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広島サミットはどういう物差しで測れば「成功」だったのか 永田町の裏を読む
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/323460
2023/05/24 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
日本の対米盲従ぶりに各国はうんざり(日印首脳会談=代表撮影)
広島G7サミットが成功だったか失敗だったかは、どういう物差しを当てて測るかによる。
カナダ在住の91歳の被爆者サーロー節子は「失敗だった」と言う。同サミットがまとめた「核軍縮に関する広島ビジョン」は、ロシアによる核威嚇や中国の透明性なき核戦力増強を非難し、北朝鮮の完全な核放棄を要求しているが、これについてサーローは「(米国などが)自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」と、ズバリ指摘した。
被爆者団体の日本被団協の木戸季市事務局長も「希望は完全に打ち砕かれた。核の傘の下で戦争をあおるような会議だった」と憤りを示した。
しかし、岸田文雄首相にとっては、米国を盟主とした西側先進国の結束強化を誇示し、そのためにはロシア、中国、北朝鮮の旧東側陣営をひとからげにして「敵」と再設定し、「民主主義VS専制主義の対決」という米バイデン政権の世界観を称揚することこそ、このサミットの中心目標だったのだから、被爆者たちからの批判や憤激はむしろ「成功」の証しなのである。
それに付随する演出は、グローバルサウスの西側への取り込みだった。米国や日本が推進するロシアや中国への敵視政策は必ずしも世界の多数派意見ではなく、G7内部でさえフランスのマクロン大統領のように「米国の同盟国だからといって下僕ではない」と言い放って台湾問題の平和的解決を主張する正論居士もいる。
ましてや広く世界の南側を見渡せば、インドをはじめブラジル、アルゼンチン、メキシコ、エジプト、イラン、トルコ、インドネシア、ベトナム等々、BRICsプラスアルファやE7やG20や上海協力機構など、中国やロシアとともに多角的国際機構に加わっている隆盛著しい多くの国々は、今更ながら世界を東西に分割して対立をあおるような米国の時代錯誤的な妄動にはウンザリしている。
それでもサミットの招待国として呼ばれれば来て、対話の機会を生かそうとはするけれども、日本の対米盲従ぶりなど先刻ご承知だから、インドのモディ首相などは来日して早々に同国は「非同盟であり、中露ともG7とも付き合う」と宣言して岸田を牽制した。彼らの目から見てサミットはどの程度に成功し失敗したのかを聞いてみたい。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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