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※紙面抜粋
※2024年5月7日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
戻しても束の間(C)共同通信社
今年の大型連休、最大のニュースはドル円の為替ではなかったか。植田日銀総裁が口を開くたびに、そして、岸田首相が外国に行くたびに、見透かされたように仕掛けられる円安に再び、襲われたのである。それも先月29日午前は一時、1ドル=160円を突破。と思ったら、午後に入って、急伸し、1ドル=154円まで戻った。が、それも束の間、翌日以降、再び、157円、158円と円安が進んだと思ったら、2日早朝、いきなり、153円まで円高が進んだ。
いずれも政府・日銀による円買い介入があったと観測されている。その後、米国の雇用統計の悪化が伝えられ、さらに円高が進み、151円後半まで戻った。連休の薄商いも手伝って、この間、円は8円も乱高下したのである。
例によって、政府は「コメントしない」「行き過ぎた動きがあるときはそれをならす」(鈴木財務相)、「必要な場合は私が機内にいようが海外にいようが24時間適切な対応を取っていく」(神田真人財務官)とけむに巻いたが、市場の観測では29日に6兆円、2日に3兆円規模の円買い・ドル売り介入が行われたとみられている。米国の景気指標の悪化や直前の米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利据え置きの発表のタイミングで介入、一気に円高に戻したことで、「ノーコメント」の神田財務官はほほ笑んでいた。そこからは「してやったり」の空気が伝わってくる。国民も160円には驚いたが、151円まで戻ったことで、ちょっと安堵のムードが漂う。
なにしろ、円安は原材料を輸入する中小企業にとっては死活問題、3カ月遅れで強烈な輸入物価高に襲われる庶民にとっても大打撃だからだ。4月に150円突破、5月は160円突破、こんな調子で円安が進んだら、目も当てられなくなっていく。列島から悲鳴が上がる寸前に、何とか為替介入で食い止めたのである。
適正な為替水準は1ドル=100円
それにしても、つくづく、日本は酷い国になったものだ。1ドル=150円で胸をなでおろすなんてあり得ない話だ。安倍政権が始まる前、つまり、異次元緩和をやる前は1ドル=100円以下だったのである。それがアレヨアレヨで日本は貧しい国になってしまった。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「160円、170円と突き進んで行ったらたまらないから、“まっ、いいか”と思っている国民がいるとしたら大問題です。購買力平価でみると、1ドル=100円くらいが適正なのです。それが150円なんて、それだけ国民が稼いだ円の価値が減っているということです。アベノミクス以降、政府は“円高デフレ”なる言葉を使って、あたかも円高が悪者であるかのように喧伝しましたが、とんでもないことです。食料自給率が低く、エネルギーを輸入に頼る日本の消費者にとって、円高は生活コストが安くなる。実際、円高の時の方が消費が活発でした。円安でいい思いをしているのは輸出大企業だけで、購買力平価に見合った為替水準に戻していかなければいけません」
米国で5ドル以上するビッグマックは日本では450円。だとすると1ドル=90円くらいが適正だ。毎年、英エコノミスト誌が発表するビッグマック指数(2024年1月)でいうと、日本は下位20%の45位で、中国、ルーマニア、ベトナムと同レベルなのである。
金利差5%、円安は絶対止まらない
先のG20財務相・中央銀行総裁会議での神田財務官(左)と植田日銀総裁(C)ロイター]]
そのうえ、この1ドル=151円だって、その場しのぎで、連休明けの7日以降、すぐに地獄の円安に引き戻されるとみられている。
淑徳大大学院客員教授の金子勝氏(財政学)はこう言う。
「もう鉄火場なんですよ。円は投機マネーのターゲットにされているので、どんどん、円安は進みます。日米金利差という構造的問題が横たわっているうえに、市場はこの景気で日銀がおいそれと金利を上げられないのを見越している。急激な円安に対する介入への警戒感も薄れています。政府・日銀に“弾”がないことが見透かされているのです」
日米金利差について、元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長はロイターのインタビューでこんなことを言っていた。@金利差が3%ポイントならば為替安定A2%ポイント以下なら円高B4%ポイント以上で円安。当たり前のことだが、マネーは金利が高い方に流れていく。金利差だけで為替が決まるわけではないが、差が2%以下になることが円高に振れる条件だということだ。このハードルはとてつもなく高い。
現在、日銀の政策金利は0〜0.1%、米国は5.25〜5.5%。これを2%以下に縮めるには日銀が3%以上も金利を上げなければならない。米国が金利を下げてくれればいいが、住宅用不動産価格も堅調で、景気の過熱感がある。構造的円安要素はそのままのところにもってきて、覆面介入の原資は底をついてしまった。
ハイパーインフレのトルコの二の舞い
「政府の外貨準備高は3月末で1兆2906億ドル(約200兆円)。このうち9948億ドル(約150兆円)は米国債などの証券で、売れば米国債の下落、金利上昇を招き、米国の金融機関に少なからず影響が出るので使いにくい。すぐに介入に回せるドル預金は1550億ドル(約23兆円)程度で、すでに8兆〜9兆円くらいを使ったとすると、先細り感は否めません。50兆〜60兆円を保有する短期債を売る手はあるが、時間稼ぎにしかならない。市場は“再び介入があるとしてもあと数回が限度だろう”とみています。そうなると、投機マネーは遠慮しない。円安は止まらず、日本はいずれ、トルコと同じ運命をたどるかもしれません」(金子勝氏=前出)
安倍元首相のおともだち、エルドアン大統領のトルコは日本と同じように金融緩和政策をとってきたが、今年3月の消費者物価指数の上昇率がナント、68%にも及んだ。黒田バズーカの際にも、ハイパーインフレの懸念が叫ばれたが、いよいよ、明日は我が身ということだ。
円安放置で裏金ガッポリの自民党
もうひとつ、指摘しなければならないのは、岸田政権に円安・物価高を止める気がさらさらないことだ。「賃上げと物価上昇の好循環」などといって、インフレをあおっているのが岸田なのだ。
「本来であれば、この円安を止めるには、少しずつでもいいから金利を上げていくしかありません。しかし、岸田政権にやる気があるかは疑問です。円安を放置すれば、輸出企業は儲かる。そこからたんまり献金をもらっているのが自民党だからです。彼らにしてみれば、円安、インフレは大歓迎。また、インフレになれば、名目賃金は上がるので、所得税の税率や社会保障の負担比率を上げられる。国への実入りはどんどん増える。新NISAをあおった手前、ドル高を是正しにくいという側面もあります。そうした思惑が金融政策是正の遅れにつながり、結果、円安が制御できないレベルになってしまったのです」(斎藤満氏=前出)
政府は「適正な為替水準」という言葉をよく使うが、「適正」とは輸出大企業にとって「適正」だということを肝に銘じた方がいい。そんな輸出大企業からのパーティー券収入を裏金化してきたのが自民党だということも忘れてはいけない。
今度の連休、庶民はこの円安で海外旅行とは無縁になったが、それでも成田からの出入国者は昨年の1.3倍、83万5200人だったとNHKは流していた。円安恩恵企業がいる中で、格差にもがき苦しむ庶民がいる。大マスコミの垂れ流し報道に惑わされ、自民党政権を許してはいけない。
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