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※紙面抜粋
※2023年5月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
高揚感に酔いしれて(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
防衛目的や抑止力のための核兵器は正当化し、広島の被爆者たちを失望させた欺瞞のサミットだったが、岸田首相は「歴史を刻んだ」と高揚感に酔いしれ、自民党は「大成功」だと沸いている。
サミットを終え、これまで微風だった永田町の解散風が強まってきた。6月21日の国会会期末までに岸田が解散総選挙に踏み切るのではないかとの観測が高まっているのだ。先週末に実施された世論調査で内閣支持率が10ポイント近く爆上がりし、3万円台に乗せた株価もバブル崩壊後の最高値を更新する爆騰。「ここで選挙をしなければ、いつやるんだ」と自民党幹部が主戦論をぶつほど勢いづき、党内は「今なら勝てる」と歓迎ムードらしい。
4年ある衆院議員の任期はまだ半分以上も残っている。「今なら」というのは、4月の統一地方選や衆院補欠選挙で躍進した日本維新の会の選挙準備が整わないうちにやってくれ、という身勝手な理由だ。防衛増税や子育て支援策への負担増の論議が本格化する年末に近づくほど、選挙が不利になるという解説もある。
政局好きの大マスコミも浮足立ち、与野党幹部の記者会見のたびに解散がらみの質問をして風をあおる。当の岸田は「今、解散は考えていない」と否定を繰り返すが、解散については嘘をついてもいいとかいう永田町のおかしな慣習があるから、誰も額面通りには受け止めない。
「岸田首相は権力の絶頂に浸っている。早期解散の観測に皆が踊っているのを楽しんでいるきらいすらあると、総理周辺も話しています。総理にとって解散風は、政権維持のために党内を抑えるパワーになる。とはいえ、支持率が高くても、支持の理由は『ほかによい人がいない』が半数に達しています。岸田首相の政策を支持しているわけではない。地方選挙で自民党の現職がバタバタと落選しており、有権者の自民離れはクッキリ。今は有頂天で、イケイケドンドンだが、岸田首相に解散を打つ度胸があるのかどうか」(政治評論家・野上忠興氏)
不信任案なら「大義」のご都合主義
岸田派の宮沢洋一参院議員が、22日の同派議員のパーティーで「不信任案(内閣不信任決議案)が出たら、首相の性格からすると受けて立つ可能性もかなり高い」と予告したことも、さらなる解散の臆測を生んでいる。宮沢は岸田のいとこで、幼少期から付き合いがある。
23日は自民党の遠藤利明総務会長も「不信任案は解散の大義になる」と発言。野党から出される会期末の不信任案には、いつもは粛々と否決するのに、ご都合主義の「大義論」は野党に対する揺さぶり。会期末までこんな駆け引きが続くのだろう。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「サミット“成功”で解散総選挙なんて大義がありません。一体、何のために国民の信を問うのでしょうか。任期の半分の折り返しにも達していないのに、今、解散するのはおかしい。でも逆に言えば、解散したいならすればいい。ここまで国会を無視して勝手に決めてきたさまざまな政策について、国民の審判を仰いだらいいのです。
安保3文書を改定し、防衛費をGDP比2%まで増やすことや、購入する武器の中身まで閣議決定で決めてしまった。防衛費倍増のために増税までするのに、一度も国民に信を問うていません。他にも、60年を超える原発の運転延長を閣議決定で決めました。旧統一教会問題の被害者救済法はザル法で、教団と関係のある自民党議員についての調査もうやむやです。こうなったら、これらすべてについて、国民に信を問いましょうよ」
立憲主義と法治主義を捨てた政権に正当性はない
確かに、その通りだ。G7議長国として「自由と民主主義の価値」を確認し合うほどなのだから、首相は民主主義の原則に従って、ウクライナ戦争に乗じて進めてきた軍事大国路線の是非を国民に問えばいい。
防衛費を5年間で43兆円というとんでもない巨額に増やせば、日本は米中に次ぐ世界第3位の軍事大国に躍り出る。憲法9条に基づく「必要最小限の防衛力」を逸脱することになる。敵基地攻撃能力の保有は、国際法違反の先制攻撃とみなされる恐れがある。専守防衛をかなぐり捨てるのだ。
23日は衆院本会議で防衛費増額のための財源確保法案が与党などの賛成多数で可決し、参院に送られた。税外収入を積み立てる「防衛力強化資金」を新設し、特別会計の剰余金などあらゆる余り金をかき集めて防衛費に充てるというのである。そんな金があるなら少子化対策を優先すべきだし、剰余金だけでは足りないから、増税までして庶民の懐に手を突っ込むのだからフザケている。
自衛隊の隊舎整備や護衛艦建造費などに建設国債を充てることも決めてしまった。NATO(北大西洋条約機構)基準のGDP比2%にするだけでなく、NATOが来年にも東京に連絡事務所を置くという話もある。林外相は今年もNATO外相会合に出席した。ウクライナの戦争に首を突っ込み、日本はいつのまにかNATOの一員になったかのようだ。
正々堂々と国民に向き合え
ウクライナ支援で「防衛装備移転三原則」の運用見直し議論も加速している。殺傷能力のある兵器の供与に道をつけ、輸出解禁で防衛産業育成も視野に入れる。とにかく、安全保障に関するあらゆる政策変更が、憲法を踏みにじり、戦後日本の平和国家としての歩みを止める歴史的大転換なのである。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「日本国憲法9条の原点は、すべての軍備の放棄でした。当時の吉田茂首相は国会で『自衛権の発動としての戦争も、交戦権も放棄した』と答弁しています。その後、日米安保条約により、専守防衛の自衛は認め、侵略戦争は認めないと憲法解釈を変えた経緯があります。ですから、敵基地攻撃能力の保有によって敵の攻撃着手の段階で反撃できるようにするのは、先制攻撃の侵略戦争を認めるようなもので、自民党は自分たちがつくってきた論理をひっくり返している。
先の大戦の反省から防衛費に国債を充てるのは『禁じ手』とされてきた。建設国債を使うのは、憲法と財政法に違反します。むやみやたらに国債発行を許せば、歯止めがなくなる。このように、岸田政権は国民の審判を仰ぐことなく軍拡を進めている。立憲主義と法治主義を捨てた政権には正当性がありません」
野党の弱体化もあり、岸田政権の国会軽視は甚だしい。どんなに野党が少数だとしても国会議員は主権者国民の代表だ。ところが、これだけ疑問や疑念が山積する防衛力強化と軍事大国化なのに、「相手に手の内を明かすことになる」などと言い訳して説明を避け、既成事実化し、民主主義を軽んじる。
防衛費増額のための財源確保法案について「問題がある欠陥法案だ」として、立憲民主党が鈴木俊一財務相の不信任決議案を衆院に提出した際も、権力監視の牙を抜かれた大メディアがキワモノ扱いするから、岸田自民はニンマリだった。
国民を愚弄するのは、もういい加減にして欲しい。姑息なごまかしや逃げるのではなく、真摯に向き合ったらどうなのか。
前出の鈴木哲夫氏が言う。
「正々堂々と国民の声を聞くべきです。ただ、支持率が上がっているからといって、解散総選挙でも支持を得られるかといえば違う。個別政策で見ると、防衛費のために増税することに世論は反対です。サミット成功といっても、世論は核廃絶が進むとは思っていない。『異次元』とうたう子育て政策で少子化に歯止めがかかるとも思っていない。これらが選挙の争点になれば、岸田政権にとって、そう甘くありません」
23日は2022年度の実質賃金の月平均が前年度比1.8%減だったと発表された。物価高の影響で家計は依然苦しい。そんな中で、軍拡一直線の岸田政権に鉄槌を下せるなら、国民は大歓迎。会期末解散なんて、やれるもんなら、やってみろ、だ。
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