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あまりに醜い…国民無視の岸田首相「施政方針演説」 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/335797
2024/02/06 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
シレッと原発活用推進、国民の不安を一切無視する施政方針演説(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
岸田首相の施政方針演説の酷さには目を覆うばかりだ。ここまで国民の声を無視した施政方針演説を見たことがない。メディアは怒ることを忘れてしまったようだ。
まず、岸田は元日の能登半島地震で志賀原発にも深刻な事態が起きたことに一言もふれず、シレッとGX(グリーントランスフォーメーション)の一環として原子力発電の活用推進を言う。
外部電源を受けるための変圧器の配管が壊れて、2号機では約2万リットルの冷却・絶縁用油が漏れ、主電源が失われた。1号機は非常用発電機が試運転中に停止。重大事故時の避難経路に定めた国道など11路線のうち、7路線が崩落などで通行止めだ。原発周辺9市町の住宅被害は2万件超に上り、屋内避難も難しい。直下型地震による原発事故発生時は、避難などできないことがハッキリした。
強い揺れがあった輪島市では地盤が4メートルも隆起。同市から50キロ程度しか離れていない志賀原発で同レベルの地盤隆起が起きていれば、福島原発事故の二の舞いになっていた恐れもある。ところが、岸田は一切言及しない。国民の不安を一切無視する驚くべき感覚である。
DX(デジタルトランスフォーメーション)も酷い。マイナ保険証は総点検後もトラブルが絶えず、昨年12月のマイナ保険証の利用率は4.29%で、8カ月連続で下落している。ところが、岸田は演説で「マイナカードの利便性向上を徹底的に進める」と言ってまだ紐付けを増やそうというのだ。
裏金問題についても、肝心の実態解明に後ろ向きだ。二階元幹事長が使途の公開義務がない「政策活動費」を5年間で50億円近くも受領。裏金そのものなのに、岸田は「政治活動の自由」を理由にメスを入れる様子がない。政治資金規正法改正にも及び腰で、解散をブチ上げた「派閥」も「政策集団」と言い換えただけ。
さらに、裏金を収支報告書に記載せずに懐に入れていれば、規正法違反なだけでなく脱税の疑いが濃厚だ。訂正記載しても日付がなく領収書もなければ同じだ。5年間で2700万円超の不記載があった萩生田前政調会長は、一部を事務所の机の引き出しに入れて管理していたと明かした。典型的な所得隠しではないか。国民が巨額を引き出しに隠していたら、重加算税を課されるだけでなく、所得税法違反で逮捕もあり得る。萩生田の免責は、国民にはとても受け入れられない。
国民軽視と“犯罪隠蔽”に満ちた演説の中で、岸田が唯一約束したのは「総裁任期中の憲法改正」だけだ。裏金議員たちに憲法を「改正」されてたまるものか。
金子勝 淑徳大客員教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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