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「汚染水」の海洋投棄を撤回し議論のやり直しを求める れいわ新選組が声明
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/27464
2023年8月29日 長周新聞
政府と東電が24日から福島第1原発内の汚染水の海洋放出を開始することを発表したことを受けて、れいわ新選組(山本太郎代表)は23日、「『汚染水』の海洋投棄を撤回し議論のやり直しを求める」とする声明を発した。以下、全文を紹介する。
「汚染水」の海洋投棄を撤回し議論のやり直しを求める
8月22日の関係閣僚会議において、岸田首相は福島第一原発の処理後の汚染水を8月24日から海洋放出(海洋投棄)すると表明した。
米国詣(もうで)の直前、8月17日時点で岸田首相は「今現在、具体的な時期、プロセスなどについて決まっているものではない」と発言。
19日米国で取材に答えて「国として判断すべき最終的な段階」と、決定が近いことを匂わせる発言に変わった。大事なことはアメリカで決める、歴代自民党総理らしい、岸田首相らしい振る舞いだ。
8月21日の会見でも首相は放出開始日程の明言は避けたが、結局、その時点ですでに報じられていたとおりの24日放出開始を決定した。
プロセスは決まっていないという発言から、放出開始日程の発表まで一週間も経っていない。方便でその場その場を逃げ切る詐欺師が国をつかさどっているようだ。
この愚かな決定に対して漁業団体が反対することは当然である。しかし、反対しているのは漁業者だけではない。地元福島大学の関係者が立ち上げた「福島円卓会議」は「影響を受ける人々が参加すべき議論のプロセスを省略して放出を強行することは認められない」と民主的プロセスの欠如を批判する。
中国だけが反対しているかのような報道も間違いだ。フィリピンや太平洋諸島諸国などから反対の声は根強い。100以上の海洋研究機関が集う全米海洋研究所協会(NAML)も反対声明を発表している。
れいわ新選組はこれまでも国会質疑や街宣、対政府交渉の場を通じて汚染水の海洋放出に反対を表明するとともに、反対理由を示してきた。
改めて政府に「汚染水」の海洋投棄を撤回し議論のやり直しを求める。
海洋投棄される放射性核種を含む水を「汚染水」と呼ぶことを、政府は「事実に基づかないデマ」と批判する。それでも我々が「汚染水」と呼び続けるには根拠がある。
政府・東電はこれまで「トリチウム以外は基準値以下になるまで取り除いている」から「汚染水」ではないと主張してきた。さらには「トリチウム水」なる名称まで作って「トリチウム」だけの問題であるかのように宣伝してきた。
「トリチウム以外取り除いたから汚染水ではない」という主張には大きな嘘がある。
最も重大な嘘は、トリチウム「以外」ほぼ取り除いた、という主張。トリチウム以外の放射性物質も完全には取り除けておらず、そもそもどのくらいの量が含まれているのか測定していない。
溶け落ちた核燃料に直接触れた「汚染水」は通常原発からの排水とは全く異なる。
福島第一原発の汚染水には、当初の段階で210種類もの放射性物質が含まれていると想定される。多核種除去設備ALPSで減らすことができるのは62種類の放射性物質。しかし海洋投棄直前に「基準値未満であること」を確認するため測定するのは30種類だけである。
それ以外の百数十種類の放射性物質は、「どうせ少ししか含まれていない」との決めつけで、測定しないことになっている。「トリチウム以外ほとんど取り除いた」は嘘で、「ほとんど測定していない」だけである。
そもそも経済産業省は1g当たりの濃度で評価しているだけ。総量、という概念は存在しない。
政府はセシウムやストロンチウムを総量でどれだけ流すのか「分からない」という。事実上無限に放射性物質を海に流すために総量は考えないことにしている。
本来必要なのは、トリチウム以外の放射性物質も含めて総量で規制する基準である。
「薄めたからよし」としていくらでも流せる仕組みを押しつける姿勢には、科学や地元への誠意は微塵も見られない。
さらに、測定されている放射性物質に関するデータさえも信憑性がない。東電が正確なデータを把握していないことを、海外の科学者達が問題視している。
16カ国及び2地域からなる太平洋諸島フォーラム(PIF)の専門家達は、東電がごく限られた一部のタンクからサンプル水を測定し、ごくわずかな種類の放射性物質しか測定していないことを批判している。
「東京電力のソースタームに関する知識、貯蔵タンク中の特定の放射性核種についての情報は、極めて不十分」「東京電力の測定方式は統計上不十分であり偏りのあるもの。統計上信頼できる推定値を提供できるものとして設計されているようにさえ見えない」などと痛烈に批判されているのだ。
れいわ新選組はこれらPIF専門家パネルメンバーからの指摘について政府や東電がどのように回答したのか、そのやり取りの詳細を公表するように繰り返し求めてきた。
しかし政府は「その詳細については、相手方との関係もあることから、お答えすることは差し控えたい。」と隠し続けている。政府が繰り返す「丁寧な説明」の姿である。
岸田首相や関係閣僚はIAEA包括報告書(2023年7月4日公表)を振りかざし「(海洋放出計画)は国際基準に合致」と主張する。しかし原発推進機関であるIAEAがトリチウム放出規制に消極的であることは、上記PIFの専門家からも批判されている。
そもそもこの報告書の日本語版すら作らず、結論だけ「要約」で紹介するやり方が、岸田首相が主張する「高い透明性を持った丁寧な説明」として認められるはずがない。
国内外の専門家からタンク貯蔵の継続を提案されながら、東電も政府も海洋投棄先にありきで貯蔵可能な敷地を探す努力すら行ってこなかった。
結論ありきの海洋投棄に突き進むことで、海洋環境に取り返しのつかない影響を与える可能性があるだけではない。海洋投棄に至るごり押しの意志決定が、民主主義と地方自治、国民の知る権利を徹底的に破壊してきた。
海洋投棄方針は撤回し、ゼロベースで議論をやり直すことを求める。議論のやり直しに際しては、特に以下を求めたい。
・反対意見も含めた国内外の専門家によるオープンな議論と代替案の検討
・国会に汚染水問題に特化した特別委員会を設置し意志決定に必要な全てのデータ・資料を公開すること
・本当の意味で関係者の参画を保証するため各地での住民投票の実施
大規模公害を引き起こした東電と政府が、さらに環境汚染を拡大する計画を推進している。
その意志決定から国民を排除するこれまでのようなやり方は断じて認められない。
規模、期間ともに前例のない放射能汚染水の太平洋への投棄を撤回し、生態学的・経済的・文化的に貴重な海洋資源と共に生きてきた人類と地域社会をまもるための他のアプローチを徹底追求することを強く求める。
2023年8月23日
れいわ新選組
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