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※紙面抜粋
※2023年12月5日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
自民党丸ごと金銭腐敗にどっぷり(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党5派閥が政治資金パーティー券の販売収入を億単位で裏金化していた疑惑に対する世論の怒りは相当だ。JNNの世論調査(2、3日実施)では、政治資金収支報告書へのパー券収入の一部不記載について「非常に問題がある」との回答が59%に上り、「ある程度問題がある」の30%と合わせて9割が問題視している。
そりゃそうだ。一般市民は10月に始まったインボイス制度によってカネの出入りをより厳しくチェックされ、苛烈な税金の取り立てに遭っている。政治の不作為が招く物価高で実質賃金は18カ月連続マイナスだ。われわれの懐は寒くなる一方なのに、自民党議員は詐欺まがいの手口で濡れ手で粟。国民の三大義務を果たし、マジメに生きているのがアホらしくなる。
JNN調査の内閣支持率は先月から0.2ポイント下落し、岸田政権発足後最低の28.9%に落ち込んだ。国民生活を顧みないばかりか、自民党丸ごと金権腐敗にどっぷりつかっているのが露呈したのだから当然だ。
にもかかわらず、岸田首相は相変わらず鈍い。4日の自民党役員会で対応策を打ち出すのか注目されたが、進展なし。「各政治団体の事情は最もよく知る人間が説明していく、これがあるべき姿だと思います。その努力を続けてもらいたいと考えています」とお寒い「あるべき論」をぶち、「状況を把握しながら党としての対応を考えていく」と棚上げした。
安倍派の還流は10人規模
最大派閥の安倍派が収支報告書に記載したパー券収入は2022年までの5年間で計約6.6億円。所属議員が販売ノルマを超えて集めた1億円超の収入を裏金化して議員に還流させ、5年間で1000万円超のキックバックを受けた議員もいるという。第5派閥の二階派についてもパー券収入1億円超の不記載が浮上。派閥からの支出と議員側の収入は記載があるものの、裏金化に違いはない。
東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)容疑で安倍派と二階派の立件を視野に調べており、派閥が議員側に還流した分の収支も把握し、高額な裏金づくりを組織的に行っていた疑いを深めている。
読売新聞(4日付朝刊)は〈同党議員数十人への事情聴取も検討している〉と報じ、NHKも〈安倍派「清和政策研究会」では、キックバックを受けていた所属議員が、数十人規模に上るとみられる〉と伝えている。つまり、安倍派の半数超が裏金をつかんでいて、二階派でも相当に上るということ。政権中枢にある松野官房長官と西村経産相はカネの流れを知り得る安倍派の事務総長経験者で、高木国対委員長にいたっては現職だ。
松野と西村は知らぬ存ぜぬで、4日に初めて取材に応じた高木も「会計には関わっていないので何とも言いようがない」とシラを切っているが、ダンマリを貫けるのかどうか。臨時国会が閉会する13日から年末年始を挟み、通常国会が召集される見通しの来月22日までが捜査のヤマ場とされる。
司直の手が伸びれば政権は崩壊必至。立件が広範囲に及べば、大量辞職、公民権停止は免れない。麻生派に所属していた薗浦健太郎前衆院議員は辞職したものの、昨年12月に政治資金の過少記載で略式起訴され、東京簡裁は罰金100万円、公民権停止3年の命令を出した。
安倍政権で肥大化した驕りが蔓延
組織ぐるみの裏金疑惑が浮上したきっかけは、「しんぶん赤旗日曜版」(昨年11月6日号)の特報だった。さらに調査した神戸学院大教授の上脇博之氏が昨年から今年にかけ、規正法違反の疑いで各派の会計責任者らを刑事告発。
告発状によると、18〜21年分の不記載が5派閥で計約4000万円に上り、内訳は安倍派約1900万円▽二階派約950万円▽茂木派約600万円▽麻生派約400万円▽岸田派約200万円──だった。各派閥とも捜査が本格化した先月になって、慌てて「事務的ミス」として収支報告書を訂正。それまで鷹揚に構えていた、大手メディアにしても、検察の動き次第で報じる日和見だ。
上脇博之氏はこう言う。
「自民党は検察が動くことはないとタカをくくっていたのでしょう。政治資金規正法は1回の政治資金パーティーで20万円超の支出をした個人・団体名や金額の記載を義務付けていますが、違反が露見しても収支報告書を訂正すれば形式犯で逃げ切れると踏んでいたのが見て取れます。ところが、特捜部の捜査で販売ノルマを超えた分を裏金化する組織的なスキームが浮かび上がった。裏金づくりのやりたい放題で順法精神のかけらもない。自民党がここに至って姿勢を正し、説明責任を全うすればトンデモない自白につながってしまうことから、様子見を決め込んでいるのではないか」
第2次安倍政権で肥大化した権力の驕りが自民党に蔓延している。検察が動いても、圧力をかければ潰せると軽く見ていたのだろう。モリカケ桜疑惑にまみれた安倍元首相は「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務東京高検検事長を検事総長に昇格させるため、勝手な法解釈変更で黒川氏の定年延長を閣議決定。それを正当化しようと、後付けで検察庁法の改正を強行しようとまでした。東京地検が立件に動き出した背景には、安倍政権末期の「横暴人事」への意趣返しとの見方もある。
森会長時代もパー券裏金化
それにしても、安倍派の裏金づくりは筋金入りだ。共同通信によると、森元首相が会長だった04年に開催した政治資金パーティーでは、ノルマを超えてパー券をさばいた議員に対し、手渡しなどで収入の一部を還流。支給額が数百万円に上る議員もいる一方、ゼロの議員もいたという。
汚いカネが流れるところに森喜朗ありなのもア然とする。自民党議員は派閥パー券収入の裏金化を「当たり前」だと思ってきたのは疑いようがなく、このご時世にして驚くべき金銭感覚とモラルの欠落だ。政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言った。
「収支報告書への不記載が自民党5派閥で常態化しているのですから、金額の多寡や手口の変容はあるとはいえ、裏金づくりが党全体で長く共有されてきたのは間違いないでしょう。岸田派の不記載額が比較的少ないのは、総裁派閥になるまで集客力がなかっただけで、クリーンだからとは言えません。数十人の議員が聴取されるとなれば、派閥の幹部クラスはもちろん、閣僚経験者も対象になる。まさに一大疑獄で、詐欺や横領でも立件されなければ、国民感情は収まらないのではないか」
8日にも衆参両院の予算委員会で集中審議が予定され、岸田が火ダルマになるのは避けられない。嫌われ政権にダメ押しとなるか。
「首相は岸田派が火の粉をかぶることはないとみているようです。安倍派の松野官房長官、西村経産相、そして高木国対委員長が狙い撃ちされ、茂木派の新藤経済再生担当相も追及を受ければ、最大派閥とライバル派閥がヘタる。国会を閉じてしまえば自分が矢面に立つことはないし、東京都江東区長選をめぐる公選法違反事件で逮捕者が出れば、世間の関心はそちらへ向かうだろうと」(与党関係者)
バカも休み休み言えという話だ。自民党議員の一掃以外にこの国の政治をマトモにする道はなし。これだけは間違いない。
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