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世界をかける「MANGA」 若者の支持集め大衆文化の一翼に
http://www.asyura2.com/2us0310/nihon9/msg/121.html
投稿者 日経ネット記事 日時 2003 年 10 月 05 日 18:14:20:Tna70rZvsKsiM

(回答先: 漫画原稿の売り払い流出で、弘兼憲史氏や高橋留美子氏が提訴 投稿者 【時事通信記事】 日時 2003 年 10 月 05 日 17:16:34)


http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/sp.html
世界をかける「MANGA」 若者の支持集め大衆文化の一翼に


《写真》海外で発行している日本のマンガ雑誌。左からドイツで販売されている「DAISUKI」、米国で発売されている「SHONEN JUMP」、「RAIJIN COMICS」
http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/20031003s26a3000_03.jpg

 日本のマンガが海外で人気だ。多くの地域で、ティーンエージャーを中心に若者たちが日本のマンガを楽しむようになり、新たなポップカルチャーとして定着しつつある。米国では昨年日本のマンガ誌が相次いで上陸。これまでコミック文化のなかったドイツもマンガブームに沸いている。だがアニメ―ション、ゲームのように、日本の輸出コンテンツとして今後も成長していくためには調査研究や人材育成などに一層の力を入れる必要がありそうだ。

●<北米>日本発マンガ誌発刊1年 現地の流通課題
 
 “To hell with Kakarot. I'm a super saiyan now too!”(「カカロットがどうしたというんだ。今やこのオレもスーパーサイヤ人だ!」)迫力たっぷりに英語ですごんでみせるのは、人気マンガ「ドラゴンボール」に登場する敵役。集英社が昨年11月、米国で創刊した月刊コミック誌「SHONEN JUMP」の1コマだ。JUMPにはドラゴンボールのほか、「ONE PIECE」「遊☆戯☆王」など「少年ジャンプ」の人気作品が掲載されている。
 創刊時の発行部数は約30万部。現在は約38万部程度と、順調に部数を伸ばしてきている。しかしその手応えを聞くと「流通や決済の仕組みが日本と全く違っており、まだ詳細な分析ができるほどのデータは集まっていない」(集英社)と慎重だ。
 やはり昨年の10月、米国で日本のマンガを翻訳したコミック誌「RAIJIN COMICS」を創刊したコアミックス(東京都武蔵野市)にとっても、悩みの種は流通。RAIJINは一般的な日本のマンガ誌と同じように週刊で発行したが、コアミックス取締役で、RAIJINの編集長を務める根岸忠さんが現地の販売店を回ったところ、翌週発売の号が店頭に並んでいたこともあったという。店のスタッフにクレームをつけると「そんなことはない」の一点張り。業を煮やして「私はこの雑誌の編集者なんだ」と言うと「じゃあ、早く出たんだな。早く出るぶんにはハッピーじゃないか」という答え。意識の違いを実感したという。
 このような経緯もあり、RAIJINは9月から月刊誌になった。流通の仕組みをたて直し、長期的にシェアを広げていく構えだ。また、縦横にコマを区切ってダイナミックに読ませる日本のマンガをまだ読み慣れていない米国の読者からは「週刊だとペースが速すぎてついていけない」という声もあがっていることも考慮した。現在RAIJINは5万部ほどを発行し、実売部数はその6−7割になっているもようだ。根岸さんによれば、マンガを売っているのはコミック専門店が多いが、徐々に一般書店もマンガの棚を増やしつつあるという。
 根岸さんは、RAIJIN創刊の経緯についてこう話す。「90年代に入り、『ドラゴンボール』や『ポケットモンスター』など、日本のアニメが米国でヒットした。それらを見て大きな影響を受けた子供たちが現在ティーンエージャーになっている。その世代をターゲットに、アニメの原点であるマンガを紹介したら受けるのではないか、と考えた」。そのためRAIJINには、コアミックスが国内で発売している「コミックバンチ」に連載中の「蒼天の拳」や、「少年ジャンプ」の「スラムダンク」「シティーハンター」、「少年ガンガン」(スクウェアエニックス)の「守って守護月天!」など、JUMPに比べるとやや高い年齢層を意識した作品が並んでいる。

《写真》夏目房之介さん http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/image/manga/natume1.jpg

 米国は巨大な市場だが、そこにはハリウッドを頂点としたコンテンツ供給の体制が確立しており、日本のマンガがどこまで入りこめるかは未知数だ。マンガの研究や評論で知られ、海外のマンガ事情の調査も手がけているマンガ・コラムニストの夏目房之介さんは「契約社会ともいわれる米国でビジネスを展開するのは相当にタフな仕事。
 海外進出の戦略としては、まず欧州の市場で実績を固めて、それから米国に挑むほうが現実的ではないか」と話す。 根岸さんも、挑む相手の大きさは百も承知だ。しかしあえて参入したのは「各雑誌から面白い作品を集めて『ドリームチーム』を作り、ハリウッドの国に乗りこむ」という夢があったから。その夢にマンガ家たちも賛同してくれたという。
 コアミックスは、94年に週刊少年ジャンプ編集長としてマンガ誌最高の発行部数653万部を達成した堀江信彦さんや、月刊少年ジャンプ編集長を務めた根岸さんらが中心となって2000年に設立した「マンガベンチャー」。そのベンチャースピリッツが、米国のフロンティアスピリッツ(開拓者精神)の共感を呼ぶことができるか、注目だ。


●<欧州>ドイツで未曾有のマンガブーム 「コミック大国」フランスでも人気

 「ヨーロッパ DE 日本のマンガ 大暴れだそうです!!」。これは今年5月、大阪国際交流センターで開かれた欧州と日本の文化交流を目的にしたシンポジウムのテーマだ。欧州各国のコミック文化の現状と、日本のマンガがどのように受け入れられているかについて報告がなされた。
 ドイツから参加したパネリスト、イェンス・バルツアーさんは、「もともとドイツには国産コミックと呼べるものがほとんどなく、コミック市場はディズニーの作品や、フランス・ベルギー作品の翻訳によって細々と成立していた。それが90年代半ば以降、日本のマンガ『ドラゴンボール』や『美少女戦士セーラームーン』がアニメとともに紹介され大ヒットとなったのをきっかけにマンガ中心のコミック市場が形成された。今やマンガは低迷するドイツの出版業界にあって最も利益をあげることのできる分野に成長している」とリポートした。
 またフランスのパネリスト、ジュリアン・バスティードさんは「2002年にフランスで出版されたコミックの17%以上が日本の作品。海外作品の中では60%を占める。売り上げベースでは260万ユーロ(約3億4500万円)で、コミック市場の11-12%に達する」という数字を明らかにした。フランスが「バンド・デシネ」と呼ばれる、美しい絵が特徴的な独特のコミック文化を持ち、欧州随一のコミック大国ともいえることを考えると、その数字が意味するものは大きい。


《写真》ジャクリーヌ・ベルントさん http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/image/manga/berndt1.jpg

 このシンポジウムでコーディネーターを務めたのは、ドイツ出身で、横浜国立大学教育人間科学部助教授のジャクリーヌ・ベルントさん。美学や、比較文化論の視点でマンガを研究している。 ベルントさんは「ドイツやフランスの若者に日本のマンガが受ける要因の一つには、それが親の世代の文化とは一線を画すものだから、ということもあるのでは」と分析する。前の世代との差異化にこだわるのは若者の一般的な行動様式だ。特に日本のマンガは、一回完結であっても全体として長編ストーリーになっている場合が多く、最初から読んでいないと途中からは入りにくいという、ある種の閉鎖性を持っている。それが若者たちを刺激しているようだ。
 またドイツでは、ハンブルグに本社を置くカールセンが白泉社からライセンスを受け、今年1月から少女マンガ誌「DAISUKI」を発行している。これは白泉社の「花とゆめ」「LaLa」から作品を選んでまとめたもの。カールセンは毎月20点ほどのマンガ単行本のほか、集英社からライセンスを受けた少年マンガ誌「BANZAI!」も手がける、ドイツのマンガ大手だ。少女マンガというジャンルは日本特有のものだが、14-15歳前後の少女たちから支持を得ているという。


●<アジア>韓国、「青年誌」など世代別充実 タイでは経済危機乗り越え浸透

 「その動きのダイナミックさという点では、世界のマンガ市場の中でもアジア市場が一番でしょう」と語るのは、マンガ評論家であり、複数の大学で教べんをとっている村上知彦さん。村上さんは、2002年に国際交流基金が開催した「アジアINコミック2002―アジア・コミック・カルチャー・フォーラム」の準備のため、その前年に韓国、タイ、マレーシアを回り、各国のマンガ事情を調査してきた。

《写真》村上知彦さん http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/image/manga/murakami1.jpg
《写真》韓国のマンガ誌。少年誌、青年誌、少女誌がそろっている
http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/image/manga/korea.jpg

 韓国では、ほぼ日本と同じような形のマンガ文化が形成されている。少年誌、少女誌、青年誌とマンガ雑誌のバリエーションも豊富で、体裁も日本とあまり変わらない。それぞれの雑誌に3本程度日本の作品も収録されていることが多いが、韓国の作家の手による作品も、その作風は日本のマンガに近い。「マーケットの規模は日本の10分の1程度ではないか。ただ、日本が5000億円を超える巨大市場であることを考えれば、それは決して小さいものではない」と村上さん。90年代前半をピークに、少し下降線をたどっているというが、これも日本におけるマンガ市場規模の推移とほぼ重なっている。


《写真》音楽や映画などの話題を折りこんだ総合誌的なタイのマンガ誌(下2点)。ほかにタイではマンガに特化した雑誌(上左)、アニメ・マンガの情報誌(上右)などもある
http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/image/manga/thailand.jpg

 タイでは、音楽やゲーム、テレビドラマといったポップカルチャーのひとつ、という文脈でマンガをとらえている傾向が強い。村上さんが現地で購入してきたマンガ雑誌は、表紙に若者の写真を使い、映画や音楽、ゲームに関する記事があり、マンガも多数掲載している、というような構成だ。「マンガ同様、日本のテレビドラマや音楽も人気があります」(村上さん)。また、大学の近くなど、若者が集まる場所にはマンガの単行本やアニメーションのキャラクターグッズなどを売る、ややマニア向けの店も見かけるようになっているという。
 さらに、タイの作家たちも繊細なタッチのものからいわゆる「ヘタウマ」路線のようなものまで、バラエティーに富んだ質の高いコミックを多数生み出しており、独自のコミック文化を形成しつつある。 マレーシアでも、中国系住民が早くからマンガを受け入れてきたのと、もともと政治風刺を中心としたコミック文化があったことでマンガの人気は徐々に広がりつつあったが、97年のアジア経済危機でブレーキをかけられてしまった。その打撃は大きく、立ち直りには時間がかかっている。タイで経済危機にみまわれたが、村上さんによればタイの場合すでにある程度マンガの供給体制が確立していたため、現在は盛り返しているという。
 アジアでも人気がある作品は米国や欧州と同じように「ドラゴンボール」などだが、なぜかアジアでは「ドラえもん」がそれらに匹敵する人気を獲得しているという。


●日本マンガは「すきま産業」――夏目房之介氏

 なぜ日本のマンガは世界で受け入れられてきたのか。ベルントさんや村上さんも理事を務める日本マンガ学会で、事務局を担当している吉村和真さん(京都精華大学 表現研究機構マンガ文化研究所 研究員)は「日本のマンガが持つ、ジャンルの多様性とそれに伴う読者層の厚み」が大きいと分析する。また、夏目さんはそれが日本マンガを世界の「すき間産業」として成立させることにつながったのだという。「日本のマンガ業界では、小・中学生のころは少年誌を読み、高校生以上になると青年誌を読む、というように、各年齢層ごとにマンガが提供され、ライフサイクルに対応したマンガの供給体制ができあがっている。
 だから、ある国のコミックの対象年齢層に『すき間』があれば、それがどんな層であれ日本のマンガはそのすき間を埋める準備ができている」(夏目さん)。子供向けのコミックは多くの国で普及しており、また国によってはフランスのバンド・デシネのようにアートとして成人が楽しめるコミックもある。しかし、その中間にある若者向けのコミックはほとんどの国に存在しない。それが日本マンガがヒットした最大の理由のようだ。


●継続的な成長には多くの課題も

 今後も、日本のマンガは世界で広がり続けていくのだろうか。ベルントさんは「ドイツのマンガブームは、ビジネス主導で進んでいるきらいもある。現地の出版社も、そして日本の出版社も、もっと積極的に『読者を育てていく』という姿勢がないと、一過性のものになってしまうかもしれない」と懸念を示す。しかし日本の大手出版社は「各国で流通の仕組みも違えば、受ける作品も、文化も違う。『SHONEN JUMP』の北米以外での展開は慎重に考えたい」(集英社)、「ドイツ以外の地域での少女マンガ誌発売については今のところ未定」(白泉社)と、今のところ積極性よりも慎重さが前面に出ている。

日本マンガ学会のホームページ
http://www.kyoto-seika.ac.jp/hyogen/manga-gakkai.html

 世界に供給できる良質な作品を継続的に生みだす土壌を作るためには、マンガそのものの研究や、質の高い批評も重要になるだろうが、その不足を指摘する声も強い。「まだマンガがどのような構造、手法で成り立っていて、それがどうして面白さを生むのか、といった研究をしている人は少ない。その上で、各国のマーケットや商慣行がどうなっているのか、どうしたら参入できるのか、ということも徹底的にリサーチすべきだ」(夏目さん)。「作家にも、読者にも影響を与えるような、強烈な主体性のある面白い批評がない」(ベルントさん)。
 こうした状況に対応し、前出のマンガ学会では現在、個々人の研究を支えるデータや、マンガ資料の収集・整理に力を入れているという。 さらには人材育成の問題もある。夏目さんは「ほとんどのマンガ家が低収入にあえいでいる状況では、優秀な人材の発掘など期待できない。もっとマンガ家に大きなリターンをもたらす仕組みが必要だ」と強調する。村上さんも「韓国では、すでに50以上の大学でマンガを教えている。それはデジタルネットワーク社会の重要なコンテンツの源として、マンガを戦略的にとらえているからだ。だが日本の大学ではまだ本格的に取り組むところは数少ない。各国で『本場の日本に行ってマンガを学びたい』という学生が増えているのに、その受け皿がないのが実情だ」と教育体制の不備を指摘する。
 こうした課題をクリアしていかなければ、各国で充実したマンガ文化が育つ中で、逆に日本が遅れをとることもあり得ない話ではない。すでに、日本国内でもマンガの勢いはかつてほどではなくなってきた。電通総研の「情報メディア白書2003」によれば、国内のマンガ市場規模は94年の5864億円(単行本と雑誌の合計販売金額)をピークに下降線をたどっている。
もっとも、夏目さんは、そうなったらなったで「日本のマンガ」ということにこだわらず、ひろく「マンガ」のために作家や研究者、ビジネスマンなどがボーダレスに連携し、よりよい作品を生み出していけばいい、とも話す。マンガというメディアが世界に広がる中で、マンガに恵まれた国・ニッポンが何ができるか、問われようとしている。

(ニュース編成部 市毛勇治、岩船靖、古屋絵美、浅沼友子)
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