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※2024年11月28日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2024年11月28日 日刊ゲンダイ2面
目先の“つじつま合わせ”ばかり(C)日刊ゲンダイ
「103万円の壁」引き上げを早々と所信表明する石破首相。何十年も放置してきたのだから、見直しは当然だが、理念・理屈は後回しで、まずは数を補う政局優先。
かくて権力亡者たちが政治を歪める典型例になる懸念。
◇ ◇ ◇
「税は国家なり」という言葉がある。近代国家は租税国家としてその機能を維持しているからだ。
28日から始まる臨時国会で、石破首相が行う所信表明演説で「年収103万円の壁」の引き上げを表明するという。総選挙で躍進した国民民主党が掲げた公約を早々と受け入れるわけだ。
現行制度では、年収が給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)の合計103万円を超えると所得税負担が生じる。そのため、パート主婦や学生アルバイトが収入が103万円を超えないよう調整する「働き控え」の原因になってきたとされる。103万円の「非課税ライン」は1995年から据え置かれているが、当時と比較して最低賃金の全国平均が1.73倍になっているのだから、非課税ラインも1.73倍の178万円に引き上げるべきだというのが国民民主の主張だ。
基礎控除は本来、憲法が定める生存権を保障するためのものであり、物価や経済状況に応じて引き上げるのが道理だ。それを何十年も放置してきたのだから見直しは当然だが、問題は、そこに理念などカケラもないこと。見えてくるのは政局的な数合わせの論理だけなのだ。
先の総選挙で自公両党は惨敗し、この臨時国会に石破政権は少数与党として臨むことになった。与党だけでは法案ひとつ通せず、野党の協力が不可欠だ。年明けからは長丁場の通常国会も始まり、来年度予算案の審議がある。全野党が予算案に反対すれば、たちまち立ち往生だ。
官邸での会談は異例の厚遇
徳俵に足がかかった石破の目には、他の野党と距離を置く「ゆ党」の国民民主の衆院28議席がこの上なく魅力的に映る。自公と国民民主でがっつり組めば過半数を押さえられるのだ。だから、ろくに議論もないまま、国民民主が訴える「103万円の壁」引き上げに食いついた。連携への誘い水であり、媚でもある。
これは国民民主にとっても渡りに船だ。総選挙で「手取りを増やす」と訴えて議席は4倍増。浮かれていたところへ玉木代表の不倫問題が発覚し、もともと希薄だった信頼を少しでも取り戻すには、政策実現のアピールしかない。謝罪会見で玉木は「妻にもそう言われた」と話していた。
27日、都内で講演した際も、臨時国会で審議する2024年度補正予算案への賛否について、玉木は「かなり前向きにわれわれの意見を取り入れてもらった」と胸を張った。103万円の壁の引き上げを含む税制改正に向けた与党との協議についても強気で、「納得できなければ、予算にも法案にも協力することは難しくなる」とクギを刺すことを忘れなかった。
「石破首相としては、103万円の壁の引き上げを表明して国民民主党のパフォーマンスに協力する見返りに、政権運営を支えてもらいたい。そのためのバラマキですが、税収減を補う財源についてはどうするつもりなのか。税収が減れば公共サービスが行き届かなくなる可能性もあり、地方自治体の首長からも懸念の声が上がっています。石破首相と国民民主党は利害が一致しているのでしょうが、細部を詰める前に、焦りから拙速な判断をすれば、混乱を招くだけです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
石破はきのう官邸で玉木と会談。「エネルギー基本計画(エネ基)」に関する提言を受け取った。もちろん、「103万円の壁」の話もあったという。首相が野党党首と会談する場合、通常は国会内で行う。官邸での面会は異例の厚遇だ。
「公平・中立・簡素」の租税原則を歪める結託
パフォーマンスで目くらまし(C)日刊ゲンダイ
国民民主が求める178万円の“満額”かはともかく、控除額を引き上げれば、特定扶養控除や配偶者特別控除などの基準見直しも必要になってくるだろう。そこをいじらなければ、労働時間を増やしても結果的に手取りが減ってしまうケースが出てくる。103万円の壁の引き上げに合わせて、つじつま合わせの弥縫策が講じられることになるはずだ。
「103万円の壁を撤廃したとしても、106万円、130万円、150万円……と、税制と社会保障の壁はその先にいくつもある。年収の壁を見直すならば、国民民主党の協力を期待した目先のパフォーマンスで取り繕うのではなく、総合的、全体的な制度の見直しを行うべきでしょう。国民の手取りを増やすというのなら、防衛費倍増をやめて、その範囲で年収の壁引き上げに充当するとか、消費税を減税して法人税を上げるという選択肢もあり得るはずです。103万円だけを議論しても、また別の問題に突き当たるだけで、何も解決しません」(五十嵐仁氏=前出)
臨時国会の召集を前に、27日は立憲民主党、日本維新の会、共産党、衆院会派「有志の会」が政治改革の実務者協議を行い、政策活動費の廃止と企業・団体献金の禁止を含む野党案を作成して臨時国会に提出する方向で合意。国民民主とれいわ新選組は欠席した。そもそも国民民主は企業・団体献金の禁止に消極的なのだ。
官邸に呼ばれれば喜んで行くのに、政治改革の野党協議には呼びかけられても参加しない。玉木は「野党で集まってとにかく法案出して、結局通らないからパフォーマンス」とまでコキ下ろしていたから、窮地の石破政権もちゃっかり野党分断に成功している。キャスチングボートを握って全能感に酔いしれていたつもりが、実は踊らされていたという情けない話にならなければいいが。
対処療法では乗り切れない
企業・団体献金の最大の問題は、カネで政策が歪められかねないことだ。実際、与党への献金が多い業界ほど政策減税の恩恵を受けているというデータもある。大企業が空前の利益を上げているのに法人税が上がらない背景にも、経団連企業の献金やパーティー券の大量購入という現実がある。自分たちの大きな収入源だから、自民は企業・団体献金を絶対に手放したくない。企業・団体献金の禁止に後ろ向きという点でも、自民と国民民主は一致しているのである。
税制の原則は「公平・中立・簡素」とされるが、103万円の壁の引き上げも、法人税の過度な優遇も、租税の理念に反するものではないのか。
そういう理屈は後回しで、自分たちの利益のために結託して税制を弄ぶのが自民と国民民主の協調であれば、これほど醜悪な話はない。権力亡者たちが政治を歪める典型例になる懸念がある。目先の「103万円」に国民はだまされないことだ。
「国民民主党の要請に応じて『103万円』の部分だけいじれば税制がイビツになるから、全体的に見直して抜本改正をしようと提案するのが与党の見識ではないでしょうか。現行制度は、本当は建て替えが必要なのに対症療法的なツギハギで済ませてきた古い家屋のようなもの。いつ壊れてもおかしくない。税制や社会保障の基準に使われる終身サラリーマンの夫と専業主婦の妻、2人の子供という『モデル世帯』は、もはや少数派です。今の時代に即した制度にするため、与野党でオープンに議論することを国民も望んでいるだろうに、石破首相は目先の補正予算案を通すために『103万円』で国民民主党を懐柔しようとしている。それで臨時国会を乗り切れたとしても、来年の通常国会はそうは行かないでしょう」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
イギリスにおける「マグナ・カルタ」の時代から、アメリカ独立の「代表なくして課税なし」もそうだが、税は国家の根幹だ。租税のあり方は、議会制民主主義の発展とも深く結び付いてきた。それを数合わせや不倫問題の糊塗に使うのは言語道断で、税を政争の具にする不埒なヤカラというほかない。
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