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※紙面抜粋
※2023年5月8日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
米国隷従どこまでも(日韓首脳会談)/(C)ロイター
石川県能登地方で最大震度6強の揺れを観測後、活発化する地震活動に不安が高まる中、岸田首相は7日、就任後初めて韓国を訪問した。
アフリカ4カ国とシンガポール歴訪から帰国後、1日おいて1泊2日のスケジュール。3月中旬に来日した尹錫悦大統領と再開で合意した首脳同士の相互訪問「シャトル外交」の一環で、2011年12月に当時の野田首相が来日した李明博大統領を迎えて以来だ。
日本の首相による訪韓は、2018年2月に当時の安倍首相が平昌五輪開会式に出席して以来。核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に対する「異次元の圧力」を主張していた安倍は、米国のペンス副大統領に引っ付き、その威を借りてふんぞり返っていたものだった。
この間、日米韓のいずれも政権が代わった。隣国との良好な関係構築は安全保障上、極めて重要だが、とても手放しでは喜べそうにない。日韓関係改善の裏に軍事的なキナ臭さがぷんぷんするからだ。
7日の首脳会談では、北朝鮮による相次ぐミサイル発射を踏まえて日韓および日米韓3カ国の安全保障協力を進め、抑止力と対処力を強化していくことを確認。半導体のサプライチェーン構築への連携も申し合わせた。どれも、中国を「国際秩序を変える意図とそれを実現する経済力、軍事力、技術力を備えた唯一の競争相手」と位置付ける米国のバイデン政権の政策に沿った動きだ。
2カ月で3回会談の変わり身
岸田が政権浮揚を期待するG7広島サミット(19〜21日開催)は目前。尹錫悦は招待国トップとして出席し、日米韓首脳会談も予定されている。戦後最悪といわれた日韓関係を雪解けさせるべく、元徴用工問題をめぐる解決策を引っ提げて3月中旬に来日したばかり。岸田訪韓を挟み、2人はこの2カ月で3回も顔を合わせることになる。
先月末にホワイトハウスで米韓首脳会談が行われた直後、岸田側が訪韓を打診したという。対日突破口を開いた尹錫悦が韓国大統領として12年ぶりの「国賓訪問」を果たし、大歓待を受けたことで焦りを募らせたのか。半年前まで会うことすら拒んできた岸田の変わり身の早さといったらない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「日韓関係は伝統的に米国の意向が働かなければ動かない。河野談話、村山談話、そして当時の橋本首相が元従軍慰安婦の方々宛てにおわびの手紙を出し、それを継承した小渕、森、小泉各首相に至る10年ほどは例外的でした。今回の会談で岸田首相は、植民地支配への反省とおわびを明記した日韓共同宣言(1998年)を含め、日本政府の立場は今後も揺るがないと改めて表明し、歴史問題について『心が痛む思い』と言及した。
広島サミットの機会に韓国人原爆犠牲者慰霊碑をそろって訪れることや、(東京電力福島第1原発の)汚染水の海洋放出をめぐる韓国視察団の受け入れも決めた。関係正常化に向けて大きく舵を切った尹大統領のメンツを潰さないよう配慮した結果でしょう。背景に米国のプレッシャーがあるのは明らかで、両首脳とも米国に向かって『頑張ってますよ!』とアピールする意図が透けて見えます」
岸田は会見で「3月に私と尹大統領が示した方向性に沿って、2カ月足らずの間に日韓の対話と協力がここ数年の低迷期を脱し、経済、安全保障を含む多岐にわたる分野で動き、具体的な成果をあげている」と胸を張っていた。
岸田訪韓が外交的成果のように報じられているが、その裏に何があるのか。
尹大統領の安全保障観を奇貨とした軍事強化
元経産官僚の古賀茂明氏は3月の尹錫悦来日を受けて、近著「分断と凋落の日本」でこう書いていた。
〈それよりはるかに大きな懸念は、尹大統領の安全保障観だ。前任の文在寅政権は米国一辺倒の日本と異なり、米中との間でバランスをとる外交を展開してきた。しかし、尹氏は米日との経済・安保関係重視の姿勢を強調しているように見える。これを奇貨として、日本側保守層には、韓国との真の友好関係を発展させることには関心を持たず、ただ単に、中国封じ込めのために日米韓の軍事協力強化に利用したいと考える人々が多い。
今回の韓国側の歩み寄りの裏には、米国バイデン大統領の後押しがあったとも言われるが、米国から見れば、これで東アジアにおける米国の軍事的負担のかなりの部分を日韓に肩代わりさせることができ、しかも、両国に大量の武器を売却する基盤が強化されたということになる。もちろん日本は、ますます米国への依存を強めることになるのである。その先にあるのは、中国との対立激化だ〉
古賀氏が指摘したのは、米国主導の中国包囲網による緊張エスカレートへの懸念だ。「台湾統一」を掲げる習近平国家主席の動向をバイデン政権は警戒している。それに呼応し、岸田政権は昨年末に安保関連3文書を改定。防衛費倍増や、国是である専守防衛を逸脱する敵基地攻撃能力の保有を決め、この国の安保政策を大転換させた。言うまでもなく、平和主義を掲げる憲法9条を死文化させる暴挙だ。
「共存」と「戦争」が逆転
東大教授の石川健治氏(憲法学)は、憲法記念日に放送されたNHK「ニュース7」で、9条の意義についてこう話していた。
「日本は1930年代のテロリズムや戦争の時代を乗り越えて9条の思想を選択した。この選択が戦後の共存思想の最後の支えになっている。最近の風潮を見ていると、この支えが外され、共存の思想と戦争の思想の拮抗した関係が逆転するのではないかという危惧を感じる。異質な他者と共存していくかどうかという選択が、戦争に関する態度決定につながる」
憲法施行から76年。この間の日本は一度たりとも戦争せず、1人の命も奪うことはなかった。持ち回りに過ぎないが、G7議長国トップを務める岸田がなすべきことは「異質な他者」である中国などとの平和的な「共存」に向けた外交的リーダーシップの発揮だ。にもかかわらず、バイデンの寵愛欲しさに対中包囲網のお先棒を担ぎ、その旗を必死に振っているのだから度し難い。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「27年までに中国が台湾を侵攻するという仮説を立てる米国からすれば、日米韓が一体となり、表向きは北朝鮮、その実は中国をにらんだ軍事的・経済的な包囲網構築は待ったなし。7日の日韓首脳会談は、米国を媒介とした事実上の日韓軍事同盟形成に向けた一歩と言っていい。ともに民主国家であるにもかかわらず、両国民は置いてけぼりです。
昨年末に安保政策と原発政策を大転換させた岸田首相は高揚した様子で『俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ』と口にしたと報じられている。要するに、国民のために政治をやっているんじゃない。『軽武装、経済重視』を掲げる自民党宏池会の領袖ですが、ハト派のふりをした獰猛なタカがその本性なのです。岸田首相に対して幻想を抱くのはやめたほうがいい。岸田政権下では、すべての道は戦争に通ず。これは決して大げさではありません」
岸田ハト派外交などと思っていると、とんでもないことになる。この国は確実に「重武装、軍事重視」に向かわされている。目をこじ開けなければ、いよいよ取り返しがつかなくなる。
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