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ガザの騒擾とウクライナ戦争 米国の軍事支援は確実に弱まっていく 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/331787
2023/11/09 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
もはや米国の関心や軍事支援はウクライナからイスラエルへ(ウクライナのゼレンスキー大統領)/(C)ロイター
2022年から23年にかけて国際関係で最大の懸案はロシアとウクライナの戦争だったが、さらなる問題が起きた。
パレスチナ自治区ガザ地域におけるイスラエルと、同地区を実効支配している武装組織ハマスの戦いである。
ウクライナ戦争はウクライナ人とロシア人によるスラブ系民族同士の戦いだが、ガザ地域で起きている戦いはアラブ人とユダヤ人による戦いである。
イスラエルの首都とウクライナの首都は約2000キロ離れている。
ガザ地域の戦いがウクライナ戦争に影響を与えるとは通常、考えにくいが、実は大いに関係がある。
米国などは、「ロシアがウクライナを破れば、ロシアは勢いに乗って西欧を攻める。従って西側は自分たちのためにも、ロシアを破らなければならない」との論理を展開。この主張に基づき、米国と西欧は大量の武器をウクライナに提供してきた。
仮に米欧の武器供与が途絶えれば、ウクライナは戦場で敗れるだろう。
そんな状況の中、イスラエルとパレスチナ双方の市民が戦争で殺害される様子が連日、報じられるようになり、ウクライナに対する世界の関心は一気に吹き飛んでしまった。
米国内では、下院でイスラエルに対する軍事支援が決定されたが、ウクライナへの軍事支援は未解決のままだ。おそらく、米国のウクライナへの軍事支援は確実に弱まっていく。そして、ガザ地域の騒擾が、この流れを後押しする。
米国のTIME誌は、「もはや誰も自分(ゼレンスキー)のようにウクライナの勝利を信じない(Nobody Believes in Our Victory Like I Do)」という論評を発表した。
記事によると、彼(ゼレンスキー)が(ウクライナが勝利すると)自分自身を欺いている、として、一部の側近らは、ゼレンスキー氏の頑固さが、新たな戦略や新たなメッセージを打ち出すチームの努力に悪影響を及ぼしている、という。
そして側近らが戦争の将来について議論する中で、タブー視されてきた問題の一つとして、「ロシアとの和平協定交渉の可能性」を挙げていた。
日本の多くの人は、大手新聞・テレビの流す大量の情報に麻痺してしまい、ウクライナ戦争を客観的に見ることができない。
森元首相らが「ロシアが負けることはない」という発言をすると「老害」といった非難が飛び交う。だが、米国はこれまでのようにウクライナに対して武器支援をする強い意志はない。
あり得ない勝利をかたくなに模索するゼレンスキー氏は、米国にとってもウクライナ国民にとっても無用・重荷と見なす声が出始めている。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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