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岸田政権によって日本の健康保険制度が破壊される 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/339573
2024/04/30 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
異常なほどの「マイナ保険証」強制、日本の健康保険制度の根幹を破壊する(河野太郎デジタル相)/(C)日刊ゲンダイ
裏金問題で自壊状態の自民党が、国民生活を支える健康保険制度を破壊し始めている。
河野デジタル相は欠陥カードのマイナ保険証の強制に躍起だ。マイナ保険証での受け付けができない医療機関があった場合、「公的相談窓口に通報しろ」という文書を自民党議員に配布した。岸田首相も「政府と同じ立場」だと認めた。しかし、欠陥カードのマイナ保険証の利用率はわずか5%程度。12月に紙の保険証を廃止すれば、日本中が大混乱するだろう。岸田政権は、健康保険の制度を根幹から壊そうとしている。
すでに健康保険制度は少子高齢化の中で風前の灯火である。大企業の会社員らが加入する健康保険組合の2024年度の赤字見通しは、なんと6578億円だ。昨年度の赤字は5621億円。年々、膨らんでいるのは、高齢者医療への拠出金拡大が主な原因である。中小企業の協会けんぽ、市町村の国民健康保険も厳しい状況だ。今後、保険料の引き上げは避けられないだろう。そこにこそ医療DXで在宅を組み込んで健康管理し、医療費を削減すべきなのに無策だ。
この状況で「子ども・子育て支援制度」の財源を、医療保険料の上乗せに求めようとしている。関連法案が既に衆院を通過してしまった。これは、マイナ保険証と並ぶ世紀の悪政だ。本来、医療を支えるための保険を、なぜ子育て対策に流用するのか。理由が全く成り立たない。
子育て対策に財源が必要なら、防衛費を見直すべき。これでは増税の方がマシだ。税金であれば、所得が高い人ほど負担が重くなる「応能負担」をとって不公平感が生じづらい。国民への説明も十分に可能なはずだ。ところが、増税をゴマカしたい岸田が財源を医療保険に頼ったため、逆に不公平感が生まれている。健康保険制度は、組合健保と協会けんぽ、国保に公務員の共済組合、75歳以上の後期高齢者医療制度に分かれており、それぞれ負担のあり方が違うのだ。
そのため、同じ所得でも負担率が全く異なってしまう。例えば、後期高齢者医療制度に加入する人で年収300万円以上の所得があった場合、1人当たりの負担額は月750円。一方、会社員らが加入する被用者保険だと、年収400万円でも負担額は同650円となる。後期高齢者の方が被用者保険に比べ、負担が重くなってしまうのだ。負担割合があまりにバラつきすぎで、政策としての一貫性が保たれていない。
戦後日本は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と医療水準を保ってきた。ところが、いよいよ裏金政権の手によってそれも崩壊寸前だ。早期退陣を求める他にあるまい。
金子勝 淑徳大客員教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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