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2023年11月8日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/288685?rct=national
イスラエルの閣僚が、パレスチナ自治区ガザに核爆弾を落とすのも選択肢だと発言した。国内外の非難で処分されたが、ウクライナに侵攻したロシアに続き、戦争当事国から発せられた核による威嚇。あまりに軽い言葉に憤っているのが、広島・長崎の原爆被爆者だ。戦後78年訴えてきた被爆の実相、核兵器の非人道性はどう受け止められているのか。(木原育子、岸本拓也)
◆「それも選択肢の一つだ」
共同通信によると、問題の発言があったのは5日の極右系ラジオ。エルサレム問題・遺産相のアミハイ・エリヤフ氏がインタビューで「ガザに核爆弾を落とすべきか」と尋ねられ、「それも選択肢の一つだ」と答えた。
エリヤフ氏は、対パレスチナ強硬派の極右政党「ユダヤの力」党員。ネタニヤフ首相は「現実とかけ離れている」と否定する声明を発表したが、周辺のアラブ・イスラム諸国から非難の声が相次いだ。
◆忘れられない地獄
被爆者はどう感じたか。
「核兵器の怖さを知らないからそんなことが言える。使うぞ使うぞと威嚇し、誰の何のための戦いか」と憤るのは、日本原水爆被害者団体協議会事務局次長の児玉三智子さん(85)=千葉県市川市=だ。
国民学校に通っていた7歳の時、広島の爆心地から3.5キロで被爆。木造建て校舎の1階にいて強烈な光に襲われ、爆風でガラスが吹き飛んだ。心配になって迎えに来た父と自宅に帰る際、「忘れられない地獄を見た」。
目の玉が飛び出た人、真っ黒な塊になった子どもを抱きかかえる人、そして、自身と同じぐらいの年代の女の子が児玉さんを見たすがるような目。「新聞やテレビに映る戦火の子どもたちの目が、あの時の女の子と重なって身体が凍る。どうして罪もない人たちがこんな目に…」。78年前に感じた思いが再び交錯する。
父や母、2人の弟をがんで亡くした。婚約者の親戚に「被爆者の血を入れることはできない」と差別され、破談になったこともある。2011年にがんで亡くした娘=当時(45)=から、「なぜ私ががんに!」と言われたことは生涯忘れられない。
「ひとたび放射能を浴びれば、死ぬまで被爆者。心の痛み、差別も全て連鎖して引き継がれる。だからイスラエルの閣僚の発言は、許してはならない」と言葉は止まらない。
◆「全てを消滅させるものなのに…」
その思いは長崎で被爆した長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(83)も同じだ。「原爆は普通の爆弾と違い、将来にわたり全てを奪う非人道的なものの極致。とんでもない話だ」と、憤りを超えた悲しみに沈む。
5歳の時、爆心地から約3キロで被爆。「ピカッとした光もドンという音も記憶がない。気付いたら10メートル吹き飛ばされ、地面にたたきつけられていた」。意識を取り戻し防空壕ごうに逃げると、祖母に「外は幽霊の行列だ」と聞かされた。「手を前に出し、皮膚の皮がむけた人間がぞろぞろさまよっていた」と。
子どものころから身体が弱く、やせていた。30歳ごろまで、なぜかよく鼻血が出た。15年ごろ、食道がんと宣告され、原爆症に認定された。核兵器のむごさを身をもって感じてきただけに、今回の発言は理解できない。
「被爆の実態を知らな過ぎる。威力がやや強い大きめの爆弾ぐらいにしか考えていない。全てを消滅させるものなのに…」
◆イスラエルでも核廃絶を訴えてきた
被爆者は「ノー・モア・ヒバクシャ」を掲げ、世界中で体験を語ってきた。イスラエルにも2012年9月、非政府組織(NGO)の「ピースボート」が被爆者4人を派遣している。
その1人で、広島での被爆体験をテルアビブなど3カ所で話した杉野信子さん(79)=東京都世田谷区=が振り返る。「母とともに倒壊した家の下敷きになり近所の人に助け出されたことや、小学2年生だった姉がやけどで亡くなり、中学1年だった兄が行方不明になったことを話すと、親子連れが涙ぐんで聞いていました」
印象に残っているのが、核兵器について問われたときのことだ。12年8月に広島市の平和記念公園での慰霊祭にイスラエルを含む各国要人が列席したことを紹介。「参加した人たちが自国で核兵器の惨状を伝えてくれたら、核兵器がなくなる日が来るかもしれないと話すと、会場からわーっと拍手がありました」
イスラエルにも核廃絶を願う人たちはいる。そう思っていただけに、今回の閣僚発言には怒りが込み上げる。「軽く脅すように核兵器を使うと言う人が国の中心にいるなんて。使えば自分の国も地球も駄目になるのに。何も知らな過ぎる」
◆事実上の核保有国
公式には認めていないが、イスラエルが核兵器を保有しているのは「公然の事実」だ。NPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道氏は「イスラエルは一貫して核兵器の保有を否定も肯定もしない曖昧な態度を取ってきた。しかし、核施設で働いた技術者の告発などもあり、事実上の核保有国と国際社会はみている」と指摘する。保有理由は「アラブ諸国への対抗策として、もし攻められれば核を使うぞという抑止力のため」で、「遅くとも1960年代から保有してきたと考えられている」と話す。
ストックホルム国際平和研究所によると、22年1月時点の推計で、イスラエルは90発の核弾頭を保有しているとされる。米国の5428発、ロシアの5977発に比べれば少ないが、北朝鮮の20発を上回る数だ。
核拡散防止条約(NPT)で核保有が認められているのは、米ロ英仏中の5カ国だが、イスラエルやインド、パキスタンはNPTに入らずに核兵器を開発し、北朝鮮はNPT脱退を宣言して核実験を続けている。
国際社会も、イスラエルのNPT加盟を求めるとともに、中東一帯の非核化を目指す国際会議を19年に初めて国連本部で開いた。ただ、その後の会議を含めてイスラエルと米国はすべて欠席。梅林氏は「国際社会は中東の非核化に向けた努力はしているが、米国がイスラエルの核保有を黙認、擁護する中で実のある議論はできていない」と米国の対応を問題視する。
◆「ガザに落としたらイスラエル全土に被害が及ぶ」
核容認の根本に、原爆の実相、恐ろしさへの理解不足があるのではないか。ピースボート共同代表で、12年の被爆者イスラエル派遣にも同行した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲氏は「もしガザに原爆を落としたらイスラエル全土に被害が及ぶ。そんな現実も知らない主張を閣僚がしたのは危険」と指摘する。
「甚大な被害を生む原爆投下が許されないのは、良心あるイスラエルの人々は分かるはずだ。良識ある人たちと連携して、停戦と人質解放にかけていく」と草の根の平和活動の重要性を説きつつ、日本政府にも注文を付ける。「今こそ核兵器が許されない国際的な規範を確立しなければならない。核兵器による威嚇も使用も禁じる核兵器禁止条約に日本も正面から向き合う時期に来ている。まずは今月下旬の締約国会議にオブザーバー参加すべきだ」
◆デスクメモ
20年ほど前、原爆症と国に認定されなかった被爆者が集団訴訟を起こした。被爆後数十年でがんなどの病気になった人らで、その多くが勝訴。厚生労働省の狭すぎる認定基準とともに、生涯続く核兵器の残虐性が司法で認められた。亡くなった原告も多いが、語り継いでいきたい。(本)
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