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インフレを予測できない日本銀行
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2023年9月28日 植草一秀の『知られざる真実』
日銀の政策運営に疑義が生じている。
9月22日の政策決定会合で日銀は金融緩和政策の現状維持を決めた。
インフレ抑止の方針を明示するべき局面で日銀はインフレ率の引き上げを目指す方針を改めて明示した。
インフレが庶民生活を直撃しているが日銀はその苦しみを増幅する方向に政策を運営している。
日本の消費者物価指数上昇率は本年8月時点で前年同月比3.2%。
日銀の目標は前年同月比2%上昇である。
7月の政策決定会合で公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」で日銀は2023年度の消費者物価上昇率を3.2%(生鮮食品とエネルギーを除く総合)、2.5%(生鮮食品を除く総合)とした。
中央銀行が重視する物価指数は変動の激しい生鮮食品とエネルギーを除く総合指数(以下コアコア指数と表現)。
日銀は消費者物価上昇率を2%に引き上げることを目標にしている。
しかし、現状で日本の物価上昇率は目標を上回っている。
今年度全体の物価上昇率が「生鮮食品とエネルギーを除くコアコア指数」ベースで3.2%と展望されている。
本年4月時点の見通しは2.5%上昇だった。
わずか3ヵ月で0.7%ポイントも上方修正された。
インフレ亢進が誰の目にもはっきりしている。
このことを受けて日銀は7月28日の政策決定会合で長期金利の上限を従来の0.5%から1.0%に引き上げた。
当然の政策修正である。
しかしながら、日銀は日本のインフレ率を引き上げるための政策誘導を現在も維持している。
すでに足元のインフレ率が2%を大幅に超えているにもかかわらず、インフレ亢進を推進する政策方針を示している。
日銀の説明は
「2%の消費者物価上昇率が持続的かつ安定的に達成される見通しを確保できるまで金融緩和をねばり強く維持する」
というもの。
本年7月発表の日銀「展望レポート」では、2024年度、2025年度の物価上昇率見通しが次のように示された。
コア指数(生鮮食品を除く総合)
2024年度 +1.9%
2025年度 +1.6%
コアコア指数(生鮮食品とエネルギーを除く総合)
2024年度 +1.7%
2025年度 +1.8%
これらの数値はいずれも2%を下回っている。
これを根拠に日銀は
「2%のインフレ率が持続的・安定的に達成される見通しは得られていない」
としている。
しかし、日銀の先行き見通しは、失礼ながらまったく信用に値しない。
日銀が本年1月18日に公表した「展望レポート」で2023年度のインフレ率をどのように展望していたのか。
コア指数 +1.6%
コアコア指数 +1.8%
だった。
これが本年7月の「展望レポート」で既述の通り、次のように改定された。
コア指数 +2.5%
コアコア指数 +3.2%
今年度のインフレ率見通しが、わずか半年の間にこのように激変した。
中央銀行にとって最重要のコアコア指数の今年度見通しが年初の+1.8%から+3.2%へと大幅上方改定された。
遠い将来の見通しが修正されたのではない。
目の前の今年度の見通しすら完全な見当違いの数値しか示せないのが、現在の日銀の実力である。
日銀はインフレ率2%を目指すとしているが、2%に届かないとの今年度のインフレ率見通しが、一転して2%を大幅に超える見通しに改定された。
日銀は、現時点で2024年度、2025年度のインフレ率が2%に届かないとの見通しを示し、これを根拠にインフレ率を引き上げる政策を推進すると主張している。
しかし、足元のインフレ率はすでに2%を大幅に超えており、2024年度、2025年度の実績が2%を大幅に超えることは確実な情勢である。
問題はこのインフレ亢進が国民を苦しみの淵に追い込んでいること。
インフレ亢進がもたらす最大の災厄は実質賃金の減少。
日本の労働者は実質賃金減少に苦しめられ続けている。
この苦しみを増幅しているのが日銀のインフレ推進政策である。
日銀の金融政策運営の誤りを正す必要がある。
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