
 その理由は何か。これまでナチスに関する報道を研究してきた主要シンクタンクの研究員の一人は筆者にはこう指摘している。

 「泣く子も黙るSWCが、BTSの出した1通の謝罪書簡で怒りの矛先を収めた理由は何か。BTSが世界のアイドルだからか」

 「国連ユニセフに巨額の寄付(2017年には反暴力キャンペーンのために140万ドルを寄付)をしているからか。あるいは国連親善大使だからか」

 「おそらく、それらすべてを総合的に勘案したからだろう」

 「ネオ・ナチスの動きは欧米で今や顕在化している。万一、BTSにかつて日本の雑誌にやったような『洗脳教育』でも強いれば、バックファイアが起こりかねない」

 「もともとアジア諸国と欧米とではホロコーストに対する一般庶民の認識には大きな隔たりがある」

 「それを今回蒸し返えせば、『歴史戦争』ににまで発展する可能性もあったはずだ」

韓国や台湾は「ホロコーストには無関心」
 スウェーデンに本部を置く「Institute of Security and Develpement Policy」のエリオット・ブレナン氏*1は、アジア諸国の一般庶民のナチスやホロコーストについての常識と、欧米のそれとは大きな隔たりがあるとしている。

*1=ブレナン氏はアジア全体の社会、文化について現地調査研究し、欧米の文化と比較研究してきた専門家である。

 ブレナン氏はこう指摘している。

 「ナチスに対するアジア人と欧米人との認識には大きな隔たりがあるのは、第2次大戦史観が異なるためだ」

 「ここ10年、韓国や台湾、インドネシアではナチスの服装をしたり、SS帽子(ナチス親衛隊の帽子)を被ったりしてパフォーマンスやパレードを行う傾向が目立っている」

 「その理由は、アジア人にとって第2次大戦はナチスとの戦いではなく、日本帝国主義との戦いだという認識が植えつけられてきたからだ」

 「小中高ではナチスについてはほとんど教えていない。だから若者はよほど教育程度が高くない限り、ナチスやホロコーストについては知識がない」

 「特にエンターテインメント業界などで働く人にはナチスに対する正確な認識など望む方が無理だ」

 「若者の間にはナチスやSS帽子は特別な意味はない。アジアの若者にとっては反体制的であり、現状打破的でクールで格好いいものと受け取られている」

 「いわゆる『パンクカルチャー』(パンク・ロックを中心に発生したサブカルチャー)なのだ」

 「韓国では2014年にもポップグループの『Pritz』がSSを連想させるブラックスーツを着て歌い、踊るビデオを製作して欧米では問題になったことがある」

 「そうした背景にはナチスを知らない国際的非常識が韓国には存在していることを意味していた」

参照=https://www.cnn.com/2018/11/13/asia/bts-simon-wiesenthal-complaint-intl/index.html

ナチスの犯罪を再び取り上げたオライリー氏
 今回のBTS騒動の背景には恐らく、ブレナン氏の指摘するアジアにまかり通っている「ナチス無知シンドローム」がありそうだ。

 欧米では今なお、「ナチス・ハンチング」(ナチスの犯罪者捜索作戦)は現在進行中だ。米国内では保守、リベラルといった政治スタンスとは無関係に有無を言わせぬくらいのナチス観が定着している、学校でも徹底的に叩き込まれる。

 いかなる理由があれ、ナチスは許されないのだ。

 13歳の時に両親とともに米国に移住した韓国人大学生は筆者にこう述べている。

 「韓国ではナチスとかホロコーストのことなど学校で学ばなかった。米国に来て学校では耳にタコができるほどナチスの戦争犯罪について教えられた」

 中間選挙を終えて、政治の季節が通り過ぎた今、ベストセラー争いのトップに躍り出たのが、書けば必ず売れる保守派テレビの司会者兼作家のビル・オライリー氏の新著だ。

Killing the SS: The Hunt for the Worst War Criminals in History By Bill O'Reilly and Martin Dugard Henry Holt and Co., 2018
 タイトルは『Killing the SS: The Hunt for the Worst War Criminals in History』(ナチス親衛隊をせん滅せよ:史上最も極悪の戦争犯罪者を追いかける)だ。

 同氏が毎年のように上梓してきた『Killing』シリーズの第12冊目だ。同氏はナチスについて2015年にも1冊書いている。

 その時のタイトルは『Hitler's Last Days:The Death of the Nazi Regime and the World's Most Notorious Dictator』(ヒトラー最後の日々:ナチス政権の死滅と世界最悪の独裁者の死)。これもベストセラーになった。

 本書は、この本の続編だ。イスラエル政府をはじめ欧米諸国政府が血眼になって探している「ナチス残党捕物実録」とも言える。

 欧米人はナチスの残虐行為については学校で徹底的に教え込まれている。だがここ数年、欧米ではネオナチスの動きが台頭している。

 頭では分かっていてもナチスの犯した犯罪に対する認識は薄れ始めているのだろうか。

 オライリー氏には、「ナチス健忘症」になりかけている現代人のねじを巻こうとする意図があるのだろう。

母親に赤ん坊を抱かせて銃殺したナチス
 筆者がこの本を読んでいてショックを受けたくだりがある。

 かってアウシュビッツ収容所で実際にユダヤ人を殺害した元ナチスの被告と検事との質疑応答だ。

検事 君は生まれたばかりの赤ん坊も殺害した。どのように殺したのか。

被告 母親に赤ん坊を抱くように命じました。そして座らせて母親の胸に向けて銃弾を撃ち込みました。

検事 なぜだ。

被告 そうすれば赤ん坊は泣きませんし、銃弾1発で母親も赤ん坊も殺せたからです。弾が節約できます。

米政府やバチカン、モサドも実はナチスを助けていた
 こうした事例を挙げながら、オライリー氏が本書で明らかにしている事実の中で興味深いのは以下の点だ。

 1つ目は、米政府がナチスの残党を捜査するイスラエル政府や関係組織に積極的に協力しなかったところか、残党を諜報部員として雇っていた時期があったという事実だ。

 その実例として挙げているのが、「リオンの虐殺者」の異名を持つクラウス・バルビー元ナチス親衛隊員を対ソ・スパイに使うために雇っていたケースだ。

 2つ目は、ローマ法王庁、特にピウス12世のナチス容認外交についてだ。

 同12世は1933年、ヒトラー政権下のドイツとライヒスコンコルダート(政教条約)を結び、ナチスにお墨つきを与えてしまった。

 理由は、ドイツ国内のカトリック信徒の保護やカトリック系学校や施設を迫害から守るためだった。

 しかし、ナチスのユダヤ人迫害を欧州本土に拡大する中でも批判せず、「不偏」を貫いた同12世の対応は許しがたいというのがオライリー氏の主張だ。

 3つ目は、ナチス親衛隊特務部隊員だったオットー・スコルツェニーについてだ。

 スコルツェニーは、イタリアのベニート・ムッソリーニ首相(当時)を救出、1944年、ナチス郡の最後の大反攻となったアルデンヌ攻勢の陣頭指揮を執った男だ。

 米政府をはじめ連合国は、スコルツェニーを戦後も捕らえ切れず、南米に元SS隊員たちによる「基地」を作られてしまった。

 この「基地」を拠点に南米に次々と反共独裁政権を樹立させた立役者にしてしまった。

 それだけでなく、イスラエルの諜報機関モサドはスコルツェニーを同機関の一員として徴用したというおまけまでついている。

 本書を読み込んだ歴史家やナチス研究家たちは異口同音に「別に驚くべき新事実が出てきたわけではない」という点は一致している。

 だが、オライリー氏という保守派大物ジャーナリストが今なぜ、「ナチス・ハンター」について世に問おうとしたのか。

 アマゾン・ドット・コムの「読者感想」には、馬に食わせるほど称賛するコメントが殺到している。

 「平易な文章で感情的にならずに淡々とナチスが何をやったかについて改めて世間に伝える教育的な1冊だ」(ユダヤ系米人の高校教師)

 「テレビで正論を述べるオライリー氏が書いたナチスものだけに親しみを感じる。子供たちの教科書にすべきだ」(共和党支持者の主婦)

「ナチスの紋章には悪臭と血が染みついている」

 最後にBTS騒動に戻る。

 何人かの米国人に意見を求めた。その1人、ロサンゼルス在住のホロコーストを逃れて米国にたどり着いた高齢のユダヤ人女性(元大学教授)は筆者にこう語った。

 「SSの記章や軍服にはナチスの蛮行の悪臭と血が染みついている。だからそれをどこの国の若者であれ、クールだなどと身に着けていることは絶対に許せない」

 「先進国の若者であるならばなおさらだ。ナチスについてだけではない。きのこ雲の写真をTシャツに印刷しておどけるなんて・・・」

 「指摘されて初めて謝罪するなんて許されない。そういう若者がいる国は決して世界から尊敬などされない」

 「その国の大統領がいくら世界平和だとぶっても誰も信用しない。世界から相手にされるわけがない」

 もっと怖いのは、そうした軽薄な世界観しか持たない若者のパフォーマンスがこれほど世界でもてはやされていることだ。

 少なくともハリウッドの俳優たちにはその程度の節度も常識もある。これも欧米とアジアとでは歴史観が違うからなのだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54721
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/589.html

[経世済民129] ゴーン容疑者の高額報酬、世界の自動車大手首脳には見劣り ゴーンにトップを2度打診したフォード年2400万ドル

#単に金が欲しいだけなら移っていれば良かった


ゴーン容疑者の高額報酬、世界の自動車大手首脳には見劣り
Neil Weinberg、Anders Melin
2018年11月22日 8:11 JST
ゴーン容疑者の報酬総額、15年までの5年間で年平均約17億円
トヨタとホンダ上回るも、フォードやFCAのトップを下回る

カルロス・ゴーン容疑者 Photographer: Misha Friedman/Bloomberg
逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者は日産自動車のトップを務めている間、日本の他社トップと比べてはるかに多くの報酬を稼いだ。だが、世界の自動車大手首脳には見劣りする。

  報酬虚偽記載の疑いが指摘されている2015年までの5年間、ゴーン容疑者の報酬総額は年平均1500万ドル(約17億円)前後だった。これは日産のほか、フランスのルノーが支払った額も含む。

Ghosn’s Compensation Atop Nissan-Renault

Source: Company filings

Note: Mitsubishi Motors Corp. didn't report compensation payouts for Ghosn prior to 2018.

  ブルームバーグがまとめたデータによると、この報酬はトヨタ自動車とホンダが同期間中に首脳に支払った額のほぼ10倍に相当する。だが世界の自動車大手の報酬は巨額で、給料に加えて株式も付与される。ゴーン容疑者にトップ就任を2度打診した米フォード・モーターは、最高経営責任者(CEO)に対して同期間中に年2400万ドル支出。フィアットとクライスラー・グループの合併をまとめ上げたフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の故セルジオ・マルキオンネ氏は、この合併の功績もあり年4000万ドル近い報酬を得ていた。

  東京地検特捜部は、ゴーン容疑者が全ての収入を有価証券報告書に適切に記載していたか、私的な支出に会社の資金を流用していなかったか調べている。同容疑者はパリや東京、ブラジルなどでの住宅のほか、16年にはベルサイユ宮殿で結婚披露パーティーを催すなど豪華な暮らしぶりで耳目を引いたが、こうした費用を実質的に会社に負担させていたのではないかとの疑いが浮上している。

  ゴーン容疑者は逮捕以来、容疑についてコメントできない状態に置かれている。

Ghosn’s Compensation Atop Nissan-Renault

Source: Company filings

Note: Captures pay for the top executive on an as disclosed basis from company filings valued in USD based on currency conversion rates as of Nov. 20, 2018. Ford includes pro-rata payouts for 2014 and Fiat-Chrysler values are for Fiat SpA from 2011-2013. Mitsubishi Motors Corp. didn't report compensation payouts for Ghosn prior to 2018.

原題:Ghosn Under Scrutiny: How His Pay Stacked Up, How He Lived(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIK2TM6JTSE801?srnd=cojp-v2

日産が午後4時半に取締役会開催、ゴーン氏解任の有無発表へ
古川有希、鈴木偉知郎
2018年11月22日 12:41 JST
過少記載の報酬額は今後より大きな金額が明らかになる見通し
日産側がゴーン容疑者に提供した住居はNYと東京を合わせ計6カ所
日産自動車は22日午後4時半に臨時取締役会を開催し、逮捕された同社会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の代表取締役と会長職の解任などを提案する。終了後に解任の有無や会長代理の選任などについて発表する予定。

  同社関係者2人が匿名を条件に明らかにした。取締役会では、不正の実態について調査する第三者委員会の設置についても決定するが、メンバーなどの詳細については今後詰める。また、同社は、今後開催する株主総会でゴーン容疑者の取締役解任についても提案する考えだが、日程については今後、仏自動車大手で筆頭株主のルノーとの調整が必要になることから未定だという。


カルロス・ゴーン容疑者Photographer: Junko Kimura-Matsumoto/Bloomberg
  東京地検特捜部は19日、ゴーン容疑者とグレッグ・ケリー容疑者を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕した。同地検によると、2011年3月期から15年3月期までの5年間で、報酬約99億9800万円を約49億8700万円と約50億円少なく記載した有価証券報告書を提出していた。

  同関係者によると、過少に記載した額は現在公表されているよりも膨らむとの見方を示した。また、ゴーン容疑者による不正行為は会社の私物化だったと指摘。内部告発はクーデターではなく不正を正すのが狙いだと強調した。

  さらに、日産側が負担していたゴーン容疑者の住宅は、リオデジャネイロ、ベイルート、アムステルダム、パリの4カ所だけでなく、ニューヨークと東京も合わせて計6カ所だったことも明らかにした。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-22/PIKSG16KLVR401


 

ゴーン長期政権、チェックできないなら「企業統治上問題」と金融庁長官
谷口崇子、中道敬、萩原ゆき
2018年11月22日 5:00 JST 更新日時 2018年11月22日 14:51 JST
ガバナンスコード、「機能していなければ絵に描いた餅」と点検も
内部通報制度は「ガバナンス確保の重要な手段」と評価
日産自動車のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕された事件について、金融庁の遠藤俊英長官はゴーン容疑者が長期間経営トップを務めた結果、経営陣が「きちっとチェックできなくなったという事態がもしあるなら企業統治上問題がある」との考えを示した。


カルロス・ゴーン容疑者Photographer: Junko Kimura-Matsumoto/Bloomberg
  遠藤長官は20日のブルームバーグとのインタビューで、企業統治の指針であるコーポレートガバナンスコードが求める独立社外取締役のような「形を整備しても機能していなければ絵に描いた餅だ」と断言。フォローアップ会議などで、コードに則って形を整備した上場企業の統治が実質的に機能しているのかどうか、点検する可能性に言及した。

  金融庁は株式市場における企業価値向上の観点から企業統治の浸透に注力。東証とともにその指針となる同コードの策定を主導しているが、東芝の不正会計問題やスルガ銀行の不正融資問題などスキャンダルが後を絶たない。

  日産自の西川広人社長は19日の記者会見で、ゴーン容疑者について「長年実力者として君臨してきた弊害が大きい」とし、「ゴーン統治の負の側面」と批判。役員報酬の過少記載や会社資金の流用などの問題に関して「権力が集中して問題が起きても検知できない弱点があった」として、ワンマン体制の中で生じたとの認識を示していた。

  一方、今回の事件は内部告発が端緒となっており、遠藤長官は「内部通報がガバナンスを確保するための重要な手段、契機となりうることを改めて確認できた。経営に対する一つのけん制になる」と評価した。内部通報に関しては、同コードの中でも上場企業に対し「従業員などが不利益を被る危険を懸念することがないよう、内部通報の適切な体制整備を行うべきだ」と求めている。

高額報酬
  日本の上場企業は、報酬が1億円以上の役員の氏名や金額を個別に開示する義務がある。10年の内閣府令改正で金融庁が制度を導入した。東京地検の発表によると、ゴーン容疑者らは府令改正後間もない2011年3月期から15年3月期までに、報酬合計約99億9800万円を約49億8700万円と虚偽記載した有報を提出していた。

  同容疑者が役員報酬を過少記載したのは高額報酬批判を避けるためとの見方について、遠藤長官は、仮にそれが事実であれば「どれだけ日産の立て直しに対して貢献してきたのかということをきちっと説明すべきであって、そういった議論、批判を避けるために金額を開示しないというのは適切な対応とは思えない」と述べた。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、グローバルな自動車メーカー経営者の中では、同容疑者の報酬は特別高額な訳ではない。米独立系運用会社Tロウ・プライスのアーシバルド・シガネール日本株式運用部長は、「日本の経営者に対する報酬が少なすぎるのは間違いない。グローバルな投資家は、透明性がありパフォーマンスとの相関性をきちんと説明できさえすれば、企業価値を上げてくれる人にお金を払うことに違和感はない」と述べた。 

(第6−8段落を追加しました.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-21/PIIN8L6K50YE01
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/568.html

[経世済民129] ルノー・日産・三菱連合は崩壊に向かう公算大 EVが減速する中国、加速する欧州 積極的なEV投資にはリスクも

ルノー・日産・三菱連合は崩壊に向かう公算大

2018.11.22(木) 須田 慎一郎

検察を巻き込んだクーデターで日産が狙うルノー離れ

日産は東京地検との"共同作戦"でゴーン氏排除に踏み切った
                (ジャーナリスト・須田慎一郎)

 11月19日の月曜日。日産のカルロス・ゴーン会長と、グレッグ・ケリー代表取締役が東京地検特捜部によって逮捕された。速報を見た瞬間、「まさか、何かの間違いでは」と思ったほど、寝耳に水の逮捕劇だった。

 ただ、逮捕日直前の週末くらいから、東京地検に妙な動きがあるという情報はキャッチしていた。地方から続々と応援部隊が集結しているというのだ。こういうときにはただでさえ口の堅い検察関係者も一層堅く口を閉じ、内部から情報が漏れてくることはまずない。「近々、何か大きな案件に取り掛かろうとしているのか」と推測はしていたが、その矛先がまさか日産に向いていたとは想像していなかった。

針の穴に糸を通すような立件手法
 カルロス・ゴーンとグレッグ・ケリー。百戦錬磨の経営者と弁護士出身のビジネスエリートである2人に、一切の動きを悟られないように、東京地検特捜部は相当慎重な捜査と内部調査を重ねてきたのだろう。

 逮捕のタイミングもそのことをよく表している。海外に出ていた2人が、月曜日にプライベートジェットで帰国したところを見計らって地検が接触し、事情を聞くという段取りを踏んでいる。ゴーン、ケリー両氏に悟られないようにすることを何よりも最優先させた捜査だったと言えるだろう。

 ただし、立件の仕方を見ていると、針の穴に糸を通すような、かなり難しいやり方をしている。

 今回、ゴーン氏らの行為で問題視されているのは所得の過少申告だ。過少申告なら本来は所得税法違反、つまり「脱税」で立件するのが一番オーソドックスなやり方だ。だが、最初の段階でそれはできなかった。というのも今回の件については、国税が先に動いて検察が受けたという案件ではない。入り口から逮捕まで特捜部主導でやっている。日産社内からの内部告発を受けて、日産サイドの全面協力を得て情報を提供してもらって特捜部が立件したわけだ。

 その過程の中で司法取引が行われ、実際に「所得隠し」の実務を担当した日産社内の社員・役員に関しては、刑事的責任を問わないということを前提に情報を出してもらってきた。

日産のゴーン会長逮捕、報酬過少申告疑い 取締役会に解職提案へ
【写真】会見では西川廣人社長はクーデター説を否定したが・・・(2018年11月19日撮影)。(c)Behrouz MEHRI / AFP〔AFPBB News〕

 その捜査の中で、最も確実に立件でき、事件の入り口として最も適当だと判断されたのが、有価証券報告書虚偽記載という「金融商品取引法違反」だったのだろう。

 もちろんこれは全くの“別件逮捕”というわけではないが、あくまでも形式的な犯罪だ。

 つまり、もしも「意図的に所得を隠していた」ということであれば「脱税」による所得税法違反だし、「本来受け取るべきでない報酬であるにも関わらず受け取った」ということであれば、会社に損害を与えたということで「特別背任」による商法違反も成り立つ。場合によっては「横領」という形にもなる。

 いずれにしても本来なら、脱税や特別背任、横領などを問うべき案件なのだが、今回東京地検は、「まずはやり易い金商法違反でとりあえず身柄を確保し、取り調べをしかりやって解明していこう」という方針を立てて、形式犯のところから入ったのだ。

 全容解明のためには、今後の捜査で「本人たちがどの程度の意識をもってやったのか」というところをどこまで詰められるかが焦点になる。

ゴーン氏の刑事責任を追及せざるを得なかった事情
 逮捕容疑の中身をもう少し詳しく見てみよう。

 ゴーン氏の報酬として総計でおよそ50憶円、有価証券報告書で過少に記載されていた、ということであるのだが、報道を見て、もしかしたら一般の新聞読者やテレビの視聴者の中には、キャッシュ、あるいはキャッシュに近い株券や債券がゴーン氏の懐に入ったと思っている人もいるかもしれない。

 そうではない。日産が、オランダに設立した子会社に投資資金として回ってきたお金を使って、事実上、ゴーン氏専用の邸宅を、レバノン、ブラジル、オランダ、フランスの4か所で購入していて、それをもっぱらゴーン会長及びそのファミリーが利用していた。日産の金でゴーン会長の邸宅を買ったわけだから、事実上、ゴーン会長に対する形を変えた報酬ということになる。

 報道ベースではまだ判然としていないが、これらの物件の所有者が誰になっているのかも一つの焦点になる。日産の金で購入した邸宅をゴーン氏にあげたということになれば、その購入額が丸ごと報酬になる。あるいは物件の所有名義が日産になっていれば、利用した期間に応じ、本来払うべきだった賃料の合計が報酬となる。

 いずれにしても、購入資金なのか賃料なのか、その合計がマックスで50億円ほどになるということだ。その額が有価証券報告書に記載されていなかったということであり、ゴーン氏の懐や銀行口座に50憶円ほどのキャッシュが転がり込んだ、というわけではない。

 そういった意味では、日産側の「被害額」はまだ正確には確定していないと言える。脱税は金額の確定がないと立件できない。特別背任も、会社が被った損害額が確定しないと立件できない。横領も同様だ。つまりいずれにしてもそうした犯罪を立件するためには金額の確定が必要となってくる。それゆえに入り口の段階では、その種の犯罪を逮捕容疑にするのは難しかったのだろう。

 ところが有価証券報告書の虚偽記載は、記載された内容に間違いがあったら立件できる。だから特捜部はここを入り口に定めたのだ。

 先ほど、「針の穴に糸を通すような立件の仕方だ」と書いたのはそのためだ。ゴーン氏が会社を私物化したことはまず間違いないので「無理筋な事件だ」とは言わないが、少々危うい罪の問い方をしているのは間違いない。

 そうまでしてゴーン会長の刑事責任を追及しなければならなかった理由が日産、あるいは東京地検にはあるはずだ。

ルノー・日産・三菱連合は崩壊へ!?
 恐らく日産の経営陣の多くは、ルノーによる日産統合を画策している上、会社の私物化・専横が目に余るようになったゴーン氏を何とか排除したいと考えていた。しかし、取締役会で解任動議を提案するという「クーデター」を起こしても、仮に万一それが成功しても、何らかの逆襲を食らう恐れもあった。そこで、ウルトラCを狙って、捜査当局の協力を仰いでゴーン排除に動いたというのが今回の一件の本質ではないかと筆者は睨んでいる。言うなれば、特捜部を巻き込んだクーデター劇だ。

 もちろんゴーン氏側に何も問題がなければ検察が動くこともなかったろうが、「会社私物化」の明確な証拠がそこにあった。検察としても、日産側に協力する大義名分が立つという判断が下されたのだろう。

 今後の捜査についても触れておこう。入り口としては金融商品取引法違反から行くにしても、いずれは脱税、あるいは特別背任、横領というところでの立件を目指していくはずだ。

 これまでのセオリーを踏まえて予測するならば、金融商品取引法違反で捜査をし、次に特別背任あるいは横領について捜査し、そこで不正に得た報酬の金額が確定できれば、「それは報酬に当たるのだから本来は納税しなければならなかった。あなたは脱税しています」ということで、最後は脱税事件として立件することになるだろう。

 本来の目的ではない形で子会社が使われた、会社のお金が半ば私物化された、その状況を隠蔽しようとしてグレッグ・ケリーが日産社員に強い指示を与えていた、ということがこれまで報道されている。これらが事実認定されれば、恐らく裁判官の心証は真っ黒になる。ゴーン、ケリーの両氏が刑事罰を免れることは、現時点では極めて難しいと言わざるを得ない。

 残された最大の問題は、ルノーと日産の関係がどうなって行くか、だ。ルノー、日産、三菱自動車のような企業連合の場合、普通だったら持ち株会社を設立し、その下に3社がぶら下がるという形をとることが多い。持ち株会社が、傘下企業間のアライアンスや経営資源の適正配分、事業再編のハンドリングをするほうが効率的だからだ。

 ところがルノー・日産・三菱自動車の3社連合では、そういった組織的な司令塔がない。人的な司令塔としてゴーン氏が3社の会長を兼ねるという形で束ねていた。「ルノー・日産・三菱アライアンス」というパートナーシップもあるが、これとて代表はゴーン氏だ。つまり3社連合はゴーン氏が一人でまとめ上げていた連合体なのだ。

 その人物が逮捕され、経営の表舞台から消えてしまった。新たに3社の会長を兼務するような人物が出てくるだろうか。その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

 ルノーは日産の大株主であるから、「ルノーから新しい会長を派遣します」という申し出があるかもしれないが、経営規模ではルノーを上回る日産が、唯々諾々とルノーの要求に応えるとも思えない。3社連合は瓦解の方向に向かう可能性高いと思う。

 果たして日産の西川廣人社長はルノーとどう渡り合うのか。クーデター劇の第二幕はもう始まっている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54749


 


EVが減速する中国、加速する欧州
技術経営――日本の強み・韓国の強み
積極的なEV投資にはリスクも共存
2018年11月22日(木)
佐藤 登

(写真=shutterstock)
 10月11日に「トップブランド参入で超激戦を迎えるEV市場」というタイトルのコラムを記述した。そこでは、電気自動車(EV)で先行してきた日産自動車、三菱自動車、米テスラ、そして中国ローカルメーカーに追随して、日米欧のトップブランドが本格参入する構えを打ち出していることで、EV市場は超激戦の競争を強いられることを述べた。
VWの抜きんでた電動化投資
 11月18日の日本経済新聞は、独フォルクスワーゲン(VW)がEV企業へ変身する準備に入ったことを報じた。それによると、同社は2023年までの5年間で、電動化の分野に約3兆8500億円を投資するという。25年には欧州生産分の17〜20%をEVにするという積極的なEV路線をとる。
 電動化に加えて、自動運転とデジタル化の3分野に約5兆6000億円を投資するとのことなので、電動化だけの投資は全体の約70%を占めることになる。これまでの投資計画から比較すると30%の投資増に相当する。
 この投資とは別に、中国での電動化対応として5000億円強の投資を行い、2020年までに30車種のEVとプラグインハイブリッド(PHV)を市場に供給する計画とのこと。同社は既に、本年10月から上海市でEV生産工場建設に着手している。電動化投資では、先行する各社に対して断トツの投資額を示しているが、15年に発生させたディーゼル排ガス不正問題の払拭につなげるべく、かなり積極的に取り組んでいる様子が窺える。
 この一連の計画に伴い、電池生産についても触れている。独ジャーマン3(VW、ダイムラー、BMW)は、近年、モジュール(下図参照、セルユニットの集合体)以降の開発を自社内で推進する体制を整えてきた。
 今回のVWでの計画では、韓SKイノベーションと合弁でセルを生産する可能性があるという。SKイノベーション自体は元々、200億円の投資で韓国瑞山工場のリチウムイオン電池(LIB)の生産キャパを2018年内に3.9GWhまで拡大する計画を持ち、ハンガリーには850億円規模の投資で7.5GWhの生産キャパを構築し、2020年に稼働することを目標としている。さらには、中国での生産拠点を構える方針だ。今回のVWとの合弁は何処で実現させるのかは定かではないが、今後のサプライチェーンに大きな影響を及ぼすものと考えられる。

セルからモジュール、そしてパック化プロセス
 VWが19年から量産を開始するEV「I.D.」シリーズは、一充電走行距離が550kmにまで達する。EV専用プラットフォーム「MEB」を適用することで、価格もディーゼル車と同等レベルにする計画だ。EVの量産は、独東部のツウィッカ工場、北部エムデン工場、そしてハノーバー工場の3拠点で、年間100万台規模の生産を計画中とのことだ。
日系各社に迫るEV戦略
 日系自動車各社でのEV戦略も動き出している。スペイン政府は、2040年までにガソリン車、ディーゼル車、さらにはハイブリッド車(HV)までも販売を禁止する方針を示した。純然たる内燃機関自動車の制限は理解できなくもないが、電動化で燃費向上を実現しているHVまで制限するのは現実的ではない。ディーゼル車規制の代替として位置づけられるHVの価値に理解を示していないといえる。
 消費者目線で考えれば、PHVと違って家庭内に充電器を設置しなくても良いHVは、燃費特性でも内燃機関自動車を上回ることで価値が高い。その価値を否定する考えは、欧州自動車各社がHVではなくPHVやEVを積極的に推進していることで、仮にHVを市場から締め出しても欧州勢にとっては痛くもない。むしろ、HVを制限することは、HVで強いビジネスを進めているトヨタ自動車とホンダの2トップに対する牽制そのもので、欧州自動車業界の保護政策とも見える。
 2021年から30年まで段階的にCO2排出量を制限する規制が先には控えている。ただし、この規制では自動車各社の商品ラインナップに任せる形で、電動化の種類を制限していないところに合理性があった。しかし、スペイン政府のようにHVまでに制限を加えることの意図は、欧州勢が進めるPHVとEV路線に対する防壁機能としてHVを排除しようとする考えがあるのだろう。
 そのような中、特にトヨタは近年、欧州でのHV販売を急速に伸ばしている。18年1〜9月の欧州販売に占めるHVとPHVの割合は46%に達した模様だ。それだけ欧州におけるHVは市民権を得ていることになる。そのトヨタも、いよいよ2020年にはレクサスブランドで多目的スポーツ車(SUV)「UX」のEVを欧州で販売する計画になっている。HVに対する風当たりが強まる中、対抗策の一つとして構える。
 ホンダも19年には欧州で小型のEVを販売する計画だ。マツダも同様に、20年には日米欧向けにEVを供給するという。いずれにしても日系各社としては、欧州自動車各社が進めつつあるPHVとEV戦略に対して十分に競合できる商品が必要とされている状況にある。
 一方、中国市場においては中国政府が2019年から適用する新エネルギー車(NEV)規制の導入に呼応した日系各社の対応が進む。トヨタはNEV対応の一環として、18年9月から合弁相手の広州汽車ブランドでのEV販売を開始した。さらに、トヨタの自社ブランドEVを20年に発売することになっている。
 ホンダは、中国専用EVである「理念VE-1」の生産を来月12月から開始する計画だ。また、提携先の広州汽車集団との合弁企業が約530億円を投じて、年産17万台のNEV生産拠点を構えるという。
 マツダは合弁相手の中国長安汽車集団と共同でLIBやモーターを調達し、マツダがデザインと車体設計を主導する形で中国専用EVとして投入する。そのEVは小型SUVベースとなる模様で、日米欧で販売する独自開発EVとは異なるという。
 日産自動車は、中国で自社ブランド初のEVを18年8月から生産を始めた。先行した日産自動車に続き、トヨタ、ホンダ、マツダが中国市場で追いかける格好だ。
 となれば、中国のEV市場で苦戦するのは外資系自動車各社と真っ向勝負を迫られる中国ローカルメーカーであることは明らかだ。これまでは大規模な補助金で支えられてきたローカルメーカーであるが、昨年から補助金の減額が進んでおり、中国のEV販売にはブレーキがかかっている。さらには本年より、一充電走行距離が300km以下のEVに対する60%程度の補助金減額、150km以下のEVに対する補助金ゼロ化、一方、400km以上の走行距離を出せるEVに対しては補助金アップなど、メリハリのある補助金政策が打ち出されている。
 400km以上の走行距離を実現できる中国ローカルメーカーは、EV最大手のBYD(2018年1〜10月で16万3306台:シェア20%強)や、中国2位の北京汽車集団(同期間で11万4474台)など大手メーカーに限られる。よって、本年からは弱小のEVローカルメーカーの淘汰が始まっている。
 次なる中国市場での競争段階は、2019年から一層市場に供給される日米欧のトップブランドメーカーのEV間での競争、そして中国ローカルメーカーとの競合であろう。
 そして次なる競争が待ち構える。それは20年に撤廃される中国政府の補助金ゼロ化政策である。底上げで保護されてきた中国ローカルメーカーにとっては試練の場となる。ブランド力や技術力、信頼性や安全性の高い外資系各社のEVと真っ向勝負はできるだろうか? 現状のレベルを考えれば勝負にならないはずだ。ローカルメーカーが生き残るためには、外資系との合弁事業にて外資の技術力やノウハウに依存することが不可欠だろう。
新規参入組によるEV市場の更なる激化
 既に、英ダイソンはEV開発に多大な投資と開発を進めている。2020年以降を目標にシンガポールでの生産を開始するとのこと。家電製品での基幹デバイス開発と販売での実績は立証されているが、信頼性や安全性、耐久性が要求されるハードルが遥かに高いEV領域である。トップブランドの既存自動車各社が全面的に市場競争を繰り広げる段階で、競争力あるEVをどこまで打ち出せるのか、いささかの不安材料とリスクは拭いきれない。
 最近の11月6日に、調査会社のDIGITIMES Research社が報道した内容によれば、米アップルがEV「アップル・カー」に関して、欧州中堅自動車メーカーと台湾系の受託生産企業との協力で、計画が進行しているとのこと。一時はEV事業を断念した同社であるが、19年にはアップル・カー事業を運営する会社を他社との合弁で設立し、20年にアップル・カーの発表というロードマップのようである。この報道の信憑性は詳らかではないが、この計画が実行されることになれば、ますますEV市場の競争が拡大することになる。
 米国ゼロエミッション(ZEV)規制、中国NEV規制、欧州CO2規制等の法規が強化されていく中、電動化の勢いは止まらない。しかし、その中で中国NEV規制が適用される中国市場を中心に、そして欧州においてEV偏重と言える壮大な事業展開が起ころうとしている。
 中国政府は2020年にEVを主とする新エネ車を200万台、25年には700万台を目標に掲げる。現在、中国国内で新エネ車を生産する現地企業は250社に及ぶという。その各社が計画する新エネ車を積み上げると、年2000万台を超えるとの試算もある中、かなりの無理が共存しているのも実態だろう。
 ビジネスチャンスという理解とリスクが両輪のように動きつつあるEVシフト。勝利の方程式を導ける構図は、各市場におけるEV顧客規模の試算、使用上のハンディを極力減らせる魅力あるEVの開発、信頼性と安全性をリードできる製品戦略、補助金に依存しなくても自立できるビジネス、競合他社との差別化、電動化比率におけるEV比率のバランスなど、複雑な要素が絡み合う解が求められている。


このコラムについて
技術経営――日本の強み・韓国の強み
 エレクトロニクス業界でのサムスンやLG、自動車業界での現代自動車など、グローバル市場において日本企業以上に影響力のある韓国企業が多く登場している。もともと独自技術が弱いと言われてきた韓国企業だが、今やハイテク製品の一部の技術開発をリードしている。では、日本の製造業は、このまま韓国の後塵を拝してしまうのか。日本の技術に優位性があるといっても、海外に積極的に目を向けスピード感と決断力に長けた経営体質を構築した韓国企業の長所を真摯に学ばないと、多くの分野で太刀打ちできないといったことも現実として起こりうる。本コラムでは、ホンダとサムスンSDIという日韓の大手メーカーに在籍し、それぞれの開発をリードした経験を持つ筆者が、両国の技術開発の強みを分析し、日本の技術陣に求められる姿勢を明らかにする。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/112000090/

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/569.html

[環境・自然・天文板6] ラボで成長した「ミニ・ブレーン」は、未熟児の電気的パターンに似ています 
ラボで成長した「ミニ・ブレーン」は、未熟児の電気的パターンに似ています
構造は、研究者がてんかんを含む脳発達障害の初期段階を研究するのに役立つ可能性がある。
サラリアードン
  
 PDF版
脳オルガノイド
脳オルガノイドを通るスライスは、構造の外縁部でより成熟した皮質ニューロンを示す。クレジット:Muotri Lab / UC San Diego

皿の中で成長した「ミニ・ブレーン」は、人間のような脳波を自発的に作り出しました。電気的パターンは未熟児に見られるものと似ています。

この進歩は、早期脳発達を研究するのに科学者を助けることができる。この分野の研究は、分析のための胎児組織試料を得ることが困難であり、子宮内の胎児を検査することがほとんど不可能であるという理由から、遅い。多くの研究者は、これらの「オルガノイド」の約束に興奮しています。このオルガノイドは、3Dカルチャーとして成長すると、脳に見られる複雑な構造のいくつかを発達させることができます。しかしこの技術はまた、意識を発達させる可能性のある小型の臓器を作る倫理についても疑問を投げかけている。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の神経科学者Alysson Muotriが率いる研究チームは、人間の幹細胞を萎縮させ、認知を制御し感覚情報を解釈する脳領域である皮質から組織を形成しました。彼らは数百の脳オルガノイドを10ヶ月間培養し、個々の細胞を試験して、典型的な発生中のヒトの脳で見られるのと同じ遺伝子集合を発現していることを確認した1。このグループは、今月サンディエゴで開催された「神経科学学会」での研究発表を行った。

驚くべきパターン
Muotri氏と彼の同僚は、ミニ脳の表面に電気的パターンまたは脳波(EEG)活動を連続的に記録した。 6ヶ月で、オルガノイドは以前に作成された他の脳オルガノイドよりも速く発砲し、チームを驚かせた。

脳波パターンもまた予期せぬものでした。成熟した脳では、ニューロンは予測可能なリズムで発火する同期ネットワークを形成する。しかし、オルガノイドは、脳の発達に見られる同期電気活動の混沌とし​​たバーストに似た不規則な脳波パターンを示した。研究者らは、これらのリズムを未熟児の脳波と比較すると、オルガノイドのパターンは、受胎後25〜39週に生まれた乳児のパターンを模倣することを見出した。

オルノイドは実際の人間の脳に近いものではない、とMuotriは言う。彼らは皮質に見られるすべての細胞型を含んでおらず、他の脳領域にもつながっていません。

しかし、彼のグループは、オルガノイドが成熟し続けるかどうかをより長く見極めるためにオルガノイドを成長させるために現在作業中です。脳や身体の他の部分をシミュレートするオルガノイドに結合することによって、これらの構造が正常な皮質のように機能するかどうかを探求する予定です。

脳波の比較
「これは非常に興味深く、非常に驚​​くべきことです」と、フィラデルフィアのペンシルベニア大学の発達神経科学者、ソンジュン(Sonj)は語っています。早期幼児脳波パターンとの類似点は、オルガノイドが癲癇や自閉症のような脳発達障害の研究に最終的に役立つ可能性があることを示唆している。

ソングはまた、脳波パターンがオルガノイドにどのように由来するかを研究することは、研究者が脳の発達においてどのように脳波リズムが出現するかを理解するのに役立つと考えている。

しかし誰もが同意するわけではない。ヘルシンキ大学の脳神経医学者、Sampsa Vanhataloは、有機体の脳波が未熟児の脳波のように見えるからといって、同じことをしているわけではないとMuotriが測定した乳児EEGのデータベースを開発したオルガノイド。

サンフランシスコカリフォルニア大学サンフランシスコ校の神経科医であるArnold Kriegsteinは、研究者たちは赤ちゃんの脳がどのように配線されているかをほとんど知っていないので、同じであることを証明するのは難しいでしょう。オルガノイドは実際の脳の脳波パターンを駆動する重要な要素を欠いている可能性がある、と彼は付け加えている。

意識の起源
にもかかわらず、このプロジェクトは、オルガノイドが意識を発達させるかどうかについての倫理的疑問を提起すると、ワシントン州シアトルの脳科学のアレン研究所の神経科学者Christof Kochは述べています。 「彼らが早産児に近づくほど、彼らはもっと心配すべきです」

しかし、オルガノイドが意識している時期を知るのは難しいかもしれないと認識しています。なぜなら、研究者は大人の意識を測定する方法や幼児に現れる時期についても同意しないからです。

Muotriは、オルガノイドが自己認識しているという証拠があれば、プロジェクトを中止することを検討するとしていますが、今は非常に原始的です。 「この段階では非常に灰色の地帯で、誰もがこの可能性をはっきりと見ているとは思っていない」

Nature 563,453(2018)

doi:10.1038 / d41586-018-07402-0
最新情報:

自閉症スペクトル障害

発生生物学
自閉症とDDT:何百万人の妊娠が可能かどうか

Lab-grown ‘mini brains’ produce electrical patterns that resemble those of premature babies
Structures could help researchers to study the early stages of brain development disorders, including epilepsy.
Sara Reardon

PDF version
brain organoid
A slice through a brain organoid shows more mature cortical neurons on the outer edge of the structure.Credit: Muotri Lab/UC San Diego

‘Mini brains’ grown in a dish have spontaneously produced human-like brain waves for the first time — and the electrical patterns look similar to those seen in premature babies.

The advancement could help scientists to study early brain development. Research in this area has been slow, partly because it is difficult to obtain fetal-tissue samples for analysis and nearly impossible to examine a fetus in utero. Many researchers are excited about the promise of these ‘organoids’, which, when grown as 3D cultures, can develop some of the complex structures seen in brains. But the technology also raises questions about the ethics of creating miniature organs that could develop consciousness.

A team of researchers led by neuroscientist Alysson Muotri of the University of California, San Diego, coaxed human stem cells to form tissue from the cortex — a brain region that controls cognition and interprets sensory information. They grew hundreds of brain organoids in culture for 10 months, and tested individual cells to confirm that they expressed the same collection of genes seen in typical developing human brains1. The group presented the work at the Society for Neuroscience meeting in San Diego this month.

Surprising patterns
Muotri and his colleagues continuously recorded electrical patterns, or electroencephalogram (EEG) activity, across the surface of the mini brains. By six months, the organoids were firing at a higher rate than other brain organoids previously created, which surprised the team.

The EEG patterns were also unexpected. In mature brains, neurons form synchronized networks that fire with predictable rhythms. But the organoids displayed irregular EEG patterns that resembled the chaotic bursts of synchronized electrical activity seen in developing brains. When the researchers compared these rhythms to the EEGs of premature babies, they found that the organoids' patterns mimicked those of infants born at 25–39 weeks post-conception.

The organoids aren’t close to being real human brains, Muotri says. They don’t contain all the cell types found in the cortex, and they don’t connect to other brain regions.

But his group is now working to grow the organoids for longer to see whether they will continue to mature. The researchers also plan to explore whether these structures function like a normal cortex by hooking them up to organoids that simulate other parts of the brain or body.

Brain-wave comparison
“This is very intriguing and very amazing,” says Hongjun Song, a developmental neuroscientist at the University of Pennsylvania in Philadelphia. Although the work is preliminary, he adds, the similarities to preterm infant EEG patterns suggest that the organoids could eventually be useful for studying brain-development disorders, such as epilepsy or autism.

Song also thinks that studying how EEG patterns originate in an organoid could ultimately help researchers to understand how EEG rhythms emerge in a developing human brain.

But not everyone agrees. Just because the organoids’ brain waves look like those in premature babies doesn’t mean they’re doing the same thing, says Sampsa Vanhatalo, a neurophysiologist at the University of Helsinki who developed the database of infant EEGs to which Muotri compared measurements from his organoids.

And proving that they're the same will be difficult because researchers know so little about how babies' brains are wired, says Arnold Kriegstein, a neurologist at the University of California, San Francisco. The organoids could be missing key components that drive EEG patterns in real brains, he adds.

Origins of consciousness
Nevertheless, the project raises ethical questions about whether organoids could develop consciousness, says neuroscientist Christof Koch, president and chief scientific officer of the Allen Institute for Brain Science in Seattle, Washington. “The closer they get to the preterm infant, the more they should worry.”

But he acknowledges that it could be difficult to know when an organoid is conscious, since researchers don’t even agree on how to measure consciousness in adults, or on when it appears in infants.

Muotri says that he would consider halting the project if there were evidence that the organoids had become self-aware, but right now they are very primitive. “It’s a very grey zone in this stage, and I don’t think anyone has a clear view of the potential of this.”

Nature 563, 453 (2018)

doi: 10.1038/d41586-018-07402-0
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https://www.nature.com/articles/d41586-018-07402-0
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/680.html

[国際24] 北朝鮮 外貨獲得部隊Dollar Heroes 北朝鮮の奴隷労働が核開発と金一族の贅沢を支えている 中国ロシア・・もグル

奴隷は北朝鮮や中東に限らない

日本や欧州、米国にもいて、途上国の搾取システムを支えている

BS世界のドキュメンタリー「北朝鮮 外貨獲得部隊」
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/253/2145667/index.html


 

Dollar Heroes - The Why Version

150,000 forced labourers worldwide are working to provide foreign currency for North Korea's regime - even in the European Union. This investigative documentary exclusively shows the inhumane conditions under which North Korean labour brigades are forced to live and work, and it sheds an important light on how this state-organized human trafficking helps to finance Kim Jong-un's nuclear program.

https://vimeo.com/249784160
https://www.bbc.co.uk/programmes/p06nwwfv


 


北朝鮮の出稼ぎ労働者の過酷な状況に国際的関心を 脱北者が米で会見

2018年10月27日 14:24 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 北朝鮮 韓国・北朝鮮 ]
 


米首都ワシントンで記者会見を行い、自分は「奴隷労働者だった」と話すノ・ヒチャンさん(2018年10月26日撮影)。(c)Eric BARADAT / AFP


【10月27日 AFP】出稼ぎ先の中東とロシアで長時間にわたって過酷な状況で働いていた脱北者の男性が26日、米首都ワシントンで記者会見を開き、北朝鮮が多くの人々を国外に派遣して強制労働に従事させている実態への懸念を表明し、この問題に国際的な関心を寄せるよう訴えた。

 ノ・ヒチャン(Roh Hui Chang)さんは、自分と同じような苦境にある北朝鮮の人々は大勢いるとし、「現状を知る情報筋によると、私が国外にいた頃と状況は何も変わっていない」と主張。北朝鮮に科されている経済制裁に言及した上で、出稼ぎ労働者の数については、「すぐには減りそうにない。彼らが稼ぐ外貨が欠かせないものになっているので、むしろ増加していく」との見方を示した。

 北朝鮮では多数の人々が貧困にあえぐ母国よりは人並みの生活が送れるのではないかとの期待から、借金をしてでも出稼ぎ労働に就いている。しかし、賃金の大半を北朝鮮政府の指導部が着服するため、数年間働いて帰国しても、手元には100ドル(約1万1200円)も残らないケースもあるという。

 ノさんは中東各地で7年間──最も長期間働いていたのはクウェート──毎日午前5時から午後11時まで建設業に従事していた。日中の猛烈な暑さのせいで仕事が終わらず、深夜まで何時間も残業することもしょっちゅうあった。わずか20平方メートルの部屋に10〜30人の労働者が押し込まれ、荷物を置くスペースもほとんどなかったという。その後、渡ったロシアでも過酷な条件下での労働を強いられ、食べ物は塩を入れたご飯しか与えられず、ノさんは2年間働いた後、脱走。2〜3か月間、茂みに隠れながら移動し、2014年に韓国にたどり着いた。

 北朝鮮が国外に派遣している出稼ぎ労働者の実態については、これまでにもたびたび報じられてきたが、人数については報告によって大きなばらつきがある。韓国政府の支援を受けた韓国統一研究院(Korea Institute for National Unification)が脱北者の話として伝えた2016年の報道では、北朝鮮は計27か国に年間1万人の労働者を派遣することを目標に掲げている。

 こうした労働者の大多数は、北朝鮮の同盟国である中国とロシアに派遣されているが、ポーランドでも確認されており、欧州議会(European Parliament)の監視対象となっている。(c)AFP
www.afpbb.com/articles/-/3194920


 


 

『北朝鮮 いまだ存在する強制収容所』 尾っぽのないけだものたち
asian-reporters.com/oppononaikedamono/
2017/10/26 - この世の地獄、北朝鮮の完全統制区。炭鉱では日の光を浴びることなく採掘作業の後は小さな檻に入れられ、にぎりめし一つ与えられるだけ。足は鎖でつながれ、死ぬまで奴隷労働に従事させられる。こうやって朝鮮同胞が殺されている横で、 ...
[社説]北朝鮮の海外奴隷労働者が送る核開発資金の流れを断て : 東亜日報
japanese.donga.com/List/3/05/27/520776/1
ロシアのウラジオストクで働いていた40代の北朝鮮労働者が、元旦の朝に焼身自殺した。ユーチューブの動画には、消防隊員が消火器を噴射し、焼け焦げた男性がうつ伏せになって動かない姿が映されている。 彼が残…


北朝鮮の隠された奴隷達 中国やロシアに見る現代の奴隷労働 - ライブドア ...
news.livedoor.com/article/detail/14592395/
2018/04/17 - 北朝鮮では、多くの労働者が国外で働かされ、政府の資金源となっている。労働者たちは行動が制限され、稼ぎのほとんどを上納させられているという。専門家は、こうした資金が核プログラムに投じられていると指摘している.
北朝鮮、強制労働者の実態… 最初の3カ月は月給わずか約192円 ...
news.livedoor.com › 海外 › 海外総合
2018/02/15 - 北朝鮮政府が海外へ派遣した強制労働者の実態を、労働経験者が語っている。ポーランドの造船所では、最初の3カ月は月給わずか約192円だったという。10〜12時間働くのが普通で、指示で24時間勤務させられたこともあったそう.


奴隷扱いされる北朝鮮の派遣労働者たち…人権侵害追及にEUも乗り出す
https://blogos.com/article/184567/
2016/07/24 - 画像を見る金正恩氏北朝鮮のせい惨な人権侵害の実態は、おおよそ明らかになっている。見過ごせないのは国内だけでなく海外に派遣される労働者にも及んでいることだ。強制売春や逃げればリンチのケースも海外に派遣された多くの労働者 ...
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[国際24] 子供への暴力・虐待、世界で10億人 WHOが対策要請 子どもの虐待・貧困はなぜ続く?語られなかった「歴史の闇」 手遅れ?
子供への暴力・虐待、世界で10億人 WHOが対策要請
2018/2/10 9:11
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【ジュネーブ=共同】世界保健機関(WHO)は9日、世界で2〜17歳の子供の2人に1人に当たる約10億人が暴力や虐待の被害に遭っていると推定されると発表した。WHOは「看過できない状況だ」と指摘、子供への暴力をなくすための法整備や親への支援など7項目からなる対策の指針を公表し、各国に取り組み強化を求めた。

WHOによると、犯罪や紛争などによる暴力は10〜19歳の少年の死因の2番目を占める。子供の5人に1人以上が身体的虐待、3人に1人以上が精神的虐待を経験しているという。性的虐待についても少女の約18%、少年の約8%が被害に遭ったことがあるとみられるとした。

WHO当局者は「子供への暴力は深刻な結果をもたらす。被害に遭った子供はアルコールや薬物乱用など問題行動に陥りがちだ」と強調した。

WHOがまとめた指針には、体罰禁止などの法整備や、暴力多発地域での警察活動強化、子供たちへのケア体制整備、若い親への教育などの支援が含まれている。

WHOなどは今月14〜15日にストックホルムで子供への暴力撲滅に関する閣僚級の国際会議を開催する予定だ。〔共同〕
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26785880Q8A210C1000000/


 


 


2018年11月23日 みわよしこ :フリーランス・ライター

子どもの虐待・貧困はなぜ続く?語られなかった「歴史の闇」とは

子どもの貧困や、それを温床とする虐待が止まらない。負の連鎖を重ね過ぎた結果、虐待の問題は解きほぐせるものもほぐせなくなっている

子ども虐待対策は
もう手遅れなのだろうか

 11月は、「児童虐待防止推進月間」だ。今年2018年の標語は「未来へと 生命を繋ぐ189(いちはやく)」(189は児童相談所全国共通ダイヤルの番号)。あと1週間で11月は終わってしまうけれども、児童虐待はいつでもどこでも防止される必要があるだろう。

 今年は、3月に東京・目黒区で発覚した5歳児の痛ましい虐待死事件があり、7月20日には政府が「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を公表するという、スピード感ある展開があった。日本の児童虐待対策の歴史に残る年となるかもしれない。

 しかし、悲惨な子ども虐待事件は、特別な親の特別な行動によって起きる、特別な問題なのだろうか。もちろん、子どもの生命や身体や健康は、最優先で守られなくてはならない。だからといって、「親に対する強制力が決め手」と割り切ろうとすると、どこかにモヤモヤが残ってしまう。

 そこで今回、京都市の山科・醍醐地区で1980年代から活動を続けている「特定非営利法人山科醍醐こどものひろば(以下「こどものひろば」)」の理事長を務める村井琢哉さんに、疑問を率直にぶつけさせていただいた。

「こどものひろば」の活動目的は、地域のすべての子どもたちが心豊かに育つこと、および、社会環境・文化環境をより良くすることだ。大切にしていることは、子どもと大人の“共に育ちあいたい”という願いであり、自分らしく生きることのできる人との交わりだ。「こどものひろば」という名称ではあるが、必ずしも、「子ども」「子どもの貧困」「虐待」を強く焦点化しているわけではない。その立ち位置から、昨今の虐待対策への動きは、どう見えるだろうか。

 村井さんは開口一番、こう語る。

「遅きに失した、と思います。連鎖を重ねすぎた結果、ほぐせるものもほぐせなくなっているのではないでしょうか」

 いわゆる「虐待の連鎖」は、もはや社会常識だろう。石井光太氏の著書『「鬼畜」の家―わが子を殺す親たち』(新潮社)には、社会に強い衝撃を与えた3つの虐待死事例の背後が描かれている。我が子を悲惨に虐待死させた親たちは、自分自身が子ども時代に育ちや学びの機会を奪われていたことが多い。そして祖父母世代も、子どもを健全に育てられない状況にあったことが少なくない。家族の課題は世代ごとに濃縮されていき、あるとき、子どもの悲惨な虐待死として世の中に現れる。

 しかし、村井さんが「連鎖」という言葉で指しているものは、誰もが関係していそうな物事だ。必ずしも、子どもや虐待に直接かかわるとは限らない。

「今」起きている問題は
過去や歴史とつながっている

「特定非営利法人山科醍醐こどものひろば」の理事長を務める村井琢哉氏
 村井さんが重要視しているものの1つは、歴史的文脈だ。明治維新と戸籍制度は、結果として被差別部落を固定させて現在に至っている。関西、四国、九州の多くの地域で、同和問題は現在の課題だ。決して「過去」の話ではない。

 明治維新から150年の間には、日清戦争・日露戦争・太平洋戦争があった。現在の日本のあらゆる場面に、それらの名残がある。たとえば酒税法には、日露戦争の戦費調達のために導入された自家醸造禁止規定や、太平洋戦争中の「日本酒」の定義が、現在もおおむねそのまま残っている。

 敗戦と被占領、旧憲法から新憲法への一大転換もあった。高度成長期もバブル期も、「失われた20年」もあった。

「政策や国政がひっくり返って、価値観が変容したわけですよね。それがプラスに働いた人もいれば、マイナスに働いた人もいるでしょう。それまでの生活がどうだったのか、そのとき何歳だったのか。上の世代も色々なものを抱えているわけです」(村井さん)

 敗戦当時、10歳で「1945年の夏」を経験した人々は、今年83歳になる。当時18歳、実際に従軍経験があるかもしれない人々は、今年91歳になる。敗戦で何かを失ったのか、それとも得たのか。何かを得たとして、それは喜ばしいものだったのか、それとも負い目や生き地獄のような状況をもたらすものだったのか。「焼け跡闇市世代」「戦中派」といった用語で束ねられてしまいがちな人々は、個々に異なる戦争の「何か」を抱えたまま、高度経済成長期やバブル期を迎えた。その波に乗れた人もいれば、乗れなかった人もいた。

「色々な時代の波に飲まれるなかで、どの波にも乗れなかった人たちもいました。また、乗って社会的な事故に遭った人もいました。バブルに乗って破産した、など」(村井さん)

 結果を左右したものは、生まれた場所かもしれない。親の思想信条かもしれない。ビジネスの成功や失敗だったかもしれない。

「周囲が『イケイケ』『ゴーゴー』の時代に、眩しい“光”があれば、“影”もあったはずです。“影”には、“光”を支えるような仕事もあったでしょう。水商売とか、土木・建築系の労働とか。支えてきた人たちは、“光”のために、育ちや学びの機会を失っているかもしれません。それが重なって、今があるのではないでしょうか……。このことを抜きにして“今”の子どもや貧困や虐待を語ると、ほぐせるものもほぐせなくなるのではないかと思います」(村井さん)


イラストは「山科醍醐こどものひろば」ファシリテーショングラフィッカー 三宅正太氏の手によるもの 拡大画像表示
 そう言われると、いわゆる「虐待の連鎖」の異なる姿が見えてくる気がする。親自身も、「自分が何に困っているのかわからないけれど、とにかく苦しい」という思いがある。その苦しさを背負わせたのは、直接には親自身の親だが、その世代にも「なぜそう思うのか分からないけれど、とにかく苦しい」という思いがあったはずだ。

 そして、自分の状況が好ましくない場合には「自己責任」と責められることを甘受するしかない。苦しさの責任を取ってくれる人はおらず、苦しさを緩和してもらう方法にたどりつけない。自分を責めず、自分の苦しさを少しでも小さくして耐える方法の1つが、我が子を虐待することなのかもしれない。

「親自身が虐待されたり、排除されたり、後ろ指を指されたり。あるいは病気や事故など『こんなはずじゃなかった』を経験したり。それが2世代くらい回り回って、今のようになっているのだと思います。ほぐし方は、その家族が積み上げてきたものの内容によって変わるでしょう。それは、生き方の多様性ということでもあります」(村井さん)

「血のつながり」と「絆」の明暗
親に向かうこともある虐待の連鎖

「虐待の連鎖」という言葉で忘れてはならないことの1つは、子どもが虐待されるとは限らないことだ。男の子が成人して、介護を必要とする親を虐待する場合もある。とはいえ、低所得世帯では、30代・40代で祖父母になるケースもある。是非はともあれ、若い祖父母は孫の育児の具体的な“戦力”になれる。

「最初はいいんです。祖父母といっても若いですから、子どもと一緒に孫を育てられます。でも子どもが経済的に力を持つ世代になってくる時期、祖父母の自分は介護を必要とするわけです。肉体的に力がなくなって、お金も子どもに握られたとき、暴力が自分に向かうのか、それとも孫に向かうのか。若い祖父母のいる家庭では、そういう状況が生まれる場合があります」(村井さん)

 自分・子ども・孫の間に、それぞれ20年の差がある場合、子どもが35歳のときに自分は55歳となる。自分自身が生まれと育ちの中で背負ったハンデや、積み重ねられた身体へのダメージが、「生活習慣病」などの形で顕在化しやすい年齢層でもある。いずれにしても、「家族の絆」に多くを期待することは、逆効果になりそうだ。

「もちろん、“血のつながり”があるからこそ、関わりや言葉に力が込められてきたんです。暴力も含めて、“血”で許されてきたところもあります。それが下の世代に、呪いのように残っていく感じです。それをバネにできる人もいますが、非常に少ないのが現実です」(村井さん)

「明日殺されるかも」と考える
子どもに大人の言葉は響かない

 世の中は、愛に溢れた家族像でいっぱいだ。そうではない家庭に育っている子どもは、自分の家庭や家族を、他の人に語ることができるだろうか。将来、大人として生きている自分をリアルに想像できない子どもに、将来を夢見ることができるだろうか。

「毎日、『自分は、明日殺されるかもしれない』と実感しつづけている子どもに、大人になれてしまった人々の言葉は響きません。その父親や母親は、なんとか大人になれて、何がなんでも生きようとしています」(村井さん)

 厳しい状況にある子どもたちに関わろうとする大人たち、援助の専門職になれた大人たちは、自分自身の体験として、そのような苦労や苦しさを知っているとは限らない。同じ経験を持っているとすれば、「自分も頑張れたのだから、あなたもできるはず」というプレッシャーを与える存在になりかねない。専門職として厳しい状況の子どもや親の前に現れたときには、「指導」「監督」の立場にあったりする。

「児童の専門職が関わろうとする親たちは、専門職の声を『聞けない』というのが素直なところではないでしょうか。自分が苦しい子ども時代を送ってきて、『あのとき、あなたたちは私の前に現れなかった人でしょう?』という思いを持つのが自然ではないでしょうか」(村井さん)

 それでも、子どもの生命、身体その他の危機が迫っているのならば、児童相談所の介入によって、子どもは一時保護されることになる。

「児童相談所の人員は充分、一時保護所も余裕があります」という自治体は、現在の日本にはない。児童相談所も一時保護所も、慢性的に「キャパ」が足りない状況にある。一時保護所は、いわゆる「非行」を行う「不良」少年少女たちを指導する場でもある。虐待からやっと一時保護された子どもが、その子どもたちと同じように規律を強制される場合もある。

「虐待されてきた子どもは、とりあえず身体が無事だとしても、簡単に『さあ、ここから復帰に向けて』という気持ちになれるわけがありません。『保護所にいるときくらい、安心して寝てなさい』でいいんじゃないかと思います。「不良」であっても何であっても、そこにいるのは何らかの意味で虐げられてきた子です。安心させ、落ち着かせることが、まず必要なのではないでしょうか」(村井さん)

「虐待が増えている」の虚実
お金を充実させて抗体をつくれ

イラストは「山科醍醐こどものひろば」ファシリテーショングラフィッカー 三宅正太氏の手によるもの 拡大画像表示
 子どもの虐待については、公的統計が整備されたのは1990年以後である。平成の30年間を通じて、件数は増加する一方だ。「通報が増えただけ」「把握される件数が増えただけ」という見方もあるが、村井さんは「実数が増えており、虐待の性格も変わってきた」と考えている。

「愛の『アメ』もある中での愛の『ムチ』ではなく、『ムチじゃないけど、ずっと痛い』とか。タバコの火を押し付けられるのではなく、低温やけどみたいな。それがあるのかどうかも、隠れてしまっていてわかりにくくなっていると思っています」(村井さん)

 昭和40年代・50年代には、「ウチはしっかり躾けています」というアピールのために、家の外限定で大げさに怒る親もいた。そもそも、子どもに対する叱声や若干の体罰は問題視されていなかった。当時、子どもだった私には、隠さない親の方が多数派だった実感がある。

「虐待かもしれないことを、親が隠していなかった時代と、親が隠している時代の差は大きいです。他人がいるときといないときの二面性のようなものがあるのかないのかも、今は家庭が閉じてしまっていて、わかりにくい印象があります。他の家がどうなのか、子どもは知りません。どの家も、良いところだけしか外に見せませんから」(村井さん)

 しかし、もしも本当に「昔は良かった」のだとしても、昔には戻れない。それだけは明確だ。そうこうする間も、虐待未満だが良好ではない家庭環境で育つ子ども、周囲でイジメが常態化している学校生活を送り続ける子どもたちが、社会のひずみを自分の心身に宿して大人になっていく。助けようとする社会の試みは、いつもいつも大海の一滴にしかならないだろう。

「インフルエンザに例えれば、まずは抗体です。貧困も虐待も、お金を充実させて抗体をつくること。効くうちに、お金で解決できた時代に解決しておくべきだったと思います」(村井さん)

 自己免疫力も大切だが、発症してしまったら治療するしかない。遅きに失しているとしても、治療と抗体づくりを進める必要があるだろう。具体的には、子どもに関わる予算を増やすことだ。子ども自身と家庭の暮らし・育ち・学びの費用はもちろんのこと、子どもの心身を守る仕事を「暮らせる仕事」「キャリアを作れる仕事」にするための人件費も忘れてはいけない。もちろん、心ある民間の団体や個人を「やりがい搾取」し続けるべきではないだろう。さらに、虐待している親を責めずに気づきや変化をもたらす、手紙などソフトな働きかけももっと模索されてよいはずだ。

「結局、ものごとが『お涙ちょうだい』でしか動かないところがあります。目黒で両親に『ゆるしてください』とメモを残して亡くなった5歳の女の子は、5歳まで生きられたから、文字で言葉を残せたんです」(村井さん)

目黒の女の子の背後に
声も残さず消えた無数の児童たち

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 目黒の事件の、5歳だった女の子の背後に、声も文字も残さずに消えた何人の子どもたちがいるのだろうか。考えたくないが、考えないわけにはいかない。

「あの目黒の子のケースでは、調査も会議も議論もきちんとされていました。警察ももともと連携していたはずです。すると親としては、無理やり指導される状態を長引かせないために、言うことを聞くふりをして、隠して、逃げたんでしょうね」(村井さん)

 子どもの虐待に簡単な解決方法はなく、1人の子どもを生命の危機から救おうとする間に救えない10人の子どもがいて、きわどい100人の子どもに「ちょっと待って」というのが実態だろう。

 虐待を生み出す社会の大人である私たち自身の背負ったトラウマや「宿命」という感じ方や「自然」の振る舞いを、自分たちの「生きていて嬉しい」という実感を大きくするものにつくり変えることが、本質的な解決なのかもしれない。もどかしいが、すべての子どもたちの暮らしと育ちを守れる社会は、政治を動かすことを含めて、小さな着実な一歩の積み重ねの上にしか実現しない。今は、この現実を認め、覚悟すべき時ではないだろうか。

(フリーランス・ライター みわよしこ)
https://diamond.jp/articles/-/186422

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/596.html

[国際24] マネロンで26兆円国外流出か、プーチン氏の内憂外患 原油先物、供給過剰懸念で下落 原油市場「OPEC減産説」に懐疑的
コラム2018年11月23日 / 09:00 / 5時間前更新

マネロンで26兆円国外流出か、プーチン氏の内憂外患

Steven E. Halliwell
4 分で読む

[19日 ロイター] - デンマーク最大のダンスケ銀行で、8年間で総額2000億ユーロ(約26兆円)もの巨額の資金洗浄(マネーロンダリング)が行われていたという底なしのスキャンダルは、デンマークや同銀行の評判を失墜させた。

それだけではない。プーチン大統領のロシアに巣食う組織化された汚職の実態と、同大統領が直面する政治的困難をもあらわにした。

資金は、旧ソ連圏にあるダンスケ銀エストニア支店を経由してロシアから流出していた。ダンスケ銀を巡る捜査は、内部告発者のハワード・ウィルキンソン氏が欧州議会とデンマーク議会で証言し、改めて注目を集めている。

同行のバルト諸国におけるトレード部門責任者を務めていたウィルキンソン氏は19日、デンマーク議会で証言し、他の複数の大手行が疑わしい取引に関与していたと述べた。

しかしこのスキャンダルは、金融面だけでなく政治面にも同じくらい大きな教訓をもたらすだろう。

大富豪のオリガルヒ(新興財閥)にとどまらない多くのロシア人がエストニアを経由してマネロンを行っていた事実は、多くのロシア企業や低賃金の官僚にとって、マネロンが生存スキルの一部となっている実態を浮き彫りにした。腐った秩序の中に閉じ込められた個人にとって、西側への資金飛ばしが「安全弁」となっていることを認識しているプーチン氏は、本気でこうした流れを止めようとはしていない。

しかし、ロシア経済が低迷し、マネロン隠しが難しくなるなか、そのような態度でいられる時間はなくなりつつある。

ダンスケ銀の発表によると、「非居住者」の顧客1万5000人が絡んだマネロンは、主にロシア市場が対象だった。その手口は、ロシアのリテールや法人顧客向けに1992年に設立された2つのエストニア支店で、資金をルーブルから別の通貨に両替し、第3国に送金するというものだった。近年では、ダンスケ銀のエストニア事業の税引き前利益のほぼ9割が、こうした顧客の送金や両替の取引から来ていた。

エストニアの銀行取引は、より大きな問題の一角でしかない。

ダンスケ銀の報告書によると、同行のエストニアにおける顧客のうち177人が、モルドバの仲介者を通じてロシアから資金を転送するマネロン集団の一味として過去に名指しされたことがあるロシア人だった。この集団の顧客は、ダンスケ銀エストニア支店の大多数の非居住者顧客と同様、英国や、べリーズや英領バージン諸島のような租税回避地に登録された法人だった。

2000億ユーロは途方もない金額だが、ロシア富裕層が国外に保有しているとみられる8000億ドル(約90兆円)のほんの一部でしかない。この額は、ロシアの全世帯が現在保有している資産の合計とほぼ同額だ。

この巨大な資金のほとんどが、プーチン政権時代にロシアから秘密裏に移転されたものだ。マネロンが、時折が行われる犯罪ではなく、経済システムの欠かせない一部になっていることの証左といえるだろう。

ロシア通貨ルーブルが、インフレや失政で常時値下がりする、他通貨との交換能力が低いソフトカレンシーであるという事情も背景にある。自国通貨がソフトカレンシーの住民は、資産を守るためにユーロや米ドル、英ポンドなどのハードカレンシーに現金を換金したがる。国民にハードカレンシーへの換金を制限している国から送金されるソフトカレンシーの現金を銀行が両替すれば、法に抵触する。こうした資金は、非合法に入手されていたり、出所が疑わしかったりすることも多い。

エストニアの支店を経由したマネロンは、以下に詳述するような手口で行われていたとみられる。

ロシアのある中級官僚の手元に、10億ルーブル(約17億円)規模のプロジェクトがあるとしよう。この官僚は、サプライヤーに請求書の金額を1.5倍に水増しするよう依頼する。サプライヤーは、実際の金額との差額を、この官僚が管理するダンスケ銀行エストニア支店の口座に送金する。

このルーブル建て資金は、不利なレートで米ドルに換金される(マネロンは高くつくのだ)。その後、この官僚は同支店に、残高をロンドンの銀行口座に送るよう依頼する。この口座は、ロンドンを観光した際にでも開設しておいたものだろう。英国の銀行が送金を不審に思うことを恐れて、官僚が所属する役所のロンドンにおける法律担当者は、英領バージン諸島などにある口座への送金を指示する。

とはいえ、租税回避地は規制当局の目に留まることもある。資金をより「クリーン」に見せるには、もう1度資金を移動させる必要がある。ロンドンや米国で不動産を購入するのが、典型的な次のステップだ。

その間ロシアでは、資金不足で当該プロジェクトが遅れる。役所は予算を増額する必要があるが、中には完成されないまま放置される橋や道路、新病院なども相当数ある。

各国政府は近年、こうしたマネロンを取り締まるようになっている。オーナーの身元を隠すペーパーカンパニーを使った不動産取引は、ニューヨークやマイアミなどの高級不動産市場では現在禁止されている。英国も今年、同様の対策を導入した。

ダンスケ銀行エストニア支店。タリンで2018年8月撮影(2018年 ロイター/Ints Kalnins)
銀行への圧力も強まっている。米国は2010年、米国人がスイスに保有している金融資産の報告を義務付け、スイスの秘密口座市場に風穴を開けた。この規制が転機となり、経済協力開発機構(OECD)が音頭を取って、約50カ国がこうした情報の共有に同意した。租税回避地も参加している。

マネロンが難しくなるに従い、プーチン氏は「安全弁」を失いつつある。さらに悪いことに、国際制裁とこの6年の低調な経済成長により、ロシア人の実質収入は低下し、ロシアの銀行からのハードカレンシーの引き出しが急増している。

国内では、退職年齢の引き上げ政策を受けてプーチン氏の支持率が低下し、与党は最近行われた4つの地方選で敗北している。このことが背中を押して、プーチン氏は再び外国で冒険を仕掛けるか、または市場改革に着手するかの選択をするかもしれない。

この選択肢は、両方とも危険だ。ロシア人、特に制裁対象となっている富裕層のロシア人は、2014年のクリミア併合によって追い込まれた孤立状態に飽いている。再び軍事行動を取れば、大規模な抗議活動が起きかねない。

一方で、市場改革に乗り出せば、西側政府からは称賛されるだろうが、プーチン氏が敷いてきた強権的な統治システムは揺らぎ、政治が不安定化しかねない。

いま問われているのは、プーチン氏の選択だ。国際的なマネロン対策のルールに従えば、国外への資金流出が止まることはないにしても、減少し始めるだろう。国内で市場改革に着手すれば、新たな投資を刺激できるだろう。しかし、このような政策が国内で支持を集められるかは不透明だ。また、側近たちが実行させてくれるかも定かではない。

ダンスケ銀行のスキャンダルにより、ロシアの経済復活と世界経済への段階的な合流が、瀬戸際に立たされていることが明らかになった。

*筆者はシティバンクNAで中東欧の法人ファイナンス責任者を務めた。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/halliwell-danske-idJPKCN1NR0LH


 


東京外為市場ニュース2018年11月23日 / 13:46 / 42分前更新
原油先物、供給過剰懸念で下落

 OPEC減産観測は下支え
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[シンガポール 23日 ロイター] - アジア時間23日の原油先物は下落。世界経済の見通しが悪化する中、供給過剰を巡る懸念が重しとなった。

ただ、石油輸出国機構(OPEC)が来年から減産を行うとの観測が一定の下支えとなった。

0333GMT(日本時間午後0時33分)時点で米WTI原油先物は1.34ドル(約2.5%)安の1バレル=53.29ドル。

北海ブレント先物は0.78ドル(1.3%)安の61.82ドル。一時2017年12月以来の安値をつけた。

石油生産で上位3位を占める米国とロシア、サウジアラビアが世界の石油消費量の3分の1以上を生産する中、世界全体の産油量は今年に入って大きく増加した。

一方、世界経済の減速を背景に需要見通しは弱まっている。

サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業資源鉱物相は22日、「顧客が必要としない石油は売らない」と述べ、需要の弱まりに対応する考えを示した。

関係筋によると、OPECと非加盟産油国のロシアなどは、2019年に最大で日量140万バレル減産する案を協議している。

OPECは12月6日に総会を開く。モルガン・スタンレーは「OPECは2019年の需給を均衡させることで合意する可能性のほうが高い」と指摘し、そうなれば米原油価格は「少なくとも短期的に、50ドル代後半」に押し上げられる公算が大きいとの見方を示した。

*グラフィックは tmsnrt.rs/2CTwqaq をご覧下さい。

グラフィックは tmsnrt.rs/2PKtzIy をご覧下さい。

グラフィックは tmsnrt.rs/2PLz8Xk をご覧下さい。
https://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPL4N1XY24Y?il=0


 


トップニュース2018年11月23日 / 09:00 / 5時間前更新
アングル:原油市場、「OPEC減産説」に懐疑的
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[ロンドン 19日 ロイター] - 石油輸出国機構(OPEC)その他の産油国が供給過剰を防ぐため減産で合意するとの期待から、原油価格は先週の急落から持ち直している。しかし先物市場を見ると、投資家は減産合意が機能するかどうか、なお疑問視しているようだ。

北海ブレント油先物は、1月きりLCOc1が2月きりLCOc2を下回っている。期近が期先を下回る「コンタンゴ」は、投資家が供給過多を予想していることの反映だ。

1月きりは先週約5%下げて1バレル=65ドルを割り込んだ。

OPECとロシアなど産油国が2017年1月、原油価格押し上げのために減産で合意すると、在庫が減って原油先物市場は期近が期先を上回る「バックワーデーション」となった。これは供給不足の見通しを反映する形状だ。

バックワーデーションは17年の大半の時期と18年前半まで続いたが、米国の対イラン制裁による供給不足に対応するため、OPECその他産油国が増産で合意すると、コンタンゴに転じた。

以来、OPECは需給バランスを維持できることを市場に説得するのに苦労しており、先物市場は現在、7月以来で最大のコンタンゴとなっている。

国際エネルギー機関(IEA)の推計では、OPECが影響を及ぼせない米国などの生産急増により、来年は1年を通じて供給過多となる可能性がある。

供給過多を背景に現在、一部の原油現物価格は数年ぶりの安値に沈んでいる。この結果、ファンドマネジャーは北海ブレント油と米WTI原油先物CLc1の買いポジションをわずか8週間で50%も減らし、2017年半ば以来の最低水準としている。
https://jp.reuters.com/article/oil-market-opec-idJPKCN1NP0TC
http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/600.html

[国際24] EUと英国、離脱の最終草案に合意−緊密な経済関係を維持へ ECB景気の脆弱性認識 新興市場は買いの好機、ボラティリティー
EUと英国、離脱の最終草案に合意−緊密な経済関係を維持へ
Ian Wishart
2018年11月22日 23:49 JST
25日に調印予定、前日には英首相が欧州委員長と再会談
ジブラルタルや漁業権の問題、未解決で残る−欧州委報道官

Britain's Prime Minister Theresa May Photographer: Ben Stansall/AFP/Getty Images
欧州連合(EU)と英国は、緊密な経済関係を維持する方針を盛り込んだEU離脱の最終草案に合意した。メイ英首相にとっては一定の譲歩を引き出せた形となり、国内で離脱合意への賛同を呼び掛ける上で有利となる可能性がある。

  EUのトゥスク大統領(常任議長)は草案に原則合意したと明らかにし、25日の首脳会議に諮られると語った。メイ英首相は閣僚らに報告した後で首相官邸前で記者会見し、「英国民はこの決着を望み、明るい将来への道を開く良い合意を期待している。そのような合意が手の届くところにあり、それを実現させる」と述べた。 

  離脱交渉の決着を受け、外国為替市場では英ポンドが上昇した。メイ首相の次の課題は懐疑的な議会を説得し、来月行われるとみられる採決で承認を取り付けることだ。

  最終草案は22日、EU加盟各国に配られた。ブルームバーグが入手した同草案によると、「自由貿易圏を創設し、規制・関税面で密接に協力」していく計画をうたう。今回の離脱交渉で最も難航したアイルランド国境問題のバックストップ条項については、EUと英国双方が「決意」を持って、より良く永続的な解決策に取り換えると言明した。

  さらにEUは、英国に規制当局間の協力を認めることも検討する。これはメイ首相が特に強く要請していた分野でもあり、首相にとってはさらなる勝利と言える。

  ただ、欧州委員会のシナス報道官は記者団に対し、スペインが主張するジブラルタルや、漁業権の問題がいまだ合意できていないと語った。ドイツのメルケル首相も依然アイルランド問題が障害になっていると述べ、合意が成立したとの見方に疑問を示した。

  メイ英首相は24日に再びブリュッセルを訪れ、ユンケル欧州委員長と会談する見通し。この翌日に開かれるEU首脳会議で調印の予定だが、メルケル首相は合意文書を完全に仕上げることができなければ首脳会議に出席したくはないと表明している。

原題:EU Sets Out Deep Ties With Wins for May in Draft Brexit Deal(抜粋)
Pound Jumps as Draft Post-Brexit Agreement Signals Deep Ties (1)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-22/PILHWG6JIJUP01


 

ECB:景気の脆弱性を認識

2021年含む最新見通し待ちー議事要旨

Carolynn Look

2018年11月23日 0:33 JST

ECB、10月24−25日の政策委員会議事要旨を公表
保護主義への懸念認めつつ、米輸入好調が相殺する可能性を指摘

欧州中央銀行(ECB)当局者らは10月24、25両日の政策委員会で、景気に関する「不確実性と脆弱(ぜいじゃく)性」を認める一方で、ユーロ圏の域内経済の強さが持続するとの信頼を損なうには至っていないとの見解で一致した。ECBが22日、この議事要旨を公表した。

  議事要旨は「入ってくるデータは予想よりも幾分弱いものの、全体としては現在進行中の広範な景気拡大と整合している点を強調する必要がある」とした上で、2021年の見通しを初めて含める最新の経済予測が12月に公表されれば、「より踏み込んだ判断の機会が得られるだろう」との認識を示した。

主な内容は以下の通り

多大な不確実性と脆弱性にさらされている環境において、金融政策に関する継続性と安定性が特に求められる
ユーロ圏の経済成長に対するリスクが下方向に傾いていると考える多数の理由があるとの発言もあったが、政策委員会は最終的に、「おおむね均衡している」との文言を維持することを決めた
保護主義のリスクに対する懸念を認めつつも、「より開放的な」経済への悪影響は、「米国をはじめとする現時点の輸入好調」によって相殺される可能性があるとの見解も示した
企業はこれまでのところ、賃金上昇を利幅を削ることで吸収し、消費者物価インフレへの波及を抑制してきたが、利幅を無限に削ることはできない
原題:ECB Waits for 2021 Projections While Noting Economic Fragilities(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-22/PILHZM6JTSED01?srnd=cojp-v2


 

新興市場は買いの好機、ボラティリティー特異でない−ゴールドマン
Ruth Carson、masaki kondo
2018年11月23日 9:03 JST
• 中国をややオーバーウエート、インドとインドネシア株を選好
• 2019年はクレジットより株、先進国より新興市場−アシュリー氏
米銀ゴールドマン・サックス・グループの資産運用部門ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントは、世界の株式市場を今年襲ったボラティリティーは特異なものではなく、一部の新興市場資産を購入する好機だと指摘した。
  同社の国際市場戦略責任者ジェームズ・アシュリー氏はシンガポールで開いた説明会で、「これは常態への回帰だ」と発言。「新興市場は売られ過ぎていると思う。買い参入の魅力的な好機だと捉えている」と述べた。
  買いの好機だとみているのは同社だけではない。アバディーン・スタンダード・インベストメンツは今月上旬に米国株を購入。アリアンツ・グローバル・インベスターズは新興市場債券と英国、中国、欧州の株式を選別買いした。ノースケープ・キャピタルも買いの好機だとの認識を示す。

  ゴールドマン・アセットは中国を「ややオーバーウエート」とし、インドとインドネシアの株式を選好していると、アシュリー氏は明らかにした。
  「2019年への重要なメッセージは、クレジットよりも株式、先進国市場の債券よりもクレジット、先進国市場よりも新興市場が好ましいということだ」と同氏は語った。
  ただ、それほど楽観視していない向きもいる。JPモルガン・チェースのマルチアセットチームはリスク削減のため株式の保有を落とし、現金と米国債の比率を高めている。
原題:Goldman Asset Says Buy Emerging Markets as Volatility Normal (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-23/PILUPN6K50XU01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/601.html

[経世済民129] 米国、同盟国に中国華為の製品使用停止を要請 中国、自由貿易区の改革深化 強みハード小米 パキスタン中国総領事館襲撃2人死
テクノロジー2018年11月23日 / 12:21 / 1時間前更新
米国、同盟国に中国華為の製品使用停止を要請
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[22日 ロイター] - 米政府は同盟国のワイヤレス事業者やインターネットプロバイダーに対し、中国の華為技術(ファーウェイ)の通信機器を使用しないよう説得を試みている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が22日、匿名関係筋の話として報じた。

報道によると、米国は華為の製品に絡むサイバーセキュリティー上のリスクについて、同社製品が既に広く使用されている友好国の政府と通信会社幹部に接触したという。

情報機関関係者らは華為など中国企業について、中国政府や共産党とつながりがあるとみており、スパイ活動のリスクを懸念している。

WSJによると、米政府は中国製通信機器の使用を停止する国に対し通信インフラ整備の資金支援を拡大することを検討している。

日本やドイツ、イタリアなど米軍が基地を置く国での中国製通信機器の使用が米政府の懸念の1つになっているという。

米商務省の報道官は、米国の安全保障に対する脅威に引き続き警戒するとの声明を発表した。華為のコメントは現時点で得られていない。

*余分な文言を削除し、写真をつけて再送します。
https://jp.reuters.com/article/usa-china-huawei-idJPKCN1NS05C


 

ビジネス2018年11月23日 / 18:56 / 26分前更新
中国、自由貿易区の改革深化へ 個人に海外証券投資認める方針
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[北京 23日 ロイター] - 中国国務院(内閣に相当)は23日、自由貿易試験区(FTZ)の改革深化につながる一連の措置を発表し、資格要件を満たした個人に対し、関連規則の下で海外の証券への投資を認める方針を示した。

中国は現在、個人に対し、上海と香港の株式相互取引など限られたクロスボーダーの投資手段を通じた海外証券への投資しか認めていない。

国務院のウェブサイトに掲載された声明によると、FTZ内の銀行が海外の機関に代わって人民元のデリバティブ事業を行うことや、特定のFTZで知的財産権の証券化に関する試験プログラムを立ち上げることも認める方針。

このほか、主要FTZの鄭州と西安から海外の航空会社が国際旅客・貨物サービスを運航することを認める。

自動車輸入に関して煩雑な手続きを効率化する方針も示した。
https://jp.reuters.com/article/xiaomi-china-breakingviews-idJPKCN1NP0TW?il=0


 

コラム2018年11月23日 / 12:16 / 7時間前更新
コラム:中国の小米、強みはやはりハードウエア
Robyn Mak
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[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国の小米(シャオミ)(1810.HK)のスマートフォンは世界に浸透しつつあるが、ソフトウエアは違う。第3・四半期の売上高が前年比約50%増加したことで、インドなどにおけるスマホ販売事業の成功は確かめられる。

実際、シャオミと言えば主にハードウエアだ。そうだとすれば、雷軍・最高経営責任者(CEO)が動画配信やフィンテック、その他インターネットサービス向けに行っている投資は、本筋から逸れて費用がかさむだけかもしれない。

シャオミにとっては、第3・四半期もまた大幅な成長の原動力はスマホだった。売上高全体の3分の2強を占めるスマホ部門の収入だけで350億元(およそ50億ドル)を超え、前年同期を36%上回った。今年全体の目標として掲げた販売台数1億台は、既に10月に達成したという。

これは旗艦モデル「Mi8」などに対する需要が中国国外で堅調だったおかげだ。今や同社の海外売上高比率は44%という驚くほどの高さになっている。

シャオミの他のハードウエアも前途は有望に見える。例えばいわゆるスマートTVの出荷台数は、第3・四半期中に3倍近くも伸びた。同社はスマートTVのブランドとして、インドをはじめとする急成長市場で首位に立ち、エアコンなど他の家電にも手を広げる方針だ。

しかし雷軍氏には別の野望がある。同社をハードウエアとソフトウエアを融合した「新種」の企業として売り出していこうとしているのだ。主として広告とオンラインゲームで構成されるソフトウエア部門はハードウエアよりもうま味があるかもしれないが、現時点では売上高に占める割合は1割にも届かない。

一方、雷軍氏がオンライン・ビデオ・ポータルのIQiyi(愛奇芸)向けなどに行っている投資で生じた損失もまた第3・四半期に3倍近く膨らんでいる。これは重大な意味を持つ。というのも研究開発費用は膨張を続け、為替レートの変動と相まって本来薄いハードウエアの利益率が一段と圧迫されつつあるからだ。シャオミの営業利益は前年から38%減ってしまった。

同社の株価は、7月上旬の上場以降で2割近く、最高値からは33%余りも下がっている。雷軍氏にとって投資家に伝えるべき最も単純な前向きのメッセージは、シャオミはスマホ販売で強さを発揮するということではないだろうか。

●背景となるニュース

・シャオミが19日発表した第3・四半期売上高は508億元(73億ドル)で、前年同期比49%増加した。リフィニティブのIBESデータに基づくアナリスト予想平均は487億元だった。

・調整後利益は17%増の29億元となった。

・シャオミは、スマホ製造と自撮りアプリを手掛ける美図(Meitu)との提携も発表した。

・IDCによると、世界のスマホ出荷台数は第3・四半期に前年同期比で6%減少し、3億5500万台となった。シャオミの世界におけるシェアは9.7%で、サムスン電子(005930.KS)、華為技術(ファーウェイ)、アップル(AAPL.O)に次いで第4位。

Xiaomi Corp
14.24
1810.HKHONG KONG STOCK
-0.08(-0.56%)
1810.HK005930.KSAAPL.O
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。https://jp.reuters.com/article/xiaomi-china-breakingviews-idJPKCN1NP0TW?il=0

 

ワールド2018年11月23日 / 17:16 / 2時間前更新
パキスタンの中国総領事館で襲撃、警官2人死亡 職員は全員無事
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[カラチ(パキスタン) 23日 ロイター] - パキスタンの南部カラチにある中国総領事館が23日、武装集団に襲撃され、少なくとも2人の警察官が死亡した。

警察当局が明らかにしたところによると、襲撃犯3人は爆弾を積んだ車に乗って現れ、館内に進入しようとしたが、警察と銃撃戦になり、その前に死亡した。

パキスタンのクレシ外相によると、領事館の職員は全員無事だった。

パキスタン南西部での中国の天然資源開発に反対する「バルチスタン解放軍(BLA)」が犯行声明を出した。

パキスタンのカーン首相は事件の捜査を命じた。
https://jp.reuters.com/article/pakistan-blast-idJPKCN1NS0OO?il=0
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/582.html

[経世済民129] 溝深まる日産とルノー、かじ取り役不在で3社連合の前途多難 日産、ルノーと資本構成見直し ルノーの権益守る=ボロレ副CEO

ビジネス2018年11月23日 / 13:46 / 6時間前更新
焦点:
溝深まる日産とルノー、かじ取り役不在で3社連合の前途多難
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[横浜市/パリ 23日 ロイター] - 日産自動車(7201.T)、ルノー(RENA.PA)、三菱自動車(7211.T)3社の会長を兼務してきたカルロス・ゴーン容疑者が22日の日産の臨時取締役会で、同社の会長職と取締役の代表権を解かれた。ルノーは解任決議の延期を求めていたとされ、早くも日産とルノーの間に溝が生じている。

かじ取り役を失った3社の連合(アライアンス)のあり方がどのように変化するのか。その前途には不透明な霧が立ち込めている。

<ルノーの解任決議の延期要請を無視>

金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕されたゴーン容疑者の会長と取締役の代表権はく奪が提案された臨時取締役会は、横浜市の日産本社で22日午後4時半から始まった。この日の議論は、午後8時半まで約4時間に及んだ。

関係者によると、臨時取締役会前にルノーは、日産に解任決議の延期を強く求めていた。しかし、日産は全会一致による解任に持ち込んだ。4時間のうち、「相当な時間を割き、(ゴーン容疑者逮捕に至った)内部調査の結果が丁寧に説明された」(別の関係者)といい、ルノー出身の2人も賛成せざるを得なかったもようだ。

後任の会長は今回決めず、暫定的な会長も置かなかった。選出の透明性や独立性を保つため、社外取締役3人からなる委員会(委員長:豊田正和氏)が新たに設けられ、現取締役の中から候補を提案することにした。

投資資金や経費の私的流用も発覚し、会社を私物化していた実態が明らかになったゴーン容疑者。日産幹部の1人は「日産のステークホルダー全員に対する裏切り行為。絶対に許されない。解任は妥当」と話す。ただ、これまでの3社連合は、ゴーン容疑者の「鶴の一声」で意思決定されてきただけに、今後は意見がまとまらず、「時間がかかるのでは」と懸念する。

三菱自関係者は「ゴーン氏は経営者としては非常に優れているし、日産と三菱自が対立した時も、三菱自の意見を尊重してくれた」と、その存在感の大きさに言及している。   <日産とルノー、深まる溝>

日産の親会社であるルノーは、20日の臨時取締役会で、ティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)を暫定トップとし、ゴーン容疑者の会長兼最高経営責任者(CEO)の解任は見送った。「解任するのに十分な情報や証拠がない」。ルノーの筆頭株主で15%を出資するフランス政府のこうした意向をくみ、疑惑の詳細が判明するまで先送りした。

フランス政府はもともと、ルノーの日産に対する影響力を強めたい意向があり、近年はゴーン会長の退任後を見据え、連合が解体しないよう不可逆的な関係構築を目指していた。一方、日産は対等な関係や経営の独立性維持を求め続けており、真っ向から異なる。

ゴーン容疑者の処遇も、ルノーは「見送り」。一方、同社が決議延期を求めたにもかかわらず、日産はこれを受け入れず「解任」。日産とルノー、フランス政府の溝はさらに深まる恐れがある。

<「より対等な関係」を模索したい日産>

検討を続けてきた日産とルノーの資本関係見直しも、さらに混迷を極めそうだ。現在の資本構成は、ルノーが日産に43.4%、日産はルノーに15%を出資する。ただ、ルノーは日産に対し議決権を持つが、日産はルノーに対して議決権を行使できないといういびつなものだ。

両社の資本関係は、1999年に経営危機に陥った日産をルノーが救済したことに始まるが、現在は立場が逆転し、ルノーを日産が支えている。ルノーの2017年度の純利益の約半分は、日産の業績が寄与する持分法投資利益からきている。

約20年もトップに君臨しながら、ゴーン容疑者は長年続いていた一連の完成検査不正で批判の矢面に立たず、役員報酬も自ら決めていた。3社間のあらゆる機能の共通化でも、ゴーン容疑者の息のかかったルノー出身者が責任者を務めるなど「役員選出も彼の思い通りだった」と三菱自関係者は振り返る。

別の日産幹部は「それぞれがより独立した形で、ウィン・ウィンの関係という原点に戻るべきでは」と指摘。ルノーが日産に対する出資比率を下げるなど「より対等な関係」を模索していくことを示唆した。

日産は15年、経営の独立性を担保する合意をルノーからとりつけているが、日産が15%から25%までルノーへの出資比率を高めれば、日本の会社法によりルノーが持つ日産株の議決権は消える。

<切っても切れない関係>

日産とルノーの両社はこれまで車種ごとの設計・部品の共通化、14年4月からは研究・開発、生産・物流、購買、人事の4機能の統合を進めてきた。100年に1度といわれる変革期を乗り越えるため、電気自動車や自動運転などの次世代技術でも共通化を進めており、3社は今や切っても切れない関係にある。

Nissan Motor Co Ltd
961.5
7201.TTOKYO STOCK EXCHANGE
+7.40(+0.78%)
7201.TRENA.PA7211.T
日産は22日、ルノーとのパートナーシップは不変であることも確認したと表明した。自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは、日産が単独で生きていくのは厳しいとしつつ、連合の運営や資本関係の見直しなどで「相当もめるのでは」とみている。また、フランス政府の思惑から日産が離れていく場合、フランス政府が「何かしら手を打ってくるのでは」と予測する。

ゴーン容疑者は自らの晩節を汚しただけでなく、3社連合の未来にも大きな影を落とした。同業他社の幹部は、3社連合に漂う緊張関係を他山の石とし、こう指摘している。「資本を出し合うことが連合ではない。気持ちが一致していなければ何をやってもダメだ」――。

白木真紀 取材強力:山崎牧子、久保信博、Daniel Leussink、Laurence Frost  編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/xiaomi-china-breakingviews-idJPKCN1NP0TW


ビジネス2018年11月23日 / 18:06 / 1時間前更新
日産、ルノーとの資本構成見直しも=ブルームバーグ
1 分で読む

[23日 ロイター] - ブルームバーグが関係筋の話として報じたところによると、日産自動車(7201.T)は仏ルノー(RENA.PA)との資本構成の見直しを模索する方針だ。

見直しの対象には議決権の問題も含まれるとしている。

事情に詳しい関係者が23日、アライアンスの進め方、体制の在り方、資本構成も当然もう1回考え直すこともあると述べたという。


ビジネス2018年11月23日 / 19:01 / 19分前更新
アライアンスにおけるルノーの権益守る=ボロレ暫定副CEO
1 分で読む

[パリ 23日 ロイター] - 仏ルノー(RENA.PA)のティエリー・ボロレ暫定副最高経営責任者(CEO)は、日産自動車(7201.T)が報酬過少記載で逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者の会長職解任を決定したことを受け、日産とのアライアンスにおけるルノーの権益を守ると表明した。

日産自は22日に開いた臨時取締役会で、代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者の会長と代表取締役の解職を決議した。

ボロレ暫定副CEOは株主への動画メッセージで「安定性を保証し、アライアンスの持続性とルノーの権益を守るというミッションに引き続き注力することを確認する」と述べた。

ゴーン容疑者の事件にともない、ルノー、日産、三菱自動車(7211.T)のアライアンスの資本構造のあり方が問題となっている。
https://jp.reuters.com/article/nissan-ghosn-renault-bollore-idJPKCN1NS0YZ


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/583.html

[経世済民129] ゴーン会長の逮捕とは無関係!どんなに割安でも日産自を買えない理由 ルノー株急落! この値動きの意味するものは!? 日仏関

#日産は急落、トヨタ上昇 ホンダ変わらず

ゴーン会長の逮捕とは無関係!どんなに割安でも日産自を買えない理由=栫井駿介
2018年11月21日 株式
 
ゴーン会長の逮捕で揺れる日産自動車<7201>に関連して、2017年9月23日付のレポートを公開。今後の方向性は現在分析中ですが、基本的な事業環境は変わりません。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

【関連】日経平均、27年ぶり高値圏へ。今こそ身につけたい「誰でもバフェット投資術」=栫井駿介

日産自動車<7201>のファンダメンタルズを解説
数値だけ見れば圧倒的な割安水準
※レポートの内容は2017年9月時点のものです。株価数値のみ2018年11月20日終値に更新しています。

日産自動車<7201>株価 日足(SBI証券提供)
日産自動車<7201>株価 日足(SBI証券提供)

日産自動車<7201>の株価指標を見ていて目を引くのが、配当利回りの高さです。6.0%という数字は国内で並ぶ企業はほとんどなく、ましてこれほど知名度のある会社では特異と言えます。

記念配当などの一時的な要因で極端に数値が高くなることもありますが、日産はそうではありません。配当性向(年間配当額÷1株あたり利益)も30%程度と至って平均的な水準であり、無理はしていません。

配当利回りと並んで目につくのがPERの低さです。7.4倍という数字は、それだけ見ればすぐにでも飛びつきたくなるほどの低水準です。同様に、PBRでも割安の目安とされる1倍を割り込んでいます。数値だけ見れば完璧な割安株と言ってもおかしくありません。

景気の波をもろに受ける自動車業界
日産ほどではありませんが、自動車業界のPER水準は落ち込んでいます。トヨタやホンダも10倍を下回ります。業界全体のPERが低いということは、投資家が業界に懸念を抱いているということです。

自動車業界は、景気の影響を受けやすい特性があります。リーマン・ショック後にはトヨタですら大赤字を計上するなど、業績が落ち込みました。景気が悪い時に、人々が車のような大きな出費を抑えることは明白です。

逆に、景気が良いときは業績が上向きます。北米への依存率が高い日本の自動車メーカーは、リーマン・ショック後10年に及ぶ景気拡大期で大きく業績を伸ばしてきました。日産もその例外ではありません。

【出典】みんなの株式
【出典】みんなの株式

今が好景気だとすると、これから起きる可能性が高いのは不景気による業績の悪化です。それを考えると、長期投資家としては今敢えて自動車会社に投資するタイミングではないと考えます。

確かに高い配当利回りは魅力的です。しかし、これも額面通りに受け取ってはいけません。同社は配当性向を目安に配当を行っているため、利益が減れば配当も減ってしまいます。赤字になればゼロです。継続性のない高配当は、長期投資の対象としてあまり魅力的ではありません。

Next: 景気変動だけじゃない、自動車業界がいま抱えるリスクとは…

 

自動車会社の存亡をかける研究開発
自動車業界は、景気変動だけではない様々なリスクを負っています。特に大きいのが研究開発費の高騰です。
世の中では、電気自動車や自動運転車に注目が集まっています。テスラやアップル、グーグルをはじめとする新規参入者も多く、各社は技術開発を急いでいます。結果として、研究開発費は右肩上がりに伸びているのです。
それでもいい技術が開発できればいいと思うかも知れませんが、競争はそれだけでは終わりません。新たな技術を開発したら、それをなるべく多くの人に買ってもらい、シェアを一気に伸ばす必要がありますから、価格設定は無理しがちです。
電気自動車のみを販売しているテスラがいまだに赤字であるように、まだガソリン車と同じレベルの価格で勝負できるコスト状況ではないでしょう。日産も「世界で最も売れている電気自動車」リーフを販売していますが、それを売ってもおそらく利益にはつながっていないでしょう。
それでも、研究開発をやめるわけにはいきません。もし、世界が急速に電気自動車に舵を切るようなことがあれば、それまで全く開発を行っていなかった会社は完全に置いていかれてしまいます。研究開発は、自動車会社としての存亡をかけた戦いなのです。
このように、一見盛り上がっている業界は過当競争が起こりやすく、利益が残らないということも往々にしてあります。話題になっている業界こそ、注意が必要だと考えるゆえんです。
長期的な成長のためには中国が不可欠だが…
日産が景気に関係なく成長する可能性があるとすれば中国です。中国はいまや世界最大の自動車販売台数を誇り、少なくとも台数争いでは中国を制した企業が圧倒的に有利となります。
そこで優位性を発揮しているのが、独のフォルクスワーゲンです。どこよりも早く中国に進出したこともあり、圧倒的なトップシェアを誇ります。
日産の中国における販売台数はフォルクスワーゲンの3分の1程度にすぎません。昨年中国全体の販売台数が13.2%伸びたのに対し、日産の伸び率は8.4%しかないなど、勢いにも欠けます。
また、海外の企業が中国で自動車を販売するには現地との合弁会社を設立しなければなりません。つまり、稼いだ利益の半分は現地企業に流れてしまうわけです。
現在、日産の中国での売上高は10%程度にすぎません。業績に貢献するとしても、もうしばらく先の話になりそうです。
Next: いまから投資を検討するなら、意識するべき大切なポイント

「買う価格」にこだわる投資を
数値だけ見れば割安な日産ですが、詳細なリスクを検討すると決して割安とは言い難い部分が見えてきます。
もちろん、決して自動車業界が悪いというわけではなく、今は必ずしも投資に適していない時期だということです。どちらかと言えば景気が悪くなったときに長期的な目線で会社を見れば、株価下落に伴う投資のチャンスが訪れているかもしれません。
株式投資ではタイミングが重要と言いますが、なぜかというと買う価格が違ってくるからです。同じ会社に投資したとしても、100円の時に投資するのと200円の時に投資するのでは全然成果が違ってきます。
買う価格には徹底的にこだわって、リスクを十分に検討しながら割安株を更に探していきたいと思います。
<分析のポイント>
日産自動車<7201>の配当利回りは6.0%、PERは7.4倍と、数値だけ見れば圧倒的な割安水準。
自動車業界は景気の影響を受けやすく、今は好調なとき。景気悪化による業績悪化リスクは大きく、研究開発費の高騰も重荷。
高配当は魅力的ながら、中期的な業績見通しを考えると無理に買うことはない。買う価格にこだわる投資をしたい。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2018年11月7日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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https://www.mag2.com/p/money/579379/3


 


日産ゴーン会長逮捕でルノー株急落! この値動きの意味するものは!? 日仏関係にどんな影響が出るのか? 日産の中国市場進出・EV開発はどうなる!? 2018.11.22
記事公開日:2018.11.22 テキスト

(IWJ編集部)

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長と同社代表取締役のグレッグ・ケリー氏が11月19日、東京地検特捜部に逮捕された。容疑は金融商品取引法違反とのこと。ゴーン氏とケリー氏は共謀し、ゴーン氏の2010年から2014年度の役員報酬を、実際には合計約99億9800万円だったにもかかわらず、約49億8700万円と約50億円過少に有価証券報告書に記載し、関東財務局に提出していたことが発覚した。

▲カルロス・ゴーン氏(Wikipediaより)

 日産自動車は19日夜、西川(さいかわ)広人社長が横浜市の本社で記者会見を開き、ゴーン氏らの不正行為について数か月にわたり社内調査を続けてきたことや、ゴーン氏とケリー氏の解任を22日の取締役会に提案することを発表した。不正の発覚は社内からの内部告発によるもので、検察当局に情報を提供するにあたり、見返りに日産への刑事処分を軽減する司法取引が適用された。

 報道によると、日産は海外子会社の資金を利用してブラジルやレバノンに数十億円の高級住宅を購入し、ゴーン氏に提供していました。ゴーン氏の両親はレバノン人。ゴーン氏はブラジルで生まれ、幼少期をブラジルで過ごし、その後レバノンのベイルートとパリで教育を受けている。ゴーン氏の国籍はブラジル、レバノン、フランスの多重国籍となっている。

ゴーン容疑者、海外の高級住宅を子会社に購入させた疑い(朝日新聞デジタル、2018年11月20日)
 フランスのタイヤメーカー、ミシュランのCEOだったゴーン氏は1996年にフランスの自動車メーカー、ルノーにヘッドハンティングされ入社した。国営企業から民営化される中、赤字だったルノーの完全民営化と黒字への転換に貢献し、「コストカッター」と呼ばれるようになった。

 1999年に、ルノーが日産の株式を取得し、資本提携した際にゴーン氏はルノーの役員のまま日産のCOOとなり、翌年CEOに。赤字と経営不振に陥っていた日産を復活させた経営者として、著名となった。


▲田代秀敏氏(2018年10月28日 IWJ撮影)

 19日夜、ゴーン氏が東京地検の取り調べを受けていると報じられた直後、エコノミストの田代秀敏氏がIWJの取材に応じ、不正発覚が内部告発だったことについて、ゴーン氏の経営に対する合理的な手法は、一方で強引で冷徹な側面もあったため、「社内では恨みをかっていたのではないか」と推測している。

 その上で、「民営化したとはいえ現在もまだフランス政府が10数%の株を持つルノーのCEOを務めるゴーン氏が地球の反対側で突然逮捕されたとなると、日本とフランスとの関係、さらにはゴーン氏の両親がレバノン人であることを考えると日本と中東との関係にも影響があるかもしれない」と語った。

 また、「強引で冷徹」に進めようとしていた、フランス政府の意向とも関わる構想が、ゴーン氏と西川氏との間の対立を引き起こしていたとの見解もある。『自動車が消える日』(文集新書、2017年)の著者であり自動車分野に詳しいジャーナリストの、井上久男氏は20日付の現代ビジネス掲載の記事の中で、ゴーン氏のルノーCEOの任期を2022年まで延長させることと引き換えに、フランスのマクロン大統領が提示した条件にふれながら、「ルノーと日産が経営統合に近い形で関係をさらに深めるのではないか」という憶測の背景を説明している。

ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」(現代ビジネス、2018年11月20日)

▲エマニュエル・マクロン仏大統領(Wikipediaより)

 井上氏によれば、マクロン大統領が提示した条件のひとつは、「ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにする」というものであり、その条件を満たすために「持ち株会社の下にルノー、日産、三菱をぶら下げる」といった内容も視野に入れて関係強化策を2018年度中にまとめようとしていたという。

 ゴーン氏の逮捕を受け、19日の欧州株式市場では、ルノーの株価が一時15%急落した。

仏ルノー株が15%値下がり CEOのゴーン氏報道受け(朝日新聞デジタル、2018年11月19日)
 日本の自動車業界は、米国のトランプ政権の保護貿易政策の標的にされる一方で、目指すべき将来の自動車業界の方向性が、電気自動車(EV)化へと確実になり、さらには自動運転の開発が盛んな中国市場にどのように参入していけるのか、という課題も抱えている。このことは、自動車業界にとってまたとない商機が到来していることも示している。と同時に、EV化の波に乗り遅れれば、「自動車大国」というポジションから日本はすべり落ちるであろう。11月28日午後2時より行われる岩上安身による田代秀敏氏へのインタビューでは、そうした自動車業界の転換や、米中経済関係の行方などをうかがう予定である。

 これまでの田代氏へのインタビューは下記を参照されたい。

異次元金融緩和の重大かつ深刻な弊害!出口を模索しようにもわずかな金利上昇で日本経済は大混乱!? アベノミクスの無残な最期!〜6.18岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー 2018.6.18
失敗したアベノミクス・異次元金融緩和の副作用!? 人口減少にも関わらずバブル化する不動産市場・サブリース契約の地獄!〜日銀が発表した英語論文の謎に迫る!岩上安身が田代秀敏氏に7.1インタビュー第2弾! 2018.7.1
米国覇権の陰りと中国の台頭、数年以内に起こる米中覇権交代は21世紀最大のテーマ! 日本のマスメディアが決して伝えない中国の真の姿とは!? 中国通のエコノミスト・田代秀敏氏に岩上安身がインタビュー! 2018.10.22
米国株価は「世界大恐慌直前の水準」!? 21世紀最大のテーマ・米中覇権交代は目前に迫っている!? 岩上安身による中国通エコノミスト・田代秀敏氏インタビュー第2弾 2018.10.28
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/436173


 
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/584.html

[経世済民129] 介護ケア不足慢性化か 6人死亡施設、看護師頼み 介護ロボットメーカーは無理解 介護は「単純労働」? メディアの呼称に不快


介護介護ケア不足慢性化か 6人死亡施設、看護師頼み
九州・沖縄 社会
2018/11/23 19:19

鹿児島県鹿屋市の住宅型有料老人ホーム「風の舞」で約1カ月間に入居者6人が死亡した問題で、施設側は全介護職員が退職した9月下旬以降、日中の入居者対応を隣接するグループ病院の看護師らに頼っていたことが23日、分かった。施設関係者は、看護師は本来業務である医療行為に追われていたと証言。介護ケアの不足が慢性化していたとみられる。
施設によると、介護職員は8月に5人、9月に3人が一斉に退職。その穴埋めの形で、日中は業務を他の職員らで分担し、1〜3人の看護師が訪問して入居者の対応に当たっていた。当時は約30人が入居していたという。
施設で働く職員は、看護師に負担が集中していたと証言。「薬の準備など医療行為に加え、食事介助やおむつ交換をしている。介護の人手が足りなかったのは間違いない」と実情を訴えた。
鹿屋市によると、施設側はグループ内に加え、外部のデイサービスも用いて、昼間の介護態勢を補っていた。
施設側は21日の記者会見で、職員退職と入居者死亡との因果関係を否定した上で「介護面でのサポートは適正ではなかった」との認識を示している。夜間については、施設長がほぼ1人で入居者への対応をしていた。
退職した8人は、夜勤手当を1万円から7千円に引き下げたことなど待遇面の不満や、職員間の対立があったという。
鹿児島県は施設運営に問題がなかったか、引き続き調べている。〔共同〕
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38133830T21C18A1000000/

 

横浜の介護施設職員ら「介護ロボットメーカーは現場を無理解」
2018.11.22 17:56ライフくらし

介護職員の腰痛を軽減しようと導入した移乗用ロボット「SASUKE」。この特別養護老人ホームでは、使用するためには専用のシートをアームに装着しないといけないなど作業に時間がかかり、現在は施設の片隅に放置されている=横浜市港北区(王美慧撮影)

 「現場が何を求めているのかを(メーカー側は)分かっていない」−。慢性的な人手不足に悩む介護業界で、解決策の一つとして注目されている介護ロボット。期待が高まる一方で、導入に足踏みしている介護施設は少なくない。インフラ整備など導入コストの高さやロボットの力を借りることに現場職員の理解をなかなか得られないなど、さまざまな原因が存在する。ロボットの普及を阻む課題は山積しており、介護施設の関係者たちから話を聞くと、辛辣(しんらつ)な言葉が相次いだ。

 横浜市港北区の特別養護老人ホーム「第2新横浜パークサイドホーム」のフロアの一角に、放置された介護ロボットがあった。車椅子からベッドに移動する際などの「移乗介助」を支援する介護ロボット「SASUKE(サスケ)」だ。

使用対象限られる

 介護現場で働く多くの人々は、深刻な腰痛に悩まされており、代表的な離職理由にもなっている。同施設は、職員の業務負担の軽減や腰痛を引き起こす労働環境を見直そうと、約5年前に試験導入した。しかし、その後は徐々に使う頻度が減っていった。

 体重制限があったり、関節を構成する血管や筋、神経などの組織が変化し、可動域に制限がある入居者には使用が難しかったりしたため、利用が進まなかったという。同施設の牧野裕子施設長(57)は「使いたい人に対して使えない。時間短縮を期待していたが、職員が2人で対応したほうが早い」と現場の実態を明かす。このロボット以外にも、移乗用など約10種類のロボットを導入したが、全て本格的な活用は断念した。

移乗用ロボットは着脱式のものが多く、「装着に時間がかかる。常に装着しておくと、重かったり、肩がこったりして職員に別の負担がかかる。入居者がお手洗いに行きたくても、間に合わない」といい、「実態と合っていない。介護施設が何を求めているのか、(介護ロボットのメーカー側は)分かっていない」と指摘した。

ロボット自体高額

 ロボットの導入は、人手不足を補うために、有効だと思われてきた。だが、牧野施設長は「とにかくコストがかかる。ロボット自体、高額で、複数台導入するのは負担が大きい。維持費に月10万円かかるものもあった。そのお金を払うのなら、人を雇ったほうが有益だと感じた」と振り返った。

 一方、10年以上前からロボットを導入している同市港南区の特養「芙蓉苑」は、国や県の支援事業や各種メーカーのモニタリングなどで、現在、9種類のロボットを導入している。ロボットを導入するに当たり、プロジェクトチームを発足。管理職や各チームの責任者が新しいロボットを導入する前に、入居者の特徴や課題を照らし合わせながら協議を重ね、具体的なイメージを持てたものを導入している。

 ロボットを使うに当たり、現場職員と共通認識を持ち、ロボットへの理解を深める環境の整備に力を入れる。同施設の小林央(あきら)施設長(44)は「年配のスタッフには『介護は人の手のぬくもりがあってこそ』という方もいる。しかし、ロボットが効果を発揮しているのを目の当たりにすると、徐々に介護ツールの一つとして浸透していった」と語る。

老朽化した施設も

 その上で、ロボット導入の課題について小林施設長はメーカー間の互換性がないことを指摘する。平成12年に介護保険制度が導入されて以降、介護サービス事業者数は大幅に増加した。制度開始から18年がたち、築10年以上の施設も多くあるとみられる。

 老朽化している施設では、既存のインフラに最新のロボットが適さない場合があり、最新の技術を入れるためにインフラ整備にお金がかかるとなると、足踏みする施設も出てくるとされる。小林施設長も「ロボットを入れ替えたいと思っても、ロボットのメーカーによっては既存のインフラが使えなかったりする。メーカーの間で利用するインフラの互換性がないため、結果的に新たなロボットの導入を断念してしまうことになる」と語る。

 しかし、こうした課題をクリアすれば、ロボットを導入することに意義があることは間違いないだろう。小林施設長は「今、日本のメーカーが製造している介護ロボットのなかに、ケアワーカーの代わりになり得るロボットはなく、直接的には人間の代わりにはならない。だが、その延長線上でわれわれの業務が軽減でき、より入居者との時間がとれるようになると信じている」と前向きに語った。


【介護ロボット】

 介護に用いるロボットの総称。介護者の業務量の軽減だけでなく、車椅子からベッドへの移動などで体にかかる負担の軽減や、見守りなどの精神的な負担となる業務もサポートする。また、要介護者の自立支援で、低下した身体機能を補助して自立を促したり、リハビリに活用したりもできる。厚生労働省などは、介護ロボットを、移乗支援▽移動支援▽排泄(はいせつ)支援▽見守り・コミュニケーション▽入浴支援▽介護業務支援−の6分野に分けている。
https://www.sankei.com/life/news/181122/lif1811220047-n4.html



障害者と介護者をマッチング、都が新宿で実証実験
南関東・静岡
2018/11/22 22:15日本経済新聞 電子版
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東京都は都市部の繁華街で手助けを必要とする障害者や高齢者と、介護者をマッチングする実証実験を始める。介護を求める人はスマートフォン(スマホ)などで情報を発信し、事前に登録してもらった介護者が位置情報などに基づきすぐに駆け付けられるようにする。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたバリアフリー対策として実用化を目指す。

実証実験は2019年2月の1カ月間、人通りが多い新宿駅西口で実施する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38097130S8A121C1L71000/

 
「不完全なケア」に悩む介護職 認め合う関係が支える
アピタル・松本一生2018年11月22日06時00分
 認知症を単独の支援職だけで支えることはできません。実際に生活を支える介護職、法律や制度の面から支える行政職、そして医療職や地域の人々が連携して支えることが大切です。もちろん、よいことばかりではありません。関係者の連携は時に意見の食い違いを生み、連携体制そのものが頓挫することも珍しくありません。でも、そんなプロ同士の関係こそが、介護職を支えてくれるのです。

 72歳のAさん(女性)は独り暮らしを続けていますが血管性認知症です。血管性認知症の特徴として、主治医(かかりつけ医)の前ではシャンとする場合があります。Aさんも長年通っている主治医の前では、はっきりと言葉を交わすことができます。

 そのため主治医は「彼女がそれほど悪くない」と感じていました。これは何もその医師が悪いわけではなく、私も診療時間の限られた対話だけでその人の状況がわからないこともあります。主治医の診療のように、少し緊張する相手との会話では、Aさんは無意識のうちに「しっかりしなければだめ!」と自分を奮い立たせていたのでしょう。

 この状態はデイサービスでも同様でした。診療の限られた時間と比較すると格段に長い時間を過ごすデイサービスですが、要支援1のAさんは介護予防として週1回の機能強化型デイサービスを半日利用しているだけでした。このようなリハビリ型のデイサービスで彼女は頑張り、スタッフも気づきにくかったのでしょう。

 ところが台風が近づいた秋のある日、突然、Aさんが自宅から行方不明になりました。Aさんが出かけたことを町内の人が見かけていましたが、夜になって豪雨でも自宅に帰ってこなかったのです。そのことを町内の民生委員から聞いた地域包括支援センターの主任ケアマネジャー山本紀子さん(仮名、40歳代)は、時間帯や状況によって常に大きく変化し得る血管性認知症の特徴に改めて驚きました。

 その後、Aさんの遠く離れて住む妹や主治医、デイサービスの職員も交えて対策が話し合われましたが、Aさんの症状はそう心配するほどでないという人から、山本さんと同じようにある程度深刻に受け止めている人まで、彼女の病気についての理解がそれぞれ全く異なることがわかりました。会議で方針を探っても答えが見つからず、その場の雰囲気は悪くなるばかりでした。

 山本さんは困ってしまいました。地域包括ケアの概念の元、みんなが認知症を支えていきたいと考えているのに、その人の状態の把握内容がそれぞれ異なるとは思ってもみなかったからでした。

 さあ、困りました。山本さんが考えていた対応ができずに数か月が経過したころ、その知らせは突然にやってきました。Aさんが自宅近くの運河に転落して亡くなったのです。外出して行方知れずになっての事故だと聞きました。

 山本さんは自分を責めました。誰一人として彼女の判断を間違っていたとは思いません。しかし彼女は、Aさんが事故に遭う危険性をもっと深刻に受け止められなかったかと後悔しました。「すぐには命にかかわるほどの危険性はないという、自分の判断が正しかったのか」と、悩んでふさぎ込んでしまいました。

 ところが、意外にも、そんな彼女を救ったのはあの時の会議に出ていた、かかりつけ医やデイサービスの人びとの言葉でした。彼らは山本さんに彼女がAさんを唯一、どのような状態にあるか理解していたことを評価して、口々にそのことを伝えてきました。

 山本さんの気持ちが落ち着くまでに時間はかかるでしょうが、彼女は周囲のみんなの言葉で少しずつ自分を取り戻していきました。

お互いを支えあう、エンパワメントの会
 かつて私は介護職や福祉職を対象に「支え合いのエンパワメントの会」を展開したことがあります。今は診療で精いっぱいなので実施できていませんが、その時の経験から、お互いがエンパワー(力づける)することの大切さを学びました。山本さんのように自分を責めて気持ちが沈んだ人に「頑張れ、そのうち忘れるから」などと安易に声をかけるのは最も避けたいことです。いくらプロだからといっても山本さんのこころが傷ついたことは事実で、そのような人には、よくも悪くもプロの目線で評価され、変な誤解をされずに完全に守られていると感じる雰囲気の中で支えられることが大切だからです。

 エンパワメントの会もそのような集まりのひとつです。例えば彼女のような主任ケアマネジャーや介護福祉士、さまざまな職種が何人かつどい、決して相手の批判をすることなく、その人の評価できる点を語り合うミーティングをおこなうのが特徴です。

 最初は照れ臭いかもしれません。でもその数人の会に参加した誰もが、相手の「この点が素晴らしい」と評価できるようになると、自分が相手の良い点を見いだすことの幸せを感じられるようになります。人の良さを見つける視点でものをとらえるようになると、結果として自分も支えられていると感じるようになります。決して最高の手段ではないかもしれませんが、このような集まりをおこなうことも、支援職がお互いを支え合う機会になると思います。普段から介護の職場でこのような見方をすることが大切なのかもしれません。

不完全なあなたでもいたほうがまし
写真・図版
イラスト・福井典子

 私はかつて介護職のカウンセリングをしていた時に、自分の精神科医としての経験を話したことがあります。それは多くの認知症の方から「先生は私の病気をよくすることはできない。でも、あなたは私と一緒に歩んでくれるから、先生がいないよりはいたほうがましです」と言われた経験です。若年性認知症で側頭葉が変化する彼は、ときに私に容赦ない言葉を投げつけるのですが、彼は本心を語ってくれるので、本当に私のような不出来な医者でも、いないよりはいたほうがましだと思ってくれていることに感謝しました。そしてそんな風に思ってくれる人がいる限りは、自分が医者を続けても良いのだと思うことができました。

 いま悩んでいる介護職のみなさんも、あなたがいない世界と、不完全ではあってもあなたが誰かのために役に立ちたいと願いながら存在する世界とでは大きな違いがあることに気づいてください。不完全ではない支援者などこの世に存在しません。誰もがみな、自分の行いが正しいのか違っているのか自信がない時もあります。

 しかし、そのような時こそ思い出してください。あなたは微力であっても、あなたがいることで支援される誰かがいます。泣きながら悩みながら、それでもあなたが力になりたいと願う気持ちが、少しずつ誰かの支えになるなら、あなたや私のような支援の仕事に就いた者の役割を演じていくことができます。

 泣きながら、泣きながら、それでも明日の希望を捨てるな、介護職!

<アピタル:認知症と生きるには・コラム>

http://www.asahi.com/apital/column/ninchisyou/

(アピタル・松本一生)

アピタル・松本一生
アピタル・松本一生(まつもと・いっしょう)
精神科医
松本診療所(ものわすれクリニック)院長、大阪市立大大学院客員教授。1956年大阪市生まれ。83年大阪歯科大卒。90年関西医科大卒。専門は老年精神医学、家族や支援職の心のケア。大阪市でカウンセリング中心の認知症診療にあたる。著書に「認知症ケアのストレス対処法」(中央法規出版)など
https://www.asahi.com/articles/SDI201811194654.html


 

介護は「単純労働」? メディアの呼称に不快感続出、法務省の見解は
2018/11/23 11:00
政府が「単純労働」の外国人を受け入れる方針を決めたとの報道について、介護などの関係者が「単純労働」と決めつけられたと、ツイッターなどで不快感を露わにしている。

専門性があるとされた医師や弁護士とどう違うのか、といった疑問が背景にあるようだ。一体、なぜ介護などが「単純労働」呼ばわりされてしまったのか。

「単純労働」呼ばわりに反感続々(写真はイメージ)
「単純労働」呼ばわり止めてのツイートに「いいね」5万件


外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案の審議が、衆院で始まり、新たな在留資格を巡って、与野党の論戦が活発化している。

農業、建設、介護、宿泊、造船、外食など14分野が予定されている。そんな中で、これらを「単純労働」と紹介するテレビのニュース番組がツイッター上で話題になった。新聞でも、この呼称は度々使われている。

ある介護関係者は、「専門性」があるとした医師や弁護士などと番組内で対比されたことに怒り、自らの仕事を「単純労働」と呼ぶのを止めるようにツイッター上で訴えた。この関係者は、介護などにも「専門性」はあるとし、人手不足なのは重労働だからに過ぎないと指摘した。

関係者のツイートは、大きな反響を集め、2018年11月21日夕現在で5万件ほども「いいね」が付いている。共感の声の方が多く、「どれも単純労働じゃなさ過ぎ」「専門資格必要だし、介護に至っては国家資格」「これはほんとに腹が立ちますね!!」などと書き込まれている。

「単純」とは、広辞苑によると、「構造・機能・考え方などが複雑でないこと。こみいってないこと。簡単」という意味だ。実際の仕事は、単純労働の呼称とは裏腹に複雑で簡単ではないことから、反発も多かったようだ。

日本介護福祉士会も、「一部の報道に誤りがある」

単純労働とメディアが紹介することについては、日本介護福祉士会も6月15日、ホームページ上で会としての見解を述べている。当時、政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に新在留資格を盛り込み、今回と同様に「単純労働」の呼称が話題になっていた。

見解では、新たな在留資格の対象として、一部のメディアが介護などの「単純労働」と報じたことについて、「極めて残念な伝えられ方であると考えます」と異議を唱えた。閣議決定された政府の方針には、単純労働とは書かれていないとして、「一部の報道に誤りがあると指摘せざるを得ません」ともした。

そのうえで、「メディア・報道関係者におかれては、私たちが、誇りを持ち、日々の介護サービスを通し、専門性をもって、介護福祉を必要とする国民の生活支援に携わっていることについて、十分にご理解いただきたい」と訴えている。

法務省入国管理局の広報担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、単純労働について、「この言葉を使ってはいないです」と話した。メディアが使ういわゆる単純労働は、出入国管理法改正案では、「人材を確保することが困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野」としての「特定技能」だとされていると説明した。

これに対し、医師や弁護士などは現行の「専門的・技術的分野」という別の在留資格になっている。このように分野を分けたことが単純労働の言葉を生み出したかについては、「その言葉を使って表現していませんので、コメントできません」と話した。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)
https://www.j-cast.com/2018/11/23344322.html?p=all

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/598.html

[経世済民129] 『金が欲しい』以外に動機ない」 万博に懸念の声も 25年大阪万博決定 知事市長ら帰国へ、一夜明け喜び
『金が欲しい』以外に動機ない」 万博に懸念の声も
2018年11月24日11時58分
 
戎橋周辺で万博開催地の決定を待つ人たち=2018年11月24日午前0時4分、大阪市中央区、加藤諒撮影
 
 万博の日本開催が決まったことを受け、懸念の声も上がった。

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 思想家で神戸女学院大学名誉教授の内田樹さんは「『え』と絶句。『金が欲しい』以外に何の動機もない万博の開催がどのような悲惨なかたちで終わるのか、想像すると悲しくなってきます」とツイートした。内田さんは取材に「今回の万博の目的は経済波及効果だけで、世界に伝えたいメッセージや未来へのビジョン、歴史的意義がない。開催後に残るのは廃虚だけ。長きにわたって負債に苦しむことになる」と語った。

 歓迎一色の報道に、ツイッターで疑問を投げかけたコラムニストの小田嶋隆さんは「賛否があってしかるべきだと思うが、開催地に決まった瞬間、報道が『よかった』『おめでとう』という声に染まったことに違和感を覚える」と話す。「東京五輪についても言えるが、招致の段階では両論併記だったのが、決まった瞬間に反対意見がなかったかのようになる。自分の意見より、空気に従順なことが大切にされることに怖さを感じる」と語った。

 立命館大学の千葉雅也准教授(哲学)は「最悪だ。住みにくくなる」「しかも健康とかテーマなんでしょ、押しつけがましい生政治万博ってことよね。最悪だ」とツイートした。

 千葉さんは取材に「五輪もそうだが、国家的イベントの際には、開催地周辺だけでなく、都市全体で経済的合理性を優先する再開発が進み、昔ながらの街並みや小さい商店などの歴史的文脈が失われるおそれがある。『いのち輝く未来社会』というテーマは聞こえはいいが、国民をいっそう強健な生産者にし、効率よく管理したいということに他ならない」と話した。

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https://www.asahi.com/articles/ASLCS31FPLCSUTIL001.html

 


25年大阪万博決定 知事市長ら帰国へ、一夜明け喜び
2018/11/24 19:47日本経済新聞 電子版
 【パリ=奥山美希】2025年国際博覧会(万博)の大阪市での開催決定から一夜明け、松井一郎府知事と吉村洋文市長は24日午前(日本時間同日午後)、フランス・パリの宿泊先のホテルを出発した。25日午前に帰国する予定。

帰国に向けホテルを出発する大阪府の松井知事(写真左)と大阪市の吉村市長(いずれも24日午前、パリ)

 吉村市長は記者団に「これまで誘致活動で5回ほどパリを訪れたが、今日は街が温かく迎え入れてくれているように感じる」と喜びをかみしめていた。松井知事は開催までの準備を「これから気を引き締めて頑張っていきたい」と話した。

 25年万博には日本、ロシア、アゼルバイジャンの3カ国が立候補。パリで23日に開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で、各国の投票により日本開催が決まった。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38140320U8A121C1AM1000/
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/600.html

[経世済民129] 仮想通貨、今年最悪の1週間−時価総額はピークから7000億ドル減少 S&P500調整入 原油大幅下落 来週のG20注視か
仮想通貨、今年最悪の1週間−時価総額はピークから7000億ドル減少
Eric Lam
2018年11月24日 0:36 JST
主要仮想通貨の動きを示すブルームバーグの指数は今週23%の下げ
ビットコインは2500ドルに下げる可能性もある−トレーダー
2018年に大暴落とも言える勢いで下落が続く仮想通貨だが、中でも今週は最悪の1週間となりそうだ。

  ビットコインは23日も急落し、4000ドルに接近。他の仮想通貨も大半が大きく値下がりした。時価総額の大きい仮想通貨の指標であるブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト指数は16日以降に23%低下。週間ベースとしては時価総額がピークを付けた1月初め以来最大の下げとなる。

How Bitcoin Stacks Up to Other Asset Bubbles

Sources: Bloomberg, International Center for Finance at Yale School of Management, Peter Garber

  仮想通貨は昨年、過去に経験した大規模バブルの多くを上回るペースで上昇した後、急落して時価総額は7000億ドル近く減少。そしてこの下落傾向が弱まる兆しはほとんど見られない。大半の仮想通貨が既に70%を超える下げとなっているが、オアンダのアジア太平洋地域トレーディング責任者、スティーブン・イネス氏は、相場の底を示唆するような強い証拠はまだ目にしていない。

  シンガポールから電話取材に応じたイネス氏は、「仮想通貨市場にはなお多くの人が参加している」とし、ビットコインが「崩壊し、3000ドルに向かって下げるような状況になった場合は、極めて深刻な事態になる。投資家は出口を求め、売りが殺到するだろう」と予想した。

  イネス氏は自身の基本シナリオとして、ビットコインは短期的に3500−6500ドルの間で推移すると予想。その上で、1月までに2500ドルに下げる可能性もあると指摘した。

  ブルームバーグのデータによれば、ビットコインは23日、一時7.6%下落。ニューヨーク時間午前9時4分現在は3.7%安の4266ドルで、このまま取引が終了すれば終値としては2017年10月以来の安値となる。

原題:Crypto Losses Near $700 Billion in Worst Week Since Bubble Burst(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-23/PINI906KLVR501?srnd=cojp-v2


 


米国株・国債・商品】
S&P500が調整入り、原油が再び急落
Vildana Hajric
2018年11月24日 5:08 JST 更新日時 2018年11月24日 6:58 JST
デボン・エナジーなどエネルギー株の下げ目立つ
米原油先物は51ドル割れ、ブレント原油は週間で約3年ぶりの大幅安
23日の米株式相場は下落。S&P500種株価指数が調整局面の領域に入った。米原油先物がバレル当たり51ドルを割り込み年初来安値を更新したことから、エネルギー銘柄がきつく下げた。米国債は原油急落を背景に上昇。

米国株は下落、S&P500が調整入り−原油下落でエネルギー安い
米国債は上昇、10年債利回りは3.04%
NY原油は反落、7.7%安−サウジ増産と世界的株安で
NY金先物は反落、1オンス=1223.20ドルで終了
  感謝祭の翌日で、株式市場の取引は米東部時間午後1時までに短縮された。主要3株価指数は全て下落。S&P500種株価指数は週間ベースの下げが3.8%と、感謝祭を含む週としては1939年以来最悪。9月高値からは10%下げた。この日はエネルギー銘柄が最も振るわず、デボン・エナジーが5%を超える下落。マラソン・オイルも4%余り下げた。

  S&P500種は前営業日比0.7%下げて2632.56。ダウ工業株30種平均は178.74ドル(0.7%)安の24285.95ドル、ナスダック総合指数は0.5%安。ニューヨーク時間午後1時59分現在、米10年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し3.04%。

  ニューヨーク原油相場は大幅反落。週間でも大きく下げた。サウジアラビアが生産を過去最高水準に引き上げていると示唆した上、最近のトランプ米大統領からの原油価格押し下げの呼び掛け、世界的な株安などの材料が重なった。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は4.21ドル(7.7%)安の1バレル=50.42ドル。ロンドンICEの北海ブレント1月限は6.1%安の58.80ドルと、60ドルを割り込んで終了。週間ベースでは約12%下落と、2016年1月以来の大幅安。

  ニューヨーク金先物相場は反落。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.4%安の1オンス=1223.20ドルで終えた。

  ABバーンスタインのチーフ米国ストラテジスト、ノア・ワイスバーガー氏はブルームバーグテレビジョンで、「まだ市場に消化されていない不透明性がかなりある。10月に始まってこれだけ経過したというのに、まだ立ち直れていないことに少し驚いている」と述べた。

  インディペンデント・アドバイザー・アライアンスの最高投資責任者(CIO)、クリス・ザキャレリ氏は、「今日は薄商いだ。相場はあまり深読みしないでおく」と述べた。

原題:S&P 500 Slips Into Correction Led by Energy Stocks: Markets Wrap(抜粋)
USTs Steady, Eurodollars Rally as Hike Path Adjusts to Oil Slide
Oil Limps to Worst Week in Almost Three Years as Glut Fears Grow
PRECIOUS: Platinum Nears Third Weekly Loss as Dollar Hits Metals

(第6段落以降を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-23/PINTJW6VDKHT01


 
OPEC総会より来週のG20を石油市場は注視か−原油大幅下落で
Javier Blas
2018年11月24日 14:38 JST
• サウジとロシアのエネルギー相がブエノスアイレス入りへー関係者
• 12月のOPEC総会の方向性がG20で決まる可能性も
石油輸出国機構(OPEC)は12月6日にウィーンで総会を開くが、石油市場が注目する会合はそれより1週間早く訪れる。
  ブエノスアイレスで11月30日から開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議の合間に、来年の原油相場の方向性を左右する協議が行われる見通しだ。

プーチン大統領(左)とムハンマド皇太子(中国・杭州、2016年9月4日)
写真家:Yuri Kochetkov / EPA
  2大石油輸出国であるサウジアラビアのムハンマド皇太子とロシアのプーチン大統領はこの2年間、石油市場への影響力行使で協調してきた。両氏とも来週末にブエノスアイレスに滞在する予定。ツイッターを通じてOPEC批判を続けてきたトランプ米大統領もブエノスアイレス入りする。
  ホワイトハウスの元エネルギー担当高官で、現在は米エネルギーコンサルタント会社ラピダン・エナジー・アドバイザーズの社長を務めるロバート・マクナリー氏は、「トランプ大統領がG20でムハンマド皇太子、プーチン大統領と共に最適価格レンジについて協議するとみている」と語った。
  石油市場では、原油価格を下げたいトランプ大統領の要求をムハンマド皇太子が拒否するのは難しいとの見方が広がっている。サウジのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏殺害事件への関与が疑われているムハンマド皇太子について、トランプ政権が擁護する姿勢を示しているためだ。
  コンサルティング会社エナジー・アスペクツ(ロンドン)のチーフ石油アナリスト、アムリタ・セン氏は「市場はサウジが減産できないと想定している」と指摘した。

  サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相とロシアのノバク・エネルギー相もブエノスアイレスを訪れる。予定がまだ公表されていないことを理由に関係者が匿名で語った。両エネルギー相の出席は、サウジとロシアがOPEC総会前の合意を目指すとの印象を強めるもようだ。
  23日の取引で北海ブレントは6.1%下落し、1年ぶり安値の1バレル=58.80ドルで終了。月初からの下げ率は22%に達した。石油市場の供給過剰に対する懸念が高まっていることが背景。
  トランプ氏は21日、「原油価格は下落している。素晴らしい! サウジアラビアに感謝する。だがもっと押し下げよう!」とツイートした。
原題:As Oil Plunges, the Real OPEC Meeting Will Be at Next Week’s G20(抜粋)


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-24/PIOMP26S972901
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/604.html

[経世済民129] 日銀が直面する緩和副作用と世界景気減速懸念 ユーロ圏経済が失速、逆風目立つ=ECB専務理事 独IFO指数予想下回る 
ビジネス2018年11月26日 / 12:38 / 6時間前更新
焦点:
日銀が直面する緩和副作用と世界景気減速懸念
3 分で読む

[東京 26日 ロイター] - 粘り強い金融緩和で物価2%目標の実現を目指す日銀に対し、ベクトルの方向が正反対の2つのリスクが浮上している。金融緩和の長期化に伴う金融機関収益への悪影響という副作用と、米中貿易摩擦が長期化する見通しの下で高まる世界経済減速のリスクだ。どちらも直ちに日銀の金融政策を修正させる「切迫感」はないものの、日銀では慎重にリスク分析を進めているとみられる。

<市場にくすぶる政策修正の思惑>

足元の消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)の前年比上昇率は1%程度と、日銀が目標に掲げる2%が依然として遠いにもかかわらず、市場には、日銀が一段の金利変動幅の拡大など早期の政策修正に動くのではないかとの思惑が消えない。

背景にあるのは、超低金利環境が長期化する中で、金融機関収益や市場機能に及ぼす副作用が無視できない領域に入っているとの見方だ。

10月末に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、金融機関収益の下押し長期化によって「金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」とし、「先行きの動向には注視していく必要がある」と警戒レベルを一段引き上げた。

黒田東彦総裁は5日の名古屋市での講演で「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが、最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっている」と発言。同日に日銀の金融研究所が公表した外部の学者による論文では、マイナス金利を撤廃しても、景気やインフレ率にプラスの影響を与える可能性が示された。

一連の発信を受けて市場では「さらなる政策修正への地ならし」(国内金融機関)との見方が広がった。

これに対し、黒田総裁は20日の衆院財務金融委員会で、論文について「日銀の公式見解を示すものではない」と述べ、現在の金融政策運営との関連を否定。自身の発言は「今、さらに追加的な措置をとる必要はない」と説明し、緩和策縮小の意図はないとの見解を示した。

金融機関収益への影響に関しても、金融政策での対応は、金融仲介機能や金融システムを通じて経済・物価情勢に悪影響が生じるリスクが高まった場合に検討されるべきというのが現在の日銀の考え。

金融機関収益への配慮と金融政策修正を直接結びつける議論は「飛び過ぎている」(幹部)とみており、金融政策運営は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく。そのためにも、政策の効果と副作用をバランスよく考慮し、緩和の持続性を強化することが重要だ」(黒田総裁、22日の参院財政金融委)と繰り返す。

<影落とす貿易摩擦>

一方、激化する米中貿易摩擦が世界経済の先行きに暗い影を落とし始めている。経済協力開発機構(OECD)は21日、貿易摩擦はすでに「成長を鈍化させ始めている」とし、2019年の世界の経済成長率を従来の3.7%から3.5%に下方修正した。来年からは日米通商交渉も本格化する。

布野幸利審議委員は7日、高知市内での会見で、米中貿易摩擦が中国経済に及ぼす影響に懸念を示し、「中国経済に対する下押し圧力が掛かることを起点として、わが国の投資や企業マインドに影響が出てくる可能性を秘めている」と、中国経済を通じた日本への悪影響に言及した。

政府は来年10月の消費税率引き上げに向けた対策を策定中だが、貿易問題をめぐる世界経済の先行き不透明感の強まりも見据えた内需拡大策に焦点が当たりつつある。

需給ギャップの改善を起点に物価上昇率が高まっていくシナリオを描く日銀にとって、日本経済の成長持続は物価2%実現の大前提。日本経済の下振れリスクが高まる場合、日銀に対しても政府と歩調を合わせた対応を求める声が強まる可能性がある。

<追加緩和、副作用上回る効果は期待できず>

しかし、日銀の打つ手は限られる。短期金利マイナス0.1%、長期金利ゼロ%程度という超低金利の中で利下げ余地が乏しいことに加え、マイナス金利幅の拡大など長短金利のさらなる引き下げは市場機能を低下させるとともに、金融仲介機能・金融システムリスクが顕在化する可能性を高めかねない。副作用を上回る効果が、なかなか期待できないのが実情だ。

ある日銀OBは、現在の日銀の金融政策運営について、2013年4月の量的・質的金融緩和(QQE)の導入とその後の拡大、マイナス金利政策の採用という物価押し上げにこだわったコスト度外視の政策運営から、効果と副作用のバランスに配慮した本来の姿に戻る過程にあると分析している。

当時に比べて経済・物価情勢が改善する中で「同じ大規模緩和でも有事対応から平時モードになったということだ」という。

日銀として「物価2%目標の早期実現」の旗を降ろせない中で、副作用に配慮した安易な政策修正議論には乗れない一方、副作用をさらに拡大させる追加緩和にも踏み切れないジレンマを抱えているとし、当面はリスクが顕在化しないことを願いつつ、「国債買い入れの減額や、オペの弾力化を含めた技術的な見直しでしのいでいくしかないのではないか」と述べている。

伊藤純夫 清水律子 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/boj-policy-risk-idJPKCN1NV077

 
ビジネス2018年11月26日 / 17:11 / 2時間前更新
適切なペースでのバランスシート縮小は十分可能=出口戦略で日銀総裁
1 分で読む

[東京 26日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は26日、参議院予算委員会で、現在行っている量的・質的金融緩和からの出口戦略に関し、市場の安定を確保しながら、適切なペースでバランスシートを縮小していくことは十分可能との認識を示した。藤巻健史委員(維新)の質問に答えた。

黒田総裁は、出口戦略について「拡大したバランスシートの取り扱いがひとつの重要な課題となる」との認識を示した上で「その時々の状況に応じて、保有国債の償還や再投資などを上手く組み合わせることで、市場の安定を確保しながら、適切なペースでバランスシートを縮小していくことは十分可能」と述べた。

保有国債の評価方法については、償却原価法を用いており、評価損失が計上されることはないとしたほか「中央銀行の信認は、何を資産で持っているかではなく、金融政策運営で物価の安定を図ることを通じて、信認が得られる」との考えを示した。

日銀による大量の国債買い入れについて、黒田総裁は「あくまで2%の物価安定目標を実現するという金融政策上の目的のために行っており、政府による財政資金の調達を助けることを目的とするものではない」と述べた。こうした考え方は、市場参加者の間でも理解されているとした。

現在の財政状況については「一般論として言うと、わが国の政府債務残高は確かに高い水準となっている。政府が中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することは重要だと思う」とした。ただ「財政運営は、政府・国会の責任において行われるものと認識しており、コメントは控えたい」とし、具体的な言及は行わなかった。

そのうえで「日銀は、物価安定という自らの使命を果たすために、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要」と繰り返した。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-idJPKCN1NV0NG

 

 
ビジネス2018年11月26日 / 18:37 / 7分前更新
ユーロ圏経済が失速、逆風目立つ=ECB専務理事
1 分で読む

[フランクフルト 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のプラート専務理事は26日、ユーロ圏経済が失速しており、逆風が一段と目につくようになってきたとの認識を示した。同専務理事は会合で「保護主義、金融市場のボラティリティー、新興国市場の脆弱性が、逆風を生み出しており、逆風が一段と目につくようになってきている」と指摘。

「ユーロ圏の企業活動に関する調査やセンチメント指標は、大半のセクターや国で引き続き拡大局面にあり、依然として長期平均を上回っているが、先の高水準との比較で軟化が目につく」との認識を示した。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-praet-idJPKCN1NV0WS?il=0


 


経済指標2018年11月26日 / 18:42 / 2分前更新
独IFO業況指数、11月は102.0に低下 予想下回る
1 分で読む

[ベルリン 26日 ロイター] - ドイツのIFO経済研究所が26日に発表した11月の業況指数は102.0となり、3カ月連続で低下した。ロイターがまとめたコンセンサス予想の102.3も下回った。ドイツ経済の見通しに対する企業経営者の楽観的見方が後退していることが浮き彫りになった。

IFOのクレメンス・フュースト所長は「ドイツ企業のセンチメントは今月、一段と弱まった」と指摘。「企業は現在のビジネスの状況に対する評価を後退させており、期待感も弱い」と述べた。また、第4・四半期のドイツの経済成長率は最大でも0.3%との見通しを示した。

【あおぞら銀行マーケットの展望2018年11月26日】
 
・米国
 住宅着工件数や中古住宅販売など夏以降低迷気味だった住宅関連指標に底打ち感が出てきたものの、購買担当者指数は前月比では下振れ。米中貿易戦争、FAANGに代表されるプラットフォーマー企業の業績不安や大型減税の息切れ等が懸念される状況が続く。ただし労働需給のひっ迫を背景に消費関連は比較的堅調で、感謝祭(ブラックフライデー)から年末にかけての小売に期待がかかる。

・欧州
 EUが先日合意したBrexit案の再修正は認めないとしたことで、「現状のBrexit案」が英の議会承認を得られない場合は「合意無き離脱」となる見込み。その場合、英EU間の物品および金銭の行き来が滞る事態が想定される。伊の赤字予算案に対して、欧州委員会は違反として制裁手続き(最大でGDP対比0.5%の罰金や国債発行計画の監視等)入りを示唆した。独ではメルケル首相率いるCDU党首選が12/7に予定されており、欧州全体で政局混迷が続く。

・日本
 10月の全国消費者物価は前年比1.4%と前月(1.2%)から加速したものの、日銀が注目するコア指数は前年比1%で目標の2%は遠い。OECDは経済見通しで日銀に対し2%より低いインフレ目標導入を提言した。比較的堅調だった物価以外の経済指標にやや頭打ち感が出て来ていることに加え、日産自元会長の金商法違反や三菱FGの北朝鮮をめぐる資金洗浄疑惑などの報道を受け先行き経済に不透明感が漂う。

【主な予定】
11月26日(月) 日:景気先行指数(9月)、独:IFO企業景況感指数(11月)
11月27日(火) 日:企業向けサービス価格指数(10月)、米:消費者信頼感指数(11月)
11月28日(水) 米:GDP成長率(7-9月期)、リッチモンド連銀製造業指数(11月)
11月29日(木) ユーロ:消費者信頼感指数(11月)、米:個人消費支出(10月)
11月30日(金) 日:失業率(10月)、鉱工業生産(10月)、ユーロ:消費者物価指数(11月)
https://jp.reuters.com/article/germany-economy-ifo-idJPL4N1Y137R?il=0
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/617.html

[経世済民129] 株式市場が織り込み始めた次の景気後退 米国株に不吉な兆候増加リセッションの可能性 ビットコイン年間下落率最悪断トツの急減
為替フォーラム2018年11月26日 / 18:42 / 2分前更新

株式市場が織り込み始めた次の景気後退

嶋津洋樹 MCPチーフストラテジスト
4 分で読む

[東京 26日] - 今年も残すところ1カ月あまり、さえない株式相場が象徴する通り、ほぼ楽観一色だった年初の景色は今や見る影もなくなった。

先進7カ国にユーロ圏、豪州、スウェーデン、スイスを加えた先週末時点の主要な株価指数をみると、年初来でプラス圏にあるのは米国のナスダック総合指数(プラス0.5%)ぐらいで、イタリアのFTSE MIB指数(マイナス14.4%)、ドイツのDAX(マイナス13.4%)、日本のTOPIX(マイナス10.4%)はいずれも2桁下落している。

欧州は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)やイタリアの財政問題など、政治的な不透明感が嫌気されている。景気の回復ペースが鈍化するなかで、欧州中央銀行(ECB)が金融政策の正常化路線に固執していることも、相場を圧迫している可能性が高い。

対照的に米国は、一時ほどの強さではないにしろ、トランプ減税という追い風が吹いているうえ、連邦準備理事会(FRB)の継続的な利上げが米国への資金流入を促している。金利上昇は株式相場に必ずしも良い話とは言えないが、米国に集まった資金のすべてが現預金や米国債などの安全資産に向かうとは考えにくい。米景気が相対的な底堅さを維持しているとすれば、なおさらそうだろう。

<ブラックスワン指数は低下>

興味深いのは、足元の新興国市場の動きである。FRBによる過去の継続的な利上げと米金利の上昇は、新興国からの資金流出を招き、最悪の場合には金融危機を引き起こすことさえあった。今回もアルゼンチンが大規模な資金流出に悩まされた揚げ句、国際通貨基金(IMF)に支援を要請。市場では、次はトルコや南アフリカに危機が伝播する懸念が浮上した。

しかし、上述した主要先進国とは異なり、主要新興国の代表的な株価指数の中には、年初来でプラス圏を維持しているものもある。

ブラジルのボベスパ指数(プラス12.9%)やロシアのMOEX(プラス11.1%)は、2桁のプラス。コロンビアのIGBC(プラス3.7%)とアルゼンチンのメルバル指数(プラス2.2%)も、小幅ながらプラスを維持している。

11月だけをみても、主要先進国の指数が軒並み下落しているのとは対照的に、新興国ではハンガリーをはじめ、香港やトルコ、インドネシア、フィリピン、ポーランドなどの代表的な株価指数は上昇。危機の伝播どころか、むしろ主要先進国の苦戦を浮き彫りにさえする。

もう1つ興味深いことがある。起こり得ない衝撃的な事象の発生を織り込むSKEW指数、別名ブラックスワン指数の低下だ。依然として100を上回り、テールリスクの存在を示しているとはいえ、直近で最も高かった8月の160近辺から大幅に低下し、足元は120を下回る。

この間、相場のボラティリティーを示す恐怖指数(VIX)は10ポイント台から20ポイント近辺まで上昇。足元のボラティリティー上昇にもかかわらず、それがブラックスワン的なイベントにつながるとの懸念はむしろ低下しているのである。

主要先進国の代表的な株価指数が大幅に調整したことで、世界的な景気の減速懸念は足元にかけて急速に広がった。米中貿易摩擦の激化やブレグジット、イタリアの財政政策を巡るニュースを受けて先行き不透明感が強まる中、「世界的な景気回復は続く」という筋書きの前提となる米中2カ国の経済のうち、米国では住宅市場が失速、中国では債務圧縮(デレバレッジ)の行き過ぎが明らかになった。それを反映するかのように原油価格も下落した。

<景気減速シナリオの現実味>

筆者も、世界的な景気減速というシナリオには全く異論がない。しかし、重要なのはそれがいつから顕在化し、どれぐらいの深さに達するかということだろう。具体的に言えば、次の景気減速が2008年のリーマンショック並みの金融危機とともに顕在化し、当時のような深刻な景気後退を世界中にもたらすのか、それとも1990年代後半のアジア通貨危機や2000年初めのITバブル崩壊のように、影響が特定のセクターや国に限られるのかということである。

リーマンショックとその後の景気の落ち込みは、今も多くの人の記憶に強く刻まれている。しかし、それは「100年に1度」の危機であって、「10年に1度」ではないことになっている。

その評価自体が誤っている可能性は否定しないが、次の景気後退が再びリーマンショック並みの落ち込みをもたらすリスクは、それほど高くないだろう。筆者のこうした考え方は、主要先進国の代表的な株価指数が軒並み下落する中、一部の新興国の株価指数が底堅いことと整合的にみえる。

また、中央銀行の利上げ局面における株式相場は、1)金融緩和の終了を嫌気した調整、2)利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇、3)利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落、4)利上げの打ち止めを好感した反発、5)ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落──という経過をたどることが多い。

足元の主要先進国は、3番目の段階へ移行した可能性が高い。本格的な調整を意識していないことは、VIX指数が高止まりする中で、SKEW指数が低下していることからもうかがえる。

やや長めの観点からみると、主要先進国の代表的な株価指数は次の景気後退を織り込む初期段階にあると考えられる。現在のトランプ減税の効果が、2019年半ばに一巡することを踏まえると、株式市場はそれを織り込み始めたと評価することもできるだろう。

<リスク資産の反発局面>

しかし、株価や景気が足元から一直線に落ち込むというのは極端なシナリオである。まして、それが世界同時に起きるというのは、リスクまたはテールリスクとして念頭に置く必要こそあれ、メインシナリオにはなりにくい。

逆説的ではあるが、各国当局の政策担当者も含め、多くの人の頭にリーマンショックの記憶が鮮明に残っているとすれば、無謀な決断は回避されやすく、なおさら危機は起きにくくなるはずだ。

主要先進国の株式市場を含め、来春ごろまでにリスク資産が反発する局面があると筆者は考えている。最もあり得そうなきっかけは、FRBが利上げをやめるか、追加利上げに慎重な姿勢を示すことだろう。中国政府がデレバレッジ路線を明確に転換することや、米中対立が大幅に緩和することも材料視されるだろうが、可能性はそれほど高くないと考える。

なお、一部の投資ファンドが閉鎖や顧客資金の返還を決めたと報じられており、短期的にはそれに伴う換金売りが膨らみやすい。年内は好材料が出ても、株式相場が十分に反応できない可能性があり、注意が必要だ。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-tax-hiroki-shimazu-idJPKCN1NV0VW


 

米国株に不吉な兆候増加、ウォール街はリセッションの可能性考慮
Elena Popina、Vildana Hajric
2018年11月26日 12:31 JST
• 200日移動平均線下回る銘柄増加、ディフェンシブ銘柄台頭
• 今後1年の米リセッション入り確率は15%−ブルームバーグ指数

Traders work on the floor of the New York Stock Exchange.
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
米株式相場の波乱の9週間と調整局面入りは、アナリストらに厄介な問いを投げ掛けている。株式市場は経済について何を伝えているのだろうかという問題だ。
  投資家がリセッション(景気後退)に備えていることを示す明らかな兆候はほとんどいないが、その言葉が取り上げられるケースは増えている。
  株式市場ではディフェンシブ銘柄の台頭や、相場の乱高下に耐えられる企業の突然の人気の高まりなど、過去に成長減速の前触れになった動きが見られる。経済成長と企業収益の伸びは今年の急激なペースから2019年には鈍化すると見込まれているため、これは理にかなう動きだ。
  以下のチャートの大部分は、リセッションを最も明白な結論とは見ていないアナリストの見解を表している。多くのアナリストは10年にわたる長期上昇相場の後だけに急落は健全と受け止めているが、貿易戦争の広がりや米追加利上げ観測を背景に、リセッションの可能性に言及することを少なくともいとわないアナリストの数は増えている。
  キーバンクのチーフ投資ストラテジスト、ブルース・マケイン氏は「売り浴びせの要因は何かと言えば、われわれに見えない何かを市場が見抜いているのかという考えだ。世界の成長や世界経済が想定されるよりもはるかに弱いなら、逃げ場所はあまり多くないとの懸念を強める」と指摘した。

モメンタムの恐怖
  9月下旬以降、米株式市場の時価総額は3兆ドル(約340兆円)減少。売り浴びせでS&P500種株価指数は高値から10%下落し、テクノロジー株は調整局面の基準を大きく超える下げを演じた。
  どれだけ激しい売り浴びせなのかを知るには、200日移動平均を割り込んでいる銘柄の数を見れば一目瞭然だ。S&P500種構成企業で200日移動平均を上回っているのはわずか37%にとどまる。

  同時にこのチャートは、景気の先行きを占う手掛かりとして相場動向を真剣に受け止め過ぎるのは間違いである可能性も示している。失速した銘柄の数の多さは歴史的基準では高いものの、直近の前例である16年の場合、そのシグナルの後にリセッションは発生しなかった。
  今回も同じだろうというのが、リセッションの予測を仕事とする人々の意見だ。ブルームバーグが算出する米リセッション確率予想指数によると、米国が向こう1年にリセッション入りする確率は15%。米経済は来年と20年に多少減速すると予想されつつも、エコノミスト予想の中央値では向こう1年で2.6%の成長が見込まれている。

  エコノミストがリセッション予測で必ずしも素晴らしい成績を収めてきたわけではないが、いずれにせよ投資家は不安な動きを見せている。投資家は不況を相対的にうまく乗り切るディフェンシブ銘柄に資金をシフトさせており、9四半期連続で市場全般に出遅れていた公共株は唯一、9月以来上昇している。
  一部の投資家は株式市場の波乱からの避難先として、価格変動が抑制された銘柄に注目している。リスク回避姿勢の投資家が殺到したことで、「インベスコ・S&P低ボラティリティーETF」は9月下旬に始まった相場急落以来、S&Pを上回るパフォーマンスだ。

  JPモルガンのストラテジストらは今週のリポートで、ディフェンシブ銘柄と景気敏感株のパフォーマンスの差について、投資家がリセッションのようなシナリオを織り込み始めていることの表れだと指摘。ただ、こうした動きは行き過ぎで、ファンダメンタルズと一貫しないとの見方も示した。


原題:Grim Stock Signals Piling Up as Wall Street Mulls Recession Odds(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PIS1AC6TTDS301

 
ビットコイン下げ止まらず:年間下落率で最悪に迫る−断トツの急減
Eric Lam、Matt Turner
2018年11月26日 14:02 JST
• 25日に一時3475ドルまで値下がり−ビットスタンプ
• ビットコインは11年に93%下落−13〜15年は84%下げた
仮想通貨ビットコインの急落は週末に一段と進み、2018年の年間下落率はビットコイン史上最悪に近づいた。
  ビットスタンプの価格によると、ビットコインは25日に一時3475ドルまで値下がりした。
  ブルームバーグがまとめた価格では、香港時間26日午前11時23分(日本時間午後0時23分)現在3949ドル。ニューヨーク時間23日午後5時(日本時間24日午前7時)に比べ7.3%安、昨年12月に付けた終値ベースの最高値からは約79%下落している。

  ビットコインは2011年に93%下落。13−15年は84%下げた。こうした下落率に18年も近づいている。金額ベースでは今年の方が格段に大きい。コインマーケットキャップ・ドットコムによれば、仮想通貨市場の時価総額はピーク時から7000億ドル(約79兆2400億円)余り減少した。
原題:Bitcoin’s Deepening Crash Now Rivals Its Worst-Ever Bear Markets(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PIS9NK6KLVR801?srnd=cojp-v2

 


ゴールドマンが予期せぬ1.5p利上げの影響分析−インフレ突発を想定
Joanna Ossinger
2018年11月26日 14:34 JST
• ドル相場を4%押し上げ、株価を9%押し下げる結果になりそうだ
• ゴールドマンのモデルでは景気後退リスクは今年5ポイント上昇
米銀ゴールドマン・サックス・グループのモデルによれば、連邦公開市場委員会(FOMC)が1.5ポイントという予期せぬ利上げに動けば、米国の10年国債利回りを45ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、ドル相場を4%押し上げ、株価を9%押し下げる結果になりそうだ。しかし、予想される金融の動きに伴う影響は「はるかに小さい」としている。
  FOMCが今年に入り計0.75ポイントの3回の利上げを決定する中で、10年国債利回りは年初来で60bp余り、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は4%既に上昇し、S&P500種株価指数は1.5%下げた。
  FOMCの今後の追加利上げ幅は最大1ポイントで、1四半期で0.25ポイントという過去1年の利上げペースが加速する可能性はほとんどないと多くの専門家が考えており、10月初め以降の金融市場のボラティリティーの高まりもあって、2019年の利上げ休止の可能性が今や市場の観測の焦点となっている。よりタカ派的なシナリオは、歴史的に逼迫(ひっぱく)した雇用市場がある時点で突発的なインフレ高進を引き起こすという見通しに重点を置く。
  ダーン・ストルイベン氏を含むゴールドマンのエコノミストらは25日のリポートで、「われわれの経験則によると、失業率の1ポイント低下は賃金の伸びを0.35ポイント押し上げるが、コア個人消費支出(PCE)価格指数は0.1ポイントとより緩やかな上昇にとどまる」と指摘した。PCE価格指数は、FOMC参加者がインフレ指標として重視している。
  ゴールドマンのモデルによれば、2年の予想期間におけるリセッション(景気後退)リスクは26%と主に金融情勢の引き締まりの影響で今年に入り5ポイント上昇したが、なお平均を下回っている。3年の予想期間では、リセッションリスクは43%と「歴史的平均をわずかに上回る」という。


原題:Goldman Models Impact of Rate-Shock Scenarios on Markets (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PIS87S6JIJUS01

 


日本株は続伸、円安推移や株価の割安評価ー輸出や内需関連高い
長谷川敏郎
2018年11月26日 7:53 JST 更新日時 2018年11月26日 15:41 JST
• ドル・円相場は一時1ドル=113円29銭、16日以来の円安水準
• 業績鈍化の織り込み進む、大阪万博は内需を下支えも

The Tokyo Stock Exchange
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
26日の東京株式市場は続伸。為替の円安推移に伴って電機や機械など輸出関連が買われ、大阪での国際博覧会(万博)開催決定で建設や倉庫・運輸関連、小売などの内需関連も上昇。
• TOPIXの終値は前営業日比3.24ポイント(0.2%)高の1632.20
• 日経平均株価は同165円45銭(0.8%)高の2万1812円
  きょうの為替市場でドル・円相場は一時1ドル=113円29銭と、16日以来の円安値を付けた。23日に発表された11月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)速報値は52.4に低下、米PMIも55.4に鈍化したものの、アジア時間の米国株先物は堅調に推移。市場が注目する11月30日、12月1日の20カ国・地域(G20)サミットでは、トランプ米大統領と習近平中国国家主席が首脳会議を行う予定だ。
  三井住友アセットマネジメントの金本直樹シニアファンドマネージャーは「欧州景気が反転する兆しはなく、来年にかけて世界景気は加速しないとの見方が大勢。今期増益率はコンセンサスの1桁台後半から低下する可能性があるが、先に株価が下がった」と指摘する。今週は重要イベントを控えて売買代金が少ないとした上で、「ニュースフローを見る限りG20での米中会談は決裂しないだろう」と言う。

  前週末に発表された米欧の経済指標を受けて景気の先行きが懸念され、TOPIXは午前半ばまで前日終値付近で推移、売り一巡後に徐々に値を上げた。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「世界経済の減速、米中通商協議があまり進展しないという悲観シナリオを織り込み過ぎており、G20の前にバリュエーション修正の動きが出てきやすい」と話していた。モルガン・スタンレーは日本株の投資判断を「オーバーウエート」に引き上げた。
モルガンSの日本株の見方についてはこちらをご覧ください
  23日(現地時間)にパリで開かれた博覧会国際事務局(BIE)総会で、2025年の大阪万博開催が決まったことを受けて、小売や建設、不動産といった内需関連業種が買われた。「20年の東京五輪で景気のピークが懸念されていた状況からみて、万博やカジノは下支えになる」と、三井住友AMの金本氏はみている。
大阪万博関連の記事はこちらをご覧ください
• 東証33業種ではゴム製品やパルプ・紙、海運、倉庫・運輸、機械、小売が上昇
• 海外原油市況安で鉱業や石油・石炭製品が売られ、米長期金利の低下を受けた銀行、保険も下落
• 東証1部売買代金は2兆1734億円
• 値上がり銘柄数は1119、値下がりは915
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-25/PIRT666JTSNP01

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/618.html

[経世済民129] 米利上げ停止、株式市場からのSOSだけでは不十分歴史が示唆 合意なき英EU離脱回避、頼みは暴落 既視感溢れるイタリア問題
米利上げ停止、株式市場からのSOSだけでは不十分
歴史が示唆
Emily Barrett、John Authers
2018年11月26日 13:39 JST
• 2019年に3回の利上げというFOMC見通しを市場は疑問視
• 株式相場下落で「パウエル・プット」への期待が浮上
米国株の売りで金融当局の引き締め軌道を疑問視し始めた投資家は、過去の市場の波乱を振り返ってみた。かつては当局が市場の救援に駆け付けたことがあったが、最近は経済から警戒信号が発せられない限り支援はしていないようだ。
  12月の利上げはほぼ確実視されているが、連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に示した2019年に3回の利上げという見通しは疑問視されている。株価が同月に付けた日中取引での最高値から10%余り下落したことで、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長による「パウエル・プット」への期待が広がり始めた。
  グリーンスパン元FRB議長の時代には「グリーンスパン・プット」があった。ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメントの1998年9月の破綻や新興市場危機に際して、グリーンスパン氏は利下げで対応したが、それは株式相場の下落と強く連動していた。
  後任のバーナンキ元FRB議長も2007、08年の景気後退に際して利下げし、金利がほぼゼロになった後は量的緩和(QE)に訴えた。
  とはいえ、バーナンキ氏は株式相場の大幅下落のたびに行動したわけではなく、その次のイエレン前議長もそうはしなかった。最近の世界的市場混乱に現議長がどう対応するか、市場は計りかねている。
  ジャン・ハッチウス氏らゴールドマンのエコノミストは1994年からの株安を分析した結果、「当局が緩和的になるのは信用スプレッドなど他の金融環境指標も大きく悪化した場合か成長が長期的トレンドを下回った場合だけだった」として、今回は当局が利上げを停止しないとの結論に達した。



原題:History Shows Fed Pause May Require More Than an SOS From Stocks(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PIS7786JTSE801?srnd=cojp-v2

 

外為フォーラムコラム2018年11月26日 / 15:21 / 3時間前更新
コラム:「既視感」溢れるイタリア問題、抜本策は何か=井上哲也氏
井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
4 分で読む

[東京 26日] - 2019年の予算を巡るイタリア政府と欧州委員会との対立が、いよいよ正念場を迎えている。トリア経済相は欧州委との調整が決裂する事態を回避したい意向を示しているが、欧州委と妥協する可能性は低いように見える。

連立政権を支える「五つ星運動」と「同盟」の党首をそれぞれ務めるディマイオ、サルビーニ両副首相が、来年の欧州議会での影響力強化を目指していることも背景にある。最終的にイタリアが課徴金を課される事態に至るかどうかは不透明としても、欧州委による何らかの是正措置を免れることは難しいようだ。

<既視感ある展開>

しかし、冷静に考えれば、少なくとも2018年春の総選挙の時点で、こうした事態を予想することは難しいことではなかった。なぜなら、現在政権政党となっている「同盟」と「五つ星運動」だけでなく、レンツィ元首相やベルルスコーニ元首相がそれぞれ率いた中道政党も含め、主要な政党が全て財政拡張政策を主張していたからである。つまり、どの政党が政権を獲得しても、財政健全化を巡る欧州委員会との対立は不可避だった訳である。

イタリア国内でそうした政治環境を演出したのは、国民の「緊縮疲れ」とも呼べる世論であった。実は、前出の両副首相が欧州委に対して主張しているように、イタリアはこれまで財政健全化を着実に進めてきていた。さらに言えば、もう一つの構造問題である銀行の不良債権についても、不動産価格の底打ちもあって、新規の発生には歯止めが掛かりつつあった。

しかし、そうした施策が経済成長率の底上げを実現するまでには時間がかかる中で、国民の間で低成長に対する不満が抑制できなくなったものとみられる。

加えて、筆者が非常に残念に思うのは、2008年の世界金融危機や2009年以降の欧州債務危機において顕在化した問題が、今回少なからず再現されつつあることだ。

例えば、国際金融市場は、18年春の選挙後にはグローバルな「リスクオン」の投資環境の中でイタリア財政をほとんど問題視していなかったにもかかわらず、夏以降にさまざまな不安要因が生じてから、急にイタリア国債利回りへの上昇圧力をかけ始めた。こうしたいわば正循環的な反応では、財政拡張に対する有効な歯止めの役割を果たすことはできない。格付け会社も、欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れへの深刻な打撃となることを考慮したのか、事態の推移に対して格付見直しが遅延気味になっている。

しかも、10月ECB理事会の議事要旨が示唆するように、イタリアでは、強力な金融緩和にもかかわらず、ここへきて銀行貸出の金利が上昇したり、銀行が優良な借り手に対しても貸出をためらうといった、この10年間さまざまな国で観察された金融仲介機能の低下までもが再現されつつあるようだ。イタリア当局にとっては、世界金融危機後に講じてきた銀行システムの頑健性向上に向けた取り組みを考えると、無力感にさいなまれる事態とも言えよう。

<ECBが取り得る一手>

ECBが18年末で量的緩和策を停止する方針にある下で、イタリア国債の利回りが上昇しつつ不安定化した場合、ECBに対してイタリア国債の買い入れ継続を求める声が高まることが考えられる。しかし、ECBからみれば、そうした要求に屈することは、イタリア政権による財政運営に決定的なモラルハザードを招くだけでなく、中央銀行による財政ファイナンスそのものになるだけに、受け入れがたい選択肢である。

もっとも、上記のようにイタリア国内で財政規律の問題が金融仲介を脅かす事態になりつつあるとすれば、域内の金融システム安定をマンデートの一つとするECBにとっても看過できないことになる。

そこでECBが取り得る対応として注目されるのは、前述の理事会議事要旨が示唆するように、貸し出し条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)のような中長期の資金供給オペをイタリアの銀行に対して実行する案である。ECBがイタリア国債を買うのに比べると、直接の政策効果が銀行に生じる点で望ましいことは明らかだ。

しかし、それでもざまざまな課題が残る。まず、イタリアの銀行が金融仲介機能を低下させている最大の原因が大量に保有しているイタリア国債の価格下落、あるいはその懸念だとすれば、問題の本質は自己資本の充実度ということになる。その場合、中長期オペの供与のような流動性対策では抜本的な解決は望みがたい。

実際、少なくとも域内主要国の中で唯一、イタリアの銀行は自国の国債保有を増やし続けてきた。その背景は必ずしも明確ではないが、景気や物価低迷による金利低下期待と、国内預金の回復、そして国内貸出の低迷による資産運用上の要請が考えられる。

加えて、イタリアの銀行は、国際金融市場での「風評」を恐れるあまり、ECBが提供する中長期オペの利用を逡巡するかもしれない。これもまた、世界金融危機後に欧米市場で実際に生じた既視感を覚える事態であると同時に、有効な対応の見出しがたい問題である。

<本質的な対応は>

イタリア経済を回復軌道に乗せる上で金融仲介の活性化が必要であるのに、イタリアの銀行がソブリンリスクの負担に圧迫されているのであれば、それを何らかの形で除去することが有効な解決策となる。

つまり、かつての日銀が銀行の保有する株式を買い取ったのと同様な対応ができればよいが、今回は中央銀行以外の買い手の登場が望まれる。その意味では、かねて欧州委が検討を進めてきた、ユーロ圏救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)の機能拡充が最も実効性のある対応となろう。

さらに、もともとの財政規律の問題に関しても、域内国に対して一律のハードルを設定する現在の安定成長協定の枠組みには再検討の余地もあるように思われる。例えば、同協定の基準が適用される時間軸や経費支出の内容に柔軟性を高めるといった対応が考えられよう。

もちろん、この問題を究極的に解決するのは、域内国の間で財政面での統合を進めることである。来年の欧州議会を展望すると厳しい外部環境にあるにもかかわらず、フランスやドイツが粘り強く財政統合促進の道を模索していることにも、今回のイタリア問題が少なからぬ影響を与えているのかもしれない。

*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/column-inoue-tetsuya-idJPKCN1NV0E2


 

トップニュース2018年11月26日 / 13:38 / 5時間前更新
焦点:合意なき英EU離脱の回避へ、頼みは市場暴落か
2 分で読む

[ロンドン 23日 ロイター] - メイ英首相の欧州連合(EU)離脱素案に反対する英議員に再考を促したいなら、最高の妙薬は金融市場が暴落することだ。ポンドや株価がどの程度下落すれば、英議会が素案を拒否して合意なき離脱(ハード・ブレグジット)に突き進むのを回避できるだろうか。

議会は12月半ばに離脱案の採決を行う見通し。離脱案への反対は与野党を問わず強く、否決されればハード・ブレグジットが現実味を増す。投資家はポンドの下落やボラティリティー(相場の変動率)の上昇から身を守るため、オプション取引などで備え始めている。

ただ今のところ、金融市場が暴落して離脱素案に反対する議員を転向させる兆しは見えない。

つまり投資家は依然、合意に基づく円滑な離脱の可能性が最も高いと考えているようだ。

スミス・アンド・ウィリアムソンの債券ディレクター、ロビン・マーシャル氏は「政治家を真剣にさせるには、資産価格がもっと大幅に下落する必要がある」とし、ポンドと株価が5─7%急落すれば政治家も腰を上げると予想した。

<TARPシナリオ>

12月の採決でメイ氏の離脱案が否決された場合、市場が暴落して議員らはすぐに転向し、小幅な修正を加えた離脱案が再投票で可決される──。ブラックロックのポートフォリオマネジャー、ルパート・ハリソン氏は、こうしたシナリオを「TARP」モデルと名付けた。

TARPとは2008年の世界金融危機時に米政府が打ち出した銀行救済策「不良資産救済プログラム」の略称。当時、米下院がTARPを否決すると米国株は10%近く暴落し、4日後に下院が方向転換した経緯がある。

こうした事例には事欠かない。例えばギリシャでは2015年、EUに課された緊縮策の撤回を公約したチプラス氏が首相に選出されたが、市場の暴落でギリシャ銀の経営が危うくなると公約を撤回した。

英国は1992年、投機筋のポンド売りを防衛し切れず欧州為替レート・メカニズム(ERM)を離脱し、その後大幅な利上げを余儀なくされた経験がある。いわゆる「ブラック・ウエンズデー(暗黒の水曜日)」だ。

ハード・ブレグジットになれば、英国経済は当時と同様に悲惨な状況に陥るかもしれない。UBSの試算では、この場合、英国の国内総生産(GDP)は10%減少する。もっとも、合意に基づく離脱でも6%減少するという。

<ショックが不十分>

ただ、EU離脱の是非を問う2016年6月の国民投票で離脱派が勝利し、ポンドが急落したにもかかわらず、議員は離脱への見解を変えていない。

ロンバード・オディエの首席投資ストラテジスト、サルマン・アハメド氏は「ポンドがもっと強い売り圧力にさらされなければ、混乱状態には陥らない」と指摘。ギリシャの場合は銀行セクターの悪化がチプラス首相に妥協を促したが、「英国はショックが足りないので、そうした事がまだ起こっていない」と言う。

アハメド氏は、合意なき離脱になればポンドはさらに10─12%下げて過去30年強の安値である1ポンド=1.13ドルに近付くと予想した。

議会が12月に離脱案を否決するとの見方が強まり、市場への織り込みが進んだこと自体が、TARPシナリオの可能性を遠ざけている面もある。

12月にいったん否決されても、最終的にはハードブレグジットよりも円滑な離脱、場合によっては国民投票の再実施に至る可能性の方が高いとの認識が広がっているようだ。そうなればポンドは急反発する可能性があるため、投資家はポンドを裸で売るのを怖がり、代わりにデリバティブを利用している。

本当に厳しい状況になれば、ポンド以外の資産にも影響は広がりそうだ。閣僚の間で「メイおろし」の機運が高まった今月半ばには、英国株とポンドの逆相関が崩れ、ポンドと株がそろって下落する珍しい事態となった。

不動産株や銀行株も急落し、経済全般に混乱が広がる兆しも垣間見えた。

BNYメロンのストラテジスト、サイモン・デリック氏は、離脱案が否決されそうな12月から、議会が再採決を試みそうな1月までの期間は、年末年始で流動性が薄くなると指摘。こうした時期に英国市場が混乱すると、世界的に余波が伝わりやすいと警告を発した。

(Tommy Wilkes記者 Dhara Ranasinghe記者)
https://jp.reuters.com/article/brexit-market-analysis-idJPKCN1NV08H

 

外為フォーラムコラム2018年11月26日 / 15:21 / 3時間前更新
コラム:
「既視感」溢れるイタリア問題、抜本策は何か

井上哲也 野村総合研究所 金融イノベーション研究部主席研究員
4 分で読む

[東京 26日] - 2019年の予算を巡るイタリア政府と欧州委員会との対立が、いよいよ正念場を迎えている。トリア経済相は欧州委との調整が決裂する事態を回避したい意向を示しているが、欧州委と妥協する可能性は低いように見える。

連立政権を支える「五つ星運動」と「同盟」の党首をそれぞれ務めるディマイオ、サルビーニ両副首相が、来年の欧州議会での影響力強化を目指していることも背景にある。最終的にイタリアが課徴金を課される事態に至るかどうかは不透明としても、欧州委による何らかの是正措置を免れることは難しいようだ。

<既視感ある展開>

しかし、冷静に考えれば、少なくとも2018年春の総選挙の時点で、こうした事態を予想することは難しいことではなかった。なぜなら、現在政権政党となっている「同盟」と「五つ星運動」だけでなく、レンツィ元首相やベルルスコーニ元首相がそれぞれ率いた中道政党も含め、主要な政党が全て財政拡張政策を主張していたからである。つまり、どの政党が政権を獲得しても、財政健全化を巡る欧州委員会との対立は不可避だった訳である。

イタリア国内でそうした政治環境を演出したのは、国民の「緊縮疲れ」とも呼べる世論であった。実は、前出の両副首相が欧州委に対して主張しているように、イタリアはこれまで財政健全化を着実に進めてきていた。さらに言えば、もう一つの構造問題である銀行の不良債権についても、不動産価格の底打ちもあって、新規の発生には歯止めが掛かりつつあった。

しかし、そうした施策が経済成長率の底上げを実現するまでには時間がかかる中で、国民の間で低成長に対する不満が抑制できなくなったものとみられる。

加えて、筆者が非常に残念に思うのは、2008年の世界金融危機や2009年以降の欧州債務危機において顕在化した問題が、今回少なからず再現されつつあることだ。

例えば、国際金融市場は、18年春の選挙後にはグローバルな「リスクオン」の投資環境の中でイタリア財政をほとんど問題視していなかったにもかかわらず、夏以降にさまざまな不安要因が生じてから、急にイタリア国債利回りへの上昇圧力をかけ始めた。こうしたいわば正循環的な反応では、財政拡張に対する有効な歯止めの役割を果たすことはできない。格付け会社も、欧州中央銀行(ECB)による国債買い入れへの深刻な打撃となることを考慮したのか、事態の推移に対して格付見直しが遅延気味になっている。

しかも、10月ECB理事会の議事要旨が示唆するように、イタリアでは、強力な金融緩和にもかかわらず、ここへきて銀行貸出の金利が上昇したり、銀行が優良な借り手に対しても貸出をためらうといった、この10年間さまざまな国で観察された金融仲介機能の低下までもが再現されつつあるようだ。イタリア当局にとっては、世界金融危機後に講じてきた銀行システムの頑健性向上に向けた取り組みを考えると、無力感にさいなまれる事態とも言えよう。

<ECBが取り得る一手>

ECBが18年末で量的緩和策を停止する方針にある下で、イタリア国債の利回りが上昇しつつ不安定化した場合、ECBに対してイタリア国債の買い入れ継続を求める声が高まることが考えられる。しかし、ECBからみれば、そうした要求に屈することは、イタリア政権による財政運営に決定的なモラルハザードを招くだけでなく、中央銀行による財政ファイナンスそのものになるだけに、受け入れがたい選択肢である。

もっとも、上記のようにイタリア国内で財政規律の問題が金融仲介を脅かす事態になりつつあるとすれば、域内の金融システム安定をマンデートの一つとするECBにとっても看過できないことになる。

そこでECBが取り得る対応として注目されるのは、前述の理事会議事要旨が示唆するように、貸し出し条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)のような中長期の資金供給オペをイタリアの銀行に対して実行する案である。ECBがイタリア国債を買うのに比べると、直接の政策効果が銀行に生じる点で望ましいことは明らかだ。

しかし、それでもざまざまな課題が残る。まず、イタリアの銀行が金融仲介機能を低下させている最大の原因が大量に保有しているイタリア国債の価格下落、あるいはその懸念だとすれば、問題の本質は自己資本の充実度ということになる。その場合、中長期オペの供与のような流動性対策では抜本的な解決は望みがたい。

実際、少なくとも域内主要国の中で唯一、イタリアの銀行は自国の国債保有を増やし続けてきた。その背景は必ずしも明確ではないが、景気や物価低迷による金利低下期待と、国内預金の回復、そして国内貸出の低迷による資産運用上の要請が考えられる。

加えて、イタリアの銀行は、国際金融市場での「風評」を恐れるあまり、ECBが提供する中長期オペの利用を逡巡するかもしれない。これもまた、世界金融危機後に欧米市場で実際に生じた既視感を覚える事態であると同時に、有効な対応の見出しがたい問題である。

<本質的な対応は>

イタリア経済を回復軌道に乗せる上で金融仲介の活性化が必要であるのに、イタリアの銀行がソブリンリスクの負担に圧迫されているのであれば、それを何らかの形で除去することが有効な解決策となる。

つまり、かつての日銀が銀行の保有する株式を買い取ったのと同様な対応ができればよいが、今回は中央銀行以外の買い手の登場が望まれる。その意味では、かねて欧州委が検討を進めてきた、ユーロ圏救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)の機能拡充が最も実効性のある対応となろう。

さらに、もともとの財政規律の問題に関しても、域内国に対して一律のハードルを設定する現在の安定成長協定の枠組みには再検討の余地もあるように思われる。例えば、同協定の基準が適用される時間軸や経費支出の内容に柔軟性を高めるといった対応が考えられよう。

もちろん、この問題を究極的に解決するのは、域内国の間で財政面での統合を進めることである。来年の欧州議会を展望すると厳しい外部環境にあるにもかかわらず、フランスやドイツが粘り強く財政統合促進の道を模索していることにも、今回のイタリア問題が少なからぬ影響を与えているのかもしれない。

*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部主席研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。  

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

(編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/column-inoue-tetsuya-idJPKCN1NV0E2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/619.html

[経世済民129] 中国で意外な「トランプ人気」トランプ発言で原油価格急落、減産も小幅 中国不動産2桁調達コスト 米国第一主義と軍備増強矛盾
コラム2018年11月24日 / 08:17 / 2時間前更新

中国で意外な「トランプ人気」
Rob Cox
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[香港 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は中国に貿易戦争を仕掛けている。しかし意外なことに、中国の民間セクターの一部には、密かに同氏を支持する心情がある。

中国の企業家は自国経済の開放と競争の導入を望んでいるが、国内で習近平国家主席に圧力をかけることはしない。トランプ氏が中国に突きつける改革要求に頼るしかないのが実態だ。

対外的には、中国の高官や企業人、政府系メディアは結束して米国の「保護主義」に反対している。王毅国務委員兼外相は19日に外務省ウェブサイトで、特定の国が「保護主義と一国主義を正当化」していると非難した。米政府を指しているのは明らかだ。

同時にここ数カ月、中国国内では経済問題、とりわけ対米貿易に関する報道への検閲が強まっている。しかし水面下をのぞくと、もっと複雑な構図が浮かび上がる。

米国の輸入関税引き上げや投資規制の強化が恩恵をもたらすとは、中国の民間企業幹部も政策参謀も考えていない。直感に反するトランプ氏への支持は、別のところから来ている。中国は故トウ小平政権下の1980年代から「中国独自の社会主義」という理念の下で市場経済の要素を取り入れたが、その機運が途絶え、理念に合致する改革ですら滞っていることへの不満が根底にあるのだ。

不満を抱く人々にとって、習氏は経済問題にほぼ無関心で「中国共産党を再び偉大にする」ことに集中しているように映る。例えば党による国有企業への統制を強化し、企業の定款に党の役割を挿入するなどの措置を進めた。政府高官らも厳しい改革の推進には及び腰のように見える。

その上、政府による一部産業への関与、特に消費者向けハイテク分野への介入がここ1年で目に見えて強まった。政府は騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の人気ゲーム販売について、近視や中毒の恐れがあるとして新規認可を凍結し、同社は第2・四半期に2005年以来初めての減益となった。

またコンテンツ配信プラットフォーム運営の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は今年、政府高官から人気のニュースアプリ「今日頭条」のダウンロードを閉鎖させられるなどして、創業者が謝罪する事態となった。総合的に見て、中国の民間セクターが暗い政策見通しを抱くのも無理はない。

この結果、改革派はトランプ氏が外圧によって変革を促してくれることに期待を寄せている。

関税引き上げという乱暴な道具を振りかざして中国指導部を動かすことができれば、党幹部らが本来避けて通りたい市場開放につながるかもしれない、というわけだ。そうなれば民間企業の競争が進み、とりわけ国有企業と戦いやすくなるかもしれない。

この理屈には一理ある。外資系自動車メーカーや金融サービス業者による合弁企業への出資制限撤廃など、過去1年ほどで発表された数少ない自由化策は、米政府の働きかけに対応したものだったからだ。

習氏その他の高官はここ数週間、雇用を生み出せるのは民間企業しかないとして、企業家のアニマルスピリットを鼓舞する発言を始めた。習氏は今月北京で開いた民間企業のシンポジウムで、民間企業と企業家に「揺るぎない支援」を約束。減税や資金調達の改善、国有企業と民間企業の競争条件の平等化も誓った。

その後、李克強首相ら高官や人民日報などの有力メディアも同様のメッセージを発し、民間企業を持ち上げた。これがある程度まで米国の圧力のおかげなのか、単に民間部門の重要性を認識したからなのかは分からない。いずれにせよ、中国の企業幹部らは内心、自国の政府よりトランプ氏に改革の期待をかけている。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/trump-china-breakingviews-idJPKCN1NR090

 

 

2018年11月26日 芥田知至 :三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員
トランプ発言で原油価格急落 産油国減産も小幅の見通し
 10月3日の原油相場では、米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル当たり76.90ドル、欧州の北海ブレントは同86.74ドルと、共に2014年11月以来の高値を付けた。
 背景には、米国の対イラン制裁による需給逼迫懸念や、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の合意で貿易摩擦への懸念が後退したことなどがあった。

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 しかし、その後、サウジアラビアとロシアが非公式に増産で合意していたとの報道や、世界的な株式相場の急落を背景に原油相場は下落した。
 10月下旬まで増産姿勢を示していたサウジだが、11月に入ると一転、減産を志向するようになった。サウジにとっては、足元の原油の需給緩和や相場下落が想定外だったということであろう。
 11月2日には、米政府がイラン産原油の禁輸措置について、日本、中国、インド、韓国、トルコ、ギリシャ、イタリア、台湾の8カ国・地域は180日間、適用除外とする方針を明らかにしたことがサプライズとなって、需給逼迫への懸念が和らいだ。
 11日に、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟産油国は、アブダビでJMMC(共同閣僚監視委員会)を開催し、原油市場の状況について議論が行われたようだ。
 その結果を踏まえて、翌12日にはサウジのファリハ・エネルギー相が、19年は18年10月比で日量100万バレルの減産が必要との分析結果で産油国が一致したと表明した。サウジ自身は12月に50万バレルの減産を行う方針も明らかにした。これらを受けて、需給引き締まり観測が強まり、原油相場は上昇していった。
 しかし、その後、トランプ米大統領がツイッターで「サウジとOPECが減産しないことを望む。原油価格は供給量に基づきもっと引き下げられるべきだ」と述べた。これにより売り圧力が強まり、結局、この日に下落しただけではなく、翌13日も大幅下落した。
 トランプ氏は原油相場を高過ぎるとしていたのに対して、サウジは原油安を懸念し、減産で相場下落に歯止めをかけたい意向とみられる。ロシアは少なくとも13日の相場急落前までは、原油相場は適正水準に近いとの見方であった。
 12月6〜7日に予定されるOPEC総会と非加盟産油国も参加するOPECプラス閣僚会合では、19年の減産の是非などが協議される。トランプ氏からの圧力はあるが、産油国の事情が優勢され、減産が決定される可能性が高い。
 ただし、サウジは日量140万バレルの大幅減産を検討しているのに対して、ロシアは大幅減産には消極的とされる。現時点での落としどころは、やや小幅な減産となるだろう。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

https://diamond.jp/articles/-/186480

 

2018年11月26日 ロイター
中国不動産デベロッパー「新常態」は2桁の調達コスト

11月20日、中国の不動産デベロッパーは高い利回りでの社債発行が常態化し、調達コストの膨張が顕著だ。写真は河北省の建設現場。8月撮影(2018年 ロイター/Joyce Zhou)
[香港 20日 ロイター] - 中国の不動産デベロッパーは高い利回りでの社債発行が常態化し、調達コストの膨張が顕著だ。利回り上昇の背景には、中国不動産市場の冷え込みに投資家がリスク回避姿勢を強めていることや米金利の上昇がある。

 時代中国(旧時代地産)が1月に3年物を起債した際の発行利回りは6.25%だったが、最近の2年物起債では11%と約2倍の水準を強いられた。

 中国の不動産投資は10月に伸びが10ヵ月ぶりの水準に鈍り、住宅販売も再び減少。市況の軟化に直面した不動産開発業者は事業拡大計画を棚上げした。

 今月初めの18億ドルの起債で表面金利が当時最高だった中国恒大集団も、19日の2年物、10億ドルの追加発行では11%となった。

 中国恒大が18億ドルを起債した際には、負債額の大きい同社が高い表面金利で社債を発行すれば同業他社への圧力が増し、借り入れコストを全体的に押し上げると、銀行関係者やアナリストが警鐘を鳴らした。実際に開発業者は今年のオフショアでの借り入れ割り当てが期限切れとなる前に、高い表面金利で投資家の買いを呼び込もうと雪崩を打って起債に走り、こうした危惧が現実のものとなっている。

 ANZの社債アナリストのオーウェン・ガリモア氏は「ダブルB格付けの発行体は2年という短めの社債発行で10─11%の利回りを求められており、発行利回りの水準は毎週のように上がっている。最悪の場合は10%台半ばもあり得る」と述べた。

 雅居楽集団は7月に3年物の発行利回りが8.5%だったが、先週の2年物、4億ドル(S&Pの格付けがダブルB)の起債は9.5%だった。

 ロイターが入手したタームシートによると、緑地香港控股も今週の1年半、2億ドルの社債の発行利回りが9.25%となった。6月の1年物起債では7.875%だった。

 リフィニティブのデータでは、過去2年間に期間2年の社債を1億ドル以上の規模で起債し、発行利回りが2桁に達したのはわずか15社で、うち12社が中国の不動産開発会社だ。

 リフィニティブによると、来年償還期限を迎える社債はオンショアとオフショアの両方の起債分の合計が961億ドルとなり、発行利回りの見直しが進んでいる。

 銀行関係者の話によると、投資家はジャンク(投資不適格級)の社債を購入する際にはより大きなプレミアムを要求し、期間の長い社債を敬遠しており、起債を実行に移すのはどんどん難しくなっている。

 シティグループのクレジット部門のスペシャリスト、マンジェシュ・ベルマ氏は「以前は7%でも投資家の関心を集められたが、今は7%どころか、9%でもまったくだめだ」と話した。

 発行利回りの上昇を受けて発行済み社債の価格は下落し、今年は債券投資家にとって極めてさえない年になった。

 時代中国が1月に発行した社債は現在、1ドルに対して90.8セントの水準で取引されており、利回りは11.16%に上昇。雅居楽集団が7月に発行した社債も価格が1ドルに対して96.6セントに下がり、利回りは9.94%に上がった。

(Julia Fioretti記者)
https://diamond.jp/articles/-/186660

 


 
 
露呈した「米国第一主義」と軍備増強の矛盾

2018/11/26

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)


(iStock.com/flySnow/Purestock)
 トランプ政権の看板スローガン「米国第一主義」と表裏一体で進められた大幅減税。しかしその結果、財政赤字が深刻化、このままでは自ら再選を目指す2年後の大統領選で国民の批判にさらされることを恐れる大統領は、早々と来年10月に向けて2020年度予算の切り詰めを全省庁に言い渡した。この中には、聖域扱いされてきた軍事予算も含まれており、ペンタゴンをあわてさせている。

 「全省庁例外なしに、予算カットを覚悟してほしい」―トランプ大統領は去る10月16日、ホワイトハウスでの閣議で次のようにまくしたてた。


富裕層減税が、国防費カットの結果に……。写真は、21日に香港に寄港した空母ロナルド・レーガンの乗組員(Imaginechina/AFLO)
 「2020年度予算だが、本日出席の閣僚たちには最低でも5%はカットをお願いしたい。いやもっとやってもらいたい。そうすればみんながハッピーになれる。各省庁の脂肪部分や無駄を除去すべきだ。私はあなたたち全員がこれを達成できることを信じている。努力すれば(財政赤字削減の)インパクトはとてつもなく大きい……」

 この異例の要請は、たまたまその2日前の14日、ホワイトハウスが公表した「米国財政見通し」を受けたもので、それによると、本年度財政赤字は2012年以来、最悪の7790億ドル(約80兆円)を記録、さらに2019年度には1兆ドルを突破した後、その後も同レベルの苦しい状況が続くと見込まれている。

 これとは対照的に、トランプ氏が頭ごなしに批判を続けてきたオバマ前政権下では、とくに2期目の在任期間中に着実に財政赤字が減り始め、ブッシュ政権当時の1兆3000億ドルからトランプ政権発足前の2016年会計年度では5850億ドルと5割以上の顕著な減少となった。

 ところが、「小さな政府」を標榜したはずのトランプ政権下で、2019年にはオバマ政権時の倍近い赤字にまで再び膨れ上がって来ることが明らかになり、大統領の尻に火がついた格好だ。

 赤字増の最大要因とされているのが昨年10月以来、実施されてきた大幅減税による税収減であり、しかもその減税効果が富裕層優先で、中産階級には及んでいないことから批判が高まった結果、11月中間選挙では下院で共和党が敗北するなど、国民の手痛いしっぺ返しを受けていた。

 予算カット要求をいきなり突き付けられた各省庁の中で、最も注目されるのが国防・軍事関係であることはいうまでもない。

 この点に関して大統領は詳細には触れず、閣議後の記者団とのやりとりの中で「おそらく(2020年国防関係予算は)7000億ドルぐらいだろう。軍事関係でやるべきことはすでにやっているからだ」と述べた。

 2018年度の国防関係予算は7000億ドルだったが、10月からスタートしたばかりの2019年度予算では7160億ドルにまで引き上げられることになっている。しかし今回の大統領指示により2020年には再び7000億ドルに戻ることになり、結果として5%ではなく、2.23%の削減にとどまるという。

 この間の事情について大統領は「つい少し前までは5200億ドルだったが、私が大統領になって7000億ドルに、そして7160億ドルに増額し、新型艦船の建造にあてた。わが国は眼を見張るような新世代潜水艦を造りだしている。それでも2020年度は自分としては7000億ドルに抑えるつもりだ」と説明した。

ペンタゴン関係者は不満を隠さない
 しかし、他の省庁並みの5%カットは免れたもののそれでも、ペンタゴン関係者は不満を隠さない。

 軍事専門紙「ディフェンス・ニュース」によると、国防総省高官は「今後のインフレ上昇分を差し引いた上で、人件費増、技術開発投資なども含め要件を満たすためには最低毎年2〜3%の予算増は絶対必要だ……とくに2020年度には物価上昇率が目立つ時とぶつかるだけに、逆に予算のアップではなくダウンとなるのは困ったものだ」と厳しい表情で語っている。

 さらに大統領の国防費カット方針については、去る11月14日公表された「国防戦略委員会」報告書でも厳しい批判が展開された。同委員会は連邦議会によって民主、共和両党の元国防関係当局者14人から構成され、「2018年トランプ政権国家防衛戦略」についての評価を目的として審議を進めてきたもので、報告書では主に以下のような点が指摘されている。

世界の新たなる大国間競争の時代にあって、アメリカの軍事的優位はすでに危険なレベルにまで低下し、将来中国およびロシアとの戦争で敗北しかねない状況になりつつある
政府は強いアメリカというビジョンを実行に移すためのスピードと十分な投資を行っておらず、このままではアメリカの軍事的優位性が一層失われ、国家安全保障上の非常事態を惹起することになる
この点、権威主義国家である中国およびロシア両国はアメリカと対等な軍事力増強に着手、当該地域における優位性の確保とグローバルな軍事力展開を模索している
アメリカは過去何十年にもわたり間違いなく軍事的優位性を維持してきたものの、その後、現状をよしとし、冷戦を想起させる中国やロシアとの軍事力レースに勝ち残るために不可欠なあらゆる資源調達(予算獲得、技術開発など)、イノベーションといった 必要な努力を怠ってきた、
欧州、アジア、中東において同盟諸国の信頼を損ない地域紛争の危険性が高まるにつれてアメリカの軍事バランスは悪化してきた
こうした状況下にあって、同委員会としては必要な軍事予算規模に言及する立場にはないものの、将来的な対中国およびロシア戦争での勝利を確実にするためには、従来の国防関連予算だけでは不十分であることは明白だ
 同報告書は超党派委員会の性格上、トランプ政権を名指しで批判はしていないものの、大統領自身が就任以来、「アメリカ・ファースト」を錦の御旗に掲げる一方、NATO(北大西洋条約機構)など西側同盟関係の重要性に疑問を投げかけ、メイ英国首相、マクロン仏大統領、メルケル独首相などへの個人批判発言などを通じ、対米関係がとくに動揺を来していることや、中国やロシアがその間隙をぬって軍事攻勢を強めつつあることへの危機感を随所ににじませたものとなっている。

メキシコの壁への莫大な支出
 しかも、このように世界情勢が緊迫の度を深め、アメリカの確固たる軍事対応が求められる重要な時期に、国防予算を犠牲にしてまでも大統領が「アメリカ・ファースト」の象徴でもあるメキシコ国境沿いの「壁」建設計画のために莫大な支出を要求し続けているのも、皮肉といえば皮肉だ。

 同計画は言うまでもなく、中米諸国からの不法移民取り締まりを目的としたものであり、「国防戦略委員会」が警告する「国家安全保障上の危機」とはまったく無縁だ。それにもかかわらず、大統領は全長2000キロにおよぶアメリカ版“万里の長城”建設に固執し続け、そのための第1次段階費用として議会に対し50億ドルの支出を要請している。しかし、専門家の試算によると、完成のための必要総コストは200~300億ドルにも達するという。

 さらに「アメリカ・ファースト」の一環として今後莫大な予算計上が予定されているのが、国内道路、線路、河川、港湾、橋梁など老朽化したインフラ整備のための大規模投資だ。

 今年初めに明らかにされたホワイトハウス「インフラ整備10年計画」によると、総額1兆5000億ドルにおよぶ壮大なもので、その大半は州、市町村、民間に負担させる一方、連邦政府としては2000億ドルの出資を見込んでいる。ただ、財政難にあえぐ一部の市町村の中には、自己負担を渋るところもあり、結果的に連邦政府負担分が当初よりさらに膨らむ可能性も指摘されている。

 インフラ投資は長期的に見た場合、アメリカの経済成長維持のためにきわめて重要であることは確かだが、短期的には、大幅減税による減収と合わせ財政赤字をより一層、拡大させることになりかねない。
 
 次の大統領選挙を2年後に控え、「アメリカ・ファースト」戦略にこだわるあまり同盟諸国との関係悪化を招き、中国およびロシア相手の軍事的優位性確保が困難になる一方で、国内的な財政状況の悪化にどう対処していくのか―トランプ大統領が今後直面する課題はきわめて深刻と言わざるを得ないだろう。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14608


 

2018年11月26日 芥田知至 :三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員
トランプ発言で原油価格急落 産油国減産も小幅の見通し
 10月3日の原油相場では、米国のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル当たり76.90ドル、欧州の北海ブレントは同86.74ドルと、共に2014年11月以来の高値を付けた。
 背景には、米国の対イラン制裁による需給逼迫懸念や、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の合意で貿易摩擦への懸念が後退したことなどがあった。

拡大画像表示
 しかし、その後、サウジアラビアとロシアが非公式に増産で合意していたとの報道や、世界的な株式相場の急落を背景に原油相場は下落した。
 10月下旬まで増産姿勢を示していたサウジだが、11月に入ると一転、減産を志向するようになった。サウジにとっては、足元の原油の需給緩和や相場下落が想定外だったということであろう。
 11月2日には、米政府がイラン産原油の禁輸措置について、日本、中国、インド、韓国、トルコ、ギリシャ、イタリア、台湾の8カ国・地域は180日間、適用除外とする方針を明らかにしたことがサプライズとなって、需給逼迫への懸念が和らいだ。
 11日に、OPEC(石油輸出国機構)と非加盟産油国は、アブダビでJMMC(共同閣僚監視委員会)を開催し、原油市場の状況について議論が行われたようだ。
 その結果を踏まえて、翌12日にはサウジのファリハ・エネルギー相が、19年は18年10月比で日量100万バレルの減産が必要との分析結果で産油国が一致したと表明した。サウジ自身は12月に50万バレルの減産を行う方針も明らかにした。これらを受けて、需給引き締まり観測が強まり、原油相場は上昇していった。
 しかし、その後、トランプ米大統領がツイッターで「サウジとOPECが減産しないことを望む。原油価格は供給量に基づきもっと引き下げられるべきだ」と述べた。これにより売り圧力が強まり、結局、この日に下落しただけではなく、翌13日も大幅下落した。
 トランプ氏は原油相場を高過ぎるとしていたのに対して、サウジは原油安を懸念し、減産で相場下落に歯止めをかけたい意向とみられる。ロシアは少なくとも13日の相場急落前までは、原油相場は適正水準に近いとの見方であった。
 12月6〜7日に予定されるOPEC総会と非加盟産油国も参加するOPECプラス閣僚会合では、19年の減産の是非などが協議される。トランプ氏からの圧力はあるが、産油国の事情が優勢され、減産が決定される可能性が高い。
 ただし、サウジは日量140万バレルの大幅減産を検討しているのに対して、ロシアは大幅減産には消極的とされる。現時点での落としどころは、やや小幅な減産となるだろう。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

https://diamond.jp/articles/-/186480

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/620.html

[経世済民129] アメリカだけじゃない、日本で急速に進む「自国第一」日本人の社畜ぶりが話題!外国人驚愕 財政で農家を守り低所得層をいじめる
アメリカだけじゃない、日本で急速に進む「自国第一」
博報堂生活総研の「トレンド定点」(第18回)
2018.11.26(月) 三矢 正浩
意外な層が、「自国第一」意識を強めている?
 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。 
 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。
日本でも進んでいる「自国第一」意識
「米国は国家の利害を常に優先して行動する」(トランプ大統領)
「(国連を指して)選挙を経ず責任も負わないグローバル官僚機構に、わが国の主権を明け渡すことはない」(同上)
「米国は世界各国の『財布』のように認識されているが、そのような現状を終わらせなければならない」(同上)
「米国が米国第一なら、ドイツはドイツ第一だ」(ドイツ政党「AfD」ガウラント党首)
「イタリア国民が第一だ。イタリアはばかげた規則にこれ以上従わない」(イタリア政党「同盟」サルビーニ党首)

・・・上記は、最近発言された、アメリカなど世界各国政治指導者たちの発言。
近年、世界の政治動向のニュースを見ると、「自国第一」「内向き化」に向かう動きを報じるものが、非常に多くなっていると感じます。
 自国の利益を優先する政策を掲げるポピュリズム政党の政権奪取。
 国政選挙での「反移民・難民」を掲げる右派勢力の躍進。
 自国有利、保護主義的な貿易枠組みの再構築と相手国への制裁。
 国際協調的な環境保護ルールからの離脱・・・。
 さまざまな領域で動きが起きていますが、これらの根底にあるのは、「国際協調や世界全体の利益よりも、自国の利益を優先すべきだ」という考え方。
 これが人びとの支持を集め、政治の勢力図を変え、実際の動きとして世界各地で表出し、ひとつの潮流を形成しています。
 日本にいると、それらの状況が“対岸”で起きているかのように感じやすいのですが、ふと気になるのは「『自国第一』の動きは、外国だけの現象なのだろうか? 日本はまったく無関係の出来事なのだろうか?」ということ。
 今回はその点について、博報堂生活総合研究所の行っている、長期時系列調査「生活定点」(首都圏・阪神圏の20〜69歳男女約3000名に聴取、調査概要詳細は記事末尾で記載)のデータを使って、考えてみたいと思います。
 生活者の国際意識について聞いている設問のひとつに、
「世界への貢献よりも日本の利益を第一に考えるべきだと思う(=日本の利益第一)」
「日本の利益より世界貢献することを第一に考えるべきだと思う(=世界への貢献第一)」

の2択から選んでもらうものがあります。2つの回答割合が過去からどう推移をしているのかを示したものが、下のグラフです。
●「日本の利益」か「世界への貢献」か
 「日本の利益第一」1998年57.1% → 2018年69.2%
 「世界への貢献第一」1998年43.0% → 2018年30.7%
出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」(以降データも同様)


http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/b/f/-/img_bfcb090d94a3375099f7e14f6c26292d91426.png

 質問開始時の1998年には「日本の利益第一」と「世界への貢献第一」はおよそ6:4の割合でした。その後、「日本の利益第一」が少しずつスコアを伸ばした結果、直近ではおおむね7:3の割合へと変化しています。
 次に、こちらのグラフは「世の中の考え方について、あなたにあてはまるものを教えてください」という質問の中で、「貿易の自由化に賛成している」「日本は移民を受け入れるべきだと思う」と答えた人の割合を示したものです。
●「貿易の自由化」と「移民受け入れ」
「貿易の自由化に賛成している」1992年48.1% → 2018年20.1%
「日本は移民を受け入れるべきだと思う」2014年10.6% → 2018年9.8%


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「貿易の自由化に賛成している」人は、1990年代には約半数。それが2000年代に入って徐々に低下していき、2018年には過去最低の20.1%となりました。
「日本は移民を受け入れるべきだと思う」人については、最初に調査した2014年は10.6%、2018年はやや低下して9.8%となりました。
 長い目で生活者の意識を捉えると、日本においても以前に比べて「世界への貢献よりも自国の利益」という意識の変化が着実に進んできているようです。また貿易自由化や移民受け入れという個別のテーマについても、あまり前向きに受け止められてはいない様子がうかがえます。
 冒頭で述べたような「自国第一」「内向き化」の流れは“対岸”の出来事ではなく、日本も決して無関係ではありません。むしろその流れを受けた意識が、徐々に強まりつつあるということができるでしょう。
「内向き化」を牽引するのは若年層
 この自国第一の流れ、データを細かく見ていくと、ある変化が浮かび上がってきました。
 それは、若年層ほど時代と共に急速に「内向き化」に向かっているということ。
●「日本の利益第一」
 20代:1998年55.8%(全体より▲1.3pt) → 2018年73.3%(全体より+4.1pt)
 30代:1998年53.3%(同▲3.8pt) → 2018年73.4%(同+4.2pt)
 40代:1998年52.3%(同▲4.8pt) → 2018年68.3%(同▲0.9pt)
 50代:1998年60.3%(同+3.2pt) → 2018年67.9%(同▲1.3pt)
 60代:1998年65.2%(同+8.1pt) → 2018年63.6%(同▲5.6pt)

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 50代、60代では20年前とそこまでスコアが変わっていないのに対して、20〜40代は20年前と比べて15〜20ポイント近くスコアが伸長しています。全体のスコアが伸びていたのは結局、比較的若い世代が「日本の利益第一」という意識に向かっていたためで、それが全体のスコアを押し上げたのだということが読み取れます。
 この結果をどう受け止めればよいのか。
 上記スコアの推移について当の若者はどうとらえているのか、私の周辺で率直な声を集めてみました。20代女性に話を聞いてみると、返ってきたのはこんな言葉。
「そもそも、日本が何か世界に貢献するということの実感が湧かない」

 また、別の20代男性にきいてみると、
「世界のために日本が貢献する必要性というか・・・理由? 理由がよく分からない」
「なんで日本が? って感じ」

 そんなフレーズが印象に残りました。
 振り返ってみると、1990年代には湾岸戦争の勃発や南北経済格差の問題などもあり、PKO(平和維持活動)やODA(政府開発援助)などを通じた日本の国際協力・開発途上国支援はどうあるべきかについて、国内で盛んに論じられていました。また、1995年にはGATT(関税および貿易に関する一般協定)を発展させる形でWTO(世界貿易機関)が設立され、「国際的に協調して自由貿易促進の枠組みを作っていこう」という機運が世界的に盛り上がっていたように思われます。
 ところがその後、アジア通貨危機、リーマンショックと1990〜2000年代の日本は経済的に苦境に立たされ、企業業績は不振に陥り家計所得も減少。さらに2011年には東日本大震災にも見舞われました。
「失われた20年」とも言われる国内状況が長期間続く中で、いつしか生活者の中には、「まずは、自分たちの暮らしをきちんと保ちたい」「世界のことを軽く考えるわけではないけれど、今はそこまで余裕はない」・・・そんな気持ちが高まっていき、それが調査結果にも表れているのではないか。そんなふうに見ることができます。
自国への認識に大きな隔たり?
 また、特に若い人たちにとっては、世界における「日本」の位置づけが変わってしまったことも関係しているように思います。
 昭和の急速な経済成長の末、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「世界第2位の経済大国」と呼ばれるまでになった“かつての日本”を知っている中高年層と、経済的低迷からなかなか抜け出せずに、GDPでは中国に抜かれてしまった“現在の日本”しか知らない若年層。日本の誇れる部分について聞くと、「経済」も「科学」も「教育」も、今ではすっかり影を潜めています。
●「日本の誇れること」
 経済的繁栄 1992年45.4% → 2018年15.7%
 高い科学技術水準 1992年41.1% → 2018年24.6%
 高い教育水準 1992年46.2% → 2018年21.1%


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「日本は大国」との認識やプライドが強ければ強いほど、必然、世界に対して果たすべき役割も大きいという意識も生まれやすいのでしょう。が、「別にそれほどの国でもない」となれば、世界貢献への意識も大きく変わってくるのではないでしょうか。先述の若者の発言を借りれば「なんで日本が?」という感覚です。
 若年層の「内向き化」意識が高まっている背景には、そもそもの「日本」という国の捉え方自体に、かつてと今とで大きな隔たりがあることを押さえておく必要がありそうです。
 先日開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では、米中の利害対立などから、首脳宣言を取りまとめることができず、採択が断念されました。これは1993年のAPEC開催以来初めてという異例の出来事だったようです。
 いよいよ改元を迎える2019年も、世界では「自国第一」の流れがまだまだ続いていきそうです。世界各国、そして私たち日本の生活者は、これから先、どんな国の姿を描き、自国に対して何を望むのでしょうか。
○「生活定点」調査概要
 調査地域:首都40Km圏、阪神30Km圏
 調査対象:20〜69歳の男女3080人(2018年、有効回収数)
 調査手法:訪問留置法
 調査時期:1992年から偶数年5月に実施(最新調査は2018年5月16日〜6月15日)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54736


 


2018年11月26日 藤野ゆり :清談社
日本人の社畜ぶりが話題に!外国人が驚愕する「居眠り」「接待飲み」
働き方改革が叫ばれて久しいが、日本人の労働環境が劇的に改善される兆しは見えず、相変わらずブラック企業に関する報道も絶えない。日本人の「社畜化」が改善されないのは、一体なぜなのか。『残念な職場』(PHP新書)著者の河合薫氏に話を聞いてみた。(清談社 藤野ゆり)

外国人が驚愕する
日本人の「居眠り」
日本人の社畜ぶりは海外でも話題です。
実際の業績よりも「疲れ果てるまで働くこと」が評価され、夜は「マラソン・ドリンキング(ダラダラ飲み会)」――日本人が社畜化する背景には、家事などの「ケア労働」への不当に低い評価がありそうだ Photo:PIXTA
「日本と海外の働き方の違いを象徴する例として、海外の人は、通勤電車で平然と居眠りする日本人を見て驚愕すると言います。もちろん治安の差などもありますが、『公衆の面前で昼寝?日本ではそれは勤勉の証しである』というタイトルで、居眠りとサラリーマンの生態を紹介する記事がニューヨーク・タイムズに書かれたこともあります」

 そう話すのは、『残念な職場』(PHP新書)の著者で、働き方に関する研究をしている河合薫氏だ。

 河合氏によると、日本人の睡眠時間は、世界最短という調査結果が出ているという。米ミシガン大学の調査でわかった国別の平均睡眠時間の比較では、日本人の平均睡眠時間は7時間24分。欧米は軒並み8時間前後を記録しているのに対し、7時間半以下を記録したのは、日本とシンガポールだけだった。

 さらにその内訳をひもとくと、最も眠っていないのは働き盛りの中年男性だったという。日本の中年男性は諸外国と比較して、圧倒的に睡眠不足であり、その睡眠不足を補うように「居眠り」をするのだ。

『日本人は眠らない、昼寝もしない、居眠りをするのだ!』というタイトルで書かれたケンブリッジ大学のステガー博士によるコラムでは、日本人の「inemuri」について以下のような文章がつづられている。(河合氏による一部要約)

「彼らには到底理解できない日常がある。それは居眠りだ。通勤電車の中で椅子に埋もれるように居眠りしたり、立ったまま居眠りしたり、簡単に公衆の面前で寝る。しかも驚くべきことに周囲もそれを受け入れている。彼らは睡眠時間を削って働いているので、だらしない居眠りが許される。

(中略)職場での居眠りは無気力と怠慢の証しではなく、疲れ果てるまで仕事をがんばった結果と評価され、実際の業績より疲れをおして会議に出席するほうが価値が高い。日本人の精神はオリンピックに通じている。つまり『参加することに意義がある』のだ」

 さらに河合氏によると、日本人は睡眠時間が短いだけでなく、「仕事以外の時間の使い方」が世界基準と異なるという。

「2009年のOECDの調査によると、日本人は家族で過ごす時間は欧米の半分以下という独特のライフスタイルを送っていることがわかりました。その一方で日本人は、コース料理が一般的なフランスやイタリア並みに食事時間が長いことも判明しました」

家族の時間を奪う
“マラソンドリンキング“

河合薫氏の著書『残念な職場』(PHP新書)
 家族と過ごす時間が少ないのに食事時間が長い傾向にある理由の一つには、「仕事終わりの一杯」が関係しているのではないか、と河合氏は指摘する。前述のコラムのように、「参加することに意義がある」というサラリーマンの姿勢は、就業時間だけに限らない。仕事終わりに男同士で連れ立って飲み歩く文化も日本人特有のものだ。

「海外、特にヨーロッパでは仕事後に飲みにいくような文化はありません。既婚者であれば、退社後は真っ先に家族のもとへ帰っていくのが普通。米国では職場の飲み会があったとしても18時には終わります。『接待』と称し、夜中まで飲み歩くなんて考えられません」

 河合氏によると、海外では飲みにいく場合、子どもをベビーシッターに預け、妻も同伴させるなど家族ぐるみでの付き合いが多いという。サラリーマンだけで連れ立っているようなことは、独身者でも珍しいのだ。

 日本のサラリーマンの飲み方に関しては、CNNが以下のように論じている。『Salarymanは日本経済を支える役目を果たすために、会社を最優先させる生活を営んでいる。彼らは死ぬほど働いたあとには、顧客や同僚たちと長々と酒を飲む』。「長々と酒を飲む」の原文は『marathon drinking』と表現されている。

「このmarathon drinkingこそが、サラリーマンの食事時間をダラダラと延長させ、家族と過ごす時間を奪い、睡眠時間を削っているわけです」

社畜でいたがる日本人
背景には家事軽視の社会通念
 ただでさえ長い労働時間の上、仕事が終わった後は同僚や取引先とダラダラと飲み続け、結果的に家族との時間や睡眠時間が短くなる。まさに「社畜」という表現がピッタリだ。

「だったら仕事が終われば、さっさと帰ればいいじゃん」という声も聞こえてきそうだが、日本人が「社畜化」を余儀なくされている理由には、「社畜でいるほうがラク…という心理が隠されている場合もある」と河合氏は分析する。

「男女関係なく、生きていくためには労働力として売買される『市場労働』と、『ケア労働』のどちらの労働も不可欠です。しかし、北欧諸国と比較して日本では家事、育児、介護などの無償の労働である『ケア労働』が評価されにくく、そのことが家にいることのストレスにつながっている可能性があります」

「育休」がなかなか浸透しないことからもわかるように、軽視されがちな家事育児などのケア労働。日本と同様にケア労働が軽視されがちな社会であるアメリカでは、家庭より職場にいるほうがストレスを感じていない、という研究結果が判明している。

「米ペンシルベニア州立大学の研究チームが、客観的なストレス指標によって検証した結果、男女、既婚未婚、子どもの有無に関係なく、家庭より職場にいるときの方がストレスを感じたときに分泌されるコルチゾール値が低いことが判明しました。つまり、母親だけでなく父親も独身者も皆一様に、家にいるより仕事をしているほうがラクだと感じているのです。早く退社してもフラフラと外で時間をつぶしてすぐに帰宅しないフラリーマンが、いい例ですね」

 この研究グループのリーダーである教授は、この結果について「有償である職場の仕事に対し、家庭の仕事は退屈でそれほど報いのあるものではない。それが家庭のストレス度を高めているのではないか」と論じている。

「家庭の仕事を退屈で報いがない…と表現してしまうことは、多くの主婦層に反感を持たれるでしょう。しかし、結局のところいまだに多くの男性(そして女性も)がケア労働をそのように評価している現実が、ケア労働のストレス性をより高めているのではないでしょうか。改めて家事や育児、介護に対する評価を見つめ直さないことには、社畜化の改善は見込めないと思います」

「社会を支えるのは市場労働」という価値観が根底にある限り、ケア労働が本当の意味で評価されることはない。日本のサラリーマンの社畜化は、ケア労働への低評価と表裏一体のようである。
https://diamond.jp/articles/-/186440

 

財政で農家を守り、低所得層をいじめる愚 望む、「担い手政策」への回帰

ニッポン農業生き残りのヒント

2018年11月26日(月)
吉田 忠則


農政に関わり、批判的な立場を維持した生源寺真一氏
 今回は、キーマンに取材して平成の農政をふり返るとともに、ポスト平成時代の課題を探る企画の第3弾。インタビューしたのはこの連載の常連、福島大学の生源寺真一教授だ。

 生源寺氏は旧農業基本法に替わる食料・農業・農村基本法の制定やコメの生産調整(減反)制度の見直し、基本計画の策定など農政に幅広く関わってきた。まさに平成の農政の「証言者」とも言うべき存在だ。

 ここで証言者と表現したことには意味がある。農政で長年重用されながら、政府や与党のやることに一定の距離を置き、批判的な立場を守ってきたからだ。そういう姿勢を保っているから、筆者も度々意見を伺ってきた。

 みずから政策の立案に関わっていながら、実現したものを後から批判することに対しては、反論も予想される。「政策があるべき姿にならなかった責任の一端を本人も担っているのではないか」と。

 そういう見方はわからないでもないが、筆者は立場を異にする。まるで政権の方針に寄り添うように、政権のやることにお墨付きを与える発言をする研究者がいることを否定できないからだ。中には、中立を旨とする研究者としての良心を疑わざるを得ないような発言をする人さえいる。

 そうした中で、政府にとって耳に痛い指摘もくり返しながら、生源寺氏は農政の真ん中に居続けた。そもそも研究者の立場で、自分の考えを政策に100%反映させることは難しい。そのズレをインタビューを通して語ってもらうことには、一定の意義があったと思っている。

 取材のテーマはコメ政策。先端技術の農業への応用など農政が対応すべき前向きな課題は数多くあるが、稲作をこれからどうするかという問いかけほど重い政策テーマはない。稲作農家の数の多さが政治への影響力を生む図式を含め、今もなおコメが日本の農業の構造を根底で規定しているからだ。

 日本のコメ政策のどこに問題があるのか。問題の背景はなにか。生源寺氏はこの問いに対し、インタビューで明確に答えてくれた。

生源寺さんが座長を務め、2002年に提言を出した農水省の「生産調整に関する研究会」がその後のコメ政策の起点になりました。

生源寺:1月にスタートしてから11月まで、ずいぶん議論した。部会も含めると、40〜50回は会議を開いたと思う。最初は1993年のガット・ウルグアイ・ラウンド合意で始まった「ミニマムアクセス(MA)制度」のコメ輸入への評価から議論を始めた。農協関係者とそうでない人の両方が参加し、時間無制限で議論した。

 MAについては3月にいったん評価をまとめた。相当な資金を投入していったん国内に入れたコメを海外に出すことで、国内市場には影響を与えないようにしているというトーンの評価を公表した。客観的な情報にもとづく内容だったと思うが、地方などで会議を開いて説明すると「それは違う!」などと激しい口調で罵詈雑言を浴びせられたと記憶している。

議論は「担い手論」へ
議論はその後、「担い手論」に進みましたね。

生源寺:まずテーマは生産調整をどうするかに移った。国ではなく、生産者と農協などが生産調整の主役になるようにする。生産調整を廃止するわけではないが、参加する人と参加しない人の双方が納得できる形にすべきだという議論になった。参加する人にそれなりのメリットを与えるという方向になった。

 生産調整を見直して、もし米価が下落したら、その影響をどう緩和するか。その中で、担い手への支援を上乗せするという議論が出てきた。

都府県で4ヘクタール、北海道で10ヘクタール以上の認定農家を支援の対象にするという方向が打ち出されました。

生源寺:農水省は対象を決める際、「普通の世帯の半分程度の所得を確保できるような規模」を目安にした。ようするに、専業農家や準専業的な農家をしっかり支えようという発想だった。米価が下がったときに薄く補てんする仕組みはそれまでもあったが、担い手にはさらに支援を厚くするのが狙いで、2004年に実施した。

規模で選別する政策は2007年には麦など他の品目にも広げられました。ところが、同年の参院選で民主党が規模に関係なくコメ農家に補助金を出す戸別所得補償制度を掲げ、与党である自民党が惨敗しました。

生源寺:参院選での敗北を受け、自民党政権は4ヘクタールや10ヘクタールの面積要件を満たしてなくても、市町村が認めれば上乗せの支援の対象にするように改めた。私自身は面積で切るのはあまり合理的ではないと思っていたので、この見直しにそれほど違和感はなかった。これから本気で頑張ろうという若者や、将来の担い手候補を増やそうとするのなら、面積で単純に切るのはやや形式的だった。

 ただ面積要件は見直されたが、少なくとも、担い手を支援するという考えは続いていた。民主党政権になってからそこが明らかに変わった。

自民党政策への疑問
民主党は政権をとると、2010年に戸別所得補償を実際に導入しました。さらに自民党が2012年に政権に復帰すると、戸別補償の廃止を決める一方で、コメを家畜のエサにしたときに甘い基準で補助金を出す飼料米助成を拡充しました。ある自民党の農林関係議員に問題点を指摘すると、「現在の飼料米助成に問題があることはわかっている。だが戸別補償で選挙に負けたので、幅広く出す補助金は見直しにくい」と話していました。

生源寺:欧州では政策が少しずつ変わってきていて、社会全体に還元されるようなものに補助金を投入するという方向にむかっている。環境問題などを重点に置き、経営政策的なものは後退した。

 日本の政策で言えば、担い手を応援し、彼らが規模を拡大することでコストダウンが進めば、結果的に消費者にも利益が還元されることになる。一義的には農家を支えることになるかもしれないが、例えば米価をある程度低い水準に落とすことで、国民全体、消費者も利益を得る。

 今、新規就農者の半分近くを60歳以上が占める。その中には、農家の息子の定年帰農や、趣味でやるような農業が含まれる。彼らの存在は、担い手の規模拡大の障害にはならない。そういう農業を認めるのにやぶさかではないし、むしろ羨ましいくらいだ。

 ただし、納税者の負担で国費を投入するのであれば、社会に還元される道筋がきちんとしている必要がある。その点が非常に大事だ。

民主党の戸別所得補償と、自民党の飼料米助成をどう評価しますか。

生源寺:大きな枠組みとして、納税者つまり財政負担型の政策と、消費者負担型の政策の2つがある。農家に直接補助金を渡すのが納税者負担型で、農産物価格を支持するのが消費者負担型だ。

 日本は価格支持から納税者負担への移行が進んでいた。そのほうが、担い手に支援を集中させやすいという面もある。価格支持をやめて消費者の負担を減らし、その結果苦労する担い手を支えようというのはわかりやすい政策だった。それが、生産調整に関する研究会の議論で目指した方向だった。

 民主党の戸別補償は財政負担型だが、バラマキという側面があった。

 これに対し、自民党の政策は財政資金を使って飼料米に誘導し、結果的に主食米からの転作を進めることで米価の下落を防いでいる。消費者負担型の価格支持政策に逆戻りした。全体として米価を上げることで、担い手も恩恵を受ける。だからいいだろうということなのかもしれないが、小規模な人たちもみなハッピー。担い手政策とは言い難い。

 この政策はかなり疑問だ。補助金で飼料米に作付けを誘導していることと、価格支持で消費者が負担しているということのリンケージがふつうの人にはわかりにくい。担い手からすれば、財政負担型と消費者負担型で得る金額は同じということもあり得る。だが、価格を維持する消費者負担型の政策は、所得水準が低い人たちにネガティブな影響を与える。

 納税者負担型であれば、利益の出ている企業から累進税率で負担してもらうことで、所得再分配の効果がある。消費者負担型はその逆。残念ながら、夕ご飯で100円玉1つを何とか節約したいと思う、エンゲル係数の高い人がこの国にはずいぶんいる。その人たちへの影響を考えると、消費者負担型はちょっとずつだが、積み重ねるとかなりの負担をもたらす。

 もう一度、財政負担で担い手を重視するという格好に戻ってほしいと思っている。


コメ政策の抜本見直しはポスト平成時代の課題
需給を締めて米価を上げたツケ
 ややマニアックな内容かもしれないので、かいつまんでおさらいしよう。財政負担で主食のコメを飼料に回し、その結果、主食のコメが減る。量が減れば当然、価格には上昇圧力がかかる。納税者の負担で市場を誘導し、そのあおりが高米価となって消費者の負担にはね返る――。

 生源寺氏が問題視しているのは、いまの自民党農政の帰結として生まれたこうした構図だ。納税者と消費者のダブルの負担で、コメ農家は潤うかもしれない。だが、その恩恵はある例外を除いて社会に還元されることはない。例外とは、選挙でコメ農家の票をあてにする一部の政治家たちだ。

 しかも問題なのは、一連の政策効果の流れが消費者には見えにくいことだ。農政の目的に農業振興が含まれるのは当然。だが、それがたんなる農家保護、そして消費者利益の否定につながる政策を、国民は支持するだろうか。生源寺氏が指摘するように、とくにあおりを受けるのは食費の確保に悩む低所得層。本来、農政のもっと上位の目的は、食料政策だったはずだ。

 いつまでこんな政策を続けるのだろう。農林関係議員には「いまの米価は消費者にとってたいした負担でない」と強弁する声もあるが、ここ数年、需給を締めて米価を上げたことで、コメ消費の減退が加速した。結局、長い目でツケを負わされるのはコメ農家だ。長期的な視野で、農家と農村、ひいては日本の食料問題に貢献することが、農政の役割ではないのだろうか。


農家と消費者の利益のバランスが求められる
【新刊紹介】
『農業崩壊 誰が日本の食を救うのか』

砂上の飽食ニッポン、「三人に一人が餓死」の明日
三つのキーワードから読み解く「異端の農業再興論」

これは「誰かの課題」ではない。
今、日本に生きる「私たちの課題」だ。

【小泉進次郎】「負けて勝つ」農政改革の真相
【植物工場3.0】「赤字六割の悪夢」越え、大躍進へ
【異企業参入】「お試し」の苦い教訓と成功の要件

2018年9月25日 日経BP社刊
吉田忠則(著) 定価:本体1800円+税


このコラムについて
ニッポン農業生き残りのヒント
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加が決まり、日本の農業の将来をめぐる論議がにわかに騒がしくなってきた。高齢化と放棄地の増大でバケツの底が抜けるような崩壊の危機に直面する一方、次代を担う新しい経営者が登場し、企業も参入の機会をうかがっている。農業はこのまま衰退してしまうのか。それとも再生できるのか。リスクとチャンスをともに抱える現場を取材し、生き残りのヒントをさぐる。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/252376/112000178
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/621.html

[経世済民129] 原油急落、新興国市場に追い風 ベネズエラ荒れる自然遺産インフレ率100万%超 ブレグジットは英国崩壊の道、破産よりひどい
2018年11月26日 Avantika Chilkoti
原油急落、新興国市場に追い風
原油価格急落
Photo:Reuters
 原油価格の急落で勝ち組になったのは、主要なエネルギー輸入国である新興国だ。

 国際石油取引の指標油種であるブレント原油先物は10月上旬につけた4年ぶり高値から20%余り下落し、弱気相場入りした。今月20日には下げ幅を一段と広げ、前日比6.4%安と2017年10月以来の安値で引けた。

 米国株も売られ、主要株価指数は年初来の騰落率がマイナスに転じたほか、米指標油種のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は6.6%安に沈んだ。

 多くの投資家が損失を被っている一方、このところの原油安はインドやトルコ、インドネシアなど、世界でも成長の著しい一部のエネルギー輸入国にとってはありがたい救いとなる。これらの国は年初からほぼ一貫して、ドル高とエネルギーコスト上昇の挟み撃ちに苦しんできた。

 新興国ファンドを運用する英アシュモア・グループの調査部門責任者、ジャン・デーン氏は「こうした国々の大半は原油輸入国だ」と指摘する。原油相場の下落は「経常収支の改善につながり、インフレ率を低下させるため、明らかに好材料だ」という。

 新興国通貨は原油安を背景に上昇している。このため、エネルギー輸入国は同じ量の原油をドル建てで購入する際、自国通貨での支払額が少なくてすむ。

 インドルピーはここ1週間に対ドルで1.7%上昇し、今年つけた過去最安値からやや持ち直している。フィリピンペソは1.1%、インドネシアルピアは1.5%、それぞれ上昇。MSCIエマージング・マーケット・インデックスは11月に入り1.6%上昇した。もっとも、年初来では依然として16%安にとどまる。

 ほかにも好材料が見え隠れし、世界の貿易摩擦が近く緩和するとの期待が膨らんでいる。とりわけ、今月末の20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせたドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談が実現する可能性が注目される。

 それでも、新興国の中央銀行は引き続きインフレを警戒している。バークレイズのアナリストによれば、一部の中銀はなお利上げに傾いている。インドネシア、フィリピン、メキシコはいずれもここ数週間で金融政策の引き締めに動き、インフレ上昇を巡る懸念を理由に挙げた。

 中銀が警戒を解かないのは、原油安が一時的なものかどうか不明だからだ。米政府によるイラン産原油の禁輸措置に関し、制裁対象の除外範囲が大きく、トレーダーが不意打ちを食らう格好となったことが原油の急落につながったのか、あるいは基本的な需給の変化が相場に影響しているのか。原油市場では、需要が伸び続ける限り、来年の供給過剰は心配ないとの見方が大勢だ。

 原油安となれば、一部の新興国中銀への重圧は弱まる。バークレイズのアナリストは顧客向けリポートで、「南アフリカやインドなど、インフレリスクが高い国では、どちらかといえば中立的な政策姿勢を取る傾向にあるかもしれない」とし、「自国通貨が比較的高めにとどまれば、その傾向は一段と強まる可能性が高い」と述べた。

 こうした新興国では消費者も企業も慎重な構えを崩していない。インド国営の石油精製・販売会社であるヒンドゥスタン・ペトロリアムのムケシュ・クマール・スラナ会長は、原油価格の下落がインド経済に追い風となったとしても、足元の原油市場の変動は国内の石油精製業界の意志決定を複雑にしていると指摘する。

 スラナ氏は、世界的な原油安はヒンドゥスタンの利益率を押し上げるものの、「ボラティリティー(変動性)はいただけない。相場の上げ下げで在庫評価損が発生する」と語った。
https://diamond.jp/articles/-/186514

 


  


 

2018年11月26日 Kejal Vyas
経済危機のベネズエラ、金採掘で荒れる自然遺産インフレ率が100万%を超えるなか、国立公園のツアーガイドでは先住民は生活できない
カナイマ国立公園(ベネズエラ)
Photo:PIXTA
 【カナイマ国立公園(ベネズエラ)】絶壁の上に平らな台地が広がる「テーブルマウンテン」や世界最大の落差を誇る滝「エンジェルフォール」で知られるベネズエラのカナイマ国立公園。先住民のペモン族は長らく、この国立公園の世話役を自認してきた。

 しかし、国の経済危機によってツアーガイドとしての生活が成り立たなくなった彼らは今、金鉱を求めて地面を掘り起こさざるを得ない状況に追い込まれている。こうして広がる露天掘りの金鉱が、深刻な自然破壊を引き起こしている。

 「われわれペモン族は常にエコロジストであり、この土地の守護者だった」。近くの集落のリーダー的存在であるアブラハン・サンドバル氏(33)はこう話す。「だが状況が変わり、われわれは自分たちの居住地の破壊者になってしまった」

 9月に住民が掘った穴はフットボール競技場2つ分を超えるほどの広さだった。

 ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、落ち込む石油収入を穴埋めし、同国史上最悪の経済危機を解決する手だてとして、金採掘に期待を寄せている。深刻な食糧不足で数百万人が国外に脱出する中、マドゥロ大統領はカナイマ国立公園の南北に広がる4万3000平方フィート(約4000平方メートル)を、金やその他の鉱物資源の採掘地として指定した。

 マドゥロ氏は最近の演説で「次のクリスマスの最も注目すべき、魅力的で人気の高い贈り物は、金の鑑定書になるだろう。(中略)金は価値が増すことはあっても絶対に減らない」と語った。

 同国の今年のインフレ率は130万%を超える見通しだ。公園内の集落に住むペモン族にとって金は、ほぼ無価値となった通貨ボリバルの代わりとなるものだ。集落の食料雑貨店では、店主がカウンターで金のかけらを計量し、1ポンドのコメに対して4ドル相当、1ガロンのガソリンに対し7ドル相当を徴収する。この地域ではダイヤモンドや鉱石コルタンの採掘も行われている。コルタンは精製すると、携帯電話に使われる希少金属(レアメタル)のタンタルが得られる。

 米財務省は最近、米企業にベネズエラの金採掘への参入を禁じる制裁措置を発動した。金採掘で得られる資金は、マドゥロ氏や側近らが同国最後の富を略奪し、窮地にある政権を浮揚させるのに役立つというのがその理由だ。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産に指定されているカナイマ国立公園内で採掘を行うと違法になる。同公園は滝だけでなく、かつて南米とアフリカが1つの大陸だった証拠を示す地質学的に重要な岩石層でも知られる。珍しい植物や、オオアリクイやバクといった希少動物が生息するほか、5億年前からの侵食の痕が残る独特の形状のテーブルマウンテンは、ディズニーのアニメ作品「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009年)の舞台のモデルにもなった。

 だが、新たな経済的現実が引き起こした「ゴールドラッシュ」は、国立公園に取り返しのつかない被害を与えると環境活動家は指摘する。鉱物採取用に掘られた穴には、汚染物質を含む青緑色の水が大量にたまっている。園内の河川では、金採取者がわずかな金でも抽出できるよう、すくった泥に水銀を混ぜている。彼らはこうした作業を通常は夜間に行うという。軍が率いるレンジャーの目を避けるためだ。

 「予想されるのは、この破壊行為が今後さらに激しくなるだろうことだ」。ベネズエラの環境保護団体「SOSオリノコ」は、最近ユネスコに提出した報告書の中でこう述べた。同団体はユネスコに対し、シリアの古都アレッポやイエメンのサナア旧市街と同じく、カナイマ国立公園を「危機にさらされている世界遺産」に登録するよう求めている。

 SOSオリノコは衛星画像を使った報告書で、公園内から周縁部にかけて30カ所を超える採掘場が確認されたとしている。

 一方で、ゴールドラッシュは、犯罪組織やコロンビアの反政府左翼ゲリラなども引き寄せている。こうした集団の縄張り争いで10月には17人が犠牲となった。今月発生した衝突ではベネズエラ軍の兵士3人も死亡した。

 ベネズエラ当局は公式声明で、カナイマ国立公園での採掘は禁止されており、指定した採掘地に限定すると強調している。だが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先月現地を訪ねた際、ペモン族のリーダーらは政府が金採掘に代わる選択肢を提供していないとし、大半の住民は今後も金鉱石探しを続けるつもりだと述べた。
https://diamond.jp/articles/-/186515


 

 
ブレグジットは英国崩壊への道 突如見えてきた終点、破産よりひどい結果になる恐れ
2018.11.26(月) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年11月23日付)

英EU離脱の国民投票後に抗うつ薬の使用急増 研究
英ロンドンの国会議事堂前でデモ隊が掲げた「ブレグジット、価値はあるのか?」と書かれた幕(2018年9月10日撮影)。(c)Daniel LEAL-OLIVAS / AFP〔AFPBB News〕

 「どんなふうに破産したのか」

 ヘミングウェイの小説『日はまた昇る』の登場人物はそう尋ねた。すると、2通りだなという答えが返ってきた。

 「少しずつ、そしていきなり、だ」

 少しずつ、そしていきなりというのは、ブレグジットの物語そのものだ。

 2016年の国民投票で欧州連合(EU)から離脱するとの結果が出たことで、英国はエネルギーや目的、国際的な影響力を少しずつ奪い取られている。

 少しずつだから、気づいていない人も多い。だがここに来て、終点がいきなり視界に入ってきた。破産よりひどい事態になるかもしれない。

 ロンドンの官庁街ホワイトホールでは、公務員の委員会がいくつも設けられ、国の非常事態に備えたコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)の策定に大わらわになっている。

 国民保健サービス(NHS)は、薬の在庫がなくなるかもしれないと警告を発している。航空機が着陸させられたり、銀行のトレーディングルームが閉鎖されたりする可能性もある。

 食料輸入の入り口として重要なドーバーの港も、ゆっくりと活動を停止するかもしれない。そんなことになったら売り場の棚は数日で空っぽになる、とスーパーは話している。

 これらは、英国が「合意なし」でEUから離脱した場合に発生するコストの、ほんの一例にすぎない。

 道路を1本隔てたところにあるウェストミンスター(英国議会)の政治家たちは無頓着なようだ。

 保守党強硬派の下院議員たちは、自分の党から出ている首相の不信任投票を実現すべく署名を集めて回っている。

 彼らカミカゼ離脱派によれば、テリーザ・メイ首相が交渉したEU離脱協定案では英国が「属国」になってしまうらしい。

 それなら自分たちの同志を首相に据え、ブリュッセルのEU本部には指を2本立てておさらばし、リスボン条約第50条が定めた期限の到来する2019年3月末をもって一気にEUを離脱する方がましだ、英国は以前、強く自立していたではないか、というわけだ。

(注1=ピースサインを裏返した2本指は、米国などで「中指を立てる」のと同じ侮辱的行為)

 立場は異なるものの、労働党のジェレミー・コービン党首も欧州プロジェクトを毛嫌いしている。

 コービン氏は、英国で今起こっていることよりも米国主導の西側帝国主義に立ち向かうことの方に関心があり、EUは労働者に対する資本主義者の陰謀だと考えている。本当だ。

 EU離脱派は大英帝国への郷愁に、コービン氏は1970年代に自らが掲げた革命的社会主義への郷愁に、それぞれ囚われているのだ。

 ことがこれほど深刻でなかったら、笑えるほどばかげた話だ。だが実のところ、そのばかさかげんのせいで事態の深刻さがかすんでしまう危険性が大きくなっている。

 英国は、40年以上かけて築き上げてきた欧州大陸との政治的・経済的関係を取り壊そうとしている。

 EU加盟国という地位はこの国のあり方にしっかり織り込まれており、外交政策の重要な柱になっている。

 メイ氏は以前、ブレグジットだと言ったらブレグジットだと述べたが、いったい何を意味していたのかについて保守党自体がまだ同意できていない。

 平時の危機はこれまでにも何度か起きている。1970年代の初めには保守党のエドワード・ヒース首相と労働組合との対決のせいで、週に3日しか工場を操業できない時期があった。

 大臣たちはこのとき、歯を磨くときはエネルギー節約のために電気を消すよう有権者に説いた。

 その数年後には国が破産の危機に瀕し、労働党のジェームズ・キャラハン首相が国際通貨基金(IMF)の緊縮プログラムをめぐってほかの閣僚と対立した。

 その後にやって来た冬には労働争議が多発し、選挙でのマーガレット・サッチャーの勝利と1980年代の経済革命への道を開くこととなった。

 ブレグジットは、まるでケタが違う話だ。国民投票は連合王国とその中にあるコミュニティーを分断した。

 イングランドの醜いナショナリズムを活気づけ、スコットランド独立派に新たな不満の種をもたらした。

 若年層ではEU残留に投票する人が圧倒的に多かった。スコットランド、北アイルランド、ロンドン、イングランドのほかの大都市、そして裕福な専門職の人々の間でも残留派が多かった。

 片や高齢者、小さな都市や町に住むあまり裕福でない人々――イングランドとウェールズではこちらが多数派となった――は離脱を支持した。

 このときの敵意はまだ鎮まっていない。議会制民主主義は歪められてしまった。

 下院議員の過半数はEU残留を支持したのに、今や、彼らが国益に反していると考えているブレグジットの取引を支持するよう要請されているのだ。

 メイ氏が示した答えは、25日開催のEU加盟27か国の首脳との会議で最終決定させたいと同氏が望んでいるブレグジットのパッケージ(離脱協定案)である。

 実を言えば、これは悪い取引だ。

 ブレグジット原理主義者なら、これでは英国とEUの結びつきが緊密すぎると言うだろう。だが、この取引が悪い理由はそれではない。

 北アイルランドとアイルランド共和国との国境が開かれ続けることを保証する「バックストップ」が盛り込まれているからでもない。

 その理由は、「支配権を取り戻す」という無意味な試みのためにEU加盟国の大きな利点を犠牲にする内容だからだ。

 この言葉がもし何かを意味するのであれば、「支配権」とは国益を増進させる能力のことだ。ブレグジットはこの能力を弱めてしまうのだ。

 離脱協定案は、経済面では時限的な取り決めしかしていない。1、2年で新たな崖が目前に迫ってくるだろう。

 それでも、下院で支持を求めるメイ氏には強力な援軍がついている。

 港湾や空港、スーパーの品不足、景気の悪化と言ったカオス(混沌)が急激に迫ってくる恐れがあるという、あの「いきなり」の脅威だ。

 気に入らない――それどころか大嫌い――かもしれないが、それを避けたら無秩序なブレグジットしか残っていない、と首相は言う。

 その場しのぎの解決か、それとも混沌か。大企業はすでにメイ首相への支持を表明している。

 もちろん、この選択肢の組み合わせは間違っている。

 英議会はリスボン条約第50条による交渉の延長と、政府によるほかの選択肢の検討を求めることができる。

 しかし筆者の政治感覚では、白黒がはっきりするときが近づいているように思える。

 もし議会でメイ氏の離脱協定案が否決されれば、両極端の中間を行く、ごまかしながらもどうにか切り抜けるブレグジットを探る試みも終わりを迎える。

 おそらく、現状維持か完全離脱かの「オール・オア・ナッシング」になってしまうのだろう。

 2016年の国民投票で、英国はEU離脱という結論を出したものの、その後どこに行きたいかは明確にしなかった。

 今なら、行く手に何が待ち構えているかが分かっている。ここで国民投票をもう一度実施したら、上記の2つの行き先が選択肢として示される。

 その投票は国民を分断するだろうし、ひどい事態にもなるだろう。有権者は自己嫌悪を募らせた揚げ句、崖に突っ込むことを選択するかもしれない。

 しかし、「少しずつ」の過程はもう終わりを迎えた。突如、英国は決断を下さねばならなくなったのだ。

By Philip Stephens

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54767


 

2018年11月26日 ロイター
英国の「合意なき離脱」で何が起きるか

11月20日、英国が欧州連合(EU)を離脱する期日まであと4ヵ月あまり。だが、経済に与える影響を和らげるための移行期間については、依然として当てにできない状況だ。写真は英国のメイ首相。ロンドンで15日撮影(2018年 ロイター/Peter Nicholls)
[ロンドン 20日 ロイター] - 英国が欧州連合(EU)を離脱する期日まであと4ヵ月あまり。だが、経済に与える影響を和らげるための移行期間については、依然として当てにできない状況だ。

 英国のメイ首相は先週、EU本部とEU離脱(ブレグジット)協定の素案で合意した。だが与党・保守党内でも頑強な抵抗に直面しており、議会の承認も得られない可能性がある。

 では「合意なきブレグジット」とは、一体どのようなものなのだろうか──。項目別にまとめた。

●英国経済

 イングランド銀行(英中銀)のカーニー総裁は、移行期間を伴わないブレグジットは、英国経済に対し、1970年代の石油危機に匹敵する「大きなマイナスのショック」を与えると警鐘を鳴らした。

 国際通貨基金(IMF)では、合意なきブレグジットによって英国経済はマイナス成長に陥ると予測している。

 英シンクタンクの国立経済社会研究所は、英国経済の2019、2020年の経済成長率について、EUとの合意を伴うブレグジットであればそれぞれ1.9%、1.6%と予想しているが、「合意なき離脱」の場合には、いずれも0.3%にとどまると予測している。

●貿易

 少なくとも短期的には、貿易障壁が高くなることで、英国、EU双方の企業が打撃を受ける。

 英国の輸出企業はEUの輸入関税に直面する。関税率は平均5%だが、同国の主力輸出品については、自動車に10%が課せられるなど、さらに高くなる。

 製造企業は、通関手続の遅れによって自らの「ジャストインタイム」製造方式に支障が出ることを危惧している。

 だが離脱賛成派は、テクノロジーの活用により通関手続の遅れは緩和されると予想。将来的に英国がEUとの自由貿易協定を実現すれば、輸出も自由に行えるようになると主張している。

 また同賛成派は、EUとの緊密な関係を続けるよりも、米国やインド、中国といった、より成長率の高い国々と貿易する方が英国にとって利益になるとも主張している。ただし、英国財政を予測する担当者は、こうした諸国との2国間貿易による恩恵は小さなものに留まる可能性が高いとされている。

●港湾、企業倒産、備蓄

 最初に影響が出る可能性が高いのは、港湾と空港だろう。政府は、イングランド南部の自動車専用道路2本と空港1カ所を、必要に応じて大型トラック駐車場に転用する計画を立てている。

 フランスのボルヌ運輸相によれば、合意なきブレグジットに備えて、フランスは、港湾における通関手続きや検査対応を中心に、さまざまな措置を準備しているという。

 英国勅許調達供給協会(CIPS)では、部品・原材料等の通関手続が10─30分遅延することによって倒産する懸念を抱いている英国企業は、全体の10分の1に及ぶと試算している。

 多くの製造企業は、通関手続が遅れた場合でも製造ラインを稼働させ続けるために、部品の備蓄を進めている。英国政府は製薬企業に対し、薬剤の備蓄を通常より6週間分積み増しするよう要請している。

●財政とイングランド銀行

 ハモンド英財務相は、ブレグジットが経済的なショックを与える場合に備えて財政支出を拡大すべく、財政上の予備費を積み上げてきた。

 同財務相は同時に、長期的には、合意なきブレグジットという事態に陥るとすれば、緊縮財政を終らせるという自身の公約を考え直すことになる、と警告している。

 離脱賛成派は、合意なき離脱は、EU予算に対する英国政府からの資金拠出がただちに終了することを意味しており、公共財政にとってプラスになるはずだと主張している。

 英中銀は投資家に対し、合意なき離脱ショックが生じた場合でも、ただちに中銀が救済に動くとは当てにしないよう警告している。英ポンド下落によって、同国のインフレ率が押し上げられ、利下げの障害となる可能性がある。

●英ポンド

 経済に打撃を与える可能性が高いことを考慮すれば、合意なきブレグジットによって、恐らくポンドは下落する。ポンドの対ドル相場は2016年にEU離脱を決めた英国民投票以来、約13%下げているが、この幅がさらに拡大することになる。

 ロイターが1日発表した市場ストラテジストを対象としたアンケート調査によれば、EUとの合意が成立しない場合、ポンドは6%以上下落するが、合意成立の場合には約5.5%上昇すると予想されている。

●英国株価

 ポンド安になれば、世界で事業展開する英最大手企業の多くにとって、株価が上昇する可能性がある。FTSE100種株価指数の構成銘柄であるブリティッシュ・アメリカン・タバコやGSKなど、収益の7割を海外で稼いでいる企業がそれに含まれる。

 だが、より国内市場に注力して、収益の半分を自国に依存するFTSE250種株価指数に含まれる企業は打撃を受ける可能性がある。

 従来の相関関係がいまも有効だとすれば、これは理にかなっている。だが先週、FTSE100と英ポンドがどちらも下落し、こうしたトレンドが一時的に乱された。秩序なきEU離脱リスクの上昇が投資家を動揺させるなかで、珍しく双方が連動する動きが生じている。

●債券

 合意なき離脱による経済ショックが生じた場合、通常であれば、投資家は英国債という安全資産に流れるはずだ。債券価格とは反対方向に動く英国債利回りは15日、2016年以来最大となる下落を記録した。

 だが、合意なき離脱はメイ首相にも大きな打撃を与え、新たに総選挙が行われる可能性がある。いくつかの世論調査では左派の労働党が優位に立っており、公共投資の大幅増を公約する同党の政策は、一部の投資家を動揺させることだろう。

(William Schomberg 翻訳:エァクレーレン)
https://diamond.jp/articles/-/186657


 

2018年11月26日 ロイター
イタリア銀行株の空売り拡大、EUと対立激化で

11月21日、ここ数週間、イタリアの銀行に対する投資家の空売りポジションが膨らんでいることがデータで確認できる。ローマで5月撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)
[ロンドン/ミラノ 21日 ロイター] - ここ数週間、イタリアの銀行に対する投資家の空売りポジションが膨らんでいることがデータで確認できる。浮かび上がってくるのは、イタリアの銀行の厳しい収益見通しや、同国政府の来年予算案を巡る欧州連合(EU)との対立激化に伴う経済の先行き不安だ。

 イタリアの銀行の時価総額は5月以降で計400億ユーロが消失した。予算問題で国債利回りが5年ぶりの高水準に迫り、銀行の保有する国債の価値が目減りするとともに、財務基盤の弱い一部の銀行は資本不足に陥るリスクが高まりつつある。

 21日には欧州委員会が、イタリアの来年予算案がユーロ圏の財政規律を順守していないとして、是正措置を求める過剰財政赤字是正手続き(EDP)を勧告した。

 イタリアの銀行は国債残高の2割近くを抱えているだけに、こうした欧州委の動きを見越したかのように、投資家は既に銀行株がさらに下落することに賭ける取引を拡大。空売りの標的になっているのは中小銀行で、投資銀行のメディオバンカや銀行と資産運用を手掛けるバンカ・メディオラヌムの空売りも増加している。

 FISアステック・アナリティクスのデータに基づくと、空売りに用いられる貸株残高はイタリアの銀行の場合、少なくとも過去15ヵ月で最高水準となった。例えばメディオラヌムの発行済み株式に占める貸株の割合は約8.7%で、メディオバンカに至っては可能限度いっぱいの15%に達するほどだ。

 ジェフリーズの銀行アナリスト、ベンジー・クリーラン・サンドフォード氏は「2012年のようなソブリン型の側面が強い危機の再現というテールリスクがあると信じられているとすれば、イタリアの銀行は間違いなくそれによってマイナスの影響を受ける」と述べた。

 空売り需要の強さの尺度となる株式の借り入れコストを見ると、国内第3位のバンコBPMはこの3ヵ月で40%も跳ね上がった。

空売り規制
 政治サイドには、銀行株の空売りを制限しようとする動きも出ている。ジョルゲッティ官房長官は21日、国債利回りスプレッド拡大から銀行を守る目的で、空売り禁止を提唱した。

 ただし空売りを規制しても、投資家が来年予算案の問題でEUとの対立が終息すると投資家がみなさない限り、銀行株への逆風は弱まらない、とジェフリーズのクリーラン・サンドフォード氏は話す。

 同氏はロイターに「空売りが下げ圧力を助長しているとの考え方があるが、より長い期間では株価は(企業の)基本的な価値を反映する。その観点では、空売りできるかどうかは大勢に全く影響しない」と説明した。
https://diamond.jp/articles/-/186642
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/622.html

[戦争b22] ウクライナ、戒厳令発動を決定 ロシアによる艦船拿捕で ウクライナ艦船にロシア砲撃 ロシア資産下落 米大使ロシア警告国連安
#予想通り


ウクライナ、戒厳令発動を決定 ロシアによる艦船拿捕で
2018/11/27 5:45日本経済新聞 電子版
 【モスクワ=小川知世】ウクライナは26日、同国軍の艦船がロシアに銃撃、拿捕(だほ)されたのを受け、ロシアとの国境や黒海、アゾフ海沿岸地域に戒厳令を発動すると決定した。28日から30日間実施する。ポロシェンコ大統領が提案し、最高会議(議会)が承認した。「戦時状態」として政府や軍の権限を強化し、必要に応じて移動や集会、報道の自由を制限する。

ウクライナのポロシェンコ大統領=AP

 ポロシェンコ氏は26日、戒厳令は「防衛目的のためだけに発動する」と説明し、宣戦布告ではないと強調した。ウクライナ側は拿捕された艦船と乗組員の即時解放を求めているが、ロシアは拒否している。

 最高会議の審議は戒厳令が2019年3月に控える大統領選の選挙運動を妨げるとの懸念の声が上がり紛糾した。ポロシェンコ氏は当初、全土で60日間にわたる戒厳令を提案したが、時期や場所を修正した。

 ポロシェンコ氏は26日、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長や欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ドイツのメルケル首相らと相次いで電話で会談し、ロシアへの圧力を強めるように求めた。NATOは同日、大使級の緊急会合を開くもようだ。

 ウクライナ軍の艦船は25日、黒海とアゾフ海を結ぶケルチ海峡でロシアの攻撃を受け、乗組員に負傷者が出た。ロシアは14年、親欧米に転じたウクライナのクリミア半島を武力により併合、同国東部にも軍事介入した。ロシアが軍事支援する東部の親ロ派武装勢力との戦闘により、ウクライナではこれまでに1万人以上の死者が出ている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38214490X21C18A1000000/



マネロンで26兆円国外流出か、プーチン氏の内憂外患

マネロンが難しくなるに従い、プーチン氏は「安全弁」を失いつつある。さらに悪いことに、国際制裁とこの6年の低調な経済成長により、ロシア人の実質収入は低下し、ロシアの銀行からのハードカレンシーの引き出しが急増している。

国内では、退職年齢の引き上げ政策を受けてプーチン氏の支持率が低下し、与党は最近行われた4つの地方選で敗北している。このことが背中を押して、プーチン氏は再び外国で冒険を仕掛けるか、または市場改革

http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/600.html


 


 
ウクライナ艦船にロシアが砲撃、クリミア半島近くで−緊張高まる
Aliaksandr Kudrytski、Daryna Krasnolutska、Ilya Arkhipov
2018年11月26日 6:37 JST 更新日時 2018年11月26日 11:40 JST
クリミア半島近くで6人が負傷、3隻が拿捕されたとウクライナ
ウクライナ議会は26日に戒厳令発令を討議、国連安保理も緊急会合
ロシアが4年前に一方的に編入したウクライナ南部クリミア半島近くの黒海海域で25日、ウクライナ海軍の艦船がロシアから攻撃を受け数人が負傷、両国の間で緊張が高まっている。

  ウクライナは、同国海軍の艦船の船団がクリミア半島近くのケルチ海峡に入ろうとした後、公海上でロシアの軍艦から砲撃を受けたと説明。ウクライナ海軍によると、6人が負傷し、3隻が拿捕(だほ)されたという。

  ウクライナ議会は26日午後4時(日本時間午後11時)に緊急招集され、戒厳令を布告するかどうかを検討する。ヘイリー米国連大使はツイッターで、国連安全保障理事会は同日午前11時(日本時間27日午前1時)に緊急会合を開き、状況を話し合うことを明らかにした。

  ロシアは同国領海を侵犯し、「危険な作戦」に従事したウクライナの艦船を止めるため、必要なあらゆる手段を講じたと主張した。同国は「安全保障上の理由」から、ケルチ海峡の航行を禁じていた。

  ウクライナのポロシェンコ大統領はロシアによる「犯罪行為」への制裁の可能性を巡り欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)に連絡。ただ、戒厳令布告は軍事動員ないし戦争を意味するものではないと強調した。

  EUの報道官は声明で、「われわれはロシアがケルチ海峡の自由な航行を認めることを期待するとともに、状況の速やかな緊張緩和のため全ての当事者が最大限の自制をもって行動することを求める」とした。NATOは別個に、状況を注視していると発表した。

原題:Russia Fires on Ukraine’s Navy Near Crimea as Tensions Flare (2)(抜粋)

(ウクライナ議会や国連安保理の動きなどを追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-25/PIROVU6KLVR401


 

ロシア資産が下落、ウクライナと衝突で追加制裁リスク再燃
Olga Voitova、Áine Quinn
2018年11月27日 3:26 JST
ルーブルが新興国通貨で逆行安、一時1.7%安−株と債券も下落
ロシアの軍艦、ウクライナの艦船にクリミア近くで砲撃
26日の新興国市場では、ロシアの株式と通貨ルーブルの下げが目立った。ウクライナとの緊張激化で対ロシア制裁が強化されるとの懸念が再燃し、ロシア国債も下落した。

  ウクライナ海軍の艦船にロシアの軍艦が砲撃したと伝わった25日は、米国の対ロシア追加制裁が成立する公算は小さいとの報道を受けてルーブル相場が落ち着きつつあった矢先だった。クレディ・スイス・グループのアナリストによると、緊張が続けばロシア財務省は28日に予定する国債入札を中止せざるを得ない可能性がある。

  26日は大半の新興国通貨がドルに対して上昇しているが、ルーブルは逆行安。下落率は一時1.7%に達した。野村ホールディングスのアナリストは、ルーブルが下げを拡大し、厳しい米制裁が当面は導入されないとの期待を背景にした最近の上昇を消す可能性があるとみている。


原題:Russian Assets Retreat as Ukraine Clash Revives Sanctions Risk(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PITAAL6K50XS01

 


ワールド2018年11月27日 / 04:03 / 5時間前更新
ロシア、拿捕したウクライナ艦船解放せず 西側が相次ぎ非難
1 分で読む

[モスクワ/キエフ 26日 ロイター] - ロシアが25日にクリミア半島沖でウクライナの艦船3隻を砲撃後に拿捕(だほ)した問題で、ロシアは26日現在、艦船と乗組員の解放を巡る西側諸国の要請に応じていない。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はウクライナのポロシェンコ大統領と電話会談を行った後、26日にウクライナとの緊急会合を召集することを決定。NATOは「ウクライナの領土保全と主権を完全に支援」していると述べた。ウクライナはNATO加盟国ではない。

欧州連合(EU)のトゥスク大統領もウクライナ艦船の拿捕を非難し、ロシアに対し直ちに解放するよう要請。英国、フランス、ポーランド、デンマーク、カナダも今回の事件を非難している。

ウクライナ政府はロシアによる攻撃を非難。ウクライナには自国を防衛する権利があるとし、軍隊を完全な戦闘態勢に置いた。ポロシェンコ大統領は28日付で全土に戒厳令を発令する方針を表明。発令期間は30日間となる。

ロシア外務省はウクライナに非があるとして同国を非難。声明で、今回の事件は対ロシア制裁の一段の厳格化を目的に計画されたものだったとの見解を示し、「ウクライナが米国、およびEUと手を組んで追求しているアゾフ海と黒海でロシアとの紛争を引き起こす政策は、深刻な結果を招くとウクライナに対し警告する」とした。

ロシア連邦保安局(FSB)はウクライナ艦船はロシアの領海を侵犯したとし、刑事事件として捜査を始めたと表明。ペスコフ大統領報道官は拿捕は国際法、および国内法に厳格に則った措置だったとの見解を示している。

ロシアのインタファクス通信は人権団体の話として、26日現在、24人のウクライナ人乗組員の身柄が拘束されていると報道。砲撃で負傷した3人の乗組員の容態は深刻ではなく、病院で手当を受けているとしている。

また目撃者によると、クリミア半島のケルチ港に停泊しているウクライナの3艦船の船体に目立った損傷はない。

アゾフ海の西岸に位置するクリミア半島は現在はロシアが支配しており、東岸もロシア領となっているが、北岸はウクライナ領となっており、アゾフ海ではこれまでも緊張が高まっていた。

事件を受けロシアルーブルは対ドルで1.4%下落。1日の下落としては11月9日以来の大きさとなっている。
https://jp.reuters.com/article/russia-ukrainian-ship-idJPKCN1NV2EG


 


米大使、ウクライナ情勢でロシア警告=国連安保理で緊急会合

26日、ニューヨークでの国連安保理緊急会合で発言するヘイリー米国連大使(AFP時事)

 【ニューヨーク時事】ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島沖で、ロシア当局が「領海侵犯」があったとしてウクライナ艦船に発砲、拿捕(だほ)した問題を受け、国連安全保障理事会は26日、緊急会合を開いた。ヘイリー米国連大使は会合で「ウクライナの主権領域に対する言語道断な侵害」とロシアを批判。こうした行為は「米国や他国と、ロシアの関係をさらに悪くする」とロシアに警告した。

米大統領、ウクライナ情勢緊迫に不快感=ロシア批判せず

 ヘイリー氏は会合での演説冒頭、26日朝にトランプ大統領やポンペオ国務長官と話したことを明らかにし、自身の演説内容は「米政府の最高レベルが持つ懸念を反映している」と説明。「米国はロシアとの関係が正常になることを歓迎するが、このような不法行為がそれを不可能にしている」と指摘。対ロシア制裁を継続する考えも示した。
 一方、ロシアのポリャンスキー国連次席大使はこれに先立ち「(ウクライナが)挑発を計画し、すべてロシアのせいにして、(ウクライナのポロシェンコ大統領が)架空のロシアの侵略から国を救う救世主になって支持率を上げようとしている」と主張。緊急会合でも、クリミア半島の帰属問題は解決済みとし「制裁や追加制裁でわれわれの考えは変わらない」と述べた。
 安保理各理事国は事件への「懸念」や「遺憾」を相次いで表明。緊張回避へ当事者に自制を促した。ウクライナは対ロ制裁強化を求めた。(2018/11/27-07:06)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018112700205&g=int

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/427.html

[戦争b22] ロシア軍が「ガス弾へ反撃」の空爆 シリアの武装勢力に シリア北部で100人が呼吸困難、ガス弾か アサド政権が批判  
ロシア軍が「ガス弾へ反撃」の空爆 シリアの武装勢力に

イスタンブール=其山史晃、モスクワ=喜田尚2018年11月26日10時38分
写真・図版
24日、シリア北部アレッポの病院で治療を受ける少年=AFP時事

 シリア国営通信は25日、シリア北部アレッポの住宅地で24日夜に有毒ガス弾を使った砲撃があり、107人が呼吸困難を訴えて治療を受けていると報じた。これを受け、アサド政権を支援するロシア軍は25日、砲撃をしたとされる武装勢力に反撃の空爆を加えたことを明らかにした。反体制派が最後の大規模拠点として政権軍と対峙(たいじ)する北部イドリブ県の情勢に影響を与える可能性もある。

 国営通信によると、アサド政権は国連事務総長などにあてた書簡で、「テロ組織から塩素ガスを使った数十発の砲撃があった」としている。反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」も25日、24日夜にアレッポ西部への砲撃があり、94人が呼吸困難の症状を示したと発表した。現場に近いイドリブ県の反体制派武装組織「国民解放戦線」の報道官は25日、朝日新聞の取材に「我々は24日にアレッポに攻撃はしていない」と疑惑を否定した。

 ロシアのインタファクス通信によると、ロシアのコナシェンコフ国防省報道官は25日、「ロシア軍は化学兵器を使ってアレッポ市民を砲撃したテロリストの陣地に対し攻撃を加えた」と明らかにした。すべての目標物が破壊されたという。

 砲撃を受けたとされる場所は、…
https://www.asahi.com/articles/ASLCV161QLCTUHBI01M.html


 

シリア北部で100人が呼吸困難、ガス弾か アサド政権が批判
ロシア軍は反体制派を空爆
2018/11/26 4:11日本経済新聞 電子版
 【カイロ=飛田雅則】シリアのアサド政権が支配する北部アレッポ県で24日夜に砲撃があり、住民ら100人以上が呼吸困難となり病院に搬送された。アサド政権は反体制派が塩素ガスを使って攻撃したと非難。AFP通信によると政権を支援するロシアは北西部イドリブ県近郊にある反体制派の拠点を空爆した。シリア情勢が緊迫する恐れがある。

 シリア国営通信は25日、「反体制派が塩素ガスで攻撃した可能性がある」との政府関係者の話を伝えた。反体制派に近いシリア人権監視団(英国)も、アレッポが砲撃され、住民が呼吸困難の症状を示したと報じた。AFP通信によると、アレッポに近いイドリブに拠点を置く反体制派は関与を否定。さらに主要な反体制派も攻撃について声明を出していない。

 イドリブ県と周辺をめぐっては戦闘を避けるため、ロシアとトルコの合意により、政権軍と反体制派を引き離す「非武装地帯(DMZ)」を設置する試みが10月以降、続いている。今回、空爆したロシア国防省は「DMZのテロ組織がガスによる攻撃を実行した」と非難した。DMZの設置で、アサド政権によるイドリブなどの反体制派に対する総攻撃が回避されてきた。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38169140W8A121C1I00000/
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/428.html

[経世済民129] ゴーン逮捕で日産を司法取引に走らせた「史上最高額脱税」の可能性 日産のサクセスストーリ 幹部経費どこまでOK?文化の違い
2018年11月27日 戸田一法 :事件ジャーナリスト
ゴーン逮捕で日産を司法取引に走らせた「史上最高額脱税」の可能性

写真:ユニフォトプレス
逮捕状の請求を受けた裁判官も、「被疑者の氏名」欄を見て度胆を抜かれたに違いない。日産自動車の経営再建の立役者であるカリスマ経営者、前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)が19日、東京地検特捜部に逮捕された。昨今の特捜部は大阪地検が証拠改ざん事件を起こしたり、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書の改ざん問題では何も立件できなかったりと、捜査能力の低下と相まって信頼は失墜。関係者には「持ち込み(内部告発)で、よほど固い証拠を頂戴したのだろう」という冷ややかな見方もある。事実、日産側は特捜部と捜査協力の見返りに起訴を免れたり、罪を軽くしてもらう「司法取引」で合意していた。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

“やりたい放題”で余罪続々
 ゴーン容疑者は日産の有価証券報告書に自分の役員報酬を計約50億円少なく記載して申告したとして、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、右腕だった前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者(62)とともに逮捕された。

 2人の逮捕容疑は2011年3月期〜2015年3月期の5年間に計約99億9800万円の報酬を受け取っていたのに、計約49億8700万円と過少に記載した有報を財務省関東財務局に提出した疑い。

 特捜部は逮捕容疑とされた約50億円の内訳を明らかにしていないが、日産の株価に連動して報酬を受け取る権利(ストック・アプリシエーション権、SAR)による報酬数十億円分のほか、オランダの子会社から毎年受け取っていた数億円の報酬を記載していなかったとみられる。

 日産は19日、ゴーン容疑者の逮捕を受け「早急に企業統治上の問題点を洗い出す」との声明を発表。西川広人社長は同日夜、緊急記者会見し、内部通報をきっかけに数ヵ月前から社内調査を実施し、逮捕容疑となった有報の虚偽記載のほか、私的な目的での投資金支出、会社経費の不正支出が確認されたと発表した。

 西川社長が「私的」「不正」などと言い切ったということは、明確な証拠・書類が残っているのだろう。日産が特捜部との司法取引に基づき、全面協力して一切の資料を提供すれば、特別背任罪や業務上横領罪の立件も視野に入る。

 関係者の証言や各報道によると、逮捕容疑以外にも直近の3年分(2016年3月期〜2018年3月期)についても、計約29億円と記載されているが、実際には計約30億円多かった疑いがある。特捜部は時効の関係で古い案件から手掛けたとみられるが、いずれ再逮捕容疑となるだろう。

 西川社長の言う「私的な目的の投資支出」だが、日産が投資目的で設立したとされるオランダ・アムステルダムの子会社「ジーア」が実はペーパーカンパニーで事業の実態がなかった上、ゴーン容疑者がジーアに幼少時代を過ごしたブラジル(リオデジャネイロ)やレバノン(ベイルート)、アムステルダム、フランス(パリ)に高級住宅を購入させ、無償で利用していたことを指すとみられる。

 これは「組織の幹部など組織運営に重要な役割を果たしている者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は組織に損害を加える目的で、その任務に背く行為」であり、特別背任罪に該当するだろう。

 また「会社経費の不正支出」は、業務実態がない姉にアドバイザー契約を結ばせ、毎年約1100万円余りを支払わせていたほか、家族旅行や私的な飲食の代金も日産に負担させていたことを指すとみられる。姉はゴーン容疑者が子会社に購入させたリオの住宅で生活しているとされる。

 いずれも公私混同の極みだが、姉への支出は特別背任罪か「業務上占有する他人の物を横領」したと判断されれば、業務上横領罪が成立する可能性もある。両罪は法的な適用の解釈が専門家でも意見が分かれるが、家族旅行や私的な飲食の代金は業務上横領罪に問われる可能性が濃厚だ。

捜査急展開に2人のキーマン
 今回の逮捕劇は、ゴーン容疑者サイドから見れば「クーデター」、日産サイドから見れば「堪忍袋の緒が切れた」と言えるだろう。

 両者の見方は別として、明らかになっている点が事実なら、どう見ても会社の私物化、横暴が過ぎる。ゴーン容疑者に矢が向くのは時間の問題だったのは間違いない。

 しかし日産としても、経営トップが現職時に行った犯罪行為であれば、放置すれば法人として罪に問われるのは必至で、ゴーン容疑者の追放とともに傷を少しでも小さく抑えたいという意向が働いたはずだ。

 そこで「司法取引」だったのだろう。

 日本の司法取引は今年6月、改正刑事訴訟法施行で導入された。容疑者や被告が共犯者など他人の捜査や公判維持に協力する見返りに、自らの起訴を見送ってもらったり、求刑を軽くしてもらったりする制度だ。

 対象となるのは贈収賄や談合、脱税、独占禁止法違反などの経済事件のほか、銃器や薬物事件に限定される。個人だけではなく、法人(今回の場合は日産)が処罰対象になり得るケースでは、企業も取引が可能だ。

 日本では今年7月までに、タイの発電所建設事業を巡る贈賄事件で、元執行役員が現地の公務員に賄賂を渡したとされる三菱日立パワーシステムズ(MHPS、横浜市)と初めて司法取引が成立。MHPSは捜査に全面協力し、元執行役員は起訴されたが、法人としてのMHPSは不起訴となった。

 今回の事件はどうか。ゴーン容疑者がケリー容疑者にメールで有報への虚偽記載などを指示。それを受けて法務担当の外国人執行役員と、別の幹部社員の2人が実行していたとされる。

 役員報酬は監査法人による監査の対象外だが、日産の監査法人はゴーン容疑者にSARの報酬を有報に記載するよう進言していた。実は日産は春ごろには既に内部調査に着手し、こうした経緯から2人の実行行為を特定。2人には社内処分の軽減などとともに司法取引に応じるよう提案したとみられる。

 日産と特捜部は司法取引制度が導入された6月には既に調整に入っていたとみられ、2人は特捜部と司法取引で合意。これによって捜査は一気に加速したとみられる。いずれ2人は解雇を免れないだろうが、心ばかりの退職金(もしくは報奨金)が用意されているだろう。日産も家宅捜索を受けたが、専門家も口ぶりは慎重ながら「不起訴になるのではないか」との見立てが支配的だ。

史上最高額の脱税の可能性
 ではなぜ、ゴーン容疑者は報酬を少なく見せ掛ける必要があったのか。

1つは「高給過ぎる」との批判をかわす目的だったとされる。瀕死だった日産の救世主とはいえ、トヨタ自動車の豊田章男社長は2018年3月期の有報によると、3億8000万円。ルノーから招いたディディエ・ルロワ副社長は10億2600万円。報酬の算定方法なども違い一概に比較はできないが、それでもゴーン容疑者の報酬は格段に高い印象を受ける。

 もう1つの可能性は「税逃れ」だ。

 筆者は「パナマ文書」が公開された当時、ゴーン容疑者の名前を探したが見つけることはできなかった。納税地がどの国かは不明だが、西川社長は「日本で納税したと思っている」と発言している。

 かつて「長者番付」と呼ばれた国税当局による高額納税者の公示が2006年以降に廃止されたため、ゴーン容疑者の納税地が日本であるかどうかを確認するすべはない。租税条約や国税の関連法などによると、複数の国に居住地がある場合、一般的には1年間の半分以上にわたり滞在しているかどうかが判断基準になるが、何ヵ国も渡り歩いている場合は拠点や生活実態、経済基盤などで総合的に判断される。

 もし納税地が日本であれば、あえて有報に過少申告したのに、実際に受け取っていた報酬を正直に確定申告していたとは考えにくい。もし正しい所得を申告したとすれば、公表されている有報より過大な所得を申告していたことになり、国税側には後に還付金が発生する懸念も生じる。国税当局がそうした情報を見逃すわけがない。

 本来、個人の高額納税者を調査するのは東京国税局であれば課税1部だが、明らかになっている点が事実であれば課税1部から査察部へ移送、もしくは特捜部の捜査を待って一気に査察部が強制調査に着手するかもしれない。いずれ経理ミスのたぐいとされる申告漏れ(無申告加算税、もしくは過少申告加算税)ではなく、所得隠し=脱税(重加算税、刑事罰としての懲役や罰金など)の対象になる可能性が高い。

 すべてが脱税と判断され刑事事件の対象になるとは限らないが、国内では史上最高額の脱税事件になる可能性がある。

 当然、法人としての日産も無傷では済むまい。巨大企業を担当する調査1部が税務調査を担当すると思われるが「会長職にあった人物による個人的な犯罪」では済まされない。不正経理・申告と認定されれば刑事事件にはならないにせよ、重加算税の対象にはなるだろう。

 ほかにも有報を訂正した後、証券取引等監視委員会が調査し、金融庁に課徴金の納付命令を勧告することになりそうだ。金商法では有報への虚偽記載は刑事罰として法人に対し7億円以下の罰金と規定し、行政処分としての課徴金も定めている。不起訴となれば罰金は免れるだろうが、課徴金の納付は避けられないだろう。

 一方、ゴーン容疑者の弁護人を元同特捜部長の大鶴基成弁護士が務めることが明らかになった。また、ケリー容疑者は逮捕後、関係者に「役員報酬は適切に記載していた」と説明していることも判明。ゴーン容疑者も「有報に虚偽の記載はしていない」などと容疑を否認しているもようだ。

 東京地検特捜部の捜査は始まったばかり。今後の捜査の行方が注目される。
https://diamond.jp/articles/-/186648


 

2018年11月27日 Andrew Peaple and Kosaku Narioka
ゴーン氏失墜で浮き彫り、報酬めぐる文化の違い

 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の失墜により、先進国間でも文化の違いによって企業慣行が大きく異なるエリアが残っていることが鮮明になった。それは、幹部報酬だ。

 企業の財務報告の方法は近年、国際会計基準の広範な導入を受けて世界的に収れんしつつある。だが経営陣の報酬の開示度合いを巡っては、おおむね各国が引き続き独自のルールを設けている。

 ゴーン氏は約50億円の過少申告があったとの容疑で逮捕され、日産から会社資金の流用を指摘される中、会長職を解かれた。同氏は勾留されており、コメントは得られていない。

 日産がゴーン氏の報酬について義務付けられている開示の水準は、同氏が会長兼最高経営責任者(CEO)に留任しているルノーよりはるかに低い。パリ株式市場に上場するルノーは、ゴーン氏や他の幹部の報酬について多くの詳細情報を提供している。フランスでの世論の批判を受けて、ゴーン氏は今年、ルノーでの報酬を削減された。

日本企業と欧米企業

 米国と英国では通常、企業は幹部報酬についてさまざまな詳細を提供する。ロンドンを拠点とするPwCのパートナー、トム・ゴスリング氏によると、幹部報酬の項目が年次財務報告書の10%以上を占めることも少なくない。そうした国々では、企業は報告書に「全てを含む」よう強いられる。これは、経営陣の基本給やインセンティブに加え、年金や手当の情報も全て提供しなければならないという意味だ。

 日本では、幹部報酬に関する情報が相変わらず少ない。2010年以来、上場企業は対象年度に1億円以上の報酬を得た役員を開示するよう法律で義務付けられているにもかかわらずだ。例えば日産は金融庁に提出した直近の年次有価証券報告書で、必要な開示に1ページを割き、ゴーン氏と西川廣人社長の報酬の内容を記載している。

 専門家によると、報酬に関する記載の違いは社会的傾向を反映している面もある。日本企業は欧米企業に比べると、従業員と首脳陣の給与はかけ離れていない。一方で欧米の一部の国では会社内外での経済的格差が大きな政治的争点になっている。

 日本企業の経営陣の給与水準が相対的に低く、報酬の詳細な報告が重視されない背景には、国際的な経営者争奪戦が少ないことやプライバシー尊重などの要因が挙げられている。

 ゴーン氏が日産で得ていた比較的高い報酬は、長期にわたってトップに君臨していたことや、有名日本企業の外国人経営者という珍しい地位も反映していた。一方、その高い報酬は、同氏が強すぎる権力を手にしたと日産社内で見られるようになった一因とも考えられる。

 みずほインターナショナル(ロンドン)の上田亮子氏は「(日本企業幹部の)報酬は低いものだったので、あまり報酬自体が大きなガバナンスの問題とはならなかった」と指摘。「他人の財布の中身」をのぞくのは良くないとの伝統的な考えも開示が限定的であった一つの重要な理由だと述べた。

 欧米諸国で幹部報酬の詳細開示を求める動きがあったのは少し前だ。英国では、民営化された公益会社の幹部が享受していた高い報酬がメディアで批判されたことを受け、1990年代に政府が一段の開示を求めた。

 株主も企業の報酬慣行についての情報、特に経営陣の長期的な業績に連動する報酬の設定に使われる基準が投資家利益に一致するか否かを判断できる材料を要求してきた。

 PwCのゴスリング氏は「投資家にとって幹部報酬の設定に関する開示は、取締役会の運営方法や、彼らが経営陣からどれだけ独立しているかを知る手段の一つだ」と述べた。

 欧州連合(EU)では来年、英国の現行モデルに基づき株主の権利に関する新たな指針が導入され、報酬開示規則が統一される。

 確かに、報酬体系の複雑さが企業の開示水準に影響を与えている面はある。日本企業で一般に開示が少ない一因として、欧米企業の幹部報酬パッケージほど業績ベースの賞与や長期インセンティブプランが利用されてこなかったことがある。

 それでも、日産での問題を受け、報酬の分野で一段と透明かつ明確に定義された規則を求める声が噴出する可能性もある。取締役選任の株主投票を行う株主総会の開催後に報酬を報告しているという慣行は見直すべき時期に来ているのかもしれない。

 例えば日産が2018年3月期の有価証券報告書(役員報酬のページを含む)を提出したのは6月28日。年次株主総会の2日後だった。

 日産のスキャンダルを受けてみずほの上田氏は、日本では「もう性悪説に立って制度設計すべきなのかもしれない」と指摘。「パンドラの箱を開けてしまった」感があるとした。
https://diamond.jp/articles/-/186688


 

2018年11月27日 Chip Cutter
幹部経費どこまでOK? ゴーン氏逮捕で議論再浮上

 企業が幹部に与える最大の特典の1つは、潤沢な経費だろう。だが乱用の疑いが生じれば、キャリア転落の憂き目に遭う恐れがある。

 企業幹部による資金流用疑惑を巡っては、自動車業界の大物、カルロス・ゴーン氏の逮捕により、あらためて注目が集まっている。日産・ルノー・三菱の3社連合を束ねてきたゴーン氏は、報酬過少報告に加え、会社経費を不正利用していた疑いが持たれている。日産の内部調査に詳しい筋によると、ゴーン氏は自宅の購入・改装などに、オランダ子会社の資金およそ1800万ドル(約20億3000万円)相当を流用していたもようだ。

 関係筋によると、ゴーン氏の家族は、住居を会社持ちだと認識しており、購入は日産自動車の正式な承認手続きを経ていると話している。ゴーン氏のコメントは得られていない。同氏はまだ、正式には起訴されていない。

 ここ数年にも、会社資金乱用の疑いで独ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ、英広告大手WPP、旧ヒューレット・パッカードなどの幹部が辞任に追い込まれた。

 WPPのマーティン・ソレル氏は4月、CEOを辞任した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がこれまで報じたところによると、WPP取締役会はソレル氏が売春婦への支払いに会社資金を充てた疑いを調査している。調査結果については分かっていない。ソレル氏は疑惑を否定している。

 マーク・ハード氏は2010年、旧ヒューレット・パッカードのCEOを辞任した。会社の調査により、不正確な経費を申告しており、会社側はそれが請負業者との個人的な関係を隠していたと主張していた。ハード氏は現在、オラクルの共同CEOを務めている。

 ダイムラーは11年、会社資金を私的流用していた疑いで、メルセデスベンツの米国部門責任者、アーンスト・リーブ氏を解雇した。

 会社への献身が期待されている幹部は、一般社員には理解できないような経費が認められている。個人の事情にあわせた医療サービス、家賃負担、会社ジェット機の私的使用といった具合だ。だがこうした経費の扱いは幅広い解釈の余地や誘惑を生む、とガバナンス(企業統治)や会計の専門家は指摘する。

 デラウェア大学の企業ガバナンスに関する組織の統括者、チャールズ・エルソン氏は「CEOは年中無休で稼働しているから、やることはすべてビジネス絡みと主張できる」とし、境界があやふやになると話す。

 米内国歳入庁(IRS)や米証券取引委員会(SEC)の規定では、個人と会社の経費を分けるよう定められている。だが、線引きが難しいケースもある。例えば、幹部が会社のジェット機でビジネス関連の会合に出席する際、社外での行動に参加するため配偶者を同伴するといったケースだ。航空法を専門とする法律会社、クーリング・アンド・ハーバースの弁護士、リサ・D・ホルト氏は「そうした移動について、完全にオン・オフの区別が可能なケースはまれであり、線引きが難しい」と話す。

 一方、イエール大学のジェフリー・ソネンフェルド教授(経営学)は、当然の権利であり、非難される余地はないと考える幹部に起因する問題もあると話す。「一部の幹部は英雄気取りとなり、自分と他人のお金の境界線を混同し始める」

 大手企業のCEOであることの本質やプレッシャーが進化する中、経費も変化している。CEOが効率よく、かつ気持ち良く仕事を遂行する上で、スポーツ競技場のスカイボックス(ガラス張りの特別観覧席)やゴルフクラブ会員権といった手当てよりも、セキュリティー対策や家族を含めたプライベートジェット利用などの方が優先順位が高くなっている。

 アップルは昨年12月、セキュリティー対策として、ティム・クックCEOに対し、公私問わず、プライベートジェット機の利用を義務づけると明らかにした。私用目的で利用する場合、コストは追加報酬とみなされ、クック氏は税金を支払うとしている。

 企業幹部の雇用契約では、どのような裁量経費が認められるか定めている。だがたとえ、内部監査が最初に承認していても、取締役会は少なくとも定期的にCEOの経費について調べることが望ましい。法律事務所マクダーモット・ウィル・アンド・エメリーの企業ガバナンス専門弁護士、マイケル・ペレグリン氏はこう指摘する。また、何らかの不正が疑われる場合、審査官が取締役に報告できる経路を確保すべきだという。こうした手段を講じなければ「まさにそこから誘惑が生まれる」という。
https://diamond.jp/articles/-/186689

 


【第199回】 2018年11月27日 上久保誠人 :立命館大学政策科学部教授

ゴーン逮捕は「日産のサクセスストーリー」と捉えるべき理由

ゴーン容疑者の逮捕は、今後日本企業と日本人が世界で生き残っていくための1つの指針を与えているといえる
写真:ユニフォトプレス
 ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務していたカルロス・ゴーン氏と、日産の代表取締役のグレッグ・ケリー氏が、金融取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。日産自動車は臨時取締役会を開き、ゴーン氏の会長職解任を全会一致で決めた。一方、ルノーはティエリー・ボロレ氏を「暫定会長」としたが、ゴーン氏を当面会長職にとどめることを決め、日産とルノーの間で、ゴーン氏逮捕を巡る対応が分かれることになった。

 日本のメディアは、ゴーン氏が逮捕の理由となった、2010年度から5年間の99億9800万円の役員報酬を49億8700万円と記述した有価証券報告書の虚偽記載に加えて、海外の高級マンションなど、さまざまな形で行われた毎年10億円程度の日産からの便宜供与を詳細に報じている。ルノーという外資と、ゴーン氏という外国人経営者に20年間に渡って支配された日産の「負」の側面が一挙に噴出しているようだ。

 これに対して、この機会にルノーとの関係を清算し、日産・三菱の「日本の民族系資本」としての地位を回復すべきだという主張も出てきているようだ(現代ビジネス『反強欲・反グローバル資本主義という潮流で読み解くゴーン事件』)。だが、筆者はその主張に同意するつもりはない。

 むしろ、日産のストーリーは「日本政府からも見捨てられていた会社が、外国のカネと経営者を受け入れ、技術力と勤勉さで立場を逆転し、外資を飲み込む世界屈指の企業グループを形成し、経営の主導権を取り戻した」という、「サクセスストーリー」として語られるべきであり、今後の日本企業と日本人が世界で生き残っていくための、1つの指針を与えているからだ。

英国で考えた「欧米の経営者」と
「日本の技術力」の相性の良さ
 この連載では、「欧米で経営学を学んだ経営者」と「日本の技術力」の組み合わせは、新たなビジネスモデルとなると主張してきた(第125回・P.4)。筆者が英国の大学で見たものの1つは、将来ビジネス界で成功しようと志す若い学生が、経営学やMBAを専門的に勉強していたことだった。

 これは、日本では「現場主義」「ものづくり」への強い「信仰」があり、就活では企業側が、大学時代の成績や、何を学んできたのかをほとんど評価しないことと対照的で興味深かった。欧米と比較することで、日本では「学問」「専門性」は軽視されてきたと言わざるを得ないことがよくわかった。

 日本の製造業では、製造部門出身者が取締役会の多数派を占め、代表取締役会長・社長のポジションを占めることが多い。だが、彼らは経営を専門的に学んだわけではない「素人経営者」であるのは明らかだろう。そして、オリンパス、東芝、シャープなど、素人経営者による不祥事、経営の失敗が多発してきた。武田薬品のように、M&Aで獲得した外国企業を日本人が経営できず、社長以下取締役、部長級のほとんどを外国人に切り替えざるを得なかった企業もある(日経ビジネスオンライン『モンゴル人こそ真のグローバル人材』)。

 中小企業についても、高い技術力に基づく「ものづくり」への評価が高いが、実は経営は問題が多いのではないだろうか。親会社の言いなりになって、長年蓄積してきた部品の開発・製造ノウハウが詰まった仕様書を親会社に差し出し、それが外国企業に渡り、技術を盗まれ、商権を失っている。これは日本人の誠実さを示す「美談」として扱われてしまうことも多い(第8回)。しかし、見方を変えれば、利益を度外視して親会社への忠誠を誓うのは、「素人経営」の極みではないだろうか。

 世界の若手経営者が中小企業を買収すれば、こんなことは起き得ないのではないだろうか。彼らは考え方が「ドライ」だからだ。親会社との関係を始めとして、ものづくりを「聖域化」する裏で隠されてきた中小企業の経営の問題点を、徹底的に洗い出し、純粋に「高い技術力」を生かす経営を、経営学の専門的な観点から考えるはずだ。だから、筆者は「欧米の経営者」と「日本人の技術者」の相性はいいはずと考えるのだ。その仮説を証明する格好の事例が、「ゴーン改革」初期の日産であるように思うのだ。

日産を復活させたゴーン氏の
「理論的経営」を振り返る
 ここで、業績が長期にわたって低迷し、2兆円の負債を抱えて倒産寸前となり、日本政府も見捨てたといわれた日産が「ゴーン改革」で復活した経緯を振り返ってみたい。1999年にルノーの傘下に入った日産に来たゴーン氏は、これまで長年の慣習と文化に浸り、経営者の経験と勘に依存していた日本企業に、「理論的経営」を導入した。

 まず、ゴーン氏は、開発、生産、購買、販売という主要部門が責任をなすり合って意思決定と実行が遅れる縦割り組織の弊害を正すために、「クロスファンクショナル(CFT)チーム」を設置した。解決すべき課題ごとに9つのCFTチームを発足させて、そのチームリーダーを「パイロット」と名付けて40代の課長クラスに任せた。CFTは日産再建策「リバイバルプラン」の原案をわずか4ヵ月で作成した。

「リバイバルプラン」では、国内5工場の閉鎖やグループ従業員の14%に当たる2万1000人の削減、部品調達先を1415社から600社へ削減、航空宇宙部門など本業以外の事業の売却など、総額1兆円のコスト削減を断行した。

 このコスト削減策を通じて、ゴーン氏は、日本企業の長年の慣習であり文化であるといえる「系列」を破壊した。部品調達先などとの「系列」関係が、日産社員の天下り先となり、甘えの構造の基になっていると見抜き、容赦なく切り捨てたのである。

 また、ゴーン氏は「コミットメント(必達目標)」という概念を導入した。具体的に「リバイバルプラン」では、2001年3月期までの黒字化、2003年3月期までに営業利益率4.5%の達成と有利子負債の50%削減の「3つのコミットメント」を掲げた。

 そして、ゴーン氏は、「黒字化できなかったら責任を取って退任する」と宣言した。当時、日本企業の経営者が、「経営責任を取る」と明言するようなことはなかった。どこか曖昧さが許されてきた日本の企業経営に、ゴーン氏は明確な「ノー」を突き付けた。

 ゴーン氏の「理論的経営」によって、倒産寸前だった日産は、ルノーの傘下に入ってわずか2年後の2001年3月期決算で、過去最高の当期純利益2500億円を達成したのだ。

ゴーン氏の「自滅」で経営の主導権を
回復する日産の「サクセスストーリー」
 元々、日産はルノーよりも企業規模が大きく、開発や生産の能力が劣っているわけではなかった。長年の慣習や文化によるしがらみを断ち切ることができず、経験と勘に依存する経営が問題だっただけだ。「ゴーン改革」で目覚めた日産は、社員が持ち前の「勤勉さ」を発揮したこともあり、業績を急激に回復させた。

 現在、ルノーの純利益の半分程度は日産からの利益である。ルノーは日産からの配当金や技術供与がなければやっていけなくなっている。ルノーと日産の立場は逆転した。むしろ日産からすれば、ルノーに利益を吸い取られているという不満が強くなっていった。

 しかし、ルノーの大株主であるフランス政府が、2年以上保有する株主の議決権を2倍にする「フロランジュ法」を制定し、ルノーの経営に強く関与するとともに、ルノーと日産を統合させて、日産をフランス企業の傘下に収めようとする動きを見せた。

 ゴーン氏はこれに抵抗し、ルノーと日産の経営の独立性を守ろうとしたとされる。だが一方で、ゴーン氏が2018年で切れるルノーCEOの任期を2022年まで延長する代わりに、ルノーと日産の関係を後戻りできない不可逆的なものにすることを、フランス政府と「密約」したと囁かれていた。

 そんな時に起きたのが、「ゴーン氏逮捕劇」であった。これは、日産の経営陣が、フランス政府・ルノーによる日産支配の強化策を排除するために仕掛けた闘争であるという見方が存在する。それが事実であるかどうかはさておき、1つだけ言えることは、日産は経営の自立性を取り戻そうとしているということだ。ルノーからの「新しい会長」を派遣するという打診を、日産はきっぱりと拒絶したのだ。

 ゴーン氏の失脚という「自滅」の結果とはいえ、本稿の最初に述べたように、「日本政府からも見捨てられていた会社が、外国のカネと経営者を受け入れ、技術力と勤勉さで立場を逆転し、外資を飲み込む世界屈指の企業グループを形成し、経営の主導権を取り戻した」という、日産復活のサクセスストーリーが浮かび上がりつつある。

 日産の今後だが、ルノーを排除して「日本の民族系資本」の企業グループに戻ろうとするのは間違った考えだ。現在、ルノー・日産・三菱のアライアンスは、生産台数でトヨタを抜いて世界第2位を誇っている。ルノーと組むことで達成した大成果を、わざわざ捨てることはない。

 経営の自立性を回復した日産は、今後は逆にルノーを買収するなど、世界第2位のアライアンスの主導権をどう握るかの戦略を立てることが重要だ。もちろん、ルノーの背後にフランス政府がいるのであれば、日産も安倍晋三政権の後ろ盾を得て、戦略を練る必要があるだろう。

 しかし、それは政府によって企業の「民族主義」を強化するという意味ではない。安倍政権は、日産のストーリーをサクセスストーリーと捉えて、外資のカネと経営理論を、日本企業を強化するために利用するという、したたかな戦略を考えるべきなのだ(第57回)。

「日産再生のサクセスストーリー」という
ポジティブな側面こそ「本質」である
 この連載で主張してきたが、日本は外資導入を経済成長につなげられる条件を備えている(第43回)。「有名ブランド」「地理的条件の良さ」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」「政治的リスクの低さ」というグローバルビジネスのための好条件を備える日本は、政府が余計な規制を作って斜陽産業を守るような愚策を取らない限り、世界中からヒト、モノ、カネが集まってきて、「豊かな場所」になるはずなのである。


本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されます。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)
 日本は戦後、「開発主義国家モデル」と呼ばれる独特の国家モデルにより、高度経済成長を達成した。それは、経済成長に必要な人材、産業を政府(中央省庁)の主導により自国内ですべて育成する「自前主義」のモデルであった。

 しかし、1990年代以降、経済のグローバル化による大競争に晒された日本企業が多国籍化し、国内産業が空洞化した。それに対応するための構造改革や大学の国際化が取り組まれたが、高度成長の成功体験から抜けられず、日本は「失われた20年」と呼ばれる停滞期に入り込んだままである。

 グローバル経済の時代には、もはや「自前主義」は通用せず、諸外国とのネットワークにより分業体制を築くことがより重要となる。しかし、過去の成功体験を忘れることができず、停滞期から抜け出すために、「自前主義」により再び世界一を目指すという方法にどうしてもこだわってしまう。そのため、もはや斜陽産業となった輸出産業を保護しようとしたり、国内空洞化を防ごうと、無理に企業の海外進出を引きとめようとして、結果として経済の停滞を長引かせてきたのだ。「失われた20年」とは、この堂々巡りであったといえる。

 今後、日本は「自前主義」にこだわらず、諸外国の力も利用しながら、したたかに、しなやかに経済力を強化していく道を選んでいくべきではないかと考える。「ゴーン氏逮捕」という衝撃的な事件があったために、ネガティブな側面に焦点が当たりがちだが、「日産再生のサクセスストーリー」というポジティブな側面にこそ、我々が考えるべき事の「本質」がある。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
https://diamond.jp/articles/-/186649


 


2018年11月27日 Chip Cutter
幹部経費どこまでOK? ゴーン氏逮捕で議論再浮上

 企業が幹部に与える最大の特典の1つは、潤沢な経費だろう。だが乱用の疑いが生じれば、キャリア転落の憂き目に遭う恐れがある。

 企業幹部による資金流用疑惑を巡っては、自動車業界の大物、カルロス・ゴーン氏の逮捕により、あらためて注目が集まっている。日産・ルノー・三菱の3社連合を束ねてきたゴーン氏は、報酬過少報告に加え、会社経費を不正利用していた疑いが持たれている。日産の内部調査に詳しい筋によると、ゴーン氏は自宅の購入・改装などに、オランダ子会社の資金およそ1800万ドル(約20億3000万円)相当を流用していたもようだ。

 関係筋によると、ゴーン氏の家族は、住居を会社持ちだと認識しており、購入は日産自動車の正式な承認手続きを経ていると話している。ゴーン氏のコメントは得られていない。同氏はまだ、正式には起訴されていない。

 ここ数年にも、会社資金乱用の疑いで独ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ、英広告大手WPP、旧ヒューレット・パッカードなどの幹部が辞任に追い込まれた。

 WPPのマーティン・ソレル氏は4月、CEOを辞任した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がこれまで報じたところによると、WPP取締役会はソレル氏が売春婦への支払いに会社資金を充てた疑いを調査している。調査結果については分かっていない。ソレル氏は疑惑を否定している。

 マーク・ハード氏は2010年、旧ヒューレット・パッカードのCEOを辞任した。会社の調査により、不正確な経費を申告しており、会社側はそれが請負業者との個人的な関係を隠していたと主張していた。ハード氏は現在、オラクルの共同CEOを務めている。

 ダイムラーは11年、会社資金を私的流用していた疑いで、メルセデスベンツの米国部門責任者、アーンスト・リーブ氏を解雇した。

 会社への献身が期待されている幹部は、一般社員には理解できないような経費が認められている。個人の事情にあわせた医療サービス、家賃負担、会社ジェット機の私的使用といった具合だ。だがこうした経費の扱いは幅広い解釈の余地や誘惑を生む、とガバナンス(企業統治)や会計の専門家は指摘する。

 デラウェア大学の企業ガバナンスに関する組織の統括者、チャールズ・エルソン氏は「CEOは年中無休で稼働しているから、やることはすべてビジネス絡みと主張できる」とし、境界があやふやになると話す。

 米内国歳入庁(IRS)や米証券取引委員会(SEC)の規定では、個人と会社の経費を分けるよう定められている。だが、線引きが難しいケースもある。例えば、幹部が会社のジェット機でビジネス関連の会合に出席する際、社外での行動に参加するため配偶者を同伴するといったケースだ。航空法を専門とする法律会社、クーリング・アンド・ハーバースの弁護士、リサ・D・ホルト氏は「そうした移動について、完全にオン・オフの区別が可能なケースはまれであり、線引きが難しい」と話す。

 一方、イエール大学のジェフリー・ソネンフェルド教授(経営学)は、当然の権利であり、非難される余地はないと考える幹部に起因する問題もあると話す。「一部の幹部は英雄気取りとなり、自分と他人のお金の境界線を混同し始める」

 大手企業のCEOであることの本質やプレッシャーが進化する中、経費も変化している。CEOが効率よく、かつ気持ち良く仕事を遂行する上で、スポーツ競技場のスカイボックス(ガラス張りの特別観覧席)やゴルフクラブ会員権といった手当てよりも、セキュリティー対策や家族を含めたプライベートジェット利用などの方が優先順位が高くなっている。

 アップルは昨年12月、セキュリティー対策として、ティム・クックCEOに対し、公私問わず、プライベートジェット機の利用を義務づけると明らかにした。私用目的で利用する場合、コストは追加報酬とみなされ、クック氏は税金を支払うとしている。

 企業幹部の雇用契約では、どのような裁量経費が認められるか定めている。だがたとえ、内部監査が最初に承認していても、取締役会は少なくとも定期的にCEOの経費について調べることが望ましい。法律事務所マクダーモット・ウィル・アンド・エメリーの企業ガバナンス専門弁護士、マイケル・ペレグリン氏はこう指摘する。また、何らかの不正が疑われる場合、審査官が取締役に報告できる経路を確保すべきだという。こうした手段を講じなければ「まさにそこから誘惑が生まれる」という。
https://diamond.jp/articles/-/186689


 

2018年11月27日 真壁昭夫 :法政大学大学院教授
ゴーン逮捕でルノー・日産・三菱連合に変化、世界自動車大再編も
カルロス・ゴーン
写真:ユニフォトプレス
ゴーン日産会長の突然の逮捕
3社のアライアンス体制に影響
 11月19日、突然、日産自動車のゴーン会長が逮捕された。それに伴い日産自動車は、「当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について」のプレスリリースを出し、夜には西川(さいかわ)社長が記者会見を行った。これまでの報道等によると、日産は時間をかけて不正行為の調査を進めてきたことが分かる。

 羽田空港にプライベート・ジェット機で到着したゴーン容疑者に、東京地検特捜部は任意同行を求めその後逮捕したようだ。記者会見で西川社長は、ゴーン容疑者が日産の経営再建に重要な役割を果たしたことを認めつつ、1人の人物にあまりに大きな権限が集中し、不正行為の発生を防げなかったと述べた。

 今回の問題をより複雑にするのは、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンス体制に大きな影響が出ることが予想されることだ。自動車産業は、主要先進国で最も重要な産業分野で、自動車メーカーはいわば「稼ぎ頭」と言ってもよい。

 足元で支持率の低迷に直面するフランスのマクロン大統領にとって、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスは自身の経済運営にとって最も重要なファクターの1つと言っても過言ではない。

 今後、その3社のアライアンス体制に変化が生じ、世界の自動車業界に波紋が広がることも考えられる。

日産の経営危機を
救ったゴーン容疑者
 時計の針を巻き戻せば、1999年3月、経営危機に直面していた日産は、ルノーと資本提携(アライアンス)を結んだ。9月には17人のルノー管理職が日産に送り込まれた。10月に入ると、日産の経営トップに就任したゴーンCOO(最高執行責任者、当時)が“日産リバイバルプラン”を発表した。

 その主な目標は、2000年度に黒字化を達成すること、および、2002年度までに連結ベースの売上高営業利益率を4.5%に引き上げることだった。ゴーンは目標が1つでも達成できなければ役員は総退陣すると退路を断ち、組織の改革に取り組んだ。

 ゴーン容疑者は目標達成に向け、固定費の削減を進めた。村山工場をはじめとする国内5つの工場の閉鎖や、サプライヤー数を半分に削減することが進められた。“ゴーン、イコール、コストカッター”との印象を持つ人が多いのはこのためだ。

 同時に、ゴーン容疑者はルノーとの共用プラットフォームの使用などを進めて新商品開発を強化しつつ、生産拠点を集約することで生産性の向上を目指した。また、ゴーン容疑者は従来の企業間のつながりよりも、競争を重視しグローバルに競争力のあるサプライヤーとの関係強化を徹底した。

 当時の国内経済は、金融システム不安を受けて低迷していた。その後、2002年2月からは、米国経済の回復などに支えられてわが国の景気は回復局面に移行した。それに伴い、日産リバイバルプランも徐々に効果を表した。

 特に、ゴーン容疑者は中国をはじめとする新興国市場でのシェア拡大を重視した。リーマンショック後の景気低迷を挟みつつ、中国を中心にインド、ブラジル、ロシアなどに進出し、販売台数を伸ばしてきた。

 ゴーン容疑者の経営手腕は日産の経営再建とその後の成長に欠かせなかったのである。市場参加者の中には、「ゴーンなくして今日の日産なし」と評する者もいるほどだ。企業文化の異なる自動車メーカーの統合はうまくいかないと考え、ゴーン容疑者が資本関係を維持しつつ各社の自立性を重視したことも大きかった。

想定以上に強かった
ゴーン容疑者の権力欲
 今回の逮捕容疑(有価証券報告書の虚偽記載、実際の報酬額よりも少ない金額を有価証券報告書に記載していた)、および日産の投資資金の不正使用などは、ゴーン容疑者の権力欲、強欲さがすさまじく強かったことを示している。同氏は、越えてはならない一線を越えてしまったといえる。

 大きな原因は2つあるだろう。

 まず、ルノーは日産の窮地を救った筆頭株主だ。1999年にルノーは日産自動車の36.8%の株式を取得し、現在の保有比率は43.4%だ。過半数は保有していないものの、事実上の意思決定権はルノーが持っているといってよい。その中で親会社から派遣されたトップ=ゴーン容疑者の意向には従わざるを得ない。それが資本の論理だ。

 また、経営者として、ゴーン容疑者は優れた資質を持っている。リバイバルプラン以降の業績がそれを示している。従来の発想では、聖域なき構造改革を進めると同時にグローバルな視点で成長を目指すことは難しかったかもしれない。ゴーン容疑者は日産にとって、困難な目標を成し遂げた救世主といえる。

 また、ゴーン容疑者の指揮の下、日産は英語を公用語にした。中途採用人材も増えた。同社の企業文化は大きく変わったのである。その中で、日産再生の立役者であるゴーン容疑者の意見には従わざるを得ないという雰囲気が組織全体に広がったことは想像に難くない。

 その結果、ゴーン容疑者の権力欲と強欲さをいさめることは、かなり難しくなったと考えられる。2005年にゴーン容疑者は日産のCEOとルノーのCEOを兼務した。その上、ゴーン容疑者はアライアンスの運営を管理するルノー・日産BV(オランダ・アムステルダムが拠点)のトップにも就いた。同社のトップはルノーCEOが就くと内規に定められていると報じられている。また同社は非公開企業であるため、内部の経営状態などはわかりづらい。

 アライアンス体制の最高意思決定権者の地位を手に入れたことによって、ゴーン容疑者の権力基盤は一段と強固になった。それが、長年にわたって有価証券の虚偽記載が行われ、会社資金が不正に使用される原因となった可能性がある。

アライアンスの今後と
世界の自動車業界への波紋
 今後、日産とルノーの関係は変化する可能性がある。ルノー・日産・三菱自動車の3社アライアンス体制の背景には、フランス政府の利害が深く、密接に絡んでいることは重要だ。

“産業政策のプロ”との評価を受けてきたマクロン大統領が産業政策を推進するために、国内自動車メーカーの競争力向上は非常に重要である。

 自動車のような組立型の産業は雇用増加にもってこいだ。マクロン大統領としては、独フォルクスワーゲンなどを上回るフランスの自動車企業を生み出し、今後のEV開発競争などのイニシアチブを取りたいだろう。日産のリーフをはじめとする電気自動車の開発力は、どう考えても手放すわけにはいかない。

 そのためマクロン大統領は、ルノーと日産および三菱自動車の経営統合を重視してきた。ルノー・グループがゴーン容疑者のCEO任期を2022年まで延長した理由は、3社の経営統合を進めるためだろう。ルノーが逮捕されたゴーンCEOの解任を見送った理由は、同氏以外に3社の経営統合を進める手腕を持つ人材が見当たらないからだと考えられる。

 今後、フランス政府はルノーに3社の経営統合の実現を求めるだろう。

 それは、世界の自動車業界の再編につながる可能性がある。日産が日本企業としての再出発を目指すのであれば、ルノーとの関係は悪化する可能性が高い。その場合、他の自動車メーカーなどが日産に提携などを申し出ることが考えられる。

 そうなると、EV技術などの取り込みや生産の効率化を目指して、アライアンスや買収を真剣に検討する企業は増える可能性がある。すでにIT先端企業はEV開発や自動運転テクノロジーの開発を進めている。今後の再編は自動車メーカーだけではなく、異業種を巻き込んだものに発展することも考えられる。

 ゴーン容疑者の逮捕を受け、3社アライアンス体制の先行き不透明感は高まった。フランス政府の利害や他の自動車メーカーなどの利害が複雑に絡み、今後の自動車業界はより大きな変化に直面する可能性も高まったと考える。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
https://diamond.jp/articles/-/186625

 
トップニュース2018年11月27日 / 12:14 / 8時間前更新
焦点:ゴーン会長解任劇で注目、「敏腕」西川日産社長の横顔
Norihiko Shirouzu and Maki Shiraki
3 分で読む

[東京 22日 ロイター] - 日産自動車(7201.T)の西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)は、長年「指導役」であったカルロス・ゴーン容疑者を会長職から解任したことで、大義のためなら周りを敵に回すことも辞さないタフなリーダーとしてその名を轟かせることとなった。

自動車業界で最も著名なリーダーの1人であるゴーン容疑者が金融商品取引法違反で19日に逮捕されたことを受け、日産は22日の臨時取締役会で同容疑者の会長職と代表取締役の解任を決めた。

日産関係者は、西川社長について、頭が切れ、厳しく、結果重視だと語る。

今回の逮捕はゴーン容疑者や仏ルノー(RENA.PA)とのアライアンス(提携)に不満を抱く取締役会メンバーによるクーデターだとの疑惑や、失われた評判、司法上や規制上の問題に対処する上で、西川社長はこうした資質を総動員する必要があるだろう。

ある日産幹部は同社長について、とても強くてアグレッシブだと語り、もし業績が彼が求める水準を下回った場合、会議の場で担当者に恥をかかせることもいとわないと付け加えた。

社内では、西川氏のことを慕う人がいる一方、嫌っている人もおり、同氏が非常に厳格であることが嫌われている理由だとこの幹部は語った。

日産は、ゴーン容疑者が会社の資金を私的流用し、報酬を過少申告していたと主張している。東京地検によると、5年間で得た報酬99億9800万円の半分程度しか申告しなかった疑いが持たれている。

ロイターは、東京地検によって勾留されているゴーン容疑者、あるいは同容疑者の弁護士に接触することができなかった。

西川氏は長年ゴーン容疑者の後任として育てられ、昨年社長に就任したばかりだ。

また別の日産幹部は、西川社長が物事を徹底的に追及する性格だと説明。こうした性格が、社内でゴーン容疑者に関する疑惑が浮上した際に取った対応にも反映されたことは確かだろうと語る。

西川社長は非常に規則を重んじる人であり、私用と社用の電話2つを持っているが、家族にかけるときは絶対に社用電話は使わないとこの幹部は言う。

また、日産が国内で無資格者に完成検査を行わせていたことが昨年発覚してから、西川社長は一段と慎重になり、コンプライアンス上の問題は見過ごすことはできないと考えるようになっていたと同幹部は話す。

日産はこの幹部による西川氏の評価についてコメントするのを控えた。また、西川社長からコメントを得ることはできなかった。

 11月22日、日産自動車の西川廣人社長兼最高経営責任者(写真)は、長年「指導役」であったカルロス・ゴーン容疑者を会長職から解任したことで、大義のためなら周りを敵に回すことも辞さないタフなリーダーとしてその名を轟かせることとなった。横浜市の本社で19日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
<今や反ゴーン派>

普段は早口な西川社長だが、ゴーン容疑者逮捕を受けて19日夜に開いた記者会見では、弁護士や他の幹部を同席させず、急がず冷静な態度で90分近く質問に答えた。その姿にはソーシャルメディアで称賛の声が上がった。

西川社長が頭を下げて謝罪しなかったこともかなり効果的だったと、日産の元幹部は指摘。まるで自身は個人的に悪くないと示しているかのようだったとこの元幹部は付け加えた。

西川社長はまた、「ゴーン統治の負の側面」を率直に認め、前会長に権力が集中し過ぎていたと説明。ゴーン容疑者は金銭的不正に加え、必要な意見を求めることなしに独断で物事を決定していた時期もあったと明らかにした。

一方、20日開かれた幹部会議では、西川社長はいつもの冷静さを欠いていたと、同会議に出席した2人が明かした。そのうち1人は、社長の目は潤んでいるように見えたと述べ、もう1人は声を震わせる場面もあったと語った。

Nissan Motor Co Ltd
975.7
7201.TTOKYO STOCK EXCHANGE
-2.70(-0.28%)
7201.TRENA.PA7211.T
日産とルノーの他の社員同様、西川氏のキャリアもゴーン容疑者の影に隠れてきた。カリスマ的で、「コストカッター」と呼ばれた同容疑者は、日産の5工場を閉鎖して2万1000人をリストラすることにより、負債に苦しむ同社を再生させ、高い評価を得て日本で新境地を開いた。当時、このような大なたを振るえるのは外国人だけだと広く思われていた。

しかし今度は、西川社長が未知の領域に踏み出す番である。

日産、ルノー、三菱自動車工業(7211.T)の3社連合をうまく率いていくことができるのはゴーン容疑者だけだと、多くの専門家はみていた。

自動車産業コンサルティング会社カノラマのマネジングディレクター、宮尾健氏は、3社連合を率いることは西川社長にとって非常に困難であり、日産の株式43.4%を保有する筆頭株主のルノーが支持するか定かではないとの見方を示した。

西川社長はルノーの取締役を10年務めているが、フランス政府と交渉したり、ルノーを率いたり、仏タイヤメーカー、ミシュランの上級幹部を務めたりといったゴーン容疑者のような多岐にわたる経験はない。

だが、西川氏はやり手の交渉人であり、それでなければゴーン容疑者は同氏を社長に選ばなかっただろうと宮尾氏は指摘する。

ゴーン容疑者より数カ月年上で現在65歳の西川氏は40年以上前、東京大学から日産に入社。目立つことは嫌いといわれ、既婚者であるという以外、私生活はあまり知られていない。

キャリアの大半を調達とサプライチェーンの管理に費やし、ゴーン容疑者がコスト削減のため部品供給網を解体するのに貢献した。

2013─16年はチーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)として、原材料調達費や調整費、企画開発費の節約により、製造費を削減する仕事を任された。西川氏はまた、三菱自動車との資本業務提携交渉でも大きな役割を果たした。

西川氏は数字が全てで、結果を出さない人には厳しいが、自分にも厳しいと、前出の日産元幹部は言う。優しさに欠けるという人がいるかもしれないと、この元幹部は付け加えた。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
https://jp.reuters.com/article/nissan-saikawa-idJPKCN1NW07Y

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/632.html

[戦争b22] ウクライナ艦船拿捕プーチン氏の危険な領土ゲーム 地上部隊攻撃に備え 米政府ロシア非難 いずも空母化F35B導入、防衛大綱
コラム2018年11月27日 / 15:54 / 4時間前更新

ウクライナ艦船拿捕プーチン氏の危険な領土ゲーム

Peter Apps
4 分で読む

[26日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が今年5月、アゾフ海でクリミア半島とロシア本土を結ぶ橋を開通させた際、ロシア当局者は、ロシアが2014年にウクライナから奪った係争地である同半島を、ロシアの交通インフラに一体化させるのが目的だ、と説明した。

だが、巨大な橋の下を通ってケルチ海峡を通過する船を制限することで、ロシア政府は、アゾフ海というスイス国土とほぼ同じ面積の海域への海上アクセスを規制する力も手にすることになった。

ロシア政府は25日、貨物船を使ってアゾフ海への侵入をブロックし、この航路の「扉」に鍵をかけた。戦闘機や戦闘ヘリが上空を飛びかう中、ロシア国境巡視船がウクライナの艦船3隻に砲撃し、拿捕した。

乗組員数人が負傷したという。ロシア連邦保安局(FSB)は26日、ウクライナ艦船が違法にロシア領海に侵入したことを受けて拿捕したと表明。ウクライナ側は、これを否定している。

ロシアはその後、再びこの海峡を開放した。だが今回の衝突で、横紙破りで非軍事的、かつ時に致命傷は与えないテクニックを駆使して地政学の地図を塗り替えようとするロシアの意欲が増大する一方であることが改めて示された。

これは、終わりの見えない国境紛争を続けているウクライナなどのプーチン氏に対抗する国々だけでなく、西側諸国や北大西洋条約機構(NATO)も悩まされている戦略だ。

ウクライナとその西側同盟国は、対応を定めなければならない時期にきている。さもないと、ロシア側に「弱腰」とみなされ、さらなる侵略行為を招くことになると指摘する人は多い。だが、コントロールできない衝突を求める国はない。実弾や艦船、航空機や人間が巻き込まれてはいるが、実態はチェスのゲームに近いのだ。

今回の件は、軍事力と経済力、そして巨大な建設やインフラ計画が、サイバー兵器やプロパガンダと並んで使われるという、国際舞台でで増えつつある戦略の傾向を示している。このような「衝突」は、南シナ海のように流血を伴わないこともあれば、ウクライナ東部ドンバスや、シリアやイエメンで行われている中東の代理戦争のように残虐なものもある。

通商から人権に至るさまざまな分野における緊張の高まりを受け、このような対立は確実に増えているようだ。

パプアニューギニアで今月行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は、米中の対立が原因で、首脳宣言を採択できなかった。 アゾフ海の危機は、今週アルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)の首脳会議にも影を落とすだろう。プーチン大統領とトランプ米大統領は共に同会議に出席する。

巨大な埋め立てや建設事業を盾に、中国政府が領有権の主張を強め、軍事基地を建設してきた南シナ海と同様に、アゾフ海における対立も、衆人環視の中で時間をかけてここまで拡大したものだ。

橋の建設は、ロシアがウクライナからクリミアの支配を奪った翌年の2015年に始まった。

プーチン氏は後日になって、クリミア併合にロシア軍が関与したことを認めたが、ウクライナの他地域に対するロシア政府の軍事関与については、証拠があるにもかかわらず否定し続けている。

ロシア政府は、アゾフ海での出来事についても同様に誠実さに欠ける対応を取っているようだ。ロシアの外務省高官は先週、西側が新たな制裁を正当化するために意図的に緊張をあおっていると批判した。クリミア併合と同じく、この海洋版の「領土分捕り」は、国際法違反にあたる。アゾフ海は、ロシアとウクライナの共同管理下にあると法的に判断されていた。

だが現実には、今やロシアの支配下となってしまった。アゾフ海に面したウクライナ領唯一の主要港であるマリウポリは今、事実上の封鎖状態に置かれている。25日の事件の前から、ロシアによる輸送妨害で地元経済は大きな打撃を受けていた。マリウポリの住民は今、より悪い事態を恐れなければならないかもしれない。2014年には、マリウポリから数キロの地点まで戦闘が迫り、その後も散発的な戦闘が東のドンバスやルガンスク周辺で続いて1万人近くが死亡した。

今週末の衝突発生以前に、ウクライナ軍幹部は、この地域が「第2のクリミア」になる事態を防ぐため、クリスマスまでにアゾフ海に海軍基地を開設すると吹聴していた。

だがそのような戦術が、ロシア側から確実に大規模な反撃を招くことが明らかになった。ウクライナ側は他の選択肢を検討しているようだ。ロシアのメディアは25日夜、ドンバス周辺の戦地でウクライナ軍の砲撃が増加したと報じている。

ロシアによるクリミア併合後、西側からの軍事支援が増加したとはいえ、ウクライナはNATO加盟国ではない。したがって、西側諸国に行動を起こす義務はない。

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しかし、欧州諸国や米国の安全保障関係者の多くは、直接的な支援を拡大したがっている。訓練の提供や、追加兵器支援が考えられる。米国や他のNATO加盟国の軍艦が、黒海航行を増やすことも一案だ。黒海沖での小競り合いは増加している。英国の軍艦上空をロシア機17機が威嚇するように飛行する事件が今年起きている。

西側がこのような対応を取れば、現在すでに回避不能とみられる追加制裁が科された場合と同様に、ロシアはさらに激怒するだろうが、それでもロシア政府による行為を罰することができる。また、東欧の防衛強化というNATOの取り組みをてこ入れする効果もあるだろう。

25日の衝突に対する最も重要な反応は、「軍事防衛に対する正当な対価」を払っていない、と欧州を批判したトランプ米大統領のツイートだったのではないか。

これらの状況から、G20首脳会議の雰囲気は暗くなるばかりだ。欧州各国の指導者は、反トランプでまとまりつつあるが、今回の件でさらに腹を立てた状態で乗り込んでくるだろう。米大統領と中国の習近平・国家主席の首脳会談が今回の最重要イベントになると考えられていたが、今やプーチン氏が参加する会談なら何でも大きな注目を集めることになりそうだ。

アゾフ海での衝突は、今後さらに流血の事態を引き起こすかもしれないが、その後の展開は恐らくコントロールできる範囲のものになるだろう。しかし、外交を捨ててリスクの大きい軍事的な賭けを選ぶ国が増えれば、世界的な破滅が起きる確率も高まるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。
https://jp.reuters.com/article/apps-ukraine-idJPKCN1NW0H8


 


 
ロシア地上部隊の攻撃に備え…ウクライナ戒厳令
2018年11月27日 19時43分
ウクライナ議会で発言するポロシェンコ大統領(26日、ロイター)
ウクライナ議会で発言するポロシェンコ大統領(26日、ロイター)
 【モスクワ=工藤武人、ワシントン=大木聖馬】インターファクス通信によると、ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島周辺の黒海海域で、ウクライナ海軍の艦艇3隻がロシア警備艇に拿捕だほされたことを受け、ウクライナ議会は26日、戒厳令の発令を賛成多数で承認した。適用期間は30日間で、ロシアに隣接する地域が対象となる。

 対象地域では、政府の権限が大幅に強化され、報道機関や政党などの活動が制限される見通しだ。ただ、ポロシェンコ大統領は議会で、戒厳令に関し「ロシアによる地上部隊の攻撃に備えるものだ。(地域住民の)自由や権利は制限されない」と強調した。

 ポロシェンコ氏は当初、戒厳令をウクライナ全土に60日間導入する大統領令に署名したが、方針を変更した。市民生活への影響を考慮したとみられる。

(ここまで346文字 / 残り203文字)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20181127-OYT1T50064.html

 

 
米政府、ウクライナ艦艇銃撃でロシアを非難 電話会談で
2018.11.27 19:38国際欧州・ロシア
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26日、ウクライナ議会で戒厳令について説明するポロシェンコ大統領(ロイター)
26日、ウクライナ議会で戒厳令について説明するポロシェンコ大統領(ロイター)
 【ワシントン=加納宏幸】ウクライナ南部クリミア半島とロシア領を隔てるケルチ海峡で、ロシアがウクライナ艦艇に発砲し、拿捕(だほ)した問題は、トランプ米大統領に西側指導者としての存在感を問うている。30日からアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議時に予定されているロシアのプーチン大統領との首脳会談が一つの試金石となる。

 トランプ氏は26日、銃撃について、「好ましいことではない。解決することが望ましい」と記者団に語ったが、ロシアを名指しで非難することは控えた。

 一方、ポンペオ国務長官は26日発表した声明で、ロシアによる2014年のクリミア半島併合を認めないと重ねて表明し、ウクライナの主権を尊重するよう要求。「攻撃的なロシアの行動」は国際法に違反しているとして非難した。

 ポンペオ氏はウクライナのポロシェンコ大統領との電話会談でも、領海に及ぶ同国の主権への「強い支持」を表明した。ポロシェンコ氏は米国の支持を評価し、西側諸国がロシアの「侵略」に対して結束する重要性を強調した。

 米政府はクリミア併合やウクライナ東部紛争への介入で対露制裁を引き続き強化している。だが、米露関係の改善を模索したトランプ氏はクリミア併合を容認するような発言をしたこともあり、アルゼンチンでの首脳会談では7月のフィンランド・ヘルシンキ会談と同様、プーチン氏に融和的な姿勢を取るのではないかという警戒感が米議会で強まっている。

院軍事委員会のインホフ委員長(共和)は26日、ロシアへの追加制裁やウクライナへの軍事支援強化を検討するよう政府側に要求。ロシアの行動は権威主義体制を取る中露が米国の決意を試していることの表れだと指摘し、トランプ政権に強い対応を促した。

 上院外交委員会の野党・民主党トップ、メネンデス議員も声明で「ヘルシンキ会談でトランプ氏が見せたような弱い行動をする余裕は米国にはない」とし、プーチン氏との会談前にケルチ海峡に入る黒海での北大西洋条約機構(NATO)の展開強化やウクライナへの軍事支援強化に取り組むよう求めた。
https://www.sankei.com/world/news/181127/wor1811270031-n2.html

 

ワールド2018年11月27日 / 17:30 / 3時間前更新
「いずも」空母化やF35B導入、防衛大綱に明記へ=関係者
2 分で読む

[東京 27日 ロイター] - 政府は12月中にまとめる新たな「防衛計画の大綱」に、海上自衛隊の「いずも」型護衛艦の事実上の空母化や搭載する最新鋭のステルス戦闘機「F35B」の導入を明記する方向だ。政府関係者が明らかにした。

与党内では、航空自衛隊が保有するF15戦闘機の後継として次世代ステルス戦闘機F35のA・B型を計100機、計1兆円程度購入する案も浮上。財政支出膨張に歯止めをかけたい財務省などとの綱引きが激しくなりそうだ。

岩屋毅防衛相は27日の閣議後会見で、いずも型護衛艦について「せっかくある装備なので、できるだけ多用途に使っていくことが望ましい」と表明。F35Bの導入についても「短い滑走路で離陸できる性能を持った航空機だ。航空機体系全体をどうするかの一つとして検討している」と述べた。

自民党が5月に示した防衛大綱に向けた提言では、いずも型護衛艦を空母化改修する「多用途運用母艦」とF35Bの導入が盛り込まれ、大綱および同時に策定される、今後5年間に自衛隊がそろえる装備品や費用を示す中期防衛力整備計画(中期防)での焦点となっている。

従来の政府見解では、遠方に攻撃型の戦力を投入できる空母の保有は日本が掲げる専守防衛との整合性を問われる可能性があるとされていたが、今回の防衛大綱の作成時に論点を整理する。

<次世代ステルス機100機・1兆円購入案、与党内で浮上>

自衛隊は現在200機保有するF15の半分を改修する予定だが、改修に適さない残り100機の取り扱いも焦点となっている。

与党議員の中では、中国、ロシアの航空戦力が拡充される中で「F35のA型であれば60機程度でF15・100機相当の防空能力がある」として、A型を60機、垂直着陸が可能で空母搭載に対応したB型を40機の計100機の購入が望ましいと主張する声がある。

政府が100機購入を決定した場合、来年1月から始まる日米通商交渉での有力な交渉カードになる可能性があるとの声が政府・与党内にはある。

トランプ大統領は今年9月の日米首脳会談直後に「私が『巨額の貿易赤字は嫌だ』と安倍首相に言うと、日本がすごい量の防衛装備品を買ってくれることになった」と表明。日本の防衛装備品購入に期待している。

トランプ政権は年間7兆円の対日貿易赤字削減を繰り返し主張しており、日本に対して「(赤字削減には)自動車輸出削減や自動車の米国生産拡大、米国からの輸入拡大の全てが必要」(ハガティ駐日米大使)と明言している。

竹本能文 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/izumo-f35b-idJPKCN1NW0PL
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/432.html

[経世済民129] 日本経済の「命綱」米中貿易戦争に耐えられるか 超長期債上昇 優原油大幅安、背景にアジア資金引揚 日本株3日続伸景気敏感高
外為フォーラムコラム2018年11月27日 / 14:59 / 5時間前更新

日本経済の「命綱」米中貿易戦争に耐えられるか

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
3 分で読む

[東京 27日] - 7─9月期の国内総生産(一次速報、GDP)は前期比マイナス0.3%と、今年2度目のマイナス成長となった。2017年の成長率が高かったこともあり、18年は7─9月期時点で0.56%のプラス幅しか見込めない。

10─12月期、さらに19年1─3月期の景気を展望すると、わずか数カ月の間に山ほどイベントが集中しており、見通しが大きくかく乱されそうだ。最も注目されるのは、今週末に迫ったアルゼンチンのブエノスアイレスで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合。そこで米中首脳会談が行われる見通しだ。貿易問題で何らかの合意が行われるという観測もあるが、トランプ大統領は強硬姿勢を強めており、楽観は禁物だろう。

12月は米連邦準備理事会(FRB)の利上げが予想されるほか、米国でクリスマス商戦が本格化する。株価の下落が、好調な個人消費を脅かす可能性がある。年末には環太平洋連携協定(TPP)がいよいよ発効する。これで貿易自由化のメリットが意識されれば、日本は年明け1月から始まる日米物品貿易協定(TAG)交渉のけん制材料として利用できるかもしれない。

19年に入ると、日本とEU(欧州連合)の経済連携協定(EPA)の発効や、英国のEU離脱(ブレグジット)など欧州関連のイベントがある。ブレグジットは、3月29日の離脱日までに英議会の調整など混乱が予想される。

<日本が耐えられる円高水準は>

こうした数々のイベントは新しい展開を生み、人々を過度に強気にさせたり、逆に弱気にさせたりするだろう。

その中で、日本経済にとっては円安基調と強い米経済が命綱となりそうだ。筆者は19年10月の消費増税が景気の腰折れにつながらないとみているが、その根拠は外需が総崩れにならず、設備投資と企業収益の増加が内需を支えると予想しているからだ。

ドル円は今年6月以降、109─115円の円安レンジで安定的に推移している。これは同月の米朝首脳会談で、北朝鮮リスクがうまく封じられたからだと筆者はみている。いずれ開催されるであろう2回目の首脳会談は、初回ほど注目度が高くないかもしれないが、トランプ米大統領が北朝鮮の非核化プロセスを前進させようとして、新しいディールを持ち出してくる可能性がある。もしかすると、いったん決裂というショックに見舞われるリスクもあると警戒している。

企業収益は、実際の為替レートが想定よりも円安で着地すると上積みされる。もし北朝鮮ショックが起きればドル円が下落し、企業収益を圧迫する恐れがある。

筆者は、日本経済が十分に耐えられる為替の目安を1ドル=107.40円とみている。

<トランプ減税の賞味期限>

もう1つの命綱である米経済に水を差す可能性があるとすれば、中国との貿易戦争だろう。米国は9月24日、2000億ドル(22兆円)相当の中国からの輸入品に10%の追加関税を課した。その悪影響が色濃く表われないかと心配された10月の米雇用統計は、依然として強い結果だった。米供給管理協会(ISM)が発表する製造業景気指数も高水準が続いている。

だからといって、米中貿易戦争を懸念する必要はないと判断するのは早計だろう。米国は19年1月に対中関税率を25%に引き上げる。トランプ米大統領は11月26日、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、関税引き上げの見送りを求める中国の要請を受け入れる可能性は「非常に低い」と述べた。タイムラグを伴って、米国の輸出入が減っていく可能性は否定できない。

そこで肝要なのは、米経済の成長ペースが貿易戦争の悪影響を完全に吸収できるかどうかである。7─9月期の成長率は年率換算で前期比3.5%(速報値)と極めて強かった。10─12月期、19年1─3月期も3%台の成長ペースが維持されるのであれば、貿易戦争のインパクトは相対的に小さかったと総括できるだろう。

筆者はそう単純ではないと思いつつ、米経済の強さは最終的に持ちこたえるという見方に同意したい。感謝祭前から本格化した年末商戦は好調で、アドビ・アナリティクスによると、ネット通販の売上高は過去最高の78億ドル(約8800億円)に達する見通しだ。少なくとも19年前半まではトランプ減税の効果もあり、3%台の成長ペースを維持できるとみている。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト (写真は筆者提供)
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hideo-kumano-idJPKCN1NW0DH


 


 
超長期債が上昇、40年債入札順調で買い優勢ー株高やオペ減額観測重し
船曳三郎
2018年11月27日 7:53 JST 更新日時 2018年11月27日 16:14 JST
大きな構図は世界経済の減速、金利低下基調続くーパインブリッジ
40年入札はショートカバー需要で順調ーSMBC日興
債券市場では超長期債相場が上昇。この日の40年債入札が順調な結果となり、40年ゾーンを中心に買いが入った。半面、株式相場の堅調推移や日本銀行の国債買い入れオペ減額への警戒感が先物相場の重しとなった。

新発40年物11回債利回りは0.96%と、日本相互証券の前日午後3時の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)低下、9月11日以来の低水準
新発20年債利回り0.595%、新発30年債利回り0.81%と、ともに取引ベースで3カ月ぶり低水準
長期国債先物12月物は横ばいの151円13銭で終了。午後に151円08銭まで下落した後、引けにかけて持ち直す
市場関係者の見方
パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長

債券市場を取り巻くファンダメンタルズの大きな構図は世界経済の減速、30年債や40年債を中心に金利低下基調が続く
オペ減額を意識して超長期債を買っていなかった向きが多く、日銀が減額した瞬間は売られるが、その後はじわじわと買いが入って金利低下へ
  
SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジスト

40年入札はこれまでに投資家の買いが入っていた故のショートカバー需要で順調。カバーを終えれば週末のイベントに向けて様子見
リスクオフ的な環境や期待インフレ低下から金利低下リスクがあるが、米中首脳会談や日銀オペ運営方針も見極める姿勢。20年債利回り0.6%割れに抵抗感

背景
40年債入札
最高落札利回りは0.940%と、市場予想の0.945%を下回る強い結果
応札倍率は3.85倍と、前回の3.24倍から上昇
パインブリッジの松川氏
応札倍率が3倍台後半になるなど思ったより強い結果。投資家の買いを受けて業者のポジションがショートだったのが大きかった
日本債券:40年利付国債の過去の入札結果 (表)
27日の日経平均株価は0.6%高の2万1952円40銭で終了。一時は約2週間ぶりに2万2000円台に乗せる場面
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
-0.145% -0.105% 0.090% 0.595% 0.810% 0.960%
前日比 横ばい +0.5bp +0.5bp 横ばい 横ばい -0.5bp
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PISIG36JTSES01?srnd=cojp-v2


 


トップニュース
2018年11月27日 / 17:25 / 3時間前更新 アングル:

原油大幅安、背景にアジア資産からの資金引き揚げ
3 分で読む


[シンガポール 26日 ロイター] - 原油価格は過去数週間、供給過剰の兆しが出たのをきっかけに急落した。しかしより大きな構図を見ると、原油だけでなくアジアの通貨や株式など、リスクの高い新興国資産全体から資金が流出している。
中国、インド、インドネシアなどの景気拡大を背景に、こうした資産は過去数年間、順調に上昇していた。
しかしアジア諸国の債務増大、米財政政策の引き締め、米中貿易摩擦などを嫌って投資家は原油やアジア株から資金を引き揚げ、ドルなどの安全資産にシフトしている。
この一環として、原油先物価格LCoc1CLc1は10月初めから3分の1程度下落した。

原油先物からは数十億ドルの資金が流出。ANZバンクの26日のノートによると、原油先物の買い越しが「3年ぶりの低水準まで削減されたと報告されている」
しかもトレーダーは、さらなる原油安に備えているようだ。取引所のデータによると、米原油先物の期近物の売りポジションは、7月には1万4100ロット(1ロットは1000バレル)と過去最低に近かったが、11月半ばには約11万ロットに増えた。これは2017年10月以来で最大だ。

その上、北海ブレント油先物2月きりのオプション取引では、1バレル=55ドルおよび50ドルのプット(売る権利)が急増。これらプットの価格も急上昇している。

こうした悲観ムードはアジア市場全体で観察される。
モルガン・スタンレーは25日のノートで「2018年はアジア(特に中国)の金融環境が引き締まったことにより、10年にわたるアジアの強気相場が明らかに終わった」とし、「まだサイクルの底には達していない」との見方を示した。
JPモルガンも23日、「米国および世界株の下落により、リスクバランスが明らかに下方向にシフトした」と指摘した。株式と足並みをそろえ、原油や鉄鉱石、金属などコモディティ価格が下がっているのは心配だという。

金融市場だけでなく、国際貿易にも減速の兆しが生じている。コンテナ船CHT-IDX-HARPXとばら積み貨物船.BADIの運賃はそれぞれ、今年の高値から26.4%と38.35%下落した。
シンガポールの海運商社イーストポートは26日、「米景気の減速がアジアからの輸出需要を衰えさせ、貨物輸送を圧迫する可能性がある」との見方を示した。

https://jp.reuters.com/article/oil-asia-idJPKCN1NW0PB


 

日本株は3日続伸、米年末商戦期待や為替安定−輸出など景気敏感高い
長谷川敏郎
2018年11月27日 7:47 JST 更新日時 2018年11月27日 15:48 JST
米サイバーマンデーのオンライン販売額、79億ドルに達する公算
円は1ドル=113円台半ばに弱含み、指数の3日続伸は約2カ月ぶり

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
27日の東京株式相場は約2カ月ぶりに3日続伸した。米国の年末商戦への期待が強まったことや為替相場の円安定からソニーなど電機や自動車株が買われた。海運や非鉄金属など景気敏感株、保険や銀行など金融株も高い。

TOPIXの終値は前日比11.96ポイント(0.7%)高の1644.16
日経平均株価は同140円40銭(0.6%)高の2万1952円40銭
  26日の「サイバーマンデー」のオンラインショッピングは79億ドルに達する見通しで、米国での1日のネット通販の金額として過去最高になる。アドビが米東部時間午後7時(日本時間27日午前9時)時点で前年比19.7%増などと電子メールで資料を配布した。きょうのドル・円相場は1ドル=113円台半ばと、前日の日本株終値時点の113円20銭からやや円安に振れた。

  大和住銀投信投資顧問の門司総一郎シニア・エコノミストは「トランプ米大統領の発言などから、貿易戦争のピークは10月のペンス副大統領の演説あたりだったのではないか。景気への影響も事前予想ほど大きくなっていない」と指摘。米国の年末商戦は「予想通り良好で、景気が悪くなっていないことのエビデンスになる」と付け加えた。


  午前に日経平均株価が前日終値に接近する場面があったが、米S&P500種Eミニ先物が下げ渋るとともに値を上げ、10月2日以来の3日続伸で終了した。「投機筋が下にトレンドを出そうとしても追随する向きが少なくなっている。需給面からも売りはいったん出尽くした感がある」と、大和住銀投信の門司氏は評価する。

  みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は「きのうの米国株が10月下旬の安値に対する二番底を形成する動きだったことと、為替の円安がプラスに働いている」とする一方で、「日米株は米中貿易問題への政策催促とバリュエーションのせめぎ合いの状況にある」と指摘した。20カ国・地域(G20)首脳会議に際した米中首脳会談後も貿易問題に関する不透明感は払しょくできず、そうしたせめぎ合いの均衡が大きく崩れるのは、日程面などから「来年1月ごろ」の可能性があると言う。

東証33業種では保険、鉱業、海運、情報・通信、銀行、非鉄金属、輸送用機器、電機が上昇、金融は米長期金利の上昇が追い風
下落は医薬品や繊維製品
東証1部売買代金は2兆3149億円
値上がり銘柄数は1509、値下がりは526
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PITNYX6S972901?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/633.html

[経世済民129] ビリオネアは下降局面に備え資金を準備−株売らずに融資で調達 最も正確に株価予測した男、来年も弱気 BTC急落で採掘業者も
ビリオネアは下降局面に備え資金を準備−株売らずに融資で調達
Sonali Basak、Hannah Levitt
2018年11月27日 14:22 JST
資産家はキャピタルコールに備え与信枠を準備したいとスタイナー氏
ウェルズF傘下のアボットは430億ドル規模のビジネスに成長
10億ドル(約1135億円)以上の純資産を持つビリオネアや100万ドル以上の純資産を持つミリオネアの資産家らは、景気下降局面で投資資産を売却しなくて済むよう即座に入手できる資金を準備するため、借り入れをアレンジしている。米銀ウェルズ・ファーゴ傘下で超富裕層に対応するアボット・ダウニングのジェームズ・スタイナー社長が指摘した。

  スタイナー社長はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「市場の下降局面において非公開投資でキャピタルコール(払い込み要求)を受ける場合に備え、ライン(与信枠)を準備しておきたいと彼らは常に考えている。公開市場で株式を売却するのではなく、そうしたラインを活用し、キャピタルコールに応じたい意向だ」と語った。

  スタイナー氏は2012年に発足したアボット・ダウニングを430億ドル規模のビジネスに成長させた。同社の広報担当者によれば、貸し付けは過去1年で5%増加した。

  ウェルズ・ファーゴのウェルス投資マネジメント責任者を務めるジョナサン・ワイス氏は、同行のプライベートバンクとアボット・ダウニングを1人の統括責任者の下で統合することを計画していると今月明らかにした。資産額250万ドル以上の顧客に対応するプライベートバンクと、アボット・ダウニングは、統合後も別々のブランドとチームの下で存続する見通し。

アボット・ダウニングのジェームズ・スタイナー社長

(出所:Bloomberg)
原題:Billionaires Leveraging Up in Case of Downturn, Banker Says (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-27/PIU4ZW6S972901?srnd=cojp-v2


 

最も正確に株価予測した男、来年も弱気−収益不況の確率50%超とみる
Lu Wang
2018年11月27日 11:58 JST
企業利益の悪化に伴う収益不況リスクをウィルソン氏は警告
米連邦準備制度が来年6月に利上げを休止すると同氏は予想
ウォール街有数の株式弱気派として知られる米銀モルガン・スタンレーの米国株チーフストラテジスト、マイク・ウィルソン氏は、今年について予測の正しさが既に立証されたが、2019年についても同じような展望を持っている。


マイク・ウィルソン氏写真家:Christopher Goodney / Bloomberg
  ウィルソン氏は、S&P500種株価指数が年末時点で現在の水準を約3%上回る2750になると予想し、来年末も同じ水準で取引を終えるとみている。今年も残すところ5週間となったが、同氏の見通しは全ての予測の中で群を抜いて現状に最も近い。

  同氏は今年、金利が上昇し、グローバル経済が同時成長といえない状況となる中で、金融資産が一連の打撃を被る「弱気相場の進行」をはっきり見通した。実際のところ、新興国市場の混乱に続き米株がハイテク主導で値崩れし、クレジット市場にも売りが波及しており、まさに予想通りの展開となった。

  減税の好影響が徐々に失われ、グローバル経済の成長が鈍化するのに伴い、S&P500種構成企業の増益率が今年の23%から19年には4.3%に鈍化するという見通しが、ウィルソン氏の慎重な見方を支えている。S&P500種構成企業の1株利益の伸びが2四半期連続で前年同期比マイナスになる確率が50%を超えると同氏は考えている。

  ウィルソン氏は、米連邦準備制度が来年6月に利上げを休止し、それが企業利益悪化の状況緩和に役立つとみており、S&P500種構成企業の株価収益率(PER)が昨年のピークから18%低下し、10月時点で15倍程度となったことも株式相場を支えるとしている。


原題:Analyst Who Nailed 2018 Has Same S&P 500 Forecast for 2019 (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-27/PITXJJ6KLVRJ01?srnd=cojp-v2


 

ビットコイン急落で採掘業者も打撃−損失拡大で閉鎖迫られる恐れ
Eric Lam
2018年11月27日 0:27 JST
ビットコインの急落は採掘業者にも大きな打撃を与えており、一部は白旗を揚げつつあるようだ。

  ブロックチェーン・ドット・コムによれば、ビットコインの採掘(マイニング)に利用されるコンピューターの計算力を測る指標のハッシュレートは、過去最高だった8月末から11月24日までに約24%低下。採掘業者による他の仮想通貨への乗り換えが影響している可能性もあるが、JPモルガン・チェースはこの低下について、ビットコインの価格急落を受けて一部採掘業者は損失が拡大しつつあると指摘する。

Hash it Out
Falling hash rate shows miners shuttering as crypto prices plunge: JPMorgan


Source: Blockchain.com

Note: A terahash is 1 trillion hashes, or values generated per second by miners to solve a complex "proof of work" problem and earn Bitcoin.

  ニコラオス・パニギリツオグル氏らJPモルガンのストラテジストは23日付のリポートで、ハッシュレートの低下は「一部の採掘業者で採算が取れなくなる水準にまで価格が下げたことを示唆している」と指摘した。

  価格が採掘業者のコスト(電気代やマイニングリグの効率性など)と照らした損益分岐点を下回り続けた場合、業者は事業の閉鎖を迫られる可能性がある。

  ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズの16日付リポートによれば、仮想通貨マイニング用半導体の設計などを手掛けるビットメインのマイニングリグ「アントマイナーS9」を利用した1ビットコインの採掘の損益分岐点は7000ドルと推定される。ビットコインはニューヨーク時間26日午前5時35分時点で3912ドル。

原題:Battered Bitcoin Miners Seen Shutting Down as Losses Pile Up(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-26/PIT2N26JTSEQ01?srnd=cojp-v2


 

 


 

ナスダック:ビットコイン先物上場へ、急落でも関心続く公算−関係者
Ben Bain
2018年11月27日 18:00 JST
上場は2019年1−3月期になる見込みー関係者の1人
CMEとCBOEグローバル・マーケッツは昨年12月に上場
ナスダックは仮想通貨ビットコインの先物を上場する計画だ。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。ビットコインは過去1年に急落しているが、投資家の関心は続くとみている。

  関係者らによると、ナスダックは米商品先物取引委員会(CFTC)の懸念を払拭(ふっしょく)するための作業を進めている。ナスダックのビットコイン先物上場計画についてはブルームバーグが昨年報じていた。関係者の1人によれば、上場は2019年1−3月(第1四半期)になる見込み。

  CMEグループとCBOEグローバル・マーケッツは法順守を約束することで当局の認可を得て昨年12月にビットコイン先物を上場した。ビットコイン熱はピークにあり機関投資家の市場参入が期待されたが、先物の取引高はそれほど伸びず、現物価格も当時の2万ドル近くから現在は4000ドルを割り込んでいる。

原題:Nasdaq Is Said to Pursue Bitcoin Futures Despite Plunging Prices(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-27/PIU9QA6JTSED01


 

為替トレーダー、トランプ大統領と習近平主席の停戦に「安い」賭け
Katherine Greifeld
2018年11月27日 12:57 JST
人民元のコールオプションに6月以来の高い需要
何らかの合意に向かうという兆候だけでもポジティブーベクテル氏
為替トレーダーらはトランプ米大統領と習近平中国国家主席の週末の会談が貿易を巡る停戦につながる可能性を排除していない。

  1週間物ドル・人民元リスクリバーサルは26日に一時、6月以来の低水準となり、20カ国・地域(G20)首脳会議に際した米中首脳会談の後に元が上昇する可能性を市場が見込んでいることがうかがわれる。米中貿易摩擦の中で人民元は今年に入り約6%下落し、オンショア人民元は1ドル=7元に近づいている。

  ドル・人民元の1週間物インプライドボラティリティー(予想変動率)は今年のピークを大きく下回っており、人民元のコールオプション購入は停戦と元上昇に賭ける比較的安上がりな方法だとジェフリーズは指摘する。

  外為責任者のブラッド・ベクテル氏は「人民元のボラティリティーはそんなに高くないので、これは比較的安い賭けだ」とした上で、「両首脳が何らかの合意に向かうという兆候だけでも、当初はポジティブに受け止められるだろう」と話した。


原題:FX Traders Place Cheap Bet That Trump and Xi Could Reach a Truce(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-27/PIU0L46KLVR401?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/634.html

[経世済民129] カリスマ経営者の「ゴーン化」を防ぐ方法 ルノー日産連合の危機、元凶はマクロン大統領 ゴーン不正を会計から…脱税、特別背任
コラム2018年11月29日 / 16:12 / 10分前更新

カリスマ経営者の「ゴーン化」を防ぐ方法
Edward Hadas
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[ロンドン 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 1970年代のベストセラー「タイプA 性格と心臓病」という本は、心臓疾患は「攻撃的で、より短時間で多くのことを成し遂げようと常にもがいている」タイプの人に起こりやすいと主張した。

その後、心臓疾患との関連性については疑問が呈されるようになっているが、「タイプA 性格と魂」というタイトルだったならば、多くの経営者に当てはまるのではないか。多国籍企業の最高責任者だったカルロス・ゴーン容疑者は、その最たる例だ。

現在は日本の拘置所で勾留されている64歳のゴーン元日産自動車会長は、究極の「タイプA」行動パターンだ。

仏自動車大手ルノー(RENA.PA)、そして日産自動車(7201.T) という、経営危機に瀕した2つの巨大企業のトップとして、夜もよく眠らず、それぞれの企業や産業界のタブーをエネルギッシュに打ち破り、経営を立て直した。実業界を舞台にしたアクション映画のヒーローにでもふさわしい「コストキラー」というあだ名まで手中にした。

だがゴーン容疑者は、大胆すぎたようだ。

年20億円程度だった日産からの報酬を、過少申告した容疑が持たれている。日本メディアによると、レバノンやブラジルにおける自宅用不動産の購入に会社資金を流用したなど不適切な行為もあったという。

勾留中のゴーン容疑者は、自らの疑惑について公の場で発言していない。だが、仮にルールを何も破っていなかったとしても、今回の事件は、大きな成功を収め、世界的な名声を得て巨額の富を手にした経営者が、大半の人の目には異様に映る高額報酬よりも、さらに多い金額を自分は受け取って当然だと考えていたことを示した。

輝かしい経歴に、惨めな終止符が打たれたように見える。運命の突然の暗転は、ゴーン容疑者を悲劇のヒーローにしてしまうかもしれない。偉大な人物だが、その偉大さは、重大な人格の欠陥と切っても切り離せない。

成功を収めた経営者が、偉大さと大きな弱点を併せ持っていることは珍しくない。

米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)のジャック・ウェルチ元最高経営責任者(CEO)からハリウッドの大物プロデューサーだったハーベイ・ワインスタイン氏まで、それぞれの業界で最もダイナミックで大きな成功を収めた経営者のキャリアには、過剰報酬や性的威圧、無謀なリスクテークなどの汚点が付いて回っている。

この悲劇的な呪いは、職業上の強みと密接な関係にある。不安定な自信と物事を達成させる飽くなき欲望が、凝り固まった企業の通例を打破し、企業文化の再構築を成し遂げる原動力となる。

だがそれは時に、聖書で言うところの「肉の欲、目の欲、生活のおごり」、すなわち過度のセックスや金、権力への欲望を満たすための不適切な努力にもつながる。

言い換えれば、当初は会社組織で成功をもたらす「タイプA」の突出した部分は、昔ながらの個人的な「罪」へと簡単に脱線する。これは、会社組織だけの問題ではない。何千年もの間、権力は支配者を腐敗させてきた。しかし、神とほぼ同等とみられていた皇帝や王は、下々と違う行動をしても許されたため、罰を受けずに済むことが多かった。

企業のトップは、「長」と「執行役」の不安定なハイブリッドだ。王族のような報酬を受け取り、敬われるが、他の従業員と同じルールに従い、自制することも求められる。「タイプA」の性格は、「長」としての職務の助けにはなるが、善行とは相いれない部分がある。

企業には、ゴーン容疑者のようなスキャンダルを防ぐための防波堤が4つある。それぞれが強力に保たれなくてはならない。

まず第1に、企業内の手続きだ。すべての社員と同様に、CEOにもその決定を社内の委員会に諮り、監査証跡を残して職務規定に従うことが求められる。こうした仕組みが完全に機能することはまずないが、それがなければ、倫理面で「心停止」に見舞われる「タイプA」経営者はずっと多くなるに違いない。

それでも、例えば定期的な個人監査や、内部告発者が直接取締役会に通報できる仕組み作りなど、より手厚い官僚的なチェックを導入することが効果的だろう。

次に、取締役会だ。強いボスが、弱気な「タイプB」ばかりを取締役に起用し、やりたい放題やることは、よくある話だ。強く慎重なタイプの人間が規律に目を光らせていない限り、自制心のないボスが不適切な行動に出る可能性は高まる。CEOを監督するための、真に独立した役員で構成される特別委員会設置が有効かもしれない。

3番目の防波堤は、トップ自身の良心だ。成功を収めた「タイプA」の人物は、非常に説得力がある場合が多い。高額報酬でも自身の特別な貢献には見合わない、と自分自身を納得させることができる。

有益な自戒を呼び覚ますのは難しいが、例えば瞑想などの精神的修行を義務付けることが役立つかもしれない。または、過去の絶対君主のように、厳しい真実を告げる許可を与えられた「お抱え道化師」が必要なのかもしれない。

最後に、懲罰だ。恐れが、言うことを聞かない心を抑えてくれるかもしれない。1人や2人の経営者が投獄や財産喪失などの不名誉に陥ったとしても、多くの自己中心的な人間はへこまない。自分達は普通と違う基準で判断されるべきだとする彼らの自信は、驚くほど強固だ。とはいえ、CEOの報酬が増加するにつれ、罰を受けるCEOは減少した。これにより、倫理的な誤りがより起きやすくなっている。

これら4つの防波堤に共通するのは「不信」だ。部下や取締役、株主や検察が、「この経営トップは職務で不可能なこと成し遂げ、奇跡を起こした」などと考えなければ、悪行に対する耐性は下がる。そうなれば、未来のコストキラーや起業家も、魂を滅ぼさずに済むだろう。

Renault SA
61.98
RENA.PAPARIS STOCK EXCHANGE
--(--%)
RENA.PA7201.TGE.N
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/global-markets-breakingviews-idJPKCN1NY0N0?il=0


 
トップニュース2018年11月29日 / 15:22 / 31分前更新
焦点:
ルノー日産連合の危機、元凶はマクロン大統領の介入主義
3 分で読む

[パリ 28日 ロイター] - カルロス・ゴーン容疑者の逮捕を機に、日産自動車(7201.T)は再度ルノー(RENA.PA)支配からの脱却を試みようとしており、マクロン・フランス大統領は新たな悩みの種を抱えることになった。しかしこの問題はマクロン氏の「身から出たさび」と言えるかもしれない。

2015年4月、当時経済相だった37歳のマクロン氏は、政府によるルノー株買い増しという驚きの命令を下した。国の議決権倍増の是非が問われる同月末の株主総会で、倍増を確実にするための工作だ。一夜にして下されたこの命令が、ルノー日産連合の日産側に深刻な波紋を広げる。

その後8カ月にわたるマクロン氏側と当時日産ナンバー2だった西川廣人現社長との闘いが、今日の危機の種をまいたと多くの関係者はみている。

「マクロン大統領自身がどっぷりと関わっている」と語るのは資産運用会社アライアンスバーンスタイン(ニューヨーク)のアナリスト、マックス・ウォーバートン氏。2015年の決断が「最終的にフランス政府の支配下に組み込まれてしまう」という日産側の危機感に火を付けたことを、マクロン氏は認識すべきだという。

昨年大統領に就任したマクロン氏は現在、街頭デモや過去最低の支持率に見舞われている。同氏の大胆な介入主義はかつては新鮮に映ったが、ルノー日産連合の危機を契機に、その負の側面に注目が集まるかもしれない。

マクロン氏が政府保有ルノー株の拡大に動く前年、当時のオランド大統領は「フロランジュ法」を定めていた。これは全上場企業について、株主投票により適用除外(オプトアウト)を選択しない限り、フランス政府など長期株主の議決権を2倍にするものだ。

<急襲>

マクロン氏は2014年末から数カ月にわたり、ゴーン氏とルノー取締役会に対し、翌年4月30日の株主総会でオプトアウトを提案しないよう説得を続けたが、ルノー側は首を縦に振らなかった。政府の持ち株比率は15%、議決権はそれを小幅に上回る比率だったため、政府は株主投票で負ける公算が大きかった。

そして4月7日の夕方、マクロン氏からゴーン氏に「礼儀上の」電話が入る。政府がルノー株を4.73%買い増したこと、そして翌朝にはそれを発表し、オプトアウト案を否決に追い込んだ後に買い増し分を売って持ち株比率を15%に戻すことを告げたのだ。

これについては、マクロン氏の批判派も称賛者も口をそろえて政府による前代未聞の「奇襲」だと言う。くすぶりつづけていたゴーン氏とマクロン氏のエゴのぶつかり合いが、この時爆発した。

マクロン氏は周囲の警告をよそに事を進め、オプトアウトを否決に追い込んだ。これによりフランス政府は事実上、ルノーの「可決阻止少数」株主となった。そのルノーは日産株の43.4%を保有して株主総会を支配している。

東京は殺気立った。日産は取締役会の構成や資本関係などに関する協定(RAMA)からの離脱をちらつかせる。離脱すれば自身より小規模な親会社ルノーの株式を自由に買うことができるようになり、ルノー支配を覆せる。

西川氏は2015年9月3日付のルノー取締役会宛ての書面で「連合の信頼の基礎であるルノーのガバナンス、ひいてはルノーの自主的経営に重大な影響が及ぶだろう」と告げている。書面はロイターが入手した。

日産の広報担当者はこの記事へのコメントを控えた。

西川氏はルノーに対し、日産の支配株を売却し、日産が保有するルノー株15%の議決権を元に戻し、連合に対する支配を放棄するよう求めた。しかしマクロン氏のスタッフは当初、ゴーン氏が振り付けたものだと考えてこれを無視する。

フランス政府の株式保有を管轄していた機関の高官は当時「ゴーン氏が日産と日本側の考えを語るとき、彼は自分の考えを語っているのだ。私からすれば全部たわ言だ」と話していた。

<見誤ったマクロン氏>

3年後の今、ゴーン氏は逮捕されたが、日産は再び同様の要求を突き付けようとしている。

元フランス政府高官の投資銀行バンカーは言う。「専門用語も言い回しも語彙も、2015年とほとんど同じだ。日本の立場を代表しているというゴーン氏の話をわれわれは信じていなかったが、本当に彼の作り話ではなかったことが分かった」

Nissan Motor Co Ltd
984.7
7201.TTOKYO STOCK EXCHANGE
+13.20(+1.36%)
7201.TRENA.PA7211.T
マクロン氏がルノーと日産の完全合併を求めて圧力をかけたことも、逮捕劇の数カ月前から日本側を警戒させていた。

両社と三菱自動車(7211.T)の首脳は29日夜、今後の連合の在り方を協議する予定で、主導権を巡り日仏の確執が深まる恐れもある。そうした中、ルノーはマクロン氏が結んだもう1つの合意に手足を縛られている。

日産が連合を離脱する可能性を巡り緊張が高まっていた2015年末、フランス政府は大半の非戦略的決定に関してルノーの議決権を18%に制限することに合意した。

マクロン氏が支持したこの「安定」合意には、ルノーが日産の株主総会で取締役会に反対しないとの拘束力のある約束まで盛り込まれている。これは主導権争いのハンデだ。

パリの議決権行使助言会社プロキシンベストのロワ・ドゥサン最高経営責任者(CEO)は「ルノーは主要な資産に対する権利を放棄したも同然だ」と指摘。「彼らはもうすぐ、交渉力が損なわれたことに気付くだろうが、もう手遅れだ。連合のパワーバランスは既に覆された」と述べた。

<気もそぞろ>

当時の判断について当時のある閣僚は、マクロン氏が大統領選をにらんで政党「共和国前進」の立ち上げ準備を進めていた時期にあたり、そちらに気を取られていたようだと振り返る。同党のウェブアドレスが登録されたのは2016年1月7日。ルノーと日産が合意を結んでから4週間も経っていなかった。

この元閣僚は、ゴーン氏にも2015年の闘いをエスカレートさせた責任の一端があると言う。

「ゴーン氏は、閣僚らより自分の方が上だという鼻持ちならない自信を持っていた。話し相手としては首相しか念頭になかっただろうから、やはり自分の偉さを重々認識しているマクロン氏には気に入らなかっただろう」

(Laurence Frost記者 Michel Rose記者)
https://jp.reuters.com/article/renault-nissan-macron-idJPKCN1NY0HD?il=0


 

2018年11月28日 ダイヤモンド・オンライン編集部
ゴーン不正の実態を会計から読み解く…金商法違反、脱税、特別背任
八田進二・青山学院大学名誉教授に聞く
有価証券報告書への報酬未記載や、住宅などさまざまな個人的利益を日産から受けていたといった報道が連日出ているゴーン容疑者。これらは果たして、どの程度の罪になるのか。また、ゴーン容疑者以外の日産経営陣の責任はどう考えるべきなのか。会計の専門家で、青山学院大学名誉教授の八田進二氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

<論点1>
「退任後の報酬」は記載すべきか?
ゴーン容疑者の不正を会計視点で読み解きます
驚くような不正の数々が明らかになってきたゴーン容疑者。今後一体、どんな罪に問われていくのだろうか? 写真:ユニフォトプレス
――ゴーン容疑者の逮捕容疑は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)。2010年から5年間にわたって毎年、役員報酬の約10億円、合計50億円を記載しなかったというもので、その後の3年間(30億円)分も合わせて80億円になるとの見方もあります。

 高額な報酬という批判を避けるために、毎年の役員報酬20億円のうち、半分の10億円を「退任後に受け取る」という契約にし、その年の有価証券報告書には記載しなかった、ということのようですが、原則としては、これはアウトです。「退任後なら、役員退職慰労金扱いであり、今は記載する必要はないのでは」との見方もあるようですが、役員退職慰労金とは在任年数などを勘案して、退職時に決めるものです。「2010年は10億円、2011年も10億円」といった具合に毎年、金額を決めて契約していたのなら、それぞれ当該年に会計処理すべきです。

 ただ、この約束が単に「それくらい払うよ」という、一種の希望的観測じみた効力しかないようなものならば記載の必要はない、という解釈もなくはない。その辺りは、会社がどういった処理をしているかを、詳しく見ていかなければ分からないでしょう。

――さらに、株価に連動した報酬を受け取れる「SAR(ストックアプリシエーション権)」も約40億円分、開示しなかったとされています。

 次々に明らかになっていることを一言でいうと、ゴーン容疑者は会社の財産をほしいままにしてきた、ということです。検察は最終的には特別背任を狙っているのではないかと思います。

 ただし、特別背任は検察側が越えるべきハードルが高いのも事実。どういう意思決定プロセスを経ていたのか、本当にほかの取締役は一切知らなくてゴーン容疑者の独断なのか、などといったことをきっちり詰めて行かなければいけませんから、相当時間がかかるだろうと思います。

<論点2>
「住宅の無償供与」は脱税行為にもなる

八田進二/青山学院大学名誉教授・大原大学院大学会計研究科教授
慶應義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(プロフェッショナル会計学)。 駿河台大学経済学部教授、青山学院大学経営学部教授、同大学大学院会計プロフェッション研究科教授を経て、青山学院大学名誉教授。2018年4月より、大原大学院大学会計研究科教授。他に、日本監査研究学会会長・日本内部統制研究学会会長・会計大学院協会理事長・金融庁企業会計審議会委員(内部統制部会長)等を歴任。また、複数の企業等の社外監査役および監事を務めている。 《主な著訳書》 『公認会計士倫理読本』(財経詳報社)、『「逐条解説」で読み解く 監査基準のポイント』『逐条解説 内部統制基準を考える』『会計プロフェッションと監査』『会計・監査・ガバナンスの基本課題』『会計のいま、監査のいま、そして内部統制のいま』『会計人魂』『COSO全社的リスクマネジメント』 (以上、同文舘出版)『会計プロフェッションの職業基準』『開示不正―その実態と防止策―』『21世紀 会計・監査・ガバナンス事典』(以上、白桃書房)、『決定版COSO不正リスク管理ガイド』『内部統制の統合的フレームワーク−フレームワーク篇、ツール篇、外部財務報告篇』(以上、日本公認会計士協会出版局)、他多数。
――さらに、今回の逮捕容疑には入っていませんが、オランダの子会社を通じてレバノンやブラジルに高級住宅を購入させたり、挙げ句の果てには家族旅行の費用や、娘の大学への寄附金などを日産に出させる、姉との不正なアドバイザリー契約を結んで年10万ドルを支払うなど、明らかに私的な出費も日産に負担させていたようです。会計的には、これらはどのような問題だと捉えられるでしょうか?

 会社名義で従業員が私的利用するもの、たとえば社宅などを買って提供するというのは、いわゆるフリンジベネフィット(福利厚生費など、会社規定による付加的な報酬の総称)です。しかし、ゴーン容疑者が独占的に使い、かつ家賃などを一切払っていないのなら問題です。家賃相当額は給与と見なすべきなのです。当然課税対象になりますから、ゴーン容疑者はここで脱税をしていたということになります。

 家族旅行費用や姉への報酬、娘の学校の寄附金といった類いも、実質的な給与と考えるべきです。いずれも事業目的とは無縁なので、経費に認められるわけがありません。これは不当な支出であり、背任とも言える、違法性の高い話でもあります。

<論点3>
会社側はどの程度悪いのか?
――独裁者として君臨するゴーン容疑者を駆逐するため、日産の役員たちが立ち上がったクーデターである、との世論醸成がされている印象もありますが、やりたい放題の独裁者をこれまで支えてきた日産経営陣にも大きな責任があるのではないかと感じます。

 両罰規定が適用されるだろうと思いますが、日産の取締役会、さらに監査役にも大きな問題があります。日産ほどの規模の会社であれば当然、経理・財務はチームで働いています。司法取引に応じた執行役員らがいたわけですが、そのほかの取締役たち、監査役たちは本当に一切、何も知らなかったのか?大いに疑問ですね。歴年にわたって随所で行われてきた不正ですから。断片的であっても、いろいろ耳に入っていたと考えるのが自然じゃないでしょうか。これは取締役会、そして監査役会の機能が果たせていないということです。

 また、たとえば今年6月に提出された有価証券報告書には、西川廣人社長名で「当社の第119期(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)の有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正に記載されていることを確認しました」と記載されていますが、西川社長が今回の不正を知ったのは、今年3月だったと報道されています。これが事実なら、なぜ「適正に記載されていることを確認」できたのでしょう?

 さらに、ゴーン容疑者解任を決議した取締役会では、ルノー出身の2人の取締役がフランスからテレビ会議で参加したという点も、私に言わせれば大問題です。監視・監督は現地現物であるべきです。でないと、会社の内部監査を適切に行うことなどできない。普段から、グローバル企業の名の下で、こんなやり方がまかり通っていたから、会長解任という一大事に際しても、テレビ会議での出席で済ませてもいいや、という感覚なのでしょう。これは、監査役会の問題です。取締役会の執行がきちんと行われているかどうか、見極めるのは彼らの役割ですから。

 もちろん、最大の権限を持つトップ自らが不正を働いた、というのは、非常に食い止めるのが難しい話ではある。日産の不幸だったと言えます。しかし、ガバナンスが緩かったからこそ、ゴーン容疑者は独裁者としてやりたい放題できたのでしょう。私は、取締役たち全員が、ゴーン容疑者とほぼ同罪であると言いたいですね。今年6月に就任した取締役2人は、さすがに責任がなかったかもしれませんが、その他の役員は全員責任がある。特に、西川社長と軽部博CFOの責任は重いのです。

<論点4>
監査法人の責任は?
――日産の監査法人はEY新日本。あの東芝やオリンパスも担当した大手監査法人です。売上高11兆円の大企業ですから、数億円の住宅やゴーン容疑者の姉への年10万ドルのアドバイザリー契約などという少額の不正は、なかなか見抜けなかったのでしょうか?

 もちろん、売上高の9割に貢献している事業を重点的に見る、という重要性の基準はあります。ただし、たとえ小さな規模のものであっても、定性的に見て、コンプライアンス違反が潜んでいるんじゃないかと疑わしい、つまり信用できないものがあれば、規模の大小に関わらず、きちんとチェックすべきだというルールになっています。

―― 一部報道によれば、ゴーン容疑者の住宅購入に使われたオランダの子会社「ジーア」は資本金60億円の小さな会社ですが、監査法人は「会社の実態が不透明だ」と指摘したものの、日産側からかわされたようです。

 企業の連結ベースでの不正はたいてい、子会社や関連会社、外国事業拠点を通じて行われるものです。そして、この手の不正は、監査法人が疑念を感じたのにもう一歩、きっちり踏み込めていないというケースが多い。新日本は指摘するだけでは役割を果たしたとは言えないのです。2011年に起こったオリンパスの不正事件を受けて、金融庁は2013年に監査基準の改正を行い、疑問を持った際には徹底的に深掘りすべしという旨を盛り込みました。

 今回のケースであれば、疑問を投げかけるだけでなく、実際にオランダに行って調査をすべきです。

 確かに手間ひまがかかる話ではありますが、EY(アーンスト・アンド・ヤング)のネットワークを活用したっていいわけで、とにかく疑念がある場合にはしっかり調査すべき。会社側のお茶を濁すような釈明に言いくるめられるようではダメなのです。

<論点5>
金額は決して大きくないけれど…
――東芝の不正会計事件は、経営危機に陥るほどのインパクトがありました。日産の一件は、驚くような話ではあるものの、業績に大打撃を与えるような規模の金額ではありません。

 会計監査の世界では、「ある情報が間違っていた場合、正しい情報を知っていたとしたら、情報の利用者(投資家など)は違う意思決定をしただろうか?」という点が重要視されます。その意味から言うと、確かに数字的インパクトは小さい。しかし、投資家は数字のみならず、ガバナンスの状況など非財務情報も重要視しているはずです。

 ゴーン容疑者がこだわったであろう役員報酬の開示も、投資家は関心を持っています。だから、株主総会では「前期より利益が下がっているのに、なぜ役員報酬は上がっているのか」といった質問が出たりするわけです。つまり、報酬が納得の行く金額であって、かつ正しく開示されているかどうか、ということは、投資家からすればその企業や経営者を信頼できるかどうかという大切なポイントなのです。

 2001年に破綻した米エンロンは、巨額の簿外債務があるなどの不正が起きていた一方、経営者は高額な報酬をもらっていました。米国ではエンロン事件後、監査強化やディスクロージャー強化などを盛り込んだSOX法が制定され、経営者の不正は厳罰化。虚偽記載は罰金も強化された上に、経営者は最長20年の懲役が科され、二度と上場企業の役員にはなれません。

 日本では2007年に金融商品取引法ができたときに経営者の責任が重くされましたが、それでも最大で懲役10年。これは「軽すぎる」という議論もあります。

 過去には長銀や日債銀の経営者がさんざん争った挙げ句に無罪となった事例もあり、東芝の歴代社長の立件に検察が及び腰になった原因だと言われています。検察は日産で失地回復を狙っているのではないでしょうか。しかし、ゴーン容疑者のケースでも、脱税や横領はまだしも、特別背任まで視野に入れるとすると、簡単な戦いではないはずです。
https://diamond.jp/articles/-/186764
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/662.html

[経世済民129] 世界経済は「岐路」と習近平主席−自由貿易か保護主義か 中国への借金はモルディブ困惑と警戒 中国「大きすぎてつぶせない問題
世界経済は「岐路」と習近平主席−自由貿易か保護主義か
Charles Penty、Thomas Gualtieri
2018年11月29日 10:19 JST
• 習主席がスペイン議会で演説−週末にトランプ米大統領との会談控え
• 投資や知財保護などの分野での市場アクセス改善を図る−習主席
トランプ米大統領との首脳会談を週末に控えた中国の習近平国家主席は28日、世界経済が転換点を迎えているとの認識を示した。
 
  欧州・中南米歴訪中の習主席はスペイン議会で演説し、グローバルな貿易体制を支えるための取り組みを続けるかどうか世界が決める必要があると指摘。それに失敗すれば、各国間の新たな障壁につながると述べた。

サンチェス首相と習国家主席(マドリードで、28日)
撮影:Javier Soriano / AFP via Getty Images
  習主席は「経済面でわれわれは岐路に立っている。経済的なグローバル化と自由貿易を続けるかどうか、一国主義や保護主義に訴えるかどうかだ」と発言。「世界を正しい方向に発展させるよう、もっと前向きなエネルギーを傾け、より大きなコンセンサスを形成するため国際社会全体の協調と結束が必要だ」と語った。
  週末にブエノスアイレスで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合に出席する習主席は、現地でトランプ大統領と会談する予定。同大統領は通商関係での条件で中国側と合意できなければ2000億ドル(約22兆7100億円)相当の中国製品に関税を賦課する方針を示している。
China Calls For Spanish Exporters
Exports to China so far make up tiny share of Spain's exports

Source: Spanish Trade Department
  習主席はマドリードでスペインのサンチェス首相と会談し、多数の商業合意などに調印した。両国は共同声明で、「グローバルかつオープンでバランスの取れた」経済へのコミットを表明。スペイン上院での議会演説で習主席は中国の対外開放を進め、投資や知的財産保護などの分野での市場アクセス改善を図ると説明した。
原題:China’s Xi Highlights Economic Crossroads Before Trump Talks (1)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXHJ46S972Z01?srnd=cojp-v2


 

トップニュース2018年11月28日 / 11:10 / 6時間前更新
焦点:
中国への借金は一体いくら、小国モルディブの困惑と警戒
Sanjeev Miglani and Mohamed Junayd
3 分で読む

[マレ 23日 ロイター] - インド洋に浮かぶ小国モルディブで今月発足したばかりのイブラヒム・モハメド・ソリ新政権は、中国からの債務がどの程度に膨らんでいるのか見当もつかないと述べ、同国で起きた建築ブームの裏側で過去5年間に膨らんだ債務が持続不能となるリスクを懸念している。

17日に就任したソリ大統領の参謀役を務めるモハメド・ナシード元大統領によれば、駐モルディブ中国大使Zhang Lizhong氏は、モルジブ政府に対し32億ドル(約3600億円)に上る「請求書」を渡したという。これは国民1人当たり約8000ドルに相当する額だ。

ただし中国側はこれを否定しており、金額は15億ドルに近いと述べている。

「あれはまさに請求書だった。32億ドルという金額だけが記載されていた。衝撃的だった」とナシード氏。「単なる会話ではなく、文書を突きつけられた。はっきりと、あなた方はわれわれにこれだけ借金があると告げていた」

9月の大統領選挙で親中派のアブドラ・ヤミーン前大統領を破り、驚くべき勝利を収めたソリ大統領は、10月6日に行われた会談の席で中国大使からこの通達を受け取った。ナシード氏はそう明かすが、正確な文面については、詳細を明らかにしなかった。

この発言について、中国外務省は、駐モルディブ大使が「事実ではない」と声明で否定していると指摘。ニュースサイト「アバス」で、対中債務報道が「ひどく誇張されている」と語った同大使のインタビューについて言及した。

現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国は、中東に至る活発な輸送航路上に位置するモルディブでのインフラ整備のために、多額の融資を提供している。

だが、白い砂浜と青い海で知られる人口40万人のモルディブ列島で生じた前例なき建設ブームは、同国が債務を膨らませているのではないかという懸念を巻き起こし、野党は声高なキャンペーンを繰り広げた。それに力を得た野党連合のソリ氏が、大統領選挙で現職ヤミーン氏を打ち負かした。

中国の「一帯一路」プロジェクトは、その積極的な融資姿勢によって「借金漬け外交」を繰り広げていると一部で批判を浴びている。

<食い違う数字>

ソリ新政権は、モルディブ財政が予想よりも悪化していると指摘。中国企業と締結した契約すべての詳細を解明するには、数週間から数カ月を要すると発表している。

「中国に対して、実際どれだけの債務を負っているか把握できず、困惑している」とナシード氏は語る。

「1つには直接債務、つまり政府間の2国間直接債務があるが、それに加えて、民間セクターに向けた国家債務保証がある。さらにそれ以外にも、国有企業による債務がある」と付け加えた。

ヤミーン前大統領からは、コメントを得ることができなかったが、同氏は選挙期間中、ここ数年で過去のどの時点より多くの雇用が生まれており、そのために自らの政権は債務を重ねたと発言している。

「4─5年という短期間に、多年にわたる開発が始まった。だが私が言ったように借入れを行わず、モルディブ国民が稼ぐ収入だけで事を進めようとすれば、ここまでの開発は不可能だった」と同氏は言う。

Zhang中国大使は、「アバス」のインタビューで、モルディブの対中債務は6億ドルで、首都マレと空港を結ぶ海上橋の建設、空港の拡張、埋立地でのタワーマンションの建設に投じられたと述べている。

同大使によれば、これとは別に、発電から住宅に至るさまざまなプロジェクト資金として9億ドルが複数の国有企業向けの銀行融資として確保されているが、その融資の多くはまだ実施されていないという。

この数字は、21日行われたモルディブ国民議会の公共財政委員会におけるモルジブ中銀総裁の証言によって、ほぼ裏付けられている。この証言で総裁は、同国の対中債務は15億ドルだと試算している。

前政権に任命されたモルディブ金融庁のアフメド・ナシール長官は、中国に対する政府間債務は合計で約6億ドルと推定する。残りの9億ドルは、国家による債務保証が付された、中国の銀行からの融資推定額だと同長官は述べている。

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ナシード氏は、中国大使の表向きの発言は、中国側がソリ大統領に伝えた内容と異なっていると主張する。中国大使はその後ナシード氏との面会を要請してきた、と同氏は言う。

モルディブのアブドラ・シャヒード外相は22日、2国間問題を協議するために近日中に中国を訪問すると述べた。

<問題は国家による債務保証>

ソリ大統領の政権移行チームの一員で、今週政権にも参加した当局者は、中国側が先月提出した通達について話を聞いており、国家による債務保証が原因となって数値が膨れあがった可能性があると語る。

「債務の状況を明らかにしようと努めている。多くの借用証が文書として発行されたようだ。どの程度の金額をどこから借りているのか把握しようと取り組んでいるところだ」と同当局者は匿名で語った。

政府歳入が年間15億ドル、国内総生産が約39億ドルであるモルディブにとって、これほどの規模の債務を返済していくことは困難だ、と やはり新たに政権に参加し、国営企業の債務の検証を担当する別の当局者は指摘する。

「財政破綻させるわけにはいかない。国家債務保証が定める通りの債務を認めてしまえば、われわれは債務超過に陥るだろう」

環礁上に建設された高級リゾートへと観光客を運ぶ高速船の出発地となっている首都マレでは、至る所でインフラ建設ブームの兆候を確認できる。

ヤミーン前大統領は、観光客向けのリゾート施設を建設するために、中国系デベロッパーに不特定数の島々を貸与してきた。観光客の5分の1は中国人であり、8年前に中国政府がモルディブに大使館を開設して以来、両国の関係は劇的に拡大している。

モルディブ外務省はロイター宛の声明で、「繰り返しておきたいが、中国とモルディブのあいだでは、対等で相互に利益のある関係をベースに互恵的な協力が行われており、すでに誰の目にも明らかな形で成果が生まれているし、モルディブ国民に歓迎されている」と述べている。

「モルディブ新政権によるリーダーシップの下で、モルジブと中国の友好的な協力は前進を続け、新たな成果を生み続けるだろう」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/maldives-politics-china-idJPKCN1NW0QP


 


コラム2018年11月29日 / 11:22 / 29分前更新

中国の「大きすぎてつぶせない」問題に正しい一歩
Christopher Beddor
2 分で読む

[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国金融セクターの「大きすぎてつぶせない(too big to fail)」問題に対する中国政府の対策が、正しい方向に向かいつつあるようだ。

中国規制当局は27日、主要金融機関に対する監督の新指針を公表した。もちろん、中国政府は主要金融機関の大半を所有しており、金融機関の破綻はめったにない。

だが、火事の際にどの金融機関が守られるべきかを明示することは、それ自体が他の機関は燃えても構わない可能性を意味する。これにより、約40兆ドル(約4550兆円)規模に上る中国銀行セクターは、自由化に一歩近づくことになる。

新指針では、国内銀行30行以上に加え、証券会社と保険会社それぞれ10社を、不可欠かつ相互に関わり合い、1つでも破綻すれば危機を誘発しかねない「組織的に重要」な機関に指定する。

世界の金融規制を担う金融安定理事会(FSB)はすでに、中国銀行(601988.SS)(3988.HK)や中国工商銀行(ICBC)(1398.HK)(601398.SS)など数行を、世界的に不可欠な金融機関とみなしている。

今回発表された新指針案では、より広範な金融機関を、一段と厳しい資本要件や負債比率などの基準の適用対象にする。その代わり、これらの金融機関には救済措置の適用が検討される。

一見、この新指針は風変わりに見える。

重要なポイントは、最重要の金融機関を特定し、監督を強化することで破綻の可能性を抑えること、あるいは破綻した場合に事態の沈静化を早めることにある。グローバル金融危機以降、民間金融機関の救済という不人気で高くつく政策を取らざるを得なかった西側政府の課題に解決策を示すことが、今回の目的の1つだ。

とはいえ中国では、政府と金融の間に西側のような区別は存在しない。政府は中国最大級の銀行や、多数の保険会社や証券会社を所有している。

最後に深刻な銀行破たんが発生したのは、約20年前だ。中国の投資家は、トラブルが拡大すれば直ちに中国政府が介入すると期待するようになっているが、これは、一定規模以上の金融機関はほぼ全て「大きすぎてつぶせない」ということを意味する。

とはいえ、今回の指針にはより歓迎すべき含意も込められている。 指定を受けなかった金融機関は理論上、「つぶれ得るほど小さい(minor enough to fail)」ということだ。

規制当局による指定の有無にかかわらず、より規模の小さい銀行でも中国政府は当面救済するだろう。それでも当局は、少なくとも「上限」を設定しつつある。金融セクター全体に対する、巨額すぎる暗黙の国家保証をいつか撤回するためには、この点は極めて重要だ。

米国や欧州が学んだように、こうした線引きは早い段階でやっておくべきだ。危機が起きてからでは、ずっと難しくなるからだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/china-banks-breakingviews-idJPKCN1NY07B?il=0

 

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/663.html

[経世済民129] 米景気の山は来春か、ドル円が失う上昇力 日銀は超長期債の買い入れ縮小か パウエル・プット米株式市場を救う−これが最後にな
外為フォーラムコラム2018年11月28日 / 19:10 / 2時間前更新

米景気の山は来春か、ドル円が失う上昇力

亀岡裕次 大和証券 チーフ為替アナリスト
4 分で読む

[東京 28日] - このところ米国の株価や長期金利が下落し、ドル円を押し下げている。背景にあるのは景気減速への懸念で、米国の経済指標や企業業績に弱さが見えるようになってきた。

米金融当局者は景気見通しに慎重な姿勢を見せ始め、市場も利上げ期待を後退させている。「ねじれ議会」となった中間選挙後のタイミングで米株や長期金利が下げに転じたことから、トランプ政権の政策遂行能力が低下することへの懸念も一因なのかもしれない。

米国の経済成長は、すでに鈍化している。実質国内総生産(GDP)の伸び率は、2018年4―6月期のプラス4.2%(前期比年率)から、7―9月期はプラス3.5%に低下した。高水準の成長率だが、押し上げたのは在庫の増加で、その寄与度はプラス2.07%。在庫増減を除く最終需要の伸び率はプラス1.4%にとどまる。4―6月期の最終需要がプラス5.4%の高成長だった反動もあるが、7・四半期ぶりの低成長となった。

最終需要が減速した原因は、輸出から輸入を差し引いた純輸出と設備投資、そして住宅投資にある。

<輸出減少は続く>

GDP成長率への寄与度が最も低下したのは、純輸出だ。4―6月期のプラス1.22%から7―9月期にはマイナス1.78%まで落ち込んだ。輸出減少と輸入増加が原因で、このうち輸出は今後も減少が続きそうだ。需要減速を反映して世界的に製造業購買担当者景気指数(PMI)が低下しているうえ、ドル実効為替レートが上昇傾向にあり、米国の輸出環境が厳しいからだ。米製造業の輸出受注指数は10月、大幅に低下した。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、世界経済に減速の兆しがあることを懸念材料として挙げている。成長率に対する純輸出の寄与度がさらに低下し続ければ、米国の国内需要に悪影響を与えやすいため、警戒しているのだろう。

米景気が世界経済の減速を受けて弱まれば、米金利やドルの上昇力が相対的に衰えることにもなるはずだ。実際、債券利回りにはそうした動きがみられる。一方、ドル高が明確に鈍化しないのは、英国の欧州連合(EU)離脱問題(ブレグジット)などによる欧州通貨安が作用しているためだ。

<減退する企業の設備投資意欲>

GDP成長率への寄与度が2番目に大きく低下したのは、設備投資だ。4―6月期のプラス1.15%から7―9月期にはプラス0.12%へと低下した。

米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明は、「家計支出と企業の設備投資は力強く伸びた」(9月26日)から、「家計支出は引き続き力強く伸びたが、企業の設備投資の伸びは今年早い時期の急速なペースから緩やかになった」(11月8日)へと変わり、設備投資の判断は下方修正された。

10月の米供給管理協会(ISM)製造業新規受注指数は、17年4月以来の水準まで低下。設備投資の減速が影響しているようだ。設備投資の先行指標とされる航空機を除く非国防資本財の受注は、3カ月移動平均の前月比が10月にマイナスへと転じている。法人税の減税による増益効果が薄れる一方で、貿易摩擦や海外経済の減速から景気不安が台頭し、米国企業の設備投資意欲が減退しているように見える。

<雇用もペースダウンか>

米国企業の雇用意欲が減退していることをうかがわせる動きもある。毎週発表される新規失業保険申請件数は、9月半ばにかけて20万2000人まで減少したが、その後は22万4000人に増加している。5月以来の高水準だ。

転職のために自発的に離職し、失業保険申請が増えるケースもあるので、一概に雇用鈍化の兆しとは言い切れない。だが、雇用者数の比重が大きい非製造業の景況指数や雇用指数が、9月をピークに悪化に転じつつあることも合わせて考えると、やはり雇用鈍化の兆しである可能性が高い。

10月の非農業部門雇用者数は25万人増と強い伸びを示したが、今後は増加幅が縮小することもあり得る。雇用が鈍化すればFRBは利上げの継続に慎重な姿勢を示す可能性があり、米長期金利とドル円の下落を招くかもしれない。

住宅投資も、わずかながらGDP成長率への寄与度が低下している。4―6月期のマイナス0.05%から、7―9月期はマイナス0.16%へと下がった。特筆すべきは、18年に入って3・四半期連続でマイナスになっていることだ。輸出や設備投資に先行し、いち早く減速し始めた需要項目である。

住宅市場は価格が高止まりしているうえ、ローン金利の上昇もあり、販売が減少している。10月の米中古住宅販売件数は7カ月ぶりにプラスに転じたが、3月から9月までに減少した分の15%を取り戻したに過ぎない。戸建て住宅販売や住宅建設許可件数は10月も減少し、住宅市場指数は11月に大幅に低下するなど、住宅投資は先行きも明るくなさそうだ。FRBのパウエル議長は、弱まる住宅セクターの動向を注視していると述べている。

<好調な個人消費も要注意>

唯一好調を維持しているのが個人消費だ。GDP成長率への寄与度は、4―6月期のプラス2.57%に対し、7―9月期はプラス2.69%となり、ここ最近で最も高い水準となった。米株価指数が9月から10月初めにかけて最高値を更新し、資産効果が拡大したことが大きく影響しているのだろう。

その後、株価指数は下落に転じている。27日時点のダウ工業株30種は9月末から6.5%、S&P総合500種は8.0%、ナスダック総合指数は12.0%それぞれ下落している。株安を反映するように、米ミシガン大消費者信頼感指数も10月、11月と2カ月連続で低下している。

11月以降、雇用が鈍化すれば、それも消費支出を抑える要因となる。米感謝祭の連休中、ネット通販の売上高は前年を上回ったものの、実店舗の客数は前年を下回ったようだ。米個人消費には不安材料も出てきており、今後の動向に注意が必要だろう。

09年6月を底に始まった米景気の拡大は、18年11月で113カ月が経過した。19年6月まで拡大が続くと、過去最長だった1991年3月から01年3月までの120カ月に並ぶ。当時は景気の山が01年3月、その7カ月前の00年8月にS&P500がピークアウトした。

18年9月にS&P500がピークアウトしていたとするなら、米景気は19年4月にピークアウトするかもしれない。米経済減速によるリスクオフや金利の低下で、ドル円は上昇力を失う可能性がある。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

亀岡裕次氏(写真は筆者提供)
*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yuji-kameoka-idJPKCN1NX0Z5


 

 


 

 

 


 


日銀は超長期債の買い入れ縮小か、

値動き拡大と金利低下の緩和狙う

野沢茂樹
2018年11月29日 7:00 JST
• 超長期債のオペを月4回に削減、前月比1500億円減額との見方
• 中長期オペの回数減らしたがうまくワークしているーメリル日本証

日本銀行は30日に来月の国債買い入れオペの運営方針を公表する。世界的に金利低下が進むタイミングに加えて、市場の流動性を回復させるために超長期国債の買い入れ規模を縮小するとの見方が有力視されている。
  12月のオペ方針について、残存期間「10年超25年以下」と「25年超」の購入回数を今月より1回少ない4回にするとメリルリンチ日本証券やみずほ証券、BNPパリバ証券、野村証券は予想する。
  メリル日本証の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、超長期債のオペ回数が中期債と同じ月4回となれば「ほぼ1週間に1回という座りのいいペースになる」と言う。みずほ証の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストも、オペ回数減で「市場で日銀に依存しない取引の余地が広がって値動き幅の拡大と流動性の向上のほか、超長期金利の低下を和らげる効果も見込める」とみる。
  日銀は9月から中期債と長期債の購入回数を5回に削減し、今月からは需給が逼迫(ひっぱく)する中期債をさらに4回に減らした。しかし、実質の買い入れ額の削減にもかかわらず、世界経済の減速懸念の強まりを受けて金利低下が進んでいる。米10年物国債利回りは節目の3%目前まで低下し、日本では新発20年国債利回りが約3カ月ぶりに0.6%割れの水準まで下げた。

  メリル日本証の大崎氏は、「これまで中期債・長期債の買い入れ回数を減らしてきたが、それで相場は荒れておらず、うまくワークしている。回数を減らして1回当たりの金額を増やす手法が日銀にとっても市場にとっても心地良いようだ」と言う。
  残存期間「10年超25年以下」の1回当たり購入額は現在1800億円、「25年超」は500億円。日銀は中期債と長期債では回数減による月間の減額幅を抑えるため、1回当たりの金額を増やした。今回は減額を続ける方針を示すために「10年超25年以下」を2000億円への小幅増とし、「25年超」は据え置くと4社は予想。月間購入額は両ゾーンの合計で1500億円減る見込みだ。
  BNPパリバ証の井川雄亮債券ストラテジストは、今後も「隙あらば減額していくだろう」とし、「日銀としてはオペの存在感がどんどん薄れていくのが理想ではないか」とみている。
日銀国債買い入れの年限別月間回数
8月 9月 10月 11月
1ー5年 6 5 5 4
5ー10年 6 5 5 5
10年超 5 5 5 5
  日銀は金利操作の対象となっている長期債が含まれている残存期間「5年超10年以下」の国債だけは、10年利付国債の入札翌日にも買い入れを実施している。
  中期債と超長期債については今月から入札の数日後へと間隔を空けたが、BNPパリバ証やメリル日本証は今回のオペ運営方針では「5年超10年以下」の変更はないと予想。大崎氏は「いずれは変えるにしても、今回は守る可能性の方が高い」とみている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-28/PIUN1N6KLVR701?srnd=cojp-v2

 


「パウエル・プット」米株式市場を救う−これが最後になる可能性
Luke Kawa
2018年11月29日 14:47 JST
市場が織り込む来年の利上げ幅、さらなる圧縮の余地はわずか
最後1回の利上げ見通しまでなくすような変化、議長には見込まれず
米株式市場にとって、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が果たした救世主の役割は1回だけで終わる可能性がある。


パウエルFRB議長フォトグラファー:Mark Kauzlarich / Bloomberg
  28日にパウエル議長が2019年の利上げ回数に関する発言のトーンを和らげたことを受け、トレーダーが織り込む来年の利上げ幅は大幅に圧縮された。ユーロダラー先物18年12月限と19年12月限のスプレッドは一時、1回の利上げに相当する25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を下回る場面があった。

  28日の市場取引を悲観的に見れば、トレーダーが織り込む来年の利上げ幅予想のさらなる圧縮の余地はもうあまりないということになる。さらに悲観的な見方が強まるとしたら、それには景気下降見通しが伴う必要があるかもしれないが、これはリスク資産にとっては到底好ましいものではない。

  現在のところ、米株式市場は米金融当局がより慎重になっているとの見方を好感している。インフレ調整後の米国債利回りの低下はS&P500種株価指数の3月以来の大幅上昇を後押しした。ユーロダラー先物19年12月限の取引高は、中立金利まで「長い道のり」があると議長が発言し、リスク資産からの撤退を引き起こした10月3日以来の規模に膨らんだ。

  ウィーデンのチーフ・グローバル・ストラテジスト、マイケル・パーブス氏は、「ゴルディロックス(適温)状態に戻ることが話題となっている」とした上で、「まずまずの成長と、友好的な金融当局。そうだ、これが株の合理的な反応だ」と述べた。

  しかし、この「パウエル・プット」も一回行使されただけで、もう尽きてしまう可能性がある。マニュライフ・アセット・マネジメントのマクロ戦略責任者フランシス・ドナルド氏は、「市場が織り込む残りの最後1回の利上げ見通しまでなくすような劇的な変化をパウエル議長について想像するのは難しい」と指摘。「市場はハト派的な金融当局や20カ国・地域(G20)首脳会合の思わしくない結果といった可能性に加え、成長鈍化も織り込み済みであり、下振れよりは上振れのサプライズの余地の方がはるかに大きい」と述べた。

原題:The Powell Put Saving Stocks Is Exercised and May Be Exhausted(抜粋)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXSNY6KLVR701?srnd=cojp-v2


 

パウエルFRB議長、来年の利上げ回数予測引き下げの可能性に道開く
Rich Miller、Christopher Condon、Jeanna Smialek
2018年11月29日 11:19 JST
12月FOMCで来年の利上げ回数予測が3回から2回に減る可能性
現在の金利は中立レンジを「わずかに下回る」と議長は発言

パウエルFRB議長 Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は28日、来年の利上げ回数見通しについて、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が下方修正する可能性に道を開いた。

  パウエル議長はエコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークで講演し、一連の米利上げにより金利は米経済成長を加速も減速もしない中立の推計レンジを「わずかに下回る」水準になったと述べた。また、米経済への利上げの影響について、まだ完全には顕在化していないと指摘した。

  パウエル議長の発言は、先月の発言に比べトーンを和らげたものと受け止められ、米株式相場を押し上げた。前日にはトランプ大統領が再び利上げを批判していた。


  9月に発表されたドット・プロット(金利予測分布図)の中央値を見ると、FOMC参加者は来年に0.25ポイントの利上げが3回行われると予想していた。ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は12月18、19両日に開催されるFOMCで示される最新予測では来年の利上げは2回とされる可能性があると指摘。「もはや中立水準まで利上げを断行するというわけではない」とし、「近づくにつれて進路のぶれも若干大きくなる」と述べた。

市場の反応
  トレーダーが利上げ回数見通しを後退させる中、S&P500種株価指数は2.3%高と、3月以来の大幅上昇となり、2年物米国債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。先物取引が織り込む来年の利上げ幅は25bpと、利上げ1回分に相当。外国為替市場では、ドル相場のピークに近づいている可能性があるとの見方をトレーダーが強める中、一次産品生産国と新興市場の通貨が上げをけん引した。

  大方が予想する12月の利上げによりフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは2.25−2.50%になり、9月にFRB理事と連銀総裁が推計を示した中立金利レンジ2.5−3.0%の下限に達する見込み。

  パウエル議長は米経済については堅調な伸びと低失業率、2%の当局目標近辺のインフレ率が続くとして楽観的な姿勢を保ち、「この見通しに関しては好ましい点が非常に多い」と話した。ただ、「政策に既定路線はない」として、情勢が予想を大きく外れて展開する可能性に注意を促した。

  パウエル議長は2週間前、来年の米経済成長を阻害しかねない要因として、海外の需要鈍化や米国内の財政刺激効果の減退、過去の利上げが効き始める可能性の3つを挙げていた。

エコノミストの見解
  来年の利上げ回数について、エコノミストの見解は分かれている。ゴールドマン・サックス・グループとJPモルガン・チェースのエコノミストは4回と予測しているが、モルガン・スタンレーとシティグループは2回だ。ブルームバーグ・エコノミクスは3回とみている。

  アマースト・ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は顧客に対し、パウエル議長の講演の「幾分ハト派色が強まったトーン」に市場は過剰反応していると指摘した。パンセオン・マクロエコノミクスのイアン・シェファードソン氏は、パウエル議長がFOMC参加者の金利予測の「差し迫った変更を示唆」しているとは思わないと記した。

  パウエル議長は10月3日に、米金融政策は恐らく「中立まで長い道のり」があるが、最終的には引き締め的になる必要があるかもしれないと述べ、投資家の間に不安が広がった。FRBウォッチャーの多くはこのコメントには特に目新しい点はないと見なしたが、多数の投資家は利上げサイクルの終了はかなり先になると示唆したものと受け止め、株価は下落した。

  ソシエテ・ジェネラルの米国担当エコノミスト、オメイア・シャリフ氏は28日の顧客向けリポートでパウエル議長の10月のコメントについて、「新人ならではの失敗」だと指摘した。

  元連邦準備制度エコノミストで、現在はコーナーストーン・マクロのパートナーを務めるロベルト・ペルリ氏は顧客に対し、「十分に吟味して草稿を準備したスピーチと、原稿なしのフリートークは大きな違いがある」と述べた上で、「金融当局は経済を意図的に減速させるところまで断固として引き締めを続けるという懸念が解消されたため、市場に安心を与えるメッセージ」となったと説明した。

原題:Powell Opens Door to Possible Pullback in Fed Rate-Hike Outlook(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXJNK6S972B01

日本株続伸、パウエル発言で米金利の先高観後退ーサービスや機械高い
河元伸吾
2018年11月29日 8:00 JST 更新日時 2018年11月29日 15:12 JST
米政策金利は中立レンジをわずかに下回る水準ーパウエルFRB議長
米経済は堅調な成長続くと議長、為替のドル安・円高は重し

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
29日の東京株式相場は5営業日続伸。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利上げの打ち止めが近いことを示唆し、金利上昇を背景とした景気不安が後退した。サービスや機械、医薬品などが高い。

TOPIXの終値は前日比5.81ポイント(0.4%)高の1659.47
日経平均株価は同85円58銭(0.4%)高の2万2262円60銭
  パウエル議長は28日の講演で、政策金利が中立レンジを「わずかに下回る」水準にあるとの見方を示した。米経済は堅調な成長が続くと自身を含めた政策当局者は引き続き予想、漸進的な利上げが経済に及ぼす影響は不確実だとした。利上げ休止期待で米S&P500種株価指数は2.3%高と、3月26日以来の大幅高だった。
FRB議長講演の記事はこちらをご覧ください

  三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストはパウエル議長の発言について、「米国の過度な金利引き上げに対する警戒感が緩み、米国経済が腰折れせずに堅調が続くことが期待される」と述べた。金利の先高観が後退してドルが売られたことで「新興国通貨が下落せず、減速気味な世界景気への不安が薄らいだ」とみていた。

  日経平均は取引開始直後に前日比1.2%高の2万2437円まで上げた。ただ、為替市場で円が次第に強含んだことに伴って、午後に0.3%高まで上げ幅を縮小した。市川氏は「米金利高で買われていたドルが売られ、円高に推移したことが株式相場の重しとなった」と指摘した。ドル・円相場は1ドル=113円20銭台まで円が強含んだ。


東証33業種ではサービス、石油・石炭製品、医薬品、非鉄金属、機械が上昇率上位
国内長期金利の低下で利ざや改善期待が後退した保険が下落、小売や食料品、パルプ・紙も安い
東証1部の売買代金は2兆5304億円
値上がり銘柄数は1301、値下がり銘柄数は730
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-28/PIXD3W6S972C01?srnd=cojp-v2


リスクアービトラージ「草分け」流れくむグラス、ヘッジファンド閉鎖
Saijel Kishan
2018年11月29日 14:22 JST
グラス氏のM&Aリスクアービトラージ戦略に基づく投資を行った
イベントドリブンの年初来の運用成績は1.9%とS&P500下回る
2000年にスタートし、マーティン・グラス氏が採用した合併・買収(M&A)リスクアービトラージ戦略に基づく投資を行ってきたヘッジファンド運営会社グラス・キャピタル・マネジメントが、思うように利益を出せず、運用していたファンドを閉鎖する。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  非公開情報であることを理由に関係者が匿名を条件に語ったところでは、ニューヨークに拠点を置くグラス・キャピタルは、ファンドを最終的に閉鎖することを投資家に今月伝えた。監督当局への届け出によれば、借り入れを含む昨年末時点の運用資産額は15億ドル(約1700億円)。ショーン・ダニー最高投資責任者(CIO)は、コメントを控えている。

  グラス氏の父、ジョゼフ・グラス氏は、ウォール街でも有名なリスクアービトラージ投資の草分けとして知られ、グラス・キャピタルはその流れをくむ。ジョゼフ氏が創業したグラス・パートナーズには、ヘッジファンド運営会社ポールソンを後に設立する資産家のジョン・ポールソン氏もかつて勤務していた。

  HFRIイベントドリブン指数によれば、スピンオフ(分離・独立)や経営陣の交代を含むコーポレートイベントを見込んだ投資を行うイベントドリブン・ファンドの年初から10月末までの運用成績はプラス1.9%と、S&P500種株価指数のリターン(3%)に届いていない。

原題:Gruss Capital Is Said to Wind Down Hedge Funds After 18 Years(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXRZP6S972M01?srnd=cojp-v2
 

 


トップニュース2018年11月29日 / 06:01 / 5時間前更新
米FRB議長、利上げ終了の前倒し示唆か:識者はこうみる
3 分で読む

[29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、政策金利が中立金利を「若干下回る」水準にあるとの認識を示した。2カ月足らず前には、中立水準にはおそらく「程遠い」との見方を示しており、利上げ終了時期が早まった可能性を示唆したもよう。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●利上げ継続に慎重、NY連銀総裁発言が鍵

<三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト 鈴木敏之氏>

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が言及し、市場が大きく反応した中立金利を「若干下回る(just below)」という表現は、27日の講演でクラリダ副議長も使っていた。

利上げが行われるであろう12月会合を前に、正副議長が続けて同じ表現を使ったということは、FRBが周到な準備を進めているとみられる点で重要だ。

30日には、同じく副議長を務めるニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が講演を行う。どういった表現を使うかまだわからないが、中立金利が見えてきた中で利上げを続ければ、金融引き締めに入ってしまうので、そこまではまだ決めていないと、FRBは伝えているのだろう。

ただ、もし前日の市場反応がFRBの思い通りでなかったとしたら、ウィリアムズ総裁は表現を修正してくるだろう。前日の米株急騰を良しとするかは不透明で、ブレーキをかけるような言い方になるかもしれない。

次回の米利上げは12月と予想しているが、来年は3月の1回のみで終わる可能性も見ておく必要がある。

●日本株には中立か若干プラス、急激な円高見込みにくい

<大和住銀投信投資顧問 シニア・エコノミスト 門司総一郎氏>

日本株にとっては中立ないしは若干プラスとみている。為替が円高に振れる可能性があるので、そこはマイナス要因。一方で新興国通貨への恩恵は大きい。来年の米国の利上げ回数については、少なくとも2回はあると思うが、来年半ばの利上げ終了を織り込みにいく形になるだろう。ただ利上げ打ち止めという要因だけで、ドル/円が105円まで円高に振れるということも見込みにくい。

そもそも市場は好材料を無視しすぎていた。日本企業の決算は終わってみればまずまずだったが、一部の悪い決算発表に反応する形で日本株は割安感が強まっていた。貿易摩擦も、米中が交渉をするための項目を事前に出していること自体がプラスだ。トリガーさえあれば修正の動きとなりやすく、潜在的に株価が上昇する余地は大きい。20カ国・地域(G20)首脳会議で米中が完全に決裂したということにならなければ、イベントをこなしたことになり、日本株のさらなる上昇が見込まれる。

●マーケットは過剰反応

<みずほ証券 チーフ債券ストラテジスト 丹治倫敦氏>

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長がFRBの利上げサイクルはこれまでの想定より早い時期に終了する可能性があると示唆。また、約2カ月前には政策金利は中立金利から「程遠い」水準にあるとしていたが、政策金利は予想される中立金利を「若干下回る」水準にあるとの認識を表明した。

FRBはこれまでも3%近くが中立金利だとしてきたことや、声明文から「緩和的」との文言が削除されるなどメッセージを出してきた。市場では講演内容はハト派的と捉えられたようだが、個人的にマーケットは過剰反応とみている。

パウエル議長の講演を受けて、米株式市場は強く反応したが、米債市場のイールドカーブはスティープ化したものの比較的小幅な動きにとどまったことから円債市場への影響は限られそうだ。

●将来的な利上げ回数の下振れ示唆、歓迎すべきこと

<クレセット・ウエルスアドバイザーズ(シカゴ)の最高投資責任者(CIO)、ジャック・アブリン氏>

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は政策金利は中立レンジを若干下回ると指摘した。中立水準に近いと認めたわけで、将来的な利上げの回数が市場で考えられているほど多くない可能性が示唆された。文言が変更したことは確かで、投資家にとっては歓迎すべきニュースだ。

これによりリスク回避の妙味が薄れ、株式投資といったリスクテイクの魅力が増した。

政策調整を今日実施しても、その影響が感じられるまでにはしばらくかかるということにも注意を促す内容だった。ここから推定されるのは、FRBがかなり漸進的な姿勢を取るということだ。FRBは株式市場のボラティリティーにやや感度が高いようだ。トランプ大統領に耳を貸しているかどうかはわからない。

●利上げ休止示唆か、想定下回る可能性

<サントラスト・アドバイザリー・サービシズ(アトランタ)の米国マクロ・ストラテジスト、マイケル・スコルデレス氏>

政策の道筋をあらかじめ定めていないとの文言が重要だ。米連邦準備理事会(FRB)が必要なら(利上げを)休止するという、やや明確なシグナルを市場に送った可能性がある。データ次第という姿勢は市場が聞きたかったポイントだ。

(利上げは)機械的な操作で行うものではない。インフレ動向や成長指標、諸外国の動向はどうか。何か他の動向が鈍化すれば、想定したほど多く利上げを行う必要もない。2019年に(予想どおり4回の)利上げに踏み切るかは疑わしい。2、3回にとどまる可能性もある。

●利上げ、年内あと1回・来年2回となる可能性

<チャールズ・シュワブのトーレディング&デリバティブズ・バイスプレジデント、ランディ・フレデリック氏>

政策金利が中立金利を若干下回る水準にあるとのパウエルFRB議長の認識を受け、市場は金利が3%を超えることはないと解釈したと考える。

あと1回(0.25%ポイント)の利上げで、金利は2.5%となることから、来年の利上げは2回のみとなる見通しだ。これはトランプ大統領を満足させる可能性がある。

●市場やトランプ氏の要望に応えた格好

<ブルーダーマン・アセットマネジメント(ニューヨーク)のオリバー・パーシュ氏>

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は今回の講演で、従来の金利見通しがおそらく積極的過ぎたと認めつつ、利上げペースの減速に含みを残した。そういう意味で、議長はまさに市場やトランプ大統領が欲しがっていたものを与えた格好だ。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げとともに、打ち止めに向け何らかの手掛かりが示されるだろう。声明では通商や関税と経済成長への影響に関する記述が増えると予想される。バランスシートの圧縮やその見通しの変化については依然不透明感が根強い。

*コメントを追加しました。
https://jp.reuters.com/article/instantview-fed-idJPKCN1NX2QE

 

コラム2018年11月29日 / 13:27 / 11分前更新

金融安定に胸張る米FRB「リスク軽視」の恐れ
Gina Chon
2 分で読む

[ワシントン 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)が28日公表した金融システムに関する初のリポート「金融安定報告」は、いくつかの不安要素に関して深刻にとらえていない。

パウエルFRB議長も同日の講演で金融システムは安泰だと歩調を合わせた。貿易摩擦や企業債務といったリスクへの言及はほんのわずかだ。

FRBは2008年の世界金融危機以来、金融の安定により大きな努力を払ってきた。パウエル議長は講演で金融の安定の重要性を強調し、銀行の自己資本は「グレートリセッション」以前に比べて強固になっていると指摘。失業率が約50年ぶりの水準に下がっていることを引き合いに出し、米経済の見通しについては「好ましい材料が非常に多い」とも発言した。

さらにパウエル氏は、米政策金利は中立水準に近づいていると述べ、トランプ米大統領などFRBの利上げを批判している勢力にとっては、追加利上げの回数はそれほど多くないかもしれないと受け止めることが可能になった。

しかしいくつか心配は残る。米企業の抱える負債は対国内総生産(GDP)比で高水準に達しており、FRBもリスクのある高利回り債とレバレッジドローンが9月までの1年間に5%増えて2兆ドルを超えたと指摘した。金利が上昇して成長が鈍れば、こうした債務が問題化しかねない。それにもかかわらずFRBの報告は「企業の借り入れ状況は全体として満足できる状態が続いている」と結論付け、自信たっぷりだった。

貿易摩擦はさらに小さな扱いだ。国際通貨基金(IMF)は10月、米国の輸入関税導入と他国の報復関税を理由に、世界の今年の成長率見通しを従来の3.9%から3.7%に引き下げたというのに。世界貿易の伸び率は昨年の5.2%から4.2%に鈍化する見通しだ。

保護主義は来年さらに激化するかもしれない。トランプ大統領と習近平・中国国家主席が30日から始まる20カ国・地域(G20)首脳会合における会談で「停戦」を打ち出さなければ、米政府は中国からの輸入2000億ドル相当について輸入関税の税率を10%から25%に引き上げる構えだ。米国は輸入関税の対象を全ての中国製品に広げる可能性もあり、中国以外の国からの自動車・自動車部品に輸入関税を課すというトランプ氏の意向に変化は見られない。

FRBの報告は新興国市場の動揺や英国の欧州連合(EU)離脱問題にも形ばかり触れただけだ。いずれ当局は、こうした態度を後悔することになるのではないか。

背景となるニュース

*パウエルFRB議長は28日の講演で、金融は全般的に安定しており、米経済の見通しについては「好ましい材料が非常に多い」と述べた。その上で、金利は歴史的な水準に照らして低く、中立金利を若干下回る水準だと付け加えた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/frb-powell-column-idJPKCN1NY0CO
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/665.html

[経世済民129] 世界経済、10月の予測より悪化している公算−IMF専務理事  19年リセッションないBR ECB長期資金供給オペ再開ない
世界経済、10月の予測より悪化している公算−IMF専務理事
Andrew Mayeda
2018年11月29日 11:47 JST
• 相当なリスクが顕在化し一層の暗雲が垂れ込めつつある時期
• 最近の関税を反転させ、新たな貿易障壁を回避することが不可欠

Christine Lagarde
Photographer: Justin Chin/Bloomberg
世界の経済成長は1カ月半前の予想と比べても一段と減速している可能性があり、悪影響の大きい貿易戦争を各国が直ちにやめる必要性を裏付けていると国際通貨基金(IMF)が28日指摘した。
  IMFは世界の成長予測を10月に下方修正したが、週末にブエノスアイレスで開催される20カ国・地域(G20)首脳会合を控え公表した報告書では、見通しがさらに悪化していることを最近の統計が示唆しているとの分析を示した。
Slipping a Little
The IMF cut its 2018 GDP forecast for the world, euro area and emerging markets

Source: International Monetary Fund's October World Economic Outlook
  ラガルドIMF専務理事は報告書に関連したブログ投稿で、「歴史的な基準に照らせば十分に長い堅調な成長が続いてきたが、今は大きなリスクが顕在化しつつあり、暗雲が垂れ込めつつある時期に直面している」と記した。
  同専務理事は特定国の名指しを避けながらも、最近課せられた輸入関税を解除するよう各国首脳に呼び掛け、「貿易障壁引き上げは関与する全員にとって最終的に自己破壊をもたらすことわれわれは知っている。最近の関税を反転させ、全ての国が新たな貿易障壁を回避することが不可欠だ」と訴えた。
  また、景気が一段と軟化した場合に対応できるよう可能な範囲で支出を削減するよう各国に促し、利上げについて各中央銀行は「漸進的でコミュニケーションを重視し、データに応じた道」を歩む必要があるとも論じた。
原題:Global Economy May Be Slowing More Than Expected, Lagarde Says(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXMU16S973801?srnd=cojp-v2

 

ECB、12月に長期資金供給オペ再開を発表する公算小さい−関係者
Jana Randow、Carolynn Look、Piotr Skolimowski
2018年11月28日 22:58 JST
• 政策委員会、議論の大半を償還金再投資の戦略に割く見通し
• 依然として年末での資産買い入れ終了を確認する方向
欧州中央銀行(ECB)が12月の政策委員会会合で、銀行向け長期資金供給オペの再開を発表する公算は小さく、依然として資産買い入れの終了を確認する見通しだ。事情に詳しいユーロ圏の関係者が明らかにした。
  このような内部議論は部外秘であることから匿名で語った関係者によると、12月の政策委員会では議論の大半が満期を迎えた債券の償還金再投資に充てられる見通し。ECBの報道官はコメントを控えた。

  ユーロ圏では軟調な経済指標が相次ぎ、イタリアの金融市場が圧迫を受けていることから、域内経済の健全性やECBの対応を巡り臆測が流れている。エコノミストの一部は、景気の軟化局面を乗り切るためECBが新たな長期資金供給策を打ち出すと見込んでいる。
  ECBは12月13日の政策委員会会合後、最新の経済見通しを公表する。
原題:ECB Is Said to See No Need for New Long-Term Loans in December(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-28/PIWO5B6S972E01?srnd=cojp-v2


 


「19年にリセッションはないと賭けてもいい」ブラックストーン社長
Shelly Hagan、Sabrina Willmer
2018年11月29日 11:30 JST
ボラティリティーの高まりがチャンスを提供とグレイ社長
19年の不動産についてはやや横ばいか非常に低い伸びを予想

米ブラックストーン・グループのジョン・グレイ社長は、エネルギーのような一部資産クラスの価格が下落する状況で、ボラティリティーの高まりがチャンスを提供していると指摘した。

  ブルームバーグが28日にニューヨークで主催した「ザ・イヤー・アヘッド」サミットで、グレイ社長は「多くの資産の価格が動いている。より面白い投資環境になりそうだ」と語った。

  グレイ氏は資産価格の下落にもかかわらず、米経済の成長が来年も続くと考えている。

ブラックストーン・グループのジョン・グレイ社長は、ボラティリティーは「一般的には良いことだ」と語る

出所:ブルームバーグ)
  同氏は「金利上昇が景気を減速させることはあり得る」としながらも、銀行のレバレッジ拡大などリセッション(景気後退)を引き起こす要因を示すような兆候は表れておらず、「19年にリセッションはないと賭けてもいい」と述べた。

  さらに米国の不動産は「サイクルのより成熟した部分」に属するが、物件不足を理由に住宅市場に強気だと発言。19年全体の不動産については「やや横ばいか非常に低い伸び」になると予想した。

原題:Blackstone’s Gray Says He’s ‘Willing to Bet No Recession in ’19’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-29/PIXJC56S972H01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/667.html

[戦争b22] 中国が南シナ海に築いたミサイルの「万里の長城」対決する米海軍は戦力の転換が必要に 日本に迫る危機:残る手は憲法の無効宣言
中国が南シナ海に築いたミサイルの「万里の長城」

対決する米海軍は戦力の転換が必要に
2018.11.29(木) 北村 淳

南シナ海・南沙諸島のミスチーフ礁(2017年4月21日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / TED ALJIBE〔AFPBB News〕
 中国が南シナ海・南沙諸島の7つの環礁を埋め立て、人工島を建設する作業を邁進していた状況を、当時のアメリカ太平洋軍司令官であるハリー・ハリス海軍大将(現在、駐韓国アメリカ大使)は「great wall of sand」(埋め立ての砂で築き上げる万里の長城)と表現し、中国による南シナ海での支配圏の強化に強い警鐘を鳴らしていた。
 そして先日、アメリカインド太平洋軍司令官、フィリップ・デイビッドソン海軍大将は、「great wall of sand」と呼ばれた南沙諸島人工島や西沙諸島に、中国軍が地対艦ミサイル(SSM)や地対空ミサイル(SAM)を配備し、アメリカ軍艦艇や航空機の接近を阻止する態勢を固めている状況を「great wall of SAM」と表現し、大いなる危惧の念を表明した。
アメリカ側はたかをくくっていた
 ソ連との冷戦終結後の東アジア方面では、ソ連海軍の脅威が消滅したため、アメリカは大平洋(南シナ海や東シナ海を含む)からインド洋にかけての軍事的優勢をほぼ完全に掌握し続けてきた。それに対して、米ソ冷戦末期頃から近代化努力を開始した中国海軍が、21世紀に入ると急速に戦力強化の姿勢を示し始めた。
 しかしながら、世界最強の空母戦力を誇っていた(現在も誇っている)アメリカ海軍は、「中国海軍が“まともな”航空母艦や空母艦載機を手にし、空母部隊を運用できるようになるのは(もし実現できたとしても)相当先のことになる」と考えていた。
 潜水艦戦力をとっても、やはり世界最大の原子力潜水艦戦力を有していた(現在も有している)アメリカ海軍から見ると「中国海軍の原潜のレベルが米海軍に追いつくのははるか先の未来」と考えていた。
 要するに、いくら中国が海洋戦力の強化に勤(いそし)しんでも、アメリカ(それに日米)の海洋戦力にとって深刻な脅威になることなど、少なくとも近未来には起こりえないと、アメリカ側はたかをくくっていたのだ。
戦略最優先目標を達成しつつある中国
 ところが、ここで忘れてはならないのは、アメリカの海軍戦略と中国の海軍戦略がまったく異なることである。
 アメリカの海軍戦略は、世界中の海に空母部隊を展開させることによりアメリカの国益と軍事的優勢を維持することを主眼に置いている。一方、中国の海軍戦略は、アメリカ軍とその同盟軍による中国沿岸への接近を阻止することを主眼に置いている。それぞれが必要とする海洋戦力の構成内容や用い方が相違しているのは当然である。
 中国の海軍戦略にとっては、アメリカ海軍に匹敵するレベルの、すなわち世界中の海に進出展開して沿岸諸国を威圧する能力を持つ空母艦隊(巨大航空母艦と高性能艦載機、空母を護衛するイージス巡洋艦とイージス駆逐艦、艦隊の露払いをする攻撃原潜、それに戦闘補給艦)を保有することは必須ではない。なぜならば、そのような空母艦隊が存在しなくとも、中国の戦略主目標である「アメリカ海洋戦力の中国領域への接近を阻止する」ことは可能だからである。
 実際に中国は、東シナ海や南シナ海を中国大陸沿海域に接近してくる米軍や自衛隊の艦艇や航空機を撃破するための地上発射型対艦ミサイルや対空ミサイルを極めて多数沿岸地域に配備しているだけでなく、アメリカ海軍が警戒を強めている対艦弾道ミサイルまで開発している。また、東シナ海や南シナ海での防衛任務に投入される各種艦艇(攻撃原潜、通常動力潜水艦、駆逐艦、フリゲート、コルベット、ミサイル艇)には、強力な対艦攻撃能力が付与されており、新鋭駆逐艦には高性能防空システムが装備されている。加えて、防空用、そして対艦攻撃用の戦闘機、攻撃機、爆撃機も多数保有している。
 このような東シナ海から南シナ海にかけての中国本土沿海域への接近阻止態勢に留まらず、中国当局がその大半の主権を主張している南シナ海での軍事的優勢を維持する態勢も、着実に手にしつつある。
 数年前までは、いくら中国が、南沙諸島の領有権をはじめとして南シナ海の8割以上の海域をカバーする「九段線」の内側海域の主権を主張しても、そのような広大な海域での主権を維持すること、すなわち軍事的優勢を確保するための海洋戦力を手にすることは至難の業である(あるいは、はるか先の未来の話である)と米軍側では考えられていた。もちろん、そのような楽観的予測は誤りであり、中国の海洋戦力建設スピードを見くびってはならないと警鐘を鳴らす勢力も存在したが、少数派に留まっていた。
中国当局は、南シナ海の九段線内は「中国の海洋国土」であると主張している
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 ところが、中国海洋戦力に対する警戒派が危惧していたように、中国は南沙諸島に7つもの人工島を建設するという方針に打って出た。そして、ハリス太平洋軍司令官(当時)が「great wall of sand」として何らかの強硬な抑制策をとらねばならないと警告していた間にも、中国はそれらの人工島に3カ所の本格的軍用飛行場を含む海洋軍事施設を建設し続けた。
 こうして人工島の埋め立て作業が確認されてからわずか4年足らずのうちに、南沙諸島人工島基地群や、かねてより実効支配を続けている西沙諸島にも、アメリカ軍艦艇や航空機の接近を阻止するための地対艦ミサイルや地対空ミサイルが展開し、デイビッドソン司令官が「great wall of SAM」と呼称するようなミサイルバリア網が出現してしまったのである。
 多くのアメリカ軍関係者たちが考えていたように、今のところ中国海軍はアメリカ海軍に匹敵する巨大空母を中心とする空母艦隊はまだ手にすることはできていない。しかし、中国の海軍戦略にとって最優先事項である「敵海洋戦力に対する接近阻止態勢」は、南シナ海において確立させつつあるのだ。
米海軍は戦力内容の転換が必要に
 これに対してアメリカ海軍は、東シナ海や南シナ海、そして西太平洋で、中国海洋戦力を抑制できるような態勢を確保しなければ、東アジアでの軍事的優勢を維持することができない状況に直面している。
 そのためには、それらの海域上空から米軍側に脅威を加える中国空軍と中国海軍の戦闘機、攻撃機、ミサイル爆撃機などを撃破しつつ、それらの海域で活動する中国海軍攻撃原潜、通常動力潜水艦、駆逐艦、フリゲート、コルベット、ミサイル艇などを打ち破らなければならない。同時に、中国本土沿岸地域、西沙諸島、南沙諸島人工島などの地上に展開している各種ミサイルシステム(移動式発射、コントロール装置に搭載されている)も破壊する必要がある。
 つまり、アメリカ海軍は強力な防空能力、対艦攻撃能力、対地攻撃能力を身につけて、西太平洋から東シナ海や南シナ海に接近しなければならないのである。
 ところが米ソ冷戦期以降、アメリカ海軍は空母艦隊を敵の攻撃から防御する戦力の強化には多大な努力を重ねてきたが、敵艦艇や地上移動式ミサイル発射装置などを攻撃する戦力は重視してこなかった。そして近年は、北朝鮮による弾道ミサイル開発に対応して、とりわけ日本周辺海域に展開するイージス巡洋艦やイージス駆逐艦に弾道ミサイル防衛を担わせる態勢を固めていた。
 したがってアメリカ海軍は、中国海洋戦力と対峙し、万一の際には打ち破るために、弾道ミサイル防衛重視、そして自衛態勢重視というこれまでの基本姿勢をかなぐり捨てて、敵艦・敵地攻撃優先という方針へ転換することが迫られている。その結果、日本は、これまでアメリカ海軍が担ってきていた弾道ミサイル防衛戦力を肩代わりする努力が迫られることになるであろう。その動きについては、稿を改めさせていただきたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54790


 


日本に迫る危機:残る手は憲法の「無効宣言」か
危機迫る国際情勢を認識しない野党への対処法
2018.11.29(木) 森 清勇
日中企業3000億円規模の商談成立、安倍首相訪中で
中国・北京の人民大会堂で開催された第1回日中第三国市場協力フォーラムで演説する安倍晋三首相(2018年10月26日撮影)。(c)Lintao Zhang / POOL / AFP 〔AFPBB News〕

真のシビリアン・コントロールとは
 自衛隊に30余年間奉職した。当初は生活のためであったが、次第に意識は国家と国民を守るという思いに変わっていった。

 同時に、何でこんなに虐められるのだという悔しい思いも強くなった。

 憲法違反と批判されていたからであるが、市民に迷惑をかけないように演習場には明け方までに到着するように真夜中に移動することを常とした。

 そうした中でシビリアン・コントロールに違和感を覚えたのは、三矢研究(昭和40年に発覚)と栗栖発言(昭和53年)が問題になった時であった。

 あらゆる事態を想定し計画を練ることは自衛隊の任務遂行に不可欠であり、また自衛隊が動けるように法令が整備されるのは法治国家として当然であると思っていたからである。

 シビリアン・コントロールを逸脱することは許されないが、政治がしっかりしないと自衛隊は持てる力も存分に発揮できないことも事実である。

 現に初のカンボジアPKOに所属部隊から隊員を派遣することになったが、政治が許容した任務はただ一つで、あまりにぎすぎすしていた。案の定、現地の要求などに即応不可で持てる力を発揮できず、双方が失望する状況であった。

 実際、被派遣国や国連の関係部署の依頼などから任務がどんどん拡大され最終的に9任務となった事実からも、シビリアン・コントロールについての政治家の認識問題が浮き彫りになった。

 こうしたシビリアン・コントロールに疑問をもち、自衛官から政治家に転じた人士もいた。

 しかし、その後も今日に至るまで、現実の国際情勢をあまりにも考慮しない「御身大切」な政治家が蔓延り、日本の「国家と国民」を忘れた政治が続いているように思えてならない。

戦力なき日本が蒙っている諸々の事案
 数年前の安保法制に関する国会論戦時、野党が日本の安全保障をどこまで考えているのか理解できなかった。

 安全保障問題であるから、想定上の敵性国家や敵性勢力などがあり、具体的な地理も関係してくるであろうに、実際の問答は禅問答や神学論争という類でしかなかった。

 日本の安全を論じながら、リアリズムに欠け空理空論の、誤魔化しのように思えてならなかった。

 長年防衛に関わってきた筆者を含めた者に理解できない論戦が、ただでさえ関心が薄い多くの国民に理解できようか。国民の能力が低いのではなく、ざっくり言って、質問している議員自身が分かっていないとしか思えない。

 国家間の機微にわたる問題で、防衛には秘密事項もたくさんあり口外できないことも多い。従って、腹を割って論戦するためには、秘密聴聞会なども必要なはずである。

 米国の議会報告には黒塗り箇所も結構多い。公開できない論戦が真剣に行われている証左である。

 民主主義とはいえ国家の安全や防衛に係る事項では、議論をするが公開できない部分も多く存在するということであるが、こうした基礎の基礎さえ日本では整備されていない。

 日本はスパイ天国とも言われる。時折発覚して問題になることもあるが、さっさと逃げられほとんど解明できない。いまは人間を介するスパイ行為ばかりでなく、サイバー攻撃による知財窃盗などに拡大している。

 そもそも、安全保障や防衛に関わる報告が行政文書ということからして理解できない。

 日報問題のような事案が起きると、現地部隊の正直な報告にさえ支障をきたしかねない。ひいてはシビリアン・コントロールが機能しない危険性にもなり得る。

 政治の不作為が問題を引き起こす原因になっている現実に目を向ける必要がある。

 日本の安全を考えるならば、いまや専守防衛、非核3原則、敵地攻撃、PKO5原則、(上空通過の)弾道ミサイル対処、領海・空侵犯対処、竹島・尖閣諸島問題などなど、リアリズムの立場から国会では日夜を徹してでも激論が交わされなければならない状況にあるのではないだろうか。

 日本人拉致は、軍隊がなく情報機関も持ち得ない日本が攻めてくるはずはないとみた北朝鮮による国家犯罪である。

 しかし、日本はその不法性を責め、力をもってでも取り戻すという主権行為を何一つとり得ない。

 日本は主権国家でないも同然である。被害者家族は日本人であることにどんな思いを抱いておられるであろうか、想像するだけで気が重い。

劇変が予測される国際情勢
 いま世界情勢は看過できないほど流動しており、劇変が予測される。

 英国のEU離脱、ドイツの政治的混乱、そこにつけ込むロシアの動きなどが伝えられている。日本が石油を依存する中東の情勢も不安定化している。

 何よりも普遍的価値観を満ち合わせない中国の台頭が日本周辺の情勢を混乱させている。同盟国の米国も自国第1主義を掲げ、貿易収支で中国や日本に圧力をかけつつある。

 特に米中貿易摩擦、今では貿易戦争とさえ呼称されるまでになっている影響は看過できない。また、南シナ海では米中が一段と対決姿勢を強めており、武力解決しかないという識者までいる。

 安倍晋三首相が7年ぶりに訪中した首脳会談で戦略的互恵関係を維持し、「競争から協調へ」「隣国同士として互いに脅威にならない」「自由で公正な貿易体制を発展させる」3原則を確認した。

 その中には「東シナ海を平和・協力・友好の海とする」とも謳われている。

 しかるに、首脳会談以降、こうした約束などどこ吹く風の中国である。尖閣諸島の接続水域侵入は以前にも増して頻繁になっている。同行する公船も4隻が通常化しつつある。

 会談で日本の行動に釘を刺したとでも中国は勝手に思い込んでいるのではないだろうか。

 中台関係も流動化の気配である。11月24日の統一地方選挙で蔡英文政権の求心力低下が明確になった。台湾外交に圧力をかけてきた中国は、来年に予定される総統選挙に向けた干渉を一段と強めるに違いない。

 半島情勢は予断を許さない。米朝首脳会談後、文在寅政権は異常とも思える速度で南北関係の融和を図り、日米韓の結束に綻びをもたらす危険性が高まっている。

 北朝鮮の核・ミサイルが削減されている兆候がないまま、米韓の合同演習は中止され、DMZ(非武装地帯)で切断されていた道路は接続された。今や在韓米軍は人質同然になりつつあり、存在意義が薄れている。

 万一、核保有のまま半島が共産党政権になると、日本が対馬海峡を挟んで直接共産圏と対峙することになる。

 西部方面管内では沖縄と対馬の2正面への対処が必要になり、当然のことながら今のままの日本の防衛態勢は許されない。

 日露関係は平和条約締結云々の話まで進みつつあり、安倍政権で決着の努力が行われるであろう。

 しかし、ロシアは話の進展をぶち壊すかのように、北方領土への軍備の増強を強め、また第3国の企業誘致を進めている。

 以上、簡単に国際情勢を概観しただけでも激変が予想される中で、日本の安全保障のブレーキになっている憲法改正への展望が開けない。

開かれない憲法審査会
 野党が国会での憲法審議に応じようとしない。いったん法審査会に出席すれば審議に応じないわけにはいかないから、欠席は議論そのものを回避したい野党の戦略であろう。

 しかし、これは立憲主義国家の在り方ではない。ましてや党名に「立憲」をつけている政党のとるべき行動であろうか。

 議論の府と呼ばれる国会である。国際社会の激変がもたらす国難が日本にもひしひしと押し寄せているというのに、論戦が行われない国会でいいのだろうか。良いわけがない。

 佐瀬昌盛防衛大学校名誉教授(「現実に目覚めた日本人の憲法観」『Voice』2018年10月号所収)によると、安倍首相が憲法の改正を目指していると報道したのは2006年11月23日付「産経新聞」の榊原智記者であったという。

 しかし、この時の改憲内容は明確でなかった。

 その後、第2次安倍政権が発足して1年余後の2014年2月、衆院予算委員会で96条の改正手続きについて言及している。この時点までは改憲の焦点が定まっていなかったということであろう。

 9条改変の是非が活発化したのは、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書が出た2014年5月以後のようだ。

 そして、2017年5月3日の「読売新聞」のインタビューで、首相としてではなく自民党総裁として、「平和主義の理念はこれからも堅持」すると9条残置のうえで、与党公明党の加憲に配慮してのことであろうが、「自衛隊」を書き加える考えを示した。

 爾後、最高指揮官としても「自衛隊は違憲という(憲法学者などの)考えがある中で、国のために命を懸けて頑張ってくれとはとても言えない」として、首相は「自衛隊」追加案を提示していく。

 しかし、憲法改正を議題にすること自体を避けたい野党は、2017年の通常国会、臨時国会、また2018年の通常国会までも「モリカケ問題などという低劣な問題」(石原慎太郎「日本よ、完全自立への道標――憲法改正は民族の沽券」『WiLL』2018年7月号所収)にこだわり続ける。

 この間、日本の安全保障に大きな影響を及ぼす北朝鮮と韓国、さらには中国の情勢が大きく変化した。

 安全保障に真剣に取り組むべきだという認識が国民の間に高まったにもかかわらず、野党は10月に始まった臨時国会でもモリカケに代わるかのように外国人労働者受け入れを最大テーマに押し上げ、またも憲法審査会での憲法論議を避け続けている。

適時適切に動けない自衛隊
 ともあれ、日本国憲法では日本の独立も国民の安全も保障できない現実が明確である。

 それは、現憲法の素案がGHQによる脅迫のうちに受領され、国会でも総理がハンカチで目を吹き払いながら「受け入れざるを得ない」と説得しなければならない状況下にあったからである。

 しかも、条文は日本の国柄も伝統も無視する日本骨抜き憲法でしかなかったのだ。

 吉田茂首相(当時)はそうしたことが分かっていたが、国民の塗炭の苦しみもあり、責任は自分1人が負うからと、安全保障を米国に任せる安保条約に署名し、自分の内閣では「戦力なき軍隊」として自衛隊を認めたのだ。その後の内閣も、「軍隊」を言い出す勇気がなかった。

 今のままでは、主として野党各党は国民受けだけを狙って日本の安全を忘れているとしか言いようがない。

 国会運営でも法案審議でも建前ばかりで本音が語られない。その顛末はペロポネソス戦争と同じであろう。

 古代アテネはソクラテスやプラトンなどの哲人を輩出した都市国家であった。しかし、人民(デモス)は民主主義を過大解釈して自己欲求ばかりを際限なく高め、国家をゆすり、たかりの対象として弱体化させた。

 その結果、専制国家スパルタとの戦争では兵役を嫌い、享楽一途で道徳を廃れさせ、敗戦を迎える。

 その後経済は復興するが、今度は「平和国家」に徹し続け、スパルタに代わって台頭したマケドニアに無条件降伏を突きつけられると一戦を交えるが、惨敗して亡国となる。

 スパルタやマケドニアを米国や中国に擬すると、今日の日本はアテネに相当するであろう。明日の日本は中国に吸収されていいのか? いいはずがない。

無効宣言してはどうか
 ここまで切迫しても、憲法審査会が開かれず進展もない。現憲法が占領下の外圧で、しかも許せないのは天皇の安全をちらつかせながら押しつけてきたことである。

 時の総理大臣は悔し涙をハンカチで拭きながら、現時点では不満も大いにあろうが隠忍自重して受け入れざるを得ない旨の発言をして採択されたのである。

 憲法公布に当って、天皇は「日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至ったことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法73条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれを発布せしめる」と勅語を発せられた。

 しかし、実態は先述の通りであり、全く国民の総意に発しても、73条によってもいなかったのである。

 日本に残された時間がなくなりつつある。

 古代アテネの二の舞にならないためには、首相が潔く現憲法の「無効宣言」を行い、期限付きで「大日本帝国憲法」を復活させるか、最大政党の自由民主党が成文化している「日本国憲法改正草案」を暫定的に施行し、国民総意の「新憲法」を早急に編み出す以外にないのではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54785
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/436.html

[戦争b22] 映画が悲しく伝えるナショナリズムの広がる時代 テクノロジーのもたらす限りない進歩の夢と戦争のための戦争 原油価格急落、5

映画が悲しく伝えるナショナリズムの広がる時代

テクノロジーのもたらす限りない進歩の夢と戦争のための戦争

2018.11.29(木) 竹野 敏貴

フランス・パリの凱旋(がいせん)門で開かれた第1次世界大戦終結100年記念式典の様子(2018年11月11日撮影)。(c)BENOIT TESSIER / POOL / AFP〔AFPBB News〕
 第1次世界大戦終結100年を迎えた11月11日、世界各地で追悼式典が行われた。
 激戦の地フランスでは、休戦協定が発効した11時に式典が始まり、60か国以上の国家首脳や国際機関幹部ら120人を超える世界の要人が、無名戦士墓のある凱旋門で戦没者を追悼。
 エマニュエル・マクロン仏大統領がホストを務め、フランス同様、連合国で参戦した米国の現首脳ドナルド・トランプ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領も参席した。
 しかし、世界のトップが雨降るシャンゼリゼ通りまでバスで乗り合わせ、凱旋門へと並び歩く列に2人の姿はなかった。
 「世界協調」を示す演出に異を唱えるかのような超大国首脳のこうした「単独行動」は、世の現状を象徴。
 式典でマクロン大統領は「Le patriotisme est l’exact contraire du nationalisme. (パトリオティズムとナショナリズムは真逆)」と語り、自国第一主義を掲げるトランプ大統領や各国のポピュリストたちを牽制した。
 マクロン大統領は9日までの6日間、アルデンヌ、ソンム、マルヌなど特に犠牲者の多かった11県を訪れ「歴史」を再確認、式典後も「平和フォーラム」を主催、市民、企業、NGOなど社会の代表者とも、協調に基づく多国間主義を進めていく姿勢を見せている。
 式典には、連合国もう1つの主力で、100万人近い犠牲者を出した英国のテリーザ・メイ首相が出席していなかった。
 とは言っても、別に「Brexit」の影響、というわけではない。
 時を同じくしてロンドンでも、エリザベス女王やチャールズ皇太子参席のもと、ドイツからフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領も招き、厳かに式典が執り行われていたのである。
 英国では、例年、11月11日に「Remembrance Day」の式典が行われる。
 メイ首相は9日にはベルギーを訪問しており、シャルル・ミシェル首相とともに、大戦最初の激戦地であり、最後の最後ようやく解放された地でもあるモンス(Mons)で、犠牲となった英兵の墓に、Red Poppy(赤いひなげし)の花輪を捧げている。
 英国ではRed Poppyは「Remembrance Poppy」と呼ばれ戦没者を象徴する。
 大戦に医官として従軍したカナダの詩人ジョン・マクレエが、戦死した友人の葬儀の際インスパイアされたという、Poppyが埋め尽くすフランダースの野に眠る戦死者の視点から語られる詩「In Flanders Field」に由来している。
 メイ首相は、英軍最後の戦死者ジョージ・エドウィン・エリソンの墓に捧げた花輪に、西部戦線で赤十字に従事したローレンス・ビンヨンの詩「For the Fallen」からの引用を添えた。
 そして、わずか17歳で最初の犠牲者となってしまったジョン・パーの墓には、ガリポリへと向かう病院船(hospital ship)で敗血症のため死亡した「戦争詩人」ルパート・ブルックの「The Soldier」が書かれたカードを添えられていた。
 続いてフランスの激戦地ソンム県を訪問したメイ首相は、マクロン大統領とともに、7万人以上の英国と英連邦兵士を追悼した。
 実は、マクロン大統領自身、ソンム県の生まれで、英国人である曾祖父がこの地で戦い、戦後、フランスで暮らしていたのである。
 ここでは、Red Poppyにフランスでの追悼花「ブルエBleuet(de France)」をあわせた花輪が捧げられ、ソンムの戦いで行方不明となったジョン・ウィリアム・ストリーツの詩「A Soldier’s Cemetery」の書かれたカードが添えられた。
 日本も連合国の一員として戦い、戦後、国際連盟の常任理事国にもなっているが、式典に出席したのは安倍晋三首相ではなく麻生太郎副総理だった。
 日本でも式典は行われているが、あまり注目も浴びず、その「原因」、その「歴史的」意味合いが議論されることは少ない。
 4年余り続いた第1次世界大戦開戦の「原因」は、一言でいえば、欧州列強の植民地政策を中心とした国家主義的膨張、となるのだろう。
 しかし、同盟、民族、宗教、イデオロギー、経済など様々な要素が複雑に絡み合い、単純明快に答えることなどとてもできない。
 戦いそのものも、国家間戦争と内戦が、革命と反革命が、民族自決と植民地再構成が混在。
 戦線も西部戦線、東部戦線、オスマン帝国領、大西洋や地中海、さらにはアジア、アフリカ、オセアニアまで、文字通り世界中。
 大戦直前には伊土戦争やバルカン戦争、直後には希土戦争やアイルランド内戦、さらには内戦続くロシアでのシベリア出兵のような干渉戦争まであり、主語を変えれば、もつ意味は大きく変わってくる。
 かつては当然のようにドイツに責任を一任する分析がなされていたが、近年、冷静に参戦国それぞれにそれなりの責任を帰するようにもなっている。
 それでも、全貌をイメージするため、あえて映画を1本だけ選んでみたいと思う。
 ロシア革命も英国の三枚舌外交も青島の戦いも出てこないが、ブラックな笑いと当時兵士の間で歌われた歌の替え歌に包み、マクロン大統領同様の西部戦線の戦地巡りができるシニカルな寓話『素晴らしき戦争』(原題『Oh! What a Lovely War』)(1969)なら流れが掴めるのではないだろうか。
 英国有数の海浜リゾート地ブライトンに建つロイヤル・パビリオンの豪勢な一室。
 ドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア帝国皇帝ニコライ2世、レイモン・ポワンカレ仏大統領、エドワード・グレイ英国外相、モルトケ・ドイツ帝国参謀総長(小モルトケ)、レオポルト・ベルヒトルト墺外相など、欧州の王族、政治家、軍人たちが、「外交」にいそしんでいる。
  欧州の王家は、婚姻による結びつきが強く、英国王ジョージ5世はもとより、ヴィルヘルム2世もニコライ2世の皇后アレクサンドラも、大英帝国の一時代を築いたヴィクトリア女王の孫。
 帝国主義に覆われた欧州の「Balance of Power」を保つため、軍事同盟による集団的自衛権のみならず、気高き血筋「Blue Blood」による結びつきが重要な役割を担っていたのである。
 「集合写真」を撮ろうと、狂言回したるカメラマンが声をかける。
 (写真に入りきらないので)「イタリアとトルコ、もっと寄って!」
 中心には、オーストリア・ハンガリー帝国を近々継ぐはずのフランツ・フェルディナント大公夫妻がいる。2人はカメラマンからRed Poppyを渡される。
 シャッター音は銃声となり、大公夫妻は倒れる。カメラマンが叫ぶ。「オーストリア大公暗殺!」。
 1914年6月28日、大公夫妻は、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで、セルビア人青年ガヴリロ・プリンツィプに暗殺された。
 長くオスマン帝国の支配下にあったその地は、帝国の崩壊進む1878年のベルリン会議で、施政権がオーストリア・ハンガリー帝国へと移り、1908年、青年トルコ人革命の混乱に乗じ、「正式に併合」されていた。
 そして、バルカン諸国、諸帝国、それぞれの思惑が交錯し起きた「バルカン戦争」が終わって間もない、宗教、民族・・・、様々な価値観が狭い地域にひしめく「世界の火薬庫」バルカン半島で、汎スラブ主義vs.汎ゲルマン主義という構図で語られる大セルビア主義の青年によるオーストリア・ハンガリー帝国後継者の暗殺が起きたのである。
 オーストリア・ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は、ベルヒトルト外相に促され、宣戦布告書にサインする。
 パビリオンでは、カメラマンが各国首脳に向って叫ぶ。
 「皆さま、ご用意願います。いつも人気のWar gameの始まりです!」
 同盟、協約など、それぞれの立場を語り、駆け引きを続ける国家首脳たち。
 「ロシアが総動員令発令」「フランスも」
 「ドイツ、ルクセンブルク侵攻」
 もはや後戻りは自殺行為と小モルトケに諭され、ヴィルヘルム2世は戦うことを高らかに宣言。
 静観する旨語っていたグレイ英外相も、ドイツのベルギー侵攻の報に、もはや参戦は免れないことを悟り、ベルヒトルト墺外相と「外交辞令」を交わす。
 国家首脳たちの去った部屋には、無数のRed Poppyが届けられる。
 フェルディナント大公暗殺後、1か月にわたり、列強諸国は、外交交渉を続けていた。
 しかし、7月23日、ベルヒトルト外相の対セルビア強硬策のもと、オーストリア・ハンガリー帝国はセルビアに最後通牒を送付。
 厳しい要求を突きつけられたセルビアは概ね受けいれたものの、それでは不十分とばかり、ベルヒトルトが開戦に慎重な皇帝を押し切る形で、28日、宣戦布告。
 8月1日にはドイツがロシアに宣戦布告、翌日ルクセンブルクに侵攻し、3日にはフランスにも宣戦布告。
 東西2面を強国に接するドイツは、中立国ベルギーを「通り」フランスを短期間でつぶし、のちにロシアと戦うという「シュリーフェン・プラン」の小モルトケ改訂案を、実行に移したのである。
 かつてナポレオン・ボナパルトは「欧州の戦争はすべて内戦」と語った。
 「光栄ある孤立」を守り続けた大英帝国も、他国の外交が歴史的転回を見せるなか、自らも日英同盟を結び、やがて、かつての敵対関係、友好関係を覆すかのように再構成された、英仏露の三国協商vs.独墺伊の三国同盟という対立の構図となり、8月には入り、次々と宣戦布告、「欧州の内戦」が始まるのである。
 とは言いながら、三国同盟の一角イタリアは、「未回収のイタリア」をめぐりオーストリアと対立しており、当初中立を保持。
 翌年になってロンドン密約を結び、同盟を放棄、協商国(連合国)側で戦うことになる。
 10月同盟国側に加わり最後には大半の領土を失ってしまう「瀕死の病人」オスマン帝国ともども、映画での開戦前「集合写真」では端っこにいた・・・。
 ブライトンの浜辺で休日を過ごす普通の英国人スミス一家。
 楽し気な楽隊を追い、桟橋に辿り着けば、遊園地のゲートには「第1次世界大戦」との電光が点灯。
 入り口でイ英国海外派遣軍(BEF : British Expeditionary Force)ダグラス・ヘイグ司令官から入場券を買ったスミス一家は、フランス軍の人形劇を見たり、射撃をしたり、楽しい時間を過ごしている。
 やがて画面は戦場へと移行、ジャック・スミスは、塹壕で銃を構えている。
 英軍最初の大きな戦闘、ベルギーでの「モンスの戦い」のさなか・・・。
 ドイツの予想に反し、ベルギーは抵抗を見せた。8月4日には英国も宣戦布告。
 9月のマルヌ会戦でその勢いが止まると、以後、「西部戦線」は汚く湿った塹壕で文字通り泥沼の消耗戦を続けることになる。
 「東部戦線」でのロシアの攻勢も思いのほか早く、シュリーフェン・プランは破綻した。
 こうして「欧州の内戦」は、西部戦線、東部戦線、大西洋や地中海、さらには隣接する中東でも展開されていくが、のちに米国も参戦、「世界の中心」たる欧州列強の帝国主義ならではの同盟、協約、植民地といった要素から、アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカをも巻き込む「世界大戦」へと発展していくのである。
 クリスマスイブも塹壕で戦う兵士たち。
 ジャックが詩を読む。
「If I should die, think only this of me
That there’s some corner of a foreign field
That is forever England. There shall be
In that rich earth a richer dust concealed・・・」
 聞こえてくる「きよしこの夜」の歌声。ドイツ兵たちのものだ。
 塹壕を出、杯を交わす敵味方。しばし友となる。
 「今後こっちからは発砲しない」「こちらもだ」
 砲撃が始まり塹壕に戻る兵士たち。
 「休戦」の報告を受けた士官は電話でどなりつける。
 「何が親交だ。立派な反逆罪だ。死刑に値する」・・・
 ジャックが読んだ詩はメイ首相が英兵犠牲者追悼の花輪に添えたブルックの「The Soldier」。いまも、亡くなった兵士に捧げる詩としてよく引用される。
 当初、参戦国すべてが戦いは短期で決着をつけられる、と考えており、多くの兵士たちもクリスマス頃までには帰れる、と思っていた。
 しかし、現実は、泥沼の塹壕戦。そんななか、「クリスマス休戦」が西部戦線各地で起きたのである。
 「軍隊ほど楽しいところはない」
 ヘイグを中心とした士官たちが「Oh! it’s a lovely war」を歌う。
 後方には、1914年の連合軍犠牲者数150万を表示するスコアボードがある。
 「昨日爆撃された。今日もあるだろう。爆撃機がやって来る。だけど弾孔には4人しか入れない」
 塹壕の兵士たちは、厳しい日常を歌う。
 「毒ガス攻撃があった。またあるだろう。ガスマスクは1つしかない。3人逃げてくれて助かった」
 普通の市民たる一兵卒の目線と、彼らを消耗品のごとく扱う士官たちの視線が交錯し、シニカルな語り口で物語は展開していく。
 ブライトンの桟橋でヘイグは語る。
 「1916年の見通しは素晴らしい」
 直属の士官が反論する。
 「このままでは塹壕が伸びるだけです。膠着続きで決着はつかないのでは」
 ヘイグは動じない。
 「あと一押しだ。この種の戦争に英国はたけているのだ」
 「これは戦争じゃありません。殺戮(slaughter)です。日に5000、時に5万の命が犠牲となっているのです」との反論にも動じず、ヘイグは更なる命令を下す。
 「前線を歩いて突破せよ」・・・
 前線は動かず、塹壕戦は膠着状態。お互い犠牲を重ねるだけの戦いの命令を士官は出し続ける。自分ではどうにもできない兵士たちは、文字通りの消耗戦で、次々と死んでいく。
 ヴェルダン、モンス、イーペル、ルー、ヴィミー・リッジ。
 桟橋で、箱を覗き込み、様々な戦いの映像を少年が観ている。
 母親は言う「どれも同じでしょ」。
 1916年、スコアボードはソンムの戦いの経過を表示する
 初日の犠牲者6万人。同時に示される「Ground gains」は「0」。それでもヘイグは消耗戦を続行する。
 戦場で孤立すれば、行くも地獄、帰るも地獄の兵士たち。胸には色鮮やかなRed Poppy・・・。
 映画は、Red Poppyを兵士たちが死へと向かう象徴として使い続ける。
 第1次世界大戦最悪の犠牲者を出したソンムの戦いは、後世まで記憶される英軍最悪の負の遺産。BEF総司令官となっていたヘイグは、「The Butcher of the Somme(ソンムの肉屋)」とさえ呼ばれた。
 ソンムの戦いは、初めて本格的にフィルムに収められた戦いでもある。そのドキュメンタリー映画は、大戦のさなか欧州で上映され、2000万人が観た。
 戦いには戦車も登場した。
 大戦初期に比べてもテクノロジーは格段に進歩していた。
 航空機や飛行船、Uボート、毒ガスなど、第2次産業革命は兵器の進歩に大いに貢献、大量殺戮を容易にし、戦争の質を一変させた。
 大ヒット戦意高揚歌「Over there」の替え歌にのせ、星条旗を掲げ颯爽と進む一団が桟橋にやって来る。
 歓迎する英国市民。勢いにたじろぐ英軍士官たち
 1917年、のちの2大超大国が戦局を動かした。
 3月のロシア革命、そして4月の米国参戦である。
 ロシア市民は戦いに疲れ、経済も疲弊、鬱積した不満が、革命へと発展した。
 ニコライ2世は退位。臨時政府は戦争を続行するが、11月、さらなる革命で政権を奪取したボリシェヴィキが、18年3月、ドイツと単独講和を結んだ。
 最初の戦地モンスの地下壕(dugout)に再びやって来たジャック。
 かつての仲間と出会い、話題となったのが「革命」。
 「ドイツでは飢えがひどいらしい。ボリシェヴィキ化するって噂だぜ。海軍では反乱も起きったっていうし。ロシアみたいな革命になるかもな」
 ドイツは西部戦線に総力を結集、春季攻勢が始まった。前線は膠着を脱し、西へと進んだ。
 4月、進軍のスピードに物資補給が追い付けず、快進撃は止まった。
 米国外征軍(AEF : American Expeditionary Forces)がついに前線に投入され、豊富な物資、体力、気力で、力を発揮。戦局は連合国側に大きく傾いていく。
 11月5日、ドイツ北部、キール軍港で5万人の水兵と労働者の反乱が勃発。
 蜂起の波は各地に広がり、9日には、ベルリンでゼネスト、決起した労働者たちの大規模デモとなった。
 そして、社会主義共和国宣言をしようとするカール・リープクネヒトを出し抜くように、フィリップ・シャイデマンが共和国樹立を宣言。
 ヴィルヘルム2世はオランダへ亡命した。すでにオスマン帝国もオーストリア・ハンガリー帝国も休戦協定にサイン。
 戦いの終わりはすぐそこまできていた。
 その頃、パリ北部コンピエーニュの森に停められた客車の中では、すでに、マティアス・エルツベルガー無任所相が、ドイツ帝国全権大使として、連合国軍総司令官フェルディナン・フォッシュ元帥と和平交渉を進めていた。
 ガスマスクを着け、戦場へと出ていくジャック。
 銃声とともに画面が赤くにじむ。フォーカスが変わると、そこにあるのはRed Poppy。
 赤いテープに沿うように歩くジャック。
 兵士に呼び止められ、地下壕に入る。
 「無名戦士か?」
 「いいえ、ジャック・スミスです」
 「11時2分前、君が最後だ」
 赤いテープに沿い、さらに地下へと進む。そこは、あのパビリオンの一室。国家首脳たちが休戦交渉を行っている。
 ジャックには気づかない・・・。
 11月11日午前2時15分、エルツベルガーは新政府の協定受諾の返事を受けた。
 5時15分、休戦協定署名。11時、発効。
 即時発効していればジャックも、現実の最後の犠牲者エリソンも、さらに多くの兵士たちが、命を落とさず済んだはず・・・。
 そもそも、ドイツの「全権」大使が即時協定を結ばなかったのは、示された条件が予想をはるかに上回る苛酷なもので、署名に帝国中枢の承認を必要としたからだった。
 翌年、ヴェルサイユ条約で、ドイツにはさらなる苛酷な賠償条件が課される。
 多額の賠償金がドイツ国民の生活を圧迫し、ポピュリズムの空気、ファシズムを容認する社会を生み出した。
 そして、さらなる世界大戦・・・。
 協定の結ばれた客車のたどった数奇な運命は独仏関係の感情的根深さを物語っている。
 第1次世界大戦が終わると、フランス国内の博物館に展示されるようになっていた客車は、1940年6月22日、協定を結んだ時と同じ場所に運ばれることになる。
 第2次世界大戦勃発後、フランスに侵攻したドイツが、再び、その車内で休戦協定を調印することを選んだのである。
 そして、その後はドイツ国内で保管、大戦末期には破壊されてしまう。
 いま、コンピエーニュの森にある博物館には、そのレプリカ「休戦の客車」が展示されている。
 11月10日、マクロン大統領は、アンゲラ・メルケル独首相と、その「休戦の客車」を訪れ、車内で記帳、「欧州と平和のための独仏和解の価値をこの地で再確認」と記された石碑の除幕も行った。
 ジャックは、パビリオンを出た。
 そこは一面Red Poppyの草原。
 先に来ていた仲間たちの横に寝そべるジャック。
 野はおびただしい数の墓が並ぶ墓地となり、映画は終る。
 「すべての戦争を終わらせるための戦争(The war to end all wars)」と呼ばれた最初の「世界大戦」。
 その犠牲者は統計により幅があるが、それまでの欧州での戦争犠牲者総数1000万をも上回り、多くの民間人を巻き込み、1800万人にも及ぶと言われている。
 ロマノフ、ハプスブルク、ホーエンツォレルン、オスマン、歴史ある4つの名門の名が政治の表舞台から消えた。
 米国という欧州列強とは別の超大国が出現、その対抗馬として異なるイデオロギー国家ソ連が登場した。
 民族自決を是とする戦いで、解体縮小された多民族国家オスマン帝国の「被支配民族」だったアラブも、ユダヤも、クルドも、騙され、利用され、すぐさま「民族自決」には至らず、矛盾にみちた「中東」は、今に至るまで、世界の火種であり続けている。
 「大戦の教訓が、他民族への恨みになってはならない」
 マクロン大統領は11日の式典で、EU懐疑派や移民排斥を掲げるポピュリスト政党が台頭、ナショナリズムが伸長する右傾化社会に警告を発し、多国間連帯の重要性を訴えかけた。
 しかし、マクロン大統領の支持率は30%を切り、ともに協調を訴えるメルケル首相は、党首を務めるCDU(キリスト教民主同盟)や提携政党が地方選で大敗したことを受け、21年の任期満了で首相の座を退くことを表明している。
 それでも、「独仏枢軸」がEUの要であることに変わりはないが、一方で、プーチン大統領、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、セバスティアン・クルツ首相、オルバーン・ヴィクトル首相、ロシア、トルコ、オーストリア、ハンガリーというドイツ以外の「消えた帝国」のいまのトップがすすめる政策は協調とはほど遠く、「皇帝」と揶揄される者さえいる。
 第1次世界大戦でフランスと「連帯」した新旧「世界の中心」英米のBrexitもAmerica Firstのかけ声も、重くのしかかる。
 「テクノロジーは人類に幸福をもたらし、人類は進歩し続ける」
 19世紀終わり頃から続く「平和な欧州」「ベルエポック」の楽観の風潮を裏切り、大量殺戮の場となってしまった第1次世界大戦は、世界の力関係のみならず、テクノロジーと人間との関係、さらには人間としての根本的価値観をも、戦後、再構築する必要に迫られることになった。
 いま、さらなるテクノロジーの進歩が、個人のありかたを根本的に変えつつある。
 日本は来年平成の時代に幕を閉じる過渡期にもいる。
 2045年には「シンギュラリティ」の世がやって来るかもしれない。
 右傾化や排他的な動きが1930年代に似ているとの声もよく聞かれる。
 そもそも、2つの大戦ではなく、20年ほどの休戦期間をおいた長い世界大戦、との見方もある。
 グローバリゼーション華やかなりしいま、信条、宗教、民族、国家・・・、自らの価値観とは違う目を通し、「長い世界大戦」を招いた「歴史」を顧みることは、決して無駄にはならないはずである。
 これからしばらく、様々な視点から、その過程を、振り返っていくことにしよう。
素晴らしき戦争
(再)826.素晴らしき戦争 Oh! what a lovely war  1969年英国映画
(監督)リチャード・アッテンボロー
(出演)ローレンス・オリヴィエ、ジョン・ミルズ、ジョン・ギールグッド、ラルフ・リチャードソン、ケネス・モア、ジャック・ホーキンス
 平凡な英国人スミス一家が第1次世界大戦西部戦線で遭遇する死と隣り合わせの現実と、安全な場から彼らを消耗品のごとく使いたおす士官たちとのギャップを、兵士の間でも歌われていた歌の替え歌を交え、皮肉一杯に描く異色のミュージカル映画。
 のちに『遠すぎた橋』(1977)『ガンジー』(1982)を監督する俳優出身のリチャード・アッテンボローの監督デビュー作である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54768


2018年11月29日 Sarah McFarlane and Pat Minczeski
原油価格急落、5つのポイントを分析
投資家らは原油供給について突然考え方を変えた。過剰在庫が価格動向のカギを握る
原油価格急落
Photo:Reuters
 つい10月初めには、アナリストらは原油価格が近く1バレル=100ドルに達するかもしれないと考えていた。その後に落とし戸が開き、価格は過去約8週間で約3分の2になった。2014〜16年の原油価格崩壊を投資家に連想させる大きな下落だ。

多すぎる石油

 何が相場を反転させたのか。投資家と石油トレーダーは今後数カ月に世界市場に流れ込む石油の量について突然考え方を変えた。主な要因は、米国での生産ブーム、米国の制裁免除のためイラン原油の供給が予想より多いこと、主要産油国のロシアとサウジアラビアが夏から生産を増やしていることだ。

在庫の増加

 供給の急増は、石油市場の強気陣営を支えた主なトレンドを反転させた。在庫が再び増加しているようなのだ。

 国際エネルギー機関(IEA)は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の石油在庫が近く5年平均を上回ると予想している。在庫の増加が続けば価格への下押し圧力が強まりかねず、在庫が膨らんで相場が下落した14年と同じ道をたどる可能性もある。

 世界最大の独立系石油取引会社ビトル・グループの調査責任者ジョバンニ・セリオ氏はこう述べている。「サウジと石油輸出国機構(OPEC)は、当時(14〜16年)起きたような大幅な積み増しを避ける在庫水準を目標にしようと必死だ。OPEC諸国が基礎的な条件に反応し続ければ、在庫の激増はないと確信していいと思う」

米国産原油

 直近の供給過剰は米国が中心だ。同国の原油在庫は、生産が過去最高水準をつけるなか9週連続で増加している。IEAによると、米国は23年までにエネルギーの純輸出国になるとみられる。米エネルギー情報局(EIA)のデータによると、米原油輸出の週間統計は6月に日量300万バレルのピークに達した。これは15年に米国産原油の輸出が解禁されて以降で最高の水準だ。

供給のボトルネック

 世界有数の産油国に向かう米国の増産ペースは、その輸出に必要なインフラを整備するペースを上回っている。そのため米国の石油価格と国際指標油種の価格に格差が生じている。米指標油種のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は国際石油取引の指標油種であるブレント原油よりも下げがきつい。予想されていたよりも大量の米国の供給が相場を圧迫している。

 しかし、WTIとブレントの価格は来年遅くには収れんする可能性がある。追加の輸出インフラが開通し、特にテキサス州とニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地から、より多くの米国産原油を世界市場に出荷できるようになるからだ。米原油の最大の輸出拠点であるメキシコ湾岸都市コーパスクリスティ(テキサス州)に向かう新しいパイプライン3本(1日の輸送能力は合わせて約180万バレル)が開通を予定している。

 BNPパリバの商品戦略責任者ハリー・チリンギリアン氏は「米国がパーミアン盆地とメキシコ湾をつなげば、同盆地の石油を定期的かつより大量に国際市場に出荷できる」と述べた。

石油価格のドラマ

 最近の原油価格下落で市場のボラティリティーが高まった。一般に、原油相場の動きとボラティリティーは逆相関にあり、価格が下落すればボラティリティーは高まる。そして、価格は12月初旬のOPEC総会を前にボラティリティーが高い状態が続くと見られている。総会では、OPECが追加減産の態勢に入るのかどうかが明確になるだろう。

 ワシントンのコンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループのボブ・マクナリー社長は「産油国の最も恐れる大量の在庫と価格崩壊に(OPEC加盟国が)目を光らせている」と述べた。

 原油価格の下落はガソリンにも波及するはずだ。米国のドライバーにとってはうれしい展開だ。個人消費や経済の他の部分も押し上げる可能性がある。
https://diamond.jp/articles/-/186920
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/437.html

[戦争b22] Sinopec副社長、米中貿易戦争による影響を懸念 原油急落にトランプ氏の影 ロシア産原油に目を向ける中国 弱気派正しい
Sinopec副社長、米中貿易戦争による影響を懸念

© REUTERS / Hyungwon Kang
経済
2018年11月29日 12:36短縮 URL
トピック 米中貿易戦争 (45)
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国営石油会社「中国石油化工集団(Sinopec)」の李云鹏副社長は露中エネルギー・ビジネス・フォーラムの場で、米中貿易摩擦によるSinopecへの影響は避けられないとの見方を示した。

スプートニク日本

李副社長はスプートニクに対し「(貿易摩擦の影響は)いずれ波及してくるだろう。言うまでもないが、われわれはすべての国々が平和に暮らすことを願っている。とりわけ、われわれのような企業集団に関して言えば、皆が平和を望んでいる」と語った。

李副社長はまた、Sinopec・米企業間の広範な協力関係に言及し、「これは単なる原油取引ではなく、第三者間協力だ。われわれは米企業と多くの国際協力プロジェクトを進めている」と述べた。

Sinopecは中国石油天然気集団(CNPC)や中国海洋石油総公司(CNOOC)と並び、中国の最大規模の石油化学工業製品の生産・販売を担う国営会社で、「Energy Intelligence」の石油企業上位50社ランキング『PIW's Top 50: How the firms Stack Up』で2016年から2年連続でトップ3入りを果たしている。

関連ニュース

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中国、貿易問題で米と協議に意欲

トランプ大統領は、G20サミットで中国と貿易協定を結ぶことに関心を示している=ブルームバーグ
https://jp.sputniknews.com/business/201811295641305/

 

 


原油急落にトランプ氏の影

 産油国への「圧力」も影響 

11/29(木) 20:44配信 毎日新聞
 【ロンドン三沢耕平】原油価格が急落している。世界経済の減速懸念や供給過剰に対する警戒感から下落幅はこの2カ月で3割近くに達している。原油高を嫌うトランプ米大統領の産油国への「圧力」も影響しており、原油高を目指して協調減産を続けてきたサウジアラビアやロシアは難しい対応を迫られている。

 市場では現在、国際指標の米国産標準油種(WTI)が1バレル=49ドル台で推移。10月上旬には約4年ぶりの高値となる76ドルを記録し、100ドル台へ向かうとの見方まであったが、一転して下落基調が続いている。

 もともと10月に高値を記録した背景には、米国のイラン制裁で供給不足に陥るとの見方があった。だが、トランプ氏は11月上旬に制裁を発動すると、主要な輸入国にイラン産原油の禁輸措置の適用除外を容認。サウジやロシアはイランの供給力不足を想定して増産を続けてきたため、一気に過剰感が強まった格好だ。

 米国のシェールオイル生産も過去最高のペースで増えており、国際エネルギー機関(IEA)によると、2019年にも供給過剰に陥る可能性がある。消費大国の米国と中国の「貿易戦争」も石油需要の伸びが鈍るとの不安につながっている。

 原油安はガソリン価格の低下などにつながるため、消費国にとっては恩恵となる。一方、原油収入に依存する中東の産油国の財政には大きな痛手だ。このため、石油輸出国機構(OPEC)は12月6日の総会で、ロシアなどの非加盟国と実施してきた協調減産のあり方について協議する。複数の欧米メディアは、米国、サウジ、ロシアがブエノスアイレスで30日に開幕する主要20カ国・地域(G20)首脳会議の場を利用して原油価格について意見を交わす可能性があると伝えている。

 OPECは今夏、協調減産を緩和する実質的な増産に踏み切ったが、今回は価格の急落を受けて減産措置を強化したい考えだ。ただ、トランプ氏はOPECを主導するサウジに対し、価格を抑えるよう繰り返し要求。今月21日にはツイッターに「原油価格が下落してサウジに感謝する。だが、もっと下げよう!」と投稿し、さらなる引き下げを促した。

 トルコでのサウジ人記者殺害事件を巡り、サウジに対する国際社会の批判が高まる中、トランプ氏はサウジを擁護する姿勢をにおわせている。このため、市場ではトランプ氏の要求をサウジが拒否できないとの観測も浮上している。

 サウジとともに協調減産を主導してきたロシアの動向も焦点だ。AFP通信によると、プーチン大統領は28日にモスクワで開かれた投資家向けのイベントで、現在の原油価格について「満足できる水準だ」と発言。予算編成で前提とした水準を上回っていることも明かし、価格上昇に慎重な考えを示した。ロシア産原油の質はイラン産に近く、供給力が落ちたイラン産の代替品として注目されており、これを機に市場シェアの拡大につなげたい思惑もあるとみられる。

 ◇石油輸出国機構(OPEC)

 欧米の国際石油資本(オイルメジャー)に対抗し、原油価格の安定を図るため、サウジアラビア、イラン、ベネズエラなどの5カ国が1960年に結成した国際組織。現在の加盟国は中東、アフリカ、南米などの15カ国で、総生産量は世界全体の約4割を占める。本部のあるウィーンで年2回総会を開く他、原油に関わる研究や政策提言も行う。

 90年代末のアジア通貨危機や2008年のリーマン・ショック後の原油安局面で協調減産を実施するなど、原油市場に影響を与えてきた。ただ、採掘技術の革新を背景にしたシェールオイルの大量増産で原油生産量世界1位の米国や、同3位のロシア(いずれも17年)は加盟しておらず、近年は影響力の低下も指摘されている。

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最終更新:11/29(木) 20:44
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181129-00000084-mai-brf

 

 


ロシア産原油に目を向ける中国
2018/11/28北朝鮮/国際fnnewsjapan
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ロシア産原油に目を向ける中国

米国によるイランへの経済制裁と米中貿易戦争により、中国のロシア産原油の輸入が先月、過去最大量を記録したとの集計が発表された。中国の官営メディア、グローバルタイムスは27日、米国による一連の「一方的な行動」により、ロシアのエネルギー分野が恩恵を受けていると報じた。

中国の税関資料によると、中国が最大の供給源であるロシアから今年10月に輸入した原油は、前年同月比で58%増加した734万7000トン。これは過去最大の規模で、一日平均173万バレルに該当する。

一方で中国が先月イランより輸入した原油は、64%減少した104万9600トンで、一日平均24万7160バレルに留まっている。前月比では3ヶ月連続での減少。これは米国によるイラン原油への制裁が始まる前に、圧力を感じた中国企業が前もってイラン産原油の購入を減らした事による。

中国は米国からイラン産原油の輸入制裁の例外国として認められた8ヶ国の中のひとつ。最近、中国がイラン産の輸入をじきに再開するだろうと報じられた事もあった。

米中貿易戦争も中国の原油輸入先の変化に影響を与えている。米国との貿易摩擦が強まる中、中国企業は8月と9月に米国産の原油輸入を中断した。中国上海にある素材コンサルティング企業、ICISチャイナのリサーチ担当リリ氏は、「この様なグローバル原油市場の変化の中で、ロシア原油は価格などの面で中国にとって最高の代案だ」と話した。

中国のロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入もまた米中摩擦により増加している。中国は昨年、米国産LNGの輸入を増やすとしたものの、このところの貿易戦争激化に態度を変え、米国産LNGに関税を賦課した。

中国国営企業の中国石油天然気集団公司(CNPC)は、ロシアのヤマル地方にあるLNG工場が完工し、生産を開始したことを26日に明らかにした。この工場では年間1650万トンのLNG生産が可能だ。これは中国によるロシアLNGの輸入が、より増加する事を表すもうひとつのサインだと、グローバルタイムスは指摘している。

エネルギー分野のアナリスト、ハン・シャオピン氏は「中国に入って来るロシア産LNGが、米国産に代わって急増することは確実」と、「米国の頑なな保護主義的な行動のせいで、米国のエネルギー製品が中国市場で問題を抱えるようになった」との見解を示した。

翻訳:水野卓
https://fnnews.jp/archives/2740

 


2018年11月28日 ロイター
足元の原油安、証明された弱気派の正しさ

11月23日、原油価格が足元で大きく下がり、今年のエネルギー株に対して強気になることに懐疑的だった一部投資家の目が正しかったことが証明された。ベネズエラのモリチャル近郊の石油施設で2015年4月撮影(2018年 ロイター/Carlos Garcia Rawlins)
[ロンドン 23日 ロイター] - 原油価格が足元で大きく下がり、今年のエネルギー株に対して強気になることに懐疑的だった一部投資家の目が正しかったことが証明された。

 今年初め、原油価格はイラン情勢緊迫化や石油輸出国機構(OPEC)の減産で世界的な供給ひっ迫が心配されて一時4年ぶりの高値を付けた。ところが10月以降、世界的な貿易戦争の発生懸念や米国のシェールオイル大幅増産を受けて逆に需給の緩みが話題になり、23日の取引では北海ブレント先物が1バレル=60ドル近辺まで下がって約1年ぶりの安値に沈んだ。

 主要石油会社は、2014年の原油価格急落以来バランスシート調整において一定の成果を収めてきたとはいえ、株価は依然として原油価格の動向に左右されやすい。

 そして今年序盤に原油価格が跳ね上がった局面で、大手銀行は投資家に対してエネルギー部門の買い戻しを推奨し、特に欧州では多くの投資家がこれに従った。

 ただその際に様子見を決めた一部の投資家は、現在の原油市場の動きを見て自分たちの慎重さが報われたとの感慨を覚えている。

 ロスチャイルド・ウェルス・マネジメントのグローバル投資ストラテジスト、ケビン・ガーディナー氏は、いったん検討した原油の強気取引に乗り出さなくてよかったと話す。

「原油価格の強気ストーリーが登場してすぐに、地合いが一転して妙味がありそうに見えたセクターがあっという間に相当色あせてしまった。コモディティには注意して臨まなければならない。というのもタイミングの話になるからだ」という。

 もっとも欧州石油株については、今年初めに買って10月の高値で売るという先見の明を持っていたとすれば、15%という大きなリターンを得られただろう。また欧州のエネルギーセクターの今月22日時点の年初来リターンはなおプラス2.2%と、ヘルスケアを除く全セクターがマイナスになっている状況では引き続き最も成績が良い。

 それでも投資家が迫られている一番の決断は、このセクターのボラティリティを受け入れられるかどうかだ。

 キャンター・フィッツジェラルドの石油・ガス担当アナリスト、アシュリー・ケルティ氏は「先月の原油価格の急落で機関投資家は非常におびえてしまった。投資家は石油株が依然として基本的に問題ないと認識しているものの、長期的な価値を確定する試みはとても難しいので、原油価格が落ち着くまで手を出さない向きが多い」と指摘した。

 バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの11月調査では、投資家がエネルギー株の保有比率を前月から7%ポイント引き下げたことが分かった。エネルギー株指数に連動する上場投資信託(ETF)からは資金が大幅に流出し、運用資産規模は4月の水準まで目減りしている。

 昨年から既にエネルギー株は、原油価格に対して大きくアンダーパフォームしていた。投資家が価格の反落を警戒していたためだ。

 今年初めの段階では、エネルギー株が上昇する形で原油価格との値動きの格差が解消されるとの期待が広がったが、直近のデータでは結局原油価格が下がることで格差が埋まり、弱気派の妥当性が明らかになった。

https://diamond.jp/articles/-/186894

http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/438.html

[経世済民129] 12月の日銀オペ方針、超長期債の回数削減−金額レンジは据え置き 円は今後上昇へ 金利予測不能、米金融当局荒野に 米中会談
12月の日銀オペ方針、超長期債の回数削減−金額レンジは据え置き
船曳三郎、三浦和美
2018年11月30日 17:48 JST
フラットニングに抵抗を示している感あるーSMBC日興
先物夜間取引は一時151円23銭まで上昇、日中終値比6銭高
日本銀行は30日に発表した12月の国債買い入れ方針で、超長期ゾーンのオペ実施回数を減らす一方、1回あたりの買い入れ額のレンジは据え置いた。

残存10年超の実施回数を5回から4回に削減、1回あたりの金額レンジは据え置き
その他の年限の実施回数・金額レンジは据え置き
30年債と20年債の入札翌日は残存10年超オペなし、5年債の入札翌日の残存1ー5年オペなし
10年債の入札翌日は引き続き残存5−10年オペの実施を予定
市場関係者の見方
SMBC日興証券の竹山聡一金利ストラテジスト

残存5ー10年の買い入れ回数は4回に減らされる可能性をみていたが据え置かれた
10年超は想定通り4回に減少、フラットニングに抵抗を示している感ある
超長期ゾーンの初回買い入れ額が焦点、10ー25年は2000億円、月間ベースで前月比1000億円の減額を想定
来年度の国債発行計画で20年債の減額観測がある中で整合性ある
市場の反応
債券先物の中心限月12月物は夜間取引で日中取引終値より2銭安い151円15銭まで下落した後、オペ運営方針の発表を受けて同6銭高の151円23銭まで上昇した。


1年超3年以下:(単位:億円)
回数 金額(下限) 金額(上限)
12月 4 2500 4500
11月 4 2500 4500

3年超5年以下:(単位:億円)
回数 金額(下限) 金額(上限)
12月 4 3000 5500
11月 4 3000 5500

5年超10年以下:(単位:億円)
回数 金額(下限) 金額(上限)
12月 5 3000 6000
11月 5 3000 6000

10年超25年以下:(単位:億円)
回数 金額(下限) 金額(上限)
12月 4 1500 2500
11月 5 1500 2500

25年超:(単位:億円)
回数 金額(下限) 金額(上限)
12月 4 100 1000
11月 5 100 1000
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PIW9KJ6KLVRY01

 
円は今後上昇へ、著名通貨アナリストの見解一致−20年までに105円
Austin Weinstein
2018年11月30日 10:08 JST
強気派のコメルツ銀は20年末までに96円と予想
日銀の金融政策が円上昇の引き金になる可能性
向こう2、3年間の為替見通しを巡り各国の通貨アナリストは少なくとも1つの大きなトレンドで意見が一致している。それは円が今後上昇するということだ。

  ブルームバーグ調査によると、円は2020年までに1ドル=105円に上昇する見込みだ。最も弱気な予想でも113円だ。現在の円相場は113円30銭前後。コメルツ銀行やモルガン・スタンレーなど強気派は円が安定的に100円より円高水準になり、13年以来の水準に達すると予想。世界的な混乱に伴う逃避先としての買いではなく、日本銀行の金融政策が引き締め方向となることが円の上昇要因になるとコメルツ銀は分析している。

Creeping Stronger
Most forecasters expect the yen to strengthen against the dollar


Source: Bloomberg

  こうした状況が米金融当局の利上げ局面が勢いを失うこととも重なり、円は20年までに96円が視野に入るとコメルツ銀行のウルリッヒ・ロイトマン氏は予測する。ここ数年トレーダーは100円より円高が進んだ場合に日銀が介入に動くとみていただけに、100円を超える円高は重要な意味を持つだろう。金融危機とその後始末の影響で投資家が逃避先として円を買い求めた08−13年以降、ドル・円は長い間100円を割り込んでいない。

  為替戦略責任者であるロイトマン氏(フランクフルト在勤)は「日銀は低金利が銀行セクターに与える長期の影響を心配しており」、日本国債利回りで「より大きな柔軟性を容認しつつある」と指摘。「円はかなりの力強さを発揮するだろう」と語った。

  同氏の強気な見方が固まったのは、7月に黒田東彦総裁が会見で長期金利の変動幅を倍増させる方針を示してからだ。指標の10年国債利回りは現在0.08%前後。7月上旬には0.02%付近まで下げていた。同氏によると、ドル・円が96円になるシナリオでは米金融当局が利上げを休止する一方、日銀が刺激策を縮小することが想定されている。

原題:Wall Street’s FX Gurus Agree on One Thing: Yen Strength Is Ahead(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PIZBM66S973N01?srnd=cojp-v2

 


予測可能な金利の道筋離れた米金融当局、荒野に足を踏み入れる
Craig Torres
2018年11月30日 16:44 JST
政策金利が中立を「わずかに下回る」状況で当局は転換点に
中立金利の正確な推計欠く中、当局の政策運営も手探りに
これまでの予測可能な利上げの道筋を離れた米金融当局者は、混迷の度を深める経済データへの依存を一段と強める上で、厳然たる事実を投資家に伝えようとしている。それは、もはや安易な答えはないという現実だ。

  それは不安定で、もっとサプライズに富んだものとなるだろう。金融当局の戦略をたどろうとする人々には険しいものとなるかもしれない。金融当局自体が何をするのかこれまでよりも確信を持てなくなる中で、ウォール街の著名な経済予測担当者の多くが各自の予想見直しを迫られるだろう。

  マクロポリシー・パースペクティブスのシニアエコノミスト、ローラ・ロスナー氏は当局者について、「彼らは政策運営の柔軟化を図っており、それは伝達するのが難しい。当面の見通しに変化はないが、リスクは若干シフトしつつあり、将来的には政策の道筋に変更が必要になるかもしれないというメッセージだ」と指摘した。


パウエル議長(右)とクラリダ副議長(ワシントンで)写真家:Andrew Harrer / Bloomberg
  今週は連邦準備制度理事会(FRB)正副議長の講演と、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7、8両日開催)の公表があり、四半期ごとの規則正しい利上げに終わりを告げるシグナルが発せられた。これから先は、当局者の次の一手に経済データが一層大きな影響を及ぼすことになる。

  クラリダ副議長とパウエル議長が27、28日にそれぞれ行った講演での発言によれば、その理由は政策金利が景気の加速も減速も招かない中立金利の推計レンジを「わずかに下回る」水準にあると考えられることにある。

  だが中立金利の問題は、金融当局者にも正確な推計がない点だ。政策金利が中立金利を上回れば、既にトランプ大統領が当局批判を繰り返しているタイミングで、リセッション(景気後退)を招くリスクがある。反対に中立金利を下回れば、物価圧力を高めたり資産バブルをあおりかねない。そして当局者は政治、経済両方のリスクを考慮して慎重になっており、先行きにはリスクが控えている。

  HSBCセキュリティーズの米国担当チーフエコノミスト、ケビン・ローガン氏は、米金融当局は中立金利の推計レンジに近づきつつあり、「彼らは転換点にある。一段と踏み込んだ政策判断が求められるだろう」との見方を示した。

  ソシエテ・ジェネラルの米国担当シニアエコノミスト、オメイア・シャリフ氏は「当局者が会合ごとにさらなる利上げが正当化されるかどうか議論を重ねる状況にわれわれは今、移行しつつある。彼らはどの水準が正しいのかを知らずにおり、データを注視するという点でわれわれと同じ境遇にある」と説明した。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iVSNXEUhHebA/v2/-1x-1.png
原題:Fed Jumps Off Predictable Rate Path and Into a Policy Wilderness(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PIZWFN6S972C01?srnd=cojp-v2


 


米中会談、「ありそうな」結果は貿易戦争のエスカレート−ゴールドマン
Karen Leigh
2018年11月30日 13:18 JST
2番目はエスカレーション停止して交渉続ける「一時休戦」
現在の関税を全て巻き戻す合意は「ありそうもない」
ゴールドマン・サックス・グループによると、アルゼンチンでの20カ国・地域(G20)首脳会合に際したトランプ米大統領と習近平中国国家主席の会談で生じる「最もありそうな」結果は貿易戦争のエスカレーションだ。

  ゴールドマンはリポートで、両首脳の夕食会後のシナリオを3つ想定した。「最もありそうと思われるシナリオは『エスカレーション』が続く、つまり現在の追加関税対象の輸入品全てについて税率を25%に引き上げるとともに、中国からの輸入品全てに関税対象を拡大するというものだ」と記述している。

  僅差で次にありそうな2番目は「一時休戦」で、現在の関税は維持するが「エスカレーションは停止して交渉を続けることに合意する」シナリオ。現在の関税を全て巻き戻す合意は「短期的にありそうもない」シナリオだという。米中首脳は1年余りで初めて対面して会談する。

原題:Goldman Says Escalation ‘Most Likely’ Outcome of Trump-Xi Dinner(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PIZKX06S972E01
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/679.html

[経世済民129] 市場に行き過ぎた悲観論、ドルは来年118円も 米長期金利の高止まり、世界経済や市場のリスク ユーロ圏インフレ率コア1%に
外為フォーラムコラム2018年11月29日 / 18:47 / 2時間前更新

市場に行き過ぎた悲観論、ドルは来年118円も

鈴木健吾 みずほ証券 チーフFXストラテジスト
4 分で読む

[東京 29日 ロイター] - 米国株を中心とした株式市場の不安定な動きや、米中対立への警戒感などから、世界経済、とりわけ米国経済に対する悲観的な見方が強まっている。戦後2番目の長さとなった米国の景気拡大局面もいよいよ終焉(しゅうえん)を迎え、来る2019年の景気減速局面入りに備えなければならないといった論調だ。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言も変化した。10月3日には政策金利が中立金利に到達するまでは「遠い(long way)」としていたが、11月28日には「わずかに下回る(just below)」と述べ、あと数回程度でいったんは利上げが打ち止めになる可能性を示唆した。

この発言直後、米金利が低下、為替市場ではドルが売られ、米株は上昇した。時間がたつにつれ、株の上昇に押されて金利も徐々に上昇に転じ、米10年債利回りは3%割れせずに前日比で若干上昇して引けた。利上げ打ち止めが示されても、米金利の低下余地が限定的だったことは印象的だ。米株が上昇し米金利もさほど低下しなければ、ドル円の下落反応も限られるだろう。

<行き過ぎた悲観論>

実際、足元の米国経済はそれほど警戒が必要なのだろうか。米指標をみると、確かに住宅関連指標の悪化やレバレッジドローンを通じた企業債務の増加傾向など警戒が必要なものもある。

しかし、企業債務よりもずっと大きな家計や金融機関の債務は低下傾向が続いている。また、前回のコラムにも書いた通り、潜在成長率と実質短期金利の逆転などといった将来の不景気到来を告げる信号はまだほとんど点灯していない。物価の上昇も緩やかで、労働市場の改善や堅調な企業利益のもとで個人消費や設備投資が底堅く推移し、それがさらなる所得や生産増加をもたらす米国経済の好循環は維持されている。これを減税や歳出拡大といった財政政策が下支えする構図も変わっていない。今後は、FRBの利上げ期待後退もこの下支え要因に加わることとなる。基本、悲観論は行き過ぎとの筆者の見方に変化はない。

最近の米国経済に対する悲観論を耳にすると、真逆だった昨年末の状況が思い起こされる。トランプ政権が難しいとみられた減税法案の成立に成功し、米株は史上最高値を更新。楽観的な雰囲気が支配的な中で年越しを迎えたが、2018年に入ると序盤からトランプ政権の通商政策などリスクが台頭。2月にかけてドルは一方的に下落し、米株も急落する展開となった。

相場の格言に、「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」という言葉がある。皆が来年の景気減速を警戒し、さあ準備をしなければという雰囲気の中で、その通りに減速局面がやってくるだろうか。10年近いディーラー経験ですっかり天邪鬼(あまのじゃく)が染みついた筆者には、「これだけ見方が悲観に片寄れば、来年は案外いい年になるかもしれない」とすら思えてくる。

<ドル円の押し上げ要因>

また、市場では前述の米景気減速懸念のみならず、イタリアの財政問題や英国の欧州連合(EU)離脱問題、米中の対立、原油価格の下落など、さまざまなリスクが意識される状況にあるが、為替市場でリスク回避の円高は限定的にとどまり、足元のドル円は年初来高値である10月4日の114.55円からわずか1.5%程度下の高値圏を推移している。

この背景には、1)いくつかのリスクが緩和に転じたこと、2)ドルと円が同方向に動く傾向が強まったこと、3)投資資金などのマネーフロー、4)金融政策の方向性などがあるとみている。

緩和したいくつかのリスクとは、米国が通商問題に関し、カナダなどの友好国を中心に対話姿勢に転じたことや、米中間選挙を通過したこと、夏場に強まった新興国に対する懸念の後退などが挙げられる。目先も米中首脳会談や12月6日の石油輸出国機構(OPEC)総会などを経て、米中摩擦や原油価格の下落といったリスクが緩和すればドル円のさらなる押し上げ要因となるだろう。

ドルと円の方向性については、米国経済の独り勝ち状態が続いたことで、円と同様にドルも安全通貨としての性格が強まっていることがポイントだ。この場合、リスクオフでは円が買われるがドルも買われる傾向が強まったことで、ドル円の円高圧力が限定的になっている。

マネーフローとは、日本の対外直接投資や対外証券投資、貿易黒字の減少などだ。対外直接投資は96年以降で最高を記録した昨年の同時期にはやや劣るものの、それでも高水準を維持している。対外証券投資も9月までの合計で過去3位だった一昨年の年間合計額に迫る勢いだ。また、(10月以降急落しているが)原油価格の上昇により貿易黒字額が大きく減少していることも重要だ。今年9月までの黒字額は合計で1.9兆円ほどだが、昨年同時期の3.8兆円の半分にすぎない。このようなフローがドル円を高値圏に押しとどめている可能性がある。

日米金融政策の方向性の違いも引き続きドル円の押し上げ要因だ。米国の利上げがあと数回程度で打ち止めになる可能性については前述の通りだが、これまでFRBが積み上げた利上げによって、日米10年国債利回り格差は今月、2007年以来約11年ぶりの3.10%台まで拡大した。

この水準はキャリートレードによる円売りが進んだ2006年ごろの水準にも非常に近い。キャリートレードには金利差と低ボラティリティーが必要だが、これまでは金利差が十分に拡大していなかった。あと数回程度でFRBの利上げが終わったとしても、十分に拡大した金利差がキャリートレードを通じてその後もドル高円安をもたらす可能性がある。

もう1つ、金融政策の方向性の違いには量的緩和の方向性もある。日銀は量的緩和を継続中だが、FRBは月額500億ドルペースで米国債等への再投資を縮小し、バランスシートの圧縮を進めている。これまでも資産の縮小・拡大格差はドル円を下支えしてきたが、今後も来年夏ごろまでにFRBの資産が4500億ドル程度減少し、日銀の資産が20兆円程度増えることで、2円程度のドル高円安効果があると試算している。

今後もいくつかのリスクが先鋭化したり、FRBの利上げ停止が現実化したりする場面においてはドル円が下押す場面はあるだろう。しかし、上記の通り、少なくとも来年半ばにかけての米国経済に対して基本的には強気の見通しを維持していることや、ドルも安全通貨化することでドル円のリスク耐性が強まっていること、さらにフローや金融政策の方向性などから、来年半ばにかけてドル円は118円程度まで上昇する局面があるのではないかと予想している。

鈴木健吾氏(写真は筆者提供)
*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
https://jp.reuters.com/article/column-kengo-suzuki-nov-29-idJPKCN1NY0ZZ


 


外為フォーラムコラム2018年11月30日 / 16:19 / 4時間前更新
 米長期金利の高止まり、世界経済や市場のリスクに
Jamie McGeever
3 分で読む

[ロンドン 29日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は来年、利上げペースを従来見通しより緩めるか、場合によっては利上げを打ち切るとの見方が強まってきた。

他の条件が同じなら、これに伴い米国債利回りも低下して金融環境の緩和につながるはずだが、利回りは予想ほど下がっていない。これは利回りの上昇要因も着々と積み上がっているたためだ。

10月は米国株にとって過去7年で最悪の月となった上、米景気指標の一部、特に住宅統計には赤信号が灯り始めた。

パウエルFRB議長は28日、政策金利が既に中立水準に近付いたことを示唆し、これを受けて10年物米国債利回りは9月以来の低水準を付けた。とはいえ依然3%を上回っており、10月初めのピークから20ベーシスポイント(bp)程度しか下がっていない。

これに対し、短期金融市場が完全に織り込む来年の利上げ幅は0.25%ポイントと、数カ月前の2%ポイントから大幅に縮小した。

米国債利回りが3%超に高止まりしたり、再び上昇を始めることが、市場と経済のリスクに浮上している。

Reuters Graphic
そうなれば、米金利とドル相場の影響を最も受けやすい新興国市場が危うくなるだろう。現在、米国債利回りは高止まりし、ドルは昨年6月以来の高値水準で推移しており、雲行きは良くない。

米国債は過去最大の供給、高いヘッジコスト、FRBのバランスシート縮小に加え、新興国が自国通貨を支えるために米国債を売る可能性にも直面している。これらの要因が重なれば、10年物利回りが3%超の水準を保っても不思議ではない。歴史的な長さの景気拡大と強気相場が終焉を迎えてもだ。

米国債市場の需給バランスは、徐々に供給過多の方向に傾いているように見える。調査会社FFTTのルーク・グロメン氏は、今後嵐が訪れて投資家が安全資産を求めた時、その需要だけで需給不均衡を埋められるだろうか、と疑問を呈する。

グロメン氏の試算では、米国債は来年最大8兆ドルが償還を迎え、新規発行は1.3兆ドルとなる見通し。その上、FRBは既にバランスシートの縮小に着手している。

これは民間セクターが買うには大きすぎる規模だ。しかも現在の利回り水準により、海外投資家にとって米国債買いヘッジコストは耐えられないほど高くなっている。

Reuters Graphic
Reuters Graphic
フェデラルファンド(FF)金利をFRBが中立と考える3.0%前後まで引き上げるには、あと3、4回の利上げが必要だが、政策金利は既に高過ぎる可能性もある。

シンクタンク外交問題評議会のベン・ステイール、ベンジャミン・デッラ・ロッカ両氏は最近のブログで、FRBのバランスシート縮小と利上げによって金融環境は既に中立よりも引き締まっているとの見方を示した。「つまり来年初めから、金融政策が景気を縮小させ始めるだろう」という。

米景気が来年景気後退に陥ると考える人はほとんどおらず、ましてや既に景気後退入りしたとは見られていない。しかしFRBが2008年末に利下げを始めたのに対し、米景気は前年の12月から既にマイナス成長に陥っていたことを思い出す価値はある。

大半のエコノミストは、金融政策はなお緩和的であり、米経済にリスクがあるとすれば減速ではなく過熱だと考えている。このためFRBは引き締めを続け、米国債利回りには自ずと上昇圧力がかかるだろう。

10年物米国債利回りはいったん3.50%を付けてから2.50%に下がるというのが、今も大方の見方だ。景気の状態に関係なく実際に3%超を維持し、徐々に上昇していくようなら、FRBはある決断を迫られるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/us-bond-mcgeever-idJPKCN1NZ0GG


 

ユーロ圏:11月インフレ率は前年同月比2%、コアは1%に減速
Marcus Bensasson
2018年11月30日 20:16 JST
前月のインフレ率は6年ぶり高水準を記録した
ECBは年末での債券購入終了の見通しを堅持している
11月のユーロ圏インフレ率は6年ぶり高水準だった前月から低下した。欧州中央銀行(ECB)は間もなく緩和策を縮小する見込みで、12月13日には新たな経済見通しも発表する。

  欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が30日発表した11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年同月比2%上昇。前月は2.2%上昇だった。食料品やエネルギーなど変動の激しい項目を除いたコアCPIの11月の上昇率は1%。


  インフレ率はECBが目指す2%弱の水準を6カ月連続で上回っているものの、その主な要因はエネルギー価格の上昇だ。それでも、ECB当局者らは債券購入プログラムを年末で終了させる方針を堅持している。

  次回の金融政策決定は12月13日。ECBは経済成長やインフレの最新予測を発表する。

原題:Euro-Area Inflation Eases as ECB Approaches End of Bond Buying(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PJ04WH6S972C01?srnd=cojp-v2


ドイツ銀、株価が最安値更新ーマネーロンダリング巡る検察の捜索続く
Jan-Patrick Barnert
2018年11月30日 19:28 JST
株価は3.3%安の8.03ユーロと過去最安値付ける
検察当局はマネーロンダリングの疑いでの捜索続ける
ドイツ銀行の株価は30日、上場来安値を更新した。検察当局は前日に続き、マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いで同行のオフィスを捜索している。

  29日にはマネーロンダリングの物証を押収するため170人の捜査官がドイツ銀に入った。

  株価はフランクフルト時間午前10時40分現在、前日比3.3%安の8.03ユーロと過去最安値。


原題:Deutsche Bank’s Stock Drops to Record Low as Raid Continues(抜粋)
Deutsche Bank Raids in Germany Continue on Friday: Prosecutor
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-30/PJ03OG6S972C01?srnd=cojp-v2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/680.html

[経世済民129] 年金抑制策、19年度に実施へ 厚労相 年金世界29位Dランク、給付改善し持続不可能へ 未払い年金があるかもしれない人は?

年金抑制策19年度に実施へ 厚労相
経済
2018/11/30 20:00 
根本匠厚生労働相は30日、公的年金の給付額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が2019年度に発動する見通しとの見解を示した。衆院厚生労働委員会で「発動されるような状況になるのではないか」と述べた。そのうえで「将来の給付水準を確保するためバランスをとらないといけない」とした。

国民民主党の山井和則氏の質問に対する答弁。

指標の1つとなる消費者物価指数(CPI)が、1〜10月までは高い水準で推移していることが念頭にある。発動すれば15年度以来2度目となる。

根本厚労相は仮に0.1%抑制した場合の減額を機械的に計算すると「(夫と専業主婦からなる)厚生年金のモデル世帯で年2655円になる」と述べた。

年金の給付額は毎年改定され、物価などが上昇すればあわせて引き上げる。マクロ経済スライドは、年金額の上昇率を物価などの伸びより抑える仕組みだ。現役世代が将来もらう年金が減りすぎないようにするためで、高齢者が受け取る年金は実質的に減る。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38382340Q8A131C1EA4000/

 

日本の年金は世界で29位 米民間調査、持続性に課題
2018/11/29 19:04
日本経済新聞 電子版
 日本の年金制度は世界の34国・地域の中で29位――。各国・地域の年金政策を指数化し、優れた年金を評価する2018年度の国際ランキングがまとまった。日本の年金は持続性への評価が低く、順位を押し下げた。ランキングをまとめた米コンサルティング会社マーサーは「公的年金の支給開始年齢の引き上げ」などを日本の対策にあげた。

https://www.nikkei.com/content/pic/20181129/96958A9F889DE1EAE1E6E2EBE3E2E0EBE3E3E0E2E3EA9797EAE2E2E2-DSXKZO3836015029112018EE8000-PB1-4.jpg

 日本の総合指数(0〜100)は48.2。総合の格付けは7段階のうち下から2番目の「D」ランクで前年度と変わらなかった。「対処すべき重要な弱点があり、改善しなければ有効性や持続性が疑問視される」と評価された。
 国の借金や平均寿命、支給開始年齢の関係などを評価する「持続性」が低い。項目別の格付けは最低の「E」だった。マーサージャパンの北野信太郎プリンシパルは「赤字国債で財政を賄う現状では、年金制度がこのまま続くとは言えない」と指摘している。
 一方、年金が老後の生活に十分なだけ支払われているかなどを評価する「十分性」は改善。去年の「D」から「C」に上がった。確定拠出年金が普及してきたことが背景にある。ただ、企業型の確定拠出年金の掛け金が年66万円以下に抑えられている点などを課題として指摘した。
 ランキングの1位はオランダ、僅差の2位がデンマークだった。どちらも公的年金の支給開始年齢が、平均余命にあわせて変動する仕組みが導入されることになっているという。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38340910Z21C18A1EE8000/?n_cid=NMAIL007

 

未払い年金があるかもしれないのはどんな人? 「年金探偵」が解説
Tweet Facebook 2018年11月30日 16:00
未払い年金があるのはどんなケースか?
未払い年金があるのはどんなケースか?

〈あなたのものと思われる年金記録があります〉──そう書かれた「ねんきん特別便」の葉書を、どこかにしまったままにしていないだろうか。

 11年前、旧社会保険庁の記録ミスなどで受取人不明の年金記録が約5000万件にのぼることが発覚。いまなお約2000万件分の年金が本来の受給者のもとに戻らないままだ。総額は定かではないが、数兆円に及ぶとも言われている。

 特別便が届いて年金事務所に出向いたものの、結局、昔の記録が見つからなかった人も少なくない。

 福島在住の70代女性のAさんは中学卒業後、縫製工場を経営していた叔父のもとで、定時制高校に通いながら、工場も手伝った。高校卒業後、化粧品会社に勤め、結婚して故郷の福島に戻った。受け取っている年金は、化粧品会社勤務時代のものだ。

 そこでAさんの話から「工場の従業員扱いだったのではないか」と見当をつけて年金記録を調べたのは、社会保険労務士の柴田友都氏だ。柴田氏は「年金探偵」と呼ばれ、年金記録を戦前までさかのぼって調べ上げ、これまでに5000件もの年金支給漏れ(請求漏れ)を発掘した「取り戻しのプロ」だ。

 柴田氏の調べで、工場は40年近く前に閉鎖されていたが、3年分の厚生年金加入記録が見つかった。その結果、Aさんは未払い分の年金約170万円を取り戻したうえ、2か月毎に振り込まれる年金額が約1万7000円増えた。柴田氏がいう。

「転職が多かったり、勤務先が合併、社名変更した経験のある人は要注意です。また、女性であれば、結婚前に会社勤めをしていたり、家事手伝いをした実家の小売店が会社組織だったなどのケースでは、未払い年金がある可能性を疑ってみたほうがいい」

 徹底した「探偵」の捜査で、年金が返ってくることも少なくないという。

※週刊ポスト2018年11月30日号
https://www.moneypost.jp/349527

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/685.html

[経世済民129] 新卒採用を欧米流に改革すると日本の若者はブラック職場行き 欧州「薄給ブラック」に耐えやっと就職 間違いだらけの新卒採用
未来の働き方を大予測

新卒採用を欧米流に改革すると日本の若者はブラック職場行き
雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生
2018/11/1

欧米ではそもそも未経験の採用が本当に少ない
若年失業率が3割に迫る欧州諸国。本当に「脱日本型」のお手本になるか?

 新卒採用ルールに関する連載、今回が5回目となる。前回までで、新卒ルールのあり方、実効ある規制、そして、そもそもなぜ新卒一括採用がなくならずどんどん拡大しているのか、について書いた。

・新卒採用ルールの連載全7回はこちらから。1回目。 2回目。 3回目。 4回目。 5回目。 6回目。 7回目。
 今回は、日本以外の国では、大卒者の就職がどのようになっているか、を考えていくことにしよう。

 「新卒一括採用をどう変えていくか?」。この話をするときに、決まって出てくるのが「欧米の話」だ。ただ、雇用事情に詳しい人間から見ると、そこで語られるのは「夢のような」一部の恵まれた人の話だけだ。いわく、大学中退でもグーグルに入れた天才システムエンジニアや、ファーウェイに年収80万元(1300万円)で新卒採用されたAIエンジニアの話とかだ。

 それはそれはすばらしい話なのだが、一方で、OECD40数カ国の中で、日本より若年就業率が高い国はほとんどない(年によって異なるが日本常に上位5位以内に入っている)。 若年失業率で見れば、米国は日本の2倍、フランスは3倍、イタリアは4倍、スペインは5倍といった状況だ。

 日本では新卒3年転職率が3割だと騒がれる(これは過去30年来変わらないことだが)、新卒で闇雲に就業することが良くないという声が起きる。ただ、欧州諸国では20台前半の年間転職率が3割程度の国が多い(日本は1年にすれば10数%)。

 あれあれ? 範とするはずの欧米はそんなに良い仕組みなのだろうか……。

 そう、今回は、理想とされる欧米型入職の現実を探る。


新卒改革論で語られる案は欧米でも全く一般的ではない

 まず、新卒一括採用をやめて、企業はどのような方法で若年者を受け入れるべきか、について、以下のような話が語られる。

(1)新卒時点にとらわれず、卒業後にゆっくりと考えられるようにすべき
(2)大学の早い段階から、インターンシップや企業実習で社会を知るチャンスを豊富に用意して、キャリアをよく理解したうえで仕事を選ぶべき
(3)職務別の雇用形態をとり、「必要なスキル」が明示された形で募集活動が行われるべき。
 この改善策は、たとえば1994年に上梓された『日本の雇用』(島田晴雄著)の中にもすでにその要諦が垣間見られるように、20年以上も言われ続けてきたことなのだ。

 しかし、欧米にもここで言われるような夢のような仕組みはありはしない。まず、向こうは若年未経験採用自体が少ないために(1)などありえない。また職務別採用とは「職務ができる人用」のものなので、未経験者にはとりわけ厳しい。そしてインターンシップは、就業のためのとんでもなくハードボイルドなものだ。

 こうした現実を知らない絵空事が「日本型の改革案」として語られている。

そもそも未経験採用が本当に少ない欧米

 最初に、欧米では、若年未経験者の大量採用がなぜ少ないのかを説明しておこう。

 欧米の場合は、前回話したとおり、やめた人が出たら、そのポストにかなう人を採るのが一般的だ。課長が辞めたら課長を、部長が辞めたら部長を、スペシャリストが辞めたらスペシャリストを採る。限定型雇用の中では、上位にできた空席を、ヨコ・ヨコ・タテ・ヨコとパスして組織末端に寄せることが難しいと説明した通りだ。

 だから、組織末端のポストで求人が起きるのは、そのポジションの人が辞めて欠員ができたときだけになる。だから、エントリーレベルの求人がとても少なくなる。

 対して日本は、無限定雇用のために、どこで欠員が出ても、社内異動と昇進でそれを埋める。そうすると空きポストに異動した人が新たな空きポストとなる。この玉突き連鎖により、空きポストは最終的に組織末端に寄せられていく。だから大量の「エントリーポジション」が生まれる。これが、前回書いた「日本型無限定雇用」特有の人事管理術だ。

 結果、企業は課長が辞めようが部長が辞めようがスペシャリストが辞めようが、結局、新卒一人を採用すればいい、というものすごい楽な人員補充が可能になる。

 そして、大卒者も、どの企業でも組織末端に大量のエントリーポストが空くために、入職が容易というメリットを有することになる。

 お分かりいただけただろうか? そもそも、欧米は「新卒採用がほとんどない」という国柄なのだ。失業率や転職率が高まるのは、そのためだ。

 なので、「卒業後いつでも未経験者を大量に受け入れてくれる」といった夢のような仕組みは欧米にはほぼない。

エリート職か、ブラック職か、職業訓練をするか

 では、欧米では若者はどのような入職方法となるのか?

 それは超優秀層のエリート採用(対象は1%程度だろう)と、それ以外で大きく異なる。

 日本のマスコミやネットで語られる「うらやましい話」はすべて、上位1%のエリート採用の話なのだ。冒頭に引いたファーウェイの高給新卒採用などももちろんそうだ。こうした超レアな事例を掲げて、「こうすべき」というのが、今、よく言われている話なのだ。


99%の普通の人は、基本、以下の二つの入職となる。

■組織の末端ポスト(エントリーレベル)が大量に空く企業にひとまず就職する。
■ある程度訓練を積んで、社会人枠で中途採用者と競争しながら入職する。
 この2つの方法について見ていく。

 まず、エントリーレベル採用だが、空席を組織末端に寄せることができない欧米で、なぜそんなに多くの下位ポストが空くのか。その理由は、(1)人員の流出が多い、(2)不人気で応募者が少ない、(3)成長著しくポストが拡大し続けているの3ケースが考えられる。

 (1)に関してはブラック職務の臭いが漂い、(2)は文字通り人気のない職務もしくは低待遇、唯一若者が進んでいきたくなるのは(3)の場合だけだろう。ただし、日本の新卒採用と違って、エントリーレベル採用は新卒向けではないため、(3)のケースでは腕に自身のある社会人が応募し、そちらの方が採用される可能性が高い。

 結果、普通の学生は、(1)ブラック(2)不人気・低待遇の仕事しか残らない。

 米国の求人サイトでエントリーレベル求人を見ると、店舗販売、コミッション営業、フィールドサービス、もしくは本当に小さな零細企業などが主であり、人気企業の採用でもたとえば「機種管理とオペレータ」(ATT)といった応募者が集まらず、定着も芳しくない職務となっている(唯一、コンサルティングファームのアソシエが人気職での例外的に多いが、採用レベルは高いので普通の学生には難しい)。

 こうした不人気・低待遇職なら、日本でも既卒者の未経験受け入れが通年で行われている。たとえば、不動産営業や携帯電話ショップ、飲食店、コールセンター、カスタマーサポートの特定派遣などなどが上げられるだろう。その点では日米とも対して変わりわせず、見習うほどのこともないとわかる。


近著の『名著17冊の著者と往復書簡で読み解く 人事の成り立ち 「誰もが階段を上る社会」の希望と葛藤』(海老原嗣生・荻野進介著、白桃書房)
中途採用で社会人と争うために腕を磨く=インターンシップ

 普通の学生たちのもう1つの入職方法である「職業訓練を積んで、入職する」についてみてみよう。、学生たちはどのように「腕を磨いて」即戦力となるのか。

 そのためには、大きく2つ方法がある。大学在学中に自主的に行う企業実習(インターンシップ)。そして、公的機関による企業実習(見習い訓練)だ。

 社会人相応に腕を磨くことがその目的となるから、日本のインターンシップのように「長くて1カ月、多くが1日・2日」というものとは全く異なる。

 基本は、長期の実習となる。フランスの企業に聞いたインターンシップの受け入れ期間の調査によると、一番多いのが「4カ月以上」で49%と約半数。続いて3カ月が22%でここまでで70%を超える。続いて2カ月が17%。2カ月以上トータルで89%ともなる。夏休みよりも長いのが、向こうのインターンシップのごく普通な姿なのだ。

 さらに驚くのは、こうした長期インターンシップをフランスの学生は何回も受ける。グランゼコール(大学より難しいエリート養成機関)では回数が特に多いが、一般大学の学生でも4回以上が25%、3回が24%、2回が26%と複数回経験者が8割近くにもなる。結果、大学生のインターンシップ期間は平均で14カ月にもなるという。ちなみに欧州の大学は3年制なので、その半分近くをインターンシップに使っていることになる。

 なお、こうしたインターンでも習熟が積めなかった学生は、見習い訓練を受けることになる。

 仕事を覚えるためには、それくらいのハードな実習が必要で、職務別採用の世界で職にありつくためには、こうした下積みが必要となる。日本のように、1週間程度のなんちゃってインターンシップが事足りるのは、その前提に未経験者を採用するという、新卒採用慣行あることに気づいてほしい。

 こんなことを書いても、まだ欧米に夢を描く人からは、「いやいや、何カ月も学生を受け入れて親切に研修をさせてくれるなんて、向こうの企業はやさしい。それに比べて」という声が聞かれそうだ。

 なので、次回は欧米(特に欧州)のインターンシップがどれほど過酷なものかを書くことにする。


海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。
https://bizgate.nikkei.co.jp/series/DF040620184168/
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO3648850015102018000000

 

欧州の若者は「薄給でブラックな訓練」に耐えてやっと就職
雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生
2018/11/8

欧州のインターンシップの多くは、企業の雇用調整弁であり、移民よりも安い低賃金労働だ
決して企業の社会奉仕ではない、欧州のインターンシップ事情

 新卒採用ルールに関する連載、今回が6回目となる。新卒ルールのあり方と実効ある規制、そして、そもそもなぜ新卒一括採用がなくならずどんどん拡大しているのか、そして、日本以外の国では、大卒者の就職がどのようになっているかを書いてきた。

・新卒採用ルールの連載全7回はこちらから。1回目。 2回目。 3回目。 4回目。 5回目。 6回目。 7回目。
 結局、職務限定型の欧米では、未経験者を大量に雇い入れることなどしない。結果、未経験学生は数少ないエントリーレベル求人を奪い合いするか、もしくはブラック覚悟で不人気職に応募するかになる。

 それがいやなら、学生の間にインターンシップなどで腕を磨くしかない。ただ、日本のインターンシップのような生易しいものではない。フランスでは3年制の大学在学中になんと14カ月もインターンとして働くのが「平均的な」姿なのだ。前回はどれだけの期間働かなければならないかを書いたが、今回はその職務内容や待遇などを書くことにする。その前に、欧米企業はなぜこんなに長期間、インターン生を受け入れるのか。

 欧米では日本より企業が社会責任を重視するから、なんてキレイごとでは語れない厳しい現実がある。欧米は2つの理由から、インターンシップを受け入れている。

エリートに対する「ここまでやるか!」というほどの厚遇型インターンシップ

 その1つが「希少人材の早期獲得(青田買い)」だ。詳しく説明することにしよう。

 たとえばフランスの場合、一般大学の文系学生などは人気企業からはまるで相手にもされない。彼らが欲しがるのは、大学より格上のグランゼコール出身者であり、それも、180校もある中で取り合いが起こるのは上位10校程度。さらにいえば、ここに在籍していても社会人学生や大学からの編入者は企業には好まれず、グランゼコール予備級から上がってきた生え抜き者のみが引く手あまたとなる。数にしてフランス全土で5000人程度だろうか。日本でいえば、東大と京大を合わせると約7000人なので、そのくらいのレベルと同等だろう。

 彼らは、奨学金付き自社研修(アプロンティサージュ型インターンシップ)として2年次から各社に囲い込まれる。その際の学費はすべて企業の支払った訓練税で充当され、そのほかに、企業は生活費相当の実習手当まで支払う。

 ちなみに、フランスのグランゼコールの学費は年間400万円程度が相場だ。これに実習期間の給与も含めると企業負担はゆうに500万円を超える。そこまでしても採る。それが希少人材の青田買いであり、そしてこれは究極の「内定拘束」にもなる。アプロンティサージュは1〜2年にも及ぶのだ。その間、他の会社で企業実習を受けることなどできないのだから、自社への入社確率が高まる。

 エリート予備軍にはここまでの「青田買い」が行われている。「欧米ではインターンシップが普及している」という時に語られる一方の世界は、こんなものなのだ。誰もが平等一律を好む日本で、こんな特権階級的な待遇を上位1%が享受することに、コンセンサスが採れるとはとても思えない。

非正規代用のブラック型インターンシップ

 一方、普通の大学生を企業がインターンシップで迎え入れる理由はまったく別物となる。それは、「偽装雇用」とフランス語で呼ばれている。フランスの若年雇用に詳しい五十畑浩平准教授(名城大学経営学部)はこう説明している。

 「企業研修は、本来の教育活動としての意義が希薄になる、あるいは欠如することで、雇用形態のひとつとして機能することとなる。企業にとってみれば、有期雇用などの非正規雇用に次ぐ不安定雇用のひとつとしてみなされるようになり、労働市場にとってみれば、雇用の調整弁としての機能を果たすことになる」

 欧州の場合、原則としては非正規雇用ができない。そこで、インターンシップが非正規雇用の代替として使われているのだ。フランスの公的資料から、その状況を探ってみよう。

 「私は、ジュネーブにある国連人権高等弁務官事務所で3カ月の研修を受入れた。無報酬であることははっきりしていたが、研修にかかる費用は知る由もなかった。もちろん旅費、滞在費、食費、交通費などすべての費用が自己負担であった。〜ジュネーブの物価は高いため、すぐに銀行口座の残金がゼロになった。〜この研修は自分にとって有意義なものになるであろう、すぐにいい仕事が見つかるであろうと確信していた私は、研修を継続するため借金をし、継続更新をした。6カ月の研修の末、丁重に感謝された。〜現在私は失業状態で、一時的な仕事を掛け持ちしている。専門分野での経験が十分ないため、私の資格の水準にあった職は見つからない」

 「私は、SMIC(最低賃金)の30%分が支給される修了時研修(Bac+5国際貿易専攻)を終えたばかりだ。〜研修生がいなければ、その部署は機能しない。プロジェクトリーダーは、あまりにも多くの仕事を抱え、その部下も仕事で手一杯である。研修生は、したがって、アシスタントとプロジェクトリーダーの仕事を引き受けることになる。5カ月の研修で、超過勤務は100時間ぐらい溜まった。ただ6月にカウンターがゼロに戻ったから、少なくとも150時間は超えている。就業時間ですか?それは、8時45分から、18時30分まで。時々、19時15分になる。単純に、研修生には、労働短縮の権利や、ヴァカンスの権利がないからだ。それに、私たちは、アシスタントよりもはるかに重く、プロジェクトリーダーと同等の責任をもたされている」

 「私は、正規ポストを任され、サービスの新規開発に参加していた。そこでは、従業員よりも研修生のほうが多かった。しかし、職務経験を積んでおきたかった」

 「うちの制作会社では、あるケーブルテレビの仕事を 請け負っているが、 15 人の 従業員 に対し私たち研修生は10人いる」

搾取と答えた人43.5%

 実際に、彼らの賃金はどのくらいだったのだろうか。

 2006年当時のデータを見ると、報酬ゼロが52%、続いて当時の月額最低賃金の3割以下が27.6%。ここまででほぼ8割となる。この額を超えると、企業は社会保険料負担が義務化されるので、極力この範囲で賃金を抑えようとしているのだ。つまり、インターン生はそのほとんどが無保険となる。日本ではあれほどお気楽なインターンシップにも学生保険をかけろ!といっている。欧州の現実がよくわかるだろう。

 報酬レベルについての感想は、「搾取」と受け止める人が43.5%であり、とても不十分(21.6%)と合わせてほぼ7割。一方とても良いが2.8%ほどいるが、これは先ほど触れたグランゼコール在籍のエリート予備軍だろう。

 くどいようだが、ほんの一部のエリートが厚遇される階層構造が見て取れるだろう。

デモ、ストライキ……その末、最低賃金の1/3

 こうした状態への不満が爆発し、2005年10月4日、パリでインターン生によるデモが起きた。11月1日にはインターン生の一斉ストライキも起き、その後も継続的な活動で1万5000人の署名が集まり、翌2006年4月13日に現状改善の請願書が首相に提出される。そこから3年半をかけ、インターンシップ改革が進みはしたが、それでも、インターン生の月額報酬は、最低賃金の1/3以上にとどまっている。月額で日本円換算するとフルタイム労働して5万円ほどだ。それを14カ月もこなしながら仕事を覚えないと職にありつけない。

 さて、企業実習ではどのように職業教育がなされるのか。先ほど出てきたインターン生たちの発言からも、計画性や教育性があるというよりも、無茶ぶりと思われる実態があり、教育とはいいがたい内情がよくわかるだろう。

 ちなみに、実習先での訓練内容については、CFA(見習い訓練制度=公的な企業実習)を対象にしたアンケートデータがある。こちらでは、64.2%が職業教育を受けていないと答えている。

 そう、欧州のインターンシップは、企業の雇用調整弁であり、移民よりも安い低賃金労働なのだ。だから企業はインターン生を重用する。こうした現実が日本では全く語らず、ただ単に、日本型は悪く、欧米が羨ましいという印象のみが語られがちだ。


海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO3649088015102018000000?


 

間違いだらけの新卒採用、「第二新卒と卒業直前」にヒント
雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生
2018/11/13

就職ナビを規制するハードルは高そうだ
4月1日選考開始と、抜け駆けをなくすための就職ナビ規制

 就活ルールをめぐる連載も、7回目の今回で最後となる。どのような就活が最善なのかを本稿では考えていくことにしよう。

・新卒採用ルールの連載全7回はこちらから。1回目。 2回目。 3回目。 4回目。 5回目。 6回目。 7回目。
 まず、就活ルールがなければ、企業の選考はやみくもに早期化し、結果、学業は破壊状態、企業も消耗戦となって、結局、調整ルールを皆が欲しだす。過去の歴史からそれを示した。続いて最適なルールはいつか、そのためのキーになるのは何か?ということを書いた。最適なルールとは、(1)学業阻害が少ない(2)抜け駆け企業が少ない(3)採用力の乏しい中小企業にも十分な選考期間が得られる、の三点を考えるべきだ。この条件からすると4年次4月1日前後がよいと私は考えている。

 選考が4月1日からだと、その前に必要な企業説明会がほぼ春休み期間に行われる。就活で一番、物理的に学生を拘束するのは説明会であり、それが休暇期間に開催されるので、このスケジュールは学業阻害が一番小さくなる。

 また、ルール違反企業が抜け駆けするのを防ぐのにも効果的だ。なぜならば、春休み前は後期試験にバッティングするため、そこでは説明会・選考を行っても集まる学生が少なく意味がないからだ。

 そして、4月選考開始であれば、人気企業の採用はその多くがGW前後までで一段落し、不人気企業や中小などの採用期間が十分にとれる。

 続いて、このルールの実効性をあげるキーポイントには、就職ナビの規制強化を謳った。今の就活は就職ナビなしでは企業も学生も思うように進めることができない。そこで、この就職ナビに対して、広告掲載期間の規制を強化することで、ルールが徹底できる。現在でも規制はあるのだが、これは協会内の申し合わせ事項であり、何の罰則もない。何より協会に加盟していない企業は何の規制もされない。だから、ここに強制力を持たせるよう、就職ナビは厚労省の許認可事業にしてしまうことを私は提案した。

 また、申し合わせを遵守する就職ナビも、「インターンシップ」の募集広告は載せ放題だ。とりわけ、1Dayインターンシップの名を借りた偽装説明会は花盛りだ。だからここにも規制を入れる。

 こうすることで、実効性のある就活ルールは作ることができるだろう。

日本にやってくれば外資企業もはまる。それほど日本型雇用は手ごわい

 とここまでを連載の前半で示した。

 後半は、そもそも新卒一括採用など辞めてしまうべきではないか、ということを主題にした。

 まず、なぜ新卒一括採用は日本でのみこんなに浸透しているのか。そして外資系企業やベンチャー企業までなぜみなそれを使うのか。その理由は、無限定雇用という世にもまれな雇用慣行を持つことにある。それを人事管理側面から説明した。

 欧米の企業は社員を勝手に異動させられない。職務ポジションを限定しているのだ。だからこれを限定雇用と呼ぶ。対して日本は自由だ。こちらは無限定雇用と呼ばれる。

 さて、無限定雇用だと、限定雇用よりもはるかに欠員補充が楽だ。空席は横の異動もしくは縦の昇進で楽々埋められる。ただ、こうした異動・昇進は空席を社内パス回ししているだけだ。ただ、このパスを続けていくと、どのポストが空いても、最終的には末端に空席が寄せられ、非熟練者を一人採用すればよい。欧米に比して日本は膨大な末端空席が生まれ、新卒採用となる。

 欧米型の同業×同職×同ランクの即戦力採用は、すなわち競合からの引き抜きであり、本当に針の穴を通すようなるリクルーティング術のため非常に手間がかかる。さらにいえば、採ったら採り返す、という形でし烈な戦いにもなる。対して、誰が抜けても末端社員一人採ればいいという日本型は簡単だ。だからこの方式を、日本にきた外資企業さえまねる。

 こんな状態だから日本型はなくなりはしないとわかるだろう。

欧米の「いい話」は一部エリートの厚遇事例。一般的な若者はかなり苦しい入職となる

 連載終盤では欧米の未経験入職の方法に触れた。日本のように組織末端に大量の空席ができない欧米では、未熟練者向けの採用ポストは少ない。職を得るのはいかのような方法に頼ることになる。

(1)エリートトラックでの超優遇採用。
(2)空席の多いブラック的職務での入職。
(3)インターンシップや職業訓練を長期間経て、熟練度をあげて入職。
 日本で欧米型のうらやましい話を聞く場合、たいていそれは、(1)のエリート採用だ。かの国でも上位1%程度の人材の取り扱い方法であり、そんな手法は参考としてはいけない。

 (2)に関しては日本でも同様に、「いつでも何歳でも採用している」ブラック的不人気企業は多々あるから、変わらないだろう。

 (3)のみ日本と欧米(欧州)の大きな違いだが、それは現実、生易しいものではない。連載でふれたフランスの例などでは、長期間低給与で企業内にて雑務を押し付けられ、身分保障もないという「訓練とは名ばかりのブラック労働」となっている。(「ドイツおよび周辺国のデュアルシステムはどうだ?」と訳知りの人は言うだろう。この方式については、そのうちじっくり解説することにする。中身を知れば、騒ぐほどのこともないのがわかる)。

 結局、欧米に参考となるような若年入職システムはない。

 だから結局、日本型の新卒採用をより良き形に改良するしかないことになる。

 そこで、前半の「最適な就活ルール」について、さらに補足する形でこの連載を終えることにしよう。

政治主導で就職ナビ規制をできるのは進次郎氏くらいか

 まず、就活ルールの徹底には、就職ナビ規制が一番効果的だと書いた。そのためには、就職ナビを厚労省の許認可事業にする。この件に関して現実性はあるのか?

 実は、昨年、職業安定法が改正され、規制対象の拡大が可能になった。それまでは主に転職エージェントに関して規制をかけていた条項が、「求人情報提供者」全体に広げられたのだ。就職ナビももちろん「求人情報提供者」だ。つまり法律的素地は整った。

 あとは、衆参両院に諮って詳細条項を設けるか、政令・省令・指針・通達など行政府内での指令にて規制をかけるか、で実現が可能だ。議員間での合意形成が不要な後者が手っ取り早いだろう。

 ただそれでも、実現は難しいと私は思っている。こうした規制拡大に対して現在は政治だけでなく社会全体が後ろ向きだからだ。マスコミなどを中心に、就活ルールの在り方がより騒がれて、就職ナビ規制が盛り上がれば、政治や行政も動き出さざるを得ないだろうが、それでもなかなか動かきはしないと読む。義務的業務が拡大しすぎた厚労省は新たな職務の追加には二の足を踏むだろうし、大学・産業界の調整を一手に引き受けるのも荷が重いからだ。

 そして、ここで掲げたルールはあくまでベターなものであって、完璧ではないから、いくら損をする人もそれなりに出る。少数の反対者でも影響力の強いプレイヤーだと、政治や行政はそれを聞かざるを得ない。たとえば、4大臣指令の就活後ろ倒しさえ無視してきた新経連所属企業の経営者には、現政権に近い人がいる。彼らが反対の声をあげれば動きは止まるだろう。

 そうこう考えると、国民的人気のある政治家で、この分野に関心を抱く人が、大英断をし、規制を整えるしか方法はないように思われる。そう、進次郎氏くらいしか、就職ナビ規制へと政治・行政を動かせないのではないだろうか。

とすると、今回の就活ルール再改定論議も、結局は、その場しのぎの粗いもので終わり、また数年すると産官学で大騒ぎが起こるだけ、とみている。30年もこの領域を見てきて何も変わらなかった諦めにも近い予想だ。


第二新卒採用のさらなる拡大と、卒業直前駆け込み採用

 日本型の若年採用に対して、いくつか改革案を付しておくことにする。

 まず、日本型新卒採用の大きな問題として以下ことがあげられる。

・(大手人気企業には)新卒以外だと入職のチャンスが少ない。
・景気変動により就職環境が大きく左右される。
 この改善策として長らく言われてきたのが、「新卒採用に既卒者も含める」という話だ。この施策は、2011年民主党政権だったころから政府要望もあって実施大手企業がソニーなど多数あった。そんな二番煎じ策なのに、同友会は新卒採用改善策として、「学卒後5年程度の若者」を新卒採用の対象とするように、提言を行っている。

 ただ、この仕組みを取り入れた大手企業も成果は上がっていない。まず、有名大手企業が欲しがるような人材は、不況でもそこそこの企業に就職している場合が多い。とすると、その企業を辞めてまで転職するのははばかられる。たとえば、新卒でソニー志望がかなわず、パナソニックに入った人は、よほどのことがないと、ソニーを受けなおすことはない。

 仮に転職をするとしても、まっさらな新卒入社よりは、社会人経験を考慮してくれる第二新卒採用の求人を受ける。だから、「新卒扱い」に応募する人は少ない。

 それよりは、第二新卒採用を拡充させる方が良いだろう。実は常識に反して、日本の超大手(従業員数5000人以上)は、第二新卒をけっこう普通に行っている。少し古い調査となるが、2004年に労働政策研究・研修機構により実施された「第二新卒の実態調査」によると、従業員5000人以上の超大手100社のうち、過去3年に第二新卒者を採用した企業が50.5%と半数を超えていた。ちなみに、従業員5000人を超える超大手企業は日本全国でも500社程度なので、調査対象数の100社はそれなりの捕捉率といえるだろう。

 調査対象となった2001〜03年は新卒氷河期直後に当たり、採用をストップしていた企業も少なくない。そうした企業を除いて、新卒採用を行った企業を分母にした場合、割合はもっとずっと伸びるだろう。しかもそれから現在までの15年間に、たとえば大手総合商社のような新卒採用固執の象徴とも思われた企業までも第二新卒が広まってもいる。既卒を新卒に入れ込むなどという話よりもその方が企業経営としても合理的であり、脱日本型にも直結するだろう。

 ということで、第二新卒採用の拡充が一つ。

 もう一つが、卒業直前採用だ。超大手の採用は、3年次後半から本格化し、4年次初盤で決着する。同時期の応募資格に「新4年生」だけでなく「現4年生」も含めてはどうか?そうすると、学生は3年次・4年次と二回、採用のチャンスが訪れる。たとえば3年次に第二志望に決まって納得いかなかった人、留学していた人などが、4年次に再トライできる。そうして採用となった4年生は、次の春に3年生と一緒に入社するのでもよいし、駆け込み入社で現4年生と同時入社でもよい。そこは企業が学生に任せる。

 企業側も、採用枠を2割程度残して置き、現4年生に振り分ける。この2割を増減することで、業績の上下による採用枠の調整が行える。現行の1年前採用では直前景況に合わせた採用枠にならなかったという問題も解決するだろう。

 人事管理的には、「内定即入社などできるか」と二の足を踏む企業もあるだろうが、トライする企業が出てきてもよいのではないか。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZZO3680943023102018000000
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/686.html

[経世済民129] 最も稼ぐ30歳未満のセレブ、首位は21歳 年収190億円 急増する定年女子を襲う厳しすぎる現実 無給で働く医師、必要悪 
最も稼ぐ30歳未満のセレブ、首位は21歳 年収190億円




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Hayley C. Cuccinello ,
FORBES STAFF
I write about film and television

カイリー・ジェンナー(Photo by Noam Galai / FilmMagic)
リアリティ番組の「カーダシアンファミリー」の末っ子として知られるカイリー・ジェンナーは、今年7月のフォーブスの「アメリカで最も成功した女性」(America’s Richest Self-Made Women)ランキングに、弱冠20歳で登場した。

現在21歳の彼女はわずか2年前に、コスメブランド「Kylie Cosmetics」を設立し、30歳未満のセレブリティとしては最多の年収を稼ぎ出す存在となった。ジェンナーは2017年6月1日からの1年間で1億6650万ドル(約190億円)の収入を得て、今年のフォーブスの「世界で最も稼ぐ30歳未満のセレブリティ」ランキングで1位に立った。

2位に入ったのはエド・シーランで年収は1億1000万ドル。27歳の英国のシンガーソングライターの収入の大半は、ツアー活動からだが、ストリーミングからも膨大な報酬を得ている。

3位はブラジルが生んだサッカー界のスーパースターのネイマールで、年収は9000万ドル(約102億円)だった。30歳未満で最も稼ぐセレブリティのほぼ半数がスポーツ選手だ。上位10名の内訳は、リアリティ番組出身のスター(カイリー・ジェンナー)が1名、ミュージシャンが4名、残りの5名がアスリートだった。

本ランキングのもう一つの特徴といえるのが、女性が少ないことで、トップ10に入った女性はジェンナーとテイラー・スウィフトのみとなっている。

ただし、アルバム「Reputation」の成功や同名のワールドツアーから年収8000万ドルを稼ぎ出したテイラー・スウィフトは巨大な存在感を誇り、4位にランクインした。スウィフトは先日、ユニバーサルと新たなレコーディング契約を交わし、前払金の額は2億ドルに及んだとも報じられている。この金額を算定に入れれば、彼女は本ランキングの首位に立つこともできた。

ボクシング界ではフロイド・メイウェザー・ジュニアが引退して以降、急激に注目を集めているのがカネロ・アルバレスだ。彼とゲンナジー・ゴロフキンの対戦は、130万人がペイパービュー視聴を行い、アルバレスは4450万ドルの報酬を得た。

現在28歳のアルバレスはスポーツに特化したストリーミングサービス「DAZN」と、5年間11試合の配信契約を交わし、契約金は最低でも3億6500万ドルと報じられている。

フォーブスは本ランキングの集計にあたり、各人の2017年6月1日から1年間の収入を推計した。金額は税引前のもので、エージェントやマネージャー、弁護士への支払い費用は差し引かれていない。推定にあたってはポーラースタープロのデータを参考にしたほか、関係者へのインタビューも行った。

下記にランキングの上位10名を掲載する。

1. カイリー・ジェンナー
年収:1億6650万ドル(約190億円)
職業:パーソナリティ

2. エド・シーラン
年収:1億1000万ドル
職業:ミュージシャン

3. ネイマール
年収:9000万ドル
職業:サッカー選手

4. テイラー・スウィフト
年収:8000万ドル
職業:ミュージシャン

5. ザ・ウィークエンド
年収:5700万ドル
職業:ミュージシャン

6. ジェームズ・ハーデン
年収:4640万ドル
職業:バスケットボール選手

7. アンドリュー・タガート(ザ・チェインスモーカーズ)
年収:4550万ドル
職業:ミュージシャン

8. カネロ・アルバレス
年収:4450万ドル
職業:ボクシング選手

9. デレック・カー
年収:4210万ドル
職業:アメリカンフットボール選手

10. ジョーダン・スピース
年収:4120万ドル
職業:プロゴルフ選手
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編集=上田裕資
https://forbesjapan.com/articles/detail/24132

 


これから急増する「定年女子」を襲う厳しすぎる現実
人口減少日本で、女性に起きること
河合 雅司
プロフィール
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10年後、20年後の日本にいったいどんな未来が待ち受けるかをリアルに描いた『未来の年表』(約51万部)、『未来の年表2』(約19万部)は、累計70万部を突破している。それらの著者でジャーナリストの河合雅司氏が、「定年女子」を待ち受ける雇用環境こそ、この先非常に厳しくなると分析する。
女性の2人に1人が90歳まで生きる
日本は「おばあちゃん大国」への道を邁進している。

昨年の敬老の日に合わせて、総務省が発表した推計(2017年9月15日現在)によれば、65歳以上の高齢者は前年比57万人増の3514万人だが、これを男女別にみると男性1525万人、女性1988万人で女性が463万人多い。

女性100人に対する男性の人数でみても、15歳未満では105.0、15〜64歳は102.3と男性が上回るものの、65歳以上になると割合は逆転する。男性は76.7にまで落ち込んでいるのだ。

総じて女性のほうが長寿であるためだ。厚生労働省の「簡易生命表」によれば、2017年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性は87.26歳となり、ともに過去最高を更新した。ちなみに、戦後間もない1947年は男性が50.06歳、女性53.96歳であった。

この頃「人生100年時代」と言われるようになったが、「簡易生命表」で確認してみよう。2017年生まれが90歳まで生きる割合は、女性が2人に1人(50.2%)、男性も4人に1人(25.8%)だ。95歳までなら、女性25.5%、男性9.1%に上るという。

各年齢の平均余命をみると、2017年時点で40歳だった人の平均余命は男性42.05年、女性は47.90年だ。70歳だった人は男性15.73年、女性20.03年である。

「おばあちゃん大国」となった日本では、80代ガール≠ェファッションリーダーとなり、今では考えられないような流行やブームが到来するかもしれない。

高齢女性が流行を牽引する時代へ(photo by iStock)
かつてない規模で「定年女子」が誕生する
だが、長寿を喜んでばかりはいられない。

平均寿命が延びたといっても、「若き時代」が増えるわけではない。老後がひたすら延び続け、戦後間もない時代の高齢者には想像もできないほど膨大な時間を過ごすことになる。それは、老後の収入をどう安定的に確保するかを考えなければならないということに他ならない。

「簡易生命表」の数字を見るかぎり、誰が100歳まで生きなければならないか分からない。とりわけ確率が高い女性の場合、人生100年を前提してライフプランを立てておいたほうが無難だ。

もちろん、これからの「おばあちゃん像」は大きく変わる。一昔前に比べて若々しい人が目立つようになったが、変わるのは容姿だけではない。1986年に男女雇用機会均等法が施行されて以降、女性の社会進出が進んだ。

もうすぐ、われわれは、日本のビジネス史において経験したことがない場面に遭遇することだろう。かつてない規模での「定年女子」の誕生だ。

総務省による2017年の「労働力調査(速報値)」を見ると、55歳から64歳の女性の正規職員・従業員は131万人いる。45歳から54歳となると、250万人だ。

65歳を定年と見なして、この女性たちが定年を迎える場合、10年後には131万人の女性が定年を迎えており、20年後にはさらに250万人の女性が定年に達している。合わせると、約380万人の女性が定年後の生活を歩むことになるのだ。

男女雇用機会均等法の施行以降、オフィスの風景は様変わりした。寿退社が多く、コピー取りやお茶汲みが女性の仕事とされた時代は完全に終わり、今後は1つの会社に勤め続けて定年退職を迎える女性社員が増えてくる。

統計の数値がそれを先取りしている。総務省の「労働力調査(基本集計)」の平均速報(2017年)によれば、定年まで10年以内の55?59歳の女性の就業率は、2007年の59.5%から2017年には70.5%へ上昇した。60?64歳も2007年の41.0%から2017年は53.6%に増加した。

内閣府の「男女共同参画白書」(2016年版)は、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考えている人は45.8%だと伝えている。1つの会社に勤め続け、昇進する女性も珍しくなくなり、女性役員も次々と誕生した。厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2016年度)によると、課長相当職以上の管理職の12.1%は女性である。

男女雇用機会均等法の施行年に四年制大学を卒業して就職した女性の多くが、2024年には60代に突入する。この世代は途中で退職した人も少なくないが、彼女たちより少し後の世代は働き続けている割合が増えてきており、定年まで働き続ける女性はさらに増え続けることが予想される。

「人生100年時代」を展望したライフプランを考えるとき、定年後も働くというのは大きな選択肢の一つとなろう。ところが、定年女子を待ち受ける雇用環境は、現時点では決してバラ色ではない。定年退職を迎える女性の場合、厳しい現実が立ちはだかっている。

年金を増やすために

オールド・ボーイズ・ネットワークとは?
第一生命経済研究所が定年前後に再就職した60代に調査を実施しているが、男性は「退職前から(再就職先が)決まっていた」が36.8%、「満足のできる再就職先がすぐに見つかった」が30.3%と、70%近くが定年後の人生の選択をスムーズに決めている。

これに対して女性はそれぞれ22.2%、17.8%と、苦戦ぶりをうかがわせる数字が並んでいる。男性以上に、長い老後のライフプランを描き切れない女性が増えることが予想される。

男女の差が生じる要因としては企業側の責任も小さくない。男性の場合、「前の勤め先が紹介してくれた」が26.3%なのに対し、女性はわずか4.4%にすぎない。

50代後半の女性の53.0%は勤務先から定年後の仕事に関するアドバイスや情報提供を受けておらず、多くはハローワークや友人・知人、インターネットを使って自ら情報を集めているのである。

男性と同様に65歳までの再雇用制度も利用できるが、前出の第一生命経済研究所の調査によれば、男性の6割ほどの水準だ。むしろ、以前から関心のあった資格を取得するためにスクールに通うなど、「第2の人生」を切り開こうという傾向も見られる。

定年女子の再就職を厳しくしている要因の一つに、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在がある。

「オールド・ボーイズ・ネットワーク」とは、排他的で非公式な人間関係や組織構造のことだ。伝統的に男性中心社会であった企業コミュニティーにおいて、暗黙の内に築き上げられてきた。

社内派閥や飲み仲間、業界の勉強会、経営者の親睦団体など、ネットワークの形態はさまざまだ。多くの男性はこうした人脈を通じて情報交換をしたり、仕事上の便宜を図ったりしている。

女性たちは、ほとんどが蚊帳の外に置かれているため、組織の文化や暗黙のルールも伝わりにくい。

ポストは居酒屋で決められる!?(photo by iStock)
重要な人事異動や新規プロジェクトが、仕事帰りの居酒屋などの会話の中で決まることも少なくない。女性の昇進を妨げている大きな要因として挙げられるが、定年後の好条件のポストについても例外ではないということだ。

そうでなくとも、女性の場合、これまで1つの企業で働き続ける人が少なく、定年後の生活について参考にできる先輩がなかなか見つからない、相談できる仲間がいないという事情があった。

企業には女性が定年退職まで働くことすら、あまり想定してこなかったところさえある。企業経営者は、定年女性の再就職の受け皿づくりを急ぐべきである。

わが子に先立たれる女性も増える
とはいえ、企業経営者の奮起を待つだけでは心許ない。人生100年をにらんで自ら準備できることは、若いうちから実践に移しておくに越したことはない。

では、長き老後の生活費を、どうやり繰りすればよいのだろうか。

よほどの資産家は別にして、多くの人の老後の生活資金の主柱といえば公的年金であろう。女性は男性に比べて賃金が抑え込まれたり、途中で寿退社したりする人も多いため、退職金や年金受給額も低い傾向にある。賃金構造基本統計調査(厚労省、2017年)によれば、女性の賃金は男性の73.4%だ。

この男女格差を引きずったまま、高齢期に入る女性は多い。男性よりも老後が長いことを考えれば、少しでも受給額を増やしたいところだ。

公的年金は受給開始後、生きている限り受け取れるし、長い年月の間の物価上昇にも対応している(民間の個人年金や企業年金は必ずしもそうではない)。

まず選択として考えたいのが、「年金の受給開始年齢の繰り下げ」だ。むろん、受給開始年齢の繰り下げは男性にとっても大きな選択肢であるが、寿命の長い女性のほうがそのメリットは大きい。

年金額を少しでも増やしておきたい理由は、寿命の長さが「独り暮らしになる可能性」の大きさと抱き合わせになっていることにもある。

夫のほうが年上という夫婦は多いだろう。男女の平均寿命の差も考え合わせれば、連れ合いを亡くしてから独りで暮らす時間はかなりの長さとなる。

さらに考えなければならないのが、人生100年時代においては、年老いた子供に先立たれる女性が増えてくる点だ。「高齢化した高齢者」となって身内が1人もいないとなれば、頼れるのは年金だけとなろう。

女性の8割が個人事業主


具体的に説明すると、現行では公的年金の受給開始年齢は原則65歳である。だが、本人の希望で60?70歳の間で選択できる。受け取り開始時期を1ヵ月遅らせるごとに、受給額は0.7%ずつ増え、最も遅い70歳からもらい始めれば、受給額を42%も増やすことができる。

70歳の受給開始から12年弱で、原則として、65歳から受給を開始した場合と年金総額は等しくなるという試算もある。これに従うならば、70歳まで受給を遅らせて81歳以上生きればより多くの年金をもらえることになる。

女性は、かなりの人が100歳近くまで生きるとみられているのだから、得をする人は多そうだ。

ただし、男女を問わず、年金受給開始年齢を繰り下げようと思えば、その間収入の算段をしなければならない。それは「働けるうちは働く」とセットとなろう。

とはいえ、先述したように「定年女子」の再就職は難しいという現実もある。

定年後の好条件ポストを確保するには、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」を崩さざるを得ないが、長い時間をかけて築き上げてきたアンダーグラウンド組織の強固な結びつきを断ち切るのは難しい。ならば、メンバーに加わるのも手だ。

ただメンバーに加わろうといっても、ハードルが低いわけではない。そこで対抗策として考えたいのが、性別を超えたディスカッションの場を設けるよう会社側に働きかけることだ。

就業時間内になるべく多くの接点をつくっていくことで、「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に風穴を開けられれば、今よりキャリアアップしやすくなり、定年後の選択肢も広げやすくなる。

「起業」を考えよう
それでも、高齢になって自分らしく働ける仕事はなかなか見つからないものだ。そこでさらなる選択となるのが「起業」だ。起業ならば、「第2の定年」を心配しなくてよい。

男性に比べて勤務先からの情報が少ないという状況を見越してか、定年前に60歳以降も働ける会社に転職したり、起業に踏み切ったりする女性は増加傾向にある。

もちろん、そのすべてが安定的な収入に結びつくとは限らない。勝算があって踏み切る人ばかりでもないだろう。退職金をつぎ込んだ挙げ句、事業に失敗したとなったら目も当てられないと尻込みしたくなる人も多いだろう。

こうしたリスクをできるだけ減らすためには、定年間際になって慌てて準備をするのではなく、老後の長さを考え、むしろ若い頃から将来的な起業をイメージし、人脈づくりやスキルアップを計画的に進めるぐらいの積極的な発想がほしい。起業を念頭に置いて資格取得やスクールに通うのもチャンスを拡大する。

内閣府男女共同参画局の「女性起業家を取り巻く現状について」(2016年)によれば、女性の起業が最も多い年齢層は35?39歳の12.1%である。次いで30?34歳の10.4%だ。一方で55?59歳以降も上昇カーブを描き、65歳以上も9.9%と3番目に高い水準となっている。

起業を志した理由のトップでは「性別に関係なく働くことができるから」が80.8%と最も高く、「趣味や特技を活かすため」(66.7%)、「家事や子育て、介護をしながら柔軟な働き方ができるため」(54.4%)などが男性に比べて大きくなっている。

子育てや介護に一段落ついたタイミングで、いま一度、「自分らしさ」を見つめ直し、「仕事と家庭の両立」を求めて起業に踏み切っている人が、すでに相当数に上っているということである。

女性の場合、78.6%が個人事業主である。起業にかけた費用や自己資金をみても、50万円以下が25.2%とトップで、比較的低額で開業する傾向にある。経営者の個人保証や個人財産を担保とはしていないとした人も73.6%を占め、手元資金の範囲で堅実に始めるという人が多い。肩肘張らずに考えれば、案外、始めやすい。

女性は男性に比べて子育てや介護といった生活ニーズに根ざした「生活関連サービス、娯楽」(18.8%)、趣味や前職で身につけた特技を生かした「教育、学習支援」分野での起業が多いのも特徴の一つだが、今後、勤労世代が減っていく中で、生活関連サービスのニーズは大きくなる。

こうした分野で小回りのきくサービスを展開する企業が増えることは、社会全体にとってもプラス効果が期待できる。

大きなリスクを背負わない人が多い分、女性起業者の起業後の手取り収入は少なく、月額「10万円以下」が26.7%、「10?20万円以下」が22.5%と、半数近くは20万円以下にとどまる。だが、これでも長い老後を踏まえて、「老後資金の蓄え」、「年金の足し」として考えれば大きい。

女性に限らず、男性だって、長い老後を、いかに「自分らしく」生きるかは大きなテーマであろう。現役時代から入念な準備を進めておかなければできないことは多い。少子高齢社会にあってのライフプランづくりは、実に計画的でありたい。

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プロフィール
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発売1年も経たずして、45万部を超える大ベストセラーとなった『未来の年表』。その著者でジャーナリストの河合雅司氏が、いよいよその続編『未来の年表2』を刊行する。今回のウリは、人口減少で起きることを年代順に追った「人口減少カレンダー」ではなく、あなたの身の回りで起きることを一覧にした「人口減少カタログ」だ。発売に先立って、『未来の年表2』の一部を特別に先行公開する。

街は高齢者だらけ
日本が少子高齢社会にあることは、誰もが知る「常識」である。だが、自分の身の回りでこれから起きることをわかっている日本人は、いったいどれくらいいるだろうか?

日本は劇的に変わっていく。例えば、25年後の2043年の社会を覗いてみよう。

年間出生数は現在の4分の3の71万7000人に減る。すでに出生届ゼロという自治体が誕生しているが、地域によっては小中学校がすべて廃校となり、災害時の避難所設営に困るところが出始める。

20?64歳の働き手世代は、2015年から1818万8000人も減る。社員を集められないことによる廃業が相次ぎ、ベテラン社員ばかりとなった企業ではマンネリ続きで、新たなヒット商品がなかなか生まれない。

高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は36・4%にまで進む。高齢者の数が増えるのもさることながら、80代以上の「高齢化した高齢者」で、しかも「独り暮らし」という人が多数を占める。

こうした高齢者が街中に溢れる社会とは、一体どんな様子だろうか?

いま、東京や大阪といった大都会では、ラッシュアワーには5分と待たずに電車やバスがやってくる。なぜ、そんな過密ダイヤで運行できるのかといえば、乗客の大多数が人の流れについていける「若い世代」だからだ。

たまに、杖をついた高齢者が、駅員の手を借りて乗降する場面に出くわす。ただ、それはあくまで少数派であり、駅員の手際よい作業でそんなに多くの待ち時間を要するわけではない。

しかし、2043年とは、総人口の7人に1人が80歳以上という社会だ。独り暮らしであるがゆえに否応なしに外出する機会は増えるが、若い世代の「流れ」についていける人ばかりではない。こんな過密ダイヤはとても続けられない。

〔Photo〕 iStock
80代ともなれば、動作は緩慢になり、判断力も鈍る人が増える。こうした高齢者が一度に電車やバスを利用するのだから、駅員は乗降のサポートに追われ、ダイヤ乱れなど日常茶飯事となるのだ。

新幹線や飛行機だって同じだ。現在でも空港の保安検査場に長い列ができているが、機内への移動も含め、スムーズな移動は年々期待できなくなる──。

ダチョウの平和
残念ながら、皆さんが生きている間は、人口減少や少子高齢化が止まらない。過去の少子化の影響で、今後は子供を産むことのできる若い女性が激減していくためだ。

人口減少のスピードは凄まじい。国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の推計によれば、2015年の国勢調査で約1億2700万人を数えた総人口は、わずか40年後には9000万人を下回り、100年も経たずして5000万人ほどに減少する。

われわれは、極めて特異な時代≠生きているのである。


ただ、こうした数字を漫然と追いかけ、社会の変化を大くくりに把握していたのでは、少子高齢化や人口減少問題の実像はつかめない。ましてや、それが自分の暮らしにどう関わってくるのかを理解できないだろう。

それでは、いつまで経っても真の危機意識が醸成されないではないか。もっと、リアリティーをもって、「未来」を想像する力が求められている。

人間というのは不都合な真実≠ノ直面したとき、往々にして見て見ぬふりをするものだ。それどころか、気休めにもならない楽観的なデータをかき集めて、不都合な真実≠否定しようとする人さえ出てくる。

皆さんは、「ダチョウの平和」という言葉をご存じだろうか?

危険が差し迫ると頭を穴の中に突っ込んで現実を見ないようにする様を指した比喩だ(実際のダチョウの習性とは異なるとの指摘もあるようだが)。日々の変化を把握しづらい人口減少問題こそ、この「ダチョウの平和」に陥りがちな難題である。

それは切迫感が乏しいぶん、どこか人ごととなりやすい。何から手を付けてよいのか分からず、現実逃避をしている間にも、状況は時々刻々と悪くなっていく。そして、多くの人がそれを具体的にイメージできたときには、すでに手遅れとなってしまう──。

どこかズレている
「ダチョウの平和」ですぐ思い起こすのが、他ならぬ安倍晋三首相の発言である。

2017年10月の総選挙に際して行った記者会見で、少子高齢化を「国難とも呼ぶべき事態」と位置づけ、突如として、増税される消費税の使途変更を宣言した。

国の舵取り役たる総理大臣の言葉は重い。首相の発言を耳にした私は、「ようやく、少子高齢化への対応に本腰で取り組むことにしたのか」と期待を抱かずにはいられなかった。

だが、それが全くの「ぬか喜び」であったことを思い知らされるのに、多くの時間を要しなかった。

安倍首相の口から続けて飛び出した対策が、幼児教育・保育、高等教育の無償化だったからである。「国難」と大上段に構えた割には、スケールがあまりに小さい。スケールの大小だけでなく、「どこかズレている」と感じた人も多かったのではないだろうか。

深刻な少子化にある日本においては、子育て世代が抱える不安を解消しなければならない。だから、教育・保育の無償化について、「全く無意味だ」などというつもりはない。

だがしかし、今後の日本社会では高齢者が激増する一方で、少子化が止まる予兆がない。このままでは勤労世代が大きく減り、社会システムが機能麻痺に陥る。日本という国自体が無くなってしまうことが懸念されるからこそ、「国難」なのである。

その対応には、ダイナミックな社会の作り替えが不可避だ。私が首相に期待したのは、人口が激減する中にあっても「豊かさ」を維持するための方策であり、国民の反発が避けられない不人気な政策に対し、真正面から理解を求める姿であった。

「具体的な変化」に置き換える
「ズレ」は、首相や議員だけでなく、イノベーション(技術革新)や技術開発の現場にも見つかる。少子高齢化に伴う勤労世代の減少対策として、人工知能(AI)やロボットなどに期待が高まっているが、開発者たちは本当に少子高齢社会の先を見据えているだろうか?

その典型が、話題の超高精細映像システム「8K」だ。鮮明な画像で楽しみたいと心待ちにする人も少なくないだろう。「8K」技術そのものに、ケチをつけるつもりは毛頭ない。むしろ、厳しい開発競争に打ち勝った技術者たちの努力には賞賛の拍手を送りたい。

〔Photo〕iStock
ただし、超高齢社会を睨んだとき、追い求めている技術が果たして、超高精細映像システムでよいのかが疑問なのである。今後どんなにクリアな画像を実現したとしても、老眼鏡ではせっかくの性能を楽しめない。

高齢者たちが求めているのは高画質ではなく、むしろ「音」にある。耳が遠くなり、ボリュームを大きくしてテレビを見ている人は多い。聞き取りやすい小型スピーカーを搭載したテレビを安く手に入れたいという声は少なくないはずだ。

技術開発とは、社会の課題克服のためにある。ならば、開発者たちは高齢者のニーズをもっと聞くべきであろう。

ネット通販は切り札か?


「ズレ」といえば、最近普及してきたインターネット通信販売(以下、ネット通販)もそうだ。買い物難民¢ホ策の切り札の如くに語る人も少なくない。

だが、ちょっと待っていただきたい。ネット通販が本当に切り札と言えるのだろうか?

荷物を運ぶ人手は少子化に伴って減りゆく。買い物難民¢ホ策だと言って普及させればさせるほど需要が掘り起こされ、トラックドライバー不足はより深刻になる。

無人のトラックが走り回る時代も遠くないとされるが、トラック自らが荷棚から個別のお届け物をより分け、重い荷物を玄関先まで運んでくれるわけではあるまい。少子高齢社会において、ネット通販が遠からず行き詰まることは簡単に想像できよう。

こうした「ズレ」をなくすには、少子高齢化や人口減少によって起こる大きな数字の変化の意味を、想像力を豊かに働かせて、あなたの身の回りに起こる「具体的な変化」に置き換えるしかない。

全く新しいアプローチで
『未来の年表2』は、タイトルでもお分かりのように、ベストセラーとなった前著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』の続編である。今後続く私の「未来シリーズ」の第2弾という位置づけだ。


2017下期新書1位、45万部超の大ベストセラー!
ベストセラーの続編というのは、大概が前著の余勢を駆った二匹目のどじょう狙い≠ナある。しかし、本書に限っては決して二番煎じをしようというものではない。

前著において私は、少子高齢社会にあって西暦何年に何が起こるかを「人口減少カレンダー」を作成することで俯瞰した。こうしたアプローチは多くの読者の支持を得た。「人口減少の危機をかなり具体的にイメージできた」という感想も多く頂いた。

他方、私は限界も感じていた。前著では、少子高齢化や人口減少を、全体の姿をなかなか現さない巨大なモンスターにたとえたが、「人口減少カレンダー」だけでは、モンスターの全貌をとらえきれないと思ったのだ。

安倍首相や8Kテレビ開発者の「ズレ」も、モンスターの図体が大き過ぎるからこそ、生じたのだろう。ならば、今回は全く新しいアプローチで迫ろうと思う。

そのヒントは、読者の皆さまから頂いた。

私はかねて講演に招かれる機会が多いのだが、前著『未来の年表』を刊行して以降、その数は激増した。はるかイギリスのテレビ局をふくめ、バラエティ番組やラジオ番組、月刊誌や週刊誌などさまざまなメディアからインタビューを受ける機会も増えた。

数多くのお便りも頂戴した。その中でとりわけ多かったのが、「自分の日常生活で何が起こるのかを教えてほしい」というリクエストである。

ある講演会が終わったときのことだ。数年後に定年を迎えるという女性会社員に呼び止められた。そしてこう言われたのである。

「私が聞きたかったのは、政府や国会議員にならなければできない政策ではなく、自分の定年退職後にどんな社会が待っているのかということです。私たちがいま備えておくべきこと、これからできることは何なのかを知りたいと思っている人は多いはずです」

また、年配の中堅企業経営者からのお便りにはこう綴られていた。

「人口減少の深刻さはよく分かりました。企業レベルとしてもできることはあるはずです。どこから始めればよいのかを知りたい」

前述した電車やバスの乗降問題などはほんの一例だが、人口減少や少子高齢化をより正確に、より深く理解しようと思うならば、個人の身の回りで起こり得ることを、より具体的にイメージする必要がある。

少しばかり想像力を働かせてみることが、「ちょっと方向違い」な政策や商品開発を減らすことに間違いなくつながってゆく。

ギフトカタログのように
そこで『未来の年表2』は、あなたの身近なところで起こる変化を、より具体的にイメージするための手助けをしようと思う。

今回は、少子高齢化や人口減少が人々の暮らしにどのような形で降りかかってくるかを、あなたの生活に即しながら明らかにする。言うなれば、これからあなたに起きることを、お中元やお歳暮のギフトカタログのように一覧してみようというのだ。

もちろん、それは個人的な妄想や願望、思い込みではいけない。データや知見に基づいた精緻な予測を前提とする必要がある。

人はいろいろな顔を持って暮らしている。職場や地域社会、家庭といったどの生活シーンにおいても少子高齢化や人口減少の影響を避けられない。しかも、その人の年齢や住む場所、性別などによって、見える未来も、降りかかる影響も大きく異なることだろう。

この問題を真に理解し、うまく立ち回っていくためには、さまざまなシーンを「あなた自身の問題」として具体的に置き換えなければならない。

ビジネスに役立つカタログ


したがって第1部では、少子高齢化や人口減少によって起きるであろうことを、家庭、職場、地域社会といったトピックスに分けてカタログ化する。若い読者にもわかりやすく内容を理解してもらうために、「人口減少カタログ」を各トピックに載せた。

 
あなたにの身に起きることが、ひと目で分かる人口減少カタログ(一部抜粋)

第1部目次(抜粋)
◎伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化す
◎亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる
◎東京や大阪の繁華街に、「幽霊屋敷」が出現する
◎高級タワマンが、「天空の老人ホーム」に変わる
◎80代が街を闊歩し、窓口・売り場は大混乱する
◎オフィスが高年齢化し、若手の労働意欲が下がる
◎親が亡くなると、地方銀行がなくなる
◎若者が減ると、民主主義が崩壊する
◎ネット通販が普及し、商品が届かなくなる
◎オールド・ボーイズ・ネットワークが、定年女子を「再就職難民」にする


前著『未来の年表』が年代順というタテ軸を用いて俯瞰したのに対し、本書は「人口減少カレンダー」で起きる出来事を「ヨコ軸」、すなわち面としての広がりをもって眺める。そうした試みによって、人口減少社会とはどんな姿なのかをより立体的に把握できると考えたからだ。

もちろん、すべての生活シーンを再現できるわけではない。「これから儲かるビジネスは何ですか?」などというストレートな質問を頂くことも少なくないが、私はジャーナリストであり、ビジネスコンサルタントやマーケットリサーチャー、ましてや予言者ではない。

人口動態から社会の変化の兆しを先読みすることはできても、あまたある職種に今後起こりうることをすべて知る術を持っているわけではない。

しかし、主だった生活シーン、ビジネスシーンへの影響をデータの裏付けをもって疑似体験できるように描けたならば、それが結果として、ビジネスチャンスや個々人のライフプランづくりに役立つことになるだろう。

小さな子供を持つ親御さんならば、「子供の将来」への不安も小さくないだろう。『未来の年表2』はそれを考えるヒントにもなる。

第2部では、個々人や会社などで「今からでも始められる対策」を中心に選択肢としてメニュー化した。

どこかズレている政治家や官僚、古い体質の企業経営者の変化を待っているだけでは、もはや遅い。地域や一般社員、個々人のレベルで「今できること」を着実に進めることが極めて重要となってきている。

一人ひとりの取り組みが日本社会の価値観や常識≠変え、いつか世論となり、社会ニーズとなっていく。われわれが政府や企業を動かしていかなければ、この国は衰退の道を歩み続ける。

私は少子高齢化を「静かなる有事」と名付けたが、近年の出生数の減り幅の拡大ぶりを見ると刻々と進んでいる印象だ。人口減少のスピードは思ったより速くなるかもしれない。まさにいまが日本の正念場ともいえる。

時間はさほど残されているわけではない。過去の成功体験にしがみつき、人口減少や少子高齢化対策に逆行するような愚行は許されないのである。

『未来の年表2』が、あなたを救う一助にならんことを願う。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55466?page=4


 

無給で働く医師、必要悪の理由第38回 まだまだ遠い働き方改革への道

一介の外科医、日々是絶筆
2018年11月29日(木)
中山 祐次郎
 こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。現在京都大学大学院で勉強中です。
 さて、まずは近況から。
 秋が深まり、京の街は徐々に色づいて参りました。観光に来られるお客さんが増えるとともに道路は渋滞し、バスは満員になり、ただでさえあまり良くない交通状況はさらに悪化しました。
 そんな中、私はこの1年のみの京都滞在ということで、あちこち紅葉を見に行っております。いくつか写真でご覧いただきたいと思います。

永観堂、人が多くて参りました

清水寺

鞍馬山、ずいぶん階段を登っていくとあります
 このように永観堂、清水寺、鞍馬寺というメジャーなところのみならず、街を歩いていても色づく葉を楽しむことができました。

京大前で見つけた紅葉
医師だけには認められていない働き方改革
 では本題に入りましょう。本タイトルにもある「無給で働く医師」について、今回は皆様にご紹介したいと思います。
 皆様ご存じの働き方改革ですが、先日医療の分野でもついに働き方改革が導入されました。こんなポスターが厚生労働省によって配布されています。

 パッと見、「医療機関で働くすべての人に適用されます!!」と大々的に書かれています。
 これは働き方改革関連法の施行に伴うもので、いやあ、やっと医療業界もちょっとはブラックではなくなるのかな……と思いました。しかし、注目していただきたいのが真ん中辺りの赤字。「医師については応召義務等の特殊性を踏まえ、2024年度から適用されます」とあります。
 実はコレ、医者だけは働き方改革の導入が延期されているのです。
認めたら医療が崩壊するという現実
 あまりご存じない方が多いかもしれません。働き方改革法案の議論のさなか、医者だけは適応を延期することになったのです。まあ厚生労働省の気持ちも分かるのですが、だったら医者だけじゃなく医療職全体にしてくれないと医者の過労は加速するではないか……と私は思っておりました。
 しかしなぜ、医者だけ延期になったのでしょうか?
 これは病院で働いていたら当然のように納得できるのですが、もし医者もすぐに適応したら医療が崩壊するのからです。日本の医療は、医者の多大なる自己犠牲の下に低コストで世界最高レベルの質を保っているのです。自己犠牲は、常態化している36時間以上の連続勤務や、ほぼ毎年のように発生している過労死する医師のニュースから見ても明らかです。
 そんな中、一つのニュースが飛び込んできました。「無給医」(むきゅうい)という聞き慣れない単語です。NHKが2018年11月の初めに「ニュースウォッチ9」という番組で特集したことから、この問題に火が付きました。
 無給医とは、無給で働く医師のことです。いやいや待てよ、医師は高給取りで有名で、ましてや無給で働くなんてこの現代日本にあるはずがないじゃないか……そんな声が聞こえてきそうです。しかし、無給医は確実に存在します。
 ここからは、NHKやjoy.net、m3.comという媒体の調査結果に加え、私がSNS等で独自に呼び掛け、実際に無給医から聞いた内容から実態をお示ししたいと思います。

なぜ無給で働く? 医師兼大学院生のカラクリ
 ではなぜ、医師は無給で働くのでしょうか? そもそも医師の給与は高く、拙著「医者の本音」にも書いたように、だいたい勤務医の平均年収は1500万円、開業医は2500万円です。にもかかわらず、無給で働く医師がいる場所があります。
 それは、大学病院です。大学病院では、主に医師のライセンスを持った大学院生が無給で医師の仕事をしています。大学病院の医局に所属する医師の多くは、一度医師となり臨床現場で働いた後、数年してから大学院に入ります。医師を4〜 5年経験してから大学院に4年間通うのが、定番コースと言ってもいいでしょう。この4年間は大学院生ですから、学生として研究を行い、論文を書いて学位審査で認められれば「医学博士」となります。授業料を4年間納め、学生証ももらいます。
 しかし実のところ、かなりの割合の医局では丸々4年間、学生をさせてくれるわけではないのです。様々な理由で、4年間のうち1〜 2年は医者として働く場合が多いのですね。このとき、「無給医」になってしまうケースが多々あります。
若手医師が「無給医」を容認する理由
 様々な理由とは、このようなものが考えられます。
1. 慣習・人手不足
2. アカデミック・ハラスメントやパワーハラスメント
3. そもそも条件交渉の文化が皆無
1. 慣習・人手不足
 恐ろしいことに、「昔からそうだったから」という理由で無給医というシステムが続いていることがあります。大学病院では多くの仕事があるそうですから、それらをやるためには医師歴が4〜10年目くらいの医師ってちょうどいいのですよね。何でもだいたい一人でできる年代ですし、もっと上になるとフットワークが重くなりますから。実にちょうどいい。
 人手不足のところに、「院生を割り当てる」ことで診療を維持させている医局は実に多いのです。まあこれは何も強制労働ではなく、院生側の希望のこともあるでしょう。院生は医者です。若い医者は普通、「臨床現場から4年間まるごと離れると技術や知識が落ちるのが心配」と考えます。その気持を受け止めてくれるのが、院生の間の1〜2年を働くパターンです。これは、フルタイムで給与が付いて働く人もいれば、週に3日だけで時給1000円という人もいるようです。
 時給1000円でも、大学卒で専門職を働かせるにはなかなかの低額です。アルバイト医師の時給の相場はだいたい5000〜1万円です。さらに問題なのは、もっと安い給与の場合もあり、時給は最低賃金を下回っているケースもありました。
2. アカデミック・ハラスメントやパワーハラスメント
 そういう状況であっても、医師は黙々と働きます。なぜなら、医師の世界は非常に強い縦社会。一つでも上の学年の医師には絶対に逆らえません。これは医局に入っていなくてもまあまあ感じますし、医局ではかなり強固でしょう。
 さらには、院生のボスである教授は、医学博士の学位を院生に取らせるかどうかという立場にあります。気に入ったかどうかで学位授与を決める浅ましい教授はいないでしょうが、院生の研究に協力したり、研究がうまくいくような状況を提供したりする可能性はあります。このような学位授与と労働・雇用の権力が医局の上層部に集中するため、間違っても院生は文句が言えないでしょう。ここには、パワーハラスメントやアカデミック・ハラスメントの成分が含まれています。
 文句を言うとしたら、それは医局を辞めるということになるでしょう。
3. そもそも条件交渉の文化が皆無
 そして、そもそも医師には条件を交渉するというスキルがある人はとても少ないのです。初めての就職はマッチングというシステムで厚生労働省が決めますし、医局に入れば後はどの病院に勤めても労働条件は医局との間で決まっており、医師個人がすることは稀です。ですから、もともと悪い条件を言われてもYesと言うしか選択肢がないのです。
 これらの理由が複合的に合わさって、無給医というシステムは何十年も存続してきました。そして今回NHKが取り上げなかったら、私も取り上げる勇気がなかったでしょうから、「医者なら誰でも知ってるけど、誰も言わない」状態が続いたことでしょう。
「無給医は必要悪」と医者自身が言う理由
 m3.comが行った無給医の調査では、実に198人の医師が「無給医経験あり」と答え、さらに「計34大学」もの名前が勤務先の大学病院として挙がったそうです。日本には約80しか大学病院がありませんから、およそ半数ということになります。恐ろしい。
 そしてこの調査では、「無給医は必要悪である」という、医師自身からの意見が複数寄せられていたことも特記すべき点です。医局の維持のためには、無給で院生を働かせなければ仕方ない、ということでしょうか。 大学病院経営は厳しさを増しているそうですし、教育や高度な治療を担っている大学医局をただ非難すればいいというものではありません。しかし、体制を維持せねばならないことと、医師を無給で働かせていいということは全く別の問題です。
 冒頭に述べたように、医師以外の医療職は働き方改革で残業が減るでしょう。そのしわ寄せは医師に来ます。経営者であれば、文句を言わず安い人件費で働いている医師に仕事を回すのは当然ですから。
文科省、調査へ
 この報道を受けて、ありがたいことに文部科学省が調査することになりました。柴山昌彦大臣は、「5年前の調査で、すべての大学院生の雇用契約が結ばれていることを確認しているが、改めて実態把握を行うことを検討したい」( NHK NEWS WEB の2018年11月22日付記事)と発言しました。存在は認めていないものの、まずは実態調査をするということ ですね。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181122/k10011719941000.html 
 ただ、きちんと実態調査ができるかどうかは非常に難しいと思います。だって院生は大学を経由して書類などを受け取るでしょうから、正直に書けるかどうか、改ざんがないかどうか。骨抜きにならないことを祈りつつ、今回はお開きとさせていただきたいと思います。医師だけのサイトなどでは「ドレ医」(奴隷)と揶揄されていますが、このような人がいなくなるといいですね。
 なお、無給医は大学院生以外でも存在します。詳細は私が書いたこの記事をご参照ください。
https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20181028-00102034/ 


このコラムについて
一介の外科医、日々是絶筆
現役の外科医(2017年2月〜3月は福島県の高野病院院長)として働く筆者が、時事ニュースをメスで切り込んだ解説や、健康や病気にまつわるお話、他所では言えない医者の本音などをつづるコラム。月2回くらい(緊急ニュースがあればこれに限りません)のペースでお届けします。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/112800050


なぜタダで働くのか?「無給医」たちの現実 〜医師の視点〜
中山祐次郎 | 一介の外科医 10/28(日) 10:30 無給医ー給料をもらわずに医者の仕事をする人々

 先日、NHKのニュースウォッチ9で「無給医」(むきゅうい)についての放送があり、話題になりました。本記事では、実際にいる無給医の実態と、その実状を医師の立場から解説します。なお、筆者は外科医師で、部分的に無給だった勤務経験があります。
なぜ無給なのか?
 まず、「無給医」とは、無給で働く医者のことです。無給といっても意味が通じないかもしれませんが、色々な理由で本当に給料をもらわずに労働している医師が存在するのです。ほとんどは医師になって3〜12年目くらいの若手・中堅医師です。私の知人医師にも経験者は何人もいます。
 無給医は大きく3タイプに分かれ、それぞれによって無給である理由が微妙に異なります。
無給医には3タイプ
 ここで3タイプの無給医を紹介しましょう。順に説明します。
1. 「勉強したいから無給」医
2. 「大学院生で無給」医
3. 「医局の都合で無給」医

1. 「勉強したいから無給」医
 「勉強したいから無給」医は、言葉のとおり「この病院で働きつつ高度なスキルを勉強したいから、無給で働かせて下さい」というもの。実は私も若い頃、月15日の給料のみという契約でしたが勉強したかったので月22日勤務していたことがあります。事務方からは、「その7日は趣味で来ているということにして下さい」と言われていました。私の先輩医師には、完全フルタイムで働きつつ無給で勤務した医師も数人います。
 この「勉強したいから無給」というスタイルは、医師の世界ではそれほど特殊なことではありません。なぜなら後述するように、医師は超長時間労働さえ覚悟すればアルバイトで生計を立てられるからです。
2. 「大学院生で無給」医
 次に、大学院生で無給というスタイルがあります。医局に入局した医師の多くは、だいたい卒業まで最短で4年かかる大学院に入学します。そこで大学院生として講義に出たり研究をしたりしながら、その4年のうち1、2年は大学病院で給与は出ないまま医師の仕事をするパターンが非常に多いのです。
 調査したわけではありませんが、耳に入ってくる医師の大学院生は8割以上がこれに当たります。下手をすると、「人手が足りないから」という理由で大学院に進学したが研究をする時間を与えてもらえず、ずっとタダ働きをしていたなんてこともあるのです。その結果研究が進まず論文が完成しないため、大学院には行ったが卒業できなかった、又は博士号が取得できなかったというケースも存在します。
3. 「医局の都合で無給」医
 最後は医局の都合で無給医をやっている医師です。このタイプが人数としては一番多いかもしれません。こちらは、医局が「大学病院に有給職として雇えるのは○人」と決まっており、しかしそれでは人手が足りないため無給医として大学病院に勤務させるというもの。
 そんなひどい話があるのか、それなら医局を辞めればいいのでは、という声も聞こえてきそうです。が、やはりアルバイトで生計がある程度立ってしまうのと、医局をやめることは大学病院医師としてのキャリアを失うことになります。さらには医局の人間のつながりがあり、「人助け」が信条の医師はついその立場に甘んじてしまうこともあるでしょう。また、大学病院でしかできない病気の治療や高度な治療、そして稀な病気の治療や研究に携わりたい人もいます。
 また、女性医師は妊娠・出産・子育てに関連して有給→無給医と命じられることがあります。実際にそれを言われた女性医師がNHKのニュースウォッチ9(2018/10/26放送)で出演していました。さらにjoy.netというサイトでも無給医のリアルな声が多数寄せられています。
勤務証明がないので認可保育園に入れない
 無給医は、その勤務実態を証明する勤務証明がなく、従って社会保障がありません。また、認可保育園に入園することもできないのです。joy.netにはこのような声が寄せられています。
無給の場合は実際に働いていても勤務証明を出してもらえないので、認可保育園に入園することができない。
出典:joy.net
 若い医師がタダ働きをしたあげく、社会保障がなく、保育園でも苦戦する。これが今の大学病院の現状です。
なぜいま無給医が取り上げられるのか
 この無給医、なぜ今まで問題にならなかったのでしょうか。重要なポイントは2つあります。
 1点目は「医師はアルバイトで食っていける」という点です。医師には、アルバイトというシステムがあります。医師がするアルバイトは、普通のアルバイトと同じで時給か日給で一日〜数日間など病院で働いてアルバイト代をもらうもの。中には金曜日の朝から日曜日の夜までぶっ通しで働くものがあり、割がいいのです。これだけ毎週やっていれば、年収は800万円を超えます。詳しくは日経ビジネスオンラインの記事にも書きましたが、アルバイトだけで生計が立つのです。ですから、本業(フルタイムの仕事)は無給でもやっていけるという事情があります。もちろん、労働時間は超長時間にはなりますが。
 もちろん、「食っていけるからフルタイムは無給でいいだろう」という論理は誤りですが、場合によっては無給医みずからがそう考えていることもあります。
 2点目として、私は労働体制に文句が言えない業界体質を指摘します。医師の大多数は大学医学部の医局という組織に所属し、基本的にその医局の人事で動いています。医局とは教授をトップとするピラミッド型の構造で、多くの場合給与や階級(職位)はおおむね年功序列です。
 私は大学病院と無縁に働いているためこういった発言ができますが、大学病院勤務、あるいは医局に所属する医師にはまず不可能でしょう。大学病院を辞めても他の病院で働けばいい、という話はありますが、大学病院は多くの都道府県では1つしかなく、県内じゅうの大きな病院は医局が強い影響力を持っています。医局との関係が悪くなれば、そのエリアでは働きづらいという状況に陥る可能性もあるのです。
解決策は?
 では、この問題の解決策はあるのでしょうか。残念ながら現段階では、厚生労働省などから強い力で無給医問題に取り組んでもらうことくらいしかないと考えます。問題の根本には、大学病院にはそもそも多くの医師を有給で雇う経済的余裕がない点があります。大学病院は好き好んで無給医のシステムを取っているわけではありません。これが解決しないうちは、無給医はいなくならないでしょう。現在厚生労働省は「医師の働き方改革」を進めていますが、その中身であるタスクシフティングなどがすぐに解決に繋がるとは考えづらい状況です。
最後に
 無給医を取り上げたNHKの番組では、大学病院を所管する文部科学省が「無給医は存在しない」とコメントしたと紹介しています。しかし全国には、無給で、あるいは過酷な待遇で働く医師が存在しています。本問題の闇は深く、光を当てることさえままなりません。
 しかし、無給という待遇は当然ではありません。この記事では問題提起のため、無給医を取り上げました。


中山祐次郎一介の外科医

1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、同院大腸外科医師(非常勤)として10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、現在福島県郡山市の総合南東北病院外科医長として、手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「幸せな死のために一刻も早くあなたにお伝えしたいこと」(2014年幻冬舎)、「医者の本音」(SBクリエイティブ 2018年)。Yahoo!ニュース個人では2015年12月、2016年8月、2017年6月、2018年6月のMVA賞を受賞。
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https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20181028-00102034/


http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/687.html

[原発・フッ素50] 中国、新型原発の稼働ラッシュ、発電能力4倍に 「原発は危険」と主張する文大統領、チェコで韓国原発の安全性をPR 三菱日立
中国、新型原発の稼働ラッシュ、発電能力4倍に
環境エネ・素材 中国・台湾 アジアBiz
2018/11/26 23:30日本経済新聞 電子版
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中国の国有発電大手が新型の原子力発電所を相次ぎ稼働した。事故で電源が失われても自動で原子炉が停止可能な次世代型の原子炉「第3世代プラス」など3基が商業運転を始めた。原発は習近平(シー・ジンピン)最高指導部の産業政策「中国製造2025」の重点分野。2030年には最大で現状の4倍近くの1億5千万キロワットまで発電能力を引き上げることを視野に入れる。

国有発電大手、中国核工業集団が運営する三門原発(浙…

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柏崎刈羽原発が正式合格 規制委、安全基準満たす
2017/12/27 11:46
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38178690W8A121C1FFE000/

 
「原発は危険」と主張する文大統領、チェコで韓国原発の安全性をPR
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2018年11月30日 10時31分 朝鮮日報
 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日(現地時間)、チェコでバビシュ首相と会談し、韓国の原発が安全で高い技術力を誇っていることを強調した。文大統領は「韓国では現在24基の原発が稼働しているが、これまで40年にわたり事故は1件も発生していない」「アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発も砂漠という特殊な環境にもかかわらず、追加の費用も発生せず工期も完璧に守っている」などと説明した。

 これに対してバビシュ首相は「UAEのバラカ原発の成功についてはよく知っている。韓国は原発の安全性に関する技術を確保している」と述べた。会談後、韓国大統領府の尹永燦(ユン・ヨンチャン)国民疎通首席秘書官は「両首脳はチェコでの原発建設に向け緊密に協議を続けることで一致した」と伝えた。

 一連の報道を受け野党などからは「韓国国内では『原発は危険』と主張し、脱原発をごり押ししたのに、チェコでは『韓国の原発は安全』と言って原発を売り込もうとしている。完全な自己矛盾だ」などと指摘する声が相次いでいる。保守系野党・自由韓国党の金聖泰(キム・ソンテ)院内代表は29日の非常対策委員会での会合で「『自分は食べないがお前は食べろ』と言って商売をしてはならない」と指摘した。文大統領は政権発足直後の昨年6月「原発は安全でもないし安くもない。環境に優しくもない」と訴え、新規の原発建設を白紙化し、延長稼働中の月城1号機の廃炉も決めた。文大統領は2016年12月、釜山で原発事故を素材にした映画「パンドラ」を観賞した際「涙が止まらなかった」とコメントしている。

 ところが大統領府のある幹部は「われわれが推進するのは脱原発ではなくエネルギー転換政策だ」とした上で「脱原発は現政権の任期中に行われるのではない。現政権は原発が占める割合を下げるだけだ」と主張した。「文大統領が脱原発を宣言したので何度も問題になるのでは」との質問にこの幹部は「脱原発は今すぐできることではなく、また短い期間にできることでもない」「強くお願いしたいが、エネルギー転換政策と表現してほしい」と述べた。しかし原子力関連の業界では「どんな言葉を使っても、最終的に原発産業がなくなるのは同じだ」と反発している。

 一方で文大統領はこの日夜にチェコを出発し、現地時間の29日に20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれるアルゼンチンのブエノスアイレスに到着した。文大統領はG20首脳会議の期間中に米国のトランプ大統領と首脳会談を行う予定だ。

朝鮮日報

「文在寅(ムン・ジェイン)」をもっと詳しく

トランプ氏と文在寅氏の会談 正式な首脳会談ではなく「立ち話」に
三菱重工業にも賠償命令 文政権に求められる早急な収拾策
文大統領の矛盾 国内で脱原発を宣言も海外では大々的に原発セールス
http://news.livedoor.com/article/detail/15670149/


 

国内では脱原発、海外では原発を売り込む文在寅大統領
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2018年11月29日 10時2分 朝鮮日報
 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日にチェコでバビシュ首相と会談し、現地での原発建設プロジェクトを韓国が受注できるよう協力を要請した。チェコは現在稼働中の6基の原発で国内における電力需要の3分の1を賄っているが、ここからさらに追加で2?3基の原発建設計画を進めている。大統領自ら原発セールスに乗り出すのは素晴らしいことだ。2009年に韓国がアラブ首長国連邦(UAE)から原発を受注した際にも、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が前面に立ったことが大きく影響した。

 ただ国民としては文大統領の原発セールスにどこかふに落ちないところもある。文大統領は就任から1カ月後の昨年6月「原発は安全でもないし安くもない。また環境に優しいわけでもない。脱原発の時代に進んでいく」と述べ、新規の原発建設計画の白紙化、既存の原発に対する設計寿命延長の放棄、延長稼働中の月城1号機の閉鎖を宣言した。つまり韓国は自国では「危険で費用が安くもない」との理由から原発を放棄したが、他国では「自分たちの原発は素晴らしい」と宣伝しセールス外交を行っている。これについて相手国の国民にどう説明するのか気になるところだ。自分の子供には「ジャンクフードだから食べるな」と言いながら、他の家の子供にはそれを販売する悪徳業者と何が違うのだろうか。


 韓国大統領府のある幹部は文大統領によるチェコでの原発セールスについて「脱原発には60年以上かかるが、その間に技術力と受注競争力を維持することは脱原発政策とは矛盾しない」と説明する。しかし現在建設中の新古里5・6号機が完成すれば、韓国国内における原発建設は終了し仕事はなくなる。本来安定した仕事と考えられていた原発関連の雇用がなくなる影響で、大学の原子力工学科では志願者がほぼいなくなったという。原発部品などを製造するメーカーでも同様で、自発的な離職や構造調整が一気に進んでいる。このような状況が今後も続けば、数年後に発足する新しい政権がもう一度原発政策を推進しようとしても、韓国だけでは原発を建設できないという事態に直面するかもしれない。このように脱原発はさまざまな側面から強い批判を受けているため、政府はその説明を少しずつ変えてはいるが、それで脱原発の本質が変わるわけではない。

 原子力事業は将来的に世界で年間数百兆ウォン(数十兆円)規模に拡大するとの見通しもある。現在、世界では454基の原発が稼働し、56基が建設中、さらに89基の建設計画が新たに進められている。サウジアラビアだけでも今後25年間に16基の原発を建設する計画だが、その事業規模は100兆ウォン(10兆円)に達するという。脱原発を宣言した主要国・地域は韓国以外にドイツ、スイス、ベルギー、台湾の4カ国・地域があるが、うち台湾は数日前の住民投票で脱原発政策そのものを見直した。韓国も脱原発政策を見直し、大々的な原発セールスに乗り出すべきだ。チェコにおける文大統領の原発セールスがそのスタートになることを強く願いたい。

朝鮮日報

「文在寅(ムン・ジェイン)」をもっと詳しく

韓国内で「原発は危険」としていた文在寅氏 チェコで韓国原発の安全性をPR
トランプ氏と文在寅氏の会談 正式な首脳会談ではなく「立ち話」に
三菱重工業にも賠償命令 文政権に求められる早急な収拾策
http://news.livedoor.com/article/detail/15664442/


三菱日立、中国に原発機器を初納入
自動車・機械 環境エネ・素材
2018/10/12 17:50
保存 共有 印刷 その他
三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は12日、中国浙江省の三門原子力発電所1号機向け蒸気タービンを、運営者の三門核電に納入したと発表した。MHPSが中国から初めて受注した原子力関連機器だ。世界的に原発市場が縮小するなか、中国は積極的に推進する数少ない国。同市場で存在感を高め、事業機会の拡大を目指す。

三門原発は米ウエスチングハウスが開発した原子炉「AP1000」の初めての導入事例。MHPSは蒸気タービンを備えた125万キロワットの発電ユニットの製造を担当した。実証運転での各種性能試験をクリアし、営業運転を開始したという。

中国は原発の発電容量を2020年に5800万キロワットに引き上げる目標を掲げ、現時点で40基近い原発が稼働している。

MHPSは中国市場の開拓に向け、現地の大手重電のハルビン電気とパートナーシップを結んで営業活動をしている。このほかにも三門原発の2号機、山東省の海陽原発の1、2号機の発電ユニット受注しており、建設工事を進めている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36426680S8A011C1916M00
http://www.asyura2.com/18/genpatu50/msg/607.html

[原発・フッ素50] 愛犬はチェルノブイリ出身 原発事故で置き去りにされたペットの子孫を里親へ 健康すぎて驚き 「奇形」は見たことがない
 
愛犬はチェルノブイリ出身

原発事故で置き去りにされたペットの子孫を里親へ
Meet the Dogs of Chernobyl

2018年11月30日(金)15時30分
リサ・スピアー

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チェルノブイリ立入禁止区域には多くの犬が生息する GLEB GARANICHーREUTERS

<ゴーストタウン化した原発事故の町に生きる約1000頭の犬を保護する活動が進んでいる>

ウクライナ北部の町チェルノブイリで、史上最悪レベルの原子力発電所事故が起きたのは32年前のこと。発電所はもちろん、半径30キロ圏内は「チェルノブイリ立入禁止区域」に指定され、住民は直ちに避難を余儀なくされた。ソ連時代の団地や遊園地は、今も無残な姿で打ち捨てられたままだ。

そんな文字どおりのゴーストタウンで、よく見掛けるのが野良犬たち。昼間は、雑草が生い茂ってアスファルトが見えなくなった道路に寝そべり、のんびりと日光浴をしている。日が暮れると、群れをなして走り回ったかと思えば、鼻を空に突き上げて遠ぼえを始める。

そんな野良犬たちにとって最大の栄養源は、人間の食べ物だ。チェルノブイリでは今も事故現場の処理作業が続いており、毎朝数百人の一時労働者が列車でやって来る。彼らは愛嬌のある野良犬たちを気に入り、自分の昼食を分けてやるのだ。

だが、野良犬の多くは4歳になる前に死んでしまう。「5歳の犬を見つけたら、おじいちゃんだ」と、チェルノブイリで働く環境放射線学者のルーカス・ヒクソンは言う。ただし犬たちの寿命が短いのは放射線のせいではなく、凍えるような寒さのせいだとヒクソンは言う。

事故とは無関係の被害者
たとえ厳しい冬を生き抜いても、オオカミやイノシシといった捕食者に襲われる可能性がある。そこでヒクソンは16年、クリーン・フューチャーズ基金(CFF)を立ち上げて、チェルノブイリの野良犬たちの保護活動を始めた。

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チェルノブイリの犬 Blinoff-iStock

今年7月、ヒクソンはチェルノブイリで保護した子犬15匹を連れて、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った。そこで子犬たちは、アメリカの里親と感動的な対面を果たした。

「胸を打たれた」と、ヒクソンは振り返る。CFFでは、さらに15匹の子犬の里親も募集する計画だ。だが、誰でも里親になれるわけではない。子犬たちが愛に満ちた、安定した家庭に引き取られるよう、里親希望者たちは厳しい審査をくぐり抜けなければならない。

【参考記事】犬も鬱で死ぬ 捨てられたショックで心は修復不可能に

次のページ 犬たちは被害者だ

「この犬たちは原発事故とは何の関係もない被害者だ。だから生活の質を改善し、よりよい未来を持てるよう、できることは何でもするつもりだ」と、ヒクソンは言う。

1986年4月にチェルノブイリ原子力発電所の4号炉で爆発が起きたとき、近隣の町プリピャチでは、住民5万人に緊急避難命令が出た。状況がよく分からなかった住民の多くは、すぐに戻ってこられると思ってペットを置いていった。だがそのほとんどは、二度と町に戻ることはなかった。

現在チェルノブイリをうろつく犬は、このとき置き去りにされたペットの子孫と考えられている。CFFによると、その数は現在1000頭に迫る勢いだ。「犬好きな人は、チェルノブイリに来てほしい。きっと気に入るはずだ」と、9カ月前から原発処理業務の監督を務めるティム・モロハンは言う。

毎朝、モロハンがチェルノブイリの駅に到着すると、何匹もの子犬が跳びはねて寄ってくる。「コーヒーを飲まないと一日が始まらないと言う人は多いが、私の場合、犬とじゃれ合わないと一日が始まらない」と、彼は笑う。「チェルノブイリの犬を故郷に連れて帰れたら最高なのにと、いつも同僚たちと話していた」

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子犬の保護活動に従事するボランティア SEAN GALLUP/GETTY IMAGES

だからフェイスブックで「犬の里親募集」という記事を見つけたとき、モロハンはすぐに米ジョージア州にいる妻に電話した。事情を説明すると、妻はモロハンが帰国する際に、チェルノブイリの子犬を1匹引き取ってもいいと言ってくれた。

そこでこの7月、モロハンは生後3カ月の子犬フレディーを連れてジョージアに帰ってきた。フレディーは白い体に黒ブチが入った元気な子犬で、事故のあった4号炉から100メートル足らずの所にある機材小屋で、母犬と共に保護された。

CFFに保護されて里親に引き取られる犬たちは、体毛に放射性ちりが紛れていたりしないように、飛行機に乗る前に徹底的な洗浄を受ける。さらに1カ月にわたりさまざまな検疫を受けて、健康証明書を発行してもらう。「体内被曝の検査も受けて、引き取り先の家庭に大きな危険をもたらさないという証明書が発行される」と、サウスカロライナ大学のティム・ムソー教授(生物学)は語る。

【参考記事】心臓病リスクを下げる犬種は? 「ハート」を守る愛犬効果は本当だった

次のページ 健康すぎて驚き

「奇形」は見たことがない
ムソーは2000年代から、放射能がチェルノブイリの自然に与える影響を研究しており、現在は動物のDNA破壊を調べるために野良犬たちを調べている。これまでのところ、ほとんどの犬は立入禁止区域の中でも汚染レベルが比較的低い場所に生息していることが分かった。

中には、食べ物と一緒に放射性物質セシウム137の粒子をわずかながら摂取している犬もいる。だが、放射性物質の混ざっていないエサを数週間あるいは長くても数カ月与え続ければ、代謝されて体外に排出されると、ジョージア大学のジェームズ・ビーズリー准教授(野生生物生態系・管理)は指摘する。

立入禁止区域に生息する動物の一部は、低レベルの被曝により放射線耐性を獲得している可能性がある。ただ、これまでにそれが確認されたのはバクテリアだけだとムソーは言う。

また、里親プログラムの対象になる犬は皆、避妊または去勢手術を受けているため、アメリカに移住した後にその遺伝子が受け継がれる可能性はないと、ムソーは断言する。「ほとんどの犬は放射能を浴びたようには全く見えない。これはちょっとした驚きだ。頭が2つある犬といった奇形や大きな遺伝子異常は見たことがない」

チワワはいないけれど
立入禁止区域に生息する動物の全てがこうではない。ムソーは、くちばしに腫瘍がある鳥や、生殖能力のないネズミ類を見たことがある。クモの生息数も減ったし、ほとんど姿を消してしまった鳥もいる。

ところが犬の数は増えている。しかも驚きなのは非常に健康なことだと、ムソーは言う。チェルノブイリの犬の特徴は、大きくて垂れ下がった耳と、筋肉質のがっちりした体だ。「自然淘汰を勝ち抜いた種は、より強くてタフだ。この区域にマルチーズやチワワはいないだろう?」と、ヒクソンは言う。

ヒクソンは、13年に専門家交流プログラムのボランティアとして初めてチェルノブイリを訪れた。そのとき路上をうろつく野良犬の数に驚いたという。その犬たちと地元住民の温かさにほれ込み、16年にパートナーのエリック・カンバリアンとCFFを設立。ドッグシェルターと動物病院を造って、野良犬たちの保護に当たっている。

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クリーン・フューチャーズ。基金では専門家が犬たちの不妊手術やワクチン接種を行っている SEAN GALLUP/GETTY IMAGES

今年に入り、ヒクソン自身もチェルノブイリから子犬を引き取った。CFFのチームが保護・治療した犬の第2号だったので、ロシア語で2を意味する「ドゥバ」と名付けた。「本当に美しくて、好奇心の強い子犬だ」とヒクソンは言う。「すっかり心を奪われてしまった」

CFFは当初、ドゥバを保護して不妊手術をした後、立入禁止区域に戻そうとした。だが、何度放しても、ドゥバはクリニックに戻ってきてしまった。「手術室に座って、獣医たちの仕事をじっと見つめている」と、ヒクソンは言う。「まるで私たちがちゃんと仕事をしているかチェックしているみたいに」

ドゥバは今、シカゴ郊外のヒクソンの両親の家に住んでいる。「動物は、人間に重要な影響を与える。実際にペットを飼うまで、動物が自分にとってどんなに重要な存在になるか想像するのは難しいと思う。驚くような共生関係が構築される」と、ヒクソンは言う。

「チェルノブイリの子犬たちも、普通の犬と何ら変わらない。注目されるのが大好きで、愛を必要としているんだ」

【参考記事】キモかわいい! 「人間」すぎる人面犬にネットが大騒ぎ

[2018年9月25日号掲載]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2018/11/32.php


http://www.asyura2.com/18/genpatu50/msg/608.html

[経世済民129] 特養経営難、入所者30人移送へ 行橋市近く改善命令 職員退職、水道停止 介護崩壊 医療があっても介護が存在しない終末期支
特養経営難、入所者30人移送へ 行橋市近く改善命令 職員退職、水道停止
2018年12月04日 06時00分
 福岡県行橋市流末(りゅうまつ)の社会福祉法人「友愛会」が運営する特別養護老人ホームなど2施設で、複数の職員退職や、水道代の支払い遅延など運営に行き詰まったことが3日、分かった。市は同日、施設への水道供給を停止。計約30人の入所者の安全を図るため、市内の別の施設に近く移送する異例の対応を取る。法人には年内に、社会福祉法に基づく改善命令を出す方針。

 福祉施設の運営では、鹿児島県鹿屋市の住宅型有料老人ホーム「風の舞」で、待遇の不満から全介護職員が退職し、10月から11月半ばまでの約1カ月間に入所者6人が相次いで死亡した問題が発生。行橋市は今回、風の舞と似通った面があると認識した上で「施設運営が事実上困難」「入所者の安全を優先」と判断し、移送に踏み切る。

 市などによると、施設はともに市内の特別養護老人ホーム「今川河童(かっぱ)苑(えん)」と特定施設「いまがわ秋桜(こすもす)ガーデン」。法人は2014年10月に市の認可を受け、15年7月に両施設を開設した。部屋数は計58。

 関係者の話では、法人は、利用者を行橋市居住者に限定したことなどから経営が徐々に悪化。10月には、法人の事実上のオーナーの元行橋市議が急死したことも、運営に影響を与えた。数十人いた介護職員らのうち複数が給料支払いの遅れなどで退職しており、現在、数人の職員で入所者の世話をしているという。

 法人は10、11月分の2カ月分の水道代約40万円を延滞。市は11月30日までに支払いがない場合は供給を止めると通告していたが、支払いはなかった。これまでにも長期にわたる延滞があり、市は特別監査を行い、再三、改善勧告を出し、指導していたという。市は入所者の移送と同時に立ち入り調査し、経営状態を詳しく調べる。

 市幹部は「入居者のために、早急に移送を完了させたい」としている。今後は改善命令を経て、業務停止命令を出す可能性もあるという。

=2018/12/04付 西日本新聞朝刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/470374/


 

介護崩壊 


[1785] 介護職員が全員退職し約1月で6人が死亡した有料老人ホーム ...
https://www.akai-hana.jp/patio/read.cgi?no=1785
2018/11/22 - 介護職員8人全員が退職したこととは因果関係なし、だそうですよ。 今朝の日テレ「スッキリ」の中で、加藤浩次がこの問題を有料老人ホームの運営問題以前に、介護人材不足という社会問題として捉える必要があるっ .... 職員が多数退職して、現場が崩壊する。

 


医療があっても介護が存在しない終末期支援の恐ろしさ

昨日午前中、鹿児島の老人ホームで1月に入所者8名が死亡し、県が調査に入っているという短い記事がネット配信されて、何のことかと目が点になった。

その後、徐々に詳細が明らかになり、死亡者の数も訂正されて6名となったが、その内容が何とも恐ろしいものだ。

報道によると、問題となっているのは鹿児島県鹿屋市の住宅型有料老人ホーム「風の舞」で、10月から11月半ばにかけて入居者6人が相次いで死亡していたことが21日に明らかになったもの。

この施設では8〜9月に介護職員8人全員が退職し、夜間は施設長がほぼ1人で対応していたという。

施設側は記者会見を行い、6人は85歳以上の高齢女性で、死因は老衰や消化器官の出血などの病死だったと明らかにしたうえで、死亡と職員の退職に因果関係はないとの認識も示した。

この記者会見の映像は昨晩報道機関で一斉に配信されたが、会見しているのは最高責任者と思しき、この施設の経営母体の【総括】という役職がついている医師と、当該施設の施設長の2名である。医師である総括は、悪びれた様子もなく、「特養が受け入れない重度の人を受け入れて十分な医療を提供していたから全く問題ない」・「死亡したのは寿命としか言いようがない」という趣旨の話をしている。その態度は記者会見させられることが非常に不満な様子で、態度も不遜に見える。

夜間はほぼ毎日施設長が対応していると報道されていたので、てっきり介護職の経験者である女性施設長かと思っていたが、実際の施設長は総括という医師とあまり年齢が変わらないような、かなりお年を召した男性が施設長であった。あの人が夜間の排泄ケアや体位交換や、モーニングケアなどをすべて一人でこなしていたというのだろうか?

「医療面では適切、食事や介護の面で問題があった。」という内容の発言もしているが、仮に寿命が迫った終末期の人がそこに居た場合、必要なのは医療ではなく、十分なる介護ではないのか?日中はクリニックから看護師が4名程度派遣されているといっても、それはクリニックの仕事の合間に交代で来ているのだろうし、夜間は施設長が毎日対応しているといっても、本当に安楽のケアができていたのかは大いに疑問である。 

寿命だから死んだと言いたいようだが、寿命が迫っている人も、最期の瞬間まで生きているのだ。終末期だとて人として安心して過ごせる日常が存在しているのだ。そのためには自らの力で動くことができなくなった人に対する、体位交換や排泄ケアを含めた清潔支援や、水分摂取支援などが不可欠である。そうした介護が不十分な状態で、やるべきことはやっているといえるのだろうか。

鹿児島県は今月上旬に外部から「施設内で死亡者が出た」との内容の情報提供があったために、当該施設の運営に問題がなかったかどうか、老人福祉法に基づき9日に施設の聞き取り調査を、16日に立ち入り検査したそうであるが、その結果については明らかにしていない。

僕はインターネットで第一報を読んだときに、「老人ホーム」というのが特養であると思い込んだ。志短期間に死亡者が複数出るのは、重篤な状態の人のいる施設であろうし、老人ホームという表現は、療養型医療施設には使わないだろうから特養と思ったのである。

しかしその老人ホームが「住宅型有料老人ホーム」であったのに、まず驚いた。有料老人ホームでも「特定施設」の指定を受けている、「介護付き有料老人ホーム」であれば、何となく重度の人も住んでいるので、感染症や病気の重篤化が重なって、死亡者が短期間に集中するのはあり得るかと思うのであるが、「住宅型有料老人ホーム」であれば、そこには基本的に身の回りのことが自力でできる人が住んでいるというイメージだ。

しかし総括によれば、いつなくなってもおかしくないような人が複数居られたということである。しかし住宅型有料老人ホームについては、介護保険制度上の配置規準が存在しないので、仮に介護職員がゼロ人でも法令違反ではない。が・・・実際に看取り介護を受けてもおかしくないような人を入居させておいて、介護職員が配置されていないという状態で2カ月に及ぶ長い期間、そのような状態を放置していることは、道義上の問題があるとは言えないのだろうか。

少なくとも終末期の利用者への適切な住環境という意識に欠けることにおいては、人の命を預かる医師としては、倫理観に欠けるお粗末な対応と言わねばならないだろう。

人手が足りないことが問題で、この総括や施設長の問題ではないという論調があるが、人が雇えないのであれば、できるだけ早く居所変更をするなどの手当てをすべきである。そうした対策を全く講じようともしていないというのは、医師として介護事業経営者としての資質が問われる問題であり、マスコミは、安易な社会問題にこの問題を転嫁するなと言いたい。

それにしても介護職員が全員辞めてしまったのはなぜだろう。理由として施設長は、10.000円支給していた夜勤手当を3.000円に引き下げたからだというが、それだけで短期間にそれだけの職員が全員辞めるだろうか。それとともに複合的理由がないと、職員が一斉退職するようなことは考えにくい。

どちらにしても、職員が辞めたのだから食事や介護の面で不足があったのは仕方ない、しかし医療は提供していたので問題はないという、上から目線の理屈は社会通念上許されるものとは言えないだろう。

医療面では十分で寿命だとされても、その状態で亡くなっていった人は、それを許してくれるのだろうか。人生の最期の時間をあの何もできそうにない施設長だけの対応で、食事介助も十分にされていない状態で旅立っていった方々のことを思うとやるせない。
http://blog.livedoor.jp/masahero3/archives/52102343.html

高齢者のケアを保障しえない介護保険 −歴史と現在 - 全日本民医連
https://www.min-iren.gr.jp/kaigo_wave/data/2018/181119_02.pdf
2018/11/18 - 生活困難. 家族の介護負担. 増大. Y−HAYASHI@全日本民医連. なぜ、こんな事態に至ったのか. 介護保険のしくみと見直しの経過 .... 介護崩壊”. (医療崩壊). *介護報酬引き上げ、処遇改善策. *“消費税を増税して社会保障の「機能. 強化」をはかる”.

 


最大1000万円も 親の介護費用を補償する団体保険|マネー研究所 ...
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO38084440S8A121C1PPE000
5 日前 - 勤務先の団体保険に介護を補償する保険が加わりました。どのような商品なのでしょうか。◇ ◇ ◇高齢の親の介護と仕事を両立できず、会社を辞めざるを得ない「介護離職」。 ... 親が一定の介護状態になると一時金を給付するタイプが主流で、介護開始に伴う金銭面の負担に備えられる。団体保険なので ... タスヴェリ 1年で8割下落 ビットコインバブル崩壊の現場を歩く · 自動車保険には運転者を限定することで保険料を割り引く契約 ...

 
現役世代を使い潰す日本の介護制度は、もはや完全に失敗している(中村 ...
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52630
介護保険制度が始まって以降、介護ベンチャーの経営者たちはこぞって高齢者の生活の質の向上を煽った。その結果、膨大な介護職たちが低賃金と重労働で使い捨てにされ、介護現場は崩壊し、高齢者殺害事件や死亡事故が頻発している。激増する介護 ...

ルポ・「地獄」の介護現場〜虐待・セクハラ・逆ギレ……職員の「質の劣化」が ...
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/47873
午後のレクリエーションの最中、40代の男性介護職員Aがフロアを徘徊する70代の認知症男性高齢者に怒鳴った。 ... ノンフィクションライターの中村淳彦氏は、以前に自身が運営していた介護施設内で起きたトラブルを経験し、その「崩壊」の様子を目の当たりに ...

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介護体制また崩壊、預金残高の減少が止まらない:日経ビジネスオンライン
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030300121/061200018/
そこに通常の老化も加わる。断熱もままならない築40年の古い家で、専門家ではない自分が母の介護をするにしても限界がある。それがいつになるのかは分からないが、将来、母は家を去ることになる。短期間の帰宅はあるかもしれないが、一度去ればもう戻っ ...

80代母の死で年金頼みの生活が崩壊!介護職員が見た“丸ごと一家引き ...
https://diamond.jp/articles/-/55155
都内の会社で介護職を務めるBさんは、高齢者の介護のために訪れた家庭で、要介護者の息子や娘たちが、奥の部屋の扉を閉めて引きこもっているケースを数多く見てきたという。息子や娘たちは30代〜50代。傍目から見ると「働けるはず」と思える世代の人 ...

人材不足が招く老健の崩壊 – 介護老人保健施設 しょうわ
https://www.showa.or.jp/about/room/writing/writing02/
病院経営 2月5日号に掲載. 医療業界では、特に医師、看護師の需要に対する供給不足が取り上げられている。 では、医師や看護師は本当に不足しているのか。人口当たりで比較すると、日本の医師数は世界保健機構(WHO)の2006年版「世界保健報告書」 ...

「介護業界は崩壊している」あまりに過酷な実態に指摘 (2016年3月23日 ...
news.livedoor.com › 国内 › 社会
2016/03/23 - Twitterの「#介護士辞めたの私だ」に集まった介護業界の実態が物議を醸した。「噛まれた」と痣だらけの腕の画像が投稿され「暴力はよくある事」だそう。「1人で30人の利用者を対応」「100時間以上も残業して手当つかない」とも.

90歳の入居者が激白!介護ホームの“悲惨なる日常”(河合薫) - 個人 ...
https://news.yahoo.co.jp/byline/kawaikaoru/20160218-00054529/
2016/02/18 - 現在、90歳。ご夫婦で入所されている方から寄せられた介護現場のリアル……です。 ... 介護のいかなる状況にあっても、暴力や虐待は許されることでない。 だが、. 「他人事ではない」ーーー .... 崩壊するよりその方がまし。 だって、このまま質を ...

「介護による家庭崩壊の危機は日本以外にない」と大前研一氏 NEWS ...
https://www.news-postseven.com/archives/20140331_247795.html
2014/03/31 - 高齢化が進む日本では、介護が今以上に深刻な問題となることは明白である。先進国に共通する介護問題だが、日本のように介護を理由に離職したり、家庭が崩壊する危機に直面させられる国はないと大前研一氏は言う。 * * * 親の介護 ...

特集1 STOP介護崩壊 介護、ピンチ 受ける側も担う側も – 全日本民医連
https://www.min-iren.gr.jp/?p=5309
2008/09/01 - 民医連では「STOP! 介護崩壊」を合言葉に「介護ウエーブ」の運動に各地でとりくんでいます。八月末までに二〇万の署名を集 めて国会へ、という目標。介護分野がこれまで経験のなかった大きな運動に踏み切る背景には、介護する者にも、 ...
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/732.html

[自然災害22] 12月なのに夏日、各地で記録更新 福岡市は26度「暖冬傾向続く」地球温暖化を否定=米大統領 世界のCO2排出量4年ぶり増

12月なのに夏日、各地で記録更新 福岡市は26度
2018年12月4日16時44分
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通勤などでJR博多駅に向かう人たちに強い日差しが照りつけ長い影が出来ていた=2018年12月4日午前10時2分、福岡市博多区、小宮路勝撮影

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 列島各地は4日、季節外れの暖かさに包まれた。気象庁によると、午後3時40分までに、全国926の観測地点のうち342地点で12月の最高気温を更新(タイ記録を含む)。沖縄や九州、近畿など52地点では最高気温が25度以上の夏日となった。

 最も高い最高気温を記録したのは沖縄県宮古島市で29・8度。東京都千代田区で23・4度、大阪市中央区で24・5度、福岡市博多区で26・4度まで上昇し、福岡県内では観測史上初めてとなる12月の夏日に。9月下旬並みの気温となったところも多かった。日本海を進む低気圧に向かって南から暖かい空気が入り込んだためという。

 5日以降は冬型の気圧配置となり、北海道や東北では寒気が入り込んで気温が下がる見通し。今週末は東日本、西日本でも今季一番の冷え込みになると予想されている。
https://www.asahi.com/articles/ASLD45G4KLD4UTIL02C.html


 

暑すぎる12月の夏日、気象庁「暖冬傾向続く」
2018年12月04日 18時41分

気温が上昇し、上着を脱いで薄着の人の姿も見られた(4日午前9時47分、福岡市・天神で

 日本列島の南から暖気が流れ込んだ影響で、全国各地は4日、季節はずれの暖かさとなった。43都道府県328地点で12月の過去最高気温を更新し、東京や福岡、徳島など66地点で25度以上の夏日になった。

 気象庁によると、4日の最高気温は各地で、平年より10度前後上昇。沖縄県宮古島市29・8度、福岡市26・4度、大阪府八尾市で26・1度を観測するなど、各地で汗ばむ陽気となった。東京都練馬区でも25・0度を観測し、関東の島部以外では14年ぶりとなる12月の夏日となった。

 平年を10〜15度上回る暖気が、九州から北海道の上空1500メートル付近を広く覆ったことが気温上昇の要因で、気象庁は「暖冬傾向は来春まで続くだろう」としている。

 一方、今週末から来週にかけては一時的に冬型の気圧配置となり、全国的に冷え込む見通しという。

2018年12月04日 18時41分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12213-20181204-50064/

 
地球温暖化を否定し続ける米大統領の内輪事情

2018/12/03

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)


(iStock.com/flySnow/Purestock)
 11月23日、地球温暖化がアメリカに及ぼす深刻な影響と対策を論じた注目の米政府専門家委員会報告書が公表された。しかし、就任前から温暖化そのものを否定、パリ協定からの脱退まで言明したトランプ大統領は、報告書の内容を頭から否定、ホワイトハウスは激しいマスコミ批判を浴び対応に苦慮している。

 トランプ大統領の反環境主義は今に始まったことではない。実業家だった2012年11月7日、自らのツイッターで「地球温暖化という概念は、もともとアメリカ製造業の競争力をそぐために中国によって中国のために作り出されたものだ」と断じ、内外で話題を集めた。それ以来、ことあるごとに「温暖化は人間の活動とは無関係」と気候変動説を否定し続けてきた。こうしたツイートによる自説展開は昨年6月までの間に115回にも達しているという(電子メディアVox)。そして、きわめつきが、同年6月1日「パリ協定離脱」の大統領発表だった。


(Darwel/Gettyimages)
 しかし、今回のように、米政府の公式報告書(1656ページ)を大統領自らが否定するのは、異例中の異例であり、議会、学界、産業界、マスコミを巻き込んでハチの巣をつついたような騒ぎとなっている。

 まず、報告書が作成された経緯と内容、発表のタイミングを振り返ってみよう。

 正式には「全米気候アセスメント National Climate Assessment(NCA)」と呼ばれ、
1990年に連邦議会で成立した「地球変動調査法」に基づき政府関係省庁専門家による協議の上、4年ごとに大統領に調査報告書の提出が義務付けられてきた。このうちオバマ大統領(当時)は前回報告(2014年)を受け、大気汚染規制などさまざまな地球温暖化対策を意欲的に打ち出してきた。

 しかし、13省庁が参画した今回報告書がより注目を集めたのは、アメリカ国内の大気汚染実態の指摘だけにとどまらず、気候変動が将来的にアメリカ経済に及ぼすマイナス面の影響を具体的数字を挙げて論じた点だ。

 それによると、今世紀末までに

ヒートウェーブ現象がもたらす病人、死者続出などで1410億ドル
海浜の水位上昇による被害1180億ドル
道路、水路、鉄道、橋梁などのインフラ被害320億ドル
 などの甚大な経済損失が見込まれるほか、「干天続きで水力発電が制約を受け飲料水確保が高価なものになりつつある南西部州、海氷消失による海浜氾濫や住民移転を強いられるアラスカから、海水流入による飲料水の水質変化に悩まされるプエルトリコ、バージン諸島にいたるまで、気候変動の影響を受けずにすむ地域はアメリカじゅうから消え失せる」と指摘、さらに、アメリカ以外の世界各国も同様被害により経済的ダメージを受け、ひいてはそれがアメリカの輸出入貿易を直撃、結果として国内の自動車、食料品工場などの閉鎖につながるといった、経済面の負の連鎖にまで言及したものとなっている。

 いずれにしても前回までの報告書とくらべ、2018年版は、全米国民向けにわかりやすいかたちで気候変動の深刻さと自国への影響を、経済的側面から詳細にわたり説明した衝撃的内容であることだけは確かだ。

 このため、気候変動を一貫して否定してきたトランプ・ホワイトハウスとしては、できるだけ国民の関心をそらすため、マスコミ発表のタイミングを慎重にうかがってきた。

 その結果が、「感謝祭」明けでクリスマス・ショッピングに多くの国民が浮足立つ「ブラック・フライデー」として知られる休日扱いの11月23日金曜日だった。

 この点について、報告書作成に携わって来た政府当局者によると、発表は当初は12月第1週を見込んでいたが、ホワイトハウス内部で検討の結果、予定を繰り上げ、ニュース報道があまり目立たない同日発表となったという。

 発表後、ホワイトハウスは「同報告書はオバマ政権の時に始まったものであり、おおむね地球温暖化の最悪シナリオに基づいた内容だ。4年後の次回報告書はよりバランスのとれたものとなるだろう」とのそっけない声明を出した。

「アメリカの大気はかつてないほどクリーンだ」
 しかし、トランプ大統領は3日後の26日、報道陣を前に「報告書を部分的に読んだが、私は内容を信じない」とこれを全面否定した上「アメリカの大気はかつてないほどクリーンだ」として、現状以上の大気汚染規制措置にも反対の態度を見せた。

 問題は、なぜトランプ氏が、このように先進諸国が一様に認める温暖化対策の必要性をかたくなに否認し続けるのかだ。そのひとつのカギを握っているのが、国内石炭、石油産業とのかねてからの癒着関係だといわれてきた。

 中でも際立つのが、石炭業界とのディープな関係だろう。

 ワシントンに本部を持つ政治献金調査機関「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティクス」の調査データによると、2016年大統領選でトランプ候補に大口政治献金したトップ企業10社のうち、第1位と2位は、ロッキード・マーチン社、バンク・オブ・アメリカなどを抜いてマレー・エナジー社、アライアンス・コール社のいずれも石炭採掘会社だったことが明らかになった。

 このうちウェスト・バージニア、オハイオ、ペンシルバニアのいわゆる“炭鉱州”に鉱山を持つマレー・エナジー社のワンマン経営者ロバート・マレー氏は会社労組としての献金のほかに、個人的にも選挙期間中に22万6000ドル、トランプ氏当選直後にも「大統領就任式関連費用」として30万ドルという大金を寄付していたという。

 マレー氏がこれだけの踏み込んだトランプ支持を決断した裏には、当然のことながら、政治的賭けと打算があったことはいうまでもない。

 ニューヨーク・タイムズ紙が暴露したところによると、マレー氏は昨年3月、ホワイトハウスに招かれた際、トランプ大統領に3ページ半の「アクション・プラン」(行動計画)と題する秘密要求リストを提出、その中には、「温室効果ガス排出規制の撤廃」「石炭採掘安全基準の大幅緩和」「地球温暖化対策を念頭においた環境基準の撤廃」など、トランプ政権が実行に移すべき13項目が列挙されていた。(同紙2018年1月8日付)

 注目されるのは、トランプ・ホワイトハウスはその後、この「アクション・プラン」に沿った環境規制緩和策を忠実に実現させてきたことだ。 

 大統領はまず、秘密メモを示された直後の同年6月、他の大多数の先進諸国からの批判をよそに、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を発表した。

 この発表に際しては、令嬢のイバンカ・トランプ氏らが反対したものの、最後は石炭、石油産業からの政治献金を受けてきた共和党上院議員22人の強硬意見に押し切られるかっこうになったという。

 トランプ政権は続いて同年10月には、オバマ政権時代に地球温暖化対策の看板政策ともいわれ、一酸化炭素排出量を2030年までに2005年レベルより32%削減を義務付けた「クリーン・パワー・プラン」の廃止を発表した。

 同政権がこれらを含め、2017年から2018年にかけて環境保護に逆行する規制撤廃または緩和のために打ち出した方策は、全部で80項目近くにも達している。

 しかし、このようなトランプ政権による際立った肩入れにもかかわらず、“20世紀のお荷物産業”化しつつある石炭業界の現状と将来は、実に暗澹たるものがある。

 全米炭鉱労組(UMWA)のデータによると、今世紀にはいり顕著に下降線をたどり始めたアメリカの石炭生産量は2016年には1978年以来、最低を記録、この間の電力会社などによる石炭需要も1984年以来、最低にまで落ち込んだ。失業者数も過去数年で3万人にも達し、採掘労働者数は全体で約5万1000人程度となっている。

 ただ、2017年には、厳しい寒波襲来が続いたこともあって生産量は一時持ち直し、雇用も前年より8000人程度増加した。これを受けてトランプ大統領は今年1月の年頭教書の中で「石炭業界の復活」と高らかに謳いあげ、実際の数字を5倍近くも膨らませた上で「われわれは短期間のうちに4万5000人もの新たな雇用を炭鉱業界にもたらした」と豪語してみせた。

 これに対し石炭業界の専門家は「この一時的な雇用と生産量の増加は、昨年の気候状況と天然ガス価格上昇にともなう海外からの需要増によるもので、トランプ政権による環境規制緩和とはほとんど関係ない」と冷ややかな反応を示している。

 さらにトランプ政権にとって気がかりなのが、強力な組織力を持つUMWAが、2018年に入って共和党から民主党シフトの動きを見せていることだ。

 ロイター通信によると、UMWAは11月中間選挙に向けて民主党議員候補への政治献金を2016年にくらべ20%近くも増やし、その額は全体の8割近い91万ドルにも達したという。

 その理由について、同労組スポークスマンは、「全米各地で炭鉱閉鎖が続く中、残された炭鉱労働者たちにとっての最大関心事は、失業手当や退職年金に対し、どちらの政党が理解を示してくれるかという点だ。これまで共和党議会は炭鉱閉鎖にともなう救済措置に否定的だった」と説明している。

”レトロ・アメリカ”への偏重
 最後まで大接戦となった2016年大統領選では、ペンシルバニア、ウェストバージニア、オハイオ、ワイオミングなどの”炭鉱州”が、いずれもトランプ支持に回り、同大統領当選に決定的に重要なカギとなった。

 21世紀に入ってからの米国地勢マップの推移を見ると、都会のサラリーマン、近郊居住者、女性、大卒若年層、マイノリティなど有権者層の民主党支持が拡大する一方、共和党の支持基盤は農鉱業従事者、閑村白人層など過去の伝統にしがみつく”レトロ・アメリカ”への偏重が目立ちつつある。それだけに、2020年大統領選で再選を目指すトランプ氏としては今後、何としても石炭、石油などの化石燃料関連事業への肩入れを一層強化、白人保守層の支持つなぎとめに腐心せざるをなくなっている
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14668


 


G20、温暖化対策「1対19」 パリ協定で米孤立変わらず
経済
2018/12/2 14:02
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【ブエノスアイレス=杉原淳一】1日(日本時間2日未明)に閉幕した20カ国・地域(G20)の首脳宣言では、温暖化対策を巡っても米国とその他の各国で立場の違いが残った。国際的な枠組みである「パリ協定」に関して、米国は離脱するとの決定を改めて表明。対策の実効性を高める国際協調に不安がのぞく。

G20首脳会合の記念撮影に臨む(前列左から)マクロン仏大統領、トランプ米大統領、安倍首相ら(11月30日、ブエノスアイレス)=ロイター
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G20首脳会合の記念撮影に臨む(前列左から)マクロン仏大統領、トランプ米大統領、安倍首相ら(11月30日、ブエノスアイレス)=ロイター

「G20において、越えてはならない一線はパリ協定だった」。フランスのマクロン大統領は1日の記者会見でこう強調した。首脳宣言はパリ協定について、署名した各国の間では「不可逆的であることを再確認し、完全な実施にコミットする」と明記した。

同協定は米国が離脱を表明し、国際協調の足並みの乱れが目立っている。17年7月にドイツのハンブルクで開かれたG20首脳会議ではっきりした「1対19」の構図は変わらず、後退させなかったことが今回の成果だ。

温暖化対策は先進国と新興国の間で意見が対立しやすい。その一方で、できるだけ多くの国が参加する国際協調の枠組みが維持できなければ、取り組みの実効性が失われやすいという傾向もある。

地球温暖化対策を話し合う国連の第24回気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)は2日から14日までの日程でポーランドで開かれる。温暖化ガスの排出削減に向けたルールの合意を目指す。米国の離脱は首脳間で改めて確認されたが、ルール作りでは米国の復帰を見据え、米国が不利にならないような仕組み作りが意識される。

米国は世界で最も大きな経済大国だ。19カ国・地域をはじめとする残りの世界各国が米国と距離を置いて連携するとしても、それでは国際協調が成り立たないところに、「1対19」の難しさがある。

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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38445270S8A201C1EA2000/

 


世界のCO2排出量4年ぶり増、2017年、国連調査
環境エネ・素材 ヨーロッパ 北米
2018/11/29 17:47
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【ブリュッセル=森本学】国連環境計画(UNEP、本部ナイロビ)によると、2017年の世界全体の二酸化炭素(CO2)の排出量は前年比1.2%増となり、4年ぶりに増加へ転じた。世界の気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えるとの目標を定めた「パリ協定」の達成はこのままでは極めて難しいと指摘。各国の温暖化ガスの削減量を約3倍に引き上げる必要があるとの見解を示した。

「すべての国が前例のない緊急の対策を必要としている」。UNEPが27日に公表した報告書では、各国の今の温暖化ガスの削減目標では21世紀末に気温上昇が約3度に達すると警鐘を鳴らした。12月2日からポーランドで開く第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)を前に、各国に対策強化を呼び掛けた形だ。

世界のCO2排出量は14年から16年にかけてほぼ横ばいが続いていた。温暖化ガスの排出量がピークに達する兆しが見えてきたとの議論も一部で浮上していたが、報告書は「ピークの兆しは見られない」と強調した。

20年以降の温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」では、温暖化による世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度より十分低く抑え、かつ1.5度以下にとどめるよう努力する目標を定めた。UNEPの報告書は、2度未満を実現するには各国の排出量の削減目標を現状の約3倍、1.5度未満の実現には約5倍へ引き上げる必要があると指摘した。

COP24では、20年からのパリ協定の実施に向けた詳細ルールの決定や、各国の削減目標引き上げへの道筋を描けるかが課題となる。2日の開幕を前に、欧州連合(EU)の欧州委員会は28日、50年までにEU域内の温暖化ガス排出量を「実質ゼロ」に削減する新目標案をEU加盟国や欧州議会に提案。トランプ政権が離脱表明した「パリ協定」の堅持へ議論を主導したい考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38338710Z21C18A1910M00/?n_cid=SPTMG053

 

G20再建の成否が議長国の日本にかかる
社説
2018/12/4付
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日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)の首脳会議が閉幕した。保護貿易の抑止や温暖化対策の推進をめぐる主要国の結束を確認できず、国際協調体制のほころびが鮮明になった。

この枠組みが機能不全に陥ったままでは、世界経済の底上げや金融危機の封じ込めに支障をきたしかねない。2019年の議長国となる日本は、G20の立て直しに指導力を発揮してほしい。

アルゼンチンで開いたG20首脳会議は、体面を取り繕うのに終始した。首脳宣言すら採択できなかったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の二の舞いは避けたものの、米国の反対で「保護主義と闘う」というメッセージを発信できずに終わった。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」については、米国の離脱表明を容認するような文言を盛り込まざるを得なかった。通商や環境などの世界的な課題に取り組むG20の劣化は深刻である。

外交や安全保障も例外ではない。ロシアによるウクライナ艦船の拿捕(だほ)やサウジアラビアの記者殺害について、真相の究明を強く求めたようにはみえない。経済問題を中心に討議する場とはいえ、この点でも疑問の残る首脳会議ではなかったろうか。

G20の首脳が一堂に会するようになったのは、08年9月のリーマン・ショックをともに協力して克服するためだ。だが危機から遠ざかれば遠ざかるほど国際協調のエネルギーは失われ、ついには米国をはじめとする「自国第一」の流れに抗しきれなくなった。

貿易戦争の長期化などを背景に、世界経済や金融市場は不安定さを増している。パリ協定や世界貿易機関(WTO)などの立て直しも急務だ。G20はその原点に返って結束を固め、国際社会の統治に責任を果たす必要がある。

トランプ米大統領は20年の再選を目指し、内向きの政策を推し進める公算が大きい。中国の習近平国家主席が異質な政治・経済体制を修正するとは考えにくい。

強権的な両氏に対抗するはずのメルケル独首相やマクロン仏大統領は、指導力の低下に苦しむ。G20の議長を引き継ぐ安倍晋三首相の責任は極めて重い。

日本が自由貿易や温暖化防止などの旗を振り、G20の存在意義をもう一度示すときだ。国際協調の砦(とりで)ともいえるこの枠組みを漂流させてはならない。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO38497580T01C18A2EA1001/?n_cid=SPTMG002
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/633.html

[経世済民129] 仏デモ、マクロン氏への不満爆発=庶民結束、政権苦境に 貧困対策で1兆円支持率反転狙う 支超富裕層に優しいマクロン税制改革
仏デモ、マクロン氏への不満爆発=庶民結束、政権苦境に
2018年12月04日21時37分


燃えさかる車を前に燃料税増税方針への抗議デモを行う人々=1日、パリ(AFP時事)

 【パリ時事】フランスのマクロン大統領の燃料税増税方針に端を発した抗議デモは、パリで一部が暴徒化し、建物が破壊され車両が炎上する事態にまで発展した。減税などで大企業や富裕層を優遇するマクロン氏を「金持ち大統領」と批判してきた庶民の怒りは頂点に達し、社会の不平等に対する不満が爆発。政権は苦境に立たされている。

〔写真特集〕パリで大規模デモ

 マクロン氏は11月27日の演説で「怒りを受け止める」と述べつつも、来年1月1日の燃料税増税は撤回しないと表明していた。しかし、政府は市民の不満の高まりをこれ以上無視できないと判断。フィリップ首相が4日、テレビ演説して半年の増税延期を発表し、事態の収拾を図る方向へ転換した。
 仏メディアによれば、仏仲裁研究センターのクロード・ポワスノ研究員は暴徒化の理由について「政府に支配される不満が爆発した」と指摘。労働組合や政党が組織的に主導する従来のデモと異なり、「個人が怒りの感情に基づき行動し、過激化した」と説明した。
 インターネット交流サイト(SNS)上では、4回目となる8日のデモ開催の呼び掛けが拡散中。政府はこれ以上の混乱を防ぐため、デモ運動側との対話を模索しているが、自然発生した経緯から誰が代表を務めるのかさえ不明だ。賛同者の主張もあまりに多様で政府は対策を立てられず、和解の糸口はつかめていなかった。
 デモは、自動車運転者に携行が義務付けられている安全ベストを参加者が着用することから「黄色いベスト運動」と呼ばれる。公共交通機関が未整備で、通勤や買い物に自家用車を使用せざるを得ない郊外や地方の住民を中心に広まった。当初は燃料税増税への抗議が主だったが、マクロン氏の構造改革に反発する幅広い層に浸透。賛同者の主張は年金・社会保障の負担増や、購買力低下への不満など多岐にわたっている。
 フランスではデモやストライキが日常的に行われているが、今回ほどの被害が出るのはまれ。1日はパリだけで400人超が拘束され、パリ警視庁は「前代未聞の暴力行為」と表明した。カスタネール内相は当初、暴徒の大部分はデモに乗じて略奪を行う「壊し屋」だと説明していたが、その後の調べで一般の参加者も暴力行為に及んでいたことが判明した。(2018/12/04-21:37)

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2018120400491&g=int

 


 
フランスのデモが激化!マクロン政権の富裕層優遇(グローバリズム)に民衆の怒りが爆発!警察は400人以上を拘束、負傷者も多数!
2018年12月4日 ゆるねとにゅーす ピックアップ, 世界のにゅーす

どんなにゅーす?

・燃料税の増税など、富裕層を優遇するマクロン政権の政策に対して、フランス国民から怒りの声が噴出する中、パリを中心に反政府デモの動きが激化。2018年12月2日は仏全土で13万人以上がデモに参加した上に、一部のデモ隊と警察との激しい衝突が発生し、多数の拘束者や負傷者が出ていることが伝えられている。

フランス
燃料税デモ、パリで衝突 催涙ガス、凱旋門包む

フランスで1日行われた燃料税引き上げなどに抗議するデモは、パリで破壊行為や放火、略奪が相次ぐ極めて異常な事態となった。同国メディアによると、警察当局は2日、パリでの拘束者は412人、負傷者は警官23人を含む133人に上ったと発表した。政府は「過激派」がデモに乗じて暴力行為を繰り広げたと非難した。内務省によると1日のデモ参加者は全国で約13万6000人。

〜省略〜

【毎日新聞 2018.12.2.】

「イエローベスト」の暴徒化に揺れるフランス、その不穏な正体

〜省略〜

「右派でも左派でもない」と強調し、政治への信頼を回復すると叫んで2017年に就任したマクロン大統領は、3週間続けてパリで発生した数十万人規模のデモとその暴徒化によって窮地に立たされている。この背景にはビジネス志向の急速な経済改革への不満があり、これは結果的に右派と左派の連携を生んでいる。

「革命とデモの国」の動揺
「芸術と美食の国」であるフランスは「革命とデモの国」でもある。どちらも既成概念に囚われず、自らのセンスと意志で新たな境地を切り拓こうとする点で共通するが、11月半ばから毎週末発生してきた大規模デモは、さすがにデモに慣れたフランスにとっても大きな衝撃となった。

11月17日、約30万人のデモ隊がパリを覆い、翌週末の24日には前回より少ない約10万人規模となったが、一部が暴徒化。大統領官邸(エリゼ宮)周辺で火を放ち、2人が死亡し、数多くの負傷者を出した。警察は3人の極右活動家を逮捕した。

デモのきっかけは、燃料税の引き上げだった。マクロン大統領は地球温暖化対策としてエコカーの普及を目指しており、燃料税の引き上げはその一環だが、それまでの急激な改革(後述)に不満が募っていたなか、これが最後の引き金になったのだ。

〜省略〜

イエローベストとは
この大規模なデモの最大の特徴は、特定の党派や集団によるものではなく、さまざまな立場の参加者が、生活への不満と反マクロンで一致して参集したところにある。

デモ参加者には2017年選挙でマクロン氏に対抗した右派の支持者が目立つが、一方で左派系の労働組合関係者も少なくなく、極右政党から極左政党に至るまで幅広い野党もこのデモを公式に支持している。さらに参加者の多くは地方在住者で、このデモには「都市に対する地方の反乱」としての顔もある。

この背景のもと、デモ参加者の多くは工事現場などで用いられる黄色の安全ベストを着用することで、「働く普通のフランス人の意志」を表現している。そのため、このデモはイエローベストと呼ばれる。

今年7月の世論調査によると、マクロン政権の政策に対する「よい」という回答は29パーセント、「マクロン氏を信頼できる」という回答は32パーセントにまで下落していた一方、フランス24は約70パーセントがイエローベストを支持していると報じている。

中道・親ビジネス派の改革
右派と左派が垣根を超えて連携する大規模なデモを呼び起こしたマクロン氏の政権運営とは、どんなものだったか。一言で言えば、それは「ビジネス界向けの政権」といえる。

シリア難民の流入やテロの頻発、さらにイギリスのEU離脱やアメリカのトランプ政権に触発されて右派が台頭し、これに警戒感を強める左派との摩擦や衝突が深まるなか、「右派でも左派でもない」と強調して大統領となったマクロン氏は就任以来、アメリカ流の規制緩和や「小さな政府」路線に基づく改革を行ってきた。そこには雇用契約や農産物貿易の規制緩和や、公共サービス削減、主に富裕層向けの減税などがあげられる。

〜省略〜

中道を自認するマクロン氏は、イデオロギー対立から距離を置き、ビジネスを活発化させることで停滞の打破を目指したのだが、これは一定の成果を収めてきた。海外直接投資(FDI)を含む投資が活発化してリーマンショック(2008)後の最高水準に近づき、好調な企業業績を背景に失業率も低下した。今年7月の段階の調査で、企業経営者の54パーセントがマクロン大統領の活動に「満足している」と回答し、65パーセントが「改革が進んでいる」と回答している。

現代版「ブルジョワジーの王」
しかし、経済が成長した一方で物価も高騰し、給与の上昇は相殺された。また、若年層の失業率は高いままで、とりわけ外資流入で活気づく大都市と地方の格差も鮮明となった。

〜省略〜

【Newsweek 2018.12.3.】
https://yuruneto.com/france-demo-kakudai/


 


仏マクロン氏、貧困対策で1兆円 支持率反転狙う
ヨーロッパ
2018/9/14 9:43
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【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は13日、国民の約14%が貧困層とされる現状の改善に向け、4年で80億ユーロ(約1兆円)を投じると発表した。職業教育の強化や生活保護の充実を進める。マクロン氏の政策は金持ち優遇だとの批判が集まっており、低迷する支持率の反転を狙う。

18歳までの若者に職業訓練などを義務付ける。就職などを支援する若者の人数も2022年末までに現在の10万人から50万人に増やす。

貧困家庭の子供は学校の食堂で1ユーロで食事できるようにする。生活保護などの社会保障をまとめ、制度を簡略化することも表明した。マクロン氏は「何世代も続いてきた不平等を終わりにしたい」と語った。

フランスの失業率は9.1%で、欧州連合(EU)平均よりも高い。貧困家庭に生まれると満足な教育や訓練を受けにくく、就職しづらいことから貧困の連鎖を生んでいると指摘されてきた。

マクロン氏は国内総生産(GDP)とほぼ同じ額の累積債務を減らすため、高齢者を含めた社会保障増税に踏み切ったほか、企業誘致に向けた法人税減税などを決め「金持ちのための大統領」と批判を受けた。貧困対策を進めることで支持を回復させ、19年の欧州議会選での勝利を目指す。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35358870U8A910C1EAF000/

 

超富裕層には優しい、マクロン税制改革。
( 2018/02/07)

マクロンの諸改革を「社会的クーデター」と批判するジェン=リュック・メランション率いる野党「服従しないフランス」のサイトから。

 「マクロン大統領は金持ちの味方」と野党や労組からたびたび揶揄されてきたが、昨年12月に国会で成立した今年度予算に盛り込まれた税制改革が今年1月からいくつか実施されている。それらは本当に富裕層に有利なのだろうか?

2018年からの税制改革
 まず、これまでの富裕税(ISF)が不動産富裕税(IFI)に転換された。ISFは130万ユーロを超える純資産にかかる0.5〜1.5%の累進課税だったが、これが廃止され、IFIでは同額以上の不動産資産が対象となる。株式、債券などの金融資産は対象とならないので、そうした資産を多く持つ企業主や「超富裕層」に有利となる。

さらに利子、株式、債券、生命保険などの金融商品からの利益(インカムゲイン)への課税が30%の一律徴収税(フラット・タックス)となった。インカムゲイン課税は従来、一般社会貢献税(CSG)や所得税として徴収され、最高60%の累進課税であったが、改正によって税務手続きが大幅に簡素化されるほか、高収入世帯への課税が軽減される。ただし、多くの国民が持つ「リヴレA」や8年以上経過した15万ユーロ未満の生命保険は除外される。

社会保障制度の赤字を補填するための一般社会貢献税(CSG)は1月から、給与等の収入に対しては7.5%から9.2%に上がり、年金へは6.6%から8.3%へ(65歳未満の年金には9.2%)、資産収入などには9.9%となる。しかし、給与所得者はCSG上昇の代わりに健康保険の被雇用者負担(0.75%)と失業保険負担(2.4%。1月と10月の2段階に分けて)が廃止されるので、手取り給与はやや増える。ただ、年金生活者はこの恩恵に浴さないのでCSG率引上げに反対していたわけだ。控除後所得額が1人世帯で1万4404ユーロ、夫婦で2万2096ユーロ以上の年金生活世帯はCSG上昇の影響をもろに受けるが、それ未満の世帯の税率は65歳以上なら3.8%のままだ。

そのほか、1月から変わったものとしては、一人世帯で控除後所得額が2万7千ユーロ、夫婦と子ども2人の4人家族で同5万4千ユーロ未満の世帯(全世帯のほぼ8割に相当)の住居税が3分の1減額され、2020年にはゼロになる。

フランス景気観測所による分析
 ル・モンド紙が1月15日に報じたフランス景気観測所 (Observatoire français des conjonctures économiques) の分析によると、マクロン政権がこれまでにとった税制改革は、富裕層のなかでも特に上のクラスに有利なことは確かなようだ。

それによると、国民のうち最も裕福な5%の世帯は今年、可処分所得が1.6%(1760ユーロ)上がるのに対し、最も貧しい5%の世帯は0.6%(60ユーロ)しか上がらない。2019年末までならそれぞれ2.2%、0.2%上昇になる。逆に特に資産を持たない裕福な世帯の可処分所得は0.4%下がり、中流家庭のそれはほとんど変わらない。

ISF廃止とフラット・タックスの導入で、マクロン大統領は「生産的経済」への投資を促進し、経済を活性化させるのが狙いだという。「超富裕層」がその通りの動きをするのか、その効果が出てくるとしても少し先のことだろう。住宅手当の減額、公的支援付雇用の減少、軽油値上げなどは庶民の購買力を低下させるだろうし、地方公共団体の予算減など間接的な負の影響もある。

「超富裕層」に有利な政策が経済活性化に貢献して、国民全体の購買力を押し上げていくのかどうか、行方を見守っていくしかないだろう。(し)
https://ovninavi.com/macron_reforme_taxes/

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/737.html

[経世済民129] 内憂外患のG20首脳「最悪の事態」まだこれから 英「合意なき離脱」覚悟超えるショック 100機F35購入米通商圧力緩和を
コラム2018年12月4日 / 13:59 / 4時間前更新

内憂外患のG20首脳

「最悪の事態」まだこれから

Peter Apps
3 分で読む

[3日 ロイター] - アルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議から帰国の途についた世界の首脳らは、ほっと一息ついているだろう。

無理もない。数週間前のアジア太平洋経済協力会議(APEC)と違い、共同宣言で合意にこぎ着けた上、米中首脳会談では、当面の間とはいえ貿易摩擦の激化を避けることができた。

しかし、こうした結果を伝える明るい見出しは、物事の半面しか描き出していない。

首脳会議は、各国間で憂慮すべき数多くのずれが生じていることも浮き彫りにした。フランスのマクロン大統領はサウジアラビアのムハンマド皇太子を非難し、トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領を冷遇。互いを無視したり敵意をむき出す首脳が増えた。

最大の目玉は世界貿易機関(WTO)改革での合意となったが、これも論争拡大への序章に過ぎないかもしれない。大半の国々は実際にWTOの変革を望んでいるが、米中貿易摩擦を踏まえれば、改革の方法について合意を形成できるとは考えにくい。

トランプ大統領のような首脳のご機嫌をうかがい、国際外交の最高の舞台であるはずのG20で「多国間主義」という文言を首脳宣言に盛り込むのに四苦八苦したこと自体が、すべてを物語っている。関係者らによると、ほとんどの外交努力は米中を筆頭とする主要国にとってのタブーを避けることに向けられた。

国際的な危機が同時進行する中で開かれた今回の会議は、多くの意味で、2009年4月のロンドン会合以降で最も重要なG20だった。当時は世界金融危機の翌年で、首脳らは国際協調で一致した。

しかし今回の出席者たち、特に西側最大の民主主義国家の首脳らは、自国の政治情勢のことで頭がいっぱいだったようだ。マクロン大統領は首脳会議中、国内で過去数十年で最悪の街頭デモが起こっていることを知らされた。メイ英首相は欧州連合(EU)離脱素案の議会採決を控えて正念場を迎えている。トランプ氏は会議中も、大統領選ロシア干渉疑惑捜査を批判するツイッター投稿に忙しかった。

プーチン大統領とムハンマド皇太子が笑顔で握手を交わす姿は、また別の物語を伝えている。圧政の度合いを強める独裁的国家同士が接近する構図だ。しかし同時に、独裁者らは強まる圧力にもさらされている。ロシア経済の不振ゆえにプーチン氏の支持率は下がっており、ウクライナのような国々に喧嘩を吹っかけても形勢を変えられるかどうか分からない。サウジは記者殺害疑惑によって外交上の痛手を被った。

独裁的指導者らはまた、一枚岩ではない。トルコのエルドアン大統領はプーチン氏のロシアに接近しつつ、サウジとの対立を強めている。国際的相関図のパーツが次々と移動し、多くの2国間関係において確執が深まり続けているように見える。

トランプ大統領にとって、今回のG20はおおむね成功だった。米国の要望を受けて首脳宣言から難民や移民への言及が取り除かれ、気候変動対策へのコミットメントも避けられた。明らかに米国を意識した「保護主義」の文言も削除された。

数々の問題で頑として譲らないトランプ氏だが、それでも主要国首相は彼のご機嫌を取りたいようだ。とりわけ安倍晋三首相は、与党・共和党が下院で過半数議席を失った米中間選挙でトランプ氏が「歴史的な勝利」を収めたとまで言い、おべっかに余念がなかった。中国の習近平国家主席も融和的な態度を見せ、ロシアは米ロ首脳会談を中止した米国に「遺憾」の意を示すにとどめた。

トランプ政権は来年初め、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と再び会談して外交的な成功を収めたい意向だ。米中関係が一時的とはいえ改善したことは、追い風となるだろう。トランプ氏は3日のツイッター投稿で、近い将来に習、プーチン両氏との3者会談を開き、大規模かつ際限のない軍拡競争に歯止めを掛ける交渉を始めたいとも述べている。

この機運がいつまで続くかは定かでない。米中首脳会談で、米国は追加関税を90日間猶予することで合意した。しかし早くも緊張再燃の兆しが芽生えている。会談後、合意の解釈について米中間で小さいながらも顕著な違いが明らかになっており、今後数週間の出来事によって多くが左右されそうだ。粗雑ながら分かりやすい指標は、南シナ海での対立が増えるか減るかだろう。

この1年間、ほぼすべての主要な国際関係が悪化したことを考えれば、G20首脳会議はもっと悲惨な結果に終わってもおかしくなかった。しかし出席したほとんどの首脳が大きな内憂を抱えている。来年6月に日本で次回G20首脳会議が開催されるころには、多国間外交の成功はさらに難しくなっているかもしれない。

*筆者はロイターの国際問題コラムニストです。筆者は2006年、戦地で自動車衝突事故により麻痺状態となり、自身の障害についてのブログも書いている。2016年以降は英国防義勇軍と英労働党のメンバー。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/us-apps-g20-column-idJPKBN1O308K

 


外為フォーラムコラム2018年12月4日 / 15:09 / 2時間前更新

英「合意なき離脱」覚悟超えるショックも

唐鎌大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
4 分で読む

[東京 4日] - 12月に入り、いよいよメイ英首相は欧州連合(EU)と合意した離脱協定(ブレグジット)案の承認を目指し、議会の審議に臨む。もし議会が首相案を否決した場合、内閣不信任案提出、そして総選挙へという流れを想定する向きもある。

議会の承認期限は来年1月21日と、まだ1カ月半以上残っていることを考えると、メイ政権に対する離脱強硬派の抵抗はしばらく続くことが予想される。同時に、内閣不信任案、解散総選挙といったフレーズが市場心理、とりわけポンド相場の重しとなる事態が続くだろう。

市場では議会での可決が難しいことを見込み、「ノー・ディール(合意なき離脱)」に備えよ、という論調も珍しくなくなっている。英国がEUに、来年3月29日に設定されている離脱日の先送りを要請するのではないか、との見方も一部浮上しているが、まだ大勢とは言えない。市場が先送りを本格的に織り込んでくれば、まず低迷しているポンド相場が復調してくるはずだが、本稿執筆時点ではそうはなっていない。

<ノー・ディールとBOEの限界>

一方、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のカーニー総裁は11月、EUと英政府が合意した離脱案に支持を表明。カーニー総裁は、「移行期間を設けることの重要性を最初から強調してきた」とした上で、協定案の肝である「(2年弱の)移行期間延長の可能性」に注目していると述べている。

中銀総裁としては、たとえ時間がかかろうとも、軟着陸に至る環境をできるかぎり整備することが望ましいのは当然である。とはいえ、「ノー・ディール」シナリオを非現実的なものとして切って捨てられるような状況でもなく、「移行期間を延長する可能性」もろとも、全てが破談になる可能性も意識しておく必要がある。

カーニー総裁は、そうしたシナリオに至った場合でも中銀にできることは限定されると牽制。具体的には、BOEが利下げで対応すると想定してはならないと強調しており、万一の展開になっても景気刺激策で応戦する構えがないとの立場を明示している。

<迫られるのは利下げではく利上げ>

ノー・ディール・シナリオとなった場合に、BOEが実際に迫られるのは利下げではなく、恐らく利上げである。EU離脱を決めた16年6月の国民投票後を思い返せば分かるように、今回も合意なき離脱で悲観ムードが極まった場合、ポンド相場は急落を強いられ、英経済は輸入物価経由で一般物価の大幅な上昇に直面する可能性が高い。

2年前は国民投票を境にポンド相場が急落を始め、ほぼ同時に消費者物価指数(CPI)も押し上げられた。より正確には、ポンド相場が反転、上昇に転じた後も、CPIはしばらく騰勢が続いた。ポンドの実質実効為替相場の下落幅(前年比)は、16年11月を底として浮揚してきたが、CPIがピークをつけたのはそこから1年以上経過した17年10─12月期で、この3カ月間は前年比プラス3%で推移した。

すべてが為替相場からのパススルー効果(浸透効果)ではないだろうが、大きく寄与したであろうことは想像に難くない。通貨の大幅下落による実質所得環境の悪化を緩和すべく、BOEが通貨防衛のための利上げに動いたことは周知の通りである。

ノー・ディール離脱ともなれば、このときに経験したショックと同程度か、それ以上のポンド安は不可避だろう。BOEは、すでに2回の利上げを経験した現行水準から、さらに追加利上げを強いられることになる。

ノー・ディールになってもBOEの利下げで対応可能、と考えるのは大きな思い違いであり、むしろ、利下げで対応したくても真逆の対応を強いられる、という状況が想像される。中銀としては極めて厳しい局面であり、だからこそカーニー総裁は、「安易にそのような事態を想定すべきではない」と注意喚起をしたかったのではないか。

<英国ではすでに買いだめ現象>

離脱方針決定後、ポンド相場はBOEの利上げと共にかなり値を戻しており、ノー・ディールとなってもさほど悲観する必要はないという意見もあるかもしれない。だが16年の国民投票時点では、実際の離脱までには2年以上の時間的余裕があり、そうは言ってもソフト・ブレグジットになる、などの思惑もあった。

ノー・ディールが決まれば、単なる離脱「方針」の決定に過ぎなかった国民投票時より実際的な影響を持つだろう。カーニー総裁の言葉を借りれば、「少なくとも(石油ショックに見舞われた)1970年代までさかのぼらなくてはならない」ほどの震度が予想される。

果たして今度は、BOEによる1─2度の利上げで下げ止まるかは不透明と言わざるを得ない。すでに市場では、ポンドは国民投票後の安値を割り込み1.10ドルまで急落するという見通しも目にする。

そもそも国民投票後、ポンド相場が下がった以外、実体経済に具体的な変化があったわけではない。当の利上げも、「通貨防衛のための一手」というより「好景気に対応する一手」と解釈される雰囲気が強かった。実際、BOEは17年11月に利上げに踏み切った際、実質国内総生産(GDP)の成長率加速や失業率の低下などを理由として挙げていた。

国民投票で離脱方針を決めても、EUから即離脱するわけではなく、関税や非関税障壁が突然復活することによる景気失速や、社会的混乱を懸念する必要はなかった。

しかし、ノー・ディールで離脱すれば、英国とEUの輸出入には共通関税が課されるようになり、英国民が品不足に直面するケースも多々出てくるだろう。すでに英国では買いだめ行為が発生しており、それにより景気が上向いているという声すら出始めている。実体経済において、ノー・ディールを現実に起こり得るものとして受け止める向きが出てきた好例だろう。

<市場に漂う覚悟>

ノー・ディール・シナリオを警戒すべきとの論調が広がってきたことで、逆に、数あるリスクの1つに過ぎないと捉える向きも増えている印象がある。

そんな油断は禁物で、未曾有のショックに見舞われる恐れがあり、BOEに打つ手はないので、必ず現行の離脱案で決着させるべきだ──。カーニー総裁は、このような警鐘を鳴らしたかったのではないだろうか。

オプション市場では、ポンド相場の下落に備え始めた様子がうかがえる。ポンド/ドルのプットオプションとコールオプションの売買の傾きを示すリスクリバーサル、予想変動率(インプライド・ボラティリティ)を見ても、16年6―7月並みの緊張感が漂っている。すでに市場には、ノー・ディール・シナリオをある程度覚悟している雰囲気がある。

しかし、カーニー総裁が警告するように、事実は覚悟を優に超えるほどのショックをもたらす可能性がある。

(本コラムは、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

(編集:久保信博)

唐鎌大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト(写真は筆者提供)
*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月) 、「ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで」(東洋経済新報社、2017年11月)。新聞・TVなどメディア出演多数。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKBN1O30E2

 

ワールド2018年12月4日 / 17:09 / 4時間前更新

政府、100機のF35購入検討 米通商圧力緩和を期待
2 分で読む

[東京 4日 ロイター] - 政府は米国製の次世代ステルス戦闘機F35を中期的に100機程度購入する方向で検討に入った。複数の関係筋によると、5年間で40機程度を購入し、その後に60機程度を継続購入。総額1兆円程度の調達コストを見込んでいる。

2019年1月から始まる日米通商交渉で、米国が要求するとみられる日本からの自動車輸出削減などで、米側の「配慮」を引き出す効果などを狙っているとの声も、政府・与党内で浮上している。

<5年間に最大40機購入の方向>

ブエノスアイレスで11月30日に開かれた日米首脳会談では、トランプ米大統領が「日本はF35など大量の戦闘機を買ってくれており、われわれはそれを高く評価している」と謝意を表明した。

これに対し、日本政府高官は、日本が導入決定済みの42機のF35購入に対する「御礼」と説明している。

しかし、関係筋によると、政府内では今月中にまとめる防衛大綱や中期防衛力整備計画に、F35の追加購入を盛り込む方向で最終調整が進んでおり、与党幹部は「トランプ大統領は、新たに大量購入することへの御礼をしたのではないか」と解説する。

航空自衛隊(訂正)は現在、F15戦闘機を200機保有。そのうち100機を改修して継続使用し、残りの100機については改修に適さないため、後継機種への買い替えが水面下で検討されてきた。

関係筋の1人は、第1弾として5年間で30─40機、可能であれば最大40機程度を購入し、その後の購入も含めて中期的に100機を調達するとの有力な選択肢があると説明する。

経済官庁幹部によると、購入初年度の2019年度予算では、数機分の予算が盛り込まれる可能性があるという。仮に8機ならば800億円程度となる。

このF35大量購入について政府・与党関係者は、ここ数年で急速に強化されている中国とロシアの航空戦力に対抗するためだと説明する。すでに中国はステルス戦闘機J20を量産する見通し。このままでは質・量ともに、日本が中国に対して劣勢になるとの見通しが、防衛当局者らから示されていた。

<トランプ大統領の心証好転狙う>

しかし、複数の政府・与党関係者は、日本を取り巻く安保・防衛環境の悪化だけでなく、日本外交の「基軸」である通商・外交を包含した対米関係を戦略的に見て行った高度の政治的な決断であると明かす。 

年明けからスタートする日米通商交渉の前提として、今年9月の日米首脳会談後に発表された共同声明では「交渉結果が、米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること」という文言が明記された。

日米通商交渉に詳しい複数の関係者は、年間約7兆円の対日貿易赤字のうち、4兆円が自動車輸出が占め、米国からみれば、牛肉や防衛装備品の輸出拡大よりも、自動車輸入の削減が、より効果的だと映っていると指摘する。

阿達雅志・国土交通大臣政務官は11月12日の講演で、日米交渉は「日本から米国への年174万台の自動車の輸出。これを何とか減らせという話になると思う」と指摘した。

ハガティ駐日米大使も11月16日、日本記者クラブで講演・記者会見し、米国の対日貿易赤字削減のためには、日本メーカーによる自動車輸出削減や現地生産の拡大、米国車の輸入拡大、農産品の輸入拡大のいずれが最重要かとの質問に「大変複雑な質問だが、答えは単純で、それらすべてが必要だ」と述べた。

こうした中で、F35の大量購入を表明すれば、交渉の行方を左右するトランプ大統領の「心証」を好転させ、日米通商交渉にもプラスに働くとの思惑が、日本政府内で台頭している。

実際、先の20カ国・地域(G20)首脳会議の合間に開かれた日米、米独の首脳会談を比較すると、「謝意」を表明された安倍首相とは対照的に、メルケル独首相はトランプ大統領から対独貿易赤字の大きさに対し、ストレートに不満を表明され、明暗を分けた。

ただ、F35購入が、米国の通商圧力にどの程度の直接的な効果があるのか、楽観的な見方を戒める声も政府内にある。

茂木敏充経済再生相は、4日の閣議後会見で、トランプ大統領の謝意に関連し、日米通商交渉への影響は「分からない」としつつ、「首脳間で非常に信頼関係が醸成されている雰囲気は、通商交渉を進めるうえでもプラス」と述べた。

*本文5段落目の「海上自衛隊」を「航空自衛隊」に訂正しました。

竹本能文 編集:田巻一彦
https://jp.reuters.com/article/japan-usa-f35-idJPKBN1O30OQ
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/738.html

[自然災害22] 暖冬の師走、エルニーニョが要因 ヒートショック死、交通事故死より多い 寒暖差に注意 すでに11人死亡
国内社会ニュース(共同通信)2018年12月4日 / 18:20 / 1時間前更新
暖冬の師走、エルニーニョが要因
共同通信
1 分で読む

 東日本、西日本を中心に暖かい日が続いている。気象庁によると、4日は大分県国東市で最高気温が27・0度に達するなど夏日になった地域も多く、全国926観測点のうち351地点で12月の最高気温に並ぶか更新した。地球温暖化や今秋に発生したエルニーニョ現象が要因とみられ、暮らしや経済活動にさまざまな影響が広がっている。

 世界の平均気温の上昇傾向は止まらず、2016年には観測史上最高を記録した。背景にあるのは温室効果ガスの増加だ。世界気象機関(WMO)によると、主要な温室効果ガスである二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の濃度が上昇している。

【共同通信】
https://jp.reuters.com/article/idJP2018120401002472?il=0

 

 

ヒートショック死、交通事故死より多い 寒暖差に注意

新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部 馬場晃弘助教2017年12月9日06時00分


新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部 馬場晃弘助教


 寒くなると増える症状に「ヒートショック」というものがあります。ヒートショックとは、急激な温度差によって体が受ける影響のことです。暖かい部屋から、寒い浴室、脱衣室、トイレ、屋外などへ移動すると体が温度変化にさらされます。10度以上の変化があると、血圧や脈拍が急激に変動し心臓や血管に負担がかかります。ひどい場合には心筋梗塞(こうそく)・脳梗塞・脳血管障害(脳卒中)などを引き起こすおそれがあります。めまい、失神、動悸(どうき)といった症状が出ることもあり、入浴中の溺死(できし)や転倒からの死亡例もあります。

お風呂のヒートショックから命守るコツ
 入浴中に起きた心肺停止状態の発生状況に関する全国調査(東京都健康長寿医療センター研究所)によると、2011年の月別発生件数は、最多の1月と最少の8月で約11倍もの差があり、冬季はヒートショックの危険性が高まることがわかります。同調査の推計値では、入浴中のヒートショック関連死は全国で約1万7千人(うち高齢者が約8割)。これは、同年の交通事故死亡者数(約4600人)の約4倍にもなります。

 冬は寒い脱衣室で服を脱いで冷え切った浴室に入るため、血管が縮んで血圧が急激に上がります。湯船につかればさらに血圧が上昇します。しかし、体が温まると血管が広がり、今度は血圧が下がります。このような血圧の乱高下が心臓に負担をかけるのです。

 ヒートショックは体の生理機能が落ちてきた高齢者に多く見られます。若くても、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)、肥満、不整脈、動脈硬化、このほか晩酌後に入浴する習慣のある方も注意が必要です。血圧の乱高下が一番の問題ですので、血圧が高い場合や、降圧薬を飲んでからの入浴には注意することも大切です。

 ヒートショックはインフルエンザと同じように、寒くなったら注意すべきものとして心に留めておきましょう。

<アピタル:医の手帳・ヒートショック>http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学医歯学総合病院医科総合診療部 馬場晃弘助教)

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https://www.asahi.com/articles/ASKD865HYKD8UBQU01J.html


 


 

 


師走 県内20度超え
季節外れの暖かさに、上着を脱いで手に持ったり、腕まくりをしたりして善光寺を散策する観光客ら=4日午前10時46分、長野市
 
 県内は4日、日本海上の低気圧に向かって南から暖かい空気が流れ込んだ影響で気温が上昇し、季節外れの暖かさとなった。長野地方気象台によると、朝の最低気温は、松本で平年を14・3度上回る13・3度、松本今井で12・9度上回る11・4度となるなど、30観測地点のうち10地点で12月としての観測史上最高を記録。全域で9月下旬から10月下旬並みとなった。

 日中の気温も上がり、正午時点の最高気温は上田21・4度、立科20・9度、信濃町19・9度など。立科や信濃町など5地点で、12月としての観測史上最高を記録した。

 正午時点で18・8度と10月中旬並みの暖かさとなった長野市。善光寺では参拝に訪れた観光客らが着ていた上着を脱いで手に持ったり、腕まくりをしたりする姿が見られた。「今日は暑いね」と話し日陰に入って歩く人もいた。

 気象台によると、高気圧の勢力が強く暖かい空気に覆われていたところに、南からの暖かい空気が流れ込み、気温が上がったとみられる。5日は低気圧から延びる寒冷前線が南下して、次第に冬型の気圧配置となる見込みで、寒暖差が大きくなるため体調管理に注意が必要としている。

 全国的にも4日は気温が上昇。大分県国東市国見町で正午に27・0度を記録するなど福岡と大分の両県で観測史上初めて12月の夏日となった。

(12月4日)
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20181204/KT181204FSI090002000.php


 


風呂場の寒暖差に注意 ヒートショック、すでに11人死亡
47NEWS-2018/11/22
寒さが本格化する冬場を前に和歌山県田辺市消防本部は、寒暖差が引き起こす体調不良「ヒートショック」に注意を促している。寒い脱衣場と熱い湯船といった寒暖差が、血圧を下げて失神したり、心筋梗塞などを誘発し ... 記事全文を読む ❯ ...


「寒暖差 ショック」のストーリーの画像(日テレNEWS24)
冬は屋内でも怖いヒートショックと低体温症
日テレNEWS24-2018/11/26
寒暖差による「ヒートショック」や、寒い場所に居続けることで全身に障害がおきる「低体温症」。どちらも最悪の場合、命の危険も。「ヒートショック」は、交通事故による死者数より多く、「低体温症」で亡くなる人は、熱中症による死者数の約2倍にも ...

「寒暖差 ショック」のストーリーの画像(THE BRIDGE,Inc. / 株式会社THE BRIDGE)
THE BRIDGE,Inc. / 株式会社THE BRIDGE
交通事故の4倍「ヒートショック関連死」も知ってる人はわずか2割ーー長 ...
THE BRIDGE,Inc. / 株式会社THE BRIDGE (プレスリリース) (ブログ)-2018/11/12
ヒートショック関連死は、全国で約1万7千人(2011年データ)。同年の交通事故死亡者数(約4600人)の約4倍にあたります。ヒートショックの発生は寒暖差の激しい12月〜2月の冬場に集中しており、特に入浴時には注意が必要です。
「寒暖差 ショック」のストーリーの画像(アサ芸プラス)
秋津壽男“どっち?”の健康学「寒い季節の室内外の温度に注意すべし。脳 ...

アサ芸プラス-2018/11/25
脳梗塞以上に怖いのが、ヒートショックです。これは急激な寒暖差で血圧が急上昇することによる突然死です。例えば入浴の際、寒い脱衣所から温かい湯船につかった際に血圧が急激に変化して、心筋梗塞を招いた結果、浴室で亡くなるという ...

http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/634.html

[経世済民129] 欧州司法裁の法務官、英EU離脱の撤回可能と判断 英政府、EU基本条約第50条発動は撤回せず 英中銀総裁、ブレグジット影響
ワールド2018年12月4日 / 19:49 / 4時間前更新
欧州司法裁の法務官、英EU離脱の撤回可能と判断
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[ルクセンブルク 4日 ロイター] - 欧州司法裁判所(ECJ)の法務官は4日、英国には欧州連合(EU)離脱の決定を一方的に撤回できる権利があるとの判断を示した。

法務官の判断に拘束力はないが、ECJは法務官の意見に従うことが多い。ECJが最終判断をいつ示すかは不明。

ECJは「カンポス・サンチェス・ボルドーナ法務官は、リスボン条約50条ではEU離脱の意思の通知を一方的に撤回できることが認められるとECJが宣言することを提案した」と表明。

「離脱協定が正式に締結されるまでそうした可能性が存在する」としている。

訴訟を起こした離脱反対派のスコットランドの議員グループは、一方的な離脱撤回が認められれば、国民投票の再実施でEU残留を決められるのではないかと期待している。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-article50-idJPKBN1O313X?il=0


 

東京外為市場ニュース2018年12月4日 / 22:29 / 1時間前更新
英政府、EU基本条約第50条発動は撤回せず=首相報道官
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[ロンドン 4日 ロイター] - 英首相報道官は4日、英政府は離脱手続きを定めた欧州連合(EU)基本条約第50条の発動を撤回しないとの立場を示した。

欧州司法裁判所(ECJ)の法務官はこの日、英国には欧州連合(EU)離脱の決定を一方的に撤回する権利があるとの判断を示している。


東京外為市場ニュース2018年12月4日 / 22:14 / 1時間前更新
英中銀総裁、ブレグジット影響分析への批判に反論
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[ロンドン 4日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)のカーニー総裁は4日、一部議員から批判が出ている、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が経済に及ぼす影響に関する中銀の予想を擁護した。

中銀は前週、ブレグジットの経済的影響に関する分析を発表し、無秩序な離脱となった場合は、世界金融危機時を超える大打撃を受けるとの見解を示した。メイ首相の離脱協定案に反対する一部議員は、中銀の分析に反発していた。

カーニー総裁は議会で、中銀が示したシナリオは銀行、その他の金融会社がブレグジットへの準備を万全にさせるための準備作業をもとに策定したもので、急ごしらえの予想ではない、と説明した。

カーニー総裁に批判的な離脱派の議員は、中銀の分析を人々を不安にさせるものと批判。

カーニー総裁は、最悪のシナリオは、可能性は低いが、銀行システムがブレグジットのショックを克服できるよう、中銀としては検討しなければならないケースだと強調した。
https://jp.reuters.com/article/britain-eu-carney-idJPL4N1Y93GG?il=0
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/740.html

[経世済民129] 逆イールドは「破滅の前兆」か、米国株急落で注視は必須 投資家心理大転換 トランプFRB原因でなかった 日米株価が下落
逆イールドは「破滅の前兆」か、米国株急落で注視は必須
Yakob Peterseil、Vildana Hajric
2018年12月5日 11:52 JST
• 利回り曲線を巡る懸念は株式やドルなどの市場に波及
• 逆イールドの要因が株式相場の不安材料に、新興国には恩恵も

Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
米国株式市場は4日にほぼ2カ月ぶりの大幅安に見舞われた。主な要因の1つには債券投資家による景気リスクの受け止め方の変化がある。
  短期金利が長期金利を上回る逆イールドは、景気減速を予兆する最も頼りになる前触れの1つと考えられるシグナルだ。3日には3年債と5年債の利回り格差(スプレッド)が10年余りぶりにマイナスに転じた。
  フォート・ピット・キャピタル・グループのシニア・ポートフォリオマネジャー、キム・フォレスト氏は「世界経済の成長減速の兆候がある」と述べた上で、「しかし、それが何を意味するのか。リセッション(景気後退)なのか景気減速なのか。それが逆イールドという破滅の前兆と重なったため、私は注視している」と語った。
他市場への影響は以下の通り。

株式
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらによると、長短金利逆転は株式にとって悪い兆しだという。同社のメアリー・アン・バーテルズ、アンドルー・シールズ両氏は今週の顧客向けリポートで、S&P500種株価指数が来年、軽度の弱気相場に陥るリスクがあるとして株式保有を減らすよう投資家に勧めた。ただ、懸念材料は、逆イールドそのものではなくむしろその要因だという。
  両氏は「米金融政策引き締めと対中貿易を巡る懸念、企業収益の鈍化と利益予想の下方修正の動きは、2019年にかけて株・債券にとって良い材料ではない」と指摘。ボラティリティー上昇と短期的な「ベビー・ベア」相場が起こり得ると付け加えた。
ドル
  ドイツ銀行は利回り曲線にドル相場の前兆があると考えているが、逆イールドであるかよりもむしろ、凹型(強気)なのか凸型(弱気)なのかが鍵だという。ロンドン在勤ストラテジストのロビン・ウィンクラー氏は「重要な問題は米国の利回り曲線が他通貨との比較で、逆イールドの形からの足かせを相殺できるほど十分な曲がり具合を保持するかどうかだ」と述べた。

新興国市場
  直感に幾分反するかもしれないが、マーカス・アシュワース氏がブルームバーグ・オピニオンで指摘したように、新興国資産にとっては逆イールドは強気シグナルになる可能性がある。米連邦準備制度は、短期債利回りの上昇に居心地の悪さを感じるようになれば、引き締めの手を緩めることを納得する可能性がある。
  そうなればドルには新たな逆風になり、新興国資産の下押し圧力を軽減するという。マニュライフ・アセット・マネジメントのマクロ戦略責任者、フランシス・ドナルド氏は「これは新興国市場にとってゴルディロックス(適温)の環境だ。ハト派の米金融当局が金利を抑制し、ドルの弱含みが見込まれるものの成長見通しは依然として安定している」と指摘した。
原題:Tumbling Stocks Show You Can’t Ignore the ‘Harbinger of Doom’(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ8PAU6KLVR801?srnd=cojp-v2

 


外為フォーラムコラム2018年12月5日 / 14:41 / 3時間前更新
コラム:米イールドカーブが示す投資家心理の「大転換」
Jamie McGeever
2 分で読む

[ロンドン 4日 ロイター] - 米国債イールドカーブの急速なフラット化は景気後退(リセッション)の到来を警告しているが、それと同時に投資家心理の大幅な転換を映し出しているのが、米中貿易戦争の「一時休戦」を受けた債券、株式市場の動きだ。

週末に米国が中国への追加関税を90日間猶予することで両国が合意すると、世界の株式市場は週明け3日、安堵感から上昇した。一方で、米国債の2年物と10年物の利回り格差は2007年以来の最低水準に縮まり、長短金利が逆転する「逆イールド」に迫っている。

投資家の関心は貿易戦争を巡る戦術よりも、長期に及ぶ景気拡大が終わるリスクに集中し、株価も再び下落に転じた。

楽観論が消えるスピードの速さは、投資家の行動が「押し目は買い」から「上がれば売り」へと根本的に変わったことを示す極めて明確なサインだ。日々の動きより、大きな構図が注目されるようになった。

今年は米国の利上げ、ドル高、貿易摩擦といった逆風にもかかわらず、最近まで投資家のリスク志向が衰えなかった。

こうした状況を市場は、景気は十分強いから金利上昇に耐えられる、イールドカーブのフラット化や逆イールド化の可能性は先行指標としての力を失った、今回は今までと違う──と解釈。そして米国株は上昇を続けた。

しかし今、過去最長に近い米景気拡大が終わりを告げつつあること、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが行き過ぎであること、そして来年の投資収益見通しが暗くなったことが、間違いなく意識されるようになった。

JPモルガン・アセット・マネジメントによると、過去10年間で初めて、ボラティリティ調整後のキャッシュのリターンが米国株を上回っている。「利益の伸びが鈍り、マクロ経済面のリスクが高まる環境」が訪れそうだという。

予想外に強い経済指標や、通商面での好材料に反応した株価上昇の持続期間が、日増しに短くなっている。

モルガン・スタンレーによると、今年は2000年代初頭以来で初めて「押し目買い」戦略が失敗している。

<景気後退は2020年か>

米国株とMSCI世界株価指数は10月の下落分を半分取り戻したが、上昇基調は早くも息切れしている。米中一時休戦の効果は24時間ももたなかった。

一方、石油価格は10月初めから30%以上下落し、FRB高官らは利上げ余地が小さいと示唆し始め、短期金融市場は来年の利上げを25bp程度しか織り込まなくなった。

市場ストラテジストの間では今、米国株のリターンは1桁台後半になるとの見方がコンセンサスだ。欧州に比べればまだましだが、今年の25─30%から大幅に下がっている。

モルガン・スタンレーは4日公表した来年の見通しに「2019年は50%以上の確率で小幅な企業利益リセッションに陥るだろう。ただFRBが6月までに利上げを休止することで、一部が相殺されそうだ」と記した。

米経済が来年リセッションに入ると予想する者はほとんどいないが、2020年に入る確率は20─35%だ。過去50年以上にわたり、リセッションの前には必ず米国債の2年物と10年物のイールドカーブが逆イールド化している。

今回逆イールドが起こるか、そしてその後にリセッションが続くかどうかはまだ分からない。しかし3年物と5年物の間など、カーブの一部は既に逆転している。

警戒信号は発せられており、投資家は姿勢を正しつつある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/us-yield-sentiment-column-idJPKBN1O40FA

 

トランプ氏とFRBが原因ではなかった−問題進展でも投資家は売り
Sarah Ponczek、Luke Kawa、Vildana Hajric
2018年12月5日 16:07 JST
• 貿易と金融政策が株安の原因との説は人を惑わす情報か
• イールドカーブの一部逆転でリセッションシグナルかと投資家懸念
それほどタカ派的でない金融当局、貿易問題に関して安心させる言葉。これは投資家が望んでいたもののはずだ。これらを得ても投資家が満足しないということは、株安の理由はほかにあったということを示唆している。
  本当の不安の根源は、経済成長と利益拡大が来年減速、または頓挫する可能性だ。貿易戦争と金融政策とは異なり、これらについては人による明確な解決方法がない。
  貿易と金融政策が株安の原因との説は人を惑わす情報だったのかもしれない。両問題で進展があったにもかかわらず、4日の米市場でS&P500種株価指数は3.2%下落した。
  1営業日の取引で何かが分かるわけではないが、強気相場を支えてきた10年にわたる景気拡大へのリスクを市場がかぎ取っていることがうかがわれる。
  BNYメロン・インベストメント・マネジメントのチーフストラテジスト、アリシア・レビン氏は「債券市場は世界の成長減速を懸念している」と指摘。米3年債と5年債の利回りは3日に逆転した。「イールドカーブの一部が逆転したことで、リセッション(景気後退)のシグナルなのではないかと投資家は恐れている」とジョーンズ・トレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オローク氏は述べた。

Earnings Regress
Estimates for S&P 500 2019 profit growth dim

Source: Bloomberg


原題:Insatiable Stocks Hint Market Menace Goes Beyond Trump and Fed(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ93FG6JIJUQ01


 

トップニュース2018年12月5日 / 06:00 / 4時間前更新
日米株価が下落、米景気と貿易摩擦への警戒で:識者はこうみる
4 分で読む

[5日 ロイター] - 前日の米国株式市場が急反落し、主要指数が3%超下落して取引を終えたことで、日経平均も5日、2万2000円を割り込み、一時は300円を超える下げとなった。米国債利回りが逆イールド(長短逆転)となったことで景気への懸念が広がったほか、貿易摩擦を巡る不安も再燃した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●不況予想する市場心理、景気減速につながりかねず

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア投資ストラテジスト 服部隆夫氏>

2年―10年米国債利回りの格差は7ベーシスポイント(bp)台まで低下した。

戦後、米国では9回逆イールドが発生しているが、発生後6カ月─2年で景気後退に突入したとの分析結果がある。

ただ、足元ではまだ逆イールドにはなっておらず、米国経済は10―12月期も2%台後半の成長を遂げるとみられ、現状ではリセッションが予測できる状況ではない。

世界経済をみれば、米国の保護主義を背景に企業経営者のマインドが慎重化し、グローバルに設備投資が鈍化している。

こうした中で、金融市場が米国債のイールド形状を「不況の前触れ」と捉えていることによって、経営者心理が一段と冷え込む可能性があり、米経済や世界経済に減速圧力がかかるリスクがある。

実質インフレスワップでみた日米金利差は、11月初旬の106bpから足元では71bpまで低下してきている。こうした日米金利差の縮小は円高要因となり得る。

10―12月期の米10年国債利回りの予想値の下限は2.8%と想定している。

金融政策面では、パウエル議長とクラリダ副議長の最近の講演内容から、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを従来の想定より落とすことを検討しているもようだ。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されるフェデラルファンド(FF)金利のドットチャートに加え、潜在成長率を示す長期の経済成長率、潜在失業率にも注目したい。

●再びボラティリティー上昇へ、仕掛け的な売り警戒

<フェアラインパートナーズ代表 堀川秀樹氏>

米国では長短金利の逆転を景気減速のシグナルと位置づける投資家が多い。今週末には米雇用統計の発表も控えている。再び米VIX指数は20に乗せており、もうひと波乱がありそうだ。米国景気の減速を織り込む相場になれば、日経平均はPER(株価収益率)が12倍台だから大丈夫、との見方が信頼に値するかどうか微妙になる。

先週末に日経平均オプションは(プレミアムが非常に低い)ディープ・アウトのプット(売る権利)が買い戻されるなど、おかしな雰囲気があった。週明けはボラティリティーが一気に低下したが、それでも油断できない状況が続いていた。

来週は国内はSQ(特別清算指数)週となる。さらに日本株にはソフトバンク(9434.T)上場に伴う換金売りなど特殊な需給要因があり、仕掛け的な売りが見込まれるため、2万円プットが買いの対象となりやすい。

サンタクロース・ラリーがあるとしたらSQ通過後の9営業日だろう。日経平均は年末まで2万0500円から2万3000円程度のレンジで推移するとみている。ただ、米国株については大きなピークを付けた印象もある。米金利が上昇しにくい状況であることも考えると、年が明けてからドル/円は円高方向に振れるのではないか。国内の企業業績の来期以降の減益シナリオを織り込む相場となりそうだ。

●過剰反応、米景気後退入りの見方は行き過ぎ

<ソニーフィナンシャルホールディングス シニアエコノミスト 渡辺浩志氏>

景気後退のシグナルとみられている長短金利の逆転(逆イールド)が米国で発生し、市場のセンチメントが急速に冷え込んできた。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げはあるにせよ、来年の利上げ回数の見通しが引き下げられるのではないかとの見方も強まっており、米長期金利は低下している。

ただ、米長期金利の低下の要因をみると、先行きに対する不透明感もあるが、欧州景気の減速を織り込んだ欧州勢が米国債を買いにきているという側面もある。中には米国が景気後退に入るのではないかと言い始めている人もいるが、米国の経済指標は依然として強く、われわれは景気の減速はあっても後退はしないとみている。今の大幅な株安は過剰反応ではないか。日経平均の年末までのレンジは2万1500─2万3000円とみている。

先週末の米中首脳会談で、米国による対中関税の引き上げが留保されることになったが、米中の問題は技術覇権をかけた長い戦いで、すぐに解決できるような話ではない。この先も投資家心理を圧迫し続けそうだが、保護主義による米国経済の減速はインフラ投資など財政政策などで補われることになるだろう。

●投機筋のカーブ平坦化取引、米景気とは無関係

<SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地慎氏>

今回の米国債市場におけるイールドカーブの平坦化は、投機筋による「カーブフラットニング取引」によってもたらされたものだとみている。

ヘッジファンドなどの投機筋は今年、商品取引や米財務省証券先物の売り持ちによって損失がかさんでおり、こうした負けを取り戻す必要に駆られている。

投機筋は、年末で流動性が低下し価格が変動しやすい今の金融市場をリカバリーショットの好機ととらえ、長期債を買って短期債を売却するカーブフラットニング・プレイと株売りを同時進行させているとみられる。

そして、これまでのところ、これらの戦略は奏功している。

市場では米景気腰折れ懸念で株安、米金利低下などという「まことしやか」な解説まで聞かれるが、投機筋の損失挽回と実体経済を混同すべきではない。

米国景気の基調は依然強く、米国の本格的な景気後退は来年になるだろう。

つまり、足元のカーブフラットニングと株売りは、実体経済からは乖離しているため、米長期金利にも米国株にも目先は戻り余地があるとみている。

為替市場では、米長期金利の低下にもかかわらず、ドル指数が高止まりしている。これはドイツをはじめ欧州の景気後退が背景にあるとみられる。対円では、金利差縮小という側面から円高圧力に結びつきそうだ。

●米中関係は単なる休戦、景気後退疑う見方も

<レイモンド・ジェームズ(フロリダ州)の首席エコノミスト、スコット・ブラウン氏>

(今回の米中首脳会談の結果について)多くの人は合意というより休戦と見ていて、単なる休戦のほかに何で合意したのかがあまりはっきりしない。

長短利回りの逆転について、米連邦準備理事会(FRB)が行き過ぎた政策を採ったのか、この先景気が後退するのかと人々が疑っている状況だ。

今年は良好な形で成長したが、ある時点で鈍化し、より持続可能なペースとなるだろう。

●ブレグジット、FRB発言、関税が重し

<ドイツ銀行ウェルス・マネジメントの首席株式トレーダー、デロレス・ルービン氏>

直近の大きな値動きは、その大部分がブレグジット(英国の欧州連合離脱)への反応だ。今日の売りは、関税に関する一連の発言を見て、問題が何も解決されていないことや、なお取り組むべき作業があり、前日に感じた高揚感が実体のあるものではなく大見出しのようなものだったと気付いたことが背景だ。

前週の米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言の影響も続いている。多くの人はパウエル議長のコメントが利上げ鈍化を示唆したと受け止めている。今日はニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が発言したが、来年のFRB政策について読み違いがあるのかもしれない。

ブレグジット、FRBの発言に加え、関税を巡る懸念も再浮上してきた。

●弱気地合いでリスク回避

<インフォーマ・ファイナンシャル・インテリジェンス(ネバダ州)の市場ストラテジスト、ライアン・ノーマン氏>

現時点で弱気の地合いだ。投資家が(米中)協議に関する情報を消化した途端、不透明感や情報不足に関心が向かう。

(利回り曲線を巡る)現在の状況は、投資家が対応する必要のあるさらなるマイナス材料だ。

リスク回避の展開で、貿易動向に敏感とされる銘柄が先に売られている。利回り曲線の平坦化に伴い金融株が売られている。平坦化で銀行の収益力に大きな影響が及ぶからだ。

現時点では、よりディフェンシブな相場展開となっている。

●FOMC前に2、10年債利回り逆転なら来年の利上げペース鈍化

<ナティクシス(ニューヨーク)の米州担当首席エコノミスト、ジョセフ・ラボーニャ氏>

まず成長が鈍化している可能性がある。欧州と日本発の指標が軟調だったことで、過去6─8週間はこれが市場のテーマだった。

次に、米連邦準備理事会(FRB)は金利を中立金利と考えられる水準を超えて引き上げる可能性がある。

この日のニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言は、前週のパウエルFRB議長の発言をリセットするようなものだった。一部で考えられているほどFRBはハト派化しない可能性がある。

こうしたFRBの事情に加え、経済が2019年は軟化するとの懸念が出ていることが、この日の相場に大きな重しとなったと考えられる。翌日は(ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の死去を受けた「国民追悼の日」のため)市場は休場となり、売りを出すなら1日待つのは避けようとの心理も働いたのだろう。

長期的な視点で見れば、利回り曲線は逆転せざるを得ない。逆転は大方の予想よりも早い時期に起こるだろう。今から今月18日までの間に2年債利回りが10年債利回りを上回れば、FRBは来年の利上げを縮小せざるを得ないだろう。
https://jp.reuters.com/article/instantview-us-stock-idJPKBN1O32OM


ビジネス2018年12月5日 / 07:06 / 1時間前更新
訂正:米国株式市場=急反落、景気・貿易巡る懸念で3%安
4 分で読む

[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米国株式市場は急反落し、主要指数が3%超下落して取引を終えた。米国債利回りの動向を受けて景気への懸念が広がったほか、貿易摩擦を巡る不安も再燃し、金融株や工業株を中心に売られた。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しに関する当局者発言や、英国の欧州連合(EU)離脱案を巡りメイ政権が逆風に直面していることも不透明感の高まりにつながった。

S&P500.SPXは1日として約2カ月ぶりの大幅な下落率を記録し、前週から週明け3日にかけての上昇分を一部消失させた。

小型株中心のラッセル2000指数は4.4%安と、約7年ぶりの大幅下落となった。

この日は米国債利回りの動向に市場の関心が集まった。米10年債利回りは9月半ば以来の水準に低下し、10年債と2年債の利回り格差は過去10年余りで最も小幅な水準に縮小。2年債と3年債の利回りは前日に続いて5年債利回りを上回り、一部の年限で逆イールド(長短逆転)となった。

過去50年の米リセッション(景気後退)の前にはいずれも2年債利回りが10年債利回りを上回る(訂正)現象がみられたことから、市場では警戒感が強まっている。

債券市場の動向に特に敏感な金融株.SPSYが4.4%下落。

貿易摩擦の影響を受けやすい工業株.SPLRCIも4.4%安となり、ボーイング(BA.N)は4.9%、キャタピラー(CAT.N)は6.9%、それぞれ下落した。

ダウ輸送株20種.DJTは4.4%安と、2016年6月以来の大幅下落となった。

ディフェシブセクターの公益株.SPLRCUは0.2%高と、S&P500の主要11セクターのうち唯一、辛うじてプラス圏で引けた。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁はこの日、金融市場のリスクが高まる可能性を注視する一方、向こう1年程度の段階的な追加利上げが引き続き理にかなっているとの認識を示した。

パウエルFRB議長の前週の発言を受けて投資家の間ではFRBが予想ほど積極的な利上げを行わないとの観測が出ていた。ウィリアムズ総裁の発言について市場関係者からは、FRBが一部の観測ほどハト派的にならない可能性があるとの声が聞かれた。

ニューヨーク証券取引所では値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を4.24対1の比率で上回った。ナスダックでも5.96対1で値下がり銘柄数が多かった。

米取引所の合算出来高は約90億株。直近20営業日の平均は77億株。

終値 前日比 % 始値 高値 安値 コード

ダウ工業株30種 25027.07 -799.36 -3.10 25752.56 25773.12 25008.11 .DJI

前営業日終値 25826.43

ナスダック総合 7158.43 -283.09 -3.80 7407.95 7421.11 7150.11 .IXIC

前営業日終値 7441.51

S&P500種
2700.06
.SPXCHICAGO BOARD OPTIONS EXCHANGE
-90.31(-3.24%)
.SPXBA.NCAT.N.DJI.IXIC
S&P総合500種 2700.06 -90.31 -3.24 2782.43 2785.93 2697.18 .SPX

前営業日終値 2790.37

ダウ輸送株20種 10374.07 -476.37 -4.39 .DJT

ダウ公共株15種 749.84 +1.28 +0.17 .DJU

フィラデルフィア半導体 1209.35 -63.39 -4.98 .SOX

VIX指数 20.66 +4.22 +25.67 .VIX

NYSE出来高 11.91億株 .AD.N

シカゴ日経先物12月限 ドル建て 21610 - 460 大阪比 <0#NK:>

シカゴ日経先物12月限 円建て 21610 - 460 大阪比 <0#NIY:>

*本文6段落目の「下回る」を「上回る」に訂正しました。

S&Pセクター別指数は関連コンテンツでご覧ください; リフィニティブデータに基づく暫定値です。前日比が一致しない場合があります
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKBN1O30E2
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/747.html

[経世済民129] 「逆イールド」は凶兆、景気後退シグナル点灯か トランプ自動車高関税なら消費増税延期 経済下押あるとデフレに戻る日銀副総裁
外為フォーラムコラム2018年12月5日 / 13:16 / 3時間前更新

「逆イールド」は凶兆、景気後退シグナル点灯か
Tom Buerkle
2 分で読む

[ニューヨーク 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米債券市場の点滅灯が青色から赤色に変わった。米国債利回りは4日、3カ月ぶりの低水準にまで落ち込み、リセッション(景気後退)の可能性を示すシグナルが点灯した。

低い金利は回復期の経済と株式市場を支えてきたが、今回の利回り低下は厄介なぜい弱さを示している。

減税に後押しされた成長加速や四半世紀ぶりの低い失業率、連邦準備理事会(FRB)の目標である2%にほぼ近づいたインフレ率により、国債利回りは今年の大半において徐々に上昇してきた。また、こうした要因は9月、米国の主要株価指数を記録的水準にまで押し上げた。

しかし、トランプ米大統領の中国との貿易戦争が成長にもたらすリスクにより、上昇傾向にあった利回りは過去1カ月でその勢いに陰りが出ていた。週末に開かれた米中首脳会談で何らかの成果があったようにも見えない。

長期金利の指標となる米10年債利回りは2.91%に低下し、FRBが9月に行った0.25%の利上げを実質的に無効にした。10年債利回りは2年債利回りを下回る水準に近づいている。こうした「逆イールド」は過去40年、全てのリセッションに先立って発生している。

確かに、債券は過去10年の大半において、米国経済の安全な調整役を果たしてきた。成長に危険信号が出ると、金利は抑えられ、株式市場や住宅などの金利に敏感なセクターに追い風となった。

だが、今回は様子が異なるかもしれない。

貿易摩擦に加え、連邦政府の財政赤字が1兆ドル(約113兆円)に迫り、企業債務も記録的高水準にある中、経済は以前に増してぜい弱だ。ニューヨーク連邦準備銀行のエコノミストたちは、この数週間で経済成長率が0.5ポイント近く低下し、2.5%程度になったと指摘。減税は一時的な効果をもたらしたにすぎない可能性を示唆した。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が先週、中立金利に近づいていると発言したのを受け、株式市場は上昇した。ほとんどのアナリストは、12月19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で再び0.25%の利上げが行われると予想している。

しかし先物市場は現在、2019年はあと1回だけ利上げがあると投資家が織り込んでいることを示唆している。2度の利上げを見込んでいた1カ月前から減少している。もし債券市場のシグナルが正しければ、それさえも間違っている可能性がある。

 12月4日、米債券市場の点滅灯が青色から赤色に変わった。米国債利回りは4日、3カ月ぶりの低水準にまで落ち込み、リセッション(景気後退)の可能性を示すシグナルが点灯した。NY証券取引所で11月撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/column-us-bonds-idJPKBN1O40BY


 

外為フォーラムコラム2018年12月5日 / 12:06 / 7時間前更新
コラム:トランプ氏が自動車高関税適用なら、消費増税の延期も
田巻一彦
3 分で読む

[東京 5日 ロイター] - 2019年の日本経済は、トランプ米大統領の経済・外交政策の行方に翻弄されそうだ。米中貿易戦争の長期化が世界経済の減速懸念を強め、そこにトランプ減税の効果はく落を見越した米景気失速への懸念が足元で台頭。

一方、保護主義的な色彩をいよいよ強め、米国が輸入する自動車に高関税を適用する可能性を否定できなくなっている。大幅な腰折れ懸念が顕在化すれば、消費増税の延期も具体性を帯びる可能性がある。

<米経済の振幅拡大させたトランプ政策>

4日のNY市場では一時、ダウ.DJIが前日比800ドルを超す下落となり、米中貿易戦争の90日間猶予を歓迎した株高は、たった1日で幕を閉じた。

直接のきっかけは、米長期金利の低下による米景気の先行きに対する懸念の台頭と思われるが、整理して考えると、この大幅変動の起点は、どれもトランプ米大統領の政策にある。

米経済はもともと、世界で最も順調に拡大を続け、低インフレと潜在成長率を上回る成長を実現していた。そこにトランプ大統領が、10年間で総額1兆5000億ドルの税制改革案を提示。財政を吹かして、景気を持ち上げる政策を大胆に展開した。

その結果、2018年の米経済は成長率を上げ、ダウも最高値を更新するという「好況」を演出したが、人手不足による人件費高騰と物価上昇という現象ももたらした。

いわば、そこそこの景気拡大を見せていた米経済に大きな刺激を加えて、景気変動の振幅を大きくしたのがトランプ大統領の経済政策だと言える。

人件費高騰の背景の1つとして移民流入の規制も指摘されており、日本のプラントメーカーの中には、米国での人件費高騰で受注した案件の採算が悪化し、業績見通しを下方修正したところもある。

<先が見えない米中貿易戦争>

さらに大きいのは、米中貿易戦争の勃発だ。当初、市場の多くは、中国が米国からの輸入を大幅に引き上げ、それで決着すると高をくくっていた。

しかし、先の米中首脳会談後の米国側からの情報発信を見ると、知的財産権問題で米国は中国の完全な譲歩を強く求めており、90日後に決着する見通しが立たなくなっている。

そのあたりの市場の見通しの変化が、4日のNY市場での米株下落にも影響していると考える。

グローバルに展開している企業の中には、サプライチェーンの変更を検討、一部を実行に移しているところもあり、単に米中間の貿易量が減少するだけに影響はとどまらない。

<米自動車市場の変化と関税政策>

ここで注視すべきは、足元で起きている米国内での自動車販売におけるセダンの売れ行き不振だ。ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)の工場閉鎖計画は、その影響を受けた対応とみられるが、トランプ大統領は同社を強くけん制している。

この方向性がさらに強まれば、米国内での米自動車産業の生産量を維持するために、輸入される自動車に20%ないし25%の高関税をかけるという決断をトランプ大統領がする可能性が、ジワリと高まってくる。

日米間では、通商交渉の継続中は自動車関税を引き上げないという合意ができている。しかし、これは「永遠」に上げないことを保証した内容ではない。

日本政府と国内自動車メーカーが、対米自動車輸出の自主規制を自ら提案しない場合、日米通商交渉の合意時に米国が高関税適用を発表するケースも想定できる。

ダウ平均
25027.07
.DJIDOW JONES INDEXES
-799.36(-3.10%)
.DJIGM.N
<消費増税なら、衆参同日選か>

いずれにしても、年間174万台の対米輸出が大幅に削減されるような展開になれば、4兆円分の対米自動車貿易黒字が大幅に減少し、日本経済に大きな打撃となる可能性が高まる。

そのケースでは、2019年10月に予定される10%への消費増税を延期する選択肢も浮上する可能性がある。

安倍晋三政権が推し進めてきた消費増税の延期は、「国民に信を問う」ことに直結し、来年7月に衆参同日選となることも十分に予想される。

このようにみてくると、2019年の日本における政治・経済上の大きな変動は、ことごとくトランプ大統領の政策対応と関連していることが分かる。

中国と劇的に和解し、さらに日本にも自動車貿易で融和的なスタンスを示せば、19年の日本経済は、想定を上回って成長する可能性がある。

しかし、米中交渉が長期化し、中国からの輸入品に25%の関税をかけ、日本の自動車にも高関税を課すような展開になれば、「大嵐」となるだろう。

●背景となるニュース

・対中交渉決裂なら追加関税、「私は関税マン」 [nL4N1Y94B1]
https://jp.reuters.com/article/trump-consumption-tax-idJPKBN1O405P


 


 

経済へ下押し圧力あるとデフレに戻る可能性ー若田部日銀副総裁
日高正裕
2018年12月5日 11:02 JST 更新日時 2018年12月5日 15:29 JST
再び経済への下押し圧力があるとデフレに戻ってしまうかもしれない
物価への効果だけでなく市場・金融システムへの影響も間断なく点検

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
日本銀行の若田部昌澄副総裁は5日、新潟市内で講演と記者会見を行い、米中貿易摩擦の長期化などの影響で日本経済に下押し圧力が掛かった場合、デフレに逆戻りする危険性を指摘した上で、「必要があればちゅうちょなく追加緩和すべきだ」との考えを示した。

  若田部副総裁は会見で、「追加緩和の余地はないのではないかという議論があるが、やる必要があればその余地はある」と語った。追加緩和を行う判断については「物価がすう勢的に2%を達成する見通しがどの程度揺らぐかによってくる」と説明。金融機関の収益への影響など金融緩和の副作用については「効果を覆すほど顕現化していない」との見方を示した。


若田部日銀副総裁Photographer: David Paul Morris/Bloomberg
  これに先立ち行った講演では、物価上昇率は「着実に改善している」としながらも、依然1%程度と2%との対比では道半ばにあり、「再び経済への下押し圧力があるとデフレに戻ってしまうかもしれない」と述べた。

  一方で、金融緩和を続けていく上で「物価に対する効果だけでなく、金融市場・金融システムへの影響も間断なく点検することが必要」であり、そのことが「政策の持続性を向上させ、結果として、2%の実現の蓋然(がいぜん)性を高めることになる」とも語った。

  5日の東京株式相場は通商問題や米景気の先行きに対する懸念から続落した。日銀は10月末、2018年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)を1.1%上昇から0.9%上昇に下方修正した。原油価格の下落に加え携帯料金の値下げも今後見込まれるため、日銀は来年1月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)でさらなる下方修正を迫られる公算が大きい。

  若田部副総裁は米中間の通商摩擦について、「現時点では内外経済に対する影響は限定的とみている」としつつ、問題が長引けば貿易面での悪影響が徐々に広がるだけでなく、企業の投資マインドの悪化や金融市場におけるセンチメントの慎重化という経路を通じ、「世界経済への下押し圧力が強まっていく可能性がある」と述べた。

(会見での発言を追加し、見出しや第1段落などを差し替えて更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ8QJZ6JIJUO01?srnd=cojp-v2

 

ビジネス2018年12月5日 / 18:07 / 1時間前更新
長期金利想定1.1%で調整、3年連続最低に=19年度予算で政府筋
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[東京 5日 ロイター] - 政府は、2019年度一般会計予算案で、国債利払い費の前提となる積算金利を1.1%とする方向で調整に入った。複数の政府筋が明らかにした。今年8月の要求時点からは0.1%ポイントの引き下げで、予算の4分の1を占める国債費の抑制要因となる。

積算金利を1.1%とするのは3年連続。今年8月の段階では1.2%と想定し、利払い費を9兆0214億円と見込んでいた。さらに低い水準に設定することで、元本返済も併せた国債費は要求水準を下回りそうだ。19年度の要求額は24兆5874億円だった。

財務省は、17年度の剰余金9000億円余りの全額を債務返済に充てることを前提に、19年度の国債費を3年ぶりに増額要求した。剰余金の一部は18年度2次補正予算案の財源になるとみられ、財源にまわす分、国債費の予算額は縮減する。

積算金利は、日銀の金融緩和政策に伴う長期金利の低下で13年度の1.8%から段階的に引き下げられ、17年度から1.1%と、もっとも低い水準での予算編成を続けている。

山口貴也
https://jp.reuters.com/article/japan-rates-budget-idJPKBN1O40XB
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/748.html

[経世済民129] 来年は現金保有を、リスク調整後リターンで株式上回る 仏政府、富裕税に 英議会「侮辱動議可決 EU案に猛反発 無秩序離脱に
来年は現金保有を、リスク調整後リターンで株式上回る
Cecile Gutscher
2018年12月5日 8:37 JST
• 企業利益の伸び減速やマクロ経済リスクの高まりが株式圧迫と予想
• 米国でのキャッシュ保有、オーバーウエートに−19年の投資戦略

Photographer: Christopher Lee/Bloomberg
現金は投資資金の安全な保有形態であるばかりか、リスク調整後のリターンで今や株式を上回ると、 JPモルガン・アセット・マネジメントが指摘した。
  2600億ドル(約29兆3100億円)を運用する同社のマルチアセット戦略チームは、2019年の投資戦略で米国でのキャッシュ保有をオーバーウエートに引き上げた。同チームによると、投資家は過去10年で初めて、ボラティリティー調整後でS&P500種株価指数をはるかに超えるリターンを、安全で流動性の高い証券で得ることができる。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マルチアセット戦略責任者、ジョン・ビルトン氏が率いるチームは「企業利益の伸びが減速し、マクロ経済のリスクが高まる環境」が株式を圧迫すると予想。これに備えて、ポートフォリオのリスク削減を進めていると説明した。
  同チームの見方が正しければ、今年と同様、退屈なポートフォリオを組むことこそ来年に成功する鍵となる可能性がある。ブルームバーグがまとめたデータによると、世界の大規模な資産クラスの中でリスク調整後のリターンが今年最も高いのは、米財務省短期証券(Tビル)になる見通しだ。
原題:JPMorgan Asset Says Cash Better Than Stocks First Time in Decade(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-04/PJ87426KLVR601?srnd=cojp-v2


 

ワールド2018年12月5日 / 17:22 / 2時間前更新
仏政府、富裕税に関する方針変更も=政府報道官
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[パリ 5日 ロイター] - フランスのグリボー政府報道官は5日、マクロン大統領の政策に対する抗議デモが続く中、仏政府は富裕税(ISF)に関する政府の方針を変更する可能性があると述べた。

仏政府は金融資産にかかわるISFを廃止し、ISFの対象を高額の不動産取引や不動産資産に限定している。

しかしこうした動きがマクロン大統領は「金持ちの味方」との批判を招いている。

グリボー報道官はRTLラジオで、政府はこの措置が有効でないと感じれば、提案を再考する可能性があるとし、「われわれが取った措置が有効でないと判明すれば、順調に運ばなければ、われわれは愚かではない。われわれは変更する」と述べた。
https://jp.reuters.com/article/ny-us-stock-idJPKBN1O32SB


 


英議会、「侮辱」動議可決 EU離脱案に猛反発 無秩序離脱に市場も警戒
Brexit ヨーロッパ
2018/12/5 18:37
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【ロンドン=中島裕介】英国と欧州連合(EU)で合意した離脱案の行方が見えない。英議会では離脱案の是非を判断する審議が4日始まったが、関連動議で与党議員が造反し、立て続けに政権側が負ける失態を演じた。離脱案自体にも与党から100人を超える造反がでるとみられ、11日の採決後にメイ政権が窮地に陥る可能性が高まっている。金融市場でも無秩序離脱への警戒感が広がり始めた。

4日、英首相官邸を出発するメイ首相(ロンドン)=ロイター
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4日、英首相官邸を出発するメイ首相(ロンドン)=ロイター

「議会への侮辱だ」。審議初日の4日、野党が出した動議に、政権に閣外協力する民主統一党(DUP)や保守党の一部が造反し、可決された。メイ首相が離脱交渉で参考にした法務長官からの法的助言の全文を出さなかったためだ。

さらに11日に離脱案が否決された場合、その後の手続きで議会の発言権を強めるよう求める動議も政権の意に反して可決された。この動議は保守党のEU残留派が野党を巻き込んで提案したもの。メイ政権が与党内を掌握できていないことが審議初日から浮き彫りになった。

離脱案の可決には、下院の実質的過半数である320人をメイ氏が確保できるかが勝負になる。与党議員は324人だが、地元メディアは保守党90〜100人、DUP10人が造反すると分析しており、野党の一部が賛成しても可決には遠い。

「議会が否決すれば、我が党は内閣の不信任動議を提出する」。野党第1党・労働党のコービン党首は4日の下院の審議でメイ氏に宣言した。メイ氏は「完璧な離脱を追求しすぎて良い離脱を妨げてはならない」と呼びかけ、妥協に理解を求めるのがやっとだった。

メイ氏は先週以降、地方も含めて国内での離脱案のPRを強化。20カ国・地域(G20)首脳会議では、首脳会談で安倍晋三首相らから離脱案への賛同を取り付けるなど、挽回を図ってきた。

しかし離脱案への反発は与野党を問わず広がる。「EUの政策に関与できないのに、EUルールに縛られ続ける」との懸念は根強い。

離脱案が否決されても、経済に混乱を及ぼす「合意なし離脱」が自動的に確定するわけではない。政府は否決後、21日以内に代替案を示すルールだ。11日の採決では修正案も6本までかかる予定で、政府内には「どんな修正案が支持を集めるかわかれば、代替案の作成に生かせる」と楽観的な声もある。

ただ否決されれば内閣不信任案の提出をうかがう労働党だけでなく、保守党内で首相交代を求める声は確実に高まる。メイ氏が続投できる保証はどこにもない。続投できても反対派自体がEU残留派や強硬派などに割れており、過半数が賛同する代替案をつくるのは至難の業だ。

EU司法裁判所の法務官は4日、他の加盟国の同意がなくても英国が一方的に撤回できるとの見解を示した。「合意なし離脱」を回避する究極の選択肢が示されたようにも見えるが、メイ氏は離脱の撤回も視野に入れた国民投票の再実施は「国を悪い形で分断させる」と否定した。否決後の道筋は全く見えていない。

金融市場は警戒感を強める。安全資産である国債に資金が流れ、英長期金利は10月前半から低下(国債価格は上昇)した。米国株・国債市場にも影響が広がるなど、世界のマーケットの波乱要因になっている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38578510V01C18A2FF2000/


英議会、離脱案審議開始 11日採決、過半数のメド立たず
Brexit ヨーロッパ
2018/12/5 5:36
保存 共有 印刷 その他
【ロンドン=中島裕介】英議会下院は4日(日本時間5日未明)、英国と欧州連合(EU)で合意した離脱案を受け入れるかどうかを決める審議を開始した。5日間の審議を経て11日に採決する。ただ残留派と離脱派の双方が離脱案を批判しており、過半数を確保する見通しは全く立たない。否決されれば経済や市民生活が混乱する無秩序離脱が現実味を増すため、メイ首相がどこまで反対派を切り崩せるかが焦点になる。

メイ英首相は「離脱案が最善の案だ」と訴える=AP
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メイ英首相は「離脱案が最善の案だ」と訴える=AP

メイ首相は審議の冒頭、与野党議員に「離脱案への皆さんの支持をお願いしたい」と強い口調で訴えた。議会での否決は無秩序離脱につながると改めて警告したうえで、再国民投票の実施については「国を悪い形で分断させる」と否定した。

一方の野党第1党のコービン党首は、離脱案に与野党から反対の声が上がっていることを念頭に「統治できない政府は辞めるのが英国の伝統だ」と首相の政権運営を批判した。

上院は実質的な影響力を持たないため、下院での審議が勝負になる。ただ大きな局面変化がないままでは、離脱案は否決される可能性が高まっている。

下院の定数650のうち、採決に参加するのは議長などを除いた639。過半数には320票が必要だが与党は満票でも324票しか持っていない。多くの地元メディアは保守党内だけで反対が90〜100票まで膨らんだと分析しており、10議席の閣外与党・民主統一党(DUP)も反対の構えだ。

メイ首相は先週以降、地方視察やメディアでの積極的な出演で離脱案をアピールしてきたが、議員の間での支持は広がっていない。離脱案が否決されてもEUとの再交渉などの道は残るが、与野党双方から退陣を迫られる可能性もありそうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38556440V01C18A2000000/?n_cid=SPTMG002
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/749.html

[経世済民129] 外国人受け入れで先行、広島の地方都市で何が起きているか 労働力不足、安倍内閣の前から存在=安倍首相
ワールド2018年12月6日 / 17:04 / 1時間前更新

外国人受け入れで先行、広島の地方都市で何が起きているか
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[安芸高田市(広島県) 6日 ロイター] - 進行する高齢化や少子化による人口減に直面し、外国人の定住を促す政策を積極的に展開している地方都市がある。中国山地に囲まれた、人口が3万人を割り込む広島県安芸高田市だ。

政府は来年4月1日からの施行を目指し、出入国管理法改正案を臨時国会に提出。11月27日に衆院を通過させ外国人労働者の受け入れ拡大を目指しているが、人権団体や海外から批判の強い「技能実習制度」を残したまま新たな制度の導入を急ぐことに、野党や与党の一部からも疑問の声が出ている。

10年前から「多文化共生推進」を打ち出し、外国人の定住を促す安芸高田市で何が起きているのか。ロイターは外国人や市長、日本人の市民らにインタビューし、課題や問題点を探った。

<定住する外国人からみた安芸高田市>

谷内ルアン・ダルトラさん(31)が日系ブラジル人の父とイタリア系ブラジル人の母と一緒に広島に来たのは、彼が9歳の時だった。日本語が全くわからないまま、小学校に入り、勉強した。

16歳で働き始め、マツダの下請け工場で車の部品を作った。より良い収入を求めて移った電子部品の工場で日系ブラジル人の女性と出会い、子どもが生まれた。

しかし2008年、リーマン・ショックで「仕事が一気に減った」(ダルトラさん)。「(辞めさせないと)約束したのに、辞めさせられた。あの時が人生で一番困った」と話す。妻と子どもを一時的にブラジルに帰し、必死にどんな仕事でもやった。

その後、建設の仕事に就いたことが転機になる。「モノ作りの仕事が自分に合っていた。興味を持って、学ぶことが楽しくなった」。プレキャストという、コンクリートの資材を一つ一つ設計して作る技術を身につけ、取引先から高く評価された。

独立し2016年に株式会社を設立。今では従業員14人を抱える「株式会社ダルトラ」の社長だ。父も兄弟も、同じ会社で働く。社員は主に日系ブラジル人だが、日本人も3人いる。

会社設立に際しては、安芸高田市のNPO法人国際交流協会にサポートしてもらった。協会は、多文化共生を推進する市と連携し、外国人の生活支援を行っている。ローンで建てた郊外の大きな家は、家族の住居兼会社の事務所だ。

10歳と3歳の子どもたちは、元気に育っている。ダルトラさんは「安芸高田は、子育てするには最適なところ。周りの人は親切だし、家族を持ちたい人にはお勧めです」と話す。

東ティモール人のレオネル・ダビッド・マイヤさん(33)は、市の消防団の一員だ。国際協力機構(JICA)の仕事で同国を訪れていた奈津美さんと結婚、戦争が終わったばかりで治安の悪い母国を離れ、奈津美さんの故郷である安芸高田市に来た。軍隊で戦争を経験、身体には戦闘で受けた傷がたくさんあるという。

農業をして働くマイヤさんの故郷も農村で、安芸高田と似ているという。7歳と4歳の子どもがいる。「子どもの将来を考えたら、日本の方が良い」と話すマイヤさんは、ずっと日本に住むつもりだ。

ボランティアの消防団に入った理由は「安芸高田のために、できることをしたかった」から。町には若い人が少なく「おじいちゃんやおばあちゃんが、草刈りをしているのは危ない」と心配する。

東ティモールには、日本で働きたいと思う若者がたくさんいるという。「今は働きに来ることはできないが、制度ができてビザが取れるなら、いい人を呼んできて、ここで働かせたい。若い人がいれば町も助かる」とマイヤさんは話した。

Reuters Graphic
<「これを怠ったら町がつぶれる」>

安芸高田市は、2004年3月に6つの町が合併してできた。合併時に3万3000人を超えていた人口は現在、2万8910人。65歳以上が40%近くを占める。

浜田一義市長(74)はロイターのインタビューで「この町を守っていくためには、人口のバランスが問題。誰が老人を支えて、誰が工場を支えて行くか考えた時には、外国人の手伝いがなければいけない。外国人が好きとか嫌いとかの問題じゃない。必須の形だと考えている。これを怠ったら町がつぶれてしまう」と、定住外国人の必要性を強調した。

市長は多文化共生プランについて「住む動機がカネ稼ぎだけじゃなく、ここが住みやすいから住むというためには、日本人と同じようなレベルのサービスがいると思う。例えば、いろいろな住宅の施策、これもしてあげたい。差別なしに。そういうことをやって、少しずつ定住につながればいいと思う」と説明した。


日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩氏氏(訂正)は、安芸高田市の取り組みは浜田市長のリーダーシップによるものだとし、「市長は日本の移民政策について率直に語っているが、これはとても勇気のいること。安芸高田は日本の先駆者だ」と評価する。

同市は3月に、移住者・定住者に魅力的な街づくりを目指す「第2次多文化共生プラン」を策定した。プラン作りにかかわった明治大学国際日本学部の山脇啓造教授によると、このプランは人口減少問題と多文化共生をリンクし、国籍や民族を問わず移住・定住を促進することを目標に掲げた全国初の試みだという。

また、山脇教授は、国が6月に示した外国人材の活用は、地方創生と多文化共生をリンクさせたものであり、安芸高田市のプランが示した方向性に合致すると指摘する。その上で「安芸高田市のような取り組みを、これから国は後押ししていくと思う」と述べた。

<新たな外国人受け入れ制度>

Slideshow (4 Images)
政府が提出した入管法改正案では、人手不足が深刻な業種で外国人労働者を受け入れるため、在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」を新設。2019年度から5年間の累計で最大34万5150人の受け入れを想定している。

新設される特定技能1号では、家族の帯同は認められない。1990年代から大量に日本が受け入れた日系ブラジル人の問題を研究している武蔵大学のアンジェロ・イシ教授は、今回の法案について「本当は移民を受け入れているのに、移民政策ではないと言おうとしているカムフラージュ」だと指摘。

家族の帯同を許していないことは「(労働力の)使い捨てだということを認めているもの。非人間的、非人道的な状況」だと批判する。

安芸高田市の浜田市長は、今回の法改正案は「不十分」であり、「外国人が定住しやすいように、国の法律を変えてもらいたい」と要望する。安倍晋三政権の政策は、短期的労働力としての外国人受け入れ拡大であり定住を視野に入れていないと多くの労働専門家が指摘している。

現在の入管法では、日本人と結婚するか日系外国人などの特別な在留資格がないと外国人が定住することは難しい。

山脇教授は、安芸高田市での外国人定住プランを実現化させるあたってはこの国の制度が壁になっているとし「国が外国人労働者を定住前提で受け入れていない、というのが一番大きい」と述べた。

<技能実習生>

現在、安芸高田市には665人の外国人がいる。そのうち定住者は218人。技能実習生が400人近くを占める。国籍は中国、ベトナム、フィリピンなど。同市の人口に外国人が占める比率は2.3%と、日本全体の2%をやや上回るに過ぎない。

マツダ(7261.T)の下請け部品製造会社・スターライト工業広島工場では、中国人7人、フィリピン人4人の合計11人の技能実習生を採用している。全員が女性だ。

Mazda Motor Corp
1223.5
7261.TTOKYO STOCK EXCHANGE
-5.00(-0.41%)
7261.T
フィリピン人のグラディス・ガエタさん(22)は、実習生として日本に来た目的について「家族を助けるため」と答えた。安全で美しい日本での生活を楽しんでいるものの「山以外に何もなくて、夜には行くところがない。ファミレスがあるけれど、値段が高い」と話す。

この制度では、実習生は、期間が終われば日本で学んだ技術を持って母国に帰ることになる。だが、安芸高田市ではこうした実習生に対しても、無料の日本語教育や相談に応える制度を設けている。市役所内にある相談窓口には、1カ月間に200件以上の相談が寄せられる。

スターライト工業の室中光男工場長によると、同社では、実習生に家賃補助や法令にのっとった諸手当を支給している。

実習生の平均月額給与は、約17万2000円(賞与、通勤手当を除く)。来年は、日本人社員の英語教育への効果も考え、新たにフィリピン人の実習生を採用する計画だ。

安芸高田では、ここ2─3年、人口減少により小規模の下請け・孫請け企業で人手不足がますます深刻になり、労働力としての実習生に対する需要も高まっているという。

<市民の意識変化>

市の多文化共生プランに対し、市民の理解は進んできていると浜田市長は話す。外国人が安芸高田市に住むことを良いと思う人は2010年の30%から17年には48%に増え、外国人と共生すると良いことがあると思うかとの質問に「ある」と答えた市民は60%から82%に増えた。

市内の大型スーパーマーケットの近くで市民の声を聞くと、「異文化によって人生が豊かになるし、交流することは良いこと。日本人が海外に出て行くのだから、外国人が来るのは駄目というのは違う」(64歳、女性)、「子どもが通う小中学校にも、外国人はいる。同じクラスで一緒に遊んでいるし、言葉のコミュニケーションは難しいが、子どもは対応が早い」(44歳、女性)、「市が積極的に外国人受け入れを進めようとしているのは良いと思う。人口減少の面もある。特に問題があったという話は聞いていない」(70代、男性)といった声が聞かれた。

ただ、85歳の男性は「外国人は駄目。悪い人が多くなる。今でもニュースをみると事件が多いし、外国人をこれ以上受け入れるのには反対」と答えた。

ブラジル出身の定住者であるダルトラさんは、今後、日本に帰化することも選択肢としているという。そして、外国人定住者を増やそうとする市のプランについて「外国人が受け入れられる町だと思う。あと300人、400人来ても問題ない。態勢は整っている」と話した。

*18段落目の「毛受敏弘氏」を「毛受敏浩氏」に訂正しました。

(宮崎亜巳、Linda Sieg 編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/us-japan-ageing-foreigners-hiroshima-idJPKBN1O50JN


 

労働力不足、安倍内閣の前から存在=安倍首相
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[東京 6日 ロイター] - 安倍晋三首相は6日午後、参議院法務委員会に出席し、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法(入管難民法)改正案を巡り、与野党の質問に応じた。労働力不足にこれまで無策だったのでは、との立憲民主党の小川敏夫委員の質問に対し、「労働力不足は安倍内閣の前の政権から存在した」と答えた。「労働人口が減少すると、伸びていく社会保障費の財源をまかなうことができない」とも強調し、外国人受け入れ拡大の必要性に理解を求めた。
https://jp.reuters.com/article/japan-labour-shortage-idJPKBN1O50NH?il=0
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/768.html

[経世済民129] 高齢化で中立金利が低下、金融緩和効果の発揮が難しく=日銀総裁、海外リスク「深刻化する恐れも」国債金利低下さらに世界金利低
高齢化で中立金利が低下、金融緩和効果の発揮が難しく=日銀総裁

ビジネス2018年12月6日 / 18:29 / 1時間前更新


[東京 6日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は6日の参議院財政金融委員会で、高齢化の進展が潜在成長率低下とともに中立金利低下を招くとし、中立金利低下により、金融緩和効果を発揮することが難しくなると述べた。中山恭子委員(希党)の質問に答えた。

黒田総裁は「高齢化の進展が潜在成長率とともに、景気や物価に対して中立的な金利水準を低下させる可能性が問題になり得る」と指摘。金融緩和効果は、中立金利よりも低い金利を実現することで景気刺激、物価上昇をもたらす効果があると説明し「中立金利が低下すると、金融緩和効果を発揮することが難しくなってくる」と述べた。

そのうえで「来年のG20で高齢化社会におけるさまざまなチャレンジについて議論することは、大変時宜を得たもの」と述べた。

高齢化の進展とともに人口減少や成長率低下が起きると「金融機関の貸出需要や金融機関の収益に下押し圧力として作用する」と指摘。地方では、人口や企業数の減少が大きく「高齢化、人口減少のなかで、新たな金融サービスで向かっていかないと、長期的に、地域銀行は難しい状況になる」とした。個人・企業に向けて多様なサービスを提供することによって「地域金融機関の経営をきちっとした形で持続できることは可能だとは思う」としながらも「相当大きなチャレンジであると思う」と述べた。

黒田総裁は「地域金融機関の基礎的収益力は趨勢的に低下してきている。大きな課題だ」と指摘。地域から都市部への預金流出は「現在は起きていないものの、そうなると、ますます地域金融機関の経営は大変」とし「適切な金融サービス提供にはさまざまな改革や投資、支える政府の政策が必要。日銀もさまざまなチャネルを通じて、そうした動きをサポートしていきたい」と述べた。

清水律子
https://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-rate-idJPKBN1O50V7?il=0

 

日銀総裁、海外リスク「深刻化する恐れも」−必要に応じ適切に対応
日高正裕
2018年12月6日 14:31 JST
最も大きなリスクが貿易摩擦のアジア、世界経済への影響
白川前総裁の著書での主張に「全く無意味な議論」と反論
日本銀行の黒田東彦総裁は5日の参院財政金融委員会で、米中間の貿易摩擦など海外経済を巡るリスクが「深刻化する恐れもある」とし、必要に応じて適切に対応していく考えを示した。

  黒田総裁は「海外経済を巡る不確実性が増している」と指摘。「最も大きなリスクが貿易摩擦のアジア、世界経済への影響」と述べた。その上で、「海外経済を巡るリスクは注意深く点検し、必要に応じ適切な対応を取っていきたい」と語った。


黒田東彦日銀総裁Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  2019年10月に予定される消費増税については、14年4月の増税に比べ「影響は小幅のものにとどまる」としながらも、「不確実性は残るので、よく注視して適切な対応を取っていきたい」と述べた。

  6日の東京株式相場は大幅に3日続落。カナダ当局が華為技術の最高財務責任者(CFO)を逮捕したことで、米中関係の悪化が警戒され、電機や機械など中国関連中心に全業種安い。東京外国為替市場では、リスク回避の動きから円が全面高となっている。

  黒田総裁は、追加緩和余地を作るために金利を引き上げるべきではないかとの主張に対して、「今直ちに、将来の緩和の余地を残すため、まだ物価目標が達成されてない段階で金利を引き上げることは、むしろ物価目標の実現を遠ざけることになりかねない」と述べ、否定的な見解を示した。

  追加緩和の手段に関しては、「短期政策金利の引き下げや長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速などが抽象的には考えられる」と説明した。もっとも、「現時点では、今の大幅な緩和を粘り強く続けることによって、物価上昇率は徐々に2%に近づいていく」と従来の見解を繰り返した。

  白川方明前総裁が10月に出版した著書「中央銀行」で、金融緩和政策は需要の先食いであり、効果は長続きしないと主張したことについて問われると、「マクロ政策をすべて否定する議論で、全く無意味な議論だ」と色をなして反論する場面もあった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-06/PJAU1X6S972B01?srnd=cojp-v2


 

 
日銀総裁、海外リスク「深刻化する恐れも」−必要に応じ適切に対応
日高正裕
2018年12月6日 14:31 JST
最も大きなリスクが貿易摩擦のアジア、世界経済への影響
白川前総裁の著書での主張に「全く無意味な議論」と反論
日本銀行の黒田東彦総裁は5日の参院財政金融委員会で、米中間の貿易摩擦など海外経済を巡るリスクが「深刻化する恐れもある」とし、必要に応じて適切に対応していく考えを示した。

  黒田総裁は「海外経済を巡る不確実性が増している」と指摘。「最も大きなリスクが貿易摩擦のアジア、世界経済への影響」と述べた。その上で、「海外経済を巡るリスクは注意深く点検し、必要に応じ適切な対応を取っていきたい」と語った。


黒田東彦日銀総裁Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  2019年10月に予定される消費増税については、14年4月の増税に比べ「影響は小幅のものにとどまる」としながらも、「不確実性は残るので、よく注視して適切な対応を取っていきたい」と述べた。

  6日の東京株式相場は大幅に3日続落。カナダ当局が華為技術の最高財務責任者(CFO)を逮捕したことで、米中関係の悪化が警戒され、電機や機械など中国関連中心に全業種安い。東京外国為替市場では、リスク回避の動きから円が全面高となっている。

  黒田総裁は、追加緩和余地を作るために金利を引き上げるべきではないかとの主張に対して、「今直ちに、将来の緩和の余地を残すため、まだ物価目標が達成されてない段階で金利を引き上げることは、むしろ物価目標の実現を遠ざけることになりかねない」と述べ、否定的な見解を示した。

  追加緩和の手段に関しては、「短期政策金利の引き下げや長期金利操作目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速などが抽象的には考えられる」と説明した。もっとも、「現時点では、今の大幅な緩和を粘り強く続けることによって、物価上昇率は徐々に2%に近づいていく」と従来の見解を繰り返した。

  白川方明前総裁が10月に出版した著書「中央銀行」で、金融緩和政策は需要の先食いであり、効果は長続きしないと主張したことについて問われると、「マクロ政策をすべて否定する議論で、全く無意味な議論だ」と色をなして反論する場面もあった。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-06/PJAU1X6S972B01?srnd=cojp-v2

 

国債金利低下さらに、日銀の修正前に 一時4カ月半ぶり 世界金利低下で
経済
2018/12/6 18:29日本経済新聞 電子版
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債券市場が騰勢を強めている。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは急速にQ低下(価格は上昇)。6日には一時約4カ月半ぶりと、7月末の日銀の金融政策修正前の低水準に戻った。米国の景気減速懸念などを背景に、世界的に金利低下や株価の下落が進行。日本の債券市場にも買いの流れが波及した。

6日の債券市場で新発10年物国債利回りは一時前日比0.020%低い0.040%と、7月20日以来の低い水準となった…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38632470W8A201C1EN2000/


長期金利が低下 一時0.040%に
経済
2018/12/6 13:49
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6日の債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは一時、前日比0.020%低い(価格は高い)0.040%まで低下した。日銀が金融緩和政策を修正した7月末時点の水準を下回り、同月20日以来、約4カ月ぶりの低水準となった。

日経平均株価が大幅に下落したことで、価格変動が小さく「安全資産」とされる債券に買いが入った。東京時間6日午後の時間外取引で、米長期金利が低下していることも、国内債への買いを促した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38609900W8A201C1000000
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/769.html

[経世済民129] 長期投資家、日本株に見切り 強まる米景気の減速懸念 クレジット市場は「バブルの状況」パウエル過去利上の効果顕在化まで時間
長期投資家、日本株に見切り 強まる米景気の減速懸念
証券部 大西康平
2018/12/6 18:32日本経済新聞 電子版
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6日の東京株式市場で日経平均株価は400円超下げた。3日続落となり、この間の下げ幅は1000円に達した。この日の朝、カナダ当局が米国の要請に応じ、華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)を逮捕したと伝わり、米中摩擦の高まりが嫌気された。だが理由はそれだけではない。米国の景気減速への懸念を強めた中長期で運用する機関投資家が、日本株の見切り売りを出し始めているのだ。

「淡々とした売りが続い…


日本株は大幅続落、華為ショックで米中悪化を警戒ー中国関連に売り
河元伸吾
2018年12月6日 8:08 JST 更新日時 2018年12月6日 15:10 JST
カナダ当局が華為技術CFOを逮捕−米国が引き渡し求める
米株価指数先物やアジア株が軒並み安、為替相場は円高が進む
6日の東京株式相場は大幅に3日続落。カナダ当局が中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の最高財務責任者(CFO)を逮捕し、米中関係の悪化が警戒された。電機や機械など中国関連中心に全業種安い。

TOPIXの終値は前日比29.89ポイント(1.8%)安の1610.60
日経平均株価は同417円71銭(1.9%)安の2万1501円62銭
  カナダ政府は5日、中国スマートフォンメーカー、華為技術の孟晩舟CFOを逮捕したと発表した。米国が引き渡しを求めているという。米中関係の悪化を懸念して金融市場はリスクオフとなり、日本時間6日の米S&P500種株価指数先物は下落、アジア株も中国上海総合指数が一時1.8%安、香港ハンセン指数が2.9%安など全面安。為替市場でドル・円相場は一時1ドル=112円58銭と円高に振れた。
華為技術CFO逮捕の記事はこちらをご覧ください

  みずほ証券の三野博且シニアストラテジストは「米中首脳会談を経て両国の貿易問題に進展が期待されていたところに華為技術CFOが逮捕され、融和的な動きがひっくり返される可能性が出てきた」と指摘。両国の態度が硬化して貿易問題の解決が遅れる公算があるとし、「米中通商協議が90日間の期限を待たずに交渉打ち切りとなることも警戒される」と言う。

  日経平均は611円安まで下げ幅を拡大した。三野氏は「英国の欧州連合(EU)離脱案が来週予定の議会採決で否決される可能性が伝わり、混乱を警戒したリスク回避の動きも見られる」とした上で、大幅安は「ファンド系の仕掛け的な売りによる先物主導の下落」とみていた。


東証1部の売買代金は2兆7166億円
値上がり銘柄数は253、値下がり銘柄数は1828
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38633210W8A201C1EN1000/


 


クレジット市場は「バブルの状況」、行き過ぎを生む−アポロ創業者
Sabrina Willmer
2018年12月6日 13:44 JST
「利回りへの渇望」が世界的に存在するとブラック氏
バブルの状況下でより慎重で用心深くなるよう努めていると同氏
米プライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社アポロ・グローバル・マネジメントの共同創業者であるレオン・ブラック氏は、投資家が利回りを追い求める中で、クレジット市場が行き過ぎに直面しているとの認識を示した。

  ブラック氏は5日のゴールドマン・サックス・ファイナンシャル・サービシズ・コンファレンスで、「クレジット市場は株式市場と異なり、バブルの状況に進んでいる。コベナンツ(特約条項)のない借り入れの総量は2007年よりも多い。利回りへの渇望が世界的に存在し、真の意味で行き過ぎがある」と語った。

  このような環境の下で、ブラック氏のPEビジネスは、固定金利での借り入れと、コベナンツの少ない借り入れを可能な限り多くすることを目指し、逆にアポロのクレジットビジネスでは、コベナンツを確実に交わすアプローチを取っていると同氏は説明した。

  アポロの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるブラック氏は「われわれはバブルの状況下でより慎重で用心深くなるよう努めている」と述べた。


レオン・ブラック氏フォトグラファー:Patrick T. Fallon / Bloomberg
原題:Apollo’s Leon Black Says Credit Markets Are In ‘Bubble Status’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-06/PJAV8S6JIJUO01


 

 

パウエル議長の発言、過去の利上げの効果顕在化までの時間差を意識
Rich Miller
2018年12月6日 14:44 JST
• 金融当局がある時点で利上げを休止するとの観測高まる
• 利上げ停止なら政権や市場の圧力に屈したとの批判浴びる恐れも

パウエル議長
Photographer: Chip Somodevilla/Getty Images North America
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、2019年以降の利上げに特に慎重となる公算が大きい。それは、これまでの利上げの効果が顕在化するまでには時間的な遅れが伴う点を認識していなければ、景気の落ち込みを引き起こしかねないためだ。
  パウエル議長の最近の発言から判断する限り、議長はこうしたリスクを十分意識していると考えられる。
  パウエル議長は11月28日、ニューヨークで行った講演で、「金融当局による漸進的な利上げの経済的効果は不確実で、完全に顕在化するには1年ないしそれ以上かかる可能性がある」と述べた。このコメントを受けて、当局が早めに利上げキャンペーンを休止するとの観測が高まり、株価の大幅上昇をもたらした。
  米金融当局は18、19両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で今年4回目となる利上げを決めると広く予想されているが、来年の道筋はもっと不透明だ。

  JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は利上げに関し、「政策効果発揮までの時間差についてよく耳にするようになっており、住宅市場の低調なデータと合わせて見た場合、当局がある時点で休止を望むという確率がやや高まるのではないか」との考えを示した。ただ同氏は来年4回の米利上げを見込んでいる。
  ただ、金融当局が利上げを一時停止することにはリスクも伴う。利上げ打ち止めを求めるトランプ大統領や、株式市場の投資家の圧力に当局が屈したの批判にさらされる恐れがあるためだ。
  実際、ムニューシン財務長官はCNBCに対し、トランプ大統領はパウエル議長の先月28日の発言が気に入ったと語った。

  パウエル議長が今後の金利の方向性を策定する上で取り組まなければならない時間差には2種類ある。1つめは議長がニューヨークでの講演で言及したように、金利の変化が経済に影響を及ぼすまでしばらくかかるというものだ。
  もう1つは、金融当局がコントロールする短期金利が、金融状況全般に影響するようになるまでの時間だ。この側面はそれほどよく知られていないが、経済に一段と大きな意味を持つもので、やはり重要性が高い。
  金融状況が引き締まり始めたのはごく最近だが、そうなり始めたことで、市場は「極めて急激かつ非線形」の動きを示す可能性があると、国際通貨基金(IMF)のトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は11月15日、ワシントンでの会議で指摘した。同局長は、誰もが常に「緩やかな」動きを望んでも、それがかなうことはないと考えられるとコメントした。

原題:Powell’s Dovish Rate Tilt Reflects Fear of Fool-in-Shower Trap(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-06/PJAV8S6JIJUO01?srnd=cojp-v2

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/770.html

[経世済民129] 幹部逮捕のファーウェイ「中国封じ込め」の矢面に 米中対立、貿易以外でも幅広く悪化 中国で跋扈する「赤ちゃんのような大人」
コラム2018年12月6日 / 15:29 / 1時間前更新

幹部逮捕のファーウェイ「中国封じ込め」の矢面に
Christopher Beddor
2 分で読む

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]は今や、地政学的な嵐の中心に完全に入ってしまったようだ。

カナダ司法省は、米制裁措置に違反している疑いで、同社の孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕したことを明らかにした。

今回の逮捕は、ファーウェイに対する各国の風当たりが強まる中で行われた。サプライヤーも影響を受けることは必至だ。逮捕は中国を封じ込めようとする取り組みの「縮図」なのかもしれない。

ファーウェイ創業者の娘でもある孟氏は、米国に身柄が引き渡される可能性がある。7日には法廷審問が予定されている。

複数の報道によると、孟氏には米国の対イラン制裁に違反した容疑がかけられている。また、関係筋が4月、ロイターに明らかにしたところによると、米当局はファーウェイを以前から捜査していた。

孟氏の逮捕により、ファーウェイが米国のサプライヤーと取引を継続できるのかという疑問が生じている。現在は解除されたが、同じく中国のライバル企業、中興通訊(ZTE)(000063.SZ)は今年、米企業との取引禁止という制裁を受けた。ファーウェイは、孟氏のいかなる不正も承知していないとしている。

逮捕はファーウェイの問題をこじらせる。各国が次世代高速通信「5G」技術を構築する中、同社はこの数週間、多くの政治的抵抗に直面していた。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは先月、米国が同盟諸国に対し、ファーウェイを使わないよう求めたと伝えた。オーストラリアは8月、同社とZTEを締め出した。ニュージーランドも同様の措置を講じている。また、英通信大手BT(BT.L)は5日、5Gだけでなく、既存の3Gと4Gの基幹ネットワーク部分から同社を排除すると表明した。

投資家には今後の影響がより明らかとなりつつある。米企業からファーウェイを排除することの影響は計り知れない。欧州からの緩やかな排除でさえ痛手となるだろう。

米投資銀行ジェフリーズによると、同社は欧州市場の4割を占める。欧州大陸における通信分野の設備投資は、世界全体の少なくとも4分の1に達する。ファーウェイが今年の売上目標1000億ドル(約11兆円)を達成するのは、ますます困難になるだろう。

ZTE Corp
19.89
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000063.SZBT.L
また、孟氏の逮捕が、すでに緊張が高まっている米国と中国の通商交渉に悪影響を及ぼす可能性がある。両国間の調整に度々携わってきたポールソン米元財務長官は先月、世界で今後「経済的な鉄のカーテン」が下ろされると警鐘を鳴らした。

それは、ファーウェイから始まるのかもしれない。



華為CFOをカナダで逮捕、米国が引き渡し求める−中国は抗議
Josh Wingrove、Natalie Obiko Pearson、Mark Gurman
2018年12月6日 16:34 JST
創業者の娘である孟晩舟CFOは1日、バンクーバーで逮捕された
華為とZTEは「同じコインの表裏」−バンホーレン米上院議員
中国のスマートフォンメーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)兼副会長が米国の対イラン制裁に違反した疑いでカナダで逮捕された。中国側は激しく反発しており、重要な局面に入ったばかりの米中通商協議が一段と複雑になる可能性がある。

  華為創業者の娘である孟CFOは12月1日にバンクーバーで逮捕され、米国から身柄の引き渡しを求められている。カナダ司法省のイアン・マクラウド報道官が5日の声明で発表した。米司法省は4月、対イラン輸出に対する米国の制裁にもかかわらず、華為がイランに製品を販売したかどうかについて捜査に着手していた。


華為技術の孟晩舟CFO(2014年)写真家:Alexei Druzhinin / TASS / Alamy
  孟CFOの逮捕後、在カナダ中国大使館は直ちに抗議し、米国とカナダが「不正行為を是正」し、同CFOを釈放するよう求めた。米中は数日前に貿易戦争の「休戦」で合意したばかりで、今回の逮捕は両国間の緊張を高める公算が大きい。同CFOの逮捕についてはカナダ紙グローブ・アンド・メールが先に報じていた。

  米司法省は逮捕についてコメントを控えた。カナダ政府へも問い合わせたが、トルドー首相の報道官は同国司法省に質問をするよう求めた。

  華為は文書で、逮捕は米国の要請に基づくもので孟CFOは米国に送還され「詳細不明」の罪状で訴追される可能性があると説明。その上で、孟CFOの容疑に関してほとんど情報を提供されておらず、同CFOによる不正行為を認識していないとし、華為は「カナダと米国の法律制度が最終的に正しい結論に達すると考えている」と主張した。


華為がロンドンに置く拠点を訪れた中国の習近平国家主席(左、2015年10月)フォトグラファー:Matthew Lloyd / Pool via Bloomberg
  米商務省は今年、イランと北朝鮮への不正輸出を巡る以前の制裁措置に絡んだ合意条件に違反したとし、中国の中興通訊(ZTE)に制裁を発動。罰金支払いや経営陣刷新などの米国が示した条件をZTEが受け入れ制裁は解除されたが、同社は事業停止の瀬戸際に追い込まれた。

Six Top Companies by Worldwide Smartphone Shipments

Data: IDC

  米上院のクリス・バンホーレン議員(民主、メリーランド州)は5日夜、華為とZTEは「米国の国家安全保障に対する根本的なリスクとなり得る中国の通信機器会社という同じコインの裏表」だとの声明を発表。「今回のニュースは商務省がZTEに焦点を絞っている間、華為も米国の法律に抵触していたことを裏付けている」とコメントした。


バンホーレン米上院議員フォトグラファー:Patrick T. Fallon / Bloomberg
原題:Huawei’s CFO Arrested at U.S. Request, Sparking Outrage in China(抜粋)
https://jp.reuters.com/article/column-huawei-idJPKBN1O50HC?il=0

 


2018年12月6日 Kate O’Keeffe
米中対立、貿易以外でも幅広く悪化 投資や人権問題、軍事面など

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 米国と中国の対立は和らぐどころか悪化する一方かもしれない。

 この2超大国は貿易紛争で注目を集めてきたが、他の分野でも対立が激化しつつある。米政府は、投資とインフラ融資を通じて世界中に影響力を拡大する中国政府の動きに対抗しようとしている。

 南シナ海では領有権を主張する中国をけん制するため、米軍の艦船や航空機が日常的にパトロールを行っている。折しも中国は軍事支出を拡大している。また米トランプ政権は、中国が特に米国企業の技術を入手するために用いている方策を妨害するために、さまざまな手段をとっている。

 双方とも相手の攻撃的姿勢を非難しているが、トランプ政権は特に強い行動に出ている。対中強硬姿勢が歴代政権と大きく異なり、新たな強硬姿勢が当分続くことを示すためだ。

マイク・ペンス副大統領は10月に保守系シンクタンクのハドソン研究所で行った政策講演で「歴代政権は中国の行動をほとんど無視してきており、多くの場合、その行動に手を貸してきた」と主張し、「こうした日々は終わった」と述べた。

エスカレートする手段
 2超大国の対立の中心にあるのは、米国の貿易赤字は米国の富の喪失に等しいというドナルド・トランプ大統領の信念である。米国の貿易相手国の中で中国は最も優位にあり、対米貿易黒字額は年間3750億ドル(約42兆3000億円)に上る。

 トランプ政権はこうした不均衡を是正するため、中国からの2500億ドル相当の輸入品に制裁関税を課し、一方の中国は米国からの輸入品に報復関税を課してきた。米産業界はこうした関税措置について、国内市場と消費者にとって利益より打撃が大きい手法とみなし、総じて不快感を示している。

 週末の20カ国・地域(G20)首脳会議の閉幕後、中国と米国は貿易戦争の一時休戦で合意し、米側は制裁関税の税率引き上げ計画を先送りした。これまでほぼ解決不可能とみられていた一連の問題について両国が協議することになったが、米国が設定した交渉期間はわずか90日だ。

 米国のさまざまな利益団体のうち、産業界は中国に味方して当然だと長年みられてきたが、トランプ政権の動きに直面する中で中国擁護の姿勢が弱まっている。主な理由は、米国の技術を入手しようとする中国政府の政策に不満が蓄積していることだ。こうした技術の中には軍事的に利用できるものもある。

 中国政府は、外国企業が巨大な中国市場へのアクセスを得る条件として、中国の提携相手と技術を共有することをさまざまな手段を使って求めている。また、中国企業が米国の技術を盗んだり、中国企業の購入を阻止するプロセスの迂回(うかい)を試みたりするケースもある。

 中国が米産業界の支持を失ったことは、米中間の緊張が今後何年も続く可能性があることを示す兆候だと見る向きもある。無党派の非営利団体「アジア・ソサエティ」の中国問題専門家オービル・シェル氏は「中国の政策を支持する最後の集団がビジネス界の人々だった。ビジネス界が『不支持』の側に移ったとき、潮目が変わった兆候を私は強く感じた。これを元に戻すことは非常に難しいだろう」と語る。

 トランプ政権はこの変化を利用して、最近新たな計画に着手した。輸出管理や訴追などの手段を使い、中国の知的財産窃盗に対抗し始めたのだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先月、関係者の話を引用してこれを報じた。

 新たな戦略の第一歩は、商務省と司法省が中国国営の半導体メーカーを締めつけるという形で表れた。関係者によると、米政権はこのメーカーが米半導体大手マイクロン・テクノロジーから企業秘密を盗んだとし、それが自国の半導体業界構築を目指す中国政府の取り組みの一環だったと非難した。

 一方で、財務省率いる省庁間委員会の対米外国投資委員会(CFIUS)は、国家安全保障の脅威になると思われる中国のハイテク分野での取引を阻止する上で大きな役割を担っている。その対象には、中国企業が関わっていないが米中関係に影響をもたらしかねない案件も含まれる。

 CFIUSは今年、シンガポールの半導体大手ブロードコムが米同業のクアルコムを1170億ドルで買収するのを阻止するようトランプ大統領に助言した。この際、中国の華為技術(ファーウェイ)が通信機器業界で優位に立っていることを引き合いに出した。

 この案件に関わる企業はどちらも中国企業でなかったが、CFIUSはこの取引がクアルコムを弱体化させる恐れがあることを懸念した。クアルコムは無線技術の特許をめぐりファーウェイと競合関係にある。新たな施策が共和、民主両党の幅広い支持を得て議会を通過したことを受け、CFIUSは今後、前例がないほど多くの案件を見直す予定だ。特に中国のハイテク分野の取引に焦点を当てることになる。

人権問題
 米中両国は、人権問題を含む政治的な問題でも対立を強めている。中国の人権問題などを調査する連邦議会の超党派委員会の委員長を務めるマルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)と、上院外交委員会のメンバーであるボブ・メネンデス議員(民主、ニュージャージー州)は先月、中国・新疆ウイグル自治区に住む少数民族の人権政策に関する法案を提出した。同法案は、同自治区のウイグル族――大半はイスラム教徒――のうち約100万人が中国当局によって強制収容所に収監されているとみられることや、米国籍を持つ人や米国在住者を中国共産党が脅迫しているとされることに対応したものだ。

 法案は、ウイグル族の人権問題を取り扱う新たな役職を米国務省に創設すること、ウイグル族抑圧に対する制裁措置の適用、米国籍を持つ人や米国在住者が家族の失踪や拘束に関する情報を提供できるデータベースの構築――などを提案している。

 二国間の緊張は軍事面でも高まりつつある。特に南シナ海で顕著だ。中国中央軍事委員会は今年に入り、沿岸警備を担当する中国海警局を直接の指揮下に置き、南シナ海での警備を強化している。

 米議会指導者に超党派で選ばれた専門家の委員会は、最近の報告書で、中国が沿岸警備隊を「威圧行為の手段」として利用することに関し、国土安全保障省に分析を指示することを議会に提案している。

 米中間の問題には複数分野にまたがるものもある。例えば、中国共産党は米国の大学の技術を狙い、学問の自由を脅かしているが、米政府はこうした大学を保護するための政策策定に苦慮している。この問題がとりわけ難しいのは、門戸開放は米国の学術制度の誇りであるうえ、多くの中国人学者が米大学に専門知識と資金をもたらしているからだ。

 オーストラリア政府系の無党派シンクタンクがまとめた最新の報告書によれば、中国の軍の科学者は、時にその所属を明確にしないまま、米国などの技術先進国の学者との共同研究を著しく拡大している。分野は量子物理学、暗号解読技術、自動運転技術などだ。

 ペンス副大統領は先の演説で、「中国は経済の自由化により米国や世界との連携を強めることになると米国は期待していた」と述べた。「しかし中国は経済的侵略の道を選び、その結果、増大しつつある軍をつけあがらせてきた」
https://diamond.jp/articles/-/187658

 


2018年12月6日 莫 邦富 :作家・ジャーナリスト
中国で跋扈する「赤ちゃんのような大人」が改革・開放を脅かすリスク
北京大学で学生と交流する安倍首相

安倍訪中時の座談会で
礼儀を欠いていた大学生

 2012年の尖閣諸島(中国名は釣魚島)事件以来、こじれていた日中関係は中国の李克強首相の訪日に続いて、10月の安倍晋三首相の中国訪問により、大きく関係改善の方向に動き出した。訪日ビザのさらなる緩和、第三国での日中共同提携、新潟産米の中国輸入の解禁など、安倍首相訪中後の日中間が喜ばしい進展がいくつも見られた。

 安倍首相は、訪中時に北京大学を訪問し、大学生と座談会を行った。ニュースとしては日本のメディアではそれほど大きく取り上げられていなかったが、座談会を報じた鳳凰衛星テレビの記事に、私の目を引いた1枚の写真があった。

 豪華な会場の真ん中に設けられた主賓席には、安倍首相と大学関係者3人が座り、その両側には大学生らが広げられた翼のように座っていた。主賓席に一番近い2人の女子大生が長いコートを着たままの姿で座っており、厚い防寒服を脱がなかった学生もいた。

 私はこの写真を見て、中国版SNS「新浪微博」に次のように書き込んだ。

「北京大学の学生も礼儀を学ぶべきだ。一般常識では客人を訪問するときや会議に参加するときは、会場へ入る前にコートや分厚い上着は脱ぐはずだ。安倍首相の座談会に参加する学生は、きっと選りすぐりの人だろう。しかし基本的な服装の礼儀を分かっていないようだ。誰か北京大学の学生に、この類の常識の補習授業でもしてやったらどうか」

 すると、驚くべき現象が起きた。この書き込みは話題になり、わずか1日で135万ものネットユーザーが読んでくれ、関心の高さがうかがえた。その後も増え続け、本稿執筆前日にはすでに262万人に達していた。シェアした回数は1464回、コメントを残した人数はのべ1659人、いいねを押したのは339人といった状況だ。

 自分が提起した問題に、多くの人々が関心を持ってくれたことはもちろん嬉しいが、コメントなどを読むと、不快な思いに駆られるものもかなりあった。

大人になっても赤ちゃんのように
考え行動する「巨嬰」
 私の考えや主張に共鳴しなくてもいい。反論を加えられても全然平気。長年、著述業の仕事をしてきただけに、他人の意見や主張に耳を傾ける習慣ぐらいは持っている。しかし、反対意見の多くに私はある危険なものを見いだし、それを不快に思っているのだ。

 危険なものとは何か。簡単に言うと、批判を容認せず、非常に幼稚な論理で自らの行動を正当化することだ。

 近年、中国社会でよく使われる言葉がある。巨大な嬰児(赤ん坊)を意味する「巨嬰」だ。大きくなっても赤ん坊のような思考回路で物事を考え、行動する大人を揶揄する言葉だ。しかもこういう“巨大な赤ん坊”は1人や2人ではなく、一種の社会現象を作り出すほど膨大な人数に上っている。

 前述した大学生の服装問題をめぐる「巨嬰」たちの論理を見てみよう。

「ここは中国だ。なぜ外国の習慣を求めるのか」

 これは“中国特殊論”と読めなくもない。幼稚な愛国主義者がよく使う論理だ。

「正装の着用を求めるなら、服装代を出せ」

 これは論点のすり替えで、まさに「巨嬰」たるところだ。

集中砲火を浴びせ
自己主張を正当化
「この私が北大の学生に正装を着なくていいと教えている。水曜日は私の授業だ。文句を言いたいなら、こちらにこい」

 これは、「王門張氏」というハンドルネームの“自称大学教員”の発言で、その非常識さに脱帽する。

「太ももをあらわにして、生足にハイヒールの姿で出席した方が礼儀正しいとでも言いたいのか」

 対象、場所、タイミングを判断せずに自己主張するのも典型的な「巨嬰」の症状だといえるだろう。

「日本人の尻を舐めたいから、こう発言したのだろう」

 ここまでくると、日本の「ネトウヨ」と瓜二つだ。

「会場の天井が高く、室内が寒いから」

 主賓席の安倍首相らでもコートなどを着込んでいないのだが…。

 中には、その数日前に私が杭州で講演した際に、ネクタイを締めていなかった写真を引っ張り出してきて、「これが正式な場所での礼儀なのか」と噛みつく人までいた。

 その講演は、浙江省での視察を終えて上海に向かう道中、情報をキャッチした地元の大手弁護士事務所に無理やりに頼まれて登壇したもので、ネクタイはすでにスーツケースに収めた後だった。こうした前後の文脈を完全に無視して「ネクタイを締めていない」という1点に集中砲火を浴びせることで、自己主張を正当化する。これも「巨嬰」たちがよく使う手段だ。

 こうした書き込みを読んでから、私はあるいたずらをした。

「あの日に限って言えば、たとえ私がランニングシャツのまま登壇しても誰からも文句を言われなかっただろう」とわざと挑発的なコメントを書いた。そうしたところ、まるでハチの巣をつついたようにな騒ぎになり、猛烈な攻撃を受けざるを得なくなった。

 ただ、公平な視点で見ると、これは北京の大学生に限った現象ではなく、長年いびつな教育が行われた中国社会に広く見られる社会現象だ。

 例えば11月18日、蘇州市で行われた蘇州マラソン女子の部で、ゴール直前に最後の力を絞り出してアフリカの選手とデッドヒートを繰り広げていた中国人の女子選手・何引麗(ホー・インリー)が、コース上で2度もボランティアと思われる人物に中国国旗を手渡されるという事件が起きた。雨に濡れた国旗が重く、何選手はバランスを崩してしまい、失速して2位に終わった。

 議論の余地もない“妨害事件”に、中国のネット上では評価が真っ二つに割れ、「マラソンの成績と国旗、どちらが重要なのか」というくだらない問題へとエスカレートしてしまった。

 重くて国旗を落としてしまった何選手の行動を「国旗への侮辱」と捉え、批判する人も結構多かった。これに対し、何選手は中国のSNS微博で「国旗を投げ捨てたのではなく、腕がこわばって落ちてしまった。とても申し訳ない」という謝罪に追い込まれてしまったほどだ。

 文化大革命時代を思わせる時代錯誤的な発言も出てきて、思わず背筋に冷たいものが走った。

氾濫する「巨嬰」が
改革・開放を脅かす存在に
 ただ、幸いなことに、中国社会の健全さもまだ残っている。何選手の行動を支持する人も多く、国旗を強引に持たせようとする行為を「安っぽい愛国主義」と容赦なく批判している姿が見られるからだ。

 しかし、主催者である智美体育集団の責任者が、批判に対して、「ラストスパートをかける段階で、選手に国旗を持たせることはこのマラソン大会の慣例で、中国選手に対する礼儀でもある。これからもこの国旗手渡し行為を継続する」と答えている。

 国旗を武器に、愛国主義を濫用する主催者は、往時の紅衛兵を思い出させ、それこそまさに現代の「巨嬰」に映る。筆者は、「改革・開放路線の最先端を走ってきた蘇州に、そんな企業が安っぽい愛国主義をまき散らしているのを許してはいけない。今日のスポーツ大会の主催者としては失格だ」とメディアを通して批判した。

「巨嬰」の氾濫ぶりに、何かあると扇動されて暴走しやすいという中国社会のある側面を見ることができる。だが、そんな「巨嬰」は、改革・開放の流れを脅かす危険な存在になる恐れがある。日中間の交流、特に民間交流においては、こうした勢力の動向に十分な注意を払う必要があるといえる。

 その後、また「巨嬰」に関するニュースが入ったので、ここに追加しておきたい。

 1つは、「巨嬰」が中国の今年の流行新語トップ10にランク入りしたことだ。「巨嬰」がすでに社会現象というレベルにまでなっていることを物語っている。軽視してはいけない現象だ。

 もう1つは、広西チワン族自治区南寧市で行われたマラソン大会で、ゴールインしたアフリカ系のマラソン選手が記念撮影に強引に引っ張られ、転倒してしまったそうだ。主催者の「巨嬰」ぶりに憤慨を覚えざるを得ない。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)
https://diamond.jp/articles/-/187619
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/771.html

[経世済民129] 熱海がV字回復できた「本当の理由」なぜ日本の組織は息苦しいのか?今も昔も日本人を支配する妖怪の正体 人文科学は必要ないが
熱海がV字回復できた「本当の理由」
齊藤栄熱海市長インタビュー
2018/12/06
WEDGE Infinity 編集部
 「熱海がV字回復している」――。数年前からメディアなどでそう言われることが増えている。昔ながらの温泉街、かつての新婚旅行や社員旅行での定番の行き先、でもその後は廃れていった……。多くの人はそんなイメージを抱いているのではないだろうか。しかし、平日の日中に降り立った熱海駅は、たくさんの人で賑わっていた。高齢者だけでなく、若者のカップルやグループ、家族連れも目立ち、まさに老若男女が集まる観光地。なぜ熱海に再び人が集まるようになったのか。2006年に市長に就任し、現在4期目に突入した齊藤栄氏に話を聞いた。

熱海市の中心市街地の全景
熱海の『宝』の良さに改めて気づき、その価値を高めた
 「熱海の宿泊客のピークは昭和44年、532万人でした。そこからはほぼ一貫して減少の一途をたどります」(齊藤市長)。
 バブル景気で一時持ち直したものの、東日本大震災のあった2011年には247万人まで落ち込んだ。しかしそこからは4年連続で増加し、2015年には307万人と13年ぶりに300万人を突破、以降もその数値をキープしている。一体どんな施策を打ったのだろうか。
 「一番大きかったのは、熱海梅園とあたみ桜という、熱海の『宝』の良さに改めて気づき、その価値を高めたことです」(齊藤市長)。
 熱海の梅はなんと11月には咲き始める。桜も河津桜よりも早くクリスマスの頃には咲くそうだ。ただ、他にはない貴重な観光資源だったにもかかわらず、梅園は明治19年の開設から大規模な改修もされず、老木化が進んでいた。あたみ桜も、駅から徒歩圏内の糸川遊歩道沿いに色々な種類の花木が脈絡なく植わっており、印象に欠けるものだった。それらを熱海に縁のある大塚商会の名誉会長である大塚実氏の支援によって大規模改修が実現した。齊藤市長は、これが最初のきっかけだと考えている。

梅まつり期間中の熱海梅園。園内には59種472本の梅が植えられている。
 「2011年から『シティプロモーション』施策を開始しました。2012年からは『ADさんいらっしゃい!』といって、AD(アシスタント・ディレクター)や制作部を全面的に支援し、ロケ誘致を推進。ドラマ・映画のロケ地となることで、観光客も徐々に増えていきました。また、ソムリエの田崎真也氏が特別招聘審査員として名産品を認定する事業も開始しました。認定率約50%と、行政主導らしからぬ「厳しさ」で、熱海のブランドイメージアップを図ってきました。
 これらの施策によって「熱海ブランド」が高められ、プロモーションがうまくいったことで観光客が戻ってきたのでは、という指摘をされることが多いのですが、その前提として、熱海にある良いものに改めて気づき、その価値を高めていったことが大きかったのではと考えます。それなしには人は戻ってこなかったのではと思うのです」(齊藤市長)。

齊藤栄熱海市長
 磨きをかけたことで、それが売り物となり、初めてプロモーションの意味をもつ。実は齊藤氏が市長に就任した当初、市は約41億円もの不良債務を抱えていた。夕張市の破たんは多くの国民の知るところだと思うが、熱海市も同様の危機下にあったと言っても過言ではない。危機感を強くもった齊藤市長は、まずは財政の立て直しを最優先に取り組む。歳出カットのために、市庁舎の建て直し、駅前広場の建設、再開発事業など公共事業はいったん取り止め、約4半世紀ぶりとなる水道料金の値上げ(2007年に6%、2年後には9%) 、さらにゴミ袋の有料化など、市民にもすべからく負担をお願いした。そのような状況で観光事業の立て直しにまだ手がつけられない中、取り組めた梅と桜というコンテンツの強化が後々生きてきたのだという。

あたみ桜は熱海市の木にも指定されている早咲きの桜。糸川遊歩道をはじめ、市内各所に植えられている。例年1月から3月にかけて見頃を迎える。
観光産業は「オンリーワン」か「ナンバーワン」を目指す
 こう聞くと、「うちにも梅や桜はある。売りになるかも」と飛びつきたくなる自治体もいるだろう。だが事はそんなに単純ではない。
 「観光産業に関しては、『オンリーワン』か『ナンバーワン』にならないと生き残れないと思います。熱海の梅・桜は日本でこれ以上早く咲くものがないから価値があるのです。他にも、ポルトガルなどで有名なジャカランダという紫色のきれいな花があるのですが、海外旅行好きの女性の間で大変人気が高く、これも市街地に100本近く植わっているのは熱海だけだと思います。この花は毎年どんどん伸びていくので、後から植えたとしても熱海が先行優位性を保てます」
 「競争相手に必ず勝てる状況を作って、舞台を回していかなければいけません。すぐにまねされて追いつかれるものはやってはいけないのです。常に熱海が優位に立てるものを中心に取り組んでいます」(齊藤市長)。

ジャカランダは例年6月頃に咲く、世界三大花木の一つ。国際姉妹都市であるポルトガルのカスカイス市から贈られた2本の木がはじまりで、現在は遊歩道も整備されている。
 確かに、ゆるキャラ、B級グルメ、ふるさと納税、一事が万事その調子だ。自治体の特色はそれぞれ違うはずなのに、「すべての自治体がお手本探しをしているよう」だと齊藤市長は言う。
 「自治体が100あれば、生き残り方は100通りあるはずです。立地、歴史、産業構造、人口構成などの要素によってそれぞれ異なってきます。たとえば、熱海の隣接自治体である伊東市と湯河原町も、同じ観光地で近接しているにもかかわらず、雰囲気も強みもまったく違います。そこを冷静に考え、アクションを起こしていく必要があるでしょう」(齊藤市長)。
 また、行政と民間の協働も欠かせない。それぞれの役割を全うするとともに、それらがつながってうまく循環していけば、まちは活性化していく。熱海でも様々な取り組みがなされているが、官民の連携という点では「A-biz」が注目だ。ブランディングやマーケティング、ITの専門家チームが主に売上アップに特化した無料の経営支援を行なった富士市産業支援センターの「f-Biz」をモデルにした取り組みを行っている。まさに頑張る民間を応援する行政の仕事と言えるだろう。「頑張れば売り上げが上がりますよ、と具体策なしに口で言っても意味がないですし、事業者もやる気が出ません。先ほどお話した熱海の名産品の認定制度もそうですが、もっと味をこうしたら、パッケージをこう工夫したら…と具体的なアドバイスがあり、それが結果を生み出すことで『それならもっと頑張ってみようかな』という気持ちになれるのです」(齊藤市長)。
まちづくりは時間がかかる
 「V字回復した」と言われる熱海。齊藤市長も4期目を迎え、今後どのようなビジョンを描いているのだろうか。
 「4期目の公約に『回復から躍進へ』と掲げていますが、これから熱海がもっと発展していくためには、観光事業の枠組み自体を変えないといけないと考えています。その一つとして『DMO*』を作ることは必要だと思います。これが世界の潮流であり、行政も民間も専門家も一緒にまち全体を経営していく……。ハワイ然り、ヨーロッパ然りですよね」

*Destination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の頭文字の略。『地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』(観光庁HPより)
 「重要なのは専門性と機動力です。そのためには例えばマーケティングのプロを正当な対価を支払って雇い、その人を核に関係者10人くらいの組織体にするイメージです。大きな方向性とビジョンを策定し、具体的な施策に落とし込んでいきます。基本的に行政は年度単位の予算設定で動くので、刻々と変わっていく状況に対応するのが難しい場面が多々あります。ですので、民に近い形でのDMOで、専門性と機動力をもって運営していければと思います」
 「その運営のために、私が4期目の立候補の際に掲げた『宿泊税』を当てることも考えています。宿泊税に限らず、たとえば入湯税を上げる、という選択肢もあるかもしれません。いずれにしても、観光事業は常に新しい投資をし続けないと飽きられてしまいます。そのための財源確保は考えていかないといけません」(齊藤市長)。
 まちづくりは時間がかかる。2016年には約10年かかってやっと不良債務を解消した熱海市。これまでの取り組みも「まずは3年は続けてみよう」というのが齊藤市長の信念だ。大切なのは自分たちの頭で考えること。観光事業であれば、他のまちが追いつけないコンテンツを作り出すこと。それぞれの自治体がいかに自立していくか、もっと真剣に考えていかなければならないだろう。
●熱海市基本情報
伊豆半島の東側に位置し、相模湾に面する。人口37,284人(平成30年2月末時点の住民基本台帳人口)、21,458世帯(一世帯あたり約1.7人)。産業構造は、宿泊業が大きな割合を占める。江戸時代から湯治場として栄え、昭和9年の丹那トンネルの開通によって観光地化・大衆化が進み、その後新婚旅行や社員旅行のメッカに。その後の衰退、回復は記事の通り。
●イベント情報
<忘年熱海海上花火大会>
2018年12月9日(日)・16日(日)時間 20:20〜20:45
場所 熱海湾(熱海サンビーチ〜熱海港)
https://www.ataminews.gr.jp/event/8/

<第75回熱海梅園 梅まつり>
2019年1月5日(土)〜3月3日(日)
時間 8:30〜16:00
場所 熱海梅園
https://www.ataminews.gr.jp/ume/

<第9回あたみ桜 糸川桜まつり>
2019年1月12日(土)〜2月11日(月)
時間 見学自由(ライトアップ 16:30〜23:00)
場所 糸川遊歩道
https://www.ataminews.gr.jp/event/208/
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14659


 


【第1回】 2018年12月6日 鈴木博毅 :ビジネス戦略コンサルタント・MPS Consulting代表
なぜ日本の組織は息苦しいのか?今も昔も日本人を支配する妖怪の正体
忖度、パワハラ、同調圧力、いじめ、ネット炎上、無責任主義……。なぜ、日本の組織は息苦しいのか? 会社から学校、家族、地域コミュニティ、ネットまで、日本社会が抱える問題の根源には「空気」という妖怪が存在する。それは明治維新、太平洋戦争、戦後の経済成長にも大きく作用し、今日もまったく変わらず日本人を支配する「見えない圧力」である。15万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者・鈴木博毅氏が、40年読み継がれる日本人論の決定版、山本七平氏の『「空気」の研究』をわかりやすく読み解く新刊『「超」入門 空気の研究』から、内容の一部を特別公開する。佐藤優氏推薦!「日本型組織の病理がわかる。組織で巧みに生き残るための必読書」

旧日本軍からネット炎上まで
今も昔も変らず日本人を支配するもの
 1977年(文庫版は1983年)に出版された山本七平・著『「空気」の研究』という書籍があります。この書は、日本人の特殊な精神性や日本的な組織の問題点を指摘する存在として、世に出て以降ずっと読み継がれてきました。
 同書を一読されたほとんどの方は、この書が今の日本の何か重要な問題を描き出していると感じるのではないでしょうか。
 神経をすり減らす人間関係、個性より周囲との協調性を優先する教育、繰り返される組織内での圧力などが今、問題となっています。
 息を潜めて、目立つことを避けながらも、周囲を常に意識しなければ不安にさせられる「相互監視的」な日本社会のリアル。誰もが「空気」に怯えながら、「空気」を必死で読む日々に疲れ切っているように見えます。
 山本氏は、世界の歴史や宗教への深い造詣、戦地での極限の体験などから、日本人を支配する「空気」という存在を、多角的に描写してその力学を解き明かしています。『「空気」の研究』で鋭く描写された多くの理不尽な構造は、残念なことに現代日本でもまったく変わらないままです。
エスカレートする日本社会の生きづらさ
「空気」という言葉から、日本社会の息苦しさを連想する人は多いのではないでしょうか。自由に意見が言えず、人と違えば叩かれ、同調圧力を常に感じる。
 山本氏は『「空気」の研究』で、日本の組織・共同体は「個人と自由」という概念を排除する、と指摘しました。
 最近ではネットやSNSでの誹謗中傷、匿名の集団による個人攻撃もエスカレートしています。学校ではいじめや自殺がなくならず、会社ではブラック企業や過労死が問題になっています。
 1977年に同書が世に出て以降、日本社会の生きづらさは改善されるどころか、益々ひどくなっているように思えます。では、なぜ日本社会はこんなにも息苦しいのでしょうか?
 それは、私たちの社会に浸透する「空気」と大いに関係しているのです。
「空気」が日本を再び破滅させる
 東日本大震災後の国の対応、東京都の築地市場の移転問題、相次ぐ巨大企業の不祥事と隠蔽、次々と明らかになる組織内でのパワハラやセクハラ……。その都度指摘されるのが「同調圧力」「忖度」「ムラ社会」「責任の曖昧さ」などです。
 問題への対処にさえ「なかったフリをする」「起きた事故の惨禍に目をつぶる」など、日本社会の悪しき慣習が、この国の問題を拡大して日本人を苦しめているかのようです。
『「空気」の研究』で、山本氏は衝撃的な予言を残しています。
 もし日本が、再び破滅へと突入していくなら、それを突入させていくものは戦艦大和の場合の如く「空気」であり、破滅の後にもし名目的責任者がその理由を問われたら、同じように「あのときは、ああせざるを得なかった」と答えるであろう(*1)
 山本氏は砲兵士官として1944年にフィリピンのルソン島に出撃し、その地で敗戦を迎えています。そのため『一下級将校の見た帝国陸軍』などの軍体験を活かした著作も多いです。その山本氏が「日本が再び破滅するなら、空気のためだ」と予言しているのです。
 敗戦後の日本は、1980年代まで経済成長が続き、一億総中流時代と呼ばれた豊かな時期を経験していました。その頃すでに、日本の未来に「空気による破滅」を山本氏は予感していたのです。
旧日本軍の失敗と今の社会問題に共通すること
 終戦直前、護衛戦闘機もなく沖縄へ出撃した戦艦大和は、アメリカの戦闘機の波状攻撃を受けて戦果なく撃沈されました。無謀な作戦の理由を聞かれて、軍令部次長だった小沢 治三郎中将はこう答えたと言います。
「全般の空気よりして、当時も今日も(大和の)特攻出撃は当然と思う(*2)」
 山本氏はこの発言に「空気」の存在を見ていました。
 当然とする方の主張はそういったデータ乃至根拠は全くなく、その正当性の根拠は専ら「空気」なのである。従ってここでも、あらゆる議論は最後には「空気」できめられる(*3)。
 さらに、山本氏は大胆に、空気を「妖怪」のようなものだと指摘します。
 統計も資料も分析も、またそれに類する科学的手段や論理的論証も、一切は無駄であって、そういうものをいかに精緻に組みたてておいても、いざというときは、それらが一切消しとんで、すべてが「空気」に決定されることになるかも知れぬ。とすると、われわれはまず、何よりも先に、この「空気」なるものの正体を把握しておかないと、将来なにが起るやら、皆目見当がつかないことになる(*4)。
「空気」で合理性が消し飛ばされ、非合理極まりない決定に突き進むかもしれない。日本が破滅の道を避けるには、「空気という妖怪」の正体を見極めるべきなのです。
なぜ穏和な日本人は集団になると攻撃的になるのか
 日本社会でたびたび問題となる「いじめ」。集団の中で誰かを多数で攻撃したり、陰湿な差別をすることに、学校現場で歯止めがかかりません。いじめの対象にされた子どもが自殺する痛ましい犯罪がいまだに続いています。
 最近では、ネットや不特定多数が参加するSNSでも、特定の人物を袋叩きにするような現象が頻繁に起こっています。
 空気を乱す者を敵視して、集団になると個人の倫理を捨てて一斉に攻撃する陰湿さ。日本人は性格的に穏和な人が多いと言われながら、特定の状況には極めて非情、不寛容で仲間外れにすることに容赦がありません。まるで古い時代の村八分のようです。
 一体、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。そしてなぜ、日本社会はそれを克服できないのでしょうか。
 日本的なムラの仕組みにも、「空気」が大きく関係しているのです。
(注)
*1 山本七平『「空気」の研究』(文春文庫)P.20
*2 『「空気」の研究』 P.15
*3 『「空気」の研究』 P.16
*4 『「空気」の研究』 P.19
一瞬で頭が切り替わり矛盾も気にしない
 日本人は海外に行くと、その国に溶け込んでしまうと言われます。「郷に入れば郷に従う」で、その国の文化や信条にできる限り従おうとするからでしょう。日本人の民族性の一つは、「状況に即応する」ことなのかもしれません。
 何かに染まりやすい、自らを進んで塗り替える性質を持っているのです。裏を返せば、状況に即応する意味での一貫性が日本人には常に存在しています。
 山本氏は「明治維新」「文明開化」「敗戦後」には、がらりと変わったという意味での共通点があると指摘します。みんなが一緒に新しい方向を向く。文明開化の時代と言われたら、国を挙げてそれに取り組み、みんなが乗っかってしまう。
 敗戦で戦争が終わり、平和な時代になると、鬼畜米英がアメリカの自由主義万歳になる。一瞬でほとんどの人の頭が切り替わり、なぜそうなったかは気にしない。こうした日本人の瞬時の対応力を、山本氏は「見事なものだ」と何度も褒めています。
 時代の転換点で、状況にすぐ頭が追いついてしまう。だから時に、他国を驚かすような急激な変化を実現し、ちょっと前までの自分たちと矛盾することなど、日本人は苦にもしない。そのプラス面が出たのが明治維新であり、その後の文明開化や敗戦後の経済成長だったのです。
仮装の西洋化では変わらなかった日本人の根源的ルーツ
 変わってしまった状況に「即応する」のが日本人の行動原理だとするなら、江戸時代から明治維新、戦前から戦後という大激変期にも、日本人の根本は変わっていないのではないでしょうか。
「仮装の西洋化」で日本人は自分が変身したように感じて、過去を捨ててしまう。しかしその実体は、「変化に即応する」「先に進む度に過去の歴史を捨てる」など、変わらない日本人の根源的な行動様式、一貫した思想の結果ではないか。
 平成になり、21世紀に生きているように振る舞いながらも、その規範や意識、抱えている問題は、まさに「昭和の行動原理」から生み出されているのかもしれません。いや、日本人の根源的な思想は、大昔から変化していない可能性さえあるのです。
日本人を知るための、もう一つの「失敗の本質」
 過去30年以上読まれ続けた『失敗の本質』という名著があります。野中郁次郎氏ら6名の共著者によるこの書籍は、旧日本軍の戦略・組織上の失敗を明らかにした書として累計70万部以上のロングセラーとなっています。
 山本氏の『「空気」の研究』は、日本人の思考様式や文化的精神性の「失敗の本質」を解明した名著と言えるかもしれません。日本人が集団として組織化したときの“規範”も分析しているため、日本人が陥りやすい「失敗の本質」を探り当てているのです。
 明治維新や近代化、敗戦後の復興と経済成長では、日本人は世界でも稀な偉業を成し遂げています。誇るべき日本人の文化的・思想的ルーツの力なのは間違いありません。
 一方で、日本は悲惨な第2次世界大戦で数百万人の命を失いました。敗戦後の経済至上主義的な社会でも多くの問題を生み出し、放置したまま拡大して惨劇にまで発展させたことがたびたびありました。この傾向は現在も続いています。
 山本氏が描いた「空気」を本当の意味で知ることは、私たち日本人を知ることです。日本人の思考や精神のメカニズムを知ることです。日本人を縛り続け、歴史上の幾多の成功と失敗へと導いてきた恐るべき「何かの力」を把握して、その正体を見極めることなのです。
空気という妖怪の正体をつかむ「7つの視点」
 新刊『「超」入門 空気の研究』は、『「空気」の研究』を構造から把握するために、次の7つの視点で紐解きます。
●第1章「空気という妖怪の正体」
 なぜ空気が合理性を破壊するのか。不可能とわかり切っている作戦をなぜ決行するのか。この章では、日本人が合理性と空気の狭間で引き裂かれている理由を解説します。
●第2章「集団を狂わせる情況倫理」
 日本人は共同体、集団になると、なぜか愚かな決断をしてしまう。ムラ社会と言われる日本で、空気が共同体にどんな影響を与えているかを解説します。
●第3章「思考停止する3つの要因」
 日本社会の中に、空気の拘束をより強力にしてしまう要素が存在します。何が空気を狂暴化させているのか、日本人の思考法とともに空気の構造を読み解きます。
●第4章「空気の支配構造」
 空気が日本社会を支配するときの、3つの代表的パターンを紹介して、精神的な拘束が、物理的な影響力に転換される構造を明らかにしていきます。
●第5章「拘束力となる水の思考法」
 加熱した空気を冷やす「水」という存在。山本氏の記述から、水の機能とその正体を解説し、その限界を明示することで、空気を打破する新しい入り口を考えます。
●第6章「虚構を生み出す劇場化」
 空気は虚構を生み出すが、人間社会では虚構こそが人を動かす。日本人が、虚構の劇場化で社会を動かし、時に狂う理由を、歴史を踏まえながら解説していきます。
●第7章「空気を打破する方法」
 山本氏の解説した「根本主義(ファンダメンタリズム)」などから、本書第6章までの分析を踏まえて、空気打破の方法を発展的に論じます。
 山本氏は空気の拘束から脱出するためには、その正体をまず正確に把握すべきだと何度も強調しています。
 日本社会に息苦しさを生み出す空気と、個人に自由を許さない共同体原理。日本の組織を支配して、時に合理性を完全に放棄させるその恐ろしさ。太平洋戦争の惨禍と社会統制の異常な時代を体験した多くの日本人は、空気の異常性を訴え、空気打破への願いを込めて、さまざまな形で空気の正体を描写しようとしてきました。
 山本氏の『「空気」の研究』は、空気打破への英知の集大成と考えることもできます。
 私たち日本人は、明治維新から150年を経て、空気を打ち破る入り口に立っています。今こそ、悲惨な歴史を繰り返さないため、健全な未来を創造するために、『「空気」の研究』からその打破の方法を学びとるべきなのです。
(この原稿は書籍『「超」入門 空気の研究』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)
https://diamond.jp/articles/-/186200


 

ビジネスに人文科学は必要ないが、人間には必要だ
ジャンピエロ・ペトリグリエリ:INSEADの組織行動学准教授。
2018年12月6日
ビジネスやテクノロジーには、もっと人間的な要素が必要だという主張は、何十年も前から言われ続けている。だが筆者は、そうした主張に正面から反論する。人文科学を何らかの利益を生み出すための道具として用いる行為、それ自体が弊害である。逆説的だが、人文科学に利便性を求めないことで、いっそう有意義な存在になると筆者は言う。

 複雑な問題を、単純な物語だけで説明できそうに思えることがある。
 例を挙げよう。数年前にフェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグは、スクラブルという言葉遊びのボードゲームで、友人の10代の娘さんに負けた。「2戦目を始める前にザッカーバーグは、手持ちの文字を辞書で調べる簡単なプログラムを書いた。当てはまるすべての言葉を選べるようにするためだ」と、『ザ・ニューヨーカー』誌の記者エバン・オスノスは述べている。
 女の子はオスノスにこう語ったという。「私がプログラムと対戦している間、周りの人たちはどちらか一方を応援したの。“人間チーム”と“機械チーム”に分かれたのよ」
 この逸話は、あまりに面白すぎて無視できないものだった。ザッカーバーグについて我々が知っている(と思い込んでいる)すべてを表しているように見えたからだ。地頭のよさ、強烈な競争心、極端な論理性をもってテクノロジーを信じる姿勢、そして、賛否両論を呼ぶ彼の強力なソフトウエアである。このエピソードは一気に拡散した。
 この話がウケた理由は、寓話として読めるからだ。どんな問題にも技術的な解決策を見出そうと決意している、コンピュータを知り尽くした達人の物語である。そこにはスクラブルよりはるかに複雑な問題――フェイクニュースや二極化、疎外感など――も含まれる。
 世界中で公の議論に影響を及ぼせるザッカーバーグの役割について、彼と縦横に話し合ったオスノスは、こう結論づけている。「ザッカーバーグは懸命に――常に首尾一貫していたわけではないが――まったく準備のできていなかった問題を理解しようと努めていた。それは真夜中に解決できるような技術的な問題ではなく、人間の最もデリケートな側面にまつわる問題だ。たとえば、真実の意味、言論の自由の限界、暴力の源泉などである」
 このようなストーリーを、あるリーダーの性格と、それが大衆文化に与える影響を表す話として読むのは簡単だ。しかし、結局のところ、どのリーダーも、その時代の文化を反映しているのだ。テクノロジーやその他の業界にいる「準備不足のまま、頑張りすぎる人」を称える文化において、ザッカーバーグは一人の代表的な存在にすぎない。
 企業が好む不安に駆られた頑張り屋とは違い、準備不足の頑張り屋には、自分の仕事が与える影響について熟考する辛抱強さがない。前者は承認を求めて完璧であろうとするが、後者はデータを好み、さまざまなことを躊躇せずに試してみる。素早く行動して物事を打ち壊し(フェイスブックの社是)、破壊したものが実は価値あるものだったという事態になれば、謝罪して次はもっとうまくやると誓うのだ。結局、失敗とは見方を変えれば学習である、というわけだ。
 それは必ずしも正しくない。失敗が単なる怠慢や完全なる無知にすぎない場合もある。
 批評家筋が主張するように、テクノロジー業界の大物の中には、人文科学や社会科学のコースをもっと受講していたらよかったのに、と思われる人がたくさんいる。こうした一般教養の主要科目は、未来のリーダーが人間の生活と社会におけるジレンマや複雑さに取り組む準備をするためにあるのだ。
 昨今、経営やハイテク関連のカンファレンスで、「テクノロジー業界にはもっと人間主義が必要だ」という話を耳にしないことはない。我々は皆が、「人間チーム」と「機械チーム」に二分されているようだ。
 経営書の著者チャールズ・ハンディは、2017年のグローバル・ピーター・ドラッカー・フォーラムでの感動的な演説の冒頭で、こう述べた。「我々は、テクノロジーがどれほど進歩しても、それを人間性に代替することはできない。感受性、愛や美や自然への理解と感謝、愛情や同情や意義を求める心、希望や恐怖、直感、想像、論理を超えた信念などには、替えられない」
 経済学者、石油企業の経営者、経営学教授としてビジネスに関わってきた人生経験をもとに語る80代のハンディは、ひときわ印象的だった。ビジネスに人間性を求める声は目新しいものではなく、その課題がまったく解決されていないということを、彼は思い出させてくれる存在だ。
人文科学の活用
 エルトン・メイヨーは1930年代、組み立てラインの労働者に敬意と配慮をもって接すれば生産性が高まることを立証し、人間関係論の潮流を引き起こした。この潮流は、フレデリック・テイラーの科学的管理法――労働者を効率重視の産業機械に組み込まれた扱いにくい歯車へとおとしめた――に異議を唱えるものとなった。
 人間関係論の提唱者たちは、生産性の向上を目指しながら、疎外感――メイヨーが言う「自分の社会的役割および集団との一体感に、自信が持てなくなる」ことを抑制しようとした。ほどなくして、ピーター・ドラッカーが「経済人の終わり」を予言した。しかし、経済至上主義者が死ぬというその知らせは、いまだ実現していない。それから半世紀後、グローバル化時代の前夜になってもドラッカーは、経営とは科学よりも一般教養に近いと主張し続けていた。
 テクノロジーや経済の動向に不安が生じるたびに、ビジネスに人間性を求める声が表出するようだ。2008年の金融危機の後、ビジネス・スクールは倫理のコースを急いで追加した。それ以来、人間的成長と社会貢献に関するクラスは増加の一途をたどっている。人々は再び人文科学を必要としており、さもなければデジタル変革はテイラー主義と化してしまうだろう。
 文学や哲学、社会科学は、ビジネスリーダーの不備を補い、我々を救済してくれるのだろうか。私はそうは思わない。
 たしかに、意欲に満ちた大物リーダーが、ジェーン・オースティンやジョージ・オーウェル、マヤ・アンジェロウ、ミシェル・フーコーなどを読む時間を増やせば、ためになるだろう。しかし、人文科学の味を知ったところで、準備不足の頑張り屋は、人間をめぐる問題をうまく管理できるようにはならない。なぜなら、頑張り屋が準備不足に陥るのは、彼らが知らないフィクションのせいではなく、彼らが信じている物語のせいだからだ。
 それは、テクノロジーと経済の力が、進歩を否応なく牽引するという物語だ。その物語の中でも人文科学の役割はあるが、権利を伴わない。テクノロジーは仕事熱心な大黒柱で、人文科学は慎ましい家庭の主婦なのだ。
 彼女たちは「美しく」「便利」でなければならない。その責務は、ビジネスリーダーが共感力や思いやりや魅力を備え、人々に力を与え鼓舞し、影響力を持てるようにサポートすることだ。けっして疑問を抱いたり、葛藤したり、助力を惜しんだりすることはない。この都合がよい結婚は、古びたスウェットパーカーのように、サイズは合っていてもお似合いではないのだ。
機械チームは存在しない
 スクラブルで優位に立つためにテクノロジーを使ったマーク・ザッカーバーグの場合であれ、蒸気ドリルにハンマーで対抗して勝ったが息絶えたジョン・ヘンリー(米国の民話)の場合であれ、「機械チーム」は存在しない――これが真実である。競争は常に、人間同士の間で起きているのだ。
 一部の人間は機械を持っているが、トロイア戦争でギリシャを勝利に導いた伝説の木馬のように、機械は必ずしも贈り物というわけではない。そう考えると、「テクノロジーが人間性にどう影響するか」という危惧は、「力を持った人間が他者に何をするか」という、昔からある問題を覆い隠してしまう。
 もし「機械チーム」があるとしても、彼らは機械の味方をしているのではない。機械を自分の味方につけているだけなのだ。したがって「人間チーム」が侵入、剥奪、偏った競争条件と恐れるものを、「機械チーム」は解放、効率、楽しみ、進歩と見なすのも不思議ではない。
 問題は、機械は(人間性にどう影響を及ぼすのか、ではなく)リーダーにとってどのように役立ち、リーダーに何をもたらすかである。なぜなら、まもなく同じことが他の人々にも起こるからだ。
 昔から、人間がテクノロジーをつくるのと同じく、テクノロジーもまた人間をつくってきた。農業技術が定住に、産業革命が都市化につながり、インターネットが民族主義の世界的広がりを招いた。新しい経営モデルも、大きな技術変化への適応であることが多い。人間は使用するものに合わせて変化するのだ。
 テクノロジーと経済の進化は止められない、という言説が、リーダーの意思をいかに曇らせているか考えてみよう(愚かな話だ、ただの機械なのに)。あるいは、その進化に対する信念が、視野を狭め二極化をあおるイデオロギーをどれほど助長するか考えてみよう(ただの愚かな機械なのに)。
 このイデオロギーは、一見するとイデオロギーのように見えない。なぜなら、そこでは道具主義が実用主義を装っているからだ。問題を解決して利益を生み出すもの、生活を便利にして人々の能力を高めるものであれば、何であれ優れているとされる。人々に求められるのは、効率性と一貫性だ。疑念やジレンマは解決されなければならない。迷ったり、考えを変えたりすることは許されない。どちらか一方を選ばなければならないのだ。
 かつて、フランシス・スコット・フィッツジェラルドは次のように綴った。「一流の知性とは、2つの相反する概念を同時に持ちながらも、それらを機能させ続ける能力である。たとえば、絶望的であることを理解し、なおかつそれをやり抜く決意を持てるということだ」
 この人間的な基準に照らし合わせると、機械的な、あるいは機械でつくられた知性は、それほど知的ではない。ビッグデータは狭量な思考を生じさせる。人は道具主義を受け入れた途端、機械を使うのではなく、自分が機械と化してしまうのだ。
 昨今では、ハイテク業界のリーダーの多くは、自分の魔法でつくり出したものを制御できない、見習い魔法使いのように見える。プライドと不安が入り交じっている。その好例が、新しい言葉を編み出して会話を交わすようになったチャットボットを停止したフェイスブックのAI(人工知能)研究者たちだ。彼らは、何も非道なことはなかったと説明した。機械が有益なことを何もしなかっただけだ、と。
 私は機械に同情した。この話を聞いて、自分の好きな場所の運命を心配するようになった。イタリアの広場、フランスのレストラン、学会、小説、食卓――。人々がこうした場所で交わす会話は、はたから見ればたいして有益とは見えないこともある。
人間主義は、捕らわれの身となれば死ぬ
 機械をつくりながら自分が機械と化してしまう、道具主義に従って生きているのは、テクノロジー業界の魔法使いや企業経営者だけではない。「人間チーム」のジャージを着ている知識人の多くも、よく見ると「機械チーム」の一員となっている。
 広く読まれている経営学の文献をめくれば、ほとんどの論文は、問題を指摘して現実的な解決方法を提示する、という月並みの形式に従っていることがわかる。我々はうまく機能するものや自分の能力を高めてくれるものを称賛し、より効率的になるための助言やテクニックに熱心に耳を傾け、うまく生きていくためのショートカットやハックが大好きなのだ。
 我々が立ち止まり、こうした処方箋の副作用について考えることはめったにない。「ベストプラクティス」が人を堕落させるとしたら、どうだろうか。不便さや不快を覚えたり、退屈したり気が散ったりすることは、よき人生には付きものであり欠陥ではないとしたら、どうだろうか。社会の分断や働きがいの欠如が、失敗の症状ではなく成功の副作用とは考えられないだろうか。つまり、問題解決と利益獲得への執着がもたらした、意図せぬ結果だとしたら?
 人文科学はこうした問題に対処する一助となるが、それを詩的な「生産性ハック」に矮小化してしまうと役に立たない。哲学が、よりよい戦略を立てるための手段と見なされ、小説を読むことが、自分の魅力度を高めるための手段と見なされ、社会的意義と理念には商業的価値があると見なされるたびに、人間性は捕らわれの身となり、少しずつ死んでいく。
 逆説的な言い方だが、「実用的な人間主義」はほとんど役に立たない。人間主義の面倒な部分を受け入れずにヒントだけを求めると、その価値は損なわれてしまう。人間主義は、批判や隠喩を与えてくれる。道具主義的な処方箋や手法やショートカットに対抗してバランスを取るための、曲がりくねった道を示してくれる。これらを受け入れない限り、人間主義の威力はかすんでしまうのだ。
 人文科学が最も効果を発揮するのは、自由に解き放たれ、思う存分能力を発揮できる空間を与えられたときである。そうなれば人文科学は我々に、他者の存在や死について思い起こさせ、何が公平で意義深いのかを問い掛ける。そして、何かがうまく機能するからといって、その存在を必ず肯定すべきではないのだと主張する。
不都合な結婚
 要するに、人間主義と道具主義は、互いが互いの問題となっているため、互いの問題を解決できないのだ。両者の最善の関係は、不都合な結婚である。ビジネスに貢献し、我々をよりよい人間にするには、人間主義と道具主義は互角の敵対者のままでなければならない。
 我々が機械への恐怖を感じるとき、本当に恐れているのは何だろうか。人間主義と道具主義の競争が、互角ではなくなるかもしれないことだ。疑問を持たなくなることや、人間には生産性や効率性や合理性の他にも大事なものがあるという感覚を失うことだ。そして、人間を人間たらしめている矛盾を失うことだ。
 すなわち、生きていくためには将来をコントロールしようと努めなければならない一方で、生きていると感じるためには、自由に将来を想像しなければならない。何かを実際につくるのと同時に、何かをでっち上げる必要がある。
 たとえば、ソーシャルメディアでのプロフィールと文芸雑誌における人物描写の違いを考えてみよう。後者をより人間らしく、より真実らしく見せているのは、ディテールではなく矛盾だ。
 再びザッカーバーグの例を見てみよう。彼をローマ皇帝――彼自身がその偉業を研究し敬服するアウグストゥスのような人物――として見るなら、彼は恐ろしい存在だ。しかし、彼をハムレットとして見るなら、魅力的である。武器を手にしながらも行動を躊躇する、葛藤を抱えたこの王子は、少しずつ理解していく。その武器の使い方次第で、彼がどういう人間なのかが決まるのだ、と。文学を通して見れば、彼はいっそう複雑で有望な人物になる。より人間的になるからだ。
 それこそが人文科学の役割である。自分の嫌な部分を思い出させる相手に戦いを挑もうという気にさせるのではなく、自分の中に複雑さや矛盾、変化をもたらすうえで役立つのだ。ビジネスが、そしてビジネスリーダーやビジネス論文がより人間らしくあるためには、インスピレーションや力を与えるだけではなく、問題を抱えて自制することも伴うのだ。
人文科学の課題
 では、ビジネスをよりよいものにするための人文科学の課題とは何だろうか。いつの時代にもそうであったように、人々に無力感を与える力に対抗することだ。
 それはメイヨーの時代には、労働者の疎外感に対処すること、そしていわゆる「鉄の檻」の中での自主性を促進することを意味した。今日では、自動化に対抗すること、そしてかつてなく流動的で自動化の進む職場で、人間の責任と絆を取り戻すことが求められる。
 それらを実現し、同時にスクラブルのゲームでも高得点を取れるかもしれない3つの方法を提案したい。道具主義への盲信が引き起こしている、意識の崩壊、コミュニティの崩壊、コスモポリタニズムの崩壊に対抗するのだ。
 意識とは、いま現在の意識を冷静に保とうと集中することにとどまらない。それは、自分の仕事がより広い範囲で長期にわたって及ぼす影響を考慮することだ。コミュニティとは、単に自分たちのパフォーマンスを強化するための「部族」ではない。それは、皆の幸福と学習のために尽力する集団だ。コスモポリタニズムとは、エリート意識ではない。それは、自分の領域や文化や信念の外にあるものに対し、好奇心を持つ姿勢だ。
 人文科学に利便性を求めるのをやめれば、真に有意義なものになる。そうすることで、人間チームは初めて、機械チームに追い付けるだろう。しかし最終的には、どちらか一方が極端に前進しすぎてはならない。両者の相克こそ、人間を人間らしくし、社会を発展させるものであり、失われてはならないものである。
 素早く動いて物事を破壊することが役立つときもあるが、ゆっくり動いて人々を癒やすことが賢明なときもあるのだ。

HBR.ORG原文:Business Does Not Need the Humanities — But Humans Do, November 02, 2018.
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ジャンピエロ・ペトリグリエリ(Gianpiero Petriglieri)
INSEADの組織行動学准教授。医学博士号を持ち、精神医学の専門家。リーダーシップ開発の研究と実践を行う。同校の「マネジメント・アクセレレーション・プログラム」と、グローバル企業のリーダーシップ・ワークショップの指揮を執る。ツイッターは@gpetriglieri、フェイスブックはこちら。

http://www.dhbr.net/articles/-/5635

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/772.html

[経世済民129] マクロンの改革に国民が激怒するフランスの特殊事情 フランスの起業を変えたマクロン メイ英首相に離脱採決延期を閣僚らが要求
マクロンの改革に国民が激怒するフランスの特殊事情
ぬるま湯に慣れ切った国民性は「痛みを伴う」改革を許容できない
2018.12.5(水) 舛添 要一
反政権デモは救急車の運転手たちにまで飛び火した(写真:ロイター/アフロ)
(国際政治学者・舛添要一)

 フランスのマクロン大統領が最大の危機に瀕している。

 フランス全土に反政府デモの嵐が吹き荒れ、暴徒と化したデモ隊は、破壊活動、放火、略奪を繰り返し、治安部隊と激突している。花の都パリでは、シャンゼリゼ通りにまで瓦礫の山ができ、観光業や外食産業は大きな打撃を受けている。

「マクロン辞任しろ」の声
 G20から帰国したばかりのマクロン大統領はさっそく現場を視察したのだが、「マクロン辞任!」という罵声で迎えられる結果となった。今回のデモは、来年1月に予定されている軽油とガソリンの燃料税の引き上げに対する不満がデモにつながったが、根底にはマクロンが進める「構造改革」に対する不満があり、それが臨界点に達した結果と言うことができよう。

仏政府、燃料税引き上げ延期を発表へ 抗議デモ広がりを受け
フランス・パリの凱旋(がいせん)門で、抗議活動中に機動隊と衝突する人々(2018年12月1日撮影)。(c)Abdulmonam EASSA / AFP〔AFPBB News〕

 マクロンは、フランスのエリート中のエリートである。パリの政治学院(Sciences-Po)→国立行政学院(ENA)→財務監察官というコースを辿って、ロスチャイルドグループの投資銀行入りした。私もパリ時代に、両校のゼミの講師を勤めたことがあるが、日本で言えば、名門受験校→東大法学部→キャリア公務員試験合格、財務省→一流銀行という経歴である。そこでM&Aなどで辣腕を発揮して、当時のオランド大統領に抜擢されて経済相に任命された。

 そのときに、ルノーと日産の統合を図ろうとしたが、ゴーン会長に拒まれた。しかし、2017年5月の大統領選挙で当選し、国家の頂点に立つと、ゴーンと力関係が逆転した。それが今回のゴーン逮捕劇、つまり日産によるゴーン追放クーデターの伏線になったことは、11月21日の本欄(「知られざる圧力、ゴーンは常にフランスを向いていた」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54734)で説明した通りだ。

 マクロンは、金融界出身だけにフランス産業の活性化、国際競争力の強化を優先課題としている。その点では、安倍首相が進めようとしている改革と方向性は同じである。

 具体的には、まず、日本の「働き方改革」と同様な、解雇しやすくする労働法改正である。フランスは労働組合が強く、極めて社会主義的な国であり、企業がいったん雇った労働者の首を切るのは容易ではない。そこで人員整理ができず、人件費負担が重くなって、フランス企業の国際競争力が低下する。「痛みを伴う」マクロン改革を進めれば、当然のことながら、ぬるま湯に浸かった労働者の反感を買う。

仏政府、燃料税引き上げ延期を発表へ 抗議デモ広がりを受け
フランス・パリ市内の視察中に、消防隊員と握手するエマニュエル・マクロン大統領(左、2018年12月2日撮影)。(c)Geoffroy VAN DER HASSELT / AFP〔AFPBB News〕

 さらには、法人税を現行の33.3%から段階的に25%まで下げようとしている。仏企業が国際競争に負けないためである。また、start-up、つまりベンチャーなどの起業を支援する諸政策を遂行している。

 以上のような規制緩和政策は、小泉内閣が声高に叫んだ構造改革と同様な政策だが、たとえば解雇が容易になれば労働市場は流動化するが、既得権益を死守しようとする労働者は反発する。いったん与えた権益を剥奪するのは、政治的に大きなリスクを伴う。

「公務員天国」
 フランスは「公務員天国」だ。日本人は「欧米」とひとまとめに考える癖があるが、アメリカとフランスは全く違う。フランスは、前述したように、社会主義的であり、極論すればアメリカよりも中国に近いのだ。

 私は、フランスの国会で仕事をしていたこともあって、国会議員のみならず、国会職員にも友人がいる。彼らの仕事ぶり、生活ぶりを見ていると、「フランスでのんびりと楽しく暮らすには、公務員になるにかぎる」といつも思っていた。

 給料は保障されているし、長いバカンスもある。さらには、様々な保障や特典もある。仕事も融通がきき、人員過剰なので1人、2人私用で欠けても問題は起こらない。私も、よく国会を仲間と抜け出して、近くのカフェーにお茶を飲みに行ったものである。

 また、国会の職員パスを見せれば、商品を割引して売ってくれる店も沢山ある。まさに公務員天国だ。しかも、そのような状態に対して民間から批判が出るわけではない。官尊民卑の国なので、下手にお上を批判するとどのような災いが起こるか分からないからだ。

 さすがに、少しずつだが役人批判は強まっているのだが、「官尊民卑」と言われる日本と比べても、まだまだフランスは役人天国である。

 こうした状況をマクロンは改革しようとした。そこで意気込んで、公務員12万人の削減を打ち出したのである。最大の目的は財政赤字の削減だ。同じ目的で、国民に対しては社会保障費の抑制により、国民負担を増やそうとしてきた。

 日本だったら、増税、たとえば消費税増税は激しい抵抗を呼ぶが、社会保障費の負担増はあまり注目されない。それは、社会保険料が給料から天引きされるからであり、マスコミが保険料率の上昇を大々的に報じないかぎり(ほとんど報じないのが実態である)、国民は気づかない。しかも、医療期間の窓口で3割の自己負担分を支払えば済むので、尚更のことである。

燃料価格に敏感にならざるを得ない生活環境
 しかし、フランスでは医療費はまず全額自分で払う。そして、後日領収書を添えて社会保険庁に書類を出し、還付請求をする。この面倒なプロセスのおかげで、フランス国民は自分たちの社会保障負担がいかに大きいかを実感するのである。そのため、社会保険料の負担増は大きな社会問題となりやすい。

 さらにフランスは国土が広く、公共交通機関が日本ほど発達していない。とくに地方ではそうである。まさに車がなければ生活ができないのである。私もフランスの地方都市、グルノーブルで2年間生活したことがあるが、車のない生活は考えられなかった。

 そういう生活環境なので、ガソリンの値段が1円でも上がると大変である。町内で隣人達と顔を合わせると、「中東危機のせいで、ハイオクで1リットル、○フラン△サンチームだよ。参ったな」というような会話をいつもしていたことを記憶する。つまり、ガソリンの話題が茶飲み話となるくらいに、ガソリン価格は生活に切実な問題なのである。

 地球温暖化対策を決めたパリ協定の推進役がフランスである。環境問題に取組には財源が要る。それを捻出するための燃料税の値上げだ。だが庶民的な感覚では、「大企業優遇する法人税の値下げをしながら、庶民泣かせの燃料税の引き上げとは何事か」という不満となるのである。

 結局、フランス政府は、反政府デモに対応して、来年1月からの燃料税の引き上げを延期することを決めた。これで自体が沈静化するかどうか、現時点では不透明だが、地球温暖化防止を優先課題とするマクロン政権にとっては大きな失敗になったのは間違いない。

 今後マクロン大統領が、今回の異常事態にどう対応するかについて、世界は大いに注目している。なにしろ彼は、ドイツのメルケル首相と並んで、ポピュリズムに対抗する欧州の大黒柱なのだから。

(2018/12/05 9:20 一部訂正いたしました)


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54868

 

フランスの起業を変えたマクロン大統領と「Station F」
数字で見るオープンイノベーション(10)

2018.12.6(木) 市川 隆治
今年(2018年)再び訪れたフランスの「Station F」の玄関。
 日本のオープンイノベーション促進には何が必要なのか? 通商産業省/経済産業省で貿易振興、中小企業支援などに携わり、現在はベンチャーエンタープライズセンター理事長を務める市川隆治氏が、諸外国の実例とデータに基づき、オープンイノベーションの環境について議論を重ねていく。(JBpress)
【第9回】「フランス人の起業意識は日本人と同じくらい低かった」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54722
フランスの起業家教育“after”
 フランスの最近の変化について、“before & after”で説明を試みている。前回は、“before”の状況を説明した。
「清算となった起業家は、フランス銀行のブラックリストに掲載され、銀行取引に困難が生ずる」との暗い調査結果があると思えば、「今日、優秀な学生は、大銀行や大企業で働くよりもスタートアップの創設を夢としている」との前向きな学生の姿勢が報告されている。何とか憂鬱な状態から抜け出そうとする姿が、今の日本と二重写しになる。
 2017年のフランスのスタートアップの資金調達額は約30億ドルと言われており、これは、日本の2017年度のVC投資額国内向け1362億円に大企業からの投資額を加えるとほぼ同水準となる。その意味でもフランスの動向は気になるところである。
 さて、今回は“after”である。何をもって“before”から“after”に転機を迎えたのかの判断は難しい。もちろん、“before”のときから未来に向けた兆候はあるものであろうが、フランスにおけるエポックメーキングなできごとは、エマニュエル・マクロン大統領の登場と「Station F」の創設と言ってもいいのではないかと思う。
 “before”のときからの未来に向けた兆候については、今年(2018年)11月に訪仏し、フランスのエリート養成校グランゼコール(Grandes Écoles)のひとつ、パリ政治学院(SciencesPo)のアントレプレナーシップセンター(Centre pour L’Entrepreneuriat)のディレクターから話を聞くことができた。
 同センターの設立について質問したときだ。同センターは2008年に設立されたのであるが、その背景にはリーマンショックと、それへの対応として当時のニコラ・サルコジ大統領が発足させた、スタートアップへの投資に対する税制優遇策があるということだ。その当時からスタートアップには一定の注目があり、グランゼコールにおける起業家教育も始まっていたということになる。
動き出したベンチャー育成キャンパス「Station F」
 さて、2017年5月14日に就任したマクロン大統領は、経済・産業・デジタル大臣時代から“la French Tech”(フレンチテック)という起業支援プロジェクトを推進してきており、当選間もない6月29日に開催されたStation Fのオープニングにも駆け付けている。
Station Fの外観。縦は300mと巨大。
 私は、オープニングからちょうど3カ月後の9月29日に訪問した。Station Fは世界最大級のベンチャー育成キャンパスで、場所はパリ13区(市内南東部)のオステルリッツ駅そば。廃屋となっていた貨物駅舎を改装したものである。駅舎だけあって長さは300mを超え、中に起業家3000人を収容するスペースを用意している。航空写真で回りの建物と比べてみてもらえば、その大きさが分かる。
【参考】Station F周辺の航空写真
 当時、写真の右下部分に設置が予定されているレストラン部分は、まだ工事中だった。しかし、左上のイベントスペースでは既に国際的なイベントが開催され、ネームタグをぶらさげた参加者たちが入場するための荷物検査を受けていた。中のテックラボにはレーザーカッターや3Dプリンター、NC工作機械などがあり、試作品製造もできるようになっている。
 このようなインキュベーション施設は国内外に散見されるものの、これほどの規模のものはなく、Station Fもインキュベーションとは言わず、キャンパスと呼ばせている。この大規模施設のオープンを奇貨として、フランスの反転攻勢も現実のものとなる日が来るかも知れない。
 第8回でも少し触れたが、このようなキャンパスに重要なのは、さまざまなイベントを開催し、起業家同士が交流するカオスの中から生まれる化学反応だろう。四六時中「同じ釜の飯を食う」中での交流には、格別な価値があるのではなかろうか。施設というハードばかりではなく、イベントや交流会を企画するソフトの力量も問われる。
中はコンテナを並べたような造り。
 在京フランス大使館の書記官からは、フランスのエリート中のエリートを育成するグランゼコールの卒業生たちがベンチャーに目を向け始めたと聞いたし、グランゼコールの授業にアントレプレナーシップ(entrepreneurship)が取り上げられるようになったという話も聞いた。第9回で書いたように、“entrepreneur”は元々フランス語であり、先祖帰りとも言うべきかも知れない。
 そこで、パリ政治学院のホームページを覗いてみると、“l’entrepreneuriat”とか“l’incubateur”とかのフランス語の文字が躍っていた。さらに細かく見ていくと、全体がフランス語の中に“lean start-up”とか “design thinking”とかの英語がそのまま使われている。前者については、まさに第6回で触れたように、GTEで米国人の先生が教えているこの世界では定番の理論であり、後者も英米では最近もてはやされている考え方である。パリ政治学院でも米国流の教え方を取り入れているのである。
ラグジュアリー大企業、LVMHのスペースも。
 そういえば、Station Fでも公用語は英語と聞いた。日本在住のフランス人に聞くと、スタートアップの世界での言葉が英語になるのは仕方ないが、少し残念だと吐露していた。
 もっとも、英国とフランスは地理的にもお隣で、歴史上もブルターニュ公国を取ったり取られたりの関係がある。“beef steak”を語源とする“bifteck”はフランス語の辞書にも載っていて、その歴史の名残であると聞いたし、最近では単語の短さから駐車場をそもそものフランス語である“parc de stationnement”というより“parking”と英語を使ったりもする。逆に“〜ment”という英単語はだいたいフランス語から来ていると聞いた。
 今年(2018年)11月にパリ政治学院の教授を訪問したところであるが、教授自身も米国での訓練を受けており、教え方にも米国流を取り入れているとのことであった。
 アントレプレナーシップセンターには学生は誰でも参加でき、他の生徒とチームを組みビジネスプランを練り上げていく。少なくともチームの1人はパリ政治学院の学生であることが必要であるが、メンバーには理系のグランゼゴール「エコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)」の学生がなることもあるとのことであった。すでに起業したチームも出て、パリ市からの補助金を獲得したり、大企業にM&Aされてイグジットしたチームもあるとのことであった。
変わる、フランス人の起業意識
エコール・ポリテクニーク 2017年年次報告書の表紙。
 さて、名前の出たエコール・ポリテクニークについては、ホームページで「2017 Rapport Annuel」(2017年年次報告書)を読むことができる。その冒頭の「当校の3本柱」のところでは、研究、教育の次に「L’Entrepreneuriat」(アントレプレナーシップ)が掲げられている。そのページを要約すれば次のとおりとなる。
「エコール・ポリテクニークは、アクセラレーターおよびインキュベーターを活用し、健康、安全および経済分野におけるテクノロジーのあるプロジェクトを支援している。当校のスタートアップは国際的にも注目を集めている。また、当校はスタートアップと産業界の結びつきを強化するために『club des industriels』(産業クラブ)を立ち上げた」
 そして、具体的な成果として次のような数値を掲載している。
・2010年以来250社以上のスタートアップが創設された。そのうち36社は当校キャンパスに設立されている。
・2017年に18社のスタートアップがアクセラレーターを活用した。
・2017年に22社のスタートアップがインキュベーターを活用した。
・200人以上の雇用創造が生まれた。
・過去10年間で当校学生により創設されたスタートアップの評価額は2億5000万ユーロ(約325億円)にのぼる。
・2017年に当校のスタートアップは5700万ユーロ(約74億円)の資金調達をした。
・「club des industriels」に6社の企業がパートナーとして参加した。

 このような状況が、第9回で述べたフランスの“before”の状況から想像できるだろうか? エコール・ポリテクニークといえば、ジスカール・デスタンをはじめとして3人の大統領を輩出し、ノーベル賞受賞者、それに大銀行や大企業の幹部を約束されるエリート校の中のエリート校である。その学生たちが今やベンチャーに目を向け出したということである。そして既存の企業も「club des industriels」に参加することで、その後押しをしている。
 EDHEC(フランス北部のリール市にある経営学グランゼコール)については、2016年6月24日付の『Le Figaro Etudiant』紙の次のような報道があった。
 2016年5月に、経営学グランゼコール入学準備クラスの2930人の学生に「何を夢見るか?」とのアンケートを実施したところ、フランスの大企業でサラリーマンとして働くのではなく、国際的、もしくは人間的な規模の企業で起業家となることを夢見ているとの回答が目立った。具体的には、2014年のアンケートでは創業者もしくはフリーランスとなりたいという学生は22%に過ぎなかったが、今回の2016年調査ではそれが36%になった。アンケートを実施したNewGen Talent Centre de l’EDHECの先生は、「これは重要なことである。学生たちが夢見ているのは企業との間の無期雇用契約ではなくなっているということだ」と述べている。
 実際、EDHECに私からメールで質問表を投げてみると、「同校では既に2009年から起業家教育を始めており、今年は18カ国から78人の学生が「Entrepreneurship & Innovation」クラスに参加している。学習内容は国際水準に照らして最高のものである。4年生に特別コースがあるが、その学生の25%が起業している。また、フランスにおいては、高校段階での起業家教育も盛んになってきている」との回答が寄せられた。
 第9回の冒頭で示したGEM調査のフランスの企業活動率(TEA)が、ぐっと右にシフトしていくのも、そう遠くないのではないかと期待している。それに日本も取り残されてはならない。
 次回は、ヨーロッパ全体の起業家教育事情についてみてみたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54789


 


メイ英首相に離脱案巡る議会採決延期を閣僚らが要求−タイムズ
Jim Jia
2018年12月6日 7:54 JST 更新日時 2018年12月6日 8:15 JST
議会採決を延期するよう閣僚らが強く迫っているとタイムズ
圧倒的な大敗を喫し、それに伴い政権が倒れる恐れがあると懸念

メイ英首相 Photographer: Simon Dawson/Bloomberg
メイ英首相に対し、来週予定される離脱合意案を巡る議会採決を延期するよう閣僚らが強く迫っていると英紙タイムズが報じた。首相があまりにも圧倒的な大敗を喫し、それに伴い政権が倒れる恐れがあるとの懸念が背景にあるという。

ウィリアムソン国防相が採決を延期するよう首相の説得に動いていると考えられる
ラッド雇用・年金相とジャビド内相、ケアンズ・ウェールズ相らは、離脱案の受け入れに向けた説得を首相は続けるべきだが、70票を上回る大差で敗れるとなお予想される場合は、採決が予定される前日の10日に中止を宣言する必要があると主張
原題:May Urged to Call Off Brexit Vote in Parliament Next Week: Times

(大差で敗北が予想される場合は中止する必要があるとの主張を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJACYN6JTSE901
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/773.html

[経世済民129] 嘘を発信し続ける中国と韓国、信じて日本を叩く米国「民間活力を引き出せるか」習近平の苦悩 韓国「国家不渡りの日」ヒット背景
嘘を発信し続ける中国と韓国、信じて日本を叩く米国

米国の対中・対韓認識は虚飾だらけ、太平洋戦争時の悪夢再び?

2018.12.6(木) 森 清勇
米中首脳会談での合意「可能性十分ある」 クドロー国家経済会議委員長
ドナルド・トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席。北京の紫禁城で(2018年11月27日撮影)。(c)Jim WATSON / AFP〔AFPBB News〕

 ラビア・カーディル元世界ウィグル会議議長が中国のウィグル政策に対して、「米国は目覚めた」と語っている(「産経新聞」平成30年10月21日付)。

 自由や民主主義、法の支配は古代から幾多の哲人や革命などを経て確立され、近代社会になると人権も重視され、今日では普遍的価値とされている。

 また、17世紀半ばのウェストファリア条約体制で、「国家主権の尊重」が確立され、普遍的価値と共に現代の国際社会を律する基本とみなされている。

 そうした中で法の支配を無視する韓国、自由や人権も含めた普遍的価値観を蔑にする北朝鮮などの独裁国家も依然として存在する。

 ところが中国は、中華思想や華夷秩序も手伝ってか、普遍的価値観を認めず、他国の国家主権の侵害も平然と行い、覇権を追求してやまない国であるようだ。

ピルズベリー博士の指摘
 米国のマイク・ペンス副大統領はハドソン研究所で行った10月4日の演説で、対中対決の姿勢を明確にした。

 「ソ連の崩壊後、中国の自由化は避けられないと想定した」

 「自由が経済的だけでなく政治的にも拡大することを期待した」

 こう述べ、そのため「楽観主義をもって米国経済への自由なアクセスに合意し、WTO(世界貿易機関)にも加盟させたが、その希望は満たされなかった」と断言したのだ。

ペンス米副大統領、トランプ氏との不仲説を一蹴 「2人で大笑いした」
マイク・ペンス米副大統領(2018年11月17日撮影)。(c)Fazry ISMAIL / POOL / AFP 〔AFPBB News〕

 副大統領は、ハドソン研究所理事のマイケル・ピルズベリー著『China 2049』の論拠をなぞるような形で演説した。

 ピルズベリー博士は、もとCIA(米中央情報局)の高級職員として米国の歴代政権に仕え、1973年から中国各軍の将官や政府の強硬派と仕事をしてきたと自認する人物である。

 コロンビア大学の博士課程時代の政治学の指導教官は「西洋と日本がいかに中国を不当に扱ってきたかを強調し、『贖罪すべきだ』と示唆した」と述べる。

『China 2049』(日経BP社)
 その結果、中国を研究する米国人の多くは「(中国を)西洋帝国主義の気の毒な犠牲者」と見做しがちであるという。

 「中国を助けたい」という願望と、「犠牲者という中国の自己イメージ」を盲信する傾向が米国の対中政策の軸となり、「中国分析の専門家による大統領などへの提言」にも影響を与えたという。

 『China 2049』は、博士が50年間中国に関わってきた集大成として2015年に上梓したものである。

 中国専門家として中国の軍部や諜報機関に誰よりも通じていたと自負する著者が、朝鮮戦争、中ソ関係、ニクソン訪中、天安門事件などに関わる中国の考えを米国は少しも理解していなかった、というから驚きである。

 ピルズベリー氏と同じように、ジョージ・ワシントン大学のロバート・サタ―教授なども中国の攻撃的行動を過小評価していたことを告白している。

 中国が依然として「孫子」の国であったことを如実に示したというべきであろう。

 そこに習近平氏が登場し、ケ小平の遺訓ともいうべき「韜光養晦」の終焉を告げたのである。

 「中華民族の偉大なる復興」を掲げて権力を集中し、「中国製造2025」で世界一の軍隊を作り上げ、太平洋の二分を目指すと公言したのだ。

 そのベースになる研究や技術は米国や日本など先進国の知財窃盗によるものである。

 中国が米国に対峙する、あるいは凌駕する覇権国家を目指すと闡明するに至っては、好意的にサポートしてきた米国も黙っているわけにはいかないと立ち上がったのだ。

中国の条約破りに加担した米国
 日本で参事官として1919年まで2年間勤務したジョン・マクマリーは、帰国後は国務省で極東部長や国務次官補を務め、1925年から4年間、公使として中国で勤務する。

 1921〜22年のワシントン条約会議にも参加し、中国の主権や領土をいかに保全するか真剣に議論されたことを知り尽くした人物である。

 また、米国が英国に代わって世界のリーダーに躍り出る仕組みを仕かけ、日英同盟もこの時に破棄されたのだ。

 しかし、中国は条約違反を繰り返す。

 日本が被害を受けている事実を中国の後見人ともみなされた米国に訴えると、逆に日本の対応に異議を唱える始末で、中国を諫めるどころか増長させていくことになる。

 そうした顛末については、マクマリーが『平和はいかに失われたか』に詳述している。

 米国がもっと日本の言い分に耳を傾け、また約束を守らない中国に強く当たったならば、状況は全く変わったであろうというのだ。

 著名な外交史家のジョージ・ケナンやジョセフ・グルー駐日米国大使もマクマリーの見識を高く評価していた。

 特にケナンは、ワシントン条約破り常習犯の中国に日本が苦労していることや共産主義に日本が対処している実情を米国が理解していれば、その後の米国がソ連という共産主義国に対処する必要は起きなかったといったニュアンスのことを述懐している。

 日本人で当初共産思想に憧れ、米国に帰化したカール・カワカミ(カールはカール・マルクスに由来)は、後に米国紙誌の論壇で保守思想家として活躍する。

 1930年代、満州や中国本土なども視察し、中国を最も知っているのは日本(人)であると述べ、その日本の忠告に耳を傾けない米国に意見する。

 実際どのように米国が親中反日的行動をとっていたかを、下記2人の米国人が教えてくれる。

中国の宣伝に踊ったルーズベルト大統領
(1)フレデリック・ウイリアムズの忠告

 ウイリアムズは少年時代に外人部隊に所属し、その後は世界各地を放浪する冒険者的生活を続け、新聞で発表していた経験からジャーナリストになる。

 支那事変前の日本軍と中国軍にも従軍して取材し、正義感はどちらが持ち合わせているか、また共産主義の危険性などを警告する。日米と米中の貿易についても商務省統計を使って事実を明かす。

 「西洋諸国はアンチジャパンで、(中略)日本が負けたら、ソビエトがあらゆる国を中国貿易から締め出し、共産主義の垂れ幕の下に宝の山を運び入れるだろうという事実を彼らは考慮に入れない」

 「ロシアの脅しが聞こえている。いままさに行動に移ろうとしている。日本はいまにも世界のパワーになろうとしているソビエトを阻止しようと一人で戦っている」

 「我々が日本に1ドルを支払うごとに、彼らは20ドルをアメリカに支払っている。日本は1937年では、アメリカから41%以上を買っている」

 また、1936年と37年の米国の対日中貿易額の細部にわたる統計資料(36年:対日出超額3179万1000ドル 対中入超額2681万7000ドル、37年:対日出超額8417万6000ドル 対中入超額5391万9000ドル)から、両年で対日出超額は5238万5000ドルの164%増加に対し、対中入超額が2710万2000ドル、10%増加を示す。

 そして、「日本は西洋の工場で生産された農業機械類、鉄道資材など、無数のものを必要とした。(中略)アメリカ人が目覚め、外国のプロパガンダの手先になることをやめれば、このビジネスに参加できる」と、真実に目覚めるよう訴える。

 蒋介石のプロパガンダについては「かつてなかったほど沢山の偽物写真がアメリカの新聞雑誌にこっそりと挿入されている。彼らは次々と人々に恐怖を起させようと、実にタイミングよくリリースしていった」として、上海の爆撃で破壊された廃墟で泣き叫ぶ赤ん坊の写真を例示する。

 「世界中に配布されているから、偽物だと論破するにはもう遅い。(中略)『無法行為』をしでかした『非人間的な日本人』への反感から、義憤が立ち上がってきた。このような写真は沢山ある。・・・そして日本の敵には大変な名声を博している」

 「没落し行く紹介石政府は絶望したあげく、アメリカ人が結果として干渉してくることを期待して、まず同情を、それから援助を獲得しようとして宣教師たちにすがり寄った」

 「宣教師がやろうとしたのは、アメリカ人からの寄付であった。(中略)彼らは軍閥の支配体制、泥棒性、いかさま性、不信性、道徳的堕落、野蛮性、ふしだら、賄賂といったことには言及しない」

 「これらは役人にも大衆にも共通する中国人の日常生活である。彼らは『素晴らしい』ところ、哀れを誘うところ、同情を喚起するところしか言わないのだ」

 「中国人は善意で貧しくて、西洋世界とキリスト教が彼らに与えられるものを評価し、あこがれていると」

(2)ラルフ・タウンゼントの警告

 タウンゼントはコロンビア大学卒業後、新聞記者、大学講師を経て外交官となり、カナダから1931年に中国に赴任する。上海、厦門、福州で領事として2年勤務する。

 中国に対する知識をほとんど持たずに赴任した実体験から、中国人の生き方や社会観、国家観などが自分の国と著しく違うことを知り、同時に米国が行っている援助や布教活動は全く無意味なものであると考え、外交官を2年で辞職する。

 中国の本当の姿を知るのは宣教師、事業家、外交官らであるが、宣教師と事業家は本国からの援助や事業継続のために真実を覆い隠し、外交官は美辞麗句の建前報告をする一方で、日本の脅威のみが誇張されたという。

 中国の本当の姿を米国人に知らせる必要があるとして『暗黒大陸 中国の真実』(1933年)を書き上げる。

 その後も大学講師の傍ら米国の極東政策のあるべき姿を示し、米国人の間違った日本観、中国観を執筆や講演・ラジオで糾すことに明け暮れる。

 ルーズベルト大統領が進めている極東政策、なかんずく対日政策の誤りを質すものだけに、言論弾圧にも似て出版も放送も制約され、自宅あてに希望冊数などを寄せた者へ配送するなど大変な窮状の中でやらざるを得なくなる。

 サンフランシスコのラジオ局から放送された原稿などを集めた『アメリカはアジアに介入するな!』では、中国発信の嘘を米国が拡大発散していく状況を、軍隊の規模や商務省の統計などを活用して明らかにしている。

 当時の米欧諸国は「狂犬病的日本軍国主義の恐怖にさらされている」という話で持ちきりであるが、タウンゼントは「いかなる証拠があっての言い分か?」と訝る。

 そして「最大限入手可能な中立国の資料を総合して弾いた兵力」を、中国225万人、ソ連130万〜150万人と紹介し、同時期の日本の常備軍は列強中最小の25万人だという。

 しかも、中国とソ連は合体し400万人の兵力と圧倒的優位な資源で日本に対処してくる恐れがある。これでどうして「(日本が)世界征服を企てる」と言えるのかと疑問を呈する。

 日本は「米国を脅したことは一度もない」し、「どこの国よりも米国に対して丁重であり、借金をきっちり返済する唯一の国である」と事実に基づいて言う。

 軍国主義ばかりでなく、日本の印象を悪くするためにありとあらゆる偽情報、例えば最大の海軍増強国、独裁国家、未開の国、侵略国家などが流されているという。

 他方で、「民主主義の中国」、「平和愛好国家中国」と称揚し、「孤立するアメリカ」と際立たせて、すべての原因が日本にあると言わんばかりの一色に染め抜かれた状況に言及する。

 こうした「反日アジは、中国の領土を保全しようとして起きたものでないことは明らか」という。

 なぜなら、1895年(日清戦争)から1910年(韓国併合)までずっと日本が領土を拡張していた頃、「アメリカの新聞は大の親日」であり、西海岸の一部の新聞を除いて1918年(WW1終了)まで「心から日本を支持」していた。

 実際、親日世論もあって日露戦争(1904〜5年)時、クーン・ローブ社のニューヨーク銀行のジェイコブ・シフはかなりの額の融資を行う。

 タウンゼントはこうした真実を米国民に訴え続けるが、米国政府の(日本を敵に仕立てる)政治的企みがもたらす悪意の宣伝に抗すべくもなく、前述のウイリアムズともども、日本を好意的に報道したとして外国代理人登録法違反で囚われ、日米開戦数か月後から囚われの身となり刑に服する。

米国の対中認識は遅すぎた
 米国の中国専門家や政治家が中国に対する敵対心を高めている。しかし、ざっくり言えば、上述のように政治的思惑から放任してきたわけで、寝ぼけた話である。

 日清戦争は中国の約束破りから起きたもので、日本はそれ以前から中国の狡猾に気づいてきたし、諸外国に警告も発してきた。

 しかし、諸外国、特に米国は一向に耳を傾けないどころか、日本を悪者に仕立てて批判するばかりで、日本は孤軍奮闘する以外になかった。

 こうした状況は昔話ではなく、今でも南京事件や慰安婦問題などに受け継がれている。

 中韓の誇大宣伝は真よりも偽の拡大をベースにしている。対する日本は物事の真髄を指摘して、さほど騒いだりしない。

 ところが、多くの米欧メディアは偽を騒ぎ立てる中韓に加担して、「日本=悪」という前提を固守しているように見受けられる。

 「一帯一路」に関係する諸国は、中国の底意に気づき、プロジェクトに疑義を持ち始めた。

 これらの諸国よりも1世紀以上も長く中国と関わってきた米欧諸国もマーケットの大きさなどに幻惑されることなく、中国の本質をしっかり見極めてほしいものである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54852

 

 

「民間活力を引き出せるのか」習近平の苦悩 ケ小平の「改革と開放」から40年の節目を迎える中国の現実
2018.12.6(木) 新潮社フォーサイト

◎新潮社フォーサイトの関連記事
・米「INF全廃」離脱に見える「核なき世界」追求の衰え
・米中「経済摩擦」激化で日本企業が抱えかねない「市場リスク」
・中国「監視社会」強化に米国が築く「分断線」


ケ小平氏没後10周年 - 中国
2007年1月23日、四川省広安(Guangan)で催されたケ小平の没後10周年追悼展示会。(c)AFP/LIU Jin〔AFPBB News〕

(文:田中直毅)

 師走を迎えると、ケ小平(当時、中国副総理)が開始した「改革と開放」からちょうど40年の節目となる。

 シンガポールのリー・クァンユー首相(当時)が、10年にわたった文化大革命(1966〜76)の悲惨さからの離脱の手法に頭を悩ませていたケ小平に、シンガポールの見学を誘ったのは1978年5月の訪中時だった。この年11月にシンガポールを訪問したケ小平は、南方に成立した都市国家の繁栄ぶりを見て「改革と開放」に踏み出す決意を固める。1カ月後の12月には、その後の中国経済を決定的に変えた「改革と開放」が発表された。

 この間の経緯については、シンガポールでの宿泊の地となったエンプレス・プレイスの施設周辺に、控え目ではあるが英語の解説がなされている。「改革と開放」に強烈な刺激を与えたのはシンガポールなのだ、という自負の表れである。

「利益の刈り取りに余念なしという姿勢なのだ」
 リー・クァンユーは、周辺のマレー系国家に対して常に慎重に対処した。インドネシアでもマレーシアでも、国内政情が不安になれば、「華人街」は攻撃の対象となった。このため中国との国交の樹立もASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国で最後と決めていた。「改革と開放」から10年以上経過した1990年になって、やっとシンガポールと中国との国家間関係が成立している。

 ケ小平がフランスを目指す途中、シンガポールに2日間だけ立ち寄ったのは1920年のことだった。港湾機能はあったものの、貧しい華人がイギリスの支配のもとで働いているという印象しかなかったはずだ。文化大革命によって経済基盤の破壊がはなはだしく、もはや華僑による資金と経営能力の中国回帰を図る以外の手法はないとの思いが「改革と開放」の理念の背景だった。広東省と福建省とが華僑の圧倒的な故郷である以上、焦点はまずこの2省だった。リー・クァンユーは広東省、そしてその後継者となったゴー・チョクトン(元首相)は福建省を、父祖由来の地としている。

 シンガポール政府が江蘇省蘇州という中国文化の中心地に工業開発パーク「蘇州工業園区」の建設投資を決めたのは、ケ小平による1992年の南巡講話によって「改革と開放の加速」が決まってからだ。資産接収の恐れが中国人から消えたのは1992年以降である。ケ小平によって歴史が刻まれてきたことは明らかで、しかも彼を刺激し続けたのはリー・クァンユーであったと言える。

 しかし中国の現実は一直線ではない。「蘇州工業園区」の建設にシンガポールは培ったノウハウのすべてを注ぎ込むが、しばらくするとその隣接地に蘇州市政府の手で独自の「工業園区」が立ち上がる。彼らは地代に差をつけたので、シンガポールの「蘇州工業園区」は大苦戦に陥る。リー・クァンユーは腹を立てた。私は晩年のリー・クァンユーに、この点についてインタビューしたことがある。彼は「中国文化の中心地であったので蘇州と立地を決めた。それでもこの有り様だった。中国に根付くのは背信への恐れよりも、利益の刈り取りに余念なしという姿勢なのだ」と苦笑まじりに経緯を話してくれた。

「輸入博覧会」を開いてはみたが
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 中国は2001年にWTO(世界貿易機関)加盟を果たす。今世紀に入った段階で中国経済の世界に占める比重は約5%だった。しかしこれが今日では15%に達した。5%の時には大目に見られたことも、20年足らずの間に3倍もの比重になれば、「知的所有権の実質的剥奪があったとしても、それは巨大市場へのアクセスの代価だ」とは中国に進出した世界企業も言っていられなくなる。これが中国のWTO違反の廉(かど)として取り上げざるを得なくなる由縁といえよう。「米中貿易戦争」と一括して表現されることが多いが、WTO改組構想に各国とも必ずしも熱心といえないのは、中国がまず基本方針を変えることが先決と考えているからだ。中国の指導者は「自由貿易と多国間主義の原則は守らなければならない」と主張する。しかしだからといってWTOの場が際立つわけではないという現実が、地球規模において重い。

 11月に入って上海で中国国際輸入博覧会が開催された。輸入推進に焦点を絞った世界で初めての博覧会という触れ込みで、中国の指導部がおよそ1年をかけて企図、実施したものである。

 博覧会は、習近平中国国家主席の演説で開幕した。当初は中国各地からの業者、関係者が、後半では抽選で一般消費者も参加できるという仕組みである。交通規制も安全保障上の理由から厳しく、顔面認証も徹底しているので、お客様を迎え入れるという雰囲気には遠かったが、世界にどのように伝わるのか、という視点を突出させて立案されたものであることは確かだ。

 展示はもちろん企業サイドの裁量に委ねられている。私が立ち寄ったところではトヨタ自動車は水素自動車に重点を置いており、FCV(燃料電池自動車)のバスには来会者が殺到していた。中国における環境汚染対応の緊急化と多様化という課題が焦点となりつつあることを示すものと言えよう。

 しかし、国際輸入博の開催が米中摩擦の緩和策の切札というわけにはいかないことは、中国の指導部も承知しているだろう。中国経済にはすでに間違いなく、投資や生産面において下押しの圧力がかかっているからだ。ケ小平の指導並みに画期的な民力引き出しの施策を打ち出したいところだ。

 ところが皮肉なもので、習近平時代とは国有企業の比重の一層の高まりと共産党指導の強化によって特徴づけられる、との理解が広まったままだ。反腐敗のスローガンに批判される側面はないはずだが、全国各地で共産党指導部による恣意的な民間企業への介入が相次いでいるとの声がネットにあふれ始めている。習近平体制の行き詰まりを示す1つの側面が、米中貿易摩擦の最中において、これまでは等閑視してきた民間企業の活力への期待を表明せねばならなくなっているという状況であろう。

 そもそもアリババの創始者ジャック・マー(馬雲)の引退宣言や、オンライン・ゲームでのしあがったテンセントに対する締めつけも、権力による民間への介入が民間企業の意欲を奪い始めているのでは、という指摘に繋がってきたというのが現実であろう。

企業統治の原則が踏みにじられることが常態に
 ところがここへきて、民間企業の比重が圧倒的に高い福建省が中国メディアで取り上げられることが増えた。習近平主席が福州市党委員会書記や福建省長などを歴任して18年近くも在任した地であり、福建省長当時の2002年には、晋江市での民間企業の積極的な取り組み事例を称賛したこともある。そして今日になって、「晋江での実践」が再び持ち上げられる気配だ。

 河北省の保定の近辺では「雄安新区」という巨大都市の建設が、習近平主席の呼びかけで始まった。BATと呼ばれるバイドゥ、アリババ、テンセントというIT(情報技術)時代の覇者たちは、雄安新区での新しい挑戦に追い立てられようとしている。環境、効率、安全の共創を掲げ、スマートシティ建設の第1号にしようとする試みといえようが、完全監視社会の実現が、果たして中国の掲げるイノベーションの実現に繋がるのかどうかについて、私の知る限り中国でも疑問視する人が多い。

 民間活力の引き出しに繋がったとされる「晋江での実践」も、「あれは習近平指導が腐敗防止を掲げる前の事例で、民間事業者は規制措置、許認可、行政介入という壁を乗り越えるに当たって、採用できるものはすべて使った結果であったに過ぎない」と解説してくれた人もいる。ここでは「雄安新区の建設手法」と「晋江での実践の称揚」とはまったく方向が逆で、民間活力を引き出すという方向性に収斂していない、との声が広まりつつあるのだ。彼らは次のように表現する。「10月から11月にかけてのわずか1カ月間に習近平主席は5回も民間企業の重要性に言及し、民間企業セクターの懸念に正面から向き合う、とした。これは共産党指導の現場においては、民間企業への抑圧的介入の事例が相次ぎ、株主の意向を企業経営に反映させることを旨とする企業統治の原則が踏みにじられることが常態になりつつある、との指摘への危機感がなせるものだ」。

 米中摩擦への対応が急がれる中で、中国共産党による民間指導も、また重要な局面を迎えつつあると言えよう。「改革と開放」から40年が経過し、中国はもう1つ乗り越えねばならない厳しい局面を迎えた。ケ小平は香港に隣接する深?を選んで「改革と開放の加速」の発言場所とした。深?では「天は高く王様は遠い」という表現が使われる。自由の気風が満ち、権勢家の威力も及びにくいところを選んだのがケ小平だとすれば、「雄安新区」は王様のプロジェクトとでも呼ぶべきもので、必達目標として提示せねばならない。他方、民間活力の引き出しとなると、福建省晋江市での実践しか参照事例として提示できない習近平主席の苦悩は相当に深い、と見るべきであろう。


田中直毅
国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54844


 


あれから21年…韓国で「国家不渡りの日」の映画公開
IMF危機、「国辱の日」がヒットする背景は
2018.12.6(木) 玉置 直司
韓国・ソウルの夜景
 2018年11月28日、韓国でIMF経済危機を描いた映画「国家不渡りの日」が公開になった。最初に週末で大ヒット作である「ボヘミアン・ラプソディ」を抜いて観客数1位に躍り出た。

 映画の舞台は今から21年前、1997年の韓国だ。

 この前年の1996年、韓国は先進国クラブともいえるOECD(経済協力開発機構)に加入した。経済は絶好調だった。

年初から「異変」が見えた1997年
 ところが、年が明けた1997年初めから「異変」があちこちで起き始める。1月に中堅鉄鋼メーカー、韓宝グループが事実上倒産した。

 これを皮切りに、無理な拡大経営を続けてきた中堅財閥が相次いで経営危機の陥る。金融、流通、機械、建設・・・。国民企業だった起亜自動車まで経営危機に陥る。

 東南アジアから始まった通貨危機の直撃も受けて、連鎖倒産は止まらない。この頃の話だ。

 映画は3つのストーリーが同時並行の形で進む。

 1つは、中央銀行である韓国銀行の女性通貨政策チーム長と、韓国銀行、財政経済院、青瓦台(大統領府)の幹部との間で繰り広げられる激しいやり取りだ。

 迫り来る危機をどうとらえるのか。何をすべきなのか。折りしも、1997年12月には大統領選挙を控え、政権は末期で求心力は大きく低下していた。

https://movie.naver.com/movie/bi/mi/photoViewPopup.nhn?movieCode=164192 (国家不渡りの日のポスター)
 危機の可能性を国民に知らせるべきだとする声が、かき消される。密室での堂々巡りのやり取りを続ける間に傷口はどんどん大きくなる。

 この間、一部の財閥トップにだけはこっそりと事実が知らされる・・・。

 結局、韓国は、「国家倒産の危機」に直面し、IMF(国際通貨基金)に緊急支援を要請する。ところがこれで一件落着ではない。

IMFからの厳しい要求
 IMFから突きつけられる熾烈な「国家構造改革要求」。

 金利の大幅引き上げ、金融機関の大規模整理、外資規制の大幅緩和、労働者の解雇要件の緩和、不振企業の退出・・・すさまじい内容だった。

 その影にちらつく米国政府の影。同時に進む大統領選挙・・・。

 綱渡りの交渉の結果、1997年12月3日、IMFは韓国を緊急支援することになる。外貨が底を尽きかけていた韓国に550億ドルの資金援助が入った。

 一方で、IMFの厳しい管理下に置かれ、韓国では今もこの日を「国辱の日」と呼ぶ。

 2つ目のストーリーは、雑貨品を製造販売する町工場だ。

 数人の従業員を使って手堅く工場を運営していた経営者にある日、思いも寄らぬ大きな商談が飛び込む。韓国の名門デパートへの製品納入だった。

 飛び上がらんばかりに喜んだ経営者に1つの条件がつく。

 「支払いは手形です」

 現金決済一筋できた経営者は最初は難色を示す。しかし、信頼する部下に「こんなチャンスを逃す手はない」と説得され、これに応じる。

 その直後だった。この名門デパートが倒産したのは。

 映画ではこのデパートも実名で出てくる。ミドパだ。今は、ロッテのヤングプラザ館になっている。

 町工場の経営者は、個人所有の住宅まで失い、文字通り、裸一貫となってしまう。

 3つ目のストーリーは、ノンバンクに勤務していた課長。1996年までの好景気の乗って急成長していたノンバンクだが、異変が始まっていた。

 韓国からの資金引き上げの動きが外国系金融機関で始まっていた。

ドル買いでぼろ儲けした元金融マン
 「これから大変なことが起きる。もうこの会社にいても意味がない」と真っ先に退社し投資会社を始める。

 「未曾有の危機が来る!」

 大転換期を見越した投資を薦めるがこんな予想に乗ってくれたのは2人だけだった。

 韓国政府は「危機など起きない」と繰り返していたからだ。2人が用意した資金をまずつぎ込んだのが「ドル買い」だった。

 「ウォンは必ず暴落する」という予想を立て、街金で買えるだけのドルを買い込んだ。

 これが大当たり。次に目をつけたのが、ソウルの不動産だった。

 「必ず暴落する」と見て、底値で不動産を買いまくり、その後、大金持ちになり「投資の鬼才」と呼ばれる。

 この3つのストーリーが、1997年の韓国の大混乱期にめまぐるしく展開する。「国家不渡りの日」はそういう映画だ。

 IMF危機は、韓国では「朝鮮戦争以来最大の国難」(1997年12月の大統領選挙で当選して収拾に追われた金大中=キムデジュン=元大統領)と言われた。

 半分以上の大手財閥、金融機関が連鎖倒産した。サラリーマン、商店主、自営業者・・・多くの韓国人の人生が変わってしまった。

 筆者の周りにも、もちろん、IMFで人生が変わった人たちがたくさんいる。大企業の「人員整理」はすさまじかった。肩たたきどころの騒ぎではなかった。

 1998年に韓国を訪問した時、40代初めの知人がほとんど「失業者」だったことがある。

いまなお爪痕深いIMF危機
 今なお、あちこちにその痕跡が残っている。されど21年だ。「IMF」は徐々に歴史の中の出来事にもなりつつある。

 韓国経済も企業も、その後短期間でめざましい回復を見せた。IMFからの支援金は返済し、「構造改革」を通して競争力をさらに高めた大企業は急成長を続けた。

 その一方で、「IMF」を機に、韓国は超競争社会、超格差社会に変質してしまった。

 あの時、採算が悪化した企業は売却し、業績が悪化すると大規模合理化をすることでしのいだ企業は、その後も、「人に優しい」とは言いがたい「合理的」と称する経営を続けた。

 文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)政権が、「包容」を掲げ、最低賃金の引き上げ、労働時間短縮、非正規職の正規職転換などを優先課題として掲げるのは、「格差社会」を何とか是正しようという信念があるからだ。

 こういういう「信念」の原点がIMF危機とその克服過程にあったことは間違いないだろう。

なぜ、いま、IMF危機の映画を見るのか?
 では、今の時期にどうしてこんな映画がヒットするのか?

 一時は見たくも思い出したくもなかったその時代についての映画を見ると言うことは、それだけ、時間が経過し、危機を克服したということではある。

 だが、その一方で、「漠然とした不安感、が多くの観客を引き付けているのではないか」(韓国紙デスク)という指摘も多い。

 韓国経済は、最近、明るい話題が少ない。経済成長率は鈍化し、青年失業率は最悪の水準だ。さまざまな統計発表があると、メディアは「IMF危機の時を超える水準」「IMFの時に匹敵する水準」などと書く。

 ではその時何が起きたのか?

 もう一度きちんと知りたいと言う意識が映画館に足を運ばせる理由ではないかということだ。

 映画は、IMFとの交渉から20年経過した姿を描写して終わる。韓国経済は復調し、それぞれが新しい人生を歩んではいる。

 それでも、IMFを引きずりながら生きている。

危機は反復する? 漠然とした不安広がる
 最後に、危機は反復するというメッセージで終わっている。

 この映画が封切りになった前後に、韓国の家計債務が1500兆ウォン(1円=10ウォン)を超えたという統計が発表になった。

 ソウルの優良不動産の価格は、ここ1年で2倍に跳ね上がった。

 「やっぱり、こんなこといつまでも続かないよね・・・」

 映画を見た筆者の50代の知人は、「IMF危機なんてもう起きないよなぁ? いくら何でも」と嘆きながら話した。

 2019年の経済見通しに明るい材料が乏しい中で、韓国では「国家不渡りの日」という何とも物騒なタイトルの映画がヒット中だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54877
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/774.html

[経世済民129] ニクソン時代の1972年以降で最悪、どの資産も儲からない今年の市場 OPECプラス原油生産削減 2019年は「一本釣り」
ニクソン時代の1972年以降で最悪、どの資産も儲からない今年の市場
Elena Popina
2018年12月6日 1:50 JST
• NDR分析:8つの資産クラス、5%を超えるリターンは皆無
• 2008年と1974年の危機では、どこかに強気市場は存在した

2018年のマーケットが資産クラスを越えて味わう苦痛をどう表現するか。統計の専門家らが知恵比べをしている中、「ニクソン大統領の時代以降で最悪」という表現に、有力調査会社がたどり着いた。
  ネッド・デービス・リサーチ(NDR)は債券や米国株、国外株、商品などマーケットを大きく8つの資産クラスに分類。このうち、今年5%を超えるリターンを残しそうな資産クラスは一つもない。この現象は1972年以降なかったものだと、NDRのストラテジスト、エド・クリソルド氏は指摘した。投資損失については、過去にもっと悪い状況があった。しかし資産クラスを越えた広がり具合という点で、2018年は歴史に残りそうな低迷となっている。
  米国の大型株や小型株、国外株、新興国株、米国債、投資適格級債券、商品、さらには不動産に至るまで、何一つうまくいっていない。ほとんどの成績がマイナス圏にあり、プラス圏にあってもせいぜいパーセント表示1桁台の前半だ。
  こうした状況は過去に例がない。通常は何かが下がれば、ほかの何かが上昇する。2008年の金融危機では米国債が上昇した。1974年には商品相場が明るい一角となった。2002年には不動産投資信託(REIT)にその役が回ってきた。2018年、逃げ込む場所は残されていない。
  クリソルド氏は悪役を特定している。中央銀行の景気刺激の効果が消失していることだ。「超緩和的な金融政策の解除に資産価格がどう反応するか、不安が市場を覆っている」と先週のリポートで指摘。過去に市場が荒れた時、「どこかに強気市場というものは存在した」と述べた。

勝ち組はどこに
NDR
  米連邦公開市場委員会(FOMC)は2015年以降に政策金利を8度引き上げ、欧州と日本でも金融当局は徐々に緩和プログラムを縮小させている。これに世界経済の成長減速への不安が加わり、マーケット全般で投資家のセンチメントは悪化した。
  今週、米中貿易戦争が休戦に入ったとの楽観は短命に終わり、英国の欧州連合(EU)離脱や米国債利回り曲線のフラット化、世界的な景気減速への不安が前面に押し出された。S&P500種株価指数は4日に急落したが、3%を超える値下がりは今年5日目だ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iwdn8jsE9Pa8/v2/-1x-1.png
逃げ場はない
出所:ブルームバーグ
  年初からの展開を振り返ると、S&P500種は1%上昇。米国の投資適格級債券は1.6%の下落。新興国株式は12%下げ、ブルームバーグ・バークレイズ・長期米国債トータルリターン指数は6.4%下げている。
原題:It’s the Worst Time to Make Money in Markets Since 1972(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ9STF6JIJUX01?srnd=cojp-v2

 
OPECプラス、原油生産削減を提言−規模については合意なし
Fred Pals、Nayla Razzouk、Elena Mazneva
2018年12月6日 4:31 JST 更新日時 2018年12月6日 6:56 JST
6カ月間の生産抑制参加でロシアの同意取り付けた−オマーン石油相
産油量を削減しないよう、トランプ米大統領は要請している
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は、原油生産の削減を提言した。産油量を削減しないようにとのトランプ米大統領の要請に逆らった格好。ただ、供給削減規模についての合意はなかった。

  オマーンのルムヒ石油・ガス相は5日、1月からの6カ月間の生産抑制に参加することでロシアの同意を取り付けたと、会合終了後に記者団に発言した。

  OPECプラスの共同閣僚監視委員会(JMMC)は削減の詳細を協議しておらず、必要な減産規模についてまだ話し合いが残る。ルムヒ氏は日量約100万バレルを市場から削減することで最終合意する可能性があると述べたが、一部の国はより小幅な減産で十分だと考えていると別の国の代表団は指摘した。日量100万バレルは世界の原油生産量の1%をわずかに上回る水準。
  
  OPECは6日の総会で減産をどの国が担い、どの程度の規模で実施するかについて合意を目指す。

原題:OPEC+ Recommends Oil Cuts, But No Deal Yet on Size of Curbs (1)(抜粋)

(3段落目以降に減産幅に関する指摘を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ9YDKSYF01S01?srnd=cojp-v2

 
2019年は「一本釣り」で大漁を狙う雲行きに
市場は「晴れ、ときどき台風」
海外投資家の「売りすぎ」の反動がやってくる
2018年12月6日(木)
居林 通
居林:今回は迷いに迷いました。
例のチャート(業績予想と株価の推移の比較。詳しくは第1回と第2回の3ページを)はどうなっていますか。どれどれ。

(UBS提供)
居林:ご覧の通り、業績に比べて明らかに安いんですよ。市場は。
株価はさまざまな要因で動くけれど、最終的には業績の関数だというのが居林さんが一貫して言われていること。だから、株価が業績のトレンドラインを大きく下回る(上回る)ときは、「市場が短期的な理由で価格を付け間違えているから、逆を狙って買う(売る)」のが、市場でプロとして収益を上げる投資家のすべきことだ。でしたね。
居林:そうですね。だとすると買わない理由があまりない状況ですが、でも「企業業績はここから下がる」と思っているのは既に何回かお話しした通りです。おまけに、市場がずっと目をつぶってきた構造的な変化、具体的には米国を始めとする各国の中央銀行が張っていた、市場のセーフティネットが取り去られていることを意識しだした。
たしかに、2年近く前からずっと居林さんが言っていた状況が、ようやく現実だと認められつつあるような(「ヒーローは、そろそろ帰してあげましょう」)。
居林:昨年の今ごろは、未来に向けて悪い話が怖いくらいないよねという話をみなさんしていて、いわゆる「適温相場」でした。今は、投資のキーワードは「慎重」「ピークアウト」「ボラ(ティリティ)高まり」「金融政策変更」と、様変わりです。
 目先の、といっては失礼ですが、起きたニュースに目を奪われていた人たちが、構造論によって弱気になってきた。正しいと思いますし、もちろん同調するんですけれど。連載を始めたときは市場が上り調子で楽観論を唱える人が多いので、こちらは「基調は強いが株価は割安ではない。何かのイベントで下げたら取りに行け」とずっと唱えていたわけです。
楽観論が引いて、下がっても買いづらくなってきた
その状況が変わると困りますか。
居林:楽観論が強い間は「下値に突っ込んだら買う」が通用しやすかったのですが、空気が「金利上昇はまずい」と様子見、慎重になってくると、安いからと買っても戻らない可能性が出てきます。強気な人が減ると上がらないですから。
それはそうですね。こういうときはどうするんですか。
居林:こういうときは、時間軸が大切になります。株式市場がいつその材料を読み込むか、株価に反映し終えて「次」を探し始めるか、ですね。
いまは悪材料を消化しているところだと。でも、金利の動向を“消化”するなんてどうしたらできるんでしょうか。
居林:端的に言えば、別の材料が登場し、忘れて、気にしなくなるまでということになりますかね(笑)。我々はみな、忘れることで前向きに生きていけるのです。
うわあ。
居林:真面目な話をすれば、「どの辺が底か」が見えるとパニックは収まります。例えば、足の付かないプールがあったとして、底が見えなかったら怖いけど、見えるとなんとなく落ち着くでしょう。事態には何の違いもないのですが。
 で、底を打つとは「ひとまず悪材料が出きったな」という状態になることだとすると、私はそれが来年の1月、2月くらいではないかと思います。
そのこころは。
居林:第一に、企業の12月期決算が出ることがあります。これも過去に申し上げましたが、昨年の12月期は米国の法人税引き下げの影響で大きな利益が出ている、その反動が出ます。追い打ちを掛けるように中国の設備投資需要が急減している。よって企業業績は純利益ベースでは20%程度の減益になると思います。
 第二に、年初から米国が中国への関税を上げる可能性があります。いわゆる米中貿易摩擦がどこまでエスカレートするのか、これがわかるのが早くても年明け、もしかすると春くらいになる。第三に、日本の安倍政権の憲法改正に対する姿勢も海外投資家は注視しています。
個々の銘柄ではお買い得なものが続々と
それらの悪材料が「出尽くす」タイミングが、来年初。
居林:これが今回の論点1、今後のイベントからみた投資の時間軸です。来年1月、2月という時間軸を超えないと、海外投資家が再度日本株投資に踏み切るのは難しいと思います。
なるほど。2月を待つと。
居林:基本はそういうことです。
基本?
居林:というのは、マーケットを日々観察しているとどうも違和感があるのです。銘柄ごとに割高修正が進んで、逆に割安になるものが増えてきているのです。しかし、日経平均はまだ今年の3月の安値を割っていない。
業績比で割安な銘柄が増えているわりに、全体としては下がっていない。
居林:これはちょっと理解に苦しみました。色々分析して出した結論は、「日本の株式市場が二層化している」ということです。
2017年の人気銘柄が総崩れ状態
二層化?
居林:こちらを見て下さい。2018年に何が起きたのかを象徴的に示していると思います。 

(UBS提供)
これは。
居林:TOPIXで、2017年の年間の株価が前年比で上昇率上位10%の50社と、下落率の大きい50社の株価を比較しました。グラフの意味するところを簡単に言うと、昨年の人気銘柄が下落していて、昨年の不人気銘柄は下がっていません。それどころか、若干ですが上がっているくらいです。
昨年のヒーロー、上位陣が18年はいったん上がった後に総崩れ。なのに下位は動かない。不思議ですね。
居林:PER(※)はもっと不思議です。ほら、2017年の人気銘柄のPERと不人気銘柄のPERが逆転しています。

(UBS提供)
※PER=Price Earnings Ratio。現在の株価が、その企業の1株当たりの純利益(EPS=Earnings Per Share)の何倍かを示す指標。企業が生み出す利益の何倍の価格が付いているかが分かるので、「今の株価が、その企業の利益水準に対して割高か割安なのか」を判断する目安になる。
ということは、トップパフォーム企業群の方が、割安になっちゃっているんですね? これ、おかしくないですか。業績が急落したとか、いや、利益が悪化して株価が落ちたのなら、PERが割安になるわけはないし……。
居林:トップ10%には、パナソニック、東京エレクトロン、デンソー、ファナックなどなど、国際優良銘柄がぞろぞろ入っています。どれも株価はひどいものです。
いったいなぜですか。
居林:一言で言えば、「外国人投資家が売ったから」です。
え。

(UBS提供)
居林:外国人投資家は17年に日本市場のトップパフォーム企業群を大きく買い越して、今年に入って3月の急落時に一気に手放した。その後2兆円程度買い戻しが入りましたが、ここに来て再度大きく売り越しています。アベノミクス開始時から14兆円ほど購入して、そのうちの10兆円を売っている、と言えばそのインパクトの大きさがわかっていただけるでしょうか。
ああ、一方で成長ストーリーのない銘柄はもともと外国人投資家が目を向けないから、買われもしないし売られもしない。なので今年は値段が動かないんですね。
居林:そうです。市場全体だとこの二層が交ざるから動きが読みにくかったのですが、分けて考えるとよくわかる。
もともと居林さんは業績悪化懸念による株価下落を予想していたけれど、個別に銘柄を見ると下がり方には大きなばらつきがある。原因は、本来の業績に比べて不合理なまでに海外投資家に売られた、トップパフォーム企業群……ということですか。
居林:そうです。なので、新年は、インデックス、相場全体というより、外国人投資家が売りすぎた銘柄を一本釣りしていくと、面白い投資ができるのではないか、というのが今回のメインのネタです。
氷が真ん中から溶け出した
なるほど、全体としては弱気だから、インデックスだとこれまでのような反発が期待しにくいけれど、個別に狙えば海外投資家による「売られすぎ」の銘柄があるぞ、と。面白い。しかし、なぜ海外投資家はそんなに慌てて手放したのでしょう。
居林:基本的には、世界中で買われすぎたものの修正が起きているのだと思います。米国市場でのFANG(フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル)の凋落も同じです。
 恐怖に支配された心理のなせる業ではないかと思います。常識的に言えば、人気が集まっていた銘柄は最後まで落ちない。普通は「氷は回りから溶ける」んです。真ん中からではない。少なくとも、業績が良い間は市場が悪くても優良銘柄はポートフォリオから外されないのが普通です。
 ところが今回は、本当に珍しく氷が真ん中から溶けるようなことが起きています。FANGもそうだし、任天堂、資生堂、ファナック、村田製作所、トヨタは言うに及ばず、優良銘柄が売られている。こうした企業の中には、業績が伸び悩んでいて業績予想が若干下方修正されている銘柄もありますが、株価の下落のスピードの方がずっと速いので、PERが急激に下がる、という現象になって表れています。
居林:こんな分析もありますよ。

(UBS提供)
居林:これは業績予想(12カ月先)の今年4月から直近までの変化幅と同期間の株価の変動をマッピングしたものです。業績予想が下がって株価が下がるのはいい。上がって上がるのもいい。業績(予想)が下がって上がるのは今回は投資対象ではない。しかし、業績(予想)がほぼ同じか上がっているのに、株価が下がる会社がけっこうあるんです(図の右下、ブルーの枠内)。
それは、どう思うべき状況なのですか。
居林:「それはないでしょう」ですね。なので、溶けた真ん中を買いに行く、という投資戦略が来年一番報われるだろうと考えています。簡単に言うと、売りすぎた外国人投資家が戻ってくるときには、やはり日本を代表する国際優良銘柄から買いが入る、という判断です。
 業績がいいのに割安な銘柄が増えていて、来年春からは時間軸的には「戻る」と見ます。1年持てるならいま買っていいし、インデックスを買いたいなら2月まで待つ方が得策でしょう。
 改めてまとめますと、現状は普通なら素直に買うところですが、市場の前提条件が変わった。もう一段下げたらさすがに出動だけど、さっき言った外国人が買わない株が動かないので下がりきらない。
 だけど、上のレイヤー、海外投資家が好んで買っていた銘柄は、すごく安くなっている。相場全体では「下げきっていないように見える」のですが、個別で見ると下げきっているものもあるからそこから買いませんか。という、珍しい結論になりました。
バブル的に買われた反動
理解力が低くてもうしわけないのですが、海外投資家が、好業績で成長力もあるGAFAやトップパフォーム企業群を「売ろう」と決断する背景を、もう一段噛み砕いて解説していただけませんか。
居林:一言で言ってしまえば「米中貿易摩擦」です。が、この場合は複合要因の部分もあります。
 振り返ってみれば、去年から今年の頭にかけて、市場はゴルディロック(適温相場)に陥り、買うべきテーマが見つからなくなって、お金が特定の銘柄に集中しました。危険な兆候でした。「他に買う物がないから」と、GAFAや好業績の企業群に集まっていった。これが一転して下がったことで「持っていたら危険だ」と、パニックを起こしたんでしょう。業績は高水準でも大きく売られる、この業界には長いですが、今まで数回しか見たことがないケースです。
投資する側に確固たるテーマがあったわけじゃなく、「上がっているから買う」という、バブル的な買われ方をした反動ですか。個々の企業のせいではない、いわばとばっちり……。
季節も市場も一番寒いときに始めよう
居林:企業は業績には責任を持つべきですが、株価は最終的には投資家が決めることですからね。世界的に好業績の特定銘柄にお金が集まりすぎていた。ETF(上場投資信託、インデックス指数に連動する運用を目指す)が興隆したのも一因だと思います。我々は、いまや米国の時価総額の1割弱がETFと推定しています。個別の選定をせずに時価総額の大きいものを集めるので、売られるときは、インデックスウェイトが高い株ほど売られる。17年に沢山買われて、売るときも売られているわけです。
なるほど。
居林:アベノミクスの次は、日銀の出口政策は、と、不安要因は山積していますが、企業は生き物なので柔軟に対応して生きていくでしょう。日本企業の国際優良銘柄は海外で戦えるブランドです。円高の中でも戦ってきた。となれば、戻ってくるときが来れば戻る。
 現状は医薬と小売がパフォーマンスがいいですよね。株価安定志向が効いているのでしょう。でも今年が守りの年、ゲリラ戦の年だったとすれば、来年は、それをすこし忘れてチャレンジの年になるんじゃないかな。来年は勝負に出ませんかという心構えで。私も、もっと下がるならもっと強気になると思います。
まわりが弱気になると燃えるタイプですね。
居林:ついでに言えば、1-3月期の業績数字も悪いでしょう。そして、これを乗り越えると、私の予想でさえも横ばいになります。来年の冬が一番きついところ。谷を過ぎるのは春ですね。ということで、正月から2月の、季節も市場も一番寒いときに投資を始めるのがいちばんいいと思います。一本釣りで大漁を。


このコラムについて
市場は「晴れ、ときどき台風」
いわゆる「アナリスト」や「経済評論家」ではなく、「実際に売買の現場にいる人」が書く、市場の動きと未来予測です。筆者はUBS証券ウェルス・マネジメント本部日本株リサーチヘッドの居林通さん。そのときそのときの相場の動きと、金融市場全体に通底する考え方の両面から、「パニックに流されず、パニックを利用する」手法を学んでいきましょう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/020500004/120300023/


 


米地区連銀経済報告:景気は緩慢ないし緩やかに拡大−楽観は後退
Christopher Condon
2018年12月6日 4:33 JST 更新日時 2018年12月6日 6:45 JST
関税や金利上昇、労働市場のひっ迫で不透明感が高まる
関税への言及は約40回、幅広いコスト上昇引き起こしたと指摘
米連邦準備制度理事会(FRB)が5日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、大半の地区が緩慢ないし緩やかな景気拡大を報告した。ただ4地区は拡大ペースが鈍化あるいは「わずかな」拡大にとどまったと説明した。

  ベージュブックは「大半の地区では、企業は引き続き明るい見方を持っているものの、一部では関税や金利上昇、労働市場の逼迫(ひっぱく)が影響して不透明感が強まり、楽観が後退した」と記した。

  今回のベージュブックは12地区連銀が11月26日までに集めた情報を基に、フィラデルフィア連銀が作成した。次回12月18、19日の連邦公開市場委員会(FOMC)での討議資料となる。

  ベージュブックは、「半数を超える地区で、要件を満たした労働者の獲得・維持ができず、雇用や生産、また時として生産能力の拡大が抑制された企業があった」と指摘した。

  また「労働力不足の影響もあり、大半の地区は雇用の伸びについて、緩慢ないし緩やかなペースの中でも遅い方に傾いたと報告した」と説明。「逆に、大半の地区は賃金の伸びについて、緩慢ないし緩やかなペースの中でも速い方に傾いた」と加えた。

  全般的な物価に関しては、大半の地域で緩やかに上昇。住宅価格は過半数の市場で上昇が続いたとされた。

  今回の報告はまた、関税に関する記述が目立ち、言及回数は約40回に上った。「関税が引き起こしたコスト上昇は、製造業や建設業から広がり、小売業や外食産業に至った」と記された。  

原題:Fed Says Growth Still Modest or Moderate While Optimism Ebbs (1)(抜粋)

(最終2段落を追加し、更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJA36G6KLVR501?srnd=cojp-v2


2018年12月6日 加藤 出 :東短リサーチ代表取締役社長
中央銀行がデジタル通貨を発行する難しさ、スウェーデンの議論

スウェーデンの地方小都市の店舗で「現金お断り」の実験を行った家具販売大手イケア
(写真はスペイン・マドリッドの店舗) Photo:REUTERS/アフロ
 スウェーデンの中央銀行リクスバンクは、個人向け中央銀行デジタル通貨「eクローナ」の発行をめぐって、ここ数年議論を重ねてきた。

 11月22日に同行副総裁は、正式決定するのはまだ早過ぎる段階であり、研究を続ける姿勢を示した。しかし、全体としては発行に前向きなニュアンスが感じられる。ブロックチェーンなどは使わずに既存の技術でeクローナを発行できることや、そのパイロットプログラムの検討が示されていた。

 スウェーデンの場合、中銀が個人向けデジタル通貨の議論を進める背景に独特の状況が存在している。同国ではキャッシュレス化が世界で一番進んでいる。名目国内総生産(GDP)に対する現金の市中流通残高は1%強しかない(日本はこの年末で20%前後)。

 ちょうど米紙「ニューヨーク・タイムズ」(11月24日)がスウェーデンの状況を解説していたので、以下に引用してみよう。

「同国で今年現金で代金を支払ったことがある消費者は、10人中1人だけだったという。5人に1人はこの先二度と現金自動預払機(ATM)を使うことはないと答えている。スウェーデンの全銀行店舗1400のうち、約半数が現金を扱わなくなっている。2008年に同国で銀行強盗は210件発生したが、昨年は2件だった。

 同国では手の甲に埋め込んだマイクロチップで、鉄道やレストランなどで支払いが行えるシステムも稼働している。4000人以上がそれに参加している。

 首都ストックホルムではすでに現金を受け付けない商店が多数現れているが、家具販売大手のイケアは先月同国の地方の小都市で、現金を受け付けない実験をやってみた。結果は、現金でなければ支払えなかった顧客は1000人中わずか1.2人だった。

 彼らは同店のカフェに食事に来る少額の小銭を持った客だった。それ故、店舗のキャッシュレス化は問題なさそうだと判断されたが、その一方で従業員の労働時間の15%が現金の管理に使われてきたことがあらためて認識された。

 しかしながら、ある年金関連団体はこの実験に反対を表明している。少額のコインを持ってイケアにホットドッグを食べに来る人の多くは、年金受給者世代だからだ。同団体の幹部は電子決済ができない人が100万人もいると苦言を呈している」(以上、前掲紙より)

 しかしリクスバンクは、経済のキャッシュレス化の流れは止められないと予想している。いずれ銀行や商店、飲食店は現金を流通させるインフラを捨ててしまうと同行はみている。その際にIT弱者(または銀行口座が持てない人々)にも使いやすい中銀デジタル通貨を提供すべきではないか、という問題意識を同行は持っている。

 だが、利便性が高くかつ安全性も高い公的なデジタル通貨が登場したら、既存の電子マネーにとっては“民業圧迫”となる。また、そうした中銀デジタル通貨は金融システム不安が発生したときに危機を増幅し得る。民間銀行に預けている自分の預金を、例えばeクローナにスマートフォンで簡単に移すことができれば、民間銀行は風評被害で瞬時に破綻してしまう。

 そのような事態を避けるには、eクローナの魅力を低下させるためにマイナス金利をかける必要があるのかもしれない。だが、その適切な水準を決めることは非常に難しそうだ。このように考えると、中銀デジタル通貨を発行するには、煮詰めなければならない問題がまだまだあるといえそうだ。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
https://diamond.jp/articles/-/187556
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/776.html

[戦争b22] ウクライナで戒厳令、同国海軍船を拿捕したロシアの狙い 支持率の低迷が続く両国の首脳 今回の衝突で得をするのはどちらか 
2018年12月6日 仲野博文 :ジャーナリスト
ウクライナで戒厳令、同国海軍船を拿捕したロシアの狙い

ウクライナのポロシェンコ大統領(左)とロシアのプーチン大統領は、ともに国内の支持基盤に脆弱さを抱える

ウクライナとロシアとの間の緊張関係が再び高まっている。ウクライナ海軍は先月25日、ロシア連邦保安局の監視船がクリミア半島に近いアゾフ海で、ウクライナ海軍の小型船3隻に向かって発砲したと発表した。発砲を受けたウクライナ海軍の小型船はロシア側に拿捕され、23人の乗組員は現在も拘束中だ。アゾフ海での衝突はウクライナの社会や経済にどのような影響を与えるのか。西側諸国はウクライナを守るために何らかのアクションを起こすのか。来年3月に大統領選挙が行われるウクライナで、今回の衝突とその後発令された戒厳令は何を意味するのか。ウクライナ国内外で活動する、3人のウクライナ人有識者に話を聞いた。(ジャーナリスト 仲野博文)

ウクライナ国民の愛国心が高まる11月に
アゾフ海で発生したロシアとの衝突

 11月はウクライナ人にとっては特別な意味を持つ月だ。過去に発生した歴史的な事件を追悼する集会などが行われ、ウクライナ人としての愛国主義と、ソ連時代から続く反ロシア感情が顔を覗かせる。

 親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領を退陣に追い込んだ市民デモは「マイダン」と呼ばれているが、自然発生的にマイダンの参加者が増え始めたのが2013年11月であった。また、ソ連時代の1932年にはソ連の中央政府によって、多くのウクライナ人が農業生産の向上などを名目に、ウラル地方などに強制移住させられ、1年の間に少なくとも500万人近くが餓死したとされる。これは「ホロドモール(飢餓による殺害)」と呼ばれており、ウクライナ国内の各地では11月にホロドモールで命を落としたウクライナ人の追悼集会が行われていた。

 そんな11月に突然発生したのが、ロシア連邦保安局によるアゾフ海でのウクライナ海軍小型船の拿捕だった。ウクライナとロシアは2003年にケルチ海峡とアゾフ海周辺の海域を共有することで合意していたが、2014年のウクライナ政変後にロシアはケルチ海峡に全長18kmに及ぶ橋を建設することを発表。翌年には工事がスタートし、今年5月に橋が開通したことによって、両国間の領海問題は鮮明に。一触即発の状態が半年にわたって続いていたのだ。

 2013年にキエフで開局したニュース専門のインターネットテレビ「フロマドスケ」で代表を務めるナタリヤ・グメニューク氏は、11月というタイミングでロシア側が動いた背景にはウクライナ社会を動揺させる狙いがあったのではないかと指摘。同時に、ウクライナ海軍の船をいつでも拿捕できる状態にあったロシア側が、最も効果的なタイミングと考えたのが先月であったという見解を示した。

「アゾフ海でウクライナ海軍の船が拿捕され、現在も乗組員全員がロシア側に拘束されていますが、これは起こるべくして起こった事件と言えるでしょう。アゾフ海周辺でのウクライナの経済活動や軍によるパトロールを徐々に困難にさせ、ウクライナ軍への直接的な行動に出るタイミングを狙っていたのです。ロシアによるクリミア併合が第2段階に入ったとも言えるでしょう」

 ウクライナとロシアの対立では、ウクライナ東部で現在も続くウクライナ軍と「親ロシア派民兵(実際には現役のロシア軍部隊が加わっているケースが少なくないとされる)」との戦闘に注目が集まってきた。しかし、クリミア併合後に発生した事実上の海上封鎖によって、ウクライナは経済面でも大きなダメージを受けている。ロンドンにある英王立国際問題研究所でリサーチフェローとして、ウクライナとロシアの政治について研究するオリシア・ルトセヴィッチ氏は、クリミア併合はウクライナの領海の併合も意味し、地元の漁業や海運業だけではなく、石油や天然ガスの取引にも影響が出ていると語る。

「ロシアのクリミア併合後、アゾフ海に位置する港湾都市マリウポリとベルジャンシクでは、現在までに貨物取引量が約30%も落ち込んでいます。地元の漁業はこの4年で漁獲高が50%減少しています。(ロシアが2016年に着工を開始し、今年5月に道路部分が開通した)ケルチ海峡大橋は高さに制限があり、大型の貨物船は橋の通過が事実上不可能になりました」

1994年のブダペスト覚書の存在
ウクライナの主権を守れなかった国際社会

 ウクライナの安全保障を考える際に忘れてはならないのが、1994年にウクライナが米英露との間で交わした「ブダペスト覚書」の存在だ。1991年のソ連崩壊時、ウクライナは世界第3位の核保有国で、国内には約5000発の核弾頭があった。しかし、第三国への売却を含む核の拡散を懸念したアメリカを中心とする核保有国は、ウクライナに対し、全ての核弾頭を廃棄するよう要求。その見返りとして、ウクライナの主権や領土の尊重と、非常時における防衛面での協力を約束した。

 しかし、ロシアによるクリミア併合によって、大国との間で交わされた覚書が何の意味も持たないことをウクライナ人は痛感する。

 キエフを拠点とする報道系NGO団体「インターニュース」で編集主幹を務めるヴォロディミル・イェルモレンコ氏は、アゾフ海で発生したロシア軍による拿捕が、2014年のウクライナ政変以降では初となるロシアによる直接的な武力行使であったことに注目。ロシアとの全面戦争の可能性は低いとの認識を示しながらも、ウクライナの現有兵力では国土防衛にも限界があると指摘し、西側諸国に軍事・経済の両面でロシアへの圧力を高めてほしいと語る。

「西側諸国に限らず、日本にもぜひおこなってもらいたいのが対ロシア経済制裁のさらなる強化だ。石油やガスといったエネルギー企業への経済制裁を強化してほしい。この分野に対する制裁強化で他国が団結してくれると、プーチン政権には大きな打撃になるのだが…」

支持率の低迷が続く両国の首脳
今回の衝突で得をするのはどちらか

 ウクライナのポロシェンコ大統領は先月26日、ロシアやモルドバに隣接する地域に対して30日間の戒厳令を敷く大統領令を提案。戒厳令は議会承認を経て、先月28日から発動している。ウクライナで戒厳令が発動した日には、ロシアのプーチン大統領が「自身の支持率回復のために、ポロシェンコ大統領は何かをする必要があった」と発言。来年3月に行われる大統領選挙に向けて、ポロシェンコ大統領が起死回生のためのアクションを起こしたことを示唆したが、実際にはどうなのだろうか。

 今回話を聞いた3人全員が、戒厳令によってウクライナ国内に緊張状態を作っても、ポロシェンコ大統領の支持率が大きく変わることはないと断言している。

「ロシアとの緊張関係と、ポロシェンコ大統領による国家運営の酷さは、ほとんどの国民が別問題として考えています。ポロシェンコ時代の4年間を評価し、来年の大統領選挙で彼に再び投票しようと考える人は極めて少ないと思います」(グメニューク氏)

「戒厳令は諸刃の剣と言えるでしょう。戒厳令によってウクライナ軍が国防のためにより効率的に動けるのなら、ポロシェンコ大統領の支持率はアップすると思います。逆の場合も考えられます。戒厳令が結果的にウクライナ軍や司令官の能力不足を露呈してしまう可能性です。その場合、ポロシェンコ大統領にとっては大きな打撃となるでしょう」(ルトセヴィッチ氏)

 インターニュースのイェルモレンコ氏は、ポロシェンコ大統領が切った「戒厳令カード」は、来年3月に予定されている大統領選挙には大きな影響を与えないだろうと語る。ポロシェンコ大統領の支持率低下はどうにもならないレベルに達しており、戒厳令が大統領の人気を奇跡的に回復させることは現実的には起こり得ない話だと断言するイェルモレンコ氏は、大統領のレームダック化の背景を4つのポイントで指摘する。

 イェルモレンコ氏が最初に指摘したのは、一般的にウクライナ人が政府というものを信用していない点であった。これはポロシェンコ政権以前から続く問題で、国民は国家としての基盤の弱さを理解しているという。2点目は、ロシアによるクリミア併合や東部の不安定化によって、限られた国家予算内で軍事費の割合が大きくなり、結果として福祉関連の予算が大幅にカットされたこと。3点目は、ポロシェンコ政権が掲げた政府改革や汚職の廃絶が全く成功せず、とりわけ警察や司法関係で汚職がより蔓延するようになったウクライナ社会の現状。4点目は、誇張した情報からフェイクニュースまで、ポロシェンコ政権を糾弾するさまざまな情報が、メディアやブロガー、ボットなどによってロシアから連日ウクライナに発信されている情報戦の影響だ。

「戒厳令は大統領選を中止に追い込みたいポロシェンコ大統領の政治的な賭けだという声もあるが、それは間違っている。来年3月の大統領選挙はウクライナ議会によって投票日が決められ、政治システムの点からも大統領がそれを覆すことは不可能だ。選挙前の支持率回復を意識した可能性は否定できないが、いずれにせよ、戒厳令では何も変わらないほどウクライナ人の政府や大統領への不信感は高い」

 ポロシェンコ大統領もプーチン大統領も、国内では支持率低下に直面している。プーチン大統領にとってもシリア問題への積極的な介入やウクライナに対する強硬な姿勢は、「強いリーダー像」を国内外に示すチャンスである。しかし、支持率が思うように上昇しない現実が存在する。領土問題で火花を散らすポロシェンコとプーチンだが、皮肉にも自国での支持率低下という点だけは共通している。
https://diamond.jp/articles/-/187678
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/448.html

[国際24] ミャンマーの堕ちた偶像、スー・チー氏に若者世代が反旗 かつてケシ畑いま合成麻薬 薬物から抜け出せない 地下銀行25億送金
トップニュース2018年12月6日 / 10:49 / 1時間前更新
焦点:
ミャンマーの堕ちた偶像、スー・チー氏に若者世代が反旗
Shoon Naing and Poppy McPherson
4 分で読む

[ヤンゴン 1日 ロイター] - ミャンマーの若手活動家でテレビ番組の司会も務めるThinzar Shun Lei Yi氏は、かつてアウン・サン・スー・チー国家顧問の熱烈なファンを自認していたが、いまや最も痛烈な批判者の1人だ。

27歳の彼女は、少人数だが存在感の大きいリベラル活動家グループに属している。メンバーの多くはスー・チー氏の忠実な支持者だった。しかし3年前、非常に強い期待を込めた彼らの投票によって権力の座についた現ミャンマー政権に対して、彼らの幻滅は深まる一方だ。

「偶像は失われた。私は混乱し、苛立ち、戸惑っている」と、国内の人気ウェブサイトで「アンダー30(30歳以下)」というトーク番組の司会を務めるThinzar Shun Lei Yi氏は語る。

「活動家や若者の多くは『次は何か』『何が起きるか』『私たちに何ができるか』と考えている。現段階では、スー・チー女史は好き放題で、誰も干渉できない。市民団体の声に耳を傾けることもない」

スー・チー国家顧問は引き続き多くのミャンマー市民から献身的な支持を受けているが、若い世代からの抗議運動が同政権の新たな課題として浮上している。その原動力となっているのは、現政権によるムスリム系ロヒンギャ民族を含む少数民族への扱いや、メディアや市民社会への抑圧に対する怒りだ。

ここで問われているのは、長年に及ぶ軍事政権支配から民主制に向けて移行するミャンマーの将来だ。2020年の総選挙が視野に入る中で、数十年ぶりにこの国に誕生した文民政権は、かつてはスー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)を軸に結集していた活動家のあいだで亀裂が拡大する事態に直面している。

NLDの広報担当者Myo Nyunt氏は、若者の支持を獲得するため、同党が教育予算の増額や職業訓練プログラムの支援に取り組んでいると言う。「若者や国民は私たちの政権に多くを期待していた。その期待に応えきれなかったことは認める。だが最善は尽くしている」と語った。

スー・チー氏は2016年、民主改革の継続と長年続く内戦の終結を公約して、選挙で地滑り的な大勝を収めて政権を握った。

その後、「ジェノサイドの意図を伴う民族浄化」と国連に批判された少数民族ロヒンギャに対する軍弾圧への対応や、民族主義武装勢力との和平協議の不調、そして経済の停滞を巡って、現政権はプレッシャーにさらされている。

<言論の自由>

文民政府がますます独裁的になっており、議会で圧倒的な多数を占めているにも関わらず、反体制派の弾圧に使われていた植民地時代の法律を廃止せず、市民社会に対する締め付けを厳しくしている、と活動家は批判する。

ここ数カ月で幾度かの抗議活動が行われた。5月には商都ヤンゴンで反戦行進が行われ、最後には小競り合いが起きた。違法デモ容疑で起訴された17人の中にThinzar Shun Lei Yi氏が含まれていた。彼らの公判はまだ続いている。

「センシティブな問題を掲げることは禁止されており、デモ参加者は逮捕され、殴打される」と彼女は言う。「国民民主連盟は、民主を名乗るのであれば、民主主義と人権を尊重しなければならない」

言論の自由を主張する団体「Athan(ビルマ語で声という意味)」によれば、スー・チー氏らが政権を握ってから、44人のジャーナリストと142人の活動家が裁判にかけられているという。

その中には、ロヒンギャに対する迫害問題を取材していたロイターのワ・ロン記者(32)とチョー・ソウ・ウー記者(28)も含まれる。彼らは植民地時代に制定された国家機密法違反で起訴され、9月に禁固7年の判決を受けた。

2人はこの判決について、警察による陰謀の証拠と犯罪行為が立証されていないことを根拠としてヤンゴンの上級裁判所に控訴した。スー・チー氏は9月、2人の拘束は表現の自由とは関係ないとの見方を示している。ミャンマー政府は、裁判所は政府から独立していると述べている。

Athanの創設者であり、詩人で活動家のMaung Saung Kha氏も、5月の抗議行動の際にThinzar Shun Lei Yi氏とともに逮捕されたデモ参加者の1人だ。それから4カ月たった9月、2人は別のデモ開催に協力した。今度のテーマは「言論の自由」だった。

今もNLD党員のMaung Saung Kha氏は、群衆を前にして、伝統的にNLD議員が着用しているオレンジのシャツを着て、軍服に似せたグリーンのジャケットをその上に羽織った。彼は手にした国営紙「ザ・ミラー」を丸め、周囲に集まったジャーナリストらを叩く仕草を見せた。

「政府はその権力を、国民の権利を守るために使っていない」と彼はロイターに語った。

NLDの広報担当者Myo Nyunt氏は、政府は非政府組織と協力しているが、その活動はケースバイケースで吟味する必要がある、と語る。

「安全保障や民族間で賛否の分かれるテーマ関連の活動でなければ受け入れる」と彼は言う。「私たちは民主主義を推進しており、非政府組織(NGO)の役割も認めている。だが、NGOに独立性がなく、背後の支援者に影響されているのではないかという懸念を抱いている」

<「ロヒンギャを認める」>

Slideshow (3 Images)
スー・チー氏は軍を統制する権限を持っているわけではないが、少数民族ロヒンギャへの保護を怠ったことで国際的な批判を浴びている。国連機関によれば、2017年に西部ラカイン州に起きた軍による徹底的な取締りによって、73万人以上のロヒンギャが国外に逃れている。この取締りは、ロヒンギャ反政府勢力が治安部隊を襲撃したことへの対応として行われた。

ミャンマーはロヒンギャ難民が告発している残虐行為のほぼすべてを否認しており、軍は合法的な対テロ作戦を実施したと述べている。

ミャンマーで多数派を占める仏教徒はロヒンギャに対して批判的だが、若い世代の活動家からは数少ない同情的な声が上がっている。

「私たちはロヒンギャを受け入れている。彼らが『ベンガル人』と呼ばれている事実はまったく受け入れがたい」とMaung Saung Kha氏は言う。ロヒンギャ族がミャンマーで長年暮らしてきた歴史があるにもかかわらず、バングラデシュからの侵入者という意味で「ベンガル人」という呼称が一般的に用いられている状況に言及した。

「実際に起きたことについて、確認も処罰も行われた形跡が見られない」と語るMaung Saung Kha氏。「人々が彼らを人間以下の存在だと見ており、彼らを殺しても罪ではないと考えている限り、難民は戻ってこないだろう」

やはり違法デモの容疑に問われている青年活動家Khin Sandar氏は、2015年の選挙に向けて何ヶ月もNLDを支援する運動に参加したが、スーチー氏によるラカイン危機への対応を巡って、彼女に抱いていた信頼を失ったと語る。

彼女の家族は2012年に発生した一連の住民同士の暴力的衝突によって影響を受けた。このときはロヒンギャだけでなく、同じくムスリム系少数民族のカマンも住居から追われた。カマンも差別を受けているが、ロヒンギャと違い、ミャンマー市民として認識されている。カマンはラカイン州の州都シットウェ郊外に設けられた窮屈な難民キャンプで暮らしており、移動の自由を厳しく制限されている。

昨年の暴力行為の後に行った演説の中で、スー・チー氏は「(ラカイン州のすべての住民は)差別を受けることなく教育・医療サービスを利用できる」と述べた。

「私自身の甥や姪たちは今もシットウェの難民キャンプで暮らしており、スー・チー氏が言うような権利を享受していない」とKhin Sandar氏は言う。「私にはショックだった。どうしてスー・チー氏は演説であのようなことを言えたのだろうか」と付け加えた。この演説の後、彼女はNLD議員の下の研究員の職を辞したという。

こうした若い世代の活動家はミャンマー社会のなかでは小さな一部分でしかないが、彼らの抗議行動や公式コメントはメディアやソーシャルメディアにおける多数のフォロワーから多大な注目を集めており、草の根運動における影響力を増しつつある。

大半が20─30代の彼らは、ミャンマーの若年人口(中央年齢は27歳)と、60─70代の男性を中心とする高齢化した指導層とのあいだには大きな隔たりがあると指摘する。

「ミャンマーは非常に保守的な国だが、こうしたヤンゴン出身の若い世代は、それに挑みつつある」とYangon School of Political Scienceの政治アナリストMyat Thu氏は語る。「考え方の革命を起こすには、多くがそれを知る必要はない。徐々に拡散されるからだ」

(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/myanmar-activists-idJPKBN1O40S3?il=0

 

 
かつてケシ畑、いま合成麻薬 薬物から抜け出せない「黄金の三角地帯」
World Now
2018.12.06
シャン州南部のケシ畑=2017年撮影、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)提供 

タイ、ラオスとともにゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)の一角を占め、麻薬原料となるケシの栽培が盛んだったミャンマー。政府の対策などでケシ畑は減ったが、いま、合成麻薬の製造拠点という新たな姿を見せつつある。紛争や貧困で、いつまでも薬物依存から抜け出せない生産地の深刻な課題に、世界はどう対応するべきか。
■世界2位のケシ生産国
山に囲まれたミャンマー東部シャン州ラショー。農家の畑では、トウモロコシや米など十数種類の作物が育つ。ヘロインの原料となるケシ栽培が続く同州で、別の作物を普及させようと、国際協力機構(JICA)が支援する「モデル村」だ。 

タイ、ラオスと国境を接する同州は、麻薬の生産が盛んな「黄金の三角地帯」の一角として知られてきた。少数民族武装組織と国軍の紛争が絶えず、発展から取り残された山間部だ。車も通れない細い山道でもリュックで運搬でき、中国などから来た業者と取引されるケシは、村人の生活を支える収入源になってきた。ミャンマーは、アフガニスタンに次ぐ世界2位のケシの生産国だ。

ミャンマー政府は1999年に麻薬撲滅の計画を作り、武装組織との和平に至った地域では、政府の手が入りやすくなった。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、同国のケシ栽培面積は2017年は約4万ヘクタールと20年前の4分の1になった。 

ただ、和平協議は停滞しており、武装勢力の管理地域ではまだ30万人がケシ栽培を続けているという。ラショーの六つのモデル村では、農家が低い利率で資金を借りられる仕組みももうけた。ここには紛争地域からも公務員らが農業や畜産を学びに来る。JICA企画調査員の飯塚協太(44)は、「紛争が終わったときに農民がケシ栽培に戻らずに済むよう準備したい」と話す。 

麻薬_ミャンマー_1
ケシの実に傷をつける様子=2017年撮影、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)提供
ケシ産地からの脱却の試みが続く中、地域では新たな問題も浮上する。 

「ミャンマーが供給する大量の合成麻薬の原料は、我が国を挟む大国から流入している」。11月初旬、首都ネピドーで国連と政府が共催した麻薬に関する国際会議でアウントゥー内務副大臣はこう訴えた。 

■目が届かない「保護地域」
ミャンマーで作られる麻薬の主流は近年、ケシ原料のヘロインから複数の化学原料を混ぜてつくる覚醒剤などの合成麻薬に大きく変化した。政府や国際機関の目が届きにくいシャン州などの山間部は「合成麻薬のセーフヘイブン(保護地域)として悪用されている」とUNODCミャンマー事務所長のトロエルス・ベスター(44)は話す。一部の地元武装勢力と国際的な犯罪組織が原料を持ち込み、製造した麻薬を世界各地に運び出す密輸に関わっているという。中国、タイ、ラオスとの国境では、合成麻薬の原料になる大量の化学薬品が押収されている。 

麻薬_ミャンマー_2
国連薬物犯罪事務所(UNDOC)ミャンマー事務所長のトロエルス・ベスター=鈴木暁子撮影
ミャンマーで作られるのは主に2種類の覚醒剤だ。高純度のものはタイや中国に渡り、日本、韓国、豪州などに運ばれ高額で取引される。もう一つが地元で「ヤバ」と呼ばれる低純度の覚醒剤の錠剤だ。製造過剰で、14年に1錠5〜15ドルだった価格が最近は1〜5ドルに下落。薬物の知識がない小学生の間で元気がない時に飲むビタミン剤のように服用され、社会問題になっている。 

麻薬_ヘロイン密売ルート
国連によると、覚醒剤を含むアンフェタミン型興奮剤の使用者は16年で世界に3420万人。中国の新華社通信によると、中国は合成麻薬の中毒者が約150万人いるとされる巨大市場だ。東・東南アジアで押収された覚醒剤は、13年で1万4000キロと08年の倍で、その後も増えている。 

麻薬原料の生産地は、紛争や貧困などに悩まされる地域が多く、生産は増え続けている。ミャンマーのケシ栽培量は減る一方、世界のケシ生産の約9割を占めるアフガニスタンでは、政情不安などから生産が急増。世界のケシの生産量は昨年、1万500トンと過去最高となった。


【あわせて読みたい】 ケシ畑からコーヒー農園へ ミャンマー、麻薬に頼らぬ暮らしへの挑戦

筆者
鈴木暁子
鈴木暁子
朝日新聞記者
1973年、埼玉県生まれ。朝日新聞鳥取・奈良両総局と大阪・東京の経済部、GLOBE編集部などをへて、2016年9月よりハノイ支局長として夫と息子とともにベトナム・ハノイにくらす。カンボジアとフィリピンのニュースも担当し、月の半分はどこかに出張。水浴びする水牛を見るのが好き。
https://globe.asahi.com/article/11989521
 


 


ケシ畑からコーヒー農園へ ミャンマー、麻薬に頼らぬ暮らしへの挑戦
World Now
2018.12.06
ミャンマー・シャン州でコーヒーを作る農家=国連薬物犯罪事務所(UNODC)提供

麻薬原料となるケシが多く栽培されている「黄金の三角地帯」の一角として知られたミャンマーのシャン州。山深いこの地域を、まったく別の農作物の産地に変えようとする試みが始まっている。作られているのはコーヒーだ。作られる気候条件が似ている点に眼をつけた。
■産地の条件同じ
「ケシは標高1300〜1800メートルの高地で育つ、つまり高級コーヒーの産地と同じ。アジアではお茶からコーヒーへとニーズが変わっているし、将来性が見込める産業になりうる」。そう話すのは、国連薬物犯罪事務所(UNODC)ミャンマー事務所長のトロエルス・ベスター(44)だ。 

UNODCによると、同国のケシ栽培面積は1996年の約16万ヘクタールから急激に減少。2017年は約4万ヘクタールと往時の4分の1になった。 

栽培面積が減った理由の一つには、少数民族武装組織とミャンマー政府の和平が徐々に進み、人目に触れにくかったケシ栽培地に政府の手が入りやすくなったことがある。また、ミャンマーで取引される主流がケシ原料の麻薬から合成麻薬に代わり、ケシの栽培地がアフガニスタンに集中化していったことも大きい。 

そこに、ささやかな取り組みとして加えられるのが、日本の国際協力機構(JICA)や国連などが、ケシから代替作物への転換を後押ししてきた成果だ。 

UNODCは3年前からシャン州の農家とコーヒー栽培の取り組みを続けてきた。「グリーンゴールド協同組合」には、いま60村の農家968人が参加している。農家の中には、いまはまだ「畑の半分でケシを栽培し、半分でコーヒーを作り始めた」という人もいるという。それでも少しずつ栽培は増え、ベスターによるとおよそ1000ヘクタールがコーヒー畑に変わった。 

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ミャンマー・シャン州でコーヒーを作る農家=国連薬物犯罪事務所(UNODC)提供
コーヒーを作ることは農家にとってメリットになるとUNODCは強調する。ケシ栽培によって土地が傷めつけられてきたためだ。

■ケシと同額をコーヒーで稼げるよう
ミャンマー事務所のハイメ・ペレスによると、ケシは本来、日光を浴びて育つ作物だ。だがシャン州の場合、農家の土地は山の斜面にあり、森の中のため日光も差さないため、この地域では「焼き畑農業」によるケシ栽培が続いてきた。乾期にケシの収穫を終え、雨期になると雨が土中の養分をすべて洗い流す。2回か3回収穫をすると同じ畑で栽培は難しく、また別の畑を求めて移動しなければならない。十分な知識のないまま大量の化学薬品が使われ、土や水が汚染される問題もあった。 

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ミャンマー・シャン州でコーヒーを作る農家=国連薬物犯罪事務所(UNODC)提供
一方、コーヒーならその場にとどまり、畑を子や孫へと引き継いでいくことができる。UNODCは、森を維持しながら農業をしていく森林農法(アグロフォレストリー)も取り入れ、持続可能な産業にしていこうとしている。コロンビアやペルーのコーヒーの専門家が技術指導をし、途上国同士が協力するしくみも取り入れた。 

UNODCのベスターの目標は「農家がケシ栽培と同等の年間2000ドル(約23万円)をコーヒーで稼げるようにすること」だ。フランスの高級コーヒー企業マロンゴが22年まで、グリーンゴールドのコーヒー豆を買い取るという契約も取り付けた。きわめて高品質のコーヒー豆ができる地域も生まれ、1キロあたり8ドル(約900円)と、従来のミャンマー産コーヒー豆の倍の価格でマロンゴが買い取った。 

コーヒー豆は今年10月、最初のコンテナが欧州向けに出荷された。今後製品化され、来年3月にはマロンゴを扱うパリなどのカフェで飲むことができるようになる見込みだ。 

国連主導で作るシャン州産のコーヒーは、マロンゴが全量を買い取る予定だったが、少量がミャンマー国内でも今後販売されることになった。UNODCのベスターによると、「このコーヒーはミャンマーの人たちの誇りになる」という、アウンサンスーチー国家顧問たっての希望で実現したという。 

麻薬_ミャンマー_2
国連薬物犯罪事務所(UNDOC)ミャンマー事務所長のトロエルス・ベスター=鈴木暁子撮影
今後、フェアトレード認証の取得や、有機栽培コーヒーに注力するなど、さらに利益の高いコーヒー作りを目指す。日本でもいつか飲めるようになるかもしれない。そのときが楽しみだ。

【あわせて読みたい】 かつてケシ畑、いま合成麻薬 薬物から抜け出せない「黄金の三角地帯」

筆者
鈴木暁子
鈴木暁子
朝日新聞記者
1973年、埼玉県生まれ。朝日新聞鳥取・奈良両総局と大阪・東京の経済部、GLOBE編集部などをへて、2016年9月よりハノイ支局長として夫と息子とともにベトナム・ハノイにくらす。カンボジアとフィリピンのニュースも担当し、月の半分はどこかに出張。水浴びする水牛を見るのが好き。
https://globe.asahi.com/article/11991706

 


地下銀行で25億円送金か ミャンマー国籍5人逮捕
社会
2018/12/4 16:57 
「地下銀行」を運営しミャンマーに不正送金したとして、警視庁組織犯罪対策1課などは4日までに、東京都豊島区巣鴨3、会社役員、カリヤー・モー容疑者(43)らミャンマー国籍の男女5人を銀行法違反(無免許営業)の疑いで逮捕した。いずれも容疑を認めているという。

同課によると、カリヤー容疑者らは2009年〜18年9月にかけ、日本にいるミャンマー人ら延べ約1万2800人から依頼を受け、約25億7千万円を送金。1億円以上の利益を得ていたという。依頼人から集めた資金で日本で中古車などを購入し、ミャンマーに送って共犯者が現地で売却する手口で送金資金を保管していたという。

逮捕容疑は18年8〜9月ごろ、ミャンマー人留学生4人から手数料を得て計約23万円の送金依頼を受け、現地で同国通貨に換算して受取人に支払い、無免許で銀行業務をした疑い。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38524550U8A201C1CC1000/


http://www.asyura2.com/18/kokusai24/msg/690.html

[経世済民129] 米「逆イールド」で市場動揺も、持ち直しの可能性 米中対立深刻化への懸念強まり日経平均は417円安 日本株上昇のきっかけ
米「逆イールド」で市場動揺も、持ち直しの可能性
金融テーマ解説
大槻 奈那 2018/12/06
• マネックス
・先週末、米5年国債と2年国債の利回り差が逆転、ベンチマークとなる10年債と2年債の利回り格差も11.9bpまで縮小。これを受け、今週週明けの株式市場が暴落した。
・18-19日のFOMCでは再利上げの確率大。10年債と2年債との逆イールドが発生し、再び市場が動揺する懸念も。しかし、これ本来は逆イールド自体が景気悪化の要因になるわけではない。
・過去も、株価の暴落には、逆イールドが発生したからではなく、経済成長期待と長期金利の減速にもかからず、政策金利引き上げを続けたことが影響していた。従って、FRBが早めに金利引き上げを休止すれば、逆イールドは長くは続かない。それが確認できれば米国株は持ち直すだろう。
逆イールドの発生で市場は動揺しているが・・・
今週初頭から米株式市場は大荒れとなった。この主因として、米国の長短金利差の急速な縮小が挙げられている。12月3日には、11年7か月ぶりに、米国債5年の金利と2年国債の利回り(イールド)が逆転し、「逆イールド」が発生した。同時に、ベンチマークである10年国債と2年の国債利回り格差も11.9bpまで縮小した(図表1)。これを受け、12月4日の米ダウ平均は前日比マイナス799ドル(-3.1%)の大幅安となった。


逆イールドから株価暴落に直結するとは限らず。市場は「尻尾が犬を振り回す」
株式市場が反応したのは、過去、米国で逆イールドが発生すると、その後概ね1年半後に株価が暴落する傾向があったためだ(図表2)。
しかし、イールド・ギャップの縮小や逆イールドの発生は、債券市場の景気見通しと政策金利の結果であって、それ自体が企業の減収に直結するわけではない。市場は、若干「尻尾が犬を振り回す」状態になっている。


逆イールドの意味するもの
では、なぜ逆イールドの発生ののち株価が下落するパターンが多くみられたのか。
短期金利は政策金利を反映しやすい。これに対して長期金利は、数年先の経済成長やインフレ率を表す。つまり、逆イールドは、成長期待が落ちているにも関わらず、政策金利の引き上げが続いたことが、要因の一つとなったと思われる。
例えば、90年代末や2005年末の逆イールド発生時は、その後も政策金利の引き上げが続いた。結果、逆イールドの幅は大きくなり、その後、景気を冷やし過ぎたことから株価暴落につながった。
これに対し、イールド・ギャップがゼロに付近に転落したにもかかわらず株価がほぼ堅調に推移例もある(1994〜98年)。この時FRBは、それまでの利上げを一旦停止し、景気刺激に転じた。古い事例ではあるが、そもそも逆イールド発生自体、直近でも10年前であり、事例も多くない。このため、逆イールド発生を、即ち株売りシグナルと断じるのは早計である。


今後の動向は、利上げ停止のタイミング次第
問題は、政策金利をどこで転換し、利上げを一旦停止するかである。FRBは過去に学んでおり、早々に逆イールドについても警戒感を示しているため、過去よりは景気変動をうまくコントロールできると思われる。この3年間の利上げでコントロールの自由度も拡大している。
今月予想されるFRBの利上げで10年債と2年債の金利も逆転する可能性はある。しかし、米国経済成長は、伸び率はやや鈍化するものの底堅く推移すると予想される(図表4)。来年の早い段階から利上げを一旦棚上げすれば、逆イールドは長くは続かない可能性が高い。それが確認できれば米国株は一段高もありうるだろう。


但し、イールドギャップの縮小で米銀の収益には直接マイナスが発生しうる。我々は、先月、それまで強気だった米銀へのスタンスを「弱気」に変更しており、当面これを継続する。

大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
大槻 奈那 の別の記事を読む
バックナンバー
• 2018/11/30米銀はそろそろ売り時
• 2018/11/15銀行決算後の下落は「買い」か
• 2018/11/01日銀・金融政策維持:弊社アンケートにみる“デフレマインド”と金融政策見通し〜正常化にはほど遠いが、長期金利上昇の可能性高まる
https://media.monex.co.jp/articles/-/10588


米中対立深刻化への懸念強まり日経平均は417円安と大幅に3日続落
市況概況
マネックス証券 マネックス証券 2018/12/06
 国内株式

マネックス

日経平均
東京市場まとめ
1.概況
本日の日経平均は417円安の2万1501円と大幅に3日続落しました。TOPIXやJPX日経400、東証2部指数や新興市場のマザーズ指数など主要指数は総じて下落しました。昨日の米国市場はブッシュ元大統領の追悼のため休場で材料難でしたが、昨日までの軟調な地合いを引き継ぎ日経平均は152円安の2万1766円と続落して寄り付きました。日経平均は寄り付き後も軟調に推移すると、中国の通信機器大手のファーウェイの副会長が米国の要請に基づきカナダで逮捕されたと報じられたことで米中対立が深まるとの懸念が強まり、さらに下げ幅を広げました。前場を404円安で終えた日経平均は後場に入るとさらに下げ幅を広げて一時は611円安まで下落しました。引けにかけてやや値を戻したものの日経平均は結局417円安で取引を終えました。東証1部の売買代金は2兆7165億円となりました。東証33業種は全業種が下落しました。中でも電気機器、医薬品、精密機器、機械、証券商品先物などが大きな下落率となりました。一方で電気・ガス業、陸運業、小売業、不動産業などのディフェンシブセクターは比較的小幅な下げにとどまりました。

2.個別銘柄等
東証1部の売買代金上位銘柄は総じて下落しました。売買代金トップのソフトバンクグループ(9984)が5%近く下げたほか、任天堂(7974)も4%安、武田薬品(4502)も3.2%安となりました。その他にもトヨタ自動車(7203)、ファーストリテイリング(9983)、ソニー(6758)、三菱UFJ(8306)、みずほ(8411)、村田製作所(6981)、東京エレクトロン(8035)がいずれも下落しました。材料が出たところでは、会計ソフトや家計簿アプリなどを手がけるマネーフォワード(3994)は海外募集で新株の発行を行うと発表したことが嫌気され13%超の大幅安となりました。一方でホテル運営会社の日本ビューホテル(6097)は第2四半期決算を発表し8−10月期の営業利益が前年同期から大幅に増加したことが好感され5%近く上昇しています。

VIEW POINT: 明日への視点
日経平均は417円安と大幅に続落しました。日経平均は11月22日から12月3日まで7日続伸しましたが、本日の下落でその上昇分を全て吐き出した格好となりました。先日から当欄で記している通り足元は一段の調整に警戒すべき局面だと考えています。

(マネックス証券 マーケット・アナリスト 益嶋 裕)
https://media.monex.co.jp/articles/-/10590


 

日本株上昇のきっかけは?
広木隆のMarket Talk
広木 隆 2018/12/06
2018年12月6日(木)Market TalkのSummary
現在の日本株の状況について
相場が投資家不在のなか、真空地帯のような状況で売られて下がっているが、あきらかに行き過ぎているように見える。悲観心理が勝っているので仕方がないことだが、今まで述べているように、このように相場が総悲観に傾いているときは絶好の買い場だと思う。
独ZEW期待指数と欧州GDP成長率の下落。政局の混乱と薄れていくECB利上げ期待の後退から今後のユーロとマーケットへの影響について教えて下さい
(ECBは)利上げはできないだろう。来年10月でドラギ総裁が引退、後任でタカ派がくると分からないが恐らく夏には(利上げは)無いであろうから、しばらくユーロは軟調かもしれない。逆に株式にとっては非常にポジティブ。金融緩和が続くなかで、米金利打ち止め感が出てくると株にとってはプラスとなる。ユーロの弱さは日本や世界の株価に悪い話ではない。
米中貿易戦争は追加制裁期限が90日先送りになっただけ、ファーウェイCFOの逮捕と、米中関係悪化による先行き不安でセンチメントが最悪ですが、現時点で何が株価上昇のきっかけになりますか
きっかけとなるのは、米長期金利低下を好感して米国株が持ち直すことだ。米国株が上昇することが一番センチメントを改善させるだろう。
ファナックは今週も大幅安ですが、まだ買い場ということか?
そうだと思う。根拠として中国の景気が回復してきている - 建機の稼働率や鉱工業生産、固定資産投資などが上向いてきた、銀行の融資態度が変わって民間に資金を流している等 ‐ からだ。今後のサプライズは中国景気の回復、それが指標面で出てくることだと思う。そうなったときに買われるのはファナックのような中国関連銘柄だろう。
年末、年度末の日経平均予想は?
年末には年初来高値ぐらいまで戻ると予想していたが、時間軸的に無理な状況となってしまった。23,000円の節目を回復できればよいというところだ。年度末については、米中貿易戦争の協議期限(90日間)が2月でそこまではもやもやしているだろう。しかしそこを過ぎて関税をかけるものはかけて出尽くすといった形でいけば、今度はいよいよ見えてくる業績を織り込んで年初来高値24,000円超えぐらいは十分あるのではないか。
https://media.monex.co.jp/articles/-/10587 

http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/780.html

[戦争b22] 米軍戦闘機と給油機が墜落、2人発見 高知沖 米最新機F35Bの導入を了承 戦闘機で買えるもの 意思疎通できず戦闘機接触
米軍戦闘機と給油機が墜落、2人発見 高知沖
2018/12/6 8:45 (2018/12/6 13:08更新)日本経済新聞 電子版
 6日午前1時40分ごろ、高知県の室戸岬南約100キロの太平洋上で、米軍岩国基地(山口県岩国市)所属のFA18戦闘攻撃機とKC130空中給油機が接触し、墜落した。乗員1人を救助し、1人を発見したが、他の乗員の安否は不明。民間船舶などは巻き込まれていないという。米国からの情報提供を受け、防衛省などは捜索作業を進めている。

 防衛省や在沖縄海兵隊によると、FA18戦闘攻撃機には2人、KC130空中給油機には5人が乗っており、午前5時半ごろ、墜落現場付近で攻撃機側の乗員の1人を発見し、ヘリコプターで岩国基地まで搬送。意識があり、容体は安定しているという。

 正午ごろ、海自の艦艇がもう1人を発見、収容したが、容体は不明という。空自と海自は残る5人の捜索を続けている。

 在沖縄海兵隊によると、両機は岩国基地を離陸し、空中給油の訓練中だった。事故の原因は調査中としている。

 岩屋毅防衛相は6日午前、記者団の取材に対し「事故は遺憾。まずは行方不明の乗員の捜索・救助に全力を尽くしたい」と述べたうえで、引き続き米軍から情報収集を進めるとした。

 西村康稔官房副長官は首相官邸で「海上などでの(船舶の)被害は現時点ではないと聞いている」と記者団に述べた。

 外務省の鈴木量博北米局長は同日、米軍機墜落について、在日米軍トップのマルティネス司令官に遺憾の意を伝えた。原因究明と再発防止の徹底、速やかな情報提供も求めた。

 米軍機をめぐっては、11月12日、那覇市の東南東約290キロの海上でFA18戦闘攻撃機1機が墜落。エンジントラブルがあったとみられ、操縦士と副操縦士の計2人が緊急脱出し、救助されるなど、事故が続いている。

米軍のKC130空中給油機=共同
 

米軍のFA18戦闘攻撃機=共同
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38602880W8A201C1CC0000/?n_cid=NMAIL007


 


 
米最新機F35Bの導入を了承
2018年12月05日 20時18分 時事通信

米最新機F35B導入了承=いずも「空母」化、協議継続−与党
米軍の強襲揚陸艦「ワスプ」で公開された訓練で、垂直に降下して着艦するステルス戦闘機F35B=3月23日、沖縄県東方沖のフィリピン海

 新たな防衛大綱の策定に関する与党ワーキングチームは5日、衆院議員会館で開いた会合で、米最新鋭ステルス戦闘機F35Bの導入を了承した。これに先立ち、政府は有識者会議に新大綱の要素案を提示したが、いずも型護衛艦を改修し、事実上の航空母艦の任務を担う「多用途運用母艦」の導入は明記されなかった。大綱策定に向けた今後の焦点となる。

 「多用途運用母艦」導入をめぐっては、与党側は「もう少し丁寧な議論が必要だ」と指摘し、協議を継続することになった。政府は与党との調整を経て、新大綱と中期防衛力整備計画(2019〜23年度)を18日にも閣議決定する。

 航空自衛隊は現在、F15戦闘機を合計201機保有。うち旧型でレーダーなどの近代化改修を受けていない99機については、F35に置き換えることを検討していた。

 F35には長い滑走路が必要なA型と、短距離離陸・垂直着陸能力を持つB型、空母艦載機として運用されるC型がある。

 与党会合で、政府側はF35Bについて、「(わが国は)島しょ部が多く、飛行場が少ない太平洋側でも監視が今後必要となる中で、短い滑走路でも運用できるBタイプは有効だ」として、導入の必要性を強調した。

 また、F35Aの追加導入に関しても、高いステルス性能のほか、既に空自F4戦闘機の後継機として運用しているため、パイロットの教育・訓練や整備の観点からメリットがあると説明した。

 一方、「多用途運用母艦」の導入に関し、公明党は専守防衛の枠内で「攻撃型空母は持たない」としてきた過去の政府答弁との整合性などを指摘。さらなる説明を政府側に求めた。 【時事通信社】
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12145-139451/

 

 
<税を追う>取材班から 

戦闘機で買えるもの

2018年12月6日 朝刊


 「毎回、驚きと怒りをもって読んでいます。登場する数字が大きすぎて実感を持てません」「一般人は『兆』だとピンと来ないので、庶民目線で比較できるものを載せたらどうか」

 複数の読者からそんな声が寄せられた。たしかに記事の見出しだけでも「兵器ローン残高5兆円突破」「米製兵器維持費2兆7000億円」「地上イージス6000億円超も」と、とてつもない数字が並ぶ。

 たとえば米国製の戦闘機F35は一機百億円以上する。都市部で定員九十人の認可保育所を建てる場合、厚生労働省は建物費用を約二億円と想定しており、土地があれば一機分で少なくとも五十カ所、四千五百人分を建てることができる。

 防衛省は二〇二四年度までに四十二機購入する予定だが、さらに約百機を追加購入する方針が五日、明らかになった。昨年度の保育所の待機児童は全国に二万七千人。六機で全員分の保育所を建てられる計算だ。

 「日本から約束があったが、F35などを数多く購入することは非常に感謝している」。先月末、アルゼンチンでの日米首脳会談の冒頭で、トランプ大統領は安倍首相にお礼を伝えた。百機でざっと一兆円。ディール(取引)好きのトランプ氏のことだから大喜びするに違いない。

 一機でも二機でも減らしてくれれば、大勢の子どもたちが保育所で元気に遊べるのに。母親たちの願いが聞こえてきそうだ。 (望月衣塑子)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018120602000125.html


 

パイロット、意思疎通できず 戦闘機接触で空自公表
2018/12/5 23:08日本経済新聞 電子版
 航空自衛隊は5日、築城基地(福岡県)に所属するF2戦闘機2機が11月に空中接触した事故は、約20メートルの距離で並行飛行した際、パイロット同士の意思疎通ができず、互いに目を離して旋回したのが原因とする調査結果を公表した。関係者の処分は今後検討する。

接触し、垂直尾翼の上部が損傷したF2戦闘機(2日、航空自衛隊築城基地)=航空自衛隊提供・共同 

 事故は11月2日午後3時50分ごろ、築城基地から西約200キロの長崎県付近の洋上で発生。訓練後、落下物がないか互いの機体を目視で確認する作業中、左側を飛行していた1番機の垂直尾翼の一部と、2番機左主翼下のミサイル発射装置の一部が接触した。

 1番機のパイロットが機体を確認してもらうため、無線やジェスチャーで「左に旋回しろ。自分が前に出る」と伝えたが、2番機のパイロットには左旋回の指示しか通らなかった。1番機より急角度で左にターンしたところ、急速に接近して接触。双方のパイロットはこの間、相手の機体から数秒間にわたり目を離していたという。

 空自は、パイロット2人の技術レベルの差が事故の一因とし、所属部隊でレベルに応じた手順を規定するなどの再発防止策を講じたとしている。

 丸茂吉成航空幕僚長は「安全管理を徹底し、再発防止に努める」とのコメントを出した。〔共同〕
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3859781005122018CC1000/
http://www.asyura2.com/18/warb22/msg/449.html

[国際24] 世界のメディアを支配し始めたロシアと中国 AIの軍事利用で世界最先端を進み始めた中国 お粗末すぎ日本 グーグルついに自動
世界のメディアを支配し始めたロシアと中国

活発なメディア間交流で、お互いの親近感を高める記事続々
2018.12.7(金) 徳山 あすか
モスクワで開催された日露メディアフォーラム(筆者もスピーカーとして参加)
 ロシアにいて最近よく思うのは、近いうちに世界のメディアの潮流を、中国とロシアが支配するのではないか、ということだ。

 近年、この2か国のメディアの接近は、目を見張るものがある。そう聞くと、何だか不気味な予感がしないだろうか?

 中露メディアの蜜月を説明する前に、日本とロシアのメディア交流の現状を見てみたい。

 さる10月25日、モスクワで日露メディアフォーラムが開催された。

日本とロシア、初のメディアイベント
 マスコミ関係者のみを対象にしたイベントが日露間で開催されるのはこれが初めてだ。筆者もロシアメディアで働く日本人ということで、スピーカーとして登壇した。

 フォーラム開催のきっかけは、デジタル発展通信マスコミ省のコンスタンチン・ノスコフ大臣の提案による。

 今年7月、野田聖子氏が日本の総務大臣として初めてロシアを訪問したとき、「日露でメディアフォーラムをやりましょう」という話になっていたのだ。

 その後の内閣改造で総務大臣は交代したが、メディアフォーラムの話は残った。日露交流年である2018年のうちに開催したい、という関係者の意向で、急ピッチで開催に漕ぎ着けた。

 ロシア側からはデジタル発展通信・マスコミ省のアレクセイ・ヴォーリン次官や、国営新聞「ロシア新聞」のエフゲーニー・アボフ副社長など、業界のトップが参加した。

 ヴォーリン次官は元ジャーナリストで、若かりし日にはジャカルタ特派員を務めたこともある。

 日本には、ロシアでいうところのマスコミ省にあたる省庁はない。実際のところは別として、形式上、マスコミは権力から一歩距離を置いた存在だ。

 なので、日本側は参加者を「動員」することはできない。あくまで、参加しませんかと提案するだけだ。

新聞社やネットメディア関係者の姿はなく
 結果、一部の地方局や、コンテンツ販売会社の代表者らが呼びかけに応じたが、ロシア側が期待していた新聞社やネットメディア関係者の姿はなかった。

 結果として日露で参加者の業態がだいぶ違ったため、マッチングは起こらず、単なる初顔合わせの会となった。いつか2回目があるのかどうかは、まだ明らかになっていない。

 もちろんロシア側のオーガナイズの問題はあり、直前まで日程や開催地が決まらなかった。

 しかし、前もってアナウンスしていれば、日本のメディア関係者が来てくれたかというと大いに疑問である。

 モスクワは、ビザの問題はあるが、行こうと思って行けない場所ではない。結局、わざわざロシアへ行くだけのメリットが感じられなかったということだろう。

 中にはタス通信と共同通信のように、長期にわたって協力関係にある会社もある。ロシア新聞と毎日新聞は定期的に「日本・ロシアフォーラム」を開催している。

 しかし、逆に言うと、それくらいしか具体例が思い浮かばない。後は細々とコンテンツを売買しているだけで、あくまでもビジネスの関係である。

 さて、中国に目を向けてみると、全く状況が異なっている。2016年と2017年の2年間は、ロシアと中国のマスメディア交流年だった。

 これはプーチン大統領と習近平国家主席が取り決めたものだ。交流年のロゴマークは、鉛筆を持ったクマとカメラを持ったパンダ。2人(2頭?)は仲良く取材現場に向かっている。

 この間、ロシアメディアと中国メディアの間では、共同で番組や記事を作ったり、若手記者の相互交流や研修を行なったりと、約400のプロジェクトが実現した。

ロシアの放送を中国語の字幕つきで視聴可能
ロシア・中国メディア交流年のロゴマーク
 プロジェクトに参加したのは、通信社、新聞社、テレビ、ラジオ、コンテンツ販売会社やネットメディアなど。

 例えばロシア国営放送「第1チャンネル」と中国中央テレビは、共同プロジェクト「カチューシャ」を約1年前からスタートさせた。

 中国の視聴者は、ロシア語放送を中国語字幕つきで見ることができる。

 ロシアも中国も、国営メディアの国なので国が主導したのは明らかだが、それに加えて根底にあったのは、「交流したい」「一緒に何かしたい」という現場の意思だろう。その現場の意思を鼓舞したのは、プレスツアーではないかと思う。

 昨年は、ロシアのジャーナリストを招いた中国へのプレスツアーが多く実施された。

 プレスツアーと言っても要するに観光で、いかに中国が将来性のある素晴らしい国かということをアピールするツアー旅行だ。

 筆者の知人のロシア人記者は、就職して間もなく、ジャーナリストとしては駆け出しだったが、プレスツアーに参加できた。中国のあらゆる名所旧跡を回る充実したツアーで、とても楽しかったという。

 日本では大手メディアの記者と言うと、社会正義のために働き、公共性の強い職業というイメージがあるが、ロシアでは全くそんなことはない。給料も他業種と同じくらいかむしろ低いくらいだ。

ロシア人記者を歓待、中国ファンに
 そういう状態で右も左も分からないうちに大歓待されると、すっかり親中派になってしまうのである。

 ちなみに飲食を伴う記者の接待は、ロシアではよくある。こういった文化を踏まえれば、若いロシア人記者の取り込みなど中国にとってみれば造作もないことだ。

 地域間のメディア交流も非常に進んだ。

 例えば在エカテリンブルク中国領事館は、観光ジャーナリズム発展という名目で、スヴェドロフスク州とノヴォシビルスク州を代表する10社の記者らを招待した。

 在ウラジオストク中国領事館は、沿海州の記者を相手に深圳・広州・大連・北京などをめぐる豪華ツアーを実施した。

 ドミトリー・メドベージェフ首相はロシア・中国メディア交流年の締めくくりにあたり、「ロシアは他のどの国とも、メディア業界でこんな親密な協力関係を築いてはいない。心から参加者に感謝しお祝いする」と満足げに挨拶した。

 また、中国という存在がメディアで露出してきたのに伴い、文化面全体でも存在感を増している。

 筆者の知人で、ロシアで俳優としてドラマや映画に出演している木下順介氏が言うには、ここ2年ばかりで中国人役のオファーが非常に多くなったそうだ。

 しかもそういう場合、中国人は正義感あふれる「良い役」ばかり。むしろ日本人の役を演じたとき、上役の日本人が悪役で、部下の中国人にたしなめられるというシーンもあったという。

メディアの力でお互いの国民が親近感
 もちろんフィクションの世界だが、フィクションはイメージの集大成であり、大衆はそこから多くを感じ取るものである。

 この変化は、ロシア人にとって中国人がそれだけ身近な隣人になったということだろう。

 ロシアで日本のイメージは全体的に良いが、オールドメディアの影響力が強いロシアでこういう状態が続けば、近いうちに中国が日本のポジションを取ってしまうのではないかと感じる。

 筆者はロシアの大学院でメディア研究をしているが、中国の事案とからめた先行研究の多さに驚かされる。

 中国メディアについてロシア語で書かれた論文がたくさんあるので、中国に行かなくても全容が分かりそうなくらいだ。

 ジャーナリズム学を専攻し博士候補(ロシアの学位システムでは修士の次は博士候補)まで出る中国人も多い。

 筆者は日常的に、ロシア人とも中国人とも仕事をする機会があるので、個人的なレベルでは彼らに好意を感じている。

 しかしその一方で、中国とロシアが急速に接近するのを何となく見守っているのは歯がゆい気持ちになる。

 日本はメディアがとても発達した国なのに、大手メディアほど内側に閉じ、国内で完結しているのではないかと思う。

 そのうち、日本の読者だけを対象にしていては、立ち行かなくなる時代が来るだろう。

将来が不安な日本のメディア
 そうなったとき、従来のやり方に加え、共同取材や外国人記者の受け入れ、逆に外国のパートナーメディアの力を使って若手記者に外国で取材の機会を与えるなど、商業ベースでないいろいろな試みが生きてくるかもしれない。

 少なくとも、ロシア側はそういった機会を欲しがっている。

 決して、ロシア人記者をもてなせ、ジャパンマネーでプレスツアーをしろ、と言っているのではない。

 ロシアをプロパガンダの国、と毛嫌いせず、経験の交換と相手側の実態把握のために、できる範囲で付き合ってみてはどうか、というのが筆者の主張である。

 中国はメディア交流の分野で、ロシアだけでなく、アフリカ諸国や様々な国に手を伸ばしている。

 気づいたら日本だけが世界から取り残されていた、ということになってほしくはない。

 日本は、西側の大手メディア以外とのパートナーシップ構築を積極的に考える時期に来ていると思う。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54874

 


AIの軍事利用で世界最先端を進み始めた中国

アルファ碁の勝利をきっかけに一気呵成、お粗末すぎる日本の対応
2018.12.7(金) 渡部 悦和
中国ファン激怒、アルファ碁と最強名人の対局中継が突如禁止に
中国・浙江省烏鎮で、人工知能(AI)「アルファ碁」との3番勝負の第2局に臨む柯潔氏(2017年5月25日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News〕

 米中貿易戦争が進行中だ。その背景には「米中の覇権争い」があり、さらに言えば米中の「AIなどのハイテク覇権争い」がある。

 習近平主席が目指す「科学技術強国(Superpower in Science and Technology)」は、国家ぐるみのハイテク覇権追求を象徴的に表現している。

 本稿ではハイテク覇権争いの中核であるAI開発の状況特に中国におけるAIの軍事利用について紹介したい。なぜならば、AIの軍事適用は、将来の軍事作戦の帰趨を決定する最重要な要素であるからだ。

 まず、最近報道されたAIに関する象徴的な出来事を紹介した後に、中国のAIの軍事利用に関する本論に入りたいと思う。

中国における若者を利用したAI兵器開発の試み
 香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが、北京技術研究所(BIT:Beijing Institute of Technology)のAIの軍事利用に関する「北京技術研究所プログラム(BITプログラム)」を報道*1しているので紹介する。

 なお、BITプログラムは、18歳という若者を対象としたAI兵器の開発プログラムとしては世界初の試みだ。

●BITプログラムの概要

 中国はAIの軍事利用を重視し、米国との熾烈な開発レースを展開している。

 北京技術研究所は、中国人民解放軍の兵器の研究・開発を担当しているが、優秀な若者31人(27人の男子と4人の女子)をAI兵器開発プログラムのためにリクルートした。

 彼らは、約5000人の志願者の中から選抜された最も優秀な高校生で、世界で最も若いAI兵器の科学者を目指し、4年間のAI兵器システムプログラムに参加する。

 BITの教授は、「31人の子供たちは全員、非常に聡明だが、聡明だけでは不十分だ。創造的思考、戦う意思、困難に直面した際の粘り強さ、新兵器を開発しようとする熱意をもった愛国者でなければいけない」と発言し、中国らしい育成の方向性を示している。

*1= China’s brightest children are being recruited to develop AI ‘killer bots’

 31人には、各人に2人のベテラン兵器開発者がメンターとしてサポートする。1人は大学から他の1人は国防産業から派遣される。

 若者たちは、当初の短期コースを修了すると、専門分野を選択し、関連する国防研究所に配置され、様々な経験をしスキルを上げていく。

 4年間のコースを経て、博士課程に進み、中国のAI兵器プログラムのリーダーとなる。

 中国においても日本と同様に、優秀なAI人材の不足が問題となっているが、高校生をAI兵器の開発に利用しようという試みは世界的に例がなく、中国人民解放軍のAI開発重視を象徴している。AI研究者の低年齢化は今後とも進むと思われる。

●BITプログラムに対する批判

 BITプログラムには当然ながら批判がある。国連大学政策研究センターの研究者(Eleonore Pauwels)は、次のように警告している。

 「この中国のプログラムは、次世代の若者にAIの軍事利用に関する研究を奨励する世界で初めての試みだ」

 「BITの試みは、AIの兵器化に焦点を絞った強烈な試みであり、多くの問題点を内包している」

 「AIの知識が、その他の技術例えばバイオ技術、量子コンピューティング、ナノ・テクノロジー、ロボット工学などと結びつくと、安全保障や軍事的支配の観点で劇的な意味を持つ」

●AI兵器に関する中国の本音と建て前

 中国の発想と行動の特徴は、民主主義諸国が重視する倫理とか国際法の順守などに縛られることなく、自らの国益を追求していく点にある。

 AIの軍事利用についても、倫理や国際的な取り決めには制約を受けないで、BITプログラムに対する批判にもかかわらず、これを推進するであろう。

 中国は、国連などにおけるAIを搭載した殺人ロボットなどに対する規制の議論には参加しているが、本気で規制を実現しようとは思っていない、と判断するのが妥当であろう。

 例えば、中国は国連に対してAI兵器の使用に関する文書を提出し、「ハイテク製品の誕生および致死的な自律兵器システムの開発や使用は、戦争の敷居を下げ、それを使用する国の戦争のコストを下げるであろう。これは、戦争がより起こりやすく、頻繁になることを意味する」と記述している。

 しかし、中国国内では多様なAI兵器を開発し装備している現実がある。

米中貿易戦争の背景にある
習近平主席の「科学技術強国の夢」
●中国の夢と米中貿易戦争

 習近平主席の「中国の夢」は、「中華民族の偉大なる復興」であるが、この中国の夢の背景には中国にとっての屈辱の100年がある。

 中国は、英国が仕かけたアヘン戦争(1840年)から中華人民共和国の誕生(1949年)までの屈辱の100年を経験した。この屈辱の100年の恨みを晴らすという思いが、習近平主席の心の奥底にはある。

 国家主席になった瞬間(2013年)から、「今こそ、屈辱の100年の恨みを晴らし、世界に攻勢をかけるべき時だ」と判断したのであろう。

 彼は、故ケ小平氏が主張した「韜光養晦」を過早にも放棄してしまった。

 「韜光養晦」は、「才能を隠しながら、内に力を蓄える」という考えだが、これを放棄し、極めて強圧的な姿勢で「米国に追いつき、追い越す」政策を推進してきた。

 この世界一の大国になり、世界の覇権を握ることを目指す中国、それも米国などの知的財産を窃取するなどの不公正なやり方でハイテク覇権国になろうとする中国に対するドナルド・トランプ大統領の怒りが、米中貿易戦争や米中新冷戦という状況を引き起こしたと私は思う。

 中国は「韜光養晦」を持続し、辛抱強く「その時」を待つべきだったのだ。

●マイク・ペンス副大統領による歴史的な中国批判演説

 ペンス副大統領は、10月4日に保守的シンクタンクであるハドソン研究所で行われたスピーチで中国を厳しく批判した。

 「中国共産党は『中国製造2025』を通じて、ロボット、バイオテノロジー、AIなど世界の最先端産業の9割を支配することを目指している」

 「中国政府は、21世紀における経済の圧倒的なシェアを占めるために、米国の知的財産をあらゆる手段を用いて取得するよう指示してきた」

 このペンス演説は、米中貿易戦争の本質が「AIなどの米中ハイテク覇権争い」であることを如実に表している。

 中国経済は現在、危機的な状況にあり、膨大な債務処理の問題など中国経済の構造的問題の解決は喫緊の課題であるが、そこにトランプ大統領が仕かけた貿易戦争が重くのしかかっている。

 中国の著名な経済学者であり中欧国際工商学院教授の許小年氏は、この中国の危機を打開するためにはイノベーションが必要だと強調する。

 そのイノベーションをAIなどの最先端技術で達成しようというのが習近平の科学技術強国路線であり、富国強軍路線である。

●中国の野望は「2030年までにAIで世界をリードすること」

 現在、米国がAI分野における世界のリーダーになっているが、中国は、AI分野において米国に追いつき追い越すと決意している。

 中国指導部は、AIを将来の最優先技術に指定し、2017年7月に「新世代のAI開発計画」を発表した。

 その中で「中国は、2030年までにAIで世界をリードする」という野心的な目標を設定している。

 そして、最先端のAI研究に大規模な予算を投入し、その目標を達成しようとしていて、中国のAI投資額は米国を凌駕し世界第1位だ。

 中国は、すでにAI先進国であり、AIに関する論文数では米国を上回り世界一であり、AIの特許出願数において米国に次ぐ第2位である。数のみではなく質の面でも中国は米国を猛追している。

 中国は、多額のAI予算の投入、アクセスできるビッグデータの存在、最も優秀な人材を集め教育する能力などにより、AI分野で米国に激しく迫ってきて、米国は手強いライバルと対峙することになる。

世界最強の囲碁AI「アルファ碁」が
中国のAI軍事利用を加速させた
 AIの歴史において、グーグルが買収したAI企業「ディープマインド(DeepMind)」が開発した「アルファ碁ゼロ」は画期的であった。

 特に、囲碁発祥の地である中国は、「アルファ碁ゼロ」の登場に衝撃を受け、AIの開発とAIの軍事への応用に向けた努力に拍車がかかることになった。

 なぜならば、「アルファ碁ゼロ」は、戦闘シミュレーション、ドクトリン(戦い方)の開発、軍事教育・訓練への応用などAIの軍事利用に大きな可能性を提供すると評価されたからだ。

 ディープマインドが開発した囲碁のAIには3つのバージョンがある。

 まず、第1のバージョンは「アルファ碁」で、2016年、当時の世界トップ棋士であった韓国のイ・セドル9段に勝利して世界の囲碁界を驚かせた。

 次いで、第2のバージョンは「アルファ碁マスター」で、「アルファ碁」の能力向上バージョンであり、2017年に世界最強と言われていた中国の柯潔(かけつ)9段を圧倒し勝利を収めただけではなく、世界トップ棋士に60戦して全勝の実力を発揮した。

 ちなみに、初期バージョンである「アルファ碁」と「アルファ碁マスター」は、トッププロ棋士の棋譜をビッグデータとして「深層学習(ディープラーニング)」で学びながら実力を高めていった。

 つまり、人間の知識を利用して実力を高めていった。

 一方、「アルファ碁ゼロ」にインプットしたデータは囲碁の基本的なルールのみで、トッププロ棋士の棋譜を全く使用していない。

 「アルファ碁ゼロ」は、自己対局による強化学習だけで強くなり、ディープマインドの論文のタイトルにあるように「人間の知識なしで囲碁を極めた」のだ。

 「アルファ碁ゼロ」の登場で、データが足りない分野でもAIを活用できる可能性が広がった。

 ディープマインドはさらに改良を繰り返し、将棋やチェスにも応用したAI「アルファゼロ」を開発し、将棋、チェス、囲碁のいずれでも世界最強のソフトとなっている。

 昔のAIは人間の助けが必要だった。

 その後、大量のデータがあれば自ら学ぶようになり、今は人の助けもデータも不可欠ではなく、AIが競い合うことで「独学」で進化する技術(敵対的生成ネットワーク[GAN])の登場だ。

 将来的には軍事における戦闘シミュレーションや自動運転のためのシミュレーションなどに使用される可能性が大である。

 アルファ碁が世界のトップ棋士を完全に撃破したことは、AIが一定のルールの下では、複雑な分析や戦略構築において、人間よりも優れていることを示す転換点となった。

 AIと人間の戦いは、将来戦争において指揮官が下す決心に対し、AIが果たす途方もない潜在力を示した。

 人民解放軍にとってアルファ碁の勝利は、人工知能を将来的に活用することを考える大きな動機になったのだ。

AIの軍事利用
●人民解放軍は野心的な「AI軍事革命」を目指す

 目覚ましい勢いでAIが進化しているが、中国の人民解放軍はAIを軍事のあらゆる分野に取り込み、「AI軍事革命」や「戦場のシンギュラリティ」を標榜している。

 シンギュラリティ(技術的特異点)は、人によって定義が違うが、ここでは「AIの発達により軍事のあらゆる分野において抜本的な変化が起こること」と定義する。

 このシンギュラリティに達すると、戦場の無人化が加速し、人間の頭脳ではAIが可能にする戦闘のスピードに追随できなくなる可能性がある。

 人民解放軍の研究者であるエルサ・カニアは自らの論文「戦場のシンギュラリティ」*2で、

@中国は、AIを将来の最優先技術と位置づけ、「2030年までにAIで世界をリードする」という目標達成に向け邁進中である。

A習近平主席の「軍民融合」により、民間のAI技術を軍事利用し、「AIによる軍事革命」を実現しようとしている。

B「AIによる軍事革命」の特徴の一つは、AIと無人機システム(無人のロボットやドローンなど)の合体であり、この革命により戦争の様相は激変する。

C「AIによる軍事革命」にはリスク(倫理的問題など)もあり、人間とAIの関係は今後の大きな課題である、と記述している。

 人民解放軍は今や、米軍も重視する新技術AIによる革命「AI軍事革命」を目指している。

 人民解放軍のリーダーたちは、AIが「軍事作戦・戦術、兵器体系などを刷新させ、戦争の様相を激変させるであろう」と確信している。

*2= Elsa B. Kania, “Battlefield Singularity”, Center for a New American Security

 中国では、AIが戦争を情報化戦(informatized warfare)から知能化戦(intelligentized warfare)へシフトさせると確信している。

 中央軍事委員会の連合参謀部は軍に対して、指揮官の指揮統制能力を向上させるためにAIを使うように指導している。

 AIはまた、ウォーゲーム、シミュレーション、訓練・演習を向上させるだろう。これは、実戦経験のない人民解放軍にとって非常に重要な意味を持つ。

 AIは、軍事の専門分野や機能を人に代わり担当することが可能になるであろう。

 AIが仮想現実の技術と合体して、人民解放軍の訓練をより現実的・実戦的なものにすることが期待されている。

 いずれにせよ、AIは、軍事における指揮官の状況判断、幕僚活動、部隊の運用、訓練などを大きく変え、今後何十年後には戦いの様相を大きく変貌させていくであろう。

 AIの軍事利用は既に始まっていて、各種対空ミサイルシステムの自動目標追随と目標の決定、重要な兵器の欠陥の予測、サイバー戦への適用などAIの適用分野は軍事の大部分にわたる。

●情報化から知能化へ

 中国の情報革命は、3段階の発展を経て実現する。つまり、デジタル化(数字化)、ネットワーク化(网络化)、知能化である。

 中国は、情報化のためにITを活用し、戦いにおいて情報を活用する能力を向上してきた。

 また、ITをプラットフォーム(戦闘機、海軍艦艇など)やシステムに導入し、結果としてC4ISR(指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察)の統合を図ってきた。

 情報化の最終段階は、人民解放軍の情報を大規模かつ機械(コンピューターなどのマシーン)のスピードで処理し活用する能力を向上することだ。

 また、中国の戦略家やAI専門家は、知能化に焦点を当てている。

 彼らは、AIのインパクトのある応用を考える傾向にあり、AIを使った知能化による指揮・統制または意思決定の支援、知能化無人兵器、人間のスタミナ・スキル・知能の増強を指向している。

 人民解放軍は、シミュレーションやウォーゲームを使い、軍事構想や理論を構築する傾向にある。

 つまり、「技術が戦術を決定する」という伝統的な考えに基づき、AIを使った実験を実施し、新たな軍事理論や構想を構築しようと積極的な試みをしている。

 人民解放軍は、AIを活用し、戦争遂行における戦術、作戦および戦略レベルにおける指揮・統制を強化し、高速での決心を可能にしようとしている。

 戦いの知能化により戦いが高速になれば、人間は知能化戦の作戦テンポに追随できないであろう。

 AIの導入は、人間の認識力を強化またはそれに取って代わり、決心のための思考過程OODAループ(Observe観測し、Orient方向づけをし、Decide決心し、Act行動する)のスピードを劇的に加速させるだろう。

●「軍民融合」により民間AI 技術を軍事利用

 軍民融合は、「民の技術を軍に適用すること、反対に軍の技術を民に適用すること」だが、習近平自らが「中央軍民融合発展委員会」を主導する力の入れようだ。

 米国のITの巨人であるグーグル(Google)、アップル(Apple)、フエイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の頭文字を取ってGAFAと表現されているが、GAFA はAIの巨人でもある。

 GAFAに対抗する中国企業を表現する言葉としてBATがある。

 BATとは、中国のIT企業であるバイドゥ(Baidu)、アリババ( Alibaba)、テンセント(Tencent)の頭文字を取ったもので、BATもAIの大企業だ。

 中国の強みは14億人の人口であり、そこから得られるビッグデータはBATにとってもAIの開発にとって大きなメリットになっている。

 BATは、ビッグデータにアクセスするメリットを享受し、AIの多くの分野(機械学習、言語処理、視覚認識、音声認識など)で長足の進歩を遂げている。

 中国では民営企業がAI開発の主人公であり、習近平主席は、軍民融合という国家的戦略により、民間のAI技術を軍事に転用しようとしている。

 例えば、自動運転車の技術は人民解放軍の知能化無人軍事システム(AIにサポートされたロボット、無人航空機、無人艦艇・潜水艦など)に応用可能である。

 コンピューターによる画像認識と機械学習の技術を応用すると、目標の正確な認識が不可欠である各種兵器の能力を飛躍的に向上させることになる。

 軍民融合における優先技術は、無人システムの智能化のためのAI技術のみならず、量子科学技術(量子コンピューター、量子通信、量子レーダー、量子暗号など)、バイオ技術などの最先端技術も含まれている。

 また、研究・開発における軍民の連携のために、軍関係の研究機関、国営の研究機関、BATに代表される民間研究機関が連携する「連合研究所(Joint Research Institute)」が設置されている。

●AIの軍事への適用分野

 中国におけるAIの軍事適用の分野は戦闘・戦術・作戦・戦略の「あらゆる分野」である。

 考えられるAI適用分野すべてであるが、既に記述してきた適用分野を含めてまとめると以下のようになる。

・無人機システムなどの兵器の智能化(自律化)。

 例えば、AI搭載のドローンの分野では中国は最先端の兵器を持っている。

 世界的なドローン企業であると同時に有力なAI企業でもあるDJIの智能化ドローン「ファントム」はコストパフォーマンスに優れたAIドローンだ。

 また、AI搭載の水上艦艇や無人潜水艦、AIロボットの開発を推進している。

 この無人機システムのAI化により、将来的には自ら判断して任務を完遂する自律型のAI無人機システムが多用されるであろう。

・サイバー・セキュリティに対するAIの適用は既に一部で実施されているが、今後ますますサイバー戦における防御、攻撃、情報収集の全ての分野でAIが活用されるであろう。

・AIによるデータ融合、情報処理、情報分析も有望な分野だ。

 身近な例で言えば、AIを活用した小型で性能の高い自動翻訳機が完成するであろう。もはや語学を真剣に勉強しなくても困らない時代が来る可能性がある。

・目標確認、状況認識(SA)の分野で、例えば顔認証技術に関しては中国は世界一の可能性がある。

・ウォーゲーム、戦闘シミュレーション、訓練の分野はAIを早期に適用できる分野だ。

・指揮・意思決定、戦場管理の強化の分野におけるAIについては記述の通りだ。

・兵站および輸送分野。例えば、AIによる補給、整備、輸送などの迅速かつ最適な兵站計画の作成などに適用できる。

・戦場における医療活動、体の健康と心の健康の両方の分野でAIが適用されるであろう。意外な分野として、心の健康のためのカウンセラーをAIが代用する案は有望だ。

中国による最先端技術の窃取への対処が喫緊の課題
 中国は、なりふり構わずに、「科学技術強国」「2030を目標にしたAI強国」「中国製造2025」の実現を目指している。

 目標達成のために、米国をはじめとする諸外国からの先端技術の窃取を国家ぐるみで行っている。

 その手段は、サイバースパイ活動(ハッキング)、人によるスパイ活動、最先端技術を有する外国企業の買収、中国に進出する外国企業に先端技術情報の提供を強制するなどにより入手している。

 これらの不法な情報窃取に対して危機感を露わにする米国は、様々な手段を駆使してこれに対処しようとしている。

 例えば、米司法省は、中国へ先端技術情報を持ち出す産業スパイの検挙を強化する「チャイナ・イニシアティブ」を実施している。

 また、中国企業による米国ハイテク企業の買収禁止の措置などを行っている。米中貿易戦争に伴うハイテク製品の輸出禁止なども行っている。

 また、ウミガメと呼ばれる中国人への対処も重要だ。

 ウミガメとは、米国に留学し、卒業後にGAFAなどの有名な民間企業で働き、最先端技術を身に着けたのちに、中国本土に帰りその技術を活用する人のことを言う。

 これを防ぐための措置(例えば中国人留学生の制限など)を検討している。

結言
 中国は、「科技強国になる」「2030年までに世界のAIイノベーション・センターになる」などの明確な目標を設定し、国家ぐるみでその実現に向け邁進している。

 また、中国は、目的のためには手段を選ばない、汚い手段を使うことを厭わないやり方を採用している。

 その結果として、米中のAIなどのハイテク覇権争いにおいて、圧倒的に優位な立場にあった米国を中国が激しく追い上げる状況になっている。

 この状況に危機感を抱いた米国は様々な方策を駆使して、ハイテク覇権争いで中国に勝利しようとしている。

 それでは日本の状況はどうであろうか。

 日本のAI開発に関する国全体としての明確な戦略や目標はなく、国家ぐるみの態勢にもなっていない。

 例えば、IT戦略の中で、安全保障(軍事)の視点が欠如している。その典型例が「AI戦略実行会議」であり、防衛省からの参加者はいない。

 AIを国家レベルで考える場合、安全保障は不可欠な観点であることを考えれば問題があると言わざるを得ない。

 また、我が国では、アカデミア(大学など)における軍事分野の研究に対する拒否感が強すぎ、AIの軍事適用などに対するアカデミアの拒否感にも強いものがある。

 その一方で、中国の各種工作(サイバースパイ活動、会社・大学からの知的財産の窃取)に極めて甘く、実効的に対処できてはいない。

 日本は、中国による各種工作にあまりにも無防備である。

 我が国がAIなどのハイテク技術において米中に完全に置いていかれないためにはやるべきこと(AIなどのハイテク技術に関する国家ぐるみの態勢の構築、憲法の改正、スパイ防止法の制定、民間企業・アカデミア・マスメディアにおける危機意識の向上など)をスピード感を持って遂行すべきだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54839


 

 

グーグル、ついに自動運転車を使った配車サービス
米国初の商業サービス、年内開始の目標を達成
2018.12.7(金) 小久保 重信
グーグル系ウェイモと英ジャガー、自動運転車開発で提携
ポルトガルのリスボンで開かれた会合で自動運転車についてスピーチするウェイモのジョン・クラフチック最高経営責任者(CEO)(2017年11月7日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / PATRICIA DE MELO MOREIRA〔AFPBB News〕

 米グーグルのグループ会社「ウェイモ」が、米国で初めて自動運転車を使った商業サービスを開始したと話題になっている。

 同社の、ジョン・クラフチック最高経営責任者(CEO)は、かねてから今年の年末までに自動運転車を使った商業サービスを始めると述べていたが、それが現実のものになったというわけだ。

12月5日にアリゾナで開始
 サービスの名称は「Waymo One」。利用者がモバイルアプリを使って自動運転車を呼び、目的地までの移動に利用するというものだ。同社はこれを12月5日、アリゾナ州フェニックスの周辺地域で始めた。

 当初サービスを利用できるのは、すでに公開試験プログラムに参加していた数百人程度の住民。また、対象となるのは、チャンドラー、メサ、テンピ、ギルバートといった一部の地域に限られる。そして当面は、安全を確保するため、運転席にドライバーが座るという。

 営業体制は、24時間、年中無休。料金は、時間と距離で決まるが、利用者にはアプリで予約する際に、おおよその金額が表示される。

 ウェイモは今後、サービス対象地域を拡大したい考えで、やがては、ドライバーなしの自動走行を行う計画である。

 自動運転車を使った配車サービスについては、米ウーバー・テクノロジーズや米ゼネラルモーターズ(GM)傘下のGMクルーズなどが、実用化を目指して試験走行を行っている。

 ただ、米国では今年(2018年)3月、ウーバーの車両が試験走行中にアリゾナ州テンピで歩行者をはねて死亡させる事故が起きた。それ以来、各社の公道試験走行は、厳しい監視の対象になっていると伝えられている。

ほぼ10年の歴史、グーグルの自動運転開発
 ウェイモは、グーグルが2009年から取り組んでいた自動運転車開発プロジェクトの技術を商用化する目的で、親会社のアルファベットが2016年12月に設立した会社だ。

 そして、同社は昨年4月、フェニックスで「Early Rider Program」と呼ぶ自動運転車の公開試験プログラムを開始。これにより、交通ニーズや公共交通機関としての自動運転車の使い勝手などを調査してきた。

 また同社は、欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携し、昨年1月、共同開発による自動運転車を披露した。

 英フィナンシャル・タイムズによると、ウェイモは現在、自動運転仕様を施した、クライスラーのハイブリッドミニバン「Pacifica(パシフィカ)」を600台保有している。

 先ごろは、フィアット・クライスラーやジャガー・ランドローバーと新たな契約を結んだ。これにより近い将来、配車サービスに使う車両を8万2000台に増やす計画だと同紙は伝えている。このほか、ウェイモは米国の20以上の都市で、走行試験を行っている。

投資家は今後の事業展開に期待
 こうした、ウェイモ事業の動向を投資家は歓迎しているという。ほぼ10年にわたり、自動運転の開発を続けてきたグーグルは、この業界のリーダーであり、商業的に成功する可能性があると見られている。あるアナリストは、ウェイモ事業が今後数年にわたり、グーグルにもたらす金銭的価値は、数百億ドルに上ると見ている。

(参考・関連記事)「グーグルと配車アプリのリフトが自動運転車で提携」

米アルファベットの自動運転車。フランス・パリで開催された展示会で(2016年6月30日撮影)。(c)AFP/ERIC PIERMONT〔AFPBB News〕

 ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズなどの米メディアが報じるところによると、米グーグルの親会社アルファベットが設立したウェイモと、モバイルアプリを使った配車サービスを手がける米リフトは、このほど、自動運転車の技術開発で提携した。

ウェイモの自動運転車を配車サービスに
 この提携の具体的な内容は明らかになっていないが、今後ウェイモはリフトの配車サービスの仕組み利用して、自動運転車の試験走行が行えるようになると、事情に詳しい関係者は話している。また両社は将来、ウェイモの自動運転車をリフトの配車サービスに導入することについても協議したという。

 自動運転車の開発は、配車サービス最大手の米ウーバー・テクノロジーズも行っており、ウェイモと開発競争を繰り広げているが、折しもウェイモは、機密情報を盗んだ元従業員がウーバーに移籍し、自社技術がウーバーの技術開発に使われたとし、ウーバーを訴えている。今回のウェイモと、同業リフトとの提携は、ウーバーにとって脅威になりそうだとアナリストは指摘している。

 というのもウェイモとリフトは、自動運転車の開発において強力なタッグになる可能性があると考えられているからだ。

進む企業連携
 ウェイモは、グーグルが2009年より取り組んでいる自動運転車開発プロジェクトの技術を商用化する目的でアルファベットが昨年(2016年)12月に設立した会社。すでに300万マイル(約483万キロメートル)に及ぶ公道走行試験の実績を持っている。

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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54891

 


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